行政監察特別委員会 第3号
- 発言数
- 163 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1955/12/14
会議録
○高木委員長 これより会議を開きます。 小、中学校における教科書関係事件について、調査を進めます。 直ちに証人より証書を求めることにいたします。 ただいまお見えになっておられる方は、田中義男さんです。 この際、証人に一言申し上げます。現在わが国において、小、中学校における教科書は多種多様にわたり、大小出版業者が乱立し、これが検定並びに採択等に関しとかくの風評も生じ、これらが学童並びに父兄に及ぼす影響等を懸念し、世上大いに関心を抱いておる向きがあるのでありますので、義務教育の本旨にかんがみ、これが真相を明らかにすることは、きわめて意義のあることと考え、本委員会は、本件の調査に着手した次第であります。証人におかれましては、率直なる証言をお願いいたします。 証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人に証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならないことと相なっております。宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言が、証人または証人の配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあった者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの着の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び、医師、歯科医師、薬剤師、葉種商、産婆、弁護士、弁理士、弁護人、公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあった者がその職務上知った事実であって黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになっております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓庫たは証言を拒んだときは一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは三月以上十年以下の懲役に処せられることとなっておるのであります。一応このことを御承知になっておいていただきたいと思います。 なお、証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものであるときは、その旨を申し出願いたいのであります。 では、法律の定めるところによりまして、証人に宣誓を求めます。御起立を願います。 宣誓書を朗読して下さい。 〔証人田中義男君朗読〕 宣 誓 書 良心に従って、真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。
○高木委員長 それでは、宣誓書に署名捺印を願います。 〔証人宣誓書に署名捺印〕
○高木委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際にはその都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。まず委員長から概括的に証言を求め、次に各委員から証言を求めることになりますから、御了承を願います。なお、こちらから質問をしておるときはおかけになっていてよろしゅうございますが、お答えの際は御起立を願いたいと思います。 証人の略歴をお述べになって下さい。
○田中証人 私は明治三十四年一月十三日生れでございまして、大正十四年東京大学の法学部政治学科を卒業し、直ちに内務省に採用になりまして、地方警視、地方事務官等を歴任し、昭和十年に文部書記官として文部省に赴任いたして以来、教学局書記官兼任文部大臣秘書官等を歴任いたしまして、昭和十七年に関東局の在満教務部長となり、次いで満州国政府において文教府を創設いたしました際に、昭和十八年の四月文教府次長を拝命し、昭和十九年の七月に文部省参事官として文部省に帰って参りました。さらに昭和二十年の三月に自発的な依願退職となりまして、さらに同年の九月に公職追放の指定を受けましたところ、昭和二十六年の十月でございましたか解除と相なりまして、昭和二十七年の二月に初等中等教育局長として復職をし、昭和二十八年八月に文部事務次官を拝命いたしまして、現在に至っております。
○高木委員長 終戦後、教科書の検定制度をとるに至った経緯について、お述べになっていただきたい。
○田中証人 教科書につきましたは、終戦前は御承知のように国定でございまして、小学校については明治三十七年以来、また中学校につきましては昭和十八年以来原則として国定、こういうことになっておったのでございますが、終戦によりまして、GHQの特別な指導によりまして、一時暫定教科書を作ってこれを用いておったのでございます。さらに昭和二十一年の三月にアメリカから教育視察団が参りまして、その報告書には、当時の教科書につきましては、全く文部省がこれを編集いたしておって、教育関係者もその作成、出版等には一切関係しておらない。これらはよくないことであって、教科書の作成出版を、一般に競争にゆだねるべきである。かような趣旨の報告をいたして帰ったのでございます。さらにたまたま二十二年度からは六・三制の新しい学制が実施に相なりましたので、さらに一そう教科書を急いで作るための重要性を感じまして、文部省といたしましては、昭和二十二年五月に教科書制度改善協議会というものを作って、省内外のそれぞれの学識経験者等を集めまして、四カ月にわたって教科書の編集、発行、供給あるいは採択等についての協議をいたしたのでございまして、その結果、機会均等、門戸開放ということを趣旨にした答申を得たのでございます。さらに内外の方々によって一そうこの教科書制度についての意見を求める必要を感じまして、昭和二十二年十一月教科用図書委員会を文部大臣の諮問機関として設置することとなりまして、各県から代表を選んでいただいて、そうしてその代表者の方々の会合を求めました。その結果、教科書制度の改革の諸問題を審議するという目的のために、地方から特に推薦されましたその人々と、文部大臣において広く学識経験者の中から推薦をする人々、かような方々を集めまして、ここに二十三年の一月に教科用図書委員会が発足をいたしたのでございます。その結果、同委員会の答申といたしまして、教科書については、検定制度をとるべきである、なおまたその検定によってできた教科書を、二十四年度から使用すべきである、かような意味の答申を得、さらには図書の原稿の審査は、教員の方々、あるいは学識経験者の方々で組織する検定委員会を設けて、その委員会によって審査をするということと、さらにその審査のためには調査員を置いて、そうして検定基準によってその調査をなすべきである、かような意味の答申があったのでございます。それに基きまして、昭和二十三年において現在の検定制度というものがはっきりいたして、実施することになり、昭和二十四年度の教科書から既存のような検定による教科書を各学校において使用する、こういうふうになりまして、現在に至っておるのでございます。
○高木委員長 教科用図書検定規則によれば、図書の検定は、教科用図書検定調査審議会の答申に基いて、文部大臣がこれを行うこととなっておるが、この審議会の委員の氏名、これは昭和三十年度分でけっこうですが、その氏名及び職業、その任命方法並びに図書検定の際の調査審議方法等について詳細にお述べになって下さい。
○田中証人 教科用図書の検定につきましては、教科用図書検定審議会というものができておるのでございます。その中に分科会がございまして、教科用図書の検定につきましては、教科用図書検定調査分科審議会というものができております。この分科会において、もっぱら教科用図書の検定をいたしております。 この委員の任命につきましては、大体任期は二年になっておりまして、半数交代を大体においていたしております。その任命につきましては、これははっきり規定がございまして、十六人定員がございますうち、小学校の教員の方から二名、中学校の教員の方から二名、高等学校の教員の方から二名、あとの十名につきましては、文部大臣が広く学識経験者の中から候補者を求めまして、そうして教科用図書検定分科審議会の方々の御意見をも徴してこれを任命する、こういうのが慣例になっておるのでございます。 昭和三十年度の委員の名前を申し上げますと、原田実氏、これは教育の専門家でございまして、早稲田大学の教授をしておいでです。それから中島健蔵氏、これは評論家でございます。それから大町芳文氏、これは化学の先生でございまして、慶応の教授をしておいでです。山田忠雄氏、これは国語専攻の方でございまして、日本大学の教授をしておいでです。小松勇作氏、これは数学専攻の方でございまして、現在東京工業大学の教授をしておいででございます。それから佐藤省吾氏、これは英語専攻の方でございまして、学習院大学の教授でございます。それから読谷山朝宣氏、これは体育保健専攻の方でございまして、昭和女子大学の教授をしておいででございます。それから中野三郎氏、これは天文地学の専攻の方でございまして、東京天文台に勤めておいでです。それから荻野三七彦氏、これは歴史専攻の方でございまして、早大の教授をしておいでです。それから鈴木虎秋氏、これは港区白金台小学校の校長をしておいでです。それから稲葉捨己氏、これは千代田区の芳林小学校の教諭をしておいでです。それから先ごろなくなられました野口彰氏、これは港区の愛宕中学校の校長をしておられました。それから宮崎利邦氏、これは音楽を専攻の方でございまして、新宿区の落合中学校の教諭をしておいでです。それから土橋兵蔵氏、これは英語を専攻の方で、千葉県船橋高等学校の教諭をしておいでです。それから片山徹氏、これは物理を専攻の方で、都立大学付属高校の教諭をしておいでです。それから佐原六郎氏、これは慶応大学の教授をしておいでで、社会に関する専攻をしておいでです。 以上でございます。
○高木委員長 その任命の方法は、どういうことになっておりますか。
○田中証人 任命につきましては、規定によりますと、文部大臣がこれを任命する、こうなっておりまして、その内訳は先ほど申しましたように、小学校の教員から二名、中学校の教員から二名、高等学校の教員から二名、その他学識経験者の中から十名、こういうふうになっております。しかもその委員の任命につきましては、委員会の意見をも開いて任命するという慣例になっております。
○高木委員長 図書検定の際の調査審議を詳細にお述べになって下さい。
○田中証人 審議会におきます調査審議につきましては、一応文部省において取りまとめました原稿を委員会にお渡しをいたします。委員会におきましては、これを調査員に配付いたしまして、そして調査員に原稿調査をなさしめるわけでございます。この調査員は、冬科目にわたりますので、大体総数約千四百名近くになっておるのでございます。この調査員の方々は、小学校、中学校あるいは高等学校等の現場の教職員の方々あるいは学識経験の豊富なる方々に御依頼するようにいたしておるのでございます。そこで原稿を渡します場合に、一つの原稿につきまして調査員五人を選ぶことになっております。これはきわめて機械的になしておるのでございまして、文部省としては一応のリストを作って、そしてそのリストの順序によって、機械的に、一点一点これを分けていく、こういうことにいたしておるのでございます。その五人の調査員の中には、学校の教職員の方々を三名、学識経験者を二名、こういう割合で、組織をいたしておるのでございます。この五人の調査員の方々が、それぞれ教科用図書の検定基準の多項目につきまして、教科書検定基準に基いて十分なる調査検討をいたしまして、そうしてそれぞれの調査員が、それについて、検定基準の各項目に基いての採点評点をいたします。その評点をいたしましたものを取りまとめまして、その結果を審議会にかけて、そして合格、不合格をきめる、かようになっております。その合格、不合格を審議会においてきわめましたものを文部大臣に答申して参りまして、その結果に基いて文部大臣が検定をする、かような手続になっておるのでございます。 なお、評点につきましては、大体一応の基準ができておりまして、一千点を満点といたしまして、従来は七百五十点以上を得たもの、しかも個々の項目について定められた合格点に達しない項目が三つ以上であるというような、いろいろこまかい基準もあるようでございまして、それに基いて厳正公平な調査をする、かようになっております。現在までそれを続けておるわけでございます。
○高木委員長 調査員の方はわかりましたが、審議会の方はどういう権限を持っているのですか。ただ機械的に通すだけですか。その審議内容を一つ詳細に述べていただきます。
○田中証人 審議会自体につきましては、ただいまのところ、調査員が調査をいたしましたその評点について、合格点に達しておるかどうかという結果について詳細を聞いて、それに基いて合否の決定をいたしております。ただ問題によっていろいろ疑義が生ずるような評点につきましては、さらにそれに疑義があると認めた者の数の倍数を新たに加えて、そして公正な判定をする、かようなことになっておるのでございまして、大体従来はそれでやってきております。
○高木委員長 文部省における教科書に関する事務当局と審議会との業務上の関連性について述べてもらいたい。具体的に申し上げると、審議会の審査に関して、事務当局は関係するのでしょうか。その実情を一つ述べていただきたい。
○田中証人 教科書の検定は文部大臣がこれを行うとなっておりますけれども、文部省自体が、権限としてこれに介入することはおもしろくない、こういうのが検定制度をとられた趣旨でもあったわけでございまして、その関係もございまして、委員会において一応おきめになりました結果は、そのまま大体尊重をいたしまして検定をいたしているのが実情でございます。文部省の事務当局が、検定自体の内容に入っていろいろ立ち入ったことをなしているという事実はございません。ただきわめて事務的な取次、運営をいたしておるというのが実際でございます。
○高木委員長 その点多少疑義があるので、はっきりさせてもらいたいのですが、事務当局は、内容に対して関係していないということを、はっきりと言い切ることができますか。
○田中証人 事務当局として、内容に関与しておるということは、私はないと思います。
○高木委員長 検定済み教科書の中には、国名の呼称が不統一であったり、歴史的事実の叙述がまちまちであったり、漢字習得の段階がばらばらであったりしているが、現行検定制度では、かかる内容上のばらばらや不統一の生ずることはやむを得ないのでありましょうか、どうでしょうか。その点に対する御見解をお述べになっていただきたい。
○田中証人 検定教科書について、ただいまお示しのございましたように、いろいろ意見、批判のあることは聞いているのでございますが、漢字の点について、各年配当と申しますか、一年でこれだけの漢字を教え、二年ではこれだけの漢字を教えるという、そういうきめ方をいたしますことは、なかなか専門家の方から聞いてもむずかしい問題のようでございまして、今までまだそのことを実行いたしておりませんが、しかしいろいろ不便のありますことも事実でございますので、文部省といたしましても、その検討を目下いたしているのでございます。いずれ近く大体の成案を得る見通しも立っておりますので、漢字の問題については、何か結論を得、解決を見るのではないかという希望を持っております。 なお、外国の地名、人名の表記統一ということは、よくいわれることでございまして、これらにつきましても統一した方がよろしい、その方が便利であるとは考えますけれども、これについても、関係方面ではいろいろ議論もないではないようでございます。なお、この点は文部省だけではやり切れない、各省、社会全般が協力態勢になりませんとできない事柄でもございますので、なお私どもも十分その点については統一できるように努力をいたしたいと考えているのでございます。なお、教科書という性格からいたしまして、内容の適正化につきましても十分意を用いまして、誤まりのないようにいたしたいと考えております。
○高木委員長 今のお話をいま少し突っ込んで、検定基準を整備する必要の有無等についてお話できませんか。
○田中証人 検定基準につきましても、特に重複しておるというような批判も聞いておるのでございます。そこで文部省といたしましても、その点については検討をいたしまして、学習指導要領等の改正と相待ちまして、検定基準の整備、こういうことはいたしたいと考えておるところでございます。
○高木委員長 学習指導要領がしばしば改正されて、教科書の発行に相当影響があるように考えられますのでお尋ねしますが、学習指導要領について、左の点について詳細にお述べになっていただきたいと思います。 指導要領と教科書との関係を、まず第一に述べていただきたい。
○田中証人 現在学校教育法によりますと、教科に関する事項は、文部大臣が定めることになっております。さらにそれに基いて文部大臣は学習指導要領を作って、そうして、しかもその学習指導要領に基いて教科書の検定基準を作り検定をする、かように現在相なっておるのでございます。しかも学校におきましては、それによって教育課程を作らなければなりませんし、なおまた教科書の検定に当っては、その内容が果して学習指導要領に定められた教育課程に基いておるかどうかということを調査することになっておりますので、必然的にこの学習指導要領というものは、学校にとりましては、非常に重要な因果関係を持っておるのでございます。そこで、学習指導要領につきまして、しばしばこれを変える、従って教科書もしばしば変るんじゃないかということを私どももよく聞くのでございますが、何分にも終戦直後、最初作りましたのが昭和二十二年でございます。当時の実情といたしましては、必ずしもそれを長い間変えないで済むという自信もなく、またいろいろ一般の要望もございまして、昭和二十六年に一度改訂を加えました。その後現在まで参りましたが、先般、最近でございますけれども、高等学校の教育課程につきましてこれを改め、学習指導要領もそれに基いてまた一応変ってきておる。なお社会科につきましては、小、中を通じましてその改訂をはかろう、実はこういう現状になっておりまして、毎年これを変えてきているというようなことではございません。現在までのところ、二十二年、二十六年、ただいまというふうな経過を経て、改善をいたしたのでございます。
○高木委員長 指導要領は試案となっているようですが、検定基準として拘束力を持っているでしょうか、どうでしょうか。持っているとすれば、その根拠はどこにあるのでしょうか。この点を一つお述べになっていただきたい。
○田中証人 ただいまも申し上げたわけでございますが、教育課程の問題は文部大臣がきめる。これは学校教育法の二十条に規定がございます。さらにそれに基きまして学校教育法施行規則によりますと、その学校の教育課程は学習指導要領の基準によらなければならぬ。こういう規定が施行規則で小、中、高にそれぞれございます。しかも教科書の検定に当りましては、その内容として現在の学習指導要領の中に示されておるそれぞれの課程において、国語科編とか数学とかいろいろございますが、その編に示されておる教育課程に基いておるかどうかということが、やはり検定の内容基準になっておるのでございます。そういたしますと、学校としては、また教科書の検定に当りましては、学習指導要領というものは直接の関係を持ち、拘束力を持つ、こういうことになっておるわけでございます。
○高木委員長 それではどうして試案ということになっているのですか。試案でなく、指導要領でいいだろうと思うが、試案となっているのはどういう意味ですか。
○田中証人 これは先ほども申し上げましたが、第一回は昭和二十二年に作りましたのでございまして、直ちに当時作ったものが長く用いられるかどうかということについての疑問もございますし、むしろだんだんとこれは発展をし、改正をする必要があるじゃないか、こういうふうな見通しから、一応試案ということにした次第でございます。さらに昭和二十六年の場合にも、試案ということにするかどうか、これは当時いろいろ議論をいたしましたが、従来の例に基いて、試案ということにいたしました。しかし本年いたしました高等学校の一般編の推進要領につきましては、もう試案ということは削りました。
○高木委員長 大体わかりましたが、指導要領の改訂はどのような場合に、またいかなる手続で行われるか、一つお述べになっていただきたい。
○田中証人 学習指導要領の改訂は、ただいま申しましたように、学校教育あるいは教科書に直接関係を持ちますので、慎重になすべきことであるとは十分考えておりますが、社会一般の情勢の変転に伴って、教育の問題についても情勢の進展がございますので、それに基いてどうしても改正をしたければならぬ、こういう必要に迫られた場合にこれをなしておるのでございまして、それは先ほど申しましたように、最近二回の大きな改正をしました。その改正をいたします手続は、これは文部省の設置法において置かれておる教育課程審議会という審議会がございます。これは定員六十名で、各方面の有識者の方々等を委員にお願いいたしまして、むろん学校の関係者、先生方も入ってもらっておりますが、それによって基本的な点についての調査、審議をいたします。そこで大体の基本をきめまして、さらに具体的な各科についての内容を審査、調査いたしますために、教材等調査研究会というものをその下に設けまして、そうしてその教材等調査研究会において具体的な詳細な調査をいたしまして、その結果をさらに重ねて教育課程審議会において調査審議し、そうして、結論をもって文部大臣に報告がございました場合に、初めてそれに基いて文部省として改正する、かような手続を経ておるのであります。
○高木委員長 教科書の発行についてお尋ねしたいのですが、発行者の信用状況等について、文部省として調査をしたことがありましょうか。あるとすれば、その実情を詳細にお述べになっていただきます。
○田中証人 特に信用調査といった意味でこれを行ったことはございませんが、文部省といたしましては、毎年、事業概要として、その資料の提出を慣例として求めておるのでございまして、その事業概要等によって、発行者の信用状況等をも私どもとして知る、こういう程度でございます。
○高木委員長 教科書の採択方法の実情について調査したことがありましょうか。また現在の採択方法について、文部省はいかなる指導をしているか、その実情についてお述べになって下さい。
○田中証人 教科書の採択方法につきましても、これは毎年各都道府県で展示会をいたしておりまして、この展示会が教科書採択についての中枢的な実は役割を果すべきものと考えておるのでございますが、その展示会の実施状況の報告を毎年都道府県の教育委員会から文部省はいただいております。その報告事項の一つとして、教科書の採択方法の実情についても報告をいただくことになっておりますので、それによって、私どもも実情を承知することができるのでございます。なお、採択の問題が、教科書問題として最も重要な問題ともなっておるようでございますので、文部省といたしましては、この展示会を実施する場合の実施要綱を、毎年かなり詳しく地方に通達いたしております。その中において、きわめて具体的に点この採択が自由に、公正に、適正に実施されるように、こまかな点までいろいろ意見を申し述べて、その実行を願っているようなわけでございます。それらについては、さらに資料に基いて詳しいことを申し上げるわけでございますが、大体各都道府県において採択されております実情につきましては、いろいろ方法があるようでございます。昭和三十年度の使用教科書について私ども調べたものがあるのでございますが、それにつきましては、約六種ばかりございます。一つは、各学校が自主的に選定したもの、これが六県あります。それから各学校の選定を、地方教育委員会連絡協議会ごとに研究調査会が調査をして、その中から改めて学校が選定をした、こういうのが二県ございます。次に、各学校の選定を都市及び県の段階で調整をした、こういうのが五県ございます。郡市の段階で選定をしたものに空いた、こういうのが二十六道府県ございます。次に、県の教育委員会が推薦図書のリストを示してその中から各学校が選定をした、こういうのが一県ございます。それから最後に、県の教育委員会が方針ないし図書のリストを示して、さらに郡市の段階で選定をし、または調査した、こういうのが五県ございます。これらが実施状況でございます。
○高木委員長 採択の問題は、まことに重大な問題でありますので、特にお尋ねしたいのですが、事実は詳細にわかりましたが、文部省の指導方針というようなものがありますか。
○田中証人 具体的に、特にどういうふうに採択をすべきであるというこまかな方針をもって指示したことはございません。ただ、先年、地方に市町村教育委員会が設置をされまして、その教育委員会が個々に採択権を持つ、こういうことになりましたので、非常に細分をされて、まちまちに採択がなされるということになりますと、いろいろ問題が起ってくることが予想されましたので、文部省としては、大体の指導方針といたしまして、なるべく広い範囲において、地方の実情をもとにし、都道府県の教育委員会なり市町村教育委員なりとよく連絡協議されて、そうして細分されるということの弊害をなくするようにされることが適当であろう、こういうようなきわめて抽象的でございますけれども、さような方針をもって参っておるのであります。
○高木委員長 教科書発行会社の行なっている教科書販売活動について、文部省ではいかなる指導をしておりますか、その実情を、これも重大な問題ですから、こまかくお述べになっていただきます。
○田中証人 この問題も非常に重要な問題でございまして、文部省といたしましても、この教科書の販売活動について行き過ぎのないように、また批判を受けることのないように常に心を用いておるのでありまして、特に先ほども申し上げましたように、教科書の展示会を実施いたす場合の実施要綱等にも常に心を用いて、採択関係にある教育委員会や教員の方々方面に対しましても、あまり宣伝に迷わされて採択を誤まることのないように、また業界に対しましては、不公正な、行き過ぎた販売活動のないように常に意を用いて、いろいろ通達等を重ねてきておるわけでございます。
○高木委員長 教師の研究団体を編集もしくは著作者とする教科書、いわゆる地方版と称するものは、当該研究団体の存在する地方において多数の採択を得ている事実がありますが、かかる著作方法と教科書採択との関連性について、証人の御見解をお述べになっていただきます。
○田中証人 この問題につきましても、私どもいろいろ耳にいたしておるのでございますが、大体教科書の編集もしくは著作と採択というものとの間に、あまりに関係が密接でございますと、そこにいろいろ弊害も起るおそれがございますので、従って、それらの点については、十分慎重な態度が望ましく考えておるのでございます。特に地方版につきましては、これもいろいろ議論がございますけれども、大体一般の教科書は、国民として必要な最小限度の知識というものは与えることになっておるのでございまして、特に地方特有のものを作らなければ、教育上支障があるというのかどうか、私ども非常に疑問に思っておるのであります。大体一般の教科書を使っていて、それで差しつかえないのじゃないかとも考えますし、なお教科書の検定基準の中におきましても、地方的に幅を持った編集をしておるかどうかというようなことも一項目掲げておるようなわけでございまして、従って、さような教科書が必ず必要であるとも考えません。むしろその点については、どうかすると弊害が起り得る余地がございますので、十分慎重でありたい、かように考えております。
○高木委員長 現行教科書供給機構、発行会社、配送会社、特約供給所、取次供給所について、何か御意見がございましたら、お述べになっていただきます。
○田中証人 現在の供給機構は、大体お話のように三段階になっておりまして、発行者、さらに発送設備を持たないもののための代理の取次店、府県におきましては特約供給所と地方の小売があるわけでございます。ことに発行者自体で発送設備等を持たないもののためには、それを代行する機関が必然的に必要になってくるだろうと思います。それから地方の特約供給所になりますと、これもそれぞれ受け持ち地域内の過不足の状況、特に最近転校の場合の教科書について不便があるというので、これも非常にやかましく言われておる問題でございますが、それらの学校間における過不足の調整ということも非常に重要なことでございまして、特約供給所はその仕事を重要な仕事といたしております。なおまた、代金回収等も、これは業務遂行上重要なことでございますので、それもまた特約供給所がその任に当っている、こういうのが現状でございます。そのもとにあって、学校に直接をして、そうして教科書が子供の手に渡るようにそれぞれの事業をなしている小売の問題、この三段階の機構については、これを改編するということはなかなか重要な問題でございまして、各方面いろいろな御意見を拝聴いたしておりますけれども、今なお文部省としては、この機構を変えなければならぬ、いかにしてこれを変えるかというところまでは結論を得ておりません。むしろ、現状の中において不都合な点があるなら、それを改善してやっていきたいと考えておるのでございます。最近中央教育審議会におきまして、教科書問題についても答申を得ましたが、大体その答申におきましても、この現状の機構に根本的な改正を加えるという答申にはなっておりませんので、私どもただいまのところ、さような考えでおるわけでございます。
○高木委員長 各府県に、特約供給所が一カ所のところがあり、複数のところがあるように思うが、これに対しての御意見はどうでございましょうか。
○田中証人 現状は、お話の通り一カ所のところもあり、あるいは数カ所のところもございます。これを全然一カ所ということにしてしまいますと、独占企業的な色彩が濃岸になりますし、またこれを数多くするいうことになりますと、そこに自由競争の弊もまた起ってくる、こういう長短があるように思うのであります。そこで、その特約供給所の供給をいたしまする区域というものは、あるいは学校の種別により、これをダブることをいたしませんように、あるいはまた、できますならば両方の供給所の区域を全く別にいたしますとか、さようなことにおいて弊害を除去していく、こういうことは少くとも必要だと考えておりますが、ただいまのところ、一カ所がいいか数カ所がいいかということについても、まだはっきりした結論を持っておりません。
○高木委員長 学校生活協同組合より発足した特約供給所と教科書の採択との関係について、いろいろお考えがありましょうから、その点をお述べになっていただきます。
○田中証人 学校生活協同組合は、教科書の供給面において、従来いろいろ問題もあったかと思うのでございますが、それがだんだんなくなりまして、現在では、お示しのように、学校生活協同組合から発足した特約供給所と教科書の採択との関係については、非常にこの問題も重要な問題であると考えるのであります。その新しい特約供給所も、会社として成立をいたしております以上、これをとやかく批判することは穏当ではございません。これが適正な教科書の供給事務をなすことについて何も言うことはございませんが、ただ問題は、それが従来学校自体との関係が非常に密接であった、そのために採択の公正、自由というものを阻害したのじゃないかというようなことも言われておったのでございますが、そういうふうな点を十分是正をして、そうして特約供給所自体としての適正な業務の遂行をなさるべきである、かように考えておるのでございます。
○高木委員長 教科書以外の準教科書、ワーク・ブック、 テスト・ブック、夏休み帳、冬休み帳等の学習用図書について、文部省はどういう指導をされておりますか。最近、文部省では、各都道府県の教育委員会に対して、学習用図書の使用状況について調査を依頼しておるようであるが、その概要をあわせてお述べになっていただきます。
○田中証人 学校教育法の第二十一条によりますと、その第二項で、教科書以外の教科用図書で有効適切のものはこれを使用することができると、実は明文がございます。従って各学校等におきまして教科書以外の教材をお使いになることは、それが適切、有効でございます限り、自由なはずでございます。この問題について、たとえばワーク・ブック、テスト・ブックあるいは夏休み帳等について、個々の問題についての特別な指導ということは、文部省としては従来やってはおりません。それらのことについては、地方のそれぞれの教育委員会において、指導上遺憾なきを期待しておるのが現状でございます。 なお、最近、文部省で各都道府県の教育委員会にお願いをいたしまして、各都道府県ごとの小、中学校四校を抽出いたしまして、それらの学校での学習参考書の使用はどうなっておるか、その実情を調べた結果は確かにございます。それによりますと、ワーク・ブックにつきましては、小学校で八四・九%使っております。中学校で三七・一%使っております。それから夏休み帳が、小学校において九二・三%、中学校におきまして、六三・二%使っておるという実情を知りました。
○高木委員長 この点ですが、準教科書、ワーク・ブック、テスト・ブック、夏休み、冬休みのおさらい帳というようなものは、教育上大きな問題だと思うのです。それを文部省として手放しの状態に置くということはどうかと思うのだが、この点に対して相当突っ込んだ御意見はございませんか。
○田中証人 実は、この問題につきましては、先般の中央教育審議会におきましてもいろいろ論議をされまして、これに関する答申を得ておるのでございます。その答申によりますと、夏休み帳、副読本等の使用については、届出制をすることが適当である、かような答申もございます。私どもといたしましては、さらにこの届出制ということが適当であるかどうか十分検討いたすつもりでございますが、お話のように、何かそこに、単に野放しということでなく、他の適当な方法が見つかりますなら、それによって誤まりなく実施したい、かように考えております。
○高木委員長 学習用図書の販売方法に関する証人の御意見、抽象的ですが、具体的なものを私どもは握っております。学校側にリベートを与えたり何かする、これらに対する御意見をお述べになっていただきたい。
○田中証人 どういう内容でございますかと思うのでございますが、お話のように、何か学校を通じて販売をし、しかもそれによって手数料を学校の当事者がもらうというようなことがあるのじゃないかということを耳にしたこともあるのでございますが、さようなことは、これは具体的ないろいろな実情にもよりましょうけれども、あまり芳ばしいことではないように思います。
○高木委員長 いま少し内容をおわかりになりませんか。先ほど申しましたような準教科書、ワーク・ブック、テスト・ブック、夏冬休み帳というようなものの販売方法に相当問題があるようですが、文部省ではお調べになっておりませんか。
○田中証人 その問題につきましては、少し抽象的になりますけれども、先ほども申し上げましたように、教科書以外のそれぞれの教材にいたしましても、学校がこれを使うとなると、強制力をもって子供たちに買わせることになります。そうなりますと、やはりそのものが内容において有益適切であるかどうかという問題、それから父兄の負担という問題にもなって参るわけであり残す。従いまして、それについて十分監督権を持つ教育委員会等でも、その適正を期すべき立場にあると思うのでございます。従って、弊害のないようにそれらを処置すべきであると思うのでございます。 なお、制度そのものの問題として、それらの点について単に野放しにしていいかどうかということは、せっかく教育審議会の答申も得ておることでございますので、それに基いて検討いたしたいと思っておるのであります。
○高木委員長 一部の教職員組合では、夏休み帳、冬休み帳の販売に当って、多額の編集費を取得しているが、かかる事実は営利行為と認められましようかどうでしょうか、証人の見解をお述べになっていただきたい。
○田中証人 その利益が営利行為であるかどうかという認定は、これはむずかしい問題じゃないかと私思うのでございます。その得る得方の問題、また得た額がどの程度の額であるか、またその得たものを何に使ったか、こういうふうな問題と関連いたしまして検討をいたさなければ、私ここではっきり断定することは困難だと思うのでございます。ただしかし先ほど来申し上げますように、これらのものも学校で使用するときめますと、それは一般の教科書と大体同じような程度に子供たちがそれを買い、使用する必要に迫られるわけでございますので、従ってその編集あるいは発行等の関係者と学校の当事者との間において、あまりに密接な関係があるということは、また業務の公正自由な運営というものにも悪影響を及ぼす結果になるのではないかと思いますので、相当慎重を要する問題だと思います。
○高木委員長 委員長よりの尋問は、一応これで終了いたしました。 これより委員諸君の発言を許可いたします。大西正道君。
○大西委員 教科書問題も大体山を越したような形で、お尋ねすることも大体わかり切ったようなことなんですが、二、三お尋ねしておきます。これは初めに緒方局長が証人に出られたときに私は聞いておいたんです。教科書が、自由公正な競争によって出版され、採択される。それを文部省は監視、監督するというようなことからいって、採択前に、ある特定の出版社等がここで証人として呼ばれていろいろ尋問される。それが新聞に報道されるというようなことが、採択の面に大きく影響しはしないか。それが事実悪ければ、悪く影響してもいいんですけれども、ただここで証人に呼ばれたということだけで、かえって採択の面で不当なる不利益が特定の業者に招来しやしないかというようなことを私は懸念したのです。こういうようなことについては、大したことはなかろうということを緒方証人は言っておるのですが、大体終りまして、それから採択の問題も大体申し入れが終っておるのでありますが、各社のこれまでの実績などから見て、悪影響がなかったかどうか。監督指導官庁として、文部省のお考えを、本論に入る前にまず聞きたい。
○田中証人 私、ただいま的確な資料は持ちませんけれども、証人喚問に呼ばれた特定会社の本年度の成績について、昨年度よりもことしはよくないのだということは耳にいたしております。それが結果であるかどうかはわかりませんけれども、そういうふうなことを、私耳にいたしております。
○大西委員 それでは、次は、今委員長の質問にもありましたが、調査審議に対して、調査員以外に文部省の事務当局——幹事と申しておりますが、こういう人たちが何かそれに介入するというようなことですね。これに対してあなたは全然ありませんというようなお答えであったのですが、これはいろいろかなり文部省の事務官がこれに関与しておる、こういうことが言われておるのですが、どうでしょうか、全然ございませんか。それは、たとえば裁定をいたします。そうして惜しいところで落ちたというときに、これをこのまま不合格にするというふうな方法でなしに、ここらをちょっとお考えになりませんかというようなヒントを与える、修正意見を渡すということ、これは委員会の仕事としてやっておられると思うんですが、その際に、委員会のそういう細部な表現の方法まで委員会がきめるんではなしに、大体そういう問題点を指摘すると、それをあとは幹事の方が業者を呼んで話をする。そこに私は、事務当局がそういう立場にあるものですから、若干介入しておるように思うのです。特に平和の問題なんかについて、今、国際間に微妙な関係がある。教科書問題が内容の面でいろいろ論議されるのはそこなんですが、そういうところを具体的に指示はしないけれども、暗々裏に革新的な意見が多く書かれておるものに対しては、どうでしょうかということが言われておるやに私は聞いておる。そういう調査員の意見を伝える幹事のやり方について、これは率直に、あなたの方もこれまでが全部よかったとは思わないでしょうから、話して下さい。私らがタッチしておったときよりも、文部省としては親心の気持からであろうと思いますが、そういうふうな修正意見を付して返すということがだんだん多くなっておるやに聞くのですが、あなたの御見解をお聞きしたい。
○田中証人 御承知のように、これは初めてできた検定制度でございますから、従って、いろいろふなれな点もございましょう。軌道に乗らない点もございましょう。できるだけ親切にこれを育てていく。こういう態度が私はこの制度を通じて今あるように認めております。その関係からいたしまして、私は、お話のようにいろいろな場合に、本人に対して、あるいは会社に対して、調査の結果等について連絡をして、それらの点についての修正等もさせておるというようなことも従来あったように聞いております。しかしそればやはり調査審議会の立場において出てきた結果について、単に物理的に取り次いでおる。こういうふうな態度であるべきでありますし、またそれより出ては、お話のようにいろいろ問題もあろうかと思うのでございますが、私が係等について聞きました範囲では、単に調査の結果について、調査員の修正意見等を出すことになっておりますから、それらに基いて、審議会の意向をもとにして取り次いでおるというふうに私は承知いたしております。具体的な問題になりますと、どういうふうなことをやっておったか、その点について私ここで今確言はでき得ないわけですけれども、私はそういうふうに承知いたしておるのであります。
○大西委員 それでは、修正意見を加えて、もう一回考え直したらどうか、そういう原稿の差し戻しは、一体どのくらいやっておるかわかりませんか。
○田中証人 ちょっと今ここに資料を持っておりませんので……。
○大西委員 それはあとで調べて下さい。 これもこの前に問題になったのですが、結論を得なかったのですけれども、それでは一つ例を申し上げますと、ある出版業者で地図を出したときに、樺太の半分は、やはり北の方と同じような色が塗ってあったそうです。ところがそれが文部省の方の御注意で、その半分の色が塗り変えられた。あるいはもう一つ私の聞いたところでは、そうではなしに、パスしたのだが、いよいよ本になってみると、その半分が塗り変えられておった。こういうことは、この前の緒方局長のときにも問題になったのですが、その後それを出した業者の方にも、あるいは教科書協会の責任者の方にもこのことを問いただしたのでありますが、なかなか要領を得ないのです。これはありそうなことなのでして、本を通すためにそういう御配慮をなさるのはけっこうだけれども、しかしこれは学問的にいったり、教育的にいいますと、まことに重大なことですが、こういうことは私が一々その本をあげないでも、あなたはおわかりだと思いますが、どうですか。この点については心覚えがありませんか。私は指導しておると思うんですが、それは文部省の幹事がやったか、あるいは審査委員がやったか、私は今ここでは存じませんが、そういうことがあったのです。とにかくあったのですけれども、お認めになりますか。
○田中証人 ただいまのお話の事柄自体は、そういうことがあったということを私聞いております。
○大西委員 それに対してあなたはどういうふうな処置をおとりになりましたか、そのままですか。
○田中証人 それらについては、これは相当重要な問題でございますから、むろん係あたりの単なる心づきなんかでやるべき問題ではありません。従って委員にもむろん相談すべき事柄でありますし、委員会自体としても、これはよほど慎重に手段を尽さなければ、はっきりした結論を出すわけには参らない事柄だと思うのであります。そこで、たしか外務省あたりにも連絡をいたしまして、そうして一体それは法的にはどういうふうになるべきものか、その点について照会をもいたし、その結果に基いて私は措置をしていると思うのであります。
○大西委員 その措置をされた具体的な措置の方法は、あそこは半分南と北と色を変えた方がよいという結論だったのですか、それとも何か別にありましたか。
○田中証人 色を同じにするということは、適当でないというふうな結論を得ているように聞いております。
○大西委員 そうすると、あなたの見解は、あそこはやはり日本の色と同じ色にすべきだ、こういうふうに指導なさったわけですか。
○田中証人 そういう意味ではありませんで、つまりあれは領土権を放棄いたしておるのでありますから、日本のものでもありません。しかしそれがロシヤのものになっておるということでもない。これはまあ条約上のいろいろな解釈上そうなっておるようでございましたので、おそらくそういうふうに措置をしたろうと思っております。
○大西委員 この問題は、色を多少変えるかどうかという問題と同時に、そういう問題に対して、民主的な調査委員というものの決定に対して、文部省に聞き合わされたり何かするということ自体が、やはり文部省の干渉になりますね。そうはお考えになりませんか。
○田中証人 それはお話のように、委員会と全然無関係に文部省が勝手にやるということになれば、私はそうだと思いますけれども、やはりどこまでも、建前上、検定というものが検定審議会の権限になっております以上は、それらの内容等の措置についても、私は審議会と十分連絡なしにはやってはいけないことだと思います。
○大西委員 やっていけないとか、どうすべきだというんじゃなしに、どうなさったのですか。検定審議会の方に、さらに現実には調査委員の採決に対して、あなた方の意見を加えて、そうしてその色を多少変えるようになさったのですか、どうなんですか。
○田中証人 実はその現実の教科書の措置については、ただいまよく承知いたしませんので、いずれ調べました上でないと……。
○大西委員 ですから、これは調べて下さらぬと、こう思うとか、こうすべきだということでなしに、どうなさったかという内容の問題と、それから文部省がこういう検定委員会に関与する問題と、二つの問題がありますから、私はこの点については、文部省のとられた処置に対しては、やはり検定制度の本旨からいって多くの問題があると思いますから、きょうはこれ以上荒立てませんけれども、どうしたか、どうしたかということを私の方に報告していただきたいと思います。 それから、それと同じように、パスしましても、組版の許可ということで、またもう一回許可をしますね。これも修正意見を出して、それがうまく通った場合にはすらすらと組版の許可も出るのだが、そうでない場合は、組版の許可を時間的におくらせるというのですから、出版業者の方にしてみれば、せっかくパスさせてもらっても、そのあとの組版がおくれるというようなことは非常に迷惑なことだ、こういうこともかなりあるやに聞いているのですが、いかがですか。
○田中証人 実は私はあまりそういうふうな問題について十分承知いたしておりませんけれども、業者の方々に不便をかけるような、そんなことをやってはならぬと思うのでございますけれども……。
○大西委員 それでは次の問題に移りますが、これまでの本を改訂して出しますね。そうすると、私ら常識から言うと、本を改訂するというのは、前のがどうも不適当だ、よろしくない、時代の趨勢にそぐわない、新しい研究にうまくマッチしないからだ。ですから、以前のものは必然的によくないもの、こういうふうに常識的に考えるのです。ところが今改訂をしましても、依然として古い教科書をやはり業者が発行することもできるし、採択することもできる。これに対して文部省は、法的にも、事実しも何ら制限を加えておらぬし、指導もしておらぬと思うのですが、そういうふうに改訂したら、改訂したものがとってかわるべきものであって、改訂されたものは、当然破棄すべきものだと思う。法律の改正をやっても、前の法律も生きるし、あとの法律も生きるというのではどうもおかしいのですから、こういう点について、従来とっておられた態度、今後のあなたの見解を述べて下さい。
○田中証人 従来は、それには規制を加えておらないのが実際だと思います。それで、ただ今後の問題としては、お話のような点もございます。なおまた、そういっては何ですけれども、しばしば改訂ということがまた教科書を新たにするゆえんで、使う方としては、財政負担等の問題で、またいろいろ意見も出ているのが現状でございます。そこで実は先般来引用いたします教科書制度についての中教審の答申の中にも、教科書の改訂については、一定の抑制の方途ということを書いてございますけれども、お話のようによくするということを抑えるというのもどうかという気持もございます。 〔委員長退席、濱野委員長代理着席〕 そこで、やはりこの改訂という問題を取り上げて検討したいと思っております。
○大西委員 今後検討されるということはけっこうなことでありますが、今までこんなことをほうっておいたということは、教科書が多い多いと言いながら、非常に採択の面でも困る、困ると言いながら、こういうことをほうっておったということ自体が、これはまだまだ勉強が足りなかったということになりますね。そう思いませんかね。私はそう思うのですがね、いかがでしょう。
○田中証人 まあ十分一つ検討したいと思います。
○大西委員 この文部省の幹事の意見を差しはさむことと関連して、教科書の内容が非常に偏向しているというようなことを盛んに言っている人もあるのですが、一体そういう事実があると思いますか。
○田中証人 教科書自体は、これは文部大臣が検定をして、そして使用差しつかえないというものになっておるわけでございますから、われわれ事務当局として、それに果して偏向があるかどうかというお問いになりますというと、私ども、どうも非常にお答えいたしにくいのでございます。 なお果してそれが偏向であるかどうかという問題になりますと、これもなかなか簡単に結論を出すには、あまりに重要な問題でございますので、十分検討を尽した上でないと、私ども一がいに言えないと考えております。
○大西委員 これはおもしろいことをお聞きしますね。あなたの方で検定をして、そして出された、許可されたものを、これが偏向であるか偏向でないかむつかしいことで、何とも云えぬということであったら、あなた方検定の機構、検定事務そのものをこれは否定することになりはしませんか。当然あなたの立場として、あの検定にパスしたものは、偏向はなしに、公正妥当なりという考えをもっておやりになっているのでしょう。これはいろんな政治的な配慮、そういうようなことは抜きにして、あなたのほんとうの信念を聞かしてもらわなければ因ります。そうでなければ、あなた方は自分で偏向の教育を認めているということになる。そういう矛盾したことは私はないと思うのですが、これは一つはっきりしていただきたい。私は現行教科書には、いわれるような偏向はないと見ておるのです。教育の方法については知りませんよ。しかし教科書自体に偏向があったということは、そんなばかなことはない。これはあなたの方としても、現行の教科書には、偏向はないといわれるのが妥当なりと私は思うのですが、もう一回言って下さい。
○田中証人 検定をいたしましたことは、これは教育基本法にも、学校教育法にも抵触するものではない、その趣旨に沿ったものだという意味で検定をいたしておるのでございますから、その意味においてお話の通りだと思います。
○大西委員 お話の通りだということは、教科書の内容については——今の検定にパスした教科書の内容については、偏向はないというお考え、御見解だ、だめを押しておきますが、そう考えてよろしゅうございますね。
○田中証人 検定をしたということは、そういう意味でございます。
○大西委員 いや、それははっきりして下さい。したという意味は、そういうことだというのではなしに、検定をあなた方なさるのですが、偏向という事例のないために検定をなさったのでしょう。そうでしょう。これは、偏向があったら検定なさらぬのでしょう。ですから文部省の検定を通った教科書には、偏向はないというふうにあなたはお認めになりますね。
○田中証人 検定というものはそういうものでございますから、さよう御了承いただきたいと思います。
○大西委員 非常に苦しい答弁ではございますが、意のあるところは、私の言う通りであるというふうに解釈して、これは正解であると思います。そういたしますと、これはこれ以上証人にはお聞きいたしませんが、重大なる問題が伏在してきます。けれども、その問題にはここでは触れません。あなたは教科書の検定を通ったものは偏向ではないということをお認めになったのであります。もしお認めにならなかったら、次にいろいろ例をあげてお尋ねしようと思ったのですが、それでは、この問題はこれで打ち切っておきます。 それから、もう一つだけ聞いておきますが、これまでのここでの審査で、文部省におった役人関係の人々が出版業者と関係をして、いろいろな論議の種をまいているのですが、その人の正しいか、よくないことをしたかという問題は、ここでは結論は出ません。ここで問題になったからといって、必ずしも悪くはありませんけれども、しかし、そういう人に対しては、法律上どうであろうとも、道義上、文部省としてはいろいろお考えになっているのであろうと思いますが、そういう人々のその後の文部省関係の進退はどうなっておりますか。
○田中証人 問題にされました中の一人の人は、中央教育審議会の委員でございましたが、それをおやめになりました。それからなお問題になりました中の一人の人は、当時初等中等教育局の視学官をいたしておりました。しかし、これもむろん教科書事務に関係をいたしておったのではございませんし、正しいりっぱな人だとは考えておりますけれども、調査局の方に、仕事を一応変えました。なお聞くところによりますと、会社に勤めております先輩の方々の中にも、最近会社を辞するというような話も聞いております。
○大西委員 大体それだけで私はけっこうです。
○濱野委員長代理 それでは、佐々木君。
○佐々木(秀)委員 証人にお尋ねいたしますが、教科書が文部省において検定されている。教科書は、すべてのことにおいて中正でなければならないと思います。ただいま偏向教育の問題で証言を求められていたようでありますが、偏向教育だ、そうでないということについては、社会主義思想を持つ者は、社会主義的な書き方をしたことを、偏向だとは認めません。あるいは自由主義を唱える者は、自由主義の観点から、その判断を下すわけでございます。しかし私たちといたしましては、そうした思想的な方面に対していろいろ御議論がございましょうが、少くとも小学校あるいは中学校というような、ものの判断の自分で十分できない児童たちにものを教えるということは、どこまでも思想的な意味を入れちゃいけないと思います。われわれの目から見れば、教科書がたくさんございまして、現在四億冊もあるのですから、全部を見るというわけには参りませんが、われわれの見た中には、どうも偏向だと考えられる点があるのであります。たとえば日露戦争あたりの教科書の内容を見ましても——戦争ということについては、それは議論がございます。戦争を好む者はございません。しかし一旦戦争が始まったということになれば、独立民族性として、その国を守るために戦うことは、世界共通の事実だと私は思うのであります。日露戦争当時においては、どういう教育をされたかは知りませんが、われわれはやむを得ず戦争になったんだということを聞いております。しからば、それを扱う場合は、やはり祖国のために働いた人の名前も教える、あるいは戦争に反対した人の名前も教えるということが中正の教え方だ、私はこういうふうに考えております。しかし、私たちの目に入りますものは、「あかるい社会」、六年の上でございますが、この日露戦争の項目のところを読みましても、戦争で国のために働いたという人の名前は全然載っておりません。むしろ戦争に反対した人たちの名前が、いかにも民主主義者のごとく取り扱われております。全部読むわけには参りませんから、二、三ページ読んでみます。「中国の領土へせめこむのは、日本もロシアもおなじことなのに、日本国民の多くは、これは正しい戦争だと思って、戦いをつづけました。しかし、国民のなかには、戦争に強く反対する人たちもいました。そのなかには、堺利彦」、これは御承知の通り共産党の大先輩です。あるいはまた「幸徳秋水」、これは明治大帝の暗殺大逆事件を起した人であります。それから「内村鑑三、与謝野晶子などのような人たちがいました。」こう書いてあります。これは私たちから見れば、一方的な取扱いだと思うのであります。これは偏向だどうだということになれば、議論はございましょう。しかしこういうような一方的な教え方というものは、中正な教育のあり方ではないというように考えます。その次の項目に、樺太のことを書いてありますが、先ほどもちょっと話が出ました南樺太などというのは、現在私たちといたしましても、領土権は放棄しておりますが、これが現在ソビエトの領土だとは確認しておりません。将来外交上の問題にいたしましても、この問題は国際裁判にでもかけてきめていただきたいというのが、国民感情だろうと存じます。しかるに、この教科書の中には、それがはっきりと「樺太(いまのソヴィエトのサハリン)の南半分をロシアから手に入れました。」として、すでにソビエトのものだというような判断を下した書き方をしております。その他たくさんございますが、ただいま私が申し上げたようなことは、中正、妥当を欠く教科書の内容だとお考えになりますかどうか。お聞かせ願いたいと思います。
○田中証人 この問題につきましては、先ほどもお答えをいたしたわけでございまして、これは教科書検定委員会におきまして、当時それぞれの検定基準に基いて答申があり、そうして、従来の手続に従って大臣はこれを検定いたしました。その結果、学校で使ってよろしいということになっておるわけであります。従いまして、その点について今それが偏向である、ないということを私どもとしては——お答えにはなりませんけれども、申し上げるのはまことに不適当でございまして、大体そのことについての検定ということを一応申し上げるよりほかになかろうと思います。ただ、お話のように、それでは現在検定制度が完璧であるかどうかという問題につきましては、これは採択なりあるいは発行、供給の問題、さらにそこでもって検定等の問題についていろいろ議論があることは御承知の通りであります。そこで先般文部省といたしましても、その事態にかんがみまして、中央教育審議会に諮問をいたしました。去る五日の総会において、約五項目にわたる答申案を得ましたので、その答申に基いて検討を加え、そうして、改善すべきものは改善していきたい、かようにただいま考えているわけでございます。
○佐々木(秀)委員 偏向教育の問題については、おのおの議論がございますから、私、議論をするために証人にお伺いしておるのではございませんから、はっきりしたものからお尋ねしたいと思います。 御承知の通り、教科書は、先ほども申し上げたように、大体四億冊、総金額にいたしますと、夏休みのおさらい帳、ワーク ・ブック等を入れますと、少くとも三百億以上の金額に達するわけであります。われわれは、数ケ月間にわたって、この委員会で、あらゆる方面から教科書問題を検討して参りました。証人の方々においでを願ってお聞きいたしますと、発行所自体の証人も、現行価格より二割や三割は安くできる可能性があるということを証言しております。そうしますと、たとえば三百億の三割といたしましても九十億であります。莫大な金額が各児童の家庭から節約されるわけであります。価格の点についても、一方の委員の中では、高くないと言います。あるいは、われわれは商いということで論じております。しかし、高くない、高いという議論は、見方によって違いますが、現物を見て議論するとよくわかるのですが、一番はっきりいたしておりますものは、おさらい帳でございます。 〔濱野委員長代理退席、委員長着席〕 おさらい帳を全国から取り寄せてみました。北海道のおさらい帳あるいは東京のおさらい帳、全部ここにあります。あとでごらん願えばれかりますが、たとえば北海道のおさらい帳は、昨年度のは四十ページだったのです。しかもざら紙です。それで四十ページで、価格は三十円で売っております。東京のは四十八ページあります。価格は十八円です。こういう印刷物は、発行部数によって値段が違って参ります。部数がどうかという比較をしなくちゃなりません。東京は大体八十万部これを発行しておる。北海道は七十九万部発行しております。そうすると、発行部数はほとんど一緒だといっても過言でないと思います。一緒のものが、東京のものはページがよけいであって十八円、少い北海道が三十円で売っている。私はなぜ東京と北海道のを比較するかと申しますと、これは両方とも教職員組合で出しているのですが、こういうでたらめな価格で児童に売りつけているようなことを、文部行政の監督の責任にあるあなた方といたしまして、そのまま放置しておいていいかどうかということを考えるからであります。この春からこの問題が取り上げられて、各教員組合においても相当実は御承知のはずでありますから、今年度のおさらい帳などは、価格については相当お互いが研究し、あるいは一銭でも安いものを児童に与えるというふうに努力されているものなりと私は考えておりました。しかるに、ことしの夏休み帳を見ますと、まだひどいのです。四十ページが三十二ページになってしまった。それでまた三十円で売っている。どうでしょうか、こういうやり方ば。数字を申し上げましょうか。北海道の昭和二十六年度の学校よりの収入額が三千三百五十万百八十円、二十七年度は三千八百五十四万三百三十二円、二十八年度は四千百六十四万八千百六十一円、二十九年度が四千三百二十二万八千三百二十七円、合計いたしまして、一億五千六百九十一万七千円になります。そうして教職員組合が利益を得た総額が三千三百三十七万一千百五円になっております。これほどの莫大な利益をあげております。しかも、これは商行為をやって、全然税金を払っていないのです。これは表面上われわれの手元に出た資料でありますが、われわれが調査いたしますと、こんなものではないのです。原価は八円くらいでできるのです。現に札幌においてこの印刷をし、作った会社の社長、専務以下係の人たちを呼んで証言を求めました。原価幾らだといって聞いたところが、十一円五十銭から高いので十六円五十銭くらいですということで、十一円くらいのものを三十円で売るという、まさにこれは暴利だと私は考えております。しかもほかの商売だと、あるいはすだれも出て参ります。貸し倒れも出て参ります。児童に貸し倒れなんというものは一つもない。必ず入って参ります。すだれもない。原価十一円五十銭のものを三十円で売るなどという、こういうようなやり方が、しかも教職員の組合の名においてやられているということにつきましては、証人はどういう見解をお持ちでございますかどうか、一つ承わりたいと思います。ここに全部価格の書いたのもございますから、ごらん願いたいと思います。
○田中証人 先ほど来申し上げますように、夏休み帳あるいは副読本等にいたしましても、学校でこれを使用するということにきめますと、やはりそれぞれ子供は買って使う。大体教科書を使う場合と同じような結果になるのでございます。従って父兄の経済的負担という意味からいっても、その内容、価格等の問題について、これを無関心で放任するのも適当でなかろう、かように考えられるのでございます。 なお教員組合云々というお話でございましたが、この点も、ともかく採用をし、採択をするということと、そして発行編集をすること、供給するという面とが、あまりに密接な関係があるということは、実に弊害を伴うわけでありますから、それらの点については、従来ほとんど何らの規制をいたしておらないでおったことはあまり適当でないので、実は先ほど来引用いたします中央教育審議会の答申におきましても、それらの点については、届出制をするようにしたらどうだ、こうするなら、単にまちまちに地方の教育委員会が見ておる以上に、はっきりとした、目もここに届くということを考えておりますので、私どもはその答申を得ましたので、それに基いて、一つさらに検討をいたしてみたいと思うのが現状でございます。
○佐々木(秀)委員 文部省ではそういうお考えでおられるかもしれませんが、そのことを早急にやっていただかないで、このまま放置しておくと、これはむしろ挑戦的とでも申しましょうか、私はそれ以外に考えられないのです。価格を三円でも五円でも引き下げるというならいざ知らず、ここにちゃんとありますように、去年のものは、北海道では四十ページで三十円で売っていたのが、ことしになると、三十二ページに減らしている。これは三十二ページです。冬休み帳ほどうだろうと思ってこの間調べてみました。私の子供たちの今年度の冬休みおさらい帳もすでに見ております。そうすると、このようにページをなお減らしても、これを改正しようとする気持がない。ことに教職員組合が団結して、この問題に対しては挑戦的にいろいろ出てきております。 しからば証人にお尋ねいたしますが、この北海道の教職員組合がこれを発行して、数年間に先ほど申し上げましたような利潤を得ておる。そこで国税庁といたしましても、これは児童を対象とした組織的な営利行為であるという判断に基きまして、これは徴税をすることに決定いたしました。ちょうど二週間ばかり前の北海道新聞かタイムスか、どっちの新聞だか私記憶がありませんが、その新聞に、大体五段抜きくらいで出ておりました。札幌の税務署では、教職員組合に対して、今までの利潤の申請を出せといった。しかるに組合の方では出していない。そこで税務署といたしましては、今度は税務署独自の立場から、この徴税をすることに決定をしたという記事が大々的に載っておりましたが、その事実を御存じでありますかどうか、あるいはそういう報告を聞いておりますかどうか、その点について承わりたいと思います。
○田中証人 私は実は新聞記事として拝見いたしております。
○佐々木(秀)委員 新聞記事だけの拝見ですか。現地からの報告はございませんですか。
○田中証人 現地報告は、私はまだ拝見をいたしておりません。
○佐々木(秀)委員 その新聞記事を読まれて、文部省としてどういう処置をとりましたか、お尋ねいたしたい。
○田中証人 実は、文部省といたしましては、教員組合等については直接監督権を持っておらないわけでありまして、一々指図することは困難でございます。それで、当時、ちょうど中央教育審議会でもこの教科書問題についてはいろいろ検討をいたしておる際でございますし、先ほど来申し上げますように、それが副次的な教材等についても、これを野放しにすることは適当でないというような議論もございまして、先ほど来申しましたような答申を得ておるわけでございますから、私どもといたしましては、各般の事情を十分しんしゃくいたしまして、そうして、答申の具現の際に適切な措置がとられるように考えたい、かように思っておる次第でございます。
○佐々木(秀)委員 直接監督権はないといたしましても、この行為が事実現われて参りまして、それが児童の上に、家庭経済の上に大きな影響を及ぼしておる。しかも私の申し上げたのは、単なる人のうわさでなくて、自分自身で手をかけて調査し、しかも各県と対照してこれだけの利益がある。また北海道に行って調査いたしましても、おいでを願った証人ではございません、参考人の方々からお聞きをしても、現にこれだけの利潤があるんだということは、はっきりしているわけであります。監督権がないにいたしましても、これは、全国的な文部行政としては、大きな問題だろうと思います。教育委員会の手を回すとかあるいは中央のいろいろなその立場の人を呼んで、こういうことじゃいけないとか、これは命令的でないにしても、何かの処置に出なければならないと私は思うのです。このまま放任していたのては、迷惑するのは各家庭のいわゆる経済です。それが今非常に困っておるというときに、このまま放置しておくということは、文部行政の責任者として、私は受難じゃないと考えますので、その点については、十分一つ御考慮の上、早急に手を打っていただきたいと考えます。 それはそれといたしまして、しからばこういうおさらい帳などを届出制にするというような御証言のように承わったのですが、将来こうした児童を教育する立場にある教職員組合が、今後ともにこういうものを発行する。そうしていわゆる編集と採択とが、どうしても切り離すことのできないような関係にあるこうした組合に、こういうものを発行させることが妥当とお考えになりますかどうか、その点についての証人のお考えを承わりたいと存じます。
○田中証人 先ほど来しばしば引用して恐縮なんですけれども、中央教育審議会の答申におきましても、採決関係者が編集発行に関与することによって、採択に不当な影響を及ぼすことのないように処置をしろ、実はこういう答申があるのでございます。従いまして、これは直接教科書の問題でございますけれども、教科書に類似したようなものにまでそういうふうなことを行い得るものであるかどうか、また先ほど来申しますように、届出にしたらというのは、これは中央教育審議会の答申でございます。ですから、それらの点についてはよほど慎重考慮をいたしませんと、かえって波乱を起すようになっても困りますので、私どもとしてはその答申をもとに、慎重検討の上に、これを立法化いたしたいと考えておるのであります。
○佐々木(秀)委員 私は、何も慎重を要する必要はないと思うのです。編集と採択が一緒であってはならないという文部省の規定ができているのです。しからば、教職員組合というものは、直接いわゆる採択の仕事ができる立場の人でしょう。しかもこのおさらい帳なんというのは、ほとんど他の業者が入っておりません。これは九九%までみんな学校の先生方から渡されるおさらい帳を使っておる。採択が一〇〇%やられているといっても過言ではないのであります。その採択を自分たちの手でやり得る組織と立場にある教職員組合が、しかも北海道教職員組合あるいは東京都教職員組合といって発行しておれば、完全に採択と編集と一緒じゃないですか。しからば文部省の採択基準からいたしましても、これは事実認めるべきものではないという判断は、何も慎重を要しないと思います。その点に対して、もう一度お答えを願いたい。
○田中証人 先ほど申し上げましたように、教科書といいますか、教科用図書に関しましては、学校生活協同組合の例に見ますように、大体学校と編集供給とが密接で適当でないというので、だんだん商事会社にかわって参りました。ただお話もございますけれども、副次的な教材まで、これをほんとうに教科書と同じように扱えるかどうか、これは重大な影響がございますけれども、これを法律約に考えまして、一体同一に扱えるかどうかという問題になりますと、もう少し検討を要すると思いますので、私どもはさらに検討さしていただきたい、こういうように思うのであります。
○佐々木(秀)委員 それでは限界を切りまして、ワーク・ブックとかあるいは参考書とか、そういう種類のものを抜きにいたしまして、いわゆる夏休みおさらい帳、冬休みおさらい帳というものに限定してお聞きしましょう。これは普通の教材やワーク・ブックなどの性格と違うと思うのです。これは必ず使うものです。全学生が使いますから、教科書と同じ取扱いであらねばならないと思います。その点についてはどうお考えになりますか、承りたいと思います。
○田中証人 先ほども委員長の御質問に応じてお答えをいたしたのでございますが、ワーク・ブック、夏休み帳につきまして、地方でどんなに使っておるか、こういう実績を見たのです。もちろんこれは都道府県について四校ずつ抜き出しの調査でございますから、その点についての条件はございますけれども、ワーク・ブックについては、小学校で八四・九%使っている。そうしますと、これはもう非常な重要な地位を占めるわけでございますから、それだけに、この問題については、私どもはもっと深く慎重に考慮を払わなければならぬ問題である、従来のような考えばかりではいかぬということを、これによっても私どもは知っておるわけでございますので、いずれ、おそらく遠からず教科書に関する法案も提出されることと思っておりますので、その際検討いたしたいと思っております。
○佐々木(秀)委員 それでは、証人の大体の考え方はわかりましたが、ワーク・ブックですらも八十何パーセントというのですから、夏休み、冬休みのおさらい帳に至っては、もう一〇〇%といっても間違いないのであります。この問題はこのままほうっておくと、われわれが今まで真剣にこれについて検討してきた効果が何も上らない。むしろ逆行しているというようなことでは、私ははなはだ遺憾だと思いますので、文部省といたしましても、早急にこれに対するところの措置をとっていただきたいということをお願いいたしまして、私は終ります。
○高木委員長 濱野清吾君。
○濱野委員 先ほど大西君からお話がありましたが、あれは文部大臣が検定したものであるからというようなお話であった。文部大臣が検定をした形をとれば、それは憲法や教育基本法やその他の法令には完全に合致している、完全無欠なる教科書である、こういうように了承していいわけですか。
○田中証人 完全無欠といいますか、まあ大体合格点に達したということであれば、大臣が検定をいたしておりますので、そのことを申し上げておるのであります。
○濱野委員 合格点に達したものは、文部省に一切の責任はないのですか。
○田中証人 検定権は法律によって文部大臣にございますから、従って、検定そのものの責任は、これはやはり文部大臣にあると私は存じます。
○濱野委員 そうしますと、著しく右に片寄ったり、また俗にいう左に片寄ったりする教科書は、そういうようなことがかりにあったとすれば、文部省としては責任を負わなければならない、こういうふうに考えられるわけですが、その通り了承してよろしゅうございますか。
○田中証人 検定に関する責任は文部大臣にございます。
○濱野委員 そこでお善ねするのですが、思想偏向の問題は、教科書に関する限り、私どもはいろいろな実例を持っているのであります。これをただ単に見解の相違であるとか、その他の理由をもって曲げるわけにいかない。好き好みによって教科書が片寄って作られるということは、それは大へんな間違いであると私どもは考えているのであります。しかしこれは過般においても相当論議されたことでありますから、ここでは論じません。私がただ一つ聞いておきたいことは、教科書のうちに、委員長が質疑されました第五項でありましょうか、いろいろなる文字の間違いその他の間違いがたくさんあるのですが、これもやはり検定という一つの機関を通じてきたのであるから、間違いはない、従って責任はないというようなことと一緒にするということになりましょうか、どういうことでありますか。
○田中証人 実は、先ほど来御指摘のような、いろいろ誤まった字がございますとか、表現において不適当なものがございますとか、いろいろ調べてみると確かに出てくるようです。それについては、その都度著作者の方からの申し出によって訂正をいたすようなことも多いのでございまして、誤まりということがわかれば、それぞれ訂正をしておるのが現状でございます。
○濱野委員 そうしますと、そういう誤まりを著作者がみずから発見しなければ、そして著作者が文部省に申し入れをしなければ、その訂正というようなことはしない、こういうことでございますか。
○田中証人 それは、すべて訂正等も申し出によってやることになっておるのでございますが……。
○濱野委員 そうしますと、ただいま申し上げましたような教科書の誤まりについて、事実文部次官なり文部大臣なりその他の諸君がかりに発見したとしても、編著者から申し出がなければ、その訂正はどうにもならぬ、こういうふうに了解していいんですか。
○田中証人 一たん検定をいたしますと、こちらで訂正を命ずる権限はございません。大体それぞれの申し出によって訂正を認めることになっています。もっとも訂正というものにもいろいろ制限がございまして、改訂になるか訂正になるか、いろいろ問題はあるのでございますけれども、ただいまは、字句等のきわめてはっきりした、しかも具体的な文字等についてのことを申し上げておるわけでございます。
○濱野委員 ちょっと込み合っておりますけれども、検定が終了して、これでよろしいということになった後の手続は、ただいま次官のおっしゃる通り、しかし検定が終って後、これが重大なる誤まりだ、こういうようなときには、編著者に文部省からその旨無効にするという事実上の交渉はできるものかできないものか、この点……。
○田中証人 その点は、先ほど来、御意見がいろいろございましたが、検定権というものは、形式的には先ほど来申しましたように文部大臣の責任でございますけれども、実際としては、教科用図書検定調査審議会がやっておるわけでございます。そこで検定調査審議会の方に相談をし、そうして検定調査審議会の意見としてお話し合いをするということは、これは私は不可能でもなし、同意を得ることなら、不適当なことでないと思います。
○濱野委員 そうしますと、わが国の文部省の持つ検定という権限は、どういう本質を持っておるわけですか。
○田中証人 これは学校教育法にもございますように、学校において使いますその教科書は、文部大臣の著作権を持ったものか、あるいは文部大臣の検定を経たもの、こうなっております。そこで、文部大臣において検定をいたしますことは、その検定を経た教科書を、教科書として学校としては使用すべきもの、こういうことになるわけでございます。
○濱野委員 要するに、一つの草案が出てきますね、それをどういう手続、審議会か審査会か知らぬけれども、これが、わが国の教科書を作るに必要なる法令に全く合致しているかどうかということを検定するでしょう、それは間違いないですね。
○田中証人 ……。
○濱野委員 そのときの権限というものは一体どういうことか。全然間違っていることが検定でパスしたなら、これは一体だれが責任を負うのだ。それからそういうようなことが、検定権を持っている文部省としては許されるのか許されないのか。すべて著作権万能にまかしておくということなら、検定というものは必要ないでしょう。実質的に私は言っておるので、形式的な問題じゃない。
○田中証人 お話のように検定につきましては、検定基準というものが直接にはあります。それで、詳細な項目に基いて、いろいろ調査審議をして、合格、不合格をきめます。それで、それを検定いたした場合に、非常な誤まりがあった。その場合の責任ということになるわけでございましょうが、そこでともかく先ほど来申し上げますように、検定したということにつきましては、これははっきり形式的にも文部大臣が検定することになっておりますから、文部大臣の権限であり、責任であるということになるわけでございましょう。そこで一たん検定をいたしますと、まあ訂正については、これは文部大臣に権限がある、字句等の誤まり、正誤といった程度でございますね、そういったようなものについては、ときどきこれをやっておることであります。
○濱野委員 そうしますと、検定をパスしたものに、もし左翼偏向やもしくは文字の誤まりやあるいは文章の大へんな間違いがあったということにつきましての責任は、あげて文部大臣にある、こういうふうに了解できるわけですが、さよう了承してよろしゅうございますか。
○田中証人 検定自体としては、そういうものを検定した責任は、文部大臣にあると思うのであります。ただその内容自体の問題について、実質的にそれを書いたとか書かないとか、それらの問題はまた別になると思いますが、ただそれを検定したということは、これは文部大臣の責任だと思います。
○濱野委員 そうですが、検定した結果が教科書になって出た、ところが、その教科書を見ると大へんな間違いがあった、大へんな偏向があった、そして大へんな誤まりを犯しておるというようなことがあったら、編著者に道義的な責任は当然あるでしょうけれども、法律的に、実質的にはだれが責任を負うのですか。責任の帰着点はだれか、こういうことです。
○田中証人 検定という事柄には、文部大臣が責任を負わにやならぬと思います。検定自体をしたということは、文部大臣の責任でございます。
○濱野委員 検定したということが文部大臣の責任なのだから、検定という一つの仕事に対して、誤まった仕事をして、その結果誤まった検定をして、それに検定にふさかしわらざるミスがあるという場合には、当然文部大臣が責任を負うわけですね。
○田中証人 そういうふうなものを検定をしたという点において、検定の責任は、文部大臣にあると存じます。
○高木委員長 田中君にちょっと委員長からお尋ねいたしますが、一体、検定調査審議会というものは、諮問機関ですか、決定機関ですか、これをはっきり定義づけておかないと、今の問題が結論に移らないと思いますから、その点の見解をお述べになって下さい。
○田中証人 これは諮問機関でございます。
○濱野委員 そうなれば、検定の全責任は文部大臣じゃありませんか、どうです。一切の責任は文部大臣でしょう。
○田中証人 検定に関する一切の責任は、文部大臣です。
○濱野委員 そうならば、さっきそうおっしゃっていただけばいい。非常に間違いが多いのです。具体的の問題として申し上げますが、それがふしぎなことには、過般の委員会においてお調べになったように、編著者がやはり大きな間違いを犯しているのですよ。同僚の佐々木君が先ほど「あかるい社会」の教科書でお話をしておりましたが、この「あかるい社会」だけでも、私の見るところでは十数項に及んで間違いがある、こう思うのですが、この編著者は、周郷博君、編集員は非常に進歩的な学者だといわれる宮原誠一君、高橋顧一君、日高六郎君、これらの面々が編集員です。責任者は周郷博君。私が指摘しているのは、争いになっている思想偏向の問題じゃない。誤まりだといわれることを指摘してみたいと思っているのですが、一々読み上げるのはめんどうですから、後ほど書面であなたに差し上げますけれども、われわれの見ただけでも、十数項に及んでいる。たとえば「あかるい社会」の教科書の中に、ペスト菌の発見ということが記録されている。「北里は、この伝染病研究所で、ペスト菌を発見した……。」と「あかるい社会」の九十二ページにございます。これらを私ども調べてみると、これは北里柴三郎さんがペスト菌発見者の一人であるとしても、正確なる記事では私はないと思う。ペスト菌は明治二十七年香港における流行の際に、わが政府から派遣された北里及びフランスの医者エールサンによって発見せられ、青山博士は病理を調査した、こういう記録が世間の定説でございます。百科辞典その他にもこのことが書いてあります。またわれわれもそれらが正しいと思う。でありますから、わが国の北里博士だけがこれを発見したと記述していることは、誤まりであると思います。周郷博、宮原誠一、その他の人の大きな誤まりである、こういうふうに考えております。こういうことを調べていくと、あの進歩的学者の人の編著書のうちには、たくさんあるのです。この一冊でも十六項に及んでいるのです。先ほど同僚の佐々木君がおっしゃいましたように樺太南半は、サンフランシスコ条約によって、日本はその領土権を放棄した、これは間違いないことですが、直ちにソ連の領有を認めたわけではないのであって、南樺太の帰属については、最終的な決定はしていないのです。ところがあたかも最終的な決定をされているかのごとき記述がある。一体これはどういうことになるのですか。ことに今日、日本では、南樺太あるいは千島あるいは歯舞、色丹、それらの問題が国民全体の環視の中に投ぜられているのに、こうした誤まりのある、間違った記述をするということは、一体どういうわけなんですか。文部省は進歩的学者やあるいは日教組というような、そういう人たちがこういう間違った記述をすることも、やはりそのまま見のがしていいのかどうか、何か卑怯な態度をとっているのじゃないか、こういうふうに実は心配しているわけです。まだ数えますと幾らでもあるのです。たとえば日本は日露講和条約によって、「清国から、遼東半島をかりうけ、南満州鉄道をゆずりうけました。」こう書いてあるが、そうではない。当時遼東半島はロシヤが租借しておって、南満州鉄道はロシヤの所有であったから、その租借権と所有権とをロシヤから譲り受けたもので、清国からというのは大きな誤まりではなかろうか。これは、歴史的事実を曲げて記録しているのじゃなかろうか。よく学者は、歴史的事実というようなものを主張して、変なふうに左に寄ったり、右に寄ったりして書きたがる癖がありますけれども、こういう歴史を、みずから曲げられたのでは困るじゃなかろうか。さらには伊藤博文のことで、「一九〇四年、伊藤博文はロシアへ行くとちゅう、ハルピンの駅におりたところを、ひとりの朝鮮人にピストルで殺されました。」これは九十九ページにある。伊藤博文の遭難は明治四十二年十月二十六日であって、一九〇四年は誤まりである。一九〇九年が正しいのではないか。こういうようなことは、この周郷君の代表著作になっているやつだけでもまだまだ幾らでもあるのですよ。こういうことを文部省は検定して通しているのだが、そうしますと、この責任は文部省にあるということに了解していいですね。
○田中証人 検定したということの責任は、もちろん文部省にございます。ただお話のように、それなら全然客観的事実についての間違いがないかという点になりますと、やはり専門事項にわたりますと、明らかに客観的事実において記述が間違っているというものも、ちょいちょい実は出てくるのでございます。そこで、それはその都度お話し合いの上で、措置するようにいたしておるのが現状でございます。
○濱野委員 その全部にわたってそういうものを訂正することは、私は可能だと思うのです。それができないというなら、教科書の編集あるいは検定に関する限り、文部省は自分の権限を放棄して顧みないという態度でありまして、これは国のために憂うべきことである、こういうふうに考えているわけなんです。検定したという責任は文部省にあるというのですから、これらの責任も、やはりあなたにあるのでしょう、どうですか。あなたは責任をとるまい、とるまいとしていますけれども、これだけの大きい問題ですし、終えたことだからいいということじゃありませんね。
○田中証人 私は責任がないと申したことはありません。検定の事実については、これは文部大臣の責任である、われわれは、補佐官としてさように申し上げております。
○濱野委員 検定の事実については、われわれの責任である、こうおっしゃるが、徳川幕府時代に最もすぐれた能吏があって、あすは天気だろうかと殿様に聞かれたところ、明日雨降らざれば天気にて候と言ったそうだ。こういう答えをあなたも繰り返していらっしゃるのだが、検定の事実について責任を負うと言うなら、検定をして間違った事実についても責任を負う、こういうふうに訂正されてもいいじゃないですか、どうですか。
○田中証人 決して責任を回避しているわけじゃないのでございますけれども、とにかく全体として検定をしたのでございますから、それについては責任があるということを申し上げているつもりでございます。
○濱野委員 私は、最後にあなたにお願いをしておきますが、正しく強い者に対してはおそれてもいいが、しかし疑わしき力に対しては、私は文部当局はおそれてはいかぬと思う。そういうことは卑怯です。言うまでもなく、教育は国作りなんですから、次の時代の国民を作り上げることなんですから、変な力に左右されて、あるいは阿訣迎合したりするというようなことがあれば、それは国家の一大事です。どうぞ田中さん元気を出して、一つそれらの問題の処理に当っていただきたいと思います。 私の質問はこれで終ります。
○高木委員長 神田大作君。
○神田(大)委員 だいぶ時間もたったようでございますし、ずいぶん論議も尽されておりますので、私は大事な二、三点だけをお尋ね申し上げまして、御見解を尋ねたいと思います。 この教科書問題がいろいろと問題になりました根本的なことは、やはり私は文部行政が非常に不徹底であったという点にあると思うのでございますけれども、こういうように教科書問題が世上において論議された責任は一体どこにあるか、あるいはその欠陥はどこにあるか、そういう点について率直な御表明をお願いしたいと思います。
○田中証人 どういうふうにお答え申し上げたらと実は思うのでございますけれども、文部省の施策が不徹底であったがために、現在のようないろいろな問題を起したのじゃないかというように拝承いたしたのでございますが、実は、文部省自体のやりますことにも制限がございまして、お話のように、検定制度というものを現在あるように立てられまして、その制度のもとにおいて、文部省としても最善の努力を払って、その趣旨の実現なり施策の遂行に努めているつもりなんでございます。
○神田(大)委員 たとえば採択等に関しまして、いろいろと問題があるというようなことが言われておったが、こういうことに対して、あなた方は十分御存じだろうと思います。にもかかわらず、これらの問題に対しまして何ら法的な、あるいは何らそのほかの施策も施さないで、この数年間を過ごしてきているというようなことは、これは文部行政に何か欠陥があるか、あるいはそれでなかったならば、その当局者が怠慢であった、こう思うわけですが、その点はどうです。
○田中証人 お話のような採択上の各種の問題点等につきましては、常々われわれとしてできる範囲におけることはいたしてきたつもりでございます。そのつど、われわれとしてなすべきことは、単に地方の教育委員会等に対しましての勧告指導というものにとどまりますので、これを権力的に措置するということは現在許されておりません。それらの関係で、外部からごらんになれば、なまぬるいようなことも多いかと思いますけれども、現在の法律制度のもとにおいて許された範囲においては、そのつどの機会において、措置はいたしたつもりでございます。ただ法的措置もとらないでというお話もございましたが、これを法的に取り上げられて、措置して規制するということが適当であるかどうかということにつきましては、文部省自体の権限としても、いろいろ論議をかもす点でございまして、確かにわれわれ慎重でございます。幸いにいろいろ議論が出て参りましたので、先般この問題についての中教審の答申も得、近く新たな法律の形において、教科書制度の改善をいたしたいと考えておるのでございます。
○神田(大)委員 これは、私は深く追及いたしません。あとの機会において、この点等につきましてはこまかく御答弁を願いたいと思っております。ただ私は、この教科書問題が、今日のような不手ぎわな状態に陥ったということについては、文部大臣なりあるいは文部当局なりに、やはり重大な責任があると思うのでございます。この点について、それが行き届かなかったいろいろの理由はあるでしょう、あるでしょうけれども、今日採択の問題あるいは販売の問題、あるいは発行問題等につきましても、たくさんな問題が出ております。しかもそれは、当時改善すれば改善できる問題であったと思うのです。にもかかわらず、それを今日までこのような、たとえば行政監察委員会等において取り上げられるまで放任しておいたというようなことに対しましては、これは率直に責任の所在を明らかにしておくべきであろうとわれわれは考えるのであります。あなたは、こういうことにつきまして、もっと率直にお答えができてもよいと私は思うのでございますけれども、この点はどうですか、重ねてお尋ねします。
○田中証人 私ども非常に不行き届きでございますから、行き届かない点があったために、さらに一そう問題を複雑にし、問題化さしたということもあるかと、それは思います。その点については、私どもも公務員として反省しなければならぬのでございます。ただ、われわれとしては、単にそれを放任しておいたというわけではなくて、与えられた範囲におきましては、できるだけそれぞれ常に努力をして参ったつもりでございます。その点は御了承いただきたいと思います。
○神田(大)委員 私は了承するわけにいきませんが、ここでそう追及してもしようがないので、問題点を別にそらします。 今度中教審の答申に基いて、教科書制度を確立するというか、改善するというか、改めるといいますか、するというようなことを聞いておるのでございますが、その骨子はどこにありますか。
○田中証人 実は先ほど来申し上げますように、去る十二月五日に、中央教育審議会の会長から、教科書制度の改善に関する答申をいただいております。大体、当時、文部大臣もお答えをいたしておきましたのでございますけれども、この答申をできるだけ尊重をして、実施に移したいということでございますから、今後のいろいろな情勢が変らない限り、大体この答申案というものが骨子になるのじゃないかと思うのであります。 その内容についてお尋ねでございますから、御紹介申し上げますけれども、項目としては、検定と採択と発行供給、価格、その他の五項目に分けて答申をいたしております。 その五項目の中で、さらに中心的に大きい問題と考えられます検定は、国で行うものとして、都道府県においては行わない。これは現状通りでございます。その他先ほど来いろいろお尋ねもございましたが、教科善の検定調査審議会というものを、もう少し広く人を求め、完全に検定のできるような組織にこれを改める。なおまた調査員等についてもさらに検討を加えて、そして調査がもっと公正適切に行えるようにしなければならぬというようなこと、さらにはその調査員が非常勤でありました現在のもののほかに、ほんとうに調査自体についてもっと徹底をした調査のできるために、常勤専任の調査職員を置いたらどうかというようなことも言われております。なお検定等も、従来は一定時期を限っておりましたが、これを常時行うようにしたらどうか。なおまた、検定については、一定の有効期限を定めたらどうか、こういうふうなことが大きい事項になっております。 それから採択につきましては、なるべく都市準位等一定の地域において、できるだけ少い種類の教科書を使用するように考えたらどうか。そのための試案も一つ出ておりますけれども、これは省略いたします。なお教科書については、従来地方における展示会を、大体十日間ばかりの期限でもってやっておりますが、あの展示会でははなはだ不十分であるから、常時研究ができるような方法を考えたらどうか。なおまた、採択に関連して、不正行為があった場合には、それを厳重処罰するように考えたらどうか、こういうふうなこともございます。なお従来ございましたような駐在員、あるいは発行者等の負担において開催する講習会等につきましては、駐在員等は置かない方がいいじゃないか、また講習会等は、教育委員会の承認を得てやった方が公正じゃないかというような意見も出ております。なお、先般来申しますように、採択の関係者が編集発行に関与することによって、採択に不当な影響を及ぼすことがないように措置すべきではないか、これらの点が掲げられております。 それから発行供給につきましては、発行者については、欠格条項を設ける。たとえば、せっかく法律を制定したのに、その法律に違反をするとか、あるいは破産をするとか、またその他の事情によって刑罰を受けたとか、そういったような欠格条項を設けて、これに関連して登録制度をしいたらどうか。それから同一発行者の発行する同一種目の教科書の種類並びに教科書の改訂については、一定の抑制の方途を講じたらどうか、こういうふうなこと。それから特約供給所及び取次店等の供給状況が不良または不誠実であるような場合には、何らか是正することができるような措置を考えるべきではないか。また供給事業に採択関係者が関与する、そうして採択に悪影響を及ぼすということはよくないから、さようなことのないように措置を考えたらどうか。最後に、児童生徒の転校、被災等の場合に、教科書の供給を迅速かつ容易ならしめるための措置を考えたらどうか、こういうふうなことを掲げております。 それから価格につきましては、現行の教科書の定価の認可基準を検討して、もっと引き下げるように、現在最高基準をきめて、それ以下において認可いたしておりますが、それを検討して引き下げをはかる。教科書の用紙、ページ数、色刷り等についても一定の基準を設けたらどうか、教科書、教師用指導書等の学校、教職員への献本、これはかなり行われておりますが、この献本等に要する経費が教科書価格に算入されないようにするために、それらのことをも抑制したらどうか、こういうふうなことも言われております。なお教科書の運賃、郵送料等についても、軽減措置を講ずること。 第五項目としてその他、教師用指導書について、その内容に教育上不適当なる個所があるときには、訂正させることができるような措置を講ずること、また夏休み帳、副読本等の使用については届出制をとること、その他いろいろございますけれども、おもなる事項をあげますとさような内容になっておりますので、私どもはこれをさらに検討をして、そうして成案を得たいといただいま準備をいたしておるのであります。
○神田(大)委員 今申されました点等につきましては、なかなか重大なることでございまして、われわれといたしましては、文教委員会等におきまして十分検討をしたいと思いますので、この席では私はとやかく申しません。ただ検定をするという基本的な態度は変えないというような点は、その要綱においても変っていないようでございますけれども、やはり検定審査会というようなものを設けて、この検定制度を守っていく考えであるかどうかお尋ねします。
○田中証人 現在の検定制定の基本的性格は維持する、かような態度でございます。
○神田(大)委員 それから採択の問題でございますけれども、その採択についてはとかくの風評がありましたが、府県単位に採択して、採択権を府県の教育委員会に尽くとか、あるいは町村の教育委員会に置くとか、あるいは町村じゃなく学校校長を主体とした教師、一番末端において責任を持っておりますところの先生方にこの採択権を持たせるかというのは、非常に問題がたくさんあろうと思うのでございますけれども、私たちといたしましては、今までのいろいろの検討上から言いまして、府県に採択権を持たせて教育委員会がやっても、これは福島県の場合のように、かえって大きな問題をかもすおそれがあるように見受けられるのです。根本的には、あくまでも現場の教師に採択権というものは持たせなくちゃならぬ。その現場の教師がどのような方法で、どのような組織を持ってこれを能率的に、しかも有終の美をなすような採択の実が上げられるかどうかは、これは検討しなくちゃならぬけれども、基本的には、現場の教師が採択権を持つべきであろうと私は考えるのでございますけれども、次官の見解を聞きたいと思います。
○田中証人 私どもは、この採択と選定ということを一応分けて考えて参っておるのであります。それで、法律に、はっきり採択権というものは御承知のように教育委員会に置いております。しかしこの採択を、ほんとうに学校教育の本旨からいって、日常の教育、実際からいって、最も適当な教科書をきめるためには、やはり学校側、先生方の意見というようなものも十分尊重しなければいけないと考えまして、実は展示会というものも、御承知のようにその意味であるのでございまして、どこまでも学校の先生方の意見というものを尊重し、そうしてそのもとに教育委員会が採択する。こういうふうに考えて、また従来もその趣旨で指導して参っておるのでございまして、その意味において、やはり選択ということは学校側において十分やるべきであり、またやってもらいたい、かように考えておるのであります。
○神田(大)委員 今の問題等は非常に大事なことでございまして、この展示会等も今度常置するというようなことでございますが、非常に私はけっこうなことだと思うのです。しかしながら、いかに展示会を常置いたしまして、現場の教師がよい教科書を選定しましても、どこかでもって、たとえば県の段階あるいは郡の段階あるいは町村の段階等においてその意見が用いられないで、よい教科書が実際的には生徒の手に渡らないというような弊害を除くためにも、私は現場の教育のほんとうの末端の責任者であるところの教師が、あくまでも責任を持って選定し、採択をするという点を守ってもらいたい、こう思うのでございます。私の意見を申し述べまして、この問題に対する私の質問を終ります。
○高木委員長 他に御発言はありませんか。——御発言がなければ、田中証人に対する尋問はこれにて終了いたしました。証人には、長時間にわたり御苦労さまでした。 本日はこれにて散会いたします。 午後一時三十九分散会