外務委員会 第3号
- 発言数
- 62 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1955/12/05
会議録
○植原委員長 これより会議を開きます。 国際情勢等に関する件について政府当局に質疑を行うことといたします。これより質疑を許します。細迫兼光君。
○細迫委員 外務大臣に問題の日ソ交渉につきましてまず一点お聞きいたしたいのでありますが、問題は、交渉に当っては未解決の問題を残した形において幕を引こうとなさっておるか、あるいはお言葉のように懸案の全部の問題を解決させなければ日ソ交渉の幕をおろさない、そのいずれの方針を考えておられるかという問題であります。これはいわゆる早期妥結かいなかということに実質上基本的につながっておる問題だと思うのであります。すなわち領土問題その他懸案の全部を解決しようとなさるならば、これは失礼ながら重光外務大臣の手においては不可能な問題だと私は見通しをつけておる。ところが領土問題の解決は絶対に不可能かといえば、私は絶対に不可能ではないと思う。それはどういうことかと申しますれば、社会党の政権が樹立いたしまして、そして領土問題で千島、樺太などの返還が受けられても、これはアメリカの軍事基地にならないという保証がそこに国内政治情勢として確立せられた場合、社会党政権が安定を見た場合、これは私は返還を受けることが可能な国際情勢になっておるというべきだと思う。私どもはそのことをねらっておるのでありますが、そこにおいて、もう領土問題はこれで打ち切りだという、あとに交渉の手がかりのないような状態にこの際置かれることは、はなはだ国として大損害であると私は考えておる。でありますから、不可能と見通しの立つこの領土問題は未解決の状態で、交渉の余地を後に残した状態で、日ソ交渉の幕をおろしてもらいたいと思うのでありますが、この点についての外務大臣の現在の御方針を承わりたい。
○重光国務大臣 私は、社会党が政権をとって内閣を組織し、外交の衝に当られるという御抱負については、まことに敬意を表せざるを得ません。私は実は前からたびたび申し上げました通り、私の考え方は、外交は党派にとらわれず、日本の外交としてやらなければならぬことがあるから、その線に沿ってやる少くとも心組みをもって進んでいかなければならぬ、また自分もさようなふうにして進んでいきたい、また行く心がけであるという心組みだけは十分に申し上げて参っております。さようなわけでございますから、社会党の政権ができましても、むろん国家のために日本のためにやるという心組みならば、それを受け継いで、そして施策をめぐらされることに私は少しも差しつかえのないようになるだろう、こういう考え方を持っておるのでございます。そこで私がそういう心組みの上でどう交渉を進めておるかと申しますれば、平和条約をこしらえるという以上は、重要な問題については解決を見なければならぬという建前をもって進んでおります。しかし交渉案件の全部について、すべてが解決を見なければならぬ、こういうふうに数学的にはむろん考えておらないのでございます。現に通商条約の問題だとかいろいろな問題がございます。これは事それ自身の性質上からいっても、ゆっくり日にちをかける必要があると思っています。国交正常化に直接に解決をしなくてもいい問題もあると思っています。むろんそれらのすべての問題について交渉の対象には今なっています。しかし考え方は、解決しなければならぬ、平和を回復するのにこんな問題も解決しないで平和になるはずはない、こういうふうな問題はこれは解決するのが当然だと思っております。さようなつもりで重要な案件については解決して平和条約を作る、こういう方針をもって進んでおります。この方針については、交渉の今日までの経過を見ましても、相手方において異存のないところだとわれわれは考えておる次第でございます。
○細迫委員 的確な御答弁でないのでありまして、私は未解決の問題を残してでも幕をおろされる方針かどうかということを承わって、それに対する的確な御答弁がほしかったのであります。つまり外務大臣の言われますように、外交は国家的見地に立って、党派を越えてということは、われわれも十分心得ておるつもりであります。でありますから、鳩山内閣の日ソ、日中の国交回復あるいは貿易促進ということについては、御承知のようにわれわれは従来の党派的な対立感情も抜きにして応援を申し上げておるのであります。国家的見地に立ちまして、日ソ交渉、ことに領土問題を考える場合に、もう将来交渉の余地なきようにはっきりそこで打ち切ってもらっては、国家のためによろしくないと私は考えておる。次々の内閣が未解決の領土問題におきましては、もう一つ先へ、もう一つ先へというように引き継いで、交渉妥結のきっかけがあるような形において、この際は一応国交回復ということを第一目標として、いわゆる早期の解決をすることが国家のためであると私は確信いたしておるのであります。しかし的確な御答弁もあるいはこれ以上不可能かと思いますから、日ソ交渉についてもまだ聞きたいことがありますが、時間がありませんから中国との問題に移りたいと思います。 この前の本会議におきまして、鈴木委員長の質問に対する重光外務大臣の中国問題に関する御答弁は、これはもう大へんな、もってのほかなことだと思うのです。あれはアクセントが諸外国に通じないからいいようなものですが、それにしましても御発言の内容は、これはゆゆしい問題でありまして、一には外務大臣が全く無知であることを表明すると同時に、日中友好といいますか貿易の促進その他の中国との間の問題のぶちこわし役をなさり、中国に何らの手を打たぬじゃないかという鈴木委員長の質問に対して何の手を打つんですかという御答弁である。もってのほかのことだと思うのでありますが、知って知らぬふりをなさるのだろうと思いますが、打つべき手は具体的に幾らでもある。私はその全部を申し上げずに具体的に聞きたい。すなわち、たとえば貿易問題におきましても、一つのネックをなしておるのが決済問題である。決済問題についてどういう御努力を一体なさろうとしておるか、また努力をなさったか、いわゆる手を打たれたか。あるいはまたココムの緩和の問題、これは従来触れておられます。あるいはまた中国との交通路を開いたらどうか。今香港を回ってわざわざ遠道をしてきておりますが、すでに汽船はいろいろな貨物を積んで中国の港に直接行っておるのであります。これに対してあるいは旅客も乗せるとか、あるいはまた飛行機の交通路を開くとかいうような具体的な問題もあるわけであります。こういうことについて一体どういう手を打たれようとしておるのか、打ったことがあるのかということを聞いておるのでありおます。鈴木委員長の具体的内容をここに敷衍いたしまして、委員長の質問の続きとしてお考え下さって御答弁が願いたいと思うのであります。
○重光国務大臣 中共との問題について、本会議の質問応答に関連をして今御発言がございました。まず本会議の質問応答の事態をはっきりとさせなければならぬと思います。本会議で政府は中共との国交調整について、一向手を打っておらぬじゃないかということについて、鈴木委員長から私に対する強い非難がございました。そこで私はそれにお答えいたしまして、一体どういう手を打つのであるか。鈴木委員長からはどういう手を打てというようなことは、具体的には御発言がたしかなかったように私は記憶しております。しかしながらその御趣旨はどうであったか。中共との国交を調整しろということに終始一貫した御質問でありました。そこでそのためどういう手を打てと言われるのであるか。もし言われるところが中共を承認するということだったら、それは私にはできない御相談だ、こうお答えいたしました。これは日本としてそうであろうと私は思っておる。国会の意思として中国の政府はこの政府を承認するのだといって国民政府を承認しておるのでありますから、一つの国に対して二つの政府を承認しろ、それをもって国交の調整であるというならば、それは矛盾したことでありますから私にはできぬ。(「イギリスは」と呼ぶ者あり)イギリスは中共だけを承認して台湾政府は承認しておりません。そこでその内容は、当然のことを当然にお答えした、私はそう思っておるのであります。しかし今鈴木委員長の御質問の意味についていろいろお話がございました。私はたとい承認しておらない、また承認はできない状態にあるけれども、中共がシナ大陸において広大な土地において実権を持っておるということは争われぬことです。その実際上の状態にかんがみて、国際的の義務に反しない限りにおいて貿易も考えなければいかぬ。日本としては貧乏国でございます。それからその他の今言われる交通の問題等についても、条約上の義務に反しない範囲、国際情勢から見て今不幸にしていろいろな制約がございます。そういうことに反しない限りにおいてこれをやるということは、十分やったらよかろう。貿易の問題をココムの制限内においてやるということは、従来ともその努力をいたしてきているのであります。そういうことは着々やったらよかろうと私は思う。しかしそれがために全局の問題をこわすわけには参りません。そこでその打つ手というのが、承認をしろということならばできない、こう申し上げたのでございます。 今決済の問題でございました。これは専門的のことになりまして、私には実はよくわかりません。私としてはさようなことも貿易のできる範囲内において十分便宜な措置を講じたらよかろう、こう思って実はずいぶんそういう方面について、他の閣僚あたりとも相談してきたのであります。しかしこれは私の直接の何ではございませんから、他日他の責任閣僚から十分御説明をする機会があるだろうと思います。しかしこれらはできる範囲内においてやるべきだ、やった方がいいという考え方で進んでいることはここで従来とも繰り返して申し上げた通りでございます。 交通の問題についてもそうであります。それだから定期船を上海なり天津なりにやることができるかということは、これは相手方の都合も考えなければならない。今それは非常に困難な事情がいろいろございますから、そういうようなことは私は検討することには少しも異存はございません。
○細迫委員 もう時間ですから……。
○植原委員長 この際委員長として委員会の委嘱に対してお答えいたしたいことがございます。実は先日の理事会で、日韓両国の関係はとかくなめらかでないから、この場合に外務委員会の意向を韓国代表の金公使に話したり、金公使の意向を聞いておくことが両国のために有利ではないか、委員長が一つそのあっせんの労をとってみろ、こういうことでありました。そこで、けさ私金公使をたずねてかようなお話をしました。日韓両国は一番親善でなければならない、兄弟みたいなものだ、それが歴史的に見ても、地理的に見ても、人種的に見ても、文化的に見ても、この両国は最も密接なる関係を必要とするのに、とかく今日の状態はそういうありさまになっておらぬ。金公使としては政府の意向を聞いたりあるいは民間のことを直接聞いておく必要もあるであろうが、今日の政治はやはり民主政治で国会中心の政治だから、国会を代表する外務委員会の意向を聞いておいた方がいいじゃないか。そういう人にあなたは直接あなたの意見を話しておいた方がいいじゃないか、こうすることが両国の関係の調整の上において効果あることだと思うが、あなたはそういうことを御了承なさるかどうかということをお話をいたしましたら、それは大へんけっこうだと思うからそれではお会いしよう、御懇談申そう、こういう返事でありました。それで時間をどうしようか、いつにしようかということでありましたが、きょう本会議もありますし、いろいろあるので、私の都合で今日四時に韓国の代表部に行って、あまり大ぜいでも困るだろうから、まず四、五名くらいと思ってくれろ、こう話をしましたときに、私の頭の中にあったことを率直に申し上げるならば、まあ自由民主党から三人、その他の方から二人、それに委員長が加わるというようなくらいでも六名になるから、その程度で理事の話をまとめていただきたい。そうすれば四時ですからこの議長の次室で三時半ごろお会いして一緒に行くことがよかろう、こう思っておりますから、その点をお含み願っておきたいと思います。 もう一つは松本全権の壮行会のことでございますが、全権の都合と場所とをきめまして、そうして場所はみんなの出入りのいい日比谷の松本楼ぐらいにしてよかろうじゃないかということで、あらかじめ全権の御都合と専門員の方と打ち合せて場所がきまれば皆様方に御通知して御出席を願う、こういうことにきめておりますから、そのことを、これは委員長としてあるいはこれが皆様をお世話する最後になるかもしれないから、皆様方の御委嘱にこたえる意味において、このことだけを申し上げることを御承知を願いたいのであります。 次に大橋忠一君。
○大橋(忠)委員 今委員長の申されました日韓関係について御質問いたします。 今委員長の言われました通りに、この日韓の関係、歴史というものは近世において不幸なる事態が多いのであります。日清、日露の両戦役も実は韓国問題が主たる原因で起っておるのであります。またわが国としてまた韓国としても、この一衣帯水の両国がフレンドリーな国になるということは、これは双方の外交政策上最大の眼目であるにかかからず、終戦後もやはり不幸なる関係が続いておるのであります。これを何とかして一つ改善できなければ日本の安全も保たれないし、また極東の安定ということも保たれない。従って私はこの問題こそ日本外交の最大最重の問題である、そういうふうに実は思っておるのであります。しかもこれは私ははなはだ申しにくい話でありますけれども、日本と韓国の現在の弱い立場にかんがみまして、アメリカの軍事力が極東方面を制圧している間に抜本的な解決をとる、そうして将来の日韓両国の基礎を作っていかなくちゃならぬ、こういうふうに確信をしておるのであります。しこうしてこの現在日韓関係が悪化しておる最大の原因は、申すまでもなく李承晩ラインであります。この李承晩ラインの問題さえ何とか妥結がつけば、日韓関係も必ずうまくいく、その他のいろいろな問題もやいばをみがいて解くことはできない。そこでどうしてもこの李承晩ラインの問題を解決しなくちゃならぬ。私は自分一個の考えは持っておりますが、こういう見解に対して外務大臣はどういう考えを持っておられるか。またこの問題解決のためにどういう具体的の抱負と手段を考えておられるか、それを一つお伺いしたいと思います。
○重光国務大臣 日韓関係の調整ということの重要性については、私も大橋委員の御意見に全然共鳴をいたします。その通りであると思います。ただその日韓関係が今日困難な状態になっている。これをどうやって解決するか、そのなにを李ラインにしぼってお話がございました。李ライン以外にもいろいろ重要な問題があるようでもございますけれども、李ラインが最も目立った問題であることはその通りでございます。李ラインの解決方法が——日本から申しますれば、公海に一つの線を画して、これより韓国側に入ることは相ならぬ、こういう札を立てたことになります。そうしてこれを解決するのは、結局両国政府の交渉によって解決するということよりほかにはございません。しかし交渉によって解決することの困難な場合、できないようになる場合において、法律問題として国際紛争を解決するために国際司法裁判所があるのだから、その判決によってこれを解決するという方向に持っていくことが外交上の常道であると思います。現にさような方針のもとにその手段を日本政府はとったのでございます。そのとった内閣は鳩山内閣に至らぬ前でございます。自由党の内閣でそういう手段をとりました。私はこれは正しいことだと思って、それを受け継いでやっておるわけでございます。ところがその日本側の提案に対して韓国側が応じないという状態になって、この国際司法裁判所の提訴ということも成り立たないことになりました。御承知の通り、これは双方ともすぐに応じなければなりませんから、そこで国際司法裁判所による公平な解決方法ということも事実韓国側の態度でできないことになっておる。それでやはりもとに戻って外交交渉によってこれを解決しなければならぬことになりまして、そうしてその外交交渉は今日まで続いておることになっております。日韓双方の関係を正常化する全体の交渉の重要なる一部分としてこれが取り上げられておるのでございますが、不幸にして解決の緒についておりません。そこで、それならばどういう手段をとって、これを解決に導くかということについては、いろいろ実は苦慮しておる状態でございます。あるいは第三国の調停ということも考えなければなりません。しかしそれにしてもいまだすぐそれで解決するような気配を見せておりませんので、しばらくその問題を交渉継続という形において日韓両国の全体の交渉を他の問題についても取り上げて交渉を進めておる今日の現状でございます。
○大橋(忠)委員 この問題は、すでに今より三年以前に吉田内閣時代から起った問題であります。もう少し早く決定的手段を講ずれば最も楽にいったのを政府が優柔不断であったがために今日まできたのであります。しかしこの問題は、ちょうど胃潰瘍がガンになるように長くほっておけばほっておくほど解決が困難だ。と申しますのは、韓国の方でも武力の援護のもとに李ライン内との関係が非常に深まった。ところがここは年に二百億からの漁獲高を得、しかもわが方が開拓した一種の既得権を持っておるべき李ラインである。しかも西南漁民の生命線であるべきこの漁場から、ただ締め出しを食うということは絶対にできないのであります。従って長くほおっておけばおくほど紛争が激化をして、結局これが日韓両国の関係に永遠に暗影を投ずるガンになると私は思う。もう一つ極端な言葉でいえば、日韓両民族の闘争の修羅場になると私は思う。だから、この問題は取り急いで一日も早く抜本的の解決をしなくちゃならない。しからばどうしたならばそれができるか。私はでき得るならばやはり交渉によって解決したいと思う。あるいは国際司法裁判所に訴えるというように、なるたけ穏便な態度で解決することこそ平和国家日本として最もふさわしいことであると思う。またそれを望みますが、しかし今までの実績から見まして、また韓国民のやり方を見まして、これは普通の交渉であるとか普通の声明というようなことだけでは、解決できないのじゃないか。できないぐらいじゃない、あまり普通の声明や交渉だけをやってわあわあ騒ぐだけでほおっておくと、かえって向うの方で日本はこれは何もようやりはせぬというので、いわゆる軽侮の念を増して参りまして、事態はさらに悪化すると思う。今まで日韓関係が悪くなったのもみなそうなんです。日本の方がおとなしく出れば出るほど、向うの方が軽侮の念を増してきて、遂に非常に不幸な結果に、今までの歴史は終っておるのであります。従って私はまことに遺憾でありますが、もうそろそろ口先だけの声明や交渉以外に別な方法を一つ考えるべきじゃないか。従っていわゆる友愛外交、平和外交による今までのやり方を続けるということは、その結果においてかえって友愛的じゃない、平和的じゃない、はなはだ悪い結果になりはしないか。それがために一日も早く、一つ今までの態度を一ぺん再検討をして、もう少し具体的の措置をとることを考える必要があるのじゃないか、こういうふうに考えておりますが、大臣はどうお考えになりますか。
○重光国務大臣 私は、先ほど御説明したことを訂正を申し上げなければなりませんことが起りました。今係の政府委員からの注意で、李ラインについて国際司法裁判所に提訴したと申しましたが、これは提訴したことはない、あくまで日本が国際法に基く主張を続けて今日まできたというわけでございます。国際司法裁判所の問題は竹島の問題でございまして、ちょっとその点を御訂正申し上げます。 そこで今の御提案は実は私は非常に重大な御提案だと思います。交渉によらずして、もしくは平和的の話し合い以外の方法を考えたらよかろうという……(大橋(忠)委員「交渉のみでなく、その他のですね。」と呼ぶ)その他のね。ですから、それはどういうことでありますか。私といたしましては日韓関係の全局をどうしても正常化する、和親状態に持っていきたいという、今その念願ですべてを処理いたしておるわけでございます。さようなわけでございますから、そのやり方についてはまたいろいろ考えることが必要であろうかと考えますが、しかしそれもすべて日韓関係の正常化、いわば平和的手段でもってすべて話し合いをするというカテゴリーに入るものでございますから、それ以外の方法をとれということの御意見がもしありますれば、その方法の内容等を十分に伺って、そうして私の申す平和外交のカテゴリーに入るべきものならば、これは喜んで検討をいたしましょう。しかしその平和外交のカテゴリーに入らぬものについては、そういう手段を——どういう手段かしばらく別問題といたしまして、とる意向のないことをお答えするほかございません。
○大橋(忠)委員 平和外交は私もまことに同感でございますが、今までのようなことだけをやっておると逆の結果をもたらします。現に今度来たならば砲撃をする、そうして砲撃をしてももし聞かなかったならば撃沈する。そういう乱暴な声明を向うの陸海軍の参謀本部が出したということそれ自体が、もうすでにそれを証拠立っております。私は、今後も今まで通りのことを続けていけば、一層悪い事態になることは必定だと思う。従ってこれがいわゆる平和外交に決してならない。そこでこの際相当具体的の手段を講ずる必要があると思うのでありますが、それは事は重大でありますから、その内容についてはもう時間もないから申し上げません。本日はこの辺で質問を打ち切りましてまた別の機会に質問いたしたいと思います。
○植原委員長 高津正道君。
○高津委員 南の韓国はぷりぷり怒っておりますが、北の朝鮮民主主義人民共和国は微笑して日本に手を伸べておるのであります。私は民間外交の立場からこの間古屋貞雄君たちと一緒に合計八名で朝鮮を訪問したのであります。そうして国のためになればと思って金日成元帥兼首相、南日外相、国会議長の金科奉、この三人とわれわれは実に三時間半にわたって会談をしていろいろ意見を交換したのであります。その際に金日成首相は、現在機械製品は主としてソ連から入れておる、生活必需品でわが国でできないものは中国から入れておる、だがわが国としては日本からいろいろ商品を輸入したいと思っておる、そのためには新潟からも非常に近い、伏木からも非常に近い清津港をどんどん改築し拡大をして用意しており、もうほとんど完成した、こういうことを申しました。そこでわれわれは、日本の民間の商社やメーカーが朝鮮貿易会社とか朝鮮国際貿易振興会あたりに対していろいろ打診したり、問い合せてきておりますから、政府はいろいろな便宜をはかって、韓国も大事であるが、朝鮮との貿易に対していろいろ助成策を講ずべきではないか、このように考えたのであります。もしもう一、二年もずっとソ連や中国からだけの貿易が続くということになれば、日本の貿易はいよいよむずかしくなるであろう、一日おくれれば一日の損失がある、早く帰って国内の世論を喚起し、政府にもこういう意見を伝えて、政府をも動かせるようにしたい、こういうような考えで私たちは帰ってきたのでありますが、政府は北の朝鮮に対して貿易を開くことを大いに望んでおられるのか、民間に対して何らかの援助をされるのか、どういう考えを持っておられるか、この点をまずお伺いします。
○重光国務大臣 北朝鮮を御訪問になって、北朝鮮の微笑外交をごらんになったというお話、これは今いろいろ御意見の表示がありました。そしてその問題は、要するに貿易を開いたらどうかということのようで、早く貿易を開いた方が日本のためになるだろう、一日おくれればそれだけ損だ、私はこれも理屈がないとは考えられないと思います。しかし御承知の通りに朝鮮は二つに分れて一方は共産主義国、一方は自由民主国という建前のもとに今分れております。そして韓国は国際連合等がこれをすでに認めておるのみならず、日本にとってはほんとうに一衣帯水の国であることも明らかであります。そこで私といたしましては、韓国との関係の正常化ということが一番重要視しなければならぬ問題だと考えております。北鮮は韓国との間に今まだ交戦状態にあるのでありますが、たといさような状態にあっても、日本としていろいろなことについて話し合いをしなければならぬ問題があり得ると思います。抑留者の引き揚げ等はその最も大きな問題だと思っております。しかし韓国との国交の調整ということを犠牲にして、北鮮との関係を進めるということは、日本の全局の利害上決してとるべき方法ではないと考えております。でき得ることは、またやらなければならぬことは、やって差しつかえのないことはやることがいいと思いますが、しかし全局の問題を申し上げれば、さように考えて処置しておる次第でございます。
○高津委員 それでは次の質問に移りますが、金日成元帥や南日外相は、日本に在留しておる朝鮮人が病気した場合は、異国にあってさぞ困るであろう、病人はわれわれは喜んで引き取りたいと思う、また日本の産業機構で収容し切れない失業者がたくさんあり、朝鮮人でも働く意思があり、働く技術や体力があっても就職に困る者がある、そういう者があればわが政府は喜んでこれを引き取りたい、なお日本の大学の門は狭いと聞くのであるが、国に帰って学習をしたいという者があれば、わが国では引き取りたい、こういう重大な発言をわれわれに対していたしたのであります。ある日本の政府機関のだれかは、それは人的資源を提供することになるから、そんなことは考えられないというような驚くべき発言をしたそうでありますが、そういう意向であるかどうか。われわれは、李承晩にそんなに遠慮した外交をやらないでかまわない、われわれは武断的な外交を李承晩に対してはちっとも考えていないが、北鮮がそういうのであれば、そんなのは喜んで帰ってもらうように便宜をはかった方がいいのではないか、こう考えるのでありますが、重光外務大臣はどうお考えですか。
○重光国務大臣 外国人が日本から退出をしたいということは、その自由意思にまかしております。退出したい外国人は、自分の行きたい所に退出して差しつかえない、こう考えております。
○高津委員 今の御発言は、私は大きな発言で、非常に喜んでおりますが、それらの具体的な問題については、個人的に外務大臣にいろいろ御相談をする機会もあろうと思います。 それから金日成首相は、日本におる留学生で学資に困る者があろうと思う、あなた方でちゃんと道をつけて下されば、わが政府はそれらに学資金を送りたいと思うが、何か方法が考えられぬものであろうか、何かそれを革命の軍資金でも送るようにとられたりしては困りますから、きっちりした法人なら法人を作ってもらえれば送る用意がある、こういうことも言ったのでありますが、これに対する外務省、あなたの見解はどうでしょうか。
○重光国務大臣 国交のない共産地域から日本内地に送金をするということがどういう手続であるかということはちょっと私も今心得ておりません。学資金を政府が出す、こういうことでございましょうが、そういう点は十分検討いたしまして、手続等を調査しなければ私は申し上げるわけに参りません。
○高津委員 隣に兄貴の国中国があるので、兄貴に頼んで中国からロンドンを経由すれば幾らでも送る方法があろうと私は思います。 それでは次に移りますが、金日成は、李承晩ラインなんというものはまことに不都合なものであって、公海の漁労ということは国際法の認める当然の権利である、こういう問題を片づけるために近傍の関係国がみな集まって協議を開いて、そして李承晩ラインというようなものは除去すべきものである、こういう耳寄りな、微笑的な、しかし責任のある言葉を私たちは聞いてきたのであります。これに対する外務大臣のお考えはいかがでしょうか。
○重光国務大臣 私も東亜方面の情勢が非常に緩和して、そしてさような問題等を国際会議に取り上げ得るような情勢になることを希望いたします。さような時期の少しでも早く来ることを念願して努力をいたしておるわけでございます。
○高津委員 この答弁も私は満足でありますが、さきの韓国との外交を犠牲にして、そうしていわゆる北の朝鮮との貿易を、あるいは国交の調整の問題をというようなことは考えられないというお話でありましたが、きのう友人と、今政治の世界において何が一番緊急であろうかといって、君、十数えてみないかというから、私は地方財政の赤字などから始まってずっと数えたら、その十の中に五つあなたの所管事項が入っておるのです。日ソ交渉、日比賠償、李ライン、国連加入、ココムの緩和、これは実に外務大臣は非常に忙しかろうと思う。しかしどうも力に比べて外務大臣個人でなく、外務省全体に対して荷が重過ぎるようにも見えるのです。ではあるが、こっちが大きいから、こっちが小さい。小さいけれども、国のためには、また将来を考えると、その小さいものを小さいように扱わないで、機構々々においた、その機構の中でやはり軽い問題を大きく扱ってもらいたい。そこでは一生懸命にやる部署がなければならぬ。大いに緊張してこの際北との問題をも研究し、向うが幸い手を伸べてきておるのでありますから、南に遠慮しないで、いろいろな問題を考えて手を打っていただきたい、こういう希望を申し上げて本日の質問を終ります。
○植原委員長 菊池義郎君。
○菊池委員 まず外務大臣にお伺いしたいのでありますが、過般われわれの代議士会でもって、地方財政の赤字を埋めるために賠償関係の方からも金を捻出するということが発表されました。それは重光先生多分御承知だろうと思うのでありますが、フィリピンの賠償が五億ドルの資本財、二億五千万っドルの現金、それに対しまして役務賠償がわずか三千万ドル、どうしてもわれわれは納得ができないのでございます。 〔委員長退席、須磨委員長代理着席〕 サンフランシスコ条約にはフィリピンは加盟していないということをおっしゃいますけれども、この平和条約を離れてフィリピンが日本に対して賠償を要求する権利もなし、またこの条約を無視して日本がフィリピンに賠償を払うという義務もないのでありますから、われわれはあくまでもこの平和条約をもとにしてこの賠償をきめなければならぬ。しこうしてわれわれはフィリピンに対しまして、どこまでも役務賠償中心主義をもって臨む権利があり、また彼らもこれに従う義務があると思うのであります。これを確認せられて、もってこれを一つやり直してもらいたい、切りかえてもらいたい、これがわれわれの切なる念願でございますが、どういうお考えでございましょうか。
○重光国務大臣 フィリピンとの賠償交渉は、相当長い間続けて参っておるわけでございまして、この問題をすべて御破算にしてやり直せということは、私は取り扱いかねるのでございます。
○菊池委員 この役務をもって賠償に充てるということについては、アメリカがなみなみならぬ骨折りをしているのです。そのアメリカの好意的な骨折りを無視するということは、わが日本といたしましてもアメリカに報いるゆえんでもないと思うのでございますが、どうしても三千万ドル、こういったような考え方を変えることはできないでありましょうか。あまりに少な過ぎると私は考えております。
○重光国務大臣 今フィリピンに対する賠償交渉の現段階におきましては、全部の問題がまだ固まっているわけではございません。そこでこれからだんだんと交渉をいたしまして固めていきたい、こう考えているようなわけでありまして、御意見のあるところは伺っておきますが、幸いにしてすべて結論に達するまでは、私は交渉の内容はここで御披露しない方がよかろうと思います。
○菊池委員 もし八億ドルなんというような、いかなる形にもせよ、こういう膨大な賠償をきめるとなりますと——よしんば八億ドルが七億ドルになりましても、六億ドルになりましてもまだ高いとわれわれは考えているが、インドネシアも右にならう。ビルマも増額を要求するでありましょう。ラオス、カンボジャ、ヴェトナム、これまた相当多額を要求するでありましょう。そうなりますと日本の財政の破綻を来たすわけでありますから、十分に御考慮を願いたいと思うのであります。 さらに韓国がああいう暴虐非道な声明をする、これを米国が黙認するということは、はなはだ不都合であろうと思う。自分の作った国である韓国がああいうことをやっている。それをアメリカが見ないふりをしているというのははなはだ不都合である。日本としては米国に対して強硬に折衝すべきであろうと思うのでありますが、その折衝の結果はどういうふうになっておりますか、お伺いしたいと思うのであります。
○重光国務大臣 日韓両国の関係について、米国が重大な利害関係を持っておることは争うべからざることでございます。そこでアメリカは非常に注意をしております。そうして絶えず日韓関係の正常化ということが少しでもでき得るように、いろいろと尽力してくれておることも事実でございます。私どもといたしましては、絶えずその点も連絡をいたしております。幸いに日本側の態度については十分理解を持っておるのでございますから、アメリカ側の直接間接のいろいろなあっせん努力ということも期待していいかと考えております。
○菊池委員 では防衛庁長官にお伺いしたいと思うのでありますが、何しろ年額二百億円に上るところの漁場を放棄するということは、まことに残念なことであります。これはどうしても守らなければならぬ。ただ二百億なんという、そういう物質的な問題ばかりでございません。これが退嬰萎縮しております日本国民の思想に及ぼす影響が、いかに重大であるかということをわれわれは考えなければならぬ。われわれは欧州を回って参りましたが、日本人の考えた日本と、外国人の考えた日本とは全然違っている。外国人は何といっても日本人は中国人などよりは、はるかに高く買って、そうして日本人を尊敬し、日本人をおそれているのであります。そういうところに持ってきて、あまりに日本の国民は今日敗戦のために虚心状態になり、だらけ切っている。その国民を元気づけるがため、李ラインにおけるところの日本の漁船をどうしても保護せんければならぬ。向うが李ラインなんか設けるなら、こっちも鳩山ラインなり、あるいは重光ラインなりを設けて、そうして艦艇をもって守って漁獲に当らすのが当然であると思うが、これに対する防衛庁長官の決意をお伺いしたい。また戦闘力においても決して日本は劣っておらぬ。艦艇数から申しましても、飛行機の数から申しましても、決して彼らに劣るものではありません。彼らに優越せるところの力を持っていながら、自分たちの立場は萎縮してしまって彼らのじゅうりんにまかせることは、日本の国際的の信用を失墜するゆえんである。日ソ交渉もこういうところから彼らになめられているのじゃないかと思う。われわれは少くとも強硬なる態度をもって、日本の威信を保たなければならぬと思うのでありますが、防衛庁長官の御決意をお伺いしたいと思います。
○船田国務大臣 日韓の関係につきましては、ただいま菊池委員のおっしゃられた通り、私たちもまことに遺憾に存じます。しかし日韓関係は現在外交折衝の段階でありましてわが国の漁船の出漁を保護するために、実力を行使するというようなことは、現在においては考えておりません。私は十分事態の推移を注視いたしておりまして、適切なる措置を講じて参りたい、かように考えております。
○菊池委員 それは二日や三日前くらいのことではございません。何年か前からの事態であります。いつまでも事態を静視するなどという風見カラスのような態度でもって、どうして日本の威信を維持することができるか。すべからく断固たる決意をもって、これに臨むべきであると思います。先ほど大橋委員も私に打ち明けておる。あそこでもって戦わなければだめだと言っている。それを言いたかったのに言えない。私はこれを言えるのです。何も遠慮することはない。そうすれば、初めて国民の士気を高揚することもできる。また日本の対外的の威信を保つこともできるであろうと思う。何も戦えというわけではない。向うがこちらに対して発砲するならば、こちらもそれに対応して防御するのは当然である。正当な防衛であると考えております。何ゆえに艦艇をもって守らぬのであるか。そのわけをもう一ぺんお伺いしたい。艦艇をもって守って出漁させるべきである。国民の精神に及ぼす影響は重大であると考えております。
○船田国務大臣 この問題につきましては、先ほど来外務大臣がお答えしておる通りの事情でありまして、政府としては、その方針によってできるだけすみやかに日韓会談を開いて、そして韓国の誤解しておるものがあればその誤解を解き、できるだけ円満に妥結するように進めていきたい、かように考えておる次第であります。
○須磨委員長代理 森島守人君。
○森島委員 私は、日ソ交渉について二、三点お伺いしたいと思います。政府はこれまで日ソ交渉に関する方針を具体的に明確にしたことはなかったと思います。重光さんや、鳩山さんからは随時国会で説明がございましたが、具体的な方針は発表していません。ところが、十一月十五日、保守合同後の新党におきまして、緊急政策の名のもとに日ソ国交の合理的調整というものを発表しております。政府はこの方針を遂行される決意であるかどうか。この点を第一にお伺いしたいと思います。
○重光国務大臣 自由民主党結成のときに、政策問題、外交問題についてともに決定があったことを、私は承知いたしております。その決定は、私どもが従来交渉しておった方針に含まれておる、こういうふうに私は思うので、その決定は従来の交渉方針によって進むことに少しも反していない、こう考えております。
○森島委員 もっと明確に御答弁を願いたいと思うのですが、この方針を支持し、これに従ってやるという御意向かどうかを、はっきり一言でお答え願いたい。
○重光国務大臣 私は政府の方針によってやります。
○森島委員 それでは、私は党の方針に準拠して政府がやられるものという了解のもとに質問を進めます。私はこの方針を見ましたときには、保守合同を急ぐために、従来日ソ交渉の開始自身に反対している吉田さんやその一派の人々の意見を取り入れているものと認めているのでございます。 第二に、この方針で行きますと、東条さんのようなやり方なら別ですが、外交交渉は元来ギヴ・アンド・テイクであります。このことは練達なる外相の特に御承知のことと思うのでございますが、私はこの方針で行きますれば、早晩壁にぶつかることは当然だろうと観察しているのでございます。政府としてはあくまでこの方針に準拠し、この方針を遂行することに御熱意があるかないか、決裂してもかまわぬという御決心であるかどうかを伺いたいと存じます。
○重光国務大臣 今申し上げました通りに、政府の決定している方針によって進んで参ります。党の決定もそれに含まれていると私は解釈していると申し上げました。しかしそうしていくから直ちに決裂するものだとは私は考えません。あくまでこのわが方の主張は貫徹をしたいとは思っております。しかしそれならばすぐ決裂するのだという結論を今日つけることは、私は何人も早計じゃないかと考えます。
○森島委員 私はこの方針が決定されましたときには、民主党と自由党との間において思想の統一ができていなかった妥協の産物だと見ているのでございまして、この観点からいたしますと、たとえば南千島の問題等のごときは、重光さんがアメリカへ行っている留守中に、外務の事務当局が作った案を谷君が鳩山君のところへ行って判をもらって出したというようないきさつもございまして、必ずしも私は外務大臣が全幅的に支持しているかいないかを疑うのであります。しかし、この点について御質問しましても、これは意見の相違ということになりましょうから、私はこれ以上追及することを差し控えます。 個々の問題についてお伺いしたいのは、第一に抑留邦人を即時完全に帰還せしめるという項目がございます。抑留邦人という観念のもとにいかなる人々を想定しておられるか、その点を伺いたい。
○重光国務大臣 ソ連に今日まで抑留されておる全部の、まだ生存しておる日本人のことをいいます。
○森島委員 ついでに伺いたいのですが、これでもってみますと、戦犯というものを政府は認めておらないと思うのですが、この点はいかがですか。
○重光国務大臣 これは党のなにでございますが、私どもが考えてみても、戦犯ということは私どもは認めておらぬのであります。しかし、先方が戦犯としてこれを認めてやることは、これはどうすることもできません。しかし、この戦争において初めて戦犯問題が起ってきたわけでありますが、日本は敗れたからそういうことになったのでありますけれども、戦犯という観念は日本としては認めておらぬ、また認めたくない、こういう気持でございます。
○森島委員 その点は連合国全体に対してもソ連に対しても同一でございましょうか。この点を伺います。
○重光国務大臣 私は同様に考えております。
○森島委員 それでは日本に極東軍事裁判所というものが設けられまして幾多の戦犯がさばかれました。この事実はお認めになるかならないか、この点を伺いたいと思います。
○重光国務大臣 事実はその通りであります。
○森島委員 ソ連に対しまして戦犯を認めぬという根拠を一つお示し願いたいと思います。
○重光国務大臣 私は戦犯というものは戦争に勝った者が一方的にこしらえたものだ、こう思っております。
○森島委員 私は松本全権は非常に賢明な人ですから、おそらくソ連との交渉に当っては抑留されておる人とかいう言葉で交渉されると思う。しかしもし戦犯を認めぬという態度を政府がはっきり出されれば、これは概念がいいとか悪いとかいう問題は別としまして、実際問題といたしましては、私は交渉が壁にぶつかると思う。ソ連では現に戦犯千何百何十名、こう言っておりますので、戦犯は認めるとか認めぬという議論をやるといたしますと、私はいたずらに法理論的な応酬をやって、いつまでたっても決着点には到達しないと思う。私はこの点において政府が現実の事実としてソ連が戦犯と言っておるのですから、率直にお認めになった方がいいのじゃないか、こう思いますが、御所見はいかがでありますか。
○重光国務大臣 私の今答弁申し上げておるのも概念の問題でございます。戦勝国がこれをどう言おうと、それを争おうというわけじゃございません。しかし概念の問題であっても、私は日本人として日本的に考えてさしつかえないと思っております。相手方の概念をすべてのまなければならぬということはないと私は思います。実際問題が解決すればいいのでありますから、私はそう考えております。
○森島委員 今の御説明で私は幾らか安堵したのでございますが、次いで私は数字の問題に移りたいのですが、六月の十七日に園田政務次官が引揚促進委員会でございますか、これにおいてソ連地区よりの未帰還者は一万二千六百四十二名だということを発表されました。この内訳は省きまして、私はこの中に政府が状況の不明者としてあげている者が一万名以上ございます。ところが十一月一日に外務省はロンドンにおる高橋全権代理に対して百八十五名の人々について原籍地、氏名、性別、年令等を特に記載しまして生存の有無の調査を頼んでおります。この事実から見ますと、一万一千以上にわたる人々の中に、相当確実なる資料に基かぬ人がおるのじゃないか、政府としては吉田内閣のときは三十一万からの人がおると言っておりましたが、そのうちに三十万は消えてしまった。政府が一万何千という人々を発表しておるのについては、果していかなる正確なる資料に基いてこの数字を御発表になったのか、この点を伺いたいのであります。
○重光国務大臣 これは人命に関することでございますから、非常に注意をし正確にやらなければなりません。そこでだんだん取扱いぶりを私は聞いてみたのでございます。これは戦争が済むとあらゆる資料をもって特別の部局をこしらえて、そうして調査をしたのでございます。こちらの調査と向うの調査の食い違いがあるのは、これは戦争開始後の状況から見て、またやむを得ない状況でございます。そこでこちらはどういう資料に基いてやったかというと、本人から手紙が来たとかいろいろな実証をもって調べたのでございます。しかし一年前に手紙をよこした人がまたなくなったりしているし、これはあり得ることでございますから、正確な資料を通じて調べなければなりません。そこで今その食い違いが一万名以上もあるわけでありますが、しかしこれは食い違いがあるからそのままそれでは向うの数字通りだというわけにも参らぬ、これはあくまで一つ納得のいくように調べてもらいたいのです。だから資料の確実なもの三百八十五名はいつ何日にどういう手紙が来たとかいう資料を添えてソ連側に調査を頼んだのです。私はこれはやらなければならぬ私の義務だと思います。そこでロンドンの交渉は今事実中絶はいたしておりますけれども、まだ連絡はあるのでございます。理論上からいえば継続しておる建前なのです。そこでロンドンにこれを調査をしてもらいたいということを申し出たのでございます。先方もそれはそういうことなら調査をしようと言ってくれたのであります。私はこれは非常にありがたい。ソ連の全権団のその態度を私は実は多としておるのであります。そういう工合にして調べ上げてもらった上で、ぎりぎりこういうことだ、この点は調べがつかないのだというようなふうにだんだんなってくれば、これは納得のいく数字に帰着すると私は思っております。この問題についてこういう態度をとってもらって、そうしてこの問題が一番双方の感情を刺激するのでありますから、双方の感情のやわらぐように導いていきたい、こっちもそうであるし向うもそうしてもらいたい、こういうふうに考えておる次第であります。
○森島委員 三百八十五名についておとりになった御措置は、まことに私は適切であったと思います。私はこの措置をなぜもっと早く外務省はおとりにならなかったか、こういう点を遺憾とするものでございますが、時間もありませんので、質問はまた次会に延ばすことにいたしまして、状況不明者として一万一千名くらいの違いができております。これはいかなる資料によって状況が不明だと御判断になったのか、この点を伺いたいと思います。
○重光国務大臣 この点は政府委員から……。
○森島委員 政府委員からでけっこうであります。
○中川(融)政府委員 状況不明者の数でありますが、これは厚生省において終戦以後毎年引き揚げて来る人たち、また現地からの家族に対する通信、これをしさいにチェックいたしまして、いやしくもそれらの報告の中でこういう人にどこそこで会ったという事実が報告されますと、それを記録によりましてそういうものを集計いたしまして、大体それは今現在一万一千名必ず生きているという証拠にはならないのでありますが、かつてここ数年の間にそれらの人々がソ連地域のどこかにいたということを現認した人がおり、あるいはその人から通信が家族にあるというようなものを集めました数が一万一千名であります。従ってこの人たちについては的確な氏名がみなわかっているのであります。その氏名に基いて先方に調査を要求しておる、こういう意味でございます。
○森島委員 非常に矛盾がある、三百八十五名については家族あての手紙に基いて性別・本籍地・氏名・年令等の資料を添えて調査を要求したということになっております。しかし今お話の通りだと、一万名についても家族あてに手紙が来ているというお話もありますから全部とは申されぬでしょう、しかしその食い違いがどうして出たか、私の納得のいくように御説明を願いたい。
○中川(融)政府委員 今度先方から氏名に添えまして通知のありましたリスト、これがわれわれのところで生存が確かである、それはごく最近の資料に基きまして生存しておるということがわかっている者、これが約千三百名から四百名おるわけでありますが、偶然先方の提示いたしました数字がそれと合っておるわけであります。ところが氏名をわれわれの持っております表と比べてみますと、三百何十名かの相違が出てきておるのであります。それ以外の約九百名の氏名は合致しておるわけでありまして、生存が間違いなく、現在おると思われるわれわれの資料と合っておりますが、合っていない者が三百七十五名ですか、あったわけでありまして、つまりわれわれの方では生死不明者、消息不明者というグループの中に入れております一万一千名の中から約三百七十五名というものが出てきて、われわれが生存が確かであると思っておる数の者の中から三百何十名というものの名前がないのでありまして、ここに不思議な点がある、その三百七十幾名というものは必ず生きておるに違いないから、これはごく最近の資料に基くものだから特に調べてもらいたい、こういう申し入れをしたのが今の数になっておるわけであります。
○森島委員 非常にお手数かもしれませんが、国民のひとしく関心を持っておる重大問題でありますから、政府当局において一万何千名というのについて資料と一緒に人名のリストを一つ提示していただきたいと思います。
○須磨委員長代理 次会は公報をもってお知らせいたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後零時五十二分散会