外務委員会 第2号
- 発言数
- 63 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1955/12/03
会議録
○植原委員長 これより会議を開きます。 国際情勢等に関する件について政府当局に質疑を行うことといたします。質疑を許します。菊池義郎君。
○菊池委員 政務次官にお伺いいたしますが、韓国のああしたような暴虐非道な声明に対しまして、われわれは黙っておるわけにはいかない。しかも年額二百億に上るところの漁場を放棄することはできぬのであります。韓国はもともとアメリカの作り上げた国家で、しかもあんなことを米国が黙って見ておるということは、おそらくアメリカはこれを黙視して、そうして日本の敵気心をあおり、しこうして日本の再軍備を促進させるという考えからして不干渉の態度に出ておるのではないかと思うのでありますが、外務当局といたしましては、あの韓国の態度に対しまして、米国に対してどういう折衝をしておられますか、その点をお伺いいたしたいと思います。
○森下政府委員 十一月十七日に韓国側をこちらに招致いたしまして、ああいう重大な声明はほんとうにどういうことであるのか、その真意をただしてその返事を求めておりますことは申し上げてあるのでありますが、なおまだ返事は参りません。こちらは強くその返事を求めておる次第でありますが、まだこちらに来ておりません。またアメリカ側に対しましても、これに対していろいろ相談はいたしておりますが、この返事によりましてまた話を進めることと思うのでありますが、アメリカにはいまだここで申し上げられることはやっておりません。
○菊池委員 韓国の日本に対する不法行為は今までたび重なっておるのでございます。それで日本の外務当局といたしましては、当然にアメリカに対しましてこれまで何回か折衝せられたはずであり、また折衝しなければならぬと思うのでありますが、条約局長でもどなたでもけっこうであります。
○中川(融)政府委員 日韓問題、ことに李ライン問題につきましては、米国が日韓双方に対する友好国といたしまして、いわば共通の利害関係を双方に持っているわけであります。米国に対して十分に真相を知らせまして、米国のいろいろ好意的なあっせん措置を依頼するということは、ある意味で適切な措置であると従前から考えております。日韓問題につきましては常時米国と緊密な連絡をとって、できるだけの協力を得たいというふうに考えて措置いたしております。
○菊池委員 米国とどういう折衝をしておられるかわからないのでありますが、韓国の態度は依然として全然変っておらない。米国も全くわれ関せずえんの態度をとって拱手傍観しておるというありさまでありますが、これでは韓国の暴虐非道がどこまで続くかわからぬ。なまぬるい折衝ではだめだと思うのでありますが、今日のアメリカの態度はどういうものであるかお伺いしたい。
○中川(融)政府委員 日韓問題につきましての米国の態度、これはもちろん米国は日韓双方の友好国でございますから、どちらかをひいきするというような態度は、なかなか米国としてもむずかしいかと思いますが、日本の数々の問題に関する日本の態度及びこれに処する日本側の考え方というものにつきましては、米国も十分な理解を持っておるとわれわれは信じております。また米国は日本側の意のあるところにつきましては、十分韓国側にも説明しておる、かようにわれわれは考えております。
○菊池委員 李承晩はアメリカで国際法を今まで終生かかって一生懸命勉強して博士をとった。そうして今日彼が言うのには、自分は一生国際法を研究したが、結局国際法というものはないものであるということがわかったと言っておる男なのです。国際法を無視しておる男なのです。そういう頑迷不霊な男でありますから、並み大ていのことでは彼の態度を変えることはできぬと思う。それで米国に対しましても強硬に申し入れなければならぬと思うのでありますが、ただいまのアジア局長のそういうおざなりの答弁は聞きたくない。もうちょっとはっきりした答弁をお伺いしたいと思うのです。
○中川(融)政府委員 日本側の考え方につきましては、米国政府に十分強く申し入れをいたしまして、米国側の同調を得ておる次第でございます。
○菊池委員 日本といたしましては漁場を守るために、軍艦で漁船を護衛して漁獲に当らせるという方法もあるのでありますが、外務省としてはそういうことについてお考えございませんかどうですか。これは日本一般の漁業者がみな唱えておることなのであります。
○中川(融)政府委員 現在の外務省を含めましての政府の考え方は、李ラインに出漁いたします漁船に対しましては、海上保安庁の警備船を配置いたしまして、できるだけの保護措置を講ずるということが政府の考え方であります。そのほかに水産庁の監視船も出動いたしまして保護措置をとっておりますが、防衛庁に属します海上防衛隊の艦艇を派遣することは、ただいま考えていないのでございます。
○松本(七)委員 ちょっと例の李承晩ラインの問題で関連してお尋ねしますが、韓国側がああいう声明をしてから、日本政府が韓国代表部にいろいろ申し入れしたりしておるようですが、果してその韓国の代表部というものが、どれだけ韓国政府に日本政府の申し入れなり意向を伝えておるか、また一体この代表部というものがどれだけ韓国政府の正式の権限をゆだねられておるのか。きのうの本会議における外務大臣の報告の中にも、韓国との正式な国交を早く結びたい、こういう言葉もあったわけですが、現在の韓国代表部の地位というものは一体どういうものか、非常に不明瞭なものがある、そこのところを少し詳しく説明していただきたい。
○中川(融)政府委員 日本と韓国との間にはまだ正式条約関係はないのでありまして、従って条約に基きましての外交使節の交換ということはまだ実現していないのであります。その意味で正式国交がないという表現が当てはまると思うのでありますが、事実上の問題といたしまして、先方からの駐日代表部というものを占領時代から引き続いて−占領中は連合軍総司令部に対する代表部でありましたが、平和条約発効と同時に、これを日本政府に対していろいろの問題を折衝し得る、連絡に当り得る機関として、事実上それが設置存続されることを日本政府は認めたのであります。従って事実上の機関ではありますが、実際上は普通ほかの国の場合であるならば大使館、公使館あるいは総領事館等に相当する仕事をなすことを認めておる、かような状態にあるのであります。
○松本(七)委員 それで日本政府としてはこの韓国代表部を通じて十分政府の意向が韓国側に伝えられており、また韓国政府の意向が代表部を通じて伝えられておりますか。
○中川(融)政府委員 従来の経験によりますと、通例ほかの国の大使館、公使館、総領事館等がしておると同じ職能を韓国代表部は果しておる、かように考えております。従ってこちらから韓国政府に対する申し入れを東京の韓国代表部に伝えますれば、韓国代表部はこれを本国政府に伝達いたしておりますし、また本国政府の意向というものも、正式の経路といたしましては在京韓国代表部を通じて日本の政府に伝えられておるのが実情でございます。
○山本(利)委員 関連してちょっとお尋ねいたします。今の韓国代表部が韓国の意向を伝えているということでありますが、日本の代表部というものを韓国に設置することは日本側において必要を認めていないのか、それともこちらが希望しても向うがそれを受け入れていないのか、向うが受け入れないとすれば、それほどういう理由によるのか、その点をちょっと承わりたいと思います。
○中川(融)政府委員 日韓間に代表部を設置いたします場合、韓国側の代表部が日本に置かれれば、当然日本の代表部が韓国に置かれてしかるべきものであるとわれわれは考えておるのであります。従って韓国側に対しましては随時日本の代表部を韓国に設置したいということを申し出ておるのでありますが、韓国側は韓国における状態はいまだ日本の代表部の設置を認めるだけに熟していない、いろいろの意味合いがあるようでありますが、一つの理由といたしましては、治安その他もまだどうも日本の代表部を認めるだけに満足な状態にないと思うというようなことも、理屈の一つにしておるのでありますが、日本の申し入れを断わっておるのであります。従って日本側としては当然韓国に代表部を設置するいわば権利は持っておるのでありますが、韓国側はまだこれに同意しない、こういう状態であります。
○山本(利)委員 今のことをお尋ねいたしましたのは、今は関連質問でお許しをいただいたので差し控えますが、実際は日韓漁業対策の問題について、まことに国内の漁民あるいは留守家族の者その他が憤激しておる状態にある、その意向を真に伝えていないようにわれわれは思う。だから日本の代表部が向うにあれば強力にそのことを伝えるのでありますけれども、今のような理由で向うは受け付けていない。しかも日本におけるところの韓国代表部というものが、国内におけるわれわれの現状あるいは実情というものを実際に伝えていないように思う。先ほどアジア局長からは、韓国の代表部は各国の大公使のやっておるような役目をちゃんとしておるというふうに言われておるけれども、われわれは韓国の代表部が実際のわれわれ国民の感情、実情というものを伝えていないように考える。場合によってはそういう一方的な勝手なことだけを向うから伝えてくるような代表部、しかもわれわれの実際を伝えないような韓国の代表部は帰ってもらうのが当然ではないか。そのくらいな強い意気込みでいってこそ対等な外交になるのであって、私は今の日本の外交はまるで韓国の李承晩政府からは無視せられておるというような現状にあるということを、全国民ことに漁業関係の者は非常に憂えておるのでありますから、この問題についてはいろいろな各材料をそろえてまたの機会に御質問いたしますけれども、この代表部交換ということと韓国の日本における代表部の実際の活動状況ということについて、もう一度当局のお考えをいただきたい。
○中川(融)政府委員 御指摘のように韓国が一方的に日本に代表部設置を認められておりながら、日本側のそれに相応する代表部の先方における設置をまだ認めていないということは、われわれも非常に遺憾に思っておるのであります。これは当然日本としては要求する権利があり、韓国側としても当然これに従うべきであるということは、われわれも信じておるのでありますが、遺憾ながら先ほどのような事情で韓国側がまだこれに同意していないのであります。またなお日本にある韓国代表部が、これは政府の申し入れにつきましては間違いなく先方の政府に伝えておりますが、日本国民からのいろいろの要望というものが、韓国代表部を通じて果して先方の政府にそのまま伝わっておるかどうかという点につきましては、私どもも確たる証拠は持っていないのであります。これはそれ以外の国の大公使館につきましても、そこまで調べるわけにはいかないのでありまして、これは実際問題といたしまして、果してどの程度まで伝えておるか、その点についての証拠は今私どもも持っておりませんが、しかし少くとも何らかの報告はこれは常識上からすれば当然しておるべきである、かように考えております。
○菊池委員 政務次官にお伺いいたしますが、フィリピンの賠償が多過ぎるということをわれわれはかねてから主張して参っております。ことに資本財が五億五千万なんということは、これはもうわれわれが最初から想像もしておらなかったことであります。サンフランシスコ条約が締結せられるときに、南方諸国の賠償は全部を合せて十億ドル、しかもこれは役務によってやるという見通しであったのでございます。それがフィリピンだけが、たといいかなる形にせよ八億ドルということになりますと、インドネシアがこれにならう、それからビルマもさらに増額を要求するでありましょう。ラオス、カンボジアあるいはヴェトナム、そういうところも一斉に右へならいをして、膨大な賠償を要求するでありましょう。そうすれば日本の財政は破綻に陥るでありましょう。ことにフィリピンの賠償の中に現金賠償なども含んでおるということは、全くサンフランシスコ条約の本旨に反するものであると思うのでございます。サンフランシスコ条約にフィリピンが入っていないからといって、何もこれを、われわれはその条約を守らなければならぬということはないということを外務大臣は言っておられますが、もちろん外交は生き物でありますから、われわれはこれを厳守する必要はもちろんないと考えております。けれども、現金賠償を含むとか、資本財をあれほどたくさん出すとかいうことになりますと、今申しましたように他の南方諸国の賠償に非常な影響を及ぼすのでありまして、こういう点をわれわれは憂えておるのであります。それで役務賠償をもっとふやして、そうして資本財を減す、現金賠償を取りやめるというように外務当局で何とか折衝できないものか、全然その見込みもないのかどうか、そういう点についての見通しを一つお伺いしたいと思います。
○森下政府委員 日比賠償につきましては目下鋭意交渉中でございまして、ただいまのようなお話を十分考慮に入れまして今進めております。御承知のようにこの役務賠償ということはきわめて重大なことでございまして、これを広範囲に広げていけるように十分考慮いたしたいと思います。
○菊池委員 この役務賠償について、たとえば日本の軍閥が東亜圏をすっかり取ったつもりで、そこへお医者さん、薬剤師を送るために医科大学、薬科大学を全国にたくさん作りました。その結果、今日本にお医者さん、薬剤師さんがあふれて生活に困っております。そこでこのお医者さん、薬剤師さんをフィリピンを初めほかの地域にも送ってもらいたい、それから農業労働者をどしどし送って、そうして向うの農業の開発をやらせる、あるいは漁業労働者をたくさん向うへやりまして、向うの漁業に協力させるというやり方、こういう点を十二分に御考慮願いたいと思いますが、政府といたしましてはどういう構想を持っておられますか、お伺いしたいと思います。
○中川(融)政府委員 ただいま御質問のありましたような日本のお医者さんであるとか、さらに農業関係の人であるとか、日本の人がどしどし南方諸国に出まして、ある意味で日本人の役務によるサービスを提供することによって、これらの諸国との国交改善に資するということは、われわれ政府といたしましてももちろん賛成でありますが、何と申しましても関係国のそれぞれの……(菊池委員「役務賠償に充てたいのだ。」と呼ぶ)関係国のいろいろな事情がございますので、必ずしも一様にはいかないと思うのであります。日本側からこれをやりたい、あれをやりたいということを申しましても、先方が国民感情その他からこれをほしくないという場合もあるのでありまして、これは各国の実情に応じてそれぞれ措置していきたい、かように考えております。従って賠償中の役務としてどのようなものが出るかということにつきましても、国によりましてやはり事情がそれぞれ違うのでありまして、ここらは慎重に検討した上で、できるだけ日本人の役務を多く提供するようにやっていきたいというふうに考えております。
○菊池委員 八億ドルということになりますと、先ほど申しましたようにインドネシア、ビルマ、その他の南方諸国からも膨大な賠償の要求が出てくると思うが、これに対してどのような構想を持っておられますか。
○中川(融)政府委員 すでに御承知のように賠償は、五億五千万ドルというのがいわゆる八億ドル案の内容でございます。従って賠償に相当するものは五億五千万ドルというのがフィリピン側の案であります。これがインドネシアその他にどのような影響を及ぼすかということにつきましては、いろいろ調査、研究はいたしておりますが、これにつきましては影響するともしないとも申し上げる段階ではないと思うのであります。政府といたしましては、国の財政力もありますので、できるだけ少い金額で賠償の問題を解決したいというのが基本的な考え方でございます。
○菊池委員 どうもおざなりの答弁で困るのですが、南方諸国の損害というのは、日本軍の加えた損害はほんのわずかです。米軍の指令によって、日本軍が上陸したらこの進撃を阻止するために橋梁を破壊するとか、あるいは宿泊を妨害するためにホテルを焼けとか、これはみなマッカーサーが命じてやらせた。それはわれわれは戦争が済んだあとから南方諸国を回りまして現地でみな聞いたことでありますが、米軍の指令によって破壊され、その結果生じた損害で、日本軍の加えた損害というのは、ほとんど十のうちの二、三になるかならぬかわからぬようなものです。従って米国のあり余る富力をもってし、あるいはまた今までのフィリピンと米国との関係からいっても、当然にその損害は、米国が九分九厘といいたいが、十分十厘まで補償してやるべきものであるとわれわれは考えておる。この貧弱な日本に負担させるのはとんでもないことだと思う。またそれを引き受ける日本の政府の頭がどうかしていると考えるのでありますが、この点についてどういう考えを持っておられるか。米国が負担したのは、フィリピンの損害の、十三億ドルと向うでは主張しておるそうでありますが、そのうちで米国はわずか五億何千万ドルしか負担しておらぬ。これはまことに不当である、過少であると私は考えております。こういう点について、米国に対しましてどういう折衝をせられたのでありますか、お伺いしたい。
○中川(融)政府委員 フィリピンその他南方諸国に対する日本の賠償の義務等につきましては、これは一つのひな形といたしまして、サンフランシスコ条約というものがありまして、これによって日本はとにかく賠償支払いの交渉をやるという義務を負っておるあけであります。従いまして、日本といたしましてはもちろん賠償を払わないで済めばそれに越したことはないのでありますが、これらの国々との間の国交を回復するためには、どうしてもある程度の賠償を払いまして、それによって全然新たなスタート・ポイントから国交再開ということを始めるということにせざるを得ないのであります。もちろん先般の戦争によるこれら地域の損害は、日本軍の行為による損害のみではないのでありまして、相手国である米軍の戦闘行為による損害も多いと思うのであります。これにつきましては、しかしながら、米国といたしましては賠償の義務はいかなる条約によっても負っていないのであります。従いまして米国がもしもこれらの国に対して損害を補償するとすれば、全然別個の見地からなされる行為であるということになるのであります。フィリピンにつきましては、御指摘のように、米国が五億二千万ドルに上る補償をしておりますが、これは米比間の条約によりまして、フィリピンの戦争災害をできるだけ補償しようという考えに基きましてなされたのでありまして、従ってこれは日本のように、いわば敗戦に基く善後措置としてするものとは質が違っておるといわざるを得ないのであります。この意味におきまして、日本がアメリカに対して南方諸国の損害を補償するようにという交渉はいたしていないのでありまして、これはまたそれらの国がすることは別といたしまして、日本がこれを提議して交渉するということは、やはり筋が通らないのではないかというふうに考えております。
○菊池委員 八億ドルという膨大な賠償を日本がしょい込むといたしますと、重光大臣はこれを補って余りあるだけの利益があるといったような口吻をいつも漏らしておられるのでありますが、その賠償を日本が払いました暁において、そうして国交が回復した暁において、貿易の点あるいは合弁の事業関係その他についてどういうような、どれくらいの利益があるものですか。そういう点についての意向をちょっと漏らしていただきたいと考えます。
○中川(融)政府委員 フィリピンとの貿易関係は、ただいまのところは日本からフィリピンに対します品物が出ていきますのが、年間大体三千万ドル程度でございまして、これに対しましてフィリピンから日本に輸出いたしますものが、大体五千万ドルか六千万ドル近くになっております。日本からの一に対して先方から二が来ておるという状況でございます。これは日本としてはできるだけこれを平均したようなものにしたいという考えでありますが、日本としてはやはりフィリピンから輸入しなければならないものがどうしてもあるのであります。たとえば鉄鉱石であるとか木材であるとか、フィリピンでなければなかなかいいものが手に入らないところがあるのでありまして、輸入の方をこれ以上削減することはむずかしいのであります。これに対してこれを平均するためには日本からの輸出を増進しなければならないのでありますが、これにつきましては遺憾ながら国交が回復していないために、最恵国待遇を得られないのであります。フィリピン側のいわば一方的な措置によって、いういろ日本からの輸出品が制限を受けているのであります。これが平和条約が結ばれまして国交が開かれれば、当然最恵国待遇が日本にも与えられるわけでありまして、その場合日本からの輸出は相当飛躍的に多くなる。一番多くなるものとしては、たとえば綿製品のようなものでありますが、これらは現在日本の実情からいえば当然持っていくべきものが、先方のいろいろな措置によってこれが入っていないという実情であります。少くとも今の三千万ドルを五千万ドル、六千万ドルにふやすということは、これは決してむずかしいことではない。おそらく一年くらいの間にはそのくらいの量にはなるでありましょう。そうなればすでに現在貿易によってフィリピンには年間三千万ドルのいわば決済、現金を支払っておるわけでありますが、これが現金によらずに物によって支払うことができる。そうすれば日本の外貨事情はその分だけは明らかに改善されるわけであります。 なお、これは通常貿易の点でありますが、今後フィリピンとの国交が再開いたしますれば、いわゆる経済協力という形で日本からの投資と申しますか、経済進出が相当大規模に行われるだろうと思います。そうなれば向うの天然資源を開発いたしまして、それによって日本がより多くのものをさらに輸入する。それに見合うものをさらに日本は輸出するということになり得るのであります。貿易量は現在の状況を基礎にいたしますものよりもより大きくなり得る。これはわれわれ当然予測していいところであると思います。フィリピンとの貿易、投資、経済協力等に基く同国との経済上の緊密関係というものは、飛躍的に増進されるというふうに考えております。
○菊池委員 それでは倭島公使からインドネシアの対日賠償の折衝をしたいというような意向を漏らしておることが新聞に出ておりますが、インドネシアの方はどのくらいの考えを持っておるのですか。外務省に入りました情報がございましたらお知らせ願いたいと思います。向う側が主張しておることを……。
○中川(融)政府委員 インドネシアとの賠償交渉もすでに約三年越しになるのでありますが、その間に先方から正確な数字で幾らを要求するということは、いまだに一ぺんも言ってきていないのであります。いろいろ新聞に出ます情報であるとかあるいは片言隻句的に先方の言う数字はあるのでありますが、これは責任ある数字とは必ずしも見受けられませんので、この際御披露することは差し控えたいと思いますが、現在インドネシア側は何とか日本との賠償問題を現実的な考え方で解決すべきであるというふうになって来ておるのであります。従ってインドネシアとの賠償交渉も、近い機会におきまして相当具体化する可能性がある、かように考えております。しかしながら、一つの障害と申しますか時間のかかる理由といたしましては、インドネシアにおける選挙でございまして、この選挙が本年秋にあったわけでありますが、最初の選挙でありますので、その集計に時間がかかる、また非常に中心から離れた島々におきます選挙は、十一月の終りにやるというようなことで、これもおくれております。従って向うで選挙に基く真の安定政府ができますのは、来年になってからでないとできないのでございまして、このような実情から必ずしもただいますぐ交渉が熟して進み出すという段階ではございませんが、相当これは現実的な段階で、しかも早目に交渉が行われ得る期待を持っていいのじゃないかというふうに考えております。
○植原委員長 岡田春夫君。
○岡田委員 私のきょう御質問したい点は、いわゆる興安丸の事件に関係して特に洪進山君の問題について伺いたいと思いますが、洪進山君以外の四人の人の問題についてもいろいろ伺いたい点はあるのですけれども、新聞紙上において、いわゆる洪進山問題として最近非常に問題になっておりますだけに、当面緊急を要すべき問題でございますので、ぜひともこの際明らかにしておきたいと思います。それに入る前に、この前重光外務大臣にも私は時間の関係であまり詳しいことを伺えなかったわけですが、基本的な問題について一、二伺ったのであります。入管の局長名において、政府側を代表する見解として発表された、いわゆる白書、これによりますと、出入国管理令というものは劈頭においてまず、外国人が帰国する場合においては、自由帰国の場合においても、強制退去の場合においても、帰国先についてはでき得る限り本人の自由意思を尊重する、これが建前になっていると私は考えておりますし、この白書にも劈頭にこの点が書かれてあります。この点は非常に重要な点であります。本人の自由なる意思を尊重するのが出入国管理令の基本的な法律の建前になっておると考えるのだが、この点についてはいかにお考えになりますか、まずこの点からお伺いして参りたいと思います。
○下牧説明員 出入国管理令の建前といたしましては、退去の強制の処分を受けた者を強制送還いたします場合の送還先は、管理令の第五十三条の第二項に規定がございまして、本邦に入国する直前に居住していた国、あるいはその前に居住していたことのある国、あるいは乗ってきた船の出た港のある国、その他出生地というようなことで、強制送還としてはどうにでも帰せる建前になっておるのでございます。従いまして、本人の帰国について本人の意思を尊重するのを建前としておるのは、われわれの運用として当然そうあるべきだというので、こういうふうに運用しておるのでございまして、本人の意思に反して出国せしめて強制送還を実施してはいけないという建前には、法令はなっていないのでございます。
○岡田委員 今の次長の御意見ですが、私はその解釈はこの法律を著しく歪曲したものだと考えておる。この文章をお読みになればわかる通り、五十三条の二項を読んでみますと、「前項の国に送還することができないときは、本人の希望により、」本人の希望によりということが書いてあって、「左に掲げる国のいずれかに送還されるものとする。」いずれかの国にというところで、あなたの今説明された一から六まで、いろいろ具体的な帰国先についての規定があるわけです。この帰国先についての規定は「本人の希望により、」という原則に基いて行われたのであって、本人の意思を無視して勝手に自由なところに帰すという規定は何ら行われておりません。もしあなたのような解釈が正しいものであるとするならば、あなたの上の局長が発表された白書においても、原則であるということが書いてあることを、あなた自身が否定することになる。そればかりじゃなく、この法律の「本人の希望により、」という原則をあなた自身が無視してやっていることになると私は思うのだが、この法律解釈は、私はどうしても納得できません。この点もう一ぺん明らかにしていただきたい。
○下牧説明員 ちょっと説明が足りませんで誤解を招いたと存じますが、本来その者を退去せしめる退去先は、本人の国籍のある国でございます。そこで本人の国籍につきましては、これは華僑登録証その他のものによって、台湾に属するかあるいは中共に属するかということで、われわれは処置しているわけでございます。ただいまの洪進山は台湾の国籍を持っておるのでございまして、そこに送還するのが本来の建前で、それができない場合におきましては、どこへ帰すかわからないときは、本人の希望を尊重して、先ほども申し上げたような地域に送還する、こういうことになっているわけでございます。
○岡田委員 私は具体的な問題を聞いているのじゃないのです。法律解釈を聞いている。本人の希望によりそのところに帰す。しかもあなたはそういう逃げ口上を言われるが、この白書をあなたもお書きになった一人だろう。この中には本人として帰りたいという国に対して、その本国が受け入れることを拒否しているような場合が非常に多くある。特に中国の場合においては、二つの国が現実の問題としてあるために、非常に問題になっている、こういうことを白書の中に書いているじゃありませんか。現実の問題をあなたがお話になるとするならば、そういうことを理由にして台湾に帰すのが建前であるということは成り立たないと私は思う。もしそういうような建前でこういう扱いをされているのだとすれば、この白書自体の根拠もあなたの意見と違います。これは誤まっています。これには台湾に帰すのが建前だという意味を書いているのではありません。前後一条一項においては、中国の場合には台湾政府、ここの文書でいうと、外交上の正規の関係を持っているものと、もう一つは中華政権とはまだ国交回復はしておらないけれども、現実にあるのだという二つの問題で、非常な問題が起っている。それだからこの問題が起ったのだと書いているのです。あなたの御意見をもってするならば、台湾政権に戻すのが建前であって、そうでない関係が起っているから困っているのだ。こういうような具体的な事例をもって今ごまかされようとされたのだが、まず第一段として私が伺いたいのは、本人の自由意思を原則として、本人の希望する国へ帰すというのが、この出入国管理令の建前であるという点がまず第一の点である。それから具体的な問題として、あなたが今お話の点について、もしお触れになりたいというならお触れになられてもけっこうです。
○下牧説明員 御指摘の白書には、この出入国管理令の建前が、本人の希望によってその送還先がきめられるとは書いてございませんで、建前としているというふうに書いてあるわけでございます。それで出入国管理令の建前は、本来その者の属する国、その国籍を持っている国に帰すというのが建前、しかし第二段としまして、本人の希望も参酌しなければならないという第二項の趣旨もございますので、かりに本人が台湾の国籍を持っている場合におきましても、しいて中共に帰国を希望する場台には、運用といたしまして、なるべくその本人の意思を尊重するように運用することを建前としている、こういう趣旨で白書ができているわけでございます。
○岡田委員 法律解釈ばかりやっていたらしょうがないから、具体的に進みましょう。ことしの二月に興安丸で帰った例があるわけですが、この場合のときの取扱いはどうなっておりますか。それから第二の点は、その取り扱った場合に、これは自費出国といういわゆる五十二条の四項に基いた自費出国の方法を通じてこれを行なったものであるかどうか、こういう点について伺いたいと思います。
○下牧説明員 本年二月に興安丸でたしか百二十八名と思いますが、それを送還しようといたしました場合には、あらかじめ本人に中共大陸へ帰国を希望する者は申し出るように、こういうふうに勧奨いたしまして、その希望を募って仮放免いたしたわけでございます。ところがそのうち真実最初の船に乗ったのが三十数名という、非常な失敗をいたしたのでございますが、その場合の出国の形は、御指摘のように自費出国という形をとったのでございます。
○岡田委員 そこで問題が出てくるのですが、第一点としては、その三十何名の八が向うに帰った中に、台湾の国籍を持っている人が、本人の自由意思に基いて中国に帰りたいということで帰った人があるはずです。こういう点から見るならば、建前として国籍のある国に帰すべきであるという原則というものは、台湾と中国との問題に関する限りは、この原則を生かして出されているものではない。あなたの言っている先ほどからの意見の原則になっている台湾に帰すのが建前であるということではないのだということを、具体的に私は証明しているのだと思います。そういう台湾国籍を持っておった人があるかどうかという点が第一点。 第二の点は、あなたは今自費出国だと言われたが、私はこれは自費出国ではないと思う。なぜならば、五十二条の四項をごらんになればおわかりのように、そうして言葉をもって明らかにあなたの言われたように、自費出国というものは、自分でみずから金を出して帰るのだということならば、当然運賃その他の一切がっさいは自分の金によって出されて帰るのでなければならない。ところが興安丸で中国に帰っているという今度の場合は、経費というものは日本政府並びに三団体によって支弁されているのです。しかしその意思と権利は、自由な意思に基いて行われている。従って興安丸によって今度帰る場合も、前の二月に帰された場合にも、これは自費出国と見るべきでもないし、またもちろん強制による出国とも見るべきでもないし、いわゆる中間的な意味を持っている。これはあとに関連するから私はこういう概念をことさら言うのですが、自費出国という完全な形のものでないということだけは、明らかにしておかなければならないと私は思うのです。この点の解釈はいかにお考えになるか。
○下牧説明員 第一点の、さきに送還された中国人で台湾籍を持っていた者は、ただいま詳細を調べておりませんが、中にあったと思います。それから自費出国の形をとりましたのは、本来自費出国と申しますのは、自由な帰国というのとは違いまして、やはり退去強制処分の執行の一形態でございます。ところが強制送還ということで帰されるのでは困る。完全な、日本においてフリーな国民として送還をするようにという申し出がございました。といって、退去強制処分の決定になった者を退去強制に乗せずして帰すわけには参りませんので、いろいろ折衝の結果自費出国ということで放免して、その上で出国せしめる、自費出国の形において出国せしめるということに話し合いがまとまったわけでございます。自費出国と申しましても、本人みずからその金を出す必要はないのでございまして、いわゆる強制送還として送還船によって、日本の仕立てる、あるいは引き取りに行った送還船によって強制送還をするという、その概念の中で、幾分その形がゆるんだという送還方法にすぎないのでございます。
○岡田委員 私はなぜそういうことを言うかというと、白書の中に洪進山を逮捕し、身柄を拘束するに至った理由の一つとして、自費出国の許可も得ずに云々ということを書いてある。ところがこの許可ということは、五十二条の四項によると、許可を出すことができるのであって、許可を出せという義務条項ではありません。許可を出さなくても出してもいいのです。手続の問題としては、許可を出すことができるということになっている。その例として私はなぜ先ほど自費出国の問題を厳密に言ったかというと、興安丸で今年二月に帰す場合においても、許可書なんかを出しておらないはずです。出しておりますか。出さないで自費出国の形において事実上これは帰している。そればかりじゃありません。今隣の警備課長と話し合っているようだが、もっと例をあげましょう。今度の場合においても、現在舞鶴にいる人の中で、十二人自費出国の許可書を出してないのがあるじゃありませんか。こういう十二人の人に対しては許可書を出さないでおいて、洪進山の問題だけは許可書を与えておらないからこれを逮捕したのだという逮捕の理由にしたということに、きわめて不自然な原因があるということを私は言いたい。この点についてもう少し明らかにしていただきたいと思う。
○下牧説明員 前回の送還の場合においても、自費出国の許可の申請書をとっております。それから今度の送還の場合におきましても、十二名に対して許可書を出しておりますが、それはまだ舞鶴において預かっているわけでございます。
○岡田委員 あなたは前段の場合に、申請書をとっておりますと言うが、洪進山君だって申請書は出しておりますよ。興安丸の前のときも、申請書を出しておったが許可書を与えないで帰しているじゃないか、今度の場合は、洪進山は申請書を出しているのに、許可書が出ないからといって、逮捕の要件にしたという理由を私は伺いたい。
○下牧説明員 洪進山の場合には、自費出国の許可も得ずして出国しようとしたということは、一つの密出国をしようとしたという形において、それがいけない、こういう趣旨で述べているわけでございます。法律的な手続といたしましては、洪進山君は当時仮放免中の者でございまして、仮放免の者に対しましては、これは省令によりまして、当然居住地の制限が付せられているわけであります。そういう条件に違反いたしました場合には、仮放免を取り消して退去強制令書の執行をすることができることになっております。ところが当日、たしか十七日だと思いますが、洪進山君が私どもの局に出頭いたしまして、警備課長といろいろ話をしたのでありますが、その際夕刻まで返事を待ってくれということで、われわれはその返事を期待していたのでありますが、調べてみますと、もうすでに荷物をまとめて東京駅に行ったということでございますし、どうもその引揚列車に乗った形勢が濃厚なのでございます。そこでこれは明らかに住居制限の条件に違反したことがはっきりいたしましたので、その仮放免を取り消して退去強制令書の執行として本人を収捕したのでございます。
○岡田委員 問題をどんどん進めましょう。今仮放免取り消しの理由についての御説明がありました。簡単に要約すならば、指定された住居以外に脱出する危険性があったから仮放免の取り消しを行なった、このように解釈してよろしいかどうか。 それから第二点は、先ほども御答弁がなかったのだが、ことしの二月の興安丸において自費出国した人に対して許可書を与えているかどうか、この点についてもう一度伺っておきたいと思います。
○下牧説明員 その点はまだはっきりは調べておりませんが、確かに許可書を与えているはずだと思います。 それから洪進山君の収捕につきましては、住宅制限に違反したという理由によって取り消しをした、こういうことに相なります。
○岡田委員 それじゃ今あなたはわかっているのだけれども政府の立場で言っているのでしょうから、具体的にそうでないという事実を明らかにみんなの前に指摘したいと思います。洪進山君の入国の手続は、これはこの間重光外務大臣にも言ったのですし、あなたとも役所でお会いしたときに伺ったことですが、これは明らかに管理令の四条の一の十六、これによって入国を許されたものだと私は考えております。一の十六によって入国させられたとするならば、日本の国内において洪進山君の身分というものは、これは決して官吏としての扱いでもなく、留学生としての扱いでもないということ、すなわち一般の市民としての扱いとして扱われているものと解釈すべきであると私は解釈するのです。なぜならば、もし留学生として扱うものとするならば、四条一の別の条項で規定して扱うべきであり、官吏として扱うならば別の条項においてこれまた規定すべきものである、その解釈をとるべきものである、日本の国内においてその扱いをとるべきものであると解釈すべきであるが、この点はいかがでありましょうか。
○下牧説明員 出入国管理令第四条の第六号によりまして、留学生としての在留資格を与えます場合には、第四条の第四項によりまして文部大臣と協議いたしまして留学生の資格を与える、言いかえれば、純然たる通常の留学生についてこの第四条第六号の資格を与えているわけでございます。ところが今度の洪進山君は警察大学に特殊の課程の勉強のために短期留学するという形で参ったのでございますから、第四条に規定いたします第一号から第十五号までのいずれにもそのティピカルな形において当てはまらない。そこで第十六号を活用いたしまして、これに基いて省令の中で法務大臣が特に在留を認めるものという資格においてその在留資格を与え、またその省令に基いて一年という期間を指定した、こういうわけでございます。
○岡田委員 今の御説明を通じても、留学生としての扱いでないということだけは明らかです。第二の点は、法務省の特に定めたる者ということは、今申し上げたように留学生でないということを明らかにしていると思います。なぜならば、もし四条の四項の所管大臣と協議をしてという条項によって留学させるというのならば、警察関係にも所管大臣というものはあるわけですから、それと協議をして決定し得るわけですから、その点を行わないで、ことさらに十六号を使ってやったということは留学生としての扱いではない、その点は明らかだと思います。従って国内においてこの洪君という人の扱いは、法律上の扱いとしては、あくまでも留学生としての扱いではないはずであります。この点も明らかにしておかなければならないと思いますが、この点はどうでありますか。
○下牧説明員 この第四条の十六号によって留学生を入れることができないという法律上の制限はございません。例をとって申し上げますれば、この第四条第一項の第五号に商業者としての資格が規定してございます。ところが先ほど申し上げました省令——具体的に申し上げますと、特定の在留資格及びその在留期間を定める省令、昭和二十七年五月十二日の外務省令第十四号というのがございまして、その第一項の第一号に、やはり出入国管理令第四条第一項第五号、いわゆる商業者に該当する者のうち短期間在留しようとする者はこの省令でもって、十六の三と俗に申しておりますが、出入国管理令第四条第一項第十六号によってその資格が与えられる。同じようにこの留学生の場合においても、いわゆる普通にここに予定しておりますところの留学生でございますれば、これは四の一の六で資格を与えますが、ただいま申し上げましたような特殊の事情のある者につきましては、この省令によって同じような考え方のもとに、法務大臣が特にその在留を認めるということで措置するということに、法律的にに何らおかしい点はない、かように考えております。
○岡田委員 あまり法律論議ばかりやっているとあれかもしれないから、適当にしますけれども、私はその解釈はやはり問題を糊塗するために歪曲をしつつある一つの解釈をとっているのだと思う。もしこの白書の言う通りに、台湾政府の警察留学生であるというならば、なぜ四条の四項という規定があるにもかかわらず十六号を使ったかということ、これの証明にはならないと思う。なぜならば明らかに台湾の政府によって身分を保証された留学生である場合において、四条の四項を適用しないで、ことさら特殊な規定であるところの十六号を引用して、これによって入国させているということは、これは何らかの別な理由があるのではないかと解釈せざるを得ないと思う。しかしこの点についてはあまり法律解釈ばかりやっても水かけ論になりますからよしましょう。もっと具体的に進みましょう。 先ほど仮放免の取り消しについては勝手に出て行ったのだ、だから身柄を拘束したのだ、こういうふうなことを言われたが、そこで一つ引揚援護局の方に伺いたいのですけれども、引揚援護局ではこの洪進山という人に対して、十一月十日過ぎに舞鶴まで行く運賃あと払いの証明書を出しているじゃありませんか。引揚援護局としては、この人が舞鶴に行って興安丸に乗るための運賃あと払いの政府の証明書を発行している。しかも先ほど入管の次長が言われたけれども、実は十七日に初めて入管に行ったのではなくて、その以前に十二日か十三日に入管の東京事務所に洪進山君が行っている。そして、私は今度の興安丸に乗りたいから乗せてもらいたいと言ったところが、東京事務所の担当官は——確か本局の警備課のはずだと思います。そこにいる中村警備課長も知っているのじゃないかと思うのだが、本局の警備課に電話をかけて、洪進山君が帰るそうだがという話で、それならば帰したらよろしいだろうという意味の回答があったといわれています。こういう事実があって、そのときには洪進山君は、それではそのままで帰ってよろしい。そして、そのときに御念の入ったことにはこう言っている。本局の方の答えとしては、華僑総会が舞鶴で正式の手続をするから、予定通りそのままで運賃あと払いの証明を引揚援護局からもらって、身柄だけ舞鶴へ行けばよろしい。こういうことを言ったと言っている。洪進山君はこれを聞いている。これに基いて洪進山君は行動したのであるとわれわれは聞いている。そこで第一点として、引揚援護局ではこの証明書を出したことがあるのかないのか。勝手に洪進山君が切符を買ってこの汽車に乗ったのかどうか。 それからもう一つは、入管の東京事務所を通じてこういう事実があったのかどうか。そして、これに対して了解を与えたのかどうか。この点についても伺いたいと思います。
○田邊政府委員 お答えいたします。新聞で御承知の通り、今度の興安丸の配船の通知は十一月の五日にございました。配船の決定をいたしましたのは十一月の七日でございまして、これによって、二十日に舞鶴を興安丸が出港することにきめたわけでございます。時日の余裕がございませんので、従来からもそうでございますが、華僑総会から九日に帰国予定者の名簿が提出されまして、これが合計二百六十一名でございます。この中で浜松市を除いた二百四十三名の方に、今お話の通りの帰国のあと払い書を一括して渡してございます。もちろんこの中には、自分の意思によって舞鶴に行くことをやめた人も相当ございます。また入管当局によって出国を許可されなかったことも従来はあったのでございます。こちらは一々そういうこと確めてから渡すということでは帰国の準備が遅れますので、あらかじめ便宜的処置として、一括して渡しております。
○岡田委員 洪進山は入っているのですね。
○田邊政府委員 入っております。
○下牧説明員 この問題につきまして調査いたしましたところが、当時本局の係官に対して、洪進山君のことについて照会の電話があったことは事実でございます。その際に本局におきましては、これは問題があるから、とにかく仮放免だけは船の出る期間まで一応延ばしておいて処置するようにということで指示したはずでございます。それで、一般的な問題として、あるいはおっしゃるような話が出ておるかもしれませんが、私どもの調査した限りにおいては、ただいま申し上げたようなことで、本局は指示いたしておるわけでございます。
○岡田委員 時間もたっておるし、委員長から注意があったので、局長が来てからいろいろやりたいと思います。しかし重要な問題ですから、との点はぜひ伺っておきたいと思うのですけれども、今委員長もお聞きのように、政府自身の発行した運賃あと払いの証明によって、この人は切符を買ったわけです。そして、十八日までに舞鶴に集結せよという指示が入管からあったわけです。その入管の指示に基いて、この人は政府の発行の証明書によって切符を買って乗ったところが、突如、これは仮放免の原則であるところの住居の制限あるいはその地域の制限、これに反することであるからといって、名古屋で逮捕されたわけです。このような矛盾したことが今政府の手によって行われているのです。現在この人が拘束され、逮捕されているという理由は、この理由だけなんです。あなた自身が先ほどそう言われたけれども、政府の発行した切符によって汽車に乗って、その汽車に乗っておったことが不届きだといって、洪進山君は逮捕されている。いまだに帰されない。そしてこの帰されない理由として、最近では三団体と交渉をして、興安丸が出帆したならば身柄は釈放してやるであろうというようなことを政府が言っている。これは一体政治的ではないかどうか。あくまでも事務的な範囲としてこういうことをやったのかどうか。政治的ではないかということは、台湾との話し合いにおいて、台湾の圧力を感じて、日本の政府が自主性を失ってこのようなことをやっているのだろうということを私は言いたい。明らかに台湾からの通報に基いて——日本の政府がかつては興安丸によって中国に帰そうといって切符まで出したのに、台湾からねじ込まれて、あわてて今度はこれを緊急逮捕するというような形が行われたのだと私は思うのだが、この点について事務当局として答弁するのは困るかもしれないけれども、そのいきさつだけは私として一度この機会に明らかにしておかなければならないから、この点は事務当局の意見も一応明らかに伺っておきたいと思います。
○下牧説明員 切符の問題は、先ほど引揚援護局長から御説明がございました通りに、今度の帰国は非常に期間が切迫いたしておりますので、あらかじめ政府間においてどれを帰す、どれを残すという打ち合せをする余裕がなしに、一応の措置として引揚援護局においてそれを出されたのでございまして、私どもの立場といたしましては、洪進山君に対し、この帰国問題について警備課長からとくとその内容を話して、場合によって、しいて出国しようということになれば、こちらも強制力を用いなければならないようになるぞということまで念を押して考慮を求めたのであります。そういう関係でございますから、一般的に帰国者はいつ幾日までに舞鶴に集まれということだけをもって、本八の住居制限が緩和されたということには相ならないかと存じます。 それから洪進山君の釈放について、船が出るまで釈放はできない、こういう立場をとっておりますのは、あくまでわれわれ日本政府の自主的な見解でございまして、台湾政府からの圧力によるというようなことは絶対にございません。私ども最も確実であり、しかも妥当な措置として考えて措置いたしているわけでございます。
○岡田委員 これは多分に事務的な問題ではないのですから、この問題については政治的な問題としてもう少しあとで別な機会に明らかにしてみたいと思います。 ただもう一点だけ重要な点が残っておりますし、事務当局としてもぜひ考えてもらわなければならない点があるので、もう一点だけ言わしてもらいたいと思うのです。ということは、この人を名古屋において逮捕したときには、逮捕令状も持っておらない。多数の警察官が暴力によって逮捕している。憲法の規定においてもあなたおわかりのように、刑事事件でさえ逮捕令状を持たないで逮捕することはできないはずである。これは前に検事の御出身である警備課長はよく御存じの通りだ。逮捕令状も持たないで、多数の警察官によってこの一人の人が拉致されている、こういうむちゃくちゃなことが行われている点が第一点です。 第二の点は、こういうような前後の事情からかんがみて、この点はぜひ事務当局にも聞いておいていただきたいのだが、洪進山君の身柄を拘束しているということは、この白書のように身辺の保護に万全を期するためということについて、私は信頼することができません。むしろ身柄を拘束することによって、台湾側からのいろいろな圧力を通じて本人の自由なるべき意思を拘束して、不自由なる方向において意思を曲げようとしている。本人に、おれは中国に帰ろうと思ったのだけれども、台湾の政府からもいろいろ言われるものだから、家族のことも心配になるから中国に帰るのをやめて台湾に帰ろうかと思うというように、意思の変更を強制しようとしているのです。こういう意図を持って、たくらみを持ってやっているのです。ですからこの白書には、本人の意思に基いて帰国させると書いてある。見ていてごらんなさい、おそらくこのままでいったならば、洪進山君は身柄拘束中において、やはり台湾に帰ると言い出しました、従って本人の自由な意思に基いて台湾に帰しますよと、こういうことを言うにきまっている。そういう脅迫なり脅威なり、身柄の拘束を通じて圧迫を加えつつあるのではないかという点を私は心配している。こういう点についてあなたはどういう保証をすることができるか、事務的な面においてもはっきりした保証をしてもらいたいと思う。
○下牧説明員 まず収捕の手続でございますが、出入国管理令の第五十二条の第三項によりまして、強制退去令書を執行する場合にはその令書またはその写しを示してこれを執行する、こういうことになっておるわけでございます。それで本人が汽車に乗って出かけたことが判明いたしましてから、すぐ仮放免取り消しの手続をいたしまして、そうしてその退去令書の写しを非常に急いでおりましたので、電話で東京から名古屋の事務所に連絡してその写しを作成せしめ、それを携帯して本人を収捕したわけでございます。 それから洪進山君を目下拘束しておるのは、これは本人の意思を台湾の方に向けるように強制するための手段ではないかというふうなお尋ねでございますが、さようなことは絶対にございません。洪進山君の件につきましては、中共系の方面のみならず台湾系の方面、あるいは中立系の方面から一度本人に会っていろいろ話をしてみたいというような申し入れも従来しばしばございましたけれども、私どもはそれを断わりまして、華僑総会以外の人にはまだ……(岡田委員「華僑総会も会わしてない」と呼ぶ)華僑総会の責任者以外の者にはまだ面会をさせていない……(岡田委員「責任者にも会わしていない。おれの方が詳しく知っている、華僑総会に会わしてない。ほかの人に会わせているかどうか、それはおれは知らないよ」と呼ぶ)ちょっとお待ち下さい。華僑総会の方に会わしておるのは事実でございますし、そのほかには弁護人、それから本人の希望する友人がございましたのでその友人に会わしております。それ以外に洪進山の意思に対して影響を与えるおそれのあるような第三者には、私の方からことさら注意して会わせないようにしております。それをごらんになっても、私どもがそういう意図を持っていないということは御了解願えることと存じます。
○岡田委員 今お聞きのようにこの問題は非常に重大な問題です。このように重大な問題なので単に事務的な答弁として私は了解することができないので、今後において、これは緊急なる問題であるだけに局長なりあるいは大臣に、政治的な意味も含めてこの問題については続いて質問をいたしたいと思いますので、この点については残余の質問は留保いたします。
○植原委員長 岡田君の残余の質問は留保することを委員長は承知いたしております。岡田君の質問のうちにもかなり岡田君自身の想定のこともあります。その点はすべて明らかにした方がよろしいと思いますから、質問はなお継続すべきものとして留保いたしておきます。 次会は公報をもってお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。 午後零時二十五分散会