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22回国会参議院1955/06/17

予算委員会公聴会 第2号

発言数
77
登壇者
17
会派数
6
開催日
1955/06/17

会議録

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) これより前日に引き続きまして公聴会を開きます。  開会に当りまして、御出席の公述人の皆様にごあいさつを申し上げます。  本日、御多用のところ、わざわざ当委員会のために時間を割いていただきまして、まことに感謝に堪えません。厚くお礼を申し上げます。  申し上げるまでもなく、この公聴会を開きますのは、目下当委員会で審議中であります昭和三十年度予算案の内容につきまして、広く各界の学識経験者であられます皆様方の御意見を承わりまして、本予算案審議の参考といたし、審査をして、一層権威あらしめるためであります。どうか皆様におかれましては忌憚なく御意見をお述べ下さいまして、われわれの参考に供していただきたいと存じます。  なお、議事の順序について申し上げますが、公述人の皆様の御意見を述べられます時間を大体三十分くらいとして、御発言の内容につきましては、案件の範囲をこえないようにお願いを申し上げます。御陳述をいただきました後、委員の方から皆様に御質疑をいたしますので、御答弁をお願い申し上げます。なお、御発言の際には委員長をお呼びいただきまして、その後御発言いただきたいと存じます。   —————————————

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) それではこれから、第一に、富士銀行取締役頭取の迫静二君にお願いいたします。

迫静二富士銀行取締役頭取

○公述人(迫静二君) ただいま御紹介にあずかりました迫静二でございます。御指名によりまして、本年度予算案について意見を若干申し述べたいと存じます。  まず、本年度予算の性格につきましては、世界経済の動向と、それからわが国経済の現状並びに国際収支の見通し等にかんがみまして、いわゆる地固め予算でなければならないと存じます。地固め予算でありますためには、財政の規模の膨脹を抑制し、重点的、効率的支出をはかり、一方、民間資本の蓄積、企業の合理化を奨励して対外競争力を強化し、もってわが国金融の正常化を促進いたしますような財政金融の措置を重点的に行いまして、自立経済の基盤を強化いたすことを基本的な方針とされるべきであろうと存じます。  この観点からみますと、目下審議せられております予算案は、一応一兆円のワクを保持し、また資本蓄積のための法人税、預金その他の利子課税、配当所得税の減免あるいは輸出振興、住宅政策等の措置も取り入れられているのでありまして、この点はまことにけっこうなことと存ずるのであります。特にいわゆる一兆円のワクにつきましては、理論的根拠に乏しいとか、また、もともと実質的には一兆円をこえているではないかとか、いろいろ専門家の議論はあるようでありますが、まだまだ堅実な地固めを要するわが国経済の現段階といたしましては、とにもかくにも一兆円のワクが維持されておりますことは、それ自体、経済界はもちろん、広く一般国民に与える心理的影響の大きいことを考えまして、まことにけっこうなことと存ずる次第でありまして、今後ともこの点には十分に御配慮を願いたいと存じます。  しかしながら、私どもといたしましては、さらにその趣旨が予算全体として十分に生かされているかどうか、また来年度以降に及ぼす影響はどうかというようなことが一番問題のように考えます。この意味において、本予算案を拝見いたしますと、心配になる問題が幾つかあるのであります。  まず本年度は減税が七月から実施される予定でありまして、これを平年度に引き直せば減税額はもっと大きくなる。従って来年度以降はそれだけ歳入は減少をするはずであります。他方、来年度以降におきまして、しからばそれだけ歳出を削減できるかということになりますと、これはなかなか厄介な問題であろうと存じます。のみならず、たとえば賠償とか防衛とか恩給とかの方面におきまして、むしろ歳出増加の可能性を予想させる要因も考えられるのでありまして、かれこれ考えて参りますと、本年度予算案は実質的には収支不均衡の要因をはらんだ予算ではないかとの疑問を持たれるわけであります。また今日のような景気情勢では歳入の大幅な自然増収は期待できないでありましょうし、また、これは前年度からのことではありますが、予備費も僅少な額に圧縮されておりますので、本年度予算そのものといたしましても、少くとも弾力性の著しく乏しい予算と言えると思うのであります。従いまして、来年度の予算が編成せられますときに、この潜在的な不均衡の要因が表面に現われてくるのではないかということが心配される次第であります。財政の不均衡は、まだ資本の蓄積の乏しいわが国におきましては、直ちにインフレを刺激する懸念があるのでありまして、かくては、せっかくこの二年間回復して参りました通貨価値に対する信頼を失わせ、民間資本の蓄積を妨げ、自立経済達成を困難にするものであると存じます。このような意味合いにおきまして、補正予算の有無にかかわらず、財政の真の均衡と一兆円の実質確保に格段の御配慮を賜わりますようお願いいたしたいと存ずるのであります。  次に、本予算案は、最初に申し述べましたように、法人税、利子課税、配当課税の減免等、資本蓄積に対する措置を含んでおることは、まことにけっこうでありますが、半面、歳出の面におきまして、比較的に消費印色彩が強く、また支出がやや総花的になっておるのではないかと存じます。これには、いろいろやむを得ない事情もあろうとは存じますが、先ほど申し上げました収支の不均衡の問題と共に、来年度以降の予算の膨脹要因を考えますとき、憂慮せざるを得ないところでありまして、わが国経済の自立達成のために、財政の健全化とあわせて、その重点的、効率的配分につきまして、なお一段の御配慮を賜わりたいと存ずる次第であります。  また地方財政につきましてもその支出を合理化して、財政規模の圧縮に努め、一日も早く赤字の解消をはかられるようにお願いいたしたいと存じます。いかに国家財政が均衡を保持しておりましても、半面では、これと密接な関係にある地方財政が赤字を増加する一方だというようなことでは、国全体として真に健全財政と言えないことは今さら申すまでもないところであります。願わくば中央地方を通じて、わが国財政の今後のあり方を長期的に御検討下さいまして、万全の対策を御策定いただきますようお願いいたしたいと存ずる次第であります。  予算全般に関する問題はこのくらいにいたしまして、次に、特に金融機関の立場から、金融債及び公社債取扱いの問題について申し上げたいと思います。さきに衆議院における修正によりまして、当初資金運用部で行う予定でありました金融債引き受けのうち、約百四十一億円を財政のワクからはずして市中金融機関に肩代りせしめ、また資金運用部の国鉄に対する貸し付け予定額のうち四十五億円を国鉄公社債の発行に切りかえることになっております。これは見方によっては、本来財政でまかなう予定のものを、金融へしわ寄せすることによって、財政のつじつまを合せたとも言い得るものでありまして、それ自体一つの大きな問題をはらんでおると思うのであります。昨二十九年度全国銀行預金は実質約四千億円近く増加いたしましたが、このうち有価証券保有に充てられたのは約七百億円、この有価証券の中に金融債は約二百九十億円、公社債は約百三十億円、合計して約四百二十億円、有価証券保有増加額の約六割がこれら債券の消化に向ったのであります。そこで本年度でありますが、かりにこれら債券の発行総額が前年度なみと仮定いたしますと、金融債で百四十一億円、国鉄債で四十六億円、合計約百八十六億円が新たに民間金融機関の消化に期待されることとなりまして、昨年度の民間金融機関の消化実績の四割五分増の負担がかかってくるということに相なるわけであります。もっとも本年度は預金利子課税全免の措置も用意されまして、本年度全国銀行の貯蓄目標として四千四百億円の預金増加が予定されておりますが、この通りにゆけば、百八十六億円という金額の消化自体は、一般金融情勢ないしは債券発行条件のいかんによりましては、あるいは必ずしも困難な数字とも言い切れないかもしれません。しかしながら御承知のように、かねてから金融機関の日銀借り入れはわが国経済の不健全性を表わすものとして、極力その解消に努力して参っておるのでありまして、幸い昨年度を通じ約千六百億円の日銀返済を行なったのでありますが、なお現在千八百億円もの日銀借り入れがあるのであります。オーバー・ローンの現状におきましては、情勢のいかんによっては民間資金を圧迫し、あるいは日銀の追加信用を誘発して、経済金融の正常化をチェックするようなおそれもあるということは、十分御認識をお願いしておきたいのであります。もちろんこの案が決定いたしましたならば、金融機関といたしましては、これが消化に一生懸命に努力いたしまして、できるだけの協力をいたす考えであります。ただ私どもの懸念いたしますのは、本年度を端緒といたしまして、今後このような財政から金融へのしわ寄せが限度をこえて過度に強化せられたり、さらには開銀債、あるいは輸出入銀行債のような特殊金融債、あるいは国債の発行等にまで漸次発展するのではないかということであります。  最初に申し上げましたように、わが国はまだまだ地固めの努力を進めて参らなければならないと存じます。すなわち通貨価値の安定を第一義とし、貯蓄の増強をはかり、産業の合理化を進め、不急の資金需要を押え、資本の蓄積に専念しなければならない段階と存じます。従いまして、現状においては、財政の面にあってはその健全化と重点化を、金融の面にあってはその正常化を進めるべきでありまして、公債発行はもとよりのこと、公債発行と本質的に異ならないところの特殊金融債の発行等による民間資金の圧迫はこれを避けて、また蓄積途上にあります民間資金に対する法的ないしは強制的統制等の措置は好ましからぬものであることは、海外諸国の経済正常化の政策にかんがみましても明らかであろうと存ずる次第であります。  以上重要と思います二、三の点について申し上げたのでありますが、要するに、現在日本経済の当面しておりますところの諸問題のうちでも、最も重要なことは、通貨価値の安定を維持していくということであろうと存じます。もとより、金融界におきましては、そのため最善の努力をいたす覚悟でありますが、どうか財政の面におきましても、収支の均衡に留意されまして、通貨価値の安定を確保し、過去二カ年にわたる経済正常化への努力に有終の美を飾らしめるような予算が一日も早く成立いたしますよう、特に御配慮をお願いいたしたいと存じておる次第であります。  なお、最後に、戦後わが国経済に占める財政の地位の重要性にかんがみまして、その将来を眺めますとき、財政の前途にはなかなか容易ならぬ困難が伏在しておることを痛感いたす次第でありまして、この財政制度については、いろいろと今後われわれ民間人としても十分注意をして検討し、また慎重に私どもも勉強せなければならないと存じております。  以上私の公述を終らせていただきます。御清聴を感謝いたします。

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) どうもありがとうございました。質疑をお願いいたします。

田中啓一自由党

○田中啓一君 二点ほどお伺いいたしたいと存じますが、第一点は、今度の予算は原案乃至修正点を通じて、消費方面への金の使い方が多過ぎるように思うというお話でございましたが、それらは例をあげていただきたいと存じますが、主としてどういうようなものをお指しになって、それらが多過ぎるとお考えになるのでございましょうか。一つお伺いいたしたいと存じます。

迫静二富士銀行取締役頭取

○公述人(迫静二君) 私はまことにしろうとでございますから、どうぞ一つ間違っておりましたらお教えを願いたいと思いますが、こういう窮屈な予算でありまして、いろいろとその予算の中で御苦心になって支出の面はお使いになっておることはもとよりのことと存じます。しかしながら、重点的に配分しなくちゃならぬということ——これは限られた予算の中ですから、そうすると、私どもの考えからいたしますと、この財政地固めの年であるとすれば、できるだけ財政の膨脹を押えなくちゃならぬ。そういうときに、五十九件ものいろいろの支出が加えられたということは、ちょっと、私どもしろうとから見ますと、まあそれほどでなくてもよかったじゃないかというような感じがいたしますわけです。初めのいろいろの事務当局の御苦心のことも聞いておりますし、まあこれはしろうとの考えでございますが、いろいろの御事情もあろうかと存じますので、これは押え得るものであったかどうかということになると、結局歳入の面とのにらみ合いで考えなくちゃならぬ。そのために、これが公債発行とか、あるいはわれわれ金融機関面へのしわ寄せということは、将来に思わぬ大きな禍根を残しはしないかということを私ども金融人として考える次第でございます。

田中啓一自由党

○田中啓一君 もう御趣旨は私どもことごとくその精神で予算を貫かなければならぬ、こう実は思っておるのでございまして、ただいまは別段、例示、列挙はなさいませんが、五十九件もはどうだと、こういうお話でございました。修正の点をとりましても、中には消費的な経費の増加があるということとは、これは明らかでございまして、これはまあおそらく別の理由からそういうことになったものと思いますが、ただ、私は、あの中に農業に関する補助金の増加というものが件数は非常に多くなった、そこで、件数が大きければ総花的だ、こういう批評を一般に受けるわけでございます。ことに財界、金融界からは痛烈なる批判を受けておるわけでございます。それもよく承知しておるのでございますが、そこで、今の農業への——まああの中には全額政府でやるというのも若干あったかと思いますが、ほとんど補助金となり、しかも補助金だからおみやげ案だ、こういうように一般になかなかやられるのであります。しかし、いかなる事業でも、中身というのは相当たくさんございまして、おそらく今御指摘になりました産業合理化というような方面を申しましても、重点をとって投融資をするものもいくつもございますし、それからまた、その中にも、ひとしく鉄鋼といってもあるいは肥料といっても、あるいは石炭と申しましても、なかなかいろいろ中身はあると思うのであります。それが書き分けてあるからどうだというようなことに実はなるのじゃないか。でございますから、それらの点が、真に生産増加のためにそれがうまく回れるものであるならば差しつかえないが、というようなことでございますか。やっぱり、何でも予算の款項目に数が多いのはいけないのだ、どうもそういうような感じを受ける、ということなら、それは整理をすれば一本にもなるわけでございまして、それはもう形の上だけの問題になるのでありますが、その辺に対する御見解はいかがでございましょうか。

迫静二富士銀行取締役頭取

○公述人(迫静二君) これは件数が多いからどうこうということは、これはまあ間違いであろうと思います。その点は、私がさっき世間で言われておるいわゆる総花的という言葉を使ったことは、あるいは当らない点があるかもしれませんが、ただ、私が申し上げたいのは、赤字、収支不均衡のこの予算を組むということがあってはならないということを申し上げたいわけでありまして、ではどこを削るかということになると、これはなかなか私どもしろうとではわかりにくいことであります。いずれも必要な費目であると存じます。まあ、いよいよそういう支出がきまりました上は、これが効率的に使用されるということが大切なポイントであると思います。その程度のところで一つ……。

田中啓一自由党

○田中啓一君 もう一点だけ。それからまあ、今度の予算というものが、将来蔵入は減少し、かつ歳出は増加をする要素を帯びておるので、やがては、そのつじつまを合せるためには、政府としては、金融債の増加、あるいは、れっきとした公債というような政策に出てくる心配がある、それではせっかくここまで正常化してきた金融界の圧迫になると、こういうおそれがあるという御心配でございまして、まことにごもっともなことであると思うのでありますが、私どもこれはまた、今度、まことに、しろうとであるのでありますが、この金融に任せておきまして、そこで非常にビルばかりできるとか、デパートがむやみにできるとか、あるいは好ましからぬ飲食店が実に全国的にできると、こういうようなことで、いや観光事業だ設備だ何だというようなことで、そういう方面へ金が一体流れないのがいいのじゃないか、何らかの方法でもっと生産的な方面へ金が流るべきじゃないかということは、ずいぶん自由党内閣のときに言われてきたことなんであります。そこで、まあ統制にならない何らかの方法で金を生産し、しかも最も必要とする産業の基礎を作り上げてゆくような方面へ回すことができないかというのが、今度の現われであろうと私どもは思うわけであります。公債にしても、方向はそういう方向へゆくものと思うのでありますが、これらに対する御見解はいかがでございましょうか。

迫静二富士銀行取締役頭取

○公述人(迫静二君) 公債の問題についてまず申し上げてみたいと思いますが、日本の現状におきましては、資本蓄積が御承知のように非常に乏しい。従って経済としては非常に脆弱な経済である。もしこれで公債が発行され、そして、いよいよこの日本の現状において公債が発行されるという、そういうことが、国民に及ぼす心理的影響というものが非常に多いと思います。そういうことで国民の貯蓄心が衰える、あるいはまた通貨価値の安定ということが損われるということになると、これは私は日本の経済全般の問題として非常に大きなことである。やはり私は、日本経済のこの復興というものは通貨価値安定ということから出発しなくちゃならない。通貨価値の安定なくして経済の正常化、復興というものはあり得ない。私はこれはもう一番の眼目に置いて進むべきものであると、こう考えます。この点は、では、一体、公債はどういうときになって発行できるかという問題に一つなると思います。そうしますと、日本の私どもの金融機関の立場からゆきますと、まだ日本銀行の借り入れは千八百億もあります。公債を発行すれば、今日一般民間人としてはこれは消化できない。おおむねこれは金融機関の背負い込みになる。そうすると、金融機関としては、これは日銀の通貨信用に待たなくなり、自由経済をとってゆこうとすれば、この変態な現在の金融機関のあり方というものは、一日も早くこれは正常化しなければならないと思います。現在のように、よく金利が高いということも言われます。これは一つは、日銀の借り入れが大きくまだ残っておるということ、これはまあ日銀の借り入れが起ったということは、この戦後のあの復興の時代において急激に日本の産業を復興させるためには、これは私どもとして、ただ金融機関はそういうものはあるべきでないという態度をとるべきじゃなくて、むしろそういう面で積極的に普通銀行として協力してきて、結果がこういう形になっておる。これはまことに日本経済全部の健全性というものを外国から疑われる一番大きなところでありまして、これが解消しますと、いろいろの面で、たとえば今日言われる、よく金利が高いというようなことも、借り手のマーケットになって、こんなものは競争によって漸次下って参ります。いろいろと、今の臨時金利調整法というようなものを持たずに、これは自由競争になって下ってくる、そういうところを作っていくのが、われわれ金融機関として一番大切なことだと考えております。  それから、ただいまのお話の不要不急の所に金を回るということ、これはもう、まことによく私ども金融機関として非難を受ける問題でありまして、この点については、私どもも、つとにみんな真剣に研究をいたしまして、それで融資粛正委員会というものをわれわれの銀行協会の中に置きまして、不要不急の面に金を出さないようにというようなことを、これはみんな協力してやっているわけでありますが、これはまた今も御指摘のようにビルが建つとかいうような問題でありますが、なかなかむずかしいものでして、お得意さんの中で、ああやって、いよいよ建築の許可がおりた、しかもその人は相当金を持っておりまして、その金を出すと言われたとき、直ちに自分の金を出すとおっしるのに、これを出さないというわけには参りませんし、それから、たとえば一方に定期預金があって、まだ期限がこないというような場合は、金を貸せとおっしゃる。その金は貸しませんよと、片一方に預金があるから、そう言えないわけであります。こういうこともありますし、それから一方で、まあ、いろいろのことで巧みに資金を集められる方もあると思いますが、われわれの考え方としては、そういう面に流れないようにということで一生懸命よく真剣にこれは努力しておるわけでありまして、たまたま、ああやって現われたものについて御非難をこうむることは、私どもとしても、これは十分注意をしなくちゃならぬことでありますが、ただいまのような点で御非難を受けることのないようにしたい、また、しなければならないと思っておりますが、ただ、ただいまお話のように、ある何かの機関を設けて、そうして重点的に流そうというお話、これはまあ考えとしては必ずしも悪くないかもしれませんが、これが一たび運用を誤まると非常な悪弊が現われます。ことにまた、私どもとしましても、ただいま申し上げましたようなことで、重点的に効率的に国家目的に沿うようにということは、これは絶えず念願しておることでありまして、基本の方針を政府でお示しをいただいて、その線に沿って私どもが協力していく。統制的な建前をやっていただくということは、これは今日のこの日本の経済の発展その他に非常な弊害があると思います。ことに銀行々々によっていろいろの立場がありますし、たとえば何%公債を買えなどというようなことは、これは銀行の資産構成、あるいは借り入れの状態だとかいうようなことで、一方において資金の余裕を持っているときだったら、それもいろいろと可能でありますが、現状においては日銀の借り入れをますますふやすというような不健全な状態に追い込むもので、それは私どもとしては極力避けて行かなければならないと考えております。

高橋進太郎自由党

○高橋進太郎君 関連して一つ。田中君の聞かれたのは抽象的な、公債を発行することの可否ではなくて、私もお聞きしたいと思っておったのですが、要するに街に出ましても銀行の建物というのが大体不急、不急と言いますか、高層ビルディングなんですね。従ってどうも料亭でも何でもああいったようなあれなんで、しかも今のお話を聞きましても、実際資金というものはなかなかある方向に流すということは非常に困難だ。自粛とかそういうようなあれを持ってやられても困難だ。従ってそういう意味合いからも、むしろ公債という、従って公債のようなものであれば、国民の国家目的に達するような公債というようなものを、むしろ金融機関に発行さして、そうして世話して、そうして真の目的の方向を形作って行く方が、現在のような銀行みずからが高層ビルなり何なりというものをどんどんお建てになり、あるいはまた料亭や何かに資金が流れている現状から見て、それとの比較から見てどうかと、こういう気持でお聞きしたと思うのです。そういう観点から今の公債発行ということがむしろ役に立つのではないか、こう思うのですが、いかがなものでしょうか。

迫静二富士銀行取締役頭取

○公述人(迫静二君) お答え申し上げますが、私はまだその公債を発行する時期でないということをまず第一に申し上げたつもりでございます。公債を発行する時期でない。日本の現状からして、また一方に公債は一般民間では消化できない。そうすると銀行の借り入れを、日銀から借り入れを仰いで、これで公債を持つという、これは銀行自身まだ千八百億も借り入れを持っておりまして、それでその中で公債を持とうとすれば、これは日銀の通貨信用に待たなくてはならぬので、まだ公債を発行する時期ではないということを申し上げたわけであります。現段階において公債を発行されるということは、これはまだその時期でない。それからまた公債を発行するということは、これは一般によく言われております通りに、インフレ誘発ということに、これは必ず相なって参ります、現段階においては。そういうときにこれの国民に対する心理的影響ということは非常に大きな問題がある。従ってそれから通貨価値の安定ということがくずれ、一国経済の安定化、正常化というものがくずれてくるということを私は非常にそれを憂えるわけでございます。  それからただいまお話のように料亭ができる。これは料亭というものができるというのは私も非常に不思議に思うのですが、これはおそらく普通の、通常の金融機関では出ておらないと私はここで申し上げていいと思います。これは自分で資金を持っておりまして、そういう人が自分で作るものは、これはちょっと説得のしようがないので、こういう私たちは……。

高橋進太郎自由党

○高橋進太郎君 私は、銀行みずからが高層ビルを作っておられますね。

迫静二富士銀行取締役頭取

○公述人(迫静二君) これは私ども実際高層ビルとおっしゃいますが、これはまあ銀行というものは、工場が工場を生命とし、私ども銀行は決して華美なものを作るべきじゃない。しかし安全であり堅牢であるということは、これは私ども銀行の信用保持から言って必要であると思います。まあただその数が非常にふえてきたということ、これについてはいろいろ御批判があると思いますが、これはまあいろいろの面から検討しなくちゃならないと思います。華美に流れるようなことがあってはならない。ただ銀行が戦争中に焼けました状態のときのことをお考えいただくとおわかりだと思いますが、仮に銀行の帳簿が焼ける、あるいは銀行で扱っております証憑書類が焼けるとか、それから仮に一日でも、銀行が焼けた場合に休めないのでございますね。休むともうこれは困るのは銀行自身じゃなくて、お客さんの方に大へんな御迷惑がかかる。そうすると、やはり銀行というものは火災と地震には、これは強いものを建てなくちゃならない。これはやはり産業者が工場だけは力を入れなくちゃならぬというのと同じようでありまして、まあもし非常にまた華美にわたって御非難をこうむるようなものがあったら、それは銀行の方の行き過ぎでありますが、今日大蔵省でもその点は非常にきびしく銀行に対しては指導いたしております。その点については銀行としてもみずから反省しなくちゃならないところは多々あると思いますが、今日においてはそういう行き過ぎたものは、まあ大体なくなってきていると、私はここでお答えを申し上げていいかと思います。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 二つほどお尋ねをいたしたいと思いますが、公述を願いました一番最後のに関連をするのですが、預金増を四千四百億ほど見込んで、そうしてその中から金融債、あるいは公社債を引き受けさせる、こういう構想でございますが、民間の預金の実情、あるいは預貯金、その他の実情を考えますと、財政、金融に対する多少の不信というものもあって、なかなか見通しが困難なような気もいたすのですが、この預貯金に対しまして、今のままで目標が円滑に達せられるかどうか、それからその中から財政が予定をいたします公社債なり、金融債といったものが、何らの犠牲なしに消化できるかどうか。それからそれに関連して予算を修正をいたしました衆議院の修正案には、資金委員、その資金委員会を法的な根拠をもってやる。言いかえれば、私は、これは強制的な資金統制だと思うのですけれども、そういうものなしにそういうものができるかどうか、この点は大蔵大臣はこの委員会で法的な措置をとるかどうかはまだきめておらん、こういう意向もございましたし、自然に行くかどうか、こういう点をお見通しを第一に伺いたいと思います。  それからもう一つは御所見でありますが、半分ほどは承わったように思いますけれども、お話の通りに、財政資金が負担すべきものを金融にしわ寄せをする、肩がわりでございますが、そうするとあげられたような防衛力の増強という方針やら、あるいは賠償やら、あるいはその他これはふえる要因が多うございますから、この量もふえて参る。これは当然来年度ふえて参ると考えられるのでありますが、そうするとお話の通りに、金融が財政資金の肩がわりをする、その方向が強く出て参る、あるいはそれを法律によろうと、何にしようと、これは程度はとにかくとして初めから強く出発するかどうかはともかく、金融統制に行くと、こういうことに私はなろうかと思うのですが、そういうものに対してどういう工合にお考えになりますか。これはまあ金融界からお一人出ておられますので、御発言もお一人の御発言ではなかったように思うのでございますが、金融界からの御所見を一つ承わりたいと思います。

迫静二富士銀行取締役頭取

○公述人(迫静二君) お答え申し上げます。ただいま御質問のように今年度の貯蓄目標四千四百億というものが目標として定められております。昨年度は大体四千億増加いたしました。ところでその四千四百億の目標でありますが、一体これが達成できるかということは、これはこの現在の状態でこのまま推移するとすれば、私は達成できると考えておりますが、しかしたとえばさっき申し上げましたように、国民の心理的に今後はインフレだぞというようなことが印象つけられてくると、これはもう貯蓄というものはたちまち消えてしまいます。そういうことを私どもは一番おそれるわけでございまして、さっきから申し上げますように、通貨安定、通貨に対する信頼ということは、もう銀行家あるいは金融人ばかりじゃなくて、やはり一国のこと政治をお扱いになる方々もこれは一番大切なところだと存じますわけですが、こういうことが、私は以外に心理的影響というものは大きいと思います。そういうことを私は一番おそれる次第でありますが、まあかりに四千億、あるいは四千四百億という、こういう目標が達成されるとすれば、先刻の御指摘の金融債あるいは公社債のこの金融機関に対して肩がわりもしくは増発される分、百八十六億という予定でありますが、これはきわめて困難とまでは申し上げなくても、まあ非常に楽々とはいかないと思いますが、私は実質的にある程度やっていけるものだと、今のところ私自身としては見ております。これはまあ今後の情勢にもよることでございますから、ここで断言申し上げるわけにはいかないわけですが、まあ公社債の発行につきましては、これはいろいろ条件も、一つはあろうと思います。今の利回りからすると、たしか二銭三毛くらいのところでありまして、他の社債あるいは金融債との均衡の問題が、利回りの均衡の問題はこれはあると思います。じゃあ一体二銭三毛というものは銀行のコストを割るかとおっしゃると、これは銀行全部からしますと、この二銭三毛というものは、これはコストを割ってはいないわけでございます。銀行の資金コストでございますね。しかしこれは個々の銀行になりますと、これはまたいろいろあることですから、ある銀行ではコストを割っていなくても、あるところでは二銭三毛ではちょっとコストを割るというようなことがあるかもしれません。これは私もまだ個々に検討していないわけでありますが、ともかくも他の金融債あるいは社債とのこの利回りの均衡ということは、ある程度のつり合いということは私は必要じゃないか、前回のときも大分議論があったわけでございます。まあしかし、このくらいのところはというところで、大分あれは無理して銀行でも持ったようなことがありましたわけですが、そういうことで今のような預貯金が目標通りに増加するとすれば、そう強制的な手段を、統制的措置をとられなくても、私はこの段階においてはそう非常な困難があるとは申さなくてもいいのじゃないかと、こう考えるわけです。これは楽々といけると私は決して思いませんですが、その考えております。何しろ昨年の金融機関で消化しましたのが四割余の増加でございますから、それからまたこれが非常にふえて来ますと、金融債もしくは公社債が今後ふえて来ますと、一般産業へのこの資金圧迫になるわけでございます。この点もやはり考慮していかなければならないと思います。何かまだ申し上げなかったことございますか。

吉田法晴日本社会党(第四控室・左)

○吉田法晴君 最後の資金統制という問題についての御所見……。

迫静二富士銀行取締役頭取

○公述人(迫静二君) これは私どもとしては基本の方針を示していただいて、金融機関が実質的にこの方針に沿って協力してゆくという態勢が望ましいわけであります。私どもはそれを希望いたしております。

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) ちょっと申し上げますが、あとの公述人の方の時間に関係がありますので、簡略にお願いいたします。

豊田雅孝緑風会

○豊田雅孝君 第一点は財政のしりを金融でぬぐうということは、金融界としても従来非常に拒否しておったわけでありますが、財政のしりを金融でぬぐういき方にはいろいろな場合があると思いますけれども、今回の金融債百四十一億市中消化にするといういき方というものは、非常にはっきりした財政のしりを金融でぬぐうということになると思いますが、かような例が前例としてあったかどうかということを一つ伺いたいと思います。  それから第二点はただいま消化は自主的に大体可能であるというお見通しでありますから、強いてお尋ねすることもどうかと思いますが、もしも金融界として希望する措置として政府に要望するということになったならば、どういうことをお考えになっておられるかということが第二点。  第三点は、金利の関係でございますが、金融債を資金運用部資金で引き受けることにつきましては、大蔵大臣が、この予算委員会で私の質問に対しまして、必ず金利を引き下げるということを明言をし、確約をしたのでありますが、その直後市中消化に切りかえるということに共同修正になったのでありますが、市中消化の場合において、ただいま、特に中小企業金融関係の金の金融債は年利資金運用部資金の引き受けが八分五厘、日歩にしておよそ二銭三厘三毛くらいになると思うが、これを大蔵大臣が、資金運用部資金で引き受ける場合には、引き下げると確約した直後でありますので、市中消化の場合に、金利引き下げの余地があるかどうか、こういう点についてお見通しを伺いたいと思います。  以上三点を。

迫静二富士銀行取締役頭取

○公述人(迫静二君) 財政のしりぬぐいを金融でやったことがあるか、前例はないかとおっしゃいましたが、私ちょっと今その前例というものを具体的に存じませんわけですが、しかし従来われわれの銀行の借入れが多くなったというのは、これは財政のしわ寄せを受けたとよく言われたわけでありますが、具体的にいつどういうことがあったかということは、ちょっと私今ここで具体的に存じませんわけでございます。  それから第二点の消化が可能だということ、これは私は今、少し言葉が悪かったかもしれませんが、消化が非常に困難という程度ではないと申し上げておきたいと思います。可能だと言い切るわけには、なかなか、これは各銀行のいろいろな事情もありますし、しかし私は非常に困難ではないと申し上げておきたいと思います。で、まあ大体において現在の、今出た、今われわれ金融機関に引き受けろといわれる程度のもの増加はさまで非常な困難であるとは申さなくてもいいのじゃないか。不能ではむろんない。私はそう思います。  それから今の金利の問題でありますが、中小企業その他の受け入れの問題でありますが、これは大蔵大臣、どういうことでおっしゃったのか知りませんが、やはり私は他の社債あるいは他の金融債とのこのバランスが大切だろうと思いますが、引き下げるとおっしゃって、どの程度のお話であったか私存じませんわけですが、われわれ市中消化をはかろうとされれば、やはりこの金融債あるいは社債との均衡ということがこれは大切でないかと存じますが、そんなことでよろしうございますか。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 今の資本の蓄積、企業の合理化のお話も大へんけっこうでございますが、それを前提にして私二点ほど伺いたいのですが、銀行内部で企業の合理化を、どういったようなことをおやりになっておるか、ごく大筋を伺いたいのでありますが、それから第二点は、今銀行の事務所の建物が華美であるというようなお話がありまして、いずれも常識的には同様に考えておるわけでありますが、現在住宅問題が相当世間の重大問題になっていますが、たとえば富士銀行でどれくらいの従業員をお持ちになっているうちで、その従業員のためにどの程度の住宅をお持ちになっておるか。もっと割って申しますと、耐震耐火の建物をお建てになるのもむろんけっこうでございますが、それ以上の資金はそういったようなことに使うよりも、従業員等の住宅にお使いになる方がいいのじゃないかというのが私の考え方なんでありますが、具体的に、つまりたとえば富士銀行でどれくらいの従業員にどれくらいの住宅をお持ちになっておるか、この二点を端的に伺っておきます。

迫静二富士銀行取締役頭取

○公述人(迫静二君) 第一点の、われわれ銀行が一体どういう合理化をやっているかという御質問であったかと存じますが、私どもも極力銀行の経営の合理化をやりまして、そして資金コストを下げなければならない今日、われわれに対する要請といたしまして、よく金利を下げろというお話がある。これは、金利を下げるには、われわれ経営の合理化ということがまず第一であることはむろんでありまして、そのために私どもも絶えずこの合理化委員会というものを銀行協会内に置きましてやっております。  そのためにいろいろ取り上げた問題がありますが、第一に、一時競争のために始めましたネオンですね、あれをやめまして、それから新聞広告についてもこれは一つ圧縮する、そうして月どれくらい、これは広告というものは一つの相対的な問題ですから、両方で競争し合うとこれはどんどん伸びていくわけです。従ってこの新聞の広告についてはこういう工合にやろうというようなことをやります。それから経費の節約についてはむろんのことでありまして、庶務の係の者が寄って、いろいろと各銀行間で合理化問題を、集まりまして、たとえば業務関係のものは、業務においてこういう手続をすれば非常に事務が簡略になる。事務の簡略になることは人を少くていい。こういうことで絶えず合理化については考えておりますわけですが、そういうことで合理化には一生懸命ことにこのごろは努力をいたしてやっております。  それからただいまのお尋ねの建物、行員の住宅ということですが、これはなかなか一挙にはやれないことでありまして、漸次私の銀行ではやっておりますが、銀行の行員が全部で大体一万人でございまして、その中で女子が今四〇何%、四五、六%でございましょう。他は男子でございます。それで私どもの銀行で持っております固定資産というものは大体七十億、その行員のために投じておるものが九億でございます。それで結婚をした者あるいはひとり者、大体そういう者を全部にはまだいっておりませんが、漸次収容いたしております。それで戦争直後に住宅がない。たとえば東京といったようなところに地方から転勤をさせましても、これは住宅がないわけでございますし、まず第一に生活の安定を得ないと人の心の安定ができないということで、まず生活の、住居の安定ということからかかりました。ところで戦後のバラックでございますし、なかなか今日になるとこれで安住というわけにいきませんで、こういうものは漸次取りかえて参っておりますが、むろん銀行といたしましては、この社会のレベルということを基礎にして考えていく。銀行員はいい家におるというような考え方、これはいけないということで、大体レベル内というところで考えておりますが、ただいま御指摘のように、長い見地からすれば不燃性の建物が結局いいわけでありまして、漸次そういう方向に持ってきております。  大体そういうことで御了承をお願いしたいと思います。(「進行」と呼ぶ者あり)

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) 迫公述人に対する質問はこの程度で打ち切りたいと思います。大へん長時間ありがとうございました。   —————————————

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) 次に、国民経済研究協会の理事であられます松尾均君にお願い申し上げます。

松尾均国民経済研究協会理事

○公述人(松尾均君) 松尾でございます。実は私は財政一般についてはあまり専門家でございませんので、特に今日問題になっております雇用とか失業、そういう面から三十年度予算を見て参りたいと思います。  特に失業問題は私たち国民にとりましては、きょうか、あるいはこのあすか、もう食うか食われるかの問題でありますけれども、非常に日本ではこれをどう取り扱うか、あるいはこの問題に対してどう処理していくか、非常にあいまいな点が多いのじゃないか。従いましてこの失業問題失業問題と騒がれましても、非常にこの取り上げ方がばく然としておりますし、あるいはまた不十分な点があるのじゃないかと思うわけであります。そういう点からしまして、私は一研究所の研究員としまして非常にごく初歩的な点でありますけれども、この三十年度予算を失業問題あるいは雇用問題という観点から見て参りたいと思います。  この三十年度予算の説明、大蔵省から出ております説明にも書いてありますように、特に今回予算で注目すべきことは、この三十年度予算が実は経済六カ年計画の一環として取り上げた。そういう長期計画の一環として特にこの第一年目だという観点から取り上げた。そういう点がうたってありますけれども、日本でこのような長期の計画に基いて予算が組まれたことは今回が初めではないかと思うわけであります。その点につきまして非常に三十年度予算は注目すべき要点を含んでいると思うのでありますけれども、では、その基本方針となった長期計画がどのように雇用、失業問題を取り上げているかという点がまず大きな問題になるわけであります。それから第二の点としましては、三十年度予算が、ではこの六ヵ年計画の第一年目としての、スタートとしてのリーディング・ポイントを持っているかどうか、そういう点が次に問題になるんじゃないかと思います。時間の関係もございますので、その二点について触れてみたいと思います。  まずその一番最初の点でありますけれども、この予算が基本方針としている経済六ヵ年計画が雇用問題をどう取り上げたかと申しますというと、ここでまず気になる点は、この計画では、六ヵ年計画では経済自立と完全雇用、失業問題をなくすというふうなことを、この二つの目標を非常にゆるやかな発展率で考えているということであります。それは具体的には生産に現われておりますけれども、年々大体六%くらい、六年間にしまして二二、三%くらいの経済活動の発展率を考えている。言いかえますというと、非常に自然成長的な発展率であります。年六%と申し上げますというと、月に直しまして、二ヵ月に一%のくらいの割合であります。そのくらいの割合で現在のこの失業問題が解決する、しかも経済自立も二つとも達成するんだというふうに考えられているようでありますけれども、現在のこの失業あるいは半失業が全国にどのくらいあるかということをごく単純な数字で申し上げますというと、実は私も一専門員でありますけれども、失業対策審議会で計算したところによりますというと、生活保護法くらいの所得水準と申しますか、そういう程度以下の失業者あるいは半失業者、そういうものだけでもおおむね六百万人くらいを数えることができるわけであります。それに完全失業者と申しまして、表面に出ている失業者もあるわけでありますけれども、そうしますというと、大体現在で日本の失業、半失業は七百万ないし八百万人あるわけであります。この数字と申しますというと、産業で申し上げますというと、現在の工業の雇用とほとんど同数であります。そのくらいの膨大な失業に対して、六カ年間で二三%というふうな、非常に自然成長的な経済活動の発展率で完全雇用が達成できるかどうか。これはもう非常に大きな疑問と言わざるを得ないんじゃないかと思います。その程度の発展率で完全雇用が達成されるということになるというと、あながち完全雇用を達成するんだとか、あるいは経済自立、完全雇用を達成するというふうなスローガン、そういうスローガンを掲げる必要はないんじゃないか、そういう気がいたしております。その点につきまして、やはり日本では非常に国民は失業問題ということに対して真剣になっておりますけれども、まだまだ一般には失業問題が経済につきまとっているのだ、失業問題というのは非常にしつこいのだというふうな認識がまだ足りないんじゃないかと思うわけであります。この点でこの六ヵ年計画は失業問題を非常に表面的にあるいは一面的に、しかも一時的なものとして取り上げているんじゃないかという点、この点がまた非常に私疑問となるのであります。  それから第二の点は計画の方法論であります。計画の方法論で疑問としたいと思うのは、最近非常に叫ばれておりますように、生産性の上昇というふうなことをやはりこの六ヵ年計画でも書いてあります。そうして生産性の上昇こそは日本経済の発展のかぎだというふうなことが書いてありますけれども、それが計画の方法論に用いられた場合はどのようになっているかと申し上げますというと、生産を上昇するというとコストが下る。コストが下るというと競争力が向上する。競争力が向上するというとマーケット、市場が拡大する。市場が拡大すると経済規模が拡大して、雇用が増大するというふうな論理の構成になっているわけであります。まさしく頭の中での論理構成はそうだと思いますけれども、そのような論理構成は、実は言いかえますというと、そのような考え方をすればそのようになるというふうなことでありまして、そうすればそうなると、そうなるはずだというふうなことでありまして非常にこの点は観念的じゃないか、もっとこのようにすればこうなるんだというふうな客観的なデーターと、客観的な政策、特にわれわれにもわかるような政策の裏づけが必要じゃないかという点が非常にあいまいになっておるわけであります。  それから、そのような考え方の不十分さと申しますか、と同時にもう一点は、この考え方に関連しまして申し上げたい点は、現在の雇用が、実はそのような生産性を上げろというふうなことで、そういう事態の裏で実は下っているということであります。戦後みなさんすでに御承知だと思いますけれども、例の石炭山におきましてはこれこそ最も象徴的にその生産を上げようと、合理化しようというふうな政策がとられてきたのでありますけれども、現在から雇用と生産との趨勢を顧みてみますというと、この鉱業こそ全くひどい目にあっておるわけであります。最も生産性が叫ばれた鉱業において最も失業がはなはだしいということは、この事実として、この計画の方法論がなお若干不十分な点があるというふうなことに気がつくわけであります。  それから非常に現実問題でありますけれども、私はもう一点この方法論に関して疑問とする点は、今年の二月十四日でございますか、日本の生産性本部というふうなものができました。そうしてこの生産性向上運動が非常に宣伝されておりますけれども、私は広いあるいは理論的なことはよくわかりませんけれども、雇用と生産の以上のような事実からしまして、果してこの生産性本部の言われる生産性向上が雇用を維持する、あるいは経済を拡大するというふうな方向にいくものであるかどうか、なおもう少し時間をかけてみなければ合点できないのであります。非常に現実問題を取り上げて工合悪いかと思いますけれども、そのようななお疑点があるということを指摘しておきたいと思います。  それから六カ年計画についてもう一点指摘しておきたい点は、最近実は六カ年計画が改訂されたというふうなことを聞いているわけであります。ある新聞で見まして、この改訂の要点がどこにあったかということを見ますというと、最初の第一次原案の雇用計画が、実は労働力人口、いわば職業を与えるべき人口の見積りが少な過ぎた。だから方々から非難があった。それでこの労働力人口を上げたというふうなこと、これによってこの改訂は、生産を上げあるいは所得を上げておられるようでありますけれども、この点につきまして非常に日本ではこのような人口と経済というふうなこと、人口と雇用というふうな点、そういうふうな幾つかの論点の整理ができていないと思うわけであります。  それから、この点につきましてはなお後で触れたいと思いますけれども、もう一つ、このように労働力人口を上げたり下げたりするというふうなことは、実は私非常に日本が人口が多いというふうなことに関連しまして、やはり人口が過剰だというふうな点、この点につきましてあまり神経質になり過ぎられたのではないかと思うのであります。私が申すまでもありませんけれども、戦時中から人口の問題が非常にやかましく日本でいわれております。そしてこの日本の人口問題は常に土地と申しますか、土地との関係で取り上げられるのでありますけれども、非常に不思議なことには、戦時中はこの人口に対して土地が狭過ぎるというふうなことがいわれたのであります。そうして土地をどこか見つけようというふうなことになったのではないかと思いますけれども、戦後は反対にと申しますか、言葉の上では反対に、この土地に対して人口が多過ぎるというふうなことがいわれておるわけであります。同じような言葉のうらはらだと思いますけれども、土地に対して人口が多過ぎる。だからこの人口を調整しなくちやいかんというふうなことをいわれておるのでありますけれども、もちろんこの人口問題というものは、私は言うまでもなく非常に経済問題、あるいは雇用問題とは関連が深いと思いますけれども、私たちこの世の中に生きて行きまして、このように人口が多いとか何とか、じゃま者にされたり、あるいは何かの種にされるということは、非常に情ないことじゃないかと思います。それからそのように人口と雇用と結びつけて考えると、特にこの人口と雇用を因果関係的に取り上げるということは、実は雇用問題あるいは失業問題を非常に単純に、頭数だけで取り上げると申しますか、職についていさえすればそれは失業者じゃないというふうに取り上げるということにしまして、日本のこの失業問題の独自の性格としての、いわゆる潜在失業と申しますか、あるいは見えない失業と申しますか、あるいは半失業と申しますか、そういうものに対する取り上げ方が全然はっきりしていないんじゃないかというふうな気が強くするわけであります。  以上で、もう三点ばかりが、三十年度予算が基本方針とした六ヵ年計画についての疑問であります。特に六カ年計画が、完全雇用と言いながら、どのように雇用問題を取り上げているかということに対する疑問であります。この点につきまして、以上のように、非常に考え方が安易であり、しかも頭の中だけで観念的に取り上げられている。それから肝心な経済問題とそれから雇用問題、人口問題、これらの論点の間の整理と申しますか、それがほとんど明らかにされていないということが指摘できるのではないかと思います。それから私非常に心配になる点は、六ヵ年計画で、実は六カ年の間に、あるいはこの六ヵ年後に、完全雇用を達成するのだ、失業問題をなくするのだというふうな言葉を盛んに言われますけれども、そのような言葉を言うことによって、今日この何百万人も困っている者に対する失業政策、あるいは失業救済、そういうものがぼかされたり、あるいは引き延ばされたりする危険が非常にあるのじゃないか。そういうふうになりますというと、せっかくの六ヵ年計画における完全雇用というふうなものも、われわれ国民にとっては非常に縁のないものとなるわけであります。そういう点がありますというと、六カ年計画についても、われわれ非常に関心が薄くなるというふうな、そういう点がひそんでおるということを非常に心配するのであります。ひそんでいるのではないかという点を心配するのであります。  それから私が第二に問題にしました、では三十年度予算は、失業問題から見て、どこに、完全雇用への第一年目としまして、どのようなスタートとしての芽ばえ、あるいは契機を含んでいるかどうか、この点につきまして触れてみたいと思います。時間もありませんので簡単に触れたいと思いますけれども……、と申しますというと、六カ年先の問題も重大でありますけれども、われわれにとっては、今日、現在が非常に問題であります。特に本年は、すでに新聞なんかにも発表になっておりますように、石炭の合理化法案、あるいは地方財政の再建整備などによって、非常に大きな失業が起るのじゃないかというふうに感ぜられるのでありますが、それからけさの新聞なんかにも載っておりましたように、日本産業自体が非常に不安定なために、特に特需なんかに現われておりますように、失業が一方的に作り出されるんじゃないかというふうな心配があるのであります。そういう点からしまして、しかも現在いわゆる官庁統計による完全失業者も七十万前後に達しておるのであります。そういう失業の現状であるのでありますので、特にこの三十年度予算が失業政策をどう組んでいるか、雇用政策をどう規定しているかということは重大問題になるわけであります。  その点でまず、私しろうとながら財政問題、あるいは投融資の問題について触れてみたいと思いますけれども、財政問題は、私たち新聞程度で見る限りにおきましては、いわゆるふえたのは防衛費と住宅費でありまして、まあその二者が非常に目立っている。しかしながら住宅費は、公共事業費が減っているので、実は相殺されるのではないかというふうな見通しもつくわけであります。そうしますというと、単に防衛関係費だけの増大ということになりまして、これは実は国民の失業問題につきましても、ほとんど縁のない——と申しますか——ものと言わざるを得ないと思うわけであります。戦時中はいわゆる労働力の軍事動員というふうなものは、決して雇用とは関係のないものだということは、私が言うまでもないことだと思います。それからその財政投融資関係を見てみますというと、この点につきましても、私専門家ではないので詳しいことは存じませんけれども、特にこの開発銀行で、電源開発会社、それから輸出入銀行関係に大きな融資がなされておりますけれども、この点で気になります点は、いわゆる電源、あるいはこの海運に示された造船、それから石炭、鉄鉱、機械など、いわば基幹産業の合理化資金と言っていいと思いますけれども、この基幹産業の合理化資金があることによって、この雇用が増大するというふうなことは、先ほど申し上げましたように、この経済六カ年計画の論理とほぼ一致するのじゃないか。産業の基幹になるところにこの合理化をして投資をすれば、やがてはこの経済規模が拡大するというふうな考え方でありまして、先ほど指摘した疑問がここにも当てはまると同時に、その程度のものでは、この三十年度に、雇用に対して積極的に拡大するというふうな芽ばえがあるかどうか、私は見出すことができないのであります。雇用政策としての積極的なポイントがどこにあるか、私は見出し切れないのであります。  それから次に第三点としまして、ではそのような雇用政策というふうなものは、非常にこれを見出すに困難であるけれども、ではこの失業救済面と申しますか、この雇用政策に対しまして、失業対策と申しますか、そういう点でどうであるかというふうな点を見てみますというとまあ新聞その他で知る限りにおきましては、政府は昨年に比べまして、今年はこの失業者を、救済すべき失業者の数を、二十万人ほど余計に見積ってそしてこれを公共事業や、あるいは特別失対事業や、あるいは緊急就労事業で救済するのだというように言われておりますけれども、果してこれが失業救済として吸収できるかどうかという点につきまして、私は次のような点をなお疑問としているのであります。  その第一点は、政府の失対事業、その他は、国が予算で組まれるのでありますけれども、実は地方公共団体が非常に多くこれを負担するわけであります。そうして末端に行けば行くほど、失業対策費のための負担というふうなものは、非常に経常的な経費であって、しかもそれがだんだん固定化して行っているのであります。だから、まして今日のような、この地方財政の赤字みたいな、あるいはこの苦しみの中で、この失対事業の負担というふうなものを負担できるかどうか、これはまた非常に疑問だと言わざるを得ない。それからもう一つ公共事業であります。この点は非常に問題が多いと思いますけれども、要点だけ申し上げますというと、公共事業で、この失業者を吸収するのだというふうなことを言われておりますけれども、実は公共事業につきましては、その終戦直後始まったばかりの公共事業は、失業者を優先的に吸収するのだというふうな原則があったのでありますけれども最近それがだんだんなくなってきているのであります。しかしながらやはりこの二十九年ごろから、それでは工合が悪いということが確認されまして、失業者をこの公共事業で吸収しようというふうな方向に向いておりますけれども、実はこの公共事業の場所は、失業者が存在する場所というふうなものと地域的なズレがありまして、公共事業で吸収することは言うほど容易なことじゃないのであります。特にこのためには労働者が移動しなくちゃいかん。そのためには住宅も要るわけであります。それから移動しますというと、この移動先から自分の家族に送らなくちゃいかんというふうな、二重生活の負担もあるわけであります。そういう失業者の存在と、公共事業の実施地域とのズレと申しますか、そういう点からしまして、非常に公共事業は思うほど失業者吸収は容易じゃないわけであります。それから公共事業についてもう一つ申し上げたい点は、公共事業は大きな公共事業ほど請負会社がやっておるわけでありまして、国営とは言いながらも、ほとんど請負事業がやっておるのでありますけれども、請負事業に言わせますというと、失業者を吸収するというと、非常に能率が悪くなるということを言われるのであります。だからしまして、経費がかさむことが、失業者吸収率のせいにされておるような傾向があるわけであります。そういうような点から、失業者吸収と言いながらも、実際は職業安定所の方へ、これだけ吸収しましたというようなことを届けるだけでありまして、実人員が果して吸収率であるかどうか、この点は非常に疑問と言わざるを得ないのであります。私、北上から北海道の公共事業その他を回りましたけれども、多分にその点につきましてはあいまいしごくだと言い得るのであります。それからもう一つ公共事業について、これは雇用とは直接関係はないと思いますが、そういう点があるかもしれませんけれども、実は失対事業もそうでありますけれども、このような失対事業、あるいは公共事業は、非常に資材費が高まりまして、労力費に食い込んできておるわけであります。そうして労務費が少いために、労働力の吸収率が低くなっておるのでありますけれども、私はそこに疑問があるのではないか、資材費が高くなって行くのを放置しながら、単に労働費、賃金だけを統制して、例のPWその他で統制しておるように見えますけれども、このような事業はいわゆる鉄とかセメントとか、そういう資材の物価と申しますか、そういう点につきましても賃金と同様のやはり規制があってしかるべきではないか、資材は値上りをする、その他資材費にこの労力費が加わるというようなことは、ぜひとも避けてほしいと思うのであります。  それから最後にもう一つ。このような言わば労働力を伴うような失業対策、これに対しまして、金銭給付でやる失業保険みたいなような失業対策もあるわけでありますけれども、失業保険につきましては実は前日どなたか報告されたと思いますので省きたいと思いますけれども、そのような金銭給付でなくて、労働力を伴う失業対策というようなもの、このようなものがいわゆる失業対策として……失業対策と申しますというと本来的には失業者が職がない、このまま労働力を保持して、職があった場合にそのままつけるというようなものが、本来的な政策だと思いますが、そのような本来的な失業対策に照らしまして、そのような就労を伴うような失業対策が失業対策であり得るかどうかということは、私ももう少し研究してみなければいかん点じゃないかと思うわけであります。そのような経緯からしまして、特に三十年度だけをとり上げましても、この予算が基本方針としている六ヵ年計画のスタートとしての線があるかどうか、この点につきましても非常に疑問であります。そのような点からしましても、最近審議庁では、審議庁の役人の方の声を聞きますというと、完全雇用というようなことは一つのタブーというように一口止めされておると申しますか、タブーと言われるようになってきておるというようなことを、かすかに聞いております。やはり三十年度だけ取り上げましても、日本では雇用、失業政策というようなものが非常にあいまい模糊であるというような点を指摘せざるを得ないわけであります。  以上私は六カ年計画自体と、三十年度だけに着目して申し上げましたけれども、もう二、三分時間をかけまして、追加しておきたい点は、非常にこの失業問題がわれわれにとりましては重大問題である。資本主義の最初のころは、実は生活の貧乏というふうなものは個人的な事情でありまして、病気その地酒飲みとか、個人的な習癖が貧乏の原因であったのでありますけれども、最近の貧乏の原因は主として失業によって貧乏になるというふうな傾向であることは、これは言うまでもないと思いますけれども、そのような失業問題につきまして、何回も申し上げましたように、人口政策というふうなものと経済政策というふうなもの、さらには雇用政策というふうなもの、そういう点につきまして、非常に人口問題と雇用問題と結びつけたり、あるいは経済政策と雇用政策とを一緒にしたり、そのような、非常に不十分な取扱い方じゃないかと思うわけであります。この点につきまして、参考のために、諸外国では経済政策、特に経済政策と雇用政策がどのような結びつきで発展してきたかと申し上げますというと、まず、非常に以前は、失業問題は個人の問題だ、今申し上げましたように個人の問題だというふうなことからしまして、いかにして個人をいわば労働者として訓練するかというふうなこと、そのようなことが失業政策、あるいは雇用政策の骨組みではあったのじゃないかと思うわけでありますけれども、だんだん経済が発展してきますというと、産業が非常にいろいろな格好で発展してくるわけであります。そうして鉄鉱業が栄えているかと申しますというと化学工業が栄えてくるというふうなことから、実は失業問題というふうなものは、そのような産業のいろいろの発展の仕方の変化、それによって起るのだというふうなことが言われたわけであります。実はビバリッジというふうな学者がこのことを摩擦的失業と申し上げまして、労働市場でこれをいかに順応させるかというふうな点を取り上げてきたのであります。しかしながら、その後、特に第一次大戦後におきましては、失業問題はケインズ理論、私はよくケインズ理論はわかりませんけれどもこのケインズが言っておりますけれども、経済全部の問題だ、こういうふうなこと、そういうことになってきているわけであります。失業は経済全部の問題であって、実はそのための投資が足りないから、国民所得を再分配して投資をうんと殖やさなくちゃいかぬというふうなことを、そういうことをケインズが指摘しているわけでありますけれども、日本では、この辺のおそらく時期的な観察と申しますか、にあるのじゃないか。あるいは、この辺に焦点を合せておれば、もっと有効な効果があると思いますけれども、大体この辺で停滞しているのじゃないか。しかしながら事態は、第二次大戦後におきましては、そうじゃなくて、これまでと同じく経済全部の問題である。失業問題は経済全部の問題として取り上げなくちゃいかぬ、こういうふうに言われるのは、このケインズ、いわゆる第一次大戦後と同じでありますけれども、第二次大戦後特に注目すべきことは、同じような分配政策の面におきましても、イギリスのこれはビバリッジその他が考え出していたように、人間のための予算、マン・パワーのための予算というふうな、そういうことまで持ち出されておるのであります。それからもう一つ進んだものとして、例の分配政策だけではなくて、生産政策までメスを入れて雇用問題は解決しなくちゃいかぬというふうなところまで進んできているわけであります。そのような実は雇用、失業問題に対する、何と申しますか、論点の推移、そのようなものをもう少し日本でもいいところはもっと敏感に取り入れていいじゃないか、そういう気がいたしております。  それからもう一つ総括としてつけ加えておきたい点は、日本の潜在失業というふうなものをどう取り上げているか、この点であります。失業問題に知識を持つ者が予算その他を取り上げてみても、さっぱりわからないのであります。潜在失業がどう認識されているか、その点につきましての疑問があるだけであります。と申し上げますというと、非常に数字的なデータで失礼でありますけれども、大体日本全部で、去年二十九年度一ヵ年に、いわゆる産業に就職したもの、入職したものが百万であります。しかしながら産業から首を切られたものが大体百十四、五万から二十万、それからその間に学校卒業者のうち、特に職業を必要とするものが七、八十万人あるのでありまして、いわゆる就職したものが百万ありますけれども、職業につきたいといって出たものが大体二百万人くらい去年一カ年にあるわけであります。そうすると、この間に約百万人があぶれてきておりまして、いわば職業についていないわけでありますけれども、政府の統計で見てみますというと、完全失業者の失業統計では、去年一ヵ年に十三万人ふえただけにすぎないのであります。そうしますというと大体百万から十三万引きました八十万ないし九十万というようなものがどこに行ったか、どうしているか、こういう点に対しまして現在の予算なり、あるいは政策として、どのように取り上げられているか全く疑問であります。六ヵ年計画ではこのような潜在失業の問題、半失業の問題がどうなっているか全く疑問でありまして、この点の実証的な分析、あるいは潜在失業の原因、あるいはこれに対する対策、そのような諸点につきましての整理というようなものが非常に不十分じゃないかというふうな気がいたしております。  それから最後にもう一点だけつけ加えさせていただきたい点は、実は私がそのように申しますというと、財政投融資をふやせばいいじゃないか、あるいは何か公共事業費の予算をふやすのを君は希望しているのじゃないかというふうに言われるに違いありませんけれども、私は日本経済の苦しさというふうなものは、私ども研究員として皆さんと同じくらい認識しているつもりであります。そうして、だからしまして雇用のための予算をふやせという一点張りのことを言っているつもりではないわけであります。と申し上げますというと、やはり予算というふうなものは単に一兆円とか、あるいは何千万円というふうな数字の問題だけでないのじゃないか。数字で解決つく問題でないのじゃないかという点だけを指摘しておきたいのであります。と申し上げますというと、先ほどの石炭業の場合でも明らかなように、実は雇用、失業問題に対する非常に正しい認識と申しますか、あるいは十分な認識と申しますか、そういうものがあれば、予算の数字以上のいい政策が生まれてくるのじゃないかという点、その反対に不十分な認識、あるいは非常に失礼でありますけれども、間違った認識の上で雇用、失業問題を取り上げるというと、相当な数字の予算を組んでも、やはり成功する度合いは少いのじゃないかという点、この点を最後にぜひとも私としてはつけ加えさしていただきたいのであります。と申し上げますというと、先ほどのように、非常に日本ではまだ雇用問題、あるいは人口問題、それから経済問題、この辺の整理、あるいは現状認識、あるいは世界的な論点の推移と申しますか、それに対する感覚と申しますか、そういう点が非常にズレている、あるいはあいまいであるという点を私は言って、報告しておきたいからであります。特に現在失業問題の重要な折から、実は前年までは失業問題独自でこういう公聴会があったというふうなことは、私よく知りませんけれども、今年から特にこのようなテーマについて独自に取り上げられたということは、失業問題に対する問題性が非常に大きく取り上げられんとする証拠だと思いますけれども、そういう機会を与えられまして特に私はその点を強調しておきたいのであります。  それからついででありますけれども、この金の問題、私は金をたくさんつけたらいいということだけで言っているのではないと申し上げましたけれども、もう一つ参考に申し上げたい点は、日本の……そう言いながら私は生産性問題にも触れましたけれども、新しい機械なり、それがどんどん入るというようなことに対しても反対しているわけではないのであります。たとえば鉄鋼業なんかにおきましては、すでに皆さんが専門家と思いますけれども、ストリップその他が入ってきまして非常に上を下への大騒ぎをしているわけでありますけれども、そのような優秀な機械を鉄鋼業で使うこと自体私はちっとも反対するわけではないのであります。そのために雇用が若干減ったとしても、これはやむを得ないと思うのでありますが、同時にそのような優秀な機械を入れるだけの余裕のある所、あるいはそのような生産力の水準にある所、そういうふうな所は労働時間の短縮なんかはぜひ考えて失業問題の緩和にしてほしいということであります。と申しますというと、日本はまだ低いと思いますけれども、非常に生産力の高い所で現在四十八時間の労働時間を持っておる所は非常に珍しい。しかし日本では労働基準法もあいまいであり、あるいは四十八時間どころか非常に長い労働時間になっているというふうなこと、そういう点と雇用問題というふうなものはぜひ結びつけて考えてほしいのであります。それからそのような所で、たとえば中小企業問題その他が起っておりますけれども、中小企業の、いわゆる手による労働とさびた工作機械、そういうものまで現存しろ、こういうものを新しくすると雇用がなくなるからと、そういう点までの私は否定しないのでありまして、そういう所でもあとう限り機械は近代化してほしい、そうして生産の力を上げてほしいと思うわけであります。と同時に、そのような小さな所と大きな所との契約、特に発注契約あるいは下請契約、そういうものは非常に公明正大に、特に経済的な、近代的な契約を続けてほしいという点であります。  それからもう一つは、労働力のやはり供給というふうなものを、一般には人口を抑制する、人口が多過ぎるのだというふうなことで供給面に対する対策が考えられておる面もあります。特に最近移民問題その他が起りまして、日本人口が八千万あるけれども、これが六千万くらいになればいいのじゃないかということを平気で言っておる人がありますけれども、そういうことは非常に二千万と申しますか、——の人に対して失礼になるのじゃないかと思うわけてあります。特にそういう点につきまして、人口が多過ぎるというくらいならば、私は社会保障してほしいと思うのであります。と申しますというと、もうすでに皆さんの中でも体験者があると思いますけれども、日本では非常に社会保障が不備であるわけであります。だからしまして、私たち六十五才以上になっても職場に出なくちゃならぬわけであります。それからまた病気をしまして、特に肺結核になったり、あるいはけがをしても休むわけにいかないわけであります。そういう場合に休むというと、あるいは家計が困る、あるいはやたらに病気のために休むというと首になる、こういう危険があるわけであります。そのようなことからしまして、社会保障というふうなものがもう少し完備すれば、私はいわば労働力の供給と申しますか、そういう面の減少には非常にすぐれた、りっぱな政策となるのではないか、非常に小さな金額であってもそうした社会保障のための費用というふうなものは労働市場の緩和に役立つと同時に、やはり他の一面では国内市場その他に波及して行く度合いも大きいのではないか、そういう気がするわけであります。  非常につけたし的な報告でございますけれども、しかも非常に初歩的な点でありますけれども、私大胆に自己の論点を整理して皆さんの参考に供したいと思うわけであります。

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) ありがとうございました。

佐多忠隆日本社会党(第四控室・左)

○佐多忠隆君 経済六ヵ年計画の完全雇用の問題ですが、御説明で半失業が六百万なり七百万というようなものがいる場合に、この問題が考えられていないというようなお話であったと思いますが、これはおっしゃる通りに、この計画では、たとえば三十二年度に五十五万三千、それから三十五年度に四十三万五千というような完全失業者を認めて、その程度の減少を計画しているにすぎない。このことは、裏を返して言えば、その間に増加する労働人口は一応吸収はするが、現在存在している半失業の吸収ということまでは及ばないのみならず、完全失業者も十何万を減少するにすぎないのだということを数学的に示しているにすぎないと思うのですが、これは計画自体がちゃんとそういう問題があることを知っていて、意識的にこういうふうにしておるのか、それとも、問題の所在を知らないでこういうことにしているのか、その辺はあなたはどういうふうにこれをとられるのか。

松尾均国民経済研究協会理事

○公述人(松尾均君) 今の質問でございますけれども、この潜在失業を六カ年計画では全然触れないと申しましたけれども、実は表面的な、私たちの手に入るような資料では触れてないのであります。しかしながら、いろいろ聞いてみますというと、約二百万程度の潜在失業は考えに入れたということを聞いております。しかしながら、潜在失業に対する対策あるいは考え方が、実はまことに日本的でありまして、失業というふうなものを、職があるかないかというような形式的な区別で、いわば半失業的なものは失業者に入れなくて、就業者に入れるというふうな点、こういう考え方がまだ抜け出てないと申しますか、それは当然と申しますか、十分指摘できると思います。しかしながら今申し上げましたように、二百万程度の潜在失業を何とか考えなくちゃいかぬというふうな点は、審議庁でも苦慮されたようでありますけれども、この点につきましての審議庁の考え方と申しますか、それを申し上げますというと、計画のスタートはやはり完全失業というふうな表面的なものでスタートする。しかしながら、その土台には今言ったような二百万程度の潜在失業者はあるのだと言われるのであります。だからしまして、計画の発展の過程におきまして、年々の新規労働力、それを吸収すると同時に、潜在失業の方は、いわば半失業の方は、だんだん雇用の内容を充実して行くのだというふうに考えられているようでありますけれども、その雇用の中味を充実するというふうなその手段と申しますか、それは一つは所得の増加によるということを言っておるのであります。自然成長的な発展率で所得がどのくらい増加するか、非常に緩慢だと思いますが、そのような所得の増加によって雇用内容の充実をはかるというようなことをうたっていると同時に、他の面では非常に労働時間が長いから、労働時間を短縮するということも考えられるというふうなことも言っているのでありまして、非常にあいまいではありますけれども、そのような考え方はあるのじゃないか、所得の上昇と労働時間の短縮によって埋めるというふうな考え方はあるのじゃないかと思いますけれども、何しろ二百万の数字というふうなものは、先ほど申し上げましたように保護法以下の者だけでも六百万はある。だからしまして、厚生省その他の意見もありますように、一千万人くらいの要救済者があるのだということは当然であります。そのように少く見積るというふうなこと、そういうあいまいさは免れないのじゃないか、申しますというと、私はその点の考え方が若干何かしらん正しい方向があるように思うのですけれども、もう一つつけ加えておきたい点は、潜在失業に対する基本的な考え方がおくれているのじゃないかと思うのであります。と申し上げますというと、潜在失業は皆さん御承知の通り、農村あるいは中小企業その他にありまして、非常にいわば古い関係と申しますか、おくれた産業などにあるわけであります。だからしまして、潜在失業対策というふうなものは、そのような時間問題というふうな点よりしては、日本の雇用失業を近代化するというふうなところに重点があるのじゃないか、非常にこの農村から出てくる人は、あるいは中小企業から出てくる人は、自分の労働力に対する評価その他に欠けている。だから食えさえすればいいとか、あるいは口さえ減ればいいという観念であるわけであります。そういうことではこの日本の失業問題というふうなものは解決されないのでありまして、私が特に申し上げたい点は、失業問題、特にこの潜在失業問題の解決は、まず日本で失業対策を確立しようと思えば、対象となる失業者というふうなものを的確に把握するような事態にならなくちゃいかぬ。対象がぼやけているところに対策があり得るはずはないのであります。だからしまして、そういう非常に六カ年先の時間問題その他よりは、特にこの潜在失業問題に関する基本的な問題は、いかにして日本の失業を近代化するか、失業者を失業者としてはっきりせしめて、失業対策を確立するかというふうなことが、まず基本的になければならない。そのためにはやはりそのような口減らし的なもの、あるいはもうただでも働くというふうなこと、そういう状態をいかにして抜け出るか、やはりこの点につきましては去年なんか特に革新政党では取り上げられましたように、最低賃金制度なんかはこの潜在失業政策の最も有力なポイントとなると思いますし、それに伴って日本のこの労働の市場、いわゆる労働力のマーケットが全国的に組織されて行くのじゃないか、そういうところに実はこの潜在失業の対策のキイ・ポイントがあるのじゃないか。その点につきまして、若干この六ヵ年計画は潜在失業には触れてはいるにもかかわらず、焦点がぼやけているというふうな点、それからやはりその辺の取り上げ方あるいは考え方が非常に自信がないと申しますか、そういう気がいたしております。

佐多忠隆日本社会党(第四控室・左)

○佐多忠隆君 わかりました。もう一つ、生産性向上本部の問題が出ましたが、生産性向上本部の考え方としては、コスト切り下げ、従って設備の近代化、合理化、能率化というようなことになる。そうすると失業が出ることは当然だと思いますが、それの対策としてはどういうふうに考えているのか。たとえばそういうふうに失業が出るとすれば、その失業救済の問題として財政なり予算の問題で考えるべきだという考え方なのか、生産性を向上することと関連をして、むしろ別な意味において雇用量の増大が結果されるから、そっちでおのずからその問題は解決をするのだというふうに考えているのかどうか。そこらの生産性向上と雇用の問題を、あそこではどう考えているか、そいつを御説明願いたい。

松尾均国民経済研究協会理事

○公述人(松尾均君) 生産性向上運動と申しますか、特に生産性向上本部までできて、それ自体の中における生産性向上運動ということが、非常に現在ただいまのことでありまして、微妙な問題であると思いますけれども、特に生産性向上本部下の生産性向上運動というふうなものと、それから一般に生産性と雇用というふうなもの、その点につきましては若干私考え方を異にしているのでありますけれども……。

佐多忠隆日本社会党(第四控室・左)

○佐多忠隆君 本部はどう考えているか……。

松尾均国民経済研究協会理事

○公述人(松尾均君) 生産性本部下の生産性向上運動と雇用の関連について申し上げますというと、先ほどもちょっと触れましたように、これは生産性向上運動というふうなものは、日本では去年から始まりましたけれども、西ヨーロッパではすでに昭和二十二、三年ころから始まっているのであります。それが特に西ヨーロッパの場合は、戦後は消費財物資の生産というふうなものに重点があったのでありますけれども、日本は若干おくれてきた関係上、初めから重工業の生産性というふうな点にねらいがあるようでありますけれども、西ヨーロッパでもそうでありますけれども、日本でもそうで、全く同じことは、生産性を上げることは雇用の増大になるということ、これはもうこの生産性本部ができた国では、実に私たちも耳にタコのできるほどどこでも言われておることであります。生産性向上運動は雇用を上げるんだということはよく聞く言葉であります。しかしながら私はそのような生産性向上が雇用に対してどうなっているかということは、たとえば経営者の方、あるいは日本経済に対して非常に心配される方は、全くその通りであって生産性は雇用を上げるためにあるのだ、だからやがては国民経済の規模が大きくなるんだということを言われますけれども、私たち研究員といたしましては、もう一つの意見のあることも聞かざるを得ないわけであります。と申しますというと、生産性というふうなものは、これを上げるというと雇用が下るんじゃないか、だからして雇用を下げるような、あるいは首切りをするような生産性向上には反対だというふうな、いわば労働組合的な意見のあることも十分研究してみなくちゃいかぬと思うわけであります。その点につきまして、そのようないわば雇用が上るんだ、下るんだというふうな理論よりは、実際におきましてこの生産性運動のもとで雇用がどうなっておるかということを、私たち見た方が早いわけであります。そういう点からしますというと、実際の統計なり、事実からしますというと、先ほどから申しましたように、どうしても生産性運動というふうなものが、今のままで取り上げられるというと、やはり雇用は少くなるのじゃないかというふうに思うのであります。と申し上げますというと、私は単に観念的に言っているわけではありませんで、先ほど申し上げました鉱業——マイニングの場合を見てみますというと、終戦から二十三年くらいまでは生産も上ったわけであります、そうして雇用も上ったわけであります、だから生産性も上ったわけでありますけれども、二十七年から二十八年くらいの推移を見てみますというと、まず生産は上りました、しかしながら雇用は下ったのであります、しかしながら生産性はうんと上っておる、こういうふうな事実であります。しかしながらさらにこれが二十九年、生産性向上本部が騒がれだした年以後の推移を見てみますというと、一番上ったのは生産性であります。そして実は生産も雇用も下っている、特に雇用は一番下り方がひどいというふうな事実、こういう事実は私はやはり生産性向上、あるいは生産性本部というふうな理論の戦いの以上に、このような事実はやはり雇用に対しては非常に減少面に働くんだということが事実として指摘できるのじゃないか。この場合にマイニングだけ事実として取り上げるのは工合が悪いかもしれませんけれども、少くとも一つの事実としてはそういう点があるというふうなこと、それから最近の雇用が一般に下っているというふうなことは、官庁統計でもはっきりすることであります。そのようなことからしまして、生産性向上本部下の生産向上運動というふうなことで、雇用拡大、雇用規模拡大、国民生活向上と言われるような言葉は、私は少くとも、事実としてみるものはもう少しよしあしの判断、あるいは特にこれを肯定するというふうな方向にいくことをちゅうちょせざるを得ないわけです。この点につきましても私は先ほど申し上げましたように、せっかくこの生産性を上げるのならばやはりこの際特に生産性の上った反面に起るであろうような、いろいろな失業問題、それに対してはもっと失業補償、社会保障そういう点の対策がぜひ必要ではないかと思っているわけであります。その点につきまして私はやはり雇用問題、特に失業問題から生産性本部への生産向上運動にどのように対したらいいかということについて考えてみますというと、やはり日本の産業自体が不安であるというふうな点、こういう点につきましては、もっとわれわれ真剣に考えなくちゃいかんであろうと思うのであります。と申しますというと、終戦直後私たち、私たちというと語弊がありますけれども、国民全部が実は非常に生産が低かった、だから完全雇用を維持しながらもっと生産を上げる方法はないかというふうなことを私なんかも机上で作りましたし、いろいろ人と接触して考えてみたわけでありますけれども、やはり産業構造が不安定だという場合は、非常にこのような考え方が机上プランになってしまうというふうな気がいたすわけであります。特に今日新聞に載っておりますように、特需なんかも一方的に首切られるというふうなこと、そして首切りはやはり下請その他に波及するというふうなこと、そういう点からしましても最近の生産性向上に対する見方というふうなものは、それの一つの柱は、私はやはり産業構造をいかに日本的に安定化していくかというふうなこと、この辺の研究がやはり一番大きな柱じゃないかと思うわけであります。

佐多忠隆日本社会党(第四控室・左)

○佐多忠隆君 わかりました。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 失業救済の目的を達して、しかも公共事業の能率を上げるという、何か具体的なお考えがあれば承わっておきたい。

松尾均国民経済研究協会理事

○公述人(松尾均君) 公共事業をやって、失業対策を成功する方法でございますでしょうか。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 失業救済の目的を達して、しかも公共事業としての能率を上げるという、その合致の調整策です。

松尾均国民経済研究協会理事

○公述人(松尾均君) その点につきまして、公共事業で果して失業救済と申しますか、失業労働力を吸収して成功するかどうか、あるいはそれが本来的なものであるかどうかという点、この点につきまして実はちょっと先ほども触れましたように、終戦直後の公共事業は失業者優先雇用というふうな原則を立てたのでありますけれども、公共事業をやっていくうちに、たとえば先ほども指摘しましたように、大きな公共事業は請負会社が請負ってやっている、土建会社がやっているというふうな実態もありまして、だんだん失業労働力は吸収しなくなった、それは公共事業の地域と失業者の存在地域とのズレもありますけれども、実際はそのような失業者を吸収するような方向がだんだん薄れていったのであります。そうしてデフレ経済その他にぶつかりまして、また失業問題が出て来ますと、公共事業でもう少し吸収率を上げたらどうか、特に今年は、三十年度予算は、公共事業の額は減っておりますけれども、吸収率を上げようということで失業対策を考えているようでありますけれども、私、非常に、あるいは個人的な意見かもわかりませんけれども、公共事業が果して公共事業としての事業的な面に重点を置くか、あるいは失業救済としての面に重点を置くかということ、この点につきましてはなお検討をする余地があるのじゃないかと思います。と申し上げますと、先ほど申し上げましたように、公共事業は少い予算の中で能率を上げてやらなくちゃならぬわけであります。この点はもう予算の都合上どうしても至上命令だと思うわけであります。にもかかわらず地方において失業者を吸収するという命令と申しますか、精神が入りますと、私が心配しますのは、事業の面でも、あるいは失業者吸収の面でもなまはんかになるのじゃないかと思うわけであります。その点につきまして、まあ今後の方向と申しますか、一つの方向として考えたい点は、事業は事業なりにもう少し事業のあり方、特にそこで雇用する労働はどういうものであるかということ、あるいは事業にどのような精密度を要するか、どのような時間で仕上げなくちゃいかぬとかいうふうな事業面の検討が必要である。同時にもう一つ、一方では労働力の面で、そこに行って働く労働者はどんな人であるか、あるいは婦人であるか、あるいは若い者であるかというふうな検討がなお必要であると思いますけれども、そのような検討を進めた上で、やはり非常に端的な私の考えでありますけれども、事業に非常に重点があるというふうな場合は、失業者吸収は排除してもいいのではないかと思うのであります。そのかわりに、たとえば公共事業に行けそうもない、あるいは公共事業のような非常に重要な、あるいは重労働には耐えない労働力に対しましては、そのような事業目的を中心としないような事業をなお考えておくというふうなことが必要じゃないか。だからしましてやはり公共事業は国の事業であるわけでありますので、特に事業面をもっと重要視して、雇用面ではある程度整理してもいいのじゃないか。しかしながら他面雇用面に重点を置くような事業をもう少し前進させる必要があるのじゃないか、というふうな方向が考えられるのじゃないかと思います。

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) これにて一時二十分まで休憩いたします。    午後零時四十一分休憩    ————・————    午後一時四十五分開会

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) 休憩前に引き続いて公聴会を開きます。  大島堅造君に公述をお願いしたいと思います。

大島堅造経済評論家

○公述人(大島堅造君) 私は三十年度の予算を専門の国際経済の角度から意見を述べさしていただきたいと思います。  戦後の各国のおもな国の予算の編成を見ますというと、終戦の直後はどこの国でもすべてが混乱していましたからして、なかなか考え通り行かなかったのでありますが、大体において、戦争が済んで三年たった四十八年ごろからして、どこの国も均衡予算をとる、こういう政策をとって参っております。そうしてそれに関連してインフレーションを防止する、そうして健全通貨を確立する、こういう政策をどこの国でも皆なとって参りました。もちろんそのころにおきましては、均衡予算ということはなかなか実行は困難である。今日でもやはりそういう国もありますし、フランスのような国はそのいい例でありまするが、そういう場合におきましても、原則としては均衡予算をとる。で、万やむを得ず赤字公債を発行する場合におきましても、その赤字公債はおのずからワクを作りまして、その国で確実に貯蓄ができるその貯蓄の範囲内で赤字公債を消化させる、こういう政策をとってきております。それはやはりインフレーションをやらない、こういう建前からきているわけであります。赤字公債を出しましても、ほんとうにこの真正の国民貯蓄でこれを消化するということになりますと、インフレにはなりません。健全通貨ということを日本でも最近はモットーにしまして、今年度の予算編成大綱、ことしの一月十八日の閣議決定を見ましても、その線がやはりほかの方針と一緒に強く打ち出されております。これは当然なことでございまして、第一次大戦のあとで、それをやらなかったがためにえらい失敗をして、しまいには世界大恐慌を起すような原因を作ったものでありますからして、その教訓の一つとしてインフレーションはやらない、あくまで健全通貨制度を守ってそうして貯蓄をふやして、その貯蓄を投資に向けて産業を興して完全雇用に導く、こういう政策をどこの国でもとっているわけであります。健全通貨というものは、これは私がもちろん言う必要はないのでありますけれども、具体的に申しますならば通貨には二つの価値があります。表と裏の関係がありますが、国内価値と対外価値の二つがあります。国内価値というのは何かと申しますというと、これはその通貨の国内における購買力を示すものでありまして、要するに物価指数がこれを代表しております。対外価値と申しますのはこれは為替相場でありまして、国内の場合におきましては、政府の権力によりましてある程度人為的にその価値を安定させることをやりますけれども、対外価値、すなわち為替の場合におきましては、これはよその国で自由にこれを売買決定することになりますからして、これは国権の及ばないことになります。従って一番一国の情勢、財政はもちろん金融その他の経済上の情勢を知るのに便利な方法は、その国の為替相場、世界の自由な批判のもとに現われてくるところの為替相場を見るというとよくわかります。かようなことでありまして、予算編成の方針と申しましても、やはり健全通貨を維持する、こういうところに根本方針が置かれておるわけであります。  しからば、この為替相場の安定は一体どういうふうにしたらいいかというと、これは個人の経済でも同じことでありまして、対外収支の均衡をとれるようにするというほかは道がないのであります。対外収支には貿易からくるものと貿易外からくるものとがありますけれども、普通の国としてはやはり輸出を増加する、こういうことが一番手っ取り早い方法でありまして、輸出を増加して、そうして対外収支勘定が黒字になりますというと、いやでもおうでも為替相場というものは安定をして、そうしてほかのスペキュレーターがこれをどういじってもやはり安定はくずれません。だからして、どこの国でも第二次大戦のあとの様子を見ますというと、輸出を盛んにする、輸入はなるべく押える、そうして対外収支勘定を黒字にして為替相場を安定させる。もし、たとえ国内の通貨価値が安定をしておりましても、為替相場がくずれて参りますというと、すぐにはね返って国内にインフレーションを起します。第一次大戦などでもドイツの例などは一番いい例ではないか、こう考えております。従って予算を編成するに当りましても、貿易政策としてはなるべく輸出が伸びるようにする、ドイツなどではこれを非常に力を入れてやって今日の繁栄を見た次第であります。それは皆様方よく御存じのことと思いますからして詳しいことは私は申しません。しからば、この輸出を増進させるというのにはコストを下げるという以外に道はないのであります。コストを下げるのには投資を盛んにやらなければいかぬ、生産設備の近代化、それに力を入れてやらなければいけません。しかしながら、ここで重大な点は、生産設備を近代化するために莫大な投資をやる、これはフランスが一九四七年から五年計画で、もう五年計画は完了しましたけれども、約五兆フラン、日本の円とフランとは大同小異でありますが、五兆円投じました。一カ年に一兆円以上の投資をやったわけであります。ところがその大部分はすべて赤字公債でまかなったわけであります。経常予算の方ですらもフランスでは大きな赤字でありますからして、それを経常歳入からこの投資を支弁することができない。そこでこれは全然政府の財政から引き離しまして、そうして赤字公債で資金を調達するという政策をとったわけであります。五年経過したあとの様子を見まするというと、フランスはごらんの通り、ほとんどその計画を完全に成功しました。水力電気にいたしましても、その他工場の設備にいたしましても、全く面目を一新いたしたわけであります。しかしながら、それはまあプラスの面でありますが、他方において大きなインフレーションを起して、そうして今日そのインフレーションのもとにフランスの経済はあえいでいる、こういう状態であります。従って西ドイツのように初めからインフレーションを起さない、こういう建前で、アメリカの援助の見返資金などは使いましたけれども、赤字公債を発行して投資をして生産設備を改善し、コストを下げる、それはドイツではやりませんでした。まあおもむろに国民の貯蓄がたまる、それを重点主義で利用しました。そうして設備を改善してコストを下げる、こういうことをやったわけであります。もちろん政府はそれに対しては予算上において種々の援助をいたしました。これはコストを下げるという以前からやったことでありますけれども、たとえば輸出品に対しては、ドイツで一番歳入でよけい入ってくるのに販売税というのがあります。ウムザーツ・シュトイアーという税金がありまして、これは物を売ると売ったたびごとに税金がかかってくる。それを輸出した場合にはずっとさかのぼって、初めから払った人にそれを全部返還する、こういうわけでありまして、計算によりますというと約四%強、それでコストが下がることになる、こういうわけであります。それなどはまだ大っぴらの方でありまして、たとえば輸出物資に対する火災保険料にも税金をかけておりますけれども、それも免除する、こういうような政策をとって、重点主義で輸出奨励をしてコストを下げ、輸出を早く増大するという政策をとっております。従ってこのコストの低下、輸出の増進、こういうようなことは予算とは密接な関係があるわけでありまして、もっとも、ドイツはもうすでに功成り、名遂げたものでありますからして、イギリスその他からの抗議もありまして、今の一番問題になった販売税を免除する、これは来年の一月一日からもうやめて、普通の通り税金をとるということになったわけであります。そうして政府はやはりコストを下げるのにはインフレーションをやらないで、投資をするためには貯蓄の奨励をやらなくちゃならぬ、こういうわけでありますからして、これはもう西ドイツばかりではありません。イギリスでも、アメリカでも貯蓄の奨励を盛んにやっておりますけれども、それによって早くよその世話にならないで投資の元になるところの資金を作るようにする、こういう政策をとって来たわけであります。  かような観点から三十年度のこの予算を拝見しますというと予算としては九千九百十四億円という数字が出されておりまして、やかましい問題になった一兆円のワクを守った。それは実質的に守ったとは何人も言えないでありましょう。形式的でありましても、ともかくもそれを守ったということは非常にけっこうなことだと思っております。  それからもう一つは、これも大した金額ではありませんけれども、最初の予算でも、修正予算でも減税をいたしまして、ともかくもそれだけ資本蓄積に直接間接に奨励を与えた、こういうことは、程度は別として、これまたやはりわれわれは非常にいいことだ、こういうふうに考えております。しかしながら、その減税と申しましても、ドイツが昨年の秋にやったような大幅の減税ではありませんからして、ただ減税をしたということだけで、それがどっちかといえば、大体中途半端だ、多くの効果を期待することはできないと、こういうふうに私は考えるのであります。しかしながら、何もしないよりもどのくらいそれがいいかわからぬ、こういうことであります。  そこで問題は、一体この日本の経済において、一兆円の歳出のワクを作ったことが果して妥当かどうか、こういう問題がそこに起ってくるわけであります。大体一兆円と申しますというと、ことし予定されている国民所得の一六%弱になります。それからアメリカはどうかと申しますというと、五六年度の予算はまだ議会をパスしておりませんが、しかしながら、歳出はほとんど去年と同じであります。それで計算してみますというと、約二一%であります。国民所得の二一%を政府が財政支出として、租税としてとって使っている。それからイギリスは非常にこの割合が多くて、三二%であります。これはこの四月の十九日に議会に出された予算案の歳出四十五億六千万ポンド、それを基礎として昨年の国民所得で計算した数字であります。それから西ドイツは国民所得の二〇%の予算を編成しております。こういうふうに考えてみますというと、イギリスはこれは論外でありまして、これは戦後労働党の内閣が六カ年間続きまして、その間に労働党の伝統である非常にけっこうな社会福祉政策をとりました。そうしてそれがために十六億ポンドという大きな費用をずっと使っておったわけてあります。その十六億ポンドの社会福祉費は保守党の内閣になってから多少減らしましたけれども、もうイギリスの国民生活にそれがひっついてしまったものですからして、たとえ保守党がどういう考えがあっても、ただ一部を減額しただけで、今年の予算でも十一億ポンドその方面に盛られております。これはもう論外でありまして、これはほかの国と比較できません。大体国民所得の二〇%というところが一流の国の予算の数字であります。してみますというと、日本は一六%であるからして、それよりも一そう軽い予算を編成している、こういうふうに言えないことはありませんけれども、しかしながら、日本の経済の基礎は終戦以来まだがたがたでありまして、重いものが乗るというと、すぐに柱が曲ったり建物が傾いたりします。こういうような状態でありまするからして、私の考えとしては一六%はよほど日本の経済力には重過ぎる、もう少しその部分をさいて、産業投資とか、あるいは社会福祉政策とか、そういうような方面に使うようにすることが日本経済のためにいいのじゃないか、こういうふうに考えております。で、これもパーセンテージを減らすということになりますと、どうしても財政デフレになります。財政デフレは好ましいことではありませんからして、むしろ生産をふやして、国民所得をふやして、そうして今の財政の規模をあまりふやさないようにして、このパーセンテージを減らす、こういうことが日本のために一番いいのじゃないか。フランスでは今のフォール内閣は、フランスとしては財政赤字はもうどうしてもこれは縁が切れない、ことしの財政赤字は大蔵大臣の話、あるいは議会のレイノー予算委員長の言ったことなどをフランスの新聞記事で見ますと、約八千億フランに赤字がなる、こういうのであります。かようなわけでありますからして、むしろ生産をふやして、そうしてこの赤字財政によってふえる通貨の分量にうまくバランスがとれるような方向に持って行くということで、フォール内閣の政策は全力を尽して生産をふやす、こういう政策をとって着々成功しております。従ってあれだけ大きな赤字財政をやっても、フランスの物価は過去二カ年間ほとんど安定しております。これはフランスが初めてやり出したやり方だと私は承知しております。そういう手もあるということをわれわれは念頭に置く必要があると思うのであります。  それで、これも予算に関係しますが、戦後の日本としては復興が非常に急務である、しかしながら、資本の蓄積を待っていると、いつ果して復興に必要な資金が得られるかわからないというので、急場の間に合せに市中銀行は必要な資金を民間に貸し出す、しかしながら、手元にそういう預金が集まってきませんからして、日本銀行に駆けて行ってその資金をまた日本銀行から市中銀行は借り入れる、こういうことをやって、御承知の通り一番多いときには四千億円という大きな金を市中銀行が日本銀行から値りておりました。これは明瞭にインフレーションでありまして、中央銀行として市中銀行にこんな大きな金を貸しているというような例は、おもな外国の中央銀行には一つもありません。フランス銀行は政府に、あるときには二千億フラン程度の金を貸しておりました。これは政府の赤字財政の尻が来たわけであります。しかしながら、これを借りる場合においては議会の議決を経ないというと政府は借りられない、こういうことになっております。そこに議会は適当に借入金の限度を決定する権限を持って監視をしておりますからして、政府もむやみに金を借りることはきでない、しかしながら、市中の銀行がかような大きな金を中央銀行から借りて、インフレをやっているというところは、ほかのおもな国には実例がないわけであります。で、幸いに最近の日本銀行の発表によりますると、それが半分以下になりまして、千八百億円というところまで来ました。それは昨年の輸出の好調等の関係で金融が楽になりまして、また国民の蓄積もふえて参りまして、それが銀行に預金として集まるからして、銀行は先に日本銀行から借入金を返す、こういう政策をどこもとっておるものと想像されますが、非常に減ったことはけっこうであります。  そこで、この問題はまた予算に関連してくるのでありますが、銀行の手元にこれからもおそらく余裕がだんだんできてくると思います。預金がふえて参りまして、ほんとうの意味の蓄積がだんだんふえてくる。まあ昨年のようにうまくいくかどうかということはこれはまだわかりませんけれども、ふえてくるのはもう間違いないと思います。そういう場合において、何はさておいても銀行はこの日本銀行からの借入金を返済して、そうして早くこのみっともない状態を解消させるということが日本のインフレーションの過去の清算をする上において非常に必要であります。ところが今度の予算では大蔵大臣の説明を拝見しますというと、資金運用部から借り入れをするはずであった百四十一億円は、これは金融債でありますが、市中銀行にこれを引き受けてもらうと、それからして国有鉄道に貸す百五十五億円の資金のうち四十五億円は、これまた公募して公債でまかなう、こういうことを言われております。これはまあいたし方ないわけでありましょうが、そうなりますというと、金額は絶対額としては大きな金額でありませんけれども、市中銀行が余裕ができて、今のこの終戦以来の日本の金融を半身不随にしている日本銀行からの借入金の償還がその金額だけおくれるということになります。この点がやはり問題になろうと思います。それでこの戦後の日本の状態を見ますというと、適当な言葉でないかもしれませんけれども、政府を初め民間を通じて借金のマニアが非常に流行している、何でもかんでも借金でまかなう、こういうような傾向が見られるわけであります。従って政府は範を国民に示すつもりで、もうなるべく借金はしないようにする、こういうことが非常に肝心ではないかと考えております。そうして民間もやはりそうでありまして、銀行に借金は万やむを得ない以外はやらない、銀行は日本銀行に万やむを得ない正常の理由以外には借金はしないと、こういうふうにして、ほうはいとして戦後の日本の国民の頭にこびりついておるところの借金マニアを払拭してしまう。これが日本の金融を正常化すると同時に、日本の経済を健全経済にする一番大事な点じゃないかと私は考えております。従ってやむを得ないといたしましても、さっき申しましたような政府の赤字公債と実質において変らないような金融債を市場に発行する、消化させるというようなことは、今の考えからいえば決して喜ぶべき現象じゃない、こういうふうに考えるわけであります。日本ではコストが高い原因がいろいろありますけれども、まあ税が第一高い。これは日本ばかりじゃありません。イギリスのごときは日本以上に税が高いからして、これはあまり大きな声で言えないかもしれませんけれども、しかしイギリスの経済の堅実性と日本の経済の脆弱性とを比べるというとお話にならない。イギリスはかような負担にたえ得る力があると思います。しかるに日本は税率からいえばそう高くなくても、その絶対の負担というものは非常に大きい。それから第二は、生産各社の外部資本依存性、借金マニアと申しますか、これはやむを得ずして起ったんだからしてそれをとやかく言うわけでありませんけれども、その結果、この借入金が、払い込み資本金と積立金の合計の何倍かになっておる。十数倍になっているところもありますが、従って金利が高いばかりでなく、借入金の利子の支払いが非常に大きいものだからして、それがコストに加わるというと、平均たしか六形というような計算が出ておるように記憶しております。金利ももちろん高いからして、これを下げることは必要でありますけれども、それにも増してこの借入金を早く減らすこと、それには利益がたくさん出た場合においては配当もけっこうでありますけれども、それよりも先に内部保留を多くして、そうしてそれで金融機関に対する借入金を返して、金利の負担を減らすということが必要ではないかと考えるわけであります。時間がありませんから申しませんが、ドイツの最近の大会社、小会社の貸借対照表を新聞で見てみますというと、驚くほどに対外債務が少い。あの調子ではほとんど金利というものが生産コストにあまり入ってこないのじゃないかというぐらい少いのであります。で、かようなわけでありますからして、これは予算とは直接に関係がありませんけれども、やはり政府も借金をしない。借金はなるべく返すようにする。民間の会社も同じように、また市中銀行もそういうふなつもりでいくと、従って予算の関係で一番目につく市中銀行の中央銀行からの借入金の返済をおくらせるような措置はとってほしくない、こういうふうに私は考えるのであります。  で、心配は予算については現在よりも将来にあるのであります。来年あるいはその以後にあるのじゃないかと、こういうふうに私は考えております。なぜそういうことを申しますかというと、ビルマとのこの賠償関係の話し合いはもうすでについておりますし、フィリピンとも近くつこうとしております。そのほかインドネシアというものもあります。その金額がどのくらいに達するかということはわかりませんが、平和条約によって恐らく物資とか役務の賠償をやるということになるのじゃないか、これがこの問題でありまして、賠償に役務なり物資を出すということになりますというと、それがその対価がもらえない。結局出したままであって、輸出にはなるけれども、しかしながらほかの正常の輸出と違って対価が返ってこない。従ってその生産に要したる材料とか賃金とか、その他の生産のコストに該当する通貨の膨張を国内に来たすわけであります。つまりインフレーションになるわけであります。その通貨の裏づけになっている物資なりサービスなりはよその国に無償で渡すわけでありますからして、どうもそういうことになります。でこれは非常に困ったことでありまして、賠償ではありませんけれども、イギリスも戦後それと同じ経験を持っております。それはどういう経験かと申しますというと、第二次世界大戦中にイギリスが大軍をアフリカから近東、インド方面に派遣しました。これらの大軍の必要をする物資あるいはサービスというものは現地でこれを調弁したわけであります。しかしながらイギリスはそれを一々払う金が当時なかったのでございまして、その合計金額を英蘭銀行におけるそれらの国の預金としてカン詰にしちゃったわけであります。で、労働党の内閣は、イギリスともあるべきものが経済力の弱いそれらの国に対して借金をしている以上これは払わなくちゃいかぬ。どうしてもイギリスの面目にかけて払わなくちゃいかぬ。こういうふうにアトリー内閣は決定してやったわけであります。ところが当時野党であった保守党のチャーチル、イーデン等の方々はこれは共同の目的のために使ったんだからして、イギリス本国だけが負担するということは、これは政治の観念に反すると、だからしてやむを得なければ長期の無利子の公債というようなものにしてしまう方がいい、こういう意見を議会で述べております。まあ結局それはカン詰にしてイギリスの経済のあとう程度にぽつぽつとそれを解除してやる。その解除した金でインドその他の国はイギリスから物資を買っていくと、これは賠償と同じことでありまして、それだけの物資をイギリスが輸出してもその対価は一文も入ってこないわけであります。で、それを非常にイギリスは心配をしておりました。最近は経済の力がついて参りましたからして、どんどんと解除しておりましたけれども、一時は約二十億ポンドそれがたまっていましたけれども、それは約半分はインドに払う金でありました。  かようなわけでありますからして、賠償の交渉が成立し、支払いが進むにつれまして、それから来るインフレーション的な圧力というものがまた加わってくる。だからしてよほどこの財政を締めまして、そうして重点主義でやるということが、来年以後一そう必要になってくる。それをやらないというと、せっかく大体において安定しておる経済がまたいつインフレーション化するかわからない、こういう心配があるわけであります。なおそのほかにも失業者の救済とか、あるいは中小工業の救済とか、いろいろ日本に特殊な問題があります。で、予算を膨張させるとしましても、こういうような面にもやはり重点を置いてやる。失業者であるとかあるいは中小工業の困っている状態、こういうようなものは中にはその経営を誤まったとかというようなこともありましょうけれども、要するにこの戦後の経済の整理の犠牲者になったんで、自分だけではこれはどうにもできない原因からそういうふうになったのだからして、これは政府としてもやはり重点的に何とかしなくちゃならぬ、こういうふうに私は考えております。ドイツの予算を見ますというと、一番大きな支出の項目はこれは占領軍の駐屯費の分担であります。大体において総歳出の初めの間は四〇%くらいでありましたが、最近はだんだんとそれが減ってきて三〇%台になっております。その次に大きな項目は何かと申しますというと、社会福祉費でありますが、特に戦争による罹災者の救済と、それから戦死者の遺族の保護、失業者の保護、こういうようなことには非常に力を注いでおりまして、国防費の約半分、全体の歳出の二〇%税度をその方面に向けている、こういうわけであります。で私は三年前に久しぶりでドイツに参りまして一番びっくりしましたのは、戦傷者が町で物ごいをするということは絶対に今度は見られません。第一次大戦のあとの一九二一年の秋にベルリンに参りましたときには、制服を着た傷痍軍人が大道で物ごいをしているという光景が至るところに見られたものである。今度行ってみますと、絶対にそれが見られません。これはやはり今申しましたように戦争犠牲者に対して厚い保護を加えている、こういうような結果ではないかと思い越す。従ってたくさんの項目でわずかな金額を歳出として使うよりも、重点的に大事なものに全力を集中するというふうにして、順次これをほかに及ぼす、皆一斉にやることは最も望ましいことでありますけれども、今の日本の経済力ではそれはできません。だからしてどうしてもこれは重点的にやらなければならない、こういうふうに私は考えるわけであります。  で、三十年度の予算は衆議院で可決されまして、参議院で皆様も御審議をなさるわけでありますが、それについて関連して私の意見なり希望なりはただいま申した通りであります。これで一応お話を打ち切りといたします。

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) どうもありがとうございました。大島堅造君のお述べになりましたことについて、何か御質疑がありましたらお願いします。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 ただいま予算の重点的使用のお話がございましたが、現在の日本の状態におきまして、大島さんのお考えではどういう点に最も予算を重点的に使用するのがよいか、今総花的に使われておる傾向があるということが一般に言われておりますが、何か具体的にこの方面にもっと使ったらいいのじゃないかというふうなお考えがありましたら、お伺いしたいと思います。

大島堅造経済評論家

○公述人(大島堅造君) 私はやはり輸出振興ということに経済的には全力を集中する。それから社会的には失業者の救済、この二つだと思います。

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) 他に御質疑はございませんか。それじゃ大島さんありがとうございました。   —————————————

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) それでは次に、日本鋼管株式会社取締役の伍堂輝雄君にお願いいたします。

伍堂輝雄日本鋼管株式会社取締役

○公述人(伍堂輝雄君) 私がただいま御紹介をいただきました伍堂輝雄でございます。私は、昭和三十年度の予算案につきまして、産業界に身を置いております者の一人といたしまして意見を申し述べろということでございますので、私の気のつきました二、三の点を申し上げてみたいと思います。  過去一両年とられて参りましたいわゆる緊縮政策によりまして、わが国の経済は一応インフレの危機からも回避できましたし、また国際収支の面におきましても、一時真剣に危倶されました危機も、昨年度は国際情勢の影響もあって、ひとまず危機は回避されましたが、その経済基盤におきましては、先ほども大島さんからお話もありましたが、いわゆる戦後の荒廃から復興に入り、復興からいわば繁栄の段階に向っております西欧諸国との間には、まだ著しい立ちおくれがあるのでございまして、これを克服するためには経済基盤を養い、いわゆる実質的なコストの切り下げをいたしまして、産業の国際競争力の培養、これによる輸出振興をはかって、日本国の経済を健全にする以外に方法がないことは申すまでもないことだと存じます。私ども産業界におります者といたしまして、決していわゆる不景気を好むものでもございませんし、あくまでもいわゆる産業規模を拡大をいたしまして、雇用の増大をはかり、国民生活の水準を向上させるということに努力いたすことはもちろんでございますけれども、それに至ります段階におきまして、いわば当面の措置といたしましては、安易な拡大政策や当面の人気に投ずるための、いわば目先の暮しを楽にするというような意味の減税等でかえってそれが国民消費を増大して、懸念されるインフレに持っていくというようなことは極力避けまして、他方では起きてくる社会的な矛盾とか不合理は是正しつつも、根底におきましてはやはり耐乏による経済再建という道を歩むべきではないかと考えるのであります。  この観点から考えまして、今年の財政政策の重点は、政府の本予算の編成の大綱にもうたわれておりますように、いわゆる健全財政、健全金融の政策を堅持いたしまして、通貨価値の安定、物価の引き下げをはかりながら資本の蓄積を推進して、他方では住宅の建設とか、あるいは失業対策の強化と、社会保障関係の拡大強化によって民生の安定をはかって、企業の合理化の促進による正常貿易の進展を期していただきたいと思うのであります。これを産業界から見まするならば、本予算が基本方針においてとられております将来の経済の拡大均衡への地固めを行いまして、経済基盤の強化充実に主眼が置かれて、資本の蓄積も特に企業の資本蓄積、合理化のための財政投融資を重点的に効率的に確保して、他方では各種の補助金の効率的な調整も、消費的支出を抑制するというような趣旨での調整が本予算編成の大綱とせられておったように思っておるのでありまして、個々の点におきましてはいろいろ問題は残っているとは思いますけれども、考え方の基本の方針におきましては、基礎として編成せられておりました方針については私どもも全く同感であったと思うのであります。ところが衆議院におきまして修正されました本予算案は、修正の金額は二百十五億円にすぎませんけれども、このような国民経済的見地から編成せられるべき予算案が、伝えられるところによりますと、政治的妥協のために基本方針が誤まった修正をなされたのではなかろうかということを私どもは懸念しているわけでございます。たとえば各種補助金の調整にいたしましても、資本効果のさして期待のできぬような総花的な零細補助金等の消費的と申しますか、不生産的支出の復活が多くて、また軍人恩給や所得税等の軽減等も、むしろ消費インフレを助長する要因が増加したような感じを持つのでありまして、また資金運用部で引き受けるはずになっておりました、興銀、長銀、農林中央金庫、商工中金等のいわゆる金融債百四十一億を市中銀行に引き受けさせることになりましたし、また政府資金で予定しておられました国鉄への貸付金の一部を、国鉄公社債として公募することに切りかえられたようなことは、公債発行の端緒をなす危倶を感ぜられるのでありまして、健全財政の基本線の崩壊をきたすのではないかということを心配いたします。また市中銀行に金融債を引き受けさせる点につきましては、強制はせられないでありましょうが、市中金融の需給関係に摩擦を起す可能性を残しておるとも言えるのでありますが、これは当面の修正についての私の感じを率直に申し上げた点でございますが、ぜひ基本線は、先ほど申し上げたようないわゆる地固めの政策を貫いていただくことが望ましいのではないかというように考えるわけでございます。で、予算の全般につきまして、私申し上げるほどの力もございませんし、資料もございませんので、私どもが当面しております産業界の問題につきまして、二、三申し上げてみたいと思います。   〔委員長退席、理事西郷吉之助君着席〕  その一つは、先ほど大島さんのお話にもございました資本の蓄積対策についてでございます。わが国の経済の立ちおくれ、経済基盤の弱体の実態は、今日まで復興の途上におきまして、いわゆる外国資本の援助によって果されて参ったと言っても過言ではないのでありまして、裏から申しますと、資本蓄積の過少に起因したいわゆるオーバー・バロウィングの姿となって現われておることは御承知の通りであります。本予算におきましても、政府の方針は資本の蓄積を促進するということがうたってはございますが、具体的に現われた施策といたしましては、預貯金等の利子課税の免除とか、配当所得の源泉課税の軽減だとか、中小法人に対する法人税率の引き下げ等の処置がとられてはおりますけれども、これらはむしろ迂遠な方法であり、また見方によりますと、一番オーソドックスな国民所得をふやしてその中から貯蓄をして、その貯蓄から資本が投下されて企業が健全になることが望ましいのではありますけれども、今のような状態におきましては、むしろ迂遠な方法で、かえって国民所得がふえたことがむしろ消費を助長する懸念がないとは言えないのでありまして、そういう危険を冒すよりも、むしろ直接に産業基盤の充実のために資本充実が直接に助けられるような、いわゆる企業資本の内部保留によっての資本の充実をはかることが最も効果的であり、有効であると思うのであります。そういう意味であるいは税制の措置、あるいは投資の面におきましての施策が、この予算に現われておらないということはまことに遺憾と思うのであります。  それからもう一つの点で、こまかい点ではございますが、科学の振興の問題でございます。わが国の経済の再建と申しますか、産業の発展ということに考え及びますと、特に輸出の振興という面からも、日本を取り巻きます後進国の産業開発、特に工業化の促進が非常にはなはだしい勢いで進んでおるのでありまして、かかる国際情勢のもとでわが国の輸出産業が伸びていき、いわゆる国際競争力を持っていくためには、科学技術の振興が欠くべからざる重要な裏づけとなるものでありまして、本予算でも昨年度に比べますと十億から十二億円、わずか二億円ではございますが、増額はされておるのでございますが、もっと計画的な効率的な科学振興をしていただき、日本の輸出産業としての科学的な水準の向上をはからなければ、近い将来に日本の輸出産業というものは、当面の目先の輸出入貿易だけでは片づかない時期がくるだろうと思うのであります。こういう意味で、この科学振興についてもっと計画的な措置をとっていただき、また財政面におきましてもこれを積極的に推進する措置をおとり願いたいと思うのであります。それには、現在やっております実情を見ますと、これも使い方の点ではございますが、総花的で、末端におきましてはきわめて零細な金額となって、所期の効果が期待できぬような実情でございますので、その使い方あるいはそれのやり方につきましても、総合的見地に立つ一元的機関を設置して、重点的、効果的な科学振興をはかるようにしていただきたいと念願をしておるわけであります。  それから、これは直接私どもには関係ないことではございますが、間接には大きな影響を持ちますことは、地方財政の問題でございます。地方財政が年々膨張を続けて、いわゆる破綻に瀕しておるということは皆様御承知の通りでございまして、これに対する対策は各方面で練ってはおられるわけでございまするが、私どもとしましても、従来のいわゆる中央からの地方財政あるいは地方自治に対する影響の中で、いわゆる中央官庁のなわ張り主義の結果こうむっている被害が、非常に大きいと考えるのであります。こういう点でも、各省所管の地方補助金等がむしろそれを災いしている面もあるのでありまして、むしろそれを大幅に整理して中央権力の地方介入を排除いたして、地方自治の原則を確立して、中央地方を通じまする行政機構の簡素化、行政事務の合理的再配分を行う等によりまして、他方では地方財源を確保してその根本的な再建をはかるべきでありまして、このためには補助金の整理が一応必要になってくるかと思うのであります。で、当初予算の編成の際にも補助金の効率的調整がうたわれておったのでございましたが、政府提出案においては大幅な復活を見、また今回の修正案におきましてはほとんどもとに復して、むしろ禍根を引き続きあとに残しておるように感ぜられるのであります。しかもそれは、先ほどもちょっと触れましたように、いわゆる健全財政の線をこえて消費インフレの素地を作っておるような懸念も感ぜられるのであります。  それからもう一つ申し上げたいと思いますことは、米価についてでございます。日本経済の正常化をはかるための当面の基本的の要請は、先にも申し述べましたように、いわゆる低物価政策が基盤でなければならぬと思うのでありますが、最近の米の国際価格を見ますると、逐次低落の傾向をたどっておるのにもかかわりませず、わが国だけがその傾向に逆行して高米価政策をとられようとしておるのでありまして、その結果はますますわが国物価の独歩高を来たして、ひいてはそれが輸出減少になり、またそれがインフレ、通貨の下落というような悪循環をきたして、むしろ経済規模が縮小せられざるを得ないというようなことが懸念せられるのでありす。また、食糧管理法の規定の趣旨から見ましても、米価決定の要因となるべき物価指数だとか、農業パリティ指数等においては、現在では米価の引き上げを必要とする根拠はないと考えられるのであります。このような内外の経済事情に即応しまして、経済ベースに立脚した合理的価格算定方式をとるべきであります。一般会計たると、特別会計たるとを問わず、国の財政負担をふやさなくても、むしろ消費者価格は引き下げられるべきではないか。少くも据え置きさるべきではないかと考えておる次第であります。  最後に、先ほど大島さんのお話もございましたが、当面の産業界の一番大きな問題は、合理化の問題と、それとこれから起きてくることを予想される失業問題との調整でございます。この予算におきましても、いわゆる緊急失業対策法に基く補助金とか、あるいは失業保険法、あるいは公共事業費等を含めまして、いわゆる失業対策の経費が相当増額が見込まれてはおりますけれども、現在予想されておりまするいわゆる摩擦的失業等をいかにして吸収し、またその労力をいかにして生かしていくかという総合的な計画を立てて、広い意味での失業就労対策を確立いたしませんと、産業の合理化を阻止するのみならず、社会不安にまで及ぶ危険があると思うのであります。これは一つには中小企業対策とも合せての基本的な対策を必要とするのではないかと思うのであります。こういう点ではもちろん非常にむずかしい困難な問題でございますので、簡単には参らないことはもちろんでございますが、本予算に見まする程度の費用をふやしただけでは、解決しないのではなかろうか、こういう点を憂えておるものでございます。  以上一応私どもの気がついた点を申し上げたのでありますが、各般の施策にわたりまして、あるいはやりたいことが多くて、これをまかなう財源が足りないということが現状であることはもちろんございますが、先ほども申し上げましたように、来たるべき賠償の問題等を考えますと、あくまでも健全財政、いわゆるインフレを阻止しつつ産業を徐々にでも伸ばしていく基盤をつちかっていくという点につきましては、片方では経常経費をできるだけ削減する。その削減したところから必要な経費を生み出していく、それにはもちろん片方では相当忍ばなければならぬ苦痛を伴うのは当然でありまして、国民的な自覚といたしまして、この際いたずらな人気取り政策でなしに、また安易なその場しのぎの政策でなしに、苦しいところを忍んで、経費は極力節減をして、重点的にこれを使っていくという意味での施策を生かしていただくような意味での予算の運用が望ましいと考えておる次第でございます。  一応私ども産業界におりまする者から見ましたこの予算についての所感を申し上げて、意見にかえさしていただきます。

西郷吉之助自由党

○理事(西郷吉之助君) どうもありがとうございました。御質疑はございませんか。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 大へん有益な御意見を伺いましたが、ただいま、戦争で底が浅くなった日本の経済の立て直しは、どうしても資本の充実だ、特に企業資本の内部充実に力を入れなければならぬというお話でございましたが、その蓄積せられた資本が、果して本当に合理化というか、国全体から見て効率的に使われているかどうか。たとえば今非常に繊維が不況ですが、繊維が困っておりますが、戦後ガチャ万時代にむちゃくちゃに紡機をふやし、織機をふやし、ずいぶん国費の乱費をやった。あなたの方の鉄鋼の方は私は知りませんが、果してこれがほんとうに、それほど大事な資本の投資というものを効率的に有効にどうして適用していくべきであるか、また生かしていくべきであるか、そういうことについてもう少しお教えをいたきたいと思います。

伍堂輝雄日本鋼管株式会社取締役

○公述人(伍堂輝雄君) ただいまの点につきましては、いわゆる投下資本が有効に使われておるかどうか、あるいは設備の改善、あるいは合理化と言われます二重投資とか、あるいはむだな、ただ業界から見た思惑だけで効率的に使われてない面があるのじゃないかというふうに私承わったのでありますが、そういう点につきましては、私も先ほど申し上げました重点的にこれを使うという面では、全然野放しで、いわゆる自由主義経済にまかして、そろばんが合えば使うということをチェックする方法は当然考えなければならぬと思うのであります。ただ先ほど申し上げましたように、個人の収入をふやして、それがたとえば減税その他で浮いたものが蓄積されて、そうしてそれが企業の投資になり、具体的に申しますと株式会社の増資を引き受けてやっていくとかいうような意味での資本の蓄積は、なかなか効果が上らない。従いまして企業が自分で働き出した中で蓄積をしまして、先ほどお話しがございました借入金を返していって、そうして内容を充実していくという意味での資本の蓄積をぜひ促進していただきたい。従いまして、資本の蓄積と申しましても、かりにこれを大別いたしますと二つあると思うのでございますが、直接に設備の合理化その他にあるいは国家資金その他をつぎ込んで投下する、そういう意味での資本の投入という面と、現在借入金に依存しておって非常に弱体な企業基盤を持っておるものを、蓄積された資本で置きかえていきまして、企業自体が堅実になっていくという二つの面があと思うのでございます。その二つの中で、両方ともに、ある程度の国家慈恵が、蓄積された資本が有効に使われるような措置はやはり考えなければならぬと思います。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 実際産業界で苦労していらっしゃる方でありますのでお伺いをしたのでありますが、そのチェックしていく、今お話しのように蓄積された資本がほんとうに有効に使われるにはどうしたらいいか。極端な計画経済に持っていくのか、自由経済のもとで何かそういう方法を具体的に政治の面でどういうふうにやっていくか、それともいろいろな経済団体あるいは経営者自身の方で、もう少し自発的におやりになれるか、そういう点について具体的なお見通しを実際の御経験から得たお話を伺いたいと思って質問したわけであります。

伍堂輝雄日本鋼管株式会社取締役

○公述人(伍堂輝雄君) その点でこれは私見でありますので、そのように一つお聞き取り願いたいと思うのでございますが、片方でいわゆる二重投資と申しますか、資本を国民経済的な立場から有効に使うという面では、一つには自主的にやることが一番望ましいと思います。これは業界と申しますか、その業態、あるいは場合によりましたら企業同士の話し合いでもできるのでありますが、その点で一番大きなじゃまと申しますか、障害をなしておるのは独独禁法でございます。これはお話しのように、おのおのが単なるそろばんからやるということになりますと、もちろんその原材料の割当、その他がその災いの原因をなしておる面もございますけれども、業界が自分でそろばんの合わないことをみすみすわかってするはずはないのでありまして、当然そのときにはそろばんを一応はじいておりますが、そのそろばんが単なる自分だけで考えなければならぬ、話し合いをしないでやる場合には、往々にして他のことを考えないで計画を立つ場合がままあるわけであります。そういう意味では、やはりある程度のカルテルと申しますか、いわゆる業界の話し合いをすることによりましてむだを省いていく。業界自体が現在のままでも決してむだを承知でやることはないのでありまして、それは目先が違って、むだな結果を生ずることはあるかと思います。  それから先ほど申し上げました資本の蓄積をやる方法、今度はやられたものが、いわゆる戦争中やられましたような資金の質的統制を国家権力でやるということは、すでに従来の結果からもその弊害の方が大きく出て、効果が少いということは実績でも明らかなんでございまして、この点は何と申しますか、計画性を織り込んだ自由主義経済というものを延ばしていくのが一番いいのじゃないかというふうに考えております。   〔理事西郷吉之助君退席、委員長着席〕

木村禧八郎無所属クラブ

○木村禧八郎君 今の左藤さんの質問に関連しておるのですが、資本の蓄積ということは非常に強く言われておるのですが、特に私は今鉄鋼界が最も非合理的になっておると思うのです。そういう鉄鋼界の方から合理化を非常に強調されて意外の感じをいたしたのですが、具体的に伺いますが、たとえばストリップ・ミル、これも前に予算委員会で質問したのですが、実際今度また大同製鋼ですか、あすこでまた作るように聞いております。それで合理化の機械、これの過剰投資が起っておるけれども、これは実際問題として独禁法の改正ですぐ解決のつく問題でないと思う。それで大体こういう合理化設備をしておいて六〇%ぐらいしか稼動していない。これでは非常に不合理だと思う。個々の企業については一応合理化の機械を入れれば、それ自体が合理化です。それが六〇%しか稼動しなければ、それはせっかくこういう機械を入れても、それは合理化にならないのではないかと思うのです。そういう事例はほかにもありますが、特に鉄鋼界においては最近のストリップ・ミルの新設がひど過ぎるのではないかと感じております。そういう鉄鋼界から特に合理化を強調し、それから資本の蓄積を強調されたものですから、その点が左藤さんの疑問にもおありだったと思うのです。これはただ議論でなく、何とかやはり今後しなければいけない問題じゃないかと思います。ただ独禁法を改正する、そのことも業界の人としては一つの御意見かもしれませんが、何とかこれを実際問題として措置しなければ、非常に大きなロスになっておるのではないか、それに対してこうしたらいいじゃないかというような御意見でも承われれば幸いだと思います。

伍堂輝雄日本鋼管株式会社取締役

○公述人(伍堂輝雄君) ただいまの質問は直接業態の機微に触れた問題でございまして、各会社の問題にも触れますので、あるいは十分なお答えはいたしかねる点もあるのではないかと思うのでございますが、先ほど申し上げました資本の蓄積を促進するような措置をとっていただきたいという点は、先ほどもちょっと申し上げましたが、一般的ないわゆる借入れ資本を早く自己資本に切りかえていくという意味で、その自己資本に切りかえる方法としての資本の蓄積をやっていかなければならぬ。そういう意味で、特に強調したわけです。もう一つの点は、いわば資本の蓄積というものよりも、むしろ産業投資と申しますか、投資が二重投資にならない、あるいはそれがむだな投資になって合理化ということでない結果を招来しておらぬかという御質問じゃないかと思います。あとの方の点につきましては、これは一応形の上に現われました問題特に最近プルオバーとストリップの問題になっておりますが、当面非常に業界の問題にもなっておるわけでございまして、お説の通りの点は一面にはあると思います。ところがこの点を一つよく御認識願いたいと思いますことは、プルオバーのいわゆるシートでございます。亜鉛鉄板等の薄板でございます。それを国際競争で御承知の通り相当程度亜鉛鉄板の半分までは参りませんが、相当今日まで輸出して参っておったわけであります。今後その輸出市場におきまして、またあるいは国内のマーケットにおきましても、外部からの輸入という問題もございますが、品質的にはストリップにかなわないという点が一つあるわけであります。それから実際の今度コストの切り下げという面におきましては、現在のものをやるよりも、たとえば一例を申し上げますと、六〇%の稼動率になりましても、金利、償却を見て、なおかつコストは現在のプルオーバーよりも安い場合があるわけでございます。そういう場合には、少くとも将来の需要増を考えますと、直ちにその設備が百パーセント稼働しなければ、それは合理化施設でないか、将来伸びることを考えてできた設備が、ある程度の経済操業単位になりましても、十分コストが切り下げられるという場合には、やはり、進歩前進の意味で合理化施設として取り上げられていい問題じゃなかろうか。ただ、問題は、その場合にできました暁に、いわゆる非能率な、あるいは品質が悪い設備が依然として稼働しておる。そこに新鋭設備ができまして、それがフルに稼働した場合に、いわゆる供給過剰が起きて、実際の市況が混乱をきたすという問題が起きるのであります。実質的にはコストが下っておるのであります。ただ、問題は、業界にそれが非常な問題を波及する場合に、それをどう調節していくかという問題があろうと思います。常にできました施設が百パーセント稼動した場合は、いわゆる経済操業であるかどうか。遠い将来、かりに遠いということを考えませんでも、あるいは五年、十年、設備におきましては、あるいは二十年の命を持っておる設備もございますので、その伸びを見つつ当面の問題としては、少くとも現在の設備よりもそれがコストが下り、いいものができるという施設は、やはり合理化施設としてやっていき、そしてそれが将来伸びる場合には十分お役に立つ面があるかと思うのであります。個々の、どこの会社でどういう設備をしたことがどういう問題になっているというふうにあるいはお話が出ると、もっと具体的にお話申し上げ得るかと思うのでありますが、その点については一つごかんべん願いたいと思います。

松澤兼人日本社会党(第二控室・右)

○松澤兼人君 一つお伺いをいたしたいことは、近くまた三十年度の新造船計画が具体化してくるわけですが、この問題について、昨年のような方式がけっこうであるか、あるいはこの際新造船計画というものを何か違った角度からながめることがいいのかという問題でございますが、おそらく三十年度におきましても十八万トンか九万トンか、そうなりますと、造船能力というものとマッチしないということが当然予想されるわけであります。リンク制のあった場合、外国から輸出船の発注を受けるということが多少できたわけでありますが、それが今後どうなりますか。もし、今までのような条件で外国の船を受注することができないとすれば、これに対して何かかわるべき方策があるのか、この点につきましてお考えを承わりたいと思います。

伍堂輝雄日本鋼管株式会社取締役

○公述人(伍堂輝雄君) 造船関係につきましては、私、会社の中でもその方を担当しておりませんので、ちょっと申し上げかねると思いますが、私の承知しております点だけ、じゃあ申し上げたいと思いますが、お話のように、計画造船が年間十数万トン、あるいは多くて二十万トン程度でいきました場合に、日本の造船所の能力から見ますると、御承知のように、あるいは八十万トンの能力ありといい、あるいは六十万トンの能力ありと申しておりますので、ある程度アイドルが当然予想される。従いまして、日本の造船所の能力と日本の造船需要と申しますかの調整をどうするかという問題が、基本的な問題があるかと思います。しかし幸いに、最近はリンクの制度がやまりました後におきましても、相当程度造船作業の合理化が進みまして、いわゆる輸出船の注文が相当程度取れるような段階にはなって参っておりますが、これとても遠い将来、ある程度の何と申しますか造船所のベース・カーゴーとして実際上見得る程度がどの程度かという問題につきましては、相当問題があると思いますので、まあ、いわゆる先ほどのお話にも関連ございますが、造船所の設備の合理化という問題につきましても、そういうことを織り込んだ施策が当然なされなくちゃならん。その点の配慮をしながらなされなければならんものだと考えております。大へん御質問の何ができませんので恐縮でございますが……。

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) 御質疑ございませんか。……それではどうもありがとうございました。   —————————————

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) それでは引続きまして、日本労働組合総評議会事務局長の高野実君にお願いいたします。

高野実日本労働組合総評議会事務局長

○公述人(高野実君) 三十年度の予算につきましては、こまかい数字や各項目についての御論議はたくさんあったかと思います。私は平和を願う国民の一人として、この予算の持っている根本的な問題について、一つ、二つ申し上げてみたいと存じます。  この予算の性格と申しますか、それはアメリカの極東軍事政策に隷属する性格を持っております。私どもはその意味で、独立日本の予算としてはどうしても承認することができない。たとえば、総選挙の直後、予算の編成期に当りまして、防衛分担金の問題がしばしば日米間の交渉の課題となりました。政府はあたかもワシントンの了解がなければ予算の編成ができないという前提に立っているのではないかと思われるような態度をとりました。また、国防次官補のヘンゼル氏や、やはり国防次官補代理のロス氏が見えたときにも、明らかに内政干渉ではないかと思われるような節々のある発言がございました。そして確かに防衛分担金は百二十億減ったのでありますけれども、その金額はそのまま防衛庁費に充てられました。費目がこのように転換をしたというだけでなく、この費目の転換は、要するにその年限りの輸送や通信費に充てておった防衛分担金の費用を、今度は地上部隊とか、海上部隊とかいうものの増加に充てておりますので、このことは、今後逐年軍事費の増大することを意味しております。多分ワシントンとの交渉のうちから、日本の国民所得の二%やそこらの費用ではいけなくて、三%なり四%の軍事費を負担すべきである、このような数字に基く示唆があったのではないか。これは日米共同声明書などの中にも明らかにされておるところです。従ってすでに防衛庁の予算の中から大へんなむだ使いがあり、買付けに当ってたくさんの汚職事件が出ておったことも記憶に新たなところです。このようにしてこの費用はこれからどこまで増大するのか、このような不安を与えないではおりません。  また、このような防衛庁費の増大と防衛分担金の削減とをめぐって、いわゆるMSA援助に頼っておりました軍需工業が、特需工場が新しい危機に立っております。全国各地の特需工業はMSAの援助資金に基く注文が削減されたということで、大量首切りや、遅払いや、倒産や、ひんぴんたる失業の続出などが現われております。  それのみならず今度の予算審議を通じて明かにされたことは、吉田さんの時代には主としてアメリカの古い機械化部隊の増設という問題でありましたけれども、今審議の過程で明かにされたことは、原子戦争の準備が進行しているということです。従って今度の三十年度予算と原子戦争の準備とは切っても切り離されないのではないか。さらに、衆議院の予算委員会で左派社会党の赤松勇君や、右派社会党の今澄勇君らがしきりに滑走路の延長や拡張についてただし、外交委員会の席上でも穗積七郎君らが日本の国民の頭上には原爆兵器を搭載した戦闘機や爆撃機がうろうろしているのではないかという疑いを投げ、政府にただしたところでした。さらに、衆議院の予算公聴会の席上で、伏見康治教授から原子戦争の危険を訴えられたあとで、濃縮ウランについて私は一番おそれるのは、ウランを作れない日本において濃縮ウランをアメリカからもらうということは、結局アメリカの原子炉となり、ウラニウムのお得意先となるのではないかと痛憤をされました。これらのことは三十年度予算の性格としてわれわれが見のがすことのできない問題でありまして、この意味からどうしても三十年度予算を全面的に承認することができないという立場に立っております。  このように今度の予算を通じて原子戦争の渦中に日本民族を引き入れるということは、それ自身日本の経済の土台を根本的に破壊してしまうのではないか。われわれはよく論議をします場合に、生活保護法を受くべき貧困者は一千二百万に達しているが、そのうち百五十万も救うことができない。結核患者のベッドは三百万をこえる数が必要であるのに、十七万をこえることさえできない、こう訴えて参りました。また、失業者がひんぴんと増加するときに、特に北海道季節労働者の失業手当を削るために失業保険費を削減いたしました。社会保険のためには大へんに尽して下さった川崎秀二氏が今厚生大臣のいすにおるのに、緊急な問題である失業保険費が削られ、健康保険の制度も改悪されようとするのは実に心外にたえません。石炭の町飯塚を見よ、鉄鋼の町尼ヶ崎を見よ、特需の町呉、横須賀を見よ、全国各都市の職安労働者の惨たんたる生活を見よ、百貨店の進出によってふるえおののくような危機を感じておる中小商業者の恐怖を見よ、東都の十万大学生のうちその七〇%はあてもないアルバイトを求めてさ迷っておる惨状を見よ。昨年、一昨年、一昨々年の冷水害の復旧さえこいねがっておるあわれな農民を思え、なぜ一機二億を要するジェット機が必要なのか。それよりもジェット機一機の費用があるならば、月一万円の扶助を与え得る千六百六十六世帯を作り出すことができるではないか、五人家族八千三百三十を作り出すことができるではないか、これらのものを一家心中から救う道は幾つも求められるのではないか。私はそういう意味で鳩山政府並びに独占資本を代表する議員諸君の方々に強く警告を発しないわけには参りません。  私は最近中国に視察に行って参りました。私は少年時代から社会主義を勉学して参ったものですが、やはり中国においてはきわめて着実に社会主義が実現されつつあると感じました。私どもは二週間にわたって東北旅行をいたしました。その中で見たのでは、一言にしていえば中国六億の人民の福祉を保障する重工業の基礎が据えられつつあるということを見ました。そこでは旧日本の財閥の遺産はほとんど見ることができませんでした。そのかわりに、ソ連の最近の機械か輸入され、ソ連の設計によって驚くべき膨大な工業が建設されつつありました。たとえば解放後一度も外国人が足を踏み入れたことがないというふうな阜新の炭鉱では、かって三菱が斜坑によって豊富な石炭を採掘したのですが、今日では露天掘りの方式で石炭を採掘しております。この石炭は炭層八十メートルの厚さがあるといわれ、その上に平均十四メートルの土層がおおうているといわれるのであるが、この土層をことごとく撤去して湿地帯を埋め立てていく、町の中にも炭鉱の入口にも、百年の大計と大書をしているのです。長春では第一自動車工業を見ました。その規模は日本の横浜の子安にあります日産自動車の三、四十倍もあるかと思われるような規模のものです。そこでは一分間一台のトラック、こういうスローガンで目下建設中でありました。鞍山の製鋼所でも、中国第一等の製鋼所ではありますけれども、ここでは七つの溶鉱炉のうち、五つはすでにソ連の援助を得て電化されております。かわいらしい婦人労働者がボタンを押すと、溶鉱炉の操作はりっぱに遂げられております。筋骨たくましい労働者は、この電化された溶鉱炉の補助要員にすぎません。このことはレールを作っております製鋼所でも同じ作業をしておりました。瀋陽では工作機械工業を見ましたが、ここでは労働者の働いております足元にコンベヤーがつけられて、そこでは工作機械の大量生産が進行しております。(「本論に入れ」と呼ぶ者あり)北京の郊外に官庁ダムが作られておりますが、ここでは天津の洪水を防いでおります。われわれはこのようにしてすでに——(「委員長本論に入って急いで下さい」と呼ぶ者あり)

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) 高野君に申し上げます。予算の範囲はあまり逸脱しないようにして下さい。

高野実日本労働組合総評議会事務局長

○公述人(高野実君) すでに重工業の基礎が据えられておると思いました。その中でぜひ申し上げたいと思いますのは、一本のボルト、一個のナットがほしい、硫安は日本から幾らでもほしい、トラクターはとりあえず三十万台ほしいので、日本からもほしい、こういうふうに主張しているたくさんの労働者や官吏を見出したことです。私どもは、どうかして日本の予算は、日本の国民のほんとうの生活を守り、独立を期することのできるように組んでいただきたいものと思っております。中国では人間を大切にする、一人の労働者に一人の健康を守る兄弟がついているという組織になっているが、日本では人間を大切にするような予算が組まれていないのではないか。また人間ほど信用してよいものはないというのがかれらの立前であるが、たとえば銀行は、金が要るという私企業に対しても、合資合弁の会社に対しても、無担保で金を貸しておるが、日本ではそういう人間に対する信用が予算の上にも現われていないのではないか。私はそういう意味で、日本の予算を、もっと本格的な日本の経済を予期し、日本の独立を期する予算に組み直していただきたいと思います。私は思うに、日本の予算がほんとうに日本の独立と平和ししを保とうとするならば、今行われている中国と日本との間の貿易協定を完全に実施するその経験の中から、この協定のワクをもっともっと広めるということを前提にして、予算の措置を立てるべきだと思う。また日本とソ連との間の平和がもたらされようとしているが、何よりも、領土の問題やいろいろの条件があろうけれども、何よりも二つの国の間の国交を開くという立前において、国の方針を定めていただきたいと思う。市の商人のためではなくて、苦しんでいるたくさんの労働者や農民や商人のために予算を組んでいただきたいと思う。私は、一つ一つこまかい予算の項目については申し上げません。日本の選ばれた議員諸君が、文字通り日本の独立と平和を憂えて、困窮している国民のために何か力を尽そうというならば、われわれの経済政策を根本的に組みかえなければならないというふうに主張していただきたいと思います。議員諸君に日本の労働者階級の名においてお願いをいたす次第であります。

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) ありがとうでございました。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 議事進行について。公聴会にお願いするのは、私は、お教えを受けるためでございますので、何をおっしゃいましても、つつしんで承わるのでございますが、しかしおのずから予算の公聴会というものの性質には限度があると思うのです。自分だけが——失礼ですから申し上げませんが、いろいろ今後の予算の公聴会というものが、各種の宣伝やいろんなことになりませんように、将来の問題もございますから、委員長としてもお考えがあるかと思いますが、そういう点は相当一つお考えおきいただきたいと思います。今すぐに、たってとは申しません。私どもはいろいろここで議論したくありませんし、内容についてもつつしんで、いろんなお話を伺うのはけっこうです。やはり予算の公聴会という性質を、私は、常識をもって逸脱しませんように、委員長において、今後のことがありますので、お考えおき願いたいと思います。

木村禧八郎無所属クラブ

○木村禧八郎君 今左藤氏は、高野さんの公述を聞かれてから重大な発言をされました。公述人の公述に対して制約を加えるような発言になります。もしこれを解釈してゆきますと、事前に公述人に、どういう公述をされるか検討して、それを求めなければならぬことになります。一体、今高野氏の言われたことは予算と関係があるかないか、高野氏は、われわれの聞いたところでは、最近の中国を視察してこられたその体験に基いて、身近な体験から振り返って、日本の予算を検討して、そのまざまざとした体験に基いて話されておるのです。ですからあの話を伺って、直接には予算に関係はないようですが、あのお話を伺ってから、では日本はどういう予算を組んでおるか、そういう話はわれわれとしては感銘深いのでありますから、お立場の相違であって、そこはあまりにけつの穴を狭くしないで、日本が経済的に今重大な危機に立っているときには、広く視野を開いて、そういう立場の人の意見も十分尊重する。そんなけちな考えでは、私は、この公聴会で公述人の御意見に対して注文をつけたり、制約をしたり、そういうことになると困ると思うのです。そこはやはり賢明なる左藤さんも襟度をもっと大きくしまして、そしてあまり公述人の公述内容に制限を加えるようになりますと、これから公述に来ませんよ、そういうことになりますと。そういう点をやはり左藤さんの方も御了解を得たい。われわれとしては感銘が深かったのです。立場の相違がございますので、あまりそれに制約を加えることはいかがかと思います。   〔発言の許可を求むる者多し〕

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) 左藤さんの発言に基きますから、左藤さんにちょっと。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 私、今すぐに制約しろとか、あるいは予算の公述人に一々内容を伺えということまで申しておるのではございませんで、今後どういうふうに処置するかということはまだ提議いたしません。とにかくただ予算委員会として委員長にお考えいただき、こういう問題について、今後の予算の公聴会等については十分研究するような余裕を残していきたい、こういう意味でございまして、もちろん内容をどうしろということを申しておるのではございません。ただしりの穴を狭くしてはいけないというお話、ごもっともでございますが、また広くしてしまって何でも、まるで下痢状態のように何でも出るようになっても困ると思うのでありまして、その点はやはりお互いの常識と申しますか、そういう点で私おのずから道があると思いますので、そういうことを将来、次の公聴会等の計画をいたしますときにはお互いに十分研究するような余地を持ちたい、ただこの機会にそういうことを一言私の希望申し上げておる点でございまして、制約をしろとか私はここで決して発言をしているわけではございませんので、その点はよくお含みいただきたいと思います。

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) 左藤さんの御発言は——(発言の許可を求むる者あり)ちょっとお待ち下さい。左藤さんの御発言は、委員長に対して今何も問題があったというわけでないが、今後は公聴会を開くについて注意してもらいたい(「どういう」と呼ぶ者あり)ということの内容でありますが、私は……。

左藤義詮自由党

○左藤義詮君 注意とは申しません。研究をしましょう、お互いに。

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) それにつきましては、委員長は理事打合会におきましてよく検討をして選択をし、公聴会の進行もはかって参っておりますので、今後ともよく理事と連絡をとって参りたいと思っております。(「進行」「それでよろしい」と呼ぶ者あり)

松澤兼人日本社会党(第二控室・右)

○松澤兼人君 大体委員長が結論出されたから、これ以上言う必要もないわけですが、しかし予算の問題を公述人によって聞くということは、何も予算の側から見るだけの問題ではなくして、やはりアメリカの関係も見なければならぬし、また中共の関係も見なければならぬと思うのです。ただその問題が中共の話が多過ぎて財政の問題が少いとか、そういうかね合いの問題だろうと思うのです。向うの側からやはり予算をながめるということも、これは予算を批判する一つの方法だと思うのです。ですからして、この問題をこういうところで取り上げて、しかも公述人がいる目の前でいいの悪いのとか、あるいは発言を制約するとか、あるいは委員長に適当な処置をとれというようなことは、不適当だと思うのです。従って私は少くともこの問題は将来の問題として、ここで取り上げる問題ではないと思う。

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) 委員長もさように心得まして聞いておりました。(「了承」と呼ぶ者あり)  高野実君に対しまして、何か御質疑がありましたら。——別におありでないようでありますから、どうも高野君、ありがとうございました。   —————————————

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) それでは次に移りまして、日本中小企業団体連盟常任理事の山田正作君にお願いたします。

山田正作日本中小企業団体連盟常任理事

○公述人(山田正作君) まず私は中小企業者の立場から、三十年度の予算につきまして総括的な意見を述べたいと存じます。  第一番に、三十年度の予算から見まして、御承知の一兆円予算の最大犠牲者で国税六〇%、地方税の八〇%を負担している中小企業に対して、行政費がわずかに〇・〇六%であります。これは私どもの常識としては考えられないことでありまするが、政治的良心においてはこれが許されるでありましょうか、私は疑いを持つものであります。  第二は、民自共同修正案は、六十七億の減税と総花的歳出の増大八十八億、計百五十億の財源を金融債の運用部引き受け減に求めて、結局は中小企業にしわ寄せされたという点に不満を持つものであります。  第三に、金融債市銀肩かわりに関連しまして金融統制の復活の含みがあるように仄聞いたします。これは極力排斥すべきものであって、金融債のうち、消化疑念される商工債券の運用部引き受けを復活するように御配慮を願いたいと思います。  第四に、中央地方を通じて税制上の不均衡が是正されておりませんことは遺憾であります。  第五に、地方財政の窮乏対策として歳出の引き締めももとより大切でありまするが、一方地方税の税源を、全地方民の十分の一にも達しない商工業者のみに負担させるということでは、地方財政の確立は絶対に望まれないことと私は信じます。私は地方分権確立のために、地方税の根本的改革を要望するものであります。  さて、本論に移りますが、わが国の経済構成は、一方において重工業が高度に発達している反面、中小企業がその数において、また生産額においてきわめて重要な要素となっていることはすでに御承知の通りでございます。ことに大企業と中小企業の関係は、労資の対立関係とは全く異なり、きわめて密接なる共存共栄の立場におかれております。たとえて申しますならば、ピラミッドの頂点が大企業であって、その底辺が中小企業でありまして、大企業はこの底辺にささえられていると言っても過言ではございません。一方特に工業の面におきましては、大企業の繁栄安定なくしては中小企業の繁栄安定は得られないのであります。頂点の安定は底辺の安定によらなければなりません。従って私どもの中小企業振興運動は、決して一方的な狭い考え方から出発しているのではございません。十分にこれを御認識していただきたいと存じます。  さて、中小企業一社会問題並びに失業対策問題の関連について申し上げます。皆様のお手元に表を差し上げておりますが、中小企業の事業所は総数三百二十万余で、これに働く従業員数は一千二百万と推定されます。失業問題は社会政策、失業対策政策として国の予算にきわめて重大なる関係があることは、予算を見ても十分に納得することができます。しかしながら、たとえば病人ができてから騒ぐよりも、病人が出ないような予防医学が更に大切であることは申すまでもございません。失業問題もこれと同じく、失業者が出ないように、失業対策費や社会事業費等が少しでも減額されるような社会が生まれるようにすることこそ、政治の終局の目的ではないのでしょうか。三百万の事業所と一千二百万の勤労者を包容する中小企業こそは、実にこの失業問題を解決する唯一の面であります。六百万の農家のうち所得税を納めるものは七十七万人、勤労者また過半数はもとより税金は心配しません。しかしながら農家の二男、三男坊の就職問題あるいは勤労者の子女の就職問題、これこそ税金以上の重大関心事であるはずであります。議員諸先生方におかれましても、数十通の履歴書をお預かりになって御心配になられていることと信じます。農村の労働需要はすでに飽和状態でありまして、これが解決の道はただ三百万の事業所を有する中小企業の振興いかんにあるということを申しても過言ではございません。  次に、中小企業対策の基本は、中小企業の組織化であります。これは国会当初、関係大臣が必ず施政方針演説において述べられているというところであります。また各政党もその政策として高く掲げられておるのであります。これにより信用力の結集、企業の合理化を促進するということで、いずれも中小企業自力更生に依存せしむるというので、予算も伴うだけにきわめて政策としては都合のよい好題目であります。果してそれでよいでしょうか。政策に掲げる以上は、これを育成強化する責任があるものと存じます。  さて、私どもが組合のことばかり申しますると、必ず未加入の中小業者はどうするかという御質問を受けますので一応組織化の状況を申し上げたいと存じます。詳細は第二表を見ていただけば一目瞭然でございまして、数においては過半数の中小企業者が組織化されていることをうかがい知ることができます。しかしながら、数においてこそ一応大多数のもつものが組織化されたのでありまするが、これに対する経済的裏づけ、指導機関の貧弱等のため、半ばいわゆる睡眠状態であります。たとえば金融の面におきまして、一年分経過実績がなければ保証協会も保証してくれない、金融機関も融資の対象としてくれない等の問題がありますので、当初の一年の運営は、特に困難であります。従って組合を作れば何とかなるだろうというよな安易な一方的な考えは排除しなければなりませんけれども、指導育成に一段の考慮が必要ではないでしょうか。この点につきまして、今回協同組合中央会が取り上げられたことは、おそきに失するとは言え、喜びにたえません。しかしながら中小企業庁より要求された予算措置が取り上げられなかったのでありますが、この点はまことに遺憾に存じます。  次に、予算に計上されました中小企業関係の問題と検討いたしますと、冒頭申し上げたごとく、一兆円予算のうち、中小企業庁関係、修正一億円を加えまして五億五千万円弱、その他部局関係の二億二千万円を加えましても、七億七千万円でございます。このうち組織強化のために共同施設費二億五千万円でありまして、これも二十八年度までは補助金として、十年間のうちに成功したとき返済すればいいということに相なっておりましたが、二十九年度から、これは貸付金として支出されるように相なったのであります。組織化に対する唯一の対策費でありまするこの費用を、やはり他の方面の補助金とつり合わしまして、従来通り補助金として支出されんことを要望するものであります。  次に、金融の問題でございます。一昨年中小企業金融公庫が設立されまして、中小企業としてはまことに喜びにたえませんが、御承知の通り、今まで取り扱った数は一万五千、年間約一万であります、全国に。その資金面から見ましても、中小企業向け融資の一億六千万円に比較いたしますと、一%三にすぎないのであります。どうかこの点を御考慮下さいまして、その増強を期待するものであります。  次に組合金融の中枢は、何と申しても五十万の取引先と中小企業としての唯一の短期資金の中心である商工中金であります。従って中金の強化は、すなわち組織化の経済的裏づけの基本であります。現在組合経営のうち、最も大きな比重を占めておるのは金融事業でありまして、東京都の場合、調査組合一千二十九のうち、七百組合がそれであります。また運営上の隘路としては、資金調達の困難を訴えるものが最も多く、四〇%に及んでおります。全国的に見ても同じ割合となっております。そのことから見ましても、商工中金の資金を大幅に拡大し、組合に潤滑油を与えることが組合強化の上きわめて大切であることは明らかであります。この意味におきまして、今回中金に対する本予算よりの出資が十億円ございました。この点はわれわれのまことに喜びとするところでありまするが、今回民自両党の修正によりまして、中金の最も大事な債券の資金運用部による引き受けがなくなったということにつきましては、私どもは重大なる関心を持っている次第であります。  最近、大蔵省が金利引き下げの問題を取り上げまして、大銀行はすでにこれを実施しつつあるのでありまするが、商工中金におきましても、かねて金利が高いというような評判がありましたので、先般日中連の全国大会でも、あるいは総代会におきましてもこれが強く要望されたのであります。中金においてもこの要望にこたえるべく、その資金源に苦慮しておるようでありますが、私どもの期待、あるいは商工中金の考え方としては、今回商工中金はすでに半官半民の形になったから、資金運用部資金の引き受けの利率八分五厘を六分五厘にしてもらいたい、そうして出資金十億に対しても配当を免除するというような、いろいろな手を打ったならば何とかなるだろう、こういうような考えを持っておったようでありますが、先ほど申し上げたように、これが市銀に肩代りされますという、この望みも取り去られたということに相なるのであります。そうして最も安い原価であった政府預託金の二十七億は引き揚げられ、さらに地方財政の窮乏によりまして、地方の公共団体よりの預託金も漸減の傾向にありまして、ますます憂慮にたえないものがあります。  私どものお願いとしては、市銀消化が最も懸念される二十億の商工債券の運用部引き受けを復活させていただきたい。資金運用部資金を、万一の場合、中金に直接に買付ができるように法律を改正してもらいたい。また利子補給の方途も一応考えていただきたいのであります。  さらに預託金の問題でありますが、一時六百億を上回った政府預託金は、今まで中小企業金融機関の育成強化にどれだけ役っていたかしれません。相互銀行協会、信用金庫協会等の大会におきましても、ことごとくその存続はもちろん、増強が強く叫ばれておるのであります。ことに中金におきましては、その資金の約七%を占めているだけに、特に重大なる関係があるのであります。しかるに、大蔵当局は、会計法に違反するという法理的な見解によって、これをやめるということを申しております。大蔵当局としては、当然法律を守らなければなりませんから、当然の考え方であるかもしれませんが、国民の利益のために法律を改めることはできるはずであります。法律を改廃できる最高の権限者であられる国会におきまして、これに十分の御検討を賜わり、三百万中小企業のために善処せられんことをお願いいたします。  次に、税の問題であります。まず法人税について申し上げます。私どもの減税の主張は、大小法人の税率改正による負担の均衡を目標とする税制上の理論的主張であります。従って乏しきを憂えず、等しからざるを憂うる根本的理念に出発している均衡運動でございます。当局は法人税の均一的引き下げによる資本の蓄積を期待されているようでありまするが、お差しさわりがありますれば恐縮でございますが、今日の大法人は、先ほど資本蓄積の話もございましたが、大法人の重役はほとんど雇われ重役であります。これらの人々に会社の資本の蓄積を望むことはまことに困難なことであります。おそらくこの人たちは給与、賞与の増額を望み、あるいは不必要な外遊を試みて外貨を消費するというような結果になりゃしないかと思います。さらに労働攻勢の対象になるというようなことで、おそらく資本蓄積はできないと考えられます。しかるに、同族会社は資本蓄積の熱意を最も有するものでありまして、しかも法人総数三十六万のうち三十二万が同族会社でございます。そうしますると、この同族会社の大部分が中小企業者でありますからして、この中小企業者のためには特に税率の引き下げを期待するものであります。  しかるに、今回の法人税改正に当りまして、大小を問わず一律に四〇%に引き下げとなり、また修正によりまして五十万円以下の所得に対しては三五%ということになっております。これは大法人も中法人もひとしく恩恵を受ける措置でありまして、この点につきまして、私どもの多年の均衡運動が取り上げられていないということを、はっきり了解することができるのであります。すなわち、大法人はいろいろな免税措置がとられておりますので、実質の税率は三〇%を下回っておるということは、皆さんすでに御承知の通りであります。大蔵当局は、この措置は中小法人も利用できるので、利用しないでいるお前たちが悪いのだというようなことを言われているやに伺っております。これはまことに不親切な言分でありまして、その理由を申し上げますと、この措置のうち最も大きなものを申し上げますと、貸し倒れ準備金、価格変動準備金、退職給与引当金、この三つはもちろん中小企業者は利用することができるのであります。しかしながら、これは相当の利益があって初めて利用できるのでありまして、こういう資金を蓄積するだけの中小企業には力がないのであります。これは皆様のお手元に差し上げました表によりまして一応御理解願えることと存じます。すなわち、資本金五百万円以下の中小法人の利用状況を申し上げますと、第一に貸し倒れ準備金の方で八・一%、二の方で四・一%、三は五・八%であります。きわめて一小部分であり、ほとんど大部分が資本金五百万円以上の法人のみに利用されていることは、国税庁の調査によっても明確であります。これによって、私どもの法人税均衡運動が断じてふまじめなものでないということは、御理解いただけるものと確信いたします。また税率の引き下げによって、税収の減少はきわめて軽微であることは、私が差し上げました表を見ましてもおわかりでありますが、かりに二%全部引き下げまして約八十八億、これを一千万円以下に引き下げましても、全部三五%に引き下げましても、大体百億、ほとんど同じであります。これらの点は表によりまして御検討下されば十分御理解ができることと存じます。のみならず、この徴税率は中小企業者の方は非常に悪いのであります。昭和二十七年までは、資本金二百万円までは税務署所管でありまして、それ以上は国税庁所管でありましたが、この二百万円以下の法人税の税収はその当時七〇%であります。ところが、それ以上の法人の徴税率はその当時一一四%。その後緊縮政策によりまして、二十八、二十九年が最も悪い年でありますから、この成績が悪くなっておるとは考えられません。ただ政府が、大蔵省が提出しますところの徴税成績は、大法人も中小法人も、徴税のいいのも悪いのも全部ひっくるめまして、これを合計して百何%だということを言っております。この点は私ども遺憾とするところであります。  次に、地方財政は国家の予算に重大な関係のあることは、今さら申し上げるまでもないことであります。しかるに、近時地方財政は年とともに急落の度を加え、今や根本的に荒療治をしない限り、一時の糊塗策によってはとうてい救うことのできない状態に陥っているのではないでしょうか。果してしからば、その原因は那辺にあるのであるか。歳出の面における浪費もとより重大なる素因であることは申すまでもないのですが、歳入の面におきまして独立の確固たる税源を持っていないという点がもっとも大きいのではないでしょうか。すなわち、第九表を見ていただけば明らかでありますように、シャウプ改革以後、地方税収入は約五六%が商工業者のみの税金であります。かりに他の税目を加えますというと、もちろん八〇%近くなります。そうして一方的に商工業者のみが税を負担するという、まことに不合理きわまる税制であります。大体この事業税というものは応益税でありまして、何か事業をやるために地方公共団体から特別の恩恵を受ける、その代償として応益税を納めることになっているのです。ところが、その地方税の歳出の方面を見ますというと、表にもございます通り、商工費は、国庫の予算と同じように、大体地方歳出の二%にしか当らないのでございます。つまり税金の方は八〇%近く納めて、そうしてその恩恵であると思われる施設はわずかに二%である。こういう不合理なことをいつまでも持続していいのであるかどうか、この点を特に御研究を願いたいと思います。ことに事業税が最近におきましては、所得税の課税の標準が事業税の標準と相なったのでありますからして、基本的には所得税の課税基準となっているので、本来の物税でなく人税となっているのであります。私の考えとしては、この際これを所得税の付加税とし、地方受益税として府県民ひとしくこれを負担する、そうして低額な人には、これを免税しあるいは軽減を行う、そうして府県の県民がこぞって府県政に協力するということにしない限り、一部商工業者の負担のみに依存することによっては、府県財政の窮乏は救い得ないことを断言するものであります。またこれらの商工業が一方的負担の実情を把握することになりますれば最も大切な納税意識を消耗せしめるおそれがありまして、現に事業税の税収状況は悪化しつつあると伺っております。地方財政確保のため、まことに憂うべきものと存じます。私は地方分権確立のため、地方税の根本的改革を期待するものであります。  次に、中小企業泣かせの労働基準法について申し上げたいと思います。現在の労働基準法は、米国式、天下り式、あるいは直訳立法でありまして、中小企業者の特殊性を無視したものであります。従って、中小企業の実態とマッチしていないために、きわめて守りがたい、およそ縁の遠いものとなっておるのであります。まことに遺憾にたえません。従って、基準法違反件数はほとんどが中小企業者でありまして、労働組合の結成によりそれが全国的に積極化されることになりますと、常に圧迫され、搾取されている中小企業者に対し、さらに上から、下から、横からの総攻勢がとられんとしておるのであります。第八表をごらんになりますとわかりまするが、この三月の調査によりまして二十二億の賃金不払いがあり、その大多数が中小企業者であるということを御承知下されば、中小企業者の窮状がよくおわかりになっていただけることと存じます。そうして中小企業者は、大企業のごとく労働組合に対抗するところの力を持ち合せておりません。このままにしておけば、中小企業は崩壊のほかありません。中小企業の崩壊は、日本経済の崩壊であります。中小企業の振興なくして、日本経済の発展は考えられない。私は冒頭に申し述べましたように、農民のため勤労者のためにも、唯一の職場である中小企業の職場を守り続けなければならぬとの信念の下に、これに対し、日本独特の現行法はこれをそのままとし、中小企業労働基準法の制定を望んでやみません。

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) ありがとうございました。  何か御質問がありましたら……。

八木幸吉第十七控室

○八木幸吉君 中小企業者の立場から、本年度の予算案で一番改正を希望される重要な点を、一、二点、簡単にお示しを願いたいと思います。

山田正作日本中小企業団体連盟常任理事

○公述人(山田正作君) 法人税の均衡ですね、これが最も望ましいところであります。これは数字的に決して国税の減収になりません。これは詳しく皆さんのお手元に書いてあります。  それから金融の面におきまして、金融債の引き受けが今度市銀に肩がわりされました。これは興銀とかあるいは長銀、よそのことを申し上げてまことに済みませんが、こういう所は長期銀行であります。従って、長期の資金を扱わない大銀行が常にこの両銀行にお世話になっております。従って、この銀行の債券を持っておりますと、また何かのときに長期の資金を世話してその預金は自分の銀行に入れるというような、非常に密接な関連性があります。ですから、大蔵大臣も興業債券、長期債券は何とかなるだろうということを言われております。ところが、商工債券は、残念ながら、私どものような中小企業者でありますし、また相手の銀行というものは零細銀行でありますから、これを引き受ける能力はございません。まあ農林債券のことを申しますとどうかと思いますが、これも農業協同組合というものは預金の引き受けができます。相当の資金量を持っております。そうして銀行あたりへ預ける。あるいは全信に預ける。そうしてこのわずかの利子をもらうよりも、農林債券を買った方がはるかに利益だということを納得すれば、おそらくこれを買うことも可能であります。そうして農林債券を買っておけば、また必要なときにはわずかの金利の差で利用することができるのであります。遺憾ながら、商工協同組合におきましては預金の扱いもできません。これは信用組合が扱っておる関係もありますでしょうが、こういう意味で、商工債券の消化が最も懸念されるのでありますから、どうか、この少くとも中小企業の重要性をお考え下さいましたならば、わずか二十億でございます。新規債券のわずか二十億は、少くとも運用部資金から出していただくように、御配慮願いたいと思います。

館哲二緑風会

○委員長(館哲二君) ただいまの公述に対しまして、何か御質疑はございませんか。——御質疑がないようであります。山田君どうもありがとうございました。  これで公述人の方々の公述は全部終りました。公聴会はこれをもって散会いたします。  明日は、十時から総括質問を継続いたします。本日は、これにて散会いたします。   午後四時四分散会

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