予算委員会 第18号
- 発言数
- 234 件
- 登壇者
- 24 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1955/05/31
会議録
○委員長(館哲二君) それではこれより予算委員会を開きます。 昨日に引き続きまして一般質疑を行います。松澤兼人君に申し上げます。要求大臣のうち大蔵大臣と高崎国務大臣、自治庁長官は出席されております。外務大臣はちょっとおくれますが、間もなく出席されるはずであります。
○松澤兼人君 最初に大蔵大臣にお尋ねいたします。 参議院におきまして現在暫定予算が審議されておるのでありますが、一方、三十年度本予算につきましては、現在民主党と自由党との間に予算の修正の折衝が行われているようであります。そこでお尋ねいたしたいことは、どの程度までこの修正あるいは組みかえの折衝が行われているのか、あるいはさらにその折衝が果して大蔵大臣の了承できる程度のものであるかどうか、この点についてお伺いいたします。
○国務大臣(一萬田尚登君) お答えを申し上げます。私はただいまのところ御審議を願っておりまするこの三十年度の本予算案の成立を期待いたしておるのであります。ただいま折衝されておるということについては、内容については私は存じませんのが現状であります。
○松澤兼人君 しかし、あなたも政党に所属しておられるし、かつまた、実際の折衝の過程はそのつど大蔵大臣までは一応報告なり了解なりを求めることが行われておると私は思いますし、また一般にその点は新聞も伝えておるのであります。どういう程度のものならば、のめるとかあるいはのめないとかということも、大蔵大臣の談話として発表されている。もちろんここは公式の場所でありますから言えることと言えないこととありましょうけれども、しかしこの折衝に対する大蔵大臣の所見というものは、少くともわれわれが予算を審議する場合において参考のために必要と思われるので、ぜひともこの点はできる限り詳細に御説明を願いたいと思います。
○国務大臣(一萬田尚登君) お答え申し上げますが、新聞に伝えられておりまする、いわゆる自由党の御提案、これは私同意いたしかねるということは申し上げております。なおその他のことにつきましては、私が大蔵大臣としていろいろと判断を加える段階にないのでありまして、せっかくいろいろと御折衝なすっていると思いますが、私はまだこれについてかれこれ申し上げる状況にありません。
○松澤兼人君 私は大蔵大臣が現在進行中の予算の修正、組みかえ折衝に対して直接の関係のないことはよく存じております。しかし三十年度予算を編成された当面の責任者である大蔵大臣は、この予算の修正、組みかえ折衝に際して、最低限度どういう点までは認められるけれども、どういう点以上のものは認められないという基本的な態度がなければならないはずであります。あってしかるべきだと思う。この点をはっきりしていただけば、われわれもこの予算審議に際して、これ以上は無理であるということを了承もできます。少くとも予算の修正に応ぜられる最低限度、あるいはその承認を与えられる基準というものは、おのずから大蔵大臣として持っておられるはずであります。私はそれを聞きたいと、こう言っているのであります。
○国務大臣(一萬田尚登君) お答え申し上げますが、そういうような意味合いにおきまして、今日私が明確に申し上げ得ることは、大蔵大臣といたしまして、ただいま御審議を仰いでおるこの本予算、これを大蔵大臣といたしましてぜひともこのまま通過をお願いしたい、これを申し上げ得るのであります。従いましてその他のことにつきましては、今大蔵大臣がぎりぎりこういうところまでという見解はあり得ないのであります。ただ大蔵大臣といたしましては、全体の各般の事情も考えなければならぬこともありましょう。従いまして今ぎりぎりということも言えないのであって、しかし各般の情勢は考えて政治はやらなくちゃならぬ、こういうことは考えております。
○松澤兼人君 私は少くとも一兆円予算はこれは厳守しなければならないとか、あるいはまたは産業債を発行することは不賛成であるとか、あるいは金融債ならいいとかというような点は、一つの基準だろうと思うのであります。一兆円のワクをくずすことは絶対反対であるということをおっしゃっても、あるいは産業債ならいけないけれども金融債ならいいということをおっしゃることも、一つの基準だろうと思うのであります。それについて大蔵大臣の御見解を承わりたい、こう申し上げているのであります。項目別にこういったことは三十年度予算を根本的にくつがえすから、こういうことはいけないということは言えるはずであります。それを伺いたいと申しているのであります。
○国務大臣(一萬田尚登君) お答え申し上げます。一兆円のこのワクをくずさない、これはもう申すまでもないことであります。なおまた公債政策によらないということも、これも私の信念であります。本予算の骨格をなしておるこういう予算案自体の性格を変更するような、そういうことには私としては応じられないことは言うまでもないのでありますが、こういうことはもうきわめて本予算案自体について明確な線である。特に私はこれに応ずるとか応ぜぬとかいうこと以上に明確な事柄でありますから申し上げなかったのであります。そういうことでよろしければ、そういう点ははっきりします。ただその他については何も私はここで申し上げる段階でないということを申し上げておきます。
○松澤兼人君 こういうことは常識ですから、私が聞いたからといって、その点は厳守したいということを申さなくても、それはもちろんわかっております。しかしもう一歩それでは進めて、現在の予算はいわゆる拡大均衡に対する一つの地固めである、こう言われております。これも予算の一つの性格だろうと思うのです。しかし自由党の修正なり組みかえなりというものが、果して現在の地固めから一歩出たものであるか出ないものであるか、昭和三十年度において拡大均衡の一つの途をとるということは、三十年度予算の根本的な性格をこわすものではないか、こういう点はいかがでございますか。
○国務大臣(一萬田尚登君) 私は三十年度予算につきましての基本的な考え方はしばしば申し上げますように、一面において日本経済の地固めをする性格、もう一つは将来の経済発展への基盤を醸成して行く、そういう性格を持つべきである、もう一つはそういう政策を遂行する過程におきまして、特別に社会上において、もろもろの困難な、あるいはおもしろくない現象がある。これについては調整と言いますか、ある程度の手を差し伸べて、そして調整を加えていく、この三つを考えまして、それに応ずるような予算を組んでおると考えております。
○松澤兼人君 こちらの方で申し上げればそれについていろいろとお答えになるのでありますが、それでは現在三十年度予算に盛られておる減税以上の減税を要求された場合に、それで予算の性格というものはくずれないとお考えでありますか。守られておるとお考えでございますか。
○国務大臣(一萬田尚登君) お答えしますが、今それについてお答えをするのは行き過ぎではないか、私は減税についても、今回減税をやっておるのでありますが、私としては、本予算に平年度において五百億、この減税をもって今日では最も適当と考える、これ以上申すことはないと思います。
○松澤兼人君 もう少し大蔵大臣が率直にお話願えるといいと思うのですけれども、貝のふたを締めたように何にもおっしゃらない。私もそういうことならば今回お聞きしないで、三十年度本予算のときにさらに重ねてお伺いしたいと思います。 経審長官にお伺いいたしますが、物価は自由党のいわゆる末期におけるデフレ政策を採用して以来下り気味にあります。しかし現在の物価の低落の傾向というものは、これがもはや底であるかどうか、さらにさらに物価がまだ下ってくる傾向にあるか、あるいはまたは物価の低落は、たとえば消費者物価において下っているのか、あるいはまたはコストが下ってきているのか。物価がもし低落しているとするならば、どの面において最も著しくそういう傾向が現れているか、この点お伺いしたい。
○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。大体におきまして、三十年度は前年度に比較いたしまして二%程度の低物価政策をとって行きたいという方針で進んでおるのでございまして、現在の情勢におきますというと、国際情勢に相当作用を受けるものでありますから、これらの情勢の変化におきまして、鉄だとかそういったもの、非鉄金属等につきましても、ゴム類等につきましても、相当影響を受けております。現状におきましては大体横ばいの状態でございます。そういうわけで今私どもの計画いたしておりまする二%程度のものにつきましては、大体現状におきますれば低落の気運を見せておると存じます。
○松澤兼人君 問題は結局輸出品の物価がどの程度に下るかということにあるのであろうと思いますが、この点につきまして、現在の物価低落の状態及びその将来ということの見通しをお伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(高碕達之助君) 輸出貿易を促進いたしまする上におきましては、輸出物資の原価をもっと下げなければならぬ、できるだけ下げなければならぬ、それにはその基礎になっております石炭というものが相当大きな役割を演ずることになりまして、石炭が下れば電力も上げなくても済む、あるいはその他の工業もこれによって下って来る、こういうことを考えまして、石炭を合理化いたしまして逐次この価格を安定せしめて下げて行きたい、こういう方針でございますが、大体の方針は今後も逐次輸出物価につきましてはなお下げて行きたい。また下って行くものだ、こう存じます。
○松澤兼人君 昨年の上半期に比べますと、輸出物価は漸次下って来たようでありますが、また最近において少しく反騰しているのではないかという傾向が見られます。これは事実でおりますか、あるいはその原因はどういうところにありますか。
○国務大臣(高碕達之助君) お話のごとく、あるものは低落いたしておりますが、あるものにつきましては幾らか値が上っておるものがあります。しかしながら、これは大体におきまして予算等がよく通過いたしまして、そうして政府の方針等がはっきり定まりますれば、ここで私は物価は逐次われわれの考えておる通りに落ちついて低落の機運を見ることと存じます。
○松澤兼人君 次にお伺いいたしたいことは、経済六カ年計画における外国貿易、特に輸出貿易を中共あるいは東南アジアというふうに分けてみました場合に、どういう点に重点を置かれて、またそのためにはいかなる政策をおとりになるお考えでございますか。
○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。二十九年度に中共における貿易は輸出が約二千万ドル、輸入が約四千万ドルになっております。これは逐次ココムにおきまして、大体ヨーロッパと同じ状態のものが輸出できるということに相なりましてから、この輸出の方はもっと増進して参りまして、逐次これは改善して参りたいと考えます。同時に輸入の方も日中貿易協定等がただいま民間においてやられておりますから、大豆等も輸入いたしますし、また輸出の方も化学製品等も輸出いたしまして、逐次中共貿易はもっとよくなって来るという考えでございます。また東南アジアにつきましては、二十九年度は大体輸出が五億二千万ドルくらいになっておりますが、輸入が四億以上になっておりますか、これは私はどうしても非常な重点を置いてこれを開発いたしたいと思いますが、現在御承知のごとく東南アジアにおける賠償問題が解決していないということが唯一の障害でございまして、ビルマとの賠償問題はようやく解決し、ただいまフィリピンとも連日交渉を重ねておるようなわけであります。この賠償問題が解決いたしますれば、インドネシアとの間もよくなる、賠償問題の解決が非常に重要な役割をすると思います。これが解決しますれば、私はこの間の貿易は急速に増加すると存じておりまして、これに重点を置いておるわけであります。
○松澤兼人君 日中貿易協定で締結されました片道三千万ポンド、これは果して可能でございますか、あるいはこれを可能ならしめるために政府はどういう対策をお考えになっておりましょうか。
○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。私はこれは今すぐにどうこうということはむずかしかろうと思いますが、かすに時期をもってすれば、ここ一年くらいの間にはでき得ると存じております。
○松澤兼人君 それでは外務大臣に伺います。日比賠償交渉は、今まで日本におきまして私的な交渉が進められたのでありますが、今日ネリ全権が帰国されるのですが、これはどういう事情によるものでありますか、あるいはその見通しにつきましていかなるお考えを持っておいでになりますか、お伺いいたします。
○国務大臣(重光葵君) 日比賠償交渉は非常に重要性を持っておるという観点から、ぜひこの交渉は結果あらしめたい、こういうふうに考えて処理をいたしてきておったのであります。従来そのために専門委員会が開かれて、専門の人が比島から派遣されて、わが専門家と打ち合わせしておるということは御報告申しておる通りでおります。ネリ大使が、これは賠償問題を従来出島でやっておった人でございまして、これが大統領並びに比島政府の代表として委任状を持って当地に参りまして、その専門家会議の結末を一つはつけようというような任務を持って、かつはまた賠償問題について日本側の意向を十分探ってみよう、こういういわば内交渉をやってみよということで来ておったのでございまして、いろいろわが方と接触をして、その任務を遂行しておったわけでございます。まだ結末はつきません。しかし結末のつかないままに一応専門家会議の結論をももたらして、そうして比島に帰って、さらにまた交渉自体は続けて行こうということになりまして、ネリ大使は今日午後出立する予定でございます。さようなわけでありますから、日比の賠償交渉はなお続けなければなりません。また続けて交渉中であるわけでございます。そこでこの交渉の内容についてはさようなわけでございますから、申し上げることを差し控えますけれども、この交渉を続けて行けば双方の満足する条件に到達するだろうという予想を持っておるわけでございます。
○松澤兼人君 それでは時間がございませんので、さらに外務大臣にお伺いいたしたいのは、移民の問題であります。三十年度の予算に移民を送り出す費用、か見込まれておるようであります。しかしわが国の人口問題を解決する場合には、やはり計画産児の面ともう一つは移民の問題、この両者を適当に解決しなければならない、こう考えておるのであります。そこでお伺いいたしたいことは、ただ移民政策がたまたま予算を多少計上することができたということで解決する方法ではなくして、やはり長期にわたる移民の送り出しという計画もなければならないし、そのためには受け入れる国との間に適当な協定も必要でございましょう。従って中南米地方におきまして移民を送り出す、あるいは受け入れる協定というものが成立する可能性がありますか、あるいはどういう国においてその可能性があるか、もしそういう協定ができるならば、年間どの程度の送り出しが可能になるであろうか、これらの点について外務大臣の所見をお伺いいたしたい。
○国務大臣(重光葵君) 移民の重要性はこれまた申すまでもございません。受け入れ態勢は中南米方面において昨今好転しておるということも他の機会において御説明申し上げたと思います。受け入れ態勢の十分いいところと、政府との間の協定を結ぶということも、これは適当な方法でそれを幾多の国とやっておる状況でございます。しかし非常に注意しなければならぬのは、政府の協定として、政府間の話し合いとしてやるよりも、私の、個人の関係、もしくは私設会社との関係で行った方が実効を上げるに効果的であるという、そういう国のことも考えなければならぬので、たとえばブラジルのごときは、そういう方法によってやっておるわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、この事業はお話しの通りに、これは長期の計画性を持った政策でなければならぬと、こう思うのでございます。今日まで何分これに対する予算的措置も非常に不完全でございまして、今回の予算も完全でないことばもとよりでございますけれども、これでもって一つ出発点として、また将来は計画的にこれを進めて行きたい、こういう方針で参っておることを申し上げます。なお今のように受け入れ態勢が好転しておる状況を計算に入れますというと、大体移民はすべての設備が整えば、条件が整えば五万人ぐらいは年々送り出し得ると、こういう計算をいたしております。これもあわせてお答え申しておきます。
○松澤兼人君 時間がきましたからやめます。
○委員長(館哲二君) 昨日曽祢君の質疑で外務大臣の分は留保されておりましたので、この際曽祢君の発言を求めます。
○曾祢益君 ちょっと昨日御質問申し上げようと思っておったことの前に、ただいま日比賠償について松澤委員に対する御答弁がありましたが、われわれも総額の問題、期限の問題、いろいろ国際上機微な問題があろうと思うので、その内容の全貌をここでお漏らし願おうとは考えておりません。ただ大体におきまして、昨日はまあ日比賠償問題があるいは好転するかもしれない、こういうようなことで外務大臣が議会に出られなくなったということでありましたので、われわれもその進展を非常に希望する意味から、御欠席もやむを得ないと思っておったのですが、大体伝えられる日本側の前のガルシア・大野仮協定ですか、あの四億ドル二十年の案、これと、これまた伝えられるフィリピンが少くとも十億ドル、期限は十年以内といったようた案との間に、今度はネリ大使が来られて、専門家同士の話ではなくて、その最も問題の核心である年額及び期限及び総額の問題について両者間に相当歩人寄りができたのかどうか。従ってこの際は一応はネリ大使が帰国して、東京における会談は一応ストップになったけれども、会談を開いたことが大いに有意義であって、今後進展に見通しん持っておられるというのか、それとも今回のは折角話はしたけれども、その結果、デッド・ロックになったというようなことになると、これは日比関係全般にかえってマイナスな現象が起りはしないか、かような意味から、要するに両者の間に近寄りつつあるのか、今後さらに好転する希望を持っておられるのか、それともまた一時棚上げ的な悪い結果ができるのか、これらの交渉のあらましのところと見通しについて伺いたいと思うわけです。
○国務大臣(重光葵君) 今伺いました御趣旨によって、それと全く同じ趣旨によって先ほど御答弁申し上げたわけであります。しかしさらに繰り返して申し上げます。日比賠償交渉が行き詰りになってしまったということは、もうこれは説明を要しません。御承知の経緯でございます。そうでありますから、新たに取り上げた交渉は、前の行きがかりを捨てた交渉でもって初めて交渉が進行し得たのでありますから、それはそう申し上げて御了解を願いた。それで内交渉いたしましたことは熱心に、比島の代表もこれをぜひ結末をつけたいという、つまり日本側と向う側との全体的な気持はよく合ったのでございます。それはマグサイサイ大統領と鳩山総理との挨拶の交換から始まっておるいきさつもございますが、その挨拶の趣旨によってきわめて熱心に討議いたして、その討議の結果は非常に有益であったのでございます。しかし今日は協定を結ぶというところの結論はまだ得ておらない状況でございます。今後の交渉に残されております。残されてはおりますが、今日までのところは決して逆転はいたしておりません。そうしてなお従来の態度を続けて行って交渉を両方から熱心に進めて行くならば、見通しはきわめて有望であると、こう考えております。ただ最後の結末には達していないということを御報告をし、それからまた双方とも同じ気持でこれを進めて行く。将来日本とフィリピンとの関係を正常化するということは、単に通商上の関係だけにとどまらず、これはもう非常に大きな意義を持つことでありまするから、これをぜひ成立せしめたいという見地に立って交渉を進めておりますが、交渉は結末にはまだ達していない、こういう状態であることを御承知おき願って御了解を願いたいと思います。
○曾祢益君 くどいようですけれどももう一ぺん伺いたいのですが、今のお話によって、非常に有益であった、そして決してスタートよりか悪くならなかったというお話しで、われわれもこれを希望するのですが、今おっしゃったように、今度は日本もこの前の経緯にかかわらずということは、もっと平たく言えば、必ずしも四億ドル二十年という大まかな線にこだわらずにという意味だろうと思う。これは日本としても相当大きな犠牲が伴うかもしれないというかたい決意がおありだったと思う。さらに、むしろこちらから、鳩山総理のマグサイサイ大統領あての書簡で、こちらからいわば積極的に持ちかけた交渉であった。その結果、こういうむずかしい交渉ですし、いろいろ内政上の問題も、相手国にもあることでしょうから、今日直ちに協定に達するほどの了解にはいかなかったとしても、ほんとうに私が心配しているような、こちらから持ちかけた交渉が実はまたデッド・ロックになった、そういう好ましからざる政治的結果が生まれてくる危険はない、のみならず、これを手がかりとしてまだ双方歩み寄りの余地を残しつつ有益な予備会談をやったということを、もう一ぺんはっきり確認することができるかどうか伺いたい。
○国務大臣(重光葵君) 御趣旨は非常によくわかりました。私も、今申します通りに、先ほどからの答弁はみんなさようなことを申し上げるために答弁しておるつもりでございます。すなわち、決してブレーク・ダウンしたわけではございません。そして将来は、この交渉を続けていくならば、必ずや交渉は妥結し得るものという見込みを持っております。すなわち、双方の、両国の関係が将来大きく開けることを単に希望するのみならず、そういう見込みをもってこの交渉を続けていこう、そうしておるということを申し上げます。
○曾祢益君 どうぞ今後ともの御努力のほどをお願いいたしまして、次に、昨日御質問申し上げようと思っていた富士自動車の解雇問題と、これに関連して特需産業の企業の安定、また労働者の生活の安定の問題でございますが、これはすでに昨日も関係労働者から外務大臣に陳情もあったことでございますし、私はここに事件の概要を申し上げる必要はないと思うのですが、要するに、アメリカの特需がこれは減るということは、まあある意味で望ましいことでもあると思う。平和的に産業が転換し、真の自立産業になるという意味から……。と同時に、現実の問題としては、急激に一方的にこれが減るということは、日本の外貨収入並びに産業の維持、雇用量の維持からいってきわめて好ましからざることであるわけです。従ってこの間に処して、もちろん国内対策としては政府全般が特需産業の平和産業への転換、切りかえ、また雇用対策としてのいわゆる首切りが起らぬようにという国内的措置がとられなければならぬとともに、これは重要な日米間の外交上の問題であります。しかも特需産業に働く労働者は、特に朝鮮動乱以来いわゆる国連の措置に協力するという立場から、ただ単に自分の職場の利益を守るだけでなくて、国連の集団的な安全保障に協力するというような気持から、アメリカ軍ではありまするけれども、その軍需産業の一端である仕事をやってきたわけであります。ところが必要なときには使って、必要がなくなったからそれを放り出してしまう。これは単なる私契約の原則からいえば、特需産業はそういう不安定なものであるから、一年々々の契約にしておるのだから、生産量がなくなれば、失業が起ることは当り前じゃないか。その通りでございましょう。日本の国内的措置が非常に、現内閣においても、吉田内閣においてもおくれておったことは責められなければなりません。しかしこれは非常に大きな日米間の政治的な感情の問題でもございます。従って外務大臣がこういう問題に、みずからこれを取り上げて、そうしてアメリカとの間にそういう事実上無責任、非人道なことをやらせないように、たとえば、昨年九月十五日からアメリカの兵站部の方では、特需が漸減するだろうということを言っておりました。警告は発していたということは事実でございますが、しかし、七月のこのアメリカの予算切りかえ期になって、急に富士産業の場合のように、半分以上も要らないというようなことを通告して、あとは日本でしかるべくやれということは、これは許さるべきことじゃないと思う。従いましてこの問題については、外務省の事務当局もすでに私の承知するところでは、日米行政協定のあの混合委員会ですか、あるいはその下に設けられた特需対策委員会等に交渉していると思いまするが、外務大臣としても、この問題と真剣に取り組んで、そうしてアメリカ大使、アメリカ政府にもこの特需の減少に対する計画化減少、そうして急激な変化がないように、そうしてそういう場合にはアメリカも責任をもって、この民需転換に対して交渉をする、と言ってはあるいは無理であって本、それくらいのモーラルな、道義的な責任を感じて、円満にこれが処理ができるように、彼らの責任を一つ喚起するという措置をとっていただきたいと思うのですが、この問題に関する外務大臣のお考え並びに現に起っておる富士産業の解雇問題に対する外務大臣としての御処置のほどを伺いたいのであります。
○国務大臣(重光葵君) 今日の日本の状況において、日米関係の重要であるという御趣旨については、その通りだろうと思います。従いまして特需の問題についても、また、それから派生することについても、双方の間に感情の問題がわだかまることのないように、いろいろ措置をとるということは、これも当然やらなければならぬことです。それはただ一片の約束だけの問題でなくして、双方の政府との間はむろんのこと、国民同士との間においても了解を進めるような気持が醸成されることが非常に必要だろうと考えます。今お話しになりましたこの事件につきましては、これはさっそく措置をとらなければなりません。まことにかようなことは不幸なことだと思います。そこで一方的にすべてのものを解釈するということも果していかがかと思う。これは双方の立場をよく了解し合うようにしむけていって、問題の解決を見出すということが一番大切であろう、こう考えるのであります。そこでこの件につきましては、われわれもいろいろ事情をたださなければならぬこともある、反省を求めなければならぬこともあるだろうと思います。そこでさっそく外務省といたしましては、アメリカ軍側に注意を喚起して、これは早く一つ処置をしてもらいたいということを申し入れたのでございます。その結果会社側とそれから軍側とそれから神奈川県当局及び通産省当局、これらの関係者が会合をいたしまして互いにその事情をよく検討し、また言い前を聞いて、適当にこれを解決する方向にしむけるように対策を講ずることに今措置をしておるわけでございます。
○曾祢益君 ただいまの事務的な措置については一応了承します。ただ、前段に外務大臣が言われたようにきわめて重大な問題であるから、これはきょうあす中に開かれるであろうこの現地当局と業者との会談の結果にまかせずに、重大な関心をもって必要な場合には、さらにアメリカの上級官庁に、すなわち最終的には大使ということになろうと思うのでありますが、問題を取り上げるつもりで十分なる関心をもってすみやかに、かつ円満にこれが措置されるように御努力を願いたいと思うのですが、さように御努力願えるかどうか、もう一ぺん伺いたいと存じます。
○国務大臣(重光葵君) 御趣旨をよく伺いましたから、御趣旨に沿うようせいぜい努めたいと思います。
○曾祢益君 最後にもう一点、私は時間がございませんので、大きな問題である原子力の平和的利用の問題並びに外国からの技術の導入についての全般の問題をこの際御質問をすることは差し控えますが、要するにこのポイントとなっておるところは、私はこうではないかと考える。すなわち濃縮ウランというような一つの物質についての受け入れについても、何だか好ましからざる、日本の自主性なり何かを阻害するようないわゆるひもがつくかつかないかということが問題の中心であろうと思います。私個人の意見としては、おそらくは濃縮ウランだけの受け入れならば、これは直ちにそれがひもつきだというのは、少し警戒的に過ぎやせぬかという気もするのであります。ただ問題になっておりますアメリカとトルコとの協定をしろうと的に見ても、第九条だったかと思いまするが、ただ単に濃縮ウランの提供だけでなく、引き続きすなわち実験炉に必要な原材料を提供するだけでなくて、いわゆる原子発電等の大きな技術的な提携にまでこれを予約するといいますか、濃縮ウランというものの提供ということが一つのきっかけとなりまして、その受入協定それ自身がすでに技術提携、発電の設備等についてまでアメリカと提供を受ける国との間が約束してしまう。これは一種のその受け入れる国が割り切って、アメリカの技術だけがいいということに割り切った場合には、それでもいいでしょう。しかしその点についてさらにもっと広く研究してから、この発電の問題についてはどこの国とやるかについては、いわゆるコミットしない、こっちの自主性を残しておく、こういうことが適当ではなかろうかという私たちの見地から言うならば、少くともそこまでこの予約するようなたとえばトルコとアメリカの第九条のごときものは行き過ぎではないか、かように考える。そこで今濃縮ウラニウム受け入れについては、政府は腹をきめて今交渉に入られた段階であるから、細目については協定ができてから是非善悪を判断するというお答えだろうと思いますが、ただその基本的な考えとしては、そういったような今の段階においては、濃縮ウランをもらって、ひもつきでなくもらって実験する段階である発電をどういうふうにやるかということについては、世界全般の技術、日本の技術等のことをよく総合的に考慮して、今直ちにアメリカから濃縮ウランを受け入れるということだから、将来の自主性なり行動の自由を拘束しないということが、存外政治的のひも一つき云々ということよりも私は重要ではなかろうかと考えるのですが、この問題に関して外務大臣及び高碕経審長官の基本的な交渉に当ってのお心がまえを伺わしていただきたいと思います。
○国務大臣(重光葵君) 濃縮ウランに関する援助受け入れの交渉をすることにいたしました経緯は、もう再び繰り返しません。申し上げた通りでおります。そうしてその受け入れる交渉のその気がまえでございます。今のひもつきであるかどうか、この点はお話しの通り一番われわれも重要に考えておる点でございます。ずいぶん専門的のわれわれのわからぬところは非常に多いのでありますが、そういう点はわれわれも非常によく了解をいたして、そういうことのないように今お話しの趣旨に沿うべく努めておるわけでございます。今朝の新聞あたりにだいぶ問題が出ておるようでございますが、だんだん専門家の意見を聞いてみましても、少しあれ本何と申しますか、少し誤解と申しますか、少し行き過ぎた議論もあるようでございます。そういう点は専門家を初め各方面の議論を十分に頭に入れてこれは交渉に臨んでおるわけでございます。それから交渉のこちらの気持として向うに持ち出しておるものについては、全くそういうもののないことを庶幾して、そうして今やっておるわけでございます。今のお話しのように受け入れてあとのいろいろこの発電の方面のことなんどについて拘束を受けるようなこと、つまりお話しのように自主性を失う、特に私は日本の将来の科学進歩についてむしろこれを拘束したり妨げになるようなことは、これは当座の便宜のために犠牲に供すべき問題じゃないとこう考えておるわけでございます。気持はさような気持でやっております。なお、この件については私は非常にわからない、知識のない点が非常に多いので、専門家の意見を十分に聞かなければならぬと、こう思ってまた聞いてやっておるわけでございます。なお、その他のことについては、高碕大臣からお答えをお願いいたします。
○国務大臣(高碕達之助君) お答えを申し上げます。ただいま重光外務大臣からお答えした通りでございますが、大体の方針といたしますれば、今回アメリカから受け入れます濃縮ウランという問題は、単に実験炉用の小さなものであるから、大きな問題はないと思っておりますが、トルコとの契約等を見ますというと、多少疑問とすべき第九条等もあるようでありますが、こういうもののために、将来日本はこの原子力を動力用として使った場合に、アメリカの承認がなくてはほかとの協定ができないようなことになると非常に困りますから、そういうことのないように、こちらの都合であるいはアメリカの知恵を借りることもあるでしょう。こちらの自主性を持つようにこれは間違いのないようにやらなければならぬ、こういうことは十分注意してやっております。この意味におきまして、将来このウラニウムの研究はアメリカだけでなくしてそのほかの方面でも非常にやっておりますから、これで少しでも手がかりを得るように、この方針で進んでいきたいと存じております。なお、日本といたしましても日本独特の方針で進むようにまた一歩を進めていきたい、こういう考えでございます。
○委員長(館哲二君) 委員長から千田君に申し上げますが、外務大臣がやむを得ざる用事で五十分から退場されますので、外務大臣に対する質問を先にお願いしたいと思います。
○千田正君 外務大臣にお伺いしますが、ただいま曽祢委員からのお尋ねの濃縮ウラニウムにつきましてお答えがありましたが、ただ一点私は伺っておきたいと思いますのは、今朝の新聞に伝うるところによりまするというと、学者の方の方々は、アメリカの提案に対する日本側の修正にはどうも承服しかねる、早く言えば、日本側の修正案はアメリカ・トルコの協定に基く第九条にのっとるような修正案を日本側は出しておるから、ああいうふうであっては、将来日本においてアメリカ側から規制を受けるおそれがあるから、これはどうもわれわれは感心できないというので、昨日学術会議の原子力問題の委員長の藤岡博士から外務省に向ってその訂正方を要求したということが、新聞に伝えられておりますが、これは政府においてただいまのお答えを伺うというと、慎重に考える、こういうお話しでありましたが、将来これは変更されるという御意思がありますかどうか、その点を一点伺っておきたいと思います。
○国務大臣(重光葵君) 御心配の点の大要については、もう先ほどお答えした通りでございます。今朝の新聞を私も見まして、そうして実はその問題について私自身としては、まだ詳細に検討する余裕を持たないのでございます。しかし外務省の主任官に聞いてみますというと、少し藤岡博士の御心配も行き過ぎのようだということでございます。トルコ条約の第九条と同じようなものを作る意図はない。それからまた今外務省の日本側の修正案ということでございましたが、あれは向うから案が出て来て修正したというわけではない、日本側の意図を向う側に伝えたというわけでございます。そこでそういうことでありますならば、今の御心配の点はまずなかろうかと思います。しかしこれらの点は影響するところが大きいのでございますから、外務省といたしましては、各方面の何も十分に研究をいたしまして、そういう御心配は除きたい、こう考えておる次第でございます。
○千田正君 それでは外務大臣もお急ぎのようでありますから、三点だけ続けて問題を圧縮しましてお尋ねします。それはただいま松本全権がロンドンに着かれて、明日からソ連側と交渉を始められると思いますが、その際特に私は外務大臣に伺っておきたいのは、終戦時におけるソ連領土内に残留しておったところの邦人の数は、かつて日本の政府が発表しておった数とは相当の食い違いがあるわけであります。さらに中共側からの発表も、たとえば終戦時においてソ連側から引き継いだという人数に対しても相当の開きがある、こういう問題はもちろん交渉の最中においては、相当慎重に取り扱われて、その明細な点まで打合せがされると思いますが、同時にかつての日本の領土でありました樺太、千島にありましたところの個人の財産は、これは当然現在のところは、ソ連が没収して、それを管理しておると思いますが、この返還等に対しまするところの問題は、どういうふうにお考えになっておられるか。この問題、たとえば今の終戦時におきますところの残留邦人及び軍人、軍属の行方不明、死亡等に対する問題と日本側の個人の財産の没収に対するところの問題はどう処理されるか。 もう一点は、今度の漁業問題、通商問題につきまして、特にこの漁業問題などがこの交渉の重点になると思いまするが、従来国際公法の慣習から言いますれば、私が申し上げるまでもなく、沿岸三海里が普通の領海として常識上国際公法じゃそういう観点に立っておるのでありますが、最近におけるところのソ連側の主張を見るというと、三十海里あるいは十八海里とまちまちな主張をされておるようであります。こういう問題に対しては、将来日本の北洋漁業に対する非常なる影響を及ぼすものでおりますから、この領海の主張の点は、日本側はあくまで従来の国際公法の観点に基いて三海里を主張されるのか、あるいはソ連側の三十海里というものをある程度までこれはのみこまなければならないのか、これは相当な重大問題であると思いますから、日本側の外務大臣としましての腹を伺っておきたいと思うのであります。 もう一つは、最近日本の漁船が、たとえば北海道の漁船がソ連側の近くで漁業しておりますときに、暴風に襲われてその死体がソ連側に上った。その引き取り方を外務省に通告してきましたけれども、国交が回復しておらない日本側からは、正式にそれは回答できないというので、日本赤十字社にその交渉を委託した、こういうことでありまするが、遺族からは再三再四その死体を引き取りたい、せっかくソ連側がそれを通告してきたならば、どうかその死体を引き取りたい、こういうことを要望してきておるのであります。この死体の引き取りというような問題は、将来……、あるいはきのうあたりでも、北洋漁業におけるところの遭難船が相当出ておる。おそらくまた死体が漂流していると思いますが、こうした正式のソ連側からの通告に対しては、日本側としてはどういう処置によってそういうような死体、その他の引き取りをやるか、こういう問題について、この三点だけをお伺いしたいと思います。
○国務大臣(重光葵君) 簡単にお答えを申し上げます。第一に、抑留邦人の帰還の問題であろうかと思います。もっともどういう人が抑留邦人か、生きておるか死んでおるかという問題も含まるでありましょう。人の問題、それからまた今ソ連領としてソ連が持っておるところにおける元日本住民の個人の財産の問題、これらは第三の漁業問題とともに、必ずこれは交渉の題目に上る問題でございます。従いましてこれにつきましては、十分の資料を整えて、わが方の持っておる資料によって主張をいたしたいと考えております。だがしかし、それをどういうところまでというような交渉の将来の動向を示すようなことは、ここで申し上げることを差し控えますが、十分その資料によって主張をいたしたい、こう思っております。 漁業問題も同様でございまして、日本の従来の建前を変える意向を少しも持っておりません。 漁船の問題について最後にお話がございました国交のない国との間にいろいろ事件が起る、また交渉問題が起る、これは私は承認問題と関連をしないような問題は、最も適切、有効な方法でやって差しつかえないと思います、交渉の方法は……。しかし、その有効適切な方法は、それならば中立国を介してやる、あるいは直接、交渉の方法があれば交渉してやるというのが、最も有効適切な方法であるかないかということも、これまたその場合場合によって違う問題だろうと思います。この場合におきましては、これは赤十字を通じて、赤十字をしてやらせることが最も適切な方法であることは、従来の経緯からみてもそう考えられますので、赤十字を督励して今やらしておるわけであります。以上であります。
○委員長(館哲二君) 外務大臣に対する質問はこれでよろしゅうございますか。
○千田正君 外務大臣にお願いしますのは、今の赤十字はまだ回答をソ連側から受けておらないわけでありますから、回答を早く御請求願いたいと思います。
○国務大臣(重光葵君) 今督促しておりますから……。
○千田正君 次に、厚生大臣にお願いいたしますが、ただいまの通り、非常に外交問題としましてはソ連との国交回復がクローズ・アップして参りまして、外向きにはまことにはなやかでありまするけれども、実際に引揚問題に対しては、過去十年の間苦難の道を歩んでおるのであります。特に私はそのうち二、三点を厚生大臣にお伺いしたいのでありまするが、現在のこの留守家族の援護法に対しての問題であります。御承知の通り、留守家族の援護法の第十三条の項目によりますというと、この法律の施行後三年を経たるとき、たとえば来年の七月三十日になりますが、過去七年の間生存資料のない場合は留守家族の手当を打ち切る。明年八月以降はいかなる処置を一体とるつもりでおられますか。それまでの間に一体留守家族が安心できるように全部引き揚げができるかというと、われわれはそれはとうてい予想されません。しかも行方不明の者もあり、死亡しておる者もあって、その実態がはっきりしておらない。この点をまず第一点にお伺いしたいと思います。 第二点は、最初にわれわれが参議院におきまして引揚委員会において決定して法律になりましたのは、これは国のために残留しておって、そうして抑留された人たちであるから、当然国が考えなければならないという建前から、未帰還者給与法、それから一般邦人に対しましては特別未帰還者給与法と、昭和二十二、二十三年とこう続きまして、これは両院とも通過しまして発布されたのでありますが、その後昭和二十八年に援護法、いわゆる生活に困る人たちを援護するというような法律のもとに一括して今の援護法にされておる。この点は私は非常に考え違いではないかと思うのでありまして、特にそのうちでこの問題の改正を厚生大臣に御意思があるかどうか伺っておきたいと思うのは、未帰還公務員が死亡した場合は公務扶助料がその遺族に支給されるけれども、公報発令の月の翌月から支給されることになっておる。ところがこれからの死亡公報は、大体において実際はもう昔死んでおる者、あるいは終戦直後の者も多いでありましょうが、こういう者が未復員者給与法で事実死亡した月までの分が精算されておる。ところが生きて帰ってきた人たちは、今まで何年間というものをなるほど苦難の道を歩んできたけれども、その面に対しては通算して引き渡されます。しかし死んだ人たちの分は、公報が発令した翌月からしかこの問題が解決しない。これは非常に不合理であって、死んだ者と生きている者とのアンバランスがそこに現われてくる。これはどういうふうにしてこれを是正し調整していくかという点を一つお伺いしておきたい。 第三点は、留守家族、未だ帰らない人たちの留守家族の人たちのことは、これは何か援護法という、生活に困っている人たちを援護するという意味ではなく、国のために犠牲になった人たちの問題であるから、これはむしろ援護法というよりも、国家補償法のような法律をはっきりして作ってやらなかったならば、幾ら再軍備をあなた方が唱えても、こういう問題の根本的な法律の改正がない限りは、その解決を期すことはできないと私はそう考えまするが、厚生大臣の御意見を伺っておきたいと思います。
○国務大臣(川崎秀二君) 留守家族の問題は、今度の日ソ交渉に当りましても最優先的に交渉のトップに出すということを松本全権も申しておりますし、政府の所信も総理大臣の言明をもりて明らかにしておる問題でございます。ただいま御質問が逐次ありましたので、第一の問題から申し上げます。 第一の問題は、留守家族手当がもう三年後には打ち切られるじゃないかということであります。その後はどうするのかとこういうことでありますが、この法律を施行しましたのは昭和二十八年八月一日でありまして、三年を経過した日以後においては過去七年以内に生存していたと認めるに足る資料がない未帰還者の留守家族には、留守家族手当を支給しないと、こう法文に規定されております。これはただいま千田委員も御指摘の通りでございまして、規定がそういうふうになっておりまする原因を尋ねてみますると、これは調査の究明及び帰還促進に関する国の義務を規定した法第二十九条と密接に関連しておるということでありまして、今後調査究明をいつまでも漫然と放っておくということでなく、単に国内だけで調査するのみでなしに、対外的にもあらゆる手段をとって今日やっておるわけでありまして、その努力目標としては大体三年間ということにきめた趣旨のもとであるということを御了解いただきたいのであります。従って、来年になってなお調査不明で、未帰還者の特別状態が解消しないというような場合には、あらためてこれは十分に考慮をいたしまして、でき得れば延長というような方向に進めるのが当然じゃないかというふうに私は考えをいたしております。それが第一であります。 それから第二の、未帰還者の公務員が死亡した場合に公務扶助料を死亡判明の日の翌月から支給することは不合理じゃないかという意味の御質問であったかと思うのでありまするが、これは恩給法の問題でありますが、恩給法には未帰還公務員というものの制度がございまして、未帰還公務員はすべて未帰還中は一応生存しておるものとして取扱っておるのでありまして、そのうちすでに普通恩給の年限に達しておるものにつきましては、たとえ本人が内地に帰還していないものにつきましても、その留守家族に対しては普通恩給を支給し、また未帰還公務員が死亡した場合においては、死亡判明の日の翌月から公務扶助料を支給すると、こういうことになっております。しかし、公務扶助料を死亡の日の翌月までさかのぼって支給すべきであるということにつきましては、一応ごもっともな点がありますので、ただいま慎重に研究をいたし、御要望の線に向うべきが当然かと思うております。 ただ、最後にお尋ねのありました留守家族を国家補償せよということでありますが、この点は、厚生省としても、また私の個人の考えといたしても、多少恩給法やあるいは戦没者遺家族援護法でありますか、あの法律と趣旨は少し違うのではないかと思うのであります。それは未帰還者の置かれておる特別の状態にかんがみまして、この援護法ができたときにもいろいろ議論がありましたが、国の責任において留守家族を援護することを目的として、一般の社会保障でいう生活保護法とは違うという観念を明らかにいたしたのでありますけれども、その意味では広い意味の国家補償の範疇には現在も入っておると思うのです。ただ、恩給法やあるいは戦没者遺家族のように、直接最初から国に奉仕をするということを目的として、国家奉仕の行動を行うということを最初からの目的にしたものと、遺家族援護と留守家族援護というものは多少違うのではないかというふうに考えまするけれども、この点は御指摘もありましたので、十分考慮はいたしてゆきます。しかしやはり留守家族援護法の建前と遺家族援護法における国家補償の精神は、必ずしも合致しないところがあるのではないか、これは議論になるかもしれませんが、そういうふうに思っておる次第でございます。
○千田正君 時間がありませんので、議論になりますからあらためて論じます。ただ一点だけ委員長にお願いして、大蔵大臣にお伺いいたします。予算面には現われておりませんけれども、終戦時における外地に商社がありましたところの国策会社的性格を持った商社が、閉鎖機関において整理されたことは御存じだろうと思います。閉鎖機関において整理されたその処理後の資産、いわゆる政府出資の株式は大蔵省において管理しておったはずでありますが、これを今後どういうふうに処理するのか、相当、数億に上るところの株式の保管をされておるはずであります。これは現在東南アジアの開発あるいは中共との貿易等のように、日本の進展する方向に向って進むべき一つのデータとしては最も好適のものだと思いますが、この処理はどういうふうにやっているか。聞くところによると、あるいは民間にこれを投資するという説もあるし、大蔵省としては持株を全部整理しようという問題があるように承わっておりますので、この際大蔵大臣の御所信を承わっておきたいと思います。
○国務大臣(一萬田尚登君) 御質問の商社あるいは銀行等の整理は、国内店舗に関しては御承知のように大体終了して、それでまた残余財産としていろいろな形で、あるいは現金勘定あるいは短期証券勘定というように扱っておって、これらの処理をどうするかというと、このうちには在外の債権債務の関係はまだはっきりいたしておりませんから、すぐに処分行為ができないものもあると思うのでありますが、なお詳しいことは、今政府委員がおりますから、政府委員からお答え申し上げます。
○説明員(岩動道行君) 閉鎖機関に指定されました中には、たとえば中支那振興でありますとか、北支那開発株式会社等、相当国策的な会社があったわけであります。それに対してはある程度の政府出資もいたしておりまして、その株式は大蔵省において管理をいたしておったわけであります。ところでこの閉鎖機関の清算方式は、在外の資産、負債につきましては、ただいま積極的に、自主的にこれに手をつけて処理をするという態勢にありませんので、一応それは除外いたしまして、国内にある資産、負債につきまして、整理を続けて参っておるわけであります。その結果、もしその間に国内においての資産、負債の整理をいたしまして、そこに資産が相当残りますれば、これは株主に分配をするという法制の建前になっております。ただその残余財産の分配をいたす前に、もし在外の資産、負債につきまして、在外の資産よりも債務の方が超過いたしております場合には、その債務の超過額に相当する部分は国内の資産をもって引当留保するという建前になっております。従いましてその引当留保をいたしましても、なお国内に資産が残りました場合には、これを株主に分配をするということになっております。ところでただいま申し上げました例として引き合いに出しましたところの中支那振興あるいは北支那開発等におきましては、国内資産もある程度残っておりましたが、たとえば中支那振興について申し上げますると、一億ほどの資産が残っておりますが、さらにこれは国内で募集をして国内で支払いをする約束のもとに発行いたしました中支那振興の社債等がございます。これらの債務の弁済をいたすといたしますれば、現在残っておりますところの約一億の残余財産も、その債務の弁済に充てるということになりまして、国内には何ら資産がない、従って政府の所有株式に対する分配もあり得ないというような状況になることが予想されるわけであります。その他北支那開発につきましても、これは従業員債務を払ってあとは、一般債務はほとんど払えないという状況になっておりますので、とうてい株主分配というようなことは考えられないような状況になっておるわけであります。
○千田正君 この問題では時間がないようですから、あらためてほかの機会にお尋ねすることにいたします。
○湯山勇君 私は濃縮ウラニウムの受け入れについて、外務大臣に御質問申し上げたいのですけれども、いらっしゃいませんから、なるべくその方に時間を廻したいと思いますので、大久保国務大臣に、大へん失礼ではございますけれども、一括して御質問申し上げたいと思います。昨日同僚永岡委員の質問に対しまして、大臣は本年度の昇給財源は不足しておる、これについては各省各庁の運用によってやっていきたい、その運用につきましては、たとえば新規採用の時期をおくらせるなどの方法がある、こういう御説明があったわけでございますが、各省が新規採用者の採用時期をおくらせるということは、これは今大学を出ても、あるいは高等学校、中学を出ても、就職できないで困っておる者がたくさんある実情、さらにまた新卒業者で、公務員試験まで受けて待機しておるものがおる実情にかんがみまして、非常に不公平な扱いではないかと思うのであります。で新採用者、つまりこれらの待機しておる新採用者は、いつ採用になる御予定なのか、この点についてまずお伺いしたい。 次には従前の給与予算において、定期昇給財源は全給与費のどれくらい、何%くらいを見ておられたか、それに対して本年度給与予算の範囲で、従来通りの定期昇給をするとすれば、一体財源不足は幾らくらいになるか、この点について第二に明らかにしていただきたい。 第三は、従来通りの定期昇給をもし不可能とするような予算措置であるならば、これは実質上の給与ベースの引き下げになるのではないか。これは人事院の性格、勧告、この実施、こういうことを御検討をいただけば、よくおわかりいただけると思います。理論的にそうなるわけでございまして、もし昨日御説明になったように、今回の級別定員制度による給与予算が、実質的に給与ベースの引き下げになるということであれば、これは一つの新しい給与予算方式だということになるわけでございますが、こういう新しい方式をとることについて人事院の意向をお確かめになったかどうか。お確かめにならなかったとすれば、なぜその必要を認めなかったか。以上の点につきまして御説明を願いたいと思います。
○国務大臣(大久保留次郎君) ただいまの御質問は、昨日永岡君から官房長官に御尋ねがありました。官房長官はただいまのような答弁をされたように伺っております。官房長官の答弁は数字に触れなかったので、参考のために数字を申し上げてみたいと思います。今年の予算の編成は、御承知の通り、デフレ政策を加味しておりまするので、その昇給の財源ばかりでなく、一般の旅費の部面におきましても、また庁費、備品費の面におきましても減っております。旅費の面におきまして一五%、備品費、庁費などの面において一五ないし二〇という減らし方をしておるのであります。そこで問題になりましたただいまの昇給の財源の問題、これは給与に関する重要な問題でありまするので、少しばかり減らしたのであります。すなわち従来百分の二・五であった率を百分の二に、〇・五だけ減りましたのであります。これをいかに運用するかという問題でありまするが、昨日官房長官からお話がありました通りに、まず第一の方針といたしましては、昇給に当っては成績主義を加味するということであります。成績のよい者を昇給さして、成績の悪い者はあと回しにするという、昇給についての成績主義を加味するというのが一つの方法で奉ると思います。もう一つのは、新規採用をなるべく見合せる。これはただいま御指摘になりました新しい卒業生が試験をして待っておるというようなものはなるべく採用いたし、そのほかの不必要、と言っては語弊がありますけれども、なるべく支障のない限り欠員を補充しないでいって、多少の財源を得てそうして昇給についての難関を突破していきたい、なるべく平年通り昇給をさして行きたい、こういう考えであります。従いまして、ベースの賃金のストップというようなことは意味しないのであります。これはいっときのデフレ政策のためにとりました手段でありまするからして、決してベースの問題に触れた問題ではないと存じます。いっときの措置であります。おそらく一兆円問題もしばらくで明るい見通しを持つことと信じております。ですから、この点は御了解を願いたいと思います。 人事院の問題でありまするが、人事院もおそらく、話し合いをしておりまするから、御了解のことと信じております。以上をもちまして終ります。
○湯山勇君 人事院も了解しておると思うというのでございますが、人事院は了解しておるのかおらないのか。この点明確にしていただきたいのと、それから昇給の成績主義というその成績とはどういう内容を持ったものか、これは一つ明確にしていただきたいと思います。
○国務大臣(大久保留次郎君) 人事院は了解しておると思います。
○湯山勇君 思いますじゃなくて、話し合いがついておるか、ついていないのか。(「最も大事なことだ」と呼ぶ者あり)
○国務大臣(大久保留次郎君) 私はそう思います。
○湯山勇君 推測ですか。
○国務大臣(大久保留次郎君) 話はしてありますから、了解しておると思います。(「了解していないよ」と呼ぶ者あり)どうもそれ以上私は申し上げることはできないと思います。
○湯山勇君 それじゃ後刻でけっこうですが、人事院が了解しておるかどうか、はっきり一つ御回答願いたい。それからもう一つは、今の昇給の成績主義という成績の内容。
○国務大臣(大久保留次郎君) この点は各省にまかせる以外に方法ないと思います。成績主義つまり精勤者を、成績の優良なる者を先に昇給させるという成績主義であります。その運用は各省にまかせるほかないと存じます。
○湯山勇君 給与担当国務大臣ですから、内容をもう少し詳しく言って下さい。(「給与がわからんのだ」「答弁が違うじゃないか」と呼ぶ者あり)
○国務大臣(大久保留次郎君) いわゆる成績主義、すなわち本人の勉励、成績が上る者を優良とみなして先に昇給させる。このこまかい執行の点は、各省の人事の係にまかせる以外に方法はないと思います。
○湯山勇君 その成績の要素です。出勤率だとか何だとかいろいろあると思うのですが、そういう要素はどういうものを考えておられるか、担当国務大臣として。
○国務大臣(大久保留次郎君) もちろん出勤率もその一つにあると思います。精勤率もありますし、本人の能力もあります。努力もあります。いろいろの点が加味されておると思います。
○田村文吉君 関連……。今のお話に関連しておりますが、今日本のあらゆる階層に対する給与の方法が、家族給というものがついておりまして、いわゆる生活給の性質が非常に多いのであります。だんだん変って参りましていわゆる能率給に移らなければならないということは当然なことではありますが、現在の給与の状況では、そういうふうに移りかねるというのが現状であろうかと思うのでありまするが、しかしいつまでもかようないわゆる家族給のような生活給を払っていくような形は正しくないと考えているのですが、大体政府ではそれに対してはいつごろになったならばそういうものはやめる考えをお持ちになっているのか、また、どうしてもやめられないのには、現在給与している給与というものは少な過ぎるから生活給をどうしてもやめることはできないんだ、かようにお考えになっているのか、こういう点について政府の大体のお考えを承わることができれば仕合せだと思うのであります。と申しますのは、公務員が採用になっておりますることは、いわゆる民間の給与体系にもすべて影響しているのでございまして、いつまでも日本がかような給与体系をとって行かなきゃならんということは非常に不幸であると思う。これでは国民の能率というものは上らないような組織になっている。この点について政府ではどういうふうにお考えになっているか、この機会にお聞かせ願いたい。
○国務大臣(大久保留次郎君) ただいまお尋ねでありまするが、昨日もこの席で申し上げました通り、政府は昨年の夏以来公務員の調査会を設けまして、公務員の全般にわたって調査立案中でございます。で、この問題は相当に進みまして、今日におきましては公務員の一般の問題の総論を終って、給与の問題にも今移っております。おそらくこの結論が出るのも、そう長くないときであると存じます。この結論を終って処理いたしたいと存じております。
○田村文吉君 やめたいと思ったのですが、今の御答弁でございますので、ちょっと……。私はしからば大久保国務大臣はどうお考えになっておるかを伺いたい。
○国務大臣(大久保留次郎君) 私の意見は、なるべく現在の給与は減らさん範囲において進めたいと思って考えております。
○田村文吉君 私の伺っておりますのは、家族給というような給与体系というものがいつまでもそれでよろしいのかどうか。これについて大久保国務大臣はどうお考えになっているか、こういうことを伺っているのでありますが、ほかに御意見がなければないでよろしいのです。なければないで考えていないとおっしゃるならば、それでもよろしい。はっきりと一つ御答弁願いたい。
○国務大臣(大久保留次郎君) 私一個の考えとしましては、なるべく早くやめるような方向に進んで、能率給の方に進めるのが理想ではないかと思って考えております。
○湯山勇君 私は時間がないのでこれでやめたいと思うのですが、お許し願えれば、もう一つ聞きたいことがあるのですけれども、あとの時間が惜しいものですから……。
○委員長(館哲二君) それでは外務大臣の出席せられるまで暫時休憩したいと思います。一時まで休憩いたします。 午後零時二十二分休憩 —————・————— 午後一時二十五分開会
○委員長(館哲二君) ただいまより委員会を開きます。 休憩前に引き続いて質疑を続行いたします。
○湯山勇君 原子力平和利用準備調査会の会長であり、副総理としての重光外務大臣にお尋ねいたしたいと思います。今朝来、濃縮ウラニウムの受け入れにつきましては同僚委員から質問がありましたが、なおかつ御答弁によりましても、私は不安な点が解消されていないと思います。そこで当初からこの交渉については一切を公表する、さらにまたアメリカの側でも秘密事項は一切ないというように言っておるのでございますから、今日までにアメリカから公式にもせよ、非公式にもせよ、示された案の内容は大体どういうものであるか、それからそれに対して訓令を出されたということも報道されておりますから、日本側としてはどういう態度で、どういう訓令を出しておるか、そういう点も明らかにしていただきたいと存じます。
○国務大臣(重光葵君) まあ交渉はできるだけ周知せしめる方法をとることがいいと思います。しかし交渉がどういうことでどういうことになったということを一々言うことは、交渉それ自身の進捗上、これは国際慣例上果してどうかと思います。ただ私ども従来も申し上げておる点は、たとえば御懸念になっておるような点などについては、十分一般の納得のいくような手段をとって進みたいと、こう考えておるわけでございます。さよう御承知おきを願いたいと思います。
○湯山勇君 それでは私は限定しまして、トルコとの協定の第九条、つまり将来この原子力発電をやる場合における事項です。これと関連した、あるいはこれと相似た事柄については、どういう態度をとっておられますか。
○国務大臣(重光葵君) 今特にトルコとアメリカとの条約第九条の点を御指摘になりましたが、この点は最も慎重に取り扱っておるわけでございます。そうしてトルコとアメリカとの条約の第九条とは違ったものができるだろうと思います。そしてその点について御心配の点、つまり日本の自主性のことが御心配だろうと思います。それらの点については、この委員会でも随分御心配の御議論がございましたが、これらのことを十分考慮するつもりでございます。そこでどういうふうな今それでは条文を作るかというようなことは、実は今審議中でもありまするし、そのこと自身を今申し上げることはできませんが、十分これは御趣旨のあるところも考慮して進んでおるということだけを申し上げたいと思います。なお、この点について私の説明では不十分な点もあろうかと思います。そこで関係の閣僚の知識を持っておられる人の御説明を聞いていただきたいと、こういうふうに思います。
○国務大臣(高碕達之助君) アメリカ側から案は提出されておりません。それで大体はトルコとの協定というものを基礎にして、われわれは言っておるのですが、トルコとの協定の中で私どもの承服し得られないことは、十年という期限になっております。これは少し長過ぎる、五年くらいでやろうじゃないかということでやっております。御質問の第九条につきましては、あのままを見ると、何も日本側にオブリゲーションがないように見えますけれども、とり方によりますれば、原子力を動力用に使用した場合には相談しなければならんというようなことにもとられるような気もいたしますが、そういうようなことは、日本で希望するときには、入れてもらってもいいが、オブリゲーションになって原子力を動力用に使うときにもアメリカと協議しなければならんと、こういうようなことになるとなれば、これはきれいに取り払ってくれ、こういうことをこちらから交渉に当らしておるわけでありますから、その点は十分考慮しております。
○湯山勇君 今の点は非常に重要でございますから、もう一度お確かめいたしたいと思います。つまり将来日本が原子力発電をする場合においては、今回の協定ではそのことについて何らのひももつけない、付せない。今回の協定ではそういう意味でございますか。
○国務大臣(高碕達之助君) ただいま御質問の通りに私は考えております。何ら日本が原子力を動力用に使いますときには、この協定はひもはつかないということの考えでございます。
○湯山勇君 それでは重ねて同じようなことをお尋ねいたしますが、高碕大臣は先般二十七日森崎議員の質問に対して、そういうひもつきであれば、これは全然交渉に応じないつもりでございます、ということを言明されております。従って、事のいかんを問わず、将来原子力発電をする場合には云々ということがあれば、これはもう当然交渉に応じない基本線は確立しておるものと存じますが、この点もう一度念のために確認いたしたいと存じます。
○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。先般私が説明いたしましたごとく、日本の原子力を発電なりいろいろな方面に発展いたしまするにつきまして、それが何かひもがついて、日本の研究なり、日本の自主的な研究に何かの障害になるというようなひもがつけば、これは断じて断わるつもりでございます。
○湯山勇君 次に重光外務大臣にお尋ねいたしたいと存じます。今日やはりこういう段階におきましても、昨日の藤岡博士のようなできごともございますし、学者や国民の間にはやはり慎重論、これに伴う不安が相当あると思いますが、その慎重論や不安の大きい要素はどういうところにあると、外務大臣は御把握になっておられますか。
○国務大臣(重光葵君) 私は問題になっておる点は、やはり先ほど御指摘になったような点だろうと考えております。
○湯山勇君 それは第九条に関する部分だけだとお考えでございますか。
○国務大臣(重光葵君) さような種類のものだと大体見ております。
○湯山勇君 外務大臣は先ほど、私はそういうことはよくわからないというお話でございましたので、これは高碕経審長官は今の点をどうお考えになっておられますか。
○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。ただいま原子力利用準備調査会において各方面の方々がいろいろ心配しておりますことは、先ほど私がお答え申し上げました通り、将来日本の原子力利用についてアメリカ側から非常なオブリゲーションがあっちゃ困る、こういう点を心配されておるように私は存じまして、政府自身もその点は慎重に研究してもらうようにやっておるつもりでございます。
○湯山勇君 今両大臣がおっしゃったようなことだけでなくして、国民感情の中には、これが戦争とつながるのではないかという心配が大きいと思います。また学者たちの中にも、こういう形で研究させられたものが、将来知らない間に戦争につながっていくのではないか、こういう問題が一つあります。第二の問題は、これによって学者の研究が阻害されるのじゃないか、その自由をそこなわれるのじゃないか、こういう心配があると思います。そうしてまたその心配には根拠があるわけでございまして、これは一つここでお聞きしておきたいと思うのですが、先般の調査団で伏見博士がなぜアメリカへ行くことができなかったか。これは外務大臣に一つお尋ねいたしたいと思います。
○国務大臣(重光葵君) 私は実はそのことを存じません。もし必要ならば調べてみてもよろしゅうございます。
○湯山勇君 どなたからでも結構です。
○国務大臣(高碕達之助君) これはどういうわけだったかわかりませんが、私どもがやはりアメリカへ行きますときにも、個人で行くときは、お前は満洲におったからということのために、なかなか査証が得られない、あるいは公用のときに行ったというようなことはありましたが、そういう結果ではございませんでしょうか。私はよくわかりませんが。
○湯山勇君 わかる方に一つ。
○政府委員(河崎一郎君) 伏見博士は査証を申請したのでありますが、査証の許可が出発までになかなかおりなくて、それで出発ができなかったわけでございます。
○湯山勇君 あとでおりましたか。
○政府委員(河崎一郎君) いや、そのうちにもう調査団の方がどんどん行っちゃってそれはそのままになっておるわけでございます。
○湯山勇君 ほかの人は早く出て、あの方だけ出なかったというのは何か理由があるとお考えになりますか、全然わかりませんか。
○政府委員(河崎一郎君) これはアメリカ側の方の問題で、われわれの方にはないと思います。
○湯山勇君 わからない、アメリカ側の事情は。
○政府委員(河崎一郎君) こちらにはわかっておりません。
○湯山勇君 これは外務大臣もよくお聞きとりいただきたいと思います。そういう事実が起きましたので、学者の心配も国民の心配も、決して皆さんお考えになっておるような軽い小さいものではございません。かりに第九条に関係なく受け入れて、濃縮ウラニウムの研究に着手したとしましても、この人たちが今度また外国の事情を調査に行くときには同じような制約があるかもしれません。そこで私はこの際、そういう不安を一刻も早く除去したいという、外務大臣の先ほどの御答弁は全く同感なんです。で、除去するためにはどうしようとお考えになっておられるか、これも一つ伺いたいと思います。
○国務大臣(重光葵君) むろんさような故障の起る余地のないような協定をこしらえるのが第一と考えております。その上はその協定の運用について、さような不当な故障が起りませんように、常にこれは必要があれば交渉によって途を開かなければならん、こう思っております。
○湯山勇君 その前に私は国内態勢をまず作らなければならない。国内態勢を作るというのもいろいろ細かい問題がたくさんありますけれども、この際、日本の国として原子力の平和利用については、こういう基本的態度をもっておる、つまり原子力の基本法、そういうものを早く制定すべきだと思いますが、これについて外務大臣はどうお考えになっておられますか、経審長官はどうお考えになっておりますか。
○国務大臣(重光葵君) そういう御意見をすぐ承われば、私もすぐお答えができたと思いますが、私はそれはお考えはしごくけっこうだと思っております。それから国内態勢を、いろいろな機構的にも作り上げなければならんということで、御承知のような閣議了解もいたしておるわけであります。しかし今そういう考え方で進んでおるだけで、まだ実行案はできておりませんが、これも不日できるだろうと思います。そこでそれに伴う基本法をこしらえた方がいいか悪いかということは、すぐそういう機関を通じても、これは案が出てくると思います。しかし今日のところは、今案を持っているわけではございません。
○国務大臣(高碕達之助君) お答えいたします。ただいま外務大臣からお答え申しました通りでありまして、原子力の基本法は将来はこれは作っていきたい、こういうことで研究は進めておりますが、さしあたってまた基本法を作るまでに至っておりません状態でございます。
○湯山勇君 基本法というのは私はそんなにむずかしいものではないと存じます。経審長官が先般おっしゃいましたように、たとえばウラニウムの独占はいけないとか、技術は公開するとか、あるいは経審長官自身がお認めになった三原則のようなものを盛り込めば、それで国民もまず安心するし、学者も安心すると思います。そういうものが先にできないで、濃縮ウラニウムだけ受け入れる。これでは学者も全力をあげて協力できない。できないのに研究の進歩ということはないわけでございまして、基本法を作るというのは当面緊急な問題だと思います。重ねて外務大臣並びに経審長官に御意見を伺います。
○国務大臣(重光葵君) 私はお説は実にごもっともだと考えます。ただいますべてのものを順序正しくやっている事態では、まあないわけで、必要に迫られて先に進んでおるというわけでありますから、そう理想通りに参らないところに遺憾な点がございましょう。しかしそういうお考えはわれわれも共鳴するところでありますから、よく伺っておきます。
○湯山勇君 経審長官も多分同じ御意見だと思いますから、承わりませんが、今申し上げましたように、今濃縮ウラニウムを受け入れて完全な協力態勢ができないことよりも、基本法で今のような基本的な問題だけ言っておいて、それによって受け入れるなら受け入れて、研究を強力なものにしていくということの方が、私ははるかに有効だと思いますから、すみやかに制定の御意思があるかどうか、これを重ねてお伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(重光葵君) むろんそういうことは十分検討いたした上でなければ、私は今すぐそういう決定をするということを申し上げるのは少し行き過ぎだと考えます。しかしそれはそういう趣旨でもって十分これは研究していく。そしてそういう制定も考慮していきたい、こういうふうに考えております。ただ、まあ今お話にあったように、すべてが整った上で研究を進める。それはそれが私は一番能率的なことだと考えます。むしろそれはお話のはドイツ流な考え方です。しかし私かような日本の科学進歩を急速につちかわなければならぬ問題につきましては、あるいは理論通りにいかずして、実際的に実効をおさめていくという方法も、これは理論にかなわなくても、無視すべきではないと思います。この問題のごときも日本の科学進歩について非常に重要な問題でありますから、日本にとって不利なこと、もしくは研究に妨げになること、そういうふうな故障はできるだけこれを排除して、そしていい面だけをとるように努力をもって進むべきだと、こう考えてまあ進めておるわけであります。
○湯山勇君 それでは私が申し上げておるのはドイツ流もどこ流もないのであって、ただ現実の事態を見て、こうするのが最善だと思うことを申し上げておるのであります。じゃ基本法をお作りになる御意思がおありになるかならないか、その点だけ一つ明確にお答え願いたいと思います。
○国務大臣(重光葵君) これは将来制定する意思をわれわれは持っていることを申し上げます。
○湯山勇君 そこで次に、そういうふうに考えていきますと、まだ問題点もたくさん残っておる。アメリカからの受け入れを今そんなに急いでやらなくてはならないという理由は見当らないと思うのですが、なぜ今そう急いでこれをお受けになりますか。これは経審長官の方から伺いたいと思います。日本の現状から見て、今直ちにこの交渉を妥結しなくちゃならない、協定を結ばなくちゃならないという理由はどこにあるか、経審長官から一つ。
○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。大体根本の日本の考え方は、先般来お話し申し上げた通りでございます。この考え方に間違いがなければ、この考え方通りに進められるというならば、あえてこれは拒否すべきものではない。わずかばかりの濃縮ウラニウムを持ってきて、それがすぐ日本の方の研究に役立つというならば、これは取っても差しつかえない、こういうわけでありまして、非常に急いでいるわけでもございませんし、ただ今日われわれがこれを受け入れることによって、将来は縛られないということがはっきりしておれば、これを断わる理由もない。できればこれを早く利用するということが、日本の国のために有利だろうと、こう存じておるわけでございます。急ぐあまり、将来の大きな拘束が出るというふうなことになれば、これは大へんなことになりますから、その点は十分慎重に慎重を重ねて折衝いたしておる次第であります。
○湯山勇君 拒否すべきではないということについては私も同感です。私も決して拒否せよということを申し上げておるのではありません。しかしまだまだ検討しなければならない要素がたくさんあると思います。たとえばアメリカは一体国内資源だけで将来のウラニウムの生産ができるかどうか、これについてはどう御把握になっていらっしゃいますか。今日国際貿易の統計では、ウラニウムのことは少しも出ておりませんし、実際アメリカはコンゴなりカナダから相当多量の原鉱石を入れていることも事実です。こういうことの一切がジュネーブ会議では相当明瞭になってくることも事実です。こういうことを確かめないで、なぜお急ぎになるか、こういう点について、国際貿易の資料以外に御把握になっている点があれば御説明願いたい。
○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。御説のごとく現在アメリカといわず、イギリスといわず、ソ連といわず、各国がこのウラニウムの資源を確保することについて非常に努力しておるということも事実であります。しかしながら私はこの問題につきましては、一国がこの原料を独占するということはどこまでも反対である。こういうことの考えのもとに、今回の濃縮ウランを受け入れますにつきましても、日本の将来において発見されるべき、またどういうふうになるかわかりませんが、日本の将来においてウランができるといったような場合に、これがこの濃縮ウランをもらったために束縛を受けるというようなことが断じてないだけのことの手を打って交渉いたしておるわけでございます。
○湯山勇君 通産大臣にお尋ねしますが、国際貿易上におけるウラニウムの取引がどうなっておるか、これは資料にはありませんけれども、大体どういうふうな推測をしておられますか。通産大臣どうでしょうか。
○国務大臣(石橋湛山君) ウランの取引については詳細のことはわかりません。ただうわさに、今さきにお話しになったように、アメリカは他国から多少のウランを買い入れているということがあるだけであります。
○湯山勇君 そこでそういう点もジュネーブ会議ではある程度明らかになると思いますし、今日イタリアにしても、スイス、インド、フィリピン、ベルギー、ノールウェー、オランダ、ニュージーランド、カナダ、これらはいずれも同じ提供の申し入れを受けながら見合しております。しかもこれが非常に競争率が激しいというのではなくて、百キロを六キロずつ分ける。十五カ国以上にわたるのに、申し込みをしておる国は十カ国くらいです。何にも日本だけ急ぐ必要はないと思うのですが、なぜそんなにお急ぎになるのですか。ジュネーブ会議の結果を見て、この決定をするということにはなぜならないのか。この点もう一度一つ御説明願いたいと思います。
○国務大臣(重光葵君) 私からお答え申し上げます。別に急いでおるわけではないつもりでございます。向うのそういう機会にですね、そういう機会をとらえることが、日本の全体のために利益であると判断をして、その交渉に応じておるわけでございます。あるいはジュネーブァの会議の後にようやくまとまることになるかもしれません。それからまたそういうとき、会議にいろいろ資料も出ましょう。もしそれが出ますならば、十分にこれは参考に供しなければならぬと、こう考えておるわけであります。
○湯山勇君 それではジュネーブ会議の結果です、今アメリカからウラニウムを受け入れることよりも、もりと他の方法をとることの方が有利であるという結論に到達した場合には、これは変更することもあり得るのでございますか。
○国務大臣(重光葵君) それまでにこの交渉がまとまらない場合においては、当然それは参考に供せられなければならないと思います。
○湯山勇君 そうしますと、今そういうことも予想されるわけでございましょう。そうすれば、今結ぶ協定の中に、そういう含みも持たせる御意思はおありになるかならないか、これはいかがでしょうか。
○国務大臣(重光葵君) 今の御質問の、含みを持たせるということはどういうことでございましょうか。条文にどういうふうに入れよと言うのでございましょうか。
○湯山勇君 つまり協定で、受けるなら受けるという協定ができるならできる、その交渉の過程において、いずれ近いうちに、ジュネーブ会議もあることだから、その結果、もう少し日本のためにいい条件で他のものが入るということであれば、このものは見送ることもあるというような含みを持たすことができるかできないか、そういう御意思があるかないか、それをお伺いいたしておるわけであります。
○国務大臣(重光葵君) もしそういうことならば、もう交渉は延ばした方がいいと思います。
○湯山勇君 そうそう、そうなんです。
○国務大臣(重光葵君) 延ばした方がいいと思います。しかしこれは今交渉を受けて立っているわけですから、そういうことを十分考慮に入れて、慎重にこれは検討した上で、交渉をどういうふうに進めて行くかということをやらなきゃならぬと思う。今すぐそれまでに、交渉に入ったままで、ある一定の時期まで延ばすということは、どうもどうかと思います。
○湯山勇君 ええ、わかりました。
○国務大臣(重光葵君) それですから、そういうことも考慮に入れて進むことについては、私少しも異論がございません。これは十分に検討することをここで申し上げても、少しも差しつかえございません。
○湯山勇君 ああ、そうですか、それでは政府としては、今のアメリカのは、今議会で必ずしも議決しなければならないとも考えておられないわけですね、今のお話では必ずしもそうでなくちゃならないという強いことば考えていないわけですね。
○国務大臣(重光葵君) ぜひこれを成立せしめたいというわけでやっておるわけじゃありません。
○湯山勇君 わかりました。
○委員長(館哲二君) もう時間がありませんから……。
○湯山勇君 ああ、わかりました。それでなおいろいろ心配なことは多々あるわけでありますけれども、時間がありませんから、この問題は最初申し上げましたように、国民の協力もいることでございますし、それから学者の一致した態勢でこれに対する協力も必要だと思います。それから御質問申し上げようと思っておりましたが、時間がありませんので、ウラニウムは鉱山法でございますか、鉱業法の有用金属にも指定されておりません。国内に一体どれだけ出るか、そのこともまだわかっておりません。国内にどれだけあるかもわからない。で、将来の原子炉を作るとか、発電をするとか言ったって、これは本末転倒です。で、こういう基礎態勢を整えてでなければ、せっかく受け入れたウラニウムが何の役にも立たないということも、これも懸念されるところでございまして、外務大臣はよくおわかりいただけると思います。そこでこれらの問題を整えて行くためには、こういう鉱山法をどうするかとか、危険防止の法律をどうするか、こういう問題よりも先に、こういう態度でやって行くのだ、平和的に利用するのだから戦争の心配はないのだ、特需などで、これで原子砲の砲弾なんか作ることはないのだというようなことを、これにうたっておけば、国民も、学者も、協力することにやぶさかでないのです。これをやって、そして受け入れるなら受け入れる。一齊にスタートをすれば、急がば回れということわざは、今日のこのことのために最も適切な言葉だと思います。どうか一つ慎重に、私ども決して受け入れそのものに反対するものでもなく、平和的利用に反対するものでもありません。実際に心配にたえないことを申し上げておるわけでございますから、十分一つ今御答弁になりましたような点を事実においてお示し下さいますようにお願いいたしたいと思います。ではこれで終ります。
○秋山長造君 私は先般の防衛分担金の交渉のいきさつ、あるいはまたその結果、発表された日米共同声明というような問題が、やはり本年度の予算審議の中心問題であると思う。またこれを含めた防衛問題というものが今後の日本の財政問題のやはり中心問題だと思います。従いましてこの問題は、これはいくら論議しても、論議し過ぎるということはないと思う。それほど重要な問題だと思いますけれども、しかし時間が非常に限られておりますから、その方は本予算の審議のときに譲りまして、ただいまはこの日米共同声明の中にうたわれておる防衛分担金という言葉の意味について、外務大臣その他の担当大臣にお尋ねをしたいと思う。 まず第一に、この日米共同声明の一番最後の方に、防衛分担金の減額は、米国政府の特別の恩恵として、本年度限りのもので、来年度以降には適用されない、つまり来年度以降はまたもともとだという意味のことが書いてありますが、行政協定第二十五条の二項の(b)に定められておるところの、防衛分担金一億五千五百万ドルというのは、協定締結の二十七年の当初の、在日米軍費用を基礎にして、日米折半という原則できめられたものだと思うのでありますが、そう解釈してよろしゅうございますか。
○国務大臣(重光葵君) ここに日米共同声明もございますが、分担金を軽減するのには、アメリカ側の恩恵として日本に与えるのだということはどこにありましょうか。
○秋山長造君 いや、その通りの言葉があると言ったのではないのです。そういう意味の言葉がある。
○国務大臣(重光葵君) そういう意味の言葉もないように私には思われるわけですけれども。(笑声)それで申し上げますが、アメリカの恩恵というので私はもらったというわけじゃございません。
○秋山長造君 特別の協力措置としてというのは、日本の言葉でわかりやすく言えば、アメリカの恩恵によってということじゃないですか。
○国務大臣(重光葵君) ああ、そうなりますかな。私はそういうことには思いません。特別な協力をして、互いにこれは協力する精神によって、これはそうなっておるのだ、こういうふうに了解をしておるのですが、それは別に私は、ただそういう文字があるかと思って見たから、お尋ねしただけです。
○秋山長造君 まあ、さっきの答弁をお願いします。
○国務大臣(重光葵君) そこで一億五千五百万ドルの防衛分担金はどうやってきめられたということは、実は私はこれを御説明する地位にはおらぬと思います。しかし私の了解しているところでは防衛分担金、これは共同防衛のなんでありますから、その共同防衛のために支出する、つまり日本の防衛についてアメリカが共同防衛をしておるのですから、そのアメリカ側の負担を日本が若干軽減する意味において日本がそうきめたんだと私は考えておりますが、そのときちょうどその負担を折半する意味においてきめられたということを私は承知をいたしておりません。
○秋山長造君 折半というようにわれわれは説明を聞いておったんですけれども、ただいまのお話では必ずしも真二つに割ったという言葉ではないようです。しかしそれにいたしましても、アメリカが日本に駐留をしておるその駐留軍の費用の何割かを日本が分担をする、こういう約束と解してよろしゅうございますか。
○国務大臣(重光葵君) 私もそうだろうと思っております。
○秋山長造君 といたしますならば、この分担金は駐留軍の費用が減っていくと共に当然減っていくものと考えるのでありますが、いかがでございましょうか。
○国務大臣(重光葵君) それは歩合によりますから当然と言うことができるかどうかは問題だと思います。
○秋山長造君 まあ歩合によるとは言いましても、しかしこの協定が結ばれたときに、その歩合から割り出して一億五千五百万ドルという数字が出たものに違いないとすれば、その歩合というものは翌年度においても、その翌々年度におきましても、そのまま申し送られるわけでございましょうから、当然アメリカ軍が減り、あるいはアメリカ軍の駐留軍の費用が減るということになれば、この分担金というものも減ってくるのが当り前だと思うのですが、いかがですか。
○国務大臣(重光葵君) それは私はその情勢によって判断しなければならないので、当然減らすべきものであるという結論が出るとは思いません。しかし私はそれはそういう場合においては、こちらの言い分としては非常に言い分になると思います。
○秋山長造君 外務大臣はひとごとのような答弁をなさるのですけれども、現に政府自身がこの分担金の削減という問題に手をつけたときには、この駐留軍があの二十七年の行政協定締結当時から比べればうんと減り、従ってその費用も減ったんだから、当然に防衛分担金も大幅に減らしてもらうべきではないか、こういうことを唯一最大の根拠にして私は交渉に入られたと思うのですが、そうじゃなかったのですか。
○国務大臣(重光葵君) そうではございません。そういうことは説明を申し上げたことはございません。のみならず、われわれの得ておる報告によるというと、駐留軍はそんなに減っていないということであります。ですからその根拠はないわけです。
○秋山長造君 じゃ大蔵省のほうで、最初この防衛分担金の削減という資料を持ち出されたときにはどういう根拠をもってやられたのですか。これは大蔵大臣にお尋ねしたい。大蔵大臣は防衛分担金を二百億円減らして、そうしてその半分の百億円で日本の防衛力の強化をやり、さらにあとの百億円で住宅建設その他をやる。またときによると、二百億円ではなくて三百億円分担金を減らすことは、これは十分自信があるというようなきわめて景気のいい放送さえしたと承知しているのですけれども、大蔵省はどういう根拠をもってこの交渉に入られたのですか。
○国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。ただいまお話があったようなことは、私申したこともありません。二百億、三百億、そのうちの百億はどうと、そういう景気のいいことを私は申し上げたことはありません。ただ私の大蔵省の立場といたしましては、先ほどお話のあったような事柄も考慮に入れ、その他条約上のいろいろな条件もあり、いろいろなそういうふうなことを考慮して、そして防衛分担金の削減を求める一つの事情ではあると考えております。
○秋山長造君 先ほど外務大臣の御答弁では、駐留軍の兵力は二十七年の行政協定締結当時から減っておらないという御答弁ですが、これは防衛庁長官にお尋ねいたしますが、事実駐留軍の兵力というものは二十七年当時と今日とでどういう推移がございますか、その数字をお示し願いたい。
○国務大臣(杉原荒太君) 駐留軍の陸空海というものの総体のことは実は私の方でも承知いたしておりません。陸に関しましては、約二個師団半ということを承知しております。それから今まで減ったかどうかという点、この点も実は私はっきりとせぬ点がございますが、あまり減っていないというのです。しかし最近約一混成団が近く撤退するということは承知しております。
○秋山長造君 今地上兵力が二個師団半ということをおっしゃったのですが、この二個師団半の中から、さらに今後混成団が一団減る、こういうことですね。そういたしますと、二十七年当時は、私どもの記憶では、六個師団あるいは六個師団半くらいのアメリカ軍が日本にいたということを、私どもは記憶しているのです。だからその数字からいきますと、すでに三分の一くらいに減っておるはずなんです。
○国務大臣(杉原荒太君) それは特に朝鮮事変のために出たり入ったりしたのでありますから、本来の日本の駐留のことを申し上げている次第であります。
○秋山長造君 朝鮮事変のために出たり入ったりとおっしゃいますけれども、一体政府の方では朝鮮事変のために出たり入ったりしているアメリカ軍と、それから本来の厳格な意味の日本の防衛のために日本に駐留している軍隊との区別というものをはっきりおつけになっているのですか。いかがですか。
○国務大臣(杉原荒太君) この分担金の関係におきましては、本来の日本を守るためにもちろん駐留しているためのものでございます。それから先ほどどういう割合できまったのかという御質問、これは私の承知しておりますところでは、そのまま申し上げますが、直接私担当しておりませんけれども、私が承知しておりますところでは、実はいろいろ経緯があったようでありまして、最初そうはっきりとした将来にわたっての基準の数字額の固定的なものはきめない方がよかろうというような話もあって、ああいう数字はきめまいという段階もあった。それから結局はあれがきまったのは、協定を作ります当時少し前、占領軍で、その中ですでに日本が施設などを提供しておりますが、それだからその駐留軍の経費の中で、施設など提供しておる部分などを除いて、そのあとをいくらか日本側で分担する、その場合、それじゃその割合をどうするか、それなどは実際ははっきりと二分の一とか、そういうふうなのがはっきりそれを前提にしてじゃないと私は聞いておるのです。実際の結果から言いましても、その当時一億五千五百万ドルというのは半分よりもっと少い額なんです。私はそう聞いております。それから現在でも実はアメリカ側から聞いておりますところでは、実際はアメリカ側の負担は一億五千五百万ドルよりもっと多い、本来の日本駐留の分だけでも。それが御承知の通りこっちの防衛分担金は、こっちが払いますのは日本銀行のアメリカの特殊の勘定に入って、その入った後はほかのものと一緒になって向うの会計法規に従って管理されております。そういうふうな状態と私は承知しております。
○秋山長造君 そういたしますと、大体行政協定の二十五条の二項の(b)に書いてある一億五千五百万ドルという数字の根拠というものは、今の内閣では前の内閣がおやりになったことだから、どういう根拠ではじき出された数字であるかということは、はっきりわかっておらないという結論になるわけですか、外務大臣いかがですか。
○国務大臣(重光葵君) そのときの、協定の結ばれたときの経緯は今防衛長官の説明されたことの通りだそうでございます、今係官の方に聞いても。そういうわけであれが締結されたことはその通りだろうと思います。これは正確にそのときの、協定が結ばれたときのいきさつは正確にむろんこれは記録をたどって正確につかんでおく必要があると思います。けれども私の申し上げたのは、今それを私は十分に頭に持っておらぬということを申し上げただけでございます。
○秋山長造君 その点も私はこういう日本の予算全体を拘束するような重大な条項について、局に当っておられる政府当局が、はっきりした根拠というものを持たずに、ただ漫然とやっておられるということに対して非常に不満を持つのですが、さらに時間がありませんから次に進みますが、大体この四年間に分担金だけでも二千二十八億円、三十年度も何して二千二十八億円という膨大な額に達しておる。さらにこれに広い意味の分担金として施設提供費を含めますと二千三百十四億円、まことにこれは膨大な数字なんです。こういう膨大な数字がただ漫然と、はっきりした根拠もわからないままに支出をされて、しかもその使い途ということについては、予算にも決算にも、これは殆んどこれという説明がついておらないのです。この理由はどうか、この理由をお尋ねしたい。大蔵大臣にお尋ねしたい。
○国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。防衛分担金はあれを向うに渡しますときに支出になりまして、そして向うがそれを受け取って向うが使うのでありますから、そのこういうものに使ったという報告は受けております。
○秋山長造君 それは毎年確実に受けておいでになりますか。
○国務大臣(一萬田尚登君) さようでございます。受けております。
○秋山長造君 それではその二十九年度に受けた資料をわれわれの手元に提出していただきたいと思う。それはどういう形で出ているのですか。
○政府委員(森永貞一郎君) ただいま大臣から答弁がございましたように、日本政府といたしましては、これを渡しましたときに支出いたしまして、先方はその日本からもらいましたものと、アメリカ本来のものとを合せまして、米軍の会計手続に従って経理しているわけでございますが、日本側から支出いたしましたものにつきましては、日米間の合意によりまして毎月支出の実績をとっております。これは過般衆議院で資料の要求がございまして、二十七、八、九の三カ年の支出状況を資料にして差し上げてございますが、おそらくは当院におきましてもお配りしてあるかと存じます。試みに二十九年度の状況を申し上げますが、日本側から二十八年度に渡しました金が百三十六億三千九百万円残っておりまして、その分が二十九年度に繰り越されております。その百三十六億円に、昨年度交付いたしました金額は五百三十二億円でございますが、合せますと六百六十九億円になります。それの支出済み額は六百四十二億円でございまして、支出の内訓を申し上げますと、輸送通信費が四十五億、用役作業費が百三億、物品費が四十七億、それから災害復旧費、これは小さな金額で二千二百万円、労務者の給與四百四十四億、翌年度への繰り越し額が二十七億、さような数字に相なっております。
○秋山長造君 今の資料はわれわれの手元にきておりませんから、ぜひ至急に出して頂きたいと思います。 それからさらにそれにつきまして、ただ向うから出された報告書をそのままうのみにしておられるのか、それともそれをさらに逆に会計検査院なり何なりの手によって事実について、現地においてはっきり確認をされているのかどうか。 それからもう一つ、ついでにお尋ねしますが、まあ先ほど防衛庁長官からもお話がありましたが、行政協定の対象となる純粋の意味の駐留軍にだけこれは使わるべきだと思う。しかるにその駐留軍なるものは半面において国連軍という性格と任務を持っていると思う。そこでこの分担金というものが駐留軍だけに使われて、そうして国連軍の任務と性格をもって行動する場合においては断じてびた一文も使わないという保証はどこかにあるのですか。
○政府委員(森永貞一郎君) 先ほども申し上げました報告を聴取することを合意いたしましたのと同じような意味合いにおきまして、合同委員会での協議の結果であったと存じますが、合同委員会の委員は、会計の専門家並びに米軍当局の専門家の援助を受けて、この経理についての実地監査をすることができる。そういう合意が取りかわされております。そうして現実の問題といたしまして、たしか二十八年の三月です、その三月の支出状況が他の月に比べまして非常にふくれている、これは少しおかしいのじゃないかという気がいたしましたので、ただいま申し上げました合同委員会での覚書に基きまして、同年のたしか七月でございましたか、八月でございましたか、六月でございましたか、はっきり記憶いたしておりませんが、横浜の米軍当局へ参りまして、帳簿を見せてもらいまして、現実の契約の状況なり、支出の状況なりを監査いたしたことがございます。これは会計検査院の検査ではございません。調達庁と私どもの方が協力して実行いたしたわけでございまして、さらに必要がございますれば検査院の援助も求めるつもりでございましたが、そのときは調査の結果、大体それぞれ理由のあることがわかりましたので、書面の交換によりまして実情をつまびらかにいたしまして本件の結末をつけた、そういうような事例がございます。 さように支出の状況につきましては一々注意を払っているわけでございまして、日本に駐留している本来の駐留軍のためにだけこれが使われるようにということは、私どもの方といたしましては十分気を使っておる、注意をしておる、大体間違いなく今日まで推移しておる、さように御了承をいただきたいのであります。
○秋山長造君 会計検査院の検査はやったことがないのですね。やれますか。
○政府委員(森永貞一郎君) 合同委員会の協議によりまして、合同委員会の委員が、日本政府の会計の専門家並びに米軍の会計の専門家の援助を受けて検査をすることができる。その場合に私どもといたしましては、検査院に応援を求めまして、検査院を連れて参って検査をすることができると考えております。ただし、ただいま申し上げました場合におきましては、そこまでいかないうちに、調達庁とわれわれの方とでいろいろ調べまして、向うの説明を聞きまして、大体納得いたしましたので、検査院までわずらわすということはそのときはいたしておりません。しかし必要がございますれば検査院の御援助を求めるということはでき得ることに相なっております。
○秋山長造君 結局大蔵省が、一度何か簡単に二十八年度かに検査らしいものをやられたということだけであって、ほんとうに会計検査院が一般の費目について検査をやっているような厳重な検査というものは、いまだかつて一度もやられておらない。二千億という膨大な国費について、大体あなたまかせで放任をされているというのが、これが実情だと思う。私はこの点ははなはだ遺憾に思う。会計検査院の検査というものをほんとうに徹底しておやりになる意思はないのかどうか。これは会計検査院長がおいでにならんのだけれども、しかし政府のやはり腹がまえとしては私は答弁ができると思いますので、大蔵大臣にお尋ねしたい。
○国務大臣(一萬田尚登君) これは私の一応の解釈ですから、あるいは御満足を得ないかと思いますが、あの防衛分担金は、防衛分担金として向うに渡しまして、それから先向うが使うことになっています。従いまして、これはやはり私はその使途を会計検査院が検査するぞというような態度でやるのには、どうも先方の同意が要るのではないかというふうにも考える。従って今日合同委員会というような形を通して、そこでいろいろ向うと協議をしてやる。こういうふうにやるのじゃないかと思いますが、これはいろいろ法律の問題もありますから、なお研究はしてみなければなりませんが、従来は大体そういうふうなことであったと私は考えます。
○秋山長造君 従来はそういうようなことで……、はっきり、真剣に取り組んだことがないと思うのですよ。従来はなしくずしで、あなたまかせで、仕方がない、仕方がないでやってきたに違いない。ところが内閣が変りまして、そうして鳩山内閣は特に前の内閣とこと新らしく、自主外交というようなことを強く打ち出しておられる。それだから一番に、こういう面について厳重に会計検査ということはやってみられる必要があると思うのです。で、大蔵大臣は衆議院において五月七日の予算委員会でわが党の赤松委員の質問に答えて、会計検査はできるということをはっきり言明しておられるのです、いかがですか、正確な答弁をして下さい。
○国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。衆議院においては私はやはりその通りに、向うの同意が要るというふうに……、初めできるというふうに考えたのですが、どうもそうでないように考え直しまして、同意が要るというふうに修正いたしたはずであります。(「事務当局それをはっきりして下さい」と呼ぶ者あり)
○政府委員(森永貞一郎君) ここにその根拠になります申し合せの文案を持って参っておりませんのですが、日米合同委員会での協議の結果でございますが、日米合同委員会の日本側の委員は、日本政府の会計専門家の援助を得て、また米軍当局の同意を得て実地に帳簿を検査することができる、こういうふうな規定があったと存じます。これは検査院の本来の権限ではもちろんございません。その合同委員会での合意の結果、会計検査院の援助を求めて、合同委員会委員が実地監査をすることができるというわけでございます。そこで検査院当局の援助を求めて、実地について一緒に見てもらうということはできるわけでございますが、これは検査院本来の権限ではないわけでございます。しかもその合同委員会の委員が検査をいたしまするその根拠は、やはり日米間の合意ということに基いてできるわけでございます。これは日本側といたしましては、交付いたしましたときに支出が行われ、その金は向う側の金と一緒に米軍の会計手続に従って経理されていることからくる当然の結論であると思うわけであります。これがいわゆる間接調達というようなことになりますと、日本側が米軍にかわって全部日本で経理してやるということでございますれば、これは日本側の経理ということになるわけでございますが、いわゆるどんぶり勘定に、日本側が一括して交付して、それ以後は米軍の経理手続に従って経理されるわけでございますから、直接に会計検査の対象になるというわけのものではないわけでございます。歩くまでも合意に基いて調べることができると、さような構成になっております。
○秋山長造君 これはもう時間がないから、私さらに本予算のときまで保留しておきますけれども、しかしほんとうに日本の政府が、びた一文の金も国民の血税である。むだにはしないという誠意を持たれるならば、行政協定によってそういう手続についてはっきりした取りきめがなければないだけに、いっそここで改めるのもいいし、書き直してもいいわけなんですから、ちゃんと行政協定の二十八条に「いずれの当事者も、この協定のいずれの条についてもその改正をいつでも要請することができる。その場合には、両政府は、適当な経路を通じて交渉するものとする。」とはっきり、これはもう完全なものではないのだから、いつでも気がついた点はどっちの当事者からでも申し出によって改訂されるのだ、こういうことを初めから予想してわざわざ書いてあるにもかかわらず、この会計検査の問題一つとっても、できるようなできないような、まことにわけのわからぬ説明しかわれわれは聞けない。で、この二十五条の二項の(b)の初めに、「定期的再検討の結果締結される新たな取極の効力発生の日までの間、」云々と、こう書いてありますが、この取りきめというのは、これは二十五条全体の改訂をするという内容を持った取りきめですか。それともあの共同声明のような形の、いわば了解事項といいますか、そういうものを意味しているのですか、その点はどうですか。
○国務大臣(重光葵君) 今言われた後者でございます。
○秋山長造君 そうするとこの日本共同声明というのは、この(b)のところに書いてある「新たな取極」という、この取りきめに当るわけですか、共同声明は。
○国務大臣(重光葵君) 大へん時間を取りまして相済みませんでした。今私がお答えしたのは、少し、そうじゃないらしいのです。(笑声)この行政協定の、今お話しのあったむしろ前の方なんで、その行政協定のこの部分の改正のある、別段の新たなる取りきめのあるまでは年額これだけを支払う、こういうことのように解釈すべきだそうでございます。
○秋山長造君 解釈すべきだそうですという外務大臣の御答弁は、私ははなはだどうも不満です。これ一番重要な問題ですからね、この点は。これはもう外務大臣が一番のみ込んでおられなければならんこれは条文だと思うのに、その点について、だそうですというようなことは、私は承服できん。しかしですね、今外務大臣がおっしゃるような意味ならば、では「定期的再検討の結果」と書いてあるのですが、定期的に再検討しておられますか、やっておられるのか、やっておられないのか。
○国務大臣(重光葵君) 定期的の検討をやっておるわけでございます。
○秋山長造君 で、その定期的検討をおやりになっている、一億五千五百万ドルという数字について定期的検討をおやりになっているというならば、一体政府はいつ定期的にどういう検討をおやりになったのか、その詳細を私知らしていただきたい。
○国務大臣(重光葵君) これは的確に申し上げませんといけませんから、しばらく時間をいただきたいと思います。的確に調べてお答えすることにいたします。(「休憩々々」と呼ぶ者あり)
○佐多忠隆君 議事進行について。今のお答えによりますと、定期的に検討していらっしゃる。従ってその定期的な検討をいつ何回やられたか、その検討の結果の状況がどうであったか、それを一つ詳しく御報告を得たいので、今すぐにはできないとおっしゃいますから、しばらくここで休憩されんことを提案いたします。(「賛成」と呼ぶ者あり)
○委員長(館哲二君) では条約局長が今出席されるそうでありますから、条約局長が出席するまでこのまま一つ休憩を願います。 午後二時三十七分休憩 —————・————— 午後三時四分開会
○委員長(館哲二君) それでは休憩前に引き続いて質疑を続行いたします。
○国務大臣(重光葵君) 今問題になっております行政協定の第二十五条の二項の(b)の冒頭の「定期的再検討の結果締結される新たな取極の効力発生の日までの間、」、これをどう解釈するかということ、これは従来の経緯もよく知っております条約局長をしてお答えいたさせたいと思いますが、私もよくわかりましたけれども、条約局長からはっきりした見解を申し上げさせます。
○政府委員(下田武三君) 行政協定二十五条第二項(b)規定に関しまして御質問がありましたそうでございますが、御承知のように、二十五条第二項(b)は「定期的再検討の結果締結される新たな取極が効力を発生するまでの間、一億五千五百方ドル」ということを規定いたしております。この定期的再検討ということは何かということになりますると、これは行政協定締結当初におきましても、日本の会計年度、四月一日に始まります日本の毎会計年度を基準として検討するということに了解ができております。従いまして本年度に至るまで毎年日本の会計年度の始まりますまでに日米間に合意いたしまして、新らしい数字をきめて参っておるわけでございます。そこで本年度におきましても、先般日米共同声明で明らかになりましたように、三百八十億、円にいたしますと三百八十億という数字が、本年度の再検討の結果、政府限りにおきましては合意ができております。従いまして国会で御承認を得ますならば、予算が確定いたしまするので、あらためて正式の交換公文をもちまして本年度の正式の取極を締結するわけでございます。
○秋山長造君 そうすると、先ほどの外務大臣の御答弁と全く逆になるわけですね。
○国務大臣(重光葵君) いや、そうでもない。
○秋山長造君 いや、そうですよ。私はさっきこういう質問をしたのです。二十五条の二項の(b)に書いてある「定期的再検討の結果締結される新たな取極」という規定は、二十五条全体の改訂を意味するのか、それともこの日米共同声明のごときものを意味するのか、こう質問したところが、外務大臣は最初には、それは私の質問のあとの方、つまり共同声明のごときものを意味するのだ、こういう答弁であった。それからまた、あとからそれを取り消されて、いやさっきの質問の前の方を意味するのだ、こうおっしゃった。だから前の方のということになれば、二十五条全体の再検討、二十五条全体の改訂、一億五千五百万ドルという数字の改訂、これを意味するのだという御答弁が出てきた。さらにその点については、しかしはっきりしたことがよくわからないから、条約局長を呼んでくる。こういうことで休憩になっておる。ところが今条約局長の話によりますると、やはり共同声明のごときものを意味するという御答弁、だから外務大臣のさっきの御答弁とは私は逆な御答弁だと思う。
○国務大臣(重光葵君) 私の先ほどの答弁は、実ははっきりしませんでした。そこで条約局長を招いたわけであります。その検討の結果、今条約局長から申し上げたわけでございまして、条約局長の意見は、お話の通りに、私が前に答弁したのと同じように思われます。前に答弁したというのは、第一回目のことで、そのことを御了承願いたいと思います。なお条約局長から補足的の答弁があるようでありますから、どうぞ一つ……。
○政府委員(下田武三君) 私秋山先生の御質問を伺っておりませんために、多少ピントはずれの御説明になりまして恐縮でございますが、もう少し補足的に御説明さしていただきいと思います。「定期的再検討の結果新たな取極」を締結すると規定しておりまするが、立法政策的に考えますと、二つ方法があると存ずるのであります。第一は、二十五条二項の(b)の一億五千五百万ドルという数字自体を変えてしまうという規定であります。これをたとえば一億ドルという数字に削減いたしまして、この協定が続く限りは毎年一億ドルに削減するという取極も実はできるわけでございます。しかしながらこの第一回の年度におきまして問題になったのでありまするが、この定期的再検討と申します以上は、その趣旨は、やはり毎年々々そのときの実情にかんがみて決定するのが至当であると日本側も認め、アメリカ側も認めました結果、ただいま申し上げましたような、永久改正の手段はとりませんで、やはり一年限り一年限りできめて行こう、こういう第二の方式によりましたわけでございます。従いまして昨年度に減らし、また本年度にさらに減らすということで、また来年度はさらにまた減らすということを日本も期待して交渉しておるわけでございまするが、そういう永久改正をいたしませんで、年々の年次改正をやるという方式に相なっておるわけであります。従いまして「新たな取極」というものの実体は、毎年毎年変って行くわけでございますが、なお先ほどの行政協定の三百八十億ということは、まだ実は取極め自体ではないのでございます。取極はあくまでも予算で御承認を得ました上で、正式の交換公文をいたしますので、共同声明に出ました結果は、その取極の素地をなす政府限りの合意でございます。そういうわけでございまするから御了承願いたいと思います。
○委員長(館哲二君) 秋山君時間が超過しておりますので、なるべく……。
○秋山長造君 ちょっと今の問題、特殊な問題なので……。今の点は、これは外務大臣もそのままお認めになると思うのです。ただいまの御答弁を聞いておりましても、これだけ日本の国家財政、あるいは国の予算を大きく左右しておるような分担金の問題についても、その局に当られる外務大臣御自身が確固たる信念を持たずに、ただ漫然と私は交渉に当っておられるんだとしか解釈できないのです。その点ははなはだ遺憾に考えます。しかしながらただいまのような御解釈といたしましても、この「定期的再検討の結果」というのは、ただいまの条約局長のお話を聞いておりますと、これはきわめて事務的な再検討というような印象を受けるのです。で、そういうきわめて事務的、技術的な再検討の結果をこういう日米共同声明にうたわれておるような、ただ今年の分担金をどうするかということだけでなしに、さらにその他一般的な防衛問題、さらにまた明年度以後の問題までも含めてこの取極をやられるということは、私はあまりにもこれは責任ある政府としては無責任な、あまりに便宜主義に過ぎた私は態度じゃないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
○国務大臣(重光葵君) 今の点は共同声明の内容についてのお話だと思います。共同声明の内容については、お話の通りに今年分はこれは合意が成立しております。それで防衛分担金の軽減ができたわけでございます。本年以後の分については、つまり方針の、こちらの考え方を、声明した考え方の表示でありまして、そこで厳格な合意というわけには行くまいと思います。私はその合意に達するために、今後はこういうつもりであるということを言うのは、かような場合においてはやむを得なかったんじゃないかと、こう思うのであります。
○秋山長造君 これは完全な合意という性質のものではないとおっしゃるけれども、しかし日米共同声明という看板のもとに書かれておるのですから、これはただ一方的なものではなしに、これは完全な合意の上で出ておる声明と思うのですが、そうじゃないですか。
○国務大臣(重光葵君) むろんさような声明を出すという合意ができたから共同になるわけでありますが、しかしその共同声明のうちで、はっきりと合意した部分はこれである、日本とアメリカと双方のおのおのの政府の考え方はこうである、こう書き分けてあるわけでありますから、意味に厚薄の別があるように思っているわけであります。(「時間」と呼ぶ者あり)
○委員長(館哲二君) もう時間が超過しておりますから、締めくくっていただきたいと思います。(「本予算でやれよ」と呼ぶ者あり)
○秋山長造君 ちょっと。今の共同声明の問題は、ただいまの外務大臣のような御答弁では私は承服ができません。これはまた別な機会にもう一度突っ込んで御質問をいたしますが、しかしいずれにいたしましても、問題を今後にさらに複雑なむずかしい形で残したものだと思うのです。その点についてはおそらく外務大臣といえども御異存はないと思う。 そこでこの行政協定自体にも、これは完全なものでないので、実情に沿わない点があれば、これは双方の外交交渉によって、政治的な話し合いによっていつでもこれは改定できるということを、わざわざ二十八条に書いてあるのですから、だから今後過般の日米交渉のような、ああいう面倒な問題をいつまでも持ち越すのでなしに、なぜ私は政府が一億五千五百万ドルという数字を改めようと努力されないのか。また二十五条全体について、ただいまも条約局長をわざわざ呼んでみなければ解釈がよくわからないような、非常にあいまいな不完全な条文なんです。これをなぜ政府がこの条文全体を改訂をしようとなさらないのか。あるいは外務大臣また鳩山総理大臣も本会議や本委員会、あるいは外務委員会等におきまして、行政協定は改訂の必要がある、鳩山さんはできるだけ早く改訂したいということまでおっしゃっているのです。そういうお気持があるならば、何よりもまず第一番に、いつも問題の起る二十五条というものをまず改訂をされたらどうか、こう思うのですが、政府の御見解はいかがですか。
○国務大臣(重光葵君) 私は行政協定一般についての改訂問題の議論がありましたときに、まだこれは一般の情勢の変化、さような時期のくることを希望しておるけれども、今日はその時期でないということを申し上げました。二十五条がさような不明確な点もあり、かつまた防衛分担金の額などは変更するように、もしくは減額するように、初めからもうそれははっきりするように交渉したらどうか、こういう特別の今のお話しでございます。これも私はさような時期のくることを実は念願をし、そのときには遅滞なくその手段をとりたいと、こう考えます。しかし今すぐ今日その時期であると、こう申し上げることはできませんので、今日、今それに着手するということはいかがかと、こう考えておるわけでございます。
○委員長(館哲二君) 秋山君、もう時間が超過しておりますから……。
○秋山長造君 今すぐとおっしゃるけれども、これは行政協定にもいずれかの当事者が一方的にそういう意思表示をしても、これはいつでも交渉ができるという余地を十分残してあるのです。しかもさっきの条約局長の話のように、毎年々々再検討の結果出てくるところの新しい取極というものの数字が、ここに書いてある一億五千五百万ドルという数字と毎年食い違うのだったら、そうまでこの一億五千五百万ドルというものに執着する必要はないと思うのです。すみやかにこれは一億五千五百万ドルを、もっと合理的現実的な条文に私は書き直すということは何ら不都合でも不自然でもないと思う。ごく当りまえのことだと思うのですが、そういう御意思はないのかどうか、もう一つお尋ねしたい。
○国務大臣(重光葵君) これは条約は相手あってのことでありますから、(「条約じゃない」と呼ぶ者あり)行政協定で、行政協定でありますから、広義の条約であります。協定でよろしゅうございます。それは相手あってのことでございますから、相手の状況、一般の情勢を検討しなければ、すぐこの条文が不利益であるから、すぐ改訂、改正しようという意思表示は、それはできますが、二十八条にはっきり書いてありますからできます、それはできますけれども、それは、ただこっちがそれを提案するだけで目的は達しませんから、目的を達するような情勢を見てやるということは当然のことだろうと思います。 〔秋山長造君「その御答弁にも私 は、はなはだ不満足です」と述ぶ〕
○委員長(館哲二君) 秋山君に申しますが……。
○秋山長造君 一点だけにしますから……。
○委員長(館哲二君) じゃ、それだけにして……。
○秋山長造君 そこで、その点もまたあらためてお尋ねしますが、最後に一つお尋ねしたいことは、どうしてもこの問題は、私どもがはっきりするためには、あの長期間にわたって紛糾した防衛分担金のあの削減交渉というものの経緯を、私どもはっきりさせていただかなければならないと思うのですが、その点はいかがですか。
○国務大臣(重光葵君) その点は、明確に経緯を叙述したものを差し出してあるつもりですが、まだお手元にはないでしょうか。 〔秋山長造君「持っていない」と述ぶ〕
○国務大臣(重光葵君) 少くともこれは差し出してあるつもりです。調べてみましょう。
○委員長(館哲二君) 以上をもちまして質疑は終了いたしました。 〔「ちょっと確かめておくだけ」「確かめるだけだから。問題は終了しておらん」と呼ぶ者あり〕
○委員長(館哲二君) 質疑の終了の宣言をいたしました。 〔「議事進行」「関連があるのですよ」「議事進行ですから願います」「議事進行の発言を許してやりなさい」「関連質問があるのですよ」「手をさっきからあげているじゃないか。問題を明らかにしなければだめですよ」と呼ぶ者あり〕
○委員長(館哲二君) 質疑の終了を宣告いたしました。 〔木村禧八郎君「さっきから関連質問の手をあげているじゃないか」と述ぶ〕 〔「委員長聞かなければいかん」と呼ぶ者あり〕
○委員長(館哲二君) 秋山君の質問につきまして、政府当局の意見をお聞きします。秋山君の質問につきまして私から一つ……。 〔秋山長造君「それをはっきりして下さい。その経違を公表したということをはっきり言って下さい」と述ぶ〕
○国務大臣(重光葵君) ここにこの文書をもって、これは衆議院の予算委員会で要求をされて提出したのですが……。 〔秋山長造君「共同声明ですか」と述ぶ〕
○国務大臣(重光葵君) 共同声明じゃありません。経緯です。 〔秋山長造君「だから詳細に発表する、詳細な資料を提供するということを、そこではっきりおっしゃって下さい」と述ぶ〕
○国務大臣(重光葵君) 衆議院に対して提出した資料を同様に提出します。
○委員長(館哲二君) 本委員会にも一つ同様に御提出を願うことにしておきます。 〔木村禧八郎君「関連質問」と述ぶ〕
○委員長(館哲二君) 質疑の終了を宣告いたしました。 四時まで休憩いたします。再開直後ちに討論に入ります。 午後三時二十五分休憩 —————・————— 午後四時十四分開会
○委員長(館哲二君) これより委員会を再開いたします。 昭和三十年度一般会計暫定予算補正(第1号)外二件に対する討論に入ります。通告により順次発言を許します。
○高田なほ子君 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府提出の六月分暫定予算補正三案に対しまして反対の意見を表するものでございます。 私は、まず四、五月暫定予算に引き続きまして六月もまた暫定予算案を提出するに至りました責任政治に対する政府の強い反省を要求するものでございます。政府はさきに四、五月の暫定予算の承認を国会に求めるに当りまして、今後再び暫定予算を提出しない旨を断言しておられたにかかわらず、この間の政府の不手ぎわ、不誠意に基いて六月暫定予算を提出するのやむたきに至りましたことは、国会運営のルールを誤まらしめる要素をはらむものとしてまことに遺憾にたえないところでございます。理由のいかんを問わず、地方財政の窮迫の中において、適切な予算措置の運営を誤まることによって、中央及び地方を通じまして、国の財政と国民の生活に不安と動揺を与えて、しかも正常な議会運営を著しく阻害し、ついに七月暫定予算の危機をすら思わせるがごときは、まことに政府重ねての失態と申さなければなりません。かかる不手ぎわを招来いたしました第一の理由は、防衛分担金削減交渉が重大な難関に直面いたしまして、しかもこの際適切な措置をとり得なかった鳩山内閣の弱体性と政府自体の対外外交の失敗を遺憾なく露呈したものと言わなければなりません。しかも重ねて政府の怠慢は、予算に伴う重要法案の提出をはなはだしく遅延せしめ、予算審議に際して不可欠の条件であるこの法案提出を政府みずから犯しましたことは、これまたまことに遺憾きわまりないところでございます。こうした政府の失態を糊塗するために保守合同の策を弄し、本予算案の早急通過をはかろうとするがごとき、政策無視の無軌道ぶりはまことに国民を愚弄するものと言わなければなりません。 次に、本暫定予算の性格でございますが、単純に事務的であるべき暫定予算の性格を逸脱いたしまして、政府の重要政策を織り込んだことは、未審議の本予算に対する承認の既成事実をはらむものでございまして、これまた民主政治の根底をくつがえす性格を含むものとしてまことに批判されなければならない問題であろうかと存じます。 以上政府の不誠意によって、かかる手続上の不備に加えまして、第二に反対の理由としてあげなければならないことは、明らかに本暫定予算は年度予算の縮図でございまして、明確に再軍備強化予算としての性格を持っておるという点でございます。鳩山内閣はさきに公約として平和外交、民生の安定をうたい、具体的には生活保護、失業対策、住宅問題等、当面する国民の苦境打開の方針であったにもかかわりませず、事軍事費に至りますと、その自主性を失い、軍事費優先の隷属的性格をむき出しにして、六月分の防衛分担金までも四、五月の暫定予算の中に早手廻しに計上しておるというろうばいぶりはまことに遺憾なところでございます。七十一億七千九百万円に達する防衛庁費は、前年度の月割額に比べて著しい増加の幅を示しておりますが、これは日米共同声明の中にもあります通り、防衛分担金の削減は、本年度限りというのでございますが、おそらく防衛庁費は今後ますますその幅を広げ、この隷属予算は際限なく生活を不況に追い込み、かつ教育費の削減によって新学制の危機をも招来するに至るでございましょう。しかもこの点については、同僚秋山委員によりまして、審議の過程において共同声明の性格並びに防衛分担金の性格については、幾多の疑義を残したことをここに明確に申し上げなければなりません。私ども社会党は、平和と民族の独立の旗のもとに戦いますがゆえに、国民生活を二次的に見る本末転倒の本予算案に対しましては、賛成の余地を見出すことはできないのでございます。 第三にあげられる反対の理由は、社会保障費と防衛庁費の相対的な幅の開きでございます。六月分の生活保護費三十六億三千万円は、若干の増額を示しておりますが、その内容においては、赤字の穴埋めの形をとっておるのでございまして、実質的には削減を見ているという重大な点でございます。今日わが国の失業者は八十万をこえ、ちまたには欠食児童、長期欠席児童があふれ、千万人をこえる要保護者は旱天に慈雨を待つがように政府のあたたかい手を望んでいるのでございます。しかしその予算は、わずかに二百万人を潤すにすぎないじゃございませんか。食うに食なく悲しむ人々にこそ伸ばすべきが政治の手であることを御承知の上で、アメリカ政府の要請のままに飛行場滑走路の拡大、ジェット機の国内生産に拍車をかけ、しかも飛行機一機二億の巨額を要するこの飛行機一台の費用を持つならば、優に八千三百三十人の要保護者を生かすことができるということを考えてみたいと思います。働くに職なき失業者の激増は、まことに目をおおうばかりでございますが、失業対策費にいたしましてもわずかに失業者の一部二十二万を潤すにしかすぎないのでございます。同じ大空のもとに日々親子心中が跡を断たず、不幸な人身売買にさらされるせつない少女の叫びは、壁厚い殿堂に響くことがないのでございましょうか。私ども社会党は、両社共同の形をもって、衆議院においては社会保障費二十億の金額を増額いたしました。しかしこの金額は決して多額であり、しかも、不要のそしりを受けることはないと存じます。さらに義務教育費国庫負担金、地方交付税十二億の増額、これまた現状を知るものにとっては当然の常識であろうかと存じます。行政費二割天引強行の中に、行政整理の不安におののき生活に取り組む公務員の、正当な所要の夏季手当一カ月分五十億は、たびたび人事院勧告を無視した低い給与水準に対する適切かつ妥当な考慮と言わざるを得ません。この措置こそ、一般労働者の低賃金を引き上げ、農村の低米価引き上げに通ずる道であって、政府はこの際えりを正して民衆の声を聞いて、そうして労働強化、不正及び事故の原因を率直に除去するの途を講ずることなくして、何で道義の高揚、新生活運動を指導することができるでございましょう。しかし遺憾ながらわれわれ日本社会党の衆議院において提出いたしましたこの修正案は、政府並びにこれに同調する各位の反対によって敗れさりましたことは、まことにもって痛恨事であると言わなければなりません。 以上の観点において、私は六月分暫定予算補正三案に強い反対の意見を表するものでございます。(拍手)
○池田宇右衞門君 私は、ただいま議題となっておりまする昭和三十年度暫定予算補正三案に対しまして、自由党を代表して、若干の意見を付した上で、不本意ながら賛成の意を表せんとするものであります。 まず、この暫定予算補正三案に対する意見を申し述べるに先だって、政府の本予算提出についての不手ぎわを指摘しておきたいと思うのであります。前回の四、五月分暫定予算の審議に際し、われわれは暫定予算の国民経済に及ぼす悪影響にかんがみ、本予算案提出をできるだけ早くすること、少くも四月十五日までには必ず国会に提出するよう強く要求し、本会議における私の討論においても、希望条件の第一として申し上げておいたのであります。政府もまた委員会等において、四月中旬までには必ず本予算案を提出する旨をしばしば公言いたしておりました。しかるに事実はどうであるか。本予算案が国会に提出されましたのは四月の二十五日でありまして、国会はその間十数日を空費せざるを得なかったのであります。この十数日は決して短かい日時ではありません。この十数日の遅延によって、国会の予算審議の日程には非常な狂いを生じ、ついに六月分暫定予算案の提出を必至とするに至ったのでありまして、六月分までも暫定予算を組まなければならなくなったということは、経済界にも、地方行政にも非常に大きな影響を及ぼしたのでありまして、政府の責任きわめて重大であります。 政府がこのように本予算案の提出を遅延せしめた理由は一体どこに拠るか。第一は、政府の無能と怠慢にあります。昨年末鳩山内閣が成立しました当時、政府はその当然の義務である予算案の編成に、いささかもまじめな努力を払わず、いたずらなる公約の宣伝を事として、もっぱら選挙運動に没頭いたしておりました。周知の通りその公約の中には、防衛分担金を削減して、住宅政策に回すという一項がありました。われわれは、この公約がきわめて現実性に乏しいものであって、必ずや失敗に終るであろうことを予想していたのであります。果せるかな、米国政府との折衝は難航し、公約はついにから手形に終ったのであります。交渉には相手があります。相手の意向を十分に確かめることなく、未決定の事項をさも自信ありげに放送して、国民の意を迎えようとした態度は、まことに軽率と申すよりほかはありません。もしまた政府にしてまじめにその意図を持っていたのであるならば、予算案提出の時期ともにらみ合せて、十分な時間の余裕をもって交渉に当るべきが当然でありますが、政府の無能と怠慢とは、ついに予算審議上きわめて重大なる時期における十数日の空費を生ずるに至ったのであります。 本予算案提出が遅延した第二の理由は、政府、与党の地方選挙に対する配慮であります。本予算案を一見すれば直ちに明らかになる通り、さきに衆議院の総選挙において民主党が天下に誇示したいわゆる公約なるものは、本予算案においては、ほとんど全く無視せられておるか、あるいはきわめておざなり的に組み込まれておるにすぎません。本予算案を公表することによって、国民の失望を買い、ひいて地方選挙において民主党の得票数に大きなマイナスを生ずるであろうことは、賢明なる民主党首脳部諸君がつとに熟知していたところでありまして、政府が本予算案の提出を遅延せしめたところの裏には、地方選挙に対するこうした配慮がひそんでいたことは、新聞等の批評にもうかがわれるのであります。 以上のような理由から、政府は本予算案の提出を遅延させ、予算審議に重大なる支障を生ぜしめ、六月暫定予算を必至とするに至ったのでありまして、その責任はきわめて重大であります。わが党が四、五月暫定予算の成立に当って付した条件を政府が全く無視したことを、私は深く遺憾とするものであります。 今回の暫定予算案を見ますと、前回の四、五月暫定予算と比較して、著しく編成の仕方が異なっております。四、五月の暫定予算が、前年度予算を基礎としておるに反し、六月分の暫定予算案は、目下審議中の三十年度本予算案を基礎として編成されておるのでありまして、その意味において、政策的経費が多分に盛られているのであります。今回の暫定予算案の基礎となっている三十年度本予算案につきましては、わが党の主張に沿わない点が多々あるのであります。すなわち三十年後本予算案は、経済六カ年計画現実のための地固めの予算という美名の下に、わが国産業の基盤である農林漁業関係の経費を、前年度に比して大幅に削減するとか、社会保障関係費を増額したと称しながら、戦没者等援護費、季節保育所並びに上下水道等の予算を削減するとか、あるいはまた健康保険の赤字保てんはしたが、国民健康保険の赤字対策はきわめておざなりであるとか、歳出面において、われわれのとうてい同意しがたい点が多々あるのであります。また歳入面におきましても、懸案となっている中小法人に対する低位税率の設定であるとか、勤労者、農民等の低額所得者に対するところの減税であるとか、現下の経済情勢から見て、当然必要とせらるる措置が何ら講ぜられていないのでありまして、これらはわれわれのはなはだ不満とするところであります。 御承知のごとく一昨年末自由党内閣のとりました財政健全化政策によりまして、国際収支は著しく改善せられ、年度間を通じて実に三億四千万ドルをこえる黒字を生じ、経済の正常化は大いに促進せられました。これによって一方的な緊縮政策は拡大均衡への一歩を踏み出すための基礎条件はほぼ整ったのであると申すことができるのであります。打ち続く災害とデフレのしわ寄せを受けた農村と中小企業の現状を考慮に入れるならば、今やささやかなりとも拡大均衡への転換を促すための措置を講ずべき時期に到達したものと考えなければなりません。三十年度本予算案がこれらの点についての配慮を欠いていることは、われわれとしてはなはだしく不満とするところでありまして、従ってこれらの欠陥を持つ本予算案を基礎とする今回の暫定予算案に対しましては、暫定予算の性質上、本予算案の構想の一部を具体化しているにすぎないとはいえ、全面的に賛意を表するわけには参らないのであります。特に地方財政につきましては、公共事業関係費、一般補助金のほか地方交付税交付金として、普通交付金の年額の四分の一を計上しておるのでありますが、暫定予算に次ぐ暫定予算によって拍車をかけられている地方財政の窮乏に対処するにはまだまだ不十分と申さなければなりません。 次に、財政投融資についても、今回の暫定予算には一般会計の出資及び投資は計上されず、資金運用部資金等に全部頼っておるのでありまして、運用部の原資の状況から見て果して当面の資金需要に対処することができるかどうか大いに疑問であります。 以上を要約いたしますと、今回の暫定予算案は、四、五月分の暫定予算の討論に際し、われわれが付しました希望条件の趣旨に必ずしも全面的に沿ったものでないこと、及びこの暫定予算案の基礎が三十年度本予算案に置かれており、その本予算案にはわれわれの賛成しがたい点が多々含まれていること、この二点において不満を感ずるのでありますが、六月はすでに明日に迫っております。これを修正するに時間的余裕もないし、否決することによって国政に空白を生じ、経済界に不安を高め、国営関係事業の遅延を来たす等のことは今日許されない現状でありますから、わが党は、はなはだ不本意ながら、暫定予算補正三案に賛成をいたす次第であります。 以上をもって私の討論の終りといたします。(拍手)
○松澤兼人君 私は、社会党第二控室を代表して、政府提案の昭和三十年度一般会計暫定予算補正外二件に対して、われわれの立場を表明しながら、政府の原案に対し反対の意思を表明しようと考えるものであります。 われわれが四、五月暫定予算を審議いたしましたときに、六月暫定予算は組まないと言っていたにかかわらず、三十年度本予算の編成が遅れてここに六月暫定予算が提案せられたのでありますが、三十年度本予算が遅れた重大な原因の第一は、現内閣の財政自主権の喪失という事実に基くものであり、第二は、財源措置を伴わない公約濫発の跡始末ができない事実に基くものであります。最初内閣は防衛分担金を削減してこれを内政費あるいは公約財源としたいと考えていたようでありましたが、ついに米国側の強力なる要請により、分担金において削減されただけの金額はそっくりそのまま防衛庁費の増額と、施設提供及び軍事顧問団交付金に振り向けざるを得ず、防衛関係費は前年に比して減額せざるのみならず、百五十四億八千万円の国庫負担契約を三十年度において締結し、さらに二十九年度繰越分二百二十七億の使用を合計すれば、実に千七百八億に達し、政府の意思は全く予算編成において抹殺されているのであります。これをわれわれは財政自主性の喪失とみたいのであります。それだけでなく、防衛分担金交渉に関する日米共同声明によれば、日本政府は昭和三十一年及びそれに引き続く年間において、自己資力のより大きな部分を防衛目的のために振り向けることを義務づけられているのであります。この日本政府が鳩山内閣をさすのであるか、あるいは今後の日本国の内閣をさすのであるかは問題があるとしまして、将来の日本の財政自主性に対して重大な制約を加えた点については、われわれは非常な関心を払わなければならないのであります。 さらに第二の点は、民主党が過般の衆議院選挙に際して、総理各省大臣が財源を考慮することなく公約を乱発したため、本予算編成に際し、予算的措置に行き詰りを生じてきたのであります。一応形は公約のあるものは実現するように予算編成上の考慮が払われているわけでありますが、これが果して実行上達成できるかどうかは、すこぶる疑問と言わざるを得ないのであります。あれもこれもという予算上の考慮は、あれもこれも実現容易ならざるものとし、きわめてその実現が危ぶまれる結果となったのであります。 われわれ日本社会党左右両派は、この六月暫定予算について組みかえ方針として次のごとく主張するのであります。 すなわち、組みかえの要求として、 一、政府案の生活保護費、失業対策費は昭和二十九年度予算経費の月割り比率より見れば十分でなく、これでは本年度は経費不足になることが明らかであるので、これを増額する必要がある。 二、政府案の義務教育費国庫負担金は、本年度の小学校児童増加に相当する経費が計上されていないので、従ってこれを増額する必要がある。 三、右の社会保障関係経費並びに義務教育費国庫負担金の増額に伴う地方財政の負担増加分は、地方財政の現下の窮状にかんがみて、これを地方交付税交付金の増額によって補う必要がある。 四、政府案の水稲健苗育成費は本年度の食糧増産の目標からみて不足しているので、これを昭和二十九年度額並みに増額する必要がある。また、本年度政府案は農薬購入補助金を全廃したが、これは食糧増産に支障をきたすので、昭和二十九年度並みに計上する必要がある。 五、公務員給与の夏季手当は、現在の公務員給与水準が人事院勧告額にも及ばない現状にかんがみて、〇・二五カ月分増額する必要がある。 六、政府案の防衛庁費のうち、器材費と艦船建造費は削減する。 七、右の支出増加による歳入総額に対する差引歳出超過は、国庫余裕金及び大蔵省証券の発行によって十分まかなわれるものである。 具体的な詳細な数字はこれを省略いたしますが、かような見解を私どもはとっているのでございますが、しかし右は議事手続上、これを組みかえ動議としては提出しないで、これをもってわれわれの態度の表明といたしたいと存ずるのであります。 これを要するに、対外政策、予算編成上の基本問題、社会保障、農水産対策、文教政策、経済六カ年計画、国民生活の安定、防衛、平和、地方自治等の根本的な問題については、やがて本委員会において審議される三十年度本予算討論の際にこれを申し述べることとして、ここでは六月暫定予算に関し、次の点を明らかにして、政府の反省を求めるとともに、われわれがこの予算に賛成いたしかねる理由を申し述べたいと存ずるのであります。 第一に、政府の経済六カ年計画は、防衛計画と切り離して考えることができないにもかかわらず、これを政府は明らかにせず、漸進的に三十年度の自衛隊の増強を予算に計上していること。 第二、この予算審議に重大な関係を持つ各種重要法案の国会提案がおくれ、今日に至っても成立した法案がりょうりょうたる現状であり、政府の怠慢は大いに責められなければならないこと。 第三、本来暫定予算は事務的な経費のみを計上すべきであるにもかかわらず、防衛庁費の増額計上等、最も問題のおる費目が入れられていること。 第四、社会保障費、失業対策費等は十分でなく、これを防衛費に比較すれば問題でないこと。 以上簡単に六月暫定について触れたのでありますが、われわれの組みかえ要求は上記の問題点を是正して妥当なるものと信ずるのでありますが、一々各費目について修正、組みかえをする事務的な手続が困難でありますので、結論として政府原案に対しては反対の立場を表明ぜざるを得ないのであります。 以上をもって反対の討論を終ります。(拍手)
○豊田雅孝君 私は緑風会を代表いたしまして、ただいま議題になっておりまする昭和三十年度六月分暫定予算三案に対し、意見並びに希望を付して原案に賛成するものであります。 第一に、この暫定予算案は、大蔵大臣の提案説明にもありましたるごとく、四、五月分の暫定予算とはその性格を異にいたしておりまして、三十年度本予算を基礎としているものであります。従ってこの暫定予算案は、暫定予算とは言うもののその性格は本予算と同様とみるべきものであろうと考えるのであります。しかるに三十年度本予算案は、現在衆議院において少くとも修正必至の情勢にあるのであります。従って三十年度本予算案の見通しをつけた上でなければ、この暫定予算案の審議は完全を期し得ないと考えるのであります。しかしながら、五月末日となりました今日、本暫定予算案を通過させねば、予算的空白を生ずるという抜きさしならぬ現実問題に当面させられているのであります。従って、やむなくわれわれはこれを認めざるを得ない立場に置かれておるのでありまするが、これは政府の重大なる責任であるということを明らかにこの際しておきたいと存ずるのであります。 第二に、四、五、六、三カ月にわたって暫定予算となっておりまするために、経済界並びに地方公共団体に及ぼす影響は、まことに甚大なるものがあるのであります。さらに、現在の情勢では、七月も暫定予算となる懸念が多分にあるのであります。加うるに、関係法案の提出ないし成立の状況を見まするに、きわめて不良であります。かくのごとく、本予算案ももちろんでありまするが、関係法案までも成立が遅々としておるということは、まことに憂慮にたえないのであります。政府は、すみやかにこの際本予算案並びに関係法案の通過するように、大乗的見地に立たれて、真剣な努力を払われることを切に希望するものであります。 第三に、三十年度本予算案によりますと、政府資金の散布超過は七百億円であります。昨年の散布超過は千九百億円であったのであります。それでも、なおかつ経済界にあの程度の深刻な打撃を与えたのであります。しかるに、本年度は昨年度の半額以下の政府資金散布超過に相なるのであります。しかも予算自体がこま切れ予算でありまするがゆえに、経済界等に及ぼす影響は、一そう深刻なものに相なると思われるのであります。政府は、この点を十分に考慮せられまして予算の運用については特に深甚の考慮を加えられたいと考えるのであります。 第四に、経済六カ年計画は、単なる目標ではなく、計画であるということが明白になりましたにかかわらず、これを推進いたしますために、何ら見るべき裏付け政策がないということは、はなはだ遺憾とするところであります。ことに経済六カ年計画におきましては、失業人口を商工業方面に吸収せんとしておるのでありまするが、商工関係の予算を見ますると、輸出振興の予算並びに中小企業振興の予算等は、予算全体に比しまして、依然としてきわめて僅少であります。かくのごとき施策をもっては経済六カ年計画の遂行は非常に困難だと考えざるを得ないのであります。従って、経済六カ年計画をほんとうに推進せられようというつもりでありますならば、計画の裏付けとなる政策なり、あるいは計画の樹立実行につきまして、真剣なる検討を加えられたいと考えるのであります。 以上、希望並びに意見を付しまして、政府案に賛成するものであります。(拍手)
○木村禧八郎君 私は、ただいま提案の六月分暫定予算案に反対するものであります。反対理由は三つであります。 その第一は、六月分暫定予算に政策的経費を織り込んだこと、すなわち、まだ参議院にも回ってこない三十年度予算を基礎にして、そうして編成しているということであります。この点は、先ほど自由党を代表して討論されました池田委員によってはっきりと指摘されまして、二十八年度予算においても六月暫定予算は編成されましたが、そのときには政策的経費は含まない。こういうことははっきり政府当局からも言われ、そうして暫定予算はいわゆる仮予算であって、財政法で定めている暫定予算の精神は、政策的経費を盛り込まないということが暫定予算の精神であることになっているのですが、その精神に明らかに反するわけであります。先ほど来、討論に立たれました各委員の述べられた通り、はなはだ不満であるが、もしこの暫定予算が通らないと財界に混乱が起きるので、やむを得ず認めざるを得ない立場に追い込まれているという討論をされましたが、それは政策的経費を織り込むと、不本意ながらもこの政策的経費を認めざるを得ないという立場に追い込まれていきます。従って、政府が暫定予算に政策的経費を織込みますと、その盲点に乗じて、その盲点に乗じて政策を無理に一方的に認めさせるというような窮地に委員を追い込むわけであります。暫定予算は、言うまでもなく予算不成立の場合に備えたものでありますが、予算不成立の場合を予想してみますると、大体五つあると思います。第一は、衆議院が解散されていて、国会として権能を果し得ない場合、第二は、災害その他で国会の召集が不可能な場合、第三は、衆議院が予算案を否決し、または可決しない場合、第四は、憲法第六十条によって、参議院が可決しないで衆議院の当初の議決が有効になるためには参議院の審議期間が三十日間以上必要であるが、それ以下の審議期間であって、しかも議決しない場合、第五は、国会が予算審議中に新年度が開始される場合、この五つの場合に予算が不成立になることが予想され、その場合に備えて暫定予算の制度ができておると思うのであります。従って、暫定予算に政策的経費を織り込むということを今回原則として認めますと、今述べましたような五つの場合において政府が政策的経費を織り込んできますると、非常に重大な問題が起ってくると思います。そういう非常に緊急の場合に政府がそれに、言葉は悪いが、つけ込んで、そうして政策を織り込んできますと、緊急の場合ですから、どうしても暫定予算を認めざるを得ないという立場になって、非常に弊害が生じてくると思います。そうなりますと、政策的経費で対立が起って、暫定予算が不成立になる場合も予想されるのですが、憲法も財政法も暫定予算が不成立の場合を予想した規定は何にもありません。そういう規定がないのは、とりもなおさず、暫定予算には対立の起るような政策的経費は織り込まないという前提になっているから、暫定予算の不成立の場合を予想するような規定がないと解釈すべきではないかと思います。従って、今までの暫定予算は政策的経費は織り込んでない。今回に限りはっきりと政府は、四、五月分の暫定予算はその編成当時まだ本予算ができ上っていないから、従って、その内容は政策的なものは除外して、ごく事務的な経費のみを計上した。ところが、今度は三十年度予算案がもうできておるから、原則としてただいま審議中の三十年度の本予算を基礎としている、そうして編成したと言っております。そうなりますと、従来の暫定予算案の編成の仕方の原則をここで根本的に変えることになる。これは非常な悪例を残すことであります。こういう暫定予算案の編成をわれわれは認めることはできないのです。討論に立たれる各委員とも、自由党の方もそういう点に反対である旨を表明されておるのです。その点が私がこの暫定予算案に反対する第一の理由であります。 それから第二の理由は、本予算案が成立しないうちに本予算の一部をこれは実行することになるわけです。これははなはだ矛盾と言わざるを得ません。また本予算案がまだ参議院に回ってきておりません。正式には参議院で審議されておらないのです。しかもそれが衆議院で修正されるかもわからないという不安定なものになっている、そういうものを基礎にして編成された六月分暫定予算をわれわれここで審議するということは、不見識きわまるものだと思うのです。この点で私はこの六月暫定予算をどうしても認めることができないわけであります。 第三の反対理由は、この政策的経費を盛り込んでおりますが、その政策的経費に対する反対の態度であります。これは本予算を基礎としておりますが、本予算に対するわれわれの態度については本予算の際に討論するといたしまして、この六月暫定予算の基礎になっている本予算の性格は一言をもって要約いたしますれば、国民の貧困と国土の荒廃の犠牲の上に、非常に多額の不生産的な軍事支出の予算をこれに織り込んでおる。そうしてそのために経済自立というものが妨げられている。そういう性格を持った予算であります。詳細については本予算の討論に譲ります。 以上三点が私の六月暫定予算案に対する反対の要点でありますが、最後に、私は政府がこのような三カ月の暫定予算を組まざるを得なくなったために、経済界、国民生活に非常に悪影響を与えておる。そのことに対する政府の責任をわれわれは追及せざるを得ないのです。完全失業者は三月末で六十三万と言われたのが、最近では八十四万にもなっていると言われております。非常にデフレ、不景気がこの暫定予算のためにさらに一そう拍車をかけられた。あるいは国立結核療養所においては夏が来るのでハエを予防するためにDDTを買わなければならないのにこの本予算が成立しないためにDDTが買えない。そのためにハエが多くなって結核が伝染する危険があるけれども、それが十分手当できない。あるいは結核患者に対するパスとか、ストレプトマイシンとか、そういう薬が十分買えない、こういうような状態になっておる。従ってその影響というものは、これをこまかく検討すれば非常に深刻なものがあると思うのです。このような状態になったのは、すでに他の委員が指摘いたしましたから私はくどく申しませんが、要するに政府のこの本予算編成あるいは提出の態度が非常に自主性を欠いておる。編成過程においてアメリカから予算編成についていろいろ干渉されておる。自主的に政府がこの予算をきめることができなかった。また対内的には衆議院の予算審議の過程においても政府の各委員に対する説明の態度が不一致であって、何回も政府の意見の統一を求められて、そうして衆議院の予算審議は遅々として進まなかった。これは内外をあげて政府の予算に対する自主性というものが全く喪失されておる。そういうところからこの暫定予算を三カ月も組まざるを得なくなった。これは全く私はあげて政府に責任がある。そういう意味で私はこの六月暫定予算に責任を負うことができません。全くこれは政府の責任である。内容においても、またこの提出の手続あるいは形式についても、これはわれわれがどうしても賛成しがたいところで、あげてその責任は全部政府にあるのであります。われわれはこの責任を分担することはできないという意味で反対するものであります。(拍手)
○石坂豊一君 私は日本民主党側の総意に基きまして、ただいま上程されたる三十年度六月分暫定補正予算に関する三案について原案に賛成をいたします。政府与党でございますから、全面的に賛成するわけでありますが、別に文句も申す必要もないのでありますけれども、(笑声)委員会のメンバーといたしまして、われわれは批評の位置に立って申し上げなければならぬ必要も感ずるのであります。 さてその理由の第一は、三十年度本予算は御承知のごとく目下衆議院において審議中であります。本月中に通過の見込みが立っておりません。従って六月分の国家予算がこのままにしておきますと空白となるおそれがあります。よってとりあえず六月分の暫定補正の必要が刻々に迫っておるのでありまして、この暫定予算の成立は国民のひとしく切望しておるところと思いますから、第一にこの案には賛成しなければならぬと思うのであります。 第二には、この暫定予算の一般会計歳出千二百八十九億の内訳及び特別会計等の費目を検討してみまするに、所管別及び経費別はすこぶる緩急よろしきを得て、政府が国民生活安定のためにとりあえず、よほど念には念を入れて御編成なさったものということがうかがわれるのであります。その主なるものを拾ってみますのに、まず一般会計予算については、さきに議決したる四月、五月の分の予算と異りまして、三十年度の本予算を基礎として諸般の経費につき六月中に支出または支出負担を必要とする額を計上しておりますために、総額一兆の平均月割額は八百八十億となるのでありますが、はるかにその上をこしておるのであり標す。しかしながら一面人件費のごときものは経常費としてぎりぎり決着一カ月分をみておるのでありますが、また一面人件費において六月に給与する職員の特別手当は〇・七五月分を合算して計上しております。 次に補助費については、大体すでに四月、五月分と合せまして第一四半期の所要額を全部今月にやり得るように取り扱ってあります。また公共事業費、食糧増産対策事業費は四月、五月分と合せて年額の三分の一程度となるようになっております。さらにまた北海道その他積雪寒冷地帯の事業費及び災害復旧費については、四月、五月分の暫定額と合せて年額の二分の一、三カ月においてすでに二分の一程度のものを目途としてこの予算の合計三百六十六億を計上しておるのであります。かくのごときは国民生活安定のために最も注意を要する、また関心を寄せられた編成の仕方と考えるのであります。そもそも第一四半期というのは、一年度の大切なる事始めの時期でありまして、また前年度来からの継続事業の竣工時期でもあります。ゆえに月別額に拘泥することはもちろんできないのであります。この辺の事情をしんしゃくして、まことに適当なる予算の計上の仕方と考えるのであります。 次に一言地方財政に触れなければならぬのでありますが、地方財政については、公共事業関係費及び一般の補助費等につき所要額を計上するとともに、地方交付税交付金のうち普通交付税分については年額の四分の一、三百十九億を計上しております。特別会計及び政府関係機関の六月暫定予算については、一般会計並みに所要額を計上してあります。また財政投融資については、資金運用部資金等によって農林公庫には十億、国民、中小企業、住宅の各公庫に対して五億、おのおの五億円を出すことになっておる。また国鉄には三十億、特定道路には二・三億、開拓者資金には二・六億等、合計六十億に及ぶ投資をすることになっております。その地電源会社、地方債等についても原資の状況等を勘案して、必要に応じて資金の配分をすることになっております。かように用意周到に編成されてあり、現内閣が公約に基いて徐徐にこれを実現するように努力を払っておることがうかがえるのであります。一面現下のわが国産業及び経済の各界に及ぼす影響はどうであろうかということを考えますのに、本案審査途上において、同僚諸君が熱心かつ活発に政府との間に質疑応答を重ねられました際において現われました食糧増産対策、その他もろもろの懸念が必ずしも無理ではないと思うのであります。またただいま反対の御意見には大いに敬意を表する次第でありますが、国家内外の状況はわが国にとってきわめて市大であります。よろしく経済財政の根本をつちかい、インフレを防止し、経済の基礎を固くして、もって国際貿易の振興に努むべき最大の局面と考えなければならぬのであります。さればこの際において一兆の限度を固く守って、そうして国の経済の確保を期するということに努めなければならぬのであります。従ってこれの線に沿うために計上された本暫定予算に対しては、文句なしに通過するのほかなしと思うのであります。 以上の見地に基きまして、本暫定予算が一刻も早く成立することを切望するために、各案とも原案に賛成する次第であります。
○委員長(館哲二君) 以上をもちまして討論は終結いたしました。 先ほどの松澤委員の討論中数字を省略されましたが、松澤委員からこの数字を会議録に掲載されたい旨の申し出がありました。掲載することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(館哲二君) 御異議ないものと認めます。 直ちに採決に入ります。昭和三十年度一般会計暫定予算補正(第1号)、同特別会計暫定予算補正(特第1号)、同政府関係機関暫定予算補正(機第1号)、一括して議題に供します。三案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○委員長(館哲二君) 起立多数と認めます。よって三案は可決すべきものと決定いたしました。 なお、本会議における口頭報告の内容、報告書の作成等につきましては、委員長に御一任を願います。 次に賛成の方は順次御署名をお願いいたします。 多数意見者署名 池田宇右衞門 石原幹市郎 西郷吉之助 豊田 雅孝 堀木 鎌三 秋山俊一郎 伊能 芳雄 泉山 三六 植竹 春彦 小野 義夫 田中 啓一 左藤 義詮 佐藤清一郎 西岡 ハル 堀 末治 安井 謙 吉田 萬次 片柳 眞吉 小林 政夫 田村 文吉 中山 福藏 廣瀬 久忠 溝口 三郎 石坂 豊一 深川タマエ 武藤 常介
○委員長(館哲二君) 御署名漏れはありませんか——ないと認めます。 本日はこれにて散会いたします。 午後五時十六分散会