法務委員会 第10号
- 発言数
- 139 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1955/06/28
会議録
○委員長(成瀬幡治君) これより法務委員会を開会いたします。 本日は少年院法の一部を改正する法律案について参考人から御意見を承わることになっておりますが、その前に御報告申し上げます。 本月九日、本委員会の決議をもって要求いたしました逮捕権乱用についての調査のための資料要求に対しまして、二十三日付をもちまして法務大臣からお手元に配付してありますような回答がありました。 第一、 昭和三十年六月初大阪市警察当局が同市東淀川区自動車運転者山下喜久次氏(被害者)の強盗殺人罪被疑者として同市同区南方町橋本良人氏を逮捕した事件は、未だ検察庁に送致されておりませんので、資料を提出致しかねる次第であります。なお、大阪市警察当局においては、引き続き真犯人の発見のための捜査に努力致しております関係上、この際疎明資料等を提出致しますことは、真犯人の確定及び検挙を著しく困難若しくは不可能たらしめる情況にありますので、この点御了察を得たい意向のようであります。 右御了承を願います。 第二、 同月二日警視庁当局が竹中恒三郎氏に同行していた西沢富夫氏を犯人蔵匿罪被疑者として逮捕したのは、現行犯人として逮捕したのでありまして、逮捕状及び逮捕の疎明資料等は作成されていないため、提出することができませんから、御了承を願います。 以上の通りでございます。本件につきましては、次の機会にあらためて御協議願うことにして御了承をお願いいたします。 —————————————
○委員長(成瀬幡治君) 次に、裁判所制度に関する調査の件につきまして、当委員会においては、従来取り上げきたった検察及び裁判の運営等に関する調査の一環として裁判所制度に関する事項について調査を行うため、第二十国会までは裁判所制度に関する小委員会を設けて調査研究をいたして参ったのでありますが、当期国会においては特に小委員会は設けませんが、従前同様の調査大綱、すなわち、 第一、裁判所の機構等について 一、最高裁判所の機構及び権限 二、簡易裁判所の機構及び権限 第二、審級制度について 一、民刑の控訴審の構造 二、民刑の上告審の構造 第三、裁判官の任用制度等(最高裁判所裁判官の国民審査及び裁判官弾劾制度を含めて)について により調査を進めたいと存じます。なおその具体的調査事項につきましては、別紙調査事項案によりいずれの点を問題点として取り上ぐべきか、御検討おきを願います。 —————————————
○委員長(成瀬幡治君) それでは少年院法の一部を改正する法律案を議題に供します。 まず、参考人の方から、直接現場の責任者として、あるいは少年問題を担当しておられる方として腹蔵ない御意見を承わりたいと存じます。 参考人の方には御多忙中にもかかわりませず御出席いただきまして、ありがとうございました。 なお参考人の発言時間は一人大体二十分以内においてお願いをいたします。また参考人に対する質疑は、すべての参考人の意見を聴取いたしました後にお願いすることにいたしたいと存じます。それではまず、東京家庭裁判所判事佐藤信一郎君からお願いいたします。
○参考人(佐藤信一郎君) お指図に従いまして、少年院法の一部を改正する法律案についての、私どもが実務家としての立場から感じた印象並びにささやかな意見を申し述べたいと思います。 この改正案は、それぞれ四つばかりの雑多なことを寄せ集めたような案であると思うのでありますが、これを一見しましたときに、私どものまず感じましたと同時にまた私どもの感覚を刺激いたしましたところのものは、何だか人間を大へん偉く扱う、少年院の対象少年を大へん軽く扱うという気持が底流しておるような感じを受けます。御承知の通りこの受刑者と違いまして、少年院における矯正教育は……。
○委員長(成瀬幡治君) 恐縮ですが、もう少し大きな声で願います。
○参考人(佐藤信一郎君) まあ人を人として認めるところから出発すると思うのであります。特殊な人間として扱うとか、特段の低い立場にあるものだとか、上から望むというような考え方に立って矯正教育が成果を上げることは不可能であろうと思うのであります。人格をつまり低く評価する、あるいは人間を軽く見るというような印象をなぜ与えるかと申しますと、特に私が触れたいと思う点ではないのでありますが、預った金品に対して受け取りを今までは出しておったのを省略をするというようなこと、あるいはまた連戻状についても個別的な特段の工夫を施すべきときに、あるいは令状を発するといいますか、一見耳に入りやすいようであるが、安易なやり方をもって貫こうとするとか、あるいはまた大へんな工夫と努力によってなし遂げつつある少年に対する教育の途上において相当な制約を法文上、案文上設けてありますとはいえ、手錠を使うことを明らかにするとかいう点は、何だかせっかく日本において今まで築き上げてこられたところの矯正教育の一角がくずれるような気持さえいたすのであります。その根底は教育の本義が人を人として扱うことから出発すべきだというのに、それに背馳するがごとき見解がそこに流れているのではないかという例であります。 さような気持を、印象を私たちはこの改正案について感じたのでありますが、それで主として卑見を申し上げる点は、連戻状の関係並びに手錠の関係について申し上げたいと思うのでありますが、この連戻状を今までの少年院法第十四条に連れ戻すことができるというのがすでに権限を認める条文であったと思うのですが、これについて令状方式を用いるということは必ずしも反対するに当らないと私ども思っております。この従来逃走者を連れ戻すことについて警察官の援助を求めていた事例は相当あると思います。そういう場合に警察官において連れ戻しを執行する場合に不便があるばかりでなく、何も文書による明確なる令状もなければ、そこには間違いや弊害が起りやすいと思うのでありますので、警察官による連れ戻しについて、この今度の改正案に盛られた連房状が用いられる、令状が用いられるということは一つの今までの欠点を補うものと考えまして、私どもはこれは適当な考え方であろうかと思うのであります。しかしながら翻って考えますというと、この矯正教育は簡単に申せば、個別処遇の徹底によって初めて効果を上げ得ると思うのであります。少年院の処遇においてはあるいは分類処遇の徹底、あるいはそれに相並んで個別処遇を徹底する。一人々々についてあるいは適当な工夫を加える、あるいは一人々々について抱いておる悩みに耳を傾けてやるという、一人々々についての苦心と努力がなければ、個々具体的に妥当した工夫と努力がなければ、矯正教育などというものは成果を上げ得るものではないと思うのであります。それと一つ加えて考えますことは、逃走した場合の姿は一体どういう状態と見ていいのであろうか。私はこの場合受刑者などの因人の逃走とは全然性格の違ったものであると考えるのであります。逃走しておる状態も、それからこれを連れ戻すことも、院内における教育なり処遇の延長であると私どもは思うのであります。そうであるならば、院内において個別処遇をする、それぞれに具体的妥当な取扱いをするということは院内処遇、院内教育の延長である、離脱者を連れ戻すにおいてもその努力と工夫がなされなければならぬと思うのであります。しかるに原案は、あらゆる場合に四十八時間を経過した後にはどうしても連戻状がなければ連れ戻しができないようにするように見受けられるのでありますが、これなどはこの院内離脱者の状態が囚人の逃走とは違う、あるいはまたその離脱者を連れ戻すことについては、院内における個別処遇につり合った工夫と努力が傾けられなければならぬなどということの考え方を、いかなる場合も連戻状を使用するということは、そろいう工夫の処置を余地なからしめる結果になると思うのであります。もとよりこれは任意で帰る場合を対象としてはおらないと思います。しかしながら少年院を離脱したものが帰る場合、任意で帰るなどということはまさに稀なことであろうと思うのであります。おそらくは家へ帰った者が親の奨めによっていっときじゃ帰ると帰りがけることは多いでありましょう。しかしながら帰るまでの道順というものは相当の距離がある場合が多いのであります。帰ろうと家を出たときから最後まで、少年院の門を入るまで一貫して任意である場合などというものはまことに期待しがたいものであろうと思うのであります。そうでありますから、大体連れ戻しについてはもう法律的に考えますれば、常に強制の連れ戻しを考えなければならぬと思います。その強制の連れ戻しには令状を用いることは適当でない、連戻しを制御する意味において人権を守るゆえんだとは考えやすいのでありますが、私は思うのにさように適当でない連戻しの請求を退けることの後悔よりも、この条文ができましたならばすべての連戻しをする場合に強制的な方式、やり方がとられる、おそらくは少年院の職員が院長の命を受けて連戻しに行く際には、常にまず連戻令状を請求して携えることであろうと思います。そういうことになろうと思うのであります。初めその院所在の場所から少年院まで戻るまで一貫して任意などということは普通期待しがたいことでありますから、あらゆる場合に令状を用いるという結果に陥ることは見やすいことであろうと思うのであります。それに加えてあとの条文に適用しております令状を使うというようなこと、これもまた逃走したことのある少年に対してならば、一応抽象的には手錠を使うことは合理化される、正当化されることはまた実務上見やすいことであろうと思います。そういうことになりますと、すべての場合に令状を用いる、手錠を用いる結果に陥ると思います。かような結果に陥りますならば、まさに院内においていかなる工夫をし、いかなる努力をしても、それは逃走という場合に、逃走した場合に施した職員からの取扱いによって、せっかくの日ごろの努力は一朝にして水泡に帰することこれまた明瞭であろうと思うのであります。ことに少年院はピンからキリまでと申しますが、全然開放をした施設もあれば、あるいはまた一面においては刑務所にほとんど変らざる施設であるところもあるわけであります。私はこの連房状を全然使うことが適当でないと考えるのではありませんので、そういう相当拘禁性の強い施設に収容しておるような少年、それはきっとそこにふさわしい少年が多くは収容されておると思うのですが、そういうものについては院内の処遇とつり合いがとれないという論は出てこないと思います。おそらくはまた危険性もあり必要性もそこにはあろうと思います。そういう場合には警察官に援助を求めて連房状を活用する、そうして一面開放施設的なところには、御承知の通り極端なものは十四才の少年、少女も収容されておるわけであります。そういう十四才から十五才の少年男女などを連れ戻す際に、そんないかつい方式によらなければならんなどということは、今申し上げましたように院内の処遇における、教育における努力を一朝にして水泡に帰せしめるものである。百日の説法何とやらと申しますが、とにかくこの逃走した状態も囚人とは全然性格の違うものである。逃走中における状態も囚人の逃走とは違うのだ。今申し上げたように開放した施設から離脱するということも相当にあるということを考えなければならないと思います。そういうものを、離脱した者を令状による手錠もまた場合によっては用いるなどということは、あまりにも常識を離れた考え方ではなかろうか、そういうわけで私は連れ戻し可なり、しかしながら必要の限度にこれをとどめるということで人権を守る面においてもその目的を確保することができるし、一面において矯正教育、独特の教育と処遇における努力もこわされないということが期待できるだろうと思います。そういうわけでこの連戻状については、職員が連れ戻す場合は大体少くとも連戻状を用いないでもよろしいのだ、それは職員の能力に信頼を置くのであるという建前が望ましいと思うのであります。 それから連房状を全面的に用いなければならんことになる結果は、いろいろこっけいともいうべき事態に遭遇することを思うのであります。まず一つは少年院の門前などを三日かあるいは四日ばかりそのへんにひそんでおったのが出てきて、歌をうたって踊り歩いても、急速には手がつけられない。あるいは急速に令状を求めるなどということができない結果、手が出せないというようなこっけいなことにすら遭遇すると思うのであります。それから刑務所の離脱者であるならば別に逃走罪で追及されるとかいうようなことがありますから、常識的にもこれは承認できるでありましょうが、十四、五才の子供が、まだ子供が施されなければならない、教育を受けるべき途上にあるものがそれを離脱して表を勝手な格好をして、あるいは勝手な態度をとって歩いてもつかまえることができないなどということは、あまりにも少年院の職員の無力化せしめるものではないかと思うのであります。 それからもう一つ困ることが起ろうと予想いたしますのは、よく逃走者は何か事故を起して裁判所に新しく事件が係属する場合が多いのであります。大体連れ戻されるのは、少年院を離脱しても半月か二十日の間であって、それ以後になりますと、大てい町をさまようて食べるのに困る、寝るのに困るので、多くは何かかっぱらいでもやるというようなことで、東京などではそれが新しく事件として送致されて来るということは珍らしくないのであります。そういう場合にしかしすでにこの保護処分に付して裁判がなされておる。それはなお期間が相当残っておる、なした新らしい事実は、新たにさらに責任を追及するとかいうような必要はないというような場合には、というよりもそういう場合が多いのでありますが、そういう場合にはさらに何らの処分に付することなくして、いわゆる不処分として原院に復帰させる手順を今まではとっておるのであります。ところが今後これがかりに遠隔地の少年院を離脱して東京に流れ込んで来ておるような場合に、あるいは北海道であるとか、あるいは九州であるとかいう場合に連絡が十分にできない結果、それで同時に一面みすみす保護処分に付されておることは明確になっておるにかかわらず、あるいはこれを安易にといいますか、釈放しなければならないという結果にも到達することをおそれるのであります。二、三ヵ月、つい前に教育に付する決定をしておきながら、一旦それにプラスするに、逃走という事案だけで、もうその裁判の執行が、施す道がないなどという成り行きは、実に他の立場からもちょっと納得がいかない気持がいたすのであります。 それからちょっと時間もあれですが、手錠の点については、この説明書というものですか、提案理由の説明の中に、大へん私どもの見解と違った見解を提案当局で持っておるのではないかと思いますので、一言申し上げたいと思うのですが、「第三点としましては、最近の少年院の状況を申し上げますと、在院者には、反社会性の非常に強い者が多いのでありますが、そのため往々にして集団的な逃走や騒擾等が起る場合があるのであります。」ということを言われております。こういうことの対策として手錠の問題、手錠の使用を強化といいますか、あるいは明瞭化しようということのようでありますが、ただ、おそらくは昨年でしたか、あった因旛少年院、特別少年院である印旛少年院の集団逃走事件、あるいは久里浜少年院、これも特別少年院でありますが、久里浜少年院における、続いての集団暴行事件というものが、きっと立案の前提になっているのだろうと思うのですが、この点について私は結論的に申し上げますならば、これらの少年に対する対策として、手錠による圧力の強化をはかるとかいうような方向は大へん見当違いではないかと痛切に思うのであります。何となれば、私の方で当時裁判所の立場としても関心なきを得ませんので、遺憾な七十六名の少年院の逃走者についてどういう犯罪事実、あるいはどういう状況によって少年院に送致されて今日に至ったのであるか、どういう少年があるいは首謀者となり、あるいはこれに追随するような立場をとった、あるいはそれぞれの暴行に加わった少年は、もともとどんな少年であったのか調べましたのでありますが、それによりますと、決してこの集団暴行に首謀者となった者、あるいはこれに相似た立場をとった者の中には、その刑務所へやる必要があったのを少年院へやったのだというような遺憾を感ずような者などは全然見当らないのであります。この首謀者とそれに相似た追随者が十八人あるのでありますが、それらの少年院に送られたときの犯罪事実を見まするというと、犯罪事実に限らないのでありますが、送致されたときの虞犯事実、あるいは犯罪事実を見ますというと、その中に虞犯事件で送られたものが、十八人の中で四名おります。それからそのほかが、刑法犯、窃盗あるいは恐喝、傷害という、刑法上の刑法犯ですが、しかしこれがどういう程度に評価された事件であるか、社会の治安面から考えてもどんな程度に評価されたものであるかということを、ざっとした見当で一番見やすいのは、検察官がつけた意見であろうと思います。その検察官がこれらの十八名の中で刑事処分に付すべきだという意見をつけたのは、水戸からの事件二名、それから前橋からの分一名というわけで、三名でありまして、他の十五名については検察官の意見としてすらそういう刑事処分に付すべきだというような意見には値いしない、あるいは少年院、あるいはしかるべきというようなことで、必ずしも狂暴なものであるとか、あるいは反社会性が大へん顕著であったものというような者がこの集団暴行事件を起したのではないということを、われわれは今後の反省の資料にいたさなければならないとわれわれは覚悟いたしておるのでありますが、どういう点に反省しなければならないかということを差し当って考えましたときには、これはそういうような送られるときの前提条件で犯罪事実が大したものでないということ、あるいはまた犯罪事実なくして虞犯事件であるというようなこと、少年のこの不満がどういう場合に湧き起るかということに相当留意しなければならないのではないかと思います。それらを知ってやはりそれらに対処をするのが、少年院の職員、少年院の教官の責任あるいは職務ではないかと思うのであります。この方向であるいは工夫と努力を傾注することを怠って、手錠をもって抑圧を強化するとか、あるいは方針を強化するというようなことでは、今後の矯正教育において成果をあげるということについて大へん心細い気持がいたすのであります。手錠の問題について、いろいろな批判をなされたと思うのでありますが、私はただ一点これを思いついた前提事実が大へん感違いをしていらっしゃるということを一点申し上げて、私のひとまずの意見を終ることにいたします。
○委員長(成瀬幡治君) ありがとうございました。 —————————————
○委員長(成瀬幡治君) 次に、多摩少年院長の徳武義君にお願いします。
○参考人(徳武義君) 今度の改正案をざっと見ましたときに、私自体も異様な感じが最初したのであります。順序を追うて申し上げなければなりませんが、最初に直観的に感じましたことは、第二のこの逃走したときから四十八時間経過云々という問題と、連れ戻し上の問題であります。その後当局にもその理由をいろいろ承わりました。で私の考えも少し変ってきたのでありますが、まず第一に、この少年院の性格というものはどういうふうに規定したらいいかということが、これが私ども現に現場におります者の実は多年の悩みなのであります。矯正教育の場だということはわかっておりますけれども、一方におきましては最近における高等裁判所の判決にも見られますように、少年院は拘禁施設だというようにも言われております。そういう場合に矯正教育を施すということと、身柄の拘禁ということがどうもときどき衝突するのであります。教育をやるにはできるだけ自由を与える。自由の場において、もちろんこれは放任ではありません。自由の場において教育しなければ、ほんとうの教育はできない。これが拘禁の場ということになると、必然的にそこに逃走という問題も起きますが、そういうことの防止に力を注いでおりますと、教育の場が狭まってくるということが現実なのであります。職員としましては逃走しますと、どうしても職責も感じますので、できるだけ逃走させまいというふうに努力いたしますが、その反面においてはそれだけ教育の方が手薄になってくるということも考えられます。それを私は逃走させないということは、これは少年を再び悪に転落させないゆえんでありますから、逃走させないように努力することはこれは教育愛だ、たとえて申しますと自動車やトラックの往来の激しいところに、うちの小さい子供が飛び出して行きましたときに、なるべくやらないように手を引っぱってでも連れ帰す。子供はそれは意に反することでありますが、そうすることがほんとうに子供の身を守ることでありまするから、そうした場合にはできるだけ手を引っぱって連れてきて家に移すということが一番いいのではないか。少年院における逃走の防止も、単に刑務所で言われるような保安的な角度とはまた別の気持で、少年の逃走の防止に当らなければならない。その防止についても結局同じことでありますが、心がまえが違ってくるわけでございます。 そういう意味で少年の逃走の防止を考えておるわけでありますが、ただ一つ、旧法時代の少年と比べまして、最近の少年の性格はだいぶ重点が移行しつつあるんじゃないかというふうなことを感ずるものであります。と申しますのは、旧法時代におきましては、ここにもございますが、昭和二十七年にわずかに在院者は九百二名であります。ところが最近になりますと、すでに一万をこしております。これはもちろん人為的に少年の年令が引き上ったというふうな問題もありますが、一方では少年院の施設も非常にふえております。終戦当時十二ありましたのが、すでに今は五十六にも及んでおります。絶対数が非常に多くなりました。そういう意味で各地に少年院が非常にふえましたために、あちこちでときどき事故が起ります。事故が起りますと、世間はこれを当然逃走と新聞あたりで大々的に書きますけれども、そういうように評価されますと、少年院としましては、何か重大な失態を犯したような、みずから責任も感じます。最近の傾向としましては、少年院をにぎわしたところの少年たちが社会に逃げますと、かつてはそんなことほとんど私ども経験しなかったのであります。ただ逃げてどこかに姿を隠す、また何かの機会に出てくる、あるいは警官につかまるというだけのことでしたが、最近は逃げますと、必ず近所で相当ないたずらをいたします。中には強盗をやります。私のところでも昨年ですが、六名の少年が逃げまして、近所で居直りまして強盗をやったという事件がありまして、大々的に新聞でたたかれた事例があります。そういうふうに少年の数が非常に多くなりましたために、各種の少年が入ってくる。非常に悪質の少年も入ってくるのです。私のところなんかは別かもしれませんが、特少のごときは相当な少年が入ってくる。そうしますと、私どもは逃走の防止に相当力を注がなければならぬ。一方では教育もやらなくちゃならぬ。こういうふうなジレンマに現在毎日悩んでおる姿なんであります。そして職員の手は非常に少いのでありまして、私こちらに表を持っておりますけれども、私のところを一例にとりましても、少年の数が約九〇%、倍に近くふえましたけれども、職員は逆に三割も減っておるといろのが現状なのであります。こういうことでどうして少年の教育ができるかということを考えますときに、勢いほんとうの理想的に申しまして、教育的に、あるいはまたいわゆる科学的に少年を個別的に処遇していくことがどうしても現状では無理なのであります。でありますから、私どもは、できるだけ逃走させないということが非常に望ましいことですが、あるときは万やむを得ない、好ましいことじゃありませんが、万やむを得ないのであります。ということで、この少年院の現状はそうなのでありますが、その際に職員としてどうするか。乏しい人手でありますけれども、できるだけこの十四条の一項に従いまして、できるだけ早急に少年を院に連れ戻す、これが望ましいことで、また現にやっていることなのであります。ただ今まで不便を感じましたことは、現実の場合としまして、スラム街に、あるいはまたやはり不良仲間の中に少年がとどまっておる。どうしても連れ戻したくっても連れ戻し得ないということがありますが、警察官に依頼しますと、警察官が連れ戻しの権限を与えられていなかったために、今まではどうもうまくいかなかったのですが、今度の改正案によりまして、連れ戻しの権限が警察官に与えられますと、私どもとしては非常にこれは便宜でありまして、ぜひそうありたいものだと思うのであります。 その次でありますが、十四条の二の今度の改正案、これは一見すなおに読みますと、どらも四十八時間経過したならば、私どもには連戻状がなければ、少年院の職員は手出しができないというふうな感じを受けるのであります。先般当局からいろいろ御説明を受けたのでありますが、第一次には一項でできるだけやる。しかし少年が少年院を逃走し、しばらくしましてから、相当時間のたったものを、ただ何の様式行為も用いずにこれを連れ戻すということは、少年の人権の保障という意味からいっても妥当じゃないというふうなお考えも承わっておりますが、この様式行為をもって連れ戻す、ただ私はこれにつきましては、この四十八時間というのが、少年としてはどうかと思うのであります。かりに少年院の職員が連れ戻しできて、連れ戻すようになるにしましても、四十八時間という時間は少し早過ぎるんじゃないか、現実の場合に、第一項でできるだけ処置しまして連れ戻すことにいたしますが、なお現実はいろいろな具体的な場合としましては、四十八時間では短か過ぎる。むしろ一週間なり、あるいは十日なり、こういう期間があっていいのじゃないかと思うのであります。ただこれについて私の個人の意見としましては、これは少年院の職員よりも、むしろこれは警官にこういうような連戻状を与えた方が、それによって連れ戻すことができるようにした方がいいのじゃないか。少年院の職員はこれは言わぬでも職責を感じておりますし、できるだけ連れ戻したいという気持を持っておりますので、現実に連れ戻し得ないような状態になりますれば、常識的に私どもは、あるいは一ヵ月もたってから連れ戻しに行くことはできないのであります。現実にできないのであります。でありますからして、この際には警官にあとはおまかせした方がいいのじゃないかというふうに考えます。 それから十四条の二ですが、逃走、暴行または自殺のおそれある場合に、やむを得ないときは手錠を使用する、これは現在の処遇規則の中には適当な方法と処置ということがうたってありますので、ありのままを申し上げますと、少年院ではやむを得ないときには手錠を非公式に使っておる。非公式というと語弊がありますけれども、やむを得ず使っておる。と申しまするのは、私の方は東京の家庭裁判所の少年がほとんど大半参りますけれども、月に三、四名もしくは五名は、宇都宮、水戸の方面から参ります。実際は相当の遠隔地であります。しかも予算等の都合で職員は一人しか行けないのであります。そうしますと、汽車も非常に混雑した中で、どうしても少年を無事に連れてくるには、やむを得ず手錠を使わざるを得ないのであります。この必要を大いに感ずるのであります。教育的には非常におもしろくない問題でありますけれども、普通の場合にはほとんど使いませんけれども、同行の際には、やむを得ずこれを使っております。と申しますのは、少年と職員とがほんとうに気心が知れるまでには約三ヵ月を要します。お互いに気心がわからない。また少年たちは少年院に入るということは、家庭裁判所の処分でありますけれども、皆意に反して来るわけであります。これは申し上げるまでもないことなんであります。ですから、できるならば、あらゆる機会をつかんで、少年院には行きたくない、少年院に行くのはいやがるのであります。そのいやがる少年を見ず知らずの職員が連れてくるのでありますから、その間にはどうしてもお互いの意思の疎通がつかない。お互いの意思の疎通がつくまでには、相当の時間を要するのであります。そういう意味から申しまして、これは万やむを得ない処置として、むしろ明確にこういう規定を設けた方がいいのじゃないかというふうに考えるものであります。在院中の少年が裁判所に出頭するとか、何か余罪事件等がありまして出頭するとか、またその他、あちこち連れていくことがございますが、そういう際には絶対に使うべきものではない。これはすでに相当な期間がたっておりますので、お互いによくわかっています。ですから少年たちも、お互いに気心のわかった人間は、人情としては手錠を使うことはおもしろくない問題でありますので、むしろこれは同行の際は使ってもいいのじゃないか、ただ逃走の場合は、少年がいやで逃げたのでありますから、どうしてもそれは反抗もいたしますし、また職員に暴行もいたします。またかりにつかまりましても、逃げようともがくのはやむを得ない。その際に数名の職員がその少年のところへ行って、少年を連れ戻すことができればけっこうですが、現実問題としてなかなかそうはいかないのであります。でありますから特殊の場合に限って手錠を使うことも万やむを得ないのじゃないかというふうに私は考えております。 あと、佐藤参考人の方から申されましたが、九条の最初の受領証云々の問題でございますが、これは実際には少年に受領証を渡しておったのでありますが、現実に見ますと、少年は大体在院中にそれを失ってしまいます。失いますと院としては少年たちに疑惑を与えないために、またそれをもう一ぺん預かってやるという二重な手間をいたします。預かりましても、少年としてはあんなものを預かってどうするのだろうというふうな疑惑を持ちますので、現実には預りましたときには少年の母印をあるいは判をとりまして、現に預かったことを確認させましてやっておりますので、これは受領証というものは発行しない方がいいのじゃないか、実際に即応するのであります。ほとんど少年は在院中に失うという場合の方が多いのではないかと思います。その点は信頼されております。また信頼されなければいけないのでありまして、こういう点はむしろこういうふうなきまりきったことをやらない方がお互いの信頼関係を維持する上にいいのじゃないかというふうに考えております。 とりあえず思いついた点だけ申し上げます。
○委員長(成瀬幡治君) ありがとうございました。 —————————————
○委員長(成瀬幡治君) 次に、愛光女子学園長の大平エツさんに御発言をお願いいたします。
○参考人(大平エツ君) 愛光女子学園長の大平エツでございます。 愛光女子学園は女子の中等少年院でございまして、少年院法第二条第三項にうたわれてあります「心身に著しい故障のない、おおむね十六歳以上二十歳未満の者を収容する。」という建前になっておりますところでございます。このたび少年院法の一部改正の問題につきまして、私はっきり内容を承わりましたのは、きわめて最近のことでございまして、自来矯正局当局から詳しい説明を承わりましていろいろ考えてみました。けれども法律の知識も乏しゅうございますし、研究の日時も浅うございますので、ほんとうに意見の一端を申し述べさしていただくのでございます。ことに本日は、私は女子の中等少年院であります。そのほかに女子でも初等少年院あり、特別少年院あり、医療少年院がございます。男子の方はさらにその上に施設も大きく中等少年院でもABに分類され、さらに久里浜少年院のごとき大きな少年院がございますので、私がただいま申し上げさせていただきますことは、収容人員百四十名前後を常に在院いたしております小さい、女子のしかも中等少年院という建前で話を申させていただきたく思います。 少年院法にあります第十四条の条文「在院者が逃走したときは、少年院の職員は、これを連れ戻すことができる。」と現在ございます。私はこの条文に非常に妙味を感じて運営をいたして参っております。と申しますのは、私が昭和十年の十月に当時司法省に少年保護司を拝命いたしまして東京少年審判所に勤務をさせていただきまして自来十四年間同じ一つの仕事をさせていただきました。旧少年法、旧矯正院法の時代を通過いたしまして昭和二十四年一月一日から新らしく発足いたしましたこの新少年法並びに新少年院法、それに伴って家庭裁判所が発足し、収用施設としての少年院が新らしい構想のもとに発足するようになったというこの歴史的な少年保護の転換期にたまたま私も遭遇いたしました一人でございまして、このたび一部の改正ではございますけれども、非常に私現場の者として十四条に妙味を感じておりました一人といたしまして、これは何が原因であったのかしらというふうに考えさせられたのでございます。で同じ旧法の矯正院法にもたしか第十五条にこの連れ戻しの、少年審判所の職員とそれから矯正院の職員が連れ戻しができる条項がございます。私個人の狭い見解から考えますと、法律が全面的に改正をいたされまして、非常に新らしい教育的な、内容、外観ともに教育性を多分に帯びまして、人権の保障と申しますか、かつては愛の法律だと申されておりました少年法、矯正院法も言葉をもっと広くいたしまして、人権の保障に基く新らしい教育的な構想によって作られましたところのこの新少年法、新少年院法、これができますときに、逃走した子供の連れ戻しについて、以前には連れ戻しでなくて逮捕することができるという逮捕という言葉、それが連れ戻しというまことにやわらかい言葉に変っておりますのでございます。しかもそのときも援助の条項が加わっておりましたが、新法におきましても十三条の第二項に、警察官その他児童福祉司に援助を求める項目が入っておりまして、非常に飛躍的に教育的に進歩的にできました法律の中で、ただ保護処分の決定が家庭裁判所に……昔の少年審判所から裁判所に移りましたわけでございますから、家庭裁判所の御処分で今度は行政機構としての収用、執行になるときの場合に、何か変化が起きると思っておりましたが、この連れ戻しの条項が以前よりもまことにやわらかい言葉でうたわれましたことに私はむしろ驚異の思いをいたして参りました一人でございます。自来私微力をもちまして、昭和二十四年の創業から愛光女子学園のお仕事を承わらしていただきまして今日に参りましたわけでございますが、子供の様子を見ておりますと、かつての家庭少年審判所の時代の少女と、新法になりまして、しかも年令が二十才に引き上げられましたことにも、非常に少女たちが悪質になっているであろうと予測されましたことは、まことに如実に現われて参っております。そういう現状におきましても社会悪の中に泥まみれのようにまみれ込んで、心身ともにいためつけられているような少女たちを、百四十名前後の者を常に収用いたしまして現在三十一名の職員をいただいておりますけれども、実際の運営には職員に一方ならぬ苦労をしてもらっておりますほどに、少女自体の生活が実にすさんで悪くなっております。一番問題になっております人身売買、あるいは売春のケース、売春のケースは大体在院者の四%くらい売春とみて差しつかえなく、そのうちに人身売買の被害者もかなりまじっております。こういう実情でそのほかに覚せい剤を並用いたします者、単独の覚せい剤違反で参ります者、いろいろ悪質になって参りますので、従って逃走、なかなか落ちつけない、施設に落ちつくまで少くとも三ヵ月ないし四ヵ月くらいは非常に苦労をいたします。子供自身も苦労いたしますでございましょうけれども、職員自体も非常に苦労をいたしますのでございまして、逃走の機会をねらうものがたくさんございまして、これは私が職員をかばうわけではございませんけれども、非常に職員の熱意、……職員もかなり最初から仕事を共にしております職員も多数ございますおかげで、早く子供たちの気持を知ることができ、またいろいろな悩みや問題を共に生活しておりまして早くつかむことができる。そのおかげで気持が動揺しております者を知ることができるために、未然に事故を防いでいるということが年間にたくさんございます。そういうおかげで統計上に現われます私の施設の逃走件数は非常に少いのでございます。少いことをもって私は申し上げるわけではございませんが、事実はたまたまどなたがお聞き下さってもとうてい施設に落ちつくことの方がむしろ不思議のように思える、外の生活方法をしてきておりました子供たちでございますにかかわらず、比較的事故が少くて済んでいるということには、しかも私のところの施設はほとんど開放でございます。外塀のバリケード、塀の方に一尺五寸くらいのバリケードをつけましたことのほかは、窓に何ら格子を張っておりません開放の施設でございますが、この中で処遇をいたしますことは、限られた職員で非常に心労をいたしますけれども、幸いにしてそうしたなれた職員が非常な熱意をもって深夜勤務にまで当っております。そういう職員の熱意というものも十分に買わなければならない。私はむしろ平素職員の方に感謝しながら仕事をさせていただいております実情でございます。それで少年院法の十四条に、少年院の職員は子供が逃走した場合に連れ戻すことができる、これは見方によりましては職員が非常に苦労いたしますのでございますけれども、少年院の職員が信頼されているということにも私はとれる、解釈をいたしました。少年院の職員に与えられました権限がもう一つ二つございますけれども、逃走者を連れ戻すことができるということは、最もこの少年院法の中における少年院の職員に与えられた特権ではないか、私はそんなに思いまして職員の指揮、監督に当りまして、少年保護の意味をよく理解をしてもらって仕事をいたしております。ときには子供たちが逃げまして、遊廓に入り込みましたり、浅草の危険な国際マーケットの中に入り込みましたり、新宿のやみ屋のあるいはヒロポン宿のボスの家にかくまわれましたり、いろいろなことがございます。そのときに結局職員は何とかして、もちろん自分の職責を感じることは公務員でございますから、当然職責を感じなければならないのでございますが、さらに子供がそういうところに入って、せっかく自分たちが深夜勤務までして、夜の目も寝ないで矯正教育を施して参りましたその途上において、そういう外にまた出るような失策をいたしましたときに、責任と同時に、いっときも早く子供を探して早く連れ戻してやらなければいられないという、これは私が言葉を巧みに申しますのでなくて、私ども非常に職員に恵まれておりまして、そうした熱心な愛情をもって子供に接する職員が全部でございますから、私はむしろ陰へ職員が入って閉されてしまって出られないような二重戸、三重戸になっておるようなそういう場所のところでございますから、非常に心配をいたしますけれども、そういうときに必ず警察官の援助を求めることを、この十三条の第二項を活用することを申しております。援助を求めることは事故が起りますと、そういう意味ですぐにとにかく子供を一刻も早く手配して一刻も早く連れ戻したい気持の方が先に走りますものでございますから、すぐに調布の警察へ電話をいたしまして、そうして夜中でも走って行きまして実情を話しまして多分こういう方向へ行くだろうから、早く手配をしていただきたい、同時に夜が夜中でも、職員が自転車に乗り、自動車を引き回しまして、あるいは徒歩で探し回っております。これはまあほんとうに実情でございまして、女子の職員と申しましても、そんなに見る目も痛々しい、何か済まないような気持がいたしますほどに職務を遂行してくれますので、警察当局も、私どものただいままでの経験では十三条の二項の活用によりましてどこの警察に行きましても、地元だけでなく浅草に行きましても、新宿に行きましても、上野に行きましても、地方に行きましも、非常に善意をもって援助して下さいます。そういう意味から私の少年院の場合は現に今までございましたものを活用をして今後もいけるのではないかということを私は考えております。先ほどからくれぐれも申しますように、私のような中等の女子の少年院に限ったこれは見解でございまして、まだ女子でも特少、医療、初等という少年院がございますが、そういう施設の長の見解があると存じますので、私がそれを申し上げるのは非常に僭越だと存じますので、そういう意味でお開き取り願いたいと思います。この項目につきましては旧法の時代から幾たびか警察官がせっかくその努力をして動いてもらいますときに、何にも法律的な裏づけがないということで、常にやはり少年審判所の時代から問題になっておりましたことを私思い出しました。これは法律が改正されますときに、むしろ何かもう少しむずかしい方法が出るのではないかと思っておりましたところが、ちっともむずかしくなく、しかも令状も持たず、期限も限らずに少年院の職員が連れ戻すことができるという十四条ができましたことには、私は非常に何か意味があったのではないかと、浅い法律の知識をもちましてそのように解釈をいたしております。ただ、これが先般矯正局の方から御説明を承わりまして、任意連れ戻しではなくて強制連れ戻しの場合にうたわれた条項であるということを、私浅学にして初めて承わったのでございますが、よく考えてみますれば当然でございまして、そもそも家庭裁判所の強制措置による処分でございますから、任意連れ戻しということはむしろ考える方がしろうとでございまして、強制措置であるということは、意味をよく了承いたしました結果、先日来、数日いろいろ考えてみましたけれども、私の愛光女子学園も私が承わっております範囲におきまして、ただいまはこんな気持でございますということをお含みいただければ幸いと存じます。 なお、手錠の問題でございますが、これも年々少年院長の会同にいつも出ます。それは、いつも特別少年院のように、あるいは中等でも男子の少年院の場合、力で参られますと、とうてい私どもの方ではどうにもならないということをお察しを申し上げることでありますが、少年院長会同のときには、これも少年院処遇規則の七十六条にうたわれております「適当な措置」ということで、なかなかパスしなかったのでございます。実現いたしませんでした。それは実現するのじゃないかと年々思っておりましたが、やはり十分御当局で御研究を遊ばされまして、ついに手錠のことが実現いたしませんで、今日に及んでおります。私の施設では、今まで手錠を一個も持っておりませんし、手錠を使ったこともございませんで、ずいぶんあばれられましたり、職員が首を締められましたこともございましたり、いろいろなことが今までやはり起っておりますけれども、ついに手錠を今まで一つも持っておりません。そんなふうにいたしまして、これは非常に職員が努力をし、熱意と愛情をもってやってくれたおかげだと思っております。私はいつも全くの不遇な子供を、泥んこのように泥まみれに心身ともになった子供を、何とか清め、何とか幸福に、心身ともに社会生活に適応する子供に育ててあげなければ、お国に役に立つようにしなければ申しわけない責任を持っておりますことを、職員にも常に話をいたしておりますので、また職員もよく趣旨をくんでくれまして、職員が今まで暴行するということもなく、何もかにもなくて今日まで参りましたけれども、これも女子の中等少年院という建前からでございまして、全般的にこれが果してよいかどうか、これはよく御研究、御検討の結果、自然に問題が解決をされるのではないかと、そのように考えております。 未熟な意見でございますけれども、一応意見を述べさしていただきました。
○委員長(成瀬幡治君) ありがとうございました。 —————————————
○委員長(成瀬幡治君) 次に、久年浜少年院長の小川洋君にお願いいたします。
○参考人(小川洋君) 結論を先に申し上げますと、この法律案の案の通り、改正方御可決願うように久里浜の院長としては切望をいたしております。理由を簡単に申し上げます。 昔の少年院あるいは矯正院から現在の改正された年令引上げ後、特別少年、医療少年の加えられた現在の少年院に発展したわけでありますが、その根本を貫ぬく愛の精神で教育をしなければならないということは、現在もみじんも変化がないと思います。しかし、少年院という字の示す内容、中にどういう少年が入っておるかという実情は、ここ三、四年の間にはっきりと変ったという事実を認識すべきであると思うのであります。第一に、二十九年末現在の法務省の統計を見ますと、少年院におります少年が一万六百四人であります。そのうち二十才以上の者、これが六千三百九十人、約六千四百人であります。十六才以上十九才未満というのは四千三百人で六割近い者が実は二十才以上なんであります。これは年令引き上げ後著るしく変った大きい点だと思うのであります。それから別の表、ただいまいただきました矯正局の三十年五月二十日の法律案の参考資料を拝見いたしますと、少年受刑者が、昭和二十一年を一〇〇とすることに対して、三〇に激減いたしております。少年院の在院者の方は、同年二十一年を一〇〇としまして、二十九年には一千百七十七、十一倍にふえておるのであります。これはかつて少年刑務所に入るべきような行為をした、あるいはそういう素質を持った者が少年院の方に振りかわってきたということが推定できると思うのであります。現実に久里浜少年院の本日現在の在院者の行為別を調べてみますと、窃盗が二百六名、強盗二十九名、覚せい剤取締法違反二十名、詐欺十三名、傷害十一名、恐喝十一名、住居侵入十名、強姦九名、放火四名、殺人一名、窃盗を除きました強盗、詐欺、傷害、恐喝、住居侵入、強姦、放火、殺人、こういったいわゆる凶悪な犯罪行為を犯したといわれるものが、三百七十九名のうち百二十九名に達するのであります。そこで少年院といっても、先ほどの参考人の方から話がありましたように、非常に幅が広い、初等少年院から特別少年院まで、年令的にもあるいはその素質においても、やった行為についても非常に幅が広いのでありますが、少くとも半数近く年令の高い者が少年院に入っておるということ、それから刑法犯としても相当重い行為をやった者が少年院におるということ、この事実をまずわれわれは率直に認めなければならないと思うのであります。 そこで、少年院は、もちろん強制教育の場所でありますが、もう一つ要求されていることは、社会の安寧を保つための拘禁施設でもあるということであります。私たちが少年院から逃走者を出すことは、まことに国民の皆さんに対して申しわけないことであります。そしてこれは一刻も早く復院させなければならない。その復院の方法は、何といっても、第一に、本人を説得し、任意出頭というか、任意で、本人の気持ちで院に帰ってくるということに全力を尽すべきであることはもちろんであります。しかし、それに応じない場合、応ずるというよりも、居どころがわからないという場合が多いのでありますが、そういう場合に、限られた職員で、たとえば久里浜の少年院の場合は、非常に遠くから来ております。北海道からきておる者もあるし、東北からもあるいは九州からもきておる、こういうところへその親元へ多分行くだろうとは思いながらも、限られた職員の中からそういうところにまで行って説得をするには職員の手が足りない。そういうことにばかり専念すると、残った大多数の少年の教育がおろそかになってしまうという場合もあるのであります。そういうときに、全国的な組織を持ち、そういう迷った少年を探すのに、少年院の職員よりももっと勘のいい、あるいは能力のある警察官に連れ戻しに協力していただくということは、これは絶対必要な場合があるのであります。第一は説得して任意出頭させる、任意に帰院させる、これはもちろんでありますが、やむを得ない場合には、少年院の教官以外に警察官の協力を求めて、一日も早く少年院に帰るように協力してもらうことが必要である。その連れ戻すということでありますが、これは処罰するために連れ戻すわけじゃありません。あくまで本来の保護を受けている保護の姿に帰す、本人が、少年が間違った道を踏む前に、予防措置として早く本人を、少年を保護の姿に帰すということでありまして、連れてきてから処罰するというために、いわゆる受刑者の逃走、逃亡者をつかまえてくる、そうして逃走罪をもってこれを問うというためにやることではなくて、連れ戻すことは、保護のために連れ戻して本来の保護の姿に帰す、本人が間違いを起さないように一刻も早く連れ戻すということでありまして、それはその職員はもちろんのこと、警察官もこれは協力していただくということは絶対に必要であります。 もう一つ先ほど申し上げましたように現在の少年院におりますところの者がどういうことをやって来た少年かという点から見まして、社会の不安が起るのであります。社会不安を早く除去するという点からも、これは保安の面でありますが、社会不安の面からも少年が間違いを起さない前に早く連れ戻すさなければならない、それには少年院の職員の手では足りない、距離的にも広範囲にわたる、人数も先ほど徳参考人からお話しいたしましたように、少年の数に比較して職員の数が足らない、そういう職員の手だけではこの本人を間違った道から早く帰すこと、社会の不安を一刻も早く除くこと、この二つの目的が達せられない。従って警察官に協力をはっきりと求め得る根拠を作っていただきたい。そのためには十四条をこういう法律案のように改正していただければ、われわれ特別少年を扱っております第一線の少年院の職員としては、大へん仕事がやりよいのであります。 もう一つは、かねがねそう思っていたのでありますが、全然別な場合を考えますと、少年院からいなくなった、逃走をしてそうして半年か一年か、とにかく本人はまだ少年であるが、見つからないで連れ戻せないうちに、りっぱにどこかの会社に勤め、夜は夜学に行って日曜日には教会に行ってお祈りをしておる。こういう社会にはっきりと順応できた生活をしておる少年院からの逃走少年があった場合、これまでの十四条でいきますと、少年院の職員はいつでも連れ戻すことができるのであります。この少年院の職員というのはその逃走した少年院の職員だけではないと思います。全国のどこの少年院に勤めておる職員でも連れ戻すことができるのであります。そうなるとそういう社会にすっかり順応しておるのに、今さら少年院に連れ戻して矯正教育を施す必要はないと思われる現状にある少年をも、あるいはよその職員がおせっかいといいますか、少年院の職員だから、これはどこどこ少年院の逃走者ということがわかったときに連れ戻してしまう、これは本人の将来、一生に対して非常に暗い行為をすることになるわけであります。この改正案の通りでありまするならば、少年院の長が請求しなければ連戻状が出ないから、そういうことは起り得ないと思うのであります。少くとも任意で帰るように勧める、あらゆる努力をする、これは第一義でありますが、第二にどうしても本人の居どころもわからない。まごまごしていると、また何か悪いことをしてしまうというような少年を連れ戻す場合、どこにいるかわからないものを連れ戻す、しかも警察官に応援をお願いする場合に、何の令状もなしに引っぱって来るということは、逆に言えば、人権尊重の面から非常にまずいのではないか、人権尊重の上からもこの十四条は法律案のように改正していただいた方が当然ではないかというふうにも考えるのであります。 時間がありませんので手錠の問題でございます。この久里浜の少年院の恥かしい実状を数字で申し上げます。二十九年の一月から今年三十年の五月までの間に自殺未遂七件、自傷行為、自分を傷つける行為です。自傷行為三十九件、傷害、この傷害はガラスや刃物で仲間同士、少年同士で傷つけ合ったことでありますが、傷害十六件、少年間の暴行及び教官に対する暴行を含めまして四十四件自殺、自傷行為、傷害、暴行等の総件数約一年五ヵ月の間に百六件に及んでおるのであります。この自殺をしようとした、自殺未遂に終った、あるいは自傷、自分の身体を傷つけるというような場合、こういうときにどうやったらば本人の自殺を防げるか、あるいは友だちを傷つけずに済むか、傷つけさせずに済むかということは、特別少年院の職員の人が苦労しておるところであります。どうやったらこれを防げるか、もう興奮状態に至っておって半気違いというか、気違い以上の姿である。愛情の言葉も、愛情の気持も受け入れる余裕のない興奮状態にあるとき、これをどうやって本人または本人のそばにおる少年を救うか、大へん苦労しておる点でありますが、いろいろとこれまでの人間が考えたうちで、やはり意思能力がない、考える力がなくなった場合の興奮状態を静めるのには、手錠というものが一番安全であると思われるのであります。いわゆる保護具としての手錠、これは本人が自殺しようとしても非常にしにくい。人を傷つけようとしても傷つけがたい、そうして本人を守り落ちつかせる時間をかせぐには、やはりひもでくくったり、注射をして静めるとか、いろいろ何かほかに方法はあるかもしれませんが、やはり長年の体験によって手錠が一番そういう目的を達するのには都合がいいんじゃないかと思われるのであります。ところで現場の少年院の職員はこういう手錠を使いたいのでありますが、法律に根拠がないために使うことができない。こんなに便利なものが、本人を守るりっぱなものができておるのに、これを使う権限がはっきりしていない。そのために使っていいかと言っても、日本人のだれもが、監督官庁のどなたも使ってよろしいということをはっきり言えない。しかしひもや何かでしばるよりは手錠が安全なのでありますから、実際上は使っておる例があると思うのであります。こういう手錠についての現場の苦労をお察し下さいまして、はっきりとこういう場合には最小限であるが、使ってよろしいぞ、しかし使う場合には慎重を期せよ、これこれこういう場合には使ってはいけない、手錠が乱用されないようにこういう保管の仕方をしろという、はっきりした監督官庁のそれに対する心得、取扱いに対する注意ができるその根拠を作っていただいて、そしてはっきりとした立場で取扱い上間違いのないように、保護の目的を逸脱しないように使う権限を与え、教えてやる。それでこそ本当にはっきりとした保護具として使える。手錠も皮手錠も使いようによっては人権じゅうりんとなるのでありましょうが、使いようによっては、これは人を助けるりっぱな道具であります。少年院に対しては、もちろんりっぱな保護具として役立つように使え、ただし乱用は厳に禁止するというはっきりした命令を下す根拠を法律上に作っていただく。このことがこれまで特別少年院長が集まったときに、たれ一人反対なく、それを立法化していただきたいものであるということを申し合せ、あるいは話し合っていたところであります。もちろんこの手錠の使い方については、あくまで少年院が何ものであるかということと、その使うべき相手に対してなぜ使うのかということについては、十分融通がきかないほどにはっきりと規定して、それは法務省令できめるでありましょうが、この使い方をはっきりと示して、根拠のある手錠の使い方をするならば、決して弊害にならない。手錠を使いたいからこういう法律を改正してくれということではないのでありまして、あくまで使わなければならないときに使う権限を与えておく、しかしできるだけ使わないように監督を厳にする、そのために法律上の根拠を与えていただくということを、私たち現場の少年院の職員としましては、切にお願しているところであります。 なお、最後に、久里浜の少年院長は刑務所長をやっていたから、人情味のない手錠とか逮捕とかいうようなことに賛成したんじゃないかという誤解をされては残念でありますから、私の立場を最後につけ加えさしていただきます。私は命によりまして、山口県に塀のない刑務所を作れと言って作り、四年半にわたって少年受刑者を塀のない所で教育をしたことのある刑務所長であります。そして、同時に少年刑務所に付設されました改正後の特例少年院の一部の少年を、少年受刑者と隣り合せて私の手で同時に教育を仰せつかった体験を持っております。その体験から考えますと、かつて少年刑務所に送られてきた少年たちと、当時性別少年院に送られてきた少年たちと比較してみますと、これは私個人の意見ではありません。こういう体験を持った私と一緒に働いていた職員の九九%の意見の一致しましたところは、少年受刑者よりも特別少年の方が教育がむずかしい。むずかしい理由はどこにあるかというと、質において、あるいは毎日の反省をする度合において、少年受刑者の方は話せばわかる者が多いのに、特別少年の方は話しもわからない者がパーセントが非常に多い。そのために少年受刑者よりも非常に教育が困難であるという、大へん短かい一年ばかりの経験でありましたが、そういうことを痛感しておるものであります。決して私は少年院における少年たちを令状でつかまえてきて処罰するとか、あるいはあばれるのを手錠でおどかして静めさせるとか、そういうためにこの法律案を御可決願いたいと言っているのではないのでありまして、私たち少年院に勤める者は、たれ一人として少年に対して愛情を持たない者はありません。その愛情が届くときと届かない興奮状態にあるときとがあるわけであります。そういう場合に、教育の範囲内から逸脱する少年を逸脱させずに保護の状態下におくというために、十四条の法律案のような改正をすみやかに御可決あらんことを、少年院の職員として、現場の一員として希望しておる次第であります。
○委員長(成瀬幡治君) ありがとうございました。 —————————————
○委員長(成瀬幡治君) 以上をもちまして参考人の意見開陳は終了したわけでございますが、参考人に対し御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
○宮城タマヨ君 初めに意見をお述べ下さいました佐藤判事も、この少年院法の精神を非常によく理解していらっしゃる、その判事であればこそ、法律の解釈問題や少年の処遇問題、それから制度の問題についていろいろ伺いたいのでございますが、それはあと回しにいたしまして、三人の少年院長に小さい問題ばかりのようなことでございますがお伺いいたします。最初に徳院長にお伺いいたしたいのでございますが、それは教育の場面である少年院がだんだん拘禁施設を必要としているので、少年の取扱いが非常にむずかしくなったというお話しでございましたが、それは年令の引き上げ、その他少年の質に関して、だんだん拘禁しなければならないというようになっていくという御説明だったのでありましょうか、そこをはっきりしていただきたいと思います。
○参考人(徳武義君) 御質問の通りでございまして、だんだん量がふえましたし、質的に変化がありますので、まあ法律的の形式から申しますと、拘禁施設だというふうに解釈されておりますし、実際またその必要が生じておるのであります。先ほど申し上げました通りに、出ますれば相当な被害を社会に与えますので、勢いそういうふうに私どもは解釈しております。
○宮城タマヨ君 少年法には、保護処分と刑事処分とが両方ございますが、この拘禁施設に拘禁しなければならないというような少年は、一体保護の対象にならないものとお考えにならないでしょうか、その点をお伺いしたいと思います。
○参考人(徳武義君) これは拘禁というのは、少年によりまして、先ほどもいろいろお話がございましたが、全然開放のところと、保護のためにやむを得ずある程度の拘束の用意をしたところがございますが、私は拘束をしましても、決してそれが教育にならないとは考えておりません。その範囲で教育はできる。少年たちの出ましてからの後の感想を聞きましても、初めは窮屈だった、しかしながらだんだんなれてもくるし、また自分たちが簡単に飛び出していくようなことになりますと、今時分こんな社会復帰はできていなかったろう、あのとき物的施設だったけれども、やむを得ず不自由な目をしておったが、それが現在自分がほんとうに社会に復帰するようになったゆえんだと述懐する少年も決して少なくはないのであります。ですからそれは一つの手段であって、技術でありまして、開放するような少年を入れるところは開放してもよろしいと思いますし、またそうでなく、相当凶暴その他の天性を持った少年であれば、技術的手段としても、私は拘束施設をしてもいいんじゃないかというふうに考えております。
○宮城タマヨ君 その拘束するという実際でございますね、多摩少年院は日本でも一番初めにできた少年院でございますだけに、あそこの施設は私は非常に興味を持っているのでございますけれども、ただ部屋に、あるいは寮に錠前をかけて、その寮からは自由に出られないようにしておりますというその意味の拘禁でございましょうか。あるいは先ほど小川院長がおっしゃったような、困ってただ手錠をはめなければならない、あるいはそれに類似したようなことを今までやっていらっしゃるのかどうか。その点を明らかにしていただきいと思います。
○参考人(徳武義君) そうではございません。これはあとの段階でお話し下さったような意味でなくして、あくまでも中ではできるだけ自由は大幅に与えたいという意図を持ちながらのことでございます。別に法律上拘禁施設であるという解釈から、無理に何らそういうことをしているという意味じゃございません。
○宮城タマヨ君 そうすると、私が承知しておりますように、つまり寮からは自由に出入りがならないようなことになっておるという程度の拘禁施設の意味でございますか。
○参考人(徳武義君) その程度でございます。
○宮城タマヨ君 それでは、先ほど院長はこの点にはお触れにならなかったようでございますが、今度の十四条の二に「在院者が逃走、暴行又は自殺をするおそれがある場合において、これを防止するためやむを得ないときは、手錠を使用することができる。」院内においてこういった場合にやはり手錠をはめなければならないとお考えになったことがございますか、どうでしょうか。
○参考人(徳武義君) ございます。それは実例を申し上げますと、ヒロポンの後遺症がまだ残っておりまして、入院早々非常な暴行をして、ガラスを六十枚割った実例の少年がございます。のみならず、その辺の部屋のドアをこわしますし、それから他の少年にも非常に危害が及びまして、数名の職員でそれを取り押えて何とか鎮静させようといたしましたが、いかんともしがたい。やむを得ず万策尽きまして手錠を使ったことがございます。これは本人のため、また他の少年たちを保護するためにやむを得ない処置として使いました。
○宮城タマヨ君 そういう場合に考査室は役に立ちませんか。
○参考人(徳武義君) 考査室は現にその後にできたことなんですが、考査室を用いましても、考査室まで連れていく間が非常に大へんなんです。場所が離れておりますし、ある寮で起りますと、考査室までは相当な距離もございますので、考査室に入れてしまいますと、その用は現在ではないわけなんでありますが、これはその当時はもちろんございました。現在ではないわけですが、考査室に連れて行く途中でも相当な危険が感じられます。
○宮城タマヨ君 まあ今度手錠をはめてもいいという法律ができれば、それはまかなえましょうが、今まではどうしていらっしゃいましたか。今手錠というものは院にございませんね。
○参考人(徳武義君) ございません。
○宮城タマヨ君 おはめになったことはございませんね。
○参考人(徳武義君) これはまあありのままを申し上げますが、職員が個人的に持っておったのがありまして、非常に危険な際に一度使ったことがございます。さっき申し上げましたヒロポンの場合ですね。
○宮城タマヨ君 一ぺんだけですか。
○参考人(徳武義君) 一ぺんだけ使いました。
○宮城タマヨ君 しかし今までまかなわれておりましたものが、あの中で広いといっても、そんなに何町もあるわけじゃございませんでしょう。考査室に連れて行くだけの間の手錠は必要でございましょうか。
○参考人(徳武義君) 私どもはそのときは必要だと認めました。どうしてもそうせざるを得ないと思いました。
○宮城タマヨ君 今まで長い間たった一ぺんだけお使いになった手錠でございますが、しかしやはり必要でございますか。
○参考人(徳武義君) 私は今までの経験からいたしまして必要だと思っております。
○宮城タマヨ君 どうぞこれは子供にとって大事な法律ですから、どっちでもほんとうのことをどうぞおっしゃっていただきたいと思っているのです。先ほどのお話しのときは、私はこういうふうに伺いました。今まで暴行の際は手錠を使っておった。それも三ヵ月ぐらいの間、まあ職員と子供とがなじまない、理解のできない間は手錠を使っておったというふうに伺ったのですが、それはどうなんですか。
○参考人(徳武義君) 先ほど御質問の、院内での暴行等の問題につきまして、院で使いましたのは、私が参りましてからはその一件なんでありますが、これもありのままを申し上げますと遠隔地に少年を連れにいく場合ですね、少年を連れに参ります場合には、これは現に使いました。
○宮城タマヨ君 その手錠はないと先ほどおっしゃって、職員が持っているのがありましたとおっしゃったのですが、それはどういうわけなんですか。
○藤原道子君 参考人の方が何か遠慮しておられるのか、どうもほんとうのことを言っておいでにならないように思うのです。どうぞ大事な法律の審議でございますから、そのものずばりでお答えを願うよう御注意を願いたい。
○委員長(成瀬幡治君) ただいま藤原委員からの御発言がございましたように、遠慮なく、一つ腹蔵なく御意見の御開陳をお願いいたします。
○参考人(徳武義君) 私ども決して遠慮を申し上げておりません。先ほどからありのままに申し上げておりますが、実は法律的な根拠がございませんので、予算的に手錠を買うわけにいかないのであります。で、私どもは手錠を現実にこれは買えないわけなんであります。ただ職員がたまたま持っておりましたものを必要の際にやむを得ず貸してもらっておるということなんであります。ですからこれを使う場合が、この間さっきの暴行の場合に使いましたけれども、院内ではこれを使わないという方針をとっております。ただあばれたときは使いました。ただ鑑別所に連れていったりするような場合には、これは内密といってははなはだいけないのでありますけれども、適当な処置として、これを私は黙認した形なんであります。
○宮城タマヨ君 それはまことに聞き捨てならぬ問題だと思います。法律的にも根拠がない。手錠を今まで使ったということは法律上も根拠がない。そうして根拠がございませんから院に備えたものがないというものを、職員がわが物として持っておる手錠というものを、院長がそれを黙認してあるときに借りるというのは、一体どういうわけなんですか。それは私は聞き捨てならぬ問題だと思います。
○参考人(徳武義君) これは私の独断で、違法かもしれませんけれども、少年を逃がすということ、あるいはまた汽車の中から飛び下りて非常に危険があるという場合にだけ、そういう事態が生じた場合には、そういうことが予測されるときには、少年院処遇規則のあれを私が全責任で解釈するわけでございますけれども、万やむを得ないか、一つそういう際は少年の保護のために使え、こういうふうに申したわけであります。
○藤原道子君 ちょっと関連して。万やむを得ずにいたしましても、どうしてもそういうものがなければ輸送その他に危険だという場合の手錠ならば、職員がたまたま持っているものを借りるということじゃなくて、それは堂々とやはり要求なさってやるべきじゃないでしょうか。私は今まで法にも出ない、手錠の備えもない、それでも相当使っておいでになったということを耳にしておるのです。それをここにこうして公然と手錠ということが出るところによけい不安を感ずる。今までの参考人の御意見を聞いていても、これがあった方が便利だ、こんなに便利なものがあるのになんという言葉が出るので、非常に不安を感じております。それはさておきまして、宮城委員の質問中でございますからあれでございますが、ほんとうに職員がたまたま持っておいでになったものをお借りになって使っておいでになったのですか、輸送その他にも借りて使っておいでになったのですか、その点一つ明確にしておいていただきたい。
○参考人(徳武義君) それは今御質問の通りでありまして、職員が、繰り返すようでありますが、私ども正式に買える予算を持ちませんので、それは買わない方針でおったのでありますが、現にその必要がありと、やむを得ないと認めたので、それを借りて使いました。
○宮城タマヨ君 それは職員の名前を一つ教えていただきたい。そうしてその職員は一体どういう目的でそれを持っていたのか、どこから求めたのか、一つその職員に当って聞きますから、どういう職員なんでございますか。
○委員長(成瀬幡治君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(成瀬幡治君) 速記を起して下さい。
○宮城タマヨ君 私の耳に誤りがなかったら、実際は手錠を使っているのです。だからそれを乱用しないように今度の法律を作るのだということを局長からも聞きましたが、一体その点はどうなんですか。
○政府委員(中尾文策君) 現にずっと前から使っておりまして、その出所はもとは私物もだいぶあったようでありますが、最近はそれを予算で買っておるというところもあるようであります。
○宮城タマヨ君 それは局長に伺いますけれども、一体法律のどこに根拠があるのですか、伺いたい。
○政府委員(中尾文策君) それは少年院処遇規則の第何条ですか、その条文で適当な措置をとることができるという、その適当な措置というのを手錠が使えるのだというふうに解釈をいたしまして、そうして手錠を使っているわけであります。しかし前にも申し上げましたように、その程度のことではやはり不安がございますので、これを法律の上ではっきりさせたいというのが今回の改正法の趣旨だということでございます。
○宮城タマヨ君 適当な措置ということはございます。ございますけれども、それが手錠をはめることだと、必要ならはめることだと解釈する根拠は一体どこにあるのですか。これは手錠をはめるなんということは、ことに保護の、教育の対象にある子供に対して、適当なことであるなら手錠をはめてもいい、どうしてもいいというように勝手に解釈ができるということは、これは許しがたいことだと私は思っております。
○政府委員(中尾文策君) 第七十六条の「暴行又は自殺の虞がある在院者に対してはこれを防止するため、適当な措置を講ずることができる。」という条文でございますが、この暴行、自殺を防止するために、ほかにとる方法が適当なのが見つからない、しかもその際、捕える方法が著しく常識上非人道にわたるというふうなものでないときには、せめてこの規定で今のような処置ができるのではないかと解釈いたしておるのであります。重ねて申しますが、そういう解釈につきましては、私たちが一応の不安を持っておるということはまた事実でございます。
○宮城タマヨ君 今まででも非常に法律の根拠の薄い、これはもっと突いていきたいと思っておりますが、私研究いたします。後日に突きますけれども、この手錠は、警視庁の犯罪捜査規範の中に、「被疑者を逮捕した場合において、被疑者が狂暴であり、又は逃亡し、自害しもしくは奪取される虞れのある場合、その他必要があると認められるときは、確実に捕縄又は手錠を施さなければならない。」というのがあるのでございます。あるいはこういうところからだんだん引っぱっていかれたものかもしれないのでございますけれども、とにかく今でさえも、そうやって必要やむを得ずというような解釈のもとに手錠を使っておりまして、そうして必要だからといって、教育の対象にある者について、手錠をはめなければ始末がつかぬ、ヒロポンの中毒症を起しております者が非常に狂暴だということもわかっておりますが、しかしそういう特別なものはもうほんとうに特別な異例であって、そういうときには今まで施していらっしゃったように、何か処置があるし、ことに私は考査室を使えば十分に手当ができると思っておりますが、徳院長のお考えはどうでございましょうか。
○参考人(徳武義君) 考査室を昨年完備いたしましたので、それで事は一応今絶えております。ただできましてから後の経過を見ますと、それまで狂暴な少年が出ておりませんので、事は足りておるのじゃないかというふうにも考えますが、果して今後考査室の中でもほんとうに気違いみたいにあばれる少年が出たときにどうするかということについて、私どもは何の道具も持たないでこれを鎮静し得るかということについて、大きな危惧の念を感じております。
○宮城タマヨ君 多摩少年院には考査室が去年できましたか……。私は少年院ができました大正十三年にその考査室に一晩泊めてもらった経験があります。全くこれは刑務所のあの独房と同じであったと思っております。あれに入れておけばどうして捕縄をかけたり、手錠をかけたりする必要がございましょう。
○参考人(徳武義君) 私、ちょっと今勘違いしましたが、私どもの新しい考査室は二十八年度の工事でできましたが、二十八年の八月にできました。ちょっと訂正をしておきます。その前の先生の御存じの考査室は空襲で焼けまして全然ございません。その後は長い間終戦後非常に不便をいたしておりました。それで寮内の維持にはそのつど非常に苦しんだものでありますが、それでその必要からしまして、ぜひそういう清潔なまた静かな部屋を作っていただきたいということで、外見は堅牢でありますが、中は以前の考査室とは非常に違った明るいいいものができております。この点は一つ御了承をいただきたいと思います。
○宮城タマヨ君 明るい、いいものは大へんけっこうでございますけれども、その中が非常にお粗末で目的を達しないというようなものじゃございませんか。
○参考人(徳武義君) 決してそうではございません。まあ外見も明るくできておりますが、中は決してお粗末にはできておりません。特にブロック建築で少年が少々あばれても差しつかえない、こわされない程度のことはいたしておりますが、実際問題としまして、少年がかりにそこであばれたとき、相当……そこに手洗い等も用意しておりますので、それもあるいはもぎ取って……、かつてどこかで例があったかと思うのでありますが、もぎ取ってぶつけてドアでもこわすということはあり得るのじゃないかという程度のものです。
○宮城タマヨ君 もし今手錠をはめなければならぬ子供を、がんじがらめにして手も足も出ないような子供がだんだんふえてくるという場合に、手錠ということよりも私は考査室というものをもっともっと考査室の目的に合うようなものにお作りになるのがほんとうだろうと思っておりますが、どういうわけでございますか。つまり中に入っておっても、気持がいいようにという、ガラスをこわし乱暴もできるようなものというのは、考査室の目的にそぐわないのではございませんか。
○参考人(徳武義君) 今の予算その他につきましても、できるだけ気持のいい、そして落ちつけるような部屋にいたし、ガラス等も、できますならば絶対に割れない程度のものにいたしたいという理想は持っておりますが、なかなかそこまでは現実問題としていかないのであります。それで少年を一応鎮静せしめるためには、最初の期間だけやむを得ず使うのであります。あるいは医療手段等によりまして鎮静が不可能であるということは申し上げられないのであります。まあそうしたいのでありますが、最初どうしても医療的な方法を施すまでのわずかな期間でも、それが必要なことが起って参るというふうに考えております。
○宮城タマヨ君 こういうふうに承知してもよろしいのでございますね。徳先生は、まだ子供とあまりなれていない、愛情の重ならない間に連れていくときに手錠が必要だ、それからヒロポンなんかの中毒なんかであばれる子供には、部屋から考査室まで連れていくにはやはり手錠が要ると、その程度のものというように了解してよろしゅうございますか。
○参考人(徳武義君) まさにその通りでございます。私はそういうふうに考えております。
○宮城タマヨ君 久里浜の院長に伺いたいのでございますけれども、久里浜には手錠はございませんか。
○参考人(小川洋君) ございます。
○宮城タマヨ君 幾つございます。
○参考人(小川洋君) 数は今覚えておりません。
○宮城タマヨ君 数えられないほどたくさんございますか。
○参考人(小川洋君) たくさんあるわけでございませんが、今覚えていないのです。
○宮城タマヨ君 だけども、久里浜からはずいぶんいろいろ集団逃走もございましたね、先生がいらっしゃる前ですけれども。ああいうときに手錠をはめたりなんかで、いろいろ少年を鎮圧するために手錠を使っていらっしゃるのでございますか。
○参考人(小川洋君) 使いました。
○宮城タマヨ君 第十四条の二にあるようなふうに、つまり暴行したり……。
○参考人(小川洋君) そうでございます。その通りです。
○宮城タマヨ君 手錠をはめて子供をどこにお置きになるのですか。
○参考人(小川洋君) 反省室というのがございます。
○宮城タマヨ君 それは考査室でしょう。
○参考人(小川洋君) 考査室とは違いますが、作りは似ております。反省をさせるための謹慎室、あるいは取調べ等に使うわけであります。
○宮城タマヨ君 そうすると独房みたいなものでございますね。警察の留置室、まあ一人の留置室や独房と同じように、外から錠をかけたら、全然自由のない部屋でございましょう。
○参考人(小川洋君) そうでございます。その範囲内ではもちろん歩けます。
○宮城タマヨ君 ええ、それはまあ、狭い部屋でね、それは歩けますけれども、だけれども歩かせない方がいいんでしょう、手錠はめたら……。
○参考人(小川洋君) 歩かせない方がいいのです。その部屋の中では……。現に手錠をかけないために重傷を負ったのがございます。中に高いところがあって手洗いがございます。そこへこっちから飛んで行ってぽんと飛び上る、そうしてひっくり返ってはまた飛び上る、そうして足に十四針か重傷を負った少年がございます。
○宮城タマヨ君 そういう者は精神に異常があるとか、医療的な手当をやらなければならない者があるのじゃありませんか。
○参考人(小川洋君) その通りと思いますが、それは本来医療少年として来た者の中に分裂症、その傾向の強い者、これはもちろんおりますが、特別少年の中にも、瞬間的には、ある時間内はそういう気違い状態になるという者がおります。従ってそれは医療の措置をずっと講じなければならないという性質のものでなしに、その一日なり二日なりを静めれば、あとは医療の必要まではない、いわゆる興奮状態に陥った者、病人ではないが、そのときは病人にひとしい、あるいは病人と言える者がいるわけであります。
○宮城タマヨ君 それは鑑別所の方でわからなかったのでございますか、そういう子供は……。
○参考人(小川洋君) なかなか鑑別所の仕事もむずかしいと思われますが、そういうときにちょうどそういう症状を起しておればおかることは、これは確実でございますが、一年の間に一回起るか、二年の間に一回起るかわからないという場合もありますので、鑑別所でわからない場合の方があるいは多いのじゃないかと思います。わかれば医療少年として送致されると思います。
○宮城タマヨ君 そういう場合にすぐに医者の手当をするとか、あるいは気違い病院に入れてもらうとか、医療少年院に移すとか、何とかの処置はできないものでございますか。きょうは実際の話をしていただきたいのです。
○参考人(小川洋君) 実際の話を申し上げているのでございますが、そう急に精神病院があいておりません。一人のかりに医療少年の中に分裂症であるということがはっきり診断された者、この一人の少年を厚生省の監督下にある精神病院の方に病床をもらって入れるまでには、少年院の職員は非常に苦労をします。期間的にも早くても三ヵ月ぐらいかかります。とうていあすやあさって、気違いの診断が下ったから、あす取ってくれ、取りましょうということはまれでありまして、なかなかそういうふうにうまくいかないのであります。従ってはっきりと分裂症であると診断された少年でも、相当少年院で、その病床があくまでめんどうを見なければならない場合が多いのでございます。
○宮城タマヨ君 そうするとせっかく新法によって分類されて、それぞれの適性によって処遇を受けることになっておりますが、今の段階ではそれは事実十分にできていないというように了解してよろしゅうございますか。
○参考人(小川洋君) 大体このごろはなれてきたので気違いは少いと思います。しかし人間の行いますことで、やはり気違い病院に行くべきものが少年院に来たり、あるいは医療少年に行くべきものが特別少年に来たりすることがあるのが実情でございます。私たちも鑑別の技術ということには大へん信頼を強くしてきたのでありますが、残念ながら百パーセントとまではまだいかないというふうに考えております。
○宮城タマヨ君 もし、それではもっと鑑別を徹底して、そういう分類処遇を適切にするならば、こういう手錠をはめるなんというような必要をお認めにならないのですか。それでも要りますか。
○参考人(小川洋君) 私の考えはむしろ逆で、現状に合った法律を作っていただきたいということなんでございます。もし裁判所の方でそういう乱暴なものは少年院へは今後送らないという方針がはっきりきまりまして、これがまた実際に実行しようとしてもこれはなかなかむずかしい問題で、いわゆる人をはかるものさしでありますから、相当むずかしいことだろうと思うのでありますが、もしそれが百パーセントできるならば、仰せの通りこういう規定は要らない。しかし実情は先ほど御説明申し上げました通り、こういうことが必要だという現実なんです。悲しい現実でございます。
○宮城タマヨ君 先ほどからお話を伺ってみまして私はこういう気持になったんでございますがね。これは起訴権を持っている検事が大体初めに間違っている、そうして判決をする判事がやりそこなっているという結果にならないか。もう一つは、その検事も判事もいいとしまして起訴して送られた者が、そうまでしなければならない、教育の目的を達しられなかった、つまりがんじがらめにしなければならないというような結果になったということは、これは検事や判事が間違っていないで、少年院送りをした以上は、私は少年院の職員が悪いのじゃないかという、これは冷静に考えてそういう結果になるのじゃないかというように私伺っておったんでございます。結局は、保護の対象にならない、刑の対象になる者が少年院に送られたというような小川先生お感じがありましょうか。先生は長い間、おっしゃったように少年刑務所でずいぶんおやりになって、実情も私拝見しに行っております。よく御苦労は知っております。けれども、少年刑務所に入れた方が少年院に入れたよりいいという御結論じゃないでしょうか。つまり先ほどおっしゃったこと、どうも刑務所に入った者の方が教育がしやすい、少年院の教育はなかなかむずかしいなんというようなお話がございますというと、これは根本的に、法律の根本からやり直さなくちゃならぬ問題が起ると思いますが、いかがでしょう、この点は。
○参考人(小川洋君) 宮城先生のおっしゃる通りだと思います。少年院法の改革を国家がしながら、そこで、そこへどういう者を送るのかということについて今試験の最中であると思います。裁判所も研究中であり、鑑別所も研究中であり、国全体が研究中である。そういう少年が送られてきてから、手錠をかけなければならないような者が出るということについて、現場の少年院の職員としても大へん申しわけなく思っております。しかし私は実情を隠さずにお話しして、現在の少年院がどうであるのか、どういう現状にあるのかということを御了解願うために、実情をありのまま申し上げておるわけであります。それで少年院の方に送らずに少年刑務所へ送ったらいい者が相当おるのじゃないかという御質問でございますが、私の乏しい体験からは、確かにそれの方が本人の教育上もよろしいと思う者もございます。あるいは現在の少年院の設備と職員と予算とでは、とうてい少年刑務所ほどの矯正教育はできないという点のあることも率直に認めます。
○宮城タマヨ君 今度新しいことでお伺いしたいのでございますが、久里浜なんかの特少には、少年は一番長いのはどのくらいおりますか。
○参考人(小川洋君) きょう材料を持って来ておりませんが、平均一年と二ヵ月半くらい、一番長いものですと三年半くらいおります。
○宮城タマヨ君 そういたしますと、先ほど法務省から出た統計のお話しをなさいましたが、二十九年度は六千人、二十才をこえた二十三才までの者がいるといろお話しでございましたが、一体そういう二十三にもなる少年が六割もいるというようなことになりますと、これは少し合わんじゃありませんか。それこそ二十かちかちで審判を受けましたとしましても、それから三年もいるというような者が六割もおったら大へんな問題だと思いますが、いかがですか。
○参考人(小川洋君) 今三年半くらいいるのがいると申し上げましたが、それは二十で入ってきたのではないのであります。あるいは十七才、十八才ごろから入りまして、そうして仮退院の間近になると事故を起して少年院から少年院へ送られてゆく。極端にいえば、初めは大したことなしに初等少年院、しかしそこでボス化して、そこの少年院ではほかの少年の処遇上困るという者は中等少年院に送られる。そうして中等少年院からまた事故を起して、ここでは教育できないというので特別少年院に送られる。こういうふうに転々として最後の久里浜へ来てからも、入れまして三年半、十八才で入ったとしますと現在二十一才六ヵ月ということになります。
○宮城タマヨ君 それで普通だったらそうでございましょう。そうして二十をこえて満齢になりましたときの措置は、あとで佐藤判事に伺おうと思っておりますけれども、その満齢になった者が、少年法は二十三才まで保護の対象としてはおります。けれども、それは満齢の者は大体少年院に置かないのが実情だろうと思いますが、それを六千人も、つまり六割はそんなものだという点がどうしても私はげせない。あなたのところは一体何人二十三になるような少年がおりますか、現在は。
○参考人(小川洋君) 最初に久里浜の年令別の人員をお答え申し上げます。十七才四名、十八才五十七名、十九才百八十四名、二十才百二十三名、二十一才九名、二十二才二名、二十三才はおりません。なお、先ほど例に引かしていただきました矯正局の統計表を読み上げます。二十九年末現在、十六才未満千三十四名、十七才未満千三百三十一名、十八才未満千九百五十五名、つまり十六才未満から十八才未満まで入れまして四千三百二十名、次、十九才未満二千三百五十六名、二十才未満二千七百十六名、二十三才未満千二百二十五名、従って十九才未満から二十三才未満までを合計しますと六千三百九十七名となっております。
○宮城タマヨ君 それは少年法でも二十才を線に引いているのに、十九才から二十三才というようなことははなはだおかしいですね。年令超過のものが多いから、こういう法律を作らなくちゃならぬという、材料のためにこういうことがしてあるのですか、私の知りたいのは二十才で線を引いて、そしてその上が幾らかということが知りたいのです。
○参考人(小川洋君) 実情を申し上げますと、十九才六ヵ月というときに、少年院に送致をされて参りますと、二十一才になるまでに少年院にいる期間は半年であります。満二十才になったときに少年院に半年であります。そこでこの法律によりまして、たとえ二十才になっても少年院の教育を二年受けていないものについては、一年までは少年院長の権限で教育をすることができる、少年院に置くことができる。そしてそれが過ぎてもなお矯正の目的が達せられていないという場合には、家庭裁判所の方の決定を待って二十三才まで置けるわけです。従ってその送られてくるのが十九才に近いものが、十九才何ヵ月というのが多くなれば、二十才を越すものも多くなってくる。
○宮城タマヨ君 私の調査しました範囲におきましては、もう満二十才に近い者が来た場合に、十九才幾らじゃありませんよ、もうじきに満令になるという者が来た場合の措置について、私非常に案じて、裁判所の方でどうしているかということを、ごく最近に調べてみましたら、その手当が、まことに残念ながらできていないのです。ですから実際においては、二十才をこえている者はあまりいないはずなんです。全国的に言って……。現にあなたのところでも、二十才をこえているものは十一人じゃありませんか。何割になりますか、全体のあなたのところの……。大へん割合は少いでしょう。
○参考人(小川洋君) 百三十四名になります。
○藤原道子君 二十才以上ですか。満令以上が……。
○参考人(小川洋君) ええ。
○宮城タマヨ君 いや、満令以上は十一名、九人と二人……。
○参考人(小川洋君) 御参考までに申し上げます。先般の衆議院議員の選挙のとき、選挙権を持った者、これは満二十才をこしております。百七十三名、久里浜の少年院だけでおります。それからその次の県知事の選挙、このときに百七十四名、二十才をこして選挙権を行使したものがおりますので、私の記憶は間違っていないと思います。
○宮城タマヨ君 いや、今、九人と二人とおっしゃったのは、これは何ですか、二十一才が九、二十二才が二なら、二十才何ヵ月というのが百二十三、そうでしょう。二十才何ヵ月というのが実際にあるのですものね。満令で入ると。たとえ二ヵ月でも三ヵ月でも二十才をこすのですから、そういうのがあると思うし、そして私は満二十才以下のものを保護の対象として、つまり十八才から二十才まで上げたときに、私は原則としたら十八才でも二十三まで保護の対象だったのですから、ほんとうは私は二十六才まで保護の対象にしてほしいということをちょっと主張してみたくらいですから、年令の多い者は、もうとても喜ぶのです。だけれども、残念ながら今日ではそんなに長く保護することができないのです。なぜかというと、二十才以下の者で、もう保護し切れないほど子供がいるのですから、だからこの統計あとで調べてみます。 それから大平先生に伺いたいのですけれども、どうも先生方、園長初め、女の職員で、今日まで逃走の率も非常に少い。そうして教育の面から申しましても、ほんとうにこれが少年院かと思うような、もうそれこそ学校そのもののような感じを受けるくらい、りっぱにおやりになっている陰に、どういう先生方のはかり知れない御苦労があることかを、私は看取いたしておるのでございます。それなればこそ、今まで逃走いたしましても、大てい職員で連れてきたり、そうしてまた警察が非常に協力したり、だから今度のように警察権を乱用しないように判事の令状が出るということは非常に賛成だというようにおっしゃったように思いますがそうでございますね。
○参考人(大平エツ君) ちょっとお伺い申し上げますけれども、今度のように判事の令状が出ることは、私が賛成であると申し上げたとおっしゃったのですか。
○宮城タマヨ君 いや、警察に対しては。
○参考人(大平エツ君) 私は賛成だということを申しません。ただいまのところはまだ申しません。それは最初からお断わりしましたように、ただいまのお答えは愛光女子学園の私園長といたしまして、私が管理させていただいておりますお仕事の立場だけで考えまして……。なぜならばそれは全国的に考えましても、女子の少年院、初等、中等、特少、医療、まだ他にたくさんございます院長の見解が、意見が異なると思います。このお尋ねを受けましても、私がこのような見解を持ちましても、他の院長は同じ女子の中等少年院でも、全国的に意見をお問い下さいますと、意見が異るのではないかと思います。それで今の令状の問題を、私は現在運用いたしております第十四条から参りますれば、当面令状の必要もない。逮捕、連れ戻す期間の要求もされておらない。その十四条の現行法に非常に深い意味を感じ、少年保護の妙味あるこの法律の一条であると思って、私もこれをできるだけ法の精神を生かすようにしていくのが私の使命だと思いまして、職員にも理解を深めておりまして、先ほども申しましたように十三条の二項をできるだけ活用いたしております。ありがたいことに、おまわりさんだけでなく、ヒロポン宿のボスでも、国際マーケットのボスでも、遊廓のおかみさんでも、主人公でもよし少年院の趣旨をまず話すんでございます。話しますとほんとうにそういう人たちでもやはり子供を持った親心というものがあると見えまして、初めは女の職員ですから実におどされます。また必要があればすぐそばまで警察官が必ず行ってくれますけれども、中の部屋の方まで踏み込むのには、警察官は入れません。そばまで行っておりましても、あるいは国際マーケットあたりは中が非常に危険だそうでございますから、下にまで行ってみてくれるというようなことまでしますけれども、しかしこれは警察権はないわけでございますから。しかしそんなにまでして警察官は非常に気をつかってくれますけれども、坐り込んでそこの主人、ボスでございましても、話をいたしますと、先生方のお仕事も大へんだねと言って、それは無理はない、ほんとうにこれは子供が来ても、初めは極力来ないと言ったり、隠しておりますけれども、とうとう職員の熱意にほだされまして、その人たちが協力をしてくれます。 ことに私はこれは訴えていけばそういうやくざの親分であってもだれであっても、親心は同じものだなと思いまして、その心持で私のところの職員は動いておってくれます。それで申し上げますと、この例、こういうものをもしも使わなくても仕事ができるものならば、私は使わないで仕事がしていけないかと、私の立場ではそう思いますけれども、今の特少のような立場、あるいは中等少年院でも男子の場合の二十才までに達した非行性の非常に重い子供の場合は、これは自分がやってみませんから私はそこまで申し上げる権利はないと思っておりますし、事実少年法が改正されまして年令が非常に多くなる、少年の力が非常に広くなってきておりますので、よほどお骨が折れることだろうと十分お察しはいたしておりまして、これは十分意見を徴されまして、御研究いただけば結論が出るのじゃないかしらと思いまして、そういう意見を十分徴して御研究いただく機会ができましたことは非常に仕合せなことだと、私はそういうふうに考えております。
○宮城タマヨ君 ありがとうございました。そうすると愛光ではもちろん警察の判事の令状は必要がないし、それから少年院の職員にはもちろん令状を持って、ときには手錠を持って連れに行くというような必要は、今までもなかったから、今後も必要ないだろうという御意見と伺ってよろしゅうございますね。
○参考人(大平エツ君) 現状の私職員では、現状のままで今後もいけると思って、またいきたいと願っております。
○宮城タマヨ君 はい。わかりました。 それからもう時間がございませんで、大へんおそれ入りますけれども、佐藤判事にお伺いしたいのでございますが、この大平園長もさっきちょっとおっしゃったのでございますが、私も大平さんと同じように、あまり法律家でないもので、判事の御意見が伺いたいのでございますが、この旧少年院法の十五条に、逃走のときの規定がございまして、「矯正院ノ職員ハ之ヲ逮捕スルコトヲ得」と、「逮捕」という言葉でなくて、「逮捕スルコトヲ得」とあります。ところが今度は現行少年院法では、この「少年院の職員は、これを連れ戻すことができる」となっております。で私はこの少年法の精神から見まして、「連れ戻すことができる」というところに非常に妙味があって、もう連れ戻さないでもいい。親のところへ行って落ちついているとか、それからたまたま出会った者が大へんいい人で、世話してくれて、いいところへ就職しているとか、まあいろいろな、落ちついて、悪いことをしないというような子供のときは、むりやりにこれは強制力を用いてまで連れて帰らなくても、臨機応変の処置ができるというふうに解釈した方が、私は少年法の精神に合うのじゃないかというように思っておりますが、だんだんこの委員会で、この少年院法の改正について回数を重ねて、これを法律的に言いますと、やはり強制的に連れ戻す権限がある、権限を与えられたと解釈する方がいいという結論になっておりますが、いかがでございますか。
○参考人(佐藤信一郎君) 今最後におっしゃったように、やはりこの法律の解釈としてはそうなると思いますね。やはり連れ戻す権能を与えたものである、権限を与えたものであるというように考えます。……と解釈するのが正しいのじやないかと思います。それかといって任意に帰るというのは、法律の論外である、ワク外であるということであります。
○宮城タマヨ君 それは受刑者でございますと、四十八時間が過ぎれば、これは逃走罪になるのでございます。そういうときには強制力をもって、罪人ですから連れ帰らなければならないのですが、少年院の逃走者は何ぼ時間がたちましょうとも、それは犯罪者じゃないのですから、必ず独制的に連れ戻さなければならないという建前をとらない方がいいのじゃないかと思いますのでございますが、これはまあ法律の解釈は解釈としてどうでございましょうか。むりやりにこういうことになるというと、やはり脱走者と、刑務所を出た者と同じに少年が取り扱われるのじゃないかという感じを受けますけれども、その点どうでございましょうか。
○参考人(佐藤信一郎君) お答えいたします。私どもが警察以外の場合に連戻状を使うことは、やめた方がいいと考えますのは、今おっしゃったような御見解と同じ見解に立って申し上げておるのであります。……をとられておるのであります。この刑事的な感覚で、強制、あるいは任意とを区別している考え方が、直ちにこの少年院の院生の離脱した場合に適用して、適当な考え方であるかどうか、ちょっとその辺ははっきり申し上げられないのですが、しかし今簡単に申せば、私は少年院の院生に対処しては、いわゆる法律的に任意でない。従って強制である場合も、なお令状は使わない方がいい場合が大へんたくさんあるのだという見解に立って、私は職員の場合には少くとも令状を必要としないということに願わしいと思います。
○宮城タマヨ君 それから初等、中等で成績の悪い者は特少に送られますね。
○参考人(佐藤信一郎君) はあ。
○宮城タマヨ君 それから特少にしましても、こうたらい回しに、たとえばまあ甲から乙にこう移って行くという場合に、今の現行法では、それは判事は関係しないでも、管区長の裁量によってできることになっておりますが、この点はどうお考えでございましょうか。
○参考人(佐藤信一郎君) お答えいたします。おっしゃることは少年院法のたしか十条に関する移送の関係でございます。この十条がありますために、それの運用として現実では初等少年院、あるいは医療少年院、中等少年院へ送置する裁判に回された少年が、極端な場合には日ならずして特別少年院へ移送されている事例があり得るのであります。これは一体その特別少年院に送付するというのは、少年院法の二条にも示されておりますように、犯罪傾向の進んだ者を送るのであって、審判の際にそういう条件がある場合には、満たされている場合には、少年院の種類を指定することになっておりますが、そういうことなくして、中等少年院送致、あるいは初等少年院送致の少年が、きわめて安易に、事務的に裁判の経路をたどらずして、変更されているということは、実質的には裁判の否定であり……。
○宮城タマヨ君 そうです。
○参考人(佐藤信一郎君) また、この裁判前の調査とか、鑑別というものを、あるいは無視する場合も相当に出ていはしないかと思います。そういうわけで、少年院法の十条は、この種類を異にする少年院に移送しようとする場合には、裁判者の許可を得なければならないということに改正をしていただくことが望ましいと、日ごろから言っておるわけでございます。
○宮城タマヨ君 ああ、そうですか。……いま一つ伺いたいのは、この少年院で、少年院に送られている場合に、今言ったように、これは保護の対象ではない、これは刑の対象ではないかというような場合に、今ではこの特別少年院から、もうつかえておりまして、送るところがないのでございます。中等なら特少へ入れられますけれども……。その点私はどうしても手を打たないと、今言ったように、もうやはり困るからがんじがらめだということになって……、しかし法の精神から言えば、やはり教育の対象として少年院は苦しいという……、これはまあ事実の問題なんでございますから、これはやはり法的の処置をしなければいけないのじゃないかと思いますが、いかがでございましょう。
○参考人(佐藤信一郎君) お答えいたします。いろいろ相当狂暴性のある者だとか、あるいは相当たくましくなっておる少年が特別少年院の中に入れられて、ことにまあ中等少年院などで手に負えない場合には、特少へ特少へと送るようなことが、あるいはなされているのではないかと思うのでありますが、そういう結果は。特別少年院はまるで掃きだめみたいな形に陥ることがあり得ると思います。現在も部分的にはそういうことがあるのじゃないかと、私どもも思うのです。従ってその特別少年院長の、教育について、あるいは処遇について苦心をなさっておるところには深く同情申し上げるほかないのでありますが、しかしながらよく安易に、刑務所へやるべきであったのが少年院へ来ているというような御議論は、先ほど申し上げました通り、大へん見当違いであります。実は昨年久里浜少年院で集団暴行事件があったときにも、私直ちに何がそういうことをもたらしたかを知るために、お見舞かたがた直ちに伺って、院長にもお目にかかったんですが、そのときに、率直に院長あるいはその他の方から伺い得た御意見は、裁判所が大へん少年院へ送るべからざる者を送っているのだというような御非難が含まれていたと思うのでありますが、私は日ごろ審判に当っておる確信からしてそういうようなことがあろうはずはないということで、実態調査を私どもの裁判所の職員をしてなさしめたのですが、それが大体まとまっているのですが、果せるかな印旛少年院で集団暴行に参加した者、あるいはその中の主謀者である者、主謀者といいましてもそれが十二、三人数えられていますが、あるいは久里浜へ送られて大へんな集団暴行を働いた者、そのいずれも刑務所へやりようのない者であるというのですね、大ざっぱに言えば。刑務所へやりようのない者、大体これを……大体でなくすべてですが、検察官が裁判所に書類を送ってくる場台には、検察官としての意見をつけてくるわけであります。その中で検察官が刑事処分に付すべしと考えても、資質の鑑別をしたり、あるいは何が彼をそうさせたかの原因を探究しますと、刑務所へ送るに忍びない者あるいは刑務所でまかなうよりもやはり教育に付した方が、社会的にも国家的にもいい場合が見出されるのでありまして、結局検察官の刑事処分に付すべしという意見を、相当またうち回って、本当の刑事処分にされるものの数は、それから大分減縮されるのが実情であります。検察官の方では、まあ簡単に申せば、少し大げさに刑事処分に付すべしという意見をつけやすいのであります。大げさにつけやすいという検察官の意見すら、今度の集団暴行事件の少年の中でそういう意見をつけられている数というものはきわめてわずかであります。七十六名、ちょっと今資料を持ってきておりませんが、暴行の結果逆送、つまり暴行事件によって公判に付された者が十八名、大体あばれるときには相当つまりすぐれた働きをした連中なんですが、それらの中で、それらの大部分はおそらくは刑務所へやるはずのものであったのじゃないかというような御非難が少年院側からかつてあったのですが、それは見当違いである。と申しますのは、検事が少し大まかにつける刑事処分に付すべしという意見すら、この中で三件しかないということです。その三件は東京のではございませんで、水戸からのが二件、それから前橋からのが一件というわけで、十八人の中で十五人については、少年院収容以下の意見を検察官がつけてきたくらいなような少年であります。そういうわけで、これらの暴行に参加した少年が刑務所へ行っておればよかったんだ、刑務所でこれはまかなうべきだった、裁判所はあまり甘きに失して、少年院へ送ってきたんだというような御非難は、少くとも今度の、昨年の印旛少年院並びに久里浜少年院の集団暴行事件については大へん当らざるものと私は確信いたしておるわけであります。それで今後これを一体いかに……、少年院の現実の能力を超えておることは事実であると思います。それの苦心と焦慮が、あるいは手錠となりあるいは格子の強化となるかと思うのでありますが、しかしこれを解決する道は刑務所へやることでなくして、刑務所入りなどというのは日本の刑事法大系が許さざるところであると思います。これを解決する道は、ただただ少年院における処遇の改善と発達に待つよりほかにないと思います。 それから今の法律で、自然の流れとして特少にかような少年が送られるのでありますから、それにふさわしい施設の充実ということ、それから職員の適当な配置ということが、結局解決の方法であり、そうしてその目標はやはり個別処遇に徹する、あるいは分類処遇に徹するということ以外にないと思います。
○宮城タマヨ君 私はそれで今日少年が悪くなった、悪質だということも、それからおとなをしのぐような少年がいることも事実なんでございますが、そこでこの処遇からいいますと、少年刑務所みたような非常に不自由なやり方でも仕方がありませんが、この少年刑務所に行きますと前科者になりますから、前科者という、このかわいそうな焼き印だけは押さないようにするために、名前は何と言ったらよろしゅうございましょうか、特別少年院の上にまた特別少年院、つまり刑務所のかわりに一つの施設を作りまして、そういうものでもしましたら、少年のその教育の目的を達するようないろいろな処遇の分類がもう少しふえたというようなことになりはしないかというような考えを、かねがね持っているのでございますが、何とかこれを今しなければならないと思いますが、それが私は手錠をはめたり、あの少年院の職員に判事の令状を出さなければならないというようなことになると、私は少年法の精神を殺すことになって、これは相ならぬと今ここでがんばっているようなわけなのであります。それで、それにつきましてもう一つここで、判事が令状を出しますときにはこれは事務的じゃないでございましょうね、子供の問題だから。その令状を出します以上は、子供のその記録なりあるいはいろいろな調査したものをよく研究した上でございますか。つまり、申しますと、責任を持った令状を出すか、あるいは事務的の令状を出す、それでもいいかというような問題でございますが、いかがでございますか。
○参考人(佐藤信一郎君) お答えいたします。最後のその令状がどの程度の資料によって判定されるかということは、今おっしゃった大へんその見込としては悪いことでありますが、事務的に処理される程度よりしか資料が与えられないと思います。ということは、これにあったと思うのですが、まだこの法案には現われていないようですが、結局これを受けてのルールにおいては、おそらくは院の所在地の裁判所にその令状の請求がなされるのであろうと思うのです。そうしますと、その院の所在地の裁判所には、偶然送致裁判所であれば別でありますが、大体において送致裁判所ではなかろうと思います。従って記録がないわけでございますので、特に何か一般の逮捕状などの令状請求よりも、特段の指示が法律なり規則にない限り、調査記録まで裁判所へもたらされるということは、ちょっと期待しがたいのじゃないかと思います。従ってよほど、この連戻状でチェックされる部分というものは、まことにまれなるものであろうと思います。そういうわけで、私はそのまれなる一、二の場合、あるいは全国でも一、二%以下にしかとどまらぬかもしれないその人権擁護という面にとらわれて、一面実施せられる連れ戻しが全部ほとんど見通しとしては連戻状の使用となり、あるいはそれにまた加うるに手錠の使用となり、それによって矯正教育の院内における処遇すらあるいは誤解せられ、あるいはまた少年院の職員が刑務官的感覚に、どうしたってとらわれる面が出てこようかと思います。そういうわけで弊害はいろいろな面に現われて、警察官だけに限ればよろしいのでありますが、それが全面的ということになれば、大へんな弊害を及ぼすと考えて、この原案に適当な御修正がなされることを願っているわけなんです。 それから最初に仰せになりましたこの少年院について、超特別少年院とでもいうような御見解、私もやはり大体先生のお考えのように、結局教育をもってこの青少年の犯罪を処理しようという限りは、結局多くの場合、二十二、三才まではその可能性があることは立証されているようでありますから、結局二十才以下の少年について刑を科するというようなことは、理論上はちょっと必要もなくなるだろうし、またちょっと理論的に成り立たぬことではないかと思います。従ってもう全面的に少年院での教育と処遇でまかなうということが、結局落ちつく目標であろうと思うのです。その場合に適当なる段階を設け、またそれに送るについてこのよき分類、鑑別を施して、それで個別処遇が徹底するようにということに到達すればよろしいと思うのであります。結局今でもあるいは将来も、おそらくは少年に対する刑罰というものが消える日は当分の間はないだろうと思いますが、これは理論的に存在価値があるのでなくて、やはり社会感情において妥協の余地としてのみ価値があるのではないかと私は考えておるわけであります。 それからなお一つちょっと最後かもしれませんので申し上げたいことは、五、六年前に法務省の機構が改まって、行刑と少年の矯正保護教育とが一元的に処理せられる機構に相なったわけでありますが、当時やはり少年関係の権威ある人たちは少年保護あるいは矯正教育が行刑化されることを大へんおそれておられたようであります。大へんしかし明敏の局長を得てその後そういう弊害は、あるいはそういう傾向は顕著にはなかったと思います。しかしながらほんとうに少年法が実を結ぶといいますか、あるいは今後その成果を上げるためには、やはり行刑と少年保護は別の部局によって処理せられるように願おしいのであります。それが一つでせられておる結果、つまらんことをすらなかなか実現しない。たとえば私どもが常日ごろ長い間遺憾に思っていることは、もう五、六年前から私どもも唱え、あるいは少年院長も唱えておりました少年院における被服が囚人と同様になった、あるいは従前は夏の物あるいは冬の物として少年院独特のものだったのでありますが、当時の囚人服ではなかったのでありますが、それが機構の一元化とともに被服も行刑関係と一元化になった、少年院の教育に付されている少年が囚人服をまとっておる。少年の教育が果して効果を上げる上においてこれがどのような意義を持つものであるか、大へん寒心にたえないところでありました。それでそれは外部から、つまり少年院の外部から、あるいは少年院の内部においてもこれを遺憾に思っております。その声が上ってすでに五年、あるいは六年になんなんとすると思います。しかもそれが解決されないということ、こういうことはやはり機構の罪が幾らかあるのじゃないかと思うのであります。それからやはり少年教育の特殊性を生かし、少年保護の効果をほんとうに、上げるというためには、どうしても純粋な少年矯正関係の別の部局、たとえば今の法務局あたりがそういうものをつかさどるというような態形を整えることが、いろいろな面の困難な点を解決するまず手っとり早い一つの道ではないかと心得ているわけであります。
○宮城タマヨ君 ありがとうございました。いま一つ令状をお出しになるときでございますね。院長が請求したら、もう事務的に無条件で今出すようなお話しでございましたが、ときに出せないと判事が断るような場合もあり得るのでございますか。法律上どうなるのですか。
○参考人(佐藤信一郎君) お答えいたします。あり得る法の建前になると思います。
○宮城タマヨ君 それにはやはりその事件を判断する資料がなければできんわけでございますね。
○参考人(佐藤信一郎君) 完璧な判断はやはりその少年についての全部の資料がなければできがたいことであり、また同時に新たに既応の記録だけにとどまらず、現在を知るということは普通の事件の審判ほどに効果を上げるためには、普通の審判ほどにやはり現地について調査するというようなことも必要になってくると思います。しかしそういうことは期待しがたいと思います。従って人権を守るということの面は、そんなにこの法律をこしらえたからといっって期待しがたいと思います。なすことは、裁判所の立場から言うのはおかしいのですが、大体においてはお座なりで処置がせられると思います。
○藤原道子君 私はもう二、三質問したいと思っておりましたが、もう相当時間もおそくなりましたので、きょうは簡単にしたいと思います。ただ一点ですね、私非常におそれていたことがきょうの参考人のお言葉の中で看取できたのです。こういうことを申し上げてははなはだ失礼なんでございますけれども、私はあくまで保護でいかなければなおらない、保護矯正であると思っておりましたけれども、それがどうも最近逸脱して保護の精神が失われているのじゃないかということをおそれております。でこの間少年院の開所式に行って受けた感じは、この前の委員会でも率直に申し上げていたのです。でまあ現場で御苦労なさる院長さんたちにしてみれば、御無理のないお言葉かとも思いますけれども、どうしても愛情が私は欠けておるように思われて仕方がない。いま一つは人が足りないからやはり手錠をはめた方が便利だというようなことになるならば、子供を保護育成していく上においては人が足りないのなら人をふやす方に私は努力をしなければならないと思うのです。だからといって手錠というようなことは私は絶対に承認できないのでございます。ことに職員の手錠を借りて使っていたというように至っては、言語道断だと思います。けれどもそれと同時に最近どうも家庭裁判所等における家事調停においても、どうも逆コースの傾向が見える。あるいはまた諸般の動向がどうも逆コースのように思えてたえられない気持ちでいたのですけれども、今佐藤判事のお言葉を伺いましてまだ救われるところがあると思ったのです。私はほんとうに判事と同じ気持なんです。この間の囚人服を見ましてこれじゃだめだと私は考えておりました。で、私は子供には悪人はいないと思う。社会の環境が悪い、おとなの罪だ。従って子供はやはり一本化でいきたいというのが私の精神でございまして、児童福祉法でいきたかったのでございます。けれども、こうなったけれども、あくまで少年の方も保護矯正でいくのだと言われるので希望を持っておりました。ところが最近はそれがだんだん変ってきて、まあ手錠だとか、逮捕状だとかというような言葉が法案の中に出ることは許されない、私には……。しかし佐藤判事も言われますようにあくまでも教育でいくのだ、あの囚人服も五年前から反対でおいでになったということをお開きしまして、やや私は希望を持つことができました。少年法の今後の審議においてはまだ私は都合によっては参考人を呼んでもらいたいかもわかりません。きょうは不満足ながら、もっと質問をしたいことは多々ございますが、宮城委員があまりに御熱心な御質疑で、時間もやがて五時にもなりますので、きょうはこの程度にいたします。ただどこまでも局長にお願いしておきたいのは、少年法の精神はあくまで愛情に立脚しておやりいただきたい。暴行を働くと言うけれども、その暴行を働く原因はどこにあるかということの究明が足りないように私には思えてなりません。今後の質疑に譲りたいと思います。 それからもう一つちょっと聞きたいのですがね、少年刑務所が少くなって少年院が非常に激増してきたというのは、年令が上ってきたからでございますか。
○参考人(佐藤信一郎君) お答えいたします。先ほど小川院長のお話の中にもあったと思うのでありますが、その点についてはこの年令が上ったということは、直接のその原因と言いにくいと思うのですが、さっきの数字私ども年中関心を持っているのですが、結局少年刑務所とそれから少年院との両方を合算して数の推移をみると、結局最近全国で現在数が二千か三千ふえているように思います。これは年令は、たとえば十八才以前は刑務所へ行っておったものとみればいいのですが、結局年令の点は考えなくていいと思うのです。両方合計して考えればどっちかになる。それが実質において二、三千ふえておると思います。それは結局少年法が鑑別機能あるいは調査機能を持ちまして、内に蔵する非行性あるいは要保護性が見出されて、それが教育に付されておるというのが相当に増加の原因だろうと思います。同時にもう一つ、虞犯事件というのがそれと同じようなものですが、十八才以上でも虞犯の理由によって保護処分に付されるということで、増加のワクが広げられておるということがあると思います。そういうわけで、刑務所へ行ったはずのが少年院へ来たから、少年院の数が大へんふえたということでは決してないというように私は理解します。
○委員長(成瀬幡治君) 他に御発言がないようでございますが、参考人の方々には、長時間にわたり有益な御意見等を伺わさしていただきまして、まことにありがとうございました。 それでは本日の委員会はこれでもって終ります。 午後四時四十二分散会