法務委員会 第2号
- 発言数
- 112 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1955/03/31
会議録
○委員長(藤原道子君) それではこれより委員会を開会いたします。 本日の案件は、検察及び裁判の運営等に関する調査でございますが、公報に掲げてございますように、公職選挙法違反事件の処理について、それから戦争犯罪人の刑の執行及び赦免について、それから出入国管理に関する問題について、それから売春問題対策協議会の協議経過について、それから交通事件即決裁判手続法の実施状況についてまず当局の御説明を伺いたいと思います。 まず第一に、公職選挙法違反被疑事件の処理状況について伺いたいと思います。
○説明員(井本臺吉君) 公職選挙法違反被疑事件の処理状況について御報告申し上げます。 今回の総選挙におきまして全国の検察庁が受理いたしました公職選挙法違反被疑事件の総受理人員、罪種別人員数、処理状況、候補者、主宰者、出納責任者などの受理人員などについて、われわれの手元に集まっておる報費を集計した点を申し上げます。 われわれの手元におきましては、一般の事件は十日ごとに集計をとっておりますので、全般的のものは現在では三月二十日の分が最終になっております。三月二十日の現在の全国検察庁におきまする受理人員の総数は一万二千七百八十六名でございます。そのうちで買収事犯が一万二百六十六名、これは全受理人員の八一%になっております。その他の事犯、すなわち戸別訪問、文書違反などが二千五百二十名で全体の一九%になっております。右の受理人員につきまして、すでに処理済みのものは、買収事犯につきましては、公判請求が百四十五名、略式命令請求が二百七名、不起訴が三百七十名、合計七百二十二名でありまして、未済人員が九千五百四十四名でございます。その他の事犯につきましては、公判請求が三十一名、略式請求が百十二名、不起訴百六十三名、以上合計三百六名で、未済人員は二千二百十四名となっております。この違反の概況は、同じ選挙期日後の日数において比較いたしますると、昭和二十九年四月の総選挙の際には、選挙期日後の二十日現在におきまして、七千百二十七名、その前の年の二十七年十一月の総選挙の際に比較いたしますと、二万三千百六十五名という数になっております。現在までの受理状況では、おおむね二十八年選挙のざっと倍近く、二十七年選挙の三、四割方減っているという状況でございます。 次に、現在までの候補者、総括主宰者、出納責任者の関係の事犯受理人員数を申し上げます。この方は毎日集計をとっておりますので、三月二十八日付の現在で申し上げます。候補者につきましては、当選者が、買収犯で二名、その他の事犯が八名、合計十名になっております。落選者につきましては、買収犯が二十七名、その他の事犯が十四名、合計で四十一名になっております。それから総括主宰者につきましては、買収犯が八名だけでありまして、そのほかはございません。それから出納責任者につきましては、買収犯が四十一名、その他の事犯が四名、合計四十五名を受理しております。 以上のような概況でございます。未済人員がまだ多数に上っておりますのは、現に調べ中でありますので処理ができなかったということになるので、これらも逐次処理されていくものと考えるのでございます。 大体の概況は以上の通りでごいます。
○委員長(藤原道子君) それでは関連がございますので、続きまして公職選挙法違反事件の処理及び審理状況について最高裁判所事務総局の刑事局長江里口さんにお願いいたします。
○説明員(江里口清雄君) では公職選挙法の違反事件の処理状況について御報告申し上げます。 昭和二十七年の四月の恩赦によりまして、選挙事件は、当時裁判所に係属しておりました刑事事件は、免訴の判決によって一掃されたのでありますが、同年十一月に衆議院の総選挙がありまして、その結果十月から年末までには、新受理人員が一万九十七十五人、既済人員は一万一千五百九十三人、年末の未済は七千八百四十一人でございます。昭和二十八年の四月に衆議院議員それから参議院議員の選挙がございました。その結果、同年一月から十二月までには新受人員が二万六千九十人、既済人員は一万八千三百三十人、年末の未済は六千三百九十五人となっております。昭和二十九年には、全国的な選挙がございませんで、市町村長あるいは市町村会議員等の地方選挙だけでありましたので、新受人員はここ数年来の最低でございまして、新受人員は三千七百四十三人、既済人員は六千五百八十二人、年末の未済人員は三千五百五十六人にすぎないのであります。 以下昭和二十八年の既済人員について処理状況、あるいは審理期間等について御報告申し上げます。その既済人員の処理の区分は、お手元に差し上げました資料の第二表公職選挙法違反事件第一審終局区分調査表に詳細ございますが、第二表の一月から十二月まで合計という欄の右から七番目のところでございます。既済人員、処理人員の合計は一万八千三百三十人でございます。そのうちの有罪人員は左から二番目でありまして一万六千三百十二人、その内訳は懲役一年以上が九十三人、それから一年未満が千八百九人、計懲役は千九百二名、うち千七百四十人が執行猶予というふうに相なっております。禁固の方は、一年以上が二十四名、一年未満が四百二十六人、計四百五十人のうち三百九十五人が執行猶予ということに相なっております。それから罰金でありますが、これは通常手続と略式手続と両方ございまして、通常手続による罰金は合計……詳細はこれに載っておりますが、合計いたしますと五千六百六人でございまして、うち執行猶予は四百四十七人、略式手続による罰金、これは八千三百五十四人のうち執行猶予が十一人、その金額の罰金額の詳細はお手元に差し上げました表の通りと相なっております。懲役、禁固の刑の合計が二千三百五十二人のうち、一年未満が圧倒的に多いのでありまして、しかも懲役刑のうち九〇%に当ります二千百三十五人が執行猶予ということに相なっておりまして、実刑に処せられた人員は二百十七人ということに相なっております。罰金刑では五千円未満という罰金刑が五千七百九十七人で全体の四一%、五千旧以上一万円未満が三千百六十六人、全体の三三%、それから三万円以上というのが千八十一人、全体の七%、罰金の六四%は一万円未満ということに相なっております。 それから無罪の人員は百九十二人でございます。その無罪率は〇・〇一二%、通常の事件の無罪率よりもやや高いということに相なっております。 それから既済人員の一万八千三百三十人を選挙別に見て参りますと、その同じ表の下の面でございますが、衆議院議員の選挙の違反が一万三千四百四十五人、参議院議員が二千五百四十二人、それから府県会議員、市町村会議員の地方議員が五百五十一人、それから知事、市区町村長の違反が千五百五十九人、その他教育委員会委員その他を合せますと二百三十三人、こういうふうに相なっております。 それから、この表では出ておりませんが、有罪人員の一万六千三百十二人のうち買収及び利害誘導罪等の実質犯が一万四千百九十五人で、これが最も多く、全体の八七%を占めておるという状態でございます。なお、公職選挙法の二百五十三条の二によりまして、いわゆる百日裁判あるいは優先裁判を要請されております事件の人員、これは当選者が五十八人、総括主宰者が三十二人、出納責任者の事犯が五人、九十五人ということに相なっております。 それから控訴率でございますが、通常の第一審の有罪人員七千九百五十八人のうち被告人の方から控訴いたしましたのが二千四日二十六人、それから検事の控訴が三百六人、合計いたしまして二千七百三十二人、控訴率は三四・三%であります。執行猶予のつかない第一審の有罪判決に対する控訴率は五〇%でございまして、一般の刑事事件の控訴率は一八%でございますので、選挙事犯に対する第一審判決に対する控訴率は、一般の控訴率に比してはるかに高率であるということでございます。 次に第一審の審理期間及び公判開廷回数でございますが、これはお手元の表の第四表の通りでございます。これによりますと、審理期間の三カ月以内のものが公職選挙法におきましては三〇%、それから三カ月以上六カ月、三カ月を越えて六カ月以内が三五・三%、六カ月を越えて一年以内が二九・八%、一年を越えて二年以上というのは全体で五%でございますので、全体の事件の九五%は一年以内に審理が済んでおるという状態に相なっております。これは通常の刑法犯におきましては、三月以内に七七・九%が済んでおりますのに、選挙違反におきましては三月以内には三〇%しか済まないというような状態でございます。で、選挙違反事件は一般の刑法犯の事件、あるいは特別法犯一般に比べますと、審理はややおくれておるという状態でございます。一年以内には九五%までは済んでおるという状態にあります。
○委員長(藤原道子君) 九五%ですか。
○説明員(江里口清雄君) 一年以内が九五%という率になっております。大体昭和二十八年の審理状態は以上の通りでございます。
○委員長(藤原道子君) ただいまの御説明に対して御質疑がございましたら、一つ逐次お願いいたしたいと思います。
○中山福藏君 あのちょっとお伺いいたしますが、この「買収その他」ということで受理件数を数学的にあげてありますね。これは何でございますか。「その他」というのは大体戸別訪問なんかを含むものだと思うのですが、このうちにはローカル新聞なんかの選挙妨害によって受理された件数なんかありますか、ちょっとお尋ねします。
○説明員(井本臺吉君) 買収の方はいわゆる供応をここに含めておりますが、そのお話の戸別訪問でありますとか、選挙妨害とかいうのは、「依願その他」の中に含めて統計を出しております。
○中山福藏君 その妨害の方は何件くらいありますか、それちょっとお伺いしておきたいのですが……。
○説明員(井本臺吉君) こまかい集計は毎月ごとにとっておりますので、もう数日いたしますと三月分が集計できますので、もうちょっとお待ち願いますと、選挙妨害等の集計もできますから、いましばらくお待ち願いたいと思います。
○中山福藏君 これは二十日現在ということにしてありますが、これから先大体この検察庁で……。これは何ですか。ちょっとお伺いしておきますが、二十日現在で、いわゆる現在まで受理されたものの数なんですね。
○説明員(井本臺吉君) 各地からの、各地検ごとに法務省の方に報告をとります。それが二十日現在で、各地で受け付けました分をこちらに報告して参るわけでございます。それを集計したものがこの表になるわけでございます。なお、これは非常に繁雑になりますので、十日ごとにやっておりますが、一カ月ごとにそのこまかい内訳も報告するということで、三月三十一日付でこまかいその他の内訳なども集計いたしまして、全国四十九の地方検察庁から報告して参りますから、それを集計いたしますと、こまかいのが出るわけでございます。その集計に、なお三月三十一日の集計が三、四日かかりますから、四月四、五日ごろになりますと、その集計が出るわけでございます。
○中山福藏君 さらに一つお尋ねしておきたいのですが、これはなんでございますか、この「受理」と書いてあるのは警察で受け付けたもの、検察庁で受け付けたもの、両方含んでいるのですか。この受理したというのは、ただ単に犯罪の嫌疑ありとして捜査に着手したという意味なんですか、どういうこれは限度なんですか、この受理という言葉は……。
○説明員(井本臺吉君) この受理と申しますのは、検事が自分で調べに着手いたしましたか、あるいは警察から送致を受けまして、あるいは送付を受けまして、検察庁として事件となりましたものの件数でございます。従って警察で調べ始めてまだ検事の方に報告ない分も多少ありますので、すでに警察の受理人員、もしくは件数の方がわれわれの件数より多くなっております。それはまだ検察庁の方に送って来ていないのでその関係で向うの方が多くなるということになります。
○中山福藏君 逮捕状が出たのは、それはまだ嫌疑捜査という段階でありますから、それは受理の中に入らぬのですか、それはどうなんですか。
○説明員(井本臺吉君) 検事の方で直接調べの際に逮捕状を請求して、出していただきますれば、これは当然受理した件数の中に入りまするが、警察の方でやっておって、いまだ検事の方に送って参りませんものは、このうちに入っておりません。
○中山福藏君 逮捕状が出て警察で調べておるのがありますね、それはどうですか。この受理のうちに入るのですか。検事がまだ調べていない……。
○説明員(井本臺吉君) 検事がまだ調べておらずに、警察が逮捕状を執行いたしまして調べております間は、検察庁といたしましては受理件数のうちに入っておりません。われわれの方といたしましては、そのような事件は、検事の方に持ってきまして、さらに勾留請求するという段階になりますと、受理ということになるわけであります。
○中山福藏君 それじゃ、そういう段階にありますその件数というものは、大体どのくらいに上っておりますか。それはまだお調べになっておりませんか。
○説明員(井本臺吉君) 正確な件数はわかりませんですが、おそらく集計いたしまして二割くらいになるのじゃないか、それは概数でございますから間違っておるかもしれませんが、われわれの感じでは、二割くらいになるんじゃないかと考えております。
○中山福藏君 私の考えでは五割くらいに上るのじゃないかと見ておるのですが、これはどういうわけかと申しますと、大体警察というものは、むやみやたらに引っぱり出して、そうして連行するのです。朝早く起きて来て……。嫌疑ありと考えられるもの、すなわち投書その他によって、こいつは、怪しいというものはみな連行して連れて行くのです。このごろは。そうして夜になりまして、自白しないと逮捕状を執行するぞというようなあんばいで、さっそく逮捕の手続を、自白を強要して、その泥を吐かない限りは、お前の家には帰えさん、逮捕状を執行すると言っておどかされた人間がたくさんあります。そういったものを数えると、私は五割以上になるんじゃないかと思うのです。これは受理されるかどうかはわかりませんけれども、そこのところをですね、もう少し正確にお調べ下さらんというと、これはですね、妨害とか人権蹂躙とかいう問題が起きていろいろ論議が出てくるわけですが、二割くらいのものでしょうか。もう一回お確かめ申し上げておきます。
○説明員(井本臺吉君) 正確な数を照らし合わせておりませんので、ときどき警察庁の方でも検挙件数を発表しておりますが、あれは警察庁の方の受理事件だと思います。常にわれわれの方よりも二、三割がた多くなっておりますので、大体そのくらいを向うが受付けてやっておる事件じゃないかと想像しておりますが、正確に研究しておりませんので、後日これはまた調べまして、適当な機会にお答えを申し上げたいと思います。
○委員長(藤原道子君) ほかに御質疑ございませんか。……よろしゅうございますか。 最高裁判所からただいま公職選挙違反事件の審理状況の説明を伺いましたが、この審理を促進する対策についてお考えがあれば伺いたいと存じます。
○説明員(江里口清雄君) 先ほど申し上げました通り、公職選挙法違反事件のうち、九五%は一年以内に済んでおるわけでございますが、特に促進を法律上要望されております当選者あるいは当選者の総括主宰者、出納責任者の事件が非常に遅延をするというようなことから、このたびの公明選挙に関連いたしまして、審理促進が要請され、これが世論になった状態でございますので、先般最高裁判所の方で主催いたしました地方裁判所の判事、それから高等裁判所の判事、最高裁判所の調査官、それから事務当局、法務省の刑事局の事務当局、それから最高検、東京高検、東京地検、それから弁護士連合会の方々からも御参加をいただきまして、選挙事犯審理促進の対策協議会を三月に二回開きまして、なお継続して四月も研究をいたすことに相なっております。もともとこの審理の遅延をいたします原因はいろいろあるのでございますが、その第一は関連事件が多く、関連事件の起訴が必ずしも早急に出そろわない。そのためにその関連事件の起訴を待つというようなことも一つの原因であります。またその二は、被告人が多数ございまして、従ってまた弁護人の数も非常に多くなる、またその三は、期日の指定が従ってなかなか困難である、早急に期日の指定が困難である、その四は、弁護人に中央の有力者、有力弁護人が多く使われ、期日がうまく入らないというような点、その五は、被告人多数のために、審理が複雑になる、証拠関係も繁雑になる、それからその六が、検察官のほうであらかじめ、被告人、弁護人に調書を閲覧せしめる機会を与えることに、必ずしも積極的でないというような点、それからその七は、検察官の手持ちの調書等を弁護人が十分に閲覧をして準備しないという点、その八は調書を証拠にすることについて、同意がほとんど被告人、弁護人の側から得られない、そのために証人の数が非常にたんさんになるというようなこと、それからそのほかに元来選挙事犯の事実の真相の認定が、著しく事実の真相をつかむことが困難であるというような点、それから多数の被告人が上訴して、判決の確定が一審ではなかなか確定されないというようなことが審理遅延の大きな原因と相なっておるのであります。審理促進と申しましても、事実の認定が著しく困難であります上に、判決が有罪判決になりますと、その結果は公民権に影響するところが非常に大でありますので裁判所といたしましては慎重に審理をする必要がございます。でそのために、ある程度遅延することはこれはやむを得ない、かように考えておるわけでございます。裁判所といたしましては、十分に調べるべきものは調べた上で判決すべきものでありまして、そのために時間がかかることはやむを得ない、定められた期日が守られて、予定した証拠調べなり、審理なりが着々と行われて、できる限り継続審理によって審理を促進するということにならなければならないと思っておるのでございますが、実際はなかなか当事者の協力が得られないというような実情でございます。 で、対策といたしましては、選挙事犯に二審制にしたらいいじゃないかとか、あるいは保釈をしないで審理したらいいじゃないかというような極端な議論もございますが、これらは目的のために手段を選ばないというような議論でございまして、これらはとるべきではないのでありまして、結局は検察官、弁護人等の訴訟関係人の協力によりまして、できるだけむだを省いて審理を促進するということが必要でありまして、審理促進は裁判所だけではできない、当事者の協力が最も必要だと、かように考えておるわけでございます。三月の二十八日、二十九日の全国の刑事裁判官の中央会同におきましても、この審理促進の問題を取り上げて協議をいたしたのでございますが、大体において意見の一致をみたところは、次のような点でございます。その審理促進についての意見の一致をみた方策でございますが、第一は、裁判所の方針でございまして、その一は、選挙違反、特に公職選挙法の二百五十三条によって百日裁判、あるいは優先裁判が要請されております事件、特に被告人が国会議員、当選の国会議員であるというような事案につきましては、これを担当する裁判官にはできる限りほかの事件の配点を停止する等、当該事件処理に専念することができるように配慮する、第二は、弁護人多数のために審理の遅延をきたすおそれのある事件につきましては、刑事訴訟規則の第二十六条、これは弁護人の数の制限の規定でございますが、この規定の活用を考慮する。三は、関連事件との併合分離ということにつきましては、審理の遅延をきたさないように、格段の配慮を払う、四は、第一回の公判期日前に、できる限り訴訟関係人と期日の指定等について打合せを行なって、すみやかに第一回の公判期日を開くように努めること、五は公判期日は数回分をまとめて指定して連続して開廷すること。 六は一旦定めた公判期日は真にやむを得ない場合のほかは変更しないこと、被告人が出頭しないときは、刑事訴訟法の五十八条、これは被告人の勾引の規定であります。または九十六条、これは保釈の取消の規定でありますが、規定の活用を考慮すること、七は、公判調書は特に迅速に整理し、上訴記録はすみやかに上訴審に送付すること、これは裁判所の方針であります。 それから第二は、検察官に対する要望事項として、そのうち一は、関連事件の起訴はできるだけすみやかに行うこと、その二は、捜査担当の検察官と公判担当の検察官との連絡を緊密にし、特に記録の引継ぎをすみやかに行うこと、その三は、できる限り第一回公判期日前証拠書類及び証拠物の整理を完了し、相手方に対してその閲覧謄写の機会を十分かつすみやかに与えること。 それから第三は、弁護人に対する要望であります。第一は、これは主任弁護人または副主任弁護人の予定者には、当該裁判所の所在地またはその近傍に在住する弁護人を指定する等、特に主任弁護人の指定については、審理の遅延をきたさないように、配慮すること、二は、証拠書類及び証拠物の閲覧謄写等訴訟の準備をすみやかに整え、第一回公判期日においては少くとも公訴事実の認否及び証拠書類の同意不同意、これは証拠とすることに同意不同意でございますが、同意不同意の表明をすることができるようにすること、三は、期日の指定に協力し、指定された期日は厳守すること。 こういうような点が中央の二十八日九日の合同刑事裁判官の合同において意見の一致をみたところでございます。裁判所といたしましては、この点を励行いたしまして、審理促進の実をあげたい、かように考えているのであります。
○中山福藏君 ちょっとお尋ねしますが、あなたの御資格立場というのは、どういうところにいらっしゃいますか。
○説明員(江里口清雄君) 最高裁判所の事務総局の刑事局長です。
○中山福藏君 これはただいまの裁判官の会議でしたかね、それでおきめになった方針と承わったのでありますが、それはなんでございますか、政治いわゆる公職選挙法違反の問題に限って審理を迅速にやらなければならん、いわゆる特別な取扱いをなさるということなんですか、それをちょっと承わりたい。
○説明員(江里口清雄君) それは審理促進がすべての事件について必要ではございますが、特に公職選挙法の二百五十三条の二によりまして、当選者の選挙選反、それからその総括主宰者あるいは出納責任者のある種の選挙違反事件につきましては、裁判所に起訴されてから百日以内に裁判しなければならない。それから百日以内に裁判できないとしても、他の事件に優先してすみやかに裁判しなければならない、こういう規定がございまして、この種の事件につきましては、特に審理促進が法律上要請されておりますので、この事件については先ほどのような意見の一致を刑事裁判官の会同で実はみたのであります。これを励行しようということに相なっておるわけでございます。
○中山福藏君 それではちょっと尋ねておきますが、今までの選挙違反の問題は、大体百日以内になされましたかどうです。
○説明員(江里口清雄君) 百日裁判が要請されております事件で、特に国会議員の当選者の事件では一番早いのは起訴されてから百三十二日目に第一審の判決があったという事件がございます。
○中山福藏君 そうすると、それが一番早いのですね。
○説明員(江里口清雄君) さようでございます。それは第一回公判期日からは八十八日目に裁判がされております。
○中山福藏君 平均裁判日は公判が開かれてから何日ぐらいになっておりますか。
○説明員(江里口清雄君) その調査はまだできておらないのでございますが……。
○中山福藏君 これはいわゆる憲法第十四条の規定からいうと、国民全部が法の前には平等であるという考え方からいきますと、これは刑事訴訟法の規定とかいろんなほかの規定もありましょうが、大体平等にすべての国民というのは取り扱わなければならぬのです。選挙違反だけは特別に裁判して早く片をつけろということは、これは人種、性別とかその他によって国民というのは政治的にも経済的にも、社会的にも区別されないという規定から、これはまあ法律的にという文字はありませんけれども、やはりそのすべての問題は平等に取り扱われなければならぬというので、そうしなければ粗雑になるという、そこに弊害が必ず現われてくる。これは一種の世にてらう考え方じゃないかと思うのです。こういう裁判官会議で決議するというのは、そういう点はどうですか、そういういろいろの議論なかったですか。
○説明員(江里口清雄君) 憲法の十四条には「国民は、法の下に平等」という規定がございます。また憲法三十七条には何人も訊速な裁判を受ける権利があるという規定があるのでございますが、これは一般の原則でそうあるべきであることは明らかでございますが、たとえば勾留事件と不拘束の事件を考えてみますと、これは勾留事件の方を不拘束の事件よりも訊速に処理すべきであるというやはり合理的な理由があるのではないかというふうに考え、やはり私たちといたしましては勾留事件の方を不拘束の事件よりも平均すれば迅速に処理すべきことが相当と考えるわけでございます。それは選挙事件のうち特に資格に影響のある事件、すなわち公職選挙法の二百五十三条の二に規定されております当選者の選挙違反、それから当選者の出納責任者、総括主宰者の選挙違反については、これは有罪の場合におきましては、ある種の選挙事犯の有罪の判決がありますと連座の規定によって失格ということが起りますので、その資格に影響ある事件は迅速に裁判すべきであるということは、合理的なやはり理由があるわけでございまして、こういう合理的な理由のあるものについて、ある程度の例外は認められることは憲法に違背するところではない、かように解しておるわけでございまして、法もその趣旨で法の二百五十三条の二の規定も設けられてある。それでその法に従うべきことが裁判官のなすべきことだと、かような議論が大多数の裁判官の意見でございまして、その意見の一致をみたので、先ほど申し上げた方策をとろうということに相なった次第でございます。
○中山福藏君 私はあなた方の会議の結論がどういう影響を及ぼすかという是非善悪を論ずるのは、後日また質問したいと思います。ただしかし今御説明を承わっておりますと、そういう裁判官会議があったから、その結論にのっとってこの事件というものを処理していこうという考え方は、これは裁判官としては少し行き過ぎじゃないかという感じを持ったものですから、私はまあ考え方はいいのですけれども、結論を出すということは、一つのやっぱり圧力を加える。これは裁判官は独立の良心に従って当然裁判をすべきもんだから、良心を持った裁判官の行動に圧力を加えるという一つのここに政治力の結集というものが現われてきているのじゃないかという考えを持つ。ただ単に選挙違反だけを百日以内という紋切り型の言葉に拘束されてそういう決議をなさるというのは、裁判官の態度にあまりふさわしくないのじゃないか、こういう考え方を持ったからお尋ねしておる。私はほかの問題は一々御意見承わってまたいろいろと私も意見を述べたいと考えておりますが、そういうことをお伺いしておるのじゃない。ちょっとその点について一つ。
○説明員(江里口清雄君) 裁判官会議でそういう申し合せをした……、これは会同に出ました裁判官の意見の一致をみたところで、そういうふうにやろうというこをと申し合せた、そういうふうな結論が出ただけでございまして、これは別に拘束力を持つわけでもないのでございまして、迅速な方法、迅速裁判の方法はどんな方法であろうかということで、討議をいたしてそういう意見の一致をみただけでございまして、これは各裁判官を拘束するというような性質のものではないのでございます。従って裁判官の独立ということには関係……、独立を害するようなことには相なるまいとかように考えておるわけでございます。
○中山福藏君 私はまあその点についてはもうこれ以上述べませんが、結局特別の部をこれはこさえられるわけになっておるのですか。
○説明員(江里口清雄君) そういうわけでございませんで、選挙事件、当選者等の事件は、通常、たとえば買収事犯というようなことになりますと、買収者と被買収者と、それが第一の段階の買収、第二の段階の買収、こういうふうに関係者が非常にたくさんになりますので、一つの事件が三十人、四十人と一つの一連の事件がなりますので、それをほかの事件と一緒に審理をいたしますと非常に審理がおくれるという結果になりますので、この当選者の事件を担当する裁判官の場合には、できる限り事件を配点して、その事件に専念できるように、他の事件の配点を停止してやるほうがよかろうとこういうことでございます。特別の部を設けるという趣旨ではございません。
○中山福藏君 これくらいでやめておまきす。
○羽仁五郎君 花村法相に伺いたいのですが、選挙違反被疑事件の処理状況について伺いたい点が三つばかりあるのです。第一にこれは今さら申し上げるのもおかしいのですが、日本には選挙干渉の伝統が非常に強いことは御承知の通りです。それで敗戦後民主主義の時代になってしばらく選挙違反ということの検挙を検事なり、警察なんか、あまり熱心にやるべきでないというふうな占領軍などの指示などあって、一時は選挙法違反事件の検挙というものはかなり減っていた。それが、最近になって、またこういうふうに選挙違反事件の検挙ということが盛んになってきた。そこで伺いたいことが三つあるのですが、第一は法相は選挙の自由ということと、それから選挙違反取締りということと、どちらを絶対的な高さとお考えになるのか、その点一つはっきり伺っておきたい。先般来前内閣当時の法相として新聞に発表せられました意見にも、選挙法の違反を厳格に取り締るということばしばしば承わりましたが、選挙の自由についての御意見を拝聴したことがはなはだ少ないように思いますので、あるいは国民は誤解して、現在の法相は選挙の自由というより、選挙の取締りというほうに考えを集中しておるのではないかという、はなはだ失礼ですが、誤解を生ずるのではないかと思いますので、この点について十分なる御意見を伺っておきたいのです。
○国務大臣(花村四郎君) 選挙の自由については、これは申し上げるまでもなく当然なことでありまして、いかなる理由によりましても、選挙の自由を拘束し得ざることは、これは当然であります。常に自由意思に基き、そして選挙権を行使していかなければならぬということは、これは当然であり、また望ましいことでありまするので、こういう面に対しましては、私どもがとやかく申さずとも、当然にこれは行われるべきであろうと存じまするので、まあことさら自由についてどうこうというようなことはあまり申さないのでありまするが、しかしこの取締りの面に対しましては、お説のように一時幾らか取締りのゆるさというようなものを認める時代もあったのでありまするが、これに対しましては、この違反事件は取り締らなんでもいいという意味ではなくして、御承知のように自治警によって第一線の取締りが行われておったというような事情から、つまりこの自治警としての選挙違反に関する取締りがいろいろの事情から、相当に寛大さを持っておったというようなことで、違反事件もその検挙の数が少なかったというような事情がありましたことは、これは間違いのないところであろうと思います。近来は御承知のごとく国警にまとまって参りましたのみならず、ことに今回の選挙においては、選挙界の革正を目ざして公明選挙を打ち立てまして、そうしてこれが所管官庁というばかりでなくして、国民もともにこの一線に沿うて協力をしていくというような関係で、今回の総選挙が行われたというようなところから、違反事件も旧来よりもその数が著しくふえておるというような関係にあろうと思います。しかし、この取締りと選挙の自由というものとは、これは別個でありまして、それを混同して取締りを厳粛にするがために、その選挙の自由を束縛するというようなことがあってはなりませんし、またあらざるよう、われわれも今日まで努めて参ってきたわけでございます。
○羽仁五郎君 その第一点についてはわれわれの花村法相に対する敬意を高めるようなお答えを一つぜひいただきたいと思うのですが、選挙の自由はわかりきった問題だから、言わなくてもいいというようなお考えでは、なかなかただいまの御結論におっしゃいました、選挙取締りから選挙の自由を拘束するようなことが生じないということを実行していかれる上に困難ではないかと思うのです。どうですか。今後あらゆる機会においてどうかその法相御在任中に、この国民の印象に、選挙取締りのために選挙の自由が拘束せられるようなことが、これこそ許されないことである。でそういう意味で選挙の自由の尊重ということがどうか法相によって一段と国民の間に徹底するように御尽力を願いたいと思いますが、いかがでしょうか。わかりきった問題だから、やはりあまりおっしゃらんということでしょうか。
○国務大臣(花村四郎君) 御趣旨は同感であります。御趣旨の意味を実現するように心がけます。
○羽仁五郎君 第二の問題は、これは法務委員会でも従来いろいろ問題になったことなのでありますが、この選挙違反の取締りということにおいて、党派的な不公平がないかどうか。そうしてそれに対してどういうふうな是正の決意を持っておられるか。で前内閣の時代でありましたが、これはお名前を申し上げるのははなはだ失礼かと思いますが、そのケース、一つの場合として申し上げるのは、前の岡崎外相に対する選挙違反の問題、これは検察審査会などでも、それを取り上げられたというにもかかわらず、そうして一般の輿論などでも、それを相当に追求していたにもかかわらず、そういうものはほとんど問題にならない。そうして反対にこの政府に反対の立場の政党であるとか、あるいはその他の場合というものでは、ずいぶんつまらない問題まで選挙違反として取り上げられた。それらの間の均衡を失していたことが一つもないというように御答弁になっていただければ大へんに私ども安心するのですが、果してそうであるか、どうか。もしその間に若干でも均衡を失しているような印象を与えるような事件があるとするならば、それはどういうふうにして是正なさるおつものであるか。
○国務大臣(花村四郎君) ただいまの取締りに関する公正ということに対しましては、あくまでも検察当局といたしましても、注意に注意を重ねてこれが取締りに当っておりましたことは、これは事実でございまして、その取締りに対して党派的観念に立脚した不公正等は断じてないと私は申し上げてよろしいと思います。ことに、今回のこの選挙違反の事例を見ましても、むしろ検挙もしくは拘束されておりまする違反者が民主党に割合に多いというような(笑声)事実から見ましても、その取締りが少くとも今の政府において公正でありしことは、雄弁にこれが私は物語っておると、こう申し上げてよろしいと思います。で、ありまするから、そういう御心配は一向なさらんで私はよろしいのではないかと思います。
○羽仁五郎君 それはとんでもない誤解である。民主党に選挙違反が多いというふうなことを、民主党御出身の法相が法務委員会でおっしゃるということは、私はよほど慎重に伺わなければならないと思うのです。それをもって公正の証拠とせられるというのは、いかなる論理に基くものであるか。これは反対に民主党がそんなに腐敗した政党であるということを御自身が告白せられておるにほかならない。それは容易ならざることではないかと思うのです。けれどもその問題は私の伺いたいと思うことでないから、しばらくおきますが、もう少し重大な責任を負われる法相として、責任を持った答弁をしていただきたい、事実上としてこの選挙取締りというものが政党政派に片寄らないということは、これは人間である以上、警察官なり検事なりにおいて、これはきわめて至難であって、それを求めることは、従ってそういう問題についてどこに困難があるかということは十分認識せられて、そうしてそれに基いて私に納得せられるように答えていただきたい。けれどもあまり繰返して申し上げてもなんですから、第三の点を伺いたいと思います。 現在選挙取締りというものにおいて、いわゆる官憲ですね。警察官、あるいは検事そういう人たちがあたかも自分たちが選挙をやるかのような印象を与えつつある事実は、あなたはないというふうに断言せられますか。選挙よいうものは警察官や検事がやるものではない、それは国民がやるものである。これは過去の日本においては、あたかも選挙というものは警察官なり検事が、検事が指揮し、警察官が監督して、国民はおずおず選挙をやっておるという印象を与えておった。それをそういう傾向の復活のおそれ全くなしというふうに御断言になるか。それともそういうおそれ決してなしとは言われないが、それに対してはどういう措置を講じておるとお答えになるか。念のために申し上げておきますが、そういうおそれは断じてあり得ないというようなお答えをいただくと、また私は激越なことを申し上げなければならないので、念のために申し上げておきます。われわれは法務委員として先般本院の命によって視察をしました当時に、検察局の責任ある地位にある方々の御意見として、先般の警察法の改正というようなものによって、警察官の全国的な集中ということができてきたことが、再び古い時代の選挙干渉というような忌わしい傾向に動かされるのではないかということを非常に憂えておるという良心的の御発言がありました。これは本院に対して報告をしておいた事実でございますが、私はまじめに考えれば、やはりそういう心配をするのが良心的な態度だと思う。そういうことが起ってきてから、それは改めたいというよりも、そういうことが起らないように、やはりなすべきことはなされることが、御職務上当然であろうと思うので、この第三の点を伺ってそうして結論として申し上げることがあります。
○国務大臣(花村四郎君) ただいまの御質問でありまするが、警察官並びに検察官が選挙を先に立って、国民よりも先走ってという意味ですか、先走ってやっておるという感があるのではないか、こういう御質問であったようですが……。
○羽仁五郎君 そうではないのです。公明なる選挙を誰が行うのか、それは国民が行うのであって警察や検事の力で選挙を公明にすることができるのかということです
○国務大臣(花村四郎君) 公明選挙を行うということは、これはただに国民ばかりではなくして、取締り官憲のすべての人がやはり協力してやらなければいかないのじゃないか、公明選挙のうちには、もちろんより正しい取締りをやらなければならぬという意味も、これは私は含まれておると申し上げてよろしいと思います。でありますからこの公明選挙の線には、やはり官憲は官憲という取締りの立場に立ってやはり取締りを正しく行なってゆくという心がまえで、公明選挙を実現すべく努力をし、また国民も公正なる立場に立って情実因縁、あるいは金力等から離れて、そして真に自由な意思で自分の信頼するところの候補者に投票をするということで、やはり選挙権を正しく行なっていくという態度で進まなければならぬことも、これまた当然でありまして、従って公明選挙はこういう意味においてその選挙に関係を持つすべての人がやはり正しく行うという意味であろうと存じます。しかして私は選挙の方面から言えば、これは相当に何回もやっておりまするし、体験を持っておりまするが、過去においては選挙干渉のような忌むべきことも往々にしてありましたが、まず最近においては私はこういう点はやはりよりよく是正されてきておると、こう見ていいと思うのですが、まあ今回の選挙も御承知のようにやはり警察官にいたしましても、自治警から国警に移管をしたというような関係もありまして、なかなか昔のように中央の指令が下まで徹底して浸透をしないようなやはり気持にもなっており、形にもなっておるというようなことで、昔のいわゆる中央から地方に向って選挙干渉の指令が行われた時代とは、相当隔たりがあるとこう私は申し上げてよろしいと思うのであります。まあ、こういう意味において今回ももちろんそういう選挙干渉がましいようなことは断じてなかったと、こう申し上げていいと思います。もしありとするならば、その具体的の事例をおっしゃっていただけば、それに対して十分に調査をいたして、しかるべき答弁をいたしてもよろしゅうございます。
○羽仁五郎君 その旧憲法時代のような選挙干渉というものは今日それほどのものはないだろうということですが、まあそれほどのものがあっちゃ大へんなんです。しかし全く私の伺っているところその反対なんで、われわれが努力すべきことは、選挙の自由をどうして実現するかということに、今日の民主政治家は唯一のそして最大の目標を置くべきではないか。それを選挙違反の取締りなどによって選挙の公明を期そうなんというお考えじゃ、やはり旧憲法時代とあまり頭の切りかえができていないのではないか。昔やったようなことをまた繰り返しているのではないか。そして選挙の自由に関する政府のセンスというものは、私は国民を必ずしも納得させていないと思う。その最も顕著な例は、最高裁判所の裁判官に対する国民審査の実際行われている形です。あれは明瞭に、つまり選挙は秘密でなければならないという憲法の命ずるところを侵しているのではないのですか。平気にそれをやらせている。各地においてそれを実際行なっている。われわれに向って事例をあげようというふうに法相がおっしゃるということは、はなはだ責任を回避したもはなはだしい。そういう事例について政府こそそういう事例を直ちにわれわれ議員に報告せられる責任があるのではないか。われわれが伺っているのも、その意味で伺っている。最高裁判所の裁判官の国民審査の実際において選挙の秘密を破っている事実がないとおっしゃることができますか。選挙の秘密はりっぱに破られておりますよ、各地において。そういうことを平気でやっておられて、それで選挙の自由というものを実現する確言があるというようにおっしゃることは私はできまいと思います。 私は最高裁判所についても、あとで御意見を伺いたいと思のですが、公職選挙法の違反事件の処理状況というような問題につきましても、第一にわれわれが伺いたいことは、選挙の自由がどれだけつまり実現されつつあるかということを伺いたい。ところがその点についてはおそらく何らの御説明がないだろうと思う。かつまた、選挙違反事件の検挙件数が多いときと、それから検挙件数が少いときと、選挙の自由がどっちにおいて実現されておるかということこそ、民主主義をもし標榜されるならば、その政府が最も関心を集中しなければならないのであって、選挙違反をやった人間が一体どのくらい検挙されているかなんということを勘定しているような政府に今日国民は税金を出しているつもりじゃないのです。ですから結論的にそういう意味において選挙の自由を実現するためにどういう御努力をなされるか。それから選挙の自由を阻害するようなことはすべてやめる。で、私は実際問題として今申し上げた三点、ことに第二点、第三点、政党政派によって選挙の取締りの公正を期するということはなかなかむずかしいことです……、実際問題として、神様でない以上、人間である以上…… それから第三の選挙に官憲が干渉する、あたかも警察官や検事が選挙の公明をやるというように選挙を監督するようなこと、これこそ最大の腐敗ですよ、政党間の腐敗どころじゃないですよ。民主党が今回選挙違反をそんなに大ぜい出されたということを初めて私聞いて驚いているんですが、政党の選挙の腐敗というものは直すことができる。しかし官憲が選挙に干渉してくるということは、われわれ国民が直すことができないのです。それがすなわちファッシズムですよ。ところが日本ではそういうことが一番大きな危険だということを十分政府においても、あるいは裁判所においても、ことによると十分の御認識がないのじゃないかということを今回の選挙においても私は痛感する。この選挙を政府や検察官や警察官が監督することによって公明を期することができるなんという考えは、この際一掃せられるべきではないかと思うのですがどうでしょう。そしてそういうような方法によって、選挙違反事件の検挙によって、選挙の自由というものを実現することはきわめてむずかしい。しかもややもすれば、それは選挙の自由を阻害するおそれがある。すなわち百害あって一利がないというような選挙事犯の検挙方針というものを今後も続けていかれるおつもりかどうか。その辺について結論的に御意見を伺いたい。ことに政党政治家として、今御自身おっしゃったように、しばしば選挙を重ねておいでになりました体験に基づかれまして、この点については必ずお考えがあるだろうと思う。政党間の選挙の腐敗ということよりも、官憲が選挙を監督するということがはるかにおそろしい。そういうことになったなればこそ、日本がああいう戦争に引ずり込んでいかれた。そしてまた今日そういうふうにして新たにファッショが発生するということは法相においても断じて許されないところだろうと思う。そうすれば政府が主として、もっぱら努力しなければならないのは、選挙の自由をいかにして伸ばしていくかということにあくまでも努力を尽されるべきで、選挙違反事件を検挙することによって……、しかも検挙はずいぶん多い。そしてややもすれば警察官、検事が国民の上に支配するというような弊害は防ぎにくい、そういういろいろな弊害がある。選挙取締りというものを一生懸命やって、それで選挙の自由を失ってしまうという方向にいかれることは、断じて阻止せられる私は御決意だろうと思うのですが、どうでしょうか。
○国務大臣(花村四郎君) 選挙の自由を、取締ることによってこれを維持していこうというような気持は毛頭ありません。またそういう筋合いのものでもございません。選挙の自由の侵すべからざることは、これは当然でありまして、この自由に対しましては、いかなる事情があろうとも、またいかなる方法をもってするも、これを制限し、もしくは干渉がましいことをいたしますることの不当でありますることは、お説の通りであります。あくまでもやはり選挙の自由はこれを守っていかなければならないと私どもも考えております。そうしてまた、官憲が選挙干渉をやってはならぬということも、これも当然でありまして、お説の通りでありまするが、しかし何か選挙干渉に関する事実でもおありになりまするならば、それを一つ具体的におっしゃっていただきたいと存じます。
○羽仁五郎君 それはわれわれが政府に向って伺い、政府が御説明になる責任がある問題なんです。私はそれじゃ最後に、法相に伺っておきたいのですが、この今回の選挙の場合の取締りの場合に、おそらく法務省は全国の検察庁などに指示を与えられたことじゃないかと思いますが、そういうことはありますか。あるならば、その指示を与えられる場合に、常に検察官が選挙の自由という大原則を絶対に忘れることがないように強調せられてあるのでしょうか、どうでしょうか。
○国務大臣(花村四郎君) もちろん選挙の自由を犯すことのないように訓示の中でうたってありまするし、また取締りももちろん厳重に行わなければならないということにあわせまして、そうしてその取締りが行き過ぎのないように、また人権をじゅりんするようなことのないように、そういう事柄も強く要請して、訓示の中にも入れてあったわけであります。
○羽仁五郎君 先ほどちょっと言及しました問題につきましてお答えいただいておきたいのですが、最高裁判所の裁判官の国民審査の実際に行われている状況の上で、選挙の秘密を侵している事実があると私は考えますが、それはどういうふうに改められるおつもりですか。
○国務大臣(花村四郎君) その事実はどういう事実でしょうか。私は今までそういう事実を見てもおりませんし、聞いてもおりませんが、どういうことでしょうか、具体的におっしゃって下さい。
○羽仁五郎君 そういうことを法相が御存じがないということは、実に戦慄にたえない。国民としてあたなに全権をおまかせしてあるのに、あなたがまあいろいろと御多忙であるのでしょうが、そういう大問題について御関心がないというのは、あなたを補佐せられる方々の責任におそらくなりましょう。今回の選挙の際に行われた最高裁判所の裁判官の国民審査の際に、棄権したい者は棄権してもよろしいということを発表せられておる。ところで、御説明申し上げる必要があるでしょうか、御承知じゃないのですか。
○国務大臣(花村四郎君) 知りませんね。そういう棄権してもよろしいというようなことを、いつ何びとが、どこで言うておりますか。(笑声)それを一つ具体的におっしゃって下さい。
○羽仁五郎君 これは新聞などを通じてそういうことが一般に行われた。ところが事実問題として棄権をする、つまり棄権したい人は紙を受け取らなければいい。紙を受け取らないという人は、すなわちその審査を受ける裁判官に対して、それに賛成しない人であるということが明らかである。そうすれば紙を受け取らないということは、すなわち前内閣で任命せられた最高裁判所の裁判官に対して不信任の意思を持っている者である、そういうことだからみな受け取って、そうしてしるしをつける。しるしをつけるということになれば、大体賛成するという方法になってしまう。そういう事実がこれはしばしば新聞にも報道されていたことだし、世論も問題にしたことです。私のごとくはなはだぼんやりしている人間でさえ、それを気づいて非常に驚いたことですから、そういうことに責任を持っておられる法相、あるいは法相を補佐せられる方がそういう事実にお気づきがないということははなはだ遺憾である。世論の批判をも考慮せられてお答え願いたいと思います。
○国務大臣(花村四郎君) なるほど選挙場で審査投票に関する紙を受け取らざりし者のあることは私も聞いておりまするが、これはその本人が受け取らんというものを、しいて渡すわけにもいきませんから、これはまあやむを得ないと思うのですが、しかし少くとも選挙に関する秘密をあばいたというようなことには、紙を受けとらんという一事をもって私は断ずるわけにはいかんと思うのですが、そのほかに何かそういう事例がありまするか。紙を受け取らなかった者が相当にあったという話は、私も聞いているのですが、これはまあしいて受け取らんと言うものを渡すわけにもいくまいし、そうしてそれが選挙の秘密には何らの私は関係はないと思うのですが、それはどういう意味になりましょうか。
○羽仁五郎君 問題を本質的なところへ引き戻しますと、最高裁判所の裁判官の国民審査という、現在行われている制度の上に欠陥がないか。そうしてその欠陥が選挙の秘密を知らず知らずの間に侵している事実がないか。そういうことは世論の批判となっているのです。ですから法相として、またそれを補佐せられる方々として、また最高裁判所御自身におかれてももちろんのことですが、そういう世論に対しては敏感にそれを受け取られて、そうして御研究に相なっていることと存じたのですが、何ら世論に対して敏感でない。それに対して何ら御調査もない。あべこべにわれわれに向って質問せられるようなことであるから、私はこれ以上質問しませんが、しかしながらおそらく最高裁判所御自身なり、あるいはそういう問題を直接に扱っておられる方が、そんなに無神経で世論を無視しているというようなことであるということは信じたくないのですが、どうですか。もう少し御答弁のありようがあるんじゃないですか。
○国務大臣(花村四郎君) この裁判官の国民審査の方法が、ただいまの方法でいいか悪いかという問題は、これはいろいろ議論もありまするし、そうして私どもも実際の上から考えてみて疑問を持つものもございます。従いましてこういう制度に関しましては、もっとこれは研究して、何とか改善する方法があるんじゃないかというようなことは、私どもも常に考えておるのでありまするが、これをただいま取り上げて何とか処置をするかどうか、また、すべきであるかどうかというところまではまだ考えておりませんが、しかし大いに考える余地のありますることだけは、ただいまでもやはりそう私も考えております。
○羽仁五郎君 これを例に引いたんです。最高裁判所の裁判官の国民審査の場合の選挙の自由というものは、十分に尊重せられていない、その責任は政府にある。それに対する世論の批判に対しては、もっと敏感であられる責任があるということだけを申し上げておきますが、最高裁判所の方に対しても、これは参考として御意見を伺っておきたいと思うんですが、最高裁判所の裁判官は、おそらくこれも新聞を通じて国民に御発表がありましたが、最高裁判所の裁判官に対する国民審査は、不信任か信任かということを問うているのに、世間に誤解があるようだ、不信任だという明らかな事実があるのだけ不信任をしてくれればいいんだ、それで信任をするという意思を問うているんじゃないんだということを最高裁判所の長官が新聞にお書きになっていたように思う。私は先ほど中山委員からも御批判もありましたが、裁判所に対するわれわれの期待というのは、もっと高いところにある。で、前の天野さんが文相をしておられたときだったが、「静かなる情熱」ということを言われましたが、最高裁判所は、やはり情熱を持たれることは大いに期待するんですけれども、静かなる情熱を持せられたい。最高裁判所の裁判官に対する審査が、不信任だけを聞くので、信任を聞いておるのじゃないというのは、実に国民をばかにしておるのもはなはだしい。私はここで立法府において司法府を批判しようという僭越なことを申し上げているのじゃありませんが、おそらくこれは私見で発表せられたかと思いますが、いわゆる国民が最高裁判所の裁判官の審査の現在の方法について非常に悩んでおりますことは、花村法相も最高裁判所においては、国民のこの悩みについて深い同情を感ぜられる責任があると思う。その国民の深い悩みですね、つまりろくに知りもしない人に対して判断を下せということを国民に強いておられる。国民は非常にそれを良心的に考えて、おれはその人がいい人だということもできないし、悪い人だということもできない。そういう人は選挙の自由を尊重せられるならば、判断を自分は保留する、つまり棄権をするということをお認めになるのが選挙の自由を尊重せられる当然の意図だと思うのです。それを信任投票でないのだ、ただ不信任かどうかだけを聞くのだ。だから明らかになる不信任の根拠をお持ちにならない方は信任して下さいというのは、国民の悩みに答えるゆえんじゃないと思う。ですからこの制度につきましてやはり国民がその裁判官の実績について知らない。従ってその人がいい人か悪い人であるかということを判断できないというのが、国民の本当の偽わらざる気持であるとするならば、その偽わらざる国民の気持に答えるように制度を改めてゆかれるということを急がれることが必要だと思う。国民の悩みを平気で放っておいて、十分研究してみると言われるようじゃ、責任を忠実に果しておられる、憲法の命ずる公務員の職務に忠実であるとは言えないのじゃないかと思う。この点についてもしお答えがあるならば、お答えいただきたいと思います。私の質問の本来の趣旨は、裁判官の審査じゃないので、公職選挙法の問題なんですが、公職選挙法についても……。私は最後に申し上げたいことは、どうかもう少し法相なりあるいは最高裁判所なりが、国民の選挙の自由ということが実現せられるように御努力がありたいということを願って、私の質問を終ります。
○中山福藏君 先ほど私が申し上げたことで誤解があるといけませんから、私が裁判官の集会の結果をいろいろと意見を申し上げたのですが、これは憲法の第七十七条の最高裁判所が訴訟に関する手続とか、弁護士、裁判所の内部規程、紀律及び司法事務の処理に関する事項なるものについてのルールをおきめになったということに対する批判じゃないのですから、その点誤解しないように一つ、私も弁護士として立場がありますから、十分一つお願いしたいと思います。そこで花村法相に一つ実例をあげて私お伺いをしてみたいと思います。これは名前をあげますというと、その人のひいきをするようにへんぱな気持で質問をするのじゃないかという御疑念を持たれては困るのですから申し上げませんが、近ごろ昭和二十四年の五月の二十四日ですか、廃止が施行されたと思っております。出版法、新聞紙法というのがないわけですね。それから至るところにローカル新聞ができまして、この議会に出入りしておられるような大新聞は別として、いなかの小さい新聞があちらにもこちらにもできまして、これが恐喝をやって選挙妨害をやって、手も足も出ない善人がたくさんあるわけです。そうしてそれが公職選挙法のうちに、新聞雑誌を利用して選挙を妨害するということに対する罰則は設けられております。ことに名誉毀損という刑法上の立場から見たら、これも取締りができるわけです。ところが一週間に一回、一カ月に一回、六カ月に一回選挙目当てにして出版するというような新聞がありまして、何かそのつど書物をこしらえてこれを買ってくれ、あるいはこういうことを発起するから、その発起人の一人に加わってくれ、金を五万円なら五万円くれということをやる。それを拒絶しますというと、直ちにあることないことローカル新聞に書き立てて、ことに今度の地方選挙にはそれが多い、手も足も出ない、こういうことがたくさんある。今度の長野県の第二区の選挙においてもそれをやられて落ちた代議士もある。現在私が告訴した雑誌もある。これはどういうわけかというと、その転載のもとの記載者でありまするローカル新聞を種にして書いている。このローカル新聞というのは、金もうけをしなければならないから、根も葉もないことをでっち上げて書いている。こういう出版法や新聞紙法がなくなったということを奇貨として、、どうもこういうことから日本のいわゆる新生活運動というものを阻害するということの一つの例ですが、日本の社会の道徳や、法律や、宗教が、今日野たれ死んでいることが、現在の日本人をどういうふうにもって行きつつあるかということは、法相すでに御存じの通りである。私はこういう事柄について、これはよほどお考えにならぬと、幾ら政府が力こぶをお入れになっても、なかなか国民思想というものは……、私は人間のいわゆる平和な社会状態というものを招来するということは不可能じゃないかと、実は非常に心配している。今日全国にどうですか、ローカル新聞の数なんかはどのくらいあるかということをお調べになったことがありますか、法務省では。私はこれは大へんに害毒を流していると思う。私のところに三千五百円で年鑑を売りつけに来た。あるこれは第四流くらいの相当の五、六万部出している新聞ですが、それを拒絶したところが、その三日目にありもしないことを書き立てた。そういう工合なんです。それを転載したところを私は一時間のうちに告訴してみた。ところがその雑誌社は三人特派員を派遣して、その事実を調べて全部それが事実無根だということがわかったと言って帰って来られた。これは一例でありますが、いろいろと例をあげておっしゃればたくさん種を持っておりますが、こういうことは大新聞にはないのですが、ややもすると、いなかの小新聞にあって、善人は非常に困っている。金を出さんと悪口を書く。これに対する何か特別な立法をなさるというお気持は法相ございませんか。あるいは何らかこれに対して手を打つということは大事だと思いますが、そういうことはありませんか。これは選挙違反に非常に関係がある。
○国務大臣(花村四郎君) ただいまのお説ごもっともでありまして、私が申し上げたいと思うようなこと、みんなおっしゃられたので、もうすべて賛成でございます。ぜひ一つ何とか新聞紙法等によって取締らなければならないのじゃないかということを私も考えておりまするし、また社会の多くの人々も、そういう口吻を漏らす人が非常に多いので、何とかこれは処置をしたいものだと考えております。
○中山福藏君 それからもうこれは実質上の質問に入っているようですから……。羽仁さんが言われましたので、私もその点はちょっとお尋ねしておきたいと思います。これは大麻国務大臣がおいでになってお尋ねするのが当然ですけれども、まあ一つ近所つき合いというような気持で、法相から御答弁をわずらわしたいのですが、実は今度の公明選挙とおっしゃいますけれども、警察官のうちには、まだおかみ根性というものが抜けていない。少し荒い言葉で被疑者が文句言うと、お前はおかみに反対するのか、こういう文句を使っておりますね。これは実際私の案内の選挙問題について、私がその座談会に行ったのがあるいは種になりはせんか、犯罪の種になりはせんかと思って調べられた婦人があるのです。そうすると、その調べの状況を聞いてみますというと、十人ぐらいの刑事が選挙対策本部から派遣されまして、一人の若い女を取り巻いて質問するわけですね。逮捕状も拘引状も何も出ていない。そうしておいて朝から晩まで調べて夕方に逮捕状というものを見せるようなまねをして引っこましたというのですね。理由も何もつけていない。そして四日間これを勾留した。その選挙違反の調べの状況を聞いてみますと、座ぶとんを敷いているのを、突然座ぶとんをさっと引くのだそうです。そうするとからだがひっくり返るのですね。そうしておいて、それがふだんから糖尿病で、血圧が高い。とうとう病院に連れて行って、そして診断を受けて、初めてこれを四日目に釈放したという事実がある。これは私が握っているのだから間違いない。そうしておいて自白しなければ、お前は逮捕状通りここに勾留するのだというわけで、四日間とめられた。それでその参考人として呼び出されましたのが、その若い女なんです。そしてその座ぶとんを引っぱられて、ひっくり返って、どういう質問を受けたかというと、お前は去年結婚したのか、結婚というのはどういうことをするかというような事件に関係のないことをやっている。そして若い二十二、三の、これはある会社の、工場の班長をしている人の奥さんらしいのですが、それが泣き狂うて、全く喪心状態になって帰って来た。十人も取り巻いて、取り調べて、そして反対すると、お前はおかみに反対するのかと言う。そういうことが現在あるのですが、こういう事件が私はあちらこちらに起っては大へんなことになると思う。やはり旧帝国憲法時代のおかみ思想を持っているのですね。これは私は大麻国務大臣にはもちろんのこと、さらに検事にはそういう方は、相当の常識を備えておられますからないと思いますが、しかし警官にはそういう人が多いのです。だから一つ大麻さんにも御相談をなさいまして、こういうことをやった人間は根こそぎ私は首を切る必要があると思う。どうかこういう点を一つ御注意下さいますように実例をあげてお話申し上げておきます。何かその点について法相の御意見がございましたら……。
○国務大臣(花村四郎君) この問題も御説ごもっともでありまして、私もそういう同じ事例の問題に、ぶっつかって、やはりただいまおっしゃられたようなことを感じておるのでありまするが、これはどうもやはり警察官の教養をもう少し高めるというような点に力を注がなきゃならぬと思うのですが、それがためには、やはり再教育をもう少し徹底的にやったらどうか。もっとも今日も再教育は、やってもいるのであります。やっているようではありまするが、どうもどちらかといえば、下の階級に属する人々ですか、第一線に立っておられる人々ですか、そういう人々はどうもただいま言われたような、やはり好ましからざる発言をし、あるいは行為をし、取調べをするというようなことが、往々どころじゃない、どうも非常に多いように思えるので、まあ私は今日最も考えなければならないことは、この警察官の素質をやはりよくし、地位を上げるということが、これは大事なことはないのじゃなかろうか、こう考えておる一人であります。これはまたよく警察庁当局とも話し合いまして、この方面に対する最善を期したいと思っております。
○中山福藏君 私は法相に一つお願いしておきたいことがあるのですが、逮捕状というものはもちろん裁判官の、これは署名、捺印でこれが発せられて、そして大体基本的人権を尊重するという意味から、これは連行なさるということになるのじゃないかと思うのです。このごろはだんだんもとに返りつつあるのでありまして連行ということが盛んにはやる。連行されて、これは憲法でも拷問とか、無理やりに強制的に自白させることはできないということははっきり書いてあるのですけれども、気の弱い人間は連行されて朝から晩まで調べられて、そしてお前は白状しなければ逮状捕を執行する、こう言われたらたまったもんではない。そこでやはり逮捕状を出すだけの証拠を一応固めておい、正式に逮捕状を持って出かけるというのならいいが、逮捕状も何もないのに、連行々々ということで連れて行かれましたら、婦女子並びに気の弱い男というものは、結局長く引っぱられて勾留されるのじゃないかというので、自白というものが現われてくるのじゃないかと思うのです。そこで将来嫌疑のある人は少くとも周囲の証拠固めをやって、これだったら逮捕状出しても差しつかえないとし従来はめくら判を大体判事が押されて逮捕状というものは発行されておったのですが、近ごろは一応その点についてもやにり出すに値いする理由があるということでなければ、逮捕状に出さないというように去年なったように考えておりますが、私はやはり責任を持、て、判事が逮捕状を出すに当っては、これだったら間違いはないと、そうしないとただいま検察当局ですか、法務省からお出しになった説明が、全員を調べているとか、これだけの人間は受理したということが、とほうもない疑いを受けている人々の数というものを、そういう点から同じようにあげてみますというと、大へんな数になってくると私は思うのです。これは連行連行ということになれば、結局羽仁さんが言われましたように政党政派が盛んになればなるほど、いろいろな問題というものが、上のほうから命令しないでも、おれは今度政府が民主党になったから、あの人は今国警だから中央の指令によっていつ首になるかもわからん。で下の者は上の方の者の顔色ばかり見るようになります。何とかして手柄を立てたい。今度の選挙でもそうです。隣の警察が選挙違反を一つあげたというと、必ず隣があげていきおる。そうしないと顔が立たんという考え方を、貧弱な警察官は持つようになる、人をあげることが競争になる。でございますから、将来一つ裁判所とも御相談たまわりまして、逮捕状を出すだけの証拠のあがらないものは、連行という形で引っぱらないということに、これはしていただかなければ、公明選挙ということに泥を塗るのじゃないかと、実は私は非常に憂えるものであります。やはり本人の自白というものが唯一の証拠になる場合においては、その事柄に証拠にならないという憲法の規定の通りに、私は周囲の証拠固めをやって、これだったら間違いないというところに持ってこなければ、やはりむちゃくちゃに国民を引っぱっていくということはどんなものであろうかということを考えておりますか、一つ多年在野法曹にあって、そういう点については種々な経験を持っておられます法務大臣でありますから、一つ高邁な御識見と御決意をこの場合承わっておきたいと思います。
○国務大臣(花村四郎君) ごもっともなお話でございまして、この逮捕状については昨年でしたか、一昨年でしたか衆議院でも大いに論争いたしまして、そうして、刑事訴訟法中逮捕状発付に関する一部を改正したように記憶をいたしておりまするが、私は一昨昨年欧米に参りましたときにアメリカで逮捕状についての研究も幾らかいたして参りましたので、その研究の結果を、私の逮捕状発付に関する意見を衆議院の法務委員会で述べておりまするが、速記録をごらんになればおわかりになると思いますけれども、まあ日本の逮捕状というのは要するに逮捕をしていってそうして自由を拘束して、初めて自白を求めて証拠を集めるというようなことで、証拠集めをする一つの手段方法として逮捕状を出すというような傾きがありまするので、まことに遺憾だと思うんですが、少くとも逮捕状を出しまするについては、犯罪ありと思量し得べきやはり相当の信憑を得てからに出すべきが当然でありますることは、これは多く申し上げるまでもありませんが、アメリカ等におきましては、要するにすべての証拠を収集して、そうしていよいよ犯罪は成立しておるものであるという的確なる証拠を握った上で逮捕状を出すということに相なっておるのでありまするが、これが私は当然だと思う。でありまするから、従って逮捕をして参りましても、逮捕して参りまして身柄を拘束しても、保釈金を積めばすぐ保釈で出す。出しても、しかし証拠の煙滅等のおそれはないというようなことで、アメリカはむしろもう逮捕をすれば、必ず犯罪が成立するものであるというすべての証拠が収集されておるというようなことになっておりまするが、かくあってこそ、初めて人権じゅうりん等の問題も出て参りませんし、そうして不当な、あるいは過酷の取調べといったようなものも出て参りませんし、なるべくはこの米国式でやはりやるのが一番いいと思うので、ここへやはり日本の逮捕に関する方途も進めてもらいたいと私は常に念願をいたしておるのでありまするが、こういう意味で日本の今日行なっておる逮捕状の発付というようなことは、あまり私どもも適当であるとは考えておりません。おりませんが、しかしさてそれではアメリカ式に逮捕をする前にすべての証拠を収集して、そうして犯罪が的確にあるものであると認めらるる信憑を得て逮捕状を出すというようなところまで、どうして持っていくかというような点を考えてみまするというと、あるいは予算の点、あるいは科学捜査に関する方法等、あるいは取締り官憲の素質の点、こういうあらゆる面を考えてみまするというと、なかなかどうも理想は理想として、理想へは近づけないではないかというようなうらみが多分にあると申し上げていいと思うのでありまするが、とにもかくにもその理想に向って一歩々々進むということであらなければならないと思いまするので、法務委員の各位におかれましても、やはりその方向に向って御協力をお願いいたす次第でありまするが、さらにまた、本来から言えば、逮捕状がなければ警察等へ連れて行くことのできないことは、これは中山委員も御承知の通りでありまするが、まあこの連行という意味は、要するに任意出頭の意味だろうと思うのですが、その本人の自由意思に基いて警察に連行するのであるという形をとっておるのでありまするが、その実はやはり強制的に引っぱって行く。これは逮捕状を持っての逮捕と同じようなやはり実質においては関係になるのでありまするが、表向きはこれはまあ任意出頭というので、本人の自由意思に基いて行くのであるから、さしつかえはないじゃないか、こういうことに相なっており、また、こういうことがひんぱんに今日も至るところで利用せられております。おそらく利用しない警察というものはないでありましょう。が、こういうことも大いに改善していかなければならないことを痛感しておる一人でありますので、こういう方面に関しましても、関係当局と一つ折衝をして、なるべくそういう無理のないこと、違法処置をとらざることに向って、私も一今後最善を尽して、いきたいと考えております。御了承願いたいと思います。
○中山福藏君 きょうは齋藤長官はこういう人権に関する重大な問題を議せられるところにおいでになられないのですか。警察の長官です。何かこれは……御承知じゃないんですか。
○委員長(藤原道子君) 中山委員にお答えいたします。処理状況についての御説明を聞いて、それに対する質問というようなことでございましたので、きょうはお呼びしていなかったのです。
○中山福藏君 次回に必ず一つお呼び下さいますよう。
○委員長(藤原道子君) かしこまりました。
○中山福藏君 私ついでに、きょうは序の幕ですけれども、せっかく法務大臣が見えておられますから聞いておきたい。 第一のいわゆるくだらない名誉毀損の問題ですが、大体英国では名誉毀損をされた場合は、必ずその名誉毀損をやられた人は告訴せよという法律がある。必ず告訴しなければならない。だから日本もそれくらいの私は厳格な規定を設けて、名誉毀損をされた者は必ず一つ告訴して、この社会から害悪を除くという風習を一定の期間やる必要があると思う。アメリカなぞそういう規定はあまりないようですけれども、これはアメリカでは一たび名誉毀損が成り立ったら根こそぎやられて、名誉毀損をやった人は破産だというところまでやるらしい。英国では必ず告訴しなければならないという規定があるらしい。私は英国式に日本というものもやはり国民訓練という意味において、これはでたらめを書いた人間とか、ふまじめな人間を懲罰する、いわゆる社会悪を除去するという意味で、そのうそを言う人間をこの世の中からたたき出す必要があるので、そういう立法をなさる御意思があるかどうか。あるいは御研究になるという気持があるかどうか。一つ英国などの制度を御参考にされて検討を願いたいと思います。どうでしょうか。
○国務大臣(花村四郎君) まことに貴重な御意見でありまして、それを参考にして十分にそういう方面の考慮をいたしたいと存じます。
○中山福藏君 けっこうです。
○羽仁五郎君 今の問題に関連してですが、中山委員から実際の実例をおあげになって御質問があったのですが、警察官の人権じゅうりん、それからそういう人権じゅうりんをやるような警察官は平気で、平気でというのは失礼かもしれないけれども、そういう警察官によって援けて仕事をしておられる検事の方々の活動の実情というものを、これは前からこの法務委員会で問題になっていることで、法制局長官の御意見を伺ったり、いろいろ議論してきたんですが、これを根絶しなければならない。でこういうような問題を絶えずここでやっているということは国民に対してもまことに恥かしい、顔向けのできない問題です。警察官による人権じゅうりん……。で人権擁護局の御報告でも累年それが増加している。従って法務当局におかれても、これを根絶せられる御工夫をしておいでになることと存じますが、ただいまどんな御工夫をしておいでになっているか、それを伺っておきたいと思います。 それから関連をして、これはなかんずく選挙関係の場合に、たとえばここへ下さったこの表を見ても、法務省刑事局でお作りになった三十年二月施行衆議院議員選挙事犯の統計表、選挙事犯の被疑事件なんです。これはそういうときには被疑と言われることは平気で落される。やはりそういう点にもどうも当局御自身のセンスが国民のセンスと大分食い違っているんじゃないか。明らかに有罪にあらざる、有罪という判決のあらざるものは無罪であるということが民主主義の原則であると思うのですが、有罪の判決がない人を平気で罪人と同じように扱っているということを平気で続けていられるということと関連して、第一点は今の、この警察官が人権じゅうりんをやった。あるいはその疑いがあるというような場合に、どうしておいでになるのか。あるいは今後どうしようというおつもりか。これは交通事件の取締りなんかにもひんぴんとしてあるのです。で、たびたびこれはもう論じて伺ったからよくわかっているのです。まあ点取り主義みたいなものを根絶するということも必要であろうし、それから人権じゅうりん的なものを持ってきた警察官というものを、やはりマイナス点をつけるということも必要だろうと思うのです。あるいは人権じゅうりん的な疑いのあった事件は、事件として立てることを許さないという方針をとられることも、これは外国にも例のあることだし、さまざま御工夫になるべきことはあると思う。それを怠っておられるというふうには信じたくないので、その点一点伺いたい。 第二点は、続けて伺っておきますが、第二点はこれと関連して、どうも私最近聞くところでは、警察において今のようにお年寄りの女の方を不当に引っ張ったりすると、われわれはあの警察に引っぱって行かれると、監獄に入ったと同じようになってしまう。それから拘置所というのですか、未決の方が入っているところでも、監獄と同じような扱い方をやっている。それをいろいろ考えてみるというと、監獄の扱い方というものはさっぱり民主化されていないのじゃないか。だから警察の中がもっと民主化され、あるいは未決の方がおられるところをもっと民主化されるためには、根本的に監獄の中の扱いがやはり民主的になっていないのじゃないか。そう考えてみると、この監獄法というのが、その施行細則というのか何というか、そういう法律とか、規則というものも昔のものをそのまま使っておるのじゃないか。従って第二点として、そういう人を拘束するような刑務所だとか、あるいは未決の方がお入りになるところ、あるいは警察、そういうところに関する法律及び規則ですね。そういうものが古い民主主義以前のものがあるならば、それを民主主義的なものに改正せられる、あるいは廃止せられるという御研究が進んでいることじゃないか、あるいは御計画もあるのじゃないか。その点も伺っておきたい。以上二点について御答弁願いたいと思います。
○国務大臣(花村四郎君) 警察官の人権じゅうりんの問題に対しては、往々私どもも耳にするところでありますが、しかし警察官の人権じゅうりんに対して法務省としてどういう処置をしていくかということは、これは御承知のようにこの法務省のほうは人事、身分に関する事柄については関係を持っておりませんので、従ってそれに対する処置は警察庁の方面で扱うべきものであろうと思いますが、ただし、この人権擁護に関する問題に触れて参りまする場合においては、人権擁護局においてその法令の基くところによって処断をいたして参ることに相なろうと思います。なお、またこの人権じゅうりんによってでっち上げた事件を検察当局に送致してきたというような場合は、やはり教養の高い、その方面の専門の知識においては欠くるところのない検察当局がよく調べて、そうしてでっち上げた事件のごときは取り上げざる処置をすることであろうことは言うまでもないことでありまするが、大体において人権じゅうりんに基いてでっち上げた事件のごときは、まあ大体取り上げんというようなことで、間接的には彼らに対して一つの何と言いますか、注意を与えるような措置を講じておりまするけれども、直接にはやはりこれは警察庁のほうで何らかの処置をしなければならぬものであろうと存じます。 それからなお監獄法については、いろいろまた議論もありまするんで、今の監獄法がすべていいものであるとはわれわれも考えておりません。大いに民主的に改善すべきものもあろうということで、目下やはりこの改正に向って検討をいたしております。
○羽仁五郎君 この選挙違反事件の問題に関連して、最高裁判所の方からも御出席をいただいておるように存じますので、今の題問と関連しまして伺いたいのですが、最近新聞で見ますと、帝銀事件の被疑者として、平澤君に対して最後の処置が講ぜられるかに承知するのですが、それに対して本日の読売新聞でしたかにも、現われているように世論が心配をしておる面があります。で、伺いたいのは、まあ政府の法制局なり、あるいは法務省なり、あるいは最高裁判所において、これは三つの方面の御意見を伺いたいのですが、有罪であるという明らかな証拠がないのに、国民が有罪の判決を受けるという事実があるんでしょうか。それを伺っておきたいと思います。
○国務大臣(花村四郎君) 裁判の方は私のほうとは違いますが、まあ私も長い在野法曹としての生活をしてきておりまする体験の上から考えましても、証拠がなくて罪を断ぜられるというようなことは断じてないと私は申し上げてよろしいと思います。
○羽仁五郎君 これは法制局においても、最高裁判所においても同じ御意見だろうと思います。ところが事実問題としては、最近これは昨年アメリカで起ったローゼンバーグ事件であるとか、あるいはその他最近どうも有罪であるという明らかな証拠が確立していないのに、有罪の判決がなされているのじゃないかというような世間が心配している例が多々あります。そこでその有罪ということを立証せられる、先ほど中山委員もそういう点についての御心配に基く御発言があったのですが、それからまた法相からもそういうに点ついての外国の例などをおあげになったのですが、有罪だということを証明する……それについて最近の、これは日本のいろいろな事件の場合に世間にいろいろなつまり問題が起っていますね、松川事件に関しても起っている。そうして廣津和郎君のような芸術家がそれに対して非常に関心を持ち、非常な努力をして毎月のように中央公論なり、有力な言論機関を通じて訴えておられる。それらは何を意味しているのかということを法務省なり、法制局なり、最高裁判所ではお考えになっておられるのでしょうか。第一の問題に対しては、有罪であるということが証拠がなくて人が有罪とされることはない、そんなことは断じて許されぬ。第二の問題として、有罪であるという証拠、その証拠というお考えに、どうも裁判所なり、あるいはもっぱらこれは裁判所の場合でしょうけれども、やや国民を納得せしめていないところがあるのじゃないか。点数で言えば、百点の点数の証拠があがっておれば、国民は決して心配はない。ところが三十点、四十点の証拠を三つか四つ合せて、そうして算術的に合計して九十点ぐらいになっておるようなことで、有罪の証拠ということを言っておられるのじゃないかという深い国民の心配、これは私自身の人権を守る、意味からも、日本の裁判所がそんなことになっているはずはないと思うのですが、そういうような心配が世論にもあるし、今回の帝銀事件の被告である平澤について、けさ読売新聞が書いているのも、やはりそういうところにある。そういう意味で、ことにいわんや死刑とかなんとかというような問題ということになってくれば、いやしくも世論がそれに対して敏感であるということは当然であって、私はそれに対して深く敬意を表するものであります。政府なり、裁判所はその点については御同感のことと思うが、今の点についてはどんなふうにお考えになっておりますか。有罪であるというふうに決定している上に、形式主義的な非難を受ける余地はないと自信を持ってお答えになれるでしょうかどうでしょうか。
○説明員(江里口清雄君) 有罪の判決のことにつきましては、証拠なくして判決をするということはあり得ないことであります。証拠が足りないということであれば、疑わしきは被告の利益に従うという原則に従って、無罪の判決をいたすべきであり、裁判所はそういたしておるわけでございまして、証拠不十分のままに有罪を言い渡すということは、裁判官としてあり得ざることと私は考えておるのであります。なお、御説の松川事件、帝銀事件、これは係属中の事件でございますから、その点についてはご説明することを差し控えたいと思います。
○羽仁五郎君 その事件の内容について伺いたいというふうに申すわけでは毛頭ありませんが、いわんや裁判所に対して私どもが差し出がましい点にわたってまで、意見を述べるということはいたさないつもりでありますが、あったらばお許し願いたいと思います。私がぜひこれは政府においても、裁判所においてもお考え願いたいと思いますのは、最近国民の世論の中において、どうもかなり不安が現われているということはお認めになると思う。これも事件の内容を申し上げるのではないのですが、例として申し上げれば、松川事件について芸術家がそれについも一つの場合です。それから平沢被告に対して、けさ読売新聞が意見を発表しているというのも一つの場合であります。その個々の事件について申し上げるのじゃないのですけれども、それらの事件において現われておるような国民の不安というのは、やはり裁判所が有罪の証拠とお考えになるものが、国民の納得を得ておられないのではないかという点を心配するのです。もしそういうことがあれば、これは裁判所の御努力を待つばかりじゃなく、われわれも努力しなければならぬ。また行政府においても努力せられることは当然だと思うのですが、有罪の明らかなる証拠がなければ有罪とせられることがないということがあれば、国民は安心しているわけです。それから裁判所において今日有罪を断ぜられる場合の証拠というものは、お考え方の上において、いやしくも形式主義的なことはなく、そうしてまたいやしくもそれだけでははっきり証拠にならないようなものを幾つかお集めになって、そうして何というのですか、その情況証拠というのか伝聞証拠というのか、学問上にはいろいろな議論の、コントラバシイのあり得るような証拠法、あるいは証拠の立て方というようなものをいろいろお使いになって、そうしてそれらを合せて、一つじゃ、一本になっていないけれども、幾つか合せて、そうしてそれを一本に仕立てて罪を断ぜられているというようなことがあるのじゃないかということが、国民の非常な心配であるというふうに私は思いますが、その点については、どんなふうにお感じになっておられるのですか。そんなことを国民が心配しているとは思わないというふうにごらんになっておりますか、国民はそういうことを心配しているらしい……、それについてはどういうふうにお考えになっているか。これは法相の方からも、最高裁判所の方からも御意見を伺えれば仕合せだと思います。
○国務大臣(花村四郎君) ただいまのいろいろ御心配ごもっともだと思いまするが、しかし日本の裁判に関する限りにおいては、国民は何も私は心配されなんでいいのじゃないか、とこう思うのですが、とにかく刑事訴訟法は御承知のごとく、今日は被告の自白のみによって裁判をすることはできないということに相なっておりまして、さらに物的証拠によって、そうしてその犯罪、事実が断ぜられるところまでいかなければ、犯罪ありとする有罪の裁判はできぬのでありますから、従って今言われたような御心配は、私はないように思います。ことに裁判官は、御承知のごとく憲法上身分は保障せられておりまして、裁判官独自の正しい考えのもとに、裁判ができるという機構に相なっておりまするこういう関係から、裁判官は何人にも気がねをすることなく、自分の思うままに裁判ができるという立場におかれておりまするのみならず、日本の裁判官は私はきわめて人格的においても、あるいは手腕力量の面からいうても、まず非難のうちどころのないと言っては語弊があるかもしれませんが、きわめてまありっぱな人である。おそらく日本の役人というものをこう見渡してみまするのに、私は裁判官以上のものはないのじゃないかと、これまで断じて決して間違いはないと思う。でありまするから従って私どもも法務委員会において、かつては裁判官の地位を他の行政官よりも、より高く引き上ぐべきであるということで、その地位も引き上げました、かような次第でありまして、裁判官それ自身を個人的に見てもりっぱでありまするのみならず、その処置も公平であると私は申し上げてよろしいと思う。しかも刑事訴訟法によって罪を断ずるには、やはりその事実を証明する証拠がなければならない。しかも昔は自白のみで罪を断ずることができましたので、とかく拷問などが行なわれて自白を強要されたという事実はざらにあります。そうしてこういうことがいけないというので、刑事訴訟法も改正されて、本人の自白のみでは罪を断ずるわけにはいかないのである。自白にかてて加えて他の物的証拠によってその犯罪事実が証明さるるにあらざれば有罪と断ずることができないという法律的の措置も講ぜられておりまするから、こういうあらゆる点を考慮に入れてそうして裁判官のなす裁判というものを考えてみまするときに、これは国民としても安心してすべてまかしておいていいのじゃないか、不安を抱く必要はないとこう私は申し上げてよろしいと思う。がしかし、裁判官も御承知のように人間でありまするから、それはすべてにおいて間違いなしとは、ぜられませんけれども、まあ大体において人間の行う処置としては、最善の処置を講じておるものの一つがつまり裁判であるとこう私は申し上げてよろしいと思うのでありまするから、こういう意味において今言われるような御心配はないと思いまするが、ただし、その証拠の見ようによってあるいは無罪ともなり、有罪ともなり得る場合のありますることは、これは当然でありまして、検事も必ず犯罪があると信じて起訴した事件が、たまたま裁判の結果無罪になるのもありますけれども、それは要するに証拠を採用する仕方、あるいは方法、あるいはまた証拠の見よう等によって、やはり人が違うように見ようも違いまするので、あるいは無罪になる場合もあり、有罪になる場合もあるというようなことにも相なって参りまするけれども、まあおしなべて大体において裁判というものは正しく行われておるものであり、国民のすべてはこれに対してすべての信頼をおいて可なりと、こう私は在野法曹の長き体験者の一人としてこう断じて間違いないと思います。
○説明員(江里口清雄君) 裁判所裁判官は立場がないのでございます。露骨に申せば、有罪無罪どちらでもいいわけでございます。裁判をするに当りましては、立場がなく、検察官から出された証拠によって、有罪の心証があれば有罪にする、有罪の心証がなければ無罪にするというだけでございまして、有罪の証拠なくして有罪の判決をするということはこれは絶対にございません。有罪の理由はすべて判決中に示してあることでありまして、有罪の心証なくして有罪の判決を下し、あるいは有罪の証拠がないのに推定だけで裁判をするということは絶対にございません。この点は裁判官を信用していただいてけっこうだというふうに私は考えております。ただ、証拠の証明力は裁判官の自由心証ということに相なっております。もちろん裁判官の恣意によるものではございませんので、証拠法に従った自由心証でございます。証拠価値判断のいかんによりまして、有罪無罪ということが分れるということもございましょうが、その場合におきましても、裁判官が十分なる証拠に基く心証がないままに有罪、の判決をすることは絶対にございませんので、その点は御信用いただいてけっこうじゃないかと私は考えております。この証拠の価値判断につきまして、いろいろと判決について御批判されることはけっこうでございますが、またそれに対しましては、裁判官も十分に耳を傾けるにやぶさかでないのでございますが、ただ自分の認識判断と違うからといって裁判が誤判であるということを主張されることは、裁判官としては、裁判所としてはいささかいかがかというふうに考えております。
○羽仁五郎君 今のお答えをちょうだいして終ることができれば、非常に仕合せなんですが、これは行政府に対しては強い意味をもちましてお願いをしておきますし、裁判所に向ってはこれはひたすらお願いを申し上げるより仕方がないのでございますが、次のことを要求またはお願いを申し上げますが、今法相がおっしゃいました答弁は、そのままちょうだいしますが、それにもかかわらず現在世論において不安が表明されているという事実については、当局としてはもう少し謙虚にそうした不安……、国民は心配しなくてもよろしいと、国民をあまり子供扱いにされておる。いわゆる民主主義に反するような扱いをなさることは毛頭ないことはよくわかっていますが、それにしても、お答えの中にも、まあ大体、まあ大筋とがというふうにおっしゃっていますけれども、まあ大筋、まあ大体でいい場合もありますけれども、しかしその関係しておられる個人の人命、ないし人権というものに対しては、やはり深く御同情なりお考えなり御尊重なりをしていただきたい。で繰り返して申し上げてははなはだ恐縮でありますが、廣津和郎というような芸術家は尊敬せられるべき芸術家であります。中央公論という言論機関も尊敬せられるべき言論機関であります。そうしてこの問題に世論が大して不安を抱いていなければ、一回か二回かそういうようなことを書かれるということはありましょうが、毎月連載せられる。中央公論がそれを掲載し、その芸術家自身が毎月苦労して執筆し、それが各その雑誌の読者によって毎月読まれているということは、私はやはり相当の不安があるという証拠にりっぱになる。それから帝銀事件の関係の場合も、けさのように読売新聞がその意見を発表せられるということも、これは国民の中にごく少数の人がそんなことを言っているんだ……あるいはただいま裁判所のほうからのお答えを批判する資格は僕にはありませんけれども、自分の意見と違うからというようなことで言っているんだというふうにごらんになるのは、はなはだ残念なように思う。決して国民はそんなふうに思っているんじゃないと思います。それで国民は裁判所を信頼しているということは、法相のおっしゃる通り私もそう信じております。しかしながら信頼はしているけれども、最近の一、二の重大な大きな事件などにおいて国民が不安を表明しているという事実もまたあります。これに対しては政府はどうかもう少し御反省をしていただきたいというように思うんです。ことに、裁判所の場合にはいわゆる裁判官としての心証というんですか、証拠の価値判断というようなお言葉もお使いになっておりまして、それを批評するのではありませんけれども、しかしながらやはり国民が納得するようなはっきりした証拠であれば、国民も決して心配しないと思うんです。しかしながら証拠の考え方の上に、どうも国民の納得し得ないものがことによるとあるんじゃないかという点を私は心配しているんで、それからまた、その芸術家なり言論機関なりも、それを心配しているんじゃないか。私の心配なり、言論機関のそういう心配なり、芸術家の心配なりというものによって、裁判所が動かされることを私は毛頭願うものではありませんけれども、しかしそういう心配があるということを裁判所においても十分にお考えいただければ、これはまことに仕合せであるというふうに思います。でなかんずく先ほどからも中山委員の御発言の中にもありましたように、事件が最初に警察官によって取り扱われる場合には、人権じゅうりんが実におびただしいということは世論の認めるところであり、政府も裁判所もこれは御否定になることはできないと思います。で警察官がああいうように人権をじゅうりんして、そうしてでき上った事件、そうしてそれを事件として仕上げる上には、専門家がきわめて巧妙に、形式の上にはあたかもそれが客観的な証拠力を持つものであるかのごとくに仕上げてこられる場合が、ことによるとあるのではないか、それを最後に裁判官がごらんになって、形式の上から見れば、これは証拠としての価値が高い、そういうふうに心証を御決定になるような場合があるいはあるのじゃないか。で、警察官が調べてきたものも、実際ずいぶん乱暴な方法でもって作り上げてきた。それが法律の形式の上では形式は整っているからということだけで、御決定になるということになると、ますます国民の不安もはなはだしくなってくるのじゃないか。こういう意味でどうか現在これは例にあげてあるので、その事件そのものについて伺いたいと言っておるのじゃないのですけれども、松川事件なり、あるいは帝銀事件なりについて国民の間に不安が現われているということについては、政府はどうかもう少し十分にその点についての深い関心を持っていただきたいというふうにお願いをしますし、裁判所に対してはそういう点につきましても、いま少しくお考え願えれば仕合せじゃないかと思いますが、どうでしょうか。
○委員長(藤原道子君) よろしゅうございますか、お答えいただきますか。
○羽仁五郎君 お答えないのですか。
○国務大臣(花村四郎君) 御趣旨のほどはよくわかりました。とうといお言葉として参考に供したいと思います。
○委員長(藤原道子君) ちょっと速記をとめて下さいませ。 〔速記中止〕
○委員長(藤原道子君) じゃ速記を起していただきます。 大臣にちょっと私から質問さしていただきたいのでございますけれども、前国会、前々国会と引き続いて問題になって参りました売春対策でございますが、これは政府で売春対策協議会というものができて、これは吉田内閣当時から……、それで民主党の内閣になりましたときに、私はこれを継続なさいますかということをお伺いしたら、継続いたします。そうして、それは今期国会に御提案になりますかと言ったら、出す予定でございますということの御答弁をいただいておるのでございますが、この売春対策協議会の協議経過について一つ御説明を願いたい。
○国務大臣(花村四郎君) 売春問題対策協議会の現在までの審議の経過を御説明申し上げます。売春問題対策協議会は、御承知のように早急に売春問題の総合的対策を樹立する必要から、一昨昭和二十八年十二月十八日の閣議においてこれが設置の了解を得まして、さらに昨昭和二十九年一月二十二日の閣議でも了解をいたしまして、そうして協議会の設置要綱を決定し、直ちに委員十五名をきめました上で、昨年二月六日第一回委員総会を開いたのでありまするが、事来今日まで十回の委員総会を開催して、きわめて熱心に協議を重ねて今日に至った次第でございます。 すなわち同協議会におきましては、売春行為等の防止及びその取締り並びに売春婦の更生保護等、売春に牽連する諸般の問題を、あらゆる角度から検討をいたしまして、これに関する立法その他総合的根本対策について協議を重ねて参ったのでございます。昨年五月七日第九回委員総会におきましては、基本方針の決定を見まして、さらに具体的な問題につきましては、委員の申合せによる運営要綱によりまして小委員会に付託せられ、なお細部の点について必要のあるつど、幹事会を開いて検討を加え、なお資料の収集等、事務的な問題につきましては、関係各省、関係係官が随時懇談会を開いて審議の円滑、能率化をはかって参ったのでございます。 その結果、協議会といたしましては、大体の基本方針は決定をいたしまして、幾つかの問題点と予算措置の裏づけが確立いたしますならば、政府に対して御期待に沿える意見の提出ができる段階に至っております。目下右の基本方針にのっとりまして、法務省が中心となって売春等の防止及び処分に関する法律案要綱完成に努めておるのであります。すでに第一次案の脱稿を終えまして、逐条的に再検討を重ねております。他方また労働、厚生両省において売春婦転落防止案要綱の作成を急いでおりますが、これまた一応の成案をみまして、本年早々数回にわたり関係各省間においてこれら要綱案の細部について打合せを行っております。 以上のような経過でありまして、さほど遠からざる将来におきまして、協議会より内閣に向って答申があることと存じます。従いまして法務省といたしましては答申によりまして、そうしてこの問題に対して善処をいたしていきたいと存じております。
○委員長(藤原道子君) お伺いしますが、これは内閣に答申されました場合に、花村大臣としては、国会に直ちに御提案になる御意思ございますか。
○国務大臣(花村四郎君) どうもまだ答申も出ませんし、いかなる答申が出て、その答申をどういう形で整えていくかというような構想もまだ起っておりませんので、従って将来その答申があれば、直ちに法案として提出するかどうかの結論を申し上げるまでの時期でないと存じます。
○委員長(藤原道子君) 私、今の大臣の御答弁はまことに不満でございまして、歴代大臣から法案提出は約束されておりますので、さらに突っ込んで御質疑したいのですが、申合せで今日は御説明を聞くということでございますので、これは保留いたしておきます。可及的すみやかに、私は御提案を願いたいということを要望いたしておきます。
○委員長(藤原道子君) 続いで交通事件即決裁判手続法の実施状況について御説明を願いたいと思います。この手続が立法当時期待されましたようにスムースに進行されることは、まことにけっこうでありますが、あまりに即決に重点が置かれましたために、最も重要視されなければならないはずの人権がほとんど顧みられない、じゅうりんされておるということがあっては大変だと思われますので、ことに当委員会で審議されましたときに、二重処罰はしない、二重処罰は避けるということが意思であったというふうに私は伺っておりますが、それが今日ではどんどん二重処罰されておるというようなことで、非常に家庭的悲劇をも醸成しておるような状態でございますが、これについての今の実施状況について一つ御説明を願いたいと思います。
○説明員(江里口清雄君) 交通事件即決裁判手続の実施状況について申し上げます。 最近における交通事件、これは道路交通取締法またはこれに基く命令違反の罪に当る事件でございます。その激増ぶりは驚くべきものでありまして、全国の簡易裁判所で処理された件数は、昭和二十七年におきましては二十一万八千九百四十三件、二十八年は三十九万六千二百六十五件、前年度の一、八倍であります。二十九年度は七十三万五千八百九十一件、二十七年度に対しては三・四倍、二十八年度に対しては一・九倍、こういうような状態でございまして、この増勢は少しも劣えていない状況であります。 このような情勢に対処いたしますために、交通事件即決裁判手続法が制定公布されまして、昨年の十一月一日からその施行をみたわけでございます。この法律は交通事件を適正迅速に処理をするために即決裁判という特別の裁判手続を定めたものでありまして、この手続は交通事件について被告人の異議がないときに限り、検察官の請求によって起訴の即日、公開の法廷で被告人の出頭のもとに審理し、五万円以下る罰金、科料を言い渡す簡易裁判所の第一審公判前の裁判手続で、あるわけであります。以下、法施行後の実情について概略を申し上げますと、現在即決裁判手続を実施しております庁は、宇都宮簡易裁判所ほか二十六庁でございまして、近い将来実施を予定しておる庁は東京簡易裁判所ほか四十一庁で、人的、物的施設が不十分なために実施のできない庁は新宿簡易裁判所ほか九十庁と相なっており、その他の大部分の簡易裁判所におきましては、事件数が少いか、あるいは検察庁からこの手続による請求がないために実施しておらない状態であります。東京、大阪では事件数が署しく多いのでございます。昭和二十九年度におきましては東京都の特別区内の簡易裁判所で処理された事件数は、全国の処理件数の約四七%を占めております。大阪市内簡易裁判所で処理された事件数は全国の処理件数の一一%を占めておるものでございますが、この東京、大阪はこのように非常に事件数が多いのにもかかわらずこれを即決裁判手続で処理するに必要な人的、物的設備がまだ整備されておらないために、その実施をみるに至っておらない状態でございます。東京につきましては東京、台東、墨田、北、足立、葛飾、江戸川の七つの簡易裁判所、それから渋谷、大森の二つの簡易裁判所、中野、新宿、豊島の三つの簡易裁判所をそれぞれ一ブロックといたしまして、三つの各ブロックの管内で発生する事件をブロックごとに統合して処理する構想のもとに法廷の増設、裁判官などの増員を要求しておりますが、さしあたり本年度すなわち昭和二十九年度の予備金の中から支出を認められた経費をもって、東京都七つの簡易裁判所の管轄区域内で発生する事件を、これは東京都の特別区内の総件数の約六七%に当る事件でございますが、これを統合して処理するために、庁舎を墨田区錦糸町四丁目に目下建設計画中であります。また大阪におきましても市内五つの簡易裁判所の管轄区域内においての事件を統合して処理することといたしまして、そのための庁舎を同じく予備金中から支出を、認められた経費をもって目下大阪市東区法円阪町に建設中であります。いずれもその完成を待って即決裁判手続実施の運びに至る予定であります。建物ができましても、現在のような裁判官の人員ではまかない切れないので、増員をしておる状態でありますが、なおその手続を実施するために、法廷の増設、人員の増員を必要とする理由は、これまでの交通事件はほとんどすべてが書面審理による略式手続で処理されてきたのでありますが、即決裁判手続によりますと、公開の法廷で裁判官が被告人に一々面接して審判をしなければならない、しかも法廷人員も転用の余地のないのが現状でありますので、さらに交通事件が激増ということになりまして、この不足はますます拍車を加えておるというような状態であります。 事件処理の状態でございますが、現在即決裁判手続を実施しております庁の事件処理の方法といたしましては、その迅速適正な処理という要請にこたえるために、裁判所の構内の一部を検察、警察側に提供して、事務連絡の緊密化をはかり、あらかじめ開廷時、起訴件数、人員の配置等、運営の細目について関係機関と打合せをしておきまして、警察官による被疑者の取調べ、警察からの送致、検察官によるその取調べ、起訴裁判所における審判、検察庁における罰金、科料の仮納付金の徴収という一連の行為が流れ作業的に行われるように処置されているわけでございまして、その結果は非常によい成績を示しております。警察の取調べから、検察官の取調べ、即決裁判、仮納付金の徴収まで、一時間足らずで終了するという実情になっております。統計によりますと、交通事件即決裁判手続法が施行された昨年の十一月一日から本年一月末まで三カ月間における交通事件の総件数は、全国で二十二万七千五百八十八件でありますが、このうち即決裁判手続によって処理された件数は七千五百九十九件、全体に対する三・三%ということに相なっております。この比率はきわめて低いわけでありますが、その原因は先ほども申し上げました通り、東京、大阪を初めとする大都市の簡易裁判所が人的物的の施設の関係から、まだこの手続を実施していないからであります。なお、罰金等の仮納付につきましては、全般的にうまく運用されておりまして、ただいまのところ八〇%ないし九〇%に当るものが仮納付によって即納されておるという状態であります。これは略式手続の場合には、その徴収に多大の日子を要しておる実情から考えますと非常に成績がよいということが申せると思うのであります。 以下簡易裁判所において事件処理の状況を、やっておる具体的な事例を御説明申上げますと、仙台の簡易裁判所では本年の一月十四日からこの手続を実施しておりますが、従来の事務室の一室を法廷に改造して、開廷日に限って調停室として使用中の四つの室を検察、警察側に提供使用させることにしまして、まず警察官の室で取調べを受けた被疑者は検察官室に誘導されて、ここで取調べを受けて起訴されると、法廷の誘導される。裁判所の受付係は事件の受理をする担当裁判官に記録を提出して、裁判官は記録を調査した上で公開の法廷で審理に入り、即決裁判の宣告を受け、仮納付を命ぜられた被告人は、検察庁の徴収係に誘導されて、罰金等を仮納付するという順序で事件が流れ作業的に処理されておりまして、その開廷回数は週一回、一日の処理件数は、五十件ないし九十件であります。罰金の金額は平均一人当り千百五十二円、これを即納した者の割合は九二%ということに相なっております。また審理は終始円満、静粛裏に進められて六回の開廷をやっておりますが、この法廷で事実を争ったものは一件あるだけでございまして、その他この手続によることについて異議を申し立てた者や、異議を申し出た者や、宣告の即決裁判の刑に対して不平不満を述べた者はなかったという状態でございます。宮崎の簡易裁判所の実施状況は、昨年の十一月十五日から実施に移っておりますが、開廷回数はこれまた週一回、一日の処理件数は平均七十件、一件当りの処理時間は裁判所に出頭してから警察官、検察官の取調べを受け、さらに裁判の言渡しを受けて、有罪者は罰金、科料を払って退室するまでの時間が約一時間のよしであります。罰金の金額は平均一人当り千六十七円、仮納付の割合は八〇%というふうになっておるのであります。ただいま委員長からのお話の二重の処分というようなことはない、こういうふうに記憶しております。
○委員長(藤原道子君) いやあるのです。それが……。この問題は他の関係委員会からも合同審査を前国会で申し入れられておるわけです。結局犯罪人を多くするのが目的でないので、この交通違反にはずいぶん原因が多いと思いますので、これは関係委員会でまた十分連絡していたしたい。 —————————————
○委員長(藤原道子君) では、引き続きまして朝鮮人の送還について、その後の経過を御報告願います。
○国務大臣(花村四郎君) 大村収容所に収容中の者は三月二十八日現在で千二百八十七名に相なっております。その大部分は密入国者、あるいはまたその他わが国で麻薬の罪を犯し、あるいはまた強盗、窃盗等の常習者等の悪質な犯罪の前歴を有する者でありまして、これらの人々を収容いたしておるのでございます。その収容に関する法的の根拠は、出入国管理令に基き、それぞれの本国へ強制送還をするために一時収容所に収容をいたしておるのであります。韓国は従来これらの強制送還者を引き取っておったのでございまするけれども、昨年七月、一方的に引き取りを拒んで参りましたために、その後収容者がだんだん増加いたしまして、一時は千五百名余りを突破することに至ったのでありまするが、本年の初めからしばしばわが方と、そうして朝鮮の日本におりまする出先官憲との間に折衝を行いました結果、最近に至りまして密入国者の引取りを再びまた始めるという話し合いになりまして、そうして二月の二十八日には二百八名を引き取ってもらったのであります。そうしてさらに、三月二十九日に二百四十九名を引き取ってもらいました。 以上のような経過で、相手国の引取りがおくれているために、収容期間が長引いたりいたしておる人もありまするが、これは向うの引取りが意のままにいかなかったというような事情が伴っておるのでありまして、真にやむを得ない現象であると申さなければならぬのでありまするけれども、政府といたしましては、極力韓国政府との折衝によりまして、早期送還の実現に努力をいたしておりまするのみならず、また国内において一時仮放免をすることの適当な者に対しては、それぞれの処置をいたしておるような次第でございます。 〔中山委員発言の許可を求む〕
○委員長(藤原道子君) 中山委員にお諮りをいたしますが、ただいま時間も大へん経過しておりますので、今日は一応御説明だけをお聞きしようじゃないかということに相なっておりますが、御了承いただけますか。
○中山福藏君 けっこうです。 —————————————
○委員長(藤原道子君) それでは続いて戦争犯罪人の刑の執行及び赦免について。
○国務大臣(花村四郎君) 私から一つ今の委員長の申し入れにかかる件を御報告申し上げます。 戦争終了後すでに十年を経過しようとしておる今日、巣鴨プリズンに六百四十七名の同胞を、戦争犯罪者の名のもとに拘禁することを余儀なくされておりますことは、まことに遺憾至極くと存ずる次第でございます。これら巣鴨在所者は、平和条約によりましてわが方の赦免減刑または仮出所の勧告に対しまして、関係国が同意すれば、その釈放ができることとなっておりますので、全員について一回ないし数回勧告をいたし、熱意をもって関係国の同意を求めて参ったのでありまして、今日までにある程度の人数は関係国の同意を得て釈放の運びになったものでありまするが、先ほど申しましたように、相当数の人が残っている現状でございます。すなわち、中国関係では九十一名の者は二十七年中に全員が赦免され、フィリピン関係五十六名は二十八年中に全員赦免され、フランス関係四十二名は二十八年、二十九年にわたって赦免または減刑出所となり、これら中国、フィリピン、仏関係は全部解決をいたしまして、現在は米、英、オランダ、豪州の四カ国関係だけとなっておるのでございます。米国関係は百五十八名が仮出所、三十六名が減刑となりましたが、現在なお二百五十九名が残っており、英国関係は一名の仮出所、二名の赦免、十八名の減刑、うち七名は即時出所をみましたが、現在八十九名残っておりまするし、オランダ関係は七十四名の仮出所、一名の減刑をみましたが、現在百四十一名残っております。さらにまた、豪州関係は現在百四十九名となっておるのであります。このほかA級は三名仮出所を許され、現在九名となっております。 これら六百四十七名の人は、あるいは戦場に、あるいは戦犯として十数年ないし二十年家郷を離れておるのでありまして、本人はもちろん、その家族の困窮に対しては、心から同情を禁じ得ないのでありまして、これらの人々の早期釈放についてはあらゆる方策を講じておる次第でございます。関係国がわれわれの熱望を容易にいれてくれない理由は、多くはそれぞれの政府が国内輿論を考慮して躊躇するところにあると想像されるのでありまして、正面からの勧告、あるいは勧告を裏づけるところの追加資料の送付に努めるほか、わが国に来朝する関係国の要人に対しまして、これらの事情をつぶさに訴え、あるいはまた宗教その他民間諸団体の協力をも求めまする等、あらゆる努力を傾倒いたしまして一日もすみやかに戦争の古傷とも言うべき本問題の解決に向って猛進をいたしておる次第でございます
○委員長(藤原道子君) ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(藤原道子君) 速記を始めて。
○羽仁五郎君 大村収容所の件につきましては、先日緊急質問でも申し述べましたので、政府の御答弁もありましたことでありますが、今法律の御引用になりましたが、一時収容という一時というのは、まさか二カ月も三カ月も、一年も二年も一時というふうに解釈はできないと思います。ところが、二カ月、三カ月、一年、二年というふうに長期にわたって収容せられておることは、法律にも違反しておることであります。なぜそういうことが生じているかということになりますと、外交上の問題とか、いろいろ過去の歴史上の原因というものもあることであります。ですから 結論として重ねてお願いをいたしますが、どうか一つあまりに大なる実害のないことが明らかな方、それから引受人などがおありになる方、こういう方々、ことに朝鮮の方々に関する問題でありますが、過去において日本国民として日本に生活しておられた方々でありますし、現在日本がなかなか失業問題なども多くて、好ましい職業につかれるということも困難であるという諸般の事情もありますし、それから外交上の問題もあり、最後には感情上の問題もありますから、実害の大してないというふうな御判断になられるもの、また信頼すべき引受人のあると御判断になれるもの、こういう方方はどうか一つすみやかに大量に釈放せられるように御尽力を願いたい。重ねてお願いをしておきます。
○国務大臣(花村四郎君) この収容をいたしておりまする期間については、管理令に、送還の可能のときを待つという規定に相なっておりまするので、従ってその日子が長くなったというようなことが違法であるというただいまのお言葉は当らざるものであると、こう申し上げてよろしいと思います。しかし御申出の事柄はまことにごもっともであります。相なるべくは今言われたことにいたしたいような気もすることはやまやまでありまするけれども、しかしこの強制送還をなさねばならぬというこの管理令を守ってゆくという建前から考えますると、なかなか今おっしゃられたような御希望を、すぐいるることのできないことを遺憾に思いますが、しかしまあ、この法の許す限りにおいて、御趣旨は一つ何とか考慮したいと、こう考えております。
○委員長(藤原道子君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(藤原道子君) 速記を始めて。どうも御苦労さまでございました。本日の委員会はこれで散会いたします。 午後五時十二分散会