農林水産委員会 第6号
- 発言数
- 51 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1955/05/13
会議録
○委員長(江田三郎君) ただいまから委員会を開きます。本日は日中漁業協定の件を議題にいたし、まず去る十日の委員会決定に従いまして、参考人として日中漁業協議会代表団山崎喜之助、高橋熊次郎、谷村高司及び田口新治の四氏の出席を得ましたので、ただいまからこの問題について説明を伺うことにいたします。参考人には御多忙中御出席を頂きまして、まことにありがとうございました。なお、参考人に対しまする質問は、参考人の説明が一通り終ってから後にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(江田三郎君) ではさように運びます。それでは参考人の説明をお願いいたします。山崎喜之助君。
○参考人(山崎喜之助君) ただいま御紹介を得ました山崎でございます。私ども民間の漁業代表が、今回北京において協定いたして参りました日本国の日中漁業協議会と中華人民共和国の中国漁業協会との黄海・東海の漁業に関する協定につきまして、御説明の機会を与えられましたことを感謝いたします。 この協定は、お手許の印刷物をごらん願えればおわかりになります通り、前文と十一条から成る協定本文と四つの附属書から成っております。ほかに往復書簡及び備忘録が各一通ございますが、これもまた重要な内容を持つものであります。 以下それらについて御説明を申し上げたいと存じますが、順序といたしまして私どもがなぜこのような協定を結ぶに至ったかというその間の事情をかいつまんで申し上げておきたいと存じます。 黄海、東海における日中両国漁業の現勢について。 御承知の通り黄海及び東海はわが国に近接したトロール船及び汽船底びき網漁船の重要な漁場であります。現在この海域において操業する日本漁船は、底びき網漁船七百八十一隻、五万八千六百八十九トン、トロール漁船五十八隻、二万九百三十トン、計八百三十九隻、七万九千六百十九トンに上り、その年間の漁獲高は昭和二十九年には二十九万二千トン、金額にして約百五十億円であります。なお昭和二十八年の漁獲高は約二十七万トンでありました。これに対比すべき中国側は汽船底びき網漁船二百八十七隻、トロール漁船四隻、ほかに目下建造中の汽船底びき網漁船が四十四隻あるとのことであります。そして昭和二十九年中の年間漁獲高は、十一万五千九百トンであります。また中国の沿岸漁業は、中国側の発表によれば、渤海・黄海・東海における漁獲高は約六十三万トンといわれております。私どもはこれよりも多いのではないかと推定しておりますが、その大部分は、機船底びき網漁業と同じく底魚をとっているのであろうと想像されます。 漁船の拿捕事件について。 東海、黄海においては、一九五〇年十二月七日以来、日本漁船の中国における拿捕事件が続出し、昨年の七月四日までに累計百五十八隻、一万三千三百十五トンの漁船とその乗組員千九百九人が抑留され、乗組員中には十七名の死亡者を生じております、その後、昨年の秋までに乗組員全員と漁船五十四隻は返されましたが、現在なお百四隻、八千八百七トンの漁船が返還されないでいるのであります。しかも従来はその原因も明らかでなく、いつ拿捕されるかわからんという不安な状態でありましたので、私どもは何とかして中国と話し合いをつけて、今後そういう事件をなくしたい。また漁船も返還を受けたいと熱心に要望してきたのであります。幸い昨年中国を訪問された国会議員団の方々のお骨折りにより、中国周恩来首相の言明となり、年末に中国漁業協会準備委員会から日本民間代表を招請するとの入電があり、今回の会談となったわけであります。 なお、それに先だち、昨年十二月わが国の漁業界におきましては、大日本水産会、日本遠洋底曳網漁業協会等の漁業団体及び全日本海員組合等の労働団体をもって、日中漁業協議会を組織し、私どもはこの日中漁業協議会の代表として派遣されたのであります。日本代表団の構成は、底びき漁業者六名、全漁連一名、海上労働者三名、陸上労働者一名、計十一名。ほかに随員が三名でありました。これに対し、中国側は、団長揚煜氏以下十名からなり、揚団長は中国漁業協会準備委員会の主任。副団長の高樹頤氏は前の農業部水産監理総局の局長でありました。ほかに広州の水産局長も加わっておりました。また代表のうち二名は、上海と青島の国営水産公司の社長、また一名は浙江省漁業協会の主任、また一名は中国海員工会の副主任であります。代表兼顧問として日本通の中国紅十字会顧問趙安博氏が加わり、その他の二名は中国漁業協会の幹部という構成でありました。なお、中国代表のうち二名は、途中で病気及び日本への貿易代表として参加のため辞任し、調印の際は八名の代表が署名したわけであります。 次に交渉経過の大要を申し上げます。 交渉は一月十三日の第一回正式会談から四月十四日の第十回正式会談まで、双方の代表全員の会議を十回、小委員会、分科会、私的会談等を加えますと百回以上の会談を行いました。これを日付を追って大別いたしますと、一月十三日から一月二十二日までの四回の正式会談では、双方の議題の調整と漁業問題の解決に関する根本的な構想が提示されました。すなわち日本側は一、東海、黄海における日中両国漁船の平和操業に関する問題。二、過去の事件の解決に関する問題。三、海難防止と人命救助に関する問題。四、漁業資源保持のための研究及び資料の交換に関する問題。以上の四つの議題を提案したのに対しまして、中国側は一、東海、黄海の漁撈、二、海難防止と人命救助。三、資料の交換及び資源の共同調査などの問題は、平等互恵の基礎の上に立って話し合いで解決することができると述べたが、日本提案の第二議題であるところの、すなわち過去の事件の解決に関する問題については、日中両国漁業問題を解決するには、今後の問題を解決するのがおもな問題であると主張し、過去の事件の解決については明確な意思を表示しなかったので、日本側といたしましては、中国側と一致した三つの問題を話し合うことによって、残された一つの問題も自然と解決を促進することができるという見解のもとに、まず三つの問題について話し合いを進めたいと同意し、他日適当な機会にこの問題を持ち出す方針をとったのであります。そうして、第一議題の平和繰業の問題に入ったのでありますが、その際、日本代表からこの議題の要点は、一つは両国漁船が資源の荒廃を防ぎつつ、できるだけ多く漁獲し、これを有効に利用して、両国漁業の利益と繁栄をはかることであり、もう一つは、今後漁場において漁船及び乗組員の抑留事件などの起らないようにすることであると述べ、これについて中国代表の意見をただしたところ、中国側は双方代表団の間で三つの議題について話し合いがまとまり、双方がこれを実行するならば、今後両国の漁業には紛糾は起らないと理解してよいと思うとの答えでありました。なお日本側としてはこの第一議題について、一、主として現実問題について協議すること。二、日中漁業協議会と中国漁業協会が当事者となり、約束の実行に責任を持つこと。三、相互に関係ある漁業を対象とすること。四、相互の漁船が入りまじる漁場を対象とすること。五、現在交戦状態におかれている水域については、日本漁船は誤解を受けないような行動をとることなどについて協議したいと、討議の範囲を限定することを提議したのであります。この問題に関する双方の主張の詳細は後刻申し上げたいと思いますが、要するに日本側は公海漁業の自由を主張したのに対し、中国側は中国政府のきめた機船底びき網漁業禁止区域と、軍事上の三つの区域を話し合いから除外すること及び公海漁業の調整を主張し、その方法として東海、黄海を大きく三分割する案を提出したのであります。右の図でございます。このように根本的に主張が相違しておりましたので、会談開始後四十数日間というものは全く意見の対立に終始いたしました。正式会談でこれを接近させることは不可能でありましたので、一月二十三日以降一カ月間は小委員会及び個別的会談をひんぱんに行なって意見の調整をはかりました。日中漁業協議会の基本案の実現に努力したのでありましたが、それではとうていまとまる見込みがないと判断されましたので、二月二十三日の第五回正式会議で一応休会を提案し、帰国を決意したほどであります。しかし中国側は休会に同意せず、しいてこれを主張すれば決裂のおそれもあり、その影響も憂慮されましたので、日本側の従来の構想を変えて、新らしく具体案を提出した結果、ようやく会談を軌道に乗せることができたのであります。もちろんこの日本側の新提案につきましても、中国側は大幅な修正案を出して参り、その調整に苦心したわけでありましたが、三月十九日に至って日本の原案に近い案で話がまとまりましたので、これを起草委員会に移すとともに、他の議題である海難防止、資源及び資料、漁場秩序等の委員会を設けて併行的に討議を進め、いろいろと困難な場面もありましたが、四月十四日に第十回の正式会議でこれを最終的に決定し、翌十五日調印式を行なったのであります。 以上九十三日にわたる交渉の経過をごく大づかみに申し上げたのであります。御不審の点もおありかと存じますが、それは後刻御質問の際補足させていただくことにいたしまして、次に協定本文及び附属文書の説明をかねて今回の会談において双方の重要な論点になった問題を少し詳しく申し上げることといたしたいと思います。 一、協定水域について。 協定本文の第一条は協定水域の規定であります。何ゆえこのように東海、黄海の一部分だけを協定水域としたかと申しますと、それは次のような事情であります。会談の当初中国側は、中国政府のすでに規定した四つの区域、すなわち軍事警戒区域、軍事航行禁止区域、北緯二十九度以南の軍事作戦区域及び機船底びき網漁業の禁止区域、この区域は今回の話し合いから除外すべきであると主張しました。これに対して日本側は、軍事上の区域は別として、少くとも機船底びき網の禁止区域は漁業上の区域であるから話し合いに入れるべきであると主張した。その理由は、一国の国内法が公海において他国の漁船に適用さるべきではないから、日中双方で話し合いの上でそれを適当と認めたならば双方の協定によって資源保護区域として守ることにしたいというのが日本側の主張でありました。特に中国の示した機船底びき網漁業禁止区域は一九五〇年に華東軍政委員会の設定した区域よりも拡張されており、それを追及したところ、一九五四年中央政府が新たに規定したものだが、まだ批准を終っていないという説明であったので、まだ批准されていないものならばわれわれの意見をとり入れ適当な資源保護区域として協定したいと主張したのでありますが、中国側はこれをきかず、中国政府の規定したものを民間会談で修正することはできない、まして中国政府が法律を設けるときに日本漁業者の意見をきく必要はないと強く主張いたしました。また北緯二十九度以南の作戦区域は、もしこの区域に日本漁船が行けなくなるときは、日本側としては非常に大きい影響があるので、日本側は協定の中に入れることを強く主張いたしましたが、中国側は二十九度以南は作戦中で危険であるから日本漁船が入らないようにお勧めする、もし入って操業した場合いかなる事態が起ってもそれはその漁船の責任であるというのであって、しいて入ってはならんとは言っていないのであります。従って日本側は、独自の判断で自己の責任で行くことは差しつかえないと理解し、それ以上は追及しなかったのであります。要するに、四つの区域の除外について日本側としては釈然としなかったのでありますが、どうしてもこれを話し合いの対象としようとすれば会談は決裂のほかはないと判断いたしまして、会談開始後四十五日ほどたってからあとは双方ともこの区域については話をふれないこととして、話し合いの対象になる区域のみについて協議を進めることにいたしました。しかるに中国側は最後に起草委員会で再びこの問題にふれ、協定第一条の協定水域の表示方法として四つの区域を除外することを明示したいと主張いたしました。この際も、日本側は協定水域の表示は協定した水域だけを表わせばよいとしてこれを主張し、これを撤回させました。ところがまたまた中国側は、協定書の日本側の草案に第三条として「双方の機船底曳網漁船は、六つの区域以外では如何なる場合と雖もその操業を制限又は禁止されないことが保障されなければならない。」とあったのに対して、中国側は但書として、「鴨緑江河口の薪島から北緯二十九度に至る六つの点を結んだ線、即ち警戒区域及び機船底曳網漁業禁止区域の線以西では日本漁船は入って操業してはならない。」とつけ加えることを主張し、その理由として、そういう線のあることを協定のどこかに表わして日本漁船に知らせるのが目的だと強硬に主張いたしました。日本側としては、この問題は協定そのものが不平等な協定になること、協定水域外の水域における日本漁船の義務を規定することはできないことなどの理由をあげて論争し、一時はこの問題で暗礁に乗り上げたのでありますが、すでに協定の実質である漁場問題も解決し、あとわずかなところで全部が解決するという大局的見地から、これを双方の往復書簡に譲ることを提議し、結局そういう方法で落ちついたのであります。 二、漁場問題については、協定第二条及び附属書第一号に規定してありますが、日本代表は日本を出発するに先立って、資源保護を伴う公海漁業自由の原則に基いて、中国沿岸に資源保護区域を設定し、その区域内では日中双方の機船底びき網漁船の操業を抑止するということを主眼とした案を用意いたし、それを提案いたしましたが、中国側は中国政府の規定した機船底びき網漁業禁止区域であるから討議できないと主張し、これを話し合いから除外する区域として、話し合いのできる水域として、大まかに言えば、そこにございます東海、黄海を三分割し、日本に近い漁場を日本優先の漁区、中国に近い漁場を中国優先の漁区、その中間を双方の共同の漁区とする構想を示しました。日本側は中国側の考え方は誤りであることを指摘して強硬に論争をいたしました。しかし、中国側は、東海、黄海の沖合における漁船の勢力は圧倒的に日本が優勢であり、しかも勝手気ままに縦横無尽に操業するので、中国漁船は安心して操業することができない、すなわち、日本漁船は一方的に東海、黄海の漁場を独占し、中国漁船の操業を排斥している、これがすべての紛争の原因であるから、平等互恵の原則に反するこのような操業方法は容認できないと主張いたしました。そうして協定の目的は、漁場を合理的に利用し、両国人民の需要を満たし、紛争の発生を避け、資源の枯渇を防ぎ、一方が漁場を独占して他方を排斥する行為を防ぐようにすることである。そのために何らかの措置が必要であるから、もし日本側が中国案に不賛成ならば代案を示されたいと要求いたしました。 次に休会提議から新提案に至るまでにつきまして、日本側といたしましては、用意した構想ではとうてい会談を進行きせることは困難であると判断するに至りました。といって中国案にかわる日本側の代案を提示することも困難な事情にありましたので、二月二十五日第五回の正式会談において次のように休会を提案したのであります。日本代表は、中国が自国の漁業を保護育成しなければならん事情を理解できた、われわれは中国の希望を満たし同時に日本の利益とも調和させる何らかの方法を見出す必要を感じている、ただ具体的にいかなる方法で調和させるかについては、一たん帰国の上、日本漁業者の総意によってこれを取りまとめ、実行可能な案を提出したいから、この際この会談で解決可能な問題を討議し、未解決の問題については適当な機会に再開して討議することとしたいと要望いたしました。これに対して中国側は、今回の会談は日本側の数年来の熱心な要望の結果、周総理の言明に基いて日本代表を招いたものであって、現在中日間の漁業問題を解決する道は民間会談が唯一のものであり、これ以外に方法はない、であるから会談を続行すべきである、日本の考え方は、東海、黄海で日本漁船の優勢を利用し、いかなる制約をも受けずに無秩序に勝手気ままに走り回り、中国側の利益を考えないで無制限に漁撈することである、これがすなわちすべての紛議のもとである、このようないかなる考え方も中国は断じて受け入れられないと、このように言明したのであります。そうして日本側の態度を激しく非難し、休会に同意しなかったばかりでなく、海難防止、資料交換等の他の議題はまず両国の利益に関する漁場問題を解決してから解決すべきであるとして、引き続き会談を開くことを主張したのであります。そのために、日本代表団としては種々考慮の結果、二月二十六日の第六回正式会議の席上で、日本代表としては一たん帰国して次のような構想のもとに日本漁業者の意見を取りまとめた上で再度会談したいと考えているのであるという意見を発表したのであります。それは一、中国の東海、黄海に対する依存度のきわめて高いこと、中国は漁業を発展きせるために東海、黄海に強い関心を持ち漁業の保護育成に努力していること、沿岸漁業においては中国側が圧倒的に優勢であるが、沖合における機船底びき網漁船の勢力は日本が優勢であり、中国は劣勢であること、これらの事実に基いて双方の利益を調和させるため何らかの措置が必要であり、それには今後双方が原則論に拘泥することなく、具体的かつ実際的な方法を見出すべきである。二、将来の恒久的対策としては、東海、黄海の全域に対する適正漁獲量を決定し、適正漁船数を協定する必要がある。三、暫定的措置としては、中国沿岸に近い漁場で両国漁船の特に競合する場所および時期を限り、主たる魚種を対象として小区画かつ短期間両国漁船の入り会う隻数を協定する必要がある。この日本側の構想に対して、中国側は、もし日本代表がこの三つの意見に基いて具体案を提出するならば歓迎すると述べました。そうして会談行き詰まりが打開することのできることを示唆したのであります。日本側は中国側の右のような発言によって、二月二十八日第七回正式会談において、前回発表した構想に基き、中国沿岸に近い漁場で特に両国漁船の競合すると思われる六つの区域について第一区より第六区までの区域と期間の案を示したのであります。同時に日中漁業協議会の了解を取りつけ、代表の権限拡張を求めるため、代表二名を帰国させる手続をとったのであります。日本の新らしい提案は、中国側の指摘した漁船の競合による紛争という事態が起るとすれば、それは魚群の密集する時期にごく狭い場所に漁船が多数に集中するところから起るものである、従ってそういう時期と場所について何らかの制限をすれば紛争を避けることができるという見解であります。この日本の新提案に対しては、中国側も原則的には同意いたしましたが、中国側の提出した修正案は、日本案を一とすれば四つに当るほどに区域と期間を拡大したものであります。特に東海、黄海の中央部に新たに第五区を設け、また日本に近い済州島南方に第八区を設けるという案でありました。日本が提案した六つの区域はいずれも中国の沿岸に近い区域で、両国の漁業調整には適切な区域であるが、中国案の五区、八区は調整上必要のない場所でありますから、日本側といたしましては公海漁業自由の原則の良心的な立場から同意することはできないものでありました。しかし中国側は中国案の第五区については最後までこれを固執し、これを制限して中国漁船の安全操業を確保しなければ中国の漁業生産を維持できないから、この区域では日本漁船の優勢を認めてもよいから区域を設定すべきだと主張いたしました。結局この区域は討議の経過を備忘録として交換するということで妥結したのであります。また第八区は、日本側からその必要でない理由を説明した結果、中国側はこれを撤回いたしました。このようにして成立した六つの区域は、期間区域とも日本の当初案を一とすれば一・七に拡大されておりますが、しかし中国案の修正案に比べると相当縮小された結果、大体において日本の原案に近いものであります。なお、この六つの区域に入り会う双方の漁船数は双方の比率をきめたものではなく、またおのおのの漁区の収容能力を算定して割り出した数でもないことを念のために申し上げておきます。同時にこの規定した漁船数は、入り会う漁船を特定するのではなくて、常時そこで働く船の数を示したものであって、入れかわることができるものであります。すなわち漁区で操業する最高の隻数をきめたものであります。もちろん期間外は完全に自由であります。 次にこの六つの漁区が設定された結果、日本漁船にいかなる影響があるかという点について一言申し上げておきたいと思います。一、日本漁船の年間航海数約六千航海。二、六つの漁区における漁船の稼働日数を十二、三日と見ると、制限された期間内に千八百航海ないし二千航海は可能であります。すなわち三分の一は六つの漁区で操業が可能であります。三、昨年七月ごろから中国の拿捕がなくなりましたので、九月以降は相当に日本漁船は進出していると思われますが、それらを考慮に入れても、公式の報告による統計からは決して不利になっていないのであります。 操業秩序維持について。 これは協定本文第三条及び附属書第二号にこまかく規定してありますが、今回の会談で中国側が常に強く主張した点は、日本漁船が自己の優勢をたのんで漁場を独占し、また勝手気ままな操業をするので、劣勢な中国漁船は操業が困難だということでありました。同時にこれは日本漁船相互あるいは中国漁船相互の間にも起り得ることでありますから、両国漁船が漁場において紛争を避け、友好的に平和操業を行うためには、一定の基準のもとに秩序を維持することが望ましいわけであります。そのためにこの附属文書第二号は海上衝突予防法をもととして、更に具体的な操業上の注意事項を定めたものであります。従って今後この規定を守ることによって、漁場における紛争を少くすることができると思うのであります。 海難救助及び緊急避難について。 第四条及び附属文書第三号は、海難救助及び緊急事故の際、相手側の港に寄港する場合の注意事項を規定したものであります。このようなことは特に規定がなくても、人道上の問題として処理することはできるはずでありますが、しかし両国間の現状から見て、緊急避難港を特定しておくことが必要だとの観点から、双方おのおの三つの港を指定したのであります。なお協定本文には機船底びき網漁船に限定してありますが、ほかの漁船もこれに準じて扱われるとの了解ができております。 有効期間。 第十一条にあるように、この協定の有効期間は一年間であります。これはこのような協定は当然政府間でなさるべきものでありますから、長期にわたるべきではない、また自動的に延長する規定も設けない方がよいという中国側の主張によるものであります。しかし有効期限が来ても、政府間で協定ができない場合はまた協議してよいという了解があります。協定の第九条に、双方がそれぞれ自国の政府に対して日中漁業問題の解決についてすみやかに話し合い、漁業協定を締結するよう促すものとするという規定があるのも前に述べたような理由に基くものであります。 拿捕漁船の解決について。 これは今回の協定のほかの問題でありますが、この交渉の経過を申し上げます。中国側はこの会談の当初から話し合いの目的は将来の漁業問題を解決することだと言い、話し合いがまとまってそれを実行するならば、今後拿捕事件のごとき紛争は起らないと理解してよいと言明いたしましたが、過去の事件の解決についてはそれは中国漁業協会の関知しないことである、また中国漁業協会は新らしくできた団体であるから、過去の事件については何ら知らされていないという態度でありました。日本側は会談の初めにこの問題を持ち出したのでありまするが、中国代表がこれについて触れることを避けていたので、適当の機会を待ったのであります。しかし漁区問題の話し合いもまとまり、調印の見通しもついたので、三月三十一日に日本側団長、副団長から正式に中国代表団に申し入れをいたしましたが、中国側は前に述べたような態度でありました。ただ日本代表の意向を関係方面に伝えるということでありました。日本代表は周総理に面会して直接お願いしたいと考え、その斡旋を依頼いたしましたが、周総理がバンドン会議に出発後でありましたので、四月十三日日本代表の意見を周総理あての書面にしたためて、中国側の団長に伝達方を依頼しました。これについては中国側団長も快く承諾いたしましたので、遠からず何らかの回答が得られるものと期待しております。周総理あて書簡の要旨は、総理の言明に基いて漁業会談が開かれ調印の運びになったことを感謝いたします、ついては過去の未解決の事件をこの際解決していただくよう御配慮を願いたい、解決の方法としては、釈放可能な船はすみやかに釈放し、もしほかに事情のあるものは何らかの解決の方法を示されたい、こういう意味のものであります。 以上が今回民間代表が北京で交渉いたしました漁業問題の大要であります。われわれ代表団といたしましては、いかにして平和に、安全に操業することができるか、またいかにして日本の正当な利益を守り、この協定が将来他国との漁業協定に悪例とならぬように、また両国の理想の異なることによって生ずる諸制度の不一致の中に、現実的な問題について意見の一致を見るようにと微力を尽したつもりでございます。この協定が理論的に適正であるか、また実質的に適当であるかということにつきまして御批判をお願いいたしますとともに、不備な点等につきましては教えを受けたいと存ずる次第であります。両国間に国交のない現状での民間交渉には限界もありまして、われわれとしては十分に意を尽せなかった点もあることを御了解願えれば仕合せと存ずる次第であります。それにつきましても、一日も早く両国の国交が調整せられ、政府間の交渉によって漁業条約が結ばれることを切望するものであります。 最後にこの交渉に当って中国側は終始まじめに、しかも建設的な態度であったことをあわせて御報告いたしまして私の報告を終る次第でございます。
○委員長(江田三郎君) ありがとうございました。ただいまの参考人の説明に対して御質疑がありますれば御発言願います。
○千田正君 代表の方々に対しましては大変長い期間にわたって、しかも国交の回復しない両国間のむずかしい事情の間に折衝してこられたことに対しては、まことに感謝にたえない次第であります。皆さんが御出発に際して当参議院の水産委員会といたしましては、特に将来日本の権益が何らかの事情のもとに阻害されないようにということを特に強くお願いしておったのでありますが、ただいまのお話によるというと、そういう問題もある程度会談の中へ出て来ておるようでありますが、向う側の観念として、いわゆる国際通念から言いますところの領海以外のいわゆる公海というこの観念については大分われわれが考えておることとは違っておるような感じがしますので、特にこの際この協定の海域を設定するに当りまして、中国側の主張するところは、軍事上の問題あるいは自国の機船底びきの禁止区域等という名目のもとに強く自己の権益を主張しておるようにわれわれには見受けられるのですが、その点についてはどういうふうに考えておられますか。その点を伺いたいと思います。もちろん今度きめて参られましたところの協定も一カ年というきわめて短い期間に限られておりまするから、この期間において皆さんが結ばれた協定が両国の間に友好的に好影響を及ぼせば、もちろん二カ年後においては日本の国交回復その他に十分なる役目をなすものとわれわれには考えられますけれども、この領海の観念という問題について一言承わっておきたいと思います。
○委員長(江田三郎君) なお委員の質問に対しましては、ただいま御説明くださった山崎君だけでなしに、きょう御出席の他の二君の方でもそれぞれ担当の問題についてお答え願いたいと思います。
○参考人(山崎喜之助君) 中国側はいろいろとわれわれとの協議の中に、新中国は世界に新しい国際法の考え方を示したいのだというようなことを間々申しております。しかしながらそれが具体的にはいかなるものであるかということは示しておりません。この協定第一条の最後に、「黄海、東海の公海とする。」ということを述べております。この公海という字句に相当こだわったのでありますが、こういう字句を入れております。従って公海の内側に領海があることはもちろんであります。この領海の距離についてはわれわれも触れないようにいたしましたし、中国側も触れておりません。しかしこの山東高角の第何点かと思いますが、そこは島から十二海里離した所を一つの基点としております。ですから大体そうした数字がいわゆる領海の何かであるということを示唆しているのではないかと、われわれはこのように考えております。 それからこの中国側が漁業協定を通じて漁業上の権益及び中国の権益を主張しておるという点につきましては、これは軍事上の区域と称するものと漁業上の区域と称するものと二つに分れておると思います。漁業上の区域、これは禁止区域となって現われております。中国側がわれわれに説明する禁止区域の設定理由は、資源を保護するという一つの理由となっておりまするが、その禁止区域の内部において中国側は約六、七十万トンに上る多くの底魚を漁獲しておるのであります。もちろん機船底びき網の禁止区域であります。で、資源保護ならばとらないというのが理の当然だと思いますが、とっておるわけであります。しかしやはり資源保護の方法として網目を制限したり稚魚の育成をしたり、そういうことは非常に熱心にやっておるのであります。でありますからこの禁止区域の内部は資源を保護する手段を講ずるとともに、国内の漁業の育成あるいは調整ということに用いられておると思います。こういう点で相当大きい禁止区域を主張しております。これらはたしかに国家的な目的があったものと思われます。われわれはこの禁止区域を禁止区域として認めようというのではなくて、われわれそういう主張を中国が主張しておられることは知ることができた、しかしわれわれはそこに自主的な立場でその内部には船を入れないという表現を用いておりまして、将来国と国との交渉をなされる場合に、政府の発言を拘束しないようにと特に心がけた次第であります。 もう一つは中国の軍事上の理由と称する三つの区域でございます。これは一番北が軍事警戒区域、それから舟山群島附近が軍事航行禁止区域、それから北緯二十九度以南が作戦区域と、この三つになっております。これが非常に理論的に問題になると思うのでありまするが、私たちはこの軍事上の区域の設定が国際法的にどういう立場にあるかということについてはつまびらかではありませんけれども、事実上中国が力をもってそういう制限を行なっておることは知ることができておるのであります。そこで一番北の軍事警戒区域につきましては、あらゆる国に対して同様の措置を中国が講じておるのならば、われわれ日本漁船はそこに入る場合は中国の承認を求めよう、こういうふうに言っております。こういうふうな点で中国はいわゆる権益と申しますか、自国の保衛のために主張しておるようであります。それから二番目の舟山群島の附近の航行禁止区域、これは私たちが自主的に日本の船を入れないようにしようという区域よりもなお中国側の内側になっておりまして、現にそこらでもいろいろと戦い等もあったようであります。これはわれわれは船を入れないようにしよう、こういうふうに言っております。また北緯二十九度以南、これは現に作戦区域であるから入らないことを希望すると、こう言っております。これは先ほど述べましたように、日本側の自主的判断に基いて行動しよう、このように考えております。このような、国の権益というような立場と若干違うかもしれませんが、中国側は軍事上の三つの問題についても相当強い要望を日本側に対していたしました。以上であります。
○千田正君 それで操業期間をある程度これは制限されておるようでありますし、なおかつまたそうした場合に、日本側は先ほどおっしゃられたように八百数隻という相当数の隻数を持っておるのである。これが一斉にまあかりに操業した場合、現地においていろいろな問題が起るような杞憂をわれわれは持つのですが、これは国内的には皆さんの間において出漁するところの漁船の隻数というものに対しての調整はとっておられるのかどうだろうかということ、もう一つは、その現場に行った場合、禁止区域を侵さないのが原則でしょうが、侵すようなこともあり得ると思うのですが、向うからは監視船あるいは何といいますか、調査船というようなものを派遣し、こちらからも何かそれに代るような船でも行って両方立ち会いの上において操業するのですか、そういうことは全然なくして自由操業を建前としておられるのか、その点はどういうふうなお話し合いになっておりますか、その点を一つ。
○参考人(山崎喜之助君) 日本の漁船は約九百隻近くあります。それが漁場において常時稼働する隻数は四百四十隻くらいであろうと想定されます。また中国側は三百二十隻くらいございまして、そのうち約二百隻くらいが常時沖合で稼働すると思われます。この日本側の漁船をあの六つの制限された区域の中に入れることにおいて非常に立て込むかというと、それほどではございません。また中国側はこの常時稼働する隻数は二百隻となっておりまするが、あの六つの漁場に対しましてやや実際より大きい数を要望して計上されております。で中国側はあれだけの大きい数は出漁しないのでございます。ですからあの六つの区域においてあの期間それほど紛争を予想せられるというほど立て込むものではない、このように一応考えてよいと思います。で、日本側はこの漁船の割当方法などをどうしておるかと申しますと、おもな根拠地である下関、戸畑、福岡、長崎に漁場調整委員会というものを作りまして、それぞれ割当数を行なっております。そしてこの四つの委員会の上に連合委員会を作りまして全体的な調整をはかっております。きわめて順調にそうした具体的な問題が進行されておるようであります。 この日中両国のこの六つの漁区における操業協定の違反の摘発はいかにするかということでございますが、この協定によりましては、相手側の漁船が発見し、そしてその自分の所属する国の団体へ通報する、こういうふうになっておりまして、特に監視船を用いて摘発するということになっておらないのであります。また日本側といたしましては、では摘発はそういうふうにするが、これを守るために日本側はどうするかということでございますが、これは主として自主的に、道義的にという線で今強調しておるわけでございます。もし必要がある場合は、政府の監視船等にここで行動していただきまして、自主的な立場で行動していただきまして、より違反のないようにしていただくことは結構だと、このように考えております。
○千田正君 最後に、このかつての拿捕されているうちで、帰されなかった船は百四隻あるのですが、これは向うもこの問題には触れたがらない、こういうような御説明でしたが、やはり漁業協定、あるいは漁業協約、今後また発展的に両国の間に漁業協定等が行われるとするならば、やはりこの過去の問題もこの際解決しなればならないのじゃないか、これはどういうわけで向う側はこの問題に触れたくないのかという点をどういうふうに御観察なさったかということをちょっと……。 次の点は、大体この協定は一カ年のようでありますが、これはやがて発展されて、いい意味において拡張されて、両国間におけるところの正式な国交回復の前提としての協定が結ばれるように、われわれももちろん望んでやまないのでありますが、これは大体将来の国交回復の実質的な、何といいますか、実績としてこの問題を進めていくというお考えですか、また向う側もそういう考えを持っているわけですか、これはどういうふうに考えておりますか。外交問題に移行した場合に、皆さんがお作りになったところの協定が両国間の外交上の一つの実績として将来適用されるということを一応目途としてこの協定が結ばれたかどうか。この点どういうふうにお考えになられますか。
○参考人(山崎喜之助君) お話のように、百四隻の日本漁船が今なお中国に抑留されておりまして、これは数年来の問題となっております。これは単に漁業者の問題であるばかりでなく、日本国民の大きな問題でありますので、何とかこの際解決したいと思いまして、私たちは、この問題の解決と、それから将来の問題として漁業の安全操業という、この二つを大きな目的として中国へ参ったのでございます。しかし中国側は先ほど申しましたように、民間団体であり、しかもその民間団体が生まれる前の問題を自分たちが討議して決定する権能がないというふうに申します。これは当然であろうと思います。それからいろいろ話をしておりますと、この問題は非常に関係の範囲が広い、またなかなかむずかしい問題であると、こういうふうに漏らしておるわけであります。そこで私たちは、その問題をまずおきまして、将来の問題を解決していく、そうすると、今まで拿捕された問題が漁業協定によってなくなる、ということは、過去の拿捕も何かこうした今の漁業協定の精神と非常に大きい関連があるということはわれわれにも、また中国側にも、また世界の人にもわかることである。だからまず漁業協定を先にしよう、こういう態度で臨んだわけであります。そこでやはりこれは中国の最高の責任者にお話しすることが最もよいと思いまして、周恩来総理に面会してお願いしたいと思いましたが、時期を失したわけであります。中国がなぜこの問題に触れたくないかというと、やはりいろいろと向う側にも言えない事情があると思います。私たちもまず大きい漁業協定ができれば、そうあせらないでも中国側にも大国としての襟度の上から、私は日本側の懇請に対してこれを黙殺することはなかろうと思いまして、これは急いで追及しないほうがよいと考えて追及しなかったわけでございます。 次にこの漁業協定は、将来外交関係が樹立された場合の一つの実績になるのではないかということであります。この私たちの漁業協定は、理論的な面と、実際的な面とございます。理論的な面で会談の半分以上を費しましたが、もともと国家の理想が異っております。従って漁業生産のごときも、その生産手段及びそれに対する観念が、はなはだしく違っておるのであります。これは双方の平行的な考え方でありまして、いくら話をしておっても一致する点がありませんので、まず理想論及び原則論を一応伏せて、実際問題で話し合おうという態度をとひまして、今度の漁業協定は理論の問題よりも、主として実際問題に主点をおいておるわけであります。しかし実際問題といえども理論をはなはだしく踏みはずしてはならないというのが日本側の配慮でございまして、若干疑義のある点もあると思いますが、このような協定を結んだようなわけであります。特に私たちが将来の両国間の政府の漁業交渉の際最も問題になると思うのは、底びき網漁業禁止区域だと思っております。これに対するわれわれの感じといたしましては、双方が漁業協定としてある区域内に相互に漁撈をしないということは、これは資源維持ということが唯一の理想じゃないかと思うのです。ですからその資源維持のために十分に、将来日本が発言できるようにという点につきまして、具体的な問題と、この理論的な問題を何とか調和して、将来日本が不利にならないようにというふうに考えてやっておるわけでございまして、特に私たちが外交問題となって最も心配する点はこの問題でございます。特に書簡等におきます軍事的な問題につきましては、これは少し大胆過ぎるという御批判も受けると思うのでございますが、向うもずいぶん大胆な表現をしておりますし、私たちはそれにこたえるというよりは、われわれが現実の問題としてどうするかということを述べたというふうに考えておりまして、この点が大いにわれわれとしても研究しなくちゃならないと考えておるわけであります。 それから中国側はこの漁業協定をどういうふうに考えているかといいますと、非常に真剣に考えておりまして、今後この期間が過ぎた後も、依然としてこの協定の、いわゆる協議をすることを要望するであろうと思うわけでございます。と申しますことは、中国は御存じのような政体でありまして、その漁業等も国家目的のためにどしどし力を注ぎ込むのでありますが、現在中国の沿岸のこの種の漁業は、非常に事業成績を上げております。そして政府は次々と増産の命令をしておるようであります。またこれを営む水産公司も相当の収益をおさめております。また昭和二十九年に比べ一五%に相当する新船四十四隻を昭和三十年、本年度は造船しております。今後大型漁船で操業すべきである。また上海附近の漁船が今非常に不足しておるというようなことが、われわれの折衝の間にわかって参りました。また東海、黄海の底びき魚の六〇%あるいは七〇%は、中国側がとっておるような立場から、やはり日本との漁業協定については私は熱心であろうと、このように考えております。
○秋山俊一郎君 まことに御苦労でございました。いろいろ御説明がありまして、大要わかりましたが、皆さんが長い間向うでいろいろ折衝されるかたわら、向うの漁業状態等もかなりお調べにもなったと存じます。ただいまお話のありましたように、中国側としてはどんどん増産を奨励しておる、現在、先ほどのお話によりますと、中国の船が、底びきが二百八十七そう、建造中のもの四十四そうというのであります。われわれといたしましては、意外にその数の多いのに驚いておるわけであります。これらに対しまして、中国側として一向制限をしておるような感じは受けない、どんどん船を作って増産に拍車をかけておるように思われるのです。ところが一方日本では、どんどんこれを制限し、現在制限しておるのみならず、減船しようとしておる。そこに、果してそれは妥当な政策であるかどうか、資源保護という問題はもちろんでありますが、日本は非常な制限をし、さらに船を減らしておる。ところが先方はどんどんふやしておる、しかも大型に変えていこうというような構想があるとすれば、そういう点について皆さんの向うで感じられたそういう点は、どういうふうに感じられたか、この点を一点お伺いしたいと思います。
○参考人(山崎喜之助君) 中国船は、先ほど申しました隻数でございまして、なお付け加えたいことは、その稼働率の非常に高いことであります。一年約二十航海いたします。日本の漁船は十二ないし十三航海であります。しかも一回当りの漁獲量は、日本よりも一〇%以上多くのものをとっておるのであります。また中国の禁止区域内で操業しております帆船の漁船、こうしたものは割合に稼働率が低いので、これを漸次機械化した機船底びき網漁船にしようという計画があるのでありまして、いわゆる日本の漁船と入り会うところの漁場に対して、中国は相当積極的に漁獲力を増し、漁獲を増そうとしておることは明らかであります。日本の底びき漁船が現在減船、整理をするということが問題になっておるそうでありまするが、それは国内問題といたしまして、われわれが漁業代表として中国で交渉いたしましたときには、そのようなことは夢にも思わなかったことであります。と申しますことは、将来両国の漁業者が、この東海、黄海における適正な漁獲量を定め、それを最も経済的に生産するために、適正な漁船の数を決定しよう、これは恒久対策である。しかし現在はそういった段階にはない、こういう考えのもとに漁業協定をなしたのでありまして、私たちはこの適正な漁獲量の決定しない前に漁船を減少させるということについては、いかなる立論の根拠があるかということを疑うのであります。むしろわれわれは、できるだけ日本の漁船が十分に活動できるように、いわゆる漁業上の正しい権益を拡張しようとするにかかわらず、日本は一面日本の漁船を減して行くということは、私たちが中国と交渉する場合に非常にわれわれの主張を弱めたものでありまして、こういうような風評が中国に伝わることを私たちは非常におそれたものであります。帰国してみますと、こういう問題が現実にあったということで、非常に意外に感じておるのであります。われわれ漁業代表としては、今日、日本の漁船を漁業資源の上から減船しなくてはならないというふうな理由を見出し得ないのであります。以上であります。
○秋山俊一郎君 もう一点お伺いしたいのは、この協定について違反のあった場合、私どもはこれは違反がないことを望みますが、従来といえどもいろいろな場合に違反がどうしても出てきておる。今後一切違反がないということも保証しがたいのでありますが、たとえばこの禁止区域として示されている線、あの中に日本漁船が入って行った場合に、これは向うはつかまえないで、その船の船名、その他の事実を、日本の皆さんの組織しているこの協議会に通報してきて、日本で処分させるということになっておるのでありますか、あるいはまた従来のごとく拿捕されるというような憂いはないものでありますか、その点をお伺いしたいと思います。
○参考人(山崎喜之助君) 違反の問題に二つございます。六つの区域について約束したことの違反と、それから次は中国が言うであろうと思う禁止区域を侵して日本の船が中に入った場合のいわゆる違反といったようなことであろうと思うのであります。六つの区域の中の違反というようなことにつきましては、先ほども申しましたように、相手側の漁船がこれを発見して自国に通報し、これを処理する、違反した場合には警告その他の適当な処置をする、そういうことになっております。 それから今お尋ねの重点は、中国が作った禁止区域を侵して日本の船がその内部に入る、そうして中国側に抑留されたような場合はどういうことになるかということだと思うのでございます。この点は、この漁業協定は触れていないのでございます。
○秋山俊一郎君 そうしますというと、その中に入れば拿捕の危険はある、こういうふうに承知してよろしゅうございますか。
○参考人(山崎喜之助君) この禁止区域の中に入れば拿捕の危険はあると思います。で、こういう点については、政府で御交渉下さる以外にはわれわれとしては手がないと思います。ただ、これは御参考までに申し上げますが、いろいろと交渉の経過のうちに、相手側の団長が、何とかこの禁止区域を認めてほしい、ということは、日本の漁業者の利益にもなる、もし日本の漁船がこの中に入った場合、中国の漁業協会は中国の政府に対して、これは漁業協定の違反であるからといって特に何らかの取り計らいを願う余地がある、だから中国の言うことをいれないかと、こういうふうに述べたことがございます。しかし、これは向うの責任のある態度を表明したものとは思いませんが、御参考に申し上げておきます。
○秋山俊一郎君 その違反をした場合に、拿捕されてしまえばそれまでで、今までのようになかなか帰ってこないかもしれませんが、その他の違反において警告を受けたりなんかした場合には、日本の漁業者といたしましてそれの処置方法というものは大体考えておられるのですか。
○参考人(山崎喜之助君) 今秋山先生が質問されました違反の処置については、ただいま漁業調整委員会等において割当等を行い、さらにこれを厳守するためのいろいろの申し合せ等をやっております。できるだけ民間で自主的に何らかの措置を講じたいと思って、寄り寄り研究をしております。
○委員長(江田三郎君) ほかにございませんか。
○千田正君 参考人の方じゃなく、政府当局にお尋ねしたいのですが参考人に対する御質問がなかったら、あとから質問したいと思いますから、お願いします。
○委員長(江田三郎君) それでは参考人に対して質問ございませんか。では参考人の説明はこれで終ります。どうも御苦労さんでございました。 それではこの問題について政府当局に対して御質疑があればこの際お願いいたしますが、なお、政府に対しましては、農林大臣、外務大臣、水産庁長官、外務省アジア局長、海上保安庁長官の出席を求めておりましたが、ただいま出席なさっておるのは、外務省アジア局第二課長、海上保安庁警備救難部長、水産庁次長、同じく水産部長の四君でございます。 それじゃ逐次御質問をお願いいたします。
○千田正君 まず外務省の方にお尋ねしたいのですが、この日中漁業協定はもちろん民間側の同志によって結ばれた協定でありまするが、実質的においては私はこれは将来中国と日本との間に国交回復にいくところの一つのきずなであるということを示唆されているように感ずるのであります。それで今度のこうした問題は将来の外交交渉の際の一つの日中間の国交回復の前提としての実績になるかどうか、この点についての外務省側の見解を承っておきたいと思います。
○説明員(小川平四郎君) ただいまの御質問につきましては、今回の協定が民間の団体の間に結ばれたものでありますので、将来政府間の話し合いになる場合に、実績とはならないと考えております。協定の内容その他につきまして検討いたしますと、もし政府が結ぶのでありましたらば、若干異った結び方をしたのではないかと思われる点が二、三ございますけれども、これらの点につきましては、先ほど御説明のありましたように、民間の代表の方々も特に注意してこられましたようでございますし、また政府を束縛するものでないという態度をとっておられましたので、将来漁業協定ができるようになった場合に障害にはならないと考えております。
○千田正君 障害にはもちろんならないだろうが、私は障害になるのじゃないかというお尋ねじゃないのであります。それは一つの実績となって一つの両国の間の国交回復に対してよい意味の影響にならないかという点を、むしろ私はプラスにならないかということを、あなた方の観点からどう考えるかということを聞いておるのです。その点を承わりたいのです。
○説明員(小川平四郎君) 私はこの障害の点だけ申し上げましてはなはだ恐縮でございますが、具体的に結ばれました安全操業その他の取りきめは、実際に内容としましてはおそらく政府間の協定を結ぶときにも対象となる問題でございますので、そういう意味では何と申しますか、手がかりになると思います。
○千田正君 それがいわゆる手がかりになるのであって、実績となるとは私どもは考えません。もう一つはこの民間側のこうした漁業協定によって第三国に及ぼす影響についてはどういうふうに考えておりますか。例えば新中国からいえば台湾政府は認めておらないので、台湾もやはり大きな意味における中国であるという観点に中国は立っておるのでありますが、ところが日本政府は御承知の通り台湾政府を認めておる。こうした面におけるところの一体関連性からいって、この協定から受ける影響は何もないかという点は、どういうふうに考えておられますか。
○説明員(小川平四郎君) その点につきましては、いろいろの影響があるものと思います。台湾の問題がまず第一にございます。あるいは朝鮮の李ライン、その他オーストラリアの問題、似たような問題がございますが、これに対する一つの例となるわけでございます。もし政府間の協定でこういうものを結びますれば、直接にそういう他の方に影響が及んでくるということの可能性が非常に多いが、民間で結ばれましたものでありますので、将来そういう他の国と政府が交渉する基礎にはならないという考え方に立って、他に及ぼす影響は極力防がねばならない、こういうふうに考えております。
○千田正君 どうも外務省の方々はいつでも要領よく逃げることを訓練されておるから、うまい逃げ方をしておるようだが、それでは一つ聞きますが、かりに今の禁止区域において民間同志の話し合いだから問題は起らないと思いますけれども、かりに拿捕事件その他のような問題が起きたような場合において、これは日本の外務省としては日本の国民が不幸にして第三国から捕えられたり、あるいはいろいろな問題が起きた場合においては、この問題に対しては民間側の交渉によって協定があるのだから、われわれは知らんといわれて逃げられることもあり得ると思いますが、もしも不幸にして拿捕事件とかあるいは障害事件とかいうような問題が起きた場合においては、外務省としては当然この問題はいわゆる国と国の問題として取り上げて折衝するだけの腹がまえはできておられるかどうか。その点はどうでありますか。
○説明員(小川平四郎君) ただいま例にあげられました拿捕その他が起る。中共に拿捕されるということでありますが、中共の拿捕につきましては、現在昨年まで国交がありませんために直接の交渉ができなかった。その結果こういう民間の直接のお話になったと思います。そこで協定に違反して中共が船を拿捕したということが起りました場合に、私どもとしてはこの協定によって拿捕されたのだから、これはわれわれの知ったことでないということは申しません。これは申せないと思います。ただそうしますと、事態は昨年のこの協定が結ばれます前と同じことになりまして、私どもとして直接に今中共と話し合うということができない状態でございますので、これは他の方法によって解決しなければならん。他の方法と申しましても、現在でき得ます方法は、第三者を通じて返還を求める、そういうようなことになると思います。結論としましては民間協定によって拿捕されたものであるから、日本政府としてはこれはもうしようがないのだという態度はとれない、こう思います。
○千田正君 もちろんそうあって然るべきであって、代表が行くにしたって、あなたがたの外務省から旅券を出して行っておるのだから、代表を認めたことになっているのですから、実際から言えば……。だからかりに民間側の協定であるといたしましても、国全体の問題としては、やはり渉外交渉としては、外務省それ自体が、何か民間側の協定違反であっても、それが国と国との間の紛争である場合においては、外務省としては当然何らかの方法をもってその解決を講じなければならない、そういうふうに今考えておられるわけでありますね。わかりました。
○秋山俊一郎君 ただいまの御答弁を伺っておりますと、民間同士の協定であって、日本政府としてこれは関知していない、従ってその協定に違反しておろうがしていまいが、そういうものが協定されない前と同じような態度で行く、こういうふうに聞えるのでありますが、さようでございますか。
○説明員(小川平四郎君) これがうまく行く場合におきましてはこの通り実施されて結構なことでございますけれども、この協定に違反したことが直接に日本政府を束縛するということではない、従ってただいまお話の問題につきましては、中共に拿捕されたことは民間の協定から申しますれば、日本の民間側としては、これはもうやむを得ないことだと言わざるを得ないと思いますけれども、日本政府としては、これは別の立場から抗議ができる、そういう点においてこの協定には拘束されない。こういうふうに御答弁します。
○秋山俊一郎君 それでは水産庁にお尋ねしますが、水産庁も同様の感じを持ってこれに対処されますか。私の伺いたいのは、若し日本政府が、今言ったように漁業者代表の協定とは別途の考えを持っておるとするならば、従来漁船の特殊保険というものがあり、その特殊保険は拿捕された場合に当然支払うべきものでありますならば、若しこの違反によって拿捕された場合にもやはりその保険は当然今外務省の見解のごときであれば、支払うべきものであると思いますが、さような見解をとっておられますか。
○説明員(岡井正男君) 同じでございます。外務省と同じように特殊保険に入っているものが民間協定を破ったというような場合にも、これは払わんというわけには参らんと、かように考えております。
○千田正君 中国側はやはり政府の意向を体して民間協定として出ておられるようでありまするが、日本側としましては当然民間の方々が代表においでになったとしましても、日本の立場から言えば、少くとも政府が暗黙の間にこの協定を認めざるを得ないだろうと思うのですが、それに対して何らかのサゼスチョンなりあるいは指導なりということは政府当局としてはおやりになっておられますかどうですか。その点をまず第一に聞きたいと思います。
○説明員(岡井正男君) 民間代表がおいでになる前に事前連絡があったかどうかという御質問でございますか。
○千田正君 事前連絡はもちろんのことでありまするが、事水産の問題であるがゆえに特に慎重を期さなければならないので、行政の立場からこういう問題に対しての指導かあるいは何らかのサゼスチョンをされたかどうか、こういうことであります。
○説明員(岡井正男君) 国の考え方ということは、一貫して外務省と水産庁と十分連絡をいたしまして、一本の方針は持っておるわけでございます。民間もそれぞれ権威のある人が代表者に選ばれて御出席になっておりますので、事前にわれわれが格別御注意申し上げなくても、十分に政府の考え方そのものは消化されていたものと思います。
○千田正君 私は、敗戦後日本の水産業というものは各国から制限を受けておるという感じを深くするのであります。たとえばマッカーサー・ラインが撤去されたあと、直ちに占領直後においては日米カナダ漁業条約によって日本のいわゆる公海におけるところの操業というものはある程度の制限を受ける、さらに一方的には李承晩の勝手な宣言などで操業が不可能になっておる。一面濠州のアラフラ海等においては、これまた日本の操業に対しては一応の制限を加えられている。さらに今度のいわゆる中国との間のこの問題についても、やむなく協定をせざるを得なくなってきておる。だんだん、だんだん、いわゆる日本の水産業というものは広く発展すべきにもかかわらず、圧縮されつつあるのではないかという感を深くするのですが、その点については一体水産庁としてはどういうふうにお考えになっておられますか。
○説明員(岡井正男君) むずかしい御質問ですが、実はその通りの実態でございます。それで現在ローマで国際的な会議が開かれまして、私の方からも藤永部長が出席されまして、現に副議長に選ばれたという電報が入っておりまするが、詳しい報告はまだありませんが、アウトラインだけを申し上げますと、そういう国際会議におきましても、沿岸国の隣接している海域についての行政権の優先という線が相当発言力が強い、早く言いますれば、集まった諸国のうちで三海里外は自由に、公海自由の原則だというような日本の発言は非常に少くて、むしろ沿岸優先であるというような意味の発言が非常に多いと、従って国際会議においてもそういうような色合いの決定があるいは実現するのではあるまいかというような心配があるというようなことを申して来ておりまするが、現在、終戦後に現われたいろいろなケースを見ましても、千田議員さんが仰せの通り、ひしひしと水産日本が自由奔放に三海里の外では自由にやるという点がだんだん狭められていくのだという心配が非常に多いということは事実でございます。これについて外務省とも緊密な連絡をとりまして、でき得る限り日本のようなわずかの島国に生きるために、水産を捨ててはいけないのだという点と、無主物をとって、もって人類のために寄与せしむるという方向は、これは阻止すべからざるものではないんじゃないかという理論づけで戦っておるというのが現状であります。
○千田正君 そこで今度のラインを引いたことはまことにいいようでありますし、又将来先ほど外務省のお答えのように、それは民間側の協定であって、将来の日中国交回復の際の足がかりにはなるのだが、それをもって実績があるという結果にはならないという御答弁でありますが、実際からいって、ある程度の禁示区域を設定されるということは、とりもなおさず日本の公海における自由の原則というものは一応拒否されておるのだということ、言いかえて考えればそういうふうになります。しかしこれが国交回復を前提としてやられるのだという意味においては非常にプラスになると思いますが、ただこの禁止区域に入った場合において、何らかの紛争を起す、あるいはその他のこちらにおいてこれは一カ年しかありませんが、十分に自粛して将来の発展に資するために、日本の漁民のために、水産庁としてはこの結ばれてきた両国の協定に対しては、できるだけの援助をされるのか、それとも全然それは民間側でやっているんだから適当にやったらいいだろうというふうにお考にえなっているのですか、いかがですか、その点は……。
○説明員(岡井正男君) 先ほど副団長の山崎氏から繰り返して民間が自主的に守るという決意を持って協定をしてきたという御説明をいただきまして、意を強うしているわけでございますが、さように進んでほしいという気持を十分持っております。で、先ほど外務省からもお答え申し上げたので御想像はつくと思いますが、政府として一本のかたい方針であらゆる国家とも将来漁業交渉を進めたいという一本の太い線はゆがめないつもりでございますので、その線にこの協定を政府がバックするとか、何とかするために、政府自体もそれを認めているのじゃないかというようなことが露骨に出て、将来日本が非常に交渉上にマイナスになるというようなことのないように考えて、一つそれは実際問題としてどういうふうな点をどこまでどういうふうに出ていくかということは、今すぐに御即答はできないと思いますが、非常にむずかしいと考えております。
○千田正君 まあ大体だいぶ苦しい御答弁のようですからこれ以上追及いたしませんが、この資源調査その他に関して、水産庁あたりはこういうことは別といたしまして、資源調査その他いろいろな海流の調査ということで、調査船とか、そういう船はその方面に、ちょうどそういう操業区域内に派遣することがありますか。
○説明員(岡井正男君) 双方がいわゆる科学的に調査のデータを交換しようというような友好的な取りきめについては、政府は表からは出るのはおかしいとは思いますが、政府が公表しているような種類のデータも民間の方もキヤッチされているわけでございますので、民間の御意向として友好的にお使いになるということは好ましいことと思いますし、われわれも間接ではあるにしても、中国側の資源についての詳細なデータは、できればわれわれも入手いたしたい、かように考えております。
○秋山俊一郎君 水産庁にお伺いをいたしますが、われわれは水産庁も同様であろうが、シナ東海、黄海という所は元来日本が開発したもの、そうして日本の独占漁場であるがごとき感じを今日まで持って参りました。従ってこの資源の保護については専念するということで今日まで保護をして参っております。ところが只今山崎副団長からの報告もありましたように、中共といたしましては盛んに進出してくる態勢にある、そこで今までわれわれの持っておった日本の漁場であるという観念はこわされてしまっている。しかしながらこの海の資源というものは別にふえるわけでもないし、厳然として変化はしてないはずです。ところで、この資源を維持していくということは非常に必要なことではありますが、日本だけがそういうふうにみずから引っ込んだ制限をする一方、どんどん進出してくるということについては、われわれとしても今までの観念を変えなければいけないのではないか、かように考えるのでありますが、昨年来、農林省といたしましては、北洋に進出したために、以西底びきの減船をするということが問題になっておるようであります。ところで、今度の代表団が向うに行って向うの実情を調査して来た結果は、山崎副団長の話のみならず、交渉に当った団員がひとしく同じような御意見を述べておられるのであります。それに対して水産庁は、その減船という問題について心境に変化がありましたかどうか。依然としてそれは変えないつもりでありますかどうか、その点をお伺いしたい。
○説明員(岡井正男君) 以西底びき網の現有勢力は約九百ばかりで、中国のほうは二百五十程度だという話でございまするが、しかしこれは現段階の話で、中国のほうは国家のバックによるほとんど国の息のかかった企業形態での行き方で、場合によれば相当早く造船、いわゆる操業能力の増加ということが出てくるのじゃあるまいかという御懸念については、われわれも同じでございます。そうなりますと、おそらく中国からお帰りになった代表者各位が、それぞれブロックの指導者でもあられる方が相当多いのでございますから、底びき各業者に対する今までの考え方を若干変えるようなこともあり得ると思います。政府は元来、以西底びき網についての行政方針としては、もちろん資源という面を考えはしますが、また一方、今の以西においては、ほとんど他の漁業が今は行なっておりませんので、ひたすら東海、黄海においては底びきオンリーでございます。従って底びき網関係業者の結集された世論の一致ということは、行政上にも反映さしてきておるわけであります。従って、そのもとのほうの意見が若干今までと観点が違ってくるだろうという予想もつきまするので、これは十二分に遺憾のないように一つわれわれも考えてみたいと、かように思っております。
○秋山俊一郎君 もっともだと思います。今までのわれわれの観念とは大分変って来ておりますので、ただわが方が引っ込んで向うの進出にまかせるということでなしに、先ほども話がありましたが、中国側がどんどん船をふやし生産を増加していくということになれば、勢い限界に達すればやはり双方に影響はくると思います。そのときにおいて、そこに資源に基いての何らかの協定というものが必要になってくるのじゃないか。あるいは優勝劣敗にやりまくるか、そうではいけないと思うので、そういう際のことも考えて、水産庁は今後のシナ東海、黄海における水産行政というものを慎重に一つ考えていただかないというと、非常な後退をせなければならぬことになると思いますから、この点一つ御了解を特にお願いいたしておきます。
○千田正君 海上保安庁さんに伺いたいのですが、もう一つ水産庁次長に最後にお願いしておきますが、少くとも今度の民間の漁業協定は、非常に苦難な道を歩んで、とにかくここまでこぎつけて、一つの成果をおさめてきた。これに対して日本政府は、わしは知らぬという態度ではなく、できるだけの力添えをして、それが発展して、プラスになるような方向に、政府当局の行政面を担当する方々は、将来の日本の発展のためでもあり、日中の友好のためにも考えていただきたい。これは特に要望しておきます。 保安庁の方に承わっておきたいのですが、今申し上げた通り、代表は民間の側で話し合いをつけてきた問題にしろ、事は公海上に行われるところの操業でありまするから、いろいろな支障が起きないとも限らぬのであります。そういう場合に日本側からの出先の漁船、その他から要請があった場合に、あるいは警戒、あるいは保護、そういう面には当然出動されると思いますが、その点のお考えはどうでありますか。
○説明員(砂本周一君) 海上保安庁の巡視船といたしましては、領海はもちろんでございますが、公海におきましても、日本の船舶が活動します全範囲にわたりまして必要であり、かつ可能であれば、まず海難の救助というのから出ていかなければならない、かように考えるのでございます。そうしてもう一つは、法律に基きましていろいろ、海上におきましても犯罪がございますので、その取締りに当然公海にも活動をしなければいけない、かように考えております。 それから、今回問題になっております拿捕の問題につきましては、もちろん海上保安庁の当然の業務に関連はございますが、いろいろなファクターがございますので、これは特に関係官庁、関係団体の御意向も十分織り込んで、これは閣議決定によりまして、現在御承知のような方法をとっておるのでございまして、今回の新しい事態につきましては、いろいろ巡視船の行動が、誤解によって正常な操業を阻害するというようなことは、あってはなりませんので、その点も十分顧慮いたしまして、なおその点については海上保安庁独自の行動というのはないと思います。従ってよく皆さんの御意見も聞くことは当然でございますが、また、正当な手続によりまして、中共関係の漁業に対する直接の巡視船の行動につきましては、十分研究いたしまして、最も適当な措置をやられるべきだと、かように考えます。
○委員長(江田三郎君) ほかにございませんか。質疑がなければ、本日はこれで散会いたします。 午後三時四十八分散会