本会議 第12号
- 発言数
- 16 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1955/04/25
会議録
○議長(益谷秀次君) これより会議を開きます。 ————◇—————
○議長(益谷秀次君) 御報告いたすことがあります。議員小畑虎之助君は去る四月二十日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。 この際弔意を表するため大西正道君から発言を求められております。これを許します。大西正道君。 〔大西正道君登壇〕
○大西正道君 ただいま議長から御報告に相なりました故衆議院議員小畑虎之助君に対し院議をもって弔詞を贈呈し、その弔詞はこれを議長に一任するの動議を提出いたします。 小畑君は、去る二十日にわかに逝去されました。私は、この際、諸君の御同意を得て、議員一同を代表し、つつしんで哀悼の辞を申し述べたいと存じます。(拍手) 君は、明治二十七年三月、兵庫県宍粟郡神戸村に生まれ、若くして志を政治に抱き、昭和二年には早くも弱冠三十二歳にして兵庫県会議員に当選され、以来十カ年にわたり引き続き県会に在任されました。この間、県会議長の要職に選ばれ、大いに地方自治の発展と民生の福祉増進のために貢献せられたのであります。また、君は、多忙な政治生活の半面、神戸又新日報社長、揖水銀行支配人等の重職を兼ね、報道、文化、地方経済の発達のためにも多大の業績を残されました。 昭和十一年、第十九回衆議院議員総選挙には、兵庫県第四区から出馬、みごと当選の栄誉を得られたのであります。以来当選四回、在職七年に及び、常に憲政の発達と民意の暢達のために尽された功績は、まことに甚大なるものがあります。特に第十五回国会におきましては法務委員会理事として活躍され、また改進党内にあっては税制調査特別委員長として重きをなし、君の得意とする財政問題について多年のうんちくを傾けられたのであります。先般の第二十七回総選挙にもみごと当選、引き続いての地方選挙に席の暖まるいとまなく、郷党の後進のためもっぱら連日奮闘せられつつあったのであります。 しかして、去る四月十三日、神戸市における街頭演説の途中、突如脳出血にて倒れられました。この報一たび伝わるや、われらはもとより、君を知る人々はあげて驚き、かつはその全快の一日もすみやかならんことを祈ったのであります。しかるに、われらの祈りもむなしく、越えて二十日ついに君は不帰の客となられました。このことは、君の三十年の長きにわたる輝かしい政治生活を飾るにふさわしい御最期とは申せ、まことに哀惜痛恨にたえない次第でございます。(拍手) 君は、資性豪放にして、らいらく、事に当るや満身の熱情を傾倒してこれに臨むという熱情家でありました。平素日本刀を愛し、酒を好み、漢詩をよくされた。人訪れれば十年の知己のごとく酒杯をかわし、斗酒なお辞せず、興至れば長刀を撫し、唐詩を朗詠して思いを述べられました。しかして、君はまた至誠の人でありまして、公私多端なる生活においても特に郷党のために尽力し、その信望はきわめて厚かったのであります。 今や日本の前途ますます多事多難、君のごとき練達の士に期待するところまことに大なるものがあります。しかして特別国会も再開されんとするときに当りその長逝にあいましたことは、返す返すも残念至極であります。 ここに、つつしんで哀悼の誠をささげ、君の御冥福を心からお祈り申し上げる次第であります。(拍手)
○議長(益谷秀次君) ただいま大西君から提出されました動議に御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって動議は可決せられました。 ここに議長の手元において起草いたしました文案を朗読いたします。 衆議院ハ議員勲四等小畑虎之助君ノ長逝ヲ哀悼シ恭シク弔詞ヲ呈ス この弔詞の贈呈方は議長において取り計らいます。 ————◇—————
○議長(益谷秀次君) 内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、石橋国務大臣から経済に関しそれぞれ演説の通告があります。順次発言を許します。内閣総理大臣鳩山一郎君。 〔国務大臣鳩山一郎君登壇]
○国務大臣(鳩山一郎君) さきに行われました総選挙の結果に基きまして、私は、第一党たる日本民主党の総裁として、本国会の指名によって再び内閣総理大臣の重責をにないまして、第二次鳩山内閣を組織いたしました。 本日、昭和三十年度予算を国会に提出いたしまして国政の本格的審議を求めるに当りまして、ここに政府の所信を申し述べる機会を得ましたことは、私のまことに光栄とするところであります。(拍手) 私はまず私の抱く政治理念の大本について申し述べたいと思います。 その窮一は、民主政治のあり方についてであります。およそ民主主義の基調は個人の自由の達成と人格の尊厳とを主張する自由主義にありますが、それは同時に他人の自由と人格の尊厳とを認めることを前提としておることでありまして、私はこれを友愛精神と呼んでおります。要するに、互譲、寛容の精神こそ民主政治を正しく運用させる基本であると思うのであります。 各政党が、それぞれの信念に基いてお互いに自説を主張し合うことは当然でありますけれども、それはあくまでも、国家国民のために、よりよい政治を実現することが目的でなければなりません。(拍手)しかるに、不幸にして、近来、わが国の政治の実態は、その民主政治の精神から逸脱いたしまして、何事についても与野党の間に絶対相いれない形の政争が繰り返されたことは、まことに遺憾にたえないことであります。 このような風潮に対して、政府は、今後あくまでも民主政治の本義に徹してみずから恥じない行動をとり、わが国の民主政治を正しい姿に引き戻しまして、りっぱに育て上げ、国民の議会政治に対する信頼を回復するために最善の努力をいたすべく深く決意しているのであります。(拍手)いたずらに権力をふるって独善に陥ることなく、あくまでも謙虚な態度で各派の意見に耳を傾けまして国政の審議に当っては十分その意を尽し、国民の要望する政局安定のために誠意を披瀝いたして、その協力を求める態度をとりたいと考えておるのであります。(拍手) 次に、その第二は、平和外交の推進についてであります。従来しばしば申し上げました通り、わが国外交の基調が、自主独立の方針を堅持しつつ、米国初めその他の民主主義諸国との協調にあることは、不動の方針であります。他方、ソ連に対しては、たびたび表明いたしました通り、すみやかに戦争状態を終結し、正常関係を回復したいという考えを持っておりまして、同じく中共に対しましても、極力貿易関係の改善に努めたい所存であります。 私はこの機会に特にあらためて明らかにしておきたいと思いますことは、共産主義国家と国交を行うことと、共産主義を受け入れるということは、全然別個な事柄であるということであります。(拍手)われわれは、あくまでも反共の態度を堅持いたしまして民主主義擁護のため万全の対策を講じて参る覚悟であります。しかしながら、幾らわれわれが反対している共産主義思想であっても、現にその共産主義を信奉している有力な国家が存在する事実は否定はできないのであります。このような国家に対しては、お互いに相手国の主権を尊重し、自国の思想を他に宣伝強制することなく、正常なる国際関係もしくは経済交流の道を開くことによって、ともに利益を得ることを考えなければなりません。しかも、このことは、世界のたれもがおそれる第三次世界大戦の勃発を防ぐためにも必要であると信ずるものであります。(拍手)戦争の回避と平和の確保こそは、今、日本国民にとって何ものにもかえがたい絶対の悲願であります。従って、平和外交の推進こそは、今日の日本の為政者に与えられた最大の務めであると確信するものであります。(拍手) もとより、アジアに国をなす日本として、アジア諸国との親善に力を注ぐのは当然なことであります。そこで、政府は、あらゆる機会をとらえてアジア復興の方策に参画し、さらに他国の主唱するアジア援助計画にも積極的に参加するなどの手段をとりまして相携えてアジアの自立と発展に寄与したい所存でございます。 以上のような外交方針とも関連して、わが国が自主独立の実をあけるためには、どうしても国力の許す範囲内において自分の国を守る態勢を整えておく必要があります。従って、政府は、国力に相応じた自衛力を漸次整備いたしまして、米国駐留軍が逐次撤退できるようにするため、経済六カ年計画と見合う長期防衛計画を作成するつもりであります。そのためにも、国防会議を設置し、国防に関する重要事項を審議することといたしたい考えであります。 次に、国民生活の安定と向上について申し述べます。 独立の完成は、経済の自立がその基礎でありますが、この経済自立のためには、国民生活の安定をはからなければなりません。国民生活を安定させることは、ひいては真の防衛力を培養することとなるとともに、わが国を共産主義の脅威から守ることにもなるのであります。 国民生活の安定のためには、まず農林、水産、鉱工業等の生産と貿易を盛んにするとともに、消費生活をできるだけ豊かにすることが肝要であることは言うまでもありません。 しかしながら、敗戦によって経済の基盤を破壊されたわが国においては、終戦十年を迎えた今日、いまだその回復が十分ではありません。従って、民生の安定も一挙にその成果を全うすることは困難でありまして、長期にわたる総合計画を着実に実施いたさなければなりません。政府はさきに経済六カ年計画を発表いたしましたが、本年はその出発の第一年として、拡大生産への地固めと民生安定の第一歩を着実に進める方針でありまして、このため諸般の施策を三十年度の予算に具体化した次第であります。詳細については関係閣僚から説明することになっておりますので、そのおもなるもの二、三について簡単に申し上げることにいたします。 その一は、住宅問題であります。政府が住宅政策に大きな重点を置いておりますことは、すでに種々の機会に申し述べたところであります。昭和三十年度における建設目標を四十二万戸といたしまして、公営住宅、住宅金融公庫による住宅等のはか、新たに住宅公団を設立して、一般庶民住宅の建設、宅地造成等を積極的に推進していく予定であり、また、民間の自力による住宅建設に対しましては、税制その他の面において必要な措置を講じて、できる限りこれに協力を惜しまない所存であります。 その二は、社会保障関係の問題であります。まず失業問題については、政府の最も重視しているところでありまして、根本的には、長期経済計画のもとに逐次産業活動を活発化し、それによって雇用の増大をはかっていく考えでありますが、当面の対策としては、失業対策費を大幅に増額して失業対策事業を拡充し、また特別失業対策事業と公共事業の総合的運用によって失業者の吸収をはかり、いやしくも社会不安を引き起すことのないよう万全の措置を講ずるつもりであります。また、医療保障及び各種の公的扶助等の社会保障の充実は、民生の安定上きわめて肝要な事柄でありますので、政府もまたこれに十分力を注ぎたいと思っております。 その三は、所得税の減税であります。税制が国民生活に影響することはきわめて大きいものでありますが、本年度においては、所得税を中心とする直接税三百二十七億円の減税をはかりました。国民生活に関係の深い所得税については、特に低額所得者の負担を軽減することとし、公約の実現に努めたのであります。 以上、私は政局の現状に対する基本的態度と重要政策の二、三について申し述べましたが、私は、民主政治は力の政治ではなく、あくまでも正義の政治でなければならないと確信いたしております。(拍手)正義の政治が行われる土台がその国の国民のかおり高い品性と良知良能にあることはもちろんであり、その意味で教育こそすべての大本であることは申すまでもありません。政府は、そのために必要な文教の充実と刷新の諸施策を講ずるとともに、国民の間から盛り上る新生活運動を助長して参りたいと思います。 政府は、民主主義のルールを守り、みずからその身を清廉に持して、国会の品位を高め、それによって政治の信頼を回復することに全力をあげる覚悟であります。しかも、国民大衆の声をできるだけ施策の上に反映させて、国民と血のつながる明朗な政治を行い、(拍手)人心を一新して国民が前途に希望の持てるような正しい社会を築き上げたいと念願しております。 ここに政府の所信の一端を申し述べまして、国会を通じて国民各位の御理解と御協力を衷心より切望する次第でございます。(拍手)
○議長(益谷秀次君) 外務大臣重光葵君。 〔国務大臣重光葵君登壇〕
○国務大臣(重光葵君) ここに政府の外交方針についていささか所信を申し述べますことは、私のすこぶる光栄に存ずる次第でございます。 最近の国際情勢は、前国会において申し述べまして以来少しも改善を見ておりません。世界情勢の緊張は依然として緩和されない状態でございます。欧州においては、パリ諸協定の批准手続が完了した結果、西ドイツの再軍備は始められ、西欧連盟は結成いたされましたが、ソ連は二月政変によって軽工業主義から重工業主義に移行して、力には力をもってする政策に転換をして以来、いわゆる共産勢力の平和攻勢は様相を変えて、ために国際関係は緊張の度を増してきたと判断せざるを得ないのであります。 しかしながら、第三次世界大戦は、人類のために何としても阻止しなければならないのであります。日本の現在の地位よりしても、国際平和のために最善の努力を尽すことがその義務でなければならないと思うのであります。日本がソ連等との間に戦争状態の終結を期し国交を正常化せんと企てておるのも、この趣旨にほかならぬのであります。日ソ交渉は不日ロンドンにおいて開かれる手はずに相なっております。さらに、中国が二つに分れて台湾海峡を差しはさんで国民政府と中共政府と相争っておることは東亜の安定と平和を害するものであって、事態はすでに重要なる国際紛争となっておりますので、日本としては、かかる紛争は一日もすみやかに、武力によらず話合いによって平和裏に解決せんことを祈るものであります。 日本は、いかなる国といえども、相手国がこれを欲するにおいては、武力を排し、紛争を平和的手段によって解決することを約束する用意があるのであります。いな、かかる国際慣習を確立することが平和を確保するゆえんであると信ずるのであります。これは、わが平和憲法においてもすでに明らかにされておる主義であるのみならず、国際連合憲章の趣旨と完全に一致するものであって、すでにアジア・アフリカ会議においてわが全権が明確に世界に向って声明したところであります。この主義を基礎として初めて国際間において国交は樹立せられ、友好関係は増進し、通商貿易は進展するのであります。繰り返して申しますが、平和外交を推進して各国との間に理解と好意とを交換して一般平和の基礎となし、この基盤の上に経済外交を促進して貿易立国の基を開かんとするのがわれわれの方針でございます。 米国初め民主主義諸国との協力関係がわが外交国策の基調であるということはしばしば声明したところでありまして、これによってわが平和政策を展開する基礎を得るのであります。日本は平和条約によって民主陣営内における自主独立の民主主義国家として出発したのであって、同じ主義の米国とは安全保障条約によって共同防衛の立場に立っておる次第であります。日米の根本利害はここに完全に一致し、両国の協力関係はきわめて緊密であるのであります。しかしながら、占領行政時代の残淆が多少とも残っている今日、幾多の困難が両国の間に存在することもまた否定することはできません。これが共産活動の乗ずるところとなるのであって、なかんずく防衛問題がその目標と相なっております。米国は日本が防衛上今日安固であるとは決して判断いたしておりません。そこで、日本においてみずから防衛力を安保条約の趣旨に従って増強せんことを希望しているわけでありますが、この点は日本の経済力と調整を要するものがあるのでありまして、防衛分担金減額の問題について最近双方の間に合意が成立いたしましたことは、日米共同声明によって発表いたされた通りであります。日米の間に見解の相違を見ることがあり得るのでありますが、その調整を不可能ならしめるものは一つも存在いたしておりません。独立後すでに三年、日米の基本的協力関係を一そうつちかうために、さらに大小の事項について冷静な判断によって合理的な調整をはかることが必要となるのは、これまた当然であると思うのであります。単に防衛の問題だけでなく、日本が自立経済を確立するためにも、また海外において経済発展を遂げるためにも、米国との協力がいかに貴重であるかは申すまでもないことであって、いたずらに当面の感情にとらわれ、日米の基本関係に災いするがごと盲言動は有害無益なことと言わなければならぬのであります。 われわれはアジアに対する平和外交を重要視いたします。何となれば、日本はアジアの一国であり、解放されたアジア諸国と親善関係を結ぶことは日本の宿願であったからであります。それのみならず、近隣アジア諸国との経済通商関係は今日日本の死活問題とまで相なっているのであります。すでに国交の樹立せられている諸国との関係はきわめて順調であり、特に中近東諸国とわが国との通商貿易は年々飛躍的に発展している状況でありますが、いまだ国交の開かれざる国々につきましては、まず賠償問題の解決をはかることが必要と相なっておるのであります。 最近フィリピンのマグサイサイ大統領とわが鳩山総理とのあいさつ交換を機として賠償交渉再開の端緒を得ましたのは喜びにたえません。すなわち、先月下旬フィリピン側専門家団が着京いたしまして、わが国の専門家団と会議に入りました。この会議は将来における正式会議を成功に導くため準備をなすものでありますが、双方の善意と互譲とによりすみやかに公正妥当な協定の成立せんことを祈るものでございます。次いで、インドネシアとも同様、賠償交渉再開の日の一日も早きを期待しておる次第であります。なお、ビルマとの平和条約及び賠償経済協力協定は、最近東京においてその批准書が交換されまして、両国の国交が正式に樹立せられましたことは、重要な意義を持つものであると信じております。 また、過日タイ国のナラディップ外務大臣が来朝いたしましたのを機会に、かねがね両国間の重要案件となっていた特別円問題も了解に達し、さらにまた、タイ国との周に文化協定が締結いたされました。日・タイ両国の伝統的な友好関係は、今回ピブン首相の国賓としての来朝によりましてますます緊密の度を加えるものと期待される次第でございます。 かくて、政府の所期するアジア善隣外交の発展は着実に歩みを進めておるのでありまして、一衣帯水の韓国との国交調整の交渉もすみやかに行われますよう、せっかく努力いたしておる次第でございます。 アジア各国に対しましては、以上のごとき個別的交渉の方法によるのほか、地域全般にわたる国際的協力もまたきわめて重要なることであるのであります。アジア地域の経済開発については、米国は援助をさらにふやす模様でありますが、これに関しわが国の貢献し得べき分野の多分に存することは御承知の通りであります。米国もコロンボ・プランの機構を活用するに異議なき模様でありまして、その準備として、インドの主唱によって五月七日より開かれるシムラ会議には、わが国も代表を派遣し、積極的に協力いたすことにいたしております。 次に、バンドンにおいて開かれたアジア・アフリカ会議は、この地域にある諸国の相互理解と親睦を主目的とした重大なる意義を持つ国際会議でありまして、政府は、本会議に対し特に高碕国務大臣を首班とする有力なる代表団を派遣し、わが平和外交の趣旨を広く徹底せしめるとともに、同地域内の経済協力及び文化交流について有意義なる提案をなさしめた次第であります。本会議が現に所期の目的を達成したことは慶賀にたえません。 世界経済の動向は、米国経済を中心とする好調が大体本年もなお続く見通しでおりますが、欧州において経済自由化の進展にかかわらず、なお各地に輸入制限が続けられる傾向が現われておるので、今後の国際通商における競争はさらに激化されるものと考えます。かかる情勢に対処してわが国としては、ジュネーヴにおいて行なっているガット関税交渉のすみやかなる妥結をはかり、世界の主要貿易圏との間に平等互恵の条件による通商発展の基礎を確立いたすことに一そう努力しておる次第であります。対アジア貿易については格段の配慮をなしておることは前に申し述べた通りでありますが、中共に対しても一そう貿易の増加を期して、必要なる手段をとっておる次第でございます。 移民政策は、直接間接人口問題解決の一助として、政府として最も力を注いでおるところでありますが、最近中南米諸国の日本移民受け入れ態度は著しく好転し、単にブラジルのみならず、アルゼンチン、パラグァイ、ボリビア及びドミニカその他の国々も好意的態度を示しておる状況であります。この情勢に即応して、できるだけ多くの移民送り出しをなすため、有効なる施策を行う方針でございます。 さて、現代は原子時代と相なっております。原水爆弾に対する恐怖のために原子力に対する科学的研究に目をおおってはならないのであって、国際連合も原子力の平和的利用に熱意を示し、国際的にその研究を推進しておるのでありまして、国際連合の計画には日本は進んで全面的に参画しておる次第であります。原子爆弾の最初の洗礼を受けた日本としては、原子力を人類の破滅に使用することを阻止し、これを平和的利用に専用する考案が国際的に発見せられんことを熱望してやまない次第でございます。(拍手) 最後に、日本の国際的地位は今日なお十分安固なものとは言えないのであります。われわれは、つぶさに世界情勢を検討し、謙虚な態度をもって各国との友好関係を重んじ、国際信義を積み上げて国家の前途を開き、徐々に国の力を内外に対して築き上げることに努めなければならぬと信ずるものでございます。 あえて卑見を付加して御協力を願い、私の外交演説をこれで終ることにいたします。(拍手)
○議長(益谷秀次君) 大蔵大臣一萬田尚登君。 〔国務大臣一萬田尚登君登壇〕
○国務大臣(一萬田尚登君) 私は、前国会において、わが民主党内閣が実行すべき財政金融政策の基本方針を明らかにいたしました。ここに提出いたします昭和三十年度予算は、この基本方針に即して編成したものでありまして、その大綱を説明いたしますとともに、この際、私は、わが国経済の実情を顧みまして今後政府のとらんといたします施策について所信を申し述べたいと存じます。 昭和二十九年度の国際収支じりは、三億四千四百万ドルの黒字となりました。これは主として昨年来の財政金融健全化政策の効果の現われでありますことは申すまでもありません。(拍手)しかしながら、昨年度の輸出増加は、海外諸国の好況や輸入制限の緩和等外的要因に基くものが多く、また特殊の輸出助長措置に基くものが少くなかったという面も看過できないのであります。また、固定的な債権が累積し、短期の流動債務が増加したという実質も考えねばなりませんし、また今後特需収入の減少傾向も覚悟しなければなりませんので、国際収支の前途は決して気を許すわけに参らないのが実情であります。 最近、海外におきましては、欧米諸国の好景気も、その行き過ぎ、インフレヘの進行を警戒する空気となっております。英米その他の国において中央銀行の公定歩合引き上げが行われ、また特に国際収支の困難を感ずる国におきましては輸入制限の強化等の措置もとられるに至っておるのでありまして、今後海外の需要面は決して楽観を許さないのであります。他面、西欧主要国は、貿易の自由化、通貨の交換性回復を目標といたしまして一歩々々着実な努力を重ねており、その進展に伴い各国間の輸出競争は当然激しくなってくるものと予想すべきであります。 従って、わが国といたしましては、なお経済を合理化し、生産コストの低下をはかり、物価をできるだけ引き下げて、輸出産業の対外競争力を強化することが依然肝要であると申さねばなもません。 なお、貿易為替自由化の趨勢に沿った体制を整えていきまするため、政府は、外貨予算の編成に当り、通貨別区分を設けない予算のワクを拡大し、自動承認制の金額を増加する等の措置を講じました。また、為替相場の建て方の簡素化、また外貨預金制度の改正等を逐次実行に移して参ったのであります。 翻って国内経済の動向を見まするのに、昨年度の一兆円予算と、これに関連する金融引き締め政策によりまして、経済は漸次健全化の方向に進んで参りました。金融面におきましては、全国銀行の預金の増加額は昨年度中ほぼ四千億円に近く、貸し出し増加額は二千三百億円にとどまり、これらの結果といたしまして、日本銀行貸出金は年度間一千六百五十億円を減少いたしました。しかしながら、このことは、国際収支の巨額の受け超その他の理由で国庫の異常な散超があったことに基因する面も少くないのでありまして、経済健全化の地ならしができて正常な預貯金の増加と企業経営炉健全化されたことに基くとは言い切れないのであります。 さらに、企業経営の面においても、引き締め政策が企業の不自然な収益率を是正せしめ、また新規借り入れを困難にしたことは事実でありますが、その反面、従来のインフレ下におけるがごとき安易な態度を捨てて、経営を合理化するとともに、自己資本の充実に努め、極端な借入金依存をみずから是正していこうという堅実な傾向が見えております。しかしながら、この努力もいまだ十分とは申しがたいのでありまして、あるいは資本蓄積を怠り、あるいは合理化投資が過剰投資となって、真に合理化の効果を発揮し得なかったというような事例をなくしていくためには、なお新たなる決意と工夫とを要するのであります。 さらに、物価の動きを見まするのに、財政金融面の施策と相まって、昨年度間を平均して、卸売物価は二十八年度に比して約三%の低下を見たのでありますが、国際物価水準に比してはなお割高な面があり、消費者物価に至っては、昨年八月以来わずかに下落を示してはおりますが、年度間を平均いたしますれば、まだ二十八年度より若干高いところにとどまっているのであります。 このように見て参りますと、従来の財政金融健全化の基調はなおこれを継続すべきものと信ずるのであります。ことに、今後の経済の拡大発展をはかるためには、国民の勤倹による貯蓄の増強と企業の健全経営によって資本の蓄積を強化することを第一義としなければならないのであります。すなわち、消費を節約して貯蓄を増大し、経営を健全にして資本の充実をはかり、これらによって重要な方面に対する資金の供給を確保し、産業活動を盛んならしめ、もって雇用の増大をはかる方向に進むべきものであると存ずるのであります。従って、政府といたしましては、法人税の軽減等により企業資本の充実をはかるとともに、さらにこの際預貯金利子に対する一切の課税を停止し、貯蓄の飛躍的増強を意図いたしておるのであります。 金融機関としても、かかる政策に即応して、その公共的性格をその経営態度に反映するよう常に十分なる自覚を有していなければならないと思うのでありまして、みずからの経営の健全化、合理化をはかるのみならず、進んで貸出金利の引き下げをはかって企業コスト低下に協力するとともに、資金供給については、わが国経済の自立発展に真に寄与する資金を確保することになお一そうの努力を傾けられたいのであります。政府といたしましても、これが所期の効果をおさめ得るよう期待いたしておるのでありまするが、事態の推移に応じさらに所要の措置を考慮いたしたいと存じております。 今回提出いたしました昭和三十年度予算は、総合経済六カ年計画の構想に沿い、前に述べましたような見地から、まず現在の経済健全化の基調を堅持し、将来における経済の自立発展についてその地固めを行うことを眼目といたしましたが、その間、民生の安定はもちろん、失業等の摩擦的現象に対する措置につきましても十分に配慮した次第であります。すなわち、本予算におきましては、第一に、財政収支の均衡を確保し、一般会計予算の総ワクを一兆円以内にとどめることといたしました。第二に、国民の租税負担の現状にかんがみ、特に低所得者層の負担軽減を主とする減税を実施することにいたしました。第三に、限られたる財源の範囲内において、各種の重点施策の遂行に必要な経費を確保する一方、補助金の整理、物件費の節減等、経費の節約、効率化に一そう配意を加えることにいたしました。 以上の方針により編成せられました昭和三十年度の一般会計予算は、前年度とほぼ同規模の九千九百九十六億円と相なります。 次に、予算の内容につきまして、その概要を説明いたします。 まず歳入面でありまするが、政府は、国民生活の安定をはかり、資本の蓄積を促進するため、平年度約五百億円に達する減税を実行することといたしました。 すなわち、本年度におきましては、所得税の基礎控除額及び給与所得控除の限度額の引き上げ、専従者控除の限度額の引き上げ、税率の引き下げ等によりまして、勤労者、中小企業者及び農民等の低額所得者を中心とする所得税の軽減をはかることにいたしております。この結果、たとえば勤労者につきましては、夫婦及び子供三人の場合、給与の平均月額一万九千円程度までは所得税を負担しないで済むこととなるのであります。また、別途、個人の事業税につきましても、基礎控除額参の引き上げにより、特に中小事業者の税負担の軽減をはかることといたしております。 資本蓄積の促進の面におきましては、臨時に預貯金利子に対する課税を免除し、配当所得に対する源泉課税の軽減を行うとともに、生命保険料控除の限度額を引き上げることといたしました。さらに、法人税につきましては、昭和二十七年以来百分の四十二に引き上げられました税率を百分の四十に引き下げることといたしております。 このほか、輸出振興をはかるため輸出所得控除の限度額を引き上げるとともに、住宅建設の促進のため新築貸家に対する特別償却額の引き上げ等、税制上の優遇措置を講ずることにいたしておるのであります。 これらの措置によりまして、平年度において五百十四億円、本年度におきましては三百二十七億円に達する減税が実現されることとなるのであります。 歳出につき政府が重点を置きましたのは、まず住宅対策費であります。すなわち、政府は、財政資金により約十七万五千戸を建設することを目途といたしまして、一般会計に二百十八億円を計上いたしましたほか、資金運用部資金等の財政投融資を含め、昨年度に比しまして百四十億円を増額いたしまして、四百二十四億円の資金を振り向けることといたしました。これによりまして、公営住宅のほか、住宅金融公庫及び勤労者厚生住宅の資金の充実をはかるとともに、新たに日本住宅公団を設立し、不燃性集団庶民住宅の建設を促進することといたしたのであります。なお、これと並行し、民間における住宅建設の意欲を促進いたすため、さきに金融機関の融資準則について住宅の順位の引き上げを行いましたが、このほか、すでに申した税制上の優遇措置、住宅融資保険制度等各種の施策を講ずることといたしております。これらの措置によりまして、本年度約四十二万戸の住宅建設を実現できるものと信ずる次第であります。 次に、社会保障関係費であります。この経費は、今年度におきましては昨年度に比し五十二億円を増加いたしまして一千六億円を計上し、生活困窮者の救済等に遺憾なきを期しまするとともに、他面、社会保険の充実をはかっておるのであります。特に失業対策費につきましては、昨年度に比し四十六億円増額いたしまして二百八十五億円計上いたしましたが、このほか、公共事業、特に道路整備事業及び鉱害復旧事業等におきまして、機動的運営をはかり、失業者の吸収に遺憾なきを期する所存であります。 貿易の振興対策費につきましては、海外広報宣伝、国際見本市の開催参加、重機械相談室の充実等、海外市場の維持拡大に関する措置を一そう強化することといたしました。なお、さきに申し述べました通り、輸出免税の拡大等、税制上の配慮を加えるとともに、輸出入銀行に対する財政資金の融資を大幅に増額いたしたのであります。 次に、防衛関係費について申し上げます。わが国の自主的な防衛態勢を整えるため、国力に応じて漸次自衛隊の充実をはかって参りますことは政府の基本方針でありまして、本年度は陸上自衛隊二万人の増員を中心といたしまして自衛隊を強化することとし、防衛庁経費を、昨年度に対し百二十五億円増額いたし、八百六十八億円を計上いたしました。また施設提供等の経費についても、昨年度に対し二十七億円増額をし、七十九億円を計上いたしました。しかしながら、国民経済の現状を考えまするとき、防衛関係費総額としてこれを増額いたしますことは困難でありますので、その増加額の全額を防衛分担金の減額によることといたし、米国政府と交渉の上、防衛分担金は昨年度より百五十二億円を減じ三百八十億円といたしました。従って、防衛関係経費の総額は昨年度の一千三百二十七億円のワク内にとどまったのであります。 地方財政につきましては、赤字累積の現状にかんがみまして、その刷新改善は各方面から強く要請されているところでありますが、これには、まず地方団体の自主的努力によって徹底的に経費を節減するとともに、収入の確保をはかることが根本であると考えるのであります。近時、地方公共団体の側においても、財政健全化について真撃な努力を傾けられる向きもあり、政府といたしましても、積極的にこれを援助するため、各般の措置を講ずることといたしました。すなわち、補助金等の整理合理化を促進し、補助率を改訂する等、地方負担の軽減をはかったのでありますが、他面、地方交付税交付金につきましては、定率の増加に伴い、昨年度に比し百三十二億円を増額して千三百八十八億円を計上いたしたのであります。このほか、地方財源の充実をはかるため、専売公社の収益のうちから三十億円を交付いたしますとともに、特に本年度に限りまして、入場税の一割相当額を一般会計に帰属させることを取りやめまして、入場税の全額を地方に譲与する等の措置を講じたのであります。さらに一地方道路税を創設いたしまして、道路整備五カ年計画の実施等に伴う地方道路の財源を確保することといたしております。また、地方財政の再建のため自主的努力を進められている地方公共団体に対しましては、再建整備のため特別の地方債の発行を認め、その政府の引き受けあるいは民間引き受け分に対する利子の補給を行う等の施策を実行する考えであります。 次に、財政投融資につきましては、一般会計、資金運用部資金等においてほぼ前年度程度の財源を調達いたしますとともに、新たに砂糖等輸入特殊物資の超過利潤の吸収によりまして七十億円、さらに、目下米国政府と交渉中の余剰農産物買い入れのため見返り資金二百十四億円の借り入れをも見込みまして、総額三千二百七十七億円といたし、昨年度に比しまして四百二十七億円の増額を予定いたしたのであります。 しこうして、その配分につきましては、民生の安定、輸出の振興及び経済基盤の育成に特に重点を置くよう配意いたしております。 すなわち、住宅対策のための資金を充実いたしましたことは、すでに述べた通りであります。 中小企業対策といたしましては、国民金融公庫及び中小企業金融公庫に対する投融資総額二百十五億円を予定いたしました。両公庫の本年度の資金貸し出し予定額は約七百七億円で、前年度の貸し出し資金に対しまして八十七億円の増加となっているのであります。また、商工中央金庫に対しましても、金融債の引き受けのほか、新たに十億円の出資を行うことといたしております。 輸出の振興のためには、輸出入銀行に対する投融資といたしまして、昨年度の五十億円に対し百七十億円を増額し、二百二十億円を予定いたしております。 開発銀行につきましては、自己資金を合せ昨年度とほぼ同額の五百九十五億円の資金を予定いたしておりますが、その運用に当りましては、特に石炭、鉄、肥料等の重要基礎産業の合理化に重点を置く考えであります。 電源開発会社におきましては、本年度は事業の量が相当増加する時期に当りますので、財政資金の供給は昨年度の二百四十五億円に対しまして約三百億円を見込んでいるのであります。 財政による投融資につきましては、従来とかく資金の獲得、金利負担の軽減等の立場から、安易にこれに依存しようとの態度が見られないとは言えないのであります。窮屈な資金事情から特に重点的に配分すべきものであることに思いをいたし、真に合理化の精神に徹し、いやしくも救済融資となり過剰投資となることなく、わが国産業全体のコスト引き下げ、国際競争力の増大に資する基盤をつちかうべきものと考えております。 以上、わが国経済の現状とこれに対処いたすべき施策について申し述べたのでありまするが、これに対し、今日巷間には、その基調を緩和し、何らかの景気対策を要望する声がないとは申せないのであります。しかしながら、内外の経済情勢にかんがみるとき、わが国経済の拡大発展は、経済健全化を基調とした資本蓄積を基礎として初めて逮成されるのであって、インフレ的景気政策はこの際とるべきものではないと思うのであります。このことがあえて安易を避けて困難な道を選ぶゆえんであります。国民各位もこれを了とせられまして、経済繁栄の基礎確立のため衷心より協力を寄せられんことを期待いたしたいのであります。(拍手)
○議長(益谷秀次君) 国務大臣石橋湛山君。 [国務大臣石橋湛山君登壇〕
○国務大臣(石橋湛山君) 高碕経済審議庁長官がただいまアジア・アフリカ会議に出張いたしまして不在でございますから、かわって私から昭和三十年度の経済計画につきまして概要を申し上げます。 最近のわが国経済の情勢を概観いたしますると、わが国が今後経済の自立を達成いたすためには、なおなみなみならぬ努力が必要であることは申すまでもございません。しかし、私どもとしては、慎重に、しかも勇敢にこの達成に躍進する覚悟でございます。昭和三十年度の経済計画もこの覚悟のもとに策定いたした次第でございます。ただいまその概要を申し述べたいと存じますが、その前に、恒例によりまして、まず海外並びにわが国国内の経済に関する最近の情勢について一言いたします。 米国の景気の動向は、昨年二、三月を底といたしまして、逐次上向の傾向を示して参っております。本年の景気は昨年より多少明るいものがあるように考えられるのであります。また、西ドイツ、イギリスを初めといたしまして、西欧諸国は、昨年以来相当に生産の上昇を示しております。経済活動も活発化しておりますが、しかし、一部の国においては、昨年末ごろから国際収支の悪化傾向が見られるようになりました。かような事情から、これらの諸国はもとより、各国いずれも国内経済基盤の強化をはかりつつ輸出伸張への努力を強化しようとしておる現状でございます。 また、東南アジア等の諸地域の経済情勢につきましては、国によりましてまちまちでございますが、元来これらの諸地域は、購買力が乏しいところに加えまして、国によりましては、最近における農産物の世界的過剰傾向とその価格低下による打撃が相当きびしく響いております。しかも、西欧諸国のこれらの地域に対する輸出競争は激しさをますます加える形勢にございますから、従って、この間に処してわが国がこれらの地域に輸出を伸張いたして参りますためには、できる限りこれらの地域から輸入を行うこと、あるいは長期信用の供与を行うこと等、よほどの努力を必要とすると考える次第でございます。 翻ってわが国経済の最近の情勢につきまして申し上げますと、従来とって参りました財政金融を中心とする引き締め政策の効果と、昨年度中海外市況が比較的好調でありましたことが相待って、七、八月ごろからようやく輸出は伸張いたして、国際収支も著しく改善されて参りました。すなわち、国際収支は、昭和二十九年度間を通じてみますと、年度初めの予想に反しまして、三億四千万ドル以上の黒字を計上するに至りました。また国民所得も、前年度に比べて実質的には約三%の上昇を見たのであります。 このように、わが国の最近の経済は一見順調であるように見られますが、しかし、遺憾ながら、その実態はなおきわめて不安定でございます。産業基盤はまたはなはだ脆弱であると認めなければなりません。今その二、三の点について申し上げたいと存じます。 まず第一に、昨年度におけるわが国の国際収支は、年度間約六億ドルに上る特需収入にささえられているのであります。また、輸出の伸張いたしました原因の中には、緊縮政策の圧迫による換金急ぎというような事情も含まれておりまして、必ずしも生産費の低下による対外競争力の増強に原因いたしておるものとは言えないのでございます。また、輸入が減少いたしましたのも、その原因の中には、たとえば在庫の調整というような一時的な原因によったものがあると考えられます。 次に、昨年度において就業者数はある程度増大いたしました。しかし、年々新たに加わる八十万人近くの労働力人口を吸収し尽すわけには参りません。ために完全失業者は漸増いたして参りまして、昨年八月には一時七十一万人の多数に上って、戦後の最高に達しました。その後若干減少いたしましたが、最近でもなお六十数万人を数えるという現況でございます。 さらに、わが国の産業は、戦後急速な回復を見たのでありますが、設備の近代化、合理化に至りましては、いまだはなはだ不徹底でございます。また、企業の経営ないし資本の構成等におきましてはきわめて脆弱な面がありまして、今後の産業の国際競争力の培養土大いなる問題が残されております。 以上のような次第でございますから、この内外の情勢のもとにおいて、年々増大いたします労働力人口にそれぞれ職場を与え、その活用をはかって、わが国経済の自立復興を企図いたすためには、従来のごとき消極的な財政金融の引き締め政策一本に依頼して参ることはできないと考えられます。わが国経済の健全な発展をはかり、その伸張を期するためには、長期かつ総合的な経済計画を策定し、完全雇用の態勢を整えるとともに、生産性の向上をはかることがきわめて必要であると信じます。 わが国に労働力人口が多いということは、わが国の経済の弱点ではなく、むしろその長所であり、強味であると考えるべきでありましょう。また、わが国の土地、資源が乏しいということが申されますが、しかし、その土地及び資源はいまだ完全に利用し尽されておるとは申せません。今後まだまだ開発の余地が残されております。さらにまた、東南アジア、中南米等の諸国との経済協力によりまして、わが国各種産業の進出を可能とする余地も少くございません。われわれは、これらの与えられた諸条件を最大限に生かしていくことが大切であると感じます。これこそ、わが経済の自立繁栄をはかる唯一の道でありましょう。われわれは、この道を切り開くためにあらゆる努力を尽すべきであると信ずるのであります。さきに、政府が、昭和三十五年度を目標年次といたしまして、完全雇用と経済自立とを実現する意図をもって、総合経済六カ年計画の構想を策定いたしましたのは、すなわちこの趣旨によったのであります。 でありますが、同時に、もう一つ注意すべき問題がございます。それは、わが国の経済は、当面において労働力の供給には事を欠きませんが、そのほかの生産要素、なかんずく工業用原材料と食糧の供給におきましては著しい隘路が存するということであります。これを見落してはなりません。従って、わが国経済といたしましては、まずわれらの隘路の打開をはかりつつ、逐完全雇用の実現に努めて参る用意がきわめて緊要であると考える次第であります。もしそうでなくして、にわかに完全雇用の実現を企図いたしまするならば、わが国経済は労働力以外の生産要素のくびれに妨げられまして、物価の騰貴を来たし、国際収支の不均衡を発生し、ここに破綻を生ずる危険なしとしないのであります。従って、完全雇用と経済自立の実現を期するためには、各種生産要素の間の均衡を失わないように、その調整をはかりつつ、慎重に目標の達成をはかって参る必要があると信ずるのであります。(拍手) かような見地から、今年度の経済計画は、六カ年計画の初年度といたしまして、さしあたり、経済の安定と将来の拡大均衡への態勢を整えることに主眼を置いて策定をいたしました。そうして、これに基いて本年度本予算並びに財政投融資計画を編成いたしたのであります。以下、本計画の概要について申し上げます。 まず、本計画の実施に当りましては、その基調といたしまして、すでに述べました通り、経済の安定に重点を置き、財政金融の均衡を維持し、通貨価値の安定強化、消費内容の健全化、貯蓄の増強等をはかって参ります。すなわち、物価につきましては、国際物価との均衡をはかるため、各種商品の生産費の低下に一そうの努力を傾けるつもりでおります。ことに、公企業料金及び重要物資の価格等につきましては、経営の合理化を推進いたし、生産用原材料の供給を確保し、資金の疎通と金利の低下とをはかる等の方法によりまして、努めてその低廉化を期待いたしたい方針でございます。また一面、政府は、率先して冗費の節約に努め、新生活運動を国民的規模において推進し、奢侈的ないし不急不要の消費を抑制し、国産品の使用を奨励する等、消費内容の健全化をはかって参るとともに、貯蓄の増強に努める考えでございます。 本計画における産業政策としましては、施策の重点を特に輸出の振興、資源の開発、食糧の効率的増産、農林漁業経営の安定、産業の合理化、生産性の向上、中小企業の育成、科学技術の振興、国民生活の安定、就業機会の増大に置いて参るつもりであります。 第一に、輸出につきましては、本年度においてぜひとも十六億五千万ドル程度までこれを伸張せしめたい考えであります。これがため、根本的には企業合理化の促進に努め、輸出品生産費の引き下げと品質の改善をはかり、取引機構の整備確立等によって輸出競争力の強化に努めることが肝要でありますので、これについて重機械技術相談室の強化その他の措置をとるとともに、あわせてプラント輸出促進のための資金の充実、輸出金融の円滑化、金利の引き下げ等をはかって参る所存であります。 また、対外的には、経済外交をさらに強化し、国際経済協力の促進をはかるとともに、東京における国際見本市、米国における日本商品見本市等の開催、海外市場の調査、宣伝活動の推進等を強力に実施する計画であります。特に東南アジア、中近東地域諸国及び中南米諸国が、わが国貿易市場としてきわめて重要である点にかんがみまして、これら諸国との経済協力に特段の努力をいたすつもりであります。ことに東南アジア地域諸国につきましては、賠償問題等の懸案事項をすみやかに解決し、正常な通商関係の拡大に努めたいと存じます。なお、近来、中南米等の諸国がわが国の移民を歓迎してくれますことは、まことに喜ぶべき現象でありまして、将来わが経済の海外発展に寄与することが多大なりと信じます。政府はできる限り優良なる移民の送出に努力する計画であります。 第二に、資源の開発、国内自給度の向上につきましては、その重点を食糧、海運、電源開発、石油、繊維等に置き、効率的な増強方策を推進して参る考えであります。すなわち、食糧につきましては、米麦を初めとし、畜産物、水産物を含めて総合的に食糧の自給度向上をはかるため、各般の効率的な施策を講ずるとともに、さらに農林漁業経営の安定については一そう留意いたし、農産物等の価格の安定、経営の多角化、米穀の集荷方式その他の流通の改善、飼料、肥料等生産資材の供給確保、農業金融の整備等について格段の努力をいたす所存であります。 次に、海運につきましては、約十九万総トンの外航船を建造して、貿易外収入の増加をはかる覚悟でございます。また、地下資源につきましては、民間企業の協力を求め、鉄資源その他の開発を推進いたす覚悟でありますが、ことに従来おくれておりました国内石油の開発、増産には一そうの努力を傾注する所存でございます。 電力につきましては、計画的に需給の改善をはかるため、効率的に水力開発を引き続き推進いたしますとともに、低品位炭を利用する火力発電を奨励する等の処置を講ずる計画であります。また、繊維につきましては、合成繊維、アセテート等の増産と、その品質の改善に力をいたしまして、需要面開拓して、もって輸入原料の減少に努めたいと存じます。 第三に、企業の合理化、生産性の向上につきましては、さきに発足を見ました日本生産性本部を母体といたしまして、強力にこれを推進いたして参る考えであります。この場合、企業の合理化に必要な資金に関しましては、財政投融資の重点化、効率化に努めるとともに、日本開発銀行の債務保証制度を活用する等の方法によりまして、その供給の円滑化をはかるつもりでございます。また、税制の改正等により民間資本蓄積の増強をはかり、これら蓄積資本が重要産業の合理化のため確保されるよう適切の措置を講ずるつもりであります。 企業の合理化を実施するに当りましては、その重点を石炭、鉄鋼等基幹産業に指向して参ります。特に石炭につきましては、その生産費と価格の低下等を促進することの急務なるを感じますので、燃料全体にわたる総合対策を樹立するとともに、石炭鉱業の合理化を強力にはかりたく、近くこれに必要な濃案を整え、御審議をわずらわすつもりでございます。 第四に、中小企業につきましては、日本経済に占めるその地位の重要性にかんがみまして、中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工組合中央金庫等、関係金融機関の資金源の充実に努める等のことは、先ほど大蔵大臣から申し述べた通りでございます。産業基盤の強化、生産性の向上に寄与するように、ぜひともわれわれは設備の近代化、合理化に重点を指向いたしまして、なお相談所の強化による合理的経営の指導、中小企業協同組合の強化、製品の海外への販路開拓の援助、これらと相待ちまして、中小企業の育成助長をはかって参りたい所存であります。 以上のほか、住宅の建設、その他社会保障等の問題もございますが、これらはすでに総理大臣及び大蔵大臣から説明がありましたから、これは省略いたします。 本年度におきましては、以上申し上げましたごとく、経済の安定をそこなわざる限度において生産活動の増大をはかり、もって雇用の増大を期する考えであります。しかし、なお発生する失業者に対しましては、道路事業、河川事業、鉱害復旧事業、失業対策事業等を強力かつ機動的に実施いたしまして、これらの労力を努めて建設的事業に吸収して、少くとも完全失業者の数が二十九年度のそれを越えざるように努力する考えでございます。 さて、これらの諸施策を総合的に実施いたしました場合、本年度のわが国経済はどんな形になるかと考えますに、物価は若干の低下を示す見込みでございます。また、国民所得は六兆三千二百億円程度に達しまして、昨年度に比し実質的に四%程度増加するものと期待いたしております。鉱工業生産は昨年度に比してほぼ一・五%、農林水産生産は、昨年度が前々年度に引き続き米作がやや不良でありましたため、本年がもし平年作であるといたしますなら、昨年度に比し約四%近く増大いたすものと期待いたしております。この結果、本年度においては、人口増を勘案いたしましても、一人当りの実質消費水準は約三%上昇する予定であります。 また、国際収支については、輸入は昨年度における輸入原材料在庫の減少を調整するため、本年度におきましては十九億ドル程度を必要とすると考えております。これに対して、輸出は十六億五千万ドル程度にまで伸張せしめたい考えでございます。ただ、特需は昨年度よりもさらに減少いたしまして四億二千万ドル程度になるものと考えられます。かようにして、これらを総合いたしますと、本年度の国際収支は、前述の輸入を十九億ドル程度に伸ばしましても、収支均衡を保持することができるものと期待いたしておる次第でございます。 以上申し述べましたように、昭和三十年度における経済は、いまだ完全雇用の目標には遠いものがございます。しかし、貿易、生産並びに国民所得は堅実に伸張いたしまして、将来さらに伸張する素地もできます。消費水準も若干上昇して国民生活はさらに安定べ一歩を進め得るものと考えております。申すまでもなく、今後の日本経済の前途にはなお容易ならざるものがあると考えます。しかし、幸いにして国民各位が今日のわが経済の置かれておる位置を了解せられ、政府と国民各位と一体となって努力するならば、先ほど申し上げました昭和三十年度の経済計画の目標が達成されることはもちろん、総合経済六カ年計画の最終目標の達成も決しで難事ではなく、わが国経済の将来は期して待つべきものがあると私は確信をいたしております。(拍手) 私は、国民各位とともに、ここに決意を新たにして、日本経済の自立と発展とのために最善の努力をいたす覚悟でございます。どうもありがとうございました。(拍手) ————◇—————
○長谷川四郎君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、明後二十七日定刻より本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
○議長(益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(益谷秀次君) 異議なしと認めます。よって動議のごとく決しました。 本日はこれにて散会いたします。 午後二時三十六分散会