法務委員会 第36号
- 発言数
- 54 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1955/07/14
会議録
○世耕委員長 これより会議を開きまます。 売春等処罰法案を議題とし、質疑を進めます。本日はまず提案者に対する逐条質疑を行いますが、質疑は通告順に従って許可いたします。細田綱吉君。
○細田委員 提案者に伺います。第二条の字句ですが、「この法律で「売春」とは、婦女が対償を受け、又は受ける約束で不特定の相手方と性交することをいう。」これが三条以下の処罰の対象になるわけですが、これは業としてやらなくてもいいのですか。あるいはしろうとの婦女がたまたま何かの動機で一回そんなことがあったというような場合もやはり処罰の対象になるのですか。業として行うということがおのずから二条の文言の中に入っていいと思うが、この点を伺います。
○猪俣委員 今第二条につきまして細田委員から質問がありましたが、この第二条で処罰する売春の中には、業としたかしないかということは含まれておらぬのであります。業とせざる者でも、女にして対償を受けあるいは受ける約束で不特定の相手方と性交する。婦女であること、対償を受けまたは受ける約束をしたこと、不特定の相手方であること、性交したこと、この四つの条件がありまするならば、業の有無を問わぬという立法の趣旨であります。
○細田委員 「対償」という文句が、ときにはかなりばく然とすると思うのです。たとえて言うならば、女の友人に対して、今度、この暑いときだから一つ日本アルプスに行く旅費をおれが持つからというような場合もあれば、あるいは、一つ今度鎌倉に海水浴に行くというような場合もあると思う。そういうな場合に、これがこの「対償を受け」という場合あるいはまたその約束をするというような場合に入る。何かこの「対償」という文句をもう少し具体的なる方法はなかったか、あるいはまたその御意思があるかどうか、この点をい伺たい。
○猪俣委員 「対償」という言葉は、結局性交と給付、反対給付の相関関係に立っている意味でありまして、性交と何ら関係のない経済的給付、反対給付というものを含まない意味においてあるのであります。つまりこの「対償」と申しまするのは、不特定の相手方と性交するということとの給付、反対給付の関係に立っている経済的価値あるものを言うという意味で立案されているものであります。これをもっと具体的にということになると、立法技術上非常に困難でありまして、この売春等処罰法の目的、精神から、具体的事実については裁判所の判断にまかせる方が立法上かえっていいのではなかろうか、こう思いまして、どういう場合が「対償」になるというような具体的の列挙をこの法律の中へ織り込む意思はありません。
○細田委員 先ほど私一つ例をもって申し上げましたが、たとえば同じ職場で、若い男女の間で、今度は鎌倉へ海水浴に行こう、その費用は持とう、あるいは日本アルプスへ登山に行こう、その費用は持とうという場合、これはもちろん業ではない。多少議論もありましょうが、とにかく業でない。同じ職場で友達の間でそういうようなことが行われた場合、そして性交の約束あるいは性交したというような場合はこの条文に当てはまるかどうか、その点を伺いたい。
○猪俣委員 これは具体的事案になって裁判所が諸般の事情を判定すべきことでありましょうが、たとい同僚関係であったといたしましても、金銭を授受する、その他の経済的利益を授受するということが条件になりまして、それが因果関係となって性交に入ったということになりまするならば、やはり第二条の適用があるかと存ずるのであります。
○細田委員 第五条について伺います。この「困惑」という文句は必ずしも本法律案の中で初めて使われたものではないのですが、「婦女を欺き、若しくは困惑させて、」というこの「困惑させて」という文句はぼうばくとしており、従来の判決例等で確定した一つの解釈が行われている。「困惑」といえば文字通り困惑ではありましょうが、立法者の立場からこれをどういうふうに御解釈になっているか伺いたい。
○猪俣委員 これはたしか勅令第九号に使ってある言葉で、すでに法律語になっておる言葉だと思いますので、在来の法律語として使用せられている意味の言葉でありまして、この立法において新しい観念を持ち出したのではないのであります。さてどういう場合が困惑させたことになるかということも、これまた具体的の問題といたしましては千種万様でありましょうが、読んで字の通り、ともかく女の自由なる意思が何かゆがめられまして売春をするに至ったという状態でありまして、どういう具体的な事実が困惑させたことになるのかならぬのかというようなことは、裁判官の自由なる心証によって判定するより仕方がないのじゃないか、こういうふうに思っております。
○細田委員 困惑の状態というものは、婦女において自由な意思の範囲内であるか、あるいはもう困惑という状態に入った場合には自由な意思を逸脱しているか、その点を一つ。
○猪俣委員 困惑というのは意思が全く抑圧せられておる状態じゃないと思うのです。そうなれば脅迫なりなんなりの問題も起ってきようかと思いますが、要は、意思の自由を全く失わしめられておる状態じゃないけれども、その下の親族、業務、雇用その他の特殊な関係を利用せられたために思う通りの行動ができない、俗に言いますならば、いやいやながら売春をせざるを得ないようになった、さればといって絶対の自由の意思がなくなっておる状態じゃない、そういう普通在来の観念で困ってしまったという意味で用いたのでありまして、特殊な意味があるわけではないのであります。
○細田委員 第六条について伺いますが、他の条文に比較して「五年以下の懲役又は三十万円以下の罰金」ということはいささか過重に過ぎるのではないか。これもまた何ら業としてやらなくても、五年以下の懲役もしくは三十万円以下の罰金に処せられるのですか。この点は立法者の方でどうお考えになっておりますか。
○猪俣委員 第六条でありますが、実はこれは立法趣旨のところに述べましたように、この売春等処罰法は、売春婦あるいはその相手方を憎んで、それを厳罰にしようという趣旨ではないのでありまして、さようなすべての売春行為ができやすいようにする環境に対して重圧を加えようという精神から出ておることは、前に説明申した通りであります。そうするとわれわれの考えからいたしますならば、「婦女に売春をさせることを内容とする契約の申込又は承諾をした者」というようなものは最も弊害をかもしやすいものでありまして、こういうものをやはり処罰いたしませんならば、われわれの所期の目的は達しない。その意味におきまして、いわゆる売春をした者よりも、こういう手引きをした者、そういう環境を作った者を重く処罰するというような意味がここに含まれている。五年以下の懲役というのは重過ぎるじゃないかという御質問でありますが、われわれが所期の目的を達するには、このくらいの厳罰にしなければいけないのではないかという考えでこの六条を設定したのであります。
○細田委員 最後に、売春をする者あるいはその業者等、各般のこれに関係しておる人数は非常に多い。実際赤線区域、青線区域その他街頭のパンパン等ですが、街頭のパンパンは別としまして、赤線区域、青線区域等で実際場所を供与したり施設を経営するというような者は、きのう労働省が発表したところによって、売春をする者の推定が大体五十万、特に十二万九千というものが具体的な対象になるということは伺いましたが、これで飯を食うといいますか、場所を供与したり、施設を提供したり経営したりするなりしてこれで職業を立てておる人たちは全国で大体何人くらいと御推定になっておりますか。
○猪俣委員 これもまた統計が詳しく出ておりますが、今記憶しておりませんが、とにかく相当の数でありましょうけれども、これも厚生省なり労働省なりで明らかになっております。私も文書を見ればすぐわかりますから、後刻数は申し上げますが、相当の世帯があると思います。
○細田委員 提案者も相当の数があると言われる。私もこの法案の通過を切にこいねがう者の一人ですが、しかしその問題とは別で、そうした生活をしておる人が相当あるとすると、附則の第一項の三カ月という期間はあるいは短かいのではないか。もう少し期間をおいて転業に対するその間の準備を十分させる必要があるのではないかとも思われますが、この点はどう考えておられますか。
○猪俣委員 これはわれわれ提案者側にもいろいろ異論がありまして、中には法案として成立した以上は公布と同時に、かかる悪とみなされるものの存在は一日も許されない。直ちにこの法律を実施しなければならぬという強硬な論者もありました。今お説のような相当の猶予を置かなければならぬという論者もありました。そこで結局においてその中をとったような意味で三カ月という期間を置いたのでありますが、なおこの三カ月でも短かいという議論が相当あると思われるのでありまして、これは立案者といたしましても必ず三カ月でなければならないと固執する意思はございません。当委員会におきまして論議を尽されまして、相当の期間をおきめ下さるならば、われわれ必ずしも三カ月というものをどこまでも貫徹しなければならぬという意思ではありませんが、ただこの際お含みいただきたいことは、これは一種の文化革命であることは、先般から申し上げておるところであります。そこでかような在来ないところの法律というものを実施いたしまするには、相当のそこに犠牲者が現われる。ただ立案者といたしましても立法機関といたしましても、なるべくならその犠牲者というものを少くしたいということは申すまでもありません。犠牲者として一つは売春婦それ自身がありましょうし、一つはそれに関係し、それによって生活を立てておった人たち、こういう人たちが大かれ少かれ犠牲を受けるということは予測できるところでありますけれども、さればというてその犠牲をあまりに誇大に考えまして、そこに重点を置きますならば、この法案は通せないことに相なるのであります。御存じの通り、終戦後土地革命が行われまして、新潟のごとく千何百町歩も持っておった大地主が、ほとんど二束三文でこれが解放せしめられ、それがために多くの貧農が自作農となって今日の農地革命が成就し、これが日本における共産主義革命の温床をなくした英断的な行為であったことは歴史的に証明されるのでありまするが、しかし当時のこの人種というものは惨たんたる犠牲を払ったろうと思うのであります。革命のあるところにはさような犠牲のあることはある程度やむを得ざる現象で、ただそれをなるべくいろいろの方法から少くするということを政治家は考えなければならぬと思うのでありますが、そこで今相当売春施設を持ったり、営業をやって食っている人たちも、この法律ができますればこれができなくなりますから、相当の犠牲を払うことは想像いたされますけれども、しかしこれはある程度彼らからこらえていただきませんならば、この画期的な文化革命は成就しないのであります。犠牲の伴わざる革命、革新というものは、歴史上も少いのでありまして、私はこの業者に対しましては、すみやかに覚悟を新たにいたしまして、そうして再生の道に早くから出発せられんことを希望するとともに、ただ業者の利害にのみとらわれまして、漫然この法の実施を遷延いたしますならば、これはいろいろにまた弊害が生じて参ります。ですから三カ月に固執する意味ではございませんけれども、悪と見て処罰する以上は、すみやかにこの法の実施を迫りたい。ことに申し上げるまでもなく、こういう売春等処罰問題は、二十数年来の歴史的沿革を持っておるのでありまして、ことに終戦後におきましても、こういう公娼制度を廃止せられておるにかかわらず、ほとんど脱法的に黙認的に赤線区域、青線区域が生じてきている現在であって、彼らも決してこれを正業なりとしてやっていなかったはずだ、お見残しによって今日まで営業してきたはずでありまするがゆえは、ここに正しいところの法律ができ上るということになるならば、彼らはさようなことを覚悟しなければならぬのではなかろうか、こういうふうにも考えるのでありまするので、この三カ月に対しましては固執はいたしませんけれども、あまりに長い間の実施を怠るということは、この立法の精神を阻害することに相なりまして、立案者としてはあまり長い延期は希望いたさぬのであります。
○細田委員 終りました。
○世耕委員長 馬場元治君。
○馬場委員 売春禁止に関する条例が全国では五十五に及んでおると承知いたしておるのであります。自治法の規定に基きまして自治団体で制定をいたしておる条例、その条例と今度提案せられております法案が成立いたしました場合の関係についてお尋ねをいたしてみたいと思います。この法律が衆参両院を通過いたしまして成立をいたしました暁には、この条例は廃止せられるのであるかないしはそのまま存続せられるのであるか。法案を見てみますと、この条例廃止をうたったところは一つも見当りません。そこでこの条例は失効するのであるか、そのまま存続するのであるか、ないしは効力が停止せられるものであるか、およそこの三つの場合が想定せられると考えられます。自治法の第二条の二項の規定の、いわゆるその他の行政事務ということにこの売春条例をごらんになる、あるいはその他の行政事務ということには入らないので、これは国の専管事務である、こういうふうに見るのか、これによって問題は非常に違ってくると思うのであります。自治法の第十四条の第一項によりまして、条例制定権が依然として残るのか、それとも一時停止せられるのか、この点を明確にしておかなければ、法律の適用の場合において、裁判所も検察庁も警察も、みなその帰趨に迷うことになる。もしそのままで効力が停止されるというようなことを想定いたしてみまする場合には、もしこの売春禁止法というものが将来廃止されるというような場合には、これが復活してさらに適用を受けるのか、こういうことも当然問題になり得ると思うのであります。各種の条例は千差万別でありますが、現在自治団体でそういう条例を作っておる。しこうしてこれを施行しておる。むしろこういった法律を制定いたしまする以上は、この際そういった条例ははっきり廃止せしむべきものじゃないか。全国を統一的にこの法律だけによって規律するということの方が、はるかに事態がはっきりするんじゃないか。これは法の適用の上に、法を適用します裁判所、検察庁あるいは警察、そういうもののよりどころを明確ならしむるために、この際この点は特にはっきりさしておきたいと思います。
○猪俣委員 今の全国的に条例がたくさんあって非常に不統一であるというようなことも、この立案の一つの動機になりましたのでありまして、われわれが立案いたしますときの法解釈によりますならば、地方自治法に基き地方自治団体の出した条例は、法律と衝突する場合においては効力がないという建前に立ってこの立案をしたのであります。それについて法理上の議論があるかも存じませんので、あるいは本法に明確にした方がいいであろうという御意見かも存じませんが、私どもの根本的態度は、法律と抵触した条例は効力はない、ただしからば全部条例を廃止したらよかろうじゃないかという御議論があるかも存じませんが、各地方においてはそれぞれの意図を持った条例を作ったのでありまして、中にはその地方の特色を出しました条例があった方がいい場合もあります。ただ、今提案せられましたる法律と違っておるものは、これは効力がないし、法承に規定せられざるもので条例にのみ規定せられたものはそのまま効力を存在せしめて差しつかえない、こういうような趣旨からこの法案はできておるのでありまして、地方の条例と法律とが正面衝突する、同じ事項を規定している際に、両方が存在するという考え方ではないのであります。そういう立案者の趣旨でありまして、それですから、この法律と衝突するものは効力はない、衝突せざるものはそのまま残しておいて差しつかえないという意味で、立案したものであります。
○馬場委員 御説承わりましたが、ややもするといろいろな議論が起る余地が十分にありますので、帰趨に迷うことがしばしば起り得ると思うのであります。従いまして、かくのごとき場合には、むしろ地方の特殊事情などということもさることながら、これは全般的に全国的に統一的に取締りを行うべき事案であると私は考えますので、むしろこの際この法律の制定を機会といたしまして条例は廃止するということをはっきりした方がより効果的であり、適用の上において疑義の生ずる余地がないのじゃないかと考えます。 次に第八条に、「情を知って、営利の目的でされる前条第一項の施設の経営に要する資金、建物その他の財産上の利益を供与した者は、五年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」こういう規定があるのであります。そこで問題となりますのは、現在まだ本法が適用されます前において、たとえば赤線地区の施設に対して、その施設の経営に要する資金あるいは建物その他の財産上の利益を供与したものがかりにあるといたします。たとえば銀行が特殊飲食店に対して融資をした、あるいはその他の個人でもよろしい、建物の賃貸をしたというような場合、もしそれが情を知りながらそういう方面に融資をした、建物を貸したという場合に、処罰される規定がこの規定であろうかと思いますが、その通りですね。
○猪俣委員 第八条は、まさに在来行われておりましたこういう売春施設に資金その他を供与した者、これを処罰する規定であります。しかしもちろん刑罰法規が遡及するはずはありませんので、この法案の出でざる以前さような状態にあったものを処罰する意味でないことは申し上げるまでもないことであります。これは実はいろいろ御異論のあるところであろうとも存じまして、立案者もいろいろ考慮いたしました。現に相互銀行あたりからこれらの業者に金融されておるものが全国に千六百億円もあるということも聞くのでありまして、これは容易ならざることだと存じます。しかしこれを処罰の対象からはずしますと、ここに脱法的行為が行われて、ほんとうの取締りができなくなるのじゃなかろうか。なぜならば、ちょうどヨタ新聞の編集長とか編集責任者はつまらぬ人物がなっておって、その資金を出し、実際やっておるのは奥に隠れておる。問題が起った際にはその編集者だけが処罰されるというようなことがままあるのでありまして、からだを張ったやつに名前だけ出させておいて、そうして実権を持っておる者は背後に隠れておる。もしこの第八条のようなものがなくてこの法案が通過いたしましたといたしますならば、どうも私はそういうふうな傾向になるのじゃなかろうか。そしてたまたまそれがそういう施設で売春行為をさせた者が明らかになったとしても、その処罰される者はその営業主だけであって、それはほとんどつまらぬやつがなっておる。それはロボットです。実際資金を出しいろいろな実際の実力を持って支配しておる者は陰に隠れておる、そういうことになりますと、この営利事業として売春の場所を提供するとかいうようなことが根絶できません。これは国体論はなやかなりしときに治安維持法ができまして、共産主義者を徹底的に撲滅いたしまする方法として最も効果をあげましたのは、この共産主義者にいわゆる経済的援助をする者を処罰する、治安維持法を強化いたしましてその条項を入れまして、これが非常な効力を発揮したことは、当時の取締り官憲によって報告せられております。私どももその意味におきまして全く違う事情でありますが、真に売春等の行為をこの世の中から、殲滅いたしまするにはここまで取り締らなければ、これは結局千里の堤もアリの一穴からくずれるたとえのごとく、またこれからくずれてしまって、そうして今の吉原という公娼が特殊飲食店となってやっぱり同じ公娼のようなことをやっているようなことに、また脱法的になるおそれが十二分にあると存じます。その意味におきまして第八条は、いわばこれは共犯であり幇助罪でありましょうけれども、この情憎むべしといたしまして、独立罪としてここに規定した次第であります。
○馬場委員 不遡及の原則が、あるから法律制定前の件については罰しないんだ、これはお尋ねするまでもなく法の施行前に融資もしくは建物の賃貸等をいたしました場合を処罰する、行為の時期いかんにかかわらず処罰するということが不可能であることは、これはもうお尋ねするまでもないのであります。ただ考えられることは、本法が公布施行せられましても、従来そういう方面に情を知りながら融資をいたしておった、もしくは賃貸をいたしておった、それを直ちに引き揚げるわけにもいかないということは、これはあり得る。そういう場合に新しい法律ができて現在融資をいたしておる、もしくは賃貸をいたしておるその行為は犯罪行為であるということを規定せられたことになる。公布と同時に現在続けておる状態というものはやっぱり違法行為なのである。そこでいわゆる不作為犯みたいな考え方でこれが追及を受けることはないかということが一応考えられる。そこで今提案者の御説明によって、これは一種の幇助罪みたいなものであるが、独立犯として処罰することにした。これを処罰しなければ、絶滅することはできないのだ。いいねらいであると思います。ただし、従来法に禁止せられていなかった行為が今度新たに禁止せられるという場合においては、不遡及の原則があるからということで、簡単に済ませられない状態が起り得ると思う。不作為犯が成立するという考え方でこれが処罰を受けるということになれば、適法行為だと思ってやっておった行為が、法の改正と同時に処罰の対象になる。こういう憂いがなきにしもあらずであると私は思う。そこで、今の説明によっても明らかになっておるように、この後のものを処罰することは当然なんでありますが、その辺に対する疑惑、議論の余地もあるかと思いますから、最終の議論の決定は別として、そういう不明確なことのないように、これらの点を明確にせられる意思はないのか、それを伺っておきたい。
○猪俣委員 今申しましたように、本法の施行前の行為に対して処罰するわけじゃないのでありまして、すでに多額の融資をしておった業者がありましても、その融資をしたときには、かような法律は存在しないのであります。この法律が施行せられました後において、第八条の条件がありますならば、処罰するという意味でありますから、現在すでに融資をなさっておる人たちが、この八条の対象になるとはゆめ立案者は考えておりません。不作為犯になるのじゃなかろうかという御心配があるようでありますが、不作為犯を罰するならば、やはりそれに対する明文がなければ、刑法の遡及せざる限りにおいて、一定のただ処罰せられざる状態が継続しているだけでありまして、もうすでに犯意がない、犯罪の構成要件が備わらぬだろうと考える。不作為犯につきましても、犯意がなければならぬ。しかるに、この融資をした際には、かような法律がないのであるから犯意のありようはずがない。犯意がないものが不作為犯になるということも考えられませんので、その継続した状態それ自体を処罰するには、やはり明文が必要かと存じまして、明文がない限り、法律不遡及の原則に基いて、現在融資をしている人たちは、何らこの八条に触れるものじゃないのだ、そういう心配はなかろうと考えております。
○田中(幾)委員 御心配、まことにごもっともだと思いますが、附則の第二に、婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令はこれを廃止する、しかしこの法律施行前にやった行為については、なおこの勅令第九号を適用する、こういうことでありまして、この法律施行以前に施設その他のものに融資したものについての罰則はないのであります。猪俣委員の御答弁によって、これは遡及も、前に処罰する法律もないわけでありますから、ただ問題は、この法律が出た後も、なおその施設に対する融資が生きておる、その施設の行為を援助しておる、協力しておるというような形を御心配なさるのではないかと思いますが、ただいま猪俣委員の答弁なさった通り、処罰する規定がなかったのであります。ただ法律を限界として、新しい協力態勢ができた、積極的な協力態勢ができたというときには、これは犯罪の成立の形において裁判所の判断の対象になろうかと思います。この法律では直接にさかのぼって処罰する規定は認めてないのであります。
○馬場委員 その点ははっきりしたようです。 そこでこの第七条でありますが、「営利の目的で、売春を行う場所を供与することを主たる目的とする施設を経営した者は、一年以上十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」となっております。これは主として赤線、青線なんかの経営者が、処罰の対象になっているものと考えます。この種のものを絶滅することを目的としているものと考えます。ただここに事実問題として考えてやらなければならぬのじゃないかと思うことは、ただ処罰するだけでこの問題が解決しないことは、識者ひとしく認めているところであります。そこで赤線区域の経営者などというものは、従来黙認を受けて事業税も納めており、あるいは飲食税等も納めている。しかも特殊の営業をやっているということを前提として査定を受けている。その連中が今度は一挙に一年以上十年以下の懲役もしくは六十万円以下の罰金という相当重刑を課せられることになるのでありますが、これは何とかして転業させるよりほかはない。その事自体の善悪はしばらく別といたしましても、とにかく従来黙認されておったことは事実である。それが法の新しい制定によって急に、しかもかなりの厳刑酷罰をもって臨まれる。しかも転業については一向めんどうは見てもらえない。相当の資金を下した者もあるでしょう。融資を受けている者もあるだろう。それが一挙に転業についてのめんどうも何も見てもらえないで、こういう厳刑酷罰を受けるということは、事実問題として一体どうだろうか。処罰の対象にされるのはよくわかる。しかしそういった一種の犠牲者に対しては、特別の考慮を払って、親切に転業その他についての施策を講じてやる必要があるんじゃないか。提案者はどうお考えになるか。処罰さえすればよろしいというのか、ないしは他に考えるべきであるとお考えであるか。これはそのこと自体の善悪とは別に、やはり国民の一人であり、社会人の一人なんだから、親切にものを考えてやることも必要じゃないかとわれわれは考える。この点についての御意見を承ってみたいと思う。
○猪俣委員 お説ごもっともでありまして、実は売春等処罰法の盲点は、売春婦をどうして更生させるか、その営業者をどうして転業せしめるか、これが重大な問題であることは、当委員会においても、熱心に厚生省、労働省の政府委員に質問のあったところでありますし、提案者といたしましても、その点は深く考えてきたのであります。これをなるべく出血を少からしめ、なるべく犠牲を少からしめて、転業せしめたいという考えであることは馬場委員と同感であります。たださればというて、それが完全にできない限り売春は禁止することができないという、在来たびたび問題になりました点は、今これを乗り越えませんならば、この文化革命は永久にできなくなる。われわれの考えからいうならば、この法案が通過いたしますならば、政府におかれましても国会におかれましても、放任することはできない。売春婦につきましても業者につきましても、ここに何らかの救済を講ずる必然的運命に陥る、ここに社会保障制度が一進展を来たすのではなかろうか。あるいは業者の救済がないから、売春は禁止することができないということでは、いつまでたっても法案の成立はむずかしくなる。私は今や日本の現状がこれを乗り越えて、多少の出血があってもなおこの売春を撲滅するというところの勇気を持って、この法案を通していただきませんならば、百年河清を待つことよりもめんどうなことになるかと存ずるのであります。しかし馬場委員の御質疑のような点も十二分に考慮してもらわなければなりませんので、この点につきましては、政府におかれまして万全の対策を講じていただきたい。また国会議員としてもそれに対してのいろいろの知恵を出していただきたいと思います。 それはそれといたしまして、この法案を通過いたしまして、かえってそういう彼らに対する政策を進展せしめていただきたい、こういうのが私どもの偽わらざる真情であります。ただ処罰さえしていればいいのであるというようなことは毛頭考えておりません。処罰と教育と、そうして保護処分三位一体と相なりませんならば、長い間の伝統である売春行為がこの世の中から姿を消すことが困難であります。これはたゆまざるわれわれの文化闘争として努力しなければ困難だと存じますので、ただこの法案を通過させ、取締りだけしておってそれでいいのであるかという御質問に対しては、決してさような考えがありませんし、この法案が通過して一挙にこの世の中からすべての売春がなくなるとも考えておりませんが、一歩々々われわれは自分の理想を実現せしめる努力を払っていかなければ、人類の進歩というものはないのじゃなかろうかという悲願から、この法案の提出と相なったことを御了承いただきたいと存じます。
○馬場委員 刑の軽重の問題でありますが、本法案によると、第五条「婦女を欺き、若しくは困惑させて、又は親族、業務、雇用その他の特殊な関係を利用して売春をさせた者は、五年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」それから第七条のごときは、ただいま申し上げましたように、十年以下の懲役あるいは五十万円以下の罰金、こういうことになっておりまして、相当の重い刑罰か課せられることになります。そこで考えなければならぬことは刑の均衡です。この刑法の二百二十四条ないし二百二十六条に、未成年者を略取したり誘拐したる者は三カ月以上五年以下、営利、わいせつ、または結婚の目的をもって人を略取しまたは誘拐した者は一年以上十年以下、国外に移送する目的をもって人を略取または誘拐した者は二年以上の有期懲役、こういうことになっている。二百二十七条は、前三条の罪を犯した者を幇助する目的をもって、被略取者または被売者を収容または蔵匿しまたは隠避せしめた者は三カ月以上五年以下の懲役、こういうことになっております。これは売春自体を禁止したものではないことは申し上げるまでもない。条文にうたわれているところは以上申し上げた通りでありますが、それらの法定せられた刑というものは、未成年者の略取や誘拐は三カ月以上五年、国外に移送の目的をもってする略取や誘拐は二年以上ということになっておるのでありまして、本法案にうたわれている第五条ないし第七条といったようなものは、刑法の規定との均衡を失っているのではないかと考える。重い軽いはしばらく別といたしまして、現在刑法でそれに類似の犯罪規定との間に非常な開きがある、これらは国法として大体の均衡がとれていることが必要だと思います。もちろん刑罰を現実に課しますのは、裁判所の確定判決によって執行せられるのでありますから、それぞれ刑の量定は裁判所でやるでありましょう。さりながら、とにもかくにも法規に量定されております刑期は、大体において均衡のとれていることが必要だ。そこで現在提案されておりますこの法案の要求いたします刑罰と、ただいま読み上げましたこういった犯罪に対する刑期との間に均衡を失しているというような気持はお起りになりませんか。もしあるとすればどちらかを訂正する必要があると思う。
○猪俣委員 ごもっともな御質疑でありまして、提案者といたしましても、その点非常に研究いたしたのであります。売春等に関する現在の法律も、児童福祉法から労働基準法から職業安定法から性病予防法からいろいろあるのであります。それから今馬場委員の申されました刑法の規定、こういうものの量刑を実はいろいろ研究いたしまして、その比較一覧表を印刷しまして皆さんに御配付したと思うのであります。実は私自身が今それをどこかへなくしまして持っておりませんが、それには詳細に各法と本法との刑罰につきましての比較をしてあるのでありまして、そういうふうにながめて参りました結論といたしまして、この売春等取締法は、先ほど申しました文化革命として今までたびたびルーズに流れておりましたものをここに引き締めなければならない。そうしてしかもそれは売春婦それ自体に向けられることなくして、その行為を誘発する営利業者、人の肉体を売ることによって生計を立てるということ自体が許すべからざることでありますが、そういうことをやって暮します者を根絶しなければならないという確固たる決意のもとに実はこの法案に着手をいたしました。いたずらに刑罰の重きをもって事足れりとするのではございませんけれども、この売春というものが悪であり、しかもさような売春をさせることによって営業としていくというようなことは、許すべからざる業であるという建前から、予防主義に重点を置きまして、一般人の覚醒に重点を置きまして、かような刑法の二百二十五条と同じような略取、誘拐、それと同等の犯罪価値ありといたしまして、一年以上十年以下の懲役というものを課し、なお五十万円以下の罰金というものにしたのであります。御説のように、いきなりでは非常に重過ぎはせぬかという御議論、ごもっともでございますけれども、私どもはこれによって、かような営業をなし来たった者及びなさんとする者に対しまして、一般的な予防措置に立ちました考えから、かような量刑にいたしたのであります。いろいろ御議論があるでありましょうが、私は在来の慣習をこの際何としても画期的に粛正しなければならぬという意気込みから、こういう規定を置きましたので、これは刑法の規定及びその他の規定から見まして、多少重いかも存じませんけれども、さような刑の不均衡があるんじゃないかというようなおしかりを受けるほどの重いものではない。在来これを見のがしておりましたこと自体が、はなはだ文化国家としては不手際であり、こういう貞操を売買させることによって、職業を営んでおるという者に対しまする社会的排斥の標準があまり甘過ぎた、結局社会的制裁を根拠として刑罰ができるのでありますが、ほんとうは逆に私どもはかような刑罰によりまして、予防的、社会的な自覚を促したい、こういう精神も織り込まれておるものであることを御了解願いたいと思います。
○田中(幾)委員 ただいまの御質問まことにごもっともでありますが、第七条の規定は、「売春を行う場所を供与することを主たる目的とする施設を経営した者」こうありますが、これは第二国会の場合におきましては、簡単に娼家を経営した者、つまり女郎屋なんです。女郎屋があるからこういう売春をする者が起ってきて、これが売春の本拠ですから、公然と女郎屋を経営した者、たやすくいうと、そうなるのでありまして、これも当時におきましては、刑を非常に今よりは軽く見まして、これを五年以下の懲役、または五万円以下の罰金、それからその次の十五国会におきましては、五年以下の懲役または二十万円とこういたしまして、十九国会におきましては、五年以下の懲役または二十万円以下の罰金、こうしまして、今度の結果になりましたので、これはいろいろ歴史的な関係もありまして、種々批判と検討を加えた上に、こういう今回の量刑になったわけであります。
○馬場委員 先に提出せられて、廃業になった法案が、五年云々とあったのが、今度は一挙に倍増して十年になった、重く処罰しなければならぬという意味はよく了解できます。ただし法律のきめ方としては、略取、誘拐であるというような、きわめてたちの悪い犯罪、それに対する刑罰の規定と、今度のこれらの規定との間に非常な不均衡があります。これによって絶滅するその熱意の現われとしてこういう規定を置いた、その趣旨はわかります。しかしてまたこれらの犯罪を何とか絶滅しなければならぬという熱意においては、あえて提案者の諸君にわれわれも劣るものではない。ただし刑が不均衡であるということは、これは冷静に考えてもらわなければならぬ。そこで略取、誘拐の罪がこれらに比較して非常に軽きに失するということであるならば、むしろそっちの方を改正するために何らかの措置をやるべき必要があると私は思う。 次にお尋ねをしたいのは、この法案によりますと第二条に、売春の定義として、「「売春」とは、婦女が対償を受け、又は受ける約束で不特定の相手方と性交することをいう。」こういうことになっておるのであります。従いまして、売春という行為は婦女だけがその対象になっておる。婦女のやる行為が売春ということになっておる。婦女が対価を受けまたはその約束をして不特定の男性と性交することが売春だ、そういたしますと、売春という行為は女に限るのか。婦女だけに限るのか。具体的にいえばかげまというようなものがあるそうでありますが、そういうものは売春罪としての対象にはならないのか。この法律にはそれは取り除いてあるのか。その意味がはっきりわからぬ。婦女だけが売春行為として処罰される。憲法ではいわゆる男女同権。男性が対価を受けて不特定の相手方と性交いたした場合にはどうなる。しかしてそれは包含しないということであるならば、その包含せざる理由を一つ明らかにしていただきたい。
○猪俣委員 これは立法の趣旨にありますように、婦女の基本的人権の侵害を防ぐ、そして健全なる社会秩序の維持に寄与するということがこの立法の目的になっておるのであります。それは結局法で取り締らなければならぬ社会現象になってきた。立法の根源は結局社会現象から出てくるのでありますが、そこで今御説のようなかげまのようなもの、これもはなはだけしからぬことであります。しかしこのかげまなるものの数、社会的影響、そういうものと、この婦女の売春とは、社会的現象としても比較に相ならぬと思うのであります。そういう意味において、まず売春等処罰法は、これは伝統的におきましても、婦人の人権擁護から出てきておるのでありまして、また人権擁護を叫ばなければならぬような社会現象として存在してきておるのでありますがゆえに、まずここに取り締りのほこ先を向けたのでありまして、この立法はいわゆる男色、男娼というようなものは、他の風俗取締法、あるいは刑法のわいせつ罪、そういうものの対象になりましても、この売春等処罰法では対象からはずしてあるのでありまして、御説の通りそういうものもやらぬじゃいかぬじゃないかという御説ごもっともでございますが、それはまたそういう処罰の必要を生じましたときに立案をいたすことにいたしまして、ただいまでは婦女の人権擁護ということを最大の立法理由にいたしまして、この売春等処罰法をつくったものであって、かげまのごときはこの中に含まれていなかったのだ、その含ませなかった理由は、社会現象として違っている、そしてまた沿革的にも違ってきている、そこで法の対象として今われわれは後日はいざ知らず今は取り上げるまでに至っていない、こういうふうに御理解願いたいと思います。
○馬場委員 これは男女の差だけで本質的にはちっとも違やしない。婦女の基本的人権を擁護する必要があると同時に、こういう者の基本的人権を放任してよろしいというりくつは立たぬ、たといそれが数において婦女ほど多くないにしても、現にこういう事象があることは御承知の通り。しかもいろいろな弊害が行われておるということをわれわれは聞いておる。これはむしろこれを除外する、そうして他の法規によって取り締ればよろしいということはちょっとわれわれ納得いかない。そこでいま一つお伺いいたしたいのは、ういう場合にはどういうことになりますか。たとえば一人たちの悪い男があって、その甲なる男があって、その甲なる男が乙という女をほしがっておる男を説きまして、それとその女と性交させるのです。周旋をした。そうして女には金を一文もやらない。その周旋をしてくれた男だけが金をとった。約束は男と男、女を買いたいという男と世話をしたいという男との間に約束ができて、第三者である女を提供することを条件としてその女をほしい男と周旋をした男との間には金銭の授受があった。周旋料をとって女を世話をしてやった。しかもその女と性交を要求する男との間には金銭の授受もなければ、約束もない、こういうことがあり得ると思う。そういう場合には一体どうなるのだ。売春ということは婦女が代償を受けて、もしくはその受ける約束をして不特定の相手方と性交することだ、それから婦女が代償を受けまたはその受けることを約束して性交するのでなければ売春という行為は成立しない。婦女が代償を受けるということが犯罪成立の要件なんだ。しこうして女は金をとっていない、こういう場合、たちの悪い周旋屋がおって金を自分がとった、女は金銭の授受や約束には一切関していないという場合には、売春という犯罪は成立しないんじゃないか。そうしてその周旋屋というものは一番たちの悪い行為をやっておる。売春が成立しなければこれを幇助した周旋罪というものも成立しないはずだと私は思う。そういう場合には一体どういう処置をなさるのですか、それを伺いたい。
○猪俣委員 今馬場委員の御設例の場合、すなわち甲と乙と二人の男の間にある女を周旋する約束をして、甲が金をとってしまった。ただし性交をいたしました女は一銭も金をとっておらない、また約束もしておらないという場合におきましては、本法の違反にならぬのであります。これは立案の際にいろいろ議論が出ましたが、第二条に売春の定義を下しておりまして、必ず売春には報酬を受けるとかあるいは約束するとか、それを含まなければならないという定義を下しております。そこであなたの御設例のときには、婦女が報酬を受ける約束もしない、受けてもおらない、報酬を受けたのは周旋屋であるという場合には婦女は売春をしないのであります。従って本条の行為から処罰できません、それには法の解釈上出てくると思います。馬場委員の御設例のように、そういうやつこそ不都合じゃないかということになりますが、ただし私どものような解釈をとりましても、その事例は非常に少かろうと思うのであります。たとえば前借を負けてやるとか、食費をどうしてやるとかいうようなことが女と周旋屋との間にありましたならば、それはことごとく報酬でありまするがゆえに本条によって処罰されます。何ら純然なる代償の約束もせず、代償も得ておらずして貞操を提供したというのは売春になりませんので処罰いたしませんけれども、さようなことは非常に希有の例じゃなかろうかというふうに考えておりますが、なおこの点については……。
○神近委員 この点ちょっと説明さしていただきます。御存じのように婦女ということと、代償ということと、不特定の相手ということと、それから性交という四つの要件がございます。ただいま馬場委員が仰せになりましたようなケースは、非常に例外的な場合と思います。これは直接の代償、間接のものも含んでおるのでございまして、たとえば女が精神耗弱者である場合か、ちょっとおばかさんというような婦人か、あるいは相手の男を非常に好いている、ごく軽度の恋愛でもその感情の中に含まれている場合としか想像されないのでございます。もし精神耗弱で少し足りない人の場合は、これは刑法の規定がございます。ただ恋愛感情が半ばであっても、それは非常な深い恋愛か浅い恋愛かという区別は、これは人間感情の基準でございまして、ちょっとできないだろうと思います。恋愛関係の状態におきましては、これは対象にならないのでございます。
○馬場委員 女が売春にならぬ、だからそいつは罰しない、これは常識なんで、あえてそういうことを問題にしておるんじゃありません。従って恋愛情感が深いとか浅いとかいうことはこれには関係ないのです。私の言わんと欲するところは、そういった薄のろというか、少しおばかさんというようなお言葉がありましたが、そういった女を道具に使いまして、女には一文もやらないで、自分が周旋料をとって女を世話した、そういう者は重く処罰すべきだと私は思う。非常にまれな事例だとおっしゃるが、あながちまれではあるまいと思う。まれな事例であっても非常にたちの悪い行為なのです。それをなぜお見のがしになるか、私はこう言いたい。だからそれは別に刑法によって処罰する、こうおっしゃるが、それこそ均衡を失うものであって、そういうたちの悪い者こそほんとうに厳重に処罰すべきものである。私はこう思う。そこで一応出されたこの法案も、なるほどということであれば、いつでもそういった方向に改めるだけのお考えを持ってもらいたいと私は思う。提案者としても虚心坦懐になるほどそういう場合があり得る、しこうしてそういう事例は憎むべき行動だという御理解がいくはずだ、まれな事例だから放任してよろしいという理屈は立たぬ。しかもまれな事例だとは必ずしも言えないと私は考える。非常な法の盲点ではないか、どうです。
○猪俣委員 馬場委員も専門家であられるから御存じのように、一体刑罰法規には法益は何であるかという問題が重要な論議になっているわけです。そこで売春つまり報酬を得て性交する、あるいは報酬の約束で性交する、その者を処罰するということを根幹において、法の体系を整えなければならぬのです。金を取らぬ者までも全部処罰することになりますと、それは法の体系が一貫できないような混乱した立法になるんじゃなかろうか。もちろん立案の最中に、さような案も出たのでありますが、報酬を得て貞操を売るということを売春なりとして、これを悪として処罰する観念を貫き、その売春に協力した者、その共犯関係にある者を独立罪として処罰するという法体系で、これは貫いているのであります。その売春の定義をくずしました者までも入り込むということ、馬場委員も御承知のように、要するにつつもたせみたいなことをするやつ——最もこれは憎むべきやつだと思いますが、しかしさような者までも処罰の対象にするということになりますと、法の一貫性を欠いてきて、非常に立法が混乱するんじゃなかろうか。しかし皆さんの方で名案があらせられるならば、私どもはあえて異論を唱える者ではありませんが、そういう意味において、そうしていわゆる社会現象としても、さっきのかげまを処罰しないのと同じような意味において、非常に少いのじゃなかろうかということと、そういうものまでも包含することになりますと、立法技術上非常に困難に陥るということから、今回におきましては、そういう者は何らかのほかの刑罰規定に触れる行為があるに違いない、女をだますとかなんとかいうことが行われておるんじゃなかろうか、そうすればほかの刑法で処罰できるんじゃなかろうかというようにも考えられますので、今回においてはさような者を対象にしないようにしたのであります。
○馬場委員 議論は幾らでもありましょうが、虚心たんかいに考えてみて、売春だけを処罰するんだ、その意味はよくわかる。それを入れれば体系が乱れる、こうおっしゃるが、およそ薄のろみたいな女の肉体を犠牲に供してみずから利得する、こういうことが放任せられるようであっては、とうていこれは問題にならぬと私は思う。 そこで私は法案全体についていろいろお尋ねしてみましたが、提案者の方でも処罰規定だけで、この社会に深く根をおろした複雑な問題が一挙に解決できるとは考えておられないようだ。われわれもこの種の問題に対しては、早くから非常な関心を持ちまして、何らかの対策を講じなければならぬ、かわいそうな立場にある婦女の人権を特別に擁護しなければならぬということは、絶えず考えておるところなのであります。そこでこれらの問題を解決するためには、やはり一片の処罰規定の制定だけでは、満足な解決はできないのであって、まず第一に生活の問題、転落した婦女子を補導する問題、あるいは厚生の施設、あるいは性病の予防対策であるとか、教育、文化各方面にわたって、しかも予算を背景とした総合的な施策がなければ、とうていこれを満足に解決することはできないということを実はわれわれ考えておる。その点については、おそらく提案者諸君も御同感だろうと思う。そこでこのいわゆる文化革命——好んでお使いになる文化革命ということのために、その一環としてまずこれをやるんだ、こういう御意見のようであります。提案者は、この法案を提出すると同時に、次次にこの問題の抜本的な解決に向って手を打っていく意思がもちろんおありだろうと思う。それらの点について概略でけっこうですから、御意見を承わっておきたい。
○猪俣委員 われわれはもちろん、この法律自体において売春を絶滅せしめることは困難であることは、しばしば申し上げておいたのであります。されば厚生省、労働省あるいは文部省の政府委員にたびたび来ていただきまして、その点についての政府の所信を追及して参りました。先般の法務委員会におきましても、あるいは法務委員会と社会労働委員会の合同審議の際におきましても、川崎厚生大臣は、この法案が通るならばという前提のもとに、今馬場委員が御心配になったような保護施設につきまして、相当の抱負を述べられておるのであります。八十億円くらいの予算を獲得することを考えておると述べられております。私ども、売春専門に研究せられておる人の御意見を承わりますならば、二十億か三十億あるならばとにかく保護処分はできるんだという専門的な見解も承わっております。さような意味におきまして法案ができるということは、さような当然今まで国家がやらなければなりませんところの保護処分というものを進展せしむる突破口になる、動力になる。それができなければ、これはむだだということではいけないんだ。たびたびその保護処分が完備せざるという理由によりまして、審議未了で十数年を経過して参りましたが、今や躍進いたしまして、その突破口にこの法案をしなけばならぬのじゃなかろうかというふうに私どもは考えてきたのであります。もちろんこの法案が提案に至りますまでには、全国的な婦人団体が熱心にこれを推進して参りました。さればこの法案が通過いたしました暁におきましては、これらの婦人団体が政府機関と熱心に協力いたしまして、必ずこの文化革命の出血を最小限度に食いとめるよう尽力することを私ども期待いたしております。この点につきましては、神近委員から御説明があるかと存じますが、また政府におきましても、すでに厚生大臣が分けの委員会で発言されておるのでございまするゆえに、この実現を一日も早くするよう強く迫るとともに、各党一致いたしまして予算措置をしていただくよう、私ども努力したいと思いますが、馬場委員におかれましても御協力のほどをお願いしたいと思うのであります。
○馬場委員 これはいたずらに批判のための批判といったことが行われるんじゃない、ほんとうに国家として、民族として、真剣にこの問題の解決に取り組んでいかなければならぬと私どもは考える。そこでひとりこの処罰規定ばかりでなく、ひとり法務省の問題ばかりでなく、政府全体、内閣、関係各省とも十分に連絡をとりまして、昔からこの問題で完全な成果をおさめたという事例を寡聞にして実は聞いておりませんが、とにもかくにもお互いの現在の知識、現在の経験において、これ以上のものはないというだけのりっぱな対策をぜひすみやかなる機会にでっち上げてみたい、こう実は考えております。私の質問は以上をもって終ります。
○神近委員 今馬場委員から、この法案の弱点的面を御指摘に相なりました。第二国会で提出された法案が廃案になったのも、その点が不完全だということによって廃案になったのだということを私どもは承わっております。それから七年の間、今のような恐るべき教育方面、あるいは青少年の勤労の精神、あるいは国民の保健の面における性病の状態、そういうものがほっておけないということで、処罰面でも、修身的な面でも、これはやらなければならないという考え方から提案したものでございます。それでこれが出たということだけで、すでに月々増加の傾向にありました婦人が増加しないということ、それから警察の方面においても深く注意を呼び起されて、そうしてその点で多少の成果を上げているという点、それからきのうの東京新聞によりますと——実はきのう芸者さんたちをこの法案によって取り締るかどうかということが、連合審査会において問題になりましたときに、まず赤線あるいは基地売春の方面が最初にこの法案にかかるものだということと、青線あるいは芸者街におきましては、芸者さんたちは芸によって身を立てるように、それから青線区域におきましては、飲食店業というようなものに一応その仕事を返すようにということを私が発言したのでございます。昨晩の東京新聞によりますと、芸者さんたちが、すでに売春等処罰法案が提出されて問題になったということも理由になりまして、芸で立っていこうということから玉代の増加を要求して、ストライキのような形でやっているというようなことを考えますと、ただこの法案が審議されているということだけで、それだけの効果があったということを考えますと、必ずしもこれが効果がないということは私ども考えられないのでございます。それからこれからどういう法律が必要かということで、更正面については猪俣委員から御返事いたしました。しかし検挙の問題、それからたとえば学校あるいは病院その他の施設の外郭における、これに類似するような商店は認めないということもなさなければならないということであります。それからこの人は明らかに売春婦である、まだ摘発されていないけれども売春婦であるというような人たちは、子供のいる家庭に同居することができないということも立案されなければならない。それからあの人たちのひも——夫であって、その商売をやらせるというような人たちに対する対策も、私どもは行く行くは行わなければならないと考えております。何度も繰り返しましたように、理想的なところに一歩にいくということでは困るのでございまして、私どもはどちらかというと、理想論よりは、現実の状態に対してこのままでほっておけない、まずとりあえずこの悪ということ——日本の人の考え方には、キリスト教国と違いまして売春というものが悪であるという観念が微弱であります。この観念をこれから植え付けて、そうして逐次掃討する。外国の例もたくさんございますけれども、時間がございませんから申し上げませんが、そういう方面に向っていかなければならないというので、私どもこれを一つの拠点として提案したものでございます。
○馬場委員 神近委員の、いわゆる芸者諸君の補助労働の問題が話題に上ってきた、いろいろ御意見拝聴いたしておきます。これは非常に解決に困難の面のたくさんある問題であり、しかも解決をしなければならぬ問題、何とかしてこれを是正していかなければならぬ問題であると思います。党派を超越して真剣に一つこの問題に取り組んで解決をはかっていきたい、かように考えます。
○三田村委員 関連して。法案の内容、その解釈については、いずれまた提案者及び関係当局に伺いますが、昨日の社会労働の連合審査会、本日の委員会において提案者の神近委員並びに本日猪俣委員から御説明になりました内容について、今朝来の質疑に関連して一、二点簡潔に、主として神近委員にお尋ねいたしたいことがあるのであります。それは昨日の御説明を聞きましても、本日の御説明を聞きましても、このいわゆる売春行為なるものの内容が、きわめて広範なんです。きのうの神近委員の御説明によりますと、オンリーも二号もすべてこの対象になる、正常な夫婦関係以外の性行為はすべて好ましくないのだという御説明であります。ごもっともだと思うのでありますが、しかしこれはなかなか容易ならぬ問題であります。もちろん御婦人の方々が御熱心のお気持はよくわかりますが、私はむしろこの場合、神近委員と御同様に御婦人の立場に立ってお尋ねいたしてみたいのであります。御承知の通り、終戦後民主主義、基本的人権の保護というものが非常に強調されまして、刑法の中から姦通罪というものが消えております。これは婦人の人格権を尊重しての立場であり、また男女の権利の平等という立場からでもありますが、姦通罪を刑法の規定から抹殺したという趣旨は、やはり婦人の人格権の解放であります。ところがこの法案を厳重に解釈いたしていきますと、婦人の人権解放というよりもむしろ、この立法対象が婦人に置かれますがゆえに、非常に婦人の自由なる行動に制肘が加えられてくるのであります。たとえば今朝来ここで質疑応答が繰り返されておりましたが、愛し合うと言うとどうかと思いますが、とにかく結婚前の交わりをしている者が、相携えてどこかへ旅行に行く。性行為が伴うかもわかりません。愛情は物質によって計算はされませんが、男子の方でその費用とかそういうものを負担するということは、一般の社会常識として、社会通念としてこれは当然肯定されることであります。その場合も、昨日来の御説明を聞いておりますと、これはもし結婚という最後のゴール、終着点があればいいけれども、そうでないものは本法の対象になるような御説明であります。これは容易ならぬ解釈でありまして、こういうことが一体婦人の解放とか婦人の基本的人権の保護になるかということに、はなはだ疑問を持つのであります。神近先生は長い間婦人運動に携わっておられますが、この点は一つどのようにお考えになりますか。御説明を聞けば聞くほど私はこの法案に大きな不安を持つのであります。婦人の解放、まことにけっこうであります。私たちもとより異論はありません。売春行為なんといういかがわしい問題をわれわれの社会からなくすることについてはもとより異論はありませんが、その目的を達成するに急なるのあまり、善良な社会生活の範囲にまでその目的の余波があまりにも深刻に及ぶことをわれわれはおそれるのであります。婦人解放、けっこうであります。御婦人の方々が本法案の促進に御熱意を持たれることも私はよくわかりますし、まことに敬意を表するものでありますが、果して神近先生のおっしゃる婦人解放になるかどうか、刑法がその規定の中から姦通罪を除いた趣旨にかんがみましても、婦人の行動にも相当広範囲な自由が与えられていいと思う。報酬を得たから必ず売春法の対象にしてこれを処罰するということは、私は正常な人間の活動、端的な言葉で申しますと食欲と性欲というものは人間の生存せる限りどうしてもこれは抹殺することができないと思うんです。どうしてこんなふうにしたのか神様に聞いてみなければわからぬのですが、この問題を社会的な悪が目につくからわれわれは文化革命の突破口としてこれをどうしても追及するという場合に、私はその点に今非常に疑問を持ったのでありますから、どうか一つその点について、ことに神近委員から率直な御意見を伺いたいのであります。今の刑法から姦通罪を除いた趣旨、これは婦人の人格権を尊重する建前からでありますが、きのう以来の御説明を承わっておりますと解釈が非常に広範囲になりまして、普通の社会通念、社会常識として男女の持つ交わりすらこの法が踏み込んでいくような懸念を持ちましたので、その点一つ率直に御説明を願いたいと思います。
○神近委員 きのうの私の連合審査会における発言を若干三田村委員が聞き違えていらっしゃるところがあると思います。第一に夫婦関係以外の性交が危険であるということは、性病に関しまして市川篤二博士が御発言になったことでございます。それからめかけとオンリーというようなものまでもこれに入れるということも誤解でございます。この条件が不特定というのがありまして、めかけというものは特定の人の相手をする、報酬を受けるということは事実でございます。当時であれ後刻であれ報酬を受ければ、これは一つの条件を作るんですけれども、特定な相手であるという意味で、めかけはこれに入っていないということをたびたび——この点で椎名委員は大へん御不満でございますけれども、この場合はわれわれは入れておりません。ただし合資会社というような形式で、三人なり五入なりをかかえているという女の人に対しては、これは特定という言葉は三人でも特定じゃないかということが成り立ちますけれども、三人が一人欠けた場合には、また不特定の中からより出してくるということで、これは不特定ということの解釈をいたしておるということを申し上げました。 それから人権じゅうりん的なことが行われないか、特に結婚予約中の人たちが——これは三田村委員はどうお考えになるかしれませんが、日本の社会が結婚ということにこれだけのいろいろの障害がなければ——古い世代の慣習があったり、あるいは金を三万円なり五万円なりかけなくては結婚ができないというような状態、こういう制約がなくして、登録するということによって教会なりあるいは仏教関係なりの方が簡単に結婚の成立を祝福して下さるような形ができれば、私はもっと簡単に結婚というものは行われるべきだと思うのです。そういう場合に三田村委員はどうお考えになるかしれませんが、そっちの方の調整を早くしないで、まず熱海に行くとかあるいは伊東に行くとかということが現実に行われています。だけれどもこれは良識をもって考えれば、そういう商売の女の人であるかあるいは初心の女の人であるかということくらいの判別は宿屋でもつくはずでございます。一例としてこの間区別を申し上げましたけれども、少し利口な警察官あるいはそういう人たちは、男性の居住地と女性の居住地が離れておる場合に、その疑いをもって調べるということを言ったことがあります。これは大へん賢いやり方だと思います。それでむやみやたらに普通の恋愛関係の男女が検挙されるということは起り得ない。そうしてこの法律ができてもっと徹底してくれば、結婚前にそういうことをやらないでも、結婚を急ぐという態勢をとった方がもっと健康だということの通念が起ってき、親たちも本人たちもそういう形を早くとるだろう、何も熱海や伊東に行って結婚の予備行動をしなくてもよいことになるのではないかというふうに私は考えております。 それから刑法の姦通罪の問題、これはこの間めかけの条項をどうして入れることができないかというときに、実は今回ほぞをかんでおる次第でございます。私はその当時責任者ではございませんでしたけれども、ある大学に行きまして、犯罪史の展覧会を見せられたのでございます。その刑罰というものは非常に酷なもの、男子の人たちは他人の財産を不当に略取するというのが極刑でございます。それなのに女に対しては姦通罪というものが極刑なのでございます。それは悲惨な刑罰を長年女だけが受けてきたということに対して私は非常な衝撃を受けまして、あの姦通罪をどうするかというときに、実はあれを両方ともなくするということに賛成をいたしまして、今日この法案を作成するに当りまして、あれがありさえすれば問題はないのにと言われたので大へん後悔しておる次第でございます。ですけれども、これはもしあの犯罪が両罰ということになっていたらば、女よりも男の人たちがずいぶん御不自由をおなめになったんだということも想像されるのでございます。私どもはある時が参りましたら、めかけに対して既成事実を除いて、今日以後の問題には何らかの方法をとらなければならない。私は今さしあたりましては民法の重婚の罪——どこにも重婚の問題が起っているのにあれが罰することができないという矛盾、不合理を何とか取り去らなければならないのではないかということを考えております。
○三田村委員 私ここで理論闘争をやるつもりはないのであります。きのうあたりの御説明で疑問が浮んできたからお尋ねしたのであります。この前の委員会で今神近さんお話の通りこれはオンリー、二号も本法の対象にならぬという御説明があった。私はこの法文をそのまま解釈すると、対象になるのは不特定の相手方でありますからそうだと思います。特定した場合には対象にならぬということになって、逆にオンリー、二号の奨励になるのではないかという議論がしばしば繰り返されてきました。ところがきのうの御説明を聞いていると、それも場合によってはひっかかるんだ。きょうの御説明を聞いているとまたそうでない場合もあるんだというような御解釈でありましたからお尋ねしたのでありまして、これは法の正確な解釈は提案者である方々にお尋ねすると同時に、法務当局、警察当局からもお尋ねいたしますし、また当委員会においてどういう解釈をするか、それは委員会の権威で結論を出すことにいたしますから、ここでこれ以上はお伺いいたしません。私はただきのう、きょうの御説明を伺っておって、そういう疑問が出たから一応お尋ねしただけであります。御答弁の必要はありません。
○細迫委員 議事進行。きょうは暑いから昼までで散会しようというような委員長の御意向のように承わりましたが、条件次第によってそれでもいいと思います。それについて委員長に一言議事進行についてお伺いしておきたいのでありますが、私どもの最も懸念いたしておりますることは、この法案の審議に時間を取りまして、参議院に回して審議を仰ぐ時間の余裕もなくなるというような状態であります。でありますから、聞くところによりますと、十九日にこちらの委員会の討論採決をしようというような理事会の御協議の決定であるようでありますが、十九日の採決を絶対にやれるようにお取り計らいを願いたいが、そういうことになっておりますかどうかをお伺いしたい。またそれにつきましては、この法案はいろいろ問題がありますから、十九日に修正案だとかあるいは代案というものが出るかもしれません。十九日に修正案あるいは代案というものが出されては、事実上これは十九日に採決する運びにならないような場面が出てこないとも限りません。今日から逐条審議に入っておりますから、もう一日くらい逐条審議をやりましたならば、大体討論する材料は尽きるのじゃないかと思います。そうすれば、修正案なり代案なり出される希望のある方面では、これを提案せられ、あるいはいろいろ全体で懇談するような機会もできまして、十九日には採決できる、こういう運びになるだろうと思います。代案やあるいは修正案を提出なさる御希望のところでは、だから十九日でなく、その以前に出していただくように、委員長から御尽力を願いたいと思うのでありますが、これについての委員長の御方針をここで公けにはっきりしていただきたいと思うのであります。
○世耕委員長 細迫さんにお答えいたします。委員長が暑いから午前中でやめようじゃないかと言ったというようなお言葉でございましたが、委員長はお見かけの通り暑さには平気でございます。ただ委員諸君の御意向で大体の日程を組んでいただいたわけでありますから、どうぞ御了承を願いたい。 なおお尋ねの点について申し上げますが、先ほどの理事会できまりましたことは、十六日に売春等処罰法案の審議を終えまして、十七日は日曜でございますので休んで、十八日月曜日に、過般来より問題になっておりました人権問題の調査をいたしまして、夕刻ごろから売春等処罰法案に対しての委員諸君の御懇談を願う、そして十九日火曜日に売春等処罰法案の採決を予定しようじゃないかということを、大体理事会で御了承を得たのであります。つきましては、なるべくこの予定にマッチするように、各党の方々がそれぞれ党に帰って御協議を願って、この方針に御協力を願うようにお願いすることを努めたいと思っております。御了承を願いたいと思います。
○細迫委員 お言葉には、修正案提出のことを含んでいますか。
○世耕委員長 それは含んであります。 なお、過般来も本席も問題になっておりましたが、この問題は掘り下げて論議すると尽きない問題なんです。たとえば提案者の説明によりますと、売春は罪悪だというような議論をしているが、反対論から言うと、女性の立場から言うと、貞操は命にかえて守るべきものだが、その命にかえて守るべき貞操すら売る、その実情は何に原因しておるかというようなことを掘り下げてくると、経済問題やいろいろの問題がつながってくるのであります。そういうようなことがありますので、いろいろ委員諸君は熱心な御論議があったとも思いますが、先ほど来申し上げたように、理事会の御方針にもほぼ予定ができましたから、これに沿うような委員各位の御協力、各党の御協調を願いたいということの希望をこの際会けにいたしておきます。
○猪俣委員 熱心に御審議をいただきましてありがとうございました。 今馬場委員あるいは三田村委員から設例として申されたこと、たとえば会社の同僚同士が旅行でもして、そうしていい仲になって、男だから汽車賃や宿賃ぐらいは持つ、それでも売春だといって取り締られるじゃないかという御説、ごもっともな御設例でありまして、これは人権じゅうりん問題とからんで相当デリケートな問題を含んでおると実は思うのでありますが、ただ理屈から申しますと、この売春の規定の第二条をわれわれが堅持いたしまするのもそこから来るので、先ほど馬場委員の質問に対しまして、法体系を乱るという困難があるということを申し上げたのもそこからくるのであります。要は犯罪構成要件といたしましての範囲の問題で、同じ会社に勤めている男女が一緒になりますこと、肉体交渉を持つことが、たとい汽車賃や宿賃を持ってもらっても、それが一体対価といえるかどうか、対償といえるかどうかということはもっと客観的に調べなければならぬし、従って、さような対価を受けて貞操を提供するような認識があるかないかの問題、それから同じ会社の同僚というものが一体特定か不特定かの問題、諸般の状況から考えまして、さような場合においては売春というようなことは成り立たぬのじゃないかというふうにも考えられるのでありますが、そういうデリケートな問題になりますと、裁判上客観的なあらゆる事象を調べた上でないと判定ができないことになるのでありまして、これは具体的裁判にまかせるより仕方がない。どちらから考えても、売春の目的、理論からしてこの売春に当てはまるという売春の構成要件を備えないという場合に、これを処罰するというようなことは裁判所ではなさらないであろうと思うのでありますが、ただ、裁判所では無罪になるかもしれないが、そういう嫌疑を受けて警察にちょっと来いということが起る、これが人権じゅうりん問題とからんだ問題だと思うのであります。これは取締り官憲に対しまして、さようなことのないように十二分に指導してもらわなければなりませんが、ただ、お互いに正式に結婚せずして同じ会社の者が旅に出て一つ部屋で肉体交渉を持つというようなことは、これはどうもあまり感心したことではないのでありますので、多少警察に疑いを持たれるような災難はあることを覚悟した方がいいのじゃなかろうかとも考えられるのでありまして、かえってこれは無分別なる婦女の無造作な貞操提供を阻止することにもなるかと考えられますので、御説の通りなかなかデリケートな問題の多い問題だとは思いますが、これは結局この法律を施行する人の良識に待つより仕方がない。立法技術といたしましては、こういうふうにやっていかないといかぬのじやなかろうか、こういうふうに考えております。それからさっき細田委員が御質問になりました、業者がどのくらいあるであろうか、これは労働省の白書を見ますと、日本全国に三万五千四百三十五名あるというような白書になっておりまして、これも統計が本によって多少違いますが、まあ二、三万あると思っておいていただけばいいのじゃなかろうか、こういうふうに考えております。
○世耕委員長 最後に委員諸君にお願いしておきますが、本件は社会問題としても非常に重大な問題であります。ところが問題は年寄りにあまり関係がないことで、むしろ若い人たちの性問題をいかに解決させるかという重要な問題でありますから、年取った方々のがんこな気持でものを見ないで、若い二十才代の人たちがいかにこれを考えているかというところに中心を置いて御論議なり御調査なりをなおお進め願いたいことを特にお願いしておきます。 —————————————
○世耕委員長 なお、この際お諮りいたします。人権擁護に関しまして徳島市における選挙違反の取調べ事件の調査のため、当委員会に参考人を招致いたしたいと存じますが、その人選、期日等は委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○世耕委員長 御異議なければさよう決定いたします。 本日はこれにて散会し、次会は公報をもってお知らせいたします。 午後一時十三分散会