法務委員会 第27号
- 発言数
- 67 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1955/06/25
会議録
○世耕委員長 これより会議を開きます。 売春等処罰法案を議題といたし、あわせて法務行政について調査を進めます。 なお、この際お諮りいたしますが、警視庁の養老防犯部長を参考人として出席していただくことといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○世耕委員長 御異議なければさよう決定いたします。 —————————————
○世耕委員長 それでは質疑の通告順にこれを許します。山本粂吉君。
○山本(粂)委員 三鷹事件によって刑事訴訟法第四百条の問題について重大な問題が明らかになった。私はこのことについて法務当局の率直な御意見を承わりたい。できるならば当国会中にでもこの法律の改正をしてもらわないと重大な結果が起るので、緊急に質問をいたそうとするものであります。時間の関係上私の質問の要旨をまず全部述べますから、それに対して法務大臣として、あるいは局長として適当なる御意見を拝聴すればそれで私の質問を終ることにいたしたいと思います。 御承知のように刑事訴訟法四百条のただし書きの規定、この場合は一審の判決に対して被告人または被告人に利益のために控訴した場合は問題でないが、被告人に不利益に判決を変更する必要ありとして控訴した場合、すなわちいうならば、検事が控訴した場合に、検事の控訴趣意書を裁判所で判断して、また一審の裁判所の記録等を判断して原判決を破棄して被告人に不利益に原判決を変更する場合であっても、事実審理を経ないで直ちに原判決を破棄して被告人に不利益なる判決をすることができるという判例が三鷹事件の判決によって示された、ここに重大な問題がある。私は三鷹事件の判決そのものを批判しようとするものではない、これはおのずから別問題であります。私の一番懸念する問題は、これによって明らかにされた最高裁判所の裁判官が数名四百条ただし書きの規定に対する解釈において意見を異にしている、多数決で今私が申し上げたようにこの問題が判断せられていることである。すなわち検事が控訴した場合に、控訴裁判所は訴訟記録または検事の控訴趣意書等々を調査した結果、控訴理由ありと認め、原判決を破棄して被告人に不利益な言い渡しをする場合でも、事実審理を経ないでも差しつかえないのだ、違法がないのだ、こういう意味で三鷹事件は上告が棄却された。ところがこれに対して数名の最高裁判所の判事は、あれはいけない、違法だ、四百条ただし書きの規定は、被告人の利益に原判決を変更する場合はもちろん問題はないけれども、被告人の不利益に原判決を変更する場合、すなわち原判決を破棄して被告人の不利益に変更する場合には、第一審に差し戻すか、しからずんば事実審理をした上でなければ被告人に不利益なる裁判をすることはできないのだ、それが四百条ただし書きの規定だ、こういう解釈をしておるのであります。ところが多数意見は、いやその場合でも、被告人の不利益に判決を変更する場合でも、事実審理を経ないで破棄をしても違法ではないのである、こういう意見が勝ちを制して三鷹事件は上告棄却になったように聞いている。さように判断しているのです。そうするとこれが最高裁判所の判例でありますから、今後下級裁判所を覊束する。これから起ってくるもろもろの事案に対して、たとえば一審で事実に直面した裁判官が被告人の情状に同情して執行猶予の判決を言い渡した、ところが検事が被告人を憎むのあまり、また刑の量定等の均衡の上から執行猶予を付したのは軽過ぎるという理由で検事が控訴した、ところが高等裁判所は一回の事実審理もやらずに、検事の出された控訴趣意書と一審の裁判記録とを精査した結果、直ちに判決をすることができると判断すると原判決を破棄し、被告人が一審において受けていた執行猶予を取り消して、執行猶予を言い渡さない不利益な判決をすることができる、こういうことになります。そういたしますと、刑事訴訟法第一条の規定、憲法の規定から、基本的人権を尊重するという趣旨に極端に違反する、根本的に食い違う。こういう解釈について、いやしくも最高裁判所の裁判官の間に数名と数名との解釈の争いがあって、そうして被告人の基本的人権を侵害するような判例が下されたということは、今後における刑事裁判の上に重大な問題が起ると思うのであります。よって私はくどくどしくは申し上げません。みなその筋の専門家であるからすぐおわかりになると思いますので、私の質問の要旨は、さような基本的人権を侵害するような刑事訴訟法をそのまま置いておくことは相ならぬ。さような解釈がまちまちになって非常な不安を抱かせるような法律をそのままに置いておくことは、まことに危険千万であるから、この際法務当局は刑事訴訟法四百条を改正して、被告人に利益のため被告人みずからが控訴した場合はこれはもう被告人に不利益に判決を変更することができないということに議論の余地がないが、被告人に不利益に原判決を破棄する場合には——すなわち検事控訴の場合がそのおもなるものであるが、その場合においては必ず事実審理を開くか、一審に差し戻すか、いずれかの明確な規定を四百条ただし書きのあとに置かなければ、私はこの四百条の規定はきわめて危険な法律になると思います。この点に対する法務当局の率直なる意見を承わって、そして一般裁判の上にこの問題のはっきりした姿を現わしてもらいたい、かように思うのであります。
○花村国務大臣 お答えいたします。山本君の主張される議論もまた一応の理屈はあると思います。しかし私は、この四百条のただし書きは、やはり最高裁判所が今回の裁判においてとったように控訴裁判所または上告裁判所は、訴訟記録並びに原裁判所及び控訴裁判所において取り調べた証拠によって判決ができ得ると認むる場合においては、これは判決をしてもよろしいという意見が正しいのではないか。と申しまするのは、現行刑事訴訟法は御承知のごとく第一審裁判を中心としておりまするのみならず、旧刑事訴訟法は覆審制をとっておったのにもかかわらず、現刑事訴訟法は続審制をとっておる。こういう刑事訴訟法の根本的理念から考えて、証拠の上において原審に差し戻して、再びそういう無益な手数をわずらわさずとも、記録の上において明瞭である場合においては、事実審理を経ずとも直ちに判決をしてよろしいということが、かえって新刑事訴訟法の趣旨に沿うのではないか、私はこういう意味に解釈ができると思いまするので、法律上の解釈から言うならば、今回の三鷹事件に関する最高裁判所の判決は適当であると申し上げてよろしいと思うのであります。しかし今山本君の言われたような主張もごもっともでありまして、この条文が果して完全無欠なものであるかどうかということに考えを及ぼしますならば、必ずしもこれがすべての面において完全であるとも考えられない点もあるように思いますので、この条文については大いに研究する余地がある、こう私は考えておる次第でありますから、法務省といたしましても今後この条文についてはあらゆる観点からもう少し研究してみたいと思います。 先ほど私が現行刑事訴訟法は覆審制でなくて続審制であると申し上げましたが、それは事後審の意味ですから、ちょっと訂正いたしておきます。
○山本(粂)委員 花村法務大臣の御意見は、抽象論としてはその通りであります。そういうことはもうよくわかっておる。ただ被告人に不利益に原判決を破棄して変更する場合、すなわち検事が控訴した場合でも、実際は多くの高等裁判所においては、まず十中の九までは事実審理を開いた後でなければ原判決を破棄してみずから裁判をしておりません。だから実際の問題としては、みんな事実審理をやってから原判決を破棄して被告人に不利益な判決をしておるのが事実のようです。けれども今度の三鷹事件を契機として明らかになったように、あの四百条のただし書きの規定は、被告人に不利益に原判決を変更する場合でも事実審理を経ないでみずから高等裁判所が破棄できるという規定だこういうふうな解釈が最高裁判所の判例となってしまうと、実際今日まで行われていた、なるべく被告人の基本的人権を尊重するという建前から多くの場合事実審理を経ておるのに、今度は厄介だから事実審理を一切やめてしまって検事の控訴趣意書と一審裁判所の裁判記録だけで被告人に原判決を不利益に変更してしまうというようなことが行われるということになると、私はこれは重大な問題だと思う。だからこの問題については法務当局において慎重に御研究の上、何らかの改正をするか、何らかの処置を講じてもらいたいというのが私の質問の趣旨なんです。一般的に一審に差し戻して同じ手数を二度も三度もやるというような煩雑を防ぐために今度の刑事訴訟法が改められたことは、これは百も承知しておる。そうじゃない、一審に差し戻さないでもいいから、破棄自判をしないでもいいから、その場合には少くとも事実審理を開かなければいかぬということにしないと多くの弊害が起るでしょう。そのためには、今の最高裁判所の判例からいって四百条の改正が必要になってくるのではないか。それが今度の三鷹事件によってあまりにも大きくクローズ・アップしてきたから、これに対する法務当局の御意見を拝聴したい、こういう意味です。
○花村国務大臣 上訴審が破棄自判をやる場合に、今山本君の言われたように事実審理が大部分なされておるようなお話でありましたが、これは今までの例を見ますれば決してそうじゃないんです。ほとんど事実審理をせられないのが常で、やはり書面審理で今日まで行われてきておったのでありまするが、これは新刑事訴訟法の精神にかんがみてこれは当然のことであろうと思うんです。そういうわけですからただいま山本君の言われたように、今までの事例が事実審理をほとんどやってきておるから、従ってやらぬのは感心しないじゃないかという論は当らぬと思いまするが、しかし本条が疑義を差しはさむものであるということは明瞭であり、またこれは研究の余地のあることも認めざるを得ない次第でありまするし、この点は一つ十分に研究してみたいと思います。
○山本(粂)委員 それではこの程度で私の質問は打ち切っておきます。
○淺沼委員 関連して。法務大臣にお伺いしたいんですが、人間にとって一番とうとばなければならぬものは人間の生命であろうと思うのであります。それがゆえに政治も人権を尊重して、いかに人間の生命をとうとぶかという政治が行われているということは一番いい政治だと思うんですが、しかし最近死刑の宣告を受ける人がだんだんあるように私ども見受けられるのでありまするが、人間が一番とうとばなければならない生命を、その生命を断ち切ったがゆえにまたその生命を法によって断ち切る、これに私はどうも納得がいかないような気がするのであります。やはり人間が人間を裁判する、そのことは必ずしも全部が全部あやまちがないということはあり得ない、こう思うのであります。現に三鷹事件についてこれを見ましても、第一審においては無期ということになって、第二審においては書面審理でやってそれで死刑ということになって、第三審、最終決定判決では八名が死刑、それから七名が少数意見で反対した。たった一名の差で人間の生命が奪われていくという結果になるわけであります。これは私は非常な重大な課題ではなかろうかと思うのであります。従ってこういうような問題の起きた際に当局としては、法務大臣として人間の刑罰に対する規定として死刑というものに対してあらためて研究し直すというお考えがあるのかないか伺っておきたいと思うのであります。
○花村国務大臣 死刑という刑罰が果して正当なりやいなやについては、これは議論の存するところであります。今淺沼君の言われたごとく、人間の最も大事な生命を取るのであるんだが、しかし今日の教育刑から申しますると、一番人間として大事な生命を取るというがごとき刑は不適当じゃないかという論もあり、世界においても六、七の国では死刑を廃止しておる国もあり、ソビエトのごときも一時廃止しておったのでありまするが、このごろは復活をいたしましたが、しかし世界各国の例を見ますれば大部分がやはり死刑を存置しているということだけは、これは疑いのないところでありまするが、しかし凶悪なる犯罪を犯した者に対して死刑を課し、そうして社会の人々に恐怖の観念を持たせることによってかかる凶悪なる犯罪を行わしめないというようなことや、あるいはまたその被害を受けた遺家族等の心情を察して、そうしてその傷つけられた金銭にかえがたい遺家族の気持をいやしてやるというような見地から考えて、やはり死刑は必要じゃないだろうかという意味に、私どもは今日もなおかつ考えております。
○淺沼委員 言葉の末をとるわけではありませんが、という意味に考えているということではなくして、法務大臣は最後には死刑の判決を受けた者に対して判を押して死刑を執行せしめるという立場にあるんであります。従って私は一体今あげられたような単なる理由ばかりではなくして、人間として今われわれは文化国家として再生をしておるのでありまするから、文化国家の理想に立ってこのことを考えてみますならば、私は死刑というものは廃止すべきものであると考えるのであります。しかし今日本が戦後文化国家として出発をして、そうして人間の生命を一番とうとばなければならぬというときに当って、何だか大臣の意見を聞いておりますと、死刑をやることによってそういうような犯罪を犯そうとする人たちに対して、一つの恐怖心を与えて、それでやるんだ、何だか一つの恐怖政治をやるように私には受け取られるのであります。 それからもう一つは遺族の心痛に対する同情といったようなことがあるようでありますが、遺族の心境を察してまた同じような断罪を行う、死刑にする、どうも私には納得がいかないのでありますが、外国の例はいかようであろうとも、文化国家として再出発をした日本の国において、死刑の問題はもっと私どもは深刻にお互いが考えて、こういう刑罰はなくさすのが当然だと考えるのでありますが、もう一つの単なる事例だとか、あるいはその心持だということではなくて、あなたのほんとうの考え方を言っていただきたいと思うのです。
○花村国務大臣 死刑廃止論も一応の理屈もあり、またあながち無益な議論でもないと存じまするが、しかし世界各国の情勢をながめ、またわが国の社会事情等を考えてみまする場合において、恐るべき凶悪なる犯罪をいくら犯しても無期程度で済むんだというような考えを持たせることがはたしてよいかどうか、ことに終戦後におきましては御承知のごとく凶悪なる犯罪が非常に激増して参ってきておりまする今日において、こういう凶悪なる犯罪——私は二、三日前にも二人死刑執行の判を押したのでありまするが、ほとんど死刑の執行を受くる者は強盗殺人であります。この二、三日前に押した死刑囚などは、四人の家族をみな殺しにして、しかもその殺人方法たるやまことに残虐なる方法をもって四人も殺し、そうしてそこらにある財を盗んで行った、こういうのでありますが、そういう極悪犯人であってもやはり無期懲役刑くらいにしておくというようなことは、社会不安を増大せしむる一つの大きな原因になると申し上げていいと私は思う。でありまするから、死刑廃止論も相当あるようでありますけれども、しかしそういう極悪犯罪を犯す者は、やはり一番人間の大事な命を取られるのであるというような気持を持たせることによって、そういう恐るべき犯罪をなくしていくということを考えなければならないのじゃないか。要するに、社会の福利を増進し、社会の人々の利益をあくまでも守っていくという意味において、やはり人一人の生命を犠牲にするというようなことはやむを得ないじゃないか、こう私は考える次第であります。
○淺沼委員 関連ですからあまり長くやってはいけませんので、ごく簡単に、あと一点だけ聞いてやめます。凶悪なる犯罪を犯した者に対しては極刑をもって臨まなければならない。しかし凶悪なる犯罪が行われることは人間としての自覚が足りないところに原因があるのではなかろうかと私は思うのであります。単に頭から押えつけることによって犯罪がなくなるということでなくして、犯罪が起きる原因というものは——国民としての自覚があり、なおかつ生活が安定されて、ほんとうに国民それぞれ所を得ておりまするならば、そういうような凶悪なる犯罪をする者はないはずだと私は思うのであります。従って、政治というものが、万民のための政治が行われなくして、一部のための政治が行われた結果、やはり犯罪というものが出てくるのでありまして、従って極刑のみをもって、対抗するということでなく、政治の面でもっとなすべきことがあるのではなかろうかと私は思うのであります。私は法務大臣から政治の貧困のことについて聞かれなかったことを遺憾といたしますが、しかしそれは別といたしまして、人が人を裁判するのでありますから、万全ではありません。ことに三鷹事件のように、第一審においては無期、第二審では事実審理をやらないで、書面審理で死刑、そうして最後には八対七ということで死刑の宣告が告げられる。どうしても国民に納得しないものを残しておると私は思うのであります。この前の帝銀事件にいたしましても、必ずしも納得がいかないもののような印象を国民が受けておると私は思うのであります。これは裁判でありまするから、裁判のことに対してとやかく口ばしを入れるという気持は私毛頭ありません。しかしながら、人間の生命はやはり失われていくのでありますから、人間の生命のとうとさを感じますならば、今のような裁判の様式、それから来て死刑の宣告、そうすれば死刑そのものに対しても当局においては考えてしかるべきではなかろうかと考えるのでありますが、どうも極刑をもって臨まなければ犯罪がやまないような考え方であります。もう少し教育の徹底もはかり、生活の安定もはかって将来は死刑がなくなるような世の中にしたいくらいのことは——法務大臣も縛ったりあるいは判を押すばかりのことをやらないで、未然にそういうことが起らぬようなことをやるように願わなければならぬのではなかろうかと私考えておるのであります。
○花村国務大臣 淺沼君のおっしゃられた後段はまことにごもっともであります。もちろん犯罪が生活に関係を持っておりまする以上、やはり政治にも結びついてくることに当然だと思います。で、二十八年以降は凶悪なる犯罪が漸次減りつつあります。減りつつありまするこの傾向は、要するに、やはり生活にゆとりを持ってきたということを一面示すべきものであると申し上げてよいと思いまするが、それは政府がよかったからとかどうとかいうことを私ここで言うわけじゃありませんけれども、生活にゆとりを持ってきたという一つのやはり社会現象から今日凶悪なる犯罪が減りつつありますることはまことにけっこうだと思います。もちろんこういう凶悪なる犯罪を、ただ単に死刑の刑をもってのみ絶滅しようというような考えが適当でないことは、これは淺沼君の言われる通りであってむしろこういう極刑をもって臨む前に、やはり生活上のゆとりを持たしてやる、生活がやはり困らぬようにしてやる、悪いことをせなんでもやはり食えるようなところへ持っていくというようなことは、これは当然考えられなければならぬことでありまして、こういう点もともにともに加わってこういう凶悪犯罪がなくなるであろうことは、これは当然であると申し上げてよろしいと思います。でありまするから、私も、ただ、どうも死刑執行の判を押すばかりではない——判を押すときはあまり気持のよいものじゃありませんよ。ないけれども、これもどうも衆議院で作った法を誠実に守っていくという建前において、自分を殺して判を押しておるわけですが、まあ今言われた、やはりもう少し生活面のゆとりをこういう犯罪を犯すものに持たしてやり、そうしてまた教育の面においても指導してやらなければならぬというお説に対しては、双手をあげて賛成し、私どももそういう信条をもって進みたいと存じます。
○世耕委員長 この際お諮りいたします。山本粂吉君から発言がありました刑法四百条のただし書きの規定の問題は、非常に重大な問題だと考えられます。なお淺沼君から御発言のありました死刑廃止論の問題もかなり重大な問題であると考えておりますので、両方ともいずれあらためて論議する機会を得たいと思います。本日は、本件に関してはこの程度にとどめていただきたいと思いますが、志賀君何か御発言ありますか。
○志賀(義)委員 関連質問であります。
○世耕委員長 実は大麻国務大臣並びに花村法務大臣の両大臣とも正午より他の会合に出席したいとの申し込みがあるのでありますから、はなはだあなたにはお気の毒ですが、早くから申し込まれておったので、簡単に御発言を願いたいと思います。志賀君。
○志賀(義)委員 ただいま花村法務大臣から、凶悪な犯罪を犯した者は死刑もやむを得ない場合があるというような御発言でありましたが、一昨々日行われた三鷹事件の上告棄却の判決は、凶悪な犯罪を犯さない者を死刑にしようとしておるのであります。しかも大法廷に——これは前もって世耕委員長にも申し上げて、当日私が傍聴することをお知らせしておきましたが、大法廷に傍聴しての感じでは、ただいま花村法務大臣が言われた衆議院で議決せられた法律を最高裁判所が守っていないで、あの判決を強行したということがあるのであります。なおさら今法務大臣としておられる花村さんが、この三鷹事件の死刑の判決に判を押されるようなことになると、あまり気持がよいどころではなくして、後世に必ず誤まった判を押したという歴史に残るべき問題でありますから、この点について私若干法務大臣に質問してみたいと思います。 実は下山、三鷹、松川事件は一連の関係を持っているのでありまして、私が六月二十九日東京を出発しまして、青森の駅の構内に入って列車が徐行をしておるときた、突然私の窓を破ってこぶし大の石が飛び込んできたのであります。三鷹事件のちょうど十六、七日前のことであります。当時列車投石事件ということがひんぴんと言われておりましたが、これは新聞の報道によれば、首切りの通告でやけになっておった国鉄の職員がやるのではないかというふうにしきりにうわさが振りまかれておりましたが、当日私がその列車のその窓に乗っていたことを、とうてい青森の国鉄の職員があらかじめ知るわけがないのであります。明らかにその後起ってきた松川事件までの一連の諸事件を考えますと、これはうしろに黒い手があってやっておったということがわかるのであります。現に三鷹事件が起ったのも、七月十五日日本共産党の創立記念日のその日がねらわれておったということが推定できるのでありますが、一体この間の大法廷に対し前日からバリケードを築き、当日乱闘服を着た警官隊を多数出動させ、そうしてさらに裁判所の職員——多くは協力的でありましたが、一部の職員が新聞社のカメラマンに対して暴力をふるうというようなことをやっておって、これで一体司法大臣としては司法権の独立があるとお考えになるかどうか、その点をまず伺いたいのであります。そういうことをして判決をしなければならないようでは……。
○花村国務大臣 裁判の内容に関することは、これは憲法できめられておりまする裁判の独立といった見地から考えまして、私は批判をすることを避けたいと存じます。その裁判をやる方法がよかったか悪かったか、これはいろいろ異論もございましょうが、私は裁判所として法律の命ずるところにのっとってその訴訟手続を正当に進めてきたものであると信じて疑いません。従いまして私はただいま志賀君の言われたような見解とその裁判手続の運営に対する考え方は違うと申し上げてよろしいと思います。
○世耕委員長 お諮りいたしますが、実は花村法務大臣その他関係閣僚に特に在席中に猪俣君からも質問通告が出ておりますから、なるべく時間を御割愛願いたいと思います。
○志賀(義)委員 ただいまの花村法務大臣の御答弁では、最高裁で裁判長がやったことは刑事訴訟法から見ても合法的であった、こういうように言われるのでありますが、当日は明らかに裁判所側から挑発して、混乱を起して、あの不当な判決を正当化すべく、こういうふうに騒がしたというような印象を与えようと思ったのですが、これはみごと傍聴者及び傍聴できなかった人々の方でその裏をかいて静粛にやったのでありますが、刑事訴訟法の手続に従って果して正当にやったかどうかは、忌避が当日弁護人の方から出されたのに対して、刑事訴訟規則第十条によれば意見書を出すべきでありますが、この意見書を出しておりません。また刑事訴訟規則第三十三条によれば、検察官の意見を聞かなければならないのに、出廷しておった検察官の意見を少しも聞いておりません。また理由がないといって忌避を却下した際に、それが何条にあるかと弁護人の方で聞いたときに、発言を禁止しております。またその発言禁止に対して異議申し立てをやったときにも、これをしゃにむに押えて発言禁止をやって、判決を強行したのであります。しかもその判決については八対七ということでありますが、一人の裁判官は合議に参加しておりながら署名捺印をしておりませんが、この署名捺印をしない人を除くと七対七になるのでありますが、あの判決は合法的になり立ち得るものであるかどうか花村法務大臣に伺いたいと思うのであります。なお当日十五人の判事が出ておりましたが、池田、垂水両判事は御承知の通りあとから後任になって入った人でありまして、あの判決には加わっておりません。十五名の判事があたかもこの判決について八対七をやったように外観は見えますけれども、当日出廷しておった判事の中では、あの判決に反対した者が七名、賛成した者が六名であります。こういう状態であの判決ができたのであります。さらに田中長官に至っては、政令三百二十五号、プレス・コード違反事件のときに、共産主義者及び全体主義者は憲法の保護規定から除外して差しつかえないというナチスの除外法、アウスナーメゲゼッツ、これと同じような言動さえ弄しておるのでありまして、この裁判がいかに不当に行われておったかということがはっきりするのであります。 これについては弁護人の方で再審の要求をするのでありますが、ただいまのことに関連して、この竹内景助という死刑の判決を受けた被告人が犯行をやったということについて、七月十七日の朝日新聞三多摩版、都下版でありますが、これには捜査本部発表、指紋もとれた云々ということがあるのであります。ところがこれについてその指紋を提出すべきことを要求しているにもかかわらず、一切その点は証拠として出されておらない、こういうことがあります。また八月一日の三多摩版の朝日新聞にこの記事が出ておりますが、それについて、そのあとででき上った検事調書というものは、三多摩版八月一日の朝日新聞に出た記事の通りの内容になっておりまして、これについて弁護人は当時法廷において質問しておるのであります。その他あらゆる事実審理の場合に非常に疑わしい項目が八つもあるのであります。それらのことを取り上げずに第二審においては無期を死刑と改め、さらに最高裁判所においてはこの上告を棄却しておるのであります。そういうわけでありまして、これはどうしても再審をやらなければならない問題でありますが、その点について、再審のときに裁判長としてこれを正当に受け入れるように私どもは努力するつもりでありますが、法務大臣としては判決の内容には立ち入れない、批判はできないと言われるのでありますが、この再審について、法務大臣としてあらゆる便宜をはかられることについて御同意されるかどうかということを最後に伺っておきたいと思うのであります。
○世耕委員長 政府側に議事の進行上御注文いたしますが、なるべく簡潔に御答弁を願います。
○花村国務大臣 ただいま志賀君の言われたような事実があったかどうか私のあずかり知らざるところでありますが、しかしただいま申された大部分は法務行政を離れた裁判権の範疇に属する問題でありますので、ここで私が答弁する限りではないと存じます。なおそのうちで検事調書が不当であったかのごときことが加わっておったようでありまするが、その点はもちろん法務行政の範囲に属するのでありまするが、かくのごとき今言われたような不当な処置はなかったと私は信じます。 —————————————
○世耕委員長 次に売春等処罰法案を議題といたします。質疑の通告があります。猪俣浩三君。
○猪俣委員 まず法務大臣にお尋ねをいたしたいと存じます。今回議員提出法案といたしまして、売春等処罰法案が出されておることは御存じの通りでありますが、元来この法案の計画は、政府提出案となるべきことが妥当であるのであります。そこで婦人団体を中心といたしまして、政府の提案を再三、再四要請してきたはずである。ことに沿革的に見まするならば、第二国会には政府原案が出されておる。自来第十五、第十九いずれもこの法案が提案になっておるのであります。さればこれはほとんど世論化しておるものと見なければなりません。しかるに今日これが政府原案として提案せられておらない。たまりかねました婦人団体その他の有志議員がはかりまして、ほとんど超党派的にこの売春等処罰法案というものが作られたのであります。そこで私どもは疑問に感じますることは、政府提案なるべきものが、まことに妥当である。この法案が何がゆえに政府から今日まで提案せられないのであるか。しかも過去において提案せられたものの実績がすでにあるのであります。そこで今日底で政府原案ができないところの原因経過、そういうことに対して相当つっ込んだお話を願いたいと思います。何かいろいろの事情があるだろう。そうすればその事情はわれわれが立法をはかる上についても、参考になることでありまするがゆえに、法務省が中心となって、政府原案が今日まで出されざりし理由、その中にはいろいろなデマもあります。業者から何らか牽制せられておるというようなデマもあります。われわれはそんなことは申し上げませんけれども、ただ今日まで政府が出し渋っていることから見ますと、何かそこに原因があると思うのであります。そこでその原因につきまして、われわれは詳細なる説明をお願いしたいと存じます。これが第一点であります。
○花村国務大臣 ただいま猪俣君の申されましたごとく、売春等に関しまする法案は、かつて何回となく国会に提案されたのでありまするが、幸か不幸か国会を通過せず、もしくは審議未了等に終っておるのでありまするが、こういう点を考えてみますると、よほどやはりむずかしい法案であるということが推して知ることができようと思います。かるがゆえに前内閣におきましても、ここに見るところがあり、売春問題対策協議会というものを作りまして、そうして世のこの方面に対する学識経験等を持つ権威者を集めまして、そうしてこの法案を作るべく審議を進めて参ったのであります。しこうしてわが鳩山内閣もこの協議会を受け継ぎまして、そうして協議会が生まれて今日に至るまで二十数回にわたって協議会を開き、あるいはまた懇談会を開き、あるいはまた幹事会等を開きまして、あらゆる面から検討をして今日に及んでおるのであります。しこうして私は早急にこの協議会を開催してその結論を聞きたいものだということで、それぞれの係に指示をいたしましたところ、本月の二十七日に開くことに相なっているようでありまするが、かくのごとくしてなかなか複雑であり、かつ重大なる法案をせっかくこの売春問題対策協議会にかけまして、今日までその案を練って参りました以上は、もちろん私どもといたしましてもこの協議会の意見を尊重して、その結論を見た上でそれを参考にして国会を通過するようなりっぱな法案を作って提案せなければならないという意味において、あらゆる努力を傾倒して今日に及んでいるような次第でございます。ところがこの協議会の結論が遅れておりまするために、今日まで私どもがこの法案に対してその成案を得て国会に提出する運びに至らなかった大きな理由である、こう申し上げてよろしいと思います。
○猪俣委員 この協議会のことでありますが、そういう今の御答弁私どもは納得できないのです。これは今始まってのことでないのであります。何十年来の懸案である。協議会のできたのも鳩山内閣になってからできたものではない。聞くところによれば二十何回も集会をやっている。私はほんとうにこの法案を成立せしめる熱意がないからかような結果になっていると思う。初めからもうやる気がない、それで馬力をかけない。破壊活動防止法のような乱暴の法律でも一夜にしてでき上っている、しかるにもかかわらず、人類の最も大切な文化活動に対して今日まで政府にその熱意がない。一体花村法務大臣は売春等処罰の必要があると考えているか、ないと考えているか、それを第一にお聞かせ願いたい。
○花村国務大臣 たびたび私から申し上げておりまするように、必要ありと認め、その成案を得ることに関しては、人一倍の熱意を持って臨んでいることをはっきり申し上げておきます。
○猪俣委員 しからば何年にわたってこの問題についていまだに成案ができないというのは、どういう盲点があるのかお示しを願いたい。
○花村国務大臣 長い間の懸案が早急に解決できぬというところに、この問題のむずかしさがあると申し上げてよろしいと思う。それは御承知のごとくいろいろと社会面から見ましても、あるいはまた法律実施の面から見ましても、その他こういう売春行為のよって起って参りまするところの原因に複雑多種なるいろいろの関係が錯綜して起きてきているというこの事実が、やはりこの法案作成に対する慎重さをより強く持たせるということに相なるのではないでしょうか。そういう意味で今猪俣君の言われた通りに、長い間の懸案であるのにかかわらず、その解決がつかぬとおっしゃるのでありますが、そういうむずかしい懸案の問題を鳩山内閣ができて直ちに解決させようとおっしゃられるあなたも、どうもこれは無理だと言っちや失礼なのですが、少しどうも、同情もいただきたい、こういうわけであります。(笑声)
○猪俣委員 まことにはぐらかしたような御答弁で、大臣としての御答弁としては落第であります。そんな御答弁では承服できない。その答弁の内容、答弁の態度、そういうことからあなたは一体これに熱意がないと言わなければならない。世界においてはみな解決しているじゃありませんか。何がゆえに今日までこれが解決できないか、これは、われわれはこれによって売春婦が一瞬にしてなくなるような法案を考えているわけじゃない。あらゆる方策の一つとしてこの立法化を考えているわけなのである。それは三分の一、五分の一の効果しかないかもしれぬ。他のあらゆる政治その他の道徳喚起の運動、あらゆるものと並行しなければならぬことは言うをまたないのであります。ただこれが必要なことであるとするならば、法案化くらいは急がなければならぬことであります。それを重大だ重大だと称して、じんぜん日を空しうしておる。こんなものの論点はもう大体尽きております。売春婦の生活をどうするか、そういうようなことに対する研究というものはもう十分できておる。論点なんていうものはほぼ明確化されておる。それを断行する意思があるかないかにかかっておるのであります。また重大問題だ、長い間かかっているのは重大問題だからと言うが、大体重大問題と考えること自身にわれわれはなはだ疑問がある。簡単明瞭なことなんです。断行の意思さえあるならばできる。こんな明確なことはない。政治の貧困を哀れな婦女子の人権じゅうりんにまかせておいて、そうして政治家が安閑としておる。そこに資本主義制度下における悪が存在するのです。政治の貧困をこの売春婦によって解決しておる。そんなことに対して、これが対策を至急に立てなければならぬことはもう論議の域を過ぎているのであります。そんなあなたのもっともらしいような議論を聞く時期ではない。そんなことは百も千も論議し尽されておる。今日いかにしてこれを断行するかにかかってきている。いまだに、こういうような重大問題を鳩山内閣に課せられてはというなら、そんな弱体内閣ならやめてしまいなさい。ただそれに対する意思ありやいなや、断行する意思ありやいなやにかかってきている。調査々々といって日を暮す問題ではないのです。そんな調査はもう済んでおるはずです。それを今日まで調査に名をかりて、協議会というものを隠れみのにして、そうして政府当局は漫然としておる。ほかの法案ならば委員会なんかそっちのけにして断行するくせに、こういう問題については協議会というものを作ってああでもない、こうでもないといってじんぜん日を過ごしている。そこに私どもは熱意の足らざるものを発見するのです。一体いっその協議会は結論を出すのですか。そのあなたの決意を承わりたい。
○花村国務大臣 でありますから、今月の二十七日に委員会が開かれることに相なっておりますが、なるべくすみやかに結論を出してもらいたいということをあらゆる機会に協議会の方に要請をいたしております。でありますから、従ってすみやかにその結論を出してくれることであろうと思います。
○猪俣委員 法務大臣は議員提案の売春等処罰法案をごらんになったと思います。これが通過にわれわれは今必死になっておるのでありますが、法務大臣はこれが通過することに対して賛成でありますか反対でありますか。
○花村国務大臣 通過せられることを希望しております。
○猪俣委員 しからば議員提案であるけれども、政府といたしましてもこの通過に御努力なされる意思があるかどうか。
○花村国務大臣 議員立法でありましても、その趣旨はよろしいのでありますから、でき得る限りの努力は捧げたいと存じます。
○猪俣委員 大麻国務大臣は何か御所用があるそうでありますから、先にお尋ねいたしまして、あと他の政府委員にお尋ねすることにいたします。それは今法務大臣に私が言葉鋭く申しましたように、売春等処罰法案は、これは何としても、国会の名誉にかけても今回は通過させなければもう世論も承知しなくなっております。国会議員の品位それ自体も疑われるような状態になっておる。これはもう売春婦の生活問題とか業者の生活問題とかそんなところにひっかかっておるときじゃない。これは国会が真に文化活動に勇猛に立ち上るかどうかという試金石みたいな法案であります。大麻国務大臣は警察関係の最高責任者であられますが、どうもややもすれば警察は取締りが困難だというようなことからこういう法案の実施に熱意がないように見受けられる。取締りに真に熱意があるならば現在十二分に取り締れる法令が存在しておる。東京都には東京都の条例もあるのであります。あるいは勅令もまだある。ポツダム勅令でありますが、婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令はまだ生きております。しかるに昨日も私どもは特飲街、ドヤ街と称するようなところを視察して参りましたが、ほとんど公娼制度が復活し、赤線区域と称するものはほとんど公娼であります。政府官許の売春行為が公然として行われておる。かような状態でほとんど取締りが行われておらぬ。そこで懸念することは、今良識ある議員によりましてこの売春等処罰法案が通過するといたしましても、警察がこれが実施に熱意がなければ実効が上らない。一体大麻国務大臣はかような法案を必要であると認識されるか、そうして法案が通過して法律になったならば、部下に命じてこれが励行に徹底的に努められる意思がありやいなや、これをお尋ねいたします。
○大麻国務大臣 お答えを申し上げます。この問題に関しましては私も非常に真剣に考えております。また皆さんの御議論はつつしんで傾聴いたしておるものでございます。この問題を根本的に解決するのには、ただ単に警察が取り締るだけで目的を達することができないことは言うまでもないことでございます。かといって、警察当局が決してこれをなおざりにしているものではありません。今までもそうだと思います。これは申し上げるまでもなく、どうしても国民性道徳の向上と相待って、そうしてたとえばよく言われます転落防止の施設とか保護施設とかいうものを完備いたしまして、これと相待って目的を達成するようにしなければならぬ、かように考えておるのでございます。ただ取締り当局といたしましては、法に定まっておることは、最も公正に、厳格にこれを実行しなければならぬ、こう考えておる次第でございまして、もしこの法案がめでたく通過いたしたしまして成立いたしましたら、当局といたしましては、もとより誠意を持って、国家のため、また民族のため、よかれかしとして取締りに従事することは当然のことであります。私もその方針で警察に勧告いたすつもりでございます。それだけ申し上げておきます。
○猪俣委員 大麻国務大臣の御答弁でほぼ御意思がわかったのでありますから、もうくどくどしく申しませんけれども、大麻大臣は、現内閣における閣僚としても有力な閣僚の一人であらせられる。そこで重ねてお尋ねしたいことは、これは民主党の有志諸君も提案者の一人になり賛成しておられる法案であります。そこでこの法案通過に対しまして、政府としても努力していただけるのかどうか、それをもう一点確かめたいと思います。
○大麻国務大臣 よく、つつしんで承わりまして、御趣旨に沿うつもりでございます。
○猪俣委員 なおわれわれは、この法案ができたとして、そうして警察が活動したとして、それでこういうことが根絶するように甘く考えておりません。これはもう絶えざるところの文化闘争でなければならぬと思う。人間の苦悶の象徴でもあります。これに対して私どもは、警察の力によって根絶するなんということを考えてはおりません。ただし昨日も警察官に言うたのでありますが、取締りの困難ということをあまりに強調されて、だからだめだということにありますならば、せっかくお互いの闘争心が鈍るのであります。この執拗にして頑強なる敵との戦いは、われわれの全知全能を傾けなければならぬことは当然でありますがゆえに、私どもは警察だけにおまかせする意思はありません。しかしながら、何としても警察が中心となりまして、大いなる文化目的、人類に奉仕する大いなる理想を持って、ほんとうに熱意を持ってこれを遂行していただかなければ、それができないこともこれまた当然であります。私どもは今のあなたの答弁に相当満足するものがあるのでありますが、どうぞこの法案が理想に過ぎる、現実的じゃないのだというような簡単なことで割り切らず、法案のできることに努力していただき、もしできた際におきましては、警察が先頭を切って口火を切っていただく。そうするとその他のあらゆる機関が活動するでございましょう。政治家といたしましても、放任できない問題でありますがゆえに、われわれもまた先頭を切って戦うつもりでございます。大麻国務大臣は、この法案が通過した際に、まず警察をどのような熱意を持って動かしていただけるのか、もう一度念を押して御答弁いただきたいと思います。
○大麻国務大臣 お答え申し上げます。国会の意思が最高であり、そしてそれで認められたる法律というものは、警察官としてもけんけん服膺してこれを実行しなければならぬことは当然のことでございます。ただこう申し上げると、また猪俣さんは御心配下さるかもしれませんが、私どもといたしましては、やれやれと言いますとまたほかの弊害が起ってくるおそれがありますから、それはどうしてもたしなめなければならぬ。そうすると大へん憶病じゃないかというようなおしかりを受けるかもしれませんが、おそらく今日この委員会でこれからまた皆様から国を憂えるまじめな御議論があるだろうと思いますが、私はこれで退席させていただきますけれども、よく速記録その他によりまして、御意思のあるところを伺ってあやまちなきを期したいつもりでございます、これだけを申し上げます。
○猪俣委員 大麻大臣は何か御用があるそうですから、私はこれで終ります。
○世耕委員長 神近市子君。
○神近委員 大体今の猪俣委員からの御指摘によりまして私の申し上げることが尽きておるように思うのですが、一つだけぜひ二人の大臣にも法務委員にも聞いていただきたいことは、横須賀に起ったことでございますけれども、十二の女の子が十円の代償をもらって十四才ぐらいの男の子たちにままごとの売淫をしていたということが起っておるということでございます。これは思春期の子供たちの場合と違いまして、十一か十二の子供たちであったならば、これはままごとだろうと思うのです。子供のままごとというものには、よくそういうことを含んでおるのですが、それが売淫の形態をとり始めたということに私どもは非常におそろしい事態を感ずるのです。今花村法務大臣が、いろいろとむずかしいので、対策協議会がなかなか結論を出せないのだというようなことをおっしゃっておりますけれども、婦人議員が非常にあせって早く早くということは、もう何度も申し入れておるはずです。それでがまんができないで、とうとう法案を出さなければならないというようなことになりましたのは、こういう実態があまりにも目につき始めたからでございます。ついこの間は制服を着た女学生たちの事件が鹿児島に起ると同時に、東京都内にも無数にそれがあるということがわかって参りました。これは横須賀の場合だけでなく、岩国でも同じようなケースがあるのです。学校の便所の中の落書きが、百円なら売りますというようなことを書いて、どうもそれが女の子らしいというようなこともわかっております。それで今度の、横須賀で十二才の子供が十四才の男の子に十円で売るというままごとをしていたということは、これはただ一例であって、少し調査をしたいと考えておることですが、これはもう日本国中の子供の遊び——たとえば山中湖の場合あるいは岩国のようなところの子供の遊びになっておるということは想像にかたくない。私どもはその点委員会全体にも大臣方にもこの事実を知っておいていただきたいと思います。それで法務大臣は、大へん伝統の長さがあとに引いていて、これを変えることが容易でないということをおっしゃったようでございますけれども、忠君愛国から民主主義に変ってきたこの時代におきまして、これほどの大きな変化を遂げてきたのでございます。そうしてこの売春の問題につきましては、日本が近代国家になりましてから八十五年、この古いからを持ってきたということを考えていただきたい。今ほんとうにその御決心で御尽力下さって変えれば、私は不可能なことじゃないと思うのです。今いろいろの法律がございます。性病予防法とか風俗営業取締法とか、あるいは職安法とか労働基準法とか児童福祉法とかありますが、この前の委員会でそういう関係の方々にお一人お一人ここに出てきていただいて御意見を伺っても、どうしても売春をやめさせる、それに反対する、単独の独立法が必要だというような結論が出ていたのであります。ほんとうにやろうと思えばできないことはない。ぜひ今の御答弁を実行していただきたい。それから、もう一つ申し上げておきたいことは、不思議なことに、今度の法案が問題になりましてから私のところに参ります投書に、在来は女の人から非常に非難をした手紙が参ったのですけれども、今度は一通も女の人からの非難はございません。大へん喜んで、早くこれを通すように努力をしてほしいということ、それから青年たちの投書が全部早くこれを通してくれということでございます。これだけをどうか御記憶におとめ下さいまして、ぜひ御尽力を私はお願いいたしたいと思います。
○大麻国務大臣 神近さんのお話、よく承わりました。鹿児島の事件やその他私も耳にいたしておりますが、今の横須賀の事件のお話、初めて実は耳にいたしましてびっくりいたすような次第で、身の毛もよだつような、ぞっとするようなお話でありまして、涙なくては伺い得ないようなお話だと思います。なげかわしいことだと考えますけれども、今初耳でびっくりしておるような次第でございますので、何とも申し上げようがございませんが、御趣旨のところよく肝に銘じまして、また取り調べてもみます。そういう事実が果してあったか、どうしてそんなことが行われるだろうか、不思議に思うくらいでありますから、真剣に、まじめにこれは研究をいたしてみたいと思います。それだけのことを申し上げておきまして、お話よく謹聴いたしました。
○世耕委員長 田中幾三郎君。
○田中(幾)委員 ただいま猪俣委員の質問に対する法務大臣の御答弁によって大体満足をいたしたのでありますが、この法案が今日まで数回国会に提出されまして、なおかっこの実現を見ていない。あまりにこの問題が古びてしまって、カビのはえたような感があるのであります。しかしながら、この提案理由にも申し上げてありまする通り、非常にこれは重大な、根の深いところからきているということを私は一言ここに申し上げて、なお今後の御協力を得たいと思う。 第一に、これは単にちまたの街頭に出ているところの売春婦を街上からのけるという問題ではないのであります。御承知の通りに日本の憲法は、国民は個人として尊重され、生命、自由、幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の上において、最大の尊重を要するということを規定されておるのであります。これは憲法に規定されておるところの、国家は国民の生活、自由を政治の面で擁護しなければならぬというところに基本的根拠があるのであります。国家が生活を保護しておればこういう問題は生じぬ。私どもは昨晩いわゆる特飲街を委員長とともに視察して参りましたが、吉原へ行くと、少いので月三万円、多いので月五万円の収入がある。そして成績のいいのは、一年に百万円もかせいでおるという。これは重大な生活問題です。国家が国民の生活を保護しておれば、こういうところに職業を求めて行かない。もし国の政治が貧困であって国民の生活が困るならば、職業のないものは、みな吉原あるいはその他の都下十七、八カ所のこういう働き場に行って働くだろうと思う。昨日新宿で私ども会ったやみの女の話を聞きますと、つい最近始めたのだけれども、一晩に客は千五百円だという……。
○世耕委員長 田中君にお諮りいたしますが、大麻国務大臣はお約束の時間がすでに経過いたしまして、急に出たいというので再三の申し込みでありますから、大麻国務大臣に対する質疑は後回しにして、他の国務大臣なりに御質疑を願います。
○田中(幾)委員 ですから、この問題は国民の生活問題を含んで非常に大きな問題になるのでありまして、第一にわれわれは、街上の売笑婦をただやめさせるというだけの問題ではない、各種の問題がこの問題にからんで、政治の点と連携をもってこの問題を解決していきたい、かように考えているのであります。もちろん国内における風俗、性道徳の問題もありましょう。また社会の悲劇も、こういうものを置くことによっていろいろな悲劇も生じてくる、かように思いまして、この提案をした根拠というものは、単に街上の売春婦を取り締るというだけに当面しないのであるという重大なところにわれわれの提案理由があるということをあらためて御認識を願いたいと存ずるのであります。 そこで法務大臣にお伺いいたしますが、すでに御承知の通り、この売春法案の内容をもったところの法律は、ただいま出ておりますところの売春の勅令の問題はむろんありますけれども、これは困惑をさせて云々ということをいっていわゆる売春を罰している。しかしながら今度出しましたこの法案の内容は、警察本部から出しております資料にあります条例にたくさん出ているのでありまして、ほとんどこの法案の内容と同じであります。すでに各地方にこういう条例ができているのでありますから、これを一つの国家の法律として形を変えるということでありますから、そうむずかしい問題ではない。あらためて新しい法律を作るのでないのであります。そんなに法務大臣の考えられるように盲点があったり、むずかしい問題ではないと私は考えるのでありますが、その点いかがでございましょうか。
○花村国務大臣 田中君のお説ごもっともでありまして、大体において私も賛成でありますが、ただ売春法案を作ることはさほどむずかしくないじゃないか、こういう御意見ですが、あるいは考えようによってはそう考えられるかもしれませんが、しかし少くとも法案として出します以上は、国会を通過するものであるという、やはり自信をもってその法案を提案するということが、要するに責任政治のあり方であろうと思いますので、こういう意味において、あらゆる点から検討し、かつせっかく設けられている売春問題対策協議会の意見等も聞き、その最善を尽していくという意味において私は今日まで進めてきたような次第でありますので、幸いにして議員立法で法案が出されたのでありますから、その法案が国会議員の諸君のお骨折によって必ず通過することであろうと思いますので、どうぞすみやかに通過しますよう私も念願してやまない一人なんでございます。
○田中(幾)委員 先ほど猪俣委員からもちょっと意見がありましたが、この法律ができても取締りが非常にむずかしい、むずかしいからそれを予想してこの法律を通すことにちゅうちょしはしないかという感じもあるのであります。 それから現在の売春婦でありますが、この売春婦をいかにするかという処置の問題もありましょう、いわゆる職業転換の問題もありましょう、また業者をいかにするかという問題もありましょう。それから売春婦を取り締った後における国民生活の上における性生活の解決の問題もありましょう、いろいろな問題を予想しましたならば、この法案そのものを考えますときには非常にむずかしいのであります。しかしながら私は国家の政治というものは総合的でなければならぬと思う。一つの行政官庁が全部の政治をやっておるのじゃないのでありますから、われわれはこの法案を通した後において、業者なり売春婦なりの生活問題、性問題があるならば各政治のその部門々々において国民生活を向上し、改善していかなければならぬ、私はかように考えておるのであります。ですから先にこの問題を考えて心配してちゅうちょする必要はない。また私どもの見るところによりますと、こういう売春婦というものは非常に教養が低い、文化の程度が非常に低いのであります。ですから文化を高めてからこの売春婦を一掃するということは困難である。むしろこの法律を先行さしておいて、そしてそのあとに教育をつけていって、文化なり国民の文化水準というものを上げていき、また生活保護の問題、職業補導の問題も解決していかなければならぬ、こう私は考えておるのであります。まず職業転換の問題を考え、それから業者の生活を考え、性問題の解決の問題を考えてから通すということではいけない。私はこの問題はこの問題として、別途に先に解決すべきである、こう思いますが、法務大臣はいかがですか。
○世耕委員長 田中君に申し上げますが、ただいま参議院から法務大臣の出席を約束した時間が来たので出席を求められておりますから、そのつもりでお願いいたします。
○花村国務大臣 田中君のただいまの御意見ごもっともであります。私も同感であります。さらばこそ私はこのごろも、やはりとにもかくにもこの売春法案を通過せしむるということが最も必要であるから、まずこれを通過せしめなければならぬということを、実は放送座談会でも言ったような次第でありまして、お説ごもっともで同感であります。
○田中(幾)委員 もう一点だけ……。法務大臣、むろん人身売買及び売春により利益を得る行為の禁止に関する条約、この条約の存することは御承知でありましょうが、もし日本が国際連合に加盟するようなことになりましたならば、やはりこの条約に基いて、この売春法案のような内容の法律を日本において国内法として通す義務があると私は存ずるのであります。この意味におきましてもぜひこの法案は通しておいて、日本が国際連合に加入するときの準備にしなければならぬと私は考える。ですからこれはただ単に努力するということではなしに、むしろ政府の提案としてぜひともこれを作ってもらわなければならぬ、私はかように考えるのでありますが、この条約の面から見て法務大臣はいかにお考えになりますか。
○花村国務大臣 田中君のおっしゃられる通りであります。賛成であります。
○猪俣委員 今度は警察庁方面あるいは警視庁方面の実際その衝に当っておるお方どなたでもよろしゅうございますが、お尋ねしたいと思います。これは私どもこの法案審議の上に参考にしたいと思うのです。先ほどもちょっと触れましたように、現行法それ自体においてもいわゆる売春行為を取り締るところの法令はあるはずであります。しかるに今日実際上は、ほとんど吉原のごとき、新宿のごとき、あれは公娼であります。警察が許した上で公然として売春をやっておる。また道ばたにいわゆる引っぱりの女性がたくさんおる、そしてそれらを連れ込むところの旅館も数限りなくある。これも警察はそのまま許しておる。しかるに法令はちゃんとある。あるいは東京都の条例もある。東京都のみならず、日本全国に売春を禁止する条例は実におびただしくある。ところがこれが少しも行われておらない。ここにこういう売春取締りの法規の相当の盲点があるかと存じます。われわれもそれをよく承知の上で立法しなければならぬと思いますので、実際の取締りに当られるところの警察方面の方として、こういうことについての御意見を実は承わりたいと思うのであります。そこで警察庁関係にお尋ねいたします。各県の条例というものが一体どの程度に実施されており、どの程度に売春が取り締られておるものであるか、その現況についてお話をいただきたいと思います。
○中川(薫)政府委員 ただいまの猪俣委員御指摘のごとく、現在は国の法律といたしましては、売春したという行為だけでは罪とする法律はございませんが、都道府県、市町村等におきまして売春したことだけをも罪とする条例もございますし、売春そのこと自体は問題にしないけれども、街頭でそういったことを勧誘するという行為を禁止する、こういうことを内容とする条例もございます。その両者の条例を私ども一口に売春条例と言っておるのでありますが、その売春条例はお示しのごとく都道府県、市町村等に——都道府県では十余りあると思いますが、そういう条例がございます。御質問の要点は、その条例によるところの警察取締りの状況はどうかということだと思います。それで私ども売春行為を禁止した条例等によって、売春事犯として全国で警察はどれくらい検挙ないしは警告等をやっておるであろうか。いわゆる警察が手をつけた事件はどれくらいあるだろうか、こういうことを警察で調べてみました。その結果を申しますと、昨年、二十九年一年中の件数を申しますと、全国を通じ、三万人余りの被疑者をこの売春関係だけで警察では検挙いたしております。三万人だけではあまり少きに失するではないか、いろいろ現に売春行為が行われておるであろうと推定せられるにかかわらず、検挙漏れがあるではないかという御指摘でございますが、そういう点につきましてお答え申しますれば、少くとも都道府県条例にいたしましてもりっぱな条例でありますので、この条例違反行為につきましては、警察として当然その犯罪捜査に努むべきは言うをまちません。ところが実情はどうかと申しますと、その条例制定のいきさつでも個々に違いますし、条例によりましていろいろございますが、条例制定の場合に市によりましては、たとえば何条の適用については風俗営業取締法の適用により許可を得たものを含まないものと解する、それから旅館業者に対する適用については正当な営業権を侵害しないように留意することというような附帯決議を付せられまして通過した条例もございます。ところがこの附帯決議も、法曹の専門家に対しては釈迦に説法でございますが、附帯決議というものは法律効果まではないのでございますけれども、運用に当りましては法律の制定のいきさつ等にかんがみまして、そういうことに十分留意しながら、特にその犯罪行為が国民に影響力の顕著な部面、具体的に申しますと学校周辺だとか住宅地域につきましては周密な視察、内偵を行う。それに反して従来集娼地域と言われておって、そういう行為がありそうなところは、それが済んでから逐次国民の性道徳の高揚と相まってその捜査の方向をそういう方に運営して参りたい、こういう事柄の結果御指摘のようなことがあろうと思うのであります。それからこれは確かにお説のごとく犯罪でありますので、警察としては努力すべきは当然でありまして、各警察とも努力しているのでございますけれども、運営の方式が、あるいはその条例制定の場合の地方議会の意思を体し、あるいはその法令の適正な運用を期するために国民に特に弊害が顕著な部面から逐次やっていく、こういうことの結果御指摘のようなことが起った事情が一つあろうと思います。他の一つは、これも御案内のごとく、条例にあります犯罪も、それぞれ刑事手続に従いまして厳重な制約を受けておりますので、売春行為自体が部屋の奥深く行われる行為でございますので、その発見に非常な苦心を要する、その結果発見するということに至らずしておる事案もあろうかと思いますが、事柄の実態は今申した二つの理由によって警察としては努力したあとは、ただいま申しましたごとく二十九年におきましても三万人強を検挙しておりますので、努力したあとは見受けられるのでありますけれども、まだ徹底をしていない部面があるということは認めざるを得ないと思うのであります。
○猪俣委員 今御説明のうちの三万人の内容の分析でありますが、私どもが最も関心を持ち、今回のわれわれの提案の重点を置きましたのは、要するに婦女を売春させて、そうして搾取する徒輩、これは人間のくずだと思うのです。こういう徒輩を根絶することが中心的な課題であります。そこで各県の条例を見ますと、場所を提供したような者、あるいは勧誘をやったり、引っぱったりしたような者をみんな罰する規定が、ほとんど各県の条例にあるようであります。そこで場所を提供したり、そういうことを業として中間搾取をやっているような徒輩に対して、警察がどれだけおきゅうをすえたのであろうか、これがまず最大の私どもの疑問なんです。そういう内容についての統計がありましたならばお示しを願いたい。場所を提供したり女子を食いものにして商売しておるような連中、これは御存じのように、各府県の売春条例にはほとんど全部処罰の規定の中に入っておるが、どれくらい警察が取り締られたのであるか。そうして従来ややもすればいろいろの風評の出ますのも、こういう業者と警察の結びつきである。哀れな売春をやったその女自身よりも、人の貞操を売りものにして生活を立てる者が存在するということが許すべからざることであります。そういう徒輩に対しての警察の取締りというのがなまぬるいのじゃないか。東京につきましては警察庁に私どもなおお尋ねいたしますが、日本全国といたしましても各処罰法規があるにかかわらずどれだけその実効をあげておられるか、それについての実情報告を願いたいと思います。
○中川(薫)政府委員 ただいま猪俣委員御指摘のごとく、売春事犯はただいま申したように、取り締っておるのでございますが、各警察とも、特に売春行為をした婦女子の方もさることながら、そういう行為に陥らしめた者を厳重に特に視察して行う、こういう点は全く同様の考えを持っておりまして、各警察とも売春行為をした婦女子そのものにつきましては、ただいま私がお答えいたしましたような趣旨でやっておるのでありますが、それについてそういう行為を行わしめるような特に悪い人たち、こういう点を重点的にやっております。それで私ども各警察におきましては売春行為につきましても売春行為自体よりも、場所を提供したその他の違反事項の方に特に力点を置く、こういう関係から売春行為条例そのものでは一万二千ばかりの検挙でございますが、売春行為自体を除くそういうことに関連する他の仲介者等につきましては一万九千——二万近くこれを検挙いたしておるのであります。以上申したのは条例の関係でございますが、ただいま御指摘のようなことにつきましてはひとり条例に限らず、御存じの児童福祉法とか刑法の罪とかないしは職業安定法、勅令九号、こういう国の法律も御案内のごとくございますので、国の法律も含めて私ども警察におきましては人身売買事犯という考え方で、今申した刑法の罪とか職業安定法違反事件とか児童福祉法違反、勅令九号の事件、人身売買事件につきましては特に厳重な視察を行なって調査漏れがないように努力を続けておるのであります。われわれが考える人身売買と認められるような事犯で昭和二十九年に検挙せられました人数は、全国を通じ五千五百十一名——六千人弱の被疑者を検挙いたしておるのでございます。
○猪俣委員 今刑事部長の申されたように、現行法でもこの売春行為あるいは売春の幇助、教唆、その他の協力者に対して処罰する法規は相当あるのであります。それが実際は行われておらない。そこで私は警察庁のその道の権威である養老さんにお尋ねいたしたいのですが、きのういわゆる赤線区域と称するところを視察いたしました。まだ公娼であります。昔の吉原と一つも変っておらない。みな引っぱりもするし、女が店の先へ出ていて誘い込んでおります。また新宿あたりにも実におびただしい街娼なるものが出ておって、それらがお客を公然誘い込んでくわえていく。設備もたくさん完備しておる。しかるに現行の法令を見ましても、こういうものは許されない立場になっておるはずであります。そうして警察官はいつでも臨検ができることは、警察官職務執行法を見ても書いてある。旅館なんかいつでも行って調べられるはずである。また軽犯罪法の分野からでも調べられる。婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令からもできる。その他たくさんの法令がある。ところが実際はそれができなくて、ほとんど公娼制度のような形になってしまっておるのにはそれ相当の理由があると思われるのでありますが、どうして一体ああいうふうにならざるを得なかったのであるか。今の警察の態度から見ると、売春は必要悪というような態度で臨まれておるように見受けられるのであるが、いわゆる売春取締りの盲点と申すようなものに対しまして、養老さんの御意見を承わりたいと思います。
○養老参考人 東京都内の売春の取締につきまして、警視庁の立場で申し上げます。御指摘のように、売春関係の各種法令、特に東京都では売春そのものを禁止いたしました条例があるのでございますが、にもかかわらず売春行為が現実に各所に行われておるのでございまして、この点は取締りに当ります当事者としまして、まことに遺憾に存じております。ただ取締りをいたします実情を申し上げまして、そうした点についてさらに御理解をいただきたいと思うのでありますが、われわれがこの売春関係で取締りました件数は、月に数百件、大体ここ数年を見ましても、むしろその件数はふえております。年に六千件ないし七千件、ないし八千件程度を検挙いたしておるのであります。もちろんその大多数は、売春婦そのものが警察の取締りを受けまして、これを検察庁等に送致せられたものでございますけれども、中には先ほど御指摘のありましたような売春婦を管理いたしましたり、あるいは売春の場所を提供いたしましたり、そうした方法によって売春行為から得られる収益を享受しておるような者も相当に含まれておるのであります。しかしこの取締りにつきましては、われわれとして許す限り係の者を督励いたしまして、専心この取締りに従事いたしておるつもりでございますけれども、そうした取締りの件数がいかにふえるようなことであっても、なおかつ売春婦がふえておる。決してそうしたことのために取締りの熱意を失っていくようなことはないのでございますが、一般的な社会、経済情勢でございますとか、生活の不況というようなものの影響かと思うのでありますが、警察の取締りの強化等には影響なしに、売春というものはふえるときはふえておる。現実に昨年よりことしにと、東京都内において、われわれの推定いたしました限りにおきましては売春婦はふえておると考えるのでございますが、結局売春婦は幾ら取締りましても、それが罰金程度ないしはそれ以下の軽い措置によりまして釈放されると、そのときからまた売春を始める。まあ初犯ないしは二犯程度のものが非常に多いのでございますけれども、中には二十数回取締りを受けても、依然売春婦として足が抜けないというのがあるのでありますが、どうしましても、都下に大体一万数千人の売春婦があるというふうに推定いたしておりますけれども、何度取締りましても、結局それだけでは売春取締りの効果は期し得ない。従いまして、売春婦そのものからより以上高度の、たとえば、この売春婦を搾取しているようなその根源を突きたいということに専念はいたしておりますが、売春婦をつかまえまして、これをいろいろ調べましても、その売春組織というものを話さないのであります。しかし売春そのものに関連するものでございますから、どうしても売春婦から足をとって、それから入っていかなければ捜査が進まない。しかし売春婦は極力これを否認するのでございまして、なかなかその根源を突くことについては、捜査からいうと非常に苦労が多く、しかもなかなか能率が上らない。先ほど警察官の立ち入り権によってあやしげなところに立ち入っていけるのではないかというお話があったのでありますが、単純に警察官が売春の容疑があるからということで立ち入るということは、現在では許されておりません。たとえば旅館等を捜査いたします場合も、特定の旅館の部屋におきまして売春行為が行われていることの確証を得ますためには、そこで売春をやってきたという男なら男の供述を得まして、それの署名ある供述に基いて、それを何通かそろえて、特定の女が不特定の男を相手にしたということを得なければならぬのであります。そうしたものに基いて令状を請求して、初めて特定の旅館のその特定の一室の捜査ができる。たとえば帳場に入りましても、直ちに旅館の客室まで警察官が入り込むということには、相当令状請求等についての手続が要るわけでありまして、こうしたことを一つ一つ拾って参りますと、ちまたにあふれるこの売春婦に対する警察の取締りが一挙に徹底して進むということには、非常にわずらわしさといいますか、煩瑣な手続が要るのでありまして、そうした点でなかなか実効が期し得ない。期し得ないならば、社会的に弊害の多いところ、たとえば文教地域とか、住宅地域とか、せめて売春のそうした行為のくせのついていないところから、どうしても重点的に押えていこうということであって、われわれは売春そのものを必要な社会悪というふうには考えているわけではありませんけれども、結果的にどうしても社会的に沿革のある、従来からそうしたくせのついたところが残されていくという形になっているのが実情なのでございます。詳しく申し上げますと切りがないのでありますが、警察力を売春取締りに充て得るその人員等の制約もありますし、そのほか諸般の警察事務から考えまして、すべてをほったらかして売春取締りにのみ専念することも許されませんし、警察の取締りのみでこの売春そのものに立ち向う場合に非常な困難さを痛感しているというのが実情でございます。
○猪俣委員 俗に赤線区域といわれております吉原あるいは鳩の町というようなところは、一体どういうふうに警察が許可されているのですか。カフエーとなっていて、いかにもコーヒーを出すような格好をしておりますが、きのうも行って、コーヒーを飲みたいと言ったら、コーヒーはないのだと言う。だからコーヒーを飲ませるなんていうのはうそであって、全く売淫の場所提供だ。そこであれが勅令やら東京都条例やら、そういうものとどう調和するか疑問だと思うのですが、警察は、ああいう特飲街というのは、どういう法規に基いて、どういう許可を与えているのであるか、そこをちょっと御説明を願いたい。
○養老参考人 俗に赤線区域といわれておりますところは東京都下ばかりではないのでございますが、東京都内にも十数カ所そうした地域がございますから、私は東京都下におきます実情を申し上げます。戦争前、戦争中にかけまして、御承知のように公娼が認められておったのでございます。これが敗戦後、占領下に直ちに公娼廃止の指令が出まして、一切こうした公娼地域というものを廃止することになったのでありますが、当時行政方針として、こうした沿革のあるものをなくしてしまうというような急激な変化についての困難性が考えられたと思うのであります。そうした従来の公娼地域に対しましては、そうした業態をカフエー等の形態に転換させて、売春に従っていたような婦女子は、そのカフエーの女給——これはいろいろ言葉はいえると思うのでありますが、先ほどのように、お客に対してコーヒーとかあるいは酒間のあっせんをするというように逐次に持っていこうという方針によりまして、そうした業態に対しまして、ほとんどがカフエーでありますが、風俗営業としてこれを許可いたしたのであります。ただその許可を受けた店では売春行為は行われていないのでございまして、そのカフエーならカフエーとして許可せられました店に雇われておる女が、結局自分の部屋、多くは住み込んでおると思うのでありますが、その経営者にあてがわれた部屋において売春を行なっておる。かってにお客さんを自分が引き込んで売春を行なっているというような形になっているのでありまして、その許可を受けた営業所内でこれが行われる場合には、行政処分等は直ちに行い得るのでございますけれども、その女が自分の部屋で行う売春に対しましては、先ほど申しましたように、やはり特定の捜査上の手続を経てこれを取り締る必要があるというような実情になっておるのであります。
○世耕委員長 他に御質疑はありませんか。
○生田委員 人権じゅうりんの問題につきましては、本国会の初めに当委員会でお取り上げを願って審議をしていただいておったのでありますが、その後その審議の途中で法務、警察両関係方面から調査の結果御報告があるということになっておりましたが、もはや一カ月であります。その間に法務関係では多少の取調べができておるようでありますが、警察関係におきましてはいまだ御報告をいただく目鼻がついていない。こういうことでは、この国会の会期も迫っておりますので、特に人権じゅうりん問題は取り上げてこの国会にこれを解決するということが好ましいと思いまするので、もし警察関係でそのようでございましたならば、当委員会としては警察関係の報告を待つことなくして、この問題については委員会独自の考え方で審議をしていただきたい。 それで、徳島県の警察本部長の山本利光君、第二捜査課長、それから第二捜査課の西尾警部補、徳島東署の藤山署長、捜査主任の吉川警視、また関係しておりました田上巡査、岡地巡査、平木巡査、それから誣告の行為があったと考えられます徳島市両国橋筋の山田義明、この人たちについて私といたしましては証人として当委員会に喚問をしてお調べを願いたいと思いますので、委員長の方でそのようにお取り計らいを願いたいと思います。またこの事件の審議に当りましては山田、それから橘、亀田、森に関するこの誣告問題に限った調書がございますはずでございますから、その調書を参考資料として御提出を願うようにお取り計らいを願いたい。 なお横道旅館を強制捜査いたしましたときの捜査令状というものはどのような捜査令状になっておりますか、これも資料として御提出を願いたい。またその捜査令状をお出しになりました考え方についてもし御説明がありますならばそれも付していただければけっこうと存じます。 これらの点については委員長においてこの人権じゅうりん問題についての結末をつけるように、審議の過程において早急にお取り計らいを願いたい、このようにお願いしたいと思います。
○世耕委員長 生田君にお答えいたします。今御要求になったことはあらためて理事会に諮って方針を決定いたします。 なおその前に要求された資料につきましては、委員長からあらためて政府側に至急提出するようにいたさせます。 なお人権じゅうりんの問題は他の法案等の関係でやや中絶の形でありましたが、できることならば次会において取り上げて審議を進めたい、かように考えております。理事会等においてよく協議いたしまして、生田委員の御趣旨に沿うように取り計らいたいと思いますから、さよう御了承願います。 本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。 午後一時七分散会