法務委員会 第16号
- 発言数
- 114 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1955/06/09
会議録
○世耕委員長 これより法務委員会を開きます。 本日はまず人権擁護に関する件について調査を進めます。質問の通告があります。順次これを許します。猪俣浩三君。
○猪俣委員 大臣が参られるまで、南方連絡事務局長さんにお尋ねをいたしたいと思います。それは沖縄島民に対する問題であります。ただし南方事務局というのはただ簡単な行政事務をやっておられるところのようでありますから、根本問題については総理大臣なり法務大臣にお尋ねすることにいたしまして、事務的なことについて一、二お尋ねしたいと思います。 先般沖縄の島民諸君や学生が二十五、六人集まりまして、いろいろの陳情を聞いたのであります。その中に沖縄に自分の年老いた両親を置いて日本内地に働きに来ている人が、その両親の生活費を送ろうとしても金を送ることができない。こういう訴えをしておりました。そこで沖縄島民にして日本内地におる人が、沖縄に残されております自分の肉親に金を送るようなこと、これは政府としては一体どういう取扱いになっておりますか。送られないというのは、どういう制度の建前からさように相なっておるのであるか、これについて御説明いただきたいと考えます。
○石井(通)政府委員 お答え申し上げます。沖縄と日本との間の送金問題に関しましては、貿易等については特に銀行その他の手を通じておりますが、一般の個人送金に関しましては、郵政省事務当局と琉球政府と郵便為替に関する申し合せをいたしておりまして、その申し合せによりまして、沖縄出身者で本土に居住する人は送金ができることになっております。お話はどういう事例か承知いたしませんけれども、両親に対する生活の扶助を行わなければならぬとか、あるいは病気のために毎月仕送りしなければならぬとか、条件は若干ございますけれども、そういう両親の生活が苦しくて本土におります子弟から送金することについては、道が開かれております。従って何か特殊の事情がありますれば、そういう事情はよく調査しまして、その道が開かれている方途に乗せてあげればできると存じております。
○猪俣委員 日本内地から内地へ送金するのとは非常に違った、何か特殊な条件、今あなたがちょっとおっしゃった、両親の生活が困っているかどうかとか、その他何かそういう条件がなければ送金できない。そういうことの証明をすることがなかなか困難なのじゃないか。そこで一般人には送金ができないような印象を与える取扱いをやっているのではないか。そうでなければ、自由に内地におけるがごとく送金ができるならば、現に私にそう言って訴えるはずがないと思うのです。そこでその条件を承わりたい。どういう条件があれば送金していいということになっているのか、その条件によっては、形式的には送金の道は開かれておると称しながら、実質的にはいろいろの条件を証明か何かしなければ送れないということで、実際は送金が不可能のような状態に陥っているんじゃなかろうかと考える。そこでどういう条件であれば送金ができ、どういう条件でなければ送金ができないか、また親が生活に困っているというようなことは、どういう方法で、どこへ行って証明すればそれが送れるようになるのか、内地における送金の方法とどんなところが違うのであるかを、もう少し詳細に御説明願いたい。
○石井(通)政府委員 送金の方法は郵便局にその沖縄から来ました手紙その他生活に困っておる、あるいはこういうことで送らなければならぬというような書類を出しまして申請するわけでございます。ただ外貨の関係がございますので、従来日本銀行まで参りまして相当長い期間かかっておったのでありますけれども、最近は郵政省におきましてもいろいろ大蔵省と協議いたしまして簡便な方法をとっております。その申し合せの条項を持っておりませんので、どういう条件ということを詳細に記憶いたしておりませんが、生活に困っておるというような場合には、郵便局にその申請書を出しまして、最近はどのくらいかかっておりますか郵政当局から聞いておりませんが、あるいは一週間くらいかかるかとも思っております。その期間待てばおおむね許可がおりて、それからずっと毎月送れるようになる仕組みにはなっておるのでございます。
○猪俣委員 いろいろ問題がありますけれども、大体南方連絡事務局というところは、どういう仕事をなさっておるのか、それをお聞きせぬとあなた方があまり取扱いをせぬような質問をしてもしようがないと思うので、それをお聞かせください。どういう行政事務をやっておられるのか。
○石井(通)政府委員 南方連絡事務局は、講和発効のときにアメリカから招請状が参りまして、たとえば本土から沖縄に渡航する人の証明の問題、あるいは沖縄に居住しております軍人軍属、遺家族等の援護の問題あるいはもと公務員で恩給の請求権のある人への送金の問題その他本土と南西諸島間のいろいろな懸案の問題がありまして、そういう懸案を解決し、処理していく。それからまた沖縄と本土との関係に関しましては非常に広範な問題がありまするので、たとえば教育の問題、経済、貿易の問題、そういう事務に関しましては、本土と南西諸島との連絡に関するそれぞれ関係各省の事務の連結調整並びに推進を行うということになっております。南方連絡事務局の下部組織といたしまして、那覇に南方連絡事務所を設けておりますが、この南方連絡事務所は、直接は総理大臣の指揮監督下にありますけれども、また関係各省がその那覇の事務所を指揮監督することができることになっております。現在郵政省の担当官、通産省の相当官、厚生省の担当官、労働省の担当官等が那覇の事務所に総理府事務官として勤務いたしております。各省が事務所を指揮いたしまする場合には、総理大臣に協議すべしということになっておりまするので、各省所管の事務もおおむねは了承いたしておりますが、細部の手続になりますと、関係各省が直接事務をやっておるような状況になっております。
○猪俣委員 先ほどの送金問題については、郵政省と琉球政府との申し合せなるものを一つ当法務委員会に御提出いただきたいと思います。それを見ましてまたお尋ねしたいと思うのです。実際困っておられる様子であるから。おそらく何か条件があって、その条件を充足させることが困難な状況ではないか、こう思われるのです。だからこれはそれを見ましてからまたお尋ねすることにいたします。 そこで、今お話を承わると、琉球へ内地の人が行ったり、また琉球の島民が内地に来たりする出入国についての事務もおやりになっておるようでありますが、沖縄に本籍があって内地に来ておる、そういう人間が自分の故郷へ帰るというような場合にはどういう手続をするのでございますか、その手続を一つお伺いしたいと思います。 ついでに、沖縄島民が内地へ渡航する場合にはどういう手続をしているか、その世話は一体いかなる政府機関かやっておるのであるか、そういうことについて御説明を願いたいと思います。
○石井(通)政府委員 沖縄の出身者で長く内地におる人が沖縄に渡航する場合につきましては、おおむね二通りの種類がございます。たとえば、一時的に旅行し、あるいは一時的に墓参に行くとかいうような人たち、それから沖縄に永住の目的をもって帰る人たち、そういう種類がございます。沖縄の人が一般の本土人と同じように、商用その他で行く場合におきましては、一般と何もかわりません。南方連絡事務局に、都道府県を通じまして渡航申請書を提出していただきます。南方連絡事務局は、その書類によりまして、極東軍に対して入域許可書の取りつけをやっております。入域許可書の取りつけができますれば、それを添付いたしまして、身分証明書というものを南方連絡事務局で発給いたしております。その身分証明書を持って沖縄の方に渡航するということになるわけでございます。それから……。
○猪俣委員 途中ですが、ちょっと……。今の、都道府県を通じて渡航申請書というものを出すのですね。さっきちょっと聞き取れなかったのですが、どこの機関の許可を取るとおっしゃったのですか。もう一ぺん……。
○石井(通)政府委員 アメリカの方の極東軍司令部の許可でございます。
○猪俣委員 わかりました。極東軍司令部の許可を取る、その次はどうなりますか。
○石井(通)政府委員 極東軍の許可書を取りまして、それを添付しまして、身分証明書を発給いたします。これは総理大臣の名前で出すことになっております。その身分証明書を持って渡航するわけでございます。 それから沖縄の出身者の人たちが永住の目的をもって渡航する場合には、特にその永住の目的を掲げて申請いたすのでございます。それも手続は同様でございますが、沖縄の現地におきましてもいろいろ調査いたしまして、永住が適当である者はその許可を認めます。場合によりますと、永住許可をすぐ認めませんで、ある一定期間、たとえば二カ年くらいの居住許可というような条件を付して入域許可を認めることがあるのでございますが、その許可が得られますれば、同様な身分証明書の書類を発給いたすことになっております。 それから沖縄に現在おります沖縄在住の人、いわゆる沖縄住民の人たちが本土に旅行する場合におきましては、琉球政府に渡航部というのがございまして、その渡航部を通じましてアメリカ民生部の許可を得るわけでありまして、アメリカの民生部の許可がありますれば、渡航の証明書を交付し、それを持って本土との往復をいたしておるのでございます。
○猪俣委員 今、商用あるいは永住目的で内地から沖縄に渡航する順序をお聞きいたしましたが、この渡航申請書なるものを都道府県を通じて出して、それが極東軍司令部の許可書を持って行くというような期間は、大体どのくらいかかっておりますか。
○石井(通)政府委員 従来この渡航許可を取りつけるにつきまして、たとえばこちらから渡航する人の身分引受人といいますか、引き受け側で、その本人の生活費あるいは住宅を提供するかどうかというような相当詳しい調査をしておりました関係から、従来は長いものになりますと二カ月くらいかかった例もございますが、私どもといたしましては、できるだけ渡航の手続の簡素化を絶えずアメリカ側に要望いたしておりまして、向うもだんだん研究してくれておるのであります。最近そういう身元引受人の調査を若干省略するようなことになりまして、早いものは二十日くらい、長くかかりまして現在のところ大体一カ月程度かかるのが普通の状況になっております。
○猪俣委員 そこで、司令部の許可が出て、今度は総理大臣の身分証明書が出る、その期間はどのくらいかかりますか。
○石井(通)政府委員 事務が非常に複雑しておるときは別といたしまして、許可書は南方連絡事務局に来ました場合、その日に都道府県に送付できます。若干事務が輻湊しております場合におきましても、南方連絡事務局で整備する期間というのは一、二日もかかっておりません。大体その日あるいは翌々日くらいには交付ができております。
○猪俣委員 先般の島民の訴えには、親が死んだ、子が死んだといっても、あるいは親が危篤、子が危篤といっても、その臨終に間に合わぬ、まことに何と言っていいか、形容しがたい焦燥を感ずる、何とかもう少し早く——自分の生まれ故郷へ帰るのがいけないものだろうかという訴えがありました。二カ月も三カ月もかかるのでは臨終には間に合いません。しかし今聞いてみれば、これは極東軍司令官がやっているとなれば、何とも仕方がないことでありますが、私はこういうところに外交交渉の余地があるのじゃないかと思います。いま一点だけお尋ねいたしまして、あと法務大臣の質問に切りかえまして、その質問の内容によっては局長からもまた御答弁をいただいていいのじゃないかと思います。 今度は沖縄から日本へ渡航いたします場合、渡航したいという意思で何らかの手続をしてから実際船に乗り込むまでには、一体どのくらいかかると南方事務局では御承知になっておりますか。
○石井(通)政府委員 大体一週間ないし十日くらいの程度で許可されておるように聞いております。
○猪俣委員 これはもう少しあなた方実地調査をしないといけないと思うのですが、私が訴えられたところによると、早くて三カ月、おそいのは半年かかる。そこで密航者が非常にふえております。ところがこの密航者については官憲は黙認している形であるというように私は聞いております。本国へ入るのだから密航というようなことはあり得べからざることですが、事実密航というようなことになっておる。それは許可がおりるのが非常におそい。現在においては、実際上はほとんど北極探検、南極探検に行くようにかかってしまう。かようなことに対しましても、南方事務局はもっと実情を調査し、民の声を集めまして外交交渉に移さなければならぬと思いますが、十日なんという御答弁を聞くと、私が訴えられましたこととあまりに違い過ぎる。もしそれが虚偽な訴えだとすると私も調べなければならぬ。三カ月、六カ月と十日間というのはあまりに違い過ぎるのです。それはあなた方当局者として十分御調査の上の御答弁でありますか、もう一ぺんお尋ねいたします。
○石井(通)政府委員 沖縄の住民の民生部の許可の状況に関しましては、個個のあらゆる事例を調査するということは、私どもの権限としては現地におきましてはできないのでございまして、こちらに来られます人の状況を聞き、あるいはまた渡航関係の琉球政府の担当官の説明等によりまして、おおむね一週間ないし十日ということを聞いておるのでございます。ただ私ども承知していることで、特殊の事例といたしまして、これを本土に出すかどうかということについて長期間かかっておる事例も聞いてはおります。それは特殊の事例でございまして、特別の事由のないもので三カ月も四カ月もかかっておる者が非常に多いということは、現在までこちらで聞いておりません。そういう御事情もございますれば、なおよく琉球政府の担当官から現状の説明を聞き、あるいはまたこちらに渡航した方々の状況をもよく調査して、必要であれば向う側とも折衝したいと考えております。
○世耕委員長 猪俣君にちょっと御相談いたしますが、花村法務大臣は十一時四十五分から約一時間ばかり中座いたしたいとの申し出があります。連絡事務局長に対する御質疑はなるべくあと回しにしていただいて、この際法務大臣に対する御質問を願うのが御便宜だと思いますが、お諮りいたします。
○猪俣委員 ですから私は先ほどもそれを宣告いたしました。法務大臣にお尋ねを切りかえることを申し上げましたから、法務大臣にお尋ねいたします。 法務大臣は、官制が変りまして内閣の法律顧問でなくなったので、われわれも非常に内閣全体の責任のある法律解釈を聞くことができなくなったのでありますが、しかし法律解釈につきましては、第一次的の責任がやはり閣僚の中ではあると考えますので、沖縄島民の人権問題にからみまして、その前提であります沖縄島民の国際法上、国内法上の地位についてお尋ねしたいと思うのであります。このことはなお外務大臣にも、総理大臣にもお尋ねしたいと思いますが、きょうは参議院の予算審議の都合上出席できない。そこで出席のできる日を見てなおお尋ねしたいと思いますが、法務大臣としてお答えできる範囲においてお答え願いたいと思います。沖縄島民というものは日本国民であるかどうか。これは当然日本国民であるがようであって、またしからざる面もある。そこでこの点について政府の見解を明らかにしてもらいたいと思うのであります。もし日本国民なりとするならば、これは国際法上、国内法上いかなる法的根拠に基いて断定を下されるのであるか。その法的根拠を明らかにしていただきたいと思います。これは法務大臣並びに法制局長官、両者あるいは御相談の上御答弁をいただいてもよろしいし、めいめい御答弁をいただいてもけっこうであります。私の問わんとするところは、沖縄島民が日本国民なりやいなや。日本の国籍を有するものなりやいなや。日本国民なりとするならば、その国際法上、国内法上の根拠いかん、すなわち日本の政府だけの解釈であるのか、あるいは国際的にそれが認められておるのであるか、そういうことについても、その根拠を明らかにしていただきたい。これが明らかになりませんと、その後の沖縄の人権問題についての論及が困難になりますので、この点を明らかにしていただきたいと思います。
○花村国務大臣 ただいまの御質問に対して結論を申し上げますれば、日本国民なりということに相なります。その根拠は、申し上げるまでもなく平和条約締結前におきます沖縄島民の地位は日本国民であった、これは疑いの余地は寸毫もないと申し上げてよろしいと思う。そこで平和条約締結後における見解いかんということに相なるのでございますが、これは要するに平和条約第三条において、日本国がアメリカ合衆国を施政権者とする信託統治制度のもとに置かれることに同意しているという結果といたしまして、その実施に当りましては司法も行政もはたまた立法もすべてアメリカが権利を有することにこれまた同意しておるのでございます。従いまして主権が潜在的であるというゆえんのものもまたここにあると申し上げてよろしいと思います。しかしながら領土権に限りましては、はっきりと日本領土でありますことが明瞭であることも、これまた何ら疑う余地もございません。そこで沖縄島民が日本国民なりやいなやという問題でありますが、これはただいま申し上げました諸事情の点から申しまして、やはり平和条約締結後においても日本国民であることに疑いないと申し上げてよろしいと思う。がしかし日本国民としての、すべてが内地の日本国民と同一の地位に置かれているものでありませんことは申し上げるまでもないと思います。主権が内地のごとくすべて働いておらないという点、あるいは信託統治下に置かれているという意味において、国民のそれぞれの権利に一応の制約が加えられておりますことは、当然のことであると申し上げてよろしいと思う。従いまして先ほど申しましたような結論、すなわち日本国民なりということに相なると申し上げてよろしいと思います。
○猪俣委員 私は日本国民であるという法務大臣の確信のあるところは非常に心強いのですが、その国際法上国内法上の根拠をどうもはっきりなされない。
○花村国務大臣 あなたの質問に対して私が申し上げた点でちょっと言葉の足らぬ点がありましたから、誤解を生ずることなきよう一言付加しておきたいと思うのであります。ただいま信託統治制度のもとに置かれているように多分申したと思うのですが、これは将来は置かれるであろうが、今は置かれているわけではありません。しかし司法、行政、立法に対する権能は、すべてあげてアメリカで持っているというような関係から、国民の権利の上にもその現実からいろいろと制約を受けなければならないことは当然である、こういう意味でございます。
○猪俣委員 信託統治であるということで実は驚いたのでありますが、信託統治になっておってしかも日本国民であるというようなことは説明できないことですから、それをお尋ねしたいと思っておりましたが、今御釈明があったのでやめます。ただ御説明を聞きましてもどうも確信だけで、法的根拠が明らかでない。たとえばアメリカと日本との意見の交換、あるいはイギリスと日本との交換、そういうことで国際法的に一体日本の国籍を有するものとせられているのかどうか。日本の政府だけの解釈なのか、あるいはアメリカ政府との間にはっきりした意思の交換があったのかどうか、あるいは第三国がそれを容認している何かの根拠があるのかどうか、その辺のところについてもう少し法的に御説明いただきたいと思うのでありますが、これは法制局長官でもよろしゅうございます。なぜかような質問をするかと申しますと、沖縄の漁民三十四名が漁に出まして、暴風雨のために流されまして、インドの南端に漂着いたしましたところが、インド政府はこれを領海侵犯なりとしてカルカッタの刑務所へ留置した。そこでその漁師は日本の川副という領事にその救出方を依頼したところが、どうも沖縄の島民なんというのは日本政府の力が及ばぬのだからということで放任しておいた。しからばアメリカの領事に何とかあっせんしてもらいたいといっても、アメリカの領事は沖縄は、あれはアメリカ国民ではないのだということで、無国籍の扱いをせられたということが起って参りました。それで民間団体が騒ぎ出しまして、外務省やあるいは南方連絡事務局あたりも御承知だろうと思うが、ようよう動き出して、先月の二十六日に十人だけ帰って来たが、まだあと二十四人は残っている、かような事実がありますと、一体沖縄島民は日本国民であるという自覚が政府自身にあるのかどうか、あるいはインドその他の諸外国において、これを日本国民なりとする国際法上の見解が一体統一されているのかどうか、そういうことについてわれわれは疑わざるを得ないことになるのです。それですから法的根拠が明らかになるならば、これは厳重なる外交交渉をしなければならず、国民に対して政府の怠慢はまた責められるべきものであります。その意味におきまして、あなたが断固として日本国民であるという宣言をなさるにはそれだけの根拠がなければならぬ。行政、司法、立法ことごとくアメリカに移譲いたしまして、今沖縄の国際法上の地位というものは実に信託統治にもあらず、租借地にもあらず奇々怪々な地位に置かれている。しいて求めるならばパナマ共和国のパナマ地帯の住民にほうふつとしているということでありますが、パナマ地帯の住民は四万人しかない。沖縄の島民は八十万人おります。こういうあいまいな国際法上の地位に彼らを置くということは、今までわれわれの国民として親しんで参りました内地の人としても忍ぶべからざることであります。さような意味におきまして、いかなる法的根拠があって日本国民とせられるのであるか、それをいま少しく明確なる根拠をお示し願いたいと存じます。
○花村国務大臣 先ほども申し上げましたように、平和条約発効前においては日本国民であることに対して何らの疑いのありませんことは、御承知であろうと思うのですが、沖縄もやはり日本国の領土であり、しかも占領前においては日本の主権もすべて及んでおったのでありまするけれども、それが敗戦の結果占領せられまして、そうしてすべての統治権の働きというものが押えられておりましたところ、御承知のように平和条約がついに成り立ったのでありまするが、その平和条約第三条において、司法、立法、行政権はアメリカの方でこれを一切行使するという権能を持つことに相なったのでありまするけれども、しかし領土権は依然としてやはり以前と変ったことがないのでありまして、従来からずっと日本国民であったのでありまするから、別にそれが前にあって、一たん失って、またその資格を得たというのじゃない、昔も今もずっと一貫して日本国籍を持ち、日本国民として今日に及んでおるわけですから、従ってその点は何ら疑いはないと思うのでありまするが、ただその司法、立法、行政等に関する国権がアメリカの手へ移っているという意味において、国民が持つ権利に対しても、それぞれの面に制約を受けなければならないという結果に相なりますることも、これまた当然であろうと思うのでありまするが、しかしそういう国権からくる制約を受けたにしても、それが日本人でないとは言えないのでありまするから、従って法律的の根拠も、昔も今もずっと日本人できておるわけですから、その点ははっきりしておるのじゃなかろうか、こう私どもは信じておるわけであります。
○猪俣委員 あなたのおっしゃるように、昔も今も日本人としてちっとも遜色ない状態であるなら、この質問はいたしません。沖縄島民というものは、まるっきり外国人扱いにせられておるがゆえに、しかもその扱いにするのはアメリカ政府なるがゆえに、そこでアメリカ政府との間に国際法上一体いかなる了解があり、どういう根拠があるかということをあなたにお尋ねしておる。それに対して、昔からあるのだから今もあるのだというような御答弁では、どうも承服いたしかねます。私がかわって申し上げる必要はないことであるけれども、御指摘のこの平和条約第三条ができました後、サンフランシスコの会議に当時全権として出ておりましたダレスが、ステートメントを発表し、その中に、沖縄には日本の残余主権があるということを発表しております。そこで結局政府は、このダレスの、沖縄に日本の残余主権があるということを根拠になさっておるのじゃないかと思われまするので、そこでこの残余主権、潜在主権というものがいかなるものであるか。これは当国会におきまして平和条約審議の際にも問題になった。行政、司法、立法ことごとく他に移譲して何が残るのだ、何も残るものはないじゃないかという論議がありました。これは当時改進党の芦田均氏と吉田総理大臣との一騎打ちの質問戦があったことは、御記憶に新たなことだと思う。そこでこの残余主権の内容というものがあいまいである。これを日本政府は領土権と解釈することから、沖縄島民は日本の国籍があるのだという解釈になっているのかとも思われますが、私は現在この条約によって行政、司法、立法というものをことごとくアメリカに移譲した以上は、アメリカ政府のこれに対する見解というものが、沖縄島民は日本国民であるという見解が明らかになりませんと、国際法上沖縄島民の人権を主張するに困難を感ずる。それでこの質問をいたしておるのであります。沖縄島民の人権の保障を求むる根拠といたしまして、沖縄島民の施政権者であるアメリカに突っ込むところの根拠はどこにあるか、それを私はお尋ねしておるのであります。前からあったのだから今もあるのだというような答弁では、アメリカに突っ込めません。歴代政府の今日まで沖縄島民に対する態度を見ますと、一体へそを固めておらぬ。わけのわからぬ浮き腰でもってアメリカに対しておったことは明らかである。されば沖縄島民は今実に混乱の極度に達しております。アメリカ政府に交渉するに際して、沖縄島民は、かくかくの根拠で日本の国籍があるんじゃないかということを主張しなければならぬ。その根拠があるのかないのか、それを私はお尋ねしているのです。今ちょうど琉球の比嘉主席がアメリカに交渉の最中でもありますがゆえに、国会における国民代表の意思、政府の意思が合致いたしまして、この反響がアメリカに及ばなければならない。そういう意味におきまして、緊急の必要ありとして質問に立っております。これは総理大臣が当委員会に答弁することによってアメリカにこれを響かさねばならないと存じますが、きょうはおいでにならぬのでありますけれども、沖縄島民が毎日々々私どものところには陳情に参っております。何とかして救ってもらいたい。委員会の問題にしていただくだけでも、島民は蘇生の思いをしているのだ。忘れられてしまったのじゃないかということが島民の心配であるという切々たる訴えがされている。そこで私はこの後にお尋ねする幾多の沖縄島民の人権の侵害に対しまして、いかなる根拠をもって交渉に当られるかという、その根拠をお尋ねするつもりで質問している。ですから、ただ今まで通り、変りがないのだというような答弁ではいけない。立法、司法、行政、ことごとくアメリカ政府に譲り渡しました今日においても、なおアメリカ側でも、沖縄島民は日本の国民である。日本国民であるといたしますならば、これは国家原理といたしましても、国民の保護権があるはずである。国民の保護権のない国家というものはありません。沖縄島民が日本国民であるならば、日本国においては沖縄島民を保護する権限があるはずである。その権限がないならば、それは独立国ではありません。国家の国民保護権をわれわれは発動しなければならぬが、それについては、アメリカ側がやはり日本国民であることを認めた根拠がなければならぬ。それをあなた方に私はお尋ねしているのであります。ないならないでよいのです。あるならある、その根拠をお示し願いたい。なおお答えがないならば、質問者が答弁するようになるのでありますが、一九五一年十二月十日、日本の外務次官がアメリカ国務省に対して、沖縄島民は日本国民と理解してよろしいかという要請をしております。確認を求めておる。それに対してアメリカの国務省から回答が来ておるはずであります。そういうことをお調べになっているかどうか。そういうことがあるならば、その往復文書が公表せられますならば一つの根拠もできます。なおこのことはフィリピンの裁判所においてフィリピンの判決文の中に当時の日本政府とアメリカ国務省の往復文書が参考として挿入せられておりまして、これには全文が載っております。これには明らかにアメリカ政府は、沖縄島民は日本の国民であることを認めているはずである。それをなぜ堂々と往復文書を発表して沖縄島民に安心させないのか。もとから日本国民であるから、今でも日本国民だというような消極的な態度にあらずして、アメリカ政府が認めているという積極的な根拠があるはずであります。さようなことについての御研究があったのかないのか、一つ御答弁いただきたい。
○高辻政府委員 私法制局でございますので、ただいまのアメリカに対する照会に対して先方から何か回答があったかということにつきまして正面からお答えすることはできないわけでございますが、ただ沖縄の住民が日本国籍を保有するかどうかということにつきましては、先ほど来法務大臣が仰せになりましたことで尽きておるとは存じますけれども、なお御疑問があるようでございますので、一応補足的に申し上げさしていただきたいと思います。ただいまも御指摘になりましたように、平和条約の第二条と第三条を比較してみますればきわめて明らかなように、片方では一定の地域に対する権利、権原、請求権一切を放棄しておりますが、第三条の沖縄等に関する部分につきましては、そういう文言は全然ございません。ただそこでは信託統治の制度がしかれるまではアメリカ合衆国が行政、立法、司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するということに相なっております。そこから見ますればわかりますように、まさに御指摘のように、そこには残余主権があるというふうに説明をされております。それは説明でありますが、その内容いかんという御質問もございましたので、繰り返して申し上げますが、そこにおる住民、それらは日本国籍を失ってはおらない。それからまたなるほどアメリカ合衆国は沖縄の領域について施政の全権は握っておるけれども、その領域についてこれを処分する権能は有しておらない。ただ日本が同意しておる面が一面ございます。これは申し上げるまでもないと思いますが、信託統治制度のもとに置くということでございますが、それが一つございます。それからもう一つは、もしもアメリカ合衆国が沖縄に対する施政権を放棄する場合があると仮定いたします。これも国際法上いろいろ問題がございましょうが、あたかも奄美群島に対して日本とアメリカ合衆国との間に協定が遂げられたごときでありますが、ああいうふうに沖縄について施政権を放棄いたしたとしますれば、その場合の始末としての協定が起り得ることは可能であるにいたしましても、理論上は当然に日本の施政権がそこに及ぶというふうに考えるわけであります。さようなふうに沖縄の領域及び住民について施政権を持つということと、その他の区域について権利、権原、請求権を放棄したというのとは、しかく明瞭に相違があるわけでございまして、その相違から先ほどお話のような、住民の国籍問題も異なってくる、つまり日本の国籍はそのままに保有しているということになるのだと了解しております。さしあたりそれだけ申し上げます。何か御疑問がありましたら……。
○猪俣委員 どうも政府当局は私の質問の本旨を、あれだけ説明しているのにはっきりさせない。私の質問のやり方もあるいはまずいのかもしれませんが、今沖縄に人権侵害問題が土地取り上げ、人民党弾圧事件等においてやかましく言われておる。そこでそういうことについてアメリカの政府に対して抗議をしなければならぬが、それはわが国家の国民保護権、これは自然法的な一つの国家の権限だと思います。それを根拠にして抗議をしなければならぬけれども、沖縄島民が日本国民であることについて政府同士間に何らかの意思表示がお互いにかわされておるようなこと、あるいは何か協定というようなこと、そういう法的根拠があるならば、貴政府もこの通り沖縄島民は日本国民と認めておるじゃないか、それならば日本政府として国民保護権に基いて沖縄に対してこういうことをしてもらいたいということを要求するのは当然であるということで、強硬に突っ込んでいかれると思うのです。そこで一体アメリカなりあるいはインドなりイギリスなりフランスなりが、この沖縄島民が日本国民であるということを国際法上認めているだろうか。立法、司法、行政ことごとくアメリカに渡し、しかも信託統治にすることに同意しておる今日、昔からあったから当然だということでは済まされない。そうなったけれども、沖縄島民は結局日本国家の保護する責任ある島民だということを国際上において認められておるのだろうかということのお尋ねです。アメリカが認めておとるということになるならば、これがわれわれがアメリカに交渉する最も足がかりであります。日本国民だとあなた方もこの通りちゃんと了解しておるじゃないかと言うて突っ込んでいかれる。ただわが政府の独断的解釈にあらずして、アメリカを含んだところの国際的な解釈にそれがなって、沖縄島民の地位というものがあるのかどうか、それを私はお尋ねしておるのです。その意味において御答弁いただきたい、こういう意味なんです。
○花村国務大臣 御質問の趣旨はよくわかり、答弁としてもはっきりとお答えをしておるように思うのでありますが、日本国民たるの地位はアメリカなりあるいは国際法上認めるか認めないかということによってきまるべきものじゃない。日本国の主権の及んでおります領土内に住んでおります者は、何人が認める認めないにかかわらず、日本国民でありますことはこれは疑いのない事実でございます。こういう見地から従来から沖縄島民も日本人であるということを申し上げておるのでありますが、ただしかし日本人ではありますが、内地の日本人とすべてにおいて同じかと言えば、それはただいま申し上げましたように、司法、立法、行政権等がアメリカの手に移って行使されておるという特殊事情から考えまして、国民としてその地位においてもしばしばこれに基く制約が伴ってくるであろうことは、これは当然であると申し上げてよろしいと思う。そういう制約が加わっておりますから、従って内地の国民と違うことはもちろんでありますが、しかしその性格においては同じものであると申し上げてよろしいと思います。日本国民はどこまで行っても日本国民です。そこで日本国民に対して、日本国政府が保護権を持っておりますることも当然であります。しかしその保護権の行使については、アメリカで持っております司法、立法、行政の権利行使に相反せざる程度においては保護権の行使ができると申し上げていいと思いますが、今猪俣君の言われる保護権というのは、一体同を意味するのか、どういう保護に対する権利であるのか、抽象的の言葉を使われて、保護権の性格がきわめてぼやけておりまするから、はっきりは申せませんけれども、しかし、日本国民である以上、日本国政府が国民を保護するという権利を持っておることは、当然であると申し上げていいのではありまするけれども、ただいま申し上げましたように、アメリカとの関係においては制約があるから、従ってその制約に反せざる限度においては保護権の実施もできると申し上げていいと思います。あるいは、司法、立法、行政権をアメリカの方に移譲してしまえば、日本国の領土と言えないじゃないかというような議論ももちろん出てこようと思います。出てもきております。しかし、これは、沖縄に対する主権を日本が持っておらないわけではない、持ってはおるけれども、しかしその権利を、平和条約によって、アメリカに司法、立法、行政の権利行使を認めておるがゆえに、持ってはおるけれども、その権利を十分に行使ができないということなんです。でありまするから、主権は持っておるが、その主権はすべてが国内のように働いていく主権じゃないから、それは潜在している主権である。持っておるが、それは活動せずに眠っている主権であるというような言葉を使われるゆえんもそこにあると思う。主権は持っておるが、しかしその主権は使えないということなんであります。でありまするから、日本領土であるという点においては疑いの余地はない、こう考えておるのであります。 かような論点を総合して結論を申し上げますれば、もちろん日本国民であり、日本国がその日本国民を保護していくべきは当然であるが、しかし、アメリカで持っておる施政権者としての権力行使、立法、行政、司法等に関するその権力行使に支障を来たすとか、あるいは相反せざる限度においては、日本国政府といえども沖縄の日本国民に対して保護の手を伸ばしてやることは差しつかえがない、こう論断してよろしいと思います。
○猪俣委員 あなたは時間の都合があるそうですから、私はこれ以上言いませんが、今、国家の国民保護権というのは何だか抽象的のことでわからないとおっしゃったから、それだけ私の方から逆に説明いたします。具体的に申し上げますと、私はそれを条約第三条改訂の前提としておる。これは国際連合の信託統治に関する非自治地域の島民の関する原則、とにかく統治する国の福利にあらずして、島民自身の利福を第一として統治しなければならぬという大原則がある。これは自然法の一つの現われだと思います。そういう大原則がある。そこで私どもはサンフランシスコ条約第三条によって行政、立法、司法の三権を移譲したけれども、しかし沖縄の島民に対してどんなことをしてもよいという条件ではないはずです。条約に一々制限は書いておりませんが、自然法の原則に基いて沖縄島民の権利保障、利福というものを第一として善政をやらなければならない。善良なる管理者の注意をもって管理してもらうことを移譲したのだ、日本国が独立国であり、国民保護権がある以上、沖縄に対して、煮て食っても焼いて食っても勝手だという移譲の仕方ではないはずだ、善良な管理者の注意をもって施政してくれという条件で移譲したはずであります。そうすると、今おびただしくわれわれが訴えられます沖縄島民に対する人権侵害問題及びこれの救済の道がないような問題については、アメリカ政府が打開せざれば、われわれが彼らに信託したサンフランシスコ条約第三条のこの真意にそむいているわけです。しかのみならず、第三条を見るならば、国連の信託統治によるということが前提となっている。今のような統治は暫定期間であるはずなのが、先般アメリカ政府の発表によれば、もう信託統治にするつもりはないということである。そうすると、これは永久に今のような状態を続けんとする意思が明らかになってくる。ここに事情変更の原則が現われてくる。わが国家は、国民保護権に基いて、善良なる管理者の注意をもって施政をやるべきことをアメリカに要求する権利があるとともに、サンフランシスコ条約の第三条締結当時の事情と事情が変更してきている。ですから、第三条を改訂する根拠がそこに出るのじゃなかろうかということなんです。これは総括的に言うならば、日本国家の国民保護権がその根底になっている。しかも、国民保護権というものは自然法的な事実であって、何ら成文法があるわけじゃない。そういう自然法的な保護権利に基きましてこの改訂ができるのじゃなかろうか。そこで、これは法制局長官にお尋ねいたしますが、今のような事情変更の原則、及びアメリカが善良なる管理者の注意をもって施政せざる場合において、国民保護権の発動といたしましてこの条約変更を求むる権限が日本に発生するのじゃなかろうか。そうして、同条約の第二十二条に基きまして、国際司法裁判所にこれを訴える根拠があるのじゃなかろうかと思うが、法制局長官の御意見を承わりたい。なお、その前に、このサンフランシスコ条約第二十二条に国際司法裁判所に訴える条項がありますが、今私が申しましたような善良なる管理者の注意を怠り、沖縄島民をしてほとんど飢餓寸前に追い込んでいるかようなアメリカの施政状況及び信託統治、今のような、租借地にもあらず、信託地にもあらず、パナマ地帯の住民と同じような統治を続けようとすることに対しまして、事情変更の原則、国民保護権の根拠に立って、二十二条によって国際司法裁判所に訴える権限があると私は思いますが、法制局の見解いかん。
○世耕委員長 猪俣君にちょっと御相談いたしますが、あなたの御質問は非常に重要な人権問題だと思います。そこで、政府側にももう少し準備してきていただいて、そうして継続してもう少し掘り下げて本問題を解決することが非常に大切なように委員長は感じたのでございます。なお、本件に関しましては、細田君、椎名君、神近君からも御発言がございますし、そういう意味で御質問を御進行願いたいのと、もう少し政府に準備期間をお与え下さることが、かえってあなたの御質問が徹底なさるのではないかと考えておりますから、御参考までに申し上げておきます。
○猪俣委員 委員長のその御趣旨非常に感謝するのでありますが、これは徹底的に御調査願いたい。なお私は今から一週間くらい前に、私の質問要綱というものをわざわざプリントにいたしまして、政府に出してあるはずです。ですから、突然今質問したわけじゃないのであります。しかし事は重要でありますから、きょうの私の質問の趣旨というものをおわかり下さったと思いまするから、あるいは次会にでももう少し法的な根拠——私は何も法務大臣とけんかするつもりでも何でもない。同じ日本国民であることには違いはないのだから……。アメリカに対して突っ込むために、法的根拠があるはずです。これは法務大臣で御無理であれば外務大臣にお聞きしなければいけないと思いますから、これは外務大臣にいずれお聞きしますが、アメリカも明らかに沖縄島民は日本国籍であるということを認めておるはずです。私はそれを明らかにしてもらいたいというのが根拠であります。なお今委員長の要望もありますので簡単にやりますが、このサンフランシスコ条約第二十二条が、私の今申しました国際司法裁判所に提訴する法的根拠になるかどうか、これも法制局として一つ御検討願いたい。あまり法的にむちゃなことなら、私も乱暴を言うても始まらぬと思う。御研究いただいて、何らかの足がかりがあるならば、私は政府にそれを断行する意思がありやいなや御質問したい。これは総理大臣なり外務大臣にお尋ねするより仕方がないと思う。そういうお含みを願いたい。 そこで、時間がございませんが、せっかく刑事局長その他警察関係の方も来ておりますので、一点だけちょっと、これも場合によれば宿題になるかもしれませんが、問題だけあげておきます。それは人権じゅうりん問題に関することですが、婦人公論の本月号に大論文として、「私は暴力で日本女子大を追われた」という東佐誉子という方の論文が載っておる。そこでこれを見ますると、日本女子大学内部の学閥の争いから、女子大学の先生で東という人を精神病院の院長と結託して、精神病者として無理に五十日間監禁したという疑いがある。これが事実だといたしますと、容易ならざる人権侵害だと思うのであります。この精神病者とされた東佐誉子という方は、日本女子大学の古い卒業生で、先生をやっておった方です。相当のインテリ階級であります。この人を精神病者として病院へぶち込んだという。この点について、法務省でもしまだ御調査がないのだとすれば、これは婦人公論の今月号に詳しく出ておりますので、法務省及び警察関係においてもこのいきさつを御調査願いたい。実は私もある特別の事情から、ある人が、自分の息子がどうも妙な宗教にこっておって困るというので、ある暴力団と結託して、精神病院の院長とも結託して、その息子を精神病院にぶち込もうとして、これは未遂に終りましたが、そういうことを聞いてから一カ月後に——これは今から一カ月前の話ですが、どうも世の中にはそういうことが行われているのじゃないかということがわかってきた。ことにこの婦人公論に出ておりまする東佐誉子という人は日本女子大学内の一室を占拠して、そこに研究論文なんかを置いて、学校ではそこをどいてくれと言うてもなかなかどかなかったらしい。そこに派閥関係が入って参りましたが、この人を精神病院にぶち込むとともに、その部屋をすっかり片づけて、この人の研究論文もみなどこへやったかわけがわからないようにしてしまって、部屋をきれいに片づけてしまった。もし精神病院と結託してこういうことが利用されると、家屋の明け渡しなども簡単にできる。なお場合によると、極端に言えば反対党をみな精神病者にして、ぶち込むようなことが起ってくる。(笑声)これはゆゆしい人権の問題だと思う。ここに人権擁護局長がおられますが、一体かようなことをごらんになったかどうかわからないが、人権擁護局長としては、これはぼやぼやしている問題じゃない。徹底的に調査していただきたい。これは法務大臣及び人権擁護局長、それから国警長官もお見えになっておりますので申し上げますが、この論文を読んでみますと、いかに東という人が頭脳明晰な人であるかわかる、実にはっきりした長い論文を書いておりまして、切々として訴えている。こんなことは当代にあるまじきことであって、当法務委員会の権威にかけても追及しなければならぬ問題だと思いますので、これは法務大臣に、この次までにぜひ御答弁願うよう特にお願い申し上げておきます。なお御意見があればこの際承わりたい。
○花村国務大臣 法務省としては、ただいまの問題に対しては調査をしておらぬようでありまするが、お説ごもっともでありまするので、十分に調査をしてみたいと思います。
○世耕委員長 大臣お急ぎのようですが、この際細田綱吉君並びに志賀義雄君から、法務大臣に何かお聞き取りを願っておきたいことがあるようでありますから、いま少し……。
○志賀(義)委員 法務大臣、帰られてようございます。法務大臣にはこの次に聞くことにいたします。先ほど猪俣委員から提出された沖縄の問題についてでありますが、それはこの次政府の方で十分に研究してこられてから、もっと問題を掘り下げてみたいと思います。それをはっきりこの次まで準備してきていただくために、出入国管理局の局長が来ておられますからちょっと伺いますが、出入国管理令の第一章総則第二条に、「この政令において、左の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。」その一に、「本邦」というので外国人に対していうのですが、本邦は「本州、北海道、四国及び九州並びにこれらに附属する島で法務省令で定めるものをいう。」というふうになっておりますが、沖縄はこの「附属する島」の中に明示されて、法務省令で出されているものかどうか、その点について御答弁願いたいと思います。
○内田政府委員 ただいまの御質問にお答え申し上げます。出入国管理令施行規則というのが出ておりまして、その第一条に列挙してございますが、その中には沖縄は入っておりません。
○志賀(義)委員 入っていないとすると、この主権の関係の問題で、先ほど来猪俣委員は、沖縄に対する日本の主権は存在すると言われ、あるいはよく眠れる主権と言われますが、それは眠っているために除外されたのですか、主権がないということを認めて除外されたのですか、その点について……。
○内田政府委員 この出入国管理令におきまして、われわれが日本と申しておりますのは、われわれが出入国管理令を実際実行し得る区域を指していっているつもりでございますので、たとえば沖縄に密入国があったといたしましても、それをわれわれが日本の出入国管理令でどうこうすることはできませんので、そういう意味で、われわれはこの出入国管理令の施行される範囲の外に置いているわけでございます。しかし一言つけ加えますが、先ほど来の猪俣委員の御質問とも関連いたしますが、逆に沖縄の人が日本へ入って参ります場合のことにつきましては、われわれは日本人として扱っております。
○志賀(義)委員 そうしますと、先ほど猪俣委員の質問にもございましたが、日本人として取り扱っているのに、十日ぐらいで片づくと言われたが、それが半年も片づかない場合がある。これは一体どういう理由によるのですか。
○内田政府委員 その問題につきましては、先ほど来南方連絡事務局長がお答えになっておったと思いますが、われわれといたしまして承知しておりますことは、沖縄から出国いたしますときに、あそこに行政権を行使しております者から出国の許可書を取りつけまして、これは日本人の場合はもちろんでありますが、琉球人の場合にも南方連絡事務局から日本人であるという確認書をもらいまして、それで日本へ入って参ります。われわれ出入国管理令を行使しております者といたしましては、つまりその場合に入国の査証等は一切要らないわけであります。向うの出港許可書と日本人であるという確認書を持って参りますならば、われわれはこれを日本人が日本へ入って参りますと同様に取り扱っておる、こういうことを申し上げておるわけでございまして、その場合に、少くともわれわれの方に関します限り、そのために時日を要するというような実情は何らございません。
○志賀(義)委員 何ら時日は要しないと言われるが、事実は猪俣委員も言われた通りであります。何か問題があるから、そういう点はこの次に問題にするときまでに十分調べておいていただきたい。私が特にこの問題を申しますのは、ポツダム宣言の第八条に「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国竝ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」とあり、ここに「主権」という文句がある。今の出入国管理令の「本邦」というのは、これに関連のある規定であろうと思うのであります。そういう点で、ただいまの入国管理局長の御答弁はまだ首肯しがたいものがあります。こういう点についても十分御研究、御調査の上、この次この法務委員会において問題を取り上げるときにもう少しはっきりした答弁をいただきたい。事実そういうことはないと言われるけれども、沖縄の人はこちらへ来るのに半年もかかっておる。これはやはりそういうところであいまいな解釈をあなた方がとっておられる、何も遠慮しなくていいところヘアメリカに対して遠慮する、そういうようなところからも問題が生まれてくるのかどうか、そういう点もあわせて研究の上、この次の法務委員会に臨まれることを希望しておきます。どうもただいまの御答弁では首肯しかねます。
○世耕委員長 次に神近市子君。
○神近委員 私は、戸田人権擁護局長と、それから斎藤長官に、婦人と子供の人権擁護のことで少しお尋ねいたしたいと思います。 きのうの毎日新聞に、上野の人身売買の状態について、富永千枝子という人が奔走してあそこの実態を探ったという記事が出ております。今人権がどんなに侵害されておるかということは、いろいろの事例によってもはっきりしておるものと考えますけれども、その中でも婦人と子供とが最も粗末に扱われえおるという状態が出てきております。上野と新宿では、地方から出てくる婦人と子供たちがつかまるということは、もうかねてうわさにはさんざん上っていたのですが、きのうの記事を見まして、上野の状態がややわかるような感じがいたします。人数は決して一日に何十人というような数ではないかもしれませんが、日によると二十人くらいがあそこに出てきてつかまるというようなことがいわれております。そうしてこれは一日だけでなくて、季節がよければずっと毎日継続的に出てきておりますから、これは相当の数になっておるわけでございます。私はこの間米沢市に参りまして、そこで二人の家出娘の行方がどうしてもわからないということをお母さんに訴えられたのであります。警視庁にもお願いし、いろいろ手を尽して尋ねているけれども、もう二カ月の間どうしても二人の女の子供の行方がわからない。大体東京だろうということであったのですが、やはり同じような状態で、人身売買をちっとも恥としないであそこに張っている人たちにつかまっておるのではないかということが想像されるのでございます。これはあとで名前をお出しにいたしましてできるだけ御調査を願いたいと考えておりますけれども、一体人権擁護局はああいう実態があるということを御存じになっても何にもできないのであるか。そして一体人権擁護という名前にふさわしい仕事としてどういう種類のことをなさるのか。よその局からの通告によってお動き出しになるのか。あるいは自発的に何かその弊風をためようという動きがおできになるのか、あるいはなさっておるのか。それからその所管の法律は、大体どういう法律によってやっていらっしゃるのか、これらの点を承わりたいと存じます。
○戸田政府委員 昨日の毎日新聞の記事は拝見いたしました。こういう実態がなお今日横行しておるということで非常に驚いたのであります。従来もそうしたようなことが往々にしてあるということを私は聞いております。ただ私どもの方の仕事の権限と申しますか、取締り面におきましては権限を持っておりませんので、従来人権擁護局で人身売買等を取り扱っておりますやり方は、主として申告によってやっております。なお新聞等に出ました場合、情報を得ました場合に、職権をもって事件を取り上げる場合もございまして、昨年において人権擁護局で人身売買を処理しました件数は二百二十五件でございました。われわれの方も、もっと機構、予算等がございますと、こうした全国的な実態を十分に調査いたすと大へんよいと思うのでありますが、まだそこまで整備されておりませんので、今までのところは、申告及び情報によって得た場合に事件を取り上げて処理いたしておるような次第でございます。
○神近委員 それでこういう問題が起りましたときに裁判で処罰されますね。そういう場合、量刑のようなことでこれは適当であるかとか、あるいはどのくらいのものだとかいうような相談をもお受けになるようなことは、局内あるいは省内においてあるのでしょうか。
○戸田政府委員 裁判所が判決いたしました量刑等につきましては、人権擁護局としては、これを軽いとか重いとか批判する立場にございませんので、さようなことはいたしません。
○神近委員 批判はなさらなくても、問題について意見をお聞かれになることはないのですか。たとえば人権じゅうりんのようなことが行われて、それについてこういう問題があるけれど、どういうように考えるかという、協議というか、参考というのか、そういうことを聞かれることもないのでございますね。
○戸田政府委員 従来さようにいたしておりません。
○神近委員 人権擁護局の予算が大へん少いということは、この前も承わっております。それで二百何十件お扱いになったというのですが、一カ月に二百人、三百人とあそこでつかまって、どこかに売られていった実例があるんですよ。お金がないから調査もできないし、権限も限られているというのでは、積極的には何にも動かないのだというような印象を私どもは受けるのですけれど、そういうお感じを局内でお待ちになることはないのでしょうか。
○戸田政府委員 人権擁護局で、こういう問題に対して予算が少いからできないんだ、そういう投げやりなことは決してございません。ただ実際問題として全国的にこういう問題を調べることについては、非常な経費と努力を必要といたすのでございますが、従来われわれの方では、自分の方で知り得た可能な範囲内において、その事件を適切に処理するというところで、実はせい一ぱいでございます。しかし昨日の新聞等を見まして、実はあれほどひどいというふうにも考えておらなかったのでございますが。私の方でもこれらの点について、もう少し積極的に実態調査等もしなければならないのじゃないかと考えております。
○神近委員 全国的にお出かけになるとか、調査なさるとかいうことは、なかなかすぐに行えないとしましても、上野なんていうのは、いわば役所の隣みたいなところでございますし、あそこで警察と何か連絡をお持ちになって警察に忠告するとか、警察と一緒になって、一日に一人の方でいいから、あそこがどういう状態か、そして家出人がどういう状態であそこにたたずんだり俳回したりしているか、その人たちを実際につかまえて聞いてやるくらいのこともおできにならないのでしょうか。
○戸田政府委員 私の説明が十分でないからと存じますが、少し誤解があるようでございます。私の方でもこうした問題に非常に努力しておりまして、従来も啓蒙活動等においてこの問題を重視して参ったのであります。昨年も上野付近の人権擁護委員が中心になりまして、各関係者の座談会を開いて、こうした問題の防止等にも努めて参ったのでありますが、何せ常時そうした人たちを配置できるかどうかということになりますと——決してこれは投げやりとかいうような意味ではございませんが、人権擁護局で今調査にかかっております関係者だけで四名、各法務局も、東京に例をとりますと、東京法務局で調査のできるのがこれも四、五名で、毎日参ります申告のある事件すらなかなか十分に処理ができません。考え方としては、さらにさらにそういう方面へどんどん進出して十分に調査し、処理することができれば非常に理想的だと考えておりますが、何せ非常に手薄でありまして、本来の、今現にきております事件以上にさらにやることには、非常な困難を感じております。しかし最近この問題が世上非常に問題になっておりますので、私の方もできる限り人をさいて、その方面にも実態調査をいたしまして適切な処理をいたしたいと考えております。
○神近委員 非常に手薄でおありになるということ、それから御調査もいいかげんなものだというような印象を受けた事件が別にございます。これは今理事の方からこの次に回そうということでございましたから、きょうお尋ねしようと思いましたが次会に譲ります。御調査になるのなら、宮崎事務官の名前があがっておりました。その状態について私どもちょっと考えさせられることがあったのですけれども、それは次会に譲ります。私は全国であれほどひどい誘拐が行われる所はないだろうと考えております。ぜひ一つ重点的に、調査というよりも、調査と並行いたしまして、どうしたらばこれを善導することができるか、この点考えていただきたいと思います。 次にあそこの状態につきまして、斎藤長官にお伺いいたします。あそこの駅前交番というところには何人くらいの警官が常駐しているのでございますか。
○斎藤(昇)政府委員 御指摘のように上野、新宿等はいわゆる地方から家出をしてきた若い人たちが集まる所であります。従って当該受け持ちの署といたしましては、そういう点に相当重点を置いてやっておるのであります。あの近辺の受け持ちの警察官の仕事の過半は、それであろうと思っておるのでありますが、ただいまお尋ねのように、そういった方に何人くらい専従をしておるかどうかという数字は、私ただいま持っておりません。従いまして、警視庁にその点をよく調べまして後日お答えをいたしたいと思います。 なおまた昨日の毎日新聞の記事はまだ読んでおりませんが、これはどうしても読んでみなければならぬと思いますから、これを読みまして、警視庁が現に実際どういうことをやっておるか、さらにその記事を読んで、こういうことをやる必要があるじゃないか、やれるかどうかというようなことを十分研究をいたしまして、その結果を御報告いたすのが適当であろうかと、かように感じております。
○神近委員 私はもっとまとめて警察のお考ええを伺いたかったわけですけれど、ごらんにならなかったといえば仕方がないですけれど、あの記事に出ております以外に、御本人——富永千枝子という方ですが、御本人のお話によりますと、そのとき非常に危険であったということ、何しろ男の記者が二人護衛格について行ったんですけれど、相手は非常に多人数組んでいるらしくて、非常に身の危険を感じた。それで警察にそれを持っていきましても取り上げなかったという事実があるのです。なぜ取り上げなかったかというと、われわれは駅内の秩序を保つためにここに来ているので、そういう事件を起されては困る。そこで何か人買いたち、あるいはオオカミという表現がしてございますけれども、その人たちとの間にトラブルを起し、そうしてそこらが乱れるということは困るという意味にとれます。その次にはもうほんとうに危険を感じてかけ込むというところまであったのですけれども、あそこにすわってただ見ているだけならば何の役にも立たないではないか。あそこで監視をしていて下さるのは、そういう危険な事件が起ったときこれを守って下さるというのが本来の役割じゃないか。ただたばこをふかしてゆっくりと休憩をしていて、そしてそれを訴えてもお取り上げにならなかったということでは、一体何のためにああいうところですわっているのですか。オオカミたちが目の前をぞろぞろ通るときに緊張を失った形でそこへ腰かけているということは私は不当だと考えます。 それから委員長にお願いしますけれども、子供、未成年者あるいは若い婦人たちの実態をあそこまで勇気を出して調べたといったところで、実態がよくわからぬと思うのです。その意味で一度法務委員会でも参考人をお呼びいただいてみんなに聞かせていただいたらと思うのですが……。
○世耕委員長 お答えいたします。理事諸君と御協議いたしまして善処いたしたいと思います。
○神近委員 警察の方にはこの次もいろいろお尋ねしたいことがございますけれども、今全国的に問題になっている鹿児島の松元荘事件、あの子供たちの処理でございます。戸田局長にもあとで御意見を伺いたいのですけれども、あれは家庭裁判所で扱いましたもので、今汚職事件の部分は裁判が進行中なのでございます。これがほんとうであるならば奇怪なことが出ている。松元荘の家宅捜索をいたしまして、そして相当の証拠物件がふろしき包みになって持っていかれたのでございます。それをまだ裁判の進行中に、これは要らなくなったからといって松元荘にわざわざお持ちになってお返しになったという事件が起っております。私ども家宅捜索を受けて持っていかれたものがなかなか返らない。あるいは永久に返らないということさえございますのに、それをまだ事件が進行中で、別に貯金の通帳が入っていたとかいうことではないのにわざわざそれを持っていって返しておあげになるということは常住あることでしょうか。異例のことでしょうか。ちょっとそれを伺っておきたいと思います。
○斎藤(昇)政府委員 警察といたしまして犯罪関係で資料を押収いたしました場合に、その資料の中から犯罪となるものがあるということを発見いたしましたならば、押収した目的が他の犯罪でありましても別の犯罪が成立するという資料がありました場合には、その犯罪を捜査するのは当然でございます。今松元事件と言われておりまするこの児童の事件を警察が捜査いたしましてから後にそういうことがあったようには聞いておりませんが、調べてみますると、制度の変る自治体警察の時代に、民事事件の関係で松元旅館から何か資料を取り寄せたことがあるそうでございます。それでそのまま民事事件だというので資料を返したということがあると聞いておりますが、児童の淫行勧誘事件として八月以降——この事件の調査にかかりましてから以降は、ただいまおっしゃいましたような事柄はないように報告を受けております。
○神近委員 今まだ井本局長が帰っておいでにならないので私どもは確かめることができませんけれども、鹿児島は人身売買が非常にたくさんあるのです。この間御報告になりましたように、昨年八千何百人かの子供の人身売買が行われております。そのうち九州が千三百人で、さらに鹿児島がそのうち何人というふうには出ていませんけれども、その千三百何十人のうちで鹿児島は特殊な土地の事情で相当多かったろうということが想像される。そのうち何とかいう漁村では一人で八十何人というような子供を売り飛ばした男もいた。それがそんなふうに頻発しておりますのに警察にあがっていない。それはあとでどういうふうにあがったか知りませんが、児童福祉法を適用したのはあの松元荘事件が初めてだということを私は聞きまして非常に驚くわけなんでございますけれども、一体ああいう子供たちの問題を警察の方ではどういうふうにしてあげておいでになるか、そうしてあとの始末はこの法律の適用外でどういうふうにしてやっていらっしゃるのか、そこをちょっと伺わせていただきたいと思います。
○斎藤(昇)政府委員 どういう端緒であげておるかというお尋ねでございますが、これはいろいろございまして、松元事件は母親からの申し出で、十五才になる女の子が行方不明になったということが端緒であの事件を検挙するに至った。あるいはいろいろな風評でありますとか、あるいは具体的な訴えでありますとか、そういった端緒になるものを耳にいたしました際には、必ずそれをもとにしてやるということになっておるのであります。従ってそういう端緒をつかむためにもまたいろいろ方法を用いているということでございます。 それから検挙いたしました跡始末は、あるいは児童福祉法違反でありますとか、松元事件のように淫行勧誘罪でありますとか、法令に該当する条項がありますものはみなそれぞれの法令によって、あるいは検察庁に送る、あるいは家庭裁判所に送る、さような処置をいたしております。
○神近委員 今私がお伺いしたのは、鹿児島県で児童福祉法を適用したのは松元事件が最初だという記事があるのです。
○斎藤(昇)政府委員 おそらく児童福祉法で送ったのが最初だということはないだろうと思いますが、その点は確かめておりません。私の方の統計によりますと、昨年中に人身売買に関連をして検挙をいたしましたのが、鹿児島県で六十八人おります。従いましてあれも昨年度中の事件でございまするが、児童福祉法で送ったのは何件ありますかわかりませんが、職業紹介関係の法令違反でありますとか、いろいろの該当法令で送っております。人身売買関係としまして六十八人を検挙いたしておりますから、あれがおそらく最初であるということではなかろう、かように思っております。
○神近委員 御存じのように児童福祉法六十条を拝見しますと、未成年者を淫行させた者の刑罰は十年以下になっておりますが、今までそれを刑法でおやりになったのか、児童福祉法でおやりになったのか。そして罰則を適用なさるのにどっちが重いのか軽いのか、その点のお考えを伺っておきたいと思います。
○斎藤(昇)政府委員 刑罰は児童福祉法の方が淫行勧誘罪より重いそうです。あの松元事件の関係は、未成年者は児童福祉法で送り、成年者については淫行勧誘罪で送検をいたしました。
○神近委員 私が今こうやって申し上げるのは、あの判決がもうお話にならないと思うんです。井本局長がおいでにならないからあなたに申し上げてもしようがないんですけれども、松元荘のあの醜行をさせて、しかも夫の事業にこれを利用した。土木の請負指定人になる運動をするのに使ったというところに今日の役人というもののあり方、それから女の子供がそういう犠牲になったというところに、私どもは今日の最悪の事態を見るような気持がして、そうして同時にこれは日本のはずれにある鹿児島に起ったことでなく、これが無数に起っているということはもう連日の、たとえば売春会社だとかあるいは何々クラブというようなところに、アルバイトというような形かあるいは会員というような形でたくさんできている。それで松元荘のかみさんが五カ月の懲役、女中が四カ月、そしてそれに執行猶予が三年ついておるというようなことを見ますと、私どもは一体これでいいのか。名誉を重んじない、金さえもうければいいという考えの方々には、その判決では拘束があまりなかった。勾留期間ぐらいしかなかった。そういうような状態では反省させることも、ほかの社会一般のそういうことを企てる人たちに与える教訓も非常に希薄になると存じます。それでそういう考え方、子供やあるいは女、特に女の子供というのは皆さん警察の方々の頭の中にはどういうふうにこの人権というものが映っているんでしょうか。一つここでちょっと感想を伺わさせていただきたい。これはあまり事例がたくさんございますので、一つの例としてこれを出したわけでございます。
○斎藤(昇)政府委員 淫行を勧誘をして営利をはかっているというような行為は、私は人道上もまことにけしからぬ事柄であると考えております。判決が重いか軽いかは別といたしまして、何か他に情状酌量の余地があったのかどうか存じませんが、一般的に執行猶予がついておるというのは一般に軽過ぎるというお感じは私はごもっともだと思います。警察といたしましては、これらの事件の捜査につきまして、今後さらに力を入れて検挙をいたしたい、かように考えております。
○神近委員 今お役人でいらっしゃるのでそのほかの役所のことを御批評はできないのだろうと思いますけれども、これは外国では非常に高いのです。カナダなんかは十四才未満の者である場合は十四年の禁錮、それから十五才未満の者であった場合には十二年以下の禁錮ですか、ともかく非常に高い罰がついている。私どもいろいろこういうことを考えているわけですけれども、今度は戸田局長はあの裁定について——鹿児島の子供たちの事件でございますが、私は何としても憤慨にたえないのは、あれだけ恥を知らない無恥なやり方をして、そのやったおかみさんに五カ月の懲役、女中さんに四カ月の懲役、それに三年の執行猶予をつけたというところに、私どもは非常にふんまんを感じるのですけれども、あの事件は八人ぐらいの未成年者、全部数えれば二十何人に及んでおるのです。それをあのくらいのことで一体子供たちの人権とのバランスが済むというようにお考えになるでしょうか、大へんむずかしいお尋ねでございますけれども、率直に一つ御返事を伺いたいと思います。
○戸田政府委員 まだ成年に達しない婦女子に対して淫行を勧誘したというようなやり方については、人権擁護の面から、また人道上からもきわめて悪質な犯罪だというふうに考えております。ただ裁判につきましてはどうも人権擁護局としてその裁判の判決がどうであったとかという批判はいたしかねるのでございますが、ただ私個人の考え方から見て、ただいま仰せのように未成年者が七、八名、全部で二十数名の者に対して自分の経営する料亭において地方の知名の士に対して贈賄の目的をもって淫行を勧誘した、こういうやり方に対して、懲役五カ月ないし四カ月、各それに対して三年間の執行猶予ということになっておるのでございますが、従来あまり重く処罰されておりませんでしたような関係から、諸般の事情を考慮してこの程度になったんじゃなかろうかと存じますが、先ほど申し上げたような犯罪の性質からいたしますと、人権擁護という面を強く考えますと、私個人の考え方としてはもう少し重く処罰されてもよろしいではなかろうか、こういうふうに考えておりますが、ただ裁判自体に対しては、私の立場としてはこれは批判をいたすわけに参りませんので、この点御了承願いたいと思います。
○神近委員 あまり長くなりますので、またこの次にほかの事件とからみ合せてお伺いいたします。 それからこれは別の項目でございますけれど、三月十五日に加藤愛子という方が、人権擁護局に対して調査をお願いしておる件がございます。これはやはり婦人、妻、あるいは個人としての女の人権に関係がございますので、ついでにちょっとお尋ねいたしておきます。新聞にも出ましたけれど、選挙のときに、婦人が立候補を阻害され、あるいは立候補した人に対していろいろな妨害が起っているわけです。そこで、これは名古屋の警察がやったことでございますけれど、加藤愛子さんの演説会の場合に——多分奥むめおさんと前の参議院議員の方とお二人、民主党でございますが、このお二人がいらして演説会を開いたということがあるのです。それは別に候補者をよろしく頼むとかなんとかいうような演説会、講演会ではなくて、ただ政治的関心を女ももっと強く持たなくちゃならないという動機から近所の人を集めてその話を聞いた。そのときに、警察がそのあとでその家を提供した、座敷を提供した人か何かの家の人を警察に呼び出して、根掘り葉掘りこれを尋ねたり、あるいはそこに参会した人の一人々々について警察に呼び出して、そうして調書か何か取ったということ、特にその主催者になった奥さんを、夫が高熱を出して、病気をしているというのに、ちょっとで済むからというように呼び出して、深夜の十二時過ぎ、もう電車も何もなくなる時間までかかって取り調べた。そうして警察の護送用か何かの自動車で送って帰したという事件があったのです。これは調査を御依頼して、ここへ写が来ております。人権擁護局にあなたのお名前で調査を御依頼してありますが、あれは調査済みでございましょうかどうか、ちょっと伺わしていただきます。
○戸田政府委員 加藤愛子さんから申告がございまして、事件が名古屋でございますので、所管の名古屋の法務局に事件を移しましてただいま調査中でございます。調査がほとんど終了したということでありまして、結論をつけて近日私の方に来ることになっております。
○神近委員 終了いたしました。
○世耕委員長 細田君。
○細田委員 大きなことじゃないのですが、朝鮮人のことでちょっと関連してお伺いいたします。こういう事案がたくさんある。あの終戦のどさくさで、内地に来ておった朝鮮の人たちが朝鮮へ帰る——うまいこと生活が楽になるとでも一時思ったと思うのです。御承知のように大挙して帰る、また帰るべき慫慂も当時あったわけです。ところがその中に、たとえて申しますと、私の知った事実ですが、両親や家族はみんなこっちにおって、子供一人だけ、おじさんやおばさんか、あるいは近所の人たちとかは知りませんが、朝鮮へ帰った。その人は子供といっても十七、八——当時十五、六でしょう。今は相当の年でありましょうが、当時は十五、六、日本で生まれて、実は都内の小学校を出た。でありますから、朝鮮語も何にも知らない。朝鮮へ帰っても、日本語を話す人たちとだけは交友ができるけれども、朝鮮語自身ができない。だから、結局どうもしょうがないから日本におる両親のところへ来たいんだけれども、なかなか許可がおりないので、遂に密航して来た。もちろん密航したんだから処罰もされるでしょうし、あるいはまた収容所にも入れられる、これはやむを得ない。しかしそういうような場合——なお私東京の法廷で他の事件を見た一つの例は、両親がない、ちょうどこれと同じようなケースで、朝鮮語も何にも知らない。東京の小学校を出た。だから、しようがないから、朝鮮では食えないし、どうにも寂蓼を感じたでしょう、密航してきてつかまったが、これは両親もいない。従って内地に引受人もない。しかしたれが見てもこれはもう日本人とちっとも違わない。これはうそも隠しもしない。言葉使いを見れば、われわれよりもむしろ日本語がうまい。朝鮮へ帰すのにまことに忍びないようなケースの事件を私東京の法廷で見たけれども、こういう場合に入国管理局ではどういうふうな取扱いをされているか、この点を一つ。
○内田政府委員 具体的にどういうケースか存じませんですが、ただ抽象的に申し上げますれば、われわれは密航である限り原則として帰すという方針で行っております。その理由は、今日世界のいかなる国におきましても、旅券という制度がございまして、旅券を持ち、かつ入国せんとする国の査証を持って往来するというのが世界各国の——その規定は国内法では消えておりましても、大体国際的な原則となっておるからでございますし、また今日、日本の当面しております事情にかんがみまして、われわれといたしましては、正規の入国の場合につきましても、その人の入国が日本の利益になるかいなかによって判断して入国の査証を出しております。その原則にかんがみましても密入国は拒否しなければならないと考えております。しかしながら、ただいまおっしゃいましたように、朝鮮と日本の場合につきましては、ついこの間まで朝鮮は日本の領土でもありましたし、また日本の国民でもあった人々でありまして、それがあの敗戦の結果、いわば急に国籍がかわり、また家族が住所を異にするに至ったという事情もございますので、特別の場合で、人道上考慮しなければならぬと考えますときに在留を許可いたす場合もございます。しかし、ただ抽象的に、日本で生まれたから、あるいは日本の小学校に行っておったからということだけで密入国した者を許可いたしてはおりません。もしそういう標準だけでこの在留を許可するということになりますと、単にその人々だけの問題ではございませんので、終戦後に日本から朝鮮に帰りました人々の数は大よそ百万と称せられておりますが、現在日本に約六十万の朝鮮人が在留いたしまして、その朝鮮人はいろいろの問題で日本に問題を提供しておると思います。そこでかって日本に住んでおったとか日本で生まれたとかいうことを理由に密航でもいいんだということになりましたならば、大げさに申しますならば、そう遠き将来を待たずして朝鮮人の人口は倍加すると考えます。われわれは個々のケースにおきまして非常に気の毒だと思う場合が多々ございますが、しかしそういうケースを許すことによって——朝鮮から日本に密航でもいいから渡来したいと思って待っておる人がほかにたくさんおるわけでございまして、そういう人々を今後どう扱うかということとも関連しまして、個々のケースの場合にははなはだ気の毒だと思いましても、原則としては密入国は帰すということでやっておる次第でございます。
○細田委員 局長のおっしゃることも一応わかるのですが、家族、両親が全部こちらにおる。若い子供が一人朝鮮に野放しにされる。しかもそれは朝鮮で育ったのではなくて内地に生まれて——内地と言ってはおかしいが、日本で生まれて日本の学校を卒業した。ただあなたのおっしゃったように、敗戦という偶然な事実がその人を国に帰したというだけの問題で、あなたが世界各国のケースでというようなことで扱うのは、何と申しましょうか、実に官僚的な一片の形式主義ではないかと思う。これは百万帰ったでしょうが、両親もこっちにおる、ただ一人そっちに野放しされた。両親の片方がおるとか兄弟が全部おるとかいうなら別ですけれども、そういうただ一人向うに行ってしまったというような人たちは、これはきわめて希有であろうと思う。それは希有といっても、百万の中では何千人あるいは何百人くらいおるかもしれませんが、今度新しい出入国管理令の一部改正法案が出ることでございまするから、なおそのとき詳しく申し上げまするが、そんなような場合に、もちろん十分なる審査は必要です。必要ですが、そういうような気の毒な人、しかもそれは、朝鮮の人たちは日本におりたかったかもしれない。ただ偶然の事実で国に帰っている。しかも家族全部がこっちにおる。それにその人は別に年寄りではなくて、まだ一人歩きも——二十代になればできるかもしれませんが、そういうような場合の考慮は全然払われていないのであるか、もう一度一つ御答弁願いたい。
○世耕委員長 ちょっと細田君にお諮りいたしますが、問題の点は別に法案が出ておりますから、いずれその機会にもっと具体的にお聞き下さる機会をおとらえ願いたいと思います。
○内田政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、われわれは抽象的な形で申し上げましたので、原則論を申し上げておるわけでございますが、具体的な場合に同情しなければならない度合いというものをわれわれの調査に基きまして考えまして、ほんとうに人道的に考慮しなければならないという場合には在留許可をいたします。 —————————————
○世耕委員長 次に裁判所の司法行政に関し調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。古屋貞雄君。
○古屋委員 私は司法行政についての裁判所の行政に関する関係をお尋ねしたいのですが、それはその責任がどこにあるかということが重大な問題でありまして、目的は責任の所在をはっきりしたい、かような意味で御質問を申し上げるのでありますが、その事実はかっての川口簡易裁判所の高井住男判事の職権濫用並びに懈怠事件に関する問題であります。すなわち三百九十四件の検事からの略式命令請求があったものを所定の手続きをしないで、四カ月以内に裁判をすることがきまっておるにかかわらず、これを怠ったという事件がございまして、被告に対する通知が四カ月以内にできませんので、遂にその事件は刑訴四百六十三条の二、同法附則の第七、第九によって公訴棄却の決定をしてしまった、この事件でございますが、この事件で本人に対する責任はおそらく別の訴追で問題になりまして、裁判官訴追事件で処置されるでありましょうが、これの責任をはっきりいたしまして、かようなことが重ねて行われないということの目標においての御質問をしておるわけであります。従いまして事務総長にお尋ねしたいのは、下級裁判所の裁判官の任命というものは最高裁判所から指名いたしました名簿を提出して内閣でこれを任命する、かような場合に五人なら五人を任命するような場合には、五人だけの、定員だけの名簿を提出するのか、それともその他数人の候補者名簿というようなことで名簿を提出いたしまして、その中から内閣が任命するのか、具体的に行われている事実はどんなようになっておりましょうか。
○五鬼上最高裁判所説明員 ただいま裁判官任命の実際に行われている手続きは、たとえばある裁判所に欠員があって、そこへ裁判官を任命するというような場合には、普通その候補者以外に、一人の欠員がある場合においてもそれにプラス一をしてリストをつくって内閣へ送っております。
○古屋委員 そうしますと、内閣には選択権があるということに相なるでしょうか。どちらを選ぶかということについての選択権があるのでしょうか。その点いかがでしょう。
○五鬼上最高裁判所説明員 法律的のむずかしい議論からみればあるいはさようになるかもわかりませんが、実際は最高裁判所でリストをつくって、こういう者を任命したいという場合には、大体今までそれが拒否されたようなことはございません。
○古屋委員 私の質問があるいは御理解いただけなかったかもしれませんが、ただいま一人の欠員に対して二人の候補者名簿を提出するというような御答弁に承わりましたので、その二人のうちのどちらかを選ぶ、こういうような関係になるでしょうか。それとも五人の任命をしようとする場合には五人だけを出しておるのか、その点はどうなっておるのでしょうか。
○五鬼上最高裁判所説明員 先ほど一人の場合をお話し申し上げましたが、五人の場合もやはりそれにプラス一をつけ加えてリストを出しております。しかし実際にはこちらの任命したい者にはまるじるしをつけて出しておって大体その通りに行われております。
○古屋委員 そうしますと、五人であれば、一、二、三、四、五とつけて、一番あとに別の方をつけ加えておられるのが実情なのだ、こうお聞きしてよろしゅうございますか。それから裁判官のさような関係がありますと、最高裁判所は判事の任命に対しては重大な責任を負わなければならない、かように考えておりますが、その点はどういうような状態になっておりましょうか。たとえば裁判官の裁判官会議が負うのであるか。それとも、もちろん裁判官会議は責任を負いまするけれども、それを総括する長官なら長官も加えて別に責任があるのかどうか。その点に対するお考えはどうなんでありましょうか。
○五鬼上最高裁判所説明員 裁判官の任命リストを作るについては、むろん裁判官会議で議決して内閣の方に提出しておるのでありますが、御承知の通り、司法行政は裁判官会議で行うということであるので、従って、その責任というものは、その裁判官会議のメンバーが負うのだ、かように考えております。
○古屋委員 裁判所法の第十二条によりますと、司法行政事務のことがここに規定されております。初めの方に「最高裁判所が司法行政事務を行うのは、裁判官会議の議によるものとし、最高裁判所長官が、これを総括する。」とあるのです。総括するということは、一つの総括の権利を持っておるのでありますが、総括をした場合に、権利行使をする場合に、この半面の義務がこれに伴わないものかどうか。私は義務が伴うように考えておるのでありますが、この点はどういう御解釈をなさっておりましょうか。
○五鬼上最高裁判所説明員 むろん、最高裁判所長官が裁判官会議を招集し、そして総括するというこの条文は、最高裁判所長官の責任の方が、一般裁判官の責任よりも重い、また義務においてもその通りだ、かように考えております。
○古屋委員 私は、さような御解釈をはっきりいたしたいと思いましたので実はお尋ねをしたのでありますが、そういたしますと、具体的な事件といたしましては、かつての川口簡易裁判所の高井住男という判事さんに対して、これを任免するに至りました責任は、最高裁判所裁判官会議であり、田中長官であるということに相なると思うのですが、さように御解釈を申し上げてもいいのでございましょうか。
○五鬼上最高裁判所説明員 抽象的にはただいまの御質問のようでありますが、実際的には、高井判事が任命されたのは前の長官時代に任命されたのであります。
○古屋委員 そうしますと、前の長官のときに任命されたことになると、当時裁判官会議に参画した判事さんの責任ということだけで終ることになるのでございましょうか。
○五鬼上最高裁判所説明員 むろん、司法行政面の上からいえば、最高裁判所は常に下級裁判所の司法行政上の監督権者になっていますから、そのときにいなかったからといって、責任がないとは申されないと思います。
○古屋委員 一昨年のたしか十月十二日から一昨年の十一月五日までの事件の略式命令請求が三百九十四件、それを四カ月経過したというのが一昨年でございまして、今の長官も在任中でありますから、任免のことは別といたしまして、下級裁判所を監督する監督官としての責任はやはりおありになるということになるのでしょうか。
○五鬼上最高裁判所説明員 川口の簡易裁判所の高井判事については、第一次的に直接監督の責任にあるのは浦和の裁判官会議であり、その次には東京の高等裁判所、そして終局的に最高裁判所、かように考えております。
○古屋委員 実はこの問題は国民の立場から考えますと、非常に重大な問題でございます。なお私が御質問申し上げる高井住男判事は、四カ月の職務懈怠というだけではないのであります。逮捕状あるいは令状用紙を、みずから公印を捺印したまま事務官並びに雇いに渡しておいて、しかも五十枚という多数のものを渡しておって、これが相当期間乱用された事実、それから庁外にこれが持ち出されて乱用されたというような、国民に対する人権の問題ではおそるべき重要な問題でございますので、私はあえて責任の所在をお尋ねしておるのであります。そういう令状などを渡された事務官が、これを乱用する、庁外に持ち出す、こういう方面に対する直接並びに最後までの責任者といたしましては、どちらとどちらが負うべきものでございましょうか。
○五鬼上最高裁判所説明員 御質問のような事実がありましたことはまことに遺憾に存じます。高井判事には、東京高等裁判所で、分限事件として、分限法によって、前の事件に対しては過料二千円、後の事件に対しては過料七千円を課しております。なお実質的には、高井判事は、北海道帯広の簡易裁判所の方に転勤を命じました。また、委託された逮捕状が外に出たということに対しては、その事務官それぞれに、やはり公務員法に定むるところに従って戒告等の手続をいたしました。
○古屋委員 これは、各裁判所における監督者があるわけなんですが、終局的には裁判所長官かもしれませんが、そういう事務的方面の上司の監督という機構上の問題はどういう工合になっているのですか。たとえば、直接監督をする簡易裁判所の責任者、さらに、簡易裁判所を監督する地方裁判所、かように考えているのですが、事務系統的には、上から下までの機構がないように思いますが、単に、簡易裁判所は簡易裁判所における上役の事務官が責任を負うのかどうか、この点を伺いたい。
○五鬼上最高裁判所説明員 この書記官及び事務官等の監督については、ピラミッド型の系統になっておりまして、書記官に対しては、その上に主任書記官、あるいはさらに首席書記官というものがあり、それからさらに、事務局の者に対しては事務局長が監督する、かような形になっております。
○古屋委員 大体この責任の所在が明らかになりましたので、私は、他の方までかような不祥事が再び起らないような考慮をしていただかなければならぬと思うのですが、これに対して最高裁判所といたしましては、何らかの——もちろん高井判事本人に対する問題はそれぞれ法がきまっておりまするから、弾劾裁判もございますが、全般的に、かようなことについての再発を防止するためにどうするかという方途がなくてはならぬと思うのです。これは田中長官に承わりますが、事務総長の方でも、これに対して、再発をしないような処置を何らかおやりになったかどうか。おやりになったとすれば、どういうようなお考え、お心がまえでおやりになられておるかということを参考に承わりたいと思うのであります。
○五鬼上最高裁判所説明員 元来、裁判所の司法行政の監督については、高裁長官の会同、あるいは地裁、下裁の所長の会同というような機会に、従来絶えずその注意を喚起しておりましたのですが、特にこの川口の事件が起って以来、最高裁判所といたしまして、首席書記官が下級裁判所を巡視し、そうして査察を行い、その監督に直接当る者として十分査察し、そうして注意を与えるようにいたしております。
○古屋委員 この問題につきましては非常に大きな波紋を描いているわけなんですが、事務総長のお心がまえを承わりたい。こういうような不祥事を起した判事さんは、たしか特任判事だと心得ております。特任判事に対する問題は、当法務委員会でも相当議論になったのでございます。この判事さんのやりました行為については、ただいま申し上げましたような単なる職務の懈怠ということでなくして、地位を乱用されたような点が見受けられる。たとえば人の金銭上の関係で、それが友人であったというような関係からみずから逮捕状の執行などに関与しておるということがうかがわれるのでございます。こういうような判事さんを弾劾裁判所で罷免する前に、やはり他に転任をさせ、ただ過料あるいは減俸をしたというようなことで、直接国民の権利擁護をしなければならない立場に置かれる判事さんとして仕事に従事させておるということは、まことに私どもはこの点については了解がいかないのですけれども、かような場合には他の職務に変える。言いかえまするならば、直接裁判に関与しないような事務的方面にお変えを願うというようなことはできないのかどうか。判事さん、検事さんが大分事務官の仕事をおやりになっている。兼務よりむしろ職務としておやりになるお仕事が非常に多いように私ども見受けますので、かような方は、直接国民との関係を持つ人権に関する関係から、他の直接関係のない方面にお回しをすることができないのかどうか、法規上絶対にできないということになっておるのかどうか、この点を一つ承わりたいと思います。
○五鬼上最高裁判所説明員 まことにごもっともな御質問なんですが、御承知の通り裁判官は身分の保障がございまして、たとい最高裁判所といえどもやめさすというようなことは、ちょっとできない立場にあるのであります。さような関係でありますが、裁判官をやめさせようと思えば、もう一つの道はいわゆる弾劾裁判所の訴追委員会に訴追を請求するという点もありますので、川口の判事の場合も私どもいろいろその点について考慮をいたしたのであります。当時非公式的でありますけれども、訴追委員会の方からもいろいろ資料を提供せよということでございまして、私どもの方は出てきた資料は全部訴追委員会の方に提出いたしております。ただこの川口の判事が、弾劾裁判所に訴追を請求するに値するかどうかは多少——たとえばこれは大分前のことですが、ある簡易裁判所の判事について最高裁判所から訴追の請求をいたしましたところが、これが弾劾裁判所では弾劾に該当しないという判決があったというような従来の例も考えて、この場合は特に正式な訴追の請求はしなかったという程度であります。
○古屋委員 そうしますと、最高裁判所といたしましては訴追要求をする程度には至っていないというお考えであられたと、かように承わっていいのでございましょうか。
○五鬼上最高裁判所説明員 私どもの方としましては、高等裁判所の分限事件においてちょうど当時は手続中でありましたし、また従来のいろいろな例からも考え合せて、最高裁判所自体が訴追の請求をするほどの事件ではない、かように考えたわけであります。
○古屋委員 大体私は高井判事のやられた行為それ自体は、まことに典型的な訴追を要求すべき一つの事案じゃないかと思っているわけです。三百九十四件の略式命令要求は、四カ月以内に裁判しなかった。手続をしていないというようなことは、これは重大なる職務を怠ったものであるというように考えられるわけですが、これが一つ。それからもう一つは、友人の金銭上の問題について逮捕状が出され、逮捕状執行に立ち会ったということを私ども伺っておるのです。逮捕状執行に関する関係の、私が申し上げまするような事実があったかなかったかということは、私どもは現実に承知しておるわけではありませんけれども、懲戒裁判でございますか、例示された中にはそういう事実があるように見受けられる。従ってそこまで参りますならば、やはり私は高等裁判所みずからがその責任において訴追の要求をすべき事案だというように思うので、いかに裁判官といえども裁判官であるがゆえに手もつけられないというような制度ではないと思うのです。裁判官なるがゆえに良心に従い公正中正にやるべきなんだ、それがその職務に懈怠の事実があった場合、あるいは地位の乱用をしたような場合には厳としてやらなければ、裁判官に対する国民の信頼感がなくなってしまうということを私はおそれるわけです。この事件は最高裁判所で訴追の要求を行なっていないということに相なっておりますから私は聞いておるので、さようなことで一体裁判官に対する監督が行えるかどうか、どうも裁判官会議というようなぼけたようなもので責任を逃げてしまうのですが、私どもはそういう解釈を法規的にしておるわけです。今の事務総長のような解釈でありますと、法務委員会は長官を呼んで、ここでどうしてもこれに対する監督の処置、責任、今後に対する心がまえを聞かなくてはならぬことになるわけです。この点は私どもはさように考えておるのですが、そういうようなお考えが事務総長並びに最高裁判所にはなかったのでございましょうか、訴追に至らない行為である、要求すべき筋の行為ではなかったんだ、こういうことに相なるのでございましょうか、その点を重ねて私は承わりたいと思うのです。
○五鬼上最高裁判所説明員 御意見ごもっともであります。特に裁判官なるがゆえにやはりその取扱い方に対しては批判をきびしくされなければならぬということはまことにごもっともだと私ども考えておるのでございますが、この事件は私十分資料を持っていないので、私の記憶によりますと、逮捕状の執行に立ち会ったというようなことはございません。ただ友人の貸し金あるいは代金を費消という形になったのですが、貸し金の関係ははっきりしておりませんが、そういうことに対して友人のために口をきいてやったということです。もとより許さるべきことではありませんが、そういう行為があったということは認められておるのであります。それから実は逮捕状がどう乱用されておるかということについては、いろいろ各方面を調査いたしましたが、この五十枚の預けてあった逮捕状が実際に乱用されておったという事実は、私どもの手元には上ってこなかったのであります。かような次第でして、いろいろ従来の例を考え、あの甲府の簡易裁判所の判事で捜査前に事件を被疑者のところに職務上知り得たことを知らした、これは捨ておくべきでないというので、実は訴追の請求をするというときに、やはり弾劾裁判所の判例は、まだ訴追に値しないのだ、かような見解の判例があるために、私どもこれをも考慮いたしまして、分限でいいじゃないか、そうして実際上は北海道の帯広といえば相当左遷の場所にやったんだから、こういう考えをいたしておるのであります。
○古屋委員 非常に弾劾裁判所の裁判に対する御懸念があるようですが、しかし私は懲戒裁判の事実の理由の中に、最近私が拝見しているのは、指揮したということをはっきり認めた理由書がありますので申し上げたのですが、そうでないでしょうか。読み上げましょうか。「略式命令告知の便宜のため呼び出しに応じないからといって当該被告人に対し拘引状を発付し、その執行を指揮するがごときは許さるべきものではなく」、こういうような事実認定をされているので、どうも総長の今御存じになっていることとはちょっと違っているようですが、そこまでいきますと、私は訴追の請求をすべき事件だと思うのでありますが、どうでしょう。
○五鬼上最高裁判所説明員 私非常に誤解をいたしておりました。なるほど略式命令を送達をいたして、出てくる本人に対して拘引状を発したという事実はございます。ただ私の言うのは、友人のために口をきいてやって、そうしてそれによって逮捕状の執行があった、その執行に立ち会ったというように私拝聴いたしたので先ほどのようなお答えを申し上げた次第であります。
○古屋委員 どうか弾劾裁判の結果をあまりお気にせずに、司法部の威信のためにも厳然たる御処置をとっていただきたい、かように私は事務総長に要望いたします。その他は他の裁判官並びに長官に御質問をするし、責任を問いたいと思いますが、事務総長に要望を申し上げることは、こういう事件が繰り返されるということになりますと、さなきだに最近の世情というものは、昨年の指揮権や何かの関係上、司法部に対する信頼の度がなくなる、国民から見て司法部の威信がなくなったことは、いわゆる革命のときなのであります。われわれはそう考えなくてはならぬ。この点について、申し上げるまでもないことだと思いますけれども、かような事例が一つ出ておるわけであります。従いまして、今後の態度といたしましては、最高裁判所の事務総長御指揮のもとに、かようなことの再び起らないよう厳重な御監督並びに御処置を願いたい、かように私は要望いたしまして、本日はこれで私の質問を終ります。
○五鬼上最高裁判所説明員 御要望の点は十分拝聴いたしてやっていきたいと思います。
○世耕委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。 午後一時四十四分散会