農林水産委員会蚕糸に関する小委員会 第1号
- 発言数
- 22 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1955/07/04
会議録
○中馬小委員長 これより会議を開きます。 目下農林水産委員会には繭糸価格安定法の一部を改正する法律案が付託になっておりますが、御承知の通り去る第十九国会におきましては、繭糸価格安定の法的措置として、内閣より同じ名称の法律案が提出され、第二十一回国会まで継続審査に付されましたが、衆議院解散のため遂に審査未了となつたいきさつもあるわけであります。本蚕糸小委員会に対しましては、委員会成規の手続による本案の審査の委託はありませんけれども、繭糸価格安定の問題はわが国蚕糸業振興をはかる上において基本的な問題であります。よって法案そのものの審査は農林水産委員会において行うべきものでありますけれども、本小委員会といたしましては、この際参考のため今次改正案の提出に至るまでのいきさつ並びに前回の案との相違点等について一応政府の御説明を承わることにいたしたいと思います。蚕糸局長。
○塩見政府委員 かなり前に、法案提案のときにお手元にお配りいたしました蚕糸業の現況に関する資料につきまして、蚕糸業の現況について簡単に御説明をいたします。 桑園面積につきましては大体十七万町歩から十八万町歩台に逐次伸びつつあります。二十八年度十七万五千町歩というのが、大体二十九年度に七千町歩ほど増加いたしました。しかしながらこれらはやはり繭の価格との関係がございまして、この当時は、十一ページにございます表によってごらん下さいますように、二十八年度においては一万二千掛というふうな春繭、秋繭の相場が現出しておりましたので、この二十九年度には七千町歩ばかりふえたわけでございますが、二十九年度において春繭が九千五十掛というふうな数字になっておりまして、そのためにかなり農家の増産意欲は失われたように考えられます。これはかねて統計調査部において養蚕農家について相当数を調べたものでありますが、この春にでき上りました結果につきましても、農家の方は増反をするという数字から見ても考えられるわけでございまして、繭値の安定ということは増産上非常に大事なことであるというふうに考えられるわけでございます。 養蚕戸数につきましては二十五、二十六年度あたりに八十三万戸前後になっておりますが、二十七年には八十万戸をちょっと割りまして、二十八、九年というのは八十万九千戸台に回復をしております。これらも先ほど申しましたところの繭の価格との関係が相当あると見てよろしいかと存じます。 それから繭の産額は大体二十三、四年度あたりが一千六、七百万貫というふうなものが逐次増加いたしました。これは面積とは別に反当収繭量の増加が技術的に促進されましたので、だいぶふえておりまして、二十七年度には二千七百五十万貫という数字になっておりますが、二十八年度は御存じの通りのはなはだしい凍霜害でございましたので、二千四百八十万貫に落ちました。二十九年度もある程度の凍霜害を食いましたので、二千六百七十万貫というふうに二十八年度よりは相当の回復を見ましたけれども、二十七年度の量にはまだ至っておらぬ、こういう状態でございますが、三十年度の見通しといたしましては、おそらく二千八百万貫を越して戦後最高の収量になるのではないか、これは二十九年度における増反等も影響しておると考えられるわけでございます。 生糸の生産高につきましては、これに伴いまして、昭和二十三年度が十四万俵、二十四年度が十七万俵というのが、二十六年度に至りまして二十一万五千俵になり、二十七年度以降は大体二十五万俵台を続けておる状態でございまして、おそらく本年度はこれよりもある程度ふえると考えてよろしいかと存ぜられます。 生糸の輸出高につきましてはこの表にございますように、昭和二十三年が八万俵、二十四年か四万八千俵、二十五年が九万四千俵ろいうふうに上りが相当ございます。二十六年が六万八千俵、二十七年が七万俵、二十八年が六万三千俵、二十九年が七万五千俵というふうに上り下りがございますが、二十七年に幾らか繭糸価格の安定を行いまして、上値と下値の方についてある程度政府の方で処置するような形になりましたので、幾らか振れが少くなりまして、安定しつつあるように考えられるわけでございます。 生糸の輸出につきましては以上の状態でございますが、このうち玉糸につきましては二十三年、四年は一千俵台でございますが、二十五年度に九千俵になり、二十六年は一万二千俵、一万六千俵と増加いたしまして、二十八年が約八千俵、二十九年が約一万俵という形で、大体玉糸の需要の方も安定しつつあるように考えられるわけで、この玉糸の輸出における比重の増大ということは戦後の特異な現象でございますが、当然繭糸価格の安定においてもその点を考慮して考える必要があると存じまして、今般の改正案におきましても輸出生糸としての特別買い入れにつきましては玉糸を十分考慮して運用する必要がある、こう存じてそういうふうな仕組みで考えておるわけでございます。 輸出の市場につきましては、大体アメリカが主体でございまして、大体四万俵台から五万俵というふうなところをずっと継続しております。あとは大体イギリス、フランスその他の欧州市場には、アメリカの半分くらいのものを全体として輸出しておる、こういう状態でございまして、輸出を多くできますのはアメリカということになっておりまして、アメリカにかなりな重点を置いて宣伝その他の仕事もやつておるという状態でございます。大体輸出の方の上つたり下つたりということもかなり価格と関係を持っておりまして、これは禁止価格がございまするが、需給関係及び非常な事態等がございまして、価格につきましては二十八年から二十九年の初めにかけて禁止価格を突破したことがございます。第十ページの表にございますように二十四万台をこしております。こういうふうな影響がございましたので、生糸の輸出の方がこの時期において非常に減退をいたしました。そういう意味から申しましても、糸の価格の安定ということにもう一段の措置をする必要があるだろうということは考えられまするし、海外からのそれに対する要望も非常に強く加わつておりまして、とにかく繭糸価格安定法ができていて、一応安定は見たけれどもまだ弱い、もうちょっと強化をしてほしい、こういう要望が相当強くございます。またこれは下値につきまして、やはり繭の増産が確保されて、農家が安心して繭を増産することによって需給関係も安定して参りまして、こういうふうな上値もなくなるというふうなことが最も望ましいのでありまして、そういうふうな点については、現在の法制では糸が主体になっておりまして、繭についてはもちろん補充措置として考えておりまするが、そういう点が不充分なために、繭の増産の意欲については、先ほど申し上げましたように、昨年の春繭の価格の下落によりまして農家の意欲が減退しているような状況でございますので、この際特に繭の最低価格につきましては、政府で十分に農民に安心して増産に邁進していただけるように措置する必要があろうかと思いまして、改正案においては、それを織り込んだ、こういう状態になっております。今般の改正案によりまして、輸出の生糸についてより一段の価格の安定が行われ、また繭についてより一層安定した感じを持って農家の方で安心して増産できるような措置がとられますならば、結局いかに政府の強権を持って上値や下値の方を確保することをいろいろやりましても、やはり要点は需給関係に非常に無理がありまして、繭がある程度の数量が生産されていて、それで無理なく価格が形成されるというふうな状態がありませんことには、的確な方策は打ちにくい状態でございますので、第一に繭の増産をやつていただいて数量を一定量確保する、それによってある程度値が落ちついて、それで過剰な状態を生じますれば、政府がその過剰な糸を手持ちして上値押え用に持つし、また不足の状態がないような生産にまで繭の生産を高めていくというのが、現在の状態をもってすれば一番大事な仕事ではなかろうか、こういうふうに考えられるわけでございます。 アメリカ等の市況につきましては、二十八年度に比べまして二十九年度は大体二割の増加になっておりまするが、現在までのアメリカ市場等における各種の情報等によっては、やはり本年度もさらに二割増すであろうというふうな見込みが強く出ております。またこの価格安定措置が十分にとられますれば、この法案の改正によりまして一段と強化されますならばそれはさらに促進され得る、こう考えておりまするので、今年度は二千八百万貫台には十分生産はふえましようし、また生糸の生産量もそれに伴いましてふえるわけでございますが、現在在庫も非常に少い状態でございまするし、需要の方も海外におけるものは、ことにアメリカにおいては二割程度はふえるだろうというふうな見込みを立てられまするので、そういうふうな意味からいって、この措置と相伴いまして輸出の増進については一段と強化することができるのではないか。もし繭の値段とそれから生糸の値段というふうなものがずっと安定を続けて参りまするならば、アメリカにおける市場の開拓はまだまだ進め得るというふうなことを考えられまするし、専門家筋もそういうふうに見ておりまするので、この際ぜひこの法案を通していただいて、それで輸出増進に一段の強力な措置を進めて参りたい、こう考えられるわけでございます。御承知のようにアメリカにおける繊維は、昔は絹くつ下で大体出ておつたわけですけれども、これはナイロンに取つてかわられまして、ほとんど見込みとしてはあまり大きいものは期待できない、ほとんどが着物の方に行っておるわけでございますが、これの競争繊維と考えられます各種の人造繊維、人絹であるとか、オーロンとか、デクロンとかあるいはナイロンとかいろいろ合成繊維が出ておりまするが、これらの価格は大体アメリカの大企業で生産しておりまするために、年間一本の値でもって売るとか、あるいは数年間一本の値で通すというふうな状態でございまして、それがために販売する方面においても大体適当な値段がずっと安定してつけられておる。向うの小売値段等を専門家に伺いますると、大体二ドル九十九セントであるとか、三ドル九十セントであるとか四ドル十セントとか、四ドル五セントとかいうドルをちょっと上になつたような小売値段は非常に売れ行きが悪くてつけられない。そういうふうな関係からして、みんな何ドル九十セント、九十五セントというふうな数字が出ております。原料の値段がちょっと上りまして、そうして三ドル九十セントのものを四ドル十セントにすればよさそうなものでありますけれども、そういうふうになりますと売れ口が悪いというふうな関係からどうしても荷がさばけないので、原料の方あるいは機屋の方その他の方へ圧迫が加わつてくるというふうな関係からして、各種の合成繊維と競争いたしまして市場を広げて参りますのには、特に価格の安定は幅が狭く行われなければならない、こういう状態でございますので、向うからの要望もその点を強く強調して参ります。御承知かと思いまするが、アメリカにおける繊維消費量のうちでもって、生糸の消費量は千分の一というふうなわずかな数字でございますので、それが一万分の一ふえれば一割増加、一万分の二ふえれば二割増加という形でございまして、アメリカには現在世界の富が集中しております関係からして、こういう天然繊維である珍しいものに対する需要は、なお非常に価格が安定さえすればぐんぐん伸ばすことができる。しかもその伸ばすのがほかの繊維を食うと申しましてもほんとうのわずかな量でございますし、なお最近におきましては、絹につきましてはあらゆる繊維との交織というふうなものがほとんど研究が進みまして、綿糸とも各種の合成繊維とも羊毛ともあらゆるものとの交織というふうなものが可能になりましたために、需要の幅は非常にふえ得る、しかもそれはわずかに一万分の一食い込めば一割ふえるというふうなことでございますので、今年度の予算においては宣伝費も強化していただいておりまするが、なおこの法案によりまして価格の安定ということが一歩進みますれば、需要の増加というものは相当量まで望み得るのじゃないか、こう考えておりまして、私どもとしましては、二、三年後には大体十万俵という目標をつけても無理はない、専門家筋の意見も聞きまして、大体それくらいの目標で考えておるわけでございます。生糸の外貨取得の方は、生糸において大体四千万ドル台を現在まで続けて確保しております。そのほかに絹織物は二千万ドル台というふうなところで、大体七千万ドル台を本年度あたりは確保しております。前年においては六千六百万ドルというふうなところでございます。これは凍霜害によって、また朝鮮動乱等の影響によりまして、かなり値が上つたために二十七年度よりちょっと落ちましたが、二十九年度においては七千数百万ドルというところまで回復しておりますし、おそらく三十年度においては八千万ドルちょっとを予定できるのではないか、こう考えておる次第でございます。生糸及び絹織物は完全に全部が外貨として獲得できるわけでございます。その取得比率というものは貿易上も相当重く見ていただいていいんじゃないか、こう考えられますので、今般の予算と伴いまして繭糸価格安定法の改正によりまして、価格の安定を一段と強化いたして参りますれば、そういうふうな明るい見通しをもって養蚕業及び製糸の方を進めて参ることができるであろう、こう考えられるわけであります。
○中馬小委員長 御質問ございませんか。それでは私から伺いますが、去る第十九国会に提出された前の法案と今度の改正案とはどう違うわけですか。たとえば繭取引に関する協定を許容することとし、内渡金、後払金等の対価の支払い方法、時期等についての協定があったわけですけれども、今次の改正案ではこれらの規定がございませんが、どういうわけですか。
○塩見政府委員 第一点としまして、前の改正案においては、繭価と数量協定に関する項目を入れております。これは生糸の上値押えのために繭の数量協定をやるというふうなことを考えて案が大体できておつたわけですけれども、今般の場合には、いろいろその後公正取引委員会等とも再々の検討をいたしたわけでありまするが、御存じの通りに、第一点としまして輸出適格生糸に対する買い入れその他生糸の価格につきましては、ある程度の処置を今般の改正案ではできるわけなので、全体の経済市況の関係も、そういう点から見て繭の増産ができ、輸出適格生繭の買い入れ等によりましてある程度上値が押えられますならば、数量協定までやつて繭の上値押えというこれについては技術的にも非常にむずかしい点等がございます。独占禁止法の関係が、ああいう規定で全般的に排除できる筋合いのものではもちろんございませんで、やはり非常な制限のもとでしかそれは行い得ないというような関係にもございまするので、公正取引委員とも十分協議をいたしまして、今般の規定といたしましては、繭価、ことに最高繭価を押えるための数量協定に関する項目は全部削除した、こういう状態にございます。それに伴いまして各種の内渡金であるとか、後払金であるとか、対価の支払い方法とか時期というふうなものまで規定しないと、数量協定等につきましてこまかい協定をさせるとなりますると不十分なわけでございましたので、前回の改正案にはそういうものが載つておつたわけでございまするが、これらの問題につきましては、現行法をもってしても、蚕糸業法の十五条の二でございまするが、繭価に関する協定という中には、こういうふうな内渡金、後払金等の対価の支払い方法とか時期とかいうふうなものについての協定はもちろん包含されておりまするので、それを特に取り上げて細部に規定する必要はないであろうというふうなことでありまするので、そういうふうな部分も、数量協定等の関係を削除しました関係からして全都削除してある、こういうふうな形になっております。 なおもう一点違いますところは、繭の最低の価格の維持に関する規定でございまするが、先般の規定は大体共同保管を農民団体等が行いました場合に、それについて金利、保管料等の諸掛りを補助するというふうな規定だけでございましたが、これは農業団体等の要望も非常に強くございましたし、国会等においてもそういう御注意がございましたようで、共同保管をやりまして、最後に乾繭が売れなかった場合に、それを政府の方で買い上げて共同保管が安心してできるようにすることが必要である、こういうような趣旨でありましたが、それにつきまして、今般のは、補助金はもちろん前回と同様に金利、保管料等の全額を補助するというほかに、もしその補助金だけで最低繭価で売れないというふうな事態が起りました場合には、これは政府の方で全部乾繭費を加えました額で、農民団体が損をしないような価格で政府が買い上げるというふうな最後の締めくくりをつけまして最低繭価の保持をやるというふうに改正いたしました。それで最後に乾繭の共同保管をやつた場合の政府の買い上げということをつけ加えました点、これが前回の法文と異なっておるわけでございます。この買い上げは、現存の繭の買い上げということは現在わずかに二十二人の政府の特別会計の職員をもってしては、仕事としては非常に負担が大きいわけでございまするが、そこまでやりませんと、どうしても最低繭価の維持というふうな点は十分な効果を期待できないのではないかというので、そこまで踏み切つた、こういう状態になっておりまして、その関係で、各種の条文が前の条文よりも非常に加わつておる、そういう状態でございます。 もう一点は、輸出適格生糸の特別買い入れということを規定したことでございます。この点につきましては現在の繭糸価格安定法は、とにかく国内の糸の値段も輸出の糸の値段も総合してみて、糸の値段全体を最高価格になつた場合には押えるというふうな考え方をしております。最低価格で買うという考え方をしておりますが、現在在庫量が非常に少くなっておりまして、ここ当分の間は、現在の繭の生産状態では、やはり作つたものはほとんど全部売れるなり輸出されるなり、内需で使われてしまう、こういう状態で、昔のように相当な在庫量を持つという状態は、まだここ数年間はおそらくこまい、生産したものはほとんど売られてしまう、こういう状態でございますので、政府の方での買い上げは非常に困難な状態にございます。そういうふうな関係から、内需も輸出の方も両方総合して値段を操作するというふうな形では、どうも少し十分な形ではないように考えられまするので、特に輸出糸につきましては、二段がまえで強力な措置をとる必要があるだろうこう考えまして、輸出適格生糸につきましては最低価格以上の値段で買い入れるようにいたしまして、それでまた輸出のためには特別の売り渡しもできるというふうな形で、輸出生糸につきましては特に最低最高価格につきまして二段がまえで十分海外の要望するような価格安定措置をとりたいというふうな意味で、輸出適格生糸の特別買い入れというふうな条項を入れたわけでございます。それに伴いまして玉糸のように八割以上が輸出されておるというような糸につきましては、輸出適格生糸といたしまして特別買い入れ制度を適用いたしまして、玉糸につきましても価格安定を同時に行うというふうな考え方をしております。これらの点が、前回提案しました改正案との相違点でございます。
○中馬小委員長 第九条の二に、「政府は、第二条の規定により売り渡す生糸として輸出適格生糸を保有する必要があるときは、農林大臣の指定する者を相手方として、」云々とありますけれども、相手方というものの性格、機能、資本金等については、どういう御構想でございますか。
○塩見政府委員 戦前におきましては、民間のこういうふうな種類の会社ができまして、それで非常に過剰な状態のときには共同的に生糸を保管して保有しておった。それが民間だけで使い切れなくなつたときに、政府の方の特別会計というものを設定して、その過剰な生糸を買い上げたという形態になっておりますが、現在の形態は特別会計のみでございまして、こういうふうな民間の方の機関がないために、操作も非常に困難でございます。また特別買い入れの基礎もできない。政府が個々の製糸あるいは問屋等から買うというふうなことは、政府という強力なものがとにかく市場に出動するというふうなことは、糸価に非常な影響を与えますので、過失においてもそういうふうな形はとれなかった。それでこういうふうな民間の会社等が保有したものを政府で買い上げるという形をとつたわけでございますので、今般もいろいろ考えてみましたけれども、大体そういうふうな形が糸価に最も影響なく買い入れられる方法ではないかと考えて、この条文を規定したわけでございます。この共同の生糸の保管会社というふうなものは、特別法によるところの特殊会社ではなくて、一般的な営利法人でございます。しかしながら政府との各種の関係においては、本法において規定されますようなところによりまして、公的な色彩を相当帯びて参ると存じます。機能といたしましては、共同保管会社は政府との契約条件及び指定条件によって輸出適格生糸の共同保管をやります。この輸出適格生糸につきましては、それを一定期間大体において現在は六ヵ月ぐらいが適当ではないかと思っておりますが、それを経過してなおその生糸が売れないというふうな場合には、政府の方に売り渡すというふうな仕事をやることが主体でございます。従いまして、共同保管会社の仕事としてやる業務としましては、第一が製糸業者とか玉糸業者の申し込みに応じまして、一定条件によって、買い戻し条件付で輸出適格生糸を買い入れるというふうな形で、この仕事は大体アメリカの農産物価格安定におけるCCCと同じような買い戻し条件付で、一定価格でもって輸出適格生糸を買う。これは輸出適格生糸に限ります。それから製糸業者と玉糸業者というものが共同保管会社に売り渡したところの生糸を、輸出する条件でもって買い戻しを要求してきた場合には、会社はその生糸を、買い入れ価格に保管期間中に要した経費を加算した額でもって売り戻す。その売り戻した糸につきましては、必ず輸出したという旨の証明をつけさせるということでございまして、このム会社に保有したものは国内には売り渡すことはできなくて、全部輸出の方に持っていくというふうな形でもって、この会社自体が政府に売らなくても、輸出の確保については相当な働きができるように考えるわけでございます。 それから先ほど申しましたところの、約六カ月くらいのところを大体考えておりますが、その期間を経過して製糸業者や玉糸業者が買い戻さなかった場合には、政府に売り渡す、こういうふうな形でございます。 また会社が生糸を保管しておりますときに糸価が最高価格、現行では二十三万円になっておりますが、そこまで参りましたときには、それは農林大臣の定める条件に従いまして、その保有しておる生糸を輸出向けに売り渡す。ある場合には、生糸を売つた者に買い戻させる場合もありましようし、また会社が輸出業者その他に売り渡して輸出するということもございましょう。この会社の保有しておる部分は、二十三万円の最高価格になりましたならば、必ずそれは上値押えのために海外に売り渡す、こういうふうな条件をつけて、それで大体輸出の最高価格の確保をはかる。内地のものは二十三万円の価格が必ずしも維持できない場合でも、この会社の操作によりまして、海外の輸出価格につきましては、二十三万円を確保するように仕組むというふうな考え方でございまして、そういうふうな条件でこの会社と政府の契約が行われるというふうにお考えを願いたいと存じます。共同保管会社の数は、これは法律的には幾つでもできるわけでありますが、この法案が成立した場合にはという前提で、現在民間といろいろ相談をしております。大体そのコストその他のことも考えますし、いろいろな点を総合いたしまして、なるべく共同で一本の会社でやっていく方がよいのではないか、こういうふうな相談になっておりまして、おそらく今の運用をもってすれば、生糸の保管会社は一社になるのではないかと考えておりますが、法律的には何社でもよい。先ほど申しましたような政府の条件をのんでやつてもらえるならば幾つでもよいことになっております。これは、菜種の買い入れ等につきまして考えられる民間の団体も、やはり形式的には幾つでもできるようになっておりますが、現在一つになっておるのと同様であります。会社の資本金といたしまては、大体現在一億ぐらいを予定して、民間の方はお考えのようでございますが、会社の構成員といたしましては、製糸業者と玉糸業者とがやるというような話し合いでその検討をしている模様でございます。私らの方もそれでけつこうだと存じているような状態でございまして、農林大臣といたしましては、会社に対して以上御説明しましたような条件を加えました上でその会社との契約をやつていきたい、こう考えておるわけでございます。
○綱島正興君 この政府の保管ということは非常に大切なことになってくると思いますが、政府の保管の間接的援助、政府の生糸に対する指導でありますが、大切なことは、それと内地の生糸との価格の関係、もし売れなかったときに内地に返つてきたものの処置、それが内地の消費される生糸に対する影響、これらに対する政府のお考えのほどを伺いたい。
○塩見政府委員 ただいまの輸出適格生糸の保管につきましては、価格といたしましては、大体今のところ二十一中のAを基準として全体の相場が考えられておりますが、それを前提として、この法文にもありますように、海外に売れるということが大事でございますので、海外で大体四ドル五十セントぐらいの相場なら大体無理のない値段だというようなことが考えられております。これは一般にみな海外においてもやつておりますし、こちらの関係者でも大体そのくらいのことを考えておりますが、そうなると、内地の糸値で考えると大体二十万円程度の相場になって参ります。最低糸価は現在大体十九万円でございますが、一万円がらみ高いというところでございまして、それで売れない場合には二十万円で政府の方で買い上げるということにこの輸出適格生糸についてはなりますので、そういうふうな意味でもって、売りさばきが困難である場合には政府の方ではそういう形での優遇をやるというふうな形になります。これにつきましては、やはり六カ月間の倉敷、金利等かかかりますので、それで生糸を売り渡しました製糸業者といたしましては、実際の手取りは二十万円からそういうものを引いた価格にはなりますが、しかしながらその間非常に商機を見ることができますので、現在の最低価格の買い入れよりは有利である、こういうふうに考えられるわけでございます。輸出ができないような場合には政府が買い入れるというふうな形で、そこで優遇をするというふうな措置をとつております。
○中馬小委員長 ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○中馬小委員長 速記を始めて。
○綱島正興君 大正末年から昭和の初めにかけて、前に農林省が中心になってやりました輸出生糸価格の安定に関する補助制度というものを特別に融資でやつたようでありますが、そのとき実行せられた結果は、ややもすれば生糸生産者よりはむしろ繭の生産者である農家が安い値段で繭を手放して、そうして生糸業者の手に入ってから政府の手厚い補助政策が行われましたために、その点に対する不平が農家に非常にあったようでございますが、このたびの本法案についてはいかようなお考えでございますか。どのような御処置をなさるつもりでございますか。
○塩見政府委員 お尋ねの点は非常に大事な点だと存じまするが、その点につきましては、独占禁止法というのが戦後できましたために、製糸業者の方でもって数量協定であるとか価格協定とかいうことが一方的にできなくなってきまして、それで現在ございますような繭価協定というふうなものが現在の法律のもとで行われる、こういう状態になっております。そういう点から、農民団体の方はもちろん協定はできるわけでございまするし、農民団体の力も、戦前に比べますと、金融その他の面につきまして相当強化されておりますので、大体そういう点からは、戦前のような状態にはなりにくい条件が一つあるわけでございます。なお非常に値がくずれるような危険がありますときには、現在の繭及び糸の価格というものが、大体最低は八五%を基準にしております。これは海外に売れる値段ということでございますので、内地に一定値で売れる米麦とは逢つた基準になっております。その八五%ですから、十五%だけは大体生産費より下げるわけでございますが、その十五%を製糸も養蚕も、どつちの方がかぶるかという点については、その振り分けは法律ではもちろん明定しておらないのであります。そこは繭の売買で決定される、こういう状態になっております。それらの点が農民にいたしましては相当不安があるわけで、糸だけでなくて、繭価の方も最低価格を安定さしてくれという要望が強くて、この委員会等におかれても、やはり最低繭価の方を何とか維持するというようなことを考えろという御要望が強かった点だと存じます。それで今般は、最低繭価については生産費を基準にいたししまして、最低糸価その他を勘案いたしまして決定するというふうな条文になっております。それで農民の方にだけ市場の状況が悪いときに、繭の方にしわ寄せされないように、乾繭の共同保管をやる。乾繭共同保管は、従前は補助金だけでやつていたわけです。今度も全額の補助金をやりますが、それでもうまく売れないというふうな心配がございまするので、昔の場合は、途中でもって値が出ないうちに売つてしまうというふうなことが往々ありましたし、そういう点で不安がありましたけれども、今般は、そういう最後の締めくくりは政府の方で買つてやるという形にしますれば、農民団体の方も十分安心して最低価格というものを確保するために努力できる。こういうふうな形で考えたわけでございまして、独禁法等における措置と相待ちまして、今般は、今御指摘のございましたように昔においては、そういうふうな非難は相当ございましたが、十分救い得るのではないか。農民団体の力が非常に強くなつたということと、農民団体に対する金融力等もついたというふうな点も加わつて、われわれも今後とももちろん金融については努力するつもりでございまするが、大体この案を実行いたしますれば、前のようなことはないのじゃないか、こう考えております。
○中馬小委員長 この際議員八木一郎君より発言を求められております。これを許すに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中馬小委員長 御異議なしと認めます。八木一郎君。
○八木一郎君 今のに関連して、ちょっと伺つておきたいのですが、乾繭によって取引をするという道を養蚕農民が持つことで、それによって今局長の言われるような目的が達成できるのではないかと思いますが、それは裏を返して、買手側は、ここに買手側が出した雑誌がありますが、その中に春繭に対する指令のようなものが出ています。これによると、「養蚕組合が当初から乾繭販売を計画実施する場合」に対しては、「(一)乾繭の買い取り価格は割高となる場合が多く、繭価協定に支障を来たすので、繭価協定までは買い入れを行わないよう自粛すること。乾繭組合を利用して購繭する方針は、重大化の懸念があるので、自粛すること。」つまり乾繭による商いはやめろ、こういう指令を買手側団体の代表の雑誌においては出しております。こういうことになると、そこのところが一つ問題が出てくると思われます。即答を要しませんが、将来の問題だと思いますから御検討を願いたいと思います。 あらためて一点伺つておきたいのですが、輸出蚕糸の増強に対する一つの措置として、私は持論として、安定、そうして宣伝、そうして増産、この三大方針を貫くことが日本蚕糸業政策の基調である、こういう主張を持っておるのですが、安定政策の手段としてこの法案を通しますと、順次海外から来る影響としては、日本は最低を十九万として、倉敷、金利を見て二十万円で売つてくれるんだなというところに買手側の心理が動くと思うのです。そうしますと、買手側心理は二十万円で買えるのだという点で市場が出て参りますから、そこを警戒してやるには、海外の需要増進に飛躍的な努力を払うということだと思います。需要さえ活発になってくれば心配は要りませんけれども、元来先ほど御説明のように、繊維の中の千分の一程度を消費しているという狭い市場なんです。特定の市場です。ですから二十万で買えるのだ、心配せぬでもいいのだということをいわれては困りますから、海外消費宣伝には、今回予算にも考慮されておりますが、もっともっと積極的な大宣伝を海外に対してやつていかないと、二十万円では、農民の方からいきますと、これは減産の方向へ行かざるを得ない。そのかね合いのところを御考慮してもらわぬと困るのじゃないか。それには安く作ればいいということになるが、廉価に作るといっても、為替レートが四百八十円と三百六十円とで三割も差があったのでは、飢餓生産に陥らないで、正常なる増産意欲をかり立てて、農民に喜んで作つてもらうということをしがてら、今のことを調整するのは容易なことではないと思いますから、廉価生産政策を徹底して、たとえば三割の為替の分を、海外市場を考慮して、肥料代を政府が半分補助するというようなことをかりにしますれば、二割や三割は安い生産ができていくと思いますし、別に海外の市場からは影響もこないと思います。それが繭になり生糸になっていくのでありますから……。とにかく画期的な廉価生産の政策がどうなっていくかということが必要になるのじゃないかと思います。ですから大宣伝とそれから画期的な廉価生産政策というものが、この裏づけとして出てこないと、ただいまのところはいい。これで進めていった将来を考えますと問題が出てきはしないか、こう思いますので、この二点に関する蚕糸当局のお考えを承わつておきたいと思います。
○塩見政府委員 ただいま御質問のありました点は、この法案以外に養蚕の振興と、輸出の振興をやります場合の、一番の要点だと存じます。海外宣伝の方も、ことしの予算は幾らかふえましたし、増産面にあるいはコストの低下のための老朽化桑園の改植等の予算も幾らか加わりましたが、さしあたりはそれで満足されるようなものの、しかしながらこれが先々と伸びていき、また伸ばしていくという点につきましては、なおそういう点について一段の強化をいたさないと、十分だとは申せないと存じます。ことに糸質の問題等につきまして、海外の要求も相当出ておるしいたしますので、そういう点についてはなお一段の強化を必要とするかと存じますが、御指摘の通りに一〇〇%外貨を取得している生糸が、これが今の実勢から見ますと、幾らか安い為替で買い取られているというふうな形が、これを大きく伸ばしていく場合の一つの欠陥になっておりますので、大蔵省等とも再々この点については折衝はいたしましたが、為替の問題には、これはほとんどタブーに近くて、手が触れられない、こういう状態で、そのかわりとにかく政府の予算その他によって、できるだけ振興できる部分をカバーしよう、こういうふうな考え方でさしあたりは行かざるを得ない状態でございますので、今後ともただいま御指摘のありましたような面での予算の確保、特別会計の強化については、なお一段の強力な折衝を必要とするし、われわれもできるだけのことはいたしたい、こう存じます。一、二年はある程度伸ばすとしましても、これを何年かにわたってずっと伸ばしていくというふうな点につきましては、御指摘のような点を十分考えて、なお一段と予算措置その他について強力な手を打つ必要があるだろう、こう考えておりますので、そういう点については今後ともできるだけの努力はやつて参る必要があろうか、こう考えているわけであります。
○八木一郎君 これも将来に関して、今から検討していってちようど間に合うのじゃないかと思いますから、輸出蚕糸について伺います。輸出蚕糸を増強して大いに伸ばしていこうという考えに立っていわゆるCCC制度を使えば、為替の正常を考えても、アメリカが当面しているように増産になって、その始末についてどうだということが出てくるほどに私は増産に寄与すると思うのです。これは少し思い過ぎかもしれませんけれどもそうなる。ですから今世界的に過剰な農産物を農業国である日本が輸入するに当つて、国際小麦協定、あるいは全剰農産物受け入れ契約というふうな、つまり外交通商の面を通して、海外でできております農産物の綿花とか小麦とかの受け入れを条約でやつている。こういう国際通商の情勢に対処いたしまして、これは輸入の面がそうなっているのだから、日本から輸出するお茶だとか、ミカンであるとか、蚕糸であるとか、カン詰であるとか、こういう輸出農産物につきましても、私は何らかの通商外交面において工夫する余地がないではなかろうという感じがするのです。両二、三年前でございましたか、海外から数カ国の国際絹会議の役員幹部がやつてきたときに、ちようどここにおられる大戸課長もおられたわけでありますが、やぶから棒に懇談会でこんな問題を提案したのです。君の方からは余つたものを買つてくれということについては、条約を結んで価格、一定数量を安定さして貿易のできるようにしている、おれの方の余つたものは、今のところはないけれども、将来できる場合を予想すれば、こういうものをやつたらどうかと思うけれども、受け入れる方はどうだということを言つたのですが、好意的な考えを持っているようでございます。何か近くまた海外から十一カ国二十数名ですか、国際絹会議の幹部がやつてくるということですから、順次そういう方向についても、政府として検討を加えることを私は希望いたします。この希望に対して検討すべき問題だとお考えになりますかどうか、塩見局長のお考えを率直に伺つておきたいと思います。
○塩見政府委員 非常におもしろい着想だと存じます。とにかく海外から輸入する場合にのみ数量を約束する、輸出するものについては数量の約束ができないというふうな形では片ちんばでございまして、増産もできまして、市況その他において今後こちらの方もそういうふうな過剰な状態になる、そういうふうなことにつきましては、そのさばき道としましては、なるべく安定した数量が見込まれるということが望ましいわけでございますから、そういうふうな考え方は非常におもしろい考え方であろうかと存じますので、現在は政府の保有糸はもちろんございませんが、相当量持つような情勢に逐次なって参りますれば、それの処分につきましては、お考えのような筋のものが実現できれば、非常に無理なく特別会計の運用もできますし、農民の方の増産面における意欲も、政府が持つたからといって減退するような危険もございませんわけですから、十分考えてみていい筋ではないか、こう思いますので、今後とも研究をさしていただきたいと存じます。
○中馬小委員長 井谷君。
○井谷小委員 この六月二十二日中央農業会議から本法案に対しまして意見が出ているのでありますが、それによりますと、「本法案は末だに養蚕農民に飢餓生産の屈従を要請する域を脱し得ず全く繭生産維持を軽視した法案である。本法案通過後に来るものは現行蚕糸関係諸法規の欠陥並にその指導方針と相俟ち繭価は不当に抑制となり養蚕農民の犠牲下において製糸企業の安定がはかられることは火を見るよりも明らかである。政府は繭糸価格安定法の精神に則る限り真に繭の再生産を維持せしめ得る制度を確立すべきである。」といたしまして、次の五項があげられております。「一、繭の制低価格は繭生産費を補償することを原則としその九割分を下らざること。二、生産者の共同保管繭に対し政府は制低価格に相当する融資保証を無制限に行うこと。前項による融資保証期間は六カ月とすること。三、繭の制低価格下落防止のための農協の乾繭保管事業は強制売渡的にならないよう措置すること。四、一定期間の共同保管繭について政府は制低価格に諾費用を加えて得た額による売渡の申込に応じ買上を行うこと。前項の買上は春、夏秋蚕期各産繭量の二五%を最低として計画すること。五、政府保有繭の売渡価格は繭生産費に乾繭保管に要した諸費用を加えて得た額を原則とすること。」こういう要請がなされているのでありますが、本法を審議する上においてこれらに対する御見解を承わりたいと思います。さらに本法の改正に当りまして、一部蚕糸業界からは、ぜひこれを通過させるようにという要請がなされているのでありますが、その文中に「蚕糸業界の総意を以て、繭糸価格安定法の強化改正を政府に建議いたしましたところ、政府におかれても、生糸輸出振興の重要性と、業界の熱意を掬まれ、今国会に繭糸価格安定法の一部を改正する法律案及び糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案を提出された次第であります。」として並べられました署名者は中央蚕糸協会会長、あるいは日本製糸協会会長、また全国蚕種協会会長、横浜生糸、日本生糸、こういうふうに業界の方からは非常な熱望をなされ、生産者の団体であります中央農業会議からはただいま申しましたような要請がなされている、ここに対立した矛盾が現われてきたのでありますが、これらに対する御見解を承わりたいと思います。
○塩見政府委員 蚕糸の生産者の団体としましては、種の方の組合とそれから全国養蚕販売農業協同組合連合会というふうなものが、大体今まで蚕糸に関係する団体として中央蚕糸会の方の構成メンバ一になっておりまして、そこで従来から検討しております民間の意見をまとめたものを持ってきたわけでございまして、そういう意味で、その範囲の民間団体の総意はそこにきまつておるわけでございますが、ただいまお話がありました中央農業会議でそういうものを出されておることは私らも伺つております。この考え方は、私らの方から検討いたしますると、繭につきまして米麦と大体同じような考え方で問題を考えておるのではないか、蚕の方と糸の方だけをやつております方からいうと、繭の商品としての性質をいろいろ検討し、過去のいろいろな経験等もございますから、そこまでは踏み切れな、こういう形ではないかと存ずるわけであります。繭と糸につきましては、先ほどもちょっと触れましたが、私らの考えとしましては、やはり繭糸は輸出商品でございますので、アメリカで買えるような価格でないとやれないという形であります。米麦等は、やはり日本では不足品でございますので、一定量を政府で輸入しまして需給関係を満たせば、一定の価格で、ずっと一本値で売つて参っても大体売れる、こういうふうな形になりまするが、糸の方につきましては海外でもって売らなければならない、しかも需給関係等につきましては、輸入するものと違つて数量が過不足が起つて、値が上つたり下つたりというふうなことを前提としなければならない。ことにこれはどちらかと申すと奢侈品でございますので、その幅が非常に大きい。それで繭糸価格安定法におきましても、そういうふうな関係からして、異常なる価格の騰貴とそれから下落を防止するために、そのときに政府が出動する、こういうふうな形になっている状態でございますので、価格の安定の基本についてある程度差があるということと、それから繭につきましては、御存じと思いますが、乾繭工程を経ないとサナギが出てしまうわけでありますから、どうしても商品として長期の貯蔵にたえない。これも梅雨を越すということになると品質が相当いたむ、こういう形になっております。それからまたその乾繭の設備は、今ほとんど九〇何%というものは製糸工場が持っております。そしてその乾燥の仕方も長時間かけてゆるやかに乾燥したり、あるいは急速に高温で乾燥したりというふうなことによって質が相当違います。あとのような方法をとりますと、乾燥費のコストが安いのですが、解舒が非常に悪くなって品質が落ちるのです。そういうふうな乾繭の技術、設備はほとんど製糸工場の方で持っておりますけれども、一般の民間や、農業団体が持っておりますところの乾繭倉庫あるいは乾繭設備等においては、十分な量と人とを持っていない。製糸工場の方でやります場合には、製糸工程において使うところの蒸気であるとか、ボイラー、そういうふうなものが全部兼用的に使われるわけであります。で、コストが非常に安くなりますが、乾繭だけ独立してやります場合には、そういうふうな関係で人についても、蒸気代、ボイラーその他の点についても、コストが幾らかかさんでくるというような不利な点がございますし、倉庫につきましても、片方は製糸にする原料として入れておるというのでコストが安くなる、そういう関係等がございまして、乾繭の保管について全面的にやっていくというふうな点については、農業団体において実力とそういう技術や設備等についてしつかりしたものを持っておりませんとなかなかできない、こういう状態にあるわけでございます。今の取引の方も、もちろんそういう点で経験もあり、進んだ地帯においては乾繭取引が行われ、乾繭保管等が行われておりますし、またそれはもちろん農民団体にとつて、先ほど八木委員からも御質問がございました通り、そういうふうな無理のないよう進ませるという点について、私らは何ら異議はございませんし、それを進めていってよいことだと存じます。しかしながら全般的に見て、その準備もできなくて、一挙にそういうふうな形でいたすというのにはかなり無理があるわけでございます。そういうような点から考えまして、この繭の取引につきましても、米麦みたいに全部単協から県連それから全国団体、ある場合には国が買う、こういうふうな行程を経ませんで、県の段階でもって価格協定をやっていく。とにかく価格を確保していって、取引の流通の方はなるべくその段階をたくさん経ないで円滑に持っていくというふうな形態が今までとられておりますが、やはりその乾繭の工程が入ることと、それらが過去の経験から見ましても非常にむずかしいことであり、その準備についても農民団体でやるとすれば倉庫とか設備とか人とか経験とかを、相当に持ちませんとできないというふうな実情があるために、価格協定という線でもってその農民の利益を確保しようという形をとつておりますが、そういうふうな形態は現状をもっていたしますれば無理のない方法じゃないか、こう考えるわけであります。繭の方の最低値の確保につきましても、先ほど申しましたような線から見て、米麦とは幾らか違つた考え方をとつていかなければならない。米麦と違いまして、繭糸価格安定の関係で糸価安定特別会計というものがございまして、その定員はわずかに二十二人でございます。これは大体糸を買えるという限度でございまして、昔から繭を政府で買うかというような検討も再三あったわけでありますが、これは商品の性質もむずかしいし、また変質しやすい、非常に高価なものでありますので、役人に扱わせることが適当であるかどうかも疑問でありますし、一般の倉庫にも入れにくいものでありますし、それから人員等も、各地でもって繭が出回るわけでありますから、それを政府が買つて検収するということになりますと、相当膨大な職員を特別会計で持って参りませんとなかなか買い入れができないというような関係から、現行法におきましては、繭はほとんど買わないというような形になっております。糸でもって繭価を保持しようという形になっておるわけでありまして、この点繭価については不安があるし、農民が現実に不安感を持っておる。どうしても繭価の最低価格というものを、非常事態が来た場合の措置として、もっとがつちりしたものに具体化していかないと、農民も不安であろうというような関係からいたしまして、繭糸価格安定法の基本の糸を買うということと、それから異常のときに政府に出動するのだということと、繭の価格が糸でもって維持しきれないというような事態が起つたときに、最低に近くなってきた場合においては、政府も思い切つて繭を買うことに腹をきめて農民に安心をさせて、そうして増産にいそしんでもらおう、そういうようなことから建前といたしましては、今ありますところの繭糸価格安定法の基本の方針というものはくずさないままでいく、しかしながら、それは繭価維持には欠けるところがあると見られますので、そういうような点を十分に補充したいという考えで立案したわけでありまして、この中央農業会議の御意見もこの間ちょっと拝見したのでありますが、基本の考え方がやはり繭をいじつた人でなくて、どうも米麦をいじつた人たちの考え方のように考えられるわけでございます。一つ一つ申しますと、大体繭の最低価格は九割を下らぬようにしろという御要望がございますけれども、これは先ほど申しましたような関係から、繭糸価格安定法では政令で大体八割五分というふうなところに定めております。糸と繭とが片ちんばになるのはちょっと困りますので、これは政令で八割五分となっておりまして、この点は政令ですが、国会においてもこの法律を通しますときに、たしか参議院であったそうでございまするが、大体八割五分というふうなところでやつていきたい、そういうことならよいだろう、八割五分でやれ、こういうことできまつたというふうな形でございます。糸と繭とが片ちんばになっても困るような状態でございまするので、もちろん繭の生産費というものを基準として最低繭価をきめるという考え方に立ちたいと思いますが、これを繭糸価格安定審議会等にも諮問した上で最低繭価をきめるつもりでございます。法律としましては、もちろん生産費を基準とするというふうな農民の生産確保が大事でありまするから、それをどの辺にきめるかということは糸値の方とも見合わなければなりませんので、大体の意見はおそらく糸と見合つて八割五分ぐらいのところになるのではないかと思います。まあそういう点を、繭だけを少し、五%くらい上げろということかとも存じまするが、その点はそういう売り先と糸との均衡というふうな点から見て、その程度で行くのが穏当ではなかろうか、こう考えられるわけでございます。 それから生産者が共同保管を自主的にやつた場合には、これは必要に応じまして中金その他の金融の方をできるだけ強化したいと思っております。今般予算で三千二百万円ほど養蚕の関係の信用保証基金に政府が補助するというふうなことをやつております。これは閉鎖機関の蚕糸協会の生産の益金の方から出してもらうことになっております。民間団体におきましてもそれ以上の額を出して信用保証基金を作ろうということを画策しておりまするが、それの考え方も、繭のめど以上をやるために民間でこれを自主的にやります場合にも、信用保証基金で金融の方をバツクしよう。現在組合製糸等につきましてやります場合において、金融が大体において繭担保でありますが、一貫千二百円くらいなんです。それだけではなかなか集めにくいところが考えられます。どうしても商人その他の方ではより以上の高い値段で買う。今度の値段が大体千五百円をこしておりますから、そういう関係からいいますと、現在組合製糸その他製糸の方に銀行がつけておりますのがまあ千二百円見当になっておりまするが、それ以上の値段を払つてやらないとやはり乾繭共同保管がしにくい場合がございまするので、繭の担保としては千二百円でもよろしいが、その上に二百円でも三百円でも、とにかく二百くらいが適当でしようが、金融をしてくれ、その千二百円分は繭担保で中金がやる、しかしそれをオーバーした分は信用保証基金で保証してやるから金融をしてくれというふうな形で中金等とも話合いが大体できております。そういうふうな形で乾繭共同保管の融資は、できるだけ政府の方においても援助はしたいと思いますし、そういう形でいろいろ考えております。ことに今度、政府の方が発動して全国的に計画的に一部の数量をたな上げしてしまう。乾繭共同保管の場合には、もちろん政府の方において副賞や今の信用保証協会を活用しまして融資の限度を非常に上げていく。繭の集めにくいような値段じやなくて、最低繭価に近いところまで融資してやるというふうな形で融資の確保をはかるようにいろいろ考えておるわけでございます。しかしながら無制限に一般的に農協がやる場合に行うということは、これは中金とか信連とかが結局貸すわけでございまして、われわれの方は、実力があつて準備ができているところはできるだけの援助はいたしたいと思いますが、そういう制度にはできない。しかしながら最低繭価を割るおそれがありまして、政府がこの法律を発動いたしまして一定数量のものをやる場合には、その数量だけのものは政府としては、中金の金がなければ、場合によれば預金部資金を出してもらわなければならぬということまで考えて、できるだけ資金源も、それかから資金の量についても十分確保してやらなければ当初の目的が達成できませんから、その数最については政府で責任を持つと言っては語弊がありましょうが、政府もやつてもらいたいわけですから、極力金融に心配のないようにやるつもりでございます。しかしながら一般的に考えました場合には、これは従来の経験からいってもそうでございますが、繭が過剰になって値がくずれた場合には、製糸の方はずっと製糸工場を経営していくということから一定量はひいていかなければ経営が成り立たないから、過剰の分は産繭量の一部を市場から隔離してたな上げしてしまつて、それは相当の値段が出なければ売らない。それは政府が最後には買い上げるんだ、その保管中の金利くらいは全額政府が見るのだというので、強硬に一部たな上げをやりますれば、製品の方はあとの繭だけでどうしてもひいていかなければ経営が成り立ちませんので、それが最低繭価は十分維持できるのではないかというので、考え方としては一部をたな上げをしていく。それであとのものは全部価格が維持できる。そして現在製糸の設備としましては、産繭量七〇%そこそこのものですから、八割、九割の操業をやれば今のコストよりは一制、二割下げることができるわけです。製糸の方は原料をもっともっとほしい状態でございますので、政府がたな上げたものを、あるいは農協団体がたな上げたものは、大体半年も越してくれば、七割操業をやつておるところは九制操業でやればコストが二割も落ちることになって相当高く買えるわけです。保管の経費を全部補助しているから農協の方では十分売れる。商品の性質上むずかしいから、できるだけ全額を補助して農協が売りやすくする。二十二人しかない特別会計で、現場で一々繭か検収して品質の低下とか盗難のおそれのないように、こちらには責任がございますから、それをやっていくというようなことは、できるだけ少い数量で、できるだけ農協が売っていけるようにしてもらつて、それでもだめな場合には、政府が最後はそこを買うということで価格を維持したい、こういう立て方で考えているわけでして、米麦のように三段階で、全国団体が買つてしまつて平均売りをやっていくというような考え方には立っておりませんので、繭の出回っている間は保管しつ放しになりましょう。いわゆる平均売りという形でなく、相当長期間たな上げしておいて、製糸の方が端境期に向うに従って原料不足で高くても買いたいといったときに売り出すという考え方に立っております。そういうような関係からいたしますと、いずれも無制限というわけではなくて、市価が維持できる一定数量を、一部長期にわたって、たな上げするというような考え方でやつているわけでございます。そのたな上げの数量も、生産量と糸値といろいろなものを見合せましてきめなければなりませんので、そのときどきの状況で乾繭共同保管をやります団体と十分協議をしまして、これくらいやれば効力が十分だという点を見定めまして、それで有効な数量をやつていきたい、こういう考え方に立っているわけでございます。この考え方は繭の商品としての特性と従来のいろいろな経験等を考えますと、政府案程度でないしできないわけでございまするが、米麦その他を頭に置いておられる方からみると、それと似たような一歩進んだようなやり方で、こう考えられるかもわかりませんが、われわれの方としては、やはり、現状をもっていたしますれば、現在の改正法程度で十分効果は達成されますし、繭の性質から見ますと、その程度のやり方がいい、下手に米麦並みに、全部握つて平均売りをやるというようなことは、倉庫を持たず、乾繭の技術とか人とかいうふうなものを持たずに、いきなりそれを強行するというようなことは、かなり危険が多いのではないか。過去における経験もそれを示しているように考えられますので、最低繭価を割ります非常措置としてそういうふうにやつていきたい。それ以外に乾繭が適当だと思われるような地帯がやはりあちらこちらにございます。そこで農業同体が乾繭共同保管をやつて、繭価を維持しようというような行動につきましては、もちろん先ほど申しましたところの信用金庫であるとか、その他農業団体を通じての中金の融資であるとかいうふうな点で、できるだけの援助をやつて参りたい、こう考えておるわけでございます。
○中馬小委員長 これにて本日は散会いたします。 午後零時五十一分散会