内閣委員会 第49号
- 発言数
- 236 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1955/07/28
会議録
○宮澤委員長 これより会議を開きます。 憲法調査会法案を議題とし、これより質疑に入ります。通告がありますから順次これを許します。森三樹二君。
○森(三)委員 私はこの憲法調査会法案につきまして、提案者の古井君にお尋ねしたいと思うのであります。 提案者は、この憲法調査会法案の提案理由の説明として、この現行憲法が、連合国最高司令官の制限のもとに置かれておった時代に制定された、いわゆる自主的でない、自主性のない憲法だと言われますが、われわれは昭和二十一年の六月中旬より十月中旬に至る約半年にわたる期間において私も憲法制定委員といたしまして、現在の予算委員会のあの部屋において、連日慎重審議をしたのであります。その、われわれが国会の権威によって決定いたしました憲法を、あなたはみずからこれを否定するがごとき、自主的でない憲法と言われる理由はどこにあるのか、一応御説明願いたいと思います。
○古井喜實君 憲法が制定されました当時の実情は、後になって明かになればなるほど無理があったと思うのであります。総司令部が憲法の草案を作りましたあの状況、それからまた日本国政府に対して臨んだ態度、その当時要請した点、そういう諸般の情勢から見ましてなるほど議会の審議はございましたけれども、ワクをはめられた審議であったことは疑いのない事実だと思います。そこで私どもはこの憲法制定の経緯におきましては、日本の国民のほんとうに自由な意思が表明されていると考えることはできないのであります。 〔委員長退席、高橋(禎)委員長代理着席〕 そういう意味で、提案理由にもあのように申し上げているわけであります。
○飛鳥田委員 議事進行について。今の提案者の説明を聞きますと、現行憲法は少くとも自立性がない、日本の国民の自主的な意思決定によってでき上ったものでない、こういう御答弁であります、昨日の提案の趣旨の説明を拝見いたしましても、自主的な憲法でないということが強調せられております。しかし、およそ法律にして、みずからの意思によって決定をされていない法律、他人の意思によって支配された法律行為、こういうものの効力のないことは歴然といたしております。すなわちかくのごとき説明をせられるのは、現行憲法が無効であるとの御議論であることは、一点の非の打ちどころのない御議論だと思うのでありまして、すなわち、これは憲法調査会法という法律の名のもとに、実は現行憲法無効論を密輸入するものだ、こう言わざるを得ないのであります。もし現行憲法が無効だとするならば、それによって構成せられている国会もまた無効でなければならない。それによって選任せられている総理大臣またよりどころを失ってしまうのであります。こういうような言説が平然とこの国会の中で行われることは実に重大であります。それは国会に対する侮辱であり、日本国に対する侮辱であります。こういうものは、当然委員長は、その権限において速記録から抹消せられることを私は確信いたしますし、この点について抹消の動議を提出する次第であります。あるいは御説明をなさる提案者は、これは西独の基本法のように暫定的な憲法であるという議論をなさるかもしれません。そういう意味で言ったのだとおっしゃるかもしれない。だがしかし、暫定憲法であれ、恒久憲法であれ、それがみずからの自由なる意思決定に基いたものでなければならないことは明白であります。暫定憲法あるいは仮憲法というものは、自由なる意思に基く点においては同様でありますが、ただ時間的に制限があるということに特徴があるだけであります。従って自主性がない、日本人民の自由なる意思決定に基いてでき上ったものでないという御説明は、すなわち現行憲法の無効を主張するものたといわざるを得ません。そうした意味でかかる御説明、答弁は、当然この国会の速記録から削除をせらるべきであります。もし削除をしないとするならば、それはわれわれがみずからをあざけるものであり、また日本国を侮辱するものであることは疑いを入れない。これが動議の第一です。 第二には、こうした議論の生じまする問題については、当然諸種の資料が提出をせられなければならない。現憲法が制定をせられましたときに行われました審議録で、そのうち秘密になっておるものがあります。これを即刻公開をせられるよう動議を提出する次第であります。 すなわち第一に、ただいまの提案者の説明及び昨日の提案理由中、現行憲法が自主憲法でないという点を削除すること。第二には、第九十議会において行われた憲法議事録のうち秘密となっているものを即刻公表せられるよう動議を提出いたします。この問題については理事会を開いて御決定をいただきたいと思います。
○高橋(禎)委員長代理 ただいま飛鳥田君から議事進行に関して動議の提出がございました。議事進行の発言において動議を提出することについてはいろいろ問題もあると思いますが、きわめて民主的にこの委員会を運営するために、飛鳥田君のただいまの御発言に関して採決をいたしたいと思います。飛鳥田君の動議に……。(「動議に対する発言がある」と呼び、その他発言する者多し)飛鳥田君の動議に対して賛成の諸君の起立を求めます。(「動議に対する意見を聞くべきだ」「鈴木義男君から発言を求めている」と呼び、その他発言する者多し)それでは鈴木義男君。
○鈴木(義)委員 ただいまの動議については私は満腔の賛意を表するものでありまして、どうもこの国会における言論がはなはだしく軽率であり、みずからを卓しめるがごとき発言が公然と行われておることに対して、非常な憤りを感じておる次第であります。 当時総司令部は、日本の国会に向って、また各政党に向って憲法草案を作ることを慫慂し、また政府に対しても草案を作るべきことを慫慂し、政府におきましては現実に作ったのであります。ところがそれを見ると、ほとんど明治憲法に毛がはえた程度のものにすぎないのであります。ポツダム宣言においては、日本の民主化を徹底的に行うことを一つの条件として休戦を受諾しておるのであります。ゆえに日本と交戦しました十三カ国においては、この機会に日本がほんとうに近代的な民主国家に生まれかわることを期待するということを総司令部に指示し、その結果総司令部は、他の点はともかく、日本の民主化という点については全力をあげてこれを指示し、あるいは指導するということを言ったことは、公知の事実であります。しかるに、日本側の提出するものは、共産党が出したものですらも十分に民主的でないというようなわけで、その他は幾多の封建的な遺制を持っておったのでありますから、そこでこれは、思い切って近代的諸国のあらゆる憲法を比較研究した上において、適当な原案を示さなければならないということになって、ああいうものが示されたことは歴史的事実として明らかなことであります。しかし日本は、これを日本の国会において国民の選挙したところの公正な代表者によって十分自由に討議することを期待する、そして修正すべき箇所があるならば遠慮なく修正していくようにということを指示せられておったのであります。そういうことは、この秘密になっております会議録等が公表せられますならば、はっきりしてくるのであります。私はこの秘密議事録を公開することには前から賛成をいたしておったのでありますが、ことにこの憲法改正をしなければならぬという議論が起ってきた以上は、何をおいてもこれを十分に調査することが大切な条件になるわけであります。御承知のように、逐条審議をしてどの条文を修正すべきかということは、大きな委員会で審議するのは適当でない、本会議などではもちろんであります。そこで各党各派からごく少数の代表者を出しまして小委員会を構成して、これを秘密会として、そうして遠慮なく各条文について修正すべきものは修正するという態度をもってやってきておるのであります。この速記録が明らかになりますならば、相当公正に自由に議論が交換されたということが明らかになるわけでありますので、幾多の箇所について修正が行われていることも明らかになるのであります。そういうことを無視して、まるで無責任な言論機関などは修正したのは二カ所だけだ、あとは与えられた通りやっていたのであると言ってみたり、われわれはなはだ心外に存ずるのであります。歴史的事実は有利、不利を問わずこれを公開すべきであります。争いの渦中にある場合、あるいは進行中は秘密にしなければならぬことがあることはある程度認めますけれども、一定の時間を経過し、その必要がなくなったときには歴史的事実は関係者に有利、不利を問わずこれを公開することは正しいことであります。そういう意味において私は公開することを希望いたす次第であります。現在の憲法を正しい態度で修正しあるいは訂正することは差しつかえありません。賛成、反対は別として、差しつかえありませんが、ただいまのように無責任に必要以上に現在の憲法を侮辱する必要がどこにありますか。与えられた憲法であるとか、押しつけられた憲法であるとか、自主性のなき憲法である、国際法上無効な憲法であると言ったり、はなはだしきは将来作るところの理想的憲法とこのマッカーサー憲法とを比較して国論に問うなどと実に現憲法を侮辱するような発言を平気ですることが許されてよいものでありましょうか。しかもそれが数の力でもって差しつかえないというような結論を見出すようなことは、議会が理性に従って議事を進めておるということを国民に疑わしめることに相なると思います。どうかそういう軽率なる発言はお取り消しを願いたい。今後この憲法改正を論ずるについて現在の憲法は正しい手続を踏んで制定されております以上、これに十分の敬意を表しつつ、これを尊重し擁護する、この九十九条の義務を尊重しながら改正のことを進めていただきたいと考えます。それが一つと、それから秘密になっておるところの小委員会の速記録をこの機会に一つ公開して、われわれがこれを十分に調査いたしました上でこの憲法調査会の問題を議したいと存ずるのでありますから、まことに適切な動議でありまして、満腔の賛意を表する次第であります。
○床次委員 ただいまの動議は提案者の説明に使用いたしました言葉に対してこれを取り消せという御意見であります。まだ提案者から十分な説明を聞くべきものである。いわんや動議の対象となりました事柄に関しましては、現行の日本国憲法が果して十分な自由のもとにおいて制定せられたかどうかということに関しましては、それぞれ主観によって著しく違うのであります。動議の提案者におかれましては、自由があったと言われますが、提案者におかれましてはその自由が相当束縛せられておったことを認めて、しこうして説明を加えておるのでありまして、その説明の用語をもって直ちに取り消せということの動議に関しましてはまことにわれわれ承服しがたいものであります。従ってこの動議に対しましては反対の意を表するものであります。 なおあわせてここに動議を提出いたしますが、この問題に関しましてこれ以上議論を続けますことは時間の空費と存じますので、すみやかに採決あらんことをあわせてお願い申し上げます。
○高橋(禎)委員長代理 それでは飛鳥田君の動議を直ちに採決すべしという床次君の動議に対して御賛成の方は起立を願います。 〔賛成者起立〕
○高橋(禎)委員長代理 起立多数。それでは床次君の動議の通りに決しました。次に飛鳥田君の動議の採決をいたします。飛鳥田君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○高橋(禎)委員長代理 起立少数。よって動議は否決いたしました。質疑を継続いたします。 〔「憲法改正の秘密議事録の公開に関する件を採決しなければだめじゃないか」と呼び、その他発言する者あり〕
○高橋(禎)委員長代理 飛鳥田君の動議の全部について採決したわけでありはして、すでに否決されましたから質疑を続行願います。森君。——森君、質疑を続行願います。
○森(三)委員 それでは私は発言を続けますが、ただいま飛鳥田君より出されましたこの憲法は自主的憲法でないという点に関しましてわれわれの動議を否決されました。まことに遺憾でございますが、これに関しまして憲法改正の委員会当時秘密会議の議事録が存在しております。これを公開いたしまして、われわれは国会ばかりでなく、広く国民全体にこの秘密議事録の経過を十分了解せしめることが必要でありまして、われわれはこの憲法調査会法案の成立に当っては何ら秘密を存することなく、明らかにせられなければならぬと思うのであります。それをしも与党並びに自由党の諸君はこれを否決されるという態度に対しましてはまことに遺憾であります。 続きまして古井委員にお尋ねしますが、あなたは自主的憲法でないと言われるが、われわれはいわゆる明治憲法にいたしましても、あの明治憲法制定当時は、伊藤博文あるいは伊東已代治というような博学な方々がアメリカあるいはヨーロッパ各国を調査し、そうして学者あるいは政治家の意見を十分しんしゃくして明治憲法は制定されたのでありまして、いずれも各国の先進国の憲法を十分に吸収していることは事実であります。従いまして非常に非民主的といわれたあの明治憲法においてもいわゆるドイツのバイエルン憲法を取り入れておる点が多々ありますが、われわれは日本の現行憲法を制定するに当りましても、三百年の歴史を有するアメリカの憲法の条文あるいは平和主義、民主主義、そうして基本的人権を守るというような非常にすぐれた長所のあるところの先進国の意見を聞くことは、これは当然でなければならないと思うのでございます。いかに憲法を改正せんとしても、この現行憲法に規定されておるところの平和主義と民主主義と人権尊重のこの要点については、これは古井委員としてもすでに認められておるところでありまして、いわゆる先進国の意見を十分に取り入れたところの憲法がなぜ自主的憲法でないと言われるか。この三原則をあなたは前進さす気持であるのかあるいは後退さす気持であるのか、この点について御答弁を願いたいと思うのであります。
○古井喜實君 ただいまの憲法の基本的な原則になっております民主主義、平和主義、また基本的人権の尊重、この原則はわれわれはまことに尊い大きな原則であると思っております。そこでこの基本的な原則はどこまでも維持していくことがわれわれはよろしいと思っております。そこでこの点につきましては憲法の改正を論ずるにいたしましても、いわゆる反動的な、ただいまのような大事な原則を逆にひっくり返すということを当初から意図して考えるものでは毛頭ありません。ただしかしこのりっぱな原則が憲法に含まれておるからといって、ほんとうに自由な日本国民の意思を元にして作られたかどうかという問題は別個の問題でありまして、これはおのずから問題が異なると思うのであります。
○森(三)委員 憲法制定当時におきましても、一つの例をとるならば、現行憲法の前文の中に「ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」とあります。また憲法第一条の天皇の象徴の条文の中でありますが、現行憲法では「主権の存する日本国民の総意に基く。」とこうありますが、原案には「主権の存する」という言葉敵なかったのであります。それから前文の中にも主権が日本国民全体に有するものであるということをいわゆる改正しているのであります。これは原案にはなかったのであります。こうした民主主義の原理というものを原案にもなかったものをわれわれはここに強く主張して入れてあるのでありまして、あなたがこの点を御存じであるか御存じでないか存じませんが、われわれみずからあの憲法改正委員会においては——あなたは自主的でないと言われるけれども、この主権在民の憲法はわれわれの手によって表わしたものでありまして、いわゆる当時の司令部の意向としても、主権が国民に存するという言葉はなかったのであります。われわれみずからがやはり憲法審議の過程におきまして、このような条文を改正することができ一また前文その他各条文等にわたりましては、あとで古井さんに御質疑いたしますけれども、われわれが多々改正している点がある。しかるにあなたは全面的にこれを圧迫されたところの非民主的な憲法であると断定されることはまことに行き過ぎである。こういうような考えを持って封建制を復活せんとするところの憲法を制定するというお考えに、私はどうしても承服することができないのであります。われわれが憲法改正当時、原案になかったところの幾多の民主主義の規定、あるいは平和主義を含んだところの改正をしたことを、あなたはどのように考えておられるのか、この点をあなたが十分調査されて、昨日のような提案理由の説明をされたのかどうか、この点についてお答えを願いたいと思うのであります。
○古井喜實君 この憲法制定当時における経緯につきましては、日本においてもアメリカにおいても当時の実情がだんだん公けにされてきまして、もはや周知の事実になっておるものが多いのであります。これによりますと、マッカーサー司令官がホイットニー代将に憲法草案を作れと命じてから、一体草案を何日間で作ったのか。もう疑いもなく、二月の初めにホイットニーに命じてからわずか一週間の間に、司令部における軍人が作り上げたものであります。それを日本国政府に二月十三日に、当時の外務大臣、松本国務大臣に、この草案を提示して、その際にこの基本的な原則並びに根本的な形式——ファンダメンタル・プリンシプル、それからベーシック・フォームズは変えることができない、こういうことを言い、そして日本の政府に草案のごとき憲法を作れといって臨んだことは、れっきたる事実であります。私どもはかような経緯から考えましても、ほんとうにわれわれが自由に作ったる憲法だとは考えることができません。皆さんは、これを自由に日本国民が作ったる憲法とお考えになるならば、まことに私どもは遺憾ながら見解を異にいたします。 なおまたこの憲法の改正に臨むわれわれの態度について、封建制を復活するのだとだれが申しましたか、われわれはそういうことを少しも言ったことはありません。国民の自由な意思で考えて、最善とする憲法を得ようということを言っておるのであって、これを封建制の復活であるとか、反動憲法を作るということは独断であります。かつてわれわれはそういうことを申したことはありませんから、この点については、誤解なさらぬことをお願い申し上げます。
○森(三)委員 ただいま古井君から御答弁がありましたが、いわゆる日本の当局が憲法の改正案を作るにはあまりにも遅々として、しかも明治憲法の天皇の統帥権あるいはその他基本的人権、あるいは家族制度等を維持せんとしておるところの態度に対して、司令部からそうしたところの意向が生まれてきたものであって、われわれはかりに司令部からそうしたところの案が出たにしましても、少くとも平和主義、民主主義、基本的人権というような、いわゆる人類の基本的な倫理に立ったところの、この平和憲法というものは、世界人類の不変の私は原理でなければならぬと思います。日本国民だけが、世界の人類の不変の原理に反するところの憲法を持つということは、私は許されないと思う。しかも私は先ほども申し上げましたように、われわれは憲法改正委員会においては、主権が国民に存するという主権在民の規定までも挿入したということを申し上げておる。決してその原案にわれわれは拘束されず、しかもわれわれは当時司令部ともいろいろ交渉いたしましたが、国会はみずからの権威によって、それこそ自主的に自由にこれを決定するところの権限があるのであるというようなことも、われわれはしばしば折衝の過程において十分認識しておる。しかもあなたは、今封建制の復活でないと言われますけれども、私は民主党の考えておるところの天皇制の問題にいたしましても、聞くところによりますし、民主党は天皇制に対しましては、いわゆる象徴的な天皇から元首的な天皇にこれを変更せんとするやに承わっております。そしてまた家族制度等についても、現行憲法に基くところの財産制あるいは人権の平等等に対しましても、相当の変更を加える、このような民主党の政調会等における考え方を、われわれは聞いておるのでありますが、この考え方につきましては、どのようにあなたはお考えになっておるか。
○古井喜實君 ただいま、聞くところによればということで、民主党の政調会はこういうことを考えておるらしいという意味でお尋ねでございましたけれども、民主党の政調会において、さような見解をかつて決定いたしたことはございません。これははっきりした事実であります。すべてはあなたの御想像にすぎないのであります。私どもは憲法の改正に当っては、国民全体の、各界、各層全体の討議を尽して、国民全体の議を尽した上で、片寄らない改正案を得たいということを望んでおりまして、ある一つの方角に憲法を持っていこうなどということはかって考えたこともなければ、この憲法調査会法案のどこにもそういうことはないのでありますから、その辺につきましては誤解のないように、われわれの真意と法案の正確な御理解をお願いいたしたいと存じます。
○森(三)委員 古井君のお話によりますと、広く国民の意見を聞いて、そしてこの民主的な憲法を改正したいというような御意向でありますが、その言やまことによろしいようでありますが、しかしその政党あるいは政府等の考えておるところの改正の意図というものはどこにあるか、これは言わずと知れたところの、その発端はとりもなおさず憲法九条に基くところの戦争放棄の規定、あなた方がお考えになっておるところの最も重要なものはどこにあるかという点でありますが、これに関しまして、あなた方はそれならばどういう点を改正するためにこのような調査会を作るのか。改正の必要がなければ、私は調査会というようなものの構成は必要ないと思うのでありますが、あなた方は改正を意図せられておるのであるから、われわれはこのような点を改正する考えがあるんだという点が多々あるであろうと思いますから、これを条項だけでもよろしいからお示しを願いたいと思うのであります。
○古井喜實君 私どもは憲法第九条を改正するだけのために、憲法の改正の必要を論じておるのではございません。憲法各章全般にわたって、再検討したいということを言っておるのであります。つまり再検討と申すのは、言葉の通りに一ぺんよくみんなで徹底的に考えてみて、そして果して改正の必要があるか、改正すべきものであるならば、どういうふうに改正すべきかということを検討してみようといっておるのでありまして、再検討することさえもできないというはずはないと思うのです。従って今日の問題は再検討すべき問題点がどこにありやということにすぎないのでありまして、この点につきましては、憲法の各条章にわたってわれわれは検討を加える価値があるという問題は山ほどあると考えております。しかし改正すべしという結論は、この調査会で審議し、国会で審議し、そうしてきまるのでありますから、再検討の問題点ということをわれわれは考えているにすぎないのであります。そういう意味のお尋ねではないようでありますので、重ねてそういう意味でありますれば申し上げることは一向やぶさかではございません。
○森(三)委員 古井委員の言われるのには、われわれは今憲法九条を改正するとか、どこを改正するというようなことは考えていない、抽象的に憲法全体に対して再検討を加えたいからこの調査会を作りたいのだというようなお話でありますが、これは私はとんでもない話だと思う。憲法九十九条には、天皇、摂政、あるいは国会議員、国務大臣、その他裁判官すべてが現行憲法を尊重し擁護するところの義務を規定されておるのでありまして、改正するところの必要性があってこのような調査会を作る、このような点を改正したいから、われわれはこの点について国会議員あるいはその他の学識経験者、その他世論を検討して、そうして改正案を作ってみたいのだ、こういうならまだしもでありますが、ただばく然とこの憲法を再吟味して、変えるところがあるならば変えるべきだ、このような考え方を持つことは、私は非常に危険であると思うのであります。しからばあなたは、憲法九十九条に規定されたところの憲法の尊重と擁護、われわれ国会議員も課せられておるこの重大なる条項に対しましてどのようにお考えになっているか。われわれは不断にこの憲法をあくまでも守るという基本的な考えに立って、われわれの政治活動、議会活動等をしなければならない。しかるにこれを全く顧みないで、あなたはこれはばく然と再検討するというならば、私は憲法調査会のごとき制度を設けることは全く必要がないと思う。そういうならば、むしろあなた方の政調会におきまして一応根本的な検討を加えて——各党にはそれぞれの政策その他あらゆる問題につきまして検討するところの政調会があるのでありますから、その機関において十分検討されて、それから出直すべきが当然であって、いきなり抽象的に、どこを改正するかというめどもつかないままに、ただわれわれはこの憲法調査会を作って、そうして憲法を再検討するんだということは、まことに議員とし、また国会といたしまして、憲法九十九条のこの憲法擁護と尊重の規定に反するところの行動であると私は考えております。この点につきまして明確なる御答弁を願いたいと思うのであります。
○古井喜實君 この憲法は絶対に改正する必要がないんだ、改正することはいけないことだという見解をお持ちになる方は再検討の必要もないでありましょう。しかし改正する必要ありという人と、また少くとも憲法制定の経緯にかんがみ、また実施の経験にかんがみて、一ぺん国民全体で考えてみる必要ありという人とは再検討の必要を認めると思うのであります。私どもはそういう意味で、国民の多数は今日やはり独立の立場に立ちまして、政治的に自由に考え得る境遇に置かれました以上は、一ぺんこの憲法を再検討してみたいという希望を持っておるのが多数であると信じております。憲法九十九条につきましては、私どもはこの憲法を不法不当にじゅうりんするようなそういう事実に対してはこれを排除することを、あるいは立法上あるいは行政上あるいは司法上求めておるのでありまして、憲法が認めた適法な改正をすること——これは憲法が明らかに認めておることでありますが、適法なる憲法の認めた改正をする調査研究をすることまでもこの憲法は否定していない、これは私は問題の余地はないと思います。そういう意味で、九十九条の関係においても問題の点はないと信じております。そういうふうに御了解願いたいと思います。
○森(三)委員 時間の関係もありますから、私はあとから質疑するとしますが、今古井さんは、それでは絶対に憲法改正をしないという意向なのか、憲法改正ということは考えられないのか、こういうような反間的な答弁をなされましたが、もちろんわれわれも憲法改正の必要の生じました場合においては、そして全国民の世論が喚起されまして、改正の必要が生まれました場合においては、われわれは改正することはあり得ると思うのでありますが、憲法が昭和二十一年に制定せられ、実施されましたのはその翌年の五月三日でありまして、いまだ十年の歳月をたっておらないのです。その十年の歳月がたたないうちに——実施されましてから二、三年たつかたたぬうちに、保守党の諸君は憲法改正論を相当になされる方が現われておる。特に憲法改正の委員会の委員長でありました芦田均氏は、あの本会議において涙を流して現行憲法を賛美し、われわれは子孫とともに永久にこの憲法を守って、戦争の惨害を再び起してはならないということを言われ、当時共産党の諸君四名を除いては、万雷のごとき拍手をもってこの憲法は通過しておるのであります。その芦田均氏は数年を出ずして憲法改正論を唱え出し、その憲法改正論を日本の国民に講演その他宣伝をして歩いており、みずから憲法改正の世論を作るようなことをされておることに対しましては、まことに遺憾にたえないのです。古井氏が、憲法改正の必要があって、このような再検討を加える時期が到来していると言われるならば、どういうところの条文を一応改正したいのだというめどがなくては、あなたがこの調査会の構成に関する法律案をお出しになる意味はないと思うのでありまして、おそらくあなたの胸の中には憲法九条を初め、その他たくさんの改正点がおありだと思うのであります。これを率直に御答弁願いたいと思うのであります。
○古井喜實君 ただいま今の憲法が実施されてからたった二、三年だというふうに言われたけれども、まさに八年間を経過しております。すでに八年間の実施の経験も持ちました。それから独立いたしましてからすでに三年以上にもなっております。私どもはこの制度の経緯と、その後における八年間のこの相当の期間の実績経験等から考えて、再検討する時期いまだ到来せずという見解には遺憾ながら賛同いたしかねるのであります。御質問のお立場におかれても憲法改正の必要は認めるというお話でありました。おそらくそうでありましょう。社会党左派の綱領にも、憲法は将来は改正するのだということが明らかにされております。ただ、今は改正するときでない。この綱領を拝見いたしますと、「平和的な社会主義権力はつぎのような過程を経て成立する。」この中の三に「中央議会では安定した絶対多数の上にたって、社会主義の原則に従って憲法を改正し、基本的な産業の国有化または、公有化を確立し、行政司法の諸機関や教育、新聞、出版、放送などの諸機構を社会主義の方向に適応させる。」と書いてあります。そこで改正の必要はあるが、今段階では、つまり多数勢力を持つまでは改正の必要は認めないというお考えのように承知するのでございますが、私どもは社会主義の原則に従って改正するというようなプリンシプルを立てるのではありません。国民全体の考えによってきめようというのであります。 そこで改正すべしというのではなく、検討を加える必要のある問題ということでありますならば、全章にわたって幾らでも指摘かできるのであります。試みに順序は逆でございますが、終り方から問題点と私が考えますものを拾ってみますと、第八章地方自治、この中におきまして「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」という規定がございます。選挙は必要でありますけれども、直接選挙するということまで憲法で制約するなんということは少くとも再検討の必要がある。また第七章の財政の章を見ましても、予算を伴う法律案あるいは予算の増額修正が無条件に認められてよいかどうか、各国の立法例に徴しても検討の必要があろうと思います。第六章の司法におきましても、最高裁判所裁判官の国民審査制度のごときも再検討を加える価値があると思います。また第五章内閣の章におきましても、国務大臣の任免の方法などについても検討を加える必要もあるかと思います。第四章の国会におきましても、参議院のあり方等についても、また任期等についても検討を加える必要はあると思います。さらに第三章の国民の権利及び義務の章におきましても、かかるばく然たる公共の福祉という名において基本的人権が限局される危険のあるこの現在の規定は検討の要がある。公共の福祉の名においてあらゆる基本的人権に制限を加え得るかのごとき誤解を与える第三章についても、むしろかかる権利を重視尊重する立場から検討を加えるべき必要があると思います。第二章の戦争放棄、第九条につきましても、もとより再検討の必要を認めます。第一章におきましても、たとえば国民投票を施行する場合の公示などのことも検討を加える点はあると思っております。そのほかにもございましょうが、およそただいま申し上げますごとく、各章にわたって検討を加える点はたくさんあると考えております。
○森(三)委員 私は質疑を留保します。
○高橋(禎)委員長代理 鈴木君。
○鈴木(義)委員 私のお聞きしたいことはたくさんありますが、総理に対する質問は留保しておきまして、提案者にお尋ねいたします。 調査会を内閣に置くということでありますが、内閣に置く調査会を議員が発案なさって立法する、変な話であります。内閣で出す方が常識であろうと思うのでありますが、一体憲法改正の発案権はどこにあると提案者はお考えになるのか。
○古井喜實君 憲法改正の提案権、発議権の問題は、この国会でもすでにしばしば議論されたところだと思っております。それは国民投票に関する発議権は国会にあることは明瞭きわまることだと思います。そこで国会の議決の段階において議案を発する問題、この点につきましてはむろん国会にありましょう、同時にまた内閣にもある、こういう見解を私どもは持っております。
○鈴木(義)委員 両方にあるというお考えのようでありますが、通常の法律案のような場合においてはそれはそう考えて差しつかえないでありましょう。しかし憲法を改正するというような問題は、この憲法を作ったときの精神というものが大事でありまして、憲法には何と書いてあるか。現在の憲法には正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、この憲法を確定すると書いてあります。そしてこれと照応して、御承知のように、第九十六条に、この憲法の改正は国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならないとある。この前文と第九十六条とを照合すると、一点の疑いもなくこれは国民の代表たる国会のやるべき仕事であるということを示しておる。作るときに国会が作り、これを修正する場合に国会がみずから自主的に行動をせずに、政府に頼んでそこにいろいろの人を集めて委員をこしらえて、それがいろいろ審議をする。 〔高橋(禎)委員長代理退席、委員長着席〕 国会に憲法調査会をこしらえて、ここに学識経験者その他の意見を必要とするならば、これを嘱託としてあるいは専門員としていろいろな形で委嘱するに何の差しつかえもない。これを修正するならば、何ゆえにこの憲法をみずから作った国民の代表たる国会が発議の権をとってそういう方法でいくお考えにならないのであるか、まことにふしぎに存ずるのでありますが、何かその根拠をお示し願いたい。
○古井喜實君 憲法改正は結局最終的には国民投票によって決するわけでございますが、その発議の権は国会が両院のそれぞれ三分の二以上という多数をもってきめるのでありまして、国会の意思がこの段階において十分に表明することができる、国会の意思が中心になることは、この憲法の改正手続において明らかでございます。国会は国会が発議します場合の前段階の議決におきましての議案に拘束されるようなものではございません。国会は自由に審議し、自由に論じて、そしてそれぞれ三分の二以上という多数が賛成して初めてこの改正の発議権があるのでありますから、国会を重視するという考え方においては少しも支障はないわけであります。でありますからお尋ねのような意味からわれわれは少しもはずれておるとは思っておりません。以上のような次第であります。 なお国会に調査会を置くということもむろん一案でございましょう。しかし政府に調査会を置くこともできないわけではありませんし、なお政府の調査会も政府のみならず国会に対しても審議の結果を報告するということにもなっておるのでありまして、これはいずれかの形でなければならない、一方は成り立たないというものではないと考えます。
○鈴木(義)委員 ちっとも満足のできない、わけのわからない御答弁でありますが、これで一応提案者に対する質問を打ち切りまして、総理大臣に対して質問をいたします。 ただいま提案者に聞いておりましたが、総理大臣に聞きたい点がございますから、総理大臣の御意見を承わりたいが、総理大臣は憲法改正の発議権あるいは発案権はどこにあるとお考えになっておられまするか承わりたい。
○鳩山国務大臣 国民に発議する場合におきましては国会にあります。国民に発議するのでなければ、つまり国会の意思を決定してもらう場合においては政府にもあるし、国会にもあるし、両方にあると思います。
○鈴木(義)委員 私が聞かんとするのはそういう形式的なことでなく、この憲法というものは一体どこで作ったものであるか、改正したものであるか、この憲法の前文に「正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」「この憲法を確定する。」こう申して——いいですか、国民の正当に選挙された代表者を通じてこの憲法を作って、宣言するのである。そうして九十六条へきて改正については「この憲法の改正は」「国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。」こういうふうにうたっておるのであります。この精神は国民の代表者たる国会において作ったのであるから、同時に改正するときも国会が自主的に発議の権をとって、そして改正をするんだということをうたっておるのではないか、こうお尋ねしておるのであります。
○鳩山国務大臣 憲法九十六条のただいまお読みになった条文は、発議というのを国民につながって読むべきものだと思います。国民に発議をする場合においては国会が発議をする、しなくちゃならぬ。
○鈴木(義)委員 そこで発議をする場合というのが、普通の法律案や何かならば政府が作って国会に持ってきてもよろしいけれども、憲法は国民の代表者が慎重審議して作ることが建前であるから、改正についても国会が自発的にその発議権をなるたけとることが憲法の予定しておる精神ではないかということをお尋ねする。
○鳩山国務大臣 私はそうは考えません。国会の意思を聞く場合においては政府にも提案権があるものと考えます。
○鈴木(義)委員 一体この精神から見て、憲法を改正するについて国会に憲法調査会なり憲法改正審議委員会なりしかるべきものを作って、そうしてもし必要があるならば、学識経験者その他の者も適当な名称、地位において嘱託をして、そうして国会が慎重にこれを審議して原案を得ることが憲法の精神に合致するものとわれわれは考えるのであるが、総理大臣はいかがお考えであるか。
○鳩山国務大臣 国会に作るのも一つの案であります。一つの方法であります。しかしながら内閣に置くのもまた一つの方法と考えます。民間人を割合に多数に入れるような場合においては、内閣に作る方が便宜であると考えました。
○鈴木(義)委員 私はどうもこの憲法改正について、はなはだ憲法の根本精神を無視するように感ぜられるのであります。民主主義を看板にしておる鳩山総理大臣にも似合わしからぬ。一体最初は国会に置くと言っておられたが、いつから変ったのか、どうもそこに明朗ならざるものがある、論理的に一貫ぜざるものがあることを指摘せざるを得ないのであります。 そこで総理大臣にお伺いをいたしたいが、一体この憲法は自主的に作ったものでない、押しつけられた憲法であるというふうに提案者が主張しておるのでありますが、総理大臣も同様の御意見でありますか。
○鳩山国務大臣 この憲法は占領治下において作られたものということは、すべての人が知っておる通りであります。占領治下に作られて、しこうしてきわめて短期間に作られたものであります。その後の施行状況から見ましても、幾多の検討すべき点があると思うのであります。これらの諸情勢のもとにおいては再検討するというのが最も適当した方法であろうと考えます。
○鈴木(義)委員 占領治下において作られたということは、これは事実でありますが、占領治下において作られたるものはすべて自主的でないというわけにはいかない。ことに議会においても、政府の属僚といっては失礼であるが、官僚のお作りになった原案を慎重審議をして、無修正で通すこともある。あるいは若干の修正をして通すこともある。これが自主的でないとだれか言い得るでありましょう。いわんや憲法のごとき、十分に時日をかけて——従来の法律案の審議において前後を通じて三カ月もかけて両院を通じて審議したものはそうないのであります。これだけにかかって、それだけの町間を費やして、逐条審議をやっておるのであります。修正した点も幾多あるのであって一しかもその後一年たった後、二年に至らざる間に、これが運用上はなはだ不都合であって、どうしても修正してもらわなければならぬというものがあるならば、遠慮なくその条項を申し出て修正したらよかろうという勧告すらあった。その必要を認めないということが当時の返答であった。そういう経過を経ておるのに、何ゆえ自主的でないと言い得るのであるか。また短時日の間に審議したものであるから不完全であると言われるか、どんなに長時間をかけて丁重に審議したものでありましても、翌日これを修正することを必要と感ずるようなものもあるのは、法律などというものにおいては常にあることであります。ただ問題は国家の根本的たる憲法のごときものを、多少の不便があるとか、あるいはこうやった方がなおいいとかいう程度のもので、そう軽々に短時日のうちにたびたび修正すべきものでないのではないかということがわれわれの考えておるところであります。総理大臣はその点についてどうしても猶予することはできない、急いで調査会を作り、修正案を作らなければならぬ、そういうふうにお考えになっておるのであるかどうか、いま一度お伺いいたします。
○鳩山国務大臣 私はできるだけすみやかに憲法を再検討することが適当と考えております。
○鈴木(義)委員 しからば総理大臣にお尋ねをいたしたいが、どういう点がこの憲法において——できれば逐条的に御質問したいのでありますけれども、私に与えられた時間はごくわずかでありますから、そういうことはできない。やむを得ず概括的にお尋ねをするわけでありますが、総理はどういう点が主として修正を必要とするものとお考えになっておるか。要点だけで御指摘を、願いたい。
○鳩山国務大臣 私は具体的にどこをどうしたらよいかということを持っておるわけではございませんが、(「何も持っていないのか」と呼ぶ者あり)持っていないわけではございません。この点をどうしたらいいかというような改訂を必要とするというような点は各所に持っておるわけであります。それは議会において山崎君の質問に答えたときに申しましたような諸点について検討を加えた方がいいと思います。それをここでもう一度言う必要があるなら言っても差しつかえありません。
○鈴木(義)委員 審議の必要上一つおっしゃっていただきたい。
○鳩山国務大臣 私はいろいろの点にありますけれども、基本人権と公共福祉との関係についても検討する必要があると思います。国会制度においては参議院のあり方、あるいは衆議院の解散権等について検討を加えた方がいいと思います。最高裁判所が憲法を解釈するについての、いわゆる憲法裁判所とする必要があるかどうかというような点についても、検討を加えた方がいいと思います。また内閣の制度についても総理大臣の権限について考えた方がいいように考えます。また財政についても予算を増額修正するということの必要ありやいなやということについても検討を加えた方がいいと思います。また公けの財産の使用についても検討した方がいいかと思います。地方自治の問題についても検討する必要があろうかと思います。そのほかにたびたび問題になっておりまする憲法第九条、これについてはあなた方のように自衛権も持てないというふうに解釈する党派もあるのでありますから、自衛権は持てるというふうなことを明白にする方が日本のために必要になろうと思います。
○鈴木(義)委員 これらの一つ一つについてお尋ねをいたしたいと思いますが時間がありませんからやめますが、総理大臣は天皇の地位について修正する必要があるということをお考えになっておりますか。お考えになっておりませんか。
○鳩山国務大臣 これらは憲法調査会において審議をしてもらいたい問題であります。憲法調査会の審議についてはまた御必要ならばそのときに答弁をいたします。私はとにかく民主主義とか、平和主義とかいうような基本の制度は、現憲法の基本として尊重していきたいということは大体において考えておりますけれども、天皇の地位、権限のごときはもとより憲法調査会においてはいろいろな意見があろうと思いますから、今日私はここで発言はしたくないと思います。
○鈴木(義)委員 本来憲法調査会を設けるということは総理大臣の発意にあるように承わっておるのです。最初選挙前には国会に置くようなことを言っておられたわけでありますから、総理大臣がいやしくも憲法調査会を作らなければならぬとお考えになっている以上は、いろいろな点において修正をしなければならぬものがあるとお考えになっておるからであろうと思うのです。私はできるだけ時間をさいて、その一つ一つについてよく検討をして、そして調査会を作ることは真に必要であるかどうかということを確かめたいのでありますが、そういうことはみな調査会できめることだと言ってしまうのではこれは問題にならないのです。憲法を改正することを議題として調査会を作る以上は、最少限度においても、これに対して発案者及びこれに賛成する政府の主管者として、この際一つ十分に御意見を述べられることが私は義務であると信ずるのであります。そういう意味においてお尋ねに対してお答えを願いたいのであります。参議院のあり方を検討する必要があると言われましたが、どういう点において検討の必要があるとお考えになっておられますか。
○鳩山国務大臣 参議院の選挙その他について考えるべきものは多々あると思います。
○鈴木(義)委員 参議院の選挙について考えることがあるというならば、これは選挙法の問題であって憲法の問題ではありません。二院制度をどうするか、参議院はやめるべきであるかどうかというようなことになって初めて憲法の問題になるのであります。どういう方法で参議院議員を選ぶかは選挙法の問題で憲法の問題ではありません。
○鳩山国務大臣 参議院の任期等との関係上選挙法にも関係があると私は思ったのであります。任期については憲法に書いてあるのでありますから……。
○鈴木(義)委員 衆議院の解散について考えなければならぬということを先ほど仰せられましたが、それはどういう点でありますか。
○鳩山国務大臣 新聞でも御承知の通り、解散権については議論がありました。それは議論のないようにした方がいいと考えます。
○鈴木(義)委員 議論がないようにするのはいいことはだれにもわかりますが、どんなに作っても議論は必ず出るのであります。議論がない法律というものを作ることは不可能に近い。とにかく総理は解散についてどういうふうに今の憲法を御解釈になっておるのでありますか。たとえば内閣に解散権ありと考えておられるのか、それとも内閣にはないのであって、不信任案が通過した場合、あるいは自主的に解散決議をやった場合だけ解散ができるというふうにお考えになっておられるのか。もっともすでにやってしまったこともありますから、聞くのはやぼであるかもしれませんが承わっておきたい。
○鳩山国務大臣 私の意見としては、議院内閣制でありますから内閣にあるとは思います。けれども問題が起きないように憲法に明瞭にしておく方がよいと思います。
○鈴木(義)委員 問題が起らないようにというのは、いつでもどんなよい法律を作っても問題が起るのでありますから、そういうことは改正の理由にならないと思うのですが、総理がそう答えるならばやむを得ない、一応そうしておきましょう。時間がだんだんなくなりますので、個別的なことはできるだけ省略しますが、最高裁判所のあり万について私答弁がよく聞えなかったのですが、どういう点を問題にしておれれるのか、いま一応承わりたい。
○鳩山国務大臣 憲法裁判所、つまり憲法を司法事件としてではなくて、憲法の解釈を抽象的にする裁判所、言いかえてみれば、憲法裁判所にするかしないかということをきめる必要があろうと思うのであります。
○鈴木(義)委員 憲法裁判所という特別の裁判所を設けることならば、今の憲法において規定してないことで、また今の最高裁判所が憲法を解釈する最高権を持っておることは憲法の規定しておるところで問題はないと思うのでありますが、どういうふうに……。
○鳩山国務大臣 憲法が間違っているかいないかということを司法事件と関連して決定する権利はあるのです。司法事件ではなくして、憲法の解釈をする権限は憲法裁判所でなければ、現在の最高裁判所にはないと私は考えます。
○鈴木(義)委員 そうすると、総理は憲法裁判を最高裁判所にさせるようにすることがよい、そうお考えになりませんか。
○鳩山国務大臣 そういう論がありまして、片山君などはしきりにその論を言っておりますから、片山君のような論を実行するのには憲法裁判所にする必要があると考えておるのです。
○鈴木(義)委員 それは今の憲法を改正しなくてもできると考えるのでありますが、どうも総理はあまり憲法を勉強しておられないように存ずるのであります。勉強をせずに改正を論ずることは少し乱暴じゃないかと思います。われわれが一番問題とし、大切に考えておるのが第九条を改正するかどうかという問題でありますが、総理は第九条をどういうふうに修正することが望ましいとお考えになっておりますか。
○鳩山国務大臣 私は国際間の紛争を戦争によって解決するというようなことを認めるわけではございません。私は国際間の紛争を戦争によって解決することはしない方がいいと思います。けれども自衛のためならば戦力を持つということが正しいと思います。自衛のためにも戦う力を持つことができないというような解釈をとりたくないのであります。現在において日本の憲法は自衛のためならば最小限度の戦力を持ってもよいということには解釈しておりますけれども、諸君の方はこの解釈をもとらないのです。そういうような点について問題なく明瞭な憲法にした方がいいと考えております。
○鈴木(義)委員 第九条について自衛権であるとか、あるいは戦力てあるとか、国際紛争解決のための戦力の発動であるとかいうことを論じますと、きりがなく長くなりますし、繰り返し論ぜられたことでありますから、ここで省略しておきますが、総理大臣に聞くこととしては、いやしくも世界の情勢にかんがみて、こういう理想的な、世界において最初にその模範を示して、全世界が次第にこれにならわんことを期待するとマッカーサー元帥が当時宣言をしたくらいなのです。そして実際世界の不法行為に対する国際的制裁手段としては国際警察軍というものをもって、そうしてこれが取締り並びに制裁に当るべきであるということが当時予見された。そしてそこに持っていくためにまずわが国が第一着手にこの理想的憲法を作って、ぜひ一つこれを広めていこう、そういうことでこれを作ったはずであります。今世界の情勢がそこへだんだん近づきつつあるように思われるときにこの第九条の改正を考えることは、政治的に適当でないのではないか。この点一つ総理大臣のお考えを承わりたい。
○鳩山国務大臣 現在の世界の平和はまだあなたのおっしゃる程度までいっていないと思います。現在の世界の平和は、やはり各国が相当の兵力を持っておる、その兵力のバランスによって世界の平和が保たれておるのであります。自国を守る程度の自衛力を持つということが、世界の平和を保っておるわけでありますから、日本が独立した以上は日本の国をみずからの手によって守るだけの戦力を持つということが世界の平和を持ち来たす上においてのわが国としての義務であると私は考えるわけであります。
○宮澤委員長 鈴木君時間か来ております。
○鈴木(義)委員 時間が来ましたからいま一問でやめます。総理大臣に一つよくお考えを願いたいことは、そういうことは十九世紀的の議論であって、この憲法を作るときに繰り返し繰り返し論ぜられたことであります。いやしくも独立国としてみずからを自衛するための軍隊を持たないことは果して可能であるか、安全であるか、そのとき、後に再軍備の先頭に立った吉田総理は何と答えたかといいますと、昔から常に戦争は自衛のために起っている。自衛のために戦力を動かさないといったためしはいまだかつてないのだ、ここに思い切って百尺竿頭一歩を進めて、今度は自衛のためでも戦力は持ち得ないのだ、これで世界の公正な世論と信義にわれわれの安全をゆだねるのである、こういうことを答えておるのであります。芦田氏ですらも同じことを衆議院の本会議においてこの条文を報告するときに申しておるのであります。それを今手のひらを返すごとく、十九世紀以来行われておる自衛のためには戦力を持たざるべからず、発動せざるべからず、こういうことでいくならば、これは何の進歩がありましょうか。これは議論になりますからここでやめておきますが、よく一つお考えを願いたいと思います。
○宮澤委員長 江崎真澄君。
○江崎委員 今回の憲法調査会は、第二条のその目的に関するところに「日本国憲法に検討を加え、関係諸問題を調査審議し、」とございます。私どもは提案者代表である古井君にお尋ねする点は留保いたすことにいたしまして、御出席の鳩山総理に先にお尋ねをいたしたいと思います。 この憲法調査会の目的達成のためには、改正論者もあるいはこの憲法を擁護しようという論者も自説を固執せず、ともに国民のための憲法はどうあるべきかということを発見するための機関でなければならないというふうに考えるものでございます。先ほども古井君の御答弁にありましたように、左派の諸君は、その綱領に掲げまして、将来国会で絶対多数を占めたら、その政権を恒久化した上で、社会主義の原則に従って憲法を改正するのだとうたい上げておられるのであります。(拍手)これを見ますと左社の憲法擁護というものは、われわれ保守党の優勢な間だけは擁護しようというきわめて便宜的なものであるやに見受けられるのでございます。これはこういった構想についても、この調査会におきましては十分承わって、ただ今までのように反対せんがための反対ではなく、社会主義政策を盛り込んだ憲法改正の方向とはどういうものであるかということも、この調査会の機関を通じて十分私どもは審議を尽し得るものと思っておるのでございますが、この点責任者としての総理大臣はいかようにお考えになっておられるのでありますか、まず最初にお尋ね申し上げたいのであります。
○鳩山国務大臣 日本の現在の憲法は、御承知のように、占領時代にできたものでありますから、自主独立した日本が、慎重に審議をして日本のためになるような憲法をぜひとも協力して作り上げたいと考えております。
○江崎委員 現行憲法というものが、国民の全面的な自由意思によるものではなく、残念ながら連合軍の最高司令官の示唆に基いて制定せられたものである点は否定することができません。しかしながらこの現行憲法の根底を貫いておりまする民主主義と平和主義、そうして基本的人権の尊重は、これまた何人も否定することができない、申し分のない点であると思うのでございます。現行憲法が制定されました当時に尾崎行雄先生は、これを称して「まことによい憲法の修正になりましたについては、私は満腔の賛成を表するのでございます。」と速記録に残しておられます。また、そこへ民主党の北玲吉先生が来られましたが、当時北玲吉先生はやはりこの憲法改正がなされましたときに、こういうふうに言っておられます。「祖国再建の途上における傑作の一たるを失わないと存じます。」「憲法の精神は、これをこまかく規定した紙の上には宿らずして、これを読むところの国民の心のうちに宿るのであります。」ときわめて美辞を連ねて鑽仰をいたしておられるのであります。これは決して私は誤った考えではなく、いわゆる現行憲法の、先ほど申し上げました民主主義と平和主義、基本的人権の尊重といったような点に大きく目が向けられたことによるものであることは申すまでもありません。そこで憲法調査会というものは当然現行憲法の長所を十分認めた上に独立後の諸情勢に即して再検討を加えるべきものであるというふうに、私どもは考えておるのでありまするが、これについての総理のお心がまえを承わりたいのでございます。
○鳩山国務大臣 江崎君の今述べられました現在の憲法の長所、すなわち民主主義をとったこと、平和主義をとったこと、というような諸点につきましては私も同様に考えております。これらの基本精神を失わないような改正をいたしたいと思っております。
○江崎委員 それは現行憲法を尊重しながら一方において独立国としての正しい立場に立っての新しい憲法を構想する、こういうふうに解してよろしいのでございましょうね。それはかつて提案者の代表者であった清瀬一郎君が、たまたま本会議の議場においてこの憲法をけなしつけ否定するような言辞に出られたことは、その後取り消しはされましたが、残念でたまりません。なるがゆえにあえて総理にこの点をただしたのでありますが、総理のお心がまえとしては、今私が申し上げましたように受け取りましてよろしゅうございますか。
○鳩山国務大臣 もとより江崎君の言われたように考えております。
○江崎委員 そこでこの憲法調査会を持つことによりまして、近い将来に憲法改正をしようという大問題とはっきり取り組んでいくことになるわけでございます。しかしながらこれはあえて言葉をくずして総理には失礼でありますが、残念ながら今日の鳩山内閣は弱体少数内閣であるといわなければなりません。そこで憲法の改正のごとき大問題は、強力なる内閣によって国民世論を起し、そうしてこの改正方向というものが決定さるべきものであると私どもは承知をいたしておるものでございます。従ってこの点からいたしましても、同様に保守勢力の大結集ということは当然やらなければならないというふうに私どもは考えておるのであります。総理はさきに憲法改正と日ソ交渉の問題は自分の手によってやりたいというふうに言明をなされたやにわれわれ承わっておるものでございます。これを考えますときに、憲法改正の問題のごとき大問題は、いわゆる保守大結集の後、強力なる内閣によっておもむろにこれを提起せられようとするのであるか。保守結集ということを第一義としてお考えになっておるのでございますか。それとも鳩山政権というものを維持、持続することによって、こり憲法改正というものをなし遂げようこいう意味の御発言であったのでありますか。この点をはっきり承わっておきたいのであります。
○鳩山国務大臣 私は鳩山内閣の命数というようなことは全く眼中にはございません。保守勢力の結集ということは大問題を解決し、日本の進路をきめるのにぜひともやりたいと考えておりまして、自分の内閣を継続させたいなんかというようなことは問題ではございません。
○江崎委員 大へんはっきりとした御答弁があったのでありますが、要するにこの段階においては、むしろ保守結集というものを第一義と考えられる、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
○鳩山国務大臣 もとよりそうでございます。
○江崎委員 それでは根本的な方向がはっきりいたしましたので、われわれ、社会党の諸君が大へん御議論がおありのようでありますから、なるべく質問を要約いたしまして端的にいたしたいと思います。 この法の案文によりますと、調査会の委員は五十人以内で組織するということとになっておるのでございます。しかもこの調査会の委員は内閣総理大臣が任命をするというふうに明文化せられてあるのであります。国会議員の三十名というものは大体いかなる見解において任命せられようとするものでありますか。社会党左右両派の諸君も当然この調査会には国家国民のために参加せらるべきものであると私は考えておるのでありますが、総理の任命に対する御構想について承わりたいのであります。
○鳩山国務大臣 社会党の諸君にも憲法改正について協力を仰ぎたいと考えております。
○江崎委員 大へんけっこうだと思います。これは当然社会党の諸君におきましても、保守陣営の憲法改正をさして、やれ明治憲法への逆戻りだとか、平和憲法を擁護して再軍備を食いとめるのだとかいういわゆる井戸ばた式の拙象議論をやられる段階というものは、私はもう済んだと思う。だからほんとうに憲法改正の方向をはっきりしようというのであるならば、社会主義恒久政権を樹立したあとの憲法改正の具体的な構想、こういったものを調査会にはっきりと打ち出してきて、堂々われわれ保守陣営と逐条的に国民に訴えるところあって、他流試合をせられるくらいの御抱負があることは、われわれも承知をいたしておるものでありますから、どうぞ総理におかれてもこういう点に十分留意せられまして、社会党がはっきりと発言をし、国民に詳しく公党としての抱懐する自党の方向を示すことができますように、機会を与えられるところの十分なる努力を希望いたしたいのであります。 それから同様、学識経験者についての選考でありますが、これについての選考の基準というか、総理の任命でありますから、議員提出法案でありますが、一つ総理の構想について承わっておきたいのであります。
○鳩山国務大臣 やはりあなたが社会党の方も委員に入れた方がいいというような御議論を持っていらっしゃいますが、学者についても同様に、賛否両論の意見をなるべく混合して採用したいというような気持でおります。
○江崎委員 総理から非常におおらかな、正しい見解というものを表明せられまして、社会党の諸君もさぞかし首肯し、今後はわれわれに対しても相当刺激的な、りっぱな考え方に立つ憲法案文というものをお示し願えることを、この際強く社会党の諸君にも期待いたしておきたいと思うのであります。しかしながらこの憲法改正をめぐりまして、残念なことに、社会党の諸君は反対の意向を持っておられるのであります。われわれは幸いにしてというか、たまたま現内閣と同じような方向を自由党は考えておるものでありますが、この問題に協力的である自由党の意向というものは、当然このいろいろな人選その他のときにおいて尊重せられるものと考えておるのでありますが、この点について念のために承わっておきたいのであります。
○鳩山国務大臣 もとより当然に尊重いたすつもりでございます。
○江崎委員 近い将来にこの問題が大きく取り上げられてくることは言を待つまでもございませんが、今まで憲法が改正せられようというとき、そのときには、どの内閣にも専任の国務大臣があったのでございます。幣原内閣のときには松本蒸治博士がございました。また吉田内閣のときには金森徳次郎先生があったことは、すでに御承知の通りであります。この法の案文によりますと、全部総理が総体の責任者である形に相なっておるのでございます。これは表面上は非常に重大問題でありますから、もちろんさようにしていただきたいと思うのでありますが、事の重要性、また事の性質上、幣原内閣、吉田内閣のごとくに近い将来に専任大臣を期待するのが当然であるというふうに私ども考えるのでございますが、この点について鳩山総理はどういうふうにお考えになっておられますか、承わっておきたいのであります。
○鳩山国務大臣 今日まだ考えておりませんが、具体化するに伴いまして考えたいと思っております。
○江崎委員 それはむしろ専任大臣を置こうとせられるお気持にウェートを置いて考えた方がよろしゅうございますか。
○鳩山国務大臣 さように考えます。
○江崎委員 実はまだこの通りいろいろ質問を分厚に用意いたしておるのでありますが、社会党の諸君がずいぶん先ほどからいろいろと御質問になりたい熱意をお示しのようでありますから、ちょうどまだ私の持ち時間が三分ほど残っておるのでありますが、これを社会党の諸君に譲りまして、紳士的にこの会が運営せられることを強く要望して、私の質問を一応打ち切るものであります。(拍手)
○宮澤委員長 森君。
○森(三)委員 私は先ほど提案者であるところの古井君にいろいろ御質疑をいたしましたが、実は総理大臣に対しましても、わが党の各委員諸君からも多々質問があるのでありまして、わずか二十分ではその意を尽すことができないのであります。従いまして私はその聞かんとする点をしぼって質問したいと思うのであります。 われわれは、現行憲法は、御承知の通り、昭和二十一年の六月以来十月に至るまで約半歳にわたって慎重審議をしたものであります。しかも現行憲法の制定に当っては、われわれは司令部としばしば折衝いたしましたが、日本の国会の権威において自由なる意思を尊重し、十分審議して意を尽されたい、このような確信のもとにわれわれは審議し、しかも先ほども私申し上げましたが、現行憲法の前文の中におきまして、ここに「主権が国民に存することを宣言し」、この主権在民の規定もわれわれこの国会の審議の中において入れたのであります。また憲法第一条に規定するところの主権の存する日本国民というこの主権在民の規定も、われわれの憲法委員会において挿入したものであります。と同時に、各条項におきまして国会の総意を結集いたしまして、われわれは少くとも平和主義と、民主主義と、そうしてまた基本的人権尊重の最もすぐれた憲法を制定したものであるという確信を持ち、当時共産党の諸君を除きましては国会においてもほとんど満場一致をもって通過した憲法でありまして、あくまで日本の恒久平和を確立するためには、絶対必要、しかも崇高なるところの世界の平和にマッチした憲法であると私どもは考えております。今日のジュネーヴの四カ国巨頭会議におきましても、世界の平和は非常に大きく前進をしておる。このようなときに当りまして、日本がこの憲法を改正して、しかも鳩山総理の意図するところは、何といっても憲法第九条の、いわゆる再軍備を阻止しておるところのこの条文の改正をなさんとされておると私は思うのでありますが、この再軍備政策を強行せんとする憲法改正は、先ほど来江崎君からも反対の意見がありましたが、われわれはこの憲法改正を二月の総選挙に唱えて、少くとも国会におけるところの憲法改正阻止の百五十六名の議席を獲得したことは、これは保守党の諸君といえども見のがしてはならない重大なる選挙の結果であると私は思うのであります。この百五十六名を得させたところの国民の意思を無視するがごとき江崎君その他の保守党の意見は、まことに選挙民の意思をじゅうりんしたものである。少くともいわば三分の一のこうした憲法改正阻止の議席というものは尊重されなければならぬと思うのでありますが、鳩山総理は、憲法改正に関しまして特に徴兵法於行の意図があると私は強く考えております。それは現在隠しておりますけれども、兵役法の制定を総理は考えておると思うのでありますが、これは率直に御明解なる御答弁を願いたいと思うのであります。
○鳩山国務大臣 憲法を改正してまた軍閥を作るというような考えはもとより持っておりません。なおまた、あなたのおっしやいましたように、徴兵制度また作るんだというようなことも、かつて申したことはございません。そういう考えは持っていないのです。適当なる自衛軍を持つということは世界の平和のために役立つのでありまして、この憲法を改正するということが、ジュネーヴの会議等の趨勢に逆行するものでは絶対にないのです。あなた方は一人ぎめにして、これで軍閥を作るんだろう、これでまた戦争をするんだろうというようにして、ジュネーヴの会議に逆行するようなことをおっしゃいますけれども、そんな憂いは一つもありません。
○森(三)委員 ただいま総理から、徴兵法を施行する意思がない、かように言われましたが、私はこの総理の言葉は永久に忘れることのできない記録上の問題だと思うのでありまして、今後この憲法調査会がかりに法案が通過して設けられました場合に、総理が今後徴兵法に関するところのどのような問題を提起されるか、われわれは国民とともに監視しなければならぬと思うのであります。なおこれに関しまして、もし保守党が二月の総選挙において憲法改正をするに足るところの三分の二以上の勢力を獲得しておったならば、総理は今国会において憲法改正の法案の作成等につきまして積極的になられたと思うのでありますが、その点につきまして総理の御見解をお尋ねしたい。
○鳩山国務大臣 とにかく国民の多数が憲法を改正する意思があるかどうかということはまだ国民に問うたことはないのであります。これから憲法改正案ができましたならば、さっそく国民の意思を問うて、そうして国会の名において提案いたしたいと思っております。
○森(三)委員 そこで保守党の諸君はいわゆる憲法改正に必要な議席をとることができなかったから、くやしいのでそれにかわるところのこの憲法改正調査会法案というものを作って、既成事実をそこに設定せんとする。いわゆる憲法改正が国民の声であるかのごとき世論を作る一つの大きな橋頭堡を作るのもであると思うのでありますが、この憲法調査会を作ろうという意図があるならば、各政党には政調会というものがありまして、互いに政策を検討しており、民主党におかれても自由党におかれてもそれぞれの政調会において十分研究できる問題だと思うのであります。そしてまた世論を十分調査して、それから改正の方途をたどってもおそくはないと思うのである。しかるに先走ってこの憲法調査会というものを作って、ここに憲法は改正しなければならないものだというような示唆を国民に与えることは、これは私は政府の大きな責任であると思うのであります。私はこうした憲法調査会などというものは無用の長物だと思う。これは各政党における政調会と同じような形においてやればいい。憲法改正提出権につきましては、同僚鈴木委員からも言われましたが、あくまでも憲法改正の提出権は国会自体にあるので、政府にはないとわれわれは考えておりますが、これに関連しまして、もし鳩山総理がこのような必要があって憲法調査会のようなものを作るならば、なぜ国会に置かないのか、国会の中に作って、そして広く国会において審議をする、また政府の考えておる意図を通じまして国民の世論をそこになぜ聞かないのか、まことに私は遺憾であると思う。憲法調査会のごとき、いわゆる諮問機関を作りまして——今日政府の諮問機関というものは数えれば枚挙にいとまのないほどたくさんありますが、そのような政府に都合のいいもの——先ほど江崎君は社会党にも入ってくれというような要請がありましたが、これに入る入らないは、もしこの法案が通りましても、十分慎重に考慮しなければならぬ問題であります。いわゆる学識経険者の中に二十名のものが考えられておりますが、これらの委員の任命に当りましても、政府の専断でもって、自分たちの都合のいい御用学者をたくさん入れる可能性がある、そしてこのような世論を作るということはとうてい承服できない。われわれは憲法改正に反対し、こうした調査会には反対するものでありますが、もしもこういうようなものを作るならば、国民の目を通じ耳を通じて、時々刻々と新聞ラジオにおいて十分了解されるところの委員会制度を通じてなされなければなりません。従いまして私は、こうした調査会を作るならば国会の中に置くことが当然であると考えておるのであります。それを避けて調査会というような諮問機関を設けることは、国民の目をいわゆる秘密主義に押えんとするものである、このように考えるのでありますが、なぜ国会内に置かなかったかということを明快に御答弁願いたいと思うのであります。
○鳩山国務大臣 国会に置くことを考えたこともありましたけれども、内閣に置く方が便宜だと思って内閣に置くことにしたのであります。
○森(三)委員 このような重大な憲法改正の問題を論ずるに当りまして、便宜主義というようなことは私はとうてい承服できない。いわゆる国民を対象にし、そして最後は国民の投票によって行う憲法改正でありますから、設けるとするならば当然国会の中に設置されなければならぬと思うのでありますが、私は時間の関係上、同僚諸君の質問がありますから、最後に私の質問をいたします。 憲法九十九条には、総理大臣もあるいはその他の国務大臣もあるいはまた国会議員も、ともに現行憲法擁護と尊重の規定があるのでありますが、鳩山総理の御発言をわれわれはしばしば聞くに及びまして、総理は現行憲法を無視するがごとき、いわゆる憲法九十九条の規定の解釈におきましても、非常に私は遺憾にたえない点が多々あるのでありまして、総理は現行憲法擁護と尊重の決意をどの程度まで持っているのであるかということをこの際お尋ねいたしたいと思うのであります。
○鳩山国務大臣 現在の憲法を尊重することにつきましては人後に落ちません。
○宮澤委員長 飛鳥田君。
○飛鳥田委員 鈴木委員並びに森委員から原則的なことを伺いましたから、私はそれになかった二、三の点をお伺いいたします。 先ほどから総理のお話しを承わっておりますと、現在の憲法は日本の人民の自由なる意思によって決定されたのではない、こう述べておられます。それならば一体現行憲法の本質を総理は何んとお考えになっていらっしゃるのか。すなわち占領法規であるとお考えになっているのか、あるいは西ドイツの場合のような暫定憲法であるとお考えになっているのか、あるいは完全なる憲法であるとお考えになっているのであるか、これをお答えをいただきたいと思います。なぜこのことを伺うかといいますと、これから憲法調査会を設置することがいいか悪いかということは、このいずれかのお答えによって非常に左右せられる点があるからであります。
○鳩山国務大臣 現在の憲法は、占領下に作られたということを申したのでありまして、日本の憲法は適法の手続を経て、議会において成立をしたということを否定しておるものではありません。
○飛鳥田委員 非常に奇怪な御議論を聞くのでありまして、およそ一つの法律にして自由なる意思のもとに決定せられなかった法律が適法であるなどという御議論は、一体どこから出てくるのでありましょうか。意思決定の自由ということは、法律行為の最大重要な事実であります。あなたが占領法規であるとおっしゃるならば私はそれでうなづきます。一つの解釈です。見解です。だがしかし完全に適法にした法律であるとこう言う片一方で、自由なる意思決定がなかった。こんな珍解釈は私は初めて伺ったのですが、一つその点明確にお答えをいただきたいと思います。それとも暫定憲法だとおっしゃるのか。
○鳩山国務大臣 法律的に考えまして、現在の憲法を否定する人は一人もないと思います。ただ政治的にいえば、これは占領治下の時代に作られたものでありますからして、これを法律化して、占領治下に作られた法は無効だというような規定をしておる国もありますけれども、日本にはそういう規定はないのです。占領治下に作られたものであるから、しかも短期間に作られたものであるから、これを検討をして自由憲法——自由にわれわれも検討をしていった方がいいではないかという考え方をしているだけであります。現在の憲法が法律的に無効だというようなことを考えた者はありません。
○飛鳥田委員 これは非常にふしぎなお話しでありまして、政治的には自由でなかったけれども、それは法律的には何らの判断の要素にならないというお説は、珍解釈であります。この点については御議論を重ねても時間を食うだけですから、私はあえて社会の御批判にまかせます。あなたの法律解釈が正当なのかわれわれの考えていることが正しいかをきっと社会が批判してくれると思います。しかし一国の総理大臣ともあろう方が、いまだかつてない珍法律解釈を打ち立てられることに対しては、非常な遺憾の意を表します。 第一の問題ですが、先ほども鈴木さんが、内閣に提案権のあるのはおかしい。こういう御質問をなさいましたが、私はそういう法律論ではなしに、少くとも改正をせられるべき憲法が自主的でありたいという御希望をあなた方が持たれる限り、憲法調査会は国会に置かれることが正しいのではないか。今の段階においては、政治的にも外交的にも、内閣それ自身はアメリカの圧力を全然受けていないとはどなたも断言できない、現にこの法案の前に審議をいたしておりました自衛隊の問題につきましても、その武器の大部分はアメリカから供与をせられておる。同時にまたMSAの資金その他の関係で、少なくとも内閣はアメリカに対して完全に中立ではあり得ない。これは少くとも自由党の方も、民主党の方もお認めになっているところでありまして、アメリカに対してはネコのごとく、日本国民に対してはトラのごとしと批評をせられることがこのことを物語っておる。もしそうだとするならば、アメリカの圧力を内閣よりも受けていない独立なる国会の中に置かれることの方が、むしろあなたの便宜論からすれば便宜ではないか、その目的に沿うものではないか、自主憲法を作るのに非常によいのではないか、こう私たちは考えざるを得ないのであります。何を好んでアメリカの圧力下にある内閣の直属にこの調査会を置かなければならないのか、こうした事実論を一つ伺いたいと思います。
○鳩山国務大臣 民間からもだいぶ委員をとるものですから内閣に置いたのでありまして、別にほかに意思があるわけではないのです。国会に置いても一向差しつかえないのでありますけれども、どうせ国会には議案がかかるわけであります。国会の審議を待たなければ原案ができないことは当然であります。しかも国民にこれを発議し提案するには国会議員の三分の二が必要なのでありますから、この準備をするのは内閣における調査会で十分だと思ったのであります。
○飛鳥田委員 およそ憲法というものは紙に書かれた法律ではありません。具体的な社会的な歴史的な環境の中に生きるものであります。そうした意味で、あなたが独立憲法を作りたいと願われる以上は、具体的な法の条文よりも先に、まず国の政治的な独立、経済的な独立が必要だと私は考えますが、この点について御意見どうでしょうか。
○鳩山国務大臣 国を完全なる独立にするのにはいろいろな方法があります。あなたのおっしいるようなこともその要素になることは当然でございます。
○飛鳥田委員 最後に一つ。この憲法調査会法を見ますと、憲法並びに関係諸問題を調査すると書いてありますが、この関係諸問題の意味を総理はどう解釈しておらるれのか。これはお答えを承わっておきまして、続いて機会を得ましてそのことを詳しく伺います。
○古井喜實君 あとで総理のお答えがあるかもしれませんが、一応提案者からお答え申します。調査会が憲法に検討を加えるということ、それから憲法に関係ある諸問題ということでありますから、検討を加えましたことに関係する諸問題、すなわち改正の要否、また改正の要ありとすればその内容いかんということがしょせん関係諸問題ということになると提案者は考えております。
○鳩山国務大臣 提案者の答弁の通りでございます。
○宮澤委員長 茜ケ久保君。
○茜ケ久保委員 総理に一言だけお聞きしたいのであります。それは提案者の清瀬さんもそうでありますし、説明されました古井さんもそうでありますか、この憲法の内容はいかようにあろうとも、占領下でアメリカが押しつけた憲法であるから改正するということを声をきわめておっしゃっていらっしゃいますが、鳩山総理もしかくお考えかとうかお聞きしたいと思います。
○鳩山国務大臣 占領治下においてできたものでありますから、しかも短期側にできたものでありますから、やはり独立国家としては、そのままにしておくということは不都合だ、不適当だと考えます。
○茜ケ久保委員 それについて私が特にお尋ねしたいのは、アメリカのマッカーサー司令官が日本に押しつけた法律は憲法だけではありません。いわゆる大化の改新以来の大革命だといわれた農地解放も、マッカーサーの指令であります。さらにわれわれの先輩の多くが何十年も唱えてきた婦人参政権の付与も、ついに日本の手によってはできなかったのでありますが、マッカーサー司令官がこれを与えた、そうなりますと、この農地解放も婦人参政権もアメリカが与えたのだから、これもまた日本人向きのように改革するという論拠が出てきますが、鳩山総理のこれに対する御所見をお聞きしたい。
○鳩山国務大臣 私は、憲法が全部悪いから改正すると言っていないのです。先刻もたびたびお話がありました通りに、現在の新憲法が民主主義や、平和主義や、国民の基本人権などを規定したということはいいと思っています。そういうような精神までも没却する改正をしようとは考えておりません。農地法の改正にしましても、私どもが見ておりまして、少しは行き過ぎはしなかったかなというような感じはほんとうに持っております。感じは持ちましたけれども、しかしあの農地法の改正によって、日本の農民の民主主義的傾向が達成できたというようにも考えております。また婦人参政権などについても、決して悪いとは思わない。婦人についても、前から私どもは参政権をやるのは当然だと言っておったのでありますから、それが実現したことも決して悪いことじゃない、いいことだと思っております。
○茜ケ久保委員 もう一問だけ……。今の農地解放と婦人参政権は、私は重大だと思うのですよ。すでに全国に旧地主が地主組合を作って農地解放の逆行をやっている。さらに一部には、婦人参政権の結果が保守党の諸君に非常に不利だというので、婦人参政権の制限も考えておられる。こういうことがあるから、憲法改正に伴って、農地解放の逆行と婦人参政権への大きな制限の可能性が非常にあるので、私はお聞きしている。従いまして私は、鳩山総理はこの憲法調査会設立後においても、農地解放の逆行とか、婦人参政権の逆行については、絶対そういうことはないという確約をここではっきりしてもらいたい。
○鳩山国務大臣 現在これを改める意思はございません。けれども憲法調査会が自由に原案を作る権利を持っておることだけは御承知を願います。
○宮澤委員長 この際休憩いたします。午後二時再開いたします。 午後一時四分休憩 ————◇————— 午後三時二分開議
○宮澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を継続いたします。鈴木義男君。
○鈴木(義)委員 それでは先ほど提案者に対してほんの一問だけ質問をいたしまして中止になったわけでありますから、引き続いてお尋ねをいたしたいと思います。 提案者はこの憲法がいわゆる司令部によって押しつけられた憲法である、ゆえに自主性がない、こういうふうに言われたわけでありますが、ただそう抽象的に自主性がないというだけでは納得ができません。われわれは相当、普通のこの法律を審議する場合と同じように、かなり自由に審議をいたしたつもりでおりますが、どういうわけで自主性がないのか、その点を御答弁を願いたいと思います。
○古井喜實君 ただいまのお尋ねの点につきましては、午前のお尋ねにもお答えを申し上げた次第でありますが、あの節の事情はもうきょう各方面で明らかになっておることをもとにして見ましても、先ほど総理も言っておられた通りに、事は占領中のことでありましたのみならず、総司令部側において一つの草案を作り、政府にこの草案の根本的な原則とか根本的な形態は変えないという限度において実現をはかることを強く求め、そういう筋道で大体において審議が行われたものと見るほかはありません。時間的にも十分の時間があったかどうかも、これも議論の余地もあるように思います。そういう諸般の点から見て、十分完全に自由な立場で論議を尽したものと考えるわけにいかないとわれわれは見ておるわけでありまして、そういう意味で申し上げたのであります。
○鈴木(義)委員 そういう御議論は納得いたしかねるのでありまして、先ほども申した通り、わが国の各政党あるいは民間団体その他が相当いろいろの草案を出したのですが、いずれも明治憲法に少し手が入った程度のものにほかならなかった。それでこれはポツダム宣言に約束した日本の徹底的民主化ということには遠いものであるという結論に達して、一つ模範的な憲法草案をお目にかけようというところから、当時アメリカの公法学の教授なども比較検討の上に参加し、まず基本的人権についてはこれを東西に通じて誤らないと言われておる人権に関する世界宣言というものをそのまま取り入れた。比較対照してみまするのに、ごく二、三カ所違うところがあるだけでありまして、これは今の文明社会においてどこの国でも共通に承認されておる基本的人権を取り入れたわけであります。ゆえに一カ条といえどもこれを改正することの不可能に近いことはおそらく提案者といえども御承認になるだろうと思うのであります。それからいろいろな内閣、国会、裁判所等の運営につきましては、これは一つの政治のやり方の技術でありますから、どうきめてもきめられるわけでありますが、これも久しい間の経験にかんがみて、あるいはイギリス、フランス、あるいはアメリカ等の経験に徴して、比較的いいところを集めて、そしてこういう制度にしたわけであります。ゆえに当時これが発表されましたときに、むしろその進歩的であり、自由であり、民主的であることにみな驚いたのであります。これはなってない憲法であるとか、あるいはななはだ意に満たざるものであるとか言うものは、陰でさえなかったのであります。それでこれを今度の選挙の題目としてやるということになりまして、わざわざ国会を解散して、憲法を作るための議会を招集したわけでありますから、選挙のときには活発にこれが論争の題目になったのであります。不思議な現象は、当時の自由党、あるいは今の民主党の前身である進歩党、社会党、共産党に至るまで、この憲法を非なりとした候補者はほとんどなかったのであります。ただ天皇制について、なるたけ天皇を一つ元首にしておきたい、天皇の地位を保存したいとかいうことを演説の中に言うものがちらほらありましたけれども、この憲法を正面から攻撃したり、批判したりするようなものは少かったのであります。私の知る限りほとんどなかったと申してもいいのであります。そうしてさらに新しく選ばれた代表者による国会で憲法の審議が始まった。そして先ほども申すように、三カ月の日時を費やして、連日慎重審議を重ね、逐条的に審議を重ねたのであります。ゆえに今になって、それがどうもどさくさまぎれにやったものである、与えられたものであるというようなことを前提にして、——そういう議論をいたしますならば、われわれがここで審議しておるもろもろの法案はほとんど官僚によって作成されたものをやっておるにほかならぬのであります。しかも短時日のうちにこれをやる、それが自主性がない、こういうものの審議は自主性がないものであるというならば、これは国会を侮辱するのはなはだしいものと存ずるのでありますが、なぜこの憲法についてそれだけの手続を経たものをさように仰せられるのであるか、われわれには納得がいかぬのであります。自主性がないということは、この内容に徴して論じなければならない。だれが見てもこんなばかなことは規定することはできないはずであるけれども、涙をのんで規定しておるのである、こういうときに初めてそういう言葉が許されるのであるが、何かそういう点があるならば一つお示しを願いたい。
○古井喜實君 錯綜いたしますけれども、御質問には二つの問題が入っておるように思うのであります。内容がよいか悪いかという問題と、制定の経緯が真に国民の自由な意思によって制定されたものと見られるかどうかという二つの問題が、御質問のうちには混雑しておるように拝聴いたしたのであります。この憲法の内容の点につきましては、多くの長所があるということは、午前中も申し上げた通りであります。ことに民主主義、平和主義、基本的人権の尊重という基本的な原則については大きな長所であり、尊重しなければならぬということは繰り返して申しておることであります。内容の問題と、その制定の経緯から国民が自分たちの憲法ならば自分たちが自由に作らなければならぬという要請、この二つの問題があると思います。あの時の事情から国民が全く自由に、何の拘束も受けないで制定した憲法と見られるかどうかという点は、しょせん議論の分れるところでございまして、私どもあのような状況のもとにおけるある経過に徴して、これはやはり国民が完全に自由な立場で作ったものと考えがたいということを申し上げておるのであります。
○中村(高)委員 関連してちょっと提案者にお尋ねいたしますが、憲法発布のときに勅語が出ておりますけれども、お読みになっておられることと存じます。これを見ますと、「自由に表明された国民の総意によって確定されたものである。」という勅語が出ておりますけれども、これはどういうふうに御解釈なさいますか。
○古井喜實君 勅語の言葉によってわれわれの考えをこうしろと御命令になる意味ではなかろうと思いますが、当時の実情は今日お互いに率直に判断し、考えた方がよろしいと思います。その意味におきまして、われわれは先ほども申したように、考えを持っておるのでありますから、さように御了承願いたいと思います。
○鈴木(義)委員 その点を押し問答しても仕方がありませんから、あなたはこれをそういうふうに信ずるといたしまして、しからば一体この憲法は、今度改正をするなり修正をするなりいたします場合には、きわめてとらわれない立場で自由自在に修正ができる、こうお考えになることであろうと思うのでありしす。しかし一部には、憲法はおのずからその本質とするところがあって、改正し得るものと改正し得ざるものとがあるという説をなす者もあるのであります。つまり改正にはおのずから限界がある、こういうことに相なるかと思うのでありますが、その点について限界があるとお考えであるか、限界はないかとお考えであるかを承わりたい。 〔委員長退席、高橋(禎)委員長代理着席〕
○古井喜實君 憲法の改正について限界があるかないかということは学究の間にも議論があろうかと思います。しかし越えるべからざることは越えない、差しつかえないことは改正するということは政治の常識問題になってくると思います。そこに今日の問題点としての、先ほど申しましたような、民主主義であるとか平和主義であるとか基本的人権の尊重であるとかいうこの原則自体は、変えないという考え方で政治的にはいきたい、こういうことでありますので、これが法律学的に限界であるかどうかは、われわれでなくして学者の論議に待つほかはないと思います。
○鈴木(義)委員 学者の論議を承わる必要はないのでありまして、この国会において現実に国民の代表たる提案者がどういうふうな見解で憲法を改正しようとしておるかということを明らかにしておくことが大事だと思うのです。ただいまの御答弁で、平和主義、民主主義、基本的人権のごときは、今度修正するとしても、手をつけるべきものでないと考える、そういうふうにお答えなったものと解して議論を進めたいと思うのであります。 しからば提案者は、今の憲法のどういう点を修正すべきであるとお考えになっておるのであるか。先ほど一応の御答弁があったわけでありますが、地方自治における長は直接選挙でなく間接選挙によってもいいじゃないかというようなお話があった。ちょっと私、十分聞きとれない点があったのでありますが、いま一度提案者はどういう点を改正すべきものと考えておられるか、一つお聞かせ願いたいのであります。
○古井喜實君 提案者としてかかる条項は改正すべきであるなどと申し上げることは僣越であります。いかに改正すべきかということは、すべてこの調査会において論じ、国民全体の考えで改正すべきかどうかをきめるべきであって、それが民主的だとわれわれは思っておるのであります。私が申し上げているのは、改正の問題で検討をしてみる必要のある問題はどういうことかということになけば、われわれとしてはかかる問題については少くとも検討を加える必要、理由はあるであろう、こういう意味で午前中も申し上げたのでありまして、この点については誤解のないようにお聞き取りを願っておきたいと思います。 午前中に数個の問題をあげましたので同じことを繰り返すこともいかがかと存じますので、さらに御質問を待って御説明をさせていただきたいと思います。
○鈴木(義)委員 それならばごもっともであります。私も提案者どういうふうに改正せよといったからといって、この調査会でそういうふうにするかしないか自由な問題でありますから、決してそういうことを言おうとしているのはない。しかし、いやしくも憲法調査会を設置する必要があると御提唱になる以上は、この憲法を十分に御研究にもなり御調査になった上で、提案者に個人として、ことに古井さん個人としてはそれぞれお考えを持っておられるはずであると思うのであります。そういうことをこの際承わることは大事なことでありまして、つまり憲法を改正しようとする意図がどういうところにあるかということを確かめて、その賛否を明らかにする材料にいたしたいのでありますから、どうかその点をお聞かせ願いたいのであります。 そこでこの前文がよく世の中で問題になっているのであります。翻訳調であるとか冗長であるとかいろいろな説がありますが、前文についてはどういうふうにお考えでありますか、古井さんの御意見を承わりたいのであります。
○古井喜實君 前文の中には国民主権の宣言であるとかあるいは平和主義の宣言であるとか、まことに貴重な大きな理想が盛られておるのでありまして、この辺につきましては大きに尊重をいたしたいという考えを私は持ちます。しかしこの前文につきまして、ただいま仰せのように、翻訳調であるというような誹誇のほかに、これはポツダム宣言の受取証ではないかというふりな議論もあることは御承知であろうと思います。現に自由党の調査会の調査資料によればさような議論も書いてある。そうといたしますれば、やはりここも検討の対象ににはすべきものでありうと私は思います。
○鈴木(義)委員 この前文を一読してみますと憲法を制定する趣旨、それから憲法に対する日本国民の基本的な立場、そうして最後に日本国民がこの憲法に対してとる基本的態度、原理とでもいいましょうか、そういうものをうたっておるようでありまして、おそらくは今後こういう憲法を作る場合でありましても、言葉の表現はいかようであれ、こういう制定の趣旨、態度、あるいは基本的な原理というようなものは、前文に述べることが妥当であるのではないかと思いますが、そういう点について古井さんはお考えになったことがありましょうか。
○古井喜實君 ただいまのごとき御意見は、こいねがわくば調査会において十分に御主張を願いたいと思いますが、私は少くとも検討を加える対象にはなすべきものである、そう思っておりますことは、先ほど申した通りであります。それ以上はこの問題については申しかねるのであります。
○鈴木(義)委員 わかりました、再検討の要がありと断言なすった。 それから天皇の問題が常に憲法改正にからんで問題になるわけでありますが、われわれが聞いておる範囲でもいろいろ議論があり、自由党の政調会案でありますか、この前発表されました基本的な要綱によりましても、今度は天皇を元首にしようというような案が見えておるようであります。まず一つ総括的に天皇の地位について、提案者はどういうふうなお考えを持っておられるか、承わりたいのであります。
○古井喜實君 第一章の天皇の部分は帯きわめて重要でもあり、かつ問題は微妙であります。この点につきましては、これこそ調査会多数の方の御意見によって結論を出すことが至当であると思います。 〔高橋(禎)委員長代理退席、委員長着席〕 従いましてこの点について軽率に私見を述べることは差し控えたいと思います。
○鈴木(義)委員 何でもかんでも調査会ということで逃げてしまえばそれまででありますが、憲法を改正する必要があるかないか、またどういう態度でこの改正に臨むべきかというようなことにについて、十分に考慮した後でなければ調査会を設定することのよい悪いの判断ができないわけでありますから、そこで提案者は、少くも現在の憲法に対してそのおもなる問題となっておる点、これは決して私が言うのじゃなくして世の中に広く改正について論議されておるところを持ってきて私はそれを言っておるのでありますから、そういう問題があることを知らぬということは申すことはできないと存ずるのであります。そしてそういうことについて少くも提案者としてはこういうふうに考えておるから、そこで調査会の必要があるのだというふうに一つ率直に御意見を承わらしていただかなければ、この審議は進むことができないのではないかと存ずるのであります。どうか一つ天皇についても若干手を加える必要があるかないかくらいのことは、あなた個人の考えとしておっしゃることができるはずだと思います。
○古井喜實君 どれもこれも、何にも意見を言わないとまでは申しておりません。事は最も重要かつ微妙なる問題でありますがゆえに、軽率な私見を申し上げぬ方がよかろうという意味で、ただいまの点については申さなかったのではあります。それ以上かかる公開の席において軽率にこの問題について私見を述べることは、私は適当でないと思っております。しかし細目的のことを申しますならば、たとえば第一章の中でも第七条の規定などにつきましても、憲法、法律等の公布の規定はあるけれども予算の公布の規定はないとか、あるいは国会議員選挙の施行を公示するという規定はあるけれども、国民投票の施行についてこれを公示するという規定はないとか、助言と承認などという言葉がとかく議論を起す種になっておるとか、いろいろ細目的なことならば申し上げても、一向差しつかえないことは多々あると思います。しかしそういうことを仰せがなかったようなので、私は差し控えたわけであります。
○鈴木(義)委員 そういうふうに率直に仰せられると非常に幸いなのでありまして、一応この憲法改正のための調査会が問題になっております以上は、この委員会においても、それぞれの立場からいかなる点が問題となり得るかというようなことを十分に審議した上で、これに対する賛否の態度を決するということが、いわゆる慎重審議の内容であると信ずるのであります。古井さんは一体、第一条のごとき日本国の象徴である、あるいは国民統合の象徴である、こういう言葉の表現が好ましいものであり、このまま維持する方がよいものであるとお考えでありましょうか。
○古井喜實君 特にこの第一条の規定の表現は、この憲法を制定した当時のいろいろ経過もあり、御苦心の表現のようでもありますので、これについては格別に多数の御議論の結果結論を出すことが適当であると思いますので、この点については私の私見は軽率に出し上げたくないと思っております。
○鈴木(義)委員 この機会に午前中の問答の中に誤解があったようでありますからそれをただしておきたいと思うのでありますが、「主権の存する日本国民の総意に基く。」という言葉は後に小委員会で直したものでありまして、最初は天皇は日本国民統合の象徴であって、日本国民の総意に基くというふうになっておったのであります。それを主権の存するという言葉——これはもとからあった言葉なのでありますが、それを最初の日本訳ではごまかしておいたのであります。それでそのことが司令部で知るところとなって、ソヴァレンティという言葉を使ってあるのに、日本文の方では少しもそれが出ていない、前文か何かにおいてもそれがごまかしてあった、そこではっきり主権の存する国民の総意、主権が国民に存することを宣言するというふうにはっきりさせたのでありまして、そのことが午前中の問答において誤まり伝えられておったようでありますから、明らかにしておきたいと思います。 天皇という言葉は、これは非常に封建的な言葉であります。大臣という言葉とともに、平安朝、鎌倉時代だと非常に適切な言葉であるが、今日は天皇とか大臣というのは適当な言葉でないという説があります。そういう点について古井さんはどういうお考えでありますか。
○古井喜實君 私一個はそのようには必ずしも思いません。しかしそういう御議論もあることでありますから、調査会で検討したらよかろうと思います。
○鈴木(義)委員 この天皇の国事に関する行為ということが憲法にうたってありますが、これは言葉の意味が非常にあいまいであるということで非難されており、あるいは修正する場合には問題になるであろうと世の中でいわれておるのであります。この国事に関する行為とか、国政に関する——政治に関する行為とか、概念はどういうふうに違うかということは別として、提案者はやはりこういう点も修正の対象になるものとお考えになっておるわけでありますか。
○古井喜實君 この国事と国政という二つの用語の表現の問題は、これはまことに日本語として区別を理解しがたいものであると私も思っております。意味がわからぬわけではありません。この辺については、表現の問題として少くとも十分検討の価値があろうかと思います。
○鈴木(義)委員 先ほど第七条について何か二、三仰せられたようでありますが、第七条等について、提案者として平素お考えになっておることがありますならば、この際、もう少しお考えを伺わさしていただきたいと思います。大体はみな政治的に意味のない行為について、単に認証するとか、そういうことで言っておるのでありますが、そうでないものもある。栄典の授与、こういう場合に、古井さんとしては天皇の行為というものはどういうふうにあるべきであるとお考えでありますか。御意見があれば伺っておきたいと思います。
○古井喜實君 第七条につきましては、先ほど特に検討の対象になるべき一、二の点を申し上げました。そのほかにもあろうかと思いますが、今仰せの栄典の点がさようになっておるということは——その点だけを申し上げますならば、栄典というものの特殊な性質からいって、この点をぜひ変えなければならぬという必要を私は感じないのであります。しかし、これは申し上げるまでもなしに私見であります。
○鈴木(義)委員 むろん私見を承わっておるので、決してこれを公の問題にしようとは思いませんから、御心配なくお答えを願います。ただ、内閣総理大臣と最高裁判所長官は天皇の任命するところになっておるのでありますが、またこれを、辞任する場合に天皇に辞表を出すように制度として改むべきであるという説があるのであります。そういうことに対しては、古井さんはどういうふうにお考えになっておりますか。
○古井喜實君 私見を申し上げて恐縮でありますが、そうい形式を踏む方がよいという議論もあるかもしれませんが、そう改めたところで実質は変りはない、やめるときにはやめさせるほかないのでありますから、その辺は一つ法律の専門家によく御議論願いたいものだと思っております。
○鈴木(義)委員 提案者が天皇の地位に対して大体どういうお考えを持っておられるか、ほぼわかったような気が写るのであります。そういう意味でこの問答は大切であると思います。それでは第二章に移りまして、戦争り放棄、この九条は一番問題になるはずであると思いますが、提案者はこれに対して改正意見であるか意見でないが、それをまず前提として承わります。
○古井喜實君 第九条につきましては、これこそ国会においてもたびたび議論された問題であります。私どもは、少くとも事柄を明確にする必要はあろうと思います。なお、私見を加えまずならば、自衛のために戦力を発動する場合であっても、その発動する手続などについては、憲法の中に規定があるのが至当であると私は思っております。いかに自衛権の発動であっても、国の運命に関する場合もあるのでありますから、その場合には、憲法上、たとえば国会の承認を得るとか、何らか手続などについても考慮がなされておるのが至当であろうと私は思っております。そういう意味で九条は大きに検討の必要があると思っております。
○宮澤委員長 鈴木君、もうだいぶ時間が過ぎておりますから、簡単に。
○鈴木(義)委員 時間の制限がないと了解しておりましたが、制限があるのですか。
○宮澤委員長 三十分ずつ交代して行こうというのです。
○鈴木(義)委員 私は五時間ぐらい必要と思いますから、どうぞそのつもりで。三十分ずつ何回でも繰り返しますから。 私のお伺いしたいのは、第九条を改正する必要ありと信じておられるかどうかということなんであります。ただいまのお答えでは検討の必要があるというのですが、検討の必要はどの条文だってみなあるのであります。ことに憲法調査会等設けるに至った、まあほかにもいろいろ理由がありましょうが、最大の動機は、この第九条を何とかしなければならぬというところにあったことは天下公知の事実でありますから、提案者などもそういう点は十分にお考えになったことのある人である、こう信じますからお尋ねするのです。事実これを修正するかしないか、大問題でありまして、することになればこれに付随していろいろな修正が考えられなければならぬ。そこでお尋ねをしているのです。どうか率直にお答えを願いたい。古井さん個人としては、第九条は書き直しをすべきものであるとお考えになっているのでありますか。
○古井喜實君 九条は議論の多い条文でありますから、はっきりさせるために、疑問を残さないように徹底的に研究をして、そうして書き直す必要があるというのが多数の意見であるなら、書き直しても一向差しつかえないと思います。幸いに鈴木委員は憲法各条検討の必要ありという御意見でありますので、一つそういう考えで御協力を願いたいと思います。
○鈴木(義)委員 私は年中検討しているつもりでありますが、検討していることと修正の必要ありということとは別問題でありまして、むしろ修正の必要ありということは、調査会の必要ありということにつながるので、提案者としてその点についてはっきりしたお考えを持っているかを伺いたい。私に修正に参加せよとか努力せよということは少し言い過ぎであると思いますので、一つ御了承を願いたいと思うのであります。そうすると古井さんは、第九条を変えて、いわゆる軍を持つことを期待しておられると思うのであります。そうなると、九条だけの修正で済まなくなるわけでありまして、統帥権に関する規定を設けるということになってくると思いますが、いかがでありますか。
○古井喜實君 改正の内容についてここで深く論ずることは少し僭越だと思いますが、自衛のための軍を認めるということになれば、これに対する指揮命令、いわゆる統帥権の問題も当然含まれると思います。ただ、これが一般の行政権の中に含まれるものとして憲法上処理してよろしいか、特殊に規定する必要があるかということは、十分研究したらよろしいと思います。
○宮澤委員長 森三樹二君。
○森(三)委員 私は古井さんに、ただいま鈴木委員からいろいろ御質疑がありましたので、それを重複しない限度におきましてお尋ねしたいと思うのです。 古井君から、抽象的にどの条文を改正するというようなことは考えないが、全般的に検討をし直すんだというような御発言が最初ありまして、私は、それなら意味がない、やはりこうしたところの調査委員会を設けるには設けるだけの、改正しようという目途が提案者の考え方の中にあるはずであるというように質疑をいたしましたところが、古井さんからは一応改正しようという条文についての御説明がありました。私はさもあるべきことだと思いまして、一応お尋ねをしたいと思います。私の方も前文等からだんだんやっていきたいと思いますが、鈴木委員がすでに質問されましたが、天皇の権限につきましても、やはり改正されるという、つまりあなた方としては、天皇の権限というものは、すなわち英国流の王は君臨すれども統治しないという建前を堅持するのであるか、あるいは旧憲法のごとく元首的な地位を与える、現行憲法の七条の規定以上に権限を与えるという御方針であるのか、私どもはやはりあくまでも第三条の規定あるいは第四条の原則としては、天皇は「国政に関する権能を有しない。」というような条文というものは、これは動かすことのできない条文である、これがすなわち主権在民の憲法の最も本質的なものである、このように私は考えておるのであります。そこで私はこの主権在民といういわゆる民主主義の憲法の規定というものは、これは制限してはいけないと思うのでありますが、その半面において天皇の権限をさらに現行憲法以上に強化するとか、付加するというようなことを、あなたはどのようにお考えになっていらっしゃるのかお伺いしたいと思います。
○古井喜實君 毎々申しますように、この憲法の基本的な特色であります民主主義というものは、あくまでも私どもは堅持していきたいという考えであります。つまり国民が政治をするんだ、こういう原則は守っていくというのが至当だと少くとも私ども思っております。従いましてそれと反するような改正を行うということは、少くとも私一個は容易に賛意を表しがたいのであります。
○森(三)委員 そうしますと、いわゆる人民のための、人民の手によるところの、人民の政治という、いわゆる基本的な考えはこれはくずさないんだ、従ってこの民主主義の理念からして、天皇の権限さらに強化といいますか、権限を付加する、付与するというようなことをなさらないということをあなたは御答弁することができるのでございましょうか。
○古井喜實君 私の個人の意見はたびたび申しますように、僣越でありますから申し上げたくないのでありますけれども、敗戦のあとにおけるせめてもの国民の得たものは、この徹底した民主主義であったと思っております。ここで初めて日本の国民が民主主義の洗礼を受けたと私は思っております。そこでこの尊い経験、事実というものに対して、われわれはここで勝手しごくに改変していくということは考えるのがよろしくないという考えを個人として持っております。
○森(三)委員 私は大体それで了承いたしますが、いわゆる民主主義のルールというものは、根本的に堅持するということをあなたが言われておりまして、その点は同感でありますが、私どもはやはりその点は堅持してもらいたい。ところで天皇が内閣総理大臣を国会の指名に基いて任命をするというような規定もありますが、私どもは憲法の改正委員会においても、大臣という言葉は封建的な、過去の藤原、蘇我、物部というような、実に日本の封建的な言葉の残滓である大臣という言葉は当時改めなければならぬということを私どもは非常に強調したのです。つまり君主に対する大臣であり、いわゆるこれは主権在民の規定からいって、私は非常に矛盾しておると思う。しかしながら遂にわれわれはそのような意見を述べましたけれども、この大臣という言葉が憲法の中にそのまま残ってしまった。これでは私は遺憾だと思っておりますが、しかしこんなことを改正するために、憲法改正というようなことを大げさな問題にすることはできない。できないが、しかしほんとうに民主主義に徹した憲法だとするならば、現在の大臣という呼称は、これは改めなければならぬと思っております。これらの点は、いかがお考えでありますか。
○古井喜實君 調査会において改めるのがよいという結論になれば、改めても一向差しつかえないと思います。ただ私一個はそれほどにしいてこれを変えなければならぬということには思いません。
○森(三)委員 私はだんだんと先へいきますが、憲法九条の規定、これは何といってもあなた方が憲法改正する一番最大の目的であって、これが根源だと思うのです。極端に言うならば、ほかのところは変えても変えなくてもこれはがまんできるが、第九条だけはどんなことがあっても変えたい、このようにお考えになっておられると思うのですが、いわゆる日本の自衛権をあなた方は現行の憲法の条文の解釈からいってもできるとおっしゃっておる。そういう建前に立つならば、むずかしい手続を踏み、そして幾多の疑問を起すような改正はなさらなくてもいいのじゃないか。自衛のためならば、今日の自衛隊のようなああしたところの軍隊的なものを持てるんだというあなた方の解釈を通すならば、これを改めるという必要は私はないのじゃないかと思うのですが、御見解を承わりたい。
○古井喜實君 われわれは、自衛のための戦力は現行の憲法でも持ち得るという見解を持つのではありますけれども、しかし一方これに対しては持てないのだという議論もありますけれども、こういう重要なことは、明確にすることが適当だとわれわれは思っております。その意味においては、検討を加える必要があると思います。のみならず、先ほども申しましたように、自衛権を発動する場合の手続なども憲法では何ら考えていない。事はきわめて重要であります。そういう点も考えることがむしろ民主主義を徹底するゆえんだと考えて、そういう点にも検討の余地はあると思います。
○森(三)委員 つまり自衛のためならばこれは侵略を受けた場合にのみ、自衛権は行使せられるというような解釈をとっておられますけれども、私は憲法九条の規定の改正にからんで、先ほども鳩山総理大臣にお尋ねいたしましたが、絶対にそういうことはないと言っておられる。しかし将来海外への派兵であるとか、あるいは今日の自衛隊、いわゆる志願制度についても、国家の予算上からいっても限界がくるであろう。その意味においては、当然に徴兵法の規定をするという考え方はあなた方としてはお持ちになっておるであろう、国民大衆も大体そのように考えております。旧憲法におけるところの兵役の義務は、やはり復活するのである、われわれはこういうふうに考えておるのです。先ほど鳩山総理は絶対に兵役法の規定を作る考えはない、かように言っておられますが、これはやはり国民を欺瞞してはいけないと思う。あなた方が自衛権の行使には、絶対に軍隊が必要だという建前をおとりになっておるとするならば、当然そこには兵役法の規定というものも考えられるのでありまして、率直なる、国民に知らしめる、あなた方の隠しどころのない御意見を承わりたいのです。
○古井喜實君 兵役義務、徴兵制のことについては、午前中すでに総理自身が見解をお述べになっておることでありますから、それ以上私はこの点については、意見を申し上げることは差し控えたいと思います。
○森(三)委員 しかし、これは提案者のあなたが、ほんとうに確信を持ってお答えになるのがほんとうであって、鳩山総理の意見と違っておったから、あるいは食い違いがあったからといっても、私は何ら差しつかえないと思う。鳩山総理は現在は総理大臣としての責任を持っておるのでありますが、やめれば一個のやはり議員としての資格しかないのでありまして、今日の憲法調査会の法案はあなたが提案者として、私はあなたの責任の方がよほど重大であると思う。当委員会においても、あなたが責任あるところのお考えを率直にお述べになって、たといそこが鳩山総理と食い違いがあったところで、これはむしろ当然であって、一部始終が鳩山総理の答弁とギャップができないというようなものではないと私は思うのでありまして、古井さんとしても忌憚なき御所見を表明されることが、私は国民に対して忠実なるゆえんであると考えておるのでございますが、いかがでございましょうか。
○古井喜實君 その辺すべて調査会の審議にまつほかはないと思っております。
○森(三)委員 それは多数でもって調査会が結論をとるというような場合がありましたならば、それは調査会の結論でありましょうけれども、提案者であるところのあなたは、少くともそうしたところの国民のいわゆる生命の奉仕、これは大きな問題です。税金の問題であるとか、あるいは兵役の義務とか、そういうようなものはこれこそ明確にしておかなければならないのであります。単なる枝葉末節がどうだというのじゃない、これがすなわち根本の大きな問題でありますから、これをただ単に委員会の結論をまって云々というようなことは私は無責任だと思うのです。やはり提案者としては、そういうかなめのところは、私どもとしてはぜひやらなければならぬ問題である。あるいはその反対とか、はっきりかなめのところは言っていただかなければ、国民はますますこの再軍備政策に対するところの疑惑というものを増すばかりでありまして、そのことは一つはっきりと御所見をこの際お述べいただきたいと思うのであります。
○古井喜實君 あらためて申し上げることもつけ加えることもございません。従前改進党でこの憲法の検討をいたした際にも、徴兵制を行おうという意見はありません。そういう結論は出ておりません。こういう事実はあります。それ以上はあまり私見は申したくないと思います。
○森(三)委員 ただいま改進党当時の御所見を述べられたのでありますが、今後そういうようなお考えがないとするならば、あくまでも私はそれを堅持していただきたいと思うのでありますが、時間もありませんから次に移ります。 先ほど古井委員はこの改正のことにつきまして、公共の福祉に名をかりて基本的人権に誤解を与えるような条項がある、このような御答弁をなさいましたが、私どもはもちろん公共の福祉は十分尊重しなければならぬと同時に、といって基本的な生命権、あるいは財産権、その他言論出版等の自由、こうした基本的人権に対する圧迫ということは許されないことだ。やはり個人的な人権尊重が守られなければ、ひいては公共の福祉も守られないのであって、私どもはあくまでも正対正の関係であって、正と不正の関係ではない。しからばあなたが先ほどそういうことを言われましたが、どういう点についてあなたはそういうようなことをおっしゃるのかお考えを述べていただきたいと思います。
○古井喜實君 基本的人権の尊重ということこそ最も重要な点であると思います。現行の憲法は、公共の福祉のために必要ならばいかようにでも制限でき得るかのごとく少くとも誤解を起す建前になっておると私は思っております。こういう点につきましては、むしろ具体的に個別的に制限ができるかできないか、限度等も変えていくことが基本的人権を尊重するゆえんだろうと私一個は思っております。
○森(三)委員 そうしますと、この公共の福祉ということを中心にして基本的人権を尊重なさるというのか。あるいはまたその調節において基本的人権の方を中心として考えるというのか。具体的に条文を示して、こういう点は自分としては変えなければならぬと思うのだというような点を一つお示し願わなければ、ただ拙象的に公共の福祉に名をかりて、個人的人権を尊重し過ぎるきらいがあると言われましても、われわれにはぴんと来ない。かえってわれわれは、そういうことを言われるよりか具体的に言われた方が、いわゆる国民に対するところの安心感というか、理解というものが求められると思うのでありまして、率直に一つ拙象的でなく具体的にお述べを願いたいと思うのであります。
○古井喜實君 あまり具体的なことを申し上げるのは、前々申すように僣越でありますが、たとえば第二十一条と二十二条を比較されましても、二十二条においては「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」と書いてある。第二十一条には公共の福祉という言葉は一言もありません。それでは第十三条この関係はどうなるのかということはまことに疑問が多いのであります。こういう点をほおっておいて人権が十分尊重されるとは私は思いません。これがつまり擁護すべき一番よい憲法などということに対してはまことに私は疑問を持つ一人であります。
○森(三)委員 これはあなたがそういう解釈をなさらなくとも、いわゆる公共の福祉というものは社会全体の問題であって、われわれは他に優先しなければならぬと思うのであります。特にこれを二十一条の上につけなければ解釈ができない、あるいはあなた方がおそれられておるかもしれないような集会、言論、出版その他の自由というものの法律的な規制ができないとは思わない。現在あなたの御承知の通り、これでなくてさえも、かの弾圧法と言われているところの破防法であるとか、あるいはその他のスト規制法であるとか、教育二法案のあのような弾圧法規というものが多数生れておる。そういう場合に、公共の福祉に名をかりて、そうして基本的人権の抑圧法規を作るということをおそれるのでありまして、現行憲法下においてさえもすでに個人的な人権が侵害されている例が多々ある。しかも過去において審議された売春禁止法等もついに葬り去られたのでありますが、私どもはあくまでも個人の人権を尊重し、その上に立って公共の福祉が考えられなければならぬと考えておるのでありまして、公共の福祉に名をかりてあまりに個人の人権を侵害されるということを絶対になさらないことを希望いたしまして、次の条文に移りたいと思うのであります。 先ほどあなたは参議院議員の任期の問題を言われたのでありますが、これは憲法の条項で衆議院議員の任期は四年、参議院議員の任期は六年となっておるのでありますが、これにつきましてあなたはどのようなお考えを持っておられるのか、お伺いしたい。
○古井喜實君 参議院議員の六年の任期が長いか短かいか議論はあるようでありますが、変えるとなれば憲法に手を触れなければいけないという意味で、この点は検討の対象になると申し上げておるのであります。
○森(三)委員 これは衆議院と参議院とはおのずから特色があり、一院制度がいいのか、二院制度がいいのかも問題でありますが、これは各国の法制を見ましても、おのずから権限の差異、任期の差異もあるのであります。われわれはこの衆議院と参議院の任期の問題につきましても相当慎重に審議をした。もちろん衆議院には解散せられる規定がありますから、実際上の任期は四年満期というようなことは少いわけでありますが、それとからんで参議院議員の任期をあなたがお考えになっていらっしゃると思うのでありますが、私どもが他国の立法例等を検討いたしまして、十分にこの憲法審議の際に検討したのであります。そうするとあなたは、参議院議員の任期は相当短縮しなければならぬ、こういうお考えなのであるかどうか、具体的に述べていただきたい。
○古井喜實君 短縮しなければならぬという結論を申し上げたり、衆議院と同じことにしなければならぬという意見を申し上げたりしておる意味ではありません。ただ議論のある点でありますから、検討の対象にはしなければならぬということを言っておるわけであります。
○森(三)委員 次に、あなたは国務大臣の任免の規定等について改正しなければならぬということもおっしゃったのであります。これはどういう点をあなたは考慮をなさっておるのかわかりませんが、私は気を回してお尋ねするのかもしれませんが、いわゆる現在の内閣制度の上においては、国会議員たる者が過半数を得なければならぬ、国会議員以外の者は過半数以下であるというような規定がありますが、それらの点を変更しようとするのか、あるいはさらに総理大臣の任免権強化を意味するのか、あるいはさらに気を回しますと、いわゆる国務大臣は文民でなければならぬという規定がありますが、これらも憲法九条の規定とからんで、いわゆる再軍備規定を強化するためには、軍人であっても国務大臣になれるのだというようなことをお考えになっておるのじゃなかろうかと私は気を回すのですが、どのような点について、この国務大臣の任免等についてお考えになっているのか、お尋ねしたいのであります。
○古井喜實君 ただいまのお話は、全く私の思うことと真反対な方角のことをおっしゃっているのでありまして、私はそういうことを考えたこともありません。もし問題になるとすれば、たとえば国務大臣の任命を総理大臣一人の専権で自分だけやってよいのか、あるいは国会の同意も得るというようなことが問題にならないかというような意味で申しておるのでありまして、あなたのおっしゃるようなことは、思いもつかぬ問題であります。
○森(三)委員 あなたは思いもつかぬとおっしゃいますが、最近の解釈論でいきますと、たとえば防衛の関係に立つところの国務大臣に、鳩山内閣では最初野村参議院議員を任命しようというような意図があったことは明らかだ。ところがこれに対しまして文民の規定がありまして、文民でなければ国務大臣の地位につくことはできないという世論の反撃が非常にありまして、ついにこの野村さんの国務大臣になることを政府が撤回しまして、杉原さんを国務大臣に任命している。そこで、当然憲法九条の改正とうらはらになってあなた方がお考えにならないのが不思議だと思う。その点について私はただいまお尋ねしたのですが、そういう点は思いもよらない、考えていらっしゃらないというならば、そこまでお考えが行っていないというのか、お考えが行っておりながら、そういうことを改正しないというならば、これは大へんけっこうなことと思っておるのであります。 そこで、時間がありませんから次に進みますが、最高裁判所の裁判官の審査の手続であります。これを省略しようというようなお考えなのかどうか、お尋ねしい。
○古井喜實君 この国民審査の問題は、あまりにこれは形式的であって、また他の国にも、アメリカの州に例があるといいますけれども、たくさん例のあることでもありませんし、世上いろいろ議論のある点でありますので、これはどっちの結論になるにせよ、再検討する価値はあると私は思っております。
○森(三)委員 この条文は憲法改正当時非常に問題になった。裁判官の連中は、そういう規定は置いてくれるな、われわれは非常に困るからというので、連日陳情に参って、私どもも直接裁判官から受けたのであります。しかしながら私どもは、民主主義の政治というものは、人の上に人なく、人の下に人なしというのが民主主義の政治だ、われわれ国会議員といえども、憲法四十一条には、国会が国権の最高の機関である、このように規定はされておりますが、しかしわれわれは国権の最高機関であるといっても、一たび解散となり、選挙に臨みましたならば、われわれを当選さすかさせないかは、ひとえに国民の意思によって決定される。国会議員といえども最高の憲法上の地位の保障はありますけれども、われわれを制肘するものは国民の投票であります。それからまた行政機関であるところの国務大臣、内閣の長である総理大臣といえども、これはやはり国民の意思によって作られた国会の選挙によってきめられるのでありまして、一たび不信任案が通過すれば解散かあるいはまた総辞職をせざるを得ない立場にある。また半面司法機関であるところの裁判官といえども、これは旧憲法では御承知の通り裁判は天皇の名においてこれを行うという厳然たる規定がありました。そして裁判所に菊の紋がついて、裁判所は天皇の名を乱用して国民に臨んでおった。しかも身分は終身官である、どんなことをしても裁判官というものはやめさせられないのだ、こういうような旧憲法の規定であったのでありますが、やはり裁判の民主化といいますか、国民に納得されないところの裁判、こういうような裁判に対しては、やはり国民の名において、国民の投票によってこの裁判官を罷免することができる、国民審査という制度がある。すなわちわれわれはお互いに憲法上の地位を与えられながら、われわれはお互いに制肘して、結局最高無二の権限を持つ、いわゆる何物にも侵されないというような、そういう機関というもの、権限というものを与えた地位を作ってはならないというのがわれわれの観念でありまして、なるほど手数はかかります。総選挙の行われる場合に、十年ごとに裁判官の適否審査をするということは手数はかかります。しかしわれわれの経険からいうならば、最初はこれはわからなかった、ところがだんだん選挙して、裁判官の国民審査という投票を通じて参りました今日におきましては、だんだんと理解を深めて参りまして、御承知のごとくあの裁判官の審査の投票用紙にも、相当これに対して国民の意思か現われてきております。これはやった実績によっておわかりであると思うのでありまして、やはり私は裁判官といえども国民の意思によって罷免されることがあるのだという規定があるということは、民主主義の政治の上においては必要である、このように現在考えておるのであります。古井議員はただ手数がかかるからこういうものは改めなければならぬというような御見解でありますが、私はやはり民主政治というものをあくまでも守るといる上においては、この条文は廃止すべきでないと考えておりますが、一応の御答弁を願いたいと思います。なお私の質問はこれで留保したいと思います。
○古井喜實君 私は手数がかかるからといって申し上げたのでは決してありません。ただ国民にかたきをしいているという議論があるのであります。最高裁判所の裁判官の適否を国民に判断させようなんということは、できないことを求めているのだという議論が一方あるのであります。民主主義の理論を通す点には敬服すべき点もありますけれども、そういう議論がありますので、再検討が必要であるという意味で申し上げたのであります。
○宮澤委員長 田中正巳君。
○田中(正)委員 憲法改正の各法条についてはそれぞれ憲法調査会の審議の経過を通じて明らかになると思うのでありますから、それらの点については私どもはあまり質問しようとは思わないのであります。私は総括的な問題について私どものまだ了解できない点が若干残っておりますから承わります。 かねて日本民主党は結党当時から選挙を通じまして憲法はこれを改正しなければならないというようなことを申しておったようであります。ここにあるのはこれは日本民主党の政策要綱でございますが、この中に「これを自主的な国民憲法となすべきものであったが、これを阻んだのは吉田内閣であった。」云々「そこでこれが準備のため、わが党は法律をもって専門学者、言論人、各界代表等全国民の輿論を反映する代表を網羅した憲法審議会を設置することを提唱する。」というふうに申し述べておられる。ところがこの提案理由の説明によりますれば、これが予算措置についても十分用意してあるというふうに申してあるのでありますが、私ども思い起してみますれば、この憲法調査会に関する予算二百万というものは政府原案に盛らておったものでなくして、民自両党の共同修正案に盛られたもののように私どもは記憶しております。さすれば一体民主党は組閣の当初において憲法調査会を作って、この憲法改正を準備なさるおつもりがあったのかどうか。そしてまた急にお変りになったようなふうに思うのですが、この間の事情について一つ提案者から御説明願いたいと思います。
○古井喜實君 民主党としては憲法の改正の調査をする必要は当初から認めておったわけでございます。ただしかし選挙の結果におきまして自由党の協調を得なければならぬこれは政治問題でもあります。自由党の方で幸いにして予算修正の際にこの問題について同調を得ることができましたので、そこで両党の共同修正でこの二百万の経費を追加計上したのであります。これは全く自由党の方のお考えが初めてはっきりしたおかげであると思って感謝をいたしております。
○田中(正)委員 どうも私どもの考えるところといささか相前後しておるように思うのでありますが、その点にお気づきになって措置をおとりになったことについては私どももこれ以上申し上げません。 ついてはこの憲法調査会法案の内容につきまして一応お聞きしたいと思いますが、国会議員というものが委員になるにはそれぞれ国会法三十九条ただし書きによって、両院の承認を必要とすると思うのでありますが「学識経験のあるもの二十人」この分につきましては他のかようなる法律においてはそれぞれやはり国会の承認を得るようになっておるのでありますが、この問題については国会の承認についての規定がございませんですが、この点は一体どういうお考えでございましょうか。
○古井喜實君 この国会法三十九条におきましては、別に法律で定めた場合は国会の承認を得なくてもよろしいという建前をとっております。そこでこの規定は別に法律に定むる場合に該当するという見解で、またそのために国会議員と明確に掲げておるようなわけでありまして、国会の承認なくしても政府において任命できる、こういうことであります。なおこの点については他にも先例があるのであります。
○田中(正)委員 こまかい問題に入りまするが、専門員及び幹事両方につきましては、それぞれ非常勤ということに相なっておるようでありますが、一体かような重大な問題を扱う職員が、全部非常勤でよいというふうにお考えになっておるのでありましょうか。この点お聞きをいたしたいと思います。
○古井喜實君 非常勤でありましても、大半の時間をこの仕事のためにさいてもらうことは十分できると思いますし、事柄の性質上やはり特別職にし、かつ非常勤の建前をとるのがよかろうということで、こういうことになっております。
○田中(正)委員 この点についても私ども少しく考えが違うのでありますが、まずその辺で一応了承いたします。 私この提案理由の説明書を読み、本日の質疑を通じて感じたことがあるのでありますが、どうも提案者の御説明によりましても、この憲法を改正しなければならないという理由が、占領下におけるところの特殊な事情から生まれた憲法であるがゆえに、改正しなければならないということを強調なさっておるようであります。私はむしろあべこべに、この憲法の内容というのは、日本の国政を今後まかなっていくための基本として不適当であるというふうな、体験から生じてこれを改正しなければならぬ。かたがたその成立のいきさつというものはかようなふうであるからして、なお考えなければならないというふうに、こういう考え方をとった方がいいように私は考えるのでありますが、これについてはいかがお考えでありましょうか。
○古井喜實君 憲法施行以来八年間の経験によりまして、この内容のままでよろしいかどうかに議論を生じておることも事実であります。このままで日本の国の復興、日本の民族の発展と繁栄をなし遂げていくことができるかという議論もあるのであります。その辺もむろん一点でありましょうが、しかし同時に政治の基本をきめる憲法を、国民みずからの手によって作るということは、まさに民主主義の出発であるとわれわれは考えまして、その意味においても制定の経緯から考えて、再検討の事由はあると考えます。
○床次委員 この際議事進行に関し、緊急動議を提出いたします。 直ちに質疑を打ち切り、本案の討論、採決を行われんことを望みます。
○宮澤委員長 床次君の動議を採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕 〔「理事会、々々々」と呼びその他発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
○宮澤委員長 起立多数。よって質疑は終局いたしました。 この際討論に入るわけでありますが、不信任案が出ましたから、私は退席いたします。委員長の席を高橋君に譲ります。 〔委員長退席、高橋(禎)委員長代理着席〕 〔発言する者、離席する者多く、議場騒然〕 —————————————
○高橋(禎)委員長代理 各委員の方の御着席を願います。 〔発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
○高橋(禎)委員長代理 私が委員長の職務を執行することに指名をされましたから、これから委員長に対する不信任案の趣旨説明を求めます。 なお、この際各位にお諮りいたします。 〔「理事会、理事会」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
○高橋(禎)委員長代理 お静かに願います。(議場騒然、聴取不能)賛成の諸君の起立を願います。 〔「休憩、休憩」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕
○高橋(禎)委員長代理 (議場騒然、聴取不能)決しました。 〔「休憩、休憩」と呼び、その他発言する者多く、議場騒然〕 〔「高橋(禎)委員長代理退席、林(唯)委員長代理着席〕 〔林(唯)委員長代理退席、高橋(禎)委員長代理着席〕
○高橋(禎)委員長代理 御着席を願います——各委員の御着席を願います。指名によりまして、私が委員長の職務を代理いたしまして、委員長不信任動議について議事を進めます。まず提出者の趣旨弁明を許します。——提出者の趣旨弁明を許します。(「ちょっと待ってくれ、もう少し納得いくよう話してくれ」「不信任案を出したら趣旨弁明したらいいじゃないか」「なぜ弁明できないか」と呼び、その他発言する者多し)提出者の趣旨弁明を許します。(「無理するからこんな混乱が起るのだ」「無理しちゃいかぬ」と呼び、その他発言する者多し)趣旨弁明はございませんか——趣旨弁明はございませんか——趣旨弁明はございませんか(「宣言宣言」「議事進行」と呼び、その他発言する者多し)提案者の趣旨弁明を許します。森君。
○森(三)委員 私どもは本日上程いたしておりますこの憲法調査委員会の法案につきましては、憲法改正が日本の独立と平和のために、しかもわれわれは再軍備政策を強行せんとするところのこの憲法改正には絶対反対という立場でおるのでありまして、少くとも私どもはこの憲法調査会というものを作ることには反対である。しかもどうしても作るというならば、世論政治の上からいたしまして、国会の中に置かなければならぬというような主張をいたしまして、特に提案者の古井君や鳩山総理に対して十分なる審議を尽したいと思っておったのであります。しかもこれに関しましては、法務委員会におきましても満場一致をもって、当委員会との連合審査を法務委員会の委員長から申し入れがありまして、宮澤委員長もこれを了といたしまして、われわれは当然法務委員会との連合審査をなさるべきものであると考えておったのであります。しかも理事会においては強くわれわれはこの連合審査の問題を要求したのでありますが、自由党、民主党の諸君は、このような連合審査のわれわれの主張に対しましてもこれを否定し、今期末に迫ってこの重大法案を、わずか一日でもって通すような態度を持たれましたことはまことに遺憾であります。私どもはあくまでも慎重審議をし、国民に対しまして私どもはこの憲法調査委員会を持つことに対するところの態度を十分に示したい、このような考えを持って審議をいたしておったのでございます。しかもわれわれは宮澤委員長が相当の御年輩であり、しかもわれわれの古い先輩として、練達の方として常に尊敬を持ちながら審議をして参りました。御承知の通り各省の機構改革の法案、これも十数件に上り、これらの法案もわれわれは通過せしめた。そうしてまたその後には、いわゆる防衛三法であるところの自衛隊法あるいは防衛庁の設置法案、あるいは職員の給与法の改正法案が出ましたが、これに対しましても、われわれはやはり野党の立場ではありますが十分に審議をし、しかもこれが通過することにもわれわれは結論的において、やはり正々堂々と討論採決をし、すでにこれも通過したのであります。その次に例の国防会議構成等に関する法律でありますが、これにつきましても私どもは反対党の立場にありながら、この国防会議構成等の法律が、実に日本の自衛隊に対する重大な統帥権の問題であり、防衛出動の可否、あるいは防衛計画を今後行われるところの重大な法案でありましたので、私どもは慎重審議をし、しかもこの国防会議も御承知の通りわれわれはやはり当委員会の慎重な審議のもとに通過した。ところでいよいよ重要法案であるところの憲法調査会の法案がかかりましたが、これにつきましてもわれわれはあえて反対のための反対ではなくして、少くともきょとあしたをかけまして本日は十分質疑をし、明日は委員会の討論採決をするというようなわれわれの考えを持ちまして、いよいよあさってに会期が切迫し、会期はもう幾日もないのでありますから、われわれといたしても十分その間の事情を考えまして、あえて明日討論採決、本会議上程ということを私どもも強く主張しておったのであります。しかるに自由党、民主党の諸君はあまりにもこの法案成立に焦燥し、結局この法案を通過さすがためにあまり夢中になりまして、審議の過程におきましては非常にわれわれの要求を無視し、先ほども述べましたような法務委員会の貴重なる連合審査の要求も、前例を破ってこれを否決したのであります。私どもは、御承知の通り、宮澤委員長が明後日にいわゆる国会を代表し、しかも団長として列国議会同盟の会議に出席される……(「趣旨弁明になっていないじゃないか」と呼ぶ者あり)聞いていけばわかる、私の与えられた時間は十分でありますから、十分聞いて下さい。かような私は重大なる任務を負われまして宮澤委員長が出発されることに敬意を表し、あえて私どもは宮澤委員長に対する不信任案というものは出さないで、われわれはこの審議を終えたい、このような考えを持って参ったのでありますが、ついに宮澤委員長に対しまして民主党の諸君は、この法案を上げたいというあまりのあせりのもとに、ついに強硬なるところの審議を進めるために本日特に強行突破をしよう、そうして本日中に質疑を打ち切り、討論採決をして本日の本会議に上程せんとするような、まことに当委員会の権威を無視したるごとき行動をとられたのであります。私どもは宮澤委員長とも話をしておりましたが、少くとも本日は十分に質疑応答をいたしまして、根本的な問題等につきましても十分慎重審議をし、そうして明日の討論をもって当委員会の採決を終えまして、本会議に上程するということもわれわれはしばしば宮澤委員長にも伝えておったのでありまして宮澤委員長もこの点は十分御了承をされておったと思うのであります。しかるにいかに自分が所属している政党から発言があったとは言いながら、民主党の床次君から、質疑打ち切りの動議が出されたそうであります。当時私は何とかして事態の収拾をしたいというので、自由党の江崎理事あるいは民主党の辻委員等にも話しかけをいたしておりまして、何とかこの打開はできる、民主的にわれわれはこの委員会を尊重し、質疑と最後の討論をいたしまして、少くともきょう中に討論採決をしようじゃないか、そうしてあしたの本会議にかけようというような、私どもは、実に委員会を尊重し、民主的な運営を提議したのでありますが、これを無視いたしまして、突然質疑打ち切りの動議を出されましたことは、まことに遺憾であると同時に、この質疑打ち切りを宮澤委員長か受け入れる、このような態度に対しましては、われわれは全く了解に苦しむのであります。宮澤委員長は、このような動議が出されました場合においても、こうした場合には暫時休憩を宣しまして、理事会を開き、その理事会を開いた席上において事態の収拾をはかり、その理事会の結果を尊重して審議を進めたことも、当委員会においては再三行われたのでありまして、宮澤委員長は、そのような議会の運営におきまして、この委員会の意向を尊重し、理事会を開きまして、動議等が提出されましても、その動議の取扱い等につきましては理事会の意向をしんしゃくし、尊重して、円満なる委員会の運営をはかり、今日まで多数の法案の審議を終えて参ったのであります。本日の民主党の突然な、まことに委員会を無視する、われわれの質疑を無視するよりな動議に対しましても、すべからく宮澤委員長は、暫時休憩を宣し、理事会を開催いたしまして、この善後措置にとるべきが当然であります。しかるにかかわらず、時日がなきことを考慮に入れたせいもありましょうが、突然にその動議を取り上げんといたしました委員長の処置に対しましては、まことに私どもは遺憾の意を表明せざるを得ないのであります。ここにおいてわれわれはやむを得ず、まことに遺憾ではございましたけれども、やむを得ず宮澤委員長に対し不信任案の動議を出さざるを得ざる状態であったことを、委員各位にも了解を得たいと思うのであります。 私は、以上のような理由によりまして、先輩である宮澤委員長に対し不信任案を提出しますことは、まことに遺憾であることを十分知りながら、あえてこの不信任案を提出したのであります。 以上をもちまして私の不信任案提出の提案理由の説明といたしたいと思います。
○高橋(禎)委員長代理 討論の通告がありますので順次これを許します。中村高一君。
○中村(高)委員 ただいま議題となりました委員長の不信任動議に関しまして、社会党を代表して賛成の意見を述べたいと思うのであります。 われわれ当委員会におきましては、当初から一度もごたごたしたこともなく、今日まで驚くべきほど多数の議案を審議をいたして参りました。さよう初めて委員会が混乱をするような事態が起ったのでありますが、これは全く委員長の不手ぎわにあったことで、まことに遺憾にたえないのであります。われわれ当委員会といたしましては、この会期中きわめて円満に委員会が進行をいたして参りまして、これは一にかかって委員長の徳望のしからしめるところであるということで、先ほど一時には、列国議会同盟会議の議員団長として出席をされるというので、われわれ委員一同はこの団長の壮行会を開きまして、各党とも委員長の今までの委員会の審議につきましては敬意を表するに足るということで、今円満に壮行会を終りまして、委員会を再び継続をすることになったのでありますが、突如としてここに委員会が混乱をいたすに至りました。その原因は何であったかといいますならば、民主党の理事であります床次君から、突如として質疑打ち切りの動議が提出をせられたことに原因するのであります。われわれは、質疑の打ち切りをすることの動議を提出すること自体に異議があるわけではないのであります。もちろん、あらゆる動議を委員会において提出することの自由は、われわれに与えられておりますから、それをとがめるのではないのであります。しかしこの憲法を改正するための調査会を設置するという案は、きわめて重要な案件であります。十分に審議を尽すことは、他の法案に比べましても私は当然だと思う。ある意味におきましては、この議案はこの委員会にかけられました他の議案のいずれよりも、私は重要な議案であると思うのであります。その重要なる議案の審議を、きわめて短時間に打ち切ろうとするところに無理があるのであります。それは会期末であるからという理由は、決して私たちは無視いたして申し上げておるのではないのであります。しかしそれにはそれ相応の順序をとって、お互いに理解と融和をして、幾らでも進行ができるのであります。今まで全部の議案にそういう扱いをしてきたにもかかわらず、この重要な議案をわずかに数時間の質疑で打ち切ろうとする、その気持は民主党の諸君みずから私は考えてもらわなければならないことだと思う。午前中に費しました時間は大体一時間半であります。午後、打ち切りの動議が出ましたときまでに、長く見ても一時間半くらいであります。わずか三時間の審議時間で、この重要な議案を無理押しに押し切ってしまうということは、会期の問題は別といたしましても、反省してもらわなければならないことだと思う。ことに床次君のごときは温厚篤実の人であります。この委員から、全く突如として、しかもこの暑さのために大部分の人は廊下に避難をいたしたり、あるいはまさか打ち切りがあると思わないので、ほとんどおらなかった、そのチャンスをねらういということはまことによろしくないのであります。これは今までの扱いを全部ごらんになってもわかります通り、みんな理事会を開いて、きょうはこの程度にしてあしたはこうしようじゃないかといって、今までの会期全部、それで完全に今日までやって参りました。与党の諸君の非常な努力もあったこともよくわかるのでありますが、野党のわれわれも熱心にしてしかも協力的に重要な法案の審議に携わったと私は思うのでありまして、実に内閣委員の諸君がまじめに審議に当ってこられたことは、まれに見るこの暑さの中で敬服するに足ると思っておりました。ところが今までの扱いを別にして、理事会にもかけずに、いきなり立ち上って質疑の打ち切りの動議を出されたということがどうしてもわからない。委員長としてはこれまたあの練達な委員長でありますから、こういう場合にはしばらく待ってくれ、理事会を開いてその上で円満にいこうじゃないかというならばけっこうでありますけれども。暑さのためかどうか、委員長ものぼせてしまったのかどうか知りませんけれども、この動議の取扱いをいたそうとするに至りましては、まことに個人的には委員長を尊敬いたしますけれども、われわれは私事を捨てて公事を論ずる建前にありますので、これは泣いて馬謖を切るという言葉もございまして、私たちはまことに忍び得ざることを忍んでこの委員長不信任に賛成意見の開陳をいたしておるのでございます。この採決がいかように相なるかわかりませんが、どうかこの跡始末については再び混乱をすることのないように、会期余すところ数日、国会の面目にかけても一つりっぱにこの審議を完了いたしまして、本会議に上程のできるような運びを、与党の諸君にも野党である自由党の諸君にも社会党の諸君にも全部お願いいたし、この議案が円満に審議できるようにという希望をつけ加えまして賛成の意見を申し上げた次第であります。(拍手)
○高橋(禎)委員長代理 床次徳二君。
○床次委員 私はただいまの動議に対しまして反対の意を表するものであります。 提案者は委員長に対しての不信任の理由をそれぞれおあげになっておりますが、手続上から申しましても、理論上から申しましても、私はその理由はないと存じておるのであります。すなわち提案者も仰せになりましたごとく、委員長はきわめて練達堪能の士でありまして、今日まで円満に議事を進行してこられたのでございまして、常に法規の命ずるところに従い運営しております。必要のあります場合は、委員会あるいは理事会によく意見を諮って今日までやって参られたのであります。今回質疑打ち切りの動議に対しましても、法規に従って行動せられておるのでありまして、この間何ら違反せられたものはないのであります。従ってこの動議を採択したことに対して委員長を非難せられることは当らないと思うのであります。 なお委員長の法務委員会との合同審査に関しての手続に対して欠陥があるかのように言われるのでありますが、本問題は内閣委員会の趣旨を体しましてすでに世耕法務委員長に対しまして申し入れてありまして、この点は、委員長といたしましてもなすべき処置を尽しておられるのであります。 なお審議の期間に対しまして非常に短かいではないかという御意見もあるのでありますが、これは私どもは意見の相違であると思っております。本法案の内容を審議するにいたしましては、時間はなかなか短かいのではありますが、しかしながら今日の場合におきましては私どもは審議をいたすのに十分であると思っておるのでありまして、いろいろ質疑の内容等を伺っておりますと、失礼ではありますが、本案そのものに対する質疑よりも、すでに憲法の改正案そのものに対する意見も大分入っておるように考えておるのでありまして、かかる推移をたどりましたならば、時間は幾らあっても足らないということができるのであります。打ち切ればあるいは時間は相当であるともいえるのであります。かかる状態でありまして、これまた委員長の処置に対しまして、決して不穏当であるという不信任の理由になるものとは私どもは考えないのであります。ことに本案は会期末きわめて時間の窮迫したときに審議せられておるのでありまして、委員長が急がれる真意もよくわかるのです。私どもは一日もすみやかに本案が成立することを要望しておる次第であります。先ほど提案者におかれましては、明日あるいは明後日等において円満成立を期待しておるようにお話になっておるのでありますが、果して明日におきましてあるいは明後日におきまして本案が成立してそれでよろしいかということに関しましては、それぞれ見解の相違であると私どもは考えております。 かかる点を勘案いたしますと、ただいま提案せられました委員長に対する不信任案はその理由なしと私ども断ずるのでありまして、あえて反対の意を表明する次第であります。(拍手)
○高橋(禎)委員長代理 飛鳥田一雄君。
○飛鳥田委員 私は日本社会党を代表して、ただいまの動議に賛成をいたすものであります。 およそ国会は国民のものであります。委員長また委員会に対して責任を負うだけではなしに、国民に対して責任を持たなければならないものであります。翻って本法案を見ますに、憲法を改正するかいなか、あるいは憲法調査会を設けるべきかいなかという点についてはひとしく国民の知らんとし、なおかつこれについて十分な議論をいたさんと願っているところであります。自由党が憲法調査会を設けられて鋭意研究を始められて以来すでに一年であります。また鳩山首相が憲法改正を唱えて選挙に臨まれまして以来——二月に行われた選挙は憲法改正是か否かということをめぐって行われましたこともこれ事実であります。この憲法の問題は今や日本の国民的な問題であります。こうした問題をこの委員会で取り扱いますに際して、果して三時間の審議をもって打ち切ることが妥当なりやいなやは、もはや言わずして明らかであります、単に会期が迫っているなどというさまつ的なことでその本質的なことを阻害すべきでないことも明らかでありましょう。私たちはこうした意味でこの法案については十分なる審議を尽し、また尽すがごとく委員長がこの委員会を指導せらるることが当然の責務であると思います。これは国民に対する義務であります。しかるにわずか三時間に足らざる時間をもってただちに質疑打ち初りの動議を出し、この動議を唯々として採択せらるるがごときは、国民に対する背反であります。すなわちこれが不信任案に賛成をいたします第一の理由であります。よろしくかくのごとき取扱いをせらるる方々は国民に向って謝さなければなりません。 さらに第二の理由といたしましては、はなはだ申し上げにくいことでありますが、この質疑打ち切りの動議が策略的に行われたということであります。すなわちわが党の国会対策副委員長である成田君が民主党の中曽根さんに、本法案をいつ上げるかということについて御相談をいたしました。この御相談を中曽根さんは党の幹部に諮り、この委員会の社会党の私たちに御返事を下さるというお約束でありました。これは単に一議員が相談を申し上げたのではなしに、国会対策副委員長という資格において申し上げておるのであります。ところがわれわれは民主党がどのような態度をおとりになるかという御返事をいただかない間に、すなわち床次さんの質疑打ち切りの動議にあったのであります。およそ議会でありますからかけ引きを用いられることはやむを得ません。私たちもまたある種のかけ引きを用いますことは事実であります。しかしペテンはいけません。詐欺はいけません。私たちはここにこのことを強く申し上げざるを得ないのであります。何によってかくまでも急ぎ、かくまでも狂暴にたけり立たなければならないのか、私たちは不思議にたえないのであります。私たちはこのような仕組みのもとに出された動議をそのまま唯々として採用せられんとする、そのまま唯々としてこれを行わんとする宮澤委員長は、やはり国民のための委員長にはあらずして、単なる民主党のかいらいにしかすぎないということをここにあげざるを得ないのであります。これが不信任に賛成を申し上げまする第二の理由であります。 第三の理由といたしましては、先ほど来賛成者の申し上げておりますように、この委員会は今まで民主的な運営を続けて参りました。しかるに今回の事件に際しまするや、突如として今まで民主的な話し合いによって事を片づけようとする態度を一擲せられた。このようなことは、私たちは強く非難をせざるを得ないのであります。すべからく今までとって参りました態度をそのまま持続し、話し合いのうちに審議を尽して、委員会を終了せしむべきものだと私は信じます。このような君子豹変ぶりに対して、われわれは強くその不信義をなじらざるを得ないのであります。先ほど個人として宮澤さんに非常なる敬意を払いつつあるわれわれの意向が、十分に表明をせられました。だがしかし、このような重要な、国民のすべて聞かんと欲し、知らんと欲しているこの法案に対して、かくのごとき非道なる取扱いをするその行為については、われわれは胸のうちから込み上げてくる痛憤にたえざるものがあります。われわれはこのような不信義に対し、国民に対する背反に対し、断固としてこれを究明せざるを得ないとかたく確信いたします。 以上。(拍手)
○高橋(禎)委員長代理 これにて討論は終局いたしました。 これより採決いたします。森三樹二君提出の委員長不信任動議に賛成の諸君の御起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○高橋(禎)委員長代理 起立少数。よって森君提出の委員長不信任動議は否決せられました。(拍手)委員長の復席を願うことにいたします。 〔高橋(禎)委員長代理退席、委員長着席〕
○宮澤委員長 一言ごあいさつ申し上げます。この事態をかもしましたことは、一に私の不徳のいたすところであります。まことに申しわけありません。実は不信任案が出ましたらば、そのいかんにかかわらず、私は再びこの席に戻る気持はなかったのでありますが、委員会多数の御意向と本案の重要性並びに党執行部の同意を得るに至りませんでしたので、心ならずも再びこの席へ着くことになりました。何とぞこの点あしからず御了承願います。(拍手) —————————————
○吉田(賢)委員 議事進行について、委員長にお尋ねしたいのでありますが、本日法務委員会の世耕委員長から、本法案について連合審査の申し入れを委員長に対してしたのでありますが、これに対して委員長はどういう措置をなされたか、まず明らかにしていただきたい。
○宮澤委員長 お答えいたします。世耕委員長より法務委員会で連合審査をしたいというお申し出がこの席上においてありましたから、いずれ理事会に諮った上でお答えをいたしますと申しました。当理事会におきましては一応法務委員会の委員長に面会をして、そのいきさつをただした上に、当委員会の大体の意向によって処理すべしということでありましたから、その後世耕委員長に面会をいたしました。世耕委員長の言われるには、法務委員会においては理事会を開きまして、理事会の大体の意向として、この際会期が切迫しておるから困難であろうとは思うけれども、委員長において一応内閣委員会にその旨を通告しろということであるから、通告をしたから善処をせられたいと、こういうことでありました。そこで私は私の方の理事会の模様をお話しいたしまして、この問題についての処理は私に一任をしていただきたい、こう委員長に申しましたら、委員長は大体において、それではさらにその処置がついたら知らしてもらうことにして、大体の処理を一任しようということで別れたままになっております。従って今日の事態におきまして、これから法務委員会との連合審査を開くということはもうできがたい事情にありますので、この討論を終りましたらその不可能なるゆえんをさらにあらためて法務委員長に報告するつもりであります。
○吉田(賢)委員 大体委員会が連合審査の申し入れを他の委員会にするという法律上の根拠は、衆議院規則六十条によるものと存じます。その六十条の規定によりますと「委員会は、審査又は調査のため必要があるときは、他の委員会と協議して、連合審査会を開くことができる。」そこでこの規定の趣旨を推していきますと、当委員会は法務委員会から連合審査の申し入れを受けたわけであります。従ってこれは協議を受けたわけでありますが、そこで当委員会の意思決定が、これを受諾するかあるいは拒否するか、必要があるかないかをきめるべきものであろうと存じます。今委員長の御説明によりますと、理事会において、この委員会の大体の空気によって委員長に一任するというような趣旨と承わりました。理事会は即委員会でないことは申し上げるまでもないことであります。言いかえますと、当委員会にお諮りすることなく、委員会の意思決定を待つことなく、理事会のみの申し合せによって、委員長が他の委員会に連合審査の拒否をしよう——今の御説明によりますと、今日の事態においては拒否することが妥当であるというような意味の御説明であります。委員長は、第一委員会に諮ることなく、みずからこれを拒否するという権限がないと思います。何となればこの六十条は、委員会の意向にによってこれを拒否するや受諾するやはきまるべきであります。第二には、委員長といたしまして、事実上委員会に今までのところ何ら諮ることがなかったのであります。当然これは当委員会に法務委員会の申し入れを承諾すべきかあるいは拒否すべきかということをあらためて諮ることが私は当然であると思います。その措置に出ることなくして、今のような御答弁になりましたことは、これは越権でないかとして委員長の所信を承わり、当委員会の意向をなぜお諮りにならないか、諮る意思がないかということをあらためて伺いたい。
○宮澤委員長 重ねてお答えいたします。世耕委員長の申し出は委員長一存においてお計らい下すってもよろしいという条件をつけてのお申し出でありました。世耕委員長からは委員長一存の処置によって御返事を下されてもよろしいという申し出でありましたけれども、私は慎重を期するために理事会に諮った次第であります。
○吉田(賢)委員 あなたも国会法並びに衆議院規則によって当委員会を運営せられる以上の何らの権限はないはずであります。ところで連合審査の申し入れ並びに承諾、拒否のその行為というもの、手続は委員会にあります。従って世耕委員長が言葉として、委員長、あなたに、あなたの一存によってというような、そういう言葉がかりにあったといたしましても、言葉にすぎない。世耕委員長は内閣委員長に、内閣委員長の独断、一存で、委員会の意向を徴することなくして決定せられてもよいというような、そういうような申し出をせられる権限は法務委員会の委員長にはないのであります。法務委員会の委員長は成規の手続によって、成規の申し入れを、この法上においてせられております。(「正式じゃないよ」と呼びその他発言する者多し)従って言葉のいかんにかかわらず、あなたは委員長といたしまして、法律の所定するところに従って処理するということが当然であって、それ以外のことはすることはできません。従ってこれは正式な申し入れできないというけうなヤジが飛んでおりますが、こんなひやかし言葉には顧慮することなく、あなたといたしましては堂々と当委員会にお諮りになるべきが筋であろうと思う。独断でこの可否を決して、世耕委員長に答弁をするということは、これは権限の逸脱であります。もしそのようなことがこの重要な法案について行われるといたしましたならば、国会の運営は大へんな変態に陥ります。現に法務委員会におきましては、この重要な法案について、これは内閣委員会に付議すべきか、法務委員会に付議すべきかということについても、いささか疑義があるのではないかというふうな意見をも、議長まで申し出るというようなことまでしたのであります。このような事情も伴っておるのであります。これはあなたが御承知かどうかそれは別といたしまして、ともかくかかる重要な法案の取扱いにつきまして、法規を逸脱し、何らの権限、根拠なくして、委員長の独断で、法務委員長に答弁をせられるということは、これはまことに不穏当しごくと申さなければならぬと思います。世耕委員長の言葉のいかんにかかわらず、——世耕委員長のそういう言葉というものは、それは法律の根拠によらざるものであります。そんなものはあなたは顧慮すべきではありません。あなたは御自身も当然これらの法規に従ってのみ行動し得られるのであろうと思います。どうしてそれをなさらないのでありますか。私はあなたの言葉は断じて納得することはできません。
○宮澤委員長 お答いたします。私は世耕委員長に向ってこれは法務委員会の決議としてお持ち下すったのですかとお尋ねいたしましたら、委員会の決議ではありません。理事会だけの意向として持ってきたのでありますというお話しですから、私もまた理事会における決定をもってお答えしたのであります。なおもうすでに当委員会としては質疑が打ち切っておりますので、ここで法務委員会との連合審査をするということはできない事態と考えております。 〔「討論々々」と呼び、その他発言する者多し〕
○吉田(賢)委員 そうしますと確認しておきます。委員長、確認しておきます。この問題、この重大な法案について連合審査を正当にするか、不当に拒否するかということは国会の権威、将来の運営に重大な問題であります。だからあなたに確認いたしますが、しからばあなたの今の一切の御説明、御答弁によりますと、法務委員会の委員長は成規の手続によって、法務委員会から当委員会あて連合審査の申し入れがなかったということになるのでありますか、それをはっきりしておきましょう。
○宮澤委員長 ありました。ないことはありません。ありました。
○吉田(賢)委員 委員長は、世耕法務委員長から成規の連合審査の申し入れがあったということを確認せられた。しからば問題は、衆議院規則六十条によりまして、当委員会が……。
○宮澤委員長 それは申し入ればありましたけれども、法務委員会の決定に基く成規のものではありません。
○吉田(賢)委員 言葉は全部聞いて下さい。あなたはこの点は明確にして置かなければならぬのであります。国会の権威と将来の運営のために——あなたはすでに世耕法務委員長が成規の連合審査の申し入れがあったということを確認せられた。しからば……(「成規じゃない」と呼び、その他発言する者あり)成規であると言ったじゃないか。妨害するな。しからば当委員会の意向を徴し、当委員会に諮るということをなぜせられないのですか。その理由、根拠を聞きたい。
○宮澤委員長 当委員会では理事会で相談をいたしまして返事をいたしました。法務委員長よりは委員長の意向だけということでしたから、理事会で返事いたしました。 —————————————
○宮澤委員長 これより討論に入ります。討論の通告がありますので、これを許します。飛鳥田一雄君。(発言する者多し)飛鳥田君、討論をやって下さい。——それ以上の答弁はありません。私はこれ以上答弁することがありません。——飛鳥田君、発言して下さい。——これ以上答弁がありません。——飛鳥田君。討論を願います。 〔発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
○宮澤委員長 静粛に願います。——静粛に願います。飛鳥田君、討論を願います。——飛鳥田君討論を願います。飛鳥田君、討論を願います。 〔発言する者多し〕
○宮澤委員長 静かに。——静粛に願います。——静粛に願います。——静粛に願います。——静粛に願います。——静粛に願います。——静粛に願います。——飛鳥田君。討論を始めて下さい。——飛鳥田君、討論を願います。 〔発言する者、離席する者多し〕
○宮澤委員長 静粛に願います。席について下さい。——席について下さい。——静粛に願います。——討論をして下さい。——席について下さい。——飛鳥田君討論を願います。
○飛鳥田委員 それでは日本社会党を代表いたしまして、ただいま問題になっておりまする憲法調査会について反対の討論をいたすものであります。 およそ現実の法律に対して、その背景となるところの歴史的なあるいは社会的な環境と分離してこれを理解することは、不可能であります。単なる字句、文章だけをひねくり回しますいわゆる概念法学というものは、今やとり得ざるものとなりましたことは、明白であります。こうした概念法学に対する一つの反動として、フランスに起った自由法論、あるいは近時日本において唱えられておりまする社会法学、こういうものをわれわれは十分に参酌をしていかなければならないのでございます。なかんずく、憲法を私たちが理解いたします場合に、その憲法がいかなる社会、いかなる国際社会の中に置かれ、これがどのような作用を営みつつあるかということを除外して事を論ずることは不可能であります。今次の日本国憲法におきましても、なるほどその発議に際して占領軍司令部の示唆がありましたことはわれわれも認めるところであります。だがしかし、この占領軍の司令部がいかなる性格を持っておったかということを私たちは考えていかなければなりません。単にこれをおしなべて占領軍という概念のもとに、十九世紀に実現をした占領軍、十七世紀に行われた占領、こういうものと同一視すべきではありません。この際第二次世界大戦はファシズムに対する、世界の軍国主義に対する民主主義の戦いとして行われました。日本に参りました司令部は、少くともその当初においては日本における封建的な制度を一掃し、日本に正常なる民主主義を与えんと願ったのであります。これがその後において変質をいたしましたことは皆様方御存じの通りでありますが、この憲法制定の当初においては少くともこれは日本に横行いたしましたる軍閥、ファシズムからの解放軍として存在いたしました。こうした人々の善意に基いた示唆、その示唆をわれわれが選択をいたしまして、日本国憲法は日本国民の意思によって成立をいたしました。しかもこの成立をいたしました憲法がどのような状況を作り出したかと申しますならば、現実と憲法とは必ずしも即応をいたしておりませんでした。憲法に書かれました諸条章はあまりにも美しかった。その当時の日本国民の与えられておった社会的な生活とはかけ離れておったことは事実であります。だがしかし私たちは、ここでこの憲法に書かれた諸条章がわれわれの生活の理想であった、われわれがここにたどり着かんと願ったものであったことだけは間違いがないのであります。こうしてわれわれの高く掲げた理想というものは、今や次第にわれわれの生活の中にしみ渡ろうといたしつつあります。すなわち憲法は次第に国民生活の中に根をおろしつつあります。しかし、根を一方においておろしつつありますと同時に、他の面における反動が生じて参りました。すなわち日本に移し植えられようとした民主主義、われわれの到達しようとした幸福を願う権利、こういうものに不便を感ずる旧支配者の一味どもは、こうした憲法をみずからにとって不都合なるものと感じつつあります。この人たちは何とかして新しく移し植えられようとする憲法に対して反発をいたそうといたしました。すなわちそれは松本博士をもって代表せらるる動きであります。しかしこれは日本の国民の願いの前に圧服せられたのであります。こうして私たちは世界にわれわれの理想を高く掲げて進もうといたしました。ところがその後米ソの戦略的な対立、国際情勢の変化、こういうものに基いてアメリカの意向は変って参りました。アメリカは日本をみずからのアジアにおける前進基地に変えなければならない必要を感じて参りました。日本をアジアにおける前進基地に変えようといたしますならば、この日本国憲法は非常な不都合なるものとなって参ります。不便利なるものとなって参ります。こうして日本における憲法改正論は、日本の国内から起ったのにはあらずして、国際的な情勢の変化の中に起って参りました。その傾向は次第に高まって、やがて労働者の権利を根本的に剥奪しようとするスト規制法、あるいは破防法、警察法の成立、こうした幾多の諸法規によって憲法は崩壊し変質を遂げる過程をたどりつつあったのであります。これはすべての日本の学者の認めるところでありまして、憲法は改正の以前に、アメリカの政策とこれに追従する人々の手によって変質し、崩壊をさせられつつあったのであります。こうした状況は次第に国民の反撃を食い、国民はこの平和憲法を守ることによってみずからの与えられた、みずからの獲得しつつあるところの権利を守ろうとする戦いに立ち上り始めました。かくてこの戦いを圧服いたしますために、自由党は憲法調査会を作り、憲法の改正を主張し始めた。民主党また同様であります。その焦点をなしましたものは、憲法第九条、すなわち戦力に関する規定でありました。日本がアメリカの用兵としての役割を果さんと欲するならば、自衛隊を持たせられなければならない。この自衛隊は、明らかに憲法第九条の違反でありました。このことは鳩山総理も在野当時につとに認められておるところでありまして、一たびその権力の座にすわりますと、アメリカからの圧力のために変節、改論をさぜるを得ない実情であります。こうして憲法改正の問題は第九条をめぐって激しく戦われ始めたのであります。さらにその第九条をめぐった幾つかの条項として、安全保障条約、行政協定、MSA協定、余剰農産物の受け入れ、秘密兵器の受け入れ、こうした幾つかの条項が出て参りました。このような社会的な状況というものをわれわれは詐称して、単にいたずらに憲法改正を唱えることはできません。この一連の傾向は、われわれがよく見詰めまする限り、現段階における憲法改正はその方々の主観的な意図いかんにかかわらず、好むと好まざるにかかわらず、さらにアメリカに奉仕するための憲法改正とならざるを得ないのであります。ここに私たちが憲法改正よりもまず第一に完全独立の達成、このことを主張せざるを得ない原因があるのであります。私たちはこうした事実を考えて参りますと、今単に憲法を改正するのかしないのか調べてみた上でやるんだ、そのための調査会を設けるのだ、こういった子供のためのおとぎ話には同調できないのであります。私たちはそのおとぎ話の下に隠された意図をはっきり知ります。自分たちの国民生活の体験に照らして知るのであります。これが私たちがどうしてもこの法案に賛成できない第一の理由であります。すなわち憲法の解釈、その改正の是非は、歴史的、社会的に、しかもわれわれが置かれた、与えられた政治的な情勢の中でこれを理解していかなければいけないということであります。 第二の点は、現行憲法に対する態度が、この憲法調査会法は明確でないという点にあります。すなわちもしこの憲法を改正すべきかいなや調査するという趣旨でありますならば、現行憲法をいかに解釈するかということをはっきりとフィックスして出発しなければならないのであります。提案者の古井さんあるいは鳩山総理の御説明によりますと、自主性のない憲法である、こういうお話であります。よろしい、自主性のないという言葉をその通りに受け取りましょう。それでは自主性がない憲法というのは一体法律的にいかなる価値を持っておるのでしょうか。私たちは学校で少くとも意思の自由なる決定のできないところに完全なる法律行為はあり得ないことを習ったのであります。いまだにこの原則は変っておりません。自由なる意思決定がなく現行憲法が定められたと御主張になるならば、それは少くとも憲法としては無効であります。当然占領法規にしかすぎないと御説明にならなければならないところであります。もし占領法規であるという御説明でありますならば、講和条約成立から現在に至るまでの間はいかに説明をせられるのでありましょうか。私たちはこう考えて参りますと、この憲法調査会法は、実は憲法調査会を設置するかいなかという組織法に名をかりて、現行憲法無効論を密輸入せらせるものだといわざるを得ないのであります。またあるいは提案者は、これは西独のような仮憲法にすぎない、こういうことをおっしゃるかもしれません。しかし西ドイツの暫定憲法と日本の現行憲法とは歴然たる差異があります。第一には、日本ははっきりと明治憲法の改正の手続によって、正規の国会の手によってこのことがなし遂げられました。ところが西独の憲法は議会らしい議会を持ちません、議会委員会という、選挙によらず、とりあえず寄せ集められた有識者の手によって作られたのであります。従ってこれをみずから暫定憲法と考えられることは当然であります。さらにまた日本の現行憲法は、西独の憲法のように、暫定憲法なりとすずからの中に規定はいたしておりません。時間的に永久の不磨の大典として規定をせられておるのであります。こういう点から考えますと、西独の暫定憲法と同様のものだと解釈することも不可能であります。一本いかなる法律的な性質を持つものだと断定をせられるのか不明だといわざるを得ません。先ほどの鳩山総理の御答弁によりますと、法律的には完全なものだ、だが政治的には不完全なものだ、自主的なものでない、こういうことを言われるのでありますが、憲法の制定に当って政治的に自主的ではないというこの事実は、当然法律の解釈として、これを要素として取り入れていかなければならないものであります。初めて私も珍解釈を承わったわけでありますが、すなわちこのように憲法調査会法は現行憲法をいかに理解しているかという座標にきまっておりません。座標のきまっていないかかる調査会をいかに発足せしめたといたしましても、それはおそらくナンセンスでありましょう。すなわち照準のない銃に相当をいたすのであります。このようなことを私たちは深く反省をいたして参りますと、この憲法調査会法にわれわれはとうてい同調し得ざることを発見いたすのであります。 第三には、この調査会は内閣に直属せしめられております。憲法改正の発案権が内閣にあるか国会にあるかはいろいろ議論をせられておるところであります。しかしいやしくも憲法を尊重し、これを守っていかなければならない義務を課せられたわれわれは、国民の意思を完全に表明している国会の中に発案権ありとしなければならないことは当然だと存じます。およそ発案というものが単に案を出すだけ、議題を提出するだけだなどと解釈するのは軽率のそしりを免れません。いかなる議題を出すか、いかなる案を出すかということは、われわれの経験に照してみましてその議案の運命を決する場合があります。国会が発議しとあります以上は、起草し、検討し、可決する権能は当然国会になければなりません。こうした意味で、私たちは内閣に発案権ありと考え得ないのであります。しかしそれだけでもありません。さらに私たちは現実の事態を振りかえってみますと、この憲法調査会法が日本の民主的な自主的な憲法を作らんと願われる限り、政治的に、事実的にいっても内閣にこれを置くことはよろしくないと思うのであります。と申しますのは、現在の内閣は必ずしもアメリカの圧力から自由でない、MSAあるいはいろいろの協定を通じて見ますと、今の内閣はアメリカに対して幾つかの義務を持っております。借金を持っております。責任を持っております。このような内閣に憲法の発案権を持たせる、あるいはこのような内閣のもとに憲法調査会を成立せしめることは、すなわちアメリカの圧力に対して何らの防波堤を持たないということであります。私たちはむしろ諸外国からの圧力に対してきぜんとしてその中立を保ち得る国会にこれを置くべきだ、このように考えざるを得ないのであります。すなわちこれが法律的にも内閣に置くことの正しくないこと、現在の政治情勢の中から見ましても、内閣の中に置くことの正しくないことを申し上げたゆえんであります。これがこの法案について私たちが賛成をし得ない第三の理由であります。 さらにこの法案の内容について幾つかの事実を申し上げていくべきだと存じますが、時間もそうございませんので、二、三断片的にこれを列挙して反対の理由を開陳いたしたいと思います。 まず第一に、この法案はその構成が非常に不確かであります。なるほどこれを見ますと、国会議員何十人、有識者何十人ということになっておりますが、かくのごとく各利害を代表いたしました人々何十人を集めて、憲法の調査をし改正の要否を議論するなどということは、おそらく不可能であります。けんけんがくがくその意見の帰するところおそらくございますまい。こうした場合に、もしこれを無理に一つの結論に到達せしめんと欲しますならば、多数決制をとらざるを得ません。しかし多数決制をとるならば、こんなに大ぜいの人を必要としません。憲法の改正を論じます場合に、少数意見を無視することもおそらく不可能でありましょう。こう考えて参りますと、構成それ自身の中に非常なる欠点を持っておることを発見いたします。まず第一にその運営が多人数のために不可能であること、第二には少数意見がどのように留保せらるるかが明白でないということ、少数意見必ずしも捨つるべきものではありません。さらにこの多人数の人々のほかに専門委員というものが置かれております。この専門委員をいかに運用していくかということも不明確であります。こうした点が内容についてわれわれの賛成し得ない第一であります。 さらに第二には、終期、すなわち調査の見通しがいつになるかということが明確になっておりません。これは質問を幾多申し上げて伺いたいと思ったところでありますが、突如として質疑打ち切りの動議においまして、伺わんとして伺い得ざりしものであります。しかしこうした憲法改正などと申しますものについては、一つの目標を定めて進んでいかなければなりません。いつごろまでにこれができるのか、こういうことを定めなければならないことはあえて申し上げるまでもありませんが、この点についても明確さを欠きます。 さらに提案理由を拝見いたしますと、これと相照らし合うがごとく、国情に照らして検討する、あるいは国民的な立場に立って検討をする、こういうような言葉が述べられております。一体何をもって国情に照らして検討をするといわれるのか。この国情について幾多の意見がありますことも先ほど来申し上げておる通りであります。結局社会の福祉に反せざる限りということで、国民の重要なる権利は、スト規制法のように、あるいは破防法のように、制約をせられました。ここでも同じ手が用いられようとしている。おそらくや国情に照らしてなどということで、またまた家族制度を復活しようとする野望が現われてくるでありましょう。醇風美俗という言葉があります。醇風美俗に照らしてわが国の民法を改正するという幾つかの表現が行われました。だがしかし、それは民法の中に古い家族制度を密輸入するパイプでありました。同様なことがここでもあるのではないか、こう私たちは考えざるを得ないのであります。さらに国民的立場に立ってとは一体何をいうか。国民的立場などというものが今一体どう解釈をせらるべきかは明白でありません。こうした幾つかの不明確なるものをあいまいなままに残しつつ、憲法調査会の中に入っていく、憲法調査会を出発せしめるということは、むしろ憲法調査をして一定の意図のもとにこれを歪曲せしめる原因になり、そのことによってかえってまたわが国内に紛争をまき散らす原因になるであろうことは歴然といたしております。これなるがゆえに、構成においても運営においても非常に不明確なるものをあえて残しておかれる、こういうことだと思うのであります。こういう点を考えて参りますと、私たちはこの憲法調査会の構成の内容について立ち入って見て参りましても、非常なる疑義が残り、非常なるあいまいが残り、この疑義とあいまいというものを通じて、一定の懐古趣味が、一定の人民に対する反動の道がたどられていくのではないか、私たちはこのように考えざるを得ないのであります。これが私たちがこの憲法調査会法に対して賛意を表し得ざる第四の問題であります。 私たちはもっと申し上げるべきことを申し上げなければなりませんが、時間も差し迫っておりますのでこれを省略いたします。どうぞ皆さん方はこの問題について、ただ単に党利党略だけではなしに、ほんとうにこうして皆さん方が作り出した憲法調査会が、どういう具体的な道をたどり、どういう社会的な役割を果すかということを冷静に反省をしていただきたいのであります。反動への道が日本を再びアメリカのアジアにおける前進基地に追いやり、そしてこの日本の上に戦火が再びやってくるような、あるいは勤労者が今までのような、今までより以上の苦悩の中に呻吟しなければならない日本国をもたらすのではないか、私たちはこのような事実をどうぞ皆さん方に十分お考えをいただいて、党利党略も捨てていただきたい、こう願わざるを得ないのであります。 最後に申し上げることもいささかどうかと思いますが、このような重要な問題をわずか三時間半で、あるいは三時間で無理やりに通していこうという皆さん方の態度の中に、私たちは根本的な疑義を提出いたしまして、私の討論を終ります。(拍手)
○宮澤委員長 床次徳二君。
○床次委員 私は日本民主党を代表して、ただいま上程せられております憲法調査会法案に対して賛成の意を表するものであります。 日本国憲法はわが国の最高法規でありまして、国民ひとしくこれを尊重、擁護すべきことは、憲法第九十九条に規定するところによって明らかであります。その徹底した民主主義、平和主義、基本人権の尊重は、日本国憲法を貫く基本原則でありまして、これらの長所に対してはわれわれ国民の大いに誇りとするところでありまして、心からこれを尊重、擁護いたしたいと確信するものであります。 しかしながら本憲法が、占領政治のもとにおいて、連合国総司令部の示唆と指導下に、きわめて短時日の間において立案せられ、しかも過去八年の経験により、われわれの伝統と国情に符合せぬ個所も少くないことも世間公知の事実であります。 今ここに有力なる調査審議機関が設置せられ、もって自主的に現行憲法に検討を加え、関係諸問題を調査審議せんとすることは、真に国民の要望に沿うゆえんでありまして、もしその結果、真に日本国民の手により、日本国民の完全な自由の意思のもとに、独立新日本にふさわしい憲法を実現することができましたならば、これは心から賛意を表する次第なのであります。 社会党は、現行憲法をもって平和憲法の美名のもとに、その擁護運動に奔命いたしておりますが、一面において、口をきわめてわが国の政治が対米依存であり、米国に従属し、あるいは隷属しておると非難しながら、その政治の基礎をなす憲法が米国により指導され、われわれ国民の完全なる自由意思によるものとはいいがたいにもかかわらず、あくまで現行憲法を墨守せんとする矛盾は、まことにはなはだしいものと存じます。修正すべきものは修正し、真の国民の憲法を作るべきであって、その調査にさえもあえて反対するということに対しましては、全く解し得ぬところであります。いわんや一朝政権を獲得しましたならば、憲法改正をもあえて行うであろうというものがあるに至りましては、今日平和憲法擁護を唱えておる事実を考えますと、ただ国民を欺くための戦術としか思われないのであります。民主政治に対する危険これより大なるものはないであります。 今日におけるわれわれ国民の最大の要望は、独立日本の完成であります。独立国民の誇りとして新しい日本を建設し、平和な民主的な国民生活を確保し、世界平和に寄与せんとするもであります。ただいまここに提案せられました憲法調査会は、実にわれわれ日本国民の独立、新日本建設への第一歩を踏み出し、その基盤を画するものでありまして、かくてこそわが国の政治の安定と新しい政治の方向を期待し得るのでありまして、きわめて意義深きものあることを私は感ずるのであります。一日もすみやかに所期の目的を達成せんことを念願してやまぬ次第であります。 以上簡単でありますが、私の賛成討論といたします。(拍手)
○宮澤委員長 中村高一君。
○中村(高)委員 社会党を代表いたしまして、憲法改正の調査会設置法案に対しまして、反対の意見を申し上げたいと思うのであります。 先ほど委員長がおらないときに、委員長の不信任の理由を申し上げた際も述べたのでありますが、この重要な法案が、質疑がごく短時間に打ち切られて討論に入らなければならないということは、まことに異例な取扱いでありまして、今までの重要法案として当委員会で審議されましたものも、たとえば国防会議の法案にいたしましても、あるいは防衛三法にいたしましても、ほとんど各委員に十分な発言の機会が与えられまして、ある意味におきましては審議を尽しておるのでありますが、この法案に限りましては、会期が切迫をしておるという理由であくまでも強行しようとする、そのことは、われわれは国会の審議権を無視するものだとまことに残念に思っておるのであります。国会は十分に論議を尽す場所でありまして、多数をもって押し切ることが国会の任務でないことは言うまでもないと思うのでありまして、おそらく委員長も、これは少し無理があるということをお考えにならないはずはないのであります。いやしくも議会常識を持つものとして、こういう異例の審議をいたしまして押し切るということは——重要ならざる議案でありまするならばいざ知らず、憲法の改正に着手しようというのでありますからして、その重要でありますことは言うまでもないのでありまして憲法は日本国の法の源泉であり、また日本の骨格をなす重要なる法律でありまして軽軽しく他の議案のように改正等を禁ぜられておりますことも明らかであります。他の議案でありますならば、いついかなるとき、いかなる方法によりまして改正案を提出することもできるし、またこれを改めることもできますけれども、憲法に限りましてはしかく簡単に改正は許されないことも明らかでありますからして、そういう特殊な憲法の重要性というものを認められますならば、十分に審議を尽して、その上に会期がなければ会期を延長することもやむを得ないが、会期の方を先にきめて、その方が忙しいからといって、重要なる議案を押しつぶしてしまっていいなどという国会の審議の方法は絶対に許されません。あくまで審議を尽して、その上に終らないということであれば、会期の延長は法の許すところであり、国会法の許すところであり、憲法の認めるところである。それを逆に、会期を延長しないということを前提にして審議をそのまま押し込むということは、あなた方自身、打ち切ろうとする諸君自身もみずからの審議権を放棄し、国会を軽視するものだと言われても私は弁明の余地がないと思うのであります。ことに、さっき法務委員会を代表いたしまして、法務委員の理事であります吉田君から連合審査の要求がありました。委員長の言葉によりますと、個人的注文、希望であったようなことを言われておりますけれども、法務委員会で決定されたことを委員長が伝える場合には、これは公式の立場から委員会を代表して申し出たと見なければならぬのであります。それをあたかも世耕委員長個人の希望であるかのごとくあしらうということは、これはまた国会の運営におきまして、われわれは悪例を残すものだと遺憾に思うのであります。たとえば、われわれが、この法案については連合審査の必要があると認めまして、逆に法務委員会に提唱をいたしましたときに、もしこれが一蹴をせられるということでありますならば、内閣委員会の面目にかけるも許さないというこはと当然であり、また議会慣例の上におきまして、他の委員会から連合審査の希望、要求があります場合は、欣然これに応じて共同の審議をするということが先例でもあるし、また議会の相手の委員会を尊重する意味においても私は必要だと思うのであります。この点におきましても、委員長はきわめてこの連合審査を軽視いたしまして、遂に会期がないからという理由で連合審査もやめてしまいましたけれども、私は憲法の改正をするというようなこの議案は、法務委員会でなくとも、他の委員会から申し出があるならば、欣然応じてその審議を尽すくらいの十分なるゆとりを持って審議するほどの重要な法案であると思うのでありますが、そういうことも行われない。またいつもの委員会でありますならば、他の大臣を呼び出して意見を聞くこともしばしばやっております。あるいは法制局長官というようなものも呼び出しまして憲法に関する意見を求めることもやらなければならなかったし、また公聴会なども他の委員会において開かれておるものを、この委員会においては公聴会を一度も開いておらず、いずれもそういう点については、他の議案に比較いたしまして、その審議の方法がきわめて軽率で、きわめて短時間に打ち切りをされておるということは、国会の審議の上においても私は遺憾だと思うのであります。あえてこういうことをいたしまして、しかも重要なる憲法の審議を踏みにじって、その上に憲法を改正するという出発点に大きな汚点を残したものだと思うのでありまして、おそらく今後開かれまするところの憲法調査あるいは憲法の研究、今後のいかなる憲法に関しまするところの審議についても、委員会がこういう汚点を残すということはまことにわれわれ残念に思っておるのであります。 次は憲法の改正に対しまする提案者の意見も、わずかに開陳をせられましたけれども、内容につきましてほとんど触れておらないのであります。特に憲法改正の発議権に関しまする審議だけでももっとしなければならない。これは憲法上の重要なる論点であり、すでにあらゆる憲法学者が——あるいは新聞雑誌等におきまして、それぞれの公法学者から、果して憲法改正の発議権が内閣にあるや大きな疑問を持たれておる問題でありまして、この問題につきましては、少くとも内閣に憲法改正の発議権ありやいなや、内容に入らずともまず十分なる論議をしなければならないことは、提案者であります代表としてきょう出られておりまする古井君にいたしましても、おそらく満足した審議が尽されたとは考えられないと思うのでありまして、少くとも発議権の問題などにつきましては、同僚の鈴木委員からも触れておりますけれども、憲法の改正については——他のいかなる法律でも改正の方法が条文の中にあるものはどこにもありません。憲法についてだけは第九章を設けまして、改正をする場合には他の法律のような改正を行ってはならないというくぎがさされておることは明らかであります。しかも憲法の前文とこれとを照らし合せまして、先ほど鈴木委員から説明をいたしておりますから申しませんけれども、国会における代表者を通じてこの憲法を作る。だからして改正する場合においても、第九章を設けまして、他の議案のごとく取り扱ってはならないという規定が明々白々に記載をせられておるのであります。内閣が発議権を認められたものでないことは、この条文によりましても「国会が、これを発議し、」と明確にうたっておるのでありまして、もしも内閣にも発議の権を許されるのでありまするならば、国会もしくは内閣と、その当時のこの改正の規定のときに考えないはずはありません。これだけの重要な規定を憲法を作るときに審議をせられました諸君が、内閣にも発議権があるのだということであるならば、ここに入れないはずはないのでありますが、特に国会だけに発議権のあることをうたわれております憲法の趣旨を、われわれは尊重しなければならないと思うのであります。そういう点から考えますならば、憲法を改正するということであるならば、当然な憲法の規定に基いた順序を踏んでくることが当りまえであります。従って国会にのみ発議権があるという憲法の条章を守るならば、内閣に憲法改正の調査会を設けること自体が憲法の改正規定に違反をするものでありまして、人によりますと、改正の発議権は内閣にあるというようなことを、たとえば林法制局長官のごときは何か新聞などにそんな意見を述べておる点があるようでありますが、法制局長官などのごときは、そうした重要な憲法の解釈について軽々しく意見を述べることは行き過ぎだとわれわれは考えて憤慨をいたしたのであります。少くともこの条章から考えましてどこに憲法調査会を設置するかというようなことが考えられなければならない。現に私はここに記録を持っておりますけれども、現内閣も当初は憲法改正調査会を内閣に置くことはいけないということから、国会に置くという決定をいたしております。私はこれは正しい解釈だと思う。根本官房長官が、——日時は調べればわかりますけれども、根本官房長官が新聞記者諸君を集めまして、わが党の憲法改正に対するその三つの態度を公表いたしておりますが、その中に憲法の改正調査会を設ける。その調査会は国会に置くということを、明確に内閣の意向を発表いたしておったのでありまして、これを見ましても、政府自体といたしましても憲法の改正の発議権は国会にあるという解釈から国会に調査会を置くという態度をおきめになっておる。これも私は正しいことだと思っております。それが全く便宜的な理由で、鳩山総理大臣の意見を聞いてみると、民間人を入れるのだから都合が悪いというような答弁がなされておりますけれども、必ずしも民間人を入れなくても諮問機関や調査会はよろしいということで、昨日も国防会議には民間人を入れるなということで、自由党の提案に民主党の諸君も賛成をされたことを考えてみれば、必ずしも民間人を入れなくてもいい。自分の都合のいいときは民間人を省くけれども、都合の悪いときには民間人を入れるのだからということは理路一貫いたしておりません。これは民間人を入れるからということで国会に調査会を設けてはならないのだということは全く牽強附会の強弁でありまして、そんなことは理由にならない。民間人を入れるのだから内閣に置いた方が都合がいいなどという便宜論でもって憲法改正に着手されたのでは、まことにこれは(「迷惑千万」と呼ぶ者あり)迷惑千万であります。(笑声)こういうような便宜的な手段をとるというところにも私たちはこの調査会の設置に対しまして反対をいたしておるのでありますが、もう一つはこの問題について私も質問をしようと思いましたけれども、どうしても質問の機会を与えられなかったので、残念に思ったのでありますが、提案者の説明にもこの憲法が自主的でない、かような意味をもちまして憲法の改正の重要な理由といたしておるのでありますか、国会みずからが長期にわたって検討をし、その当時なぜ憲法を押しつけられてそれに反撃を加えることができなかったのか、国会議員でありますならば、今日今ごろになってぐずぐず言うならば、なぜそのときに堂々と一人ぐらい……。(「社会党はどうした」と呼ぶ者あり)われわれはこの憲法を守っているのだから別に何も言う必要はない。反対をしている諸君の中から、そのときに一人でも反対の意見を述べた人がありますか。(「あるぞ」と呼び、その他発言する者あり)だらしがないじゃないか。今ごろになってマッカーサーが引き揚げてアメリカで涼しい顔をしているときになって、マッカーサーの悪口など言うことは、全くさたの限りであります。なぜそのときにマッカーサーのところへ、民主党の諸君でも堂々と行って、こんな憲法は日本のためにならぬといって、だれか言ってきた人がありますか。いないじゃないか。今になってそんなことを言うとは何ごとだ。これは国会の権威にも関することであるから、それでは私はもう一つ皆さんは重要なことであるから思い起していただきたいのでありますが、憲法改正の委員長でありましたあなた方の先輩芦田均氏は、委員長として本会議に登壇をするときに、特にモーニングに威儀を正しまして——ふだんモーニングなどを着込んで委員長報告をする人はありませんよ。それをモーニングに威儀を正してポケットに白いハンカチをのぞかせて、私はいまだによく記憶がありますが、そうして壇上に粛々として上って、明治憲法とおわかれをするのだ、ここに平和の憲法ができましたことは、欣快の至りにたえないといって、涙を流したことを忘れちゃいけないのですよ。それを今になって、古井君のごときは、自主的ではないとか、やあマッカーサーがと、清瀬さんなんかがマッカーサーの悪口などを言っておりますが、もう一度当時を思い起していただいて、そのときはどうだった。あまり卑怯未練な言葉を使わずに、その後の情勢が変ったなら変ったと、堂々とやってくればいいじゃないか。それを占領だとか、マッカーサーに責任をかけずに、自分たちは占領下にあって一言半句も言う自由がなかった、情ない国会議員でありましたということを反省をして、その上に、どうしても事情か変化したからして、今度はどうかこういうことを改正しようではないかといって、率直に言ってくればいいけれども、まるで人をたぶらかすような言葉をもって言うてくることに対して、われわれは賛成ができないのであります。今やもう一度一つ冷静に反省をしてもらいたいことは、今やみの軍隊を作り一生懸命狂奔をしておりますけれども、またぞろ私たちは第二次世界大戦のようなことが再び起らないという安心が持てないような状況に、追い込まれつつあることを考えなければならぬ。だんだんとやみの軍隊を増強してくる、ことしもまた三万人ふやされる、ジェット機は作らせられる、軍艦は持たなければならない。日本のこの狭い国土には、米軍の飛行場が四十四カ所もあり、演習基地十万坪を持ち、その上に自衛隊の基地を持ち、陸海空の大学ができて専門の軍人が生まれてきて、やがてこれが恩給法と結びつき、やがてはおそらく軍閥が現われないと私たちは断定することはできない。そういうことを冷静に考えれば、いたずらに憲法を改正して再軍備に拍車をかけることにのみ狂奔すべきときでは断じてない。国際情勢をごらんになっても、世界の各国が平和のために努力いたしておりますことも諸君御承知の通りでありまして、この世界の情勢を無視し、日本の軍備を拡張することに狂奔のあまり今度の法案のごときものに対してまでも無理をするということに対しては、私たちは保守党の諸君に十分な反省を求めなければならぬと思うのでありまして、あえて反対の討論に一言を付加いたした次第でございます。以上をもって私の討論を終ります。(拍手)
○宮澤委員長 これにて討論は終局いたしました。 これより採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○宮澤委員長 起立多数。よって本案は原案の通り可決すべきものと決しました。(拍手) なおただいま可決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと思いますが御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○宮澤委員長 御異議ないものと認め、さよう決しました。 本日はこれにて散会いたします。 午後七時十五分散会 ————◇—————