地方行政委員会 第31号
- 発言数
- 7 件
- 登壇者
- 3 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1955/06/29
会議録
○大矢委員長 これより会議を開きます。 昨二十八日警察法の一部を改正する法律案が本委員会に付託せられましたので、本案について提出者より提案理由の説明を聴取いたします。提出者菅野和太郎君。
○菅野和太郎君 当委員会に付託になりました私外五名の提出にかかる衆法第三二号、警察法の一部を改正する法律案につきまして、提案者を代表いたしまして提案の理由を御説明申し上げたいと存じます。 皆さんもすでに御承知の通り、昨年の警察法改正のいきさつにつきましては、いまさら私から申し上げる必要はないと存ずるのでありますが、議論を進める上に必要な二、三の要点について触れておきたいと思うのであります。 昨年の改正の眼目は、国家的治安の必要から、弱小の市町村警察を大単位の府県に統合して、これに対して必要な国家的関与を加える点にあったと思うのであります。その際ただいま問題になっております五大市を初め、府県に匹敵する規模を有する大都市警察については、これを独立の単位として存置するよう熱心な運動が行われたのであります。特に五大市につきましては、その前年昭和二十八年の国会解散のために審議未了となりました警察法の改正に際しては、政府原案にも五大市警察の存置を認めたというような事情もありまして、その要望は最も強烈であったのであります。その結果、当時の改進党、自由党及び日本自由党の間の話し合いとなりまして、五大市については、一方はその特殊性を認めて、市選出の府県公安委員を認め、かつ市警察部を府県警察本部のもとに設けるという特例を定めるとともに、独立の市警察本部として、警察法施行後一年間、つまり本年の六月三十日までは存置するという附則を定めたのであります。この附則は表向きの説明といたしましては、自由党側から規模の大きい大都市警察を一挙に府県に統合するためには準備に日時を要するからということでありましたが、それは表面のことで、実際は府県一本化の要求と五大都市警察独立の要望との間の妥協の産物でありまして、交渉の経過として承知しておりますところからすれば、要するにその後のいわゆる乱闘国会を巻き起した警察法改正をめぐる激烈な対立抗争に対して冷却期間を与えて、その間に最後的判断を与える猶予を与えたものと考えておるのであります。 このようにして大都市警察は現在に至ったのでありますが、その間の実績は果してどうであったでしょうか。私は国家的治安の確保という警察法改正の大眼目は、このために少しも影響を受けてはいない、五大市警察は新警察制度の完全な一環として円滑に動いており、何ら実質上の支障はないものと確信いたしておるのであります。昨年の改正の際に政府当局は二十八年の改正案において五大市警察を認めたことの矛盾を考えられたのであろうと思われますが、特に五大市警察を一本化すべきことを強調したのでありまして、その理由としては、五大市警察を独立させると大都市周辺に治安上の空白が生ずるということ、九大市警察の廃止によって二十数億の節約が可能であるということの二点をあげておったのであります。しかし現在五大市の周辺が特に治安状態が悪いという話も聞きませんし、もともとそのようなものがあるはずはないのであります。大阪市の状況について申し上げますると、昭和二十九年七月から十二月までの検挙件数二万五千百十五件、うち大阪府下関係が三百九十六件、他府県関係が九百九十七件となっておりまして、他府県関係の多いことが目につくのであります。また大阪府警の検挙した件数の約三分の一は大阪市内と何らかの関係があるという話でありますが、これは逆に二つの警察であっても、実にうまく連絡がとれておって、何らさしつかえないということにもなるわけでありまして、府県一本にしまして、大都市周辺に空白を生ずるという議論は、これだけでも成り立たないことがわかります。また五大市警察におきましても、この一年間政府の方針に従いまして、身分の切りかえ、それに伴う給与の改訂、人員の整理、重複施設の整理等を行い、政府の所期する経費の節約は十分実現しておるのであります。ただ五大市警察の廃止によりまして、主として警察本部が不必要となることによって、約二十億円の節約ができるとせられ、五大府県側の存続反対の理由として述べられておるのでありますが、五大市警察本部で約千名、一人当り年四十万円として二十億円の節約ができると言っておるのであります。しかしこれは私からいえば、計算間違いではないかと思うのでありまして、本部定員五大市で約四千三百名のうち八割まではパトロール隊、機動隊、交通取締り、捜査鑑識、少年関係など、各署に分属させられない第一線事務でありますから、純粋の本部事務は約八百三十名、一元化によって半減できるといたしましても、五大市全体で四百名程度の減員が可能であるにすぎないのであります。なおこの数字は昨年七月以前のものでありまして、その後において五大市はさらに機構の改革縮小、人員の整理を続行して、現在では政令で新たに五大市に割り当てられた定員七千八百九十名を下回る七千三百八十四名の現員を持っておるにすぎないのであります。かようにみて参りますと、どうしても五大市警察をやめてしまわなければならないという積極的な事由は乏しいように思われるのであります。逆に大都市は何と申しましても治安の上においてもやはり全国の重点なのでありまして、重点を独立の単位として全国的な組織の中に組み入れておく方が、単に画一的に府県でなければならないとするよりも、全国の警察配置の上からみて、正しい行き方ではないかと私は考えておるのであります。かように考えて参りますと私は何の支障もなく有効、円滑に動いておる五大市警察を市民の熱望に反してまでやめてしまうということは、かえって平地に波乱を起すことになりはしないか。なお積極的に五大市警察を存置すべき理由として、私はまず第一に警察の民主化ということを上げたいと思うのであります。警察の民主化のためには、できるなればなるたけ市民に直結する基礎的な団体に置くことが警察の民主化を実現するゆえんであると思うのであります。ことに権力的な警察行政につきましてはその必要があるのでありまして、その能力があり、かつ技術的にも無理がないのであるならば、当然府県よりも市に置く方が好ましいと私は考えておるのであります。第二に警察能率化の点から積極的に五大市に警察を置くべきだと思うのであります。全国治安の重点である大都市警察は、直接中央で把握する方が正しいということは先ほど申し上げましたが、全国的組織の方法としてもそうでありまするが、大都市警察事務自体を見ましても、これを特殊化、専門化する必要があるのであります。地方の警察と大阪市のような大都市の警察とを同じ統括下に入れておかねば警察行政ができないという議論は私は全く解釈できないのであります。むしろ大都市特有の問題に対しては、特有の組織をもって専門化することが必要かつ能率的であります。教養の仕方一つを見ても、地方の警察と大都市の警察とを、これと同一に行うべきではないということはいろいろな点から立証できると思うのであります。 なお警察法改正の眼目は、全国の治安を維持するに必要な規模と能力を有する大単位の警察に切りかえるということでありまして、たまたま従来からの行政単位として府県があり、それによることが大体において便宜であるから府県警察の建前をとられたのでありまして、何でもかんでも庁県でなければならないのだという性質のものではないと考えるのであります。警察区域として合理的なものがあれば、それによってよいのでありまして、必ずしも府県の区域にこだわる必要はないと思うのであります。現に地方行政の区画としての府県の区域は、今日重大な議論の的になっておりまして、府県の区域のみが適当であるとは決して言えないのであります。むしろ広域行政の区域としては、府県の区域は不適当であるということが現在の定説になっておると思われるのであります。現に警察の区域としても完全でないということが、現在の警察法のもとにおきましても警察管区制度を設けておる理由の一つであろうと思うのであります。どうしてもこうしても府県一本化である、府県の区域の中に押し込めてしまわなければならないという議論は、私からいうと少しこだわっておるのではないかと思われるのでありまして、府県の中にも特殊化すべき区域があるならば、特殊化してもよろしいのではないか。府県の区域を越えての処置が必要ならば、警察察の立場からの処置をとればよいのであります。警察全体としての能率ということからいえば、大都市警察を独立の単位としての特殊化し、それを全国的な網の目の中に入れる方が妥当なように思われるのであります。 先ほど申しました大阪府警の大阪市関連事件が三分の一もあるし、二つにわけると二元化するからいけないというようなことが言われておるのでありますが、これはやはり府県という区域が動かせないものとお考えになっておる一種のこだわった観念であるように思われるのであります、大阪府と大阪市が二元的でいけないと言われるのであれば、大阪府と兵庫県との二元化はどういうことになりましようか。神戸市と大阪市の中間地帯は大阪市ときわめて密接なる生活関係に立っておることは、大阪府下のある地方との比較ではないのであります。神戸市と大阪市との間は分けてもいいが、大阪市と、それと関係のない大阪府下の方は分けてはいけないというような理論は成り立たないのであります。大阪と兵庫との二元性は管区として調整すると言われるならば、大阪府と市の二元化も同様警察管区として処理ができる問題であります。過去一年間はそれが実にうまく行ったというのが、先ほど私が申し上げました府市の相関関係に現われておると思うのであります。 なお次に問題になりますのは、大都市ことに大阪市の警察官は、決して心から府県移管を歓迎していないということであります。給与の点から見ても不利になるのでありますが、大阪市の例を見ますと、第一線の現場の幹部である警部補、巡査部長級で、本俸がそれぞれ一万一千九百円と一万一千四百三十三円も減額される者があるのであります。調整手当は七千五百円止りでありますから、この画で約四千円の収入減になるのであります。またたとい調整手当で現収入は保証される場合でも、手当のある間は事実上昇給停止となること、なお恩給については、たとい新俸によって恩給年限を通算するか、旧俸で年限をそのときまでにするかを選択できることになっておりましても、今後は実質上恩給の増加はないと見なければならないことは否定できません。このような給与関係を背景といたしまして、警察官が市警の存続を強く要望していることは、私がしばしば警察官自身から聞いておるのであります。さらに統合により調整金をもらう者ともらわぬ者との間の精神上の影響は無視することができないのであります。府県移管を歓迎するというのは、市警の存続が一応期限つきであること、監督官庁に対する遠慮があるからだと考えないで、警察官が府県移管を歓迎しておるというようなことを言われておりますが、事実と相反しておる見解だと私は思うのであります。 次に、ことに私が強調したいことは、市民の立場から市民がほんとうに市警というものを熱望しておるということであります。とかく今までの日本の制度が政治をとる者の立場から制度の改革をやったり、制度を作ったりしておりますが、政治される側の立場の便宜ということを、われわれは考えなければならないと思うのであります。今日大都市におきましては、市民はこの市警というものに非常に親近感を持っておるのでありまして、過去何年間も訓練ができておるのであります。そしてその市民は市警を熱望しておるのであります。それをことさら無理やりにとる必要はないと思うのであります。市民がそれほど熱望しておるものであれば、そうして弊害もないものであれば、これを存続させてやることこそ、市民を考えるゆえんではないか。これがほんとうの政治ではないかと私は考えておるのであります。 以上のような考えからして、私は大都市警察は本来今の形で恒久的に残すべきものあでると信ずるのでありますが、今回の改正法律案でその処置に出でずして、単に存続期間が一年になっていたのを、当分の間存続するということに改めるのにとどめましたことは、次の理由によっておるのであります。 第一は瞬間的な問題であります。昨年来一年になるわけでありますが、その間解散前の昨年末の臨時国会及び通常国会において、五大市出身の民主、自由、両派社会党の四党議員で、今回の案と同様なものを提出したことがありましたが、解散となり、引き続き衆議院の選挙、内閣の改造、四月に入っては今度は地方選挙というわけで、その間十分の研究と措置を講ずるいとまがなくて今日に至ったのであります。しかも五大市警察の存続期限は六月三十日までですから、当面何としても暫定措置によっ現状を維持しておくべきだと考えたのであります。 第二点は五大市警察を解消するといたしましても、その後に来たる制度がかなり疑問があることであります。われわれといたしましては、わずかではあっても大都市の特殊性が認められたことはけっこうでありますが、しかしながら今度の五大都市の警察が廃止になりますと、大阪府警察があり、またその下に大阪市警察がありまして、そこに二重的な、上下的な警察制度ができるということなにりますので、その間多少複雑性を増してくるというようなことが考えられますから、この点から見ても警察制度自体について、もう少し検討する必要があるのじゃないかということが考えられるわけであります。また大都市警察は主として行政警察的なものであると思うのでありますが、刑事警察と行政警察とを、どうしてやっていくかというようなことについては、今日の警察法においては十分検討されていないように思うのであります。こういう点から見ても、なおこの警察法自体について、もう少し研究する余地があるのじゃないか、こういうことが考えられるのであります。 第三に地方制度全体、ことに府県の地位、区域というようなものが、今日政府がやっております地方制度調査会においてもいろいろ論議されておるのでありまして、それに関連しまして大都市制度についても、またやがて結論が出されることと思っておるのであります。従いまして府県制度及び大都市制度について、一方にこのような動きがありまするし、近い将来においては何らかの結論が出るというような時期でありますので、その結論を見てこの大都市警察の存廃をきめても、私はおそくはないのではないかと考えておるのであります。 以上のような理由から私は、今の警察法を暫定的に当分存続さすべきだと考えたのであります。右のような次第で、本案につきましては五大市出身の民主党員の諸君を中心といたしまして、百五十名の民主党員の賛成を得まして、ここに改正案を提出するに至ったのであります。審議の日数もはなはだ限られておる現在、当委員会に種々重要な用件もあることと存じまするが、何とぞすみやかに御審議の上御可決下さらんことを切にお願い申し上げる次第であります。
○北山委員 議事進行。ただいま詳細な提案理由の説明をお伺いしたのでありますが、私が申し上げるまでもなく、この案件は非常に期日も迫ったことでありますし、ただいまの提案者のおしまいの言葉にもそういう言葉がございました。従って提案者の趣旨を生かすためには、賛成反対は別といたしましても、条理上当然早急に審議するなり何なりしなければならぬと思うのですが、この議事の扱いについてはどういうふうになっておりましょうか。
○大矢委員長 これは午前中先ほどまで理事会を開きまして、慎重に御相談を申し上げたのでありますが、本日はただ説明のみにとどめるということで意見の一致を見ましたので、明日あらためて理事会に諮ってこれを審議していきたい、かように考えておるのであります。
○北山委員 そのような理事会の申し合せであれば、われわれとしてはやむを得ないと思いますが、やはりその理由がなければならぬと思うのであります。常識的に考えれば非常に日にちが迫っておりますものを、あしたやるというのには何か特別な理由がなければならぬと思うのです。その理由について、もしも理事会等でわれわれが納得できるような理由がありますれば——理由がなければないでしかたがございませんが、あれば一つこの際お示しを願いたいのです。委員としてお伺いいたします。
○大矢委員長 さしたる理由の説明も私は聞いておりません。各党の都合で、そういうことに相なったのであります。 本案に対する質疑は後日に譲りまして、次の理事会の申し合せとして市町村職員共済組合法の一部を改正する法律案を上程するはずでありましたが、提案者より一部訂正の必要があるので明日にしていただきたい、こういう申し出があったのでありますが、これをさようにして御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○大矢委員長 それではさようにいたしまして、本日はこの程度にいたします。 次会は公報をもってお知らせいたします。 午後二時三十一分散会