社会労働委員協議会 第2号
- 発言数
- 140 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1955/09/10
会議録
○座長(中村三之丞君) これより社会労働委員協議会を開会いたします。 皆さんの御推挙により私が座長の職務を行います。 この際食品衛生問題について、川崎厚生大臣よりその後の経過について説明を聴取いたしたいと存じます。川崎厚生大臣。
○厚生大臣川崎秀二君 森永ドライミルクの中毒事件につきまして、その後の状況並びに厚生省としてとりました処理の具体的な各段階につきまして、申し上げたいと思うのであります。 先日、社会労働委員会の協議会が行われましたが、その際私は、浜松におきまして全国勤労者の水上大会がありまして出席をしておりました。二十四日に事件突発いたしますとともに、その夜半直ちに大臣としては連絡をとりまして、公衆衛生局長に対し、この事件は必ず大きな問題に発展をする。すなわち、従来の中毒事件あるいはその他の問題は、人命に多大の損傷を与えるということが少かったけれども、今回はすでに二十数名の乳幼児がなくなっておる点からして、新聞の取扱いなどは、最初は非常に小さかったのでありますが、私はこれは必ず大事件に発展する可能性があるので、そのような意味合いから慎重にして迅速なる措置をとるようにということを、二十五日の早朝に申し出ているわけであります。これは報告のない以前において、申し入れをいたした次第でありまして、その後の情勢を見ますと、ますます重大な形勢になりましたので、新聞紙上すでに御承知とは思いますけれども、最も被害の多かった岡山方面に直接出向きまして、見舞いもいたすと同時に、現地の視察を行い、その結果、岡山現地におきましては、かなり深い研究と、それらに対する措置が行われておりましたので、事件の解決に相当に役立ったものと感じておる次第であります。 その後の経過を具体的に申し上げますと、二十八日午前一時、森永乳業株式会社徳島工場において調製粉乳の過程における中和剤——安定剤として添加いたしました第二燐酸ソーダを徳島工場自体において検査をいたしました結果、砒素を検出したとの報告がありました。国立衛生試験所における右検体についての定性検査の結果、砒素の存在をさらに確認いたしたわけであります。この事実に基きまして、即日、すなわち二十八日、各都道府県知事あ・てに、電報をもって次のように通知をいたしました。 省令第五十二号に定める乳製品に入れる添加物については局方の規格に合致するもの又は特に厚生大臣の承認したものを使用せしめるよう厳重に指導されたい。 次に、中毒の原因となった徳島工場における第二燐酸ソーダは、大阪市内におきまして製造いたしたものでありますが、この第二燐酸ソーダの製造会社は、米山化学工業株式会社、生駒化学工業株式会社であります。これを同市、すなわち大阪市の松野製薬株式会社に納入いたしまして、松野製薬から徳島市内の協和産業株式会社に販売し、これから徳島工場が購入したものであることが判明いたしました。そこで第二燐酸ソーダの徳島工場の入荷使用量は次のようであります。四月十日に八十キロ、五月十日に百キロ、六月八日に百キロ、七月三十一日に同じく百キロ、全部で三百八十キロでありますが、入荷使用をいたしたそうであります。 なお、第二燐酸ソーダは、徳島工場では四月十日以降から緩衝剤として添加した模様でありますが、なお正確な状況は、目下さらに調査中であります。 次に、全国の乳製品製造工場における第二燐酸ソーダの使用状況につきましては、都道府県を通じまして調査した結果では、森永乳業株式会社徳島工場以外の他の工場及びその他の乳業株式会社においては、これを使用していないことを確認いたしたのであります。 次に、第二燐酸ソーダ中に含有された砒素による中毒と確認されました結果、徳島県知事にあてまして、次のような電報をもって告発をするよう通告をいたしました。 森永乳業の調製粉乳事件につき衛生部長において同社徳島工場長を食品衛生法第四条違反として直ちに告発されたい、公衆衛生局長という電報を発したわけであります。 続いて、乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部を改正いたしまして、昭和三十年八月三十日厚生省令第十五号、翌八月三十一日同省令の施行について厚生事務次官の通牒を施行しました。その改正の要点を申し上げます。 調製粉乳等の乳幼児の主食となる乳製品に添加するものについては、薬事法に規定する公定書に収載されている医薬品または厚生大臣の承認を得たものでなければならない、こういうことにいたした次第であります。 次に八月三十日、森永乳業徳島工場に対し、徳島県知事をして営業停止処分を行わせることとし、次のようにこれを徳島県知事に通知するとともに、森永乳業大野専務取締役に対し、公衆衛生局長から次のような通告書を手渡しました。 貴社徳島工場において食品衛生法第四条第二号の規定の違反事実があったので、同法第二十二条の規定に基き貴社徳島工場における乳製品の製造を九月十五日から三カ月間停止させることとし、このための処分を徳島県知事にとらせることといたしました。 次に、最近森永本社に対しましては、技術部の人事を刷新するとともに、その充実をはかるよう指示いたしました。 次に、森永MF印の調製粉乳による砒素中毒患者の治療費等の取扱いにつきましては、各都道府県知事あて通知をいたしました。治療費等の取扱いについては、次のような通牒を各都道府県知事に出したわけであります、 森永MF印調製粉乳による砒素中毒患者の治承費等の取扱いについて、標記について、森永乳業株式会社より別紙写のとおり被害者の治療費等について負担する申し出があったので、御承知の上患者の医療が適正迅速に行なわれるよう、貴官においても御配慮を願い度い。 そのもとになりました願い書といいますものは、大野森永乳業株式会社代表取締役の名前で 「弊社粉乳中毒対策につき、御高配を深謝申上げます、 中毒被害者の治療救済は緊急を要しますが、何分にも罹災者多数のため、弊社も力の及限りは尽力いたす存念ですが、現下の事情御賢察下さいまして、出来るだけ真症患者を重点に別記の様御配慮下さいます様御願い申上げます。というのが、公衆衛生局長あてに参っております。 さらに、きわめて詳細になりますが、この際御報告に追加しておきますのは、治療費用の森永負担であります。第一は、第一製薬株式会社製バルを三千箱、これを現品で贈呈いたしております。これは一番注射としてきくわけであります。第二は、診察料及び直接治療費入院費、これをイ、ロと二つに分けまして、イは、社会保険患者に対しては給付額を超えた療養費をとりあえず森永において負担するものとし、社会保険による給付額については、別途各社会保険の保険者に対し給付した費用の額を森永が支払うものとする。ロは、一般患者は保険点数に準ずるも、特別の事情の場合はこの限りでない。というような意味の通牒を出し、その他細部にわたりまして指示をいたしております。 これが今事件に対しまするその後の中間報告であります。 なお、目下患者の状態につきましては、府県よりの報告によりますと、患者総数は八千六十二名であります。その内訳は重症が六百四十七名、中軽症が七千八十二名、回復した者が二百六十九名、重軽不詳、重いか軽いかという点の非常につまびらかでないものが六十四名でありますが、このほかに疑似患者が約二百名届出がありますので、目下さらに調査中であります。今回の問題につきまして、最も遺憾でありまする犠牲者、すなわち死者は五十七名となっております。これらの八千六十二名の患者のうち、六百六十一名は入院いたしておりますが、これは主として重症患者であります。なお目下地方衛生部において、これらの患者について疫学的に確認するようさらに努力いたしております。 今日の患者の状態は、原因のミルクを中止をいたしまして、そうしてバルなどを打っておりますと、保乳量も増し、元気も非常に回復いたして参っております。また体重も増加しております。中くらいの患者並びに軽症の者におきましては、ほとんど今後も死亡するようなことはまずないと断定いたしてよかろうと思います。重症の者は、ほとんど入院治療を続けている現状で、これらも漸次回復の傾向にありまして、すでに峠を越したものと見ておりますが、きわめて一部の患者につきましては、今後なお警戒を要するものがあるとの報告を受けております。 これが今日までの森永ドライミルク事件につきましての経過と、厚生省のとりました対策であることをあわせて御報告を申し上げて、私の報告にかえる次第であります。
○座長(中村三之丞君) 次に、政府に対する発言の通告がありますので、これを順次許可いたします。山下春江君。
○山下春江君 ただいま大臣から、本協議会で過般協議をいたしました後の経過を承わりましたが、この問題は、非常に遺憾千万な問題でございまして、その後現地で本協議会の会長その他現地の患者を御視察なされた方々から伺ってみますと、その惨状は、全く想像以上の残忍なものであることを、私ども聞かされております。それにつきまして、今、治療その他のことにつきましては、厚生省からもいろいろな指示をなされたように承わりました。ところが、それがその患者にはかばかしく到達していない。まして五十七名というまことに気の毒な犠牲者に対する——死亡者の補償については、今言及をされなかったのでございまするが、これはどのようになっておりましょうか、その犠牲者の補償の問題を承わりたいと思います。
○厚生大臣川崎秀二君 これは森永におきまして、今回の事件はまことに遺憾なことだけではなしに、自分の方で全責任を持って処置をいたしたいということを申し出ております。森永本社におきましては、とりあえず一人十万円の見舞金は出しておりまするが、これは補償の意味ではございません、とりあえずのことでありまして、当然社会通念上出すべき補償額は、森永をして出させるようあっせんをするつもりでございます。
○山下春江君 そのとりあえずの見舞金十万円も、出させるように指令を出したということであって、出しておるという現伏は、あるいはお調べになっていないのではなかろうかと思われる節があるのでございます。と申しますことは、先ほどの御報告の中にもありました通り、森永も誠意を持ってこの問題に処していきたいが、何分にも数のことだからということが、御報告の文句の中にありましたが、その何分にも数のことだからということが、実は実際に現われておるようでございます。たとえば、営業部長等のところへ患者のうちから行きましても、営業部長は不在だとかなんとかいうことで、なかなか面会さえしてくれないというような事実があるようであります。これは具体的なことでございますが、私ども人情として忍び得ない話は、たとえば、結婚後七、八年後に初めて辛うじて子供ができた。それを分べんするにも、多少年を取っておりますので、非常な困難をして分べんをした。普通の乳幼児と違った手当をして、親の命を削ってもというような子供が、たまたまこの患者になっておる今回のできごとなどは、これは全く聞くに忍びない問題でございます。そういう人々に対しましても、森永の方で、先ほど読み上げになったような都道府県知事に対する公衆衛生局長の指令程度で、十分にその目的を達していないと私は思いますが、どうでございましょうか。
○厚生大臣川崎秀二君 これはお話でございまするけれども、私は三日に一回あるいは五日に一回ぐらい、森永の方の専務に会っております。従って、この十万円のとりあえずの見舞金が行き渡らないようなことになると、重大な問題になるということは申しております。岡山県等におきまして、今日まで取り調べたところでは、十分に行き渡っておる——現地に一人ずつ私が確認して歩くわけには参りませんけれども、行き渡っておるようであります。兵庫県におきまして、一部行き渡らないようなことを私は聞いておりますが、これはその患者であるか、あるいはその他の原因で死亡したかということに対する争いがあるようにも聞いておりますので、その点の情報は聞いておりますけれども、これも現地に行って確認したわけではございません。しかし、もしそういうようなことがあれば——今回の森永ドライミルク事件で、確実に砒素中毒のために死亡したという者に対して、今日まで責任を回避するようなことがあるならば、なお他の処置も取らなければならぬと私は考えておるような次第であります。
○山下春江君 そのとりあえずの十万円の見舞金に対しましては、大臣がそこまで熱意を示されるならば徹底することがあろうことを私どもも信じます。昭和三十年九月九日の午後十時現在の表をただいまいただきましたが、先ほどお読み上げになった数字の中で、まだ相当重症患者とみなされるもの、それから今日まで八千六十二名の中で回復したものが二百六十九名といたしますと三%強くらいなものでございまして、これは非常に憂うべき数字であります。今後相当犠牲者を出さなければならないという、はなはだ悲しむべき事件であろうと思われます。この犠牲者に対する補償の問題はまた別だとおっしゃるのでございますが、この事件が起りましてから相当な時間を経過いたしておりますので、大臣の方でも大体どういう補償の方法をとればよかろうというような御相談の結果があろうかと思いますが、それを一応承わらせていただきたいと思います。
○厚生大臣川崎秀二君 まず自主的に森永乳業の方でどのくらいの補償を自分の方としては考えておるということの案を出してみてくれということを申しておりますが、私の考えでは、これらは最近におけるいろいろな事件がありまして、たとえば紫雲丸のような事件もあり、国鉄は一人に対して五十万円という補償をしたように記憶をいたしております。これが乳幼児の場合にどうかというようなことにつきましては、いろいろ考えてみなければならぬ点がありますけれども、社会通念上妥当だという線に向ってやはり解決をしなければならぬ。とりあえずの十万円というものは、あくまでも見舞金であって補償金ではないということを確認をいたしておるような次第でありまして、これも迅速に措置をいたしたいと存じておるような次第であります。
○山下春江君 ただいまのお言葉の中にありました、乳幼児であるからということでございますから、それから受けます一つのニュアンスのようなものは、成人と同じようには扱えないようなことが起るかもしれないというようなことを暗示されたかと思うのでございますが、しかし乳幼児と申しましても、他の被害でございませんで、御飯が飽きたからパンにしようとできるものでございませんで、これだけによって命をつないでおる乳幼児でございまして、このミルクを飲ませさえしなかったならば、りっぱに成長いたしまして、国家の役に立つ子供になったのであります。そういう意味から申しますと、乳幼児だという考えを大臣御自身がお持ちにならないように、人命尊重を生かすということについては、これしか命をつなぐものがなかったという事業をしておる者に対して、いささかも大臣がそういうようなごしんしゃくをなされてこの問題を処理されることに対しては、非常に不満であると同時に、私は人道上許されない問題であると思いますので、さようなごしんしゃくをなさらないように、きめられる場合にも、厚生大臣はむろん相談の責任者におなりになることでありましょうから、私はあらかじめそのことを大臣にお願いをいたしておくのであります。 それから、二番目に私伺いたいのは、この治療の問題でございます。今、第一製薬からバルを三千個を出したということでございますが、その三千個というものは少くとも八千六十二名という患者には行き渡らない数でございまして、しかも行き渡らないのみならず、これを出したことで、その完全な治療とはおそらく思っておいでになりますまいが、これ以外にはその後厚生省として御研究になりました適切なすみやかに快方に向う数字は——全快した者と患者との数字は三%強くらいのものでございまして、はなはだ心もとないのでございますが、何か御研究になりましたでしょうか。
○公衆衛生局長山口正義君 少し具体的になりますので、私からお答えさせていただきたいと思います。今回の砒素中毒に対します治療法といたしまして、最初から専門家の間にいろいろお話がございました。私どもも、専門家の方々の御意見を伺いながら措置を進めているわけでございますが、こういう重金属の中毒に対しまして、これだけやればというような的確ないい方法がなかなかないと見ているわけでございます。このバルという薬も、それに役立つというように聞いているのでございますが、人によっては必ずしもそうでないと言われる方もございます。またいろいろハイポを使うという方法もございます。これはその治療に当ちれる専門家の方々の御意見によっていろいろ違ってくることでございまして、先ほど大臣からも御答弁がございましたが、この砒素の入っておりました粉乳の摂取をやめるというだけで、軽症の場合には、これも新陳代謝も盛んでございますから、自然排泄というようなことも起りまして、あとのいろいろな一般の対症療法をやって参りますればそれで回復して参り、相当育つということが、専門家の最近現地に行かれました方々から伺っているわけでございます。従って、このバル三千個で十分かどうかという点でございますが、バルの効力の点については、ただいま申し上げましたようなことでございます。最初千個だけとりあえず持って参りまして、それから九月一日にさらに二千個できたというので、厚生省に持って参りまして地方から希望があればどんどん出してやる、地方から申出を受けてそれに対して発送するということをいたしておりますので、これだけあればもう何もいらないというものではございません。このものについても、専門家の方々のいろいろ御意見がございますので、いろいろな療法を総合して、専門家のその衝に当られた方々にお願いして、できるだけいい方法をとっていただきたいと考えているわけでございます。
○山下春江君 この治療問題につきましては、当協議会は専門家の先生がたくさんおられますし、私はしろうとで、ただ心配しておろおろとするだけですから、私は専門家でございませんので譲りたいと思いますが、先ほど大臣の御報告の中に、疑似患者二百名くらいの申請があるということでございます。そこで私は、疑似と申しましても、乳幼児が同じような症状を呈したということになると、これは必ずしも森永の徳島工場、すなわちMFだけでなく、他の乳製品にも同様のことがあるのではなかろうか、あるいはあってはならないと思うのでありますが、疑似患者二百数名の申出があったというその症状は、どのようでございましょうか。
○公衆衛生局長山口正義君 疑似の申し出の症状を一つ一つ当っては見ないわけでございますが、砒素中毒の症状といたしまして皮膚の色素沈着、それから貧血、肝臓の肥大、発熱というようなことが症状として考えられておりますが、それを疑わせるような症状、こういう際でございますので、心配いたしまして、重きに従っていろいろ措置をいたしておりますので、そういう疑いのあるものというものも、これは県によっていろいろその判定が違うものでございますので、疑似のような形で取り上げているものもあるのであります。ただいま述べられました山下先生御心配の森永の徳島工場の製品以外の粉乳に砒素が混入していはしないかどうかというような点につきましては、この前の協議会でも御質問がございましたので、私どもも当初からその点は、国立衛生試験所あるいはその他の試験研究機関で調査いたしておりますが、先般も協議会にお届け申し上げました資料にもございますが、MF以外からはそういうものは発見されておりません。先ほど大臣から御報告がございましたように、徳島工場とそれから福島工場で第二燐酸ソーダを使っておったわけでございますが、徳島工場で使っておりました第二燐酸ソーダが非常に品質が粗悪なものでございまして、その中に相当量の砒素が含まれておったわけでございますけれども、福島工場で使っておりました第二燐酸ソーダの中には砒素が含まれていない、非常に純粋のものを使っておったという報告を受けております。調査の結果もそういうことになっておりますので、山下先生御心配の、徳島工場の製品以外の他の調製粉乳に入っているということは、現在考えられないというふうに私どもは考えております。
○山下春江君 本問題については、まだたくさんの発言者がございますから、私これでやめますが、要するに今の疑似ということは、徳島のMFを飲んだ患者に似たような症状が出たのだけれども、実はMFでないものを飲んでこれが出たかということの調査があったかどうかということでありまして、私言葉が足りませんでした。しかしそれはまだそこまで調査がいっていないといたしましても、他の製品に対しても、厚生省がこれまでのように検査をゆるやかにいたしておるということは許されない段階に参りましたので、全乳幼児の命をつなぐ主食中の主食、これしかないというものでございますから、厳重な食品検査をみすやかに行うためには、食品衛生法の改正が当然必要でございます。この前の協議会でも、吉川委員から、これはビキニの灰以上の惨事だと言われましたが、全くその通りでありまして、これはもうほんとうに重大な事件でございますので、すみやかに臨時国会を召集してこの食品衛生法の改正を行うという御意思かどうか、大臣から承わりまして、私は他の委員に質問を譲りたいと思います。
○厚生大臣川崎秀二君 食品衛生法の改正につきましては、改正すべきことを十分に認めておるだけではなしに、積極的に条項を洗っておるような次第であります。従いまして、臨時国会が開かれますれば、もとよりこれを提出をいたす所存でございます。臨時国会は、地方財政その他の問題にも関連しまして、野党各派から御要望がありますし、与党内部におきましても、なるべくすみやかなる機会に開きたいというような希望がありますので、御趣旨に沿うて漸進をすることになろうと思っております。
○吉川兼光君 関連して……。大臣の報告の中に出るかと思っていたのですが、全然触れなかったので、この機会に伺っておきたいのですが、九月四日の朝日新聞に、京城からのAFPの特電として、京城でも森永の粉ミルクを一万個から回収したという記事が出ておりましたが、単なる新聞の記事程度か、何か外務省あたりで、このことについてあなたの方からお打ち合せをして調べた事実があるかどうか、あとの質問にも影響しますから、ちょっと伺っておきたいと思います。
○厚生大臣川崎秀二君 実ば韓国並びにその他の地域に対しましても、輸出向けとして森永のMFミルクが出ておるものがあります。その他の製品の方が多いように思いますけれども、MFも出ておるというような状態で、あの事件が発生しますとともに、たとえば沖縄方面にも若干出ておるものでありますから、非常に心配をいたしまして、すぐ連絡をいたしたはずであります。それに基いての措置……(吉川兼光君「どんな連絡ですか」と呼ぶ)商社と外務省を通じてやったそうであります。
○吉川兼光君 それから、今山下委員石御発言の最後にありましたように、私はこの前の協議会でも、これはビキニ事件以上であるということを申し上げておりますし、現在もそうだと信じておりますが、食品衛生法の改正等について、いずれこれは臨時国会でなければ具体化すわけにいかぬと思いますけれども、それに対するいろいろな調査が行われているはずだと思うのであります。この間私は、フランスにおいては食品衛生法の違反は懲役十五年ということを申し上げておいたのでありますが、その後アメリカ、ドイツ等諸外国にも、いろいろ例があるようであります。おそらく厚生省でお調べが行われつつあるのではないかと思うのでありますが、外国の食品衛生法違反に対する処罰の例を、今日わかっているところだけでいいですから、この機会にお伺いしておきたい。
○公衆衛生局長山口正義君 ただいまお尋ねの、外国の実際に適用した例は、まだ詳細には調べておりませんが、食品衛生法違反に対する罰則の例でございますが、アメリカにおきましては、初犯は一年以下の懲役または千ドル以下の罰金、または両者を併科するということでございます。それから再犯は三年以下の懲役または一万ドル以下の罰金、またはその両者の併科となっております。この際、初めから詐欺の目的で行われました場合は、三年以下の懲役または一万ドル以下の罰金となっております。それからカナダにおきましては、初犯は五十ドル以上二百ドル以下の罰金または三カ月以下の懲役、または両者の併科、それから再犯は五十ドル以上五百ドル以下の罰金、六カ月以下の懲役、または両者の併科となっております。英国におきましては、初犯は二十ポンド以下の罰金、再犯は五十ポンド以下の罰金、三犯以上は百ポンド以下の罰金というふうにこまかく分けてございます。行為が怠慢不注意等によるもので罰金に適さないというように判定されましたときには、三カ月以内の禁固となっております。それからスイスにお寺ましては、三千フラン以下の罰金または二年以下の懲役となっております。 以上、私どもの方で今まで調べましたのはこういう状態でございますが、その適用の実例等につきましては、詳細に調べて、今後食品衛生法改正の際に検討させていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
○吉川兼光君 ただいまの実例を伺いますと、私が入手している材料とだいぶ違うようでありますが、私の方も別に正確性を特に確認しているわけではないのでありますから、臨時国会までに私の方もはっきりさせますが、私はそういう軽いものではないと思っております。ただ、違反の程度がいろいろ違いますから、その問題はこれ以上触れないことにいたしますが、向うの食品衛生の取締りの検査の内容ですね、これがこちらよりよほど充実しているようでありまして、こちらはその辺に大きな穴があるようであります。今回の問題は、当然食品衛生法違反だけではなく、もっと大きな刑事事件にも発展するでありましょうから、今回の事件に当てはめる食品衛生法として私は聞いておるのではないので、これ以上触れないことにします。 それではこれで終ります。
○座長(中村三之丞君) 松岡松平君。
○松岡松平君 大臣及び局長にお尋ねしたいのです。今、食品衛生注の対象になっている物品の加工における入手材料の分析というふうな実情は、どういうふうに行われているのか、それをお伺いしたい。この点は大臣でなくても局長でけっこうです。
○公衆衛生局環境衛生部長楠本正康君 お答え申し上げます。現在、御指摘のように、食品には各種の材料が、いわゆる添加物として使用されているものが多いわけでございます。それらのものにつきましては、現在食品衛生法に基きましてそれぞれ規定はしてございます。しかし、製造工程にさかのぼって逐次それらの製造工程を精密に検査をする、あるいは許可をするというようなことは、必ずしも十分でなかったようにも思われます。また一方、これら添加物の定義というようなものにつきましても、必ずしも十分精密にきめてなかったように思われます。これらを今後至急検討いたしまして、すみやかに改善をしなければならぬと私は思いますが、しかし、結論的に申し上げますと、現在もさような添加する品物につきましては、一定の規制を加えてあることは事実でございます。
○松岡松平君 そうすると結局この分析に対する規制が明確でないというように私は了解するのです。そこで、私は事例を申し上げますと、これは食べものではない、直接人命に影響を及ぼすものでないが、日本の鉄鋼規格にいたしましても、全部分析ということが、日本規格によって明示されている通り、普通鋼を作る場合でも、特殊鋼を作る場合でも、その材料は全部分析することになっている。そして、その資料というものはちゃんと保存しておくことになっている。これは各業者、法律によらずしてもやっております。ことに、はがねに最も害になる燐とか硫黄とかいうものは、その入ってきた材料によってみな違う。それですから、材料を分析し、製造の過程において分析し、それだけのたんねんなる注意を払っておる。これは業者として当然なことです。いわんや食品に対して、いまだにこれが確立されていなかったということに、私は非常に指摘しなければならぬ点があると思う。今局長のお答えによると、添加物といわれますが、添加物だけじゃない、材料全部について、これは分析をやらなければいけない。害があるかないかということは、分析によるべきであることは明らかなんです。たとえば、牛乳の一びんについて一々分析しなくても、一定量というものを抽出すれば分析できる。これをやらないで食品を売られては、たまったものじゃない。これをこのままにしておいたら、今後この種の事件というものは、続発、頻発します。そういう可能性があります。今の場合には、添加物に砒素の入っているということは、その技術者が当然わかっている。ある一定量の砒素が残っているということは考えられる。これに対して、分析も行わずして乳製品に使った、これは重大なる過失です。許すべからざることです。そういう品物を売りつけて一定の利潤をあげていこうなどという業者の悪心においては、断じて私は許せぬと思う。これはなかなか重大な問題です。大臣も先ほどおっしゃっている通り、重大です。現在重大であるとともに、将来問題です。これをどうして防止するかということになると、結局分析制度の確立がなければならない。食品における分析及び資料を存置し、その分析の記録を明確にしておくことが絶対の要件であります。監督をどうしてやるか、およそ厚生省としてこれに対する監督行政を行うには、分析の資料を確立させておかなければ、監督の対象というものは、作って売ってしまえばなくなってしまう。これは分析に基いて確保する以外に私はないと思う。早急の立法の準備において、この分析の制度確立に対する大臣の御所見をまずお承わりしたいと思う。
○厚生大臣川崎秀二君 ただいま仰せの通りでありまして、従来の添加物以外のものでありましても、その食品の製造または加工の過程において使用する化学薬品その他の物において、新たに添加物に準じて取扱いをなす、それからその製造加工等の方法の基準及び成分、規格など定めたいというようなことにつきましても、準備を進めておるような次第であります。仰せのごとく、食品衛生法の改正ということは、行政官庁といたしましては最も注目をし、常に斬新なものにしなければならなかった点におきまして、これを怠っておりました責任は、私どもとしましては重大なものがあるとさえ考えておるのであります。国会におきましても、いろいろな問題が議せられますが、食品衛生関係の問題が、今日までは他の問題ほどは論ぜられなかったこともはなはだ遺憾でありまして、今度の事件は、要するに国民の栄養摂取というものが最近非常に多角度に発達をしてきておる、しかるにかかわらず、この客観的な要求事実というものに対して、それに伴うところの行政機構が確立されておらなかったというところにも、重大なギャップがあったというふうに私どもは考えておるのでありまして、法の改正の主点は、この点を充実することでなければならぬというふうに思っております。先般吉川委員初め各委員の御指摘の通り、製造工程に対する検査を厳重にすることがまず改正の重要点でありましょうし、またただいま御指摘のような問題についても十分の検討をいたして改正法を出すつもりであります。 さらに、もう少し具体的に申し上げますならば、薬品の問題にいたしましても、ただいま医薬品と工業薬品、試薬品と申しましてためす薬品、この三つに薬品の関係は分れておりますが、今回の事件にかんがみまして、もし検討した結果、必要であるということになりますなれば、食用薬品というものも新たに加えてはどうかという意見が出ておりまして、かなりこれは有力になり、御批判を受けたいと思っておるような次第であります。 以上が、大体改正の主点を申し上げたわけであります。なお詳しいことは局長の方から申し上げます。
○公衆衛生局長山口正義君 ただいま食品衛生法をどういうふうにしていくべきかというふうな点につきまして、大臣から厚生省としての現在考えておりますことを申し上げたわけでございますが、さらに松岡先生から御指摘がございましたように、その製造過程につきまして、分析等の非常に徹底した規制をしていかなければならないというふうに考えているわけでありまして、その製造に高度の衛生技術を要するというようなものにつきましては、衛生管理に当る主任技術者を置くというようなことも考えてはどうか、それに対する資格並びに業務上の義務などについても規定して、そこをしっかりしていかなければならぬのではないかというようなことも考えているわけでございます。 また私ども現在の食品衛生法に基きまして、食品衛生監視を実施いたしておりますが、その監視の状態、やり方につきましても、今のところいろいろな対象、業務、大体同じような形式でやっておりますが、しかし、これは個々のものについて、特別な監視様式を考えてやっていかなければならないというような点も考えているのでございまして、この現在の食品衛生法を改正して参ります点につきまして、いろいろこまかい点、検討していかなければならないというふうに考えておりますので、当面の御注意を受けながら、今後事務的に進めていきたいと考えているわけでございます。
○大橋武夫君 どうも今のお話しを伺っておりますと、今度のことでしくじったのは人がないからだ。食品衛生法を改正して、監視員をふやすということです。どうも今までとかく役所は何かしくじりがあると、これは人が足りないためにしくじったのだというふうな行き方をやられるのは私は非常に不賛成だ。それで食品衛生法を改正されるに当って、その監視的な措置をやることが必要だということは、これは確かにその通り。しかし、今日各地に保健所とか、そういうものができておるのですから、分析をさせる必要があれば、毎月定期的にある程度の製品を保健所に持ち込んで、その分析をさせるというようなことをやるとか、何もこつもから分析に調べに出張をしなければならぬことはないのです。そういう既存の行政機関をできるだけ活用して、有効な措置をお考えいただくというようなことも一つ含めて御検討いただきたいと思います。
○公衆衛生局長山口正義君 ただいま大橋先生から御指摘のように、決して人を増すということ、そういうことだけを申し上げておるわけではございませんで、御指摘のように、保健所の検査施設を十分活用する、これはすべての食品を全部そういうふうにするということはなかなかむずかしい問題もあるかと存じます。今回の対象となりましたようなものにつきましては、そのほかにもいろいろございますが、そういうものは、一定の間隔を置いて向うから持ってこさせますと、これはいろいろ故意が伴いますので、集計して、こちらへ持ってきて、保健所の機関を活用して検査するということは、当然考えていかなくてはならぬだろうというふうに考えます。
○松岡松平君 今ほど大橋君からも御指摘があったように、この分析にせよ、また監督にいたせ、これはもう間歇的にやったってだめです。日常間断なく製造が動いている以上は、間断なくこれが行われなければだめです。分析というものを、大臣初め局長はあまり経験がないように見受けられますが、これはそうむずかしいものじゃない。最近の分析技術にしても、機械にしても、非常に発達しておりまして、材料を入れれば、あるものによっては色がすっと出る場合もあるし、非常に簡単にできておりますから、これはあまりむずかしいふうに考えないで、物を作るときにはまず分析という概念を一つ持っていただいて、これは業者に督励していただく、これは簡単な事柄であります。どうぞ特にこの法改正に当ってこの点を留意せられ、さらに今ほど大橋君から御指摘のあった保健所というものは実際はあまり活動しておらないのです。これはもっとこういう実際面に大いに活用せられることを、特に私希望したいと思います。その予算的措置などについても一段と考慮せられる必要があるのじゃないかと思います。 別の点について、もう一、二点お尋ね申し上げたいのは、先ほど患者に対する一人十万円の見舞金のお話が出ましたが、これは軽症者及び重症者に対しては、どういう措置がとられているのでしょうか。先ほどの十万円は、何か死んだ人という……。
○厚生大臣川崎秀二君 そうであります。
○松岡松平君 そうすると、重症者、軽症者に対する見舞の問題がまだ出ておりません。この点はどうなっておりましょうか。
○厚生大臣川崎秀二君 これは森永の方で治療費全額を負担したい。それから社会保険に加入いたしておる者は、先ほど申し上げましたような社会保険で払われるもの以外をしたいということを申し出ておりますので、それが妥当であろうというふうに考えまして、治療に重点を置いた森永の施策を大体容認をいたしておるような次第であります。
○松岡松平君 そこで、最後に私、本件は結局業者としての注意を欠いた。もしかりに第二燐酸ソーダというものを分析してみれば砒素の含有量がわかる。わかれば、技術者としては当然使用すべからずという結論が出てきます、これを怠ったところから起ってくる。その怠りということは、普通人の注意とは違う。業者の注意というのは、特別の注意を必要とすることは明らかであります。法を立案せられるに当って、こういうような重大な過失に対しては重く処罰をするということは、絶対必要であります。普通の軽過失などという場合とは違うと思います。これは重過失であります。非常に憎むべきものであります。故意にも等しい。故意よりもっと悪いと思う。これはなかなか重大な問題であります。しかも、今聞いておりますと、その製品は韓国に行ったり沖縄に行っておる。もし韓国において乳児のこういう被害が発生したならば、一大国際問題を引き起しまして、取り返しのつかぬ事態を起すかもしれません。しかも、この森永といえば定評あるメーカーであります。しかも歴史あるメーカーがこのあやまちを犯した。いわんや最近の泡沫的な会社などたくさんあるが、そういうようなものは、これ以上の被害を及ぼす危険をおそれておるのでありまして、どうぞ厚生省当局におかれては、この問題は単なる一時的な問題でなくて、今後における重大なる一つの政治問題の因子を含んでおります。ことに最近の国家の特徴というものは、福祉性というところにある。健康にして明朗なる生活を営んでいくには、何といってもこういうところに具体的なる政治の注意が間断なく行上れていないと、私はそういう目的が達せられないと思いますので、一言私の意見を当局に申し上げまして、立法について特段の御注意あらんことを希望いたします。
○座長(中村三之丞君) 八田君、関連で簡単ならばこの際お許しいたしますが、あとでよろしゅうございますか——それでは岡本隆一君。
○岡本隆一君 先ほどの大臣並びに局長からの御説明によりますと、徳島で作られましたところの有毒粉乳の全体の量というもの、それからそれの各府県への分布、その回収された量というようなものの御報告がございませんでした。あるいはこれはあまり詳細になるという意味で御説明がなかったかと思うのでありますが、そういうことはあなたの方でキャッチしておられますか。
○厚生大臣川崎秀二君 お答え申し上げます。徳島工場の四月一日以降、八月二十三日までの調製粉乳の生産量は八十八万九千五百四十カンでありまして、この内訳は次の通りでございます。工場でございますが、営業所の在庫製品の数量が十七万四千三百十二カン、先ほど申し上げました輸出向けが二万一千六百カン、国内消費出荷量が六十九万三千六百三十八カン、こういう数字になっております。 このうち九月八日現在におきまして、各都道府県衛生部が回収した数量は、四十八万四千七百八十七カンでありまして、消費されましたものは二十万八千八百五十一カン、こうなっております。
○岡本隆一君 その消費量とそれから患者発生数との分布でもって、大体どの府県では何ぼくらいの消費量があった、従ってそれに応じてどれくらいの患者が出ているというふうなことがわかってくると思います。それからまたその消費された量によって、ある程度平均的な価を出すことから、あるべき患者の数というものが類推できると思うのでありますが、そういうふうな統計をお取りになっていらっしゃいませんでしょうか。
○公衆衛生局長山口正義君 ただいま御指摘の点でございますが、大臣が先ほど御報告申し上げました二十万八千八百五十一カン、これはとにかく森永から卸売の方に出てしまったうちで、回収残りのものでございます。その中には、先般から私どもいろいろ検討いたしておりますが、家庭でまだ持っているものも若干あると存じます。それでそれがどこの府県にどういうふうにこまかく分れているかという点、いろいろ調べたのでございますが、なかなかこまかいところまではわかりにくうございます。と申しますのは、森永の本社の工場から卸売業者へ行きまして、それかう小売へ行きますその光がなかなかこまかくわかりにくうございます。それで的確になかなかつかめないのでございます。私どもも、どこの県で、現実にどれだけ消費されたかということをつかみたいと努力しておるのでございますが、なかなかこまかいところまでいかないのでございます。と申しますのは、たとえば、広島県、岡山県は非常に患者がたくさん出ておりますのに、山口県では格段に少いというような点、いろいろ不審の点がございます。ただいま岡本先生の御指摘の点もございますので、私どもいろいろ検討いたしておりますが、なかなかこまかいところまではわからないのでございます。それと出回りましてから、今度はその場所におきまして、ほかの製品の手持ち等がございまして、実際に家庭でどれだけ消費されたか、各府県別に現在まだつかめていない状況でございますが、ただいま御指摘の点は、私ども何とかして関連をつけて、そうして当然患者が出なければならぬと思うのに、出てこないのはどういうわけかというような点も、検討しなければならぬと考えております。しかし、患者の発見につきましては、先般の協議会でも御報告申し上げましたように、事件の報告を受けまして直ちに各府県に指令を出しまして、患者の発見に努めるようにいたしております。こういう大問題になりまして、新聞紙上にも大きく出されております。乳児を持つ母親としては、非常に重大問題でございますので、患者が隠れて出てこないというようなことは、なかなかないのではないかというふうに考えておりますが、現在届けられております患者の数が、大体先ほど大臣の御報告にもございましたが、この弊が現在の姿ではないかというふうに考えているわけでございます。それからその製造いたしましたときによりまして、カンを調べましたそのカンによりまして、砒素の含有量も違っておりますので、その点なんかも一つの因子になるのではないか。全体均質的にまじっているのではないというような点も考えられまして、患者の発生に影響があるというようなことも考えられるのではないかというふうに存じております。
○岡本隆一君 仰せのようにいろいろのファクターというものもあるだろうと思います。しかしながら大体において有毒粉乳の分布と患者の分布というものは、およそ合致しなければならない、私はこう思うのです。従いまして、有毒粉乳の分布というものをよく調査されまして、その上で、およそあるべき患者の数というものを類推していただかなければならぬ。ことに今回のこの事件というものは、これは乳製品の歴史始まって以来のことで、また世界の小児科、医学界の中でも、こういうできごとというものは初めてのことです。従いまして、これについての医師の経験というものも浅いのであります。また病気には重症から軽症までいろいろある。しかも同じ量を飲んでおりましても、これについての耐量というものにも開きがあるわけであります。従って私、先日発生した患者さんを見て参りましたが、なるほど重症患者は全く急性砒素中毒、私どもが昔言いましたサルバルサン中毒の猛烈なやっと同じ形のものでやって参っております。それからまた慢性のような形をとって、ただ、膵臓、肝臓の肥大と白血球の減少、それと貧血というふうな症状だけにとどまっていて、ひどい急性症状を呈しておらない患者もあるのです。そういうふうなことになって参りますと、何かしらやせておる、何かてしらこのごろ発育が停止しておる、しかしながら原因がわからないというふうなことで、そのまま見過ごしておる患者というものも相当あると思う。また病名不明のままで死んでいったというような子供も、まだほかにもたくさんあろうと思う。こういうようなことを考えるときに、およそ分布を調べていただく、それによって各地方でその発生数と患者数が適合しておるかどうかということを御調査なさることは、必要なことであると思いますので、一つその辺のことは十分お考えになって、これからの方針を進めていただきたいと思います。 その次に、私どもの方には、事件発生以来、厚生省からはその患者の症状及びその経過についての一応の解説、それからそれに伴って治療の方針はどうするというふうな診断及び治療の指針というようなものは、何ら通達がなかったように思うのでありますが、そういうふうなことはしていただいたのでしょうか、どうでしょうか。
○公衆衛生局長山口正義君 ただいま岡本先生の御指摘の隠れた患者がありはしないかという点でございます。私先ほどお答えの中で漏らしたのでございますが、私どもの方から先般府県に出しました指示の中には、たとい現在症状が現われていなくとも、一週間ないし十日以上このMF印の粉乳を飲んだ者は、保健所に届け出て積極的に検診を受けてほしいということを指示しております。私ども十分注意してやって参ったつもりでございますが、今後も御指摘の点は十分気をつけて参りたいと思っております。 それから、症状につきましては、この事件発生と同時に、府県に対しましていろいろ参考になる事項を通知を出したのでございますが、治療法につきましては、先ほど私、山下先生の御質問にもお答え申し上げました通り、この重金属特に砒素中毒の治療につきましては、以前は先生も御承知のようにハイポを使っておりました。最近はバルというものが使われておるようでございますが、いろいろ議論もございますので、その治療の基準と申しますか、そういうものを私どもの方ですぐきめかねたものでございますので、これはそれぞれの衝に当っていただいておられます専門の先生にお願いしたい。そうして、これは医師会の方がどうこうというわけではございませんが、先ほど岡本先生からも御指摘のございました、あまり経験のない疾患でございますので、できるだけ施設の整った大きい病院に入院をしていただくようにという通知は、私の方から府県の方に出しております。
○岡本隆一君 先日病院に参りましたときに、その当時までの各医療機関の方針としては、症状の非常にはっきりした者だけ中毒患者として届けている。そうして軽症の、ことに外来として通っているというような、ややどうかしらと思えるような者については、届け出ておらないというふうな向きもあろうかと思う、従って実数というものは、ここに出ております八千六十人以上、ことに軽症患者がうんと多いということを私たちは考えなければならない。しかも慢性の形をとるために、長い間やせておる、いろいろな栄養を補給しなければならないというふうな形でもって、相当医療費に悩むというふうな人たちも、私たちは出てくると思う。そういう人たちに対しましては、少くともMFの粉乳を飲んだ者については、砒素中毒ということが明確でなくても、森永の方で当然補償しなければならない義務があると思います。必ず砒素中毒の病状が明確に出なければ補償しないというふうな方針であっては、軽症ではあるが、砒素の影響を受けておるというふうな患者にとっては、これは大きな迷惑であろうと思うので、補償に対しても今後そういうふうな指導方針をとっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○公衆衛生局長山口正義君 補償の問題につきましては、先ほど大臣も申されましたように、現在目の前にある患者の治療ということに全力を注いで、いろいろ森永の方も呼びまして指示をいたしておるわけでございます。また地方に対しても指示をいたしておるわけでございます。先ほど各先生方からも御要望もございまして、大臣のお答えもございましたように、できるだけ早い機会に厚生省としてもいろいろあっせんの労をとってやらなければならないというふうに考えているわけでございまして、その際に、ただいま岡本先生御指摘のような点は考えさせていただいて、具体的にどうするかということは、その補償問題全体をいろいろ検討していただくときにきめるようにさせていただきたいというふうに考えております。
○岡本隆一君 補償の問題が出ましたので、それについてもう少しお尋ねしたいと思うのであります。森永の今までの態度というものは私は相当不誠意であると思う。本月のかかりに厚生省から山中技官が京都府へ参りまして、京都府の婦人会の人たちからその模様をいろいろ聞いていただきましたので、局長もおそらくその御報告は受けておられると思う。九月の一日現在、会社からは何ら手を打たれていない。治療費も見舞金も何ら支払われていない。それから被害者の方から面会を申し込みに参りましても、支店長その他は、言を左右にしてなかなか会わない、むしろ逃げているような形があるというふうなことで、婦人たちが非常に憤激いたしておったのでございますが、そこへ支店長もやって参りまして、陳謝の後、これから十分な措置を講ずるというふうなことを申しておりました。しかしながら、ただいまの御報告を承わっておりますと、見舞金は出されたけれども、まだ治療費については支払いがあまり行われておらないようなお言葉のように聞いたのですが、そのときに、患者の方からもそういう要望があるような模様で、とにかく裕福な人たちは別として、やはり一般には現金に困っている、日々の往復の交通費及び病院での治療費というようなものについて、現金に非常に悩んでいる。だから、何とか金がなくとも医師にかかれるようにしてもらえないかという要望がありましたので、そのとき私から意見を出しまして、森永と医師会とで協約して、健康保険と同じような扱いをして、医療費は一括して基金もしくは医師会の方へ請求して、それを森永が責任をもって払うというような方針をとったらどうかということで、京都府ではそういうことに話がまとまりまして、そういう通達がやって参りましたが、他の府県はそういうふうな措置がとられているのかどうか。先ほどそういうふうな御報告がございませんでしたので、お伺いします。
○公衆衛生局長山口正義君 先ほど治療並びに治療費の問題につきまして、基本的なことを大臣から御報告がございました。その際に、取扱い要領といたしまして、私どもの方から府県の方に指示いたしております。それを一応申し上げてみますと、先ほど山下先生からお尋ねのございましたバルの配付につきましては、申し上げた通りでございまして、府県の要求に応じてそれから出すということでございます。それから第二に、入院を要する者は、なるべく施設の充実した大病院、これは先ほど私申し上げた通りでございますが、たとえば国立とか県立とか日赤、大学というようなところに集中的に収容していただいて、行き届いた手当をしていただきたい。しかし土地の事情でどうしてもそういかない場合には、ほかの病院ということになるわけでございます。それから病院、診療所の選択は、もちろん患者の方の自由意思によるということでございます。しかし、なるべくそういう大病院を選んでいただきたいということであります。それから一般開業医の分は、府県医師会と森永とが協議して、医師会は内訳記載の請求書を取りまとめて森永に提出する。それから患者のどれとどれとを患者の対象にするかということはよく問題になることでございますが、これは各府県で、今度は中毒患者でございまして、行政的にも患者を把握しなければなりませんので、名簿を作っておるわけでございますが、その中毒患者とみなされた者を対象とするということでございます。それから支払いは一カ月ごとに森永に請求して、森永は前記病院には直接、その他は府県の医師会へ払う、そういうふうな方針をきめまして、それを地方に出しておるわけでございます。これが先ほどの岡本先生の最初のおたずねのときに、ほかの県に行き届いていなかった点があったのかもしれませんが、私どもの方ではそういう方法でやっておるわけでございます。 先ほどのお言葉の中に、死亡者に対する見舞金は一応出たけれども、治療費の問題は出ていないというお話でございますが、まず何よりも治療費を先にやれということで、そういう措置を講じているのでございまして、その基本方針が最初にきまりません間は、いろいろごたごたがありましたことは事実でございます。しかし、大体府県の医師会が立てかえる、あるいは大病院が一時立てかえるということでやっておるわけでございますが、現在はこの方針にのっとってやってもらうということでございます。 それから後遺症の問題、これは岡本先生御専門でいられますが、この疾病につきましては、後遺症の点が考えられるわけでございます。それらの点も、私どもの考えもあり、また森永もそれを十分考えて、一定期間を置いて健康診断をする、必要があればそれに対していろいろ措置を講じてもらうというようなことをなすっているわけでございます。いろいろございますが、とりあえず現在目の前の患者を、どうすれば一番安心して治療できるか、それにいい治療が施せるかということに私ども今全力を尽しているわけでございます。
○岡本隆一君 次に、なぜ第二燐酸ソーダを加えたかということについての御追及をなさいましたでしょうか。森永からそれに対するどういうふうな答弁があったか、一つその辺をお伺いしたい。
○公衆衛生局長山口正義君 この第二燐酸ソーダを使いました理由につきまして、いろいろ私ども森永に問いただしたわけでございますが、森永の使いました意図といたしましては、原乳を集めまして、そうしてそれを熱を加えてアラにいたします際にこの第二燐酸ソーダを加えますと、凝固を防いで均等にできる、そのためにそれを使ったのだというふうに、森永の技術当局は私どもに報告して答えているのでございます。安定剤という言葉を使っております。しかしこの問題につきましては、いろいろ検討しなければならぬ点が技術的にあると私どもは考えているわけでございます。
○岡本隆一君 粉乳の製造工程で沸騰さすのでしょうか、その辺をよく御承知であろうと思いますが、一たん加熱沸騰させて、それから熱気室の中へ吹き込むのでしょうか。私はそういうことはちょっとおかしいと思うのですが、その辺のことを一つ実際その衝に当っていられる方にお伺いしたいのです。
○公衆衛生局環境衛生部長楠本正康君 これは、当初原乳を集めましてから一つのダンクに納めます。それからそれに約七十五度ないし八十五度程度を加熱をいたしまして、それから次に真空蒸溜がまに送られるわけでありますが、その前に一たん加熱をいたします。その場合に、この燐酸ソーダを入れますと、熱を加えても凝固しないということから、かようなものを使われておるわけでございます。
○岡本隆一君 私は、そのように理解しておられる緩衝剤あるいは安定剤というようなものは、名前はどうでも、体のいい防腐剤ではないか。少くもプッファーというものはペーハーを安定さすペーハーというのは酸度なんです。酸度を安定さすために使う。こういうことは、御承知のように腐敗のときには酸が出て参ります。酸性になって参ります。すっぱくなる。従って安定剤、緩衝剤と呼んではおるけれども、しかしながら、これは実際は防腐の目的で使っておるのでないか、私はそう理解している。そこで問題になってくることは、原乳を集荷してから製品に仕上げるまでの間に、かかる時間の問題があろうと思うのであります。ことに四月から六月、七月、ちょうど腐敗の一番起りやすい時でございますので、そういうものを使ったのではないか。集荷を敏速にやらない、また集荷されたものを直ちに処理し切れないというところに、自分の方の工場設備により以上のものを集荷していく。だから勢い時間を長く置かなければならないというふうなことから、このような安定剤と旅するものを使わなければならぬということが出てきたのではないか。つまり工場設備そのものと、それから扱う数とに無理があるから、こういうことが出てきたのではないかということを私は思うのです。そこで、その点を十分追及していただきまして、今後ともこういう事態の起らないように、ことに安定剤を使おなければ、今度は腐った牛乳を原料にしたところの粉乳というものが作られ、それによってまた思わざる細菌の発生、サルモレラその他とんでもない細菌の発生というふうなことがあって、それによるところの猛烈な中毒、今は無機物質でありますが、今度は有機物質のための猛烈な中毒というものが起ってくる心配もある。従って会社が行うところの製造というものには、集荷量と処理量との間の均衡ということについて、十分な注意を払っていただかなければならないと思うのでありますが、今後の食品衛生法の改正に当って、そういう点について留意していただけるかどうか、その辺のお考えを承わりたい。
○公衆衛生局環境衛生部長楠本正康君 技術的に申し上げますと、先生の御指摘の通りでございまして、この目的というものは、私どもはこれを中和剤と称して考えておりますのは、つまり酸度をある程度中和いたしまして、加熱による凝固を防ぐものと考えております。従いまして、私どもはいろいろ検討いたしましたが、これは防腐剤ではございませんが、明らかに中和をしていくものでございまして、もっと悪い言葉を使いますれば、ある意味で、こまかしを行う材料というふうにもとれるわけでございます。この辺は非常にむずかしいところでございますが、ただ問題は、かようなものを使わなくともいい原乳を得ることが、根本問題だと存じます。従いまして、今後は原乳の質の向上ということに力を尽さなければなりませんが、今回のものは、必ずしも工場の消化力と入荷量との不均等から、やむなく時間を長引かせたというよりも、この原料乳が比較的酸度の高いものも入ってくる関係もございまして行なった措置でございまして、かような点は今後十分に検討をいたしまして、また慎しむことといたしたい、かように考えておる次第でございます。従って根本問題は、原料乳問題にも触れてくるわけでございます。
○岡本隆一君 ただいまの楠木部長の中和剤というお言葉は、さらに私たちは重視しなければならないと思います。腐敗現象には酸化がつきまとうものでありますから、従って中和剤を用いなければならない。しかも、中和剤をどんどん用いていくことの中に、腐敗したものをもある程度そのような凝固を防いで粉乳とすることができるというふうなことになって参りますと、非常にこれは森永の方が故意に悪い原乳を使っている、それを中和剤で中和することによって、安い粉乳を作っておったというふうな商業上の悪徳行為というふうなものを、私たちは察することができると思うのであります。そういうふうなことになって参りますと、森永の責任重大である。従って補償あるいは治療については、さらにさらに大きな責任を負わなければならないと思うのでありますが、いかがでしょうか。
○公衆衛生局環境衛生部長楠本正康君 これは全く御指摘の通りでございまして、従いまして、今後は、いろいろな理由はあるにせよ、これらのものを使ってかような結果を来たしました事実にかんがみまして、これらの点はもろもろの判断並びに今後の補償問題等にも十分に考慮しなければならぬ問題だ、かように考えております。
○岡本隆一君 新聞紙の報道を見て参りますと、第二燐酸ソーダの使用を会社の方の技術指導部の方から指示しておるような模様でございますが、製品の検査は森永の会社は各工場でやっておるのでありましょうか、あるいは技術指導部でやっておるのでありましょうか。さらにまたどの程度の検査をやっておるのでありましょうか、その辺について伺わせていただきたいと思います。
○公衆衛生局長山口正義君 製品の自家検査は、各工場において実施いたしております。その検査いたしております項目は、牛乳省令に規定もございますので、脂肪あるいは細菌数、比重等を検査いたしております。従いまして、その問題になりました化学分析まで入っていなかったという点が、こういう事態を起した結果になったのだ、そういうふうに考えております。
○岡本隆一君 細菌の検査は、培養検査をやっておられると思いますが、どういうふうな培養基を使って検査しておりますか。
○公衆衛生局長山口正義君 原料乳は非常に急を要しますので、塗沫標本によって細菌、それから脂肪球の状態を見ておりますが、でき上りました製品につきましては細菌は培養試験をやらせております。一般の菌の培養につきましては、一般の平盤培養を使ってやっている、そういうふうに承知いたしております。普通寒天かエンドウか、とにかくそこらのところは、これは私詳しく十分承知いたしておりません。
○岡本隆一君 その辺のことについては、同僚の八田君にそれから先は専門家でありますからお願いすることにいたしまして、さらに私がお尋ねいたしたいのは、町に売られておる粉乳の、そのほとんどが加糖調製粉乳であって、全粉乳は探さなければないというふうな状況であると、そういうふうな話を聞いております。現実に子供に乳を飲ませている人から、ほとんどが加糖粉乳だということを聞いております。全粉乳を求めようと思うと相当探さなければない、こういうふうな状況であるということを聞いております。このことは、やはり加工することによって、加工に名をかりて一応より多くの利潤をあげるというふうな、利潤追求の政策のように思われる。従ってそういう点について、会社のこれから後の営業方針というふうなものについても、厚生省としてはある程度の監視の目を光らせていただくことが必要ではないかと思うのでありますが、それについて御意見を伺いたいと思います。
○公衆衛生局長山口正義君 私あるいは岡本先生の御質問の趣旨とちょっと取り違えたかもしれませんが、もしそうであればお許し願って、あとでまたお答え申し上げますが、調製粉乳か、全粉乳かという問題につきましては、小児医学会にもいろいろ議論がございます。大体調整粉乳の方がいいというふうなことでございますので、現在大体調製粉乳が多く選ばれておるという状況でございます。その際にいろいろなものを添加いたしますので、それに対して、先ほどからも申し上げております通り製品の製造工程なり、あるいは製品の検査というものにつきまして、より一そうの注意をする必要があるというふうに考えております。
○岡本隆一君 それでは、厚生省としては調製粉乳を奨励していられるというふうなお言葉のように聞えますが、そうですか。
○公衆衛生局長山口正義君 厚生省として奨励しているというわけではございません。
○岡本隆一君 調製粉乳につきましては、その添加物について、どうしてもいろいろなものが混入しやすいという点がありますので、市販のものが調製粉乳が非常に多いとするなら、それに対して一応その製造工程についての十分な監視監督が必要であると私は思います。 そこで、今後の方針についてお尋ねいたしたいと思うのでありますが、私は、粉乳というものは、乳児にとっては主食でありますから、従って、どうしても今後はこういうことが絶対にないというようにしなければならない。そのためには、やはり検定の制度をやらなければならないのではないか。ことに、有毒物全部について検定することは、あるいは困難であるかもしれませんが、比較的簡易に検査のできるようないろいろな物質については、全部これとこれについては検査をやるという種目をきめて、それについて厳重な分析検査をやる、分析検査を受けたものでなければ出荷することができない、こういうふうな制度を確立しなければならないと思うのです。ことにスペクトルの分析によりまして比較的簡単に、今日かかれば明日結果が出て参ります。無機物については、スペクトル検査で相当簡単にやれます。たとえば砒素であるとか燐であるとか、あるいは水銀であるとかいうような相当猛烈な有毒な無機物質がありますが、そういうものについて、分析検査の結果検定を受けなければ出せないような方針をとっていただく。ことにまた細菌についても同様であって、一応培養検査を済ませて、それに合格したものでなければ出せないような形にやらなければならぬと思う。全製品一つ一つについてやるのでなしに、抽出検査をやればよいのでありますから、そういう制度を設けていただきたいと思うのでありますが、それについてのお考えを承りたい。
○公衆衛生局長山口正義君 ただいま御指摘の点は、ごもっともな御意見だと存じますが、細菌製剤等と違いまして、非常にいわゆる一つのロットの数が多くなりますので、それについて技術的にどういうふうにできるかという点を検討させていただきたいと存じます。もし今のような細菌製剤等について行なっております検定制度ができなければ、それにかわるべき方法はどうか。たとえば、抜き取り検査の数を非常にひんぱんにするというようなことを考えなければならない、あるいはロットの単位を非常に大きくいたしますれば、検定の対象になる件数が少くなりますので、実施可能ということも考えられるのでございますが、そういう点、技術的にいろいろ検討してみなければならないというふうに考えております。御指摘の点は、十分私の方で研究させていただきたい、こういうふうに考えております。
○岡本隆一君 最後にもう一点、お尋ねというよりも、これはお願いしておきたいと思うのでありますが、検定制度をとるといたしますと、検定を受けるために、コスト高につくというのでもって、検定制度にはコスト高というものがつきまとっている。たとえば、ワクチン類にいたしましても、前にあのジフテリアの注射禍がありまして、それから後ワクチンが検定制度になった。そういたしますと、一切のワクチン類が二倍、三倍の価格になって出てくるのです。今度乳の検査を検定にするというふうなことになって参りますと、検定においてはねられた分については、やはりその原価の中に織り込まなければならないから、どうしても高くなる。検定品でありますから高うございますというようなことでもって、また乳製品が非常に暴騰するというようなことになって参りますと、これは乳児の主食であるだけに、大問題であるのみならず、お乳というものが今相当高いために、乳製品が高いために乳が飲ませられないで、今でも半分はお乳、半分は穀粉というふうな育て方をしている家庭が多い。ことに、いなかの貧農に参りますと、昔からのそういう習慣が残っているだけに、一そうそういう習慣が多い。従って、そういうことが絶対に起らないようにしていただきたい。ことに森永の話を聞きますと、年二十割ぐらいの収益率を上げておるというふうなことも聞いておるのです。従ってお乳は安く買いたたく、しかも製造工程はでたらめをやる。そのあげくには、今度ばまた検定を受けたから、お乳が高くなりますが御承知下さいというようなことになっては因ると思うのです。従ってそういう点については、価格についても、これから後は厚生省の方で十分な監視の目をもって、暴利をむさぼらないようにあなたの方で調整していただきたい。
○公衆衛生局長山口正義君 もし検定制度をとるということになりました場合には、そういう点は十分注意して指導して参りたいと存じております。
○大石武一君 少し厚生省当局にお尋ねをいたします。この問題の直接の責任はどこにあるか、大体見当がおつきになりまし上うか。
○公衆衛生局長山口正義君 直接の責任は、森永徳島工場の工場長だ、そういうふうに考えております。
○大石武一君 大体そのように新聞で承わっておりましたが、それで、もう少し具体的ないきさつと申しますか、その根本的な原因がどこにあったかという、こまかいいきさつをおわかりになれば、お答えを願いたいと思います。
○公衆衛生局長山口正義君 詳しい、どこにほんとうの責任があるかということは、これは刑事事犯もからみまして、現在、検察当局が調査いたしておりますので、その結果明らかになるというふうに考えているわけでございますが、私ども行政的に考えまして、先ほど岡本先生からも御指摘がございましたように、第二燐酸ソーダを使うということ自体に、いろいろな問題があるというように考えております。しかしながら福島の工場では局方の純度の高いものを使って実施、製造いたしておりますが、そのために今回のような砒素中毒の原因になるというような事態はありません。徳島の工場においては、第二燐酸ソーダを使います際に、その使います第二燐酸ソーダそのものを十分に検討もせずに使ったという工場の責任者が、やはり今回の事件の直接の責任者であるというふうに考えているわけであります。
○大石武一君 それでは、その不純な第二燐酸ソーダを、粉乳を作る製造工程に用いたということで、責任があるわけでありますが、先ほど厚生大臣のお話では、四回ほど四月から七月まで購入しておりますが、四回とも不純な、いわゆる工業用の第二燐酸ソーダが混入されたのでありましょうか。
○公衆衛生局長山口正義君 四回とも入荷しております。四回とも同様の第二燐酸ソーダが納められているというふうになっております。
○大石武一君 そうすると、これは徳島工場で注文したことになるわけでありますか。その場合に、はっきり局方の純度の高いものとして指定したか、あるいは何もしないでやったか、あるいは工業用の第二燐酸ソーダとして指定したか、そこのところははっきりわからないのですか。
○公衆衛生局長山口正義君 その辺の問題になりますと、現在検察当局が調べているわけでございます。価格の問題等もございまして、そういうことも関連いたして参りますが、一件の関係書類は、書類として残っておりますものは全部検察当局に押収されておりまして、私ども詳細に調べることはできないのでございます。特に局方のものと指定したというふうなことは聞いていないわけでありまして、また工業用品を納めろといったことも聞いていないわけです。その辺のところは書類等についても、いろいろ発註書等について調べなければなりませんが、その書類が現在検察当局に参っておりますので、私ども詳細にその点わからないわけでございます。
○大石武一君 先ほどの御報告にも、徳島工場と福島工場において第二燐酸ソーダを使用しておる。そうして福島工場では局方の純度の高いものを使っておったから異常はなかったということになっておるわけでありますが、そうすると、これは徳島工場あるいは福島工場、お互い独自に、勝手に森永乳業の本社と関係なしにそういう第二燐酸ソーダを使ったのか、あるいは本社からそのような指令があったのかどちらか、まだはっきりおわかりになりませんでしょうか。
○公衆衛生局長山口正義君 第二燐酸ソーダを使用いたしますことにつきましては、本社の方から使えという指令はございませんが、使ってもよいというような書面が参っております。しかしその際に、どういうものというふうなはっきり指定はございません。その使用の判定と申しますか責任は、各工場において購入して使用することになっておりますが、その際に、繰り返して申しますが、福島では純度の高いものを使い、徳島では純度の低いものを使ったという結果になっております。
○大石武一君 そうすると、局方の純度の高いものを使えとか、使うなとかいう指令はなかったということになりますが、ところがこういうものを使ってやるということについては、十分な技術的な知識がなければ使えないわけであります。その技術的な十分な指示というものを本社でしたのでありましょうか。ただ勝手にこれだけを使え、こういう方法でやれといっただけかどうか。もう少し具体的なこまかい説明であるとか、あるいは第二燐酸ソーダの性格であるとか、品質については、こまかい指示はなかったのでありましようか。
○公衆衛生局長山口正義君 その使います第二燐酸ソーダの性格あるいはその品質等について、特に注意をしてございません。私も出しました書面の写しを見たのでございますが、ございませんが、最後にそれを製造してでき上る際には、その製品について十分検査するようにというような指示はいたしております。ただ第二燐酸ソーダそのものについてどうこうというような指示は、いたしておりません。
○大石武一君 そうすると、そのできた製品については、十分な検査をするように指示があったということでありますが、そうすると、果して徳島工場においても福島工場においても、その乳製品の分析とかなんとかいうことをするのでありましょうが、いずれにせよ定性分析なり何なりがあったでございましょうか。
○公衆衛生局長山口正義君 その点は、先ほども申し上げましたように、脂肪、細菌数あるいは比重というようなものにつきましての検査はしておったのでございますが、化学的な分析の検査はしておりません。
○大石武一君 少しこまかいことを聞くようでありますが、そうすると、徳島工場と福島工場が同じような指令によって第二燐酸ソーダを使ったわけでありますが、福島では異状がなかった。それは結局工場長の知識なりその人の人柄なりで、その人の判断によってやったわけでございますが、その場合に、福島の場合は使用方法を生かしてやったわけだし、徳島はこれを殺したわけであります。徳島の工場長というのは、技術的な資格のある、素養のある人でございましょうか、どういう人でございましょうか。
○公衆衛生局長山口正義君 徳島の工場長は、四月に最初に購入いたしまして使い出しましたころと、その後の工場長とがかわっております。最初の工場長の大岡工場長は苫小牧の工業学校を卒業した人でございます。それから現在の山口工場長は東京薬事卒業の薬剤師でございます。
○大石武一君 そうすると、これは結局本社で第二燐酸ソーダを使ってもよろしいと言った、そうしてそれを地方の各工場において使ったわけでありますが、これを常識的に考えても、不純なものを使っていいはずはない。おそらく不純なものを使えという指令を発したとは思えないし、そういうことではないようですが、そうすると、要するに徳島の工場は、これは前の工場長は、もちろんそのような不純なものを購入してもよいような措置をとったというところに重大な責任があると思いますが、新しい工場長も、四月から七月まで四回購入しているが、それがどのような品質のものが来ているかということを何ら確かめないところに重大な責手がもると思いますが、いかがなものでございましょうか。
○公衆衛生局長山口正義君 御指摘の通りであります。
○大石武一君 次に、第二燐酸ソーダを、添加物に使ったのでしょうか、緩衝剤として使ったのでしょうか。
○公衆衛生局長山口正義君 いわゆる添加物として使ったのではございません。緩衝剤として使ったのだ、そういうふうに考えます。
○大石武一君 そうすると、緩衝剤に使ったのだということになると、これは食品衛生法に抵触しないのでしょうか。いかがなものでしょうか。
○公衆衛生局環境衛生部長楠本正康君 お答え申し上げます。ざっくばらんに申し上げまして、現在牛乳そのものには、いかなる異物も混入してはならぬことになっております。しかし、これは現在のところは、市乳いわゆる飲用牛乳を意味いたしております。ところが製造工程において使われますものは、別に現在のところ規制はないわけであります。従いまして、使ったことが決してほめることでもなく、先ほど申し上げた通りの事情でございますが、法的にはこれを違法行為ということは言えないだろうと思います。
○大石武一君 次に治療に関してでございますが、約八千六十何人の患者でありますので、大へんだと思うのであります。先ごろ森永乳業の大野専務から厚生大臣に申し入れがあったようであります。こまかいことは忘れましたが、社会保険に加入しているものは社会保険並みにやって、それ以上の給付はまた森永で持つということ、それからもう一つは、一般の社会保険に加入しておらない患者に対しては、国民健康保険並みの扱いをしてほしいということが書いてあったようでありますが、そうであったでございましょうか。
○公衆衛生局長山口正義君 ただ、国民保険という特別なことでなしに、保険点数という非常に大ざっぱな書き方であります。
○大石武一君 これはあなた方に言うまでもないことですが、社会保険は確かにある程度の制限診療であります。一般普通の病気は、これはやり方も方法もきまっておるし、いろいろな見通しがっきますから、社会保険、健康保険で一向差しつかえないと思います。ただこのような大量の砒素中毒、こういうことは、今まで例がなかったと思います。それの治療法も、私はないと思う。そのような場合は、普通一般並みの社会保険の治療だけでは、私は不十分ではないかと思うのです。そういう点は、社会保険というのは大体、確かに有効であるとか、あるいは常識的に考えて正しいと考えられた薬品とか治療法しか使わないのが常識だと思いますが、それ以外に越えた新しい試みというものをできるだけやって、将来の子供たちに対する悪影響というものを除きたいと思うのでありますが、これに対していかがお考えでございましようか。
○公衆衛生局長山口正義君 一応私どもから指示をいたしております、また森永と話をいたしました点は、保険の点数によるということにいたしております。しかし、これは特別の場合にはその限りでないというふうにいたしておりますので、ただいま大石先生の御指摘のような点は、実際問題として十分適切なる措置を講ずるようにいたしたいと思います。
○大石武一君 次にバルということについて、私不敏にしてまだ聞いておらないのですが、主成分はどんなものでございましょうか。
○公衆衛生局長山口正義君 少しむずかしいのでございますが、バルと申しますのはブリティッシュ・アンティ・ルイサイト、BALという、それの略でございます。それでグリセリンの酸素のかわりに硫黄が入った形の薬品でございまして、砒素を可溶性のものにいたして溶かして出すという作用のものでございます。
○大石武一君 もう一点お聞きいたしたいと思うのでありますが、この事件に関しまして、政府には確かに直接の責任はないと思うのであります、責任は森永乳業にあると思います。これは森永乳業だけで、大体の責任は解決しなければなりませんけれども、もちろんこれだけでは手に負えないと思うのであります。これに対して、政府はどのような所信を持っておられるか、聞きたいと思います。
○厚生大臣川崎秀二君 今回の事件は、直接には森永のドライミルクの不正品による事件でございますから、その中を分析いたしますと、直接の責任は徳島の前並びに現工場長というものがとらなければならないと私は考えます。しかし、こういうものを許しておったというようなことで、ただいま徳島地検並びに大阪地検におきまして捜査をしておる過程でありますから、刑事上の責任がどの程度に及びまするかは判断ができませんけれども、いずれにいたしましても、本社の業務指導上の責任というものはあるのではないかというふうに考えます。それから食品衛生監視ということにつきましては、厚生省にももちろん責任があるのでありまして、その最高の責任は私にあるのであります。しこうして徳島工場ということが直接責任で、刑事上の責任もあるというようなことになって参りますれば、徳島の県知事の指揮下にありまする衛生監視員というものについては、これを発見することができなかったということに対しての責任があるように感ぜられますので、そのような事態になるならば、徳島県知事としても十分に考えてほしいということを、先日徳島県知事が参りました際に、これは私だけの所存で、まだ局長にも相談しておらぬことでありますけれども、申し上げたわけであります。それに対して徳島県知事は、自分の方としては非常に責任を痛感しておるので、その後の措置としては十分のことをやっておるつもりだけれども、確かに衛生監視という点で、かようなことをでかしたわけは、自分の方に責任があるということを言っておられます。雪後措置について深い相談は、まだ実は徳島県の衛生直接責任者に対する問題につきましては相談はいたしておりませんが、そういう警告といいまするか、私としての勧告のつもりで、徳島県知事にはお話をいたしたような次第であります。
○大石武一君 ただいまの厚生大臣のお話は、大体刑事上の責任の問題でございますが、私は、それよりも別な方をお聞きしたいと思います。一つは、今後このような問題が起うないための厚生行政をどのように持って行くかということのお考え、これはおそらく食品衛生法について、ただいまいろいろな不備の点がありますが、これを改正するとか、もっと公衆食品衛生の監視員をふやすとか、いろいろな問題があると思います。それはこれから大いに研究をされて、できるだけこういう問題が起らないように万全の手を尽していただきたいと思います。 次は、今言ったように刑事上の責任でなしに、補償に関する問題であります。これは当然森永乳業の責任であると思いますけれども、あるいは手の及ばない、あるいは別に予算とかそういう問題ばかりでなしに、いろいろな面があると思います。たとえば、予算の面でも森永乳業の手に負えない点があるだろうと思うのです。その点、政府はできるだけ森永乳業に十分な補償をさせるように手をお尽しになると思いますが、それでも及ばない点は、政府でも相当に考えて、できるだけの根本的な解決をされるように努力される御意思があるだろうと思いますけれども、その御決意をもう一度お聞きしたいと思います。
○厚生大臣川崎秀二君 今回の問題は、直接的には民間の問題でありますから、従って森永乳業のごとき、今日までこの種事業に関する一般国民から見ての権威的事業者であるというふうに考えられており、補償の責任もとり得る資力を持っておるものでありますから、従って森永乳業が自発的に治療の全責任並びに犠牲者に対するところの補償をしたいということを申し出ておりますので、一応その線において治療いたすことにいたしておるわけであります。 基本的な方針としてはそうでありますが、もし、今日では重症者は割合に少くて、中軽症者がはなはだ多いのでありますが、これが逆な数字になっておるような状態で、全国的な問題になるというようなことになりまして、とうてい一会社の資力の及ぶところではないというようなことになりますれば、政府としても当然これを取り上げなければならぬということで、事態の発展を見るために、遠慮はいたしておりますけれども、現に大蔵大臣には、発展のいかんによっては、国も直接にこれらに対して何らかの財政的措置を講ずるような段階に達するかもしれぬということを、私としては相談はいたしております。しかし目下のところは、森永乳業の責任において処理し得るものと考えますので、今直ちに国がこれらのものに対して財政的負担をする、補償するということは、今日としては直ちには考えておらないようなわけでございます。
○大石武一君 厚生大臣並びに厚生省の方針はよくわかりました。どうぞその方針を堅持されて、できるだけ十分な解決をしていただきたいと思います。 それから、このような不祥事件は、私は非常に残念だと思うのです。森永乳業というのは、日本第一流の会社であります。おそらく乳製品の五割を作っている会社だと思うのです。このような日本の公衆衛生あるいは食品衛生を代表する中心の会社がこのような事件を起されたということは、私は非常に悲しいと思います。これで日本の公衆衛生のレベルが見当がついたと思うのです。これは非常に隻急なことです。ことに、それが一工場長なりあるいは工場の幹部の不注意から起ったということ、これは非常に残念な話であります。しかし、これはもちろん森永が悪いのでありますけれども、このようなことは、日本全体の公衆衛生のレベルだと思います。でありますから、これを監督される公衆衛生局の苦労も大へんだと思いますけれども、こういうことは、たび重なってはいけないことですから、ぜひとも戒心して、これからこのような不祥事が絶対に起らないように十分な御努力をしていただきたいと思います。それには、もちろん法の改正も必要でありましようし、予算の問題もございましょう。われわれは全力をあげてこれをバック・アップする決意でありますから、ぜひともこれを契機として、今後このような問題が起らないように十分な御努力あらんことを心から希望いたします。
○大橋武夫君 今の大石委員の御質問に関連して伺っておきたいと思います点は、厚生省の省令で乳製品の規格についてお定めになっておりますが、そのうち全粉乳のところを拝見しますと、乳の固形分が九五%以上、それから水分五%以下、こういうことになっておりますが、この成分の中に今度はおそらく毒物が若干検出された、こういうことだろうと思います。そうすると、これはこの条項に定めた規格に反しておるということが言い得るのですか。
○公衆衛生局環境衛生部長楠本正康君 現在の粉乳規格は、ただいま御指摘の通りでございますが、この場合に、たとえば内訳が詳しくしてございませんために——これはもちろん法的なお答えを申し上げておるわけでございますが、固形分の中にいろいろな規格がしてございませんために、これから見ると、必ずしも違法とは言えないわけになります。ただこれは、今度は次に食品衛生法の第四条に規定する有毒なものが入ってはいかぬという総括的なものに触れて参りますが、この規格そのものとは関係がなくなってくるわけでございます。
○大橋武夫君 この第七条の規格というものは、公衆衛生の見地からきめるのだと思いますが、この規格に合致しておれば大体衛生上支障がない、こういうふうに認めるのが当然じゃないでしょうか。規格に合致していながら、しかも有毒物が幾ら入っていてもよろしいというようなものならば、何のために規格を設けるのかわからないので、それなら第四条だけあれば第七条は要らないということになる。いかがなものでしょうか。
○公衆衛生局環境衛生部長楠本正康君 先ほど来お答え申し上げたように、御指摘の通りでございまして、この辺に若干私どもも責任を感じておりますが、なぜそうなったかと申しますと、従来つい最近まで、食品というものは比較的こまかい添加物その他の操作を加えずに形ができておりましたが、きわめて最近になりまして、牛乳等に、たとえばビタミンを入れるとかいろいろなことを行い出しまして、かような点で事態が少しく変ってきております。そこで早晩改正しなければならぬというように考えておりましたが、その点は責任を感じている次第であります。
○大橋武夫君 そうしますと、この規格そのものが時勢にそぐわなくなっている、しかも時勢に応ずるような急速な改正が行われなかったということは、御当局としても手落ちがあったという意味でしょうか。
○公衆衛生局環境衛生部長楠本正康君 御指摘の通りでございます。
○大橋武夫君 そこで私はその責任をどうこうという目的で伺っているのじゃないので、厚生省の今後の御方針として、こうした乳製品についてせっかく規格を定める以上は、もっと細密に定めて、そしてビタミンの含有量とか、あるいは添加物から来るやむを得ざる毒物の含有量とか、そういうものについての厳重な規格をきめて、そしてそれ以外の規格による方が製造土便宜だとか、そういうような今後の製造技術の進歩によって当然変ってくるというような場合には、その際またあらためて厚生省で十分検討した上でそうした新しい規格を認めるか認めないかというようなやり方をしていく、そういうふうにするのが、実際こうした全国的な大量の製品の衛生を保持する上からいって便宜ではないかと思うのですが、そういうようなやり方をやろうというようなお考えがあるかないか、また厚生省としてその気になれば、そういうような規格をきめて励行するということもやれる見込みであるかどうか、その辺についてお考えを承わりたいと思います。
○厚生大臣川崎秀二君 ただいま御指摘の点は、先ほど楠本部長からも御答弁申し上げましたが、その通りでありまして、今度の食品衛生法改正に当りましては、十分に考慮をいたしまして実施をずるつもりでございます。
○座長(中村三之丞君) 八田貞義君。
○八田貞義君 今までの質問によりまして大体終ったようでありますので、重複しないことを建前といたしまして、本事件について四つくらいに分けて大臣並びに局長に御質問いたしたいと思います。 本事件の意義でございますが、これは食中毒史上非常な大事件でありまして、この砒素による中毒が今まであったかどうかという問題から考えてみますと、一九〇〇年にイギリスのミットランドにおきましてビール中毒が起っています。この場合、中毒患者は六千名出まして、死亡者が七十名というような大事件でありますが、これは要するに工業用の酸に砒素化合物が入っておって、クロム硫酸でのビンの洗浄が不十分であったのでビールの中毒が起った。その後砒酸鉛とか亜砒酸による中毒がありますが、いずれもおとなの中毒事件でありまして、今回のような乳児の中毒は世界始まって以来の大事件であります。この乳児中毒をいち早く発見しまして、そうして事件の拡大を最小にとどめたというこの業績は、非常に大きなものであります。それにつきまして、厚生大臣は厚生大臣賞を医療担当者に出されるということでありまして、まことにこれは私の同感をいたすところであります。しかも、これはどのような形において厚生大臣賞を出されるのかしりませんが、藍綬褒賞以上の功績にあげなければならぬ。というのは、砒素中毒というものは、非常に簡単なように印象されがちでありますが、今までの砒素中毒というのは、ほとんど工業中毒だけを対象とした症状をあげられている。しかも工業上の砒素の中毒は、皮膚からの、あるいは粉塵としての吸収であります。このように口から入った中毒というのは、非常に大きなものであり、かつ乳児中毒の場合には、これは消化不良症ぐらいでもって、ほとんど見のがしてしまうような大事件でありますので、厚生大臣としてすみやかに表彰の手続をとられんことを、まず冒頭にお願いいたしておきます。その内容等につきましては、またあとでお伺いいたしますが、すみやかに表彰手続をとられんことをお願いいたします。 それから、先ほどから盛んに刑事上の責任の所在問題について論ぜられております。工業用の第二燐酸ナトリウムが、今日緩衝剤として使われて中毒の原因となったということでありますが、工業用といたしましても、砒素の含有量があまりにこれは多い、ほとんど常識として考えられないぐらいたくさん入っているわけであります。そこで、大臣並びに局長は、工業用のいわゆる第二燐酸ナトリウムの場合には、普通どれくらいの砒素が含まれるかということを、常識として知っておられるかどうか、ちょっと伺いたいのであります。衛生試験所の検査によると、第二燐酸ナトリウムは、工業用だから亜砒酸として五ないし八%含まれているのだという印象を与えがちでありますが、しかし、そういうことは絶対にない。五ないし八%の亜砒酸を含有しておったということを考えますと、これは何か製造上に失態があった、こういうふうに考えられるのでありますが、その点について局長さんでもいいのですが、お伺いしたい。
○厚生大臣川崎秀二君 今回の事件につきまして、信賞必罰を明らかにして進まなければいかぬではないかという御質問であり、またそのような意味での表彰をやれということでございますが、私も今回の事件の特異性といたしまして、乳幼児が岡山を中心として多数病院に収容されまして、その状況が最初は発熱、下痢が長期に持続をし、また食欲が減退をして、岡本議員も病院を回られたそうでありますが、私も中心地の岡山に行きまして驚いたのであります。最後には、ちょうどニグロまでではございませんけれども、二カ月ぐらい海水浴に行ってやけたような色にまでなりまして、海水浴に行くと、われわれも皮がむけますけれども、皮が三回ぐらいえぐられたようにむけている姿を見まして、まことに、先ほど山下委員から御質問のあった際山下委員が申された通りの惨状でありました。しかし、その反面におきまして、八月二十三日に事件が発生するとともに、徹夜でこの原因を突きとめました岡山医大の教授浜本先生、この方は今日全国小児科の会長でありまして、まことに願ってもなき方が現地におられたということではございましょうけれども、直ちにこの症状はどう見ても砒素中毒であるということを、自分の長い小児病に対する処理から推論をされまして、さらにこれを岡山医大並びに日本赤十字病院岡山分院において実験をしてもらいたいということを申し出られた結果、ついに最後に死体から砒素が出、森永粉ミルクの方からも出たというので、原因が突きとめられたわけでありますから、この結果に上りまして、専門筋では、少くも百名以上の乳幼児の生命が助かっておるはずである。すなわち二十四、二十五、二十六のこの一番危険なるときにおいて、死の一歩手前で食いとめられたものがそれ以上の数に上っております。これは非常に甚大な功績でありまして、そのような意味合いから、すみやかに表彰すべきであると考えております。しかし、その後の全国的患者の状況も見てみませんと、表彰の方は行政処分ほどそう急いでやるよりも、状態を見きわめてからと思いまして、多少時間を見ておりましたが、実は昨日大体省内の手続を終りまして、来週中にも表彰者を公表したいと思っております。今日人名をさだかに申し上げる段階には至っておりませんが、浜本教授を初め岡山医大、日本赤十字等の関係者を表彰するつもりでおります。しかして私の考え方でありまするが、全国の乳幼児を救うためには、自分の子供を死体解剖してくれということを申し出られた方があります。これらは厚生大臣として表彰するよりは、むしろ感謝の何かをいたしたいというので、手続を進めておるような次第であることも、あわせてこの際申し上げておきます。
○公衆衛生局長山口正義君 非常に専門的な工業用として砒素がどの程度含有されておるのを普通と思うかという御質問でございますが、御指摘のように、今回の第二燐酸ソーダの中には、亜砒酸として五%ないし八%、砒素としては三%ないし八%という計算になりますが、そのくらい含まれておりまして、これは専門家の人に聞きましても、ただいま八田先生の御指摘のように、普通ちょっと考えられないような量が入っているということでございます。ただ製造過程において燐鉱石、硫酸を加えてやります際に、その原料となります燐鉱石あるいは硫酸というものの中に、どの程度にもとから入っておったのか、あるいは途中で混入したのであるかという点は、まだつまびらかでございませんが、御指摘の通り、普通常識的に工業用第二燐酸ソーダとしても、砒素の含有量が高いということは考えられると思います。
○八田貞義君 今山口さんの言われたように、異例のことでありまして、そこで私は考えるのですが、第二燐酸ソーダを作る場合、もちろんいろいろな方法がございますが、材料としましては燐酸、硫酸を使うのです。この場合に迷入する場合を考えてみますると、燐酸と砒酸というものは、化学上非常に類似反能を呈しまして、普通の注意を怠ると砒酸と燐酸とを間違いやすいのであります。非常にこれは似ておるのですから、米山化学それから生駒化学、ここで果して燐酸と砒酸とを間違えたようなことがあったかどうかという点も、よく御調査願いたいと思うのであります。 それから、もう一つ硫酸の問題であります。これは工業用の硫酸には、砒素化合物が含まれやすいのでありますけれども、今日は硫酸は接触法によって製造いたしておりますので、砒素化合物は全く考えられない。昔の粗製硫酸にはよく一%以下の砒素化合物が入っておりました。ですから、今お話したようにイギリスでもそういうような事例が起ったのでありますが、現在硫酸の製造方法は接触方法によっておるため、全く砒素化合物が含まれるということは考えられない。従って私は、刑事責任の所在という問題になりますと、砒酸と燐酸との間違いが製造上の責任を云々する分岐点になるのではないかと考えております。 それからもう一つそれを証明する方法といたしまして化学用と工業用の第二燐酸ナトリウムは、値段が違うはずであります。果して森永乳業におきまして、どれくらいの値段でキロ当り買っておったか、こういった点もお調べ願いたいと思います。そういうふうなことを注文いたしまして、この事件の起った起点というものを科学的に精細に御調査願いたいと思うのであります。 それから、もう一つお伺いいたしたいのでありますが、問題の徳島工場において、食品衛生法第四条第二号の規定の違反事実があったので、同法二十二条の規定に基いて同法上の乳製品の製造を九月十五日から三カ月間停止したということ、この処分を徳島県知事に指令したというのでありますが、この事件には、さらに食品衛生法の第十一条違反の事実があるわけです。この点について御調査相なっているかどうか。いわゆる標示の問題です。ですから、単にこの二十二条だけの食品衛生法第四条第二号違反だけではない、さらに食品衛生法の第十一条違反といえどもあるわけです。
○公衆衛生局長山口正義君 ただいま八田先生から御指摘の製造工程中における砒酸と燐酸との混同という点、その点注意して調べてみたいと考えております。価格の点につきましても、これは証拠書類全部押収されておりますので、正確にはわからないのでございますが、私ども聞き取りました点では、徳島工場が購入いたしました価格は局方より少し安い、しかし製造元の工場に比べるとずいぶん高くなっております。そこらの問題、刑事上の問題ともからんでいろいろ検討しなければならない問題があると存じております。 それから最後の御指摘の十一条の問題は、十一条違反問題につきましては私どもの方でその標示の解釈等につきまして現在検討いたしていますが、ただいま御指摘の点は十分検討させていただきたいと存じます。
○八田貞義君 それから、その問題はその程度といたしまして、徳島工場の第三人者経営の法的根拠を伺いたいが、これは大臣からお答えを願いたい。一体第三人者経営にあるのでありますが、従業員は現在のままにしまして、どの程度まで上の方はかえていくか、係長まで及ぶか、課長級まで及ぶのか。 それからもう一つお伺いいたしたいのは、問題の徳島工場の乳製品の製造も許可するのか、市乳だけの営業を許すのか、あるいは乳製品にまで営業を許可するのか、それについてちょっとお尋ねしたい。
○厚生大臣川崎秀二君 今回の徳島工場の処断につきましては、国民の感情から見まして、また厚生省としてとるべき措置といたしましても、三カ月の営業停止が適当であろうということで、すみやかな処断をいたしたわけでございます。その際におきまして議論になりましたものは、申すまでもなく、毎日百二十石ずつ徳島県を中心に香川、愛媛の農家から牛乳を搬入いたしておりますのを、処理できないということになりますれば、この三県の酪農事業に重大な影響を与えるわけであります。従って、森永徳島工場に対する営業停止をすると同時に、新たにこれと肩がわりをするものを早く見出さなければならないので、処断をする際に非常にちゅうちょをいたしたのでありますが、しかし私はちゅうちょをすべきときではないという見解のもとに、早いところ代案を出すような手段を講じたわけであります。そういたしまして、農林省と法務省の専門家を呼びまして研究をさせました結果、元来ならば、法律に根拠がありますれば、その間徳島県あるいは国が直接これに肩がわりをするということができれば最も公平であり、また一般から見てよいのでありますが、これは企業の自由ということを侵害することになりますし、法的根拠がないものでありますから、従って何とか肩がわりをするものを見つけ出さなければならぬというので、研究をしました結果、全国酪農組合をして肩がわりをさせることが最も適当であろうということに三者の意見が落ちついたわけであります。そこで法的な根拠としては、第六章の営業のところに規定をされておりますが、これに従いまして、新たに届出をしたものにさせる、これは全国酪農組合にさせることがよいというので、全国酪農組合の代表者を呼びまして、やってくれるかという話をしましたところ、やはり労務者を森永工場の者を使わなければ、直ちに作業を開始するわけにはいかないということでありました。私どもの考え方といたしましては、森永の営業責任者、徳島工場の営業責任者並びにこれと重大な関係のあるものを除いて、労働者そのものには何らの責任もないわけでありますから、そこでこれらの人々を活用して営業ができるような手段方法を講じたらよろしいのではないかというので、そういう措置をも講じつつ今日に至ったわけであります。九月十五日といたしました理由は、多少の準備期間が必要でありますから、その間をとったわけであります。三カ月は、食品衛生法違反並びに食品関係の違反におきまして、戦後最大の刑罰をもって臨む、こういうことになっておりますので、法的根拠並びに措置についての概要は、そのように御了承を願いたいと思います。なお詳しい区分けにつきましては、部長の方からでもお答え申し上げます。
○公衆衛生局長山口正義君 停止期間中の作業の問題につきましては、大臣からお答え申し上げた通りでございますが、その間に作ります製品につきましては、非常に注意をしなければならない。調製粉乳はやめまして、加糖練乳と全粉乳ということに限定をしてやらせたい、そういうふうに考えております。
○八田貞義君 そうすると、大臣の答弁によりますと、営業の契約ですが、要するに新たに申請した者に県知事が許可する、そしてその業務の契約といいますか、営業契約といいますか、それは森永と全国酪農組合との契約になるわけでありますか。従業員はそのまま使うわけでありまして、従業員の給料は全部森永の方で払うわけですか。それともまた工場全体を全国酪農組合において借り受けまして、その全国酪農組合から従業員に金を払う、そういうことになりますと、森永乳業と今までの従業員との関係は、どういうことになりますか。
○公衆衛生局長山口正義君 その営業停止期間中、全酪連が営業者になるわけでございます。従いまして、その製品は全酪連のマークをもって販売する、収入は全酪連の収入になるわけでございます。ただ、森永と労務者との雇用関係はそのまま継続する、そうしてそれを提供してもらって全酪連が経営する。従って、それに必要な経費は全酪連から森永の方へ払って、それから労務者の方へ行く、こういうふうなかっこうになっております。
○八田貞義君 そこで、中毒事件に関連して、食品の検査並びに監視に従事する者の手が足りないということが現状になっております。もちろん、先ほど指摘がありましたように、各県に衛生研究所があり、あるいは保健所がある。だから、そとで十分に検査すればいいじゃないかという議論が出て参りますが、現在各県の衛生研究所、各保健所におきましては、これは大臣も御承知かと思いますが、非常に充足率が低いのであります。そこで問題の核心に入って参りますが、特に試験設備とか、あるいは衛生技術者が非常に少くなっておりまして、たといここで大臣が、今後食品監視を十分にやっていきます、検査を十分にやっていきますと申されましても、現状は非常に人員不足で、どうにもやっていけないのが今日の現状であります。そこで、食品衛生監視員というものは、現在一体どれくらいの人数が働いているかということと、さらにまた学歴の点についても、その内容についてお知らせ願いたいのであります。
○厚生大臣川崎秀二君 ただいまの食品衛生の監視員でありますが、今年三月末現在の全国の監視員の数は、専従職員として千九百八十一名であります。監視員としての業務以外の業務と兼務の者が千九百三十名、合計で三千九百十一名が置かれておりますが、監視員の仕事といたしましては、監視の業務のほかに食中毒事件の処理とか、あるいは営業許可の仕事とか、一般大衆や営業者に対する啓蒙教育などの仕事もございますので、所要の監視回数を考慮いたしますと、現在の監視員の数は所要人員の六割ないし七割程度ではないかと考えております。これらにつきまして、ただいま来年度の標準予算の編成審議をいたしておりますが、その際におきましても、公衆衛生局から、ただいま御指摘の通り、衛生監視員の数を増さなければならぬ、あるいは技術者を養成しなければならぬというようなことにつきましては要求がありまして、これは今回の事件にかんがみましてということよりは、前よりも考えてはおったのでございますけれども、特にこれらを契機といたしまして食品衛生の監視の指導行政機構を充実する必要があると思いましたので、現局の要求に近い線で大蔵省と折衝しまして、予算編成の途上これを貫徹いたしたい、かように考えておる次第であります。
○公衆衛生局長山口正義君 細部にわたりましてのお答えを申し上げたいと思います。 食品衛生監視員の経歴と申しますか、資格と申しますか、これは八田先生も御承知のように、厚生大臣の指定しました養成施設で所定の課程を終った者、あるいは医師、獣医師、薬剤師、それからそのほか栄養士で二年以上食品衛生行政に関する事務に従事した経験を有するものというような規定がございまして、食品衛生監視員の資格を与えますのにはそのどれかに該当するというようなことでやっておりますが、大体やはり医師、獣医師、薬剤師あるいは公衆衛生の課程を終了した者というのが多いのでございます。それから地方の衛生研究所におきまする技術者あるいはその施設等について非常に足りない点があるということは御指摘の通りでございますので、私ども従来もやって参りましたが、今後もこの技術者の養成ということ、それから設備の整備というようなことを、特に力を入れてやっていかなければならないと思うのでございます。特に今回の事件にもかんがみまして、従来とかく細菌検査関係の方に重点が置かれていたかと思いますが、やはり化学的な方面でございますが、そちらの方面もずっと力を入れていかなければならないというふうに考えておるわけであります。
○八田貞義君 ただいま所要人員の六〇%から七〇%しか充足率がないということですが、まことに寒心にたえないと思うのです。それでこの方面に対して、格段の配意をされんことをお願いしたいと思います。 それからもう一つお伺いしたいと思いますが、先ほどの議論にいたしましても、食品衛生法のいろいろな改正の点があげられております。私はかつて食品衛生法の草案の起草にあずかった一人といたしまして、十分その必要は感ずるのであります。ただ今年の三月でございましたでしょうか、雪印乳業の脱脂粉乳で学童が二千名以上中毒する事件が起りました。その場合に、自粛を申し合せ、それから自主的検査の強化ということを約束いたしたはずでございます。もちろんこの乳製品に関する省令では、水分、脂肪、細菌数、大腸菌群の検査を規定いたしておりますが、食品衛生検査指針、それ以外の化学的検査、たとえばビタミンとかカルシウムとか、鉱物成分とかの添加物検査をそれぞれ規定しております。ですから、もしも自粛検査とか、あるいは自主的検査ということをほんとうに徹底しておったならば、業者はこの食品衛生検査指針に従って、これらの化学的検査も当然やっていなければならない。それを雪印乳業の事件に際会したときに当然申し合せをしておるのに、さらにまた厚生省としても、それらのことについて十分な注意を与えておられるはずであります。ところが、それにもかかわらず今日の事件が起ったというのは、十分趣旨が徹底しておらなかったのではないか。どうかこの事件にかんがみまして、食品衛生検査指針のいわゆる忠実な実行をお願いいたしたいのであります。これはこの事件に際しましても、いろいろな通達が出ておりますけれども、食品衛生検査指針について忠実な実行をやれというような指令は出ておらぬようであります。この点ぜひともお願いをいたしたいのでございます。 さらに、この食品衛生検査指針があり、食品衛生法があっても、なおかっこのような事件が起ってくるのでありますから、私は業者まかせにして、製品検査をやらぬということは、国家としてはなはだ不徹底ではないか。大臣も御承知のように、薬事法第三十三条には、厚生大臣の指定する医薬品について国家検査をやる、こういうふうになっておる。乳児の主食であるところの乳製品に対して、何ら国家的検査をやっていないということは、これははなはだ厚生省としてうかつ千万ではないか、これに対して私は盛んに学会におりました時代に乳製品の製品検査をということを始終申しておりました。ところが、いつも予算の関係とかあるいは農林省の関係によって、製品検査はできないとか、あるいは価格が上ってくるから、どうも製品検査はできないということをいわれておったのでありますが、しかし、厚生大臣としてこの国家検査に要する費用を国会に提出して、このような不祥事件を二度と繰返さないようにするというのが、この事件にかんがみて厚生大臣のとらるべき態度だと思う。ぜひとも薬事法の第三十三条にならって、乳製品の国家検査を、特に調製粉乳についてはこの際国家検査を実施する、そのための予算は国会に提出して承認を求めるつもりだというような強い大臣の意見を拝聴したいのであります。そうしなければ、いかに製造過程中の検査を実施するとか申しましても、この事件の根本的解決の態度とはならないのであります。その点の大臣のお考えいかがでしようか。
○厚生大臣川崎秀二君 食品衛生に関連しまして多年研究をされ、また食品衛生法のただいま実施をされておる法律の作成についても御尽力がありました八田委員の仰せでありまするから、ただいまお示しになりましたようなことにつきましては、十分考慮いたしまして、今度の食品衛生法の改正に臨みたいと思っております。また行政機構の改革につきましても、厚生省は全般にわたって充実をしなければならぬ役所であります。今日内閣の方針としては、行政機構の一部といえども膨張してはならぬ。これは行政の大改革と整理をしなければならぬ段階であって、機構の膨張すべきときではないというのが鳩山内閣の原則であり、また国会におきましても、そういうことはしばしば論ぜられておるのでありますが、しかし役所によりましては、どうしても充実をしていかなければならぬ部面があるのであります。これはものによってはだんだん廃止をしてもよい部局もありまするかわりに、一方において充実をしなければならぬ役所もあるのでありまして、その中で最も重要なのが今日の厚生省の仕事ではなかろうかと思っております。厚生省におきまして、今日部内におきまして、生活局あるいはスポーツ局であるとかの新しい役所の考え方もありまして、厚生省ばかり局がふえては困るということの非難もありまするけれども、しかしやはり生活部面、健康保障ということについての仕事がふえなければならぬ時期にきておると思うのでございます。それは役所がふえ、あるいは局が増すということで、果して処理できるかということになりますと、いろいろ議論もありましょうけれども、社会福祉的な仕事が充実しなければならぬのだというような客観的要請がふえておるのであって、やはり厚生省というものは諸外国並みにもつと目的意識を明らかにした役所こなるべきじゃないか。そういう意味では、国防省などよりは先に社会福祉省を作ってもらいたいということを、私は部内においては力説をいたしておるのでありますが、非力にしてこれがいまだ現実化さないのははなはだ残念であります。しかし、御指摘の環境衛生の仕事を充実することにおいては、全力を尽したいと思います。ただいまの国家検査の問題につきましては同感でありまするが、これを直ちに実施をするかどうかということについては、なお検討をいたしておるような次第であります。しかし、いずれにいたしましても、乳幼児の大量死亡というような悲惨事を引き起しましたことにつきましては、私どもとしては責任を感じており、この事件の禍を転じて福とするような措置だけはぜひとも講じたい、かように信念をいたしておるような次第でございます。
○八田貞義君 ただいま大臣から、厚生省の行政機構を大いに拡大したいというような御意見がありました。私も同感でございます。特に大臣は、この乳及び乳製品問題を担当している乳肉衛生課というものがどのような状態に置かれておるかということも十分御調査になっておると思いますが、各委員に対して、参考までに乳肉衛生課はこんな貧弱な状態でやっておるのだということを、大臣ちょっとお話しになって、ぜひともどうか環境衛生部を大きくして局にするとか、そういった構想を一つはっきりと土台とするように——現在乳肉衛生課は、実際貧弱になっておるのです。私は大体知っておりますけれども、各委員の方は全然知らぬと思います。こんな貧弱では、実際まことに申しわけございませんので、大臣の責任において、必ず乳肉衛生課を大きくいたしますということを御答弁願いたいと思います。
○厚生大臣川崎秀二君 乳肉衛生課をぜひとも強化したいということは、私も実信は承知しておりますが、これを具体的に表現するのは、公衆衛生局長の方が適当であると思いますので、公衆衛生局長から大きな声で言ってもらうようにいたします。
○公衆衛生局長山口正義君 現在の乳肉衛生課がどういう状態にあるかということを御披露しろというお話でございます。現在厚生省の公衆衛生局の中にございます食品衛生課と乳肉衛生課というのは、もともと一つのものであったのでございますが、それを動物性食品の衛生問題の重要性にかんがみまして、乳肉衛生課というものを独立させてあるわけであります。その中におきます定員につきましては、まことに申し上げかねるような状態でございまして、現在定員五名というような状況でございます。しかし、これは最近の情勢にかんがみまして、省全体としても非常に重要な問題になってきておりますので、これはここをあまり大きい声で申し上げるとちょっと困るのでございますが、いろいろ定員を融通いたしまして、その機構の強化を実質的にはかっているわけでございます。しかし、先ほど大臣もお答え申し上げましたように、今後の厚生省の機構を強化していくという点につきましては、この乳肉衛生行政あるいは食品衛生行政がずっと前進するように、私主管局長としてはかたい決意を持っております。この点は、大臣にもお願いして、省全体としてその方針に進んでいきたい。大臣にもそのつもりをしていただいておるということを私承わっておりますので、今後その線に向って最善の努力をして参りたいと存じております。
○八田貞義君 だいぶ時間がたちますので簡単にいたしますが、今日第二燐酸ナトリウムを緩衝剤として加えなければならぬという問題があります。これは大臣も大体御存じのことと思いますが、わが国の原乳、いわゆるなま乳というものは非常に品質が低下いたしておるのでございます。ですから、これらの事件を今後未然に防止するというためには、乳質の改善がまず第一であります。御参考までに申し上げてみますと、なま乳の一CCの中には、大体省令によりまして細菌数は四百万以下ということになっております。ところが実際のわが国のなま乳におきましては、数千万から一億くらいの細菌数が含まれておる。ですから乳質が非常に低下しておる。蛋白質も不安な状態に置かれ、このためやむなく第二燐酸ナトリウムを緩衝剤として加えておるというようなことが行われておる。ですから、たといここで幾ら乳質のいいものを選んでやれということをいって指令を与えてみましても、原料そのものが悪い限り、これは馬の耳に念仏のたとえで、なかなか行われがたいのであります。そこで、大臣に一つはっきりお願いいたしたいのは、この際日本におきまして今お話したように非常に乳質が低下しておるのでありますから、これを改善する方法として次のような方法をとってもらいたい。今日のわが国の酪農形態というものを申し上げてみますと、飼育頭数が非常に少い。しかも分散飼育の形をとった零細酪農家が非常に多いかと思います。ですから、しぼった牛乳の保全方法というものが非常に不安な状態に置かれているわけであります。そこで厚生省といたしまして、濾過とかあるいは冷却装置を施したところの集乳所をたくさんに作って、なるべく牛乳を農家にとどめ置かないような処置を講ずる、すなわち集乳所を中心とするところの乳質改善の実をあげてほしい。これからさっそく集乳所の設置問題について予算を計上されまして、国会に御提出願いたいのであります。 それからもう一つ、農林省は酪農振興策といたしまして、量産対策と消費増大のみに心を傾けておりまして、衛生面については全く考えていないのでありますが、わが国の乳牛の四〇%くらいはみな乳房炎にかかっている。乳房炎にかかっていますから、搾乳量がだんだんに減ってくる。このような状態でありますから、ここで厚生大臣といたしまして農林大臣に対しまして、消費の増大、量産対策も非常にいいけれども、一つ忘れたことは乳房炎対策というようなことでありますから、これをはっきり厚生大臣から言ってもらいたい。しかも乳房炎対策として、厚生省といたしましてとりあえずとるべき方法といたしましては、畜舎の衛生、搾乳衛生、この方面について指導を強化されることをぜひお願いいたしたいのであります。 それからもう一つ、調製粉乳事件にかんがみまして、大臣として多分聞いておられると思いますが、乳及び乳製品の成分規格に関する省令を全面的に改正しなければならぬ状態に追い込まれていると思います。特に調製粉乳に対比される名前と考えますが、調製牛乳というようなものが今日あると思います。たとえばホモ牛乳とか、あるいはネオ牛乳とかビタミン入り牛乳とかいうものは、全く乳及び乳製品の成分規格に関する省令の中にはないのであります。しいて言うならば、調製牛乳というものは、乳飲料の一つの奇形児みたいなものであります。ですから、調製牛乳というものは省令に明らかに規定されていないのでありますから、これらに対して厚生省としてどのような考えを持っておられるか。この事件にかんがみて、調製牛乳の存在というものに対して、これを廃止してしまうか、あるいは廃止の方向に指導していくかどうか、その点について厚生当局の御意見をお伺いいたしたいと思います。
○公衆衛生局長山口正義君 集乳所の問題あるいは乳房炎対策は、私どもぜひともやっていかなければならないと考えているわけでありまして、調製粉乳につきましては、御指摘の点ごもっともの点がございますので、十分検討させていただきたい。私ども御指摘前からも、この問題は検討しなければならぬというふうに考えておった問題でございますので、この際十分検討させていただきまして、将来これによるいろいろな衛生上の被害が起るようなことがないようにやっていきたいと考えているわけであります。 集乳所の予算関係は、いろいろその経営状態などとにらみ合せまして、補助金というような格好でいくか、融資というような格好でいくかということは、いろいろ問題があると存ずるのでございますが、いずれにいたしましても、乳質改善のために冷却装置を完備した集乳所を各所に増設しなければならぬというふうに考えているわけであります。
○八田貞義君 今局長は調製粉乳だけをおっしゃいましたが、私の言っているのは、乳飲料の奇形児であると申し上げた調製牛乳の問題を申し上げたのであります。調製牛乳についても、今御答弁になったようなお考えで指導を強化していく、あるいは廃止の方向に向うというお考えで、!ざいますか。
○公衆衛生局長山口正義君 私は調製牛乳のつもりでお答えをいたしたのであります。もし調製粉乳と申し上げましたら、それは失礼いたしました。
○座長(中村三之丞君) 神田大作君。 瀞田君に申し上げます。この次が長谷川保君で、これで質問者は終りでございますが、厚生大臣に対する質問をどうぞ先にお願いいたします。
○神田大作君 だいぶ時間もたちますし、同僚からもこまごまと質問がありましたから、簡単に一、二点大臣にお尋ねします。一番問題になると思うのは、こういう事件が起きるというと、責任回避の問題が必ず起きて、しまいにはその責任の所在がうやむやにされてしまう。もちろん森永工場に重大な責任があって、これに対する適切なる措置をすることはもちろんでありますけれども、しかしながら、これと関連して厚生省の責任問題等につきましても、先ほど大臣からも責任があると申されましたが、この責任をどういうように大臣はお考えになっておりますか、具体的にどういうふうにして厚生省の責任をおとりになるつもりかという点を、御質問申し上げます。
○厚生大臣川崎秀二君 私はもう率直に厚生省にも責任があると申しておるのでありますが、これは監督上の責任でありまして、しかもその監督の責任というものの問題は、ワクチン事件のような厚生省の監督機関で当然検出をしなければならぬ、また調査をしなければならぬというものによって行われたというよりは、食品衛生法の不備等によりまして、製造過程において検査ができないという形で、しかも現地において、こちらがその製造工程にまで立ち至って検査をすることの自由を許されておるならば、より的確な判断ができ、また事前にこれを食いとめられた、そういう意味での責任は、今回は法的な不備もありまして、私は厚生省に監督行政の責任が全部あるということは、今回の事件は言えないのではないかと思っておるのであります。従いまして、もとよりこれらを強化して、そうしてまた一方において徳島県のごとき、実際にこれが刑事上の事件に発展をして、過失致死罪であるとか——これは裁判の結果を見なければわかりませんけれども、とにかく検察当局ではそういう考え方のもとに事を進めておって、徳島工場の工場長が法的な根拠による処罰をされるということになりますれば、これはやはり地元の直後責任者は行政上の責任を負わなければならぬ、かように考えておるような次第であります。もとより厚生大臣にも責任は免れるものではありませんから、これが国会などで、もし厚生大臣も責任があるという御判断でありますならば、私が最高の責任をとりますが、山口公衆衛生局長に対して責任があってこれを処断しなければならぬような問題ではないと思いますので、私は直接厚生本省には——今日その後の措置等につきまして、的確な措置をいたすべきはもとよりでありますが、直接な責任はない、かように考えておるのであります。
○神田大作君 食品衛生法の不備によって、このようなことが事前に防止できなかったというようなことについての責任であって、直接の責任はないというように承わったのでございますけれども、この食品衛生法の不備等に対しましては、この前雪印の問題が起きたときに、これは十分不備があるというようなことは、専門家である皆さんはもう御承知だろうと思うのでございますが、それにもかかわらず今日このような問題を作ったということに対しまして、これはやはり責任を負わなければならぬ。こういうように考えると同時に、第二燐酸ソーダというような添加物が使用されておったということ、しかもこれが工業用であったということを言われておりますけれども、工業用のレッテルを張っておった第二燐酸ソーダが使用されたものを、監視員がこれを発見し得なかったということは、やはり何かここに監督官庁としての責任がある、あるいはまたこれに対して士気の弛緩と申しますか、そういう点においても、これはただこのまま法的な責任がないからといって、行政的な処置を厚生省の直接あるいは間接の担当者に対してとらないということは、今後食品行政上において、うまくないじゃなかろうかと私は考えるのでございますけれども、この点どうお考えでありますか。
○厚生大臣川崎秀二君 ただいまいろいろな点について御言及になりましたが、終局的に申されました直接または間接上の何らかの責任をとらなければならぬじゃないかということは全く同感であります。私はとりあえず問題をしぼりまして、先ほど申し上げましたように、現地の衛生監視に当っておった者の責任というものは免れるものではないから、徳島県知事として森永を処断しておいて、官の方は何ら責任をとらぬことは済まぬではないかということを申しておいた次第でありますから、必ず善処するものと思います。また、たとえば厚生省の内部に先般起りました衛生試験所の所員がヒロポンの製造に当っておったというような不祥事を出しましたことについては、これは事件の報告を受けますとともに、警視庁の方とも連絡いたしまして、そして突きとめました結果、本人も自白しており——これは日本では、裁判の結果を見ないと一切のことはわからぬということで、官の方ではよくのがれることがありますが、そういうようなことでなしに、こういうふうに事態が明白になった以上は本人を懲戒処分にする、本人を懲戒処分にするばかりでなく、衛生試験所の所長並びに直接の監督部長にも責任があるというので、それぞれ昨日実は措置をとりましたような次第でありまして、決して責任のがれはいたしません。この事件について申し上げるならば、ただいま一番しまいにお話しになりました直接または間接の責任ということで、官の方においても措置をすべきじゃないかということについては、全く同感でありますから、これは遠からず処断をするつもりでございます。
○座長(中村三之丞君) 長谷川保君。
○長谷川保君 すでにこの不幸な事件が起ってから相当日数がたっておりますので、ただいままでの同僚諸君の質疑応答によりましても、いろいろな責任問題あるいは欠陥等がだいぶ明らかになって参りましたが、すでに相当期間を経ておりますので、厚生当局としましては、当然こういろ不幸な事件が起りましたにつきましては、法律上の欠陥というものについて十分おわかりになっていると思います。その欠陥がどことどことどこにあったか、また今後こういうようなことが二度と起らないためには、どういう手を打つべきかということについて詳細承わりたいと思います。
○厚生大臣川崎秀二君 長谷川君のただいまの御質問は、きわめて根本的な問題でありますから、私どもの態度を明らかにいたしておきたいと思うのであります。今回の原因は、森永乳業の責任にあることはもとよりでありまして、これに対しては、すみやかなる処断をいたしたい、かように考えております。私は、長谷川君は直接御承知でございましょうが、発生の当日は東京におりまして、そうして山口公衆衛生局長を呼びまして、これは重大な事件に発展するということを申しまして、迅速な処理をするようにということを言い残したまま浜松に出発をいたし、その後事態の重大性をさらに認識をいたしまして、岡山等の現地を視察し、それと同時に、徳島工場の製品に責任がある以上は、徳島工場を何らかの処断をしなければならぬということは、旅行中ではありましたが、天下に明らかにいたしたわけであります。これば十分の連絡はとっておりましたけれども、やはり旅行先でありますから、実は細部の打ち合せを公衆衛生局長ともなかなかできなかったのであります。しかし私の感覚では、どうしてもこれは二カ月ないし三カ月の営業停止をしなければならない。私は法律の前例を知りませんでありましたが、大体そういうことを申したのであります。そうして帰ってみますと、やはりそういう意見が、厚生省部内においても支配的でありまして、表裏合いまして直ちに処断をいたし、その結果及ぼす農民への影響を考えまして、全酪農に肩がわりをさせる、こういう措置を講じましたのが、行政処分並びにその後に起るところの措置についての第一段階の措置であります。これが政府のとりました善後処理の第一段階であります。 それから、もとより患者に対する治療の方策につきましては、先ほど来局長が説明をいたしました通りでありまして、治療費は森永が持つということになり、患者は先ほど御報告をいたしました通り、次第に回復の方途に向っております。しこうして補償については、一時見舞金として十万円、これは一時の葬祭料というものを一つのめどにした見舞金であって、全体としての補償でないということを明確にしておりまするから、近日中に森永乳業をして、死者に対してはどのような補償をすべきかということを、最終的に決定をするあっせんをしようと思っております。 それから森永乳業初め、各メーカーの乳製品などにつきましては、もとより検査の厳重を期しまして、不良品のある場合は、これを回収し、販売禁止等の措置を講じたいと思っております。 なお、もう発展の見込みはありませんけれども、先ほど申し上げましたように、非常に重大な事態にまた再転化するというようなことがありますれば、これは国として最後は考えなければならぬ。しかし、今日ではそういう段階ではない、かように思っておるのでありまして、非常に基本的な問題でありますが、ただいまのが政府の考え方であります。 なお本日衆議院の社会労働委員協議会の中村座長の名前をもって、声明書が発せられたそうでありまして、その声明書は第一項から第五項まで、政府の考え方と大体同じような趣旨の声明がここに発表せられました以上は、これを十分に尊重いたしまして、善処をするつもりであります。 以上が政府の基本的な考え方であります。法律関係につきましては、先ほど来お話し申し上げておりまするから、蛇足を加えないのであります。
○長谷川保君 その他のことについて、局長は何か今後の措置について御発言はありませんか。
○公衆衛生局長山口正義君 ただいま大臣が大体お答え申し上げましたので、私から細部にわたって、いろいろ法律の点そのほか行政のやり方の点等について、申し上げればあるかと存じますけれども、特にこの際つけ加えさせていただく点はないと考えております。
○長谷川保君 すでに当局におかれてもいろいろ議を練っておられ、今後のことにつきましては、十分な手を打つという決意を持っておられると思いますので、これ以上私はこの点について本日お聞きすることをやめますけれども、食品衛生の問題につきまして、保健所の予算が少いから、これをもっと十分なものにせよというようなこと、あるいはまたこのような乳業に関する問題だけではなく、黄変米の問題、あるいは水爆の結果からする魚の問題等々につきましては、すでにここ二、三年来私どもは厚生省の食糧の検査官等々の予算も足りず、人数も足りず、その点非常に手薄になっているから、十分な手を尽さなければならぬということを国会ごとに御注意を申し上げて参ったわけであります。不幸にいたしまして大蔵省その他の関係で、この点が現地におきましては、さっぱり充実しておらぬということは残念なことでありまして、これが今日のこの災禍を招く一つの原因であったと私は思うのでありますが、先ほど来大臣その他からも、これらの点についての今後の改善について御決意の披露がございましたから、これ以上申し上げませんけれども、どうかこの点につきましては、ただにこのドライミルク事件のみならず、われわれは黄変米等の検査につきましても、非常な関心を持って、その実情を承わるごとに背筋の寒くなる思いをしておるのであります。これらにつきまして、遠慮することなく、この次の予算において十分な予算を取られ、また職員の定員等もふやされまして、十分な措置を講ぜられるよう望みまして私の質問を終ります。
○座長(中村三之丞君) この際各位の御意見にかんがみまして、協議会の性質上座長の名をもちまして次の声明を発表いたしたいと存じます。 朗読いたします。なお、お手元に差し上げましたものと多少違っておりますから御了承を願いたいと存じます。 声 明 書 今次森永乳業製ドライ・ミルクによる中毒事件は史上稀なる不祥事であって、乳児患者の悲惨なる症状、母親の愁嘆は実に見るに忍びざるものがある。よって社会労働委員は本日再び協議会を開き協議の結果、本件に関する今後の対策として速かに左の諸措置の実行を期待する。 一、政府は食品衛生関係法規改正等の措置を講ずること。 二、政府は中毒症状に対する有効適切なる治療方策を講じ患者の速かなる回復を図ること。 三、森永乳業の責任は極めて重大であるから、政府は同社をして速かに十分なる死亡者弔慰金、患者医療費の支払をなさしめるよう措置すること。 四、政府は森永乳業をはじめ各メーカーの乳製品並びに製造過程に対する一斉検査を行い、不良品ある場合は、これが回収、販売禁止等の措置を講ずること。 五、政府は本件に関し、地方庁、地方議会、医師会、婦人団体等の厳正にして敏速なる活動を促すこと。 昭和三十年九月十日 衆議院社会労 働委員協議会 座長 中村三之丞どうぞ以上御了承を願いたいと存じます。 それでは本日はこれにて散会いたします。 午後一時三十九分散会