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22回国会衆議院1955/07/21

社会労働委員会公聴会 第3号

発言数
191
登壇者
18
会派数
4
開催日
1955/07/21

会議録

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 これより医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案についての社会労働委員会公聴会を開会いたします。  この際、公述人の皆様に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず、当公聴会に公述人として御出席下さいましたことにつき、委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本案は重要法案でございますので、審査に万全を期すべきであるとの委員会の意思によりまして、本日公聴会を開き、公述人の皆様方に御足労をわずらわした次第であります。公述人におかれましては、問題につきまして、あらゆる角度から忌憚のない御意見を御発表下さいますよう、お願いをいたします。  ただ、時間の都合上、公述の時間はお一人十五分程度といたしますが、公述のあとに、委員諸君から質疑があると思われますから、その際も忌憚なくお答えを願いたいと存じます。  なお念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、公述人の方々が発言なさいます際は、委員長の許可を得なければなりませんし、発言の内容につきましては、意見を聞こうとする問題の範囲を越えてはならないことになっております。また委員は、公述人の方々に質疑をすることができますが、公述人の方々は、委員に質疑することはできません。以上お含みを願っておきます。  次に、公述人の皆様は御発言の際は、壁頭に職業または所属団体名並びに御氏名をお述べ願いたいと存じます。なお発言の順位は、勝手ながら委員長においてきめさせていただきます。  それでは水越公述人に御発言を願います。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 日本医師会副会長の水越玄郷であります。ただいま委員長から、今回提案されました法律案についての意見を述べろということでありますので、まず日本医師会の基本的な考えにつきまして申し上げまして、最後に本案に対する意見を申し上げたいと思います。  日本医師会におきましては、法律をもって処方ぜんの発行を義務づけることは、絶対反対であるというような基本的な態度を打ち出しておるのであります。その理由といたしましては、現在欧米におきまして分業が行われておるのは、一つの医療の簡素化の形態をとりながら、逐次自然発展的に分業の形に持ち込まれたのでありまして、あたかも弁護士さんが簡単な事務所を持って仕事をしておられるというような姿で、欧米においては医業がなされておるというような形態でありますので、従いまして、日本が現在、医師のところで治療もする、さらに調剤、投薬もするというような形態とは、その発展の歴史がすでに違っておる。しかも法律で処方せんを発行せしめ、さらに調剤を禁じようというようなことにつきましては、絶対に賛成しがたいというような考えであります。  現在欧米におきましては、私が申し上げるまでもありませんが、薬局におきましては、医師の処方せんあるいは証明書がなければ、一般大衆は薬を手に入れることができない。あるいはまた注射器一個、あるいは注射針一本ですら購入ができない、入手ができないというのが、欧米の実情であって、さように欧米の薬剤師さん、薬局は、自己の仕事というものの限界を非常に正しく、守っておられる。こういうような点からいたしまして、分業そのものに忠実であると申しますか、非常に良心的な姿でやっておられるわけであります。これに反しまして、現在わが国におきましては、御承知の通り薬局におきまして、頭が痛い、腹が痛いといえば、これに調合するというような形で、その訴えに応じて薬を盛っておる。これは聞くところによりますと、国民医薬品集というものに盛られた処方で薬を盛っておるのだそうでありますが、このようなことは全く欧米にはない。  現在、御承知の通り、たとえば頭が痛いといいましても、その頭の痛い原因には幾つかあります。ただ単なる頭痛薬でこれを処理しようというようなことは、非常に危険きわまりない、かようにわれわれは考えておるのであります。従いまして、欧米では、この分業として医師が処方せんを出しているということであるので、日本におきましてもこの処方せん発行を義務づけようとするならば、これと並行して薬局の無診調剤といいますか、医薬品集に盛られたその処方によって、薬剤師さんの判断によって薬を調合するということを当然禁止しなければ、これは片手落ちの姿ではないか、かように考えるわけであります。  はなはだ申し上げにくいことを申し上げるようでありますが、たとえば赤痢、疫痢その他急性伝染病に対する特効薬が、非常にどっさり現在できております。こういうような薬を、正しい処方に基き、さらに十分なる医師の監督のもとに治療を続ければ、徹底的に治療ができるわけでありますが、現在の状況では、このような抗生物質を薬屋さんで売る、患者さんがこれを買いまして、熱が下るなり下痢がとまるなりすれば、それを患者さんは、すでになおったと考えまして、そのまま治療を中止してしまう。そういうようなことからしまして、伝染病が跡を断たないというような事柄も現在あるわけであります。  さらにまた、過日も新聞紙上をにぎわした問題でありますが、ペニシリンを注射してそのために死んだ人もあるようであります。またこれも申し上げにくいことでありますが、私が現実に体験した問題であります。昭和二十二年の末でありましたか、日本において虫を下すサントニンでありますが、その薬が非常に少かった時代がありました。その当時、私のところにあるお母さんがお子さんを連れて参りまして、うちの子供がまっかな便をしたので、赤痢ではないかと思うから見てくれというようなことでありました。私、その便を拝見しますと、血液ではないわけであります。従いまして、何か薬を飲ませなかったかと聞きましたところが、実はこういう虫下しを飲ませたというようなことを言っておりました。私の想像をもってしますならば、おそらくサントニンにあらずしてフェノールフタリンかを飲まれたのではないか、かように考えたわけであります。  このようにして、現在日本における薬局の経営の状態が、まさしく欧米の薬局の経営状態と同様であるとするならば、またここにいろいろと議論が起ってくると思いますが、いずれにしましても現状におきましては、とうてい医薬分業することが患者さんに非常に迷惑をかけるというようなことになる、かように考えておるわけであります。  さらに一部の方々からは、処方せんを発行させなければ医者が秘密治療をしておる、秘密調剤をしておる、自分のところでお手盛りかげんで、どのような薬を盛って与えておるかわからぬというようなことを言われる。しかるがゆえに、処方せんを出して、その処方によって、まさしくこれはかぜにきく薬、あるいはまたこういうようなものにきく薬だということを薬剤師さんが見て、初めてそこに処方の公開があるのだというようなことを一部の方から言われておりますが、しかしながら、これによって医師の処方せんを一部の方々に一応明らかにすることはできましたとしても、しからばその処方せんが薬局に回りまして薬剤師さんが調剤をするときに、一体その調剤をだれが監督し、あるいはまただれがこれを処方せんの通り処方したということを証明してくれる人がありましょうか。このようなことからしまして、処方せんの公開そのものが、実はあまり意味がないのではないか。さらにまた、もしそのようなことがかりにあったとしたならば、医師の診療に対する責任というものはとうてい果すことができない。かような観点から、日本医師会があえてこの処方せん発行に反対をしておるゆえんであります。  さらにまた、一部の方々からは、もし分業を実現しなかったならば、薬科大学を廃止したらいいだろうというような意見も出たやに伺っております。しかしながら、私たちが薬剤師さんを見ておる目は、そのような姿で薬剤師さんを見ておるのではないのであります。薬科大学におきまして、専門的な薬学の研究、さらにまたその製造、あるいはまたその貯蔵法、あるいは調剤、いろいろな角度においての勉強をなさっておると思うのであります。単に調剤のためにということでありますならば、それはむしろその方々の言われておりますように、薬科大学の廃止ということも、むしろ賛成せざるを得ないというようなことに相なるのではないかと思うのであります。  さらに、この分業をいたしますれば、国民負担が軽減するというような意見も、一部にはあるわけであります。しかしながら、この分業した場合に、国民負担の増減はどういうことになるかということで、昨年厚生省が新医療費体系を発表されましたが、この新医療費体系の計算は、厚生省におきましても二、三%の増加を認めておられる。日本医師会で計算をしてみますと、大体一二%くらいの増が起ってくる、こういう計算になっておるのであります。しかも、この新医療費体系には、処方せんというものは無料にする。現在健康保険においてすら、五点を認めておるこの処方せん料を、いきなり一刀両断式に、とにかくこれを無料にするというような暴挙をあえてしてすら、とにかくそのような医療費の増加がある。こういうようなことからしましても、国民の負担する医療費というものは、必ず増加するであろうとかたく信じておるわけであります。  さらに、処方せんを医師が出すというようなことになりますと、現在の社会保険医療というものは、国家の総医療の八〇%を占めておるわけでありますが、その際薬剤師さんが調剤したその請求書を基金に出されたとしましても、これをどういう方法をもって審査するか、実にこれは大へんなものだと思うのであります。おそらくは、この処方を十分に審査するためには、その処方を発行した医師からも、請求書にその処方を書かせなくてはならぬのじゃないか、かように思うわけであります。東京のごときは月に百十万件もあります。その百十万件の中から同一処方を抜き出して照らし合せるなどということが、一体できるかできないかということも、この際考えてみなければならぬと思うのであります。  さらに、調剤権の問題でありますが、われわれも同様に、調剤の点に関しましては、十分なる教育と修練とを大学教育において積んでおるわけであります。そういうような状態から、ことさらに調剤権を薬剤師さんのみに認めるということにつきましても、日本医師会としては絶対に承服できない。かように考えておるわけであります。  以上、簡単に日本医師会の考え方を申し上げましたが、今回提出に相なりましたこの法案につきましても、日本医師会としては不満足であるということを申し上げざるを得ないのであります。  以上簡単でありますが、日本医師会の考え方を公述いたしまして、委員各位が、日本医師会が考えておりますことは、現在行われておりまする医療形態、すなわちいつでも医師が必要に応じて薬の調剤投与ができるというこの姿こそ、最も日本の国情に適し、最も患者を幸福にし、さらにまた最も医療費が安く上るという観点から、最もいい案であるということをかたく信じておるということを考えておりますので、でき得まするならば、このような姿にしていただきますよう、切にお願いいたしまして、日本医師会を代表いたしまして公述いたします。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 竹中公述人。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 私は日本薬剤師協会副会長の竹中でございます。このたび医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案、すなわち本日問題になっておりますところの法律案が国会に提出せられまして、これに意見を申し述べよということでございます。  ただいま伺っておりますと、日本医師会のお考えを御発表になったのでありますが、私はあえてここで医薬分業の問題を再び繰り返そうとは思わない。何となれば、この問題は、すでに去る二十六年の第十国会におきまして、十分参衆両院の先生方が御研究を下さいまして、その結果、現在のわが国の文化の程度では、この辺までは分業を推進しなければならぬという結論に到達して、昭和二十三年の医師法、歯科医師法及び薬事法の一部を改正せられて、現在の法律となっておる次第であることは、もう私が申し上げなくてもよく御存じであります。そして、この問題が去る十九回の国会で、医薬関係審議会設置法が通り、二十回の国会において御審議になりましたが、この施行期日が、なお準備不十分であるということで、明年の四月一日まで延期されたことも、皆様方のよく御存じの通りであります。  そこで、この法律が現在いかなる状態にあるかと申しますれば、すでに皆様方の御協賛によって、今年度成立をいたしました予算において、一千三百余万円の予算が通過し、厚生当局は、これを明年度から実施をするように鋭意研究を進め、この秋までには、その成案を皆さんにお目にかけることができるのだ、こういうふうに言っておるのであります。  そこで、さような経過をたどって参りました中に、分業問題というものは、いろいろな観点から論じ尽されておる。従って、今公述なされましたことについて、一々われわれの反対の立場を申し上げるには及ばぬと思うのであります。ただ、ここで忘れてならぬと思うことは、わが国の医薬分業というものは、一体だれが作り出したのかということであります。昔の漢方医時代とは違って、新しい医術に対しては、りっぱな独立した薬学の協力なくては真の治療は行えない。そうしなければ、いろいろ人命にも危険を及ぼすようなことがあって、このまま医師一人が医のことも薬のことも両方持っていくということはできない。私が申し上げるまでもなく、各企業がだんだんと発達をしていけば、各種の分野に分れる。おのおのその分業化された各分野は、深くその専門分野を探求されまして、その協力によって、すべての成果を最高度に発揮しておることは御承知の通りであります。医学も薬学も、どんどん進んでおることは皆様がよく御承知の通りであります。しからば、現在薬学というものと医学というものを、どうしても分けなければならぬという考え方は、国においても変りがないと思うのであります。明治初年に先覚の医師諸君から、どうしてもこれは医薬を分けて、そのおのおのの責任をもって民衆のために奉仕させるようにしなければならぬということで、分業制度ができました。できまして、それから後八十年、いろいろ法律制度が変ることはありましたけれども、いまだかつて国家としては、分業の制度を取りやめるということは一回も言われたことはない。そこで、国は、まず第一に薬剤師が足らぬから分業ができぬといって、薬学校規則を作り、薬剤師の養成をされたわけです。薬剤師は、この国家の要請に従って、分業によって国家に奉仕しようという熱意を持って、すでに五方の人をこの世に送っておるのでありますが、なお毎年約三千人の新しい薬剤師が生まれつつある。現在八万五千の医師に対して約五万の薬剤師がある。しかも、この薬剤師が本来の仕事をするところがありませんために、ほかの仕事につく。あるいは薬局を開設いたしましても、一ヵ月にわずか二枚あるいは三枚程度の処方せんを扱うことしかできないという現状であります。こういう点からいきましても、国家がせっかく養成した薬剤師を活用されなければならぬ時代に到達しておるとも思えますし、また本日御提示になりましたこの案によりますれば、まず第一に、医師法並びに歯科医師法においては、医師の処方せんの強制発行と申しますか、医師が患者を見て薬品を投与する必要があります場合は、処方を書かなければならぬ、現在の法律はそうなっております。これは処方せん発行の問題が、もちろん医薬分業の前提条件でございますから、何とかして処方せんを発行することに協力をしていただきたい、かように考えまして、去る大正の末期に健康保険が立法化されましたときにも、当時の当局者は、この社会保険においては、医師会の方々によくお願いをして、処方をなるたけ出すようにするから、薬剤師協会もこれに協力するように、また昭和十三年の国民健康保険のときにも、そういうふうにして、また医師会の幹部の諸君にもお骨折りがあったことと思います。漸次処方が出てくるかに見えましたが、それはいつの間にやら姿を消して、なお現在のようなありさまなのであります。  そこで、この第一の処方せんの問題でありますが、先ほど申しましたように、現行法では、この処方せんを発行しないでよい場合、これは医薬関係審議会で十分審議をして、極力しぼって、それ以外のものは処方せんを発行するという建前になっておるのであります。しかるに、本案を見ますと、本案では、患者から医師に薬の調剤をしてもらいたいという申し出があった場合には、もう処方の発行はしなくてもいい、こういうことになっております。しかもそのためには、その場合等を勘案するために必要な医薬関係審議会というものを無視して、なお第二号で、診療上特に支障がある場合は処方せんを発行しないでもよろしい。その診療上特に支障がある場合、そういう場合も、先ほどの医薬関係審議会でこれをすっかりしぼって、それ以外は処方せんを出すという建前になりましたのは、先ほど私が申し上げましたように、処方せんの発行が分業の前提条件であります。ところが、今までの状態はどうであったか。それは、ただ医師の主観によって、診療上支障ある場合はこの限りでないという言葉で、空文化されておると言っても間違いがないのじゃないかと思うのであります。なお、われわれといたしましては、現在多くの病院等の医療状態を拝見いたしまして、かような特に診療上支障があって処方の出せないというようなケースは、はなはだまれであると思っておりますので、このことについては、むしろ同意いたしかねる次第であります。しかしながら、これはすでに決定した現行法、すなわち医薬関係審議会によって、そのケースをおきめになるということに対しましては、この法案の成立に先だち、医師会、薬剤師協会、歯科医師会、それぞれの代表が国会において証言をし、そうして衆参両院がほとんど満場一致でもって通過をいたしました法律でありますから、これに従おうといたしておる次第であります。  処方せんの発行という問題につきましては、これはお医者さんの立場におられる方には、あまり感じられないかもしれませんが、実は私は、先ほど申し上げた通り薬剤師ですが、私が医師をたずねまして診療を受けましたときにも、お医者さんは、私に診療の結果、処方をやろうかとおっしゃることは、ほとんどありません。むしろ、私の家が薬局であり、調剤しておることは御承知であるけれども、薬を上げますからそれをお上りなさい、大ていこう言われる。しかも医師みずから調剤しなければならないその調剤が、だれによってやられたのかわからない、しかも内容がいかなるものが入っておるのか、私の方から伺っても、あまりはっきりおっしゃらない。それをなお追及するだけの力を私は持っておりません。私でさえそうでありますから、多くの弱い、自分の病で自分の肉体をまかせ切っておるお医者さんに対して、そのごきげんを損じてまで処方をくれということを言うはずはなかなかないのである。  しかも、今までのお話にもありましたように、世界中どこにもないような処方せん料という制度が日本にはございます。この処方せん料の制度によって、処方の発行もまたはばまれておるということも事実であります。その処方せん料を払うことによって、二日分なり三日分なりの調剤をしてもらって持って帰ることができる。そういう点からいきますと、これまた処方せんが発行されないというような状態になっておるのであります。かようにして、長い間調剤をするために薬学というものがあり、薬学終局の目的は、調剤にあるといってわれわれは教育されておるのであります。薬科大学におけるところの研究がそれが薬科大学と名前もついておりますがゆえに、ほかのものを目標にして勉強しておるのではないのであります。すべて習っておるあらゆる薬学は、あげて完全なる調剤をするために教育されておるのであります。かような観点から申しましても、この調剤のために長い間勉強して世の中に出た薬剤師が、その本来の仕事につくことのできないという現在の状態を改善していかなければならぬと思いますときに、かような時代逆行の条文は承服いたしかねる次第であります。  次に、薬事法についてでありますが、先ほど水越公述人の話にも、医師は十分なる薬学の素養を持っておる、修練をいたしておるから、調剤をする能力がある、こういうふうにお話しになっております。去る十八日の夜の放送討論会を聞きますと、大阪の何とか言われる医師会の理事さんがおっしゃるのに、調剤ということは非常に簡単なものだ、女中でも看護婦でも、だれがやっても、ただまぜさえずればよいので、簡単だ、こういうような発言をなさっておったのであります。まことに驚き入った次第であります。幸いにして何か事故も起きないような平凡な調剤なら、それが簡単な混和で済んだかもしれませんが、現在の薬学は、非常に進歩しております。同じ調剤をいたすのにも、一つの薬品をいかに有効なる方法によって調製せられるか、またいかなるものがいかなる化学変化を起して危険を起すようなことがあるか、これらについても、そう簡単ではないのであります。  しかも薬剤師は、先ほど御指摘もありましたが、薬品の調製、保存、鑑定、すべて薬についての責任を持ち、そして調剤をし、これを交付するところの責任があるのであります。従ってその薬剤師のもとに保管されておりますところの薬品に対しましては、その薬剤師は、全責任を負わなければならぬ。もし医師が処方を発行されました場合に、誤まって、その内容のふさわしくない処方が参りましたといたしましても、薬剤師はこれを医師に照会をし訂正をして、そして調剤するのが本務であります。薬事法におきましては、この医師の処方せんの誤まり等を発見した場合に、それを修正する、それについては医師の許可を受けてやらなければならないということをちゃんと規定しております。そしてまた、事実そういうふうにしなければならぬ。もし誤まった処方によって調剤をし、不幸なる嘱帰を来たしたような場合に、それの責任はだれが取るか。これは処方をしたところの医師にあらずして、薬剤師が処罰せられておることは、大審院の判例等によってお調べ下されば、よくおわかりのことと思います。  かように、薬そのものに対する長年の教育を受け、しかもそれに対して十分な責任を持ち、これに対する責めを果さなければならない立場に置かれている薬剤師に対して、現在におけるところの医師は、薬品に対しては何らの責任もお持ちになっていない。この医師が、同じ薬事法の本則の中に調剤権を確立するというがごときことは、文化に逆行するところの、はなはだ笑止千万な案だといわざるを得ないと私は思うのであります。  なおこの場合におきましても、医薬関係審議会は、いろいろなケースを検討いたしております。これらのごく狭められた範囲において薬品が正しく調剤され、交付されるということは、医療内容の向上と国民の健康保持のために緊急なことであるといわなければなりません。  なお、医師法、歯科医師法並びに薬事法に規定せられておりますところの規則違反に対する罰則、これを本案においては、全面的にお削りになっております。いやしくも法治国の国民が、その国の秩序を保つためには、その法律を守らなければなりません。もしこの法律を守らぬ人がある場合には、この社会公共のために好ましくない人たちには、残念ながら相当なる刑罰の課せられることは当然であります。もし、初めからこの刑罰の条項を削除して、そしてこの法案を通そうというふうなお考えを持たれることに他意がなかったならば、これはすみやかにお取りかえなさるべきものであり、もしこのまましいてお通しになろうとするならば、初めより順法精神がなくして法を乱るような考えがあると言われても仕方がないのではないかと思うのであります。  以上、私は、今回の案は全面的に承服いたしかねる案であるということを申し上げる次第であります。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 次に鹿島公述人。

鹿島俊夫日本歯科医師会専務理事

○鹿島公述人 私は日本歯科医師会専務理事の鹿島でございます。委員長の御依頼によりまして、歯科医師会としての見解を申し上げたいと存じます。ただいままで日本医師会の主張せられました論旨につきましては、歯科医師会は大体同調でありまするが、この際、日本歯科医師会といたしましての考え方を簡単に申し述べることにいたします。  まずこの医薬分業の実施につきまして、われわれの歯科医業におきまする業権上の問題、いかにこれが影響をもたらすかということが、一つの問題であります。要するに診療行為は、われわれ医療担当者の大きな自由、またその主観によってなさなければならぬことが多いのであります。法をもってこの種の業権を拘束せらるることにつきましては、大いに疑義があるのであります。この点につきましては、現在医薬関係審議会等におきまして、相当論議が行われております。これにつきましては、まだ満足すべきわれわれの主張は取り上げられておらないような感じが強いのであります。この点につきましては、大いに検討の余地があるということをはっきり申し上げる次第であります。  次に、この法の実施によりまして、果して国民の福祉にこれが寄与するかどうかということが問題だろうと思うのであります。聞くところによりますと、この法の実施によりまして、国民総医療費は低減せられるというような御意見もあるようでありますが、日本歯科医師会といたしましては、必ずしもさようではないという考え方を持っておるものであります。言いかえますと、医療費は増大をするのではないかということをわれわれは考えております。  次に、この法実施と不可分の関係にあります新医療費体系の実施でありますが、御承知の通り、この新医療費体系実施方策につきましては、相当の疑義がございまして、前々国会におきましても、この新医療費体系の実施方策について、相当の御異議があられ、ここにこの法の実施が延期せられたということに承知いたしております。現在におきましても、この新医療費体系の実施方策につきましては、まだ完全なものが出ておりませんし、また現在政府特に厚生省が考えておられますような方策では、われわれは絶対に承服はできない。その一例を申しますと、要するにこの新医療費体系の考え方は、われわれの診療技術料を、いわゆる潜在技術料と申しますか、それの面を物の体系から分離するということに主体があるようでありますが、必ずしも現在の状態においては、これが完全にいき得ないと思うのであります。例を申しますと、特に薬品等の場合におきましては、この原価計算の根拠、またこの実態等については、何ら強い批判が行われないのでありまして、その結果、この新医療費体系につきましては、診療技術の面にしわ寄せが来るということがはっきりといたしております。  歯科の面におきましては、先般厚生省医務局が行いました医療経費実態調査の例によりましても、明らかにわれわれ歯科の技術面についてはマイナスの線が出ておるのであります。このデータの発表に際しましては、厚生省は、この新医療費体系の実施によりまして、歯科医師の現在の収入あるいは業態の上においては、何ら変化はないということを前提として発表いたしておりますが、必ずしもそうでない、数字の上に明らかにマイナスの線が出ております。かような現段階におきましては、十分の検討の余地があると私は、歯科医師会といたしましては主張するものであります。従いまして、この分業の実施ということにつきましては、なお十分な検討を加えなければならないということを、歯科医師会としては申し上げる次第であります。  次に、今回御提案になられましたこの改正案につきまして拝見いたしますと、まず歯科医師法の第二十一条につきましては、われわれの要望しております業権上のいわゆる判定、処方せんを交付することが患者の治療上特に支障がある場合は、われわれの主観によってこれが決定をせられるということにつきましては、相当われわれの主張がここに盛り込まれておるということにつきましては、われわれはこれに同意の線を通すのであります。ただ薬事法の二十二条の点につきましては、薬局の普及の十分でない地域に対しましては、現在、医薬関係審議会においても相当活発な議論が行われ、先ほど申し上げまする通り、いまだに結論が出ていないのであります。この薬局の普及の十分でない地区に対しまする取扱いがどうなるのであるかということにつきましては、重大な問題だろうと考えるのであります。これらは、国民の医療福祉の上に大きな影響を与える問題であります。この点につきましては、不満足なる意をわれわれは表わさざるを得ないのであります。と申しますことは、この法案に対しましては、非常に御苦心のあとも見受けられるのでありますが、歯科医師会といたしましては、これに全面的に賛意を表することはできかねるということを申し上げる次第であります。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 以上で公述人の公述は終りました。  次に、委員より質疑の通告がございますので順次許します。現在六名通告がございますので、どうぞそのおつもりで御質問を願います。大橋武夫君。

大橋武夫自由党

○大橋(武)委員 私は公述人のお三方に伺いたい第一の点は、これは特に医師会、歯科医師会のお方に伺いたいのでありますが、今日は、特に医師会方面においては、全国の医師大会も催されておるようでございまして、その大会の目的としておられまする点は、来年の四月に迫っております医薬分業の実施に対する反対ということにおると承知をいたしておるのでございます。一体、日本医師会その他歯科医師会等お医者さん方のお考えといたしましては、医業分業の原則というものは、これは現実いつ実行するというようなことは別問題といたしまして、今後医薬制度の理想として、やはり原則的には認めるべきであるというお考えに立っておられるのでございますか。それとも、医薬分業は、いかなる場合においても、日本においては絶対に認むべきではない、こういうお考えに立っておられますか、この点を伺いたいと思います。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 大橋委員の御質問に対して、日本医師会の意見を御答弁申し上げます。日本医師会といたしましては、医薬分業は、いかなることがあっても原則としては反対だ、こういうことに考え方が一致しておるわけであります。その理由といたしまして、先ほど私の公述の中にも一部あったと私記憶しておるのでありますが、医療というものは一貫して行わなければならないということの考え方を持っておりまして、たとえば手術、注射、診察、それから投薬というような一貫した中に含まれておるべきものであって、医師が、現在行われておりまする法律におきまして、患者さんの要求によっては処方せんが出せる、この処方せんに基いて薬剤師さんが薬を盛ってもよろしいということは、分業の原則というよりも、要するにそういうふうな患者の治療に対して、処方せんを与えても治療の責任が負えるというようなケースについて処方せんは出すべきだ、かように考えておるわけであります。

大橋武夫自由党

○大橋(武)委員 これは私の質問が悪かったかもしれませんが、さしあたり強制分業に対して反対をしておられることは、私もよく承知しております。しかしながら、将来の理想として、そういうふうにいろいろな条件が完備してくれば、強制分業に移行するという場合もあり得るとお考えになるのでしょうか。それとも、いかなる条件が整おうとも、強制分業は底薬制度の原則としてなすべきではない、こういうお考えでしょうか。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 先ほど申し上げましたように、現在の段階では、原則としてさように考えておりますが、欧米の分業発達といいまするか、分業に移行したその経過を私冒頭に申し上げました。これは自然発展的に、患者さんが処方せんをもらって、そして薬剤師さんに行って薬を調剤してもらう。治療に対して医師に非常な強い信頼感を持つと同時に、薬剤師さんに対してやはり強い信頼の考え方を持ちながら、そういう考え方のもとに逐次処方せんが発行せられる率が多くなったという過程を踏んでおるわけであります。従いまして、日本におきましても、現在行われておりまする法律におきましても、患者さんの求めによって自由に処方せんの発行ができるわけでありますので、逐次患者さんが処方せんで薬をもらっても、決して自分の治療には事欠かないということの認定ができ得たときには、自然その姿になっていく、かように考えておるわけでおります。従いまして、法律をもって規制することを強制分業と考えておりますので、その点については反対である、かように考えております。

大橋武夫自由党

○大橋(武)委員 そうすると、医薬分業は法律で強制すべきものでなく、自然発生的にでき上るべきものである、またそうしてでき上るところの医薬分業というものは、これは世の中の進歩に従って当然に起るものだから、それを頭から否定するという考えではない、こう承わりました。  それから、もう一つ伺いたい点は、今度の医薬分業反対についての医師会の運動は、非常に熱心でありまして、たくさんの患者を現実にかかえておられる方が、数日間自己の患者を放擲して東京へ出てこられて運動をするというような、ちょっとその熱意は非常なものだろうと思うのでございますが、こうした運動の中には、私はやはり今日の制度のもとにおけるお医者さんとしての生活権と申しますか、おのずから現在の制度のもとにおいてお医者さんの仕事の内容がきまり、従ってお医者さんの収入というものが、現在のやり方のもとにきまってきておる、この状態において、急激に医薬分業が行われるということになりますならば、これは明らかにその収入の面に非常な変化を生ずるであろうということは想像するにかたくないわけでございまして、こうしたお医者さん方として生活の基礎になるところの収入に非常に大きな影響を及ぼすという事態については、その生活権を守るという立場から、これに対して反対されるということは当然だろうと思う。そういう意味において、今回の運動の中には、医者の生活の問題に触れておる面があるのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 ただいまの御質問で、あるいははき違えた御答弁を申し上げるかもしれませんが、原則として、先ほど申し上げましたように反対であるということと、そこでこの大会が持たれておって、その大会のためには、相当患者も迷惑をしておるのじゃないかというようなこと、そのよって起る理由の中に、生活権の問題がありはしないかということと私了承いたしまして御返答申上げますが、先ほど申し上げましたように、法律をもって規制する医薬分業というものは、原則としては反対であるということが、大会を持つ、あるいはまたこれに反対するおもなる理由であります。ただ御説のような経済的な面につきましても、やはり大橋先生のお話しになられたような点もありまするので、先ほど申し上げましたことに。プラス大橋先生の御意見、かように御了解願いたいと思います。

大橋武夫自由党

○大橋(武)委員 今日のような社会生活におきまして、いろいろな政治上の意見をきめるに当っても、経済的な影響ということを考慮せずに意見が出てくるということは、考えられないのでございまして、この問題についても、生活問題というものが結びついておると、私は想像しておったのでございます。特に薬剤師会にお伺いいたしたい点は、この問題の背後には、やはりお医者さん方の生活問題があるのだということについて、薬剤師の方々は、むろん十分な御認識をお持ちのことと存じますが、いかがでございましょう。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいまの御質問に対しまして、私ども、医師会の方々が生活上の問題をお考えになっておるということを承知いたしております。しかし、また一面われわれ薬剤師も、御承知のように社会保険がどんどんと広がって、全部の医療のほとんど八割あるいは九割になろうかというような状態でありますが、そういう際に、本来の分業制度で奉仕をする立場の薬剤師は、やる仕事がなくなってくるわけであります。このわれわれ薬剤師の立場も、よくお考えをいただきたいということをつけ加えてお願い申し上げる次第であります。

大橋武夫自由党

○大橋(武)委員 その薬剤師の仕事が、社会保険制度の普及によってだんだんに減りつつあるという事情を、少しく詳しくお聞かせいただきたいと思います。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいま御質問のありました社会保険が広がっていく、これは、近年国民健康保険等に対する補助金の増額、あるいは先般これの国庫負担の御決定があったようでありますが、さようなことで、各地に国民健康保険組合が結成されつつあります。そして、国民健康保険組合が活動を開始いたしますと、今までの薬局を訪れておった顧客は、その組合員となり、その保険料を負担しております関係から、ごく軽微なうちに医療を受ける。非常に好ましい状態ではありますが、そのために本来の姿にない、薬剤師の店の売り上げは、たとえば福島、仙台等におきましては一そのほかの都市につきましても、薬剤師協会として調べておりますが、大体その売り上げの減少率は四五%ぐらいになっておるわけであります。

大橋武夫自由党

○大橋(武)委員 医師会の側としては、今薬剤師会からお述べになりましたような事実につきまして、どういうお考えをお持ちでございましょうか。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 ただいまの社会保険が発達したから薬品の売れ行きが少くなったということについては、ちょっと理解いたしかねまするので、あらためて薬剤師協会の代表の方から、いま一回お聞かせを願いたいと思います。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 重ねて申し上げますが、国民健康保険の組合が各地に結成をされ、なおこれに対しては、厚生当局も相当推進をして、全面的に結成するように勧めておられるようであります。そこで、実はわれわれ薬剤師協会の方に、各地から健康保険組合、あるいは国民健康保険組合等の結成によって、業態が非常に困難になったために、店をやめるという届けをしてきているものもあるのであります。こういうふうなことによって、薬剤師協会が各地の実態を調査いたしたのであります。その実態調査をいたしました結果は、以前に比較して大体四五%売り上げが減っているというデータが出てきたわけであります。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 ただいまの御意見に対して、日本医師会としての解釈をちょっと申し上げてみたいと思います。各地に、いわゆる社会保険、ことに地方において国民健康保険の結成がふえた、そのために薬剤師さんの収入が減ったということは、われわれの解釈をもってしますならば、国民健康保険なりその他の社会保険ができたがゆえに、医師に診療を受ける率が多くなってきた、そういう意味におきまして、私が公述において申し上げましたように、いわゆる無診投薬といいますか、国民処方という名目のもとに調剤販売しておられたその率が減ったのではないか、かように解釈しているわけであります。

大橋武夫自由党

○大橋(武)委員 そうすると、医師会としても、要するに社会保険の普及によって、売薬であるとか、あるいは国民処方の薬が売れ行きが減るということはあり得ることだとお考えになっているわけだと存じます。  そこで、医師会副会長にお伺いしたい点は、この問題を一つの生活問題として考えました場合においては、従来医者の収入というもの、これは診療による収入でございますが、この診療に対しては診察料、処置料、あるいは処方せん料、調剤料というような区別をする慣行ができていない。従って、こうした強制医薬分業ということを急激に実行される場合において、こういう法律の強制による変化に応じてのお医者さんの側の受け入れ態勢というものも、おそらくできていないということが言えると思うのでございます。従って、そういう受け入れ態勢のないところへ強制医薬分業というようなものを無理押しにされるということが、特に生活を脅かす根本の原因になっているのではないかというふうに考えるのでございますが、そういう考え方はいかがなものでございましょうか。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 ただいまの大橋委員の申される通り、日本医師会の考えでは、要するに原則として強制医薬分業には反対であるということで、日本医師会も、その分業の準備態勢も全然しておりませんし、さらに各会員一人一人が、いわゆる収入の面で、分業になったらこういうことで補っていこうというような計画も、何も企画しておらないことはお説の通りでありますので、従いまして、現在においての分業実施というものは、ちょっと妥当を欠くのではないか、かように考えているのでございます。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 松岡松平君。

松岡松平日本民主党

○松岡(松)委員 竹中さんにお伺いしたいのですが、先ほど大橋委員の質問に対して、もし改正案の趣旨のようになれば、薬剤師の売り上げの収入が四五%も減っていくというような趣旨の御説明がありました。そこでお伺いしたいのですが、現在の医薬業者の日本全国的な数と、府県、都市、あるいは部落的にも違うでしょうが、平均はどのような状態になっておるか。お手元には詳しい資料があると思うのですが、一つそれをお述べ願いたいと思います。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 薬局が全国にどのくらいあるかというお尋ねだと思いますが、ただいま開局しておる薬局というものは、大体全国で一万七千ほどございます。それでよろしゅうございますか。

松岡松平日本民主党

○松岡(松)委員 私のお聞きしたいのは、その薬局の数と平均の売り上げであります。もしこれをおわかりでしたら——いろいろ県によっても、場所によっても違うので、大へんめんどうな質問かと思うのですが……。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいまお尋ねの各府県における開局者の数につきましては、厚生当局からもこの表が出ております。ただいま私手元に持っておりませんので、もし差しつかえなければ、後ほどお届けするようにしていただきましてけっこうだと思いますが、売り上げにつきましても、なかなか地域的な影響その他がございまして、一概には申せないのであります。しかし、都会と地方においては、大へんな差がございますが、大体東京等におきましても、大きなよく売れる店もありますし、また中には一日わずかに二千円あるいは二千五百円ぐらいしか売れないような店もあるのであります。そこで、これらのデータも、ただいま手持ちをいたしておりませんので、後ほどお届けするなり何なりいたしたいと思います。

松岡松平日本民主党

○松岡(松)委員 実は、これをお尋ねいたしましたのは、あなたから四五%というような数字が出てきたものですから、基礎がわからないと、減少パーセンテージだけ伺っても、私どもわからないのです。先ほどお伺いしておりますと、薬科大学の存立の意義がないというようなお話を、あなたからもちょっとお伺いするし、他の薬剤師諸君からも訴えられております。しかし、薬科大学というものは、この医薬分業に関する法律のできる前からあるのでありまして、どうもちょっとその点が解せないので、少し誇張が多いのではないか。それから、現在一般の患者あたりの意向を聞いてみますと、中には、やはり信頼する医師に調剤してもらった方が安心して治療できる、こういう人も相当多いのでありまして、そう法律をもって千編一律にきめなくても、調剤は医師もできる、薬剤師もできるというような方法にして、漸次国民の関心を、調剤は薬剤師に限るという方向に進めていった方が、きわめて自然じゃないでしょうか。その点を、もう一度お伺いしたいと思います。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいまおそれのありましたいわゆる四五%という数字の根拠になるものをというお話しでございましたが、これらにつきましては、各それぞれの国民健康保険組合を作った地域に対しまして調査をいたしました際に、大体以前の売り上げ、それから組合設立後の売り上げというようなもののデータが出まして、それによって現われた数字であります。  それから、ただいまのお話の、薬科大学はこの法律ができる以前からできておるじゃないかと、こういうお話であります。それは、私聞き方が悪かったかもしれませんが、薬剤師は、たしか明治十五年でございますから、薬学校規則というものができ、そうして薬剤師の教育を始められて、それが学制改革によって、初めは国一家試験だけでやりましたが、それからは専門学校あるいは大学を卒業するように変ってきただけであります。しかして、これらのものは、初めから分業になるということを承知の上で、それを目標に勉強してきておる。  それから、今、松岡先生のお話の中に、医師からも薬剤師からも、自由に患者が調剤を得るようにして、だんだんと薬剤師の扱うように進めるのがいいじゃないか、こういうお話であります。ごもっともであります。現行法はそういうふうになっておるのであります。ただ要するに、医師会のいわゆる強制分業というのは、医師が患者を見て、薬品を調合して、患者に渡さなければならぬというときに、処方を渡さなければならぬ、これが強制だ、こういうのであります。国民のための強制ではないのであります。国民のためからいきますならば、国民は自分のかかっているお医者さんの顔色を見ながら、そのお医者さんの好まない、処方をくれなどということは言えない。さっき申し上げましたように、薬剤師の私でも言えない。そこで、見たらかまわず処方をくれて、それから後、これをいかにするか。そこの医師のところでもらうか、薬局に持っていくか、これがりっぱな任意分業であります。その任意分業の形態が現行法でありますから、私はこれをやめて、そうして、昔の法律ならばいざしらず、それ以上さかのぼった、それこそ徳川時代あたりの法律に持っていこうという本案に対しては反対だと、こう申し上げたわけであります。

松岡松平日本民主党

○松岡(松)委員 それでは角度を変えてお尋ねいたしますが、水越さんと竹中さんと鹿島さんのお三方にお伺いしたい。これに違反した場合に、刑罰を課せることに現在の法律ではなっておる。これは私、少しく苛酷ではないかと思うのです。これは行政罰で足りるものである。それを調剤に違反したという理由をもって刑事罰にする、あるいは選挙違反あるいけ窃盗、強盗、詐欺、そういうものと同様にこれを刑事罰として取り扱うということは、はなはだしく苛酷に過ぎるではないか。弁護士にしましても、また他の特殊な身分ある職業にしましても、原則として行政罰をもって課するのが原則じゃないかと思う。それを特にこの法律では刑事罰を課せるということになっておるのが苛酷だと私どもは考えるのですが、お三方においては、忌憚なくこれが御意見を承わっておきたい。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 ただいまの松岡議員の御意見御質問、私たちは全く同様に考えておるものであります。たとえば、昨年の十二月に一年三カ月、もし延期法が通らずして法律二百四十四号がそのまま実施されたといたした場合を仮定いたしますならば、十二月の三十一日までは当然行なっておった。またもしそれを拒否した場合には、あるいは非難の的にもなりかねないような問題が、一夜明けて翌日からは、この行為がすぐそのまま処罰の対象になるというに至っては、とうていわれわれとしては納得できない、かような考え方を持っておるわけであります。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 私はさように思わないのであります。およそ法律を作ったならば、これは守っていかなければならぬというのが原則だと思います。そうして、これに対して、ただいまお話のありましたように、その日を限って施行になったときに、誤まってやったような場合に、果してこれらの人たちに対しては、血も涙もないような裁定が下されるとは考えてもおりません。しかし、この施行期日までの間というものは、相当の期間が置かれておるのでありまして、わずかに四日とか五日というようなものではないので、各自が十分に承知をして誤まりないようにすべきでありますが、日本の法律の建前からいけば、それぞれの情状をおくみ取りになって、適当な処分をなさるのは、われわれのよく知っておるところであります。しかも、行政罰と刑事罰、どちらの罰にしても、罰は罰で同じであろうと思う。ただ刑罰でもって、やられるということが強く感じられて、行政罰の方がというのでありますが、実際の問題として、そういうふうなケースがありましても、今までほとんど処罰を受けた事例はない。これをお考えいただいたならば、やはりきまるものはきちんときめておくべきだと思うのであります。

鹿島俊夫日本歯科医師会専務理事

○鹿島公述人 お答えいたします。歯科医師会といたしましては、こういうふうに患者対医師または歯科医師の関係が微妙でありまして、その条文に規定してあるすれすれの線というようなものは、解釈に非常に大幅の幅を持つような事態もたまたま発生すると思います。刑事罰をもって臨まれることは、絶対反対であります。しかし、この法の建前からいきまして、行政上の責任を負うということについては、われわれは当然だと思います。刑事罰につきましては、松岡議員の仰せの通りであります。

松岡松平日本民主党

○松岡(松)委員 竹中さんにお伺いしたいのですが、医師法の三十三条によって、つまり二十二条に違反しますと——調剤の違反をした場合には、当然罰則が適用される。もう一つ十八条を見ますと、こういうのがある。「一医師でなければ、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。」これなんかは、当然刑事罰に該当する人でありますが、こういう種類のものと調剤に違反した医師と同じく刑事罰に処するということは、刑の処罰の均衡を失してはしないか。あくまで行政罰というものは、七条に示されておる免許の取り消し、業務の停止、こういうことが載せられておるのでありまして、これはかなりきついものであります。しかしながら、一定の職業に従事しておる者は、そのルールを守るべきである。そのルールを守らなかった場合には、その団体のルールによって処罰を受ける、いわゆる行政罰を受けるのは当然じゃないか。それを刑事罰、すなわち一般法域を侵害したような刑事上の犯人と同様に取り扱って処罰するということは、苛酷でないかと私は思う。最後にこのご意見を承わりたい。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいまのお説は、先生のお説として承わるのでありますが、この刑罰の問題は、あながち医師だけが処罰されるのではないと私は思います。医師以外の者も、これ々犯した場合に処罰されるので、ありますか一ら、さように医師の行政罰ということでありますが、実際問題として、今まで調剤を行なって、そしてそれに間違いがあったり何かした場合にも、医師の監督下にある看護婦や何かの門違いがその責任者である医師が処罰されるのかといいますと、今までのところでは、お医者さんは処罰されないで、実際問題としては、それをやった看護婦が処罰されている事例が非常に多いのであります。かような点もお考えをいただきたいと思います。

大石武一日本民主党

○大石委員 それでは、竹中公述人に、先任どの公述につきまして、一つ聞き捨てならない点がございますから、お尋ねしたいと思います。これはあげ足を取るようで、あまりおとなげないようでありますが、ちょっと許せない発言がございますので、その真意をお尋ねいたします。先ほど、われわれは来年四月から実行される正しい分業の法案を、徳川時代のものに返すということは絶対反対であるということを仰せられましたが、徳川時代には、どのような医師法、薬事法がありましたか、お尋ねいたします。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 徳川時代のような古めかしいという、これは私としての一つの形容詞で、その形容詞の使い方が悪かったら、お許しをいただきたいと思います。御提案になった大石先生のお考えと私の考えが対照的になるのは、やむ々得ないことと思いますが、この分業という線に沿って法案が審議せられ、去る二十六年の御決定によって現行法ができておる。その現行法の精神というものにつきましては、先ほど申し上げた通りであります。すなわち、患者がほんとうに自由な立場で一歩分業に進めるような態勢を、とりあえずここまではとらなければならぬという結論が現われておると私どもは思っておるのであります。分業の問題が進歩しないということは、先ほども申し上げましたが、処方が全然出ないということです。この処方が少しでもよけい出て、薬剤師もそれになれて、りっぱな分業制度が行えるようにしなければならぬというときに、それと逆行して処方の内容も公開しないところの処方せん発行義務の免除条項をお加えになるということは、私どもは非常に文化に逆行したものだと考えております。

大石武一日本民主党

○大石委員 われわれはあなたの信念を聞いているのではない。われわれはこの法案を出す場合には、ほんとうの信念と情熱を持ってこの案を作り、提案したのであります。しかしわれわれは、必ずしもあなた方にわれわれの考えに同調せよということを強要しておらない。お互いの立場もあり、お互いの主張もあり、お互いの考え方もある。われわれはそれを尊重して、お互いに正堂々と議論し合ってこれをきめたいと念願しておる次第であります。ことに昨年のあの薬剤師会、医師へ会の泥試合には、国民はあいそうをつかしておる。われわれはこれを何とかしてやめさせて、正しいフェア・プレーをもってこの問題を解決して、国民からこのような忌まわしい考えを取り除こうとして一生懸命努力しておるのであります。しかるにあなた方は、逆行であると言う。逆行であるとお考えになるのは一向かまいません、徳川時代とは何でありますか。徳川時代のようなとは申しておりません。速記録を調べればはっきりわかりますが、徳川時代の法律に逆行することは反対である、これはあなたの失言であろうと思います。いさぎよくそこであやまればけっこうでありますが、もしあやまらなかったならば……。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいま私は、徳川時代のような古めかしい制度に返ることば反対だという意味に申し上げたのですが、言葉が足りなければ、その点は取り消します。しかしながら、その意図するところは、その内容応は、結局徳川時代の秘密治療であります。その秘密治療に逆行するのでありますから、これを徳川時代の制度に逆行すると申し上げても、決して間違いではないと私は考えておる、さように御承知を願いたい。

大石武一日本民主党

○大石委員 あやまって取り消しになれば、それを許すにやぶさかではありません。許します。  それからもう一つお聞きしたいのでありますが、あなたは刑事罰と行政罰と言われましたが、この医師法、薬事法の改正案の中の、どこに行政罰がございましょうか、お聞きしたいと思います。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいまのお話で、行政罰ということで処分をしろとかしないとかいうことは、私の方から発言したのではないのであります。行政罰でいいじゃないかというお話でありますから、それに対しては、刑事罰を当然残すべきものであるということを申し上げたのであって、行政罰のことについて、私の方からは触れておりません。

大石武一日本民主党

○大石委員 これはちょいと質問の要点がおわかりにならないので、あなたは行政罰という言葉を使いましたが、おそらく薬事法、医師法並びにこの改正案には、行政罰というようなことは一つもないと思う。行政処分はあるのですけれども、行政罰はないはずです。いかがでございましょうか。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 大へん法律のしろうとでありますので、先生の御指摘によって言葉の使い方が悪ければ、それは行政処分という言葉の意味でありますから、釈明をしておきます。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 滝井義高君。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 私は御三人の方に、これはきわめて重要な点でございますので、それぞれ意見を述べていただきたいと思います。  それは、来年四月からいよいよ分業を実施することになっておりますが、行政技術的に見て、実施が可能かどうかということでございます。そういう抽象的な質問ではわかりにくいかと存じますので、一つ一つ申しますが、分業をやるとすれば、まず第一に医療費体系を作らなければなりません。これは当然のことです。昨年の例から見まして、医療費体系の審議は、昨年は五月から大体医療費体系の概念的なことから始まって、結論が出たのが十二月の初めでございます。現在政府は、九月に出すといっておりますが、九月になるのか十月になるのかわかりません。今、医務局長がおいでになったので、あとでまた聞きますが、おそらく新医療費体系は九月か十月に出てきて、審議の結果、結論が出るのが十二月か一月の初めだと思う。そうしますと、今度はこれを健康保険の点数に翻訳しなければならない。点数に翻訳をするためには、当然中央社会保険医療協議会にかけてこなければならない。ここでそれぞれ公益あるいは療養担当等の委員の意見の一致を見て、初めて結論が出てくると思う。これは厚生省が裁決で強行することができますけれども、まあまあ民主的なやり方ですれば、そう強行的なことは、医療に関してはなかなかできかねるということがあると思う。こういう点がある。  それから、現在医薬関係審議会において、あの法律のために省令を作らなければならぬ。治療上支障がある場合、それから診療上支障がある場合、それから地域の省令を作らなければならない。これらの問題は、私の聞くところでは、まだ結論が出ていないと聞いております。こういうことになって、それらのものが全部最終的に結論か出て、今度はいよいよ——大きな基本的な変革でございますから、医師、薬剤師等の具体的な社会保険診療の請求書の様式その他も、がらり変ってきます。従って、全国の七万の医師あるいは一万七千の薬剤師の諸君に向って、この請求の様式その他を普及徹底せしめなければならぬということになる。  こういう点から考えてみますと、行政技術的に見て、来年の四月からそのまま分業ができるかどうかという客観的な情勢は、私は不可能なりと考えなければならぬという結論が出そうな感じがするのですが、薬剤師協会、医師会あるいは歯科医師会の最高権威の皆さん方の見通しを、一つ率直に御表明を願いたいと思う。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 ただいまの滝井委員の御意見に対して、御答弁申し上げますが、日本医師会におきましても、ただいまの御趣旨と全く同様な考え方を持っておるのであります。医療費体系につきまして、厚生省が今せっかく精密調査を始めておりますが、この調査が一応でき上るのが八月だということを言うておるようでありますが、果して八月にできるかどうか。しかもこの精密調査を無理に八月に作り上げんがためには、町に相当の無理もしなければならぬのではないかというような点からしまして、もし八月中に作り上げようと強行いたしましたならば、また再び昨年の微々踏むのではないか、かように考えておるわけであります。  さらに昨年の医療費体系にありましては、処方せんを零としております。先ほど竹中公述人から、処方せん料を要求するというか、処方せんを有料にしておる国は、世界の、どこにもないというようなお話がありましたが、私はまた逆に、処方せんがゼロだという国は、ごくわずかの国以外にはない、かように承知しております。たとえば、米国のブルー・シールドのやっております保険におきましても、処方せんは五点を示しておる。五点というのは、御承知の通り日本の現状に直すならば、大体において千八百円になるわけであります。そのような処方せん料というものを認めておる状態でおりまして、こういうような面、さらでだに保険医療が赤字を積み重ねておるところへ、この処方せんをかりに、五ドルは譲歩しまして、あるいは四ドル、三ドルというようなことになったとしましても、これが六十億、七十億というこの赤字の上に、さらに保険財政に影響を及ぼすというような問題をも、今なおそのまま残しておるわけであります。こういうような点からしましても、さらにまた、御説のように点数に翻訳して、医療協議会を通さなければならぬこの保険の点でありますが、この点につきましても、全く同様な考え方でありまして、もしこれをあくまでも強行して、政府が実施しようとするならば、おそらくは保険医療の面におきまして、相当トラブルが起るのではないかと、われわれはかたい見通しを持っておるのであります。  さらに、医薬関係の省令を普及徹底せしめるということに至りましては、先ほど竹中公述人から、医薬関係審議会におきまして、すでにある線が出ておるということを言われておりますが、しかし、私どもの考え方からすれば、決してある線が出ておるのではない、要するに、おのおのの主張が出ておるということであって、これを、もし政府が一部の主張を聞かずして、政府単独の考え方で押し通そうとするならば、ここにも相当のトラブルがあり、さらに一たび無理に作り上げたものの普及徹底に至っては、これこそ容易ならざる問題がある。  さらにまた、先ほども申し上げましたが、処方せんを薬局において調剤した、その調剤の請求書が、今度は基金に出てくるわけでありますが、東京都のごとく月間百十万件にも及ぶ請求書の中から、選び出して照らし合せるということが、一体今の基金のあの状態からできるかどうかというようなことから考えても、すべて各般にわたって、簡単にこの強制分業ができるとはわれわれは考えていないのであります。そのような意味合いにおきまして、滝井委員の御質問を、かりに御意見と仮定いたしますれば、その御意見に全く賛成であります。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいまの滝井先生からのお尋ねでありますが、私どもは厚生当局の誠意を信じて、厚生当局が鋭意努力しておる、しかも新医療費体系にしろ、また明年実施の分業法案に対する周知方法等につきましても、いろいろと案を立てて万遺憾なきを期しておるという御言明を信じまして、新医療費体系が再び国会においていろいろ御審議になられますときにも、すみやかにこれが成立をして実施に移されんことを希望もし、そういうふうになるであろうと期待をいたしている次第であります。

鹿島俊夫日本歯科医師会専務理事

○鹿島公述人 私の方の歯科医師会の意見といたしましては、滝井委員の御質問には全く同感であります。特に先ほども申し上げました通り、現在社会保険の面にとりまして考えますると、この社会保険の方につきましても、相当に検討を加える時期に達しております。要するに、この社会保険経済におきまして赤字が現在出ておる理由等につきましても、いわゆる社会保険医療の中に、長期療養的結核がここに包含されておるというような、いろいろな矛盾した要素があるように感じております。これらの問題を解決いたしません現在におきまして、また今回のような新医療費体系の実施によって一そうの混乱が起り、社会保険医療体系のうちにおきまして、最も憂慮すべき状況になるのではないかと考えるのであります。特に歯科医師会は、先ほども申し上げました通り、この技術料の算定が非常に重大でありまして、しかも医療内容は、この歯科技術、いわゆる補綴方面の条件を無視しますと成り立たない。この技術料の算定はまことに不確定であります。先般厚生省が行いました医療実態調査精密検査によるデータによりましても、明らかにわれわれの不満足な線が出ております。この調査方法を例に取ってみますと、現在われわれの保険医が二万三千五百程度、この対象に対しまして、わずかに百二例程度の実態をもって律する。これはまことに納得しがたい統計資料をもって全体を律しようとしております。ところか厚生省は、統計技術の面からいって、これは精巧なデータが出ておると言っておりますが、われわれはさようには信じられません。また技術料の算定等につきましても、単に計時測定をなし、時間的にこの技術の面を測定して、これをもって技術料を算定する。これはまことに医学的なわれわれの技術というものを無視した考えであります。ちょっと例を取ってみますると、たとえば毎回これは引き合いに出ておりますが、かりに現在路傍においてくつみがきが二十円の料金でくつをみがく。五分間の操作でありますが、これを一分間単位にいたしますと四円、歯科の技術料におきましては、精密調査の結果一分間三円八十銭である。かようなことでは、とても納得できないということがよく引き合いに出されます。このことにつきまして、解釈は別といたしまして、ことほどさようにわれわれの技術料の算定が不確定であります。従いまして、これらの考え方を基調といたしまする新医療費体系には絶対反対であります。また厚生省当局は、新医療費体系と言っておりますが、これはまことに誤まりでありまして、これは単なる社会保険点数改正である。真の新医療費体系と申しますものは、われわれの自由診療内におきまする正しいデータの集積、その要約したデータをもって、まずものさしを作り、これによって社会保険に関しまする技術料の基礎を考えるべきであろうと私は考えるのであります。従いまして、真の新医療費体系と申しますものは、いわゆる自由診療、制限を加えられておりませんところの現在の診療内容のデータでなければならぬものと、私は考えるのであります。従って、これらの脆弱な要素を持っておる新医療費体系には絶対反対であります。またかようなものをこの社会保険機構の中に持ち込むことは、混乱を来たす以外の何ものでもないのであります。この点を明らかにいたしておきます。  次に、この分業の施行に関しまして、特に先ほども繰り返しました通り、薬局の普及が十分でないというような地域に対して、現在医薬関係審議会の第一部会において、数十回にわたって審議が行われ、その間薬剤師協会、医師会、歯科医師会の意見は必ずしも一致しておりません。この一致しない理由は、一に、国民の福祉に対して、それぞれ専門的立場の意見が出されることになるからでありますが、これらの解決もつき得ない現状においては、まことにこのやり方について、われわれは矛盾を感じる以外の何ものもないのであります。総括的に言いまして滝井先生の御趣旨に賛成であります。     〔委員長退席、山下(春)委員長代理着席〕

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 今それぞれ日本における医界の最高権威者の御意見を承わりますと、七万の保険医というか、治療に当っておる医師の代表者の方が、行政技術的に不可能であるとおっしゃる。二万三千五百の歯科医を代表する方も、不可能であるとおっしゃっておる。薬剤師の方は、厚生省の誠意を期待しておるということで、まず厚生省に一切の期待を持っておるようであります。まず全国十万の療養担当者が行政技術的に見て不可能だ、こういう結論になっておるようでありますので、これは行政担当者を無視しては、ファッショでない限り強行できない。こういう結論が大体出てきたようであります。  そこで、次にお尋ねいたしますのは、現在の日本の医療というものは、その中心が社会保険になっておる。すでに、さいぜんから竹中先生も、国民健康保険の普及は、薬剤師自身がむしろ食えない状態が出てきたということを、端的に御表明になっておるわけであります。当然社会保険の医療の中に薬剤師も入る姿というものを作らなければならない。これが一つの医薬分業のポイントにもなり得る問題である、こう考える次第でありますが、その場合に、現在の日本の社会保険というものは、御承知のように、来年度末には百億の赤字が出ようとしておる。政府は、その料率の引き上げをすでに六月から実施したが、まだ標準報酬の改訂というようなものは、法案が国会を通っていないという状態で、百億の赤字解消の見込みというものは、全くこんとんたる状態で、つかないという情勢である。しかも、こんとんたる日本の社会保険の赤字の中に薬剤師さんを入れる、その社会保険のルートの中に入れてくるということが可能かどうかということであります。そうなれば、非常に安い診療費の中で、薬剤師さんも満足し、医師も歯科医も満足するという形が出てこなければならない。そういうところへ入って医師、歯科医、薬剤師が満足していけるかどうかということなのであります。現在、私がそう申しますのは、日本の医療というものは、御承知のように、もう医師の収入の八割というものは社会保険によって占められておる。健康保険、国民健康保険、生活保護によって占められておる。しかも健康保険とか、生活保護の予算のワクというものは、国家予算の社会保障費というワクによって絞めつけられておるということなのであります。このワクをたたき破るということは、現在の日本の客観的な予算編成の情勢から不可能であるということ、この不可能の中で、あなた方三者は生活条件を下げてでも日本の医療向上のためにやる、こういう御決心があるのかどうか。結論的には、当然そうならざるを得ないのでありますが、そういう点もう一回、簡単でけっこうであります、そういうことは責任が持てないというのか、持てるというのか、お答えを願います。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 ただいまの御質問に対してお答え申し上げます。お説のように、現在ですら百億の赤字であります。先ほど私が申し上げましたように、もし新医療費体系が実施されるならば、厚生省の実態調査からも二、三%の——いろいろと表現は違うようであります。ときに〇・八%というようなことを言っておられるようでありますが、とにもかくにも二、三%の保険のワク内における医療費の増加があります。これを日本医師会が計算したときには一二%前後の増加があるというようなこの新医療費体系、しかもこの新医療費体系がどういうことをしておるかというと、先ほども申し上げましたように、アメリカでブルー・シールドという保険制度の中においてすら、一応五ドル程度を見積っておりますこの処方せん料を無料にしてすら、そのような状態が起ってくるというようなこと、そういうことから、とうていあの新医療費体系は、われわれ七万の医師としては承服できないというようなことは、機会あるごとに申し上げて参ったところであります。そこで、このような保険のワクにはめられた窮迫の中におきまして、一体薬剤師の皆さんもこの中に入り込んで生活をなさるのかどうか、現在の生活を切り下げてこの中に入り込むかどうかということにつきましては、薬剤師協会の方々の御意見はどうであるかわかりませんが、とにもかくにも、先ほど鹿島公述人から申し上げられたように、医師の平均所得を、技術料を月間一万七千円前後に一応集約して、そうして一分間を四円三十六銭——薬剤師においては三円幾らでありましたが、とにかく医師におきましては一分間四円三十六銭というようなことで、要するに技術の切り売りを最低のものさしでして、しかもなおこれを切り下げてまでやっていけるかということにつきましては、これは絶対にやっていけない、もう今の状態がいわゆるボーダーラインであるということで御了承願いたいと思います。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいまの御質問でありますが、社会保障の一環として社会保険を国が育成し、これを育てて参りますからには、これによって生ずるところの赤字、それらに対しまして特別な考慮が払われなければならぬということは、申すまでもないのであります。しかしてこの目的のためと存じますが、厚生当局ではこの問題を検討するために、特に七人委員会というようなものも設けられ、また社会保障制度審議会にも、全般的な社会医療の特別委員会を御設置になって、これの是正をお考えになっておられるようであります。およそわれわれ薬剤師も、日本の国民であり、同じ憲法のもとに健康で文化的な生活を送る権利を持っておるわけであります。今ここに百億の赤字がある、その現実の前に、それを打開するところの方途なくして、ただここへ一緒に入ってきて、そうして薬剤師は犠牲になるか——言葉はちょっと違うようでありますが、そういうふうな意見であろうと思います。しかしまた一面現在の薬剤師は、もはや最後の関頭に立っておるといってもいいような押し詰められた状態に来ておることも事実であります。従って、何とかして社会保険の中に入って、そうして社会保険のワク内におけるところの薬剤師の当然なる奉仕をいたしていきたい、かように考えておるわけであります。

鹿島俊夫日本歯科医師会専務理事

○鹿島公述人 お答えいたします。私は先ほども少し触れましたが、現在の状態におきまして社会保険医療の特に歯科の面に関しましては、全くの制限診療を行いつつある、これ以上この診療内容が低下をいたしますると、これはゆゆしい問題であります。従いまして、われわれは先般来より、点数の改正であるとか、あるいはこの基調をなす一点単価の問題につきましても、相当強い不満と主張を持っておりますが、これらについても、社会保険の現状から考えまして、現在われわれは触れておりません。また一定の時期においてのみ、これは論議が可能であるという見解を持し、制限診療にも甘んじておる現状であります。従いまして、このような現状において、新医療費体系が実施せられるということについては、はなはだ危惧の念を持つのであります。従いまして、根本的に社会保険機構の検討を行い、その例証といたしましては、先ほども申し上げました通り、結核の分離、これを結核予防法等によりまする国庫負担によるとか、あるいはそのほかいろいろな方策が並行的に立った上において、この新医療費体系が考えられなければならない。そうでない限りにおきましては、社会保険経済の上におきましても、はなはだ危険な状態が来ることをはっきり申し上げます。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 医師も、現在の状態のもとではボーダー・ラインに来ておる、薬剤師さんも、現状のままでは最後の関頭である、歯科医師さんの方も、今のようなままでは医療に責任を持っていけない、こういうことです。一人はボーダー・ラインに立ち、一人は責任を持てない状態の中で、さらに薬剤師さんを割り込ませるということは、もはや現状のもとにおいては不可能であるということが、大体結論的にわかりました。従って、薬剤師さんが社会保険機構の中に入って、薬剤師さんとしての身分を確立させるためには、根本的な日本の社会保障制度並びにその社会保障制度の中核をなす社会保険の改革が必要である、こういう結論になってきたようであります。  そこで、厚生省医務局長に簡単にお尋ねしますが、あなたの方で九月に出される医療費体系というものは、昨年あなたの方が出してこられた現状の所得の分析、第二には総医療費に変化を与えない、第三番目に個々の医療機関の所得に変化を与えない、第四番目に分業に必要な限度にするという四本の柱を立てて医療費体系を立ててきたが、この構想は変りないか、明白に御答弁を願いたい。

曾田長宗厚生技官(医務局長)

○曾田政府委員 新医療費体系の検討につきましては、具体的に結論というものはまだできておりません。基本的な考え方としては、おおむねただいま申された線を基本といたしております。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 これで厚生省の医療費体系の考え方は、昨年と同じであるということが大体わかりましたので、それでけっこうです。  次にお尋ねいたしたいのでございますが、これは竹中さんに、参考のためにぜひお聞かせを願いたいのでございます。薬科大学の目的が、究極的には完全な調剤を目的としておる、こう言われたわけですが、私の考え方は——その目的はそれでけっこうだと思いますが、もし来年度から医薬分業の実施の態勢に入ったといたしますと、私は薬剤師の状態は変ってくると考えます。これは、野澤委員などもそういう見解でございますが、将来そういう形で医薬分業が行われてきますならば、販売薬剤師と調剤薬剤師の二つに分れてくるという見方を私は持っております。たとえば、私なんかの体験から通じても、われわれがわれわれの住んでおる市で薬を買っておる薬局というものは、一軒か二軒しかない。これは統制薬品時代からの慣習でそうなっております。また現実にわれわれが処方せんを出す場合も、われわれが現実に薬品を買っておるうちに出しておる。こういう慣行があるということから考えて参りますと、将来は販売薬剤師と調剤薬剤師の二つの形になるだろうということが考えられる、そうしますと、薬科大学の目的が、調剤を目的としておるという、究極の目的はそこだということになると、販売を主たる業とする薬剤師が分業の結果出てくるということは、一つの大きな薬科大学の存在に対する矛盾が現実に出てくるということです。これは私も、そういう矛盾が出てくると実は考えておるのでございますが、あなたはそういう矛盾をお考えにならないか。将来の分業の後における薬剤師のあり方というものを、どうお考えになるのか、これをあわせて簡単に御答弁願います。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいま御質問のありましたように、分業になってきた後の各薬剤師の企業形態が、その資本あるいは環境等によって、いろいろ変化してくるとは思っておるのであります。従って、必然的に特に調剤を専門に主としてやるところの薬剤師、またそれと同時に販売の面を受け持っていくところの薬剤師、こういうふうな分野ができてくることは事実だと思う。しかしながら、この販売をいたしますところの薬剤師も、その本来の目的が、今の薬科大学は薬剤師を養成することをもって大体目的としております。薬剤師とは、元来は医師の処方せんによって調剤する者をいうと、以前の身分法はなっておったのであります。そしてこの薬学究極の目的が調剤であり、この調剤に用いるところのあらゆる薬品及び資材を扱うところの薬剤師が、これの十分なる知識を持つことも必要なのであります。従って、その従事するところの面は、あるいは病院薬剤師なるものもありましょうし、純然たる調剤薬局として立っておるものもありましょうし、また販売を主としたところの薬剤師もできることとは思いますが、これによって薬科大学の教科課程の中に、あるいは採択するところの選択科目等の中で、これらの問題が片づけられていくというふうに、私ども考えておるわけであります。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 少し答弁がぼやけておるようであります。私は一応現状を基礎にして論議をしておったのですが、将来そういう工合に薬科大学の修得する科目に開局薬剤師、販売薬剤師、それから勤務薬剤師というようなものに分科をして、その分科の課程で教える学科が違ってくる、こういう御論議ならば、これはもう論議はありません。  次にお尋ねしたいのは、来年から行われる法律においては、治療上支障ある場合、診療上支障ある場合、こういうふうに省令できめるのですが、治療上支障のある場合に、厚生省の幹事案というものが出ておるわけです。あの幹事案なるものを読んでみますと、たとえば第一の治療上支障ある場合の幹事案の第一は、神経症(他の疾患に神経症状を伴う場合を含む)こうなっておるのですが、そうしますと、これは神経症を伴っておるということをだれがきめるかというと、医者がきめるのだと思うのす。客観的に見て、症状を見て医者が主観的にきめるということですね。そうしますと、こういうものは、幾ら何十個省令できめても、意義がないということなんです。これは骨折り損のくたびれもうけです。それならば治療上支障のある場合、こう一項にした方が簡単であって、これでは私は愚の骨頂だと言っては言い過ぎかもしれませんが、意義がない。これは見た医者が、この愚考は神経症を伴っていましたと言えば、それまでになってしまって、裁判へ持っていこうとどこへ持っていこうとだめなんです。それならば、お互いの人格を信頼して、医薬双方が手を取って、日本の医療体系を整備するという形ならば、お互いの人格を信頼する形をまず作らなければならない。それが、こういう形で法律で縛っていく形を作ることは、医薬双方の将来のためにもよくないことではないかと実は考えるのです。これは私の個人的な見解でそう申しておるわけですが、今度出てきておる法案は、そういう意味から、治療上支障ある場合は処方せんをやらなくてもいい、こうなっているわけであります。それの方が、合理性からいえば合理的だ、こういう考えも浮んでくるわけですが、この点、竹中さんの見解はどうでしょうか。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 まず先ほどの私の答弁がはっきりしておらなかったようですが、私が申し上げたのは、薬科大学の教科課程の中には、当然選択科目があるわけでございます。そこで、卒業後おのおの進むところの道によって、学生がその選択科目によっておのずから分れていくであろうということを申し上げたわけであります。  それから今の幹事案のお話でありますが、これは全く同感であります。ただそういうふうな神経症というような言葉でもって、これを伴うところの病気をみな含むということになりますれば、これを断定するのはお医者さんであります。お医者さんの主観的な立場できめていくのでありますから、自分がそう思ったと言えば、それまでであります。従って、こういうふうな条項で、いわゆる処方せん義務発行の問題を空文化されるようなことは非常に残念だ、こう私は思って——また事実そういうふうな場合もいろいろありましょうが、この点はできるだけ小さくしぼって、そして現在の法律の建前から省令に規定すべきである、ただ、省令に規定する範囲において、現在の今お読み上げになった幹事案は、私どもは承服いたしかねるものであるということを申し上げたい。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 わかりました。この幹事案は承服はできないということでございますと、ますます医薬関係審議会はまとまりにくいということにもなるようでございます。  それで次に、これは三者にお伺いいたしたいきわめて大事な問題ですが、現在医療費体系、社会保険の問題が、非常に論議をされております。で、同時に私は、日本の製薬業に対する論議が足らないと思うのです。これは医師も薬剤師も歯科医師、獣医師の方々も、もっと日本の製薬業に目を向けなければならないと思う。現在日本の医療費の中に占める売薬の地位というものは、いわゆるサルゾールその方の公定書外と申しますか、ああいうものも含めると、千億をこえておる小売価格だと思うのです。これに目をふさいで日本の医療体系を論ずることは、木によって魚を求むるたぐいだと思う。ここに厚生省の弱さがあり、われわれが厚生行政を信頼することができない一つの点があるのです。そこで、現在論議をされておるのは、社会保険の小さなワクの中で、この取り分をどうするかという問題です。しかも、社会保険の医者の収入の三割を占めておる薬剤については、何ら論議をされていないということなんです。だから、この薬剤の原価が下るならば、たとえば武田の十ミリニCCの強力メタボリンは十六円である。しかし、これは製造の仕方では五十銭か一円でできるというようなものが、十六円で売られているというこの現実を無視されておるということなんです。もし、これが国家によって安い形で、原価主義でわれわれの医者の手に移るならば、そこで薬剤師さんが社会保険に入ってきても、食える姿が出てくるということなんです。ところが現在薬剤師さんは、その製薬業から出てきたものを、いわゆる番頭さんの形で売って、そこで三割の利潤を取って食っていくという姿が出てきておる。ところが、社会保険が出てきたために、サルゾールやクロロマイセチンというものが売れなくなって、そうしてその買っておった患者というものが社会保険に行くために薬剤師がつぶれるという事態が起ってきておるわけです。そこで、医薬双方が、まず現在の日本の医療制度を改革しようとするならば、医療費体系とか分業とか言う前に、製薬業にメスを入れるべきだと私は思うのです。そして安い材料を薬剤師さんがもらい、処方せんで安くやる、医師が安い注射液や薬を使って患者に安い薬をやるということによって、私は七百や千億の金は現在の日本の医療費の中から浮いてくると思っている。そこで、先般草葉厚生大臣は当委員会で、物と技術を分離する、ものは原価主義だ、従って医者と薬剤師に原価主義で物をやるならば、われわれは必ず製薬業にもいける。物というもの、原料というものは、原価主義で製薬技術料をつけるだけのものにやっていきますということを言明されたのです。私は、医薬分業で医薬双方が争う前に、まずわれわれのみ統制の中に入って、自由経済に放任せられておる製薬業にメスを入れるべきだと思うのでございますが、一つ三者の率直な意見を述べてもらいたいと思う。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 ただいまの御質問でありますが、日本医師会としましては、従前より実はそのような意見を持っておりましたので、厚生省に対しても、こういう点を指摘をしておるわけです。さらに先日も、例の七人委員会におきましても、やはりお説の点を主張して参ったわけであります。日本医師会では、厚生省がもし具体的に現在統制のワクの中にあるこの保険の中に、自由主義経済の野放しの姿で製薬されておるという事実をあくまでも放置しておくならば、日本医師会みずから、何らかの具体的な方策を講ずる以外に方法がないのではないかというようなことに相なっておりまして、これが研究のためにも、いろいろと今努力をしておる、こういう状態であります。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいま御指摘になりました薬品の原価と申しますか、薬品の価格を適正化するということをすべきでないか。これは非常にけっこうなことで、当然しなければならぬことだと思っております。ただ、この問題は、御承知のように、現在の状態では、自由企業にまかせられておる。そしてそれらの企業が、一応厚生当局の指導を受けておるとは言いながら、なおその存立のために、お互いにあるいは広告をし、あるいははなはだ大きなスペースをふさいで一般の人たちに宣伝をするというようなことにもなってきておるわけでありますが、これらの適正化をはかって、薬品が本来の性質から、正当な価格でもって供給されるようにしなければならぬ、こういう点から、日本薬剤師協会には、製薬委員会というものを作りまして、これらの点を研究いたしておる次第であります。

鹿島俊夫日本歯科医師会専務理事

○鹿島公述人 これは滝井委員の質問、同感でありまして、われわれは、先ほど来この点についても述べておりまする通り、とにかくこの薬品あるいは資材の検討があまり行われなくして、点数構成の一部に加えられる。その結果は、医療技術の面にしわ寄せが来ておるのが現状であります。従って、現在社会保険の単価等の点を考えてみましても、単価を構成する主要な要素は、単に物の変動になっておる。これでは、いわゆる医療技術料というものの線は、全然伸びようがないのであります。ここにわれわれは重大な欠陥があると考える。特に私は、最近聞いたのでございますが、ペニシリンの十万単位のものを、原価——これを私がここで発表すると差しつかえまするが、この内容を聞きまして、驚嘆をいたしたのであります。われわれの想像を絶する低額のものであるということを申し上げたい。われわれは、この新医療費体系あるいは社会保険の機構を考えます場合におきましては、この面についても、特に国会におかれましても、われわれの医療技術というものの面に関して、あくまでも正しい御認識をいただきたいということを申し上げる次第であります。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 最後にお尋ねしますが、厚生省の医療費体系の基本構想は変らないということです。従って、物と技術を分離する思想というものは、変らないと見ております。医療費体系が実施をせられますと、あなた方の技術料というものは、これはある程度の評価を受けますが、使うものは原価主義になります。薬剤師さんもお医者さんも、みなこれは、注射薬にしても薬にしても、原価主義です。そうしますと、あなた方は、製薬を原価主義でやらなくても——今の意見でも、研究されるとか、いろいろ言われましたが、私は製薬も当然原価主義に行かなければならぬと思うのです。これはあなた方三者とも、原価主義で行くべきだ、こうお考えと思うのでございますが、行くべきだとお考えになっておるかどうか、それについて、イエスかノーかだけでけっこうです。医療団体として、製薬も原価主義で行くべきである、製薬の技術料プラス原価、これが製薬業の姿でなくちゃならぬ、これを一つはっきり御言明を願いたいと思います。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 ただいまの御意見の通り、やはり日本医師会におきましても、薬品をいわゆる原価計算で作ってもらわねば困る、かように考えております。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいま御指摘の通りに、原価主義でいくという原則は、当然であろうと思います。ただこれに対して、今の自由企業である業態が、あるいは営業費その他のものを加えるでありましょうが、これらがリーズナブルなものでなければならぬ。これがいわゆる原価主義に加わっていくことになるわけですから、さよう御承知をいただきたいと存じます。

鹿島俊夫日本歯科医師会専務理事

○鹿島公述人 原価主義の方向に絶対賛成であります。特に社会保険の経済面に関しましては、その点を強調したいと存じております。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 これで終りました。三者とも原価主義でございますので、今後はこれを基礎にしてわれわれは厚生省に要求いたします。ありがとうございました。

山下春江自由党

○山下(春)委員長代理 野澤清人君。

野澤清人自由党

○野澤委員 まず第一に、水越公述人にお尋ねをいたしたいのですが、簡単な問題を簡単に質問いたしますから、率直にお答えを願いたいと思います。  水越さんのお述べになりました冒頭に、医薬分業に対する基本的態度という御解説がありました。その最初に、法律をもって処方せん発行を義務づけることには反対であるということがございましたが、今回の改正案に対して、日本医師会としては反対の態度をとっておられるのか、賛成なのか、この点お伺いいたします。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 この点につきましては、先ほども申し上げましたように、要するに日本医師会の考え方の原則としましては、処方せんを法律で発行を規制することは反対である、従って今回の本法律案につきましては不満足な考え方を持っておる、こういうことを申し上げた次第であります。

野澤清人自由党

○野澤委員 不満足だということと、不満足であるが賛成するということとは、かなりデリケートな関係があると思うのです。それで、大石案と称せられる改正案全体に対しては、不満足ではあるが賛成であるという御見解かどうか。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 不満足であるということは、やはり不満足であります。従いまして、もしでき得ますならば、野澤さん初め優秀な議員の方々の御理解をいただいて、日本医師会の従来主張しておりますような線への御修正をぜひお願いしたい、かように考えております。

野澤清人自由党

○野澤委員 日本医師会の従来主張しておる線というものの御解説をお願いいたしたいと思います。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 日本医師会が従来主張しておりました点は、先ほど申し上げましたように、法律をもって処方せんの発行を規制することに反対であるということであります。

野澤清人自由党

○野澤委員 論議がちょっとはずれているようですが、現行法の医師法二十二条を見ますと、これは二十三年の法律でありますが、二百一号には、やはり処方せんの発行ということが法律できめられているのです。こういうふうにきめられているという本則については、これは何ら変りはないと思うのです。それを反対だと言われることは、ずっとこの分業法が結定される前から、医師会としては反対されておったのか、この点お伺いいたしたいと思います。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 ただいま野澤委員からの御発言では、二十三年にできた、現在実施しておりまするその法律では、今回提案された法律と同じではないかという御意見がありましたが、現在実施しておりまする二十三年に作りましたあの法律は、要するに薬剤の交付を必要があったらするというような、ずばり投薬というところへいっているわけであります。ところが今回の法律におきましては、御承知の通り薬剤の交付を必要と認めるときは処方せんを与えなければならないというようなことで、基本的に違っている、かように考えているわけであります。

野澤清人自由党

○野澤委員 これは法律解釈の問題でありますから、見解の相違といえばそれまでですけれども、法律の条文は、処方せんの交付義務ということで、法律の二十二条にきめられています。そうして「医師は、患者から薬剤の交付に代えて処方せんの求があった場合には、これを交付しなければならない。但し、その診療上特に支障があるときは、この限りでない。」というのが現行法であります。そうして、これも三十三条の罰則が五千円以下の罰金ということできめられている。これは明らかに処方せんの交付義務という、義務づけられたことが法律によって定められている。そうすると、今度の法文というのは、医師は思考に薬を出す必要がある場合には処方せんを出さなければならない、ただし治療上支障がある場合には出さなくてもよい、これはほとんど内容は変らないと思う。しかも法文の中に、処方せんの交付義務として義務づけられている。この義務づけられたものと、今度の法律二百四十四号とは、法文で義務づけられたことについては何ら変りはないと私は思うのです。しかし、これ以上議論すべき問題ではありませんから、一応御検討を願っておきます。  第二点は、あなたの公述の中で、いろいろと欧米の例が引かれまして、医師の処方せんがなければ欧米では薬をやらぬとか、指図がなければやらない、きわめて欧米では良心的な姿であるというような御解説をされ、さらに薬局における調剤等の問題に論及して参ったのでありますが、その陳述の中で、日本の薬局の経営が欧米と異なるということを特に指摘された。異なるというのは、どういう点で異なるのでありますか。形の上で異なるのか、内容、形態等において異なるのか、作業において異なるのか、この点をはっきりとお示しを願いたいと思います。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 冒頭に申し上げた通り、欧米におきましては分業をしておる。そこで日本においても分業をせよということであるが、欧米において分業されておる実態が、現在の日本における医師と薬局に対する形とはだいぶ違う。その実情は、先ほど申し上げましたように、医師が処方せんを書いた場合に、医師の処方せんを持って行った場合に、初めて薬局では薬を売る、あるいはまた注射器一本、注射針一本についても、証明書がなければ売らない。こういうような状態で分業が実施されておるにもかかわらず、現在の日本におきましては、私が大体知っておる範囲では、これから述べるような状況であります。たとえば、かぜを引いたと思って薬局へ行けば、いわゆる風ぐすりと称するものを調剤して与えておる。これを私は非常に不当なものだということでだんだん検討してみましたところが、これかまたいろいろと議論の種になるかもしれませんが、抜け穴というようなものがあるように感じます。それは薬剤師さんが、製薬業者という免状のもとに、一応日本医薬品集という、いわゆる処方例に基いて調剤をなさるのだということでありますが、しかしこれは、頭が痛いという場合には、頭が痛いというのは病気でなくて症状であります。たとえば、かぜでも頭が痛い、神経痛でも頭が痛い、あるいはまたチフスでも頭が痛ければ、脳膜炎でも頭が痛い。その他頭痛を伴う疾患は山ほどあるにもかかわらず、ただ頭が痛いからというその患者の訴えに基いて、いわゆる国民処方の名のもとに調剤投与しておられる。この実態というものは、およそ欧米とは違うということを申し上げたわけであります。

野澤清人自由党

○野澤委員 非常に明快な解説で安心しました。  そこで、あなたにお伺いしますが、これは日本の薬局の経営というものの、欧米と異なるという端的な表現の仕方でなしに、日本の医業と薬局の経営が欧米と異なるという解説ならば、私も納得がいくのであります。なぜかというのに、そういう薬局の形態に放任されておらなければならないという素因が必ずあるはずです。そうしますと、あなたの御説明の中にも、調剤の監督に対する道義的なものを、きわめて簡単に述べられておるようでありますが、日本のお医者さんの薬室では、女中や看護婦や奥さんが調剤しているのです。薬をこね合せている。これは何人も、社会通念として認めている。これを抗弁してみたところが、医薬関係審議会の席上でも討議がされたように、現在の五万からの薬剤師が約二万開業をしておる。そうして現在の開業医の処方せんを全部一時に出されたならば、消化し切れるか、し切れないかという調査をした。しかも一日調査をして、昨年の七月二十七日か八日だと思いましたが、浦和市一市の医師会が、その日一日の処方せんの数と薬局の数と距離とを勘案して、一薬局では四十八時間も働かなければ調剤ができないということを医師会では発表しておる。     〔山下(春)委員長代理退席、委員長着席〕 こういうふうな情勢でいながら、あれだけの患者を診察しながら、医師みずから調剤する行為ということはあり得ない。結局はあなた方自身が、女中や奥さんに便宜上調剤させておるという証拠は歴然としておるのです。こういうことを考えてみると、欧米の薬局と違って、日本の薬局はその経営が異なるということは、一応うなずけますが、同時に日本の医業というものも、その実態においては、欧米とはるかに異なるという結論が生まれると思うのでありますが、この点いかがでございますか。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 だいぶ議論がむずかしくなりましたが、この点につきましては、昨年の十一月の幾日ごろでありましたか、参議院におきまして、野澤委員と同席のもとに、やはり当時の高野委員から御質問を受けた点であります。そのときに私から御答弁申し上げたことは、要するに調剤というものは、医師の監督のもとに調剤をしておる。しかも、そのときに高野さんからは、しからば医師みずからしていないのかと言われたから、医師みずからしておると私は認定しておると、かように申し上げたわけです。しからば、ただいまのような御意見で、相当時間長く調剤にかかるのに、診療と調剤とがどうしてできるかというようなことでありましたので、要するに、びんから乳鉢にあけるということが、私の解釈では調剤である。あと乳鉢の中でこねまわして、それからこれを三つなり六つなりに分けて、紙に包み薬袋に入れる、名前を書いて渡す、こういうようなことは他の補助者でもできる、かような御答弁を申し上げておきました。当時の考え方と今の考え方は、一向に変っておらぬということで御了承願いたいと思います。

野澤清人自由党

○野澤委員 そのこまかいインチキの操作はどうであっても、日本の薬局が欧米の薬局と異なるという極論をされるのならば、医業の実態も異なるということを首肯せざるを得ないのではないかということを申し上げて、議論しても始まりませんから、次に移ります。  そこであなたの説明の冒頭には、欧米では、医師の処方せんにより、あるいは指図がなければ、薬局では薬品を売らないのだ、きわめて良心的な姿であるということを陳述されて、その中間に、欧米では自己の仕事の限界を守っておるのだということを宣言されておるのです。そうしますと、この日本の現在の薬局のあり方と調剤の監督に対するただいまの道義的な問題、これを二つ合せてみますと、大きな矛盾がある。そこであなたの言われる自己の仕事の限界を守っておるということを、適切に日本の医薬の上に適用したならば、どういう姿になるか、ここにもあなたの発言には理念的に大きな矛盾があるのじゃないか、こういうことを私はまず第一に指摘いたしまして、ところで、これらの考え方を基礎にして、あなた自身が医業の担当者であり、医師会の幹部でありますから、医薬分業は、社会制度としてよい制度であるのか、悪い制度であるのか、また将来これに入るべきであるか、入らないでもよろしいのか、この基本的な態度をお伺いしたい。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 この点につきましては、先ほど御答弁申し上げたように、医薬分業を法律できめる、すなわち処方せんの発行を法律で規制するということは、われわれとしては承服できない。それは先ほど申し上げましたように、欧米において逐次医師が処方せんを発行し、さらに薬剤師さんが薬を盛るというやり方になっていったので、日本におきましても、社会的環境と申しますか、要するに薬局のあり方、さらにまた医師のあり方というものが、欧米と同じような姿になったならば、やはり同じような形態をいずれはとるであろう、かような考え方からしまして、法律をもってこの処方せん発行を規制するということには反対である、かようなことを申したのであります。

野澤清人自由党

○野澤委員 結論として医師分業は好ましい制度であるか好ましくない制度であるか、はっきりお答え願いたい。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 ただいま申し上げましたように、自然発展的な姿で医薬分業が行われるならば、好ましい制度であると思います。

野澤清人自由党

○野澤委員 ところで調剤権に関して、医師の方は相当の大学教育を受け、練習を積んでいる。こういうことを前提としまして、医療形態について、現在の姿こそ患者を幸福にし、最もよい案であるということをお述べになっております。現在の姿こそというのは、現行法のままだと思うのでありますが、この点に対して、あなた自身の考え方は、現行法というものの中には、分業形態の推進過程があるかないかということをお調べの上で、こういう言葉をお使いになったかどうか、この点お尋ねいたしておきます。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 この点につきましては、私の主観になりますが、要するに、医師が薬剤を患者に与えなければならぬときには薬剤を与えてよろしい。ただし、患者さんが処方せんをほしいと言うた場合には、これは与えなければいかぬぞということであって、分業推進をするという思想が入っているとは、解釈していないのであります。

野澤清人自由党

○野澤委員 私は、再三委員会でも、医師会の独断あるいは専横だというようなことを指摘しておったのですが、お気づきがないようでありますので申し上げますけれども、昭和二十三年七月三十日、法律第二百五号できめられました医療法の十八条をお調べ願いたいと思うのであります。この医療法十八条には「病院又は医師が常時三人以上勤務する診療所にあっては、開設者は、専属の薬剤師を置かなければならない。」となっております。これでは、国家が法律によって規制し、しかも医師が三人以上勤務する診療所においては、法的に専属の薬剤師を置け、医師は診察し、薬剤師は調剤をするといういわゆる分業の原則を、こうした医療法の中にも当てはめてあります。しかも、その罰則を見ますと七十四条に五千円以下の罰金ということまで課せられて、法的に規制されている。こういう事実をもってしても、あなた方が、分業というものについて全く反対である、また現在の姿が最も望ましい形態であると言うことには、大きな矛盾があると私は感ずるのであります。この点については、お帰りになって十分現行法をお調べを願いたい。  次に、御質問申し上げますことは、大橋委員の質問のときに——大橋委員は、これはおそらく軽率にこういう断定をされたのだと思いますが、医薬分業というものは、生活権の闘争であると断定して、これを前提のもとに、あなたに質問をしたようであります。それで、医師会の立場でプラス・アルファだということを言うておりますから、この点について、御見解を明らかにしていただきたいのですが、現在の医業から調剤行為をやめたら、どれだけ医者の収入減になるか。ばく然とでけっこうでありますから、あなたの見解を明らかにしてもらいたい。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 先ほどの大橋委員の御質問に対しての私の御答弁は、プラス・アルファということであって、要するに、理の本質から考えますならば、法律をもって処方せんの発行を規制すべきでないというこの考え方と、さらにプラス経済的の面もある、こういうことを私は御答弁申し上げましたので、もし誤まっておりましたら、またいずれ速記をもってお調べ願いたいと思います。

野澤清人自由党

○野澤委員 お尋ねしたことは、大橋委員は、生活権の闘争であるということを前提としてあなたに質問した。あなたに質問したところが、プラス経済問題も含んでいるのだ、こういうことであります。しかし、現在の分業闘争というものは、経済闘争でないと私は思う。いわゆる身分闘争であり、技術闘争だという私の見解です。そこで、もし経済闘争ということを容認されるあなた方の立場から見ましたならば、現在の医業から調剤行為をやめたら、どれだけ医者の収入が減るかということをお尋ねしているわけであります。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 この面につきましては、責任もありますので、いずれ詳細に調べた上で、書面をもって御答弁申し上げます。

野澤清人自由党

○野澤委員 きわめて賢明な逃げ口上をもらったのでありますが、それでは一応あなたに解説いたしておきます。  新医療費体系がまだ出ておりませんから論議の的になりませんが、少くとも昨年の新医療費体系の実態から考えてみましても、現在の医療費をふやさないということが根本で、技術と物とを分離しようというのが、いわゆる新医療費体系を樹立する根本理念であります。従って薬局の方では、調剤手数料をどのくらいもらえるかというのが、大きな問題になっていましたが、その当時薬剤師の方では、たとい一日分が七円であろうと八円であろうとかまわないという考え方で、相当の犠牲を払っても、薬剤師の身分法の第一条に、薬剤師とは、医師の処方せんによって調剤する者をいう、というこの定義がほしいために、現在戦っているわけであります。しかるに、いかにも医師の業権を剥奪するような含みをもって御回答されたということに、私は不満がありますけれども、むしろ新医療費体系を、医師の取り分に対しては、十分医師の方に尊重いたしまして、薬価の原価と調剤の技術料を分割して薬剤師につけて、従って、一日薬剤師が薬局において三十枚の処方せんを扱ったといたしましても、一ヵ月にわずかに一万円前後の金額であります。従って、これによって薬局の経済が救われるというようなことはあり得ない。むしろ薬局としては、相当の犠牲を払っても、正しい医療のあり方に持っていきたい、こういう考え方で、この新医療費体系にも全面的に賛成を表している。しかし、これが準備不足ということで、一年三ヵ月延ばされたのでありますから、おそらく今後出てきますこの新医療費体系の内容検討というものは、相当真剣に政府の方でもやられると思います。またその金額の多寡によらず、筋を通すという面から、どうしてもこういうような問題については、真剣に考えていかなければならない。従って、大橋委員の言われた前提条件としての医薬分業は生活権の闘争であって、医師も薬剤師もこの生活の問題が中心だという前提のもとに論議されたことというのは、一応これは御破算にして考えてみなければならない。しかしながら、他面こうした問題が、全然経済的な要素も含まないということもあり得ないのでありますから、あなたの御答弁でプラス経済問題だというお答えは、非常にいいお答えだと思います。ただし、今後の分業闘争というものか、そういう段階にないということだけをはっきり申し上げておくわけであります。  次に、竹中公述人にお伺いしたいのですが、あなたの公述中に、現行法現行法ということが何べんも言われましたが、あなたの言われた現行法というのは、法律二百四十四号のことをさしたのではないかと思うのでありますが、この点、第一にお伺いいたします。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいま御指摘の通り、法律第二百四十四号をさして現行法と言ったのであります。

野澤清人自由党

○野澤委員 竹中公述人にお尋ねいたしますが、日本薬剤師協会の立場として、改正法の二百四十四号の薬事法二十二条の一号、患者がその医師から調剤してもらいたいと希望した場合、これは調剤のいわゆる例外であります。この一項と、今度の改正案の医師法二十二条の一号であります。患者がその医師から薬を調剤してもらいたいと希望した場合は、処方せんを出さなくてもよい、この二つの関連性に関して、どちらが国民の利益になり、民主的な選択方法であるか、その見解を明らかにしてもらいたい。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいま御指摘になりました法律第二百四十四号の薬事法の第二十二条ただし書きによりまして、患者がその医師から調剤を求めることができる、そういうふうな場合は、すでに処方の発行を受けて、その処方の発行を受けた後に、自由意思でその医師からもらいたい、こういうことであります。今度の、本日御諮問になっております法案の医師法の第一号、すなわちこの条項は、処方せんの義務発行を免除するところの条項で、患者並びにその看護に当っておる者が、その医者から調剤をしてもらいたいと言った場合には、処方せんを出さなくてもいい、こういうことであります。処方の内容というものは、患者に知らさなくてもいいわけであります。そこで、この両案についての比較をいたしてみますならば、先ほど私ちょっと触れたのでありましたが、患者がその自分の病気をまかせておる医師の感情を害してまで、ほかに行って薬をもらうのだから処方を作ってくれということは、言い得ないものと思うのであります。そういう関係から、これは必然的にそこで見てもらった患者は、その医師のもとから、処方せんを発行しないで薬品をもらうというふうな形になっていきますが、これはほんとうの患者の自由意思を伸ばすゆえんではない。従って、ただいまの二百四十四号のただし書きにおけるところの、特に患者並びに現に看護に当っておる者からその医師に調剤を求める場合とは、大きな差があると思うのであります。

野澤清人自由党

○野澤委員 歯科医師会の鹿島公述人に一点だけお伺いいたします。歯科診療あるいは歯科医療等をやります際に、ほとんど薬というものと技術というものとが、現行においても分離されておるように感じられています。従って、先ほど医薬分業についての考え方をいろいろお聞きしたのでありますが、その中で、潜在技術料が不明確である、また分業をすることによって、診療技術面にしわ寄せされるということをあなたの方で主張されております。これは当然こうしたしわ寄せというようなことは、具体的に数字にあげればそうなると思うのでありますが、医師会と異なりまして、歯科医師会としては、かなり技術と対価の計算というものが合理的に進んでいるように感じられる。こうした面から、あなた方の方では、医薬分業というものは、理想的な医薬の体系であるかどうか、また将来そういうふうな御期待や御希望をお持ちになっておるかどうか、それともこれは全然期待できないし、希望もしないというお考えなのかどうか、この点をお伺いいたします。

鹿島俊夫日本歯科医師会専務理事

○鹿島公述人 御質問の要旨が二点あると思いますので、分けてお答えいたします。  まずわれわれの方で医薬分業の強制実施によりまして、われわれが受ける技術料の問題であります。これは新医療費体系を実施する場合のその方策の方法が誤まりまして、適切妥当でありませんと、歯科医の面にしわ寄せが来ると申し上げておるのであります。実はこの事実が現われておりまして、医務局が行います医療の実態調査によりましても、その調査対象約百例において三千百八十点と記憶いたしますが、減点をしておる。一診療所に対しまして三百十八点の減になっておる。この主たる原因は技術料の算定方式に誤まりがあることがはっきりいたしておりますので、その点とくと算定方式を検討を加えなければ、承認できないということを言っております。従いまして、その強制医薬分業即われわれの技術料の算定に響くということを申し上げたのでありまして、いわゆる新医療費体系の考え方に欠陥がある場合に、そうなるということを申し上げておきます。  それから、ただいま御質問のような将来における問題でありますが、これはわれわれは適切妥当な方策が乱されて、これによっていく場合には、あながち反対するわけではございませんが、現在のような状態においてこの強制医薬分業が——これは語弊がありますが、一応強制医薬分業と申し上げますが、これが実施せられるということによっては、多少疑義があるということを申し上げております。従って、これらの疑義の点が解明をせられるということになりますれば、また別の考えを持たなければならぬ。しかし、現段階におきましては、やはりとり行われましてあまり支障がないという現在におきましては、任意分業の線で合理的に進んでいく。将来におきまして先ほど水越公述人が申されました通り、発展的にこの分業の実態が、あるいは野澤委員の言われるような線に発展することは差しつかえないと思います。非常に抽象的なお答えで恐縮でありますが……。

野澤清人自由党

○野澤委員 非常にうまい御回答で、強制医薬分業にも、ただし書きがついたようであります。そこで、鹿島さんにもう一点だけ伺いたいのですが、今度の改正案の薬事法第二十二条の条文をごらん願いたいと思います。その本文には「薬剤師、医師、歯科医師及び獣医師でない者は、販売又は授与の目的で調剤してはならない。」と出ております。それで、なぜここに同列に医師、歯科医師、薬剤師というものを羅列したかということを提案者に聞いてみましたら、薬剤師ほどはたんのうではないが、調剤学も勉強しているのだ、一応勉強しているから調剤のできるということを成文の上に表わして差しつかえないじゃないか、こういう議論で今まできておる。ある陳情者が、ある議員のところに行きましたならば、あの文章の書き方を見ると、薬剤師が一番上に乗っかっておるのだから安心じゃないか、こういうことも言ったそうです。これは愚にもつかないような質問をするのですが、この筆法でいきますと、現在鹿島さん自身は、歯科医でありながら医学博士です。それで歯科医になるためには、一通り医学の勉強もされておる。そうしますと、将来の問題として、もしこれが容認されるということになりますと、歯科医師というものか、医者と市なる部分ができてくる。これは道義的には、そういうことはできないけれども、学習の状況から見ますと、医師や歯科医師が調剤学を少し勉強した、薬理をやった、こういうことで調剤が本業にできるというお考えに立って法律の規制まで要求するという段階であるならば、歯科医師が将来人体を診察して治療に当っても、何ら差しつかえないという議論が生まれると思う。やる、やらぬは別でありますが、これを法律の上に示しても、何ら差しつかえないじゃないか。これについて医学陣士である鹿島さんの御見解を一つお聞きしておきます。

鹿島俊夫日本歯科医師会専務理事

○鹿島公述人 非常にむずかしい御質問であります。私の見解を申し上げますと、結局、現在医業また歯科医業の限界については、明らかになっております。人体の構成組織上、明確に線を引くことは不可能であることは御承知の通りであります。しかし、とにかく口腔内におきます外科手術は、一般医師もこれを行いますが、その歯科医学的な方面は明瞭に分離ができます。要するに、一例として口腔内におきます血液は、人体と分離した場所から出てくるものではございません、当然一般の医療にも相通ずるものであります。しかし、専門の分野はおのおのはっきりしております。現在歯科医師といたしましても、将来一般医業にまで診療を拡大しようという意思はございません。また歯科医学の内容は、非常に複雑多岐、さらに多くの未知の世界もまた蔵しております。この方の研究で一ぱいであろう、現在そう考えております。  それから、先ほどお話中に出ました薬剤の調剤能力の問題でありますが、これは私は率直に申し上げまして、歯科医師であるわれわれが、薬剤師各位と同等の薬剤調剤能力を持っているとは決して申し上げません。これは専門家であります薬剤師各位の能力は、当然認めなければならぬ。ただ、この薬事法二十二条の制定の理由は、歯科医師法二十一条に、患者から薬剤の交付にかえて処方せんの求めがあった場合、これを交付しなければならないと規定してありまして、これとの関連を当然生じますので、第二十二条にかような起案をせられたものと、私は提案の趣旨を解しております。そういう意味で御了承いただきます。  もう一つ、歯科医師の医学博士の点は、これは参考に申し上げておきますが、現在歯科大学には大学院が設置してございませんが、近き将来において大学院設置が実現いたします。そうすると、学位の点については、歯科医学博士の線も生まれて参ります。この間われわれの学位請求に関します点は、現在の学位授与の組織上、医科大学に学位請求をする形になっております。将来医学博士と歯科医学博士の線は分離するということを、申し上げられる次第であります。

野澤清人自由党

○野澤委員 今の鹿島さんのお話で、あなたは日本医師会と違いまして、水越さんの言われたいわゆる自分の仕事の限界を守るという紳士的な態度だと、私は了承したのであります。これは程度の差だと思いますけれども、やがて水越さんの方もそうなられるだろうと思うのであります。そうした面において、今後とも医、歯、薬が協力して日本の医療制度に関しても御協力下さいますようお願い申し上げて、私の質問を終ります。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 神田大作君。

神田大作日本社会党(右)

○神田(大)委員 だいぶ時間もたちますので、私は簡単に御質問申し上げたいと思います。私はしろうとでありますから、専門的なことはわかりませんが、患者といたしましての率直な意思に基いて、お尋ね申し上げたい。  まず、医薬分業というようなことが、もし行われたというような場合において、一体患者に対する治療というものの責任は医者側にあるものか、あるいは薬剤師側にあるものか。患者として一刻も早く病気をなおしたいというようなこの一つの考え。一体医者が責任を持つのか、薬剤師側が責任を持つのか、そういう点に対しまして、非常な不安を持つのでありますけれども、そういう点について、水越さん並びに竹中さんの御意見を承わりたいと思います。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 神田委員の御質問の御趣旨は、われわれといたしましても、非常に心配をしておる点であります。診療の責任というものは、私たち医師は、あげてわれわれに責任があると考えております。従いましてこの投薬につきましても、患者さんが、医師からもらわなくてもよい、自分の信頼する薬屋さんがあるから、そこで処方してもらうから、処方せんをくれと言った場合に、それは特別な事情のない限り、治療上支障のない限りは処方せんを差し上げることにしてありますが、できるだけ自分が責任者としての立場から、自分のところから薬をあげて、そして監督、看視しながら治療をしたい、かような考え方を持っておるのであります。  そこで、かりに処方せんを出した場合に、たとえば二日間なり三日間なり患者さんを見ることができない。その結果、はたで見ておられたら、どういうことをお考えになるか知りませんが、その間の医者の心配というものは、並み大ていのものではないと思うのであります。たとえば、患者さんが熱があったけれども、一体あの患者さんは今ごろどうなっておるか、薬屋さんから薬をもらっていかれたようだけれども、ともかくその後二日も三日も来なければ、その間ずっと心配し抜いておる。従って、あくまでも治療の責任は医者にある、かように強く考えております。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいまの診療の責任といいますか、これは、その中で薬品に関する限り、薬剤師のところで調剤をいたしますからには、この責任は薬剤師にあるのであります。診療全般の責任は、当然お医者さんが持つべきであろうと思います。先ほどもちょっと申し上げたのでありますが、薬品に対しては、薬剤師は、自分の作ったものでない、よそから仕入れました薬品につきましても、自分の薬局にあります上は、常にこれの責任を持たなければなりません。従って不良薬品その他につきましての責めは、全部薬剤師が持っておる。かようにして、現在の医療制度の上から、お医者さんがみずから御自分自身で御調剤になれば、その分までお医者さんはお持ちになっておるわけですが、これは処方せんを発行されまして薬局へ参りますれば、この調剤という点についての全責任は薬剤師が負う、こういうわけであります。

神田大作日本社会党(右)

○神田(大)委員 今のお話によりますと、診療の責任はお医者さん側、それから薬剤に関しては薬剤師側にあるということになりますと、何か患者といたしましては、二つに責任が分担されておるように感じられるのでありますが、そのような医師側と薬剤師側の二つの責任というものに対する患者側の不安は、やはり日本の長い慣習からいたしまして、抜け切らないと思うのであります。こういう問題に対しまして、医師側の権威者である水越さん並びに竹中さんにおかれましては、外国等においては、この医薬分業が実施されておりますけれども、これは一体どのような環境の中で分業が実施されておるのか、その点について、参考までにお聞かせ願いたいと思います。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 ただいまの御質問は、外国においてはどのような形で分業が行われているかということの御質問だと思いますが、私、先ほど来両三回にわたりまして、外国の実情を実は申し上げたわけであります。そこで私は、はなはだ申し上げにくいことを申し上げるようでありますが、外国におきましては、一般患者さんが一たび処方せんをもらいまして、盛られた薬に対して絶対に疑義を抱くようなことがない、事ほどさように薬剤師さんが高く信頼をされておるということで、決して不安がないというところまでいっておる、それに国民性のしからしむるところでもありましょうし、というようなことからしまして、日本の現状におきましては——実は先日も私のところへ、私の郷里から知っている者が来ましたときに、もし万が一分業になって薬がお医者さんからもらえなかったら、これは大へんだということを言うておるわけであります。さらに昭和二十六年にも、これは私覚えておりますが、北海道大学の教授をしておりました中谷宇吉郎博士が、やはりあくまでも薬は医者からもらうべきだという供述をしておると思います。そのようなことから、私たちのところへ来ましても、人によりましては、どんなことがあってもあなたの薬でなければ飲まぬぞというようなことすら言うておる。この現状の中から、何を好きこのんで——現状ですら、ほしいといえば処方せんを治療上支障のない限り出しておるというこの実情の中から、法律をもって処方せんの発行を規制する、その規制する理由が、われわれに十分理解納得できない、かように考えておるわけであります。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいま、二つの責任を持たれて不安だ、こういうふうなお話でございます。大体医薬分業の根本理念は、非常に医薬が進歩して、その作用が峻烈なものが多くなってきた。昔の漢方薬のような緩和なものから見ますと、非常に作用が強い。かようなものを、もし誤まって用いるようなことがあれば、人命に被害を及ぼす。さようなことのないためには、医師は診断をして、その治療の方法を患者に示し、そしてこれに用いるところの薬品については、なるたけ別個の専門家をして当らせなければならぬというのが、分業理論の発端であります。医師が診断をし処方せんを発行されましたときに、その処方せんによって薬剤師があやまちなきりっぱな調剤をする。ただいま水越さんのお話の中には、いかにも日本の薬剤師が非常に信頼に値せぬかのごときお言葉がありましたが、これは信頼に値せぬような状況に置かれておる。これを改善しなければならぬということも、為政者の先生方によくお考えをいただきたい。とにかくこれに対しまして、あるいは調剤が不確実じゃないかとか、今神田先生のおっしゃったような心配を除くためには、ちゃんと薬事法でもって、してならないようなことについてはりっぱな規制があり、これを守らない場合には相当な処罰も与えられるようになっておる。従って、現在無資格の人が調剤をしておる医家の薬室に比べたら、その調剤をするところがかわり、資格のあるりっぱな教養のある人間に調剤をやらせる方が心配だという理論は、成り立たないのであります。さような点から、われわれはこの問題をぜひ推進していくように御心配をお願いいたしたい、こういうように思うわけであります。  それから外国における分業の状態ですが、これは御承知のように、ドイツの方で約六百年以前から分業制度がとられてきた、これはいわゆる強制分業で出発したわけであります。その後、各地でこの制度を取り上げております。しかし、英国とか米国とかは、御承知のようにその法律の建前がドイツ法の建前とはちょっと違うようであります。当然やっておる習慣その他で、差しつかえのないものを法律で規制するというようなことはないようであります。しかし日本の状態は、先ほど私が申し上げたのでありますが、八十年になんなんとする間分業問題は国是できまっておりながら、一つもこれが推進されない。その推進されないのはなぜか、これは処方が出ないからである。その出ないものを出すにはどうしたらいいか、まずそこまで改めなければなるまいというので、今の法律第二百四十四号ができたわけであります。  さような点でよろしゅうございましょうか。

神田大作日本社会党(右)

○神田(大)委員 水越先生が言われましたように、今の薬剤師側がどうも信頼に値しないと思われるような節があるというようなことは、竹中先生もある程度お認めでございますか。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 これは医師であろうと薬剤師であろうと、やはり多くの人でありますから、その中には、あるいは幾分人の指弾を受けるような人もないとは言い切れません。しかし、今われわれのあずかっております薬剤師協会の会員としては、十分それらのことを戒心し、人の指弾を受けるようなことのないように、薬剤師の道義の高揚の問題を取り扱っております。そうして、たまたま一、二好ましくないような行動をするような場合に、調査をいたしますと、薬剤師の中にも皆無とは言えないのでありますが、大体これが第三者が管理人を置いて経営をしておる業態に非常に多い。そういうふうな点からも、これらの方々の一そうの戒心をお願いしておるわけであります。業態がそういうふうな信頼することができないというようなことを認めるのかというふうなお話でございますが、少くとも、現在分業が実施されようとして、各地方ごとに薬学講習会を開き、おのおのが勉強し合って、より信頼を受けるよい薬剤師になろうという熱意から見て、さような人はほとんどないと私は申し上げることができると思います。

神田大作日本社会党(右)

○神田(大)委員 それでは、現在のような薬局の分布状態や、いろいろな客観的情勢から見まして、医薬分業が実施された場合に、医師の発行する処方せん通りに薬局では調剤ができる可能性があるかどうか、お尋ねします。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 それは先ほども申し上げたのでありますが、今の状態では、ほとんど一年に二枚とか三枚くらいしか処方が来ない薬局が多いのであります。そういうところで薬品の口をあけても、あとは処方が来ないために変敗してしまうというような場合も多いので、十分薬のそろわないところもあります。けれども、この分業が実施されるということになりますと、これらの使われるところの薬品の分量その他についても、業界といたしましても相当調査をいたしております。またこれらのものの在庫調査等の結果から見て、現在悪意というか、故意に特にむずかしいといいますか、ほとんど手に入らないような薬品でも処方せられない限りは、一向差しつかえがないと思います。またさような特殊の薬に対しましては、これは処方せられるお医者さん等から、特にその医師の調剤を求めることのできるような法律になっておりますし、それから薬局の分布状態についての問題は、ただいま医薬関係審議会の方で審議をしておるわけであります。もちろん実施をいたしまして非常に不便なところが、これから除外されることは当然でありますから、実際問題としては、この分業法案が施行せられましても、混乱を来たすようなことはないと確信をいたしております。

神田大作日本社会党(右)

○神田(大)委員 処方せんが発行されて調剤する場合において、処方せんの通りの薬がないというような場合に、ないからほかの薬局に回すのも得意がなくなるというようなことで、無理をして処方せんと違ったような調剤をするおそれを、われわれしろうとは考えるのでありますけれども、それに対しても、現在の薬事法においては、罰則がないのでございますが、そういう危険はどうでございますか、どうお考えになります。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 それは薬事法の中に、もし処方の内容を変えるというような場合には、処方医の許可を得ないで変えることはできないわけであります。さようなことの起きないように、われわれとして十分指導もいたしておりますし、現在の場合、今具体的にお話のありました、一つないために、お客がほかに行ってしまいはしないかというような場合も、なるほど考えられるかもしれない。しかし、少くとも薬剤師が自分たちの長年の主張である天職の調剤権を汚さないためには、いかなる方法をとっても、あるいは自分のところでできなければ、知り合いのほかの薬局からその薬品を得るなり、またその事情をお話ししてお待ちを順うなり、また処方医にお話ししてその処方にしるされた薬品の欠損に対して、かわるべきところの御指示を願うたりして、完全なる調剤を遂行することができると思います。

神田大作日本社会党(右)

○神田(大)委員 質問がもとへ返りますが、先ほどの責任の問題でございます。日本は長い間、お医者さんのところに行って診察を受けて、お医者さんから薬をもらうというような慣習があります。この長い慣習を、ここでもって法律ではっきりと分業にいたしまして、今のような医師並びに薬剤師側の激しい抗争の間に立って分業が実施された場合に、果してスムーズに処方せんを発行し、それによって処方せん通りの調剤が行われ、患者がそのために少しでも治療の便宜がはかられ、そうして安く、しかも早くなおるというような状態になれるかどうかということに対しまして、私たち長い聞の慣習の中に浸っておる患者といたしまして、疑問を持つものでございますが、こういう疑問に対しまして、確固たる信念に基いて、分業によって患者側に迷惑をかけないでやっていけるというような御自信があるかどうか、お二人にお尋ね申し上げます。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 お答え申し上げます。ただいま御田委員の御質問の点は二点あったと思います。まず、神田さんのおっしゃる不安ということ、この点につきましては私先ほども申し上げましたように、今にわかに法律でどういうことをきめましても、一般大衆におきましては、一たび医師のところを訪れる場合に、薬剤をもらうということをもあわせて診断の中に含めて、今日まで医師の治療を受けてきたわけであります。そういう中から、突如として薬を抜き出して薬剤師さんのところに持っていけと言いましても、患者さんそのものが、なかなか納得しかねるのではないかと思います。従って、そういう意味からも、不安ということが起りましょうし、さらにまた法律で分業を規制したときに、スムーズに協力態勢をとって医療に当れるかどうかということでありますが、これは医者もやはり感情の動物でありますので、自分たちが反対した、反対し抜いた法案が通ったときに、この法案にきん然として服従して協力するということは、なかなかあり得ないのではないか。さような意味からも、相当な混乱が起りはしないかということ、さらにこれが患者さんに及ぼす影響も相当な影響がありはせぬか、かような気持がするのであります。  さらに、私先ほど冒頭に申し上げるべきでありましたが、実はちょっと言い落しましたので、その点追加させていただきたいと思います。これは外国の例でありますが、スイスにチューリッヒという町があります。この市は再三、再四医師会がチューリッヒの市会に対しまして、分業をさせてくれということの陳情及び請願がなされておるのでありますが、それがそのつど実は市会から拒否をされておる。現在でもお医者がいやがっておるにもかかわらず、無理やりにやはり分業をさせられないという実情もあります。  さらにまた、これも冒頭に申し上げるべきでありましたが、日本におきまして、明治初年から医薬分業はきまっておったというようなことがあります。この内容について、ちょっと申し上げておく必要があると考えるので、簡単に申し上げますが、明治四年でありましたか、日本の医学の、医師の大先輩である長与先生がドイツへ参りました。当時、御承知の通り、日本の国情というものは、いわゆる未開国であって、陸軍といわず、官庁機構といわず、全部ドイツのものを翻訳して日本に持ち帰った。従って長与先生も、ドイツの医療法をそのまま翻訳して、日本でも本来はかくあるべきだということを、ただ単に翻訳した、こういう実情でありまして、八十年前からこの分業がきまっておったということでは、決してないということを御了解願いたい。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいまのお話の中で、医師のところから調剤をしてもらうという長い習慣になっておるのが、急に変るというようなことになって、うまく行かないのではないかという御心配のようであります。そのために、二百四十四号においては、患者並びに看護をしておる者から、特にその医師に調剤を求めることのできる道がついておる。従ってさようなことに対しては、予ての患者が、もし御心配でその医師からもらう方が御安心だとお思いになれば、その医師からおもらいになれはいいのであります。一つも違ったことばないのであります。  また分業に対して、ただいまの水越先生のお話では、反対をしておったものが実施されるような場合には、感情上云々というような話がありましたが、りっぱなお医者さんたちは、まさかさようなことはないだろうと思います。しかし、一つの機構が変りますときには、いかにいい機構でも、必ず幾らかの混乱があるものであるとは思います。しかし、これはそのワクを乗り越えなければ、いつまでも改善ということは行われない。これらの点から申しまして、厚生当局も、新医療制度の周知月間を設け、一般にこれらの周知徹底を期そうとしておるのでありますから、この線に沿ってわれわれもまた一般の大衆の人たちに喜んでもらえるよい制度の確立のために働き、そして完全な調剤をするということについては、もちろんそのことによって、薬剤師の本来の仕事を外からさげすまれるような結果になるようなことは、断然するものでない、かように申し上げることができると思います。

神田大作日本社会党(右)

○神田(大)委員 ほかのことはいざ知らず、人命を預かるお医者さんであり、薬剤師さんであり、また人命に関する問題でありますが、ほとんどの皆さんの今の答弁を聞きますと、多少混乱があるということを聞いております。やはり多少混乱もあるということは、ほかのことならいざ知らず、人命に関する問題に関しての混乱が多少でもあったとすれば、これは重大問題だと私は思うのです。そういう意味合いからいたしましても、やはりここは長い間の日本の慣習というものは、無視するわけにはいかぬと思うのでございます。そういう点にかんがみまして、これはよほど考慮を要するのではなかろうか、こういうように私は考えるのでございます。いま一度お二人の簡単な御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終ります。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 ただいまの神田委員のお説、まことにごもっともでありまして、ほんとうにトラブルも何もない今のこの医療制度の中へ、あえて泉の中へ石を投げ込むようなことは、していただきたくない、こういう考え方で、一つ御了解、御協力のほどをお願い申し上げます。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 私が、あるいは幾分の混乱が起るかもしれぬ。というふうに申し上げたことが、非常に強くお響きになったように思います。しかし、私は、混乱が起るとは思っておらないのであります。何となれば、ただいまも申し上げましたように、二百四十四号は、いかなる場合にもそう困らないような法律になっておる。言いかえれば、われわれの立場から言えば、これはことによっては、ほとんど骨抜きの法律だとさえ、われわれの内部では批評しておる。さようななまぬるい法律を実施するに当って、そんなに強い混乱が起きようなどということは、想像もできないことだと思っておる。しかし、いずれにせよ、今御指摘がありましたように、事は人命にかかわるところの問題であります。われわれはおのれをむなしゅうして、りっぱに国民の福祉のために奉仕申し上げる覚悟でおりますので、さよう御了承をお願い申し上げます。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 八田貞義君。

八田貞義自由党

○八田委員 医薬分業問題につきまして、各質問者からいろいろな問題が質疑討論されまして、大体質問も尽きたようでありますが、私は質問を整理する意味におきまして、ただ一、二点だけ御質問いたしたいと思うのであります。  まず第一に、竹中公述人は秘密診療ということを言っておられますが、一体これはどういうことを言うのか。また秘密診療か廃止されれば、国民医療が向上するというような点も触れておられるようでありますが、一体どのようにして秘密診療が国民の医療の向上をはばんでおるか、そういうことについて、具体的に御答弁願いたいのであります。  さらに水越公述人から、一体秘密診療というのはあるのかどうか、そういうことについて、御両人から御答弁をお願いいたしたいと思います。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 私たち七万のものは、秘密診療ということはないと確信しておるということで、御了解願いたいと思います。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 現在の医療制度で秘密診療というものはない、こうただいまお話しになりましたが、私どもは、秘密診療というものはあると思うのであります。たとえば、この医師法の第二十二条のただし書きにおいても、特に診療上支障のある場合というような場合に、これはその内容を秘密にする必要があるのだ、こう御主張になっておられるのであります。この問題に対して、先ほど滝井先生から御指摘がありましたが、たとえば神経症というようなことについて、この神経症を伴った病状すべてを指摘していくというふうなことになっていくならば、これはその内容をなるたけ患者には知らせないでいこう、その知らせないところの口実を一つでもよけい作ろうとして、実際問題としての医薬関係審議会の審議は進んでいるといってもいいほど、われわれとは対立した意見をお持ちになっておる。現在の医療制度の関係が、かつては不治の病気だと言われておった結核なども、今や、すみやかにこの病気を発見して、一刻も早く治療をしてなおしていかなければならぬというふうに変って参りました。しばしば指摘されますところのガンや悪性肉腫の問題にいたしましても、これはもう不治の病である一なるほど相当に病が進んでしまっては、症状はなおしにくいかもしれませんけれども、初期においてこれを発見して治療するならば、これはなおし得る可能性が相当にあるわけであります。しかして、これらに対して患者にその症状を十分に納得させ、すみやかに治療の方法を講じさせるならば、不幸の転帰を少くするところの原因だと思っております。そのことも一つございますが、大体医師が診療をなさって、そうして患者に薬品を調剤して渡す。その調剤の内容について、現在の日本の法律は、別段そのびんに内容を書けという法律はございません。従って、患者はその内容が何であるか知らずして飲んでおるわけであります。およそ人命にかかわる重大なる問題を——自分の髪形の姿を少しでもよくしようとするのでさえも、人一倍よけい金を使うのは人間の本能であります。しかるに、自分の生命を預け、その生命に対して治療させる、その治療内容というものを、果して現在の医療制度はしっかり公明に患者に知らせておるかどうか。私はこれは公開治療と申しますか、そういう形とまでは言い切れないのではないか。これをもっとはっきりした立場に持ち来らせるということが、医療内容の向上に寄与するゆえんである、かように私どもは考えて、あえてこの与えられるところの処方内容を公開するということが、ただその点だけでいうのではなく、実際ほんとうに患者の意思を尊重して、患者が好むところの診療体制を自分で選ぶために、まず処方を与えるという組織がとらるべきであるということを主張しておるわけであります。

八田貞義自由党

○八田委員 今の竹中公述人のお話によりますと、処方せんの内容がわかれば国民の医療が向上するということについて、はなはだ一方に偏したお考えの見解が述べられました。これは必ずしも診断ができない場合も、処方せんを交付する場合がある、調剤する場合がある。その場合に、一々診断がつかないのに、この薬剤はこの病気にきくかきかんかということを、だれが判定するのですか。この点に問題があると思うのであります。医学の知識を学んだ人が処方内容を公開してもらった場合には、ある程度まで判断はできましょうが、しろうとの患者が処方せんの内容を公開してもらって、果してこれが判断できまし上りか。その点について、私は水越、竹中両公述人に、さらにお尋ねいたしたいのであります。  さらにまた、あなたのお考えの中には、処方せんの内容を知らせてもらえば、いわゆる乱診乱療が防げるのだ、あるいは自粛監査というものができるのだ、こういうお考えがあるに違いないのであります。今、水越公述人から聞けば、秘密診療というようなことはないということです。これは結局あなた方の勝手にお作りになった言葉であって、しかもその内容を聞くと、はなはだへんぱな考えによって集約されております。その点について、もう一度秘密診療というものはこういうものであるということを、はっきりと言っていただきたいのであります。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいまのお話につきまして、薬の点についてお話をいたしましたのは、私はその立場である薬剤師の観点から申し上げたのであります。しかし、その処方の内容によって、それがどういう病気だとかなんとかということを、われわれは言おうというのではないのであります。ただ現在の医療のありさまは、特に先ほども申しましたように、分業というものの理念は、人命の尊重ということから出発しておる。一人の医師が診断をし、一人の医師がこれに対して投薬をしておりました場合に、万一あやまちがあって不幸な転帰を来たしたときに、だれがこれを発見することができるのでしょうか。結局その医師が、自分の誤まりによって不幸な転帰を来たしたという自覚で、その患者の死亡診断書を書かれるか、あるいはお気づきにならないでそのまま死亡診断書をお書きになるか、いずれにしろ、初めから終りまで一貫して第三者のタッチしないところの医療形態が、現在の医療形態だと思うのであります。その中で、今最も分業の叫ばれておるファクターでありますところの薬品の面だけでも、これをはっきりしなければならぬ。これが薬剤師によって調剤され、そのために死亡したならば、その責任は薬剤師にありまして、これを批判するところの第三者が発言しやすい状態に置かれるわけであります。私どもは、現在のままで行われている状態の診療を、言葉は悪いかもしれませんが、秘密診療であるというふうに見ておるのであります。

八田貞義自由党

○八田委員 今の竹中公述人のお話を聞くと、だんだんはっきりしなくなるのであります。今竹中公述人は、処方がはっきりしておるならば、もしも投薬によって死んだ場合には判然とするとおっしゃったのでありますが、現在の医師は、処方せんを控えておらぬのでありますか。その点、論旨をはっきりしていただきたいと思います。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 処方せんをお控えになることは、現在の医療法によって、カルテ等にお書きになっておることだろうと思いますが、これは外部の人の目に触れる機会は、ほとんどないと言ってもいいのではないかと私は思うのであります。

八田貞義自由党

○八田委員 その程度の秘密診療ならば、私もこれ以上お尋ねしてあなたを困らせる必要はないのでありまして、これ以上質問いたしませんが、ただ竹中公述人のお話を聞きますと、医療に対して薬剤師が干渉を加えるようなふうに聞き取れるのです。医師に対して薬剤師が監督の立場に立つのでありますが、それならば、薬剤師を監督するのは一体だれですか。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 薬剤師が医師を監督するというような言葉は、私は使った覚えがございません。ただ私どもは、処方せんの表に現われた間違いがあった場合には、これを正すところの義務があります。それによって危険を防止するということを申し上げたのであって、医師を監督し、あるいはこちらからとやかく言うような筋合いは然ないのであります。

八田貞義自由党

○八田委員 そうしますと、話が変になって参りましたが、医者に絶対に調剤能力がないというふうな観点に立っておられるのでございますか。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 医者に絶対的に調剤能力がないかというお話ですが、すでに国家が法律で、本来は薬剤師がやるべきものであるけれども、薬剤師からもらえない場合には、やむを得ないから、その次に薬物の知識のある医者や歯科医師から調剤をしてもらってもいいように、自己の処方せんによって調剤のできる道が認められております。従って、現在の形における医師の調剤能力は、私どもは認めております。しかし、医師の調剤能力と申しますか、医師が調剤をするというその根本の、先ほども申し上げましたように、薬学の終局の目的は調剤を完全にするということである、この理念のもとにわれわれは教育されておるわけでありまして、それらの学科課程と医科大学における学科課程の内部をよく御比較になるなら、おわかりになると思うのであります。皆さんが御勉強なさっておる薬理学とか薬物学とか処方学とかいう範囲の薬品に関するところの学問と、われわれのやっておるものとの間には、非常な差があるわけであります。従って国家も、この薬学をやった者に対しては、それだけの責任を負わせておるわけであります。その責任を負っておる者の調剤と、その薬品に対する責任をお持ちになっていないところの医師の方々の調剤との間には、おのずから開きがあることはやむを得ないことだと思います。

八田貞義自由党

○八田委員 今の御答弁の中で、処方が公開されるならば、薬剤の危険を事前に防止できるというようなお話がありましたので、医者に調剤能力がないかということを伺ったのであります。これに対して、あなたは、医科大学と薬科大学との習得科目の差異まで触れておられますが、調剤の問題は、学問上においては医学、薬学という議論は成り立つでありましょうけれども、実際上におきましては、医学も薬学も互いに交差して、決して分離しているものじゃない。しかも調剤というものは、医学と薬学との間にちょうど介在しておるようなものでありまして、このような関係に成り立っておるのでありますから、薬学の知識のない人間が処方が書けますか。しかも、われわれは医師ではありますけれども、私は十一年間医学研究機関におり、また十一年間薬学研究機関におったのであります。私は医師の免許状を持っておりますけれども、実際には開業していない。私は医学、薬学をちょうど半分々々ぐらいやっておるのでありますから、私は正しい観点からこれを見ることができるというふうに考えておるのでありまして、今あなたのおっしゃったように、医者に薬剤に対する知識がないから、処方が公開されるならば、薬剤師の方から十分注意を与えて、そういった危険を防止し得るのだということは、私ははなはだ受け取りがたいのであります。これに対して、水越公述人はどのような考えを持たれておるか、御見解をお伺いしたいのであります。

水越玄郷日本医師会副会長

○水越公述人 われわれ医師は、先ほど来申し上げたように、調剤能力はおろか、調剤権もあるということまで、われわれは主張しておるのであります。従いまして、ただいまの竹中公述人からのお話で、医師が調剤をするということは、非常に危険性が伴うもののごとき表現があったのでありますが、私たち長い間医師会の役員をして参りましたが、実際において医師の調剤によって起されたいわゆる弊害と申しますか、過失によるいろいろな事件というものは、薬剤師さんが起されたその類の事件よりも少いものだ、かように考えております。従いまして、とにかくこの調剤能力、調剤権の問題につきましては、あくまでも同等の能力があり、同等の身分、権利がある、かように考えておるわけであります。

八田貞義自由党

○八田委員 その問題については、水越公述人の御答弁を了承いたしまして、時間を急ぐために次の問題に移ります。  処方せんが発行されて、薬剤師がこれを調剤するのでありますが、その調剤された薬品が、果して正しく調剤されているかどうかということについて、竹中公述人は、証明する方法をお知りならば、教えていただきたいのであります。こういう質問をしますのは、医師側が、自分の発行した処方せんが正しく調剤されているかどうか、そういうことに対して非常な心配を持っておるわけであります。この点につきまして調べるには、どのような方法があるか、一つ御答弁をお願いいたしたいのであります。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいまの、調剤したものが処方通りであるかどうかを調べる方法はどうか。この問題については、たしかこの前の厚生委員会のときに、大阪方面で医師会がおやりになった報告が出ております。処方を出したが、ほとんど断わられ、あるいはその通りに調剤がされていないという、いわゆる大阪報告なるものが医師会から出されました。その分析方法なるものに対しましては、ここに薬事課長がおられますが、厚生当局からお調べになって、その結果を御報告になっておられますが、事実において慎重なる御検査をなされば、はっきりするのであります。ただその方法を誤まった結果、違う判定を軽々に発表されるがごときことは、非常に迷惑千万なことであります。しかし処方通りの調剤がもしできておらないとするならば、それに対するところの処分の方法もございましょうし、またこれに対する調査をいたしますのには、それぞれりっぱな機関も相当ございますから、それらによってお調べいただいたらわかると思います。

八田貞義自由党

○八田委員 今、質問からちょっとそれた答弁があったのであります。医師会で調べた大阪での成績というのでありますが、これは多分定性反応によるところの薬品の成分を調べただけであると思います。私の申しておるのは定量の問題、たとえば医師がサントニンを〇・五処方したとする、それに対して薬剤師が〇・二調剤した場合に、それを調べるような方法があるかどうかということを、私は伺っておるのであります。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいま御例示になりましたサントニンの含量等については、調査する方法があります。

八田貞義自由党

○八田委員 今方法があるとおっしゃいましたが、私の知る範囲内では、方法には非常な困難を伴っておるのであります。あなたは簡単にそのような方法があると言われましたけれども、私はここで学界上の議論をむし返して、あなたにサントニンの定量法に対するうんちくを傾けていただくだけの時間がありませんから省略しますが、一般に調剤について、これを正しく定量することはできないという今日の見解であります。というのは、広く普遍化しておるところの処方せんによる調剤を一々監視し、それを検定するというようなことはできがたいのであります。その点から考えましても、今あなたのおっしゃったことは、私にとってははなはだ納得のいかないことでありますが、この問題についてはこれ以上触れることはやめます。  もう一つ、先ほど水越公述人は、国民処方によって薬局はある程度の収益をあげておるのだ、こういうような話がありました。これにつきましては、その前に竹中公述人から、福島県とか仙台の例を引かれまして、国民健康保険が非常に普及しておるので、最近は四五%くらい薬局の収入が減った、こういうふうなことになったのでありますが、その減った理由は、やはり水越公述人の指摘されたごとく、国民処方によるところの収入の低下でありますか。またあなたは、福島県は非常に国民健康保険の普及率が高いといったようなお考えがあったようでありますけれども、一体どのくらいのパーセントであるかについては、あなたも資料をもってよく吟味されての上のお話と思いますので——私も福島県の男子でございます。一体国民健康保険の普及によって四五%減ったという根拠、その点をはっきりとお伺いしたいと思います。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいま国民医薬品集の問題が取り上げられて、これの売り上げが減ってそうなったのだろうというふうなお話であります。しかし、これらのことにつきましては、各地の国民健康保険実施に対するところの影響調査に現われてきましたところによりますと、一つ一つをどういうふうなものでということを指摘はして参りません。ただ家庭薬品とかあるいは注射薬とか、そういうふうな分野での一応の数字でありますが、大体において四五%減少をしておる、福島におきましては——たまたま福島のことか出ましたが、これは福島市の報告である。それらによって、福島市におけるところの薬局の売り上げは大体四五%減っておる、これに対して何とかしなければならぬということを申してきております。国民健康保険が実施をされまして、今までの顧客が、結局国民健康保険の被保険者あるいはその家族として診療を受ける資格ができたわけでありまして、これらの人たちが保険料を払っております関係から、なるたけその機関を利用するのは当然だ、そういうふうな結果、今まで薬局に行って買っておったところの薬品が、それだけ減ってきたということになるわけであります。

八田貞義自由党

○八田委員 その点は、どうもまだはっきりお知りになっておらぬようでありますから、これ以上つくのは遠慮いたします。よく資料をごらん下さいまして、後ほどまたいつかの機会によく私の納得いくようにお教えを願いたいのであります。  もう一つ伺いたいのでありますが、国民医薬品集は、厚生省薬品として今日取り上げられておるわけでありますが、薬局においては調剤をすることになっておるわけです。薬局というのは、薬剤師か調剤をする場所であるというふうになっております。ところが、この国民医薬品集というのは、薬品はこれは製造ということになっておる。そうしますと、今の薬局において、よく国民処方によってやったのだという無診投薬の弁解がなされておるのでありますが、すべての薬局は、登録すれば国民医薬品の製造がそのまま認可されるものでありますか。またさらに、別に薬品製造業としての登録を受けなければならないのかどうか。それを受けたならば、しろうとでもって、これは薬品製造業と薬局と兼業しているのだということを、一般民衆にはっきりわかっておるようになっておるかどうか、その点をお知らせ願いたい。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいまお尋ねの国民医薬品集を製造いたしますのには、これは製薬業の登録をしなければならないのであります。そうして、この製薬業の登録に関しましては、他の大きな製薬に対しましては、いわゆる基準がございます。けれども、国民医薬品集に収載されておるもののうち——国民医薬品集は、御承知のように先般改正になりまして、今までの第二部というのはなくなりましたが、あの範囲のものは、その薬局で製造することができる、これを厚生当局が認定いたしまして、これの登録を許しております。そこで各薬局においては、薬局の登録票とともに、製薬業の登録票を掲示しておるのであります。従って、この薬局はどちらも登録しておるかどうかということは、気をつけてごらん下されば、たいていの薬局は店頭に掲示をしておりますから、わかるはずであります。

八田貞義自由党

○八田委員 そういたしますと、厚生省医薬品の中に入れられた国民医薬品は、薬局において、かつて第二部に取り扱われた国民処方でございますね、これは当然製造し得るのだということでございますね。薬品製造としての登録を受けているわけですから……。そうしますと、調剤とか調製が、国民医薬品集の中のかつての第二部の国民処方については、現在でも自由にやり得るのだということになりますね。そうしますと、改正法二百四十四号におけるところの二十四条の第一項、医者の処方箋なしには薬剤師というものは、販売、授与の目的で調剤してはならぬということになって参りますが、そうしますと、かつての国民処方によって、薬局は薬品製造業も兼業できるのであるから、勝手に調剤しておる。ところが二十四条には、医師の処方箋によらなければ調剤してはならぬ、こう書いております。そうすると、医師の処方と、あなた方が無診投薬と言いのがれできるところの調剤と、二つできるということになるように考えられますが、いかがでございますか。

竹中稲美日本薬剤師協会副会長

○竹中公述人 ただいま御質問の医薬品の製造と調剤は、違うのであります。医薬品の製造は、製造の登録をあらかじめ受ける。今の医薬品集第二部にあったようなものはどれでもできるというのではないのであります。あらかじめ登録を受けて、それだけのものを製造することができるわけです。その製造するものは、あるいは予備的に作っておりましょうが、場合によっては品切れすることがあるかもしれません。さような際に、時間のかかることでもないのでありますから、作って渡すというようなこともあるいはあるかもしれません。けれども、これはどこまでも製造であって、調剤ではないのであります。従って、医師の処方せんによらないところの調剤とは言いがたい。

八田貞義自由党

○八田委員 それではっきりいたしたのであります。ところが、現在の薬局におきましては、調剤ということをやっておるのです。たとえば、患者が頭が痛いといってきた場合には、頭の痛い薬をすぐに処方してやるということを実際やっておる。そこに私は、あなた方に対して重ねて質問するような疑問を、また持つような気持になっておるのであります。現在、患者が来れば、すぐに国民処方という名のもとに無診投薬がやられておる。製造とは違った状態において調剤が行われておる。その点について、私は薬剤師に対して非常な不審を持っておるものであります。さらにまた、薬局におきましては、今日抗生物質というものについて、第四十四条の第七号に対する違反行為が公然として行われておるのであります。この点につきましても、私は今日の薬局のあり方につきまして、非常な不審を持っておるものであります。例をあげればたくさんあります。たとえば仙台において、薬剤師がペニシリンを買いに来た人に対しまして、ペニシリンを打ってやった。ところが、その患者は死んでしまった。これは明らかな無診注射であります。これに対しましては、昨日の薬務局長の見解では、医師法の第十七条に触れることはもちろん、薬事法の四十四条七号に触れるところであります。このようなことが始終盛んに使われておるということは——今日のペニシリン・アレルギーの問題、あるいは耐性の問題、あるいはまた交代菌現象の問題にいたしましても、薬局においてこのような薬事法四十四条の違反が日常茶飯事のごとく行われておるということが、今日の国民医療上に重大な支障を来たしておるのであります。この点につきまして、私は薬剤師の自粛自戒を求めるものであります。  特に、さらにもう一つわかりやすい例として申し上げますと、山下春江代議士が、かつての総選挙におきまして、オーレオマイシン・トローチを飲んでおれば声がかれないという、ことで、オーレオマイシン・トローチを飲んでおられた。そのオーレオマイシン・トローチが切れてしまった。それで薬局に行きまして、オーレオマイシン・トローチをくれと言ったところが、その薬局では、オーレオマイシンならば、トローチもカプセル本同じだということで、カプセルを与えられた。そうすると、山下代議士はそれをそのまま信じられまして、オーレオマイシン・カプセルを十八日の長きにわたって飲まれたのであります。そうして、私とある日会食いたした際、非常に腹が張って困る、ガスが一ぱい詰まって、これはどうしたも一のであろうか、きょうはオーレオマイシン・カプセルが切れたので飲まなかったせいかしらと言われたのでありますが、これは全く逆であります。山下代議士のごとき厚生問題について明るい方でさえ、このようなあやまちをやっておられるのであります。この点につきまして、ほんとうに薬師剤の方は、無診投薬ということに、非常に国民医療上に重大な支障を及ぼすものであるということについて、十分にお考え願いたいのであります。  なお、いろいろな点について質問いたしたいのでありますが、時間が参りましたので、これで終ります。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 公述人の皆さんには、お暑いところをありがとうございました。  午前中の部分はこの程度にとどめ、午後三時まで休憩いたします。    午後二時二十分休憩      —————・—————    午後三時二十七分開議

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 休憩前に引き続きまして会議を再開いたします。  この際、公述人の皆さんに一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず、当公聴会に公述人として御出席下さいまして、委員一同を代表してお礼を申し上げます。  本案は、重要法案でございますので、審査に万全を期すべしとの委員会の意思によりまして、本日公聴会を開き、公述人の皆さん方に御足労をわずらわした次第であります。公述人におかれましては、本問題につきまして、あらゆる角度から、忌憚なき御意見をお述べ願いたいと存じます。ただ、時間の都合上、公述の時間はお一人十五分といたしますが、公述のあとに委員諸君から質疑があると思いますから、これまた忌憚なきお答えを願いたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、公述人の方々が発言なさいます際は、委員長の許可を得なければなりませんし、発言の内容につきましては、意見を聞こうとする問題の範囲を越えてはならないことになっております。また委員は、公述人の方々に質疑をすることはできますが、公述人の方々は、委員に質疑することはできません。以上お含みを願っておきます。  次に、公述人の皆さんが御発言の際は、劈頭に職業または所属団体名並びに御氏名をお述べ願いたいと存じます。なお、発言の順位は、勝手ながら委員長においてきめさせていただきます。  それでは荒井公述人にお願い申します。

荒井研日本獣医師会副会長

○荒井公述人 日本獣医師会副会長の荒井と申します。獣医師の立場におきまして、今回の問題につきまして、私どもが考えておりますことを二、三申し上げたいと思います。  医薬分業に関しまする審議につきましては、私ども、従来から皆様の方におきまして、われわれの立場を十分御理解の上に審議されておるものと存じておりますし、また今後におきましても、そのようにされるものと確信をいたしております。しかし、獣医師は、医師及び歯科医師等と違いまして、若干の特殊性がございますので、その特殊性につきまして、ここに申し上げて、さらに認識を深めていただきたい、こういうふうに存ずる次第でございます。  まず第一番に、獣医師の診療の対象になりまするところの家畜は、分布の状態が、人口と相当の違いがございます。たとえて申しますと、北海道のごとき比較的人口の希薄なところにおきましては、逆に獣医師の数が非常に多うございます。そのようなわけで、人口の希薄なところにおきまする家畜は、一応診察を受けて処方せんをいただきましても、その処方せんを持ちまして薬剤師のところに参りますにも、薬剤師が非常に遠隔の土地におるということになりますと、農家としては耐えられないことになってくるわけでございます。  第二番目には、家畜の診療は、人の診療と違います。この点につきまして一、二申し上げますと、家畜に投薬をいたします場合には、これはすでに皆様も御存じの通り、ある場合においては、非常に危険が伴いますと同時に、薬を飲ませること自体が、しろうとでは非常に困難な問題でございます。また一面、看護婦のような制度がございませんから、勢いこれを獣医師にゆだねて投薬をいたさなければなりません。これは、単に注射ばかりではございません、内服をさせます場合におきましても、やはり同様に機械その他をもって投薬をいたさなければ、多くのロスが生じまして、そのために損失がございます。このような関係からいたしまして、処方せんを持ちまして再び薬剤師のところで調剤をしてもらい、その上に獣医師のところに参りまして投薬を受けるという繁雑性は、相当困難な問題があることは推察の通りでございます。  第三番目には、獣医師の場合におきましては、総合病院のような形のものはございません。御存じの通り、最近家畜共済におきまして診療所がございますけれども、その規模も、現在小そうございますから、そこに薬剤師を常置いたしまして調剤を受けることができないのでございます。そういう関係で、以上申し上げました二点と、これを実際に行います場合には、どうしても遠隔地の薬剤師の調剤を受けなければ相なりませんので、われわれ獣医師といたしましては、以上の観点からいたしまして、今申し上げましたようないろいろな事情を十分御推察の上、御審議あらんことをお願いする次第でございます。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 次に宮尾公述人。

宮尾武男健康保険組合連合会会長

○宮尾公述人 私は健康保険組合連合会の会長をしております宮尾武男でございます。私が申し上げたいことは、簡単なことでございますが、まず医薬分業に関する連合会といたしましての基本的な態度について、一言申し上げたいと思うのであります。  これは従来各所で連合会は申し上げておりますので、御承知のことと思いますが、原則的には医薬分業に賛成だ、しかし、被保険者に不便になったり、またそれがために医療費が膨脹するようでは不賛成である、こういう基本的な考え方に立って、今までものを見て参ったのであります。原則論として賛成だということは、社会保障制度の発展推進の上に、分業という課題が取り入れられていくことは、現今医療制度が非常に行き詰まっておりまして、何とかしてここでこの壁を突き破っていかなければならないというような事態に当面しておりますので、それには、そういう問題も含めて考えていき、また解決していくべきだ、こういうように考えておるわけでございます。  それから被保険者に不便になるというようなことは、これはもともと被保険者に不便をかけるということは、これは保険者の立場として非常に困る問題でありますので、その点についてどういう措置がとられるかということが、問題であると思うのでありますが、この点については、大体いろいろな立法上の措置あるいは例外等ができて、私ども百パーセント不便であるとはもう考えておりません。  次に、費用の点でありますが、費用の点は、健康保険がだんだんに発展して参りまして、被保険者からはようやく信頼を取り戻し、医療担当者からは関心を払われ得るようになったのであります。それに伴って、また欠点もだんだんに露呈して参りまして、非常に医療費の高騰に年々悩まされておることは御承知の通りでありますので、このままの状態で医薬分業をやるということについては、私ども費用がふえるということについて危惧の念を持っております。従って、ただいま健康保険の赤字処理等につきまして、再建計画等をお立てになっておいでのようでありますが、そういうものがはっきりと見通しがついた上でやることが好ましい、こういうふうに考えておるのであります。  それで、今回の法律案でありますが、私どもの立場から申しますと、非常にむずかしい問題で、それを国会でおきめになりましたのを、またここで非常にむし返してくるということ、あるいは毎年々々そういう問題が医師と薬剤師との間に起って、国民は非常に不安と焦燥にかられるのでありまして、従って、被保険者の治療上に非常に迷惑をかける、そういうような観点からいたしますと、私どもは早くこの問題に終止符を打って、解決をしていただきたいと思うのであります。  また、この医薬分業の問題につきましては、三年間の猶予があって、しかもまた昨年一年三ヵ月延びたのでありますが、その間に行政当局として何らかの手を打つべきであったのではないか。それもやらないで、せっぱ詰まってこういう問題を起させるということは、私は行政当局に向って非常に不満にたえないのであります。もともと私どもは、原則論で申しましたような立場から、社会保障制度の推進、医療保障制度の発展ということを念願しておりますので、もしもこれがいいものであれば、モデル地区のようなものを作って実際にやって見た上で、その結果によって論議をして、やるかやらないかということをきめるべきでなかったか、死児のよわいを数えるに似ておりますけれども、そう信じておるのであります。それで私どもは、今でもまだそういう措置をとられることがおそくない、一年なり、半年なりを限ってある地区にそういうことをやってみるということも、おそくないと思うのであります。また、もう一歩進んで、ごく限られた地域にだけ、あるいは年限を限ってやるとか、あるいはその地域だけに限ってやるとか、そういう方法によって実際やってみて、それから悪いところは改めてもよいと考えておるのであります。そういうふうに私どもは考えております。  御質問がありましたらまた……。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 松澤公述人。

松澤風有司全国国民健康保険団体中央会総務部長

○松澤公述人 私は全国国民健康保険団体中央会総務部長の松澤風有司であります。  医薬分業につきましては、われわれの間にきわめて関心を持って、従来からこの成り行きをながめているのであります。と申しますことは、このいかんによりましては、ようやく立ち直りました国民健康保険経済に、きわめて大きな影響を及ぼすからであります。この問題に対するわれわれの話し合いといたしましては、医師会の側からいろいろ話を承わりますと、分業せざる方が有利であるというふうに納得いたしますし、薬剤師側の方からのお話なり、あるいは書面なり雑誌その他で伺いますと、分業した方がきわめて有利であるというふうにも受け取れるのであります。結局今のところ、いいか悪いかわからないというのが、ほんとうのところであります。ともかくもやって、みてよいか悪いかという結論が出るのではないかというふうに、半ばあきらめておるような状態であります。  さりとて、自分自身が統計調査をして、この是非を判断するだけの資料も持っておりませんし、またそれだけの能力もないのであります。ただ医薬分業問題の方向といたしましては、今後進むべき方向と一応是認をするのでありますが、一つの問題は、これを実施する方法いかんによりましては、保険者あるいは被保険者にきわめて不便を及ぼすのではないかという危惧の念、いま一つはこれを実施したために、現在より以上の医療費の増高を来たすのではないかというような心配がございまして、この方向は是認いたしますけれども、医療費の負担がこれ以上増高いたします場合には、分業に対しまして賛成をすることができないというような現状でございます。  以上、大体私どもの関係のことか申し上げまして、公述を終ります。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 以上で公述人の公述は終ったのでございますが、本会議において記名投票があるそうでございますから、暫時休憩いたします。    午後三時四十四分休憩      —————・—————    午後五時四十四分開議

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 休憩前に引き続きまして会議を再開いたします。  公述に対する質疑に入ります。野澤清人君。

野澤清人自由党

○野澤委員 宮尾公述人に二、三お尋ねいたしたいのであります。健康保険の立場から、いろいろと現在の分業の問題、あるいは保険医療の問題等について、多分の御経験がおありになるのでありますが、先ほどの陳述の中で、基本的な態度について御説明があり、原則的に医薬分業には賛成であるという意思表示があったのでございます。その原則的に医薬分業に賛成であるという根底には、被保険者の便不便の問題を第一に指摘されております。そこで、法律二百四十四号という、いわゆる改正法でありますが、改正法は、この便不便を調和するために、分業実施地域というものをきめるようになっております。この実施地域は、少くとも省令の定めるところにより、薬局の普及が十分でないところでは、従来通りお医者さんが診察もすれば調剤もするということにしようという考えから、こういうふうに法律二百四十四号というものは、何でもかでも被保険者や、あるいは国民が不便を感ずることを押し切ろうという法律ではないのであります。こういう建前からいきますと、それでは実施地域をどこにきめるかということに問題点があるわけで、本質的な医薬分業に賛成不賛成ということは、結果的な問題でないかと思うのであります。しかしながら、一応被保険者の便不便という点を指摘してみると、それでは保険医の所在地と薬局の距離が、五百メートル離れておるとかあるいは千メートル離れておるというところに、便不便の問題も起きてくると思います。そういうふうに、便不便ということのものさしを、あらゆる角度から善意に基いて当てていきますと、たとえば、医師の隣に住居があってその医者にかかった者が、処方せんをもらって、千メートルの距離まで薬をもらいに行くことは、確かに不便であろうと思います。しかしながら、法律二百四十四号の規定というものは、患者の求めに応じまして、その医者からも薬剤がもらえるわけであります。従って、便不便のものさしをどこに当てるかということによって、結論が一応立つのではないかと思うのであります。こういうふうに、便不便ということを第一義に指摘された趣旨もよくわかるのでありますが、多少の不なれのために、そうした不便さはあると思うのでありまして、これに関して、観念的な物の考え方では、とうてい私は新しい制度は実施されないのじゃないかと思う。特に宮尾さんのように、社会保険の中核に立ち、しかもまた新しい医療制度のまっただ中に立っておられる方でありますから、こうした面については、かなりの御理解と御決心とがあると思うのであります。ところが、原則的に分業に賛成であるとおっしゃられる第一の障害として、今度は便不便の問題を指摘された。ここに問題点があると思うのです。私はこの法律二百四十四号は、決して完全分業ではない。要するに、医薬の協調によって医療の合理化ができるのだという考え方からしまして、多年の分業に対する考え方は整理して参ったのでありますが、その聞、便不便の問題に関しましては、これは国民の生活革命という言葉で表現いたしております。つまり明治初年あるいは幕末の当時における日本の国民の和服の姿を御連想願えばけっこうであります。この生活様式を洋服に変えるためには、ちょんまげをつけながら洋服を着た時代も、洋服を着ながらわらじをはいた時代もありました。そのまっただ中にあって、ハイカラ紳士といわれたあの明治初年の生活の座化というもの、生活環境の変化というものを考えてみますと、かなりその間には不便もあり、いろいろな議論も集中されたと思うのであります。しかしながら医薬制度の上において、今後医薬分業という理念を貫くために、法律によって、こうしたおのおの分離された学問の基調に立ちまして、医師と薬剤師の業権というものを画然とする。そのために、お互いの生活様式の上に、医者に診察してもらいたがら、今度は帆方せん々をもらって、薬局まで薬をもらいに行く。これを不便と称するよりも——洋服と和服とをお互いにチヤンポンに使いながらも、現在の家庭火活をして何ら不便を感じない、不満もない、ここに生活革命だとまで極論を申し上げる理由があるのであります。従って、あなたのようなこうした社会保険の中核に立っておられる方でありますから、少くとも原則的には医薬分業には賛成であるという第一の論拠に対しては、多少御意見にそぐわない点があるのではないか、こういう感じがいたしますので、合理的に医療制度を改革するため、また新しい制度に突進するためには、多少のふなれや不便さは当然あると思いますけれども、これをもって分業不賛成という理由にはならないと思うのであります。この点についての御見解を承わりたいと思います。

宮尾武男健康保険組合連合会会長

○宮尾公述人 ただいまるるお話しでございましたが、私が原則的に賛成だと申し上げましたのは、社会保障制度が推進され、あるいはより高度なものになっていくためには、現在行われている医療組織とか医療制度とかいうようなものが壁にぶつかっておりまして——医薬分業だけではないと思うのであります、そういうような問題を解決する一つのものであると信じているのでありまして、たとえば新医療費体系に盛られていない技術と薬剤をはっきりさせるような考え方、あるいは保険医の問題であるとか、いろいろな問題を、ここでどうしてもわれわれはその組織を打ち破って、新しい発展段階に進んでいかなければならないところに追い詰められていると思います。そういう意味から、医薬分業に原則的に賛成だと申し上げたのでありまして、便、不便を申し上げたのは、医薬分業を実際に当てはめていくという面においてどうかという点で、便、不便の問題と費用の問題を申し上げたのでありまして、便、不便の問題に関しましては、先ほども申し上げたのですが、大体被保険者の希望によって処方せんなり薬剤なりをもらえるような制度になっておれば、大体支障がないのではないか。地域的にいろいろな問題があると思いますが、それを全国一律に現状のままでやるということは無理があると思うのでありますが、今論議されている十万以上の都市であるとか、被保険者一五百メートルとか千メートルというような距離、そういう問題をもう少し離れて、もっと限定された地区に、もしもやったならば、あるいは可能——可能ということは、もしもやるならばそういうところでやって、そして一年なり何年かの間におきまして、いろいろな問題が出て参ると思いますので、それを契機にして、あらためてはっきりした姿にしてもいいと思うのでありまして、かねがね私どもは、三年間の猶予期間の間に、なぜモデル地区を作ってやらなかったかというような議論もしているのでありますが、とにかく、いろいろなことを申しましても、そういうことをやってみなければ私はわからないと思います。そして、ことに医薬分業問題だけではないのでありまして、医療組織の問題等をどうするかというような問題は、もっともっと大きな問題であります。それと同時に私は解決していかなければならない義務があると思うのであります。そういう意味で、毎年こういう問題が繰り返されているということについては、私は非常にたよりない感じをいたしております。

野澤清人自由党

○野澤委員 御高説を拝聴してありがとうございます。つきましては、分業の原則論と一緒に経済の問題をお話しになりまして、特に被保険者の医療費というものが増高されたのでは困るのだ、こういうお話でありますが、この分業の結果というものは、確かに医師会の話を聞けば医療費が増高する。しかも一〇%も一二%も上るというような昨年の例証もあります。また薬剤師協会の方から見ますと、絶対に増額しない、ある程度までは減額されるのだ、こういうお話をし、政府の方では、あるいは二、三%上るかもしれぬというような証言をいたしております。結果において、これの見通しをつけますと、今あなたの言われた通り、要はやってみなければわからないというのが、ほんとうの考え方じゃないか。どなたも最後的には善意に解釈して、そういう結論が生まれるのじゃないかと思うのであります。そこで、一般に言われておりますことは、現在の保険診療で、保険医の監査等をした結果を見てみますと、たとえば七百件の保険医の取り消しをされた内容を見れば、架空請求が三三%あったとか、あるいはまたつけ増し請求が一三%あったとか、こういう資料が政府から出されている。その内容を聞いてみますと、詳しいデータはないが、大体薬品が主体だということ、こういう結論が出てきますと、あなたの方の組合でも、あるいは国保等でも、よく雑誌にいろいろな会報が載っておりまして、分析をされているようでありますが、そのように、現在の医療組織といいますか、医療制度の欠陥といいますか、幾多指摘すれば微細な問題がありましょうが、そうした問題が出ている。また一方薬剤師会等の意見を、聞いてみますと、たとえば昭和三十年度が処方されて調剤される口数が約十五億剤だと仮定すると、薬剤師会の主張によれば、もし完全な医薬分業が行われれば、この調剤数というものが約半数以下に下るという主張をしている。それを半数ではあまりに多過ぎるというので、たとえば三分の二ぐらいまで減るじゃないかという論拠をしてみますと、これが実施地域等を勘案して、たとえば分業実施地域が総人口の二分の一あるいは被保険者の二分の一だ、こういうことから仮定しますと、その地域でもって少くとも節約されますものが二億五千剤。こういうことで、十五億剤のうち二億五千剤が節約になるというような計算を考えてみますと、約二割というものが減少してくる。そうしますれば、結果的には、個々のケースにおいて厚生省のいうように二%か三%は増高すると言うていましても、実際の投薬数が二割を割るということになれば、総医療費は必ず下ってこなければならない。そうした論拠からいたしますと、少くとも今後のこの分業問題というものは、社会保険の経済と密接な関係が浮んでくる。しかもまた、宮尾公述人のおっしゃられた通り、新医療費体系の内容が、保険経済の医療費というものを左右する重大な要件になってくるのは当然であります。この新医療費体系が実際に社会の上に適用された場合に、直接影響をこうむるのは、いわゆる自由診療でなしに、保険診療が大部分であります。従って、こうした面からあなたの言われた医療費の増高に対する被保険者の立場というものを考えてみますと、一つの法律改正に対する見通しが生まれるのではないか。つまり、今度の大石案として改正案が今国会に突如現われたのでありますけれども、この改正案というものは、今出されましても、あなたのお考えでこの見通しをつける際に、先ほどお話がありましたように、新医療費体系というものの重要なポイントだとするならば、この結論を出すのには、少くとも新医療費体系の案が完全に政府でまとまった時期が一番適切なのではないか。あるいは医薬関係審議会で、地域の問題とかあるいはまた除外例の問題等を審議している、少くも八月か九月半ばまでには結論が出る予定になっておる。そこで、九月一ぱいには作業が終了して、国会へ新医療閥体系が提出される、こういう段取りになっておるのでありますが、この改正案というものに結論を与えることに急であって、今国会でこれをまとめ得たところが、万一新医療費体系が出れば、そこでまた相当のもんちゃくが起きる。従って、あなたの心配されるように、医薬分業をめぐり、毎年々々こうした事態は好ましくないという先ほどの御証言でありますが、もしその論法をもってするならば、今度の改正案の結論は、十月を期して、一切のものを一緒にしてこれをまとめ上げるということが、時期的にきわめて適切でないかと私は思うのであります。そこで宮尾さんにお尋ねいたしたいことは、もし改正する場所があり、話し合いをする場所があるとするならば、改正の合理的な時期はいつが一番適当であるか、この点について率直にお答えが願いたいと思います。

宮尾武男健康保険組合連合会会長

○宮尾公述人 私ただいまのお話で、今度の改正案については、もっと先に考えるべきものがあるんじゃないかという考え方を持っております。その費用の問題にいたしましても、これはたとえば医薬分業ができて医療費が増高したというような問題よりも、先ごろの赤字問題で医療費が増高して参りました問題の方が、保険経済に取っては大きいのじゃないか。そういうようなこともありますので、私どもは、ここでしっかりとした再建案なり、あるいは将来の社会保障まで見通したりっぱな医療費、医療組織というものが組み立てられるならば、そのときに一緒に考えてもいいのじゃないかというように考えておりますので、今の改正案は、私どもはむしろ迷惑だ、そういうふうに考えております。御趣旨に沿うかどうかわかりませんが……。

野澤清人自由党

○野澤委員 大体社会保険の中核をなす宮尾公述人から、今度の改正案は時期的に迷惑であるという御結論のように承わったのでありますが、さらにもう一点、先ほど、分業を実施するならば、暫定措置としてモデル地区の選定をしたらどうかという御意見がありました。この点については、各方面とも端的にモデル地区の選定ということは、二、三年前より叫ばれてきている問題であります。そこで、このモデル地区の選定という言葉にしますと、だれもの概念的なものは、小地域にモデル地区を設けるということが基本のように考えられがちであります。そこで、私は宮尾さんの広範な常識に基きましてお尋ねを申し上げるわけでおりますが、このモデル地区として適切な都市というものはどういうところか、あるいはある人は六大都市と言い、ある人は人口十万以上ということを言われております。そこで、私どもが民間にあった当時に、医薬関係審議会でモデル地区といいますか、実施地域の選定についての討論を幾日も重ねました。その当時に結論として生まれましたことは、この実施地域として一番適切なのは、従来の町の組織である。人口が二方か二万であって、しかも医者が十軒か薬局が五軒というような地域は、面積も狭いし、また医師と薬局とのバランスが非常によく調和しておる。こういう地区ならばモデル地区として選定しても非常にうまくいくのではないか。従って、医者も少い、薬剤師も少いということでありますから、使用します薬品の重点的な選定等につきましても、あるいはまた調剤しました薬品を患者のうちまで届けるにいたしましても、地域的にも、話し合いから見ても、環境一切から見ても、町が一番適当でないかというような意見をお互いに交換したこともあります。こういう事例から見て、たとえば東京都内で一区を、文京区なら文京区をモデル地区に指定したといたしますと、そこには故意または作為によったお互いの泥試合が生まれると思うのであります。ただ医者の立場から見れば、薬剤師みたことかというので、むずかしい薬品の処方を出すとか、あるいは薬局にないような薬品をねらい打ちするとか、小区域だと、どうしてもそういう問題が起きる。こういうことを考えてみますと、モデル地区の選定というものは、相当広範であって、しかも国民も被保険者もあまり迷惑を感じない、また医者も薬剤師も納得のいく地区ということで、一応割り切らなければならぬと思うのであります。こうした考え方を基調にしてあなたにお尋ねいたすのでありますが、あなたの考えておりますモデル地区というのは、ごく少部分、ごく小範囲のモデル地区であるのでありますか、あるいはまた人口比率等によって、人口が新市制施行地の薬局の十分発達した地域だけを特例を設けて、そうしたところをモデル地域とされるというお考えであるのか、この点、率直な御意見を承わりたいと存じます。

宮尾武男健康保険組合連合会会長

○宮尾公述人 私どもが考えておりますのは、モデル地区としてもしも選定してやっていくならば、これはいろいろな場合の地区があってもいいと思う。農村であるとか、あるいは町であるとか、いろいろ無理なようなこともやっていいと思う。作為云々というような問題が起るとは思いますが、それはみなが協力してその結果を集計すれば、私はモデル地区としての実験の結果は出てくると思うのでありますが、無理のない地域に実施地区をしぼっていこうという考え方ならば、これは今御質問がありましたように、無理のないところだけにしぼっていくという考え方で、これは実施地区をしぼっていくやり方だと思うのであります。その点はどっちがいいかということは、私ども公正な判断によってやってみるのがいいじゃないかというような気かいたすのであります。

野澤清人自由党

○野澤委員 ありがとうございました。  次に、国民健康保険の松澤公述人にお尋ねしたいのでありますが、午前中もいろいろ論議がありまして、国民健康保険が全国的に逐次拡張されていくという機運に逢着しております。その関係で、昨年あたり健康保険を実施した都市を見ますと、その地区の薬局の経済に相当の影響があるというようなことを公述人が申しております。それは被保険者がふえてくるために、簡単な今まで店頭売薬で済んでおったような患者が、半額出しさえすれば、やけどしましても、あるいはすり傷にしましても、メンソレータムにかわるに医者に行って治療してもらえる。こういうことで、医療制度、さらに国民の保健衛生から見ると、早期診断、早期手当ということか実施されるのですから、国家としてはまことに望ましい状況だと思うのであります。さらに今度は国保に対する国庫補助というようなものも法的に確立された関係上、今まで実施されない都市等も、あるいは農村等も、相当のスピードで今後拡張されると思うのであります。これが全地域拡張されるということになりますと、かなり軽度な患者が、いわゆるこの国保を利用するようになると思うのであります。現在の情勢から判断いたしまして、普及の度合い、利用度等から考えて、逐年いろいろな統計も生まれるでありましょうが、新しく実施をしました地域が、何年くらいで平均化された普及度に向いておりますか。そういう点について、今度の分業問題とにらみ合せて、このスピードの度合いによっては、かなりの変化が国民生活の上に来るのでないかと思いますので、この点、もしおわかりでしたならば、お教え願いたいと存じます。

松澤風有司全国国民健康保険団体中央会総務部長

○松澤公述人 ただいまの御質問で、どのくらいのスピードで平均化されるということは、どういうことでありましょうか。

野澤清人自由党

○野澤委員 要するに、新しく町に国保を施行した、それで加入者や診療の程度というものが、逐年累増してくることはわかりますが、急激にふえる時期というものが、二年とか三年とか、期間があると思う。それ以後は平均化してくる、こういう意味でございます。

松澤風有司全国国民健康保険団体中央会総務部長

○松澤公述人 従来の経過から見ますと、国定健康保険が事業を開始いたしますと、急激に受診率がふえるのでありまして、これはところによりまして、非常な大きないわゆる受診率の増加を来たすと思うのであります。これは今お話しになりましたように、医療費負担に耐えられないという関係から医療を受けられなかった人が、非常に受けやすくなりましたために、せきを切ったように医療を受ける結果でございまして、これはいずれの国保が事業を開始した当時にも、見られる現象でございます。この現象は、大体二年ないし二年半くらいになりますと、上り詰めたものも一応安定する。過去二、三年くらい前の状況から現在を推察いたしますと、受診率が一〇〇から一二〇程度でございますが、現在二、三年過ぎますと、大体一五〇近くになっております。一五〇近くが大体最上ではないか。今後これが平行線をたどっていくか、あるいは多少下向きになるのではないかというようなことが考えられておりまして、大体二年ないし三年が一応の標準と見るべきであるというふうに考えられます。

野澤清人自由党

○野澤委員 大体の見当がつきました。そうしますと、今度国民健康保険の二割国庫補助というようなものがきめられて、今まで未実施地域であったところが、逐次国保を拡大していくという様相がますます強くなる。しかも受診率が二ヵ年や二ヵ年半は急激に上昇するという状況から判断しますと、今後の保険財政にも、相当各組合とも影響が強いと思う。そういう際に、現在のままの医療制度でいきますと、かなり経済的にも困難な面があり、二割で果して耐え得るかどうかわかりませんから、従ってその間には、いろいろとこれに対する対策等も生まれてくると思うのであります。そうした最中に、あるいは制限診療をするとか、あるいは軽易な診療はこれを保険給付から除くというようなことも、一部では考えられておるようでふりますが、今度のこの分業法というものは、昭和二十六年に、医師、歯科医師薬剤師との話し合いの結果、不満ながらこうした法律が生まれてきておる。この法律を来年の四月一日から実施しようというときに、突然これを廃案にする。またもとの二十三年の法律よりも、もっと逆行するような思想のもとに今度の法律というものが立案されておる。こういう状態では、先ほども宮尾さんからお話がありましたように、保険財政に対するところの施策というものは、大きいものから小さいものまで、あらゆる角度からやらなければならないときに、国保のように国民全般を対象とした保険の育成等から考えると、経済的な根拠からしましても、どうしても分業形態をとる。分業形態をとるということは、技術を侮辱するという意味ではなく、技術料を科学的に算定する根拠が生まれると思うのであります。物の対価と技術の対価とを合理的に組み合せていこうという制度でありまして、しかも、この間政府におきましても、あるいは薬剤師会等におきましても、無理やりに点数を上げろとか、あるいは調剤手数料をよこせというような闘争ではないのであります。つまり、正しい医療の姿に医師や薬剤師を配置すると同時に、いつでもこの関係が科学的に再検討のできるような行き方にしたい、これが分業の本旨であります。こうした新しい制度に、しかも漸進的にこれらの制度に移行する法律であります第二百四十四号の法律でさえも、これをもともとに帰してしまおうというような改正案が出たのであります。こうした面につきまして、実際保険の中枢にある健保の中央会といたしまして、あなた自身のお考えとしては、この医薬分業というものは、社会保険を育成する上において、大きな基本的な条件になり得るとお考えになるかどうか。あるいはまた、むしろ時代錯誤であるから、こんな制度は社会保険には要らないとお考えになりますか。現実に即したお答えでも、将来を見通したお答えでもけっこうでありますから、お答えを願いたいと存じます。

松澤風有司全国国民健康保険団体中央会総務部長

○松澤公述人 先ほど申し上げましたように、医薬分業ということは、考え方といたしましては一応納得できるし、それの方が合理的であるということは、是認できるのであります。先ほど地区の問題のお話がございましたが、そのほかに、これ以上の医療費の負担が増すということになりますれば、この問題については、経済的な関係から賛同ができないということが一般の空気であります。こういうふうに申しますと、この制度が果していいか悪いかという結論は、どうしても出ないのでございまして、将来の国保を育成するために、この制度を採用するかいなかというところまで追い詰められないのであります。結局あいまいもことした御返事になりますけれども、事実多くの保険者は、どっちにしてよいかわからず、あいまいもこというような態度が、事実の姿であろうと思います。  なお、先ほどお話の中に、現在の診療費の請求におきましては、いろいろ水増し請求もある、振替請求もある、架空請求もありますが、この医薬分業によりますと、そういうものが非常に節減できる、だから総体において上らないというようなお話に承わったのであります。それはその通りでありますけれども、また別に、医家が患者に対して治療するという場合に、かりに一点単価が十一円五十銭で安いと申しましても、やはり医学的の良心から、できるだけ最善の治療をしてやろうというのが医者の考え方であります。しかし、その人の経済的収入をあわせて考えて、あまり高価な、上等な薬を使えない場合もございまして、そういう場合には、その次善なるものを使うということになろうかと思います。もし分業になりますと、そういう点は、もちろん本人の負担というものを考えますけれども、自分が直接その料金を全部支払うのでなければ、比較的いいものを使うということにもなろうかとも思います。そうすると、結局診療費が上るということにもなりまして、そういう上る面、それからいろいろの水増し請求、架空請求、振替請求というようなものとのプラス・マイナスがどうなるかということは、わからないのであります。

野澤清人自由党

○野澤委員 松澤君のあいまいもこという言葉の意味は、今御説明になったように、いろいろな要素から判定がしにくいということだと思うのです。そこで、あなた個人の立場でも、あるいは団体の代表としてのお考えでもけっこうですが、要はこの医業分業というものが、その経済的な観点において、被保険者の利益になるかならぬかということが、あいまいもことしておるので、宮尾さんの言われたように、一応やってみなければわからないという考え方なのか、あるいはやる必要がないというお考えなのか、端的にお答えを願いたいと思います。

松澤風有司全国国民健康保険団体中央会総務部長

○松澤公述人 今の御質問は、いいか悪いか、結局やってみなければわからぬというのが現状であろうかと思います。

野澤清人自由党

○野澤委員 もう一言お尋ねいたしますが、それでは、そういう経済的な根拠から、医薬分業に対する熱意と申しますか、愛着と申しますか、理解と申しますか、あらゆる角度から検討されておるようでありますけれども、今度の改正案というものが、とっぴもないこういう時期に提案されて、しかも保険経済の基礎となるべき新医療費体系は十月でなければできない、あるいはまた医薬関係審議会で実施地域等をきめる結論が八月か九月でなければ出ぬ、こういうときに突然こうした改正案が出たのでありますが、この改正案の結論を出すのには、そうした新医療費体系や、あるいはまた医薬関係審議会の結論が出てから一緒に討議した方がよろしいか、それともまた、提案者の主張されるように、今日ただいまこれを採決して決定した方がよろしいとお思いになりますか、保険担当者としての立場から、一つ率直にお答えを願いたいと思います。

松澤風有司全国国民健康保険団体中央会総務部長

○松澤公述人 今の御質問に対しまして、いろいろ考えますと、やはり新医医療体系その他のあらゆる準備が整いましてから、それを勘案しながら、周囲左右の状態を見ながら御決定になる方がよいのではないかと考えるのであります。

野澤清人自由党

○野澤委員 なお荒井公述人にお尋ねしようと思ったのですが、事情を問いてみますと、全く特殊事情でありますので、分業にからんでよい患いの判定をするよりも、現実に即した獣医師としての立場があると思いますので、せっかく御公述を願いましたが、私の質問は以上をもって終ることといたします。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 岡本隆一君。

岡本隆一日本社会党(左)

○岡本委員 まず宮尾公述人にお伺いいたしたいと思います。この医薬分業の問題は、いろいろな観点から見られると思います。先ほど仰せのように、患者にどちらが十分な治療を施すことができるか、そういうふうな観点、あるいはまた経済的な面において、どちらがいいか、あるいはまた医師は調剤能力を持っておるということは、すべて各方面で認められておるところであるが、その持っているところの調剤能力に従って出てくるところの調剤の権利というものを制限し、剥奪することが正しいかどうかというふうないろいろな観点から問題にたっておるわけでございますけれども、私が本日お伺いいたしたいと思いますことは、この医薬分業問題は、保険経済と非常に密接な関係がある。従って、医薬分業が保険経済に及ぼす影響というものを、私たちは十分によく検討して、その上に立って、医薬分業をやることがよいか悪いかということの判定を下さなければならない、こう思うわけでございます。  そこで、先ほどあなたが仰せになりました言葉の中に、今、このたびのような医薬分業の改正案が出てきたということは迷惑に思う、従来のままで進んでいってもらった方がよかったように思うというふうなお言葉があったように思うのであります。そのことは、あなたは医薬分業が来年の四月一日から実施された方がいいというふうにお考えになっていらっしゃるのかどうかということを、まず最初にお伺いいたしたいと思います。

宮尾武男健康保険組合連合会会長

○宮尾公述人 私は今のお話におりました保険経済に医薬分業が非常に影響のあることだということについては、同感でございます。またそれがゆえに、被保険者に負担を増すようなことがあっては、これは反対である、こういう考え方を持っておりますが、現状の医療組織あるいは保険医療に関しましての支払い方式の問題、あるいは点数単価の問題、そういうような幾多の保険経済に及ぼす影響は、もっとウエートの多いものがたくさんあるのでありまして、そういう問題をここのところでどうしても突破していかなければならない時期にみな追い込められていると思うのでありますから、そういうものと同時にこの医薬分業の実施案というものが考えられますならば、少くとも万全の用意はできなくても、小部分の、ごく限られた部分については、実施してもいいのじゃないかというふうに考えております。

岡本隆一日本社会党(左)

○岡本委員 今度の法案がそのまま四月一日から実施されるといたしますと、小部分に行われるところの実験的な医薬分業、試験的分業というふうな範囲をはるかに逸脱しておるのでありまして、少くも医者が診療いたしました場合には、その半数以上、七割、八割という範囲で処方せんを発行しなければならない、こういうふうな法案になっておるのであります。従いまして、大都会ではほとんど分業が行われるというのが現行法の状態でございます。そういうことになって参りますと、私は保険経済に甚大な影響を及ぼしてくるように思うのでございますが、そういうふうな観点に立って、あなたはこの医薬分業というものが、現行のままで来年四月一日にすべり込んで、それでもって保険経済にさほどの影響がない、こういうふうにお考えになるのでありましょうか。

宮尾武男健康保険組合連合会会長

○宮尾公述人 私は現在の医療組織あるいは支払い方式、点数単価のような、ああいうままで医薬分業になった場合には、費用の増加が起るのだということを非常に憂えております。ですから、来年の四月からもしも実行されるならば、まずそういう解決をしていかなければならない問題が一緒にあると思うのであります。幸いにして政府がそういう努力をされておりますので、それもあわせて解決しながらやっていくならば、少数の地域においては可能じゃないか、こう考えております。

岡本隆一日本社会党(左)

○岡本委員 仰せのような形でありますと、新医療費体系というものは、国民医療費あるいは保険経済の中におけるところの医療費というものは、同じワクの中にとどめておく、その中において医薬分業が行われるのであれば、それはそれでもよかろうというふうなお考えの模様であるわけです。そういうふうなことになりますと、保険経済には一定のワクがある。そのワクの中で、新しく薬剤師の一群に、調剤手数料というものを取り分として持っていかれる。従いまして、医師は今、診断あるいは治療、それに加えるに調剤手数料というもので生活をしている、従って、調剤手数料という持ち分を取り去られますと、ただでさえ低い単価でつけている医師というものが、非常に大きな収入減になってくるということを御理解願えると思うのであります。そこで、問題になって参りますのは、現在の民間医療機関の姿であります。健康保険の被保険者の大衆が、非常にたくさん手近にあるということ、あるいはまた働きながらその医療機関が利用できる、夜間利用できるというような形でもって、民間医療機関を非常に利用しておるのです。その民間医療機関は、健康保険の単価が低く据え置かれておる。そのために来る収入減のために、だんだんその設備が荒廃しておるのです。日進月歩の医学についていけない。のみならず、十年、十数年前にようやく備えたレントゲン、あるいは顕微鏡というものが、時代おくれのものがそのままであるのみか、それがすでにがたがたになってきておる。それでも、新たにいいものを買うというような力を持たない。日本の医療機関の実態が、このようになってきておる。医療機関が質的に非常に低下するということは、自分の生命を預ける被保険者大衆に取っては、非常に大きな不幸なんです。従って、医療機関を現代の進んだ科学とマッチして、それにスライドして進歩させていかなければならない、そういう観点に立っていきますときに、医療機関に今よりもひどい収入減を来たすというようなことは、被保険者大衆に大きな不幸をもたらすものである、私はこのように考える。そういう観点から立っていきますときに、今の保険経済というものは、一群の薬剤師に調剤手数料を手渡すだけのゆとりがとてもないように私は思うのでありますが、あなたはどのようにお考えになりますか。御意見を伺わせていただきたいと思います。

宮尾武男健康保険組合連合会会長

○宮尾公述人 私は今の日本の国民経済の上から見、あるいは国民所得の上から見て、保険経済に限定してみましても、保険経済上の医療費の占める割合が、少いとは思っておらないのであります。従って、医療に従事されるお医者様の分け前が少くて、医療機関が荒廃しておるとは思っておりません。ただ、その医療組織なり、あるいは一点単価のきめ方なり、あるいは支払い方式のやり方なり、そういうものに不合理な点がある。しかも、そこへ医薬分業になって、薬剤師も生活を保障していかなければならないというふうなことになりましては、今の保険経済の総ワクをふやすということは、今の国民経済から見てなかなか無理だと思う。ただ、その総ワクの分け方が、医者と薬剤師のみならず、医療担当者の中でこういういろいろな問題が起るのは、結局医療担当者間の分配問題の不適正ということも、非常に多いと思うのであります。だから、そういうことのために、もしも新医療費体系が役立つならば、新医療体系の精神を取り、また支払い方式が悪いならば、支払い方式も改め、しかも、なおこれに加うるに、医薬分業の形にして技術料と薬剤を分けていく。しかも、技術料は技術に応じて取れるようにしていく。今のような一律平等な技術料のやり方は、私は不賛成でありますので、そういういろいろ合理的な医療の改善がなされて、そうしてから上でなければ、この費用の点については、私は無理だと思います。

岡本隆一日本社会党(左)

○岡本委員 医療機関全体としてごらんになる場合、それから公的医療機関と民間医療機関というものとを分けてごらんになって、あなたに一度よく研究していただきたいと思います。公的医療機関にありましては、税の負担もございませんし、あるいはまたその他いろいろな公けの補助というものもあるために、だんだん進歩して参っております。しかしながら、民間医療機関というものは、後退もしくは停止というふうな形でもって、ことに国民健康保険が広く行われているところの、全く保険財政に頼らなければならないような山村の医療機関というものは、非常におくれた内容を持っておる。これはあなた方、ことに松澤さんにも一度よく御調査願いまして、そして医療機関の設備の低下ということとか、また進歩しないということは、これは被保険者大衆に取って非常に大きな不幸をもたらすものだという観点から、よくお考え願いまして、その上に立って単価の問題をお考え願いたい。しかしながら、その問題は今日の本旨からはずれておりますので、その程度にいたしておきます。  先ほど松澤公述人も御発言になりましたけれども、広く医薬分業が行われることになりますと、保険経済に非常に大きな影響を及ぼしてくると思うのです。それは、処方が公開されるということになりますと、今度は新薬の流行ということが出て参ります。製薬会社は、売らんかな主義でもってどんどん新しい薬を作り、しかも新聞に一ページ大の広告をじゃんじゃんやる。往年「わかもと」が、しばらくの間に煙のように消え去りましたけれども、一時は全く今のマンボ・ブームのような勢いでもって「わかもと」ブームがありました。しかしながら、それは根も葉もないのであります。結核の治療薬にいたしましても、かつてはそういうものが幾つか出て参りました。ことに慢性になり、治癒しがたい病気になればなるほど、病者の迷いというものがあるものでありますから、そういうふうな宣伝に迷わされる。従って、どんどん、どんどん薬を流行でもってはやらせる。そういうことになりますと、今度は患者の方で、何か新聞に非常に有効なように宣伝され、ラジオでもって毎日、これはよくききますというふうに言われると、やはりその薬を求める。そうしますと、結局自由競争の今のような世の中にありましては、勢い愚考の求めに応じて、医者の方も、それが全くうつろな流行ブームであるということを心の中では考えながらも、やはり処方に書かざるを得ない。そうして、患者に精神的な満足を与えざるを得ない。こういう立場に医者が追い込まれるものでありますから、従ってどんどん、どんどんそれを利用して、新薬ブームが出てくると思うのです。またそういうものは、高くなければ値打ちがないのです。そう考えるのです。だから、そういうことで、非常に高価な内服薬の流行となって薬剤師側から出て参りまして、結局それは保険経済に甚大な影響が出てくる、こういうことを私は憂えているのです。そういうことば想像だからというふうに、あるいはあなたはお考えになるかもしれませんが、しかしながら、これは必至的な傾向であると私は思っておりますので、そういう点について、あなたはどういうふうにお考えになるか、一つ御意見を承わらせていただきたい。

宮尾武男健康保険組合連合会会長

○宮尾公述人 私は私的医療機関の荒廃については、それほど荒廃しているとも思わないし、また私的機関の収入が非常に少いというふうにも思っておりませんが、しかし、公的医療機関と私的医療機関の関係については、私的医療機関はやはり保護育成して、その能率のいい経済的な運営というものを、十分に助長していくべきだと考えておるのであります。そういう意味において、全体の医療組織を考えていく場合には、やはりそういう立場で十分考慮さるべきだと思うのであります。  それから後段の、いろいろるるお話しでございましたが、そういう問題については、われわれの方にも、申し上げればいろいろとあるのであります。そういうことをここで申し上げても、むだだと思いますので、ただそういうような非常な問題が出て参りますから、結局もっと医薬分業するにいたしましても、それと同時に、あるいはそれよりも前に解決していかなければならない問題が山積しておるので、それと同時に解決していかなければ、この医療の問題は解決しないと、こういうふうに考えます。

岡本隆一日本社会党(左)

○岡本委員 医薬分業の前に、あなたのお考えに従いますと、新医療費体系というものの樹立ということ、それ以外に大きな保険経済への政府の責任のあるところの援助というものが前提条件にならなければならない、こういうふうにお考えになっていらっしゃるというのですか、そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。

宮尾武男健康保険組合連合会会長

○宮尾公述人 大体はお話の通りに考えております。それには、やはり強力な行政的な措置が必要だと思っております。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 堂森芳夫君。

堂森芳夫日本社会党(右)

○堂森委員 宮尾公述人、松澤公述人にお尋ねいたしますが、先刻の御公述を聞いておりますと、国民健康保険あるいは健康保険連合会の方では、医薬分業になったら保険経済がどうなるかということは、まだわからない、こういうような御発言があったと思うのであります。私はあなた方の御発言のごとく、医薬分業というものに、原則的には反対いたすものではございませんが、なぜ反対するかと申しますと、まず医薬分業あるいは医薬分業を行うためには、第一に医療内容が低下しては相ならぬと思うのであります。これは第一の条件であります。また次には、医療費が高くなってはならぬ、これも一つの大切な条件であろうと思うのであります。また現在の医師の収入が、現在よりも著しく低下するということは、これは現在の医師の経済的な事情から申しましても、避けなければならぬことであると私は考えるのであります。以上のような三つの条件がぜひとも備わらなければ、分業をいたし、そうして強制分業をやっていくということは、きわめて無謀な企てであると考えるのであります。従って、医療費が高くなり、あるいは安くなる、こういうことは、あなた方が責任を持っておられますところの健康保険組合、あるいは国民健康保険組合というものにとっては、きわめて重大なる問題であると考えるのであります。従って、現在あなた方が責任を持っておられますところの連合会においては、どのような財政状態にあるか。現在政府管掌の健康保険が非常な赤字に悩んでおることは、御了承の通りでありますが、皆様方の組合連合会はどういうような状態になっておるか、簡単にお示しを願いたいと思います。

宮尾武男健康保険組合連合会会長

○宮尾公述人 前段にお述べになりましたことにお答えいたしますが、私どもは、医薬分業になって、費用が多くなるか、被保険者の負担が多くなるか、わからないと申し上げたのではありませんで、現在の医療の組織のままで、たとえば新医療費体系のような考え方が取り入れられずに、あるいは支払い方式というようなものが今のままで、この上に医薬分業というものをすぐやるということになれば、必ず費用がかさむと思っておりますので、そういうことで被保険者に負担をかけるという点で反対せざるを得ない。その点は、はっきりしております。  それから保険経済の問題でありますが、政府管掌は御承知の通りでありますが、組合管掌におきます医療費の内容を検討してみますと、二十六年の医療費に対しまして、二十九年は二倍半になっておるのであります。これは政府管掌も組合管掌も、ほぼ同じであります。そうして健康保険の組合におきましては、年間の予算を組んでやっておりますので、大体本年も医療費が上るだろうという安定点を見出して予算の認可を受けておるのであります。年間においては、普通ならば赤字が出ないのが当りまえなのでありますが、そういうようなことで、医療費の増大していることは実際でありまして、またその間被保険者の指導、あるいは医者の監査というようなことが十分に行われるかどうかということも、保険経済に非常に影響がありますので、そういう点については、政府管掌とは違いまして、組合管掌の多くは三、四千人の被保険者を対象としておりますので、被保険者の監督もできまするし、また医療を行います医療担当者との間の連絡も十分につきますために、割合に適正な診療が行われていると思っております。そのために組合では、そういう傾向が現われて参りますれば、自動的に自分で防衛手段を講ぜざるを得なくなって参りまして、自分で自主的にそういう対策を講じ、あるいは付加給付を減らすとか、あるいは保険施設をしばらく待ってもらうというようなことを、被保険者と話し合いの上で実行して参っております。そのために、甲の組合と乙の組合とを比べますと、保険経済の差は非常に大きくなって参っております。これは経済界も同じでありますし、そういう自主的な制度でやっております限りは、甲乙が出てくるのは当然だと思うのであります。そういう自主的な手段を講じておりますので、非常に無理な予算ではありますけれども、どうにかこうにか本年度の予算を組んで認可になったというような次第でありますけれども、医療費の増高ということについては、重大関心を持っておりますので、この点は、こういう情勢がなお半年続くといたしまするならば、各健康保険組合は、非常に苦しい立場に追い込まれるのではないかというふうに思っております。

松澤風有司全国国民健康保険団体中央会総務部長

○松澤公述人 国民健康保険の経済的事情を申し上げますと、終戦後、経済難のために、この制度が崩壊するのではないかと思われたような生死の岐路を彷徨いたしましたが、二十三年に市町村公営となりましたために、やや持ち直し、その後二十六、七年まで、赤字の組合が続出いたしまして、かなり経営に困難を来たしたのでありましたが、二十八年から助成交付金が交付されましたために、大体国民健康保険の財政は裏づけができまして、これによって比較的順調な歩みを進めておるのでありますが、助成交付金が交付されましても、これに国会の御要望もあり、厚生省の強い指示もありまして、国民健康保険の給付の内容というものはレベル・タウンである、もっとこれの内容を向上しなければいけないという強い指導があったものでありますから、この助成交付金を大体医療給付の拡充につぎ込んでおります。たとえば、診療日数の制限を撤廃するとか、葬祭料や出産手当金の一件五百円くらいの給付のものを千円以上にしたとか、これこれの薬は制限治療にするとか、本人負担をある程度まで緩和するとか、入院食費も、本人負担のものを全廃もしくは一部少額を本人負担にするとか、こういう意味で、相当給付の向上がはかられております。なお助成交付金を交付されたために、それだけの収入がよけいに国保財源に入るわけでありますから、これをそういう面に使って、従来一般会計から繰り入れられておるところの繰入金を減らすことも相ならぬ、こういうような厳重な指示があったわけであります。それで結局助成交付金が入りましても、出る方も相当出ておりますので、事業内容としては向上いたしましたけれども、財政的には余裕のあるというところまでいかないのが実際でありまして、現状におきましては、大した赤字もなくとんとんで二十九年度の年度決算を済ませたというのが、大体の形勢でございます。

堂森芳夫日本社会党(右)

○堂森委員 宮尾参考人にお尋ねいたしますが、政府管掌保険は非常な赤字であるが、しかし組合管掌の健康保険も、同様に非常な危険な状態にある、こういうふうな御証言があったのでありますが、これらの原因はどの辺にあるか。また医療費が非常に高まってきた、これはどういうところに原因があるのか。その点お調べになっておると思いますので、御説明を願いたいと思います。

宮尾武男健康保険組合連合会会長

○宮尾公述人 医療費がこの一両年のうちに非常な増高を来たしたということにつきまして、いろいろ原因があげられていると思うのであります。私は医療の内容が進歩していけば、上ることは当然であるとは思っておりますが、かほどに急激に上ることは、いかに考えてもノーマルな状態ではないと思っておりますので、医薬分業をいたすについても、そういう社会保障制度を推進する施策を国家がお考えになります場合にも、やはりそういうものと一緒に考えていただきたいと思っておるのであります。その増高しました大きな原因は、やはり結核に対する費用が非常に大きくなっているということだろうと思います。これは政府管掌よりも組合管掌の健康保険組合の方が、結核に対する費用は多いのでありまして、組合によって多少は違いますが、大体四〇%から五〇%に達しております。しかも傷病手当金というようなものを入れますと、半分以上は結核の費用でありまして、こうなりますと、もう健康保険は、むしろ結核保険に姿を変えてしまったといっても過言ではないような状態になっておるのであります。そういうことが一つと、それからだんだんに健康保険の信頼度と申しますか、国民あるいは被保険者からの信頼度が増して参りますと、それに伴うていろいろな弊害も一緒になって出て参ります。また医療担当者の方から、私的医療機関等において、それによって生活を立てていかなければならないような時世になって参りますと、健康保険関係の上には、また悪い面もそこに一緒になって働いて参ります。それが過剰診療であるとか、あるいは不正受診であるとかいうような姿になって出てくるのであります。そういうものが一体どのくらいあるかということは、いろいろに論議されておりますが、私どもの推定では、やはり一割から二割そういうものがあるだろうというような、大ざっぱな考えではありますが、持っておるのであります。そのほか医療組織の問題が、先ほどからたびたび申し上げますように、支払い方式の問題であるとか単価のきめ方であるとか、あるいは今度問題になりまする医薬分業によるときの点数単価のきめ方であるとかいうようなことが、やはり大きく響いて参りますので、そういう点から考えますと、私どもは三十年来これほどまでに国民の信頼をかち得てきた健康保険は、しかしこういういろいろな欠点を内包しながら成長して参りましたので、この際に——たびたび申し上げるようですが、大きな壁にぶつかっておりますので、医薬分業よりも、なおさらもっと早くその問題を解決していただけば、そこでおのずから医療費の公正なる分配もできる、あるいは医薬分業というようなものもうまくいくのじゃないかと思います。くどく申し上げるようですが、今のようなままで、このまま医薬分業が行われたとするならば、私どもは被保険者に負担が増し、保険経済に影響するところが多いのではないかというふうに思います。

堂森芳夫日本社会党(右)

○堂森委員 厚生省が昨年来唱えておりますところの新医療費体系でありますが、実は私も昨年以来各地方の、プライベートな病院ではなしに、たとえば、私の選挙区の福井県の日赤病院であるとか、あるいはその他各地のパブリックな病院についても、いろいろ調査してもらったのであります。そうして新医療費体系によって病院の経済がどうなるか、こういうこともいろいろ調査してもらったのであります。そうしますと、ほとんどの病院は、非常な収入減に相なって参るのであります。これらの病院は、何ら利潤を追求するという目的で設けられておる病院ではございません。しかし、表面はそうでありますが、実際には、日赤といえども独立採算制でありますから、従ってほんとうの意味のパブリックな病院とはいえない点もありますが、ともかく個人的な、利潤を求めた病院組織でないことは事実であります。このような病院では、新医療費体系のもとに病院の収入というものを計算しますると非常な収入減がくる、こういうことは争われない事実でございます。もっとも、病院が赤字になっても、患者の治療内容がよくなり、あるいは保険経済が赤字にならなければ、それでおれたちの組合はいい、こういうふうなお考えには、もちろんならないとは思いますけれども、それだけでは、私は日本の医療制度は根本的に解決されないと思うのであります。従って、今日日本の医療制度の大きな問題は、製薬事業にも大きな原因があると思います。私は数年前に、医薬分業を行うのかどうか、こういうことについて本会議で質問をいたしたことがあります。当時、日本の製薬会社が年々支払っておる広告費というものも、計算をいたしたことがあります。そうすると、莫大な費用を製薬事業は使っております。いわば、患者は薬を飲むというよりは、広告料を払っておるような状態であるのが日本の製薬事業であります。これらの製薬事業というものは、非常に大きな宣伝費、全く手放しの自由企業であります。一方医師の側あるいは健康保険その他を見ますと、これは完全にある種のコントロールを政府から受ける、こういうことがいえると思うのでありまして、医療制度を取り上げますならば、医師の治療あるいは手術その他の診療と製薬というものは、車の両輪のごとき関係にあると思うのであります。一方の医師の診療方面は、一つのコントロールを受けて、おる、しかるに製薬事業は手放しの、全くしろうとだましのような広告をどんどんやって、自由企業の姿そのままで放任されておる、こういうことにも、私は日本の医療制度にとって大きな悲劇があると思うのであります。従って、私はさっき宮尾さんに質問申し上げましたときに、実は保険経済において占めるところの薬というか、あるいはそういうふうなものを、あなた方の方で経営しておられる病院も、全国的には相当あると思いますが、そういう方面の会計の内容も実は承わりたかったのでありますが、そういう御発言はなかったと思います。とにかく、日本の医療制度について大きな問題は、やはり製薬事業である、こういうことも私は言えると思うのであります。こういうような点について、健康保険というものの中心に立っておられますあなた方は、どのようにお考えになっておるか、御答弁を願いたいと思います。

宮尾武男健康保険組合連合会会長

○宮尾公述人 私は公立病院に独立採算制をとらせて、外来患者を数百人持たなければやっていけないような状態に置いておくということは、不合理だと考えます。前にも申し上げましたように、そういう公的医療機関と私的医療機関とが、一つの組織になりまして医療網というものができていくので、もっと公的医療機関は私的医療機関を助け、私的医療機関は公的医療機関に依存していかなければいけないのじゃないかと、そう思っておりますので、公立病院の独立採算制は、もちろん絶対に何とか考えなければならぬと思います。  それから製薬の問題については、大体お尋ねの通りに私どもは思っております。先生は医療制度の悲劇だとおっしゃったのですが、私どもは製薬をそのままにしておいて、医薬分業で薬剤師と医者が争うというのは、これは喜劇だと思います。

堂森芳夫日本社会党(右)

○堂森委員 いろいろお尋ねしたいのでありますが、時間もございませんし、公述人の方々にもお気の毒と存じますので、私は質問を終りたいと思いますが、ともかく現在政府が考えておるような、新医療費体系というようなもので医薬分業をやっていく、これならば、なるほど保険経済にさしたる変化なしに医薬分業が行われると思いますが、そのようなことを行うならば、これはまた大きないろいろな問題が派生して参るのでありまして、そのような事柄だけで足りるとするような、きわめて無責任な態度をとって参りますならば、ひいては患者にとって大きな不幸になると思うのであります。と申しますのは、やはり医師も生活していかなければならぬ、また医療内容についても、いろいろな問題が派生してくる、こういうことでありまして、現在のような姿で、あるいは新医療費体系のようなもので医薬分業をやっていこう、こうするならば、私は大きな社会問題を今後起して参る、こういうふうに考えておるのでありますが、もう申しません。ただ健康保険組合連合会あるいは国民健康保険団体中央会の枢要な地位におつきになっておる宮尾さん、あるいは松澤さんあたりが、もっと、医薬分業になったら一体どうなるのか、こういうことについて、一つ大いに御関心をお持ちになって、やってみなければわからぬというのでなしに、大いに日本の医療界の進歩、ひいては日本の社会保障の発展のために御協力下さいますようにお願い申し上げまして、私の質問を終ります。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 公述人の方々には、お暑いところをどうもありがとうございました。  明二十二日、午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時十三分散会

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