社会労働委員会 第18号
- 発言数
- 63 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1955/06/03
会議録
○中村委員長 これより会議を開きます。 まず結核予防法の一部を改正する法律案及び毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。 両案は前回の委員会において、すでに質疑を終了しておりますので、直ちに討論に入るのでありますが、両法案の討論に関しましては、別に通告もありませんので、いずれもこれを省略し、直ちに表決に付することに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中村委員長 御異議なしと認めます。よって両法案の討論は省略し、直ちに採決いたします。両案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中村委員長 御異議なしと認めます。よって両法案は、いずれも原案の通り可決いたされました。 なお、両法案に関する委員会の報告書の作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中村委員長 御異議なしと認め、そのように決します。 —————————————
○中村委員長 戦犯者の釈放並びに遺族援護の問題について発言を求められております。これを許可いたします。山下春江君。
○山下(春)委員 私は、緊急の問題でありますので、この際政府の態度をお聞きしたいと思うのでありますが、先日仮出所を許されましたオランダ関係戦犯の方のうち韓国人二名の出所延期問題について、質問をいたしたいと思うのであります。 巣鴨に服役いたしております戦犯の方々の釈放は、私どもの切なる念願にもかかわらず、昨年末以来ほとんど停頓状態となりまして、心を痛めておりましたところ、過日、米国関係三十八名の仮出所に引き続きまして、オランダ関係十名の仮出所が許されまして、ようやく愁眉を開くことができたのであります。しかるに、このオランダ関係者は、去る五月三十一日に出所したにかかわらず、うち二名の韓国の方については居住地がきまらないという理由で、政府当局はその出所を許さなかったのであります。オランダ政府は仮出所を許し、当人たちは出所を切望しているというのに日本の政府が出所を拒否しているという珍現象の原因は、その出所日までに、彼らの住居をあっせんしてあげることができなかったということにあるようでございます。 そもそも仮出所を許された場合、なお残刑期間の間は内地に居住を制限され、特定の司法保護司の観察に付されることになっている。知らぬ他国の獄中から突然放免された者が、自分で住居を探すなど、今日の日本の状態においてはとうてい不可能であります上は、これらの者に住居を世話してやるということは、当然に政府の責任であると存じます。しかるに、今回何ゆえにこのような不始末な結果となったか。ただいま巣鴨の中にも、この問題をめぐって、所内の韓国の方々と当局の間に紛争が起っている模様であります。一体この責任はどこにあるか。政府当局はこれをいかに解決しようとしているのであるか、お尋ねをいたしたいと存じます。 なお巣鴨には、今回の二名の韓国の方を除いても、あと十八名の韓国人、三十八名の台湾人、合計五十六人の第三国人の方々が残っておられるのでありまして、今後とも同種の問題は続発の可能性があるのでありますが、事は相当に重大な問題でありまして、一巣鴨の所長に一任して済まし得る問題ではないと存ずるのであります。この際政府は、一括してこれが根本対策を講ずるの用意があるかどうかをお尋ねいたします。 さらにまた、今回仮出所を許されたこの二名の韓国の方は、住宅及び就職のあっせんと三十万円の生活資金の支給、もしくは貸与を求める点で、政府に請願書を提出していると承知いたしておりますが、過去における彼らの境遇及び今日の心情に思いをいたしますとき、その金額はともかくといたしまして、これらの要請は一々もっともな次第であると存じます。従って、日本軍隊に従軍せしめられたがゆえに戦犯に問われ、日本人として処罰せられた彼らを、今日第三国人なるゆえをもって弊履のごとく見捨てて顧みないとすれば、ついには隣邦に信を失して、国際関係に暗影を投ずるのおそれなしとしないのであります。政府は、これら請願の趣旨に関しまして、いかに対処せられるか、そのお考えのほどをお聞かせいただきたいと思います。 以上一括して御答弁を願います。
○中尾政府委員 ただいまの韓国の二名の方に対しましては、大へん重要な問題でありまして、私たちといたしましても非常に心を痛めて、目下せっかく奔走中でございます。仮釈放が許可できなかったという事由は、やはり居住地がきまりませんと、仮釈放の性質上許可を与えるわけにいきませんので、その住居地の決定を急いでいるわけでありますが、何分にも——日本人の場合は内地にいろいろな関係がありまして、家なんかもあるのが大部分でありますので、そういう問題はほとんど起らないのでありますが、韓国人のような場合には、確かにその問題があるわけであります。しかし、何分にも仮釈放というものは——満期の場合は釈放の時が予定できるので、あらかじめその措置をとっておくわけでありますが、仮釈放の場合にはこちらの予期しない時にその許可が参りますので、すぐ住居を見つけることが困難という実情なのであります。これまでも、そういう場合には、大てい住居を見つけることができましたし、なお働き先で住み込む場所があったわけであります。現に年末に出られました方なんかは、その雇い主の方で、住み込みで雇ってくれたというようなわけでありました。しかし、今回はちょうどそういうところも、いろいろ探してみておりますが、いまだに見つかりませんので、厚生省の方に頼みまして、引揚者としてそういう場合の住居のごあっせんを願うようお願いしているわけでありまして、われわれもいろいろその方面につきまして、あちらこちら交渉しているのでありますが、まだ確定的に住居がきまるというところまでに至っておりませんのは、大へん申しわけないことでありますが、事情はそういうふうになっているわけであります。 なお、残っておりますところの五十数名の方たちについてでありますが、これも今さき申し上げたような、いつ釈放になるかわからないというような事情からいたしまして、今のうちからそのためにあき部屋とか、あき屋とかいうものを作っておくということは、非常に困難な、むしろ不可能な事情でございますので、やはりそのつどただいままで努めて参りましたような方法で努力していくより、現在のところは方法がないのじゃないかと考えておりますが、なおしかし、何かいいところがありましたら、そういう者の居住場所につきまして、できるだけ努力をいたすつもりであります。 なお、請願書のことでございますが、就職のあっせん、これはもちろん努力いたしております。現に今度出られます二人の方につきましても、内定はいたしたのであります。一人は三和ゴム、一人は北見木材というように、話は大体きまっているわけでありまして、ただこの上は出ればよろしいということになっているわけであります。なお三十万円のことにつきましては、これはちょっと今のところでは、そういうことは不可能でございますが、しかし、できるだけ何とかしたいということで、厚生省の方にお願いしまして、いろいろなものをいただいております。現にそのために、今度出られます二人は、六万二千円ばかりの金を持って出られるというわけになっております。 現在のところでは、さような状況でございます。
○山下(春)委員 法務省の手を離れるといっても、まだ完全に離れておりませんが、今、厚生省の援護局長にお願いしているということでございますので、援護局長の方でもその後何かお手配があったと思いますが、いかがでしょう。
○田辺政府委員 巣鴨の戦犯者の中の第三国人、朝鮮、台湾出身の方々の処遇の問題でございますが、これは日本人でないだけに、いろいろデリケートな問題がございまして、取扱いについては特別の考慮を払っている次第であります。大体の考え方といたしましては、巣鴨に入っておられる方は、朝鮮、台湾人であるといなとにかかわらず、全体を未帰還者並みに取り扱う、こういう考えであります。ソ連、中共に抑留されている未帰還者と同様に取り扱う。従ってそこを出所した場合はちょうど引揚者が内地へ帰ってきた場合と同じように考えて、同じような処遇をする、こういうことになるわけであります。現にこの未帰還者留守家族等援護法という法律におきましては、平和条約第十一条の裁判によって拘禁されておる者については、その拘禁者は未帰還者と見なす、そうしてこの法律を適用すると書いてあります。それで第三国人は、一応本文では除かれておりますけれども、附則においてこれを日本人並みに扱うということにしてあるわけであります。従ってあそこを出所した場合におきましては、仮出所の場合であろうと、満期の場合であろうとを問わず、受け入れの施設につきましては、引揚者が内地へ帰ってきた場合と同じような考えで、それに準じて扱うということにしてあるわけであります。 実はこれは以前は問題なかったのでありますが、と申しますのは、法務省の御関係、御指導になっております団体におきまして、身元引受人となって、その団体が経営している施設に受け入れをする、こういうことになっておったのでありますが、いろいろな事情で、そういった団体がこれらの方々をお引き受けしなくなったという事情があるわけであります。そこで厚生省の方で何とかしろという御要望でありますので、昨年台湾の方々が出所いたしました際に、東京都におきまして引揚者の住宅施設にこれを入れたわけであります。今回の二名につきましても、そういう線で東京都に指示をいたしておりまして、東京都も原則的にはそれを了承しておるわけでありますが、朝鮮関係の方を受け入れるのは初めてでございますので、将来いろいろとトラブルが起ってはならない、入るときから、そういうことがないようにはっきりさせて、そうしてお引き受けをするようにしたい、こういうことで慎重にその点を検討しておられるわけであります。原則的には、東京都で受け入れるということは了承しておりますので、どこに入れるか、入れる場合の条件はどうするかということについて目下慎重に検討しておりますが、早晩それが決定いたしましたならば、そこでお引き受けするようになると思います。 それから今後出所する方につきましては、何かそういった方々だけのものとして、一つの施設を確保しておいてやるということも一つの考え方だと思いますが、いつ出所されるかわかりませんので、あらかじめ大きな施設を確保しておいてあき家にしておくのもどうかと思いますし、また一カ所に集中することもどうかという気がいたしますので、東京都には、そういった施設がたくさんあるわけでございますが、そのあいているところに、わずかの人数でございますので、入れるようにしていった方がいいのではないかと一応考えております。なお、この点は、よく研究をいたしたいと考えております。 次に、請願書の問題でございますが、これは先ほど申しましたように、厚生省といたしまして処遇する場合におきましては、引揚者以上の処遇をするということは困難であると思っております。その請願の一点であります未帰還者留守家族等援護法においては、自分たちは差別待遇を受けておるということを主張するわけでありますが、留守家族等援護法というのは、これは内地に住んでおる留守家族でないと、私の方としては援護をするわけに参りません。従って日本人でありましても、内地に留守家族がおりません場合においては、援護の手が及ばない。逆に朝鮮、台湾の方でありましても、内地に家族を持っておられる場合においては、もちろん援護の手が及ぶわけであります。ところが、実際問題としては朝鮮、台湾系統の方は、朝鮮、台湾に御家族が住んでおるわけでございますので、留守家族手当は、現実的には支給されないという結果になっておるわけであります。これは行政機関の管轄という点から申しまして、やむを得ないことでございます。そこで、私どもでは、しかしそういった差別待遇という感じを受けることは好ましくないと考えましたので、何かしら特別の処遇をすることができないかということをいろいろ研究しまして、昨年以来、盆暮れに六千円ずつのお見舞を差し上げることにいたしたのであります。これが理屈と申しましては、内地の方でありますれば、御家族もときどき面会に行けるし、またときどき御家族のところに帰っていくこともできる、また地元の方々がときどき来てお見舞して下さる。ところが朝鮮、台湾関係の方は、そういうことができない。そこで、せめて若干の見舞金を差し上げまして、それでいろいろ御慰労、お見舞申し上げるということが必要ではないか。これは日本人の戦犯者には、そういうことはしないということで、昨年以来盆暮れに六千円ずつの金を差し上げて、これでお見舞の気持を表わしているわけであります。 それから、あそこを出所した場合におきまして、三十万円の生活資金がほしいというようなお話でありますが、これもその主張の根拠といたしましては国家補償——拘禁すべからざるものを拘禁しておったのだから、国家で損害賠償として生活資金を出せということを言われておるようであります。この点は、実際問題としてはなはだ困難でありますし、また私どもの方の問題でもありませんので、一万円の帰還手当を増額することが適当であるかどうかということにつきましても研究しましたが、これも内地の一般の引揚者以上に処遇するということが困難な事情でありますので、何かないかということで、いろいろ相談いたしました結果、戦争受刑者世話会という団体がございますので、その団体ともう一つの団体から、合計三万円の金を、出所するときには第三国人に差し上げるということにいたしたわけであります。これは日本人として召集を受けらまれして、また希望せられまして、りっぱに任務を果せられた結果、それが災いとなって今日戦犯としてつながれているわけでありますので、何かしら日本側として特別なお見舞を差し上げることが必要ではないか。かりに政府でなくても、日本全体としてするということになればいいのではないかということで、日本全体の代表者という意味で、戦争受刑者世話会の方にお願いいたしまして、三万円だけ特別にそういう方方に差し上げることにいたしております。従いまして、三万円の金と政府の金と、それから従来たまっております俸給を、出たときのためと思ってためてあります、それを合せますと五万五千円程度の金になるわけであります。それにさっき申しました見舞金六千円、それから帰郷旅費と申しまして、引揚者が舞鶴につきましたときには、自分の郷里に帰るまでの距離に応じまして千円ないし三千円の旅費を差し上げておりますが、今度は帰るところが東京でありますので千円、合計六万二千円だけ差し上げるわけでございます。 就職のあっせんあるいは所内における職業補導という問題につきましては、主として法務省の方で御努力いただいているわけであります。私どもといたしましては、先ほど申しましたような考えに基きまして、政府だけの力でなしに、関係団体にも御相談申しまして、できるだけの処遇をして参ったのであります。いろいろ問題が多いようでありますので、今後とも関係当局と相談をいたしまして、できるだけ処遇をして参りたい、かように考えております。
○山下(春)委員 ただいまの御説明、よくわかりましたが、私、今質問の際に、請願の第三点の金額等につきまして、全額をどうするかというようなことは別として伺っているのでありまして、その点は、厚生省でいろいろな御苦労をなされて、それだけの御誠意をお示しになったことは、大へんけっこうだと思いますが、それでなく、住居の問題であります。オランダは仮出所させると言う、本人も出たいと言うのに、日本政府がそれを出ては困るというような立場になったことは、実におかしなことでありまして、あとに残っております五百数十名の戦犯の人たちも、一日千秋の思いで早く出所したいと思っているにもかかわらず、今後もこういうことが起るのではないかという不安を全員が感じているような状況を出現したことは、はなはだ遺憾でありまして、これは関係諸国に対しても、非常におもしろくない影響を与えることになると思うのでございますし、それから、そういったような重大責任を、非常にたくさんの人間がいるあの巣鴨拘置所の中で、あの力のない一所長が、この責任を負って一人でいじめられておるのを、何とかよく考えましてなんというのんびりした時間でないので、矯正局長に再びお答えを願っておくのでありますが、そんなのんびりした問題ではございません。あなたは、もちろん受け持ちでございますから、所内の空気をよく御存じであろうと思います。あの力のない所長が一人でいじめられておるのを、政府がぼんやりながめておるというのは、奇怪千万だと思うのであります。よくお考えになることはけっこうでありますが、すみやかな機会に住宅をあっせんできるかどうか。あっせんするという覚悟のほどを一つお聞きすれば、私はこれで終ります。緊急な問題でございまして、そんなのんびり研究していただく時間のない問題でございますので、重ねて御決心のほどを承わって質問を打ち切ります。
○中尾政府委員 むろんおっしゃる通りのことでございまして、決して私たちは、研究するということで拱手傍観しているわけではございません。現に昨日も厚生省に参りまして、またその足ですぐ東京都に参りまして、十分時間をかけて折衝しております。なおまた本省の係の者も、いろいろなところに出ていろいろ折衝しておるわけでございます。ただ、事柄が事柄だけに、熱意だけで一ぺんには結果が出てこない。まあ私たちの力が足らないということもございますが、そういう次第でありますので、もちろん、この点は所長と一緒に私たちも苦しんでおりまして、すみやかに解決をしたいという熱意を持っております。
○中村委員長 関連して受田新吉君より質問の申し出がありますので、これを許します。受田君。
○受田委員 一言だけお尋ねしますが、外国人である韓国人に留守家族援護法の適用をいたしまして、これに国家で保護するところの援護資金が出されておりますかどうか。身分が外国人である者に対して、援護法の適用がされておるかどうかをお伺いします。
○田辺政府委員 先ほど申し上げましたように、法律の対象になっております。
○受田委員 援護法の対象になっておるということになりますと、韓国人で戦時中日本人として召集を受け、日本人として戦死した当時の日本軍人があります。その人々の遺家族は援護法の適用を受けておりますか、いかがですか。
○田辺政府委員 援護法は、御承知の通り恩給法を受けておりますが、元の恩給法では、国籍を離脱した場合においては受給権を失うということになっておるわけであります。失権することになっております。従って、戦死した当時において日本人であった場合におきましては、当然その遺族には恩給法上の公務扶助料を受ける資格が発生したわけでありますが、その後、講和独立と同時に国籍を離脱されました関係上、その時をもって失権したことになっておるわけであります。これは留守家族援護法の建前と違っておりますが、留守家族援護法におきましては、従来からの経緯もございましたので、法律の対象にいたしております。片方はそういう法律上の大原則がありまして、日本の国籍を離脱した場合においては、受給権ないし受給資格を失うということがはっきり書いてございます。援護法もそれを受けまして、現在そういう方の御遺族には、受給権及び受給資格のない関係上、弔慰金、年金を支給しておらないのであります。
○受田委員 これは重大な問題だと思うのです。まだ未帰還者である場合には、韓国人であっても、巣鴨で御苦労しておられる人々には、国家が援護法の適用によって保護を与えておる、一たびその対象からはずされると、つまり巣鴨から出てしまうと、もはや何ら援護を受けることができない、また恩給法では公務扶助料も受けることができない、こういうことになりますと、現に日本にそのまま住んでおって、何ら日本人と変ることなく生活しておる韓国人、戦争中は日本軍人として召集を受け、日本軍人として戦死した者の遺家族で、韓国に帰らず現在日本にそのまま住んでいる者が、恩給法の対象からはずされておる、援護法の対象からはずされておるということは、非常に片手落ちだと思うのですが、この点、政府が法律の対象として人を二様に解釈するという結果が起っておると思うのであります。これは基本的にこの際立て直す必要はないのですか。日本軍人として戦死した、そして現在その遺家族が日本人と同じ生活をしておる、現に日本に住んでおる、ただ途中で国籍が強制的に離脱されておるという立場が昔と変っておるだけの者は、当然国家の責任において——日本人として戦死した者をほうりっぱなしにするのは、大へんなことだと思うのでありますが、この点もう一ぺん……。
○田辺政府委員 この点は援護法、恩給法が復活する時からの問題でございます。戦死者以外の方で、恩給法上権利が発生しておって、講和独立後恩給法上の権利を失った方もおありになると思います。この問題は、御承知の通り一つの問題ではあると思いまして、私の方では機会あるごとに問題を提供しておるような状態でございますが、これはやはり台湾及び朝鮮との間の外交上の問題もございまして、その折衝の一環ともなっておる問題でございまして、外務省でも御検討になっておる点であると承知しております。これは厚生省だけではどうにもならぬ問題でありますが、ごもっともでありますので、今後とも関係機関とは十分連絡を続けていきたいと思います。 —————————————
○中村委員長 次に、けい肺及び外傷性せき髄障害に関する特別保護法案を議題として質疑に入ります。山下春江君。
○山下(春)委員 ただいま議題となりましたけい肺等の保護に関しまする法律は、関係当事者の長年の努力が実を結んだことに対しまして、まことに御同慶の至りだと存じます。けい肺病は、昔からよろけ病といわれ、不治の病とされておる人道上まことにゆゆしき病気でありますが、現在けい肺にかかっております状態を、一応お尋ねをいたします。
○富樫(総)政府委員 けい肺につきましては、終戦後特に問題になりまして、それに応じて、労働省におきまして、特に昭和二十三年ごろより巡回検診に努めて参っております。その間に、過去七年間におきまして、この法案で申します第四症度、すなわち休業して療養しなければならないというものに該当した者の総数は、約二千名近い数字でございます。しかして現在労災保険に基きまして療養中の患者は、九百七十数名おるわけでございます。なお詳しいことは御質問によってお答えいたします。
○山下(春)委員 そういった不治の病ということになりますと、医療上非常にめんどうな病気だと思うのでありますが、今、法律をお作りになりまして、このけい肺を真になおし得るお医者様が日本にいるのでございますか。おればなおるはずでございますが、どういう状態になっておりますか。
○富樫(総)政府委員 けい肺は、今日の医学的段階におきましては、日本といわず、先進諸国におきましても、けい肺そのものを治療してなおすという医学の段階には、遺憾ながら到達しておらないのでございます。従いまして理屈から申しますと、そのような不治の病について療養する、治療するということは、言葉の上におきましては矛盾とも申し得るのでありますが、しかしながら、けい肺そのものの根治は困難でございましても、けい肺に基きまするいろいろな苦しみ、息切れとか、たんとか、胸痛とかいったようなものにつきまして、できるだけの対症療法をいたしまして、患者の症状を進行させない、悪化させない、あるいは心持を軽快にするということの治療は相当行われております。本法にいう治療というのも、主としてさような点に重点があるわけでございます。
○山下(春)委員 これは大事な点のように思いますから、できれば大臣の御答弁をいただきたいと思いますが、このけい肺患者に対します保護措置の経費につきまして、国が三分の一、事業主が三分の二と規定してありますが、この費用の負担の割合は、どういう理論上の根拠によっておきめになりましたのでしょうか。
○西田国務大臣 別に理論上はっきりした見解に基いて決定したわけでございません。さっきも基準局長が答えましたように、治療の方法がないという現段階におきましては、私個人の考え方では、これは事業病ではあるけれども、まず防止ができない、しかも、一たん病気にかかった者は、第四症状になった場合には完全治療の方法がない。従って、これは国民病的な見地に立って、何らかの措置を講ずべきであろうという見解を私はとりまして、そうして大蔵省と折衝の段階におきましては、全額国庫負担すべしという議論にいったのでありますが、世界の立法例を調べてみましても、かつまた、さっき申しますように、現在労働基準法によって事業病として扱われておりますし、世界でもそういった取扱いをしておる観点からいきましても、一挙に国庫負担に持っていくということが困難な情勢でございましたので、理論的な根拠は別にございませんけれども、とりあえず三分の一でも国庫が負担することによって、事業主の負担の軽減にもなるし、また将来の問題として、国庫負担の増額の端緒も開かれるであろうという考え方から、一応三分の一で折衝を打ち切ってきたのでございます。
○山下(春)委員 ただいまの大臣の御答弁で、非常によくその間の事情がわかりました。私もこの三分の一の規定を見たときに、事業主もまるきり知らぬ顔をしていてはいけないのじゃないか、三分の一ぐらいでも持たせようじゃないかという、まことに論拠不確定なところで算定されたのじゃないかと思いましたが、大臣もそのようにお考えになったようであります。しかし、この問題につきましては、事業主の負担能力を十分考えないと、粉塵作業をやっております、かなり大きな事業主もございますけれども、かなり小さな弱小事業主もございますから、この中小企業に対しましては、どうも国が三分の一で事業主が三分の二では、非常に苦しい面が出てくると思いますので、国が三分の二を負担するようなふうに変えますことが適当ではないかと思いますが、大臣はどうお考えでございますか。
○西田国務大臣 今の御答弁で申し上げましたように、私個人の考え方では、全額国庫負担にいたしたい、かように考えております。しかし、健康診断を初年度、次年度、三年度にわたって行いまして、そうしてこの法案の目的は、大体けい肺にかかる人を少くしようということでございますので、この法律の内容を施行することによって、罹病する人の数が漸減していくというような結果になりますと、事業主の負担そのものはそう大した負担にはならない。しかし、この法案の内容を実行いたしましても、なおけい肺病患者の罹病率がだんだん多くなっていくというような事態になりますれば、事業主の負担も非常に急激にふえていくということになりますし、従って、私も考えておりますように、この国庫負担分を逐次増額していって、将来は全額国庫負担に持っていかざるを得ないだろうと考えておりますが、現在の段階におきましては、減少させることを目的としてこの法案の内容に盛られたことを実行していきたい、かように考えております。
○山下(春)委員 そのお考えは、非常に私は正しいお考えのように思います。大臣が言われます通り、なかなか不治の病気ということでございますから、事前に防止するということが非常に大切でございますけれども、しかしこの法案を見ますと、けい肺に対する特別の予防措置が法律に規定してないのでございます。なぜ規定しなかったか。特別の予防措置を規定すれば、今、大臣がおっしゃったようなことにきっとなるだろうと私も思うのでありますが、特別の予防措置が規定してないというところから見ると、そういうことが望ましいことではあるけれども、なかなか困難なことではないかと思います。予防措置を、これにお入れにならなかったのは、どういう理由でございましょうか。
○西田国務大臣 山下委員も御存じと思いますが、けい肺病にかからない予防措置というものは、現在の日本の国で確定しておりません。世界各国確定しておりません。従って、労働省、通産省筆におきましては、けい肺対策審議会で、予防の方法について今盛んに研究しておりますが、まだ確実にこうしたら予防できるというような成案を得ておりませんで、とりあえず、ほかの法律の規定によっての予防措置をとるということだけしか現在いたしておりませんから、この法律を作ります場合に、はっきり条文に書き入れたいとは考えましたけれども、確定してないものを書き入れてみたところで、これは実行不可能でございます。実行しましても、効果のないことでございます。いずれ、けい肺対策審議会等において結論が出ますれば、法律の一部改正を行なって、はっきり条文に表現したいと思います。
○山下(春)委員 そういう事情でこの法律に予防措置を規定されなかったということは、よくわかるのでございますが、そこで、また話が前に戻りまして、予防措置がないのでございますから、この法律がない時よりは、きっと少くなるであろうと私も思いますが、しかしながら、急激に少くするということはなかなか困難であろうと思いますから、大臣が前に御答弁なさいましたように、減らないようでございましたら、中小企業の負担が非常に苦しいと思いますので、大臣の本来のお考え方のように漸次全額国庫負担に移行されることを私はこの際望んでおきます。 それから、これは事務局でございますが、このけい肺法と他の社会保険との関連をちょっと御説明願います。
○富樫(総)政府委員 この法律と他の法律との主たる関係を申し上げますと、第一には、労働基準法、労災保険法との関係でございます。その関係におきましては、療養、休養給付が三年間そちらの方でなされ、後の二年がこれでなされるということになります。それから健康保険法との関係におきましては、これはけい肺はすべて業務上の疾病ないし職業病ということでございますので、健康保険とは切り離して、すべてこちらで取扱われるということになります。それと厚生年金法との関係でございますが、このけい肺病が基準法及び労災保険法による打ち切り給付がなされた後におきまして、厚生年金法において一級、二級、三級の区別がございますが、労働能力の喪失の段階に応じて——従いまして、このけい肺は不治の病であり、その段階においてはほとんど労働能力喪失でございますから、おそらくは原則的に第一級となりますので、第一級の障害年金を受けられるという関係になって参ります。
○山下(春)委員 けい肺病のために職場の転換を余儀なくされる者につきまして、行政上の取り扱いとして、その雇用を優先的にあっせんするという意思があると思いますが、軽症の方を優先的にあっせんするというようなことが、法律にうたってなくても、おやりになるのでしょうか。
○富樫(総)政府委員 法律におきましても、第九条におきまして、一定の症度の者につきましては、配置転換を勧告することにいたしておりますが、会社内部におきます配置転換が困難で、どうしても離職せざるを得ないという者につきましては、第九条におきまして、公共職業安定所その他の安定機関は、その者について特段の努力をいたして、職業紹介、職業補導あるいは職業指導等に努力するという規定を設けてございます。実際問題としても、われわれ職安当局と連絡をして、そのような扱いをする打ち合せば十分できておるわけでございます。
○山下(春)委員 私はこのけい肺法という法律に対しては——ほんとうに今日までこういう者がうっちゃられていて、先ほど聞きますと、相当数の者が施行前にすでに離職されておるということを聞きまして——非常にけっこうな法律だと思いますが、この法律を通じて一番遺憾に考えますのは、この法律の施行前に打ち切り補償を受けておる患者がこの法律の恩恵に浴さない。これはまことに何と申しましょうか、お気の毒千万な話でございますが、この患者等に対する何か保護の方法をお考えでございましょうか。
○富樫(総)政府委員 確かにお気の毒でございます。法律的に申しますれば、多くの場合、そういう制度ができた場合常に起り得る問題でございます。これにつきましても、事業主と連絡をいたしまして、会社の病院あるいはわれわれの方の病院におきまして、できるだけ安い料金なり、生活保護法とも連絡し、あるいはけい肺という建前でなく、けい肺との関連の私病ということもあり得るわけであります。そういうことにつきましては、可能なる限り健康保険の適用とか、そこはいろいろと行政措置上可能なる限りのお世話をいたす、こういう建前にいたしておるわけでございます。従来もそうでございますが、この法律施行の切りかえるときにおきましては、特にそういう気持がありますので、そのような扱いに念を入れたいと考えております。
○中村委員長 山下さん、ちょっと御相談ですが、労働大臣は午前中だけしかおられませんですから、労働大臣に質問を集中していただきたいと思います。
○山下(春)委員 かしこまりました。これは労働大臣から御答弁願えればけっこうでございますが、この法案には解雇制限がつけてございません。私はこういう人道上の問題でございますし、置けば置くほどうまくないと思います。はなはだ解雇制限などという言葉は、きつい言葉になりますけれども、解雇制限があって早く転換させることが、かえって温情ではないか、どうして解雇制限をつけなかったかということと、もう一つは、この法律施行前に、すでに病気におかかりになっておる非常に重症の方も相当あると思いますが、そういう者に対しましては、この法律の一番大事な御保護、要するに保護施設でございます。これは大臣としても、すぐやるつもりでおやりになったのではなかろうかと思いますが、すでに御保護施設に移さなければならない病人があることを御承知の上でお作りになったとしては、予算がちっともないのでありますが、その御保護施設に対してはどういう構想をお持ちになり、もし本委員会等でぜひともこの予算を御要求申し上げれば、今年内にでもこの御保護施設に手をおつけになるお考えがございましょうか承わりたい。
○西田国務大臣 第一の問題についてお答えいたします。山下委員のお尋ねは、法的な離職といいますか、職場転換の制限ですか、解雇制限というものを加えたらどうかというのですが、私はこの法案の内容をお読みいただけばおわかりになると考えておりますが、政府としては、いろいろ職場転換に対する勧告ができることになっております。現在では、労働基準法によって、三カ年間の無過失損害賠償の責を果せば、解雇できるということになっております。これは解雇できるということで、解雇しなければならないという意味合いのものでないので、今まで長い間、同一事業場で使用者、被用者の関係にあったものが、少くとも国が三分の一でも負担して、けい肺病に対して特段の考慮を払うという考え方、この二つのものをあわせて考えますときに、今までこの規定がなかった当時と同じように、使用者が同じ態度で臨むということは、私は人間として考えておりません。従って、この法律のなかった以前よりも、使用者側はもっとけい肺病患者に対しては、人道的な見地に立っての処遇を当然するであろう、またしてもらわなくてはならない、こういう考えに立っております。従って、職場転換を早くしたらいいじゃないかというお考えは、私も事業を経営した経験を持っておりますが、少くともこういう法律ができましたならば、今までは同じ粉塵作業に十カ年間かまわないで従事させておったのを、あるいは五年で他の職場に転換させることによってけい肺にかかる率を少くし、かつ症状が進んでいくことを軽減していくという措置は、当然使用者側として考えなければならない問題である。こういう見解を実はとっておりますので、勧告ができるということが法文の上でうたわれておれば、十分目的が果せる、そういう結果が招来されることにならなければ、けい肺法を作った主たる目的の達成は困難である、かように他力本願みたようなことを考えておるわけであります。 それから、第二の問題につきましては、お説ごもっともでございますけれども、この法律による健康診断が完全に行われました場合においてのけい肺病患者の実数がどうなるか、各地域的にどういうふうな分布状態になるか、症状はどんなふうな段階になるかということは、現在においてははっきりしておりませんが、概念的に申しますと、あなたがおっしゃったように、最初から農場を作るとか、あるいは共同作業場をつくるとかいうように施設を完備した上でこの法律を施行するということが、大事の上には大事を踏むということからいえば、一番いいと考えておりますが、さっき申しましたように、いろいろな条件に適合するように農場を作り、あるいは共同作業場の設備を考えなければなりませんので、とりあえず大蔵省との折衝の過程におきましては、第二年度くらいからはっきりした場所心々に作っていくことで間に合うであろう。甘い考え方かもしれませんが、こういう見解に基いて、予算は今度は強く主張して取らなかったのであります。
○山下(春)委員 大臣のお心持はよくわかりました。大臣の非常な人道的な立場で、むしろ私は、与党議員で、何か大臣の立場を擁護しつつ質問したような形にたまたまなりましたが、そういうことでなくて——しかしなから、今大臣の腹の中をはっきり伺いまして、このけい肺法がうまく施行されまして、こういう人道上の病気が少しでも減少いたしますよう、法の完璧な運営をされんことを希望して質問を終ります。
○中山(マ)委員 ちょっと関連して。今大臣の御答弁を伺っております中に、この不治の病に対して、予防の方法が、今世界でも知られていないというような重大な御発言がございましたが、それがなぜ三年に一度——まずそこへ就職いたしましたときに一回、それから今度は三年目に一度、その状態に対する健康診断を行うというように法律が出ておるようでございますが、これでいいのかどうかと、私は考えるのであります。このけい肺は、どんなものか、私もはっきり存じませんけれども、そういうおそろしい、なおらない病気であり、呼吸困難になるという、そういたしますれば、三年に一度やっているくらいでは、とても親切な対策とは考えられないのでございます。それで、初めに入ったときは何でもなくても、それが非常に早急に病気が進むものといたしましたならば、その次の三年目に、その検査をしてもらうときには、もうどうにもこうにもならない程度にまでいっておるのではなかろうかということが、私は特に心配する一点でございまして、それを一年に一回と申しますことはあまりに飛躍があるかとも思いますから、せめて二年に一回というようにしていただきたいと思います。そしてここに、お仕事の転換につきましても、第三症度になってから、もし早急に進展すれば第二症度、こういうふうにございますが、もうどうにもこうにもならないところまで追い詰めてから転換をさせるということは、私はまことに不親切な御対策であろうと思う。しかも大臣は、この方面に対しては、その御職業柄非常に御体験をお持ちのように存じておるのでございますが、私はこの立場から、お仕事の転換についても、何とかやっていける間にやっていただきたい。第三症度というのは、いわゆる肺病の第三期と、同じようなものでございましょうか、私はわかりませんので、これは無知をここに表明するような格好になりますれども、参考のために聞いておきたいと思います。そういうことになってからいろいろ措置していただきましても、私はそれは無効のような感じがいたします。いわゆる病は二葉の間に切り取るというのが、最もいい対病の方法ではないかと思いますので、それについてお考えを聞かせていただきたいと思います。
○西田国務大臣 お答えいたします。三年では危険ではないかという御質問、これは一般的な考え方からいたしますと、その通りだと思います。しかし、けい肺病と申しますのは、私、専門の医者ではございませんけれども、いろいろ医者の意見を聞きますと、非常に進行速度がおそい。だから、毎年毎年やってみたところで、それを発見するという程度まではなかなか進行しないのであります。三年間に一回やれば、それで十分であろうというような専門家の意見に基きまして、これは三年といたしております。早いほどいいには間違いないと思います。しかし、これは健康診断を年に一回やれとおっしゃいましても、大へんなことでございまして、現在けい肺病の診断に関する技術を持つお医者さんというものが、日本では比較的少うございますので、非常な手間がかかって、結果としては今のところは二年に一回、三年に一回するのと同じような結論になるのではないか。第一回の健康診断も、初年度にしてしまいたいのですが、おそらく今の日本のお医者さんの状況から考えまして、初年度に一挙にやるということは、かえって診査そのものが粗漏になるのではないか、こういうふうな見解をとって、法案では三カ年ということにとりあえずいたしておるのでございます。 それからもう一つは、第三症状になった場合に職場の転換をするのを、二期、一期に早くしたらどうかというお説、ごもっともと考えます。しかし、これは職業に従事しておられます労働者自身のいろいろな問題もあることと考えられますが、第一症度、第二症度の間は、労働に対しては大した体力的、肉体的の影響はないというのが、けい肺病の特質になっております。早く転換するに越したことはありませんけれども、さっき山下委員の御質問にお答えしましたように、もしけい肺病にかかって、一期、二期になって、事業主の負担がふえるということになれば、第一期の間に、診断がされました場合には職場転換をはかるように、事業主が当然考えるだろう。これは法律によって強制しなくても、自然そうなっていく。しかも、そのけい肺病にかかる人が、全労働者のうちに大多数を占めておれば別問題でありますけれども、きわめて一小部分の人でありますから、事業主自体がそういう考え方に立ってくる、労働者自身も、そういう診断を受けたときには、二期、三期になるのはいやだ、だから今のうちに職場転換をしたい、こういうように双方の意思というものが合えば、それは法律に規定しなくても、職場転換は当然はからるべきものである。こういうふうな見解に立ちまして、実は法律の規定としては、ぎりぎりの線からちょっと手前の線で何とか保護をしたい。今までの考え方からいきますと、事業主も労働者もどっちも、今申しましたようなことでなくて、反対の考え方でいっておった。片一方はうっちゃっておく、片一方は職場転換を要請しないというなことで、現在の状態が生まれておりました。この法律が通ることによって、逆にそういうことが積極的に働きかけていけるという見解をとって、実はやっておるわけであります。 それから、第三症度というのは肺病の第三期かという御質問でございますけれども、肺病は、今は三期でも薬ができて、なおりますが、けい肺病と申しますのは、第三症度までは生命に危険はない、第四症度に入った場合においては全治をする治療の方法がない。第三症度までは、職場転換をすることによって——年令的にも相当な年令になっておられるし、人間の生きる寿命が、日本人も男六十何才にふえたようでございますけれども、昔からいう人生五十年を生きることに対しては、第三症度程度であれば、その天命を全うするという意味合いからは、どうにか生きていかれる、仕事もしていかれる、こういうふうな見解をもってやっておるわけでございます。
○中村委員長 滝井義高君。
○滝井委員 大臣に二、三点お尋ねしたいと思います。あといろいろこまかい点は、政府委員にお伺いします。 まず第一にお尋ねをいたしたい点は、この法律をなぜ単独立法として出さなかったか。なぜわざわざけい肺及び外傷性脊髄障害というものを加えてきておるか。もちろん外傷性の脊髄障害も、一たび脊髄をやられたならば、これは不治の病です。しかし、本質的にこのけい肺と外傷性脊髄障害というものは、その発生の過程において、また職業病としての取扱いについても、非常に大きな相違を持っておるものなんです。これをけい肺の中に入れた理由。もし外傷性の脊髄障害を加えるということになれば、まだいろいろこういう加えなければならない。たとえば鉛中毒というものがあるわけです。わざわざこれだけぽっと加えた理由、これをまず第一に大臣にお伺いをいたしたい。
○西田国務大臣 けい肺病と脊髄障害の問題でありますが、今滝井さんは鉛の中毒とおっしゃいましたけれども、この病気は、メタルにしろ、コール・マイニングにしろ、どっちも坑内に入って限られた場所で作業をするという特質を持った作業に従事する者がかかる病気でありまして、もちろん窯業もございますけれども、そういう観点に立ちましたのと、第二の問題は、いわゆる不治であるという点と、第三の点は、今まで脊髄障害に対して特別な保護立法がなされていなかったということで、けい肺をやれば、そのときに同時に脊髄の方もけい肺と同じように何とか保護措置を講じようではないか、こういう観点に立ちまして実は一緒にしたわけでございます。
○滝井委員 外傷性脊髄障害の方をつけ足したという御説明しかないようでありますが、むしろ私は、けい肺病というものの認識をはっきりさせるためには、これはやはり単独立法にすべきでなかったかという感じがするのです。 〔委員長退席、中井委員長代理着席〕 それから健康診断の問題でありますが、けい肺の精密検査をやるということ、これは事業主にとっては相当金のかかることだと思います。しかし、先般結核予防法が改正せられまして、今度の国会で、きょう採決されて、通ることになったのですが、これは小学校に入学するまでの子供を除く全国民を対象にして、少くとも一年二、三回はやるという形が出てきた。先般この委員会でも、そうなれば労働基準法を改正する必要がある、こういう委員の質問に対して、基準局長は、当然一年に二回ぐらいはやらなければならぬことになる、こういう改正を必要とするのだという意見を述べられた。そうなりますと、職場における健康診断というものを、特に結核対策の一環として、それが一年に二回も行われるということになれば、それにわずかの金を加えれば、けい肺の診断というのは一年に一回行われることが可能なんです。現在の日本の官庁というものは、結核は厚生省でやるけれども、けい肺の予防面というものは労働省が担当しよう、こういうことで、官庁と官庁との間の連絡がうまくいかないから、一年一回の健康診断がむずかしいようになるのだけれども、この連絡さえうまくいけば、結核の健康診断をやるときに一緒にできるわけです。レントゲンの間接撮影をやる、そしてその上に怪しい像が出た人だけをピック・アップして、いわゆる精密検査、レントゲンの直接撮影をやれば、そこで簡単に安い費用で、けい肺の予防ができるわけです。なるほど、この疾患の進行に緩慢でありますけれども——あとで質問しますが、問題は、転換というものが行われる。その転換の症度というものが、二度あるいは三度ということになって、この二度、三度あるいは四度というものの区別がきわめてユーバーゲーヘンした形になっておる、いわば移行型になっているということなんです。どこまでが三度で、どこまで行ったら四度かということは、なるほどこのレントゲンの像やあるいは症状の程度でいえば、文書では分けることができます。しかしながら、それから先の認定というものは、そのレントゲンの像なり症状、心肺の機能障害があるかどうかということの認定は、医者のそのときのいろいろな認識の状態によって非常に違ってくるのです。そういう状態から考えると、やはり早く見つけてやるためには、転換という問題も出てきますので、こういう粉塵の立つ事業場においては、結核の健康診断と、このけい肺とを同時に行えば、私はそう労働大臣が御心配になるような大きな経費というものにはならないと思います。こういう点について、大臣の御見解をいただき、これを研究してもらわなければならぬ課題だと思いますが、御所見を承わりたい。
○西田国務大臣 御説一応ごもっともと考えます。しかしながら、今厚生省の方での法律案が通った結果として、少くとも年に二回ぐらいは肺結核の診断をやることになるだろうと私も聞いておりますが、そういう際に、肺結核それ自体とけい肺病とは、多少の違いでなくて、非常な違いがある。しかも、けい肺病をレントゲンにとって映像を見て、けい肺であろうという診断を下す医者が、日本には非常に少い、従って、厚生省の方で、各地方自治団体で、レントゲンをとって結核の審査をやります場合に、そこにけい肺を診断する適当な医者が行って、一緒にやっていかれるようなら、滝井さんのおっしゃるように、大して金もかからないで共同でやれると思いますけれども、そういう点についての深い認識を、現在、私持っておりませんので、今後そういうことが研究して、さっき申しましたように、これはよけいに診断した方がいいにきまっておりますから、理屈はありませんが、私は的確な認識を持っておりませんから、いろいろな技術的な問題、その他今までの経過等につきましては、基準局長に説明をさせますから、それで御了解願います。
○滝井委員 それは、どうせけい肺の診断医というものを、中央にも地方にも急速に養成しなければならぬと思います。私はある程度のレントゲン専門家なら、こういう知識をつけるのに、そう長い日にちはかからないと思う。従って、各府県に二人や三人の配置ができる状態はすぐできてくる。そうすると、鉱山のあるところというところは、そう多くないのですから、鉱山に限って、レントゲンの間接撮影をやって、怪しい者だけをピック・アップして直接撮影をやったならば、その者だけを同時にけい肺の診断医に見てもらう、その症状を見てもらう形をとれば、全国四十六万の粉塵作業場の一割がそういう疑いがあるとしても四万人ぐらいで、そう多い数ではない。その四万人ぐらいのレントゲンの金は、直接撮影の像にしても一枚五百円そこそこですから、そうかからないと思う、こういうことなんです。従って、これはぜひやっていただきたいということなんです。これはぜひ研究して下さい。 今の問題と関連して、これは非常に大事なところなんですが、この法の八条によって、けい肺の三症度とかあるいは二症度といういろいろな条件がありますが、そういうことでいよいよ認定を受けたならば、作業転換の勧告を受けることになるわけです。この場合に、作業転換の勧告を受けた人が、たとえば今まで鉱山で働いておって千円の賃金を取っておった。ところが今度はけい肺であるという認定を受けたために、空気のいい屋外作業ということに変るでしょう。その事業場になるか、あるいは別の事業場に紹介をして世話をしていただくかもしれませんが、そうなると、必然的に、たとえば今まで千円取っておった賃金が、坑外になれば五百円とか六百円になり、そこに相当の賃金の差が出てくるわけであります。この転換のときに、わずか三十日分の転換給付をもらっていくということになれば、その労働者に取っては、長い目で見れば、莫大な損害なんです。この点について、大臣は、この立法をするときに、どういう考えをお持ちになったのか、これを一つお尋ねいたしておきたいのです。
○西田国務大臣 お答えいたします。職場転換をされた場合の賃金差がつくであろうということは、私も基本的に考えましてこの法案の作成に当ったわけでありますけれども、今も滝井さんがおっしゃったように、千円のものが半分の五百円になるということは、実際問題としてはないだろう。多少の差はつくであろう。しかもけい肺の第三症状になりまして、職場転換その他をしなければならない人は、年令的にも相当な年令になっておる。あなたがおっしゃったように、長く同一作業に携わって完全な労働力を持っているかどうかということについても、少々割り引きして考えてもいい年令になっておられるのではないか。しかし、賃金の差がつくということは好もしいことではございません。しかし、政府として、そういう問題に対して一定の規定を置くとかなんとかいうことは、いろいろ問題がある点でありまして、結局は事業主と労働者との間において——もし滝井さんがおっしゃるような非常な賃金の差がつく、しかも一応同一職種に働かれるであろう年限が非常に長い年限になる。従ってその人の労働できる年令、時期から推して、莫大な金額になるというようなことでもありますれば、それは経営者側も考え方を変えるでありましょうし、労働組合側と経営者側の団体協約というか、労働協約によってある程度は緩和される、私はそういうふうに考えております。
○滝井委員 その点は、やはり大臣も炭鉱をやられておるので、おわかりと思うが、坑内と坑外とでは非常に差があるのです。五割以上差があるところがあるのです。現在、能率給、請負給制度ですから非常に変ってくる。たくさんの子供なんかがあって坑外作業に転換されたとなると、致命的な打撃を受けるのです。大臣は、けい肺の発生はおそらく年を取った、長く鉱山に働いている人であろうと言われますが、勤続年数とけい肺の発生の割合を、ある銅山の統計を見ましても、五年以下でも起っている、十年そこらで約一〇%近く労働者の間にけい肺が起っている。こういうことから考えてみると、今の大臣の議論は必ずしも成り立たない。おそらく体質によって粉塵を吸収する量も違いますが、それぞれの体質によっても、ずいぶんけい肺病の発生が違ってくるのです。こういう点から考えて、非常に個人的の差があるということから考えると——もちろん二十五年も三十年も炭鉱や銅山に働いている人の方が発生率がずっと多い。しかし、若くても起ることがあり得るわけであります。そうなりますと、賃金の差というものは、ぜひ考えておかなければならない問題だと思います。そこで、これは考えていただかなければならぬですが、その場合に、この療養、いわば転換をした人を、大臣は病気と見るのか、それとも病気と見ないかということです。転換を勧告された人は病人なのか、それとも健康人なのかということなんです。この認定は重大だと思うのですが、大臣はこれを病人とお考えになるのか、健康人とお考えになるのか。
○西田国務大臣 非常にむずかしい御質問ですが、病人であることは間違いないです、けい肺病にかかっておるのだから。それは病人でないとは私申しませんが、専門的に病院に入院して、あるいは現在ある治療法を講じて治療をしなくてはならないという程度ではない、こういうふうに解釈する以外には解釈の方法はないと思います。
○滝井委員 まあ病人であることは間違いないが、休業を必要としない。その通りだと私も考えます。しかし、その人が作業能率が落ちておるということは間違いない。病人であり休業を必要としないけれども、作業能率というものが非常に落ちてきておる、これは間違いないと思うのです。この点はお認めになるでしょう。
○西田国務大臣 作業能率が落ちておるということではなくて、同じ職業に従事したならば作業能率が落ちてくるであろうということは、予測されると思います。
○滝井委員 それは落ちてくるであろうじゃなくて、落ちておるのです。たとえば、けい肺の第三症度というものは勧告の対象になる、そうしますと、この第三症度は、法案をごらんになると、明らかに心臓の機能や肺の機能にすでに症状が認められておる、少くともつるはしを十回振れば、普通の人ならばどうきはしないけれどもこの人はどうきがする、心肺機能に症状が現われて、明らかに労働能率というものが低下をしてきておる、これははっきりしておると思うのです。これは労働能率が低下をしていないと言うけれども、病人であり、作業はできるが作業能力は低下してきておる、こういう考え方が私は出てくると思うのですが、大臣は出てこないのですか。
○西田国務大臣 滝井さんの御議論も、もちろん成り立つと考えておりますが、しかし、必ずしも作業能率が落ちるという最終的なことでなくて、同じ労働を続けていけば落ちるであろうということです。落ちないようにやっていけば生命に危険を感ずるであろう。この二つは、かね合いで判断すべきであろうと考えております。従って、職場転換をする場合には、労働能率が落ちるから職場転換をするのではなくて、生命に危険をもたらすおそれがあるから、職場転換をして生命の危険を感ぜさせないようにするのが、この法律案のねらいであります。
○滝井委員 この問題は、少し専門的にやらなければならぬので、いずれ政府委員ともう少しやらしていただきたいと思いますが、それから大臣にお尋ねしたいのは、けい肺第四症度になっておる、そして三年間は労災保険の方で見てもらうことになる、残りの二年は政府の三分の一の国庫負担と事業主の三分の二の負担の費用で見ていただけるということになるのですが、その場合に、この休業給付というものが百分の六十になってしまうのです。現在の結核療養所の状態を見てみると、こういうことを言ってはどうも工合が悪いと思いますが、傷病手当金の切れた時が患者の死ぬ時なんです。現在、結核療養所の院長が相談を受けるのは、傷病手当金の切れたときに、その後の結核患者の生活をどうするかという、いわば身の上相談が一番多いのです。そうしますと、このけい肺は、結核よりももうすでに先が、なおらないということがわかっておる、これはガンと同じなんです。もうガンと言われたなら、大がいの人は、腹を鍛えた人間でも、間もなく飯が食えなくなって死んでしまう。それと同じように、けい肺の患者というものは先が見えておる、結核よりもさらに悲惨なんです。ところが、その人たちが、五カ年間で百分の六十というものはもうもらえなくなってしまう、私はここだと思う。こういうように、日本の生産力の拡充に寄与した労働者が、わずかに五年の後にはもはやほっぽり出されなければならぬ、しかもそれから先は、おそらく生活保護法にでも行けということになるのでしょうが、こういう形では、私はあまりにも無情じゃないかと思う。これは脊髄の外傷についても同じだと思いますが、これを何らかの形においてもう少し延ばすことができないかどうかということです。今度この法律ができることによって、大臣もさいぜん御答弁がありましたように、事業主において、一度くらいのときでも、どんどん転換をさせていくであろう、こういう御答弁がありましたが、そういうことならば、将来第四症度にまで進行する人が非常に少くなるであろうということが仮定される。そうなるとすれば、もう少しこれをやはり十年くらいにまでして見てやる必要があるのじゃないか、こういう点が考えられるのです。わざわざ三分の一の国庫負担をして、しかもそれが単独でやるのでなくして労災の方に込みになっておるという形で、わずかに二年で、しかもそれが百分の六十という給付では、あまりにも少い、むしろこれは百分の八十くらいに引き上げて、そうして、おそらく数は多くないであろうから、これをやはり十年くらいにする必要はないかということなんですが、その点、大臣は、この法案をお作りになるときに、そういう点までお考えにならなかったかどうか。
○西田国務大臣 お答えいたします。滝井さんの御意見、ごもっともであります。私のこの法案を作ります最初の考え方は、十年などとは考えておりません、一生、死ぬまでめんどうを見るという考え方に立って実はこの法案の検討をいたしました。百分の六十を百分の八十にしたらどうかというお話です。ふえることがいいことは間違いございませんが、その問題につきましては、私は現段階では百分の六十でいいであろうと思う。百分の八十でなければならないということまでは考えておりませんでしたが、給付の年限については、制限せずに死ぬまでやりたい、こういうふうに実は考えておるのであります。しかし、そういうことで大蔵省との間でいろいろ議論ばかりやっておりますと、法案の提出が間に合いませんので、こういう形で一応法案を通して、あとは国民の代表である国会の御意思によって、悪い点は逐次改正をしていけば、理想的な法律ができるだろうと考えております。
○滝井委員 大臣はほかに行かなければならぬそうですから、これ一問で終ります。 そういたしますと、大臣も、数が少いのでぜひ生涯を見てやりたい。私も賛成なんです。私は財政上の負担があるであろうから、十年という議論をしたので、私らも一生ということには賛成です。そこで、この法案で私たちが一番懸念する点は、職場の転換の勧告が行われる、こういうことかあるわけですが、これが悪用されはしないかという点です。どういう点で悪用されるかと申しますと、先ほども申しますように、二症度とか三症度とかいうことは、なかなかその認定の限界点がむずかしい、しかも病気の診断というものは、診断の専門家が少い、こういうことから、特殊な診断員が診断に当ることになるわけです。その場合に、現在の日本の労使関係の状態、あるいは炭鉱等の不況の状態から考えて、首切りにこれが利用されはしないかという点なんです。たとえば、あいつはどうも労働運動を熱心にやり過ぎるから、適当に処分しなければならぬということで、君はけい肺の二症度だ、だから一つ作業転換、こういう勧告が行われる可能性があるということなんです。善良な事業主は、そういうことはやらないと思いますが、やはりそういうことも考えておかなければならぬと思います。従って、そういう首切り法案的な性格、ニュアンスというものが、これにあるという疑いを、われわれは持たなければならぬと思うのです。と同時に、そういう疑いを持たれるがゆえに、この勧告をするときには、労働者の意思をどういう形で尊重するかということです。君は一つ職場を転換してもらわなければならぬ、こういうことを勧告するときに、承知しましたというからには、労働者の意思を、転換の勧告に当って、どういう形で尊重するかということ、この点を一つ明白にしていただいて、私の質問を終ります。
○西田国務大臣 お答えいたします。今のような資本家側の考え方、労働組合側と資本家側の対立しておるような状態下におきましては、あなたのおっしゃるようなことが、個々のケースにおいては、あることは私も考えられます。しかし、それが労使双方の日本の将来における姿であってはならない、私は固い信念を持っております。従って、この法案の内容を実行に移します場合、少くともこのけい肺等脊髄の病気に関する限り、労使双方とも、今までの観念にとらわれないで、ほんとうに愛をもって話し合いを進めていくならば、いや進めていってもらわなければならないのですが、そうすることによって、悲しむべきおそろしいこのけい肺病というものが、日本の国で発生することを防止するという大きな目的達成のためには、滝井さんのお考えになっているようなことも、個々のケースとしてはあるいはあるかもしれませんけれども、全部のものでそういうことがなされるということには、私は考えてもおらないし、考えたくもございません。
○滝井委員 それから転換の場合の労働者の希望……。
○西田国務大臣 それは私の今までのお答え申し上げました内容を御検討下されば、そういうことは懸念する必要はないと思います。しかも、このけい肺病というのは、きょうあすのうちに職場転換をしなければならないという性質のものではございませんので、ある相当の期間が待たれる、待っても差しつかえないという状態に置かれておりますから、十分話し合った上で、労働者側の意思も考え方も経営者側が十分くみ入れて、そうして職場転換がなされる。それがどうしてもなされないということになれば、それは勧告した建前上、国がやはり全責任を持って職業補導その他をやって就職させる、こういうことにお考え願いたいと思います。 —————————————
○中川委員長代理 次に日程を追加して、岡良一君外十一名提出の健康保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、審議に入ります。まず提案者より趣旨の説明を聴取することといたします。岡良一君。 —————————————
○岡良一君 このたび提出いたしました健康保険法等の一部を改正する法律案について、提案の理由を説明申し上げたいと存じます。 御承知のように、健康保険、国民健康保険等については、その給付費の二割以上を国庫で負担をしてもらいたいという声は、かねてより関係者団体の世論であったのであります。ところが、治療医学の進歩あるいは利用度の向上並びに保険制度そのものの運営の改善に伴いまして、医療給付費は年々急激に増大をいたし、その結果といたしまして、国民健康保険あるいは健康保険を問わず、その財政がきわめて深刻な危機に見舞われるに至ったのであります。たとえば政府管掌健康保険の医療給付費は、昭和二十六年度におきましては百三十七億円余でありましたが、これが昭和二十九年度には三百五十億円余、さらに昭和三十年度には約四百二億円と急ピッチで増大をいたし、その結果昭和二十九年度には五十九億円余、昭和三十年度には約九十億円の赤字が見込まれるという実情であることは、皆さんもすでに御承知の通りであります。 申し上げるまでもなく、健康保険、国民健康保険等の制度は、まことに長い歴史と伝統を有しまして、実にわが国社会保障制度の根幹ともいうべきであります。しかも、現行健康保険の保険料率も、世界的にきわめて高率なものでありまして、これ以上に引き上げる余地はなかろうと思うのであります。この際、保険給付費については相当程度の国庫の負担をすべき旨を明らかにし、また国民健康保険に対しましても、その補助率については、これを引き上げる必要があろうと信じます。すなわち、健康保険については保険給付の百分の二十以内を国庫負担とし、国民健康保険につきましても百分の三十以内を補助することといたし、船員保険についても同様趣旨の改正をいたしたのであります。また健康保険の料率については、現行の千分の六十を維持することといたしまして、料率の変更は法律の改正に待つことといたしたのであります。またすべての国民を医療保険に加入せしめるためには、とりあえず昭和三十四年の四月一日からは、すべての市町村において国民健康保険を設立すべき旨、このように改正をいたしたのであります。 どうぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成を賜わりまするように切望をいたす次第であります。
○中川委員長代理 以上で説明は終りました。なお、本案の質疑その他につきましては、後日に譲ることといたします。 次会は公報をもって御通知することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後零時十六分散会 ————◇—————