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22回国会衆議院1955/03/29

社会労働委員会 第4号

発言数
84
登壇者
13
会派数
4
開催日
1955/03/29

会議録

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 これより会議を開きます。本日は、厚生行政一般につきまして、厚生大臣に対する発言の通告がございますので順次これを許可いたします。滝井義高君。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 厚生行政一般に関する質問をいたしたいと思いますが、特に一、二の点について重点的に質問をいたします。幸い大臣のごあいさつにありましたように、新進気鋭の川崎厚生大臣を迎えたのでございますから、非常に難路の多い日本の厚生行政も、おそらくその難路を克服して、福祉国家の大平野に入ることができることを確信をいたしております。そこで、昨日予算委員会も終了して、一応衆議院を四月、五月の暫定予算が通ったのでございますが、その予算委員会の審議の過程を通じて、私は一つの異様な問題にぶつかりました。それは、鳩山内閣の公約の一番大きなものは、社会保障制度の拡充強化ということであったのでございます。ところが、大蔵大臣も鳩山総理大臣も、社会保障制度を拡充強化するということは、具体的に大体どういうことをやるのだ、こういう質問が同僚議員からありましたところ、異口同音に、総理も一萬田大蔵大臣もそれば失業対策をやっていくのだ、これが日本の社会保障制度の拡充だということをおっしゃったのでございます。これはどうも私は社会保障制度の拡充強化という看板を掲げた内閣にしては羊頭を掲げて狗肉を売るというような感じがしてきたのです。私は、社会保障制度というものが失業対策かと、どうも疑問が出たのですが、川崎厚生大臣も、社会保障制度の拡充強化というのは失業対策だ、こういうようにお考えになっておるのでしょうか、この点をまず明白にしていただきたいと思います。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 去る予算委員会の席上に配付せられました大蔵大臣の構想は、閣議の正式の承認を得たというよりは、その前日におきまして衆議院の野党各派から要求をされて、暫定予算を出すならば、当然総予算に対する内閣の大綱だけでも示してもらわなければ審議に入れないという強い御要求がありまして、従来の編成大綱に多少の修辞をいたしまして出した大蔵大臣としての構想であります。もとより、閣議はこれに対して承認を与えておりますが、論議して決定したものでないということは、鳩山総理大臣が予算委員会でお示しになった通りであります。ただいま滝井さんの御質問の点につきましては、ちょうど予算委員会におきまして社会党の岡良一氏から質問のありました際に、厚生大臣としての考え方は、これを明示をいたしまして、そうして予算編成の過程において私どもの考え方を実践していきたいということを申したのであります。そのことは、つまり社会保障制度の強化ということは、決して失業対策というような消極的な、つまり国家として最も好ましからざる状態における失業者対策というようなものに堕すことなく、当然防貧対策としての社会保険の強化ということを中心に行われなければならないということを、総理大臣のおる前で私は言明をいたしておるのであります。従って、予算編成の過程におきましては、社会保障制度の強化ということを、今度の総選挙において天下に宣明をいたしました民主党といたしましては、また民主党内閣といたしましては、当然社会保険の強化、次いで生活保護その他の防貧対策にも中心を置いて、今日厚生省の所管をいたしておりまする仕事が社会保障の中心でありますから—社会保障を取り扱っておる役所は労働省、建設省等にわたっておりまして、各種の社会保障の対策がございますが、中心はあくまでも社会保険の強化、生活保護の実践ということにあるものと私は考えをいたしておる次第でございます。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 厚生大臣である川崎さんの、厚生行政の中心は即日本の社会保障制度の強化拡充である、これが中心になっていかなければならぬというその御意見、まさにその通りであろうと思います。予算編成の過程で、消極的な失業対策ではなくして、積極的な防貧並びに救貧対策を打ち出していかれるということでございましたが、川崎厚相として、どういう点を予算編成の過程で具体的に主張されていくのか、項目的でけっこうですから、一つこの点とこの点だということを、少し具体的に言っていただきたいと思います。社会保険の強化・生活保護の強化・こういうことは少し具体的なものだと思いますが、もうちょっと具体的に、予算編成の過程であなたが極力大蔵当局に主張せられる点を御説明願いたい。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 予算編成を控えて、厚生省の考え方は、まず第一に社会保険の強化に重点を置いた施策を進めていきたいと思っております。その社会保険の強化の中心は、いうまでもなく健康保険並びに国民健康保険の充実強化にあることはもとよりであります。従いまして、今日一番世論の中心にもなっております健康保険財政の収拾ということが取り上げられなければならぬと思います。滝井議員も御承知の通り、健康保険財政が昭和二十九年度におきまして急激なる赤字を生んだことは、種々の原因もありますけれども、医療費の非常な増し高によるものであることは明らかであります。従って、この医療給付費に対してどういう措置をとるかということが今度の予算編成に際して重要な中心になってくると思いますが、社会保険の中心の柱である健康保険がくずれておることは、理論的に申すならば、社会保障の中心である社会保険、そのまた一大支柱にならなければならぬ健康保険が危機に立っておるということは、社会保障制度の強化、前進以前において既存の社会保障の形がくずれておることを意味するのでありまして、これを等閑視することは全く今日の厚生行政の重大な失策になるわけであります。従って、健康保険の財政を立て直すことに第一の眼目を置かなければならぬことはもとよりであると考えております。これに続きましては、当然国民健康保険の充実ということも考えなければならず、さらに生活保護の充実も反り上げて、峯次発展をさせていきたいというのが私の所存であります。これと並行いたしまして、健康保険が危機に立っておるということは、つまり疾病保険全体の問題でもありますから、疾病保険を今後どういう形にしていくかということについては、相当の研究と検討を必要といたすものと思うのであります。社会保障制度審議会は、昭和二十五年十月にすでに第一次勧告を発し、その後におきましても第二次勧告を発しております。これは超党派的に作られた委員会の勧告でもありますし、政府としては当然この審議会の勧告の線に従って、わが国の社会保障制度を整備していかなければならぬと思うのであります。そこに問題になってくるのは、社会保険の統合口をどうするかという問題であります。しかしこの社会保険を昭和三十年度予算編成以前において一挙に統合するなどということは、時間的にも物理的にも不可能でありまするから、従って社会保険の統合整備を一つの目標といたしております私としては、これらの問題については、民主的な審議機関を作りまして、その議を経て次第に疾病保険を整備していきたい。これが今日発表し得る最大限の具体的な構想ではないか、かように考える次第でございます。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 今厚生大臣から聞いたような構想は、すでにわれわれが数年来論議をしてきたところなのです。論議をしたけれども、なお吉田内閣以来、少しも実現を見ておりません。すでに社会保険が危機に来るということは、私は二年前から局長に忠告をしてきました。昨年の初めに一応忠告したときにも、危機は来ないと久下保険局長は言明されましたが、夏ごろから急激に危機が来てようやく驚いたという状態であったのであります。今具体的に、社会保険の中の特に健康保険の問題も出ましたので、少し質問をしぼって、健康保険の問題から質問を展開いたしたいと思います。  まず厚生省が社会保険、特に健康保険の危機の原因としていろいろのものをあげておられます。川崎大臣の就任のごあいさつの中でも、いろいろその原因をあげておられますが、厚生省があげておるのを見てみますと、第一には抗生物質療法の普及が非常に行われて、これが二十八年四月健康保険に採用された。それから二十八年十一月から療養給付期間が延長された。それから二十八年の十二月には入院費や往診料が引き上げられた。それから保険医の経費の水増し請求が、大臣の解説の中にも監査が停滞したというような形で表現された。それから被保険者あるいは事業主の不正受診、保険証の不正交付などの不正行為、保険料の収納が慢性的に一般的にデフレ政策のために困難になっておる、こういういろいろな原因があげられておるようであります。こういう原因は、なるほど日本の社会保険の危機を招来した表面的な理由にはなるかもしれないけれども、日本の社会保険の危機を招来した根本的な原因ではないかと思っております。日本の社会保険の危機というものは、もっと根深いところから出てきておると私は思うのであります。先般エコノミストは、厚生行政なき貧乏日本というようなことを書いておった。それほど、日本にはやはり厚生行政というものがないくらいに貧弱であったと思うのであります。その厚生行政の中の日本に作られておるところの健康保険そのものは、発足の当初においては相当画期的のものであったと思うのですが、すでに健康保険は昭和二年に作られておる。国民健康保険は、農村更生運動の一環として昭和十三年に作られた、すでに二十年以上を経過しておる制度になっておる。その制度自体が、非常に大きな矛盾をその内部にはらんできたと思うので簡単に考えてみても、まず第一に、医者の数が非常に急激にふえてきておるということです。医者の数の普及増加というものは、ほとんど欧米並みになってきている。人口九百人か千人に一人の医者になってきておる。こういうように、医者の数が非常に増加してきており、しかも医学の進歩というものは、日本自体の医学の進歩が世界水準にまで到達したということなのです。従って、当然それは発見された抗生物質や最近の科学的な療法というものが、即そのまま世界的水準を追って日本に移され、それが実践に移されてきておる、こういう状態が出てきた。これは何も健康保険に使ったから赤字だというのではなく、それもすでに世界的趨勢なのであります。ところが、そういうふうに医学自身は世界的水準に達し、医者の普及は世界的に同じ状態、文化国家と同じように普及したけれども、われれの問題は、根本的な国民所得がそれを受け入れるだけの状態になっていないということなのであります。アメリカの十分の一の国民所得しかない、その日本国内において、アメリカと同じ水準の医療と医学が現実に進捗し行われておるというこの矛盾なのであります。いわば国民所得というものは、日本全体から見ても年々一〇%以下しか伸びていっていねい。ところが医療費というものの支払いというものは、一昨年と昨年と比べても、四割以上の給付費が健康保険だけでも増加しておる。こういうことは、明らかに国民生活水準と医師の普及や、医学というものとが跛行状態を作っておるということなのであります。これは一つの健康保険制度自体の問題というよりも、もっと大きな情勢の変化だと私は思っておる。しかも、昭和二年や昭和十三年にできた当時においては、われわれの医療費のつぎ込みの中心点はどこにあったかというと、乳幼児の死亡率の減少につぎ込んできた、あるいは青年の結核をどうして減すかということにつぎ込んできた。最近の死亡状態を見ると、がらりと様子が変ってきておる。今までわれわれは乳幼児あたりの先天性弱質症、乳幼児下痢腸炎、肺炎というものが、日本の死亡率の最高であるということを学生時代からばかの一つ覚えのように覚えてきた。ところが最近の死亡率の状態を見ると、あにはからんや、乳幼児の下痢腸炎、青年の結核だと思っておったのが、もはや死亡率というものはこれは老人の血管病、脳溢血、ガンとかいうようなもの、あるいは全くわれわれの予測しなかったところのアクシデントによる死亡、事故死亡というものが、ぐっと一死亡統計の上に出てきておるということなのであります。今まで日本の医療費をつぎ込んでいたところに一つの変化が起ってきておる。どういう変化かというと、これはいわば結核でいうならば、川崎厚生大臣も予算委員会で御説明しておったが、青年の結核よりも、壮年層における疾病への金一のつぎ込み方が多くなってきておる。ガンであるとか、血液系統の疾患、脳溢血だとか、心臓、腎臓というような疾患、いわゆる老人性の病気がふえてきたということなのであります。こういうことから考えてみると、私たちは、将来の健康保険制度については、現実に危機であるが、今のような情勢でいくならば、ここ四、五年のうちに重大な健康保険制度自体に危機が来るということははっきりしておる。なぜならば、これは今覆ったように、乳幼児も、もちろんやはり世界に比べたら依然として死亡率が高いから、金をつぎ込まなければならぬ、結核にもつぎ込まなければならぬ。ところが、今度新しく老人病に金をつぎ込まなければならぬという事態が現実に起ってきておる。国民のあらゆる層に医療費をつぎ込んでいく、こういう形は、もはやあのビスマルクの時代にできた健康保険制度、いわば人間の平均寿命が四十五、六才のころにできた制度—現実においてはアメリカあたりは平均寿命が七十才にもなり、日本においても男が五九・三五、女は六二・七三というふうに六十才を越えるような平均寿命になってきておる。こういうふうにいわゆる人口の構成の質的な変化が起ってきておるということです。こういう人口構成の質の変化、医療のつぎ込み方の変化、こういう状態は、日本の健康保険制度あるいは日本の医療保障制度自体が大きな変化をしなければならない。もうすでに制度自体ではなくて、制度よりほかの客観的な情勢の大きな変化というものが起ってきておるということです。しかも現在の日本のこの状態を見てみると、厚生年金は六十才になったらやるのだというふうに変えられました。しかし、日本の事業場の状態を見ますと、五十五才が停年だ。五十五才になった諸君は、今度は平均寿命が六十才、六十二、三才になると、その間七、八年の空白はどこで医療を受けていくのだ。こういう問題が出てくる。まさか養老院ホームにこれを収容することはできません。当然これは何らかの形で社会保険で救済していく形を作らなければならない。そうすると、おそらく今度は健康保険でいかぬということで、一切のものが、国民保険に流れ込んでいくならば、現在地方財政の赤字の中でとにかくやりくりしておるのが、健康保険の赤字をそのまま背負つた老人たちが国民保険に殺到して、国民保険も数年を出でずして今の健康保険よりもさらに重大な危機に直面することは火を見るよりも明らかであります。そういうような情勢を見るとともに、今度は医者というものは、年々歳々二千人、三千人の医師、歯科医師、薬剤師が出ていく。しかもそれを受け入れるための病院やその他の施設というものは完備されていないので、次第にこういう技術を持った医者の失業者みたいな状態が出てくる。あるいは最近もそうですが、医者はどんどんふえておるけれども、依然として無医村や無歯科医師の村がある、こういう矛盾が出てくる。そうして最近再び医者が都市に集中する形が出てきつつある、こういうような情勢が出てきておる。いわば厚生行政というものと、文部省の医者を養成するところの教育機関の連関が何ら行われていない、まさにばらばらだ。そしてその人たちは自由開業医制度の中に飛び込んでいって、そうして食えない、こういう形が出てきておる。まさに厚生行政というものは、貧乏日本だということは、もうこういう点からはっきり出てきておる。そこで、こういう根本的な問題を考えていくと、日本の厚生行政というものは、もはやこの際根本的なものにメスを入れる以外には、健康保険の危機の打開もできなければ、国民健康保険の危機の打開もできない。日本の救貧あるいは防貧制度を確立することは、ほとんど不可能な状態に来ておることは、すでに厚生省自身が発表しておるあの厚生白書を見ても、国民の栄養というものはどんどん低下していっておる。国民の体位はどんどん伸びていっておるかというと、決して伸びておらない。蛋白質や脂肪や、国民の体力も検査してみると、二割以上の国民が栄養不良であるということは、厚生白書にもはっきりしておる。こういう状態を考えてみるときに、現在の健康保険制度、特に日本の社会保障制度の中心をなす健康保険制度というものは、今から急速に審議会を作ってやるんだということをどの大臣もおっしやる、前の厚生大臣もおっしょった、その前の山県厚生大臣も、やっぱり突っ込むと、同じようなことをおっしゃった。どの大臣も就任初めはそういうことをおっしやるが、なかなか実践ができない。なぜ実践ができないか、古い伝統というものが根をおろして、それがその改革をはばんでおる。川崎厚生大臣は、今社会保険の統合のことを言われましたが、勇敢にやってもらわなければならぬ。  まずこういう私の考え方の前提に立って、もっと問題を掘り下げてみたいと思いますが、しからば、まず日本の社会保障制度の中心点である、特に健康保険制度を立て直して、この危機を克服していくということが、当面の最大の問題になってくるでしょう。そこであなたのごあいさつの中にもありますように、当面の対策というものと恒久的な対策と二つにわけられております。まず当面の対策のためにはいろいろと監査を強化したり、保険証の不正を直すというようなこともありましょう。しかし、まず今年出ているところの四十億の赤字をどうするかということなんです。先般川崎厚生大臣の予算委員会の説明では、国庫の余裕金をもって四十億の赤字をまかなっていきたい、こういう御答弁がありましたが、当面の赤字の対策としては、国庫余裕金をもって四十億をまかなっていく、こういうことに了承してさしつかえありませんか。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 滝井さんからいろいろ厚生行政全般の問題についてお話がありまして、ことに厚生行政が日本にはないという滝井さんの政治的立場からする御発言は、十分私といたしましても、先ほど来傾聴をいたしておりました。何といってもバック・グラウンドが確立をしなければ、従って厚生行政のみを切り離して解決をしようとしても、それで無理であることはもとよりであります。御指摘の通り国民所得の増大というものが医療費の増大に比例をしないというところに非常な悩みがあることは、これは経済政策全般の問題と関連して言えるのでありまして、さればこそ、わが党ではこれらの問題について、抜本的な経済政策を逐次展開をしていきたいという考え方を持っておるのでありますが、いろいろ論ぜられたことは、十分拝聴をいたしました。  最後の、御質問の焦点でありまする健康保険の赤字につきましては、二十九年度並びに三十年度全般と関連をいたしまして解決をいたさなければならぬ問題でありますが、当面の二十九年度の赤字は、一応国庫の余裕金をもって処理をするということに原則的な了解を大蔵事務当局とも話し合いをし、大蔵大臣とも一昨夜相談をいたしました結果、大体了解点に達し得たものと私は思っております。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 当面の問題は国庫余裕金でやられるということございますが、そうなりますと、当面の傷病手当金、あるいは療養給付の診療報酬の支払いの遅延が、ただ幾分それで緩和されるというだけで、健康保険自体の苦しみというものは依然として解決せられない。従ってそのしわは一挙に三十年、三十一年に押し寄せて来て、四十億の借りた余裕金は、年度末にまた返さなければならぬことになります。そうすると、いよいよ三十年度の終りになりますと、三十年度から出て来る七十三億の赤字と四十億という、百億をこえる赤字を、健康保険自体が解決しなければならぬということになります。そうしますと、当然そこに、余裕金で今度は一時を糊塗しましたが、何らかの対策を講じなければならぬ、こういうことになります。そこで、われわれの頭に浮んでくることは、民主党が選挙対策で打ち出しました健康保険の赤字の対策として、医療費の五%程度の国庫負担をやる。あるいは被保険者本人のみの医療費の一カ月分に限って二割か三割の自己負担をやる。それから国庫負担がもし実現をしない場合には、現在の保険料の千分の六十を行政的にできる千分の六十五まで引き上げていく、あるいは現在の無制限な医療給付内容をある程度制限していく。たとえば金の入れ歯なんかはある程度禁止していこう、あるいは合金を取りかえていこうというような、そういう民主党のいろいろな対策が出ておるのですが、余裕金というものは、これは一時的なものなんですから、暫定的な対策としては当然何かここに出てこなければならぬと思うのです。これは民主党が社会保険の危機克服のために出した新聞発表なんですが、川崎厚生大臣は、こういうことを大臣として現実におやりになる所存ですか。余裕金は一時しのぎですから、少くとも当面の対策というからには、何かそこに手を打っていただかなければならぬと思いますが、今言ったようなことをおやりになるのかどうか、これを一つ承わりたいと思います。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 社会保障制度の強化前進に対する民主党の選挙時における公約は四項目ほどあっと思います。たとえば、社会保険の統合強化とか、あるいは生活保護法を実際に最低生活を保障するための措置法に発展をさせるとか、あるいはその他三、四の公約が太い線で打ち出されておると思うのでありまして、ただいまお述べになりましたものは、選挙の最中におきまして、厚生省方面から、社会保険の当面の危機に対しての対策について、患者の一部負担にするとか、あるいは保険料率を値上げしなければならぬという行政上の当面の対策として、当時選挙管理内閣とはいわれておりましたが、鳩山内閣の与党に対して連絡がありました。その際に二、三の厚生関係の委員が協議をして、選挙後においては大体こういう線で解決をしたいという案を作って、政調会としては一応決定したそうであります。しかし、これは党議として決定をし正式の承認を得たものでないということが後日になりまして判明をいたしました。今日ではこれらの問題をすべて白紙に還元をしまして、民主党の政調会としては三月の十五、六日でありましたが、当面の赤字に対しては長期の国庫余裕金の融資を受けてこれを解決する、三十年度の問題に対しては、予算の編成と関連をして逐次解決するという方針に、これはむしろ政調会だけではなしに党議としてきまったようであります。従って、ただいまお示しのことは、もとより民主党の一機関の決定であり、外部に発表したものには相違ありませんけれども、今日はそういう考え方でないように党から伺っております。これらの事情と関連をいたしまして、厚生大臣としては、党の意見を尊重しつつ、三十年度予算において、三十年度の赤字対策並びに恒久対策については別途の考え方を立てようといたしておるのでございます。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 滝井君にちょっと御了解を得たいのですが、厚生大臣は十一時半から遺族大会に出席しなければならぬそうであります。これは事情やむを得ないと思いますし、ほかにまだ大臣に対する御質問が三人もございますから、どうぞ一つそのお心、つもりで御質問を願いたいと思います。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 今の大臣の御言明によりますと、選挙中にわれわれが民主党の公約だと思っておったものが白紙に返されたそうでございますので、その問題を一つ白紙として大臣の御意見を伺っていきたいと思います。  そうしますと、昭和二十九年度の四十億の赤字については、当面の対策としては国庫余裕金でやるという、これでは芸がなさ過ぎる。これは何も内閣が決定しなくても、赤字の出たものは当然国庫余裕金でやる。一番姑息な、一番簡単な方法はこれ以外にはない。そうしますと、二十九年に赤字が出たことは、やはり三十年にも出ることはさまっておるのですから、大臣が言われたように、社会保険を統合したり強化したりしていく。しかし、こういうことは今までの、吉田内閣以来の常道であって、これはむしろわれわれは根本的な対策に属すると思う。やはり当面の対策が必要なんです。すると、当面の対策として医者の監査を強化したり、それから保険証の不正使用を防いだりしても、これは一億か、二億も出ない。幾ら監査したところで、そんなに全国の五万の保険医が全部水増ししているというようなことはないですから、そんなことをやったって大して出はしない。またやる人件費が多くかかる。ゲー・ぺー・ウーにゲー・ぺー・ウーがつくようなものです。そういうことは、もはや当面の対策としては本筋をはずれておる。そうすると、当面の対策は、国庫余裕金一を出すならば、むしろ大臣の政治力で、まず二十九年度は長期資金借り入れが行われなければならぬと私は思うのです。この余裕金では、今の赤字をちょっとあれするだけで、何の役にも立ちません。これは長期資金でもだめなんですけれども、まず一応保険経済の危機を克服していくためには、やはり長期的な資金の借り入れがこの二十九年の四十億の赤字対策としては当然行われなければならぬと思うのです。同時に、今度は、二十九年度と三十年度の赤字についての——もう三十年度はすぐ四月から始まるのですから、当面の対策を立てる。そして、二十九年度と三十年度の赤字を一応何とか、盛り上ってくるいろいろの不平不満を緩和しながら、その緩和した一年か一年半の中で、恒久的な対策をすみやかに並行的に立てていかなければならぬと思うのです。そういうまず当面の具体的な対策、少くとも来年度の七十三億までを含めた対策を立ててもらわなければならぬ。それは民主党内閣が二年も三年も続けばいいが、今のような状態で、百八十五名の不安定内閣ですから、そう長く続くとも考えられません。従って、これはやはり当面の、少くとも三十年度までを見込んだものをここで明白にしていただかなければならぬと思うのです。すでに、来月の五日までくらいには大体大蔵省においては予算が固まるといっておる。そうしますと、予算編成の過程で大臣は折衝されると言うけれども、大臣の折衝される具体的な点だけでも明白にしていただかなければならぬ。  先般こういうことがあった。この厚生委員会で結核対策を尋ねた。事務当局がるる結核対策を述べた。ところが大臣が来て、今結核対策を聞いたのだが、具体的にどの程度の予算を折衝するのかと尋ねたら、いや、私はそういうことは知りません。事務当局はるる一時間半にわたって結核対策を説明した。ところが大臣は、私はそんなことは知らぬ、事務当局の勝手だ、こういうことを言われた。そういうことは川崎大臣のときにはないと思いますが、今度は事務当局ではなくてあなたの——もう五日ごろに予算は固まるはずですから——今日は大蔵省からも大村主計官が来ていますが、一つ大臣から三十年度までの当面の対策をまずお聞きして、それから恒久対策をお聞きしたいと思います。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 ただいま滝井さんから、不安定な内閣だ——その通りだと私も思うのであります。従って、長期対策も立てるということまでいけるかどうか。いかすようにしていただきたいと私は考えておるのであります。そこで、お答えをいたしますが、長期資金の借り入れということも考えておりますが、率直に申し述べるならば、私は長期資金の借り入れよりは、この際厚生大臣といたしましては、国庫負担を実現することの方が筋道ではないかということを考えておる者の一人であります。そして今日そういう考え方をもって予算編成の過程に臨もうといたしておるのであります。もとより国だけが責任を持つというような考え方では、健康保険財政というものはまかない切れるものではありませんので、当然これに伴って各種の問題が出ると思います。私、もとより厚生大臣の責任ある立場として言明をいたすのでありますが、患者の一部負担ということは避けたいという考え方を持っております。国庫負担を実現させ、これと並行して他の問題も並行に解決をしていきたい、こう率直に意見を表明いたしておきます。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 一つ出てきましたが、長期資金の借り入れというのは、いわば余裕金に次いでやりやすい問題です。それからその上の国庫負担のことを大臣が言ってくれまして、まさに旱天に慈雨の気持がいたしました。大臣は国民健康保険の国庫負担の問題については、非常にわれわれの先頭に立って御努力いただいのです。従って、あの当時改進党でございましだが、二割の国庫負担ができた。その後われわれは厚生年金についても努力をして、坑外夫一割五分、坑内夫二割の国庫負担ができた。あるいは日雇い労働者については一割の国庫負担ができた。そうすると、日本の社会保障制度の支柱をなすといわれているこの健康保険のためには、どの程度の国庫負担を大臣はお考えになっているか、大臣の心組みを一つ表明願いたい。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 私は御承知のごとく社会保障制度審議会の委員の一人でありまして、その当時の熱情を今日も失っておりませんし、あの考え方が理想の考え方だと思います。つまり、給付費の二割を国庫負担とするのが当然とるべき考え方だとは思いますが、今日の財政の状況並びに国民健康保険との関連を見ますならば、使用者と一般国民との問題を同列に扱っていいかということは、相当税金の問題その他に関連して議論の起るところと思うのであります。従って、その間におきまして、多少の厚薄の差がつくということはやむを得ないことではないか。理想と現実には多少の径庭があるというふうにお含みを願ってけっこうではないかと思うのであります。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 川崎厚生大臣も、理想としては二割の国庫負担の実現に努力したいということで、まことにけっこうなことだと思います。  次に、大村主計官にお尋ねいたしますが、大村さんは長年厚生省の主計官として社会保険に非常に御理解のある方なんですが、きょうは一つ大臣のかわりに御答弁を願うということで来ていただいておりますから、思い切った御答弁を願いたいと思うのです。現在の一兆円の予算のワクの中で、二割の国庫負担ができましょうか。できないとすれば、大村主計官としては、あなたの長年厚生行政を客観的に見た立場から考えてみて、さいぜんも申しますように、すでに日雇い労働者健康保険もできておりますから、それではどの程度の国庫負担ならば財政的に可能だとお考えになりますか。またあなたなら、どの程度ならばできるとお考えになりますか。

大村筆雄大蔵事務官(主計官)

○大村説明員 ただいま健康保険の国庫負担の問題につきまして、どの程度来年度できるかという御質問でございますが、健康保険の給付費は、大体年四百億であります。これを二割といたしますと八十億でございます。一割といたしましても四十億でございまして、来年度、率直に申しまして、今年と同様に一兆円の予算を組むといたしますと、財源的には非常に余裕がない。来年度さらに住宅対策に非常に重点を置くといたしますと、これは当然財源的には非常に窮屈になると考えざるを得ないのでありまして、健康保険の赤字問題については、私ども非常に苦慮いたしておるところでありますが、国庫負担の問題という点になりますと、これは財源的には非常に困難ではないかというふうに考えております。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 そういたしますと、主計官の見るところでは、財源的に困難ということは、今のところ大蔵当局としては国庫負担は実現できそうにない、こう了解して差しつかえありませんか。大臣は二割をとりたいということですが、今一割と見ても、これは四十億です。四十億だと二十九年度の赤字を解消するにすぎない。そうすると七十三億と推定せられる、あるいはまたもっと多くなる可能性が強い赤字というものは、全然ノータッチでいかなければならない。もちろん大臣には、今、参議院に行かれましたのであとで聞きますが、先ほどこれと並行してその他の問題もやると言われたので、その他の問題はあとで出ると思うのですが、まず第一に国庫負担の問題です。どうですか、大蔵当局としては、今一兆円予算のワク内では、住宅対策というようなものが——もちろん私は社会保障というものは、住宅対策と医療保障が中心だと思います。そういうことで医療保障はやらなければならない。それに住宅もやるということになると、国庫負担はちょっとむずかしい、あなたのお考えはこういうことなんですね。従って、大蔵省としては国庫負担は財政的にできない、そこのところをはっきり言って下さい。これはわれわれ社会保険の基金をどういう工合にやるかという点について、非常に多くの悩みを持っておるわけですから、国庫負担が山なんです。もうどうせ四、五日のうちにきまるのですから、できるかできないか、率直に言ってもらいたい。

大村筆雄大蔵事務官(主計官)

○大村説明員 私どものは、事務的感覚でございまして、これまた大臣の段階になるとどういうふうになるかわかりませんが、事務的感覚から申しまして、来年度の予算規模から申しまして、あるいはその中に織り込む政策の諸経費の内容から申しまして、率直に申しまして、非常に困難であるし、あるいはできないのではないかというふうに考えております。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 まず事務的に見てできないことは、政治的に解決する以外にないと思いますが、事務的にも財政技術的にもできないことは、政治的にやることも非常に困難である。従って、川崎大臣は国庫負担の実現を言われましたが、その見通しは、社会福祉というものは、国家という大平野につながる一大難路であるということがわかりました。そこで、大臣のかわりに保険局長にお尋ねいたしますが、国庫負担は困難だということになった。大臣は、今国庫負担に並行して他の問題もやるのだ、こういうことを言われたのですが、当然保険行政を担当しておられる保険局長は、国庫負担、その他の問題についても、いろいろ意見を大臣に申し述べておると思うのです。これと並行してやる他の問題を、一つここで、はっきりしておいていただきたいと思います。

久下勝次厚生事務官(保険局長)

○久下説明員 先ほど大臣が、政府といいますか、それと同時に与党の方針を申し述べられたのでありますが、その前に、私ども事務的に検討したいろいろな対策はあるのでございますけれども、一応そういう政府の方針として再検討をするために、何か特別な審議会でも設けて早急に結論を得るようにしてもらいたいというのが最終的な方針でございます。今、私といたしましては、こういうことをやるというような腹案を申し上げる段階に至っておりませんから、御了承願いたいと思います。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 どうもこれは大へんなことなんだが、特別の審議会というのは、大臣のごあいさつでは、根本的な、抜本的な対策については各方面の意見を総合的に反映する審議機関を設けると、こうなっておるのです。私は、今、まだ恒久対策を聞いていないのです。当面の、今とりあえず出てきた四十億の赤字というものは、これは国庫余裕金では当面の対策にはなるかもしれないけれども、それは下の下なるものであって、それよりか長期の方がいいことはあなたも同じだと思うのです。ところが、その次にやはり当面の対策としては、短命を予想せられる民主党内閣としては、まあまあそんなに長い先のことは、あの七年二カ月政権を担当した吉田内閣でもできなかったのですから、これはわれわれもすぐできるとは思いません。これはわれわれ社会党が政権を取ればりっぱにやってみせると思っておるのですが、保守党政府のもとにおいては、元の民主党の修正資本主義の段階にあっても、最低賃金制度、完全雇用、重要産業の社会化というものの上に立たなければ、ほんとうの社会保障制度というものはできないと見ております。従って、当面を糊塗するようないわゆる資本主義政党のもと、保守政党のもとにおいては、できないと思う。できないけれども、やはり当面の対策については、はっきりとした見通しを持ってもらわなければならぬ。われわれも最低賃銀制度をつくる、完全雇用の実現、産業の社会化なんと言っても、これはわれわれが政権を取っても、そんなにすぐにできるとは思っておりません。いわんや保守政党のもとでそういうことが行われないことはわかっておるのだが、従って、当面の対策として委員会をつくる前に、少くとも行政的にあるいは内閣が単独でできる問題があると思う。国庫負担が事務的に不可能であるとするならば、当然その四十億なり、来年度出る七十億の赤字については何らかここに対策がなくては、今言ったように健康保険というものの問題がますます拡大するばかりです。これは私さいぜんるる申し述べたように、客観情勢にギャップが出てきておるのですから、このままではますます赤字というものは拡大する。雇用の量がどんどん増加するよりか、保険に加入して受診率の方が上り方が早いのですから、当面の健康保険対策としては、なるべく早く収支の均衡を回復する措置を講ずると、こうなっておるのですが、当面の収支の均衡を回復する措置というものがなくちやならない。それを事務当局が大臣に教えて、大臣は他の方法を講ずると言ったのですから、あなたの教える他の方法をここで率直に述べていただきたいと思う。この前のように、あなたが述べたことを大臣が知らぬということでは困るのですが、あなたが述べたこと即川崎厚生大臣の行政として反映するように述べていただきたい。述べられなければ、これは大臣が来てからでないと困るのです炉、患者は、やらなければ死ぬのですから、待ったなしです。早くリンゲルなりペニシリンを打ってやらなければならぬ。現実において待ったなしです、この行政は一刻の停滞を許さない。一つ局長、御遠慮なく、委員会をつくるとかなんとか言わずに、あなたのうんちくのあるところを述べていただきたい。

久下勝次厚生事務官(保険局長)

○久下説明員 少し御質問にはずれるかもしれませんが、昭和二十九年度の赤字が、ただいまのところ四十一億くらいになる見込みであります。これにつきましては、先ほど大臣が申し上げましたように、結局この赤字は診療担当者に対する支払いの遅延ということで現われてくるのでありまして、私どもとしてはこれを早急に解決をし、医療担当者に支払いをしなければなるまいと考えておるのであります。そのために昭和二十九年度に借り入れました国庫余裕金を今月末までに全部返済をし得る見込みでありますけれども、これに引きかえて、すぐに四月早々国庫余裕金の借り受けをいたしまして、遅延をいたしております支払いを完了したいという考えであります。従いまして、先ほど御指摘のように、国庫負担というものは、当然年度末にはまた返さなければなりません。このまま放置しておきますと、昭和三十年度末にそのしわ寄せが来るのであります。私どもの希望といたしましては、国庫資金の運用計画がきまります際に、何とかこれを長期資金に借りかえをいたしまして、あとへしわ寄せが来ないように措置したいと考えておるものでございます。そこで、一応そういうことが実現をいたしますれば、二十九年度の赤字問題は、長い期間にわたって解消されるということになりますので、とりあえず大きなしわ寄せは来ないで済むという考えであります。  そこで、昭和三十年度におきましては、先ほど来申し上げておりますように、私どもとしては健康保険財政に赤字のないような諸対策を講じたいというので、いろいろ具体的な案も練ってきたのでありますけれども、くどいようでありまするが、政府全体の方針といたしましては、与党の意見もありまして、もう少しこれは検討してもらいたい、特に大臣から具体的にお話のありました部負担の問題も、私どもの事務的な検討の対策の中には含んでおったのでありますが、これはただいまの状態においては、実施することが適当でないということに相なりまたしので、その他の問題についてどういう対策をとるかは、あらためて白紙に戻して至急に再検討をするようにということになった次第であります。  そこで、私ども、実は今考えておりますのは、昭和三十年度の本予算の折衝も、お話の通り近くに迫っておりますが、厚生省といたしましては、各種医療保険を通じまして、すでに御案内のように一割五分の国庫負担の実現を要求をいたしておるのであります。すべての他の対策というものも、この国庫負担が実現するかどうかということに、実はかかっておるのでありまして、大村主計官の御説明のように、私ども自身もこの実現は非常に困難だとは思っておりますが、川崎新大臣は、この問題につきまして非常な熱意を持っておられまして、私どもといたしましても、事務的に困難であれば、政治的にでもというような気持で、何とか予算が幾分でも実現がこの際できますならばということを考えておる次第であります。そうなりますと、先ほど申しましたような構想で、三十年度の財政上赤字を生じないような対策をとるということになりますと、この国庫負担の実現の有無にかかって参りますので、私どもの考え方は、そういう意味で国庫負担の実現の有無ということをまず中心的に考え、またその限度に応じまして、その具体的な諸対策を考えなければなるまいというふうな考えでおります。そういう意味で、今ここでこれこれのことをやりますということを具体的に申し上げることはできないのでありますが、先ほど大臣のお言葉の中にも抽象的に出ておりましたように、社会保険の赤字というものを何もかも国庫負担にしわ寄せをするという行き方は、私どもとしては適当でないと考えておるのでございます。そうなりますと、結局保険の関係者であります事業主、被保険者の方でも若干の負担をしてもらわなければならぬという考え方があり得るのでありまして、この辺のところは、しかし今のところはそういう抽象的な考え方だけでありまして、これをどういう方法でどの限度においてやるかということは、あげて今申し上げたように国庫負担の実現、またその方法にかかっておるというのが現在の私どもの立場であり、考え方でございます。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 まず第一に、大村主計官にお尋ねしますが、国庫余裕金で二十九年度の四十億の赤字をまかなう、これでは今保険局長の言われたように、三十年度に百億の赤字になってしわ寄せになってくるわけです。これは保険財政の赤字を、ただ一年先に送っただけなんです。もちろん政治というものは、一つの問題が起れば、それを先に送るのがいい政治家だという見方もあるようでありますけれども、これは人間の生命に関する問題で、そうはいかぬと思う。結局そういう形で支払いがおくれれば、一番迷惑するのは勤労大衆、病気にかかった弱い人たちが一番悪い治療を受けなければならぬことは明らかなんです。そういうことは、われわれはヒューマニストとしてやることはできない。そういたしますと、どうですか、大蔵省は国庫負担は実現困難だとすれば、長期資金について、これは実現は不可能ですか。長期資金の借り入れを保険財政に与える、こういう見通しについて、主計官の見通しはどうですか。

大村筆雄大蔵事務官(主計官)

○大村説明員 ただいま滝井先生のおっしゃいましたように、支払いが遅延いたしまして、医師の方にも、それから患者の方にも、非常に迷惑がかかりますので、できるだけそういうことがないようにしていきたいという気持でおります。従って、とりあえずは来年度は、暫定予算におきましても、差額は国庫余裕金をもって何とか処理していきたい、こういうふうに考えておりますが、長期借入金の問題になりますと、これはむしろ理財局の問題でございますので、私どもとしては、特にこれについてどうこうというわけには参らないのでございますが、先ほど申し上げましたよように、患者の方にもそれから医師の方にも御迷惑がかからないように、できるだけ措置していくように考えていきたいというふうな気持でございます。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 期借り入れについては、主計官としては、ぜひお帰りになったら理財局長の方にも一つ連絡をして、国庫負担の実現ができないとするならば、当然長期資金の借りかえにしてもらうように努力をお願いいたしたいと思います。  その次は保険局長さんですが、もし一割五分の国庫負担を要求するということになりますと、問題は、この健康保険には政府管掌と組合管掌と二つあって、政府管掌の被保険者が五百十万ですか、組合管掌は三百三十万ばかりあるので、両者合せて家族も含めると二千三百万の諸君がこの健康保険の恩恵を受けているのですが、政府は当然組合管掌の分については国庫負担というものはやらぬと、こういうことになるわけでしょうね。

久下勝次厚生事務官(保険局長)

○久下説明員 現在の私どもの立場なり考え方は、組合管掌につきましても国庫負担をなすべきであるという考えでありまして、先ほど申し上げたように、組合管掌につきましても、予算の要求としては一割五分の国庫負担を提出をいたしておる実情でございます。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 そうしますと、一割五分の国庫負担は、組合管掌を加えますと総額幾らになりますか。ちょっと両方をわけて言って下さい。

久下勝次厚生事務官(保険局長)

○久下説明員 私どもが予算要求の際に積算をいたしました数字によりますと、政府管掌健康保険の療養給付費の一割五分の相当額は五十九億円でございます。組合管掌健康保険が三十七億でございます。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 そうしますと、組合三十七億、政府五十九億で約九十六億、百億に近い金が国庫負担として要求せられておることになるのですが、局長さんとして、今大村主計官のお言葉に亀ありましたように——大村さんは多分四十億ですから政府管掌の分だけを問題にされておったと思うのです。そうすると両方ということになると、これはますます困難な情勢が出てくることになるのですが、われわれとしても当然これは組合あるいは政府の分を要求すべきものだと思うのです。それで、これは白紙に返しましたが、先般民主党が発表したとき、あのときは五%の国庫負担だ、こういうことだったと思うのです。現在保険財政の赤字を切り抜けていくための前提は、何としても国庫負担の決定ができなければ、一切の問題は進まない、こういう局長の御答弁がありました。私もそうだと思います。しかし、参考のために、その国庫負担の要求を実現をしたならば、おそらく一部負担という問題が考えられる点だと思うのです。さいぜん、厚生当局の考えた案の中には一部負担も入っておる、こういうことなんです。局長さんの方で考えられたその入っておった一部負担というものの構想を、どういう構想であったのか、一つ参考のためにお聞かせを願いたい。

久下勝次厚生事務官(保険局長)

○久下説明員 すでに葬られました案でもありますので、申し上げてもいかがかと思っておるのでありますが、私どもいろいろ検討いたしまして、かりに一部負担をやるといたしますれば、長期の疾病で悩んでおる人たちに負担はかけないようにしたいということを、まず第一に考える。第二は、一部負担をしてもらうにいたしましても、その限度を考えて、被保険者の実情から考えまして、大体この程度なら負担をし得るというような限度にとどめたいと思って、負担の率等もその点から制約を受けるという考えでございます。従って、その意味から、一カ月の最高限度につきましても、ある程度の制約を加えたいという考えでございます。その程度の基本的な考え方に基きましても、なお一部負担のやり方につきましてはいろいろございますが、私どもとして一応事務的な結論を得ましたのは一律の低率一部負担、それに先ほど申し上げたような制約を考えるというふうにしたものでございます。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 大体とり得る当面の対策は、そのくらいのものだと考えられます。それならば、恒久的な対策をいろいろ審議機関を設けてやるということでございますが、この問題は、もうすでに長いこと論議をされてきておる問題です。局長が考えられておる、日本のこの継ぎはぎだらけの社会保険というものを、どういうようにやったならば危機はある程度乗り切れる、長い御経験を通じて、一局長のこうやったらいいだろうという、これは厚生省のあれでなくてけっこうですが、意見を聞かしてもらいたいと思うのです。こういう対策をやったらおそらくいいだろうという意見です。これは、私はそれをもって厚生省のあれとはいたしません。これははっきり申し上げておきますが、その意見を一つ聞かしてもらいたいと思うのです。川崎さんも、社会保険についてはしろうとなんです。川崎さんの頭の中から、日本の社会保険に対するそんないいあれが出てくるとは、私たちは予算委員会の答弁を通じて、考えられません。彼は社会保障制度の専門家かもしれませんけれども、社会保険についてはしろうです。やはり長年扱ったあなたの意見というものは、今後われわれ自身がわれわれの党において政策を立てる場合にも、きわめて貴重な参考になると思うのです。そこで、今後われわれがこの問題と取り組む、赤字解消の危機克服の具体的な対策を立てる場合においても、非常に参考になると思いますので、恒久的にはこういう点とこういう点に一つの欠陥があるという点を御指摘いただいて、われわれの参考といたしたいと思いますので、ぜひ一つお漏らしを願いたい。それを言質といたすものではありません。

久下勝次厚生事務官(保険局長)

○久下説明員 私自身、実は最終的な今後の形といいますか、改革の案につきまして結論を得ておるものでありません。そういう意味で、今私どもとしてやっておりますことは、とりあえずのここ一、二年くらいの間の対策をまず立てて、それから少し時間をかしていただきまして、今後の問題、恒久的な問題を考えたいという態度でありますので、もしも後者を含めての意味であるとしますならば、まだ私自身の考えが固まっておりません。ただその考えをいたしますにつきまして、いろいろ要件として考えなければならないと思っている点だけを申しまして、御参考にしたいと思うのであります。  その一つは、よく社会保険の統合ということが言われますけれども、私から申し上げるまでもなく、それぞれの保険、医療保険一つだけをとらえましても、各種の医療保険は、それぞれそのよって立つ基盤が異なっておりますし、従いまして給付の内容にも、御案内の通りに径庭がございます。これを統合するといいましても、統合の眼目は私はそういう実態的な給付内容の調整にあると思うのであります。いろいろ過去の経験を通じましても、すでに高いレベルに到達しておりまする給付内容、この現実を引き下げるということは、実際問題としてほとんど不可能に近いことであり、またやるべきことでもないと思うのであります。かと申しまして、逆に低いレベルの給付内容のものを高きに引き上げるということになりますと、またこれはいろいろな面に差しさわりが出て参りまして、この面からの実現も非常に困難でありまして、統合と申しましてもそういう問題、いずれの面から申しましても、困難な問題はこの際やはり——何年か先の問題は別といたしまして、ここ数年間の問題としては、そこまで徹底をしなくてもいいのではないか。少くとも窓口とか、あるいは事務的な費用の節減とかいう意味の統合を考えていくべきではないかと思っておるのでございます。  もう一つは、よく言われることでございますけれども、現在の健康保険を中心とした疾病保険の、わが国の制度の建前というのは、必要な以上はこれを給付をしていく、こういう考え方に立っております。いわゆる現物給付の観念でございます。五割の負担をしておる国民健康保険でさえも、制度の考え方としては、現物給付の考え方でありまして、これを財政困難な際だから思い切ってというような意見もないではございませんけれども、私どもの考え方としては、先ほど滝井先生が御指摘になりましたように、わが国民経済力とわが国医学の水準というもののアンバランスと申しますか、これも私どもも率直に認めるのではございますけれども、事人命に関し、健康に関することでもありますので、この基本的な現物給付の考え方はくずしたくないという気持を持っております。しかしその範囲内におきまして、むだを省くということは必要ではございましょうけれども、ただいま私が考えておりますのは、その点をぜひとも堅持して参りたいという考え方でございます。  それからもう一つは、まだ固まっておらない考えではありますけれども、現在の診療報酬の支払い制度というものは、これは何とか考えていかなければなるまいと思っております。決して診療担当者が悪いという意味で申し上げるのではないわけでありますけれども、こういう保険というような形式で医療を行って参りますに当りまして、支払い方式の問題は、財政問題にも大きく影響する基本的な問題であります。これは今、今年とか来年とかいうふうに日を限った対策は、あるいは立ち得ないかもしれませんけれども、私どもといたしましては、社会保険の支払い方式につきまして、もっと根本的に考え直していいのではないかというふうに考え、すでに御承の通り、実地調査もいたしております。また三十年度におきましても、続いてこの問題と真剣に取り組んで参りたいというふうに考えておるのでございます。  取りとめのないことを申しましたけれども、大体基本的な考え方として、そういうようなことを頭に入れながら、今後の構想を練りたいと思っておる次第であります。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 私も今局長さんの言われたのと大体同意見なんです。私も社会保険の統合というものは、できやすいものから漸次にやっていかなければならぬと思います。たとえば、健康保険とすぐに近い厚生年金、あるいは日雇い労働者健康保険、日雇い労働者失業保険というような、やはり窓口の近いものは、窓口をできるだけ事務的に一本にして、まず複雑多岐にわたるもろもろの保険の事務費を倹約するだけでも、三十億や四十億は私はすぐ出てくると思います。あるいはそれの予備費が二重になっているというような点から考えても、その予備費から、五十億や六十億の金は私は出てくると思うのです。まずそういった恒久的な問題は、なかなか何十年という歴史と伝統を持った保険ですから、やりにくいと思う。やはり窓口や事務の簡素化からやって参りたいと思いますし、疾病保険がもちろん現物給付であることはまた当然だと思います。それから支払い方式についても、やってもらわなければならぬと思う。しかし同時に、社会保険の事務の簡素化、いわゆる診療報酬の請求様式の事務の簡素化、これはもう現実に社会保険の出張所自身が困っておるし、医者自身も困っておる、あるいは監督官庁においても基金の審査等を通じても非常に困っておると思うのです。これはぜひやってもらわなければならない。  いま一つ、これは別な角度から、日本の社会保険の危機の克服をしなければならないのですが、健康保険にも国民保険にも、予防という面がとられておる。たとえば身体検査をやるとか、あるいは定期的な健康診断をやるとかいうことがとられておるのですけれども、現在の日本の公衆衛生の中心を見ると、出てきたところの病人の対策に右往左往して、そしてその前の病人を作らないという対策というものが、いわば最近は盲点になっている。私たちが学生の時代には、予防医学というものがはなばなしくデビューしてきた、政治の舞台に登場してきた。ところが、最近はその登場したはずの予防医学というものが、どうも色あせて、うしろに追いやられて、いたずらに出てきた失業者、出てきた病人の対策というものがクローズ・アップされて、予防というものは忘れられておる。国民健康保険のその法律自身の中においても、健康保険の法律自身の中においても、いわゆる予防給付というものが、だんだん当面の対策に目を奪われて忘れられてきておるということなんです。従って、健康保険の給付なんかを見てみますと、死んだ患者については莫大な注射なんかをしているけれども、これは審査委員会をパスしてしまう。ところが、患者が軽いうちに少し濃厚治療をやって、病気を重くせずに早く労働力を回復させて、そしていわゆる労働の再生産を順調に行わせるようにさせてやった医者は、濃厚治療だとして切られておる、極端にいえばこういう形勢なんです。死んだ患者には何万円という莫大な注射をしておるけれども、これは認められておる。いわば社会保険制度の中で、予防保険という点が大きな盲点になって出てきておると思うのです。しかし、これは国民健康保険や、あるいは健康保険の実際の治療の面においても、そういう点が出てきておるし、国の財政の上においても、大きな盲点が出てきておると思うのです。予防医学を担当している公衆衛生局に対しては、ここにおいてもあまり質問がない。たまにあっても、簡易水道の質問以外にはない、こういう情勢なんです。こういう点は、明らかに日本の政治というものがあまりにも当面の問題に追われて、長い目で日本の民族の問題、日本の公衆衛生の問題を見ていねい証拠なんです。その具体的な証拠は、地方に行っても、保健所というものが、最近は建物だけはりっぱにできました。りっぱに建物はできたが、保健所の中身はからっぽなんです。定員は六割しかない、しかも医者は少い。保健婦はおるけれども事務に追われておる、こういう形なんです。保健所と税務署と労働基準監督署は、堂々と建物ができた。ところが保健所に至っては、建物は税務署並みにりっぱにできたけれども、公衆保健をやり、予防医学を推進する中身は全くからである。こういうことが、日本の結核対策にいたずらに金をつぎ込んでおるけれども、実績が上らないということなのです。こういう予防給付の面から、日本の医療費の節減をして、そして日本の社会保険の危機を打開する道があると思うのです。こういう対策は、当然今までやられた公衆衛生担当の局長さんは考えられていると思うのですが、何か一つあなたの卓見があれば、この際言ってもらって、われわれの対策の参考にしたいと思います。

山口正義厚生技官(公衆衛生局長)

○山口説明員 ただいま滝井先生から御指摘がございましたように、病人が出てからそれに治療の手を加えるということでは、費用もかさみますし、また技術もかさみます。本人の苦痛も多いわけでございます。病人が出ないようにいろいろの措置を講ずる、従いまして予防医学の面から公衆衛生行政を進めていくことが早手回しであるということで、当然それを考えていくべきであるという御指摘でございますが、私どもも以前からそういうふうに考えているわけでございます。御指摘のように、たとえば結核を例にとってみましても、健康診断を励行して、発病のおそれのある者に対してはそれぞれ適当な措置をとり、また患者を早期に発見して、早期治療を施しますれば、同じ療法をやりましても効果が多く上るということは、これは幾多の事例が証明しているところでございまして、疾病対策としましては、現在出ております患者に対してそれを放置しておくわけには参りませんので、医療対策ももちろん重要な問題ではございますが、疾病対策としては、予防対策あるいは早期発見、早期治療ということが、より重要であることは、私どももそういうふうに痛感しているわけでございます。結核におきましても、先ほど来申し上げましたように発病防止あるいは早期治療という点に重点を置かなければならないというふうに考えているのでございまして、一昨年実施いたしました結核の実態調査におきましても、今まで予想しておりましたよりも患者が非常に多く、またそのうちの八割が自覚をしていないという状態でございます。そういうものを放置いたしますれば、他への感染のもととなり、また本人の病状も悪化するというわけでございますので、私どもは今までもその方針でやって参ったのでございますが、今後特に疾病の医療対策に力を入れますと同時に、健康診断あるいはその他の予防措置を励行しまして、疾病の予防、発病防止あるいは早期治療という方に力を入れていきたいと考えているわけでございます。特に新しい考え方ということでなしに、先ほど滝井先生からも御指摘がございましたように、予防医学が、かつて非常に前面に推し進められましたが、現在治療方面の影に隠れているという御指摘でございます。われわれの行政力の足りないところもございまして、保健研の整備なんかもまだ不十分であるという点は、まことに申しわけないと思っておりますが、今後はそういう方面に特に力を入れていきたいと考えております。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 結核対策については、時間がありませんからこれでやめますが、さいぜん保険局長さんから、支払い制度の問題が出た。やはり健康保険の赤字を解消していくためには、もう少し公衆衛生行政が、医療費の支払の面まで深く検討して、積極的に行政を推進していただかなければいかぬと思うのです。現在それが推進されていないところに、非常に問題があると思うのです。そこで、そういう問題とも関連して、健康保険の支払いの方式ですが、この医療費が非常に莫大にかかっている。従って、この莫大にかかっている医療費をある程度切り下げるためには、物と技術とを分離しなければならぬという新医療費体系が考えられる。おそらく現在まだ厚生省も、新医療費体系に一まつの名残りをもって考えているだろうと私は思っている。私は物と技術を分離する思想は賛成なのです。この前も、われわれここでいろいろ議論を展開しましたが、これはやはり今後われわれが社会保険の危機を克服する上における一つの足がかりになる議論だと思っております。そうすると、現在の薬剤士においても歯科医師においても医者においても、正当な技術料が日本においては認められていないということは確実なんです。その正当な技術料を認めていきながら物と技術とを分離した形をつくるとするならば、われわれが当面医療費を引き下げる問題は、医療費を多く食っているのは、物そのものに利潤が入っているということなんです。これはすでに新医療費体系で検討済みなんです。そうすると、ここで医療費を下げるという場合に問題になるのは、薬品や衛生材料がどうなるかということです。問題はここに私たちがメスを入れることで、それが日本の医療費を切り下げる早道だと思っている。たとえば現実において点数と単価で掛け合せたものがわれわれの報酬と目されるのでありまして、点数単価の支払い方式というものが、現在の健康保険の基礎をなして来ているわけであります。そうすると、その点数を決定しているというそのものは、主として物なんです。技術もありますよ。手術や何か技術もあるが、主として医者の医療費の多くを占めているものは注射と投薬、これは物なんです。そうすると、物の原価を下げれば下げただけ、すぐそのまま下ってくるという形が出て来るわけです。従って、物と技術を分離する思想は、まず製薬業にメスを入れなければならないと思う。これは何も根本的な医療対策でなしに、当面政府の行政力でできる問題だと思う。たとえば、一括して政府が製薬会社から薬を買う、そしてそれを保険医に現物として給付していくという形は、むずかしいことではない。今の制度を大して切りかえなくともできる問題なんです。そういう大量のものを政府が買い、そうしてこれを分配していくということは、日経連の湯浅佑一さんあたりも、そういうことを主張している。現在の日本の政府の支払い方式、点数単価というものは、大体現状でいい。その中における基礎的な薬品や衛生材料器材というようなものを、どういう工合に実際的に使っていくかということなんだ、そういうことを言っております。私は卓見だと思う。少くとも資本家のチャンピオンである湯浅さんあたりがこういう意見を述べているということは、私は卓見だと思っている。そうしますと、何も物と技術とを分離して医薬分業という形でなくても、まずできるところから手をつけていくべきだと思う。この前医薬分業を通じても、製薬後におきます流通の過程ということは、薬務局長から満足な答弁を得ていないのです。現在保険局長も多端だと思いますが、物についての利潤をある程度排除して、少くとも原価にわずかの利潤を加えた形でやるということで、一番早く日本の医療費をぐっと下げることができると思う。問題は、ここに二重三重の利潤がかかる。かように製薬業でかかり、問屋でかかり、小売業者でかかり医者でかかる、そしてそれが患者に来る、こういうことなんです。これを製薬業から政府が大量に買って、それを医者に持っていくならば、実際のマージンが排除されていくわけです。これだけでもおそらく二百億や三百億の医療費は立ちどころに私は出てくると思う。こういうように、割合大きなトラブルがなくして、政府の力だけでできるようなことを、やはり政府はやるべきだと思う。こういう点について、医務局長さんや保険局長さんなり薬務局長さんなりの意見をお聞きしておきたいと思います。あなた方の一つ一つの意見を参考にさしていただいて、私たちは健康保険の危機をどういうところからメスを入れていけば解決できるか、その糸口をつくりたいと思います。そういう点についてはどうですか。

久下勝次厚生事務官(保険局長)

○久下説明員 私の方の問題に触れた点がありますので、その点だけまず私から申し上げます。私は、先ほど支払い制度の改革について検討しなければならぬと申し上げた言葉の中には、御指摘のような物と技術の関係の分離を考えておるものであります。それも考えつつ、なおもう一歩進んだ方式も考えたいというつもりでございます。その場合に、物につきましては、私の方に現在薬価基準という制度がございまして、それに基きまして野放図な薬価の支払いがないように、御指摘の構想そのままではありませんけれども、現在の社会、経済組織のもとにおきまして、できるだけ保険の経費が削減のできるように、また合理的な支払いができるようにという考方のもとに薬価基準という制度があり、大体年に一回ないし二回の改訂をして実態に即するようにしておるのであります。この考え方は、不当に診療担当者の支払いを低くしないように、同時にまた不当に高くならないようにという考え方のもとに、ただいまお考えの構想を現在の組織のもとにおいて可能な限りにおいて実現しようという考えでやっておるものであります。それ以上の問題になりますと、またお話の点は薬務行政の根本に触れる問題でありますので、何か薬務局長から御意見がありますればお聞き取りを願いたい。

高田正巳厚生事務官(薬務局長)

○高田説明員 医療費を安くするという観点から、それに関連をする医薬品、衛生材料、さようなものを安くする、それが医療費の低廉化をはかる非常に重大な眼目であるという御意見に関しましては、私もまったくさように存ずるのでございます。ただいま滝井先生のお話の中に、政府が買い上げて——あるいは保険財政なら保険財政が買い上げて、それを診療担当者に現物給付するというようなお、話でございましたが、これにつきましては、私の所管を若干離れるようでございますので、それはしばらくおきまして、医療に使う物の価格を安くするという点につきましてだけお答え申し上げますならば、先ほど申し上げましたように、まったく同感でございます。さような観点から、私どもといたしましてもなるべく低廉に、いいものが大量に供給されるような努力を私どもの仕事の眼目としておるわけであります。ただ、そのやり方の方法といたしましては、御存じのように今日のわが国のとっております経済の基本原則というものがございますので、その原則に沿ってこれを行なっておるわけでございます。言葉をかえて申し上げますならば、価格の決定権もございませんし、原料その他についての配給権というようなものも、今日では政府としては持っておりません。いわゆる自由経済の建前でございますので、さような経済の体制下におきまして、物を安くいたしまするためには、何と申しましても第一は企業を合理化いたしまして、新しいいい技術で、しかも合理化された企業のもとにおいて物が生産されるということが低廉化の第一でございます。このためにいろいろな努力をいたしておるわけでございます。もう一つは、大量に生産をされるということが物を安くしまする要件でございます。従いまして、これには需要ということが関連いたして参りますので、この需要の開拓等をいたしまして、できるだけ大量生産、量産をして物を下げるということに私どもも努力をいたしておるわけでございます。具体的なお話で申し上げますと、新しい非常にいい薬が外国で発見される、しかもそれがパテントを持っておるというふうな場合におきましては、これを輸入をいたしておりますると、そこにいろいろな利潤が伴いまして、価格が高くなりますので、それらの場合におきましては、外資を導入いたしまして——外資と申しましても技術でございますが、技術提携という方法によりまして、これを国内で国産化いたしまして、低廉に豊富にさような薬を供給をいたしておる、さような方法をとっておるわけでございます。滝井先生も御存じだと思いますが、最近現われましたいろいろな薬、ペニシリンを初めといたしましてストマイ、あるいはその後のオーレオマイシン、クロロマイセチン、テラマイシンというような一連のたくさんの抗生物質、かようなものが非常に国内で生産されます。しかも、大量に生産をされる段階になりましたので、非常な速度をもって値段が下っておりますることは御承知の通りであります。かような方法を実はとつておるわけでございます。その結果、日本の薬が外国の薬とどの程度値段の開きがあるかと申しますと、これはいろいろ物によって違いますけれども、私どもの持っております資料では、高いものもあるが安いものもございまして、特に全般的にわが国の医薬品が外国の医薬品と比べまして高いということは申せないようでございます。大体同じような価格で提供されているように、私どもは承知をいたしておるのであります。なおまた、医薬品の値段の状況は、前に申しましたようにいろいろな業界の努力並びに私どもの微力もございますが、さような関係から年々医薬品の価格が下っております。これも資料がございますけれども、保険局の方で年二回くらいにわたりまして改訂をしておりまする薬価基準の値段等につきましても、御承知のように年々下っているような状況でございます。これは年々と申すよりは、むしろもう少し短期間に非常な値下りをいたしておるというふうな状況であります。大体さような状況でございまして、御指摘のように医薬品の値段を下げて医療費の低廉化をはかるというその基本原則には、私ども全く同意見で、その方向に向って努力をいたしておるということを申し上げまして御了承いただきたいと存じます。  なお御質問の中に、中間の利潤を廃止していったならば非常にいいのじゃないかという御質問もございました。これはある意味におきましては、私も同感でございます。しかしながら、この医薬品ということに関連をいたしまして生活をしている人たちもたくさんあるのでございます。これらも国民のみな一人々々でございます。しかも、それらはほとんど全部が中小企業であります。中小企業の安定なり、それらのものを保護いたしますこともまた、片方において忘れてならぬことであろうと存ずるのであります。さようなことから、一がいに御指摘のような方向に参るということもいかがかと存じますけれども、医療費を下げるということと、今のそれらによって生活をいたしておる人の生活を考えていくということ、この二つを彼此較量をいたしまして、できるだけ御意見の方向に沿ったような行き方をとって参りたい、かように考えておるわけでございます。

滝井義高日本社会党(左)

○滝井委員 中間利潤排除の問題は、これは議論になりますから、いずれまた機会をあらためて御質問いたします  あと結核対策と、それから川崎厚生大臣に対して恒久的な対策の問題を御質問いたしたいと思いますが、時間がありませんので、本日は一応これくらいで中止いたしたいと思います。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 それでは午前中はこの程度にとどめまして、午後二時半まで休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ————◇—————     午後二時四十六分開議

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 休憩前に引き続きまして会議を再開いたします。  厚生大臣に対する質問を続行いたします。長谷川保君。

長谷川保日本社会党(左)

○長谷川(保)委員 近ごろの厚生行政を見ておりますと、どうも生活保護の面といい、あるいは社会保険の面といい、児童福祉の面といい、あらゆる面が、どうも非常に消極的になってきているように感ずるのであります。ことに地方へ参りまして、それぞれの現場々々に首を突っ込んで様子を見てみますと、そういうような面からいたしまする非常な苦情が多い。またいろいろなトラブルが多いのであります。申すまでもなく、憲法二十五条におきましては、ことに後半におきましては「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と明記してあるのでありまして、社会福祉や社会保障、公衆衛生、こういうものの向上及び増進ということを絶えずはかることは国の責任であります。今日このように、私どもが現場を回りまして、非常な厚生行政の消極性というものを、しばしばわれわれは、むしろ後退という傾向さえも感ずるのであります。そういうようになって参りますことにつきましては、予算の面に制約せられるという立場からいたしまして、そういう傾向が強く出てきているのでありますけれども、こういうような憲法二十五条の規定というものを見ますと、私どもは、そう消極的にならないで、絶えず前進する気構えを持っていなければならないと、こう思うのであります。こういうときに新進気鋭の大臣を迎えまして、そうして先日のごあいさつにもありましたように、非常な困難はあるが一歩ずつ前進して行くんだ、困難を突き破って、排撃しつつ一歩ずつ前進するんだということを伺いますことは、私の非常に喜びとするところでありますが、しかし現実そういうような面が多分にございますから、この点私はよほどの御覚悟を持ってやっていただかないと、なかなかこの壁が、あるいは消極的な傾向というものが破れないのではないかと、こう心配をするのであります。今朝も同僚議員が伺いました健康保険の赤字の問題でも、大蔵省の主計官の御意向では、どうもなかなか厚生大臣の考えているようなふうには行きそうもないのであります。しかし、われわれも議員といたしまして、従来の厚生委員会は、いつでも党派をこえて一つになりまして厚生行政を推進するために努力をして参りました。今度社会労働委員会となりましても、私どもの気持は少しも変っておりません。野党というような気持も全然持ちません。何とかして厚生大臣をバック・アップしまして、厚生行政の推進のため、社会保障の向上のために十分な努力をいたしたいと、こうわれわれはひそかに考えておるわけであります。先日も厚生省の予算要求書を拝見したのでありますが、予算の面では、なるほど四十五億円ばかり前年よりもよけいに要求をしておるようであります。私はなかなか大蔵省の査定は辛いのではないかと心配をしております。聞くところによりますと、大体来月五日ごろに大蔵省の意向がほぼ決定をするのではないかというふうにも聞くのでありますが、大体こういうことに当って、新厚生大臣は、予算に対してどういうようなお見通しを持っていらっしゃるか、また今年度の厚生行政の推進について、現実的に大体どういうようなお見通しを持っていらっしゃるか、一応伺ってみたいのであります。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 ただいま厚生行政全般にわたって、近ごろ非常に厚生行政が消極的になっておるという御指摘であります。私が就任いたす前のことは厚生行政事務担当者自身はどうであるか知りませんけれども、あるいは従来の内閣の関係からして、厚生行政が他に比して多少圧迫をされておったという傾向がないとは限らないと私思います。昨年の二十九年度予算編成に当りまして、たとえば保健婦や保健所の国庫補助などというものが相当に削減をされましたり、あるいは日雇い労務者の問題とか失業保険法とかに関連しまして、国費負担の大蔵省原案が一時相当な削除をせられました。当時社会党の応援も得まして、改進党としては百億ばかりの予算修正をいたし、そのうちの大部分が社会保障の関係の費用であったことは御承知の通りでございます。従いまして、現内閣になったならば、前内閣よりも後退をしたような社会保障対策を行なっては、これはまことに看板に偽りがあるということに相なりまするから、もし原則的に言わせていただくならば、社会保障の関係の費用は、予算の編成過程において少くとも後退は許さない、つまり大幅な前進強化というものははかられなくても、昨年度よりも社会保障費は後退しないのだということだけは御了解を願い、かつ見通しもできるのではないかと思うのであります。ただ、ここに率直に、大体の今日の大蔵当局が考えておられる構想に関連をして申し上げると、生活保護等の関係については、事務的な増もいたしまするし、また大いに強化しなければならぬと考えておられるようでありますが、社会保険の方は、予算折衝の途上において、かなりの難関があるということを、厚生大臣としては承知をいたしております。しかしながら、これは輿論にいろいろな強化策が出てきておる際でありまするし、また党の政調会におきましては、相当強力なる社会保険の強化策を新たに講じようとしておる機運もうかがわれますので、政党内閣の建前からいたしまして、党の政調会並びに党の機関がきめたことを尊重しない政府では、これは政党政治には相ならぬと思いますので、厚生大臣としては党の政調会と十分連絡をとりまして、予算編成の途上において社会保険の強化その他の施策を行なっていきたいと思います。これをせんじ詰めて申し上げるならば、生活保護等の関係については、相当の増額が見られるのではないかというふうに今日見通しをいたしておりますが、社会保険の方は相当な困難を予想しております。

長谷川保日本社会党(左)

○長谷川(保)委員 今日鳩山内閣は、比較多数の上に立っておるということで、非常に政治にやりにくい面がおありだということは、われわれも御推察申し上げるのでありますけれども、こういうような社会保障及び厚生行政の問題になりますならば、もし鳩山内閣が、あるいは与党である民主党が、これを十分にいたしたいといえば、われわれはそれに幾らでも同調し、幾らでもそれをしり押しをして進めて参る決意を持っておるわけであります。でありますから、おそらくこの面だけにおきましては、比較多数というようなものではなくて、われわれ全部が応援するのであります。もし大臣がこの面におきまして十分積極的なお気持をお持ちになり、その施策を進めていこうとなさいますならば、与党野党の区別なく、われわれは全部応援するのでありますから、最も強力なうしろだてを持っておるわけであります。どうかそういう立場に立ちまして、どんどん遠慮なく進めてやっていただきたいと思うのであります。ことに先ほど来申しておりますむしろ消極的な傾向というものの背後にあります赤字の問題——もちろん予算によって行政をしておりますから、その予算のらちを越えるということにつきましては、当然いろいろ警戒をしなければならぬということはわかりますけれども、しかし、一面から申しますと、今日の医療保険の赤字にいたしましても、あるいは生活保護の赤字にいたしましても、決して消極的なものになるという筋のものではない。本来原因は、そうであるのではなくて、われわれがもしこの日本国民の平均余命というものが急速に伸びておるという実情を考えますときに、われわれはこういう方面で金がたくさん要るといって心配する必要はちっともないと思う。むしろ非常に喜ぶべき傾向でありまして、これはあくまで積極的な態度をとるべきだ、こう思うのであります。しかしながら、ただいまも申しておりますように、現場に参りますと、非常に困った問題がたくさんできて参っております。たとえば二、三日前に東京都児童福祉大会が開かれましたが、こういう大会などに出てみましても、これはただに東京都だけの問題ではありませんで、私どもが地方に参りまして現場を回りましても、全く同じ傾向でありまして、それは児童保護の予算が足りないというところから来ておると思うのであります。保育料の徴収規程というものが、先ごろ厚生省から通牒として出されているそうでありますけれども、その保育料の徴収が非常に厳格になりましたために、保育料を払うことができませんので、やむなく保育園から相当数の児童が外にほうり出されていっているということになっておる。また今年度四月から新たに入って参ります児童が、昨年と比べて、保育料を厳格に徴収するという建前からいたしまして、入園しなくなった、激減する傾向があるということが各地でいわれるのであります。さらに一方、今度はその厳格な徴収を命ぜられました保育園側におきましては、それが現実において徴収できない。そのためにその保育料を取れない、あるいは児童措置費と申しますか、それが取れない。取れないためにそれを全部施設がひっかぶってしまう。そのために、東京都でもそういうものが約一千万円たまってしまって、もう施設はお手上げだということであります。地方へ参りましても、私のおります静岡県のごときも、やはりほぼ同じようなことを申しております。こういうことになりますと、たとえば児童福祉法の二条において、子供をりっぱに育てることは国の責任になっております。国の責任であるにかかわらず、事実におきましては、子供が保育園におることはできないで、ちまたにほうり出されておるということになっておるのであります。今日日本の児童保護の状況は、決して理想的なものではない。大臣もごあいさつの中で、日本の社会保障が非常におくれていることを指摘されておられますけれども、これは決して理想的な状態ではありません、きわめて理想に遠いのであります。しかるに、こういうことになって、児童は保育園から追い出されて、危険なちまたで何らの保護を与えられずにおるという状態になってきております。さらにまた、今日私どもが地方へ参りまして非常によく耳にいたしますことは、あまりに保育園の最低基準だとか、今申しましたような措置費の問題あるいは保育料の問題等々でどうにもならなくなって、保育園をやめて幼稚園にしている。幼稚園になれば定員もくそもない、定員の何倍か入れているということになったりして、そこで何とか経営をやっていくということになっているというようなところも見るのであります。いずれにいたしましても、これは今日東京都の人々が申しますように、児童福祉の非常な危機であるということは、私どもも感ずるのであります。たとえば、東京都の大会でもって申しております事柄でも、総収入一万四千三百円、四・六人家族の家庭で、一昨年は保育料が月平均百九十四円であった、ところが昨年は六百十五円にされた。家族数五人で総収入一万四千八百六十五円の家庭では、一昨年は二百二十一円であったが、昨年は七百四十七円になっている。こういうふうになるために、子供を預けておけない。これではいけないと思うのであります。一体大臣は、今日こういう児童福祉の危機ということが全国的に叫ばれてきておりますが、こういうことに対してどうお考えになっているか、またどういうふうに行政をしていかれようとするか、御方針を承わっておきたいと思います。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 先ほど来一般の社会保障行政についていろいろ御所見を伺い、これと並行して児童福祉行政というものが非常な危機に到達しておるのではないかという、実例をあげての御指摘がありました。これは素朴な私の考え方でありますが、わが国の社会保障制度の中核は、社会保険の強化にあることはもとよりでありますが、同時に児童福祉行政いうものが、世界の各国から著しく立ちおくれておることは、これは特徴的な現象であると思うのであります。先年私は社会保障制度審議会の派遣員としまして、また個人としても欧米各国の社会保障制度の実態に触れたのでありますが、特に著しくその差異を見聞いたしましたのは、スカンジナヴィアの各国における児童福祉行政というものとわが国の実態とのあまりに大きな開きであります。これはすでに一般にも相当に深く了知をされておることとは思いますけれども、デンマークにしても、あるいはスエーデンにいたしましても、まあ人口が非常に少い関係もあり、かつ児童を健全に成長させなければならぬ関係もありましょうが、児童福祉に対して国家の投資しておるところの予算上の措置、あるいは地方公共団体が援助をしておる措置等を比べますと、これはまさに雲泥の相違があると申しても過言ではないのであります。これを日本の実態に当てはめることは困難かとは思いますけれども、しかし世界の各国の中には、貧窮の状態を克服してそういう施策を進めておる国々も多々散見されるのでありますから、当然憲法第二十五条の趣旨に基いて、われわれとしては児童福祉行政に対して今後一そうの力を進めていかなければならないと思います。ただいま御指摘の通り、ことに保育所あるいは保育園等の施設がせっかく完成をしたにもかかわらず、保育料の問題等で財政的な難関に逢着をして解散をしなければならぬというような場面が見られますことは、私どもとしてはまことに残念の至りであります。従いまして、本年度の予算におきましても、保育園の育成とか、その他の児童福祉行政に対しては、相当の額を大蔵省に対して要求はいたしておるのであります。個々の実例並びにただいま例を引かれて申されました東京都の問題に関連してのお尋ねは、説明員より説明をさせていただきます。

太宰博邦厚生事務官(児童局長)

○太宰説明員 基本的な考えは大臣からお話ございましたので、私から具体的に御質問の中の点についてお答えいたしますが、保育行政は、従来財源が平衡交付金制度に入っておりまして、一昨年からこれが国庫補助の制度に戻りました。私ども見ておりますと、平衡交付金制度以来数年間、その運営が各地域々々でもって任意的に行われておった傾向がございます。これが国庫補助の制度に戻りますと、やはり全国なるべく一貫した方針でやらなければいかぬということから、漸次これを軌道に乗せるように考えております。御指摘がありました保育料が高くなったというようなことにつきましても、別に国の財政が苦しいから高くするというような気持ではなしに、これを軌道に乗せるという気持から出て始めたことであります。現実の問題としては、それは高くなったところもあったかと存じます。具体的なお話の一万四千三百円で百九十四円が六百十五円になったということ、その六百十五円という数字は、ちょっと私の方の計算では出てこないのでありますけれども、それにいたしましても、百九十四円から今二倍とか何ぼになったということはあろうかと存じます。しかし、これはやはり安いばかりがいいというわけにも参りませので、軌道に乗せて、ある程度はどうしても負担できるならば負担していただくということになって参らざるを得ないわけでございます。そういうようなことで、ただ過渡的な現象として、親の方からいたしますると、費用が高くなるのだからもうやめさせようというような気持になることも、これはあり得ると存じますが、これはやはり何としてもよくその趣旨を理解してもらう、そうすれば、決して退所とか、そういうような問題は起きないはずだ、かように考えて、今地方などにもその趣旨をお話しして、親に納得してもらうようにということを申し伝えておるわけでございます。  それから未徴収費用を施設がかぶっておるということでございますが、これはもし施設がかぶっておるといたしますれば間違いでございまして、これは市町村当局が施設に委託しておるわけでございますから、その費用をとれる、とれないというのは、市町村当局においてこれを解決すべき問題でございます。それがもし施設が余波をかぶって施設自身が赤字を出しておるということでありますれば、これは大へん施設にお気の毒だと思いますので、具体的にお教えいただけますれば私の方で善処して参りたいと存じます。

長谷川保日本社会党(左)

○長谷川(保)委員 ただいまの徴収基準とか措置費の問題は、今全国的に大きな問題になっております。この点、どうか大臣におかれましても、事務当局を一つ十分御監督、御指導なさいまして、全国にこういう点についての非常に大きな不満がございますから、せっかく戦後伸びて参りました児童福祉の芽がつまれないように、ぜひ格別の御尽力をいただきたい。これは児童福祉大会に参りますと、ここのところ一、二年、もうどの大会でも非常にけんけんごうごうたる問題となっております。また厚生省当局に対しても、大きな非難となっております。私は現場に行ってみて、無理がないと思う点が非常にあると思うのであります。どうかこれらの点につきまして、十分なる御尽力をいただきたいと思います。  それについて、もう一つ私は大臣の御意向を、この際全国の保育園あるいは養護施設、母子寮等に勤めておりまする人々のために伺っておきたいのであります。それは今日保育園、養護施設あるいは母子寮等に勤めておりまする人々の人件費の問題でありますが、先ごろ厚生省から通牒が出たということであります。私はそれを見ておりませんけれども、いわゆる現員現給制というものを強硬に実施せよということになっているそうであります。それによりますと、職員の月給を一カ月分実際の現給を現員制で、それを十二倍いたしまして、それで一年分の人件費を出す、それを強行させようとしているというのであります。その中には期末手当もなければ、残業手当もなければ、失業保険料も入っていない、退職金も全然入っていないということであります。しかし、各施設といたしましては、それらのものについては、すでに出してしまったものもある。それは今さらどうにもならないのであります。さらにまた施設の経営上、たとえば子供の食費というようなもの、そういうものが非常に少いために、人件費を削って一方に持っていって使ってしまってあるというものもあるようであります。ところが、厚生省からの通牒が非常にやかましくて、人件費以外に使ったものはまかりならぬ、人件費以外に使ったものは返してよこせというような通牒も出ているかに聞くのであります。私は見たのでありませんから、真偽の点は十分わかりませんけれども、そういうことを聞くのであります。いずれにしましても、まず人件費の問題として現員現給の問題を考えましても、ただいま申しましたように、期末手当もなければ、退職金もない、失業保険料も入っていない、残業手当も入っていないというようなもの、そういう月給の十二倍だけしか許されなく、しかも現員現給制であるということになりますと非常に困るようであります。またそれは道理でないと思います。こういうような苛酷な給与制度というものを、養護施設やあるいは母子寮等に強制なさっているということでありますが、もしそうであるとすれば、これははなはだしく遺憾なことに思いますが、大臣はどう思いますか、伺いたいのであります。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 ただいま御指摘の母子寮やあるいは養護施設等におきまして使われておる人々の期末手当とかあるいはその他の問題につきまして、まことに実情を十分に承知されての御発言がありましたことは、私も実は民主党の政調会において、二、三回この問題について他の代議士の諸君から聞いておることもあるのであります。またそれぞれごもっともな点はあると思いますけれども、従来の事務費の限度の設定がありまして、これまた予算上のいろいろな制約があるものでありますから、今日までのところ、そういうものに対する措置は十分でなかったように考えるのであります。これらの問題につきましては、予算編成の過程におきまして、最終的にどういうことになるかは知りませんけれども、御要望の趣旨は十分に承知をいたしまして、党の意見をも勘案をして善処いたしたいと考えております。従来の経過につきましては、一応政府委員からお聞き取りおきを願いたいと思います。

太宰博邦厚生事務官(児童局長)

○太宰説明員 今お尋ねのございました退職金とか期末手当とかいうのは、実は、正直に申し上げますと、この措置費の計算の中には入っていないのであります。措置費と申しますのは、御承知の通り、大体この施設を維持していく、平たく申しますと最低ぎりぎりの費用だけを国で見る、こういう建前になっておりますので、そのぎりぎりという費用の範囲内にどの程度盛るかということは、そのときどきの情勢でいろいろきまるものでございます。それで、現在までのところでは、正直に申しまして予算の積算の中にはそういうことは入っていないのであります。しかしながら、その範囲内におきましてもできるだけのことをいたしたいという気持で、本年度につきましては、人件費の合算額に一割以内のものを加算して、その限度内において必要な他の経費をまかなうことを認める。これは便宜的な措置でございますけれども、そういうような措置もとっておるわけであります。法律的に申しますと、期末手当とか退職金などは、出さなければならぬ義務支出では実はないのでございますから、なかなかこれをすぐ具体化するということは簡単にいかない点もあります。これは今後大臣のお力添えをいただいて、だんだん具体化して参りたいと考えております。

吉川兼光日本社会党(右)

○吉川(兼)委員 ちょっと関連して、児童局長もお見えのようでございますから伺っておきたいと思いますのは、大阪の児童福祉施設の児童が、最近ブラジルに集団移民をするという事実を私伺いまして、何か明日あたり日本を立つそうでございますが、これは新しいケースのように思いますので、いわゆる児童対策として、海外移民という面はどういうような構想で取り上げられたものであって、なお将来そのことを継続するのであるか、あるいは拡大して、もっと大きなものをやるのであるか、また現在はどういう状況で何人の児童が出発するのであるか、こういうことを一つ簡単でけっこうですから、御説明願いたいと思います。

太宰博邦厚生事務官(児童局長)

○太宰説明員 御指摘の点は、大阪に太陽の家という施設がございまして、そこの子供たちについて、施設長が非常に前から、どうしてやったらいいかということを考えておりましたところが、たまたまブラジルの方にある篤志家がおりまして、一つ自分の農園に引き取ろうじゃないかと、数年前から話があったわけでございます。そういうことで準備をしておりましたのが、その後いろいろ変遷がございましたけれども、とにかく今回実を結びまして六人だと存じますが、一両日中に船出して行くことになっております。これはこちらの方でも希望し、またブラジルの方でもいろいろ理解を持って引き取ろう、またブラジル政府へも働きかけて、向うの了解を得て、話し合いがうまくいって、今回実を結んだわけでございます。私どもとしては、これが初めてのケースでございまして、この子供たちが向うでりっぱに現地の社会にも貢献しまた祖国日本のためにも気をはいてくれることをこいねがっておるわけでございます。  なお、今後一般論といたしまして、これをどこまで拡大するかということにつきましては、やはり慎重に考えて行かねばならない。たとえば、かりにも日本がそういう不幸な子供の処置に困って、よその国に追いやったというような誤解を生じてはなりませんし、またそこの国の日本に対する非常に友好的な気持が、それによって阻害されるようなことが、かりにでもありましたならば、やはりこれは大きな問題と考えるのであります。そのようないろいろな点を考えていかねばならないと存じますので、ただいまのところ、すぐこれを他の施設なりに将来ずっと継続して一般的に及ぼすというような考えまでには至っておりません。

長谷川保日本社会党(左)

○長谷川(保)委員 一つこの際大臣に伺っておきたいのですが、大臣は、たとえば私的な社会福祉事業と公的な社会福祉施設というものについて、どういうような御意見を持っていらっしゃいますか、端的に伺いたいと思います。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 日本の社会事業、社会保障の発達の歴史を見ますると、わが国においての社会保障の公的な発展といえば、健康保険あるいは国民健康保険ないしは終戦後における生活保護法の新たなる発足というものによって、公けの社会保障施設というものは次第に充実を見ておりまするけれども、淵源を尋ねてみますと、私的な社会福祉事業、社会保障施設というものが、明治以来特に根深くわが国の社会保障を推進をしておったと思うのであります。しかしながら、私的な社会保障事業の従来までの感覚と、終戦後のわが国の社会保障の憲法第二十五条による大精神、あるいは最近における世界各国の社会保障の、すなわち国民の当然なる権利としての最低生活の保障という考え方から出発した社会保障とは、相当な径庭があるように思うのであります。従いまして、今後これをどうするかということの問題は別にいたしまして、われわれはやはり私的な社会福祉施設並びに社会保障事業を推進をしてこられた多くの先輩並びにこれを守って来られた人々の業績に対して敬意を表するとともに、当然この私的な社会保障事業などに対しても、政府は誘導し同時に協力すべきものは協力をしなければならぬのじゃないかというふうに考えておるのであります。

長谷川保日本社会党(左)

○長谷川(保)委員 私は大臣の御認識に、少しく足らないところがあるように今伺ったのであります。終戦を契機といたしまして、新しい憲法及び生活保護法、児童福祉法というものができましてから後の、私的な、たとえば私設社会福祉事業というようなものは、ずっとそのイデオロギーを変えております。いわゆる仁恵的といわれておりました考え方、いわゆる慈善事業というような言葉で言い現わしましたものが、その考え方を全部払拭いたして新たにいたしまして、やはりただいま大臣の言われましたような、国民の権利といたしましての児童福祉あるいは生活保護というような考え方にすでに全部立っております。今なお仁恵的な慈善的なという立場にあるものは、少くとも社会福祉事業法等にによって経営されておりますものにつきましては、もうございません。従いまして私は今日、この私的な社会福祉施設というようなものは、公的な社会福祉施設の足らないところを補い、あるいはまた行き届かざるところはさらにみずから進んでそれを開拓していく、公的なものと私的なものとが唇歯輔車の形におきまして互いに補い合って、日本のこの社会保障制度の第一線を守っており推進しておると思うのであります。またそう御認識を願わなければならないと思うのであります。今日、これは少しくお調べになりますれば——まだ御就任日も浅いことでありますから無理もないことでありますが、少しくそういう方面の者に接触なさいますれば、そういうことはもうはっきりしております。こういう点はっきりして、ただいま申しましたような国民の権利といたし、児童の権利といたしましたものを守っていくという立場で、新しい憲法の精神に立って、それらの事業が経営せられておりますときに、その私的な社会福祉施設あるいは児童福祉施設に働いております者の待遇、給料、また働く条件というものが、公的な社会福祉施設、児童福祉施設に勤務しております者と同様であるべきであるというのは、あくまで当然だと私は考えておりますが、それらにつきまして、非常に大きな現実の問題を含んでおりますので、大臣の御意思を聞いておきたいのであります。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 私は公的社会福祉施設と私的社会福祉施設の沿革の問題に主点を置いて、先ほど御答弁申したのでありますが、むろんただいま御主張の点はごもっともであります。そういうふうに現に変っておるということも、十分に認識をいたしております。しかしながら、これらにつきましては、それぞれ法律の定めるところによって善処をしなければならぬ点炉あるのでありますから、従って今日の行政としては、当然法律のワクの内において善処をする以外に方法はないのであります。もとより原則としては、ただいま御指摘になったことが当然の推移であろうかと思っておりまするから、私はただいまの御主張に対しては、全然同感でございます。

長谷川保日本社会党(左)

○長谷川(保)委員 これは非常に大事なことでありまして、ただいまお話の点をどうか——多分全国の私的な社会福祉施設、児童福祉施設に勤めておりまする職員やあるいは経営者の方は、今のお言葉を非常に重大なものとして受け取ると思うのであります。また非常な希望と喜びとをもって受け取ると思うのであります。どうか今日の厚生行政におきましては、同じように公的なものと相並んで、ときによっては公的なものよりもはるかに徹底してりっぱに、その不十分な施設の中におきましても、非常な努力をして働いておりまするそれらの人々が、今の言葉を非常な期待と喜びとをもって聞くということをお考え下さって——今日の実情におきましては、残念ながらさようにはなっておりませんで、公的なものと私的なものと非常に差別があるということをお考えいただいて、今後の厚生行政に十分な御尽力をいただきたいと思うのであります。  ほぼ同様な面で、生活保護の点でもいろいろな問題がございます。ことに生活保護の中の大きな問題でありまする医療扶助の面で、やはり最近医療扶助の適用を非常にきびしくいたしました。先日もあるところへ参りましたところ、そこで聞いたことでありますが、御主人が結核になって寝ていらっしゃる。それを入院させる。どうやら入院をさせたのでありますが、ところが細君が子供を一人かかえて一生懸命に働いてかせいで参りますものは、親子二人の生活をささえるにようやっとだと私どもには考えられるわずかなものでありますが、この医療扶助の適用の基準を非常にきびしくいたしまして、その中からなお相当額の入院料の一部負担をせよということを言われた。社会福祉主事がそう言って参りました。その細君が、どうしてもこれでは子供をかかえて生活ができないじゃありませんか、どうやってこれで生活しますかと言ったときに、さすがに社会福祉主事も、できないことはわかっていますが、医療扶助の適用の基準がやかましくなって、どうしてもこれだけ納めてもらわなければならぬのですよ、生活が苦しいのはわかっておりますけれども、そういうように上から言われておりますので……、こういうことで応対をした。わかりましたと言って、その夫人が帰っていこうとした。あまりけしきばんで、わかりましたと言うて帰っていきますので、心配をして社会福祉主事がとめて聞いた。あなた、非常にかたいお顔をして帰っていくけれども、どういうつもりですかと聞いたら、あなたは私ども親子が二人で生活できないということを承知でこれをやれとおっしゃる、それならば、方法がつかないことはわかっておりますから、私は主人とともに死にますからと、こう言ったという実話を聞いたのであります。こういうことが現実に第一線で、現場でたくさん行われておるのであります。今日各国立療養所でも、私ども現場を回ってみますと、結核療養所のベッドがあいて来ておる。どういうわけであいて来ておるのか、行って聞いてみますと、生活保護の方の一部負担がきびしいために入ってこれない、また入院を許可しないという現象が起って来ているんだというのであります。  また先ほどの児童福祉施設のときと同じでありますけれども、同様に今度は医療扶助施設におきましてはその一部負担が入りませんために、その一部負担の金を支払ってくれませんために、それを医療保護施設が自分でかぶっている。これは現実にかぶっております。そのために医療保護施設が動かなくなって来ているというところも相当あるのであります。いや、ほとんど全部だと思います。さらに、非常に困ったことは、きょうは現実問題を大臣に聞いてもらうのでありますけれども、たとえば生活保護の金、医療保護の金あるいは医療の健康保険の金でもそうです。これが御承知のように地方の市に参りますと、市から健康保険診療報酬支払基金事務所の方へ払い込まない。私ども知っているある市のごときは、最近六百万円これをためております。そのために県の支払基金事務所では、全然その種の金を払うことができない。払うことができないで方法がつかなくなっているのが第一線の医療施設であります。医療費をどうにもしようがないということになりまして、今日非常な苦労をしております。銀行から融通資金を借りて、そのために大きな利子を払う。おそらく銀行に払っておる利子は、全国の医療施設では大へんなことだと私は思う。この間あるところに参りましたところが、日赤の病院がやはりそうです。病院が動かなくなっておる。地方の小さい町にあります日赤の病院でありましたが、個人のところに頭を下げて金を借りに行っておる。金が入ってこない、こういうことです。これも児童福祉施設で両面から参っておる。一方におきましては医療扶助を一部負担を強行せられるために、病院におったが出ていかなければならぬ、あるいはまた病院に入院しなければならぬけれども入れない。当然健康で文化的な最低生活をする権利がある国民でありますけれども、事実におきましては全然これが行われておりません、憲法違反が至るところにございます、児童福祉法違反が至るところにございます。今日大臣は、社会福祉行政を進めていかれる決意を持たれておることを、先ほど私どもは承知したのでありますが、現実においてこういうことが今日行われておる。よほどしっかりこの点をやっていただかなければいけない。そういうような一部負担の問題について、どうか事務当局を十分にその点を指導していただきたい。これは厚生事務当局だけではなく、地方の非常に大きな問題である、政府全体の大きな問題であると私は思うのであります。よほど新進気鋭の大臣ががんばってもらわないと、憲法通りいかないということをお考えいただきたいのであります。  先般来入退所基準というもの、あるいはつき添い看護人の整理で、主として全国の結核療養所、国立結核病院等が大騒ぎをしたことは、御承知の通りであります。厚生省の御意向では、つき添い看護人を全部やめてしまうという御意向だということをちょっと耳にしたのであります。二千人の全国のつき添い看護人を首にしてしまうということを聞いたのでありますが、そういうことが今日考えられておるのかどうか、また大臣はそういうような道をおやりになるというお気持であるかどうか。もしそういうことになりますと、実際に患者たちがベッドの上で泣くと思います。この点どういうようなことになっておるのか、大臣にこまかく伺うのは無理かもしれませんが、全国の結核療養所におります何十万の結核患者とその家族が、今日非常に心配をしておりますから、この際伺っておきたいのであります。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 その前に、生活保護の実態につきましていろいろ御指摘の点がありました。生活保護を受けておる者は、最近若干生活扶助の方は減少しておるようでありますが、なお二百万近い数字を示しておるのでありまして、政府としては、生活保護の問題は終戦後における最も大きな問題として、今度の予算算編成に当りましても、十分に意を払いたいと考えております。もっともこの問題につきましては、非常に複雑な面もありまして、ただいま数々御指摘のありました、何と表現をいたしてよろしいか、生活保護に対して十分な顧慮が払われておらない面もあれば、また生活保護の実情を運用したような動きも一部には散見せられるのであります。これは従来の厚生委員会におきましても、しばしば指摘をせられたところであります。ことに都会地の一部においては、そういうような面がかなり現われてきておるのではないかということも、一方においては散在をしておるのであります。現在生活保護の医療の給付費、医療扶助というものは非常に大きな数字に上っておりまして、この増加ということが、生活保護費に対する非常な全体としての圧迫になっておると思うのであります。しかし、これは先ほど滝井委員からも御指摘がありましたように、医療費の増加ということは、国全体としてはやむを得ない傾向と見られる点が多いのでありまして、その点については十分意を払って、今後の生活保護対策を進めていきたいと思います。  ただいま御質問の国立療養所のつき添い制度廃止の問題につきましては、国立療養所におけるつき添い人は、入所しておる患者が健康保険法やあるいは生活保護法などによってつけることを認められたもの、あるいは自費でつけたものでありますので、雇用関係も当該患者との間のものであると御了解を願いたいと思うのであります。従って所長の監督も一般の職員に対する場合と国じ程度までは及びませんで、これがため、従来から療養所の管理に円滑を欠いた節も多々あったのであります。厚生省としては、こういう体制は、元来から申せば望ましいものではないのでありますので、患者に対する医療はもちろん、看護その他身辺の世話を国の職員の手によって行いたいという考え方から、今度のような措置がとられるに至ったのではないかと考えるのであります。なお、その実情につきましては、社会局長から答弁をしていただきます。

安田巖厚生事務官(社会局長)

○安田説明員 つき添いの廃止の問題は、これは医務局の所管の療養所の問題でございますが、大臣からお話がございましたので、私知っておる程度のお答えをいたしたいと思います。  生活保護の医療扶助の方のつき添いの問題を申しますと、従来は完全看護でない療養所におきまして、そこの療養所における看護力では足りないような常時看護を要するような病人がおりました場合に、それに対してつき添い婦をつけることを許しておったわけであります。そういった場合には、患者から申し出まして、どの程度の症状であるという病院の証明をもらいまして、それを福祉事務所に持ってくる。そうして福祉事務所は、最近ではそういった内容を審査する能力がないというので、県まで持って参りまして審査をして、つき添い券を出すかどうかということをきめておるような状況でございます。ところが今度の医務局の案によりますと、療養所において雑使婦を置きまして、そうして病人の管理についてはもちろん病院長が責任を持つのでありますから、病院長がこの患者にはつけなければならぬというときには、自分の管理下にあります雑使婦を使いまして、緩急よろしきを得た管理ができる、看護をつけることができるという案でございます。私どもといたしましては、これは非常に合理的でございますし、また急場の場合にも間に合うことでございますし、大へんけっこうな案だというので、実は賛成いたしておる次第でございます。

長谷川保日本社会党(左)

○長谷川(保)委員 たいへん机の上ではけっこうなのです。現実の場におきましては、実際において、たとえば完全看護ということが行われることになっておりますけれども、完全看護はきわめて不完全看護でありまして、人員が足りないのであります。そういうところに大きな問題があるのでありますから、どうか机の上だけでなしに、現場で完璧にできるように、現実的に事を運んでいただきたいのであります。  大臣は予算委員会に行かれるそうでありますから、最後に大臣にもう一言伺いたいのであります。先ほど来話に出ておりますけれども、私が現実を見ておりますと、何と申しましても、今日赤字に追われて実際の医療扶助にいたしましても、児童福祉の問題にいたしましても、これは不十分な予算で努力しょうとしていらっしゃるというのがいうのがほんとうであり、それが真実であると思う。もちろん今までの予算につきましては、それでやむを得ないのでありますけれでも、しかし、昨年予算を組みますときに、そのことをすでに私どもは警告いたしました。こんなことでは足りませんよ、大へんなことになりますよということを警告いたしました。けれども、私どもが厚生当局に御警告いたしましたけれども、それはついにできませんでした。しかし、今や新しい予算を組もうというときに、先ほど来お話もありますように、医療費がふえるということは重大な問題でありますけれども、これは消極的に考えてはいけない。日本人の命が現実に伸びておるのでありますから、積極的にどんどん予算をふやしていって当りまえである。これを大蔵省に押されて不十分な予算を組んでおきますと、また年度中途において、今年やったと同じように非常な苦境に立ち至るのであります。だから厚生大臣は、あくまで積極的な態度で、日本人の命は伸びているのではないか、政治において国民の命ぐらい大事なことはない、すべての政治はそこに立っておるのでありますから、どんどんその点を強くおつきになって、今年度の厚生予算をおとりになるべきである。だから、今のこの赤字にびくびくしないで、新しい予算をおとりになるべきであると、こう思うのであります。どうも先ほど来伺っておりましても、その点が私どもたよりなくてしようがないので、大臣この点ほんとうにやってくれるかどうか、もう一言念を押しておきたい。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 ただいま非常に熱烈な御意見が吐露されまして、私としても非常にしりをたたかれたような気がするのであります。今度の厚生省と大蔵省との予算折衝の過程におきまして、ただいまの御発言は十分尊重いたしまして、善処いたしたいというようにお答えするのが当然であります。  これについて、私からつけ加えさせていただきたいのは、午前中私の答弁に関連をしまして、大蔵省の主計官は、健康保険の三十年度の赤字負担というよりは、むしろ健康保険の健康なる財政確立のためには、どうしてもある程度の国庫負担をすべきであるという私の考え方に対しまして、事務的には今日は不可能である、政治的に解決する以外に方法はないという答弁があったようであります。私がちょうど靖国神社の遺族大会に行った留守のことでありますが、これは昨日も大蔵大臣に直接話をいたしましたし、先ほど来ました主計官の上役にも話をいたしまして、大蔵省としては、今日いろいろ異論はあるように聞いてはおりますが、これは党の政調会と十分連絡をとりまして、御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。ただ午前中に滝井委員の、一体どのくらいの負担が適当であるかという御質問がありました際に、私は往年社会保障制度審議会の委員をやっておりました関係で、健康保険の医療給付費の負担は二割の国庫負担が適当であると今でも考えておるということは申し上げました。しかしながら、これを実現するだけの財政的余裕は、現在の予算にはないということを私は了知をいたしております。従って、二割国庫負担が理想ではありますが、直ちにこの線に行くことが困難であるならば、今日厚生省が出しておりまする予算の原案である一割五分負担あるいはそれに近い数字をもって貫徹するという方向に向って努力をいたしたい、これが私の今日の所信でございます。

長谷川保日本社会党(左)

○長谷川(保)委員 それでは、大臣は御用があるそうですから、きょうの大臣に対する質問の私の分は終りまして、次に引揚援護局長が来ていらっしゃるようですから、援護局長に伺いたいのでありますが、援護局のお仕事は、前年来非常におくれておりましたので、私ども一生懸命にやっていただくように、たびたびお願いをし、当局でもたくさんの人を雇い入れていろいろやって下さっておるように伺っておりますが、その後どれくらい進んでおりましょうか、地方に参りますとよく聞かれますので、伺いたい。

田辺繁雄厚生事務官(引揚援護局長)

○田辺説明員 恩給業務の申達の状況でございますが、恩給業務のうちでも一番数が多く、また手数の一番かかります戦死者の公務扶助でございます。これは三月十二日現在で、全体の見込み量の八八・五%恩給局に申達いたしております。その他の恩給も合せますと、大体業務量といたしましては八〇%は終了したのであります。これは本年度における当初の予定計画を予定通り遂行したことになるわけであります。援護法につきましては、裁定の困難なもの、つまり身分だとかなんとかについて、若干判断を要するようなもの、もう少し資料を要するものというのがたまっておりますが、これもその他一時金と沖縄などがございますので、それを合せますと、十四万件くらい来年度に処理しなければならぬ、こうなっております。しかしいずれにいたしましても、来年度に持ち越される業務量は、恩給が約二〇%、それからその他の業務量は大部分来年度において処理できる見込みであります。一部沖縄関係と証書の書きかえの仕事が来来年度に持って行かれる、こういう状態であります。

長谷川保日本社会党(左)

○長谷川(保)委員 過日ラジオで伺ったところによりますと、臨時雇を馘首するということで、問題が起っているようでありますが、どういう事件でありますか。

田辺繁雄厚生事務官(引揚援護局長)

○田辺説明員 引揚援護局の非常勤職員の整理の問題でございますが、昭和二十七年の四月に戦没者遺族援護法が施行になりました際に、膨大な事務量を急速に処理しなければならぬということで、正規職員のほかに非常勤の職員をたくさん雇うことにいたしまして、四月の末ごろから採用を開始いたしました。最盛期には全国で千三百六十六名、旧陸軍関係市ヵ谷庁舎におります者だけでも九百三十三名の多数に上ったのであります。昭和二十八年度に入りましてからは、業務量が減少してきたためにだんだん減らして参りました。ただし、軍人恩給の復活の準備業務があったために、全員切らずに若干名を存置いたしまして二十九年度を迎えたわけであります。そこで恩給業務のための増員は二十九年一月から開始いたしまして、新規に非常勤職員を雇うことにいたしまして、六月の末ごろには全体で千百四十四名になっております。陸軍関係だけでは六百八十七名の多数に上ったわけであります。この職員を併用いたしまして、正規職員の中でこの方々にお働きを願いまして、先ほど申しましたような成績をあげたわけでありまして、昨年の十月以降は、大体現在の人員で予定の業務を遂行し得るという見通しがつきましたので、新規採用はストップいたしまして、欠員は補充しないということにいたしました。かたがた三十年度以降は、業務量の縮減に伴って人員も減らさなければならぬということを考慮いたしまして、私どもの方でいろいろ他の官庁であるとか、民間の会社への就職あっせんに努力をいたしました。今年の三月二十日現在におきましては、先ほど申しました千百四十四名が八百三十八名に減っております。旧陸軍関係で申しますと、六百八十七名が五百十四名に減ったわけであります。先ほど申しました来年度の恩給業務及び援護業務を処理するために必要な業務量全体をながめまして、できるだけ急ぐという意味で四月、五月の暫定予算におきましては、その全体の中でもできるだけたくさん処理したい、現実に書類が出て参りますので、その書類の申達状況の実績からにらみ合せましてできるだけ処理したい。その処理をするために最小限度の人はもちろんのこと、われわれとしても十分な人員を確保したい、こういうことで予算の折衝をいたしまして、また急速に一時に多量の整理者を出すということも考えねばならぬということでありますので、それやこれやを考え合せまして結局五百三十五人の職員を存置すということにいたしまして残りの三百三名、旧陸軍関係だけ申しますと百六十六名でございますが、これをやめていただくということにいたしたわけであります。これは一月二十日現在でありますので、その後若干の自発的な退職者もございますけれども、おおむねそのくらいの人数の方にやめていただくということに相なるわけであります。ただし、恩給業務、援護業務も、大部分は昨年末をもって予定の数量に達しましたので、本年に入りましてからは、大部分仕事の量がそれだけなくなったわけでありますけれども、急速にやることもどうかと思いまして、本年の三月三十一日一ぱいをもって若干の人を減らすということをあらかじめ職員の方々に十分徹底いたしまして、就職のあっせんなり、あるいは自分たちで仕事を探されるなり、そういうことを再三にわたって促してきたわけでございます。大体二十九年度における人員の五〇%ないし六〇%程度の人員で足り得るので、それ以外の方が整理になる見通しであるということをお話ししたわけでありますが、計算の結果は先ほど申し上げた数字でありまして、旧陸軍関係で申しますと、五百十四名の中で百六十六名、こういう数字になっております。

長谷川保日本社会党(左)

○長谷川(保)委員 非常におくれておりました恩給の申達の問題等々が、これらの諸君によって、またその他の援護局の職員の努力によって今日まで順調に進んできたのにつきましては、敬意を表し、また感謝をするものでありますが、このために非常に努力をしてくれました諸君が、どうかまごつかないように当局に特別な御尽力を願いまして、私の質問を終ります。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 それでは暫時休憩いたします。     午後四時一分休憩      ————◇—————     午後四時五十分開議

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 休憩前に引き続きまして会議を再開いたします。  厚生大臣に対する質問を継続いたします。野澤清人君。

野澤清人自由党

○野澤委員 けさほどから、いろいろと新厚生大臣の構想について拝聴しておったのでありますが、今度第二次鳩山内閣としてたくさんの大臣ができましたけれども、一番国民が期待しているのが川崎厚生大臣の今後の動向だと思われるわけであります。そこで私は、今後の厚生行政に対する川崎大臣のいろいろな抱負等についても拝聴をいたしたのでありますが、ただ全体的な予感として、これほど大きな期待を持っている国民にこたえるのに、現在の大臣の心境から見ますと、きわめて消極的な立場に置かれているのではないか、こういう感じがいたすわけであります。特に大臣のごあいさつの中にも、当面の健康保険対策としては、なるべく早く収支の均衡を回復するということを論じておりますし、また当面の赤字については、長期にわたって逐次解消していく方針であるということも示されております。これらの事柄を重点にして考えてみますと、ただありきたりの字句がありきたりに並べられておるような感じ、いたします。  そこで私は、新大臣にお伺いいたしたいと思いますことは、今日の日本の厚生行政の根幹となるところの国民の保健対策というものの根本理念をどういうふうにお持ちになっておるか。つまり現在の世界の大勢から申しますならば、イデオロギーの違うアメリカとソ連との二つの流れがありますけれども、この二つの国における国民の保健衛生対策というものは、根本的に違う角度から出発いたしております。たとえて申し上げますならば、ソ連では労働力を完成するために保健対策を講じておるアメリカは人道主義から出発した健保対策を講じておる。こういう観点から出発いたしますと、大きな期待をもって歓迎されております川崎新厚生大臣は、いかなる理念を持って今後の厚生行政に処せられるか。この点について御回答を願いたいと思います。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 根本的な問題についてのお話でありまして、これはやはり何と申しましても、現在の憲法の一番長所であるといわれておる二十五条の精神を、厚生行政の上に強く生かしていく方途に出なければならぬと思うのであります。すべての国民は、健康で分化的な最低限度の生活を営む権利を有する。これに付随しての社会福祉、社会保障の向上に努めなければならぬという規定をわれわれとして遵守していかなければならぬ、これを目標にした大きな厚生行政というものを考えていかなければならぬと思うのであります。これを具体化する道は、何といいましても社会保障制度の全面的な拡充と確立でありまして、各党各派を通じて社会保障の必要ということが、近年総選挙ごとに力説をされ、また予算の出るたびに論ぜられておるとこであります。この社会保障制度をどういう形において具現をしていくかといえば、その中心にあるものは、ただいま御指摘の通り社会保険の拡充強化ということが、第一の課題でなければならぬものだと思います。その社会保険の拡充強化ということについては、当然すべての国民が保険に加入をして、そうしてそのことによって人生に起る危険負担というものを、国家並びに地方公共団体、さらには個人が負担をいたしまして、そうしてこれらの場面に遭遇する際において起る危険を未然に防止をするということでなければならない、かように考えるのであります。その政策をさらに今度は掘り下げてみますと、掘り下げていく途上において起るのは、全国民を一律に対象とすべきかどうかということになりますれば、これは今日の社会保険の系列からいたしましても、あるいはおい立ちからいたしましても、また今日の国民経済の上からいたしましても、当然被用者と一般国民というものは区別して考えられてしかるべきではないか。従って、労働者、被用者というものを対象とする健康保険の系列に属するものと一方一般国民とは区別をして、そうして健康保険というものを中核体にする社会保険並びに一般国民を対象とする国民健康保険を充実発展をさせるということが至上の命令のように考えるのであります。しかしてこれだけでは社会保障の実態は足りないのでありまして、いわゆる防貧対策の網の目からこぼれた者に対しては、当然国または都道府県並びに地方公共団体が、最低生活を公的な扶助として与えなければならぬ、こういう考え方に基くのではなかろうか、私はさような理念をもって進みたい、かように考えておるのでございます。

野澤清人自由党

○野澤委員 非常に広汎な原則論を拝聴したのでありますが、私がお願いしたいことは、厚生大臣としての一般論でなしに、現下の日本の国情に即して今後の厚生行政をやる上においての、川崎大臣の考え方の基本線が聞きたかったわけであります。社会保障制度を拡充強化する、全面的に健保も国保等も異常なくこれを伸展させるということは、原則的な問題であります。そういう一般論でなしに、むしろ大臣のお説の中にもあります通り、抜本的な対策をしなければならぬということも御指摘になっております。また国民の所得等不均衡な資料というものが今日の窮状をもたらしておりますので、おそらく大臣といたしましても、重点的に今後施行しなければならぬというお考えだと拝察いたしたのであります。そこで、各保守党の中でも最も進歩的であり革新的であるといわれる新しい若い大臣が生まれたのですから、厚生行政の問題の中で、どれを重点として扱っていくのか。一般論でなしに、少くとも重点施行のお考えが当然なければならないのじゃないか、お差しつかえなければ、その点について、簡単でけっこうでございますから、お漏らしを願いたいと思います。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 当面の対策といたしましては、社会保障制度を強化する前提の上において現存の社会保障の形がくずれておりますので、健康保険の赤字財政を克服しまして——単に赤字財政を克服するだけではなしに、健康保険というものがどういう形であってもいいかということを、三十年度の予算と関連をして解決をいたしたいと思います。しかし、三十年度の予算に盛ろうとしております私の考え方が、今日の一般の世論また医療行政の実態からいたしまして独断的な行き方であっては非常に危険な面もありますので、われわれの考え方は考え方として、しかし疾病保険全体の見地からいたしまして、健康保険がどうあってよいかという抜本的な問題は、午前中の委員会でお答えをいたしましたように、民主的な審議会を作りまして、その答申に待ちたいと思います。しかし、今作ろうとしております審議会は、従来の社会保険審議会とか、あるいはもっと大きな形での社会保障制度審議会というように、長期間にわたって問題を審議するのではなくして、健康保険の当面の危機とこれの抜本的対策というので、なるべくすみやかな期間において結論を得たいという形の審議会でございます。

野澤清人自由党

○野澤委員 午前中の滝井さんの質問に対する御回答等を拝聴しておるのでありますが、冒頭に申し上げました通り、概念的には大体了解はつきますが、期待をされている新大臣としての構想が、実際に少しもはっきりしておらないような感じがいたします。たとえば今の赤字財政の問題にいたしましても、三十年度には余裕金からこれを支出する、こういう予算折衝をして、すでに大蔵大臣との話も済み。局長や、えらい人との話が済んで、大体行けると思います。あるいはまた二割の国庫補助も考えておるのだ、これは筋として非常によくわかるわけでありますが、厚生行政上この赤字補てんというような問題につきましては、二十九年度の赤字をどうして補てんするか、あるいは三十年度予想される赤字の補てんをどうするかということは、政府の内部事情とすれば、当然大蔵大臣との折衝が必要だと思う、これは当りまえのことでありまして、そういう事柄よりも、新大臣としての構想上必要なことは、こういう赤字を出さない対策を緊急にどうして立てるかという問題だろうと思うのであります。そういう問題になってきますと、大臣が指摘されておりますように、たとえば健康保険の医療給付の中で改善すべきものがたくさんある、あるいはまた保険医監査をも厳重にしなければならぬ。これは社会通念として当然指摘される問題でありますが、滝井議員も申されておりましたように、表面に現われたいろいろな原因だけで満足すべき状態ではないのだ、もっと根本的な原因があるのだこういう御指摘から、いわゆるこの社会保険制度自体の内部にも矛盾があるということで一つ、二つの理由をあげられておりますが、その根本的なものは何かという問題であります。これについては滝井議員の話を最後まで聞かなかったために、私自身も了解し得なかったのでありますが、この根本的なものというのは、どなたが考えても当然ある問題だと思います。その根本的なものに対して、新大臣としてはどういう観点を持っておられるか。たとえば医療給付の内容について、制限医療を行うとか、あるいはまた医薬分業の法律がすでにできておるから、これを完全に実施するとか、さらにまた保険医の選択をして、自由放任の状態でなしに、保険医自体の素質の向上をはかるために再編成をするとか、もっと具体的に何らか方針がきまっておらなければならぬのじゃないか。またそういうことをきめていただく大臣としては、最も適切な大臣をこの際得たものだと思うのです。ところが、話のあやでありますからやむを得ないと思いますけれども、この内閣は不安定な内閣であるという御質問に、その通りであるということを大臣が答えられておりますが、国民が期待しておりますことは、この内閣の安定、不安定の見通しよりも、現実に即して大臣が誠意を持っていかに国民にこたえていくか、また厚生行政上、国策の線に沿っていかなる施策を行うか、この決意をはっきりと示してもらうことが、重要な点でないかと思うのであります。非常に具体的な話で御迷惑でしょうが、これらについて一応御見解をお聞きしたいと思います。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 いろいろな部面についての御質問がありましたが、もとより健康保険の赤字が出てきました原因につきましては、当初の私のあいさつの中に申しました以外にも、種々の原因があると思うのであります。これらについては、今日までの政府の行政措置において、不満足な点も多々あったように私どもも考えておりますから、たとえば保険医の監査をさらに厳重にするとかいうような問題については鋭意努力を続けたいと思っております。ただいま二、三の問題をあげられましたが、医薬分業の問題なども、確かに御指摘のように、全体の医療体系に大きく響き、またこれが相当な影響をもたらしておる点もあると思うのであります。しかしながら、医薬分業問題などにつきましては、国会をあげての論議になりまして、昨年の末、一応今日では一年間延期をするということが、国会の意思として決定をせられたのでありますから、厚生大臣としても、この意思を尊重して進まなければならないと思うのであります。ただ、昨年御決定になりました趣旨は、委員長の報告を見てみますと、参議院と衆議院におきましていろいろ違うようであります。これは国会自身としても、延期の趣旨について統一ある意思表示をしておらぬというようにも拝察をされます。衆議院の委員長の報告によりますれば、準備が不十分であったから一年間延期するのだ、こういうことでありますが、参議院の各委員の討論とかあるいは委員長の報告を見ますと、とりあえず一年間延長するのだというような意味合いで、それぞれニュアンスが違っております。この点については、国会自体も、医薬分業の問題に関する限りは十分に解決を与えてはおらぬ、要するに一年間延期をするということだけの問題であると私は思うのです。しかし私個人としては、御承知の通り私は医薬分業を推進すべしという所論に立って今日まで政治生活を続けてきたものの一人でありまして、この所信においては少しも変りはありません。しかしながら国会の意思を踏みにじってこれを強行しようというような考え方はありませんから、やはり国会の意思というものを十分参照いたしまして、とにもかくにも、昭和二十六年でありましたか、占領下でありますが、七十年の長い抗争に終止符を打った医薬分業を推進すべしとする意義は、一応生きておる、旧法ではありますが、その後一年長延期の法律も、これをとどめるものではないという解釈を私はいたしておるのであります。

野澤清人自由党

○野澤委員 一つ問題が浮んできたわけでありますが、医薬分業の問題についての前国会における意思決定が、大臣の感じとしては非常にあいまいである、あるいはいろいろな事情が入っておるという御解釈でありますが、こういう点についてどういうふうにお考えになっておられますか。つまり参議院、衆議院を通じて、政府の怠慢のために準備ができておらない、従って一年三カ月延期するというような結論に到達したと思うのですが、やはり大臣としてその当時そういうようにお考えになったかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 これは明確にお答えをいたしておきます。それが主要な原因であろうかと思っております。

野澤清人自由党

○野澤委員 それではかっての自由党内閣当時に、これらの問題が国会あげての論争に追い込まれて、政府怠慢ということを打ち出されたのでありますが、かねてから保守党における分業論者として今日まで御敢闘下さった川崎新大臣とされましては、再び政府の怠慢によるというようなそしりを受けないような御方針をとられるお考えであるかどうか、この点をはっきりお答え願いたいと思います。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 ただいま御指摘になりました御趣旨のような形で、私どもも善処いたしたいと考えております。

野澤清人自由党

○野澤委員 ありがとうございました。非常に安心をいたしておりますが、総体的な問題で、もう不言こういうことをお伺いしたいのです。厚生行政が厚生省において行われ、あるいはその一部が労働省等で行われているというような事柄から、一般に国会活動でいろいろな議員が議案を持ち寄りますと、世論政治といいますか、民主政治の余波といいますか、外郭運動が非常に盛んになって来ます。特にこの厚生関係では、たとえば、らい患者が国会に陳情に来る、遺家族が九段で本日のように大会を開かれておる、また日雇い労務者が陳情に来る。こういうように世論政治というものが大衆行動に集約されて、国会の周辺なり国民の先端なりに立つ、こういう傾向が非常に強い。これらは正しい世論のあり方であるかどうか。またそういうことをしなければ、政治の動きというものを政府において看取することができないのか。これらについての川崎大臣の個人の考えでけっこうでございますから、お考えをお聞きしたいと思います。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 世論の一つの反映といたしまして、ある種の組織、ある種の団体が陳情を行う。あるいは遺族のごとき全国的に普遍的な、しかも政党政派にあまり色の染まらない団体が行う陳情の趣旨は、最も尊重しなければならぬと考えております。しかしながら、各種の団体では、相当利害も関係したり、あるいは一地域に限定をするような陳情もありますので、陳情政治というものが、必ずしも国民全体の世論の上に乗っておる場合のみとは限らないと考えます。ことに最近の陳情政治は、この国会を取り巻きまして、あたかも国会が——私はこういう表現を一度使ったことがありますが、国会へ来ることが、何か見物に来る、楽しみに来る、一種の、遊楽街ほどではありませんけれども、いなかの人が上京してきて国会を見て楽しむというアミューズメント・センターみたいな形になっておることは、厳粛なる国政の立場からして、喜ぶべき傾向ではないと私は思うのであります。ことに欧米各国、戦後のドイツであるとかフランスであるとかいうような、日本と非常に近似した戦争によって大きな影響を受けたヨーロッパの各国などの陳情のやり方を見ておりますと、週日を限定して、陳情する日は一週間に一回とか二回に限定して、その他は国会議員の頭脳を休養させる、そして十分に勉強させるような組織になっている。私は、これは個人のことでありますが、近ごろ大臣業を始めまして以来、応接にいとまがなく蓄積の方が非常に足りないので、この点ははなはだ日本の議会政治のために残念なように考えています。これらについては、私は大臣としても、また個人としても陳情政治の行き過ぎに対しては、今後相当に是正をしなければならないのではなかろうかと思います。私見を申し述べておきます。

野澤清人自由党

○野澤委員 陳情政治あるいは大衆行動等に対する川崎大臣の個人的のお考えを拝聴いたしまして、非常にうれしく感じました。好ましからざることであるという決定的な御意見、私ども全く同感であります。特にこの厚生行政の線に浮ぶものは、大体経済的に追い込められた人たちが多いのであります。遺家族にいたしましても、あるいは戦傷者等にいたしましても、全く日常の生活に追われている最低の生活者が多いのでありますが、新大臣にこいねがうことは、国会に対する新しい表現の仕方というようなお話まで具体的にしていただきましたけれども。今後の厚生行政というものは、予算のやりとりも必要でありましょうけれども、そうした大衆行動を起さなければ厚生行政ができないのだという、この観念的なものを一掃することに一つ強い御推進を願いたい。一々患者が集合いたしまして、あるいはまた傷痍軍人が白衣をつけて国会に陳情を行わなければならぬ。しかもその人たちは汽車賃にも困っている人たちである。この零細な国民の立場を考えてみて、今後の日本の厚生行政というものは、恩恵行政ではないのだ、少くとも国民の立場に立って厚生省全体の機関が動くのだというようなりっぱな形に持っていっていただきたい。同時に、こうした問題を考えてみますと、進歩的な川崎大臣を中心としましては、いろいろな課題が要求もされ、また投げ与えられると思うのです。ところで、先ほど御指摘になりましたこの医薬分業等の問題に関してみましても、すでに法律で決定して、一年後には——来年の四月一日からは実施される、こういうことがはっきりしているのでありますが、もしこれを推進するとすれば、今度の本予算を編成する際に厚生省としては大衆啓蒙の線をどういうところでお持ちになっているか。また厚生大臣として、当然国民一般にこの法律を知らせるための施策をお講じになると思います。それらに対する予算措置を遺憾なく御準備なさっていると思いますけれども、この点についてどういう御経過であり、また御決心であるか、承わりたいと思います。

川崎秀二日本民主党厚生大臣

○川崎国務大臣 ただいまお述べになりました御趣旨のことは、われわれも貴重な御意見といたしまして、十分参酌して善処したいと思っております。  それから、最後の御質問につきましては、予算の細部にわたりますので、政府委員から御答弁をさせたいと思います。

高田正巳厚生事務官(薬務局長)

○高田説明員 お答えをいたします。ただいま資料を持ち合せておりませんので、ちょっと金額は申し上げる方法がないのでありますが、厚生省といたしましては。自分の行わんとする施策の大衆に対する徹底をはかることは必要でございますので、さような観点から、分業の問題につきましても、若干の啓蒙宣伝費を要求をいたしております。

野澤清人自由党

○野澤委員 了承いたしました。つきましては、前の国会におきましても、こういう事態が起きたのでありますが、必ず相当の費用をとって、十分啓蒙運動もし、宣伝もするというようなことを速記録にとどめながら、実際はやっておらない。そしていよいよ最後のどたんばに行きますと、国会では政府の怠慢によりという文字を使えば、すべてが解決して参るのであります。新大臣にお願いしたいことは、予算の多寡や運営のいかんを私たちは論ずるのではなしに、先ほど御同感であると申し上げました通り、陳情政治の好ましからざる事態を再びもたらさない、そういう観点から、ぜひともこの分業問題に関しましては、政府みずからが相当の決意をされて相当の予算を組み組織を持っておるのでありますから、全国的の啓蒙については、率先してこれらの問題の解決に当っていただきたい。そうしませんと、ある一定の時期に来て、やはり川崎大臣も、国民運動を起し、大会をやり。陳情をやる、またハン・ストをやらなければとうてい承知をしてくれないのだ、こういう旧態依然とした事態を繰り返すようでは、せっかく全国民が期待しています川崎大臣としては、まことに遺憾であると思いますので、この大衆運動に対する好ましからざる事態を引き起さないように、同時にまた、国民の多年要望して参りました新しいこの医療制度に対する根本的な問題に対しての手当を十分にしていただきたい。滝井君からは、制度の欠陥ではなくしてという御意見があったように記憶いたしておりますが、私は制度そのものの欠陥が医療費の増大を来たし、保険の赤字財政を招来したと思う。従って、大英断を下さない限りは、この赤字補てんで毎年予算の折衝をしなければ、大臣がお苦しみになるという事態を引き起すのではないか。こうした大きな期待を持って生まれました若くして有能な川崎大臣にお願いしたいことは、外面的にいろいろな問題を羅列されますけれども、日本の国家財政の規模から申しまして、また現在の社会保障制度全体をながめた上において、どれもこれも一応わずかずつ施策を講ずるという手ぬるい方法では、やはり旧態依然としております。従って、どこに禍根があるかというその根本を究明されるならば、少くとも新しい医療体系に移さなければ医療費の節約はできない。またそれでも足りないならば、制限医療も必要であろうし、あるいはまた薬物等の問題に対しても、根本的に施策を講じなければならぬ。だれがこの道を開くかということになって参りますと、従来の大臣ではとうていできないと思うのです。少くとも進歩的な川崎大臣の大英断がなければできないと思います。今日までの状態は、やむを得ないといたしましても、今後本予算を編成する際には、一貫したあなたの思想、精神を流しまして、しかも局長も課長も全部一つの筋道に従って前進のできるようなしっかりした一つの目標を立てていただきたい。その目標を樹立して、あなた自身が、もしこの国会で承認されないならば、職を賭してもやるんだというような何か強いものを一つつかんでいただきたい。またそうしたことによってわれわれが大いに期待しました厚生大臣のあとをついて行けると思いますので、どうか大へんむずかしい注文のようでありますが、羅列される事柄のよしあしよりも、一つのものをつかんで、それを実際行政の上に反映させる。こういう行き方をぜひともとっていただきたいと思うのであります。いろいろ希望を申し上げましたが、どうか本予算編成に際しましては、この医薬分業の実現というような問題について、再び国会において政府の怠慢をなじられないように、十分御注意の上に御勘考をお願いいたします、おそくまでいろいろありがとうございました。以上をもって私の質問を打ち切ります。

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 他に厚生行政に関する御発言の通告もございますが、発言を通告された委員の方が見えませんので、本日はこの程度にして散会いたしたいと存じます。いかがでございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中村三之丞日本民主党

○中村委員長 それではそういうふうにいたします。  次会は明日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時二十六分散会

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