水産委員会 第1号
- 発言数
- 89 件
- 登壇者
- 14 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1954/12/02
会議録
○田口委員長 これより会議を開きます。 この際理事の補欠選任についてお諮りいたします。先般来の委員の異動の結果、田渕光一君及び田中幾三郎君の両君がそれぞれ理事の資格を失っております。この際その補欠選任を行いたいと思いますが、これは先例によりまして委員長において従前の通り両君を理事に指名いたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○田口委員長 異議なしと認め、そのように決定いたします。 ―――――――――――――
○田口委員長 次に国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。本委員会といたしましては一、公海漁業に関する事項、二、水産貿易に関する事項、三、水産金融に関する事項、四、漁業制度に関する事項について今国会も積極的な調査を行いたいと考えております。つきましては、規則の定めるところにより議長にその承認を求めたいと思いますが、これに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○田口委員長 異議なしと認め、さように決定いたします。 ―――――――――――――
○田口委員長 次に先般国会に提出されました昭和二十九年度補正予算のらち、水産関係の予算につきまして政府当局より説明を聴取することといたします。水産庁長官、清井政府委員。
○清井政府委員 ただいまの昭和二十九年度の補正予算でございますが、お手元に資料が配布申し上げてあると思います。いずれ御審議願うことになるのでございますが、今度の補正予算案に見積りました水産庁の予算といたしましては総計五億一千五百五万三千円でございます。その内訳は、ここに書いてございますが、昭和二十九年の発生漁業災害復旧資金利子補給の補助金として五百万円、漁船再保険特別会計への繰入れ一億四千六十六千円、公共事業費といたしまして、昭和二十九年発生漁港施設災害復旧事業費として三億六千九百四十四万七千円でございます。利子補給は二つにわかれておりまして、最初の三百五十万円は去る国会において御審議を願い、通過を見ました北海道東南海域暴風の漁業災害復旧資金の利子補給補助金でございます。これは総計八億五千万円の金額で、今年の終りまでに貸付をすることになっておるのでございますが、この利子補給が必要となって参りますので、その利子補給に必要な金額を一応推定いたしまして、三百五十万円今年度において必要であるということで計上いたしたのであります。それから昭和二十九年の台風漁業災害復旧資金利子補給補助金百五十万円、これは実は今回御審議願います法律によりまして融資をいたしました場合の利子の補給、これは法律が通過をいたすということを前提といたしまして、来年の三月三十一日までの利子補給に必要な金額を計上いたしたのであります。合計で五百万円でございます。 それから漁船再保険特別会計への繰入れは三つにおかれておりまして、最初が給与保険勘定への繰入れが千五百万円、特殊保険勘定への繰入れが九千四百万円、普通保険勘定への繰入れが三千百六十万六千円でございます。最初の二つは、特殊保険と給与保険への繰入れでございますが、これが当初予定いたしましたよりも合掌、抑留等の事件が多うございましたので、当初の予定では間に合わなくなりまして、特別会計では足りなくなって、そこで一般会計からこれを繰入れをいたすということで今回の補正予算に繰入れを見ておるのであります。その金が両方で一億九百万円でございます。 それから最後の普通保険勘定への繰入れ三千百六十万六千円でございますが、これは先般御審議願いましたいわゆる漁船保険の義務加入の問題でございます。これが御承知のような経過をもちまして、ただいまは二十トンまでが二分の一ということになっておるのでございますが、この際これを解決いたしたいというふうに考えましていろいろ折衝をいたしたのでございますが、その結果、当初国会の御意思の通りにはなっていないのでございますが、一応私ども事務的に大蔵省と折衝いたしましてきめた方式は、百トンまでは義務加入であるけれども、今まで二十トンまでが二分の一というのを五十トンまでが二分の一というふうに引上げまして、さらに七十五トンまでが四割、それから百トンまでが三割、すなわち五割、四割、三割、こういう率によって逓次に逓増して参る、こういう形をとったのであります。と申しますのは、今までの案では大体七十トンの船といたしますれば、七十トンそのものに四割なら四割かかる、三割なら三割かかるという考え方でございましたが、それでは不合理でありますので、かりに七十トンの船を保険にいたします場合には、七十トンの船のうちその五十トンまでは五〇%、それからそれを越える部分は四〇%、こういうふうにいたしまして逐次逓次に上って行く、こういう考え方をとったのであります。従いまして九十九トンの船が、実際問題といたしましては四二・五%の国庫負担ということになりますので、五〇%までは行きませんでしたけれども、この程度であればやむを得ないというふうに考えて事務的にいたしたのであります。なお大きい資本企業家の保険の問題でありますが、これまたいろいろ問題がございまして一応ただいまは公庫と開銀等の融資の場合に区別をつけておりますところの総所要船舶トン数千トン、乗組員三百人ということを限界に置きまして、それに達するものは見ない、それ以下のものについてただいまのような形でやって行く、こういうことに事務的に決定を見たのであります。当初の国会の御意思とはやや反するところがあるのでございますが、諸般の事情やむを得ないということで妥結をいたしたので御了承を願いたいと思うのであります。それによりますと本年度の予算額が三千百六十万六千円増になります。明後年は一億一千万円程度が増になると思います。それは目下計算いたしておりまするが、ただいまの補正予算では三千百六十万六千円の増ということになって、この金額を計上いたしたのであります。それで、これは政令によって解決して参りたい。将来は法律改正に持って行きたいのでありますが、補正予算では政令でやって参りたい、こういうふうに考えております。その点はよろしく御了承願いたいと考えるのであります。 最後は公共事業費であります。これは本年度発生の災害、今回の分も全部含めまして、全体の災害に対しまして予備費を支出する分もございますが、ここに計上いたしましたのはいわゆる補正予算に計上する分でありまして漁港災害の復旧のうち三億六千九百四十四万七千円を補正予算に計上する、なお必要な金額はさらに予備費でこれを計上するというように、二本建にわけてやっておるのであります。予備費の方はまだ最後的にはっきり数字が固まっておらないのでありますが、そういうことでただいま大蔵省と事務的に折衝いたしておるのであります。補生予算に計上されるのは以上の金額の通りでありまして、以上合計五億一千五百五万三千円を補正予算に水産庁の分として計上されておる次第であります。よろしく御了承願いたいと思います。
○田口委員長 ただいまの説明に対し質疑があればこれを許します。――別に質疑もないようであります。
○田口委員長 ただいまより内閣提出にかかる昭和二十九年の台風による漁業災害の復旧資金の融通に関する特別措置法案を議題として審査に入ります。 まず本案の趣旨について政府の説明を求めます。農林政務次官羽田武嗣郎君。
○羽田政府委員 ただいま議題となりました昭和二十九年の台風による漁業災害の復旧資金の融通に関する特別措置法案につきまして、その提案理由及び要旨を説明いたします。 御承知の通り本年も八月以降、数次にわたって台風がわが国を襲い、各地に多大の人的並びに物的損害の発生を見るに至つたのであります。すなわち、八月十八、十九日主として中国、九州地方を襲った台風第五号を初めとして、九月上旬、中旬に前後して、台風第十三号及び第十二号が、中国、九州地方を再び襲い、引続いて九月中旬に主として東海地方を中心として台風第十四号が襲来し、最後に九月二十五、六日にかけて、台風第十五号が北海道を中心として全国各地にわたり猛威を振い、本年最大の被害をもたらしたのであります。これら屡次 にわたる台風による被害のうち漁業関係におきましては、漁港、漁船、漁具、共同施設、養殖施設等につき甚大なる被害を受け、うち被害の特にはなはだしかったものは、漁船及び漁具であり、地域としては北海道、ことに台風によって発生した火災により全滅した岩内町及び四国、瀬戸内海沿岸であります。これらの重大な被害の状況にかんがみ、これらの台風によって著しい被害を受けた漁業者及び水産業協同組合に対し、この際、低利の復旧資金の融通を促進する措置が緊急となった次第であります。 次に、この法律案の要旨を申し上げます。この法案の内容は、被害を受けた漁業者及び水産業協同組合に対しまして、農林中央金庫その他の金融機関が行う漁船、漁具またはその他の施設の復旧資金並びにこれらの施設が復旧されるまでの間における特定の着業資金の融通について、地方公共団体が五分の利子補給を行うこと及び漁船については六割その他の施設については五割の損失補償を行うこと並びに国が利子補給については二分五厘に相当する額までを補助し、損失補償については漁船分の三割とその他の施設分の二割五分にそれぞれ相当する額を加えた額を限度として補助を行うことであります。 また、この法律の対象となる復旧資金は、貸付を受ける者一人につき、一千万円以内で、償還期限が一年以上五年以内、利率が年六分五厘以内のもので昭和三十年六月三十日までに貸し付ける資金であります。なお、政府が都道府県に対し補助する対象となる復旧資金の総額は、十五億円を限度としております。 また、昭和二十八年台風第二号による被害農家及び被害漁家に対する資金の融通に関する特別措置法並びに昭和二十八年六月及び七月の水害並びに同年八月及び九月の風水害による被害農林漁業者等に対する資金の融通に関する特別措置法のそれぞれの法律の一部を改正し、漁業協同組合その他の金融機関が、これらの法律の被害漁家または被害漁業者で再び昭和二十九年の台風によって連続的に被害を受けたものに対しましては、その者が貸付を受けている経営資金の償還に充てるための資金として昭和三十年三月三十一日までに貸し付ける資金をこれらの法律における経営資金とみなす旨の規定を設け実質上償還期限を延期する措置をとったのであります。 以上、本法案の提案理由並びに要旨を説明いたしましたが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
○田口委員長 引続きただいま政務次官より提案されました法案の内容につきまして補足説明を聴取いたします。清井政府委員。
○清井政府委員 ただいまの法案につきまして、提案理由で尽きておるのでございますが、なお若干補足させていただきたいと思います。 今回の災害に対しまして、一応とりあえずの措置といたしまして政府資金の融資等の処置は講じて参って来ておるのでございますが、さらに今回新たに法律によってこれを決定しようと考えておるのであります。そこで条件といたしましては、先般御決定願いました北海道東南海域暴風雨による災害の場合と同様でございまして、利子補給は国と地方とで総計で五億ということでございます。損失補償の方は、漁船については六割、漁具等については五割ということで、この点は先般の場合とまつたく同じ率を考えておるのであります。金融機関等につきましてもまつたく同様であり、またこれらの融資の対象になる部分につきましても、漁船、漁具、あるいは共同施設等につきましては、いろいろの倉庫あるいはその他の共同施設あるいは養殖施設その他が全部これに含まれておるのであります。ただここで一つ例外として考えておりますのは、第二条の三項に掲げてございますが、三項の中に括弧書きといたしまして、「(これらの施設が復旧されるまでの間の農林大臣の定める用途に必要な資金で農林大臣の定める被害漁業者等に貸し付けられるものを含む)」といいますのは、いわゆる着業資金でございます。着業資金につきましては、当初は相当広範囲に考えておつたのでございますが、その後予算のわく等の関係もありまして、着業資金の問題は一応割愛をいたしました。ただ北海道の、岩内町につきましては、これは特例として認むる必要ありというふうに考えまして、事実上は岩内町を含むのであります。すなわち岩内町におきまする着業資金の貸付、実際上は約一億円でありますが、それがこの法律の中に盛られておるのであります。いわゆる岩内については着業資金、その他は着業資金は見なかった、こういうことでございます。そこが特色があるところでございます。その他の条件は大体前回のものと同様でございます。ただここで損失補償の場合に、この前はいわゆる五割補償の分と六割補償の分、すなわち漁船とそれ以外のものにつきましては一応区別があったのでございますが、今度は双方の資金額を合計して損失補償を見る。すなわち最後に損失補償をする場合に、片一方が余って、片方が足りないということではかえって不公平があっていけないということで、こういう場合には両方を融通してみようじゃないか、こういうことが今回の損失補償でございます。 それから資金でございますが、これは十五億円を限度とするということでございまして、本決によりますところの資金は十五億円ということになっておりますが、別途公庫の方の資金をただいま要求中でございます。公庫資金につきましてはまだ金額がはっきりいたしていないのでありますが、さらに数億をこれに附加して行きたいというふうに考えておりますので、今回は十五億のこの法律による融資のほかに、さらに公庫の融資が数億加わる、こういうふうに考えていただきたいのでありまして、その合計が今度の災害の対象の融資になるのであります。公庫の資金につきましては、これはたとえば節約の解除の問題であるとか、あるいは返還金の振りかえの問題であるとか、いろいろ公庫の資金の内部の操作によってこれをいたすことになっております。まだ農業資金と同様に最後決定に至っていないのでありまして、まだ数字につきましてははっきり申し上げられませんが、この十五億にプラス数億の公庫の資金が加わるというふうにお考え願いたいのであります。従って公庫の資金におきましても漁船あるいは共同施設に貸し付ける、こちらの方からも漁船、漁具、共同施設等に貸し付ける、こういうことになるのであります。 それから附則でありますのは、これは先ほど政務次官から申し上げました通り、去年とことしと続けて災害を受けた者の経営資金の取扱いでありますが、こういう場合には、これは振りかえで引続き経営資金と見てやるようにいたしませんと気の毒でありますので、先般の災害で経営資金を借りた者がさらに今回の場合に償還をしなければならぬというときには条件を延ばしてやる、こういう特殊の措置であります。以上簡単でございますが、大体内容につき御説明申し上げた次第であります。
○田口委員長 本件につきまして質疑に入ります。質疑の通告がありますから、これを許します。松田鐵蔵君。
○松田(鐵)委員 この法律案が制定せられるまでの間にいろいろと今まで各党において論議されてこの法律案が出たことでありまするが、まず一番先にお伺いしたいことは、ただいま長官から、この法律による第二条の第三項における「(これらの施設が復旧されるまでの間の農林大臣の定める用途に必要な資金で農林大臣の定める被害漁業者等に貸し付けられるものを含む。)」と、これが従来あるつくり上げられた特別措置法と、今回は岩内の分があるために着業資金としてかわった形によってこれを認めてあるのだ、かような説明でありまして、岩内というものに対する非常な関心を持つと同時に同情、しかもこれを育成しなければならないという考え方からこうした法案が出たことであると存ずるのでありまするが、この法律全体から見る「利率が年六分五厘以内のものであること。」これが私はいかにも納得のできないことなのであります。要は漁船及び施設に対して、前般の災害において六分五厘でもつて行うのである、かようなことでありますが、三回にわたる連続した災害によって岩内の実情が非常に窮迫した実態になつておることは、政府としてもよく認められておることであり、また農林大臣も御視察されたことであり、その事情はよくわかっておることであるのであります。しかしてただ着業資金さえ貸せばそれで特別の経費だというような御意見であり、またこの法案ができておるのでありますが、あのみじめな状態にある岩内地区の漁民に対して、その償還がはたしてでき得るかどうか。非常な連続した災害に対しての救済の道は、国が船でもつくって貸してやるべきだという議論さえ起ったのであります。それに対して六分五厘の金利をもつて貸し与えるだけ、着業資金を貸し与えるだけ、これでもってあそこの生産がはたしてでき得るかどうか、復興ができ得るかどうか、この点に対して水産庁はどのような経緯をもつてこういう立案をされましたか。この点をお伺いしたいと存ずるのであります。
○清井政府委員 私の説明が足らなかったためにあるいは失礼いたしたかもしれませんが、私の申しあげましたのは、この法律全般が漁具、漁船、共同施設、養殖施設等の施設の災害復旧を見ておる、ただ岩内についてのみ着業資金をプラスしてあるということを申し上げたつもりだったのであります。従いまして岩内につきましては、むろん漁具も漁船も施設も全部貸付があるはずであります。そのほかに岩内には特別に、ほかに例のない着業資金を貸し付けるということでございますので、この点ちよつと私の御説明が足らなかったと思いますが、その点は御了承願いたいと思います。ただ、これは先般からしばしばお話がありました通り、再度の災害のために非常な打撃を受けておるということで、当時つなぎ資金を出しましてすけそうに出るのだということで、相当私どもも努力いたしまして、大方その目的は達したように私は考えておるのであります。またそういうふうに地元からも報告が来ておるのでありますが、大体において間に合ったことは非常にけっこうだと思います。ただ、六分五厘の利子ということじゃほとんどこれは問題にならぬと申しますか、非常に岩内については気の毒だということが実際問題として考えられるのであります。私どもといたしましては、実はこの点もまったく同様な考えでありまして、これは特別に何かいたさなければならぬということで、これについて特に利子をさらに、あるいは何がしかをプラスするというようなことを実は考えてみたのであります。いろいろ案を練ってみたのでございますが、結局ここに今おちついたようなわけでございます。むろんこれは政府がやるのはこの限度でございますけれども、道の地元においても道全体の利子補給なりその他の立場からこの点は至急勘案してやって行かなければならぬと思います。政府としてやり得るのは、利子について特別の措置はとらない、ただ着業資金をほかに見ないのを岩内については見るということで、ぜひこれはやって行きたい。全体の利子の過重であると考えられるものにつきましては、道において特別に考えて全体をプールするというような考え方でやって行くほかなかろうじゃないか、こういうことにいたした次第でございます。この点御了承願います。
○松田(鐵)委員 長官の今までとって来られましたる措置に対しては、ぼくは決してそれに対する批判をするものではありませんけれども、たとえば岩内の問題ということが、この法律から見ると、同一な六割の補償ということになっておるのであります。そのうち地方庁が半額、国が半額でありますか、こういうことになっておるのだろうと思いますが、北海道庁においては、あまりにも岩内の被害というものが甚大なため、しかも漁業者のみでなく、町全体が焼けてしまったのだという建前から、道が八割の補償まで議決いたしました。たとえば国が三割であろうが四割であろうが、また二割であろうが、道の責任において八割までの補償をするということで、金融機関から融資を受けるように努力したものであります。しかもまた北海道の信連はこれを見越しまして、水産庁のいろいろなごあっせん、また御同情と同一に歩調を合せて、あの出漁を見ることになったのでありますが、この法律から見れば六割の補償、道はそれに対して自己の負担においてもう二割までも多く、八割の補償をいたしまして、融資を可能ならしめるような措置をとったのであります。それほど深刻なる状態であった。漁民はその北海道議会の議決に基いて、勇気を奮ってあの出漁を見たというような状態でございます。しかるに国は単なる着漁資金を貸し与えたから、これによってあとの補償の率も同様にしろというようなことは、あまりにもむごい話ではないか。むしろ基本的人権の尊重をする自由党内閣であったならば、もっともっとここ温情ある方法をもって、生産意欲を増させるように、また償還も可能ならしめるようにしなければならないのではないかと思う。この比率というものは、ただ事務的に一方的に大蔵省に屈服された感じがあまりにもたくさんあるのでありますが、長官はこれに対してどのような努力を払い、やむを得ざる事情はどういうようなところにあったか、お知らせ願いたいと思うのであります。
○清井政府委員 ただいまの松田委員のお言葉でございますが、この問題が起りました当初から、この点につきましてはきわめて熱心に御発言があったところであります。また道が思い切った八割の補償ということでこの岩内の復旧に当ったということも万々承知をいたしておるのであります。そこで私どもといたしましても、できれば岩内町全体の融資について、道の行いました高率の損失補償等の実行とにらみ合せまして、何とか一般の損失補償あるいは利子補給率と異った特典をやれれば非常にけっこうだ、こういう考えを私個人としては持っておったのであります。そこでそういうような考え方のもとに、いろいろ折衝いたしおったのでございますが、この六割、五割という損失補償率が、すでに他の災害と比べると相当高率になっておるのでありまして、それをさらに特例を認めるということにつきましては、全体の災害補償の建前からいいまして、どうしても事務的に解決できなかったところなのであります。また利子補給につきましても、特にこれは北海道全体の問題として解決できればよいのであって、一地方だけのことでこれを取上げるというよりも、むしろその方が道全体の資金のやり繰りからいってもよいではないか、こういうような建前から、岩内については利子補給、あるいは損失補償等について特例を設けずに、岩内のみ運転資金の貸付に特例を認めるということで、これは行こうということに実はなったのであります。この間におきますつなぎ資金等のことにつきましては、われわれといたしましてもできるだけ努力をいたしたつもりであります。またほぼ目的を達したように考えるのでありますが、それを裏打ちする措置といたしまして、あるいは御不満の点があろうかと存じますが、われわれといたしましては実は精一ぱい努力をしたつもりなのであります。ただ着漁資金をわくの中に入れるということによってのみ、他との例外が認められたということは、結果的には非常に御不満かと思うのでありますが。われわれといたしまして清一ぱい努力をしたつもりなのでありまして、この点は御了承を願いたいと思うのであります。
○松田(鐵)委員 長官の言われる結果的には不満であろうという言葉に対しては、まったく不満であります。しかしやむを得ないことと存ずるので、了承する以外に方法はないのじゃないかというような考え方も持っておりまするが、またはいろいろ研究いたしまして、次の委員会において、この問題を取上げてみたいと存ずるのであります。 次に今までの災害の法律は、せっかく政府は努力いたしまして、国民に対する温情をもつて法律を制定されておりますが、その政府の気持というものは政治上の考え方でありまして、あまねく国民に同一な方法によって利益、保護を与えなければならないためにつくられた法律も、金融機関によって非常にゆがめられておる、こういう事実が歴然としておるのであります。たとえば北海道の八割の補償という問題も、中金そのものが、八割という前提がなければつなぎ融資も出さないという議論をされた、そういうことによってでき上ったのが、道議会において岩内に対する特別の方法をつくらなければならないじゃないかということだったのであります。また法律が定められて、せっかくのその金が法律通りに行けばよいものが、でき得なかったという実例としては、今年の五月災害においてその結果がどうなったか、いつその融資が出たか、先日までもやもやしておったようなことである。今はどうなっておるかわかりませんが、五月のものが十一月、十二月までかかるようなことであっては、一体金融機関というものに対する政府の考え方、また措置というものはどうなのか。責任があるのかないのか、この点であります。このように非常に融資が遅れているという点につきまして、この国会は臨時国会でありますから、強くその内容を調査することも不可能であろうと思うので、将来において十分調査しなければならないものが残されておると思うのでありますが、知っている範囲内で、水産庁と中金との間で折衝された、今までの遅れている状態、あるいはまたかりにこの法律が土曜日の本会議において制定されたとしても、どういう見通しを持っておられるか。率直に言うなら、早く出せるかどうかということであります。この点に対する長官のお考え方をお知らせ願いたいと思います。
○清井政府委員 ただいまの問題でございますが、この点も先般の委員会において御同様の活を承ったのであります。実は先般の北海道東南海域の災害の融資が実行が非常に遅れておるということでおしかりをいただいたのでありますが、われわれといたしましては金融機関とも密接な連絡をとって、できるだけ早くこれを実行いたさなければ本来の目的に沿わないことになるのでありますから、これは一刻も早く、われわれといたしましては、事務的遅れのために被災者に迷惑をかけることがあってはならないということで努力をいたさなければならないことはもちろんであります。ただ問題といたしましては、金融機関といたしましても、それが金融機関の建前上相当精査をしなければならないという問題もあろうかと思います。また同時に、これは地元の関係といたしまして損失補償なり、利子補給なりがやはり国、県あるいは地元市町村というふうにいろいろと責任の負担がわかれておるというふうなこともありまして、なかなかそこに事務の進行に円滑を欠く点があったのではなかろうかと思います。いずれにいたしましても、先般のお話の通り、東南海域の融資につきましてはいろいろの原因で遅れておったのでありますが、今や完全にこれは実行されておるのであります。そこでわれわれといたしましては、ただいま申し上げましたような趣旨から、今後この法律の施行に当りましては、できるだけ早く諸般ので手続を進めまして、被災者の関係の方に対しましては、できるだけ早く融資が行きまして、法律制定の趣旨に沿うようにできるだけの努力をいたしたいと考えておる次第であります。
○松田(鐵)委員 その点に対しては次の委員会に私はもう少し調査をいたしまして、長官の御意見を承りたいと思いますので、長官においてももう少し詳しく御調査をして御答弁願いたいと思います。 それから先ほどの御説明から行きますと、この法律によつて融資の総額というものは十五億でございますか、そのほかに農林漁業金融公庫から、まだ未決定ではあるが、相当の融資をするのであるという御説明がありましたが、この点に対しても、当時の自由党の対策本部においていろいろと論議されたものである。要するに本年公庫に対して返って来る金が二十億ある。この二十億というものについては、本年の災害に対してそれをぜひ融資をするようにする。また本年の投融資の減額、これは十億でございましたか、この十億というものも同様に出すべきであろうということで決議されたはずであります。しかして農林省は全体からいつて四十八億のわくをこの災害に向けようと努力されておるのにかかわらず、いまだにその内容、数字が決定しないというようなお話を承るのです。拝聞するところによると、二十億だけ災害に対してまわしたいというようなことでありますが、それでは当初の予定から見たならば、非常に金額が不足になって来る。公庫から融資を受けなければならないという北海道の災害は、水産だけで四億二千万円ある。それであるから、どうしても二十四億という数字を増額してもらわなかったら所期の目的は達せられない。水産に対する四億というわくを増してもらわなかったならば、目的は達せられない。法律ではいろいろと、やれ公庫か出します。中金から十五億は善処いたしますと言うけれども、なかなか中金というのは酢でもこんにゃくでも食えない金融機関なんです。とにかく貧乏人と県会議員以上の政治家には金を貸してはいけないという法律まで中金の中にはある。そういうことであるから、なかなか容易じゃない。そこ一行くと公庫は、山添総裁自体も農林省の次官としてこの公庫法をおつくりになった人だから、非常に理解がある。それからああした岩内の災害というような特殊なものに対する融資というものも考えられていることでしょうから、どうしてもこの二十四億、水産の四億というものを増して行かなかったならば、いかにここで長官がわれわれを上手にごまかそうとしたところで、これはとても方法がつかないことになるのですが、この点二十四億というものを増すように御努力を願っておるか、それからまた見通しがあるかないか、なかったならば当委員会としても厳重に政府に対して抗議を申し入れなければならぬと思うのでありますが、こういう点に対する見通しを御説明願いたいと存じます。
○清井政府委員 十五億のわくは非常に少いというのでございますが、この点は、私どもも、全体の融資に向ける金融のわくということにつきましては、水産の災害として各県から出て参りましたものをいろいろ勘案いたしまして、従来の査定率等を適用いたしまして数字をはじいて参って来たのでございますが、端的に申し上げまして十五億だけではわれわれとしては不十分であるというように実は考えておるのであります。そこで十五億にさらに公庫の資金額をプラスするということによって目的を達したいということで部内で折衝いたしておるのであります。まだきまりません理由は、先ほどちよつと申し上げました通り、公庫のわくの中からこの災害の方に向けるわくといたしましては、いわゆる償還財源の増の十八億、これを農林水産全体の農林漁業金融公庫の貸付対象の中の災害融資の方に割振るということと、さらに節約の部分、十億円を節約いたしておるのでありますが、この節約を解除することによって、これを災害融資の方に向けるということになるわけであります。これはむろん水産だけではございませんで、農林水産全部にこれを割振るということで、現在いわゆる十八億の財源、十億の節約解除による財源、これによって農林水圧のわくをきめようということで、目下節約解除について大蔵省と折衝いたしている段階であります。まだきまりませんので、はっきり申し上げられませんが、私どもといたしましてはこの中から数億円水産の方に向けたいとせっかく努力いたしている最中であります。
○松田(鐵)委員 よくわかりました。会期も短かいので、日曜日の五日にはこの予算案を衆議院は通過させようという段取りになっておるのであります。土曜日には当委員会としても、先ほどの理事会の打合せにおいてこの法案をあげてしまおうという考え方を持っておるのであります。よって明後日の委員会において、私がただいま申し上げたような事柄をもつと具体的に御説明を願えるように御努力をお願い申し上げたい。そんなような状態でありまするから、どうかひとつそれまでの間にもっと御努力をされて、その成果をお知らせを願いたいと存じます。私は本日はこの程度で質問を打切ります。
○田口委員長 ほかに御質疑ございませんか。――別に質疑がないようでございますから、本件はこの程度にとどめます。 ―――――――――――――
○田口委員長 ただいまより公海における漁業の安全操業に関する件について調査を進めます。 本日の政府側出席者は水産庁長官清井政府委員、同じく漁政課長家治説明員、同じく協同組合課長中里説明員、外務省アジア局長中川説明員、海上保安庁長官山口説明員、同じく警備救難部長砂本説明員――外務政務次官及び条約局長はただいま参議院本会議に出席中でございますから、やがて当委員会に出席になると思います。 ―――――――――――――
○田口委員長 この際お諮りいたします。先般の東支那海における第三十一山田丸及び第三十二山田丸の銃砲撃による沈没事件について、本日山田丸船主山田吉太郎君、山田屋商店支配人松尾重三君、山田屋商店無線部長高原徹君、第三十一山田丸通信上大古貞水君、以上の方々を参考人に選定し、それぞれ意見を承ることといたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○田口委員長 異議なしと認め、そのように決定いたします。 ―――――――――――――
○田口委員長 それでは参考人各位より順次御意見を承ることといたします。山田丸船主山田吉太郎君。
○山田参考人 私は今回漁場におきまして撃沈せられました第三十一山田丸及び第三十二山田丸の船主山田吉太郎でございます。今回の事件につきましては、海上保安庁初め各方面の格別の御配慮と御同情を賜わりまして、十一月二十六日、死亡船員二名の合同葬儀を相営みますと同時に、この事件の真相を親しく、つぶさに、一刻も早く中央に報告すべく上京いたしましたところ、本日幸いにも水産委員会へ参考人として喚問を受け、皆様に訴え得ます機会を与えられましたことは、私の最も喜びとするところでございますと同時に、国事多端の皆様におかれまして、特にこの事件をお取上げになり、ここに御審議を賜わりますことは、私はもちろん、全国の漁業関係者、乗組員、遺家族一同、まことに感激と感謝にたえない次第でございます。 本件は従来の拿捕事件と異なりまして、銃砲撃により二隻の漁船は撃沈せられ、とうとき二名の人命を失い、五名の重軽傷者を出しておるのでありまして、しかもそれは政府において許可されました区域で、平和に操業しておりました公海においてなされ、沈没により海中にただよう船員の救助もなされなかったことは、天人ともに許すことができない暴挙と存じます。死亡いたしました二人の霊に対し、何といたしましても相済みません。御遺族に対しお気の毒にたえません。なお重傷を受けた船員に対し慰めの言葉もございません。私といたしましては、できるだけのことはいたしたいつもりでございまするが、個人の力には限度がございます。生存されました乗組員のためにもただちに代船の建造をいたさねばなりませんが、これとて容易なことではございません。どうか皆様方におかれましても、私のこの窮状に御同情くださいまして 一日も早く本事件の解決のために御審議を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。
○田口委員長 松尾重三君。
○松尾参考人 松尾でございます。今回撃沈せられました第三十一、三十二山田丸の二そうはいずれも昭和二十二年六月三菱長崎造船所で建造いたしました六五・九六トン、六五・二七トンの鉄船でございます。機関は焼玉百十五馬力をおのおのすえつけおったのでございまするが、政府の許可番号は長第三五六号、第三五七号を得ておりまして、二そうびき機船底びき網漁業に従事しておったのであります。その操業区域は、政府の御指示によりまして東経百二十八度三十分以西の全海面にわたっておるのでございます。 この両船は、建造以来きようまで七年四箇月の間、航海稼働日数千七十八日に及ぶ期間、許可されました操業区域におきまして、何らの違反もなく、事故もなく、平和に漁撈に従事しておったのでございまするが、その間総計百三十万三千八百六十一貫に及ぶ漁獲を水揚げしておるのでございます。従いまして、国民蛋白栄養資源にもいささか貢献しておることを自負しておったのでございます。しかるに今回、すなわち昭和二十九年十一月二十二日午前五時五十三分、本船は政府において許可されておりまする区域内におきまして、すなわち東経百二十二度二十分、北緯二十八度三十分、農林漁区五百五十四区の右上の公海におきましてまつく理由なき銃砲撃を受けまして第三十二山田丸がまず沈没し、続いて第三十一山田丸も沈没したのであります。その攻撃によりまして第三十一山田丸船長多田美幸三十七歳、甲板員井筒高義二十九歳は即死いたしました。漁労長東根三郎三十四歳、甲板員上田久雄二十一歳は重傷を受けたのでございます。なお通信士大古貞水二十五歳は軽傷を受け、また片船であります第三十二山田丸船長高島岩雄三十三歳も重傷を受けたのであります。計七名の死傷者を出したのでございまするが、皆様のお手元に差上げております本件の顛末書は、一切の誇張なき真実の記録でございまして、その惨状を立証する記録でございます。また私はこの記録に基きまして、ここに国会に対し、政府の方々に対しまして、また国民に対しまして、また国民の立場から、遺族の立場から、罹災船員の立場から、水産業者の立場から、船主の立場から、押えることのできません憤激を、あきらめ切れぬ悲しみをここに訴え、こみ上げる怒りを、そしてわれわれの窮状を訴えたいと存ずるのでございます。隣接諸国間の騒乱は、政治的にはともかく個人的には何らの関係もないのでありまして、本件のような、許されました公海で平和に漁業に従事しております日本漁船が、理由なく撃沈されまして、多数の死傷者を出しておりますことは、いやしくも独立国家の国民といたしまして、これ以上の痛恨事はないと考えるのでございます。不幸にして殉難されました遺族は、この天人ともに許さざる暴挙のために一家の支柱を奪われ、悲歎の涙にくれております。まだうら若い身空で今後たよる人もなく、幼き子弟を抱えてこの苦難多き人生をどうして過ごせばよいのでございましょう。まったくその胸中察するに余りあるのでございます。こんなひどい目にあって一体だれに訴えたらよいのでしょうか、二度とこんなことがどうぞ起りませんように、国のえらい方々にたのんでください。これは遺族の方々の血の叫びでございまして、私は国会の方々、政府の方々に対し、この必死の願いを聞き届けていただきたい、慰藉の御誠意をお示しくださいますように、衷心訴えるものでございます。 同僚のいたいたしい死体と重傷者を守って海上保安庁の救助船「あまくさ」から長崎に上陸した山田丸船員一同は、まださめません死の恐怖をただよわせながら、なまなましい憤怒をたたきつけるように申したのでございます。何というむちゃな、何という惨酷な、何という悲しいことでございましょう。このかたきは必ずうたねばならないと異口同音に怒ったのでございますが、船員たちの力で何ができましようか。国会の皆様、政府の皆様、どうぞこの船員たちに心から御同情をいただき、誠意ある処置によって船員たちを慰めてくださいますことを衷心より訴えたい次第でございます。 以西底びき漁業によって生産されます魚類が、国民の食生活に重要な比重を加えておりますことは申すまでもございません。もちろんそれゆえにここに政府におかれましても、私たち業者の維持育成に格別の御留意をいただいておるのでございますが、実情はどうでございましょうが、国府に、中共にまたは韓国に数百そうの漁船が拿捕されまたは追い払われ、はなはだしきは撃沈せられまして、その乗組員は抑留せられ、または投獄せられ、今回のごとき砲撃に倒されましても、独立国日本人は結論的に泣き寝入りして、一日一日を戦々恐々として過さねばならないのでございましょうか。 この事件の起りました五日後すなわち十一月二十七日でございますが、私の方の社船第十五山田丸の漁場からこんな報告を受けたのでございます。「二十七日十一時三十分より十二時まで国府軍艦に横付され、警告された。この海域は作戦区域なり、よっていかなる被災にも責任を持たず、他の日本漁船にも通達されたし。位置五四三区中」続いて「今後山田丸をこの海域で見た場合没収すると通告され、即時退去を命ぜらる。横付のとき左舷のサイドと表をかすったのみで、ほかに船体に損傷なし、一時五分避行し網を入れる。」この通信位置は、今回の事件の起りました位置よりもさらに二十五カイリ沖合いでのできごとでございます。国家経綸の地位にあられます国会、政府の方々におかれましては、これらの実情を何と御判断くださいますでしょうか。 本席には事件当時現地と通信の応答をなし、その状況を詳細にキャッチしております高原山田屋無線部長もおります。また三十一山田丸に乗組みまして、九死に一生を得て帰還しました大古通信士が、腰にまだ砲弾の破片を受けたままで出席しておりますので、当時の実情を詳細に御説明申し上げます。どうぞこの悲惨な実情に御同情を賜わりまして、何らかの方法によりすみやかに解決していただきますように、切にお願い申し上げる次第でございます。
○田口委員長 山田屋商店無線部長高原徹君。
○高原参考人 山田屋の高原でございます。私がお手元に差上げました船員の口述書を全部とりました関係上、事件の詳細を説明させていただきます。 第三十一山田丸及び第三十二山田丸は、昭和二十九年十一月四日午前八時四十分、長崎港を出港いたしまして漁場東支邦海に向いました。同月五日午後二時十分、農林漁区二七七区において第一回の投網操業開始、爾後三一九区、五二二区、五二三区、五三四区、五四五区、五五四区の各漁場において操業し、同月二十一日午後八時零分揚網投錨仮泊いたしました。仮泊の位置は東経百二十二度二十分、北緯二十八度三十分、農林漁区五五四区の右上と推定されます。 同月二十二日第三十一山田丸は午前五時四十七分抜錨完了、微速前進いたしまして、僚船の第三十二山田丸と接近操業準備中、同五時五十三分、突然怪船より曳光弾及び砲撃を受けました。当日の午前五時三十分現在の同位置における気象状態は、天候は半晴、雲、三分の一、風向、ゼロ、風力ゼロ、視界二、うねり、ゼロ、波浪ゼロ、気圧一千二十二ミリバールでございます。これはお手元にあります東根三郎の口述書にございます。 怪船は午前五時五十三分から約三十分間、前後三回にわたり猛烈なる銃砲撃を加えまして、あまりにも突然のできごとのため、ある者は沈着冷静に、ある者は周章狼狽しあるいは船室に待避し、あるいはその場に伏せ、各人各様の行動をなしましたが、これを総合しますと、攻撃の武器は、砲または機関砲及び機関銃でありまして、怪船の船型は四百トンより五百トン程度の駆潜艇型またはフリゲート艦らしく、その至近距離は百メートル前後、その攻撃は執拗をきわめました。しかして三度目の攻撃を終えました怪船は、沈没寸前にあります第三十二山田丸乗組員が海中に飛び込むのを知りつつ救助もせず、そのままいずれにか退去しましたが、その方向は必死の場合で目撃したる者がないようであります。 攻撃の開始より終了までの彼我の配置見取図はそこへ掲げてございますが、これは東根三郎及び高島岩雄船長の口述書のときに御説明いたしたいと思います。 攻撃による死傷者の明細は、第三十一山田丸は第一回目の銃砲撃により、当時船橋にありました漁労長東根三郎は右前腕紛砕複雑骨折、左上手盲貫銃創外重傷、第二回目の攻撃により吉田市次郎は右顔面及び左手背部に受傷、船長多田美幸は腹部裂傷により死亡、上田久雄は左下腿盲貫銃剣による重傷、第三回目の攻撃終了後井筒高義は頭部貫通銃創により死亡せることを発見しましたが、目撃者がございません。通信士大古貞水は海上保安部巡視船「あまくさ」へ収容後腰部を受傷していることを発見しましたが、負傷時は不明であります。第三十二山田丸は船長高島岩雄が第一回目の攻撃により顔面及び胸部並びに両足上腿部に受傷しました。両船の人員の損害は死者二名、重傷一名、負傷四名、計死傷者七名でございます。 第五十五山田丸は、第三十一、三十二山田丸の乗組員及び死者二名を救助収容後ただちに――別にお手元に差上げましたものに電報がつづってございますが、別紙のごとき通信を発し、午前八時零分南東に向け避行開始、同八時三十分水産庁監視船第十六大洋丸の指示により同船と会合すべく航走、同日午後四時零分同船と会合、さらに同船の指示に従いまして海上保安部巡視船「あまくさ」へ向く航行、二十三日午前四時零分同船と会合、全員「あまくさ」へ収容せられまして、翌二十四日午前九時三十分長崎港へ入港いたしました。 同船が射撃を受けました当時の詳細は状況は、東根三郎の口述書によって申し上げます。当日同船は作業のための抜錨完了が五時四十七分、同時に微連前進いたしまして、五時五十分第三十二山田丸に操業開始のため近接操業準備中、五時五十三分突然怪船より射撃せられたるも、第三十二山田丸の影になり怪船の船影を確認し得ず。これが銃砲撃を受けた当時の図面でございますが、三十一山田丸の船首及び三十二山田丸の船首の向いておった方向は逆で、高島岩雄の口述書にございます通り、操業開始のために両船は船尾を並べまして、三十二山田丸から三十一山田丸ヘワイヤーを渡そうとしておりました。そこへ突然午前五時五十三分、怪船の姿は見えませんが、この図の一の方向から、最初に約二十発ぐらいの曳光弾の射撃を受けまして、続いて砲撃を受けております。その第一回の砲撃を受けた時間は、十二、三分間連続射撃を受けております。十二、三分間連続射撃を受けましたあと、二、三分間時間がございまして、今度は突然反対舷の方から四、五分間の連続射撃を受けております。この射撃後、第三回目の射撃を受けるまでの間、約四、五分間時間があったものですから、船員はデッキへ出てみたところ約百九十メートルくらいの位置に怪船の形及び怪船に乗っておる人影も見ることができたそうでございます。それでまた全員船員室に退避いたしましたところ、第三回目の銃砲撃を受けました。第三回目の銃砲撃の時間は約四、五分間、距離は百五十メートル。第三回目の銃砲撃後、三十二山田丸が沈没に瀕しましたので、三十二山田丸の乗組員は全員デッキへ出て海へ飛び込もうとした場合にも、約百五十メートルのところに怪船を見ることができました。三十二山田丸の船員は、ただちに海へ飛び込んでおります。海へ飛び込むころの船の状態は、潮に流されまして、初めの状態とかわりまして、この図が第三回目の銃砲撃ごろの船の位置でございます。両船間の距離は約五十メートル。この位置で船員は海へ飛び込んだと推定されております。それから、海へ飛び込みました船員が、三十一山田丸の方へ向って泳いでいる間に、三十二山田丸はちょうど三十一山田丸と並んだ場所まで流れまして、この位置で沈没しております。それで、三十一山田丸の船員は三十二山田丸の船員を救助しておりましたので、怪船がどっちの方向に去ったか、はっきり見てないようでございます。ただ一人西の方へ去ったと口述書に述べたのがおりますが、これは重傷を受けております東根漁掛長の口述でありまして、どうもはっきりしないと思われる点がございます。 三十一山田丸は、全員を救助しまして、船首の方向に船影が見えたために、その方へ向って約十五分くらい走っております。約十五分くらいで三十一山田丸も浸水がはなはだしくなり、ついにエンジンがつかりまして、機関は自然停止いたしました。自然停止いたしました時分、ちょうど五十五山田丸がこれを発見しまして、三十一山田丸へ横づけをしてくれました。そのために三十一山田丸の船員は全員救助されました。 以上が、三十一、三十二山田丸が撃沈されました詳細でございます。なお各人の口述書はあとの方へつづってございますので、参考までにごらん願いたいと思います。
○田口委員長 政府並びに参考人に対し御質疑があれば、これを許します。
○白浜委員 この事件は、かつて見ない非常に深刻な、漁業者として、また国民としてのわれわれに対する打撃であったと思うのでございまして、関係者の皆様方に対して、まことにわれわれ国会としても議員としても申訳ないと思うわけでございます。参考人に、どなたでもけっこうでございますが、お伺いしますが、この視界二ということは、どういうふうな明るさであるのか。それと非常に至近な距離にあったのでございますが、これがこの書類で見ますというと、国府の艦艇ではなかったかというふうなことが書かれてあるのでございますが、何かこれについてはっきりとお認めになった点があるかどうか、この点お話願いたいと思います。
○高原参考人 お答えいたします。視界二と申しますのは、これは気象観測上の階級でございまして、大体五百メートル程度見えるというのが、視界二でございます。 それから次にお尋ねになりました国民政府の船であると推定した根拠は、大陳島には国民政府の海軍の基地がございます。それから十一月二十三日付INS台北特電によりますと、国府当局が二十二日大陳島付近で中共の護送船団と見誤り、日本漁船二隻を撃沈せる責任は国府艦艇にありと発表したという新聞記事がございました。
○白浜委員 視界二の距離で非常にあわてておると申しますか、そういうような際であるので、船型なり何なりの認識はできたとしましても、はっきりした船員といいますか、先方の乗組員の認識が非常に不確かだと思うのでございますが、そういうふうな点について、何か保安庁の船か何かなりで、この点はっきりした証拠と申しますか、そういうふうなものがあるかどうか、ひとつ海上保安庁の方からお答えを願いたいと思います。
○山口説明員 ただいま参考人の方から言われた程度でありまして、想像ではただいまのところ国府の船じゃないかという疑問を持っておりますけれども、的確にこれを言い切るだけのデータは目下調査中で、まだつかんでおりません。当時の状況が、最初一回、二回あたりはかなり暗くて三回目のときに若干明るくなって見えたというような話でございまして、残念ながらきめ手を一応持っておりません。
○鈴木(善)委員 先ほどの参考人のお話の中に、この事件がありましたあとでありますが、二十五日の午前十一時に第十五山田丸が、国府の船でありますか、あるいはどこの船であるかわかりませんが、この海域は戦闘海域であって、非常に危険な区域である。今後被弾等の責任は一切負わない。このことを他の日本漁船にも通告せよという警告を受けたということも申されておりますし、なお今後この海域で操業する場合には、山田丸は没収をするという通告も受けておる、こういうお話があったのでありますが、この不祥事件が起りました二十二日以前に、他の漁船でこのような警告を受けた船がありましたかどうか、またそういう船から、山田丸なり他の漁船がそういう警告があったという連絡を受けたかどうか、そのことを参考人からお伺いいたしたいと思うのであります。 もう一点、水産庁あるいは海上保安庁どちらでもよろしいのでありますが、このような通告をそれ以前に政府機関が受けておるかどうか、また外務省等は吉沢大使を通じて、正式にこのような戦闘区域に日本漁船が入って操業することについての事前の警告が、外務省に連絡があったかどうか、またそのことを日本漁船に周知徹底せしむるの措置をとったかどうか、これらの点を参考人及び政府関係者にお尋ねしたいと思います。
○高原参考人 当方面海域における従来までの警告等は再三ございまして、当方面で撃沈されたというのは、ずいぶん前に二件ほど事故がございました。その後事故がございませんで、それまでには国府の関係によって当海域に立ち入るなという通告を受けた船はございました。ごさいましたが、立ち入ってはいけないという通告だけでございまして、撃沈を受けるとか没収をされたということはございませんし、また政府当局から当方面に行ってはいけないというはっきりした通告を受けたことはございません。
○山口説明員 今回のような事件が起る前に、当該水域に対してどのような方針であったかという点につきまして海上保安庁としてお答えいたします。すでにことしの五月ごろから、外電等によりますと、上海南方それから三門湾付近でありますか、その辺で中共と国民政府との間に紛争が起きておるというようなことを情報としてキャッチしておりましたので、これらの関係海域では厳重な警戒をしてくれということが最初に出ておるわけであります。そのような言い方でありましたが、五月、それから六月にもそれが出ております。六月のごときは、その主管の本部長、これは門司でございますが、これから監視船、巡視船その他へも連絡をいたした警戒電報の要旨は、「大陳島をめぐり、国府中共の紛争が伝えられるので下記事項に留意せよ。1、ことさらに国府艦艇を刺激する行動をとらぬこと。2、万一国府艦艇より退去を要請されたときは作戦の区域等について尋ねると共に一応区域外に退去すること。」というような警戒的な情報は出しております。その後もそういった程度で警戒をいたしております。ことに今回のような事件でございましたので――むろんそれからあとにつきましては非常にセンセーションを起しておるのでありますが、ちょうど二十二日の事件のありました際に、これはかねて設けてある門司における海上保安庁並びに水産庁共同の対策本部、それと民間の業者の方の対策本部が合同会議をやっておる席上にこの電報が入って、以後さらにひとつ自粛的にやろうではないかという話合いもこのときはあったような次第であります。
○鈴木(善)委員 今山口長官からお話がありましたような、海上保安庁としてとられた警戒についての日本漁船に対する注意と申しますか、その御措置をとりましたことは、海上保安庁が当該水域におけるそういう事態を、客観的な諸情勢を勘案してお出しになったものであるか、ないしは正規の外交機関を通じて国府から日本側に申し入れられたことによってそのような御措置をとったのであるか、その点を御説明願いたい。
○中川説明員 台湾海峡、東支那海の水面におきます日本漁船に対する国民政府側の臨検措置法は従来もしばしばあったのであります。その法律的根拠等については必ずしも明確でなかったのであります。一昨年の春ごろより国民政府は、同方面の広い水域を防衛水域と称しまして、ここに日本の漁船が入ることは遠慮してもらいたいというようなことを通達して来たのであります。こういう公海の広い水域を一国がかってに制限するということは、公海自由の原則に反することで、日本側は主義上これを拒否して来ておるのであります。山口長官の言われましたことしの春ごろより、大陳島付近において日本の漁船が国府側の軍艦に臨検されるという事件が二、三発生いたしました。そのときには、国民政府側は防衛水域ということよりもむしろ大陳島の付近は臨戦地域である、ここに立ち入ることは危険であるから日本の漁船は立ち入らないようにしてもらいたいということを口頭をもって警告したのであります。それは台湾の国民政府の外交部から台北にあります日本の大使館に対して、口頭をもってそういう連絡がありました。その都度この点は国内的に連絡いたしまして、ただいまの海上保安庁からの警告と申しますかあるいは勧告と申しますか、そういう措置になったのであります。最近におきましては、十月の初めにたしか第十新生丸という船が、やはり大陳島の近海で国民政府の軍艦に臨検を受けまして、その際にやはり同様の警告が国民政府の外交部から芳沢大使あてに口頭をもってあったのであります。その警告は十月の二十日にあったのでありますが、十月二十日にありましたのが一番最近の外交部を通じての先方からの申入れであります。
○鈴木(善)委員 ただいまのアジア局長、海上保安庁長官等の御説明によりますと、政府機関としては、芳沢大使からの連絡によって遺憾のないように日本漁船にそれぞれその機関を通じて周知徹底せしむるような措置をとった、こういうことでありますが、この被害をこうむりました山田丸等は、その政府機関の注意、警告を十分事前に承知してこのような臨戦海域で操業なさったのであるか、あるいはその政府からの注意、警告が十分周知徹底しなかったためにそのような不祥事態が起ったのであるか、その点を参考人からお伺いしたいと思います。
○高原参考人 ただいまアジア局長から申されました最近の警告というようなものは、当日までには私らの方には到着しておりません。それが到着しましたのは、ちょうど事件が発生しまして下関において防衛委員会が開かれております席上へ到着したということでございまして、私らの手元へ到着いたしましたのは翌二十三日でございます。
○鈴木(善)委員 ただいまの山口長官と参考人とのお話の間には時間的に食い違いがあるようであります。何か外務省あるいは海上保安庁本部から、各管区を通じそれぞれ第一線の漁船にそれを伝達するまでに時間的なずれがあったのではないかというような疑問を覚えるのでありますが、その点を海上保安庁の方ではどういうぐあいに見ておりますか。
○清井政府委員 私からちょっとお答えいたします。事件の、危険であるということについての通達の問題でございます。これは参考人の方の御意見は御意見で十分わかるのでございますが、むしろ私どもがとりました措置について時間的に御説明申し上げたいと思います。誤解のないようにいたしておきますから御了承おきを願いたいと思うのでございます。 実はこの問題につきましては、すでに海上保安庁長官から御説明の点で触れておるのでございますが、去る十月の二十六日に、水産庁といたしましては芳沢大使からの連絡を外務省との連絡において承知をいたしたのであります。そこでただちに同日日本遠洋底引網漁業協会に電報を送って連絡をいたしました。それからただちに係官の来京を依頼いたしまして、十月二十八日に、氏名もわかっておりますが係官が来られまして、それでその趣旨をさらに私は口頭で申し渡したのでございます。従来は、御承知の通りこれはただいま御説明がありましたように、公海上の関係で正式に政府が認めるというわけに行きませんので、大体口頭によつて業界に伝達をいたし、あるいは打合会において連絡をするという方法をとって参っておるのであります。さらに今回の問題につきましては、十月二十八日に連絡を実はいたしたのでございます。ところがその後、たびたびの口頭連絡でもあり、十分趣旨はわかっているけれども、この際ひとつ文書でもつて連絡してくれないか、たまたま以西の協会の代表の方が他の用務のために上京いたしておりました、その方々にお話いたしましたところが、そういう申入れがあったのであります。それでは、今までも口頭で十分連絡はしておるけれども、せっかくのそういう申入れであるならば文書をもって連絡いたすということにいたしました。十一月八日に業者の代表者が来られてそういう話があったので、さっそく起案いたしまして、十一月九日に日本遠洋底引網漁業協会あてに文書をもって通知をいたしてあるのであります。それと同時に関係の官庁にもそれぞれ連絡をいたしてあります。そういうことでありまして、私どもといたしましては従来たびたび連絡してあるのでありますが、さらに念を入れ、協会も文書でくれということでありましたから、十一月九日に文書で連絡しています。こういう経緯になっておりますから、経緯だけ御了承を願いたいと思います。
○鈴木(善)委員 水産庁が底引協会等に対して、事前に再三にわたり緊密な連絡をとったことはただいまの長官の御説明で了承いたしたのであります。海上保安庁なりあるいは水産庁の監視船なりが、現地の出漁しておる漁船にそのような警告を周知徹底せしむるような御措置を他にとっておると思うのでありますが、それについての経過を御説明願いたい。
○山口説明員 今お話の台湾関係の、向うで言うところの防衛水域関係についての警戒電報というものは、私の方ではむろん出先の巡視船に知らせて、巡視船からそこに出漁しておられる日本の漁船向けに無電で放送を再々送っておるのであります。ただごく最近の芳沢大使云々のその件は、私の方では若干遅れております。そのデータを送ることが間に合わなかったようでありまして、事前にそれによっての伝達というものはちょっと遅れておるのでありますが、この危険海域についてのことは、ここにいろいろ過去のデータがありますが、再々警戒という点では放送を繰返しております。ただ、たくさん船が出ておるのでありますから、あるいはそれが聞き取らなかったりすることがあるかもしれませんが、数次にわたってこの春以来やっておるわけであります。
○鈴木(善)委員 水産庁長官にお尋ねしたいのでありますが、長官のところから日本底引網協会に対する連絡には遺憾がないように思うのでありますが、日本底引網協会からその所属組合員である各漁船に対する連絡は遺憾のないようにとられておるかどうか。その点は、長官の方で御承知なさっておりますか。
○清井政府委員 その点はただいま私はっきりいたしておりませんので、お答えいたしかねるのでありますが、私どもといたしましては、連絡がありましてすぐ通知をいたしておったのであります。これは本部に通知をいたしておったのでありますが、本部からどういうような通達がなされておったかということは、ここで私資料を持っておりません。ただこの問題は、ただいまもたびたび申し上げた通り、従来からもしばしば警告を発しておるところであり、また私の方の水産庁の監視船も、保安庁の巡視船とともにその事故といいますか、国府艦船による臨検等がありました都度、危険海域であるという旨の連絡は、各漁船に電報等でいたしておることはたびたびあったのであります。ただ今回の問題につきましては今御説明した通りでございますが、従来ではそのように口頭連絡なりあるいは監視船、巡視船による漁船に対する直接伝達等の措置は講じて参っております。
○鈴木(善)委員 外務省当局にお尋ねしたいと思うのでありますが、さきに非常に広い海域にわたって国府の防衛海域であるという通告を受けたが、これについては公海自由の原則を堅持するわが国としては了承しかねるというような立場から、警戒を厳にしながら操業は依然として続けるという御方針をとったということは、先ほどの中川アジア局長のお話でわかったわけでありますが、次に十月二十日でありますか二十三日でありますか、重ねて外交部から芳沢大使を通じて、大陳島付近の海域は戦闘海域である、臨戦海域であるから日本漁船の立入りはきわめて危険である、責任は負えないという通告を受けたというお話がありまして、これはきわめて具体的な戦闘地域と申しますか、臨戦地域といいますか、それを限っての通告だと、こうわれわれ考えられるのでありますが、そのような臨戦海域の通告を受けて、そこに立ち入って操業した場合の被害は、これは国際慣例に照して、責任はその場合でも損害を与えた国にあるのであるか、あるいは臨戦海域を通告され、責任は負わないという通告を受けたのに入った方の側が泣寝入りになるようなことになっているのであるか、その点を外務省から御見解を伺いたいと思います。
○中川説明員 国民政府側から大陳島付近が臨戦地域で危険であるから入らないでもらいたいという口頭の連絡がありましたのは、先ほども申し上げましたが、十月二十日が初めてでないのでありまして、本年の春ごろより同地域において日本の漁船が臨検があるたびごとに口頭の連絡があったのであります。しかしその際に責任は負わないというふうな連絡はないのでありまして、入らないようにしてもらいたいという連絡でございます。従って、そこへ入った場合にどういう事件が起きた、その際に国民政府側が責任があるかないかというような点についてまでの通達は受けていないのであります。 なお純法律論といたしまして、公海において戦争行為が行われている際に、そこにおいて中立国の船が被害を受けたというような場合に、臨戦区域であるというような宣言をするとか、あるいは通達をする、あるいはそこに入った場合に責任を負わないというようなことをあらかじめ公示しているような場合に、はたして当該国に責任がないかということになりますと、純法律論としては、そういう宣言によって責任は免れることはできないというのが通説であるようであります。これは従来の戦争の際の例によりまして、たとえば第一次世界大戦におきまして、ドイツが大西洋の相当広い区域を危険区域、防衛区域といいますか、宣言いたしまして、そこに入る中立国の商船は無警告で撃沈を受けることがある、その場合には責任を負わないという宣言をした例があるのであります。当時の国際法の解釈といたしましては、それによってドイツ政府は責任を免除されるものではないというのが一般の解釈であったのであります。従って純法律論としては、やはり責任問題は依然として残るというようにわれわれは一応解釈いたしております。
○鈴木(善)委員 ただいまの中川アジア局長の御説明で、日本政府の今回の不祥事件、日本漁船の被害に対する損害賠償をあくまで要求し得るという見解が明確になったのでありますが、私どももこのことにつきましては、先般の英旅客機が中共の戦闘機によって撃墜されて、それに対して中共も損害賠償を支払うという態度を明らかにいたしておることによりましても、たといこの船が国府であろうとも、当然ただいまの日本政府の要求に対しては、これは賠償の責めを負うべきである。これはあくまでわれわれは要求しなければならない、こういう立場をとるものでありますが、問題は先ほど来参考人からも話があり、また海上保安庁の長官からもお話があったのでありますが、その砲撃を加えた怪船がはっきり国府の艦艇であったというそのことを、推定でなく具体的に立証する何らかの明確な証拠を政府機関も、関係者も今後せっかく努力を払われてつかむことが前提になる、こう思うのであります。このことについて政府の関係機関ではどのような努力を払っておられるか、そのことを伺いたいと思うのであります。
○中川説明員 今回の事件が発生いたしますと、すぐ攻撃を加えましたいわゆる怪船が、はたして国民政府の軍艦であったか、あるいはその他の国または政権に属する軍艦であったかということを確かめることが先決であると考えましたので、同日さっそく台湾の日本大使館に電報いたしまして、国民政府当局に事件の概要を告げるとともに、攻撃を加えた船が国民政府の軍艦でなかったかどうかという点について照会させたのであります。芳沢大使は、事件の発生しました日の夕方に先方に連絡いたしまして、その申入れをしたのであります。国民政府の外交部は、本件は、軍の関係事項であるので、軍当局と連絡してから調査の結果をお答えいたしましようという返事であったのであります。なお、その際芳沢大使は、ちょうどその日の台北で出ております夕刊に、その事件が発生しましたと大体同じ時刻に、約十カイリほど距離は違うようでありますが、大体同じ水域におきまして、国民政府の軍艦が中共の船団を攻撃いたしまして、そのうちの二隻を撃沈したという発表をしておる事実を指摘したのであります。国民政府外交部当局は、調査の結果を回答すると約束したのでありますが、今日に至るまでまだその回答には接していないのであります。われわれとしては、できるだけ早く国民政府側からの何らかの意思表示があることを期待しておるのでありますが、今後ともこの点につきましてはなお督促の上、一日も早く確かめる措置をとりたい、かように考えております。
○鈴木(善)委員 大体の経過と政府のとっておられます措置につきまして了承いたしたわけでありますが、次にこの被害を受けられた船の代船建造なり、あるいは死亡された船員の遺族の救済なり、乗組員等の生活の今後の措置の問題につきまして参考人にお伺いしたいと思うのでありますが、この第三十一、第三十二山田丸は特殊保険なり、給与保険なり、そのような保険等にはお入りになっておりますかどうか、その点をまずお伺いしたいと思います。
○松尾参考人 保険には入っております。
○鈴木(善)委員 その保険給付によりまして、代船建造等の資金は、その保険金と合して大体代船建造ができるようになっておりますか。また何らか農林漁業金融公庫なりその他から政府のごあっせんを御希望なさっておりますかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
○松尾参考人 保険金は代船建造の約三分の一程度と存じております。乗組船員の生活の保障につきましても、できるだけの方法は講じたいと考えておるのでございますが、個人の力には限度もございます。と申しましても、ただちに代船でも建造いたしまして、生存乗組員の生活の保障もいたしたいと考える次第でございます。従いまして代船建造に要します資金を、政府のごあつせんによりまして、お力添えを得ますならば非常に幸いといたす次第であります。ぜひお願いしたい、こういうふうに考えております。
○鈴木(善)委員 漁船の代船建造等の問題につきましては、清井水産庁長官もいろいろご心配なさっておる思うのでありますが、当委員会におきましても、本事件がきわめてお気の毒な事態でございますので、政府に協力しましてすみやかに代船の建造その他賠償の要求等の善後措置ができるように、委員長を中心として進めたい、こう思いますので、私はそのことを希望しまして私の質疑を終ります。
○辻(文)委員 鈴木委員から詳細に御質問があって、大体のことが明らかになったようでありますし、また御親切なその後の考慮までお払いいただいたようでありますけれども、私ちよつとおりませんでしたから、ダブるかもしれませんが、参考人にお聞きしたいことは、その日の天候とか、攻撃をされたときどれくらいの距離でやられたのか、大体図解でわかるようですが、もう一度だけお知らせをお願いたい。
○高原参考人 同日の天候は、お手元に差し上げましたものに書いております通りで、東根漁労長の口述書にもございますし、てんまつ書の方にもございますが、同日の天候は半晴、雲量三分の一、風向ゼロ、風力ゼロ、視界二、うねりゼロ、波浪ゼロ、気圧は千二十二ミリバール。襲撃された当時の距離は、第一回の襲撃のときは相手が見えませんので不明であります。第二回目の攻撃は、百五十メートルのところに見たというのがただ一人ございますが、ほかに見た者がおりませんので、私の方では不明としております。第二回目の攻撃後、第三回目の攻撃までの間にこれを見たものは多数おりますが、そのときの距離は百五十メートル、相手の人影が見える程度の明るさでございます。第三回目の放撃は百五十メートルの距離から受けております。第三回目の攻撃後、相手の船形を見たのは、距離が百メートルということになっております。
○辻(文)委員 これを拝見すればもうお尋ねすることがないのですが、そういう場合に、この図解を見ますと、あなた方が乗っていらっしゃったのには、ああいう日の丸のしるしがついておったんでしょうが、相手方から攻撃したのが、第一回目はわからなかった、第二回、第三回は天候も割合に静かで、どんな船かわからぬということはないと私どもが現場にいなくて考えると考えられますが、そんな場合に百五十メートルぐらいの距離になっていて、国府のものであったか中共のものであったかというくらいの何かしるしか何かがおわかりになりませんでしたか。
○大古参考人 私当時通信士として乗船しておったのでありますが、全船員とも砲撃がはげしく船室より上部にからだを出すことはあまりにも恐怖に襲われた関係上出し得なかったのであります。それで、少しの時間の間砲撃がやみまして、その間を見はからって、単に少し目撃してまた待避するような状態で、はっきりした状況はわからないのであります。それで私たちが目下判断するところによりますと、大体国府軍の軍艦ではないかと思われる点があるのであります。それは海上保安庁、水産庁監視船、また当該漁場に出漁中の漁船の方位測定によって、中共船は毎日方探測定し、一個の監視船にそれを集結して、三角方位によって中共船の位置は大体出しております。当時海上保安庁巡視船はほとんど済州島近海から北部におられたようであります。その付近に大体中共船が多かった関係上、まとめた報告は毎日十四時〇三分から送っていただいております。その報告によりますと、その当時漁区ははっきり覚えておりませんですけれども、農林漁区の一六〇区、及び三三二区付近に中共船が多かったようであります。五五四区付近の状況は、その当時全然わかりません。それで私たちの会社の各船間におきましても、中共船のキャッチにはいつも当っておりますけれども、現在五五四区付近には方位測定できないのであります。これはあまりにも中共船が遠距離にある関係であると思います。 それからもう一つは、砲撃を受けました当時、こちらの情報によりますと、中共船護送船団十数隻付近航行中、それを国府艦艇が二隻撃沈した、こういう報道でありますけれども、私どもとしましては、撃沈され、五十五山田に乗船して救助されて天草に向ったのでありますけれども、その間日本漁船は多数見受けられました。但し日本漁船が中共船を見た場合は、ただちに怪船の報告は今までしているのであります。但しそのときは全然そういう連絡もありませんでした。
○松尾参考人 要するに飛弾が多いために船員はすべて待避しておったわけでございまして、すでに沈没に瀕して海中に飛び込み、なおまた片船の船員はそれを救助するにやっきとなっておりますし、そばを振り向くひまも何にもなかったらしゆうございます。その間に敵船は姿を消したので、それもどこに行ったか、どの方向に行ったかさえも判明していないのでございます。
○辻(文)委員 その場合、たとえば李ラインなどで逮捕されておった当時、一応停船をしろとか何とかいう、そういう向うからの指示はなかったわけですね。
○高原参考人 砲撃を受けました初めは暗夜でございまして、相手は無燈火でございますために、もちろん向うを船の側から発見した者はおりませんし、またそういう信号を受けたという口述をした船員は一人もございません。
○辻(文)委員 政府の方にお尋ねしますが、外務省は総括的になりますけれども、保安庁あるいは水産庁の角度から申し上げるのですが、今のような参考人のお話ですが、国府の船だということは、今参考人がお話になったようなことが基礎になって、大体交渉をしておられますか。あるいはそのほかにも何らかのあなた方の立場から、砲撃をした船は確かに国府のものであるという見当がつくような調査がなされておりますか。
○中川説明員 政府としまして、ただいま参考人の方々が言われましたようないろいろのその当時の模様、それ以上に何も資料はないのでございます。しかしここにわれわれが一つ注意しておりますのは、同日ちょうど同時刻に、大体同じ海域におきまして海戦が行われて、中共の船二隻撃沈したという先方の発表、これは先方は確かと思って発表したに違いないと思いますので、それが発生しました時日と非常によく符合しておりますので、あるいは国府の軍艦が中共の船と間違えて日本漁船を撃沈したのではなかろうか、これは推測でございますが、一応推測するのも無理ではないのではないかというふうには考えますけれども、しかしこれは非常に重大なことでありますので、先方のはっきりした調査の結果を待ってからこちらとしても措置をとりたい、かように考えて先方に照会したわけでございます。何とか近いうちに先方からの報告がありまして、ある程度の事態が判明するのではなかろうか、かように考えております。
○辻(文)委員 そうすると、国府の方で、あなた方の交渉の過程においては、自分たちの方の船がやったのだという言明は、今のお話では、していないわけですね。
○中川説明員 今までのところは何ら正式な回答がないのであります。しかしながら、ただいま参考人の方々が申されましたようなこちら側で見ました状況というようなものは、それぞれ参考資料としてそのあとから追加的に先方に渡しております。
○辻(文)委員 今私がそんなことを言うとおかしいが、たとえば鈴木委員がおっしゃった通りに、公海についてはその操業は自由だという本質的な建前を日本の方では立てている。そういう場合に、操業に出航して行って、そうして何をやるかということが一つと、それから長官に申し上げることですが、私も常に言つているけれども、沿海漁業とか、あるいは領海でもだんだん魚族がいなくなって、ほんとうに沿海漁業というものでは飯が食えなくなるという意味において、あるいは少々の危険とか、あるいは少々の線の逸脱というようなことをやっても、実際の生活を立てるためにみな出かけるんじゃないか、これが私はほんとうの現実だと思う。あなた方の方からは、こういう危険があるから行ってはいかぬとかなんとかいうことは言ってありましようが、その他にもそういう場合に、現実としては食生活の上から出かけて行くということに対しての何らかの援護、守りというようなことは平素おやりになっておりませんか。たとえばそういう船が出ると、その出た近所ではやはりこちらの方でも注意をするばかりでなしに、何かそういうときには早く逃げるとか、何かするようなことを知らせるとか、誘導するとかいうような構えばどうなっておるか、ちよつとお教えいただきたいと思います。
○清井政府委員 その点は先ほども御説明申し上げた点に触れていますが、海上保安庁の船と協力いたしまして、私どもの船も現場の方に相当出ているのであります。特に公海自由という原則がございますから、私どもといたしましては、国府が言っております防衛海域というものを認めておりません。しかし現実に戦闘行為が行われる危険がありますから、そこへ入るのは危険であるぞということは連絡いたしておるのであります。従って漁業をしちやいかぬぞということは言ってないのであります。そこが非常にむずかしいところでありますけれども、現実のわれわれの建前といたしましてはそうせざるを得ないのであります。そういうことでずっと来ておるのであります。そこで私どもの方の監視船もあそこら辺が危険だということは重々承知しておりますから、その方面に重点的に動いております。現実にそういう操業中の漁船に、警告したり、たまたまこういう船が臨検を受け、立ちのきを命ぜられたという事実を連絡する、こういうことをずっと繰返して来ております。また海上保安庁の船も、そういう事実がありましたときには各漁船に連絡をしておるということで参っております。われわれがしょつちゆう警戒を厳重にして、付近を重点的に警戒いたしておるということは事実でありまして、ただいま言ったように、連絡を緊密にするということを積極的にいたしておるわけであります。
○辻(文)委員 実際そこまで行けば、予算がないので監視船がつくれないから行き届かないということになるかもしれませんけれども、国民しかも漁業者から考えると、そういうときにその近所にでもいて、もっと早く知らしてくれたらというような考え方も起ると思います。 参考人にお聞きしますが、そういう場合に監視船とかあるいは保安庁の船とかいうものはいなかったわけですね。それもわからなかったわけですね。
○高原参考人 各巡視船、監視船から、毎日この船はどこにおるぞという報告を受けておるので、全部どこにおるということはわかっております。それから各漁船がどこで操業しているかということも、巡視船、監視船には毎日報告しますので、わかっておるはずであります。
○辻(文)委員 その報告を受ける場合に――そのときただちにということではないかもしれないけれども、その前に、最も近い時間の間に、あぶないからとか、こんな船が来るぞとか、そういう御注意は無電連絡か何かでなかったのですか。
○高原参考人 もちろん当日は朝早かったのでありますが、前日あたりにそういう警告を受けた事実はございませんし、また当時五五四区には私の方の船が七組、大洋漁業さんの船が十四組というふうに多数の船が操業しておりまして、そういう危険を各船が感知しておりましたならば、もっと早く逆避しておったはずであります。もちろん三十マイル四方くらいに四十数隻の漁船が操業しておったということは、全船舶が危険を感じていなかったということになります。
○辻(文)委員 参考人のお話と当局のお話とを並行して考えますと、どうも少々政府側にも手落ちがあったんじゃないかという気もいたします。あなた方は最善を尽しておられるでしょうけれども、この場合にこんなまれなる現実が浮び上ったことについて、私の感じから申し上げると、やはり手落ちがなかったとは言えない。万全ではないというふうに考えられます。従って鈴木委員がおっしゃったように、今吉沢大使を通じて交渉がなされておるそうでございますが、たとえば、向うがおれの方の船でなかったのだ、こう言えば何にも話にならぬ。もし認めたときたどういう賠償をこちらからとるか。こういう段階になります。認めたとしても、早急の解決がつくかどうかという考え方になります。幸い国府でありますから――次官も見えておりますが、次官は私どもの考えと一応違う。私は近い方ですから、よく性格も存じ上げておるので、違うと思いますが、岡崎大臣はどうも中共とか、ソ連とかいうと、初めからお話にならぬ、こういうことですけれども、国府の方は大臣でもやはり近い方でありますから、やりよいだろうと思います。これは率直な話です。ですからそういうことに対して、今度こそ力を入れて賠償をとるようにしていただきたい。同時に秋山政務次官には外務省の次官になっていただいておるので、私どもの県などにとっては――それを私的に使うことは私はしたくないと思いますが、よけいに今のようなことの詳細は御理解があられると思いますので、ぜひこのことについては大臣のしりをたたき、また局長以下皆様を鞭撻して、ぜひ向うにどこの所属の船であるかということもはっきりさせて、一日も早くこのことを解決をして、でき得るだけ多額の賠償をとっていただくようにお願いしたい。但しできるだけお願いするといっても、ちゃんと算定がございますので、水増しのできないことはもちろん、外交のことでありますから、信用上の問題もありますのでなし得ませんが、なし得る範囲で、当然とるべき賠償にひとつお骨折り願いたいと存じます。 なお重ねて関連的にお願いしてみたいのは、先ほど鈴木委員にもちょっと言っていただいたのでありますけれども、ビキニのような問題でも交渉がまだ終結を見ない段階において、いわゆる遭難者に対しては四百万円の金を日本政府が融通しておることはすでに皆様御承知の通りであります。今参考人は代船建造についても保険に入っておる、三分の一はそれでやれるだろうとおっしゃるし、なお二名の死者あるいは五名の重傷者に対しては、でき得るだけのことは自分らでもやるとおっしゃっておられますけれども、そもそもこの撃沈されたというできごとを、今までの各委員からの御質問その他を総合して考えますと、ほうっておけないものだ、これはやはり内外ともに不注意であった。操業に行った皆様が一番悪かったのだということは言えないと思います。いろいろ検討してみて、どちらから考えても、今私がお聞きした範囲においては、どうしても政府にも先ほど申したように手落ちがあったし、また向うさんも、国府であろうとも、中共であろうとも、むちやなことをやっておる。さように思われますので、その間いかに皆様が御得心が行くことができないといっても、お慰めをするか、あるいは償いをするということは当然だと思います。こういう意味から申し上げて、これは水産庁長官にひとつ伺いたいのであります。ほんとうは農林大臣が来ておられるとなおよいのでありましようが、おいででないので、水産庁長官のお考え、御決意を承りたい。やはりこの際さような、たとえばとれるかとれぬかわからぬ、あるいはとれてもどれくらいかわからぬ、いつとれるかもわからないという現実に立って、私が今申し上げたような、いわゆる被害者に対する何らかの補償の措置、慰めの措置をおとりになるお考えがあるか、ちよつとお聞かせ願いたい。
○秋山政府委員 今回の三十一、三十二山田丸の不祥事につきましては、かつて例のないとまで考えられる問題でございました。三、四年前であったかと思いますが、東支那海において銃撃を受けて撃沈された船もございます。しかしこれは相手がはっきりしておるのでございます。今回のごとくまったく国籍不明といったような、やみ討ちを食ったということは、前例がほとんどないことでございまして、被害を受けた方々に対してはまことに御同情にたえないのでありまして、私どもも同じ郷党の者として深甚の弔意を表しておる次第でございます。ただいま辻委員から御要請があったのでございますが、今のところはっきりとその加害者がわかりません。当方においては多分これじやないかと思っておりましても、相手方がまだはっきりと返事を――はっきりも何も、返事をして参りません以上、これと交渉する段階には至っておりませんけれども、御承知の通り国民政府とは日本は国交を開いております。中共その他と違いまして直接交渉のできる立場にございますし、またかなり友好的な関係もございますので、この問題は、私はそう日にちをかけないではっきり出て来るのではないかと考えております。そういう際におきまして、できるだけ友好的な手段をもちまして、被害をこうむられた船主の方あるいは船員の方々のできるだけ御納得の行くような方法に、われわれとしても極力努力をいたしたい、かように考えて、出先機関を通じまたその他と連絡をとりまして、さような目標に進んでおりますので、いましばらくお待ちをいただきたいと思います。
○辻(文)委員 秋山次官のお言葉非常に心強く思いますけれども、同時に今日まで私二年間くらい秋山次官と、次官におなりにならない前、いろいろ郷党の仕事をやっておりますときに、ほとんど実現させて御協力願っておりますので、今のお言葉は私は心から信頼いたします。どうかさようにお運び願いたいと存じます。ただ水産庁長官の方はどういうふうにお考えか。今のような交渉過程ですから、その間でもしも遅れるというようなことが万一あった場合には、先ほど申し上げましたような国内の操作で、特別の処置をおやりになるお考えか、ひとつ聞かせていただきたい。
○清井政府委員 今の外務政務次官からのお答えの中にも含まれておると思うのでありますが、私どもといたしましても、この実現はきわめて重大視いたしておるのでございます。そこで外務次官もただいま必要な措置をとると申しておりますが、なかなか今すぐという見通しは立つておりません。もちろんこれは損害賠償を要求いたしまして、適切なる補償をとることが第一だと思っておりますが、ただその前に、あるいはそれと関連を持って、先ほども本人の方から代船建造の融資あるいは留守家族の問題についての御要望があったのでありますが、私どもといたしましても、この事態の特殊性を十分認識いたしておるのであります。何とか努力をいたしてみたいと思いますけれども、私今ここですぐ具体的に申し上げる段階ではございません。ただ事態がきわめて特殊な事態でありますので、関係方面と相談いたしまして、できるだけ御要望に沿うように十分検討いたして行きたい、こう思います。 それからちょっとつけ加えさせていただきたいと思いますが、先ほど少し手落ちがあったのではないかとおしかりの言葉をいただいたのでありますが、これは先ほど来私が御説明申し上げておりますように、現実に戦闘行為を予知して連絡するということは限度がありますので、なかなかうまく行かないのでありますが、現実にわれわれが努力できる限度においてできるだけのことは善処いたしたいと存じております。
○辻(文)委員 長官のお話もよくわかりましたので、必ずほったらかしておかないということだけは御承知いただいたことと思いますから、どうか長官の方でも、私がただいままで希望申し上げたことをひとつお考え願って、適切な処置をおとりくださるようにお願いいたしますと同時に、秋山次官には、場合によっては閣議にでも持ち出していただき、そうしてひとつお助け願うようにお願いいたしまして質問を終ります。
○田口委員長 委員長からも参考人に承りたいと思いますが、非常にとっさの場合で、しかもさんたんたる状況でございますが、一面多数の船員もおったことでございますから、先ほどの参考人の話を承りますと、第三回の砲撃を受けた際は大体日も明けておった、こういうような実情からいたしましてだれか砲撃した船の船型を見られた方はございませんか、その点をお伺いいたしたいと思います。
○高原参考人 船型の点につきましては、一昨日でしたか海上保安庁に参りました際に、大古通信士が海上保安庁から写真を出して見せていただいた際に、大体これではないかと思われる船型でございましたし、それからまた長崎の方に連絡いたしまして、船を見たという船員に全部船型を書いて出してもらうように連絡いたしております。それでこれが参りますと、こうだ、大体この型だという船型がはっきりいたすと思います。
○田口委員長 その船型について海上保安庁の写真と比べて、この船だということはどうして認定されたのでありますか。
○高原参考人 それは午前に大古通信士が、大体自分が見たという船型を白紙に書きまして、また夕方参りました節、先方にあります写真を見せていただきました。そうして大体これに似ておったという写真を見つけ出しまして、大古通信士が書きました見取図とその写真とが非常によく一致しております。それからその船のトン数――見たのよりも実際のトン数は少し少かったのでありますが、今までこういう事件がありました際、船側の人が言うトン数というのも、普通よりも非常に大きく見ておりますので、大体それではないかと推定されるのであります。
○田口委員長 大古通信士が船型を書いたのは午前中でございますね。それから海上保安庁で写真を見られたのはその日の午後ですね。
○大古参考人 はい。
○田口委員長 大体一致しておりましたか。
○大古参考人 はい、一致しておりました。
○田口委員長 これは外務省に委員長としてもお願いしたいわけなんですが、今大古通信士の話を承りましても、写真を見る前に見た船型を図に書いた、それを持って海上保安庁に行ってこの船だと言うたということでございますが、おそらくその話は海上保安庁でもよく知っておられ、さような船型は中共にあるか、あるいは台湾にあるかということは、はっきりしておられると思うのであります。従ってこの点はひとつ海上保安庁ともよく御研究くださいまして、中共にない船型である、台湾にのみある船であるという事実からいたしましても、また撃沈の翌日の台湾の方の戦果の発表、こういう点からいいましても、普通われわれの考えといたしましては、当然国府の軍艦が撃沈した、こう結論を出してもさしつかえないと思うのでございますが、かかる状態においても、なお国府が自分の船でない、かようなことを言いますことは、国府自身が、今の日本及び中共、台湾、この国際関係のデリケートな実情から考えましても、これは国府としてさような横車は押さないだろうと私は考えるのでございます。台湾政府に対しまして、むしろさようなことはしてはいかない、将来の日本と台湾との友好関係からしても、さような無理な解釈をしてはいかない、かように私自身も国会を通じて警告をいたしたいのでございますが、だれが考えましても台湾の軍艦に相違なかった、かような認定の事実でございますから、この点につきましては、ひとつ外務省といたしましてはさような確信を持って、そうして強くしかもなるべく早く、たびたび外交折衝によって事実を認定させ、その認定のもとに損害賠償の問題を進めていただきたい、こういうことを委員長からも特に外務省に対して要望をしておきます。 水産庁に対しましては、目下いろいろ研究を願っていると思いますが、事件そのものがまことに新しいケースであり、水産界全体にとりましてきわめて重大である。言いかえますと、あの方面に働いている漁業者の志気に関する問題である。御承知の通り日本の国民の食生活というものは、その保健食料の八〇%からを魚からとらざるを得ないような国民の食生活でもありますから、いかなることがありましてもこの漁場を日本漁船が放棄することはできない事情にあるのでございます。どうか漁業者及び乗組員の志気が沮喪しないような万全の処置を、知恵をしぼってなるべく早く実行していただきますよう、委員長からも特に両官庁に対しましてこの点を要望しておく次第でございます。 本日はこの程度にとどめまして、次会は公報をもってお知らせいたします。 これにて散会いたします。 午後一時三十五分散会