労働委員会 第7号
- 発言数
- 79 件
- 登壇者
- 13 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1954/02/23
会議録
○委員長(栗山良夫君) 只今から労働委員会を開会いたします。 本日の議題はけい肺法案及び労働基準法の一部を改正する法律案でございます。 この際、委員の方にお諮りをいたします。先に田畑委員が委員を辞任されましたので、当委員会は理事が一名欠員になつておりましたが、このたび田畑君が再び労働委員になられましたので、成規の手続を省略して、田畑君を理事に指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(栗山良夫君) 御異議ないものと認めまして田畑君を理事に指名いたします。 —————————————
○委員長(栗山良夫君) 次に、二月一日の委員会会におきまして御承認を頂きました一月二十六日の委員長及び理事打合会の申合せに基きまして、只今外務委員会に付託されておりまする二つの承認事件、即ち国際労働機関の総会がその第二十八回までの会期において採択した諸条約により国際連盟事務総長に委任された一定の書記的任務を将来において遂行することに関し規定を設けることと、国際連盟の解体及び国際労働機関憲章の改正に伴つて必要とされる補充的改正をこれらの条約に加えることを目的とするこれらの条約の一部改正に関する条約(第八十号)の批准について承認を求めるの件、及び国際労働機関憲章の改正に関する文書の受諾について承認を求めるの件につきまして、外務委員会と連合委員会を開きたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(栗山良夫君) 御異議ないものと認め、さよう決定をいたします。 なお、連合委員会の予定日時は、外務委員会と連絡をとりたいと存じますが、只今のところ三月二日を予定いたしております。
○寺本広作君 国際労働機関憲章の一部改正に関する条約批準の件、三月二日に外務委員会と合同審査会を開かれるということでありますが、この憲章改正は常任理事国を増加するということがその中に含まれているように聞いております。それでその常任理事国には日本が予定されておるということも伺つております。それで国際労働機構の事務局のほうでは、たしか三月の九日に向うの常任理事会をやつて、このことを今度の総会に提出する議案をきめたいということのようであります。そういたしますとその理事会までに日本の批準が到着するということが、日本が常任理事国になる場合に有利な条件になろうかと考え、日本が常任理事国になるということは、戦前の国際労働機構における日本の立場を取戻すことでもありますし、まだ最終的に確定したことでもなく、殊にソ連の参加などが予想される現状においては、できるだけ日本の立場を国際労働機構の中で有利にして置くことがどうしても必要だと思いますので、是非外務委員会と御協議の上、できるだけ早くこの批准が国会を通過するように御尽力を委員長にお願いしたいと思います。
○委員長(栗山良夫君) これは非公式ではございますが、外務委員会のほうの大体の予定を委員長において尋ねましたところ、二日に連合委員会を持ちまして、四日に外務委員会に討論採決をいたしまして、五日の本会議に上程をする予定のようでございます。従つて諸般の状況を勘案いたしまして、五日に本会議上程で可決決定になれば、寺本君が只今御心配いたされましたような支障は起きないものと、こういう工合に一応準備を進めておるようでございます。 —————————————
○委員長(栗山良夫君) 次に、近江絹糸の不当労働行為の問題につきまして、赤松常子君より委員外発言を許されたい旨申出がございました。これを許すことに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(栗山良夫君) 御異議ないものと認め赤松君の発言を許します。
○委員外議員(赤松常子君) 今日はこのあとけい肺法案に対する重要な参考人の御意見を伺うことになつておりますので、私の質問は端折りまして極く簡単に申上げたいと存じます。 中西労政局長にお尋ねいたしたいのでございますが、今まで安井政務次官がおいでになつて、安井政務次官にもお聞きしたいと思つていたのでございますが、御退座なさつて残念ですが、私今日近江絹糸の不当労働行為について労働委員会で問題にいたしますことを非常に悲しむものでございます。と申しますのは、もう数々の不当労働行為、労働基準法違反があちこちの近江絹関係の工合に挙げられておりますことは枚挙に遑のないくらいでございます。これに対しまして、昨年の八月七日に当委員会において同僚上條議員が詳細に亘りましてその実情を報告なされ、それに対し労働省の監督を要請されておるのでございます。これのここに速記録もございます。それに対しまして安井政務次官が、そういう御指摘の労働基準法違反について、女子の深夜業をやらしているとか、或いは寄宿の規則の違反等の事実があつたことは事実である。これらの不当労働行為に対しましては、労働省といたしまして十分なる監督と勧告をやつておる次第でございますと、はつきりお答えになつていらつしやいますにもかかわらず、過去二年間におけるいろいろな不当労働行為が行われております事実に対しまして、労働省は一体近江絹糸株式会社に対しどういう勧告と注意をなされたのでございましようか、それを先ず伺いたいと存じます。
○政府委員(中西実君) 基準法違反の点につきましては、それぞれ基準局の出先でやつておると思います。今の不当解雇の問題につきましては、これは三重の基準局並びに労働委員会でそれぞれ処理をいたしております。
○委員外議員(赤松常子君) そういうことでございませんで、私はもつと、ただそうしていらつしやいましても、なおそのあとを絶たないというその事実に対しまして、何か本省として監督のやりにくいところがあるのではないか、もつとそういうところを実際にお伺いしたいのでございます。
○政府委員(中西実君) 基準法の違反の問題につきまして、基準局のほうでやつておると思うのでございますが、この点はちよつと私具体的にどういうふうにやつておりますか聞いておりませんので、連絡いたしましてお答えするようにいたします。
○委員外議員(赤松常子君) 私時間を取らないようにいたしたいと思いますが、お聞きしたいことは、いろいろやつていらしやいますけれどもそのあとを絶たない、これは近江絹糸のみの問題ではございませんです。ほかの中小企業はもとより大工場におきましても、いろいろと規則には謳われておるのでございますけれども、なかなかそれが実施されない、監督されない、根絶されないというところに何か根本的に原因があるのではないか。それを伺いたいのでございますが、今日はそれは時間の関係で省くことにいたしまして極く最近津の工場に起きたことを一、二申上げて十分なる御調査をお願いしたいのでございます。 それは昭和二十六年の八月に起きた津の工場における不当労働行為からまだ尾を引いた問題がずつと引続いておりまして、これは津の地方労働委員会でも曾つて会社の不当労働行為であるという判定を下しておるのですが、会社が更に中央労働委員会にこれを持出したのであります。中央労働委員会でも不当労働行為である。解雇された者は解雇の理由はないから復職させるようにという仲裁命令が出ておる。それに則りまして一月の二十一日に解雇された長岡さんが復職されました、そうすると翌日又解雇を申渡されておりまして、誠に中央労働委員会の仲裁命令も、一つの会社の考え方によりまして蹂躪されておる。そういう会社と通謀いたしまして、そこの労働組合が作業場の中でも村八分の制裁をしている。寄宿の中でも村八分の制裁をいたしておりまして、誠に復職した者が居住し労働するのに非常に困難を極めている状態の報告があつたのでございます。こういうことに対しまして本省としてどういうふうにお考えになつているのか。三重県の地方労働委員会がどういうふうにこの問題を扱つておるのかということと、こういう労働組合、つまり会社の息のかかつた労働組合ということは言うまでもないのですが、こういう地労委の決定をもあえてふみにじつておる。こういう労働組合に対し本省はどういうふうな御見解を持つておいでになるのか、そういう際にどう御監督御勧告をなさるおつもりであるのか、それも併せて次の機会でよろしうございますから詳細に御報告願いたいと思います。 以上を以ちまして私の質問を終ります。
○委員長(栗山良夫君) 赤松君の御質問に関連するのですが、中西労政局長に私はやはり委員長として抗議ではないけれども、それに近いことを申上げておかなければいかんと思いますがね。それは労働基準法の違反に関する問題は、全般的に当委員会が先々国会以来ずつと取上げておることは御承知の通りであります。近江絹糸の問題は、特に先ほどお話のありましたように、上條君の発言がありまして、労働省側もたしかあなたの発言であつたと思いますが、今まで起きた不当事項について調査をすることは勿論、将来についても厳重な監督をするというお約束があつたと私は思います。これは基準局長もそうだつたと思います。そこで今現地で監督しておるだろうというお話でしたが、それではこの前からこの委員会で取上げた熱意に応える私は答弁じやないと思うのです。特に近江絹糸の滋賀の現地において基準監督署が数件を挙げて告発をしておるはずです。昨年の秋であつたと思うのですが、告発をしておるはずです。それが会社側のほうと意見の相違があつてまだ未解決の状態にあると私は思うのですが、そういうものは一体どうなつておるのかも御報告願いたいと思います。 それから今の津工場の新らしい問題も提起されたわけですが、成るべく早い機会に政府側から全貌を調査の結果当委員会に報告をせられたい、こういうふうに思います。 —————————————
○委員長(栗山良夫君) それから後ほどになつて御退席になる方があつてからでは遅いと思いますので、前以て御了解を得ておきたいと存じます。それは委員会で決定しておりますところによりまして、来る二月二十六日、金曜日に、都内の労働関係施設及び中小企業工場の視察をすることにいたしまして、その案をこしらえたわけであります。金曜日でございますが、目的地は、港区の東輿電機株式会社電球工場、品川区の都の職業補導所、同じく品川区の三菱鉛筆製造工場でございまして、出発時間は午後一時、帰るのは午後五時三十分の予定であります。いずれ事務当局から出欠につきましてお尋ねに参ると思いますが、多数御参加をお願いいたします。 —————————————
○阿具根登君 参考人のことでお諮り願いたいと思います。 簡単に申上げますと、去る十六日に労働大臣が、現在闘争中の炭労の問題につきまして、賃金カツトは妥当であるというようなことを行政解釈として申されまして、非常な波瀾を生じておりますが、当委員会といたしましては、ただ行政解釈のみを聞いたということでなくて、事実闘つておる双方、或いは学者の人をお願いして、参考人としてお聞きしたい、かような考えを持つたわけであります。 それからもう一つお願いしたいと思いますのは、職安法の施行規則の第四条の改正によりまして、非常に組合が動揺しておる。而もこれはもう請負のほうに廻されているということは、この前吉田委員からも御発言のありました通わであります。これも八幡製鉄等の現業の組合の方々が陳情に見えておられますので、次の機会にこれも一緒に参考人として、実情をお聞きしたい、かような考えであります。この二つの参考人の問題をお諮り願いたいと思います。
○田畑金光君 只今の参考人を呼ぶか呼ばんかという、まあ呼ぶという動議の提案でありますが、私もこの問題について、特に労働大臣の賃金カツトの問題ということについては、法律的にも相当にまあ問題があるのじやないかと、こう考えるわけなんです。同時に又今後の労働運動の全般に対しましても相当な影響のある重大な問題だと、こう考えます。従つてこれにつきましては労働法学者というか、それぞれの専門の法律学者の御意見を我々としても承わりたいとかねがね思つておりますので、適当な機会にそのような処理をお願いしたいと、こう思つております。 同時に又、今職業安定法の施行規則に伴う問題についても、先般の労働委員会でいろいろ質疑応答が繰返されておりましたが、これに関する職業安定局長の答弁等ではまだ十分尽せない点があるように見受けております。これらの点等についても適当な機会に参考人等をお呼びになつて、更に又労働委員会といたしましても別の機会において更にこれの研究を進めて参るようにして頂きたい、私は今の提案に賛成いたします。
○井上清一君 只今阿具根委員から、先般の労働大臣の発言に関連して、只今争議中の炭労の経営者側或いは又勤労者側を呼んでまあ実情を聞いたらどうだというような御提案がありましたが、先般の労働大臣の発言は、私はこれは法律的な見解を或いは質問に応じて述べられたものだと思います。まあこれに対して御質問が若しあるならば、労働大臣に来てもらつていろいろ質疑をしたらいいだろう。ただまあ炭労の関係者を参考人としてここに出てもらう、そうしていろいろと労使双方から意見を聞くということは、今はまあ争議の最中であつて、中労委でもこの問題については実は非常に関心を持つておる。それで又調停に入ろうかとしておるわけなんで、この問題を、今争議中の問題をここで労使双方の関係人を呼んで実情を聞くというようなことは、どうも私はまだ時期じやないと、こう思います。それで私は参考人を招致することは現在の段階においては不賛成であります。
○阿具根登君 私も十六日のあの大臣の言明がなかつたならば、井上委員のお説と全く同じ考えを持つております。併し一応ああいうことが新聞で流されて新聞も、御承知のようにこの中の討議その他を全部出されておりません。ただ労働大臣の言つたものをそのまま、賃金カツトは当然だ、こういう大きな見出しで流されておる。今日もうすでにこれは火をつけてあるわけであります。それを我々は頬かむりするわけには行かない。それで双方から十分に実情を聞いてみようじやないか、いわゆる実情を知らずに、こういうことを我々が審議しておるからああいうことになつて来るので、私はそれは非常に、実際双方が紛争しておるときに介入するようなことは避けたいと思いますが、事実それに介入されたのはもうはつきりしておることであります。そのために私は呼んで頂きたい、こういうように考えております。
○榊原亨君 井上委員から先ほど御意見がありましたが、私も井上委員のお考えに同調したいと思うのであります。現に争議が進行中のものにつきまして労使双方から意見を聞くというような段階ではないと思うのでありますが、この問題についていろいろと論議をされますことは、今日も参考人が来ておいでになることでありますので、理事会において十分御検討を頂けたら如何かと思います。
○寺本広作君 私はまあこの問題についてはあらかじめ委員長、理事で打合せがあつたのかと思つておりましたが、今の榊原さんの話を聞くと打合せがなかつたように想像されます。先日この問題が起つたとき、私はやはり個個の争議に国会が入るということはいい例にもならんからということで、この当労働委員会の立場を特に考慮して発言をしたつもりであります。スト規制法という法律が制定されて初めての事例であるから、だからその運用についてということで発言するのが今度の炭鉱ストの取上げ方だろうということを申上げたつもりであります。これはまあ保安要員の就業拒否という具体問題が起る段階で取上げなければならんという委員長のお話であつたと思います。又賃金差引の問題については、労働大臣の説明が、まあ私が来る前でありましたが、政策的な問題であるか法律的な問題であるか、答弁を聞いておつても余りはつきりしませんでしたので、速記録を見た上でということを私はあの際申上げました。まだ速記録もできておらんようであります。問題は行政解釈の疑義がもとになつて労働争議に非常に火の手が上つておるということは、国会の行政に対する一般監督の立場からいつても放つておけないということで、この行政解釈をつめてみるという必要があるだろうということをあの際申上げました。それで委員会の速記録もできておらんことでありますし、速記でもできましたら、皆それを見た上で、そうしてその上で何とか案を立てたらどうでしようか。それでその案については榊原さんの言われたように、委員長及び理事打合会で一遍こなして来られたら如何でしようか。この問題は今日この委員会で結論に達しようとは思いませんので、委員長において然るべくお取計いを願いたいと思います。
○阿具根登君 反対の御意見が多いようですので、固執しても駄目だと思いますけれども、それでは反対の方に一応私がお尋ねしたいと思いますことは、労使双方は紛争中であるから介入したくないから呼びたくない。それでは第三者の学者の意見をお聞きになることは、これはちつとも差支えないということですね。労使双方を呼ぶか呼ばんかということを委員長及び理事打合会でやりたい、こういうことでしよう。
○田村文吉君 これは四角張つて言うわけではありませんが、成るべくこういう問題は理事会で相談して、そうして成るべく円満にものを運ぶようにお進めになることを希望するのです。こういう委員会の本会議にすぐそういうものをお出しになるというと、問題がまとまるものもまとまらなくなる、こういうことに考えますので、私は是非ない問題は別問題として、本日はこの問題は理事会で御相談をして、その上で参考人を呼ぶとか呼ばないとかいう問題が決定になり、それで委員会に掛ける、こういうやはり慣習を従前ではやつておるように思いますので、そのようにやつて頂きたい、こう思います。
○田畑金光君 私も理事会でこの問題を一応調整することについては反対ではありませんが、先ほど提案者である阿具根君から問題を切詰めて質問の形で言われましたが、即ち労使が現在の段階において参考人として出て来て意見を述べることについてはとやかく議論があるかも知れんと思うが、第三者である労働法学者その他にこの問題についての見解をお尋ねすることは問題ではないのじやないか、こういうようなお話がありましたが、私もこれはそういうように分けて考えて参りますならばその通りじやないかと、こう思うわけであります。少くとも労働大臣ともあろう最高責任者が、争議の最中において、而もそれが委員の質問の形でなされた答弁であるにしても、こういう争議の最中において重要な発言をなさるということは不見識も甚だしい。或いは或る意味から申しますと、馴れ合いの質疑応答であつたかも知れんと言われても、これは弁解の余地もないと、こう考えるわけなんです。我々といたしましても、少くとも新らしいケースであるし、新らしい行政解釈というものが生まれた。而もそれには疑義がある、こういうような問題に関しましてはやはりこの際、私は労使という当事者の意見を聞く前に、労働法学者その他の法律家の御意見等も聞いて、この問題についての今後の行政運営等についての参考に資すべきである。まあこういうようなことを強く考えていたわけであります。そういう意味合いから申しまするならば、社会党から提案がなされた、直ちに自由党がこれを葬るというような、こういう態度でなくして、少くとも正しい労働行政の確立をお互いが協力して図つて行くためには、自由党の諸君も、前段であるところの阿具根君のお話にある第三者の見解を聞くということについては、私は少くともこの委員会において意見の統一がでるきだろう、こうまあ期待しておるわけであります。併しこれ又理事会で一応調整したいとおつしやるならば、私はあえて反対ではないが、少くともこの点に関する限りは、理事会においても無条件に見解の統一を図れるものと、まあ私は期待いたしております。そういう意味におきまして第三者の見解を聞くことと、更に労使の意見を聞くというこの点につきましては、理事会においてという御意見が多いようでありまするから、理事会において調整することについて私も反対ではありませんが、この点についてはまあ自由党の諸君も御協力願いたいということだけを強く申上げておいて、まあ私は理事会に任すことにこの際は譲歩したいと思います。
○田村文吉君 只今の御発言の中に、あの当日の質問は私がいたしたのでありますが、何か馴れ合いで質問をしたのじやないかというようなことで、ちよつと私とすると聞き捨てならんことをおつしやつていらつしやいましたので、ちよつと申上げますが、私は炭鉱というものが昨年のストライキ関係以来、誠に世の中に迷惑至極の状態を起している、又石炭の値段を下げてもらわなければならんと考えているときに、今日操短が行われて、石炭がでなくなつて、原価が高くなつている、こういうようなことは非常に困る。こう考えたから私は又この前のような大きな過ちを繰返さないようにと考えたのでありますが、併し労働省はこれに対してどういう見解を持つているかということで大臣にお尋ねをいたしたのでありまして、そういう意味で、あなたが若し馴れ合いの質問をするようなこと、それはそういう場合もあるかも知れませんが、馴れ合いの質問をしたとおつしやることは、甚だ私としては不愉快千万に、奇怪千万に私には取れる。どうかそういうことは軽卒におつしやらないように今後お願いしたい。
○田畑金光君 実は私十六日の労働委員会の日には旅行しておりまして、遠く新聞で拝見いたしまして、誰が質問されたのか、それすらも実は究めずして先ほどのような発言になつたわけでありますが、それは田村委員からお話の通り、質問された御本人のお言葉でありまするから、私もその通り解釈したいと、こう思つております。ただ私の気持といたしましては、争議の深刻なる段階において、而も新らしいケースであり、これを労働基準法の解釈上どう見るか、こういうことは重大な問題だと、こう思つております。こういうようなときにいやしくも最高責任者である労働大臣が、行政解釈を以て労使の問題に少くとも一つの断定を下すということは、大きな私は責任問題だと、こう考えております。こういうような不見識なる発言を或いは答弁を委員会の席上においてなしたということが、軽率の態度余りにも甚だしきが故に、場合によつては馴れ合いの質問でもあつたのではなかろうかと、実は私こう考えましたのでさような言葉を申上げたわけでありまして、只今田村委員が質問者であるということも初めて承知いたしましたが、私はそういうような気持で申上げましたので、その点は一つ悪しからず御了解願いたい、こう思つております。又私自身も炭鉱のこの争議については毎年深刻化し、これがいろいろな面におきまして国民経済等に影響の度が深刻である。この点については同じく同憂の気持を持つておるということだけはまあ申上げたいと思いますが、先ほどの点に関しましてはさような気持で申上げましたから御了承願います。
○阿具根登君 委員長理事打合会にこの問題が移されましたので、私もそれで了解いたしますが、ただ申上げておきたいと思いますのは、労働委員会がこういう問題を取上げます場合に、ただ起きて来た現象のみ……ストライキが起きて非常に国民に迷惑を掛ける、毎年じやないかというようなことのみで私は論議されるのが一審大きなストライキをますます誘発しておる原因になつておる。少くとも我々はそういう立場にあるならば、何のためにそういうストライキが起らねばならないか、実態はどういうものか、これを私らは先ず知つて、そうしてその根本対策を考えなければ、ただ争議が迷惑だ、こういうような考えでは、私は争議は納まらないと思うし、特に今度の労働大臣の発言では却つて争議を激化さしておる。私はこの一半の責任は労働大臣にあると思つております。労働大臣が言明されたそのあとで組合の空気がどうなつて来たか、皆さんのところには陳情、抗議もないと思いますが、私らのところには連日抗議、陳情が参つております。いやしくも最高責任者たる人がこれを却つて激化させるようなことは、私は厳に慎しまなければならないことだと思います。時間もありませんのでやめますが、委員長理事打合会には、動議を提案いたしました私も発言をさして頂きたいと思いますので、この点は委員長にお願い申上げておきます。
○委員長(栗山良夫君) 大体御議論が出尽しまして、阿具根君の動議、即ち石炭争議につきまして過日行われた労働大臣の言明に対する調査並びに職業安定法第四条に関する具体的な八幡製鉄所の問題に対する調査につきまして、参考人を招致して先ず事情を調べたいという件でございます。委員長及び理事会に諮りまして結論を出すということに御異議がないようでありますが、さようにいたしてよろしうございますか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(栗山良夫君) それでは本日この委員会が終了いたしましてから委員長及び理事打合会を開きまして協議をいたしたいと思います。
○井上清一君 本日只今三人の方からいろいろけい肺法について御意見があると思うのです。参考人としておいでになりましていろいろ陳述を承わることになると思いますが、これは又別に日を改めておやり願つたら結構じやないか、こう思うので、その点御配慮願いたいと思います。
○委員長(栗山良夫君) 委員長は只今今日委員会が終了後開くということに宣言いたしましたので、御了承願います。
○田村文吉君 おかしい、そんな議事の進め方はない。若しこれが委員会においてその問題を決定なさるならば、やはり委員長、理事お互いに都合のいいときを考えて一つやることが円満にものを進めるのにいいのじやないか。すぐ今日これを終えてから開くというようなことで、時間が何時になるか、私も実は外出しなければなりませんが、一体何時になさるのか、そういうような点もありますから、一応一つ時間等をお打合せの上に願いたい、こう思うのです。
○田畑金光君 今の田村委員のお話、どうも少し私ども納得が行かんのですがね。まあ本日は参考人の一応御意見を承わる日なんでありますから、この御意見を承わつたあとに委員長理事打合会でさつきの日取り等について相談しようじやないかというのが、私は委員長のお話だつたと記憶しているわけですが、一つまあそれぞれ御用件もありましようし、お互い用件もあるわけですが、この委員会の済んだあとに委員長理事打合会を開いて、さつきの問題についての処理をきめようということなんだから、別にこれに反対する理由は何もない……。
○井上清一君 只今御発言がございましたが、今日の参考人の御意見も相当私は長時間に亘ると思います。又いろいろ御質問もあることと思う、通常委員長理事の打合会は、あらかじめ公報に日時を指定されまして、一応お出しになるのが建前になつております。それがそういう意味で一つ、正式に公報に掲載を頂きまして、日を改めて一つ我々に御通知を願いたい、かように思うのです。
○委員長(栗山良夫君) ちよつと速記をやめて。 〔速記中止〕
○委員長(栗山良夫君) 速記起して。それでは只今よりけい肺法案及び労働基準法の一部を改正する法律案につきまして参考人の御意見を聴取いたしたいと存じます。 参考人の方に一言御挨拶を申上げます。本日は御多用中にもかかわりませず御出席下さいまして厚く御礼を申上げます。又委員会の開会が遅れ、又本日当面した問題について、若干時間を取りまして大変お待たせをいたしましたことをお詫び申上げます。発言の時間はお一人大体三十分程度にお願いを申上げたいと思います。一応御発言を頂きましてから、委員諸君から御質疑があろうかと思いますのでお答えを頂きたいと存ずるわけでございます。 先ず労働科学研究所副所長勝木新次君の御意見をお伺いいたします。
○参考人(勝木新次君) 私は、御参考になるかどうかわかりませんが、けい肺の、殊に自分の専門のほうから考えまして、予防に関連したことに主眼を置いて、暫らく考えているところを述べさして頂きたいと思います。 御承知のようにけい肺は、現在非常に広い範囲の産業に発生しておりますし、その軽い症状の者も加えますと相当厖大な数に上るということが最近の調査でだんだん明らかになつて来ております。而もその多数の一部分ではありますが、非常に悲惨な状況に陥つている者もおります。現在職業病の中でけい肺が最も重要な地位を占めておるということは、これはもう広く知られておる通りでありますが、こういう現状に対して、何よりもこの病気を予防するということが第一に必要な措置であるわけであります。ところでけい肺の予防については、その原理は至極明らかで、遊離けい酸を含んだ粉塵を吸わないようにすればいいというのでありますが、これを実際に行つて行く上にはいろいろの方法が考えられるわけであります。 その第一は言うまでもなく埃が立たないようにする、防塵の措置でありますが、これも又それぞれの事情によつていろんな方法が考えられますが、大きく考えて防塵が一つあるわけです。それから第二には、防塵が必ずしも万全に行かないという場合には、作業者がそれを吸わないように防塵のマスクを使うということがあります。それから更に或る場合には遊離けい酸を含んだ材料を使わないようにする。これは例を挙げないと或いははつきりしないかも知れませんが、例えば鋳物の研磨に砂の吹付作業、サンド・ブラストをやつておりますが、その砂にけい酸を含まないものを使う。これは各国でもやつておることでもありますし、日本でも一部行われておりますが、そういうようにけい酸を含んだ砂を使わないで、鋼鉄の球を使うとか或いはカーボランダム等の有害でないけい酸塩のものを使うというように、材料を変えるということができれば、これも有力な予防措置になるのであります。このほかにこれらのすべてがなかなかうまく行かないという場合には、止むを得ず労働者がその粉塵にさらされる機会を少くするような措置を考えることであります。例えば実際に作業をする時間を短くするとか、或いは作業の強度が激しい労働でありますと、呼吸が大きくなつて余計粉塵を吸いますから、作業の方式を変えて強度を低くするとか、いろいろ労働者が粉塵の害を受ける機会を減らすという措置、こういうことも考えられるわけであります。 これらの方法を併せて考えて適当に予防を行なつて行くわけでありますが、日本の現在の事情から考えまして、このけい肺の予防というものがなかなか容易じやないということが考えられるので、と申しますのは、第一に、現在いろいろ調査されておりまする限りで、けい肺を起さないと考えられるような理想的な状態と申しますか、それと、それから現在の実際の作業場の状況というものとを比べて見ますと非常な差があるのであります。例えば数学的に申してみますと、比較的けい酸の含有量が少いような粉塵を発生しておる作業場で、一立方センチの中に千くらいの粉塵を含んでおると思われるようなところでも明らかに現在けい肺が起つております。従つてけい肺を起さないというためには、これよりも更に粉塵が少くなくてはならないというわけでありますが、鉱山の坑内でありますとか或いは工場の或る特殊な作業場においては一立方センチに数千から或いは万を超えるというような粉塵を現在発散しているという場所が相当あるのでありましてれ我々の考える理想的な状態というものと現状との間に非常な開きがある。この大きな開きを一挙に解決するということは、これはなかなか容易ならない点があると考えられることが一つであります。 それからもう一つは、最初にも申しました通り、現在けい肺を発生しているのは、最初問題になつた金属鉱山だけではありませんで、炭鉱でもけい肺があると考えられます。又工場でもいろいろな産業に亘つてけい肺が現に起つておりまして、それらの産業にはそれぞれ特異な条件があります。従つてこれらのいろいろ種類の多い産業に対してどういうふうな予防措置を講じて行くかということに又問題があるわけです。 と申しますのは、例えば先に挙げました四つの方法のうち、或る産業では防塵、埃を防ぐということに主眼を置こうといたしましても、技術的な面から、或いは又それが経営経済と非常に関連を持つておるという点から、これを十分に行うことに相当な困難があるというようなことがありましたり、或いは又防塵マスクにいたしましても、現在市場に出ておる防塵マスクは、戦後国家検定が行われるようになりましてから、相当質が良くなつて来てはおりますけれども、その質がいいというのは、粉塵を濾過する性能において非常に質が高まつておりますけれども、現在の防塵マスクでは粉塵を濾過する性能が高ければ高いほど、呼吸するときの抵抗も又高いというような難点が自然に伴うような事情がありまして、労働が激しいとこの防塵マスクの使用というものになかなか不都合な事情が起つて来るというような点もあります。それから又遊離けい酸を含まない材料に替えるというようなことは、これは一部の事業でだけ可能であつて、すべての場合に可能であるというわけではないというように、一々の産業の事情によりまして、どういう方法をどういうように実施して行くかということについて考究しなければならないことが非常に多々あるというような点があるわけです。こういうようなことから粉塵の害を防ぐという措置は困難でもあるし、又一方で非常に複雑な事情を含んでおるということが言えると考えております。 併し職業病の問題として非常に大きく且つ重要な地位を占めておるけい肺の防止ということは何としてもやつて行かなければならないわけであります。から、これをただ漫然と予防措置を講ずるのだということを言うだけではなかなか仕事が動いて行かないという点もあろうかと考えられるのであります。従つてこういう点で国が当面どのようなものを目標として防塵、けい肺の予防をやつて行くか、当面どの辺に目標をおいて予防措置を進めるかということ、或いはどういう手段で、どういう基準によつてこの予防措置を進めて行くかということについて適当な線を示して、各方面がその線に向つて、或いはその線に沿つて予防措置を進めるというようなことが、どうしても先刻申しましたこの問題の困難さや複雑さの点から考えて必要なのではないかというように考えられるわけであります。で国が或る線を示すということがこういう意味で必要ではあると思いますが、それが法規の上でどういうふうに示されるかというようなことについては、又一面私は次のような点を考える必要があるのではないかと思うのです。 というのは、只今申しましたことの繰返しになりますが、予防の措置を講じて行くということを画一的にあらゆる産業を通じて同じようにやるということは、実際上困難でありますし、又それでは実際に進まないというような点もあるのではないか。それぞれの産業の事情によつて最も効果的で且つ実行が容易であるという線を先ず進めるということが必要で、余りに画一的に指導なり監督なりが向うということにも又一面の弊害があるのではないか。弊害とは言えないにしても、実際効果を挙げる上で適切でないようなことが出て来るのじやないかということも考えられます。こういう意味で実情に即した指導なり監督なり、推進なりが行われるように、法規を定められる上でも十分な考慮をされることが望ましいというように考えておるわけであります。細目の点についてはいろいろ申し落した点が多いと思いますが、予防については大体以上のようなことを私は考えております。と同時に只今まで申しましたように、予防が困難であり複雑であるということは、同時に予防について一層の研究が必要であるということをも併せ含んでおるわけでありまして、殊にこの粉塵の発散の防止ということを考えまする上では、当然に粉塵を測定する、空気中に浮遊している粉塵を測定する方法も問題になります。これらの点についても国が一定の方法を用いること、これは予防を進める上では是非とも必要であると思いますが、若し基準になる或る方法を指示しようといたしますれば如何なる方法を選ぶかというような点についても、細目については研究の必要があろうかと思います。又それぞれの産業の特殊な事情の下で粉塵の発散をどういうふうにやることが、企業経済に著しい打撃を与えないで実行が可能であるかというような点についても、余り企業経済を主にいたすことは適切でないかも知れませんが、如何に行うことが経済的であり又効果的であるか、こういう点についても具体的な実際的な研究が必要であると思います。 又防塵マスクの改良についても、まだ研究の余地があると思います。こういうような点については極力研究を進めて行くということ、こういう点についても国として力を入れて頂くことが必要ではないかと考えるのであります。 大体予防についてはこのようなことを考えたのでありますが、補償関係けい肺についての補償の関係がもう一つあります。このほうは別の方から詳しく述べて頂けると思いますが、ただ一つこの点について私が感じておりますことは、実は昨日我々の研究所に一人の患者が見えて、診察をいたしますと、けい肺は三度と思われる程度の重症であり、若干結核も合併しておると思われ、機能障害も非常にあります。呼吸循環の機能が非常に侵されておるという状態なのであります。ところがこの人は現在はカツテングを野天掘りでやつておるところに勤務しておりまして、この附近ではけい肺は出ておらない。従つて現在のけい肺はここで起つたとは考えられないというような状況にあるわけであります。本人は過去にいろいろの鉱山を転々と廻つておりまして、或いは金山にいたこともあり銅山にいたこともある。恐らくそういうところに原因があつて現在の状態になつているのだと思いますが、こういう事情でありますためにこの人間の補償が行われないのであります。本人が相談に来た重な悩みの根本はそこにあるわけで、現在の勤めている所にはその原因がなくて過去にあつた。従つて補償責任がどこにあるのか、或いは発病の時期がいつであるのかという点がすべて不明のままになつておつて、補償を受けることができない。而も現在本人の状態は非常に悲惨な状態になつているのであります。こういうような実例は昨日たまたま我々のところに来ただけではなく、過去にもある。こういうことは朝鮮で鉱山の仕事をしておつて、戦後内地の山に帰つてその病気がはつきりして来たということでやはり補償が行われないということであります。これはこのような症状というものは、けい肺の特殊な性格から起つて来るのでありまして、決してこれは偶発的なケースではないのであります。けい肺というものの性質から当然にこういうケースが起つて来るということが予想されるのでありますが、現在の法規ではこういう人間は救われないということで、誠に悲惨な実例を私ども目にしておりますので、何とかこういう人間について補償の措置を是非講じてもらいたいということを非常に痛切に感じておるのであります。 現在御審議になつておりますこのけい肺法案という内容について詳しく存じませんし、又この問題についての詳しい点についても私は門外漢でありますが、果してこういうケースが救われるようになるかどうか。一番悲惨なのはこういう事例でありまして、何とかこういう事例が救われるように国として措置を講じてもらいたいということについて私どもは痛切な気持を持つているわけであります。補償のことについてはそのこと一言だけ申上げておきます。
○委員長(栗山良夫君) 大変有難うございました。続きまして珪肺労災病院長大西清治君の御意見を伺います。
○参考人(大西清治君) 私個人のことを申上げて甚だ恐縮ですが、最近自動車事故で歯を損傷いたしまして、歯を抜いております。従つて言葉が極めて不明瞭なところもあろうと思いまするが、あらかじめお許しを願いたいと思います。 私この委員会にお呼び出しを受けまして、けい肺問題に関する意見を申上げる機会を得ましたことは、現在、過去五年間に亘つてけい肺患者と取組んでおる私といたしましては、誠に光栄且つ喜びに存じておる次第でございまするので、暫らくの間けい肺問題に対する私の考えなり意見の一端を各先生方にお聞き取り願いたいと存ずるのでございます。 御承知のごとくけい肺患者の発生は最近突如として現われたものではなくして、我が国に工業がやや産業の形態をなした当初からすでに相当多くの労働者は本病の犠牲となつて葬られておつたことは、記録にも文献にも明らかであり、我々も過去においてそういう事例に幾つも会つておるわけでございまするが、特に旧工場法時代においてけい肺患者に対する国家の補償、或いは経営者の扶助等がどういう程度において行われていたかと申しますると、たしか昭和七年頃のことであつたと記憶いたしておりまするが、工場法の解釈に基きましてけい肺症も業務上の疾病であるという決定をいたし、これに基いてけい肺症の或る段階以上の病状に陥つた者には、工場法に基いた使用者の扶助を行うことを行政措置として取上げたのでありまするが、その当時未だ各産業においてけい肺患者が如何に悲惨なものであり、又如何に恐るべきものであるかということにおいての認識は極めて足りなかつたのであります。従つて当時の行政官庁であつた内務省の外局である社会局のこの行政上の措置も、徒らに一部の事業主のみに対しこれが実行を促し、十数人の患者のみが軽うじて救われたという現状であつたのであります。 併しながら過去におけるそういう状況は、もとより一般社会が本病に対する認識が不足であり、又直接事業を行なつておる経営者並びに労働者各位においてすでにこの病気に対する認識が不十分であつたために、折角行政措置としてけい肺患者の救われる途が講じられていたにかかわらず、これが普遍的な普及が見られなかつたということは、我々当時官庁に関係いたしていた者としては誠に残念に考えた次第でございます。続いて国際労働機関においてけい肺患者の重要なる問題が取上げられ、各国からの専門家が相会して第一回のけい肺専門家会議がヨハネスブルグで開催されたことも御承知のことと思います。その後徐々にそういう方向からいたしまして、我が国におきましても労働者の業務上の疾病のうちにおいて最も悲惨なけい肺症に対する問題が徐々に各方面から注目の的と相成つた次第でございます。 終戦後、あの画期的な民主的な労働基準法が制定施行になり、労働省が新たに設置されました結果、労働行政のうちにおいても特に斬新にして且つ人道的な、且つ労働者に対する福祉向上の上において最も有意義なけい肺問題が労働行政の一環のうちに取上げられたということは誠に喜びに堪えなかつた次第でございます。その後今日に至るまで約五年を経過したのでありまするが、労働省が強くけい肺問題に対するけい肺対策を取上げられました結果、けい肺患者を強く補償する。又その予防に対しても、労働基準法の規定の線に従つて相当強力な手が差伸べられるという段階に入りつつあるわけであります。 で私は過去五年間、労働省の設置にかかる珪肺労災病院をあずかりまして、今日までに約三百人のけい肺患者を治療して参つたのでありますが、その過去における経験に基きまして、今日問題となつておりますけい肺患者に関する補償の全般に亘りまして、今日の段階において如何なる困難があるか、如何なる矛盾が現われているか、又如何に改善を要する点があるかということについて私見を申上げてみたいと存ずるのでございます。 先ず第一に、今日行政上の手続といたしましてけい肺患者が発生、発見されました後においては、これが補償の対象となるべき段階にまで病状が進行しているか否かということについての相当具体的且つ詳細な判断を必要とする手続になつております。曾つては労働省みずからが全国主要の事業場に対し行なつた集団検診の結果を集めまして、それを詳細に検診し、詳細に診断を下して補償の対象の有無を御決定になつておられたのであります。更に最近におきましては、数府県に対してこの診断決定を委譲されておることは御承知の方もおろうかと存じますが、今日におきましては集団検診によつて得たレントゲン写真並びに同時に行なつた臨床検査の結果を基礎といたしまして、補償の対象とすべきか否かということを労働省において御決定になつた一つの基準に照合して、これが認定を下すという段階になつておるのでございますが、 〔委員長退席、理事田畑金光君着席〕 成るほどけい肺症はその進行は極めて緩慢であり、慢性病のうちでも特に慢性的な経過を取る病気でございますが、療養の時期は、おのずからやはり最も必要とする段階の場合と、比較的療養はまだ早めであろうと思われる段階があるわけでありまするが、診断の認定が遅れるということは、誠に療養の適時を失う結果ももたらされ、更に又本人が療養したいという熱意を阻むことも必ずしも少くないと思うのでありまするが、現在のやり方においては、けい肺症の認定に対し非常な長期間の時日を必要とする。これは技術的な立場から誠に止むを得ない点も多々あるわけでありまするが、けい肺症の認定に対し極めて長期の勘案を必要とするということは、実際療養を一日も早くやつてやらなければならないという我々の立場からすれば誠に都合の悪い扱いになつておるように思われるのであります。これはなぜそういう長期を必要とするかと申しますると、もとより医学的にけい肺症の診断を的確に下すということには、なお今日幾多の困難が潜んでいるのであります。例えばレントゲンの読み方にいたしましても、一定の基準に照合して判定を下す今日の方法では、誠に慎重な態度を以て相当の長期にいろいろ研究をする必要があろうと思います。更に又過去の経歴をつぶさに照合するといつたような建前からいたしまして、けい肺症の認定には相当長期の時日を必要といたしておるのでございます。これは今日の労働基準法におきましても乃至又労災保険法におきましても、業務上の疾病の診断乃至認定ということに関する特別の規定がないわけでありまして、これに関する何らかの法律的な規定が定められた場合におきましては、一層けい肺乃至その他の業務上の疾病につきましても、その認定が相当的確に且つできる限り短期間に下すことができるように相成ろうと思うのであります。例えばけい肺を診断する特定の医師乃至専門家を法律に基いて任命し、これが活動の範囲も法律に基いて規定することができました場合においても、けい肺症の認定をもつと的確に且つもつと早く下し得ることも決して不可能ではないと思われるのであります。その結果はもとより犠牲者である患者に対する補償の実施が早期に行われ、又一方医学的な臨床的な立場からすれば、療養の時期を失するというような事柄も少くなると思う次第でございます。併し今日ではいろいろの条件のためにけい肺症の認定が非常に遅れておるということは自他共に是非とも考え直す必要があるところではないかとも思われるのであります。 そのけい肺症の認定が行われるのに最も困難な原因の一つに、けい肺症状を決定する一つの基準が今日の医学者間においてなお幾多異論があります。例えばけい肺症の分類を一期、二期、三期或いは一度、二度、三度というふうに分類するという一応の案が多く行われておるのでありまするが、我々が又過去五カ年間の経験に基くと、むしろ一期、二期、三期の分類よりも、A型、B型、C型といつたような特殊の観点からしてけい肺症状の分類を行う必要性も痛感いたしておるような次第でありまして、けい肺症状を的確に定める、且つ動かし得ない基準を制定するというところになお若干の困難性があるわけでありまするが、これは多くの専門家が相共に研究をいたしたならば必ずしも不可能な問題ではない。すでに過去三回も国際機関の下にけい肺専門家会議が行われておりまするが、そのレポートを見ましても、けい肺の症状の分類に対する一つの基準案なるものが提案せられておるのでございます。我が国では未だそういう基準案さえも提案せられておられない現状でありますが、これは是非とも我々も相努力して基準案の作成に邁進して行く必要があろうと思うのであります。それができましたならば、今日非常な長時日を必要としておるけい肺症の認定にも一段と困難性を打破することができるものと考えられる次第でございます。 その次に、具体的に補償の問題についても幾多考究を要すべき事柄があろうと思います。先ず私が過去五カ年間の経験で最も強く感じておる事柄は、現在の労働基準法の規定に基きまして、あらゆる業務上の災害は三カ年間の療養期間ということが定められておるのであります。従つてけい肺症のごとく極めて慢性的な経過を取らざるを得ない疾病に対しても、他の疾病、負傷と同様に三カ年の療養期間という制約を受けざるを得ない規定になつておるのであります。これは実際の治療、療養の面から考えてみますると、三カ年の療養期間では、今日の医学的な水準から見まして、最高の技術を最大に発揮することがどうも不可能なように私には考えられる次第であります。いま一年、いま二年この病院にいてくれ、且つ我々が治療を行うことができるといたしましたならば、この本人の病気ももつと救つてやることができるであろうと思う幾多の事例に遭遇しておるのでありますが、悲しいことには法規の定めによつてそういう患者と手を切らざるを得ない場面に逢着いたしておるのであります。我々の経験した特殊の場合を考えてみますと、現在なお咯血を続ける、又一般状態も極めて悪い、それにもかかわらず、三カ年の療養期間がまさに切れようとする、そういうときには、我々は涙を呑んでその患者を退院させなければいけない、而も時によつては、 〔理事田畑金光君退席、委員長着席〕 遠方の事業場に帰るその途中の危険性さえも我々保証することができないという場面に逢着したことも決して少くなかつたのであります。これらの事実から勘案いたしますと、今日一様に療養期間が三カ年と規定せられておりますことは、特にけい肺症を対象として考えた場合には余りにも短期間であつて、臨床医学のかなり進歩した今日において、十分その医学の恩典に浴せしめることができないほど短い療養期間のように思われるわけであつて、特にこの点について皆さんがたの御検討の下に、療養期間のより延長が実現せられるように私は強く希望して止まないのであります。 今日御承知のごとく健康保険法におきまして、結核という特定の病気に限つてのみ二年間の療養期間を一年延長する特別な扱いを法律改正に基いて実現されたようであります。それと同じ意味において、療養に相当長期間を必要とするというけい肺症については当然に他の負傷、疾病とは別個に扱つて、特定の療養期間を新たに実行し得るように御勘案して頂くということは当然でなかろうかと私は思つておるのであります。御承知のごとく、治療医学は日進月歩で、まさに我々応接に暇がないほど新薬が発見されております。なかんずく今日まで極めてその治療の上に困難であつた結核に対しても種々化学療法剤が発明せられまして、その効果の偉大なのに我々驚いているのであります。御承知のごとく、けい肺症には結核を合併する場合が極めて多いこれに対する唯一の治療法は、この結核化学療法剤の使用であります。この化学療法剤は如何に神のごとき効果が期待し得る新薬であるといたしましても、実際に患者に応用いたしまして、相当見るべき効果を期待するまでには相当の長期間を必要とせざるを得ないのでございます。特に普通の結核とは異り、けい肺患者に結核を合併した、いわゆるけい肺結核の場合においては一層その感を深くいたしておるのであります。その点からいたしましても、三カ年以内にこの結核化学療法剤を十分に駆使して、より治療効果を期待するためには、現在の三カ年というのは余りにも短かきに失すると痛感いたしておるのでございます。 その次にはけい肺患者の一般状態からいたしまして、我々非常に困難を感じておることは、患者の療養生活に十分な安心感を持たして療養生活を送らせてやりたいという事柄であります。現在日本でけい肺専門の病院は栃木県に一カ所しかございません。従つて遠くは九州鹿児島県或いは北海道という極めて遠方の所から家族と別れて、そうして療養生活に入らざるを得ない現状でありまするが、その場合は彼らの生活はもとより二重の生活に陥らざるを得ない。ところが基準法の規定に基きまして、休業補償費というものはいずれも平均賃金の六割が規定せられておるのであります。ところが実際の生活が二重になつて、病院生活を送つておる者は殆んど小遣銭は要らないだろうとお考えになる場合もあるだろうと考えられるのでありますが、決してそうではなく、彼らが安心して療養生活を送るためには、いま少しく彼らの生活を維持する最小限度の補償額というものは当然に考えてやるべき必要があるのではないか。現在の基準法に基いた六〇%の休業補償は、単に家族と共に同じ家に生活をして療養を行なつている場合においては或いはそれで以て最小限度生活は維持し得るとは存じまするが、生活が二重にならざるを得ないけい肺症の療養状態に対しましては、あの六〇%の休業補償費というものは決して十分とは私は考えられない。我々あずかつている多くの患者の中には、他人から小遣銭を借り受けて、そうして必要なる物資を購入せざるを得ないといつたような悲惨な具体的な場合にも接しているのであります。病院が立替えることも時によつてあるのであります。そういうふうにあの長期に亘るけい肺症の療養に対しては、おのずから安心して療養に専心し得るような待遇を考えてやらなければならん。これが当然にその後における療養効果に影響することが決して少くないと思われるのでございます。 更に又問題となる補償の面において、今日多くのけい肺患者は三年以前或いは四年以前と極めて古い昔の労働条件の中の平均質金が基準となつて殆んど大部分の補償額の算定が行われておる。昨年からは休業補償費に関する限りスライド制が実行されて、彼らも救われているのでありまするが、今日けい肺患者が最も多くの望をかけているのは打切補償費にあると思うのであります。彼らはこの療養期間が満了した場合に、一時にもらい得る打切補償費に全面的の、その後における彼らの生存のすべてをかして、すべてを打切補償費に打込んで、彼らは打切補償費に最も大きい期待を持つておるというのが現に療養しておるけい肺患者のすべてが懐いておる考えであります。ところが打切補償費は未だスライド制が実行せられておらない。従つて手にし得る金額の計算の基礎は、過去数年前の低い労働賃金から算出された平均賃金が基礎となつている。ここにも一つの矛盾があると私には考えられる次第であります。特に打切補償がけい肺患者の最後の望みであるというところを十分に一つお汲み取り願いたいと思うのでございます。 この療養につきましては実際に医者にかかればそれでよいというふうなわけにも、私は事けい肺に関しては言えないと思うのであります。今日の段階においては、けい肺症に対しては誠に的確な治療法はないと申してもよいのであります。と言つて私どもの病院におきましては、決して拱手傍観しているような事柄は毫もいたしておらない。やはり単純けい肺に対しては単純けい肺、けい肺結核に対してはけい肺結核独特の治療法はでき得る限り行なつておるものであります。これは国の療養機関であればこそそれだけの高度の治療が実際に実行することができると私は感謝いたしておる次第でありまするが、これがけい肺症であるからと言つて、如何なる医者にかかられてもそれで十分とは私は言えない。やはりでき得る限り国の経営する特別の療養機関に殆んどすべてを収容して、安心して而も最高度の療養が受け得るような制度なり施設を私は希望して止まないのでございます。これは法律の規定とは若干遠ざかるとは思いまするが、実際の点からお願いとして特に申上げて置きたいのでございます。 今日このけい肺法案として、一応我我の眼にもとどまつておる一つの案がございまするが、その中にいろいろ取上げられておる補償の個々の具体的な問題に対する私の意見も附加えてこの機会に申述べてみたいと思いますが、先ず第一にこの転換補償の問題がいろいろ論議せられているようでございます。成るほどけい肺の予防には、先ほどの勝木参考人からのお話にもありましたごとく、作業現場に対する粉塵対策の強化、これはもとより発病防止になると思います。更にその他の労働条件の改善等によつておのずから一定の発病防止は実行し得るとは思いまするが、併しこれは好むと好まざるとにかかわらず、毫も粉塵作業、あの遊離けい酸もうもうと発生する粉塵現場において数年乃至十数年の長きに亘つて労働につく場合においては、好むと好まざるとにかかわらずけい肺症に取りかかられるという運命にあるのではないかと思われる。もとより予防措置の如何によつてその発生率は減少して行くとは思いまするが、皆無にまで持つて行くことは殆んど不可能に近い事柄ではないかと思われるのであります。従つて軽度のけい肺患者という者は、今後ますます増加こそすれ減少する気配は毫も見受けられない。この軽度けい肺の時期において、然らば如何にすればその後における病状の増悪を予防し得るかと言えば、そこに最も有力にして決定的な手段は、配置転換を行うというところにある。これは本人から見れば、もとより本人の意思に反してでも必要な場合においては配置転換を命ずる必要があろうと思う。こういう点からいたしまして、配置転換をけい肺症の進行防止の角度から強化せしめるためには、是非ともこの配置転換に対する何らかの補償の手を打つ、こういうことの必要性はもとより当然のことのように思われるのでございます。 ここにけい肺症というものは、一体進行するものかしないものかという医学的な重要なる問題があると思います。例えば或る時期における集団検診を受けて、けい肺であると認定せられた患者が、その後も引続きその職場に働いていた場合において、その後その患者がけい肺症がどんどん進行して行くものであるか、停止しているものであるかということは、いろいろまだ医学的な角度から検討を要する点もあろうと思いまするが、我々の医学の常識的な立場からすれば、やはり原因が積み重なればなるほどその原因によつて起り得る病的変化というものは増悪して行くのがこれは当然の結果でなければならん、こう思つている次第でございます。従つてけい肺症のような慢性な疾患におきましても、原因が除去されない限りは、その人間に現われた病的変化はその後において進行すると、こう考えるのが当然であり、これが進行を予防するためにはどうしても配置転換という手を打たざるを得ないと思う次第でございます。従つて配置転換をより効果的に且つより普遍的に実行するためには、配置転換に関する或る程度の補償を考えるということも、私は当然のように思うのでございます。 その次に問題となつておる栄養補給の問題があろうと思いまするが、今日結核患者においても御存じのごとく、病気そのものは肺臓に限局する、或いは腎臓に限局する、けい肺症であれば大部分肺臓に限局しております。併し結局この病気そのもの、即ち病的変化が肺臓に限局いたしておる病気であるといたしましても、その病気から来る全身的の影響というものは、これは疾病の治療の角度から見て、又疾病の予防の見地からいたしましても、当然に医学の目標とせざるを得ない事柄であろうと思う。即ち病気が肺臓に限定いたしましても、その病気の結果、全身的な影響としては栄養の低下、これが当然の結果であろうと思うわけでございます。特に結核と同様に、私はけい肺症はこの病気の本体的の点からいたしまして、他の人々とはちよつと違つた考えを持つておる。それはどういう考えかと申しますると、皆さん御承知のごとく、この胃癌或いは肺臓癌或いは子宮癌といつたようなあの癌乃至その腫瘍、これは非常に今日の医学においてはその病的変化はその臓器に限局はいたしておりますが、全身的な影響は非常に大きい。特に栄養の低下というものは癌疾患においても特に著明な変化となつて現われて来るのであります。けい肺と癌とはなぜ私ここに二つを並べて申上げたかと申しますると、肺臓におけるけい肺症の変化と癌の変化と極めて類似の点があるように私には考えられる。病気の本体は全然別個のものでありまするが、この病状発展の途上において癌腫とけい肺症とは非常に近似した変化を見られるのであります。癌によつて全身的な影響が非常に高度に現われると同様に、けい肺症も又全身的な影響は極めて見逃すことのできない著的な変化となつているのであります。御承知のごとく、鉱山に長年労働すれば、三十代の者がすでに四十歳、五十歳の顔貌を呈して来る。これは病気の症状が比較的軽度でありながら、すでに全身的の影響が外部に現われている証拠とみなさなければならん。こういう病気であるといたしましたならば、今後治療の面においても、癌に対して抗生物質が研究せられております。例えばザルコマイシンといつたような特殊な抗生物質が肉腫に非常に効果があると言われております。私はこの考え方からしてけい肺症にも或いは独特の抗生物質が発見される時期が来るのではないか、こういう考え方は、けい肺症と癌腫と非常に近似した変化があるという事実に立脚して私は一つの夢を懐いているのでありまするが、そういう点からいたしまして、私けい肺症と栄養とは誠に重要な関係にある。けい肺症の今後の発展増大を予防するためには、栄養の問題は決して等閑に付することのできない一つの予防法であり、一つの事前的な治療法と私には考えられるわけであります。従つてけい肺症を発生する危険な業務に従事しておる労働者に対し事前的なその予防手段を、或いは粉塵防止その他の方法において講ずる必要があるならば、肉体的な予防手段としての栄養問題を取上げるということにおいて不合理な点は少しもないことであり、我々は是非ともこれは法律の力においてでもこれが実行を期待して止まない事柄でございます。 時間もたつたようでございまするが、最後に申上げておきたいことは、先ほども一言申しましたごとく、けい肺と結核は誠に切つても切れない悪因縁がございます。我々が過去において扱つた患者の約六割は、相当高度の結核を合併いたしております。今日結核に対しては外科的の治療法も相当研究せられまして、見るべき効果を挙げるまでに医学が進歩いたして参りましたが、不幸にしてけい肺と結核の合併した場合においては、その斬新な而も進歩した外科的な手術方法を応用することができない。漸くにして応用し得る段階は、化学療法剤をふんだんに給するという点にあるわけでございます。これも私どもの過去の経験によりましたならば、この化学療法剤のみの使用によつても、今日けい肺結核に対して臨床上相当見るべき治療効果が現われて来るとすでに私は確信いたしておるのであつて、その一、二の事例は今日ここにも持つて参つております。それから単純けい肺に対しても、これは今日治療法がないのではないかというふうにお考えの向きもあるように聞き及んでおりまするが、我々といたしましては、決してこれはそういうふうには考えておらない。ただ研究が未だ足りないというだけであつて、今日僅かな我々の研究からいたしましても、単純けい肺に対しても相当見るべき治療効果を期待し得る治療法があるのであつて、現在私どもの病院ではすでに相当数に対してこれを実行して、見るべき効果を挙げておるということを附加えておきたいと存ずるのであります。 一応私のお話はこの程度にいたしまして、なお御質問がありましたならばお答えすることにいたしたいと存じます。
○委員長(栗山良夫君) 只今青山先生においで願つたのでありますが、実は労研の勝木先生が時間を大変お急ぎのようでございますから、青山先生に大変申訳ありませんけれども、少し御猶予を頂いて、勝木先生に対して御質疑のある方は順次御発言を頂きまして、そのあとで青山先生に御意見を伺う、こういうことにいたしたいと思います。
○吉野信次君 ちよつと勝木さんに伺いますが、予防措置で、まあ鉱山の場合ですけれども、真空装置付の鑿岩機、私は素人ですけれども、日本にも入つたというような話を聞いたのですが、これはどんな状況ですか、ドイツでたしか……。
○参考人(勝木新次君) 私もドイツでやつたもののことについては直接調査はいたしておりませんが、かなり効果があるというようなお話は伺つております。それから又方式は違いますが、日本でもそういう方面についての考案が一、二ありまして、そういうものについては私ども直接試験をしてみたこともありますが、なお実用するまでに改良すべき点はあると思いますが、こういう方面だけでなしに、今後大いに研究をして、坑内深く水を引張つて行く、配管をするほうがいいのか、吸引の方法をとるほうがいいのか、この辺は実地についてもつと具体的な研究を進めて、効果の上るふうにして頂きたいものだと考えております。
○吉野信次君 と申上げますのは、私の知識は少し古いけれども、昔そんなことをやつておりましたが、聞いたときにも、非常に細かいものでして、今考えても何だと思うけれども、何か水が通らないような布でやつて行く、そのほうが通るのだという、まあそんなことがあるかなと言うたのですけれども、それだから防塵のマスクというのは、比較上でしようけれども、殆んど駄目じやないかというふうにその当時は聞いたのです。それからまあ水をやることも、私はいいにはいいけれども、実際山の坑内に入つて水をやれと言つても、掘るほうがなかなかやらないのですね。それでそのときには、そういうものがあれば、そういうものがどのくらいのものか知らんが、大いに望をそこにおいたらばどうかということが、私が行つたときに問題になつたのですが、丁度この機会に場……。そうするとその後余り普及しておりませんね。
○参考人(勝木新次君) 日本では余り普及しておりません。それで吸引いたしますものも、吸引した埃はお話の通り布の袋の中に吸い込んで、こし取りをいたしますもの、或いは水で落すということもいたしておりますが、袋で取るほうがいいのじやないかと思います。それから防塵マスクのこととも関連があるわけでありますが、その点についても若干我々のほうで調べてみました結果、けい肺を起す粉塵は非常に細かい分子でありますが、今のような布の目で逃げるとすれば、その細かいものが逃げる可能性が多いということは確かですが、併しマスクの場合も同様に細かいものも相当よく取れるので、ですから多少逃げるという可能性がありましても、効果は十分期待できるような事情にあると考えております。
○榊原亨君 先ほど職歴がはつきりしないために責任の所在が明確でない。従つてこれについては非常に困難性があるというお話でございましたが、どうしたらその補償の場合に具体的にいいという方法、具体的なお考えはお持ちじやないでございますか。
○参考人(勝木新次君) それは法律上のことはどういうふうになるかわかりませんが、現在のは先刻申しましたように、責任の所在がはつきりしないということと、それから同時に発病の時期という法律上の認定の時期がからんでいるわけだと思いますが、それがいつにきめるかということで、非常に補償額に大きな開きが出て来ます。補償額との関連がありますから、それを明確にきめなければならない。そういうことが技術的になかなかきまらない。もう一つ補償責任と考えられるものが、戦前になつて参りますると旧法でやられる。こうなつたならば全然なきにひとしいものになつてしまうというようなことになるわけであります。それじや現在の技術を尽せば、いつにその原因があつて、どこに責任所在があるかということを明確にできるかといいますと、これは一つの山だけにおつた方ならよろしいのでありますが、転々としておるような場合が相当多い。それで事柄がすべて過去のことに属しておつて、その山としても当時と今と同じでない。或いは廃坑になつているような場合もあるわけであります。ですから原因の時期とか、それから責任というものの所在を突きとめようとしたつて、技術的にも実際できないというような事例も出ておるわけであります。ですからどうしてもこういう特殊な事例については、これはできるのかできないのか、法律上そういうことがいいか悪いかということには問題があるかも知れませんが、まあ何分現在起つているけい肺患者と同じような事情で起つているものなんですから、そういうものには今の責任者の追及とか何とかということが困難であり、或いは不可能なことであつても、国として総括的な措置として何とか補償をしてもらうというような方向で考えて頂けないものだろうかというふうに考えるわけですが、それを法律上ではどういうふうに扱うことになるか、この点は私どもにはわかりませんけれども、実際責任の所在がはつきりしないということは、これは事実なんです。それに補償を与えるということも非常な困難になつておる。それは一応わかるのですけれども、併しけい肺では過去には診断されたことがなくて、或いはあつても見逃されておつて、現在ずつと進行して来てから初めてわかるという事例が実際あるわけです。ほかの職業病にはそういうことが殆んどないのですが、こういう特殊な疾患であるためにこういう悲惨な実例が起つて来るのですから、けい肺についてだけは何とかこういう人を救う特別な措置を考えるようにして頂けないものかということを考えておるわけであります。
○委員長(栗山良夫君) それでは勝木先生どうも有難うございました、続きまして東京大学工学部長青山秀三郎君の御意見を伺います。
○参考人(青山秀三郎君) 大変遅くなりまして御迷惑をおかけしたのではないかと思いますが、よんどころないことで遅刻いたしました。 このけい肺のことにつきましては、御承知のように労働省のけい肺対策審議会でいろいろな専門に分れて討議されておるのでありますが、私は主として予防専門、けい肺対策のうち、その予防に関します事柄を委員会の中では取扱つて参りました。なお私、自分は大学におりまして、長い間昔の採鉱冶金、その採鉱のほう、只今鉱山と申しておりますが、採鉱学のほうを勉強いたしておりますので、その二つの立場から御参考になるかどうかわかりませんが少し申上げたいと思います。 けい肺の問題が最近非常にこういうところで真剣にお取上げ頂きまして、御協議を仰ぐようになつたということは非常に喜ばしいことだと思うのであります。又一方医学のほうも非常に進歩して参つておるのでございますが、遺憾ながら私ども専門といたします採鉱関係のほうで、粉塵を起すというその問題に対する研究も、実施面も、甚だ遅れておりまして、誠にまずいことだと思うのであります。そこで何とかして坑内に立ちまする粉塵を最小限度にしたい、これは今職業病と言われておりますけれども、日本ではまさしく職業病でありますが、私必ずしも世界的に見て職業病だと思わないのです。その処置さえ完全に近いものに持つて行くことができれば、過ちで起る病気という程度まで引下げたいと思いますので、これは病人になられた方を見ますと、人道的な立場から見ましても、十分な措置を業者も、又国としても考えなければならないと思います。そこで戦前或いは戦後、アメリカ、ヨーロツパ等に私も多少行つて参りましたし、行つて来た諸君の話を聞きましても、この点でも、どうも日本が甚だ粉塵を発生する、或いはそのあとの始末に対する処置が手遅れいたしておるようでございまして、もう少しこれを急速に解決して行きたいと実は思つております。現にアメリカに参りますと、よし鉱山に参りましても、私どもけい肺の話をいたしましても相手にしないのです。そういうものがあるかなということなんです。けい肺というものを鉱山と結び付けて考えるのはむしろ私は国辱だと思うのです。それほどアメリカの坑内がどうして粉塵が立たないのかということなんですが、これは御覧になつた方は驚かれると思いますが、数時間坑内を歩きまして出て参つても鼻の孔が黒くならない。つまり坑内の空気が清浄なんです。これが実情であります。あの通り大仕掛に機械を使つて採掘しているのですが、実際よく粉塵の発生を防止しておる。ドイツへ行かれました方は、最近鉱山は見ないで、炭鉱を主として見て来られるのですが、ドイツの炭鉱は、これは石炭の性質にもよることでありますが、非常にもうもうと粉塵が立ちます。石炭の粉が立ちます。これはドイツはこういうことをよく考えておる国でありますけれども、石炭の粉が飛ぶということに対して甚だ呑気な態度をとつております。これはけい肺ではありませんが、これと似た、つまり炭肺と申しますか、石炭の粉が肺に入つたやはり類似の病気でありますが、これを起す原因になると思いますけれども、けい肺ほどは恐しくない。炭肺の原因は十分与えると思うのでありますが、石炭の粉を吸うことに対して無関心とは言えませんが、措置は余り講じられておらないというのが現状であります。 それで日本でも、炭鉱でも鉱山でも両方にその問題がありますので、できるだけアメリカの坑内事情に近いように日本の坑内の事情を持つて行きたいと思うのでありますが、何しろ長い間の経営でもあり、依然として機械の操縦その他に不備な点が多いので、今直ちにこれを著しく好転するということは、今お話がありました通り困難だと思いますけれども、これは捨てておけない問題だ、それで鉱山の関係では、今日のけい肺法の中にもございますが、第七条で鉱山保安法のことが出ておりますが、これがまさに私ども予防関係で申しますと一番関係の深い現行法であります。この鉱山保安法の立場で、いろいろ保安協議会等におきましてもこの問題を申しまして、如何にして岩粉なり炭粉なりの飛散を防止するかということが出ております。ここに出ておりますのが昭和二十四年の法律第七十号でございますが、その後数次これに対して改正案を提出して頂きまして、昨年の暮にも又最近の情勢に応じてこの改正案の協議をいたしたのであります。でそれを振返つてみましても、二十四年当時よりも保安法自体もかなり具体的な問題になつて参りました。私どもから見ますと、よくこういう法律の改正をして頂いたと喜んでおるのであります。そういうわけでありまして、更に今申しましたような線に沿うてこれを進めて行きたいと日夜考えておるわけであります。 で先ず第一に予防のほうで考えますと、どうしても岩石を砕きますためには、火薬でこれを起さなければならん、俗に申します発破でありますが、発破をかけなくちやならない、そのためには火薬を入れます火薬孔をあけなければなりません。それを鑿岩機等であけますときに一番大きな岩粉が立つわけであります。発破のときにも無論立ちますが、穴をえぐりますときが一番恐しいのであります。穴をえぐるときに、ここに湿式化するということが掲げられております。水を送らないで穴をえぐるということをしないで、水を或る程度圧力をかけて送る、これは私は湿式化することによつて完全に粉塵を落し得るとは思いませんけれども、先ず第一番に必要なことじやないか、この点についてはもう皆さん御承知と思いますので、詳しく申上げませんが、只今鉱山などでも最近二、三年の間に非常によくなつて参りました。殊に大きな鑿岩機、中型のものについては殆んど湿式化いたしております。ただ非常に小さなものにつきましては、機械自体がそういう装置を持つておりませんので、補助の設備で水を送るというようなことをせざるを得ないので、これも只今何とかして完全に湿式化したいということを機械のほうの立場とも話合つて努めておるのであります。ただ炭鉱の場合には岩石の性質によることでありますが、水を送らないで坑道を掘るということが今日もまだ相当残つております。これは湿式化することが望ましいのでありますが、水を送ると岩石が膨れ上つたり、坑道掘進に非常に煩瑣なことが殖えますので、まだ完全にそこは湿式化しておらない。そうといえども私どもは湿式化することが望ましいと思つて努めておるのであります。ドイツでもやはりこの点は鉱山では非常によく考えておりまして、水を送らないで穴をえぐるということは殆んどいたさないように今努めておるのであります。アメリカはもう完全に湿式であります。従いまして、今申したように坑内が汚れておらないというのは、技術の向上がそこにあるのであります。更にそこから粉が立ちました場合に、或るところで限定して粉をこちらに誘導、粉が出ないように局限するという方法もさまざまにとられております。ただ日本の鉱山でそれが行われておらないのは、やはり作業が不規則であつたり、採掘個所が散在いたしておつたりしましてその統制が今のところ完全に行われないというのが欠陥だと思います。更にそういうふうな、それには今の水を撒くとかいろいろな方法をとるわけでありますが、これも保安法でも最近そのことを条文化いたしておるのであります。そこでいよいよ粉が人間のそばに来たときには、先ほどお話のあつたマスクの問題でありますが、これは今日もいろいろマスクにつきまして研究も進められまして、かなりいい防塵マスクができましたけれども、これは最近日本の工業規格として発表いたされておりますが、この防塵マスクも現段階においては、まだそれをかけましたときの呼吸の状態が、何か一つこういうふうにあるものですから、呼吸の抵抗がある、この抵抗がやはり相当本人に感じまして、ああいう重労働をいたしますときにどうも邪魔になるというので、これを外しちやう。設備はいたしますけれども、そこにぶら下つておるか、腰に下つておるかして、口にはついていないというのがしばしば見受けるところであります。これは甚だ仕事される諸君にそういう不便な器具を付けて重労働をしろということは気の毒ではありますが、保護の上からはやはりこれを付けるということを立法、励行したいが、マスクのほうもできるだけ抵抗の少いものにしなければならん。この規格にも載つておりますが、大体普通のマスクでありますと、こんな数字を申上げてどうかわかりませんが、十ミリとか或いは二十ミリ、水の高さでありますが、十ミリ或いは二十ミリに相当するような抵抗をまだ持つておるわけであります。これが半減されるとか、非常に抵抗が少いということであれば、我慢して付けておられる。只今のところまだ空気を濾過しますときの抵抗が、よく濾過しようとすればするほど抵抗が高くなるから、その点に研究の余地がまだあると思います。最近はだんだん、もう少し研究が進みますれば、我慢して付けておられるマスクができるのじやないかと期待しておるわけでありますが、現状のマスクでは、やはりどうもこれを付けてあの仕事をしなければいけないというところにまだ無理があると思うのです。だからマスク自体の研究をまだ何らかの方法で、労研でもやつておられますが、促進すべきものである、こう思います。 そういうような過程で、けい肺になるもとをできるだけ解決したいということが、殊に技術的にこれを検討したいということが私どもの第一の狙いであるのであります。先ほどもお話がございましたが、けい肺の原因となります岩粉は非常に細かいものでありまして、ドイツでも大体、一ミリメーターの千分の一をミクロンと申しますが、そのミクロンにしましてコンマ一とかコンマ二とかコンマ五ミクロンという、ミクロンのまだ十分の一とか十分の五とか、そういう非常に細かい微粉が蓄積して害を与えるというのでありまして、殊にけい肺のもとでありますけい石の粉はどんなに小さくなりましても、これを顕微鏡で御覧頂きますと、円く粗くて尖つた、非常に角張つた粉なんです。それが害を与えるということは、顕微鏡で見ると恐しいものだという感じがするのであります。でそういう細かい微粉が肺に蓄積して害を与える、そういう細かいものを実は取らなければならないのであります。その点に非常に技術上苦心があるのであります。最近水を送つて粉塵を落すということも考えておりますが、なお水を送らない場合には、その穴口で適当な方法で収塵をする、塵をおさめるわけでありますが、収塵機も二、三出て参りました。又ここでお話があつたと思いますが、ドイツの製品がもう一つ日本に参考に入つております、これをこちらで研究いたしまして、国産のものも二種類ばかりございますが、この三つの種類が卍巴で研究をやつておるわけです。結局これも研究の過程でありまして、今ここでお話がありましたように、細かいものまでよく取れるか、作業能率にどう影響するか、そういうような点研究いたしておりますが、まだ私完全だとはちよつと考えられないのでございますが、そういう点で湿式にもし、又乾式に対して収塵機に対する研究も今進めております。 そういう事情でありますので、只今のところまだまだ道遠しと言えばそれまでですが、私はだんだん解決されておるという、多少楽観かも知れませんが、感じを持つておるのでございます。そういうようなことでこれ以上外国の知恵によるというのはちよつと困難かと思いますから、日本独自の立場でこれを研究して行かなくちやいけないのじやないかと思いますが、ただ問題がこういう相当困難なことでありますので、その一例を申上げますと、空気中にあります粉塵の量を測定いたしますのに、只今いろいろな機械が出て参りました。空気中にある粉塵を重さで見ようとか、粉の数で見ようとか、或いは光を当てて曇り工合を見ようとか、いろいろな機械が日本にも出ております。外国にもございますが、そういう機械を持つて来て、例えばこの部屋なら部屋でどれくらいの粉塵があるかということを測つてみましても、例えば寒暖計まで測つた温度がそんなに違つては何も寒暖計を信用いたしませんが、粉塵計で測りますと、場合によると相当な差が出て来る。これはどこが悪いのか、機械が悪いのか、測り方が悪いのか、原因は両方かも知れませんが、非常に差が大きい、倍もあるのであります。従つてそういう粉塵の測定すらまだ完全でないと私は思います。そういうことで技術上の問題がたくさん残つておりますが、ただ今アメリカの鉱山の例をちよつと申上げましたが、そういう例を見ますと、甚だ日本の現状に対して遺憾だということを痛切に思いますけれども、十年或いは五年前の炭鉱、鉱山の坑内を御覧になつたのと、只今、或いは期待するならば数年後御覧になつた場合とは、相当差があるのではないか、又差を付けなくちやならんのじやないかと思います。 それでけい肺そのものについては私申上げませんが、予防の立場から申しますと現状はさようなことでありまして、それについてけい肺対策をどうするかということは、皆さんのお考えに待ちたいと思うのでございますが、少くとも予防関係においては幸いに鉱山保安法のほうで年々改善して参りまして、昨年暮もマスクにつきましても規格の品を使えということで条文に掲げるように工夫しております。できるだけこれを実行して、又こういうものは或る程度まで使うほうにも私は教育が要るのじやないかと思うのでございますが、よく普及のための教育も徹底してつけなければならんものだということをよく考えて置くべきじやないかと思います。 只今いろいろ申しましたような理由で、欠陥もあちらこちらにございますが、私どもがけい肺に対して専門的には責任も感じ、多少は明るい見通しを持ちたいと思つておるわけであります。細かい問題を申上げたいと思いましたが、御質問がありますれば何でも申上げます。
○委員長(栗山良夫君) 有難うございます。 それでは大西先生、青山先生に同時に御質疑のある方は順次御発言を願います。
○榊原亨君 只今青山先生がお話になりました、防塵のことについて研究過程にあるが、数年後には明るい見通しだという御意見の下に立ちまして、現行の鉱山保安法の程度において一応のけい肺の予防ということができる可能性を、まあむずかしいこれは御質問ですが、持つていらつしやるのでしようか、御意見を伺いたい。
○参考人(青山秀三郎君) 申上げますが、この保安法が二十四年にできました当時でございますね。まだこの粉塵の問題についての保安法に対しても私相当不備があると思いました。それで丁度鉱業法と姉妹法で鉱山法ができたわけでございますが、そういう関係で保安法そのものに私欠陥があると思つておりましたのですが、年々、これは先ほど申しましたように、マスクの規格を入れるとか、そういうことを励行するような条文がだんだん盛り込まれて参りまして、これを又明年、明後年新しい状態に即して改正する必要が起るかも知れませんが、只今のところは保安法のほうが相当現在の仕事をされます上においてはかなりきびしい法律になつております。そこまで近付けて下されば、一歩先へ行つておりますから、この線に近付いてくれれば一段進めるのじやないかと思います。法律のほうが少し先に進歩しておるものでございますから、更に見通して保安法を完備いたしますれば、予防の立場から見ますと或る程度まで私法律的にも措置が行い得るんじやないかと只今思つております。
○榊原亨君 先ほどアメリカの鉱山において埃が少いというようなことをお話になりましたのですが、只今の鉱山保安法によりましても或る程度の研究が進めばアメリカの状態になし得ると一応のお見通しがございますか。
○参考人(青山秀三郎君) これはちよつと、優だ言いはばつたいことを申上げますが、私の理想としましては、アメリカの鉱業法を今日持つて来ませんでしたが、甚だ簡単なものでございます。アメリカでは殆んど必要なくなつた。日本は遺憾ながらまだいろいろな法律も必要であり、又現場の技術なりそういうものを持たないと、現在の問題は解けないものですから、こういうものが利用されておる。日本の現状としてはむしろ当然だと思つております。
○榊原亨君 大西先生に承わりたいのでございますが、先ほど結核と癌の、けい肺と癌のお話がございましたが、それは日本の学界においてすでに認められた学説でございますか。
○参考人(大西清治君) まだ学界に発表はいたしておりません。従つて現在としては、現在の段階においては私個人の考え方であります。
○榊原亨君 先ほど栄養はけい肺を予防することが或る程度できるのだ、或いは或る点からいつたら栄養の補給というものはけい肺をとめ得るであろうというようなお話がございましたが、これも現在の学界において認められた学説でございましようか、その点について伺いたい。
○参考人(大西清治君) 学界云々と御質問を受けますと、まだ具体的に学術的な研究テーマとしてけい肺と栄養との関係について学界で報告いたしておりませんから私からは単に個人の意見と申上げるより仕方がないと思います。
○榊原亨君 大西先生は三百人の患者の御経験があるというお説を承わつたんでございますが、その三百人の患者につきまして、例えばまあ一型、二型、三型というような形を付けるということについては先ほど御議論がありましたことでございますが、その一型、二型、三型の統計的な御観察、並びに結核の合併症についての統計的な御観察、先ほど結核は六〇%ということをおつしやつたのでございますが、これが労働省の出しております昭和二十三年から二十五年の六回の検査の統計と少しく違つておる。これは統計でございますから止むを得ないことでございますが、そういう而についての統計的な御観察がございましたら承わりたいと思います。
○参考人(大西清治君) お答えいたします。一期、二期、三期の症型別に見ました私どもの取扱つた患者は、これは労働省においてすでに補償の対象となるけい肺症だという認定を下された事例ばかりでございます。従つて一期の患者という者は皆無、少くとも二期以上の患者ばかりが三百名で、但し結核が合併した場合は一期であつてもけい肺結核として補償の対象として認定されたという者は入つておりますが、ともかくも補償の対象と認定を受けた患者ばかりが入つておりますので、一般の分類の数値とはおのずから違つて参ります。結核合併症も私どもはそういうふうに認定を受けた患者ばかりでありますし、特に又遠方からわざわざ入院して参つておる患者のみでありますので、相当病気の進んだ者のみが入つておる。従つて六割の合併率というものは他の統計から比べますと相当数字はおのずから違つて来ると思います。
○榊原亨君 先ほど認定の期間が長い、これを短くすることが実地の諸先生方にとりましても大事なことでありますし、患者にとりましても大変なことであると思います。それにつきましては基準の認定ということが必要だ、或いは形を一型、二型、三型としないでA、B、C型にするというようなお話があつたのでありますが、それでは具体的にその期間を短くするのにはどうしたらいいか。まだ現在相当長くなつておりますのは、先生がおつしやいましたように、その形の分類ということに起因する、この基準の認定がむずかしいということでございましようか、或いはその所管庁がその事務を怠つておるために起つたと言いましようか、その方法と、その改善の方法の先生のお考えを承わらして頂きたいと思います。
○参考人(大西清治君) 申上げます。先ず第一の原因といたしましては、健康診断の実施が、けい肺症といつたような特殊な疾患の発見のために行われておる割合がまだまだ少いのじやないか、現実に発見される機会が随分見逃されておるのではないかということが一つと、それから第二は、実際の認定に当る医者の監督官が非常に少い、手が少い。それから又認定をする手続についても一つの扱い規定も余り完全ではない。一つの認定機関といつたような、国の定めた認定機関というものが、例えば労働省或いは又地方の基準局等に属しておるようなことになれば、これは英国にそういう組織を持つておるのです。そういう組織、機関を持つということも認定期間を短縮する意味において相当私は有効な方法ではないかと思うのです。そういうことはどうしても法規の上で定められない限りにおいてはちよつと実行困難なことになると思います。
○榊原亨君 レントゲンだけではけい肺症が診断ができないということは私どもも聞いておるところでありますが、そうしますと先ほどお話になりました、職歴とか或いは症状とかいうようなものを参考に入れると申しますか、入れて御診断になるわけですね。そこでその症状というものを、これはけい肺の独特の症状で、これがあればもうけい肺であるというようなことがあるのでございましようか。私がほかの方から承わつたところによりますと、認定の期間が長いというのは、その症状を診断、確定する方法が確定しておらないからだ、総合診断ということになつて来るから自然に長くなつて来るのじやないか。又その経過も見なければならんというようなことを私承わつておるのでございますが、若しもそうであるといたしますれば、先ほどお話になりました、都道府県にこの認定の役人を置くとか、機関を置くということだけではこの問題は解消しないんじやないかというような虞れがありますが、その点についての御意見を一つと、それからもう一つは現在の医療制度、各機関の制度におきまして、各都道府県にこの専門の認定をする医者、それを現在の段階でも置くことができるでございましようか、その点の御意見を承わりたいと思います。
○参考人(大西清治君) お答え申上げます。確かに榊原先生の御意見のごとく、認定する場合の医学的な診断技術も相当現在の段階においては完成せられておらないというところもございます。現在先生のおつしやる通り、過去における職歴或いは現在の症状等を総合的に判断して、けい肺の何度であろうかというふうにだんだん推論的に持つて行くわけでありますが、又労働省においても鋭意研究せられておりますごとく、心肺機能の特殊な診断技術がより一層進歩して参りましたならば、その間の困難が比較的私は少なくなつて来るというふうに確信を持つております。アメリカ乃至英国におきましての診断では、動脈血圧の酸素飽和度を極めて簡単に見る、オキシメーターと言つておりまするが、そういう方法で以てけい肺症の診断を相当助けておるという報告も私どもは持つております。こういうことも将来日本でも行われ、多数の患者についてのデータが集積されて参りますると、動脈血圧の酸素飽和度という点からだけでも一層診断の確定ということに大きい力を与えるものだと私は思つて、間もなくそういうことももうあと一年も待ちますならば成功して来るんじやないかと私は思つております。
○榊原亨君 先ほど単純けい肺を治療する方法があるというお話がございましたが、それはどうすることでございますか。或いは又三年から五年に二年間延ばしたら、もう少しこの患者は何とか治療できるだろうというような場合が多々あるというお話がございましたが、それでは延ばしましたら、そのときどんな治療をするのでございましようか。或いはけい肺専門の病院ならば何とかすることができるのだが、一般のところではなかなかむずかしいというような、特殊な治療があるというふうに私承わつたのでございますが、それでは現在けい肺病院でやつていらつしやいます特殊な治療というのは何を言うのでございますか。大体素人にわかりやすい程度で御説明願いたいと思います。
○寺本広作君 病院に伺つたとき、これをお尋ねして、こういうことなんですが、こういう資料をお持ちなのか、なければあとでお調べの上教えて頂くようにして頂きたいと思いますが、今の榊原先生の質問に関連しまして、先ほどお話の労働省の珪肺病院の三百人の事例につきましてれ全快、病状が治癒して、元気になつて国に帰つた者が何人くらい、それから三年の期間を経過したのになお治らんで退院した者が何人くらい、それから三年の期間を経過して打切、補償になつて、自費で続けておつた者がどれくらいあるか、若しわかれば三年で打切補償をもらつて退院した方々のその後の状況なり、何年くらい寿命があつたか、これは打切補償の場合、今の千二百日というのが平均余命年数、これは計数的に計算して出しておるものでありますから、それが恐らく五年になれば平均余命年数が変つて来るだろうと思います。先ほどお話のように、今の千二百日というのは一般の災害補償を受けたすべての労働者の統計なんで、けい肺だけ別にとつたらこれは変つて来るものかどうか、そこらが法案審議に非常に大事な点になつて来ると思いますから、非常に御面倒でありますけれども、お帰りになりました上で結構ですから資料を出して頂きたい。
○参考人(大西清治君) 寺本先生の御質問にちよつとお答え申上げますが、これは我々としても非常に欲しい資料なんでありましてれ是非やりたいと思つております。一部はもうすでに私どもも調査済の事項がございますが、寺本先生のお聞きの点を満たすためには、なお帰りました者の行先を追求して行つて、退院後の経過を照会しなければならない問題があるわけなんですが、若干の期日を貸して頂きましたならば、詳細に調べて委員長の手許まで書面で以て御報告いたしたいと思います。 それからもう一つ榊原先生の御質問にお答え申上げますが、現在珪肺病院で行なつておりますけい肺治療の特殊な治療法を簡単に申上げます。このけい肺患者の一番困る症状は呼吸困難、即ち息切れの状態でございます。この息切れの状態を多少でも緩和さしてやりますると、患者は非常に喜ぶ、又対症療法に過ぎないのでありまするが、そういう息切れ或いは呼吸困難といつたような最も苦痛とする症状を平快ならしむるようないわゆる対症療法を先ず第一に行なつておるのであります。又これにつきましては特効的な薬は御承知の通りございません。普通の薬ではなかなかけい肺患者の独自の呼吸困難並びに咳嗽というようなものは平快しない。ところが私どものほうではこれに対して一昨年の冬頃からコーチゾンの注射をやつております。御承知の副腎皮質ホルモンのコーチゾンを今日まで十数名の患者について相当研究的な建前からコーチゾンの治療効果を観察して参りまして、これは学界にすでに報告いたしております。この注射は私どもはけい肺に関する限りにおいてはやや特殊性を帯びた治療法、こう考えておるわけでして、それにつきましては症状の平快、呼吸機能の回復、体重の増加等、臨床的に見まして相当見るべき結果が表われておるというふうに私は確信いたしておるわけであります。なおコーチゾンのほかに最近では乾燥プラスマも使つておりまして、乾燥プラスマは、これは普通輸血の代用薬としてお使いになる薬でございまするが、これはなぜ乾燥プラスマがけい肺に効くかと申しますると、単純けい肺に罹りますと、血液の成分が相当変つて参ります。この乾燥プラスマの注射によつて血液のその変化した症状がかなり回復して来るという医学的な事実を突きとめることができたわけでありまして、乾燥プラスマなども相当使つております。それから鎮咳剤としては例の、今ちよつと名称を忘れたのですが、アストリジンと申しましたか、オランダ製の、蝸の唾液からとつた非常に貴重な薬もありまするが、これも我々のほうで今試みて相当の効果を期待できる段階になつているわけであります。一般単純けい肺におきましては今日のところそういう種類の治療を行い、又近く計画して実行したいと考えておりますことは、レントゲンの深部治療を胸部に行う。これは日本のいずれでも実行しておりません。或いは予備的な実験で以て効果が期待し得るという予想を持つております。本実験にはかかつておりませんが、この夏あたりからはレントゲンの深部治療を開始いたします。それからアメリカのほうで行われておる陽圧酸素吸入療法、これは特殊な機械が必要であるわけですが、これはけい肺上の慢性気管支炎、肺気腫又は喘息といつたような慢性呼吸器疾患の特殊な治療法としてアメリカで相当な効果を挙げておるわけですが、これもできれば予算が頂ければ、輸入いたしまして、この陽圧酸素吸入療法ということもけい肺の特殊療法として取上げて行きたい。これはまだ機械も入つておりませんので、全然治療成績はございません。
○榊原亨君 先ほど配置転換のことをお話になりましたが、今までの御経験上配置転換をやることによつてけい肺の進行がとまるのでございますか、それともそれに合併しておりますいろいろな症状がよくなるというのでございましようか、その点の御経験がございましたらお話を伺いたいと思います。
○参考人(大西清治君) 特別の経験は私どものほうは現場でございませんのでないのですが、患者について治療中に若干興味のある変化を発見することがございます。そういう事実からいたしまして、配置転換をやるということは、原因の新たな作用を全然防止する状態に置かれておるわけでありますので、私は少くともその大半の事例において急速なけい肺症の進行ということは当然に措止される、こういうふうに考えておるわけでございまして、私どものほうの経験は、現場の配置転換をやつたその人間について検査したという経験はございませんが、患者について見ますれば、そういうことも推論的にいろいろ興味のある変化も経験しておるわけであります。
○阿具根登君 青山先生にお尋ねいたしますが、先ほど青山先生のお話では、アメリカの炭鉱のお話がありまして、非常に粉塵がないためにけい肺というものは見られない、こういうお話でありましたが、金属ですね、金属の鉱山とか或いは窯業、鋳物業、こういうものにはやはり相当けい肺患者が出ているのじやないか、かように思いますが、それに対する予防はどういうふうにアメリカ等ではやつておるか、お示し願いたいと思います。
○参考人(青山秀三郎君) 私先にアメリカの例を申しましたのは、アメリカ鉱山の例でございます。アメリカの鉱山は、日本でも今一番問題になるのは鉱山だと思いますが、アメリカの鉱山が今申上げましたような状態で、炭鉱はこれはもう日本と大分事情も違いますので、アメリカの炭鉱の例は日本よりももつと自然条件がいいのであります。通気もよろしい、そういう関係で一層問題になると思います。鉱山自体が今申したような状態であります。窯業その他のほうは私専門外でありますのでよくわかりませんが、少くとも今日のけい肺に出ております金属鉱業、鉱山関係は今申した通りであります。
○阿具根登君 日本の鉱山、まあ炭鉱を外れました金属の問題を申上げますと、日本では金属で、金属がまあ一番多くけい肺が出ておるわけですね。而も大きいところでは殆んど湿式でやつておると思うのですが、その点はアメリカも日本も変らないと思うのですが、アメリカのそういう金属のほうがけい酸度が少いということでもないと思うのです。日本でも相当湿式は使つておるところはあるのです、それでもやはり相当けい肺患者が出ておる、これはどういうように解釈なさるのですか。
○参考人(青山秀三郎君) やはりこれはにわかにそういうことを試みましても困難と思いますが、やはり大体鉱山、炭鉱にいたしましても、一番大事なのは坑内の通気でございますね、ベンチレイシヨン、通気が問題なんです。どうも日本の鉱山の通気が今日もなお皆大体そうでございますが、扇風機等を使わないで自然通気、自然のままに風を廻すというやり方なんです。この通気改善をするということが徹底して来なければ、なかなか局部に起りました粉を防ぐということはできないと思いますが、ただその点日本の鉱山に対して、今の爆破口を開けますために、いろいろ苦心をいたしますが、全体の風が停頓しておるのが一番いけない。そういう通気法を今日本でも熱い鉱山では止むを得ないほかの原因から通気法を変えるようになりましたが、ところがアメリカの鉱山は、実際御覧になるとわかるのですが、小さい鉱山でも大きい鉱山でも、まあ大きいのはアナコンダあたりの大きな鉱山になりますと、日本の全体の産出量を一つの山で出すというような大鉱山であります。そういうところに入りましても、坑内の通気は、まあ炭鉱に入つたような、涼しい風が廻つておるという事情なんです。日本では小さい鉱山ではとても鉱山の通気が悪いので、粉も立てる、これは根本的に変えなければならないことだと思います。一日アメリカの坑内を歩いておりましても、殆んどよごれないというのが現情なんです。それは今の通気が根本の問題であります。それから無論湿式化もいたしております。所によりましてマスクを使う所もありますが、殆んどマスクを使う必要がないというところまで来ておるのであります。
○阿具根登君 私もこの法案につきまして、まあ予防が一番大切だと思つておるわけですね。只今先生のお話を聞いておりますと、アメリカでは非常に予防法が徹底しておるから非常に患者が少いのだ、こういうことになりますと、日本でそれができないということはないわけなんですね。
○参考人(青山秀三郎君) そうなんです。
○阿具根登君 でこういう法律でも十分作つて、そうして予防を徹底させるのが第一だ、こういうことに考えるんですが、まあそれが第一のことだと思うのですが、そうですか。
○参考人(青山秀三郎君) それで先ほど申上げましたように、鉱山保安法で最近、昨年の暮にも又改正いたしましたが、マスクの問題とか湿式化の問題とかいうことをだんだん具体的に考えられて、そのほうで法律的にも処置しようということになつているのじやないかと思いますが、まあ現在日本でも相当この線に近付いている鉱山もありますし、小規模の鉱山だとなかなかそこまで行つておらないというのがたくさんございますから、そういう水準からも少くともこれを作つて、保安法等で抑える必要がある、こう思つております。
○委員長(栗山良夫君) 先生に一点だけちよつとお尋ねをしておきます。実は参議院で或る一部有志議員でけい肺法案を国会に出されて、その審議を只今いたしておるわけでありますが、これにつきまして一番問題になりますのは、今先生の御専門の鉱山のほうにはそう大して問題はないように思うのです。要するに鉱山法が先生の御指摘の通り進んでおりまして、大体現在の状態においては完璧を期しつつやつている。法律ができたからと言つて直ちにどうという問題ではない。ところが一番やはり問題になつておりますのは、遅れた分野として製錬所でありますとか或いは鋳物工場でありますとか、或いは石切り場であるとか、こういつたようなところの予防措置というのが非常に遅れているために、法律を作ると直ちに相当大きな経営的な圧力になるのじやないかという心配が、一部資本家側と申しますか、経営の衝に当る人のほうから意見として出ている。人道問題としては十分御理解願えると思いますが、実際の問題として出ておるわけであります。従つて鉱山以外のそういうような所における粉塵が作用する病気の程度の問題ですね、並びに予防措置を講ずるとしました場合に、非常に困難な、多額の経費を要するものかどうか、経営を危くするような経費を要するものかどうか、その点は如何なものでございましようか。
○参考人(青山秀三郎君) 甚だ重要な問題だと思います。実際鉱山保安法の場合も、そういうような鉱山保安法に今のようなけい肺の問題を織り込むというようなときに、やはり鉱山、炭鉱側にもいろいろ意見があつたのでございます。それで私はむしろ学問の立場から技術的にこれを進めるということが必要なので、たまたまそれは経営される場合に多少過重になるかも知れん、そういうことも決して少くないと思いますが、やはり初めこれは或る程度まできめて、それを励行するということになれば、そのときは多少の損害、負担がありましても、長い眼で見れば、結局人道上も経営上も得るところが多いというところで、進歩の段階では或る程度まで我慢してもらわなければならんというような考えで、保安法もあそこまでとうとう持つて来れたのですが、現在、私申上げましたように、鉱山保安法も、経営される方の立場から申しますと、少し痛いのかも知れないが、これは痛くてもしようがないのじやないか。そしてできるだけそういうふうにしてけい肺患者を少くする。そしてそれに対する措置を技術的に進めるということが非常に必要なことであろうというので盛り込んだのでございます。それでお蔭様で相当患者も、その問題も私は或る程度解決して行きつつあるのじやないかと思いますが、鉱山関係以外の問題になりますと、やはり同様大小にかかわらずあると私は思うのでございます。これは殊に石に近付いて石の細工をしている人のそばに行きますと、そばで見ておれないようないたわしい状態があるわけであります。こういうようなのは何か措置を講じなければいけないのじやないかと思います。そういう大乗的見地からしてけい肺法を御覧になつて頂ければ私どもは結構だと思います。ただそれが鉱山、炭鉱の問題には少い。只今は、前段の予防の問題になりますと、一応保安法のほうに譲つてありますから……ではありますが、一般的にはやはりお考えになられたらいいんじやないかと思いますのですが……。
○委員長(栗山良夫君) それでは参考人の諸先生に一言お礼を申上げます。 非常に当委員会の審議に御協力を頂きまして、長時間貴重な御意見を寄せられましたことにつきまして厚くお礼を申上げます。 本日はこれにて散会をいたします。 午後四時四十五分散会