労働委員会 第5号
- 発言数
- 195 件
- 登壇者
- 15 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1954/02/16
会議録
○委員長(栗山良夫君) 只今から労働委員会を開会いたします。 本日の会議に付する事件は、けい肺法案並びに労働基準法の一部を改正する法律案の二件を審査いたしますると共に、労働情勢一般に関する調査、特に労働行政の基本方針に関する件でございます。 法律案の審査は後刻に譲りまして、冒頭に労働情勢一般に関する調査を行いたいと存じます。御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(栗山良夫君) さよう進めます。ちよつと速記をやめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(栗山良夫君) 速記を始めて下さい。
○田村文吉君 丁度労働大臣が見えられておりますから、この機会にちよつとお伺いいたしたいのでございますが、今の日本の経済界の状況は非常な悩みに直面していると考えるのであります。特に基幹産業の物価というものは世界的水準において非常に高いというようなことのために、日本の経済界を如何にしてこれを軌道に乗せるかということは非常な問題になつていると思うのであります。これはひとり労働大臣たる御資格だけでなしに、閣僚の御一人として、今後の石炭とか電力とかというような問題の大きな基幹産業について世界的物価水準において非常に高いという立場にあるものをどうしたらいいか。石炭鉱業から行きまするというと労働問題が大きな問題だろうと思う。殊に労働賃金という問題は非常に大きくアピールして参る今日の事態でありまするが、これに対しては一労働大臣というだけでなしに、一つ閣僚としてどういうふうに今日、今後の物価というものに対して対応されるというお考えをお持ちになつておるか、これを先ず第一に承わりたいと思います。 それから次に私お伺いいたしたいのは、今炭鉱は運搬のストライキや何かをやつておるようでありますが、ああいうような場合におきまして、そのストライキが組合の指導によりまして、できるだけ組合の犠牲を少くする、そうして大きな効果を収めるという意図はわからないではないのでありますが、そのために全般的に産業が若し麻痺してしまうというようなことが起りまする場合において、一体大臣はどうお考えになりますか、そういう場合にも一体賃金というものは全部に対して払つて行かなければならんのか、出てさえいれば賃金はもらえるというのか、こういうような点が私少し疑問に考えるのであります。こういうことを私は申上げなければならないという根本の問題は、余りにも今日の日本の経済再建ということをやかましく言つているにかかわらず、又日本の経済というものが非常に危機に瀕しているにかかわらず、平常にそういう乱暴なことが行われているじやないか、こういうことに対して私は労働大臣としてはもう少し根本的にお考えになつて、こういう問題の起らない方法を考えなければならんと、こういうふうに考えるのですが、その二つを一つ私は労働大臣にお伺いいたしたいのであります。
○国務大臣(小坂善太郎君) お答えを申上げます。誠にお話のように今日の我が国の経済界は非常な危機的な様相を呈しておると思うのであります。部分的には繁栄部門もあるように見えまするが、一歩深く考えまするときには誠に御指摘のごとく憂慮に堪えない情勢であると思うのであります。そこでこの基幹産業におきましてもできる限りその合理化を推進いたしまして、そして日本の全体の物価を下げて、国際競争の中に立つて日本自体が堪え得るようなそうした日本経済の基盤を確立すべきときであると思つております。そういう際でございまするので、特にこの労働問題もやはり労使だけの問題として見ませんで、国民経済全般の立場との関連において労働問題というものを見、その中における国民所得との関連においての賃金というものを見直す必要があるのではないかということを考えておるのでございましてやはり終戦後非常に押せ押せというような勢いでただやつて参りましたこの日本経済の運営を、今お話のような国際経済との関連で日本の経済をどう持つて行くかということで見直す必要があろうかと考えております。このことにつきましてはだんだんそうした輿論も、健全な輿論が一方において醸成されつつあるように考えられまするので、私といたしましてもどうか労使間に十分なる協力態勢ができ、産業の平和が一日も早く来まするように努力いたしたいと考えております。 第二点の現在行われておりまする石炭鉱業におきまする搬送部門ストの問題でございますが、これも今申上げましたような観点から、労使双方が良識を以てこの問題を解決することを望んでおるのでございますが、誠にお話のように非常に小部分のストライキによつて全体が麻痺する、それが組合の指令によつて行われるという場合に、私どもといたしましてはこういう考え方を持つておるのでございます。部分ストを行いました場合においては、その部分ストに参加した労働者の賃金を差引くことは当然でありまするが、当該部分スト、例えば運搬部門ストが炭鉱の他の部門の機能を麻痺せしめることを意図するものである、部門スト職場以外の労働者も形式的には出勤して労務の提供をなすがごとくであつても、組合のかかる効果をもたらす争議行為の一翼を担うために、形式上出勤しつつ予定の行動として労務の全部又は一部の不遂行を来たしている場合には、部分スト以外でこれに関係ある全労働者についてノーワーク・ノーペイの原則によつて賃金を差引くことは当然であつて、労働基準法乃至労働組合法違反の問題は生じないのであります。この場合使用者はロツク・アウトをしなくても、ノーワーク・ノーペイの原則によりまして賃金を差引くことができるのであります。この場合の賃金差引は、当該部分ストによつてこれに関係ある全労働者について、労働契約の本旨に適つた労働がなされなかつた限度において差引かれるものであり、具体的な差引額は、結局個々の場合の認定によるものでありまするが、出炭を賃金差引の基準とすることは当然であると考えるのであります。そういうような考え方で私どもは法律的には了解いたしておるのでございますが、事実問題といたしましては、早く労使間に十分な良識のある話合いの行われることを期待いたしておる次第でございます。
○田村文吉君 前段の問題でございまするが、これは労働大臣だけおいじめしても御無理かも知れませんけれども、今の日本の状態ではこのままに放置するということでありますというと、物価はなかなか下らない。仮に部分的に金融の引締をやつてみるとかいうようなことをなさつても、先ず第一に労働賃金でありまするが、労働賃金はなかなか下るような情勢にない。むしろ上げようというようなゼスチユアにしても現実的には相当に動いているような状況で、或いは三月攻勢であるとかいうようなことも言われまするのでありますが、こういうようなことを放つておきまして、一方に合理化によつて物価が下るなんということをお考えになることは、およそ経済知識の最も詳しい労働大臣としては私は受取れないのであります。それは若干の企業の合理化によつて経費を切下げるということも不可能ではなかろうと思うのでありますが、殊に今のような石炭のごときに至つては大部分は労金である。そこでそういうものは一体どうして今後日本の物価を世界の物価水準に入れて、重油がどんどん入つて来るとか或いは外国石炭が入つて来るとか、こういうことをして、石炭業者自体がみずから自滅するような方式をお立てになつているのでありまするか、これはまあ業者だけがお倒れになつたところで使うほうでは何でもないというようなものではありますけれども、併しこういうことについて日本の基幹産業が根本的に破壊されたなら大変ゆゆしき問題である。でありまするからこれは私は経済にお詳しい労働大臣に私はお尋ねするのでありますが、今のような合理化というようなことで、或いはむやみに金融を引締めてそれで物価を下げるのだというようなことで、果してこれができるかどうか。又金融引締というようなことをやれば大きな問題が起つて、労金の切下げということになると、これは労働者としても非常に大きな問題になる。こういうような大きな問題があるのに、一体これをどうして打開なさる途をお考えになつているのか。これは私はあなたにお責めするのは無理でありますが、閣僚としてこの点についてのお考えを持つておいて頂きたい。 それから第二の問題でありまするが、えらい丁寧な御答弁で、慎重な御答弁でありまするが、私は慎重な答弁でなくてもよろしいのですが、大体組合が全般の機能を麻痺せしめるようなことをやるということは、このこと自体が全般の意図によつて、組合の決議によつてなされている場合には組合全体のストであるということを考えて差支えないか、そういうような場合において対処する方法はおのずから経営者側にも相当のものがあつて然るべきだと、こう私は考える。いろいろのまあ細かくおつしやれば御説明が付くかも知れませんけれども、昨年電源ストを禁止したというようなことも、いろいろそのこと自体が末端では殆んど作業に大した影響がないということをしているものならこれは影響ありません。けれども機能が全然停止してしまわなければならんようなことを組合の決議において一部分の労働者がやるというような場合にはノーワーク・ノーペイというような問題でなくて、一体そういうこと自体が私は当然組合法としての救済も受けられないし、又経営者側としてもこれに対しては全面的のストライキであるということでこれに対抗し得ると、こういうふうに、私はもう細かい議論はわかりませんが考えるのであります。そういう点について大臣はどうお考えになられますか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 非常に経済にお詳しい田村さんから私を鞭撻する意味で貴重な御意見を伺いまして感謝いたします。全く現在のように重油が石炭に変りつつあるこの状況が、石炭業界を非常に不況に追い込んでおると思いますが、これも淵源を尋ねれば、一昨昨年のストの結果非常に石炭の供給が不安定になり、重油は一方に使いやすいということで非常に重油転換が多く行われたことは御承知と思いますが、その後私どもといたしまして、通商産業当局ともいろいろ話合いをいたしまして、できるだけこの重油転換を石炭に再転換せしめる、こういうことを進めておるのでございます。併し今日に至りまして、やはりそのストの影響等によりまして、非常にこれは今お話のような大部分労働力による石炭というものが、ストがあればいつでも供給が不安定になる。だから重油から石炭に再転換しようという考えを持つておる者でもこの点慎重に態度を持して譲らなくなつて来ておる。甚だ全体の産業計画或いは日本の産業構造をどうしようという場合の障害になつておるのでございます。この点は誠に遺憾であると思います。 なお、この石炭等の基幹産業をできるだけ安くするという方針で臨んでおるのであります。例えば機械化いたしまして、堅坑をできるだけ進めて行く、そうすれば竪坑のエレベーターのところにおる者が部分的にストをするということになりますれば、極めて少人数であつても、石炭の出炭が如何ともなし得ざる状態になるので、今回のストでも炭鉱関係の三十一万のうちの数百人を以て数えるほどの者がこのストに従事しておる。而も一日九万トンからの出炭が零に低下をしておる。こういう状態で、如何に金融的に恩恵的ないわゆる傾斜投資をいたしましても、これは合理化すればするほど非常に効果が挙がるべきものが却つて不安定になる。こういう矛盾した状況も生じて参りますのでございまして、産業の平和、労使関係の平和というものを今日において築きませんことには、日本の経済はどうにもならんところに追い込まれるのではないかということを憂えておるのでございます。お話のように財政全体或いは金融の健全性を強調するということは必要でございますが、同時にどうしても生産性を高揚しなければならんという至上命題があると存じまして、私もお話のように一労働大臣としてのみならず、閣僚の一人として、日本の経済的基礎を強固にするためあらゆる努力をいたして参りたいと考えておるのでございます。 第二点の運搬ストに対しての問題でございますが、今日行いつつありますいわゆる部分ストにつきましては、目下紛議中の問題でございまして、当事者が世論の動向を察知して、良識ある解決をしてもらうということを非常に期待しておるのでございますが、現在の新聞論調はすでにこれは好ましくない争議方法であると、こう論じておるのは御承知の通りでございます。やはり組合の指令によつて全体を麻痺せしめるために行われたストであれは、少人数の者が休んでおつても、これは全体がその意図の下に行動しておるのでございますから、その労務の本旨に適わなかつたという限度において賃金は当然払わないものであろうと思います。私は今の段階では、やはり片方は労務を提供する、片方はそれに対して賃金を払う、こういう労使の関係において、片方は賃金を支払わない、片方は労務を提供しない、その兼合を以て労使関係の紛議を解決する手段としておるのであります。やはり賃金の不払というようなことについて我々の解釈をして行く以外もつと突き進んだことを考えるのはそのときにいたしたい。かような考え方を持つておりますのでございます。 何と申しましても世論も誠にこれは好ましくない争議方法であると考えておるのでございますから、当事者の良識ある解決を日本産業全体のために一日も早くとつてもらうことを心から期待いたしておる次第でございます。
○阿具根登君 私は本日こういう質問が出て、又それに対して非常に喜んで、すでに準備おさおさ怠らずその回答を書いておられるような答弁を聞きまして、非常に私は残念に思います。なぜかならば、今労使双方がその紛争の渦中にあります。それをかかる公式の場所における労働大臣の今の言葉は、一体誰の勝利を意味するものか、いわゆる誰に肩を持つておる言葉であるかということを考えます場合、非常に一方的な言葉だと私は思うのであります。なお田村議員の御発言の中にもございましたが、国際経済の問題云々ということはわかりますけれども、然らば、例えば一つのストライキをやつた場合にはスト規制法というような法律を出されて、今度はそのためにこういうストライキ戦術が練られれば、又それに対してこういう回答を労働大臣がなされる。然らばこれを掘り下げて行くならば、憲法によつて許された日本の労働運動は、労働者の犠牲のみによつて、そして一般社会に一つの迷惑もかけないような戦術が練られねばならないという結果になつて来る。炭鉱の実態をどう考えておられるか。私はこの前の委員会でも労働大臣に御質問申上げました通りに、田村委員はおいでになりませんでしたけれども、然らば炭鉱の労働者の現在の給料を如何に考えておられるか。坑内で約三人の扶養家族を持つておる炭鉱労働者が一万円以下の収入を取つておることは現実であります。それに対しまして何ら対策も講じなくて、そうして中央でかかる言葉を吐かれるということは誠に心外であると考えます。いわゆる日本の石炭のコストが高いこともわかつておる。而も今日本の労働者が如何なる生活の危機に追い込まれておるかも皆さん御承知の通りであろうと思う。そうすればその犠牲になつて、ストライキもやらずに、迷惑もかけずに、ただ交渉をしろというようなことがどういう結果になつて来るかも皆様御承知の通りであります。而も炭鉱労働者の大部分の人は殆んど高利貸から金を借りて、そうしてその日の生活をやつと賄つておる現状であります。この前も申上げましたが、或る九州の一炭鉱を例に取つてみましても、九千人のうち三分の二は借金をしておる、平均二万円の借金をしておる、こういう苦しい中から戦術を練るならば、私は許された範囲内においてこういう戦術が当然立てらるべきものだと思つておる。それをそれに対する何らの対策も考えることなく、ただ自分の立つておる立場を考えて、或いは大所高所からというような見方かも知れないけれども、そのために炭鉱労働者は犠牲になれというようなお考えであつたなばらば、ますます事は深刻化して行く。その動機を作つて行くのがこういう公式の場所であると、かようにまで私は極論したいのであります。而も労働大臣は只今おつしやられましたように、経営者の言つておるその通りを言つておられます。労働大臣の立場で以つて、今の炭鉱労働者の賃金で我慢せよと、ストライキするなと、こうおつしやるなら、はつきりとそう言つてもらいたい。そうでなかつたならば、今のような結論を出されるならば、炭鉱労働者の生活はかくあるべきである、賃金はかくなからねばならない、炭鉱の経営の実態はかくなければならない、こういう抜本的な方法を示してもらいたい。何ら解決の役になるようなものも示さず、話合いでやつてもらいたいと言う、その裏ではそういう戦術は悪い、賃金は引くのが当然である、こういうことを言われて、何が解決の遂になりましようか。ますます油を注いで行かれると思う。私はこういう問題を論議する前に、炭鉱の責任者に或いは連盟の責任者に来てもらつて、双方の意見も十分に聞いてもらつて双方の言わんとするところを十分に聞いた上で発言されるならばいざ知らず、どこの発言を聞いておられるのか、健全な世論とおつしやられましたが、どこの世論を聞いてそういう結論を出されましたか、労働大臣にお尋ねします。
○吉田法晴君 ちよつと関連して……。答弁される前に関連して伺いたいのですが、田村委員の御質問に答えられました前段は、日本の国民経済と賃金問題ということで、これは労働大臣の標準賃金制についての所信に関連して前から論議して参りました或いは質疑をして参りました問題でありますから、これはあとにいたしたいと思います。特に後段の炭鉱の賃金問題について今交渉がなされております中で、ストの方法が好ましくない、或いは部分ストであつても全体の賃金を支払わなくてもそれは当然であろうという意見を表明せられました。これは労働大臣として表明されたのでありますから、個人の意見ではないと思います。そこでそれについて労働省として、今進められております炭鉱の賃金問題についての労使の交渉に介入せられようとする意図があるのかどうか。更にストの方法が好ましくない、或いは部分ストによつて全体の賃金は払わなくてもそれは妥当である、こういう見解を表町されたのでありますが、それは公式の見解である以上、政府として、資本家が部分ストに対して全体の賃金を支払わなくても、それは正しいという法的な解釈をなされた、かように考えるのでありますが、それが今のスト或いは労働紛議に介入するものであることは、これは間違いのないところでありますが、介入をして労働運動或いは労使の紛争を一方的に片付くことを期待する、或いは賃金が上らないことを期待する、こういう意味で今のような御発言をなさつたのか、阿具根君の質問に関連して御答弁をお願いいたします。
○国務大臣(小坂善太郎君) お答え申上げます。私が田村委員の御質問に対しまして非常に準備をして答えたという話でございますが、今回の炭労の部分ストに関しましては、私どもも労働省としまして関心を持ちまして、この場合の法的なあり方についての研究はいたしております。従つてそうしたものについての準備はいたしております。たまたまそういう御質問がございましたのでお答えしたわけでございます。 なおそういうことを言うことによつて争議の渦中に介入するのかどうか、こういうような御意見がお二方からございましたのでありますが、労働省といたしましては、具体的には争議の渦中に入らんという考え方を持つておりますので、先ほど申上げたように現在紛争中の問題であり、当事者が世論の動向を察知して、良識を以て事態を処理されることを望んでおる、期待しておる、こういう態度でおるのであります。而して現在の新聞論調はすべてこれは好ましくないと言つていることも、これ又御承知のことと存じますが、附加した次第でございます。 で、私どもはただ法律的にこの問題をどう扱うか、どう解釈すべきか、賃金はその場合に差引くということはなし得るのかどうか、法律的にどういう見解が成り立ち得るのかどうか、こういうことにつきまして、今申上げましたような組合の事例を以ていたしましても、全体を麻痺せしめるような意図を持つたものであつて、他の部門の者が形式的には出勤しておつて、労務の提供をなすようであつても、組合のかかる効果をもたらす労働争議の一翼を担うために、形式上出勤しつつ、予定の行動として労務の全部、又は一部の不遂行を来たしている場合には、部分スト以外のこれに関係ある全労働者についてノーワーク・ノーペイの原則によつて賃金を差引くことは当然である、こういう法的な見解を持つわけであります。勿論個人ではございません。そこで具体的にはどうするかということでございますが、具体的の問題についてはこれは中労委が当るべきものと私どもは考えております。
○阿具根登君 労働大臣にお尋ねします。労働大臣がかかる紛争のさなかに重大な発言をされましたので、十分御承知のはずだろうと思います。今炭鉱の坑内において一万トン当りどのくらいの負傷者が出ておるか、労働基準法が完全に守られておるか、坑内の安全が完全に法的に守られておるかどうか、なお一部の人がストに入つたあとの人はどういう坑内で作業をしておるかどうか、お尋ねいたします。
○国務大臣(小坂善太郎君) 何か重大な発言をしたとおつしやいますが、私は御質問にお答えしたので、私の答えを以て御了承願えることと思うのであります。 なお、今の御質問でございまするが、これは通産省関係で坑内災害のことをいたしておりますから、通産省の政府委員からお答えいたします。
○寺本広作君 私遅れて来たので、どういういきさつでこういうことになつたか知らんのですが、労働争議の問題をここへ持込んで来て議論するということは、私余り賛成ではない。(阿具根登君、「重大な問題であつたから」と述ぶ)ただ私、一昨年暮に六十何日という長いストライキをやられて、緊急調整が出て争議がやまつたという苦い経験を労使双方持つておられる、その労使双方が又賃上問題でストに入らなければならないということは、よくよく労使双方に事情があつたことだと思うのです。今は労働争議が始まつたばかりで、まだ影響は発電にもガスにも、製鉄にも大きな影響は来ておらん、国民生活にも大きな影響は出ておらない、この限度であえて問題にしなくてもいいのではないかという気がするのです。ただ先ほど労働大臣のお話がありましたように、今度の争議でとられておる手段は、運搬部門のストライキということについては新聞が大分論説を書いているようです。その点では非常に輿論を集めつつあると私は考えるのです。これは今労働大臣がお話の通り、労働争議が自主的に片付かん場合に輿論が起る。この斡旋とか調停とかサービスを行う、そういう恰好で片付いて行くならば結構で、あえてここで問題にせんでもいいのではないか。今争議をやつておるような恰好で取上げられたのですが、ただ併し、国会の問題としていい面もあるのではなかろうか。それは今問題になつておる以外に、去年の夏できた電気産業と石炭産業の争議方法規制に関する法律の運用が、あの法律ができて一回も運用されておらん。じや法律を作つた国会として今後どういうふうに動いて行くかということを関心を以て見ていいのではないか。労調法が改正されて緊急調整制度ができて、緊急調整制度の第一回が発動するまで、労使間で相当自分の立場からする解釈が行われて、あれが、第一回が発動せられるときには非常な困難を感じたものです。今後とも争議方法規制に関する法律ができて初めての例だから、あれの解釈について労使双方の間にいろいろの食い違いがあるだろう。これはあの法律を生み出した国会として、一応あの法律が今度の争議にどういうふうに動いて行くかということについては重大な関心を持つていいのではなかろうか。その点は、私は炭労は非合法はやらん組合だと思つているのです。併し炭労のほうから出された通告ですか、申入れですか、そのものの中には、聞くところによるとロツク・アウトをやつた場合には保安要員の就業を拒否するということが入つているように聞いているのです。これはロツク・アウトをやつた場合に保安要員の就業を拒否しても、いわゆるスト規制法違反にはならないという法律解釈が行われておると思うのです。これはやはり事前に……、最終的には罰則がある法律ですから、司法法廷で片付けられる問題ですが、やはり法律を生み出した国会としては、それが誤まられんように行政解釈を明らかにしておく必要がある。あのときの答弁を実は私ちよつとひつくり返して見ておりますが、こういう事態になると、的確に当てはまつて来るような解釈が出て来んように思うのです。経営者のほうもロツク・アウトをやつてはいかん、保安要員のロツク・アウトをやつてはいかんということが見受けられる。併しなお保安要員以外のロツク・アウトをやつた場合に、組合が対抗手段として保安要員の就業を拒否するということがあの法律の下で認められるかどうか。あの法律自体にもこれは鉱山資源保護ということが相当大きく打ち出されておりますが、争議の場合にも保安要員だけは就業させなければならんと思いますけれども、どうも合法闘争を主張しておられた炭労がああいうものを打ち出しているところを見ると、相当法律解釈について双方の食い違いがあるのではないか。そういう点で争議が現に行われておるけれども、国会としては立法当時の事情を遡つてみて、ここらで一遍提案者側である政府の所見、政府の行政解釈を、今や法律は我々の手を離れて運用される段階になつておりますから、行政解釈を一遍聞いてみる必要があるだろう、これが一つ、これを政府側の意見をこの際聞かして頂きたい。
○委員長(栗山良夫君) 寺本君にちよつと申上げますが、実は只今の問題は、私も労働大臣の御答弁は、これはやはり寺本君の今の御意見のように相当重要な問題を含んでおるので、話がここまで来れば、やはり掘り下げて当労働委員会としても調査をしたいと思うのですが、ただ今日こういう話題になりましたのは、ちよつと遅れてお見えになつたので御事情おわかりでないと思いますが、決して単独にこの問題が出て来たのではありません。これは田村君から今日の石炭争議の問題について労働大臣に御質問がありまして、労働大臣がこれに答えられまして、その内容について阿具根君、吉田君等から御質問が出ておつた。その御質問をだんだんと続けて行くと、結論的に寺本君のおつしやるようなことに私はなつて行くだろう、こういう工合に思うのです。今の傾向から行きますとそういう状態で、まだそこまで話が進んでいなかつたということを御了承頂きたいと思います。
○吉田法晴君 議事進行について。手本さんは、争議が国民経済に影響する、或いは国会を先般通過したスト規制法に関連するほどに事態が進展しておれば別問題だけれども、労働争議で今労使双方において賃金問題を論議しておる際に、労働委員会が一々取上げることはどうか、こういう寺本さんの御意見或いはお気持というものは、私どもも実は今日炭鉱の賃金問題或いはこれに関連する労使双方の問題というものをここで取上げようとは思わなかつた。ところが田村委員から御質疑がありまして、その中で賃金一般についてのかねての標準賃金制その他についての話ならば別でありますが、それはこの間から実はやつておつた。そうじやなくて、それを越えて、具体的に炭鉱の部分ストについての政府の見解或いはこれについて賃金を支払うのが正当であるかどうか、こういう問題について御質疑があり、そして労働大臣から答弁がございましたので質疑に実は入つたので、それからなお寺本さんに申上げるわけではございませんが、申上げるまでもなく、炭鉱の今の賃金問題は昨年の十月以降の質金問題でございます。その十月以降の賃金問題を今漸ぐ論議をして労使双方できめようとしておる。そのいわば話の途中に部分ストということで、争議は今始まりだというのです。そういう際に労働大臣がこれに対して述べられた。而も部分ストに対しては全体に対して質金を支払わなくてもよろしい、こういう発言をせられるならば、それは争議に介入することじやないか、こういう質問も実はしておるのであります。 なお、今お話のロツク・アウト或いは保安要員の引揚問題等については、成るほどそういう論議がなされたということは私ども承知しておるのです。併し法とそれから今進んおります問題と申しますか、或いは賃金との関連性がもつと進んで、ロツク・アウトが行われ或いは保安要員の引揚げが行われるという可能性がもつと強くなつて参りますならば、これは取上ぐべきだと思うのであります。今の田村さん、それから労働大臣の口振りを聞いておりましても、部分ストに対して全体で賃金を払わなくてもよろしい、こういう労働大臣の所見であります。或いは資本家なり資本家団体でもそういう態度である場合には、私はスト規制法とそれから今度の争議がどういうことになるか、こういう問題には入るべき段階ではないだろう、かように実は考えておるのであります。
○阿具根登君 先ほど賃金カットの問題で発言された。これは重要な問題だということを私は言つております。吉田議員も言われたように、労働大臣が閣僚の一員として今度の労働争議に介入された、而も公式の場所で介入をされたと私は考える。本当です。で田村議員もその御意見であるようでありますから、田村議員に私はお尋ねしたいと思う。一万トンの炭を出すために十数人の重軽傷者を出しておる。そういう危険な場所の作業をこの一部のスト以外の人は全力を挙げて現在やつております。坑内の切羽の整備或いは機械の整備、誰一人遊んでおる者はおりません。当然の仕事だと思つております。そういう仕事をしておる人に対して賃金を差引くのが当り前だ、炭鉱は炭さえ出せば、怪我をしても死んでも、或いは坑内がどんなに荒廃してもいいのかどうか。そういう実態も知らずに、まだそれが本当に世間に御迷惑をかけるというような段階にまでも来ておらない今日、すでにもう経営者が言つておる賃金カット問題に対して、それが正しいのだというような結論を出されたということに対して、恐らく炭鉱二十数万の労働者並びにこれを含んでおる家族は非常な怒りを以て私は対処して来ると思うのであります。こういうことをやられた労働大臣の責任は極めて私は重大だと思つておる。これについて一体どういうふうにお考えになつておりますか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 先ず重大というお話ですが、これは重大なのは重大で結構でございましよう。ただ私が争議に介入したということは、これは全然ございませんから、その点誤解のないように……(「介入ですよ、片方が言つているのに賛成したから介入だ」と呼ぶ者あり)その点この問題につきまして労働省といたしましては、法律の解釈、法律の適用範囲、そうしたものにつきましての解釈の内容については責任を持つておるのであります。従いまして御質問がございますれば労働省としての解釈を明確にいたすということは、これは当然のことと考えております。
○田村文吉君 大変阿具根さんから私の名前がたびたび出ておつたから私は申上げたいのでありますが、私の前段の質問を先ずお聞取り願いたい。
○阿具根登君 この問題については私も触れておりません。
○田村文吉君 今日触れておらんと言うけれども、非常に大きな関連があるのです。そういうような日本の今の状態下にあるのにかかわらず、みずからがみずからの首を締めるようなことをされるが、而もその方法は正々堂々とストライキをやるということは、ストライキを認めておるのですからこれはおやりになつたらいいけれども、ほんの大事な機関、例えば時計なら時計の大事なねじのところだけをとめておいて、そうしてあとはこのままでいいのだというような形で行くような争議が、今後ひとり炭鉱ストライキだけではなく、あらゆる争議においてそういうことを認められることになりますというと、日本の産業というものは或る特有の人の意図によりまして歪められるし、又我々の幸福というものはだんだんこれも削られる。現に石炭などは不景気で困る困ると言いながら、我々の小売値段は二割も三割も上つているのです。そういうような情勢下にあるのでございますから、私は単にそういう争議状態に介入するとかしないとかいう問題でなくて、一体組合自体がそういう意図で計画をして、決議をして、一部分の者をそのたびに操短に入らせるというようなことのために全機能を麻痺させるということ自体が、一体これは正当のただ部分ストであるというようなことに認めていいのかどうか、これはもう全面的のストをやると同じじやないか。こういう私は考えを持つから、その点を労働大臣にお伺いしたのであります。一日も早くそれはお互いにもう少し経済の立直りということを考えないというと、自分の首を縊つている。そういうようなことでは今日の非常な重大なる経済上の危機に遭遇して非常な大きな問題だ、こう考えたので質問したのでありますから、別に争議に介入するとかしないとか、そんなことを私は聞いているのじやない。そんなことは又お互いの間で折衝したらいいのですし、裁定する人もおりましようし、又それぞれの機関があるのでありますから、それは私言うのじやないのですけれども、そういうことについて労働省はどう考えておるかということを私はお伺いしているのです。
○阿具根登君 田村議員の前段の質問については、この前おいでになりませんでしたが、私もこの前の委員会で大臣に質問申上げております。ただ単に惰性云々ということを言われておるが、労働省が考えられておるのは惰性だけじやないか、抜本的な案も何も考えておらんじやないか、こういうことを質問しているわけです。 然らば只今言われた第二段の質問の問題について、一部の人がストライキをやつて、そうして機能を麻痺させた、これだけをとつておられるが、それがそうならざるを得なかつた原因はどういうように考えておられるか。先ずその原因を考えなければいけないと言つておるわけなんです。それではそういう問題のために、極端なことを言うならば、そういう立場におる労働者は食うこともできない戦術以外に立てることはできないのか、争議以外にできないのか、自分たちが本当に食えない、死ぬ以外の争議しかできないのかということも考えてもらいたいと思う。私が先ほど言つたように、それならば炭鉱の実態を調べてみなさい。どれだけ借金をしているか、あなた方は実際知らない。そういう苦しい中にあるからこそこういう闘争もせざるを得ないように追い込んでおるじやありませんか。それがその原因は探求することなく、現われて来た現象のみを見て、これはいいのだ悪いのだと言つて、争議の真最中にここで論議するのは、一方に利することであつて決してこの争議を円満に解決することでなくて、逆に深刻になして行く傾向があると私は言うわけなんです。本当にこれを円満に解決するためには、我々が炭鉱の労働者であつて、炭鉱の経営者であつてみる、日本の置かれている立場を考えてみる、三者の大きな考え方でなければ私はできないと思う。それをただ自分たちが大所高所からというような考え方でやつたならば、その下積になつておる数十万の炭鉱の労働者は決して浮び上らない。それではドイツを見てみなさい、英国を見てみなさい、炭鉱労働者はどういう環境に置かれておるか、なぜ日本のみが一般産業より遙かに下の生活をしなければならんのか。今の皆さんの御議論で行くならば、日本の炭鉱の労働者は基準法もやられつつあるようでありますが、昔のように十二時間も十三時間も坑内で働いて、そうして血みどろな生活をしなければならないようになつて来るのだ。どうしてコストを下げるかはつきりここで言つてもらいたい。今の機構のままでは中共やソ連からの石炭が入つて来るようになるでしよう。どうしたらもつともつと立上るようになるのか。発展的な考えもないのに労働者だけに政策を押付けようとする考えか、私はこの前もこういう点から質問した。而も労使双方立上つて、そうして何とかして打開策を見付けたいという交渉も続けられておる。そのさなかに一方に利するようなことを労働大臣が言われたということについては、私は大きな責任を持つてもらいたい。争議に大きく介入されたと私は思うのです。そういう点についてどういうふうに田村議員お考えになつておるか、私と大分違うようですから……。
○田村文吉君 私に対しての御質問でございますが、私はそういうような解釈についてどう考えておるかということを労働省に今お伺いしたのでありまして、あなたの言うように今食えるとか食えないとか、借金がどうしたとか、そんな今の労働関係の実態に関する折衝を私はこの国会で取上げようとはしていないのです。そういうような問題を、(阿具根登君「それが悪いとか言われるから言つておるわけです」と述ぶ)そういうようなことを言うことはおかしいので、そうでなくて、一体組合の決意によつて機能を麻痺せしめるような一つの決意をするということは、全面的にストライキとどこが違うのだ、そうじやないかと、こういうことを労働大臣にお伺いしておる、それだけです。
○寺本広作君 同僚議員の間でストライキの批判めいたことが言われ、又ストの弁護めいたことが言われておつたのでは国会の立場というか、当委員会のこの問題を取上げている立場がはつきりせんと思つて、私はさつき立法者の立場から、スト規制法を制定した当委員会として、初めてこの法律が発効するについてどういうふうに考えるかということの問題を提起したのですが、それについての答弁はまだない。それからその問題はほかの方が取上げておられずに、基準法と労調法の解釈問題を頻りにこう問題にしておられるように思う。これは組合法や労調法の問題なら、これの運用は主として委員会なり裁判所なりがやることですけれども、基準法の問題は行政法規の問題だから、労働省がその運用について行政解釈を下すというのは当然のことだと思う。今度の争議でやつぱり法律闘争というかこの基準法の解釈をめぐる争いというのは当事者間に相当あるのだろうと思う。労働大臣が争議に関与したというて阿具根さん言われるけれども、実は私は大分緊張して聞いておつたつもりですけれども、労働大臣の答弁がよくわからんです。これは速記を見た上で改めて質問するようにしたら如何でしようか。というのは、先ほどのお話を伺つていると、部分ストに関係した者域外でも関連がある全労働者からは出炭量に応じて貸金を差引くことができるというふうに取れた部分もある。併しノーワーク・ノーペイと言われたこともあるし、どうも言い分をよく見てみんと意味がよくわからんです。田村さんの御質問の部分ストであつても企業全体を麻痺させるという場合には全体のストライキと同じに見ていいじやないかという質問に対して、労働大臣がまともから答えられたかどうかですな。部分スト以外でも関係ある全労働者というような言葉を使つておつたようにちよろつと私は聞いた。そこらのところはもう少し掘り下げてみんと、法律解釈ですから、要するにこれは争議法と保護法の交錯面にある問題で、なかなか法律的にはむずかしい問題だと思うのです。それでやはり基準法は行政法規で、行政官庁である労働省の責任で運用される問題ですから、労調法のほうの問題は労働委員会なり裁判所が扱う問題であつても、基準法の解釈だけは間違いがなければ、その解釈をめぐつての争議といものは少くとも少くなるのじやなかろうか、こう思われるですね。これは国会の立場としては行政の一般監督を行う国会の立場でありますから、先ほど私はスト規制法に立法者の立場を出しましたけれども、やはり行政の一般監督の立場からその行政法規がどう運用されるかということについてはこれはやつぱりここの委員会で質問を展開し、そうして焦点をできるだけ縮めて行くということが、こういう法規の解釈をめぐつての争議を片付ける一つのポイントじやなかろうか、それは国会としても国会の任務として考えていいじやなかろうか、争議の価値判断は余りここでやらんほうが問題をしぼつて行つて片付けるのに役立ちはせんか、こう思いますから、先ほどから同僚議員の間で争議の批判と擁護が行われておる恰好はこの辺でおしまいにして、委員会としての行政法規の運用の監督者の立場から問題を縮めて行つて頂きたい、こういうふうに委員長にお願いしたいと思います。
○吉田法晴君 同僚議員のこれはまあ質疑の場でないので、たまたま田村さんから御質疑がありまして、それに対する答弁として労働大臣の答弁が穏当を欠くものがございましたのでああいう恰好になつて参つたと思うのであります。まあ取上げの時期或いは具体的な内容等について若干遺憾の点があつたかと思いますが、それをここで私も論議いたそうとは思いません。 そこで労働大臣の答弁に関連してでありますが、労働大臣にお尋ねをいたしたいのでありますが、炭鉱の今の賃金問題はこれはいつからの賃金と考えておられるか、十月以降の賃金問題であると考えておる。その昨年の十月以降の賃金問題を労使双方で協議をしてきめるという方法が悪いと考えておられるのか、第一点にそれを承わりたい。 それから協議が調わないで、そうして労働者としてストに訴えるということ、これも好ましくないと考えておられるのか。田村委員の御質問の中にはそういう意味のお言葉がありましたが、はつきりお答えはございませんでしたが、賃金、物価或いは国民経済一般の問題として賃金が上るのは好ましくないかのごとき御発言を今までもして来られましたし、先ほども積極的ではございませんでしたが、そういう意向があつたかのごとくであります。その点を第二にお伺いしたい。 それから部分ストが好ましくない、そういう輿論が炭鉱の今度の賃金問題について新聞等に現われているから云云ということで、それを支持せられるがごとくでありましたが、部分ストは好ましくない、どんな場合においても部分ストは好ましくない、かように考えられるのかどうか。それから部分ストをやつた場合に関連の範囲は、今寺本さんからもちよつと質問ではございませんが、質疑の内容を含んで出ておりましたが、どういうふうに考えておられるのか。例えば大会で決定したらどんな部分であろうとも部分がストライキをやつたらこれは如何なる程度にかしら生産全体に影響するでしよう。従来の考え方によると、そのストをやりました労務の不提供に対して賃金を支払わないのは普通だ、こう考えられておりましたし、それからこれは慣例といいますか、実際でありますが、直接ストをやりました以外については賃金が支払われて参つております。或いはこれはもう数年前になりますが、私ども八幡の製鉄で送風、熱風を送ります工場がストをやりましたために、熱風が送られて行つた先の工場の能率が低下いたしました。併しその場合にもこれはそのストをやつた部分については賃金は支払われておりませんと思いますが、出勤をいたしまして作業をいたしました部分的な工場については、或いは労働者については賃金が支払われておる。それから昨年の三池炭鉱その他において部分ストが行われましたが、その際においても他の出勤をいたしました或いは入坑をいたしました労働者に対しては賃金が支払われております。いろいろ議論、疑問等が出ておりましたけれども、支払われております。そこで労働基準法に関係があることだと寺本委員から御指摘がございましたが、どういう条文に従つて部分ストをやつた場合に影響を受けた作業場、そこにいる労働者が出勤或いは労働の態勢にありました場合にも賃金を支払わなくていいという条文があるのか、その点を一つ御明示を願いたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) 私がお答えいたしましたように、炭労組と石炭経営者との間の賃金の交渉問題は、十月以降労使間においていろいろ交渉されておるのでありましてれこの解決が一日も早くなされることが日本産業全体のためにも非常に望ましいと考えております。なお第二点のストに訴えるということがいかんということだというお話でございましたが、先ほど申上げましたように、ストを大いにやれというふうには私は日本産業の現状から見ては言えない。まあできるだけストというような方法に訴えんで、自主的に良識を以て解決して頂きたい、こういうふうに考えておるわけであります。 なお、部分ストについての解釈についてお聞きになりましたが、私は組合の意思によつて労務の不提供ということを意図いたしまして、労働契約の本旨に副つた労働がなされないという、その目的を以てなされたものは、その労働がなされなかつた限度において労働賃金は、これに関係のある全労働者について差引かれることが当然だろうと思つております。なお具体的には差引は個々の場合によるものでありますが、出炭量を賃金差引の基準にするということは当然だと思うのであります。 なおこれは二十三年の四月七日から五月九日までの井華奔別艦業所の北海道の場合でも、会社側は出炭量において賃金を差引いて、組合側から労調法違反として提訴したのでありますが、地労委は会社側に利ありとしております。なお北炭においても同様の事例がございました。なおイギリスあたりのT・U・Cの考え方でも、部分的なストというもの或いはサボというものもやはりストライキの方法としては好ましくない、こういうふうな考え方で労組全体を指導するというように聞いております。やはりストライキというものは全体の関連においてなさるべきものであろうと、こういうふうに考えております。
○委員長(栗山良夫君) 間もなく通商産業大臣が来られます。 それから只今の問題は私も委員各位のお話を承わつておりますというと、いろいろなデリケートな問題が錯綜しておつて込み入つておると私は思います。従つて只今の労働大臣の答弁に満足された方もあり満足されない方もあり、又よくわからなかつた方もあるかと思うのです。(笑声)そこでこの問題は寺本君のおつしやつたように、一応只今速記が全部残つたわけでありますから、よく調べまして、お互いに調べて頂いて、そうしてもう少し掘下げて調査をすることにしたほうがよくはないかと私は考えるのであります。どうでありますか。
○吉田法晴君 議事進行ですが、速記録を読み、或いは議論を整理してやるということに根本的に異議を差し挟むのではございませんが、今日のこの委員会で或いは炭鉱の賃金問題が労使双方で協議をされ、団体交渉は今事実上行われておらんかも知れませんけれども継続をしておる。そういう際に労働大臣が委員の質問に答えて、そこで公式の意見を表明されて、それで時間を延ばしまするならば、これは或いは新聞にも書くし或いはこれが伝えられると、それだけ争議に介入するという客観的な意図を持つ、労働大臣が慎重を欠きましたから答弁を撤回いたしますということならこれは了承いたします。併しそうでない限りもつとはつきり質疑を続けて、労働大臣が何らかの、何と言いましようか、陳謝でなくても、或いは取消しはなくても、はつきりとした緩和の言明をなされぬ限り、私どもは委員会としてこの問題について打切るというわけには参りません。
○委員長(栗山良夫君) 私労働大臣にちよつと一言お尋ねするのですが、今お話を承わつておつた中で、一つわからない問題が私自身にあります。それは労働組合が労働三法の定めるところによつて一つの意思を決定し行動するということについては何ら御意見はないと思いますが、その点は如何でございますか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 結構です。
○委員長(栗山良夫君) よろしいですか。そうしますと只今行われている石炭産業における労使の紛争は、労働組合法その他の法規の枠内において行われているということはお認めになりますか。
○国務大臣(小坂善太郎君) お答えいたします。これは争議の実態をどういう方法、手段によつて行われておるかということ、その一つ一つについて見ませんと、概括的に合法であると言い切つてしまうわけにいかん、やはり実態を見ていないとわからないと思います。例えば先ほど寺本委員からお話がございましたように、本委員会を通じてスト規制法の問題もあるかと思います。
○委員長(栗山良夫君) そうしますと、余り抽象的な質問をしましたのでそうおつしやつたのでしようが、もう少し具体的に申しますと、只今行われている部分ストというものは法規の枠内のものであるかどうか、この点をお答え願いたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) 法規的に部分ストは違法であるということは言えないと思います。
○委員長(栗山良夫君) そうしますと、今の労働大臣の御答弁を伺つておりますというと、石炭産業の労使の紛争においては少くとも労働基本権というものは労働大臣も確認されたということだけははつきりした。そうしますと第二の私のわからないと申上げた点は、そういう争議が正常な争議方法としては好ましくないとおつしやつたのですがね、それはあなたのどういう考え方ですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 先ほど私或いは言葉が足りなかつたかも知れませんが、部分ストというものは具体的に組合の指令で全体がストに入る、併しその部分、或る特定の部分をとめるということでありますればという意見でありまして、いわゆる部分的に山猫ストをやる場合、これは違法でございます。それからなお争議というものはやはり双方が全体の組合の意思として仕事をする、しない、会社側は賃金を上げるとか上げないとか或いは払わん、そういうようなことで交渉するということだけで、成るたけ闊達な方法を以て行われたい、そういう考えであります。
○委員長(栗山良夫君) あなたのお言葉の中に、先ほど労使の間の問題は円満に解決をされることを期待するとおつしやつたのですが、それをもつと積極的に解釈をすれば、物価の引下げ運動が只今起きておる。物価は上げてはならんという考え方からしてれ一応争議なんかはしないで、会社側の出す給与というものを大体話合いによつて労働組合側は呑むべきである、こういうようなお考え方なんですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 私はこの争議の実態について何ら関与したいと思いません。又会社側の言い分が是であるとか、組合側の言い分が是であるとか、或いは会社側の言い分が非であるとか、組合側の言い分が非であるとか、いずれともそういうことは言いたくない。又この委員会はそういう場所でないと思います。私は全般的の法規解釈を申上げたわけであります。
○委員長(栗山良夫君) そこで私のわからないと申上げることは、あなたの述べられた言葉をもう一遍速記録をよく見ないとわかりませんが、労使の問題は、今日置かれておる日本の産業経済の状況からして円満に問題を解決せられるべきである、こういうような強い意思の表明があつて、労働問題というよりは産業経済問題を中心にしての御議論がずつと述べられ、そこで只今行われておる部分ストというものは石炭産業の機能を大きくとめるものであるから好ましくない、こういうような理由を付けてノーワーク・ノーペイの理論に発展したので、そこで私はわからなくなつた。労働省としては飽くまでも労働三法の法律の中においていろいろなことを御議論されるならわかります。併し或る意味において経済政策或いは財政政策に関係するようなことがその理由になつて争議を批判せられ、そうしてその中からノーワーク・ノーペイという理論が述べられたように私は伺つたわけです。そこで私は何のことだかさつぱりわからなくなつたので御質問申上げたわけです。
○国務大臣(小坂善太郎君) 御質問にお答えいたしておりましたので、いろいろその関連が明確でなかつた点も或いはあるかと思います。私はこのいわゆる部分ストに対して賃金差引きの問題は法規の解釈をお答えしたつもりでございまして、その問の関連は別に部分ストは好ましいとか好ましくないということの関連はないのでございまして、要するに部分ストについては賃金は全争議の意思、労働契約の本旨に副うた労働がなされたかなされないか、その限度によつて賃金差引きがなされるべきであろうという解釈を明らかにしたに過ぎません。
○委員長(栗山良夫君) もう一遍念のために確めておきますが、労働大臣が閣僚として経済政策を論じ或いは労働政策を論じ、そうされることは御自由であろうと思いますが、労働大臣として少くとも労働問題に対する意見を述べられるときには、飽くまでも基本法である労働組合法或いは労働基準法、或いはその他の法律をもとにして述べられることであろうと、まあ只今の質疑を通じて私は了承したいと思うのでありますが、そういうお考えで大体答弁に当つておられる、こういう工合に理解してよろしうございますか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 労働大臣のみならずあらゆる閣僚がそうであろうと思いますし、又議員もそうであろうと思いますが、現行法を遵守してその枠内で行動し、その枠内で判断する、これは当然であります。
○田村文吉君 議事進行。通産大臣がお見えになるのは何の問題ですか。
○委員長(栗山良夫君) それは物価問題です。この前から保留になつております、あなたが質問された第一段です。
○田村文吉君 そうですが。
○委員長(栗山良夫君) それは、今労働大臣のおつしやつたことは私その通りに理解をいたします。又了承もいたしますが、最近の労働大臣のいろいろな言葉の中のニユアンスは、その上にやはり経済問題、産業問題というものがくつついてこの日本の経済問題、産業問題を何とか好転させるためにはやはり労働問題そのものも若干耐乏しなければならんというような、上からの重しをかけるようなにおいが相当強く出て来まして、今のお話と若干違つたような私は印象をここ二、三回の委員会で受けているのでありますが、その点は私のそういう理解が間違つている、こういう工合に考えてよろしうございますか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 私は今日の日本の置かれている現状から見まして、国民のすべてが現状をよく認識して、そうしてこの現状を如何にすれば打破できるかということを考えるのは国民として当然であろうかと思うのであります。私も国民の一人として心から日本の復興を希つている一人でありまして、私の言説はすべてがそれに繋がつているとお考え頂きたいと思います。
○阿具根登君 先ほど労働大臣は山猫云々ということを言われましたが、今度の部分ストと山猫争議とどういうふうに考えておりますか。
○国務大臣(小坂善太郎君) これは全然関係ございませんと思つております。ただ仮定の問題といたしまして、さつきの委員長の部分ストは合法かどうかということで、部分ストの中で或いは山猫というものがこの前には合法と申したのじやないかとあとになつて御質問があるといけませんと思いまして、仮定の問題としてそれだけ別にしてお答えしたわけであります。
○阿具根登君 まあ山猫は非合法であるけれども一部ストは非合法でない。こういうことだと思うのですが、それでは一部ストが賃金獲得まで発展して行く、或いは一部ストが全ストに通ずるものであるということは、法的には何も根拠がないということを先ほど言われたと解釈していいのですね。
○国務大臣(小坂善太郎君) この山猫は非合法であると思いますが、部分ストは現在の法規解釈からすればこれは非合法とは言えぬと思います。ただこの社会に及ぼす影響その他によつて、スト規制法におきまするような時の世論が出て来ないことを私は衷心から希うのであります。 ただ賃金の問題は先ほど申上げたように、労務の意思が、いわゆる労働契約の本旨に副うた労働をしないというところにあるのでありますから、その範囲において賃金を差円くということは当然であろうというふうに思うのであります。
○阿具根登君 その実態はどこから調査されたか、こういうことであります。今言われたお言葉の中に、いわゆる先ほどのノーワーク・ノーペイの問題に絡んで来ていると思うのでありますが、それは組合なり経営者を呼んで調査されたことがあるかどうか、これをお尋ねいたします。
○国務大臣(小坂善太郎君) これは阿具根さん誤解のなさらないように特にお願いして置きますが、法規の解釈でございます。その法規の解釈上ではこうすべきものであるということで、その実態と関係しているのじやないのです。部分ストを行なつた場合、賃金の支払は法規上どう解釈すべきかという解釈でございます。
○寺本広作君 只今の労働大臣の御答弁に少し疑義が私はあるのでございます。と言いますのは、部分ストは争議行為として違法でないということです。これは後段の部分ストの場合にはほかの関係ある全労働者にも賃金を支払わんでもよろしいという前提があつて部分ストは違法でないという結論が出て来るのじやないかと私は想像するのでありますが、そうでないと部分ストの場合には残りの労働者に全部賃金を払わなければならないということになると法益均衡論が残つて来ると思いますので、ほかの労働者に賃金を払わなければならんということになると、争議方法として適当であるかどうか、合法か非合法かという問題が起ると思いますが、大臣の御答弁はほかの労働者に、部分ストをやつて賃金を払つても違法でないということで、部分ストは争議行為として違法でないという説明が行われていると思いますが、念のために申上げます。
○国務大臣(小坂善太郎君) 私の言葉が足りませんでしたが、正にその通りに御了承を願いたいと思います。
○吉田法晴君 全般として法的解釈をここで述べているという態度でございますからお尋ねしているのです。 田村委員の前段の御質問に答えられた、経済政策として賃金問題をどうする、この点をお尋ねしているのじやございません。それは通産大臣が来られてから質疑なり論議をいたしたいと思いますが、そこで法的な解釈問題として組合の部分ストは労働三法から考えてみて違法であるとは考えぬ。但し組合の意図があるならばそれは部分ストの効果が他の作業にも及んだ場合に、他の作業に従事する労働者の賃金を差引くのもこれは違法でない、差支えない、違法でないと言われましたか、差支えがないと言われたか、その点ももう少し明確に承わりたいのでありまするが、差引くとしてもそれは違法でないと言われるならば、その法的な根拠を明らかにお示し願いたい、こういうことを明確に労働基準法第何条によつてそれは違法ではないのだと、こういう御説明を一つ頂きたいと思います。労働大臣から御答弁を願います。
○国務大臣(小坂善太郎君) 先ほども申上げましたように、部分ストによつてこれに関連ある全労働者について労働契約の本旨に適なつた労働がなされなかつた限度において差引かれるものであつて、具体的には個々の場合の認定によるものでありまするが、例えば出炭量を賃金差引の基準にするのは当然である、これは御理解願えると思うのであります。要するにその意思決定が行われてそれだけ出炭を減少する、作業をそれだけ麻痺させるのだと、こういう意図がはつきりしておる場合ノーワーク・ノーペイの原則は当然適用される、こういうふうに思つております。なお詳細に亘りましては基準局長からお答えいたします。
○吉田法晴君 組合の意思決定が行われたという場合、こういうお話でございます。先ほど質疑をいたしておりまして、山猫ではないということが前提になつておりますから、山猫のことはこれは問題ないと思うのであります。そうすると部分ストをやります場合に、その部分ストが組合の大会で決定された、或いは組合の戦術としてとられた、これは組合全体としてあるかも知れません。その部分ストが行われる、工場の場合においても或いは炭鉱の場合においても、その影響は他の作業場に如何なる程度にしろ現われて来ることは間違いございません。或いは炭鉱の場合に採炭なら採炭の部分ストをいたしましても、これは出炭が減ります。出炭が減ると運搬の作業量も減ります。或いは選炭の作業量も減ります。併しながらその場合に、従来においてはそれに関連があつたからといつて運搬の賃金を下げた或いは選炭の賃金を下げたということはない。これは先ほど八幡製鉄所の例を申上げました。あなたは北海道の労働委員会に出した例を二つ挙げられたわけですが、影響は部分ストにいたしましても他の作業場或いは他の作業に従事する労働者の労働量に影響することはこれは間違いないでしよう、それで第何条に基いて控除をするのが妥当だと、或いは法的に合法だとこういう工合に言われるのか、その法的な根拠。 それから今全体の意思決定として云々ということですから、それでは部分ストによつてこれだけとにかく出炭量を減すのだと、こういうことがあるならば、それだけは全体について責任を負わせるのだ、こういう意図で答弁をされましたのか、その辺をもう少し明確に願いたいと思います。特に法的な根拠条文を一つお示しを願いたいと思います。
○国務大臣(小坂善太郎君) 先ほどもお答えしましたように、賃金差引というものを前提にすれば部分ストというものは違法でないのであります。即ちこの炭鉱の場合が例になりまするが、他の部分の機能を麻痺せしめることを意図するものであつて、部門スト職場以外の労働者も形式的には出勤して労務の提供をなすごとくであつても、組合のかかる効果をもたらす争議行為の一翼を担うために形式上出勤して、予定の行動として労務の全部又は一部の不遂行を来たしておる場合においては、部分スト以外でこれに関係ある全労働者についてノーワーク・ノーペイの原則によつて賃金を差引くことは当然である。即ち労働基準法乃至労働組合法違反の問題は生じない、こう申しておるのであります。
○吉田法晴君 法的根拠をお示し願いたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) 基準局長から一つ……。
○政府委員(亀井光君) 基準法の第十一条に賃金の定義が掲げてございます。「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」という賃金の定義がございます。即ち賃金は労働の対償として支払われる建前になるわけであります。然らばその労働の対償の労働の質と量が何できまるかということになりますると、これは労働契約で結ばれて参ります。或いはそれに基く就業規則で規定されて参るわけであります。そこで正常の労務提供によつて通常支払われる賃金というものはあらかじめ定められておるわけでございますが、その正常な労務提供というものがなされなかつた場合におきまして、その限度で賃金が差引かれることはこの基準法の十一条の賃金というものの性格から、定義から当然生じて来るものと我々は法律的に解釈しております。
○委員長(栗山良夫君) 通商産業大臣は只今記者会見中でありまして、一時四十分においでになるそうであります。
○吉田法晴君 今労働基準法第十一条の賃金或いはその対象となるべき労働、こういう内容は労働契約或いは就業規則によつてきまるんだ、こういうことであります。これはその通りだと思います。労働基準法自体が何のために設けられたか、或いは労働基準法の賃金の定義は十一条に書いてございますが、具体的には第三章に賃金の規定は設けております。その第三章賃金の各規定は、これは労働者保護のために或いは賃金支払は現金で支払わなければならん、従来金券等で支払われた場合もあるが、現金で支払わなければならん、或いは直接本人に支払わなければならん、或いは例えば出来高払の場合にも保障給を設けなければならん、こういう規定が設けられておる。それから具体的な労務の提供及び賃金の支払ということは労働契約によつてきめられる。その労働契約について問題が起つて、去年の十月以降の賃金がきまつておらん、そこでその賃金問題について労使双方において折衝がなされておる。その折衝の方法の中で法で認められたストライキというものも行われておる。従つて労働基準法或いは労働法関係から見て、今の折衝の方法或いはストライキの部分的な実施というものもこれは合法的であると言わざるを得ないと思うのであります。その賃金或いはストライキの方法は法の中で行われる。大臣は合法だと言われる、それに対してどういう賃金を支払うかということは、これは労使双方の問題であり或いは労働契約なり就業規則の問題であります。そこで部分ストが行われる場合にどういうふうに賃金を支払うかということは、これは契約に基く或いは就業規則に基く労使の問題だと思うのであります。そういう際にこれは労使双方で話がまとまらないで賃金支払についての紛争が起つて、それが労働委員会にかけられる。こういうことについては私どもこれを否定するわけではありません。併し今日この段階においてまだ団体交渉なり或いは賃金交渉が進展の中途、或いはどの程度に進んでおるかという認識はこれは別問題にして、その途中で労働大臣が部分ストに対して賃金を支払わないのは、それは支払わなくても基準法の精神に反しない、こういう答弁をされた。これは労働省として妥当であると考えられるか。これは労働基準局長も出て来られましたから労働大臣と併せて労働基準局長に一つ伺いたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) 妥当であると考えます。
○政府委員(亀井光君) 只今の御質問にお答えいたします。第三章の賃金で、労働者貸金についての保護規定をいたしております。保護いたしておるわけでありますが、これは飽くまでも正常な労働提供があつたという前提の下になされておるわけであります。従つて正常な労務提供がなされない場合においては、その限度におきまして賃金について差引かれて参るということは、これは先ほど申上げました趣旨から当然と思います。従つて先ほどの質問の中にも過去の事例で一部の部分ストをやつてそれに応じて働いた者にも全額賃金を払われるという事例のお話がございました。これは何もまあ使用者に賃金支払を禁止する規定はございません。ただその場合に賃金を差引いても違法ではないという解釈を我々としてはとつておるという解釈をしておるのであります。
○委員長(栗山良夫君) その解釈はいつされたのですか。いつそういう解釈をされたのですか。
○政府委員(亀井光君) この考え方は昭和二十四年でございますか、一応基本的な考え方を通牒として出しております。
○委員長(栗山良夫君) それからずつと変つていないわけですか。
○政府委員(亀井光君) 変つておりません。
○委員長(栗山良夫君) 労働大臣にちよつとお伺いいたしますが、そういたしますと、去年スト規制法をやつたときに一番こういうことをよくやつたのは当時の電産がやつたわけです。これは労働大臣もしばしばそういうことをあのスト規制法の中で、趣旨の中で言われました。一部の山や発電所をとめて大勢の者の賃金を払つておる、そうしてこういう争議が行われることは好ましくないということを言明されておる。速記録にそのまま残つておると思います。併し賃金はそういう場合にノーワーク・ノーペイの原則に立つて支払うべきでないということは一言も言つておられんと思います。只今の解釈は極く最近そういう工合に定義付けられたのではないのですか、労働大臣に伺いたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) こういう一部分のストライキによつて全体を麻痺せしめるような行動が好ましくないということは、これはもう私は誰でもそう思うと思うのです。やるのは止むに止まれんでやるということは、こういう場合もありますけれども、好ましくないということは誰も異議はないことだと思うのであります。今電気の場合を挙げていろいろお話ございましたが、電気の場合は、電源ストをやりましても他の部分が必ずその労働量が一定割合を以て低下するというものではないと思います。これは電気を使ういろいろな職種があるのでありまして、その使う量も違う、使う方法も違うということで、まあそれは一概に炭鉱という一つの有機組織の中において運搬部門のストが行われる場合とこれは又違う状況にあるというふうに私どもは思つております。
○阿具根登君 基準法の十一条によつて正常な労働をしなかつた場合には払わんでいいということを言われておる。正常な労働というのはどういうふうに解釈されておるのか。例えば今一部の人がストライキをやつて他の人が現場で仕事をしておるのは、何かサボか何かやつて正常な労働をやつておらんという、こういうことを言つておられると思うのですが、どうですか。
○政府委員(亀井光君) 正常な労働と申しますのは、先ほども申上げましたように、労働契約或いは就業規則で労働の量と質がきめられておる、それを指すのでございます。今お話の質問の点につきましては、具体的な事例につきまして検討しませんければ、それについてそれが正常であるか否かということはできないのであります。
○阿具根登君 それでは具体的な例も調べずにあなた方は正常な労働ではないから賃金を支払うことは要らんということを言われたのじやないですか、労働大臣はそう言われたのじやないか。何のためにそういうことを言われたか。正常な労働であるかないかということをはつきりそこでしなさい。それでなかつたら賃金協定をやられた理由がそこにないでしよう。あなたどこで調べられたかはつきり言つて下さい。
○国務大臣(小坂善太郎君) 形式的には出勤しても労務の提供をなす様相を持つておつても、組合の全体の意思として、こうした全体を麻痺せしめるというような効果をもたらす争議行為の一翼を担うために、形式上出勤しつつも予定の行動として労務の全部又は一部の不遂行、そういう場合には、部分スト以外でこれに関係のある全労働者についてノーワーク・ノーペイの原則によつて賃金を差引くことは当然である。こういうのであります。
○阿具根登君 形式上の労働をやつておるということはどういう意味ですか。どこから形式上の労働をやつておるということを調査されたのですか。
○吉田法晴君 関連して。労働というのは形式云々と言われますが、炭鉱の坑内に例をとります。これは入坑時間云々という労働時間にも関連をいたして参りますが、通常一定の場所を経過して坑内に入りましたならば、これは労働時間に算入されることは御承知の通りであります。歩いて行くこともこれは労働であります。それから坑内に入つて切羽に座つていることも労働であります。労働力の消耗は事実上ございます。その場合に例えば箱廻りが悪くて、或いは運搬系統の故障のために実際には炭が出ないこともございます。併しそれも労働であります。そこで労働の実体というのは、ただ意図だけを先ほど労働大臣は言われましたけれども、意図だけではないと思うのです。これは刑法上の問題ではございませんが、刑法でも或いは民法でもそうだと思うのですが、極端な意思主義、意思だけで問題を論議するわけにいかん。これは実体がなければならんと思う。そうすると坑内の場合に坑口から入つて行くと、それは労働時間であり、労働だと考えられるならば、これは労働の量と質ということを言われましたけれども、一応労働基準法なり或いは炭鉱の実態を考えるならば、入坑したらそこに労働がある。これに対して所定の労働契約なり或いは賃金協定なりそういう労働契約に基いて賃金を支払うという当然の義務が起つて参る、かように考えます。その場合に出来高払制の保障給というのは、そういういろいろな事情によつて労働の量が減つたとしても、労働時間に一定の賃金を保障しなければならんというそういう出来高払制の場合の賃金の保障、それから労働者の最低生活の保障という意味において私は二十七条というものが入つておると思いますが、これらの関係において先ほどの考えを如何ように考えておられるのか伺いたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) 申すまでもないと思うのですが、近代的な産業におきましては、これは一つの労働というものは有機的に組合わされて目的を持つて働くわけであります。その目的を以て労働協約というものがなされるわけです。ただ坑内を歩いておるということのために労働協約ができるわけじやないので、炭鉱を有機的に運営せしむるに必要な労働の量と質というものを提供するという本旨があるわけです。そこでそういう本旨に従つてこの労働協約なり賃金協約なりというものができるのでありまして、二十七条のお話がございましたが、それはそういう本旨に副うた場合に賃金を払うという協約なんであります。その場合このストの意思を決定するということになりますと、これはもうストライキの意思と決定したのでありますが、そのストライキをやる前の意思とストライキをやるということを決定したあとの意思とは当然違う。ただ坑内を歩いておつたからといつて契約の本旨に副わない賃金をもらえるということはないと思います。
○吉田法晴君 そうすると意思決定があつたら、坑内を歩いておつてもそれはストライキ、だからそれに対して賃金を払わんでいい、こういう御説明であるというように思う。問題は部分ストであります。運搬ならば運搬の部分はストライキをやつておる。これはもう論議の余地はない。ところがその影響は機械が故障した場合のごとく、或いはそれは運搬であろうと或いは採炭であろうと選炭であろうと、如何なる程度にかそれは影響するであろう。併しその影響を、坑内に労働の意思を持つて入つた労働者に責任の範囲を拡大することは不当ではないか、それをしても賃金を支払わなくてもいいということを言うのは、それは今の事態の場合に経営者側で一方的に言われておることを完全に代弁するものであると、かように言うておるのでありますが、その前段の部分について重ねて一つ答弁を願いたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) ストをやる、そうして全体の機能を麻痺せしめよう、そういう意図がはつきりして、そうして部分ストに入つた、その際部分スト以外の職場の労働者が形式的に出勤しておつても、今申上げたように意思がそこにないというふうに判断することができると思うのであります。その場合その労働の量というものはそれじや一体どういうことなのか、この労働協約にあるところの、労働協約によつて期待される本旨に副つた労働というものはどこで判断するかということは、これは個々の場合によるほかないと思います。ところが出炭によつて払う、これも一つの立派な基準で当然であろうと思います。
○阿具根登君 基準局長なり労働大臣は正常な労働でない形式的な労働だということを言つておられるから、相当坑内の事情も御承知の上でやつておられると思う。ところがお聞きすれば何も知つておらない、例えば四十八時間の部分ストをやつた場合に、坑内ではただ坑外に上らないだけのことであつて、生産はどんどんされておる。坑内にはポケツトもあります、立凾もありますから炭は十分に掘つてすぐ搬出されるだけにしてある。そうすれば四十八時間後の、今度は翌日には普通よりもより多くの石炭がどんどんと出ることになる。こういう実態も御存じなくて、そうしてこれが正常の労働でないのだ、形式的労働だと、こういうことを言われておる、そういうあなた方の勝手な解釈から賃金はカツトしていいのだ、正常な労働でない形式的な労働だと言われることが私にはわからない。正常な労働というのはどういうことを意味するのか、出炭の量によつて形式的な労働だ、正常な労働でないと言われるならば、炭鉱の賃金は全部出炭によつてきまつておるはずだ。ところが出炭によつてきまつておらないとすれば、そういうことによつて賃金をカツトすべきだとすれば、私は重大な影響を与えると思う。先ほども言つておりますように、而もそれは軽率だと私はこういうふうに思つておるのですが、これに対してどうお考えですか。正常な労働と形式的な労働についてもう少し詳しく御説明願いたいと思います。現在の炭鉱の労働者が形式的な労働をやつておるとか正常な労働でないとどこで断定しておるのか、その根拠をはつきり伺いたい。
○寺本広作君 私はさつき申上げましたように大臣の答弁の速記を見ておりませんが、先ほどから二、三の方から同じことを言われております。すでに同僚の吉田委員、阿具根委員がその答弁を基礎にして細かく掘り下げた質問が行われております。さつきからそれに関連いたしまして大臣の御答弁の中に、部分ストの場合、部分スト以外にこれに関係のある全労働者から賃金を差引いてもいいというような御答弁もありましたけれども、又個々の場合というお言葉もちよつと説明に出たように思います。又御説明を伺つておりますと、炭鉱の場合には有機的に組織的に企業が動いておるから、部分的にストが起れば全体として能率が下つて来るというような御説明もあつたように思います。これは特別の場合を除いて近代企業はことごとく有機的、組織的に動いておるのである。企業がそういうふうに有機的、組織的に動いておる事実に着眼して、企業の能率を低下させるという意図で部分ストが行われた場合には、個々の場合ということでなくて、全体の労働者を対象にしてその賃金をカツトするのが適法であるのかどうか、そこらのところをはつきり伺つておきたいのです。それが問題の山だろうと思う。
○阿具根登君 さつきの質問に答えてもらいたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) お二人の御質問にそれぞれお答え申上げます。形式的な労働か正常な労働かというようなお話でございますが、こういうふうに申上げたらいいと思います。労働協約の本旨に副うたもの、そういうふうに認められるものには、その労働に期待される賃金を払うということになりますが、その本旨にもとるものは形式的とみなすほかはないと思います。従つて賃金の支払の必要はないと、こう思います。それで寺本委員の御質問は、あらゆる企業が有機的に関連を持つて動いておるのだから、この有機性に着眼をして全体を麻痺せしめる意図を以て行う部分ストというものならばそれは目的がはつきりしておるのだから、今言うように賃金協約それ自体の本旨にもとるものであるから、その意図がいずれにあるかということを判断して賃金は払わなくともよろしいと、こういう御意見であります。私もその通りであろうと思います。そういうふうに考えております。ただ具体的の認定でいろいろ争いがありますれば、その協約の本旨にどこまでもとつておるかという反論がありました場合に、これはその具体的の場合で認定するという一つのアローワンスがある、こういうわけであります。
○委員長(栗山良夫君) 時間が大分たちましたので、成るべく早く一応の質疑を終つて頂いて、休憩して、午後再開いたしたいと思いますので、さように一つ御進行願います。
○阿具根登君 それじや労働大臣の答弁は、現在の炭鉱のストが正常な労働でなくして形式的な労働だということではないのだけれども、そうであつたならば賃金をカツトしてもいいのだ、こういうことなのですか、たまたま炭鉱に問題が起きておるからこうなるが、正常な労働でなく、基準法の第一条にきめられておるのに違反した場合は賃金をカツトとしてもいいのだ。併しそれが違反しておらなかつた場合には賃金のカツトはやるべきでない、こういうことですね。そうでなかつたら、今炭鉱に起きておるのは正常な労働でないのだとはつきり断定されたならば、その断定した根拠をはつきり何時間かかつても納得するまで答えてもらいたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) 先ほども申上げましたように、労働省は法規解釈を明らかにしております。その法規解釈を明らかにすることによつて、阿具根委員は、炭労の場合はまさにそれに当ると、こうお取りになるならそうお取りになつても差支えないと思います。(笑声)
○吉田法晴君 そうすると今の御答弁は、炭労の場合は具体的には部分ストの影響、或いは運搬以外の労働の実態が先ほど言われるような全般の機能を麻痺せしめる意図を以てやられておると具体的に判断するから、そこで賃金を全労働者に支払わなくてもよろしい、こういうふうに具体的に労働の実態或いは部分ストの実態を調べた上での御答弁でございましようか、それを先ず伺いたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) 政府委員から答弁させます。
○政府委員(亀井光君) 先ほど大臣が御説明申上げましたのは、法律解釈として申上げておるのであります。具体的に然らばこの山においてどうだ、あの山においてどうだということになりますれば、それは事実の認定の問題が最終的になろうと思います。併しながら考え方としては、今申しますようにストライキをやるという意思決定に全労働者が参加し、その意図の下に労働に従事しておる。併しそれが形式的に一応正常な業務の運営をしておるやに見えましても、実質上そういう意図の下にそういう労働がなされておる場合におきまして、その労働が契約の本旨に反する場合におきましては、その限度において賃金が差引かれるという一つの解釈を今申上げておる。然らばこの山で一体どのくらいの差引がなされるのかということになれば、これは具体的な事実の認定によるものであるということであります。
○阿具根登君 委員長の注意もありましたからこれでやめますが、大臣なり基準局長のお話を聞いておると、最初の答弁から少し形が変つて来たように私は考えますが、先ほど田村委員の質問では、今の炭労の争議に対してどう考えるということだつたわけです。私も今の質問に対しては、阿具根委員が考えておるように解釈してよろしいということであつたとするならば、最初の労働大臣の答弁は取消しになつた、こういうように解釈したのですが、いいのですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) これは速記録を見て頂けばよろしいと思いまするが、私はこう申上げたのです。炭労が現在行なつておる部分ストについては目下紛争中の問題であつて、当事者が世論の動向を察知して、良識を以て事態の処理に当られることを期待しております。新聞の論調等においても、社説等を見ますると、いずれもこれは好ましくない争議であるとしておる、そこでこの炭労の部分ストについての賃金問題についての御質問があつたから、それを法律的に解釈すればこういうことになります。こういうことを申上げたのであります。
○阿具根登君 大臣からははつきり賃金カツトすべきであると思う、賃金カツトするのが正しい、こういうことを発言されたから、私はこれを取上げたわけです。それでは賃金カツトをする原因は何か、これは法律的な根拠に基く、法的根拠は何か、労働基準法の第十一条の正常な労働、正常な労働は何かと言つたところが、そういうところはまだ調査しておらない。それでは現実を以てそうするのでなくて、仮定の問題だ、そういう結論になつたと思うのです。そうした結論から言えば、最初の炭労の今回の闘争に対する賃金カツト云々というのはもう取消されたと、こういうようになつて来るのだが、そうでないですか。そうでなかつたら法的根拠に基いて基準法の十一条によつて正常の労働であるか労働でないかという問題はもつと論議しなければならんし、それがそうでなかつたとするならば、はつきりした根拠がそこにあると思う。それをはつきり説明してもらわなければならない。
○吉田法晴君 阿具根君の質問を別の形でいたしますが、炭労の個々の具体的なストがどういうように行われておるか、その実態を調べなければ賃金の支払を全体についてしないということは、これは当、不当は具体的な事例については判断がしにくい、こういうお話です。そうすると一番最初のお話に遡つて、炭労の今度の部分ストについて全体について賃金を支払わなくてもいいということは、それは具体的な根拠はない、全体的に部分ストを行なつて、その部分ストが全体の機能を麻痺せしむる目的で行われるならば、それは賃金を支払わなくてもよろしい、こういうことを一般論としてなさつた。こういう答弁に聞いたのであります。そうじやなくて、今度の炭労の場合には、具体的なストの態様等を検討をして、或いは検討をしなくても賃金を全体として支払わなくてもよろしい、こういうことに言われるのか、その辺ははつきりして頂きたい。
○国務大臣(小坂善太郎君) いろいろ誤解があるようですけれども、政府の態度はこういうことなんであります。政府は個々の争議に介入するとか、いやしくも干渉するという意図は持つていない。ただ法規解釈はこうである、こういうことだつたのであります。それを具体的に当てはめて、今の部分ストの結果出炭が零になつているとか何とか、そういうようなことは、個々の具体的の事例はよく御存じだろうと思います。私はそれについては当委員会の問題ではない、この際論ずべき問題じやない。私どもは法規の解釈について御質問があつたから、こういうことでありますと答えたので、もう一回申しましようか、部分ストを行なつた場合においては、その部分ストに参加した労働者の賃金を差引くことは当然である。併し当該部分スト、例えば運搬部門ストが炭鉱の他の部門の機能を麻痺せしむることを意図するものであつて、部分スト職場以外の労働者も形式的には出勤して労務の提供をなすごとくあつても、組合のかかる効果をもたらす争議行為の一翼を担うために形式上出勤しつつ、予定の行動として労務の全部又は一部の不遂行を来たしている場合には、部分スト以外でこれに関係ある全労働者についてノーワーク・ノーペイの原則により賃金を差引くことは当然であり、労働基準法乃至労働組合法違反の問題は生じない。この場合使用者はロック・アウトをやらなくてもノーワーク・ノーペイの原則により賃金を差引くことができる。この場合の賃金の差引は、当該部分ストによりこれに関係ある全労働者について労働契約の本旨に適つた労働がなされなかつた限度において差引かれるものである。具体的な差引額は個々の場合の認定によるものであるが、出炭量を賃金差引の基準とすることは当然と考えられる、こういうことなんであります。
○委員長(栗山良夫君) 労働大臣今読み上げられたのは非常に準備がよくできておるようですが、新聞発表をされたのですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) いや、こういうことは全然……。
○委員長(栗山良夫君) ちよつと速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(栗山良夫君) 速記を始めて。労働大臣にちよつとお尋ねいたしますが、仮にその部分ストをやつて操業が停止しているときに、そこで資本家側はスキヤツプを入れて仕事を流したときには、部分スト以外の労賃は差引の対象にならんものでしようか、どうでしようか。
○説明員(石黒拓爾君) 技術的な問題でございますから私から御答弁申上げます。 仮に部門ストにスキヤツプを入れて、それによつて搬送部門が円滑に動くときという場合に、搬送部門以外の労働者が、搬送部門が動いたということで普通通りに働けば勿論賃金を払うと思います。搬送部門はスキヤツプで動いているのだからおれたちは働かないでサボなりストをやれば、一般の争議の場合の賃金の支払の通りに従うわけです。
○委員長(栗山良夫君) 非常にはつきりしております。そうしますと、これほど社会問題が起き、出炭の問題が起きているので、今度の石炭の争議を通じて会社側は賃金の差引だけのことを考えるのは枝葉末節であつて積極的に部分ストを行なつているところにスキヤツプを入れて仕事を、出炭をストツプさせないような努力を実際資本家でやつているかどうか、その点を一つ労働大臣から。
○国務大臣(小坂善太郎君) 私は資本家と余り協議したことはございませんので、どういうふうになつているものやら、よく存じません。
○委員長(栗山良夫君) それでは資本家というのはそういう努力をすべきじやないですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 私はこう思うのですね、ここでそういう争議対策とか争議破りとか、そういう問題を論ずるのはちよつとどうかと思つております。
○委員長(栗山良夫君) いや、私が質問しましたのは争議破りということでなくて石炭を是非とも出さなければならんという資本家的な使命があれば、部分ストをやつておるということになれば、その部分だけ動かせば石炭は出るのだからそれで出そう、そういう努力はやはりすべきじやないか。ほかの企業も今までスキヤツプの問題で随分問題になりましたが、非常な努力をしてスキヤツプを入れて工場を動かし、運搬をやつた例が多いのです。そういうことについてやはり労働省としても経営者側でもやはり一応の見解を発表して、経営者を叱咤勉励させるべきである、その点労働大臣どうですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) まあいろいろ産業によりましても種類がありまして、一概に言えないものもあるだろうと思います。いずれにいたしましても、私のほうは法規解釈をしておるのでありまして……。
○委員長(栗山良夫君) いや、私も法規解釈をしておる。
○国務大臣(小坂善太郎君) このスキヤツプを入れるべしというような法規はない、そういう私は強制はできないと思います。それはその経営者なりのそれぞれの自由意思で考えるべきであると考えます。
○吉田法晴君 労働大臣はその経営の維持或いは経営の運営については自由意思だと言われるのですが、経営を維持すべき責任は、従来労働関係において、これは労働大臣としても運営すべき責任は経営者にあると、これは言われるべきではないか。その経営を放棄するか放棄せんか、石炭を出すことは望ましい云々と言われましたが、それもないというわけですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 経営者の社会的意義というようなことについては私も相当まあ考えております。要するに石炭の経営者としてはできるだけ出炭を確保するという社会的なフアンクシヨンを持つております。これは経営者も労働者も持つておる。それを労使間において良識を以て如何にすれば出炭を能率的に出し得るか、こういうことは双方において特に考えるべきことであろうと思います。たださつき申しましたように、政府として殊に争議手段は例えば部分ストというのがあるから、これをやつたらいいぞということを労働者に勧めることはできませんし、経営者にはその会社にスキヤツプを入れてスト破りをやれ、こういうことは勧めるべきではない、そういうことは厳に慎しむべきだと思います。私はそういうことがあつた場合に、法律的解釈はこれはどうかということは、これは役所としてすべきものだと、こういうふうに思つております。
○吉田法晴君 今の点は労働大臣、スト規制法のときにも問題になりましたが、労働者がストライキをやつたり或いは部分ストをやつたその場合に経営者の責任はそのために全部解除されてしまつておる、或いは業務の正常な運営についても責任が解除せられる、或いは賃金の支払についても責任が解除せられる、こういうふうにあなたは答弁されるから、そこで経営の責任というもの或いは業務の正常な運営の責任というものが議論に出て来たのです。労働者が部分的ストにしろ或いは何にしろストライキをやつたら、経営者の一切の責任というものは解除される、こういう工合にお考えになるのですか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 只今労働問題に御造詣の深い私の尊敬する吉田委員のお話ですが、私はストというものは、これは労働者は労務不提供、それから経営者は賃金を払わない、こういうことでお互いに要求を出し合つて妥結点を見出だす、これがストライキの常識ではないかと思います。その場合政府としてそれを一方的にどうしろ、こういうことは言えないと思います。ただその方法がいろいろむずかしくなつて参りますと、法規解釈も明瞭でなくなつて来る。そういう場合に役所としては法規解釈を明瞭にする、これは役所の当然なすべきことであると考えます。
○赤松常子君 私は労働大臣の先ほどからの御態度についてちよつと疑問を持つのですが、というのは、先ほどから労働大臣は今起きております争議の実態をまだ知らない、把握していないとおつしやつておるのでございます。そういう段階において先ほどからの労働大臣の御発言は、この渦中にある労使双方のいずれの側に利益するかということを考えますと、非常に私は今重大だと思うのであります。それで先ほどから大臣は争議に介入はしないとおつしやつております。又これは単なる法規解釈だとおつしやつております。けれどもその意図はそうあろうと、結果的に見まして、結論的には、大臣がこういう段階において発言をなさつたことがどちらに大きな影響を与えるか、マイナスを与えるか、プラスを与えるかということを考えますと、非常に私は政治的に見まして、大臣の今日の御発言は穏当を、慎重を欠いておるのじやないかと思うのでございます。そういう点に対して私は非常に、却つて円満に妥結に至る問題をそらすのじやないかというようなことを心配いたしておるものでございまして、(「その通り」と呼ぶ者あり)今日の大臣の御発言に対しそういう政治的な考慮からどう考えていらつしやいましようか。
○国務大臣(小坂善太郎君) 私もこのたびの争議については非常に関心を持つておりまして、まあ実態等もわかりますことならばと思つております。山の数も多うございますし、一々の実態については存じない、こういう意味で申上げたのであります。全体的な方向は、リーズンというようなものについてはよくわかつておるつもりでございます。ただ私の発言は慎重を欠くというようなことがございましたが、私として、私の立場も赤松委員において一つ御推察を願いたい。委員からの質問があればいずれの問に対しましても率直に誠意を持つてお答えをすべきだと考えております。その意味においてお答えを申上げた次第であります。
○赤松常子君 それはいずれの委員の質問に対してもお答えになるという御義務がおありとは思います。けれども、本来は今非常に重大な炭労の争議でございますし、そういう考慮もお払いになつてお答えになるのが労働大臣のお立場だと思うでございます。都合のいいときにはずばずばとおつしやるが、都合悪のいときには何か歯に衣を着せておつしやる、そういう印象を私どもは従来しばじば受けておるのでございますから、こういうときだけえらいはつきりおつしやつて大変私は驚いておるわけでございますが、もつとそういう大所高所に立つての御答弁というものが、こういうときには特に労働大臣にはおありになつていいのじやございませんでしようか。
○委員長(栗山良夫君) 通商産業大臣は只今交渉の結果、二時から二時三十分まで出席ときまりました。従つて委員会は二時まで休憩いたします。 午後一時四十八分休憩 —————・————— 午後二時二十一分開会
○委員長(栗山良夫君) 委員会を再開いたします。 先の委員会の決定に基きまして、来る十九日、第二回の都内の視察を行います。日本光学株式会社及び産業安全研究所の労働状況或いは労働研究施設の視察を行いたいと存じます。後ほど御出欠の旨事務局側から御連絡を申上げますから御返事を頂きたいと存じます。なお、当日は田町の労働省産業安全研究所約一時間、大井町の日本光学株式会社光学レンズ並びに望遠鏡、写真機等の製造でございますが、約一時間半視察をいたすことにいたしまして、午後一時出発の予定でございます。 —————————————
○委員長(栗山良夫君) 只今通商産業大臣がお見えになつております。
○吉田法晴君 通産大臣或いは経審長官としての経済演説は本会議で私ども承わつたのですが、これに対する各党の質疑は本会議でなされましたのでありますが、本労働委員会において労働大臣の今後の労働行政についての所信を披瀝せられるという形でいろいろな方針が示されたのでありまするが、その中で、内閣の方針であります物価の引下げ或いは貿易の伸長、インフレの停止、こういうことのために賃金を上げて行くという従来のやり方は改めたい、こういうお話がございました。これに関連して労働大臣の構想として標準賃金制というものが出て参つております。この具体的な労働省の施策についてはここで論議しようとは思いませんけれども、物価の引下げ、それが労働省所管の場合に、賃金の引下げ或いは賃金の引上げを抑制するということのみとして現われるといたしますならば、私どもこれは実際に物価を引下げ或いは経済規模を拡大し、或いは貿易を伸長するゆえんではなかろうと考えます。この労働大臣の施策に関連いたしまする政府の方針というものについてお尋ねいたして参りたいと、かように実は考えておいでを願い質疑をするわけであります。 物価を引下げたい、五%乃至一〇%引下げたいと、こういうことが政府の施政方針演説の中に言われております。五%、一〇%の基準がどういうところにあるかということも問題でございますが、二十八年度に比べて当初五%、或いは年度末一〇%、こういつたような意図もあるように承わるのでありますが、この一月一日から消費者米価は上つております。消費者米価の値上りと共に当然他の食糧或いは麺類というのですか、小麦の加工賃その他も上つて参りつつございますし、それからその他の食料品の値上り等がすでに現われつつございます。或いは大きな問題として電力料の値上りも必至ではなかろうか。これはまあ政府として電力料を値上げしないのだと一応言われておりますけれども、新聞に伝えられるところでは繰延べるだけであつて、或いは租税或いは融資の利子等について引上げる措置云々と言われておりますけれども、後半においては電力料の値上りも政府として認めざるを得ないのではなかろうか、かように言われております。或いは汽車の運賃は、一、二等に限定されましたけれども運賃の値上りの方向にありますことは、これは否定が困難だと思う。そこで或いは繊維消費税の問題はなお決定を見るに至つておりませんけれども、消費税といいますか或いは間接税といいますか、そういう税体系の変更は政府ですでに出しておる方針でございます、租税制度についての……。こういう基礎物資についての値上り傾向或いは税制の間接税への移行とまでは行かなくとも、間接税の増徴、これは物価値上りの要素であると考えるのでありますし、それから二十九年度予算がデフレ予算であるか或いはインフレ的な要素を持つかということは非常にむずかしい問題だと思うのでありますが、たとえ財政規模の均衡を図られようとも、或いは金融面からデフレ政策を行おうとしても、純消費的な軍事的支出が増加いたしますならば、或いは軍需産業への助成というものも含んで純消費的な財政部分が殖えたことは間違いないと思います。その限りにおいてインフレ的な要素が全くなくなつたというわけには参らない。かように物価の引下げの方針と言明にかかわらず、物価は、或いは運賃について、或いは税制について、或いは予算の中にもインフレ的要素があることを考えると、物価の引下げというものは非常に困難ではないか、実際問題として困難ではないか、かように考えられるのでありますが、先ずこれについての大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(愛知揆一君) 只今いろいろお話がございまして、その中には御尤もと思う点もございまするが、私どもの考え方、特に物価につきましての大体の見方を御説明いたしたいと思います。 で、只今も今回の財政というものがデフレ的なものであるかどうかということについてはいろいろ論議もあろうがというお話でございましたが、私どもとしてはいろいろの過去における傾向或いは今回の予算の編成にとりました方針から申しまして、それはデフレ的な予算である、又そうしなければならないというふうに考えておるのでありますが、特にそのうちで私は物価に最も影響があると思われます点は、一つはいわゆる財政投資の面と考えておるのであります。御承知のように財政投資の関係で申しますと、昭和二十八年度に比べまして、金額で五百八十五億円ほどが縮減されておりますが、比率で申しますと、これは二十八年度を一〇〇にして八二・八ぐらいの規模になつておるわけでございます。それからこれは財政投融資の関係だけでございませんで、これと並行していわゆる設備資金等におきましても、やはり大体同様の程度における縮減が行われるというふうに考えておるわけでございます。でそれを一つの前提にして考えますと、先ず生産財と消費財とに大きく物資を分けてみて、生産財のほうの物価は主として需要が減るということから低落をするという見通しを立てておるわけでございます。即ち一口で申しまして、生産財の物価の面は、今申しましたような財政投融資の減というようなこと、或いは設備資金の減というようなことから需要が減退する。それに対しまして供給のほうはどうかと申しますると、先般来申上げておりまするように、二十九年度の生産の規模で、その中でも鉱工業の生産の見通しというものは、年度を通じて見れば二十八年度と大体同様、数字で申しますと生産指数を鉱工業については一五二と見ておるわけでございます。従つて生産財の供給は大体二十八年度と同様である。そこで需要が減退するのに対して供給のほうが変らなければ、需要供給の関係から申しまして生産財の低落を見ることは、私どもは必至であると考えておるわけでございます。 それからその次に消費財の物価でございますが、このほうは生産財と逆な見通しを立てておるのでありまして、このほうは主として供給が増加することによつて低落するというふうに考えております。例えばその中で最も顧著なものと思われますのは農産物でありますが、これは申すまでもなく、二十八年度が非常な凶作でありましたが、二十九年度におきまして平年作ということになりますれば、二十八年度に対しますると、大体数字で申しましても一三%或いはそれ以上の供給の増加になるのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。こういうふうな全体の関係からいつて、需要供給の面から申しまして生産財も消費財も下る。それからいつどういうふうな状態に、タイミングの関係がどうなるかという点につきましての大体の見込といたしましては、やはり二十九年度の第一四半期というようなところにおいてそう顕著な開きは起らないでございましよう。併しながら例えば二十八年度の末である今年の三月三十一日と、それから二十九年度末でありまする来年の三月三十一日というような、一つの時点と時点とを年度間を通じて比較いたしまするならば、生産財につきましては大体一〇%程度、それから消費財につきましては四%前後のところが低落をする。そうして年度間を通じて平均で比較いたしますると、前にも申上げましたように、大体幅といたしましては五%から一〇%ぐらいの幅で、例えば六、七%程度の年度間を通ずれば開きになるであろう、大体こういうふうに見ておるわけでございます。
○吉田法晴君 私だけから質問をするのはどうかと思いますので質問を集約いたしますが、通産大臣は主として財政の均衡或いは従来の撒布超過を改める、そうして消費を引締める。或いは資本が特に過小であるし、擬制資本が大きいので、これを資産再評価によつて資本の増加を図る、こういうことで物価の引下げを図りたい。賃金を上げるとコストがそれだけ上るから、そこで賃金が上ることは望ましくない、或いは健全な消費を期待する、こういうことを言われたのであります。そこで私どもは消費というものは、これは消費のまあ別でありますが、今答弁のありました中に、例えば生産財、生産財にもよりますけれども、生産が低下するということは私どもは一般的に申しまするならば望ましいことではないのではなかろうか。消費と申しましても、例えば労働者の賃金の大部分は、これは労働の再生産のために使われます。労働の再生産に使われる消費というものは、或いは金というものは、これは私は生産的な意味を持つて、インフレの要素とはならんと思う。個人で或いは競馬に耽ける、或いはまあパチンコもそうでありますが、これが純消費的に使われるということは望ましくない、これはわかります。併し賃金全体が純消費的であり、そうしてそれがインフレの要因になるとは、これは私は考えられないのであります。それから生産財という点は、その生産が経済規模の拡大或いは生産力の向上或いは生産性の向上というものに役立つ限りにおいては、生産財の生産も或いはその消費もむしろ拡大が望まれこそすれ、その縮小はこれはむしろ警戒されなければならない。そこでそういう意味を含めて個人的な生活も或いは財政もそういう意味において純消費的な部面は抑えられなければならないけれども、生産的な、或いは生産規模の拡大或いは生産性の向上のためには、これは政府として施策をしなければならない、そういう意味において財政投融資或いは設備資金の減小ということを言われましたが、これはそれが好ましいと考えられるかどうか、私はまあ仮に自由党の立場であろうとも、私日本の経済のためにむしろやはり悲しまれるべきことじやなかろうか。そうして財政投融資は減らされ、生産力、生産設備の拡大というものがとまつて、そうして財政の中の一番大きな部分が軍事的な純消費的な生産の外に出てしまう、消費が殖えるということこそ悲しまるべきことで、或いはむしろそれがインフレの要素として考えられるのじやなかろうか。この点は労働大臣も経済学者だそうでありますけれども、労働大臣おられませんが、その点は通産大臣或いは経審長官であるあなたにはつきり一つ御答弁を願いたいと思います。 それからもう一つ、その中におけるその賃金の問題でありますが、賃金の点については先ほど一応賃金の大部分というものが経済の中に占める役割、生産的な或いは労働の再生産といいますか、或いはこの仮に栄養の高い物を食つて、そうして生産力が余計出る、労働力が余計発揮できるとするならば、その面での消費の向上というものはむしろ喜ばるべきである、この点についてどういう工合に考えられますか、お伺いいたします。 それからこれは愛知さんの大臣就任以前の御報告ではございますけれども、従来経済白書或いは安本白書ですか、経審白書ですか、経済報告が行われて参り或いは経済月報等が出ておりますが、この中での考え方というものを愛知さんはお認めになりますかどうか、ちよつと書かれておりました場所を発見しないんでありますが、去年の報告でありますか、一昨年の報告でありますか、労務費の節減はすでに限界へ来ている。労務費の節減によるコストの引下げには限界が来ている。こういう報告の一節があつたことを御承知だと思います。今持つて参りました二十八年度の経済報告を見ましても、設備の老朽化或いは陳腐化、そうしてそれによる生産性の低さというのが一番問題だと書かれております。そうしますとこの設備の老朽化或いは陳腐化、それから設備からいたします生産性の低さというものを回復することが日本の宿題ではないか。それを労働賃金なり或いは労務費の切下げだけによるということは、これは限界に来ておるという点からいいましても、労働者の生活、実質生活或いは労働生産性をも犠牲にする結果になるのではないか。なお今年の一月の経済月報でございますが、これは全都市の世帯区分別収支状況が出ておりますが、これを見ますと、昨年の事例でございますが、一万七千四百二十四円を取つておる世帯で二百八十円の赤字が出ております。一万五千円の場合には三百二十七円の赤字が出ております。このときの平均賃金、全産業別の賃金をとりますと、一万五千円そこそこだと思います。この統計の中に出ておりますが、従つて平均賃金を取つておるところでも三百円くらいの赤字が出る、これが実態だろうと思う。まあ或いはそう消費水準が戦前に帰つたとか或いは実質賃金指数が戦前に帰つたということも報告に出ておりますけれども、併しこの全都市の勤労者世帯についての世帯別区分収支状況等を見ましても、一万五千円程度のところで赤字が出ておるという事実は、これは否定することはできないのじやなかろうか。そういたしますと、これは数字の基礎についてはいろいろございましようけれども、ざつと言つて実質賃金が戦前に近いところへ来たとして、賃金がインフレの最大の要素或いは中心的な要素のように考えて賃金を抑える、これは名目賃金の話でありますが、そういたしますと、実質生活を切下げ、或いは労働の再生産をやつと戦前程度にやつて来ておる。今までは長い間瘠せ細りながらといいますか、労働の再生産も十分できないでやつと生活して来て、最近漸くまあ戦前に帰りかけた、こういう実質生活が切下げられる結果になる。このことが或いは経済政策としてとらるべきかどうか、これらの点についてお尋ねいたします。
○国務大臣(愛知揆一君) 先ず第一の点からお答えいたしたいと思いますが、先ほど申しましたように、生産財等については、この供給という点から見れば、二十八年度の年間を通ずれば規模が同様ということを一つの前提とし、又同時にそれを見通しにいたしておるわけでございます。それに対していわば過剰の投融資、それから財政上のインフレ要因になるような水ぶくれの意味での需要を切るために、財政投融資その他を切つて行こうというのでございますから、そういう事態が一応健全な姿として成立つた上においては、私は生産の規模が更に拡大されることが望ましいと思いますが、昨年の実績等に徴しまして、生産も伸びておる、消費も伸びておる、それはそれ自体としては結構なことだが、輸出にこれが向かなかつたということは、国内的に過剰の投資でもあり過剰の消費でもあつたろうというところに着目してこれを切りたいというのでありますから、この二十九年度中に先ほど御心配の点というものが私はないと考えるのであります。 それから第二に、労賃高といいますか、或いは労賃が非常な比重を以てインフレの要因になるか、或いは企業のコストの中に占める労賃の比重というものが、これは或る一つの限界点に達しておるのではないかというような趣旨の審議庁の報告等をお挙げになりましたが、私はその審議庁の報告等についてそういう見方が私はあると思うのでありまして、決してこれを否定する者ではございません。 そこで第三にお答えいたしたいと思いますのは、これは私の見方はこういう見方なんであります。先ほどから申しておりますように、生産の規模が急激に縮小するということではない、少くとも二十八年度の年間を通ずれば同じ規模である。ただ二十九年度の後半期等に入りまして、物価が下落する、それでその関係から企業の収益が減少するということが予想されまずから、賃金につきましても従来見られたようないわゆる基本給の上昇度が低下するということはあり得るでございましよう。それから例えば賞与でありまするとか臨時給与等が減少するということも予想されると思うのであります。けれども或る部門におきましては、年度と年度を比較すれば、結果において賃金水準の上昇度の上るものもございましようから、私どもとしては全産業の平均の名目の賃金は平均として減らないという見方をしておるのであります。 で第四に、従つてその間、先ほども挙げましたように消費財の下落、特にCPIに占めておりまする食品等の価格の比重が大きなことから考えますと、CPIは私どもの勘定では大体三・六%ぐらい下落する、こういう関係から賃金の実質水準はむしろ二十八年度より上る。その実質賃金水準が上るということは、それだけ余裕と言うとお叱りを受けるかも知れませんが、そこに余裕ができる。その点が従来と同じようにこれが消費に対して翕然と向うようであつては困るので、そういう部分については何らかの形において資本蓄積その他の方面におきまして、将来の日本経済の基礎に役立つような面にこれが積まれることが望ましい。私はいわゆる消費生活についての耐乏という意味は、従来過度の消費があつた面についてはこれを切つて頂きたい。又今後の面におきまして、実質賃金の上昇があるという場合におきまして、そこに多少のゆとりが出ればそれを直接に消費に向けないで、これを資本の蓄積のほうに充実して頂くという、さような国民的な御協力が願いたいということが、私はいわゆる耐乏生活の内容ではないか、こういうふうに考えておるのでありますから、大体以上総括してお答えいたしますると、御懸念の点はよくわかるのでありますけれども、私どもとしては大体その御懸念のところがないように計画を立て、又それを遂行して参りたいと、こういうふうに考えておるということをお答え申上げたいと思います。
○吉田法晴君 全般に亘りますので話が抽象的になるのですが、コストの引下げ、従つて物価の低下を図るという点からいたしますならば、先ほど石炭の賃金問題が午前中随分論議をされたのでありますが、石炭或いは電力或いは鉄鋼その他基礎産業について言いますならば、経済報告が言いますように、設備の老朽陳腐化或いは有機的構成の程度と言いますか、その辺に癌がある。労務の問題については、これは限界に来ておるということが言われるなら、ば重要産業についてのこれは基礎産業から漸次拡大をして行かなければなりますまいが、それに資本が投下される、増大をして行くことが生産性の向上とそれからコストの引下げの一番大きな要素ではないか。そういう政策が行われないで、ただ金融面で引締めを行われるということでは、コストの引下げということは事実上できんじやないか。それについてどういう工合に考えておられるか。それから純消費、よく言われますが、例えば料理屋等で消費せられます、或いはそれが接待費等の場合になるかも知れませんが、最近まあ贈収賄がよく言われておりますが、これは純消費だと思うのであります。それが或いは二千億であると言われ或いは三千億であると言われる。こういうものはこれは金融面からだけ抑えようとされておるわけですが、従来これは奨励をされて来られなかつたと思うのですが、実際にはどんどん建つておる。而も今日あれだけやかましく言われておるけれども、なお料理屋の前には非常にたくさんの高級車が並んでおるというの、がまだ実情だと思う。或いは競馬、競輪その他にしましても、私はまあ政府でありますか、或いは我々仲間もそうかも知れませんが、相当そういう純消費が行われて来ておるのは事実であります。それらのものがそれではなくなることが或いは減少することが期待せられるというならば、この金融政策だけによるのか或いは別に考えられるのか、その点を伺いたい。 それから今のところ金融面とそれから市場についてはこの外貨割当ということで規制がなされておりますが、今後更に純消費が減ることが望ましいというならば、これは過去の官僚統制は弊害は言われておりますけれども、何らかの計画経済的な措置がこれは考えられておるのじやないかということを考えますが、その点についてもこれはついででありますが、お考えを承わりたい。 それから賃金問題について重ねて恐縮でありますが、労務費からのコストの引下げが限界に来ておるのではないかという点については大体お認めを頂いた。それから先ほど消費財の面で国内消費云々というお話がございましたが、これは賃金なり或いは給与でありましてもそうでありますが、本質的には賃金、それから農業関係の収入、労働者と農民の収入が一番大きなこれは国内市場の要素だと思うのです。それをむしろ抑えようというのでなければ、国内市場を培養しようというのであるならば、これは貿易関係もございますけれども、それを抑えるというのはこれは間違いではないかと思います。純消費的な消費はこれはその消費面を抑えるということは必要かと思うのでありますが、先ほど消費財の需要云々という点もございましたから、国内市場としての、賃金或いは給与或いは農産物価格等の労働者農民の収入が大部分をなします国内市場というものについて、どういう工合に考えられておりますか、伺いたいと思う次第であります。
○国務大臣(愛知揆一君) 第一の基礎産業の設備の近代化というようなことについてのお尋ねでありますが、私はこの金融政策とか財政政策だけで物を考えるべきでないということはもう誠に御尤もであります。そこで先ほどはこの全体の規模として、例えば財政投融資とか産業設備資金が約一割或いはそれ以上削減するということを申上げましたが、同時に大事な基礎産業につきましてはその切つた枠の中で一番経済効果を発揮できるように重点的に配分すべきだろうと考えるのでありまして、これは物価の問題にいたしましても、先ほどは総体としての見通しといいますか、こうなるであろうという傾向を主としてお話申上げたのでありますが、例えばこれは例にお挙げになりました石炭についてもあえて金融問題だけで解決するものとは考えておりません。と同時に金融問題としても重点的な配分ということは考えなければならんと思いますが、石炭の例をお挙げになりましたのでちよつと申上げたいと思いますが、只今通産省といたしましては、総合燃料対策という建前から、石炭の問題についてはどうしても適正な出炭量というものを確保して、これが国内においてこの程度のものなら需要ができる。いわゆる適正な需給の一つの点を発見するということが何より大事だろうと考えておるわけでございます。従つて具体的な数字といたしましては、私一個のまだ見方であるのに過ぎないのでありますが、できれば四千八百万トンから五千万トンまでは適正な出炭規模としてこれを確保いたしたい。そういうことがはつきり年度を通じて見通しがつくのでありますならば、それに応じた出炭の計画ができて、そこに引続きコスト低下の努力というものが地についてできるのではなかろうか。同時に現在の石炭の貯炭の状況、出炭の状況から見まして、これは燃料の需要家の立場からも相当の協力を求めなければなりませんから、その面からいつても炭価の引下げという努力が石炭業界からはなされ、又これに対して需要家からもこれに対する協力をされ、或いは多少の犠牲というものも出して頂かなければならない。要するにコストの点だろうかと思うのでありますが、そうして一方におきましてできるだけ貴重な外貨を使つての油を使うということは、油でなければいけないような程度にとどめて頂く、こういうような協力態勢を作るということが、むしろ石炭についての根本問題でありましようし、又そういうことが私どもの希望通り行くということになれば、おのずから労使間の協調も、又賃金の安定ということも期待できるのじやなかろうか、こういうふうに考えております。 なお又税制等の上におきましてもいわゆる石炭の追加投資というようなものを損金に見えるかどうか、積立金とした場合に、これに対して税の軽減ができるかどうかというような点についても現在努力をいたしまして、政府部内におきましても税制の改正或いは少くとも徴税技術上の工夫を凝らすということについて一生懸命の努力をして協議いたしておるようなわけであります。 それから二番目の純消費の問題でございますが、これは御尤もで、例えば不当な支出に充てられておるというようなものが見受けられるような場合、今日のような場合におきましては、法人の自己資本の充実とか積立金の充実とかいう面において税の軽減措置を図らなければならない。これは一つの行き方でありますが。同時にいわゆる交際費といいますか、その他の項目において支出されるようなものについては、法人の税制上においても相当のこれは工夫を凝らす、それによつて弊害が根絶されるかどうかということは必ずしもはつきりはいたさないかと思いますが、少くともそういう措置を政府が国会の御決議を経て、やるということは一つの私は改善措置ではないかと思います。 それから第三番の外貨の割当の問題でございますが、これは先ほど来申しておりますように、生産の規模を急激に縮小するということを断じて考えておるわけではないのでありますから、原材料に依存しなければならない我が国の産業構造から言えば、必要な原材料の輸入については外貨を配当しなければならない。そこで適当な外貨の割当をするということが取りも直さず原材料等については二十八年度と同規模の外貨の確保をしなければならない、こう考えております。同時に高級自動車でありますとか、香水でありますというような奢侈品というものについては徹底的な削減を加えることが、これは国民の輿論にも応えることであり、又経済政策としても適当のことだと思うのであります。ただこれも詳しくなり過ぎるのでありますが、御承知のように貿易については他国との間の協定等の問題もございますので、相手の希望によりましては極く小部分の不用不急品、奢侈品等も入れなければこちらの輸出が十分伸びないというような場合もありますことだけは御了承願いたいと思います。 それから第四に労賃、労務費とコストの関係並びに農民等についての正常な消費は抑えないほうがよろしい、国内市場ということも十分考えなければならない、こういう御説でございますが、この点も御尤もでありまして、例えば農村方面におきましてのここ一カ年くらいの見通しを申上げますなら、先ほど申しましたように農産物の収穫は相当殖えるであろうという半面、価格は或る程度下落するでありましようから、その全部が収入の増ということにはなりますまい。又公共事業費とか救農予算が削減されたというようなことからいつてまるまる所得の増加に出て来ないことは当然と思いますが、併し農村におきましても消費水準は或る程度維持できる。そこで適正規模の生産を維持することによつて、その国内向けの消費に充てるものは十分確保され、又これは適正に需要として吸収されるであろう、こういうふうに考えておるわけであります。
○田村文吉君 一般的の財政経済に関する問題については、大分お伺いしたいことがございますけれども、これは機会がございましようと思いますので、大体労働に関係する問題として通産大臣に伺つておきたいのですが、私どもは一番心配いたしますのは、それは要するに国際的に物価が高いのだ。高いのだから輸出が振わない。こういうことが最大の問題になる。そこで通産大臣、経本長官の御発表によれば、先もお話があつた通り五分乃至一割の値が下る、こういうことなんでありますが、一体そんなことの値下りで輸出が振興するかどうか。それは私どもの考え方から言えば、なに輸出が出なければ買わなければいいのだ、お互い耐乏生活で外貨で自動車を買つたりガソリンを買つたり、そういうようなことをやめてもいいのだということも一面では言い得るのですが、そうも言い切らんので、どうしたつて輸出を振興しなければならぬ。然るところ輸出はとまるという情勢であると、必ず失業者が多く出て来る。失業者が出て来るということになると、これは大きな問題なので、一つのバスに乗る場合において力がある奴は乗つたけれども、あと力の弱い奴は乗せないのだというような今日の日本のあり方のような状況のままにしておいてこれで果してよろしいかどうか。私どもはいわゆる耐乏生活をしてでもいいからお互いが助け合つて、そうしてこの今日の難局を切り抜けて行く、それには通産大臣としてはどうして物価を切下げるかということについてのお考えがなければならん。今のお言葉の中に、例えば賃金は大体これ以上に切詰めることは困難だということが白書にあるかのようなお話でございましたが、そういうようなことで若干上る程度をコントロールするような程度では私はいかんので、今日のような行詰つた時代においては当然耐乏生活としてお互いが我慢し合つて、皆さんが、八千万の人たちが助け合つて行く、こういう気持にならねばならない。それには現在の労働賃金さえも、無論もらうほうでは少いと害うけれども、実は物価は安くない。低物価という問題も今お話がございまして、合理化ということでどんどん下るかというと、これも或るマージンがありまして、而も日本のような乏しい資本の下において、そうむやみやたらに機械を入れたつて、なかなか生産費を切下げるわけに行かない。そこで私は通産大臣、経本長官として、一体その問題をどう取組んでおいでになるか、その問題を取組んで行かないというと、必ず失業者が殖えて来る。失業者が殖えるということは、私としてはより以上耐えがたい問題であります。こういうことを考えるのであります。何かそれにつきまして、ただ安易に、それは非常におつしやる言葉はやわらかくて結構でございますけれども、やわらかいのは結構だが、今日耐乏生活ということを打出して来るという限りにおいては、賃金はこれ以上上げないようにするというくらいの強い決心の下で、より以上に合理化によつて国際的に物価を引下げて行くのだというようなことはお考えがなければならないのじやないか、こういうふうに考えるのですが、もう一つ、今丁度石炭の問題が出たからでありまするが、石炭は昔八、九円程度であつたものが今日七千円程度以上になつておりまするから、かれこれ一千倍くらいとは行かないかも知れませんが、やや一千倍に近いところに行つておる。これは私は非常に石炭の業者としてもお困りになつているだろうと思う。労働者自体としても、非常にこれは困つておる。これは一体こういうふうにやつてしまつた過去のやり方が悪かつたのか、これは私は追及しませんが、こういう問題についてひとり日本の貿易の上において重大な影響があるという問題だけでなく、又日本の物価というものを低物価にするというときに非常に困難があるというだけでなく、又労働者などそれがために非常に今日は決して楽に生活をしておらんというようなところに私は非常に実は疑問を持つておる。こういう問題につきましても通産大臣としては、何か私どもはこういう問額についての打開する方法を考えて行かなければならない。これはひとり通産大臣、経本長官の問題じやない。みんなの問題でありますけれども、ただ私どもは今日言わなければならんことは、無論耐乏生活についての覚悟は、これは我々国民が持つて行かなければならんということは無論観念しておるのでありますが、余り又大臣にやわらかい言葉でおつしやつて頂いても、実は却つて間違いがありますから、私は申上げるのでありますが、そういう点については一体こういう七百倍から八百倍の値段になつてなお更に石炭というものが合わない、労働者の賃金も余りよくない、こういう問題は一体どこに起因しているか。私は一つの問題としては、一体表面賃金というものはそうであるけれども、この厚生設備というようなもので非常な金額を要するようになつて来ているという、このことは随分私は炭鉱でも問題はあるのじやないかと思うのです。これは一般の産業から考えましても非常にあるのでありますが、こういう場合にやはり耐乏生活というようなことになりますというと、或る程度までは我慢をしてこの一、二年は歯を食いしばつても、日本の経済というものを建直して行かなければならんと、こういうふうに私は考えておりますので、労働問題に関する限りにおいて、余りそうかと言つて、どうも大臣からえらい勢いのいいことを言つてもらつても、これ又却つて委員会の物議をかもしても困りますから、そういうことにならん程度においてはもう少し……、併しやはり経本長官としても、又通産大臣としても、少し固い決意をお持ちになつて行かないというと、これはどうにもこうにもなりませんよということを私は遺憾ながら申上げざるを得ないと、こういうふうに考えるのであります。
○国務大臣(愛知揆一君) 大いに御激励頂きまして、誠にどうも恐縮に存じますが、私はただ、縷々申上げておりまするのは、私自身の考え方としては、まあ物事をできるだけ合理的に、合理主義を基礎にして考えて行く、そうしてそれを又御納得を願うというところに、私は労働問題については全く素人でわかりませんが、書生論かも知れませんけれども、物事を筋道を立てて御理解を願うというところが私としては基礎ではないかと思うのであります。 それからいま一つは、これもざつくばらんに申上げますが、今回の政策の転換ということについて極端に申しますると、数十万の中小企業者が倒産をするであろうとか、それから数十万の失業者が巷に溢れるであろうとか、或いはこれは恐慌になることが必至であつて、そうしてこれは今年の後半期において日本として大動乱になる虞れがある、そういうものではないかというような一部に懸念のある向も相当あるように思われます。私はさつき申しました書生論かも知れませんが、合理的にものを考えて角を矯めようとして牛を殺す愚を政治としてすべきではない。これは数学的に申しましても、例えば井上財政が登場したときのあのときのいろいろなその前の状況又はあとの移り変りの状況等も十分考えまして、先ほども御指摘がありましたが、本年で言えば一兆円予算でも多過ぎる、その理論から言えば……。それから物価も五分乃至一割がたというのはけちくさい。これで輸出の振興がどうしてできるか。三割以上現在国際物価水準との開きがあるのでありますが、そこは併し今申しましたように牛を殺さないように、而も考え方をできるだけ貫徹して行くというところから申しますと、実は両方からお叱りを受けることになるかと思うのでありますが、これが私どもとしてのとるべき道ではなかろうかというふうに考えますので、自然これは今申しましたように両方の側から御批判があると思うのでありますが、これ以外には私は行く道はないのではなかろうか、こういうような考え方をもとにいたしまして縷々申上げたようなわけでありますが、併しそれにもかかわらず、私は相当これは窮屈な政策である。でこれをすら貫徹し得ないようであつたならば、只今田村さんの御指摘のように実に大変なことになるのではなかろうか。最小限の要請としてこういう政策は推進して参りたい、こういうふうに念願しておるわけであります。
○田村文吉君 ちよつとその問題に触れましたからお伺いしたいのでありますが、ちよつと労働問題を離れるのでありますけれども、今のようなお話で、姑息ではあるけれども、そうして行くことが合理的であつて、而も皆さんに納得してもらえる点である、こういうお話でありますが、どうも私どもはちよつと気が短いせいですか、もう少しばちりと三割高いものを三割下げるというようにお考え下さらんというといけないのじやないかと思う。併し下げる方法には今おつしやつたような不愉快な嫌なような言葉を言わなければならんようなことがあるかも知れません。私どもそういう点まで今日はお話し申上げたいとは存じません。存じませんが、そういう点についてひとりこれは労働省だけの問題でなくて、通産省としても経本としても十分にお考えになつて、思い切つてやるというくらいの御決心がないというと実際できませんぞ。成るほど一部の人は賃金ベースを上げてもらうとか何とか言うかも知れませんけれども、大部分の人はそれがために職を失つて街に流浪せざるを得ない。今の合理的ということをおつしやるならば、三割高いというところに五分、七分下げて、それで輸出ができますという事自体が私どもには合理的というお言葉に合わないような気がするのであります。余り経済の問題深くなりますから他日の機会に伺いますが、何かそういう点について通産省としても、石炭行政にいたしましても、何かそういうことについての御案がありませんか、こう考えたのでお伺いいたしたのですが、以上お話があつたほかに別に言うことがなければ、あえて私はあなたを詰問申上げるわけじやありませんから、結構ですが、若しそういうことについて何かの決意と、それから実効的な方法がある、しなければならんというお話があれば私は伺つておきたい、こう思うのでございます。
○国務大臣(愛知揆一君) 先ほどもちよつと申上げましたが、この計画を推進して行くということだけであつても私は相当な決意が要るだろうと思います。これは先ほど申しましたように、何としても貫徹しなければならない。それに対して相当の決心を以て断固たる措置をやつて行くという決心は私どもとしても十分に持つておるつもりでございますので、なお具体的ないろいろのコスト引下げの工夫でありますとか、それに対する対策として考えておりますことにつきましては、他日の機会に十分御説明申上げたいと思います。
○阿具根登君 田村委員の御質問と似たような問題ですが、実は違つた意味で御質問申上げるわけです。 通産大臣の話を聞いておれば、双方から叱られる立場におるのだ、逆に言えば双方からほめられるような政策をやりたい、こういうことはなかなかむずかしいと思うのです。で、先ほどの石炭につきまして、二十九年度は四千八百万トンから五千万トンぐらいを考えておる、こういうことを言つておられましたが、私の記憶間違いであつたら御指摘願いたいと思うのですが、二十八年度はこの三月までで大体四千三百万トンの国内炭であると私は記憶しております。実際の使つておる消費燃料は五千三百万トンだつたと思います。そうすれば強粘結炭は恐らく五、六百万トン、四、五百万トンは当然入つて来るものと考えております。重油は殆んど必要がない、要らない、こういう結論において四千八百万トンから五千万トンという数字を出されたのであるか、それとも石炭の需要を別個に国内で消費するように考られておるのであるか、それをお伺いしたいと思います。それからなお、石炭のコストが非常に高い、このコスト切下げに対して税の問題をちよつと触れられたようでありますが、それによつて国際価格に対処して行くだけの石炭のコストが下げられるかどうか、或いは労賃の問題も、或いは違つた意味で只今御質問もあつたようでありますが、炭鉱労働者が、例えばアメリカならアメリカ並みの炭鉱労働者の賃金をくれと言つている炭鉱労働者は一人もありません。併し午前中も論議されましたように、日本の炭鉱労働者は最も下位な立場にある。金銭問題のみでなくて、その生活実態から、作業関係から見ても実に下位におる。これ以下に下げること、これをこの位置にとどめるということは不可能な現実に立至つておる。こういうことから考えましても、これ以上労賃の引下げ或いはコストをこれによつて下げるということは不可能だと思う。そうすれば何があとに残つておるか。いわゆる今までのような企業形態のまま行つてコストが下げられると考えられているような、国際市場における競争ができるかどうか。どういうところでコストを国際市場で競争できるだけの値段に下げられるお考えか、この二点をお尋ねいたします。
○国務大臣(愛知揆一君) 第一点のその四千八百万トン乃至五千万トンというのは、先ほど申しました通り、現在のところは私一個の考え方でありますが、どうしてもそこに一つの適正な規模、又そこまでは出炭の努力ができるのだということの基礎がなければ、これは石炭の経営者の側におきましても、或いはこれに従事される方面の方方からいつても、安心をして安定をした努力というものが私はできないという観点から、何とかして一つそれだけの需要というものを持ちたい。併しこれは御承知のように必ずしも国内消費の問題だけではございませんし、又重油の問題にいしましても、重油でなければならないものも相当あります。ただ、重油については、昭和二十七年というようなところをとつてみても、二十八年、又最近の状況は非常にこれが厖大な勢いで増加いたしておりますから、これを何とかして減らす工夫を一方においてしなければならない。それについては、私は炭労でございますか、組合方面におきましてもそういう事情というものを十分一つ呑み込んだ上で、いろいろと御考慮願いたいと思うのでございまして、これをやりますのには、石炭業界と政府だけの間の手ではこれは到底できる問題ではないと思います。そういう意味におきましても、非常に政府側としても勇気が要りますし、場合によつては断固たる措置が私は当然必要だと思います。 それからその次に税の点で、国際価格まで引下げができるかという話でございますが、これはもうお答え申すまでもございませんが、とてもそれだけでできる問題ではございません。ただ石炭が国内の資源であるということに着目をして、而もできるだけ我々としては、恐らく企業形態を変えたらどうかという話だと思うのでありますが、私どもとしては税の面でも政府というか国民として考えて行く、又金融とか金利の面においてもできるだけのことは、国家的な仕事でありますから考えて行く、その基礎の上に企業の創意工夫、或いは労使の協調というものがその上に組み立てられているのが私どもの妥当と思うところのやり方であります。こういうふうな考え方を持つておるわけでございます。
○委員長(栗山良夫君) 大分約束の時間が過ぎましたので簡潔に願います。
○吉田法晴君 四千八百万トン或いは五千万トンと言つておられましたが、それは双手を挙げて賛成をいたします。問題はそれによつてコストを引下げる、その引下げ方に問題があるのです。田村委員の言われたように、現在以下の賃金或いは現在以下の生活で耐乏せよと言われるなら、これは別であります。政府はそういうお考えは私はないと思います。これはまあ田村さんも大分御不満で、重ねて御質問になつた点ですが、これは国民の生活水準を上げるという点から、或いは経済政策として国内市場を培養して行かなければならんという意味においても、これは生活水準の向上というのは、たとえ炭鉱の労働者であろうとも、これはやつて行かなければならん、労務費の部分による生産費の低下というものは、これは日本の産業の場合一般的にも限界に達しておるということが、去年、一昨年ですか、経済報告に書いてございましたが、炭鉱の場合でも曾つてのように七〇%、それ以上労賃がかかつておるという時代ならば別ですが、平均いたしまして五〇%、或いは五〇%以下に下つておる今日では、これは生産費の面からいたしましても、実際的に今の技術を以てするならば、或いは資本の構成を以てするならば、或いはこれは不可能な仕事だと思うのです。そこで四千八百万トン、五千万トン消化して行くためには、或いは外国にも出て行くためには、どうすればよいか、ここに二つの方法があるわけで、労務費を抑える或いは賃金を抑えるという方法をとらんとするならば、これは資本の投下、或いはそれによる人的構成の増加、生産性の向上という途が残つておるだけであります。その点については通産大臣お触れになりませんでしたが、政府は竪坑の開鑿ということで、その竪坑の開鑿ということも総額について昨年と殆んど同額であつたと記憶いたしております。単価の値上り等を考えるならば、二十八年度通りやれるかどうかもこれは問題だと思う。それも一つの方法ではありましようが、それだけでコストを下げ得るとは十分考えられないのじやないか。そこで資本の重点的な配分という言葉がございましたが、政府としてはもつと考えらるべきではなかろうか。具体的に考えられておる点があるならばお示しを願いたい。 それからここに政務次官がおられますので、労働省として賃金のストツプ或いはもつと積極的な賃金の切下げの意見等も出たのじやないかとさえ心配をするのでありますが、コストの実情、或いは資本の構成からいいまして、労務費の節減はこれ以上困難である、或いはこれ以上は生活を切下げ、労働の再生産も不可能にするような賃金の切下げができないとするならば、別の面で、今申上げたような別の方法でコスト引下げを考えるべきじやないか、それが政府の方策でなければならんのじやなかろうか、こういうことをお尋ねをしておるわけでありますが、通産大臣とそれから安井政務次官に一つ御答弁を頂きたいと思います。
○国務大臣(愛知揆一君) 石炭とその労務費の問題でございますが、先ほど申しておりますように、日本の石炭を考えまする場合には、例えば重油を使えばコストは三割も安いというような現在の段階である場合において、或る程度石炭の増産を適正規模として政府が斡旋をして設定するからには、その需要者に対しても相当の犠牲を払つてもらわなければそういうことができないということを私は一つ大きな問題としてお考えを頂きたいと思うのであります。そういう環境の中で石炭業を一つ守り抜いて行くということのためには、私は企業者も、それに従事する労働者も、或いは株主も、相当なやはりその環境の中において、それこそ犠牲というか、或いは真当な努力というものを考えて頂かなければならないと思うのでありまして、そういう点から今後の炭鉱における賃金というものも改めて私は考えて頂きたいと思うのであります。殊に例えば先ほど申上げましたように、消費財の関係、CPIの関係から見れば、私はノミナルな賃金が同じだつたとしても、CPIは相当低下する、実質賃金がよくなるということを一方において政府として考えておりまするにおいてはなお更のことではなかろうかと私は考えるわけであります。同時に政府としても例えば税の面でも、或いは財政融資の竪坑開発なんかにしても、昨年と同額ということでありますが、昨年と同額をとにかく確保し得ているものは他に余り例はないのであつて、これらの金がどこから出て来るかと言えば、これは全国民の税金から成り立つておる。かくのごとく石炭について四千八百万トン以上を適正出炭量としてこれを確保したいというからには、そのほかの面において相当多くのこれを盛り立てるための犠牲を払うわけでありますから、くどいようでありますが、同時に私は石炭業者も労働者も、或いは企業としての株主も、応分のそれに対して犠牲を負担して頂くべきではなかろうかと思うのであります。若し仮に重油の輸入がどんどんできるとか、ストライキが連続して起るとかということであれば、それこそもう石炭業の前途というものは壊滅してしまうものでありまして、そういう点を私はいわる合理的にお考え願えれば、ただ単に賃金だけ上げろとか下げてはいかんとかという御議論は出て来ない、これは私は確信を持つて申上げます。
○政府委員(安井謙君) 労賃の面についてお答え申上げますが、国民経済の比率を占める労賃が非常に重過ぎるか或いはまだ安過ぎるかという点では、いろいろ御議論があるかと存じますが、これは前回におきまして労働大臣も御答弁申上げましたように、国民所得の中に占める勤労所得の比率が四八%を超えておる、人員の割合では勤労者は国民全体の三七%であるというような現状から見まして、労賃が今日の国民経済から見れば限界点に来ているであろうというような推測は、我々は一応立てておるわけであります。今後の労賃の上り下りその他の問題につきましては、主として労働の生産性と結び付けて考えて行きたい、かように考えております。
○委員長(栗山良夫君) 今日通商産業大臣に特においでを願つたのは、この前の委員会で労働大臣が国民総耐乏の政府の決意に対して、標準賃金等の新らしい仕事を始めて賃金水準の引上げを一応抑えて行きたい、こういう説が述べられたので、国民総耐乏であるということならば、賃金だけではない、ほかのこと全部が総耐乏でなければならん、然らば通商産業政策は如何ということをお聞きしたい、こういう意味で今日おいでを願つたわけであります。で各委員の御質問で大体尽きておりますが、一点だけ私まだ落ちている点があると思いますので、お伺いしたい。 それは先ほども大臣若干触れられましたが、要するに資本の正常な活動ということなのであります。正常な活動ができているかどうか、最近新聞等を賑わしておるいろんな問題を見ましても、どうも正常な活動というものは行われていない。この正常な資本の活動なしに賃金の水準の引上げ拒否をやつてみたところで、国民総耐乏は軌道には乗らないのじやないか、それを愛知新大臣としてはどういうふうに考えておられるか、どういうふうに施策しておられるか、資本の再評価とか或いは自己資本の充実とか、いろんなことが言われております。そういう言葉は結構ですけれども、如何にしてそれを実行に移して行くか、国民が納得するような方向にどうして持つて行くかということが一番重要なことであります。その点が一つ。 それから第二点は、現在外貨節約の問題でいろいろ原材料或いは原材料を主とした製品で、引下げの宣伝にかかわらず、現実に値上りしておる物資、こういうものを通産省或は経審でどれとどれとどれであるかおつかみになつておると思いますが、それを先ず伺いたい。
○国務大臣(愛知揆一君) 第一の点は、一つは再評価の問題であり、一つはそれと関連いたしますが、資本の充実の問題であると思います。従来資本の再評価については再三に亘りましていろいろの措置が講ぜられたのでありますが、まだ十分正常な資本形態になつていない。俗に言えば資本が非常に少いというものがございます。そうすればちよつと儲かれば収益率が非常に高くなる、すると高率の配当をする。そうすれば従業員としてもこれは黙つているわけには行かない、ここに賃上げの要求も起つて来る。ところがその企業としてはそれでは誠に健全な経営ということは言えない。そこで私どもは先ず税の方面において資本の再評価を妨げておつた原因を除去する。で殆んど強制といつてもいいような程度に資本の再評価をして頂くということにおいて、これは資本家のほうも或いは株主のほうも、或る意味では非常な犠牲を受けるかも知れませんが、これこそは健全な経世であつて、これも一つの耐乏である。又労働者の側からいつても、自分の属する企業の経営の実態というものを合理的に把握することができることによつて、生産意欲も向上いたしましようし、いろいろの労働問題についての行過ぎというようなものもそういう面から是正ができるというふうに私は考えます。 それから外貨の問題については、実は二つの問題があると思うのであります。先ほど来申上げておりますように昭和二十九年度において外貨予算の編成をいたします場合においては、原材料や或いは日本の産業を合理的に伸ばすために必要な物はどうしても入れなければならない。その限りにおいては二十八年度と同様の規模においてこれを確保したいと思つております。ところが極めて最近、今年の正月以来、政府は外貨を引締めるであろうというような思惑から例えば自動承認制に対して非常な希望が殺到いたしました。ところが私どももこの問題については十分慎重に考えたのでありますが、例えば今それによつて価格が高騰しておりますのは例えば砂糖或いは生ゴムといつたようなものでございましようが、そういうものは私どもの調査したところによつて、大体国内の正常な需給は大丈夫やれるのだ、それにもかかわらず将来外貨は締められるであろうという思惑の下に、折角国際的に自由経済の窓を開けるという意味で立てておりました自動承認制が、表現は悪いかも知れませんが、多少悪用された、或いは利用の度が過ぎたというような情勢になりましたから、これは思い切つて大体自動承認制をクローズいたしまして、従つてその影響で以て当面或る種の物資については価格の高騰が起つておりますが、根本的には私は需給のバランスが取れておると思います。従つてこの情勢は漸次正常になるにつれてこの価格の一時の騰貴というものは必ず鎮静する。それに対して更に二十九年度の外貨予算の編成方針というものが或る程度具体的に打出せる時期がそう遠くないと思いますけれども、これが打出せれば、政府の全体の考え方が地について、御納得が頂けるのではなかろうか、こういうふうに考えております。
○委員長(栗山良夫君) 只今の値上りした物資に砂糖と生ゴムを指摘されましたが、繊維、油、そういつた物も私は上つておるように聞いておるのですが、違いますか。
○国務大臣(愛知揆一君) 大体御説の通りございますが、同時に私の申上げましたことはそれらについてもアプライされると思います。
○委員長(栗山良夫君) そういたしますと今のお話だと、需給バランスの心配がないのにこういうふうに値上りをしたということは、裏から言えば業者の思惑によつて不当な価格の吊上げが行われた、こういうふうに私は解釈していいと思う。そうすると国民総耐乏を訴え、労働者の賃金を抑え、争議をやれば、何か理窟を付けて成るべく争議のできないような工合に行政的にもやつて行こうという強い決意を持つ政府が、一部の不当な業者の思惑的な利潤をそのまま認めて、そうして放置するということは、私はゆゆしいことだと思うのです。従つてこれは今度に始つたことではなくて、過去何回となくこういうことがあつた。そして国民は非常な迷惑をしておる。こういうような不当な利得に対して政府はどういうふうに対処をしようとしておるか、これを一つ承わりたい。
○国務大臣(愛知揆一君) これは企業としての利益がある限りにおいては、これははつきり税率その他において処理ができまするし、私はこれは極めて一時的の現象であつて、思惑とだけ断定することは或いは言い過ぎかも知れませんけれども、思惑である場合におきましては、必ずこれは全体として価格も下りましようし、却つて思わざる損害をそういう連中が受けることも当然予想されることである、こういうふうに考えております。
○委員長(栗山良夫君) その業界全体では元へ戻れば損をするかも知れません。併し経済は生き物であります。これは大臣が一番よく御承知のことです。従つて大手筋で今現に儲けておる、それの値下りするときには二次、三次の末端のほうへ流れて行つてしまう。結局大手筋は損をしないというのが日本経済の仕掛になつておる。従つて砂糖業者にしても油業者にしても繊維にしても、生ゴムにしても、大手筋は一時現象であるかも知れませんけれども、不当な利得を得ることは私は間違いないと思う。そういうものを税制で若干監視するのだと言つておられますけれども、その程度のことでは私どもは監視しても実効が挙がるなんということは夢にも考えられない。そういうことについて労働省なり或いは通産省が労働問題と真剣に取組んで闘われるくらいの決意を持つて、これはやはり天下に声明をして本当に行動を起されなければ、それは吉田内閣の総耐乏なんということは絵に描いた餅になる、その点如何ですか、言葉が過ぎますか。
○国務大臣(愛知揆一君) 御意見はよく承わります。非常にその御指摘のような点が何と申しますか、行き過ぎたようなことになれば、これは政府としても当然何らかの措置を考えなければならんと思いますが、現在のところはそこまでは考えておりません。
○田村文吉君 委員長の御発言でございましたが、私はちよつと自分として申上げたいのですが、そういう贅沢品に類似したような物は成るべく入らないほうがいい、そういう物は或る程度高くなつたら高くなつてもいいじやありませんかそれを今大臣の御説明ですと、やがてそれは平常に復するだろう、こうおつしやるのですけれども、今後為替勘定をやつて行く限りにおいては当然そういうことは起り得るし、又贅沢品や奢侈品などは成るべく高くして、国内の国民に使わせないということのほうが本当なんじやないか。こういう意味から言うと、必要品が若しさようなことが起つて来た場合に、例えば食糧ですね、そういう問題が起つて来たときは、大いに私は鼓を鳴らして政府を責める、こう考えるか、これは委員長の発言だけに私は言わなかつたが、委員長はそういう御発言をなすつているから、私はそれに対してはむしろ反対の考え方を持つておるということだけをちよつと……。
○吉田法晴君 委員長の発言の中に砂糖だとか油だとかゴムだとか、これは贅沢品じやないと思う、そこで問題は……。 それでは愛知通産大臣立ちなすつたから安井政務次官に一点だけ……。先ほどの通産大臣のお言葉の中に、賃金を上げろとか或いは賃金を引下げてはいかん云々というようなお話でありましたが、これは炭鉱だけの問題を論じておるのではなくて、炭鉱を事例に引いて、コストをどういう工合に下げるか或いは物価をどういう工合に下げるかという論議をしておつた。そこで通産大臣の答弁がございましたから、政府としては今の炭鉱の賃金、或いは施設にしても、価にしてもそうですが、これをどういうふうに考えておられるのか。いわゆる実質的な賃金の値上げを考えられておられるのか。それとも昨年の暮十月、或いは今年の一月或いは三月頃になるのもありましようが、賃金改訂期になつて協約が切れて、その後の賃金をどうするかということを協議しておる或いは交渉しておる。そうするとその場合に昨年の物価、生計費がどれだけ上つたからそこで賃金はそれに合せてどの程度に直さなけばならん、これが今の交渉されておる賃金問題だと思う。賃金を上げるのはどうであろう或いは下げるのはいかん、こういう御認識ですと、甚だ以て私ども政府の認識のあさはかさといいますか、或いは間違いを指摘せざるを得ないのであります。炭鉱の賃金問題に関連して来ましたから、今の賃金問題をどのように考えておられるか、一つはつきり伺いたいと思います。
○政府委員(安井謙君) 個々の賃金の実態につきまして、又或いはその協約のやり取りにつきましては、それぞれの事情もあろうかと存ずるのであります。ただ政府といたしましては、物価は引締めて行く、下げて行く、これから労賃の今日の国民経済に占める割合から申しますと相当な限度までに達しておるというような見方から、これがむやみに上るというようなことのないことを希望をいたし、又そういつたような政策を進めたい、こう考えておる次第であります。 —————————————
○委員長(栗山良夫君) 次の議題はけい肺法案及び労働基準法の一部を改正する法律案でありますが、本日は先の委員会の決定に基きまして学識経験者の御出席を願い、けい肺及び粉塵の実態に関し御説明願うことにいたしたいと思います。 本委員会は両法案に関しましては今まで提案理由の説明、その補足説明及び法案の逐条説明と順を逐つて審査を進めて参つたのでありますが、本日からは法制上の問題を審査するに先立ちまして、けい肺及び粉塵自体、或いはけい肺を結核等の関係或いはその治療対策の現況、及び我が国におけるけい肺対策の問題点等、実情に関する審査を進めることになつております。ここに御出席を願つております参考人の方は、労働科学研究所の佐野辰雄君、順天堂大学医学部の山本幹夫君、早稲田大学理工学部の房村信男君の三君であります。佐野先生及び山本先生からは病理学的或いは診断医学的立場からそれぞれけい肺の本質に関し御意見を承わることとし、房村先生からはけい肺発生の要因である粉塵自体の性質、生産技術的な問題について御意見を承わりたいと思います。 先ず佐野先生、それから山本先生、房村先生の順序でそれぞれお話を願うことにいたしたいと思います。時間はそれぞれ四十分前後にお願いすることとし、委員の質疑は参考人の陳述が一応終つてからお願いをいたしたいと存じます。なお参考人の方々にお断りを申上げなければなりませんが、本日は委員会の議事が極めて錯綜いたしまして、長時間お待たせをいたしましたことについて御了承頂きたいと存じます。 先ず労働科学研究所研究員佐野辰雄君にお願いいたします。
○参考人(佐野辰雄君) 佐野でございます。只今四十分のお時間を拝借できるということでございますけれども、大分遅いのでございますから、要点をかいつまんで述べさして頂きたいと思います。 それから実は御理解を助けるために、もう御実見のこととは思いますけれども、けい肺及びけい肺結核で死亡された方の肺を実は持参をいたしておりますので、場所柄少しどうかと思つたのでございますけれども、それを見て私の話を聞いて頂くほうがよろしいように思います。そういうふうにさして頂きたいと思います。
○委員長(栗山良夫君) 結構でございます。
○参考人(佐野辰雄君) それで私今日お話申上げたいと思いましたことをプリントのようにして持つて参りましたので、私が申上げることは実はプリントしてあると申上げてもよろしいのであります。もう御覧になられた方もあるわけでございますが、いろいろな病気があるわけでございますけれども、やはりけい肺と呼ばれるものには特徴がございます。 その第一の特徴と申しますのは、これは細かく申上げますというといろいろな問題になるのでございますが、要約をいたしますというと、けい肺症が或る程度進むというと完全な意味の治癒が望めないという一つの事実でございます。これは標本を御覧になつて頂きますとおわかりになるかと思います。これは先ず一番ひどい例でございますが、その前に正常な普通の肺臓というのはどういうのかということを御覧になつて頂きたいと思います。これを御覧になりますというと、細かい点はおわかりにならないかも知れませんが、肺の中には特別に固まりがあるというふうなことはございません。これに比べましてこれは金属鉱山の労務者で、実は三十年以上の経歴を持つ方でございますが、これは一部分を持つて参りましたけれども、左の肺臓の、上と下に分れておりますけれども、その下の部分が殆んどけい肺の結節になつてしまつておるという例でございますが、このように非常にかたい固まりになつてしまいます。この中では無論空気も入りませんし、この中の血管は閉されてしまいますから血液もそこを通らない。即ち肺の機能として廃絶をしてしまうわけでございます。このような変化になつてしまいますというと、現在の医学でこういう部分を治療をいたしましてなくしてしまつて、又新しく肺の働きをその部分にもたらすというようなことは、非常に残念でございますけれども不可能でございます。でけい肺の不治癒性ということを残念ながら申上げなければなりません。 それで治癒しないということについて或る程度御理解が行つたかと思いますが、ここにもう一つ困つた問題があるのでございます。それはお手許のプリントに差上げたのに書いてございますが、けい酸を或る程度以上吸入をいたしますと、五ページをお開き願います。五ページに、これは実は南阿の成績でございますが、粉塵業務をすつかり離れた方が、その後けい肺が進むかどうかということを十七年の長い間に亘つて調べた成績がございます。これによりますというと、図で明らかでありますように、粉塵業務を離れましても進行をいたしております。十年程度で第二度から第三度になる者が五〇——六〇%に上つておると思います。無論百人が百人二度から三度に進むというのではありませんけれども、多くの人が粉塵業務をすつかり離れておるにかかわらず、つまり新らしい粉塵を吸い込まないのにかかわらず、進行をしておるという事実が厳然としてございます。これは高濃度のけい酸を吸入いたしますところの金山の例でございますが、多かれ少なかれこれはけい肺の重要な特性の一つでございます。 第三に申上げたいことは、これは山本さんからもお話があるかと思いますが、この標本を見て頂きます。これは御覧のようにぶつぶつがたくさんございまして、そうして一部分はこういうふうにかたまつて融合をしておる。けい肺にいたしますというとこれは第二度程度のものでございますが、これに実は結核が加味されております。けい肺と結核の関係は一口に申上げますというと、けい肺が存在いたしますというと肺結核の感染が起りやすくて、結核が感染をいたしますというと、その経過が通常の結核に比べて終局的には非常に悪い。無論けい肺結核と申しましても一律ではございませんで、けい肺のあるところに結核が入れば必ず二、三年のうちに急性に死亡するかというふうなことになりますというと、それは決してそうではございませんので、十年或いはそれ以上の長きに亘る経過を取るという場合もございますけれども、窮極的には極めて悪い経過を取るという事実でございます。 ここで又一つ注意いたさなくてはなりませんのは、この肺臓でございますが、これは単純にけい肺の度合から申しますというと実は一度にも達しない程度の変化でございますが、そこに結核が混りますというとこのような特異な、或いはけい肺の結節とも間違えられるような結節を生じまして、実質的にはけい肺の三度というのに近い肺の状態になり、従つては肺の抵抗が少くなるために死亡する。こういうふうになりますまでに二年乃至三年かかるということがございますけれども、こういうふうになつてしまいますというと、今後はいろいろな例えば肺炎或いは気管支炎というふうなものであつてすら死亡してしまうというふうに抵抗が衰えて参ります。こういうふうな問題がけい肺の発生の本質的な問題から派生しておるように思うのでございます。 もう一度申しますというと、第一には完全な意味の治癒が期待されないという点であります。第二には粉塵職場を完全に離れてもなお進行をするという性質を持つております。第三には結核とは互いに悪関係に立つておつて、窮極的に極めて悪い影響を結核とけい肺は及ぼし合つております。このような点は通常のいろいろな職業病がございますけれども、私といたしましては他にこれに匹敵するものを発見することができないというふうに思つておる次第でございます。 御質問がございましたらあとでお答えいたしたいと思います。
○委員長(栗山良夫君) 続きまして、順天堂大学医学部教授山本幹夫君にお願いいたします。
○参考人(山本幹夫君) 私こういう会議でどういうふうに皆さんにお話をするのかということは、御質問にでもお答えするつもりで参りましたために、けい肺問題の全般的な問題についてまとめてお話する準備をして参りませんために、何といいますか、まとまつた話にならないかということを懸念いたしますが、一応日頃考えておりますけい肺の問題の二、三についてお話をいたしまして、後ほど御質問を頂けたらそれに対して私のお答えできる部分をお答えいたしたいと思います。なお、ここにけい肺のレントゲン写真を焼付けたものを持つて参つておりますので、今佐野さんからお話がありましたことも加味されこれを御覧になつて頂けたら幸いだと思います。なお、ここに一度、二度、三度と書いてありますのは、レントゲンで見まして、一度というのが一番軽い、二度が二番目、三度がその次という工合にお考えになつて、あとから又御質問でもあれば御説明いたしたいと思います。 それで今佐野さんがおつしやいましたように、日本のけい肺に関します研究なり何なりの成果、日本のけい肺の問題にどういう特異性があるかということについて簡単に申上げますと、日本のけい肺の本当の研究が始まりましたのは昭和二十二年頃からでありまして、日本のけい肺に関する研究歴というものは非常にまだ日がなお浅い、従つて成果もまだ十分でないということ、それからなおこの方面の研究が従来医学的な方面からだけ研究されておつて、いろんな予防、これから房村先生もお話になると思いますが、予防のほうの研究がまだ十分でないという点が一つの特徴であろうかと思います。それからまあこれは日本だけの問題ではありませんが、けい肺の問題が非常に複雑な労働問題、社会問題としての性格を有しておりまして、この問題の進展如何が労働者、使用者双方に大きな影響を持つておるということが一つ言える点ではないかと思います。 それからもう一つはけい肺の診断とか予防とか、出て来ました患者を補償するというふうなことのためには非常に多額の費用と資材が必要であるということであります。それからなおその技術におきまして相当高度の技術を必要とするということであります。 それから第四番目といだしましては、今佐野さんが言われたように、けい肺という病変そのものが治らないばかりでなく、一定度進行したものについては職場を離れてもなお進行するということであります。でこれは私たちも実際に二、三の研究を行なつて参りましたが、殊にけい肺が進んだ者については職場を離れてからの進行度が強いようであります。 それから第五番目といたしましては、けい肺がほかの職業病に比べまして労働能力の喪失の程度が甚だしいということと、それからもう一つは予後が非常に悪い場合が多い。けい肺として見付けられてから後の予後というものは、殊にけい肺が二度以上に進んだ者については予後が悪い場合が多いのであります。それからなお労働ができなくなつてしまつてからは数年以内に大体肺結核その他を合併いたしまして死亡する例が非常に多いのであります。 それから第六番の特異点といたしましては、今も佐野さんが言われたように、けい肺も殊にその進行したものについては肺結核の合併率が高い。なおこの合併によりましてけい肺も結核も共にお互いに悪い影響を持ち合つて、結局病状全体として悪くなつて行く傾向があるということであります。 なお第七番目の特徴といたしましては、多量のけい酸粉塵を発散しておる職場で勤務いたしますと、数年間のうちには大部分の者、九〇%以上の者が、最近いろいろ調べられたところによりましても五、六年で九〇%くらい、もつと高い率を出しておるのもありますが、そういうふうに非常に高率にけい肺のこれは軽いものでありますが発生して来る。その中で非常に進行の速いものもときどき見られる。そういつたふうな特徴がもう一つにございます。 それからなお重要な問題といたしまして、第八番目にはけい酸粉塵に暴露されておる職場に働いておる労働者というものは非常に数が多い。労働省でこれは御推定になつた資料によりますと、大体三十五万という推定が出ております。そういうふうにまあ非常にけい肺というものは厄介な病気であります。 なおけい肺の診断につきまして二、三申上げることにいたします。けい肺診断のやり方でございますが、これは生きている人間については臨床的にはX線検査ということを十分に駆使するよりほかはないのであります。で、なおそうして又X線検査によつてけい肺自身の、肺の内部におけるけい肺による器質的な変化といいますか、そういうものは大よそどの程度であるかということはわかる状況であります。それからなおけい肺を診断いたしますのにはそういうレントゲン所見だけでなくて、勿論どういうふうな職場でどういうふうな粉塵の立つている職場でどの程度働らいたかというその人の職歴、それからもう一つはその人の自覚的な訴え、症状と申しますか、それと多角的ないろいろな臨床の所見、そういつたふうなものが総合されまして、その人のけい肺によつてどの程度の機能、人間の生活機能というものが障害されているかということを総合的に判断すべきものであるということが現在の学界の大体の考え方でございます。なお職歴つきましてもいろいろたくさんな職歴がけい肺の発生の虞れある職場とされております。私、いろいろの従来の文献その他を総合いたしまして、けい肺発生の虞れある職場というのを調べておるのでありますが、採鉱の鑿岩部でありますとか、運行部とか、岩石の破砕をやるもの、それからなおこういうふうな仕事を実際に自分でやらなくてもそういうふうな作業を監督しておられる方、そういう人の中にも調べてみますとかなりけい肺の患者さんといいますか、軽い程度のけい肺の方はたくさん見られるのであります。それから石炭山でも、殊にその隧道掘進をやる方、そういう方の中にはかなりひどいけい肺が見受けられます。それからいろいろな採石作業或いは採掘、截断、加工、運搬、そういつたような採石作業においても見られます。それから窯業関係、それから金属産業におきまして金属機械工業なんかにおきます金属の研磨、サンド・ブラスト、それから岩石の研磨、それからそのほかの研磨業のいろいろな職場、そういうふうな所でかなり見受けられます。それから人造石の製造の職場、研磨用品の製造の職場、そういうふうな所でも見られます。それから鋳物の鋳直し、鋳型を作る所、そういつたようた所でも調べられたところによれば相当多数のけい肺の患者さんがいると推定できます。それから先ほどちよつとレントゲンをお廻しいたしましたが、けい肺のレントゲン診断というものはどういうふうになされるかと申しますと、これはほかの病気で以てレントゲンを用いる場合も同じでありますが、先ずX線撮影をいたしまして、それによりまして影が正常であるかどうかいうことを判断いたします。それから表われている影が果してけい肺であるかどうかというようなことを見るわけであります。それによりまして我々としてはけい肺がここに存在するかどうかということを先ず見る。それからその程度がどの程度であるかということを見るわけでありますが、それもレントゲンの堪能の方でありますれば我我は……、そこにレントゲンをお廻しいたしましたが、肺の中に血管の影がたくさん出ておりますが、その血管の影がだんだんけい肺が進みますと乱れて参りまして、一番初めには血管の先に小さな斑点の、何と申しますか、刺の出たような形が見受けられます。これをレントゲン学的に第一度のけい肺と私たちは呼んでおります。その当時はなお肺の中には小さい斑点がたくさん見受けられます。それから第二度のけい肺というふうになりますと、血管がだんだんとぎれとぎれに見えなくなります。そうして中にかなり大きい粒の結節の像が見られて参ります。それがだんだん進んで参りますと、結節がだんだん大きくなつて参りまして数も増して来る。そうして血管は殆んど見えなくなる。結核が合併をいたしましたときには、その間に、まあけい肺だけですと肺や全体に一様に陰影が出て来る。殊に初めの時期に出て参りますが、けい肺が結核と合併いたしますと、肺の一部分が暗くなつて来るのであります。要するに結核とけい肺というものの鑑別ができるわけであります。なおけい肺と鑑別をいたすのに、いろいろむずかしいほかの疾患はございますが、これは非常に専門的な問題になりますから、又御質問でもあれば申上げますが、大体けい肺というものはあるかないか、或いはこれは大体けい肺であるかどうかといつたふうなことは、レントゲン学的に大よそ診断がつきます。それからなおけい肺の程度につきましては、先ほど申上げましたように、いろいろ体の生理機能がどの程度に侵されているかというような、いろいろな心肺機能検査というものがございますが、そういつたような検査をいたしまして、大体どの程度に体全体としては、その人に生理的な面で影響を与えておるかというようなことがわかるのであります。 一応そのくらいにしておきます。
○委員長(栗山良夫君) 続きまして早稲田大学助教授房村信男君にお願いいたします。
○参考人(房村信男君) どのような方法でお話するのか、実は心得ておりませんでしたので、十分に準備がして参りません。日頃考えておりますことを粉塵自体の問題として一通り申上げます。お話申上げます順序は、この粉塵そのものについて、それから次に粉塵を計るのにどんな困難があるかということ、次にけい肺になる原因としての粉塵中の遊離計算、そういうような問題、それから最後にけい肺そのものは現在治癒が困難である。然らばけい肺を防ぐには先ずその粉塵を防止することが最大の問題になるわけでございます。そこで粉塵防止の問題、そういうような点についてお話したいと思つております。 先ずこの粉塵でございますが、これは必ずしも発塵作業場のみに粉塵が存在するわけではございません。この室内におきましても或いは街路におきましても多量の紛塵が浮んでおります。例えば一例的に申上げますと、東京都の街路で盛んなときには一万若しくは二万以上の粉塵が浮遊しておる可能性がございます。それから普通の東京都内の事務所等におきまして、相当良好な通気、換気を行なつておる所でも数千乃至一万の粉塵を見出すことはそれほど困難でございません。炭鉱若しくは金属鉱山の坑内におきましても当然多量の粉塵が発見されます。ところでこのけい肺問題とは少し離れますが、我々は粉塵があることによつて日常生活において相当の利益を得ておるわけでございまして、その一例を申上げますと、例えば冬太陽の光線が弱くなりましても或る程度の暖かみを得ている。或いは夏非常に直射日光を受けても或る程度の遮熱的な効果を粉塵によつて受けておるわけであります。それから光の反対側、物の影に参りましてもそこが直ちに真つ暗にならない、それというのが空気中に浮んでおる粉塵による光の散乱のお蔭である、そういうようなふうに粉塵も我々の日常生活に多少は貢献をしておるわけでございます。一体空気中に浮んでおる粉塵がどのくらいの大きさがあるか、それはその所の風の早さ、そういうようなもの、或いはその浮んでおる物質の性質によつて異りますが、通常浮んでおりますのは二、三十ミクロン以下の粒子と考えられます。ここで申上げました一ミクロンと申しますのは一ミリの千分の一の大きさでございます。実際この中でけい肺の対象となりますものは、いろいろの説を参考にいたしますと、五ミクロン以下で〇・五ミクロンくらいのものが特に危険であるとされております。そういうような細かい小さな物質のかけら、そういうようなものが粉塵と考えて頂ければよろしいと存じます。 次にその空気中に浮んでいるこのような粉塵を我々はどのような方法で測るか、これには昔からいろいろの研究が行われておりまして、各種の測定器具ができております。それを大別して考えますると、先ず第一には一定量の空気をとりまして、その中に目方としてどれだけの粉塵があるか、そういうような方法で測つて参ります。これを普通重量法と申しておりますが、これは例えば脱脂綿或いは砂糖或いはレゾルチン、そういうような薬品を使いまして濾過いたしまして、そこに溜つた粉塵の目方を測つて計算する方法でございます。次には空気中の一定量の空気を取りまして、その中に浮んでおつた粒子の数を何粒あるか数を数える方法でございます。これは計数法、数を数えると書きまして、計数法と申しております。只今申上げました重量法と計数法とがこの粉塵を測る二つの大きな方法でございます。これに対しましてそれぞれ三乃至四種類以上の機械がございまして、同じような場所でそれぞれの機械で測つてみますると、それぞれの値は殆んど一致しないというような状況にございます。原理といたしましては、只今申上げました目方を測る或いは数を数えるという方法的にはきまつておりましても、それぞれの機械には性能の差がございますし、それからそこへ測るほうの原理的な差異がございますので、なかなか一致した値が得られません。で実際そこに真に存在しております粉塵の量が或いは数がどれだけあるかということは、我々現在の力を以てしては知ることができない。我々は単に相対的にここが多い或いは少いということがわかつているだけであるというような状況にございます。これはいろいろと研究しておりますのですが、非常に困難がございまして、なかなか真実の値に到達することができないような実に残念な状態にあるわけです。併しながら一定の機械で一定の方法で測定しておりますれば、相対的には多いか少いかということはわかります。 それから後ほど申上げます予防手段につきましても、或る予防手段をいたしましたときに、それがどれだけの効果があつたかということは現在の相対的な測定方法でも相当詳しく知ることができるわけでございます。勿論真実の量を測る研究も必要でありますが、それだけでけい肺問題が解決するわけではございませんので、それはそれで相対値がわかるという程度で、その方法を以て予防手段、予防的な効果を向上するように現在は努力がなされておる次第でございます。一般的に申しますと、現在日本では労働科学研究所で昔考案いたしました労研式の塵埃計、それから日本工業協会にございます粉塵防止研究委員会、そこの委員の知慧を集めまして創案いたしました粉研式コニメーター、この二つの器械が空気中における粉塵の数を測る機械として広く用いられております。このような器械について測りますと、普通坑内等では大体一CC、一立方センチの中の粉塵の数が二千乃至三千というような程度が多いようでございます。勿論それは一例でございまして、その作業状態或いは粉塵発生の防止の仕方によつてはおのずから異つて参るわけでございます。 次に今度は粉塵の中に存在しておる遊離けい酸の問題がございます。遊離けい酸と通常申しておりますのは石英、普通俗語的には水晶と申しておりますが、SIO2という分子式を持つております一つの物質でございます。その石英を通常は遊離けい酸と申しております。一般の岩石の中には石英はいろいろの形で入つております。が、他の物質、他の分子と結合した状態のSIO2はこれを結合けい酸と申しております。それに対して他の何物とも結合しないで、SIO2だけの恰好で岩石の中に入つておる、それを通常遊離けい酸と申しておるわけでございます。それでけい肺の原因としては遊離けい酸、只今申上げました単独に存在しておるSIO2、これが極めて有害なものであるということはすでに証明された事実でございますが、他の物質と結合した結合けい酸、それがけい肺の発生にどれほどの影響を与えるかということに関しましては、すべてのものについて全面的に検討が進んでおるわけではございません。その一部については相当の害があるらしいことはわかつておりますが、すべてについては、まだわかつておりません。それで現在の階段におきまして、我々といたしましては、先ずその結合けい酸のほうは別問題にいたしまして、粉塵の中にこの遊離けい酸、単独の恰好で存在しておりますSIO2がどれだけあるかを調べるためにいろいろの努力を重ねて参りました。いろいろ調べて見ますと、鉱物学的にはこの単独のSIO2という恰好で岩石の中に入つておりますものは、只今申上げました石英というものだけではございませんので、他に同じ、分子式は同じでも構造的に多少異つたものが七種類以上もございます。併しその中で最も多いものがアルフアー石英、石英の前にアルフアーというギリシヤ文字を付けた恰好で呼んでおりますが、このアルフアー石英と申しますのが大部分でございましてそれ以外のものは鉱物の標本として標本的な価値はございますが、実際の岩石作業等に現われて参りますことは殆んどございません。そこで我々は作業上の立場或いは鉱山等の立場といたしましては、このアルフアー石英だけを考慮すればよろしい。そういうような立場で分析法の研究を重ねて参りました。 ここに一つの粉塵があつたといたしましてその中に石英が幾ら入つているかということを分析で求める。一見極めて簡単のようでございますが、これが私ども専門の立場から申しますと決して容易ではございません。現在これに対しましてはつきりしております分析の方法が約十六種類ございまして、或るものについてはその中の三つなり四つなりの分析の方法の結果は一致しておりますが、ものが変りますと又他の方法、他の幾つかの方法がよく一致した値を得るというような状況でございます。粉塵を構成しております物質の種類によりましてそれぞれ適当な分析法を用いなければ、信頼し得る値が得られないというような状況にございます。この中で最も信頼し得る値が得られますものは、X線の回折法による方法でございます。これによりますと極めて正確な値が極く短時間で得ることができるのでございますが、如何せんこの只今申上げましたX線の機械は極く最近できました機械で、日本でも僅か一、二台しかございません非常に高価なものでございます。どこでも簡単にその機械を用いて粉塵中の遊離けい酸を求めるというわけには参りません。そこでこれに代るべき簡単で比較的信頼のある方法、こういうものに研究が重ねられて参りましたが、まだこれならばという安心して分析を重ねられる方法に到達しておりません。大体実用上満足すべき程度までにはなつておりますが、今後更に研究を重ねなければならないと存じております。以上で遊離けい酸の分析に関して如何なる困離があるかという点についてお話申上げました。 次に、最後に粉塵の発生を予防する手段として現在如何なる方法が行われているかについてお話しいたします。粉塵の予防ということに関しましては、先ず粉塵が発生する箇所で発生しないように予防すること、次に発生した粉塵を極力それを鎮静いたしまして、人に害を与えないようにする方法、それから直接各個人々々に適当な対策を講じまして、粉塵を吸引しないようにする方法、大別いたしますとこの三つに分つことができると存じます。最初に申上げました発塵防止、粉塵の発生を防ぐ方法といたしましては、これを鉱山の例で申上げますれば、遊離けい酸に富んでいる岩石を鑿岩機で孔をあける、穿孔いたします折に、その穿孔に伴つて発生しました粉塵を発生すると同時に水で濡らして除去する、或いは発生すると同時にそれを適当な方法で機械的に吸引いたしまして、空気中に飛び散らないようにする方法とがございます。初めに申上げました水で濡らして直ちに除去する方法、これは湿式鑿岩法と申しまして金属鉱山では主として現在こういう方向に向つて発塵の防止をいたしております。これもその方法の巧拙によりまして抑制の仕方、発塵の防止の仕方はそれぞれ異なつておりますが、初め何も用いないときに発生した粉塵を仮に一〇〇といたしますと、これを引下げまして二〇%程度まですることはそれほど困難でないように存じます。二〇%以上にいたしまするためには非常な注意と精密な鑿岩機等を要しまして、なかなか容易ではないと存じますが、二〇%程度までは大体現在の技術で可能であると存じます。 次に申上げましたことは、濡らさないで、水を用いませんで発生した粉塵を直ちに適当な装置で吸引いたす方法、これは通常乾式集塵法と申しております。乾いた状態で塵を集めてしまうという方法でございます。これにつきまして現在日本では三種の機械が行われておりますが、いずれもまだ試験期を脱しておりません。実用に供されておりますのは極く一、二の例しか聞いておりません。この方法の中には先ほど申上げました湿式による方法よりも更に効果が大であると考えられる場合もございますが、大むね水を使つた場合とほぼ同様の効果ありと考えられます。これが特に撒水管の敷設が形式的に極めて困難である、或いは技術的に水を引くのは不可能であるというような場合に局部的に用いる場合と、或いは坑内の鑿岩に水を用いますと岩盤を損めて作業が著しく困難になる。そういうような箇所では乾式で集塵をしたいと望まれるわけでございます。特にこの湿式と軟式の例について考えてみまするに、日本の鉱山におきましては、まだ外国ほど労働者が水で濡れることに対して非常にそれを苦痛に考えるというような風習がございませんように見受けられますが、ヨーロツパ等におきましては、坑内で労働者が水に濡れることを極めて嫌つておるというようなことが文献にございます。或いは湿式鑿岩によつて水に濡れますと、それが神経痛の原因になるというようなことが言われております。そこで海外におきましては湿式鑿岩よりも乾式集塵機を用いまして粉塵を採取するほうが好まれておるように見受けられます。 次に空気中に浮んでおる粉塵そのものを除塵するためにこれを鎮静いたしまして空気をきれいにする、この方法につきましては多量の空気を吸引いたしまして、それを適当なフイルターで濾過すれば当然きれいになるわけでございますが、鉱山の坑内では実際には極めて困難で殆んど行われておりません。昔の書籍等を読みますと、そのような機械が二、三設計されておるようでございますが、殆んど実用に供された例はございませんようです。一般的に鉱山で行われておりますのは、坑道の粉塵が浮んでおります所に水を撒きまして、撒水をいたしまして、その撒水の力によつて粉塵を沈降させようということが行われております。この方法は実験の結果によりますと、水を多量に使用する割に効果がございませんで、ただ徒らに坑内を濡らし、坑内の湿度を高め或いは坑木の腐朽を来たす、或いは落磐を招来するというような欠点のみが多いように考えられます。最近では水の表面張力を引下げ或いは粉塵の持つております電荷、電気の量でございますが、電荷の関係で沈降を極めて容易にならしめるような一種の薬、これは通常外に出ておりますソープレスソープの類でございますが、そういうようなものを水に混ぜることによつて撒水の効果を高めておる方法もございますが、何分長い間にはその薬品に対する費用が多量になりますので、実験的には行われておりますが、極く一部を除いては実用化されておらないようでございます。 最後に個人々々の吸引防止の問題でございますが、これは当然マスクを用いることが代表的な対策でございます。現在マスクには第一種、第二種とございまして、粉塵数が多く且つけい肺の危険があるような所では当然第一種の濾過効率のよい高級なマスクを用いなければならないわけでございます。併しながらこれも当然マスクを用いましても多少の粉塵は吸引しなければなりませんので、このマスクだけを用いれば他の方法はどうでもよいというわけにはならないと存じます。先ず基本的な機械そのものについての発塵防止をいたしまして、それで吸引し切れずなお且つ空気中に飛散したものをこのマスクを以て予防するというような少くとも二段がまえの予防法を講ずる必要があると存じます。 以上申上げましたことは、主として私の専門といたします鉱山及び炭鉱の立場から申上げたのでございますが、このほか工場等におきましても種々の予防方法が行われております。そのうちで私の存じております点について申上げますと、先ず普通の工場等で最も発塵の激しいものの一つであると思われまする鋳物工場等のサンド・ブラスト、ここにおきましては現在送風ヘルメツトというものを用いております。これは普通のマスクではそこに存在しております空気を吸引し、そのマスクによりましてそこの粉塵を濾過してれその空気を補給しておるわけでございます。如何に良好な性能を持つマスクを用いましても、そこに存在しております粉塵数が多ければ必然的に多量の粉塵を呼吸せざるを得ないわけでございます。そこでサンド・ブラストのような場合に数万或いは数千個以上の粉塵の浮んでおる所ではかような方法では不可能である。そこで新鮮な空気を清浄な個所からホースを以て送りまして、丁度潜水夫に陸の上から空気を補給いたしますように、清浄な個所から作業者に空気を補給して、頭から被つたヘルメット内に新鮮な空気を入れてその排気を出してやる、こういうような方法で粉塵を呼吸させないような方法をとつております。且つ又サンド・ブラストの方法そのものも変化いたしまして、発塵数の少い方法に切替える。これは鋳物の技術の問題になつて来ますが、そういうような方法で生産技術的に発塵防止法が行われておることを見聞いたしております。 以下極めて簡単でございますが、大体粉塵に関する諸問題について極く一通りお話をした次第でございます。
○田村文吉君 佐野先生に伺いますが、今実物を見せて頂きましたが、あれはけい肺のいわゆる遊離けい酸だけの問題なんですか、それ以外の粉塵が入つてもやはりああいう結果になりますか。
○参考人(佐野辰雄君) お答えいたします。主として今の学界の定説では、先ほどお話がありましたように、遊離けい酸は吸入によつて起るのであります。他の例えば炭粉というようなものはああいう程度の変化は起らないと考えております。
○田村文吉君 もう一つ伺いますが、炭粉その他のものがたまつた場合、肺というものはどの程度の変化を起しますか。
○参考人(佐野辰雄君) 或る程度までの変化は起します。併しけい肺に見られますようなああいう激しい進行性の変化を起すというようなことは殆んど見当りません。近代アメリカで発見されたものの中にベリリユウムの金属粉末を吸うとけい肺に似た進行性の変化が現われるといわれております。まだ日本では発見されておりません。
○田村文吉君 石灰などではそういう問題はありませんか。
○参考人(佐野辰雄君) 石灰はカルシウムが主体でありますから、或る程度の作用はございます。けい肺のように長く入り込んで肺の中に固まりを作るというような変化は起らないと考えております。
○榊原亨君 どなたでもよろしうございますが、少し承わりさせて頂きたいと思います。このけい肺に関しまする立法措置に必要な統計がはつきりしておらないと私は思うのでありますが、第一番目に、先ほど四十万とか三十五万というようなお話があつたのでありますが、その三十五万のけい肺の患者と推定される者のうち一型、二型、三型と、それから純粋のけい肺と結核を伴うものと、それから肺結核に対するパーセント、これはいろいろ山本先生などのお挙げになつておることを私拝見いたしておるのであります。非常に統計がまちまちでありまして、一体どの統計をとつたらいいか、常識的にどれが本当なのか、お考えを述べて頂きたいと思います。 それからけい肺と結核との合併ということに対しまして斎藤先生は、一型において二〇%、二型においては幾らと発表されております。それが各国の統計と著しく違つておる。日本だけがそういうような特別の特殊性があるのでございますか、又けい肺の死因について斎藤先生が挙げておられます結核の八四・九%というのに、アメリカでは二六%、ドイツでは四五%というように非常に違いがあるのでありますが、これらについてどの統計をとつて立法的措置を講じたらいいのかという問題、それらについて一つお話を承わりたいと思います。
○参考人(山本幹夫君) 最初の点でございますが、ちよつと私が申違えたか、お考え違いなさつたかでございましようと思いますが、けい肺の罹患の虞れのある職場に働いておる労働者が三十五万、実際にけい肺にかかつている人というのはその中で先ほど申上げておらないつもりでございます。それからもう一つ、いろいろな統計がまちまちであるという御意見でございますが、先ほど私が申上げましたように、けい肺に関するいろいろな研究というものが最近、一九三〇年頃から急激に世界各国で以て起つて参りました。で、その間に実情としてどういう問題が起つているかと言いますと、レントゲンの診断技術というものが非常に何といいますか、これも急激な進歩をしております。殊にレントゲンの取り方、それからレントゲンの写真の作り方、それからレントゲンの機械の性能、そういつたふうなものが急激に進歩しております。そのために先ほど私が五年くらいの粉塵作業者の九〇%もあるというのは、最近の日本の実情においてはそのくらいが見付かつているということでございまして、我々としては一応参考のためいろいろな各国から報告された例も一応記載はしておりますが、各国の今のX線診断ならX線診断の実状というものが、そのレポートが出されているというときの実状という、ものがはつきりつかんでおりませんので、我々としてはやつぱり現在はこのデータに信頼を置いてやつて頂き、それで又今も房村先生もおつしやられたようにけい肺が発生して来る職場の状況自身が国によりまちまちであります。そういつたことでやつぱり日本の現在の実状に応じた立法をなさつて頂きたい、そういうふうに私たちとしては希望いたします。
○榊原亨君 一型、二型、三型のパーセントというものは、今統計がはつきりしないと思いますが、諸先生方がお考えになつておるそのパーセントというものはその工場によつて違いますか、それともそういうことはまだお調べになつていらつしやいませんのでございましようか。それからけい肺の死因についての、例えば結核で死ぬ者が何%、心臓機能不全というものが何%というような、そういう統計がございますでしようか。
○参考人(佐野辰雄君) 先ほどの御質問にお答えいたします。その一つは、各国の私が差上げましたプリントのけい肺者の死因ということでありますが、九ページで日本の場合に結核で八四・九%の死亡者が出ておるというのが、下に挙げました活動性結核の合併というところとのパーセントとの食い違いのことであります。これは上に挙げましたのは、死亡いたしまして解剖をした結果についてのものでございます。下のほうは健康診断を多くの人間に対して或る時期に行いましてれレントゲン上活動性結核とけい肺との合併の度合を挙げたものでございます。その違いでございます。
○榊原亨君 症状の固定というものが時間的に統計的にいろいろ違いましようが、症状の固定というものが大体どれくらいのパーセントで、何年間くらいのときに症状が固定したというようなことはお調べはございますでしようか。
○参考人(佐野辰雄君) 先ほど私が申上げましたことは、症状の固定ということがなかなか期待せられないということを一つ申上げたのでございまして、そうしてお断りをいたしましたが、これは金山のような高能度の遊離けい酸を吸入した機会が多いときにおける成績でございまして、先ほど生の例を申上げましたが、日本においてもやはり同じようなことがここにいらつしやる山本さんなどもお調べになつております。 で、もう一つ問題になりますのは、低濃度のけい酸を吸入をした場合にそれが飽くまでもやはり高濃度けい酸の吸入と同じように進むかどうかという問題でございますが、それはその速度が遙かに遅いであろうということを申上げたにとどまります。これは必ずとまつてしまうというふうにきめることは実はできません。少し横道のようでありますが、それに関連いたしまして、低濃度のけい酸を吸入して、軽い程度のけい肺になつた場合は、問題はやつぱり結核の合併によつて悪化をするということにあると私は思つております。
○榊原亨君 レントゲンで見まして、一応けい酸粉塵が沈潜しておるということを見ることができる。そうしたものにつきましてこれをけい肺症と全部することが適当でございましようか。或いはけい肺症とけい肺とは違うのだという今までの労働省のお考えが正しいのでございましようか、その点はどう考えておりましようか。
○参考人(山本幹夫君) 医者の立場で申しますとどういう場合にけい肺というものを診断して、どういうふうな名前をつけるかという問題になるかと思いますが、結局病気として治療をしなければならん人間というものが一部あります。それよりもつと軽いものもあるわけであります。殊にけい肺におきましては軽いものは非常に症状が少いわけです。で学問的には、少くとも病理学的にはこちらに御専門の佐野さんがおりますが、病理学的には少くとも異常な所見を肺に持つて来た場合には一種の病的な変化であるということを言うのは当然であるし、その一つの場合としてのレントゲンの所見が変つて来たことは、けい酸粉塵の吸入によつて変つて来たのならそれはけい肺という病気であるということは言えると思います。併し行政的にそれをどこから、例えば病気として取扱つて治療をしなければならんとか、或いはどこからその粉塵作業をやめさせなければならんとか、いろいろな段階が出て来ます。そこで問題はいろいろあると思いますが、病理学的には少くともそういう変化が見られたときにやはり病気が起つたと考えるのが当然ではないかと思つております。
○榊原亨君 結核が前に感染しております。そこへけい肺ができて、或いはけい肺ができたところに結核ができて来る、或いはけい肺と結核と殆んど同時に起つて来る、これは勿論病理学的には解剖して見ればわかるでありましようが、臨床的にそれを区別する方法がございますでしようか。
○参考人(山本幹夫君) その問題は非常に大事な問題でありまして、殊にけい肺と結核が合併しておりまして、結核が非常に症状が強くて、肺の一面に結核の変化が出ている場合に、従つてけい肺があるかも知れん職場におる人間がおりまして、そういうときに、果してその中にけい肺症の変化がないかどうかという問題が一番重大な問題だろうと思いますが、そういう場合は非常にやはりレントゲンだけでは判定が困難という場合がたまに見付かります。実は去年私たち百五十何例かの、労働者に労災補償のために、業務上であるかないかという認定のために出された百五十三例かのケースがありましたが、それでどうしてもけい肺があるかないかわからない、結核のためにわからないという例は四例ございました。でそういう場合にも、それは非常にむずかしい例としてはあるけれども、私たちが従来考えておつたほど多くないのだということをそれによつてわかつたわけですが、そういう場合もあると申上げなければならんと思います。
○榊原亨君 症状の断続と申しますようなものはあるのでございますか。その原因は何でございましようか、症状が現われたり又ちよつと急に休みましたりします、それはどういうふうなわけでございましようか。
○参考人(佐野辰雄君) それでは私から申上げます。けい肺の変化は先ほど御覧になつて頂きましたような結節ができるということに第一の重要な変化があるわけでございまして、この結節自身が小さくなつたりなくなつたりするということはございませんので、その意味では肺の変化があと戻りをするということはございません。併しこの粉塵を吸入することによつて結節ができるということ以外に、例えば気管支炎というような状態しばしば起つて参りますが、この気管支炎は或る程度の症状に対して治療をいたしますというと軽恢をいたしますので、そういう場合には気管支炎が起つておるときにはいろいろな心機の検査をいたしますと機能が低下しているという現象がある。その気管支炎がなくなつて来る、そういうことがあるのでございますが、そういたしますというと機能が回復しておるというようなことは当然現われて参ります。こういうような事実はけい肺者の機能を診断いたします場合に極めて気を付けなくちやならないことでございまして、単に一回だけの検査だけでなくて、或る程度の期間の観察ということが必要になるという実は理由だと思つております。
○榊原亨君 粉塵の測定につきまして労研式とそれから粉研式とあるというお話でございますが、その二つで測りました数字は、勿論絶対値でございませんから違うと思いますが、それは違いますでしようか。それから違うといたしますると、それは工場の状態がよくなつたとか悪くなつたということは話がつくと思うのでありますが、例えば労災におきまして一CCの中に七〇〇というような限度を設けた、それは外国のものとその限度がどうこうということはなかなか比較が困難じやないかと思いますが、それらの点につきましての御意見は如何でございますか。
○参考人(房村信男君) 只今の御質問でございますが、労研式と粉研式とで同時に測定してみました場合、一般的に異つた値が得られます。これが、その機械自体の差もございますし、これを取扱う人の技術或いは得られました資料を顕微鏡で検測する、先ず顕微鏡で検査いたしましたときの技術、そのようないろいろ複雑な誤差の原因がございます。併しまあ大体似たような機械で測りますと、大体或る範囲内にその値は入つて参ります。それから外国で種々の恕限度に類するような発表をしておりますが、それも現在各国でやつております方法が種々の差がございます。そこでそれを我々のところに持つて参りまして当てはめて考えたときには、如何なる方法でどういうふうにやつたか、それを考慮いたしまして補正をして考えてみる必要があると存じます。
○榊原亨君 配置転換とけい肺の進行についてでございますが、配置転換をやれば統計上はいい場合もございましようか、或いは配置転換をやつたといつて効果が望めないものもあるのじやないかと思うのでございますが、それらと年齢の関係、或いは工場の種類というようなものにつきましての御意見をお聞かせ願いたい。
○参考人(佐野辰雄君) 只今配置転換の問題が出たのでございますが、配置転換をするというとけい肺そのものの進行性がとまるかという問題は、先ほど私が申上げたことと全く関係があることでございまして、おつしやる通り、配置転換によつて完全にその進行をとめるということはできない性質のものでございます。ただ南阿のあの成績を出しているアービンも言つていることでございますけれども、離職後進行するといつても、それは飽くまでも吸入したけい酸の総量に関係のあることであつてそのけい酸を吸い込めば吸い込むほどなおあとになつて進行するという可能性が大きいということを言つておりますので、私どもが配置転換を考えます場合には、進行の緩慢を図るという意味が最も大きいのでございます。 それで少し横道に入りますけれども、けい肺であつて極めて進行性の緩慢なものが或る程度ございますが、そういう場合には十分な防塵の注意を怠らなければ或る程度長くその職場につけておいてもよろしいという場合もあり得ると私は考えております。でアメリカあたりでは、ヨーロツパでも私が今最後に申上げたような立場をかなり強くとる人もございます。但しこれは飽までも十分な注意の下にということでございます。その場合には結核の合併があるという徴候がありますというと直ちに転換をいたします。
○榊原亨君 けい肺の発生日の決定或いはその方法というようなことが臨床上できることでございましようか、それが一つと。それから栄養の補給ということが、これが立法上問題になつて来るのでございますが、これがけい肺にだけ特別栄養の補給というものが何か有効でございましようか、或いは結核に対して栄養の補給ということが重大であると同様な意味でございましようか、それらの点についての一つ御説明を願いたい。
○参考人(佐野辰雄君) 第一点でございますが、もう一度……。
○榊原亨君 けい肺の発生日の決定ということが臨床上決定できるだろうか。
○参考人(佐野辰雄君) 大変むずかしい問題だと存じておりますが、御存じのようにけい肺という病変が形成されますまでに随分時間がかかるのでございます。長短いろいろございますが、それで私個人のこれは意見になるかも知れませんが、実はけい肺が発生したというのは、或る症状が発生した場合に、厳密に言えば、それは肺に変化が見られれば、これはもうその前から発生していることに違いはないのでございますけれども、一つの考え方としては、この肺の変化があるために症状が発生したというようなときに、けい肺という病気が変化ではなくて、けい肺という病気がそこに発生するというふうに考えるのも一つの方法ではないかと思つております。 それから第二の問題でございますが、大変失礼ですが、もう一度。
○榊原亨君 栄養の補給……。
○参考人(佐野辰雄君) 栄養の補給という点については、けい肺の変化そのものを、栄養をよくすることによつて阻止し得るというような根拠は私はないように思います。ただ繰返して申上げましたが、けい肺に合併する病気の中で最も重要なものは結核でございまして、結核は一般的に栄養をよくし、体力を向上せしめるということによつて予防的な意味があるのでございますから、私は栄養をけい肺に関連して考えます場合には、結核の予防という点に意味を持たせる以外にはない、そのように考えます。
○榊原亨君 このけい肺の発生原因でございますが、いろいろな学説があるようでございますが、諸先生がたが今これらしいというお考えの御確定はできないでしようか、ございましたならば……。
○参考人(佐野辰雄君) それではお答え申上げますが、無論けい肺の発生の原因ということについてはいろいろと議論がございます。併し概して申上げますというと、一九三〇年来からけい肺の原因としては、先ほど房村さんからのお話もございましたようにけい酸、而もそれはほかの物質と結合しておらないところの遊離けい酸、SIO2という形のけい酸がその原因であろうということは、動物実験上でも、又人体の経験でも、これを覆すような学説はその後現われておりません。途中で絹雲母という一種のけい酸の結合物がけい肺の原因ではないかと言われたことがございましたけれども、これは完全にそのような証拠がないとして、学界では問題にいたしておりません。従つて、もう一度繰返して申上げますと、けい肺の原因は遊離けい酸の吸入によります。
○榊原亨君 遊離のけい酸でございましても、それが先ほどお話になりました。αとβとの差違とか、或いは割面の差違とか、或いはイオン説とか、或いはコロイド説とか、いろいろあると思うのですが、それらについて今諸先生方がいろいろお考えになつて、これだということが、ございましたらお話し下さいませ、なければ結構でございます。
○参考人(佐野辰雄君) それではちよつともう一度申上げます。遊離のけい酸の中でも最も害性が多いということが確定せられておりますのは結晶形の遊離けい酸でございます。これは普通石英でございますとか水晶或いは珪石というものの中に含まれておるものでございます。それで結晶形になつておりませんところの遊離けい酸が果して害があるかどうかということは、近頃でございますけれども、この結晶になつておらないところの遊離けい酸からできております蛋白石という石がございますが、山で稼働しておられる方にも、やはりレントゲン上はけい肺病らしいものが出ておるということが言われております。それから動物実験の上でもやはり結晶形のものと似た変化が出るということが言われております。でございますから、結晶形のものが最も有害であるが、併し結晶をなさない形のものでも油断ができないという程度に現在は御了解を願いたいと思います。
○榊原亨君 これはちよつと今日の参考人の方にお伺いするのは無理かも知れませんが、無理だつたらどちらでも結構なんでありますが、けい肺を単独法としてやつております国と、その補償ということだけを主としてやつております国とまああると思うのでありますが、これはやはり鉱山を主にしたところと工業を主にしたところとあると思うのでございますが、今我が国で若し単独法を、今労働基準法より一歩を進めてやるといたしましたならば、どちらの型をとつたほうがいいとお考えになりますか、これはちよつとむずかしいことだと思いますが、若しあれでしたらお答え願いたいと思います。
○参考人(山本幹夫君) けい肺の法律の問題につきまして、前に私自身もいろいろ考えてみたことがありますのですが、けい肺という病気が先ほど申上げましたように非常に特殊の病気でありまして、そういうふうな特殊の病気に対しては一貫した一つのシステムを以ちましてけい肺の予防、それから診断の問題、或いはその補償というふうな問題、そういつたものを一貫した一つのシステムの下にけい肺の発生を防ぎ、それに対しての円滑なる補償をするといつたふうな考え方で行くべきだと私は従来から考えております。
○委員長(栗山良夫君) 只今の質問に関連するのですが、世界各国で単独法を以て保護しておる国と、それから補償措置だけやつておる国と、大体主な国わかりませんか。
○参考人(佐野辰雄君) 山本さんが調べておられる間につなぎに申上げますが、最も単独法で代表的なのは御承知の通り南阿でございます。それからヨーロツパでは、それに類するものがあつても、完全に同じものがあるかどうか、私は存じませんが、単独法の利点というような点について気の付いたことを申上げますと、これもプリントにございますが、南阿の予防の実績というのが十一ページにございますが、これで御覧になつて頂きますと、南阿では単独立法をいたしまして法規を以て坑内粉塵の低の義務を課する、検診を十分にやらすというふうなことをいたしました結果、第三表を見て頂きたいのでございますが、これは中等症以上の肺患者数がどのように少くなつたかということでございますが、一九一一年にその法令を出しましてから三乃至四年のうちに殆んど中等症以上のものがなくなつて来たというような実例があることをやはり注意すべきではないかと思います。これはやはり先ほど山本さんがおつしやられたように、予防、補償医学的な問題等が一貫してやり得られた結果であろうというふうに考えられます。まあ併し南阿というような国は、金山というのが、私よく存じませんけれども、国の産業として極めて主体を占めておるというような事情もあるようでございます。
○参考人(山本幹夫君) 先ほどの問題をお答えいたします。これは労働省のほうでお調べになつたし、私なども昔から調べておることなんですが、けい肺に関してそういう一貫的な法律を持つておる国として代表的なものは、今佐野さんの言われた南阿でございます。そのほかスペインだとかスイス、オーストラリアなんかがあります。それから補償に重点を置いておるところがイギリス、ドイツ、フランス、イタリーなんかでございます。そのほかの国は特にけい肺という問題を強く取上げて立法措置をしておるという国は殆んどございません。
○参考人(佐野辰雄君) この点についてはたしか労働省の鈴木監督官が大変よく調べておられるように思います。
○委員長(栗山良夫君) 御質問ございませんか。
○吉田法晴君 先ほど恕限度の話が出ましたが、算定の方式、形式や何かで、まあ結果も見てはおるが、技術的な困難を言われましたが、一応粉塵を少くする意味において恕限度というものを作りますことはやはり必要じやなかろうかと思われるのでございますが、その基本的な点についてどういうふうにお考えになりますか。それからあと技術的にむずかしいという点はございますが、各国の例から考えまして、その恕限度の程度について御意見がございますならばお伺いいたしたいと思います。
○参考人(房村信男君) 先ほど各種の機械を以て同一の環境で測るとそこに差が起きるということを申上げました。これは従来の機械にはそれぞれの器差が相当激しい点、それから測定者が相当任意の測定法を用いておつた点がある。そこで恕限度という点から考えまするならば、用いまする機械を細かい点まで統一いたしまして、可及的同一種の機械を用い、而もその測定技術に細かい制限を設けまして、可及的同一の結果を得るように規制した方法に従つて測定する、そういう点が基本的に大切だと存じます。それでもなお且つそこに個々の差が起きまするときには、一応何か基準的なものを仮定いたしまして、それに係数というような考え方の下に統一的なデータを得るようにする必要があると存じます。現在そういう方向に向つて種々仕事をして参りますと、当然相当細かい点まで一致したようなデータを得る方向に向つております。 次に、恕限度を設ける場合、それがどのような性質であるべきか、これに関しましてはまだ決定的なお答えをするまでに至つておりませんですが、御承知かと存じますが、労働省におきまして、けい肺対策審議会のほうで、恕限度は如何にして定めるか、又その範囲はどこにあるべきかというような点について種々討議を重ねて参つております。近く或る程度の結論に到達することと存じます。未だこれが恕限度として最も適当であるという点まで行つておりません。これは勿論数だけで考えらるべき問題ではございませんでして、その数の下にけい肺発生が如何なる……、過去においてそういうような数の下でどれほどの発生があつたか、そういうような病理なり診断なりのほうと連繋の下に考えて行かなければならない問題だと存じております。
○委員長(栗山良夫君) 御質問もないようでございますから、これでけい肺法案の本日予定せられました調査の議事を終りたいと存じます。 最後に参考人の諸君に一言御挨拶申上げます。本日は非常に御多忙なところを、特にけい肺病という稀な、又研究の非常に狭い部門につきましてでございますので、常日頃御研究に従事しておられるあなた方に御無理をお願いしましたところ、御快諾を得ておいでを頂き、且つ貴重な御意見を寄せられましたことにつきまして、委員会を代表して厚く御礼を申上げます。 本日はこれにて散会いたします。 午後五時二十三分散会