労働委員会 第4号
- 発言数
- 10 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1954/02/11
会議録
○委員長(栗山良夫君) 只今から労働委員会を開会いたします。 本日の会議に付しまする事件は、公報でお知らせ申上げました通り、労働情勢一般に関する調査、特に労働行桁の基本方針に関する件並びにけい肺法案、労働基準法の一部を改正する法律案でございます。 御了解を得たいのでありますが、政府側の都合によりまして、労働行政の基本方針に関する件は後刻に譲りまして、先ずけい肺法案並びに労働基準法の一部を改正する法律案を議題に供します。 かねて委員会で御承認を願つておりまするところに従いまして、右法案の提案理由の補足説明を聴取することにいたしたいと存じます。
○吉田法晴君 けい肺法案並びにこれに関連いたします労働基準法の一部改正法案につきましては、かねてから当委員会では御審議を頂いておるので断りますが、委員会におきましてはけい肺病院の視察、或いは鉱山におきまするけい肺発生の環境等を御調査頂きまして、けい肺法案立案のために非常な熱心な活動を続けて来て頂いたのであります。この間労働省におきましては、或いはけい肺病院の設置の方針の拡大、或いはけい肺の診断を中央のみならず地方の基準監督局にも基準監督官をしてけい肺を診断ぜしめ得るような措置を講ぜられまして、けい肺問題についての行政上の大きな進歩を見せて頂いておるのであります。 けい肺法案が提出せられましてから、各方面から公式、非公式にいろいろ意見が出ております。その中で特にこのけい肺問題の取扱いが進んでおります金属鉱山等においてはけい肺協宗を取りまとめ、或いは拡大し、炭鉱等においてもけい肺協定が新らしくできつつあるところもあります。全日本金属鉱山労働組合等におきましては、他の炭労或いは鉄鋼労連、或いは全室連等けい肺の発生しております、或いは発生いたします可能性のございます関係労働組合によつて、けい肺法制定のために協議会を作つて努力をしておられます。鉱山協会或いは石炭協会等からは、或いは弱い或いは強い反対の意見等も委員会に提出しておられるようであります。全体を通じまして、けい肺病が現在のところ不治の病であり、けい酸粉塵を相当発生いたしております工場、事業場においては、けい肺は今の状態においては発生が必然的であり、そうして一たびけい肺に罹りますならば、これに対する治療の方法がないとして、何とかしなければならんという気持は、これは労働者と言おず経営者と言わず、或いは労働者と言わず、けい肺対策審議会と言おず、或いは国会と言わず、同じように考えて頂いておると思うのであります。それが或いは行政上の措置にたり或いは協定になり、或いは協定に基きますけい肺対策となつておるのだと思うのであります。なお、金属山におきましてはろく心配せられて、予防措置につきましては相当進んでおり、最も経費を要すると考えられます予防措置、湿式繋岩機の採用、或いはマスクの使用等は殆んど十全と申しますか、相当進んでおることは間違いのないところでございます。 そこでけい肺法案につきましていろいろ意見のございます中に、予防措置について非常に金がかかるのではないか、こういう杞憂もあるようでございますが、金属山においては少くとも湿式繋岩機の採用或いは防塵マスクの使用等、現に相当行われております。この点については或いは国家の融資等の裏付も必要であるかとも思われますけれども、これは方法を似てするならば不可能でないことは、現在の事態が明らかに示しておると思うのであります。 なお、療養の期間の、けい肺病に関連いたします延長の、ごときは、これは改進党の委員の諸君も非公式ではございますが賛意を表しておられるのであります。一番問題になります栄養補給或いは転換補償、休業補償等につきましても、栄養補給は協定のございます工場、事業場には相当現に行われておりますし、転換補償も法案に講つております九十日分に相当いたします最高三カ月間或いは最低四十五日と、実際に行われておるところであります。 休業補償に関連いたしましては、先ほど期間の問題について触れたのであります。ただどのくらい患者が発見せられるであろうか、或いはそれに関連してどのくらい経費を要するものであろうか、こういうことで非常な掃摩臆測とそれから杞憂が投げかけられておるようでございますが、不完全でございますが、試算をいたしましたところでは、栄養補給について現に五十円或いは四十円と支給をせられておりますが、一人当り最高六万円、或いは四十円見当として計算をいたしますと四万八千円という金額に相成るのでございます。なおこういう計算をいたして参りますると、患者一人当りについて六万余円というものを要するということになるようでございます。これは粉塵作業に従事する労働者を四十万人と見、それからけい肺にかかつておる者、これを四万と推定して計算をいたすのでありますが、四万の推定はやや大きに失するのではなかろうかとさえ考えられるのであります。 仮にここ、して計算をいたしますと、国が法案の通り三分の一補助するといたしまして、年間五億八千八百余万円、六億弱でこの法案は施行できるということに相成るようであります。 で患者の厖大な数或いは経費の厖大な数を予定して杞憂をせられますことは、これはそれぞれの産業の今日からして尤もではございますけれども、併し一番患者が今まで発見されております金属山においてはすでに協定に基いて実施せられておる事項でございます。他の新らしく発見されて参る分野については、これは炭鉱等について、罹患率も金属山よりも遥かに低下することは間違いのないことでございます。可能な方法として国の三分の一負担というのを法案に織込んでおるわけでございます。 そこでけい肺を何としても食いとめなきやならん、或いは法案が考えますように予防をし、そうして仮に一度罹りましても、それが進行しないように健康管理をいたしますといたしまするならば、これは予想いたしますよりも遥かに患者数等も減つて参るはずでありますし、この法案が実施せられますならば、恐らく第一期に相当する者は多少予見されるといたしましても、この二期と三期と進行することは殆んどこれを防止することができると思うのであります。 かようにしてこの法律によつて第一期にとどめることに努力しますといたしますならば、四万人と推定いたします患者の予想数も遥かに減ずるでございましようし、一人当りについて四万八千円も負担するかどうか、これが中心になることと思うのであります。 なおこの治療の方法の未だ発見せられざるけい肺患者の発生の予防のために最善を尽し、或いはけい肺について何とかしなきやならんという人道的な見地については、御賛成を頂いておるのでありますから、御賛成が頂けますならば、法案の趣旨に従つて予防をし、或いは一度以上の進展がないように、法案によつてけい肺防止の対策を立てたい、かように考えるのであります。杞憂せられますところに対しましては、或いは予防措置については国の融資等の措置も御考慮頂き、或いはけい肺病の発生を予防し、或いはその進展を食いとめることによつて、心配せられますような多額の費用負担というものはなくなしたい、或いはなくなるのではないかというのが、この法案の考え方でございますので、それまでの、或いはその中におきます国の負担等も考慮に入れてこの法案が成立いたしますように御協力を賜わりますことを心からお願いをいたしまして、補足説明を申上げる次第であります。
○委員長(栗山良夫君) 続きまして、法制局第一部中原第一課長に逐条説明をお願いいたします。
○法制局参事(中原武夫君) お手許に差上げましたけい肺法案の構成と書きました、タイプで打つでございます資料と、法案の目次を御覧頂きまして、それを基礎にして概括的な御説明を先ず申上げたいと存じます。 けい肺法案は、第一章から第六章まで及び附則から成つております。第一章は総則でございまして、目的、適用事業の範囲、用語の定義、症状区分といつた法案の前提になる定義のようなものが書いてございます。 第二章には、予防措置といたしまして、発塵を防止する、吸塵を防止する、健康診断を行う、粉塵作業からの排除措置を講ずるといつたよらなけい肺病の発生及び進行を予防するための措置が書いてございます。 第三章は、けい肺症に対する特別の補償でありまして、療養期間の延長、それに伴う休業補償の期間の延長及び増額、転換補償、栄養補給、厚生年金における障害年金の取扱の特例、そういつた事柄が規定してございます。 第四章は、この法案を実施いたします場合の施行機関として、けい肺指導官及びけい肺診断官を置くということ、別にけい肺審議会とけい肺研究所を設けるということ、即ち実施に要する機関なり組織のことが書いてございます。 第五章は雑則で手続的なことでございます。第六章は罰則。 附則は十一項ございますが、そのうちの第二項から第八項までに規定する従前の患者に対する措置は、本文の第三章けい肺補償を遡及して行うという実体的な内容でございます。 この法案のうちで基本になるものは第二章と第三章でございます。この第二章、第三章の予防措置と補償措置は、労働基準法、労働者災害補償保険法によつて現在行われております予防措置、災害補償の上に積み重ねられる性質のものでございます。又、その一部には厚生年金保険法の特例をなすものもございます。けい肺も一種の職業病でございますから、現在においても当然に労働基準法、労災保険法による補償がなされておるのであります。又、予防に必要な措置も一般的にはなされておるのであります。にもかかわらず、けい肺について更に、特別な措置を講じなければならない理由はどこにあるかと申しますと、それはけい肺症が持つ特殊の病理から出て来るのでございます。けい肺は御存じのように肺の細胞組織の中に遊離けい酸の粉塵が入り込みます。その遊離けい酸の粉塵は溶けませんので、そのまま肺の細胞の中に固着をいたします。それが結節を作つて、肺の機能を阻害するのであります。けい酸粉塵は好んで肺の細胞の中の血管の近くに結節を作る特質がありますために、肺臓の中に流れておる血液の循環をとめてしまいます。そのために肺臓自体の機能と同時に、心臓の機能に重大なる障害を及ぼすのであります。これがけい肺そのもの本質的な病理でありますが、これに伴つて自覚症状として呼吸が困難になり、心悸九進を伴つて参り、血痕を吐くようになり、咳をするようになり、胸や背中に痛みを感じたり、非常な倦怠感、脱力感を伴つて、労働能力を破壊して行くのであります。 先ほど吉田先生からお話がありましたように、現代の医学ではけい肺を治すということ、根本的に治療するということが不可能であるということが先ず特質として挙げられます。けい肺の根本になる結節を取つてしまう、そういう措置は今の医学では不可能であります。その部分については治療ができないということになります。ただ、その障害から派生して来る自覚症状である呼吸困難とか心悸元進とか、咳をするとか、湊が出るとか、胸が痛いとか、そういう自覚症状に対してだけ対症的な療法がなされるに過ぎません。ほかの病気については根本的に一応の治療ができるのでありますが、けい肺は或る部分については全然手が触れられない。それから派生して来る自覚症状に対してだけ対症的な療法がなされるという点が、先ず第一にほかの職業病と異る点でございます。 次にけい肺症は常に自動的な進行をいたしますし、又慢性的な進行をいたすのであります。自動的に進行をいたすということは、先ほど申しました医学的に根本的な治療の方法がないということと裏腹をなす事柄であります。又、慢性的な進行形態をとるために、けい肺に罹りますと、一期から三期へ進むのに十年乃至二十年かかるのが常態でございます。けい肺一期の症状におきましてはさほどの労働能力の消失は見られません。殆んどないと言つてもいいくらいでございます。それが自動的な進行を続けて参りまして、二期、三期まで進行いたしますと、これは全く癈人の状態になるのでございます。けい肺症の持つこれらの特質から考えなければならないことがこのけい肺法案に織り込んであるいろいろな措置でございます。 第一に医学的治療の不可能な部分があるということ、このことは病気を予防するという面から申しますと、医学的に予防をする方法がないということになります。従つて医学的予防以外の別の予防措置を強力に講ずる必要が出て参るわけであります。医学的予防方法以外の予防対策と申しますのは、お手許にお配りしてありますプリントの初めのほうの裏にございますが、技術的な予防措置と健康管理による予防措置と、労務管理による予防措置でございます。 技術的予防措置は、環境を整備するということでございます。けい肺の原因がけい酸粉塵でありますから、けい酸粉塵をできるだけ少くする、理想としてはけい酸粉塵の発生を絶つてしまうことであります。そうすればけい肺症は起らなくなります。併しどうしてもけい酸粉塵の発生が避けられないとするならば、できるだけそのげい酸粉塵の量を少量にとめる、そうして粉塵が労働者の肺の中に入り込まないような措置をすることであります。 発塵の防止の措置といたしまして、法案の五条が粉塵の量の減少義務としてこれに応えておるわけでございます。発生した粉塵が労働者の肺の中に入らないための措置といたしまして、六条によつて保護具を備え付けることと、保護具の使用を義務付けることがこれに応えておるわけでございます。そのようにいたしましてもなおけい肺発生の虞れがないと言えませんので、健康管理による予防措置といたしまして、早期発見に努める。そのために健康診断と診断の統一を図るための規定を八条から十一条に亘つて設けてあります。早期に発見されたけい肺症は、これをできるだけけい肺一期の段階にとどめておく。それが労働能力の喪失を極度に拡げて行く二期、三期への段階へ進行しないように予防措置を講ずるのが早期転換の措置でございます。これはけい肺症発生の原因を作る粉塵作業からけい肺に罹つた者を刷の職場へ転換さぜるという措置でございます。法案の第十二条であります。 次に医学的に治療ができないということは、同時に非常に長い期間療養に努めなければならないということと同じことになります。そこでけい肺の療養に対しては、補償を行なり期間を長くしてやるという措置が必要となつて参ります。それから療養補償の対象として取上ぐべきものとして、一般の病気と違つた形態のものを考えなければ、ほかの職業病に対する療養補償との均衡が取れないということが起きて参ります。療養期間の延長につきましては、この病気が治らないのでありますから、死ぬまで療養補償をしてやるということが理想でございます。現在の職業病に対する療養補償は三年を以て打切ることになつております。この法案ではそれを更に二年延長いたしまして五年といたしました。五年といたしました根拠は、先ほど申しましたように、永久に死ぬまで補償をするということが理想ではありますが、それでは余りほかの職業病との均衡が破れる。現在労災病院が鬼怒川にございますが、そこで取扱つた事例によりますと、三年経過してまだ症状の固定の見通しがつかないにもかかわらず退院をさせた人たち、その人たちは大体二年くらいたつと或る程度生き永らえて行けるか、それとも死ぬかの転機が見られるようでございます。そういう事例から一応五年というとことに延長をすることといたしたのであります。職業病に対しては療養補償をしておる期間、その間休業いたしますと休業補償が付くことになつております。療養期間の延長は必然的に休業補償期間の延長を伴いますから、休業補償の期間を療養補償の期間延長に合わせて五年に延長いたしたのであります。一般の職業病の療養補償は、その病気全体に対して一応の治療が加えられ、それに対する補償がなされます。ところがけい肺症には治せない、全然医学的に手がつけられない部分がございます。その部分については、実際には療養補償はなされておらないわけであります。自覚症状として随伴的に生じて来る倦怠感とか咳とか呼吸の苦しさに対する対象療法的なものだけが、治療の対象になつておる。そういたしますと、病気の全体に対して医学的治療がなされて、それの補償がなされるほかの職業病に比べると、けい肺症についてだけはそのうちの一部しか療養補償を受けておらないということになります。その医学的治療が及ばない部分に対しても何らかの療養補償を考えてやらないと均衡が取れません。それには一般に現在慣行として行われております栄養補給によつて体力を強める、抵抗力を強めることによつて進行を阻止するという栄養補給という制度、この制度を療養補償の一変形としてここに持つて来ようということで、治療不能部分の進行を阻止するための手段として栄養補給を五年間やるということを十六条に書いてございます。 けい肺症が持ちます第二の特質、自動的進行と慢性的進行の症状が常態であるということから三つの措置が考えられるのであります。先ず自動的進行と申しますのは、原因になります粉塵作業から隔離をいたしまして、けい酸粉塵を吸入しないという環境を作つてやつても、或る程度或る量が肺の中に入りますと、やはりけい肺症人の原因としてそのまま続くことを意味いたします。一般の職業病につきましては、その病気が少くともその事業に働いておる間に起るということが補償を行う場合の条件になつております。一たび発病すれば、その後退職をいたしましても補償を受けることができますが、発病自体は、補償の原因となる事由は、その職業に、その事業に従事している期間でなければなりません。それは原因結果の関係が、そういう時点をとりませんと明らかでないからそうなつておるのであります。けい肺症は或る量を吸いますと、たとえ粉塵作業から離れてもけい肺に罹るという因果関係ははつきりしております。それで原因となる粉塵作業から離れた後において発病しても、けい肺症については補償の対象として取上げるという措置を先ず講ずることといたしました。これは第十一条、第十二条、第十四条、即ちけい肺療養、けい肺休業補償、それから栄養補給その各条文に、現に粉塵作業に従事している労働者だけでなく、粉塵作業に従事していた者については、その作業から離れてからでも対象になるのだという文言が使つてございます。 次に自動的な進行をし、且つ慢性的な進行をするということから出て参ります症状を別の面から見ますと、その症状の固定ということがなくて、死ぬまでずつと徐々に高度障害へと進行するということになるわけであります。現在厚生年金保険法においては、症状が固定したもので、高度の障害を持つ者に対して傷害年金を支給されることになつております。その年金を支給するかどうかの障害程度の算定時期は、療養補償が終つたときに認定をする、又は症状が固定したときに認定をして、そのときの障害の程度によつて年金をやる、或いは手当金をやるということになつております。ところがけい肺症には症状の固定ということはこぎいません。又高度障害へ進むものでありますが、その期間は非常に長くかかるのが特質であります。そういたしますと、療養補償期間五年を過ぎてその障害の程度を認定いたしましても、必ずしも傷害年金をもらえるだけの障害の程度になつておらないのが普通であります。併しその人は何年かたちますと身動きもできないような状態にまで障害は進んで参ります。自分の用も足せないような障害が生じても、五年過ぎたときに行われた認定だけを基準にされるならば、傷害年金は永久にもらえないとい、うことになるのであります。それでは余りにも不均衡であると考えましたので、厚生年金法における傷害年金をやる場合については、けい肺症に関する限り療養補償の期間が過ぎたのち随時行うということに改めたいと考えて、二十一条の特例を設けてございます。 次に慢性的進行の症状が特異な形をとつて行くことを挙げることができます。けい肺症は普通の病気のように或る期間静養をいたしますと、さつぱりとして治るということでなくて、或る期間は動けない状態である。ところが暫らくすると働ける状態が来る、又働けない状態になるという、或る期間には働ける或る期間には働けないという期間が入り交つてけい肺症の進行がなされるのであります。そのことは、医療給付を受ける面から申しますと、医療給付が極めて断続的に行われるということになるのであります。一般の病気については寝た切りの期間がずつと続きますと、今度はそれが治つて働ける状態になりますから、療養を開始したときから暦日によつて計算をして、三年という期間が経過すれば療養補償を打切るということでもいいわけであります。ところがけい肺症はその三年なり五年なりの間に、先ほど申しましたように働ける期間については医者の薬を飲まないで済むおけであります。ですから実際には医学的な治療を受けた期間だけを取上げて、その期間だけを通算して、けい肺症に対する療養補償の期間を計算してやるということにしなければ、ほかの病気との均衡が取れないわけであります。そこで、五年の療養補償の期間の計算に当つては、医者の認定によつて、その期間には治療を受けなくてもいいのだと言われた期間は除外して計算するという特例を第十三条の三項に設けてございます。 次に今まで申上げました医学的治療の不可能の部分があること、自動的進行と慢性的進行が常態であるということの両方を併せまして考慮すべきことは、けい肺症のような特殊な病気については、補償の算定基準になる平均賃金のスライド制を、現在行われておる休業補償についてでなく、打切補償についても、遺族補償についても、障害補償についてもすべて考えてやることであります。病気になつた時期からそういう補償がもらえる時期までの期間が極めて長期間に亘りますので、五年以上も前の平均賃金を基礎にして補償額を算出されるのでは、余りにも酷な取扱が常に生じて参ります。そこで平均賃金のスライド制を傷害補償、遺族補償、葬祭料、打切補償にまで拡げて行くということにいたしましたのが、労働基準法の一部を改正する法律案でございます。これは別の法案として出ております。別に出しましたのは、必ずしもそれはけい肺症だけの特殊なものでなくて、非常に慢性的な進行形態を持つ他の職業病についても同様に考えるべきであるという考え方から別建の法案といたしたのであります。 最後に、この法案におきましては、ほかの職業病に対する補償の責任と異つた考え方がなされております。労働基準法の労災保険におきましては、補償責任は使用者に全部あるということが建前になつております。ところがこの法案では、三分の一は国が責任を持ち、使用者は三分の二だけ持つということにしてあります。一体けい肺症についてだけここうい特殊な補償を考えなければならない理由はどこにあるのだろうかということを考えますと、先ほど申しました技術的な事柄のほかに、けい肺に対する医学の力が十分にメスを加え得ないというところにそもそもの原因があるということが言えるのであります。それは現在の科学水準がけい肺症をなくなしてしまうほどに進んでおらない科学水準の低さというものがけい肺症に対してこういう特殊な扱いをしなければならないそのくの原因であるというように一応考えられるのであります。そうとしますと、必ずしも使用者だけがその責任を負うべきでなくて、科学水準の低さというものが責任を分担すべきである。ところが科学自体は責任を負つてくれませんから、それほ国が肩替りをするほかはないという考え方で、国が責任を分担するということにいたしました。三分の二と三分の一と分けましたのは、現在の資本主義経済の下においては、企業は個人経営の企業でございますので、そういう企業の責任を持つ者が、危険負担についてもより多くを持つべきであると考えまして、使用者が三分の二を持ち国が三分の一を持つということにいたしました。厚生年金保険法の特例については、国が十分の二持つことにしてございますのは、現在坑内夫について持つております国の負担割合をそのままここにとつたわけであります。 以上がこのけい肺法案の構成と、そのうちに含まれます理論的な裏付でございます。
○委員長(栗山良夫君) ちよつと速記をやめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(栗山良夫君) 速記を始めて。
○赤松常子君 大変この問題は重要でございまするし、もう二、三年来懸案の問題でございますので、やつとここまで漕ぎ付けた次第でございますが、できればこの国会中に何とかの目鼻を付けるという一応の期日の目標をそこに置いて審議を進めて頂きたいと思います。
○委員長(栗山良夫君) 本法律案の審議の方法につきましては、一月二十六日の委員長及び理事打合会の申合せに基きまして、二月一日の委員会において正式に御承認を願いまして、学識経験者、更に関係各業種の労使の代表等を当委員会にお招きをいたしまして御意見を伺うことになつております。従いまして、その人選その他の手続等は委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(栗山良夫君) 異議ないものと認めましてさように決定をいたします。ちよつと速記をやめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(栗山良夫君) 速記を起して下さい。それでは次回は、前回の委員会で保留いたしておりまする労働行政の基本方針に関する問題を取上げまして、労働大臣並びに通商産業大臣の所信を質すことにいたしたいと思います。ではこれにて散会いたします。 午後零時八分散会