予算委員会 第9号
- 発言数
- 58 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1954/03/10
会議録
○委員長(青木一男君) これより委員会を開きます。
○松澤兼人君 第一に総理にお尋ねいたしたい。最近政府の施策を見ておりますと何か憲法の各条文が空文化されてくるのではないかという点、非常に疑問に思うのでありますが、総理の我が国の民主主義を擁護するという、その点についての御信念を先ず第一にお伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 憲法を擁護するという信念ということですか。
○松澤兼人君 民主主義を守つて行こうとする信念……。
○国務大臣(吉田茂君) これは当然のことであります。
○松澤兼人君 個々の政府の施策を見て参りますと、再軍備の問題にいたしましても、或いは基本的人権の問題にいたしましても、個々の法律や或いは制度によつて漸次民主主義がゆがめられて来る、そういう事実が現われて来ているのでありますが、こういう個々の法律というものを一つ一つお考えになりまして、やはり憲法に規定しているところの基本的な人権や或いは民主主義というものは守られているとお考えになりますか。
○国務大臣(吉田茂君) お答えをします前に申しておかなければならんことは、しばしば申すようでありますが、進駐軍が日本に来た最初においてはその当時の空気から申して日本は戦争を好む国だと、警察国家であると、基本人権を尊重しない国柄であるという断定の下に必要以上の規定を設けたきらいがあります。即ち行過ぎの規定があります。これをだんだん達しようというのが我々として考えているところで、故に基本人権を尊重しないとか毀損するという考えは毛頭ございません。
○松澤兼人君 やはり総理のお考えの中には、終戦直後の憲法なり或いは民主主義的な諸立法或いは諸制度というものが日本の国柄にとつて少し行き適ぎた点があるというようなお考えがあるように思つていたのでありますが、只今承わりましてもやはりその当時の制度が行き過ぎであつたというようなお考えが出ているようであります。それでは憲法なり或いは軍備なりの問題について行き過ぎだとお考えになる点はどういう点でございますか。
○国務大臣(吉田茂君) 例えば、再軍備はいたさないつもりでありますからこれははつきり申しておきます。併しながら労働立法その他においてもアメリカにもない、或いは例のアンチトラストでありますが、これもアメリカ以上のものが制定せられているのに対して、自然こういう法律をこしらえる場合には行き過ぎるものであります。行き過ぎるものでありますが、とにかく日本に対して今お話するような誤解から相当行き過ぎた法律が個々について申せばいくらもあると思います。
○松澤兼人君 今挙げられた点は私どもから考えれば決して行き過ぎではない、こう思うのであります。併しそれはまあ総理大臣のお考えであるとして、次にお伺いいたしたいことは、教育というものはやはり中立性を持つていなければならないということはよくわかるのであります。併し今回提案せられておりますような法律の形において教員の政治活動を禁止する、これを制限するというようなことは、やはり教育の中立性ということに名を借りた反動的な法律であるというふうに言わなければならないと思います。これは相当尊敬すべき教育者が殆んど口をそろえて言つているところでありまして、法律によつて教育の中立性を守る、或いは又は法律によつて教員の政治活動を禁止するというようなことは、単に憲法の民主主義を是正するということ以上に、これは反動化する心配があるのではないか。こう考えますが、そうまでして教員の政治活動を禁止しなければならないという理由は一体どこにございますか。
○国務大臣(吉田茂君) 詳細のことは文部大臣からお話をするでありましようが、我々の聞いただけでも随分行き過ぎたところがあると思います。例えばどこでありますか(「山口ですか」と呼ぶ者あり)山口、これは私が言わなくても御存じでありましようが、これなども行き過ぎの例であり、又教員という資格の肩書を持つた人が文部省に来て坐り込み戦術をやるなんていうことも随分行き過ぎたことであると思います。例えば役人という資格の上において多少の他の地位にある人と違つた制限を受けているということは、その地位にある者からいつて見ていたし方ないものであつて、これは反動と一口に言えないと私は思います。教育のことは余り私も詳しくありませんから文部大臣からお聞きを願います。
○松澤兼人君 総理大臣が教育のことに余り御自信がないということは国民にとつて非常に重大な問題だと思いますけれども、これは一般質問のときに又お尋ねすることにいたしましよう。 昭和二十九年度予算は、多くの人々によつて、相当に民生安定という点を犠牲にしてできている予算であるとこと言われております。前回も総理大臣にお尋ねしたのでありますが、再軍備と国民生活の安定という問題は、我々の考え方から言えぱこれは二者択一である、こういうふうに申したのであります。併し総理大臣は決して二者択一ではない、両方とも進めることができる、こういうようなお話を前の国会のときに承わつたのであります。併し二十九年度予算の性格を考えてみると、やはり二者択一的な傾向が漸次現われて来ております。この二十九年度予算をきつかけといたしまして三十年度の予算になりますと、いよいよそういう点が濃厚に打出されて来るのではないか。こう考えるのでありますが、やはり総理大臣は現在におきましても二者択一ではないというふうにお考えでありますか。
○国務大臣(吉田茂君) 二者択一か三者択一であるかこれはそのときの実情に応じて考えるべき問題であつて、軍備を拡張するからして民生は犠牲にしろとか、民生のために防備は捨てておけということは極端な議論で、得べくば両者ともに択一でなくて並行していくということができれば理想的であります。併しながらそのときの実情に応じていずれを先にするかということを考えるべきであると考えます。
○松澤兼人君 今の御答弁では二者択一であるのかどうか、再軍備的な経費と民生安定の経費等が両々相待つて存在し得るかということはお答えにはならないと思うのであります。現に二十九年度予算が民生を圧迫して行くであろうということは、この一年間に起つて来る経済的な変動や或いは不況というものによつて明らかにされると思うのであります。而もこれから来るところの失業者であるとか或いは家庭生活の困難であるとかいうものを救うべき殆んど多くの経費というものは計上されておらないのであります。この二十九年度の末におきまして再軍備的な経費が民生を破壊するであろうということが想像されるわけでありますが、これに対して総理大臣はいかなる所信を持つて臨もうとされるお考えでありましようか。
○国務大臣(吉田茂君) 私があたかも二者択一論をやつたように伺えますが、私の記憶ではバターか大砲かという質問を受けて私は両方ともほしいのだとこういうお答えをしたつもりでおります。それで極端な場合は別として成るべく防備は縮小したい、最小限度において防衛漸増をいたして行こうと考えておるものであります。これは防備より民生を先にしろ、或いは防備を主にして民生はあと廻しにしろという議論をいたしているのではなくして、そのときの必要に即応して政策を立つべきもの、これが私の考えているところであります。
○松澤兼人君 総理が二者択一ということを申されたわけではない。二者択一の命題ではないかとこう言つたときに、総理はそれは三者択一ではない、両方ともやつて行けるというようなお答えになつた。それじやどうしてこの両方を一兆円の予算の中において切盛りができるかという点を伺いたいのです。おそらくはこの年度末におきましては国民生活は相当まあ破綻に瀕するということは想像てきるわけで、総理は、失業者に対する問題であるとか或いは中小企業に対する問題であるとかそういうものに対して、どういう信念で対処せられるかということをお聞きしているわけです。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 予算編成者としての立場からちよつと御答弁を申上げます。実は御承知のごとくによく非常に防衛予算がふえるふえると言われるが、実際は約百四十億しかふえておらないのでありまして、これに伴う分につきましては例えば今仰せになつた生活保護費とか、或いは児童保護費とか社会保険費、そういつたものにおきましても三十八億円増加いたしていることは御承知の通りで、比率から言えば相当大きいのであります。のみならず社会党のかたのほうではよくこれを軍事費に目される。松澤さんはそういうことはないと思うが、軍人と遺族扶助費、大体これは遺族に対するむしろ社会福祉施設的なものに見たほうがいいのはよくおわかりの通りであります。それらに対してこの三十八億増額している。今軍人恩給としてもらつておる分は殆んど僅少のものです。殆んど九割までが遺家族がもらつている分であります。或いは遺族の援護費、留守家族の援護費、これは相当増加いたしておりますし、又各種の民生のものにつきましても大体におきまして、例えば食糧増産対策費もつまり総花的なものは避けましたけれども、土地改良その他のものについてふやしております。これは数字に示す通りであります。従つて私は今の日本は何としても物価を下げて国際的の競争力を持たせなければなりませんから、こういう予算を編成する必要があるのでありますが、併し一挙にこれをやることはどうかと、影響するところが大であるという考え方から一挙にことをやらんように、五分乃至一割の物価引下げの程度にとどめる方針で、今年度の予算を組んでいるわけであります。従いまして大体失業費その他は人員におきまして五%の増加を見込んでいるのでありますが、先ずそのくらいでいいのじやないか、こういうふうに実は見ている次第であつて決しておろそかにしている次第ではありません。
○松澤兼人君 大蔵大臣が御答弁にお立ちになりましたから続いてお伺いしますが、本年度は補正予算を組まないということを言つておられますからそれは別といたしまして、後にお尋ねいたしますけれども来年度の予算規模というものはどの程度になるお考えでございますか、そのお見通しを一つ。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 来年度といいますのは三十年度の意味でございますか。
○松澤兼人君 三十年度です。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 三十年度の意味でございますれば大体本年度の予算執行の上から見まして、例えば意外にも自然増収等があるというような場合につきましてどういうふうなものを考えるかと、例えばそれを引続いて物価が下つておらん、国際収支が改善されておらんとすればこれは別な考えをしなければなりませんし、物価が予期のごとくに下つて行く、そうして又下る見通しが立つて国際収支の見通しが確立すれば、多少そういつたものを産業方面に振向け得るか、社会福祉的なものに向け得るか、こういうことを考えなければなりませんので、いま少し先を見ませんとやれませんが、只今のところは大体本年度の規模の予算を以て臨むほかあるまいと考えております。
○松澤兼人君 そこで我々からみますと、三十年度はとても現在のような規模でおさまるはずはないと思います。それが総額においてふえるか、さもなければそこで問題となります再軍備的な予算が民生を圧迫して来る。三十九年度におきましてはその傾向がそれほど顕著には現れて参りませんけれども、三十年になればそれは決定的になつて来ると思うのです。そういう点も考慮せられて総理は国民に耐乏生活を要求せられていると思うのでありますが、この耐乏生活ということに対する総理の率直なお考えを承わりたいのであります。どういうところに耐乏を重点的に考えるのか、その点について伺いたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) お答えをいたします。近年の傾向をみますると日本の消費は相当に向上いたしております。消費の向上ということも一つの経済の発展とも考えられますが、これでは今大蔵大臣が説明せられたように物価は上昇する、従つて国際貿易は不況になる、国際貿易を発展させるためにはどうしても物価は下げなくてはならんとすれば、消費面において十分節約を加える、消費の節約が即ち我々の望むところの耐之経済であります。
○松澤兼人君 耐乏生活ということは必ずしもそのこと自体は決して悪いことでもないと思います。けれども我々は外国の例によればイギリスにおいて耐乏生活ということが言われた。併し多くの人々によつて指摘されるようにイギリスには社会保障制度として立派一つの制度がある。そういう中における耐乏というものはそれほど大きな比重を国民に負わせることがない。ところが日本のように何にも社会保障的なささえのないところにおいては、耐乏というものは結局裸の生活をするということを意味するのであります。従つて外国の例をとるまでもございませんが西ドイツにおきまして、社会保障費が国民総所得に対して一七%である、或いはフランスにおきましては一四%であるとかというような数字は、そういうささえの中において国民の耐乏生活というものが行われているわけであります。ところが日本におきましてはそういうささえがない、そういう保護がないところにおいて耐乏生活ということは結局人間的な生活を見捨ててしまつて、まあかろうじて生存をするという程度の生活しかできないということを意味するのではないかとこう考えるのであります。従つて先ほどお話になりました大砲かバターかというこの命題は、やはり現実の予算の面におきましてそのいずれをとるかということに決定的になつて来ると思うのであります。従つて総理が今日申されるところの耐乏というものは日本の国民にとつては本当に裸の生活を強制されることになるのではないか、こう考えております。成るほど余分の消費を削るということは結構なことであります。併し国民に対してこの社会保障的な保護を与えずして、単に消費を切捨てるということであれば、これは重大な問題だと思うのであります。社会保障に対する総理の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) ドイツの例は私はよく存じませんからお答えをしませんが、例えばイギリスなどの社会生活を見ますると家族制度ということはもうとうの昔に捨てられて、そうして都会の人は田舎と縁が切れ、そうして又親戚の間においても親が子を見るとか、子が親を見るとかということが大分日本とは違つておりますので、いわゆる社会保障制度が必要なことは感じられますが、日本がそこまで行つているか。日本の都会人が田舎と全然縁が切れておつてそうして田舎との繋がりがなくなつている日本においては都会で失業すれば田舎へ帰るという途もありますが、イギリスにおいては都会に生活をしている者は数代も都会にいるために、自分の出身地とか故郷とか田舎における関係は日本と違つてよほど薄らいでおりますから、社会保障が必要と私は思います。日本においてはまだそこまで極端な事態が行われておらないと私は思います。ゆえに日本の窮乏な現在の予算において社会保障を御希望のようにふやすということは現在これを許さないと思います。将来になつてイギリスのような状態が起れば又格別でありますが、現在のところは直ちにイギリスの例がこうであるからと言つてこれにならうことはできないと私は思つております、
○松澤兼人君 成るほどイギリスの社会生活というものは個人主義という基盤の上に立脚している、ところが日本はそうじやないんだからということはわかりますけれども、併しよしんば我我が田舎に親類がありましても、その田舎におりますところの次男三男というものは失業の点から言えばつまり潜在的な失業者であるというふうに言われるのであります。従つてそういう点を考慮するならば私どもは現在の日本の社会制度において、これを全く裸にしてしまうということは、結局失業者を増大せしめる結果になりますし、都会における一般の国民の生活も非常に圧迫されて来るということを考えるのであります。それで総理は何か日本における家族制度があれば、社会保障制度というものは不必要であるというようなお考えのようでありますが、まさかそういうお考えを持つておいでになるのではなかろう、こう思います。そこで先ほどお尋ねいたしました総理の考えておられる社会保障制度というものはどういうものであるかということをお伺いしているのであります。日本にはイギリスのように個人主義というものがまだ存在しないから社会保障制度というものは要らないとお考えになつているのか、或いは要るけれども現在はできないとおつしやつているのかその点をもう一度伺いたい。
○国務大臣(吉田茂君) 私は社会保障制度は必要なものだと申しておるものではないということは今まで申したところで御想像はつくだろうと思います。そういうイギリスと同じようなところまで持つて行けと言つても、今日の財政状態は許さない、財政はそのときの実情に応じて考えるべきものである。将来必要が生じた場合、必要と申しますか、社会保障費を増額しなければならんときになればこれは考えますが、現在においてはまだそこまで考える必要はないとこう私は思つております。
○松澤兼人君 そういう点になつて参りますと先ほど申しましたように二者択一という結論が出て来るわけであります。現在の財政の規模なり、或いは財政の枠の中では社会保障的な経費は計上できないという結論が生れて来るのでありまして、口に大砲とバターとを両方とも考えるとおつしやつても予算の枠が一定し、又国民の財政負担能力というものが一定している以上はそのどちらかをとらなければならないという結論になつて来るのであります。それでもなお総理は大砲もバターも両方とも予算の中に織込んで行くというふうにおつしやるわけでありますか。
○国務大臣(吉田茂君) 現在においても社会保障費を全然無視し、或いは削除いたしているわけではありません。相当注意をいたして或るものについては増額いたしておると私は記憶いたしておるのであります。故にバターか大砲かと択一論は私のとらないところであります。そのときの情勢においていずれに重きをおくか、或いは現在の社会保障費に更に加える必要があれば喜んでそのときの事情に応じて考えます、
○松澤兼人君 それでは問題を変えまして、まあ最近の国会における審議の状況を見ましても、非常に改進党なり或いは日本自由党なりの協力が得られなければ国会の運営がうまく行かない、或いは政府の施策が完全に行われないという感じを強く持つわけでありますが、いわゆる保守再編成と申しますか、或いは健全なる保守党というものを結成するということに対する総理のお考えを承りたいと存じます。
○国務大臣(吉田茂君) お答えをします。国会の運営を成るべく円滑ならしめるようにするためには政府としても党としてもできるだけ他党と協調いたすことは考えておりますが、保守再編成とか、合同と言われたですか、いずれにしましても無理な政治工作はいたさないつもりでおります。一に国会の運営を円満たらしめたいと思つております、
○松澤兼人君 例えば予算の修正の問題にいたしましても、大蔵省が、或いは大蔵大臣が確信を持つて提案された予算に対して三党で修正をする、或いは本日の新聞を見ますと、教育公務員に対する政治活動の制限に対しても改進党が修正案を出して、これを政府なり或いは自由党なりが呑まなければならないような情勢になつて来た。或いは防衛の問題につきましても政府の考えておりますものと、改進党或いは日本自由党からの要望によつて又違つた形のものが出て来る、或いはもう一つ問題の警察法につきましても、政府の原案通り通過できないような見通しがあるといつて考えてみますと、現在政府が提案をし若しくは政策として発表しておりますものが、実質的には保守三党の連繋によらなければ通過できないと、こういう形になつているのであります。従つて政府なり或いは自由党なりの自主性が著しく最近において制約されているのではないかと考えるわけであります。政府はそれでもなお自主性を持つておいでになるとお考えでございますか。
○国務大臣(吉田茂君) お答えをしますが、予算その他にしても政府の原案通りあくまでも通す、他党の要求に対しては何ら耳を傾けないということならば議会は要らなくなるわけであります。又民主政治といいますか、運用が円滑に行かないか、若しくは議会において徒らに紛擾を来たすという結果になるでありましよう。只今申す通り国会の運営を円滑ならしめるために成るべく党としては、政府と考えを同じうして行く政党とできるだけ協調して行こう、協調は考えておりますが、自主性を失つてまで協調しようという考えはございません。
○松澤兼人君 予算の修正におきましても、或いは教員の政治活動制限の問題におきましても、或いは防衛の問題におきましても、或いは近く又改進党の態度が明確になれば警察法の問題にいたしましても、政府の考えと著しく異なつたような修正が行われて来るのであります。それでも政府はなお自主性を持つているとお考えでありますか。私はこういう個々の予算なり或いは法律案に対する修正を受けるということは、これは政府にとつては非常に大きな責任の問題であろう、こう考えるのであります。それでもなお自主性を失つておらないというふうに総理はお考えでございますか。
○国務大臣(吉田茂君) 自主性は失つておらないと考えます。警察法その他の修正についてはまだ私は承知いたしておりませんからお答えをしませんが、自主性はあくまでも守つて行く考えであります。
○松澤兼人君 まあ現在発展しておりますところの疑獄の問題は相当に自由党なり或いは内閣にとつても大きな問題であろうと考えます。疑獄の問題について政府の責任をお尋ねすれば全貌が明らかになつてから断固たる処置をする、こういうお答えになると思います。けれども私どもとして総理にお伺いいたしたいことは、この疑獄の問題が内閣に波及するようなことはないか、或いは自由党の中において更に逮捕せられるような人があるのではないか。こういう点を非常に心配するわけでありますが、いわゆる政局の現状に対する総理のお考えを承わりたい。
○国務大臣(吉田茂君) お答えをします。私の答えは同じようなお答えをしますが、町のうわさとか新聞のうわさとか、或いは議員の中で誰から聞いた、或いは現に捕まつている容疑者から聞いたというようなことを上台として、私は同僚議員その他に対する疑惑を容認するようなことはいたしたくない。的確に事態が明らかになつて然る後に考えて行くべき問題と思います。将来は将来のことであります。
○松澤兼人君 まあいずれにいたしましても、政府にとりましても又国民にとりましてもこれは重大な問題である。そこで私どもといたしましては、政府がどこまでもがんばつてどんな問題が起きてもやつて行こうと考えるのか、或いは相当の痛手を受けたならば政府としてはいさぎよく内閣を投げ出すのかという点を国民は非常に心配しておるわけであります。政局を安定させるということに対する総理の率直な信念をお伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 私の率直な考えは国民が納得の行くような処置を必ずとつて御覧に入れる考えであります。併しながら全貌のわからないときにとやかく私はお話はできません。
○松澤兼人君 誠に政局は微妙であり且つ困難であります。新聞の伝えるところによれば四月頃に総理は外国へ行かれるということを聞いております。これは単なるうわさであるかもわかりません。併しそのことは日本全体に対して非常に大きな問題を投げかけるものであります。これに対して総理はどうお考えになつていらつしやいますか。
○国務大臣(吉田茂君) これも私はしばしば申しておりますが未だ決定いたしたことではないのであります。参つたほうがいいとは考えておりますけれども、未だ四月に出かけるとか何とかいうことは決定いたしておりません。
○松澤兼人君 おいでになることは勿論いいことでありましよう。併し一方では国会が開かれており且つ又この政局が非常に下安定である、こういう時期においでになることはどうかという問題が起るのであります。従つて我々といたしましては、国会が済んでからおいでになるということであれぱそれは御自由であります。まさか国会の開会中においでになるというようなことはなかろうと思いますが、これについて総理はどういうふうにお考えになつておりましようか。
○国務大臣(吉田茂君) 只今申した通り出発は決定いたしておりません。
○松澤兼人君 それでは希望だけ申上げておきます。国会が開会中の間は成るべくいらつしやらないように御希望申上げたいと思います。持ち時間が大体終りましたのでこれで私は総理に対する質問は終ります。で、その他の関係の問題につきましてはいずれ一般質問の際に申上げたいと存じます。
○千田正君 総理も御多忙であるようでございますし私の持ち時間も非常に少いのでありますので、簡単明瞭に重点的に二三お伺い申上げます。 只今松澤委員の御質問に対してのお答えも、大体この汚職事件に対しては前の各委員の質問に対すると同じようなお答えをされておるようでありますが、ただ一点お伺いしたいのは、総理は衆議院におきまして現在の吉田政府は少くとも過半数の自由党員をもつて国民の信頼を繋いでいるのでもる。であるから国民の信頼は過半数であるという観念の下に政策を遂行するというふうにお答えになつているように聞いておるのであります。勿論これは過去二回に亘る総選挙においては、かような汚職事件が起きるなどということは国民は予想だにもしないでおそらく自由党を信頼したのでありましようが、不幸にして今日においてはこの誠に国民にとつて遺憾な問題が汚職という形式の下に現われ来つつある。これではなかなか首相が考えておるように、国民の大部分の信頼をかち得て今後の政策を実行するということは容易ではないと思うのであります。そこで先般来各議員からも質問があつたのでありまするが、吉田首相の政治的、道義的責任というものを明らかにして頂きたい。をの観点におきましては三つしかないと私は思うのであります。その一つは、先ず第一にやはり国民の信を問うために総辞職をするかどうか。第二点は、解散して十分に今後の正しい政治を布くための軌道に戻すかどうか。第三点は、これは総理自体ができる最も簡単にして明瞭な仕事でありまするが、それは自由党内におけるところの、いわゆる国民から疑惑を受けておるところの議員諸君を一応追放して粛党するところの意思ありや否や。いわゆる自由党は国民の信頼を繋ぐためには、少くとも疑惑を受けておるところの議員を自由党外に追つて、そうして新らしい真の保守党としての発足をすべきではないだろうか、いわゆる粛党の意思があるかどうか、この三点につきまして一応お伺いしたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 三点とも私は今日考えておりません。
○千田正君 これは前に各委員の質問に対するお答えと同様のようでありまするから、あえてこれ以上追及いたしませんが、これは結局司直の手によつて調査されておる問題が具体的に現われたときにおいて国民の憤激がそこに現われて来ると思います。 次に、私は特に首相にお伺いいたしたいのは、先般ニユーヨーク・タイムズの報道によりまするというと、このたび西ドイツの首相アデナウアー氏が、アメリカに対して第二次大戦におけるところの凍結されたるところの個人の財産を返還してもらいたいということをアメリカ側に要求したということが出ております。これは首相もよく御存じの通りでありましようが、西ドイツが昨年六月ボンの会議におきまして、ドイツとアメリカとの友好条約の下に、この棟結されたる国民の財産は請求しないということを約束したようでありまするが、最近欧洲の国際情勢が変ると同時に、国民の声として、どうしても凍結されたるところの個人の財産というものは請求しなければならないという考えの下に、このたびアメリカ側に向つてそれを請求したようであります。アメリカ側としましては、ダークセン司法委員会におきましては、これは当然国際法的な立場からも、それから個人の財産権を擁護するという立場からもこれは考えてやらなければならない。特に日本とドイツに対しては、この際共産主義を排除するために相当な強い力を以て日本及びドイツの財政或いは軍事援助をしなければならない。こういう際に個人的財産をアメリカ側に凍結しておくということは、これはその当を得たものではない。政府はすべからくドイツ及び日本に対して、そうした凍結されたるところのこの財産に対しては開放すべきであるということをアメリカ政府に通告しておるようでありまするが、こういう点におきまして、首相としてはどういうふうにお考えになつておりますか、この点を伺いたいと思います。
○国務大臣(小笠原三九郎君) 千田さんに一応在外財産のことをちよつと申上げておきたいと思います。御承知のごとくサンフランシスコの平和条約に調印しておる国につきましては、当該国の自由処分が承認されておりますが、ブラジル、アルゼンチン、パキスタン、セイロン等の諸国は元の所有者に返還する意図を表明しておつて、これは誠に御同慶に堪えません。インドのほうの在外財産につきましては、これは二国間の平和条約で、インドの好意で旧所有者に返還することになつておることは御承知の通りでありますが、まだ実施の段階には立至つておりません。韓国、台湾等にあるものの取扱いにつきましては、相互の取極によつて確定することになつておりますが、実はまだ取極ができていない状況でございます。樺太、中国本土等、平和条約の結ばれていない地域にも多くの在外財産があることは御承知の通りでありますが、併しまあこういつた在外財産の問題の解決策につきましては、もう御承知のごとく終戦後相当年数も経つておりますので、条約等の確定を待つことなく、何か引揚者のかたがたに措置を講ずる必要もあろうかということで、昨年、在外財産問題調査会というものを大野龍太氏を会長といたしまして作りまして、在外財産の処理方針の答申を求めておる次第であります。なおアメリカ等におきましては、機会あるごとにそういう話はいたしておるのでございますが、余りまだ進捗状況を見ておりません。
○千田正君 先般来吉田首相がアメリカに行かれるというようなことも聞いておりますので、そういう機会があつたらば、むしろ日本側の立場を十分に考慮されて要求して頂きたいという希望を付します。 もう一つ、首相はこの際、特に我々が関心を持つて苦しんでおるのはいわゆる日韓問題であります。先般来外務大臣からもいろいろ我々が質問してお答えを頂いておるのでありますが、今の状況においてはなかなか進捗しない。私はアメリカへ首相がおいでになる前に、むしろ隣りであるところの李承晩大統領と吉田首相が十分に話合うところの機会を得て、一日も早く日韓関係のこの会談の再開を要求されて、日本国民の安心し、且つ又隣りの韓国も安心して、両国間の友好親善を増して行くという方途をとるべきであると思いますが、吉田首相はアメリカに行かれる前に、先ず第一に隣りであるところの、今問題になつておるこの日韓会談に対して、特に李承晩大統領と会見して問題の解決に当られる御意思がおありであるかどうかを伺つておきたいと思います。
○国務大臣(吉田茂君) 私が李承晩大統領と会談することによつて問題が促進するならば喜んで会談いたしますが、韓国側から未だ何ら意思表示がないのみならず、日本から両国の会談を成るべく早くいたしたいと言つて希望を述べておるにもかかわらず再開されないような状態にあるのであります。併しながら、政府としてはその再開の一日も早からんことに努めるつもりであります。
○千田正君 もう一点伺います。それは一九五一年二月七日、いわゆる吉田ダレス書簡を以て応答されておりますところの、日本の漁業問題に関しましての吉田首相とダレス全権大使との間の書簡の内容の一部でありますが、一九四〇年に漁業しておらない所或いは日本の漁船或いは汽船が行つておらない所に、将来といえども或る一定の期間は行かないという約束の文書が交換されております。その結果としまして、いわゆる日米加漁業条約等が結ばれて、この北洋における問題は一応国際信義に基いて自粛自戒の立場にあるのでありますが、これに伴つて、逆に今の李承晩ラインの設定などという一方的な問題、或いは濠洲のアラフラ海におけるところの濠洲側の大陸棚の制限であるとか、或いは中共側におけるところの日本の漁船の拿捕、或いは中国、いわゆる台湾政府の日本漁船の拿捕、或いは南太平洋におけるところのアメリカ側の日本漁船の拿捕というような、日本のいわゆる漁業、日本としましては、いわゆる海以外に今後生きる途はないというこの産業の発達の過程において、こうしたあらゆる点において制限を受けられるということは、日本の産業上、又日本の国策上誠に由由しき問題であると同時に、独立後の日本としましては、どうしてもこの面を緩和し、或いは打開して行かなくちやならないと私は思うのであります。その点において吉田首相としましては、この吉田ダレス書簡においてなされた行為において、今後において改変し、或いは緩和する方途に向つて進まれる御意思があるかどうかということを承わつておきたいのであります。
○国務大臣(岡崎勝男君) 只今のお話のうちの、日米加三国の漁業協定は、三国間で以てお互いに相談をしまして、自発的に、且つ自分の考えで相談をして、魚族の保護等を講ずる措置を取極めるのでありまして、現に先般も日本の代表がアメリカに参りまして、カナダの代表、アメリカの代表とこの点について相談をいたしております。これは大陸棚の主張とか、或いはその他のアラフラ海、それから李承晩ライン等の問題とは全然別でありまして、むしろこういう日米加三国協定のような筋で、ほかの国も魚族の保護その他について同調されんことを政府としては希望いたしているのであります。又只今お話の、例えば南太平洋におきまするいろいろの日本の漁船に対する措置につきましては、一つはアメリカの軍事的な基地のある領海内に入らないということを、しばしばアメリカ海軍等から日本の政府を通じ漁船に対して警告を発しておつたのでありまするが、それが十分に徹底いたしませんために、領海内に日本の漁船が入つて来たために捕まつたというのが事実でありまして、公海においては何ら制限を受けておりません。ただ李承晩ラインと中共の問題、中共の東支那海における問題は、いささか趣きを異にいたしておりまして、これに対しては、しばしば申上げている通り、いろいろ解決策を講じておりますが、只今のところはまだ目的を達しておりません。併し東支那海等におきましては、或る程度漁船を保護するために政府の船も出動するの止むなき場合もあろうかと考えております。
○千田正君 私の持時間がもう殆んど切れておりますので、首相にお答えを願うのは又改めた機会にお願いすることにいたします。 ただ、只今の外務大臣のお答えに対しまして、更に私は農林大臣もおられますから伺いたいのでありまするが、この吉田ダレス書簡に関係して、あるかないかという点を一応一つはつきりして、頂きたいと思うのは、先般占領軍のいわゆる統治下と言いますか、占領地下において、日本の領土に棲息しておらないところの「らつこ」、「おつとせい」の捕獲を禁止するという法律案を国会に出されて、それが通過したのであります。私は法的根拠からみましても、日本の領土に棲息しておらないところの「らつこ」、「おつとせい」というようなものを、而もそういうものは日本の近海を荒し廻つて、曾つて二十万頭と称せられるところの「らつこ」、「おつとせい」が、すでに四百万頭、これが日本の沿岸、三陸、北海道の沿岸に来まして、「いわし」とか、或いは「さけ」とか、「ます」とかというものを食い荒らすところのいわゆる損害は数千万貫と称せられておる今日、なおこの法律を存続しておらなくちやならないという理由はないと私は思う。この点について曾つて農林大臣に質問しました際には、そのお答えとしましては、この一九五一年の二月七日、東京において行われたところの吉田ダレス書簡に基いて、あの「らつこ」、「おつとせい」の捕獲禁止法案を作つたのだ、こういう説明をされておりますが、果してその作られた原因はどこにあるかということ、而もこのために日本の漁民が非常な圧迫を受けておる。これは屈辱的な法律であるということを我々は感ずるのでありますが、その点について外務大臣及び農林大臣のお答えを頂きたいと思うのであります。
○国務大臣(保利茂君) 「おつとせい」に関しましては、お話のような障碍がございますので、先般アメリカに参りました日米加の代表者に対しましても、ソ連との関係があつてなかなか面倒のようではございますけれども、少くとも日米或いはその他の関係国との条約を速かに結んで頂くように、アメリカ政府の内部に対して強く日本の状況を訴えて、認識をしてもらつて、そしてその緒を見出してくれるようにお願いをいたしております。帰られた報告を聞きましても、アメリカ側におきましても事情は大体わかつて来ておるようでございます。調査の実況を整えまして、私どものほうからは、この障碍を何とか取除いてもらうように、即ち条約締結の方向に話を持つて行つて解決を図りたい、こういうふうにまあ考えておるわけでございます。
○千田正君 これは外務大臣でもいいし、農林大臣でもいいのですが、私の答えを求める重点というのは、これはいわゆる国内法である。「らつこ」、「おつとせい」の捕獲禁止法案というものは国内法である。而もこの国内法は、この吉田ダレス書簡に基いて作られたのか、それともそれとは関係なくして作られてあるのか。関係なくして作られておるならば、日本のいわゆる沿岸の漁村を荒すところの、日本の領土に住んでおらないところのこの動物に対して、何故に一体国内法を作らなくちやならないのか。この吉田ダレス書簡に基いて作つたのか、作らないのか、その点をはつきり私は承わつておきたいのであります。
○国務大臣(保利茂君) この点はこれは私取調べまして後刻申上げるようにいたします。(「おかしいぞ」と呼ぶ者あり)
○千田正君 十分この点はわからないと思うのであります。それはなぜかというと、これは当時の占領軍の下に強圧された法律である。我々はこういう日本の領土に住んでおらないところの外獣に対する取締法案というものを国内で作らなくちやならないとするならば、アフリカの象にしても、或いはライオンに対しても、そういうものに対しても取締法案を作らなくちやならないという結論になつてしまう。(笑声)そんなばかなことはないと私は思います。これは日本の漁民の生活のためにも、日本の領土の近くまで押し寄せて来るところのこういう外獣は、むしろとつていいはずだ。とらなくちやならないのだ。でありますから、こういう国内法は一日も早くはずさなくちやならない。こういう国内法があるために、懲役何年とか、或いは罰金何千円というような非常な過重ないわゆる罰則まで付けられておつて、無辜の漁民が苦しめられておる現実を見られたならば、この問題の解決を一日も早くなされんことを要望いたしまして、私の質問を終ります。
○委員長(青木一男君) 本日はこれにて散会いたします。 午前十一時九分散会