法務委員会 第7号
- 発言数
- 54 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1954/03/09
会議録
○委員長(郡祐一君) 只今より委員会を開きます。 本日は先ず理事の補欠互選を行いたいと存じます。前回の委員会におきまして小野義夫君が辞任せられましたので、理事が一名欠員となりました。よつて本日はその補欠互選を行うわけでございます。つきましては、互選の方法は、慣例上成規の手続を省略し、その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認めます。よつて理事に上原正吉君を指名いたします。 —————————————
○委員長(郡祐一君) 次に、裁判所法の一部を改正する法律案(予備審査)について政府の提案理由を聴取いたします。
○政府委員(三浦寅之助君) 裁判所法の一部を改正する法律案について提案の理由を税明いたします。 この法律案の改正点の第一は、民事に関する簡易裁判所の事物管轄の範囲を拡張して、裁判所間の権限の分配の適正化を図つたことであります。御承知の通り、裁判所における民事訴訟の第一審の新受件数は終戦後年々増加の一途を辿ているのでありまして、昨年の全国地方裁判所における総件数について見ますに、戦前十ケ年の平均年間件数の三倍以上に達しており、これがため近時地方裁判所は、各地とも著しく事務の負担加重を来し、事件の迅速な処理が阻まれる結果となつているのであります。 ところで他面、簡易裁判所における民事訴訟事件の負担量を見ますと、昨年の全国簡易裁判所の新受件数は、戦前十ケ年の区裁判所の平均年間件数の約五分の一に過ぎないのでありまして、これを地方裁判所の負担量と比較いたしますと、民事訴訟第一審新受件数の比率は、戦前は、区裁判所八割五分、地方裁判所一割五分であつたのに対し、昨年は、地方裁判所七割三分、簡易裁判所二割七分と逆転しており、簡易裁判所は、民事訴訟に関する限りむしろ開放ともいうべき状態となつているのでありまして、この傾向は今後ますます強くなつて行くものと予想されるのであります。 もとより裁判所法の下における簡易裁判所は、裁判所構成法の下における区裁判所とは、多少その設置の趣旨を異にする点がないわけではありませんが、わが審級制度を大局的に観察するならば、簡易、地方の両裁判所間に見られる以上のような不均衡を是正して、民事第一審事件を適切に配分することが、簡易裁判所設置の本旨に副うゆえんであつて、これにより地方裁判所における事件の渋滞を解消することができ、また簡易裁判所事件の上告審が高等裁判所である関係上、延いては、最高裁判所の負担の調整にも寄与することができると考えられますので、これらの目的を達するため、簡易裁判所の事物管轄の範囲を拡張する必要があると考えるのであります。 而して現在簡易裁判所については、昭和二十五年法律第二百八十七号による裁判所法の改正の結果、訴訟物の価額が三万円以下の事件につき管轄権を有するものとされておるのでありますが、最近の物価指数は右改正当時のものと比較して既に四割程度の上昇を示しておりますし、また戦前区裁判所が千円以下の事件につき権限を有していたことや、特に、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律が近く失効するのに伴い、最高裁判所の負担が増大することを合わせ考えますと、この際簡易裁判所事件の限度額を二十万円程度まで増額することが適当と考えられるのでありまして、この法律案では、裁判所法第三十三条の概定をその趣旨に改めることとした次第であります。 次に、簡易裁判所の事物管轄の範囲をこのように拡張するとしますと、簡易裁判所の裁判官の任用資格等につき、当然考慮を払うべき必要が生じてくるわけでありますが、簡易裁判所制度につきましては、右のほか根本的に検討を要する事柄が少くないのでありまして、これらはいずれも裁判所の制度の改善に関する問題の一環として、更に慎重に研究いたしました上で、恒久的措置を講ずるのが相当であると考えるのであります。従いましてそれまでの暫定的措置としては、特定の簡易裁判所の民事訴訟に関する事務を、その所在地を管轄する地方裁判所の本庁の所在地又は支部の所在地にある簡易裁判所に移転し、事務の移転を受ける裁判所に相当数の有能な裁判官を配置することによつて、事務管轄の引上げにより生ずる不都合を除くことができるようにすると共に、事務を移転される裁判所及び事務の移転を受ける裁判所の指定は、最高裁判所の規則を以てすることとして、この法律案の附則で以上の趣旨を規定し、これに伴う必要な経過的措置を定めた次第であります。 改正点の第二は、家事調査官と少年調査官とを統合して家庭裁判所調査官とし、家庭裁判所における家事事件及び少年事件の適正迅速な処理を図つたことであります。御承知の通り、家事調査官は家事審判法で定める家庭に関する事件の審判及び調停に必要な調査を掌り、又少年調査官は少年法で定める少年の保護事件の審判に必要な調査その他少年法で定める事務を掌るものといたしまして、いずれも家庭裁判所に置かれているのでありますが、この家事調査官と少年調査官とは、それぞれ時期を異にしてその制度が設けられ、全く別個独立の官職として定められたまま今日に及んでおります。併しながら、家事事件と少年事件との間には、申上げるまでもなく、事柄の性質上、極めて密接な関連性があるものでありまして、この同種の事件を合せ取扱うものとして家庭裁判所が特に設けられました根本の意義もここにあるものと考えられるのであります。これまでの実績に徴しましても、少年事件の中に複雑な家庭関係の問題を蔵している事案或いは逆に家事事件の中に少年保護の問題を伴つている事案が極めて多数を占めているのであります。而も、これらの事件の調査に従事する家事調査官と少年調査官とは、共に事実の調査に当ることを主たる職務としているのでありまして、その活動が密接に相関連することの多いこの両者を一体化してその調査活動に機動性を与えることの必要性が痛感されるに至つたのであります。 そこでこの際、家事調査官及び少年調査官の調査事務の有機的総合的な運営を可能にし、その機能を一層十分に発揮させる途を開くことによりまして、家庭城判所における家事事件及び少年事件のより適正迅速な処理を図り、家庭裁判所がその本来の使命を十分に果し得るようにするため、裁判所法第六十一条の二以下数条の規定を改め、家事調査官と少年調査官とを統合して家庭裁判所調査官とし、家事調査官補と少年調査官補とを統合して家庭裁判所調査官補とすることといたした次第であります。 以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。何とぞよろしく御審議のほどをお願い申上げます。 —————————————
○委員長(郡祐一君) 次に民事訴訟法等の一部を改正する法律案(予備審査)、右につき提案理由の説明を聴取いたします。
○政府委員(三浦寅之助君) 民事訴訟法等の一部を改正する法律案について提案の理由を説明いたします。 政府は、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律が臨時特例法として制定された趣旨に鑑み、かねてから法制審議会に諮問して民事訴訟手続全般特に上訴制度の改正について検討を加えて来たのでありますが、上訴制度の改正は、裁判所の機構とも密接に関連いたしますので、この見地からも問題を検討する必要があるものと認めまして、昨年二月更に法制審議会に対し裁判所の制度の改善に関し新たに諮問を発し、民事訴訟法の改正と並行して調査研究を進めて参つたのであります。 同審議会においては、最高裁判所の機構の問題を中心として熱心に審議を重ねたのでありますが、何分にも事柄が我が国司法制度の根幹に触れる重大な問題でありますため、今日までのところまだ裁判所の機構問題についての最終的結論を見るに至らず、今後なお審議を継続することとなつたのであります。併しながら最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律は、御承知の通り本年五月末日を以て失効することとなつておるのでありまして、若しこの際同法の失効に備えるための何らかの善後措置が講じられないといたしますと、最高裁判所の負担が著しく増大し、延いてはわが国の裁判制度の運用に重大な支障を来たす結果となりますことは明らかでありますので、法制審議会におきましても、右の事態に備えてこの際何らかの善後措置を講ずることの必要を認め、差当り民事訴訟法の中で最高裁判所の負担の調整と直接間接に関連のある規定に改正を加えることが最も時宜に適したものであるとの結論に達したのであります。 この法正案は、右に申述べました法制審議会の結論を基礎として立案いたしたものでありまして、この案に盛られております民事訴訟法改正の要点は、次に述べる四点であります。 先ず第一は、上告手続の合理化を図つたことであります。 現行民事訴訟法第三百九十四条は「上告ハ判決ガ法令ニ違背シタルコトヲ理由トスルトキニ限リ之ヲ為スコトヲ得」と規定して原判決の法令違背一般を上告理由としているのに対し、改正案は、原判決の憲法違背及び判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違背を上告理由とすることに改めると共に、上告に関する適法要件を原裁判所に審査させ、上告が適法要件を欠く場合には、原裁判所においてこれを却下することができることとするものであります。 御承知の通り最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律の下においては、最高裁判所は、上告理由のすべてについて調査をする必要はなく、上告理由中原判決の憲法違反、判例牴触及び法令の解釈に関する重要な主張を含むものだけについて調査し判断すれば足りることとされており、従つて最高裁判所に対する上告の理由は、形式的にはともかく実質的には制限を受けていたということができるのでありまして、この際この特例法の趣旨を恒久化してこれを民事訴訟法中に規定すべしとの有力な意見もあるのでありますが、この改正案においてはかような上告制限を維持することを避けたのであります。ただ現行の第三百九十四条は法令違背一般を上告理由といたしております関係上、従来の訴訟の実情におきましては、原判決の結論を左右する見込みのないいわば枝葉末節に類する法令の違背を理由とする上告事件が少くなく、そのため、当該事件の終局的解決が不当に引き延ばされることはもとより、上告裁判所に無用の負担をかけ、延いてはこれが全般的な訴訟遅延の一因をなしていたように見受けられるのでありまして、かようなことは上告制度の本旨に副わないものと考えられるのであります。よつてこの改正案では、憲法以外の法令違背についての上告理由を刑事訴訟法における控訴理由と同様、判決に影響を及ぼすことが明らかなものだけに限定した次第であります。 又、上告に関する適法要件を原裁判所において審査させることといたしましたのは、過去における上告事件の実際を見ますと、上告期間経過後にされた上告や、上告理由書が所定の期間内に提出されない上告等のほか、上告理由書が提出されても、単に原判決の事実誤認のみを主張して法令の違背を全く指摘しないもの又は法令の違背を主張していても、単純な訓示規定の違背等原判決の結論に全然影響のない法令の違背を主張しているものが少なからずありますので、このような上告適法の要件を具備しないことの明瞭な上告は、原裁判所においてこれを却下することができることとし、これにより事件の解決を促進して正当な権利者に対する保護の万全を期しますと共に、上告裁判所の負担を調整してその本来の使命遂行に遺憾なからしめようとする趣旨であります。 改正点の第二は、仮差押又は仮処分に関してした判決に対しては、いわゆる特別上告のほか、上告を許さないこととしたことであります。申すまでもなく仮差押、仮処分の制度は、当事者間の法律上の争訟を終局的に解決することを目的とするものではなく、本案の判決前にされる暫定的な処分であり、而も特に迅速な処理を必要とするものでありますから、かような事件についてまで三審制による上訴手続を認める必要がないと考えられますので、この改正案では、仮差押、仮処分事件については上告を制限することとしたのであります。 改正点の第三は、仮執行宣言付判決に対する上告提起の場合における執行停止の要件を加重したことであります。現行民事訴訟法第五百十二条に関しましては、従来の実務上の取扱に上りますと、仮執行宣言付判決に対し上告が提起されました場合、上告人が原判決の執行停止の申立をして上告裁判所の定めた保証を立てますと、裁判所は、別段の疎明がなくても執行停止の決定をしなければならないこととされているようであります。併しこの取扱は、控訴柳において勝訴した当事者の満足を不当に遅らせる点からいつて、妥当を欠くものでありますと共に、敗訴の当事者が執行を遅らせる目的だけで上告を提起し、そのため理由のない上告事件の増加を招いているような傾向もないとは言えないのであります。上告審が法律審であつて、原判決の破毀率が極めて低いことを合わせ考えますと、控訴審の判決の執行力を強化することは、正しい勝訴者を敗訴者の不当な訴訟引き延ばし策から守ると共に、上告裁判所の負担の調整にも役立つわけでありまして、本改正案は仮執行宣言付判決に対する上告提起の場合における執行停止の要件として、執行による償うことのできない損害の発生の疎明を必要とすることとしたのであります。 又これに関連しまして、特別上告又は再審の訴の提起があつた場合の執行停止の要件につきましても、権衡上これを加重するのが適当でありますが、この場合は、性質上むしろ請求異議の訴が提起された場合と同様に考えるのが至当でありますので、特別上告及び一審の訴の提起の場合に関して規定した第五百条を請求異議の訴が提起された場合に関する第五百四十七条にならつて改めることとしたのであります。 改正点の第四は、調書及び判決の方式等の合理化を図つたことであります。これは調書及び判決の方式等を合理化して裁判所の事務をできる限り近代化することにより、最高裁判所を含む各級裁判所の裁判官等の事務処理上の能率の向上を図ろうとするものであります。元来民事訴訟法の調書に関する規定は、大福帳式の訴訟記録を前提とするものでありますから、調書の形式内容の合理化を実現するためには、新たな構想のもとに規定を整備することが必要となつて来るのであります。併しながら調書に関する事柄は、本来訴訟法のうちでも特に技術的な事項でありまして、裁判官、弁護士等の実務関係者がその経験と専門的な知識を活用して調査研究したところに基いて最高裁判所がこれを決定することが最も妥当であると思われますし、又性質上も最高裁判所の規則制定権の範囲に属する事項であると考えられますので、刑事訴訟法におけると同様、法律にはただ原則的事項のみを規定し、細目は最高裁判所の規則の定めるところに委ねることとしたわけであります。 又判決につきましても、右と同様の趣旨から、法律には判決の内容として欠くことのできない重要な記載事項について規定を設けるにとどめ、その方式等の細目については最高裁判所規則の定めるところに委ねることにいたしました。 以上がこの法律案における民事訴訟法改正の主要点でありまして、この法律案はなおそれ以外に、非訟事件手続法、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律及び中小企業等協同組合法の一部改正をも含んでおりますが、これらはいずれも以上に述べました民事訴訟法の改正の趣旨に副つてこれらの法律中の関係規定に所要の整理を加えようとするものであります。 以上がこの法律案の提案理由の大要であります。何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
○委員長(郡祐一君) 本法案につきまして逐条の説明を村上民事局長から聴取いたします。
○政府委員(村上朝一君) 民事訴訟法等の一部を改正する法律案につきましては、逐条説明書を印刷いたしましてお手許にお配りいたしてありますので、重な改正点について条文につきまして御説明を申上げたいと思います。 只今提案理由の説明の中で申上げました通り、改正の第一の要点は上告手続の合理化でございます。これに関連する条文といたしましては、三百九十四条の現行法におきましては判決が法令に違背したことを上告理由としておるのでありますが、改正案におきましては、これを判決に憲法の違背があること、又は判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の違背があることに改めるものであります。この法令違背は判決の基礎となつた訴訟手続に存する場合と、判決中の法律判断に法令違背がある場合と二通りございますが、そのいずれにいたしましても、判決の結論に影響を及ぼすもの、即ちその法令違背がなかつたならば、判決の結論が進つたであろうと考えられるものと、そうでなくて、仮にその法令違背があつたとしても、判決の結論は異ならなかつたであろうと考えられるものとがあるわけであります。後者のほうを上告理由として認めることは実益に乏しいばかりでなく、事件の解決を徒らに遷延させる結果となりますので、現行の三百九十四条におきましても、特に判決への影響については明文上明らかでないのでありますけれども、その解釈といたしましては、判決に影響を及ぼす可能性のない法令違背は上告理由とならないものとされているわけであります。この改正案におきましては、その趣旨を明らかにいたしますと同時に、これを一歩徹底させまして、上告理由は判決に影響を及ぼすことの明らかな法令違背に限るものとするものであります。言い換えますと、現行法の下では法令違背が判決に影響を及ぼす可能性があれば、これが原判決破棄の理由となるのでありますが、この改正案におきましては、法令違背が判決に影響を及ぼす蓋然性のある場合に限り原判決破棄の理由としようということであります。ただ、憲法の解釈につきましては、最終審の裁判所の判断がなされる機会を十分に保障する必要がありますので、憲法の違背の場合は現行法通りとする趣旨でございます。 次に、第一の上告手続の合理化に関連いたしました第三の条文といたしましては、三百九十九条であります。第一に上告が不適法でその欠缺を補正することのできない場合、即ち上告期間経過後に上告の提起があつたような場合に、次に上告理由を記載せず且つ上告理由書を期間内に提出しない場合、又は上告状に上告理由を記載し又は上告理由書を提出したけれども、上告理由の記載が取高裁判所の規則で定める方式に違背している場合、かような場合におきましては原裁判所において上告を却下するということにいたしておるのであります。 次に、第三の理由といたしましては、上告理由として上告人の主張するところが法令違背の主張に該当しない場合、又は法令違背の主張ではありますけれども、仮にその主張するような法令違背があつたとしても、それが判決に影響を及ぼす可能性のないことが明白な場合であります。例えば専ら原審の事実認定が間違つておるということを主張するに過ぎないものは前の場合に該当いたしますし、明らかに訓示規定と解せられる法規の違背や、原判決の単なる裁判における法令解釈の誤りを主張するに過ぎないもの等が後者に当るわけであります。この改正案におきまして原裁判所が上告を却下し得るものとされております場合は、上告の適法要件を欠き、本来上告審の実質的な審査を受け入れない場合でありまして、いわば上告の適格性を備えていない上告ということができるのであります。又これに該当するかどうかは、事柄の性質上特別の法律的判断を経るまでもなく明らかであります。従いまして原裁判所に審査の権限を認めましても、これによつて上告人の利益を不当に害する虞れはなく、事件を上告裁判所に送付して、その審理を経ることによる時間と手数とを省くことができると考えられるわけであります。なお、この点に関係のある条文といたしましては、三百九十七条及び三百五十八条等が改正されております。 次に、改正の第二の要点といたしまして、仮差押、仮処分事件の上告の制限でございますが、これは法案の三百九十三条の第三項に現われております。「仮差押又ハ仮処分ニ関シテ為シタル判決ニ対シテハ上告ヲ為スコトヲ得ズ」と、これでありますが、憲法違背を理由とする不服の申立てにつきましては、別に最高裁判所に対する特別上告を認めることとしております。これが四百九条ノ二、第二項に出ております仮差押、仮処分は本案の訴訟手続によりまして、事件の終局的解決がたされるまでの暫定的、応急的な仮りの措置であります。争いとなつております権利関係の拡張や権利の終局的実現は、本案の終局判決なり又はこれに基く執行手続がその任務とするところでありまして、仮差押、仮処分事件は単に権利保全のための仮りの措置に過ぎないのであります。又仮処分事件の上告審において問題となりますのは、大部分が請求権が、保全せらるべき請求権があるかないかという法律問題でありまして、これは本案訴訟において審判される性質のものであります。従いまして仮差押、仮処分事件につきまして上告を制限いたしましても、当事者の権利の保護に欠くるところがない、且つ法令解釈の統一にも支障はないであろう。却つて本案訴訟との審理の重複を避け、且つ事件の処理を速かならしめることによつて、保全訴訟の制度の目的を一層よく実現し得るのではないかということがこの条文の改正の理由でございます。 次に、改正の要点の第三は、仮執行宣言付判決に対する上告提起の場合等における執行停止の要件の加重でございますが、これは法案の五百十一条にあります。仮執行宣言付判決に対して上告の提起がありました場合の原判決の執行停止は、執行によつて償うことのできない損害の生ずべきことを疎明した場合に限つて許すこととしたのであります。上告の対象となります判決は、通常二審級の審判を経た控訴審の判決でありまして、且つ上告によつて破毀される率も極めて低いのであります。従いまして第二審では勝訴した当事者の権利の実現をできるだけ遅延させないことが望ましいのであります。その執行力の強化は、仮執行宣言の制度が設けられております趣旨に合うわけであります。上告の提起があつたことのみによつて容易に執行がとめられるということになりますと、場合によつては執行の阻害のみを目的とする上告を誘発する虞れもあるということが考えられるわけであります。そこでこの改正案におきましては、真に救済の必要のあるもののみを執行停止によつて救済するという趣旨におきまして執行によつて償うことのできない損害の生ずべきことの疎明を執行停止の要件といたしたわけであります。 なお五百条におきまして、特別上告、再審申立ての場合の執行停止の規定が改められておりますが、判別上告の提起、又は再審の申立てがありました場合の原判決の執行停止等は、その主張する事実について疎明があり、且つこれが法律上一応異議を理由をあらしめるものと認める場合に限つて許すことということにいたしたのであります。特別上告又は再審の申立ての対象となります判決は、すでに確定した判決でありますから、本来完全な執行力を有すべきでありまして、特別上告又は再審の申立てが行われたということのみによつて、その理由があるかどうかを問うことなくして執行停止等の処分によつて、原判決の執行をとめることは、勝訴の当事者の権利の実現を不当に害する虞れがあり、又特別上告なり、再審の申立てが執行を引き延ばすために濫用される虞れもないとは言えない。そこで請求異議の訴えが提起された場合に関する五百四十七条におけると同様の規定に改めることといたしたのであります。 次に、改正の第四の要点は、調書及び判決の方式等の合理化でありますが、これに関連する条文といたしましては先ず正四十三条でございます。百四十三条には、現在は、調書の記載事項等明細に規定してございまするが、改正案におきましては、「調書ニハ最高裁判所規則ノ定ムル所ニ依リ期日ニ於ケル審判ニ関スル重要ナル事項ヲ記載スルコトを要ス」と改めたのであります。口頭弁論調書、準備手続調書等調書の方式の合理化、能率化は訴訟手続を適正且つ迅速に進行せしめるための緊要不可欠の要請でありまして、これにつきまして現在の百四十三条、百四十四条等に部分的な改正を加えることも一つの方法でありますけれども、調書の形式、内容をどう定めるかということは、結局調書が訴訟手続の規則としての機能を十分に果し、且つその作成が能率的になされるための技術的な考慮に基いて定めらるべき事項でありますから、対象となる訴訟手続の異なるに従つてそれに適する定めをし、又常に実務処理の経験に鑑みて順次所要の改正をなし得ることが望ましいのであります。従いまして調書につきましては基本的な事項のみを法律で規定いたしまして細目についてはこれを法律で規定するよりは、みずから裁判を行い、且つ下級裁判所の訴訟事務処理の実態にも通じております最高裁判所において規則を以てこれを定めることが適当と考えられるのであります。憲法の第七十七条もこういう事項を最高裁判所の規則で定めることを予定しているものと考えられるのでありまして、刑事訴訟法におきましてはすでに規則に譲つていることでもありますので、この際かように改めた趣旨でございます。なお、調書の合理化に関します条文といたしましては、百四十七条から百五十一条まで及び準備手続調書に関する二百五十条等は同じ趣旨で改められているのであります。 なお、次に判決の方式等の合理化でありますが、これに関係のある条文といたしましては先ず百九十一条であります。現行法の規定を改正案におきましては「判決ニ於テハ最高裁判所規則ノ定ムル所ニ依リ主文ノ外事実及争点並理由ヲ明ニスルコトヲ要ス」かように改めているわけであります。即ち内容、方式等について基本的事項のみ訴訟法に規定いたしまして、その他は最高裁判所の規則で定めることとするものであります。従来判決書の方式は、百九十一条に従いまして長年の慣行によつて或る刑が成立しているのでありますが、非能率的な点がないでもないと考えられますので、判決書の作成に裁判官が費やす時間と労力は極めて多大でありながら、その相当の部分は全く形式的な、判決の真の内容をなすとはいえないような事項に費やされている憾みがあるのであります。この改善につきましては現行法の下におきましても、運用によつて成る程度考えられるのでありますが、むしろ法律におきましては判決の基本的内容として欠くべからざる要件であるところの主文、事実及び争点及び理由を備えるべきことを規定するにととめまして、その方式については、すべて最高裁判所の規則で定めることとするのが適当であろうという趣旨でございます。これによりまして或いは調書判決の制度、訴訟その他の準備書面の運用等も可能となることと思われるのであります。 なお、簡易裁判所の判決につきましては、三百五十九条に、又控訴審の判決につきましては三百九十一条に特例が規定してございますが、これらの特例も判決の方式に関するものでありますので、すべて百九十一条で統一的に規定いたしまして、特例に類する事項は規則に委ねられることとなるわけであります。その他この改正点に関連いたします条文といたしましては、三百五十九条、三百九十一条及び百九十二条百九十三条等があるわけであります。 簡単でございますが改正の要点について、条文についての御説明を終ります。
○委員長(郡祐一君) 只今説明を聴取いたしました二法案につきましては、次回以降にこの質疑を行うことといたします。
○委員長(郡祐一君) 次に、交通事件即決裁判手続法案を議題に供します。前回の委員会において本日は逐条の質疑に入りますることにお話合をいたしたのでありまするが、前回の委員会において質疑があり、法務省側より答弁があつたのでありまするが、本法の実施に伴いまして必要なる物的並びに人的施設並びに従つてこれに伴う経費につきまして裁判所側からの説明を聴取いたしたいと思います。
○説明員(江里口清雄君) この交通事件の即決裁判手続法、これは被疑者の出頭の確保とか、或いは書面手続面の簡素化、或いは裁判の迅速化、或いは裁判の執行の確実性の確保というような点につきましては、十分にその目的を達するように考慮されておるのでありまするが、その半面実質的な審理という面が低調になつておりまして、従来書面審理の略式命令でやつておつたのでありますが、それを裁判官がこの手続法によりますと、公開の法廷で一々被告人に面接いたしましてその弁解を聞き、又必要とあれば事実の取調べをした上で裁判をすると、こういうことになつておるのであります。 で、この従来の交通事件は略式手続で全部やつておつたのでありますが、略式の起訴がございますと、裁判所の書記官におきまして記録を取調べまして、そうして略式命令の原稿をこしらえる。で裁判官が更に記録を精査いたしまして、略式命令に署名をして、そうしてそれを今度は「書記官、雇が送達をする。で送達は内容証明、配達証明というようなもので執達吏の送達に付するわけでありますが、その送達報告書が返つて参りますと、これを一々記録に綴りまして、そうして記録を整理して検察庁に記録を送付するというようなことで、非常に手続面がやかましくなつておつたのであります。ところがこの即決手続法によりますと、そういう手続の面は非常に簡素化されておりまして、併し先ほども申上げましたように、裁判官の負担というものが非常に加重されておるのであります。で、この法案が完全に実施された暁におきましては、この交通事件の処理のために全国で簡易裁判所判事十七名の増員、それから法廷の増設を三十必要とするものであります。 で、その起訴でございますが、最も交通量の多い東京の簡易裁判所、それから新宿の簡易裁判所、台東の簡易裁判所、それから隅田の簡易裁判所、大森の簡易裁判所、渋谷の簡易裁判所、東京で一番交通量の多い、交通事件の多い六つの簡易裁判所について昨年の略式手続、この交通事件の略式手続の処理件数を見てみますと、十二万一千六百八十六件、こういうことになつておるのであります。これを大体六つの簡易裁判所で現在裁判官がやつておるのが五・一七人で担当いたしておるのでありまして、昭和二十八年度の一人当りの年間の処理件数、これは一年を三百日と計算いたしまして一年間に二万三千五百件、一日当り一人が七八・三件、こういう数字になつておるのでありますが、これは裁判官の非常な努力でこの件数を処理しておるのでありまして、大体これが限界点で、これ以上はむずかしいと思うのであります。ところがこの即決裁判手続法によりますと、一々裁判官が面接をして被告人の弁解を聞くということになりますので、どうしても一件で十分はかかるだろうと思います。十分と申しますとそんなに速く審理されては困る、もう少し丁重にしてというような御意見もあるかと思いますが、大体平均十分といたしまして一日の一人の裁判官の処理件数は四十件、一年三百日裁判に当るといたしまして一人で一万二千件になるわけであります。一人の一年の処理件数を一万二千件と計算いたしまして来年度、昭和二十九年度の事件を処理するには大都市、これは東京の一番交通量の、事件多い東京新宿、台東、それから隅田、大森、渋谷、中野、葛飾、それから大阪、大阪の都島、阿倍野、それから京都、神戸、福岡、これらの交通量の非常に多い、事件数の多いところで裁判官がこの手続で処理いたすといたしますと、裁判官は一人で一年に一万二千件処理するといたしまして、専門にかかり切りの裁判官が三十人で三十の法廷が必要だ、こういう計算になるのでありますが、そのうち現在略式で処理しております裁判官が十三人、従つて増員の必要が十七人、で三十の法廷が必要だ、こういうような計算になるのであります。 その経費の総額でありますが、これは総額で一億四千二百八万円、こういう経費が必要となるのでありまして、その経費の内容は、人的経費とそれから法廷や附属設備等の新設の営繕費、備品費等の物的費用、それから一般経費としての庁費に分れるわけであります。で人的経費は総額で千四百五十三万九千円になりまして、その内訳は簡易裁判所判事の十七人の増員の俸給とそれから国家公務員共済組合の負担金或いは公務災害補償費、或いは退官手当それから赴任旅費、こういうような内訳になるのであります。それから物的経費でございますが、これは営繕費とそれから備品費に分れまして、営繕費は法廷それから裁判官の部屋それからその他の廊下等の附属施設の営繕費で総額一億一千五百二十二万九千円、それから法廷の備品費、裁判官室の備品費等で千百一万、それから一般庁費が百三十万二千円、総額で一億四千二百八万円、こういうような経費を要するわけであります。この経費は現在大蔵省で認められたものは少しもないのでございまして、と申しますのは、この法案が固まりましたときには、昭和二十九年度の予算折衝が終つた後でありまして、従つて二十九年度の予算には少しも認められておらないのでありまして、この予算は現在大蔵省の事務当局と折衝中であります。 で、この法案は違反者であるところの、大体自動車の運転手が多いと思いますが、違反者側にありましても、又捜査官側にとりましてもこれは結構な案であります。又裁判所から見ましても非常に結構な法律と思うのでありますから、裁判所といたしましてもその成立を心から希望しているわけでありますけれども、予算が認められないで現在のままでありましては、判事が十七名それから法廷が三十不足というようなことで、そのままではちよつと裁判所側といたしましてはお引受けできないのでありますので、この委員会におかれましても予算が認められるように一つ御尽力をお願いいたしたい、かように思うのでありますが、尤もこの法案が御可決を得まして施行になりました場合におきましても、この歩道違反につきましては一般の刑事訴訟法による略式裁判手続も許されるわけでありますので、検事が略式の手続で起訴すれば略式命令で行く。それからこの交通事件の手続法によりまして起訴すれば即決裁判で行くということで二本建になるわけであります。現在のままでは先ほど申し上げましたように判事とそれから法廷の不足のために、お引受けできないのでありますけれども、若し予算の全額が認められなくてその一部のみが認められましたような場合におきましては、予算が認められました範囲内で、でき得る限りこの即決裁判手続を実施いたしまして、その残余の分につきましては従来通りの略式手続で処理をして行くほかはない、かように考えるわけであります。 で、検察官のほうでこの即決裁判の起訴がありました場合におきましては、裁判所は即決裁判に上りますか、或いは正式の公判手続によつて裁判が許されるだけでありまして、略式手締による処理ということは許されないのでありますから、予算が認められた範囲内におきましてこの制度を実施して行くという点につきましては、検察当局と十分打合せをいたして遺漏のないように裁判所としてはいたして行きたい。かように考えております。で、今後におきまして更に予算が認められれば、順次予算を認められました範囲内で、法廷それから判事の増員等を行いまして、この法案の完全な実施に移つて行きたい。かように思つておるのであります。
○委員長(郡祐一君) 只今の江申口最高裁刑事局長の説明に対して何か御質問がございますか。
○羽仁五郎君 裁判所からお教えを頂きたいと思うのですが、只今御説明の中に、この法案は、交通事件を起すであろうと考えられる自動車の運転手、そのほかの方々にとつてもよいものであり、又その取締りをされる警察や検察庁にもよいものであるというふうにお考えになると言われたのですが、裁判所にとつていいものであるかどうかということを伺いたいと思つたのですが、といいますのは、その趣旨は、私は、常々我々法務委員会としては、この日本の新らしい裁判所は、新らしい国民の期待に副われることを念願してやまないものでございますが、その何といつても昔の裁判所と今の裁判所とはつきりした区別というものが、我々一般国民にはどうも切実な感じとして受取つていないことを申上げるのは甚だ相済まないとは思うのですが、我々も未だ判事と検事というものが、まあ民間の言葉で言えば、ぐるのような感じを一般国民の間には抱いているということは非常に遺憾なことだと思う。そこで裁判の権威というもののためには、やはり裁判所が信頼を得られるということが必要であろう。ところが御承知のごとく、戦前日本がだんだん悲しむべき状態に陥つて行くときに、常に起つて来たのは裁判の簡素化ということである。で、裁判の簡素化というのを我々当時新聞などを通じて見ておりましたときにも、実際日本の裁判官が裁判というものをどういうふうにお考えになつているだろうか。我々国民としては、裁判というものは、飽くまでも鄭重にやつて頂きたいと思いますのに、まあ外部から拝見すれば、軽々しく簡易ということをおつしやるように印象を受けた。そこで今度の法律案につきましても、やはりこの間から参考人の御意見を伺つたりしておりますときに、又委員の御発言の中にも同様の趣旨がありましたが、裁判が簡易になるということは、粗末になるということであつてはならないという御意見が多かつたのです。そこで御意見を伺つておきたいと思いますのは、これによつて裁判が粗末になるという御疑念が毫末もないかどうかということです。 それから第二は、従来略式裁判の場合に、正式の裁判の申出が非常に少い、この原因について御所見を伺いたい。 それから第三には、この法案によつて正式裁判を受ける権利を持つ方がそれを放棄して、それで即決裁判手続というものによられる場合の意思が、大して意思の自由というものが完全に守られるものであろうかどうであろうか。本日午前の委員会に、地方行政委員の方の御発言の中にもありましたが、検察庁のみならず、裁判所の判事、裁判官の方々にしても、この即決手続というものを押し付ける恐れがあるのじやないかという御意見がありましたので、そういう恐れが全くないものであるかどうか。以上三点について、根拠に基いた御所見を伺うことができれば有難いと思います。
○説明員(江里口清雄君) この裁判が簡素になるのじやないかというお尋ねでございますが、この手続は先ほど申上げましたように手続面が書面書類等におきましては簡素になつておるのでありますが、審理の実体という点については却つて鄭重になつておるのであります。と申しますのは、この事件は従来は略式手続で書面審理でやつておるのでありますが、ところがこの新らしい手続法によりますと、従来の略式と同じ内容の証拠関係の書面はやはり出されるのであります。そうして更に裁判官が公開の法廷でいちいち面接した上で弁解を開いて、なお必要とあれば事実の取調べをするということになつておるのでございまして、従来の略式手続によりますと、ただ警察、検事の取調べがあつて略式起訴をされる。裁判所で略式命令をこしらえて送達をいたしまして、不服があれば十四日以内に正式の裁判を申立てるという手続になつておりますが、この交通事犯の大体の刑は科料五百円から大体罰金三百円というのが多いのでございまして、それでそういう罰金や科料の刑でございますから、又裁判所に出て行つて時間をつぶすというようなことではもう面倒くさい、又煩雑だ。不服だけれどもこれで我慢しようというような被告も或いはあるのじやないか、かように考えるのでございますが、ところがこの手続によりますといちいち裁判官が面接をいたして弁解を聞くという手続が加つておるのでございまして、そうして、そうするとやはり裁判官に会えばいろいろ法律上の弁解、理由のある弁解もございましようし、或いは法律上は原因はなくても一応こういう事情だということで訴えてみたいというような被告もあるのであります。それで遠慮なく裁判官に法廷で面接した上で訴えるということで、それによりまして弁解も十分聞けるということに相成るわけでございまして、この書面とか或いは証拠調べの手続とかいうような点では非常に簡素になつておりますが、弁解を聞いてもらえる、裁判官もその弁解を十分聞いた上で裁判をするということになつておりますので、決して簡素にはなつていないのでありまして、むしろ鄭重になつておるというふうに感じておるのであります。 それで先ほどちよつと裁判所のほうも希望すると申しましたのは、この手続によりますと裁判官の負担が非常に殖える。現在では先ほど申上げましたように七十八件も略式手続でやつておりますのが、四十件ぐらいしかできない。それだけ裁判官は負担の過重になるということになるのでございますが、ちよつと先ほども申上げました、が略式命令をいちいち書く、或るは原本のほかに謄本を二通は少くとも書かなきやならん。原本のほかに検事と被告人に送達をする。それもいちいち厳重な手続で送達をして、送達報告書を、これは一日に三百件、四百件となりますので、これをえりわけるだけでも大変な手続なんです。そういう手続をやらなくつて、公開の法廷で言い渡せばそれで済む。それで仮納付も裁判で執行ができるというようなことでございますが、裁判所全体の手続といたしましては、判事の手続は手が殖えますが、全体の手続としてはむしろ裁判所全体としては手が省けて、希望いたします。その手が省けて希望するというばかりでなくて、弁解を聞いて誤判を避けるというような点、それから納得の行く裁判というものができるという点につきまして結構な制度だとこういうふうに考えておるのでございます。 それからこの手続によりましても、これは公判前の手続でございますから、不服があれば正式の裁判の申立ができる。そうしてそこで第一審、それから二審、三審ということで一審前の手続より非常に鄭重になつているということが言えるわけでございます。 それから従来の略式について正式の申立が非常に少い。こういう点でございますが、特にこの交通事件につきましては東京の簡易裁判所の昨年の統計によりますと処理された事件が六万三千二百八十七件、そのうち正式裁判の申立のあつたのが十三件、五千件に一件、こういうようなことに相成つておるのでございます。これは全国も大体こういう統計じやないかと、こういうふうに、私今正確な統計をもつておりませんがそういうふうに考えております。五千件に一件もあれがないという点でございますが、これはこの一件が一体定期的な事件でございまして、それから現行犯が主なものでございます。それから刑も先ほど申上げたように軽い刑でございますので、それらの関係から正式の申立が少いのじやないかとかように考えております。或いはその中には不服を申立てたいけれども、手間もかかるし費用もかかるからやめておこうということで正式な申立をしないものがあるかも知れませんけれども、そういうものは今度の制度で救えるというふうに考えておるのでございます。 それからこの普通の公判手続によらないで、この手続を希望する被告が、この手続で異議がないということでこの手続に入るという点について十分に異議のないことの真意がわかるか、護れるかという点でございますが、その点につきましては法律には規定されておりませんですけれども、裁判所といたしましては裁判所の刑事訴訟のルール、規則によりまして被告がこの手続によることが異議がないという被告の書面を取ることは、一々これはちよつと書面を取りますことは煩瑣でございますので、検事に対して異議のないことを述べたというような検事の書面を付けるというようなふうに規則を制定しようというふうに考えておるのでございます。 なお検事に対してこの手続によることが異議がないということを申しましても、裁判官の面前へ参りまして法廷でこの手続じや異議がある。正式の公判手続でやつてもらいたいということを申述べれは、いつでも公判の手続で審理をするということにいたします。その点につきましては裁判官は十分被告の弁解を聞くという建前で法廷で面接するわけでございますから異議があればこれはもうすぐ、この手続をやめて普通の手続で行くという点について十分これは裁判官を御信用頂いていいのではないか、かように考えておるのでございます。 なお、裁判の権威につきまして、この被告に面接する場所でございますが、従来は公開の法廷以外で聞く、被告を尋問するのは、大体において新憲法施行前の予審判事が勾留尋問をやつております。それから、現存では普通検事勾留と申します。起訴前の勾留尋問、これは裁判官がやるのでございますが、これは法廷で聞かないのでございますので、これは裁判官が尋問いたす場合においては自分は裁判官である、ここは裁判所であるということをあらかじめ告げまして、今まで検事が何と言つておつても、これは裁判所であり、裁判官であるからということで尋問いたすように普通やつておるのでございますが、私たちが公判をやりまして、被告のほうで自分は勾留されるについて裁判官の尋問を受けなかつたというようなことを言う被告が間々あるのでございます。従いましてこの手続におきましても、裁判官が弁解を円く場合におきましては、これは普通の部屋でなくて、やはり公開の法廷で聞く、どうしても公開の法廷で聞く必要があるということを考えまして、この法律でも公開の法廷で聞くということになつております。私たちのほうも現在は略式手続でやつておりますが、略式手紙はこれは書面審理で判事室で仕事をやつております。これも公開の法廷ということになりますので、先ほど申上げたように三十の法廷がどうしても必要になつて来る、公開の法廷をこれはどうしても裁判所でやる必要がある。裁判所法で、最高裁判所で裁判所外に法廷を開くことを指定するというような制度もございますが、過去の実例におきましては癩患者の犯罪につきまして収容所で法廷を開くという場合と、それから曽て伊東ハンニという被告が、詐欺の被告がございまして、これが小菅の刑務所からどうしても出頭しないということで、出頭させることが困難でございました。そこで小菅の刑務所を法廷に指定して、そこで法廷を開いたという例がございますが、被告人の正当の理由なくして出頭しないという場合におきましては、昨年の刑訴の改正で出頭を待たずして審理ができるというようなふうに改正いたされましたので、この被告人の不出頭のための法廷指定ということは今後起らないので、現在では裁判所外で法廷を指定するということは、癩患者の収容所の中の犯罪について法廷を裁判所で指定するという例でありますが、この事件につきましても簡易にやれ、そこで裁判所外で法廷を指定してどしどしやつたらよかろうという御意見もあるのでございますが、裁判の権威という点からやはり裁判所内の公開の法廷でやりたい、こういうことで裁判所外の地で法廷を開くということは現在裁判所側といたしましては考えておらないのでございます。この手続をやるためにはどうしても法廷をこしらえて頂かなければならない、こういうふうに考えているわけでございます。
○羽仁五郎君 そういたしますと、御説明で、一言で申せばこの法案は日本の現在の裁判を民主主義的な裁判として確立する上にプラスになる点だけであつて、マイナスになる点は一つもないという御所見でございましようか。
○説明員(江里口清雄君) この手続は私たちの見解、現在の考えによりますと、いい面ばかりでございまして、悪い面はない、裁判所から見ましてもない。ただ遺憾な点は予算の措置が必要であるという点だけのように考えております。 それからちよつと先ほどの点で訂正させて頂きたいと思うのでございますが、先ほど刑罰は科料五百円から罰金三百円と申したそうでございますが、科料五百円から罰金三千円までの刑でございます。訂正いたします。
○羽仁五郎君 この法廷の独立ということが維持されるような設備があるならば、マイナスはないというお答えでございますね。そういう御意見ですね。つまりその点だけではないかとも思うのでありますが、只今の御意見ではその警察、検察それから裁判所がごちやごちやしているようなところでこの即決裁判が行われると、その裁判を受けた人が公開の法廷で裁判を受けたように感じない虞れがある。そこでその司法と検察というものの区別があいまいになつてしまうというような虞れも生ずる。その意味で適切な予算を以て裁判の、司法の独立ということが確立されることが望ましい。その他の点においてはマイナスになる点はないというような御意見に伺つたのですがそうですが。
○説明員(江里口清雄君) さようでございます。
○羽仁五郎君 それでは第二に伺つておきたいのは、やはり本日の地方行政委員会と連合委員会の場合に、地方行政委員の御意見の中に、この即決裁判手続という言葉が甚だシヨツキングであると言う。で、我々国民としては即決という言葉を聞くと、まあ絶望的な気持を、連想を抱くという意味でしようか恐らくは……。それでこれは文字を変える必要がないかという御意見であつたのですが、法務省のはうの御意見としてももつといい文字があればというふうに考慮されたものだそうですけれども、これが即決裁判というふうになつて来ます結果、やはりそういう観念が一般に与えられる虞れが多少ありはしないか、これが裁判所にとつては甚だ御迷惑なことになりはしないか。日本の裁判というものが一種の即決主義みたいなものに属服して行くのではないかというふうに考えられる点がありはしないか。そこでその点について裁判所の御意見としては、この名称で一向差支えないというふうにお考えでしようか。それとももつと適当な名称についての御意見がおありになればお伺いしたいということと関連しましてついでに何つておきたいのですが、この法律案に直接的に全面的な関連を持つというふうには言えないのかも知れませんが、やはり若干の関連を以て現在最高裁判所では陪審制などについてはどんなようにお考えになつておられるか。又この法律案との関連においても何かそういう点でお考えがあればお伺いしたい。 それから第三には、この法律案は或る意味で極めて地域的な性質を持つておる事件に対する処理でありますが、つまり主な都市ですね、東京とか大阪とか神戸とかいうそういう大都市、或いは自治体というものにおいて特に起つて来る問題というので、全国的にこういう交通事件即決裁判手続法というものを作るよりも、そういう自治体において解決されるほうが法の体系全体の上のほうから望ましいのではないかと考えられる節もあるのですが、その点についてはどんな御意見でおありでありましようか。以上三点について御意見を伺いたい。
○説明員(江里口清雄君) どうも即決裁判という名前がよくないのじやないかというふうなお言葉、これは曽て警察犯処罰令による即決というものがございました。それが人権擁護の点においてよろしくなかつたというようなことを言う声も開くのでありますが、いろいろこの点につきまして適切な名前を考えたのでございますが、適切な名前がどうも見当らない。でまあこの裁判が警察、横手の調べを終えて即日裁判所で裁判をやると、従来二度三度と違反をした運転手が出て来て手間や暇を潰すという点が一日で済む。その点でこれは一番正確、この即決裁判というのは今度新らしい手続を一番率直に現わしているのじやないかというようなことでまあこの名前でいいのじやないかというふうに私たちは考えておるのでございます。で過去の即決というのは警察がやつておつたのでありまして、この手続は裁判所がやるのでございます。まあ裁判所がやる、而も即日でやるので、一番正確さを現わしておつていいのではないか、かように考えておるのであります。 それから陪審の点でございますが、陪審は御承知の通り戦時、大東亜戦争中に、戦時中は陪審を停止するという、で戦時終了の際は復活するというようなことのままになりまして、そのまま陪審は眠つておるというような状態と記憶しておるのでございまして、これを復活するということについてはいろいろ考えておる。これを復活したらどうかということについて考えてはおるのでございますが、復活するにいたしましても、過去の陪審法と、過去に行われました陪審法というのはいろいろ欠陥がございまして、御承知の通りだんだんと衰徴して参りまして、陪審を辞退するいう者が非常に多くなりまして、結局行われないままになつて行われることは非常に少くなりまして眠つてしまつておるという状態でございます。これを復活するにいたしましても、もう少し根本的に検討をする必要があるということで今まあ研究中というようなところでございます。 それからこの即決裁判手続法は自動車事故、この自動車の違反が主で、ございまして、従つて自動車の交通の頻繁な都会地だけでいいのではないかという御意見でございますが、これは誠に御尤もな御意見でございますが、この手続が行われましても、この交通事犯につきましては、この即決裁判手続法とそれから刑訴の手続によります従来の略式手続と二本建になるわけでございます。検事の起訴がこの即決裁判手続法で参りますれば即決裁判、略式手続の起訴があれば略式手続によつて審理する、かような二本建になるわけでございまして、従いましてこの全国的に運用されましてもそのときの状態、例えば即日裁判が困難であるというような場合におきましては、判事の配置が少い、当日判事が居なくてこの手続でやれないというような場合におきましては、略式手続で起訴されて審理されるというようなことで、二本建で随時運用の妙を発揮することができる。従つて全国的に施行いたしましてあとは運用で賄うほうがいいように考えるのでございます。
○羽仁五郎君 その只今の御説明を頂きました中の陪審制については、私はいろいろな法律案に関係しては絶えず御意見を伺つておるのですが、甚だ僭越なことを申上げるようで恐縮なんですが、いつも同じような御意見でありますので、この陪審制度も勿論、私も、もとありました陪審制度のようなものは実際我々は辞退したい場合が多いのではないか。で、もう少し実質を備え、裁判の民主主義化の実質を持つた陪審制度についての御研究に対しては大いに期待しておりますので、そのことを申上げておきたいと思います。 それから最後に一点伺つておきたいのは、ルールの問題なのでありますが、先ほど御説明を頂戴したのでありますが、私が問題に主として考えておりますのは、やはり本日午前に法務省のほうからも御説明を伺つたのですが、決して即決裁判手続を押し付けるものではなくして、異議があれば正式裁判を頂くことができるということがその本人に徹底して、どういう程度にまで理解されるかということに心配を抱かれている面が多いと思うのですが、その点については法務省のほうの御説明ではこの即決裁判を手続によつて審理を願つても、その途中においてこれはやはり正式にやつて頂きたいと思えば、途中から正式にお願いをするということもできるというような御説明があつたのですが、その二点については裁判所のはうでルールをお作り頂くのでしようかどういうことなのでしようか。第一は、これは決して正式裁判を受ける権利を毫末も抑えるものではないのだ。で本人が正式裁判を受ける権利を十分に自覚して、而もこの即決裁判手続で満足するかどうかということを自分の意思で決定することができるのだということを、どういうふうにしたらば徹底せられるかということであります。で従来も、さつき御説明になりました略式五千に対して正式を要求されるものは一件しかなかつたというようなことの場合にも起るのですが、二つの理由から正式裁判を申立てないのじやないかと想像されるのですが、一つは、これが何か正式裁判の手続というものの権利の自覚を妨げるというか、正式裁判を受ける権利があるのだということがはつきりしないか、第二は正式裁判を申立てたということが従来の日本の慣例ではまあいわゆる不届な奴、不逞な輩というのか、まあ警察や検察庁では民主化された以後は、そういうことはないと思うのですが、まあ昔は正式裁判などを申立てる奴はお上に手向いする奴だというような考え方が多分にあつて今日不幸にしてまだその考えが多少警察などにはあるのではないかというようにも考えるのです。裁判所のはうでそういう点をお救い下すつて、そうして正式裁判を申立てるのは不逞な輩とか、お上に手向うとかいうのじやなくて、主権在民の趣旨を発揮しようとする立派な民主主義的国民であるという点が、十分に理解せられるということが必要だろうと思うのです。でこれは警察なり検察なり或いは法務省のほうにもあとから伺つておきたいと思うのですが、そういう点についてのルールで、先ほどの御説明ではルールをお作りになります場合の、他の場合について御説明でしたが、その今の二つの点についてはどんなふうにお考えで、ございましようか伺つておきたいと思います。この即決裁判の御説明の場合にも、どうも私どもの了解と少し違つている点があるのですが、即決というのが法律案の内容にどうも即していないように思うのです。これは正式裁判というものの前に行われるものであると思うという意味から言えば、即決じやなくして前段裁判とでもいうものなんでしよう。だからそういう名称のほうが内容と合つているのじやないか。併し御説明にも、そこで警察、検察裁判というので一日で済ませるから即決だ、そつちのほうが法律案の内容だと、どうもますます我々は心配になつて来ると思うので、そうじやなくて正式裁判というものはあるのだけれども、併し片付くものはこういう方法で片付けるというふうに言うならば、つまり前段の裁判ということなんです。その点ですね、本人にこれが正式裁判で処理せられるべきものであるならば、十分そういう正式裁判を申立てる理由があるのだが、それに及ばないということであるならば、この即決裁判手続で処理することがでまるのだという点の本末が、関係している人に徹底するようにどんなお考えをお持ちになつているか。それから第二にさつき申上げた点についてお考えがおありで、ございましようか、伺つておきたいと思います。
○説明員(江里口清雄君) この手続を運用いたす場合におきまして、正式、普通の公判手続によることを裁判所で抑えない保障と申しますか、そういうようなことにつきまして特別にルールを設けるというようなことは現在考えておらないのでございますが、これを抑える、普通の手続でやることを抑えるというような気持は毛頭ございませんし、折角法廷を開いて弁解を聞くのでございますから、その点につきましては十分に被告に納得してもらうように、従いましてこの手続によるのがいやなら、普通の公判手続でやれるのだということを十分説明した上で、この手続に移るというような運用はされるとまあ私たち信じておるのでございます。と申しますのは、この検事に対してこの手続で異議がないと申しましても、裁判官に対していつでも審理の途中におきましても、この手続でなくして弁護士をつけて通常の手続でやつてもらいたいということであれば、いつでも通常の手続によります。又事案につきましていろいろと法律的な弁解をして、証拠調べが必要であるというような場合におきましては、これはもう大体においてこの手続に適せない手続ということになるわけでございまして、これは当然裁判官の運用といたしましては、通常の公判手続に引直すということになると思うのでございます。と申しますのはこの手続法によりましても、一つの裁判でございまして、裁判官が裁判をいたす場合におきまして、大体でよかろうというような気持では決してやれるものではないのでございまして、又現に裁判官はそういう気持ではやつておらないのでございまして、千に一つも逃しては自分の務めは務まらないという気持でやつておるのでございまして、ただやつた裁判が千に一つも逃していない。すべて正しいというようなことは申上げませんし、又間違つた裁判もあつたことは、これは遺憾ながら事実も幾らかございましてございますが、少くとも裁判をするという段階におきましては、どんな軽微な事件でございましても、これはいろいろ弁解いたしますれば、その事件について取調べをして、そうして千に一つも逃さないという気持で裁判官がやつておるのでございまして、その点は裁判官を御信用頂きたいと、かように思うのでございまして、決して弁解をして、この手続じやなくて通常手続をやつてもらいたいというような気持を抑えるというようなことはもう毛頭できないのでございます。と申しますのは、そうやつて裁判いたしましても、正式で一本書面を出せば普通の公判手続、又正式の公判の第一審の手続をやり替えるのでございまして、決して抑えたからといつてそのまま済むものではないのでございます。又裁判官の気持としては決してそういうことでは裁判はできないのでございますから、この点は御信用頂きたいと思うのでございます。 それからこれは即決裁判よりも公判の前段の手続じやないか、まさしく仰せの通りでございまして、この手続は第一審の公判の前段の手続でございまして、異議があれば、正式の裁判の請求があれば、そこで初めて第一審の裁判にやり替えて二審、三審となるわけでございまして、これは第一審の公判前の手続でございます。併し公判前の手続はこれだけでございませんで、略式手続もやはり公判前の手続でございまして、略式手続とこれとを比べますと、これは即日即決で即日済むという点におきまして、やはり即日即決という性格はあるのじやないかという気持ちで、即決手続というのは性格をあれしているという意味で申上げたのでございます。
○羽仁五郎君 裁判官を信用しないと申上げたのでは毛頭ないので、全幅の信頼を捧げているのでありますが、併し国民のほうにまだ民主主義の裁判というものについての認識が徹底しておりませんために、裁判所に向つて子の点の御配慮を願いたいということをお願いしておるのであります。特に基本的人権に対する敏感さというものが、まだ不幸にして日本の国民の中には十分ではありません。従つてそういう敏感を非難するような声のほうが強く出ております。その敏感こそ貴重なものだというような声が少いのを非常に私は遺憾とするのです。今日申上げましたことも、そういう点において先ず裁判所の問題というよりも、国民の間に民主主義の裁判に対する信頼というものが徹底するために、いろいろお考えを願いたいという意味であります。 そのルールの点で、いま一応伺つておきたいと思いますのは、この正式裁判を受けたいという気持ちを抑えるお気持ちは裁判所には毛頭ないということは、もうよく了解したのでありますが、私の申上げるのは、本人の気持ちが、すでに社会的に或いは伝統的に歴史的な理由から抑えられているので、そこで裁判所のほうで本人が正式裁判を受ける権利があるという自覚を促されるような点のお考えがないだろうかということを伺つたのであります。ですから、特にその点について抑えるというよりも、持つているものが出て来る機会を与えるような御配慮を頂くことはできまいかという意味で申上げたのであります。
○説明員(江里口清雄君) 正式裁判の請求を抑えるという気持ちは、これは勿論毛頭ないのでございまして、ただこの法律の第十二条に「即決裁判の宣告をする場合には、罪となるべき事実、適用した法令、科すべき刑及び附随の処分並びに宣告があつた日から十四日以内に刑事訴訟法の定める通常の規定による審判」即ち正式裁判「の請求ができる旨を告げなければならない。」ということになつておりまして、この手続によりまして即決裁判を言い渡す場合におきましては、特に十四日以内に、今日から十四日以内にこの通常の審判、即ち正式の裁判の請求ができるのだということを特に告げることにしてあるわけでございまして、決して抑えるつもりではない。異議があればいつでも十四日以内に申立てができるということを、特に注意を促すという規定になつておるのでありまして、この規定に従つて十分その点は宣告の際にその権利のあることを告げるのでございます。
○羽仁五郎君 宣告のある前にこの第三条の第二項の趣旨について取調べの裁判官から被告人に対し、検察官の場合と同様の説明を行い、即決裁判手続によることについての異議の有無を確かめるように規定するということが必要じやないか。それで検察官の右の手続は往々にして形式に流れ手続を欠くきらいがあるのじやないか。その点を最高裁のルールでなさるというふうなお考えが若しおありになるとすれば、それは大変有難いのじやないかというように思うのですが、それは如何でしようか。
○説明員(江里口清雄君) その点につきましては、裁判所の規則にも特に公開の法廷で被告の取調べをする場合に、特に黙秘権を告げることはこの法律に規定されておるのでございますが、正式の公判手続にもよれるのだということを特に告げる、告げなければならないという規定にはなつておりませんし、又現在のところルールでそうきめよう、確かめなければならないということをきめるという点は考えておらないのでございまして、私たち今まで考えております点は、検事に異議のない旨を述べたという書面だけを徴するというようなことだけを今考えておるのでありますが……。
○委員長(郡祐一君) 御質疑、順次逐条にも入つて参りましたが、引続き逐条、と申しましても、これは条文の数も少いことでございますから、条文について御質疑のおありの方は御発言願いたいと思います。
○羽仁五郎君 国警のほうの方は……。
○委員長(郡祐一君) おります。
○羽仁五郎君 もう御説明の中にあつたことですけれども、午前中伺いたい思つたのですが、その時間かなかつたのですが、このいわゆる微罪との限界というのが、その違反が二回重なつたときにそれを送検するという御説明があつたのですが、その二回の期間について伺つていなかつたように思うのですが、どれくらいの長さにおいて二回なんですか。一生の長さにおいて二回というのか、一年間に二回というのか、その点はどういうことになつているのですか、御説明を頂ければ有難いと思います。
○説明員(後藤田正晴君) その点実は私のほうの通牒でははつきりいたしておりません。ただ、何と申しますか、警察の交通取締上のいろいろな規定で、行政処分というのがあるのでございますが、これでは大体一年間に何回というような通常の扱いになつております。従つてこういう通牒が行つておりますので、まあ私実情はよく存じておりませんが、恐らく一年くらいというような時間的な余裕で運営が一線で行われているのじやないか、かように私推測をいたしております。行政処分のほうは大体一年というような扱いであります。
○羽仁五郎君 その点についてやはり随分前のことまでやられるというと、そういう御処置の趣旨にも反すると思うので、なお御配慮願いたいと思います。 それから関連しますので伺つてお尋たいと思いますのは、先日も委員会において問題になつたことですが、この正式裁判を申立てたということを免許証に書入れなさるか書入れしないかという点ですが、その点については先日ははつきりしたお答えが頂けなかつたのですが、どういうことになりますでしようか
○説明員(後藤田正晴君) 運転免許証に従来いろいろなことを書いておりますが、実はここでの御審議ではいつよ悪いことばかり問題になるのですが、そうじやないのでございまして、これは悪いことは勿論書きますけれども、自動車の運転に関し、必要な事項を記入する、こういう規定になつておりましておほめにあずかつたとか、いろいろなことが記入されるわけでございます。そこでこれも先般お答えいたしましたように、従来は通常現場で書入れるんですが、むしろそれよりも署へ来た際に書入れるということが比較的多いんじやないかと思いますが、それが今回のように、事件それ自体が非常に早く解決をする、而も免許証をその間預つておるということであれば、裁判の結果を書く、このほうが私は悪いことを書く場合には正確ではなかろうか、そういうようにいたしたい、かように思つておりますが、その際に、先ほどお話がありましたように、不逞の輩というお話がございますが、決して私どもはそういうことは考えておりませんので、なお、一線に何万という職員を使つておりますからそういう御意見も、これはまあ当然私どもとしては注意せねばなりませんから指導はいたしたいと思つております。
○羽仁五郎君 そうすると大体結果だけを免許証にお書きになる。従つて正式裁判を受けた場合には、その結果が勿論ここへ書かれるわけですが、その正式裁判を受けることを躊躇せしめるに至らしめるに足るようなそういうことは一切なさらないという意味ですね。
○説明員(後藤田正晴君) そういうわけでございます。
○羽仁五郎君 法務省のうほの方にお答え頂きたいのですが、この法律案もその一種ですけれども、こういう法律案の機会に伺つておきたいと思いますのは、公務員、特に特別公務員の憲法遵守の義務並びに人権尊重の義務というものに違反した場合の処置につきまして、従来法律その他で厳重に戒しめられていることはよく承知しているのでありますが、併し全般の感じではその公務員、特に特別公務員の憲法違反或いは人権蹂躪というものに対して十分の措置が私はされているという感じがしているというふうに言いがたいように思うのですが、その点について法務省のほうではどういうふうにお考えになつておられますか。詳しく伺えるとすれば、刑法第二十五章の或いは刑法第百九十三条、百九十四条、百九十五条などを適用せられた場合がどれほどおありになるだろうか。極めて少ないんじやないか、余りにも少な過ぎるのじやないかというように思うんですが、十分活用せられておるというお考えでありましようか。それともこれらの条文が十分に活用されていないというふうに御覧になりますか。それが第一点、第二には、更に進んで公務員或いは特別公務員などの憲法遵守、人権尊重の趣旨を徹底せられる意味において、そういうふうなことは更に徹底せられるような立法の必要があるというふうにお考えになつておられないのですか。今ので十分だというふうにお考えになつておられましようか、どうでしようか。その二点についてお教え頂きたいと思います。
○説明員(下牧武君) 私からお答えするのもどうかと存じますが、知つております限りで申上げたいと思います。この特別公務員の暴行、陵虐その他の刑法犯でございますが、これは検察庁といたしましては、従来の私の経験からいたしましても調べる場合厳密にいたしております。それでただ特別公務員の暴行、陵虐、これが非常に悪意に出たという場合は比較的少いのでございまして、まあついやり過ぎたというのが事件としては多い。ちよつと事件の数は今手許に統計を持つておりませんので、ちよつと申上げにくいと存じますが、そういう関係で事件が起きますれば、これは厳正な態度で処理いたしております。ただ外部から見ますと、同じ暴行陵虐の事件でありましても動機が先ほど申し上げたような点で斟酌すべき点がございますので、その形だけで一概に判断するわけには行かないという関係にございます。それから人権擁護の点でございますが、この点は御存じのように、人権擁護局というのがございまして、これが主になつて人権擁護の観点から積極的な宣伝啓蒙をいたしておりまして、そしてそういう事犯が起きますというと、すぐこれは現場の法務局と連絡がございまして法務局に人権擁護部というのがあつて、そこでそういう事件を処理いたしております。そこのところからそれぞれ係官が直接出て行きまして、その事情を、事実関係を調べて行く。調べた上で告発すべきものは告発する、そうして検察庁へ廻して参る。それから何と申しますか、人事上の責任を求めなければならないような場合はその旨を勧告いたしまして、大体それに応じて書面で以てやつておりますから、今までの私どものこう見ている実例を見ますと、一方書面がぶつつけられれば、それについて或る程度の懲戒処置を講ずる。或いは極端なものはもうそれ以前に、すでにそういう勧告を待たずして、自分で当該官庁が自発的に懲戒してやめさせるというようなこともいたしておりますが、そこで人権尊重のための積極的な法律というものはまだ私ども考えたことはございませんが、併し方向としてはやはり人権擁護の活動というものを積極的に推進して行くというのが方向じやなかろうか、かように考えております。
○羽仁五郎君 これは特にこの際にお願いをして十分考えて頂きたいのですが、敗戦の年でしたか、あの三月かに私は逮捕されて、警視庁に留置、留置というんでしようか、何というんでしようか、不法に監禁されていたとしか考えられないんですが、その際にも随分手荒く扱われた。私のようにまず余り自分で申上げるのは恐縮ですが、そう力のある者でもないし、取調べに当つて抵抗するとか、或いは無用な力を用いられなければお調べになれないということはないと思うんですけれども、私の志を覆そうとするなら、それは別ですが、それは随分ひどい取扱いを受けて、片目は失明するのじやないかというくらいにひどく、約二週間に亙つて真黒に顔がはれているくらいに、竹刀とか、或いは箒の柄で随分思い切つたことをなさるんです。今日私はああいうことは根絶されているというふうに信じますけれども、どうかああいうことは根絶して頂きたい。これは直接には法務省なり、検察庁なりのお持ちになつている責任も非常に多いと思いますが、その点をどうか十分に考えて従来以上の御努力を望めないものだろうかということをまず第一に伺つておきたいと思います。 それから第二には、ああいうことが八年、九年前まで行われておつたものが、今日払拭されている考えられない節がございますし、又最近そういう弊害が生じておるようにも感ずるのですが、その原因はどこにあるというふうにお考えになつておられるか。これについては根本的に御説明を願いたいのですが、そのうちの一つに、検察官が警察官と協力せられる上に、どうも正正堂々と協力を求められないで、そういう点についていろいろな点で躊躇せられる点があるのではないかというように、外部からはお察しをすることが、お察しというか、邪推をすることがあるのですが、そういうことが若しあるとすれば、どうしたらそういうことが除けるであろうか。やはり端的に申して、今日この法律案にも直接関係して来るわけですが、やはり警察官が人民を恐れないという風があります。それから人民が主権者であり、自分が公僕であるということを口の上、文章の上ではおつしやつても、実際において人民の、国民の人権を蹂躙することを何とも思わない。又その蹂躪したことがあつても、後にどういう咎めもないということが支配的ではないかというように思えるのですが、その原因が、どういうところにあるか、これに対してどういう対策をお考えになつておられるか。 それから、最後に、第三にお願いしておきたいのは、先ほどの公務員並びに特別公務員の憲法違反或いは人権侵害ということ、これ必ずしも暴行、陵虐というところまで行かなくても、それらについて憲法及び刑法その他の法規が命じているところがどの程度において守られているかということをやはり知る必要がこの際あると思いますので、先ほどの刑法百三十九条などの法規がどの程度に適用されているかという点についての統計的、或いは先日お示し下すつたような資料でも有難いと思うのですが何らかの資料をお示し願えないか、以上三点伺いたいと思います。
○説明員(下牧武君) お説のような拷問事件が行われておるなら大変なことだと存じます。それで戦前におきましてはこれは行政検束が行われておつた時分でございますが、全く絶無ということは申せられませんので、その当時の私の経験を申上げますと、警察に検察官がよく巡回して行つたものであります。そういうときにこれはまあ警察にはいやがらせみたいなことになりましたけれども、署長室に入る前に黙つて道場に行つたことがあります。そうすると、ときたま竹刀なんかを隠すこともありました。検事が来たと言つたらびつくりして隠します。そういうときには、あえてそのままずつと引下つて来て、それからあとに署長に対してまだあんなことを争つているかということで、まあ注意を与えるということで、私どもといたしましてはこれは相当そういう点は睨んでおつたつもりでありました。併しその点は或る程度検察官が妥協して大目に見て見ん振りをしておつたということがないかと申しますと、これもまあ気分の問題で、あまり露骨なことをやつておりますと、これはもう黙つておれませんから、これは十分注意いたしますし、又表面的にそういうことがありますれば何いたしましても、どうもやつたらしいなというようなにおいのする程度のときは、又それ以上特に探り、ほじくり返したというようなことはございますが、正直に申上げますとその辺のところは或る程度見逃しておつたこともございました。ただ、今日の憲法下においては到底そういうことは絶対に許されません。それから若しそういうことがありますれば、これはやはり単に人権擁護の面だけでもなく、やはり刑事事件としても取上げていい問題だと思います。原因がどこにあるかということでございますが、これは一つは私ども終戦直後見受けておりました傾向、終戦直後と申しますよりも、新刑事訴訟法ができまして、新憲法と並んで行われた当初におきましては、むしろ間々意気地がないくらいに実は私ども見ておつたのであります。もう少ししつかりしてもいいんじやないか、被疑者を取調べる場合におきましても、その点で警察のほうも大分むしろ逆に士気を鼓舞するほうに努力をされなければならん面もあつたんじやないかというふうに、一時そういう状況が見受けられたのでございます。最近におきましてどうもやや立直つたようでありますが、或いは昔のように立直り過ぎては困る。その原因がどこにあるかと言いますと、私どもが感じておりますところでは、何と言つても素質の問題でございます。それとやはり自白偏重というところが一番大きな問題じやないかと思います。自白ということも、言わないものを無理に言わそうといつたつて言うはずがございませんので、それを無理に言わそうというので無理が来ますので、やはりここはもう何と申しますか、人の問題へ帰着いたして参ります。私どもの経験から言いましても、叱り付けたり何かしても、なかなか言うもんじやございません。これは本当の子供とかなんみたいなもので、おどしのきくものなら別ですけれども、少し骨のあるものならきくものじやないのでございまして、本当に弁解がある点を十分聞いて、だまされてもいいから言う通り聞いて、そして調べて見て、違つているところはここが違つておるというふうに指摘して嘘を言えばあとからみなばれて来るということになれば、初めてその人が信頼を受けてそしてすべてのことが自由な意思から供述されるということになる。そういうことが本質でございます。そういうふうにやはり警察官、検察官の教養面からそういう風潮に持つて行くということがやはり一つの大事な点じやないかと思います。それと、これは私どもの問題じやございませんけれども、警察内部の教養訓練、素質を高めるということが私はやはり一番大事じやないか。どうもその何といいますか、あせる気持、これがやはり自分に力がないとあせるようになります。力があれば、例え嘘ということがわかつておつても、それがそのままで調べができるものでございますから、これは事件にもよりますけれども、そういう点が一番大事な点じやないか、かように考えております。それから統計資料の点は、御要求の通り整えて差出すことにいたします。
○羽仁五郎君 今の第二点ですが、何故に公務員並びに特別公務員の人権侵害が後を絶たないかという点については、私は今の御説明頂いたのですが、やはり公務員或いは特別公務員の人権侵害というものを摘発する直接の責任は検察庁におありになるんじやないかと思いますが、この刑法第百九十三条などを活用しなければならない責任があるということが十分徹底しておられるのか。まさかそういうことはあるまいと思うのですけれども、その点についてはどうでしようか。
○説明員(下牧武君) その点はやはり戦前におきましては、先ほど申上げたようなきらいがままなかつたとは申せなかつたと存じます。少くとも新憲法後におきまして、そういう観念を持つている検察官はないと私どもは見ております。又そういうことがありますと、やはり検察官としては義憤を感ずる事柄でございまして、外部より御覧になると丁度一つ穴のむじなだからというふうにとられそうでございますけれども、やはりそういう点については、割合い潔癖感を検察官というものは持つておるのでございまして、その点については御心配のないように徹底しておると私どもは考えております。
○羽仁五郎君 非常に御立派な御答弁を頂戴したのですが、それで満足すべきでありますが、なお重ねて伺つておきたいのは、やはり今のお言葉の中に一つ穴のむじなというお言葉がありましたが、私どもはその一つ穴のむじなとは考えない。併しやはり行政権の不十分な他の部分に対してとらなければならないと行動ですから、そこにやはり論理上も特に留意しなければならん点があるのじやないか、だから普通に扱つていたのじや、これらの憲法尊重、人権擁護の法規というものが適正に活用されるということを期待することがむずかしいのではないか。そこでその点について特に御配慮を頂くことができまいかという点です。御研究下さるなり、或いはそれに対する何らかの手当をお考え下さるなり、それで常に最近いろいろ問題も起つておりますが、検察庁が正義感の上に立つて働かれることを国民は非常に期待しております。併し常に又起つて来る問題は、検察庁の正義感というものが、どうかすると誤つていわゆる検察フアツシヨという非難を受けられることがある。これは又実に悲しむべきことでありまして、検察当局が国民の基本的権利の侵害というものに対しても敏感であられるという実感が国民にあれば、軽々しく検察フアツシヨという非難をすることはないと思う。そういう面からも、この際特に今問題になつております法律案というものがやはり問題になる点は、その取締りによつて交通事件を防ぐという間違つた考え方があるのじやないかという点が、この法案について問題になつておる最も主な点です。警察の方に伺つておる点数主義とか、或いは検挙主義とかいうことを根絶して欲しいということとも関連しますので、公務員及び特別公務員の人権の侵害、いやしくも人権の侵害、或いはそれに近いような行為を根絶せられるために、この際特段に御配慮を頂くことができまいかという点についていま一応お答えを伺つておきたいと思います。
○説明員(下牧武君) 先ずこの公務員、特別公務員の人権侵害事件の刑事に関する面でございますが、この点は所管の係りのほうにもよく国会の空気を伝えまして、又私どものほうでもこの法案の実施に当りまして、そういう空気のあつたことをよく伝えて、そうしてその運用に間違いのないようにいたしたい、かように考えております。その点は、只今申上げました通り会同もございますし、そういう機会に十分徹底するようにいたしたいと思います。 それから交通事件の取締りの問題でございますがこれはお説の通り取締りのための取締りということであつてはいけませんので、これは飽くまで行政措置と司法措置というものは並行して進むべきものだと存じます。ただ行政措置につきましてやはり司法的な裏付けがございませんというと、十分その目的は達せられないというのでございまして、飽くまで受身な立場に立つてそのバツクをして行くということは非常にやはり大事な面だろうと思います。そこで、それなら軽微な事件まで全部洗いざらい徹底的にやつたらどうかということに相成るかも存じませんけれども、そこは又考え方でございまして、そういう苛酷な措置はとるべきものじやなくして、やはりその場合のいわゆる行政措置と司法措置が並び並行して行くという考え方と同時に、今度は実際の運用の面において行政措置の面を考えて司法措置を加減して行くというのが、これが生きた捜査、或いは検察ということに相成るかと思うのでございます。従来の考え方からいたしますれば、或る程度こういう交通事件などという事件は一つの定型化した事件でございますから、一般事件ほどその点に深く踏み込むというのはどうかと存じますけれども、事件そのものに伴う犯罪の類型でございますが、そういうものがやはり行政措置とのバツクにおいて現われ方が定型化して参つておる。そういう定型化した形においてその点を十分考えるということは、この法案の運用におきましては、私どもといたしましても十分検察官のほうに徹底さして行きたい、かように考えております。
○説明員(後藤田正晴君) 羽仁先生の御質問の中に人権蹂躪が依然としてあとを絶たない、行われておるのじやないかというお話でございますが、これちよつと私お答えいたしておきませんと、一般に誤つた考えが流れましたら大変な問題に相成りますので、お答えをいたしておきたいと思いますが、私終戦前のことは実は私自身が戦後派の警察官でございまして知らないのでございますが、終戦後は私は新憲法の下で人権蹂躪が警察で行われておるということは私はないと、これははつきりと申上げたいと思います。もとより十数万の警察官のおる一つの集団でございまするので、不心得な警察官も勿論ございます。併しそういう場合には、先ず警察といたしましてはどこの警察にでも監察官制度がございまして、これは恐らく如何なる職場においても見られんほど内部に対しては厳しいものでございます。これが先ずそういうことに絶えず目を光らしておりましてこれはおかしいということであれば、みずからが調べるのではこれは客観性がないということで、そういう場合には検事のほうにお願いして、検事局で捜査をして頂くということで、遠慮なしに刑事事件として処理をいたします。そういうように誤りのないようにいたしておりますので、依然として終戦前と同じような印象でございましたらば、一つお取消しを願いたいと思います。
○羽仁五郎君 終戦前とは一変したということは非常に有難く伺つておくのですが、どうかそういうふうにもうああいうことは根絶したというように承知したいと固く念願します。ただ二、三ついでに関連して伺つておきたいと思いますのは、私が敗戦の年に警視庁におりましたときに、警規庁にいたのは三カ月ぐらいでしたろうか、その間に警視庁の方、今日お見えになつていないようですが警視総監が、まあ名前を申上げてもいいけれども、それは遠慮しますが、一回もその留置所に見においでになる方がないですね、それで私は高等学校のときの同級生でもあるし、その看守に警視総監に一遍ここを見に来るように言つてくれないかと言つたのだけれども、そんなこととても言えないというし見に来ないのです。一般の警察の署長がやはり留置場に留置して、留置場というのですか何というのですか、ああいう所に人を入れておくについては、その人の健康その他人権の尊重について留意しなければならんという規定があるようですけれども、現在十分にそういう規定は実行されているのでしようか、絶えず……。今監察官のお話がありましたが、直接にはその警察の直接の主人である署長がやはりあそこの、人をとめて入れておくところに入つている人が健康で、そうして侮辱されたり或いは不当に圧迫を受けていないということを監督される責任があるのじやないか。それは十分に実行されているでしようかどうでしようか、その点が第一。 それから第二は、この法務委員会で前から警察官の拳銃暴発事件については非常に敏感に調査を続けておつたのですが、一時おかげで各方面の御努力によつてそれがかなり少くなつているのですが、最近何だか又それが少しぶり返して来たような、ずい分子供を撃つて殺してしまつたというような最近の例があるのですが、これらについてどんなふうに現在なつているか。 それから第三には、戦前の例をさつき私が引いて申上げたようなところまで来てしまつては大変なんですが、この法案に関連して来る点でも、やはり警察官が交通事件の関係者に対して威圧的な態度をとられるということだと、この法案の運用という面に非常に心配が出て来るので、それで今のような点を関連して同つておきたいと思います。
○説明員(後藤田正晴君) 留置場の管理の問題につきましては、実は警察は国警といわず自治警といわず一番やかましいのが留置場の管理なのでございます。で、留置場が如何にうまく管理せられておるかということが、当該警察署のどこが一体どうなつておるかという一つの重大な実は基準になつておるのでございます。一番恐らく終戦後私は改善になつておるのは、各方面実は改善になつておりますが、留置場の管理、これは非常に私はよくなつておるのじやないか。こういうふうに考えております。これはまあ私どもみずからも努力はいたしましたけれども、何分にも占領当時一番やかましかつたのは、この留置場の管理の問題であつたのであります。で、これはもう現在となりましては殆んど習い性というくらいになりまして、非常にこれはうまく運営されておるのではないか、こういうように思います。幹部もときどき留置場だけは見廻つておるというのが私は実情だと思つております。ただ、警視総監となりますと、これはちよつと地位が高くなり過ぎますので、これは私は何ともここで警視総監、どうしておられるか申上げかねますけれども、少くとも課長或いは部長というのは留置場を見ておるということは事実であります。 それから拳銃事件の点、これは誠に申わけないことでございますが、拳銃につきましては、どこでも拳銃取扱い規程というものを作つて、そうして警察官の基礎教育、それから現任教養、これで一つの重点として拳銃の取扱いの教育が行われているのでございます。これは単に拳銃をうまくあてるというだけではないのでありまして、如加なる場合に拳銃は使うべきか。これは自己防衛以外はないのでありますが、又拳銃の平素の取扱い管理はどのように注意をすべきかといつたようなことを、これは絶えず教えておるわけであります。ただ、まま暴発等の事故を起しまして、この点は申わけなく考えておりますが、警察としては非常にこれは注意をいたしておるのでございます。 それから交通取締についてのいろいろの点でございますが、これは先般もお答えいたしましたように、将来とも私どもといたしましては警察がいいとか悪いとかいうのは、交通警察と外勤警察でございますので、特にその点は指導を加えて注意をいたして行きたい。かように考えております。
○説明員(江里口清雄君) 留置場の取扱い、留置者の取扱いでございますが、この点につきましては裁判官も非常な関心を持つておりました。それで裁判官には監獄巡視という制度がございまして、この留置場が代用監獄ということになつて、裁判官の令状に基いて未決の者が警視庁管下の警察の留置場に留置されておりますので、裁判官は毎月一名ずつこれは令状当番の裁判官が宿直するのでございますがその宿直の裁判官が一つの警察或いは二つ、毎日これは巡視して留置場の点につきましては特に注意をいたしております。ちよつと附加えて……。
○委員長(郡祐一君) ちよつと速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。先ほど江里口刑事局長から、説明をいたしました必要な経費に関する点で更に岸上最高裁刑事局長が御説明したいそうであります。
○説明員(岸上康夫君) 只今御審議を頂いております交通事件即決裁判手続法の実施に伴いまして、裁判所といたしましてこれを実施に必要な予算的措置がどうなつておるかということについて一つ補足的に申上げたいと思います。先ほど江里口刑事局長からこの交通事件即決裁判手続を全国の主要都市に実施するために裁判官が新らしく十七名の増員とそれから法廷を三十カ所増設の必要があるということを申述べましたのですが、それの経費といたしまして、裁判所のほうで一応見積りました合計が先ほど申上げましたように一億四千二百八万円ということに相成つております。ところがこの予算につきましては実は二十九年度の本予算には現在のところ計上されていないのでございまして、どうしてそうなつたかと申しますと、実はこの裁判手続の法律案が固まりまして、裁判所のほうにこういう法案を提出したいということがわかりましたときに、すでに二十九年度の予算につきまして裁判所と大蔵省との間の事務的折衝は終りまして、すでに内閣から国会に本予算案として提出する運びになつた後でございましたので、時間的な関係で二十九年度の本予算案に計上することができなかつた。まあそういう状況でございまして、そこで裁判所といたしましてはこの法案が実施されることは非常に結構だ、併しながら実際に実施するためには今申しました裁判官の増員と、それから法廷の増設はどうしても必要である。それを実施できるだけの予算的な裏付けがないと、裁判所といたしましては実際に法案は成立しても実施ができなくなる。そういうふうに感じまして、裁判所のほうでこの法案のことを知りまして、すぐに事務的には大蔵省のほうに只今申しました数字を持つて行きまして折衝はいたしております。ただ大蔵省のほうといたしましてはそういう法案にそういう予算が要るということは裁判所から申出ましたとき初めて知つた。それでは困るというようなことを一つておるのでございますが、私のほうとしては事前に知つておれば、当然二十九年度の初めの予算案に組むべきものだということを私どもは承知いたしておりますし、又そうし得たわけでありますが、今申しましたような事情でそれに間に合わなかつた。だから何かの方法で実施に間に合うように予算的な措置を考慮を願いたいということを大蔵省の事務当局のほうに現在申入れ中でございます。まあそういう事情でございますので、この予算的措置につきましては若干の何と申しますか乗り遅れのような、二十九年度本予算案に入つておれば、比較的やりやすかつたという事情はあると思われるのですが、そういう事情で止むを得ず現在大蔵省のほうに折衝をしておるという状況でございますので、予算的な措置につきましては、国会におかれましても特別の御配慮を是非お願いたいしたい、こういうふうに存じ上げております。 なお先ほど江里口刑事局長からも申しましたが、今申しました一億四千余万円の予算の概要について一、二補足いたしますと、先ず人件費とその他の物件費に分けまして、人件費が裁判官の簡易裁判所の判事、これの十七名の増員分につきまして俸給が千三百九十四万二千円、それからこれらに伴う共通経費といたしまして五十一万二千円、五十一万二千円の内容は、退官、退職手当とか共済組合の負担金とか赴任旅費というようなものでございます。これはいずれも一年分を計上いたしておりますので、若しも実施が一年に満たない場合には、それだけ二十九年度は要らない、それだけ少くていいということになります。 それからその次は物件費系統でございます。先ず施設費といたしまして、法廷三十室と、それから裁判官の十七名の判事室、及びそれに附属する廊下等の営繕費といたしまして、一億一千五百二十二万九千円という数字がございます。この法廷はいずれも簡易裁判所の法廷といたしまして一室は十八坪ということにいたしまして、計算いたしております。普通は法廷のほかに被告人の待合室といいますか、いうふうなものが要るのでありますが、これにつきましては、そういうものは予算的には予定しませんで、法廷の傍聴席で待つてもらつてやるというようなことが実際には便利だろうということで、法廷十八坪と、それに附属する廊下というものだけを法廷設備費としては計算いたしております。それから今申しました裁判官の十七名の判事室というものであります。 それからその次は法廷新設に伴う備品でありまして、これは椅子とかテーブルとかという備品であります。これが全部で法廷三十室分で千百一万円という数字でございます。それから最後に、裁判所の増加に伴う一般の庁費といたしまして百三十八万七千円ということに相成ります。で合計が最初申しました一億四千二百八万円となります。以上でございます。
○羽仁五郎君 この予算の問題については、委員長において十分お考えになつて、又あとで質問きして頂きたいと思います。 さつきからの関連の逐条に入つておるわけなんですが、第一条の「交通に関する刑事事件の迅速適正なる処理」ということで実は伺つているわけなんです。先ほど法務省或いは検察庁のほうからの御説明で、敗戦直後には一体に検察なり警察なりが非常に意気鎖沈していて、でもう少し元気を出したらどうだろうというふうに思われる点があつたということをあなたが言つた。それは言葉尻をとらえるわけではないのです。併し明治の初年ですか、谷干城の書いていたものの中に、弱き民を恐れよということを随分強く書いておられますが、その点はどうか検察庁なり法務省において検察或いは警察というものが強くやることが決してよくないのであります。むしろ弱いほうがその目的を達するのだというようにお考え下すつておることと固く信じて、別にこれはお答え頂きたいというわけではないのです。 それから只今国警のほうからのお答えの中に、これは自治警に関することですから、やはりこれも別にお答え頂きたいことではないのです。が、留置場における留置してある人の健康そのほか人権に関するということというのは第一に重要なことなので、警視総監の地位は高いのであるけれども、それについて無関心であれということではない。私毎日見に来てくれと言うのではない。三カ月もいる間に一遍も見に来ないで……、これは当時は町村さんであつたか、私は町村さんがそういう点はどういうことを言うておるかということを少し坐つて考えていたのですが、警視総監は地位が高い、地位が高ければますます人権の尊重という意識が高いはずである。三カ月に亙つて一遍も見に来ない。而も内部の実情は人権蹂躪も甚だしい、今はなくなつたと思いますが、さまざまな虫が随分現われて、シヤツは一晩に真赤になつた。私も貴重な体験をしたので、これも忘れろと言つてもなかなか無理ですから忘れることができないから申上げるのですから、その点は警視総監の地位が高いから、さつきのお言葉の言葉尻をとらえるわけではありませんから、別にお答え頂かなくても結構ですが、私の申上げておる趣旨は御了解頂けるかと思います。 第二段のさつき伺つた拳銃の件ですが、これは警察官が拳銃を携帯するようになつたのは、当時の事情においてよく御承知のように、警察予備隊もなければ、今の保安隊も全くない時代であつた。今日かなりそういういわゆる武力による装備というものは他の面においては随分充実している。今日となつて見て当時警察官が拳銃を携帯することは必要だと考えていたような理由の主なるものはなくなつているかと思うのであります。各国の警察を見ましても、警察官の武装の重いのは、その国の文明の程度の低いことを現わしているということは今更申上げるまでもない。それで私はやはり日本の警察官が拳銃を常時携帯をしておられるということは、国としては非常に恥ずべきことと思つております。それでこの点について特に交通事件に関しては、最近はいわゆる交通に直接関係せられる警察官は拳銃を持つていないようにも見受けるのですが、拳銃を警察官が現在及び今後も携帯する必要があるのか、或いはむしろこれをなくしたほうが警察の民主的な運営にとつては好ましい効果が得られるのじやないかという点についてはどんなふうにお考えになられますか。 それから第三の点で、これを繰返して申上げるのですが、この法律案の運用の際に、警察が一層民主化せられるという面の努力、又そういう措置をなさるということについて、先日来いろいろ申上げている件がありますが、それらについて、お答え頂けるものがあれば、やはりこの法律案の審議の過程で伺つて行つたほうがよいと思うのです。その主なるものの第一はやはり先日申上げたようなこの点数主義、検挙主義の根絶ということです。そして警察官の資格というのですか、その警察官の能力というものを判定せられるのにもつと近代的な方法をおとりになつて頂けないかという点です。それでこの点数制度というものいわゆるメリットとしておるものと、それから昔から日本にある点数主義というものとは非常に違いますから、その面で特にこの間から伺つているのは、点数をどういう段階でつけるかということです。さつきも免許証に正式に裁判が終らないというと書き入れないので、裁判の結果が書入れられるだけだということで、最終的な結果によつてメリットというか、その警察官の能力或いは素質、資格というものが判定せられれば結構なんですが、余り早い段階でその点数がとられますと非常な弊害が多いのじやないか。これは点数制度というよりも、点数主義、検挙主義というのは、私どもの申上げていることはよくおわかりだと思いますが、それを根絶せられる意思がおありになるかどうか。それからそのいろいろな警察官の成績をとられる上に従来のやり方をお改めになるという点がないだろうかという点ですね、それを伺つておければ有難いと思います。
○説明員(後藤田正晴君) 警察官の武装の問題でございますが、これはまあ私からここでお答えするのも果して適当かどうか私疑問に思うのですが、私個人の考えで申上げたいと思いますので、その点ちよつと御了承を賜わりたいと思います。大体武装というものは私は相対的なものである。で、相手方の……相手方と申しますとあれですが、犯罪者の犯罪手段が兇悪になれば勢い警察の武装も置くなつて来る。今度は逆に警察官の武装が重くなつて来ると犯罪者の犯罪手段も兇悪になる、こういう関係に立つのではないか、こう思うのです。従つて警察の武装というものも、これはよほど気を付けてやらんといかんのではないか。私自身の担当いたしておりますのが警ら交通という名前の通りでありますが、そのほかに実は集団警備実施と申しますか、暴動鎮圧が私どもの所管になつておるのでありますが、殊にこういう場合においても私はそう言えるのじやないか。従つて警察の武装というものは、理想としてはできるだけしないほうがいいということを私は考えておるのでございます。従つて警察官の個人用の携帯武器と同時に警察部隊……暴動鎮圧というのは警察の部隊を使いますが、警察の部隊装備というものも私はでき得る限りやらない。やはり警察というものは、あのイギリスの映画でありましたか、ガス燈といいましたか、映画がありましたが、あの警察官の気魂といいますか、これでなければ私はいかんものであろうと、こういうように実は考えておるのでございます。ただまあ終戦後のあの非常な混乱のさ中で、とてもこれじや警察官が勤務ができないというような関係もございまして、個人装備として警察の拳銃というものが配当になつたわけでございますが、これらについても私は相当只今申したような見地から検討を加えるべきものではなかろうか、かように考えております。殊に私の担当いたしております交通警察の面では、私は交通警察官は夜間、深夜の勤務、これは自己防衛のために場合によれば要るのではなかろうか。と申しますのは、交通警察官が単に交通のみでなしに、犯罪捜査の面まで勤務をする場合が実は深夜に多いのでございますから、そういう観点でこれは別に考えねばならんかと思いますが、昼の交通警察官はむしろ私は拳銃よりは、あの拳銃型になつております写真機があるのでございます。これは一つの写真機で七十枚くらい撮れますが、こういう科学的な証拠を残すといつたようなもののほうがむしろいいのではないかというように考えておりますが、これは予算が伴いますし、なかなか一概にここで予算を出すというわけには私は参らんと思いますが、まだ根本の気持は、武器というものは相対的なもので、警察というものは素手で向つて行くんだというこのやり方でなければ私は本物ではない、こういうように考えておるのでございます。 それから警察の点数主義の問題ですが、これはこの間から申上げておりますように、どうもいつまで経ちましても羽仁先生と意見がなかなか交叉しない。並行線ばかりを歩んでおつて甚だ恐縮でありますが、実施いたしておりますのは、先ほど先生がおつしやいますようなメリツト・システムとして実はやつておるのであります。これは駐留軍が非常にやかましくてそもそも始つたものでありますが、まだ一部の都市警察では残つておりますが、これはやはり発足そのものがメリツト・システムとして発足し、現在もそういう運用をやつておりますので、根絶させなければならんとおつしやるその点取主義、これは私は同意見でございます。やはり警察の取締りというものは、何と言うか、合理的に判断をして、成るほどという一般世人の納得ずくでの取締りでなければ、これは私はものにならん。こういうふうに考えておりますので、その点においては先生と一つも意見の差はないのでありますが、ただ、今のやつております制度は、これはいわゆるメリツトの二つのやり方として発足し、現にその実施をせられておるという点は一つ御了承を賜わりたいと思います。ただ、これをいつまでやるかという問題でありますが、これは自治体がやつておるのであります。私のほうはやつていないのでありますが、交通警察官については勿論こういうのはございません。外勤警察官についてはあるわけでありますが、これはいわゆるアメリカ的な警ら隊という組織を警察に導入した場合に初めて意味をなす制度なんであります。ところがこれを完全にアメリカのおつしやる通りにやつてみたのが大阪警視庁、東京警視庁はややレジスタンスがありまして、まあ半々程度というやり方をやつております。ところが大阪は、条約が発効しまして間もなく少し改めたようでありますが、そういうことで今全国必ずしも一律に行つておりません。そこでこのパトロールの警ら隊、こういう純粋なアメリカ式な警ら隊というのは大阪がやめましたので純粋なものはありません。東京警視庁のほうも二、三日前の新聞に出ておりますが、交番が若干復活しつつあります。私どもが申します張り付け勤務、これになりますと、このメリツトのやり方は私は殆んど意味がないのではないか、非常に意味が薄くなるのではないか、かように考えております。従つて私は大阪といい、東京といい、その他大自治体で相当やつておると思いますが、これらは私は交番制度とパトロールの警ら隊制度との噛み合せをどう将来考えて行くかということによつて逐次変つて行くのではないか、こういうように考えております。
○委員長(郡祐一君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(郡祐一君) 速記を始めて。本法案につきましては、法案自身については審議の程度はかなり進んでおると存じますが、なおこれを受け入れます設備等につきまして、政府に更に明かにしておくべき問題があるように存じまするので、それらの点を次回において明かにいたし、又委員長の希望といたしましては、それらの点が明かになりましたならば、可及的速かに採決に入りたいと存じますが、委員の各位もさよう御了承願いたいと存じます。 本日はこの程度を以て散会いたします。 午後四時五十五分散会