文部委員会 第35号
- 発言数
- 246 件
- 登壇者
- 14 名
- 会派数
- 7
- 開催日
- 1954/05/20
会議録
○委員長(川村松助君) 只今から文部委員会を開会いたします。 最初にへき地教育振興法案を議題といたします。五月十八日に本法案の提案理由の説明を聴取いたしております。質疑は今日が初めてでございます。総括、逐条一括して質疑をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(川村松助君) 御異議がなければ逐次御発言を願いたいと思います。
○木村守江君 新らしい憲法の下に、教育の機会均等という狙いの下に、この法案を提出されましたことは誠に喜ばしい次第であると思います。併しながら僻地の教育の最も考えなければならないことは、これは僻地の、殊に積雪寒冷地帯等における僻地の季節分校の問題であります。僻地に参つてみますと、冬季間の長い間、季節分校というものを設けられまして、これは恐らくは昔の寺子屋にも劣るような所で一人の先生で一年から六年まで、殊に新制中学校の生徒が一年から三年まで一人の先生で教わつておる状態が非常に多いわけです。小学校のいわゆる学課担任の教授においては、それほどではない、なくもないのでしようが、まあ考えられるとしても、中学校の学課担任の教導ですね、冬季間の長い間、一人の先生が一年から三年まで持つて教育しておるというような状態は、これは新制中学校の設立趣旨にも反するところの最も考えなければならん状態であると思うのです。そういう点から考えまして、これはどうしても僻地教育の大きな問題の解消は、先ず第一に季節分校、特に新制中学校の季節分校による一年から三年まで同一先生、一人の先生によつて長い間教育されておるというような状態を解消しなければいけないと思うのであります。ところが、このへき地教育振興法ができて参りましても、又本年度の文部省の僻地に関する予算を見ましても、これに対して考慮しておる点がないように思いますが、当局はこれに対してどういうようなお考えを持つておりますか。又本年度の予算の中でどういうふうにこの問題を解決して僻地教育の振興を図ろうと思われますか、ちよつとお聞きいたしたい。
○政府委員(稲田清助君) 只今のお話、誠に御尤もでございまして、参議院の御決議もございまして、文部省といたしましても、この頃特にこの僻地教育の振興という点につきましては、充実を念願いたして参つて来ておるわけでありますけれども、只今御審議願いました予算等は僻地教育振興について〕 ましては、いわば一歩を進めただけであり、将来充実の基礎を作つたに過ぎない次第でございまして、御指摘のような点につきましては、まだ十分でないことを遺憾と考えております。差当り只今の僻地における中学校の学課担任制度に即する教授力の充実というような点でございますけれども、これはまあ文部省といたしましても、取りあえずこの単級複式教育につきましての指導書を作り或いは又研究会を催し、教育内容の改善、充実ということを考えますと共に 特別にこの僻地に対しまする教材等につきましても、まあ調査、いたしておるような次第でございます。更には又予算にございまするように、特別のこの教員、養成施設も設けておるようなわけで、これといささかながらこの僻地における勤務手当或いは単級複式手当を増額したというようなこと等を総合いたしまして、多少でも有力な教員を僻地に招致したいということに一歩を進めつつあります。この点につきましてはお言葉に従つて十分今後努力いたしたいと考えておりま
○木村守江君 只今今年度の予算並びにこの法案によつてはまあ十分なことはできない、私は十分というよりも、只今私が申上げたことについてはちつとも織込まれていないということのほうが当つているのじやないかと思うのでありまして、これは勿論単級複式のいろいろな教育の仕方をして教育する方法があるでしようが、新制中学校の教育には一人の先生が、これは長い間ですからね、長い間殆んど閉じ込められまして交通が遮断されておるのです。そうしてその同じ先生が一年から三年までまあいろいろなことを、中学校に必要な教育をしておるというような状態では、これはどうしても一番先に取上げなければならない問題であると思うのであります。そばで私昨年の夏、僻地のたくさんの学校を見たのですが、或る学校では二百名も寄宿生を置くのです。学校に参りましたところが、畳が非常にたくさん片付けてあるので、これは一体どうするのだと言つたら、冬季間にここに二百名の寄宿生があるのだ、そうしていわゆる新制中学校の季節分校というものをやめて、ここで一つの学校で教育するのだというような方途を講じておるということです。やはりそういうふうな寄宿制度にするということが、これはあらゆる方面から考えて、教育の面においてもいいと思いますので、どうしても季節分校の解消は、これはやはり新制中学校には寄宿施設の設備を充実する、そうしてこの寄宿舎の設置に対しては国庫が応分の助成をするというような方向でなければ解消できない問題じやないかと思うのであります。そういう点に対してどういうような考えを持つておられますか。
○政府委員(稲田清助君) 御指摘のごとく、冬季積雪の地方におきますると、どうしてもこれは冬季の分教場ということを第一に考えまして、又分教場ということを前提といたしまして宿舎を伴わせるとか、その他のことを考えなければならんかと思います。或いは又別の、例えば山間部であるとか、暖い地方における海辺、或いは離島等におきましては、これはむしろ何か交通機関のほうを作りまして、学校は成るべく大きな学校にまとめることができれば、そのほうが教育上の理想じやないかと思います。それらの点につきましては、何分にもまだ全国的の詳細に亘つて、又各方面から見ました調査が十分でないのでありまして、この法律にも文部省としては十分いろいろな調査をするというような条項もございますので、我々といたしましてはその辺を十分調査いたしまして、只今御指摘のありましたような積雪地帯におきましては、積雪地帯に即する分教場或いは寄宿舎というようなものを後年度の予算等におきまして十分考慮いたしたいと考えます。
○松原一彦君 結構な法案だと思います。成るべく一日も早く執行せられるように希望いたしますが、大変親切に考えて頂いておるようでありますが、僻地で一番困るのは、今もお話が出ておりますが、教員に人を得ないということだろうと思うのです。どうしても行きたがりませんので、それには私の知つておる実例としては、村で秀才を村費によつて養成するということが一番確実なように思います。その村の出身者で家庭もある次男か三男で、将来教育者になつてもいいといつたような極く頭のいい子供をば、小学校時代から探して中学校、高等学校、学芸大学へとやつて、高度の教育を前以て委託するのだということが計画的に行われますというと、非常に結果がいいように聞いておるのでありますが、そういう場合における何か御考慮はありましようか。ここにありますのは短期の養成機関を持つということだそうでございますが、短期の養成機関以外に何か私の希望するような事実か、或いはこれに対する考慮がございましようか、承わつておきたいと思うのであります。
○政府委員(稲田清助君) お話のように、地方におきまして只今御指摘がありましたような奨学金を持つておりますのは、例えば青森とか北海道あたりで相当行われておるように伺つておりますが、国といたしましては、御承知のように例の育英会の教育奨学生の特別の枠、これ以外にないのであります。教員となるべき人に対しまして、ほかよりも大きなパーセンテージを当てまして貸付けて、その人たちが義務教育学校に就職いたします限りにおきましては猶予し、遂には免除する、このこと以外にはないのであります。まあお話のような点につきましては、養成機関それ自身が新らしい免許法改正に伴いまして或る年を経過いたしますれば、それは二年以上のものになることになるわけでありまして、そうなりますれば一般の一年課程と同じように奨学という問題も取扱わなければならんと考えております。
○松原一彦君 今の一年課程の北海道等にある短期の養成機関に対しては育英資金のほうは出ますか出ませんか。
○政府委員(稲田清助君) 差当りはこれはまだいわゆる育英会の対象といたします学校でない養成所でありますので、出しておりません。
○松原一彦君 これもちよつと記憶にないから伺うのですが、教員養成に対する育英資金は普通の学生よりもどのくらい率が高いのか、そこに何かありましたらお知らせ願いたい。
○政府委員(稲田清助君) 普通の場合でございますると二〇%でございますけれども、これは六〇%になつております。つまり全体の学生は普通は三割しか受けられませんけれども、この学生のほうは六割受けられる、こういうことになつております。
○高田なほ子君 大臣がのちほどおいでになる御様子ですから、事務的な方面をちよつと伺わして頂きたい。その前にへき地の教育振興法を審議するに当つて僻地の全貌ということについて私たちが把握していないということは審議の上に非常に手落ちがあつたように思うので、今文部省がへき地教育振興法を出されるに当つて、日本の僻地教育のこれの対象となつている学校或いは学級、そういうものの全貌を一応ここで概数的で結構でありますから、お示しを願いたいと思います。
○政府委員(稲田清助君) 最初に学校数を小学校、中学校の別で申上げたいと存じます。私どもが僻地教育の学校として考えております数は小学校においては四千九百五十八校、それから中学校が二千百一校、合計七千六十校でございます。その内訳を申上げますれば本校が小学校は、二千九百六十七、中学校は本校が十四百一、合計四千三百六十八校、それから分校が小学校が千八百六十、中学校が六百二十六、合計二千四百八十八、それから季節分校が小学校百三十一、それから中学校が七十五、合計二百六、こういう恰好になつております。生徒数といたしましては小学校が四十八万六千九百六人、それから中学校のほうが十九万八千七百四十三人、合計六十八万五千六百四十九人、こういうような数字でございます。
○高田なほ子君 六十八万有余の児童、それから学校数にしても七千六十校に及ぶ極めて多くの対象になつておるようでありますが、この対象に対して文部省は当初二十九年度の概算要求として僻地教育振興に関する予算を要求せられました。この要求されたものに対して最終的に決定になつたものは、当初文部省が意図しているものとはかなり違つた形になつて来ておるのではないかと思いますが、念のため二十九年度概算要求した即ち二十八年の九月当初に要求されたその形と最終的の結果としての予算上の数字と、その数字かられたところの当初の文部省の計画と非常に違つて来た点を一応ここで御説明願いたいと思う。
○政府委員(稲田清助君) 当初要求の数字を只今手許に持つておりませんので、これは取寄せまして、お答えいたしたいと思います。
○高田なほ子君 現在の……。
○政府委員(稲田清助君) 御審議になりました予算は、まあ第一は特殊勤務手当でございます。これは一億五千二百九十六万三千円でございまして、大体これは昨年の基準よりも三分の一が出た増額してお認め頂いております。それから第二が、只今申上げました一億五千二百九十六万二千円はこれは実支出額でございますから、これは負担金となりまして、これの二分の一が国庫に計上せられるわけでございます。それからその次は僻地教員の宿舎の建設費でございます。これは二十八年度とほぼ同様でございまして、百二十三戸の宿舎を四分の一国庫補助で実施いたすわけでありまして、円の予算といたしましては一千六十二万四千円が計上されております。その次は僻地学校の集会室でございまして、これは今年が初めての計画でございます。三十九年度計画といたしまして七千十三坪、これは一坪当り二万七千七百円の単価で建築いたしまして、国旗補助は二分の一計上します。約一億弱でありますが、一億円計上せられております。それからその次は僻地の教員養成施設でございます。これは一分の一補助でございますが、前年に引続きまして全国十一カ所の養成施設を目標といたしまして、国庫補助として四百三十一万六千円が計上せられております。そのほか極く小さい費用でございますけれども、僻地教育研究協議会の費用といたしまして、これは新らしい費用でございますが二十五万二千円、それから各種の手引書、参考資料を作成いたします、僻地の教育の資料にいたしますのですが、これが六十三万円、それから僻地教育研究指定校、これも新らしい仕事でございますが、二十一校ばかり研究指定校に指定いたします。これが八十六万五千円、これぐらいの費用でございます。
○高田なほ子君 いろいろ予算を上げられておるようでございますが、その予算の大部分を占めるものが教職員の場特殊勤務手当或いは教員の住宅の施設と、誠にこれは当を得たものであると思うのでございます。併しながら私どもとしては、予算上からこういう手当が一応出されたのではないかと思うのでありますが、北から南にかけて山脈が縦走している日本の特殊的の地勢から見ましても、僻地教育というのは六・三制を完備する上においては特に重視しなければならない、六・三制完備の一環として重要な問題である。ただ単に僻地教育の振興というような、理科教育の振興とかその他の振興とは非常に根本的に意味の違つている私は振興だと思う。国としては六・三制完備の一環としてこれを取上げなければならない問題でありますから、今いろいろ予算上の御説明がございましたが、私としてはここに一応特勤手当とか教員の住宅の建設とか集会室とかいうようなものとは別個にどういう計画を一体この際文部省はお持ちになつてその計画の一環としてこういうことが始められているのかということについて、不幸にして我々はその全貌を知ることができない。どうか一つ六・三制の一環として重要な教育政策でありますから、ここで計画の全貌について、これは予算を抜きにして全貌についてお話を願いたいと思います。
○政府委員(稲田清助君) お話の点は各般に亘るわけでありますけれども、第一の目標といたしましては、優秀教員を招致する点にあろうと思うのであります。この点につきましては、特殊勤務地手当、単級複式手当というようなものを適正基準まで充実するということ、待遇を充実するということが第一であろうと思います。更に教員の住宅状況も只今の予算程度ではまだ十分ないと思いますので、更に補助によつて住宅を造るなり或いは斡旋するなりいたすようなことも必要である。又教員に対します各種厚生施設等も特別に考えなければならんと思います。同時に新進気鋭の先生を養成し、招致するというような面におきまして、更に教員養成というような臨時施設というものを拡充しなければならんと思います。こういうような養成と、それから待遇というような点におきまして、いい教員を招致するということが先ず第であろうと思います。その次にはやはり僻地という特別な地域における教育の内容充実でございます。単級複式の研究であるとか、僻地における特別な視覚、聴覚教材を集めるとかいうような教育計画、教育方法或いは教材というような点につきましても十分科学的に研究すると共に、物的に援助、助成しなければならんと考えております。それから同時に、こういう僻地におられる先生がたが一般の研修を受けるというような点において随分不便であろうと思いますので、通信教育を充実するとか、或いは研究協議会、講習会に出る旅費を十分支給するとかいうような点も教育向上という面におきましては必要だろうと思います。いま一つは児童、生徒の通学の困難除去という問題だろうと思います。先ほど御指摘がありましたような分教場とか或いは寄宿舎とかこれを整備するのも地域においては必要だと思います。成る地域におきましては、スクール・バスであるとか、或いは船であるとか、或いは冬季に雪をラッセルするとか、そういう通学に便利な方法を考えるということも一助であろうと思います。なお児童、生徒或いは先生もそうでありますけれども、一般に健康管理、医療が普及していない地域でございますから、教育上からもそういう面について一段と施設しなければならないと考えております。
○高田なほ子君 誠に御尤もな計画でありますが、私は今発表された計画と同時に施設の改善ということが目下の急務ではないかと思う。優秀な先生をそこに招致するためには、各般の待遇上親切な取扱ということは当然考えなければならないのでありますが、他聞ではございますが、僻地における校舎施設というものが如何に貧困であるかということ、これは勿論六・三制管理、施設の中にそれは含まれておると思うのでありますが、なかんづく僻地教育の振興のためには校舎、施設の改善、充実ということが私は重く取上げられなければならないのではないか。僻地におられる先生のこの心がまえというものは、私どもが折にふれお話合いをし、又そのお心持に触れるたびに私自体が反省させられるほど教職に対して、教育活動に対して非常に熱心であります。この熱心な先生がたの能力を更に十二分に発揮させるために必要なのは勿論待遇であるが、その教育活動の直接の国として考えなければならない計画というものは、施設それの私は充実でないか、こういうふうに思うわけであります。この点について文部省は教育内容のほかに僻地に対する施設の充実、これについて具体的にどういうようなことをお考えになり又しようとしておられるのか、それを伺いたい。
○政府委員(稲田清助君) この校舎関係の施設といたしましては、本年度の新らしい事業といたしまして、先ほども申上げましたように、僻地における集会室の建築に対する補助といたしまして一億円を計上いたしまして二分の一を助成することにいたしておるわけであります。これによりまして差当り二百校或いは、二百五十校程度、こういう集会室ができるのではないか。この集会室は体操場としても使われますし、又音楽室としても、或いは共通の講堂としても使われますと共に、一面社会教育といたしまして公民館、図書館等の施設としても利用する、こういう考えでやつておるわけであります。只今御指摘になりました教室それ自身という問題も勿論考うべきでありまして、これは冬季積雪地方におきましてはむしろ分散いたしまして分教場、得宿舎を伴う小さいものを造るなり、或いは又その他の地方におきましては教育的見地から見まして、交通関係の援助が得られるならば成るべくまとめて大きい学校を造る。そういうような具体的な状況をよく地方々々に即しまして総合的、科学的な検討の上に将来そういう問題を考究すべきだと考えております。
○高田なほ子君 僻地の学校施設というものが重大であるということは文部省も当然御存じになつておるので、集会室というような新らしい試みを打立てられたと思うのでありますが、僻地における校舎の老朽というのは、これは常識になつておる。実にこれはもう惨憺たる状況を呈しております。岐阜県の古城郡あたりには、文部省はお調べに行つておられるのかどうかわかりませんですが、実にお話にならない、ああいう老朽校舎の風も雨も雪も吹き込むようなバラック以上のぼろ校舎の内で子供が勉強しておるということはこれはもう人道的に見ても許されぬことだと思う。東北における僻地においてもその大部分は老朽校舎であります。現在文部省が老朽校舎として指摘されておるものが相当の数に上つております。そこで僻地それから平地の割合というものは多分計算されておると思うのでありますが、僻地で占められておる老朽校舎のパーセンテージはどのくらいになつておりますか。
○政府委員(稲田清助君) 僻地につきまして老朽校舎が多いということは私ども想像いたしますけれども、現実に余り地方から老朽校舎補助、要求が出てないそうでございます。今パーセンテージとおつしやるほど私どもとしてまとまつた資料は持ち合せておりませんことを遺憾といたします。
○高田なほ子君 誠に重大な御答弁です。これこそが僻地教育の実情を物語るものであつて、貧困な僻地の農村のこのやりくりというものは、まるで火の車のようなやりくりでございます。特に川村委員長におかれましては岩手県の御出身であり、岩手県における僻地の老朽校舎の実情というものは、これは誠にやはり大変なものだろうと思う。なぜその要求が出ていないかということは、今言つたように僻地の農村の財政それ自体が生活の貧困と共に貧困であるからこそ老朽校舎を改築するための要求が出ておらない。これを要求が出ておらないからといつて放置しておくところに、この問題の解決を遅らせる最も大きな私は原因があると思う。幸いにここに大臣も来ておられますが、僻地における貧困農村、これの老朽校舎について国が全額補助というくらいまでの枠を外した手を延べなければ、この僻地における学校施設というものは遂に陥没した谷間から遣い上ることのできない状況に追込まれると思うのですが、この点について事務当局並びに大臣の御見解などを聞かして頂きたい。
○政府委員(稲田清助君) 先ほど他にもお答え申上げましたように、現在といたしましてはこの僻地振興につきまして第一歩を踏み出した程度でございまして、私どもといたしまして、決してこれを以て全部を蔽うた予算ではないことは重々承知いたしております。只今の御指摘の点につきましても、我我といたしましては、この法律が示しておりますように、文部省としては十分その実情について調査をして資料を持たなければならんとある条章によりまして、今後篤と調査を遂げ、僻地教育の実際に即応する施設を将来考えて参りたいと思います。
○高田なほ子君 そうすると、文部省のほうの資料というものも今集めつつあると、これはまあ御尤ものお話でありますが、それでは、今御説明下さいましたこの校舎関係の施設の一環として、集会室を今回予算で二百校乃至二百五十校設けると、こういうわけでありますが、それは大体何年計画ぐらいでこれを完了するというおつもりになつておりますのか、それを承わりたい。
○政府委員(稲田清助君) これは全体を見通しまして、その何分の一を今年度予算として一億計上したという計算のしかたではなくて、まあ大よそその二百校乃至二百五十校程度を作るというようなことから出発したわけでございまして、これは今後僻地における他の調査と関連して十分調査いたしまして、或るところには集会室、或るところには分教場、宿舎というふうに、地方地方に即した状況に充実して参りたいと考えております。
○高田なほ子君 その次に僻地における学童の体位の問題でありますが、僻地における学童の体位について、文部省はどういう調査をされ、又資料をお集めになつておられますか、それをお伺いいたします。非常に平地における場合よりも低くなつておると思いますが……。
○政府委員(稲田清助君) その点も誠にまだ至つていないのでありますが、特別に僻地だけを抜き出しました体位の状況の調査はまだまとめてないわけでございます。この点につきましては、十分一つ今後早急に調査いたしたいと思つております。
○高田なほ子君 僻地における児童の体位の問題は、僻地の生活水準の向上と共に、特にこれは取上げなければならない問題です。東北の或る僻地に参りますと、あなたのほうは御承知ですかどうかわかりませんが、蛋白資源が乏しいために、おたまじやくしを春にとつて、それを乾して秋に大根や何かと一緒に入れて食べるところがあるのです。そういうところの住民は、大体において炭焼きをしたり、薪を伐つたりしておる。これが非常に多いというわけではありませんけれども、東北のあの阿武隈山脈から北上山脈の縦走しておるところの山間僻地の住民の生活というものは、ほぼこれに匹敵しておる。そこにおる児童の食生活というものは、もうお話にならない。こういうところに文部省が手を差し延べるならば、教育二法案というような悪法案を出しても、若干これは罪の償いになるかも知れないが、今お伺いすると、僻地における児童の体位の状況すらもまだ調べられておらない。誠にこれは遺憾極りないことと存じます。これは私が指摘するまでもなく、僻地における学童給食の対策はどのように進められておりまするのか、一応ここで以て計画並びに現在実施されておる状況について明らかにして頂きたい。
○政府委員(稲田清助君) 学校給食といたしましては、一般義務課程の児童に対しまする給食と同じ行き方で行なつておるだけでありまして、特別に僻地という問題につきまして、給食に関しますることをまだ厚くやつておる事実はないのでございます。
○高田なほ子君 聞けば聞くほど私はもう慨嘆に堪えない。そこで、このたび僻地教育研究の指定校を若干作るように先ほど御説明がありました。私はこういう考え方については、決して反対をするものではありません。併しながら、今日の文部行政の中で私が批判しなければならないのは、何々指定校、何々指定校、何々指定校、そういう指定校を作つて、あたかもそれに非常に熱心であるようなカムフラージユ、これは意地の悪い言い方でありますが、するような傾向が私はあると思う。この指定校を作ることも結構でありますが、現在オルガン一つ買えない、電気一つ引かれない、又ポータブル一つ買えない、こういうような僻地の学級が至るところにあるにかかわらず、二、三の研究指定校を作つて、それに重点的に費用をつけて、それで何になりますか。私は研究をするということそのこと自体に吝かではないけれども、そのことに目を奪わしめて、本来の今陥没しておるものを一校でも一学級でも引上げようとする熱意というものが見えないということを非常に遺憾に思うのです。それはまあ遺憾に思うだけのことになつてしまいますが、最後に、大臣がお見えになられましたので、大臣に一、二点だけ根本的な問題をお尋ねしたいと思います。 私がお尋ねいたしますことは、今度新らしく文部省が僻地教育の振興に対して本格的にこれを取上げて予算も組み、又法案も出す、このことについては非常に私は了とするものでございます。併しながら、僻地振興ということになると、何か特別な理科教育振興とか、何々教育振興とかいうようなものと同じような振興法案の性格に考えられるのでありますが、私はそういうふうに受取つてはならないと思う。これはただ単なる一教科の振興というものではなくして、日本の六・三制を完備しなければならないという文教政策上の欠陥が図らずも僻地教育の破綻ということになつて現われて来たと思う。これは明らかに六・三制完備に対する文教政策の貧困から来たところの民衆の抗議に対するこれは一つの申訳的な法律で、誠にこういう法律が出たことは申訳のないことだという考え方だと私は思つておる。この僻地教育振興に対して、大臣は六・三制の一環とお考えになつておられるのか、或いはそれを別個に取上げてこの陥没地帯を伸ばして行こうという方策をとつて行こうとなさるのか、これは誠に重大な根本問題でありますから、この際大臣にお尋ねしたい。
○国務大臣(大達茂雄君) 御指摘の通り、従来僻地における学校施設その他教育施設におきましては、非常に遺憾な点が多々あつた。これは結局私の考えでありますが、一般に一律に、特に僻地というものについて特別な扱いを比較的してなくて、一律な扱いをされております関係上、どうしてもこの僻地は、いわゆる離島或いは山村というようなことで、財政力が非常に弱いのでありますから一般の一律なみなことにしておくというと、どうしてもそこは不行届にならざるを得ない。この僻地教育の振興法は、その点から見て、僻地というものに対して特別な考えを持つて、できるならばほかの地域について行ける程度のことをしたい、こういう考え方であります。当り前の一律な原則に従えば、どうしてもそこはほかから遅れてしまうのですから、例えば従来教材費を配付する、或いは学校の教職員の数の配当におきましても、どうしても学生、生徒、児童の数によつてこれを割付けて行く配付して行くということになるので、その点からだけでも僻地におきましては非常に不利益になる。むしろ大都市のような、一つの学校に三千人も子供を容れているというところであれば、それに応じて教材費を割当てる、或いは先生を配当するということになれば、これは楽な経営ができるわけでありますが、三十五人とか四十人しかいないそういうところで、一学級編成しなければならんというようなところにおきましては、児童数によつて経費を割当てては、これは立行かない。殊に僻地村自体が非常に財政的に弱いのでありますから、どうしても立遅れをするのは当り前であろうと思います。でありますからして、このへき地教育振興法といいますか、この法律を成立させて頂いて、それを契機として、今後予算の面におきましても、この僻地に対しては特別な考慮をして、そうして何とかできるだけほかの地域に追つついて、少くともついて歩ける程度にいたしたい、こういうのが主眼であります。同時に又自治庁あたりのする交付税といいますか、平衡交付金等の財政計画の配当におきましても、従来のように、ただ理論学級といいますか、五十人を一学級とし、それに対して何人配当するというようなことでなしに、やはり実際の学級数、そういうものに応じて財政計画を組み、又或いは基準需要ですか、というようなものを算定して頂くように、折角自治庁あたりとも相談をしておるわけであります。ただ何と申しましても、これは今お話になりましたように、六・三制というものが所期の効果を、目的を達しまするように、これが一番の目標であろうと思います。山村僻地においてはどうしてもこれはついて行けないのでありますから、ほかと比べて特別な、特色のあるものをするということでないと、やはり全般的に六・三制というものが全国各地に亘つて所期の目的に一歩でも進めて行く、教育の機会均等と申しますか、そういうことにいたしたいというのが主眼であります。これは先の特別国会におきましても、あれは衆参両院とも特別の決議があつたかと思います。実はさような点に鑑みましても、この二十九年度におきましては、ひとりこれは学校教育というだけでなしに、僻地における一般の社会教育といいますか、一般の文化教養の点からもこれを総合的に、実はもつとはつきりした計画を進めて参りたいということで、折角計画をし、又所要の予算もこれによつて見積つて見たのでありますけれども、遺憾ながら私どもは希望することには非常に遠いような実情にならざるを得ない。衆議院において予算の修正がありまして、その際この点にお考えになつたことと思いますが、当初の計上予算は極めて微々たるものであり、実はへき地教育振興法を出すということもの予算裏付けがないのに、絵に描いた餅のようなものをただ出しても、責任から言つても甚だ忸怩たる点がありますので、この法律案を出すということについても、実は多少私実際躊躇をいたしたのでありますが、幸いこの乏しい予算の中で修正によつて、一億を増額修正をして頂くという折角の国会側における熱意もありますし、やはりその意味でへき地教育の振興法というものを法律の形で出しまして、そうして今後僻地教育の振興のこれを一つ契機といたしたい。御指摘の通り従来は僻地教育に対してやむを得ない点もあつたと思いますけれども、又僻地自体がお話のように生活程度も非常に低いし、又財政的に団体としては勿論、そこの民衆としても非常に経済的に恵まれておらんという実情でありますから、学校教育の面だけでなしに、いろいろな面において取残されておる形であります。私どもとしては少くとも学校教育の面及び社会教育も含めてでありますが、教育の面においてこれを何とかほかの地域のあとへついて歩けるようにしたいということで、増額の修正を頂きましたので、国会側の熱意を持つておられることも十分わかるのでありますから、それに呼応してこれを契機として、今後、今までは実は余り手をつけてないのでありますが、今後僻地教育の振興ということに努力する第一歩を踏み出す意味として実は多少躊躇しておりましたこのへき地教育振興法というものを提案をして、御審議を願つておるわけであります。要は今後に期待をかけておるわけであります。これは学校教育の面におきましては、六・三制を十分所期の効果を挙げるということが中心であります。併しこれは山間僻地でラジオもあつたりなかつたりでありましようから、そういう点についても今後十分できるだけの配慮をいたして参りたい、こう思つております。
○高田なほ子君 大臣の御親切な御答弁でほぼ意図されておるところが了承されるわけであります。併し、顧みて六・三制の完備に当つて、大部分においてはやはり都市中心主義になつて来たようです。つまり輿論の高いところの都市のほうが早く、戦災の復旧にしても、或いは天災の、自然の破壊にしても早く直るけれども、輿論のないところは常に放置されがちである。而も六・三制の中ではやはり今も申したように、六・三制としてこの僻地教育の振興ということは取上げて行かなければならない、私は強くこれを主張する。大臣はやはりこれは特に取上げてやるんだ、こういうお気持は十分わかるんです。放り投げられておつたものをほかのものと同じ程度まで引上げるために特に手当をするのだ、こういう気持は私十分わかります。併しながら今後の日本の再軍備政策、MSA協定を受容れた日本が今後軍事的な義務を負つて、来年度には更に陸軍、空軍、海軍に、三軍調整してこれを増強しなければならない義務を負つて来ましたから、当然日本の予算は相当にこの軍備のために費用を食わなければなりますまい。こうなつて参りますと、特に取上げられておるところの僻地教育振興というものの予算はかなり圧迫される私は危険性に逐次さらされて来るのではないか。六・三制の予算をこれは圧迫するといつても限界が私はあると思うでありますから、むしろ弱いふらふら面で予算をとる僻地教育振興という小さな面ではなくて、六・三制の施設という中に入れて、これをぶち込んで、そうして太い予算の中で、この軍備費に押されて来る、それを六・三制の完備という太い力でこれを抑えて行かなければ、大臣の意図されるところの真実の意味の僻地教育振興というものは私はできないことになつて来るのではないか、誠に悲観的なことを申すようでありますけれども、大臣もどうぞ特にこの僻地には足を運ばれてあの山間に放置されている子供の一日を見てやつてもらいたい、便所に行つても紙を使うことを知らない、紙を使う代りに葉つばを使う、学校でもそうである。昼飯に食べるものでないと赤松の実を懐ろに持つて来てこれを食べている、山葡萄を食べている、こういうような所の子供にせめて私は一つの夢を持たせてやりたい、それは美しい学校であり、充実したと言われなくとも、せめて授業に間に合うくらいの施設であります。又視覚教育の充実であります。せめて昼には一碗の栄養のあるものを食べさしてやりたい、特に諸外国と違つて日本の特殊的な地勢というものは北から南に数多くの山脈が通つている、この日本の特殊地勢というものと六・三制の完備というものは密接不可分の関連をするものである、ただ単にこれは僻地教育を振興させるというようななまやさしい感覚の下でこれを解決することはできない。大臣はせめて早くこの法律ができたら計画を立てて、その全貌を逐次完成の方向に持つて行きたいという意図を持つておられるようでありますが、それはもうすでに時期遅きに失している。六・三制完備の当初からこの問題は取上げなければならない問題であつた。どうぞ幸いにして法案が出ましたのでありますから、我々に一日も早くその全貌を示し、その計画を示し、その計画の一環として予算化され、而もそれが六・三制完備という全体の力の上からこの法律が龍頭蛇尾に終ることなくして、置き忘れられた数多くの子供たちのために一つ。 この僻地教育振興をやつている課はどこですか、文部省に課がございますね、この課は非常に貧弱です。一人か二人の人がいて逆立ちになつているようですが、こんなことでは六・三制完備というようなことはできません。どうかこの僻地教育を振興させるためのいろいろな研究し立案をするそのセクシヨンの人員も殖やして、これを強力に推し進めて頂きまするように、私は特にここに忘れてならないという私の意見を開陳して質問を終ります。
○荒木正三郎君 大臣は時間をせいておられるようでありますから、一、二お尋ねをしておきます。僻地教育の振興についてはいろいろ考えなければならん点があると思いますが、その中で僻地教育に対する理解を教育関係者が深めるということが私は大切なことではないか思うのです。私もたびたび僻地で教育に専心従事しておられるかたがたにもお会いしまして、如何に困難な事情の中にあつて教育愛に燃えて日々を努力しておられるかという場面に接しまして、非常に考えを新たにしておるものでありますが、併し割合に教育関係者の間には理解が薄いのじやないかというふうに考えるのです。その一つの例としては今年の春の人事異動におきまして、これは新聞等にも出ておりましたが、何かのしくじりがあつてその教員を転任する場合に、懲罰というふうな意味を付して、そうしてこれを僻地に転任さす、こういう事例が報道されておりました。これは私は単に報道だけでなしに、私も教職にあるときにそういう事実を幾つも知つております。で、教育関係者はそういう人事異動の機会を利用して、そして何らかの落度があつたというような人に対して懲らしめのために僻遠の地に異動ずる、こういう手を始終使つておるわけです。これは私は考え方が根本的に間違つておると思うのです。こういうことでは僻地教育の理解があるとか、愛情があるとかいうふうなことは言えないと思うのです。こういうことが而も常識化と言つていいか、普通に行われている。こういうことはやはり教育委員会なり教育関係者を根本的に是正してかからなければならないというふうに思つておるわけなんです。私は僻地の教育に従事しておられるかたがたが非常な御苦労をなさつておるということを知つておると同時に、教育関係者がこういう態度ではよくないというふうに考えておるのですが、この点文部大臣の所見を伺つておきたいと思います。
○国務大臣(大達茂雄君) 今荒木さんのおつしやつたと同じことを私も考えておるのであります。ただ国会においてもこの問題は最近はやかましく論じられておりますし、それから又私どものほうにも地方の教育関係のかたがた或いは又地方の団体の人々、そういう人が熱心にこの僻地教育の振興ということについてお話されます。でありますから、気持といたしましては僻地教育は振興しなければならん、観念的にはそういう考え方は非常に強まり高まつておると思うのであります。ただ実際の人事をする場合に、おのずから僻地に、立派な先生に御苦労してもらうということは考えられることであるけれども、教職員の人々がどうもやはり人情として余り山の奥まで行きたくない。こういう希望しないということがあると、自然実際の人事の場合にはそういうことは抽象的に観念としては頭に赴いておつても、その人事異動のときやなんかは自然先生の希望する所へ、いい先生は希望する所へやる、こういう実際の作用が起るのではないか、こう思います。これはまあ人情で、或る程度やむを得ないことであると思いますが、勿論これは極く理想的な希望を言えば、先生がた自身が挺身僻地に行つて日本の義務教育の上における欠陥となつておる僻地教育というものを、これは今のところは施設とかそういう点に、これは予算とか何とかいう関係から免ればそうなりますが、何といつても教育はその教育内容自体の問題でありますから、そういう先生がたが身を挺して進んで僻地にでも行かれるという気持が教職員のかたがたの間にそういう真剣な気持が作興するということが一番望ましいことでありますが、これは一種の理想論であつて、なかなかそうもいかんだろう患います。ただ私は最近この僻地教育の振興ということが非常に熱心に言われておる点は、これは一般的にこれを何とかしなければならんという気持としては非常に高まつておると、こう思います。それで僻地の先生がたで、まあ私がお目にかかつた範囲で私の感じを申しますと、これは非常に涙ぐましいほど熱心に仕事をやつておられる、これは多数の先生がたでありますから、そうでない人も無論ありましよう、ありましようが、これは私は人間というものは余りに都会におつていろいろな雑音が入つたり、それからいろいろ気が散るようなことがあつたりする、それと比較して僻地におつて、もう自分の仕事以外、何も側からこれをとやかく言う者はないのですから、まじめな先生は、非常に真剣に教育をしておられるというような点は、これは明らかに看取するのでありますが、私お目にかかつた先生がたのうちにはそういうことがありました。これはまあ自然に行くときには、多少面白くない気持で行かれても、やはり環境といいますか、そういう又子供の実態に接せられれば、優しい先生がたは又逆に、むきになつて教育に挺身されるという点がこれは人間でありますから、そういうことは当然考えることでありまして、どうも余り面白くない先生だから僻地にやるということは、これは御指摘の通りにあり得ることだと思います。それは教育委員会において人事をする場合に、その教育委員或いは教育長の人がどういう気持でやつているかということは、これはまちまちであろうと思いますが、なかなか理想的な先生がたの間で希望しないものを、この先生は非常にいい先生だから僻地に持つて行くということは、実情はなかなかできないことであろうと思いますが、私の希望しておるところでは、僻地教育というものが本当に意義のある、やりがいのある、いわゆる昔流に言うと、神聖な仕事であるという点が、だんだんと僻地教育の振興というその言葉によつてだんだんそういう点が自覚せられて、そうして一日も早く、僻地においては勿論都会地のような立派な学校、或いは立派な設備ということは、僻地において望むということは、これはでき場ないことであると思います。ただ非常に真剣な、真面目な、而も静かな教育が、僻地において行われる、まあ夢のような話でありますけれども、本当の、素朴な民族の種というものが、都会地よりも、むしろ僻地においてこそ起る、こういうことを私は、これは夢のようなことでありますが、切に望んでおるわけであります。今のような点は、これは教育委員のかたがたのほうにおきましても、漸次これはそういう点についても考慮して頂いていることと思います。又文部省としましても、これを直接人事なんかに文部省がタッチすることはできません。できませんが、一般的にはそういうふうに、一般の気分をそういうふうに向けて行くということについては、今後とも努力したいと思います。
○荒木正三郎君 この点は一つ十分理解を深めるように、私は御努力を願いたいと思います。特に僻地の教職にある人は、文化的にも経済的にも極めて恵まれない環境の中にあつて、非常な努力をしておられる、そういう事情を考えるとき、私はこういう面に対する一段と理解を深めて行くということは、重要なことではないかと思いますので、更に御努力を願いたいと思う。 次に僻地の特色として、やはり、経済事情が非常に貧困である。文化的施設がないということと並んで、経済的に非常に貧困であるということですね。これは私は根本的な問題であると思います。これは文部大臣に質問をしたり、要請をしたりすることは困難であるかも知れませんが、やはり僻地といいますか、国土開発の面から、僻地における経済事情をよくして行くという、全般的な政策ですね、そういうものが、やはり恒久的な問題としては考慮されなければならんというふうに考えます。これは非常にむずかしいことです。そういうところにどういう産業を興し、どういうふうに開発して行くかということは、口で言い得ても、なかなか実際はむずかしいということはわかつております。併しこれは、絶えず研究され、検討されて、こういう経済上の改革を図つて行くことについては、一つ重要な問題があると思いますので、この際私の所見を申述べておくにとどめます。 次にこのへき地教育振興法案に対しては、衆議院の文部委員会におきましては附帯決議が出されております。がこの附帯決議が、その内容を見ましても、私ども大いに希望する点が少くないのであります。併しこれは文部当局がどれだけの熱意と誠意を持つてこの附帯決議に副うという考え方を持つておられるかどうかということが、やはり問題であろうと思います。これは来年度の予算において、予算措置を要すべき問題が主となつておりますが、この際この衆議院の文部委員会における附帯決議につきまして大臣の所見というもの、或いは決意といいますか、そういう点を伺つて、私は文部大臣に対する質問を終りたいと思います。
○国務大臣(大達茂雄君) お話の、衆議院におきまして、一項から四項に亘る附帯決議が出されております。この殆んど大部分といいますか、その内容につきましては、実は私どもといたしましても、切に希望して、その実現を図りたいという事柄ばかりでありまして、これは実は済んでしまつておることを申上げても何もなりませんけれども、九億八千万円でしたか、実は僻地教育振興の経費として、その程度の、十億近い金を大蔵省に最後までお願いをしておるわけです。これはかなり一定の計画的な内容で、できるだけ早く僻地教育をほか並みにして行きたいという内容のものであります。これは殆んど全部済んでしまつたのでありますが、その計画の内容につきましては、ここに掲げてありますような、附帯決議に挙げられております御要望の点に触れておつたわけであります。こういう決議を頂ければ、又御鞭撻なり、御協力というものによつて、今後ともこれらのものを内容とした僻地教育振興ということに努力して参りたいと、こう思つております。
○野本品吉君 多年まじめな教育理解者、教育に熱意を持つておる人たちが声を挙げて叫んでおりました僻地教育の振興の問題が、今度政府によつて提案されましたことは、私は日本の教育の歴史の上におきまする画期的な事柄として再び、且つ提案の誠意に対しまして敬意を表するものであります。そこで只今荒木さんが触れられたのでありますが、僻地の問題を考えますとき、私は単にこの法律に該当する僻地の問題だけではなしに、僻地という観念心を拡げて行きますと、東京都から見ると群馬県は僻地である、群馬県から見ると鳥取県、或いは岩手県はなお僻地である、都府県の経済力、或いはその他の力の相違から来る教育の偏差というものは日本の大きな政治の立場からやはり考えて行かなければならん、このことにつきましては、只今荒木さんからも触れられたのでありますが、将来の国政、なかんづく文教行政全般の上から、特段の御注意と、御努力を煩わしたいということを、僻地教育の提案に対する感謝を表しますると同時に、将来に向つて特別な希望を申上げておきたいと思います。 次に僻地教育の具体的な問題でありますが、これは理想的な観点から見れば、いろいろと提案の内容その他つきまして希望すべき幾多の事項を持つておると思うのでありますが、私はやはりこの振興の根本の問題は、物的な諸条件の整備ということも無論なくてはならんことでありますけれども、先ほど来お話のありました優秀な教員を招致すること、そして教員が僻地の教育に楽しみ且つ安住する生活条件を整えてやるということであろうと思います。私の知つておりますこれは過去の僻地の実情を想い起すのでありますが、二十四、五才青年盛りの若い者が、僻地の分教場の又分家で分室という、こういうところに一人学校の宿直室に住つて、そして学年の違う大勢の子供を一手に引受けている。単にそれらの人たちは子供の世話をするだけでなしに、村の若い人たちの指導者であり、婦人会の指導者であり、まあ極端な例を申しますというと、文字を書くことを非常に厭います僻地の人たちのために、出生届を書き、婚姻届を書いてやると、こういうのが本当の僻地における教員の生活の実相です。そういう人たちに情熱を傾けて僻地の教育に努力して頂きますためには、何と申しましても、教員の生活諸条件を充足することを重点とするように考えなければならんと思いますので、待遇の問題その他各般の問題から、この点についてできるだけの心配をしてやることが、私は僻地教育の根本の問題であろうと思います。そして私どもが僻地に参つてこれらの人たちを見ますというと、聖者のごとく、私は頭が下らざるを得ない。この聖者のような姿で、聖者のような境地で働いておる人たちのために、この法案が眼を開いたわけでありますが、その気持が今後の具体的な施策の上に着々と具現されて行きますようにということを、これ又心から念願しておるわけであります。 そこで一つお伺いいたしたいと思いますことは、僻地の指定の問題でありますが、この基準をどうお考えになるか。この僻地の指定の如何は、現在やかましい問題になつておりますところの地域給のような状態を又醸し出す虞れがあるのではないかということを考えますが、僻地の指定についてはどういうふうなお考えでございましようか。
○政府委員(稲田清助君) このいわゆる僻地の指定と申しますものは、勤務手当というような手当支給という関係において指定という形が現われるわけでありまして、これにつきましては、各都道府県で条例を以てその大綱を定めまして、それに基きまして具体的基準を教育委員会又は人事委員会で定めて指定いたしておる、こういう順序になつております。これは地方公務員でございまするから、国家公務員の例にならうわけでありまして、国家公務員につきましては、政府職員の特殊勤務手当の支給に関する政令というものがありまするし、又それに基いてきめられました僻地所在官公署在勤職員の特殊勤務手当支給準則というのがあります。まあこれらを基準乃至参考といたしまして、人事院が国家公務員についてきめております。これをまあ有力な参考として、先ほど申上げましたように、都道府県の条例できめられておる、こういうような状況でございます。
○野本品吉君 只今の条件でおきめになつて行かれますと、やはりいろいろと将来面倒な事情が起るのではないかと想像されるのですが、これらのことにつきまして十分御注意を煩わしたいという希望を申上げておきます。 もう一つ、これは大きな関係ではないと言われれば言われるかも知れませんけれども、離島振興法とこの法律との関係であります。離島振興法の第四条には、住民の福祉向上のための教育、厚生、文化に関する諸施設、この計画の適当であると認められたものに対しましては、資金の融通或いは斡旋をすると、こういうことになつておりますが、これと僻地教育との補助その他の関係は何かお考えになつておられますか。
○政府委員(稲田清助君) まあ離島に関しまする点につきましては、御指摘の法律とこの法律と二つ関係して参るわけでありまして、一般的には離島振興法が、この離島という僻地が置かれておりまする財政経済上の不利をこの法律によつて匡救するという関係において、まあ一般法になつておつて、この法律は特に教育施設の充実或いは教育諸条件の改善というような点につきまして、この法律自体がきめておりまする個々の補助、援助、助成というような点が特別法の関係になつて適用されると、私どもはこう考えております。
○野本品吉君 そこで私は、この離島振興法のほうで教育に関するいろいろな施策に対して資金の斡旋融通等をしてやるからこちらはこれでよいのだというような、そういう気持で考えられては困るということで実は申上げておるわけなんです。そういう心配はありませんですか。
○政府委員(稲田清助君) この法律で規定しておりますことを実施することにつきまして離島振興法が妨げになるというような解釈は私どもはないと考えております。
○高橋道男君 私ども特に義務教育は地方の教育委員会で対処されるものだと考えておるのでありますが、今回の法案には、市町村の義務、或いは府県の義務ということになつておりまして、教育委員会の関係が全然出ておらんのでありますが、これはどういう関係でございましようか。
○政府委員(稲田清助君) いわゆる地方公共団体が財政負担をいたしまするとか、おのおの地方公共団体の主体としての点がきめてあるわけでありまして、教育に関する事務を行いまする場合の行政機関は、御承知のようにそれぞれ都道府県教育委員会、或いは地方教育委員会でございますが、その点は取上げないわけでありますけれども、行政機関としては教育委員会法に定められておりまする機関が活動すると、こういう解釈でございます。
○高橋道男君 その予算の関係があることは勿論了解できるのでありますが、この法案におきましても、教員の研修ということが第三条に掲げられておるのでありまするが、同一のことが教育委員会の職務権限のところで出ておるのですが、そういう点、僻地の関係のものは市町村が直接にやるのだと、それ以外のものは教育委員会がやるのだというような、そういう見解の相違というようなことは起らないのでありますか。
○政府委員(稲田清助君) いわゆる研修は、その任免権者の義務として国或いは地方公共団体なべて規定されておるのが一般でございますが、そのうち特別の関係におきましてこの僻地教育振興という点におきましては特別法が規定しておるのだと思うのでありまして、従いまして、僻地におきまする特殊の研修というような点につきましては、この法律の適用を考えればよろしいのではないかと思います。
○高橋道男君 その点、どうも僻地ということになりますれば、一般の教育委員会と違つて、僻地の市町村、市は或いはないかも知れませんけれども、僻地の町村に教育委員会があるから、それが当然あずかつて然るべき問題であると、こういうふうに思うのでありますけれども、その点更に念を押してお伺いいたします。
○政府委員(稲田清助君) これは全く規定の書き方、技術的な面でありまして、この法律は一貫いたしまして地方公共団体を主体といたしまして仕事も行い、或いは補助も受入れると、こういう書き方をいたしたわけであります。地方公共団体が働く場合におきましては、もとより公立学校においては教育委員会、或いは私立学校等に関連いたしましては知事が教育に関しまする行政機関として働くわけであつて、それはまあ自明の理としてここで書いてないわけであります。従いまして、第三条において「市町村、」とある場合に働きまするのは市町村教育委員会、こういうつもりでございます。
○高橋道男君 それから都道府県の場合にも同様教員の養成施設というものがあるのですが、これも只今の局長の御説明によりますと、無論教育委員会と連関なしに行われるとは思わないのでありますが、教育委員会のほうでは全般的に実際に僻地学校にどれだけの教員が要るかということの目標を持つていると思うのですが、府県においてはそれとの関連がなければどれだけの教員を養成をしていいか、これはわからないわけであります。そういう点におきましても、はつきりした連絡を法律の上においてもつけておくほうが私はいいのじやないかというように思うのでありますが、その点もこれは甚だ念を押し過ぎるお尋ねかも知れませんがお伺いしておきます。
○政府委員(稲田清助君) この点も、この法律の書き方といたしまして、事業主体でありまする都道府県という点を表面に表してあるわけでありまして、都道府県がこの事業を行います場合は、行政機関としての都道府県教育委員会が事業に当るわけで、ありまして、この僻地勤務教員の養成施設も都道府県教育委員会が計画し予算をとつて実施する、こういう関係に立つわけでございます。
○加賀山之雄君 今の問題ですが、市町村と教育委員会とが非常にうまく行つている場合は問題はないと思いますが、場合によつて教育委員会と市町村並びに教育庁、そこらの関係がしつくりしていないというような場合もあり得ると思うのでありますが、その場合この法律に教育委員会の職務権限について全然触れてないということが、どうもそういう場合に工合の悪いようなことが起きはしないか、僻地の教育のことはもう市町村が直接やるのだというような印象を与えていないかという、これは全く杞憂かも知れませんが、感じがするのでありまして、この法律に一つも教育委員の名前すら出て来ないということは、どうも少し奇妙な感じを抱くのではないかという感じをいたしますが、もう一度。
○政府委員(稲田清助君) 御尤もなお話でありますが、私どもの解釈といたしましては、教育委員会法ができまして、市町村乃至は府県という地方公共団体の行政機関につきましては、公立学校関係においては都道府県教育委員会或いは市町村教育委員会が行政機関になる、私立学校或いはそのほか一般行政につきましては知事或いは市町村長が行政機関である、教育委員会法によつてそこでもう振分けられておりまするから、地方公共団体の主体をつかまえまして「都道府県は、」或いは「市町村は、」と申しました場合に、事それ自身が教育に関しまする場合におきましては教育委員会が行政機関になるということは、私どもとしては自明の理だと考えております。法律の技術といたしましては、或る場合には補助金を受入れるという主体が出て参りまずし、或る場合には能動的に或る事業を行うという主体をつかまえる、一一書き分けないで、その主体たる地方公共団体を暫くのが簡便であるという考えを持つてやつたのでありますが、教育委員会法がありまするから、私どもの解釈といたしましては、その辺解釈の紛淆はないと考えております。
○高田なほ子君 大臣がもうお帰りだと思つて、あとで事務当局のかたに伺おうと思つたのですが、大臣がもう少しおいでになるようですから、非常に大事な点だけもう一点お伺いいたしたいと思います。言葉が過ぎるかも知れませんが、この法律は実際問題として僻地の最も劣悪な条件のところが救われない、甚だこれは書架が過ぎるかも知れません。その教員の待遇等についてはよろしいのですが、学校の施設とか、或いは折角文部当局として考えられました学校集会室を建てるというようなこと、これはいずれも二分の一を補助し或いは三分の一を補助するという補助金制度がとられているわけです。でありますから、非常に貧困な僻地、今まででも追い抜かれておつた僻地は、呼び水を出してもらつても呼び水にする元がない、こういうものは折角のへき地振興法を出しながらも、その点を受けることができなくなつて来る。実際には学校集会室のようなものも喉から手の出るほど欲しいけれどもどうすることもできないというような、本当の意味の僻地の落こぼれというものを今後どういうふうにして国が救つて行くかという問題であります。これはゆるがせにできない問題だと思います。これは老朽危険校舎の場合についても、必要に迫られておつてもなお且つこの要求ができないということは、すでに大臣も御承知の通りであります。それにも増して、この農村山岡の貧困な僻地における教育施設というものはどうしても完備の方法に至らない。これに対してどういうふうな手を今後お打ちになつて行くかということをお伺いいたしたい。 それから続いて、これと関連しておることですが、補助金制度に関する返還の規定は、これは当然あるわけでございましようが、この第七条には五つの項目を設けまして、補助金が適正に運営されるという規定が設けられてあります。これはまあ一応尤もだと思うわけでありますが、僻地における補助金の制度についてはよほどこれを緩和して行かなければならないのではないか。私は、補助金の適正な運営と共に、その運営が厳に過ぎるために所期の目的を達し得ないというような弊害に陥ることがありはしないか、こういうことを非常にまあ心配しておるわけでありますから、補助金返還の法の精神を大臣からこの際はつきりおつしやつて頂きたい。なぜ私がこういうことを申しますかというと、第七条の第三項に、「補助に係る施設を、正当な理由がなくて補助の目的以外の目的に使用し、又は文部大臣の許可を受けないで処分したとき。」、こういう条項がある。「補助に係る施設」、即ち学校集会室のような場合に、「正当な理由がなくて」といいますが、正当な理由というものがいずれそのうち細かくきまつて行くのではないかと思いますが、「補助の目的以外の目的に使用し、」というこのところが、今後日本の再軍備政策が強行されて参りますと、学校の施設がいろいろなそれに反対するような立場の者に使われると、この法文が適用されて、今後この途が断たれて行くというような例を作ることを私は恐れる。でありますから、補助金返還の精神というものをこの際大臣にはつきりと明示しておいて頂いたほうが、お互いに安心が、できると思う。法の精神を曲げないで済むと思いますから、今申上げた二点について成るべく詳細にお話を願いたいと思う。
○国務大臣(大達茂雄君) これはまあお話の通り、非常に貧村といいますか、補助金をもらつても、そのあとの金の出るところがないというようなことも、これはあり得るわけでありましよう。ただそういう場合に、これを所期の目的を挙げるためには特別の融資をするとか或いは全額を国で負担するというような方法以外にはない。ただそこまで行きますと、補助金のことであり、やはり市町村自治団体として独自な団体生活をしておるものでありますから、そう国のほうで皆見るということは有り得ないことはないと思いますけれども、一応の筋としては補助金でありますから、やはり一定の限度にとめておく。これは一般に貧弱町村というものが戦前もそうでありましたが、戦後におきましては一般に経済水準が非常に低下した関係もあつて貧弱町村が非常に殖えて、最小限度の町村の事務の運営にも事を欠くということがあるのではないかということを私ども考えております。御承知の町村合併促進ということもやはりその点から地方の自治団体として自立することができない、現状のままでは経済、財政水準が非常に低下しておるということが主たる理由であると私は思つております。それは交通が発達したとか何とかいうことはありますが、それが主たる理由である。御承知のように以前は町村合併は郷土観とか郷土意識というもので簡単に行われなかつた、これをやることは非常に難中の難であつたのだが、つまり町村合併促進に関する法律ができまして、これが昔のことを考えるとまるで夢のような違い方です。昨日もそういう説明が自治庁のほうからありましたが、予期された以上に非常に急速にこの町村合併がどんどん行われたということは、その元になつておるものはどうしてもこの町村の財政力の低下ということが一番大きな原因になつておる。つまり隣の村と自分の村という郷土意識というもの、それを顧る余地がなくて、とにかく合併したければ持たないということが一番大きな原因であろうと思います。これはひとり学校の問題だけではないのでありまして、いろいろな点で自治団体としての最小限度の仕事をするにも事欠くということになつて、そういう関係があつてこの町村合併が非常に促進されておると思うのです。そこまで自治団体というものが、この僻地の学校というものは御承知の通り学校の先生の住宅と、それから学校の教室を併せたようなことでやつておるということが多いように聞いておりますが、建物としても大して大きな建物ではないのでありますから、そういうものすら全然できないというほど町村が極度に財政的に疲弊してしまうということであれば、これは別途やはりこれに対しては先ほど荒木さんからお話がありましたけれども、全般的に僻陬地における経済水準というものが非常に低いということは、これはすべての問題の元でありますから、これは事実なかなか、前からも例えば農山漁村の振興というようなことは昔から叫ばれ、又随分政府としては努力して来てもなかなかこれは経済的な必須の、そういう条件がありますから、努力しなければなお悪いの手が、これもなかなか思うように行かない。離島振興法というものもできておる、そういうすべての力を併せて行かなければ、ただこれを全額国庫負担にしてということは、それができれば結構ですが、これを一遍にそこまで学校だけについてそれをするということは現状から言つてちよつとほかとの釣合いもとれませんし、これはできるだけ金の許す範囲で少しでも多くの学校、少しでも多くの災害地というふうに、これは欲を出しては何ですが、考えておるものでありますから、やつて見まして、どうしてもいけないということであればそのときに考えなければならないと思いますが、現在の計画としましては一応その程度でとにかく実行に移してみたい、こういうふうに考えておるわけであります。 それからその次の補助による施設を正当な理由なくしてほかの目的に使う。つまり学校として、或いは教員住宅としての施設に補助したにもかかわらず、それを全く別のものに使つてしまつた、これはどうもそういうことで補助金を使われては困りますが、どうしてもこれは返してもらうというのが当然であります。併しそういうことが頻繁に起るということを考えておるわけではないのですが、今のように僻地山村におきましては、あらゆる面において非常に財政的に逼迫しておりますから、だから折角文部省のほうでは学校の施設のほうに使つてもらうつもりで出してみても、現地ではやはり苦しまぎれにほかに使うというようなことは、そう大して悪い意味じやなくてもそういうことはあり得ますから、私たちの立場としてはそういうことにならないようにという予防的な意味で、この補助金についてはこういう規定が要ると考えて入れておいたのであります。それ以上大して深い意味はありません。こんな例が幾らも出て来るとも思つておりませんし、ただ折衝補助をするのだから、苦しまぎれにほかに使われても困るという気持から出しているだけであります。
○高田なほ子君 僻地の指定の問題でありますが、先ほど稲田局長からの、野本委員の御質問に対して、教育委員会の定めるところによる云々という御答弁があつた。ところが実際問題としては、バスの停留所から何町とか何とかいうことがあるのですが、私は詳しいことはわかりませんが、ところが青森でも岩手にしても、バスの停留所から何町ということになると、もう熊が出て来るわけです。熊の出て来そうなところにバスの停留所がある。そこから何町なんということになるとこれは僻地には入らない。実際の僻地でも情勢そのものがそういうことになつているのです。我々平地にいるものの常識では、バスの停留所から何町行つたところが僻地だ、これが常識ですが、実際僻地に行つてみると、熊の出るところがバスの停留所になつている。それですから、そこから何町ということになると、ここに学校があつても、それは僻地にならない。こういうような机上の空論みたいなような条文を作製しておいて、僻地学校ということを指定することになつたら、これは大問題です。特にこれは東北地方、或いは日本アルプスの屋根の下にある僻地においては、大問題であると思います。でありますから、ここに指定されたところの僻地学校というものの基準というものは、私は相当考えて行かなければならない。机上の空論であつてはならない。真実の意味の僻地でなければならない。こういうふうにとらなければならないと思いますが、この点について大臣の御所見を承わつておきたい。
○政府委員(大達茂雄君) これは政府委員からお答えいたさせたほうが正確でありますが、大体国の公務員については基準というものができているわけです。それを一応基準として条例によつてきめておるということになるわけでありますが、それは必ずしもその通りにしなければならんということではないのでありまして、それぞれの地方地方の実情に応じて適切な、そういう今のお話のないようにしたいと思います。その点につきましてはこちらのほうが適当にその気持を地方に説明をして流すとか、そういう点については十分配慮して実情に合うように公布して参りたい、こう思つております。
○高田なほ子君 とにかく法律は取締りの方面には拡大解釈をします。けれども保護の面になると縮小解釈されるのが今の日本の法律解釈の常套であると思いますが、殊に教育に関する限りにおいては、なかんづく僻地指定においては実情と副わないのです、実際。このことについては今の大臣の御発言は将来に非常に大きな影響を持つものと考えられますので、どうぞその点をお互いに確認して、実際にこの法律が生きるように私は主張します。 もう一つ、最後に伺つておかなければならないことは、振興教育研究協議会、こういうのがありますが、これは性格が私わかりません。文部省の外郭団体であるのか、又その構成はどうなつているのか。今度補助金が幾ら取られましたか、予算化されましたね、稲田さん幾らでした。
○政府委員(稲田清助君) 只今の御指摘の、何か地方の団体につきましては、私ども直接何も関与いたしておりません。先ほど申上げましたのは、文部省自身におきまして主催いたしておりまする研究集会、これは国の予算の下におきまして地方の関係の先生にお集まり頂いて、現場のいろいろな問題を持寄つて御研究願う、これはあるわけであります。別に補助金はないわけであります。
○高田なほ子君 それは幾らでしたか。
○政府委員(稲田清助君) 只今の予算は二十五万二千円でございます。
○高田なほ子君 これは一年間ですね。
○政府委員(稲田清助君) さようでございます。年一回限りでございます。
○高田なほ子君 折角のあれですが、年一回で二十五万というのは、誠にこれはどうも余りに情ない金額ですが、これはどうなんですか、もうちよつとこれを殖やすとか、又はこの研究協議会の運営というものを法律的に文部省のほうでお考えになるというような計画はありませんか。
○政府委員(稲田清助君) これは文部省自身が主催いたすわけなんでございます。或いは御質疑になつておりますものと私の申上げているのは、これは失礼ながら食い違つているかも知れませんが、何かそこに団体がありまして、補助するという点につきましては、今課長からも聞きましたが、こちらではわからないのであります。私どものほうの計画は、今の金でいたしますのは一会場四日間で十班に分れまして、十地区において研究討議して記録を作つて参る、こういう計画でございます。
○高田なほ子君 一会場四日間で、それは文部省が主催をする。それが振興教育研究協議会というものなんですか、さつきあなたの御説明になりました。
○政府委員(稲田清助君) 私どものほうは僻地教育振興協議会と、こういう名前で呼んでおります。
○高田なほ子君 この協議会は大変稲田さんは軽くお答えになつているが、私は軽くとらない。なぜかというと、今後の僻地学校の指定とか、補助の対象というもののアウトラインというものはこういうところで作られる。まあ作られないとおつしやればいいんですが、そういう重要なプランを立てる基礎になるものですから、この協議会にはどういうメンバーが参加しておられますのか、あとで資料として私は頂戴したい。
○政府委員(稲田清助君) これは全くそういうものではないのでございまして、私言葉が足りなりなかつたのでございますが、これは教育内容の協議会でございます。純然たる専門の協議会でございまして、まあ僻地にいらつしやいます先生なり或いはそれに関与いたします都道府県教育委員会の指導主事とか、そういう専門家が集まりまして僻地においてはどういう単級複式のカリユキラムを組むとか、或いはどういう特殊の教材を作るとか、そういう点につきましてむしろ現場におつていろいろ悩み、或いは御計画になつておられる御意見を現場から持寄つて頂きまして、それをお互いに意見を交換して、その記録を作つてその記録を印刷する、これだけでございます。
○高田なほ子君 それではお伺いしますが、学校の教員住宅が百三十二戸、それから校舎の集会室が二百戸ぐらいできるようですが、こういうようなものは補助金制度でありますから、やはり限られた予算の中で限られたものしか作つて行けないでしよう。こうなつて来ると運動がうまく行つたところに多く行く傾向があるのです。こういうことがあつては悪いんですけれども、そういうことがないためにこれを運営し按分する、配分する、そういう機関はどこでやられますか。
○政府委員(稲田清助君) これは六・三建築の補助なんかを扱つておりますのと全く同じ恰好におきまして、文部省におきましては管理局の施設部におきまして都道府県教育委員会から御申請になりました資料につきまして配分をする、こういうことになつておるわけでございます。
○高田なほ子君 管理局で取扱う。併し先ほど稲田さんも又大臣もはつきりおつしやつていることは、目標としてはこの僻地の実体というものの資料がないというのです、今。ないのに管理局がどうしてこの限られた予算、限られた計画で適当な配分ができるのですか。私はそういうところを疑問に思う。即ち運動が極めて活溌に行われたところにこういう結構な法律の恩典が浴され、運動もできない貧困な僻地が、誠に以て緊急欠くべからざる僻地の振興をしなければならないところが置き忘れられて行くというところは、やはり心配せざるを得ないわけです。実体のないところにどうしてこういうものが配分されますか。その配分の仕方を、決してこれは意地悪く聞いているのではないわけですから、どうぞどういう方法でやられて行くのかということを納得の行くようにお知らせを願いたい。それでなければ趣く僻地にいる先生方はこんな法案が出ても、何だ、我々には何にもならんじやないか。こうして政治に対する信頼感を教育者が失い、又村民が失つて行くということは不幸なことであります。でありますから、法律が出発した第一歩の配分はどういう基準でされて行くのか、それを皆が納得が行くように、この速記録を見て皆ながわかるようにあなたが答弁をして頂きたい。
○政府委員(稲田清助君) 御尤もな御心配でございます。まあどういう地方が僻地であるかという点につきましては今日只今の問題といたしましては、僻地に関しまする特別勤務手当を支給しております市町村がまあいわゆる僻地と私ども考えておりますから、先ほどお答え申上げましたあの数の市町村につきまして、これは都道府県教育委員会を経由いたしまして、今度予算といたしまして坪当り単価二万七千七百円の基準を以て二分の一補助の予算で、こういう集会室を新たに建築せられたい向きについては補助する。従つてその半分につきましての財政の用意があるとか、或いは又この集会室でありますから、成るべく利用度の多い、又利用計画の優れたものが必要でありますから、総合利用の計画としても内容を見、或いは又地理的関係その他におきましても利用の可能性等を見まして、これは書面によつて審査いたしまして決定をすることになると思います。で、それにつきましては中央におきまして地方々々のいろいろ細部の点まで或いはわかりかねる点もあろうかと思いますけれども、普通の場合、六・三建築等におきましても、経由いたしまする地方庁におきましていろいろ順位を附すなり意見を附すなりというようなことを私ども重要な参考にいたしておりますので、この点につきましてもそういう地方の意見というものを参考にいたしまして決定いたしましたならば、お話のように非常に乱雑に或いは運動によつてきまるというような弊害も防止せられるのじやないかと思いますが、まあ要は御趣旨のように、この限られた予算が非常に不公平に、適正に配分せられんということがありますと由々しい問題であります。これは初めてのことでありますので、私どもといたしましては、これは初めて分配いたしますまでにつきましては、只今の御注意を篤と体しまして関係局ともよく相談いたしまして、遺憾なきを期したいと思つております。
○高田なほ子君 それについてのプランは大体できておるのじやないのですか、どこにやるかということについてのプランは。
○政府委員(稲田清助君) まだ各地方に照会するに至つていないのでございます。照会いたしまして参りましてから配分いたします。
○高田なほ子君 それはいつ頃になりますか。
○政府委員(稲田清助君) もう近いことだと考えます。
○高田なほ子君 何月頃になりますか。何月頃にそれが実施されますか。
○政府委員(稲田清助君) この法律が御決定になりまして、関係政令が出まして、それから第一期の予算配当をもらいましてからでございますから、先ず六月に入りましてからだと思います。
○須藤五郎君 私ちよつと遅れましたので、質問がダブるかもわかりませんが、お許し願いたいと思いますがこの予算措置というものは全額どのくらいされておるのですか。
○政府委員(稲田清助君) 一つは先ほど来申上げておりまする集会室に対しまする補助金、これは二分の一補助といたしまして、国において一億を計上いたしております。それから特殊勤務手当でございます。これはまあ半額負担でありまして、地方の支出が一億五千二百九十六万二千円、その半額として七千六百四十八万一千円、それからその次はこの僻地教員宿舎の建築費の補助でございまして、これは一千万円でございます。それからあとは大変小さいのでございますが、先ほどお話の僻地教育研究協議会これが二十五万二千円、それから各種の手引、参考資料を作成いたしますのが六十三万円、それから僻地教育研究指定校二十一校分が八十六万五千円、それから僻地勤務教員養成に関しまする経費、これは地方の経費の半額を負担いたしまして、半額として四百二十一万六千円でございます。以上でございます。
○須藤五郎君 ここに出ている数はこれは文部省でもはつきり認めた数だろうと思うのですが、僻地学校として学校の数が七千校ほどあるわけなんですが、これは文部省で認めている数なんでしようね。
○政府委員(稲田清助君) これは実際において僻地勤務手当を出すというような点において地方が指定いたしましたものを文部省が数えあげたものでございます。
○須藤五郎君 そうするとこれは大体一校当り幾らぐらいの金になるのですか、非常に少額だと思うのですが、そのくらいの額でこの僻地教育の法案を作る目的を実は達することができるのですか、どうですか。どういうふうに考えておりますか。
○政府委員(稲田清助君) 今計算いたしておりますけれども、先ほどもお答えいたしたのでございますが、我々としてはこれは僻地振興について一歩を踏み出し、又将来の基礎をここに形造るということの、全くの初年度の計画程度だと考えておりまして、これを以て決して十分とは考えない、先般参議院の御決議もあり、衆議院の御決議もありますから、鞭撻を受けまして十分この上とも努力いたしたいと存じております。
○須藤五郎君 第三条の第三号に、「体育、音楽等の学校教育」の施設という問題が出ていますね。ここで私音楽という問題をちよつと聞いておきたいのですが、全国の学校でピアノなりオルガンを持つている学校の数というものは掴んでいますか、あなたは。
○政府委員(稲田清助君) 只今まで資料がないそうでございます。できるだけ早い機会に調査を完了いたしたいと思います。
○須藤五郎君 そうするとここに体育と音楽というようなことを特に取上げていることはどういうことを意味するのですか。
○政府委員(稲田清助君) これはいわゆる屋体に相当するような考えも一部にはあるわけでございます。とにかく分教場を作りましたり、或いはいろいろ一般教室を作るのも勿論急務でございますけれども、僻地におきましてはできるだけこういう共同利用の施設、これを実際調べてみますと非常に少いので、音楽にも使い、或いは体育にも使い或いは講堂にも使い、或いは社会教育の公民館的、図書館的にも利用せられる相当な大きな建物を作つて共通に利用されればという考えでもつてやつております。そのうちに音楽的な利用室も考えたわけでございます。
○須藤五郎君 一度その楽器を所有しているかどうかということを調べられるものならば調べてみておいて欲しいと思うのです。折角部屋ができても、そこへピアノなりオルガンなりを置く、そのピアノ、オルガンは非常に高いからこれだけのことでもなかなか今の予算ではとても措置ができない、私は音楽の点だけでもそういうふうに考えるわけなんですが、一度調べておいてわかつたら私に参考までに知らして頂きたいと思います。
○政府委員(稲田清助君) 本年度の計画として調べておるそうでございますから、わかりましたら申上げます。
○荒木正三郎君 それでは事務当局に対する質問を二、三いたしたいと思います。先ほどから質問の中に出ておりましたが、僻地の指定の問題です。これは現在僻地指定をされている学校以外に実情から考えて相当数まだ指定をすべき学校があると思う。私どもの手許に来ておる全国僻地教育研究連盟、これは皆さんの手許にも渡つておりますが、そのほかに小学校において約三千校、それから中学校において五百校、これは実情から考えまして僻地指定を要すべき学校であるというふうに述べられておるわけなんです。ところが僻地指定は市町村の自治体がやるわけでありますから、市町村の自治体としては財政上の理由からその負担に堪えないということで指定をしないという場合があると思います。こういう場合の救済方法があるかどうか、伺つておきたいと思います。
○政府委員(稲田清助君) 只今お話のようにこの限られた、現在指定を受けております以外にも単級学校あり複式学校あり、教育の機会均等一という見地からいたしまして、この僻地教育振興の諸施設を更に拡張しなければならない地区が相当あることは私どもとしても考えておるわけでございまして、まあこの法律ができましたことを契機といたしまして、各地方当局ともよく考えを合せて、だんだんとこの機会均等を拡張して参りたいと思つておりますけれども、只今のお話のように、救済方法が今あるかという点につきましては、遺憾ながら私どもといたしまして直ちに適用するような救済方法はないと思います。これはまあだんだんと地方の財政、平衡交付金の問題その他一般の行政、財政の問題等千と関連しながら、こうした特殊の取扱を受ける地域を拡大して参る以外には方法はないのじやないかと思います。
○荒木正三郎君 それからその次の問題は、僻地手当の増額の問題です。これは衆議院の文部委員会における決議の中にも第二項にあるわけでありますが、先ほどの説明によると、今年度は僻地手当は三分の一方増額した、こういう説明がありました。併し従来の僻地手当については久しきに亘つて据置かれた、たしか私の記憶では僻地手当は一番低い所で百五十円、それが今回増額を見て大体百八、九十円になつたのじやないかと思います。このうちで三分の一増額というとかなり増額されたのじやないかというふうな気持もするわけですが、絶対数が非常に少い、これと比較することはどうかと思われますが、勤務地手当ですね、これは漸次ベース・アップされて二千六百円ベース当時に比べては、たしか五倍にはなつております。併し僻地手当のほうは百五十円が大体変らない、水準は変らない、これでは私は三分の一とか倍とか、こういう数字では到底いけない、これを四倍にするとか百五倍にするとか、そういう増額をしないと五年も六年も前のあの水準がそのまま大体維持されているということでは、僻地手当というものは名目に終つている、こういう点から来年度においては予算措置において相当な増額をする必要があると私は考えておるのですが、文部省の見解を聞いておきたいと思います。
○政府委員(稲田清助君) 僻地手当は昨年一級地百八十円が本年度は二百四十円になり、五級地九百円が千二百円になる程度でありまして、大よそ三分の一がた増額にとどまつたわけでありまして、私どもといたしましては、非常にこれは満足すべき状況ではないのでありまして、明年度におきましては只今お話のように是非とも適正額まで増額して頂きたいと考えております。十分努力いたしたいと考えております。
○荒木正三郎君 それから法案の中に第四条第二項「都道府県は、必要に応じ、へき地学校に勤務する教員の養成施設を設けなければならない。」この教員の養成に対する責任は私は国が負つておると思うのです。この僻地教員の養成について、これを都道府県の任務としておるのは一体どういう理由なんでしようか。
○政府委員(稲田清助君) 教員の養成が国に義務があるというお話でございますが、これは現行法上別に法律はないと思つております。むしろ現行法から申しますれば、国家公務員も地方公務員も任命権者が研修をやる或いは必要な養成をやるという解釈もそこから出て来るのじやないかと思つております。併し実情といたしまして義務教育諸学校の教員というものは国が国立大学においてその大半を養成しておる、併しこれも国のみがやるという精神でないのでありまして、地方とも御相談しながら各種の養成再教育は国及び地方と協力していたしておるようなわけであります。この僻地の教員養成につきましても半額を国が持つという形におきまして地方と国が協力をして行うという一つの例だと思つております。我々といたしましてはともかく現在の十一カ所、これでは十分でないのであります。又養成数も十分とは思つておりませんので、これは地方とも更に御相談いたしながら箇所も殖やし、国庫負担額も増額いたしたい考えでございます。
○荒木正三郎君 いや、私の尋ねているのは、成るほど現在の教職員の養成は国立に限つたことではないわけでありまして、ですから、国が責任を持つておるというのは実情からいつて私が言つたことでありまして、ここは僻地教員の養成については都道府県の任務としておるというふうに限定しないで、国が相当責任を持つたらどうかという意味で私は質問しておるわけです。
○政府委員(稲田清助君) 例えば北海道あたりにおきましては現在二級教員の養成、二年課程の増員というものを毎年いたしておりまして、二百人、百五十人という程度にやつております。これが若しいわゆる二年課程でありますると大学の課程として置きやすいのでございます、実際問題として。ただ差当りこれは仮免許状を目的としての養成でありまして、一年課程でありますので、むしろこれは大学外において大学が協力するほうが恰好がいいので、こういうことになつているのが実情でございます。ただ今御審議を願つております免許法の改正では、或る程度経過いたしますると、もうこれは仮免がなくなるのでありますから、二年課程の二級免許状授与の養成施設にこれは変るわけであります。そうなりますると、これは大学の施設としてもこれは置き替え得るかとも思いますけれども、併しやはり地理的の関係もございます。如何にも大学におきましては余り分校を作りたくないのでございまして、国が又大学以外の各種学校というものを持つこともこれは又いろいろな関係において例を開くこともはばかられますから、いろいろ研究問題でございます。国が力を抜かないで、十分力を入れるというような点については、御趣旨のように尽力いたしたいと思います。どういう形になるかということは、地方々々の状況に応じて或いは大学とし或いは大学以外にするか、これは研究さして頂きたいと思つております。
○荒木正三郎君 その次の問題として、これは高田委員からも質問があつたのですが僻地における学童の体位が低いということです。これは十分な資料がないということでありましたが、私どもこれは統計的な資料に基く意見ではありませんが、僻地における学童の体位は一般に低い、これは大きな問題だと考えておるわけであります。この体位の低いのをどうして引上げるということは、これは非常にむずかしい問題であると思うのです。併しここで文部省でなし得る問題としては、やはり学校給食の問題があるんじやないかというふうに考えるわけです。こういう点で僻地における学校給食の問題について一つ検討する必要があるんじやないかと私は思うのですが、そういう点文部省の見解を伺つておきたいと思います。
○政府委員(稲田清助君) 先ほど高田委員からも御指摘がございましたことでありますが、今日まで文部省といたしましては、調査も又それに対します施策も十分できないことを誠に遺憾に存じております。我々といたしましても僻地における医療の十分でないというような点或いは経済上のいろいろな問題その他で先生或いは生徒児童にも健康上の問題が十分にあることはこれは大問題だと考えておりますので、今後十分その点努力いたしたいと思つております。
○荒木正三郎君 それでは要望だけを申上げて質問を終ります。私はこの法案を忠実に実施するということになるならば、概算して国費が大体二十億程度必要になるのじやないかと思うのです。本年度は二億足らずの予算しか計上されておらないわけです。従つてこれは相当の努力を文部当局にしてもらわなければならんということになるのじやないか、そういう意味で、来年度の予算については十分な肚がまえで一つ予算を獲得するように努力してもらいたいということを要望して終ります。
○須藤五郎君 国庫の負担が施設のほうは二分の一ですね。私は大体僻地を見ると、僻地は非常に困難な財政状態だと思うのです。それで半額国庫負担したからといつてこの施設ができるようには考えられないのですが、そういう場合に政府はどういうふうにするつもりなんです。半額負担しなければ全然放置するということなんですか。どういうふうに考えますか。
○政府委員(稲田清助君) お話のように現在申請を待つて半額負担をやる、そういう関係だと只今御指摘のように申請にも及び得ない財政状況のものをどうするかという問題、これは一般に六・三につきましても一般の教育関係の国の補助が半額乃至三分の一負担という建前でありますので、今日こういう状況でございますが、あとは我々から考えますれば、これは一般に僻地というものの財政匡救というものを国が全面的に何か助成を講じて頂く、そうして教育については一般策によるということが普通の行き方だと思うのでありますが、まあそういう点につきましては単に教育の関係だけでは匡救できない僻地の条件があろうかと思います。一般行政問題として政府部内力を合わせてこの解決を図るべきだと考えております。
○須藤五郎君 そうするとその措置ができるまでは放置するということになつて、この法の精神と非常に相反する結果が私は生れて来ると思うのでございますが、文部省としてそれに対する責任をどういうふうに処置して行こうとするのですか。
○政府委員(稲田清助君) 先ほどもお話に出ました離島振興法とこの法律との噛合い等におきましては、離島振興法が一般の財源の供給に当つてこの特殊の問題をこの法律が当ることになる、離島ばかりでなく他の僻地におきましても今の離島振興法のようなものが拡張されることが一番私どもとしては筋が通るのではないかと考えております。差当りどうするかというお尋ねでありますが、本年度の予算及び只今まで成立しておりまする法律によりましては、これしかできないのじやないかと考えられるのであります。
○須藤五郎君 私はこの法案をずつと読みまして誠に結構だと思つたのですが、反対すべき筋合いの法案ではない、私も賛成したいと思いましたが、政府の作つた法案は皆そういうどつかに大きな抜け穴がある、笊みたいなもので、そうして肝心のところでそれをがちんとやるところがないわけです。ですから、いつも法案を作りながら目的を達しない、目的を達しないような法案を作つて人をたぶらかすような感じがして私は仕方がない、そういうわけで、あなたたちは非常に結構な法案と考えられるけれども、それにすぐ賛成だと言つて賛成しきれない面が出て来るのを甚だ私たちは遺憾だと思います。私たちが若し法案を作るならば、先ずそれらを解決してから作るのですね。そこに非常に手ぬかりがある。財政措置をはつきりして、僻地のそういう財政困難な所は国の力ででもそれをやるという方針を立てないでおいて、こういうことをやるのは私たちは非常に不満の点があるわけです。ですから文章で読んだことと実際を考えた場合非常に差がひどいということを甚だ私は遺憾だと思う。それに対しては今手の施しようがないということですね。
○政府委員(稲田清助君) 御尤もの点でございまして、関係省庁と十分協議いたしまして、将来にかけて十分遺憾ない対策を練りたいと思つております。
○委員長(川村松助君) 本案に対して御質疑ございませんか。 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(川村松助君) 本案に対する御質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(川村松助君) 御異議ないと認めます。 それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。
○相馬助治君 本法案に対して本委員会の理事会は慎重に考慮した結果、修正の意見もあつたのでありますが、その精神を盛り込んで各委員全員の御賛同を得て次の決議案を附したいという議が出たのでございます。私が代表してこの決議案を読んで各位の御賛同を賜りたいと思います。 へき地教育振興法案に関する決議案 本委員会は、へき地教育振興法案について、次の附帯決議を附して賛成する。 一、政府は、へき地における教育の実情を精確に調査把握すると共に、中央教育審議会等の適切な機関に諮問し、へき地教育に対する綜合的恒久的振興策を樹立すること。 二、政府は、へき地学校に勤務する教員及び職員の特殊勤務手当の増額その他必要な優遇措置を、可及的速かに実施し得るよう努力すること。 三、政府は、教育効果の向上を図るために、へき地の小規模学校を本校に統合する際は、その本校施設について、これを国庫補助の対象とする途を開くように措置すること。 四、政府は、市町村がへき地における学校健康管理の適正な実施のための学校給食、巡廻診療を行い、児童及び生徒の通学を容易にするため事業を行うときは、必要な国庫補助をなし得るよう努力すること。 五、政府は、へき地における教育の特殊事情並びにへき地学校の所在する地方公共団体の財政事情にかんがみ、集会室の建設のみならず、へき地の事情に即応するように、校舎寄宿舎の施設、設備についても、速かにその内容を整備するため、特別な基準を設け、且つ国庫補助、起債等についても特別な措置を講ずること。 六、政府は、へき地における学校が教育課程として実地見学を行う場合、児童・生徒の負担する費用について、その一部を国が負担し得るよう考慮すること。 以上は本委員会において附さんとする附帯決議の全文でありまするが、本院に回付されておりまする衆議院回付案にも衆議院の附帯決議がついております。この附帯決議を参考に供して特に本委員会においては生徒、児童に対する優遇措置を明確ならしめた点が一点、第二点は衆議院の附帯決議においてはその意図が必ずしも明確でないと思われる点がありまするので、それを救済する意味の文章上の考慮、この二点を加えまして以上読み上げた附帯決議を附さんとするものであります。何とぞこの点を御了解下さいまして、この附帯決議に賛同給わらんことをお願いいたします。なお社会党第二控室といたしましては、只今読み上げました附帯決議を附して、本法案は必ずしも完全なものではないのでありまするが、今後政府当局の善処を期待いたしまして賛成の意思を表明いたします。
○委員長(川村松助君) 速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(川村松助君) 速記を始めて下さい。
○須藤五郎君 文字の上においてはこの法案に対して私は別に反対をする意思を持つていなかつたのでありますが、併しこの法案の裏付けであるところの予算の面において非常に私は遺憾な点があると思うのです。というのは今防衛費に対して国民一人当り頭割り三千円の防衛費を使つている政府が、このへき地教育、こういう重要な問題に対してはこれだけの金しか出せないというその精神が私は気に入らん。今文部当局は、こういうことは国の政治の中で解決しなければ解決できない問題であるという答弁でありますが、今日の政治の方向を見ておるならば、いつになつてそれが解決されるか、こういうことは百年河清を待つということだと私は思うのであります。ですから、私先ほど申しましたように、貧困な僻地教育に対して二分の一国庫が負担するといつても、それはいつまでたつてもなかなか実績の上らない結果を来たすと思うのです。これはやはり全額国庫負担して、こういう僻地の教育を振興するならば全額国庫負担でやるという決意を持つような政府にならなければこの問題は解決しないと思いますので、私はこういうような、いわゆる羊頭狗的な法案が、たとえ表面に現われた文章が如何に美しかろうとも、この裏に流れておる精神が私は間違つておると思いますので賛成することはできません。反対をいたします。
○委員長(川村松助君) 速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(川村松助君) 速記を起して下さい。 ほかに御意見もないようでございますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(川村松助君) 御異議がないと認めます。 それではこれより採決に入ります。へき地教育振興法案、内閣提出、衆議院送付全部を問題に供します。本法案に賛成のかたの御起立を願います。 〔賛成者起立〕
○委員長(川村松助君) 多数でございます。よつてへき地教育振興法案は多数を以て衆議院送付の通り可決されました。 次に討論中にありました相馬君提出の附帯決議を採決いたします。相馬君提出の通り附帯決議を附することに賛成のかたの御起立を願います。 〔賛成者起立〕
○委員長(川村松助君) 多数でございます。よつて相馬君提携通り附帯決議を附することに決定いたしました。 なお本会議における委員長の口頭報告の内容等については前例によりまして委員長に御一任を願います。 それから議院に提出する報告書には多数意見者の署名を附することとなつておりますので、本案に賛成されたかたがたの順次御署名を願います。 多数意見者署名 山縣 勝見 相馬 助治 荒木正三郎 高田なほ子 長谷部ひろ 野本 品吉 松原 一彦 中川 幸平 本村 守江 吉田 萬次 高橋 道男 加賀山之雄 剱木 亨弘
○委員長(川村松助君) 二時半まで休憩いたします。 午後一時十八分休憩 —————・————— 午後三時十五分開会
○委員長(川村松助君) 只今から再開いたします。 文化財保護法の一部を改正する法律案を議題にいたします。五月十八日に本法案の提案理由の説明を聴取いたしております。質疑は本日が初めてでございます。総括、逐条一括して質疑して頂きたいと存じます。
○相馬助治君 質疑に入る前に私質したいと思うのですが、この法律案は財政措置を相当考慮しなくちやならないので、国の財政規模ということを抜きにしては審議でき得ない面もあると思うので、私は委員部を通じて大蔵大臣の出席を要求しておいたのですが、それはどのようになつておるのでしようか。
○委員長(川村松助君) 午前はどうしても都合がつかなかつたので、午後何とか都合をつけてくれと申込んでおるそうですから、今迎えを出しておるところでございます。 では御質疑のおありのかたは御発言を願います。
○須藤五郎君 この法案は余り分量が多いので、まだ一々よく読んでいないのでありますが、この管理団体の性質であります。ここには地方公共団体その他の法人を管理団体に指定するということになつておりますが、実際こういう規定だけで適者を得ることができるように考えていらつしやるのですか、どうでしようか。
○政府委員(森田孝君) 管理団体はまだ今度初めてでありますので、重要文化財の管理団体としては、適当な団体があつた場合にはその管理団体、ない場合には地方公共団体と考えております。併しながら従来の史跡名勝天然記念物につきましては、すでに管理団体の制度ができております。この場合におきましては殆んど全部地方公共団体が管理団体になつておるわけであります。ただ予想せられ得る重要文化財の管理団体につきましては、同様先ず我我としては地方公共団体を第一次的に考えておりますが、諸般の事情で地方公共団体が適当でない、或いは又地方公共団体が同意をしなかつたような場合におきましては、他の適当なる法人を管理団体として選びたいと考えておるわけであります。
○須藤五郎君 これには個人というものが一つも……。管理団体でありますから、こういうような選び方をしたのかもわかりませんが、管理団体に個人の参加、そういうことは一向に考えていらつしやらないのでしようか。この文化財のこういう管理をして行くには、やはりその道の玄人といいますか、知識、造詣の深い個人が参加するということか必要じやないんでしようか。その点はどういうふうにお考えですか。
○政府委員(森田孝君) 管理団体を指定する場合におきましては、只今仰せられましたような点も考慮して適当なる管理団体を選びたいと思つております。
○須藤五郎君 ではその管理団体にそういう適当な人がない場合にはどういうふうに処置なさいますか。
○政府委員(森田孝君) そういうような場合におきましては、国及び地方公共団体において十分にやはり指導、助言を与えて行く以外には方法はないだろうと考えますが、併しながら全然理解のない人ばかりの法人を管理団体に選ぶということは我々としては予想をいたしておらないのであります。
○須藤五郎君 あなたたちが予定している公共団体の中にそういう適者がないという場合は、どういうふうな方法をとられますか。
○政府委員(森田孝君) 現在地方公共団体におきましては全部現行の法律に基き、まして、文化財についての専門職員を各地方公共団体は全部置いておりますから、そうして文化財の担当の主事も置いておるわけでありますので、従つて地方公共団体におきましては、市町村は別でありますが、市町村につきましても、重要な市町村は全部そういうようなものは置いております。府県におきましては置いてない県は現在はないわけであります。
○相馬助治君 只今議題になつている法律を通読してみますと、今般改正しようとする政府の意図というものは、過去の文化財保護行政の実績に鑑みて必要な問題を最小限度に改正をして、その法の施行を適切ならしめたいという意図が現われておるという意味合いにおきましては、この法律の持つ修正点そのものについては、私は別にさして問題を発見し得ないのです。ただこの改正に関連して問題になることは、文化財保護法というのは明らかに保護法なのであつて、国の財政措置というもの、地方公共団体の財政措置というもの、これがどういうふうになるかということで問題はきまつてしまうと、こういうふうに考えておるわけです。そこで第一に伺いたいことは、今度作る管理者、管理委員会、そういうものに対して一つのこの法律が通つたあとにおいては、どのような構成でどのような指導をして行くかということが具体的に事務局等においては考慮されているのですか、それらについて委員長から、又必要においては事務局をして代りに答弁せしめても差支えありませんが、承わつておきたいと思うのです。それだけ一つ。
○政府委員(高橋誠一郎君) 只今の御質問でございまするが、我々といたしましては随分国家管理の必要を感じておるものなどもございまするが、今日のところ、まだそこのところまでは参りませんのであります。只今御質問のありましたような地方公共団体そのほかのものに管理を託するというところに至つておるのでありまするが、この点に関しまして財政的な裏付けと申しまするか、これは事務局から大蔵当局と協議いたしまして、経費は支出せられまするような了解がついておると委員会は承わつております。
○相馬助治君 私が御質問申上げたことについて財政的な面についてのお答えがあつたのですが、私は委員会の構成、指導面にまで及んで積極的にどういうような構想があるかということをお尋ねしたいと思つておるのですが、今の委員長の御答弁で明らかになつたんですが、実は今度管理委員会というようなものを設けて、無住の寺、戦いは管理が十分でない場所に置かれておる重要美術の保護というようなことを考えたことは非常に時宜に適した進歩的な考え方だと思うのです。併し私は今委員長も触れられましたが、当然国が国の責任と義務において管理しなくてはならんものが多いし、それが又理想ではないかというふうに考えておるのです。そこで委員長に重ねてこの点について伺いたいことは、文化財保護委員会としては国の管理を必要とするという観点に立つて政府部内に向つてさような要求をされたのだが、財政規模その他の面からやむを得ず過渡期的な手段として今般改正しようとするような管理委員会の設定ということに落着いたのか、それとも国の管理というものについては政府に未だ正式に要求はしていない、ワンステップとして今般のような改正をして、次の段階に国に向つてさようなものを要求するというのか、このことを伺いたいと思うのです。私は具体的な例を引いて私が尋ねようとする気持を表わしたいと思うのですが、私は唐招提寺を見て二つの驚きを持つたのです。その一つは実に立派な尊い国の財産とも言うべき古美術があのお堂に納められておる、そうしてそれが又実に幾星霜を経た今日においても輝くばかりの光を以て我々に接しておる。この驚きが一つ、第二の驚きは、にもかかわりませず嫌な管理人もいないし、それから又光線の工合、それから雨漏りというようなことも考慮して見ても、その日には雨は降つていなかつたのですけれども、一体暴風なんというようなときには、これは室内にまで雨の粒が入つて来るのじやないかということを感じたことと、それから塀を見ても不心得者を守るというような防備態勢というものは何一つできていない。いわゆる邪な考えなものがあるならばやすやすと古美術を外に持ち出すことが可能であるというような状態におかれておる。この驚きが第三の驚きであつたわけです。そこで私はこれは是非とも国の財政状況というものの苦しいことは知つておるけれども、悔を残してからでなく、今においてやはりこういう問題は国家管理に委ねるべきが至当である、こういう信念めいた気持を以て唐招提寺を辞したのですが、私はそういう気持を持つて今の問題を委員長に尋ねておるのであります。
○松原一彦君 相馬氏のお尋ねに関連して私も承わつておきたいのは、今度の中に重要民俗資料の公開というのもありますし、又政府提案の理由を読みましても、民俗資料の保護ということをば非常に重きをおいておられるのでありますが、この民俗資料はどうしても一堂に集めて散逸しないようにして、相馬氏の言われる通りに、一面においては適宜に保護し、一面においてはこれをば民族の歴史的変遷を知る材料として公開する必要があると思う。いわゆる民俗博物館、これが日本にはないのでございまして、かねて我々は非常に遺憾に感じておつたのでありますが、たまたま民間に篤志者があつて、渋沢さんとかその他いろいろな人があつて小規模のコレクシヨンはやつておいでになる。それも今では保管すべき場所がないために大変危険な状態に置かれておるということを聞いております。値いの高いものならば個人が思惑から言つても珍蔵してこれが破損のないように保護せられますでしようが、いわゆる民俗資料となると、げてもの等に属するような、市場に出しても大した価値のないものが多いのじやないかと思うのです。そういうものは今のうちに集めて保護し、且つこれを適当に展観するようにいたしたい。多分相馬氏の言われるのもその点にあるのじやないかと思いますが、これはすでに計画をお持ちではないかと思うのであります。お持ちでありますならばこの際一応計画の要点をお話願つて審議の資料にいたしたいと思います。
○相馬助治君 補足しておきますが、実は民俗資料については私も尋ねたいことがあつたのですが、私の質問は重要美術に対して今日管理の行届いていないものに対する今般の文化財保護委員会が採らんとする処置、この問題についてのことを今私は一つの問題として出したのです。ですから、松原先生の申されたことと材料は一致していないのですが、その問題も非常に重要だと思いますので、第二段の問題として民俗資料のことも一つお答え願えればいいと思うのです。私が言うたのは重要美術についての管理の問題を指摘しておるのです。
○松原一彦君 唐招提寺を例に引かれましたが、唐招提寺に保管せられておるのは必ずしも美術ばかりでなくして、その当時の皇室でもつていろいろ持つておられた当時の文化を表わすものがある、これは御承知の通りであります。それは重要美術でないけれどもが、その当時の生活を表わす生活文化の資料として保存しなくちやならん点においては価値は同じだと私は思うのです、美術ばかりじやなくして。そういう意味で、相馬氏の要求の中には同様のものが含まれておると思いますから、関連してお尋ねしたわけであります。それは相馬氏の言われるようなものは博物館にも保護する途があるでしよう。併し我々の言う燈火の変遷とか或いは履物の変遷とかいつたようなものは博物館などでは取合つてくれないのです。どうしてもこれは民俗生活資料の収集する場所がなくちやならない。そういう意味におきましてまあ関連して構想がおありになりますならばお聞きいたしたい、こういうわけであります。
○政府委員(高橋誠一郎君) 只今相馬さんからの御質問でございましたが、例にとられましたのが唐招提寺でございます。委員会に属しまする者、我々も唐招提寺を見まして、実に何と申しますか傷心に堪えなかつた次第でございまして、これは私どもが聞くところによりまするというと、住職が他を兼ねておりまするようなために十分唐招提寺の管理のために力を尽すことができない。で、これを国家管理にする必要が先ずありはしないか。我々の間に一番先に話に上りましたのは唐招提寺であつたのでございます。併しながらこれはまあ一つ唐招提寺のみに止まりませんで、次いで少くも私の感じましたのは海龍王寺でございました。これは全く無住の状態に置かれておりまして、どこで管理しておるのかと聞きまするというと、西大寺が管理するということになつておりまするが、西大寺も苦しいので管理の任に当ることができないというので、近いということで法華寺が管理することになつておるということでございましたが、併しその法華寺も管理のために余り力を尽していないように思いました。まあこういう例がかなりございまするので、かくのごときものは国家管理に移さなければならんのではないか、こういうふうに我々考えたのでございまするが、これを国家管理に移しまする場合には所有者そのほかの者に対しまして十分な考慮を払わなければならんのでありまして、我々重要な文化財は国家管理にしなければならんものであるということを実は理想とはいたしておるのでございまするが、これに向つて幾分なりとも接近したいと思いまするのみで、直ちにかくのごときものを全部国家管理に移すということには非常な困難が伴うのでありまするし、又考慮しなければならん点が多々あると考えましたので、先ほどお答えいたしましたように大蔵当局とも交渉をいたしまして今回はこの改正案に記しましたような点にとどめた次第でございます。 それから松原さんからの御質問でございました民俗資料博物館、これを設けます必要は我々かねがね痛感しておるところでございまして、これは重要文化財などと違いまして、一点々々の価格というものの極めて少いものでありまするので、その所有者もとかくこれを等閑に附しがちのものでございまして、失われる危険は一層大であります。そして又一点々々見ましたところでは大した価値もないのでありまするが、併しながらこれがたくさんに集りますることによりまして非常な価値がそこに生じて来るのでございまして、いろいろこうい貴重な資料になりまするものを所有しておる人たちがあちらこちらにあるのでございまするが、併しながらこれを寄附したいと思いましても国家に適当な博物館がない、民俗資料博物館と称しまするものがないということのために、これを差控えております。そうして今日のような情勢になつて参りまするというと、その貴重な収集もとかく損傷をされがちでございまするので、我々といたしましては一日も早くかくのごときものを収めまする国立民俗資料博物館とも名付くべきものを建設いたしまして、ややともすれば散逸するとか損傷する虞れのありまするものを収容いたしたいと考えております。先ほどお名前の出ました渋沢敬三氏などの集められましたところのものも、こういうものができまするならば喜んで寄贈をせられることと存じております。又我々の委員会におきましては、委員の中の一人でありまする矢代幸雄氏が欧米を廻つて帰られまして、やはりこの民俗資料博物館建設の必要を痛感せられ、次いで森田局長がやはり欧米を廻りまして同様の感を抱いて参りまして、ぜひこれを実行に移したい、こう存じまして、まず最初準備費といたしまして予算に組み入れてもらいたいと考えたのでございまするが、これらのものは削られてしまいまして、いま暫らくその準備のための行動をすら差控えなければならんということに相成りまして、誠に遺憾に堪えないところでございまするが、余り経費をかけません限りにおきまして今年も又この博物館建設への途を進んで参りたいと考えておる次第でございます。
○須藤五郎君 お尋ねしますが、文化財保護委員会の仕事として歌舞伎の記録映画をとられているように伺つているのでありますが、私は歌舞伎の映画をとることはいいことだと思いますが、今地方をずつと旅行しますと、昔からのいい民族舞踊というものがたくさん残されていると思うのですね。特に熊本それから東北地方にはすばらしい踊りがたくさんあると思うのです。ああいうものこそ今のうちに早く記録することを考え、又それを保存することを考えておかないと、歌舞伎が滅亡する以前にそういうものはなくなつてしまうのじやないかと私は心配しているものなんです。民謡のほうでは何といいましたか私のよく知つている人ですが、音楽を採符をしてずつと一冊の本に作つてやられておりますが、踊りそのものはそういうことがなされていないと思いますので、そういうことをあなたのほうで考えていらつしやるかどうか、そうして又なさつていらつしやることがあるならば、それをまず参者までに伺つておきたいと思います。音楽のほうは町田君が音楽のほうは採譜しておりますけれども、踊りのほうの記録がないんじやないかと思います。
○政府委員(高橋誠一郎君) 只今の御質問誠に御尤もでございます。この各地方の芸能につきましても丁度お話のありましたと同様なことを我々も感じておりまするのでございまして、この点におきましても予算の許しまする限り余りたくさんはとれないのでありまするが、一年に大よそ三本くらいはとつて参れるのではないかと存じております。それで最も優れたものであり、そうして亡びる虞れのありまするものを先にいたしたいと存じております。音楽のほうなどでは町田嘉章氏のとりましたもの、殊に同君によりましてできましたところの労働歌の録音などが極めて立派なものだと考えておりまするが、この舞踊に使われまする音楽などは、やはり他の方面において計画せられておりまするところのもの、例えばNHKの音のライブラリーであるとかというようなところで計画せられておりますものと連絡いたしまして、やはり舞踊に使われまする音楽も委員会といたしましてでき得る限り多く録音して参りたいと考えております。そのほかに、先ほど申上げましたこの映画化のごときことも考えております。
○須藤五郎君 特にこの際高橋さんに御記憶しておいて頂きたいと思いますことは、音楽でも、長唄とか、清元とか、常盤津というものよりも、我々民族として最も重要なものは民謡だと思うんです。地方に残つている民謡が我我の民族の本当のエツセンスを持つていると思いますので、その点を十分配慮して頂きたいと思うんです。私は昨年中国へ行つて見て参つたのですが、中国には民族的な博物館がすでにできているのです。何千年前からの中国民族の発展の過程を系統的に科学的に整備した博物館ができております。それと同時に民族音楽それから舞踊、そういうものを今非常に奨励してたしか中国の民族は四十何種族あるようですが、その四十何種族の固有の文化を今非常に重要視して、政府が施策の一つとして取上げて、民族文化の高揚ということを今やかましく言つております。ですから、北京で劇場へ行きましても、ほうぞれの地方の音楽と舞踊をそこで公演して非常に盛んにやつておる、そういうことを見て参つたのでありますが、日本はそういう点が非常に稀薄だと思うんです、今の日本の文化運動としましても。ですからあなたのほうで、まあ年に一回くらい青年会館で民族舞踊の会などやつていらつしやるように思うんですが、あれをもつともつと私は盛んにする必要がある。それから中央で一回やるだけでなしに、全国的に各ブロックでそのブロックの持つておる民族舞踊なり、民族音楽なりをやはり保存する意味で奨励して、それで大会を持つ、地方的な大会を持つて関心を高める必要があるのではなかろうかと、そういうように私考えておるんですが、そういうことが今日一向なされておらないと思うんです。その点に関する高橋さんの御意見は如何でございますか。
○政府委員(高橋誠一郎君) 只今の点ですが、決してこの文化財保護委員会ではこの方面の保護を怠つておるわけではございませんが、この無形文化財の中におきましても、この方面の保護に相当困難を感じておるのでありまして、専門審議委員として依頼いたしました人たちの中にもこの方面の権威者と認められまする者を得ますることがなかなか困難でございまして、いろいろ選考に選考を重ねました後におきまして、只今若干名が専門審議委員として選ばれておるのでございまするが、決してこの点十分とは申されませんので、どうぞ一つ各地方における保存に価するような民族舞踊なり或いは民族音楽なりがございまするならば委員会にお知らせを願いたいと存じます。我々といたしましては早速調査に着手いたしまして、保存すべきものであるならば、できる限りこれを保存して参りたいと存じております。それから年に一度だけこの郷土芸能の大会を開いておりまするが、これは文部省の芸術祭と共同で主催いたしております。そのほかに丁度今月から始まつておるのでありますが、国際演劇月と称しまするものがございます。これは文部省とは直接関係はないのでございまするが、このITIと申しまする団体が中心になりましてユネスコの協力を得てやつております。本年からはこの郷土芸能がやはりこれに加わつております。それからして青年の芸能のようなものも加わつておりまして、各地におきまして相当華やかにこれが演ぜられておることと存じております。まだ報告は聞いておりませんが、こういうようなものと協力いたしまするならば、幾分成果を挙げて行くのに役立ちはしないかとひそかに考えております。
○須藤五郎君 私のお願いしたいのは保存ということだけでとどまらないで、もう少し民族文化を推し進めるような、高揚するような、育成するような方向に一つ働いて頂けないものか、そういうことなんです。保存だけでとどまつては私は消極的なことで、保存は勿論必要ですが、それよりもう一つ育成する形に行つて頂きたいということを私意見として申上げておる。それで私は昨年ですか、或る新聞で見まして、琉球の踊りの名手が日本に、東京におつて、そうして琉球舞踊では生活ができないので、どこかダンスホールか何かの計算係か何かになつた。ところがそこの生活が余りに汚いので厭になつて又出た。そうして生活困難をしておるというような話を何か新聞紙上で私見たことがあります。それで高橋さんもその道の専門家ですから、琉球舞踊については御造詣の深いかただと思うのでありますが、私ども琉球舞踊を大変好きでずつと以前から見て来ておるのであります。それでやはりあれも無形文化財として保護に値する十分の価値のあるものと私は確信するものなんです。というのは非常な日本の舞踊と違つた特色を持つておると思うのです。日本の舞踊には音楽で言うと、三拍子の踊りというものは少いのですが、琉球の舞踊にはいわゆるワルツ的な三分の四の、三拍子の踊りなどもたくさんありますし、それから日本の舞踊は大体歌詞を踊つておる点が大部分だとと思うのですが、琉球舞踊は音楽を踊つておる。そういう点で非常に日本のいわゆる舞踊と違つた要素がたくさんあると思うのです。そうしてむしろ私はこれから国際的に申しますならば、日本の長唄や清元の踊りよりも琉球の音楽のようなああいう形式の踊りのほうが国際的には理解されやすい。日本の舞踊として理解する点が非常に早いのではないかというふうに私は考えておりますので、琉球舞踊を私は非常に高く評価しておる一員なんです。それで是非琉球舞踊を重要無形文化財の中に採入れて、あれをもつと発展し保存するようにあなたのほうでお考え願えないかということが一点です。それから私は桂離宮の立派さを非常に称揚するものですが、私は昨年家族を連れて実は見物に行つたことがある。ところがその見物の手続きが非常に困難なんです。うるさいのです。京都御所の中にある宮内庁の出張所のあるところへ行つて言うと、その社会的地位とかいろいろそういうことをば第一に尋ねられる。それから会社員が参観しようと思うと、会社の資本金が第一何千万円以上の会社の社員でないと見せないというようなことが条件になつて来るのですね。ですから最近の新らしい小さい会社のものはそれが拝観できない。私はそのときその条件を聞いて実は驚いたわけなんです。それで今日青年たちがあれを見れば、実に感銘深いものがあるだろうと、私も非常に感銘を得て帰りましたが、そういう点のないように一つあれをもつと手軽に国民一般が参観のできるような方向に一つ持つて行つて頂きたいと思うのです。而もその京都御所の出張所が非常にやかましいことを言つて、私もそうかと思つて行つたところが、現場へ行くとどこかのお茶の先生か何か知らないような様子の人がいる。その道のボスがおりまして、そうして誠に簡単に大勢入りなさい、入りなさいというようなことで見せておりまして、どうもそこらに了解の行かないものを見て参つたのです。ですから、その点も考慮なさつて、日本の青年たちがあの昔からの文化に気楽に安易に接することができるように、この点も一応高橋さんが大いに力を入れて考えて頂きたいと思うのですが。
○政府委員(高橋誠一郎君) 全く御同感でございまして、琉球の舞踊は私どもも子供の時分からぼつぼつこちらへ参りますごとに見ております。まだ一般の人たちはあの琉球舞踊の価値を本当に認めるというところには参らんようでございまして、何年か前に文部省の芸術祭の受賞を決定いたします審査委員会において、その価値が認められなかつたということのために、或る審査員から琉球舞踊のよさはここにお集まりになりました審査員諸君には到底おわかりにならんだろうというような言葉を聞かされたことなどもございまして、その後におきましても我々常に考えてはおるのでございまするが、まだこれが具体化されるに至つておりませんことを甚だ遺憾といたします。 それから桂離宮に関しましても全く御同感でございまするが、併しこれを保存という点から申しまするというと、やはり或る種類の制限は付せなければならんということは考えまするのでありまするが、併しながらそれが今お話のございましたような特殊の人たちにのみ拝観の途が開かれておるとか、階級的な差別がここに付けられておるとかいうようなことを、前から私どももぼつぼつ耳にいたしまするので、甚だ遺憾と考えております。何分宮内庁の所管に属しておるのでありまして、宮内庁の諸君とお話合う機会などにこれまでも一、二度さようなことを私も申した記憶がございまするのでありまするが、今日のところでは、ただ宮内庁と話合うということ以外に途がないように存じまするので、今後又機会を得ましたならば、こういうような点を宮内庁の諸君とよく話合つて見たいと存じております。
○須藤五郎君 それからもう一つ私はあなたの御尽力をお願いしたい点があるのですが、ずつと私は戦争中にですね、私は三重県の生まれなんです。宇治山田が非常にまあ何といいますか、町の繁栄のためにいろいろなことを考えた。私に何か意見がないかというお尋ねがありましたとき、私は伊勢の大神宮の中にあるあの雅楽ですね。雅楽と舞踊を折角年に百万、二百万という子供たちがここへ来るのだから、夜山田には何にも見るものがない、つまらん遊びしか覚えて帰らんのだから、来るときに伊勢の大神宮の雅楽を私は公開して日本の昔からの舞踊を、踊りと音楽を聞かしたらいいのではないか。そういうことを私は意見を述べたことがあるのです。ところがその当時は大神宮の雅楽というものはなかなか門外不出で、そういうことができないのだという意見でそのままになつたのですが、昨年あたりから宮内庁のここの雅楽が僅かの期間ですが、一般に公開されて、私もそれを昨年ですか、一昨年ですか拝観したわけなんですが、非常に素晴らしいものだと私は思うわけなんです。あれもただ保存というだけでなくて、あの舞踊の持つ良さというものをやはり一般人に私は見せる必要があるのではないか、そういうふうに考えるのです。ですから宮内庁の中に閉じこめておかないで、あれを劇場になり、公会堂の中に持ち出して又宮内庁の雅楽堂は非常に良い講堂ですから、あそこをもつと長時間に開放して、長期間に開放して一般の人たちに鑑賞させる。そういうことも私はやはりやるべきではないか、そういうふうに考えるのです。あそこに昨年行つたときでもやはり国会議員とか或る特殊の人たちだけに限られておるわけです。これは桂離宮を見に行くときには、大会社の係以上とか課長以上でないと見せないという規則と同じように、やはり特定の人に限られておるという点に非常に私は大きな不満を持つのです。ですから、折角ああいう良いものですから、もつと一般に鑑賞させる機会というものを一つ考える必要があるのじやないか、そういうように私は考えるのです。その点に関しましても高橋さんの一つ御尽力を私はお願いしておきたいと思うのであります。
○政府委員(高橋誠一郎君) 宮内庁の雅楽でございますが、これも一再ならず宮内庁の係の人たちと話合いましたのでありますが、これは宮内庁のほうでもやはり公開ということにこれからは努力するということを頻りに申しておられまして、昨年でありましたか、一昨年でございましたかの芸術祭からは、これが参加することに相成つております。併しながらあららでは何か費用がないということで、何という役の人でございましたか、雅楽のほうの係をやつておりまするその主任者が、みずから自腹を切りまして、弁当代そのほかを出しておる。それにもかかわらず、文部省はこれに関して何らの感謝も捧げていないというような非難などを受けたことを記憶いたしておるのでございまするが、文化財保護委員会といたしましても、営内庁の諸君と協力いたしまして、ただ一回の芸術祭のみならず、広く一般にこれを観賞いたします機会の与えられまするように力をいたしたいと存じております。 それからその前にお話のありました宇治山田の雅楽、これにつきましては、只今文化財保護委員会におきまして、調査を進めておるということに相成つておりまするので、近いうちに或いは実現せられる運びに至るのではないかと存じまするが、専門審議会そのほかの意向を確かめません今日におきましては、まだ確答は申上げかねるのでございまするが、その方向に向つて努力いたしてはおりますのでございます。
○須藤五郎君 私がこういうことを申上げますのは、私はやはり今日の敗戦後の日本人が、余りに民族的な自信を失い過ぎているというふうに私は考えているわけなんです。それでやはり民族的な文化を通じて、私たちは私たちの民族が、立派な民族だということを、やはり自信を持たす必要があると思うのです。今はもう全くアメリカ文化に陶酔してしまつて、みずからの持つておるよさというものを、実際今日の青年は忘れがちになつている傾向があるのではないかという、そういうふうに私は感じておりますので、特に民族文化を通じて自分たちの民族が立派な文化を持つている民族だという誇りを身に着けるように、そういうふうに私はして行きたいと思いますので、只今のような質問を実は私はして参りましたので、この点どうぞ御配慮をお願いしておきたいと思うのです。 それからこの条文でありますが、何といいますか、補足説明の中に、森田さんの説明の中に、無形文化財の選定には、その無形文化財の価値以外の判断が加わつていたのでありますという条項があるのですが、この条項は私には判断ができないのでありまして、この価値以外の判断というのは、どういうことを意味しているのか。
○政府委員(森田孝君) 只今の現行法の六十七条、六十八条が無形文化財の条文でありますが、その六十七条によりますというと、国で選定する無形文化財というものは、価値が高いというほかに、もう一つ国が保護しなければ衰亡の虞れがあるという判断が加わつておつたのであります。その点を補足説明のときに申上げたのであります。
○高田なほ子君 私は三点についてお尋ねをいたします。先ずこういう時世に文化財保護のいろいろな措置が講ぜられましたことについて、心から敬意を表します。第一番にお尋ねをしたい点は文化財の保護、これを管理団体を作つて、管理団体が責任を持つてこれを保護する、こういうような一つの行き方であります。私の考え方は、基本的に日本の古来の文化財というものを保護して又それを高い民族文化として末長く日本の国に伝えて行くためには国営にしなければならない、基本的にはそういう考え方を持つておるのです。併しそれは一つの理想であつて、その方向に行く一つの方法として、こういうことが講ぜられたということはよくわかるわけでありますが、ただお尋ねしなければなりませんのは、この第三十二条の管理団体による管理の中で「管理団体が行う管理に要する費用は、この法律に特別の定のある場合を除いて、管理団体の負担とする。」管理団体がその費用を負担しなければならない、この費用の捻出方法について、これは四十七条の第三項に「管理団体は、その管理する重要文化財を公開する場合には、当該重要文化財につき観覧料を徴収することができる。」ということがございます。この前申上げたことと、今申上げた観覧料の徴収ということと、これはどういう関係を持つておりますのか、はつきりとここでして頂きたいと思うのです。それはなぜかと申しますと、管理団体の負担費用が捻出されない場合に、その費用としてここに観覧料を徴収するという行き方であるのか、それとも又別個の考え方で観覧料が徴収されて行くのか、その関連が十分私に呑み込めませんのでお尋ねを申上げます。
○政府委員(森田孝君) 管理せられます管理団体の経費の措置についても、大体予測でありますが、先ほど委員長から御答弁申上げたように、我々のほうといたしまして、来年度より新らしく管理費の補助を考慮して参るという点について、財政当局と折衝を進めておりまして、具体的な協議の段階に入つておるのであります。従つて国費の補助が管理費の一部を離すということと、その他に所有者がこれによつて利益を得た場合におきましては、その管理費の一部を所有者に出させることができるという規定があるわけでありますが、従つて所有者の負担し得る能力がある場合においては、その所有者も一部を負担してもらう、それから同時に昭和二十六年から文化財に関しての特別平衡交付金が交付されておるのでありまして、この特別平衡交付金によりまして、管理費の問題も、当然に考慮されて参ると考えておるわけであります。観覧料の問題につきましては従来も又保護の全きを期するために、これが又文化財保護の主要目的である保護と同時に、何と申しますか、活用、保護及び活用となつておりまして、その活用という目的を達する、この二つの目的から観覧料を徴収することができるということを考えておるわけであります。従いまして、活用の点と、それからもう一つはその費用によつて保護の全きを期して行く、管理の全きを期して行くということが入つておりますので、只今申上げました、管理団体の管理につきましても、只今の観覧料による問題がその一部になして行かれるということを予定しているわけであります。
○高田なほ子君 御趣旨のところはわかりました。併しながら重要文化財について今日只今それを所有しているかたが、本当にこれを後代に残し、又日本の文化のためにそれによつて貢献しようというような、高潔の精神を持つていられるということであれば問題は別でございますが、ただそれを利用して、観覧料を取つてそうして若干利益に供したいというような気持が起つた場合に、これが悪用される危険がありはしないか、むしろ重要文化財を保護し、又それを活用するという法の精神とは外れて、儲け仕事にその文化財が使われるような虞れがないのかどうか、そういうことになつたのでは折角の法の精神というものが無視されるのではないかということをお尋ねしておるのですが、どうでしよう。
○政府委員(森田孝君) 只今の御懸念誠に御尤もでありますけれども、従来並びに現在の全国の例から見ましても、管理費の一部分の補充に充て得れば非常に結構な状態でありまして、管理費を上廻つて金儲けになるという例は考えられないのであります。ただ例えて言いますというと、日光の二社一寺というような特殊の例はあるのでありますが、これは併しながら文化財の観覧だけを考えた観覧料ではないのでありまして、これは社寺の見物という点が非常に入つておるのでありますから、こういう特殊の例は一、二あるのでありますけれども、全国の重要文化財の観覧という場合におきましては、管理費の何分の一にしか当らない、或いは又管理費として考える場合においては殆んど言うに足らないというような収入しかないのであります。従つて、金儲けのためにやるということは殆んど不可能だと考えていいのではないかと考えております。
○高田なほ子君 それから第三十二条の第五項でございます。この第五項の場合には、重要文化財の所有者又は占有者は、正当な理由がなくて、地方公共団体その他の法人が行う管理、その管理の適当な措置を拒んだり忌避したりしてはならない、こういうことが書いてありますが、これは注意規定のように見られますが、若し妨げたり忌避したりした場合には、この三十二条の第一項の精神というものが無視されて来るのではないかと思いますが、この関連はどうですか。
○政府委員(森田孝君) これについては、罰則の規定があります。従つて、単なる注意規定ではないのであります。
○高田なほ子君 そういたしますと、罰則の規定があると、こういう管理をする場合には、その所有者の同意を得なければならないということになつていますが、その同意と罰則とはどういうことになつて来ますか。
○政府委員(森田孝君) 最初に管理団体を指定する場合において、所有者の同意、三十二条の二であります、「あらかじめ、当該重要文化財の所有者及び権原に基く占有者並びに指定しようとする地方公共団体その他の法人の同意を得なければならない。」ということになつておりまして、あらかじめ同意を得て管理をするわけであります。
○高田なほ子君 そこで、同意をしない場合にはどういうふうにしますか。それはここの第五項の注意規定しかないわけですね。
○政府委員(森田孝君) いや、同意をしない場合には、管理団体による管理はできないわけであります。
○高田なほ子君 その場合には、それはそのまま良識に待つと、こういうことになつて来るわけでございますね。
○政府委員(森田孝君) さようでございます。
○高田なほ子君 今日現実問題としてそういうようなものが幾つかございますか。
○政府委員(森田孝君) 只今申上げましたように、重要文化財の管理団体による管理についての規定は、今回の改正によつて初めできるわけでありますので、お説のようなケースはこれからの実績に徴さなければわからないわけであります。
○高田なほ子君 それから一つお伺いしたいのですが、日本の文化財保護委員会の国際的な文化財を保護するという機関或いは申合せのようなものがあると思いますが、日本の文化財保護委員会の国際的な地位というものはどういう地位を持つているのですか。
○政府委員(高橋誠一郎君) 最近にハーグで開かれておりまする会議で、武力紛争から文化財を守ります条約が締結せられることに相成つております。で、こちらからオランダの大使が出席いたしまして、その顧問といたしまして、京都博物館長の神田群一郎氏、それから文化財保護委員会の事務局の次長をしております岡田孝平氏、両氏が出席いたされまして、いろいろ折衝いたしたのでございまするが、こちらの要求いたしますることで結局認められるに至らなかつたところのものがございまするので、この点も甚だ遺憾といたしておりまするが、とにかくごの条約に加入いたしましたということによりまして、国際的に或る程度までは日本の文化財を保護するのに役立つことと存じます。手紙を以ちまして報告は受けておりますが、やがてこの三十六日に帰えることになつておつたのでございまするが、会議が延期になりましたがため、そのほかの理由によりまして、いま暫らく帰えることを延期しなければならんと、こういう手紙を昨日受取つておりますので、帰りましたならば又この点につきましていろいろ詳細の報告を受けることと存じます。
○高田なほ子君 文化財を武力から守るという、こうした条約に対して、日本の文化財保護委員会がそれに日本の政府を通して参加し得ると、こういうような形になつておるのですか、任意に今回は出席したのでございますか。
○政府委員(森田孝君) この件につきましては、すでに一九五〇年だつたと思いますが、ちよつとうろ覚えでありますので、間違つておるかも知れませんが、ジュネスコの主催で加盟各国の専門家による起草委員会が開かれました。そこで文化財のほうからは、文化財の建造物課長が政府代表として出席をいたしたのであります。そこで起草いたしまして、その条約案につきまして加盟各国に意見を求め、その意見によつて若干修正したものが今回の条約案の原案になつておるわけであります。そうして、これは勿論日本政府の代表として、日本政府が参加をいたしておるのでありまして、去る十四日に一応会議は終了いたしまして、欧洲各国は調印を済ませたそうでありますが、本年末まで、に調印すれば加盟国になり得るというので、日本におきましては原案を持帰つて審議した上で調印するということになつております。なお、大きい国ではソヴイエトとアメリカとイギリスが年末までに調印をするというので、この公演で調印はしなかつたそうであります。以上御報告申上げます。
○高田なほ子君 この法律の中に、史跡、名勝、天然記念物にして原状変更をしたものに対する原状回復命令の制度が設けられております。私はこの際これを非常に重要視しておることは、今度MSAの協定を受容れまして、そうしたMSA協定の第八条の中に明記されておる日本の負う軍事的な義務、日本の負わなければならない軍事的な義務を履行するために、防衛二法案が国内法として今審議されておる。この防衛二法案の中で、防衛出動時におけるいろいろの諸規定が設けられております。この中で特にここでお尋ねをしなければならないのは、第百三条の中に、自衛隊が非常時に出動しなければならないような場合に、病院、診療所、こういつたような施設、それから土地、家屋、それから物資の生産、集荷、販売、配給、保管、いろいろのものが先ず優先的にこれを提供して行かなければならないことがここに書いてあるわけなんです。こういうふうになつて参りますと、自衛隊の任務遂行上特に必要があると認めるときは、内閣総理大臣が告示して定めた地域内に限つていろいろのことができる。その地域内に、天然記念物、史跡、名勝、そういうようなものが存置された場合に、そしてそれが活動のために破壊された場合、この法律は誰に対してどういう責任を負わせて来るのか、私はそういう点をここではつきりと伺つておきたいと思つております。
○政府委員(森田孝君) 只今の御質問の、実は私は防衛法案については全然知りませんのでよくわかりませんのですが、現在の駐留軍との関係については、行政委員会を通じまして文化財についてはこれを尊重するような協定が目下結ばれようといたしております。それからなお自衛隊につきましては、先ほど申上げましたように、武力紛争時におけるところの文化財保護に関する条約というものは、一日一で言いますというと、文化財を赤十字と殆んど何様の取扱いをするという条約でありまして、この条約を結ぶ限りにおきまして、軍事基地或いは軍事の演習その他の軍事行動に関して、日本自身においても国全体としてこれを守つて行くという義務を負わされるわけであります。なお現在におきましては、各関係の地区長官と十分その点につきましてはその都度連絡をいたしておる程度でありますが、近き将来においてこの条約に日本が加盟することになれば、なお法律的にその点が確保されることになるだろうと考えております。
○高田なほ子君 私はこの問題は、現在只今はさしての心配はないかと思いますけれども、併しこの防衛隊の法律とこの法律とは不可分の関係を私は持つて来る非常に重要な点ではないかと思うのですが、日米間における軍事基地として必要なもの、地域として必要なもの、そのものの中に我が国として重要な史跡、名勝、天然記念物、こういつたようなものがあつた場合に、日米間における協定でそれが保護せられると、こういうお話でございます。その協定はどのくらいまでに一体話が進んでいるものか、どのくらい本気にそれが考えられているものか、私はやはりその本気の度合いをもう少し伺つておきたい。なぜなら、人を信じないということはよくないことでありますし、勿論国際的な話合いを信じないということはよくないことでありますが人間の、心に戦争というような気持が少しでも芽生えている限りは、文化を愛し、史跡、名勝、記念物を本当に保護しようという、そういう本当に平和な国家を栄えさせて行こうとするような精神が、往々にして蹂躙される虞れがあるのです。そういうことは考えたくないけれども、そういうことを心配するわけなんです。でありますから、その協定の話合いがどのくらいまでに一体進んでおりますものか、その点を重ねて承わつておきたいと思います。
○政府委員(森田孝君) その点につきましては、外務当局が中心で具体的に進んで、その都度我々のほうの意見も徴し、又我々のほうの希望を聞いてその会議に臨んでおりまして、我々折衝の当面には当つておらないわけでありますので、現在の段階は申上げられないのであります。併しながら、只今までの報告では、大体我々の希望するような線にまで話合いがついて来たように開いております。なお現在までの段階において、駐留軍によつて文化財が破壊されたということは、具体的には未だ起つておらないわけであります。
○高田なほ子君 わかりました。駐留軍の場合はわかりましたが、今度は駐留軍ではなくて自衛隊ですから、日本の今度は自衛隊の場合ですが、自衛隊法の場合には、電波法の適用を除外したり、漁業の操業、漁獲の禁止をしたり、それから船舶職員法の適用除外をしたり、労働組合法の適用除外をしたり、麻薬取締法の適用除外をしたり、道路運送法の適用除外をしたり、ありとあらゆるものが適用除外されるオールマイティを持つておるのです、この自衛隊法案というものはですね。こういう法案が通つたときには、やはり文化財保護委員会としては、この法案と日本の文化財というものをどういう形において保護して行くかということについては、よほど肚を締めておかかりにならなければならない、こういうことを強く私は御要望申上げると共に、先ほどのお話のように文化財を赤十字同様に取扱うというようなお話がありましたけれども、まだそのことだけでは私は非常に心配でございますから、この点について特に高橋委員長の御発言をお願いして、しつかり肚をきめて今後の責任をお果し頂けるようにお願いしたいと思います。
○政府委員(高橋誠一郎君) 只今の御注意、誠に有難うございました。我々といたしましては、極力この文化財を守りまするがために肚をきめてかからなければ相成らんと存じております。これまでの問題になりましたところのものは、やはり電源開発、産業開発、こういうようなことと文化財保護の衝突がございます。それからして又この軍事基地につきましても問題がございましたのでありますが、これはアメリカ軍との関係でございましたが、これは幸いにして、こちらが強く出ましたためであつたかどうかは存じませんのでありまするが、これは九州の都井岬とか申しますところに日本の馬がおるのでありまして、これが保護の対象となつておつたのでありまするが、レーダー基地を設けまするというとその繁殖によほど差支えを生ずるというようなことでございましたので、強く交渉をいたしましたところが、到頭このレーダーの基地を他に移すというようなことに相成りまして、先ず一安心いたした次第でございまするが、やはりこういうような問題が起りましたときには、お言葉通り腹をしつかりいたしまして、十分文化財の保護のために努力いたしたいと覚悟いたしております。
○野本品吉君 先ほど須藤さんからもちよつとお話が出ましたが、まあ敗戦後日本人が虚脱状態になつてしまつて、そして民族としての自尊心を喪失した。なお敗戦後におきまして古いものは駄目だというような間違つた思想が瀰漫いたしまして、歴史とか伝承というようなものが非常に軽視されるような傾向になつた。その結果といたしまして、自分たちの郷土、自分たちの祖国に対する愛着というようなものが非常に薄らいで来た。これをどういうふうにして取戻して行かなければならんかということは、日本の現在及び将来にとつての大きな問題であろうと思う。私はそういう意味におきまして、この文化財保護法というものが制定されて、そして各地の文化財の保護保全につきましていろいろと努力され、更に二、三年間の運営の結果に顧みまして、新たにこの法律の修正を行いまして文化財保護の完璧を期そうとするこの提案に対しまして、心から尊んでおるものでございます。そこでこれに関しまして若干の点をお伺いいたしたいと思つております。 地方の教育委員会における文化財保護に関する委員のかたがたの中には相当熱心にやられておるかたがありますが、全国的に私の見る範囲におきましては文化財保護にする関心がまだ極めて低いものと私は見ております。それで委員会のほうといたしましてはこの傾向をどう御覧になつておるか。又将来どういうふうにしてもつと活溌な活動をするように助長して行くか。この改正の法案がその法案であることはわかりますけれども、一応それらのことにつきまして委員の御感想を承わりたいと思います。
○政府委員(高橋誠一郎君) 敗戦後におきまして国民の自負心がとかく失われがちであるということは只今伺いました通りでございます。我々もこういう遺憾を常に忍んでおるのでございますが、併しながら日本の文化、戦争には敗れましたが、日本の文化が或る点におきましては世界に冠絶しておるものがある。少くとも世界に類例のないものであるということを知らせることのできまするものは先ず文化財であると思います。先年サンフランシスコの講和会議の行われました際に列国環視の下にサンフランシスコで開かれました日本古美術の展覧会が非常な成功を収めました際、私どもあちらに参つておりまして、国交は叫び日本の古美術から発するものであるというような感想を深くいたしました。その後におきましてもアメリカ並びにヨーロツパから頻頻として日本の古美術を持つて来てもらいたい、展覧会を開いてもらいたいという要求がございますので、この点におきまして我々は自負心を失うどころでない、ますます自負心を大ならしめておる次第でございまして、あちらに尊い古美術を送りますことについてはいろいろ困難あるのでございますが、でき得る限り安全を期して日本の古美術が如何に尊いものであるかということを欧米人に知らしてやりたいものと存じております。 それから次にお話のごさいました点でありまするが、今日は終戦後におきまして、特に地方分権が強化されておるのでございまするが、この文化財保護におきましては中央集権的なものが甚だ多いのでございまして、各地方の教育委員会などにおきまして、京都とか奈良とかいうようなところでありますると相当この方面の造詣の深い人たちがおりまして、相当効果を挙げておるようでありまするが、その他の地方になりまするというと誠に不十分な点が多いのでありまして、我々といたしましてはでき得る限り多く各地方の文化財方面の仕事に携つておられまする人たちを中央に集めまして、これに対しましていろいろ指導を与える計画を立てておるのであります。ここ二、三日うちにも又各府県の諸君を集めましていろいろこの文化財保護法の改正につきまして説明を施し、文化財保護法の精神をはつきり呑み込ませたい、かように考えておるのでございます。
○野本品吉君 只今のお話で世界的に日本の文化財というものが尊敬されておるというようなことは、はつきりわかつたのでありますが、そういうふうな事実を一般の国民大衆に知らせる、広報活動と言いますか、知らせる措置を何とか委員会としてお考えになつておりますか、同時いろいろといわゆる歴史教育というようなことは問題になつておりますけれども、こういう文化財というものを国民教育の教科書の内容等に高く大きく採上げるというようなことは私は非常に大事だと思うのですが、そういうことについて何かお考えになつておりますか。
○政府委員(森田孝君) 只今の点につきましてはすでにここ二、三年来努力いたして参つております。我々のほうといたしましても学校の教材のある文化財に関連するものについての解説を作りまして、年々各ブロック別に講習会を開いて学校の教員、PTAのかたがたに映画、幻燈を通じまして普及をいたしておるわけでございます。
○野本品吉君 大変結構な考え方だと思うので、是非とも今後とも一層そういう方面への努力をお願いいたしたいと思います。 次にお伺いをいたしたいと思いますことは、現行法の二十一条にあります文化財専門審議会の仕事の内容として、「重要文化財の買取」という項目がありますが、この「重要文化財の買取」ということはどういう手続或いはどういう手順を経て行われておるものでありますか。一応御説明願いたい。
○政府委員(森田孝君) この点につきましては特に慎重を期しておりまして買取の申出がありましたものにつきまして部内の専門家による買取協議会というものにかけまして、ここで買取るべきや否やということを定めたものにつきまして又部内の課長会議を経ましてなお委員会……、次に専門審議会にかけましてこれが答申を得る。その上で評価委員会というものを設けまして、そのもの自体についての評価をし得る民間の適当な数人を選びまして無記名で投票してもらいます。大体その中間の値段を以て買取ることにいたしております。
○野本品吉君 私はこの点は相当慎重を要することであろうと思うのでありまして、現在非常に注意深く行われておるということを認めることにやぶさかではありませんが、折角の苦心された今度の改正法の運用というものが国民一般、なかんづく文化財に関して深い関心を持つておる人たちの積極的な協力、信頼を得て円満に運用されて行きますようにということを念願いたすものでありますから、これは決して古傷を探し求めて皆様を苦しめようというような意図でなしにお伺いいたしたい点が一つあります。 それは古いことで昭和二十七年の八月二十九日の東京日日新聞に「保護されぬ国宝級の絵画」、「買い損つた文部省」、「世界一の唐絵樹下美人図」、こういうような見出しで大変大きく扱われた新聞記事があるわけです。私がこの問題を取上げましたのは、是非折角の、先ほども申しましたが、今後の法の運営の上におきまして一般のかたがたの善意の協力を全面的に期待したい、こういうふうに考えておりますものですから、このことを取上げまして、さようなことは現在もないし将来もないのだということの解明をここでしておく必要がある、かように考えてお伺いするわけであります。
○政府委員(森田孝君) 仰せの樹下美人につきましては只今申上げましたように買取について約六段階を経て、審議を経て買うのでありますが、その各段階においての適正な値段ということが非常に問題でありまして、この適正な値段を出した結果持主の希望する値段と折合ないということが出て来るわけであります。役所といたしましては国の予算を以て買うものにつきまして只今申上げましたような公正なりと考える値段以上には買取り得ないのでありして、持主のほうにおいて非常に高く値段を考えておられる場合においては、これは所有者の意思に反して買うということは現在の法律においては不可能と考えております。従つて只今の新聞記事になりましたような場合においては、他に非常に好きだという人が出て来た場合、こういう偏愛価値を持つておるものにつきましては我々が適当と考えておる値段以上の値段を出して買うということが起り得るのでありまして、只今のケースはさような場合の特例であります。
○野本品吉君 そうしますとこの新聞が報道しておりますように、買取評価委員会の評価格というものが事前に外部に漏洩したというような事実はあつたのですか。なかつたのですか。
○政府委員(森田孝君) それを買つた人がどういう径路で知つたかどうかということについては、文化財保護委員会としては不明でありますけれども、文化財保護委員会といたしましては交渉の段階において所有者のほうから他の骨董屋さん等を通じまして、それを買つた人のほうへ文化財委員会としてはこんな値段でしか買つてくれないということは言つたかも知れないのでありますが、これは所有者としては当然のことだと考えております。併し文化財保護委員会から外部に漏れたということは考えられないのであります。第三者に漏らしたということは考えられないのであります。
○野本品吉君 そこでなお私がお尋ねしたいのでありますけれども、この記事に、つまり悪質な美術商等が何らの価値もない贋物でも委員の中の権力者と結託して審査会議に取上げさせて不当な値段を付けていることもある、こうあるのですが、こういうような事例は何かあるのですか。
○政府委員(森田孝君) 只今最初に申上げましたように、数人の、或いは多い場合には十数人の人々が会議で決定されることでありますので、特別の委員のへの御意向だけが全体を左右するということは不可能なほどに非常に幾つかの段階を経て決定するので、さような事実は起り得ないと我々は考えております。
○野本品吉君 そこでなおこの記事には委員の構成というものが、何と申しますか、先生と弟子の関係というような関係で構成されておるためにそういう関係におかれていない委員というものが発言に力がないとか、或いは積極的に協力する意志を失つておるというようなことがこれに書かれておる、さような点についてはどうですか。
○政府委員(森田孝君) 文化財保護委員会のものとしてはさようなことは今までも感じたことは一度もないのであります。
○野本品吉君 そうですが、只今のようなことを申しましたのは、先ほども申しましたように私は決して古傷を求めようというようなひねくれた考えで申したのではないので、さような事実のないことをここで明らかにして頂けばそれで結構であります。なおこれらの委員会のこういうような過去における事実に徴して、その後委員会の運営がどういう点が改められ、どういう点に注意されて来るようになつて来ておるかということもございましたらこの際承わつておきたい。
○政府委員(森田孝君) 今まで、最初のうちは只今申上げましたようにいろいろの買取についての会議につきましては事実上の会議として行なつておりましたが、いろいろの事象に鑑みましてこれを委員会規則による、或いは又委員会の裁定によつて法令的な処置をとりまして、それぞれの責任と又職務と権限をはつきりいたして会議の運営の適正を期したわけであります。
○野本品吉君 このことは委員会の独立性ということと非常に深い関係があるのですか、どうなんですか。
○政府委員(森田孝君) 委員会の、つまり行政委員会、会議体による審議ということとは非常に深い関係があるのでありまして、こういう点につきましてもやはり行政委員会でやつたほうがより適正だということが従来言われておつた一つの問題であつたということは言えるかも知れません。
○野本品吉君 なお先ほどもお話がございましたが、アメリカにおきまして皆さんのお骨折で立派な展覧会ができて、その展覧会を通して、展覧会における古美術その他の文化財を通して日本に対する世界的認識が改められた、これは非常に嬉しいことでありますが、このアメリカヘの品物の往復といいますか、その途上で大事な文化財が毀損されておるというようなことを耳にいたしておりますが、さような点はございませんか。
○政府委員(森田孝君) さような点は絶対にないのであります。これはデマに過ぎないと私は考えております。
○野本品吉君 なお先ほど、委員長からお話がございましたが、今後電源の開発とか或いは国土の開発、道路の新設といつたようなことでこの問題と相当重大な関連を持つて来るいろいろな事態が起つて来るであろうと思うのでありますけれども、これらの場合には是非先ほどお話のありましたような決意の下に断固として文化財をお守り下さるようにお願いいたしたいと思います。 以上私の質問を終りますが、繰返して申しますが、私はこの文化財保護の仕事が活溌に動きを進めることによりまして、最初に申しました失われた日本人が取戻されて行くであろうということに大きな期待をかけておるわけでございます。終ります。
○松原一彦君 第五十六条の十に民俗資料ということが現われて、これがこの法案では一つのトピックになつておると思いますが、これは非常に内容が不明なのでありますが、「重要民俗資料に指定することができる。」とありますが、只今指定しようとお考えになつていらつしやる幾つかの例を森田君からお示し願いたい。
○政府委員(森田孝君) 只今ここに手許に材料を持つておりません。候補物件がすでに審議会で決定いたしておりますが、法案で将来指定制度ができましたときには指定すべきではないかということで、すでに専門審議会において調査審議した結果が出ておりますが、でき得れば後ほどプリントでお渡しをすることによつてお許しを願えれば有難いと思つております。
○松原一彦君 是非それを一つお見せ頂きとうございますが、今まで私どもの考えております範囲では、民俗資料というようなものは非常に広汎で、計画の如何によつては大きく手を延ばさねばならないものであるかと思うのであります。それで単なる指定によつて保全するということばかりでなく、どうしても買上げておかなければならない刻々なくなつて行くものが夥しくあるかと思われるのでありますが、それについての何か買上げの、買上げの条項は前にありますけれども、それに対する民俗資料買上げのための予算の枠でもございますか、その点を伺いたいと思います。
○政府委員(森田孝君) 只今の予算におきまして二千四百万円重要文化財等買上費として計上されておりまして、この中においてこの費用は将来できる限り増額するよう努力いたしまして民俗資料の買上げを行なつて参りたいと思つております。
○松原一彦君 そうすると買上げの枠はないわけですね。
○政府委員(森田孝君) 只今申上げました買取費は重要文化財等となつておりまして、只今申上げました費用の中でも買上げ得るのでありますが、重要文化財その他について買上げなければならないものが非常に多いのでありますので、民俗資料まで十分に手が届くとは言いかねるのでありますので、只今のような御答弁を申上げたわけであります。
○松原一彦君 それならばこの民俗資料の方面を御担当の専門のかたが事務において、又委員においてどのくらいおありになりますか、その規模をお聞きいたしたいと思います。
○政府委員(森田孝君) 只今専門審議委員にお願いいたしておりますのは七人であります。お名前を申上げます。人類学の長谷部言人先生、岡正雄先生、折口信夫先生、このかたはお亡くなりになりましてまだ後任は補充ができておりません。金田一京助先生、今和次郎先生、渋沢敬三先生、柳田国男先生の七人であります。只今一人欠員になつております。
○松原一彦君 事務局のスタッフは。
○政府委員(森田孝君) 民俗資料関係につきましては、専門技官が二人置いてありまして、その他事務の補充者が置いてあります。
○松原一彦君 これは買上げと同時に陳列とか保存とか系統を立てるとかいうことで余ほど骨の折れる仕事だと思います。そういう厭味からも先刻お尋ねをしたのですが、一日も早く民俗博物館式の御計画をお立てになつて、そうして年次計画でよろしいから、それが実現しますような予算の要求を私は切望するものであります。私どもも精一杯それが実現に向つてお力副えいたしたいと思う。これは戦災が一遍あると管理し切れなくなつてしまうものが随分あると思う。今のうちに克明に集めておかなければ保存ができないだろうかと思うのであります。そのためには特にこういう有名な民俗学者の御計画を早く附いて、それが着々集められて、而も系統的に保存せられるようにしなければならない。価格としては極めて低いものであつても、又数は多く民間に存在するものの中から集めるものでありましようから、選択等に標準が要ると思うのであります。そういう点で特にこの点には文部省も力を入れて頂きたいということを希望申上げます。
○高橋道男君 先ほど高橋委員長から文化財による国際的な理解というような御意見がございまして、誠にその実績を挙げておることにつきましても結構に存じておるのでありますが、現在外国に流れておりまする日本の文化財というものについてどれだけの御調査ができておるか。現在の委員会にはそういう権限はないかも知れませんが、事実そういう調査ができておるかどうか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
○政府委員(高橋誠一郎君) 特に人を選びまして調査をいたしましたことはないのでございまするが、あらゆる機会を利用いたしましてこの点を調べておるのでございまするが、只今御質問になりました点は、この頃アメリカに参りました文化財委員会の技官たちの報告の中などにも現われておるのでございまするが、非常に流れ出したということをよく聞くのでありまするが、終戦直後におきまして日本の古い国宝級の刀剣が四十五点、これは警察の不注意によりまして、渡さなくてもいいものを渡してしまつたということでございまして、これが、返つて参りませんのが一番の遺憾でございます。 それからアメリカに渡つておりまするものについて調査いたしたものの報告を聞きますというと、早く、フリアー博物館に収められております品が、フリアーと称します人が日本に参りまして、原三溪などの指導を受けまして、購入して帰りましたもの、これも大部古い話でございまするが、その中に相当優れたものがあるようでございまして、それから更にもつと古いところになりますると、フェノロサというような人が日本に来ておりました当時、岡倉覚三先生などの示唆によりまして購入をいたしました品物、この中に非常に貴重なものがあるのでありまして、それらのものがボストンに参つてあちらに保存されておるのであります。そういうふうに昔に遡りますると、随分貴重なものが多く失われておるのでありまするが、その後になりますると、割合に出ましたものは少いのでありまして、殊に文化財保護法ができましたあとにおきましては、殆んど全く全部と申していいのでありまするが、保存は全きを得まして、貴重な文化財があちらに流れ出したということは全く聞いておりませんのであります。
○高橋道男君 現在海外にあります。そういうものに対して、これは個人が持つておるものも全部含めて、全部ということは困難でありますが、わかつておるものにつきましてその所在、或いは題名というようなものにも関するカタログ等を編纂される御意思はないですか。
○政府委員(高橋誠一郎君) これは大体わかつておるのでありまするが、更に詳細の点を調べまして、こういうようなもののカタログを作成いたしますことは比較的僅かな費用で、比較的容易にできることではないかと存じますので、是非作成いたしたいと存じております。
○高橋道男君 もう一点その点でお尋ねいたしたいと思いますのは、アムステルダムの国立博物館でしたか、或いはブリティッシュ・ミュージアムでしたか忘れましたが、はつきり記憶はいたしておりませんが、歌麿の浮世絵が出ておる。それの解説に、題名にプロステイチユートという題名が付いている。これは遊女というものの直訳だと思うのでありますが、私どもはこれは英語の語感が正確でありませんから困るのでありますが、とにかくプロステイチユートというものから受ける私の印象は非常に悪いのであります。遊女というもののニュアンスがそのまま表わされていると思うのでありますが、私の印象は悪い。その感じが言葉の問題としますならば、私はこういう言葉は、遊女というような題名の翻訳として付けてもらいたくない事柄だと思うのでありますが、そういう下卑た翻訳ではなかつたんでありますけれども、その他にも三、三翻訳、私の見た限りにおいて翻訳上どうかと思われるようなものがあつたのでありますが、そういう点につきまして、不適当だと思われるようなものがお気付きになつておるかどうか。又そういうお気付きになつておるのだつたらば、そういう点についてその国の、或いは直接当事者に対して何か注意を促すとかいうような方法は講ぜられなかつたのかどうか、それをお伺いしておきたいと思います。
○政府委員(高橋誠一郎君) 実はこのお話は、私全く存じませんかつたのでございますが、昨日相馬助治さんからこの話を伺いましたのでありますが、アムステルダムには私参つたこともなく、かようなものの所蔵されておることも存じませんのでありますが、相馬さんから伺いましたところによりますると、これは夜鷹を書いたものだということでございまして、非常に大きな肉筆画だそうでありまして、果してこれが歌麿の作であるかどうか。歌麿の肉筆というものは非常に疑わしいものが多いのでございまして、如何なるものであるか、今日のところでは私全く申上げかねるのでございまするが、すでに夜鷹を書いたものであるとしまするならば、そういう名前を付けますることも過ちとは申せないのでありまするが、そういう場合に、我々が聞きました場合にはあちらに注意して、何とかもう少し体裁のいいような名前をつけてもらうように交渉すべきものであるかどうか、そういうような点も考慮いたしたいと考えております。
○高橋道男君 国際的理解を深める点について私は相当重要な問題だと思うのでありますが、その点につきまして、大臣にも念のためお伺いしておきたいのでありまするが、或いは先般の衆議院の委員会でしたかどうか、自衛隊ができましたら武官の、武官という言葉は今使われんかも知れませんが、そういう関係のアタッシェを海外公地に置くというような計画のあることを新聞によつて知つたんでありまするが、只今戦力なき軍隊というようなものが、甚だ先走つた考えで……戦前ありましたような在外武官を置くというようなことはどうかと思いますけれども、それよりもこの文化による提携、或いは接触というような意味におきまして、これは単に文化財だけではないのでありますが、文化関係一般を含んだ意味のアタッシェというものを在外公館に置くということは、私は今後の日本のあり方を宜明する上におきましても非常に大事なことじやないかというように思うのでありますが、その点につきまして、大臣の御所見を伺いたいと思います。
○国務大臣(大達茂雄君) お話のような息吹の文化アタッシエと申しますか、そういう人を駐在させて文化の国際交流という点、これは在外公館のほうでもそういう希望をしておられるように聞いております。これは非常に有意義な結果をもたらすのではないかと思つておりますので、これはただ今まで余りないことでありますし、これを十分研究をして、できることならば各務省方面とよく話合いまして、そういう措置を講ぜられるものならば、これは非常に喜ばしいことであるので、研究してみたいと思います。
○高橋道男君 只今の大臣の御答弁誠に結構だと存じます。これは前にありました武官のアタッシェが、軍隊関係からその影響力の下において派遣されたように私は思つておるのでありますが、若しできますならば、無論外務省との関係はございましようけれども、文部大臣の配下に置いて、その影響力の下にそういう文化的なアタッシエを是非早急に実現して頂きたい。これはこちらからの文化を向うに紹介するということだけにとどまらず、海外の文化を内地に、日本に摂取するという意味においても非常に役立つものだと思うのであります。私ども海外に出まして、そういう関係の情報などを得たいと思いましても、現在の外務省から出ておられる関係のかただけでは、これはその人数から申しましても非常に不完全だと思いますので、これは意見になりますけれども、是非その実現かたを図られるように、この際希望しておきたいと思います。 それから次にお伺いいたすのは、先ほど管理団体というものが今回初めてできるというお話がございましたが、それの対象の一つとして、奈良の海龍王寺が見られておるように高橋委員長から伺いましたが、そのほかにもこれに類するものを予定しておられると思うのでありますが、どういうものを予定しておられるか、それを伺いたいと思います。
○政府委員(森田孝君) 只今は調査の段階でありまして、具体的には予算の折衝と併行いたしまして、協議をして最終的に決定しなければならんと思うのでありますが、只今一応さような意味において当方として調査いたしておりまするのは、法隆寺と、唐招提寺と、新薬師寺と海龍王寺と福知院の五つであります。
○高橋道男君 管理上そういうものを団体管理されるということは、理由はやむを得ない問題があると思うのでありますが、只今伺つたところによりますると、全部これは寺院であります。申すまでもなく、宗教に関係のあるものでありまするが、それだけに信仰の自由ということと相反する虞れのあるような管理が行われぬとも限らんと、こういう私は疑念を一応持つのであります。それは先般来問題になつておりました月光菩薩の場合におきましても、やはりこれは信仰上からの処置、或いは管理ということに相当欠陥がありまするためにああいう問題が起つたということも勿論言えるのでありますけれども、そうでない第三者と申していいか、文化財関係の専門の技術的な面からこれにタッチされたという点とお寺との関係の間に相当のギャップがあつたということも考えられるのでありまするが、そういう懸念が起るようなこつちや、これは宗教上の問題にもなる、こう思いますので、その点についてどういうお考えを持つておられるか。
○政府委員(森田孝君) 只今高橋委員から申されました点は、我々がこの改正案を実施する場合において一番重要な問題だと考えておるのでありまして、飽くまで文化財においてはものの管理だけに限るのであります。宗教行事に関しては何らのプラスもマイナスもいたしてはいけない立場におるわけであります。従いまして、管理団体の権限と申しますか、義務と申しますか、範囲というものを、委員会規則によつて明確にいたしてこれが調整を図つて参りたいと思つておりますし、又管理の対象といたしましても宗教行事、もつばら宗教か行事に取扱うもの、或いは又増田の私有物というようなものについては、少くともタッチして参らない予定にいたしておりまして、今後更に研究の上十分に調整の行くような規則を考えて参りたいと思つております。
○高橋道男君 もう一点、第二条の改正条文の中で「民俗資料を削り」云々とありますが、これも同様宗教上の国政、慣習というものに関しての問題が中に含まれて来ると思うのでありますが、どういうものをこれは対象にしておられるか、ちよつとこれだけでははつきりしないのでありまするが、その点同様の懸念がないように十分の御配慮が願えるかどうか伺つておきたいと思います。
○政府委員(森田孝君) ここに言う信仰というのは主として民間信仰、例えば東北地方に広く農村で行われておりますおしらさまと申しますか、というような民間信仰が一つの民俗風習として我々は一応取上げて行きたいとこう考えたわけであります。
○高橋道男君 一応了解しておきたいと思います。それからやはり第二条の改正条文の中に、第四項に古墳という文字が出ておりますが、これは宮内庁で扱つておられる帝室の陵ですね、あれとの関係はどうなつておるのか、それも含んで考えておられるか、伺つておきたいと思います。
○政府委員(森田孝君) 仰せの通りここに含んでおります。ただこれに対しての所管は、同家機関との間でありますので、協議を以て行なつて参りたいと思つております。
○高橋道男君 同時に、同じく四項の中で峡谷とか山岳とかいう文句が挙げられておりますが、これは厚生省所管の国立公園との関係があるように思うのでありますが、その区別或いは取扱いということについてどうなつておるか、又国立公園というものとの関係が若しあるといたしまするならば、厚生省との了解などはできておるのかどうか、これを伺つておきたいと思います。
○政府委員(森田孝君) 天然記念物、主として名勝天然記念物につきましては、国立公園と若干重なつておるものがありますが、併しながら国立公園は対象において非常に広い範囲を指定しておりまして、我々のほうといたしましては学術的な立場を主として考えて、その極く一部分が特に価値の高いものとして指定して保護して行くということを考えております。併しながらその機能においては、国立公園はこれは国民厚生のためにこれを活用するということが主目的でありますが、文化財保護委員会のほうは、文化財保護の立場からこれを保存するということが主目的でありまして、おのずからその機能の主眼点が違つておるのであります。従つて、従来も厚生省の国立公園部とは十分に協議をし協調をいたして運営をして参つたのであります。今回の法律改正につきましても、従来の範囲と態度を変更するものでないという了解が両者の間にで、きております。従来と何らの変更なしに行われて行くと考えております。
○高橋道男君 次に、第二十一条の改正の中の二十二号、これは前からもある条文でございますが、ここに移して改正されるようでありますが、重要文化財の現状変更その他に関しましての都道府県の教育委員会への委任ということがございます。これはどういう基準によつてこういう委任をされるのか、そのはつきりとした基準があつて、どこの教育委員会にもこれだけの権限が委譲されておるのだということがはつきりしておりまする場合には全国均一な方針がとれると思うのでありしますが、個々のものについてそういう委任が行われるといたしますると、不均衡な権限委譲というようなことが行われ、それによつて行政上のミスが出て来るんじやないかというような心配もありますので、その基準について如何なるものを持つておられるかを伺つておきたいと思います。
○政府委員(森田孝君) 都道府県の教育委員会に対しましての権限委任につきましては、各都道府県の技術陣の充実工合というものを考えまして、我々か委任しても円滑に行い得るかどうか冷えてやつておるわけでありまして、お示しのこの条項によりますところの権限委任は、現場において緊急を要する場合の停止命令以外は現在委任いたしておらないのであります。この委任いたしておらないというのは、技術陣の充実が未だ完きでないということを考えておるわけであります。
○高橋道男君 もう一点細かいことを伺いたいのでありますが、文化財に関する税の関係につきまして、従来いろいろ問題がございまして、我々議員立体としてそういう措置をとろうかというような議が起つておつたことは委員会においても御存じかと思うのでありますが、具体的に申して、今回税制の大幅の改革もございましたので、或いはその中に含めて解決のできておるここもあつたかと思うのであります。或いは保護委員会において積極的に税の面で文化財を保護するという意味において税の軽減についてお考えになり、或いは運動なりをして来られたかと思うのでありますが、例えば所得税の問題、相続税の問題、固定資産税の問題、入場税の問題等、税の問題というようなことにつきまして措置をとられたものがありまするならば、又現在解決しておりまするものがありまするならば、一応それをお尋ねして置きたいと思います。
○政府委員(森田孝君) 只今税の減免を行いまして、その措置の一応できましたのは、固定資産税と入場税と物品税であります。以上のほかに相続税、譲与税、登録税、所得税等についても減免の措置が講ぜられますように大蔵省の当局と折衝いたしました結果、法律の規定で非課税の措置を講ずることはできないのでありますけれども、課税価額の算定その他実際上の運営の面で十分に考慮して参るということになつたのであります。
○須藤五郎君 先ほど海外流出の問題で高橋委員から質問がありまして、刀剣が四十数本海外へ行つてしまつておるという話でしたが、刀剣はそういう状態で、何も売つたわけじやないので、持去られたものですから、日本が取返す権利があると思うのですが、その措置が講じられておるのかどうかという点、それから今後海外流出を防止する法的措置というものは、ここでは輸出の禁止という条項があると思うのですが、これだけの法的措置で絶対日本の重要美術品が海外に流出する虞れがないか、防止できるかどうかという点、又ほかにそういう条項があるならば伺いたい。
○政府委員(森田孝君) 第一点の刀剣の問題につきましては、必ずしも向うが略奪をして行つたということは言い切れないものもありまして、あの混乱時代におきまして、所有者自から、何かの意図があつたと思いますけれども、提供してしまつたものがその中に数件あるわけでありまして、それらの点につきましては、これは所有者のむしろ責任だつたということが言えると思うのであります。その他のものにつきましては、一般の刀剣の没収のときに警官が他の刀剣との区別が十分にできないでそのまま没収されてしまつたものがあるわけでありまして、これらにつきましては、すでに三回ほどそれぞれの関係を通じまして本国の調査を依頼いたしつつありまして、未だ十分なる回答に接しておりませんが、更に今後十分調査を依頼して、でき得る限り発見すべく措置したいと思つております。 それから第二点の問題でありまするけれども、これにつきましては、法律によつて、正式に指定したものにつきまして輸出の許可を与えますが、その他の一般のものの中で指定したものなりや否やということは判定できないのであります。そうして具体的に大蔵省と協定をいたしまして、各税関において輸出する場合におきましては、文化財保護委員会において指定美術品でないという証明をつけさせなければ輸出をさせないということにいたしておりまして、目下輸出についての証明を我我のほうで発行いたしておるような状態であります。なお完璧を期するには各税関にそれぞれ係の専門の職員を置くのが適当かも知れんのでありますけれども、未だそこまでは至つていない状態であります。
○須藤五郎君 この点も、私先日中国へ行きまして、紫禁城内に造られた博物館をみたのです。そうしますと、ずつと背からの品物がずつと並んでおる。ところどころ写真だけあつて品物がないところがある、そうしてその説明に、これは日本帝国主義者が持ち去つたものだ、蒋介石政権が持ち去つたものだという註釈が掲げてある。日本でもそういうことが起つたら私は甚だ遺憾だと思うわけなんです。それでその正式の輸出は禁止することができるかもわからないが、盗まれた品物ですね、盗まれてそうしてそれが裏のほうで駐留軍の手に渡つて、そうして駐留軍が国に帰るときそれを持つて出る。駐留軍の荷物の検査というものは正式の税関の検査を受けていないと思うのです、今日でも。そういうことを防止するということがどうしてできるか。又そういうことが起りつつあるではないかと私は心配するわけです。それに対してどういう措置をあなたたちはとられておりますか。
○政府委員(森田孝君) 仰せの場合におきまして、国内にある限りにおいては外国人にもこれを売渡しをすることができるのでありますけれども、その売渡しをする場合におきましては、法律によりまして、委員会に対して先ず買取の申出をしなければならんことになつております。従いましてこれが第三国人或いは外国人に売渡されるというような虞れのある場合におきましては、委員会といたしましては万障を繰合せてこれを買取るか、或いは又国内の適当なる機関で買取つてもらうように処置して参るということにいたしたいと思つております。但し従来まだそういうケースが起つておりませんので、今後の注意としてさようにいたしたいと思います。
○須藤五郎君 これは一点心々監視はしていらつしやると思うのですが、盗まれた重要美術品が、文化財が盗まれて、その盗んだ者が裏で外国人に売つてしまうわけなんです。そういうことがあり得ると思う。そうしてアメリカ兵ならアメリカ兵が盗んだものを買つて、そうして国に帰るときに持つて帰る。それを防止される方法が考慮されておるのか。
○政府委員(森田孝君) これはやはり警察と協力しなければならん問題になるようなお話でありますので、只今までさようなまだ警察との連絡はとつたことはないのでありまして、我々としても文化財の所在地というものを警察によく知らしておくという措置は今後十分講じて行かねばならんかと思つております。
○須藤五郎君 そういう法的措置というものはなかなか困難なのでしようか。この法案の中にはそういう問題が少しも触れられていないと思うのですが、そういうことは困難なのでしようか。
○政府委員(森田孝君) どうも盗むというやつは、これは初めからどこの場合にでも法律に違反するということを覚悟してやつてますので、法律の規定ではできないので、事実上の行為に基いて、処置をしなければならんと思つております。
○須藤五郎君 それは無理だと思いますが、駐留軍の持つて帰る荷物を検査するという法的措置が講ぜられてもいいのじやないかと思うのですが……。
○政府委員(森田孝君) これは駐留軍の問題はちよつとここで答弁をいたしかねるわけでありますけれども、外交官の品物は検査をいたさないのでありますが、これは国際法上日本の外交官も日本に帰るときに検査を受けませんので不可能だと思います。
○須藤五郎君 軍隊は外交官と違いますよ。
○委員長(川村松助君) ほかに御質疑はありませんか。本案に対する質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(川村松助君) 御異議ないと認めます。それでは討論に入ります。御意見のおありのかたはそれぞれ賛否を明かにしてお述べを願います。 別に御意見もないようでございますから、討論は終局としたものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(川村松助君) 御異議ないと認めます。それではこれより採決に入ります。文化財保護法の一部を改正する法律案、内閣提出、全部を問題に供します。本案に賛成のかたの御起立を願います。 〔賛成者起立〕
○委員長(川村松助君) 全会一致でございます。よつて文化財保護法の一部を改正する法律案は全会一致を以て原案通り可決されました。 なお本会議における委員長の口頭報告の内容等については例によりまして委員長に御一任を願います。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(川村松助君) それから議院に提出する報告書には多数意見者の署名を付することになつておりますので、本案に賛成されたかたがたは順次御署名を願います。 多数意見者署名 相馬 助治 高田なほ子 須藤 五郎 長谷部ひろ 松原 一彦 木村 守江 野本 品吉 中川 幸平 高橋 道男 加賀山之雄 剱木 亨弘 荒木正三郎
○委員長(川村松助君) 本日はこれを以て散会いたします。 午後五時三十六分散会