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19回国会参議院1954/03/19

文部委員会 第10号

発言数
169
登壇者
12
会派数
5
開催日
1954/03/19

会議録

川村松助自由党

○委員長(川村松助君) 只今から文部委員会を開会いたします。  本日は先般の文部委員会の決定によりまして、参考人のかたがたから御意見をお伺いいたします。  開会に当りまして委員会を代表いたしまして一言御挨拶を申上げます。国立学校設置法の一部を改正する法律案は只今本委員会において審議中でございます。この法案の重要性にかんがみまして、この方面の識者の御意見を承わりまして今後の審議の参考にいたしたいと存じまして御出席をお願い申上げましたところ、御多用中にもかかわらず本委員会の要請に応じて御出席を頂きまして、ここに御意見を拝聴さして頂く機会を得衣したことを深くお礼を申上げます。  これから御意見をお伺いいたしたいと存じます。発言の時間はお一人大体十五分乃至二十分ぐらいで御意見を承わりまして、なお文部委員のかたがたに申上げますが、御質疑のおありのかたは参考人のかたの御意見が全部一応終了いたしましてから御質疑を願いたいと思います。  それでは公報掲載の順序によりまして御意見を承わりたいと思います。先ず木下一雄さんにお願いいたします。(拍手)

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 国立学校設置法の一部を改正する法律案、この案の問題点は国立学校学部附属施設の設置、廃止並びに各国立学校定員の増減を省令乃至政令で行えるように法律を改正する案ということでありますが、この問題を私ども見ますと、これを解釈いたしますのに抽象的にとり扱う考え方、主として理念的に考える場合と、それから具体的にとり扱う考え方、つまり現実の必要に基きまして考える場合とあるであろうと思うのでございます。  そこで先ず抽象的に考えるといたしますると、第一に法律で定められるようになつている事項を省令や政令で行えるようにするという理念的な可否が考えられるだろうと思うのであります。次に政府が各大学の定員を左右することになるということの抽象的な可否を考えることができるであろうと思うのであります。又よく解釈されがちなのでありますが、文部省の或いは政府の権限がこれで強くなる、或いは強くする意図があるのではないであろうかどうか、そういうことについての懸念、それについての可否というようなことが抽象的の場合に考えると浮かび上つて来るであろうと思うのでございます。併しながら、かようなことは私の考えでは問題になり得ないことだと思うのであります。それはこの問題は今度の改正の案と申しますのは、どこまでも具体的でありまして現実的のものであります。具体的事実として考えて参りますと抽象的には問題にならないことであるということが明瞭にわかつて来ると思うのであります。  そこで私は問題を具体的に考えて参ることにいたします。この法律案は昭和二十九年度予算に照応して関係条文を改正することであるということは明らかなことでありますが、この場合この問題を更に分析して考えて行く必要があると思うのであります。この国立学校の学部附属施設の設置乃至各国立学校の定員の増減がこの事実として生じて来る場合はどのような経過をとつて来るのであるかというようなことを考えてみなければならないと思うのであります。そういたしますと、これらの事実は先ず第一に予算を立てなければならない、予算が成立しなければ何ともならない問題であるのであります。そこで各国立大学におきましては、もう新学年が始まりますと四月の当初より次の年度の計画をいたします。これは無論その大学々々におきましていろいろ縣案があるでございましよう。その懸案を何とかして次の年度におきましては解決する。その場合には学部の増設もありましよう。或いはその中に学科の統合も起つて参りましよう。或いは研究所、附置研究所の施設でありますとか、或いは附属学校の問題でありましようとかいうような計画を立てます。無論これは大学全体の教授会の決定を待つて計画されることでございますが、そうなりまと、綿密な予算を先ず大学におきましては考究しなければならなくなつて参るのであります。毎年の行事でございますが、各大学におきまして、文部省に参りまして来年度の計画、その予算の説明をするということは、大学にとりましては大きな年中行事の一つになつているのであります。十分文部省に予算が説明せられました後、文部省ではこれにつきましていろいろ研究をして下さつて、然る後に又大蔵省その他と御折衝があるものと私どもは考えているのであります。いたしまして、最後に予算案が政府におきましてできますのは、その年の暮に近くこれが本当に審議せられまして、案になりますのには翌年の一月の初旬でございまして、殆んど大学の身になつてみますれば一年中来年度のこの計画の問題について取組んでおるというわけであります。さように一年中殆んどそういうような計画にいろいろ苦労もいたすのでありますが、幸いにその結果が国会において予算として成立いたすということになりますと、これは私どもこれでも来年度の計画のこの点は達成することができる。そこには、私は法律的な原則という言葉がどういう妥当な言葉かわかりませんが、少くとも法律の実質的な内容は、予算の成立と共に私は整つたと考えることができると思うのであります。そこであとはいろいろ又それに必要なかような条項の改正が伴うものでありますが、これは私は法律の簡素化というような観点からいたしまして、そういう措置をとりまして、省令乃至政令でそれを裏付けて差支えないものと考えるのであります。特別にここに二重の法律的規制をするというほどまでには必要を感じていないのであります。むしろ簡素化することによりまして、早く予算を国会で成立させて頂きまして、すぐに次に迫つておりますいろいろの具体的な準備に取りかかることが必要ではないか、こういうふうに考えておるのであります。なお、只今申上げましたこの具体的な事実におきまして予算の面から検討いたしましたが、もう一つ学校教育法第六十条に、大学の設置認可につきましては、大学設置審議会に諮問するということが法律できめられておるのでございます。例えば頂戴いたしました資料の中にもございますように、神戸大学の文理学部が文学部と理学部に分離いたしまして、おのおの一学部として独立することになつておるのであります。こういうような場合に、私もたまたま大学設置審議会の委員をいたしておりますので、神戸大学の文理学部が、文学部、理学部になりますについての諮問の下に実地審査をいたしておるのであります。神戸大学に参りまして、学長より文学部乃至理学部の学科の組織、これに配当されますところの教員数、而も単にこれは教員数という分量でなくて、文学部における専攻が三専攻に分れ、文学科、史学科、哲学科、それがそれぞれの更に専修を持つことになりますと、それらの科目の主要科目には如何なる専任教授が配置されるのであるか、これは大学設置審議会に専門分科会というのがございまして、ここにおきまして、教員組織について一々の個人につきましても、資格審査が行われるのでありまして、主要科目に専任教授の適当な者がなければその学科は成立しないというような綿密な審査が行われるのでございます。でございますが、と同時に例えば和歌山大学に経済短期大学部ができる、こういうこともある。これもやはり新らしい設置でありますので、実地に審査がされております。こういうような場合に只今申しました通り文部省が大学の定員を左右するというようなことは抽象的には考えられることはできるのでありますけれども、具体的に事実になつて参りますと、かようないろいろの大学設置審議会において審査を受ける。そこでは教授一人々々の個人審査までありまして、果してこの学科が成立するかどうか、これを抽象的に各大学の定員を政府が左右するということは考え得られますけれども、具体的な場合におきましては、これは到底考えられない事実であります。私は安心していい問題ではないかと思うのであります。又例えばこれは大学でございませんので、実地の審査ということはありませんのですけれども、東京芸術大学附属高等学校というのが今度設置されることになつております。これは音楽学部長よりも私長く聞いておることでございまして、どうしても芸術大学の音楽学部には小さい時から教育をしなければならない、いろいろの研究をしなければならないので、音楽のほうから附属高等学校なり附属学校施設が必要である。ない故に、私東京学芸大学に附属を持つておるのでありますが、私の大学の附属学校まで来ていろいろ研究をいたしておるのであります。一朝一夕の問題でありませんで、数年に亘つての懸案が今度東京芸術大学の附属高等学校として設置が国会で予算が成立するところまで漕ぎ付けて来たのではないか、こういうふうに考えるのであります。そうなつて参りますと、この附属高等学校の内容、組織等、これは大学におきまして中心になりまして考えられた結果が今日まで進んで来た、而も多年の研究の下に計画されたものが今日できて来るところまで進んだのでありまして、これを抽象的に政府におきまして、この定員をどうするとか、或いはこれに設置乃至廃止ということをやろうとかいうようなことは考えられないと思うのでありまして、私は結論として申上げますと、今度の改正するこの法律案は、却つて具体的な問題、私ども差し迫つておる一つ一つの事実につきまして大変に都合がよくなつた、こういうふうに解釈するものであります。実益があると解釈するのであります。而していろいろ心配されておるりますような、文部省或いは政府が定員を左右したり、或いは権限を強くするとか、或いはそのときの政府に自由にされることが心配だとかいうようなことは、私ども冷静に考えましてあり得ないことと存ずるのでございます。私の意見はこれで終ります。

川村松助自由党

○委員長(川村松助君) 次に小室三夫朗君にお願いいたします。

小室三夫朗日本教職員組合法制部長

○参考人(小室三夫朗君) 日本教職員組合の小室であります。本日参考人として当委員会で私どもの組合の考え方を申述べさして頂きまして、今後文部委員会が審議を進める上の御参考にして頂きたい、こういう念願で参りました。  今ほども木下先生のほうより、この法案の問題点というものが二つに絞られ、その二つを明確にその現場に立つておる先生がたの立場より解明されたわけでありますけれども、私どもの組合といたしましては、この法案に盛られておる全部が全部悪いとか、乃至は文部省がこれを故意に或いは意識的にやつたのではなかろうかというような点で申上げるのではなくして、飽くまでもこの法文をいわゆる現行法と比較対照して参りました節、私どもが今後教育、特に大学教育というものを考えた場合に、非常に問題点を包蔵している、こういう点を申上げたいと思うのであります。  第一点といたしましては、この改正法案の第五条が大きな問題点を孕んでいると思うのであります。で送付して頂きました資料の提案理由の説明の中にも、改正の第五点はというので、最後に、「以上のほか関係条文を整備する等のため所要の改正を行うものであります。」と、こう述べて第五条以下の解明については少しも具体的に立ち至つていない。而も前の四項に亘りましては、比較的その改正される項名すらも挙げて説明をいたしたのでありますけれども、五条以下は何ら具体的な点に触れていない。而もこの関係条文を整備する等のためという「等〕の中に、非常な大きな問題が大学行政上から含まれている。こういう点を明確に考えているわけであります。この第五条以下の改正、特に大学附置の教育施設乃至は研究施設という、こういうもののいわゆる省令を以ての改廃という点につきましては、私ども組合だけが単にこの問題を重視しているのではありませんで、御参考までに申上げますれば、サンデー毎日の三月二十一日号十八頁に大きな見出しで、「空恐しい文相のコンタン」、こういう表題で一頁を割いて克明にこの問題を解明いたしております。その中で表現しておりますのは、いわゆる私が先ほど申上げたように、この第五の提案理由の中に含まれているその意図というものが非常に問題である。意識しようとしまいとこの中に含まれているのは、取りようによつては将来この大学行政というものに非常な危険性を包蔵しているということを明確に表現をいたしております。例えばこの中の要点を朗読いたして見ますと、「国立大学の学部に付属する教育ならびに研究施設(付属小学校、医学部の病院など)の法的根拠を文部省令に移すこと、また各大学、学校ごとに法律で定められていた職員の定員を政令で定めることにあると思われる。ところが大臣のこの点に関する説明は、至極簡単をきわめていて「関係法文を整備する等の(「等の」がくせものである)ための所要の改正を行うものであります」という以外、何らの理由も示していない。」私どもとしてそういういろいろのことが書いてありますけれども、この中で明確にやはりこのサンデー毎日が指摘をいたしております。  更に資料といたしましては、朝日新聞の二十九年三月九日、火曜日の学芸欄のところに「軽くは見過せぬ国立学校設置法の改正案」こういう表題で相当のスペースを割いて、この問題について解明を与えております。このようにこの第五条をめぐる問題は、単に私ども組合だけの反対とかというものでなくて、広く輿論の中に溶け込んで行つて、非常に大学行政が問題化されつつあるということも、これは看過できない点ではなかろうかと、このように考えております。  私どもがこの第五条の修正につきまして、反対の立場を取ります理由といたしまして、いわゆる大学の附置の教育施設乃至は研究施設というものが一片の、あえで一片という表現を使いましたけれども、これが省令によつて改廃が自由自在になるといたしますれば、これはどのように現実的な問題として解明を与えたといたしましても、この文部省のいわゆるやり方によつてどのようにでもできるという点は、現在までのあらゆる行動、そういうものを通して明確に言えるのではなかろうか。特に大学の研究所というようなものが、いわゆる日本の国における最高の研究所として、その職員の身分を安定し、又その研究所の改廃等についても慎重な審議乃至は手続がふまれたときに、初めて安心して研究ができるのではなかろうか。ところがこれが文部省乃至は大学のこの審議機関等において知らない間にこの問題が解決されるというような事態が仮に起きたといたしまするならば、安心して研究に従事するというようなことは到底あり得ないのではなかろうか、むしろこの場合においては現行法通りにこれを規定を置きまして、飽くまでこの日本の国の最高の学術研究の擁護という点を明確にすべきである。木下先生に対して申訳ないと思いますけれども、反論という意味でありませんで申上げたいと思いますけれども、いわゆる大学審議機関において慎重に審議されるから絶対心配はないというようなお話でありますけれども、そういうふうなことになりますならば法律というものは要らない。極端に言えば法律というものは要らん。文部省にも、あらゆる各省にも審議機関を設置してそこでやつて行けばいいのだ、こういうことも極論できるのではなかろうか。そういう点から言いまして、私はこの大学の研究所が飽くまで学問の自由乃至は研究の自由、そうして安心して研究のできる体制のためには、この最高の審議機関であるところの国会において審議後にこの問題は決定されるべきである。こういうふうに考えるわけであります。  次に第九条の定員の問題でありますけれども、定員の問題に関しましても、いわゆるこの法案によりますれば、文部省の省令等によつてこれが自由にでき得る。いわゆる行政機関定員法で総体の六万何がしの枠はきめられるといたしましても、それの配分については飽くまで文部省が独自の立場でやつて行ける。そうしますと、すでに先生がたも御存じとは思いますけれども、各大学の定員の獲得競争というものがそこにどうしても起きて来る。非常に不明朗な空気を起して行く。而もその中にこの文部省ならば文部省のこの機関というものが介入して、どのようにやりましようと、そこには不明朗なものが生れて来る。いわゆる極端に申上げますならば、その裏道を通つた取引等というようなものが行なわれて来る危険性が十分にありはしないだろうか。そういうふうなあえて不明朗な各大学の競争意識というようなもの、これが本当の大学の研究機関としての研究に対するところの競争ならばいざ知らずとして、定員の獲得というような問題で本当にその精力を使う。例えば木下先生のおつしやりましたように、学芸大学に一つの附属校を設置するにいたしましても、予算のために一年間くらいかかり切りでいなければならん。こういう状態をお話ありましたけれども、若し仮に法案が通つたといたしまするならば、なお更そういう競争というものが非常に激しくなつて来て、各大学間におけるところの問題が起きて来る。それからもう一つは、この定員の問題についてやはりこのサンデー毎日の中でも非常に恐れておる点を指摘いたしております。その点を朗読いたしますと、こういう表現を使つております。「大学職員の定員も、もちろんあまり動きがとれなくては困るであろう。しかし自由党は東大法学部廃止論までやつた前歴をもつており、従つてその内閣の一存でことが決したら、風のまにまにどんな話が出るかわからない。戦時中、何も知らない大臣方の間では、ナチスか何かにかぶれたあげくローマ法講座廃止論が有力だつた。ローマ法講座を廃止して、世界的大家とみられていた原田慶吉教授を追いたして、どれほど日本の国威があがつたかはまさに希代の見ものであつた。」、前代未聞の見ものであつた、こういう表現をいたしております。これは文部省が現実悪意がない、或いは又意識的に行なつたものではないといたしましても、これの運用如何によつては将来非常に大きな禍根を残すのではなかろうか。時の内閣乃至は時の国の権力を握つた君たちの意に副わないと、研究の自由を守り、本当にやつて行こうとする者たちが常に迫害を受ける。而もそういう大学が仮にあつた場合におきましては、その定員の削限、追放、そういう手によつて非常な問題が将来起きて来るのではなかろうか。飽くまでも大学というのは、この学問の自由、研究の自由というものを保障して、本当にその大学の先生方が伸び伸びと何ものにも拘束されることなく、科学の真理、この真理追求のために研究をすることこそ、いわゆる大学行政乃至は文教政策として真先に取上げ、それを文部省等が飽くまでも実施して行くという態度がとられるべきではなかろうか。こういうふうな法案の内容に盛られているような、文教政策上から言いましても、或いは又大学本来の自治、自由というような点から言いましても、非常に問題を残す法案というものにつきましては、私どもは飽くまでも反対せざるを得ない、こういうふうな点であります。  更に申上げたいと思いますのは、この提案理由の説明の中にもありますように、予算との関連においてこの関係条文を整理するんだ、こういうふうなことを提案理由の中で語つておりますけれども、それならばどういうふうな一体予算の関係になつているのか。私どもが予算を見た場合に、この国立学校の設置法に基くものとしては、東大の中に設置されるといわれているこの原子核の研究所だけが大きな問題としてこの法案に関連があるのではなかろうか。而もこれは文部省が八千二百万円に及ぶところの予算を計上いたしまして、施設費の中でこの措置を取扱つております。若しも仮にこの原子核研究所ということでありますならば、現行法の第四条をこれを改正することによつて、むしろ本当によくこの原子核研究所というものが国民にもアツピールできるのではなかろうか。そうでなしに、いわゆる省令乃至は政令によつて研究所の附置を決定して、国民が知らない間に東大の中に、或いは他の大学の中に次々と新らしい研究所が設置されて行く。その研究所が而も重要な今後の日本の将来を決定するような場合もあり得るのでありまして、そういう点から言いましても、飽くまでもこの法案というのは、そういう文部省のおつしやつておるような純事務的な処置面に限つて出さるべきものであつた、こういうふうに考えるのであります。  それからその次に申上げたいと思いますのは、やはりこの提案理由の中の一部といたしまして、三月三十一日までにこの法案を通さないと非常に問題があるというような解明が与えられておりますけれども、三月三十一日までにこれが通過しないと困る点として挙げられますのは、いわゆる現行法の第三条の三及び第四条第一項のみでありまして、あとは三月三十一日までにそう急にこれを処理しなければ大学行政の運営上困るという点は何ら出て来ないと判断するものであります。こういう点から申上げまして、当初申上げました通り、私どもは文部省がこれを意識的に乃至は意図的に出したというような判断はいたしませんけれども、この中に包蔵されておる大学行政上の大きな問題点が広く輿論の前にも出されて参りましたし、大学当局等よりもこの問題に対する非常な反対の意見も出ておりますので、そういう点から委員会といたしましても慎重に御審議を煩わして、大学行政上の問題というものを本当に明朗に是非お願いいたしたい、こういうふうに考えておるものであります。  以上で第五条並びに第九条を中核といたしまして、この法案に対して私どもといたしましては賛成いたしかねる、こういう点であります。以上です。

川村松助自由党

○委員長(川村松助君) 次に戸沢鉄彦君にお願いいたします。

戸沢鉄彦名古屋大学教授

○参考人(戸沢鉄彦君) 名古屋大学の法学部に勤めております戸沢でございます。小室さんの御意見はかなり私の意見と一致しておるのでございます。私は政治学をこつこつとやつておる学究でありますが、長い間京城帝国大学におりまして、今名古屋大学におり、国立大学の行政についても多少経験がございます。従いまして、これは主として大学の立場から、又政治の点から意見を申上げたいと思うのであります。  この国立学校設置法の一部を改正する法律案は、具体的に先ず何大学にこういう学部を設置するとか、具体的ないろいろなことを書いておりますけれども、如何にも具体的な必要から是非早く通さなくちやならないものだというふうに考えられるのでありますけれども、そのうちには甚だ憂うべきいろいろな問題があると思うのであります。もとより私も長く官立学校の教授をしておりまして、文部省のほうにもいろいろお世話になつておるわけで、全く悪意を持つてこういうものが出て来たとは思わないのでありますけれども、そしてよしや今日の政府や、そのうちの文部省のかたがたが非常に善意を持つておられるといたしましても、こういう改正法案が通りますと、その結果将来かなり恐るべきものがあるんではないかと思うのであります。  先ず国立学校設置法の一部改正法案を見ますと、国立学校設置法の第二条を改めて、この国立学校設置法の第二条には、「この法律で「国立学校」とは、学校教育法第一条に定める学校のうち、国立の大学及び高等学校をいう。」とあるのを、改正案では、「この法律で「国立学校」とは、学校教育法第一条に定める学校で国が設置するものをいう。」としてありまして、そうして更に第二項が加わつて、「大学以外の国立学校は、この法律に特別の定をするものの外、政令で定めるところにより、国立大学又は国立大学の学部に附属して設置するものとする。」とありまして、政令によつて大学以外の国立学校を国立大学又は国立大学の学部に附置することができる、附属して設置することができるというふうになるわけであります。これは内閣の意向で以てそういう大学以外の国立学校を国立大学又はその学部に附属して設置することができる、国会の意向を問わずに内閣の意向でできるというところに問題があると思うのであります。  次に国立学校設置法の第五条は「国立大学の学部に左表の通り、附属の学校、教育施設又は研究施設を置く。」と規定して、次に表を掲げているのでありますが、改正案によりますと、第五条は「国立大学の学部に、文部省令で定めるところにより、附属の教育施設又は研究施設を置く。」というふうになつておりまして、文部省令で以て国立大学の学部に附属の教育施設又は研究施設を置くということが問題ではないか。国会の意向を問わないのは勿論、政令でもなしに、文部省令で以てこういうことをきめるということが問題ではないか。  次に国立学校設置法の第九条に「各国立学校に置かれる職員の定員は、別表第一及び第二による。」とあつて、そうしてこの別表第一、第二というふうにございまして、この定員が、北海道大学は職員の数が何人、東京大学は何人というふうに一々きまつておるのでありますが、今度の改正案によりますと、各国立学校に置かれる職員の定数は「行政機関職員定員法に定める国立学校の職員の定員の範囲内において、政令で定める。」というふうになつております。そこで小室さんも言われましたように、国立学校の職員の総数が六万千何百何人というふうにきまつておりまして、その範囲内で以て政令で自由にきめることができますから、政令によつていろいろの大学の定員を左右することができる。これが問題だと思うのであります。つまり大学以外の国立学校を国立大学又は大学の学部に附属して設置する場合に政令でできる。それからいろいろな国立学校の定員を変更するに当つて政令でできる。又は国立大学の学部に附属の教育施設又は研究施設をおく場合に文部省令でできるということ、これはこういう重大な問題を国会の意向を問わずに政令又は省令できめるということが、私は民主主義の立場から言いましても、大学の研究の自由及び自治の立場から言いましても、非常に憂うべきことたと思うのであります。もとよりこれに対しては、そのときそのときの必要に応じて大学の構成を変えるとか、定員を変えるといつたようなことが非常にいいことじやないか、こういう意見もありますけれども、併し私はこの点は大学の性質を非常によく考えて見る必要があるのではないかと思うのであります。一体学校というものはどういうものであるか、教育はどういうものであるかと言いますと、御承知の通り教育基本法の第十条には、教育というものは不当な支配に服することなしに直接国民に責任を以て行われるべきものだというふうに謳つてあるのでありまして、特に学校の中でも大学というものは、いろいろな専門の学者が国民全体のために、延いては人類全体のために飽くまでも真理を探求して、そうしてその学識に基いてできる限り立派な高等教育を授けることを目的としているのでございます。そういたしますと、大学の研究の立場と、その時その時の政府の考え方とか、或いは利害というものと一致しないことが往々あるのでございまして、これは私はむしろ当然なことだと思うのであります。で、為政者というものはその大学の使命を考えてやつて、本当に学者たちが真理の立場からこういう研究をするのだという場合には、よくその意見を聞いてやるだけの雅量がなければならないと思うのであります。ところがこの必要に応じてどんどんその学校の構成を変える、定員を変えるということは、時の政府の主観的な考え方や、いろいろな利害の立場から学校を左右する場合にそれを認めるということになるのであります。こういたしますと、私は学問を考え、国の安寧幸福を考えると、甚だ憂うべきことだと思うのであります。もとより国の必要に応じまして、時にはその大学のそういつたような性質にもかかわらず、多少定員を減らさなくちやならんとか、組織を変えなくちやならないということもございましよう。そういうような場合には、国の唯一最高の立法機関であるところの国会の意向を問うて、ここで以て十分に審議をした上で以て、国民を代表するところの国会の意思によつて或るところまで変えなくちやならない、こういうことはございましようが、これだけの慎重な措置がどうしても必要だと思うのであります。ただ早く問題を片附けてしまえばいいといつたような問題ではないのであります。この内閣の統轄の下にあるところの行成機関の構成とか、或いは行政組織については、その時その時の必要に応じて或いは早く決定をしなくてはならない、その構成を変更するに当つては早く決定をしなくちやならないというようなことがあるかも知れませんけれども、私は学校、特に大学の構成については非常に慎重審議した結果でなければ変更をすべきものではない、こういうふうに考えるのです。若しもこういう改正案が通りますと、政府や文部省がじつとしていても、まあいわゆる睨みが非常に大学等にきくのでございます。若しも政府や文部省からいつて、或る大学についてこういつたような気に食わないところがあるからこういうふうにしろと、言うことを聞かない場合にはおどかしの道具としてこの定員も変えることができる、いろいろな研究施設とか教育施設をAの大学からBの大学に持つて行つてしまうといつたようなこともできる、こういうふうにいたしますと、政府が大学の研究の自由、それに必要な大学の自治を蹂躙し得ることになるのであります。もとより木下さんのおつしやつたように、文部省というものはそう独断的にいろいろな処置をとるものじやない、委員会もある、そこで大学の問題は慎重に考慮されるというお話もありました。まあ今日において割合にそういうことが行われているかも知れませんけれども、私は将来のことを考える。将来を考えますと、政府が自由に大学を左右し得ることになる。これは大学の研究の自由と自治を守る者からいたしまして非常に憂慮するところなんでございます。  もう一つは、私はこの国の政治の立場から申しまして、これはやはり甚だ憂うべきことではないか。こういつたような重大な問題を国会の審議にかけないで以て内閣や或る省の意向によつてきめるということは、デモクラシーの精神と甚だ相容れないものだと思うのであります。特に昨今の政治の動向を見ますと、国会の権限をだんだん縮小してそうして執行部の権限が増大し、一部の者の憂うるように、何かフアツシズムの色彩が非常に強くなつて来たように思うのであります。この際に、我々は飽くまでも民主主義の立場から国会の権限の縮小されることを憂うるのでありまして、こういつたような点からもやはり国会の権限というものが侵されるのじやないか、縮小されるのじやないか。率直に私の考えを申すことを許されるならば、何かいわゆるフアツシズムみたいな政治がだんだん強くなつて参りまして、そうして為政者に対する正当な批判の言論を抑圧する方法がいろいろに現われて行く。先年問題になつて我が国の識者の大多数が反対したにもかかわらず、遂に成立したところの破壊活動防止法だとか、或いは今問題になつております教育に関する二法案、或いは学術会議を民間に移すということ、こういつたようなことがいろいろと出て参りましたが、こういうことがやはり執行部の権限を強めて、そうして或る方向に……もう少し率直に言えば、何か或る外国の利益のために我が国を或る方向に持つて行こうとする場合に、それに対していろいろな批判がなされることをできるだけ食いとめるといういろいろな方策が考えられているのではないかというふうに心配もするのでありまして、こういつたような点からいたしまして、私はこの改正法案の以上述べました諸点について非常に心配しているものでありまして、私はこれに反対の意見を持つております。以上。

川村松助自由党

○委員長(川村松助君) 参考人のかたがたに御質疑のおありのかたは御質疑を願います。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 私は先ず第一に、木下先生に以下四点ほどに亘つてお尋ねしたいと思うんですが、先ず第一点は、御意見ではなくて実際のことについて質問をさせて頂きます。それは大学設置審議会等において、「等」と申しますのは、先生は学術会議の会員でもあられますので、そういうものも含めても結構ですが、これらの審議会等におきまして、このような意図を持つ政府提案がいいか悪いかという諮問を受けられたことがあるかどうか。  それから次に、現在の大学審議会においては非常にうまく運営されているという先ほど概括的なお話でありましたが、そのうまく通常されているうちにも、何らかの支障等があるとするならば、改善を要すべき点としては、このような点は支障があると思うというような点について一つ実態を私どもにお教えを願いたいと思うのです。先ずそれを伺つてから次に入りたいと思います。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 大学設置審議会その他においてこのような意図を持つ諮問を受けたことがあるかという御質問でございますか、只今の御質問は……。「このような」ということがはつきりいたしませんが、只今私どもが参考人として申上げておりますことは、二十九年度予算に照応して関係条文を改正するという事実を前提としておるものでありまして、一般的な諮問を大学設置審議会その他において受けたということには該当しないのではないかと思います。それから大学設置審議会がうまく運営されておるか、これは会長初め各委員が全力を尽してやつております。完全にうまく運営されておるとは考えませんが、年々反省をいたしまして、よりよく運営をして行くということに努力はされておるのでありまして、これも只今具体的に、この問題この問題と指摘するようなことは、あとで又思い出すかも知れませんが、今ちよつと思い出ぜません。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 私の質問の言葉が足らなかつたので大変に恐縮いたしましたが、質問の第一点は、只今問題となつていることと無関係ではないのでございます。「このような」と言つたことは、一つの法改正というものは、現存する法律がよいか悪いか、教訓的に見て、運営上或いはその他諸般の事情上、このようになすべきが至当であるという一つの理由根拠があつて、立法府においては改正の手続になることについては先生御承知の通りでございます。従いまして、そういうふうな現行法を反省する意味で審議会等におきましてこういう法律が非常に問題である、こういう法律はこのようになつたら非常に執行部として楽だとか、楽でないなどということは別として、日本の大学の振興上好ましいと思うというような問題が議論されたことがあり、或いは諮問されたことがあるでございましようかということを私はお尋ねしたつもりでございます。ただ私としてはそれに対する答弁を強要する意思はございません。併しながら先生を学識経験者として、私どもは満場一致を以て木下先生の御高見を是非承わろうということで本文部委員会はきめておる経緯等に鑑みまして、正しい実態の上に物を判断したいというところから、そのような事態を御承知であつたならはお漏らし願いたいとする私の質問でございます。お答え頂けるかどうか。頂けるとしたならば、是非お願いしたいと思います。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 大学設置審議会その他において、さような諮問に接したことは記憶がございません。ただ申し添えますことは、本日私がこの点につきまして申上げたことは、今様で法律であつたところのものを政令、省令でよろしい、こう簡単に解すべきではないのでありまして、予算に照応したということでありますので、この予算に昭応するということは国会において予算が成立するということの中に法律と同様のものが含まつておるはずだと、決してこれを無視するのじやなくして、同じく重要なものがこの予算の審議の中に含まれておる。であるからその裏付として省令或いは政令でやつても差支えないんじやないかと、こういう意味であります。法律をそのまま政令、省令に改正するというように簡単に私は考えておらない、すべての場合を考えおてるわけであります。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 おつしやることはよくわかりましたのですが、実は先生の駒考えが逆立ちしているか、私の考えが逆立ちしているかは、これはわかりませんですけれども、私どもは現に国会で審議されている予算の裏付として必要な法改正であるというふうに、この提案された問題については一応現実の問題として考えますけれども、この法改正は長く将来に亘つて日本の大学教育に関連を持ち、至大の影響を与えるものであるという観点に立つて、基本的な問題としてこれを一つは考えて行く。それから具体的に現在の予算との照応した形において眺めて行くと、この二つの立場をとつておるわけでございます。先生が参考人の御意見としてお漏らして下すつた場合は非常に筋が通つておりまして、抽象的可否の議論は問題でない、こういうふうにおつしやつたのでございますが、私は問題であると考えておるわけなんです。その証拠には組合を代表して小室君の意見は輿論の動向並びに基本的な理念からこれを述べたのであつて、この議論は暫くおくとして、現に大学に席を置き、そうして現場に立つ戸沢先生が木下先生とはやや対蹄的な意見を現場に即して具体的に述べておるわけなんです。そこで私はどうしてもお尋ねしなくちやならないのでございまするが、現行法によつて何か支障があるかないか、こういうことを先ず第一点にお尋ねする。  それと同時に、現在大学設置審議会が非常にうまく運営され、定員の問題についても、或いは附置研究機関附属学校等についても問題が現在までなかつたということは私も認めるといたしましても、それは現在の法律があつて、その上になされている大学設置審議会であるということを忘れてはならないと私は思う。で基本をなす法律が今問題となつておりまするように改正された場合においても、文部省の睨みが、或いは時の内閣の睨みが完全にきいた場合においても、この設置審議会がうまく行くという保証が仮にあるとするならば、それを私はお尋ねして御指導を頂きたいと、こういうふうに考えておるわけなので、一つ基本的な問題として、これは問題にならないということでなくて、一つそこから御指導を賜わりたい。そうして又具体的な問題として法改正された暁におけるこの大学設置審議会というものの運命、そういうものにまで予見をされて一つ御意見をお漏らし願いたいと思う。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 抽象的の問題では可能であるが、具体的の問題については、この問題は抽象的の問題は解消するという意味で申上げたのでありますが、つまり抽象的には考えられ得ることでありますが、これを具体的の問題に移して現実の事実に触れて参りますと、この抽象的の問題は不可能になつて来ると言つても差支えないのではないか、こういうふうに考えておるのでございます。でありまするから、抽象的には考え得るが、現実的には不可能であると同時に、只今将来のことの御心配、これは尤もなことであろうと思うのであります。又私も今日他の参考人のかたからいろいろ御意見も伺いました。私は実は文部省の睨みということを一遍も感じたことはないのであります。実に親しみを持ちますが、未だ言つて睨みということを感じたことがありません。大学の運営者としてこちらからいろいろ計画を持つて行きまして協力は得ておりますけれども、今後におきましても、或いは定員を削るんではないか、そういう睨みを持たれているから大学が萎縮せざるを得ない。そんな萎縮感は私は打ち得ないのでございます。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 睨みという言葉が持つ概念の規定は暫くおくといたしまして、私は具体的にお尋ねをして参りたいと思うのですけれども、実はこの改正に対して地方の新設の大学、特に学芸大学、或いは学芸部等が問題にしておるわけです。私はそういう事例を幾つか現実にこのたび足を運んで調査しております。そこでその大学と文部省の従前の関係について具体的なことをお伺いし、そういう問題は将来どうなるであろうかということについて第二段としてお尋ねして御意見をお伺いしたいのですが、先ず現在の制度からいたしますと、大学から概算要求を予算編成前に出されると思うのです。そのときにその概算要求がなされるまでに大学においてはどのような経過を辿られるか、その要求を文部省と直接に現在折衝しておるのはどなたでございますか。そして又それが現在まで、先生は学芸大学の学長でいらつしやいまするが、他の東大であるとか、或いはそういうふうな昔から有名な大学等の振合い等から考えて、どうも学芸学部であるとか、学芸大学というものの意見の通り方が弱いというようなことを具体的にお考えになつたような事例はございませんですか。非常にしつこいようなんですけれども、先生のお答えを頂いておりまして、具体的にこういうことをこの際学識経験者としての先生から承わつておいたほうがいいと思うものですから、一つそれらの点についてお尋ねしておきたいと思うのです。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 只今は学芸大学並びに学芸学部につきましての、他の大学に比較しての予算概算要求その他に亘る計画がどの程度に進んでおるかという御質問と思うのでありますが、大学によりましていろいろとあり、一々他の大学のことを存じませんが、東京学芸大学におきましては、大学開設以来予算その他におきましては、現在学長として責任を持つて申上げ得ることは、具体的に事例を以て申してもよろしゆうございますが、この数年間にめざましい充実を来たしております。恐らく数年後には他の大学に負けないくらいに発展して行くのではないかと、こう考えます。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 それは個人的に木下先生の偉大なる政治力に起因することであつて、私がお尋ねしておりまするのは、従来大学が文部省と予算折衝した場合に、大学の意思と反し、或いは希望順位に反した予算決定がなされておるという例を聞いております。具体的な問題としては、農学部があつたり理学部があつたり或いは学芸部があつたりする大学において、各学部の教授会  の意見を評議会できめて予算が作られる。併し最終的にはそういう評議会は大学学長の諮問機関に過ぎないので、大学の学長の意思が各学部の教授会の意思をそのままうまく取まとめ、何人も首肯し、何人も満足するような形において文部省と予算折衝のできない場合も現実にはあり得ると思うのです。而も又国の予算というものはきまつておりまする関係を以て、希望した額が通らなかつたり、或いは希望した順位が狂つたりする事例もこれは当然あり得ると思うのでございます。で、先生の学校だけに限つた問題ではなくて、そういうふうに考えて来るというと、いわゆる予算の成立までは文部省の権力というものは従前においてもかなり大きなものではなかつたかとかように感ずるのでございまするが、これらの点については如何でございましようか。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 同じことを申上げるようでございますが、私は文部省にいろいろ予算をお願いに毎年のように上つております。併しその予算を文部省にいろいろ説明し、この事業の計画を達成して頂きますように交渉をしておりましても、文部省からこの点につきまして何と申しますか、今お言葉がありましたような、大学といたしまして文部省から抑えられるような圧迫を感ずるようなことは一遍も感じたことはございません。むしろこちらのほうから文部省に対して非常に強く大学の、殊に私どもの大学は教員養成の大学でございます。甚だ不備な足りないところから開設をされて行つたものでありまして、特に教員養成の大学なるが故に、特別に考慮を払つて頂きたいという意味で、むしろ大学のほうが文部省に対して昂然……という言葉は甚だよくないかわかりませんが、出ておるくらいでありまして、文部省に対してそういう懸念、心配というものを一つもしたことはない。ただその予算の総額におきまして、例えば経営費のようなものが全体的に何でも満足するように来ておるか、そんなことは決してございません。これは日本のこの大学全体の予算の総額を御覧下さいましてもわかります。ほかのものに比べましたらば、実に比較したら僅かなものだろうと思う。従いまして私ども頂いております経営費のごときも、昨年は途中におきまして旅費等も削られたり何かいたしまして、非常に苦しんでおります。併しこれは国全体としてかような状況にあるので、こういう大学として貧乏な生活は忍ばなければならないが、これは文部省に威嚇されたり、文部省の圧力によつて差引かれたものだとは、そうは解釈いたさない。窮乏の生活は今日は堪えなければならん。その上において比較的に今まで文部省からは多くの援助を頂いておつたということは言うことができる、こういうことであります。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 予算面から離れまして、現実の問題として一点伺つておきたいと思いますが、このたび学芸大学に附属高等学校を設置する運びになつておるかと思うのですが、事実でございますか。そうして又準備はどの程度に進捗しておいでになりますか。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 私の大学に附属高等学校ができる運びになりつつありますことは事実であります。これは先ほど芸術大学の、又私の、別の意味におきまして附属高等学校ができる運びのようでありますが、それと同じように大学といたしましては、これが予算成立をいたしますれば、非常に有難いことだと思います。(「みんなに廻せよ質問を」と呼ぶ者あり)併し今この準備をいたしておりまして、まだいつになつて、それこそ設置法も出ませんものですから、表向き如何ともすることができないのであります。内部におきましては事務的な進捗はいたしております。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 法律が成立した場合にはあれですか、四月一日から開校し得るような準備をも急いでおられるのですか。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) さようでございます。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 私の質問はこれで終ります。そして劔木先年から今御注意がありましたが、どうか関連質問はして頂きたいと思います。  私木下さんにもう一遍申上げるのですが、だから問題だと私は考えておるのです。木下先生、実は現行法によればそういう高等学校を造つたり、原子核研究所を置いたりということができないのです。然るに原子核研究所を設けること、或いは高等学校を設けることがいいの悪のと言つておるのではない、私の言つておるのは現行法ではできないのです。それに予算に照応して今度の法改正が必要であると簡単に文部省が片づけておる。その法律案の成立が予想されるというそういう立場から、一部では附属学校が具体的にぐんぐん進んでおり、一部では研究所が進んでおる、こういうことを考えてですね、私どもといたしましては、この法律改正の途上において、法律が改正されていないのにすでにこういうことが時の文部省の一つの意思によつて進んでおる。これが法律が改正された場合には、今度は何人にも遠慮することなくできるのであつて、能率的の面からは非常によい場合も予想されると思うのです、むしろ国会に審議を委ねるということではなくて、非常に能率的に行く、そういう場合が予想されると思うのです。ところが今のような場合にはいい面ばかり考えられないのでありまして、私どもはそこでこの法律について慎重を期さなければならないというので、先ほどからしつこくお尋ねしたので、どうかその点は御了解願いたいと思うのです。私の質問は以上で終りますが、いろいろ話しましたが、私の申したことのうちから特に木下先生がこの際発言されたいことがあつたら、御発言を願つておきたいと思うのです。なければ結構です。

剱木亨弘自由党

○剱木亨弘君 戸沢先生にちよつとお伺いいたします。具体的な問題でお伺いしますが、この前の国立学校設置法では、総定員とそれから各大学の定員を法律で規定しておつたわけです。そうすると先生の今のお説によりますと、各大学の定員なり各学部の定員が省令で定めると自由になるという御説でございましたが、各大学の総定員を変えないで各大学の定員が変えられるものじやないと思うが、この点どうお考えでございましようか。

戸沢鉄彦名古屋大学教授

○参考人(戸沢鉄彦君) 国立学校の総定員の範囲で各大学の定員は変更できると思います。省令で。それが私はまあ問題じやないかと思つております。今の設置法によると表ができておりまして、やはり法律によらなければこの表を変えられませんから、東京大学何人、北海道大学何人というふうになつていますけれども、そうでなくて国立学校の職員の総数の範囲で以て、政令で以てきめるとすると、将来は或る大学の数を増せば、片一方のほうは減らしてもいいというような決定が省令でなされると、こういうようなことになりますと、相当問題じやないか。私は劔木さんが文部省におられるときにも何かお願いに上つたような関係があつて、私としては文部省にひどい目に会つたという経験はないのですけれども、併しむしろそれは優遇されておるほうの大学だから余り文句なかつたので、弱いほうの大学としてはかなり考えられるのじやないか。ですから……。

剱木亨弘自由党

○剱木亨弘君 そうしますと、私承わりたいのは、例えば北海道大学が法律で二千四百九十四名ということになつておりますが、その内容は又省令で、これは文部省令でそのうち教授何名、助教授何名と小さく組み立ててそれで二千四百名というものは成立しておるわけです。そうすると、この各大学が殖やす場合は別でございますよ。予算を取つて殖やす場合は別ですが、この教授何名とか何とかいうことを自由に予算で組立てたものを変更する、大学内部でそういう変更は実際文部省の意思でできると現在お考えでございましようか。

戸沢鉄彦名古屋大学教授

○参考人(戸沢鉄彦君) 予算の場合に国会で審議するからいいじやないかという意見があるのですけれども、予算の場合は、これは実際に予算の問題が主眼であつて、いろいろと考えさせられて、大学そのものを学問の立場からどういうふうにしたらいいかというような問題がついお留守になつたのではないか、私はそう思うのです。それで、このそもそも改正案がすらすらと衆議院を通つてしまつたということは、局外者として私は如何にもおかしいと思うのですが、何かやはり人間のやることですから……。

剱木亨弘自由党

○剱木亨弘君 ちよつと質問だけに答えて頂くように。法律案が通るとか通らんとかでなく、私は簡単に質問したいのですが、私の質問したことだけにお答えして頂きたい。私は今予算の問題を言つておるのではなくて、省令で北海道大学なら北海道大学、名古屋大学なら名古屋大学、それの定員の内訳がきめてあるわけです。その省令できめてあるのを、文部省が勝手に各学部の定員の教授を何名ということを削つたり、或いは殖やしたり、そういうことが大学でできるとお考えになりますか。私はこれは予算の問題でなしに、省令できめてあるが故に現在そういう事実があつたり、又そういう危惧の念があればその点……。

戸沢鉄彦名古屋大学教授

○参考人(戸沢鉄彦君) だから大きな枠は法律できまつているわけです。

剱木亨弘自由党

○剱木亨弘君 いや法律できまつておつて、その内容は現在省令できまつているのです。省令できまつておつて現在若しできるなら、今までだつてその省令をいつでも文部省で変えられるはずだ。それを現在までそういう事実があつたかどうか、又そういう心配があつたかどうか、これは一つはつきりして頂きたいと思うのです。

戸沢鉄彦名古屋大学教授

○参考人(戸沢鉄彦君) 私は今までのことをとやこう言つておるのではないのです。

剱木亨弘自由党

○剱木亨弘君 今までのことでなしに、現実において先生が、省令に譲つたらこの小さな内容を勝手に変えられるとおつしやつた。現在もすでにその定員の内容は省令なんです、各大学の中の……。それが勝手に変えられるはずはないじやないですか。

戸沢鉄彦名古屋大学教授

○参考人(戸沢鉄彦君) 併し大きな枠は法律できまつていますから、設置法で……。だからそれがなくなつてしまうと、やはり……。

剱木亨弘自由党

○剱木亨弘君 設置法できまつているというのは、総定員はきまつていますよ。それは各大学の定員はきまつていますよ。各大学の定員の中の省令で又内部はきまつていますね。

須藤五郎無所属クラブ

○須藤五郎君 ちよつと……こういうやり方は面白くないのです。質問なら参考人の発言を十分に聞いてからしてもらいたい。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 我々は学識経験者として尊敬するからこそお呼びしてお聞きしているのだから……。

剱木亨弘自由党

○剱木亨弘君 質問の点を答えてくれませんから…。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 自由に答えさせたらいいじやないか。

剱木亨弘自由党

○剱木亨弘君 自由でよろしゆうございますが、ただ戸沢先生にお願いしますが、私が質問しております点は、法案が通るとか、衆議院がしたことがどうとか、そういうことをお尋ねしておるのではないので、今先生はどうお考えでしようかということをお尋ねしておるのです。私の質問の点については、それで今まで現実に省令で細分がきまつておるわけです。外枠は法律できまつていますけれども、それで組立てらそた大学の定員というものがあつて、それでそれを又大学間における定員を変えて行くとすれば、現に省令できまつている細分の点在でも変えなければならない。併しそういうことがあり得るかどうかということをお考えでございましようかどうか、その点をお尋ねしておるのです。

戸沢鉄彦名古屋大学教授

○参考人(戸沢鉄彦君) 私は将来の問題を憂うるのです。それで法律の枠を取つてしまうと、かなりそこに政府や文部省の意向が強くなるし、そこにそういうことができるのだということだけで以てやはり大学を成るところまで左右し得る。

剱木亨弘自由党

○剱木亨弘君 それでは今までの法律は大学ごとの定員をきめて、その大学内の定員は省令できめておりましたが、その省令できめておるこの小さな内枠までも全部法令でなければいけないのだ、法律でなければいけないのだ、こう考えるのですか。

戸沢鉄彦名古屋大学教授

○参考人(戸沢鉄彦君) 希望としてはそうです。

荒木正三郎日本社会党(第四控室・左)

○荒木正三郎君 私は第五条と、それから第九条に関連をいたしまして木下先生にお伺いしたいのです。この国立大学に附属して設けるところの教育施設又は研究施設は、これを改廃する場合には非常に慎重な考慮が払われなければならんと私は考えているわけであります。そのためには法律によつて国会の審議を経て、そういう教育施設或いは研究施設の存廃をするというのが、文部省令できめるよりはいいじやないかというふうに考えているわけなんです。こういう施設が文部省限りの見解でそのときどきに改廃される、こういうことになると、やはりこれらの研究機関が十分な機能を安心して果すことができないのじやないかというふうに考えるのですが、こういう点法律で定めなくても文部省令でいいのだ、こういう御見解についてまあくどいようですが、お尋ねしたいと思います。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 附属の施設の改廃につきまして、こういう重要なことを法律によつて国会を通して改廃するということは大変必要なことだと思つております。ただ、今私どもここで問題になつておりますのは、いつでも前提がついて先ほどもお答えをいたしましたが、予算に照応してということがございまして、予算審議のときに十分法律と同じように国会を通して、この改廃が議せられると同じ意味におきまして予算の審議のときにされているのでありまして、この法律でなくともいい、或いは省令でいいと言うのではございません。この場合はどこまでも前提がついております。予算に照応して云々ということで、私はこれは法律の簡素化で、あとのことは省令改正、省令その他で補つてもよろしいと、こういう意味であります。重要なことがこの法律によつて国会を経るということの必要なことは言うまでもございません。

荒木正三郎日本社会党(第四控室・左)

○荒木正三郎君 そこで木下先生のお考えは私にはよくわかりますが、木下先生のお考えでは、予算審議の際に実質的に国会でこういうことが審議されている。だから文部省令でもいいのだこういう御見解のようでございますが、そこで予算審議の問題でございますが、国立大学に関する予算についてこれは大綱は審議されますけれども、細部に亘つては審議されないと思うのです。と申しますのは来年度の予算におきましても、国立文教施設整備費というのが組まれておりまするけれども、これの配分についてはやはり文部省内でかなり決定する権限を持つているわけなんです。国会で審議される場合は、やはり総枠としてこれが審議されるのであつて、これらの内容が各大学にどういうふうに配分されるかというところまでは審議しておらないのであります。そういたしますと、今木下先生がおつしやつたように、予算の審議が実質的に十分されておるから差支えないと、こういう御意見は若干崩れるのじやないかと私は感じているのですがね、本国会における予算審議の実態から考えてですね。そうなるとやはりこういう法律できめる必要が起つて来るのじやないかと思うのですが、非常にくどいようで失礼ですが、その点如何でございましようか。

川村松助自由党

○委員長(川村松助君) 田中君から関連して一緒に御答弁願いたいということですから……。

田中啓一自由党

○田中啓一君 御答弁があつてからで結構でございます。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 細部に亘るということが、予算審議の場合におきましては、なかなかそこまで立至らないということでございましたが、これはちよつと私言い過ぎになるかと思うのでございますが、併しそういう重要なことが、法律できめなければならないほどのことである個所がありましたならば、細部にそういうことが予算審議のところで考えられてもいいではないかというふうに考えられるのでございます。

荒木正三郎日本社会党(第四控室・左)

○荒木正三郎君 それは国会としてそこまで審議しなくてもいい、少くともその予算の配分については執行機関である政府において決定し得る点があるわけです。これは法的にあるわけです。国会か必ずしもそこまで審議しなくてもいいという面があるのですから、だから国会で審議しろとおつしやつても、審議する必要のない部面まで審議する必要はないと思うのです。そういたしますと、木下先生の御意見ではやはり慎重にはすべきである。そうして予算審議の際に実質的にそれが審議されておれば差支えない、こういう前提に私は立つていると、こういうふうに解釈していいわけですね。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) それでよろしゆうございます。

田中啓一自由党

○田中啓一君 関連質問……。私は予算審議の過程というものは、例えば今言われた国立文教施設整備費というようなものに対して増減があれば、当然予算委員会は審議をしておるものと了解をしております。殊に総括質問の後には分科会を開いてそれぞれ名省別に審議をするわけでありますから、当然審議はしておるものと、こう解しておるのでありますが、併しこれはまあ議会内部のことで、外のかたはどういうふうにやつておるかということまで十分御承知ない。又実情と理屈とも違うこともありましようし、それはまあその程度でありますが、結局何らか国会では実質的にはそういつた問題についてもどこかで審議があるのであろうから、必ずしもかようにたくさん法律があるところで、更に法律で以て一々やらなくてもよろしい、こういう御見解のように私は伺つておつたのでありますが、そうでありますか。一つもう一遍お尋ねいたします。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) さようでございます。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 関連……。同僚荒木君の質問に対して木下先生の御意見は、この法律に連関して本年度の問題として、例えば附置研究所にしろ、附属学校にしろ、そういうものについては予算審議のところで議論されているから問題でない、こういう御意見ですか、木下先生……。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) さるべきであるからということであります。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 ところで、これは一昨日文部委員会で私がこういう質問をして、文部当局のこういう回答を得ておる。本年度国立文教施設整備費が十九億計上されておる、この十九億の内容については一体はつきりわかつている面もあるけれども、わかつていない面がある、具体的に本法案が成立して、学芸大学の附属高等学校ができたなら、これに幾ら使うかということについてわかつていない、我々にはまだわかつていない、予算審議の過程においてもわかつていない、私も予算委員会の委員をしております。そこでその予算の具体的な配分内容を示せと私は文部当局に要請しました。ところがまだ成案を得ておりませんと言うのです。御承知のように本年度予算は衆議院を通過して本院に廻つておる。こういう形から、それは非常に困つた問題だと、そんなことじや仕方ないじやないかと、木下先生に立法府の我々が叱られるかも知れませんが、現実はそうなんです。そこで私どもは本年度の問題も問題だと、こう思つているわけなんです。併しこれについては意見があるでしようから、深くこの問題については触れませんが、一点承わつておきたいのは、提案されている形は、本年度の予算に見合つて本法が改正されますと、次に改正するまで将来ずつと長く改正された法律案は口をきくのです。そこでこの第五条の改正はしかく簡単に考えられないというので、学識経験者でありまする三先生をお呼びして我々が御指導を受けておるわけなんです。将来を見通してこれは如何にお考えでございますか。大した問題でないと、そういうことが議案になることのほうがおかしいと、こういうふうな積極的な御意見ですか、将来の問題……。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) これはどういうふうにしたらば大学その他の運営が滑らかに行くであろうかということの立場においてこれは私どもが考えるよりも、国会においてお考え頂くべき性質のものじやないかと、こういうふうに考えております。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 わかりました。ですから国会で考える場合に、参考人として学識経験者として定評ある三先生を呼んで如何なものでしようと伺つているので、その御意見をお漏らし願いたい。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 然るが故に、私は改正案に賛成するのであります。

荒木正三郎日本社会党(第四控室・左)

○荒木正三郎君 それでは次に第九条に関連をしてやはり木下先生にお伺いしたいと思うのですが、国立学校の職員の定員を、どうきめるかということは、国立学校の予算がどうきまるかという問題と同様に、非常に私は学校運営上重要な問題であるというふうに考えておるわけでございます。併し今度の法律改正によりまして、国立学校ごとに定員を法律できめないで政令できめる、こういうことになりますと、政府のそのときの事情によつて、国立大学の定員の増減を自由に加減することができる、こういう結果が来ると思うのです。そうなりますと、発言力の弱い大学にとつて不利な事態が来るのではないかというふうに私は考えるのです。これは私の単なる相愛ではございません。現状においてもそういう点があると思うのです。それが更に法律改正になれば、それがますますひどくなるのではないかというようなことを心配しておるわけなんです。そういう点、私はここに昭和二十八年十一月二日に日本学術会議会長の亀山氏から総理に宛てられた新制大学の充実についての要望書を持つておりますが、その中にも、新制国立大学は非常に立ち遅れておる、だから次のような点についてその充実を図つてもらいたい、その中に、大体大学におけるスタツフの充実を図ること、こういう一項目があるのです。これは現在予算とも関係をしておりますが、やはり非常に不利な立場に立つておるのが新制の国立大学ではないか、一般的に見まして、私はそういうことが言えるのじやないかと思つております。それが今後この法律改正によつて更に条件がよくなるとはどうしても考えられない。そういう意味で私は少くとも学芸大学の木下先生はこれでは困るという御見解を持つていらつしやるのではないかと思つておつたのですが、意外にもこれでよいのだとおつしやるのですが、どうもそういう点が心配になりますので、御所見を伺いたいと思います。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 日本学術会議におきまして、大学の充実のために政府に逸書をいたしました事実は私もよく承知いたしておるのであります。その精神その他承知しておるのであります。只今の御質問は、予算の審議と共に定員を定めることの重要なこと、それについて政府のそのときの事情によつて自由に改めることができるということが考えられる、並びに発言力の弱い大学においてはそういう場合において政府に自由に改められるというようなことが起るであろう。この点についてどう考えるかという御質問だと私は考えるのであります。  これにお答え申上げますのには、政府はそのときの事情により自由に定員を取出しまして改変するということは、抽象的には考え得ることでありますけれども、現在の大学の実情からいたしまして、若しそういうようなことが机の上で考えられるということでありましたならば、到底それは政府でやろうと思つたつてできることではないと私は考えますし、又そういうことを政府がやるような意思を起すことはないと思うのでありますが、又仮にあつたといたしましても、それが発言力の弱い大学に向つてなされた場合ということでありますが、発言力の弱い大学をいろいろ心配頂きますことも大変有難いことなんでありますが、少くともそれぞれの各大学の学長並びに教授会におきまして、そういうような場合に発言力の弱い大学というようなものはあるかも知れませんけれども、私は相当そういうときに、ただ発言力が弱い大学だということで見過される大学は私は今日はもうないと、こう考えております。

荒木正三郎日本社会党(第四控室・左)

○荒木正三郎君 それでは重ねて伺うことはどうかと思うのですが、いわゆる旧制大学とそれから新制大学との間にはいろいろな面において相当な開きがあることは私は事実だと思います。特に学術会議の要望しておられる中には、助手とか助教授とか講師とかいうような面において甚だ見劣りがする、こういう面の改善をしてもらいたいということを第一項に掲げられております。    〔委員長退席、理事劔木亭弘君着席〕  これは私は発言力が弱いからこうなつたんだと一概には言いませんけれども、やはりそういう点は相当私は実際には影響があるのじやないかというふうにまあ考えておるわけであります。併しこれは重ねてお尋ねをいたしません。これは予算の問題も同じであると私は思うのです。予算の配分は、木下先生は国会の予算が決定すればもうきまつているようにお考えになつておりますが、私はそうじやないと思うのです。先ほど相馬君のお話にあつたように、予算が通つてから配分の具体的な案が決定される、そういうことになつておると思います。従つて、予算が通つたからもう安心であるというわけには行かないと思うのです。同じような事情が国立学校の職員の定員の問題についても将来起つて来る。私どもとしては、法律という問題を改廃する場合にはあらゆる事情、又あらゆる将来の見通しも考えて十分検討しなければなりませんので、今割合にうまく行つているということだけではどうも十分なまあ資料にもなりませんので、お尋ねをしておつたわけでありますが……。  それでは木下先生に対する御質問を終りまして、戸沢先生に一つお尋ねをしたいのですが、戸沢先生が先ほどおつしやつた御意見の中に、文部省令で附属の教育施設或いは研究施設を置いたり廃止したりすることができる、或いは国立学校の職員の定員を政令で自由に操作できる、こういうことは結局研究の自由というものが拘束される結果になる、こういうような御趣旨の御発言がございましたが、これは私はあり得ることだと思うのです。この研究施設でやつている研究はどうも気に食わない、こういうふうな場合に、やはりそういうものをなくしたい、或いは他の学校に移したい、こういうことが起ると思うのですが、こういう事例が今までにあつたか、どうかですね、それを私はお伺いしたいと思うのです。

戸沢鉄彦名古屋大学教授

○参考人(戸沢鉄彦君) 従来の事例は私はよく存じません。ただこういう改正がなされた場合のことを考えますと、この施設の問題のほかに定員、こういつたようなことを考えると、執行機関がやはり相当強く大学を左右するに大きな力を持つて来るのじやないか。そのためにやはり或る力があつて、どうしてもそれが濫用されるというと、どうも或る大学のやり方が気に食わないという場合に、そういう力が道具になつて、そうして延いて大学の研究の自由とか自治が侵されるという虞れがあるというふうに考えます。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 戸沢先生に関連をしてお尋ねいたします。実は御承知であろうと思いますが、この法律の第五条に私関連していると思つてお尋ねするわけですが、今度原子核研究所が今度の予算に一億円ちよつと組まれておる。ところが、それは現在の法律では何ら裏付けのない実は予算なんです。それで第五条の国立大学の学部に文部省令の定めるところによつて教育施設又は研究施設を置くことができる。つまり、研究の施設を置くことができるということに基づいてやられておるように私は承知いたしておりますが、ここでお尋ねをする点は、文部省の説明によると、この原子核研究所は共同研究所にしたい、こういうわけなんです。それで、私はまだ文部省のほうに質問していないのですが、今度防衛庁設置法案というのが出ておりまして、これによりますと、日本の国の国防のためのいろいろな技術や何かを幕僚長会議というところ人権限を託され、それに基いて技術研究所というものができるわけで、その技術研究所はあらゆる技術研究をするので、そうすると、その法律の技術研究所というものと、それから今度できる原子核研究所というものを国立の大学に附置される研究所というものが共同研究をされるような場合に、その場合に大学の運営の面で非常に不便の点があるのではないか。幕僚長、軍部のような形の意向が強くなると、科学の研究というものよりも、結局国の政策としての国防の研究というところに主力が置かれるようなことになつた場合に、学問としての研究所のあり方がどういうふうに変つて来るかということで私心配をいたしておるのです。この際戸沢先生に御意見を伺つておきたい。

戸沢鉄彦名古屋大学教授

○参考人(戸沢鉄彦君) 私そういう点でかなり心配な問題がいろいろあるんじやないか、こういうふうに政府や文部省の意向で以て大学又は大学の学部に教育施設や研究施設を置くということになりますと、何か学問の立場からはどうかと思うというようなものも、その時の政府の政策の工合で以て、どこかに何か軍事に使う、軍事目的のためになる研究所を置かなくちやならないというような場合に学校を利用することになるだろうし、それから科学技術庁の問題もございますが、そういうような点で、やはり私は厳重に国会の審議を待つて決定しなくちやいけないじやないかというふうに考えます。  私は、ちよつと横道に入るかも知れませんけれども、簡単に事を決するのがいいということは、これは戦争か何かやる場合、或いは政治上緊急の処置をとらなくちやならないという場合には、それは果断、機敏ということが尊ばれますけれども、この学校の問題はそんなに急を要することではないのでありまして、それで国会にかけて一々審議しておると時間がかかるという御意見も出ましたけれども、私はそうは考えない。それがよしや文部省とか政府の考えが立派な意見であるとしても、それならば国会にかけて、そうしてみんなの同窓を得るべきものであつて、慎重に考えるということのためには、どうしても成るところまでてきぱきと物が運ばないということになりますが、このてきぱきと物が運ばない半面において、慎重に国民の代表機関で事を決するというところにいいところがあると思う。

須藤五郎無所属クラブ

○須藤五郎君 私も戸沢教授とその憂いを同じくするものであります。そういう法律ができた将来のことを考えまして、私たちは心配するのでありますが、今も原子核の問題も出ました。それから又近く東大の中に航空学科ができるのではないかということも実は聞いておるのでありますが、そういうことが国会にかけられないで、文部省一個の考えでどんどんと自由にされて行く。その目的を明らかにされないでやられて行くという点が非常に私は危険ではないかと思うのでありますが、木下先生は定員の問題に関しましても、それから附属の教育施設が省令でできるという点におきましても、大学設置審議会というものがあるから、今国会で我々が心配するようなことはないのだというような御意見でありますが、将来にこういう私たちが持つている不安が、国会を離れて、国会の審議を超越して、国会議員の知らない間にいろいろこういうことがされて来る点を防止することがこの法案が通つたあとにできるかということ。それから大学設置審議会にかかるからそういう心配はない、国会にかけなくともいいというこの御意見に対しましては、私たち国会議員としては承服しかねる。なぜ大学設置審議会があるから国会はそういうことは心配しないでいいのだ、国会で審議されなくてもいいのだという論拠はどこから出るのか、その点を私は木下先生にお伺いしておきたいと思う。(「それは関連質問か、戸沢先生に……」と呼ぶ者あり)両先生に聞いている。

剱木亨弘自由党

○理事(剱木亨弘君) 速記をとめて。    〔速記中止〕

剱木亨弘自由党

○理事(剱木亨弘君) 速記を始めて。

戸沢鉄彦名古屋大学教授

○参考人(戸沢鉄彦君) 私も御意見同じなんであります。つまり今庄では政府或いは或る省のやり方がそう悪いことはなかつたといたしましても、今後が非常に問題であつて、これは内外の情勢によつて非常に変つて来るのじやないか。政治が非常に反動化して来れば、政府や省のやり方というものが又非常に乱暴になつて参ります。その場合に是非とも一つ国会で慎重にいろいろな重要な問題を決するということを貫いて頂かないと、我が国のデモクラシーが危いのではないかと思います。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 只今の御質問に対しましては、数回に亘りまして、もうはつきりと答えた記憶があるのでございますが、ただ大学設置審議会ということが馬鹿に強く耳に響いたようでございますが、これは現実の問題をやつて行くうちにこういう過程もあるであろうということの一例を申上げたのでありまして、併しそれがあるから法律は入用でないということは私は申述べておられないのであります。それはたびたびお答え申し上げましたように、二十九年度予算に照応して云々ということでありまして、問題になります定員その他はすべて予算の審議を通らなければならないのであります。通らなければならない過程がある故に、別に法律ということでしなくても、そこのところで法律と同様に取扱われるということでありまして、要らないということは決してないのであります。

須藤五郎無所属クラブ

○須藤五郎君 私の心配するのは、こういう法律ができたあとにいろいろなことが起るということが仮定されるわけですね、今はないかも知れませんけれども、これからあといろいろな不測のことが起つて来る。そういうことが私たちは心配だからこういう法律を作ることに反対しているわけです。ところがあなたのさつきの意見によりますと、この法律ができても私たちの心配することは大体要らないのだ、それには大学設置審議会などがあつて、そこでいろいろ論議されるから、この法律ができてもそういう心配はないというような御意見だつたように私は聞くのです。若しも大学設置審議会があつても、この法律ができたあと私たちが心配するようなことが起るということをあなたもお考えになるならば、この法律を作ることに対してどういう御意見を持たれるか。又この法律ができても我々が心配するようなことは絶対にないというならば、どういう根拠からそれが絶対ないのか。それを防止する方法はどういうか法であるのか。若しも防止する方法もなく、絶対ないということが断言できないならば、この法律に対するあなたのお考えは、どこから賛成なさる根拠が生まれて来るのか、そういう点を伺つておきたい。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) そういうことは抽象的には考えられますけれども、具体的な過程をとるときには必ず予算の審議に関係するところであります。ただ定員その他のことがこういうことになつた故に、抽象的に文部省、政府等において考えるということはあり得ないと私は考えております。

須藤五郎無所属クラブ

○須藤五郎君 そのあり得ないということはあなたの独断的な解釈で、この法律ができればそういうことがあり得るという、だからそういうことがあり得るという法律ができることに対して、どうしてそれを賛成なさるのかということ、そこをただ、そういうことはあり得ないと思うというのでは、この法律の審議に対して確信を持てないわけです。法律を作る以上は、絶対そういうことはないという裏付がない以上、この法律に賛成することができない立場にあるわけです。そこを私は伺つている。ただこう思うというだけではちよつと困るのです。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) これからはもう見解のあれだと思うのでありますが、私は必ず法律できめた場合には、具体的な問題があつて、それが審議されるのではないかと、こう思うのであります。

須藤五郎無所属クラブ

○須藤五郎君 それじや先ほど原子核のことが問題になりましたが、近く策大に航空学科ができるというようなことを私は聞き込んでいるのですが、そういうことが国会にかけられないで、文部省の省令できまつてしまう、どういう目的で東大に航空学科ができるのか、そういうことを国会に何ら知らされないで、どんどんできて来るということは問題だと思うのでありますが、その点はどういうふうにお考えですか。    〔理事劔木亨弘君退席、委員長着席〕

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 只今の問題は私がお答えすべき性質のものじやないと思う。

田中啓一自由党

○田中啓一君 実は私折角のお話をお述べになるときに席を外したりなんかして、或いは重復するかも知れませんが、この際戸沢先生、それから小室先生にお願いしたいと思いますが、先ず小室先生に……。  実は国立学校の職員を各学校ごとに法律で人数をきめているというのは、実は私は国会へ出ましてから、随分これは細かいことまで法律に書いたものだと、こう実は思うたのでありますが、他の国の例にこういうようなのはございましようか。それを先ずお伺いしたいと思います。

小室三夫朗日本教職員組合法制部長

○参考人(小室三夫朗君) 今の点につきましては、現在私どものほうに資料の持合せがありませんで、外国にその例があるかどうか、不明であります。ただ意見を言わせて頂きますならば……。

田中啓一自由党

○田中啓一君 その点の、意見は聞きたいのですけれども、実は私もよく調べておりませんで、ついでにお伺いしたようなことで誠に恐縮であります(「その点は文部省に聞けばいい」と呼ぶ者あり)それは又改めて……文部省のほうはいつでも聞けますから。  それから戸沢先生にお伺いするのでありますが、非常に将来文部省が何をやるんだかわからんというような、まあそんな言葉は決してお使いにならんのでありますけれども、受けたのでありますが、私は現在の日本の政府というものは、国会が基礎になつて成立をしているわけで、総理大臣は国会の指名によることは私が申すまでもなく御承知だと思うわけで、国会と離れて政府というものがそうえらい遠いところへ行けるとは私は思わない。(「行く場合もあるよ」と呼ぶ者あり)まあ仮定に仮定を重ねて行つて、数学的に厳密に考えれば、これはどういうことになりますか、私も何ともそこまでは申上げられませんが、日本の憲法としてはそういうことになつている。(「具体的に」と呼ぶ者あり)従つて、私は全体主義とか或いは独裁主義の政府が成立をしておる国ではそういうことも考えられるかと思いますが、それでは議会が無力で、議会へかけたところで、これはもう駄目であろうと私は思う。あつてなきがごときもので、仮に議会があるにしてもそういうことでは……。私はそれだからこそ全体主義であり、独裁主義であると解しておるわけです。そこらのところがどうも私は先生と話が合わんのでありますが、どうお考えでございますか。

戸沢鉄彦名古屋大学教授

○参考人(戸沢鉄彦君) お答いたします。今おつしやつたような、一応理論としては国会のいわば委員会みたいなものとして内閣が出て来るということは言えるのでありますけれども、併しデモクラシーの国を見ましても、やはり実はこの執行機関というものが相当に強いのですね。それは内閣の下にあるところのいろいろな行政機構というものが現実にいろいろな力を持つていて、それでデモクラシーにおいて、執行機関の権力を余り濫用されないように、どうしたらいいかということがやはり一部の人の悩みではないかと思う。この場合にやはりこういうことを考えますと、私は成るべく国会に相談をするという原則を貫ぬいて頂きたい。そしてやはり国会で問題になるというと、ただ一部執行機関がどんどんやる場合と違いまして、多数党の意向がどんどん通つて、多数党が力を振い過ぎる場合にも、とにかく公の問題とすれば、国民一般がその意見を聞く機会がありますから、それだからやはり国会に成るべくかけるということが、それだけ民主主義の原理に一致するのじやないかというふうに私は考えております。それでこのフアツシズムの問題を私ちよつと申上げましたが、これは表だつた制度としてこのフアツシズムというものが出て来るのじやなくて、現実に政治の動きを見てみると、表面は如何にも民主主義の国のように見えても、やはりフアツシズムの政治が行われるという場合がある。或る有力な外国にもすでにそういうことが起つておるのじやないか。特に第二次世界大戦後のフアツシズムというものは、第二次世界大戦前のフアツシズムと比べまして、表面からこのデモクラシーを攻撃したり、デモクラシーを蹂躪するのじやなくて、一応デモクラシーを尊重するように見せておいて、事実上着々とデモクラシーを蹂躪するというのが、第二次世界大戦後のフアツシズムの一つの特色であると思う。例えば憲法等は一応尊重する、併し事実上蹂躪するといつたような行き方が今日のフアツシズムではないかと思う。そういう意味において私は実質上フアツシズムであるかないかということを言つているのでありまして、その点も一つ……。

田中啓一自由党

○田中啓一君 今いろいろと教えて頂いて有難うございます。今おつしやつたたしかに国会に出せば論議されて、国民によくわかるということは、私もこれは非常にいいことだと思います。同時に何でも法律にしたために、法律の数は大変なものだ。もう実は法制局長官だとか或いは法制局は悲鳴を挙げてしまつて、これだけ法律が出ましては、見落しもできます、とても能力を超越しておりますと、これは事実の話、内明けた話でありますが、というようなわけで、実は昨日も私はどうも法律と法律との間に矛盾がある、片方にはそういうものがあり、片方にはないというのはどうかと言つたら、実はそのままで通つてしまつたので、十分に何できなかつたというような話で、(「絶対多数で通つた」と呼ぶ者あり)そこで私は問題があることについては、国民にとにかくよくわかるように国会でいろいろ意見が出るというとは非常にいいと思う。私は非常にいいと思います。それには全然同感でありますが、同時に非常に法律が多くてとてもいかんから、整理をしようじやないか、今行政整理が問題になつておりますが、一体五分引とか一割引とかいうようなことは本末顛倒じやないか。この煩雑な法律、その他の解釈を整理して、そこから機構を整理して、そうしてその次が人数ではないか。その法律のほうから始めろということになつたわけで、私はこの国立学校設置法のごときは、この委員会には当然かかるものと実は解しておつたのでありますが、今日はまあ文部省からみずから進んでお出しになつた。行政機関としてはなかなか勇敢であると私は思つておる。(笑声)つまり自分のほうから行政整理を始めようというわけです、この法律案は……。でありますから、私は考えれば整理の法律ということと、今先生あお話の何でも一つ国民にわかるようにやろうじやないかということの調和であります。でありますから、まあ職員の定員でありますから、大学では何と言つても中心のところは教授だと思うのであります。教授の数を減らして講師の数を殖やすというのでは法律にならないのです。そうでありましよう。それはもうすでに先ほど劔木委員からお話があつたように、又先ほど御説明があつたように、政令に譲つておるというようなわけで、やはり私はこのいい面を何とか調和をしてやつて行くようにすべきでないか。それでいろいろ御懸念の点もお話になりましたけれども、そういうことを考えますると、何でもかでも定員は法律で学校ごとに書かんといかんというまでにぜんでもいいのではないか。その調利点についてどういうふうにお考えになつておりますか。その点を一つ伺つておきたいと思います。

戸沢鉄彦名古屋大学教授

○参考人(戸沢鉄彦君) 今の御質問にお答えしますが、お説のように非常にたくさん法律ができて困るということ、それはその一面そういうことも考えられますけれども、この場合に若しその軽重があるとすれば、私はこの学校の問題こそ、国会で非常に慎重にやつて頂きたい。で、これはそのときの政府の利害、主観的な考えで左右されては国全体が非常に困るのでありまして、これこそ本当に、特に又大学の問題こそ専門家たちの意向を尊重して頂きたい。従つて機構を変更するとか、定員を変えるというようなことも成るべく大学の意向を尊重してもらいたい。併し国の立場からどうしても変更しなくちやならないというような場合には、せめて国会で以て十分に考えて頂きたい。そういうふうに私申上げて、そうして国会のほうとしても又非常は時間がなくてお困りなら、年中活動できるように一ついろいろ考えて頂きたいと思います。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 ちよつと関連して、非常に今大事なところを……、田中先生の私はお説は一応わかるわけなんです。何でもかんでも法律できめてしまわなければならんというこを私考えているわけじやないのです。ただ併し、私前提があると思いまして、これは小室さんと木下先生から御感想を承わりたい。非常に軍備予算がふくらまつて参りますと、いろいろの予算がそのために圧縮されているという事実は、これはもうお三かたお認めになつておる点だと思う。予算が少くなつて参りました場合の予算の配分の問題については、これはなかんずく教育を守る者にとつてはよくこれは考えなきやならん点だと思うのですが、まあ幸か不幸かよくわかりませんですけれども、今回の法律で若干この国会の審議を抜きにして、政令でこの配分がきまるというようなことになつて参りました場合に起つて来る一つの現象として、入学地獄、試験地獄だと思う。この試験地獄の原因というものは、私は学校の運営の面に占められる予算というものの幅が非常に大きいのじやないか。つまり学校差というものが今日の試験地獄というものを来たし、この試験地獄のために子供も親も教育者も、これは非常に苦しんでおる問題じやないかと思う。そこでこの点の解決の方法はいろいろあると思うのですが、なかんずくこの法律が今日の試験地獄に及ぼすところの影響として考えられる予算の配分が、国会の審議に待たずして省令、政令で以て動かされて行くというところに起つて来る学校差、それにつれて起つて来る試験地獄、又その解決の方法、いろいろあると思いますが、この法律施行に当つての見通しと、それから教育者としての御意見、又日教組は教育を守るという立場についての御意見、それを御両者から承わりたいと思います。

小室三夫朗日本教職員組合法制部長

○参考人(小室三夫朗君) 今の高田先生の御質問でありまするけれども、私どもといたしましても、当然こういう法案が通過いたしますならば、当初申上げました通りに学校差というものが非常に出て来るのではなかろうか。例えば研究所の附置、教育施設の附置、こういうものが省令等によつて改廃統合されて行く。どうしても今の日本の教育の実情ではそれが中央的に集まつて来る可能性が多い。これを現実的にお話し申上げますならば、地方にできている現在の新制大学があのような困難を冒して、率直に申上げて一部には新制大学云々というような批判さえ出ている理由はどこにあるかということをお考え下されば、はつきり言えるのではなかろうか。  第二点の試験地獄の問題でありますけれども、そうした学校差ができれば当然これは父兄の身にとつてみれば、有名校乃至は実質的に充実している学校というものに当然学生が殺到して行くというのは、本年度における今の入学試験を見ても、東大に非常な応募率があつて、他の地方大学が非常に少い、こういう現状を見ましても、同じ大学であつてもそこにおのおのの学校差というものが生じる。  この法案が通りますれば、先ほど申上げ差したように定員の問題で教授陣の不足が来る。乃至は研究所、教育施設が改廃統合のためになくなるというようなことになりますと、その学校の志願者というものは非常に減つて来るというのは目に見える事実ではなかろうか。これは単に抽象論ではなくして、公立学校における高等学校の問題にいたしましても、或いは私立大学の現状にいたしましても、乃至は国立大学の全国の情勢を見ましても、この問題についてははつきりした解明が現実的に私どもの目の前で今年の当初において行われておるのではなかろうか。こういうふうに考えております。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 入学のための全国的な問題、それを学校差の立場から、各学校差をなくしまして、充実しなければならない、誠に結構なことであります。と同時にこの問題は非常に大きな問題でありまして、この法案も関係するかもわかりませんけれども、この法案以上に大きな問題がたくさんあると思うのであります。でありますので、入学試験地獄を解消するためには別に大きく予算でも取つて、大学の充実その他を図るということが必要じやないか。この法案がすべての原因だとは私は考えられません。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 すべての原因というわけじやないのです。影響がちよつと……。

田中啓一自由党

○田中啓一君 関連して。入学の問題というのが大問題であることは私も実は高田先生と同感であります。実にむずかしい困難な問題でございますが、そこでまあこの法律はその大半のほうの定員の問題が一つの大きな問題になつているのですが、これは職員のほうの定員なんです。そこで入るほうの生徒のことを考えれば、いつそのこと入る生徒の定員数を法律で書いたらどうかというようなことも考えられんではないので、まあそんなに門戸を閉めないで、お前の所はもつとたくさん置け、こういうようなことも私は考えられるかと思うのでありますが、私はそういう意見を持つているわけではありませんが、考えられないわけではないと思います。   お三方にお伺いしたいのでありますが、受入れる生徒の定員数を法律で書けというようなお考えはお持ちでございませんでしようか。芦沢先生から一つ順次御意見承わりたいと思います。

戸沢鉄彦名古屋大学教授

○参考人(戸沢鉄彦君) これは予算の問題がありまして、金の関係からおのずから制限されておると私のほうは考えます。

小室三夫朗日本教職員組合法制部長

○参考人(小室三夫朗君) 今の問題一つの方法かと思います。これはすでに戦争中乃至は戦争前の高等学校において行われていた問題でありますし、或いは或る程度定員というものをきめて行くということも現在行われておると思うのであります。ところが一面今田中先生のほうからおつしやつたようなことになりますと、憲法でいわゆる確定されているところの教育の機会均等ということをどう解決するか、むしろ終戦後の教育においてはその貧富の差を問わず才能がある者に対してはできるだけこの教育の機会に恵ませる、そういう文教施設というものをすべきであるということがこの時の内閣より強調されて、それに従つていわゆる文部省というものもやつて来たと思いますが、むしろこの生徒の定員を削減するというよりも、現在の大学というものの充実を期して、才能ある者をますます教育によつて練り上げて行くというようなことを考えることが文教政策の根本ではなかろうか、こういうふうに考えております。

戸沢鉄彦名古屋大学教授

○参考人(戸沢鉄彦君) 今のお説と関連するのですけれども、私も広く学ぼうとする者を受入れることを考えなくちやならないと思います。その場合には或いは一年の半分だけは東京にいて、あとの半分は京都に行くとかいう必要が起つて来たらやる、どこの学校にもできるだけ自由に行かせるということも考えなくちやならないと思います。こういつたような点からしますと、軽々には生徒や学生の数を限ることはできないと思います。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 受入れる生徒の定員をも法律できめたらどうかということでありますが、これは教員の一人の受持ちするところの生徒の数というものは大体限度がありますから、教員数を限定されればこの問題はわざわざ心配しなくてもいいと思うのでありますが、只今文教の根本政策というようなことのお言葉も出たようでありますが、こういうような生徒の定員までも法律できめるかどうかという細かいところまで御心配下さいませんで、一体大学の国の予算が全体の国防費、これはどういう名称でありますか存じませんが、保安でありますか、こういうものの一体何分の一になつておるのか、こういう大きなところに一つお考えを頂きまして、そういう定員なんぞ余りどうでもいいのじやないか、こういうふうに考えております。(「その通りだ」と呼ぶ者あり、笑声)

高橋道男緑風会

○高橋道男君 木下先生に、私大学の審議会のことを詳しく知りませんので簡単なことをお教えを願いたい。一つは先ほど大学の新設とか学部の増設などについては審議会で審査をするとおつしやいましたが、それが大学がで史たあとですね、文学部ができたあと、その翌年以後においてはその大学なり学部の審査をされる機会はないのでございますか。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 設立の認可のときだけでございまして、その後設立されましてからのちの状況につきましては、十分充実の状況その他条件等がついておりまして、それらが満されておるかどうかということにつきましては、懸念すべきことが多々あるのでございます。その点につきましては、大学設置審議会としてはそれに対する処置は、できないのであります。

高橋道男緑風会

○高橋道男君 それから今度この法律が成立しましたならば、研究施設などは省令できめられる、そういう教育施設などについては新設、増設は審議会においては諮られるのでありますかどうか。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 研究施設につきましては、大学審議会の範囲ではございません。学部、学科等の場合でございまして……、ちよつと失礼でございますが、もう一遍質問の……。

高橋道男緑風会

○高橋道男君 省令に移されるべき教育施設、研究施設などは設置審議会においては検討はされないのでございますか。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) さようでございます。

高橋道男緑風会

○高橋道男君 そういたしますと、審議会において審査をされる大学の新設或いは学部の増設ということは、これは審議会の規則に培いてなされるのであつて、審査をされない教育施設、研究施設の増設収いは設置後の審査というものは、審議会の運営規則の上で認められていないためにそういうことがなされない、こういう意味でございますか。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) 大学の設置の場合におきましては、大学設置審議会におきまして審査をいたしますが、それは大学基準というものがあるのでございます。この大学基準と申しますのは、実はその基は大学基準協会というのがございまして、これは国公私立大学の会員を以て組織されているものでございます。その大学基準協会におきまして大学基準の原案を作りました。それが今日大学設置審議会における大学基準ということになつている次第でございます。従いまして、大学の基準と申しますのは、国公私立大学の各大学を以て会員とするものが審議の結果作りました大学基準でありまして、この基準に従う場合に、文部省が如何ようなことがありましても、定員を削つたりなんかするということはあり得ないことなんであります。ただ只今の御質問のような研究施設その他につきましては、そういうことはございません。

高橋道男緑風会

○高橋道男君 もう一点、この法律が成立しました場合にでも、予算等の審議過程において、定員その他の法律から、現在の法律から落されることも審議をされるから、当然国会においてそういうことが義務付けられているという御見解につきまして、先ほど荒木委員かどなたかから、実際の審議においてはそういうことがなされにくいというようなことを仰せられ、又慣例上そういうようなことになつていると思うのでありますが、そういうことを事務的に補う意味において、この法律が成立した後において、先生の関係なすつている設置審議会などにおいてこういうことも審議したほうがいいというようなことにはお考えにならないかどうか、その点念のためにお伺いいたします。

木下一雄東京学芸大学学長

○参考人(木下一雄君) そこまで私も考えておりませんでございます。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 議事進行上の動議ですが、いいですか。……午後の日程があるので、いろいろ御意見をいい機会なので私お伺いしたい点もあり、各委員もそうだと思いますが、時間の都合上この辺で参考意見を徴することを終りたい。かように存じますが、如何ですか。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕

川村松助自由党

○委員長(川村松助君) 只今の相馬委員の御発言に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

川村松助自由党

○委員長(川村松助君) 御異議がなければ、これを以て午前中の委員会を終了いたします。  終りに当りまして、参考人のかたがたに一言御礼を申上げます。本日は貴重な御意見をお伺いいたしまして、誠に有難ございました。深く御礼を申上げます。  では一応半まで休憩いたします。    午後零時四十九分休憩    ―――――・―――――    午後一時五十分開会

川村松助自由党

○委員長(川村松助君) 只今から委員会を再開いたします。  午後は原子問題に関しまして参考人のかたから御意見をお伺いします。参考人の藤岡さんに御意見を伺いまする前に、委員会を代表いたしまして一言御挨拶を申上げます。只今政府から提出しておりまする国立学校設置法の一部を改正する法律案のうちに直接現われておりませんが、昭和二十九年度予算のうちに原子核の施設設備費として一億三千万円計上されております。又本問題に関する先般の当委員会における政府側の答弁によりますと、東京大学に附置する共同利用の研究所といたしたい旨の発言がありました。つきましては本件に関連して原子核研究と原子力問題について日本学術会議の原子力問題に関する特別委員会の委員長をしておられる藤岡さんの御意見を承わりたいと存じます。よつて御出席をお願い申上げましたところ、御多用中にもかかわらず本委員会の要請に応じて御出席を頂き、ここに御意見を拝聴させて頂く機会を得ましたことを深く御礼申上げます。只今から藤岡さんの御意見を拝聴させて頂きます。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) 私只今御紹介に与かりました藤岡でございます。只今は委員長からいとも御鄭重な御挨拶を給わりまして大変恐縮に存じます。及ばずながら御趣旨に副いますように申上げたいと存じしなすが、なお申し足りないことはどうぞ御質問なり何なりで、できるだけの御説明をいたしたいと存じております。  只今の御説明によりますと、原子核研究所設置に関連いたしまして原子力の問題にもというようなお話と了解いたします。そこで原子核、原子力ということが、近頃は又原子炉予算ということもございますので、最初に一言その区別について、私たとえ話を以てちよつと区別を申上げますと、原子核というのは電気のようなもの、それから原子力というのは電力のようなもの、子核というのは学問的にそれ自身非常に研究しなければならないものであります。電気は必ずしも電力として利用するばかりでなく、電気についての学問というのは非常に広汎な学問であります。ところが電気をエネルギー、動力といたしまして多量に使いますのは電力である。電力は電気の知識を必要といたしますけれども、電気ばかりでなくほかにもいろいろの知識を必要といたします。ダムも必要ですし、タービンも必要ですし、発電も必要である、いろいろほかの工学的の知識を必要といたします。原子力を利用いたしますには原子核の知識は最も必要でございますけれども、原子核の知識だけではいけない、いろいろの又工業的の方面の知識が必要である、それから原子炉建設と申しますのは、現にダムを造り、発電所を造る、そういう段階が原子炉建設という段階であります。従つて原子炉建設をするということになれば、そういうことをすることになりますし、それに対する基礎的な調査研究ということになりますと、或いは河を調査すること、もつと進んでは電気他の知識を調介すること、いろく入つて来る、そういうふうに考えるのであります。  そこで主な日本の問題は、原子核研究所の問題であると存じますので、原子核研究に関しますことを簡単に申上げます。  原子核の研究と申しますと、物質を構成いたしております原子のその中央にあります原子核、物質の窮極の構造を究めますところの、学問的に申せば自然科学の一番最先端奥深いところであります。これの研究は先ず前世紀の末にキユーリー夫妻が放射能ラジウムなどを発見いたしました頃に始まるのでございますけれども、非常にこの方面の研究が盛んになりましたのは昭和七年頃からでございます。この頃から新らしい発見が非常にたくさん現われまして、学問上の最先端の問題として取上げられて研究が盛んになつたのでございます。最初のうちは全くこれは役に立たない純学術的な問題と考えられておつたのでありますけれども、今日になつて見ますと、この原子核の研究から原子力ということが生れたわけでございます。学術的な研究で役に立たないというふうなことをきめてしまいましたならば、大間違いであるということの例をまざまざと見せつけられたものでございます。この方面の研究は昭和七年頃から始まりまして、出年にサイクロトロンができ、非常に活溌になつて参りましたけれども、実は大変お金のかかる研究なのであります。だんだんとその金のかかる設備が必要になつて参りました。これをなしに何とか頭脳と腕だけで研究を進めたらというようなことは、丁度竹槍でもつて戦車に立向うことができるかということでございまして、どうしても大きな設備をしなければ学問としては進むことができないのでございます。それでこの主な発達はアメリカでございまして、サイクロトロンというふうなものもアメリカで建設され、相当の数が戦前できて参りました。戦前における日本のレベルを申しますと、亡くなられました仁科芳雄博士が日本のその方面の研究の中心でございまして、その当時の理科学研究所にサイクロトリンを二つこしらえ、そのうちの一つはその当時アメリカで一番大きかつた二百トンの鉄を使いますものと同じものでございまして、そのほかに京都大学、大阪大学、戦前は日本で四個のサイクロトンがございました。これはアメリカを除きますほかの国々と比べますると、そうそう見劣りがするものではないのでありまして、日本のそういう方面の研究は先ずく相当であつたと言つても差支えないのかと思うのであります。ところが戦争の最中アメリカのサイクロトロンは大抵原子爆弾の研究に転用されましたけれども、戦後非常な発達をいたしました。そうして只今二百トロンの鉄を使うということを申しましたが、それに対して四十トン五千トンというような鉄を使います大きなものが四個も現にできております。更にシンクロトロンと申します大きな機械がアメリカには現に二個もできておりまして、非常な大仕掛な研究が行われております。アメリカでは原子力の研究が勿論原子爆弾と共に盛んでありますけれども、そういうふうなものも原子力と関連はいたしておりますけれども、並行いたしまして、そういう原子核の研究が行われております。なおヨーロツパの現状を見まするというと、ヨーロツパの各国はやはり或る程度の原子核研究の装置を持つておりますけれども、アメリカが持ちますようなすばらしく大きなものは到底持てないそれで十二ヵ国が集まりまして、ヨーロツパ原子核研究所というものをユネスコの肝入りで昨年設立に成功いたしました。ジユネーブにそれをおくことになりまして、これはアメリカで現にあります一番大きなシンクロトロンよりももつと大きなものでありますけれども、そのアメリカ以上のものを五年ほどの予定で建設に着手いたしております。今体で二千五百万ドルぐらいの金が集められるように聞いております。  こういうような各国の現状でございますが、日本では戦後そのときまでありましたサイクロトロンが不幸にして進駐車の手によつて破壊されました。これはアメリカの学者も皆非常に遺憾としているところなのであります。そののち、原子核の研究というのは占領軍によつて禁止された形になつておりまして、そうでなくても非常なお金のかかりますものを日本の財政として造ることは到底できなかつたのであります。それで戦後優れた学者は多く理論物理学のほうに集まりまして、湯川博士、朝永博士を初め、そういう方面の学者が非常なすばらしき業績を挙げたのであります。昨年は国際物理学会議が開かれまして、世界の頭脳と言われるようなかたがたくさん集まりましたが、それというのも日本の理論物理学がすばらしい業績を挙げたからということは御承知の通りであります。ところが実験と研究のほうはそういうわけで全然行われておりません。昨年あたりから非常に小型なサイクロトロンが科学研究所、大阪大学、京都大学などで計画され、科学研究所では現に一つ動かしておりますけれども、これは昭和八年頃に最初できたのと同じ程度のもでのございまして、到底今日の進んだ学問を近いかけるには役立たんものであります。こういう現状でありますが、学問というのはやはりバランスがとれておりませんと、成ることだけが進んでも駄目で、理論物理が非常に進みましても、それの材料になります、理論的研究の材料になります実験的なデーターが全然日本では得られない。又どういうふうにして得ら決るか見ることもできないというふうな現状でありましては、やはり学問は健全な発達をいたしません。湯川博士などがアメリカに行かれたのもそういうふうな意味も相当あつたようでありまして、いつもそのことは嘆いていられたのであります。こういうような現状にありましたので日本でも原子核研究を盛んにしたいということは考えておつたのでありまするけれどもなかなかできなかつた、一昨年あたりからそろそろ日本でも原子核の研究を、もう少し盛んにしてもよいのではないということが学者の間に話題になりました。最初は物理学者、殊にそういう原子核などに関係のあります物理学者の、全国の学者の代表者でできております原子核特別委員会というのが学術会儀の中に附置されておりますけれども、そこでそういう希望が出ましたが、併し日本のような国ではそういう装置をたくさんこしらえるという、ととはできませんので、できるだけ能率よく一カ所にこしらえまして、それを全国の学者が共同的に利用するような形にしたい。あたかもヨーロツパの各国が集まりまして一つの研究所を共同に利用する、そういう形にしたいというのが日本の学者によつて得られた構想であります。そしてそれは全国の学者が集まつて使うのでありますから、その運営などに当りましては全国の学者の意見が十分に取入れられて最も正しい方向に使われるように、そこでこの大きさ、お金のかかるのも、程度もいろいろございますけれども、アメリカの一番大きなもの、ヨーロツパで今計画されているもの、これは原子核研究といいましても、どちらかと申しますと中間子の生成、消滅、そういうふうな問題に主眼を置かれておる非常に大きなものでありますけれども、そういうものは日本では到底できない、原子核のそれ自身の研究には、もう少し小さいものでもよろしいというので、いろいろ検討いたしましたが今度の案に出ておりますような程度のものであります。そこで原子核特別委員会でそういうことをきめたが、更にそれが、そういうことが行われますことが学問のほかの分野を圧迫しはしないか、幾ら原子核研究所ができましても、それがためにほかの分野が圧迫されては、又全体としてはバランスがとれない、そこで学術会議におきまして物理学研究連絡委員会というのがございます。これは学術会議は僅かに二百十名ばかりの会員で、到底その学問の全分野に互つての専門家を集つめることができませんので、学問にのきまして研究連絡委員会というものを置きまして、全国の優れた代表者に集まつて、頂きまして学問のことを検討いたしております。物理学もあれば法律、経済いろいろの方面に皆それぞれ研究連絡委員会というものができております。この物理学研究連絡委員会で検討いたしました結果、ほかには特にこれというお金のかかることもないからよかろうということになり、更に第四部会、私が現に部長をいたしております理学方面の部会におきましても慎重に審議いたしまして、この問題と、もう一つ天体望遠鏡の大きなのが欲しい、これが非常にお金のかかる大きな二つの問題である。そういうことになりましてそれを提案いたしました。更に総会におきましてよく論議いたしまして、この原子核研究所並びに天体望遠鏡を設置することは今の学界から見て最も緊急を要することである、そういうことにきまりまして、その設置を政府に勧告いたしましたのが昨年の四月の総会でございます。その結果、その勧告は文部省のほうに廻わされまして、文部省では、そこで原子核の研究所を作るにはどういうふうに作つたらよかろうということを文部省の中の研究所の審議会がありますが、その審議会に諮られまして、審議会では特別委員会の委員長であります朝水振一郎博士、それから副委員長が大阪大学の菊地正士教授、それから私、三名が特別委員となつて加わりましていろいろ審議いたしました。そうしてどういう形で置くがよろしいか、又どこへ置くがよろしいかということにつきまして、何回にも互つて慎重に審議いたしました結果、これは純学術的の問題でありますから大学附置とするのがよろしい、その大学もやはり東京に置くのが希望で、関東に置くのが全国学名の希望でありましたので、東京大学附置とするのが最も適当である、そういう結論を得られまして、そこで東京大学の手に移りまして、文部省と折衝の上で本年度の予算、その二十九年度にある予算が提出されたのでございますが、これは大体三年計画で、約九億近くの計画でありますが、その提出されました初年度の合計が四億幾らであつたかと存じますが、それが一億三千万になつて国会に提出されたのでございます。これが原子核研究所の今日まで辿りました大体のいきさつでございます。  そこで次に原子力の問題について申上げたいと存じます。原子力の問題は、これは原子核の研究の一つの応用のようなものであります。最初は原子力の、原子核の研究は何も役に立たないと思つておつたのでございますけれども、一九三八年、戦争の始まる、独ソが開戦をいたしますちよつと前でございます。ウラニウムの核分裂ということが発見されまして、或いはこれは役に立つかも知れん、大量のエネルギーを原子核から取出すことができるかも知れない、そこで原子力という言葉がそのとま使われるようになりました。で、併し戦争の始まりましたときには、これはまだそういう可能性だけでございまして、実際に成功したことはなかつたのであります。戦前に私どもの書きましたものの中にもそういうことの可能性はすでに論じております。ところが戦争が始まりましてから、アメリカは最初ドイツが原子力の研究に力を入れ出したということが情報としてアメリカに伝わりまして、アメリカは立ち遅れではございましたけれども、非常にこれに熱心に力を入れるようになりました。ドイツの原子力研究は、結局ドイツの敗戦と共に成功を見なかつたのでありますけれども、アメリカのほうはそののち秘密研究で、非常な、とうとう原子爆弾に成功いたし、爾来今日に至つておりますことは御承知の通りでございます。それでこれは不幸にして爆弾という形において世の中に現われました。日本は殊に広島、長崎の洗礼を受けまして、この原子力問題については非常に深刻な感じを国民が持つておるのはやむを得ないことだと考えます。これが原子力を利用するということはどういうことかというのでございますが、最初のうちは爆弾として、これを未開の荒野の開発であるとか、いろいろのことに使えないかということも言われましたけれども、今日原子力の利用ということは主として発電でございます。原子炉と言われますが、その原子炉というのはウラニウムを燃料として、そうして熱を出す。あたかも石炭を燃料としてかまを焚くと同じようなものと考えられますので、原子炉と言われております。この原子炉は最初は熱を出す目的に使われたのではなくて、原子爆弾の製造のために使われ、殊にプルトニウム、原子爆弾の材料の製造に使われておつたのでありますけれども、これが多量に熱を出しますことから、その熱を利用して火力発電をしたらよかろうということが誰も気のつくことであつたのであります。イギリスはアメリカよりも遅れましたけれども、そういうことも考慮に入れまして研究を進めて参りましたので、原子力発電についてはイギリスのほうが一歩先んじたようであります。そのほか船、潜水艦の動力として、いろいろと原子力の利用ということが考えられて参りまして、恐らくは将来地球上に石炭、石油がなくなりましたのちに、何を人数の将来のために残すか、これは科学の務であると思うのありますけれども、現在考えられておりますところでは、原子力は確かにその一つであるに違いないのであります。これは二十世紀の非常に大きな発見でございまして、世界各国の者が皆注目しているのは当然であると考えます。日本においてもそういう研究は是非しなければならない。日本としてそういうことの何もかも外国依存であつてはいけないのでありまして、独力で研究することは研究しておかなければならない。ただそれがすぐに工業上に今日利用されて、安い電力が供給されるかどうか、これは別問題であります。これは別問題でありますけれども、少くともその研究は始めなければいけない。そういうことには誰も恐らく異存はないのであります。併しながら原子力の研究には非常にいろいろのむずかしい問題が附随して参ります。日本人は戦争には、もうこりごり、殊に原子爆弾というのは、もう聞くだけで恐ろしい気がいたします。そこで日本で若し研究をするとしても、これが戦争に利用されるということが絶対にないようにはどうしたら保証ができるであろうか。又この原子力研究というのは、恐らく非常に金がかかりますから、原子核研究所でさえ全国一カ所というのでありますが、もつともつと金がかかることでありますから、日本にどこかやるとしても一カ所しかできまい。そうすればそれはどういうところにやらすがよろしいか、その研究の態勢をどうするか、まかり間違つてそのために統制であるとか、或いはその秘密の研究というようなことが行われるようになりますというと、これは科学の健全な発達を阻害する。各国におきまして原子力法というようないろいろな原子力に関します法律が研究されております。それから又経済上の問題というのもあり、そこで学術会議においてこの原子力のことが話題になりましたのが二年ほど前でございますけれども、これについてはなかなかいろんな議論がございます。そこでこういうふうな形にして、今すぐ始めるべきであるという結論にはまだなつていたかつたのが実情でございます。とにかく原子核研究のほうは、これは日進月歩で、すぐに始めなければならないということをきめたのでございますけれども、原子力研究、これは一つの応用の問題でありますので、これについてはできるだけ慎重に始める、技術的な面から申しましても、その最も必要な材料でありますウラニウム、それから重水、これは普通の天然の水の中にも五千分の一ほど含まれておりますけれども、電気分解によつて濃くするものであります。これを今日本で大量にはできるか、現に少量はこしらえておりますけれども、重水は戦争中アメリカでさえできなくて、アメリカはその代りに石墨を使つたのでありますけれども、石墨も必要でありますが、それの純粋なものが日本でできるか、技術上の問題だけについて見ましても、今すぐ原子炉を造るというようなことは、到底日本の独力ではできない問題であります。それやこれやでずつと原子力問題については慎重に考えて参りまして、この二月二十七日に学術会議といたしましては、原子力問題について更に公聴会を開きました。いろいろの学者の意見を聞いたのでございますけれども、やはり昨年あたりから見ますと、皆の意見、それから世界の客観的情勢、これは例えば米ソの間に、或いは原子力に関する協定ができるのではないかというような、そういう客観的情勢が変つて参りまして、いろいろのことで余ほど皆の意見が積極的になりました。昨年あたりに比べますと、余ほど積極的になりました。それから学術会議といたしましては、いろいろ慎重に審議いたしますに当つて、各国の大公使に依頼をいたしまして、いろいろのその国で行われております研究に関する情報を集め、そういうことを皆に紹介することをいたしましたり、又昨年国際理論物理学会議のときに来られたかたがたの意見もそういうことで、いろいろ積極的になりまして、四月以降におきましては、恐らく原子力問題について、もう少し積極的な踏出しをするものと、私委員長として期待いたしておつたのであります。丁度その折、三月の二日に衆議院で三派の修正予算として原子炉建設に関する助成金というのか提出されたことを新聞で知りました。それで学術会議のいろいろの会議を開くことも間に合いませんので、私会長の茅博士とも打合せまして、今までの経過から見ますと、これは先ず原子核研究所を早く建設して頂くことに、お金があるならば先ず力を入れて頂きたい。今年文部省の提出予算が削られましたときに、学者も非常に不満でありました。不満でありましたけれども、日本全体の財政というものから見て、又やむを得ないものと思つておつたのでありますけれども、科学振興として若し予算が出るならば、先ずそれに力を入れて頂きたい、これに純粋な学術的な問題でありますけれども、この原子核の研究所を作りますことは、これによつて原子力方面の研究にも相当役に立ちます。技術的においても非常に役に立ちます。人材におきましても、人材の養成をすることになります。そこで先ず廻して頂きたい。原子炉問題は今すぐに到底建設できるものでないから、まあそういう意見を申述べたのでございます。併しその結果といたしまして原子炉築造補助というのが原子炉築造に関する基礎的調査研究のまあ補助ということになりましたけれども、現在ではその三派の案のままで国会を通つた形になつております。で、私どもの希望といたしましてはあくまでその原子核研究所のほうに先ず力を入れて頂くことを強く希望いたします。併しその原子力の研究を始めるということが、これがもう国民の世論としてきまりましたならば、それをできるだけ有効に将来のためを思つて最も基礎的なところから間違いのないような形で研究を始める、そういうことに十分に学術会議としては協力して行きたい、そういう考えを持つております。  以上甚だまとまらない話でございましたけれども、これで終ります。

川村松助自由党

○委員長(川村松助君) 藤岡さんに御質疑のある方は御質疑を願います。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 ちよつとお尋ねをいたしますが、文部省が今度原子核研究所を建設するために建物に八千九百万円、施設の一部分の施設費として三千万円、これの総体的な計画を尋ねましたところが、大体七億の金で三年計画で以て中型のシンクロ、サイクロトンをここに造り上げて行くのだという説明があつたわけです。私も素人でわかりませんが、雑誌やその他いろいろの文献で見ますと、外国ではかなり多額の国費を以てこの原子核の研究所が経営されておるようでありますが、三カ年計画七億の予算で、まあ科学者としてかなり満足のできるというような原子核の研究というものができるか、その水準に達するのかどうか、ですね。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) お答え申上げます。これはいろいろの程度がございまして、現在アメリカなり或いはヨーロツパに計画されておりますような非常な大きなものは到底それだけのものではできませんでございます。併しやはりその目的が同じ原子核研究所と申しましてもいろいろございます。先ほどもちよつと申上げたのでございますけれども、アメリカの大きなものヨーロツパの大きなものは現在中間子、湯川博士の発見によります中間子を入目的に造つたり又なくしたり、又それがどう変化するか、或いは将来その中間子の更に大きな、まあ陽子と申しますけれども、水素の原子核でございます、そういうふうなものを人口的に造つたり消したりすることができるかどうか、そういうふうなところを狙つておるのです。そういう狙いは到底これでは達せられませんです。これはもう背の届かない者が高いものに届こうと思うようなもので達せられませんです。ところがそうでなく原子核の構造の問題、この原子核の構造問題になりますと、それほど大きなエネルギーを使わなくても、今計画されております程度で以てまだまだ十分に研究をする余地があるんです。日本として原子核の研究をしますのには先ずそこにそういう研究の余地があり、これはまあやはり科学者としては非常に重大な問題でありますから、そこを狙おうというのが主として日本の学者の狙いであると思うのです。大きなほうは狙いたくとも、例えば十億程度のものでありましても、このように予算がなかなかむずかしいのでございますから、これを百億程度となりますと到底日本では現在建設することは不可能だろう、学名としてもそう考えます。そこで先ずできるところで狙おうというのでございます。ですから、比較をすることはちよつとむずかしいと思います。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 それで問題は、先ほど原子力の平和的な利用というところにまで論及されたと思うのですけれども、私はよくわかりませんが、アイソトープは今アメリカから日本で輸入して来て医学や何かに使われておるのでしようか、又そのことはアイソトープそのものはやはり発展すれば原子炉にまで発展して行く問題じやいかと思ううのですけれども、そうだとすると原子核研究所だけで終る問題ではなくて、平和な国民の生活に寄与するような応用の方面まで発展して行くとすれば、研究所だけの問題じや済まなくなるのじやないかと思うのですけれども、先生はどういうふうに……。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) 原子核研究所はこれは純粋に学術研究を目的といたしております。それで特に大学附置がよろしい、その程度でございまして、学術として研究いたしたい。従つて原子核研究所でアイソトープを送つて、そうして一般に供給する、そういうようなことは計画されていないと存じます。アイソトープを造るというようなことは今科学研究所のサイクロトロンでは考えられておりますけれども、これはほかの大学では必ずしも考えられておらないのでございます。そういうわけで、やはり目的によりまして趣旨によりまして考えます場合と考えない場合とがございます。それからアイソトープを造ろうとすれば原子炉にまで発展するのじやないかというお尋ねでございますが、それはその通りでございます。或るアイソトープを多量に造ろうと思えばどうしても原子炉でなければならない。原子炉というものは、先ほど私は電力ということを主にして申上げましたけれども、電力の元になりますのはほんの模型的の研究でございますが、将来大きな本当に工業上の発電所になるようなものを作るのはまだなかなかのことで、これはイギリスにおいてもまだ五年後のことで、その基礎的な研究という意味でございますが、併しその程度のものでも同時にアイソトープを造るという点におきましては相当の役に立つだろうと思います。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 その基礎的な条件として私は予算の問題をちよつと伺いたいのですが、先頃アメリカの婦人の原子科学者がありますね、マリア・メイヤー夫人、あのマリア・メイヤー夫人が、新聞の論説の中にあつたのですが、日本が初めて今度原子核研究ということを学者が声を大きくして一応予算をとつた、誠にこれは結構だ、結構だけれども、実際に統粋科学としてもあの予算がどういうふうに発展して行くかということは随分研究されなきやならないのじやないかということを書いて、ただ単にそれは教育予算としてたけではもの足らないのじやないかというような表現でした。結局国の総合的な資源開発の費用とか或いは国防というようなものとマツチして予算が組まれなければ純粋科学としてもこれは立派な方向に発展しないのじやないか、又教育予算で原子核研究の費用を組んだ場合にはかなり予算を食うから波状的に他の教育費に影響を及ぼすのではないか、だから総合的に予算を組まなければ科学者としても満足がいかないんじやないかというような論調であつたと思うのですが、これに対しまして。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) 実はメイヤー夫人の意見というのも私うつかり聞き洩らしましたのでございますけれども、まあ学者は純粋にやはり学問的な研究ということを主に考えます。その結果思いがけない発見が出て参りまして、そうしてそれが実際に応用されることはままあることでございますけれども、一応学者の気持としては純粋な研究という目標であれを考えたものと思うのでございます。  それからそのほかのことと一緒になりました総合的な手筆を組むということ、これは実は大事なことだと思うのでございますけれども、然らば今の日本の予算の中で原子核の学術研究にどれだけの予算を割き得るかということの判断でございますね、これがなかなかつかないのでございます。或いはほかのものをもう少し削つてこちらに持つて来るのがいいじやないかというようなことも申しますけれども、それの判断もなかなかつきませんので、今度の原子核研究所の場合には先ずそのくらいならばいいのじやないか、と申しますのは、一般の学者みんなの非常に期待しておりますのに科学研究費というのがございます。これが大体年額八億でございます。それが皆殖えることを非常に一般の学者は期待しておるのでありますけれども、なかなか殖えない。若しもそういうものが削られるとか或いは文部省の大学の講座研究費というようなものが削られる、そういうようなことであつては困りますけれども、そういうようなものに圧迫を加えない程度においてその三カ年計画で十億近くならば、先ず先ず影響はないだろうというのが根拠だと思うのでございます。これが若し五十億、百億となりますと、必ずや文教予算の中でほかに圧迫を加えるだろうということでございます。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 ちよつと、私ばかり質問しては悪いから、じや又あとでお尋ねしますが、ただもう一つ伺つて置きたいことは、こういうことが非常に私、心配なんです。つまり今度原子核研究所ができる。それから外国人も指摘するように、日本の原子核研究所が本当に立派な、まあ科学者の殿堂と申しますか、そのことをするためには、科学振興費というものをやはり日本でも随分考えなければならんというふうな意見も、まあ外国人の意見のなかにあるように思いますが、これと同時に心配になることは、これは防衛庁設置法というのが今度できたわけなんです。その防衛庁設置法の法律案の中には幕僚長会議というものがあつて、その幕僚長会議の中ではいろいろな日本の軍事科学の研究というものについてのいろいろな企画もやるわけなんです。それに伴つて技術庁設置といういわゆる技術庁を設置し、或いはその技術研究所を作るということが法律の中に見えておる。当然今度の世界戦争の構想はやはり原子戦ということになつて来れば、国防という問題と原子力という問題は切つても切れない問題だし、又科学技術を研究するということになつて来れば軍事上の、結局、原子力の研究ということになれば、国立原子核研究所とそれからいわゆる国防を本としたところの科学研究というものがぶつつけられて、そうして国はどんどん予算は組むけれども、本来の科学者の目的である原子核ということよりは更に歩一歩はみ出して、国防のための科学研究という方向に行くのではないかということを私、非常に心配している。こういうような場合のことも断然まあ学術会議としてお考えになつただろうと思いますけれども、幸か不幸か知りませんが、アメリカの原子力法という法律を見ますと、いろいろな平和生産や日常の生活水準、それから公共の福祉のために原子力を使わなければならないのですけれども、その本来の目的はアメリカの国防にそれは従属するというのが法律の第一条に見えている。このことは私は日本の原子力を研究なさろうとする科学者の、本半の純粋な科学者としての気持だ。現在日本の置かれている国防というものと、それに繋がる原子力の研究というものとが総合されて戦争の方向に持つて行かれやしないかということを私非常に心配するのです。で、学術会議あたりでどういうことをこういう問題についてお話合いになつたか、又これに対する藤岡先生の御見解などを承わりたい。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) 私は今の日本のこの現在の憲法の下におきます現状におきまして、恐らくはすべての学者は、と言いたいのでございますけれども、原子力は戦争目的のために使われることを好みませんのでございます。そうして、先ほど初めに申しましたように、原子力問題についてはなかなかむずかしいことがある。ということは、それを戦争目的に使われることを防ぐにはどうしたらよろしいか、そういうようなところはなかなかむずかしい問題であるということも議論がなかなかまとまらないゆえんであると思うのでございます。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 昭和二十八年の五月六日付で、日本学術会議会長の亀山さんのお名前で、原子核研究所の設立についての要望書が内閣総理大臣に出されておりまして、その文面を私たちよく読んでみますと、これとその結果生れて来た今般の原子核研究所の構想、それから予算の面については今ちよつとお触れになつたようですが、構想並びにこれができて行く過税においての種種なる問題、種々なる問題と申しますのは、学術会議の意思を離れて文部省にこの問題が移されてからは、国立研究所協議会というところで研究したやに聞いておりますが、それらのことをひつくるめてこの学術会議が意図したもの、期待したものに真に見合う今度の原子核研究所ですか。それとも又いろいろな面について不満の点を内蔵したものですか。それらについて承わりたいと思います。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) お答えいたします。  この点は私は十分に学術会議の意思に副うものと考えます。で、その文部省の研究所協議会で議せられましていろいろの案ができますときに、これを学術会議の下部機構であります原子核特別委員会、或いは原子核の方面の日本中の研究所の、又別に団体もございますが、それの一々検討をいたしまして、そうしていろいろ意見を述べまして、その意見は協議会の委員でありましたところの私どもを通じてその協議会にも反映いたしております。  それから、結論といたしまして、東大に附置されるということになりましてから原子核の学者の代表、まあ朝永教授たちでございますけれども、東大の当局者とも話合いをいたしまして、十分にその学者の意見を以て、そうして東大に附置されるという結論になつておりますので、私はその点におきましては学術会議の意思が十分に反映された計画であると考えます。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 ちよつと細かいことですが、その東大に附置されるということがきまり、そうしてそれの運営については共同研究という意味から他の学校に属する学者、先生たちの意見も徴されるというこの仕組みに対して、巷間伝えられるところによれば、東大自身がそのような運営の方法は大学の自治に反する憂いがあると、こういう意見が開陳されたやに聞いておるのでございますが、事実でございますか。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) これはそういうような議論がいろいろ行われましたのは事実でございます。その結論といたしましてみんな納得いたしました。そこはなかなかむずかしい問題でございまして、全国の学者の意見を聞くと申しましても、大学の中にも大学の意見というものがある。従つてこれを大学の中の規則として外部の人の意見を聞くというようなことはできない。併し実際はこういうふうに運営されるものだという話合いが十分につきまして、その意見は満足されているものと申してよろしいと存じます。ただその間そういう議論のありましたことは事実であります。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 一つの新らしい行き方の共同研究所で、将来この種のものがたくさん例として出て来ると考えたものですから、さようなることをちよつとお尋ねしたわけなんです。  そこでもう一つ論を進めてお尋ねしたいと思いますが、実は当院の予算委員会で先般来この原子核予算並びに原子炉に関する予算に連関して質疑が行われました。そのときに通産大臣並びに科学技術庁の何とおつしやいましたか博士のほうの御意見では、当初は原子核研究所と関連なく原子力について原子炉設置の方向に遊んで行くんだという意味合いの発言であつたように考えたのですが、だんだん論が発展していつた過程において最終的には通産大臣の言明として原子核研究所とも十分連携をして原子炉に関する予算を効率的に使いたい、かように存じますと、こういうまあ誠に妥当な政府の見解に到達しておるのです。そこでお尋ねしたいのですが、今までこの原子炉の予算に関して先生方に何か政府が意見を徴されたことがあるかどうか。新聞で承知しているところによれば、あの予算が飛出して来るまではなかつたそうでありますが、極く最近のことでも結構ですから、予算を効率的に使う意味で原子核のほうと原子炉のほうと一つ共同に、こういう点ではこういうふうにやつてもらいたいというふうな積極的な期待を含めた諮問乃至は参考意見を聞くというようなことが政府当局から行われているかどうか、先生の知つている限りで結構でございますので述べて頂くと同時に、これに関する希望等もございましたら、やはりこの際御指導頂きたいと思います。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) 公式には、公けには学術会議にまだ話合いはございません。これは当然やはり予算がきまりますと、そうすると政府としてはその執行の責任上学術会議に諮問するということもできますけれども、まだ審議の段階でございますから公式にはお話がないのは当然かと思うのでございます。併し私的には担当者と私ども学者側のものと寄り寄り話をいたしております。それで大体においてどういうふうな方針で進まなければならないかということを、まあ個人的には友人の仲間でございますから話はいたしておりますのですが、これは余り私差出がましく申しますことは又ちよつとどうかと存じますので、ほんの私のただ希望的な意見だけを申しますと、この原子炉予算、これはまあ二億になりますか、何億になりますか、とにかく或る程度は出ると思うのです。それをどのように使うかということはこれは無駄なく使うということはなかなかむずかしい問題でございますので、十分な審議をいたしますための審議会を作りまして、そこで以て将来の方針を考えまして、どういうふうに使うかということをよく審議の上で使うようにして頂きたいとそう考えます。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 最後に一点だけ伺いたいと思いますが、先ほど同僚高田委員もちよつと触れられたことなんですが、この原子力の原子核も含めてですが、原子力の研究に連関して、これが平和的な、生産的な面にのみ使われることを学者のかたがたが希望するという御意見等を新聞等で拝見し、只今先地からもお示しを頂いたので非常に心強い限りでございますが、現実に昭和二十八年十一月十四日に木村保安庁長官はこういうことを申しております。「我が国の防衛は当然海と空とに重点が置かれる。そのためには先ず科学技術の充実が必要だ。私の考えておる科学技術の統一機関は、差当り現在の保安庁技研を拡充することだが、将来は研究の重点に副い、無電誘導弾、原子力の研究なども行う総合的な自衛科学研究所にしたい。」こういうふうな言葉を以て大見得を切つておるのであります。そこで先生がたの善意にかかわらず、一部にそういう考え方があるとするならば、何かそれに見合う、原子力憲章というようなことも聞いておりますが、それに見合う何か必要とするもの、それに見合うものは何かというと、いわゆる我々の可能なのは立法措置であるのでございますが、これを学術的な立場から、学者の先年がたが予防的措置として、どのようなことを具体的に今日問題として考えておられるのか、若しおありとするならば、是非共一つお洩らし願いたい、そうして御指導を願いたい。又立法府に望むことがございましたならば、先生の私見で結構でございますから、この際一つ御指導を給わりたいと思います。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) 誠に御尤もな、又私どもの書いたくて言い得ないところを御指摘下さいました御質問だと思いまして、非常に感激いたしております。私どもは飽くまでも原子力とございます。それに対して只今、然らば如何にそういうことを実現するかということでございますが、先ず今日の段階におきましては、すでにあの予算が通ろうとしております場合に、私はこの間改進党の原子炉予算の説明というものをちよつと或る所で拝見いたしまして、その中にやはりそういうことが謳われております。平和利用にのみ云々ということが、四カ条ほど非常に立派なことが調われております。この際でございますから、ああいう意味のことを、例えば附帯決議のような形で決議して頂きましたならば、私は非常に心強いと思うのでございます。将来は必ずそういうことに関しまする今お話の立法的措置をお願いしたいのでございます。我々学術会議といたしましては、そういうことを調査いたしまして材料を出すということも我々の責任の一つかと考えますけれども、これは学者は到底無力なものでございますから、是非皆様方でそういうことはよく将来は立法的措置その他をお考え願いたいと考えております。

須藤五郎無所属クラブ

○須藤五郎君 私も同じような点で伺いたいのですが、最近まぐろ水爆といわれる、ああいうことですが、日本人は非常に原子力に関して恐怖感を持つておると思うのです。それで私ども国会議長というものは割に学術会議の内容などに対して非常に無関心といつては相済まないのですが、実際のところは知識を持つていない、学術会議においてどういうことが論議されておるか、国会議員は実際は知らない。そこで私は伺いたいのですが、原子力の問題や原子核の問題が学術会議で取上げられたときに、先ほど先生の話によりますと、もう全員一致して原子核の研究には賛成したというようなお話でしたのですが、若し反対を述べたかたが若し反対を述べたかたがあつたら、どういう立場でその反対意見を出されたか。それから原子力の研究に関して全員賛成であつたのか、反対者があつたのか、反対者があつたらどういう立場で反対したのか、それから先ほども同僚相馬君の発言の中にありましたように、要するに木村保安庁長官が言つておる戦力というのは、原子力を含んだ戦力だということをたびたび繰返えされておる。それじや戦力を日本は将来持たないかというと持つということはこれは明らかにされておる。それですから、日本が戦力を持つたときには必ず原子力というものがその中に含まれるということは事実です。ですから、学者の先生たちが如何に平和を愛し良心的に努力なすつても若しも、原子の研究がなされて行くならば将来必ず戦力としてそれが利用され、そこに持込まれてし願うということは、これは実に宿命のような感じがするわけです。そこで私どもは今日原子核の研究、原子力の研究をすることが、今日平和憲法を持ちながら、憲法の改革すらも問題になつており、そうして自衛力という名の下に戦力が増強されておるこの状態の下で、日本が今日原子核の研究を始めることが適切であるか、又原子力の研究を進めることが適切であるか、そういう点一つ伺いたいと思います。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) 只今のお話を三つに分けてお伺いいたしたのでございます。原子核研究所設立についてどういう反対意見があつたか、原子力問題についてどういう意見があつたか。それから将来軍事科学に転化されるということが宿命的のものと考えるがどうか、そういう三つのことになると存ずるのでございますが、第一に原子核研究所の設置のことが論ぜられましたときに、反対というほどの強い反対はございませんでしたけれども、意見として述べられましたことは、これがほかの科学を圧迫しはしないか、つまりこのほうに相当巨額の金が行くために、ほかにまだすべきことができなくなる。それからたまたま原子核の学者はなかなか活溌でございますから、そういうことを申出ましたけれども、そうでない、まだ申出されないことに科学の重要な部門がありはしないか、これは十分に検討しなければならん、そういうような意味でいろいろ検討いたしましたけれども、とにかくまあ賛沢を言えばきりがありませんけれども、現在大学、研究所その他におきまして、ほかの科学は現在与えられました一般の経費でもつて或る程度のことはやつて行ける。原子核の問題だけは、如何にしてもこれは機械がなければ問題にならない。そういう意味においてこれと先ほどの望遠鏡でありますが、これは機械がなければどうすることもできません。そういう意味でこれを取上げる、そうしてほかの科学を圧迫することはないということも、先ずこの程度の金ならば、ほかの予算を削つてこちらに廻すということはないだろう、そういうことでございました。  なお一つその以前に原子力問題がすでに論ぜられておりまして、そうしてこの原子力問題は、まだ日本で今研究を始めるべしという結論を得ておらなかつた論議の最中でございます。そういうときでありますから、原子核の研究という仮面をかぶつて、実は原子力の研究を始めるのではないかという疑いを抱かれたかたはあります。これに対しましては、私どもは絶対にそうではない、これは純粋に学術的の研究を狙いにしておるのである、そういうことをよく説明いたしまして御了承を得たのであります。従つて今日におきましても、原子力の研究に金が出るのを原子核研究所のほうに適当に廻せばいいじやないかという御意見もあるのでございますけれども、その点は原子核学者はなかなか。ピユーリタンでございまして、これは初めからの約束もあり、純粋学問の研究においてこれの研究所をやるならば、原子力の応用というようなことをやるならば、別の機関でやつて欲しい、そういう希望を学者としては持つております。  それから原子力問題についてどういう反対意見が出ましたかと申しますと、やはり何と申しましても、戦力、兵器として使われる心配がないかということでございます。これは日本のような現在の技術におきまして、数百億くらいの金を注ぎ込みましても原子爆弾はそうそうできるものではないということを誰も知つております。知つておりますけれども、それにもかかわらずやはりそういう心配があるのでございます。それを申します人たちは、例えば日本でそういう研究を始めておると、外国との何らかの関連におきまして、或いは学者が動員されることがありはしないか、或いは外国からものを持つて来て日本で何かをすることがありはしないか、いろいろそういう意味における心配をするかたが現にあります。学者は余りにも神経質であるというかたもございますけれども、とにかく広島、長崎の洗礼を受けました日本人が、そういう問題について非常に敏感なのは、私はやむを得ないのではないかと思います。そういう兵器というのも、何も日本の予算で、日本の金で爆弾を造るということではなく、何かそれに関連しはしないか、従つて先ほどお尋ねもありましたように、それを防ぐにはどういう立法的措置をとつたらいいか、いろいろそういうふうな意味において心配があります。  それから兵器ということを離れましても、多くの研究者を動員するという結果になつて、戦争中にありましたように科学の統制というようなことが起りはしないか。  それから秘密研究がいろいろ起りますというと、これは科学の健全な発達をさせるものではない、戦争の最中には、陸軍は陸軍で秘密研究をし、海軍は海軍で秘密研究をした、これはお互いに話合いをしましたならば難なく解決するような問題が、お互い秘密を守るために、科学はなかなか発達しない、そういうような健全な科学の発達を願うならば、秘密は持ちたくない、いろいろ又そういうことがございまして、要するに、そういうことをできるだけ気を付けて行かなければならないが、どうするかということについて意見がまとまらなかつたのでございます。中には只今もお話のように、日本においてその研究を始めれば、必ずやこれはどこかの戦力に結び付く、そういうことをとつて動かないかたもございます。ですから、どんなことがあろうとも、原子力の研究をしてはならないという御意見のかたもあります、これは極く少数でございますけれども。でありますから、意見としてはいろいろございます。

須藤五郎無所属クラブ

○須藤五郎君 私もやはり科学者と似た心配を持つておる一員であるわけなんです。それで今日の国際情勢、今日の日本の置かれている状態で、日本の科学者が原子力の研究を始めるということには、大きな国民的不安と、それから大きな危険が附随している。如何にしてこの危険を排除できるかということだと思うのです。この危険さえ排除されるなら、私たちも原子力の研究に賛成してもよろしいのです。先ほど皆さんがおつしやつたように、これが平和的ないろいろな力として利用されることは考えて行かなければならん、それは私たちも同感でありますが、現在において、そうして今日の日本の政治のあり方において、そういうことが今日なされることが果して正しいのだろうか。これはそれをやめろ、まだ早いからそれをやるべきでないという意見は、科学者にとつては非常に酷な意見であるかもわかりません。併し今日の世界の平和とか日本人の立場から考えて、そういう危険が附随するということはよく考えて行かなければならんことじやないか、そういうふうに私は考えておるわけでございます。  それから一点伺つておきたいのは、先日の文部委員会におきまして、文部政務次官からの発言で私はわかつたのでありますが、昨年アメリカから日本に対して原子力の講習会を開催するから日本も参加しないかという呼びかけがあつた。それで学術会議に誰か適当な人を派遣したらどうかという話をした、ところが学術会議としては何ら積極的な意見の開陳がなかつた。それで湯川博士にその内容を伺つたら、湯川博士もその中に原子力潜水艦の参観をさせるというような一項目があることによつて、或いは誤解を招く虞れもあるのじやないだろうかというようなことで、湯川博士も余り積極的な御意見もなく、そうして学術会議に尋ねて下さいという湯川さんの話で学術会議に諮問した。ところが学術会議からは何ら意見の開陳がなかつたのですが、折角のことだつたので、当時ニユーヨークに滞在しておつたところの旭硝子の何とかという重役がそこにいたのでその人に出席してもらつた、そういう御答弁だつた。それで私はそれではその旭硝子の重役から文部省としてその講習会の報告を受かたかと聞いたところがまだ受けていないと、私どもその講習会の報告を読んで文部次官から私はその報告を委員会でして頂く約束をこの間したのでありますが、その間の事情を、若しも学術会議としてそれに対して積極的に意見を述べなかつたとするならば、どういう立場で述べなかつたのか、その講習会がやはり危険だという観点に立たれて学術会議がそれを拒否なすつたのか、その点の事情を伺つておきたいと思います。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) 私只今正確な材料を持つておりませんので、或いはその日付などで多少間違いがあるかも存じませんが、その話はアメリカのニユーヨークでございましたか、原子に関します或る講習会と申しますか、講演会が三日ほどに互つて行われる、そういうことは存じております。その際にこれを外務省でしたか、この学術会議が通知を受けましたときには、もうすでにその始まります二週間ほど前にその話を初めて聞いたのでございます。それで人を日本から送るということはどうすることもできないような状態の下においてその通知を受けたと存じます。そこでそのときに旭硝子の山本英雄博士、これは研究所の副所長でございますが、理論物理学の出身のかたでございまして、そういうことについては非常によくわかるかたがたまたまニユーヨークに在留されますので、そのかたに出てもらつたらどうかということの意見でございまして、学術会議としてはそれが結構であるという御返事をしたので、意見を申して、その人を送るにはもう事実上送れないような非常に差迫つた時期で初めて知つたのでございます。これが私の記憶でございますけれども、幸いにこちらに稲田文部省の局長がおいでになりますので、私以上に或いは正確なことを御存じではないかと思うのでございます。

須藤五郎無所属クラブ

○須藤五郎君 もう一点でございますが、それは後の文部委員会でいろいろ伺おうと思つております。  もう一点同つておきたいのは、これから始めようとしているところの原子咳の研究所ですか、その施設及び研究の過程において、これは純然たる日本の学者のみにおいてなさるのか、国際的な関連を以て、又アメリカの助言、援助を受けてなさるのか、その点をはつきり伺つておきたいと思います。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) この原子核研究所のほうは全く日本人の学者の独創でございます。こういうものを作ろうということにつきましても何らの助言を得た試しもございません。  それから研究の設備を作りますのも、全部日本の中において行われますものを、注文してできる考えでおります。核の研究所、力ではございません、核の研究でございます。これは学術会議のほうで……。ただ私としてここで特に声を大きくしたいことは、初年度には建物とそれから大きな設備費でございまして、人件費が一文もないのでございます。でございますから誰がこの計画をして誰が設計をするか、それも全くない。従つて三年計画ということなんでございますから、如何せんこれは無理なんでございますけれども、これはやはり学術上の問題でございますから余りぐずぐずしてはいけないのでございまして、一日も早く完成することがいろんな意味から必要なのでございます。そういうことを申しておきます。

須藤五郎無所属クラブ

○須藤五郎君 もう一点、疑問が起つて来たんですが、私もそういうことで一つの疑問を持つている。若しも今後アメリカから資材の援助、技術の援助、そういうことを持込まれたとき、日本の学術会議としての態度はどういう態度をとられますか。それを飽くまで拒否して、日本独自の力で原子核、原子力の研究をして行くという態度を飽くまでそれを堅持なさるのか、それとも今のように日本には予算もない、人件費もない状態で、それに対してアメリカの援助の申出があつた場合、外国から援助の申出があつた場合、それを受けるのか、受けないで飽くまでもやるのか、その態度を承わりたい。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) これはなかなかむずかしい御質問でございまして、私どももそういう場合を余り考えたことはございませんけれども、平素話合いをしておりますことを元といたしまして私の今の気持を申上げますというと、これが純然たる商取引、商業上の取引であるならば資材などもアメリカ、外国から買う必要が必ずやあると思うのであります。例えば原子炉築造の問題につきましても、日本でウラニラムが果してあるかないか、これは恐らくそうはございませんし、仮にあつたといたしましても、それをとるのは大変なお金がかかる、そういうような場合にはむしろ輸入したほうがよいであろうというときに、商業上の取引としてならばこれは恐らく誰も異存がないと思います。ただそれからその他のいろいろの援助でございますね、これが学者としての好意的な援助ならこれは又全く何も言うことはないのでございますけれども、ただ何か条件がありまして、そうして秘密条件その他の条件があるようなことであつたならば恐らく学者はこれを受けないであろうと私は考えます。

須藤五郎無所属クラブ

○須藤五郎君 MSA条項の中に学術上の問題もやはり含まれておるわけなんですね、交換とか指導という面が含まれておる。ですから日本に原子核の研究所、原子力の研究所ができるならば必ずMSAの条項を盾にとつてアメリカからそういうものを押付けて来るということは明らかだと思うのです。そういう危険がもうすでにそこにあるということを学者諸君がよく弁えて、それにどういう対処を持つていらつしやるか、どういう心構えでいらつしやるかという点を私は伺つておきたいと思います。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) この問題について、実は私も不敏でございまして、そのMSAのことその他十分よく研究しておりませんのでわかりませんのでございますけれども、とにかく学者がそういうことについて心配を持つておることは事実なんでございます。そこで如何にして心配ないような形にするか、それをよく研究してというその矢先に問題が起つたのでございますから、甚だ申訳ないわけでございましたが、そういう十分のことをまだ研究いたしておりません。こういうふうになりました以上は、これを立法府にお願いいたしまして、そういう心配をできるだけ除くにはどうしたらよろしいかということを今後の問題としてできるでけ敏速に研究して行きたいと思います。

須藤五郎無所属クラブ

○須藤五郎君 私たち立法府におる一員としてその点十分注意してそういう危険のないように、若しも危険があるならば原子核の研究施設も私たちやはり日本の平和のために、日本民族として破滅を防ぐためには、原子核の研究が如何に重要であるといえどもこれを拒否しなければならんと私はやはり考えます、政治家としてですね。原子核の研究が始まるならば、そういう危険のないように万全の策を講じなければならん、そういうふうに思います。と同時に学者の先生諸君にもどうぞ日本の平和のために民族を滅亡から救うために、そういう危険が生じた場合は毅然たる態度でその研究を放棄して破壊する、必ず戦力に利用されないということを心構えとして私は守つて行つて頂きたいということを最後にお願いいたしまして私の質問を終ります。

田中啓一自由党

○田中啓一君 一人の委員としておつしやることには何でも以は異議はございませんけれども、私は須藤君とは全然立場の違つた考えでおるのであります。従つてそれは委員会全体の希望であるというふうに誤解なさらんように一つ先ずお願いします。

須藤五郎無所属クラブ

○須藤五郎君 勿論私は委員会全体として発言しておりません。私個人の発言であります。どうぞ誤解のないように、冷静にどうぞ。

田中啓一自由党

○田中啓一君 それで今度できます原子核の研究所、その設備というものは日本で全部できますというお話で大変私心強く実は感じたのでありまして、それを実はお伺いしようと思つたのです。そこで実はこれらの問題につきましてはイロハから教わらんとまるつきり知識がないものですからお伺いするのでありますが、先ほど先生はサイクロトロンを付けるんだというようなお話でございました。それから今アメリカなり或いは欧州各国が共同で作る施設というものはシンクロトロンというのでございますね、まあおぼろげながらその大きなほうのやつは中間子の研究まで入れるのだということはおぼろげながらわかりましてございますが、今のサイクロトロンのほうでありますと、三カ年で作るつもりでおるのだというお話、ただ初年度は人件費も出さんような誠に小さな予算で困つておるということで、誠にそれは私も同感であります。なぜ一体そんなに予算を小さく削つたか私にはわからんくらいなんでありますが、それは金さえ出せば何も三カ年もかからなければできないものではないのでございますか。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) 私は非常に細かいところまでそれにお答えできませんでございますけれども、やはり或る程度の時期は必要だと存じます。つまり設計をいたします。それからいろいろの機械をこしらえるのでございますから、それで大体三カ年というのは恐らく最小だろうと思います。で、むしろそれよりも延びる心配のほうがこれは多分にある。

田中啓一自由党

○田中啓一君 そうしますと、これはどうしてもぐんぐん研究をお進め願わなきやいかんのでありますから、次には今のシンクロトロンというようなことも考えなきやならず、これも思い付いてからやはりこれは大きいから余計年数がかかるということになりましようから、これについても、まあ今のいろいろ諸資材の価格でどれぐらいかかるものか、又それの、要するに資材機具というようなものは大体は日本でできるのかどうでありますか、そこらを一つお伺いしたい。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) 恐らくはその最後の、そういう資材が日本でできるかということでございますが、大体は私は日本のメーカーでできるのではないかと考えております。ただ或いはこれもどの程度日本にあるかということになりますと、例えばニツケルは日本で造らなかつたので実は原料を輸入しておるということもございます。私がここで日本でできると申しましたのは、日本のメーカーにその製作ができるという意味で先ほど申したのでございますけれども、どのくらいの時間がかかるかということでございますけれども、これはアメリカその他の国を見ましても、やはり相当の時間のかかるものであると考えます。アメリカの昨年運転を始めました一番大きなシンクロトロンでも恐らくは五年ぐらいはかかつておるかと思います。ヨーロツパの研究所の計画がやはり最初四年とあと二年、五、六年の計画で完成するようになつていますので、少くともそれ以上の時間はかかると思います。

田中啓一自由党

○田中啓一君 あのヨーロツパの共同研究所については、私は日本へも勧誘状が来ておるように聞いておるのでありますが、ああいうところへ共同加入して研究をするというようなことは如何なものでありましようか。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) これは私の若し記憶に間違いないならば、最初金を出し合いますときには、日本には勧誘状は来ていなかつたのではないかと思います。これはヨーロツパの各国が十カ国ばかり集まりまして、イギリスは最後まで加入いたしませんでした。最後になつてやはり加入いたしましたけれども、併し昨年恐らくこれの長でありましよう、ユネスコのオージエという先生が昨年日本に参りました。そのときに話によりますと、将来これを利用するのは世界中の各国に開放をしたい。そういうことを申しておりました。多分そういう望みはあるのだと思うのでございます。これに加入するのはどうかというお話でございますが、恐らくこれは委員会のようなものをやはり作りまして如何に使つて行くか、そうして非常に大きなそういう設備でございますが、それを使つていろいろのことをいたします。日本などから仮に留学生を一年、二年、三年と送ることができるならばそこの研究所に入れてもらつて、そこでそれを使つた仕事ができる。そういう情勢は将来必ずできることをまあ期待いたしております。

田中啓一自由党

○田中啓一君 それから非常に予算のことを御心配になつておるのでありますが、私は少し見方が違いますので、今電力の開発だけでも国の予算というものは、或いは国の財政としますとそう大きなものではございませんけれども、総合的に民間投資のものも合せて考えれば千億以上毎年使うという勢いで進んでおるわけなんです。これまで人類と申しますか、各国と申しますかこれだけ進歩をし、従つて人間の生活というものもよくなりましたというものに、まあ学術、技術或いはそれが生産に応用されてこれだけの力が出たんだと、こう思うのであります。もう石炭や石油というものは大分先が心細くなつておりますし、電気というものもすでに限度が来そうに、少くとも先が見えた話になりつつあるということでありまして、更にこの上人類が発展して来るということになりますれば、どうしても私はこの強大な力を持つた原子力というものが産業に応用されなければ、大きなこれまで石炭、電気のために進んだような進み方はできないであろう。実に私は重大な意味があると思いますね。  そこでそういう原子力でありますから、どんどん研究をされたらよろしいので、するうには設備が足らんとどんどんおつしやればよろしい。それがどこに使われるのだ、ここに使われるのだといつて非常に議論をしていらつしやるようでありますけれども、そして又私は平和的産業にこれがもう全部流れ込むように世界中行けばそれに越したことは無論ないと思つております。が、どこの国もいろいろなことにとにかく使う。一部を平和産業に共同して使おうじやないかといつてもまだ一向相談はまとまりそうもないというような状態なんで、而も、もう日本は秘密なしにあけつ放しで一つぐんぐん出て行こうじやないかという御決心なら、何もほかのことを御心配なさらんでも私は進めるのじやないかとこういうふうに考えるのであります。ただこれが軍事に使われて、非常に人類に惨害をもたらすようなことはいやだというお気持は実によくわかります。我々もいやなんです。でありますけれども、如何にぜん世界の現状というものはそういうものなんだ、併しこちらは研究をやらなければ、今に一億になろうという日本の人口は立往生してしまう。それではやつぱり日本民族の繁栄は心細いのであります。どうぞもつと声を大にして研究を進めたいものだということを私は学者、技術家としては強力に叫んで頂きたい。  今私はなぜ資材のことをお伺いしたかというと、今苦しんでいるのは輸出入のバランスが合わないので致命傷で苦しんでいる。それからまあ下手にやるとインフレになるから苦しんでおるわけです。何も日本でできるものを日本で使う分には、それにはそう大きな障害を来すようなことはないと思う。それが先ほどもお話になつたように、思い切つた大きなものをお作りになつても百億くらいのものじやないかと思われる。今電源開発の資金計画をお話になりましたけれども、それと比較して申上げたわけですが、でありますから、何やら私はこう変なことに利用されちやつまらんからということに余りに心遣いが過ぎるのじやないかという気が実はいたしますので、そこらのところの大先生がたの御見識を一つ伺いたいと思うのですが。

相馬助治日本社会党(第二控室・右)

○相馬助治君 議事進行に関して、今の田中さんの質問、勿論質問も結構ですが、前段の御意見のところで、他の委員の質問に連関して触れられたことだとは思いますけれども、この当委員会としては原子核研究所に反対だとか何とかいうような意見を毛頭持つていないので、そういう意味で実態が如何なものなのでしようかということを藤岡先生に私たちはお尋ねして参つたのであつて、私は藤岡先生はこういうものを他に利用されるとか、何とかいうのは、委員が質問したからそれに対してそういう危険もあり得るとおつしやつたのだ、こういうふうに伺つて参つたわけで、そういう意見ですね、先生の意見なり、こつちの意見というのはのちほど、これが終つてからでも雑談の時間が先生にあつたら教えて頂くように、今差当つてこの実態についての質疑を進めるようにお願いしたいと思います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)

田中啓一自由党

○田中啓一君 それじや私も議事進行で発言したいのですが、私以外のかたはことごとくこれが平和産業のみに使われるようにおつしやる、それに対する考えはどうだ、こういうお聞きようになつておる、誰が聞いたつてそう聞える。(「その通り聞いている」と呼ぶ者あり)私はそういうふうに思わんから、なぜ先生がたはそこを非常に気になさるのか、率直に一つ教えを請いたいと、こう私は質問したわけです。そういうことなんです。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) 実にこれもむずかしい問題でございまして、やはり学術会議の会員二百十名おりますと、一人々々皆意見が違うのであります。先ほどからどういう点に反対があつたかというお尋ねでございましたから、反対の意見のあつたことを申上げましたけれども、又逆に是非日本はやらなければならないということを主張されるかたもあるのであります。広島の大学のかたで自分は広島で原爆に遭つた、であるからこの原子力の研究は米ソ緊張の解けるまで絶対にしてはならないとおつしやるかたもあります。それから同じ広島のかたで広島に自分はおつて原爆に遭つた、このときに、もう少し原子爆弾についての知識を私が持つておつたならばあれほどの被害をこうむらなかつたのかも知れない、であるから是非早く日本でも始めなければならないという御意見のかたもあるのであります。いろいろの御意見がありまして、それでこれを何か或る問題がございますれば、そこで多数決できめることもできますけれども、将来如何にすべきかというふうなものでございますと、なかなか多数決で案はできないのでございます。そこでまあいろいろ議論をしておつた、そういう実情でございます。

田中啓一自由党

○田中啓一君 もう少し重ねてお伺いしたいのですが、多分それはその通りであろうと、いろいろの御議論があるということは私もよく伺つて、その通りに拝聴するのでありますが、今藤岡先生が何かこれが平和産業以外には使われないような工夫をしたいものだ、従つて予算にそういう一つの附帯条件でも付けて頂けないか、或いは将来立法措置等も考慮を願えないかということを自分一個としては希望する、こういうお話でありましたが、その点をお伺いしたいわけです。何故そういうことになるのかということです。(「それは当然じやないですか」と呼ぶ者あり)当然だとあなたはお考えですけれども、私はそう思わんからお伺いしているんです。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) これは私の個人的な意見かも知れませんけれども、学術会議の会員の多くがそういうふうな希望を持つております。ただそのまあ平和産業に使われるという今までいろいろ議論があつたあとでございますから、そこでここで一つ踏切ります以上、それはそういう手を打つて頂きますれば非常に踏切りやすい、そういう意味でのお願いなんでございます、その希望としての。

田中啓一自由党

○田中啓一君 それは学術会議でありますか、そういうところで大体多くの人がそういう意向で希望しているからその通りに伝えるんだというお話のように伺いましたのでありますが、これに対してどうも私はそういう意見が何故出るのかは了解に苦しむわけであります。(「田中さんの意見も率直に言つて見たらどうです」と呼ぶ者あり)私は無条件でいいのじやないか、(「なんに使われても、戦争に使われようが……、」と呼ぶ者あり)意見は私聞いているのじやないのですよ、そこでそういうふうにお考えになるかたが多いということでありますが、それは何故でありましようかと申上げましたのは、今日世界各国が相当まあ原子核なり原子力というものが研究が進んでおつて、ところが無条件で殆んどやつているのに、ここだけ付けてみたところで無意味じやないか、こういうような気がいたしますので、それはどうでありましようか、つまり秘密は保てんのじやありませんか。そういうことなんであります。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) これもやはりまあ戦争が終りましてから平和憲法の下におきまして、そうして殊に爆弾の洗礼を受けました世界における唯一の国として、そうしてその日本人として、これだけはまあ学者としてでございますか、原子力だけは飽くまでも平和に使われますようにという、そういう何と申しますか、祈りに似た気持ではないかと思います。

田中啓一自由党

○田中啓一君 要するに希望宣言みたいなものではないか、こういうことですか、それならよくわかるのであります。私どももそういう希望は定言したい、こういうことなんでありますが、併しこの条件ということになれば大変むずかしいことになるのじやないか、日本で研究したものだけはよそには洩れないようにぜんことにはよそに使われるのじやないか、こういうことで私はその祈りに似た気持の希望的の官費ということならばなんらの躊躇はありません。併しそれを議会でやるのがいいかどうか、私は相当これは躊躇するのであります。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) その祈りに似た気持と申しますのは、それはそうでございますけれども、国会でいろいろ討論が行われますことは議事録に残りまずし、殊に附帯決議となり、或いは立法ということになりますれば、これは相当のやはり権威を持つものであると私は考えます。むろん中には法律できめても、いざというときには何にもならないというかたもありますけれども、私はやはり法治国に住むものといたしまして、国会でおきめになりました法律に満腔の信頼を置くものでございますので、そういう意味におきまして、その原子力の取扱い方というようなことについての立法するようなことができますれば、これはやはり具体的な気持は祈りに似たような気持でありますけれども、できれば是非お願いしたいことだと考えております。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 ちよつと聞き洩らしましたから、藤岡先生、原子力委員会をこの日本の国内で発足させたらいいじやないだろうかというような議論がされたということがあつたので、何か今そういうものの準備会議が持たれておるようなことを仄聞しておりますが、その点についてお伺いしたいのですが。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) 私ちよつと、準備会議ということにつきましては全く存じませんのでございます。ただ原子力委員会と申しますのは、普通は委員会と申しますといわゆる委員会でございますけれども、アメリカなどの原子力委員会というものは非常に強力な実行力を持つたものでございます。そういうようなものが将来日本でも或いはできるのではないか、つまり各省のどこかに付くというのではなく、非常な実行力を持つた非常に強力な機関が原子力の取扱については必要なるのではないかと、それが原子力委員会というようなものだと私は了解しておるのでございます。アメリカの場合にはそれが殊に軍事上の目的が主でございますので、なかなか強いものでございますけれども、それから私が先ほど審議会ということを申しましたが、これは今度の予算をできるだけ有効に使うためには、或いはそれがどこか一カ所に流れるというようなことなどのないように、どういう問題が必要であるか、重要であるかということを審議いたしまして、そしてその必要に応じて最も適当なところに予算を配分する。そういうことを審議いたします審議会が必要ではないかということを申しましたのでございまして、原子力委員会というものよりはもつと特殊なものだと思います。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 私御質問申上げましたのは、アメリカのいわゆる原子力委員会の性格というものを承知の上でですね、ちよつと新聞で学者間にも日本でも原子力委員会といつたようなものの芽生えがあるように私ちよつと仄聞したので、そういう動きがあるのではないかということをお尋ねしたのでございます。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) それは恐らくそういうことが必要であるという考えは相当の人は持つておると思います。ただ動きとしてはまだそれほどに出ておりません。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 その言葉を私信じたいのですが、何か予算の面までちらつと出まして、日本に原子力委員会の問題がかなり学者の間でも具体的に話されているということを伺つて、非常に心配しておつたところでございます。それはそれとして、私先生の只今の御発言をそのまま受取りたいと思います。  その次に御質問申上げたいことは、原子炉の問題なんです。どうも私自分でよくわかりませんのですが、突如としてこの原子炉という問題が出まして、私も不勉強で原子炉なるものが何たかわからないために、随分いろいろと本を見たり、何かして見まして、ようやく外貌だけ掴めた。幸いこの原子炉なるものが、幸か不幸かわかりませんが、学術会議の結論によつて一応ここでその原子炉の予算というものは時期尚早であるから、これをもつと重点的な方向に廻せ、シンクロ、サイクロトンの建設のほうにも廻せというような御意見が出たと思うのですが、最近政治心理学というものが発達して来て、原子炉なら原子炉というものを作ろうという場合には、アドバルーンを上げるのです。これは今日の政治の心理学です。そうすると、アドバルーンが上つた。併し一応学術会議の賢明なるその御進言が或る方向に持つて行つたとしますが、私はこれは再度出て来ると思うのです。又出て来ると思うのですが、この場合に、仮定の上で申上げて悪いのですが、現実問題として日本にはこのウラニウムの産出というものは私は原子炉を設けても、国内で果してその原子炉を活用するまでに、平和にしろ何にしろそのウラニウムの原料というものがないために、原子炉だけ作つてその作つた目的が果せるか、果せないかということはやつぱり日本の国内資源の問題と関連すると思うのですが、仮定の問題になつて失礼ですが、原子炉を作つた場合に、日本の国内においてウラニウムというものと原子炉の研究と、それから原子力による平和産業でも何でもいいのですが、どういうふうにこれが発展されて行くものか、一応承わりたいと思います。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) ウラニウムが日本には恐らく非常に乏しいということは皆の今一致した意見であろうと思います。燐鉱石云々という話もございますけれども、普通の日本に……、これも燐鉱石も輸入でございます。国内に産出されますウラニウムが非常に微量である。そこで日本中を今探しましても、得られたとしましても非常な貧鉱でありましようし、これを精練して果してどれだけできるか。これは誰も自信を持つて言えない問題だろうと思います。でございますから、私どもが時期尚早と、とても原子炉は今まだすぐに作ることは時期尚早と申しましたのは、そういう技術上の意味を含めてのことでございます。併し今度は基礎的調査研究ということになつておりますので、ウラニウムがどれだけあるか探す、精練にはどうしたらいいか、そういうこともとても現在のいわゆる原子炉予算として当然しなければならない研究だと思つておりますが、これが将来どれだけの見通しがあるかということは残念ながら何ら申上げられないと思うのであります。  それからちよつと失礼でございますが、初めに原子力委員会のことにつきまして、或いはこういうことかと思うのでございますけれども、学術会議の中に第三十九委員会という委員会がございます。これは私委員長をいたしております。これは学術会議の中での原子力問題についての態度を検討する委員会でございまして、これをこの四月に総会がございますが、そこに提案をいたしまして、学術会議の中に原子力問題の検討委員会というスタンデイング・コミツテイを作りまして、そうして日本の原子力問題についてもつと積極的に検討しよう、そういうことはこの間の原子炉予算の出る前から我々は委員会として決定いたしております。それを原子力委員会を作るということに若し誤り伝えられたならばでございますが、これは学術会議内部の委員会でございます。それで或いはそれに外のかたをお招きしてお願いすることもあるかも知れません。そういう性格のものなら話題に上つたことはございます。

高田なほ子日本社会党(第四控室・左)

○高田なほ子君 重ねてもう一点お伺いしたいのですが、仮に又来年度の予算で原子炉の予算が出て来たといたします。それで日本に原子炉が仮にできたといたします。この場合にあれですか。本当に学者として研究する場合にもウラニウムというものがなければ私は原子炉だけ作つたつて役に立たないと思うが、この場合にアメリカだつたら、アメリカからウラニウムを持つて来るというようなことはMSAの技術援助というような形でできるんじやないかと思いますが、そこで原子炉を作るということの前提にはウラニウムが必要だということになるんじやないですか、どうなんですか。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) それは当然そうでございます。ウラニウムは私燃料と申しましたけれども、このウラニウムなしの原子炉ということは考えられませんのでございます。原子炉を作るということは、ウラニウム或いは重水、或いは石墨、そういうものがあつての原子炉でございます。炉だけを作つたが石炭がない、そういうことはちよつと考えられないのでございまして、作るというからには勿論ウラニウムあつての話をしておつたのでございます。

高橋道男緑風会

○高橋道男君 簡単な技術的なお尋ねをするのですが、東京大学に研究所ができる。それは大学の構内で作られるのですか。これは文部省にお伺いすることかも知れませんけれども、話を今しておられるそうですから、先生からお聞きすることができればそれをお伺いしておきたいと思います。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) 只今のは原子炉研究所のことでございますか。

高橋道男緑風会

○高橋道男君 そうです。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) これは東京大学の附置でございますけれども、詳しい案は東大で作ると思いますが、私は東大の本郷のあそこでは到底できないということを確信いたしております。ですからどこか別に土地をお選びになると思います。

高橋道男緑風会

○高橋道男君 それからその原子炉に飛ぶんですけれども、そういう研究に関してはやはりこれは、勿論原子核研究所との直接の関係はありませんが、東京都内というようなところではそういう施設はできないものと考えていいんでございましようか。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) さように存じます。到底もう少し広い場所に参りませんというと無理でございますから。

高橋道男緑風会

○高橋道男君 もう一点お伺いしますが、今国会図書館で原子核か、原子力に関する文献を集めておりますが、これは先生も御関係になつておるのでございましようか。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) 私はこれは直接関係いたしておりません。近く私に委員になつて欲しいということは伺つておりますが、今までのところ、つまり何を研究するかということをきめます委員会には今まで関係しておりませんが、これは非常に結構なことだと思つております。

高橋道男緑風会

○高橋道男君 その場合、この原子核研究所ができた場合に、勿論その原子核研究所のほうでも文献をお集めになるかもしれませんが、若し両方で集めるということになると、やはりそれだけ出費が多くなるわけでありまするし、国会図書館のほうで集めても、これは実際の研究と、どういうふうに結び付くかということには手数がかかると思うのでありますが、そういう点についてはどうお考えでしようか。

藤岡由夫東京教育大学教授

○参考人(藤岡由夫君) これはお説の通りだと思います。お説の通りでございますが、原子核研究所のほうは今純然たる学術的のことを目的としておりますので、そうそう非常に文献を要しませんけれども、原子力問題一般ということになりますといろいろの法律もあり何もありということで非常に多くなる。そこで国会図書館がお取扱いになることは誠に結構でございます。併し重複を避けて、できるだけ有効に利用したいということは全く同感でございます。

川村松助自由党

○委員長(川村松助君) ほかに御質疑ございませんか。  それでは最後に藤岡先生にお礼を申上げます。本日は貴重な御意見をお伺いいたしまして誠に有難うございました。深く御礼を申上げます。  それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後三時四十二分散会

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