地方行政委員会公職選挙法改正に関する小委員会 第2号
- 発言数
- 6 件
- 登壇者
- 2 名
- 会派数
- 1
- 開催日
- 1954/03/10
会議録
○委員長(堀末治君) それではこれから地方行政委員会公職選挙法改正に関する小委員会を開会いたします。 今日の会議に付する事件は、公職選挙法の一部を改正する法律案(閣法第七号)予備審査でございます。先ず政府委員から大体の趣旨御説明をお願いいたします。
○政府委員(金丸三郎君) 昨日長官からこの法律案の提案理由を御説明申上げた次第でございますが、私から若干補足をいたしまして御説明を申上げたいと存じます。 先ず法案自体を簡単に申上げましてそれから選挙制度調査会におきます論議の経過を御参考までに申上げておきたいと存じます。この法律案は学生の選挙権の要件でございます住所の認定の原則と、保安官、警備官の住所の認定に関する方針と申しましようか、原則を規定したものでございます。それに伴いまして、附則のほうで経過的な措置を規定したものでございます。法案は若干ほかの規定の整理に及んでおりますけれども、実質的な規定は第二百七十条の改正でございます。その内容は新らしく第二項として加わりますものが、学生生徒の住所の認定に関する規定でございまして、第三項として加わりますものが、保安官、警備官の住所の認定に関する規定でございます。 第二項の学生生徒の住所に関しますものは、原則として学生や生徒が現在居住しております寮、下宿等のあります市町村の区域内に住所があるものとして推定する。但しその寮や下宿等に居住いたします前に親族と同居していたというような事由によりまして、他の市町村の区域内に住所を有するという旨の申出を学生から両親等の現在住んでおります市町村の選挙委員会にいたします場合には、この限りではない。従いまして、当然にそこに住所があるとするわけではございませんけれども、学生からそういうような申出がございました場合には、寮や下宿のあります所には推定いたしませんで、市町村の選挙管理委員会の認定によりまして、そちらのほうの名簿に登録し得るようにするというのでございます。 第三項は、保安官及び警備官についてでございますが、これも現在では本人の意思に基きまして保安官なり警備官になつておるということ、又相当額の俸給と申しましようか、そういうものの支給を受けておりますということ並びに月のうち十日乃至十二日ほどは外出が認められておるそうでございます。従いまして、夜も割合に気楽に外出ができたりして所在地の市民或いは町村の人などと融け合つた生活ができるというような実情にございますのでこれもやはり一般の市民と同じような生活を営んでおると言うことができるのではなかろうか。そういうような考え方からいたしまして、保安官又は警備官につきましても、学生と同じように原則として隊、或いは警備官につきましては船に乗つておりますので、船の定けい港の所在地の市町村の区域内に住所があるものとして推定をする。即ち現在地を原則といたしまして、但し学生の場合と同じように父母その他の親族が現に住んでおります市町村の区域内に、通俗的な言葉で申しますと郷里のほうに住所があるという申出をいたしました場合には、推定を外しまして、実際に調べました結果、そちらに住所があると認定すれば、郷里のほうに住所があると認定をして名簿に登録することができる。そういうふうにいたしたのが第三項でございます。 第四項は、この条文の解釈上疑義を生ずる点がございますので、疑義なからしめるために設けました念のための注意規定でございます。その二項、三項の郷里のほうに選挙権があるという認定をいたします端緒になりますものが、本人の申出でございますので、その申出があつた場合だけ郷里のほうに住所があると認定されるのではない。仮に住所の申出が本人からございませんでも、郷里のほうにはつきりと住所があるということが認定できる場合には郷里のほうに認定できる、こういうふうにしたわけでございます。これは本文が推定するという規定を設けておりますので、これを覆すに足る資料があれば勿論郷里のほうに認定できるわけのものでございますが、この法文にございますような但し書の表現で本人が申出た場合しか郷里のほうに住所の認定ができないという疑義を生ずる虞れもございますので、念のために設けたものでございます。 それから附則の第七項は、現在学校教育法に基かないで旧制の学校が苦干大学院として残つておりますので、これについても同一にしようという趣旨のものでございます。 附則は経過的な措置を規定したものでございます。 以上がこの法律案の内容でございますが、御参考までにこのような結論に達しました選挙制度調査会の経過を御説明申上げまして、なお御参考までにお手許に先般配付申上げました資料の中で御覧を願いたいと思いますものを申上げておきたいと思います。調査会におきましては、これもお手許に配付いたしました資料の中に、調査会の答申と別紙といたしまして、調査会における審議経過の概要というものがございます。これはガリ版で印刷いたしました五枚刷のものでございます。選挙制度調査会答申という表書になつておりまして、十二月十七日調査会長牧野良三氏から総理大臣宛の答申でございます。この中に学生や保安官、警備官の住所は現在地にあると原則として推定する、但し郷里を住所として申出た場合はこの限りでないというのが本文でございます。これに附帯事項がついておりまして、公職選挙法と住民登録法との関係について法令の整備をされたいという趣旨があるのでございます。この審議経過の概要のところについて御参考までに申上げておきたいと思うのでございますが、調査会で最も問題になりましたのは、選挙法で言う住所というのは民法上の住所なのか、選挙法は選挙法、地方税法は地方税法、民法は民法、そういうふうに各法律によつて目的が違うんだから、住所という意義も各法律ごとに違つていいのではないかという点でありました。と申しますのは、例えば公職選挙法でございますならば、選挙権を行使しやすいということを第一義にして住所の意義を考え認定をしたらいいのじやないか必ずしも民法の住所という必要はないかという意見があつたのでございます。この見解は当然に住所が二つ以上あり得るという考えと連なつておるわけでございます。調査会におきましてこのような意見がございましたけれども、これと又非常に異つた意見もございました。それは、住所というのは少くとも我が国の制度としては従来民法の住所であり、合法上の住所としては一つであるという建前でいろいろな法律ができており、各省における行政上の措置も民法上の住所であり、又一つであるという前提で今日まで来ておるのを覆すのは無理ではないかというのでございます。殊に住民登録法が民法上の住所を掴まえるということを前提にしてできた法律であり、又その住所は一つであるという建前に立つておる以上、二つであると言い、選挙法の住所、地方税法の住民税をとる住所、或いは民法上の住所、別々だということはとても無理ではないかという強い反対の御意見がございました。従いまして、選挙制度調査会におきましては民法上の住所であるかどうか。二つ以上あると考えるかどうか。そういう点につきましては結局触れないで、当面の問題を論議しようということになりましたので、その点については最終的な意見は出ていないのでございます。ただ、後ほど申上げますが、私ども政府当局といたしましては、やはり民法上の住所である、そしてそれが選挙法の住所でもあり、住民税を取る地方税法の住所でもあり、住民登録法の住所でもなければならない。そういうふうに統一的に考えてこの法案を提出いたしておる次第でございます。 なお、改正の過程におきまして、今のように住所についていろいろ論議がございますので、地方公共団体の選挙権の所在に関する住所の問題と、国の選挙には住所は必ずしも必要でないんだから両方別に考えたらどうかと、こういう御意見もございましたけれども、これは少数で結局問題にはならなかつたのでございます。それから住民登録法との関係が論議されたのでございますけれども、現在住民登録法の運用の実情から申しまして、これは時間も長くなりますので、御質問等でもございますれば申上げますけれども、今直ちに住民登録法によつて登録をされておる所を住所として必ず名簿に登録をするというようなふうにいたしますことは、非常を無理が伴いますと私どもは考えますので、将来の研究事項として残されたのでございます。 それから実質論といたしまして、学生や生徒の住所の問題と保安官や警備官の住所の問題と、それから長期療養のため病院に入つております者、或いはそのほか長期の滞在者、そういうような同じようなケースのものがございます。で、それ全体について総合的に考えるかということがございましたが、先ず当面のものに限定をしたらどうかという大部分の委員の御意見で、この二つに限定されたのでございます。中には、病院におる人も同じように病院で投票させるようにしたらどうかという少数の御意見もございましたけれども、大部分のかたが、やはり病院は仮の住いと考えて現行法がよろしいのではないかという御意見が多かつたのでございます。結局最後まで、学生、生徒、保安官及び警備官につきましては現役地を原則として住所と認定していいではないかという御意見と、外国の立法例等も考えて、郷里に住所が原則としてはある、ただこちらのほうに現在居住をしておるし、郷里にはなかなか帰らないというような者もあるし、又住所の認定につきましては、本人の意思を尊重したほうがいいじやないか。まあどちらかと申しますと、学生の場合は郷里にも帰つておる、こちらにもおる。殊に保安官等の場合には転転もいたしますので、本人の意思も聞いて住所をきめさせるようにしたらどうか、こういうようなこともございまして、郷里説と現在地説と両方お終いまで対立をいたしたのでございます。従いまして、この答申にはA案、B案というように郷里説と現在地説と両方一応参考までに掲げてございますが、最後の討論を終結いたしましたあとでは、成るべく全会一致で行こうというような委員の気持ちも働いたと見えまして、全会一致で現在地にするということできまつたわけでございます。 以上が調査会におきます審議の要点でございますが、ほかにお手許にお配りいたしてございます資料につきまして、御説明申上げます。一つは、賛成又は反対の意見集で、公平に盛るつもりで集録したものでございます。現在までの選挙部長、或いは内務省の地方局長、法務省の民事局長、そういう者の通牒、それから今までの実例や判例、民法学者、行政法学者の学説、学生選挙権の問題が世上で論議されるようになりましてから新聞等に出ました賛成論、反対論、そういうものを集録いたしてございます。これにつきましてはすでに各委員とも十分に御承知と思いますので、説明は省略いたします。 次に、御参考までに外国の立法例を御説明いたしますと、イギリスの一九四九年の選挙法ではやはり住所ということが要件になつておりますけれども、すでに何カ月以上というような期間が北アイルランドを除きましては外されております。イングランドそれからスコツトランド、ウエールズ、こういう方面ではただ名簿の調製期日でありましたか、調査期日でありましたか、この際に住所を持つておれば名簿に登録し得るということになつております。これはお手許の立法例の資料の一番最初の英国国民代表法(一九四九年)その第一条というところにございます。ただその第四条に住所の認定のいたし方がございます。これには、「六カ月以内に現実に住所を回復する意志を有し、且つ、住所の回復がその義務履行によつて妨げられない場合であつて、保持し又は引受けた職務、仕事、雇傭関係から生じ又はそれに附随する義務の履行のため不在になること。」と申しましたけれども、六カ月以内には又東京へ帰つて来る。それは客観的に可能であるというような状況であれば住所は東京に残つておるという趣旨の規定でございます。六カ月と切つてあるところに一つの立法的にこの辺で打切られたということがあるのではないかと思います。その(3)には精神病者や精神障害者等につきましては監置されておる所、精神病院、そういう所にはないという規定がございます。 それからアメリカの選挙法は御承知のように非常に詳細な規定を持つた選挙法でございますので、学生の住所の認定について規定をいたしておりますが、立法例に関する資料の十一頁でございます。それはアメリカのウイスコンシン州の選挙法(一九四七年)でございますが、十一頁の一三項に「鉄道、船舶、劇場系統の施設に雇傭されておる未婚者、」これが一区切でございます。それから「学生」、それから「教員で週、月、年の大部分異つた処に宿泊する未婚者」、こういう人は「親と一所に居住する処があれば特に他の場所を選定しない限り親の住所をその住所と認める。」という規定がございます。「親と一所に居住する処があれば」という解釈が又問題かと思いますが、そういう規定がございます。 次に、オハイオ州選挙法(一九五〇年)というのがウイスコンシン州の次にございますが、その四千七百八十五の三十三、a、「学生の投票のための住所」というのがございます。十七頁でございます。「学生の投票のための住所」、これは「入学する直前にその投票のための住所が位置していた郡以外の郡に位置する修学施設に入学している者が、入学中に限り当該施設の位置する郡内に居住するときは、その者の投票のための住所は、その者の入学中は、入学直前に投票のための住所が位置していた区域に所在するものとみなされる。」という規定がございます。他も大同小異でございます。 なお、お参考までにドイツ民法を見ますと、住所に関する資料その五、外国の立法例その二というのがございましようか。
○委員長(堀末治君) それはないようですね。資料はあとで出して、説明だけして下さい。
○政府委員(金丸三郎君) ドイツ民法を見ますと、ドイツの民法はいわゆる住所の認定について主観主義をとつておりまして、それに住所は回持に数地に存在することを得、即ち複数住所があり得るという規定が第七条にあるのでございます。ところがこれは立法上はつきりと住所が複数あり得るということを書いております。その代りにドイツの選挙法を御覧になりますと、住所が複数であるということを前提にしておりますから、選挙法の住所はその主たる住所にあるということを規定しております。ハウプト・ウオーンジツツという言葉を使つておりますが、だから私どもは日本では住所、居所というのを、ドイツでは複数住所があり得ると言つているだけであつて、日本では住所と認定したらそこに選挙権がある。ドイツでは住所も居所も住所として扱いますけれども、そのうちの主たる住所地の市町村の選挙管理委員会の名簿に登録をする、こういうふうに考えていいのじやなかろうか。従いまして、住所が複数とか単数とかの争いは、日本では日本流に住所、居所という解釈で解決し得るのじやないか、こういうように考えるのでございます。 なお、ドイツ民法は軍人につきまして、軍人軍属は衛戌地を以てその住所とするという規定を第九条に設けておりますが、その第二項に「本条ハ兵役義務ヲ履行スル為メニノミ服務シ又ハ独立シテ住所ヲ設定スルコトヲ得ザル軍人軍属二之ヲ適用セズ」、こういうような規定を設けておるのでございます。この私どもの今回の立法は本人の住所ということにいろいろな用件を捨象をいたしまして、郷里のどちらに住所があるか、学生や保安官の場合はなかなか認定が困難である。併し現在地に諸般の事情を考えまして住所があるという原則にしていい。但し本人の意思を参酌をした上で郷里のほうに住所があると申出をしたならば、それに基いて郷里のほうに住所の認定ができるようにしたらどうか。どちらかと申しますと、ウイスコンシン州の例にやや立法例としては近いのではないか、こういうふうな感じがいたしておるのでございます。 以上で私の御説明を終ります。
○委員長(堀末治君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(堀末治君) 速記を始めて。 今日はこれにて散会いたします。 午前十一時三十七分散会