大蔵委員会 第12号
- 発言数
- 59 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1954/03/03
会議録
○委員長(大矢半次郎君) 只今より第十二回の大蔵委員会を開会いたします。 関税法案を議題といたしまして、その内容の説明を聴取いたします。
○政府委員(北島武雄君) 関税法案の提案理由につきましては、昨日政務次官から説明があつたのでございますが、私からその内容を補足いたしまして御説明申上げます。 現在の関税法は、条約改正当時即ち明治三十二年に制定されたものでございます。比較的安定した法律でございまして、明治三十二年制定以後、昭和二十年の終戦までに五回の改正がございました。その後、終戦後昨年までの間に十五回の改正をいたしております。 終戦後におきましては、当時の司令部関係等によりまして、相当次から次へと改正のやむなきに至つたわけでございます。このようにいたしまして時勢の推移に即応して参つたのでございまするが、関税法の骨格は、何と申しましても、只今から五十五年前に制定されたものでございますので、現在から見ますと、法文の体裁といい、或いは使つております字句、規定の内容等を見ますと、近代的法制という点からは非常に欠けている点があるということを痛感するのでございます。私ども終戦後できるだけ早い機会に、この関税法を終戦後の最近の諸法令と歩調を揃えまして近代化したいと思つておりましたのでありますが、なかなかそのときどきの仕事に追われておりまして、その機会がなかつたのであります。一昨年五月頃から関税法の全面改正をする準備をいたしまして、スタツフを整え、各種の資料、例えば戦後における各国の関税法規、或いは又、税関で永年実行いたしておりますところの行政慣例、或いは又民間団体の御要望等を集めまして、関税法案の作成に取りかかつたのであります。昨年の通常国会におきまして提案するつもりでおつたのでございますが、まだそのときは準備整いませず、一年経た本日提案いたすようになつた次第でございます。 この関税法の全面改正におきましては、極く大体の構想を申上げますと、先ず関税法を近代的法制の見地からいつて恥かしくない法制に編成替することでありますが、その際におきまして、できるだけ税関手続というものは、支障のない限りこれを簡素化して行くということと、それから特に保税制度につきましては手続を相当広範囲に簡単化いたしまして、我が国が貿易によつて立つて行かなきやならん国柄から考えまして、保税制度の利用をできるだけ促進するという点に主眼点を置いて作成いたしたのでございます。以下今回の関税法案の内容につきましてその改正の先ず要点を大体御説明申上げたいと思います。先ず第一は関税法規の体系を整備いたしたいことであります。御承知のように関税法規といたしましては関税定率法がございます。それから関税法がございます。そのほかには保税倉庫法と保税工場法というのがございまして、この四つがいわば関税法規の根幹をなしておつたのでございますが、今回、保税倉庫法と保税工場法はこれを廃止いたしまして、その内容はできるだけ整備いたしまして関税法に統合いたしております。今回の法案の第四章第四節、第五節でありますが、そういたしまして、関税法規の体系を関税定率法と関税法のこの二本建に編成替いたしたのであります。関税定率法と関税法との関係はどういう関係にあるかと、こう申しますと、規定の内容を御覧頂けばわかると思うのでありますが、従来から関税定率法は極く大体を申しますと関税額に関するものでありまして、即ちどういう品物に対してはどういう課税標準によつてどんな税率によつて税金が掛けられて、そうしてどういう場合に課税の軽減免除を受けるかというような規定を載せております。これに対しまして関税法は、関税の賦課徴収の実体的法規も一部はございますが、その他は貨物の輸出及び輸入についての税関手続の適正な処理を図るための必要な規定があるのであります。いわば通関法としての面も持つておるのであります。このようにいたしまして二つの体系に組立てたわけでありますが、大体各国の法制を申しますと、関税定率法と関税法とを一本にして規定しておるのはアメリカでございますが、その他の国におきましては、大体におきまして、関税定率法と関税法というものは二本建になつておる国が多いようであります。イギリスにして然り、ドイツ或いはスイス、イタリー等、多くの国におきましてはこの二本建になつております。私どもも初め関税法を改正いたします場合に一本にしたらどうかということも考えていろいろ作業をいたしたのでありますが、結論といたしましては、我々税関官吏としては一つの法規になつていたほうが或いはわかりいいとも言えるのかも知れませんが、民間のかたが御覧になりますと、一体こういう貨物に対してどれだけの税金がかかるかということが別な法規になつておつたほうが実はわかりいいという点がございますので、各国の法制に倣いまして、やはり今まで通り関税定率法というのを別個に置き、又関税法を別に置く、こういう二つの体系に組立てたわけであります。このようにして関税法の体系を整備いたします際におきまして、従来保税倉庫法に規定されておりました官設保税倉庫というような規定は現在の実情におきまして全然実益のない規定でございますので、こういう不要と思われるところの制度を廃止いたします。それから又、従来の関税法におきましては、非常に古い法律でありますがために、本来ならば法律に規定すべき事項を、昔にすれば勅令、現在では政令というふうに譲つておるのが相当多いのであります。できるだけこれを法律の上に載せることにいたしました。例えば保税上屋、保税倉庫などの許可の期間であります。こういうものは従来政令で規定をしておりますが、元来は法律で規定すべき事項でございます。或いは又保税倉庫に関するところの記帳義務、或いは又納税告知をする場合の手続、こういうのも実は政令で規定をしておりましたが、今回法律にのぼせております。或いは又、関税につきまして担保を徴収する場合が種種ございます。この関税の担保の種類につきましても従来は政令で規定をしておりました。このように政令で従来規定しておりました事項で法律で規定するのを当然とするものにつきましては、これを関税法の上にのぼせまして法体系を整備いたしたのであります。 第二には、関税法の規定の内容につきまして近代化を加えております。まず第一章総則でございますが、従来はこの総則のような規定はございませんでありました。第一条におきまして、関税法の趣旨といたしまして「関税の賦課及び徴収並びに貨物の輸出及び輸入についての税関手続の適正な処理を図るため必要な事項を定めるものとする。」という法の趣旨をはつきりと明定いたしました。 又第二条におきまして「輸入」「輸出」「外国貨物」「内国貨物」等、重要用語の定義を具体的に規定いたしまして、法律の解釈の基礎を明らかにいたしております。それから又、従来の関税法におきましては、税関長とか税関職員の権限は非常に包括的に規定されておりました。例えば「保税地域内ニ於ケル貨物ノ取扱ハ総テ税関長ノ指揮ニ従フヘシ」というような規定が現行法にございます。現行法の二十七条でありますが、或いは又、保税倉庫、保税工場の庫主の特許を受けた者は税関長の指揮監督を受くべしといつたような、ちよつと例を挙げてみましても非常に包括的であり、時にはぐらつくような規定があります。実際におきましてはこの規定について税関長が非民主的なことにいたすことはないのでありますが、規定といたしましては非常に包括的な規定でありまして、最近の法令の様式に合つておりません。そこで今度は、従来このように包括的に規定せられました税関長、税関職員の権限を具体的に規定いたしまして、その範囲及び基準を明らかにいたしております。それから又、税関長或いは税関が許可承認等をいたします場合におきまして、その基準を明確にいたしております。例えば改正法の二十三条とか四十三条或いは九十九条等に規定がございますが、できるだけ包括的な強権的な傾向にある規定は厳密にその範囲を制限するように規定いたしております。 第三に、行政慣例を相当成文化してあるということでございます。現在の関税法は、あとから考えてみますと、私ども実行する上においてまあ比較的やりやすいと申しますか非常に包括的で、その間にいろんな穴が実はありまして、解釈上においても取扱いが二通りになるようなことも従来あつたのであります。その間の規定の不備を補いますために、この五十年間におきまして税関におきまして行政慣例によりましてその規定のギヤツプを埋めておつたのでございますが、このような行政慣例につきましては法律としてのぼすのが適当でございます。そういうのは相当ございますので、行政慣例につきまして法律にのぼすのを適当と認めるものにつきましてはこれを法文化いたしております。例えば輸入貨物についての課税物件の確定の時期であります。関税法案の第四条に規定がございますが、輸入貨物について、いつ課税物件が確定するかというようなことは、従来規定がございませんで、全く解釈に委ねられており、その間おのずから行政慣例として確立された法則があつたのでございます。こういうような問題。或いは又、従来外国貿易船から内国貿易船に資格が変る、或いは又沿海通航船から外国貿易船に資格が変る、こういうような場合におきまして、税関に申請いたしましてその手続をとつておつたのですが、こういうようなことも全然今まで法規には規定がございません。これを今回、例えば二十五条でございますが、船舶又は航空機の資格の変更、こういう場合には税関に届け出て下さいということを成文化いたしております。それから又現行の関税法におきましては免許前引取という制度がございます。例えば輸入貨物が入つて参りまして、その価格の鑑定等に暇をとるような場合におきましては、担保を積みまして引取ることを認められる場合でありますが、こういう免許前引取に属する貨物につきましては、一体その性格がどういうものであるかというようなことが法文の上には出ておりません。これにつきまして、今回七十三条におきまして、こういう輸入許可前の引取貨物の性格を明かにしております。 それから、これは特殊な制度でございますが、関税法に貨物の収容という制度がございます。保税地域に置かれておつた貨物が蔵置期間を経過いたしましてなお引取られないというような場合、或いは又税関長が保税地域から搬出せよという命令をした場合にその期間内に搬出しなかつたというような場合におきましては、貨物を税関で収容いたしまして、そして一定の期間の経過によりましてこれを公売するという制度でございます。ところがこの貨物の収容というのは一体どういう方法によつて行うのかというようなことについては何ら規定がなかつたのであります。今回例えば八十条にございますように、明かに収容の方法を規定いたしておりまして、「収容は、税関が貨物を占有して行うものとする。」という規定を初めといたしましてそれぞれ収容の方法を明かにしております。これなども行政慣例の成文化の一つの現われであります。 それから又、船長、或いは機長、航空機の機長でありますが、それがなすべき行為が関税法いろいろ規定されておるのでありますが、この船長又は機長がなすべき行為につきましては、実際上、代理店等によるその代行が認められておるのでありますが、こういつたようなものも法律に明かに成文化するというやり方をとつております。 次に、この関税法の改正に当りまして、支障のない限りできるだけ税関手続を簡素化いたしまして、特に保税地域に関する税関手続につきましては改善を加えて、保税制度の利用の促進を図つたことであります。例えば法案の第十条の第一項でありますが、「関税の担保として金銭を提供した納税義務者は、政令で定めるところにより、担保として提供した金銭を以て関税の納付に充てることができる。」ちよつと御覧頂きますと何でもないような規定でありますが、実は従来は、関税の担保を提出いたしまして、いざ関税を納めるという場合におきましてその担保として提供した金銭を以て直ちに関税の納付に充てるという規定はなかつたのであります。従いまして、金銭を担保として積みましても、又別に金銭を出しまして関税を納め、そこであとで先に提供いたしました担保を解除してもらうというようなことになつておる。そういたしますと、税金の関係からはその際ダブルわけでありまして、納税者としては困る点がございますので、今回は、このような場合には、請求によりまして直ちに先に提供した担保でもつて関税の納付に充てることができるようにするというようにいたしております。或いは又、外国貿易船又は外国貿易機が開港或いは税関空港に入港いたします際におきまして、現在は船舶国籍証書、これは船舶についてであります。船舶については船舶国籍証書、並びに船舶と航空機につきましては、最近の出港地の出港免状を税関に預け入れるという制度をとつておりました。ところが船舶国籍証書等を税関に預け入れますことは、これは重大な書類を税関に預けますので、船会社としては困ることもありますので、今回は預け入れを必要とせず、単に提示を以て足るというふうに改めております。第十五条でございます。 又、従来輸入申告の際におきましては船荷証券を提出することを必要といたしておりましたのを、今回輸入申告に際しまして船荷証券を提出しなければならんという規定は削除してあります。次に保税地域におきましては、従来の考え方といたしましては、保税地域においてはこの関税法上の特有の用語でありますが、外国貨物であると内国貨物であるとを問わず、すべての貨物につきましてがつちり税関で抑えるという考え方で規定されておりますのを、今回は保税地域につきましては、純然と内国貨物即ち輸出入に関係のない他の貨物につきましては、原則としてその出し入れを自由にいたしまして税関としてタツチいたさない。ただ外国貨物と或いは又輸出しようとする貨物、輸入しようとする貨物、即ち輸出入に関係のある貨物だけについて税関がそれを規制して行く、がつちり抑えて行くという方法をとつたのであります。三十一条とか三十三条或いは四十条、五十二条、五十四条、六十一条等にその現われがございます。次に、従来から保税地域につきましての貨物保管規則と保管料につきましては、税関長が認可権を持つておつたのであります。昔から保税倉庫法につきましては、貨物の保管規則及び保管料は税関長の認可を受くべしという規定がございました。それから又昭和二十七年の改正の際におきましては、指定保税地域特許歩合につきまして、保管規則、保管料について税関長の認可を受けるような規定を置いております。ところが、これらの法律の保管規則、保管料につきましては、別途又運輸省におきまして大体その届出はございますが、税関長の認可に等しいような程度の規定があるのであります。一定の規準に従つた保管料を届出なければそれは受付けないという規定がございまして、実際上保税地域の保管規則、保管料につきましてはいわば二重行政となつておつたのでありますが、今回私どもといたしましては、税関長としては、このようなことにタツチいたしまして、その結果、業者をして二重行政の弊に悩ませることは適当でないと考えまして、私どものほうの規定はこれを削除いたすことにいたしております。又従来保税倉庫につきましては、その許可を受けた者は一定の担保を提供する義務がございましたのを、今回その担保提供の義務を廃止いたしまして、業者の拘束及び負担を緩和いたしております。次に保税工場制度につきましては、第六十一条におきまして、新らしく保税工場外における保税作業というのを制度として認めたのでございます。御承知の通り保税工場は、外国から原料を輸入いたしまして、そうしてその保税工場内で加工又は製造いたしまして、積み戻す場合におきましては、輸入手続を経ないままそういうことができるのでありますが、ただ保税工場から国内に引取ることになりますと、そのときに輸入したことと見まして、課税すべきものは税金を取るという仕組みになつておりますが、保税工場からこれを下請工場に出しまして、そうして最後の製品が輸出されるというような場合におきましては、従来の規定では遺憾ながらそういうことは認められておらなかつたのでありますが、今回は第六十一条におきまして、こういうような場合におきましては保税工場主の責任において下請工場に出すことを認めまして、加工貿易に便利なようにいたしております。それから第五十九条でございますが、保税工場は御承知の通りに、その中で外国から輸入いたしました原料に加工製造を加えて、製品を積み戻すという制度でありますので、それから国内に引取ります場合には、そのときの加工性質、数量によつて課税されることになります。いわば製品課税ということになりまして、例えば外国からの原料でありますところのものと、それから国内品でありますところの原料とをまぜ合せて或る製品を作つたといたしますと、その全部がいわゆる外国貨物ということにみなされまして、若しそれが全部輸出されないということになりますと、製品の状態において課税されることになるのでありますが、このような場合におきましては、今回税関長の承認を受けて一定の場合におきましては、外国貨物である原料の数量に対応する製品だけを外国貨物とみなすことといたしまして、できるだけ保税工場の利用に便ならしむることといたしております。それから又、保税上屋又は保税倉庫、保税工場の許可の手数料でありますが、従来特許官吏のの特許手数料といつておりますが、この基準におきましては、特許官吏一人につき一万一千円というような標準で手数料を取つておりますが、一人当り幾らという標準は非常にどうも誤解を招きやすいのでありまして、ときどき例を引くのでありますが、自分のところでは月一万一千円の特許官吏の手数料を出しておるけれども、来ておる税関官吏はどうも八、九千円程度の者しか来ていない、もつと給料の高い者にしてもらいたいという誤解を招くのであります。これは税関の威信にも関することでありますから、一人当り幾らという特許官吏の手数料でなくて、保税倉庫、保税工場につきましては、その種別、延坪数、許可の期間、或いは又税関でいたしますところの事務の種類によりまして、合理的な手数料の基準を設けることといたしておりますると共に、これらの保税地域に関しましての許可手数料を一定の場合には減免できることといたしまして、加工貿易等の振興に資するようにいたしておるのであります。 次は、私権の保護、尊重の見地から、現行法の十分でない点を是正した点が一、二ございます。先ず従来税関の行政処分による私権の不当な侵害を防ぐためには審査請求という制度がございましたが、その審査請求は、関税の賦課に関する処分だけについて審査請求という制度が認められておりましたのを、今回賦課に関する処分のほかに、徴収に関する処分と滞納処分にまでも拡張いたしております。第九十条でございます。それと共に、審査の請求の対象に従来なつておらない税関の行政処分につきましては、新らしく異議申立の制度を設けることにいたしました。八十九条でございます。次に倉庫業者等の私権の保護を図りますために、税関が貨物の収容又は留置というような処分を行いました際、その貨物について質権又は留置権を持つておりましたものは、その貨物が公売又は売却された場合の代金の残金につきまして、保管料等に関する優先弁済権を有することといたしました。と申しますと、従来税関で以て貨物の蔵置期間が経過したというので収容いたしました場合、倉庫業者といたしましては収容されるまでの間に相当保管料が積つて参るわけでありますが、その保管料については何らの救済規定がなかつたのであります。税関としては、その貨物を収容し公売に処分してしまえばそれきりでありまして、保税倉庫の保管料等については保護規定がなかつたのでありますが、今回新らしく、こういうふうに収容いたしまして公売又は売却いたしました場合には、その代金の残金につきまして、保管料等に関する優先弁済権を得るということにいたしておるのであります。八十五条であります。 次に罰則等の規定の関係でありますが、罰則につきましては、今回輸入禁制品、密輸入の罪と、無免許輸出入の罪に関する罰金につきまして、従来情状加重の規定がございましたのをこれを廃止いたしております。百九条、百十一条であります。それとともに、虚偽の申告をいたしました場合につきまして罰則がなかつたのでありますが、新たにそれを追加いたしております。百十四条であります。 次に関税法におきましては、内国税と同様に第三者通報制度が終戦後設けられたのであります。即ち犯則嫌疑事実を通報した者に対して報奨金をやるという制度、第三者通報制であります。これは今回内国税におきましても廃止いたしますので、歩調を揃えて、関税法におきましても廃止することにいたしました。 次に開港に関するものであります。開港と申しますと開く港でありますが、御存じのように、この開港でなければ外国貿易船が自由に出入できないのでありまして、不開港に外国貿易船が入る場合は一々税関長の特許を要するのであります。この開港は関税法の別表に現在五十八港並んでおりますが、終戦後、昭和二十三年、二十四年に開港を十数港追加いたしたきり、その後、開港の追加はなかつたのでありますが、その後における貿易実績に鑑みまして、今回新らしく岩手県の宮古港、千葉県の千葉港、兵庫県の尼崎港、愛媛県の松山港、大分県の佐伯港、宮崎県の油津港、それに奄美大島の名瀬港を新たに開港といたしまして、この別表に追加いたしました。それと共に、従来から関税法上の開港たる資格を欠いております新潟県の両津港を別表から整理いたしてございます。
○野溝勝君 ちよつと待つて下さい。今の奄美大島のは別表にありませんな。
○政府委員(北島武雄君) 別表に今度追加いたしております。一番うしろにございます鹿児島の名瀬でございます。 開港の規定につきましては、関税法上どんな場合に指定するかというような規定はないのでございますが、消極的な条件といたしまして、次のような条件になつたものは開港が閉鎖されるということか規定いたしてあります。今回規定いたします場合におきましては、この開港閉鎖の条件には到底該当するはずがないというような見込みの所を規定いたしております。 以上が大体関税法案の内容の説明でございますが、関税法案の附則におきましては、原則といたしまして、従来の関税法において行いましたところの税関の処分或いは輸入者側の申告とか届出、そういつたものはすべて旧法によつてそのまま効力を持つという大体の規定の致し方でございます。 百四十条に亘る条文でございまして、これを簡単に申上げるのもなかなか大変でございますが、大体只今程度の御説明によりまして、あとは御質問によりまして逐条にでも御説明いたしたいと存じます。
○委員長(大矢半次郎君) 御質疑を願います。
○小林政夫君 細かい逐条的なことは後にして、大局的なことで伺いたい。 通関手続簡素化のいろいろの条約、それから今度はガツトで、今は有効ではない、効力は発生しておらないが、通関手続等についてはいろいろ協定をいたしております。ああいうものと照らし合せて、今度の関税法の全面改正が、将来ああいう国際協定と、まあ現在結んでいる国際協定は、勿論抵触しないが、将来あのガツトの通関手続関係の協定が、まあその通り有効になるかどうか。これはアメリカ等の態度によつて変るかと思いますが、なつたとしても、この関税法で十分やつて行けるか、抵触する点はないかどうか。
○政府委員(北島武雄君) 今回の改正におきましては、只今お話のございました関税手続の簡素化に関する条約、或いはガツトの規定等を十分に検討いたしまして、当分の間大体の場合において法律改正の必要のないようにいたしております。
○土田國太郎君 この関税法案百十七頁の十七の説明をちよつと願いたいのですが、「酒税等ノ徴収ニ関スル法律」。
○政府委員(北島武雄君) 単純な条文整理でございまして、「酒税等ノ徴収ニ関スル法律」の第二条中「関税法第三十九条」とありますのを、単純に新法の六十三条と読むというだけの規定であります。この法律は、保税運送の場合においては酒税等も又徴収しないという規定であります。
○土田國太郎君 この担保物は現金に限りますか。或いは銀行の保証等でもよろしいのですか。
○政府委員(北島武雄君) 担保につきましては新法の九条に種類が規定いたしてございまして、金銭と国債及び地方債、税関長が確実と認める社債、税関長が確実と認める保証人の保証、これだけを認めております。
○土田國太郎君 然らば銀行でもよろしいということですね。
○政府委員(北島武雄君) さようでございます。銀行の保証で結構でございます。
○野溝勝君 北島部長さんにお伺いいたしますが、この関税法の提案理由をこまごまと説明を願つたのでありますが、政府の方針によりますとこれからますます貿易を振興させるということを高らかに謳われておりますが、毎年毎年貿易を振興すると言いますから、さぞや成績がいいのじやないかと思いますると、いつでも赤字々々の結果が出ておつて、何のための貿易振興か、さつぱりわからないのであります。これはあなたに言つても無理でありますから、あなたから、そういう質問があつたことを大臣にお話を願いたいと思います。 私は関税法が、貿易の高調変化されているのに、五十五年前に制定された関税法がそのまま必要だとは思つておりませんから、改正結構なんです。結構なんですが、ただ問題は、今回の改正法案の骨子となつたのは、保税倉庫法の保税工場法が廃止になり、そうなると、実際問題としてその処理に難点が起るのではないか。例えば米でも或いは飼料でもいいのでございますが、外国から原料が来る、そうすると国内において配合する場合に、一旦、陸揚げする前に、これを保税工場に入れて、原料のまま或は配合飼料として製品にして今までは出しておるのですね。ところが今度保税工場がなくなれば、そう今までその法に基いてやつて来た仕事は一体どうなるわけですか。
○政府委員(北島武雄君) 保税工場法は廃止いたしましたが、保税工場に関する規定は、この関税法の第四章保税地域の第五節のところに盛つてございますので、従来通りできるわけでございます。
○野溝勝君 そこでもう一つお聞きするのですが、そうすると、従来通りできるといたしましても、従来非常に業界といいましようか、その原料なり製品なりを入取する上においてなかなか保税工場あたりで時間がかかりまして、それが需要者の手許になかなか渡らん場合があつたのですがね。そういうような場合に、検査といいましようか、その促進方をいろいろと陳情しておつたのですが、なかなかそれが解決を見ないという場合があつた。いま一つは、国内の要求によつて、配合製品でなくても、原料のままでもよいから、早急急ぐからそれを配給してくれという場合があつた。ところがそれはなかなかできなかつた。そういうようなことに対しては、この規定、この法文の中では何とか考えられておるのですか。元と同じようなことになつておるのですか。私は全文を全部見通しませんからよくわかりませんが、そういう点に対しまする従来の製品、輸入品を入取するまでに余ほど簡易化されたというようなことがありますかどうか。その点を一つお伺いします。
○政府委員(北島武雄君) 保税地域につきましては、只今も御説明いたしましたように全般的に相当な簡易化を図つております。先ほども御説明いたしましたように、今までの考えでは、保税地域におきましては輸出入に関係のない貨物まですべて税関の規制に服するというような考え方でありましたのを、今回それを改めまして、輸出入に関係ある貨物だけに改める。それから又、そういうものにつきましても、従来例えば許可を要しておつたのを届出だけに済ませるというふうに、徐々に簡素化を図つておりますので、従来に比べまして手続が煩瑣になるということは、これは絶対にないと申上げてよいかと思います。ただ要は実行の問題でございますので、このような法律を作りましても、それが第一線においてその通りに実行されなければそれまででございます。私どもといたしましては、更にこの関税法改正の際にその趣旨を十分に税関官吏に吹込みまして、いやしくも税関手続からして不当に輸出をチエツクするというようなことのないようにいたしたいと思つております。
○野溝勝君 これは部長さん、輸出だけでなくて、私の今言つたのは主に輸入を指しておるのですが、私は餌の輸入仕事をやつたことがあるのです。原料飼料、ポミー、高梁、そういうものを輸入したときに、保税工場で非常に時間がかかりましてその措置に容易でなかつたという事実があつたものですから、一応その事務的な処理等に対する簡易化の問題についてお聞きしたのですが、今後はこうした不備を簡易化して来たと、こういうことに解釈してよろしうございますか。
○政府委員(北島武雄君) お説の通り全般的に保税地域につきましては簡素化する方向に行つております。
○野溝勝君 それでは全文をよく見ておりませんから北島部長の御説明を一応了承するといたしまして、次に私が聞いておきたいのは、この関税法改正に基く百十七、八頁ですが、この中で見るというと、十七の所に酒税等ノ徴収ニ関スル法律、それから十八、物品税法の一部を次のように改正するということで、とにかく、これはそれを照合して見ればよくわかるのでございますが、ここでそれらの条文の内容に対する骨格だけでもお話願えれば幸いと思いますから、一つお話して下さい。一々これを条文を照合するのは面倒でございますから。
○政府委員(北島武雄君) 酒税等ノ徴収ニ関スル法律の第二条は「関税法第三十九条ノ規定ニ依ル運送ハ酒税法、砂糖消費税法、揮発油税法、骨牌税法又ハ物品税法ノ引取ト看做サス但シ其ノ運送ニ付必要アリト認ムルトキハ税金に相当スル担保ヲ提供セシムルコトヲ得」というのでありまして、関税法第三十九条というのは新法の第六十三条に相当する保税運送の規定であります。保税運送の場合においては、まだこれらの内国消費税法においてはその引取と見なさないという規定でございます。関税法第六十三条と申しますのは保税運送の規定でございまして、「外国貨物は、開港、税関空港、保税地域、税関官署及び第三十条第二号の規定により税関長が指定した場所相互間に限り、外国貨物のまま運送することができる」という規定でございます。旧法の三十九条に相当する規定でございます。それから物品税法第十条第四項と申しますのは「関税法第三十四条但書ノ規定ニ依リ保税地域ヨリ引取ル物品ニ付テハ第一項但書ノ規定ニ拘ラズ輸入免許ヲ受ケタル際物品税ヲ納付スベシ此ノ場合ニ於テハ引取ノ際其ノ税金ノ担保ヲ提供スルコトヲ要ス。」即ち保税地域から物品税のかかる品物を引取る場合におきましては、輸入免許を受けた際に物品税を納付すべしというのであります。関税法第三十四条但書と申しますのは新法の第七十三条第一項に相当する規定なのであります。
○野溝勝君 担保を従来とつておつたのを担保を廃止する、これは非常によいことのように思いますが、そういう場合における危険負担というようなことは何ら考えないでもよろしいか。今まで担保をとつておつたのを今後担保を廃したというこの論拠及びその考え方について。
○政府委員(北島武雄君) ちよつと先生のおつしやることが聴きとりにくかつたのでありますが、今度の法律におきましては担保の提供を廃止いたしておりません。
○野溝勝君 今の酒税のところでも物品税のところでも担保の点は廃したと言われておるじやありませんか。
○政府委員(北島武雄君) 廃したとは申しませんが、酒税等ノ徴収ニ関スル法律で、「但シ其ノ運送ニ付必要アリト認ムルトキハ税金ニ相当スル担保ヲ提供セシムルコトヲ得」ということで、これはそのまま存置しております。担保の提供をなくしておるわけではございません。
○小林政夫君 羽田空港は非常に狭い。そうして欧米は別として、東南アジアの空港に比べても甚だ貧弱な空港であつて、不潔である、こういうことについては近く何か処置する考えはあるのですか。
○政府委員(北島武雄君) お説の通り現在羽田は非常に狭隘でございまして、旅客及び貨物の捌きに苦慮いたしておる状況でございますが、こういうような状況は何とか改善しなければならんという考えで、実は昨年中から航空ビルデイング会社ができまして、それが約一年くらいかかりまして航空ビルデイングを建設することになつております。その際に税関といたしましては、予算に計上いたしまして、税関の所要部分を買収することにいたしております。恐らく今年一ぱいには航空ビルデイングができまして、今までの約十倍程度の広さの税関スペースができるのじやなかろうかと、こう考えております。
○土田國太郎君 これをお伺いするのは、この法案じやないですが、密輸入が多いですね。随分我々のところに来ますが、何とか取締る方法はないですかね。相当に大きなものも入つておりますね。例えば大きなものは電気洗濯機とか時計類、宝石類は勿論、大変なものですね。最近はこれはどういうところから大体入つて来るのですか、あなた方の観点では……。
○政府委員(北島武雄君) 密輸の取締につきましては、税関といたしましては苦心いたしているわけでございますが、だんだんやり方が巧妙になつて参りまして、終戦直後におきましてはもつぱら密輸船の用に供するために機帆船を仕立てまして、そうして堂々と南西諸島方面或いは朝鮮方面まで行つておつた。そういう原始的な方法も、次第に秩序が回復すると共に少くなつて来まして、その反面、智能的なものが多くなつて来ました。例えば最近あたりでは銀行の領収書を偽造いたしまして、すでに税金を納めておるというふうに税関に見せまして、それで貨物を引取るとか、或いは又故意に極めて低い価格で以て課税の申告をする、或いは又税関官吏を甚だ残念でありますが買収いたしまして、そうして密輸を図るというような事例が相当ございます。ただ内国税に比べまして、関税におきましては、現場におきまして処理される事項が相当多いので、何分官吏が余ほどしつかりいたさないと眼を眩まされる虞れがございますので、私ども十分注意いたしておりますが、ただ密輸の検挙件数といたしましては最近は非常に成績が上つております。只今手許に資料を持つておりませんが、昨年中の密輸検挙件数、それから金額は、恐らく戦後最高のものと思いますが、これは何も密輸が多くなつたのじやなくして、私ども密輸の検挙の成績がよくなつた、こう考えております。ただ何割程度が密輸されて、そのまま見逃がされておるかという点については、私ども実は推定がついておりませんが、極力他の官庁とも連絡をとりまして、税関官吏を督励して密輸を取締りたいと考えております。
○土田國太郎君 これは密輸品は関税を払つたものであるかどうかということは、証明はさつぱり現物についてはわからないわけなんだが、それを知らずに購入した我々素人ですね。そのかたには犯罪はないんですか。知らずに買つた場合に。
○政府委員(北島武雄君) 知らずに買つた場合には、事後従犯と申しておりますが、故買の規定がございます。やはり犯意がなければいかんわけです。この関税法案の第百十二条で「情を知つてこれを運搬し、保管し、有償若しくは無償で取得し、」と謳つておりますので、情を知らなければいいわけです。
○土田國太郎君 知らなければよろしいのですね。御承知のように、外貨関係で自動車なんかの輸入ですね。政府では成るべく阻止するという方針であるんだが、この何と言うんですか、外国の、アメリカあたりから来る官吏であるか軍人であるか知りませんが、必ず自分の所有として自動車一台なら一台を持つて来て、それを内地で以て民間に売却するという手が非常に多くて、外国自動車が氾濫するというようなことを聞いておるんですが、その事実はたくさんあるんですか。
○政府委員(北島武雄君) これは関税定率法の問題になるわけです。関税定率法におきまして、現在の取扱いといたしましては、旅行者が一時的に入国するときに、日本に入つて来るそのときに、自動車を持つて来る場合におきましては原則として関税を徴収いたしておりますが、但し一年以内に再び持つて出るのだということになりますときには担保を積ませて保税のまま使わせております。それから外人が日本に住居を変更した場合、引越しの場合におきましては、関税定率法におきまして、現行法はそのまま免税いたしておりますが、ただ今度の改正法におきましては、自動車等におきましては、たとえ引越荷物でありましても、それを輸入いたしましてから二年以内に他の用途に供する場合、例えば人に売るというような場合、関税を追求するということにいたしております。折角外貨予算を締めましてもそういうような方法でどんどん免税のまま入つて来ましては、非常に弊害がございますので、今度の関税定率法を改正する際にそういう措置をいたしたいと思つております。
○土田國太郎君 ただ関税はそういう方法ならば完全にとれるのですか。日本の金を国外にとられる結果になりますね。国策から大きく見て日本内地の金を外人に取られてしまうわけですね。それは何か又為替を組んで出してしまうわけですね。そんなことで、政府が如何に輸入を防止しても、そういう裏の口から今どんどん大きな自動車が入つて来ておるらしいのだが、それを防ぐ方法はないのですか。これは関税の問題じやないですよ。
○政府委員(北島武雄君) 為替管理の面と関連しておると思うのですが、為替管理の面におきましても、最近次第に締めて参りまして、関税と同じように、例えば、一時入国者の場合におきましては、それが一年以内に出るという見込がなければライセンスを与えないという方法にいたしておりまして、関税と相待つて次第に締めて行くという方向にあるのであります。
○堀木鎌三君 私は余り研究してないし、今日初めて出たのだからよくわからないのだが、この関税法及び関税定率法の一部改正する法律案に関連してお聞きしたいことは、これは若し私のいないときに質問があつたら遠慮しても いいが、ガツトの仮加入との関連において、相手国といろいろ違つた待遇を受けるということについての何らかの考慮がこの法律において払われておるか。もう少し端的に言えば、複数関税を設けることについてどの程度大蔵省としては考えられておるか。
○政府委員(北島武雄君) 複数関税につきましては昨年のガツト仮加入前後から相当国内的に話があるわけでありますが、その際に、私どもの解釈といたしましてこれは法制局とも打合せたのでありますが、現在の関税定率法の第四条に、報復関税という規定がございます。その規定で以てやろうと思えばできるということでありましたので、国内的には一応現行法の下においても複数関税はできるという解釈でございます。ただ今回関税定率法のほうも本則を全面的に改正いたしております。その際にその趣旨を明らかにするという意味におきまして、近日御審議願うと思いますが、新聞税定率法の確か第六条だつたと思いますが、六条あたりに複関税をできる規定を設けております。
○野溝勝君 この際、私は議事進行について発言を求めようと思いますが、一応この関税法の問題は、これは誠に、今聞くところによるというと、今日初めて提案をされているのですが、そこで結局これについては一応お互いまだ検討をしなければならん点もありますから、今日はこの程度にして置きまして、あと次回において一ついま一応この質疑をやることにしてもらつて、今日はこの程度でこの関税法はあと廻しにしてもらいたい。
○委員長(大矢半次郎君) 野溝君の御意見に御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(大矢半次郎君) 御異議ないものと認めます。 —————————————
○委員長(大矢半次郎君) 次に所得税法の一部を改正する法律案並びにその他税制改正案を議題にいたしまして御質疑を願います。
○野溝勝君 新聞を見ますと、今明日中にも衆議院で予算が上りそうだと言われています。衆議院で予算が上つてしまつてからこの大蔵委員会で質疑をするのは効果が薄らぐと思うのです。それで特に国民生活に関係を持つておる所得税の一部改正を、衆議院の予算の上る前にどうしても当局に質疑並びに意見を申出でて置く必要があると思いまして、ここに質問をいたしたいと存ずる次第でございます。 先ず渡されましたこの所得税法一部改正法律案ですけれども、この法律の一部と言いましても多く生活に関係がありますので、この際、そのうちでも、私は農業課税の点、それから物品税の点、それから繊維税等関連する所得税に関係を持つておるそれらの問題に言及いたしまして質問をすることを、あらかじめ御了承願いたいと存じます。 この所得税法一部改正法案の趣旨を見ますると、相当広範に亘りますが、特に農業部面におきまして、私は、政府の予想しておる内容と、私どもの考え並びに検討しておる内容と大きく違つておるということを先ず申上げて置きたいのであります。と申すのは、政府は二十九年度租税収入の中にも具体的に示されております通り、この昭和二十九年度を見て頂きたいと思います。二十九年度の租税及び印紙収入予算説明、大蔵省主税局から出された資料ですが、この十頁を開いて下さい。これと睨み合せて質問するのです。当局では、農民が、前年度は水害やその他或いは冷害等の凶作等があつて、比較的農村の収入が悪かつたという見解で、本年度即ち二十九年度はこれらを克服いたしまして、相当収入増が見込まれるということを先般も大蔵大臣は言われておるし、又この租税収入の点から、或いは所得等の点から見ても、そういうことが窺われるのである。併し実質上の検討をして見るとそんなものではないのでございまして、さような架空の上に立つての租税収入の予想乃至は所得関係等が若し考えられるとするならば、政府は大きな過ちを犯していると思います。特にこの表の中にありまする昭和二十七年度課税人員と総所得金額、それから課税対象額、税額のこの比較でございますが、農民におきましては、昭和二十七年度の課税人員は百十三万一千人、それから総所得金額は二千三百十九億です。それから課税対象額は六百二十二億九千二百万円、それから税額が百二十二億五千六百万円、そこで今度は営業のほうでございますが、これは一切の大事業家も何も皆含むでしよう。営業のほうですが、営業のほうは、課税人員が百三十三万四千人、それから総所得金額が三千六百九十八億八十余万円、それから課税対象額が二千七十八億四千四百万円、それから今度は税額に行きまして五百七十億余万円、こういうふうでございます。大体、農民の課税人員、営業の課税人員、それから総所得金額、それから課税対象等と比較いたしまして、この率を見ても、農民の負担率が相当過酷なのであります。更に昭和二十七年の生産関係から見まするというと、農業の面におきまして、例えば昭和二十七年を一〇〇といたしますと、これは営業も一〇〇といたします、そうすると、二十九年度におきまする生産の比率でございますが、農業におきましては、一〇一・八、それから物価の面におきましては一〇二・三、営業のほうは、生産も物価も一〇〇とみなして、昭和二十九年におきましては生産が一一五・五、物価のほうが一〇四・六、集計いたしまするというと、農民のほうは昭和二十九年におきましては一〇四・一、営業のほうは一二〇・八という大きな開きを示しております。農業の場合は差引昭和二十七年の物価指数と比較いたしますると四・一の改入増、営業のほうは今申した通り二〇・八%の収入増、この点から見ても、農民経済というものは他の営業と対比いたしまして非常に収入率というものが悪いということを如実に示しておるのでございます。更に本年の課税見込を検討いたしまするというと、人員、総所得額、税額といたしまして、農業の面におきましては、人員課税見込で八十九万一千人、それから営業のほうにおきましては百二十六万三千人、それから総所得金額においては、農業が二千八十九億三千三百万円、それから営業のほうが三千九百七十三億千三百万円、それから今度は税額におきまして農業のほうは百十八億七千五百万円、それから営業のほうにおきましては五百十九億九千四百万円、それで、この表から見ましても、農業の窮迫が露骨で、納税者が漸減の傾向である。これ即ち農民没落を露呈せる証明となるのであります。政府は農業課税を考慮したと言つているが、それは欺瞞であつて、実は納税者としての農民が漸減しておるということが尤もらしく見えるのでございますが、この実際は全部これが間接税のほうに転嫁されています。なお間接税に転嫁されておる比率というものは非常に大きいのでありまして、例えば今度新設されました砂糖税だけでも農業の収入減になつたと言われておる四十二億くらいが増税になつておるわけでございます。これが新設されておる。いわんや、ほかの間接税は殆んど皆上つています。表向きは如何にも免税点を引上げたとか或いはそれぞれ基礎控除、扶養控除その他等々による免税点の引上げ、乃至は如何にも収入が、収入減と言いましようか、減税をしたかのごとく見えておりますが、そのした分だけは砂糖の増税の面だけで大体パアパアになつておるという状態で、いわんや最近新設の繊維税の問題、特にこれは卸しの段階にかけるというが、八十五億円、これは大衆の消費税として負担しなければならない。その他、物品税等一切の消費物資に間接税がかかることに比率が多くなつて参つておるのでありまして、この状態から見ても、私は農民生活というものは決して本年度は楽になるというような予定は全然誤りだと思います。特にこれは主税局長などはすでに検討されておると思うのでございますが、大体農林省の発表並びに経済審議庁等の統計の発表から見ても、恐らく農村といたしましては、前年度は全国平均一戸当り千百七十六円の赤字、前年同期で千七百六十六円の赤字となつているという状態ですから、私はこの比率というものは農業はいつも同じことを繰返すのでありまして、例えば収入が多くなつて参りましても、今度の予算から見ると、米石当り七千五百が今度は八千五百円の予算を組んでおるらしいのでございますが、一体七千五百円から千二、三百円騰つたとて、或いはそれ以上に少し殖えても、そうなつて参りますると、農民購入物価のほうがぐんぐんと値上りをして来る。農村のほうは何と言いましても収入の誤魔化しや操作はできない、実際問題として……。ですから余裕も幅もないわけです。大体、上田から幾ら、中田から幾ら、下田から幾らということになつて、きまつておりますから、割当というものは大体できておりますしするから、そんなに田地でも殖やし、或いは肥料を多くしない限りは、多くの収穫、収入を得るというわけにも行きません。そういう状態でして、ほかの物はどんどん上る。こつちのものはちやんと型にはまつたような値上りなんです。そういう点から見て、私は、シエーレの価格差と言いましようか、だんだん価格の比率というものが鋏状価格差になつて参りますので、農村は最近におきましては美田の土地の売上げが目立つて多くなつて来ております。こういう事実に照らして見て、政府当局、特に主税局長が立案者でありますし、一番の中心でありますから、私は特に渡辺局長にお聞きするのでございますが、こういうような点から、租税収入と所得税の一部改正法律案とは、これは睨み合せて提案されたものと私は思つています。若し睨み合わして提案されないとするならば、大きな問題になると思うのでございますが、睨み合わしてやつたとするならば、その論拠におきまして、危険を犯しておると思います。特に私は租税収入の点について質問したいと思つていますが、明日にも予算が上るということになつたのではこれは大変でございますから、今日これに関連をいたしまして、私は主税局長に租税収入の考えの置きどころ乃至その見解、農民の現況というものをどう見ておるか。更にこの所得税法の一部改正について、この際検討して見ようというような意思があるかないか。そういう点を最初に一つ御質問をしたいと思います。甚だ説明が長くて、質問点が少しぼやけたようになりましたが、以上の点を一つお聞きしておいて、具体的に質問に入りたいと思います。
○政府委員(渡辺喜久造君) 我々のほうといたしましては、今、野溝委員の御指摘のありましたように、昭和二十七年度の課税実績をもとにいたしまして、本年度の先ず以て現行法における納税人員なり、歳入見積りを立てまして、それが先ほどの野溝委員のお話になりました農業について言えば、納税人員八十九万一千人、それから税額から言えば百十八億、これが現行法の場合の一応の税額でございます。それで更にいろいろ検討しました結論としまして、この際としましては、基礎控除額及び最初の三人までの扶養家族に対する扶養控除の引上げをしよう、それが改正法による考え方でございまして、この改正法によりますと、納税人員を現行法における場合の農業について申しますれば、現行法における八十九万一千人が七十四万八千人に減るのです。税額も、現行法の場合でございますと、百十八億であるのが八十一億に減る、こういう見積りを一応しておるわけでございます。今度の場合におきましては、一兆円予算との結び付きもございまして、片方で直接税を下げた場合にそれと睨み合せながら間接税の増徴をしておりますので、大きく見ますと、そこには純粋の意味の減税はないということになるわけでございますが、ただ全体の考え方といたしまして、間接税の増徴の場合におきまして、できるだけ奢侈品或いは高級品といつたようなものを中心に税率の引上げを行なつていることは御承知の通りでございます。例えば物品税のようなものにつきましても、高級自動車の税率を上げるとか或いはテレビジヨンに新しく課税するとか、こういうようなことを考えている。奢侈繊維品についても、いろいろ御議論はございますが、とにかく着尺物であるならば、小売が一万円以上、洋服地であれば、恐らく仕立てれば二万五、六千円以上になるのではないかと思われる品物について課税しよう。そういうような、比較的消費税の面におきましても、まあ高級品を使う、奢侈品を使うという人を中心として、その負担を増すと同時に、直接税におきましては、今度は逆に低額所得者を中心として減税を行なつて行く、こういうことを考えておりますので、国民全体としての負担は、一応殖える分と減る分とがありまして、違わないにいたしましても、農村の事情ということだけ考えてみますれば、恐らくはその減税のほうの利益を得ましても、増税のほうの不利益、これは砂糖消費税などが或る程度上りますから、全然そこにないとは申しませんが、併し中心がどちらかといえば奢侈的なものに行つておりますので、差引きしてみますれば、恐らくは減税による効果のほうがずつと大きくなつているのじやないか。かように考えております。
○野溝勝君 そこで主税局長にお伺いするのですが、この所得税法一部改正法律案の中にも、第二十五条において非常に納税のことについて心配されて、この法案が出されたと思うのであります。例えば五十三頁の第四節に、予定納税に関する通則、非常に何と言いますか納税の便宜を与えるような趣旨でかような一部改正法律案を出されたと思いますが、私は、こういう技術的なこともやらなければなりませんが、もつと根本的な、納税をしやすい、要するに課税が妥当であり公平であるというようなやり方でなければいかんと思う。今、主税局長は非常に正直に答弁されており、確かに一方において減税をしても、御指摘のごとく砂糖消費税などにおいては或る程度上つた、その通りだ。私は一方において減税をしても、本当に減税したことが実際に生活の中に現われて来たというのでなければ、真の減税じやないと思う。こういうようなことをたびたび繰返し繰返して、現在農民はどういう状態になつているかということを私は考えてもらいたい。特に心外に堪えないのは、先ほどもちよつと私は申上げましたけれども、間接税は多かれ少なかれ皆んな上つております。酒税が上り、砂糖消費税が上り、揮発油税が上り、物品税が上り、繊維消費税が上り、印紙税が上り、骨牌税が上り、こういう状態です。ですから、これはまあ、あなたのほうからくれた資料でございますから、それに間違いないと思いますが、こうやつてみると、これは決して渡辺局長のみがどうということではないのですが、これは一貫した方針なんですが、誠に私は心外に堪えないのであります。こういう点について、こういう義務的な予定申告乃至は予定納税額乃至は納期の問題について、こういう細心の所まで心配して納税成績をよくしようというのでありましたならば、その前にやるべきことは、私は大衆課税なり、何と言いますか、消費課税なりというものに対して、この際むしろ政府は考慮して、本当に働く者の負担の軽減、生産階級の地位の安定というところに考えを置いて、所得税乃至は租税収入の問題を考えなければならんじやないかというのが私の論拠の骨子でございます。特に私はこの表の中で、更に一言申上げておきたいことは、納税成績ですね、納税成績を何だかんだ言いますが、一番まじめなのは誰かというと、一〇〇%納税成績のいいものは労働者ですね。源泉課税で取られてしまうから間違いないですね。この表にちやんと書いてある。やつぱり表は余り嘘は言えないものだと思う。その他どの階級が一番納税成績がいいかと言うと、この表で見ると、先ず年度内の見込額という所がありますね。これを見ると、三月末までにまだ時間があるから、或いは三月末にならなければ決定的でないという御答弁があるかも知れませんが、大体もう先は見えておりますから、この表でいいでしよう。そうすると、営業のほうが七八%、それから農業が九二%、労働者 は一〇〇%、又納めるほうから見たら、これは労働者、農民と、ずつとまじめなんですね。ここにちやんと書いてある。ですから、こういうふうにまじめに納めるほうの人々には、少くとも私は税の負担乃至は課税というものはもう少しく考えなければならんし、又考えるのが正しいじやないか。こういうように思う次第であります。こういう点について主税局長は先ほど、まあいずれあとで具体的の法案が出たときに又お聞きするのでございますが、そういう点を訂正するために、奢侈品税、贅沢なものに税金をかけるというお話ですが、これはあなたではありませんけれども、前に、金庫或いは盆栽或いはその他の贅沢品に対する税金を、昭和二十六年でしたか、これは物品税から課税を廃した。今非常にこういう矛盾を解決するために、贅沢品、奢侈品に税をかけると言つておりますが、併しむしろその当時はそういうものは税の対象となつても少額だからかけることをやめた、面倒くさいからやめた、ざつくばらんに言えばというような意味でございました。ところが今回は又そういう奢侈品税をかける。誠に結構です。結構だが、併しそれが徹底をしておらない。私はこの際、税の捕捉につきましては、今渡辺局長の言われたごとく、全く贅沢或いは特殊の者が持てるだけのものに対しましては、貴金属品、或いはそういうような金庫或いは犬、猫、何でもそういうような、何と言いますか、直接生活必需品でないようなものに対しては……、化粧品などもあなたは下げてしまつた。化粧品と言つても、何と言いますか、大衆的な化粧品は、これはいたし方ないが、高級化粧品などがある。これは娘さんにえらく抗議されるかわかりませんが、私は中共のように何でもかでも白粉をやめろと言うのじやない。そんなやぼなことは言いませんが、併し高級品の化粧品を昨年ですかにやめちまつた。そういうようなことをやつておいて、今日この頃になつてかけると言つておるが、かけるなら徹底的にそういうものにかけて、そうして税の公平或いは納得のできるという課税の方針をとらなければならぬと思うのですが、この点に対する主税局長の見解はどうか。それが一つ。 それから所得税法の一部改正法律案を出したが、果して今の所得税法一部改正法律案の納税等についての条文がいろいろ出ておりますが、かような現象の下においてこの所得税法の一部改正をいたしましても、これによつて納税の問題などがうまく行くという決定的の自信があるかどうか。この点に対して一つ御答弁を願いたいと思うのであります。
○政府委員(渡辺喜久造君) 最初に納税成績の話がございましたが、その点は、そこの表にもございますようにお話の通りでございます。従いまして、この納税の成績の余り上つておらない面につきましては、更にそのよつて来る原因なども片方では探究しますと共に、できるだけこの納税の成績を上げるということに努力してやつておりまして、最近の実績は漸次これが改善されて来ているということを申上げていいと思います。併しなおまだ不十分なこともございますので、更に今後におきましても国税庁としては一層の努力をするように努めております。 第二の問題としましていろいろ物品税について、あれをやめたじやないか、これを云々といつたような御指摘がございましたが、多少お話が我々がやりましたことと違つているように思います。金庫のお話がございましたが、これは昨年一割の税率を五分の税率に下げましたが、現在相変らず物品税は課税されております。ただその場合に、それじや何で五分に下げたという御質問があるかも知れませんが、大体金庫の課税されておりますものをずつと見て参りますと、いわゆる事務的に扱われておるものが大部分であるというようなことも眼に映るものでありますから、従いまして、昨年いろいろ物品税についての税率を調整します際に、金庫については五分に下げたというわけでございます。それから盆栽、これはたしか二十六年頃でしたか、よく記憶しませんが、これは現在課税しておりません。盆栽に対する課税をどうしてやめたか、いろいろ御意見もあろうと思いますが、課税の対象としましてなかなか把握しにくい点もございますし、特にこの分について課税すべきかどうか、いろいろ議論してみたいのでございますが、まあ税額も少いといつたような点から、先ほどおつしやつたようになりまして、これは現在は課税しておりません。化粧品につきましては、現在香水だとか、口紅、白粉といつたようなものは三割の税率で、相当高い税率で課税されております。昨年もいろいろ議論がありましたが、このほうはそのまま税率が据置かれておりまして、ただクリーム、ポマードといつたような種類のものは、同じ化粧品でございましてもかなり必需品的な性格がそこにあるのじやないだろうか、こういう考え方からいたしまして、昨年これは一割の税率で課税しておつたのでございますが、これを五%に下げたというわけでございまして、全体といたしましてはやはり一応一貫した考え方で全体を調整して来ているというふうに私は思います。奢侈繊維品について今度課税しようという考え方は、同じいろいろ議論のある奢侈品の中で、繊維関係だけが従来課税になつてなかつたというので、物品税を課税されている業者の方々からもいろいろな声もございますし、我々もかねてから検討して見なきやならんという問題として扱つておりましたので、今度やはりこの機会にこれは取上げてみるのが然るべきじやないかというので御提案申上げた次第であります。 それから最後に所得税の法案につきまして相当いろいろな条文が多数改正せざるを得なくなつて、相当厖大な改正案になつておりますが、これの一番大きく条文が手を付けざるを得なかつたところのものは、現在は御承知のようにまあ予定申告制度をとつておりまして、その予定申告によつて一応先ず三分の一だけ税金を納めて頂く、こういうことになつておるのでございますが、その予定申告の制度が、シヤウプ勧告による税制の改正ののちにおきましては、前年の申告金額を下ることができないという条文が一つ入つたために、大体見て参りますと前年と同じ額の申告が大部分である。これが現在の状態であります。同時に、それを無理に更正決定するというのも年の途中であらかじめやるのも如何かというので、ちよつとやりかねている。そうしますと、結局、予定申告制度と申しましても、まああらかじめ税の額を三分の一だけを納めて頂くということが実質的になつておりますので、むしろこの制度を、こういう現実の事実を生かすということによりまして、同時にそれに附随しておりますいろいろな手数をできるだけ省く、こういう方向がいいじやないか。税制調査会のほうからもそんな御意見が出ておりますので、それで予定申告制度を原則的には廃止しまして、これを予定納税の制度に改めよう。こういうふうにいたしますと、まあ何分手続きが変りますために手続規定が大部分でありまして、実体規定としましてはそれほど大した改正もないのですが、条文の上ではかなり大きく改正をせざるを得なかつたわけでございます。ただこれによつてうまく運営できる自信があるかという御質問でございますが、この点につきましては、私は従来の制度が予定納税制度によりましてむしろより強く生かされて行くんじやないかというふうに考えられますので、新らしい法案が国会の御承認を得て成立いたしまして、それによつてうまく運営されることにつきましては、これは大体御心配なしに何とかやつて行けるのじやないかということを申上げ得るのじやないかと思います。
○委員長(大矢半次郎君) 速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(大矢半次郎君) 速記を付けて下さい。
○野溝勝君 それではあと二点で一つ打ち切りましよう。私は、その今の予定納税制度の御所見はまあ趣旨はわかるのですが、従来の申告制度にしてもなかなか思うように行かない多くの欠点を持つています。それですから、この予定納税制度というのはあなたの考えるようには私は行かんと思う。要は、どういう制度を設けようとも、先ほど言つたように、この所得に対する見方が非常に私は苛酷だと思うんですよ。殆んど何といいますか隙のないといいましようか、まあ骨までしやぶるという考え方なんだね。 だから、所得で言うなら、まあ例えば雛なら雛が、産卵が白色レグホンなら一年に二百八十個乃至二百九十個だと、そうすると、ちやんと二百九十個と見てしまうのだな。そうすると殆んど余裕がない。私はどこの国民も、国民所得に対して、そういうように徹底するならいいが、なかなか農民のほうは所得というものに対しましては、そうごまかしができないのですね。ごまかしというか、インチキができない。それはわかつておりますから、田圃だつてどのくらいということがわかつておる。桑畑から今度は桑がどれだけとれて、それでどれだけの繭がとれるということはわかつております。そういうような状態で、殆んど私は納税制度をどういうようなものを作ろうと、それを勘案するのは結構です。結構ですが、要は抜本的な租税の立て方というものを十分私は考えなければこういう解釈はできないのじやないか。 更に参考までに一つ申上げておきますが、この総理府の統計局の調査によりますと、戦前、昭和九年、十年、十一年の三年間の物価を一とする。そうすると二十八年に消費者物価は平均して二六〇・二、そうすると昭和九年、十年、十一年の三年間から異常に上つて来たわけです。併し二六〇・二倍という計算は必ずしもこれは正しいとは言えないと思う。中には三〇〇乃至三五〇、物によつては千倍も上つたものがあると思います。併し大体普通は三百倍と言われております。それに対して労働者の名目賃金は、これはお金で受ける賃金ですが、昭和十一年に対して二十七年の平均では二七七・二倍となつております。この二七七・二倍は前の消費者物価の二六〇・二倍よりは上つたわけにはなります。併し賃金としてこれは受取つた金でございます。現金、賃金として受取つた金でございまして、生活必需品を購入した場合の物の面から見た実質賃金を見ると、昭和九年、十年、十一年の一〇二・二倍にしかなつておりません。そうすると、物価は平均して三百倍と見て計算すると一〇二・三倍、それに比較するとずつと低くなります。ですから、これは賃金を受取つたお金の値打ちがずつと下つているためでございます。そのお金で買い得る量というのは少くなつたのであります。これはまあ一つの例でございますが、これは総理府の統計局から出している調査表です。こういう点から見て、実際、勤労所得者といい、農業の所得者といい、今では生活に全く窮迫を告げておりまして、私はこの際一つこれらの諸君が納得をするように、それには免税点の引上げというようなことでなくて、むしろ徹底的に物価を引下げるような、政府が思い切つた施策を講ずるか、さもなければ、私はこの際、実質賃金、いわゆる実質生活というものを、物価と十分睨み合せまして、その所得体系と租税体系を、この際、具体的に規定する必要があるのじやないか。特に私は、この間接税なんというものは、この際にむしろ誤解を起して、却つて欺瞞課税というようなことに言われておりますから、当局といたしましては、こういうものに対してもつと納得した税体系を立てるというようなことを、この所得と関連いたしまして考えておるかどうか、これを一つお聞きいたしまして、私の質問は後刻に、いずれかの法案でやりたいと思います。
○政府委員(渡辺喜久造君) 先ほどの統計局の統計のお話の中に、消費者物価の値上りと、それから賃金の値上りと、この数字を私は持つておりませんから、はつきりわかりませんが、結局総合しまして一〇二・二の数字が出ておりますのは、恐らくはこれは、実質賃金がこれだけ上つているという意味だろうというふうに、お話を伺つていると解せられるわけでございまして、物価はすでに織込み済みの数字じやないかというふうに思います。免税点を単に引上げ、或いは扶養控除を引上げましても、結局片方で物価が上り、生活費が上つて行くということがありますならば、これは何ら実質的な負担の軽減にならんじやないか、我々も確かにその通りだと思つております。従いまして今回の予算におきましては、片方でどんどん物価が上るような予算を編成しましたならば、一応例えば基礎控除を上げ、扶養控除を上げ、相当免税点も高くしましても、それはもう単なるノミナルなものに過ぎない。そこで出した結論は、とにかく相当の緊縮予算を組むことによりまして、先ず以てむしろ物価全体を引下げる方向に持つて行く。これによりまして、実質賃金を充実させると共に、更に税のほうだけについて申しますれば、それと並行しながら、基礎控除、扶養控除を上げる、こういうことによりまして、本当の意味の負担の軽減ができるのじやないか。ただ一兆円予算との結び付きもございまして、ネツトの減税ができない。そこで止むを得ない手段ではありますが、間接税の方面におきまして、中心的には大体奢侈的なもの、或いは高級品、そういつたものに対する課税を行うことによりまして、一面では奢侈的な消費の抑制を図る、こういうことによつて相当の収入を得ると共に、半面、主として低額所得者の負担の軽減になりますような基礎控除、扶養控除の引上げを行なつた。こういう次第でございます。現在の負担が、それにもかかわらず、なお相当重いということは、これは確かに考えられる問題でありまして、従いまして我我といたしましても、この実体的な負担の問題を解決しなければ、手続の問題だけで問題が片付くとは勿論考えておりませんが、同時に、手続自体につきましてもできるだけこれを簡単なものにするということは、実体的な負担の問題を考慮すると並行しながら、是非考えなければならん問題じやないか。こういう意味におきまして、予定申告の制度を、予定納税の制度に変えようということを御提案申上げておる次第でございます。なお、実体的な負担の軽減の問題につきましては、一面においては国民所得がどういうふうに今後伸びて行くか、或いは財政をどういうふうに経理して行くか、こういうふうな点をいろいろ絡み合せまして決定すべき問題でありますが、できるだけ今後とも負担の軽減を図ることについては考えて行くべきじやないかということは考えております。
○野溝勝君 一言、主税局長を通しまして、特に私は予算の立案責任者であります大蔵大臣に、本日この委員会終了後、本委員会において、所得税法の一部改正法律案に関連いたしまして、かような意見があつたということを特に伝えておいてもらいたい。というのは、明日にも予算総会を控えて、保守三派におきまして予算の修正が見解の一致を見たということが言われております。そうなりますと、折角かような重大なる問題が完全に審議されないうちに、又解決されないうちに、大蔵大臣が本委員会に来ることなくして、衆議院で決定される、可決されるということになりますと、私は大蔵委員会におけるところの租税問題、所得税問題を論議するということがもう意義をなさんのでありますから、特に私は、先ほど委員長からもお話があります通り、且つ又渡辺局長からもお話がありましたが、とにかくかような予算総会を前に控えまして、重大であります故に、私は以上の関連質問をいたしたのでありまして、どうかこの点におきましては、一つ十分私は大臣の反省を促して、所得の見方、課税のあり方等につきまして、本日のこの見解を十分私は申し伝えて、この予算の面にこの見解を現わすように努力を願いたいということを申上げて、私は質問を打切ります。
○土田國太郎君 ちよつと委員長に要求します。先ほどあなたが発言されたのでありますが、この前の特別措置法でございますね。それの審議に関して、しばらく前に新聞に出ておつたのですが、企業資金の充実に関しての臨時措置、行政的措置が出るだろうということが新聞に出ておつたのです。それが仮に出るとすれば、特別措置に関して重大なる影響がある問題であります。これは特別措置法を審議するに当りましては、臨時措置という名前は私は存じませんが、臨時的措置のものでしようか、それを大蔵省が出しますならば、特別措置を審議するまでにこの法案を出してもらうと、非常に都合がよろしいのですが、如何でしようか。
○委員長(大矢半次郎君) 主税局長に伺いますが、第三次資産再評価に関する法案はいつ頃提案になる見込みですか。
○政府委員(渡辺喜久造君) 実はその点は理財局が主になつてやつておりますので、私のほうも一部関係はございますが、従いましてかなり考え方はまとまつて来ておりますから、そう長い時間はかかると思つておりませんが、ちよつと今ここで以て、いつと、はつきり申上げかねますが、できるだけ早く提案するように努力したいと思つております。
○委員長(大矢半次郎君) 今、主税局長のお話の通りでございます。
○土田國太郎君 これは理財局の仕事だろうと思うのですが、これを審議するまでに出て来たら、一緒に審議してもらわないと、非常に厄介なものです、内容が。その点一つお含みを。
○委員長(大矢半次郎君) なるべく御趣意に副うように努力いたします。
○野溝勝君 先ほどの私の関連質問に対するお答えを願いたい。
○政府委員(渡辺喜久造君) 野溝委員のお言葉をそのまま大蔵大臣にお伝えいたします。
○委員長(大矢半次郎君) 本日はこれにて散会いたします。 午後一時散会