厚生委員会中国人俘虜殉難者遺骨送還に関する小委員会 閉会後第2号
- 発言数
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- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1954/09/06
会議録
○委員長(竹中勝男君) 只今から中国人俘虜殉難者遺骨送還に関する小委員会を開会いたします。 第一に、最初に二回の中国人俘虜殉難者遺骨還送状況につきまして、外務省のアジア局長の中川さんから御説明を願います。
○説明員(中川融君) 戦争中に内地に参りましていろいろの鉱山その他の場所で働きました中国人が、いろいろな事情から死亡いたしまして、その骨が内地に相当まだたくさん残つておるわけであります。昨年中共地区からの邦人引揚げが実施されますに当りまして、その邦人を迎えに行く船に、この内地におきまして戦争中に亡くなられた中国人のかたの骨を乗せてお還ししたらどうかという話が出て、政府のほうでもできればそうしたいというようなことを考えたのであります。その当時は国民政府側との関係が問題となりまして、邦人引揚げ船が内地から中国に行きます際にはどんなものも乗せて行かない、何も乗せて行かないという約束で国民政府側の了解をつけておりましたので、その船に中国人の遺骨を乗せて行くということは、その国民政府との約束に反するということで、了解がとれないような状態が起きて参りまして、甚だごたごたしたのでありますが、結局別の船を仕立てまして二回に亘りまして内地にあります中国人の骨をお還ししたのであります。 そういう経緯がありますので、今回中共地区から更にいわゆる戦犯として抑留されているがたが四百十七名、そのほかに一般邦人として帰国を希望しておられるかた約百五十名、合せまして五百六十名のかたが今度帰るということに通知があつたわけであります。その際に、再びその後内地においていろいろ保管いたしております中国人のかたの骨をやはり持つて行たらどうかという話が又出て来たのであります。政府当局といたしましては、外務省、厚生省両官庁におきましていろいろこれを研究いたしたのでありますが、何分今回は先方から邦人引揚げのためにいつまでに船を廻してくれということをちやんと指定して来ておりまして、日にちを指定しておりましてその日にちも非常に切迫しておりますので、又船の準備等にも大分急いでしなければいけないというふうな事情もございまして、船も近々出ることになつております。さような時期に骨をその船に乗せて遺骨を還すということの問題をこの際併せて検討することは、万般の準備に支障を及ぼす虞れがあるということがはつきりいたしましたので、遺骨の問題は今回は取上げないという方針をきめまして、このところは邦人引揚げの準備に当られます三団体のかたにもこれをお話してあるのでありますが、なお今後政府がそれでは遺骨の問題についてどう考えるかという問題があるわけでございますが、このように多くの遺骨がまだ日本に残つておるという事情につきましては、その従来の経緯に鑑みまして、甚だお気の毒なこととは考えておりますが、差当つてのところ、中共側と申しますか本国側の見解等もはつきりしていない、つまり遺骨を是非還してもらいたいというようなことがはつきりいたしておりますれば、これは又政府としても、是非考えなければいけないと思うのでありますが、この点がまだはつきりしていない状況でありますので、むしろ今後、例えば紅十字会の代表が十月の上旬には来られるということになつておりますが、その際でも先方といろいろ三団体或いは日赤等におきまして、打合せられました結果、若し先方がどうしても遺骨を還してもらいたいというような事情がはつきりいたしますれば、又そのときに考えたい、かように思つておる次第であります。 以上簡単でございますが、遺骨問題に関する政府の考え方を申上げます。
○委員長(竹中勝男君) 有難うございました。 只今のアジヤ局長の御報告、御説明につきまして何か御質問ございますでしようか。
○紅露みつ君 引揚げの迎えの船はこちらからの出発はいつにきまりましたか。
○説明員(中川融君) 引揚げの迎えの船は興安丸を配船することになつておりますが、興安丸は今月の十二日に舞鶴港を出帆いたしまして、十三日に門司に着きまして十五日に門司を出発、十八日早朝に太沽港に着く予定でございます。二日の日に太沽を出発いたしまして、二十四日に舞鶴に帰るというのが只今の予定でございます。
○委員長(竹中勝男君) 私からお尋ねいたしますが、遺骨がアジヤ局のほうでお調べになつたところでは、現在どれくらいわかつたものがあるのでございますか。
○説明員(中川融君) 遺骨の収集につきましては、御承知のように、政府の義務といたしておりませんので、民間のかたが委員会を組織されてこれに当つておられますので、そのかたがたからのお話を聞く程度でございます。只今までのお話を聞きましたところでは、約千体ほど遺骨が各地に集積されておるということでございます。
○委員長(竹中勝男君) 重ねてお伺いしますが、これらの民間の団体がやつていることで、実際に詳しいことは御承知ないかと思いますけれども、こういう千体の遺骨というものは、どこか一つの場所に保管するようなお考えが団体の中にあるでしようか。それともそれぞれその現地に置いてあるわけでございましようか。
○説明員(中川融君) 私が聞いております範囲では、委員会のかたがたはこれを大体県ごとくらいにまとめられて、或いは県単位或いはそれより大きい単位でしようが、数カ所にまとめて置いてある、一カ所にはまとめてないと聞いておるのでございます。
○委員長(竹中勝男君) この前の還送されたのは、向うからそういう意思表示があつたのでございますか。
○説明員(中川融君) その点は余りはつきりしないのでありますが、三団体の代表が引揚げ問題の打合せに北京に参りましたときに、一日も早くお還ししたいということを代表のかたの一人が言われたということを聞いております。先方にどういう反響を及ぼしましたか、それは非常に有難いことだというようなお話があつたのじやないかと思いますけれども、主として我々の受けておる印象によりますと、遺骨をとにかくお還ししたい、日本の誠意をこれで中国に示すことによつて、更に引揚げ問題も促進する一つの契機にしたい、こういうようなお考えで、むしろ日本側の自発的な、何と申しますか、人道的な行為として強力に推進されて来たというふうに私どもちよつと印象を受けております。
○委員長(竹中勝男君) それではやはりこれまでのような取扱い、即ち遺骨は中国に送り還すということについては変りないわけですね。
○説明員(中川融君) 遺骨を中国に送り還すということ自体について、勿論政府といたしまして異存はないわけでございますが、それにはいろいろの支障が出て来る場合があるわけでありまして、引揚げ船の行路を使うということになりますと、引揚げ船自体の何と申しますか、航路安全度ということの保障を取りつける際に支障が出るということもありますので、前回では、先ほど経違でちよつと申しましたが、別の船を仕立てて還すということになつております。併し経費から申しますと、別の船を出すということは、非常に経費が嵩むわけでありますから、できれば同じ船で還すほうがいいわけであります。従つて今後も引続き遺骨をやはり還すということに、どうしても遺骨を還す必要があるということになりますれば、できれば引揚げ船の行路をやはり利用したい、かように考えております。それには十分前々からいろいろ国民政府側と打合せをすることが必要であろうと考えます。なお遺骨を送還するに当りましては、若干の費用、船のほかに若干の費用がかかり、内地にいろいろまだ散在しております遺骨を収拾すること自体が、今まで民間団体がやつておられたわけでありますが、これもやはり政府のほうで肩代りして、政府の事業としてやつてもらいたいという希望も出ておるようであります。そういうようなことにいたしますと、そのほうの費用が或る程度かかるということになります。従つて政府が国の費用を出してこの遺骨の集積及び送還をやるかどうかということになりますと、これはやはりこの遺骨を集めてお還しするということが、中共側に非常によい印象を与えると申しますか、中共側が非常に希望しておるというような事態がやはりはつきりしないと、なかなか政府の予算を出してまで、かようなことを政府が直接やるというふうには行きかねるわけであります。我々がとつております立場は、政府としては勿論遺骨を還すということに反対するものではありませんけれども、政府が直接これに費用を出し、政府の仕事としてやるためには、先方の意向をもう少し確かめる必要があるというのが今の我々の考え方であります。
○委員長(竹中勝男君) その先方の意向を確かめる方法は、どうして、さつきちよつとお述べになりましたが、今度は紅十字代表が見えた際に、その意向を聞くという方法というように解釈してよろしうございますか。
○説明員(中川融君) 従来はなかなか直接に中国側と話す機会がなかつたわけでありますが、今回かかる紅十字の代表が来られるに当りまして、その際に日本側の人たちと十分話す機会があると思うので、むしろそういう機会に中国の意向を確かめることが適当ではないかと思つております。
○委員長(竹中勝男君) それでは日赤或いは三団体を通して聞かれるのですか、或いは政府として聞かれるのですか。
○説明員(中川融君) 紅十字代表は、御承知のように日赤が賓客として呼ぶわけでございますので、いろいろのお打合せは日赤がやるのが先ず一番大いし、又順当ではないかと思いますが、必ずしも日赤からのみと考えておりません。いろいろのかたがたがお会いすることになつて、いろいろ話をされた結果によりまして判断いたしたいと思つております。
○委員長(竹中勝男君) こういう参議院の厚生委員会の中に小委員会ができておるのですから、遺骨に関するこの小委員会として聞くことについてはどういうお考えでありますか。
○説明員(中川融君) 甚だ結構な考えじやないかと思います。
○紅露みつ君 関連して。遺骨を還して差上げたい気持はどなたも同じであろうと思うのですが、一体国際法といいますか、そういう関係から言いますと、どういうふうに考えられるのでございましようか。捕虜の遺骨となつているわけでございますね。
○説明員(中川融君) 戦時中に中国から主として労務者ということで中国人が大体内地に参りまして、いろいろな所で働かれた、それがいろいろな事情で亡くなられたのが今の問題の遺骨でありますが、その戦時中に中国から労務者をこちらへ連れて参りました際には、これはやはり労務者を募集いたしまして、それに応募して来たということになつております。併しその労務者である人は、戦争中に日本軍と戦争いたしまして、日本軍の捕虜となつて抑留されておつた人が釈放されまして民間人となり、その民間人の人を労務者として連れて来たというものが非常に多いようであります。従つて出身から言えば捕虜とも言えるわけでありますが、内地に参りました場合には捕虜の身分で来たのではなくて、自由の身柄の人として来たことになつております。従つて捕虜に関する国際法の規定はこの遺骨については適用がないと考えております。なお捕虜に関する国際法の規定では、たしか生きておられる方は、当然戦争が終ればお還しいたしますが、亡くなられて遺骨になられたかたを当然に還すという規定ではないはずであります。本国政府から要求があれば遺骨もお還しするというのが捕虜に関する規定でございますが併しこの華人労務者の場合には、捕虜として取扱われておりませんのでその捕虜に関する規定の適用がないのでありますが捕虜の規定を勘案して見れば、遺骨については本国から要求のあつた際に還すというのが大体きまりのように考えております。
○担当委員外委員(上條愛一君) 委員外ですけれども、ちよつとお尋ねしますが中国の意向によつて遺骨を政府の費用で送還してもいいというようなお話でございましたが、中国の意向というものは、何か中国政府の正式の要求という意味ですか。例えば紅十字の李徳全女史の意向を以て中国政府の要望というふうに取扱つてもいいというお考えなんですか。
○説明員(中川融君) つまり我々の考え方としては、いろいろ原因については非常にお気の毒な事情がありますけれども、遺骨となつて内地に眼つておられる人たちを本国へ還すという場合には、向うにありまする遺家族とか或いは向うの政府当局等から、やはりそういうことを非常に希望しておるということがはつきりした上でお還しするのが適当ではなかろうかというふうに考えますことが第一、第二には、結局遺骨を還すという人道的行為によつて、向うにおります日本人の、内地へ還りますことを促進させたいということが第二の考え方なんでありますが、それにはその両方ともまあ先方の意向、先方がやはり還して貰つて非常に嬉しい。或いは是非還してもらいたいというのがやはりこちらも前提になるかと思うので、その点ももう少し確めてみたい。その方法として、必ずしも中共の政府から直接に申出がなければいかんというように考えておりません。従つて中国紅十字会の代表のかたでも、非常に熱烈にこれを希望されるということであれば、おのずから中国の民衆の人たち、或いは政府を含めての中国の民衆として希望しておるということも判断できるのではないかと思います。それはそのときの、何と申しますか、状況によつて判断するほかないと思います。
○担当委員外委員(上條愛一君) 私どもはたしか遺骨を取扱つている日本の機関でも向うからそういう熱望があるということは、この委員会でも承わつたこともあるわけです。それでこれは常識的に考えて、中国の国民が自分たちの同胞の遺骨の還ることを熱望しておることは当然であるし、中国の政府といえども、これは熱望しておることはわかつておることなんです。ただそれを日本の政府は何か具体的に、そういうことを熱望しておるという具体的の事実がないというと取計らいにくい、こういうお考えだと思う。そこで熱望しているという事実をどういう方法によつて、どの程度に認めたらば、日本の政府は腰を上げて遺骨の送還に尽力せられるかということが問題だと思う。そういう点でできるだけ我々の希望としては、そういうことは大体常識的に考えてもわかり切つておることであるしいたしますので、向うの熱望しておるというようなことについては、できるだけ具体的の事実は、政府としてできるだけ都合されるということは私ども必要だと思うが、そういうことは成るべくゆるやかにして、この問題については日本政府としては、中国としても日本人の送還に熱意を示されておるのですから、この際特に積極的に御配慮願いたいと思う。
○紅露みつ君 お還しするということになりました場合は、千体という遺骨が各地に散在しておるということでございますが、どんな状態に置かれておりますのか。急にこれを集めるということができますかどうか、そこの辺はどういうことになつておるのでございますか。
○説明員(中川融君) 私がその団体側から聞いておりますところでは、散在というほどまでばらばらになつておるのではない。或る程度各地にまとめて置いてあるようであります。従つていざお還しするということになれば、比較的簡単に舞鶴なら舞鶴へ集めることができるのではないかと考えております。
○紅露みつ君 埋葬されておるのですか。
○説明員(中川融君) 埋葬されたままのものもまだあると想像されます。それはこちらで亡くなつた人の数から今まで集りました遺骨の数を引いてみますと、まだ相当数千のかたが発見されずに残つておるのではないかと思つております。要するにどこに埋葬されておるかということをいろいろ調べまして、それで大体ここだというところでそれを発掘いたしまして、箱に納めて一カ所にまとめて安置してあるということでございますので、全然まだ調査が行き届いていないものを集めるということは、これは時間の関係上到底間に合いませんが、すでに掘り出されて安置してある分につきましては、これは比較的簡単に集めることができると思います。
○榊原亨君 只今承わりますと、各地に散在しておる。中にはすでに埋葬がされてあるのもあるというお話でありますが、そういうふうなものを集め、或いは舞鶴なら舞鶴へ、一定の場所へ集めるということは、政府で何か財政的な援助をされるというようなおつもりはございませんか。
○説明員(中川融君) その点につきましては、只今のところは、先ほど申上げましたように、政府として国から予算を出して援助をする、或いは補助するというようなことはやつておりません。なお将来の問題として、例えば先方が非常にそれを希望する場合にはどうするかというようなことも、将来の問題としてはあり得るわけでありますが、これはそのときの要するに先方の意向、つまり何と申しますか、中共政府、中共側がもうとにかく全部調べて皆還してもらいたいということであり、又それに応じて政府としてはその要求をどの程度に実現すべきであるかどうかというようなことを研究いたさなければならんわけであります。先方の考えが今まで集つているのだけでも還してくれということであれば、それは又それで済むわけであります。これは先方の考え方を見まして研究したいと思つております。
○榊原亨君 これは全く人道上の見地かも知らないのでございますが、戦時中日本の国のために一応外国から労務者なら労労者として日本にやつて来た、そうして異国の地に眠つたというような状態でありますから、先方の意向がどうございましようとも、一応人道的立場から、或る一カ所なら一カ所に集めまして、これはこういう状態で外国からやつて来て亡くなつた人の遺骨だというようなふうに、どう申しますか、標識と申しますか、記念と申しますか、わかりませんが、そういう形にでもしてその遺骨を尊重するということは、先方の意向がどうでございましようとも、これは人道的立場から申しましても私そうじやないかと思うのです。例えば日本の兵隊が向うへ行きまして、そうしてどつかわからん所へ皆埋葬された、日本人としては一応一定の所に標識をしてはつきりさしてもらいたいという気持はあると思うのです。ただ先方がそれを受入れる場合に受入態勢ができているとか、或いは喜んで受入れるかどうかということになりますと、それは遺骨を送還するというのは、今お話になりました通りでございますが、内地におきましては一定の個所に集めて、これらの人の遺骨だということで慰霊をするということは、人道的な立場からいいましても、望ましいことではないかと私は思うのでございますが、先方の意向の如何にかかわることじやないと思うのですが、そういうようなことを政府当局がお考えになり、或いは或る団体がそういうことを考えたときに、それに政府が援助を与えるということは好ましいことかどうかというようなことにつきまして、一応お考えを承わつておきたいと思います。
○説明員(中川融君) お説の通り人道的見地から申しますれば、確かに或いは政府といたしましても遺骨をできるだけ調査いたしまして、一カ所にこれを集めて安置するというような方法をとることが好ましいと思います。これは併しながら御承知のように、政府もその欲することを全部し得るだけの財政的余裕もありません。従つてこれを国の予算に計上いたしまして、この事業をやるということになりますと、なかなかいろいろの財政上の支障が出て来るわけであります。そのような事情からまだこの問題につきましては、積極的に政府が予算を出してこれに当ろう、或いは補助金をこの団体に出そうというところまでは行つていない事情でございます。財政上のいろいろ制約というようなこともありますので、若しもこれを政府が本当こ取上げるとすれば、やはり先方の考え方、先方が非常にこれを希望しておるというような事情がやはりどうしてもないとむずかしいのじやないかと考えております。只今例に御指摘になりました日本人の遺骨が外地にいろいろ散逸している。これを集めるというような問題につきましては、御承知のように日本政府としては再三関係国に要請いたしまして、全部日本政府の費用で船も出し、人も出してこれは集めて持つて帰りたいという交渉をしておるわけでありまして、まあこれはどう言つたらいいでしようか、先方としても本当に熱望するのであれは、何らかさような意思表示が当然あつて然るべきじやないかともまあ考えられるわけであります。勿論これは人道的な問題でありますから、さような先方の意思表示を待たず、こつちからむしろ率先してやるということは好ましいに違いありませんが、限られた予算の関係等から申しましても、やはり何らか先方の意思がはつきりすることが必要だ、財政技術上政府の行政の見地から言えば、さようなことをはつきりすることが好ましいと考えております。
○担当委員外委員(常岡一郎君) 只今の榊原委員のお話を聞きましても非常に同感でありまして、外地にありますものがこちらから、日本人としては日本人の遺骨を再三あらゆる手を尽してお願いしたと言われますことでありますから、人情の然らしめるところ当然だと私は思います。今日中共と日本との間にまだ国交が回復しておらないことも御承知でありますならば、その一助としても、お互いに心を融かす上にも真実が大切だと思いますので、向うの要求があろうとあるまいと当然なすべきことであると我々は強く信じます。それを予算的措置がどうかこうかというような生ぬるい考え方で、こういう人道上の問題を片付けるということは、非常にこれは熱意の余りなさ過ぎる点を表現しておると思うのであります。まして日本の国に来て、そうして相当苛酷な待遇を受けて遂に亡くなつた人たちであることを思いますというと、それでは済まないものがある。十年もたつてなお且つそういう生ぬるいもので予算的措置というようなことは言えないのじやないか、こう思いますので、強くこれをそういう方面で立案せられたことが果してあつて、予算均措置ができないといつて、それを断わられたことがあるのか、それとも全然そういうことがないのかということが一点、そうしてそれをこれからそこまで熱意を持つて、この問題は怠つておつたからやるという熱意を持つておられるかどうか、この二点をお尋ねいたします。
○説明員(中川融君) この問題につきましては、厚生省外務省間で何遍も協議しておりますが、その結論が、只今申上げましたように、これについて政府が積極的に予算的措置をとつてこの問題を取扱うということは、先方の意向をはつきり確かめ、或る程度確かめた上でいたしたい、研究したい、かように考えておる次第であります。
○担当委員外委員(常岡一郎君) 確かめる方法はどういう方法をとろうと思つておられますか。確かめたい確かめたいという口上にしか聞えないように思いますが……。
○説明員(中川融君) その点は幸い近く中国の代表がこちらに参られることになつておりますから、その機会に確かめることができるかと考えております。
○榊原亨君 いろいろ御研究になつたようでありますからお尋ねいたすのでありますが、それではその中国人の遺骨を一応或る日本の或る一定の個所に集めるというだけの費用はどれぐらいかかるお見込みだつたのでございましようか。御研究になつたことがあるそうですが、それは如何でしよう。送還するとか何とかいうのじやなしに、集めるということで……。
○説明員(中川融君) その集め方でありますが、現在すでに調査ができまして、発掘いたしまして団体側で安置してある分、千体程度のものでありましようが、これを一個所に集める。或いはこれの保管を政府がやるということでありますれば、これは大した費用はかからないわけであります。まだ調査ができていない分、これは非常にむずかしい分が結局残つているわけでありますが、それらの調査を政府がやりまして、更にこれを発掘するということになりますと、これは金額が相当嵩まざるを得ないと思つておりますが、さようなことでどの程度一体そういうことをやるべきかというようなことも、これは先方の考え方というものをやはり確かめた上でなければ判断を下し得ないわけでありまして、さような事情から未だ全体やれば幾らとか、或いは現在集まつたものだけを保管すれば幾らというような点につきまして、数字的に研究したというようなことにはまだなつておりません。原則問題を討議したわけであります。
○担当委員外委員(上條愛一君) 今現実的の問題になつておるのは、民間の中間人俘虜殉難者慰霊実行委員会というものが各地にあつて、それがわかつた遺骨だけをそれぞれ集めて各地に保管してあるわけなんで、その保管してある千個の遺骨だけでも速かに中国の交兄の許に送り届けたいというのが一つの第一の問題だと思います。そのほかの各地にまだ散在しておつてわからない遺骨をどうするかということは第二段のことになるわけです。今問題になつているのは、民間その他が人道上の問題として掘り出した遺骨を各地に保管している。この遺骨を集めて中国に送り還したいというのが第一の問題です。その資本が幾らかかるかというようなことは、これはやはりおつしやるように予算的措置を政府が講じなければならんほど莫大な費用がかかるものだとは我々考えない。これは政府がそういう、熱意と誠意があればそのぐらいな予算はそう天げさな予算的措置を講じないでもできる問題じやないかこう我々は考えるのでありますが、この辺のお考えはどういうものでございましようか。
○説明員(中川融君) 只今いろいろ私から御説明申上げましたように、政府が直接これを財政的支出といいますか、政府の費用を出して、この点について援助する、或いは政府が肩代りをしてその保管の事務等に当るということについては、まだ政府としてそれだけの決意をしておらないわけでありまして、その決意をするかどうかは、先方の考え方をもう少し確かめた上でやりたい。今まで確かに民間のかたがやつておられたのは、人道上非常に結構なことでございますけれども、やはり政府として費用を出してやるからには、それが実際的な何と申しますか、効果と申しますか、そのことが、これだけやり、こういうことがあるからこれが必要なんだということがやはりないと、なかなかむずかしいわけでありまして、その辺の事情をもう少し確かめました上で考えたいと思つております。
○担当委員外委員(上條愛一君) これは伝統的の日本の政府の杓子定規的なお考え方だと思うのですが、向うの意向を確かめるというけれども、向うの意向ということは常識的に考えてわかつている問題じやないですか。中国人が自分の父兄の遺骨を送還してもらいたいという熱意を持つているということはわかつている。政府だつて熱望していることはわかつていることなんで、これはやはり日本人を送還してもらいたいということを熱望していると同様なことなんです。而も民間人が人道上の見地から多数の費用を投じて集めて、そして折角遺骨を掘り出して、そうして保管しておる。而も千個にも達しておる。こういう事実があるのに対して、それを集めて中国に送還するくらいなことは、形式的に向うの熱意があるかないかというようなことを確めなければやれんというような、そういう形式的な問題じやないのじやないかと我々は考えておるのですが、政府のそういう杓子定規的の考え方というものが、今日の国際情勢関係というものを必ずしも円滑ならしめていない一つの原因じやないか。まあ我々は非常にそういう点で向うの意向を確かめるというようなことにかかわつて、現実各地で千個も保管しているのに対して、国民がそれだけの熱意を持つてやつていることに対して、政府が知らん顔をしてこういう要望を委員会で取上げてやつているにかかわらず、なお先方の意向を確かめなければ政府として何らの処置が講ぜられないというようなことは、これは甚だ遺憾なことだと思います。これは一つお考えを直して頂いて、積極的に御協力を願いたいと思います。
○担当委員外委員(常岡一郎君) 只今いろいろ説明を聞いておりますと、ただ一時逃れのようなふうに聞える。厚生省と再三打合せたと言われるが、打合せた以上は何か数字的根拠でもあるかと聞くとそれは何にもない。何を打合せたと言つたら、原則的問題だ。原則的問題を打合せたというならば、その原則的問題は、人道上の問題は問題にしないという意味ですか。それとも又これは外交の問題は、特に又人間の好意と好意というものに結ばれれば一番強いものだと思います。好意は、言われない前からちやんと途を踏んで、どこに誰が聞いても恥かしくないだけの途を辿つてこそ初めて好意が光るものじやないかと考えられるが、その点に対して何かもう少し熱意を持つてもらいたいということを切に思いますので、これ以上お尋ねしても、ただその場だけを逃れるような答弁だとしますならば、意義をなさないと思いますので、質問は打切りますけれども、要望いたしますことは、一日も早くこれに対して具体的に熱意を示して頂きたいということをお願いしたいと思います。
○委員長(竹中勝男君) ほかに何か御希望或いは御意見ございませんでしようか。 それでは一応質問を打切りまして、御意見を伺い協議したいと思いますが、今日はこの中国紅十字社からの通報による引揚者還送に関して援護局からの御報告をお願いしておりましたのですが、今のアジア局長のお話で大体この点は尽きていると思います。 それからもう一つ御相談申上げたいことは、引揚者の残留者予想数について、引揚援護局長の説明があるはずなのでございますけれども、午後三時頃でないと小委員会に出席して御報告できないのだそうでございます。これは新聞発表の関係がありますために、新聞発表になつてからこちらに報告されたのではいけないと思いますが、これはどういうようにいたしたものでございましようか。お諮り申上げたいのです。速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(竹中勝男君) 速記を起して下さい。 只今各委員のかたがたから熱心に御要望があります通り、これは向うの意思を聞いた上でというようなことと問題の性質が違うと思う。日本の軍人や日本人が外国ですでに遺骨になつてまだそのまま放置されている。これを一刻も早く遺骨を日本内地に送還してもらいたいと、送り還してもらいたいということは、日本人の非常な希望なのですが、これと同じだと思うのです。我々が我々の同胞の遺骨に対してそういう熱望を持つているのであれば、なお更こちらから進んでこちらにある遺骨を集め、そして還送するということは当然国際的な人道主義の上からのみならず、我々同胞の海外にある遺骨に対する国民の当然すべき大着手だと思うのです。日本にある外国人の遺骨を還送するということは、或いはそれを丁寧に扱うということは、そういう意味におきまして、これは向うの意思を聞くということなどは問題ではないと思います。まあ上條さんからのお話の通り、これは一つ小委員会で我々の決意をはつきりして、厚生委員会で全員のやはり意思として決議に持つて行きたいと思うのですが、その点について如何でしようか。
○榊原亨君 ちよつと速記をとめて頂きたい。
○委員長(竹中勝男君) 速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(竹中勝男君) 速記を起して下さい。
○担当委員外委員(上條愛一君) それは二つともやつらどうですか。一つ所へ集めて慰霊するということと、いま一つは、赤十字を通じて向うの紅十字なら紅十字に遺骨はこれだけあると、あるからできるならば送還したいと思うが、(「賛成だ」と呼ぶ者あり)受入態勢はどうだろうかということで積極的に還すという一つ運動を進めて行くと、こういう二つの方法で行かれるのがいいように思うのですが……。
○榊原亨君 生越なんかのやつは一つも金を使わずに、そこに集めさえすればすぐお祀りができるのですから、向うとの交渉ができる前でも、向うから来られてもこんなに鄭重に祀つてあるかということで、あれは私非常に外交上もいいことじやないかと思いますがね。向うの意向を聞かなきやならないという、それは……。
○委員長(竹中勝男君) それは問題にならない。向うの意向でこれを祀つていいか、鄭重にして悪いものかいいものか、そんな馬鹿なことを聞けるものじやないですよ。
○担当委員外委員(上條愛一君) 恐らくは受入態勢のない、親族のわからない人もあると思うのですが、それはそれで向うへ送つてくれれば向うで慰霊するとか何とかいう方法があつて又受取れないというやつはこちで鄭重にどこかへ安置して置くという方法もあるんです。いずれにしても積極的にこの問題を処理するということをやつてもらはなければいかんじやないか。
○紅露みつ君 やはり第一着手としては、みんな御意見が出ているように一カ所にまとめるということを一つして頂いて、そうして鄭重にこれをお祀りして行くということの態勢を作つて頂くのが第一着手だと思うのですね。その上で、今御意見のあつたように、積極的にこちらからもお話を進めるという努力をしてもらうと、こういうことに持つて行かれたら如何でしよう。(「賛成」と呼ぶ者あり)
○委員長(竹中勝男君) これはもう御賛成と思いますが、第一着手としては、とにかく全国に散らばつておる遺骨を一カ所に集めてこれをお祀りするということですね。
○担当委員外委員(上條愛一君) これはどうです。中国人俘虜殉難者慰霊実行委員会というものがもう各地にあつて、これが保管しておるわけなんですから、政府はこれと連絡をとつてこれを一カ所に集めて慰霊する、そうしてなおこれを本国に送還するような処置を講ぜられたいという意味の決議というか、要望というか知りませんが、したらどうなんですか。
○委員長(竹中勝男君) 小委員会の決議に……。
○榊原亨君 中国にお還しするということは即刻でも意思を発表して頂かんと、できれば一方においてはやつぱり集めるということで鄭重にしておかなければ、どこともなしに放つてあるというようなんではやつぱり問題にならんと思うのですが。
○担当委員外委員(上條愛一君) 各地にはそれぞれお寺なり鄭重に宴置してあるわけなんです。おつしやるように一ところへ集めてやるということは必要だと思うのです。その上でできるだけ早くこれを送還するという処置を講ずることも必要になつて来るわけですね。それをいつまでも保管しておくということでなしに、これは処置されるということが必要だと思います。
○委員長(竹中勝男君) それを今までのように民間の団体に任しておかないで、政府は積極的にそれこそ予算措置といいますか、大げさなことを外務省は言いますが……。
○担当委員外委員(上條愛一君) 政府がみずがらやるということが何か困難だというならば、幸いここに民間団体があるのだから、これに補助を与えてやらしてもいいのだから、いずれにしても積極的に一ところに集めるということと、それから送還の手段を講じてもらうというこの二つを要望して頂いたらどうですか。
○委員長(竹中勝男君) そうですね。それでは今日の一致した小委員会の意見としては、この全国にある中国の俘虜殉難者の遺骨を一カ所に集めて鄭重にこれを保管、慰霊する、早急にこれをやる、同時にこれを本国に送還するということを政府に向つて強く要望する、これでいいでしようか。
○担当委員外委員(上條愛一君) そうですね。民間の団体と協力してそういう措置を至急とつてもらいたい。それからその方法は、政府が名目上やるということが困難だというならば、ここに幸い民間の団体もあるのだからそれにやらしたらいい。ただ費用はこれらの団体が金を集めてやつておるのだから、これ以上集めてやるということもなかなか困難だから、そういう補助は政府でやる。そうしてそういう団体にやつて頂いてもいいわけですね。
○委員長(竹中勝男君) とにかく政府がもつと本腰で経済的な措置をするということが急務ですね。……それは一つ決定したこととして、それからこの委員会の、さつきのアジア局長のお話では、紅十字の代表にやはり我々の意思というか、我々がこういう気持でいるということを参議院の厚生委員会としては伝えたほうがいいと思うのです。国会はそういう気持でいる。これを鄭重に扱い、そうして一カ所に集めてこれを慰霊し、遺骨は成るたけ早い機会にこれを送還したい、これはやはり厚生委員会の全体の意思として伝える必要があると思います。で、お手許にお配りしたように、遺骨還送に関する資料はここにまとまつて出ております。 それから東京の華僑総会の会長康鳴球さんから「中国人俘虜殉難者の遺骨の収集及び送還、並びに中国人俘虜王松山の解放送還に関する要請書」というのが出ておりますが、要請は三つ、簡単ですからお読みいたします。 一、中国人俘虜殉難者の遺骨が多数日本各地に放置されているのでその収集と送還のため必要かつ適切な措置を講ぜられると共に日本政府にそのような措置を講ぜしめられたい。 二、中国人俘虜王松山の解放と送還のため必要かつ適切な措置を速かに講ぜられると共に、政府にそのような措置を速かに講ぜしめられたい。 三、以上要請の二件は人道上極めて重大な問題であり、人情から言つてもまた道理から言つても放置することはゆるさるべきではなく、またこれが速かな処理解決が中日両国及び両国人民の間における平和的かつ友好的な関係を樹立するための基礎を提供するものであることは極めて明らかである。 これは併しこの中に新らしい問題がありますのですが、王松山の解放と送還ということですな、これは今ここで取上げますか……。第一の要請「中国人俘虜殉難者の遺骨が多数日本各地に放置されているのでその収集と送還のため必要かつ適切な措置を講ぜられると共に日本政府にそのような措置を講ぜしめられたい」、この第一の要望は只今の我々の決議と一致するわけであります。第二の問題はこれは別の問題でありますから、只今ここで伏せておきます。何か……。
○榊原亨君 先ほど私が申しました生越のそのお墓ですね、それは、何だつたら一つ自動車で行けばすぐですから、この委員会で一つ検分に行くことを御計画下すつてもいいと思いますが……。
○委員長(竹中勝男君) 埼玉県でございますか。
○榊原亨君 埼玉県ですが、一時間半くらいですぐ行けます、いつでも。
○委員長(竹中勝男君) 一応そういう所に合併して安置する、そうして李徳全さんなどもそういう所に行つて頂くというふうにすれば……。
○榊原亨君 非常に私はいいのじやないかと思いますが、外交上の効果から言いましても。そこで、委員会でおひまなかたがあれば一つ行つてみたらどうかと思います。
○委員長(竹中勝男君) どうでございましようか。これに車で一時間半くらいですが、やはりこういう所があるということを知つておくことは……。
○榊原亨君 或々が知つておけば主張が強くなるのじやないかという気がするのですよ。
○委員長(竹中勝男君) それじやそこに一つ行くことにいたしまして、時だとか行つて頂くかたなどについては又後に御相談いたしまして、何かほかに今日御相談申上げておくことがございますか。いずれこのあと懇談会をいたし又理事会をいたしますが。 もう一つ御相談申上げますが、引揚者残留者予想数についての援護局長の説明が今日午後三時頃でないとできないというのですが、これは三時半まで待つわけに行きませんし、書類ででも各委員に報告して頂いたらどんなものですか。そうすれば形式は整うわけですし、新聞に発表する前に或々委員に発表して頂くわけですから。 〔「賛成」と呼ぶ者あり)
○委員長(竹中勝男君) それじやそのように御了承頂いたものと決定いたします。 ちよつと速記をとめて下さい。 〔速記中止〕
○委員長(竹中勝男君) 速記をつけて下さい。 それじや一応これで以て問題がないようでございますから、散会いたします。 午前十一時十九分散会