厚生・労働連合委員会 第1号
- 発言数
- 155 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1954/05/06
会議録
○委員長(上條愛一君) 只今から厚生、労働連合委員会を開会いたします。 厚生年金保険法案を議題といたします。御質疑を願います。なお、本日は本案の審査のため緒方国務大臣及び草葉厚生大臣の御出席を願つております。大蔵当局にも出席を要求いたしております。それでは御質疑を願いたいと存じます。
○吉田法晴君 厚生年金制度の種々の不備については政府もおおむね認めておられるところでございますが、全般的な社会保障制度に関連をいたしまして、厚生年金保険制度の整備に関する政府の態度を承わりたいと思います。
○国務大臣(草葉隆圓君) 現在御案内のように長期年金の種類がいろいろまちまちになつておるのであります。そしてそれらのおのおのの長期年金或いは恩給法の形を以て現われ、或いは共済年金或いはその他の年金というような恰好で現われております。従いまして、これらのおのおのの長期年金に対しまして、できるだけこれを統合整理して、その中心になる将来の目標を考えまするとき、現在のようなまちまちの長期年金から、統一した、統合したものに進んで参るという一つの方針を堅持いたしまして、今回の厚生年金の改正に当りましても、将来これらの年金の一つの中核体になり、更に進んで現在の被保健者を拡大し、できるならば、国民的規模に及ぼすように進んで参りたいという一つの考えを持ちまして検討をいたしましたが、今回の改正は、これらの問題について十分な解決は得ておりませんけれども、併し厚生年金の考え方といたしましては、只今申上げたように各種年金の中核体としての将来を持続して参りたいと考えております。
○吉田法晴君 今のお言葉は被保険者を拡大して国民的な規模にという御答弁でございますが、年金制度に関する勧告の中にも、国民年金制度への拡大云々ということでありますが、そういう意味で、国民的な規模に拡大する、或いはこの制度をそうした国民的規模における年金制度或いは社会保障制度の中核にして行くと、こういうまあ御答弁であります。国家公務員、或いは地方公務員或いはその他公共企業体関係等の年金関係、或いは社会保障制度というものが多岐に亘つておることは私が申上げるまでもありませんが、それらの関係において、今の被保険者の範囲の中で公務員或いはこれに準ずべき者、更に一般の民間産業に使われております者、それをどういう工合にお考えになつておりますのか。或いは公務員関係については附加制度が現在ある。それをそのまま認めるといいますか、どの程度認めて行くかは別として、社会保障制度として考慮して行く、こういうことが述べられておるようであります。そういう意味でこの制度を中核とすると、こういう意味なのか、被保険者の、或いは社会保障制度を享受します対象のいろいろな種類に関連してどういう工合に考えておられるのか、それが一つ。それからもう一つは、給付の金額からいたしますならば、公務員或いはこれに準ずべきもの、公務員が一番恩給その他金額が多いかと思うのでありますが、そういう金額の面からいたします、給付の面からいたします厚薄ということを考えます場合に、どれを中核としてお考えになるのか、或いは今のお話のように、この制度を中心にということになりますならば、残念ながら厚生年金制度の給付が一番低い。そうすると、その低いものを中心にと、まあ先ほどの御答弁を解釈いたしますと、そういう疑問が起つて参るのでありますが、そういう給付に関連してはどのように考えられますのか、もう少し具体的に承わりたいと思います。
○国務大臣(草葉隆圓君) 御質問の第一点の、現在の各種年金がありまするのを一つは統合の問題になつて来ると思います。そこでこれらの年金は、種類によりまして、例えば御指摘のように、国家公務員の場合は恩給法なり、或いは地方公務員の場合はそれぞれ地方公務員に対しまする恩給法に準ずるものなり、又共済制度の問題、或いはこの年金制度なり……、そこで、これらのおのおのが従来から御承知のような歴史といきさつと内容とを持つておりまするので、できるだけこれらのその内容が類似するように、先ず地均らしをして、それから統合の問題になつて来ると思います。現実に私どもが直接にいたしておりまする厚生年金保険と船員保険との二つの問題を成るべく同一に今度もいたして参りたいと存じまして、その同一というのは内容を成るべく同一にしたいと、こう考えて参りましたが、いろいろ実際に関係者の御意見等を承わりますると、やはり船員保険は船員保険としての一つの歴史と現在までのしきたりと特徴とがあるので、同じようにはなかなかできないことを知つたのであります。従いまして、現在皆さんの御審議を頂いておりまする内容につきましても、その内容が、二つ通算は今回お願いをして出すことにいたしてありますが、内容そのものは大分変つている点があります。併しできるならばだんだんとこれを近ずけて来て、そうして一本にする一つの段階と存じまして、余りに無理に機械的にいたしますると、却つてそれぞれの関係者なり、従来の持つておられた権利というものがなくなつたり、いろいろな障害を来たしまするので、そういう準備過程に相当これは時間的にも、内容的にもかかるのであるけれども、併し将来は成るべくできるだけ一本の方向で行くべきものである、こういうのが一つと、この厚生年金自体にいたしましても、御案内のように、現在は五人以上の被用者を中心に、事業所を中心に考えておるのでありまするから、更に将来は、このもの自体におきましても、五人以下、進んでは国民各層という方面に及んで行くように厚生年金の考え方を及ぼして行きたい、こういうのでございます。給付の面につきましても、例えば現在の国家公務員の場合におきましても、恩給法に対しましては人事院の勧告等もありまするので、これらの勧告につきましては、三月の二十九日と記憶いたしまするが、閣議におきまして更にこれを検討して行こう。そうしてこの恩給の範囲、内容等について審議を続けて委員会等を設置してやつて行こうということをきめて参つたのであります。これらの検討を待ちまして進んで行かなければならないと考えております。これらの点を考えて参りますと、いずれにいたしましても、ばらばらになつておりまする現在の年金或いは恩給の各種のものが成るべく一つの目標に向つて同一な方向に進んで行くよう、従つて厚生年金を一つの中核体と考えて参りまする場合に、それ以上の例えば恩給法等は大分内容等も変つておりまするから、御指摘のようにむしろ低うなつて来るのであります。これらの点も、いわゆる一つの既得権が直ちに低くなるというようなことは、これは大きい影響を持ちまするので、こういう点も十分検討しながらいたさなければならないと考えております。そういういろいろな実際上の問題がありまするので、この統合なり、或いは内容の接近なりというものが重大な目標ではありまするが、おのおのにその特徴があるために、なかなか俄かに行きにくい事情にはありまするけれども、併し社会保障という点から考えますると、そういう方向に向くように今後努力をして参りたいと考えております。
○吉田法晴君 問題がたくさんございますが、船員保険等を挙げて、いろいろ歴史があるというお話でございまして、これは公務員の恩給制度なり、或いは地方公務員その他の共済組合制度なり、それから遅れて発達いたしました厚生年金制度、それぞれ沿革と歴史があることは今更申上げるまでもございませんが、それを統合する方針かどうかと、こういう質問に対して、体系化し、或いは統合する方針だ、大方針は統合する方針だ、こういうことに承つていいかと思うのでありますが、その点なお念を押してお尋ねしたい。
○国務大臣(草葉隆圓君) この点は社会保障制度審議会の建議等も十分尊重いたしまして、大局としては統合して一本に行く方向に努力をして参りたいと考えております。
○吉田法晴君 統合するといたしまして、先ほど疑問を出しましたのは、統合する場合に、上に揃えるか、或いは厚生年金が中核ということになると、引下げも行われるじやないか、こういうまあ疑問を提出したのでありますが、恐らく引下げて、不完全な今の厚生年金、現行の制度みたいに引下げるということは恐らく意図ではなかろうと思う。年金法の改正にいたしましても、少くとも意図は引上げる、改善であろうかと考えるのであります。そういう意味で、目標としては社会保障制度として統合し、或いは立派なものにする。こういう点から言いまするならば、年金制度のような低いところに引下げるのでなくして、むしろ公務員の恩給制度それ自身も人事院の勧告その他引上げる、改善をするという方向が出ておるわけです。そういういいほうに引上げ、更に公務員の恩給制度の目指しますよりよき、或いはより完全なと言うか、完全だとは申上げませんけれども、完全に近ずこうとする意図と努力とを含んで、社会保障制度の立派なものを作つて参りたい、こういう方針と解釈してよろしいかどうか。
○国務大臣(草葉隆圓君) この点は当然御指摘のようにだんだんと社会保障の充実、拡充をいたして参りまする場合には、現在よりも不十分であつてはならないと考えております。従いまして、できるだけこれらの横の関係も調整をいたしまして、そうして完全に近い、或いは不十分でない方面に努力をして参つて行くべきものと考えまして、今回もそういう線から相当思い切つた改正をいたしたつもりでございます。
○吉田法晴君 従来社会保障制度につきましては、勧告もあり、憲法の精神に従つて、まあこの点についての憲法を尊重せられようとするかどうか知らんのでありますが、少くとも従来は、憲法の精神に従つて社会保障制度を完備して行きたいと、こういう答弁は、吉田内閣によつても踏襲せられて参つたと思うのであります。実際には、社会保障制度についてなかなか前進をしない。或いは恩給問題についても、人事院の勧告があつたにかかわらず、委員会を設けて、実際には勧告そのまま、或いは勧告以上にしようという努力よりも、それを下げようという努力のほうが政府によつてなされているのじやないか、かように考えるのでありますが、一般論でなくて、実際的に、恩給制度に関連をして、或いは今お話になりました社会保障制度の一体化、或いは給付の向上について、具体的にどのように考えておられますのか、或いはどういう段階、方法を通つてその完備のために御努力せられようとするか、具体的に承わりたいと思います。
○国務大臣(草葉隆圓君) それで、この点は只今も申上げましたように、恩給法関係におきましては、人事院の勧告等もあり、これに対する具体的な検討が必要というので、そういう委員会を、或いは審議会のようなものを設置して、内容を検討しながら、財力と見合してやつて行く。従つて一般的な、全般的な社会保障といたしましては、当然年々これに努力を十分いたして参らねばならないと考えております。本年度の予算等におきましても、御承知のような状態でございまするが、今後におきましても、従つてこういう方面に対しましては、まだ具体的に十分とは決して申上げかねまするから、従つて不十分でないように、十分に近い方面に努力をして参りたいと考えております。 なお、今回のこの厚生年金の改正に当りましては、それらの点を十分検討いたしまして、従来の少くとも二十倍近く、その内容等を改正するという方向をとつて参りました。成るべくほかの恩給或いは共済その他と睨み合せまして、これではなお不十分な点もありまするが、財力等も考えまして、一応この程度で今回も御提案を申上げたような次第であります。
○吉田法晴君 そうしますと、恩給制度に関します人事院勧告に関連して、委員会を設けて審議をするというお話でありますが、ほかの大臣来られませんけれども、政府として、或いは厚生大臣として、人事院勧告を下廻るような恩給制度を作る意思はない、少くとも政府としてはそれ、或いはそれ以上の恩給制度を作る意図である、かように解釈してよろしうございましようか。
○国務大臣(草葉隆圓君) これは現在の恩給制度が、御承知のような状態でありますのに対して、人事院の勧告等もありまするので、これに対する実際のその勧告の内容及び現状、現在の恩給制度、そういうのを検討しながら、公務員制度調査会というのを設置して、内容に入つて検討をして行く、こういうのであります。従つてその結果が現われて参りまして、どういうこれが答申になつて参りまするか、それ等を考え合せながら、今後の、いわゆる保険年金制度の統合化と申しまするか、調整というものが、一方恩給関係、国家公務員関係とは関連して考えて来なければならないと存じております。又私どもが直接いたしておりまする、船員保険なり或いは厚生年金なども、更に今後成るべく一体化するように努力をして参りたいと考えております。
○吉田法晴君 そうしますと、今の点は、公務員の恩給については、実情を検討し云々というお話でありますが、勧告の精神、勧告のよつて来たるところは私が申上げるまでもありませんが、勧告の出て参りました経緯に鑑みて、勧告の精神を十分に生かして、現在より以上によくしたい、或いは少くとも草葉厚生大臣としては、勧告以下にはしない方針だ、そういう方向で努力する、こういう意図と解釈をしまして、なお民間労働者その他の年金、その他についても、公務員の恩給に負けないような水準まで上げる努力を続けたい、かように解釈をいたしますが、なお関連して私から申上げておきたいのでありますが、今審議されております教育二法案に関連して、教職員の地位或いは地方公務員の地位、それと国家公務員の地位、これらのものを検討いたしますと、これが狭義の意味の労働者であるかどうかということは問題にいたしまして、労働組合法或いは基準法にいう賃金給料を基礎にして働いておりますものであることについては、本質上変りはないと思います。職員という言葉で呼ばれておりますけれども、本質は近代法の体系の下における労働者であるということに間違いないと思います。国に使われておる、或いは地方公共団体に使われておる、或いは民間私企業に使われておるかどうかということは、問題の本質には関係がないように思うのであります。従つて年金或いは恩給、名前はどのように呼ばれましようとも、老後の生活その他、労働能力を失いまして後の、生活の保障について国が考えなければならんところは同じだと思うのであります。そういう意味で、当然不完備な厚生年金その他の制度が、国家公務員も恩給制度が完備せられなければならんと思いますが、それに負けないように地方公務員といえども、或いは民間企業に使われております労働者といえども、なるべきだということは当然だろうと思うのであります。その点は厚生大臣の、或いは政府の今後の努力を期待いたしたいと思うのであります。その具体的な方法として、これらのものを一体として考える行政機構或いは社会保障制度を担当いたします社会保障の省と申しますか、そういうものをお考えになるかどうか。或いは私どもが頂きました資料によつても、民間企業に使われております一般労働者の厚生年金保険法を適用せられて年金を受けるものにいたしましても、平均をいたしまして一万六千円そこそこ、公務員の場合にはこれは従前の金額でありますけれども五万円、或いは五万円を越しておる実態、それからその財源としましても国が補助をすると申しますか、負担します率が厚生年金の場合には二〇%、或いはそれ以下、公務員の場合には八割以上九割を超しておるものもあるようでありますが、公務員については九割強と承知をするのでありますが、具体的な方法として国の負担する率が非常に民間産業の労働者の場合と、それから公務員或いは地方公共団体の場合には違うことはこれはもう何人の目にも明らかだと思う。そこでその均等化の方法として、国において或いは地方公務員の場合には地方公共団体もこれは協力をすると申しますか或いは負担しなければならんものもありましようが、それを含めて国が負担する部分を大幅に増大をして厚生年金制度の完備、或いは社会保障制度の完備のために努力をする御意思がありますかどうか重ねて承わりたい。
○国務大臣(草葉隆圓君) これは先にも申上げましたが、いろいろ種類によつてその性質が異なつておりまするから、従つて統合その他の問題についてもよほど検討をせなければならないので、お話のように老後に対する国家保障或いは社会保障という意味においては全く同様でございまするが、その間の過程において雇傭関係がいろいろ変つて参る。更にこれを国民年金制度にもつて参りまする場合におきましては、むしろ自営業或いは雇傭関係がない場合における労働の場合も考えて来なければならんと考えております。かような点から現在におきましても民間事業所においての厚生年金の場合におきましても、国家の負担とそれから事業所の負担、被用者の負担、この三つがなつておつて、国家公務員の場合におきましてはその事業所の負担が国家の負担と代つておりまするので、そのパーセントが急激に殖えておると思います。併しいずれにいたしましても只今御指摘のような点は確かにあると思います。そこで厚生年金といたしましては今回計算をいたしましたのは、一応国家の負担というのを今回の程度で計算をいたしまして、二割乃至一割五分という程度で計算をいたしまして、あとは積立金の方式による一種の完全積立方式というのを念頭に置いてそれによる計算をして参つたのであります。併し勿論将来これらの点につきましては十分今後あらゆる点から検討をいたしまして統合の場合には計算もし、又考慮もいたすべきものと存じますが、今回の改正の基本といたしました点は今申上げた通りでございます。給付の内容等につきましても一層今後はこれらの給付の内容を改善こそすべきものとは考えておりまするが、取りあえず只今申上げましたように完全積立方式とこれに対する国家負担、これに関連いたしまして被用者並びに雇用者の負担、これらを総合していたしましたのであります。各保険の、或いは年金の、或いは共済、恩給等の長期年金の組立におきまして国家負担が相当御指摘のようにまちまちになつているのはお話の通りでありますが、こういう点につきましても、統合の問題については十分検討をいたすべき点があります。これは今後検討をいたして参らねばならないと存じております。
○吉田法晴君 これは或いは厚生委員の諸君等で御質問、御究明になつたかも知らんと思うのでありますが、事務的な問題でありますが、当局にちよつと伺いたいと思うのであります。各種の年金制度における国庫負担額というものを、これは厚生専門員室から頂いております。この表には国家の負担額だけ書いてありまして、その他の負担額、或いは今お話の企業主としての或いは雇用者としての負担額等は出ておりませんのでありますが、或いは何と申しますか、各制度のための総経費と申しますか、比べるべき全体がございませんので、若しお手許にあればお示しを頂きたい。
○政府委員(久下勝次君) 私からお答え申上げます。恩給制度につきましては先ほどもお話がございましたが、私どもが承知をいたしております数字を申上げますと、昭和二十八年度の予算によりまして恩給の給付総額が百十四億円でございまして、二十八年度の公務員の納付金が四十九億円ということに相成つております。従つてその差額は一般国庫から出ているということになるわけでございます。それから同じく国家公務員であります共済組合制度に対しましては、給付額の一割相当額を国が負担をすることになつております。この点は従来の厚生年金保険の坑内夫以外の一般労働者に対する分と同じでございます。それから同じく長期保険でございます船員保険につきましては、給付額の二割相当額を国庫が負担をいたしております。それから昨年私学教職員共済組合法というのができましたが、これにつきましても長期保険の部分につきましては、給付費総額の一割が国庫の負担でございます。それから市町村の職員に対しましては、別段、制度としては国庫負担の……、市町村職員共済組合法というのがございますが、これにつきましては、国庫負担の規定はございません。それから厚生年金保険のことは御承知の通りでありますが、現在まで一般労働者一割、それから坑内夫につきましては二割というのがそれぞれ毎年給付額に対する国庫の負担でございます。
○吉田法晴君 これは事前に総額なり何なり伺つておいて御質問をすべきだと思いますが、その場がございませんので、お尋ねしたのでありますが、今お話になりました一割、二割、厚生年金の坑内夫その他、それから船員保険の二割等は実は頂いた資料で私も承知をいたしております。先ほど厚生大臣はこの国家公務員の場合に雇用主としての負担とそれから国の負担、こういうものが、雇用主としての負担が含まれているから多くなるのだ、こういう御説明でございましたけれども、他の厚生年金或いは船員保険、これは率が違いますが、或いは共済組合その他と比較いたしまして事業主負担というもの、国が事業主として負担すべきものを考えましても、国庫の負担率が非常に高いことはこれは争う余地がないと思います。従つて他の制度の事業主負担も含まれておるから国庫負担率が多いのだ。これはちよつと説明になるまいかと思います。これは国が使用主であるから使用主としての負担は当然負うわけでありますが、その他のこの保険は制度から考えまして事業主負担以上に国が負担をしておる根拠はどういうところにあるのでありましようか、先ほどの答弁で納得が参りませんので、お伺いいたします。
○国務大臣(草葉隆圓君) 厚生年金では被用者の負担と雇用者の負担とを半々にいたしております。同額負担にいたしております。それでそれに対して一・五割でございます。そして国庫が坑内夫と一般とは違いますが、二割及び一割五分、お話のように恩給関係では先ほど局長から申上げましたように支給予算が二十八年度では百十四億納付金がいわゆる被用者負担が四十九億でございますので、普通の場合事業者負担としてはこの方式を例にしますと、四十九億が事業主負担そして、それと同額が厚生年金では国庫補助、国庫負担こういうふうになつている、まあこういうわけなのであります。それでその通りにならずに国庫負担が一層按分すると多くなつているものがあるじやないか、これも私は決して否定するものではないと申上げたのであります。
○吉田法晴君 実情はそうなんでありますが、従つて先ほどの御説明では説明のつかんところがある。国が使つておるからその老後については国が特別に見ると、賃金給料生活者として労力の続く限りと申しますか、働けるだけは働く、これは労働者といえども、或いは公務員といえども、地方公務員といえども同じだと思います。その労働力を年齢その他で失なつた場合の生活を見ること、それが今の場合には例えば本人とそれから事業主との負担で保険としてその老後を満たす、こういう建前になつている、これはわかるわけであります。併し公務員の場合に、老後を本人或いは国の事業主としての負担額より以上にその生活を見なければならんというなら、これは負担率から来ておるのではなく、老後の労働力を喪失した後の生活の実態から来ていると私は思う。そうするとその労働力を喪失した後の生活をどの程度に見なければならんかということはこれは同じだと思う。民間労働者といえども、公務員といえども見なければならん。それに国が見る責任を同じように考えるならば、これは国庫の負担率というものが今考えられておる、今現行制度の下における一割とか二割というよりももつと殖えなければならんというのは当然だと思う。国として労働力喪失後の生活について不安なからしめる社会保障制度というものを考えるならば、そしてそれが先ほど言われるように公務員の恩給に劣らない程度まで持つて行くとするならば、それが一つのまあいろいろ議論はありましようが、それで十分であるとは申せませんけれども、日本の老後の生活、労働力喪失後の生活の一応の基準だと思う、その方向で進めたい。そうするならばそれに持つて行く方法として具体的に問題になるのは、国庫負担率を殖やすということが当然結論として出て参ると思う。改善の一つの方法として国庫負担率を殖やすという点、それが大幅になるかどうかは別問題として思い切つて負担を、国庫負担を殖やして社会保障制度をよりよきものにするという御意図はないか、こういうことをお尋ねをするわけであります。
○国務大臣(草葉隆圓君) 御指摘のように、例えば六十歳になりましてその勤めておるところによつて老後のいわゆる国家保障、社会保障というのが、従来まで勤めておるところの如何は別にして、とにかく生活が或る程度賄えるという行き方にして行くのがこれが社会保障としては最も適切な行き方であり、それがうんとバランスが違つておるじやないかというような現状の状態では、不十分な社会保障と、こうなつて参る点が御議論の中心だと思います。私どももさように考えます。そこでこれを従つてこの厚生年金等におきましても、今回の改正では一応一万八千円で頭打ちをいたしております。本当ならば理想的に申しますると、給与の全額までずつとこれを頭打ちをせずに持つて来るのが理想的であろうと思います。例えば一万八千円であろうと、三万六千円であろうとも、或いは収入が四万円の方は四万円という行き方に持つて行くべきものと存じますが、従来八千円でそれはくくつておつたわけですが、この八千円では誠に現在の経済情勢或いは国民の収入実態等から考えて不十分であるから、今度一万円増しまして給与を一万八千円まで上げて来ました、或いはこれを三万六千円に上げる、或いは四万円に上げるということが、実態の通りにするのがこれは最も理想だと考えます。ただ、急激にそういたしますることは負担金が増しまするのと、本人の負担、或いは事業主の負担共々に同様に増しますので、これらの点を考えて、従来の八千円を一万八千円にいたしましたので、従つて支給額がお話のような給与とは低くなつて来るというような現状が起つたと思います。こういう点からもいわゆる内容の点からも今後大いに検討して変えべき点があると考えます。 それから更にお話の国庫負担を十分にして、従つて各自の負担金を少くしながら国庫負担を増して行く方法、これも当然考えられる方向であり、一つの途であろうと考えます。ただ、国庫負担をいたしまする負担金のバランスというのがあらゆる点から検討いたしまして、国力と合せながら考えて来なければならないと存じますので、従つてこれらの点も十分勘案して本年は従来の一割を一割五分というふうに増額をいたしました。これで全体の、すべてが満足であるとは勿論考えておりませんが、今の日本の財力では先ずこれが最大限であるという線で一割五分に増したような次第でございます。こういう情勢でございまするので、又こういう改正の内容になつておりまするので、今後更に一万八千円を上に引上げて実際の実態に即応するようにいたしたい、そういう点につきましては今後とも検討をいたして参りたいと考えております。
○吉田法晴君 今の御答弁で二つ問題があるのですが、前段の標準報酬月額八千円を一万八千円にしたと、それは三万六千円或いは四万円にすることのほうが望ましいというそのほかに、例えば年限の問題、勤続年数或いは年齢それから脱退手当金等についても改悪があり、これは率直に言つて改悪ということになると思いますが、これは事実は改悪ということであり、或いは改正をしたけれども改正が不十分であるということはお認めになつておる。従つてそれを更に改善したいとこういうまあお気持ちも一つあります。併しその気持ち通りに、希望通りに改善せられなかつた、或いは改悪さえ起つた理由は、国庫財政の負担力の限度、一〇%を一五%にしたのが、それが限度なんです。いわば国力という言葉を使いましたが、そこからまあ来ておる。そこに私ども、この貧しい、或いは底の浅い日本の経済、或いは国家の財政能力で、社会保障制度に金を重点的に出すべきか、或いは再軍備を優先的にすべきか、こういう基本的なそこに問題もございますが、国力を吉田内閣の方針でこれが限度とし、それから保険というものを前提にして、保険経済の上から本人の負担、或いは事業主の負担がこの程度であろう。これが理想通りに行かなかつた。或いは改悪せざるを得なかつた理由だと言うならば、まあ問題は、その中にも幾多問題がございますが、少くとも保険経済、或いはこの財源全体から言いまして、本人の負担、これが或る程度の限度がある以上、恩給と関連して国の負担をもつと殖やすということになぜ努力をしなかつたか。こういうことを申上げておるわけであります。そういう点で、原則的に本人或いは事業主負担の保険全体の中におけるウエイトというものを動かさないで、言い換えれば、国の負担率というものを僅かではありますけれども動かしたが、なぜもつと社会保障制度を整備したいとこういう理想があるならば、その国家負担率の点に飛躍的な努力をすべき、制度の上で飛躍すべきこの努力がなぜなされなかつたか、こういうことをお伺いしているのであります。 それからそれに関連して、今の八千円か一万八千円に上つた云々という点について、それでは厚生大臣としては、更に修正がなされるならば、その修正も又好ましいと、かようにお考えになりますかどうか。報酬月額の問題と、それから年齢年限の問題、脱退手当金の改悪等について、所見を承わりたい。
○国務大臣(草葉隆圓君) これは先に申上げました国庫負担の問題は、一つのやはりバランスというものがあると思います。従つて一割五分が二割になり、或いは三割になり、四割になるということは、そのものが大変この改善のようにも思えまするが、併しいわゆる保険年金としての立場から、国庫負担というものと、本人の掛金というものと、事業主の負担というものとが、一つのやはり今後バランスは或る程度とつて行かなければならん問題だと思います。それにいわゆる国力というものが検討されて、割出して行くべきものだ。で、そういう点から考えますると、相当国家の財力ができました暁におきましても、必ずしもすべてがいわゆる国費によつてという状態だけが、年金保険の建前ではないと考えております。勿論このできるだけの負担をする、相当の負担をする、そのバランスの点をどこで押えるかというものが、最も問題の点だと考えます。で、本年度におきましては、この点を実は相当努力住いたしたつもりで、従来の一割を一割五分に増額いたしたような次第でございます。なお、この年齢が、従来は一般の場合の五十五歳を今回六十歳にいたしました。大変改悪ではないか、一応そういうふうに、年齢が増しました点につきましては、そういう改悪のような印象を与えると存じますが、これは将来の日本人の年齢層における労働力というもの、そういうものを考えて参りまする場合に、私どもが実は改悪という意味じやなしに、これは検討して参つたのでございます。直ちにこれを現在、今までお約束しておつたいわゆる加入者に対しまして、明年から直ちに六十歳に延ばすとなりますと、いわゆる既得権であります期待権というものが外れて参りますから、これは二十年後になつてから六十歳に実施して行く、それまではこの現在の段階においてはだんだんと延ばして行こう、こういうまあ方式をとつて参つております。従いまして六十歳にいたしましても、直ちにこれを六十歳に年齢を引上げる、こういう方法をやめまして、二十年後に六十歳、で、日本人の今後の労働能力を、二十年後においては六十歳までは一つやれるような行き方を頭に置いて、そうしてこの行くことが、日本としては、この際改正するに当つて妥当ではないか、こういう一つの考え方をいろいろな点から検討いたしまして、五歳引上げたのでございますから、これは単なる一つの年齢の引上げによつて、受ける人が大変五歳だけの、まあ一種の損失をこうむるというふうな考え方ではなくいたしたのでございます。この点は一つ御了承を頂きたいと存じます。 なお次に、一万八千円で今度は切つたが、それを更に修正して行くならば、一層協力するのでいいじやないか、これも実はいろいろ検討して参りました。現在の八千円を一万八千円といたしまする問題につきまして、併しこれには相当段階の負担と、それから事業主の負担と、現在のような経済情勢におきまして、これを一躍増して参りますることには、相当な思い切つた行き方をとつて行かなければならん、こういうので、実は今度引上げるにつきましても、大体これで一万八千円にいたしまして、事業主の負担が四十四億円負担をすると存じております。従つて現在の事業主に対しましてこれだけの負担は止むを得ない負担として一つ忍んで頂きたい。それだけが又この掛金をされます被用者のほうにも当然負担になつて参るのでありますが、そういう次第でありまして、この現在の経済情勢なり事業の情勢なりを考えて、現在までの八千円では誠に不都合という点が相当ひどいので、従つて一万円を増加して一万八千円というところに行つたのでありまするが、今後更にこの経済情勢、すべての点を考えまして、検討すべき余地は勿論、これでこれが最終的のものであり、絶対的のものとは考えておりませんけれども、只今の段階におきましては、そういう意味において、一万八千円といたした次第であります。
○吉田法晴君 今の御答弁の中にも二つ、三つ問題がございますが、そのお尋ねしている中心点の、即ち今の保険制度で行くと、バランスという問題が、今の御答弁のように起つて来ます。或いは事業主の負担が四十四億殖える。でそういう保険で使用者或いは本人が負担する、それに国が補助をする、まあできるだけそれは少いほうがいい。まあ国力によつては、国力の最大までは考えようけれども、基本は当事者の負担、そうしてそれで保険するんだと、従つて労働力を喪失して後の生活の保障というものを自分自身、或いは関係者だけで負担するという建前か、それとも先ほど申上げましたように、この労働力喪失後の生活の保障というものを国の責任として見るか、根本的な立場の違いが議論の分れ目になつておるのでありますが、そこで保険制度として当事者が保険で責任を持つという点にさつき一番最初に言われたような社会保障制度の完備を考えるならば、国の負担というものを、もつと制度の中に負担率を多くするということを考えなければいけない、こういうことを申上げたのであります。依然として保険という観念、それから保険の中におけるバランスというだけをお考えになろうということなのか、それとも最初お尋ねし或いは答弁がありましたように、もつと国の責任をその給付の負担に負うこともお考えになるか、重ねてお伺いいたします。
○国務大臣(草葉隆圓君) これは国の責任ということは当然考えて行かなければならんと存じております。ただ国の責任と本人並びに事業主というものの負担というものとを適当にバランスを合せて行くという点でございます。ところで、単なる普通の民間会社のいたしまするようないわゆる保険というものとは違つて来るところがそこにあるので、又当然違うべきものであると存じております。国家が責任をそこに持ち、同時に本人並びに事業主との負担の兼合いを考えなからいたして参るという方針で参りたいと存じております。
○吉田法晴君 その辺は議論になりますから、もう少し飛躍的に、国家の責任というものを負担の上にも考えるべきだということを申上げて先に進みたいと思いますが、先ほど五十五歳を六十歳にしたのは必ずしも改悪ではない、この労働力の年齢的な限度と申しますか、年齢的な限度が長くなるだろう、或いはなつておるのじやないか、こういうお話でありましたが、それはすぐにやるのじやないが、二十年後に云々という御答弁でございましたが、或いは公務員の場合も五十五歳という停年制度が実際に考えられる。最近においては十五歳でなくて、或いは定員法の改正だとか、或いは軍事予算のために地方に交付いたします従来の平衡交付金或いは教育費等の中でも削減をして参りましたから、地方公務員の場合にも、五十五歳に達しないで、或いに四十五歳を越せばそろそろ整理の対象になつておるというのが現状であります。そうすると、生理的な或いは生命が長くなつたと言うが、或いは労働耐用力が長くなりつつあるという現状と、少くとも現在の政治による、政治の貧困かも知れませんが、政治による労働の限度というものとは食い違いがある。そういうのをこれから六十歳までも使うように国としても地方公共団体としてもして行くんだ、或いは民間産業の場合に、五十歳とか五十五歳の停年というものはそれを延ばすように努力をする、こういう方針を含んでの御答弁でございますか。労働年齢というものは単に生理的な問題でなくて、或いは政治的の問題でもある。この場合には政治的な要素が多分に入ると思う。或いは制度的なものでもあると思う。生理的なものだけでそういう御説明になつても、これは事実上通りません。これに対する政治的な態度を一つ伺いたい。
○国務大臣(草葉隆圓君) 厚生年金の改正に当りまして、実は私どもが検討いたしました点は、先にも申上げましたが、御指摘の恩給法等におきましては、昨年、五十歳を五十五歳に引上げ、恩給法でも現在五十五歳、従来は五十歳であつたのを五歳引上げた。今度厚生年金を従来の五十五歳を六十歳にいたしましたのは、先ほど申上げましたように、大体二十年後を一つの完全実施の期間といたしまして、最近日本の年齢層がずつと寿命が延びたと申しますか、そういう点もあり、又労働の情勢等も、将来とも考え合せながらいたした点でございますから、従いまして、今後ほかの保険制度、この年金制度におきましても、今後の公務員制度調査会等でどういうふうな結論が出ますかは別といたしまして、例えば五十五歳なら五十五歳で一つの年金という制度ができて来る、そうすると、日本人の寿命というものが少しずつ長くなつて来ておりまする現在から考えまして、その後国民各層においての年金制度による階層というものを考え、成るべく産業上或いはその他の仕事に携わるという状態を考えて来ることが当然であり、又妥当ではないか。今後、今までの年齢統計等から推計をいたしますると、そういう情勢を頭に入れて検討し、立案すべきものと考えたのであります。又この状態は必ずしも日本的な問題でなく、各国ともこれらの年金等を考えまする場合に、六十歳以下は殆んどない情勢でありますることも御承知の通りであります。各国とも大体六十歳乃至六十五歳以上が年金制度の置かれておりまする年齢制限でございます。こういう点等も具体的の比率等を検討いたしまして、今回五歳を延ばしたのでございます。従いましてそういう点において更に給付の内容等を今後検討して参りまする場合におきましては、厚生年金の一つの体系というものが十分に納得行くのではないかと存じております。
○藤原道子君 どうも聞けば聞くほどわからなくなるのでございますが、午前中の厚生委員会でも局長と質疑をやつたのでございますけれども、ほかの問題ではいろいろ検討してから、国庫負担にしても国情に合わして行くとか何とか言つておいでになる。ところが年齢の引上げについては、諸外国が六十歳乃至六十五歳だから、こういうことをおつしやる。日本の実情はそれでやつて行けると大臣はお考えでございますか。六十歳といたしましても、停年は五十五なんです。そうしてもつと五十五以下、五十歳ぐらいで首になる会社もたくさんある。その間の生活はどうしてやつて行くというふうにお考えでございますか。それが日本の国情に合つておるとお考えでございますか。それから二十年後と言われるけれども、その間に又いろいろ調査をされてからそういう立案をされても私はいいと思う。従いまして、厚生大臣として日本の実情から、こんなに失業者が多いときに、年とつて会社をやめて、ほかの会社へまだ就職が可能だとお考えでございましようか。そういうことができる国情だとお考えになりますか。それをちよつとお伺いしたいと思います。
○国務大臣(草葉隆圓君) お話のように、現在では五十五歳の停年制のところが大体多い。五十歳のところは殆んどございません。あとは六十歳でございます、五十五歳が大部分でございます。この実情は私も調査いたして承知しておりますが、従つてこの五十五歳を六十歳にいたしましたのも二十年後完全実施しよう、それまではこう延ばして行こう、恐らく一方におきましては停年制度はおのおのの事業所の関係ですから、私どもがこれをかれこれ今批判するわけには参りませんけれども、今後のこの日本人の年齢等も考えて参りまして、私はただ外国の例を一応申上げたので、何も各国がそうだから日本がそうするという気持は全然持つておりません。ただ世界的な社会保障の一つの線がそういうふうに現われておりますということだけ申上げたのであります。この日本人の年齢層から考えて参りまして、今直ちに五十五歳を六十歳にしよう、或いは五十歳を五十五歳にするということにおいては不合理があるであろうと思いますが、その不合理をなくするために二十年という一つの準備期間を、予備期間を置いて、その間の産業の情勢に合せて行くという考え方でそういたしたのであります。
○吉田法晴君 今の点を尋ねておつたのですが、一向満足な答弁が頂けませんが、二十年先とお話になりますけれども、先ほどお話のように五十五年停年というのが大多数である、そうすると五十五歳から六十歳までの間をどうして今のままで行けば埋める御方針か、制度として……。それまでに二十年経つたら六十歳まで働けるようになるだろう、なりつつある、こういう御説明です、いわばこれは政治的な問題です。ところが現状は政策としても国自身が整理の場合に五十歳まで使わなくて、五十五歳前で実際は整理しておられる。地方の場合についてもそうです、女の場合にはなおそうです。そうすると若しそれに合わして政策として六十歳まで働けるようにする、二十年の期間の間に民間の停年制も六十歳になるようにする、或いはそれを行政措置としても、例えば公務員の場合にも六十歳まで働けるようにするのだ、或いは六十歳未満では行政整理はしない、こういう方針を立てて行くという話なら、それは納得せんこともありませんが、併し何らの施策もやらないで六十歳にはおろか、五十五歳はおろか、五十歳未満でも整理するような方針をとつていて、二十年後には六十歳まで働ける、或いは六十歳でも働けるようになるだろう。こういうお話でははつきり納得が行かんから、具体的な政治的な態度、政策をここでお示し願いたいと、こう言うのです。
○国務大臣(草葉隆圓君) そこで労働年限が問題ですが、これは今御指摘のような問題なり、その他事業所における事業形態においての問題、或いは紡績工場等の場合とか、或いは普通の工場、或いは坑内関係、いろいろ事業所によつて違つて参つておりますことは、申上けるまでもないのであります。今回五十五歳を六十歳にし、五十歳を五十五歳にいたしましたのは、先ほど来申上げましたように、一つの観点をもつていたしたので、従つてこれの実施等におきまして、その準備期間というものを二十年置いたというのは、そういう意味でありますが、一方現在のような情勢において、例えば或いは事業或いは仕事によりましては、若くて一つの転換がなされて行く、或いは紡績等においては、四年、五年においてなされて、多く退職して行くというようないろいろの事業によりましては、まちまちな状態がありましようが、全体として、国民各層を、将来厚生年金が国民各層にこれを及ぼして行こうという場合におきましては、更にそれが引続いて通算等が行われるという現状等を考えますと、一つの年令の引上げというのは、むしろ全体から考えては考えるべきではないか、そういう考えを持つておるのであります。従いまして一見しまして、五十五歳を六十歳にした、そうすると現在の情勢はむしろ五十五歳が大多数の停年制であるからという問題もあり、この五年間のギヤツプをどうするかという点もありましようから、従いまして、これは直ちに明年から六十歳という引上げを行なわずに、その間は二十年間の一つの準備機関を置くという方法をとつて参つた次第であります。
○田畑金光君 関連いたしますけれども、只今厚生大臣の御答弁を承わつておりますと、諸外国の社会保障制度の趨勢等に鑑みて、この法律改正案を出されたということを承わりまして、その点に関する限りは至極く結構なことと、満足の意を表したいわけであります。ところが法案の内容を検討してみますと、政府の都合のよい点は取入れて、都合の悪い点は何ら顧慮されていないという憾みが多いわけであります。そこで一つ私お尋ねしたいことは、御承知のように我が国もILOに加盟してから両三年になろうといたしておりますが、一九五二年のILO第三十五回総会におきまして、社会保障の最低基準に関する条約が採択されておるわけであります。この条約案に対しまして、まだ我が国は批准をいたしておりませんが、厚生省といたしまして、厚生大臣といたしまして或いは政府といたしましては、この条約批准につきまして、どういうお考えを持つておられるか、政府の所信を承わつておきたいと思います。
○国務大臣(草葉隆圓君) お話のように、ILOに対しまして、報告をいたした程度で、なお加盟の批准の手続がとられておらないという点は御指摘の通りであります。そこで今度の改正なり、或いは又社会保障制度がILOで示しました点と相当内容も離れているのではないかという点が問題であろうと思います。私どもは実はILOの批准はできるだけ速かにいたすことが適当であるとは考えております。まだその批准をするだけの日本の社会保障がそこまで行つていないじやないかという或いは問題があるかも知れませんが、ILOの関係におきましては、九種類の中で、三つ以上があれの標準になつておりますと、これを批准し得る状態になると存じます。その点から申しますと、我が国のいわゆるその関係の、社会保障関係におきましては、それらのことはなし得る状態ではないかと考えております。ただ、今回の厚生年金は、受ける手当の四割以上であつたと思います。ILOのあれによりますると……。平均いたしますると、まだその点を少し下廻つておると存じます。で、下のほうはうんとよろしうございます、低額者に対しまする率は……。併し上のほうが相当、二割三分程度になり、最高はそのぐらいの程度に……。短い期間においては二割一分程度になりますか、長い期間で最高で二割八分程度でございます。平均いたしますると、四割までは参れないと存じております。受けました給与に対しまする年金の支給額がそこまでまだ行つていないと存じます。そういう情勢でございまするが、ILOの全体の社会保障の点につきましては、只今申上げましたように九つの種類の中で三種類以上がこれに該当するとやり得る状態になつております。
○田畑金光君 ちよつと只今の厚生大臣の御答弁私わかりかねるわけでありますが、近く政府としても社会保障の最低基準に関する条約については批准をするように努力したい。こういう御意向のように御答弁があつたわけであります。併し只今の御答弁を承わつておりますると、そのような趣旨で、或いは態度で政府がおられるといたしますならば、今回のこの法案等についても十二分にその趣旨がとり入れられて然るべきだと考えるわけであります。然るに政府の、殊に吉田内閣の今日までとつておる政策のあとを振り返つてみますならば、例えば労働政策の面から振り返つてみますると、一九四九年のILOの第三十二回総会で、団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約、これを先般批准いたしたわけでありますけれども、併しながら政府のとつておる労働政策を見ますならば、昨年の第十六国会におけるスト規制法案に端的に現われておりますように、団結権、団体交渉権を事実上抹殺しておる。或いは又年末における国鉄その他の三公社五現業におけるところの仲裁裁定等に対する態度を見ましても、全く公労法の精神を抹殺しておる。ところが表面的にはILOに加盟して、国際的なる水準にさも国内情勢、或いは国内条件が到達しておるがごとき装いをこらしておる、こう私たちは申上げざるを得ないのであります。只今厚生大臣は社会保障の最低基準に関する条約についても近く批准をしよう、そういうような御意図でありまして、そういう点、お話によりますると、いわゆる同条約の年金額というものは少くともその国の標準賃金額の四〇%を下廻つてはならないというこの原則に対しても、今回の法案の内容においてはほぼ近い、同程度のものであるという御答弁があるわけでありますが、然らば一体標準賃金額の四〇%を下廻つてはならないというこの原則が政府自身としても確認されてこの法律案を出されたといたしますならば、当然に標準賃金というものの資料が作成されて我々に示さるべきであると考えるわけであります。そういうような科学的な資料の上に立つて今回のこの法案が出されておるのかどうか、私は一つ厚生大臣の御答弁の裏打ちとして、一体標準賃金というものが算定されておるのかどうか、資料ができておるかどうか、或いは又当然に標準賃金の算定の裏付けとして、今日の産業におけるところの労働者の生活の実態、或いは又労働年齢、就業年齢、或いは又六十歳というものに一応線を置いたとするならば余命年齢、こういうようなもの等について十分に数字的な根拠があつて厚生大臣の説明がなされておると思いまするが、この点について資料を要求すると共に、改めてそのような科学的な資料に基いて一つ厚生大臣の御答弁を承わつておきたいと思います。
○国務大臣(草葉隆圓君) 先に申上げましたように、実はILOの社会保障に対する問題につきましては、これは御報告申上げて、その内容について更にいろいろ検討いたしておりまする段階であると存じます。これは直接実は厚生省でいたしておりませんので、関係方面、関係省と連絡はいたしております。そこでこの最低賃金の問題等につきましても、労働省におきまして検討いたしておると存じておりまするが、なお現在はまだそこまで行つておる段階ではないように承知いたしております。今度作りました厚生年金の基本的な資料等につきましては、年齢その他の、標準年齢或いは五十歳以上の年齢等につきましては飼料を後刻お届けをいたしたいと思います。そういうのを中心にいたしまして、先ほど申上げましたように、この今私どもが年金額としてこれをいたしましたのは、現在加入しておられまする人たちに対しまする給与の実態を中心にしてこの計算をいたしたのでございます。従つてこの標準的な最低賃金或いは標準賃金というものの上ということよりも、現在実際支給しておりまするのを分類いたしまして、そうして幾らの人は幾らのパーセントになるという行き方で計算をいたして参つております。
○田畑金光君 厚生大臣の御答弁は私非常に矛盾しておると考えるわけであります。年齢の五十五歳であるか六十歳であるかという問題は、成るほど資料にあるかも知れません。その資料は後刻我々に提供されるというお話でありまするが、私は年齢の五十五歳、六十歳の資料を提供してもらつても、何ら法案審議のプラスにはならんと考えるわけであります。更に私のお尋ねいたしておりまする本質的な問題は、一体ILOの先ほどから申上げておりまする条約の趣旨を考えてみますと、その国の標準賃金の四〇%を下廻つてはならない。でありますから私は一体我が国の標準賃金というものはどの水準、どのレベルにあるかというところに私は今回の立法の内容が、国際的な水準に照してどういう段階にあるかということが明らかにされようと考えておるわけであります。ところがその点になつて来ると、標準賃金についても、或いは最低賃金等についても、まだ検討中である。ところが都合のいい年齢の五十五歳か六十歳かというこの問については諸外国の先例にならつておる。ところが私厚生大臣にお尋ねしたいのだが、あなたの御答弁によりますると標準賃金という、給付の面においては現在の給付を受けようとする労働者の実情に即してこの法律を作つたのだというお話でありまするが、そうするならば年齢についても当然に日本の現在の経済の実情、或いは国民生活の実情、或いは産業における労働者の労働人口、労働生産年齢等を加味して年齢については当然私は検討されて然るべきだと考えております。現在の国民経済、国民生活の実情に即し、或いは企業における労働者の就業年齢等を考えましたときに、御承知のように日本の企業におきまして五十歳乃至五十五歳というものが停年制の一応の線である。坑内においては五十歳というのが停年としてもいいほうである。その他においては五十五歳である。これが今日の偽らざる現実の事実だと思います。一体厚生省はこういう点につきまして統計資料等を持つておられるのかどうか。こういう点について、給付の面のみにおいて実情に即してこの法律を作つたと言うならば、なぜこの労働人口等について実情に即してこの立法を提案されなかつたのか、この点について改めてお尋ねしておきます。
○国務大臣(草葉隆圓君) ここで申しておりまする標準報酬というのは、いろいろ建て方によつて違つて参ると存じますが、今回のこの厚生年金においても標準報酬と言つて申しておりまするのは、この一年の報酬の標準となる報酬をとつて参つたのでございます。従つてILOで言つておりまする大体の標準報酬という行き方もとりようによつては同じような場合もありましようし、或いはとりようによりましては違つて来る場合もあろうと存じます。全体から申しますると、この報酬の基本になる標準報酬という考え方が強いかも知れませんが、ここでいたしておりまするのは従来支給しております、私が実際上と申しましたのはその点でございますが、実際従来支給を受けておりまするその支給についての標準報酬を現して、その標準報酬に対する年金額というものを現して参つたのであります。そこで事実はこの現在受けておりまする額に対する標準報酬という意味で申上げたからそういうふうになつたのであります。
○田畑金光君 私のお尋ねしておることは、実際に厚生大臣の御答弁をそのまま受けて仮に承認するということにして、実際に給与を受けておるという意味の、そういう意味の標準額だというようなお話でありまするが、そうすれば私はお考えの基本的な思想として、現在の実情に即して標準報酬月額等についても一万八千円の限度を設けたのだ、こういうようなことだと思いまするが、そうしますると年齢の点について考えてみた場合に、現在の企業の実情等を見ましても、停年制というものを仮に考えて見ても、坑内夫については五十歳、坑外夫については五十五歳、一般産業等におきましてもせいぜい五十五歳というのが実情であるということであります。現在の段階であるということであります。殊に今日のような経済不況期において国民経済が非常に自立を求めて苦闘しておる。そうして又政府の施策のために多くの失業者が出ておる。生活困窮者が出ておる。こういうような条件を背景として考えましたときに、なぜ突如として五カ年の年齢を引上げるかということであります。引上げられた人がたはどうするかという問題が残されて来るわけであります。現にすでに坑内夫においては二千名前後の老齢年金を支給する人々が出ておるはずであります。で現在こういうような状態の下において、国民生活の下において、なぜ年齢のみを現実の実態から遊離して諸外国と肩を並べて六十歳というこういう高い線に引かれたのか、この点について私は先ほど来お尋ねしておるわけであります。
○国務大臣(草葉隆圓君) これは先ほど来縷々申上げたつもりでございますが、私の説明が或いは不十分かも知れませんが、本年からすでに坑内夫の給付が始まつて、従つてこれらの方々に対しましては、当然今度の改正によります支給額で参る。当然これらの人たちに対しましては従来の行き方をとつて参りまして、六十歳にならないと差上げませんという意味じやないのであります。六十歳になりますまでには、そこに先ほど申上げました準備期間を置いてやつて行く。現在の状態から今年は大体坑内夫七千九百六十四名程度支給を開始する予定でございますが、従つてこれらの方々には今度改正しました額によつてそうして支給を遡つていたす。だからこれらの人たちは或いは五十五歳或いは六十歳と、それまで待つてもらうという行き方はとらないで、その間の準備期間を二十年置いてだんだんに小刻みにやつて行く、こういうので影響する点をなくして参りたい。全体としてこれを従来の五十五歳というのを二十年後には六十歳という一つの線でやつて行くというふうに改正をいたしたのでございます。その六十歳というのはどの線で押して来たかというので、先ほど来だんだんと御意見を拝承して私どもの考えている点を申上げたような次第でございます。
○竹中勝男君 今の年齢の問題とは別なんですけれども、いわゆる五人未満の事業所にいるところのものが今度の厚生年金保険法に洩れているわけなんですが、これも又日本の経済を背景としたところの日本の産業の特殊性からやはり考えて行かなくちやならないというふうに考えております。日本人の労働可能の年齢というものはやはり今もお話があつた通りに、高熱の熱処理だとか、いわゆる体力の非常に消耗度の早い作業が日本の産業労働の一つの特色になつていると思いますが、六十歳までそこで働かすことが理想だというのは、現在においては少くともその能力がないと見なければならないと思いますが、これは今の御説明に対しては私はよくまだわかつていないのですが、少くとも日本の産業は、非常に零細企業がむしろ中心になつているような日本は国なんです。殊に弱小な資本によつて構成されている日本の産業の実体は、非常に小さい企業、従つて例えば十人使つている、十五人使つているというようところでも、五人以上というようにこの法律がしてありますと、即ち常傭の雇用者というものよりも、非常に臨時的なものにこれを切替えてしまう。或いは臨時的な嘱託だとか或いは臨時的な雇用に切替える虞れがある。事実それはやつておるのです。小さい企業では……。殊に京都の産業などを見ておりますと、殆んど京都市の産業というものは零細なんです。西陣の機業にしても、清水の機業にしても、染織関係等は……。そうするとこの厚生年金保険法というものには京都の都市に働いておる大部分の労働者というものは漏れてしまうことになるのです。私は質問を長くなりますけれども、一気にして一回だけしたいと思うのですが、それで一体どれくらいそういう五人未満の事業所というものに雇用されておる労働者があるかということをいつか私お伺いしたと思うのですが、百三十万ぐらいかと思うのですけれども、私の記憶違いかも知れません。これに急速に一つ成るたけ早い機会に、これを現在入れることができないとすれば、これを調査してこれがやはり年金保険法の対象になるように一つ政府当局としては努力されたいという希望を委員会でも述べたのですが、それに対してはその調査する企業だとか人員だとかいうものを是非この際とつて頂いて本気でこれはやはり促進して頂きたいと思うのですが、私の質問の要点はそういう実際上の準備をすでに始められて、来年度の三十年度の予算に始められておるかどうかということですね。これは社会保障制度審議会のほうでもこれは私も強く要望しておる事柄なので是非実現して、できたら一年間の調査期間で来年度三十年度からはこの五人未満のものもこれを対象とできるようなふうに促進して頂きたいと思うのですが、その準備の点について……。
○国務大臣(草葉隆圓君) 実はお話の点私どもも是非何とか急いで取運びたいと考えております。実は今回はそのところまで準備ができませんし、いろいろな問題がまだありますので、と申しますのは只今の話もありましたが、大体私どもの現在の計算では、五人未満の事業所は百三十万カ所ぐらいある。それに働いておる人たちを入れますと三百三十万人ぐらいになる。そこで現在適用いたしております事業所が二十三万ぐらいでそれに働いておるこの被加盟者が七百六十七号、二十三万カ所で七百六十七万でありますのに五人未満は百三十万カ所の多数になつてその数が三百三十万という状態でございます。そしてその労働の実態が従来の一応の調査では誠に多種多様になつております。その実態を把握することが大変困難であります。それから雇用形態が様々になつておる、従つて賃金が各種各様になつておるという状態でありまするから、これらを実は早速二十九年度から調査を始めたいと存じます。その調査は主として現在各府県に保険課を置き並びに保険出張所等を相当全国に網羅して持つておりますから、これらを中心に、こればかりでは勿論できますまいが、これらを中心にいたして参りたいと考えております。費用もちよつと正確な数字を持ちませんが、費用も計上いたしております。そこでただこの中小企業の経済的な面に与える影響を相当検討して参らなければならないのではないか、それから相当事務が複雑いたしておりますので、現在この保険事務に全国に携わらせておりますのが、二千七百五人でいたしております。これが現在大体普通になつております。従いましてこの記入簿等も外国式にやるように今度変えなければならないと思つております。そういうのと合せまして百三十万カ所、三百三十万という多数になつておりますので、これらの点も合せ考えながらいたして参りたいと存じておりまするが、併し要はこの五人以下の人たちを把握する、或いは被保険者にするということについては御意見の通りに私どもも考えております。是非ここまで行かないと、現在の五人以上では日本の中小企業の実態から考えて厚生年金としては十分ではない、こう考えておりますので、これは急いでいろいろな調査をいたしまして進めて参りたいと考えます。
○竹中勝男君 それに関連してもう一言だけ、大変結構だと思いますが、無論個々の経営体の事業主の団体というものが増大して、企業経営の面によほど考えなければならないという点はあると思うのですが、実は日本の零細企業の労働者というものが非常に多量に存在している。こういう人たちに何ら労働組合もないし、例えば他の社会保険の対象にも殆どなつていない。京都で漸く西陣に今度は健康保健組合ができるわけですけれどもそういう状態で、厚生年金保険にかからないというふうになると、結局こういう零細企業から脱落するところのものが今度は社会扶助の対象になるわけですね。又年齢が六十歳で五年間も生活の道がないというふうに、停年制との開きが五カ年出て来るというふうになると、ここからも社会保障の対象になるところの貧窮者というものが出て来る。国家がやはり国家の財政支出の面でこういう人たちを救済しなければならないということになれば、やはりこれは働く者の負担に税金によるところの財政、即ち働いている者の負担、或いは事業主の負担と別の道においてこれが負担になつて来るわけなんです。そういう意味においても零細企業の五人未満の労働人口、雇用人口というものに対しては徹底的な調査と早い機会にその対策を講ずるということが、日本の経済のやはり差し迫つた要請だと私は考えておるのですが、どうぞ思い切つてこれは調査費が幾らかかつてもこれは国の財政の上からプラスになることですから、徹底的に保健所の出張所だけではなくて、もつと地方の行政機関をフルに使つて十分の予算を以てこの一カ年に徹底的にこれを調査して来年の予算には再来年度の予算にはそれが組めるようにして頂きたいと思う。それは希望の点です。
○吉田法晴君 議事進行について、先ほど冒頭に委員長は副総理は云々と、それから大蔵大臣はおつたというお話でしたが、どうなりましたのですか。労働大臣も労働省関係の代表も誰も出て来ないのですか、来ておられれば一つお伺いしたいのですが、与党の委員もいない、(「いるよいるよ」と呼ぶ者あり)極めて不熱心で我々まだ質問をたくさん持つているのですが、この委員会の空気はだれてしまつてまだ続けるのですかといつたような調子になつてしまつた。大臣なり、それから関係者の出席について委員長から一つ弁明を願いたいと思います。
○委員長(上條愛一君) 大蔵大臣は目下地方財政委員会に出ておられますし、緒方国務大臣は内閣委員会へ出席しておりまして出席できないということであります。大蔵大臣は、今日は出席不可能だということであります。理財局の資金課長が代りに見えておるようです。
○吉田法晴君 労働大臣は……。
○委員長(上條愛一君) 労働大臣は呼んでおりませんでした。そういう事情ですが……。
○田畑金光君 労働委員会と厚生委員会との連合委員会ですから、労働大臣はやつばり出席願わんとこの審議に相当に支障になるのじやないかと思うのです。只今の調査の問題等に関しましても、私伺つておりまして、先ほど厚生大臣の御答弁によると、五人未満の事業所、百三十万カ所について全国の保険出張所を動員して賃金の実態等を調査されるというようなお話でありますが、非常に私は結構なことだと思うわけであります。併し一体できるのかどうかという問題です。御承知のように労働省においては標準賃金算定ということで、先般来大変馬力をかけておるようでありまするが、やはり餅屋は餅屋で、こういうようなことは地方の機関としては労働基準局があるし、府県の労働部があるし、こういう機関を動員せん限り、保険出張所の末端を動員しても、一体五人未満、百三十万カ所の三百三十万に上る事業所の賃金調査ができるかどうかということは、私おのずからもう明らかだと思うわけであります。こういうことはやはり厚生年金法に関してのみ厚生省の、而も末端の貧弱な保険出張所が動員されるということになつて来ますると、これは本来の仕事を忘れて労働行政の仕事に関与しなくちやならんということになつて参りまして、そういうことはお互い本省同士或いは地方の機関同士協力して、そうして正当な機関を通じてそのような調査活動等はやられたほうが、国政全般の運営においても結構なことじやないかと、こう考えますので、かような問題等もやはり労働大臣の出席がなければ審議を進めて行く上におきまして非常に支障があるわけであります。一つ委員長におかれましても適当な機会に、本日というわけではありませんが、労働大臣等の出席の上に立つて又改めてそのような機会を持てたら、なお結構だと考えます。
○吉田法晴君 労働大臣は呼んでいなかつたということでありますが、先ほど田畑委員から質問が出ましたが、ILOの条約に関連して厚生年金の支給額の問題等も出て参りますが、労働省からは問合せなり、或いは出席の必要性云々についてもお問合せがなかつたのですか。
○委員長(上條愛一君) ありませんでした。
○吉田法晴君 この前にも教育二法案のときにもいろいろ問題になつた。それから条約批准の際にも、これは外務委員会との連合の際ですけれども、労働省の関心の薄さを委員会の席上暴露して、我々不満の意を表したのですが、同様の不満をこの席上でも感ずるわけです。法案が早く審議を急がなければならぬ事情にあることは私どもも十分承知をいたしておりますので、これを理由にして審議を延すというわけには参りませんが、それだけに或いは副総理にしても、或いは大蔵大臣にしても、或いは労働省関係にしても、出席がないことについて不満の意を表して審議を続けたいと思うのであります。適当な機会に委員長から一つお伝えを頂きたいと思います。
○藤原道子君 緒方副総理はどういうわけですか。ほかの委員会だそうですが、こちらに来るのですか、来ないのですか。
○委員長(上條愛一君) 先ほどまでは内閣委員会に出席しておるため出席いたしかねるという回答でありました。
○吉田法晴君 その点は委員長から、或いは草葉厚生大臣を通じて、政府に私どもの不満を一つ伝えてもらうことで、質疑を続けたいと思います。先ほど田畑委員からILOの批准と関連をして質問がありましたが、それについて答弁ははつきりいたしません。標準報酬の月額の平均に比べて支給金額がそんなに低くない、こういう御答弁なのでありましようか。私は条約を今手許に持つておりませんけれども、月収の四〇%というのが私は条約の精神だと思うのであります。幾ら支給されるかは今俄かには数字を持つておりませんが、専門員室の資料によつても従来一万六千余円、それから本会議での質問等を見ましても、生活保護法による資金と関連をして、これは月でありますが、千六、七百円とか、それから或いは二千円近い数字で、生活保護法より低くなつておらん、こういう説明等がございまして、或いは低くなつておる、こういう議員の質問等から考えましても、月額にしても千五百円とか、或いは千二百円とかいうことだと思うのであります。それが月収の平均からいたしまして、これは労働省の調査によりましても恐らく一万二千円前後になつておると思うのでありますが、四〇%はおろか二〇%にもなりかねる云々ということになると思うのであります。どういう御答弁をされましたのか、重ねてその点はもう一度明らかにして頂きたいと思います。
○国務大臣(草葉隆圓君) 私は先ほどは、実はちよつと下廻つておると申上げたのであります。これは全体の平均をとつて見ませんとはつきりとは申上げかねると存じますが、二十年で三千円の人が七六・六%、五千円の人が五〇%、七千円の人が四五%、八千円の人が三五%、一万円の人が三〇%、一万二千円の人が二六・六%、一万五千円の人が二三・三%、一万八千円の人が二一・一%になつております。それで七千円で四五%、八千円になりますと三五%になりまするから、四〇%を下廻つております。八千円以下が多いのでありまするけれども、全体は多分これで人数をかけて割つて見ますと出まするが、四〇%をちよつと下廻つておるのじやないかと存じます。
○吉田法晴君 これはまあ計算をして論議をしなくてはなりませんが、そういう余裕がございませんので、先ほどの五十五歳、六十歳という点に返つて御質問をいたします。先ほど私は二十年後といえども政治的な、或いは社会的な停年制、或いは労働力の喪失の限界というものが直されなければ、二十年後には六十歳で差支えないということはないじやないか。そこで、それについての具体的な政策が、例えば現行五十五歳以下、或いは五十歳以下、もつと言えば四十歳前後で整理するというような方針をやめて、六十歳までは使おう、政府は、公務員は六十歳までは使つて行くというような方針をお示しになれば、これは或いは民間においても五十五歳の停年が六十歳になるということがあるかも知れんけれども、そういう具体的な政策がなければ、言われるようなことにならんじやないか。この政策についてお尋ねをしたい、こういう点でありますが、それについては答弁がなかつたようであります。重ねて御答弁を願いたいと思います。
○国務大臣(草葉隆圓君) 御指摘の点は主として公務員の場合をお指摘になつたと存じますが、(「公務員だけじやない。」と呼ぶ者あり)公務員の場合は現在学校乃至は国家、地方公務員の場合は五十五歳と存じます。従いまして四十五歳乃至四十歳で整理等のあります場合を仮定いたしましても、これは現在でも情勢が同じような情勢だと思います。むしろ五十五歳までは恩給年限或いはその恩給支給年限こういうことになつておりますので、これらの点を考えますると、今私が申上げたような情勢であります。そこでこの一般の厚生年金被保険者の場合は、現在は、藤原さんからも先に御指摘がありましたが、停年を設けておる会社、設けておらない会社もございますが、設けておる会社の多くは御指摘のように五十五が大体九〇%くらいであります。こちらで関東のほうを調査いたしましたのによりますと、五十歳が一件、六十歳が六件、あと五十五歳が八十数件、殆んど九〇%くらいであろうと存じます。併しこの情勢はずつと今後継続しますると、五年のギヤツプが起るのじやないかという問題が起つて参ります。これが今の御指摘の点だと存じます。で、今の状態は確かに御指摘のような状態になつておりますが、この保険の各種の検討をし、年齢を考え、それならばこの民間の事業会社の停年制を設けておるところの停年の多くは五十五になつておるが、これを六十歳に勧告し、或いは指導すべきものじやないかという問題が起つて来ると思います。併しこれは今俄かに私どもがここでかれこれ御答弁を申上げる段階ではないと存じまするが、(「それを聞いているのだ。」、「そこが大事なんだ。」と呼ぶ者あり)併しこの点につきましてはいろいろな点を総合いたしまして、六十歳というのを厚生年金では採つて行つた次第でございます。
○吉田法晴君 いろいろな点というが、そのいろいろな点が具体的な政策として出なければ回答にならんじやないかと、こういうことをまあ申上げているわけです。(「その通りだ。」と呼ぶ者あり)もう少しそれじや方向を変えてその点を質問いたしますが、一番最初に今年あたりから支給をされます例えば坑内夫について申します。恐らく大臣或いは厚生省は生理的な年齢がだんだんまあ長くなつて来る、こういうことかも知れません。併し問題は労働年齢であります。これはまあ十二年、十五年という点にも関連いたしますが、炭鉱の坑内夫、これは三種の被保険者であります。戦時中十二年ということでありましたが、それがこれも期待権を認めるということでありますから、二十年後になるのか。その点も伺いたいのですが、二十年ということになる、そうすると坑内夫を二十年、これは採炭夫に限りませんが、御承知のように坑内夫の大部分は採炭、掘進、そうして多少労働は軽くなつても低いのです。その他の運搬のごときは、これは採炭夫から十年経つて労働力が落ちたから運搬夫になるというわけには参りません。機械化して、ベルトにでもして二十年以内にしてしまうというなら別問題です。又人数も少いから、坑内夫の他の職種に転換するということは不可能であります。仕事の態様から言つても……。そうするとこの採炭なり掘進なりができなくなると、坑内雑夫になる以外にありません。これが十五年坑内夫を続けるということは、これは坑内の技術或いは機械化の発展にも関連するけれども、あなたの言われるように二十年なら二十年の間に十五年坑内夫を続けるということの非常に困難な実情は、私はすぐには直らんと思う。若しそれを直し得るような方策があるというならば、これをお示し願いたいと思うのです。そうして十五年経つて、そうして五十五歳まで達しなければ年金は支給しない。坑内を十五年勤めて五十五歳、それも実際には極めて少い。恐らく昭和十六年から始めて今年受給資格者が先ほど七百幾らというお話でございましたが、大半は今までの間にかけ捨てにしてやめてしまつている。終戦直後に帰つた者もおりますが、或いは整理された者もある。これは山が整理した者もあります。それから去年ぐらいから緊縮財政ではありませんが、政府の指導によつて整理をして来た。或いは賃金も抑える、或いは合理化方策で首を切つて参りました。その結果大半は退職してしまつて七百名か残つておる。更にそれが六十歳まで働けと言われても、恐らくこの十年、二十年の間に坑内を十五年やつて六十まで働ける人間は私はないと思う。あり得ると言うならば、そのあり得る政策を一つお示しを願いたいと思うのでありますが、そうすると五十五歳でも私は問題であつたというのに、六十歳にして、そこまでとにかく労働耐用年数があると言われるならば、それを一つお示し願いたい。
○政府委員(久下勝次君) 坑内夫の問題につきまして私からお答えを申上げます。いろいろな面に亘つてお尋ねのようでありますが、先ず基本的な点から申上げたいと存じます。坑内夫につきましては、一般労働者と違いまして、その労働の実態から考え、その資格期間が一般のものに比して五年短かく、十五年で資格年限が開始するようにいたしてあります。併しながら十五年坑内夫として働いたということは確かにその人の労働能力にも大きな影響を来たしますので、十五年間だけ坑内夫でありますれば、その後他の職場に転換しても、(「それはわかつておる」と呼ぶ者あり)五十五歳で開始をするということにいたしたのであります。それから現行法にございます継続した十五年間に十二年間という特典の問題でありますが、これは坑内夫につきましては現行の制度は二重の特典を与えておるというふうにも考えられますので、その面だけは今度の改正法では将来に向つては廃止をすることにいたしました。結局資格期間を一般よりも五年間短かくするということで、釣合いとしてもよろしいのではないかと考えて改正をいたしたのであります。御指摘のようにこの法律施行のときに現に坑内夫であります被保険者については期待権を尊重して、従来の継続した十五年間に十二年間という特例な期待権としてみて行くように考えておるのであります。
○吉田法晴君 事実の説明だけ、或いは法案の説明だけで、先ほどの五十五歳を六十歳にしたという点が合理的といいますか、或いは可能であるという御説明に対して、坑内夫を戦時特例によつて十二年或いは今後十五年働いたら五十五歳になつたらその五十五歳までが坑内夫であろうと坑外夫であろうと、それは問うところではない。勿論それはわかつております。併し十二年とか或いは十五年、普通の場合十五年ですが、十五年坑内で働いて、そうして五十五歳まで働くというのは実際には少い。これは坑内夫の平均勤続年数をとられたら、或いは炭坑夫の坑内から坑外を通算して働いた者の勤続年数をとられたらわかると思う。五十五歳までは極めて稀である。恐らく五十歳前後になりましたら、四十五歳ぐらいになつて、四十歳を越して坑外に上つた者は恐らくこれは雑夫でしよう。併しながらその雑夫が五十五歳になつたときにはもう労働能力というものは殆んど失つている。それを六十歳まで延べたとしても、それは政治的な年齢については、労働に堪え得るだろうと言われるけれども、実際の労働能力を失つておるというのが現状です。それが若しお調べになつてそうでないという資料があるならばお示しを願いたい。更に六十歳まで延びた、恐らくその場合には私は今の七百とか何とかいう問題でなくて、半減以下だろうと思う、実態を考えられたら……。実態を御承知ないから例を挙げて御説明しておりますが、これは坑外夫です、もう坑外の雑夫です。何と申しますか、多少よろよろとしながらといいますか、辛うじて五十五歳まで働いておる。普通の場合は違いますよ。初めから坑外におる者は別問題。坑内で十年とか十五年とか働いて坑外に上つた者は雑夫しかできない事実……それが五十五歳までは、これは停年がそこまでは可能だから、或いは厚生年金ももらえるだろうからということで、恐らく一生懸命に働いている。それを去年あたりは五十歳にならない前に老齢だというので、恐らくその労働能力を減退している者は整理されていると思う。そうしてこの大きな期待権を失わせておりますが、更に六十歳にした場合に六十歳まで保障を政府としてせん限り、或いは民間をしてそこまで停年を延びさせる、延びさせるという指導をせん限り、或いは労働の耐用年数を延べない限り、六十歳というものには行けんという現状だ。それならばこの法案は五十五歳を六十歳に直したということが無理だということが言えるじやないか。先ほどの厚生大臣の答弁から言つて、どういう工合に具体的な合理化をされるのか、事例を挙げましたから御答弁を願いたいと思う。
○政府委員(久下勝次君) 重ねて私からお答えを申上げますが、十五年間坑内夫としての被保険者期間を充たしておりますれば、その後他の業種に変りましても五十五歳に対してという一般の者よりも五年短かい開始年齢にいたしておるわけでございます。従いましてただ問題は、十五年充たさない、十五年坑内夫として働かなかつた人の関係でございます。坑内夫を数年やつて、その途中で他の職場に変りましたような場合は、これは御指摘のように六十歳になりますけれども、十五年間坑内夫としてやりますれば、その者はその者として他の業態に変りましても、開始年齢は一般より五年短かくなるわけでございます。
○吉田法晴君 法律の解釈をされるから……。五十五歳、六十歳というその法文の解釈で答弁されたのでありますが、問題は五十五歳を六十歳に延ばしたというのが、これはまあ政治的な理由であるかどうか知りませんけれども、労働の耐用年齢というもの、それから社会的な停年制に関連した社会的な労働停年制、まあ制度なり或いはそれまで使うかどうか、こういう問題に関連して御答弁を願つたところが、六十歳までは働けるようになるだろう。或いはまあするということはお話になりませんでしたけれども、なるだろう、こういうお話ですから、そこでまあ実際の労働の耐用年齢というものを申上げたわけです。炭鉱の場合に坑内を十五年働いておれば六十歳なら六十歳となり得るというならば或いは他の産業の場合に製鉄なら製鉄の圧延作業の例をとつても同じことです。圧延作業のこれは三交替よりもむしろ四交替が妥当だといわれるような労働の態様で、それは十五年のあれはございませんから、五十五歳までその五十五歳が六十歳になる。それでも製鉄で使うか或いはそうでなければほかで働いて六十歳までは働けるだろう、三十年経つ間にそこまで行くだろう、そういうお話ですから炭鉱の例を引いたのですが、それじや八幡製鉄の例をとりますが、圧延作業に従事した者が圧延作業には五年か六年しか続かなかつたとしても、他に変つたとしても六十歳まで働かなければ養老年金その他がもらえないということになる。そういうのが先ほど御説明のような六十歳まで働けるかということになりますか、というとなりません。それについてはどういう御答弁をなさいますか。
○政府委員(久下勝次君) 私のお答えの仕方が不十分であつたのかも知れませんので重ねてのお尋ねで恐縮でございます。六十歳まで何らかの形で労働者として働いて頂けるであろうというような予想でございまして、この点は現在、先ほど来大臣からも縷々申上げておりますように、最近の我が国の平均寿命、或いは六十歳以後の平均余命等を見ましてもそういうことが推測されるというふうに考えたのでございます。先ほどのお尋ねに対しまして私が坑内夫としては五十五歳になればもう労働不能になるというお話でございましたから、それは坑内夫で十五年間やりました人につきましては、五十五歳で開始をしてやりますということをお答えしたわけであります。問題は確かに五年間開始年齢を引上げますることは、坑内夫及び一般の労働者を通じまして相当社会的に、或いは労働者それ自身の労働条件につきましても大きな影響のあることであることは私どもも聞いているのであります。この点は先ほど来大臣からも縷々お答えを申上げておりますように、そうした社会的な或いは一般の雇用関係に対する大きな影響のありますることも考慮いたしまして、差当り三年間は現行通りの開始年齢が今後行われて、それからのち三年ごとに一年ずつ延びるというような極めて漸進的な方法をとりまして、そうした方面に対する影響を極力少くするようにしたいというふうな考え方をとりましたものでございます。実際問題として制度全体として考えまする場合に、私どもとしてはこういうふうに平均寿命が延びて参りました現在の数字を見て、それに基いて又将来の見通しを考えて行きまするときに、我が国の人口構成は今後ますます老人層というものが多くなる傾向にあるのではないが。そうなれば日本のような国においては確かに先ほど来御指摘のような雇用の機会等が少いということも考えなければなりませんけれども、又同時に多数の老齢人口を抱えて今後国全体としてやつて行かなければならない場合を考えました場合には、どうしても年金をもらつて、もらつたというのは語弊がありますが、年金の支給を受けて生活をして行く人と、それから実際に働いてこれらの人たちの年金の支給を可能ならしむるような人々との間の振合いというものも考えて行かなければならんと思います。こういうふうに考え併せまして、まあ労働可能かどうかということになりますと、確かにお話のように重労働或いは危険作業等に例をとりますれば、そう年老るまで働けるものとは私どもは考えておりませんけれども、但し、全体として考えて参りました場合には、そうした雇用の機会等も今後漸次変つて行かざるを得ないのじやないかということを一面において考えておるものでございます。そうした問題との見合いと申しまするか、見当を深く考慮をいたしまして将来の行き方としては、やはり六十歳の開始年齢にして五年引上げるということが私どもこの制度を考えるものとしてはとるべき筋ではないかというふうに考えておるのであります。
○委員長(上條愛一君) 緒方国務大臣は衆議院の本会議に出席中とのことであります。それから労働大臣は衆議院の法務・労働・人事の連合委員会に出席中だということでございます。
○吉田法晴君 大臣に質問をしている間に、恐らく平均年齢といいますか、生理的な寿命が延びたということからたろうという答弁はございませんでしたが、測らずも今そういう御答弁がございました。そういう生理的な平均年齢が延びた、これはまあ結核の薬が発達したりいたしまして、最近は結核がなおる病気になつてしまつた。或いはズルフアミン剤その他によつて病気による死亡率というものが非常に減つて来た。そういうことから平均寿命も延びたということはこれはわかる。併し問題は労働年齢だと思う。だから厚生省は厚生省でとられた平均年齢の延長ということでこういうものを出されたのでは、私はこれは間違いが起る。そこでまあ労働大臣おられんから申上げますが、問題はこの年齢は労働の年齢、労働可能の年齢なんで、労働可能の年齢が五十五歳から六十歳に上つたという資料があるのなら、これは私ども納得します。併し先ほど申上げたように、炭鉱の例をとつたり、或いは八幡の圧延作業の例をとりましたが、労働の実態というものは余り変つておらん。これは恐らく戦後の日本の経済復興、或いは生産性の回復、或いは発展の指数を見てもわかるのでありますが、労働の態様というものは殆んど変つていないのじやないですか。そうすると労働の平均年齢というものも私は上つているとは思いません。そうすると五十五歳を六十歳にし得る数字というものは、労働年齢については或いは労働力なら労働力の年齢的な測定というものをやるなら、恐らくこういう根拠は出て来ないと思う。だからそういう事実があるのかどうか、その数字によつて御証明を願うのなら私ども納得します。恐らくなかろうと思います。それからその労働年齢を長くする、政治的な施策をやる、例えば労働力を年齢的にすり減らすような労働はやめてしまうのだ、或いは機械的をこういう工合に進めるのだ、労働の負担をこんなに軽減するのだ、更に先ほど申しました六十歳までは首を切らんのだ、政治として首を切らんのだ。従つて恐らく民間も六十歳まで首を切らんだろう、五十五歳が労働力も関連して六十歳まで延びたのだろう、そういう施策をとるというのなら、私どももその点について諒とせんことはないけれども、そういう科学的な根拠もなく、或いは施策というものも何もなくて、ただ平均寿命が延びた、或いは余命が延びたということだけで、六十歳に変更されることはこれは改悪じやないか。改悪と言われる点について何ら反論がなかろうと言つたところが反論されましたが、挙げられた理由は生理的な寿命だけ……、改めて一つ御答弁を願いたいと思います。ただ言われたのは、老齢期の人が殖える、その老齢になつての生活費、これは恐らく生活保護法によつたり、或いは社会事業によつて養老院なり何なりに入れるでしよう、その程度の生活水準を考えて、その程度の生活水準をこの厚生年金保険が保障すればいいのだとこういう趣旨の答弁であつたかと思います。これはけしからん話であります。厚生年金保険法はそんなものじやなかろうと思うのであります。みずから働いて、或いは五十五まで精一ぱい働いて、そうしてその老後をどうするかという問題から私は出発していると思うのであります。一般的な老齢になつての、今の低い社会保障制度の下で養老院なり或いは生活保護法によつて得ているものと同じであつてよろしい、こういうことを言われるのかどうか。これも附加えてでありますけれども、御答弁願いたい。
○政府委員(久下勝次君) 私からお答え申上げますが、先ず第一に申上げたいと思いますることは、厚生年金保険の制度が現在の建前といたしましては、いずれも私から申上げるまでもなく、保険制度であり、被保険者の相互扶助の考え方で行われておるものでございます。そういうようなものが又財源的に申しましても中心になつておる制度でもありまするので、言葉を換えて申しますれば、今日及び将来の労働者及び事業主の掛金によりまして、これから将来の老齢人口を養つて行く、養つて行くと言うと、語弊がございますが、所定の老人の給付をいたさなければならないわけでございます。そういうことを考え合せましたときには、平均余命だけの数字を申上げましたことは、或いは私は多少見解を異にするのかも知れませんけれども、結局半面から申しますれば、この制度自身の中に、廃疾の状態になつて労働に従事できない人に対しましては、障害年金を支給する制度があるわけでございます。そういたしますれば結局生きておりまする限り、特に六十歳に至る程度まては、何らかの仕事に従事できるのではないかというふうに考えていいのではないかと思うのであります。そういうふうなことも再々考え合せまして、将来の方針としては現在数字の示すところに基きまして一応六十歳開始という方針をとりまして、ただ併しこれは二十年後に実施になるという制度でありまして、現実にはくどく申上げておりますように漸進的な方向をとつて参りまするので、現実の問題との調整もとれるものであるというふうに考えているものでございます。労働能力があるかないかというようなことにつきましては、そういう統計も、資料も正確なものはございません。問題は要するに生命表でありますとか、或いは平均余命というようなものに頼つて御説明を申上げる以外に、五十五歳乃至六十歳の人たちがどういうふうな健康状態にあるかというようなことにつきましては、的確な資料はございませんけれども、少くとも私どもの統計によりますれば、その年齢、五十歳乃至五十九歳時の人たちの相当多数の人が、現実には仕事に従事しているという別の統計もあるわけでございます。そういう点も考えまして全体として考えました場合には、特別の疾病等によつて廃疾の状態にない限りは、何らかの職場においてまだ働き得る人ではないかというふうに考えるのであります。
○吉田法晴君 保険だからというお話でございますが、本人、事業主の負担の範囲内でこの労働者の余後を見ようということではなくて、国の負担、国の責任を制度の上でもつと出すべきじやないか。これは一番最初に大臣と討論したのであります。保険の範囲内だけで、財源がこれだけだから、これだけしか出さんという、こういう御議論は一つやめてもらいたい。それから何らかの仕事をしているということでありますが、或いは失対事業等に働いております者の中にはそういう者がいるでしよう。或いは実際見てみますというと、整理された人が社会保障制度の不備のために失対事業にでも働かなければならん、こういう実態はこれは失対事業の相当部分の中に入つておる。従つてそういう数字から何らかの仕事をしていると、五十五歳を過ぎても働いておる者があるというこれは説明かも知れませんけれども、これは日本の現在の政治の貧困を物語つてはおつても、決してこの五十五歳を六十歳に上げ得る根拠にはならん、もう少し科学的な資料で御検討を願いたいと思います。労働省はおりませんけれども、或いは坑内夫について十五年という特例が考えられたと同じように、或いは重労働する者については五十五歳というものさえも私は高過ぎると思う。その点は一つ考慮されんことを望む。或いは六十歳というものが私どもの知つておる範囲内では改悪だと思いますが、それらの点についてはもつと科学的に御検討を願いたいと思います。そして厚生委員会で御修正を願うか、少くとも将来に亘つては御修正を願うように、労働年齢或いは労働の性格に関連してその測定に従つて御考慮、御勘考を願いたいと思います。それからそれをやつておつてもきりがございませんから具体的に一つお尋ねをしたい。脱退手当金に関連をいたしますが、先ほどもちよつと触れましたが、戦時中の坑内夫の十五年云々ということで、今まで一番近く厚生年金をもらえると考えて働いて来た、或いは掛金を支払つて参りましたのは、これは炭坑の坑内夫だと思うのです。その坑内夫の大部分が今までにやめた或いはやめさせられた、そうするとここに八百億という基金ができておるわけでありますが、その基金を期待した、或いはもらい得ると思つて今まで働いて来た者は、大部分これはもう現在においてはやめた者だと思うのです。或いはやめさせられた者だと思うのです。で、脱退手当金の問題については、これは条文を私がここで申上げるまでもなく、一般の人について或いは女子の脱退手当金について改正もなされておりますが、今この八百億の半分と考えれば四百億でありますが、四百億を積んで来た労働者の大部分はすでに受給の資格を失つてやめておる。これについてどういう工合にしたらいいと考えられるか、女子の脱退手当金のごときは、六カ月で十五日或いは一年で三十日といつたような現行法を二年経たなければやらんと、こういう工合に、これも改悪だと私は申上げますが、改悪をされております。一応法定年齢に達しました期待権というものは、改正法でも一応保障はされておるようでありますけれども、もつと広く今まで十二年或いはそれにこの戦後の十五年、具体的に言いますと昭和十六年から終戦まで四年五カ月ですか、それにその後の年数を加えて十五年経つたらもらえると、こうして働いて参りました或いは掛金を掛けて参りました人間の大部分に対して、どのようにこの厚生年金の恩恵を受けることができない者に対して、まあ期待権と申しますか、期待に対して応えようとされるのか、これは今後も起る問題であります。過去においても八百億を積んで参りますまでにも、すでに潜在的には起つておる問題であります。今後も起る問題でありますが、改悪と関連してどういう工合に考えられるか。
○国務大臣(草葉隆圓君) ちよつと一、二の点、私からお答えをしてあとは又局長からお答えしますが、お話のありました坑内夫だけの問題じやなしに、ほかの重労働も年限の短縮を考えるべきじやないか、これは御尤もだと存じます。今回も大分検討いたしましたが、いろいろ関連がありますので、例えば製鉄の熔鉱炉の問題とかこういう点はもう少し検討いたして参りたい気持であります。それから先ほど坑内夫の本年は大体七千九百六十四人くらいの開始と予想いたしております。他の点は局長から一つ……。
○政府委員(久下勝次君) 一般被保険者の期待権についてのお尋ねでございます。先ず従来長く被保険者でありまして、保険料を納付いたしました人たちが年金の受給年限を満すことなくしてやめて参りました人、或いは今後やめて行く人々に対しては、従来の現行の制度にございます脱退手当金の支給があるわけであります。その点におきまして既得権は十分尊重されて行くものと考えまするし、又この法律が国会を通過いたしまして後のことを想像して申上げますると、脱退手当金の額につきましては後ほど申上げまするが、現行法よりも内容は給付の額が落ちておりまするが、併しながらこの法律施行の時を境にいたしまして、少くとも現行法の時代において期待をされておつた受給額はそのままその期間に応じて支給するようにし、新らしい脱退手当金はその後の法律施行後の期間に応じて出すように考える次第であります。その他各種年金につきましても期待権はできるだけ尊重いたしまして、少くとも現行法で期待をされておる受給の内容を下廻らないようにそれぞれ期待権及び既得権を尊重するように考えておる次第でございます。それから女子の脱退につきまして脱退手当金を支給する条件が強くなつたというふうなお話でございますが、この点はもう御承知だと思いますけれども、女子につきましては二つの資格期間がございます。即ち脱退手当金を支給を受けまする条件として、先ず一般的には五年の資格期間が必要でございます。これは現行法の条文でございます。そのほかに特に昭和二十三年の改正で設けられましたのが分娩と結婚のために条件と資格を喪失いたしました場合には、御承知のように六カ月という非常に短期間の支給が行われておつたのであります。そこで今回の改正に当りましては、その一般的な五年という資格期間と、それから分娩結婚のため六カ月という期間の中間をとりまして二カ年という資格期間を設けまして一般男子と同様な制度をとりましたわけでございまして、一面においてはきつくなつておりますが、一面においては条件を緩和いたしたつもりでございます。それから脱退手当金の額が現行法に比較して相当下つておりますることは御指摘の通りであります。この点はもともと脱退手当金と申しますものは、この制度ができました当初から、本人の掛けた保険料に利子を加えた程度のものを還付するというのが建前でございます。ただ昭和二十三年のインフレ進行中の改正によりまして、保険料率を大巾に引下げましたにもかかわらず、脱退手当金の支給額を下げずにおいたのでありまして、これは近い将来におきまして合理的な改正が行われることを期待して、当時の暫定的な措置として行われたものでありまして、今日におきましては各方面におきまして脱退手当金の支給額が大きに過ぎるというような御意見もありましたので、その辺を本来の筋道に戻しました次第でございます。要するに結局脱退手当金で戻します金以外のものは、全部年金の支給に廻つて行くわけでございますので、全体としてはこれで筋も通り、調子も合つて行くものであるというふうに考えておる次第でございます。
○委員長(上條愛一君) 緒方国務大臣は、できれば三十分程度の間に御質問を願いたいとのことでありまするから、できますならば緒方国務大臣に対する御質疑をお願いいたします。
○吉田法晴君 前にも緒方国務大臣が御出席であれば尋ねたいことがあつたのでありますが、まあ他の方からも御質問がございましようから、前の分は省略をいたしまして、今お尋ねをしておることに関連をしてお尋ねをしたいと思います。私が説明するまでもなく、昭和十六年厚生年金法が施行せられましてから今日までに、これはまあ二十九年度予算による積立金額でありますが、八百億ばかりの積立金ができるはずです。これは今申上げたように旧法によつて或いは抗内十五年、その中には戦時特例の十二年というのもありますが、働いて五十五歳になるならば厚生年金がもらえるだろうとして、営々として働いて来て、その中から掛金を積んで来ましたものであります。それに事業主の積立が加わつておることは勿論でありますが、ところがこの法律によつて物価の高騰に即応して給付金額が上げられておらないで、抑えられておる。一万八千円ということで報酬月額は抑えられておる。それからこの資金の運用にいたしましても、極めて一部分が厚生年金病院その他に労働者が使用し得るように使われておるだけであります。法律そのものについても今まで積立てて参りまして、そして相当の保険金がもらえると期待した労働者、或いはやられると思つた事業主の期待にもこれは反しておるわけであります。それから基金の運用にいたしましてもそうでございますが、そういう点について内閣として、或いは副総理として、より以上に支給をすべきではないか。或いは運用についてももつと考えなければならんと考えておられるかどうか、一つ承わりたいと思います。
○国務大臣(草葉隆圓君) 御指摘のように本年度末になりますると、積立金が大体千百六十九億九千万円と予想いたしております。十年後には五千五百四十億円、先のは一千百六十九億九千万円、十年後には五千五百四十億を見積つております。従つてこの積立金の管理運用或いはこれが還元融資等について、もう少し被保険者に有利になるようにいたすべきものでないかという御指摘だと存じます。実は二十七年度におきまして十六億円、住宅と病院とに十億と六億、二十八年度におきまして二十五億、住宅と病院におのおの二十億と五億、これだけを融資をいたして参つたのでありますが、二十九年度、本年度におきましては三十五億円を予算に計上いたしておりますが、内容は今後検討いたして参りたいと存じております。だがこれではなお不十分である。それだけの積立があるなら、もつといわゆる被保険者の福祉増進等にもう少し十分に廻すべきものでないかという御意見であると存じまするが、この点に対しましては、今後は本年度は三十五億でございますけれども、更に相当もつと増しまして、それを被保険者の福利のほうへ廻して参りたいと存じております。一応本年度は三十五億にいたしております。又この保険金、積立金がかように増額いたして参りまするが、これは結局一種の還元積立という立場をとつておりまするので、従つてこれに合わして国庫の交付金、負担金を出す。それによる利率等の計算をいたして給付を考えて参つておりまする点もございまして、給付のほうにおきましても従来よりも相当今回は全体といたしましては思い切つて増額をいたしたつもりでございます。現行法におきましては主として養老年金が中心になつて参りまするが、月額百円、年額千二百円とこうなつておりまするのを、今度の改正では最近二万六千七百円年額といたしまして支給することにいたした状態であります。そのほか只今局長からお答え申上げましたような状態でございますので、全体といたしましては相当給付願の内容並びに額をずつと思い切つて増額いたしております。
○竹中勝男君 折角めつたに来られない副総理が、この委員会に見えておられるので、又小さい問題はわかられておられないというのが当然だと思いますけれども、二つだけ御質問したいと思います。一つは、この厚生年金保険は、将来の日本の社会保障制度を確立して行く上の基礎になる。即ち老齢の場合、障害の場合、遺族に対する生活を保障する基本的なこれは長期年金保険法なんです。これが将来全国民を対象にする全国民の老後を保障する少くとも法律の基礎になるということははつきりしておるわけです。即ち国民年金保険法を作る上のこれが基礎になる。ところが現在この年金法が各省に分散しておるのです。そうして形態も恩給局だとか、共済組合だとか、退職金制度だとか、或いはこういう労働者の年金というふうに種類も所属の省も違うために非常に等差があるのです。金額の上においても或いは年齢の上においても、公務員が五十五歳であるのに労働者は六十歳、更に体力を消耗しておる労働者が六十歳で、より消耗度の少い公務員が五十五歳というふうな矛盾が出ておる。或いは副総理の政権の下で軍人恩給法というものができておる。これも又国民年金保険を確立する上においては非常に障害になり、でこぼこになるというようなものがあるのですね。従つて私のお尋ねしたいことは、将来これを統合した国民年金保険法に作り上げて行く上において、日本の厚生行政、労働行政を統合した社会保障省とか或いは社会労働省というような一つのものにまとめて行かれるような構想を持つておられるかどうかということをお尋ねしたいのですもう一つの点は、今問題にしておつたんですけれども、この法律では五人未満の事業所に働いておるところのものは洩れておる。併し厚生省の意向としては、これを早急に徹底的に調査した上で成るたけ早い機会に五人未満の事業所にもこれを拡大したいという御意見なんです。希望なんです。ところがこれが、百三十万の事業所に分れておる。五人未満の……。そして三百三十万人ほどの人がいるわけです。これをこの法律の対象にするためにしつかりしたこれをつかんで行く、調査して行くことが必要なんですけれども、現在の厚生省の予算だけでは恐らくこれはこの一年くらいではできないだろう、又期間の上から待つも、即ち保険出張所などを通して調査するよりほかに、厚生省がするとすればそういうような方法しかない。やはりこれは政府としては労働省にも関係がある。労働省の協力も得なければならないし、地方庁の協力も得なければならないし、この調査をする上においては、相当の予算を持つてかからなければ本当な調査ができない。一体日本の行政の基礎になる客観的な科学的な調査資料というものが実際不備なんです。そのために議論ができない。みんな主観的な議論にばかりになつて、けんかになる、言い合いするようなことになつてしまいますので、こういう点においては先ずこの実態をしつかり客観的に、科学的に把握するための費用というものを、財政の中に少し思い切つて取られることが将来の国民経済の上に却つてプラスし、それが決してマイナスにならないと思うのですが、そういう点について政府としてのお考えを伺いたいと思います。その二つの点について……。
○国務大臣(緒方竹虎君) 第一の点でございますが、従来社会保障制度審議会からも、年金制度の統一ということをたびたび勧告も出ておりまするし、これは社会保障制度の進展するに伴つて当然のことだと思いますけれども、今の国情はまだそこまで行つていないような感じがいたしまするし、今の御指摘の船員保険とか、健康保険とかいろいろな保険制度がある。これらにもそれぞれ沿革があり、理由があり、これも今すぐ一緒にということは困難のように考えております。併しこれは社会保障制度というものは、今の社会の進展に伴つて、又国の事情が許せば当然その方向に持つて行くべきだ、そういう考えを政府として持つておりまするが、今のところまだ社会保障省というような一つの省にその行政を統一するということは、先ほど申上げましたような事情から、今のところはまだ構想は持つておりません。将来はそういうふうに行くべきだとは考えております。それから第二の点につきましては、これは私十分お答えするだけの用意を持つておりませんが、厚生省、労働省両省に亘つてのことでありまするし、今御質問にありまするように、政府としてもできるだけ力を入れて調査をやつて参りたいと考えております。
○吉田法晴君 副総理に一点だけお尋ねしたいのですが、私は冒頭から公務員或いは地方公務員或いは民間産業に働いております労働者といえども、賃金給料で働いておる労働者或いは勤労者という点については変りがない。ところが今竹中さんからお話のように、老後の労働力を喪失して後の生活の保障の程度には非常な差がある。而もこれが国が補助するといいますか、国が支出する率は非常に違う、或いは一五%、二〇%それから九〇%を越しておるものもあります。労働力を喪失した後の生活を保障しなければならん、それが国が責任を以て保障しなければならんという程度においては同じことじやないか、観点から言うならば同じことじやないか。そこで今の厚生年金或いは将来に亘つては国民年金と申しますか、そういう構想を考えても、国の責任というものはもつとあつて然るべきだ、こういうお話をいたしましたが、その基本精神には厚生大臣は異論はございませんが、国の財政力については現状この程度しかないから、殖やしてこの程度になつたのだ、或いは従来の旧法よりも改悪された点が多々あります。多々ありますが、それは国が出し得る能力が云々こういうことであります。そこで国の負担なり、国の財政の中でこういう社会保障制度に出すべき金額がどの程度あるか。これは二十九年度予算にも最初の予算案で社会保障関係を削ろうとされた。これは誤まつた方針でありますけれども、少くとも二十九年度予算の中にあります軍事費の増大或いは今後の防衛力の増大というものと関連する費用というものがあるわけであります。ですから二十九年度予算の中に、パンか大砲かという問題は現実に出ております。先ほど議論をしておつても、国の能力云々という点があります。今問題にしておりました八百億、或いは八百億が一千億になる。或いは数年の後には五千億にもなろうとしておる。それを誰のために使う、どういう方面に使う、こういうことになりますと、これはそれをできるだけ労働者に還元するように、或いは労働者の利用に便益するために使いたいという要望があつても、或いは資金運用部資金として今後の財政投融資、その中には軍需産業等もございましようが、その資金の運用面に関してもパンか大砲かという問題が出て来る。そこで厚生年金に関連をして、一般的な方向としては社会保障制度をできるだけ拡充して参りたい、こういう方針がございますが、抽象的な方針がありますが、具体的な二十九年度予算というか、或いは今後の防衛力増強云云の政府の方針からするならば、大きなここに矛盾があり、限界があります。そこで具体的にこの法案なり、或いは厚生年金或いは国民年金と申しますか、そういつた社会保障制度の完備という方向と、それから今後の防衛力増強という方針に関連して政府としてどういう方針をとつておられるか、とろうとされるのか、この点を一つはつきり承わりたいと思います。
○国務大臣(緒方竹虎君) これは国の財政が許す範囲、限度というものが一つの枠がありまするが、同時にその政府の政策によつていろいろな違いが出て参ろうかと思います。今の政府としましては、今もバターか大砲かというお話が出ましたが、それは総理から予算委員会等でたびたび申上げておるように、何としても今敗戦後の日本としてはバターも大砲もこれはただ形容詞的でなしに、これを並行させて行かんならんところに今後非常な政治のむずかしさもある。防衛を、これはいろいろ立場もありましようが、我々の考えとしましては防衛を無視することはできませんが、同時にそれと並行してやはり社会保障制度をできるだけ進めて参りたい。それは財政の許す範囲といいまするか、この財政の切り盛りにつきましてもできるだけこれに重点を置いて参りたい。これは今回の予算におきましても、決して予算の金額を減らしたというようなことではないので、財政の組み方が少し方針が変つたのでありますが、前年に比べれば相当の増額をしていることもありますし、又この年金の運用につきましても、今、のところこういう厚生年金の例でありますが、何としても安全にして確実つなことを先ず選ばざるを得ないので、資金運用部において運用しておりますが、これにつきましてはいろいろ御意見もあるようでありまするし、将来十分検討いたしたい、かように考えております。
○吉田法晴君 バターも大砲もとこういうお話でありますが、具体的に厚生年金の給付に関連しその財源、それから厚生年金の積立金に関連してお尋をしたわけであります。 〔委員長退席、労働委員長栗山良夫君着席〕 バターも大砲もと言われますが、二十九年度予算の当初は或いは国の負担を地方におつつけようとしたり何かされたが、これはやめられた。併し結果から見ますと、これはまあ具体的に細かく言わなくてはわかりませんけれども、その方針は率は維持された、或いは金額においては若干殖やされた点もありますけれども、その実施面に至つてはやはり社会保障といいますか、或いはそういう方面が崩れようとしているのが実際であります。それからこの厚生年金保険につきましても、或いはスライドの点から言いまして、或いは年齢の点から言つて、或いは脱退手当金の支給の条件から言つて、実際的にはむしろやはり後退があろうとしております。細かい議論は先ほどから実はしておつたのですが、従来はバターか大砲かという問題について経済力がこれを許しませんとか、或いは国民生活云々、こういうことで大砲よりもバターと言われて来たのが私は少くとも総理或いは政府が公式に言われた場合には、そうではなかつたかと思うのであります。その予備隊なり保安隊が必要であるかどうか、或いは大砲が必要であるかどうかという基本的な問題はここではいたしませんが、少くとも従来言われて参つたのは、私は経済の安定或いは経済の自立といい、或いは国民生活の維持向上というほうが先であつたと思うのですが、二十九年度予算以降むしろバターよりも大砲のほうが優先しようとしているのが実情だと思うのですが、併し副総理は今バターも大砲もと言われましたが、厚生年金に関連して或いは国民年金への理想方向、社会保障制度の拡充という点から言うならば、それは大砲に制約せられずに社会保障制度は拡充をして行きたい、こう言われるのか、或いは厚生年金の積立金に関連をいたしますが、先ほど現状はこうですというお話もございました。それから今確実な使用方法というお話がございましたが、方向として労働者の使用に利する方向を拡大しようとせられるのかどうか。その具体的な社会保障制度の拡充の方向に関連してもう一遍御答弁を願いたい。
○竹中勝男君 それに関連して、今副総理は軍備費と社会保障費は並行して考える、並行して増大するなら増大する、減少するなら減少するという意味だと思うのですが、御存じの通りに私の計算した、これは誰が計算しても大した差は出て来ないと思いますが、いわゆる日本で社会保障費という項目に属するものと考えられるものは、予算の中の七分くらいだと私は思います。ところが軍備費に関するものは二割以上になると考えます。そうして一方はそれから今年社会保障費を強化されたという、多少でも強化されたというその比率と軍備費を強化された比率とは並行してない。即ち全体として並行してないのみならず増強の分も並行していない。これは世界で軍備費と社会保障費の比率を私がとつて見ましたら、詳しくはこの間私が朝日新聞から出した書物に書いておりますが、世界で三位です。アメリカが軍備費が社会保障費に対して非常に率から言うと多い、次のフランスの分はホーチミン、仏印戦争をやつておるので、戦費が非常に嵩んでおる。その次が日本です。こういうことは日本政府の性格を決定する上に非常な重大な問題だと私は考えておるのです。西ドイツのごときは軍備費が三五%、社会保障費が三五%、これは並行しておると言えると思います。そこで副総理が今並行してやると言われたことには私は疑問がある。日本の政治における政府の基本的な政策としてはやはり軍備、私軍備は不必要だと思つておるのですけれども、一歩譲りまして軍備を必要とするというときに、或いは国の経済の負担力が足りない、弱小であるという場合に、軍備及び経済の上から社会保障はいずれもそれを裏付けるものだ、それを強化するものだというふうに私は考えておるのです。軍備費が足りなければ社会保障費を殖やせば軍備費は出て来る。日本経済が弱小であるとするならば、社会保障費を殖やすことによつて日本の生産力というものは増大すると私は感じております。これはドイツの経済学者の言葉を待つまでもなく、最善の社会政策は生産政策だというのが私どもの考え方である。そういう立場からもう一度バターと大砲が並行しておると言われる意味はどういう意味なんですか。
○国務大臣(緒方竹虎君) バターと大砲と並行しておると私が申しましたのは、金額が並行しておるということを申したわけではないのであります。大砲を考える場合にバターのことを決して忘れない。現在の国費の切盛りの仕方は、今御指摘のように防衛のほうは恐らく二割を少し上廻つていやしないかと思いますし、社会保障のほうは七分程度であろうと考えます。でありまするが、今敗戦後の日本の国情で私どもの考えとしては、少くとも独立を完成するといいますか、そういう意味で他国の防衛力に依存しなくていい程度まではやつて参りたい。それは無論地上のことを言うのでありますが、それまではできるだけ一つの目安を持つて参りたい。その一方の私どもとして止むを得ないという負担、それから今は何と言つても経済自立を急がなければ国の経済的の独立ができませんので、その意味から財政も国の財政を圧縮し、物価を引下げて貿易を振興する。国際収支の均衡をできるだけ急ごう。こういうほうに相当の重点を置いておりまするが、その間におきましても、社会保障制度というものの重要性は政府は十分認識しておりまして、そういう意味でバターと大砲ということを申上げたのであります。無論日本で大砲を持つと言つたつて、よく景気のいい軍備論者が言うような大きなものを持てるわけもなし、又持とうと今の政府は考えてもおりません。そこに始終戦力に至らざる防衛力というようなことが問題にもなつておるのでありますけれども、ただその苦しい財政、敗戦後の非常な窮屈なる底の浅い国庫の中からできる限り社会保障制度の拡充をやつて参りたい。そのことについて政府は決して関心を少くしておるのではない。財政の面においても僅かではありましようが、本年の、二十九年度の緊縮予算の中にも多少前年度を上廻る経費を計上しておるような次第で、そういう意味からバターと大砲という言葉を先ほどの吉田君の御質問の中の言葉をそのまま借用したような次第であります。
○田畑金光君 関連してお尋ねいたしたいわけでありますが、先ほどの厚生大臣の御説明によりますると、本年末には厚生年金が一千百六十九億一千万、十年後には五千四百四十億という誠に厖大な資金になるわけであります。而も副総理御承知のようにこの厚生年金の積立金というものは殆んどが労働者の保険金であり、又それに応ずる雇傭主の保険料には間違いありませんが、そういたしますならばこの厖大なる資金の積立におきまして労働者の負担額というものは非常に莫大な額に上るわけであります。然るに本年度の予算を見ますならば、厚生年金保険の費用として僅かに八億八千万円しかない、年間の利息の額にも満たないというのが厚生年金保険の実情であります。軍人恩給には六百三十億もさいておる、これが政府の予算措置であるわけであります。今回の造船疑獄を振返つて見ますると、検察庁の発表によりますならば、飯野海運の俣野健輔社長がリベートとして受取つた金が一億三千万と言つております。山下汽船の横田社長が受取つたリべートが一億三千六百万、これだけでもすでに三億に近い金になつておるわけであります。而もこういう金は或いは開発銀行の資金でありましようし、或いは市中銀行の資金でありましようが、更にその元を辿つて見ますると、こういう厚生年金保険の莫大な額が資金運用部等を通じて産業部門に融資されて、廻り廻つて僅か二つの会社の社長に三億近い金が流れて行つておる。ところが御承知のように本年度の予算等においては厚生年金保険額は僅か八億八千八百万円、これでは今の政府が何をやつておるか、今の政府のやつておることが勤労大衆にどういう搾取的な形態をとつておるかということはおのずから明らかであろうと考えるわけであります。副総理は今申上げました数字の事実を以て明らかに示しておるわけでありますが、いま少し、清潔な政治をやつてそうして無駄な資金の流出を抑えて社会保障制度のより一歩前進した方向に努力する御意図があるかどうかという点。第二の点といたしましてお尋ねすることは、本年末千百六十九億一千万に上ろうとする厖大な厚生年金の中から僅か三十五億の金を出して、労働者の福祉施設の増強に手を打とうとしておるのが現内閣の施策の姿であります。少くともこの厚生年金を納めている今日の諸産業における労働者の実情というものは、或いは失業に脅かされ、或いは賃金遅欠配に悩まされております。こういうような面等を考えましたときに、厚生年金の労働者福祉施策に関しまして、一層の積極的な運用ということが当然問題になつて来るわけでありまするが、いつまでもこういう目糞、鼻糞で以て労働者階級に対する福祉施策の、全体として満足しておられるのかどうか、この点を緒方副総理にお尋ねしておきたいと思います。
○国務大臣(緒方竹虎君) 労働者福祉のための社会保障制度の拡充につきましては、決して今の状態で満足しておるわけではございません。二十九年度の予算の編成に当りましても、厚生省の立場は私どもとしても十分にこれを尊重したつもりで、今年度の予算の編成の仕方にもいろいろ批判があろうかと思いますが、非常に圧縮されました予算の中に、政府としましてはできるだけのことをやつたつもりであります。併しこれを以て勿論満足するのではないので、今後この施設の、制度の拡充、又年金の還元的な考え方ということにつきましては、一層改善を尽して参りたいと考えております。
○田畑金光君 緒方副総理の答弁で洩れておりまするが、私の第一にお尋ねいたしましたことは、不潔な政治はやめて、そういうところに廻る金があるならば、これを積極的に社会保障施策に回する政府は肚がまえがないかどうかということが一つ。更に今の御答弁に関連してお尋ねいたしまするが、副総理の御答弁は抽象的であるわけであります。抽象論としては私は納得が行くわけでありまするが、私たちは抽象論でめしが食えるものではないのであります。国民の生活が安定になるわけでも断じてありません。千百六十九億に上る厖大な厚生年金を抱えながら、そのうち労働者の福祉施策として極く僅かな、三十五億の資金しか政府は予定していない。こういう面に関しまして私はもう少し積極的なる施策を施す意図があるかどうかということでありまして、抽象論を承わつておるわけでありません。言葉の魔術によつて国民をごまかされては大変困ることであります。どうか一つごまかしでなくして、又一つ政治には常に責任を持つという、こういう考え方で責任を持つた政治、責任を持つた具体的な予算面において、財政面から通じて国民生活の安定に、こういう政府は手を打つのだ、こういうような政府の方針を承わつておきたいと思います。
○国務大臣(緒方竹虎君) お答えをしますが、私は言葉の魔術を使うほどまだうまくありません。それから不潔な政治云々と言われますが、どういうことを言つておられるのか、今のリベートの問題かと思いますが、これは私は船会社の間の商慣習に関して、これは日本だけではなく、外国、外国といつても全部の外国かどうかは知りませんが、これはかれこれ言つても仕方ないと思います。政府の問題じやなく、これは利子補給の問題でありますが、戦争中にああいう七百万トンも持つていた日本の海運業が、今のような状態になつておるので、これを計画造船によつてだんだんに仮に戦前の状態にならんまでも、回復して行くということは、いわゆる自立経済の達成の上から、止むを得ない政策であると考えます。その利子補給の方法についてはいろいろ考え方もあろうかと思いますが、その補給の案をめぐつていろいろいまわしい政治行動が行われたということが問題であるので、その政策として造船計画をやつて行くということは、これは不潔な政治でも何でもない。これは政府としてもやはりその政策を続けて行くつもりであります。で、全体として政界の不潔ということは汚職問題が現に問題になつておるだけに、それがないとは申しませんが、これは政府の施策だけでなく、例えば選挙に非常に金が要るとか、政界の粛正ということをもう少しスケールを大きくして考えるべき問題であると、さように考えております。不潔政治と言わるる中で、政府が今責任を持つて答弁せんならんことは、政策ではなくて、その個々の政界の動きと申しまするか、それが利子補給の案をめぐつて、或いは計画造船の運動をめぐつていろいろあつた。これは政府の政策じやない。政府の政策としては別に不潔な政策をやつているつもりはございません。
○田畑金光君 緒方副総理は少し考えが薄いのじやないかと思うわけでありまするが、造船利子補給法によつて厖大なる政府資金が、国家資金が流れているわけであります。而もそれは御承知のように、国民の税金であります。その造船利子補給法をめぐつて五名の国会議員が逮捕され、それは殆んど自由党の議員の諸君でありまし。成るほどそのことは政府の施策でないかも知れんが、国民の税金が法律を通じ業者に流れ、その金を国会議員が、或いは政党が多額の献金を受けて或いは立法活動に参加し、或いは政党の運営に当つておる。而もその政党、その個人というものは与党でないかということであります。与党の上に立つておるのが現吉田政権だと思います。そういう意味合いにおきまして、そういう不浄の金が廻り廻つて今回の与党の運営になつておるといたしました場合に、一体政府はそれに責任を感じないかということであります。私も勿論海運政策そのものを反対、否定するわけではありません。ただ、私が同時に考えてもらわなくちやならんことは、あの戦争の犠牲というものは、断じて少数の船会社だけの犠牲でなかつたはずであります。我々国民大衆が戦争の最大の犠牲者であつたはずであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)その国民大衆に対して現内閣がどのような戦争による被害についてどういう賠償をやろうとしているのか。どういう賠償によつて戦争の犠牲を償い、そういう国民生活の安定の面における政府の損害賠償、戦争の被害に対する国民に対する償い、こういう面において現内閣の施策は何ら見るところがない。ここに社会保障制度という具体的な表現において我々は吉田内閣の政策の貧困を先ほどから追及しているわけでありまして、緒方副総理ともあろう方が、そういうような単純な考え方であられたら、国政の将来は危いもんだと私は非常に歎わしく感ずるわけでありまして、そういうような点において、私はもう少し慎重な御考慮を煩わしたい、こう考えるわけであります。
○委員長代理(栗山良夫君) ちよつと今の田畑君の御質問に関連して続いて一点御質問したいと思います。実は大蔵大臣が今日お見えになつておりませんので非常に残念でありまして、この点はいずれ厚生委員会の委員の方々が連合委員会を解かれてから、是非一つお尋ねを願いたいと私は希望を申上げておきます。その点は、只今保険の掛金が、草葉大臣のお話のように、現在でも千億を越しておる。十年後には五千億になる、こういう非常に多額の金が集まつて来るわけであります。これの使い方が非常に問題になるので、只今田畑君は非常に抽象的におつしやつたんでありますが、私は具体的に一つお尋ねをしたいと思います。それは現政府が資金運用部資金を通じて大衆的に集つた金を相当重点的に産業行政、或いはその他の行政に流しておられることは、これは否定はなさらないと思いますが、こういう形の中で、只今非常に問題になつておるのは、やはり中小企業に対する財政資金の投資或いは融資であります。これは幾ら中小企業団体が政府に陳情をし、又我我国会議員が運動をいたしましても隔靴掻痒と申しますか、希望額の十分の一にも達しない現状であります。従つて私は事態がこういう工合になりました以上は、少くとも厚生年金保険の掛金のごときものは全額をそういう金に投入してもらいたい。中小企業振興のために或いは労働金庫の資金等に是非とも私はこれは特別会計を設定してでもやつて頂きたいという強い要望を持つております。例えば共済組合のごときは、これは特別会計で現に運用しておるわけです。そういう具合にしてもらいたいという強い要望を持つておりまするが、これを来年度の予算くらいに実現をするお気持があるかどうか。或いは全額がいけないということなら半額でもよろしい、とにかくそういう積極的な意図をお持ちになつておるかどうかということをはつきりお答え願いたい。これこそ抽象論じやいけないと思います。その点をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(草葉隆圓君) それでは私から一応お答え申上げます。先に申上げましたように、本年末大体一千百億と計算いたしております。従いましてこれが管理、運営或いは融資等という点はよほど検討してかからにやならないと思います。現在は資金運用部資金のほうへ入れまして、そこで委員会に検討さしていたしておりまするが、その還元融資は先ほど申上げましたように本年度三十五億ということにいたしております。これは衆議院も参議院も厚生委員会等で先般来盛んにこの御意見が出ておりまして、私どもも検討いたしておりますが、これだけあるから、さてそれならこの金を別に一つのものを設けて、そうしていろいろお話のような事業に直ちにやり得るかどうかという問題でありますが、結局この金の多くは将来被保険者に対しまする給付となつて……、現在はこう残つておりますが、これがずつと先になりますと、この計算からすると、だんだんだんだんこれが減つて参りまして、そうしてこの額が給付額に廻つて参りますという計算をいたしておるのであります。従つてこの額は最も安定で確実で、そうして割に有利なものにこれを廻して行かなければならん、これが根本問題であります。そこで安全で而も有利であつて確実なということになりますと、国家の機関としていたしておりまする資金運用部等にこれを管理さして、そこで運営責任を持つて行くということが現在では最も妥当ではないか。ただ、この場合に現在は五分五厘の利率というのがもつと上げ得ないのかどうか、それからもう一つは還元融資という点をもつと多額にやれないかというこの二つの問題が起つて来る。被保険者に対する福祉の方面にもつと使い得ないか、これは先ほど吉田君の御質問なり田畑君の御質問にお答え申上げておいたように、今後はもつと検討して二十九年度は一応三十五億円の予算ですでに御決定を頂きましたが、今後はもつとこの点は検討いたして参りたいと存じておりますが、全体といたしましては元金そのものをずつと全部を融資する、こういう恰好にはちよつと行きにくいのであります。そこで今申上げたように、確実でそうして安全で而も有利で而もそれをしながら一方大体利子がこれで二十九年度におきまして一千百億円の積立をいたしました場合におきましても相当額、五十億くらいは出る予定だと計算いたしておりまするが、そういうふうな点を利用するというようなことは更に今後検討して、五十三億六千万円くらいは利息として二十九年度で出ると考えております。こういう点も考えまして今後は福祉の方面にも使いながら還元するという方向でいたして参りたいと存じます。
○委員長代理(栗山良夫君) 御答弁、時間がないようですから簡単で結構でございます。そうして而もこういう大切な資金ですから、安全確実な投資をしなければならんというようなことは御説明要りません、私もよく承知していますから。そういうことでなくて、問題になるのは一桁私どもの考えておることと草葉大臣の考えておられることと違うわけです。もつと大幅にできないかということを申上げておるわけです。それで例えば中小企業はあたかも不確実な不信用なもののようにおしやつたけれども、中小企業そのものは不信用のものであつても、それがめにこそ中小企業信用保険法を設けて、決して貸倒れのないように国が措置しておるわけです。従つて私が申上げることは、この元金を中小企業や労働金庫に出してもらいたいということを申上げ、更にそうすると保険の給付が始まると元金がどんどん減つて行くとおつしやるのですが、私はそんなに長い間貸してくれとは言つておりません。又中小企業もそんなに長い間政府から金を借りようとは思つていないのです。経済の安定するまで当座を凌ぐのに相当困つているから、そういう要望が強いわけです。日本経済がそんなに長い間低迷したのでは困るわけです。そこでこれは草葉大臣からそういうことをお聞きするのは無理かと思いますので、そういう方針について緒方副総理からお答を願いたい。それからその具体的なことについては大蔵大臣からはつきりと一つ言明を願いたい、こういうことなんです。……それは資金運用部でも別にかまわないわけなんです。ただこういう国が零細な金を集めて相当な巨額な金を運用しておるということは、これは否定し得ない事実なんです。然らばこの金を今のようなみみつちいことでなくて、もつと巨額を金を還元融資というか還元投資というか、とにかく中小企業の振興とか或いは労働者の直接の福祉とかそういうものに廻わさないか、こういうことをお尋ねしておるわけです。
○国務大臣(緒方竹虎君) それは無論方針としてはそう持つて参りたいと思いますが、私これから以上言えば抽象的になるので、この御議論は前から厚生年金に伴つて始終出ておる御意見でありまするし、今の厚生大臣からお答えしました金利の問題、それから還元融資といいますか、還元的に労働者の福祉を守つて行くやり方、そういう重点をどうやつて行くかということにつきましては、この前本会議で質問を受けた後も大蔵大臣と一度話合つたこともあるのですが、そういうことにつきまして今後よく検討いたしてみます。それ以上今お答えするだけの用意をしておりません。
○委員長代理(栗山良夫君) そういたしますと、私は厚生委員のほうへお願いを申上げておきますが、是非大蔵大臣の出席を求めてこの点は質して頂きたい。このときに私も委員長発言を一つ是非いたしたいように保留をいたしておきます。
○藤原道子君 この点については明日厚生委員会に特に大蔵大臣に必ず出席してくれるように只今要求いたしておりますから、明日御出席を願つて関連質問して頂いて結構だと思います。そこで緒方副総理にお伺いしたいのでございますが、この問題は私が本会議の質問のときにも質したのでございますが、これに対して大蔵大臣から資料を出すと言つてまだそれが延び延びになつております。明日もその点お伺いしたい……。
○国務大臣(緒方竹虎君) 今の融資についての資料ですか。
○藤原道子君 これからお伺いするのです。資金部運用審議会、これに任して運営するのが一番安全だというような只今の御答弁なんです。
○国務大臣(緒方竹虎君) 私は存じておりません。
○藤原道子君 いやこちらさんが……。(笑声)そこで安全というのが誰にとつて安全かということが問題になつて来る。資金運用審議会ですか、これの名簿を見てみますと、会長は内閣総理大臣、副会長は大蔵大臣と郵政大臣、そうしてその委員の中には資本家代表が大分入つておる。ところが労働者の代表も中小企業の代表も入つちやいないのです。ここで運用されている。これでその資金部運用資金でございますが、私が申上げるまでもないのでございますが、郵便貯金関係のものが三千四百九十九億七千五百万円、簡易保険、郵便年金保険、これらが千二百六十五億九千七百万円、厚生保険が八百三十一億九千八百万円ということになりますと、この運用資金部の金が六千三百六十三億でございますから、絶対多数は庶民階級が積立てた金なんです。ところがそれが何ら社会保障の面については利用されていないのです。そうして三十五億だの、雀の涙にも当らないようなものが廻されて得々として御報告しておいでになる。この利用されておる方面、投資されておる方面を見ましても、国債であるとか、或いは地方の問題であるとか、地方債ですか、或いは政府関係機関への債券であるとか、そういうところが多数なんです。ということになると、今すでにもう労働者の間には厚生年金不要論さえ起きている。これは由々しき問題だと思う。而も零細な積立をした金が今度受ける場合になると生活保護法よりも下廻る。営々として積立てて来たものがそういう扱いをされて、そうしてそれが妥当とお考えであるかどうかということをまず一点。それから緒方副総理は吉田総理と共にこの審議会の、いや厚生年金の審議会でしたかしら、それのときの審議委員になつておいでになつて、そのときには二割国家負担を妥当とするという答申をしておいでになる。
○国務大臣(緒方竹虎君) 私審議委員ですか。
○藤原道子君 ええ。
○国務大臣(緒方竹虎君) 委員じやないでしよう、私は……。
○藤原道子君 それはあとから伺います。そういうことで御自分がこれの発足前に確か私責任者だつたと、今日資料持つておりませんから、わからないとおつしやればあとで質しますが、政府の施行する場合になると予算がないから一割五分より負担ができない。それで給付は生活保護よりも下廻る、こういうことが妥当とお考えになつておられるかどうかという点を先ずお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(緒方竹虎君) 私は今のお読上げになつた委員になつていないと思います。従つてその内容を私はよく知りませんが、厚生大臣から妥当なお答えができるかどうか、私御答弁するだけの用意はございません。
○藤原道子君 厚生大臣には厚生委員会で幾らでも質問ができるのでございまして、緒方さんはちつともお出かけ願えないから、今日緒方さんから一つお伺いしたいのです。
○国務大臣(緒方竹虎君) 私はあつちこつち引つぱり廻されておりまして今日よく準備しておりません。お尋ねになつても御満足の行くような答弁ができません。
○委員長代理(栗山良夫君) 緒方国務大臣大変お急ぎのようですが、私重要な点でもう一点だけちよつと質問したいと思いますが、よろしうございますか。
○吉田法晴君 今の委員のことも一つ。
○委員長代理(栗山良夫君) これは事務局のほうで調べて下さい。国務大臣より調べたほうが早い。すぐ調べて下さい。緒方国務大臣にお尋ねしたいのは、社会保障という問題は全国民公平にこれは行われなければならないということはお認め頂けますでしようね。その点が一つ。それから厚生年金保険のようなこういう非常に長期の仕事につきましては、一たび制度を変えまするというと、なかなか途中において変えることは困難であります。こういうこともお認め願えると思いますが、この二つ如何でございましようか。
○国務大臣(緒方竹虎君) 公平という意味は……。
○委員長代理(栗山良夫君) それはまあ言葉を私簡単にするために端折つたわけでありまするが、例えばそれは国家公務員でありましようとも、公共企業体の職員でありましようとも、保安隊の隊員でありましようとも、或いは実業家であろうとも、労働者でありましようとも、農民でありましようとも、全部公平に行われるべきじやないか、こういうことを私は申上げたわけであります。
○国務大臣(緒方竹虎君) 法律の規定の許す限り当然と考えております。
○委員長代理(栗山良夫君) それと第二点の厚生年金保険法の問題で……。
○国務大臣(緒方竹虎君) 保険法を、容易に改正できないということですね。それはその改正の改正点でありますが、私はこの法律は、特別にこの厚生年金の法律に関連して改正がしにくいということはないと思いますが……。
○委員長代理(栗山良夫君) じやあもう少し申上げます。こういう長期の計画を実施を要するものでありますから、保険法の骨子をなす重要なポイントについてしばしばの改正ということはなかなか困難ではないかと、こういうふうに私は考えるのでございますが、如何でございますか。
○国務大臣(緒方竹虎君) そうでございます。
○委員長代理(栗山良夫君) そういたしますると、その点はよくわかりました。そこで更にお尋ねを申上げますが、今度のこの保険法の中で非常に重要な条件というのは、給付開始年が五十五歳が六十歳に切下げられたということにつきましては、これは非常に大きな条件の低下である。被保険者にとつては条件の低下であろうと思いまするが、この点は如何でありましようか。
○国務大臣(緒方竹虎君) その点は厚生大臣から……。
○委員長代理(栗山良夫君) これは常識問題ですから、副総理から一つお答え願いたいと思います。
○国務大臣(緒方竹虎君) 再三申上げましたように、こういう事情で六十歳にいたしました。
○委員長代理(栗山良夫君) 事情は別です。実際の現実として起つて来るのが、五十五歳で給付開始になつたものが六十歳になるということは、非常に条件として低下するのじやないかとこういうことを私は申上げておる。
○国務大臣(草葉隆圓君) その間二十カ年間経過規定を置いて、条件として従来の方々に対して不利益を来たさないように処置をする、こういう考えでございます。
○委員長代理(栗山良夫君) 運用じやなくて、それは従来も将来も両方ひつくるめて、少くも五十五歳で給付開始するよりは六十歳でするほうが条件としてはよくなるか悪くなるかというこの常識判断は、私は悪くなると見るのですが、この点は副総理としても常識問題としてお答え願える思いますた……。
○国務大臣(緒方竹虎君) それはその通りですね。或る意味において不利になる。そこでそれを補う意味の何か規定ができるのじやないかと思います。
○委員長代理(栗山良夫君) 私は条件が悪くなるその場合に、草葉厚生大臣に関連してお尋ねいたしますが、その五十五歳から六十歳に引上げたのは、要するに日本人の平均寿命が延びた、こういうことが第一の理由になつておるようでありますが、それでよろしうございますか。
○国務大臣(草葉隆圓君) それなり、それから先に申上げました今後の保険の見通し、厚生年金の見通し、そういうものと併せて先ほど縷々この点は御説明申上げた点でございます。
○委員長代理(栗山良夫君) それはいろいろ理由はありますが、その中の一番大きな問題はやはり平均寿命が延びたということですか。
○国務大臣(草葉隆圓君) 平均寿命が延びたのも一つですが、最も大きなものであるとは必ずしも言えんのではないかと思うのです、その点。それは尤も五十歳を中心にして考えますときには男子……、
○委員長代理(栗山良夫君) これの結論だけ伺いたいのですが……。
○国務大臣(緒方竹虎君) ちよつと時間が……厚生大臣にお答え願います。
○国務大臣(草葉隆圓君) 男子二十一歳、女子二十三歳ぐらい五十歳を中心に考えますときには、そういうふうに延びたと存じますが、それを延びたから更にそうすると労働年齢が延びたということになるわけであります。それもとつて参りました一つであります。(「労働年齢は延びるのですか」と呼ぶ者あり)いやいや、そうなつて参りますからということを申上げておるのです。
○委員長代理(栗山良夫君) 私そのことを途中から参りまして伺つていたのですが、僕は平均年齢が延びたからということが一番主要な理由になつておるように聞いたのですが、(「そうです、そういう答弁です」と呼ぶ者あり)その点をもう一遍確かめておきたい。
○国務大臣(草葉隆圓君) 主要な理由の一つではあります。
○委員長代理(栗山良夫君) そうするともう一つの理由はどういう理由ですか。
○国務大臣(草葉隆圓君) 主要な理由の一つと、それから全体の厚生年金の構成の上から考えて、今までの五十五歳ということを五歳引上げることが今後の厚生年金としては最も妥当である、こういう見通しでございます。
○委員長代理(栗山良夫君) 厚生年金を給付するということについての妥当性じやなくて、厚生年金の財源、そういうものから考えて妥当性だ、こういう意味でございますか。
○国務大臣(草葉隆圓君) ええ、財源は勿論入つております、その中には……。
○委員長代理(栗山良夫君) そうしますと五十五歳で給付を開始した場合と大十歳で開始した場合との財源の負担の割合等は数字的にできているのですか。
○国務大臣(草葉隆圓君) 現在のままで今のものをやると、一三%増でございます。
○委員長代理(栗山良夫君) 一三%……これは大したものでないですね、数字的には……。倍になるとか、五割増になるとか、そういうものじやないですね。それは大きな理由でないと私は断定しますが、そうするとそのほかにまだ大きな理由がありますか。
○国務大臣(草葉隆圓君) 大きな理由ということよりも、先にいろいろの情勢というものを申上げた中に二、三説明をいたしてあります。
○委員長代理(栗山良夫君) そうすると重ねて申上げますが、一三%増というのは、これは保険の将来の掛金等から考えて大した負担増にはならない、そういう工合に考えてよろしうございますか、若しそれを五十五歳にやるにしても……。
○政府委員(久下勝次君) その点私から申上げます。一三%と申しますのは、全体の財源に対しましてそれだけの財源が必要であるということであります。従いましてこれを現在の考え方から申しますと、差当りは現行の保険料率を維持して、順次引上げる建前をとつております。最終料率に引直しますと、衆議院の修正によりまして最終の保険料率は千分の六十一になる見込みでございまするが、五年の引上げをやめることだけによりまして、更にその上千分の十二程度負担が殖えて参ります。そうなりますと結局千分の七十三乃至四程度に保険料率がなるわけでございます。そういう影響がございますことを考慮いたしたわけであります。
○委員長代理(栗山良夫君) そうすると、私よく勉強しておりませんのでよくわかりませんが、原案ですと千分の七十三になるのがどれだけになるのですか。
○政府委員(久下勝次君) 原案でございますると……。
○委員長代理(栗山良夫君) 原案というのは衆議院修正の原案……。
○政府委員(久下勝次君) 衆議院修正の原案によりますと、当初は千分の三十で出発いたしまして、それを五年後に千分の四十にし、十年後に千分の六十一にしなければなりません。それを五年の引上げをやめることにいたしますと、更にそれだけで最終料率に引直しますと、千分の十二程度余分に料率を引上げる結果になります。
○委員長代理(栗山良夫君) そういたしますと、最終において千分の六十一が千分の十二殖えるわけでありますから二割殖える、こういうことでございますね。じやその程度では私は大した負担増にならないと思いますが、そうお考えになりますか。要するに五十五歳を六十歳に引上げるための非常な理由に私はならない、こういう工合に思いますが……。
○政府委員(久下勝次君) これは見方の相違でございますから、多いか少いかということをあえて私から申上げる必要はございませんが、ただ問題として御考慮頂きたいと思います点は、現在の被保険者は千分の三十の料率で負担しておるわけであります。これを一挙に五年後に四十に上げますのは、その後一挙に千分の七十二、三に上げるということには参らないんじやないか。もう五年くらい段階を置く必要があるんじやないか。実際問題としては、若しそれを実施すれば、そういう考え方をとらざるを得ないと思います。そういたしますと結局現在の被保険者が老齢に達して年金を受けるときには、現在の被保険者として負担をいたしました保険料率の二倍半くらいのものを、その現在の被保険者が年金をもらう時期に働いておる労働者が負担をしなければならない、こういうことになるわけであります。言葉を換えて申しますると、将来の被保険者の犠牲と言うと語弊がございますが、負担におきまして現在の被保険者が年金を支給するというような結果になりますので、保険料率を漸次引上げるにいたしましても、そうした関係を考慮しなければならない。余り大巾の保険料率を引上げることによりまして将来の被保険者の負担を増すということは、いわゆる完全賦課式の欠点と非難をされておりますような点も出て参りますことを、私どもとしては考えております。
○吉田法晴君 今の話は率だけ出されましたが、標準報酬月額は少くとも給与の現状から考えると、現在で抑えられております。それから改訂は五年に一回ということですから、少くとも例えば四〇%なら四〇%という率を出されても、総取得の何%になるかということは別問題だと思いますが、これは飽くまで標準報酬月額を固定してのお考えでしよう。
○政府委員(久下勝次君) お話の通りでございます。只今申上げました料率は標準報酬の額は最高一万八千円に将来とも続けて行くものとして計算をしております。
○吉田法晴君 もう一つ、そこでまあパーセンテージだけ挙げられておりましたけれども、その所得なり或いは物価の変動とは関係がないということは明らかになつておりますが、もう一つはこれは先ほど草葉厚生大臣は国の負担率を上げる云々というお話が出ました。それも国の負担というものは固定してそういう御議論になつているということも、これも間違いございませんね。
○政府委員(久下勝次君) 私が先ほど申上げましたのは、この種の長期保険の計算の仕方を先ず申上げる必要があるのでありますが、人口の推移或いは貨幣価値の変動、従つて又被保険者の給与なり人数なりの変動につきましては、将来非常に見通しが困難でありますので、一応現在の被保険者の数に影響のないものとして総人口にも変りのないものといたしまして、従つて又賃金のベースにつきましても現状が維持されるものとしての計算をするのが通例でございます。その例にならいまして計算をしておりますので、従いまして御指摘のように国庫の負担につきましても、又現在の状態が続くものとして計算をしておるわけであります。
○委員長代理(栗山良夫君) そこで私は重ねて草葉大臣に伺いますが、平均年齢の延長更に五十五歳から六十歳の間においてはまだ労働力もあり、就労の機会もある、こういうことをおつしやつたのです。私これを聞いておつたのですが、そういうことをおつしやつた。そこで就労率ですが、五十歳から六十歳の間で、就労率が国家公務員、地方公務員、公共企業体の職員、旧軍人それから民間人、こういうものに分けて、どういう大体就職率と申しますか、就労率になつておるか、この点はおわかりになつておりますか。
○政府委員(久下勝次君) 各業種別のお尋ねでございますが、そこまでの数字は私どもとしては見ておりません。ただ昭和二十五年の国勢調査の集計の結果の数字がございますから、御参考に申上げたいと思いますが、男女合わせますと総数におきまして五十歳乃至五十九歳の就労の実情を申上げますと、就業中の者が六七・四%、完全失業をしておりますのが一・二%に過ぎない、こういうような数字も出ておりますので、これらのことは、この点は男子と女子と若干の違いはございますけれども、具体的に申しますと、女子のほうが実際に就労しておる率は少うございまして、男子のほうが大分多くなつておりますが、双方合わせまして今年上げましたような数字てございます。即ち五十五歳から五十九歳、六十歳近くになりまして相当の人が現実に仕事に従事しておるということが数字的に現われております。
○委員長代理(栗山良夫君) こういう問題を扱うときには、少くとも厚生大臣なり厚生省としては、今のような実に大ざつぱな数字を以て五十五歳から六十歳に上げ得る根拠にせられるということは、私は非常に当を失しておると思います。特にこの際お尋ねをしたい。私どもは常識的にそう考えておりますが、五十五歳に労働能力を喪失した民間人が就労をする比率よりは、国家公務員なり或いは地方公務員なり或いは公共企業体の職員なり、こういう人が就労するほうが機会に恵まれておると私は思つておる、非常に恵まれておる。これを若し反駁なさるなら資料で反駁してもらいたいと思いますが、現実に恵まれておる。それは国或いは地方公共団体の関係しておる団体というものはたくさんある。こういうところには殆んど吸収されておるところを見ても、これははつきりしておる。民間人というものはそういうわけには参りません。而も実際に健康な労働能力を持つておる当時の給与から言いましても、只今の給与体系からいえば、こういう大きな組織に乗つかつておるいわゆる俸給生活者、こういうものの給与がいいということも否定なさらないと私は思います。民間人のほうが遅れておるということは否定されないと思います。そういうことがありながら、ここで公務員なり公共企業体の職員、そういうもののいわゆる厚生年金に相当するような恩給等の給付開始の年齢は五十五歳に、そのつままにしておいて、そうしてこの厚生年金保険法だけ現行よりも悪く六十歳にされるということは、誠に片手落ちだと、こういうふうに私は言わざるを得ない。この点私はそういうふうに断定するわけですが、若しこれを否定なさるならば、先ほどのどうも了解しにくいような理由でなくて、もつとはつきりした理由で一つこの委員会で説明をしておいて頂きたい、私はそれを願います。特にこの間復活いたしましたこれは草葉君の一番得意な軍人恩給の復活はこれは五十五歳になつておる。これを五十五歳にして、長い間産業労働に勤めて来たこの一般勤労者諸君の給付開始年齢を六十歳にせられた根拠を一つ明白に承わつておきたい。この二つが、今申上げたことが明らかにされなければ、これは五十五歳を六十歳にした理論的根拠にはならないと思います。いろいろな理由がありましよう。
○国務大臣(草葉隆圓君) これは御案内のように、去年の八月一日の恩給法改正には五十五歳であつたものが五十五歳になつた、それで今度五十五歳を六十歳にしたかというと、そういうものではないのでありますが、私はこれは将来厚生年金保険法が六十歳ということで決定いたしますると、大体恩給とか或いは共済とかいうものは、先ほど来だんだんお話になつたように、一つの統一した制度に近ずいて来る。六十歳なら六十歳というふうに一つの今後の基準になつて来るものじやないか、こういうふうに考えております。
○委員長代理(栗山良夫君) こういう重要なものをそういう漠然たる見通しで立てられては困るので、いろいろな条件というものは改善されて行くべきなんで、私は五十歳を六十歳に引上げることは絶対反対なんです。これは恩給にしても何にしても五十五歳を私は引上げるようなことは反対でありまして、現行法でさえ認めておつたものを大十歳に上げられることの不当性を私は追及しておるわけです。特に民間人の就労の機会というものは非常に少い。非常にみじめな仕事をしておるということから考えても、これだけ立派な保険法を以て社会福祉の事業をやろうとするならば、僅か二割の将来の負担増になる程度のものならば、五十五歳でこれは断行すべきじやないかということを私は考えるのです。そこでもう少し公平の原理から言つて、非常に不公平の謗りを免がれないので、そこで私は申上げる。特に公務員は五十歳なのを五十五歳に引上げた。従つて、一般勤労者のほうに五十五歳を六十歳に引上げるとおつしやいますが、これは公平ではない。基をなすものはやはり労働力でありますから、決してそんなことは公平じやない。そういうことは理由にならないので、もつと理由になることをはつきりと一つお話を願いたい。この点も私は今日御即答が願えなければ、次回に委員長発言をいたしまして質しますから、保留をいたしておきます。この点は保険法のやはり私は眼目になる点だろうと思いますので、保留をしておきます。で、次回にもう少し筋を立てて御答弁願えるか願えないか、その点だけ質しておきます。(「修正々々」と呼ぶ者あり)願えますか。
○政府委員(久下勝次君) いろいろ申上げておりましても、御了解を得られませんで大変残念に思いますが、六十歳に開始年齢をいたしましたことそれ自身の理由といたしましては、先ほど来縷々申上げておる点でございますが、私どもの現在得ておりまする数字、これは主としてまあ平均余命並びに日本人の生命表等から出て来る数字でございます。だんだん我が国の人口構成も将来になつて変つて来る。特にこの年金制度として注目しなければなりませんのは、老齢人口の比率がだんだん殖えて来る見通しでございます。現在のところはまだせいぜい七、八%くらいの数字が人口問題研究所の数字から出ております。これが四、五十年経ちますると、全人口の一八%くらいを老齢人口で占めるようになるわけであります。これもこの老齢人口と申しますのは、六十歳以上の年齢層の者を押えての数字でございます。問題はそういうふうな多数の老齢人口を限りある生産人口によつて支えて行くという恰好になりまする点を考えました場合には、この年金制度を考えますときには、そういう考慮を払つた上で、年金開始の年齢というものをきめてかかるべきであるというのが私どもの考え方でございます。現在の段階におきましては先ず一応の平均余命等の数字から申しますれば、すでに大体そういう時期に近ずきつつあると思いますが、ただいろいろ御指摘のありまするように、実際に社会上の影響も大きい問題でありますから、方針はそういうことにいたして置きまして漸進的な方法でやつて行くという考え方をとつた次第であります。
○委員長代理(栗山良夫君) 今おつしやつた理由というのは、これはいわゆる勤労国民全般に対する一般原則なんです。だからその意味において若しそれを是認するとすれば、今行われている恩給法なり、共済法なり、或いは保険法等に対して不公平がある。その不公平をどうせられるのかということを私は尋ねているわけでありますが、その不公平があるから将来どういうふうに直すのだと、こういうふうにおつしやればそれで理解できる。そういうことなしに、将来に対する対策というものを全然お述べにならないと、ただ今言つたのは一般原則を、この保除法の適用を受ける勤労者に当てるから理解しろというふうにこう押付けられても理解ができないということを私は申上げている。従つて今その御答弁を何回繰返しても僕は了解できないので、次回にもう少し筋道を立てて公平の原則に沿うように、六十歳に引上げるなら引上げる、成るほどいろいろな観点から理論的に推論してこれは止むを得ないという工合いに我々が理解し得るような説明を願いたい。理解するような理由がなければ、これはもう一遍年齢の問題は再検討しなければならない、こういうことになろうかと思います。今の厚生省からの御答弁というものは、およそ科学性、合理性を私はないと認める、押付けだと思う。これは困るとそういうことを申上げている。それで大臣よろしうございますか。次回に一つよく御研究になつて御答弁願えますか……。本案に対する連合委員会の質疑はこの程度にいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長代理(栗山良夫君) いずれ労働委員会として意見の残つておりまする点は、厚生委員長と労働委員長と協議いたしまして、適当な発言の機会まで保留いたしたい。こういう工合いに考えますが、御異議ないものと認め、本日はこれにて散会いたします。 午後七時三十六分散会