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19回国会参議院1954/05/25

外務委員会 第36号

発言数
110
登壇者
11
会派数
5
開催日
1954/05/25

会議録

佐藤尚武緑風会

○委員長(佐藤尚武君) 只今より外務委員会を開きます。  議事に入る前に、昨日委員長及び理事の間で打合を行いました結果について御報告申上げます。その打合せの一つは、艦艇貸与協定の取扱に関する件、その二は議員派遣の問題でありまして、艦艇貸与協定につきましては、本日から質疑に入り、二十八日の金曜日の本会議に上程を目途として審議を進めるということに一応話合があつたのでありまするが、そのように取運びまして御異議ございませんか……。成るべく金曜日の本会議に上程したいと思うのでありまするが、別段御異議もないようでありまするから、さよう進行することにいたします。   —————————————

佐藤尚武緑風会

○委員長(佐藤尚武君) 次に、議員派遣につきましては、只今のところ竹島の領土権と李ラインにおける漁船拿捕笠寺に関する調査が一班、いま一つの班は、MSAによる譲与兵器の整備に関する調査として北海道札幌、帯広方面の視察であります。本件につきましては、本日は議員派遣を行うことのみ決定しておきまして、派遣議員の人選その時期乃至は派遣要求書の提出等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]

佐藤尚武緑風会

○委員長(佐藤尚武君) それではさよう決定いたします。   —————————————

佐藤尚武緑風会

○委員長(佐藤尚武君) 本日の議題は、日本国に対する合衆国艦艇の貸与に関する協定であります。これより質疑に入りまするが、政府委員としては、すでに御列席の岡崎外務大臣、伊関外務省国際協力局長、下田外務省条約局長のほか、間もなく保安庁次長が来られることになつております。現存は保安庁の久保装備局長が見えておられます。なお、保安庁長官も現在内閣委員会に出席しておられるのでありまするが、そのほうの都合が付けばこちらへ廻つて来るということでございます。御了承をお願いいたします。それでは質疑のあるかたはどうぞ御発言を願います。

加藤シヅエ日本社会党(第二控室・右)

○加藤シヅエ君 外務大臣から少し伺いたいと思うのでございますが、このたびの艦艇貸与法でございますが、これは二十九年度の防衛力増強計画に基いて米国政府に対し、駆逐艦以下十七隻、総トン数において二万七千トン余りのものを御予定になつていらつしやるということでございますが、この二十九年度の防衛力増強計画の間に、あとこの全部の今御予定になつていらつしやるものの貸与を受けられるというお見込は大体付いていらつしやるのでございますか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) 大体この話合をいたしておりまする経過ではそうなるであろうと予期されるのでありますが、ただこういうものは引渡しにつきましても、先方で修理をして引渡すわけであります。修理の時間等があつて、或いはその一部は来年度に繰越されるような場合もなきにしもあらずとは考えておりますが、大体話合は、とにかく本年度中に大体その程度のものを引渡すということの話合は付くと思います。

加藤シヅエ日本社会党(第二控室・右)

○加藤シヅエ君 私ども素人で全然この駆逐艦艦隊の問題とか、トン数の問題とかということについて、ちつともこういう政事とか、艦艇の名前とかというものが、具体的に頭に何にも知識がございませんでわからないのでございますけれども、大体今度の二十九年度の予定全部を貸与をお受けになりますと、その防衛力増強という面についてどういう程度の防衛力というようなことができるかというようなことを、何か具体的にわかりやすく説明して頂く方法はないでございましようか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) これは保安庁のほうで説明されるのが適当だと思いますが、具体的にどういうふうに申したらいいか、まあ私も素人で非常にその点は申訳ないのですが、これでも勿論日本の海岸線が非常に長い関係上、又日本の国民生活維持上、外国から食糧その他いろいろなものを輸入をしなければならん、つまり海を利用することが非常に多いという観点から見ますと、この程度のものではやはり日本の防衛力を十分に整えるわけには行かないのでありまして、まあ第一歩として、この程度のことをするということになろうかと思います。ですからまだこれだけでは駄目で、将来更に増強計画をして行かなければならないであろうということになろうかと思います。

加藤シヅエ日本社会党(第二控室・右)

○加藤シヅエ君 将来の増強計画がこれでいいというところに達するということになりましたときには、艦艇が何隻ぐらいで、総トン数がどのくらいというようなことも大体お見通しが付いていらつしやるのでございましようか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) これは保安庁のほうで今非常に研究いたしておりますが、まだ計画自体ができ上つてはおらんようであります。急いで研究を続けておるようであります。

加藤シヅエ日本社会党(第二控室・右)

○加藤シヅエ君 衆議院の外務委員会における速記録によりますと、そのとき将来又艦艇を借りますと、日本の海軍力が東洋第一になるというような、そういうようなことがちよつと問題になつておつたようでございますが、これらのことの比較ということが大変むずかしいことだろうと思いますけれども、やはり日本の、防衛力増強ということが東洋諸国における他の国とのいろいろ友好関係にも影響があることだと思うのでございますが、そのときの外務大臣の御答弁では、後ほど資料を差上げるというような御答弁が衆議院であつたようでございますが、その後どういうふうな資料をお出しになりましたのですか。それで東洋におけるほかの国との海軍力との比較ということの面から見ますと、日本の海軍の防衛力の問題はどういう地位に置かれることになりますか。余り専門的なことでなくてもよろしうございますから説明して頂きたいのでございますが。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) これはトン数から言うと、日本が何番目になるかというようなことは一応の数字は出て来ますけれども、併しこれはあとでお配りするだろうと思いますが、ジェーンの海軍年鑑というのがありまして、その海軍年鑑から引つ張り出したものを資料として差上げてありますが、その中にも書いてあるように、中共の海軍力というのがこれはよくわからないのです。従つてはつきり日本が何番目のトン数を持つているか、トン数が多い少いで直ちにどうということもないわけですが、艦種にもよりましようからし、いずれにしましても懸念される点は日本のそういう海軍というか、海の力が他国に脅威を与えはしないかという点だろうと思います。その点については只今のところは一番大きいのは駆逐艦でありますから、まさか駆逐艦を以てよその国へ日本、か攻めに行くとは思わないでしようから、これは国の守りにしか役に立たないという点では脅威ということは、この程度なら感じられないと思つておるわけであります。

加藤シヅエ日本社会党(第二控室・右)

○加藤シヅエ君 その力の比較の地位というのはどういうことになりますか、日本は相当優位のところに立つのですか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) これは内容にもよりますし、わかりませんが、表をあとで差上げます。例えば中華民国、つまり国民政府は九万六千トン持つているとか、或いは中共は六万八千トン持つているとか、フィリピンは二万何千トン持つているとかいうような表が出ているわけです。日本はどのくらいになりますか、このトン数から言うと三番目か四番目になるだろうと思います。いや、二番目くらいになるかちよつとわかりませんが。

加藤シヅエ日本社会党(第二控室・右)

○加藤シヅエ君 この艦艇が貸与されますと、韓国に対して、李ライン問題なんかに対して何かこれが一つのやはり影響を与えるというようなことをお考えになるでしようか、如何でございましようか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) これは私は李ラインの問題等について、日本の漁船を保護するということはどうしても必要だと思いますけれども、これを借りて来て韓国を驚かすとか何とか、そういう気持は全然持つておりません。李ライン問題は飽くまでも外交交渉によつて解決すべき問題である、こう固く信じております。

加藤シヅエ日本社会党(第二控室・右)

○加藤シヅエ君 借りて来た艦艇で積極的に威嚇するというようなことはまさかないだろうと思いますけれども、こちらにそれだけのものを持つているということ自体が、やはり影響を持つのではないでございましようか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) これはどうでしようかね、韓国は余り驚かんだろうと思います。

羽生三七日本社会党(第四控室・左)

○羽生三七君 技術的の問題なんですが、この協定の附属書に示されておる駆逐艦等四隻というものをこの協定の実体として行くのか、それとも日米間の艦艇貸与一般というものを抽象的に規定して、それから新たに貸与を受けるものは、漸次附属書に追加して行くということなんですか。あとに追加して来るということになると、別にあとで附属書に追加する分は国会で承認なんか要らないというようにも解されるのですが、そういう技術的の画でちよつと御説明を願いたい。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) これは予算審議その他のときも申上げた通り、本年度の増強計画としては、この附属書にあるものを含めまして隻数にして約十七隻、トン数にして約二万七千トンを借受けたい、こういうことにいたしております。その範囲においてはこの附属書に追加して借受けることを併せて御承認を得たいというわけで、これはフリゲート艦等を借受けたときと同じ形式でありまして、あのときはたしか六十八隻でありましたか、の範囲でということで、但し協定にはそういうものがなくてあとから附属書で借受けるものを追加して来るけれども、六十八隻以上には出ない。今度も十七隻という点はこれは保安庁長官もよく説明されておりますが、大体二万七千トンで十七隻と言つておりますが、例えば或る一つの船はちよつと今むずかしいという場合には、小さい船を二つという場合もありますから、隻数が必ずしも十七隻と正確にならん場合もありますが、先ず十七隻、トン数においても二万七千何百トンというふうになつておりますが、これも実際借受ける場合に、それが二万七千何百トンと正確になるか、そのときの船の内容で多少トン数が上下することはありましようけれども、先ず十七隻、二万七千トンという範囲内で予算の許す増強計画等を見込んで借受ける、こういうことでありまして、又更にこれを詳しく申しますと、その十七隻二万七千トンのうちにも、MSAの協定に基いて借受けるものは、そつちのほうから借受ける、従つて十七隻二万七千トンが全部協定で借受けるというわけでもないわけです。一部はMSAの協定で借受け得ると思つておりますから、但しその借受ける艦種、その一つの船のトン数等は、これはずつと報告して国会でも聞いておられるわけであります。それを標準にして借受けるということであります。

羽生三七日本社会党(第四控室・左)

○羽生三七君 それでこの十七隻、二万七千トンは、今度の計画等で一応国会で承認は求めるわけですが、それじや次年度において新らしく十七隻以外に要求をしたり、或いはトン数が増加する場合には、又別個に新らしい協定を出されるわけでありますか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) 次年度の分をどうするかということは今研究中なんでありましてまだ結論が出ておりません。というのは、私自身のこれは個人的な考えを言つてもおかしいのですが、私自身は余り法律的にはつき」り頭ができていないせいかわかりませんが、例えば予算を来年度計上して、そうして保安隊設置法或いは防衛庁設置法によつて人員をこれだけ増すのだという、予算と人員というものが通りますれば、そこでその中の、陸上その他は別として、海の関係は、これだけの予算或いはこれだけの人を増すのだ、それにはどれだけの船が必要なのか、こういうことになりまして、その中で国内で建造するものもありましようが、そのほかはアメリカから借りて来る予定である。こういうふうに説明をして国会で認められれば、その範囲ではこの附属書に追加してもよかろうかと自分は考えておるのですが、法律的に正しいかどうか、そういう点は今研究してもらつております。

羽生三七日本社会党(第四控室・左)

○羽生三七君 まあ常識的に考えて、これも十七隻、二万七千トンというものを非常に大幅に上廻つて来た場合に、新らしい協定を結ぶことなく、単に附属書に追加するだけで事足りるとは非常に大まかな考えであると考えませんか。併し仮にまあそういう解釈上の相違から、附属書に追加だけしておけばいいということになつて来ると、何だか無限に拡大のできる途が開かれるような杞憂もあるのでありますが、そういう心配はありませんか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) これは常に予算を伴わなければなりませんし、それから人員の増加ということは法律できめなければなりませんから、この予算と人員の増加ということがなければ、船だけ借りて来たところで役に立たない。その点でむちやくちやに船をたくさん借りて来るということも実際上不可能であろうと思つておる。併し又アメリカ側でも、何でもかんでも貸してくれるというわけにも行きますまいから、実際上はそういう懸念はないと私は思つておりますが、まあこれも来年度の分につては、いろいろの面からどうすべきかということは研究中でございます。

羽生三七日本社会党(第四控室・左)

○羽生三七君 実は木村長官がおいでになつたときにと思いましたが、この際外務大臣にもお尋ねしておきたいと思うのですが、衆議院の外務委員会で木村長官が、この日本の防衛力の限界というものは、結局独立国家に値いする程度の防衛力という点から、米軍に頼らない程度のものを一応想定しておるということを言われたようですが、特に海軍について考える場合に、一体どの程度の規模をお考えになつておるのか、ただ取りあえず思い付きで十七隻というこの数を抽象的に出されて来たのか、何か根拠があつて十七隻というものを出し、それから何年後にはどの程度のトン数とか、そういうものが一応なければならんと思うのですが、この米軍に頼らない程度という場合、地上部隊、空軍、海軍いろいろあると思いますが、この艦艇貸与協定と関連して、米軍に頼らなくともいい程度の海軍力というのはどの程度を一体指しておるのか、これを具体的に一つ伺いたいと思います。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) 考え方としては、米軍に頼らない程度というのはどの程度かということは実は非常にむずかしいと思うのです。で、只今の計画はまあいわば自衛力の漸増ということはまだまだうんとやらなければならん、うんとというか、相当やらなければならん。こういう想定の下に、併し本年度は予算の制限もあるから、それの何十分の一になるかわかりませんが、とにかく予算の許す範囲内で漸増を考えると、結局この程度にしかならんということで、取りあえず、まだまだ先は漸増はいたすつもりでおりますが、本年度はこの程度しかできないということで十七隻というものは出て来たわけであります。そこで保安庁としても、いや、来年はどうするんだ、再来年はどうするんだということになると、いろいろなことから総合的に判断しなければならんので、まだよく言われる防衛の計画はできていない。併し急いでこれは研究して何とか計画を作るべきものであろうということで保安庁では考えておられるようであります。  それからもう一つ念のために申しますと、政府としてはこの日米安全保障条約というもの自体が、単にこれは日本の国内に駐留するアメリカの陸海空軍、これがありさえすれば日本を防衛するのは十分であるという考えでやつておるのじやなくて、これは一種のデイターレント・パワーとよく言われるのであつて、その背後にはアメリカの大きな軍事力があつて、この出先になるものはこれだけだが、後ろにはこれだけあるから、アメリカに挑戦するということは非常にむずかしいのであるからして、それが知らず知らずの間に侵略を防いでいるという考え方でありますから、仮に国内のアメリカの駐留軍がいなくなる場合でも、何らかの形で集団的な安全保障というものがやはり必要になつて、アメリカの軍隊にとつて代る防衛力はできても、その背後にやはり集団的の安全保障措置というものでこれをカバーして行くのであるからして、従つて独力で誰にも頼らずにというところまでは、これはまあ非常にむずかしいことで、そこまでを今考えて計画を練つているわけではないと思うのです。

羽生三七日本社会党(第四控室・左)

○羽生三七君 外務大臣の答弁がたまたま集団的安全保障に触れましたから、特にこの機会にお伺いしてみたいと思うのですが、けさの新聞を見ると、緒方副総理も外人記者団との会見で、集団、安全保障の必要を認めて、まあむしろ希望している意味のようなことが載つているわけです。そこで外務大臣のいつものお話ですと、現在の日米間の安全保障条約が一種の集団寮全方式だと答えて来ているわけですが、今仮に日米間にそれが認められれば、米軍が撤退をしても、その後になお且つ日本独力では防衛ができないのだから、集団安全保障ができたということを言われたわけですが、それは例えば具体的にはどういうことを指すのですか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) 具体的にはまだ考えられないのですが、例えば日米安全保障条約は、アメリカの駐留軍がいなくなれば一応はなくなるわけになりますが、その場合でも精神は軍隊を置くということが目的ではなくて、侵略の脅威から日本を守るということが精神なんであるからして、或いはその趣旨に基いて日米間に新たな何らかの合意ができる場合もありましようし、或いはその他の国連の措置がもつと強化されて、国連で主として集団安全保障ということが効果的に行われる場合もありましようし、具体的にちよつとまだその事態を申上一げるのはずつと先のことですから、わかりませんが、要するにそういう趣旨のことを私は考えているのであります。

羽生三七日本社会党(第四控室・左)

○羽生三七君 そこで一国防衛方式か集団防衛方式かと言えば、集団防衛方式の立場を政府はとられると思うし、まあ常識上そういうことが通例になつているようですが、その場合に、この日本の戦力との関係で問題を考えて行きますと、木村長官がよく言われる、或いは法制局長官なんかがよく言われる有効的確なる近代戦を遂行し得る能力を戦力と言う、これを戦力の限界にしているわけです。そういう場合に米軍に頼らなくてもよい程度ということを言われているのですが、集団防衛方式ということになると、一体どこが限界で戦力となるならないをきめるか殆んど不可能になつて来る。だからほんの極く催かな部隊或いは戦力、軍事力しかなくても、併し集団防衛方式の場合においてはそれはもう統一した一箇の戦力に違いない。単一の一国防衛方式で戦力となるようなことはなかなか日本の経済力、国力等からして、今すぐ一国だけで近隣の強大国を相手にするだけの力を持てるとは誰も考えていない。だから従つて集団防衛ということを言われたのでしようが、そうなると、有効的確に近代戦を遂行し得る能力を持つたときが戦力だということは全く抽象的なことで、出題をきめる限界は何もなくなつて来る。それは海軍なら二万トン、陸軍なら十数万、空軍なら千機持つておつても、それが集団安全保障の一翼を担当して行くということになれば、それ自体私は立派な戦力になると思う。だからそういう集団防衛方式ということで問題を論じて行かれる限りにおいては、日本の戦力規定についてはけじめを付けるものは何もない、無軌道にひとしいようになることと思うのですが、この点はどういうふうにお考えになりましようか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) 私は憲法の規定は外国との関係を何ら考慮しておらんと思いまして、日本自体の持つ防衛力に関して戦力を禁じておる、それだけのことだと思います。これが集団的になればどうの、そうでなければどうのというふうには憲法は考えておらん、こう信じております。

羽生三七日本社会党(第四控室・左)

○羽生三七君 それでは日本だけのことについていうと、外国については関係のないことだと言われる場合においては、先ほど来申上げるように、有効的確に日本だけで近代戦を遂行し得る力、米軍に頼らなくてもいい程度の力、そういうものから想定して来る、例えば艦船貸与協定の中に予想される海軍力はおよそ将来どの程度のものか、例えば地上部隊について言えば、今の応募方式で言えば二十二、三万が限度で、それ以上は徴兵方式になつて、現行憲法内では不可能だという見解を出して来ておる。それでは一体海軍についてはどのようなことを考えておるか。これは外務大臣では無理なら、保安庁からでも結構であります。

佐藤尚武緑風会

○委員長(佐藤尚武君) 羽生委員に申上げますが、保安庁次長は只今内閣委員会に行かれましたので、そちらが済み次第すぐこちらに帰つて来るということであります。

羽生三七日本社会党(第四控室・左)

○羽生三七君 それでは後刻でいいのですが、それでもう一度繰返してくどいようですが、申上げたいことは、日本の経済力なり、国力に制約されて、今当面この程度というような明確な案がすぐできるとはなかなか考えにくいであろうと思われます。それはよくわかるのです。わかりますが、併し外国と関係なしに日本の独力だけで一応防衛力というものを作つて行く場合に、限界というものが何にもないなら無制限であります。どこまでも空軍、海軍、陸軍、言葉は軍という古葉を使うのは語弊がありますが、そういうものを拡大できる。それならば議会で戦力なんかやつておる問答等は全然意味がない、どこかに限界がなければならない。そういう点を考えた場合に、ただ、ふつと思い付いて十七隻、二万七千トンということが考えられたのか、或いは何か海軍ならばこの程度のものを持ちたい、又持たなければならないということから、これが割出されて来たのか、その辺を保安庁のほうからもう少し明確にして頂く必要があると思います。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) これは保安庁からお答えしましようが、私は先ほど申したように、まだ戦力にはえらい程遠いことであつて、今のは例えば富士山の八合目が戦力だとすれば、一合目か二合目のところにいるので、到達しようとして努力しているので、まだそこまでは議論ができないし、又おつしやるように戦力のけじめを示せということは、これは実際上、例えばこれだけ持つていれば戦力ではないが、あと一艘でも加えたら戦力だという議論は、これはちよつとむずかしいのじやないですか。

羽生三七日本社会党(第四控室・左)

○羽生三七君 これは外務大臣が故意にそういう言葉を使われたので、私も常識を持つた人間ですから、一艘や二艘の違いをどうこうということは申しません。これは誰が見ても、国民が見ても、政治家が見ても、学者が見ても、もうこの程度はということを私はどの程度とみなすかという議論をしておるので、そこで先ほどお話のあつたように、二万七千トンが五百トン殖えてどうこうというような場合に、新らしい協定が要るかどうかという、そういう細かい議論をしているのじやない。非常に常識的な、余りに常識的に過ぎるほどのことを言つているのですが、併しそれにしても保安庁側からもう少し、少くとも日本の防衛力増強についての海上についての見通しを……。

佐藤尚武緑風会

○委員長(佐藤尚武君) 羽生委員、次長が帰つて来られましたから、もう一度質問の要点をおつしやつて頂きたいと思います。

羽生三七日本社会党(第四控室・左)

○羽生三七君 それでは次長に伺いますが、今私のお尋ねしていることは、木村保安庁長官がよく言われることは、米軍に頼らなくてもよい程度の防衛力を作りたい、これが独立国家の防衛力の中心問題だということをよく言われているわけです。そこでこの陸軍については地上部隊、軍というのは語弊がありますが、地上部隊については大体今の応募方式は二十二、三万が限度、それ以上は徴兵方式でなければ不可能だから、現行憲法上これは可能でないというようなことを言われて一応そこに目安を置かれている。海軍では今度十七隻、二万七千トンというものを協定の目標とされたわけですが、実際にはここに四隻しか出ておらんわけですけれども、あとは貸与があれぱ追加して行くということでありますが、一体アメリカに顧らなくてもよい程度の海軍力というものはどの程度を想定されておるのですか、これが私のお尋ねの要点であります。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) アメリカに頼らなくてもいい海軍力という言葉は、何と言いますか、私どもちよつとなかなか解釈のしにくい言葉でございますが、現在の日本の政府のとつておりまする措置、即ち自衛力なり防衛力を漸増して行くという基本的な考え方は、もとより日本独力で国を自衛、防衛するという建前でなく、現在は日米安全保障条約に基いてやつておるわけでありまするが、共本的な考え方はやはり集団安全保障と言いまするか、米国その他の国々と力を合せてもらつて自国の防衛を維持しようというのが建前に相成つておるわけでございます。そういう建前で米国海軍の御厄介にならないで、日本の防衛のできる海軍力というもの、海上力というものがどのくらいであるかということは、これは一応いろいろと勉強してもらつたり、私どももしたりしておりますが、なかなか想定が困難でございます。一応長期計画というようなものを作ることが妥当であろうということで、五、六年計画というようなものをいろいろ勉強を保安庁で今までして参つておるのでありまするが、これは保安庁長官が他の機会に国会でいろいろご説明を申上げましたように、いろいろの要素がそれぞれ不確定でありまするために、なかなか長期計画というものを作ることができないというふうな今事情にあるわけでございまして、例えば五、六年計画で海上の艦艇十五、六万トンというふうな案を保安庁で考えておるというようなことが新聞等に現われたこともございまするが、そうした数字を研究の途上で持つたことはありまするけれども、そうした十五、六万トンというもので、例えば米国に頼らないで日本の海上を防衛できるかと申しますると、なかなかそうではございません。これは財政その他のいろいろな関係、日米共同防衛等いろいろな前提に立つて研究をしましたときの一つの或る場合における数字というふうなものでございます。今御質問にありましたように、どういうものが日本独自でやつた場合の海上勢力であるかということは、まだまだ研究を続けさせてもらいませんとお答えができない段階でございます。

羽生三七日本社会党(第四控室・左)

○羽生三七君 もう一点だけ。そこでもうちよつと問題を明確にしますと、こういうことなんですよ。日米の集団安全保障方式で行くか行かないかということは別の問題で、それは我々の意思如何にかかわらず、政府としては集団安全保障方式をとられると思いまするが、それにしても、それじや日本とアメリカとの軍事力というものが、日本はまだ軍事力になつていないと言えばそれまでですが、そういう力が結合して一つの集団方式ができる、その場合にこちらは何もないのだが、向うの幾らかをプラスして、それが一個の集団方式の実体になるというようなことでなしに、こちらはこの程度のものを持つ、これでは足りないから、なお且つアメリカとの集団保障方式で行く、これなら或る程度私はわかるのです。私の言つているのはそれなんです。だから日本が一〇〇%力ができてアメリカの海軍力なんか要らないのだというようなものができるとは、政府でなくとも我々野党の者でも考えたことはないのです。だから日本のつまり海上自衛力というものも、現在の国力、経済力から言えば相当限界があると思うのです。それならそれなりに十万トンとか、十五、六万トン作るが、数年後の日本の経済力の見通しではこの程度しかできないのだ、併しそれでは自国の防衛にならないから、アメリカと提携して集団安全保障の方式をとる、これは政府の自由です。併しそれにしても一応日本としては想定される日本の今後の五年或いは八年の経済力から見て、この程度の海上自衛力というものは持たなければならん、持つべきだという何らかのお考えが政府にあるのじやないですか。ただそのとき出たとこ勝負で幾隻かの貸与を求めて行くというような、そういう意味の自衛力増強をお考えになつておるのか、その実体的なものを私はお伺いしておるわけなんです。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) よく御質問の趣旨はわかりました。そういう意味におきましていわゆる長期防衛計画としての海上力をどれくらいにするか、これは日本の勿論置かれた防衛的な意味がありまするが、そのほかに財政経済の問題、国民感情の問題、いろいろとあるわけでございます。そういうものを集約していわゆる長期計画としての五、六年計画というようなものを立てたいというので、いろいろやつて参りましたが、不確定要素がいろいろ多く、どうしてもこれを或る程度に想定して固めるということも困難な事情がありまするので、残念ながらまだこの五、六年の長期計画は案としてきまつておらない。十五、六万トンというような見当でこの研究をした段階もございまするが、そうした見当というのが、今おつしやつたような意味で一つの見当でありまするが、これはそうした案をどうしても固めることがまだできないという段階になつておるわけであります。

鶴見祐輔改進党

○鶴見祐輔君 ちよつとそれに関連してお伺いしたいのですが、今次長のお話によれば、不確定要素ということがありましたが、不確定要素というものはどういうものであるか、列挙して頂けませんか。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) 具体的に一番響きますのが財政の関係でありますが、去年の初め頃、財政の関係は私ども専門ではございませんが、一応想定をしまして考えました際には、大体年々三%程度国民所得の伸びがあろうか、前年までは五%以上でありましたが、一応三%程度に抑えるならば見通しとして可能かというふうなことが一つ研究題目にあつたわけであります。現在に至りますると、三%の伸びを見るということは先ず困難ではないかというようなことが相当にはつきり見通されるというような状態であります。これは相当重要な不確定要素の変更でございます。

鶴見祐輔改進党

○鶴見祐輔君 それだけでございますか、不確定要素は……。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) もとよりほかにもございまして、一応研究案として作りますものの中には、米国の援助というものを一応想定をするわけであります。これはもとより向うへ、これだけのものをはつきりよこしてくれるかというような相談をまだ持ちかける段階に至つておらないわけでありますから、勿論これは不確定要素であります。一応の想定をしてみて、それが実現可能であるかどうかということの推定をすることもまだ非常に困難な段階にあるということでございます。

鶴見祐輔改進党

○鶴見祐輔君 その不確定要素は、私は財政上とアメリカの援助だけではないと思うのですが、例えば私どもは今までの防衛に関する質問応答などを伺つておりまして、将来の計画がないということを繰返してお話になるのですけれども、日本が自主的な国防計画を立てておつた戦前では、明白に年度計画を以て計画をした。よその国もみんなそれをやつておる。なぜ日本が今日それができないかと言いますと、財政上の困難ということはどの時代でもあることで、それは大体想定をして、その限度内でやつておるということです。ですから財政上見通しが困難だということは今に始まつたことではないので、貧しければ貧しい程度の見通しは付くものだと思う。従つて私どもは伺つておるのでありますけれども、まだこのほかにあるものをお話になつていないのじやないかという気がするのですが、それだけでございますか。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) いや、不確定要素の一、二を申上げたんですよ。全部ではございません。例えば憲法上の問題で、戦力はこれを保持しないというふうなことで、自衛力を漸増する場合でもどの程度に至ればいわゆる戦力だと解釈として認めるべきものであるか、戦力として認められるようなことで増強計画を作るということは妥当でないというふうなことももとよりありまするし、申上げたものだけがあれではございません。国民感情というものが防衛力増強という線にはつきり固まつておるかどうかということの政府の見通しもございましよう、まだまだまとめて挙げれば不確定要素があるのであります。

鶴見祐輔改進党

○鶴見祐輔君 国民が持つておる一番大きい関心は、この防衛の問題について一体どこまで進んで行くのだろうかという限度の見通しが付かないという点だろうと思うのです。それで今お話を伺いますと、大体大事なものを四つお述べになりましたが、財政上の問題は私は問題にならないのです。不確定の要素と言つてもいつでも不確要素です。それから戦力の解釈ということは、これは政府が責任を持つて解釈なさればいいので、これは今の不確定要素だとは言えないと思う。政府の責任でこうだとお考えになつた程度でやればいいので、国民感情ということも非常に問題だと思う。これを政府が責任を以て政府としてこの程度で国民に納得してもらえるという決心をなされば、それは不確定要素ではないと思う。残つて来る問題は、今お挙げになつた四つのうち米国の援助がわからないということ、これは非常に大きな不確定要素であると思う。今、日本が主体的な地位を持つておりませんから、昔の日本と違つて自分だけできめられないと、こういうこともある。そこでこの問題について私がお伺いしたいのは、アメリカにも明らかに自分の計画はある。ソ連にも中共にもあるのでありまするから、その間にある日本としては、これらの国々のこと、ソ連のことははつきりわからんにいたしましても、アメリカのことは今日のような日米の関係では話はしてもらえると思うのです。そこでこれは保安庁長官及び保安庁次長の直接の問題ではございませんけれども、外務大臣及び総理大臣の問題でございますけれども、日本が極東において自分自身を守るためにアメリカと連絡をしてどういう程度のことを引受けるのだと、その軍事上の日本の役割がはつきりときまつていなければならんはずだと私は思う。今も集団保障の問題が出ておりましたけれども、集団保障の問題になつて来れば、アメリカか或いは国連がきめた場合に、日本が自主性を以て自分できめるのだと外務大臣がしばしばお話になりますけれども、実際は今、次長がお話になつたように、米国の援助というものは、文字は簡単だけれども非常に大きな意味を持つておると思うのです。そこで私が自民の一人として始終不安に考えますことは、こういう重大な日本の自衛力の問題について根本的な案がおありになるはずだと思うのです、見通しが……。見通しですから、誰だつて不確定だということはもう常識上わかることでありますけれども、一通りの見通しはあるはずで、アメリカの新らしい国防計画の中において日本はどういう役判を占めるのだと、朝鮮の問題が起つたときは日本は独立しておりませんでしたから問題はございませんけれども、今日独立した日本として、デイエンビエンフーの陥落によつて非常に緊迫したアジアの形勢の下においてアメリカが日本にどういうことを要求するだろうかという見通しが、これは自衛に対する根本の問題だと思うのです。そこでこれを次長にお尋ねすることも私は非常に無理だと思います。併し次長はその職責から、それをきめられるところの政府の考え方を御存じと思いますから、私はこういうことを質問するのでありますが、そこで私は日本国民が一番不安に感ずることは今の第二の点のアメリカとの関係ということなんです。アメリカは一体日本に何を要求するだろうかということについての見通しがないか。今後総理大臣の外遊についても、ここにおいでになる中田委員の御質問にもありましたように、一体総理は外国においでになつて、殊にアメリカで、日本とアメリカとの関係の国防の問題について何か話合をなされやしやないかという懸念をお持ちになつてああいう質疑をされたと思うのであります。そこで私はこの保安庁のお考えになつておる不確定の要素というものは、一番大きな問題は日米の関係だと思うのでありますが、それについては保安庁では勿論ほかの官庁と御相談になつて、一通りの見通もお付きになつておるはずだと私は思うのですが、如何でございますか。

伊関佑二郎外務省国際協力局長

○政府委員(伊関佑二郎君) その点は先ほど申上げましたようにいろいろ勉強をしております。各省との関係の調節その他に困難なものもございまして、総理及び保安庁長官等が国会のいろんな機会に申上げましたように、どうしてもまだ案が定まらないという実情でございます。

鶴見祐輔改進党

○鶴見祐輔君 その案が定まらないということは、つまり私は日本とアメリカとの関係において、或いは緊迫した東洋の形勢において、日本の引受けるいろいろの自衛の問題は何だという確信が政府にきまつておらないのではないか。或いはきまつておつてもお話にならないのではないか、どつちかと思うのでありますが、如何でございますか。それは次長にお尋ねして悪うございますが、外務大臣にこれについて一つお考えを伺いたいと思います。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) 只今のところでは申上げ得ることは、アメリカ側は日本の駐留軍を引揚げたい、これは何遍も申したことであります。従つてそれに必要な程度の日本の自衛力の増強ということを望んでおると思うのであります。それから先のことは別問題としまして、そこまでははつきりしておるわけであります。それじや日本が空手でただ費用だけ出せばそれに見合う装備とか、艦船とかいうものをアメリカが全部提供するかというと、私はそうは行かないと思う。従つてここに日本の経済力に見合つて日本はできるだけのことをして、毎年計画を立ててアメリカの駐留軍が引き得るところまで持つて行きたいと思います。併しこれについてはアメリカ側の援助がどうしても必要になり、これならば私は相互に十分理解が付くと思うのでありますが、そこで保安庁でも計画を立てるべく努力をしておりますが、戦争前のときのように、軍事力が非常にほかの方面を優先して。プライオリテーを以て考慮されるという時代でないものですからして、経済力の見通しという点が戦前よりはもつと大きく作用して来ていて、なかなか計画がこちらでも立たないし、又こちらの計画を立ててもその中で日本がどれだけやり得るかということの見通しがなかなか困難であつて、これを今保安庁で勉強しておる。この計画でも立てて三年でも何年でも或る程度見通しが付きますれば、その中でそれならアメリカはこれだけのことをしてくれ、日本はこれだけのことをするということがもう少し具体的になるのじやないかと思いますが、只今までのところはまだそこまで行つておらんというのが実情なんです。

鶴見祐輔改進党

○鶴見祐輔君 今アメリカ駐留軍の引揚の問題がありました。これはたびたび話が出ておりますように、実はアメリカ駐留軍が日本においてやつておる役割と、アメリカ軍の漸減に伴つて起る日本の自衛軍の漸増ということは目的が全然違うと思うのであります。アメリカと日本は憲法が違うから、日本の憲法の規定に従つて、日本で漸増される自衛力というもので駐留しておるアメリカ軍のやつたすべての仕事はできない。従つてそこに私は日本国民の心配があると思う。ここに抜け道が一つあります。日本で漸増される日本の自衛軍は、駐留しておつたアメリカ軍と同じ仕事をするのではないかという心配をしておる。でありますから、海外派兵せずという決議案を出したいという考えを持つのも一つはそれであつて、日本は厳格に今日の憲法を守つて行きたい。従つて将来漸増される日本の自衛軍は、駐留しておるアメリカ軍とは性質の違う軍隊であるということは、私は日本国民の圧倒的多数の考え方だと思うのですが、それでいいのかという点が国民は心配なのであります。ということは、アメリカ側の議論にそういうことを考えていない人もたくさんあります。将来日本にできる、日本に漸増される軍隊にはアメリカの駐留軍と同じような仕事をしてもらいたいという希望を持つておる人もあります。そこで政府として、はつきりと日本の自衛軍というものは駐留しておる米軍と同じ仕事をするものでないということを、アメリカ側は十分承知しておるのでございますか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) つまりおつしやいますのは、日米安全保障条約に基きますと、日本に対する侵略以外にアジア方面の平和と安寧の維持という点があつて、その任務をアメリカの駐留軍は持つておるという点だろうと思います。この点につきましては、日本の自衛力は漸増されましても、海外に部隊を出すとか、或いは日本の自衛以外の目的にこれを使うということはあり得ないということはアメリカ側政府当局は十分承知しております。

鶴見祐輔改進党

○鶴見祐輔君 只今議論を伺つておりますと、そこに思想の混雑といつては失礼ですが不統一があると思う。政府の御答弁には、例えば先制防禦とか、攻勢防禦とかいう考えになれば、自衛ということの窮屈な厳重な解釈から逸脱して行くと思うのです。従つて私ども厳重な日本の憲法の規定を守つて行きたいと考えておる人間から言えば、自衛ということの解釈が非常に大切なことになりますから、そこでアメリカ側においても、日本の国民感情をよく知つておられるかたもたくさんあるはずでございますから、そこで私は政府が計画を立てる根本としては、日本の持つ漸増される自衛軍というものは日本国内の自衛をすることが仕事なのであつて、アジア全体の平和には直接には貢献できないのだということであつてほしいと思うのですが、それは今のお話によるとはつきりアメリカはわかつておるの一でしようね。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) この点は間違いございません。

高良とみ緑風会

○高良とみ君 関連質問ですが、只今外務大臣は、その点はアメリカははつきりしておるということでありましたが、大臣の御答弁の中にしばしばそういう場合に、他のアジアの部分に侵略があつたときたこちらは手を拱ねいておるのは、世界の平和を維持する途でないというようなお話がありましたので、そういう場合はやはり国民は非常に心配しておると思うのです。自分の国にあつたというような場合には、この前のMSAの討議のときにしばしば問題が出ましたが、それは今問題外にいたしまして、アジアの他の部分に侵略があつた場合には、やはり集団安全保障のプリンシプルに従つて、日本もできるだけのことはするというところに集団安全保障の望ましい、或いは好ましい、或いは必要であるというお考えが内閣の諸公のお答えの中にしばしば出るのじやないかと思うのでございますが、如何でございましようか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) おつしやるような意味の集団安全保障が仮にできましたとして、よく言われるPATOとか、SEATOというものができましたとして、日本がこれに入り得るかどうかは甚だ疑問であります。併しながら、入り得るか否かは別問題として、アジアの一角に明らかなる侵略行為が起つたときに、これをただ黙つて知らん顔をして見ているということは、却つて侵略行為を増長させる結果にもなろうから、これは世界の国が皆挙つて侵略行為を阻止するために努力するのは当然だと思います。ただその努力する場合に、日本においては憲法の規定がありますので、努力に制限がある。従つて或る場合にはいわゆるモーラル・サポートしかできない場合もありましよう。成る場合にはその他の憲法に反しない範囲の、例えば金融上の措置であるとか、或いは貿易上の措置であるとかいうようなことで、これに応援する場合もあり得るかも知れませんが、これはいずれにしましても、要するに憲法の規定を破つて、乗り越えてまですることはできない。これは明らかでありますから、従つて甚だその点では冷淡なことになるかも知れませんが、結局日本の防衛部隊というものは、これは日本の自衛隊以外には使うことはできないということになつておるわけでございます。

羽生三七日本社会党(第四控室・左)

○羽生三七君 ちよつとそれに関連して、今の高良委員の御質問に関連するのですが、どうも日本の立場を見ていると消極的で、必ず日本の周辺の国から侵略がある、どこの国とは言われんが、あるかも知れんということを前提にしていろいろ外交をお考えになつておるようですが、もつと積極的に、これはいつも問題になることですが、中ソ等との国交再開の糸口の機会を作つて、同時に更に積極的に不可侵条約の締結をこちらから求めて、そうしてアメリカに対しても日米安保条約の不必要の客観的な条件を作つたことを認めさせ、同時に中ソに対しても、中ソ同盟条約の廃棄を要求して行くことはなかなかむずかしい問題だと思いますが、そういう積極的なことはできないのでしようか。すでに相手との外交はどうにもならんものと見て、向うからはいつか侵略がないとも限らないという立場でふだん外交をお考えになつておる、その立場を更に一歩積極的に進められて、外交の再開と今申上げた不可侵条約の締結を通じて、米ソ両国にこの極東の安全についての具体的な立証をしておるという、そういう積極的な方針をおとりにならないのですか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) 不可侵条約の問題についてはいろいろ議論がありましよう。過去の例等に鑑みまして、ただこういう点は一つお考えになつて頂きたい。それはアメリカとソ連との間においても、そういう条約関係を作つてソ連と提携して行こう、現に戦争中は大いに同盟国として提携して仲良くやつておつたと思うのです。条約があつても現在の状況は必ずしも条約が意図しておるような関係にはなつていない。従つて条約ができたということは、直ちにそれですべてがうまく行くのだというふうには考えられないのです。それは条約ができるまでの背景というものが必要だろうと思います。そこで今の実情ではすでに条約を作つたときに、まあ条約は作つたけれども、アメリカとソ連との間のやりとりというものが随分激しいもので、決してこれは友好国の間のやりとりのように思われない場分も随分あるのです。日本とソ連の間に仮に条約ができても、そういうような実際上の冷い戦争とか言われるような事態のある現在において、その条約がおつしやるように本当に効果を発するかどうか、こういう点も考慮しなければならないだろうと思います。

高良とみ緑風会

○高良とみ君 先ほどの関連質問から少し延びるのでありますが、増原次長からお話のあつた種々不安定な要素があるというお話の中で、一、二了解し得る点もありますが、少くともこの日本がこういう艦船等を借りますときに、国際的な軍事的役割というようなものは考えなくてもいいのだ、即ち自分の国は自分の国だけの自衛の範囲で考えればいいのだという点は、何もアメリカがどれだけ貸してくれるか、或いはどこがどうということを考えないでも、その辺がはつきりした自分の国の経済力に応じ、或いは国民感情に応じた程度の自衛をして行くという考えに、正直なところそうなつても何ら差支えないように私ども考えるのでありますが、増原次長は、保安庁としてはその点はどういうふうに考えておられますか。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) ちよつと御趣旨が呑み込めなかつたようなところもありますが、我々が借りましたというものは、今陸の大砲、戦車その他のもの、海のフリゲート、上陸支援艇、現在は我が国の国内の治安維持のために、いわゆる警備用にこれを使うために借りたという建前で参つておるわけでございます。今度の艦艇貸借におきましては、日本の自衛、防衛という目的でこれを使うということでこれを借りる、将来いわゆるMSA協定によつて借りまするものは、日本の自衛、防衛の役に立たせるという建前で借りるということにしたいと思います。

高良とみ緑風会

○高良とみ君 先ほどお挙げになりました憲法上の戦力不保持の条項からいたしましても、これに抵触しないように行きたいというお考えなのか、或いはこれまで伸ばしたならば、国民がこれを戦力と言うであろうから、或いは憲法のほうが変るのかも知れないし、だからそれも不確定な要素であるというふうに御説明になつたのでありましようか。それとも今の憲法下において仕事をなさる保安庁としては、憲法の範囲内にどこまでもとどめるのだ、だからこれは不確定な要素とすることはできないのだというふうに考えておられるのですか。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) 勿論憲法に禁止しておりまするところに違反する考えはございませんので、憲法の禁止の範囲というものは確定要素でございます。ただどこまで行つたらそれがいわゆる戦力になるかという判定があるわけでございます。これは或る意味においてなかなか判定困難という意味で申したのであります。

杉原荒太自由党

○杉原荒太君 増原次長にお尋ねしますが、二十九年度の防衛増強計画の中で、海上部隊の部分について要点と申しますか、それを伺いたい。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) 海上部隊の要点は、船におきましては借りまする十七隻、二万七千二百五十トンという大体の数字でありましたか、そのほかに認められました二十九年度予算で建造をいたしまする分が三百トンの駆潜艇八隻を中心にいたしまして、あと雑船、掃海船等でありますが、あとで資料を差上げますけれども、これが三千トンくらいになつておるのでありますが、船においてはそういうものでございます。それに見合いまする乗員、それと航空機は二十八年度予算で認められましたものはメンターという練習機とヘリコプターが若干認められておりまして、これが購入としては少しずれまして、まだ全部入つておりません。そういうものにアメリカから海上飛行機をやはり借受けまして、海のほうとしても航空関係の部隊を多少持つ、主たるものは二万七千トンと建造します三千トンばかりのもの、それに見合いまする人員の増加、若干の海に附属する航空部隊の訓練を始めるというのが二十九年度の主なるものでございます。

杉原荒太自由党

○杉原荒太君 二十九年度で増強する海上部隊の中で、而もアメリカから借りる今度の駆逐艦等を中心にしたあとの十七隻というのは、これは任務の上からすると、その駆逐艦などと同一の一つの統一的の任務、それに系統付けられたものなんですか、又全然別個のものなんですか。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) 大体何と申しますか、駆逐艦等が中心になりまして船隊群を作ります。あとのものはこれに附随するというと多少語弊がありますが、例えば七千トンの母艦というものは、これはそういう駆逐艦なり、フリゲートに対する補給なり、若干の工作をするための母艦、それから輸送船も二隻考えております。これは部隊の輸送、更にこれはより軽微な工作というものにこの輸送船、LSTを使う。それから潜水艦を二隻予想しておりますが、これは駆逐艦とPF等が演習訓練をするための目標艦というつもりであります。今申上げますように、駆逐艦等を中心にして整備、防衛に附随するものが一応考えられるわけであります。

杉原荒太自由党

○杉原荒太君 もう一つ、今の段階で海上部隊を増強されるその目的の一番の重点ですね。いわゆる海軍といつても、その中で戦闘の任務を主にしたものとかいろいろあるだろうと思う。商船の護衛だとか、そういう点でずつと……、併しこれはアメリカとの関係において日本の海上部隊の受持つ役割の重点とか、いろいろそういうことがあるだろうと思うのですが、今の段階において二十九年度の増強の場合、どういう点の任務を、目的を一番主にしたところに重点を置いておりますか。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) 二十九年度は、御承知のように我々としては防衛庁法なり、自衛隊法が通りますことを前提として考えております。そうしますと、いわゆる防衛任務を持つわけであります。そうしますと、海のほうの主たる任務は平素は警備のみでありますが、万々一の場合を考えますると、これはやはり対潜哨戒、一面においてはコンボイするということになりましようが、コンボイ以外におきましてもいろいろ対潜哨戒ということを中心にする。それともう一つ掃海船関係を充実しようとするのは、そうした機雷等を敷設されました際の掃海をしましてやはりコンボイする、一面外国との物資交流の途を確保するという意味の機雷の掃除をする、それと対潜哨戒というところが主たるものでございます。附設する航空部隊も対潜哨戒というようなことを中心に考えるつもりであります。

杉原荒太自由党

○杉原荒太君 もう一つ、今度アメリカから借りるものの中で、駆逐艦の国内法及び国際法上の地位、ステータスですね、これは端的にいつて軍艦旗を掃けるのじやないですか。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) この点は法律的には私よりも法制局関係からお答えを願いたいと考えておりますが、一応の考え方が自衛の、防衛の目的にこれを使用することになりまして、五インチ砲なり、三インチ砲、魚雷発射管等を持つておる駆逐艦を借りるわけです。乗込みまする者は海上自衛官という正規の国の官吏が正規の規律ある者として乗込みます。そうして自衛艦旗というものを掲げることにしております。そういうことでいわゆる軍艦としての要素を相当に持つものになると思うのです。従来の警備船という呼び方を自衛艦と呼ぶことにいたすのであります。ただ戦争を否定し、交戦権を否定した憲法下にある日本の政府の持つておるものでありまするから、交戦権否定という意味における制約を受ける、こういうふうに解釈いたしております。

杉原荒太自由党

○杉原荒太君 これは非常にむずかしい問題だと思うけれども、大事なのはむしろこれは対外関係においてどういう取扱いになるかという点だと思うのです。つまり国際法上の地位というか、そうしてその任務を果す上からいつて、その点は単なる法律論だけじやなく、抽象論だけじやないと思うのですが、これは国際法上でなく、対外的には軍艦としての取扱いを受けるというふうなことの何か必要があるのじやないですか。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) 私どもの考え方は、大体この法律が通りまして自衛艦となりますると、国際法的にはおおむね軍艦としての扱いを受けるのじやないか、ただ我がほうとしては交戦権を否定した建前で、軍艦としての扱いを要求しないと言いますか、従つてこれはできないという意味にもなりましようが、そういう部面がある、友好国とは軍艦としてこれは必ず扱うということになるのじやないかというふうに考えております。

杉原荒太自由党

○杉原荒太君 もう一点、これは外務省のほうにお尋ねしますが、同じ艦艇でもMSAの協定に基いて受けるものも予想しておられるようですが、こういう個々の協定を特別に作つて、それによつて艦艇の貸与を受けるという場合、一般的にMSA協定に基いて受けるという場合、これはそういうふうに分けられるのはアメリカ側の取扱いの結果そうなるのですか。これは向うの国内法とか、或いは予算措置だとか、いろいろそういう、要するに向うの関係でそうなるのか。何か協定面のみから見れば、MSAの協定によつても広く、受けられるようにも見えるけれども、併しその点向うの国内法を援用しているから、そこは私もはつきりしないのだが、それはどういうわけでそういう区別ができて来るのですか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) これはMSAの基本法であるアメリカの例の法律の中には、千五百トン以内の船を貸与すると書いてあります。実際上調べて見ますると、千五百トン以内の船は全部MSAで贈与するとか、貸与するとかいうのじやなくて、千五百トン以上の船はMSAでは贈与なり、貸与なりをしないけれども、併しMSAの法律に基いて貸与できる船はこれこれということがありますから、それに入つていないものは千五百トン以内でもMSA以外の協定でなければ借受けられないわけです。従つて贈与の対象になるものはMSAの、具体的にいうと、こういう船、こういう船ということがわかるわけです。今度借受けようとするのはそれの範疇に入らない船なので、それで別の協定を作つてこれは借受けるということになるのであります。

高良とみ緑風会

○高良とみ君 この第五条によりますと、艦艇及びそれらのものの権原はアメリカ合衆国にあるのでありますから、これは貸与されてもアメリカの船であるということには変りはないと思いますが、如何ですか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) これは借受けるのですからして、所有権はアメリカにあるわけであります。併しこれは丁度チヤーターと言いますか、普通商船などの、チヤーターということをよく言いますが、形は似たようなことで、借受けている間は日本の旗を掲げ、日本の船として使うが、ただその所有権はアメリカにある、こういうわけであります。

高良とみ緑風会

○高良とみ君 そうしてそれが友好国とは軍艦として扱われるのですと、アメリカに行つたときにはこれは軍艦である。併しよその国に行つたときにはこれは自衛艦である、増原次長の御説明ですと、そういうふうに了解して間違いないのでしようか。友好国とは軍艦として扱うという言葉があつたように伺いましたが、間違いないのでしようか。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) 法律関係は非常に面倒なところがあるのですが、大体において軍艦と言いますもののはつきりした定義がないようなところがありますけれども、正規の海軍軍人によつて指揮をされて、正規の軍艦旗のようなものを掲げて、そうして乗組員が軍規に服しておるというふうな大体条件があると、一般に軍艦と認められるというのが大体の通説なり、実効であるようであります。従いまして、この自衛艦というのは自衛官という正規の、英語に訳しますとオフィサーとなるのでありますが、そういう幹部自衛官によつて指揮をされ、そうして自衛隊としての規律の下にある乗組員が乗つておりまして、そうして自衛艦旗というものを掲げるというふうなことでありまするので、条件は非常に似ておるわけであります。武装があるなしは軍艦の要件には大体なつていないようでございます。又これは武装も持つておるということでありまするので、大体軍艦としての要素を持つておる。ただ交戦権を否定しておりまする日本の持つておりまするものでありまするから、臨検拿捕等の権限は行使しないとなつておりまするので行使できません。そういう意味における普通軍艦の持つておる権限は行使をしない、そういう制約があるわけであります。普通一般の国の軍艦とやはり同じには参らんのでありまするが、併し友好国でありますならば、例えば自分のほうのそういう国際法違反のようなものがあつて、私どものほうの自衛艦が臨検拿捕をすることを認めるということになれば、その権限は勿論認められたという立場においては行使できる、そういう意味を先ほど申上げたのであります。

高良とみ緑風会

○高良とみ君 そうしますと、これは臨検拿捕を受けない船であるけれども、この自衛艦というものが、例えば日本の近海において他の商船隊の武器、弾薬等を運んでいる、或いはその他の疑いを以て臨検拿捕をする棒利は主張なさるのですか。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) 交戦権を否定しておりまする日本の憲法の建前としては、臨検拿捕の権限は主張いたしません、できないと思います。

高良とみ緑風会

○高良とみ君 併し今度はその武装のほうでありますが、臨検拿捕をしないでも、適当な必要のあつた場合には、この五インチ砲、八インチ砲というようなものは、これは威嚇或いは追つ払うためにこれを使うというようなことはあり得るのじやないですか、交戦でない範囲の火器使用というものはあるのではないですか。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) この火器使用は自衛権行使の範囲であるならば使つていい、使うわけでございます。急迫不正の侵害に対してその適当な範囲においてする武力行使、これは自衛権の限界でありますが、その範囲においては武力を行使するということはあるわけでございます。

高良とみ緑風会

○高良とみ君 そうしますと、例えば李ラインなんかに対しまして、それはどちらが先に発砲したか、向うは小銃で射つた、こちらは八インチ砲で射つたというようなことになると、やはりその範囲においてこれは自衛権であるという主張をどこでけじめを付けるのですか。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) 李ラインの問題は先ほど外務大臣もお答えになりましたように、これは自衛権の問題というふうには大体解釈をいたしておりません。この問題は外交上の問題で解決をする、但し出ておりまする漁船を保護するという立場は日本政府として持つておりまするので、その第一線の仕事は海上保安庁が行います。海上保安庁が行なつて手が足りないとか、手に余るとかいう場合に、いわゆる警備隊の船が出て行つて漁船保護に当るということはあり得るわけでございます。その場合には正当防衛とか、緊急避難とかいう法理論に基きまして、場合によつては極く稀に最後の手段としていわゆる大砲を射つということがあるかもわかりませんが、これは正当防衛とか、緊急避難とかいう範疇に入ります限度において最小限度のものを行使するということでございます。

高良とみ緑風会

○高良とみ君 その点は自衛権によつて火器の使用等があつても、必ず外交交渉において片付けるという御決心だと思いますから、一応それをその通り了承いたして保留いたしますが、先ほどからの保安庁としての御説明でありますが、どうしても率直な国民感情から申しまして、憲法の戦力についての判定は付かないという御説明に対しては納得することができないのです。憲法には明らかに陸海空の軍とその他の戦力というのが出ているのでありまして、それは英語等における訳につきましても、その他の戦力というのは国民の生産力その他も入つておるのでありますが、それへ持つて来て、この間中から政府、殊に保安庁は明らかに陸海空の軍であるような要素のものを、これを自衛隊或いは自衛軍という名に統轄して、その他の戦力のほうに持つて来てこれが戦力であるかどうかを判定をするということを、まあ木村長官あたりも原子力は戦力であるとか何とかというお話になるのでありますが、国民はそういうふうな解釈はしておらないのです。ですから今までの御説明をはつきりと正直に受けるにいたしましても、それならばその他の戦力というそこで困難だとおつしやらずに、そうではないのだ、これは明らかにアメリカの海軍の一部であるところの艦船艇を借用するのだ、併し我が国においてこれは海軍とは言わないのだ。これは自衛艦と言うのだ。それは明らかに曾つて憲法制定前におつた陸海空の海軍に相当するものであつて、自衛艦なんであつて、海上の自衛艦なのであるから、それは憲法において保持しないと言つているものに相当するのだ、併しながら、これは違う目的のために自衛のために持つておるのであるから、その他の戦力のほうとは切離して考えるのだというふうに分けて考えて頂けないものかということをお伺いしたいのですが。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) 先ほど私がお答え申上げましたこと、言葉が足りなかつたか、少し趣旨が徹底しなかつたようでありますが、私が戦力の問題についても、何というか、解釈困難というか、わかりにくいところがあると申したのは、現在政府で持つておりまするというか、陸上自衛隊、海上自衛隊、現在は保安隊、警備隊であります。これは戦力に至らないものであるという政府の解釈は明確であります。ただこれがだんだん殖えて行つて、どこら辺になると戦力になるかということになりまするというと、そのけじめは非常に困難である。二、三万殖えたところは、まだこれは戦力ではないという大体判定を皆しておられますが、ここへ陸は更にあと十万殖えたときに、それは戦力と見るべきか、見べからざるか、海のほうもあと十万トン殖えたときに、これは戦力と見るべきか、まだ戦力と見ないものかということについては、はつきりしたことが政府としてもまだけじめが付かないという意味を申上げたのであります。戦力論につきましては、従来しばしば総理、各大臣お話になつておりまして、今私が僅かな時間でここで繰返すことも困難で、いろいろの意味から説かれておりますが、政府としては客観的にこの実態をとらえて戦力というものを判定すべきものだと考えておりまして、名前を軍隊と付けるということによつて戦力であつたりなかつたり、百万の陸上自衛隊を以てこれは陸上自衛隊だから戦力でないというようなことを言つても、これは相立たん筋であるというふうに考えておるのでありまして、これは客観説によつておりますことは、毎々申上げておる通りであります。

高良とみ緑風会

○高良とみ君 そういう数量によつて戦力であるかどうかという議論は、もう何百回伺つても同じことである。要は質の問題だと思います。量は、一つのピストルであつても人を殺すところの一つの力でありまして武力でありますから、そういう量の問題ではないと思います。質の問題である。即ち戦争を放棄しておる。自由党或いは現内閣におきましても、戦争は放棄しておると私は了解しておりますが、そういうときに、戦争しない、武器は、それは国内にいろいろな見方があるかも知れません。そういう意味でこの日本の今度貸与を受けるところの軍艦も、日本に来ては戦力がないからこれは自衛艦である。又これは戦争はどこまでもしないのだと、たとえ射ち合いが始まつても戦争には行かないのだという新らしい形の自衛艦或いは保安隊というようなものについて、これは国際的に言つても非常に新らしい形だと思うのでありますが、これは大臣にお伺いいたしますが、そういう点ではつきり国際的に日本の憲法を護持して、いわゆる戦争するための戦力は持たない。如何に今回二千七百トンの、或いはこれ以上の軍艦を、明らかに軍艦です、国際的に言つたら軍艦です。これを持ちましても、これは自衛艦であるということをはつきりアナウンスするということのほうが、近隣に対して、アジアに対しても、又世界に対しても一つの戦争回避の新らしい解決の途であるのじやないか、そういう点で御努力を払われるつもりが大臣としておありになりますか、どうですか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) おつしやるようなことは、実は国会でも口が酸つぱくなるくらい言つております。ただ高良さんのおつしやる点がちよつとはつきりしないのでございますが、戦争をしないということと、侵略があつたときに国を守るために戦うということは、これは別だと思います。侵略行為があつたならば、これを撃退するために戦う、戦争はしない。これはもう明らかであります。

高良とみ緑風会

○高良とみ君 併しその侵略があつたというのは、よそのどこかの、アジアの地域であつてもという意味ではおありにならないと思うのであります。従つてこれは日本の国民が一つ団結しているときに、日本の国内において、或いは日本の国民の共同社会を築いているこの地域においては戦わない。領海において、或いは国土においてならば侵略があつたときには戦うということならば、これはちよつと本当の自衛という意味がはつきりしますけれども、今まで仰せになつた、何百回も御説明になつたのは、それはいつでも戦力論に行つてしまいまして、自衛のためのものは質において違うのだということが、国民には量の問題と質の問題とがデフアレンシエートされてないように思いますが、どうですか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) つまり高長さんのおつしやるのだと、目的が自衛のためならば、これは戦力にならんのだというふうにちよつと聞えるのですが、我々はそうは考えておらん。目的はどうであろうとも、近代戦を遂行するに足る装備、部隊を持てば、これは自衛のためだから戦争じやないからと言つても、やはりこれは戦力だ。従つて目的で左右するのじやなくて、客観的な、何と言いますか、要するに名前はどうであろうとも、目的がどうあろうとも戦力を持つてはいけないのだということが一方にある。従つて戦力は持ちません。併し自衛力は持つ。その自衛力は何かというと、これは日本を侵略する国があつた場合に、或いは日本を侵略するゲリラ部隊があつたときにこれを戦用するのであつて、よその国を侵略する行為まで、こちらがのこのこ出かけて行つてやるという正味でないことは、これは何遍も申し上げている通りであります。

高良とみ緑風会

○高良とみ君 その戦力論になりますと、これは憲法にあるアザー・ウオア・ポテンシャルということでありまして、広い意味の戦力でありますから、それらをすべて持たない、それに当るものは持たないというお考えであるならば、これは又何をか言わんやであります。ですから、この議論はこれで以てやめて置きます。そうすると、今の御説明によると、その他の戦力を持たずというふうにお考えになつていると了解しておきます。

加藤シヅエ日本社会党(第二控室・右)

○加藤シヅエ君 大変幼稚な質問をして恐縮でございまするが、増原さんにちよつと伺いたいのでありますが、これからたくさん艦艇を借りまして、そうしてこれが他国から日本が侵略されないために防衛しているわけなんでございますが、実際ふだんは何をしているのでございますか、こういう軍艦は……。ただ、戦争をしないまでも、ぷかぷか浮んでいるものでございますか。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) 今のところは何と言いますか、自衛のためでもこれを、何と言いますか、いろいろなことをやるという任務を持つておらなかつた。単に警備警戒の任務を持つておりました。漁船保護というような任務もありましよう。従来は、去年の後半にぼつぼつと入つて来ました程度で、訓練を主としてやつております。そのほか現実に、何と言いますか、国民生活のお役に立つたというようなものは、今までのところでは近畿方面の大風水害のときに救助に出かけた。最近は北海道の暴風雨による漁船の遭難に対して出かけて行つて、今なお掃海中でございます。そのほか投下機雷が切れて流れている、非常に危険なこの処理に当つておるというふうなことが現在の主たる任務であります。そのほか掃海船は瀬戸内海その他の主要航路を毎日のように営々として米軍の落した機雷を掃海しております。将来いわゆる自衛、防衛の任務を持つようになりますると、いわゆる訓練の度合、目的というものが警備よりもちよつと広くなると言いまするか、高度になりましてその訓練は相当にやるのでありまするが、そのほか平素は漁船保護その他の警備救難というふうなものに当るということになるわけでございます。

加藤シヅエ日本社会党(第二控室・右)

○加藤シヅエ君 今まで朝鮮のほうから日本の船が不法に発砲されて船員が死んだ、それから拿捕されたような場合があるのでございますけれども、そういうようなときに、そこに今度のこの自衛艦が丁度居合せたような場合に、向うから発砲して来てもこちらからは発砲しないのでございますか。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) その場合は法律的に申しますと正当防御とか、緊急避難に該当しますれば発砲していいわけでございます。こちらの船に対して向うが発砲して来たような場合は、恐らく当然発砲しなければこちらがやられるという状態になると思います。これはやはり正当防衛として応酬することができると思いまするし、我々としては応酬せよというふうな命令を下すようになるわけであります。

加藤シヅエ日本社会党(第二控室・右)

○加藤シヅエ君 そういうような場合が、韓国のほうから日本の漁船を向うが向うの理由に基いて拿捕しようとしたような場合には、余捕させまいとこちらが抵抗するわけでございますか。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) 何と言いますか、この李ラインというものは、日本政府としてはこれは合法なものと認めていないわけで、従いまして、何と言いまするか、普通の公海において漁業に従事しておるということは一応適法なことである、それを倉捕するということで、そこへ警備船がたまたま居合せたということでありますれば、これはどうしても国民保護の一般的任務を持つておりまするから、拿捕させないようにする。拿捕させないようにする方法はいろいろありましよう。早く逃げろというので向うの船との間にこつちの船が割つて入つて、漁船を逃がすというような方法が通常一番当り前の方法じやないか、そういう場合に向うの船が我がほうの警備船に向つて発砲して来たというふうな場合には、こつちはやはり正当防衛としてこれに応酬するということになると思います。中に割つて入る以外にいろいろ逃げさせる方法を、事態によつては或いは無線その他の方法によつて向うの船と交渉して、この拿捕は怪しからん、やめてくれという談判を警備船がやるということもありましよう。いろいろな方法で、それは平和的な穏便な方法でもとよりやることを主眼といたします。向うが不法な攻撃を加えて来たら、こつちは正当防衛なり、緊急避難に該当するようなことになりますれば、適当な応酬をするということになるわけであります。

加藤シヅエ日本社会党(第二控室・右)

○加藤シヅエ君 ふだん海上を警備している場合に、日本国としては李ラインを認めないのでございますから、李ラインの中にちつともかまわずどんどん入つて行くという御予定でございますか。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) これは私からお答え申すのが適当かどうかわかりませんが、日本として適法と認めておりませんが、現在承わるところではどんどん入つて行けという措置は余りとつていないのじやないかと思いまして成るべく李ラインに入らないで漁業ができれば、適当に避けるということではないかと思いますが、そのほうの責任者でございませんので、ちよつとはつきりいたしません。

加藤シヅエ日本社会党(第二控室・右)

○加藤シヅエ君 この点は外務大臣から伺いたいのですが、避けるということになれば暗黙のうちに李ラインを認めるようなことになると思うのですが、その辺どういうふうにお考えになつておりますか。

岡崎勝男自由党外務大臣

○国務大臣(岡崎勝男君) これは非常にむずかしいので、認めないことは認めないのですが、そうかといつて向うが不法なことをすればこつちも不法のことはと言うか、向うが力を以てすればこつちも力を以て対抗するということは政府としてはとりたくない。従つて向うが一時不法な処置をして、李ラインを頑張つておれば、止むを得ず一時的には成るべくこれを避けて、外交交渉を早く進めて解決するという方向に只今政府は努力をいたしておるというわけでございます。

佐多忠隆日本社会党(第四控室・左)

○佐多忠隆君 私は資料をお願いしておいたんですけれども、まだ出て来ませんので、改めて資料をお願いして、資料が出てから質問したいと思いまするが、というのは、艦船貸与に関するアメリカ側の国内法がありましたね、去年出たやつ、あれと、それからそれに基いて中国とフランスですか、協定ができていると思いますが、それらの協定が一つと、それから今の十七隻、二万七千トンを期待されておる、それがMSA協定によるやつと、それから貸与協定によるやつとを振分けて、どういうふうになつておるかということ、それから十七隻の各種類のトン数、それからいろいろな艦の型ですか、長さ、速力或いは積載している武器の種類、乗組員の概数、そういうものがわかるような資料を一つ御提出願いたいと思います。それからもう一つは、これによつて或いはさつき言われた十五万トンとか、十六万トンの場合の艦隊の編成大要ですね、それに各艦がどういうふうに配属されるようなことになるのか、一目わかるような資料を御提出を願いたい。その資料が出た上で私のほうは質問をいたします。

下田武三外務省条約局長

○政府委員(下田武三君) 只今申されました資料のうちで、アメリカとフランス及び国民政府との協定は、それぞれ自国でも発表いたしておりませんので、私ども大体の数字はつかめておるという気がいたしますが、公に日本政府からは発表することができません。そういうものはできませんが。

佐多忠隆日本社会党(第四控室・左)

○佐多忠隆君 ないものはしようがないでしよう。

増原恵吉保安庁次長

○政府委員(増原恵吉君) 私のほうから提出すべきものでちよつと申上げておきたいと思いますが、この内訳、どういうふうに借りたいのだという内訳は差出しますが、例えば潜水艦は千六百トン級ということになつておりますが、その何艦ということはまだ話合がありませんのでわかりません。その長さが何ぼで、乗組員が何ぼということはちよつとわかりかねますが、千六百トンというふうに出ますので、おおよその判定は付くかと思いますが、それから借りまする種類がMSA協定とこの協定とどういうふうに振分けが付くか、これから具体的に交渉したのちにきまるわけでありますので、今のところはそういう意味の振分けは付いておらないことを御了承願いたいと思います。

佐多忠隆日本社会党(第四控室・左)

○佐多忠隆君 それではわかるだけのことで結構です。

佐藤尚武緑風会

○委員長(佐藤尚武君) それでは本日の質疑はこの程度でとどめたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐藤尚武緑風会

○委員長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。本日の委員会の冒頭に、昨日の理事会におきましての一応話合ができたことを御報告申上げたのでありますが、その時間に御出席になつていなかつた委員諸君がおられるようでありますからして今一応繰返えしますと、艦艇貸与の問題につきましては、本日と明日とこの二日間で成るべく質疑を終了し、討論採決まで持つて行きたいということ、それと金曜日の本会議にこの問題を上程する、そういう見当で御審議を願いたいということを申上げたのでございます。繰返すようでありますが、そういう意味で御協力をお願いいたします。

佐多忠隆日本社会党(第四控室・左)

○佐多忠隆君 若しそういうことであれば、是非一つ保安庁長官にも御出席を願うようにお願いしたいと思います。

佐藤尚武緑風会

○委員長(佐藤尚武君) 明日は保安庁長官の出席をお願いしておりますが、今日は内閣委員会にすつかりとられておりますから……。  それでは明日は午前十時から開会いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十二分散会

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