労働委員会 第37号
- 発言数
- 54 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1954/09/06
会議録
○多賀谷委員長代理 これより会議を開きます。 本日は赤松委員長が事故がありますので、私が委員長の職務を行いますから御了承を願います。 まず理事の補欠選任についてお諮りいたします。去る八月十八日理事丹羽喬四郎君が委員を辞任されましたので、この際理事の補欠選任を行わなければなりませんが、前例によりまして委員長に補欠理事の指名を御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○多賀谷委員長代理 御異議なしと認めまして、それでは理事に大橋武夫君を指名いたします。 —————————————
○多賀谷委員長代理 次に近江絹糸紡績株式会社の争議問題について調査を進めます。 去る九月四日に本委員会で決定いたしました近江絹糸株式会社争議について、夏川嘉久次君の自宅に委員を派遣いたし調査を行いましたが、その結果について御報告いたします。 日比谷病院にて深瀬院長に面会し、夏川君の病状並びに提出診断書について意見を聴取し、東京営業所にて同好の西川忠一郎君に面会、夏川氏の居所連絡を依頼し、目黒の寮において夏川君に面会を行いました。その質疑応答の内容につきましては、委員会議録に載せますので、これを御参照願いたいと存じますから、御了承願います。 —————————————
○多賀谷委員長代理 この際お諮りいたしますが、夏川証人の病状は、一週間前後静養を要するとのことでありますので、その時期を見て、本問題についての証人出頭要求をさらにいたしたいと存じますが、異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○多賀谷委員長代理 御異議がなければさよう決定いたします。 なお出頭日時につきましては、今までのような事情でありますので、委員長に御一任願いたいと存じますが、異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○多賀谷委員長代理 異議がなければさよう決します。 —————————————
○多賀谷委員長代理 それでは質疑を許します。井堀繁雄君。
○井堀委員 近江絹糸の労働争議につきましては、最近新聞の報道するところによりますと、堀田住友銀行頭取を初め、財界の三方が、労働大臣、中労委等のあつせんを希望して努力しておられる模様が出ておりましたが、この労働争議が一日も早く妥結を見ることにつきまして、何人も強く要請しておりますことは、申すまでもないと思います。ことに、国際信用の上にも非常に悪影響を持つ事柄でありますから、日本経済将来のためにも、一日も早くその解決を念願してやまないものであります。かような立場から、労働省が争議解決のために日夜御努力くださつておりますことに、深甚な敬意を表すものでありますが、同時に、争議の解決に努力されております労働省の、本問題の解決がどういう方向に進むにいたしましても、すみやかに解決することについての御努力はもちろんあろうと思いますが、こういう意味におきまして、一、二お尋ねをいたしたいと思います。このことにつきましては、労働大臣も次官も御都合で御出席ができないようでありますので、斎藤次官の出席を希望しておいたが、まだお見えになりませんから、これはあとへまわすことにいたしたいと思います。続いて、本争議の解決の上にも深い関係を持ち、かつ本委員会におきましては、争議の解決の問題とは別に、労働基準法の違反あるいは不当労働行為等に関する事件は徹底的に調査追究することを決定いたしておりますので、そういう二つの意味において、お尋ねをいたしたいと思います。 まず労働基準法の関係については、われわれが従来調査を進めて参りました過程において明らかになりましたのは、他のこの種の業種はもちろん、一般産業に例を求めましても、その例を見ないほど、このような一会社に、しかもその会社の全国各工場に、ほとんど同一性質の違反事件が継続的にあり、しかも質的にも量的に見ても、違反の事実ないしは容疑がきわめて顕著だと私どもは思いますので、その点をこの機会にはつきりいたすために、たとえば基準法違反ですでに送検を受けたものについて明らかにいたしたいと思うのです。私の承知しておるところによります。と、彦根工場におきましては、年少労働者の時間外労働の違反、年少労働者の休日労働の問題、年少労働者及び女子労働者の深夜業の問題、女子労働者の時間外労働、女子労働者の休日労働、他の工場におきましても、これと同様のものが違反事実としてあげられております。中津川の工場においても、あるいは大垣の工場においても、同様のものがすでに送検されておるのであります。送検されたものについて、あるいはすでに結審を見たものもあるようであります。こういう点の違反事実について、ごく簡単でけつこうでありますから、結論だけをひとつ御報告願いたいと思います。 それから、その後引続いて違反容疑で送検されたものについては、これは内容に触れることはどうかと思いますので、その件数と、どういう事件かという件名だけでけつこうでありますかり、この数字を明らかに願いたい。 さらに、私どもの最も重視しておりますのは、送検することがわれわれの基準法に対する期待ではなくて、むしろそういう事態の発生しないように、事前の監督の徹底が期待されておるわけでありますから、こういう意味で、それを知る資料といたしまして、われわれも調査いたしておりますが、労働省の方で、たとえば勧告をいたしたものがあるとすれば、その勧告の件数、それから、できるならば、その勧告の内容について、明らかにしていただきたい。 まずこれだけの資料につきこの機会に御答弁願つて、なお続けて質問いたします。
○亀井説明員 近江絹糸の過去におきます司法処分の事例につきましては、先般の当委員会におきましても御説明申し上げましたように、すでに五件司法処分にいたしております。 彦根工場におきましては、昭和二十三年に、御指摘のような女子年少者の時間外労働、休日労働、深夜業、こういうふうな労働時間関係の違反によりまして、大津地検彦根支部に送検をいたしまして、これの事件につきましては、会社に対して法人罰として五千円の罰金、取締役工務部長に対して懲役三箇月、執行猶予一年の判決があつたのであります。被告側は、これに対しまして大阪高裁に控訴いたしたのでありますが、控訴は棄却されたのであります。さらに被告側は、この案件につきまして最高裁に上告をいたしておりましたところ、昭和二十七年四月二十八日の大赦令によりまして、この案件につきましては免訴になつた次第でございます。 次に、同じく彦根工場におきまして、昭和二十六年六月の映写会の際に、映写機からの発火によりまして、その火災が原因となつて二十三名の労働者が圧死をされた事件があつたわけであります。これにつきまして、労働安全衛生規則違反といたしまして大津地検彦根支部に司法処分の措置をいたしたのであります。この案件については目下係属審理中であります。 次に、中津川の工場につきましては、昭和二十五年に同じく女子年少者の時間外労働、休日労働、深夜業というような時間関係の違反といたしまして、工場長を中津川の区検へ送致いたしたわけです。これにつきましては中津川の簡易裁判所におきまして、略式命令で罰金一万円の判決が下されたのでございます。 同じく中津川の工場につきまして、昭和二十六年の十二月に、女子年少者の深夜業及び休憩時間の違反につきまして、工場長を中津川地検に送致をいたしました。簡易裁判所におきまして八千円の略式命令があつたわけであります。これに対しまして被告側が正式裁判の請求をいたし、正式裁判の結果違反の事実が認められ、罰金四千円の判決があつたのでありますが、これも彦根工場の最初の案件と同じように、大赦令によりまして免訴になつたのでございます。 第五番目の例は大垣工場でございます。これは年少者の時間外労働及び深夜業につきまして、昭和二十八年の四月に工場長を送検をいたしておりまして、目下係属審理中の事案でございます。以上五件が過去の司法処分にいたしました事案でございます。 今般労働争議が発生をいたしまして、われわれとしましても、労働者の申告等によりまして調査を進めて参りましたところ、違反の容疑が明白になつて参りましたので、七月十八、十九の両日にわたり、本社並びに各工場その他の箇所につきまして強制捜査をいたしまして、証拠物件を多数押収いたしたのであります。その後これらの物件につきまする調査を進めるとともに、またこの物件についての裏づけ捜査もいたして参つたのでございます。大体容疑の事実が明白になつて参りましたので、先月の二十三日にそれぞれ関係の労働基準監督署から地検に書類送検をいたしたのが今日までの事実でございます。 この内容といたしましては、主として労働時間関係、すなわち法律の第三十二条、第三十五条、第三十七条、労働時間、休憩、休日、割増し賃金の不払い、こういう事案と、女子年少者の時間外労働、休日労働、深夜業、法律第六十一条、第六十二条、この違反が主体となつておるのであります。この事案につきましては、各工場共通の違反事実が明白になりましたし、また本社につきましても、この事案についての容疑が明白になりましたので、本社以下各工場につきましてそれぞれ書類送検の手続をいたしたのであります。 そのほか共通的なものとしましては、危険有害業務につきまして無免許者を使用した、具体的に申しますれば、ボイラーに従事いたしまする労働者に無免許の者を使用した、あるいは年少労働者をこれに従事さした、この違反は、岸和田を除きまして各工場共通にございました。これも同じくそれぞれの措置をいたしたわけでございます。そのほか寄宿舎の自治会の役員の選挙につきまして干渉した容疑を岸和田、彦根、津、この三つの工場につきまして明白に把握いたしましたので、この点につまましてもそれぞれ送検をいたしております。また寄宿舎の設備関係としまして、一人当り一・五畳の条件について違反をしております岸和田、富士宮につきましても同じく送検の措置をいたしております。 以上がおもな事項でございまするが、詳細なことにつきましては、目下それぞれ地検におきまして捜査継続中でございますので、私としましてこれ以上御説明申し上げることは差控えたいと存ずるのであります。 なお、これらの違反事実につきましては、単に司法処分をするということによりまして、われわれの行政上の目的が達成されるものでないことは、申すまでもないことでございます。お説の通り、これらの違反事実を今後是正させるとともに、さらに物的証拠その他証拠の関係で、十分容疑が明白ではございませんが、容疑としてわれわれが考えられまする事項について、今後これらの是正をいたさせる措置もとつたのでございまして、送検の対象となりました法文の違反事項は三十件に及んでおりますし、また法律違反でございましても罰則の適用のないもの、たとえば私生活の自由を侵害する条項につきましては勧告の措置をとつております。そのほか一般的な各工場共通の問題につきまして遣反がございますので、大阪の労働基準局長から本社の社長あてに、今後過去における違反が繰返されないようにという強硬な勧告をいたしておりますし、また各工場の所在地の基準局長からは、それぞれ各工場長に対しまして、司法処分いたしました案件以外の容疑の事実につきましてこれを指摘し、今後これらの違反が繰返されないようにということについて強硬な勧告もいたしておるのであります。われわれとしましては、今後近江絹糸が争議を解決し、操業が開始されましたあかつきにおきましては、過去におぎまするこういう違反が絶滅されまするよう十分な措置を講じて参りたい、かように考えている次第であります。
○井堀委員 勧告は文書によつてやつたものと口頭でやつたものとあると思うのですが、文書によつたものだけでもけつこうでありますから、この際承りたいと思います。
○亀井説明員 勧告は大部分文書でございます。先ほど申し上げましたように、大阪の労働基準局長からは本社の社長あてに、今後の遵法の措置につきまして強硬な勧告をいたしております。少し長くなりますが朗読いたします。一応本社に出しました勧告文だけ朗読してみます。「今般、大阪労働基準局及び各関係労働基準局において、貴本社、岸和田工場及び関係各工場に対し、労働基準法に基く監督を実施したところ、女子年少者の時間外労働、深夜業及び危険業務への就業並びに寄宿舎における私生活の自由の侵害及び自治の干渉等について数々の労働基準法違反事実が発見せられた。労働基準法施行以来満七年に垂んとし、今や同法の基本精神は各適用事業場において理解せられある今日、一万数千人の従業員を擁する貴社工場において、本法の根幹をなすべきかかる事項についての数多くの悪質違反が行われ、特に基本的人権の侵害とも見らるべき寄宿舎における労働者の私生活の自由が侵されたことは、全国にその例を見ないことであつて、他の本法適用事業に及ぼす影響の甚大なことに鑑み、本職の断じて看過し得ないところである。こういう前文に続きまして而も貴社工場における従前の本法遵守状況を顧みるに極めて屡々当該官更の監督を受け、その都度その違反を指摘され、戒告を受け是正の誓約をなしたにも拘らず、更に之を是正することなく依然として継続し、剰え二重帳簿を作成し、其の他証拠のいん滅を図つた形跡の認められることは本職の深く遺憾とする処である。惟うにかかる重要な違反事実が貴社関係諸工場に共通して行われた原因は、単に一舎監、一人事係員、又は一工場長等の発意又は行為に止まるものでなく、貴社の関係各工場に対する労務管理方針に基因するところ大なるものありと思料せられる。依つて貴社におかれてはその責任を十分に痛感せられると共に今後苟くも労働者の管理指導の任にある者に対しては積極的に労働基準法遵守の精神の徹底を期し、爾今かかる違反の絶対に行われることのないよう特段の措置を講ぜられたい。右勧告する。というのでございます。
○井堀委員 ただいまの勧告文を読むと、たいへん長いようでございますが、できるなら委員長のはからいで、速記録に転載することを希望いたします。 次に、今後の基準監督行政について、一般的なものと併行してであろうと思いますが、最近基準法に対する労働者側の不安が急に高まつて来ておるのです。特に近江絹糸のような事態が発生いたしましたのに、直接大きな刺激を受けておることも争えないと思う。これはたびたびわれわれが本委員会で主張いたしておるところでありますが、元来労働基準法は、憲法の規定に基いて制定された法律であることは申すまでもないのです。この法律は他の法律と異なつて、労働者の自主的な組織と併行して、監督行政が徹底的に行使されるのが望ましいことは申すまでもありません。ことに、そういうことが前提になつておるところに、他の事案と異なつて、きびしい検挙やあるいは違反に対する法律的な制裁を目的とするというよりも、数多い、しかもなかなか事実を把握しがたい事案であることは、立法当時に十分考慮されたわけです。こういう性格を持つものでありますから、こういう法律を運営される行政庁にあつては、絶えず基準法の精神が正しく運営されるようにするために、すなわち労働者の組織に対する深い関心が払われておるわけであると思う。こういう点については、役所の仕事の分担からいえば、基準局長の分野でないとおつしやるかもしれぬが、われわれはそういう機械的な見方でなしに、法の運営が実質的に正しく運営されるという立場からすれば、当然そこの労働者が自主的な労働組合、すなわち労働者自身が、その組織を通じて自分らの労働条件を守り、かつは法律に照して権利の主張をなし得る姿があつて、初めて法の運営が正しくできるということはあまりにも明白だと思う。こういう点に対して、監督行政を長く続けて来られて、しかも先ほど列挙されましたように、きわめて顕著な違反の事実が、しかも法律の処分を受け、かつはそれにも反省の色がなく引続いて違反が続いて、先ほど聞けば三十件に余る書類送検が行われておる。勧告についても、前文だけを拝聴いたしましても、私どもは経営者の良心を疑わざるを得ないような事態を察知することができるわけです。おそらくこういうことは、従来あの工場に自主的な労働組合のなかつたことに大きな原因があると私は思うのであります。監督行政の立場からではありましようが、そういう点について、どうしてこんなに違反が、しかも先ほど聞けば、今度のような強い輿論の背景があつて、積極的な強力な捜査が行われた結果、急に三十件の送検が行われるという事実が今初めて発見されたのでありますが、事実はかなり以前から横たわつておつた事柄であると思うのであります。こういう点に対して、今後監査行政を的確に遂行して行こうとするには、それぞれの見解があろうと思いますが、率直にそれらの見解を伺つておきたい。
○亀井説明員 労働基準法の施行について、一番関心のありますのは、この法律によつて保護を受ける労働者であることは、言うまでもありません。従いまして、この基準法を守つて行くということは、私、これは労使双方の責任ではないか、また労使双方の義務であるというふうに考えております。イギリスの例あたりを見ましても、労働基準法が守られているかいないか、労働法規が守られているかいないかということは、結局組合がこれを監視する責任を義務を持つている。もし経営者の方にその違反の事実がありますれば、組合の力、労働者の声で、みずからの手でこれを是正させて行くという慣行が、長い歴史の中に生れて来ているようであります。従いまして、監督官の数も非常に少くて、しかも労働法規が守られているというのが、イギリスの実例のように私見て参つたのであります。日本におきましても、これが今後の基準行政の理想、あるいは労使関係の理想ではないかというふうな考えを持つております。そこで今回の近江絹糸の労働基準法違反の原因がどういうところにあるかということについては、いろいろ見方もあるだろう思いますが、しかし、一つには組合に自主性がなかつたというところにも、私は大きな原因もあろうかと思います。この点今度の争議の結果、われわれとして今後この基準法の違反をなくすように、使用者側の考え方も改まるし、あるいはこの遵法について、労働組合側の考え方も改まつて行くということを、私としては期待いたしているのでございます。
○井堀委員 委員長にお尋ねしますが、次官の出席を要求しておきましたが……。こういう重大な時期に、労働行政の責任の地位にある労働大臣が、最近労働委員会に出席することがきわめて少いところに、かてて加えて、こういう事態があるにもかかわらず出席されない。政務次官も同様出席ができないことは、私は非常に遺憾なことでありますとともに、こういう態度では、かかるストライキの解決に十分な労働行政の実績をあげるというようなことは期待できないと思う。もちろんストライキでありますから、争いをいたしている当事者のあつせんをやるということも急務でありましようが、こういう国際的なケース、かつは輿論をあげての大きな社会問題を伴つて生れております労働争議については、国会の協力を求めるという態度をなくして、こういう問題の処理は正しく行えないと考えられる。ことにこの争議の内容は、だんだん本委員会が調査いたして明らかになつておりますように、労働行政の背徳ともいうべき、労働行政に対しましては故意かあるいは無意識かは別といたしまして、一方には法律違反の事実があがつて、それが追究されておるにもかかわらず、それを重ねて行うのみならず、その後に発生しております内容は、勧告の中にも明らかなように、法律無視というよりは、労働行政に対しましてのまつたく反逆としか思えないような傾向が出ておるのであります。こういうような事態というものは、単に行政官庁と雇い主、もしくは輿論の中に単独に労働行政を押し出すというようなことが愚かなことであるぐらいのことは申すまでもないわけであります。あらゆる機関の協力を得なければならぬ。ことに国民の代議機関である国会の協力を得ることなくしてこういう問題をスムーズに処理するということは、常識上あり得ぬことです。にもかかわらず、労働行政の衝にあり、しかも一方では新聞の報ずるところによれば、財界有志のあつせんにこたえて、労働大臣がこの問題の解決のために積極的な行動を起しておることは疑う余地がないのであります。こういう事実を本委員会に詳細に報告をして協力を求めるという態度こそ、私は行政官庁が国会に対する正しい態度でなければならぬと思うのであります。国会がみずから本問題の調査に対してたびたび委員会を重ね、先日は現地にまで出張して本問題の調査並びに本争議の円満解決のために努力しておることは、とつくに承知しておるはずであります。こういう機会にかような態度であることは、国会軽視というよりは、まつたく労働行政の衝に立つ責任者の資格を私は疑うものであります。こういう意味で、委員長ひとつ本委員会の名において厳重に御注意を加えると同時に、本委員会にすみやかに出席する処置をおとりいただきたいことを要望いたします。 なお続いて人権擁護局のお答えを一、二求めたいと思うのであります。前々回の委員会だと思いますが、人権擁護局長の出席を求めて、擁護局の態度並びに本問題に対する調査の一部を伺つたのでありますが、その後いろいろ調査をなさつたようであります。その調査の結果がどの程度明らかにされておりますか、できるだけ詳細に本委員会に報告願いたいと思います。なお長文にわたるものでありますならば、要領だけ御説明いただいて、速記録に掲載方を委員長の方からおはからいを願いたいと思います。
○多賀谷委員長代理 ただいま井堀君からも御指摘がありましたごとく、最近ほとんど大臣、次官が委員会に出席されておりません。これはきわめて遺憾のきわみであると思うわけであります。そこで次回からは大臣は必ず出席されるよう要請しておきます。
○黒澤委員 その点ですが、ただいま井堀委員からも申されましたように、本日労働大臣が見えないことは、非常に遺憾に考えるものであります。実は本日の委員会は、労働大臣の御出席願いまして近江絹糸に対する労働大の御報告を賜り、またいろいろ労働大臣から聴取するということで、本日委員会は開くことになつたと思うのであります。ところが労働大臣は、今委員長からお聞きしますと、佐世保の方においでになつておるようであります。もし労働大臣が万が一出られないようでありますならば、政務次官なり事務次官なりが、当然本委員会に出席すべきであると考えるのであります。労働大臣は、最近国警本部長官などを兼任いたしまして、労働委員会に対して非常に怠慢といいますか、委員会を軽視するといいますか、そういうことが考えられるのであります。第十九国会が終りまして以来、数回本委員会が開かれておるのでありますが、一度も出て来ていない。こういうことは非常に遺憾でありまして、そういう大臣でありますと、われわれ信任することさえできないというようなことになるのであります。どうか本委員会の権威のためにも、労働大臣の出席を求めるということで本日の委員会を開いたのでありますから、最も近い将来に労働大臣の出席を求めて本委員会を開いてもらうよう委員長からおとりはからい願いたい。
○多賀谷委員長代理 ただいまの黒澤君の意見につきましては、了承し、そのようにとりはからいます。
○戸田説明員 本年の六月の十一日から申告と情報認知によりまして、近江絹糸の人権侵害事件につきまして調査をいたしました。大阪の本社、東京の営業所、岸和田、彦根、津、岐阜、大垣、長浜、静岡等の各工場につきまして調査をいたしたのであります。調査の対象人員は五百十六名、第一組合員、第二組合員、第三組合員、全繊、会社職員などにつきまして詳細調査をいたしまして、八月の十一日までまる二箇月の期間調査をいたしたのであります。その結果、人権侵害の事実が認められましたので、人権侵害の事実につきまして近江絹糸の夏川社長に勧告をいたしたのであります。勧告の日は八月の十一日であります。勧告の内容につきまして、そう長くございませんので、一応読み上げたいと存じます。前置を抜かしまして、事実だけについて読み上げます。第一、寄宿舎における私生活の自由侵犯一、右諸工場においては、会社社長の信奉する仏教を従業員に信仰させるため、入社と同時に鑑」と称する手帳(社歌、社憲、経文等を集録したもの)一部を購入させ、就業時間外に、男子は隔週又は月一回、女子は毎週定期に連絡日或は研究会と称し、寄宿舎内の仏間と称する講堂に労働者を集合させ、前記「鑑」中の社憲及び経文等を齊唱させた上仏壇を礼拝させ、この行事に出席しない者に対しては外出を制限乃至禁止し、若しくは叱責威圧する等の方法をもつてこれに参加することを強要し、又女子寮生に対しては、自治会或は反省会と称し、毎日各居室において社憲及び経文を齊唱させ、これを行わない者に対しては、外出を禁止する等の方法をもつて参加を強制している事実が認められる。 言うまでもなく、信教の自由は何人に対しても憲法によつて保障されており、又宗教の布教宣伝の自由も当然に認められているところであるが、しかし何人も他人に対してこれを強制することはできない。宗教的行事に参加することを強制してならないことも憲法第二十条に明示するところである。 しかるに、被申告会社の前記諸工場においては、特に労働者の自由であるべき私生活の時間を選び宗教的行事を定め、これに参加しないときは上述の通り外出を制限禁止する等の手段を用いてこれに参加を強制したことは、明らかに信教の自由の侵害と言わなければならない。二、前記諸工場の人事係主任或は寄宿舎の舎監等は、従業員宛の信書を開披、検閲し、或は同人等の面前で従業員の意志に反して朗読することを強制する等の方法をもつて信書の秘密を侵し、又従業員の親族の不幸を知らせる電報等を隠匿し、或は理由なく交付を遅延した事実が認あられる。 右事実について、被申告会社は風紀取締又は転退職防止等の考慮から行われたものと主張するが、いやしくも憲法により保障される通信の秘密は厳にこれを保持されるべきであり、右の行為はその程度を越えたものであつて、場合によつては刑法第百三十三条の信書開披罪、同第二百六十三条の信書隠匿罪等に該当する疑もある重大なる人権の侵害と言わなければならない。三、被申告会社前記諸工場においては、寄宿舎の寮生が作業時間外において工場所在地附近の定時制高等学校、タイプライター学校、或は洋裁学院等に通学し或は通学を希望した場合、寮内における諸行事への参加強制、外出禁止、作業時間及び作業場の転番、転勤等、その他の不利益を労働者に与える措置等をもつてこれを妨害し、或は事実上通学を困難ならしめていることが認められる。 更に右事実のほか、諸工場附属寄宿舎においては、寄宿舎内に盗難があつた場合しばしば寮生の私物検査を行い、又不在者の私物をその承諾なく検査する等の事実、及び門限に遅れた場合程度を越えた外出の制限、或は前述の行事に参加しなかつた場合等の制裁として、本人のみならず、同室者に対しても外出を禁止する等の事実も認められる。 これらの事実は、寄宿舎における共同生活維持のため必要な限界を逸脱するものであつて、寄宿舎における労働者の自由、幸福の追求を阻害しているものと言わなければならない。 なお、通学に対する自由の制限については、昭和二十七年八月津地方法務局において、同社津工場における同様の侵犯事実を調査した際被申告会社においては、爾今これを改め、会社の設立したものと否とを問わず就業に差支のない限り自由に通学させる旨誓約したので、被申告会社に対し処分猶予の処理をなしたが、その後においても誓約を実行せず今回再びこの種侵犯をなしたものである。 以上の諸事実は、何れも寄宿舎における労働者の私生活の自由を侵犯するものと言えるのであり、諸工場附属寄宿舎において自治制度が未だ確立されず、その個人生活が制約圧迫されているものと認定せざるを得ない。第二、強制労働その他労働基準法違反 被申告会社諸工場の主任、係長或は舎監等の職員は、生産増強、割当高確保等工場の成績を上げるため、寄宿舎に寄宿する労働者が病気等の理由から作業に従事し得ない際にも、脅迫暴行を用いて就業を強い、強制労働をなさしめたこと、その他強制貯蓄、時間外労働、年少者の危険作業及び女子(未成年)の深夜作業の強制、寄宿舎における自治会役員の選任干渉等の労働基準法違反の容疑事実が認められる。 右労働基準法違反被疑事実は、前掲仏教礼拝等の人権侵犯事実と同様、労働者の基本的人権侵害についての事犯であるが、これについては、既に関係地の法務局、地方法務局からそれぞれ関係地の労働基準局及び検察庁にその旨通告、通報し適正な処理を一任する措置を採つた。 前掲各事実は、憲法に保障する基本的人権を不当に侵害したものであり、これらの事実の中には現に捜査機関において捜査中の事実もあるが、将来司法処分が行われると否とに拘らず被申告会社は、この侵犯事項につき厳に反省、自戒しなければならない。 これら人権侵犯は、人事係主任或は舎監等の職員の責任に止まるものでなく、むしろ被申告会社の労務管理方針にもとづくものであることが窺われるので、これらの方針を是正、改善し、労働者の基本的人権を尊重し、爾今かかる侵犯が行われないよう充分留意するとともに、労働者の指導監督の地位にある職員に対してもその趣旨を徹底せしめる措置をとられるよう勧告する。かような勧告をいたしたのでございます。なおこの勧告文につきましては、委員の皆さんにお配りいたしたいと考えます。
○多賀谷委員長代理 なおただいまの勧告文は全文掲載いたすようとりはからいますから、御了承願います。
○井堀委員 先ほど何か斎藤次官が出席するようなことでしたが、はつきりしたことはわかりませんか。
○多賀谷委員長代理 今事務次官は会議中でありますが、時間を繰合せてこちらに出るとのことでございます。
○井堀委員 たびたび繰返すようでありますが、本争議の解決については、当然労働省が、従来の経過から見てもわかるように、よほど腰を入れて努力しなければ、私は円満な解決は困難だと思う。そういう意味で、本争議がすみやかに解決するためにも、私は労働省の態度に多く期待するものがありますので、そういう点から、労働省の責任の地位にある人の考え方が本委員会に明らかにされ、それを中心にしてわれわれもまた考え方を改めなければならぬものもありましようし、追究を試みなければならぬものもあろうと私は思うわけであります。もちろん労政局の所管に関することについてもお尋ねをいたしたいのでありますが、これは帰するところ争議解決をどう導くかということに一切がかかるのであります。労政局長が労働大臣にかわつて本問題の解決の責任にあるとは私どもは思つていない。新聞の報道するところによれば、労働大臣が直接財界有志と会い、あるいは中労委と折衝しておるという報道をしておるのでありますが、もちろんそうあるべきだとわれわれも考えておるわけであります。それとも、大臣でなくて、局長が一切の責任を持つてそういう問題の処理をなされておるし、また将来もやるということであれば、私は局長から所信を伺おうと思つたわけであります。この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
○中西説明員 私、労働大臣の補佐役でありまして、今までも労働大臣の動かれるところを私が補佐をいたしております。今後ともそういうことで行くのじやなかろうかと思つております。どういうお話か存じませんが、やはり争議の問題についての政府のいろいろの措置ということになりますと、常に大臣に建議もし、また御意向も聞いてやつておりますので、お話によりますればお答えできるかと思います。
○井堀委員 私は何も局長を軽視してものを言つておるのでは決してありません。こういう事柄というものは、役所の地位や格式で判断をいたすべきでなく、やはり具体的な人と人との触れ合うところに、その重大なあやがあるわけでありますから、そういう衝に立つておいでの方の御意見を直接伺いたいとうのが、私の考え方なのであります。それはそれといにしまして、次官が見えましたら、次官はかなり大臣の気持の一切を含んでおいでになると思うので、お尋ねしようと思うのでありますけれども——これもまた、同様のことを言われるかもしれませんが、まあ誠意を尽す意味で順を追うて聞いておるわけであります。 そこで、争議の解決の衝に当つております人の所見を伺うことは、もともと困難なことでありますので、局長がせつかくそういう答弁の御熱意をお示しでありますから、一、二お尋ねをいたしておきますが、なお質問を保留して次官出席の節またお尋ねを繰返したいと思つております。 それでは局長にお尋ねをいたしたいのは、先ほど基準局長の報告、あるいは人権擁護局長の御報告にも明らかなように、まつたく労働行政の常識を心得ておる者からいたしますならば、当然組織労働者としての要求といいますか、希望といいますか、あるいは地位の向上の、主張といいますか、そういう問題とはきわめて縁の遠い状態において事件が発生し、またその事柄がそれぞれの立場から取上げられて御報告になつておるわけでありまして、言うまでもなく労働者が労働組合法あるいは憲法のいう団結した姿において問題の起り得るという範疇ではないのです。ということは、一口に言えば、ここでは労働者の組織的人格というものが全然否定されておるということ、すなわち労政局長の所管になる労働組合に関する問題に対して、まつたく否定的な態度が露骨に出ておるということを指摘しなければならぬ。これは労働省設置法の中にも明らかに規定されておりますように、あなたの所管事項なのです。すなわち、労働組合が正常な発達を遂げるために、莫大な経費と多数の人の必要性を労働省として国家が認めて、その活動を期待しておるということ、これはここに書いてある文章を見てもわかるように、労働組合の育成のために、あなたの局というものは全力をあげなければならぬところなのであります。それが、たとえば教育の形において、あるいは労働法を監視する労働委員会との連絡において、こういう事態が発生をしたということは、私は吉田政府のもとにおける労働行政の、すなわち労政局の部門に関するこの点については、まつたく無為無策というよりは、サボタージユをやつておつたというふうに理解できるのであります。こういうようなことが、積極的に労働省の意思表示の形において、先ほどの基準局長の答弁の中にもあつたように、これは労働者の権利であると同時に労働者の義務であるということも、われわれは認めなければならぬと思うのであります。労働者が団結するということは、民主主義のもとにおいては当然の権利であるが、同時にまた義務でもあるわけでありますけれども、その義務の遂行ができなかつたということは、先ほどの人権擁護局長の報告によつても、すべてがもう明らかになつておるのであります。そういう事態が発生するということは、たとえば労働省の多くの費用と莫大な人を、労働者教育のために今日国家は乏しい財政の中から保障しておるわけであります。これは、私は何も責める意味ではない。やはりそういう事実を前提にして、この問題の解決のために責任ある態度で労働省は臨むべきだと思う。われわれが委員会に出席を求めても大臣が出て来ないという態度は、雄弁にこのサボタージュの事実を証明するのです。私は一局長をとやかく言つたところで、指導と監督の任にある大臣がそういう態度では、上あるところ下これにならうで、局長が大臣にかわつて命令連絡するほどの期待をすることはできぬことはあたりまえなんです。でありますから、ここで労働省が直接あつせんの衝に立つはずがありますまい。争議解決のための直接の機関は、中労委のあつせんに待つて、あるいは第三者の好意的なあつせん等によつて、解決のための道が開かれて来ることは常識であります。労働省の労政局は、そういう問題を日常詳細に調査を続け、そういうことに絶えずプラスできる用意をなされていなければならぬはずだ。むしろわれわれが質問する前に資料として、いろいろ本委員会で心配していただいておるけれども、こういうぐあいになつております、こういうように努力しておるが、ここに困難がありますから、ここを協力してもらいたいという態度がなくては、設置法の精神からいつて、誠意を持つて本問題の解決をする労働省の態度とは信ずることができないのです。局長の機械的な答弁を要求しようとは私は思わぬのです。こういう意味で、この問題の解決を一日も早く、しかも合理的な解決を期待すればするほど、労働省の態度に私どもは期待するところが大きいわけです。何も私は一々具体的な事例をあげて申すわけではありませんけれども、争いの原因になつておるものがはつきりしておるのではないですか。般にも言つておるように人権闘争——労働者の団結の前の姿である。すなわち労政局の労働者に対する「いろは」の教育活動に欠くるところがあつたわけです。それも、ちつぽけな工場ではないのです、一万人を越え、しかも国際市場に発展を求めておる近江絹糸工場ではないですか。この工場に一体こういう事態が発生する原因を今日まで察知することができなかつたということは、どんなに弁解したつて、弁解のできるものではないと思うのです。局長一人の責任ではないと思いますけれども、何かこういうことに対して御所見があれば伺つておきましよう。
○中西説明員 終戦後相当な年月もたち、また新憲法が発布されてからも相当な年月がたつておりまして、国民全部の労働問題に対する考え方も、十分に浸透しつつあると思うのでありますけれども、何分にも人の考え方には、いろいろの考え方がございまして、一概に法律がこうだから、あるいは時代がこうなつたから、すべてものの考え方がこうなるというものでもないのであります。ことに現在問題になつております近江絹糸は、規模からいつても相当に大きな経営であります。経営者陣におきましても、労働組合に対するあり方、その他こうあるべきだということはよく知つておるようでございます。現に組合の結成は自由だ、できた組合がどういう上部団体に加盟しようとこれも自由だということを当初から言つておるのであります。しかるにかかわらず、なおいろいろと問題が解決しない。ここにやはり問題がある。といつて、これを頭からぴしやりと押えつけてやるということは、現在の建前、ことに労働関係法令におきましてはできない。またこれをやることは妥当でないと思います。従つて、やはりだんだんといろいろの経緯を経て来まして、おちつくところにおちつく。まわりくどいようでありますけれども、これが民主主義国家の行き方の根本じやなかろうか。その間政府としてほつておいたわけではない、あらゆる機会をつかまえてできるだけのことはして来たつもりでございまして、自画自讃ではありませんけれども、今までやつて来た措置に一つのむだもなかつたとわれわれは考えております。しかしながら、争議がしかくぴたりと解決するものなら、どこの民主国におきましても苦労はないのであります。労使間の調整をいかにするか、これがあらゆる自由民主国の悩みであります。従つて、この近江絹糸も、相当長期にはわたりましたけれども、やつとおちつくところに来たという段階でございまして、いましばらく推移をごらんいただきたいと思います。
○井堀委員 何も局長と議論する気はありませんが、今局長の述べたようなとぼけた話をするものじやありませんよ。何も私は、責任を追究してどうこうと言うのではなくて、この争議を解決する資格を判断して私は質問しているのです。一体労働省の腰がどれだけ入つているか。この腰の入り方は——私は形式を言うのじやない、実質を言つているのです。今あなたが言われるように、労働法の精神についてここで何も講義を試みようとするわけでもないし、聞こうとするわけでもないのです。今日終戦後もう九年近くもなつて、しかも一万人以上の職場において自主的な労働組合ができなかつたということは、そこの労働者が特殊な範疇に属する人たちの集団なら別ですが、そうでないことはもう議論の余地がない。こういうところに自主的な労働組合の組織ができなかつたということは、先ほど来の基準法の違反の内容にもなる。また人権擁護局の調査の結果にも出ておりますように、労働者が団結する自由を得る前に、その人権の自由が抑圧されたという事実までがある。こういうところに労働省の教育活動というものは、積極的に展開されなければならないのに、していないということは、あなたがいかに弁解しても、事実なんですよ。本委員会の調査にも明らかなように、労働省の刊行物にも入つていないじやないですか。婦人少年局長の説明にもあつたように、せつかく乏しい財政の中から、特別に弱い婦人少年労働者保護のための、あるいは啓蒙のための新聞や雑誌すら、労働者の手に渡つていないという事実が明らかになつているじやありませんか。そんなことをここでつべこべ言うことは、私は責任を持つて労働争議を合理的に解決する意思がどこにあるのかを疑わなければならぬ。大臣の答弁ならとにかくとして、局長がそういう答弁をするようでは、これは内助の功どころでなくて、大臣を誤らせる。現に近江絹糸労組の今日までの姿は、だれが見たつて、どこからもしかられるところはありはしない。明らかに労働者の自主性を侵すような、人権を侵害するような事実すらあるのです。労働省の特別な施策を必要とするというのではありません。普遍的な労働者の啓蒙活動に、そういうところに障害があつたということがわかれば、今後その障害を突破するための要諦か労働省の中からも、労働行政の立場からも、解決案の中に要請されて来てしかるべきなんです。すなわち中労委は労働省の意向を参酌して問題を解決するところなんです。中労委は、直接調査機関を持つておりません。あるいは教育啓蒙をやる機関を持つておりません。予算かありません。でありますから、そういう機関を活用して争議の解決条件を配慮するのが労働法の精神に合うんじやないですか。その資料を提供すべき労政局というものが、あなたのようなお考えであれば、誤つた資料を提供することになる。問題はこれによつて争議が解決したからといつて、あとに問題が残らぬのじやない。ストライキは段階的なものでありますから、その解決が将来合理的な労使関係をつくり、産業平和に貢献し、日本経済に貢献できるような労使関係をつくり上げて行くために最善を尽すというのが解決条件を選ぶ道なんです。それは利害関係があり、立場が相違しておりましても、その目標に向つては協力すべきだ。その道を求めて行くのが、言うまでもなくあつせん者の態度であり、中労委の立場である。それに協力するのが労働行政で、日常いろいろな蘊蓄を傾けて調査資料を提供して行くべきなんです。労政局長の今の片言隻句を言うのではありません、あなたの態度は前会以来よろしくないです。もつと労働争議の及ぼす将来のことを考えていただきたい。私は局長の責任を問うのではなくて、労働省の問題処理の衝に当つておいでの労働大臣に期待したのでありますけれども、どうしても出席できないので……。次官を通じてあなたは部局的な内助の功をすればいいのであつて、今指摘した点について欠くるところがあることを反省してもらいたい。同時に、私の今ここに次官の出席を要求しているのは、大臣と一体になつて本問題を処理して行く立場の者といえば、私は次官だと思うから、次官を通じて、間接的ではあるけれども、本問題の処理について注文をつけ、所見を聞きたいというのです。しかし、その資料を提供すべきあなたの立場というものは非常に重大です。一体この問題解決の条件になるものは、わかつているじやありませんか。第一、あなたの所管で明らかにしなければならぬことがあるんだけれどもどういうお気持か知りませんけれども——この際はつきりしましよう。たとえばここに資料を提供されておりまする不当労働行為の申立状況を見ても、二月二十日、六月八日、六月十一日、六月十二日、六月二十三日、七月五日、七月十二日、七月十五日、七月十九日、七月二十日、八月の日にちがありませんが、九月六日、こういう日付けによつて地労委及び中労委に対して不当労働行為の事実をあげての提訴が行なわれている経過が報告さえれている。こういうような不当労働行為の内容について、私が説明するまでもありませんけれども、これはあなたの所管なんです。今後こういうものが再び発生しないような解決が、何をおいても望ましい解決であることは当然だと思うのでありますが、この点について伺つてみましよう。労政局長は今度の本問題解決について、今後不当労働行為のかかる提訴が起きないように、こういう紛争の起きないように解決するについて、どういう心境でありますか、解決条件に対する所見を伺つておきましよう。
○中西説明員 労政局全体の仕事は労働教育であると私ども思つてやつているのでございますが、従来とも近江絹糸の各工場におきまして、不当労働行為がございまして、それについて、すでに決定が出たのもございますが、大体においては不当労働行為だということで是正の命令が出ております。そこで仰せのごとく、ここに今回の事件が発生後、各工場、それから本社、営業所、ほとんど全部にわたりまして不当労働行為の申立てが出ているのであります。こういつた個々の申立てをやつておりましても、近江絹糸につきましてはとうてい寧日ない。結局はこういつた不当労働行為が起らないような状態をつくる。今、井堀さんの言われたその根本をたださなければ意味はないという気持は同感でございます。従つて、今度の争議解決も、もちろん双方お互いに相手のあることでございます働行為の申立てが起らないような解決を衷心より望んでおるのであります。
○井堀委員 不当労働行為の事実について、詳細な討論をやれば、私と局長の見解が一致することは、今局長も明らかにされたのですが、それに相違があろうはずはないわけです。ただ大事なことは、争議解決の条件というものについて、経営者側と労働者側との利害、すなわち経済上の利害関係の対立は、私は並行して行くと思うのです。そういうものに第三者が介入したり、あるいは政府の機関がどうこう言うことは避けなければならぬことだと思う。しかし、労労使関係のあり方に対して、憲法なり法律なりの精神を徹底せしめるということは、これは勇気を持つてやるべきだと思う。たとい輿論が悪くとも、あるいは時の政府が一般にいう反動的のものであつても、その行政の地位にある者は、反動的であればあるほど勇気が必要である。そういうものに流されたり、それにこびを売るというようなことや、気がねをするような態度は、厳に慎まなければならぬところである。こういう意味で、私は十分決心をして、この際本問題の処理に当ることを要望いたしまして、一応質問を保留しておきたいと思います。 —————————————
○多賀谷委員長代理 次に失業対策に関する件について調査を進めます。 —————————————
○多賀谷委員長代理 この際お諮りいたします。呉市の失業対策問題について呉市長松本質一君より、参考人として説明を聴取したいと思いますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○多賀谷委員長代理 御異議なしと認めてさよう決しました。 —————————————
○多賀谷委員長代理 それでは松本参考人より御意見を聴取いたしたいと思います。
○松本参考人 それではお許しを得まして、呉市の失業問題につきまして、皆様方に、かいつまんで御説明申し上げたいと存じます。 御承知の通り、呉市は、約六十年以前に海軍が根拠地を置くことになりまして、そのために一寒村から急激にどんどん発達いたしまして、終戦当時人口約四十万の都市になつておつたわけでございますけれども、海軍が壊滅いたしまして、海軍工廠が数万の工員を失うというような状態になりましたので、漸次失業というような状態になりまして、工場も一時十三万程度に減つておつたようなわけでございます。その後駐留軍——当時の進駐軍——主として英連邦軍が進駐して参りまして、旧海軍の施設のほとんどを占領するような状態になつたわけでございまして、そのためにせつかく旧軍港市転換法という呉市にとりましてありがたい法律ができまして、そしてこれによつて平和産業をどんどん振興させるという方針をとりましたものの、接収のためになかなか転換がうまく参りませんで、現在幾つかの工場が参つておりますけれども、なかなか多数の失業者を救済することができないという状態になつており、一方多数の労働者は、駐留軍の不安定な雇用関係のもとに置かれておりまして、これが最近ではいつ失業するかわからないといつたような状態に追い込まれておるわけでございます。そういうわけで、呉市におきましては、失業者が現実の問題といたしまして非常に多いのでございまして、全国第一とわれわれは考えておる次第でございます。これを数字的に簡単に御説明申し上げますと、現在顕在失業者が約九千名ございまして、それに潜在失業者が約五千名近くございます。そういう状態でございますので、失業対策事業というものが非常に大きな市の負担になつておりまして、これが市の全財政の約一七%という比重を占める状態になつておるわけでございます。これを他の都市と比較いたしますと、他の都市では大部分が一〇%以下あるいは五%以下でございまして、呉市が特別に一七%という大きな比率を示しておるわけでございます。そういう状態で、呉市の財政もその負担に年々耐えかねて参つておる次第でございまして、これに対して市費を三分の一負担することになつておりますので、その三の一の負担になかなか耐えかねて、そのうちの約半額は起債にまつておる次第でございますが、それの元利合計二億四十万というような多額に達しておりまして、もうすでにその限度に参つておるような次第でございます。本年度、現在の状態が続いて行きますと、おそらく三億円を突破するといつたようなことになるだろうと思う次第でございます。 そういうわけでございますので、今回私ども皆様方にぜひとも御理解をいただいてお願い申し上げたいのは、この呉市の特殊な事情、他都市と比較して特別に失業状態が悪いという、この特殊な事情をおくみとりくださいまして、われわれといたしましては、他都市並の負担は当然背負つて行かなければならぬと考えておりますが、特別に多い部分に対しましては、何とかこれを全額国庫負担による事業なり、公共事業なり、失業対策事業なりというようなものによつて、これが解決をはかつていただきたいと存じまして、ここにお願い申し上げる次第でございます。 簡単でございますが、そういう実情をよくおくみとりくださいまして、何らか特別な御措置によつて、この窮状をお救いくださいますことをお願い申し上げます。
○多賀谷委員長代理 質疑があればこれを許します。
○宮原委員 ただいま呉市長の参考陳述にありましたことく、呉市は日本一の失業都市であるということは、もうすでに世間で折紙のつけられておる事実でありますが、これは単に呉市だけの問題でなく、最近のデフレ政策が経済基盤の弱いところに副作用を及ぼして行つて、全国的に各地に程度の差こそあれ、類似の問題が起つて来ているようであります。それで呉市の場合は、全国的の失業の問題よりもなお深刻で、特異の性格を持つているように思いますが、政府筋では具体的には今の呉市の参考陳述を基本にして、これに対して労働省は過去においてどういう心構えでこの問題を処理されているのか。またこの配付された文書にも出ておりますように、最近離職者数が非常に多い。呉市でも戦後最高の記録を示しておるのでございます。こういうものに対して、要請されております特別措置に対する労働省の御意見を、ひとつ局長から伺つてみたいのであります。 〔多賀谷委員長代理退席、池田(清) 委員長代理着席〕
○江下説明員 お答えいたします。呉市の失業状態につきましては、私どもも、かねてからその深刻さについて十分承知をいたしておりますが、特に最近におきまして失業者がふえて来たということも、承知をいたしております。これに対しまして、労働省といたしましては、お話にもございましたように、失業対策事業につきましても、呉市に特別に大きなわくを出しまして、失業者の吸収に当うしめておるのでございます。今のお話のように、失業対策事業だけでも地方財政の負担の問題でなかなか困難だということもございますので、先般閣議決定をいたしまして、公共事業へできるだけ失業者を吸収あつせんさせるという措置を講じまして、この措置も特に呉市地区等で強力に押し進めて参りたいというふうに考えておりますが、なお失業対策事業の面におきましても、失業の程度に応じまして、今後とも必要なわくの増加ということも、あわせて措置したいと考えております。
○宮原委員 ただいまの御説明に関連して伺いたいのですが、八月三日の閣議決定のことは、ただいま局長からお話のありましたごとく、そのうちで先ほどの市長の陳述と関連していることでありますが、いわゆるこの閣議決定の第二項でしたか、公共事業施行地域の範囲、つまり失業地域に重点的な配慮を行おうという趣旨にできておると思うのです。これは市長の要望の中にも出ておりました。これについて伺いたいのは、閣議決定がなされておる、このいわゆる特別重点的配慮というものは、本年度の問題なのかどうか。本年度は公共事業費用はすでにきまつて、対象地域はきまつているわけでありましよう。来年のことを言えば鬼が笑うことでありましようが、これは来年の話なのですか、今年の話なのですか。今年の公共事業を多少整理をして、そういう失業地域に公共事業を多少とも融通をして行こうというお考えであるのか。これは建設省等とも御連絡をおとりにならなければ、労働省としても御返事ができないかもしれませんが、閣議決定になる原案を労働省の方でおつくりになつたことでありましようし、各般の事情がよくおわかりでありましようから、政府の方針について、あなたの観測でけつこうであります、今年からこれを実行しようというのか、今年はだめなのか。鬼が笑つても来年から行こうというのか。こういう点は他の労働行政の措置ができないからということで、公共事業で来年度に譲るという誤解を受けますと、閣議決定は作文になつて、政府の単なるゼスチユアになると思う。これはなかなか重要な点もありますから、労働省では建設省の公共事業の再編成でも求めてやろうとされておるのか。この点は労働省がイニシアチーヴをとつてお働きにならなければ、実現の見込みがないわけであります。幸い大蔵省からど日なたか見えておりますので、関連しまして大蔵省としての全体から見たこの問題に対する御考慮の状況をあわせて伺つておきたいと考えます。
○江下説明員 閣議決定の内容でございますが、閣議決定におきまして私ども特に重点を置きましたのは、二つございまして、一つは、今、宮原委員がおつしやいました公共事業を今後できるだけ失業情勢に応ずるように実施をして行くという問題、いま一つは、現在すでに行われておる公共事業でありましても、できるだけ失業者を優先してこれに吸収するということでございます。そこで前の公共事業をできるだけ失業情勢に即応して実施すると申しますのは、結局本年度につきましては、本年度の公共事業のわくも一応はきまつておりますので、そのわく内で今後新たに着工されるもの等について考えられるわけてございますが、今後公共事業等がかりに増額というような措置になりますれば、当然この規定が適用されるということに相なろうかと思つております。そこで増額しないということになりますれば、仰せのごとく、本年度におきましては、そう大幅にこれを期待するわけには参らない。なお、あの文句の中において私ども考えておりますのは、公共事業の実施地域を、単に新たに着工するものについて実施地域を云々ということだけでなく、たとえば公共事業の今後の実施の種目をどうするか、あるいは施行の緩急の順序をどうするかというようなことも、あわせてあの文言の中に考えておるのでございます。たとえて申し上げますと、鉄道工事等でございまして民い線をやります場合に、できるだけ大業者の多い地帯から工事を始めて行ということも考えておるのでございます。その点につきましては、今後の公共事業のわくの問題が大きく響いて来るということであります
○大村説明員 お答えします。業対策事業に関連いたしまして、公共事業の失業者の吸収強加の閣議決定につきまして、全般的な各省共通いたします総合調整の問題につきましては、これはただいまは経済審議庁に労働対策連絡協議会というのを置きまして、これに関係各省が集まつておりまして、一週間一回ないし二週間に一回くらい定例的に会合いたしまして、ただいま安定局長から御答弁がありましたような内容につきまして、逐一相談してきめて参つたような次第でございます。
○宮原委員 労働省と関連して大蔵省に伺いたいのですが、市長の要望にもありました失業対策費の全額国庫補助、こういう問題があるのですが、この問題はいかがお考えになつておりますか。失業率と申しますか、その順位を決定するのに困難な問題があることは了解いたしますけれども、しかし、伏して不可能な問題ではないのです。たとえば、先ほども市長も申し上げましたように、求職に対する比率とか、または失業費の総予算に対する比率というようなもので順位の決定も決して不可能でないというのです。ことに練達な労働省は、勘ででもある程度わか従いまして、この公平なる基準の北見ということは、労働省がいよいよやるという前提に立つて御査定になれば、事務上、技術上さほど困難なことでもない面もあるであろうと思う。従いまして、これについて政府はその困難を克服して、特殊失業地帯に対し——これは呉市だけじやない、炭鉱地域もそうであります。そのほか重点にお考えになつて、緊急部面についててだけでも、全額国庫負担なり、また補助率の引上げ、これにかわるところの特別措置を実行して見た方が適当であろうということについてのお考え、これについて労働省、大蔵省は現在どういうお心でお考えになつておるものであるか、その点を伺いたい。 それからこの質疑を終る時間の都合上、引続いてもう一点お伺いしておきたいのですが、それは本年度こういう大量失業問題が起つておる。これは昨年度に起りました災害対策——これは天災地変ではないのですから、これとはまた同様に考えるわけに行きませんけれども、しかしながら内外の情勢から考えて、災害にも匹敵し、災害に準ずるだけの重大問題であろうと思うのです。従いまして、応急措置として本年度の上期の失業わくを大幅に拡大する。これがためには失業対策費の予算の繰上げ使用という問題も起りましよう、補正予算の編成ということも起るでしよう。こういう問題について、事務御当局としての見解は、こういう機会ですから、大臣でない立場上、あまり明確な御答弁を私期待しておるわけではありませんけれども、心構えと申しますか、皆さん方のその必要の認定についての御意見をこの際伺つておきたい、こう考えます。
○江下説明員 最初に失業対策事業の補助率の問題についてお答えいたします。失業対策事業につきましては、労務費の三分の二、資材費の三分の一、事務費の三分の一を国庫で補助いたしまして、他は地元負担ということに相なつております。こういたしましたのは、失業対策事業の事業効果が、結局はその事業の実施主体に帰属するものでございますので、三分の二という補助率は、政府の補助額といたしましてはそういう考え方であります。は相当高率でございまして、私どもとしては一応この程度で適当ではなかろうかと実は考えております。 そこで、全国的にはそういうことでございますが、具体的に呉市ないしはまだほかにもそういう町村があると思いますが、相当財政が苦しいという場合もございます。これに対しましては、以上ただいま申し上げましたような趣旨によりまして、地方財政の面でこれをカバーしていただく。具体的に申し上げますと、起債のわくを増大する、あるいは地方交付税の増額をいたすという特別の措置を、こういう市町村に対してはやつて行くということで、財源的には措置したいと考えておるわけでございます。 なお今後の失業情勢に対します労働省の方針でございますが、これは非常に大きな問題でございますので、私の答弁では御不満かと思いますが、当面の問題といたしましては、失業対策事業のわくの問題がございます。繰返しこの委員会でも御説明いたしたと思いますが、失業対策事業の予算につきましては、本年度一割程度の増額をいたしまして対処いたしておるのでございますが、第一・四半期、第二・四半期には、それほど失業、つまり日雇いという問題が深刻でないだろうという予想のもとに、下期に重点を置いてこの予算を使うということで、現在まで運営をいたしておりますが、実はやや苦しくなつておるのが実情でございます。今後の失業情勢のいかんでは、この失業対策事業につきましても、必要に応じては繰上げて充当するということも起るかと存じておりますが、現在までのところ、そういう方法で運営をいたしております。 なお、先ほど大蔵省から答弁がございましたように、失業の発生というのは、全国画一的に起るものではございませんので、具体的に地域々々によつ相当様相が違つて参ります。そこで私どもといたしましては、そういう地域地域の失業情勢を絶えず把握いたしておきまして、これに対しては、そのときそれに適合した施策を講じて参るということで実は考えておるのでございまして、労働対策連絡協議会におきましても、現在公共事業を今後いかに使つて行くかというような問題につきましても、十分協議いたしておるわけでございます。いま少しいたしますと、なお具体的なお話しができるかと思いますが、今後の事態に対しましては、公共事業の運営と失業対策事業の必要に応じた拡大というこの二つをもちまして、対処して参りたいと考えております。
○大村説明員 呉市のように特別に失業者が多発いたしまして、失業対策費に相当予算が脅かされておるということにつきましては、ただいま安定局長の御答弁の通り、私どもといたしましては、特別交付税あるいは起債の認可の際にできるだけ便宜をはかるように考えて行きたい、かように考えております。 また最近の失業情勢は予断を許しませんが、当初予算に予定した以上に失業者の発生する可能性も大きいわけでありまして、こういう場合には、すでに大蔵大臣からも言明されておりますように、必要の際適宜適切に下半期の予算を繰上げてでも使用して対処いたしたい、そういう考え方であります。
○多賀谷委員 局長にお尋ねいたしたいと思います。先ほど宮原委員からもご指摘がございましたけれども、失業者が稠密的に発生した町村に公共事業を与える、こういうことであります。しかし事実問題として、公共事業一つを決定いたしますについても、災害の場合は別ですけれども、かなり日数を要しておる。手続きをとりましてから決定に至るまでの期間が、かなりあるわけであります。こういう状態で、はたしてそういうように失業群が多く出たからそこに公共事業をまわす、こういうことが、一体事実問題として時間的にできるでしようか、まず第一にこの点をお聞きしたい。
○江下説明員 公共事業をただちに機動的に活用するということは、お話の通り、現在の制度ではなかなかむずかしい問題もあると思います。そこで私、公共事業を活用すると申しましたのは、もちろん失業対策の面で活用するわけですが、今のような時期的な問題につきましては、失業対策事業をとりあえず実施する、失業対策事業のみによつてカバーできないほど失業情勢が深刻な事態に立ち至る、こういうようなおそれがあります場合には、公共事業の実施という点も今後あわせて考えて行くということでございます。
○多賀谷委員 炭鉱地帯のごとく紘害復旧事業が継続的に行われておる、こいう場合に、よく年度のものを繰上げて事業量を増すことはよくわかるわけですが、今までそういう継続事業のないところに、新たに公共事業を持つて来るということは、今局長も若干触れられましたが、機動的、時期的な関係から見まして、ほとんど可能性がないように考えるわけです。そうすると、従来ありました公共事業の労務者に対する就労率の問題で何とかカバーしたい、こうおつしやるかもしれませんが、今問題になつております呉市とか、あるいは重点的に失業者が発生しております市町村におきましては、そういう実態ではないと思う。むしろ農村地帯の耕地とか林道、そういう方面には、確かにそのことは言い得ると思うのですが、そういう町村におきましては、なるほど就労率を高くして吸収をいたしますと、逆に今まで働いておつた者が失業する、これが日雇い労務者となつてまた現われて来る、こういう実態にしかならないと思う。ですから、これもあまり望みがないと思う。そこで、あと残された問題は失対事業です。なるべく失対事業を増す、こういうことですが、市町村としては、失対事業をもらいたいけれども、もらつても財政がどうにもならない。あなたの方は、いやそういう場合には交付金で見るのだ、こうおつしやいますけれども、今の交付金が申請通り行われておれば、比較的問題はないかと思いますが、御存じのように、交付金は頭打ちに八割なら八割、こういう制度なんです。ところがほかのケースと違いまして、この就労というのは、二十日を十五日にしようというわけには行かないのでありまして、ほかの経費のように節減のできないものである。ここに非常な困難があつて、それだけはどうしてもコンスタントになつて残る。そこでこの問題はコンスタントに残つて頭が出て来る分については、何らか対策を立てなければならぬ、かように考えるわけですが、そういたしますと、結局は将来の問題としては、直営の公共事業をするということと、もう一つは、やはり失業対策費の補助率の変更をしなければならぬ、こういうように、考えるわけです。これはすでに例のある話でありまして、水害の場合に、この前補助率をかえたわけであります。私は永久にというわけではありませんけれども、何かこういう事態におきましては、やはり時限立法でもして、こういう臨時立法を出す必要があるのではなかろうか、かように考えるわけですが、当局においてはそういう意思はないかどうか、これをまずお尋ねいたしたいと思います。
○江下説明員 先ほど御答弁申し上げましたように、確かに財政状態の苦しいという市町村はあるようでございます。呉市以外にも、私もちらほらとそういう該当町村において負担ができないということも、実は聞いております。それらにつきましては、実は私どもといたしましても、失業対策事業が行われないということによつて、失業問題が深刻になるということでは困りますので、できるだけ当該市町村長なりあるいは当該県に対しまして、市町村が苦しい場合には県営の事業をその地域でやつてもらいたいというようなことも十分話をして、実は現在までやつて参つております。県に対しましてそういう措置もやつておりますが、なおかつ市町村としても困る、県としても困るという場合には、先ほど申し上げましたように、地方財政の関係からこの点を解決してもらうということで、個別的にも財政当局の方には申出もしておるようなわけであります。これを特別な市町村だけに限つて補助率を上げる——昨年の水害の例は、仰せのごとくごさいましたけれども、現在の事態におきましてそういうことを考えて行くことは、実は現在のところまだ考えていないわけでございます。できるだけ財政の範囲内で進めて参りたいと考えております。
○多賀谷委員 私は官庁のおのおのの権限を増せ、こういうことを言つておるわけではないのですが、局長の今まで失業対策小委員会での話によりましても、どうもわれわれが思うような回答が得られぬ、またその積極性の面が見られないということを非常に残念に思うわけです。それは公共事業にあるいはそれは自治庁の方へと、こう全部仕事をよそにまわして、自分の方は残つたやつだけをやればいいのだ、こういうお考えでは困るのでありまして、この際、やはり直接の担当者であり、むしろ全部の責任を自分でかぶつてやる気持をもつて、あらゆる面に積極的に動いていただきたいと思う。今私はこの席でさらにこれ以上の回答を求めようとは思いませんけれども、続いて失対の委員会も開かれることでありますので、その際さらに質問を申し上げたい、かように考えます。
○持永委員 この機会に私も一、二質問やら希望を申し上げておきたいと思います。それはきようの新聞でしたか、米の価格の問題で、今農林省と大蔵省の方で折衝をされておるようですが、その新聞記事によりますと、これは前にも出たのですが、例の食糧輸入補給金の減額、それは麦が相当安くなつたために、安い麦を入れる。それで多少食糧輸入補給金に余裕が出て来たので、その金を約六十五億くらい、場合によつては大蔵省としては失業対策の方にまわしてもいいような用意があるということを前にも聞き、またきようの新聞にもそういうことが出ておりましたが、それは大蔵省だけの考えでありますか、あるいは大蔵省と労働省との間にある程度話があつたということの新聞記事でありますか、大蔵省の方にお伺いいたします。 〔池田(清)委員長代理退席、多賀 谷委員長代理着席〕
○大村説明員 きようの朝刊にそういうような記事が載つておりましたが、私どもはそういう数字につきましては、まだそこまでは研究いたしておりません。だからどういうところから出た数字か承知いたしておりません。また労働省とも、もちろんそういう点についてはまだ話合いをいたしておりません。
○持永委員 実は読売新聞をきよう見ましたら、その中に約六十五億円くらいの用意をしておるというようなことが出ておりましたが、これは何ら根拠のない話でもなかろうと思います。ついては、先ほど多賀谷委員からも話がありましたが、私ども今度北海道に行つて室蘭の失業状況を見て参りました。これもちようど呉市の場合と同じように、市としては相当多額の失業対策費を使つております。また今後日鋼——ただいま争議をしておりますが、あれが解決したとしても、九百人ぐらいの失業者が出るでしよう。ところが室蘭は御承知のように後方地帯が浅いですから、これが全部農村へ行くということができません。弾力性のない地方でありまるから、おそらくこれがすぐいわゆる登録失業者として失対事業の対象になるべきものだと考えます。ちようど呉市の場合と同じように、室蘭市も相当多額の失業対策費を使わねばならぬ。実はこの前室蘭に行つが際にも、市長から強い要望がありました。いずれ労働省の方にも陳情に来るということでありました。まあ金額は忘れましたが、相当の金額を使つております。総予算に対する割合も非常に高い。そこで、先ほども多賀谷委員からお話がありましたが、こういうように特殊の都市、あるいは福岡県の大牟田もそうじやないかと考えます。まあそうたくさんはないと思いますが、こういう都市に対しては、やはり労働省とされてはその関係府県あるいは市とよく御連絡を願つて、積極的な失業対策事業を考えていただきたい。先ほど全額国庫負担の事業と言うておられましたが、それも1つの案でありましよう。しかしまたそれと同じように、今度は国が全額を負担して直営の仕事をやる。あるいは道路とかその他の仕事もあると思いますが、そういう仕事がないかあるか、これはやはり当該市、府県がよく知つておるでしようから、よく当つていただいて、どうしても一般の失業対策事業ではとうてい救済ができないという場合には、そういう思い切つた公共事業を、労働省の方からまた労働対策審議会に主張されまして——やはりこれはどうしても労働省が主になつてやらなければ、ほかの省は関係が薄いのでありますからなかなか熱がありません。どうか主力をそこに注いでいただいて、主導性を労働省が持つていただくように、こういう特殊な都市については積極的に御考慮を願いたい。ほかの普通のところでしたら、それほどの御心配はいらないでしよう、こういう都市はほんとうに死活問題です。また大きな社会問題を惹起するおそれがありますから、ひとつ特別な考慮を払つていただきたい。そこで先ほども言われましたが、補助金に関する特別な立法ということも考へますが、これもひとつ今後の失業者の続出の推移を見られて、場合によつては、おそらくそこまで行つていただく必要があるんじやないか、そう考えますが、ひとつその点も十分御検討を願いたい、こう思います。希望やら質疑やらごちやまぜになりましたが、また私の申し上げたことて何かお答えいただけることがありましたらお答えを願いたい。
○江下説明員 先ほどお話に出ましたが、経済審議庁に労働対策連絡協議会がございますが、ここで実は今後の失業問題に対処いたしまして、いろいろ案を考えておるわけであります。現在考えておりますのは、石炭地方におきます鉱害復旧費の繰上げの問題であります。一応財源的な問題から、まだ日の目を見ませんが、この点について労働省としては強く推進をして参りたいと思つております。今後の問題といたしましては、仰せのごとく、失業問題は地域的に非常に違つておりますので、地域々々の失業情勢に応じた公共事業の実施ということを強く推進いたしたいというふうに考えております。とりあえずの措置といたしましては、室蘭におきましては、北海道庁に実は話をいたして、市だけに負担をさせないで、北海道の方として積極的に道営事業を実施するというようなことで、実は話をいたしております。今後とも大体御趣旨のような線に沿うて進みたいと思います。
○池田(清)委員 呉市長さんにお尋ねしたい。あなたの方の事情は私さつぱりわかりませんので、お尋ねしたいのは、今あなたの方では公共事業がどういう程度に実施されておるか、その模様を詳しくお伺いしたい。それからなお、持永委員からも話がありましたが、局長に対し希望を申し上げたい。私は、現下のデフレ政策について、一番かんじんな、影響のある問題は、失業だと思うのです。国としましても、失業に対する政策を誤つたならば、たいへんだと思う。ですから、問題になつた部分はむろんそうですが、これから起り得る失業問題に対しては、あなたの方で全力をあげて当つてもらわなければならぬ。つまりストライキもむろんそうでありましようが、それ以上に失業問題というものはきわめて重要だと思います。たとえば、呉においてこれが救うことができないで、何か大きな問題が起るということがあつたら、これはたいへんだと思う。でありますから、先ほどだんだん話がありましたが、部分々々はわかつておるのでありますから、あるいは室蘭、呉、大牟田というような、この部分部分に対する対策はあり得ると思う。どうかこれについては万全の策を、そうして熱意を持つて当つていただきたい。こう考える次第であります。
○松本参考人 お尋ねでございますので、呉市の公共事業につきまして簡単に御説明申し上げます。全体の数字を申し上げますと、大きい意味での公共事業は、これは失対事業を含めてのものでありますが、昨年度におきまして年間約五億円行われております。そのうち失対事業が二億二千八百万円行われておるわけでございます。その他の事業としましては、六・三制の整備が六千二百万円、一般公共事業としまして、土木工事その他が一億五千万円、それから災害公共事業としまして四千七百万円、これの総計が約五億、四億九千何がしというものが行われておるわけでございます。そのうち国庫補助が二億八千万円ございまして、県の方からの補助が約六百六十万円ございます。起債が一億三千万円ございまして、残る約七千四百万何がしというものが純粋な市の負担ということになつておるわけでございます。その七千四百万何がしという純粋の市の負担の中で、四千二百万何がしというものが失対事業の方に使われておるわけでございます。これが比率で申しますと、二分の一を越えます約五七%ということになつております。そういうふうな比率になつておりまして、これは余談かもしれませんが、呉市といたしましては、この三分の二の補助をいただいております失業対策事業ですから耐えかねておりますので、他の公共事業はごのために返上しなければならぬというような事態に追い込まれておるわけで事業は、これは失対事業を含めてのものでありますが、昨年度におきまして年間約五億円行われております。そのうち失対事業が二億二千八百万円行われておるわけでございます。その他の事業としましては、六・三制の整備が六千二百万円、一般公共事業としまして、土木工事その他が一億五千万円、それから災害公共事業としまして四千七百万円、これの総計が約五億、四億九千何がしというものが行われておるわけでございます。そのうち国庫補助が二億八千万円ございまして、県の方からの補助が約六百六十万円ございます。起債が一億三千万円ございまして、残る約七千四百万何がしというものが純粋な市の負担ということになつておるわけでございます。その七千四百万何がしという純粋の市の負担の中で、四千二百万何がしというものが失対事業の方に使われておるわけでございます。これが比率で申しますと、二分の一を越えます約五七%ということになつております。そういうふうな比率になつておりまして、これは余談かもしれませんが、呉市といたしましては、この三分の二の補助をいただいております失業対策事業ですから耐えかねておりますので、他の公共事業はごのために返上しなければならぬというような事態に追い込まれておるわけでありまして、補助率が低い公共事業につきましては返上しなければならぬというような事態に追い込まれておるようなわけであります。先ほどお願い申し上げましたように、ぜひとも全額負担もしくは極度に高率の補助をいただくようでなければ、呉市としては耐えて行かれないという事情にあるわけでございます。御参考までに申し上げます。
○多賀谷委員長代理 次会は公報をもつてお知らせいたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後零時五十一分散会