労働委員会 第28号
- 発言数
- 107 件
- 登壇者
- 22 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1954/05/28
会議録
○赤松委員長 これより会議を開きます。 前会に引続き失業対策に関する件について調査を進めます。本件につきまして、関東特需労協の坂本登君同じく関東特需労協の稻富信義君、日本鉄鋼産業労働組合連合会中央執行副委員長安西虎雄君、全駐留軍労働組合中央執行委員長市川誠君、日本駐留軍労働組合中央副執行委員長川畑政男君以上の方々に御出席をお願いしまして、さらに全日本造船労働組合中央執行委員溝口光治君、帝国酸素労働組合総連合中央副執行委員長立川一郎君、尼崎製鋼労働組合組織部長平坂春雄君、以上の方々を参考人として意見を聴取するに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○赤松委員長 御異議がなければさよう決します。
○赤松委員長 多賀谷真稔君。
○多賀谷委員 今炭界が非常に不況と言われ、ことに労働関係の問題としても、きわめて重大な深刻な問題を含んでおるわけで、ことに炭鉱企業は多くの労務者をかかえておりますので、中小企業の崩壊を中心としまして、失業戦線に放り出されておる、こういう状況を呈しておるわけであります。そこでお尋ねいたしたいのは、二十九年度の出炭の見込みと、さらに需要の見込み、それがどういうような状態になつておるかをお尋ねいたしたいと思います。
○佐久政府委員 二十九年の出炭の見通しというのは、正直なところ、まだでき上つておらぬのであります、と申しますのは、すでに多賀谷委員御承知のように、今石炭の問題で一番問題になつておりますのは、石炭と重油との調整をどうするかということでございます。昨年の暮れあたりから、石炭の需要を喚起するために、重油の消費を抑制しようということで、通産省としてはいろいろの点を検討して参つたのであります。一応今日まで決定されましたのは、二十九年度で自然に放置しておきますれば六百五十万キロリツターないし六百八十万キロリツター程度の需要が必要であろう、それを外貨のきゆうくつな面からも考えまして、外貨の割当は二十八年度と同じ五百三十七万キロリツターに押えて、それからさらに行政指導によつて重油の消費を抑制して行こう、こういうところまではさまつたわけであります。しかし、それによつて二十八年度以上に石炭の需要が増したということには実はならぬのであります。それで、さしあたりこの外貨の割当をやる現段階としては、上期だけの見込みを一応立てたわけであります。これは私が重油の説明をするのは、あるいは筋違いかもしれませんが、二十八年度に相当の食い込みがございますのと、二十九年度に入つて四月、五月にかなり大量の出荷をいたしております。従いまして大月以降の各月の平均出荷というものは三十一万キロないし三十三万キロ程度に圧縮する。これが三月あたりの状況から見ますと、五十数万キロの出荷を見ておる、それを三十数万キロに圧縮するということになりますので、重油の需要から見れば相当の圧縮であります。ただこれが冬場でありますと、それがすぐに石炭の需要に反映して参るのでありますが、これから不需要期に向つておるわけでありますので、そう大きな反映というものは今のところ考えられない、事務的にただいまで検討された結果によりますと、上期の国内炭の需要が昨年よりも百万トンぐらい増した二千八十万トンという程度しか見られないのであります。そこで下期に繰越す販売炭の貯炭を三百八十六万トンと見ますと、上期の国内炭の生産を二千二百三十万トンという程度に見込めるわけであります。ただ、これは最終決定をいたしておりませんので、これから変更されるかもしれませんが、現在議論の焦点になつておりますのは、下期に繰越す三百八十六万トンという貯炭が一体適正であるかどうか、それから下期においてどの程度の重油の需要を圧縮することが可能であるかという見通しいかんによつて、この三百八十六万トンというものが適正であるとも言えるし、過剰であるとも言えるわけであります。ただ私どもが三百八十六万トンというものを出しましたのは、大品工場の手持貯炭が、例年に比較して百万トンほど減つております。この手持ち貯炭をうんと圧縮して減らしておりますのは、一つは、手持ち資金がきゆうくつであるということと、もう一つは、今日まで炭価の値くずれが非常にはげしいので、買い控えをしておるという点がございます。買い控えの点は、確かに石炭の需要者自身もそう言つておりますので、今後あまり炭価の値下りは期待できないということになりますならば、かりに百万全部が大口工場の手持ちとしてふえないにしても、相当量の増加は見込めるのではないかというふうに考えるわけであります。下期の重油の消費規制に相当の手心を加えるということになれば、今私の見通しとしては、本年度の生産の見通しとして四千五百万トンないし四千六百万トン、できることなら四千六百万トンに持つて行きたいという気持でおるわけであります。
○多賀谷委員 昨年の消費実績は、どの程度になつておりますか。
○佐久政府委員 四千三百五十万トンちよつと切れる数字だと思います。
○多賀谷委員 昨年の消費実績が四千三百五十万トンということになりますと、今の御説によりますと、重油を抑制しても、たかだか昨年の重油の五百三十七万キロ程度である、こういうことであります。行政指導で何とかさらに抑制したいということでありますけれども、これは実際問題としてなかなか困難ではなかろうかと思うのです。そういうことになりますと、やはり四千四百万トン程度しか需要は見込み得ないのじやなかろうか、かように数字の上から出て来るわけでありますが、それが四千五百万トンないし四千六百万トンという需要が見込まれるという数字はどこから出るか、お尋ねいたしたいと思います。
○佐久政府委員 昨年度に比較して需要が大きく増すのは電力関係、火力発電であります。これは私の方では大分しぼつておりますが、昨年よりも百万トンぐらいの需要増加かあるわけであります。それと現在の数字から見ますと、先ほど申しましたように、大口工場の手持ち貯炭として百万トン弱の需要は別にふえる、こういうふうに見ておるわけであります。
○多賀谷委員 大口工場の貯炭がふえるということですが、これは現在よりもふえるということで、つまり昨年よりもふえるということになるのかどうか、この点まずお伺いいたしたいと思います。
○佐久政府委員 昨年の数字がちよつとここに、ございませんので、はつきりした比較がわかりませんが、お話のように、現在よりも確かにふえる。しかし実需として昨年度よりもふえるというのは、あるいは私の勘違いがあるかもしれませんが、しかし昨年度の数字が二百八十万トンぐらいじやないかと私記憶しております。これはいずれ調べましてお伝えいたしたいと思いますが、それよりも少しふえるという見方はできるのじやないかと思います。
○多賀谷委員 国鉄ないし鉄鋼の需要は、どういうふうな見通しでございますか。
○佐久政府委員 国鉄は、大体従来は年間概算で五百万トン使つておりました。上期と下期とわけますと、下期の方が需要期に入りますから、購入量はふえるのでございますが、昨年度は上期がたしか二百十万トンであつたと記憶いたしております。本年度は上期の国鉄申出の購入量は百九十四万トンであつたかと思います。この国鉄の問題については、まだ炭価がきまつておりませんので、非常に困難をして、私自身も多少あつせんに入つて、早く炭価をきめるようにということを勧めておりますが、その際の説明で、最近石炭が売れない、過剰になつておる、どうしても売り先を見つけるためには品質をよくしなければならぬということで、選炭をかなりよくやつております。従つて国鉄の方では、例年のごとく機関車を動かすにもかかわらず、その間二十万トンぐらいの消費節減をいたしておるのであります。それは選炭がよくなつたために混炭が非常にしやすいということと、もう一つは、東海道の電化が大きく響いておる、こういうことでございます。 もう一つは鉄鋼のお話でありますが、これは上期としては、一応国内炭を二百三十万トンという見通しを持つておるわけであります。
○多賀谷委員 昨年から比べると、どうですか。
○佐久政府委員 二百三十五万トンというのは、昨年よりも少しふえた数字でございます。というのは、昨年の出銑計画が四百七十万トンとふくんでおりますが、今年は五百万トン——これは最近の新聞で、また少し減るようなことが書いてありますけれども、今までのところは五百万トンということで考えております。
○多賀谷委員 電力関係を除けば、必ずしも需要がふえるという状態は出て来ないと思うのですが、今の局長のお話では、四千五百万トンから四千六百万トンというお話ですが、大臣はこの前たしか予算委員会でも四千八百万トンというお話をされておる。その時から経済の見通しが非常に悪くなつたのかどうか。少くともその時の状態と現在の状態とは、見通しにおいてあまり大差のない状態ではなかつたかと思うのですが、なぜ四千八百万トンと言わ九たのですか。
○佐久政府委員 これも率直にいきさつを申し上げて、御了解を願いたいと思いますが、昨年の十一月末から十二月初めにかけまして、二十九年度の石炭の状況を何とかして上向きに立て直したいということで、私はいろいろ考えまして、そのとき大ざつぱな考え——これは私の頭の中で考えた問題でありますが、二十九年度の国内炭の需要が、従来通りの鉱工業生産指数というものをそのまま延ばして考えた場合には、大体四千五百万トン程度の需要を考え得たわけでございます。そこで重油の消費規制ということによつて百万キロあるいはうまく行けば百五十万キロを消費節減をしたいという主張を私がしたのであります。そうしますと、それによつてとつてかわれる部分が、石炭換算で二百万トンないし、非常にうまく行けば三百万トンということで、国内炭として四千八百万トンの生産態勢というものをつくり得る。そうすれば石炭企業も安定する、また合理的な価格もそこできまるだろう、こういうように私は考えたわけであります。そこで一つの目標数字として、ぜひとも四千八百万トンというものをつくりたい。これは私の非常に強い念願でございまして、その点について大臣といろいろ御相談をいたしたのでございますが、大臣は一体四千八百万トンというもので日本の生産規模が適正かどうかということをしきりに心配された。私は適正の点から申しますと、やはり現在の状況から見て、四千八百万トン程度が規模としては一番適正ではないか。もちろん経済安定本部でつくりました五千六百万トンというような大きな数字がありますが、これは非常に無理な数字であります。そこで大臣の頭にもおそらく適正規模として四千八百万トンというものをつくり上げたいという考えがございまして、各委員会で四千八百万トン態勢をつくり上げたいという発言をしておられると思います。あるいはそれが聞かれる方の方で、現実の二十九年度の生産目標を四千八百万トンにするというふうにお考えになつた向きもあるのじやないかと思います。これは今までのいきさつをお話申し上げたわけであります。
○赤松委員長 なお本件について、委員外の井手以誠君より発言を求められておりますが、これを許すに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○赤松委員長 御異議なければさよう決します。 それでは多賀谷君、続けてください。
○多賀谷委員 今までの経緯はわかりましたが、しかし四千八百万トンということを打出されますと、中小企業の方では、あるものはどんどん掘る。また大手でも競争して掘る、こういう状態を呈するような炭鉱もあるわけでありまして、どう考えましても、昨年は四千三百五十万トンにプラス五百三十七万キロ、こういう状態である。そういたしますと、この四千三百五十万トンが四千五百万トンに上昇して、さらに重油の分が逆に減つて行く。こういうことで四千八百万トンということを言われたようでありますけれども、事実問題としては今お話のありましたように、今年ふえるであろうのを抑制するのが精一ぱいでありまして、むしろ昨年の五百三十七万キロを減らすという状態ではないようであります。この点は、石炭局長だけでは質問しにくいので、大臣が見えてからにいたします。 続いて石炭局長に質問いたしますが、現在、二十八年度におきましても、九州だけで百十一坑、それから宇部地区が四十一坑、常磐地区が十七坑、北海道が十四坑、計百八十三坑が休廃止をしているということを、通産省は発表しておるわけであります。その後さらに増大をしておる。さらに今年の八月ごろになれば、中小はほとんど倒れるのではないかということを言われておるわけでありますが、この急場の緊急対策を、どういうように考えられておられるか、お伺いしたいと思います。
○佐久政府委員 石炭の需要が減退したというよりも、需要自体としてはそう大きな減退はないと私は見ておりますが、ただ買手がつかない。それは一番大きな理由として、値くずれがしておつて、先行きどんどん値が下るのではないか、こういう点に買手の方で買い控えをする原因があつたのではなかろうかと思います。そこで、なぜ石炭にこういう大きな現象が現われたかと申しますと、昨年の夏までに、これは各月相当の増産をいたしまして、昨年の夏にある程度の過剰貯炭という状況になつたのであります。そこでそれを解消するために、大手、中小にかかわらず、ある程度の生産抑制を始めたのであります。ところが、途中と申しますか、暮れころにさしかかりまして、中小の方がその行き方を放棄しまして、能力一ぱいの出炭を始めた。そうしますと、おのずからまた過剰の状況になりまして投売りを始める。今度は中小だけの投売りでなしに、大手も投売りを始める。そこへもつて来て、緊縮財政に伴う金融引締めを行つて来たことのために、石炭に一番大きく、しかも早い時期に不況が現われた、こういうことだと思います。先般も私、九州へ参りまして、実情をよく調査いたしますと同時に、石炭に関係を持ついろいろな人たちに会いまして、意見を聞いたのであります。その意見によりますと、結局石炭の価格の不安定ということが解消されない限りは、どういう方法もとれない。具体的に申しますと、銀行関係の方々の意見としては、従来相当の金融をいたしておりますので、この際金融を全然打切るという考えはないけれども、どんどん値下りをしているような事情のもとでは、これ以上の金融というものは差控えざるを得ないというような意見であります。それから公租公課の滞納が相当ございますが、その方でも、今すぐに取立てるという考えはないにしても、何か石炭企業が安定する、炭価が安定するような状況にならないと、非常に困るというような意見でございます。そのほか府県知事の意見を聞きましても、やはり同じような意見を申しておりまして、これは私どもがかねがね考えておりました考え方とまつたく一致いたしております。帰つて参りましたあとで、需給のバランスをとることが先決であるということで、かねがね問題になつて重油問題について再検討をいたしたのでありますが、上期については、現実に相当の抑制になるわけであります。これが先日も新聞に出まして、大阪市場あたりでは相当な反響を呼んでおります。現実にまた炭価の値くずれの点も、一応ストップして、買手の方にも若干買気が出て来たというような状況であります。ただ、私がまだ残念に思いますのは、下期の状況について、もつとはつきりしたことが言えれば、炭価の建直しについては、もう少しはつきりした具体的な現象が出るのじやないかと思いますが、その点が未確定なために、ちよつと物足りない感じがいたします。 それから金融の問題につきましても、これは私大蔵省によくお願いをいたしておるのでありますが、全般的に救済金融というような考え方は、今ちよつと出しにくいのでありまして、結局この問題につきまして、金融関係と炭鉱とのあつせんをして、個々の問題として解決して行く、こういうようなやり方をやらざるを得ないと思います。なお、国鉄とか電力会社あるいは製鉄会社との炭価交渉が現在行われておる過程にありますが、この交渉を促進して、早く炭価をきめる。ことに国鉄などにおきましては、大手については昨年の下期よりも七百円引き、中小については六百円引きということを申し合せておりまして、現在のところ、その価格で仮契約をして納炭をいたしておりますが、そういう価格は、私どもの計算から申しますと、明らかに原価を割つた計算でありまして、もつと合理的な価格できめていただきたい。それが早くきまれば、それとの差額は国鉄からすぐに支払いができるというようなことが、一つの当座しのぎの金融になるのじやないかということで、努力をしておる過程でございます。
○多賀谷委員 今、緊急対策について、どうも積極的な話はなかつたわけですが、大体、見通しがつけば価格が安定するだろう、そうすれば銀行も金を出すだろう、そこで政府としては、個々の企業についてあつせんをする、こういう程度でございます。この前も新聞にも出ておりましたように、普通自転車企業ということを言つておるけれども、炭鉱の場合は飛行機企業であつて、とまれば落ちるのだ、こう言つております。実は一昨日、炭労関係の中小対策部長が来まして、現地の実情をつぶさにこの委員会で陳述したわけであります。その際の話によりますと、これはあとから井手議員からも関連質問があると思いますけれども、維持費がかなりいるわけであります、出炭をとめても、維持費の捻出に非常に困難をしておる、こういうことであります。そこで、普通の企業のように一時中止をして再開を待つというぐあいには行かない。中止をしておつても、厖大な維持費がかかるわけであります。もう永久に、政府としてはその炭鉱をつぶしても、日本経済には支障はないのだということになれば、これはまた話は別でございますけれども、どうも今の状態で行きますと、維持費すら困難である。そこで、せつかく埋蔵された炭鉱をつぶすという状態になると思うのですが、大体非常に小の、どうにもならない炭鉱は別として、かなり中堅の炭鉱が倒れておる状態でございます。十分採算もとり得る可能性のある炭鉱が崩壊して行つている、しかも維持費は厖大にかかつている。こういうことについて、どういうようにお考えであるか、お尋ねいたしたい。
○佐久政府委員 具体的にどこの炭鉱というお話がございませんので、はつきりしたことはわかりませんが、もちろん不況切抜けのために放慢な経営をそのまま認めるわけには参りません。それから中小の大きなところ、あるいは大手の下のところというところに相一当のしわの寄つておることも、私よく承知しております。そのしわの寄つている、金融上非常に困つているという例として、取引銀行がかなり数多くある。これが一、二の銀行であれば、また腰の入れ方も違つて来るのでありますが、六つ、七つ、八つというような取引銀行でありますと、どうしても不況の場合には逃げ腰になるという懸念がございます。そこで、そういう炭鉱については、やはり不況切抜けの一つの対策と申しますか、具体的な経費の節減をやる、あるいは作業上の合理化をやる、労働者の配置転換をやるというような計画の立つものについては、できるだけわれわれも資金のあつせんはいたしております。今後といえども、それは続けて参りたいと思います。ただ遺憾に思いますのは、佐賀県のある炭鉱でまさかと思うところが、この不況のあおりを食つて倒れておるところがございます。これの再建については、地元の通産局もいろいろあつせんあるいは計画の立て直しということで、第二会社の設立というようなことをやつてみましたが、どうしても銀行の方で乗つて来ない。私の方でも、東京に問題を移しまして、いろいろの折衝をやつてみましたが、今までのところはどうも成功しない。これは私も非常に遺憾と思つております。そのほかのところについては、これは会社としてやむを得ねのかもしれませんが、いよいよ倒れるまぎわまで、実情を私の方に知らさないのであります。その佐賀県の炭鉱で倒れましたのも、銀行にさえ実情を話してなかつたというのが、一つの大きな理由になつておるのじやないか。これは銀行との感情問題にまでなつておるというようなことで、なかなか解決が困難だ。ただ私の方としては、それは困難だからといつて、ほうつておくわけには参りません。今後といえども、それの再建なり——場合によつては売山ということも考えなければならぬ。今のところは、その再建についても、売山についても、実は成功していないのであります。
○井手以誠君 関連して。ただいま石炭局長から佐賀県のある炭鉱というようなお話がありましたが、多分日満鉱業の新屋敷炭鉱であろうかと考えられます。いろいろ各山の資料を持つておりますが、特に問題になつておる新屋敷を例にとりましてお尋ねいたしたいと思います。 石炭局長も御存じのように、新屋敷炭鉱は、生産費も安い、かなり優秀な炭鉱であることは、一般に知られておる通りであります。その炭鉱か不幸にして今日閉山の苦境に陥つております。何とか再建したいということで、労働組合の方も、いろいろな要求は持ちながらも、賃金の一五%カットを承認して再建を決定したのでございますが、あいにくその再建についての融資も、資金の裏づけがないために、再びここ二、三日前から行き悩みの状態に陥つておるのであります。この炭鉱について、石炭局長もいろいろと御配慮になつておることは、私承知はいたしておりますけれども、今までの御答弁によりますと、通産省の態度は、あつせん程度であつて、日本の基幹産業である石炭鉱業について、優秀な炭鉱はどうしても再建しなければならぬという強い意思が足りない。あるいは日本の産業に必要な石炭を確保する建前から、中堅炭鉱は存続させようという熱意が、通産当局首脳部において、いささか足りない感がいたすのであります。一昨日でありましたか、当委員会におきまして、炭労の今村参考人は、もしいよいよ閉山になつて失業保険を受けることになれば、一箇月間に千三百万円の失業保険金がいる、それらを考えると、当局の再建資金の方が、むしろ将来の効果はうんと違うのでありますが、当面の失業保険ということについても、融資の方がきわめて楽である、こういう発言もあつたのでありますが、きわめて注目すべき発言であつたと私考えております。将来のことを考えますと、やはりこういうむだな失業保険というようなことよりも、生かして使う方がよい。当面は一千万円前後でありましようが、その資金さえあれば再建できる。一五%の賃金カットあるいは労働時間の二時間延長をも甘んじて、のもうという労働組合のこの再建の意欲に対して、もつと通産当局は熱意を持つて——石炭局長には熱意はありましようけれども、大臣を先頭にこの再建資金について積極的な努力がほしいと思うのであります。先般参議院の通産委員会における大臣の答弁では、中堅有望炭鉱に対する融資についても考えておるという答弁のようでありますので、こういう点からいたしましても、どういうふうに本省ではお考えになつておるか。今までのように、あつせん程度ではいけないと思います。金融引締のよしあしについては、今日申しませんけれども、少くとも将来有望なものについては、あくまでも融資によつて確保しなければならないという建前から、積極的な努力を特にお願いしたいのであります。ただいま多賀谷委員からも質問がありましたけれども、この点についての通産当局の御見解並びに方針について、重ねてお尋ね申し上げる次第であります。
○佐久政府委員 私の今までのいろいろな努力が成功しないために、どうも熱意がないというふうにとられるのは、やむを得ないと思います。お話のように、融資あつせんだけでは足りないということでありますと、戦時中とか、終戦直後のように、強制融資という手がない今日では、やはりその間に立つて、会社に対しては、今後の経営方針なり、企業計画なり、さらに詳細に原価を幾らであげて、販売その他の手数料をどの程度に見るかというこまかな点まで計画を立てさせて、そうして合理的に行けるという確信がついた場合には、従来銀行にも相当強い発言もいたしております。それが新屋敷の場合にはどうにも成功しなかつたというわけでありますが、これは私の力の足らざる点で、いかに責められても返す言葉もないのでありますが、私の考えとしては、今後中堅炭鉱に限らず、かりに小さな炭鉱でありましても、それが合理的に生産をされ、その販売価格で十分に成り立つものについては、救済的な意味を含めて金融のあつせんは今後といえども続けて行きたいと考えております。
○井手以誠君 私は石炭局長の熱意が足りないという意味では申し上げなかつたつもりでございます。石炭局長の労力に対しては、感謝をいたしておりますが、大臣が先頭に立つて、炭鉱の再建ということについて、積極的な努力を特に望んでおるような次第でありまして、そういう意味で申し上げたわけであります。もちろん今の金融情勢から申しまして、簡単には行かないと存しておりますが、たとえば造船についてあれだけ国家が熱意を示しておるように、かりに一応開銀その他のわくがきまつておりましても、石炭鉱業がこれだけ不況に陥つておる最近の情勢におきましては、そういう方面についても、やはり根本的な再検討を願いたい。そういう意味で、大臣を初めとと、閣議その他で積極的な努力がほしいという意味で申し上げたのでございますので、その点はひとつ省の会議にねいても、十分お伝えを願いたいと存ずるのでございます。 なお、各地の炭鉱の模様によりますと、やむを得ず出炭制限が行われておる。公休日の増加その他によつて、どんどん出炭制限が行われておる。こうなりますと、炭価その他が安定しないということになりますれば、ますますこういう傾向が助長される、増加するということは必至でございます。この傾向に対して、石炭局としては四千八百万トンという旗はなかなかおろしにくいことではございましようけれども、この出炭制限について、どういうお考えをお持ちになつておるか。業者が自主的にやつたものについては、いたし方がない、かりに、それが四千万トンを割つても、いたし方ないというお考えであるか。 その点についてのお答えを承りたいと存じます。
○佐久政府委員 四千八百万トンとい、お話がありましたが、これは先ほど多賀谷委員に対するお答えで、私自身に多少の見通しの誤りがあつたということは、率直に告白をいたしまして、実は旗をおろしております。今後の生産抑制の問題でありますが、これは私先般九州へ行つて帰つて参りましたあとでも、強くその意見は出したのであります。もちろん従来非常にやかましく言われました単価の引下げそういう点については、いろいろの方法がありますが、極端なことを申し上げますと、生産量をうんと減らす、つまり好条件のところだけを掘るということをすれば、一年くらいの間に単価の二割下げくらいのことはできるのだ。ただそういうことが一体日本の石炭鉱業のためにいいのか、日本産業全体のためを考えていいのかどうか。それから、そういうふうに生産を減らしますと、国内で消費される全体の石炭量というのは、そう急激に減るわけではございませんから、不足分はどうしても外国から買わなければならぬということになるが そういう場合に、国内において生産できるにもかかわらず、ただ単価を下げなければいかぬという理由のために、むだな外貨を使わなければならぬというようなことは、国策としてとるべきではないのであります。と同時に、今度は働く方の人たちの立場から考えましても、これは失業者を出す大きな原因であります。従つて、今私は極端な例を申し上げたのでありますが、先般九州から帰つて参りましたあとにおきましても、生産を抑制して需給の調整をとるという行き方は私は賛成しない。というのは、当然これは失業者を出すことが伴いますので、失業対策費も十分には考えられていないようでありますし、また失業した者が働く場所もないというような状況では、いたずらに社会問題を起し、社会不安を醸成する結果になるから、そういう方法はとるべきではない。結局残された問題としては、重油の消費を大幅に規制するよりほかにないというのが、実は私が帰りました報告であります。それにつきましていろいろ検討いたしまして、先ほど申しましたように、上期だけの需要の見通しだけはつきましたが、下期につきましては確たる結論は出されてない。今後といえども、私は、生産を抑制して需給のバランスをとつていいという考えは、とらないつもりであります。ただ、こういう不況の状況でもありますし、それから重油の抑制といいましても、大幅に一度に切るということは、需要者に非常な打撃を与える結果になりますので、そこらのところは調整が非常にむずかしい問題であります。従つて、ある程度の生産の調節、抑制ということは、これはほどほどで考えて行かなければならぬ問題ではないか、こういうふうに思つております。
○井手以誠君 きよう通産大臣はお見えになる見込みはございませんか。
○赤松委員長 ただいま連絡中であります。
○井手以誠君 私は、石炭局長が、国家全般の立場から、石炭鉱業の重要性なり現下の対策について、総合的な立場から十分お考えになつておることはよく承知しております。ただ残念なことは、先般来大臣も呼んでおりますけれども、見えないほどに、大臣において石炭鉱業の悲境、悲運というものが、あまり実感がないのではないかという気がいたすのであります。もしこれについて深い関心がおありになるならば、進んでこういう委員会にも御出席になるのが当然だと考えております。造船についてあれだけ熱意を持つておつた政府は、当然石炭鉱業についても、同様の関心を持つべきだと思う。石炭局長も、さらに努力されまして、当面の問題として通産省が融資その他に大きな関心を持たれ、積極的な対策を立てられますように特にお願いしたいのであります。いろいろお聞きしたいことはありますけれども、石炭局長も十分御承知でとざいますので、私はこれ以上申し上げません。大臣が見えましてから、ありためて質問いたしたいと思います。 〔委員長退席、多賀谷委員長代理着席〕
○多賀谷委員長代理 石炭問題につきましては、通産大臣が見えてから再度やることにいたしまして、一応参考人から意見を聴取したいと思います。 日本鉄鋼産業労働組合連合会中央執行副委員長安西虎雄君。
○安西参考人 それでは尼鋼の問題につきまして陳述申し上げたいと存じます。一昨日の委員会におきまして山下委員の万から質問がございましたが、なお経過について若干補足して申し上げまして、私たちの考えておる意見を申し上げたいと思います。 争議の発端につきましては、昨年の八月協約の改訂期に入りました。そのときに、会社の方から、従来締結されておる協約よりもずつと低い線ですが、そういう形の協約案を提示されたわけです。これについて協議に入りました。その後本年の三月まで協議を続けまして、最終的に三月六日に協約をけまして、最終的に三月六日に協約を妥結しましたが、そのときの解決の条件としては、御存じのように中小企業は非常に金繰りがまずい、こういう形から、金融の操作をする一つの手段としてもこの協約を締結していただきたい、こういうことが会社の方から提示されまして、これについて組合としては、企業の実態からやむを得ない、こういう形で協約を締結したわけであります。 協約の内容は、従来人事権については、協議決定という形になつておりましたものが、協議に改めたわけです。それから、組合活動については自由ということでございましたが、これについても、組合活動は、時間中の活動については賃金を差引く、こういう形で制限条項を入れまして、協約を締結したわけです。それからユニオン・シヨツプですが、これは従来完全ユニオンでございましたが、しり抜けユニオン、こういうことで、従来の組合活動の線からずつと譲歩した形で締結したわけです。これについては、先ほど申し上げましたように、金融の操作をするためにこのような協約をのんでいただきたい、こういう会社の意向を組合としては取入れて、企業の実態からやむを得ないというふうな考え方から締結したわけです。なお、そのときの会社の条件としては、この協約を締結することによつて、金融がうまく行くであろう、そのことから今後首切り、賃下げは一切やらないという確約をしたわけです。 こういう形で協約が締結されましたが、その後三月の二十九日になりまして——協約締結後二十数日の後に、会社の方から労務費の一千五百万円、一人平均約五千円になりますが、この賃下げ案が出て来たわけです。そこで組合は、協約締結のときの条件と、社長、会長らの言明というものと勘案して、これは会社の非常に不当な出方である。このような考え方から、組合の機関にかけて諮りましたところ、絶対反対ということで、機関で反対を決定いたしましたので、この内容を四月の十日会社の方に提示しました。その後会社の方としては、組合が会社の言うところの再建プランに対する反対、賃下げに対して反対というな線が出た場合においては、現在の企業をどのようにするかということについては、しばらく考えさしていただきたい。こういうことで、賃下げ案については一応撤回するということが言われました。その後四月の二十日になりまして、賃下げ案を組合がのまないということになれば、次の案としては人員整理を行つて行きたい。なお四月の十日以降、会社としては、組合の賃下げ案の反対にあいまして、再建プランを再度考え直す、その間は臨時休業をするということで、臨時休業をしておりました。 この過程において、組合としては、早く生産再開をしろ、こういうふうな要求を出しておりましたが、二十日その人員整理を提示したときの条件としては、生産は再開する、但し、人員整理をのむことだ、こういうふうな形が三社の方から出て参りました。これについて組合としては、その後団体交渉を持つて解決して行きたい、こういうことで会社の方に団体交渉を申し入れましたが、会社は人員整理をのむ前提があるなら団体交渉を再開してもいい、それでない限り、団体交渉を持つても無意味だ、そういうことで、実質的な団体交渉は会社の方の一方的な考え方から拒否されております。こういう形で、その月一ぱい推移して参りましたが、組合としては、これをできるだけ平和的に解決するために、団体交渉の再開にあらゆる努力を払つて参りました。この間地労委の利用ということで努力いたしましたが、会社の方の態度はなお反省の色がなく、どうしても人員整理案をのむという前提がなければ、団体交渉には応じない、こういうような態度を絶対にかえなくて推移して参りました。 五月の四日になりまして、会社の方 から内容証明郵便で、人員整理の個人通告がなされたわけです。この個人通告をされました人員は、組合員で三百八十一名、なおこの工場には四百名近くの臨時工がおりますが、臨時工も全員解雇というふうなことで、会社の方一はこの期間中に臨時工の問題については、本工組合とは別個の形で処理しておりました。人員整理の内容としましては、本工組合である百二百八十一名と臨時工の四百名と合せて七百八十一名の人員整理案になるわけです。 〔多賀谷委員長代理退席、委員長着席〕 この工場の全従業員は、組合員が千七百五十名、これに合せて臨時工が四百名おります。この中における今の七百八十何名の首切りは相当な数になる。このように考えられるわけですか、このような形の会社の出方に対しまして、組合としましては、個人通告をされた内容証明の首切り通告につきましては、個人々々が全部反対の意思表示をしまして、全部一括して組合の方に持つて参りました。それを組合としては機関にかけ、これについては反対だという形で、人員整理の内容証明の郵便については、開封しないまま全部会社の方は返上して参りました。 会社の方の当時の状態でございますが、このような形で個人通告をした会社側は幹部一切の方に出勤しない、それから居どころについても住居にはいない。会社の当面責任を持つている重役、経営者としての責任者はほとんどどこにいるかわからない、こういう形で行方をくらましてしまつている。組合としては、できるだけこの問題については当初から平和的に解決したいという形をとつておりましたので、団体交渉の再開を当時も考えておりましたが、この事態に立つて会社の方の幹部が全部逃避してしまつたという形で、今のところは機会がなくなつてしまつた、こういう形が五月四日以降現在まで続いております。 このような推移の中で、組合の考えている問題でございますが、これについては、組合としては当初から平和的にものを解決する、それと企業の実態については、協約の締結のときにも考えたように、できるだけ再建プランを明確にして、企業が成り立つ形で労使双方が協力して会社の再建をやつて行きたい、このような考え方から、一つの再建プランを持つているわけです。これについて会社の方と協議したいという意思表示をしておりましたが、会社の方としては、そのような組合の再建プランについて討議する機会を与えない、団体交渉を拒否している。こういう形で、意思表示することはできませんでしたが、組合の考えている再建プランについては、現在尼崎製綱については、原料の銑鉄を尼崎製鉄から供給されているわけです。この尼崎製鉄と尼崎製鋼の二つが合併すれば、一貫体制ができ上るわけです。このことによつて原料の供給が非常に安くなる、こういう形から、この尼鉄の銑鉄と尼鋼の製品、これを一つにした一貫体制をつくることが望ましいのじやないか、こういうふうに考えているわけです。 なおこの内容ですが、従来尼鉄と尼鋼は一緒の会社でございました。これが終戦後二つにわかれて、今のように製品部門と銑鉄部門にわかれているわけです。この二つは戦前一緒にあつたもので、当然今後も一緒になつてやれば、経理内容についてももつとうまく行くということは、従来から考えられていることなんです。こういう二つの会社を一緒にすることによつて、現在の苦境を乗り切つて行きたいと組合は考えているわけです。これについて会社の方が応じ得るならばて今のような首切りの案を出さなくても、また賃下げの案を出さなくても、尼鋼はこの不況下でも成り立つて行く、こういうふうに組合としては確信しているわけです。この点につきましては、労働委員会として十分御判断の上、これらの情勢をより平和的に解決するように御努力願いたいと思います。 なお組合としては、このような再建プランを、早く会社と交渉を持つて、平和的に解決したいという努力は続けておりますが、会社の一方的な団体交渉の拒否によつて、この計画について会社と協議する機会を得ない。こういうような状態の中で、できるだけ早く団体交渉を再開する手段として、地方労働委員会の利用を考えました。これについては、四月に地方労働委員会に提訴しまして、早く団体交渉を開くようにあつせんしてもらいたい、こういう要求を出しました。これについては五月十八日と二十五日、二日間地方労働委員会の審理がございました。しかしながらこの席上にも、会社の方は当面の責任者である社長も出ない、会長も出て来ない、こういう形で、ただ一回重役が出て来る程度で、会社の責任ある言質がとれない。このような状態一として現われて参りましたが、尼崎製鉄の問題は、尼崎地方の労働者にとりましては、ただ単に尼崎製鉄、製鋼のみの問題でない。このような考え方から、近くにある尼鉄、尼鋼、尼崎製鋲、日冶工業、大同製鋼、ここらに約六万ぐらいの組合員がございますが、これらの組合員は、現状の社会情勢の中における中小企業の立場から考えて、この尼鋼の労使の紛争がどのように解決するか、この解決のいかんによつては、次に自分たちの身に降りかかつて来るのではないかというようなおそれを多分に持つております。一昨日の委員会でも、労働大臣の方から、九月以降については経済が安定するのじやないか、人員整理についても収まるのじやないか、失業者の数も安定するであろうというような発言があつたようでございますが、尼崎地域における労働者はこのように考えておりません。むしろ鉄鋼の労働者は、今後大企業に集中される現在の生産の状態から考えて、中小企業はますます縮小されるのではないか、そのことから労働者の方では人員整理が出て来るであろう、失業しなければならない、こういうふうなおそれを多分に持つております。このことかう尼崎製鋼の争議については重大な関心を持つております。この推移については、今後自分たちに降りかかる火の粉がここで払えるかどうか、このようなことから尼鋼の争議については絶大な支援態勢をとるという形で、現在非常に凄惨な争議が展開されております。このような情勢を労働委員会としては十分御判断の上、適切な措置を講じていただきたい、このように考えます。 以上経過について申し上げまして、当委員会の御審議を仰ぎたいと思います。
○赤松委員長 参考人にお願いいたしますが、きようはまだ調査案件が非常にたくさんございますので、必要ならば質問をいたしますから、大体一人十分程度で御発言をお願いしたいと思います。 次に平坂参考人。
○平坂参考人 初めに委員会の方へ、この問題を取上げていただきましたことに対しまして、委員長初め委員各位にお礼を申し上げます。 この争議が起りましたのは、先日来中央本部の方へわれわれが報告書を出してあります。それに基きましていろいろ御検討いただきました通りでございますが、実は、私たちがここで申し述べんといたしますことは、現実に起つております争議が、どのような状態にまでなつたかということを、委員の皆さんに御説明申し上げまして、一層の御協力を得たいと思うわけであります。 私たちが初め考えておりましたのは、いわゆる首切りなるもの、また賃下げなるもの、協約の改訂なるものが、いずれも私たちがこの事項をのまなければ、会社が即座につぶれてしまうのだというふうに考えて、この問題に対してどうしたら会社をつぶさないか。私たちの組合運動は、会社をつぶすためにあるのではなくて、会社とともにいかにしたら生活が向上できるかという観点からこの問題を取上げましたために、私たちは非常に会社を信用して参りました。ということは、過去のわれわれ尼鋼の労務政策が、われわれをして信用せしめられるだけの事実があつたわけです。そういう過程から非常に信用して参りまして、会社の言うことを一にも二にも聞いて参りましたのが、一番初めこの首切りにまで持ち込まれました大きな原因ではなかろうかと思います。そういう形で協約も会社案通り、われわれとしましてはストライキをしたり、あるいはそれに対する対抗措置を講じたり、労働委員会に提訴をしたりいろいろな対抗措置を講ずる力はございましたが、一切そういう対抗措置をせずに、まるまる会社案通り協約の改訂ものみました。これは会社がつぶれるというふうに言つたから、また協約をそのままのまなければ井上会長、平岡社長が退陣するということを言つたから、われわれは今までわれわれのめんどうを見てくれた、会社側がここで退陣したり、あるいは会社をつぶしてしまつたとすれば、元も子もなくしてしまうという考え方に立つて、いわゆる協約をのめばつぶれない。今後賃下げも、首切りも、工職の分離もやらないのだという確認書までいただいたから、この協約を三月の六日にのみました。そのやさき、現実に首切り案が出され、賃下げ案が出されましたのが三月の二十六日であります。私たちが想像するのに、賃下げ案が組合に提示されたのが二十六日ですから、六日にこの案をのませておいて、八日の日に賃下げ案の計算を始めたという情報すらあるというので、この賃下げ案が出ましたときに、私たちは現実の問題といたしましてこれをのまなければ、井上会長とかあるいは山本重役——銀行から派遣されている経理担当の重役ですが、こういう人々に対して、あなた方は協約をのまなければ退陣すると言われますが、この賃下げ案をのまなければ退陣いたしますかということを質問いたしました。この賃下げ再建案を一言半句でも変更すれば、あなた方は退陣いたしますかということを、三月三十一日の第一回の経営協議会で申し述べたはずです。私たちはそこでよく考えてみたわけです。ここで賃下げを認めて会社を再建さすべきか、私たちは賃下げを認めないような形の再建案をつくるべきかということに頭を悩ました。私たちといたしましては、従前から考えておりましたことく、尼鉄と尼鋼を、現実の問題として生産が一貫体制になつている。これを営業問題販売問題、資金問題を一貫体制にしてもらいさえすれば、尼鋼はつぶれないのではないだろうか。現実の問題は、生産関係から起つている企業不振でなしに、資金問題から起つている企業不振と考えましたので、尼鉄と尼鋼を一本にすれば、いわゆる資金難が解決されるというふうに考えまして、その見地から尼鋼と尼鉄を、生産体制が一貫体制になつているのだから、資金面、経営面も一緒に一貫体制にしてもらいたいということを出せばこの問題が解決するだろうというふうに思いまして、尼鋼と尼鉄合併を再建案の一環として出しました。もちろん現実に今年の三月決算期には、尼鋼は一億円の赤字を計上いたしました。尼鉄の方は一億五千万円の赤字を計上しております。尼鋼は一億円の赤字を計上しておりますが、昨年の九月までに九億五千万円の赤字を計上しておつたわけです。九億五千万円の赤字が、仕事をやれば一億円の赤字になつたということは、私たちは八億五千万円が、六箇月の間に一期にとりかえしたというふうに考えたわけであります。一期に八億五千万円もとりかえすことのできる企業が、さらに名実ともに一貫体制をとれば、表面だけでも五千万円の黒字が出る。もつとこれをいろいろな面で切り詰めて行けば、私たちはそう会社の言う通り何年もかからないでも、早急に解決できるのではないかというところに目をつけたから、こういうような出方をしたということを申し上げたい。 そこで、まず会社がつぶれるということは、現実に協約をのんだ以降の組合にとつては明らかにうそである。そういうことは、単に協約をのませておき、さらに賃下げをのませ、首切りをのますために、さしあたつてそういうこと宣伝して、われわれを押えつける道具にしておるというふうに考えざるを得ない。協約をのんだ以降の組合は、現実に会社のつぶれるという問題については、つぶさないという確信をもつている。つぶさないために尼鋼と尼鉄の合併を取上げろというふうに私たちが要求いたしましたので、そういう観点から、現実の尼鋼の組合員は、現実にはもうだれ一人として、会社がつぶれるという宣伝を信用しておる者はいないということを明らかにしておかなければ、なぜここまで闘つておるかということの一つのポイントがわかつていただけないだろうと思います。 もう一つは、現地で会社の方がいろいろ宣伝するのですが、まず賃金が高いということを非常に宣伝します。しかし高い賃金は、何でもかでもわれわれが無理やりに実力で高くしたのかどうかという問題を考えていただいて、われわれが高いのは、労使の納得ずくでここまで高くなつたのだということを考えてもらいたい。一つの例として、私たちの組合は、実は終戦以来昭和二十七年の秋まで、ストライキを一回もしておりません。ストライキを一回もしていないのに賃金が日本一高いことは、明らかに経営者が私たちの働きを認めて、私たちの働きに応じた高能率、高賃金という会社側の思想による経営方針に基いて私たちにくれたものであるというふうに考えておるわけです。だからそういう意味で、私たちは、もちろんストライキをする力もありましたし、ストライキをできるだけの賃金も持つておりましたが、一回もストライキをしたことのないものが日本一高い賃金をとつておるということを一例にとつていただいても、私たちが無理押しをして、経営者から腕ずくで金を奪い取つて日本一の高い賃金を築き上げたのではない。これは明らかに私たちがよく働き、しかも会社も繁栄したから、ここまでの高い賃金になつたのであるということを申し上げたい。 会社がいつも宣伝いたします場合に、その二つを私たちの前にぶら下げて、私たち迷わしたりあるいは全然部外者である一般の人たちに対してそういう宣伝をして、何か私たちの組合がめちやくちやであるかのごとき幻想を与えんといたしますので、そのことについては、私たちはそういうように説明をいたしたいと思います。現実に起つて来ます賃金切下げの問題にいたしましても、私たちの協約を無視して、期限付で出したわけです。七日に賃下げを出しておいて、九日までに回答しろ、九日までに回答しなければ十五日に回答しろ、十五日までに回答しなければ十七日に回答しろ、十七日までに回答しなければ十九日に回答しろということで、その都度その都度内容をひつくり返して、交渉を持とうとせずに、制限期間を与えただけで会社側が一方的に提案して、それが最終的に組合に拒否されるや、たちまち手のひらを返して賃下げを完全に撤回して首切りに移行する。 〔委員長退席、多賀谷委員長代理着席〕 首切りも、何月何日までに首切りを認めろ、首切りを認めなければ一方通告をする。十日間に審議をしろ——二十二日に出して十日間ですから、五月三日までに審議しろということで、三日が過ぎたら、四日に一方的に指名通告をいたしました。私たちは指名通告されるときに、首切りの基準についても、あるいは首切りのわくについても、一ぺんだつて会社から協議をするために提示をしていただいたことはない、私たちは、なぜ首切りせられるのかという理由を確かめることすらできずに、一万的に協議約款を無視して三百八十一名の首切りと、非組合員二名の首切り、八十二名の臨時工の指名解雇を受けたわけです。しかもその指名解雇を受けたあとは、先ほどから申し上げて一おりますように、一方的に会社側が姿を消して、会社に出て来てくれという団体交渉の申入れを、毎日のごとくいたしておりますが、その呼び出しにも応ぜず、一切行方をくらまして、団体交渉にも応じない。会社に残つておる保安要員の責任者は、そういうことを扱う権限がないということで、言を左右にして、私たちに団体交渉についての責任ある回答を与えようとしなかつたわけです。 そういう段階で、現実に起つておりますストライキは、団体交渉してもらえないから、いやおうなしにストライキに入つておるのがほんとうの事態であつて、私たちが事を好むためにストライキを長引かせたり、私たちが事を好むために会社側に対して団体交渉を持たないという通告をしておつたりするのでないということを申し上げたいと思う。 そういうことで、私たちのストライキが長引くにつれて、私たちの組合員の中では、おのずから会社の考えておることが、どういうところから来たのかということに疑問を持ち始めました。そして首切りをせられた理由を、個人ごとにいろいろ考えておりますが、いくら考えても考えられない人たちがたくさんおるわけです。今まで会社の中で模範工と言われて表彰されたような人が組合役員をやつたということだけで、非協力者ということで首を切られた。あるいは役付の人で、停年満期前まで尼鋼に働いておつて、しかも重労働をするような職場におるならともかく、倉庫みたいなところで事務をとつておる人に対しても、君は能率が低下しておるからというようなことで、十九年も二十年も働いておる人に首切りが来た。あるいは肺結核で入院をしている人に対して、そのまくら元に内容証明の首切状が来た、あるいは公傷だから、いなかで転地療養をしろということで、会社がいなかに帰しておきながら、いなかに首切状を届けるというようなことをやりました。神経衰弱である程度頭が変だというようなことで療養しておつたある人なんかは、首切状が来る前には、お医者さんもそろそろ会社に行きなさいということで、よくなりました、もう一週間もすれば出て行きますということを所属の課長に申し出ておつたにもかかわらず、その人に首切状が来たために、再び頭が変になつて、また気違いにもどつた。あるいは肺病のために病院に入院しておつて、もうそろそろよくなりかけたという人も、そういう首切状が来たために、再び病状が悪化した。それからある人は、本人に首切状が来たが、本人はどういう理由で首切られたかわからないというので、自分の母親にも、自分の女房にも隠して、悶々として一日々々を暮しておると、尼鋼の社宅でありましたので、たくさん尼鋼の人がおるし、あなたの息子さんは首を切られておりますよということを、隣近所の人から母親に言われ、その母親は自分も年をとつておるし、自分の息子は首切を切られるし、将来足手まといになつたらいかぬというので、自分の社宅の窓ぎわで、自分の帯で首つりをするというふうな事態を起したりいたしております。 そういうふうに、話し合うこともなしに、納得することもなしに、会社の一方的な首切状が突然発送されましたために、元気のいい者は、首切りが来ても、何とか組合が闘つてくれるから、撤回させるまでみなと一緒にがんばつて行こうといつて、がんばつて行けるわけですが、理由もなしに一片の首切状だけで、あすから出て来ないでよろしいというふうに言われますと、そういうふうな悲惨な状態が起つたり、あるいは健康な者でも、君たちは首切り通告したのだから健康保険もあすから使つたらいけません、あるいはそのほかの会社側が約束している諸規程に基く療養施設も、一切使つたらいけませんというように、首切りを承認しないのに、一方的に尼崎市全部の医師会に、首切した人は右の三百八十一名ですという連名の名前を送つて、健康保険証を使わせない工作を始めたり、どう考えましても正気のさたとは思われないようなむちやくちやな攻撃を私たちの上にかけておるわけです。 しかも労働委員会の方にも申し立てその攻撃に基いてこういう計画的な賃下げ、協約の解約、そして首切りというふうに次から次へ向うが戦術的に配慮しました配慮に基いて攻撃を重ねられておるというふうに私たちは考えております。そういうところの組合役員をしておつた組合活動家が、三百八十一名の病人とか年寄りとかあるいは給料の高い人とか、あるいはをまず第一点に掲げました。会社がつぶれるという問題にしても、労働条件を引下げるという問題にいたしましても、すべて労使関係を納得して話し合うということが一番基本でなかろうか、納得して話し合う、いわゆる平和的に物事を進めて行こう、こういう考え方で、井上会長は従来からの尼鋼の会社と尼鋼の労働者との間に結ばれている労使関係のルールをまず守つてもらいたい。そのルールを無視した一切の行動は、尼鋼に来れば尼鋼のしきたりにならつてくれということで、たとい井上会長がどんな偉い人であろうとも、私たちとともどもに尼鋼を再建する以上、尼鋼を繁栄させる以上、私たちの気持を納得してくれるという一点にしぼつて、私たちと共同生活をやつてもらいたいというふうに私たちは申し立てておりますが、会社は、経営権というものがある、労働者は労働権というものがある、君たちは分に応じて働けばよい、おれの言うことを聞かない人間は尼鋼をやめて行けばよろしい。こういう気持で、納得して話し合うという会社と組合の平和的な交渉ルールに対して、そういうむちやくちやな、一方的な考え方を導入して、これが健全な労働運動だ、これがわしの考えている労働組合だというように、暗に自分の思想に基く、自分の経営方針に基く忠実な労働運動というものを、自分の経営権という力によつて一方的につくり出そう、いわゆる御用的な産報的な労働運動を尼鋼の中でつくり出そうという一点にしぼつた、そのためにこういう攻撃をかけて来ておるというふうに判断せざるを得ないというふうに考えております。 私たちは、単に一方的に押しつけられた合理化に反対するだけでなしに、労働組合の活動の自由を、せめても今までの尼鋼の中において実行されましたルールに基いて確保したいという念願で闘つておるということを、私たちは申し述べたいと思いますと同時に、このことを尼崎市の一般の商売人にも、また一般の市民にも、あるいはそのほかの友誼団体の労働者にも訴えまして、広くこの私たちの考え方につきまして共感を得ておりますので、商売人も、私たちの闘争に対しまして品物の掛売りをする、それから尼崎市長にしましても、私たちに職業のあつせんを誓う、そして私たちのぐるりの労働者は一切の物心両面の支援態勢をとつていただいておるというふうに、尼崎市といたしましても、過去大同鋼鈑とか大谷とかいろいろなケースの首切り反対闘争がありましたが、過去の首切り反対闘争の闘い方に見ない、全然形のかわつた闘い方が起していただけるところまで、私たちに積極的に協力していたたけるところまで、ぐるりは尼鋼の井上会長の一方的なやり方に対して反発しておるということをつけ添えまして、私たちの闘争の現状の報告にかえたいと思います。 以上であります。
○多賀谷委員長代理 溝口参考人。
○溝口参考人 全造船の溝口です。いまさら私の方から申し上げるまでもなく、造船産業がどのような状態に置かれているかということは、汚職の問題を中心にいたしまして、すでに国会で十分御討議なさつて、よく御承知だと思います。私がこれから申し上げようとすることは、そういう造船産業の実態から、われわれ労働組合運動の分野を離れて、すでに造船産業に置かれておる労働者が社会不安のところにまで追い込まれておる現状を、二、三の例をあげて御説明いたしたいと思うわけであります。 まず第一に、すでに御承知の通りに日本海重工という造船所があります。これは冨山の港にあります。そこの従業員が約六百人ほどおりましたけれども、昨年の暮れ、突如として会社から、何ら話合いすることもなく、六百人全員の一斉首切りと、工場閉鎖が打出されて参りました。しかもその工場閉鎖の理由は、造船産業が非常に先行き不安だ、こういう理由であります。これに対してわれわれは、造船産業の先行き不安は、当然われわれも認めている、しかしながら、ただ船をつくつておるだけで食つておる造船所は、現在ありません。いろいろなその他の関連産業ともあわせてその作業をやつておりまして、ようやく息をつないでおるのが現状でありまして、そういう現状から見て、あくまでもわれわれは小型船舶の建造を中心とする産業機械あるいは鉄鋼あるいは橋梁関係の仕事をやつて行けば、当然全員首切らなくとも、あるいは若干の整理で済むではないかという話を持ち出しまして、そういうことを中心にして会社と折衝いたしましたけれども、さいぜんもどの参考人かお話がありましたように、突然会社重役以下全員姿をくらましてしまつて、遂に交渉に応じないままに、われわれは争議に入つたわけです。 ところが、もちろん工場閉鎖で全員解雇でありますから、会社側は一方的に工場にバリケードを張りまして、われわれはそれをそのままにしておいて、地労委を中心にして県知事あるいは県の経済部長、あるいは地元の有識者に話を持ち込んで参りまして、企業の再建を訴えて行つたのであります。ところが、もちろん県知事も、あるいは経済部長も、あるいは県の商工会、ことに富山市会などは全会一致でもつて、冨山の復興に必要な造船所を、あ るいは重工業を残そうじやないかということで、再建の話がまとまりかけておりましたけれども、遂に会社の一方的なやり方で、現在まだわれわれは闘つておるわけであります。 そういう事態の中で、特に申し上げおきたいことは、われわれは身分保障の仮処分の申請を冨山地裁に出しまして、昨年の暮れから争つて参りました。五月十五日にこの裁判は却下されたわけであります。その却下の理由として、組合は個人の利益を守ることはできないのだ、個人は個人で申請をやつて争うべきであつて、組合が団体として各個人の利益を守るための訴訟は行つてはならない、こういうことが第一の理由であります。 それから残念なことでありますけれども、労働協約が、話合いはできておりまして、会社からは調印書が出て参りまして、それにサインさえすればいい状態のまま置かれておりましたけれども、遂にサインする寸前に至りまして、会社が工場閉鎖を訴えて来たわけです。従つてわれわれは、労働協約は合意の上成立してあるものであるから、協約に基く協議約款に基いて十分話し合うべきであるとして、労働協約を中心にして訴訟を開始いたしましたけれども、調印がない、従つてこれは労働法にある記名捺印の項を有効と見ることができ得ないのだということが第二の理由です。さらに就業規則は一方的に改廃できるから、これは会社の自由でどうにでも考えてよろしい。 最後の理由で、ここで特にお考え願いたいことは、われわれは、会社が解雇権の濫用だということも申請いたしましたけれども、富山裁判所は、現在の造船産業の実態から見て、全員解雇しても解雇権の濫用にはならないという一文がついておることであります。このこと自体、われわれ造船産業の状態が、いかに社会問題化しているかを十分御理解願いたいと思うわけです。特にそのことをつけ加えておきたいと思います。しかしながら、われわれはなおこの問題を円滑に運ぶために、今知事を中心といたしまして、知事にあつせんを依頼いたしまして、地方の労働委員会と、会社側と組合の代表と、二十五日から協議を開始いたしました。事円満のうちに運ぼうとしてやつておりますけれども、今申し上げましたように、造船産業の実態から見て解雇権の濫用にならない、全員首にしてもよろしいのだという裁判所に対しては、あくまで抗議を続けたいと存じておるわけでありまして、特にこの問題については、労働委員会でも御勘案の上、お取上げを願いたいと存ずるわけであります。 さらに仙台の松島湾の近くに東北ドツクがあります。これは御承知のように、東北に東北興業株式会社という会社がありますけれども、これは戦争中の東北開発株式会社のあとがまだありまして、現在建設省がこの会社に関係しておる、たつた一つの国策会社だとわれわれは承知いたしております。ところが、東北興業を通じて、三百人の従業員のうち、百五十人の、やはり造船産業の見通し不安だということで、首切りを強要して参りました。われわれは、重役といろいろ折衝いたしまして、交渉をやりましたけれども、重役もとうとう東北興業やり方があまりにも一方的である、そういうことで、遂に五月十日ごろに、社長以下三人の重役が辞表を提出いたしまして、交渉相手を失つたわれわれはあくまでも残つた重役を相手に、事を円満に運ぼうと思いまして、建設省の企画部長あたりにもいろいろ話を持ち込んで参つておりますけれども、現在まだ事態は好転いたしておりません。もちろんこの東北ドックは、今申し上げましたような関係で、賃金は三月から一切もらつておりません。ようやくこのごろになりまして、一万四千円ベースのうちの三千円を四月の末にもらい、つい最近一千円をもらいまして、ここ二箇月ないし三箇月の間にわずか四千円しかの給料しかもらつていない。こういう状態でありまして、働くにも働けない。もちろん町の業者からの差押えはありますし、一切の、自分が働いているハンマーすら取上げられてしまうという状態が来ておりまして、われわれは、これら商売人に対しては、いろいろ現状を話しつつ協力を願つておりますけれども、現在のところ、建設省を中心とする東北興業の再建の方針が明確にならないことには、どうすることもでき得ない現状に追い込まれておりまして、今申し上げましたような賃金の受領の状況でありまして、その日の米に困つておる者もある実情であります。 さらに、中国に参りまして、笠戸造船所があります。ここも四月から給料の遅配が続いておりまして、遂に会社側では工場も閉鎖しなくてはならないのじやないかということを言つて参りました。ソ連船の修理の受注をわずかにやりながら、五月の初めまでつないで参りましたけれども、ソ連貿易云々の問題で、事態は好転いたしません。従つて、給料は遅配になりまして、ようやく会社とわれわれ組合代表と、さらに町の業者の代表との三者が寄りまして、五月末をもちまして、米の掛売りをいたしましよう、副食については一人当り三千円を限度として、月末までお貸しいたしましよう。家族を含めて、三千何百の者が、今申し上げました町の商人の方々の協力で、やつと飯を食いつないでおるのが現状であります。 もちろん、この給料の遅配は、小さい造船所だけではなく、御存じの日立造船所にも、すでに三箇月続いておりますし、浦賀ドックにおいても、すでに二箇月半給料の遅配が続いております。臨時工の整理などに至りましては、一昨年の四月に一万二千人ほどいました造船産業の臨時工が、現在では約五千人以下になつております。もちろん本工もそれにつれて若干整理されておることは否定できませんけれども、特に三菱長崎造船所では、一万人からの工員がおりまして、臨時工は千二百人おります。その臨時工を、第一次の整理といたしまして、つい最近四百人ばかり整理いたしまして、今年の八月までには全員整理する。もしも八月が参りまして、さらに十次計画造船の着工がそれ以後に遅れるようであれば、当然本工の整理にまで入るということを会社ははつきり言つております。こういう事態に処して、一日も早く計画造船の着工をやりたいというのがわれわれの希望であります。大手筋も、今申し上げましたように、すでに臨時工の整理に入つておりますし、当然給料の遅配も、ぼつぼつ今申し上げたような状態で出て来ることは予想できますけれども、潜在的なアイドルにいたりましては、全工場ともおそらく現在は四〇%くらいの従業員が遊んでいるものと、われわれは見ておるわけであります。こういう状態の中で——もちろん大手造船所がそういうアイドルの状況でありますから、小型船舶に至りましても、すでに中小企業は全都大手筋に奪われてしまう現象が出ております。従つて、中小企業の造船所は、今後ばたばた閉鎖のうき目にあうのではないか。最近ことに世上やかましく言われております原水爆の実験の影響を受けての漁業者の方々の収入の不足から来る、われわれ造船所建造いたしました漁船に対して、金を払つてもらえないという状態が出て来ております。こういう状態が笠戸造船所にも現われまして、遂に争議に入らざるを得ない。給料遅配によるいわゆる生活権の確保と申しますか、とりあえずの生活資金をくださいという要求すら、いれてもらえないというような状態が、金融引締めの圧迫ともに来ておることを、特に御承知を願いたいと思うわけです。特に笠戸に至りましては、会社が、税金の滞納はもちろんのこと、失業保険の滞納、さらに健康保険の滞納もいたしておりまして、病人が出ましても健康保険で見てもらえないという状態が出て来ている。医者のところへ参りますと、君のところは会社から健康保険料をこちらに納付していないので、健康保険で見ることはでき得ない。それから冨山におきましても、すでにそういう状態が出て来ておりまして、病人すら医者に見てもらえないというような状態が出て来ております。九州に参りますと、九州造船所もしかりでありまして、このような状態が全造船産業に、大にか小にか出て来ておることを特にお考えを願いたいと思うわけです。 非常に簡単でありますけれども、時間の制約もありますので、今申しましたように、とにかくわれわれ労働組合をやつておるものが、社会的な問題の中で、すでに一切の医療活動あるいは生活資金の確保、そういつたものを闘わざるを得ないところまで追い込まれておることを特に申し上げまして、今後とも十分御協力をお願いいたしたいと存ずるわけであります。
○多賀谷委員長代理 立川参考人。
○立川参考人 私、帝国酸素株式会社労働組合総連合中央副委員長立川一郎でございます。私の申し上げたいことは、帝国酸素におきましては、会社の特殊な事情、すなわちこの会社はフランスの資本が大部分を占めておつて、日本の資本はわずかに五%しかないわけであります。従つて、経営はまつたくフランスの独善独裁に行われておる。それが、あらゆる面において大きな反響を与え、これは会社の経営面——この点においても帝国酸素は、帝国酸素の特異性としてあまねく内外から注目されておるわけでありますが、特にこのことは労働関係におきまして、はなはだ顕著に現われておるわけであります。 私の本日陳情申し上げたいことは、労使関係において、特にわれわれのはなはだ困ることが一つあるわけであります。それは何かと申しますと、不当労働行為を会社の方が意識的に頻発せしめて、これによつて労働組合の財力を枯渇させる、それから組合が奔命に疲れ、時間的及び精力的にも完全に忙殺され、さらに一般組合員ないしは従業員をして恐怖感を起させしめる、かような状態でありますので、正常なる組合活動というものは全然行われなりい、組合運動というものは正常に行われない、こういう現状にあるわけであります。これはもちろん会社側が意識的にやつておるのであつて、ここに大きな問題があるのじやないかと思うのであります。 その具体的な実情について申し上げる前に、会社の大体の実情というものを申し上げます。資本金は三億四千五百万円、この約九五%がフランスの液体空気会社の所有しておる株であります。そうして液体空気会社から従業員を派遣し、これが帝国酸素の経営に当り、また取締役になつているわけであります。残りの五%は戦前まで住友が持つていた株ですが、一部従業員に放出せられた関係上、従業員が現在も持つております。これは戦後最初のときには一〇%以上であつたものですが、会社側が逐次これを回収する工作をやつた結果、現在では五%そこそこになつているわけであります。会社は専務制を持ち、専務取締役及びもう一名の取締役がフランス人で、これが日本におきましてほとんど独裁的にやつている。それ以外にフランス人の重役が三名おりますが、これはいずれも本国にあつて、実際上は何ら仕事に関与していない、いわゆる名目上の取締役であります。それ以外に日本人の取締役が二名おりますが、これは全然名前だけであつて、非常勤の取締役であります。こういう状態でありまして、経営のことはもちろん、労使の交渉その他におきましても、一切フランス人が独善的にやつている状況であります。従つて、労使関係を規制する最も重大な機関である団体交渉も、単に日本人の人事関係者その他二、三の者が出席し、フランス人の取締役の意思を口頭をもつて伝えて来る。それに対する反論なりこちらからの要求に対しては、単に向うへ伝達するということにとどまるのであつて、全然団体交渉らして交渉は行われてない状況であります。 事業所は、本社以外に営業所が十七、工場が十九、ほとんど全国に分布しております。従業員数は約千五十人であります。従つて各営業所なり工場の人員は非常に少く、工場、事業所の規模はとるに足らないようなものであります。 次に組合の実情を申し上げます。組合は昭和二十年、各事業所におきまして単一組合が生れましたが、それが二十一年の十二月に連合組織をとりまして、会社との交渉その他は、一切連合組織である帝国酸素労働組合総連合がこれに当つております。現在のところ労働協約は、多年懸案になりながらできておりません。これは組合の非常な熱意と努力にもかかわらず、会社側はこれを故意に遷延しているわけであります。労働組合は、今申し上げた通り総連合組織をとつておりますが、その傘に属する各事業所における単一組合の数は三十三でありまして、組合員数は一千名であります。 次に、本論である不当労働行為の実情について申し上げます。会社は昭和二十七年の十月までピエール・ワリイという人が専務でありまして、これまでの期間におきましては、労使関係は他の企業における労使関係とは、もちろん著しく性格が異なつていたわけでありますけれども、不当労働行為事件は一回も起つておりません。しかるに、二十七年の十一月に、現専務並びに現専務の支配下にロベール・カボーという取締役がおりますが、このロベール・カボー氏が直接労務を担当するということを宣言いたしまして以来、不当労働行為が続々と出て来たわけであります。 その第一は、二十七年十一月、書記長江原庄平に不当転勤を命じた事実であります。当時組合側は専従者制度をとつていなかつたのであります。従つて組合活動は一切就業時間外に行わなければならぬ。当時江原書記長は、本社にすぐ隣接する工場にいたのでありますが、時間外を利用して書記長の仕事をしなければならぬにもかかわらず、組合との話合いをせずに、神戸の一番東の端にある本山工場に転勤を命じた事実があります。当時まで労使間においては、組合幹部に関する異動に関しては紳士協定がありまして、組合役員の異動に関しては組合と事前に協議する、こういう紳士協定があり、また事実二十七年十一月までに、幾回かそういう例があつて、これが一つの慣行になつておつたわけであります。しかるに江原庄平に対してはこれを行わず、突然これを転勤せしめることになつたわけであります。これに対して組合側は、紳士協定並びに従来の慣行によつて団体交渉を開催して、その上で決定すべきであるということを申し出たわけでありますけれども、会社はこれを拒否して、交渉にも応じなかつたわけであります。そこで組合側は兵庫地労委に対して、不当労働行為の申請を行いました。その結果、二十八年の二月に兵庫地労委から命令が出たわけでありますが、これによつて組合の主張は通つたわけであります。しかるに会社は、これをただちに不当として中央労働委員会へ提訴いたしました。中央労働委員会は、同年、すなわち昨年の六月命令を出し、やはり組合側の勝利に終つたわけであります。ところが、会社側はこれを不満として、さらに東京地裁に行政訴訟を起しました。そうして現在に至るまでまだ解決していない、こういう状況であります。その間において組合側が払つた犠牲は、莫大なものがあるわけであります。 第二には、立川副委員長、すなわち私でありますが、昨二十八年の七月に実施すべき定期昇給が、九月に実施されたわけであります。その際に、私が副委員長をやつているということ以外に理由がないのでありますが、不当な取扱いをもつて、大体七、八百円の昇給をすべきところ、最低の二百円にした。二百円というものは、あらゆる点から考察してこれは不当であるというので、これを不当労働行為として兵庫地労委に提訴したわけであります。兵庫地労委におきましては、昭和二十九年二月二十三日、組合側の主張をいれまして、会社側にその是正を命令いたしました。ところが会社側はこれを不当として、さらに中央労働委員会にこれを持ち出したわけであります。これは目下のところ中央労働委員会で審査中であります。 第三に、組合分裂工作として、会社は次のような不当労働行為を行つております。昭和二十八年の十月に、組合側は賃上げの要求をいたしましたが、それが争議になりまして、本年の一月二十日まで争議が続いたわけであります。その間、八回にわたるストライキを実施しております。その間十一月の二十六日、これは第一波のストライキの前日でありますが、会社側は、会社の重役ではございませんが、やはり経営者の一人でありますシャルル・マルテルを名古屋の工場に派遣しまして、名古屋の組合員を集め、明日のストライキをやめろ、それから第二組合を結成すべしという慫慂をやつております。これは当然組合の支配介入であつて、不当労働行為であるというので、十二月愛知地労委に対して、われわれの方が提訴いたしました。これも目下審査中であります。これはその審査中にわかつたことでありますが、名古屋において、そういう第二組合を結成せしむべく工作したのは、あとで判明したところによると、昭和二十八年の九月上旬、ロベール・カボーみずからが、名古屋に対してそういう裏工作をやつておつたという事実が現われておつたわけであります。 その次に、やはり組合分裂工作の第二でありますが、これは昭和二十八年の十二月二十七日を第一波としてストライキに入つておりますが、十二月の二日に、会社側は公文書をもつて一般組合員に対して、スト当日ストに参加せずして会社に出勤した者及び就業の意思あることを表明した者——これは就業しなくても就業の意思あることを表明した者に対しては、割増し賃金を払うと、こういう公文書を出しておるわけであります。これも組合に対する不当介入でありまして、われわれは十二月の五日、兵庫地労委に対して不当労働行為の救済申立てをやつております。これは三月の十二日に兵庫地労委において命令が出まして、あの公文書、すなわち昭和二十八年十二月二日付をもつて出した会社のDA第八十五号という公文書でありますが、これを取消して、組合に対して謝罪することを命令しております。しかるにこれに対しても、会社側は中労委に提訴いたしております。そして、これも目下審査中であります。五月十五日、中労委はこれに対して、初審命令を履行すべしという勧告をいたしておりますが、会社はこれを実施しておりません。 その次に、第五の不当労働行為、これは昨年から本年にかけての賃上げ争議におきまして、十二月の二十八日から三十日にわたる七十二時間スト、これは第七波でありましたが、そのときに会社側は、名古屋の支社長並びに工場長をして、組合員を組合から脱落させた事実があるわけであります。これに対しまして組合側は、組織防衛のために、賃上げの争議とともに、所属長である名古屋支社長原谷憲介に対して退陣を要求するとともに、工場長島田勇に対しては謝罪を要求したわけであります。これは二月二日並びに四日の団体交渉において、組合側が正式に要求したわけであります。ところが会社側はこれに対して、組織を分裂させるために、当時工場と支社が同一敷地内にあつて、組合側は工場及び支社を合せて、一つの名古屋単組というのをつくつておるのでありますが、十二月の末にくずれたのは主として支社の方の職員でありまして、職員を工員の方から切り離すことによつて、名古屋の単組というものの再建を防げるという手を使つたわけであります。そこで、会社側はかねがね名古屋の目抜き通りに営業所を出したいという意向を持つておつたのでありますが、準備が完了していないにもかかわらず、二月五日に突然移転をするようにしたわけであります。組合側は、これを組織の破壊であると考えた結果、運送屋を説得してこれを中止せしめたという事実があるのであります。その間十二月の末から二月の上旬にかけての間に、工場長並びに支社長に対する謝罪並びに退陣の要求という闘争をやつておるということをもつて、会社側は名古屋の単組の組合長である高野新作——工員でありますが、これを懲戒解雇に付したわけであります。それが四月の三日であります。この解雇の問題でありますが、その間、組合側に対して正当なる団体交渉をやつておらないし、また懲戒解雇に至る理由というか、事情に対する十分なる説明もしておらないわけであります。これに対しまして組合側は、愛知地労委に対して不当労働行為の申請をするとともに、愛知地裁に対して身分保全の仮処分の申請をいたしております。この両方とも、目下行われておる過程にあります。 以上は、大体法廷なりあるいは労働委員会を煩わした事件でありますけれども、荒以外に、われわれが見たところ不当労働行為と見える事実であつて、しかもわれわれが煩にたえないために、また比較的事柄が重要性を持たないために、法廷なりあるいは労働委員会に持ち出していない不当労働行為というものが多々あるわけであります。その一、二の例を申し上げますと、私並びにもう一名副委員長がおるのでありますが、この両副委員長に対して、本年の一月から二月の初旬にかけまして不当転勤を命じております。これは何ら事前に交渉、協議というものを行わずに、いきなりやつております。 それからもう一つ、本年の四月八日に、会社側は各所属長に命じて事業場内における組合活動を一切厳禁せしめたという事実かあるわけであります。この事業場内における組合活動というのは、具体的にこういうことが書いてあるわけであります。事業場内でビラの配付とか掲示、あるいは組合費の徴収、その他一切の組合活動に類するものを禁止する、こういうことであります。現在われわれの方の総連合におきましては、会社との間に専従者協定があります。それによりまして専従者が二名おるわけであります。総連合としての専従者はありますが、各単位組合の専従者はないわけであります。総連合といたしましては、昭和二十七年の暮れまでは、本社内におきまして一室を貸与されておつて、そこで組合の事務をとつておつたわけでありますが、これも会社側が出てくれというので、二十七年の暮れに会社外に組合の事務所をつくつておるわけであります。しかしながら、一切の組合活動というものをまつたく会社内において禁止することになると、おそらく現在における日本のほとんど大半の組合というものは、事実上動かなくなるというのが現状じやないかと思います。特に私どもの方におきましては、単位組合というのは、小さいものになりますと十名そこそこでありますし、大きいものでも七、八十名くらいの組合でございますので、それが外部に事務所を設け、一切組合活動というものを外でやるというふうなことになると、事実上組合活動というものは消滅せざるを得ない、こういう状態であります。 大体具体的な例は以上の通りでありますけれども、かように会社側は不当労働行為というものを非常に頻繁に行つております。そうして不当労働行為を最初に起した書記長不当転勤問題すら、現在に至つて足かけ三年、なお解決いたしておらぬ、こういう状況でありまして、このために、組合側は多大の資金を必要としておるし、かつそれがために組合幹部の精力のほとんど大半を奪われるというふうな状況であります。これは何に基因しておるかというと、会社側がこれは公言してはばからないことでありますが、労働委員会あるいは法廷において、会社が負けるということは考慮のうちにある。つまり、負けることはさしつかえない。今五件ばかり争つておるわけでありますけれども、会社側はほとんど全都負けるということをあらかじめ計算に入れております。しかしながら、地労委、中労委それから地裁その他こういう手続を経ておる間に組合側はこの煩にたえない。それから特に金銭的に参つてしまう。それからそれ以外の正常なる労働組合の活動というものを封殺することができる。特にこういうあまり一般の組合員に興味のないことをずるずるやつて、組合幹部がこのために精力を集中しているということになると、組合幹部に対する、あるいは組合のあり方に対する一般の嫌悪というか、倦怠感というものを起させるのに非常に効果がある、これを目的としておるのであるということを公言しております。また事実その通りとしか考えられないのであります。 およそフランス資本といいますか、フランス人のやり方を見ておりますと、三百代言のようなへりくつをもつてとにかく押して来る。そしてりくつというものが通らなくても、実力において、究極においては金の威力があるから勝つのだ、こういう考え方であります。特に遵法精神というものがまつたくないのでありまして、これはその他の労政事務所あたりの管轄に属する安全とか衛生規則というものに対する考え方も、非常にけしからぬ考えを持つておるのであつて、そういう方面の完全なる合法的なる設備というものを整えない、あるいは従来あつたものでも、それはよけいな経費であるとしてこれを廃止するというふうな傾向があります。 かように、法というものは実質的な制裁があつて、その制裁によつてこうむる打撃というものが、会社にとつて相当大きなものでない限りは、遠慮なくやるというのが建前になつておるのであつて、それが帝国酸素の会社の一貫したやり方である。そうしてそれによれば、組合は現状においては当然存立し得ないということに対する見通しを持つておるようであります。結局法律とかあるいはその他の社会制度というものには、常に盲点があるものであつて、これを悪用して、その間隙を逢つて行こうとすれば幾らでもやれる。しかも究極においては、若干の罰金なり何かの実質的な損害を出しても、これは企業全体として見れば微々たるものである、こういう考え方であります。そこに、これは単にフランスの資本に限らないのでありましようけれども、外資というもののきわめて注目すべき性格が露呈されておるのじやないか、こういうふうにわれわれには感ぜられるわけであります。それがために一般の事務所あるいは工場における空気なんかを見ましても、他の企業におけるがごとき一つの活発さといいますか、活気というものが全然なくて、特に本社のごときは五、六名の外人がいるだけで、日常が非常に陰惨な空気であつて、職場としても非常に暗い、こういうふうな状況であります。 大体不当労働行為の続出の状態並びにそれに関する会社側の根本的な態度は以上のようであります。従つて私どもとしましては、ここに組合活動というものが大きな制約を受けるということを率直に申し上げて、そして善処していただきたい、こういうふうにお願いしたいと思います。
○多賀谷委員長代理 次に各参考人に対して質疑を許します。山口丈太郎君。
○山口(丈)委員 今参考人から、それぞれ労使間の実情について説明がありましたが、これは基礎にして少し参考人並びに関係当局に質問をいたしたいと思います。 まず尼鋼について聞きますが、参考人の証言によりますと、人員整理のための解雇通告者の中には、療養期間中の工員が含まれておるということでありますが、この療養期間中の患者を解雇するにあたつては、基準法によつて、一定の療養期間これを解雇してはならぬという規定が設けられておると思いますが、会社は具体的にどういう見解で通告をしておるか。ただ単に一般的な工員解雇として通告しておるのか、それとも特別の事情——協約等によつてそれを通告しておるのか、まず第一点としてお答え願いたい。
○平坂参考人 今回の首切りには、十一箇条の解雇基準を持ち出したわけですが、この中に、病気のために業務に不適当な者ということを出したわけです。病気のために業務に不適当なる者という理由で、いわゆる入院患者その他自宅療養者についても首切りを出しておるので、協約の第四十五条に、首切るために組合と協識して解雇する条件が八つあるわけですが、この中の第四項に、身体もしくは頭の方に障害があるか、または老衰、疾病のために業務に不適当であるということがあるわけであります。しかしこの場合は、組合と協議して解雇するというふうに書いてあるわけですが、この協議が行われておらないということで、組合の方では、このような解雇の仕方には反対であるというふうに申し出てあるのです。もう一つは、たとい協議が行われたとしても、現実に病院に入つておる者に対して、こういう条項があるのに、そういうことは人道上許されるべきでないというふうに考えてこの問題を取上げているという、別の意味の側面もあるというふうに考えております。
○山口(丈)委員 どうでしよう、労働省の見解は。こういう解雇の仕方そのものは、一時にもせよ労働能力というものを持たない、そうして療養中のものでありますから、それを基準法は保護しておると思うのです、そういう者を単なる労働能力を完全に具備しておる者と同一の扱いをもつてこれを処断するということは、人道上からしても、もちろん忌避さるべき問題であると思いますし、基準法の関係からいつても、これは保護されるべきではないかと思いますが、この見解を明らかにしていただきたい。
○亀井政府委員 基準法の関係を申し上げますと、基準法の第十九条に、業務上負傷、疾病にかかつた場合は、本人が療養中の間、及びその後の三十日同は解雇できない。しかし、但書がございまして「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能ごなつた場合においては、この限りでない。」という条項がございますが、一応原則的には業務上の疾病、負傷につきましては、そういう措置が不適当であるということは言えると思います。
○山口(丈)委員 基準法の十九条による業務上の問題が、従来の慣習としては、今組合から答弁したように、何らか組合との労働協約、いわゆる協定約款がある場合には、当然これはその約款に従つて、特に病人の場合には処置されるべきじやないかと思いますが、こういう点についてどうお考えでしようか。
○亀井政府委員 労働基準法の第十九条は、強行規定でございませんから、協約の規定があるなしにかかわらず、当然法律違反という問題は起ると思います。私傷病の場合におきまして、協約の効力がどうであるかということは、基準法外の問題になると思います。
○山口(丈)委員 そこで組合にお尋ねをいたしますが、今の説明によりますと、尼鋼と尼鉄の合併による会社の再建計画と、それからもう一つは、尼鋼自身ででも昨年度の決算から見て、八億五千万というような赤字を解消して来たのだ、従つて将来に対してもその計画があるということでありましたが、それではその後具体的な生産計画、再建計画について、会社に交渉されたことがあるかどうか、ひとつお聞きしたい。
○平坂参考人 この会社の再建の問題につきましては、現在の組合の状態といたしまして、まず具体的な話合を行う前に、この再建案、いわゆる組合と会社において経営問題について話し合う意思があるかどうかということを、会社の方に確認を求めました。ところが、会社の方は、経営権をたてにとつて、まず経営問題については会社にまかせてもらいたい。自主的におれたちがやることを、君たちはやりさえすればよろしいということを井上会長は言行分脱落おらない。抽象的にはそういうふうに言つておりますが、今その再建案についての話合いをやる前提について、特に経営問題について協議しようという協議約款をもらうことについての交渉を進めておる過程で、抜打ち的に首切つておりますので、まだ具体的にどの工場をどうすればとの程度の生産が上るということに対しまして、特に生産計画の逐一にわたりましては、まだ会社の方に提示をしておりません。会社の方がいつでも協議に応じよう、そうしてその問題について話し合つて行こうという態度があれば、いつでも出すということは会社の方に再三申上げ、しかも再建案の方向というものに関しましては、尼鉄と尼鋼の合併によるところの問題が一番適当であるということを、会社も恒久的な経営方針といたしまして採用するということは了承しております。ところが、そのこまかい具体策につきましては、組合と会社との間で協議すべき事柄ではないというふうに言つて一蹴しておりますので、ことにこの件に関しましては、仄聞するところによりますと、平岡社長は、組合が熱意があるなら、そういう話合いに応じてもよいということを重役会議において発言したにかかわらず、井上会長が、そういうことを許すということは、今後経営問題について、おれの経営方針が遂行できなくなるおそれがあるということを重役会議において発言して、それを押えたということもわれわれ仄聞しておりますので、そういう経緯からいろいろ考えまして、現在の代議員会では、まだ会社側に、いわゆる団体交渉の席上において提示しておらない。以上、途中から脱落分に続くりが来たというふうに私の方では説明しました。
○山口(丈)委員 そこで、今度は当局にお尋ねをしますが、労働省の指導方針としては、小坂労働大臣は、労使協調についていろいろの助言を新聞にもたびたび発表されまして、そしてその方針に基いて指導をせられておるやに承つておるのでありますが、そういたしますと、この今の尼鋼の労働組合がとつております態度というものは、経営者が疑うような経営の実態にまで参加をして、具体的にこの内容にタッチしようのではなくて、会社再建の大まかなその方途について、いろいろ協調的に建設的に進めて行こうという、きわめて真剣な態度をとつておるものだ、かように考えますので、当然今日このようなたくさんの解雇者を出すことは、本日議題になつております失業対策面からいたしましても、きわめて重要な関連性を持つものでありますが、これについては他の尼崎にも大小入れますと、十数社に及ぶ鉄鋼業の工場があるわけでありまして、この尼崎の実態というものはやはり全国的に波及する重要な問題だと思います。そういう場合に、今の労働省の方針である、いわゆる労使の協調ということは、ただ経営者の経営方針というものに組合が協調して行くということだけであつて、組合のいわゆるいろいろの建設的進言というものに対しては、それは経営に対する参加であるから、これは拒否してもいいんだというような指導をされておるのが、あるいは、今後そういうことではなくて、今私が申し上げたように、建設的な組合の態度行為に対しては、積極的に経営者側もこに応じて、労使紛争を起さないような指導をされるつもりなのか、これの対策はいかがでしようか。
○安井政府委員 お答え申し上げます。山口委員の御指摘の通りに、労使問題が労使間の協調によつて解決されて行く、また進展して行くということが非常に好ましいことは、しばしば労働大臣も言明いたしておる通りであります。ただ尼崎の問題につきまして、ただいま承つたのは組合側の御意向でありまして、経営者の意向も十分に伺つていないので、両者委細を尽していないかと存じますが、私ども俗にいう経営参加というものは、今日認められるわけはないと存じます。しかし、お互いの信頼の上でいろいろ再建について話合いができるという形のものができ上りますれば、これはそれで非常にけつこうなものではないかと考えておる次第であります。
○山口(丈)委員 今の状態で行きますと、この労使の協調という言葉は、単に労働組合が経営者側の経営と計画に基いて、都合よくやればそれでいいんだ、組合のそういつた意見に基くものは取入れぬでもよろしい、どうもこういうような態度に聞えるのですが、何か錯誤を起されているんじやないかと思うのであります。従来経営参加ということは、戦後盛んに唱えられたものでありまして、その経営参加の中には、確かに行き過ぎたといいますか、労働組合運動の限界を越した考えを持つて経営参加を唱えていた者もあると思います。しかし、今日のこの労使協調といいますか、それに基く組合側の経営に対する協議というものは、そういう形とは全然方向をかえていると私は思うのであります、けれども、経営者側の態度というものは、とにかく占領中に、会社を再建しなければならぬ、そうしてそれは最も真摯な建設活動を要求せられておる、そしてまた経営者もその労働組合の態度に最も頼つて行かなければならぬ、こういうような時代を過ぎて、もうすでに今日ではある程度の経済的な復旧もできて来、会社の再建もできた。ですから、今度はここで、その基礎に基いて利潤というものだけを一方的に見積つて行ころというようなことで、労働組合の団結も、あるいは労働力の提携も、今までのような必要性というものがなくなつた、ここで利潤にまかせて強力な資本蓄積と、そうしてそれに伴う利益だけをあげれば、それでよろしいというような態度になつて、まつたく労働者の意見というものが不要物化されるような傾向があるんじやないかと思いますが、そういう態度で参りますと、ますます私は失業が増大し、社会不安を起す原因になると思います。この労働の根本的対策について、労働省はどういう考えをもつて指導されようとするか、また今日の産業不振の打開につきましては、いろいろの手段方法があると思いますけれども、この今日の状態において失業を最大限に防止するためには、労働省としてはどういう見解をもつて産業界に対処しようとせられておるか、ひとつこの基本的なお考えを承りたいと思います。
○安井政府委員 今の労使紛争の問題につきまして、労使がお互いに協調してやつて行くことはもとより必要なことであり、労働省としてもこれは大いに慫慂したいところでありますが、実際問題といたしまして、経営者が経営権の管理あるいは経営の安全を確保する、これはもう当然なことであろうと思います。しかし、それかといつて、今日合法的に許されております組合の活動に制限を加えるようなことがあつては、これはもう当然いかぬのでありまして、これにつきましては、それぞれの関係機関を通じまして厳重な監督をいたして行きたいと思います。 さらに、後段のお尋ねの、今日の復旧に際しまして、いろいろと失業問題が起るがどうだということでございます。これは今日日本の経済にとりまして、非常に重要な問題で、当局もいろいろと考慮いたしておる次第でございます。何分こういう問題は政府全体の問題でもございますし、同時に、今日のいわゆる政府の緊縮政策というものが、日本経済の再建の上から、どうしてもやむを得ない政策であるという点もあわせまして、それによつてこうむる影響を最少にとどめたい、さらにやむを得ない失業部門に対しましては、失業対策あるいは公共事業等の振興によりまして、そういつた面を吸収して行くというふうに考えておる次第でございます。
○山口(丈)委員 政府の言われるデフレ政策、このデフレ政策の一番のもとは、金融の引締めだというような考えでやつておられるようでありますが、政府の目的とされる点は、結果においては消費経済を抑えたて、そうして生産を増加して行く。同時に、それはある程度の生産手段の整備統合というものが伴つてそのデフレ策を進めて行くというところに、私は特徴を持つのだと思うのですが、しかしそれでは、今日の経済から見て、消費経済なるものがまつたく停滞して行くかというと、そうじやなくて、私は今日でもなお消費経済というものはずんずん進んで行く、こういうふうに考えます。ただ問題は、消費経済は進むのでありますが、しかしそれを停滞させるものは生産経済の停滞にある、いわゆる生産手段の停滞に基く消費経済の停滞、こういうことになりますから、ますます失業は増大して行くのだこういうふうに考える。このまま行きますと、非常な社会不安を起して参るのでありまして、それは私は政府の目的とはおよそかけ離れたものになるのじやないかと思いますが、労働省のお考えはどうですか。また通産省はこれをどのように考えて生産経済の停滞を防止しようとされるか、これを伺いたい。
○安井政府委員 お答え申し上げます。政府の緊縮財政と申しますか緊縮政策が、消費面については規制をしないとかあるいは停滞を来さないで、生産面から締めて行くという方向じやなかろうかというお尋ねでございますのが、これはそういつたつもりじやないでございます。いわゆる緊縮政策と申しますか、デフレ政策、これは、低物価を維持して行くためにはどうしても一種の生産の合理化は伴うものでありまして、合理化が伴いますために、そのしわ寄せとして雇用の減少といつたような問題が起りますが、これは別途の方向におきまして、でき得る限りの救済、対抗手段を講じたいと思つておる次第でございまして、いわゆる消費を手放しにしておいて生産面から締めて行くというふうな考え方でないことは、先般来いろいろの予算の御審議その他でも御承知いただいておることだろうと存じます。
○山口(丈)委員 私はなぜこういうことを言うかというと、実際面で、たとえば今日重工業方面、いわゆる鉄鋼、石炭等の基礎産業方面において、非常な不況が襲つております。そのことは今ここに参考人として出席されております二つの産業の方が公述をいたしました中によく特徴づけられておると思うのであります。そこでこの造船を一つとつてみましても、私は運輸委員会に属しておりましたが、今年度の造船計画は、当初示されにものは二十万トンであつた。しかし、この計画造船の当初の政府の予定では、年々三十万トンを建造して、五年間に百五十万トンの造船をなすというようなことから計画造船は進められて行つたのであります。しかし本年度を見ると、二十万トンに減り、その二十万トンというものも、聞くところによると、まだ市中銀行との間における融資の問題の解決もできない。開銀必ずしも政府の計画されているような方向にも行きかねるようなことも聞くのであります。しかも十七万トン、その十七万トンの造船も危ぶまれるというような現状であります。こうなりますと、私が今申したように、政府はだんだんその生産規模を縮小して行つて、生産規模を停滞させて、そうして増加するのは何かといえば、これは不生産的ないわゆる過剰労働だけになる。労働というものは生産に使用されるのでなくて、かえつてそれが不生産的なものに使用されて来るのでありまして、そうなれば、私は一大混乱を生ずると思うのでありますが、これについて労働省はこの造船界をどうように見ておられるか。日本の造船能力というものは外航船を建造する能力が年間約八十万トンと称せられておる。また小船舶を建造するものを加えますと、優に百二十万トンないし百三十万トンという造船能力を有しておるのであります。そういたしますと、これがわずか二十万トンやそこらで、それもろくにできないというようなことになれば、これは非常な過剰労働になる。同時にまた、これをこのままにしておくということになれば、私はこれはできないと思うが、その場合に失業を伴わないで転換の方法を考えざるを得ない、こういうふうに思うのでありますが、これについて労働省として、労働の確保という面から、一体これをどういうふうに処理しようとされますか、お伺いしたいと思います。
○安井政府委員 鉄鋼界の不況も、私はやはり貿易の不振といつたようなものが、非常に大きな根本原因じやなかろうかと存じます。貿易の振興をはかりますには、やはり低物価と申しますか、低コストに持つて行かなければならない。そのために合理化ということがどうしてもある程度強要されて来る。そこに今の雇用関係の不安定性が生れて来ますので、これは先ほど申し上げましたように、別途の方法ででき得る限りの救済手段を考えなければいかぬと考えております。 さらに、造船の問題につきましても、御指摘の通り、これは非常に重大問題でございまして、ことに計画造船の未決定に伴いまして、下請企業その他が非常な苦境にあることも重々承知しております。ただ私どもいろいろ心配いたしまして、運輸省あたりとも協議を続けておりますが、近くこの計画造船も十七、八万トンのものは決定の運びになるのではなかろうかと存じております。そういたしますと、今年度五十五万トンの総新造能力といわれておりますので、むろん不十分ではございますが、昨年にやや近い新造トン数にはこれから追いついて行けるのじやなかろうか。そこでその方面を極力打開いたしますように、運輸省当局、通産省当局とも極力折衝を進めておる次第でございます。それ以外にもそういつた造船界の技術者あるいは労働者が、他の産業への転換がかなり困難な事情にあることもよく承知しておりますので、でき得る限りその職種転換というものも大いにあつせんいたしまして、さらにやむを得ない面につきましは今の失業対策、その方面で労働省としてやり得る最大の措置をとりたいと考えております。
○山口(丈)委員 事業の合理化といえば、従来から必ずこれは人員を少くすることだと考え、コストを引下げるといえば、今現われておりますように、最初は賃金を引下げるか、さなくばその一割の賃金を引下げるに見合うまでの人員を整理するかというように、とにかく労働に対する合理化ばかりが、経営の合理化のように考えられておる。これは私に非常に遺憾だと思うのです。と申しますことは、これを人口政策上から見ましても、日本は非常に過剰人口を持つておる。従つて過剰人口であるということは、とりもなおさず、それだけ労働人口が多いということを意味している。しかるに一方事業方面において、どんどんと人員の縮小だけを合理化の第一要諦とするならば、これは非常な問題をかもすものだと思う。事業の合理化とは、そうではなくて、むしろ雇用力を増大して、労働者の生活、いわゆる大衆生活というものをまず安定させるところに生産目的を置かなければならぬ。大体、今の日本でとられております生産目的というものは、先ほど申したように、合理化といえば人員を削減するとか、あるいは賃金を引下げるということだけが目的のように考えられておる。こうなればまつたく大衆生活というものが犠牲にされる、ここに今日のような事情があると思います。一体この合理的生産手段の指導ということについては、ずいぶん研究もされておることだと思いますが、労働省あたりでこれの研究対策をどういうふうにしておられるか、またその指導を今後どういうふうにされようとするか、失業対策面から、ひとつお答えを願いたいと思います。
○江下政府委員 お答えいたします。事がどうも私の専門の分野よりややそれるようでございますが、失業対策面からというお話でございますので、お答えいたしますが、日本はお話の通り、人口が非常に多いのに比較して職業が少い、こういうことは従来から言われて来ているわけであります。今度の緊縮予算におきましても、ある程度の失業者が増加するということは、私どもも当初から予期をしておるわけでございます。そこで企業がつぶれるというような事態が起る。もちろん、これは現在の最高政策のもとにおいて、企業の合理化その他を行いまして、これをつぶさないように持つて行くということについては、私どもといたしましても、できるだけ関係省に要請をして、今まで参つておるわけでございます。ただ、今の遊休施設の問題でございますが、これは最近特需等の問題でいろいろでございました。これにつきましても、できるだけ特需産業の遊休施設を他の方に振り向けるというようなことについては、通産省方面にもお願いをしておるわけでございます。何しろ直接の担当でございませんので、十分力の至らぬところはございますけれども、労働省としては、もちろん雇用量が減るというようなことは決して望んでおりません。その点については、一貫した方針で進んでおるわけでございます。そういたしましても、今政務次官も申し上げましたように、失業者が出るということは、これはどうしても避けられないことでございますから、これにつきましては、実は最近特に金融引締めの効果が石炭、造船方面に予想以上に強く響いて参つておりますので、これについて至急対策を今樹立中でございますが、とりあえず中央あるいは関係府県におきまして、労働省の出先機関ないしは各省の出先機関、あるいは関係の団体等を打つて一丸といたしました労務対策協議会を設置することに決定いたしまして、地方の方にその旨指示いたしております。この対策協議会におきまして、実情の調査も徹底的に行いますし、失業対策の面につきまししも、できるだけむだな労力が出ないように配意して参りたいというふうに、現在のところは考えておるわけであります。
○山口(丈)委員 私は、失業対策につきまして今御答弁をいただきましたが、しかし失業者が出てからそれを救済するという措置では、遅過ぎる。問題は、失業者が出ないように措置することが、失業対策の基本でなければならぬと思う。そこで今、次官の答弁になつたのを聞いていても、どうも失業者が出て来るから、その出た失業者に対する救済措置というものが失業対策だというように聞える。なぜかと申しますと、転換策をとるにいたしましても、たとえば訴えられております造船の工場閉鎖、これは造船の先行き不安から起きておるのだ、こういうことなんです。そうすると、経営者の方では完全に失業させてしまう。工場をぴしやつと閉鎖してしまつて、それからでないと転換策をしない。こういうように失業者をつくつてしまつて、そのつくつてしまつた失業者に解雇予告手当をやり、あるいは失業保険法に基いて何箇月間かの補償をしてやるということだけをもつてしましては、これは失業対策にならない。ですから、工場閉鎖というような問題が起る場合には、こういう面から、よほどそういうことのないような指導をすることが当然だと思う。そういうためには、この経済各省はよく協議をされて、日経連なりあるいは造船工業会なり、いろいろの団体があるのですから、各産業別にそれらの団体の指導、そういつたものに対する勧告をなすとかいうような、適切なる措置をとる用意があるかどうか、これをひとつ承りたい。
○安井政府委員 先ほどからのお話のように、今の日本経済の全体の貧困さと、さらにこれを建て直しますためのいろいろな企業の合理化の必然的な要請というものと同時に、日本の労働人口が非常に多いというのを、どうかみ合せて行くかということは、おつしやる通りに非常にむずかしい問題であろうと存ずるのでありますが、ただ、従来と申しますか、いわゆるインフレ的な政策によつて一時的な景気をつけるのであつては、日本経済自体がどうしてもだんだんと先細りになるというようなことから、一時この経営の合理化はやむを得ないというふうにわれわれ考えておる次第であります。さらにその経営の合理化によりまして、日本の経済基盤全体が膨脹して行く、その拡大して行くことによつて、根本的にはこの労働人口の吸収もはかつて行くというのが目標でございます。しかし、と申しましても、ただ合理化は、人の首さえ切ればいいのだというふうなことであつても、これはいくまいと存じております。ただ本日、いろいろと個個の組合から陳述がございましたが、個々の組合のいろいろな労使の難問題につきましては、これはそれぞれの機関がございますし、また当局がにわかにこれに是非の判断を下すべき性質のものではないと存じますので、その方についての見解は差控えたいと存じている次第でございます。
○山口(丈)委員 私は今の次官の御答弁は、非常に遺憾に思うのです。ということは、組合の方の活動が非常に強く、どうも経営者が押されぎみだというようなときには、すぐ勧告や声明を出す。ところが、こういう人員の整理問題とか、工場の閉鎖とかいうことは、これは組合にとつて一番苦手です。こんなものが二月も三月も続けば、どうせ首にしてしまうという足元を見ている。だから、そういうものについては一向おかまいなしにしている、こういうことは、私は労働省それ自体としては非常に労働に対する熱意といいますか、親切さといいますか、非常な冷遇的な考えを持つていると思う。こういうものを適正にするところに、私は労働省としての仕事があると思う。たとえば尼崎製鋼のごときは、社長など逃げてしまつて出て来ない。会長も出て来ない。そのためにすでに一月も二月もいらざるストライキをやつている。なるほど経営者としては、それで組合がくずれて行つて、所期の目的を達すればいいかもしれないが、それは経営者の一方的なひとりよがりにすぎない。工場が三十日、五十日という無限ストライキをやつて生産を停止しているということは、口を開けば公益性だ何だということを私はよく耳にするのですが、そういう点から見れば、まつたく公益性を無視したものである。ただ一工場の経営者の御都合、利益だけを見て、こういう状態を放置しておくということはいけないことだと考える。これは極端に申せば、社会悪だ。こういう社会悪を当然除去するところに、責任政治というものがあると私は思うのですが、そういう責任政治をお考えにならないのか。私はこの点が非常に不可解に思うのですが、次官はどう考えますか。
○安井政府委員 経営者が弱いときだけ政府がてこ入れするようではないかというおしかりでございますが、政府はそういうことは考えておりません。山口君も専門家で御存じの通り、個々の争議の紛争につきまして政府が介入しないのは、法律その他の建前になつておりまして、ただ社会公益上、非常に大きな問題を及ぼします場合、側面からこれに対する全面的な指導はいたします。そこで個々の問題になりますが、きよう御陳述のいろいろなケース、われわれの方でもできる得る限り関心は持つてただいま調べておるのでありますが、今日の段階では、一応組合側からの参考意見の陳述でもございますし、また個々のケース自体が、すでに裁判で判決のあつた問題であるとか、あるいは地労委、中労委で今日調停中の問題であるといつたような事情から、これに対しまして、今政府の立場をかれこれ言うことは差控えたい、こう考えておる次第でございます。しかし仰せのごとく、全体に非常な不況時代に対する諸問題につきましては、今後とも十分な関心を寄せて、最善の解決策を見出して行きたいと考えておりますので、先ほど所管局長も申し上げましたように、さらにそれぞれの関係部門で十分調査を進める組織を確立いたしまして、また関係省とも十分な協議を遂げまして最善の努力をいたすつもりでおりますので、御了承賜わりたいと存じます。
○山口(丈)委員 私は今答弁されるように、個々のケースについて個々の勧告をなせとか、そういうことを言つておるのではないのであります。全体的なものの中の一つとして、こういうことが起つておる。しかし、このことはだんだん全体的に及ぶ傾向があるの不況の時代になつて、人員の整理をされたとかなんとかいうことになりますと、往々にして組合の専従者等も、だんだん今申したような、雇用条件を第一条件とするような組合ではなくなりつつある。これに対して経営者がその組合の存在を不当に認めないような行動をとるということになりますと、日本の労働組合は、健全な民主的な発展をすることができなくなり、かえつてそのことは労使間に対します影響としても、よい影響を及ぼすとは考えられないというふうに思うのでありますが、こういつた点について、組合指導の面から、労働省はどういう態度をとつて行こうとされるか、お答え願いたい。
○中西政府委員 お答え申し上げます。日本の労働組合が、仰せのごとく、大部分が会社組合ないし企業組合でございます。そこで、この組合に対しまして経営陣がどういう態度で臨むか。法律上から申しますと、専従を認めるとか、あるいは先ほど参考人からのお話がございましたが、経営内で組合活動をすることを認めるとかいうことにつきまして、ああしろこうしろという規定はございません。結局労使の話合い、その話合いの基準は、結局は社会全般に行われておる労使の慣行が一応基準になるというふうに考えられるわけでございます。従つて、こうなければならぬというような基準は、公にはないわけであります。そのときどき社会情勢によりまして、労使間の関係は移つて行くものだというふうに考えておりまして、われわれとしては、小くとも法律で規定されておる規定を遵守された民主的な組合が発展するように、その方向に労使ともに協力するということが望ましい。われわれとしましても、その方向で、そのときどきの社会の慣行等も参考にいたしまして、最も妥当と考えられる線を望ましいとして慫慂して行きたいと考えております。
○山口(丈)委員 どうも最近の経済事情から見ますところの労働組合のあり方の変化というものにつきましては、どうも労働省の今の対策から見ますと、だんだんその対策の方が遅れておるような気がいたします。むしろ進んで今申されたような健全なる労使関係をつくるためには、どうしてもその基礎は健全なる労働組合指導に置かれなければならぬ。そこでこの労働組合の指導ということは、結果においてその時宜に適するような措置がとられて行かなければならぬのでありまして、そういう点からいいますと、今の帝酸などの争議の状態というものは、まつたく典型的なものではないかと思うのであります。また尼鋼の問題にしましても、労働協約を三月の六日に締結して、一応の了解点に達して、経営者が納得しておいて、それが効力を発生する手続を、ふもうとするその直前にこういう行為をやるということは、むしろこれは経営者が健全なる組合の発展を阻害しようとする行為である。同時に、合法的にして健全なる組合の発展ということが望ましいと今答弁をされたのでありますが、その合法的にして健全なる組合の発展というものは、合法的にして健全なる経営者の組合を守る態度にもあるのだ。この両者の協力がなければ、私はとうていこれをなすことはできないと思うわけです。 そこで私はこの点から憂える点を一点申し上げますと、今度のILOの問題であります。昨年も中労委会長が政治の正式代表としてILOに行かれたと思います。昨日立たれましたのもやはり中労委会長で、ILOの正式な政府代表として行かれたということを聞くのでありますが、私はこういう点については非常に遺憾なんです。なぜかと申しますと、なるほど、政府というものは、労使間における立場は確かに中立であります。また中立でなければなりません。しかし、今日の事情というものは、公平妥当なる中立性の維して続く府の責任者として国際会議に出席して出されました日本側の諸案件については、当然責任を持つて、それに対する答弁ができて、それに対する政府の責任が国会にも反映できるような人でなければ、私は適当な者でないと思う。中山中労委会長を政府代表として選ばれたということは、今申した責任を回避するものと考えられる。といいますのは、中山会長は、正式には政治的責任を帯びておられないのでありますから、私は適正を欠かれるものである、かように考えるのでありますが、その裏には、今申したように国際会議に出席して提出した案件に対する政治的責任を回避する考えに出たのじや持に努められておりますけれども、今日の政治情勢から行けば、やはり資本家側の方が強い。また一般の社会的通念から申しても、政府の政策というものは、資本家側に強くなつておる。またそういう態度を維持せざるを得ない事情にあろうと私は思います。どこまで中立性というものを合理的に、社会的に認めさせるために努力するかという程度にしかすぎない、こういうふうに私は見ておるのです。ですから、中山会長が正式なる政府代表として、しかも今日日本の労使問題に一番重要な役割を果していただいております中労委の会長でありますから、こういう人がそういう政治的立場に立つ政府の代表として行かれるということは、日本の労働界に対しては、非常な誤解を生むものである。こういう点について深く思いをいたし、考えられて、代表として指名されたのかという点が一点。 第二点として遺憾に思うことは、政府の代表でありますから、本席にも見えて、国際語条約についても、日本政いか。直接政府の責任と申されないような態度を持されることを非常に遺憾に思うが、これについてどういうお考えをお持ちになつておるか。この二点は、ぜひとも御親切な御答弁をいただきたい。
○安井政府委員 今回のILOの会議に対して政府代表として中山中労委会長が任命されたことはどうかというお尋ねでございますが、お説の通りに、政府は、今の労使という関係から申しますれば、完全に第三者的な立場に立ちまして、両者の円満な関係の持続を希望しておる次第であります。そういつた目的から申しますと、中労委の会長である資格も、ちようど政府が常にとろうとしておりまする立場と、ほぼ似たものであろう。しかも労働問題についての実際問題、あるいは学問上の両方から見まして、非常に適任な方であるというふうなことから推薦をいたし、御承諾を得た次第でございます。そうして、これが国を代表して行つて、あるいは国会に対する直接の責任者になり得ないじやないかというお尋ねがございますが、その点につきましては、代表として決定をいたしました政府自身が、全面的な責任を持つておるわけでございます。これは労働大臣が全体に対しまして十分な責任をとり得る関係に置かれておるのでございます。これは例が当りますかどうですか、たとえば一国を代表します公使あるいは大使を派遣いたします場合にも、政府なり議会と直接関係のない人を派遣いたしますが、それに対する責任は外務大臣がとるというのと同じ関係に置かれておるのじやなかろうかと考えております。
○山口(丈)委員 もう一点希望と意見を申し述べておきたいと思います。と申しますのは、今の答弁でも、りくつから申すと、直接国会に責任を持たない大使が行つて国を代表しておるじやないか。それはなるほどそうであります。しかしそのことと、この微妙な労使関係を論ずる場合の問題とは、おのずから別の問題であるというふうに考えるわけです。国の全般の問題を考える場合と、社会構成上の一端において労使問題というものを考える場合との政府の態度のとり方は、おのずから違つたものでなければならぬと思います。でありますので、今の事態から申しますれば、むしろ私は親切に政府に対して申し上げていると思うのです。今度の問題に対しては、中労委の今後の活動に対して、非常な疑念といいますか、公平妥当なるいかなる態度をとられても、先入観的に政府代表として、政治的には経営者の圧力の方がまさつた人の調停だというようなことになつて、中労委そのものの性格に非常な疑点を持たしておるということを、ひとつ御銘記願いたいと思います。そうして、今後については、そういうことのないように、十分の措置をとられたいと思います。 もう一点、時間がないようでありますから、簡単に質問をいたしますが、今の陳述の中にあつたかどうかわかりませんが、最近こういう企業整備等による労使の問題は、きわめて深刻な様相を呈しております。それだけに、警官の関与等はよほど慎重でなくてはなりません。いらざる摩擦を起すようなことが往々にしてあるのであります。ところが、聞くところによりますと、最近労使関係の紛争事案について、警察官がその組合長の家庭を、身分等も告げず、別に用事がないのに、訪問しておるというようなことが行われておるやに聞いておるのであります。 〔多賀谷委員長代理退席、池田(清)委員長代理着席〕 そういうことは、一方に対してはますます労働組合に対する誤解を生ぜしめておる。不当なる干渉ではないのですけれども、干渉というようにとられる向きが多い。こういうことはよほど慎重を期すべきであると思います。最近の動向としてはとにかくも、警察官等が身分を明らかにしないで、責任者がいない留守中の家族を訪問するような行為をするということが言われるのでありますが、これらについては、労働省としてはよほど慎重な対策を講ぜられ、また関係方面に対しても、それぞれ適切なる措置を講ぜらるべきであると思いますが、これらについてはどういう措置をしておられるかという点が一点であります。 次に、今造船界は非常な不況にあつて、まさに中小企業等については崩壊一歩手前にある。そして造船の今後の動向は、労働者にとつても死活の問題として注視の的にあるわけです。しかも、運輸省あるいは通産省等の計画によると、今後の造船工業の、今次官の申された企業の統合、合理化といつたようなものを促進するという意味からいつても、大企業に造船発注が集中するのではないかという恐怖を持つておるわけでありますが、これについては労働問題の立場から申しましても、公平妥当な、偏重しないような措置をとつていただくように、労働省からもそれぞれ関係各省等にも申入れもしてもらい、また協議の場合には特にそれを主張していただいて、失業予防の立場から十分なる対策をお立て願いたい。 第三番目は、今の鉄鋼の問題であります。この鉄鋼の問題は今一、二現われつつありますが、日経連も申しておりますように、鉄鋼界の不況打開のためにする問題とは別個に、このときに企業の合理化、すなわち人員の整理等を行つて、そしてさらに資本蓄積を増加して行こう、そして利潤を高利潤に引上げて行ごうというような、私どもから見て、きわめて行き過ぎた考えをもつて臨もうとする経営者が多いようであります。でありますから、これについても、私は失業予防の立場から申しても、それぞれそういう行き過ぎのないように適切なる措置を講じていただきますように、労働省にお願いをすると同時に、現在現われております紛争に対しては、やはり地労委、中労委を督促していただいて、一刻も早く正常なる労使関係にもどり得るように、最大の御努力を煩わしたいということを御希望申し上いますが、労使の紛争について、あるいは労使間のいろいろな関係に警官が不当に介入することは、厳に戒めております。これは今後とも、またそういう事態がありましたら、抜かりなく、十分監督をいたすつもりでおります。 さらに後段御希望としてお述べになりました、造船関係の発注に公平を期せよ、あるいは今日のいわゆる合理化に名をかりて不当な馘首その他のことがないように、十分関係機関を督励しろという御希望の御意見につきましては、重々ごもつともでございますので、労働省としましても十分な関心を持ちまして、今後とも気をつけて参りたい、こう考えております。
○池田(清)委員長代理 山下榮二君。
○山下(榮)委員 ただいま山口委員からいろいろ質問がありましたので、なるべく重複を避ける意味で、私は二、三参考人の方に、あるいは当局にも伺いたいと思うのであります。 参考人のお話を伺いますと、尼鋼にいたしましても、あるいは帝国酸素にいたしましても、どうもそれぞれ不当労働行為にその中心があるように見受けられるのであります。私のこの際参考人に伺いたいと思うことは、終戦後のわが国の労働運動の行き方は、できるだけ労働争議を避けるために、それぞれ単組においては、労使双方があるいは経営協議会その他の機関を通じて、できるだけ双方が摩擦を避ける手段を講じて来られておることは、皆さん方も御承知の通りであると思うのであります。今回はしなくもかような争議手段に訴えなければならぬ問題に相なりました帝国酸素あるいは尼鋼においては、世間各単組に行われているような経営協議会的な運営は行われておるか行われていないか、このことをひとつ伺いたいと思うのであります。たとえば尼鋼の場合は、再建というような大きな問題を提示される前に、会社側から労働組合に対して、経営協議会その他の機関を通じて、いろいろ相談があつたかなかつたかという点も、あわせて伺いたいと思うのであります。 それから、もう一つ尼鋼の方に伺いたいと思うのは、三月六日に協約が締結された、こう伺つたのであります。その労働協約の期間は一年であるか、二年であるか、その期間のことも伺つておきたいと思うであります。
○平坂参考人 初めの再建案が提示される前に、相談があつたかどうかという問題につきましては、企業の再建を提示する前には、労働協約を認めてくれれば、銀行は融資をしてくれるし、企業は繁栄するという言い方で、労働協約の問題について話がありましたが、そのときにもごく抽象的な企業内容についての、協約を認めれば銀行が融資するというくらいの話があつただけで、やれ生産がどうの、やれ資金がどうの、やれ何がどうのという具体的な経営内容については、一つも触れようとはいたしませんでした。しかも、四月三十日に五月以降の資金繰りを立てなければいけないということを言いながらも、四月の二十九日になつて五月以降の資金繰りの話を持つて来るというふうな、いわゆる資金繰りとか生産内容についてのそういう時期的な持つて行き方から考えても、私たちに対しまして経営内容について相談をする意思がなかつたのじやなかろうかというふうに、私たちはこの問題について考えております。 次に、労働協約の日にちでございますが、労働協約は三月六日から発効いたしまして、一年間の期限でございます。私たちは労働協約を締結するときに、準覚書的な確認書というものをとりましたので、この確認書は最低限一年は会社側が保証したもの——日にちは記入してありませんが、最低限一年は会社側が保証したものというふうに、私たち組合員には、会社は一年間はいわゆる賃下げ、首切り、降職分離を行わないということを確認したのだ、こういうことを、無期限ではございますが、一年間は最低保証したのだということを組合員に発表いたしました。そういう事態でございますので、この問題につきましては、労働協約の期限は一年間ということが、私たちの協約規定であるという発表をいたしました。
○立川参考人 帝国酸素の労使間におきましては、昭和二十三年の秋に失効した労働協約が、かつてあつたわけであります。その当時におきまして、さらに一年間効力を延長したいという労使間の意見が一致いたしましたので、二十四年の秋まで労働協約がございました。それによつて二十四年の秋に失効いたしました後は、会社側は労働協約を締結する意思がないということを表明したのであります。しかるに、二十五年の暮れになりまして、帝国酸素といたしましては、初めてストライキを行つたことがあります。その結果、これは会社側も認めることであるし、また当時ストライキの解決については、兵庫地労委のあつせんを煩わした関係上、外部からの慫慂もあつて、会社側もようやく労働協約の必要性ということを認めて、そして二十六年の一月になつて、具体的に締結の交渉をやろう、こういうことになつたわけでございます。そして二十六年の一月に、まず労使間におきまして、労働協約の骨子というものをつくりまして、原則的な五箇条をまず確立したわけであります。これは双方におきまして、責任者の調印をして、そうしてその原則に基いて全文をつくり上げる。全文をつくり上げる場合には、労使双方からおのおのの立場を離れて、専門委員として三名ずつ六名がほとんど半年以上かかりまして、大体十月になつて全文ができたわけであります。そうして当初の骨子に基いてでき上つたものを、双方が検討した上で、そしてこれを承認するなり、あるいは多少の変更をするなり、こういう約束になつておつたわけであります。そして二十六年の十月にやつと全文ができて、それを検討した結果、労働組合側はこれに調印することに同意したわけでございます。しかるに会社側は、そのときになつてから言を左右にして容易に調印をしない、こういうことになつたわけであります。それからこれの調印を迫つて、二十七年になつたのでありますが、二十七年の四月になつてから今度は会社側がわれわれの督促に応じて答えたところは、そもそも骨子が気に食わぬ、こういうふうに言い出したのであります。そして骨子五原則のうち三原則を——これは最も重要なポイントで、たとえばシヨツプ制の問題なんかでありましたが、こういう問題をことごとくくつがえして来て、これでなければ締結しない、こういうことになつたわけであります。組合側の努力にもかかわらず、それ以外のいろいろな問題がありまして、そのまま二十七年の九月になつたわけでありますが、九月に労働協約即時締結並びに賃金のアップ、この二つをもつて争議に入りまして、約四週間のストライキをやつたわけであります。その結果、賃上げのほかに再び労働協約の骨子をつくつたわけであります。これがやはり五原則になつて、前とほぼ同じでありますけれども、多少の異同のある骨子ができたわけであります。そうしてそのとき締結調印をしたものの内容といいますのは、この骨子に基いてすみやかに労使は正式の労働協約を締結する、こういうことになつておつたのでありますが、それ以後、会社側はまた言を左右にして容易につくらない。それでいずれが案を出すか。あるいは労使双方が案を出して、突き合せてやるか、もちろん方法論については意見の交換があつて、われわれの方は数回にわたつてこれに対して案を提示しておるにもかかわらず、こちらが案を出すと、向うはいやこちらに準備があるからちよつと待てとか、こちらの案を中心にしてやつてほしいとか、そういうふうに言つて来る。こちらが、それじや出せといつて待つておると、いくらたつても一向出して来ない。目下考慮中である、こういうような話ばかりであつて、そうして、とどのつまり、やはりお前の方から出せ、こういうふうなことで、結局二十七年も暮れまして、二十八年になりましたが、これもほとんど一年中この問題を懸案としてずつと残しておるわけであります。 それからもう一つ、この全文ができ上るまでは、骨子の精神にのつとつて労使間を規制して行く、こういう約束がやはり調印されておるわけであります。しかし、現在におきましては、会社は何かかつてなことをやつて、これでは骨子の精神に反すると言うと、会社側は、これはいまだ成文化されていない、全文ができていないのであるからして、骨子が全文の中に織り込まれて、完成したときにおいて骨子が生きて来るのであつて、精神を尊重するということはそういう意味じやない、こういうふうな詭弁を弄するわけであります。要するにそういうことで、全然協約を締結しようという意思がないわけであります。 本年に入りまして、昨年末から本年にかけての争議の結果、これは第三者のあつせんによつて一月二十日に賃金争議を終結したのでありますが、そのときに、第三者が労使双方に対して、懸案諸問題を一挙に自分のあつせんによつて解決してはどうだという提案がありまして、これは労使双方ともこれを受諾いたしました。そうして、ただちにこの問題を取上げたわけであります。組合側は前と同様、会社側の案があるのならば、すみやかに提示しろ、われわれの方が出していいのならば、われわれの方が出す、こう言つたところが、会社側は昭和二十七年秋に交換したところの骨子の了解事項というものは、時勢がかわつたから、これは一切御破算にしたい。だから、今急につくる意思はない、こういうようなことを言つて来ておるわけであります。 それから、二十四年に失効いたしました協約の中には、経営協議会というものがございました。しかしながら、この二十六年の当初骨子をつくつて、二十六年ほとんど一箇年をかけてつくり上げた労働協約草案というものがありますが、この草案の中には、会社側の専門委員の強い要請によつて、経営協議会でなくして、労使協議会という名称をもつて、経営協議会よりもかなり制約されたものをつくろうという案が盛られておつたわけです。しかし、このときは、先刻申し上げたワリイという専務がいたときで、まだそれでも労使協調という気特があつたことが認められるのであります。しかし、現在におきましては、全然労使協調を考えていないようであります。これは高野問題が起りまして、直接会談のときに、会社の都合によつてカボー取締役が組合側の委員長もしくはそれに一名ぐらいをつけて直接会談することがあります。そのときに、組合側から現在のようなやり方では労使協調はとうてい望めない、会社の方がもつとフェアに、一般的な労使関係のルールに乗つてもらわなければならぬということを強く要望したのに対して、カボー取締役は、明確に次のようなことを言つて一蹴しております。労使協調ということはきわめて幼稚な話である、われわれはそういうものは考えておらぬ。かような状態でありまして、団体交渉は、いつの場合におきましても、第三者を煩わす場合にすぐ驚かれることは、ろくな交渉ができていないじやないか、しかるに、すでに労使間は一触即発、ストに入るという状況になつているのはどうも不可解であるというのが、いつもの例であります。それほど完全なる団体交渉が行われていないわけであります。正規の団体、交渉らしい交渉は、今までにほとんど行われたためしがないのであります。こちらが言えば、あらぬ方の返事をする。それも仲介に立つまつたく権限のない、ただメモして口頭で伝達して来る、それを伝えに来るだけの代表しかいない、そしてこちらから発言をしたことも、またメモにして持つて帰つて伝えている。この間に伝達の間違いがあつてはいけないというので、わざわざ議事録をとつたりして、相当慎重にやつているのでありますけれども、これは依然としてかわりません。しかも、ときによると、自分の意向はそうでなかつたが、人事部長がそういうかつてなことを言つたのであろうと言つてみたり、組合側が正式に通達をしたものであつても、自分は聞いていないというふうに、都合の悪いときは逃げる。きわめて非常識な、アブノーマルな関係に置かれているわけであります。しかも、これは彼らが日本の実情なり、労使関係に対して全然無知であるから、こうなつているんだとは考えなれないのであつて、ロベール・カボーという人は、弁護士でもありますし、かつ、フランス本国の親会社においては、労働者側として労働組合に関係していたこともあるという経験者であります。従つて、これは完全にある意図を持つてやつている、こうすることが最も忠実にフランス資本を代弁するいい方法である、こういう明確な自覚のもとにやつております。もちろんその間におきまして、民族的な優越感、それから従業員間における多年の——特に戦争以前に三十年の歴史を持つておりますから、その間に養われて来た非常に卑屈な日本人の気持というものも、多分に影響があるのだろうと思います。そういう民族的な意思の食い違いが、そこに見られるわけであります。そこで労使関係が、協約の件に関しても、経営協議会の問題に関しても、まつたく行詰まりになつているのであります、ごく卑近な一例をもつてしますと、給仕を一人だけ新たに雇うという場合であつても、人事部において一応所定の様式によつて、いろいろ適性検査なり口頭試問をして、数名の志願者のうちから序列をつけ、どれが一番優秀かということを答申するわけでありますけれども、十人いて、十番目の一番悪い者を、最後の面接のときに毛唐がこれがいいというふうにくつがえしてしまうというようなことも、常に行われることであつて、事務当局というか一般日本人のやつている仕事は、ただ形式的に命ぜられたことをやつている。けれども、それはしばしば結果が違つて来る。こういう状況で、事実上経営協議会的なもの、労使が協調する糸口が全然ないわけであります。
○山下(榮)委員 尼崎製綱の方に伺いたい。先ほどの陳述の中に、七百人ほどの首切りの中の三百八十一名が組合員で、しかもその組合の中で八十一名は労働組合の執行部ないしは役職員であると伺つたのでありますが、伺うところによると、三役をのけて八十一名がほとんど組合の役員だ、こう伺つたりしているのですが、もし伺う通りであるといたしますならば、それがほんとうに解雇されることになつて参りますと、労働組合の機能はまつたく抹殺されることに相なるんじやなかろうか、あるいは組合の組織や機関はつぶれてしまうじやなかろうかと想像されるのですが、八十一名は私が申し上げる通り執行部並びに組合の役職員、こう解釈していいのでありますかどうか。またその八十一名をのけると、そのほかに一体幾人くらい労働組合の役員が残ることになるのか、その点を伺いたいと思います。 もう一つ、これはあなたに伺うことは非常に無理であろうと思うのですが、先ほど労働政務次官は、鉄鋼産業の不況は結局貿易不振によるものであろう、そのために合理化が行われて結局コストの引下げを行わなければならぬであろう、こういう答弁をされたのでありますが、いわゆる鉄鋼産業の生産コストの中で、労働賃金は何パーセントを占めるものであるか。これはあるいは通産省等に伺わなければならぬ問題であろうとは思いますけれども、おわかりでありますならは——労働組合方面でお調べになつておりますならば、コストの中で占める労働賃金のパーセンテージを伺いたいと思います。
○平坂参考人 組合役員で首切り通告を受けた者は、約百名くらいと踏んでいるわけですが、八十一名と申し上げたのは、四百名くらいおりました臨時工の中で、最後まで首切りに反対して、自発的退職を勧告せられたのに反対して残つておりましたのが、八十一名指名通告を受けたのでありまして、私たちの方では、十一箇条のうち、会社の運営に対して非協力的な者とい箇条に該当せしめられた者は、百名くらいと踏んでおります。なお百名くらのうちで、執行部は二十名でございます。執行委員二十名のうち、現在の執行部におりますのは五名しか切られておりません。なお残りの約九十何名は、職場委員といいまして、各職場に二十名に対して一名あて選出されている職場委員がおりますが、この職場委員の中から職場委員長を互選しております。この職場委員長の大半が首を切られる。なお三役及び執行委員会のメンバーといたしましては、数的には、切られた人は少いわけでございますが、いわゆる補助部門事務部門を除いて、過去主要生産部門の職場委員をやつた人、現在の職場委員、こういうものは大体七〇%から八〇%切られておる。現実に切られなかつたものは、いわゆる班長とか係長補佐等の職制で職場委員をやつておつた人が、主要生産部門では残つたにすぎない。私たちは過去職場闘争というものを活発にやつておりましたが、この職場闘争の中でいわゆる課長なり係長なりが、あの人は職場委員をやつておるなという程度に名前が一般的に知られておる者は、主要生産工場は大部分切られてしまつたというふうに仮定すれば、私たちはこういうふうな執行機関といたしましては、首切りの数は少いわけでございますが、決議機関の大部分が今回の整理を認めれば完全に機能を麻痺することになる。会社側に言わせれば、機能の麻痺ということは組合側の判断であつて、あらためて選出されればいわゆる採決もできるじやないかというふうに考えますが、もちろん採決はできますが、今までやつておりましたような組合運営は、まずできなかろうというふうに考えておりますので、明らかに不当労働行為であると考えまして、この問題は今地労委にも提訴する準備を始めております。そういう実情にあるというふうに申し上げたいと思います。 次は、いわゆる生産コストの中に占める人件費の比率だというふうに考えておりますが、鉄鋼業全体といたしましては——大体私の方では、あまり数字がないわけですが、一一%から一二%ぐらいで、大体どこも一二%程度でなかろうかと思います。私の企業では、最近厳密に調べてはおりませんが、そういうふうな数字も、全部生産コストという問題に関しましては、全部シャット・アウトいたしまして、厳密な製造原価というものは知らしていただけませんが、私たちがひところ聞いておりましたのは、一四%ぐらいになつた——これは約一年ないし一年半前の数字でございますが、その後いわゆる一時金等の減額等がありましたし、いろいろな意味で、われわれの生産機具の減額等も、生産減に伴いまして若干ありましたので、大体言われております平均の十二、三パーセントぐらいでなかろうか。これはひところ約二千名おりました従業員が、自然減耗という形で、いわゆる自然退職者を補充しないで、実数にいたしまして二百名ないし二百二、三十名くらい減員いたしておりますから、一応われわれの表面的な賃金というものは高いように見えますが、コストの面から見ますと、ひところ一四%ぐらいに行つておりましたので、現在も一二%を若干上まわつても、その程度でなかろうかというふうに考えております。
○山下(榮)委員 今伺いますと、大体執行部は三、四名であつて、職場委員だとこう言われますが、そうしますと、結局組合の決議機関の中核をなしておる方々であつて、会社のねらいは組合の力を弱めるというところにあるということが想像されるのであります。もしこの尼崎製鋼所の解雇の問題が、労働者の勝利に終れば別でありますけれども、労働者に不利な解決をして、それぞれの解雇を認めなければならぬという事態になつて参りますならば、おそらく今後職場から職場委員になるというのをしり込みをして、組合役員になることをいやがる者ばかりが出て来るのではなかろうかということが予想されるのであります。私は、会社はそういうことをねらつたのではなかろうか、こう想像されるのであります。これは日本の将来の労働運動の上に、きわめて大きな影響を与えるものと、こう想像いたすのであります。 次に、私は造船関係のことで、一つだけ伺いたいと思うのですが、先ほどいろいろ話があつて、いわゆる造船労働者というものが、今日このままの姿では、大きな失業問題を惹起するということを言われたのでありますが、大体政府が意図いたしております十次造船というものが、計画通り実施されがたいということになりますと、いろいろ私が調べたのによりますと、このままの姿で行くと八月末九月には、全国で大体五十三台の船台がからつぽになると報道されておるようであります。もしそういうことになるといたしますならば、全造船労働者というものの中から、どれくらい失業者を見なければならぬということになるのか。あるいはもう一つ十次造船計画というものが、過般衆議院では院議で促進する決議案も上程して、満場一致これが決定をされておるのでありますが、これが大体七月、八月に予定通り実行される、こういうことになりますならば、それらの失業状態というものが木然に防止できるものであるかどうか、その辺のことをひとつ造船労働組合の参考人の方に伺いたいと思うのであります。
○溝口参考人 お答えいたします。あとの問題から先にお答えいたしますと、現在進められておる十次船の計画の量が、十七万トンだというふうに言われております。さて全労働者の現在の稼働状況を見ますと、八万五千人稼働いたしておりまして十七万トンのまま推移いたしますとすると、十七万トンやりましても、造船産業に直接二万人の失業者と下請、臨時工、関連工業を含めて五万人、計七万人の失業者が出るだろうということは、運輸省の統計で明らかに出ております。さらに、それすら実施されないそのときの失業者数は、一体どれだけかと言われますけれども、大体現在の造船産業の実情を見ますと、海上関係、いわゆる船舶関係が平均にして約七〇%、そのほか鉄鋼部門関係が陸上関係が約三〇%、そういう比率から見まして、おそらくこの失業者数の三倍ないし四倍は明らかに完全に失業する状態でほうり出されてしまうのではないかというふうにわれわれは想像しおります。 以上であります。
○山下(榮)委員 尼崎製鋼所の方に、もう一つ伺いたいと思うのですが、報告書を伺つて見ますと、会社の再建案の中に、三つの項目があげられておるのであります。まず冒頭に、賃下げが拒否されて銀行からの融資額が減少する、こういうことが一つの理由、二つには赤字を縮小するために生産を少くする、こういうことが書かれておるのであります。三番目に鉄鋼界全体の将来の減産が予想される。大体この三つの項目があげられておると思うのですが、この中で私が一番ふしぎに思うのは、結局人員を減して生産を縮小するということは、金額がこまかくなるだけでありまして、赤字生産を防止されるということには相ならぬと思うのであります。これは根本的に赤字生産を解消するという態勢をとろうとすれば、ここにもつと根本的な対策がなければならぬのではなかろうかと私は考えるのであります。このことが、労働組合側が提唱されておるところのいわゆる尼鉄との合併とか、あるいは銑鉄のコストを下げるということに言及されて、初めて赤字生産の解消の方策が生れて参るのであろう、こう思うのであります。ただ会社の示されたものは、赤字生産を縮小するということだけであつて、根本的な対策にはなつていないと私は想像いたすのでありますが、その通りであるのかどうかを伺いたいのが一つ。 先ほど参考人の申されるのによると、昨年から今年の三月が決算期というのですが、これは山口同僚議員からも質問があつたのですが、八億数千万円の赤字は解消したと言われておるのです。そうだといたしますならば、昨年よりも今年は、なぜそう急派に鉄鋼産業が悪くなつたのであるか、あるいは悪くなくてもそう言つておるのか。昨年は八月から八億数千万円の赤字解消ができたが、今年はそう急激にできないという見通しがあるのか、会社はいかような説明をいたしておるのか、その点を伺いたいと思うのであります。 鉄鋼界全体としての減産が予想されるということは、先ほど政務次官も申されておりましたように、鉄鋼全体の輸出貿易の不振等によることてあつて、これは一にかかつて政府の施策等にも関係することであろうと思うのであります。また金融面のことについては、これは組合が賃下げを承知しないということではなくして、政府が急激にデフレ政策に切りかえた結果が金融引締めとなつて、ひとり尼鋼だけでなく、全産業に金融難が襲つていることは、世の人のすでに承知するところであると思うのでありますが、その辺の事情を尼鋼の参考人の方に伺いたいと思います。
○平坂参考人 まず、現在の会社が、昨年の九月から今年の三月にかけて八億五千万円の赤字を解消し得たのに、なぜこの四月以降急に首を切つたり、賃金を下げたりしなければ赤字が解消できないというように言うておるかということについて御説明申し上げますと、会社が言うておるのは、とにかく、まず第一番に政府が金融引締め政策を実行して、金繰りがむずかしくなつたからというように言うておるだけでありまして、前期はこの赤字が解消したのに、今期はなぜ解消できないかという質問に対して、われわれが納得できるような答弁も資料も提示しようといたしません。この件は、もつと深くつつ込んで行きますと、帳簿上あるいは会社のいわゆる原価構成の内容にまで触れなければわからない点が出て来ますので、私どもはこの点の平均単価とかいろいろ説明を求めましたが、それは会社の経営権に属することで、秘密であるから発表できないというように、この問題については言いました。しかし、私たち会社の経営概況、企業概況を提示いたしますときに、営業成績の中で毎月の黒字をあげて最終的にどの程度赤字が出るものかということと、昨年の四日決算期のときにあげた赤字との差引をやつておりまして、この差引の中味をじつくり見てみましたら、八億五千万円の赤字が減少したという点を、私たちはつつ込んだわけであります。そうすると、八億五千万円は確かに減少したが、さらに昨年の九月期に明らかにできなんだ赤字がまだ約九億ある、この際この赤字をあらためて発表したいので、そういうふうなことにしておるのだということです。だから、昨年の九月期には、ほんとうは八億五千万円の赤字でなくて、約十八億円の赤字があつたのだ、ところがこれは一度に発表すると、昨年の七月に三和と神戸の協調融資が受けられない——約七億の協調融資を受けたのですが、それが受けられないので、それが受けられなかつたら本日までの生産が維持できない、それで赤字を二分割したというような説明があつただけでありまして、さらに今期新たに追加した赤字が解消するともしないとも、そのことにつきましては、金融上当面の運転資金が困るというだけでありまして、解消するともしないとも言うておりません。しかしこの九月にとんとんになる、君たちにこの賃下げなり首切りをのんでもらえば、九月にはとんとんになるというように説明をしておりますが、これは鉄鋼の売値いかんによつてきまるからということで、将来の問題については私は予測できないというふうに逃げました。 それから、もう一点の赤字生産の問題につきましては、会社は、当初こういうように言つておりました。賃下げを出すときは、これだけ賃金を下げれば、コストがこれだけ安くなるのだから、生産は今まで通り維持すると言いました。ところが首切りを出すときには、現在の生産維持という面については、賃下げを認められないで、初め五億八千万円の運転資金を借りられる予定が一億ほど借りられなくなつたので、その一億に匹敵する約三千トンの生産を縮小したい、こう言うのであります。それで一億円の運転資金に匹敵する三千トンの生産を縮小すれば赤字がなくなりますかと言いましたところ、赤字の金額が減るたけで——赤字の金額が減るということは、一応現在以上赤字をふやさないということになるのだから、それで現在まだ赤字がふえないだけでましなんだというふうに説明しております。そこで根本的に赤字をなくする方法はどうかと説明を求めますと、現在の経済状態の中では、仕事をやらないことが赤字をなくする方法なんだというふうに、組合に対しては答弁しております。新聞にも市田常務の名前で、現在の鉄鋼不況の中では、仕事を一つをやらないことだ。組合がこのままいつまでもストを続けてくれると、賃金はやらぬでいいし、品物はつくらぬでいいし、現在かかえておる一万六千トンの滞貨を今まで通り持つておるだけで、負債の利息を払えばいいだけで済むのだというふうに説明しております。だから、初めに言つたのは賃下げで赤字をなくする方法、次は賃下げが認められてなかつたので、運転資金を減らして生産を縮小する。今度は、生産を縮小しても赤字がなくならないので、根本的に仕事をやらない方法というふうに、現在の段階では、仕事をやらないことが赤字を出さない方法だというふうに言つておりますから、私たちは、それでは仕事をやらないということになれば、会社を全面的につぶすのかというふうにつつ込みますと、いや会社はつぶさなくてもよろしいというふうに答えるだけで、それに対しましては、責任ある答弁はいたしておりません。 だから、会社の根本的な腹は、首切りにしても、賃下げにしても、コストを下げるための首切り、賃下げというところに最終的のねらいがあるのであつて、組合がストライキを続けて生産をストップしている以上、残留者に不安を抱かせる意味において、仕事をやらないことが赤字をふやさないことだ、仕事をやれば赤字が出るのだというふうにして、逆の意味から申しますと、仕事をやれやれということを、言葉をかえて私たちにそういうふうに言つておるのではなかろうかと思います。会社は、どうすれば赤字をなくするかということに対しましては、私たちの判断では、むちやくちやな答弁しかしておらないというふうにしかお答え申し上げられません。これは、むしろ会社側を呼んでいただいて、会社側の人に、会社は赤字をどうしてなくするんだということをお聞き願つた方が、私の方からお答えするより確かでなかろうかというふうに考えます。
○山下(榮)委員 最後に、これ一つだけ伺つて、参考人に対する質問を打切りたいと思います。大体今いろいろ御答弁を伺つたところを要約いたして参りますと、労働組合が賃下げを承知しなかつたから、会社はやむを得ず七百名余りの解雇通知の手段に出たということに相なつておると思うのであります。もしそうだといたします、ならば、七百名は現場における職場委員あるいは生産面においても相当重要な位置にある人たちであろうと思うのですが、それだけを馘首しておいて、次に機械をフルに動かすという場合には、新たに賃金の安い者を七百名雇えば、会社は目的通り賃下げが行われたということに相なることをねらつておるのじやなかろうかということも予想され得るのであります。こういうことに対して、一体組合はどうお考えになつておるのか、伺つておきたいと思うのであります。また、今この不当労働行為の問題については、地労委に提訴されていると報告を伺つたのでありますが、地労委はそれに対して、取扱いを今どうしておるか、その進行のほどもわかつておりますならば、この機会に伺つておきたいと思うのであります。
○平坂参考人 七百名首を切つて安い人を雇うというふうには、会社は申しておりません。七百名分の不足の労働力は主要生産部門で、補助部門は比較的首切りが少いので、補助部門から配置転換をして従来の主要生産部門である各現場部門に割当てるというふうに申されました。配置転換をすれば、適材適所主義から考えると、労働者の能力が三十とか四十とかしか発揮できないのじやないかということを抗議いたしましたら、ゼロという人はおりませんから、配置転換して二月、三月は遅れるが、そのうちになれて来ますというふうに、会社の方では言つておる。同時に、生産職場では、今まで圧延機一台に十人なら十人というふうについておつたのを、会社の方では七人とか六人つけるというふうな作業を、この首切り発表前からやつておつたというふうに聞いております。これは同じ鉄鋼会社でも、十時間も十二時間も徹底的に働かして給料を払つておる受取り賃金制度の職場がある。こういう職場に行きますと、私たちが三十二、三人でやつておるのを、十八人ぐらいでやつておるそうです。そういうふうなところを井上会長はよく調査をして見て来まして、七百人減らしても、そういうところを見習つてやれば優に作業はやれるし、やれなければ、あとはまた適当に時間を延ばすなり、あるいはそのほかの方法で考えて行くというふうに、従来口ぐせに言つておりました。私たちは、せめても安い賃金でもいいから、あとを補充してもらうなら話はわかるのですが、全然補充する意思なしに、そういう労働強化によつてあとを補うというふうに会社が言明しておることをお答えしたいと思います。 〔池田(清)委員長代理退席、多賀谷委員長代理着席〕 もう一つは、不当労働行為の審問に対する兵庫地方労働委員会の態度でありますが、団体交渉を拒否しておる不当労働行為につきましては、十八日に第一回の審問を行い、二十五日に第二回の審問をやつていただきましたが、この問題に関しましては、兵庫地労委では、単に団体交渉を開催せよという救済命令を出しただけでは、団体交渉をやつてみても意味がなかろうから、和解をしてもらいたい。そうすれば時間的にも早いからと申しますので、組合もこの和解に同意いたしました。ところが、和解をするといいましても、に、地方労働委員会で言つておりますので、そういうふうに地方労働委員会においてやつて行くのではないかと思います。なお兵庫地労委の中において、経営者委員は、終始一貫してこの争議に介入すべきではない、そのうちにどちらかが参つてしまえば、自然に片がつくからということを、二十五日の地労委の総会において強硬に発言したそうです。そういういきさつもあつたが、兵庫地労委の和解といいましても、あるいは救済命令を出すといいましても、うまく行かぬのではなかろうかというふうに私たちの方では憶測しております。 もう一つの支配介入についての不当労働行為でありますが、第一回の審問が二十六日ごろ行われるというふうに、以下は上段に戻りつて、和解をしたらどうかという引合せをやつていただけです。二十五日の和解のための第二回の審問会におきましては、会社側は、いつ組合は争議をやめてくれるのか、争議を解決する日取りについての団体交渉なら開くが、その他一切の団体交渉は開く意思はありませんと言つております。組合は、基準と額についての協議をしたらどうかと言つておりましても、これは受付けないというような状態でありますので、二十五日には、私たちはあまりの合円柱の暴言に腹が立つて、和解はとりやめてもらいたいということを兵庫地労委の方に申し上げた。ところが兵庫地労委は、もう一度だけ和解工作をやらしてもらいたいと言う。会社側も争議終結の日取りについての団交ということを譲れば始めていいというよう
○山下(榮)委員 参考人に対する質問はこれで終りますが、この機会に二、三労働省の方に伺いたいと思います。ただいまいろいろ参考人の方に春を伺つたのでありますが、帝国酸素のことを伺つてみますと、相手が外国人のことでもございますから、言を左右にして、なかなか団体交渉も、いろいろなことも、はかどらないという実情に受取れるのであります。しかし外国資本だから、あるいは外国経営者だからということで、特別な方途をとるというわけにも参らぬであろうと思うのですが、こういうことがそのまま放置されて参るということになりますと、ひいては他の工場、産業に大きな悪影響を与えて参る。大きく申し上げますならば、日本の労働運動の上に、大きな悪影響を与える結果に相なるのじやなかろうかということも想像され得るのでありますが、こういうことに対して、労働省はいかようにお考えになつておるか、何らか労働省として適切な指導をするお考えはないもであるかどうか、その辺を伺いたいと思うのであります。 もう一つ、先ほども申し上げましたように、日本の労働運動をストライキヘと激化させないためには、できるだけ労働協約を締結させて、労働協約締結期間中は、労使間の紛争を避けて、戦後におけるわが国の産業振興にお互いが協力し合うということのために、これはきわめて適切なことであろう、こう思うのでありますが、しかしいずれの参考人のお話を伺つてみましても、最近この労働協約が蹂躙されつつあるかのような感じを私は受けたのであります。本日は帝国酸素と尼崎製鋼でありますけれども、おそらくは、その他の工場、その他の産業も、これに類するものが数少くないのではなかろうかということの予想もいたすのであります。こういう事態に対して、労働省は一体いかなる方策をもつて臨もうと考えておられるか。私はこれら最近頻繁として起りつつある労働協約無視の傾向に対して、労働省のとられようとしておる方針をこの機会に伺つておきたい、こう思うのであります。
○安井政府委員 帝国酸素の労働組合が、不当労働行為を受けておるのではないかという実情のいろいろな御例証がありました。政府当局も、十分その事実と申しますか、御報告を伺つた次第でございます。こういう一般的に申しまして不当労働行為が行われるということは、決していいことではございませんし、これは厳に慎まなければならぬ問題でございますが、御存じの通り、こういつた解決は、両者の紛争ということに相なつておりまして、一方だけお話を伺いましたところで、にわかに判断を下すことも、ちよつと困難かと存じます。それと同時に、こういつた紛争の解決自体は、何と申しましても、これは地方労働委員会及び中央労働委員会の権限に属するものであります。しかし一般的問題としまして、これが社会的にいろいろなな悪影響を及ぼすような事態がさらに明らかになりますれば、これに対しましては、また政府としても、それなりに善処の方法を講じたいと考えております。
○山下(榮)委員 一般社会的悪影響を及ぼすようなことがあればと、こうおつしやるのですが、もうすでに労働運動の面では、労働協約が無視されて、一方的に会社側が労働組合にあるいは賃下げにせよ、あるいは馘首にせよ、いろいろな問題を強要して参るということは、事態すでに悪化して参つていると、こういわなければならぬのであります。これは、先ほども申し上げましたように、ひとり尼崎製鋼あるいは帝国酸素だけじやなくして、ほかに、ここに取上げられていない全国の各地の産業、工場に、私は数多くあるであろう、あるいはこういうことが、ひいては今後非常に悪化して参るのじやなかろうかということを懸念いたすのであります。労働省は、あまりのんきなことをおつしやらずに、それに対処し、それを防止し、日本の労働運動をよりよく指導することをいち早く確立されることが、私は今日焦眉の急務であると申し上げたいのであります。私は、それらがいまだに等閑に付せられておるということを伺うことは、きわめて遺憾であります。そうであればこそ、日本の今後の労働運動というものが、私は事態収拾できざる問題に相なるであろうということを懸念いたすのであります。私は、労働省はもう少し熱意を持つて、こういうことの防止に、ひとつ今からさつそく乗り出していただきだい、このことを特に希望を申し上げておきたいと思うのであります。次に、経済審議庁の方にお伺いいたしますが、先ほどから尼崎製鋼あるいは帝国酸素あるいは造船労働組合の参考人の方々に、いろいろ話を伺つて、それによつて経済審議庁に質問をいたしたいと思うのでありますが、まず最初に、日本の鉄鋼産業の不況について伺いたいと思うのであります。日本の産業は、ひとり鉄鋼産業に限らず、一切の輸出貿易その他の産業が、非常な 不況に見舞われておることは、これは私が申すまでもないところであります。そこで、例を鉄鋼産業にとつてみたいと思うのでありますが、鉄鋼産業の輸出不振の大なる原因は、世上いわれておるのは、コスト高であつて、従つて日本の輸出産業が思うように行かないということが、いわれておるのであります。今、産業の合理化を中心として、コストの引下げがそのポイントになつておるようであります。そのコスト引下げの一策として行われて参りましたのが、今度の尼崎製鋼所のいわゆる賃金引下げとなつて参つておるのであります。ところが、先ほど参考人に伺つてみますと、鉄鋼生産のコストの中で、労働賃金の占める比重は一〇%ないし一二%ということを伺つておるのであります。私はコストを引下げようといたしますならば、これは賃金よりも、その他にあるのではなかろうかと思うのであります。専門である経済審議庁のこれらに対するお考えを、ひとつ伺いたいと思うのであります。一体鉄鋼産業のコストというものの比重を、どういうふうにお考えになつておるか、その辺のことを伺いたいと思います。 もう一つは、今、日本の産業の非常な不況ということは、政府が行つたデフレ政策によるところの金融引締めが大なる原因をなしておることは、これは論をまたないのであります。世上いろいろ伺いますと、あるいは金融引締めを少しゆるめてはどうかという意見もあることを伺つておるのでありますが、こういうことに対するところの将来の見通しについて、経済審議庁の方針を伺いたいと思うのであります。 もう一つ伺いたいと思うのは、コストを引下げなければならぬ、こういうやさきに、今年の春から問題になつておりました電力料金の問題は、二月、三月ごろには通産省も、あるいは経済審議庁もそうであつたろうと思うのですが、電気料金の値上げはまかりならぬ、こうおつしやつておつたのが、先般経済審議庁の話として、七月から電気料金を値上げすることを承認する、こういう新聞記事を拝見して、私はびつくりいたしておるのであります。まつたく政府の意図いたしておりますところのデフレ政策とは、逆コースの方策ではなかろうかと考えられるのであります。さらに電気事業は、すでに渇水期の冬でも、一割二分ないし一割五分の利益をあげておるのであります。これからだんだん豊水期に入つて参るのでありまして、利益はますます向上するものと私は想像いたすのでありますが、そういうやさきに、何を好んで経済審議庁はさようなことを考えられなければならないのか。そのことは、輸出振興に関するコスト引下げと、どういう関係を持つとお考えになつておるのか、その辺のことを経済審議庁に伺いたいと思うのであります。
○多賀谷委員長代理 ちよつと速記をとめて。 〔速記中止]
○多賀谷委員長代理 では速記を始めて。日野吉夫君。
○日野委員 大分時間に制約がありますから、労働省側に若干伺いたいと思います。昨日から、ここでいろいろ失業問題を調査をいたしておるのでありますが、どうも実情は、労働省が一昨日発表したような統計とは、かなり違つていはしないかという感じを受けるのですが、この点をどう思つておられるか。 さらに、この資料によつて答弁等を聞いておりますと、労働問題に対する見通しが、きわめて甘いのじやないか。労働省が考えているような労働情勢でなく、もつと深刻なものがすでに現われつつある。一兆円予算の予算効果がほんとうに現われるのは六月だと言われていたのが、すでにこの結果を見ている。われわれは、下半期になつたら、これは重大なる結果の発生をおそれているのであるが、労働省はこれをきわめて軽く考えてこの統計を発表して、大したことはない、昨年同期と比較して完全失業者の数は減つているというような結論をし、現状においては特別に失業対策をやる必要がないかのごとき結論を出しているのでありますが、やはり備えなければ憂いありで、今のうちにこの事態に対処して、次に来るべき失業問題に取組んで十分やつて行ける態勢がとられなければならない。そのために、もつと労働事情、失業の実態を把握する必要があろうと思うが、労働省に今の統計以外に、何かもつと実態を完全に把握するための用意があられるのかどうか、まずその点を伺つておきたい。
○安井政府委員 前回の委員会でございましたか、労働大臣からお答え申し上げました完全失業者の数、あるいは失業保険受給者の数について、実態はさらに進んでおるのじやなかろうかというお尋ねのようでございますが、あの数字自体は例年定期的にとつておりまする、われわれといたしましては、信用のでき得る数字だと存じておる次第でございまして、これには、別に従来とかわつた方式で数字を取上げておるものでもないのであります。しかし、将来に対す雇用関係の不安定性に対する見通しは甘くないかといういろいろな御勧告につきましては、われわれも十分考えて、心配もいたしておる次第でございます。御説のように、いろいろごもつともな問題もあろうかと存じまして、これに対する対策は、十分手落ちなく進めたいと考えておる次第でございます。 さらに、現実のいろいろな調査について、もつと何か進んだ方法はないかということでございますが、先ほども御答弁申し上げましたように、労働対策連絡協議会といつたようなものを、中央及び主要な各地に置きまして、関係各庁あるいは関係各企業の機関その他と連合しまして、これからも強力に対策を推進して行く予定でございます。
○日野委員 失業対策の問題でありますが、これは結局雇用量の問題になると思うのであります。すでに金融の引締めによるいろいろな中小企業の破産状態が現出していることは、ここでしばしば論議されましたので、これ省略いたしますが、大ざつぱにつかみまして、三月末の国際収支の状の状況から見ますならば、輸出は若干伸びておる。だが、特需がはなはだしく減つておる。この関係が、結局次の輸入制限になつて現われて参りますことは、きわめて当然であります。従つて、輸入制限ということになりますれば、当然予想されるものは操短であります。操短が必至ということになれば、ここにいろいろの労働問題が発生することは、きわめて当然でありまして、これらに関する点は、なお後刻経審の諸君から詳しく伺いたいと思うのでありますが、今の問題は、雇用量確保の建前から、特需がもし一昨年並に確保できますならば、輸入資材の制限はしなくてもいいじやないか。奢侈品とか、あるいは食糧の制限に当然なし得るでしようが、生産資材の制限はしなくて済むのじやないか。特需の見通しにつきましては、これは二箇年間の保証をするという約束もあるし、スタツセンあたりが二月ごろ来て、いろいろな約束をしており、通産大臣とも会つて、急に減らすことはないというような話もしているので、これは向うさんの約束不履行になつて来るのでありますが、この問題を解決することは、雇用量確保の一つの大きい問題になるので、これは経審の問題だとお考えになるでしようが、労働省としても、当面失業対策の一つの問題として、雇用確保の問題を取上げて行かなければならぬ。こういうときは、政治上の問題、国の重大問題に対しては、超党派で、各省のなわ張りをはずして、お互い相談の上、雇用量確保、さらに根本的な解決としては雇用量を拡大する。今いろいろの雇用量を持つところの法案なども出ているので、さつき政務次官から、公共事業等に雇用増大の一つの相談をしているというような話もありましたが、こういう面から、雇用量の現状をまず確保する。現状を確保することによつて、大量の失業者を出すことが防止できる。現に持ち、これからさらに出て来るであろう失業者に対して、雇用量の大きな一つの計画まで考えて、その積極的な対策をとるのでなければ、とても対抗できないのじやないかと私たちは考える。今のように、失業者が出たら失業保険を六箇月とつていて、その間に何か職安で就職あつせんをしてやる。もしそれとてもできなければ、社会保障であれするというような消極的な方式では、今後起るであろう失業問題に対抗できない、対策は立たない。こういう場合も、雇用の確保、雇用の拡大という何かのねらいか、そうした根本的な対策があるかどうか。一昨日も労働大臣にちよつと言つたのであるが、今度の失業問題というのは、国策の遂行、デフレ政策遂行上、これは労働者の責任じやなくて、国の責任において失業者を出すのである。こういう場合の対策は、やはり各省のそれぞれの枢要な地位にある諸君を網羅した一つの特別委員会でもつくつて、これによつてまず失業の完全なる実態をつかんで、さらに雇用の確保、拡大をいかにしてやるかということをやる。さらに、現在やつているところの失業対策というものを、さらにく徹底さしてやつて行く、こういう一つの基本的な対策を持つて行かなければならぬと考える。今、労働対策協議会を各県に持つて、いろいろやつていると言うけれども、これではとうてい対抗ができない。それほど深刻化して重大な段階に来ていると思うので、何か雇用量の確保、あるいは新しくこういうことをやれば、相当の雇用量が出るというような一つの考えがありましたら、これを伺いたい。一昨日も大臣から聞いたのであるが、労働省、通産省あるいは経審、調達庁、建設省とも関係するということですが、これらの代表が集まつて、各省代表で失業対策協議会でもよろしい、あるいは失業対策審議会でもよろしい、そういう機関をつくり、さらに民間のその道の権威を網羅して、失業対策の参謀本部のような一つの中心機関をつくるという考え方に対する意見と、もし雇用量の確保、増大の問題に対する何かの対策があれば、ひとつ御回答願います。さらに今の失業対策特別委員会という構想に対する賛否の御意見を伺いにい、こう思うわけであります。
○安井政府委員 御説の通り、失業問題自身は、国の全体の問題でありまして、これを各省別々に、これはあそこだ、これはあそこだといつて、かつてに投げやりにしていけないことは、お話の通りであろうと存じます。労働省としましても、従来から通産省、運輸省、経審その他関係機関ともいろいろ密接なる連関を持ちつつ進めて来ておる次第でございます。将来何か特別の形をつくつたものに相なりますかどうか、今ただちに御答弁できませんが、御趣旨の線に沿いまして、今後とも対策は十分に練つて行きたいと存じておる次第でございます。
○日野委員 当面の問題は失業対策でありますから、労働省が中心になつて、あまり遠慮をなさらずに、各省に働きかけて対策を進められたい。どういう情勢になりますかわかりませんが、失業による一つの大きい社会不安をなくし、いろいろの社会問題の根元を絶つ、こういうつもりで、ひとつ重大なる決意をして、これに対処されんことを希望して、時間の制約があつて、三時でありますから、労働省に対する質問は終つておきます。
○多賀谷委員長代理 市川参考人。
○市川参考人 全駐労の市川であります。駐留軍労働の現状につきましては、一昨日実情を陳述いたしましたので、本日は集約的な要望を、次の通り申し上げたいと存じます。 まず第一点といたしましては、現在間接雇用制度のもとに、労働者を政府が雇用して、米軍並びに近く英連邦軍関係に提供する形式になつておりますので、この場合における法律上の雇用主といたしまして、日本政府は確固毅然たる態度をもつて駐留軍労働の管理に当つてもらいたいというのが、基本的な要望であります。こういうような態度から、すでに占領以来八、九年の間、苦しい条件の中に働いて来たこの労働者に対して、やはり政府として十分保護されるような措置を講じてもらいたい。特に最近顕著になつて来ておりますところの、軍の不当、不法な人事措置に対しましては、共同管理者としてこれを拒否して、そうして是正をせしめてもらいたい。さらにまた、いつまで続くか、その時期を予測することは困難ではありますが、駐留軍労働者の雇用あるいは解雇等に関しまして、軍の予算というものを総体的に把握いたしまして、そうしてその中から雇用の安定を期するような措置を積極的に講じてもらいたい。これが基本的要望であります。 次に、政策的な問題といたしましては、現実的に駐留軍の労働の問題が行き詰つている点は、行政協定にその根本的な原因があるように私どもは感じております。すなわち、行政協定の第十二条の五項では、日本の労働法が完全に駐留軍労働者に適用されるようになつておりますが、また同時に行政協定の第三条の中で、軍が施設の全面的な管理権を掌握するようになつております。この十二条の五項と第三条との競合関係というものが明らかになつておらないために、現状においては、軍から一方的にこの施設の管理権を主張され、発動されて、いろいろな措置が行き悩みになつている実情であります。この種の問題につきましては、行政協定に基くところの日米合同委員会の中において、十分協議をしてもらつて、その結着をつけるなり、あるいは外交交渉等の手段によつて、この競合関係を明らかにして、労働者保護に遺憾のないような措置をとつてもらいたい。 次の点といたしましては、行政協定の第二十五条にきめられております防衛分担金でありますが、現在施設あるいは路線権等の補償の経費だけが、日本の政府でリザーヴして債権者に支払うようになつております。その他の大部分の経費は、すべてアメリカ側に提供するようになつておりますが、この中から労務費を日本側でリザーヴして、そうして労務者に支払う措置を具体的に措置するように改訂を考えてもらいたい。もし全面的に労務費を負担するということが困難な場合におきましては、日本政府が法律上の雇用主として、当然裁判判決あるいは準司法機関の命令等を履行する場合に負担すべき経費は、遅滞なく支払いできるような措置というものを、この中においても考慮してもらいたい。 さらに次には、現実的に今直面している問題についての解決のために、一、二要望いたしたいと存じております。 第一の問題は、占領時代の労務基本契約が、いまなお適用されておりますが、この契約をすみやかに改訂するために、具体的な交渉を即時再開してもらいたい。特に昨年十月締結したところの基本協定の全面的な即時実施を要望したい。 次の点といたしましては、現在も人員整理が起つておりますが、さらに自衛隊の増強等に伴つて、駐留軍が逐次撤退して行く、こういう状況を予想いたしました場合吉には、今年の下期等においては、相当大量の人員整理が予想される実情であります。長い間苦労して参りましたこの恵まれない駐留軍労働者に対する保護の対策として、失業対策の問題なり、あるいは私どもが具体的に請願なり立法措置を要望しておりますところのこの種の人々に対する八割増しの退職手当の即時支給を具体的に措置してもらいたい。 第三の問題といたしましては、現在五つほどの労働委員会の救済命令が出されておりますが、これがすべて拒否されております。この点については、政府としてはつきりした態度をもつて軍側を説得して、日本の労働法なりあるいは準司法機関の命令、労働慣行というものを、はつきり事実をもつて、行政協定第十二条の五項というものが実施されたというこの事実関係を確立をしてもらいたい。そのために早急に対軍交渉を要望したいと思います。特に最近いろいろな既得権の剥奪の状況が現われておりますが、こういうような事態に対しましては、たとい占領時代の契約ではありましても、この契約の中から日本政府としての権利をはつきり出しておりますので、不当な軍の一方的な措置に対しましては、政府としての契約上の権利をはつきり行使して、労働者を守る措置をとつてもらいたい。 さらに、次の問題といたしましては、調達庁と軍との関係におしては、いろいろな労働諸条件について労働協約を締結されてありますが、私どもはこれを全面的に改訂しなければならぬと考えております。しかし、この労働協約の締結に関しましては、政府としては軍側の承認を得なければならないという制限条項を文書によつて協定をいたしております。この種の軍側の承認を得なければ日本政府が労働協約一つさえも結べないというところに、現在の日本政府の自主性のないということが具体的に出ておると思います。この種の制限条項の協定は廃棄して、日本政府が自主的な立場に立つて労働組合との協約をはつきり結ぶ措置をとつてもらいたい。 最後には労務基本契約の制度下に置かれていないところの軍直労働者、ハウス関係の人たち、これらの人に関しましては、政府としてアメリカ側に強硬に申し入れて、すみやかな措置をとつていただきたい。以上、数多くの要望でありますが、これらの点について速急に措置せられることが、私どもの組合に結集された十二万の駐留軍労働者の過半数をもつて組織したところの組合員の強い要望であり、意思であることをつけ加えて申し上げまして、特にお願いを申し上げる次第であります。
○多賀谷委員長代理 坂本参考人。
○坂本参考人 役務特需関係のことにつきまして、若干の意見を申し上げます。 去る五月二十日に、現在の役務特需の不合理、それからこの特需関係の見通しから来る転換の必要、こういう経過の中から予想されるところの失業問題、こういうようなものを総合的に保護する立場から、日米合同委員会において日本側と米側との間に話がととのつて、最近の調達問題に対して一連のとりきめがなされたわけであります。これに関して、われわれとしましては、現在の要望もいろいろありますが、中間的な措置として、これが厳正に実施されるならば、現役階において要望する大要を尽すであろう、こういう点から、その実施方に対しては非常に大きな関心と期待を持つておるわけであります。これが決定されました現在、たまたま七月の契約更改期に入りまして、各業者とも米側の出先機関JPAとの間に、新契約に対する話合いが始まつておるわけでありますが、この経過をわれわれが仄聞しますところ業者としましては、このような決定を見た以上、この七月の契約においては、当然これが内容において遵奉される、こういうような主張を特つておるにもかかわらず、JPAとしては、そういうことは知つてはおるけれども、要求の実施ということについては、おそらく困難であるということで、当初からこの勧告案なるものを無視するというような態度に出おりますので、われわれことの期待と現状のそれをみますときに、非常に憂慮にたえないものがあるわけであります。そこで、まずこの勧告案の効力というか、JPAに対する拘束力というものを、どういう程度にわれわれに理解すべきかという点が疑問になつておるわけであります。 それから、このとりきめの中に、いろいろなことがきめられおりますが、その一つとして業種転換に対する保護措置として、これに要する資金を事業家が積金てた場合には、これに対しては、法百七十六号による免税の特別措置をとることがきめられておりますが、これは単に日米間の協定によつて、これが実施に移されるというような性質のものとは考えられませんので、これが実施に移されるまでには、どういうような経過をたどつて、またその実現の可能性というものをどういうふうに判断したらいいかということが、第二の疑問であります。 第三としましては、現在不幸にして日本飛行機の工場におきまして、陸軍関係の特需の全面打切りということをめぐりまして、人員整理が実施されておるわけでありますが、この場合私の承知しておりますところでは、この中にきめられております退職金の補償あるいは予告手当の補償という問題に対しては、米軍側はやはり従来通りそれらに対して支払うことはできないということで、再三の折衝にもかかわらず、現在この問題が停頓しておるといてな契約が結ばれる、あるいは業者の注意と称して、業者がよければいいのではないか、こういうようなことで、従来通り当事者二者間によつて、これを解決するとすれば、これが空文化する危険がある。こういう点で、日本の政府当局あるいは関係当局として、業者の足並を統一して有利な契約をとり結ぶ、とりもなおさず、今回の合同委員会で決定したところのこの勧告案が具体的に実際に十分意を尽して効果をあげる、こういう点に対しての政府の指導を特に要望したいわけであります。そうでないとしますならば、われわれが現在見ておる状態におきまして、すでにこの問題がほごにされて、わずかにこれに対する業者の期待としては、後日どうしてもやつて行けぬ、こういうような紛争の場合にこれを持ち出して、具体的な一つ一つの事項によつて争う便宜という程度のことしか期待できない。こういうようなことを、二、三の業者が、すでに申しておるようなわけであります。従いまして、この全般にわたつて七月以降の契約について、この内容を契約の内容とする、そして足並をそろえて七月一日から新しい契約に基いて発足するという点が、はなはだ危惧されておりますので、特に強くその点を要望したいわけであります。 以上簡単でございますが、私の陳述を終ります。
○多賀谷委員長代理 参考人の意見に対する政府の御見解を表明願います。
○沼尻説明員 第一番に市川参考人の、調達庁は輸軍労務者の法律上の雇用主として、確固たる態度をもつて臨んでほしいという御要望でございますが、私たちといたしましても、むろん従来も確固たる態度で臨んでおる次第でございますし、将来も確固たる態度で臨みたい。ただ、御承知のように、この労務費は軍の力が経費を負担することになつております関係上、日本政府だけでなかなか一方的にできないというようなことになつておりますので、解決にいろいろ手間をとる。そういうことが、ややもすれば確固たる態度でないように見受けられる点があるのかもしれませんが、私たちといたしましては、法律上要求されることは、確固たる態度で従来も臨んでおると考えておりますし、将来もこの点は確固たる態度で臨みたい。 それから雇用の安定でございますが、駐留軍が漸減して行くことにつれまして、駐留軍労務者もその数が減つて行く、そこに非常に不安定な状態、ことに雇用の安定を欠くという点が、他の労務者と違いまして非常に強いのであります。この点は、私たちも人員整理手続を明確化いたしまして、不当な首切りというようなことをさせないように、なおそういう点について、今後も十分力を尽したいと存じておる次第でございます。 第二番に労働法の適用と管理権の問題でございます。これも御意見のように、行政協定十二条五項と三条との関係において、いろいろ問題がございますが、私たちといたしましては、労働法の完全適用ということを強く主張して参つて来たのでございますし、今後もこの点は軍の方にも十分浸透させてろくようにいたしたいと存じております。 次に、防衛分担金のうちから、労務費を日本側でリザーヴしてほしいということでございます。これは主として大蔵省の問題になると存じますが、私見を申させていただきますならば、行政協定にも、駐留軍の需要する労務者は、日本国の援助を得て軍が充足するというふうにございまして、これはアメリカ政府が自分の経費で負担するということになつております。従つて、これを防衛分担金の中からリザーヴすることは困難であろう。これをリザーヴすれば、不動産関係なんかの補償費がまた非常に減つてしまうというようないわゆる相互関係に立つものである。全体のわくがふえれば別でございますが、同じわく内でそういう操作は困難ではないかというふうに感じられます。 次に、新墓本契約”締結を促進するということでございますが、これにつきましては、調達庁といたしましては、あらゆる努力を払つているわけでございます。最近におきましては、問題点も非常に狭められて参りましたので、近いうちにぜひ締結まで持つて行きたいというふうに考えております。 次に、駐留軍労務者の人員整理、これに伴う失業対策、またこれと関連する退職手当の増額等でございますが、これは先ほども申しましたように、駐留軍というものは漸減して行く、これに応じて駐留軍に働いている労務者一も、だんだん数が減つて行く——日本の現状として、駐留軍労務者が減るというのもやむを得ないことでございます。ただ、私たちといたしましては、この人員整理に伴つて、不必要な摩擦を防止する、また失業対策を十分に講じて行く、この点につきましては、労働省とも連絡をとりつつ、将来また近く予想される人員整理等に備えて、対策を練つておるような次第でございます。なお、退職手当の増額でございますが、これにつきましても、駐留軍労務者の諸給与は、公務員に準じたようなやり方で、年末手当あるいは夏期手当等を支給しておりますので、退職手当等につきましても、公務員の線まで引上げるべく、目下軍と交渉中でございます。 次に、労働委員会の救済命令を軍が遵守するようにさせる、この点につきましても、調達庁といたしましては、あらゆる努力を払つているわけでございまして、実は今日も労務部長が出られないのは、この問題で座間のAFFEの方に参つておるというようなことで出られないわけでございます。私たちといたしましては、この点につきましては、今後とも十分力を尽したいというふうに考えておる次第でございます。
○関説明員 いわゆるLSOの問題につきましては、ただいま主務庁であるところの調達庁からお答えがあつた通りでございます。調達庁でどうしても話がつかぬということで合同来委員会に持つて来られれば、われわれとしては、できるだけのことをして話をつけるといことは、前から申しげておる通りでございます。 次に、いわゆる役務の特需工場の関係のお話でございますが、五月二十日の合同委員会の合意かJPAをどれだけ拘束する力を持つておるかということが第一のお尋ねでございましたが、これは勧告でございまして、あくまでも直接JPAを縛りつける力をもつておりません。しかしながら、合同委員会で、その勧告に日米双方において同意した以上は、道義的な義務があるわけでございますから、あくまでもそこを押して合意の通りに実施させるように努力いたしたいと思うのであります。 それから、第二点の業種転換のための積立金に対して免税をしろ、こういう御要望でございますが、これは大蔵省、通産省、労働省等において取上げていただきたいと思うので、外務省としては、当然日米関係の上から、こういうふうにして免税をしてもらいたいというふに考えております。 第三の日飛の全面打切りに伴う予告手当、その他の点は、きよう初めて承つたわけでございますが、実質的に米軍が法律にそむいたことをやつておるという場合でございますならば、われわれといたしましては、あくまでもこれを追究いたしまして、日本の法律に従うように持つて行きたいというふうに考えるわけでございます。 それから御要望として、業者の足並をそろえるように政府で指導しろというお話でありますが、これは、一時的には通産省あるいは労働省にお願いしなければならぬ、われわれとしましては直接こういうことに手を触れることはいたしかねるというように考えるわけであります。ただ、われわれの方といたしましても、当然関係の両省にお願いしまして、できるだけ御助力を申し上げて行きたいというふうに考えるわけであります。
○丸山説明員 調達庁の丸山調停官であります。ただいま二十日の日米合同委員会の決定につきましては、外務省の関次長からお話がありました通りでございますが、私その原案の作成に当りました契約調停委員会の日本側の委員の一人といたしまして、若干敷衍して御説明を申し上げたいと思います。 第一の効力の点の問題は、先ほど関次長のお話の通り、合同委員会の意見並びに勧告ではありますけれども、アメリカ側では、陸海空の三軍から出た代表の委員並びに総司令部の委員が参画してできました意見と勧告でございますので、少くとも米国政府側には、この意見並びに勧告に従う道義的な義務があるものと私どもは考えております。現に去る火曜日の契約調停委員会におきましても、その点の処置について米側にただしましたところが、米軍側としては、それに従うべく目下下部の調達機関に対する通達案等を準備中でありますから、近日中にはそれが調達機関の契約担当官側にも達する、それに基いて正式には現在始まらんとしております新年度契約業者との契約にあたつて、契約担当官が従うようになるであろう、かような答えを得てあるわけであります。でありますから、私は今回の新規契約の締結交渉におきましては、この意見並びに勧告は、米側契約担当官にも十分尊重されて行われるものと期待しておるのであります。もし万一その交渉途上において、その面において遺憾のような点がございましたならば、私ども契約調停委員会は、契約上の紛争処理あるいは契約条項の改善ということを任務にしておりますので、具体的にその問題を持ち出していただいて、委員会としてその処置等を審議いたしたい、かように考えております。 第二の免税点は、これは関次長のお話の通りであります。現にあの委員会の意見並びに勧告にも、直接どうこうしろとは書いてないと思います。これはあくまで日本政府の担当機関の問題であるから、その方に譲る、こういうことになつておると思います。 第三の日飛の人員整理のお話がございましたが、私も今初めて承つたわけでありますが、この処置が契約上どうなるか、今私考えてみますと、もし契約途上において、米国政府の都合による打切りということになりますと、その契約打切りに伴うて契約業者が人員整理をしなくてはならない、その場合には退職金等いろいろ支払いを要する、こういうものは米側が補償するということを勧告の中にも明らかにしております。 [多賀谷委員長代理退席、委員長着席〕 しかしながら、実際にそれが契約の途中におる打切りであつて、今申しました条項が適用になるという場合であるかどうか、こういう問題が一つあるわけでありまして、もしその場合に、条項の適用について紛議が起きますならば、これも同様に契約調停委員会の調停に付することのできるケースでございますので、具体的にその問題が提訴されますならば、私どもも十分に審議いたしたいと考えております。ただ御承知の通り、労務者との関係は、直接には会社、すなわち経営者との関係でありますので、これはおそらくその両者間の労働協約できまつておることと思います。労働協約で退職等に伴う処置がきまつておるならば、それは当然経営者がその協約に従つて労務者に支払いを要するものでありまして、かりに軍と経営者の契約では、その問題を軍側が補償する義務がないといたしましたところが、経営者側としてはそれを理由に、それならばもらえないのだから、労務者との関係も労働協約条項通りの履行ができない、あるいはやる必要がないのだという理論はただちに出て来ないわけであります。間接に経営者が十分なる経費を軍側から契約上得るならば、その関係においても実際上労務者に対する支払いもできるという関係になるだけでございまして、経営者としては労働協約できまつただけの退職金に伴う機宜なる処置はする義務があるのでございまして、軍との関係は、もう一つ別な問題として、軍との間の契約条項の適用の問題によつてきまる。その適用につきましては、繰返すようですが、今のように政府都合による契約打切りに伴うものという場合になりますと、軍側が別途にその分を補償する、こういうことになつております。またその条項の適用云々について、軍側と経営者との間に紛争が起きますならば、一つの手段としては私どもが担当いたしております調停委員会の調停という手段も考えておる、かように考えております。
○日野委員 丸山調停官と関次長にち よつと伺いたいのですが、これは合同委員会の勧告としうものは、行政協定に基くものであろうと思う。その場合、米軍側の代表が当然参加しているので、この勧告の決定は、両方異議なく承認されたものであるならば、当然道義的な義務があり、今坂本参考人から言われるような、拒否するような事態は起らないと思うのだが、何かそこらに連絡の不十分さがあるのではなかろうか。もしそれが調停委員会等できまらなければ、外務省がこれを引受けて乗り出すとか、こういうように伺つているのでありますが、当然こういう勧告が決定されて発表になれば、これに対して義務が生ずるのではないか。こういう事態は、手続上の間違いでもなければ、現地において対立するようなことはないと思うが、現実に坂本参考人の言うような問題が起つているとすれば、どういうところに原因があるのか。具体的にまだこのとりきめに従つて起つた問題が、調停委員会等に出ていないのですか。なおそこらの関係はどういう周知方法をとつたのですか、両方承知の上じやないですか。
○丸山説明員 実はこの二十日の勧告ができる前から、新年度の契約の交渉がぼつぼつ始まつておつたようでございます。でありますから、その決定になるまでの間には、直接その契約の衝に当る向うの担当将校が、その大体の状況を契約業者が知りまして話を持ち出しても、向う側がすぐその通りに応ずる態度を示さなかつた事情があるのではないかと思います。それから二十日に決定になりましてからは、実はこの勧告案は、米側に対して米軍の総司令官の管轄になつております。従つて私はも委員会で向うの委員にその点をただしましたところ、これを今度は総司令部が自分の下部の調達機関に通達するというための措置を必要とする、それで先ほど申し述べましたように、今そういう準備にかかつているので、そう遠い期間ではない、近日中に正式な総司令官の通達として下部に行く、こういう段どりになつておるというわけでございますので、それが通達いたされますと、直接業者との折衝に当る契約担当官も、それによつて交渉が行われるものと私は考えております。もしその通達が非常に遅れるような状況が見えますならば、これはもちろん私どもとしても、向う側にそういう措置の促進をはかりますし、また現実に通達になつた後に、それにもかかわらず、非常にかわつたような態度で、やはり協議が行われて、業者側から問題が持ち上れば、もちろん私どもは取上げて審議をしよう、かように今考えております。今のところ、業者側から聞きましたのは、まだ決定になる前にぽつぽつ話が始まつておるとかで、それで私どもはうすうすその勧告の模様も聞いているので、そういうようなことを言つても向うでは取上げてくれない、そのような状況でありまして、その後具体的にこうだということは、まだ聞いておりません。
○赤松委員長 山下榮二君より質問されておりました問題について、松尾調整部長からお答えを願いたいと思います。
○松尾(金)政府委員 先ほど経済審議庁に対して御質問のございました点を、御説明申し上げます。 まず第一の鉄鋼業の問題につきまして、その輸出不振の原因をなしておるコスト高に対して、その対策として賃金の切下げとか、そういうことだけで問題の解決がつくのかという、第一点の御質問であつたと思います。その点につきましては、御承知のように、鉄鋼業に限らず、産業全体としまして、その合理化策のもつと根本的な全般的な対策が進められなければならないことは当然でございまして、鉄鋼につきましても、御承知のように第一次合理化、第二次合理化というような名前で呼ばれておりますような合理化策がある程度進められて来ておるわけであります。ただ御承知のように、第一次合理化策がある程度相当の資金をつぎ込んで実施をされまして、さらに第二次の合理化策も進めなければならないというような時期にあつたと思うのでありますが、そういういわゆる合理化の本道といいますか、本筋の道を進めて行きますのには、当然それだけの資金がいることは、もちろんであります。同時に、その合理化の結果が、ただちにコストの引下げとなり、輸出の増進ということに結びついて参れば、この点は問題ないのであるかもしれませんが、現状での国内需要あるいは輸出の伸び方というような点を考えますと、ただいわゆる合理化策を進めて行くだけでは、この問題は必ずしも十分に解決しなかつたのではないかと思います。御承知のように、第一次合理化を進めました結果は、部分的にはある程度設備過剰の状態がすでに出て来ておるというような見方も立ち得るのじやないかと思います。現在のいわゆる引締め政策というものが行われましたゆえんのものは、こういう本来の合理化策を進めるだけでは、なかなかコストの引下げを通じての物価引下げ、従いまして日本の国内物価の国際物価へのさや寄せというような本来の道がなかなか達成できないというので、物価引下げということの必要なための環境を整備する目的で、いわゆる引締め政策が行われたのではないかと思います。従いまして、現在の状況では、片方に本来の合理化策が進められると同時に、いわゆる引締め策によつて、そういういわば引締め環境のもとにコストの引下げというようなことが、鉄鋼業のみならず、企業全体に要求されておる段階であると思います。従いまして、もちろん賃金の切下げとか、そういう労働面に対するだけのしわ寄せで合理化が達成できるものでないことは、申し上るげまでもないと思うのでありますが、現在のいわゆる引締め政策のもとでは鉄鋼業に限らず、各企業とも、いわゆる企業内部の、といいますか、企業全体が引締め政策に応じて内部整理を進めておる段階であろうと思います。そういう段階に、この委員会で取上げられておりますような種々の問題が起つておると思うのでありますが、先ほどの御質問に対しましてのお答えといたしましては、本来の合理化策を進めながら、同時に経済界全体が引締められながら逐次、鉄鋼業について申し上げますれば、コストの引下げその他の合理化が進められて行かなければならない、こういうふうに考えるような次第であります。 なお第二の点といたしまして、金融引締めといわれておる政策が緩和されるべきではないかという第二の御質問があつたと思います。この点につきましては、特に私からお答え申し上げるまでもないかと思うのでありますが、申すまでもなく、この金融引締め策といわれておりますものは、それ自体が目的であるわけではなくして、いわゆる経済の自立とかあるいは経済の正常化とかいう、究極の目的に対する、いわば手段であるわけであります。その手段としての金融引締めの政策が、現在どの程度効果を発揮しておるだろうかという点が、問題のポイントであろうと思うのでありますが、その点は、すでに御承知の通り、物価の面あるいはその他全体の経済界に対する効果は、ある程度現在も出ていると思います。しかし、たとえば物価の問題をとつてみましても、生産財の卸売価格とかいう点につきましては、物価の低落が若干顕著に出ていると思いますが、これも金融引締めの効果が現実に働いて、その結果としてどの程度の低落であるかという点は、まだ十分な判断ができにくいのではないかと思われます。まして物価引下げのもう一つのポイントである消費者物価の低落を希望する点からいいますれば、まだ一進一退という程度でありまして、そういう効果は出ていないと言えるくらいの程度ではないかと思います。 また金融引締めによる経済正常化の目標といたしまして、輸出を伸ばして国際収支のバランスをとるという点につきましても、確かに輸出は若干伸びておりますけれども、しかし片方に特需がかなり今後問題があると思います。また現在月々の国際収支が若干バランス回復の途上にあるように見えますのは、実はかなり輸入が引締められた結果、辛うじてバランスの傾向をとつているという程度ではないかと思うのであります。その他経済全体につきまして、いろいろな点で問題があると思いますけれども、現状で申しますれば、一般に言われておりますように、金融引締めというような目的に到達するための手段としての基本線そのものをくずす時期としては、今はまだ早いのじやないだろうか。むしろ金融引締めの、あるいは先般来問題になつております輸入引締めというようなものの効果が現実に現われるのは、今後六月なり七月以降ではないかと思います。そういうときの状況をよく見なければ、金融引締め政策に対するいろいろな問題は、今基本線について云々の議論起るのは、時期としてまだ早いのではないかと考えます。 第三の点といたしまして、電気料金の問題について御質問がございましたが、この点は、先ほどお話があつたように、七月一日からどうこうするという点は、まだ何も決定しておりません。現在の状況では、直接の監督官庁である通産省の公益事業局において、かつての申請の内容を引続き検討している。御承知のように、申請は一四・四%引上げという申請が出ておりましたけれども、その後いろいろな条件がかわつて参つております。そういう諸条件を織り込みまして、その申請の内容についてどういうふうな判断をすべきかという点を、現在種々検討している段階でございまして、もちろん一部新聞等に伝わるような点がきまつたわけでもございませんし、経済審議庁といたしましても、物価政策の問題その他から相当慎重に取扱わなければならないと考える次第でございます。
○赤松委員長 本件につきましては、なお調査を続行する必要があると存じますので、ご了承を願います。
○赤松委員長 この際お諮りいたします。国会法第四十七条には、委員会は各議院の議決で、特に付託された事件については、閉会中もなおこれを審査することができるという規定があります。本委員会は、今国会初めに国政調査の承認を得ましたが、閉会中も引続いて調査を進める必要があると存じます。なお最低賃金法案(井堀繁雄君外六十三名提出、衆法第一六号)、最低賃金保障金融公庫法案(井堀繁雄君外六十三名提出、衆法第一七号)、最低賃金法案(和田博雄君外四名提出、衆法第一八号)、最低賃金保障金融公庫法案(和田博雄君外四名提出)衆法第二九号)、右各法律案につきましても、審査を続ける必要があると存じますので、閉会中審査の申出をいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○赤松委員長 御異議なしと認めて、それでは閉会中審査すべき事項は、最低賃金法案(井堀繁雄君外六十三名提出、衆法第一六号)、最低賃金保障金融公庫法案(井堀繁雄君外六十三名提出、衆法第一七号)、最低賃金法案和田博雄君外四名提出、衆法第一八号)、最低賃金保障金融公庫法案(和田博雄君外四名提出、衆法第一九号)並びに失業対策、労使関係及び労働基準に関する件とし、閉会中審査の目的は、右各法律案の審査並びに失業対策、労使関係及び労働基準に関する件の調査とすることに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○赤松委員長 御異議なしと認めて、さよう決します。
○赤松委員長 次に、ただいま御決定を願いました失業対策、労使関係及び労働基準に関する件が閉会中審査事件として本委員会に付託されましたならば、右件の実情調査のため委員派遣の承認を議長に求めたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○赤松委員長 御異議なしと認め、それでは派遣の目的は、失業対策、労使関係及び労働基準に関する件の実情調査とし、派遣委員の人員、氏名、派遣の期間、派遣地名の決定等は、委員長並びに理事に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○赤松委員長 御異議なしと認めて、さよう決します。 次会は明二十九日午後零時三十分より開会いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後三時五十七分散会