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19回国会衆議院1954/02/20

予算委員会 第16号

発言数
204
登壇者
22
会派数
5
開催日
1954/02/20

会議録

倉石忠雄自由党

○倉石委員長 これより会議を開きます。  昭和二十九年度一般会計予算外二案を一括議題といたします。質疑を継続いたします。吉川久衛君。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 私は総理大臣にお尋ねをしたいのでありますが、総理大臣は御病気でお休みのようでございますから、副総理にまずお尋ねしようと思つておりましたところが、大磯の方へ御病気見舞かたがた、いろいろ政情の御報告にお出かけになつて、昨晩はおとまりのようでございます。昼ごろお見えになるそうでございますから、お見えになつてから副総理に対してはお尋ねをいたしますから、委員長お含みおきをお願いいたします。  大蔵大臣にお尋ねをいたします。政府は二十九年度の本予算の編成にあたりまして、インフレーションを克服するために、と申すよりは、インフレーションの起らないように緊縮予算を組まなければならないということで、たいへん御努力なさつたお骨折りの点は多といたしますけれども、はたしてこれが緊縮予算であるかどうかというところの、インフレーションを押えるための緊縮予算であるかどうかということについて、私は非常な疑義を持つのでございます。まずこの点を明らかにいたしたいと思います。と申しますのは、政府は一兆円を越えるとインフレーションの危機が増大するというので、あらゆる努力をなさつて、一兆円未満というところで押えたわけでございますけれども、その内容を検討いたしますと、昨年の二十八年度の第二次補正にあたりまして、給与のベース・アップ等を認めました関係から、二十九年度の本予算にはこれが大幅に増額をされております。それと防衛関係の予算が増大をいたしております。これらのものを含めて一兆円未満に押えたそのしわ寄せが、食糧増産等を初めとするところの方面に行われました。こうなりますと軍事予算にいたしましても、給与のベース・アップにいたしましても、これは直接物資の生産には役立たないのでございます。こういう予算を組み入れまして、そうして物を生産するという予算を削減したということは、これはかえつてインフレを増強する原因になるわけでございます。そういうことを十分御検討の上でこういう予算をお組みになつたのか。その辺をまずお聞かせを願いたいと思います。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 吉川さんのお話の点にもごもつともの点が多いのでございますが、私どもといたしましては、よく申し上げます通り、ことしの予算が防衛費として百四十億ばかり増加いたしておりますが、これは日本というものがどうしても自分の力で独立をして行くというところにだんだんと進めて参らなければならぬ。依然としてアメリカに駐留してやつてもらつておるということではいけないので、だんだんと持つて参るということで進まなければならない。それには日本の財政経済力に合う程度の規模で、いわゆる漸増的にこれを持つて参るという点から増加いたしたことはやむを得ないと思つておるのであります。またこの程度の増加は、これは吉川さんもよく御承知のごとくに、世界のどこの国に比べてもこんなに少い予算はございません。だからいわば防衛体制に一歩を進めたにとどまるのでありまして、これは日本の実力から見て、私はこの程度のことは当然出さなければならないと考えておるのであります。言いかえますと約一兆円予算のうちで千三百七十三億、いわゆる一割四分足らずであり、また国民所得の五兆九千八百億から見ますれば、わずかに二分数厘というところから見まして、これは当然私はこれくらいのことはやるべきであると考えておるのであります。しからばいわゆる生産方面の予算について、たとえば吉川さんが食糧増産についておつしやると仮定すれば、食糧増産は昨年よりはわずかばかりふえております。全体としますと災害対策、公共事業、あるいは治山治水、こういう方面に振向けられている費用は相当の額に上つておりまして、これは日本の予算としては相当大きく生産方面に向けられておる。ただ従来はこれがややもすれば重点的に行われないで、いわゆる総花的に行われておるために効果が上らなかつたのでありまして、今度は特に効果を上げるようなものは単年度のものでもこれをやりましたし、またできるだけこれを重点的に施行することによつて効果を生ずるように持つて参つておるのであります。また大勢のうちには、あるいはそう言うけれども財政投融資など減つたじやないかというお話もあるかもしれません。財政投融資のうちには多少いわば過重といいますか、過剰設備になつておるようなものも考えられぬでもございませんので、そういつた点から、財政規模を縮小するときであるから、生産の増強を阻害しない程度でこれは割振る、こういうことが根本の考えになつておるのでありまして、私はこの予算の配分については、これはいろいろな見方がありましようが、現在許されておる予算としてはこの配分は妥当ではないか、かように考えておる次第でございます。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 大蔵大臣は防衛費については世界各国よりも非常に少いというようにおつしやいますけれども、しかし今日政府は戦力のない軍隊だとか、あるは軍隊ではないとか、いわゆるごまかし軍術というやつをやつて来たために、日蔭者の兵隊さんを養成して来た。そのために日蔭者扱いされた人々がどういう心理状態になつているかということ、それから共産党の諸君が表面は平和攻勢ということに転換をいたしましたが、あらゆる努力をして保安隊の中へ仲間を押し込んでおるのであります。   〔委員長退席、小峯委員長代理着席〕  そのために最近北海道の兵隊さんについてのアンケートの答えが二つございますが、一つは共産党を容認するやという問いに対して、四五%が容認をする。上官の命に服さなくてもよいかという問いに対して、服さなくてもよいという者が五五%あるということで、増原君たいへん心配をしていると聞いております。こういう軍隊をいくらつくつても、それはむだなのです。そういうところでこのとうとい血の出るような税金を使うということは、よほどお考えを順わなければならないと思います。そういう防衛費の増強をしたり、また公務員のベース・アップの問題でございますが、われわれは人事院の勧告、あるいは仲裁委の裁定等は尊重をしなければなりませんけれども、しかし何でもかでも要求に応じて給与を上げるというようなことで、はたして公務員諸君の生活を確保できるか、名目賃金をいくら上げてもだめなのです。実質賃金の確保のために、一体どういう施策をとつて来たかということを考えますと、私は何もやつていないのではないかと思うのです。そういう点にもう少し考えをいたされたならば、二十九年度のこの予算のような組み方はなされなかつたのではないかと思うのです。こういう点についてはなはだ不徹底の感があるのでございますが、そういう点御考慮になつたかどうか。食糧増産費については昨年よりも上まわつているようにおつしやいますけれども、これは何か大蔵大臣のお考え違いでございますので、もしおわかりにならなければ、あとで私の方から指摘してもよろしいと思うのでございますが、これらについての御所見を簡明にお答えを願います。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 防衛費用の点について、今古川さんが仰せになつた保安庁のことは初めて私は耳にするので、今まで木村保安庁長官がしばしば吉川さんの前でもきわめて旺盛であると言つておりますので、さような御懸念のあるようなことは承知いたしておりませんが、もしさような事実があれば、これは保安庁で適当な処置をとると考えております。  それからその他の問題でありますが、これは私どもとしてはいろいろ考えましたけれども、今日の日本における予算の配分とすると、これがどうも一番適当であると考えている次第であります。なお食糧増産対策費はよく申します通り、これは数字的に直接食糧増産対策費は相当増加をいたしております。ただ全体から見ますと、各種の補助金を皆さんの御希望で切りましたから、これはさように相なつておるのであります。  なおただいま御指摘になりましたベース・アップの問題でありますが、これは実質賃金の増加はぜひとも必要だと考えております。従つて二十九年度の予算では、五分ないし一割の物価下落を目標といたしまして実質賃金の増加をはかることにいたしたのであります。但しお話のごとくに、それゆえ何もベース・アップをするに及ばなかつたではないか、こういうおしかりでありますれば、当時は世論もベース・アップの必要を認め、また国会においても多数でこれをお通しになり、また人事院の勧告そのままをのんだわけでないことは御承知の通りでありまして、特にいろいろたとえばあの時分に地域船の問題とか、あるいは認証官以上は上げないとか、あるいは中だるみの問題とか、そういう多年の懸案を解決してベース・アップをやつた次第であります。もつともそのころ社会党からなぜ人事院の通りやらぬかとおしかりを受けたくらいでありまして、私どももいわゆるそのまん中ごろをとつてやつたのでありまして、また当時の世論もそれを支持して通つた次第であります。ただ古川さんのお言葉の中で一番遺憾に思う点は、なぜもう少し行政整理を徹底的にやらなかつたかということであろうと思いますが、これは今後も秘めてやつて参りたいと考えておる次第であります。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 社会党の諸君といえども、私は今日では実質賃金確保ということに対する裏づけとしての施策が十分行われているならば、ベース・アップについてそう強く御主張はなさるまいと思うのですが、そういう点に欠くるところがあるから、社会党の諸君もベース・アップはやらなければいかぬじやないかということを強調されたのであろうと信じます。  そこで防衛の問題でございますが、これは十分御調査を願いまして、もしさようなことがあるとするならば、これは北海道に三十八度線を画することになる。そうして日本民族が二つにわかれて相せめぐことになりますので、重大な問題でございますから、これは保安庁の関係でもありますが、政府として十分調査を願い、さようなことがあつたならばこの防衛費は断同大削減をやつて、そうしてこれを食糧増産その他の生産増強の方面に転換していただかないと、問題は物と金とのバランスさえとれるならば小笠原大蔵大臣の一番御心配になつておりますところのインレーションというものを克服することができるのです。インフレーションに対する御懸念はまつたくなくなるのでございます。この予算について私の一群心配する点は、緊縮々々とは申しますけれども、内容を検討すると、緊縮についてのねらいであるところのインフレを抑えるという点について、非常に不十分な感じがいたしますので、この点は今後この予算をどうするかという問題について、私たちはなお具体的に考えたいと思います。  次に問題は、最近の新聞やラジオでも聞くのですが、特に政府の中から聞える言葉に凶作ブームという言葉があります。凶作ブームであるから農村には去年の救農会以来相当に金がまわつたのだ、農村は非常に景気がいいのだ、その証拠には去年の暮れの消費物資の売上げが例年に見られないほどの額に上つている、従つて農村は非常に恵まれたのであるから、今後農村政策に対しては、少くとも生産に関する限りは補助金、助成金というようなものは出す必要がないのだ、こういう考え方が大蔵当局の中に相当あると聞くのでございますが、その凶作ブームという言葉を大蔵大臣は信用しておいでであるのかどうなのか。私の見て参りましたところによりますと、二百二十億の営農資金につきましても、ただいまのところ百二十億は農村の手にまわりましたけれども、あとの百億未満のものが第二回目の配分としてまだ農村までまわつておりませんです。しかもこの農林省の指導が適当でなかつたのか、あるいは農業団体が総花正義をとつたのかどうかわかりませんが、被害を受けた農家、被害の比較的少い農家にも平均割に分配をした形跡がございます。そのために二月平均が大体一万円未満でございます。それに対して国会におきましても政府が説明をされて言うことには、一戸十五万円平均、大家畜を持つところには一頭に限つて三万円、合せて内地は十八万、北海道は二十三万ですか、そういうことで農村ではそれだけの金がもらえるものという期待をかけたということが一つ、もう一つは大蔵大臣初め今盛んにインフレインフレということをおつしやいますから、インフレが来てはたいへんだということで、インフレの起らない暮れのうちに生産資材なりあるいは嫁取り、婿取りの用意までもしてしまつた、こういうことでこれはあげて政府の責任に期するような原因によつて、見通しのきかない農民は非常にあせつて物を取得した。そのために非常に購買力が発揮されたように見えておりますけれども、そのかわり明けた今年の正月以来というものは、農村は非常に不況の様相が現われて来ております。ことに東北において娘売りが盛んになりまして、これは新聞の三面記事等でごらんであろうと思いますけれども、上野の駅に毎日運び込まれているところの、売られて行く若き女性がどのくらいあるかということについてもお聞き及びであろうと思います。この凶作ブームという言葉をほんとうに信じて二十九年度の農林関係の予算をお組みになつたのかどうなのか。もしそうであるといたしますならば、私は非常な軽率な態度であるとこの責任はあくまでも追究しなければならないと思うのでございますが、大蔵大臣はどういうふうにこの点をごらんになつておいでになりますか。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 一部に非常に凶作ブームということを言う者がありますが、私どもは決して凶作ブームというようなことを信じておるものではありません。従つて農村に対する諸対策は、すべてさような見地から日本の農村を振興させるためにいろいろなものを盛り込んでおるのであります。ただ予算が限られておりますので、限られた予算のうちでの最善を尽しておるという次第でございます。ただ補助金の問題は、これは吉川さんもよく御承知ですが、非常にたくさんありまして、少額の補助金があつてみたり、またもうやらぬでもいいようなものも相当あるのでありまして、補助金整理ということは、多年各党からの御要望なのです。それで私どもが、たとえば先へ行つて効果の薄いようなもの、あるいはもうなれてしまつてそれを出すに及ばざるもの、あるいはまた少額で国が出さぬでもいいようなもの、こういうようなものを実は整理いたしたのであります。これでもまだ私どもは不十分だと思つておりますが、整理いたした次第でありまして、農村に対する振興の諸対策は、少しも考えをかえておらないのみならず、一層やらなければならないものであると思つておるのであります。ただ営農資金の問題について申し上げますと、これは吉川さんも御承知かと思いますが、営農資金は借りるのでございますから、なかなか借手がなくて地方の知事が勧誘して歩いて借りさせておるといつたような実例は、これは私どもも耳にいたしております。それからさらに営農資金を借りてその営農の業者に行かずに銀行へ預けておるというような例も耳にしておるのでありまして、また実例も見ておるのであります。しかしお出しするものを何ら惜しんでおるものではありません。これはお出しするお約束にしておるのでありますから、国としては出しておるのでありますが、大体農村の方はもらうものはもらいたいが、借りるものは借りたくないといつたような考え方が相当あるので、これも遅れておるのではないかと思います。今私が申し上げたその金を借りて銀行へ預けておるというのでありまして、まだ適正に使われていない部分が、私ども大蔵当局で調べた部分でもございます。ございますが適正に使える部分に対しても出し惜しんでいる次第でございませんので、今後これは普及して参ることと考えるのであります。大体におきまして農村に対する私どもの熱意は、日本の農村の立場とまた食糧の事情等から、増加こそすれ決してこれを冷却せしめることはないのでございますが、しかし何と申しましても、限られた予算の範囲ですから、その範囲内で十分効率的に使つていただく、こういうことを主眼として、予算を計上しておる次第でございます。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 大蔵大臣は考え違いをしておいでになるので、昨年の暮れに農村で非常に購買力が発揮されたということは、一戸当り十五万円も十八万円も営農資金が来るということを予想をして期待をして、そうして手元にあるところの金をみんなはたいて、とりあえず必要なものを買つてしまつたという。ところがいざ来てみると、一万円未満のものであつたということで、今非常に困つているのです。もちろん御指摘のように、一部には凶作に便乗した者もございます。けれども、大部分はそうでないのです。そういう点について私は、政府が十五万円出すと育つておいて、そうして実際は一万円未満しかやつていない。これを増してくれと私は言つているのじやないのです。その配分の仕方が間違つているし、そうして実際十五万円出せないならば出せないように、実際出せるほんとうのところをもつて、私は農林省あたりも、これは農林大臣に言うべきことでございますけれども、指導すべきではなかつたかと思うのです。それからインフレインフレとあなたはおつしやるものですから、農村の人々はほんとうにインフレが来るのだろうか、インフレになつたらたいへんだから、今のうちに物を確保しておこう、こういうことだつたのです。だからあまり惑わさないように、ひとつ御発言も十分慎重にやつていただきませんと、及ぼすところの影響がきわめて大きいのでございますから、御注意を願いたいと思います。小さなものは削つたとか、いろいろのことをおつしやいますことから、私ちよつと思うのでございますが、政府では今度の国会で、何か補助金等の整理に関する法律案というものをお出しになるようでございます。まだ正式に国会に提出されたのではございませんけれども、私の見たり聞いたりするところによりますと、これは私は重大な内容を持つておると思うのです。それと申しますのは、これは特に大蔵大臣に関係がございますから、副総理にもお尋ねしたいと思う問題でございますが、大蔵大臣に伺いますが、法律があつて予算がないときはどうするかという問題でございます。今度出されようとしておりますところのこの補助金等の整理に関する法律案というのは、これは予算が国会に提出されて、それからもう相当の日時を経過してまさに上らんとしているときに、これが出て来る。少くとも私は、法律案は先行しなければならないと思うのです。ところがその法律案がいまだに提出されないで、予算の内容を検討しただけでも、こういうものが出て来るであろうということは予測されますけれども、一体これはどういうことでありましようか。法的に考えて、法律があつて予算がないときには、一体どういうふうになさいますか。憲法の七十三条を読んでみますると、誠実に政府は執行しなければならないと書いてございますけれども、法律を誠実に政府は執行しなければならないのに、その法律を無視して予算を組むということは、一体どういうお考え方でございましようか。憲法の七十三条と関連をしてお答えを願いたいと思うのでございます。国会というところは、これは憲法第四十一号に、「国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」と明定されているのです。そうすると、国会軽視のお考え方のように思いますが、その点どういうふうにお考えでございましようか。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 その前に申し上げておきますが、用語を慎むことはもちろんかんじんなことでありますが、私はインフレインフレといつて、インフレをおだてたことはいまだかつてない。御承知のようにインフレになつては困るから、インフレを抑制するということを絶えず言つておるのでありまして、私は農村の諸君にインフレになるから物を買おうといつたような心持を起させることをいまだかつて述べたことはありません。いかにしてインフレを打切るかということについての意見を絶えず述べておるのでありまして、この点はしまいの方でなく、前の方のインフレという言葉だけをちよつと聞くから妙なんで、インフレをいかにして日本は遮断するか、いかにして打切るか、そのインフレ抑制について述べているので、インフレになるから早く物を買えといつたような心持を起させるようなことは、私はいまだかつて述べたことはありません。これはそうとつている方があれば間違いでありますので、この点申し上げておきます。  その次に、今のお話でありますが、もちろん法律を尊重するのは当然でございますので、今度補助金等の整理に関する立法も昨日閣議決定を見ましたから、本日にもお出しすることと相なつております。これも吉川さん御承知のように、たとえば税法をかえます。税法をかえるときは、かわるからこうなるものというので、みな予算でも見込むのでございます。そうしなければ予算の編成はできません。これは今のままの税法で収入を組め、今のままで何をやれといつても、そうは行きまんので、法律の御協賛を願うのでございますから――法律の御協賛を願わぬ場合は、政府は法律違反になりますが、法律をお出しして予算の審議を願うのでございますから、立法措置をとつて参るのですから、私は憲法学者でありませんが、何ら憲法に違反するものでない、かように考えております。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 それはこの法律を通すか通さないかということは、国会がみずから決定することではございますけれども、それならばこういう法律がまず先行すべきではないかと思うのです。この法律は国会で定めた法律なのです。その法律を尊重して、その法律の根拠の上に立つて、予算というものは編成されるもで、予算が先に編成されて法律はあとからひとつ提案をして改めてもらうということは、これは逆なのです。だから、今小笠原大蔵大臣のお答えは、同じ国会で審議してもらうのだから、さしつかえないじやないか、それでなければ予算は立たないのだとおつしやいますけれども、しかしその考え方は、これは旧憲法時代の考え方なのです。新しい憲法時代は、そういう考え方ではいけないので、やはり法律が先行すべきである。それではもしこの法律案が否決された場合には政府はどういう責任をおとりになりますか。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 この点は先例によつてやつておるのでありまして、従来ともそういうふうにやつております。しかしその法律が通らなかつたらどうなるか、私は通るものと確信いたしておりますから、その仮定の場合についてのお答えはできません。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 しかし、従来々々とおつしやいますけれども、新しい憲法ができてからまだ日が浅いのでございますから、ここでやはり民主主義のルールを確立するように、政府みずからが先頭に立つて努力をされなければならないと思うのです。国会できめた法律を軽視して予算を先行させるような、そういう考え方自体が、私民主主義を害するところの考え方ではないかということを憂慮するのであります。そこで通るという御自信を持つておいでになるのでしようが、これは仮定で恐縮でございますが、通らなかつたときにはどういう具体的な処置をおとりになりますか、こういうことを聞いているわけです。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 そのときに至つて考えます。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 そういう場合には、こういうことがあり得るという、大体その程度のことはおつしやつていただけるはずでございますが、その点いかがですか。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 政府はすべての法案を提出いたしております以上、その法案に対して責任を持つのは当然でございますが、同時に通過することを確信いたして提出いたしております。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 これから出されんとするただいまの法律案の中に、農業改良助長法の一部を改正する問題あるいは漁船損害補償法の一部を改正するというような内容が含まれておりますが、その前の農業改良助長法の一部を改正するこの問題は、これは大臣十分御存じのことと思いますが、これは試験場でもつて試験研究されたその結果を末端の農家に流すために、改良普及員等の制度があるわけでございます。これに対するところのただいままでの補助金は、これを交付しなければならないということになつていたのでございますが、今度は予算の範囲内でということになります。そうすると、これは根本的に重大な影響を来すのでございます。根本的な精神が改まるのでございますから、これはきわめて重大な改正でございます。御案内の通り、農業関係に限らず、試験研究というものは相当の長年月を要します。一年や二年でその結果が現われるものではございません。長い間の時間をかけて、そうして一つの結論が出て参ります。それを今度は下部に浸透させるために普及員その他の制度があるわけでございます。それを毎年の予算ごとにかわつて来るというような措置をとられましては、これでは試験研究というものは一体何のためにやるのか、わけがわからなくなります。また今日までの弊害といたしまして、象牙の塔に立てこもつた試験研究機関が、研究の結果をちつとも下部に浸透させなかつたのです。それを普及員制度というものが生れて、これを下部に浸透させるような努力が行われているときに、これに対するところの助成を削減するというような措置というものは、小さな予算だからといいながら、こういうものを削るということは、私はこの試験研究の本質をお考えにならないところの御処置じやないかと思うのでございますが、その点はどういうようにお考えでございますか。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 これは今度の法案で、今まで三分の二を二分の一に減すことになつておりますが、同時にあとは平衡交付金で実は見てある次第でございますので、現実の問題には少しも影響しておりません。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 実際はそうでないのでございます。これは大臣内容をよく御存じないのでございますが、私どもは今の大臣のお答えでは承服ができませんので、予算をどうするかという問題について、なお十分私たちは考えなければならないと思つております。いろいろ尋ねたいのですが、割当てられた時間が非常に少いから次に移ります。わが国の農業は御案内の通り、一般の企業と同日に論ずることはできません。何らかの財政的の援助がなければ、その発展と申しますか、向上を期待することはできない。従つて今回のような補助金支出の削減が行われますと、零細規模の過小農にとつて、ただちに再生産資金というものに困つて来るのです。どうしても他面において長期低利の融資を一段と拡充しまして、営農の確立をはかりまして、農民の自主自立の精神を助成しなければならないと思う。ここから農業の近代化を期し得るものと私たちは信じておりますが、今回農林漁業金融公庫に対する財政投融資を大幅に削減されたということは、私の理解に苦しむところでございますが、これはどういうお考え方でこういう措置をおとりになりましたか。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 農林漁業金融公庫に対する投融資が君子減りましたことは、私もまことに遺憾と思いますが、どうも他との振合い上、たとえばほかの金融債等も三分の二に減じておるというような状況でございまして、全体の財政投融資が非常にきゆうくつでございました関係上、これは比較的組み方としては少いのでございますが、この程度で忍んでいただいた次第でございます。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 大臣は総花主義をやめて重点的に財政の使い方を考えた、こういうお言葉とただいまのお答えとはたいへん矛盾があるのでございます。ということは無理もございません、大蔵大臣にはこの零細規模の過小農というものについての御認識が十分じやないのじやないかと思う。しかしあなたも昔は農林大臣をおやりになつたこともあるし、農業団体の最高幹部をおやりになつたこともあるので、わかつていられなければならないのでございますけれども、もう少しひとつ御勉強をしていただいて、一体こういうものを今後どうするのかということを考えて、他の一般の企業と同日に論ずることはひとつ改めていただかなければならぬと思う。この点は私どもはもつと増額をしなければならないと考えております。二十九年度の予算を見ますと、食糧増産対策の重点はもつぱら外米の輸入は麦に転換しようというようなことをお考えになつている。その理由は輸入補給金を削減したい、そうすることによつて自立経済確立の基盤であるところの国内食糧の供給力を増進して、国際収支の恒久的確立に資したいというようなお考えのようでございます。しかし輸入食糧を麦に切りかえることによつて必然的に起る食生活の改善についても、積極的に推進する予算的措置がはなはだ不十分でございます。元来食糧増産というものは長期にわたる事業でありますが、財政当局の態度は短期的な経済効果にとらわれているような感じがいたします。大局観を失つているような感じがするのでございますが、さようなことはございませんか。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 ことしの食糧輸入の補給金を減しましたのは、価格が下つておるという点、大麦、小麦にかえる分をふやしたという点、こういう点がおもな点であります。しかしだんだん大麦、小麦の食生活に大衆がなれて参りましたし、まあこの程度で来年は私どもは行き得ると信じておるのであります。それから農業の政策は長い、それは私どもよくわかります。その点農業の食糧対策でも、酪農対策でも、すべて五年十年を頭に置いて計画を立てられておるのであります。私どもは右左に効果を生ずるとは考えておりません。従つてこれは金額については多少難点がございましようが、予算一の配分の面から見ますと、相当大きな一分を出しておるということは御了承願えると思うのであります。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 農業というものは、自分の土地で自分とその家族がみずから経営する自作農を、最も理想とするのであります。これによつて農業経営が改良せられ、その生活が増加し、農家経済が安定することは、いまさら説明するまでもございませんが、ことにわが国の零細な農家では、自作農でなければ農家の安定は望めません。それゆえ昭和二十年以来再度の土地立法によつて農地改革が行われ、全国の小作地約二百万町歩が政府の買上げとなり、小作人の所有となりました。ここに純然たる小作農はほとんどなくなつて、ただいま小作地は総耕地面積のわずか九%になつております。しかるに農地改革によつてつくり上げられた自作農を維持育成する施策、ことに自作農維持の金融対策を講じなかつたために、農家は資金に困つてその土地を農村在住の富農、これらの人たちは営利事業を兼ねている人が多いのでありますが、これらに売却をいたしておるのであります。再び農地改革前の地主階層が発生をいたして来ていることは大臣も御存じだろうと思います。ことに昨年の未曽有の凶作や風水書のために、被害農家はその口の生活に窮して家畜を売却したり、遂には農地をも手放さんとしているような現状でございます。これに対して農林省では農地担保金融の構想を持たれたそうでございますが、大蔵省の反対にあつてこれは実現を見なかつたそうでございます。農地のやみ売りを防いで、自作農の前途に掲げられた希望のともし火であつた農地改革はしたけれども、自作農の転落はそ知らぬふりをしなければならないということは、これも財政を重く見る大蔵省の感覚でしようけれども、一体こういう考え方で、今日ほんとうに日本の再建の思想的なまた人間的な基盤である農村の没落、貧富の懸隔のはなはだしき昔のような状態に追い込んで行くということを、一体大蔵大臣はどういうふうにお考えでございましようか。   〔小峯委員長代理退席、西村(直)委員長代理着席〕  またこれに関連をして、農林大臣は農地担保金融の構想をお考えであつたそうでございますが、どうしてもつと大蔵省を説得して、こういうすばらしい構想実現のために努力をなさらなかつたのか。そのいきさつ、今後に対する御所見を伺つておきます。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 自作農の維持について何らかの施策をとつて行かなければならぬという吉川さんの御意見、まことにごもつとものことであります。ただ農地改革後の自作農は戦前と大分性質も違つておりますし、経営構造等も違つておるので、自作農維持政策というものについても、少し根本的に考えなければいかぬ点が私にはなお相当あると考えます。特にいわゆる農地担保の金融については、農林省からも御相談を受けたこともございますが、あるいはこれは自作農創設特別措置特別会計というものがあるのですから、それを利用するとか、あるいはほかの金融機関を利用するとか、担保にとつたものが国家に流れ込んで来ても困りますので、これに対する問題もございますし、また財政の方面についても相当な金額を要する等のこともありますので、まだいろいろ双方で研究中であります。ただ二十九年度予算ではどうしたかといいますと、二十八年度予算に自作農創設特別措置特別会計の中で余裕金がありまして、八億五千万ばかりこの方へ使つてよいということに両方で話し合つておりますが、二十九年度も同様なものがございますので、さしあたりは八億五千万円まではこれを利用するように打合せをいたしてある次第であります。

保利茂自由党農林大臣

○保利国務大臣 農地改革の実施後におきまして、これが逆もどりする傾向は、経済必然の現象として、どうしてもその傾向を免れ得ないわけでありますから、制度上どうしてもこの画期的な農地改革を保持して参る、わが国の農村の基盤を固めて参ります上からは、ただいまお話の農地担保の特別の金融措置を講ずるということは、確かにその目的を達する有力な手段であると存じまして、私どもとしましては、先ほどお話のような案を内部で相談をいたし、さしあたりはただいま大蔵大臣が申し上げたような措置をとつて参りますけれども、御承知のようにかなり複雑な関連を持つことでありますので、さらに研究を進めまして、この制度は農地改革を保持して参ります上から、農村の基盤を固めて参ります上から、どうしても実現しなければならない問題だと真剣に考えておる次第であります。今後もそういう趣意で十分研究し、当面の措置につきましては、来年度予算に計上しておりますところによつて処置をいたして参るつもりであります。  なお委員長のお許しをいただきましたから、この機会に昨日川島委員から私が三水会とかいう会の会員であるかのごときお話があつたそうでありますが、欠席中でございましたから詳しくはわかりませんけれども、私は三水会というものがどういうものであり、またそういうところに入つたということは絶対にございませんから、はなはだ迷惑をいたしますから、この点はここではつきりそうでないということを申し上げておきます。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 大蔵大臣は特別会計に八億五千万円ある、それを融通しておるということをおつしやいましたが、確かにございますが、これは正確にいうとインチキ的な措置なので、これは非常に違法です。これをルートに乗せて、ちやんとしてやつた方がいいのではないかと私は考えているので、それで何か公庫とかあるいは特別の金融機関を考える必要があるのじやないかということを言つておるのです。それから八億五千万円というのは、すずめの涙なのです。こんなことをしておりますと、高利貸に零細農家、自作農家はみんな食われてしまいますよ。あなたは高利貸を擁護なさろうとなさるのならばようございますけれども、民族のエネルギーを消耗してやつたこの世界的に画期的な、革命的な土地制度の改革を、また逆転させるようなむだをおやりになるということは、十分慎まなければならない問題だと思いますので、この点には十分御配慮をお願いいたしておきます。  次に食糧増産対策に関連をいたし幸して、食管の制度の問題、それから食糧対策協議会の問題について農林大臣にお尋ねいたします。二十九年度の予算編成の経緯を見ますと、統制撤廃か米食率の引下げを押し切ろうとしておるような感じを受けました。保利農林大臣は農林行政を担当してみて、統廃の危険を感じておいでになると思いますが、大蔵省は必ずしもそうではないように私は思う。そこで統廃はできない。米食率の引下げは財政上やむを御ないとの結論を得ようとするもののような感じが私にはいたします。生産者でもない、消費者ともいえませんが、その日の米の苦労をしたことのない社長さんみたような連中をたくさんお集めになつて――この社長さんみたような連中は家庭のことなんかはわからないのですよ。そういう人たちをお集めになつて、食管制度の検討、食糧増産対策協議会とかいうものをおつくりになつて、いろいろ御検討のようでございますけれども、どうもその辺の目的が、これは私の想像なのでわかりませんが、一体どこに目的を置かれたのか、そしてまた食管制度をどのように検討をなさいまして、何らかの結論が出つつあるのか、その辺のことをお聞かせ願いたい。

保利茂自由党農林大臣

○保利国務大臣 食糧管理の現状につきましては、各方面から何とか改善をしなければいかぬじやないかという強い要請があることは、いなみがたい事実でございます。私どもも実際食管運営の衝に当つてみまして、はなはだ当惑せざるを得ない現状にあるわけでございます。昨年の暮れ衆議院で、食糧増産ないし食生活改善に関する御決議が行われました際におきましても、その趣意の一端には、米食にこだわり過ぎた政策をとつておるこの現状をかえなければいかぬじやないかということが相当多分に織り込まれておると私は了解をいたしておるわけでございます。  そこで当時政府を代表して、食糧政策の確立をいたさなければ、自立経済を達成する上から見ましても、非常な障害になるからということをはつきり申し上げておりますように、何といたしましても食糧問題を解決するためには、まず残されている増産余力に対して根気強く国の力を注ぎ込む、そして食糧増産の度合いを高めて行くと同時に、一方におきましては米食偏重の食生活に対してもう少し国民的にくふう改善を行つて行く方法をとる以外に私はないと思います。そういう上から具体的に今日の供出制度のあり方及び配給状況等に関し、ないしはまた供出に関連いたしましての価格の問題、消費者価格の問題等に関しまして、来米穀年度くらいからはどうしても一つの改善策をもつて臨みたいという考えで、ただいま各方面の御意見をいろいろ聞いておるわけでございます。その一つとして、内閣に食糧対策協議会を置いておりますが、これはお話のように米なんかどうでもいいという、いわば社長さんとかなんとかいう人たちばかりの集まりのようにもとられておるようでございますけれども、趣意といたしますところは決してそういうわけでございません。食糧問題というものは、そういうところにあるわけでなしに、大衆それ自体の問題すなわち国民全体の問題でございますから、そういう点を勘案して委員をお願いいたしております。決して偏重した考えをもつて委員をお願いしているわけではございません。実際協議会におきましては、たとえば主婦連合会を代表してお入りいただいている方にも常に御意見を述べていただいているわけでございます。  しからばどういう方法で来米穀年度からやつて行こうとしておるかということは、今日まだ申し上げる段階に至つておりませんけれども、これは吉川さんの方にもまとまつた御意見があろうかと存じますので、十分御意見を拝聴いたしまして、できるだけ生産者、消費者の納得を得る形において改善をはかるよう努力を払つて行くつもりでございますから、これはひとつぜひ御協力をお願いいたしたいと思つておるわけでございます。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 ただいまの農林大臣のお答えの中で、食糧対策協議会というものは、大衆それ自体の生活を考えておるのだとおつしやいますけれども、それならば労働者の代表、労働組合の代表、あるいはその他生産者関係の立場の人たちも入れてお考えになつたらいいのではないかと私は思う。労働組合といつても過激な連中ばかりではございません。その中にも日常食生活の問題で悩んでおる人たちがございますから、これはそういう人たちも入れて検討すべきではないかと思つております。私自身にも実は一つの構想はございますが、これは農林委員会等においてまた大臣に申し上げることとし、きようは時間がありませんから省くことにいたします。  次にこれは大蔵省のお考え方も大分よくわかつて来てはおりますが、最後に一つどうしてもわからない点があるので、その問題についてお尋ねいたします。それは昨年の凶作は六十年ぶりの凶作といわれております。あの凶作は農業技術が発達をしていなかつたならば、おそらく何千人かの人が倒れたかと思うほどの大飢饉であつたと思います。それをあそこまで防ぎとめたということは、科学技術の進歩にあつたと思います。今日まで先輩、政府各位が非常に努力をされて、この農業の科学技術の進歩に力を入れて来られた一つの結果であると思うのでございますけれども、その中で一つ保温折衷苗しろの問題がございます。これは二十八年度に打切つたのを、二十八年度は凶作のために追加をしてもらいましたが、二十九年度はまたこれをきれいに削つております。これは一体どういう考え方なのでしようか。アメリカあたりは大分食糧が過剰だからその外麦を入れよう、その外麦を入れることが期待できるから、国内の食糧増産はどうでもよいのだ、こういうお考えでこれを打切られたのでありましようか。藤原咲平博士がなくなられる前に予言をされた言葉通りだとすれば、昭和二十八年、二十九年は凶作型の年であるから警戒せよと言われたのに、農林省の諸君もだれもが豊作のためにこれに耳をおおうておりました。ところが凶作になつてみてびつくりしております。大体今までの統計によりましても、凶作は二年もしくは三年続くといわれております。それなのに二十九年度についてこの予算をゼロにしたということは、どういう考え方なのでありましようか。その辺を大蔵入用にお尋ねいたしておきます。  それからもう一つ、これは大蔵大臣と農林大臣にお伺いいたします。二十八米穀年度において米価を決定するにあたつて、豊凶係数によつて五百円の仮払いをいたしておきました。ところが豊凶係数に異動を生じたので、こまかく計算をいたしますと、なお四百三十二円バック・ペイをしなければならないということになつておりますが、それについて今どういうふうにお取扱いになつておいでになりますか。この点を簡明に御答弁いただきたい。時間がありませんから長いお答えはいりません。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 保温苗しろの問題でございますが、御承知のごとくにこの種の問題は生産費の一部をなすものであるので、農民がなれない間はこれに対する補助をする必要があるのでありますが、もうすでに習熟してそれが一番よいと考えれば、当然農民がやるべきものであつて、これがために特に補助をする必要がないと思つたのでこれを削つたのであります。しかし二十九年度の分については例の冷害対策の一環といたして保温苗しろに対する費用が出ておりますから、二十九年度の作況にはさらに影響はない次第であります。

保利茂自由党農林大臣

○保利国務大臣 減収加算の問題は、お話のように一応五百円の概算払いをいたしております。これは初め米価審議会の方式で処置をいたしておつたものでございまして、従来減収加算をいかなる方式によつて計算するかという方式がなかつたわけであります。御承知のごとくに米価審議会の答申をいただいておる。米価審議会におきましてはいろいろな案が出て、その答申案通りに計算をいたしますと、お話のようなものになるわけでございますけれども、今年のように減収度合いが著しく地域的にでこぼこを来しておりますときには、米価審議会の中で有力に行われておりました分散度をやはり考えるということが妥当である、そういう考えから算出いたしました五十数円の追加払いをもつて精算をするということで、ただいま大蔵省と協議をいたしておるところでございます。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 最後に大蔵大臣に申し上げておきますが、農民のなれないうちは助成の必要があるが、なれて来たら必要はないとおつしやいますが、今普及したのは大体富農階層でございます。富農階層はほとんど普及をいたしました。ところが貧農階層はまだ普及徹底いたしておりません。これは時間がありませんから、あらためて数字をもつて各府県別に御説明申し上げたいと思いますが、この点はもう一ぺん十分お考え直しを願いたい。  それから外務大臣にお尋ねをいたしたいのであります。MSAで小麦を輸入されることになつているそうでございますが、これはいわゆる輸入であるのか、MSAの援助であるのか、ただもらえるのか。輸入であるとすれば価格はアメリカの例の支持価格なのか、あるいは国際小麦協定の価格なのか。それから国際小麦協定の割当増加の交渉をしているかどうか、この辺をひとつ伺いたい。もう一つついでに外務大臣にお願いがございますが、それはただいま外務省に移民局というのができるそうでございます。外務省は外交関係の仕事がまだ幾らもございませんから、そこでひとつ移民の募集の仕事もやろうということで、農業技術員あるいはその他の技術員の募集の仕事も御担当なられるそうでございますが、ただいま行政整理も叫ばれている時期でございますから、あまりおなれにならないところの外務省が局までおつくりにならないで、課ぐらいで、もつぱら外交の面だけをおやりになつて、そうしてその移民者の指導教育等、あるいは募集等の仕事は、農林省あるいはその他の専門の官庁におまかせになることが妥当だと思うのでございますが、その点はどういうふうになつておりますか。  それからお願いをいたしておりますついでに通産大臣にお伺いをいたしますが、実は電力料の問題でございます。電力料金は平均して一割四分四厘値上げとなると聞いておりますが、しかるに製氷電力料は四割値上げをするという。これは一体どういうことでございましようか。水産関係は、遠洋漁業はもちろんのこと、氷によつて鮮度を維持しております。従つて氷の価格の二割が電力料に当つておるそうでありますが、全生産氷の六割を水産業に使いますので、現在十六億の電力料金が今度は二十二億円も支払わなければならないということになりますと、そのために氷が騰貴して水産業のこうむる影響は非常に大きいし、またそれがやがては消費者にしわ寄せされて来るということも憂慮されますので、この点を通産大にはどういうふうにおとりはからいになつておいでになりますか。またどうしようとお考えでございましようか。  なお運輸大臣に、これはきわめて重大な問題でございますからお尋ねいたしますが、二十一年の十月以降に拿捕された漁船が二百二十七隻ございます。そのうち中共が百三十四隻、朝鮮が六十一隻、台湾が三十二隻になつております。このために事業ができなくなつて倒産した会社が二百十五社中五十九社ございまして、現在は百五十六社しかありません。しかも残つた会社も、中共から引揚げた船員、従業員が、赤い教育を受けて帰つて参りまして、騒いでばかりおりますので、それらの会社の営業はますます不振の状態にあると聞いております。それら拉致された者は中共のみでも千五百七十八名、うち千三百十四名はみなまつ赤になつて帰つて来ております。現在中共には二百六十四名残つておりまして、盛んに赤い教育を受けております。特にオペレーターといいますか、無線通信士のごときは特殊の教育を受けておるそうでございますが、その実情を運輸大臣は御存じでございますか。これに対して外務省ではどういうように交渉をしておいでになるか。また運輸省ではどういうような措置をおとりになつておりますか、この点をあわせお答え願いまして私の質疑を終ることにいたします。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 お答えいたします。第一の点はMSA法五上百五十条による小麦の町人の問題でございますが、これは形式的にいえば輸入でございます。しかし円貨で払いまして、そのうちの二〇%は日本の方へグラントとして贈与する。日本の産業に使つてよろしいということになつておりますので、普通の輸入とは性質を異にいたします。輸入価格はこれはアメリカの支持価格ではなくして、小麦協定による価格と同様なものであります。アメリカのCCCの手持ちの小麦に対しまして、昨年の十二月から輸出用のものはこれに対して補助するということになりましたので、国際小麦協定によつて輸入する価格と同じ価格で輸入することができるわけであります。それから小麦協定の割当増加ということは目下のところ考えておりません。  その次に移民局をつくるそうだが、募集の仕事などは外務省がやるべき仕事ではないというような御意見であつたように承知いたしますが、募集の仕事につきましては、今年一月できました日本海外協会連合会の方が当ることになつておりますもので、外務省の省員がこうした仕事をとりはからうのではありません。ただ移民につきましては御承知のように、だんだん先方の希望がふえて参りまして、当方において資金なり船の手当ができますならば、一万人以上も要求しておるというような状態であつて、いろいろな関係国と交渉する必要がありますし、移民に関係する外交はますます多岐を加えるだろうと思いますから、こうした外交面について十分陣容を整えなければならないだろうというように、私ども考えておる次第であります。  なお最後に漁船のことで外務省に関連してお尋ねがありましたが、これにつきましてはこれまでも屡次抗議をし、また返環方を申し入れ、さらに損害賠償の権利を留保しておる次第であります。最近起りました問題につきましてもさつそく申入れをし、かつまた単に直接交渉のみならず、その他の方法においても万全を期したいというように考えております。

愛知揆一自由党通商産業大臣・経済審議庁長官

○愛知国務大臣 お答えいたします。電力事業者から申請して参つております料金の引上げの案によりますと、御指摘の通り、確かに平均率の問題だけではございませんで、料金制度の改正もあわせて申請しておりますので、その結果さようなことになるわけでありますが、先般来申し上げておりますように、政府といたしましては、近く聴聞会も開きまして、十分諸般の影響を考えまして、最終的な鮮度をきめたいと思います。ただいま御指摘の点は十分考慮に入れて処理をいたしたいと考えております。

石井光次郎自由党運輸大臣

○石井国務大臣 支那海方面の情勢は、お話の通りの状態でございまして、まことに遺憾なことでございます。私の方といたしましては、常時三隻の船を配置いたしまして、また水産庁の監視船とも連絡をとり、絶えず情勢を知りつつこれを漁船の方に連絡をいたしまして、拿捕されないように、また怪船の襲撃を受けないようにいたしておるのでございますけれども、本年に入りまして拿捕されたものがすでに四隻ございます。それから中共におります船は一ぱいも帰つて来ないのでありますが、人は、お話のように、随時帰つて来ております。帰つた者がどういうふうな思想動向にあるかということは、どの程度か私の方では詳しく調べることはできませんが、帰りました場合にいろいろ聞いております。なかなかいろいろなことを申しませんが、今おつしやつたような傾向を持つらしいので、はなはだ残念に思つております。これは私の力の所管ではございませんが、私どもとしては、そういう状態の起る前提としての、なるべく船をつかまえられないように、なるべく人が向うに持つて行かれないようにするためのできるだけの方法を講じたい。それには、怪船が現われまして、略奪あるいは連行等をする場合がありますので、私の方の船も武装するために武器をこちらに借りる話ができまして、今訓練中でございます。近くそれを船につけて万全を期したい、こういうふうに思つております。

西村直己自由党

○西村(直)委員長代理 松原喜之次君。

松原喜之次日本社会党(左)

○松原委員 私は、まずもつて小坂労働大臣に一、二の簡単な質問を申し上げたいと存じます。  最初に、労働大臣の賃金に対する認識の問題であります。と申しますのは、労働省の長としてあられる小坂労働大臣の賃金全般に対する認識の仕方によつて、この労働行政の色合いなり性格なりもまたかわつて来ると思うからであります。政府の発表いたしておるところを見ますと、消費景気論を常に振りかざされまして、昭和二十六年から昭和二十八年の指数をおとりになつて、東京におけるCPIはその間一七・五%の値上りであるが、これに対し、賃金は一万二千四百五円から一万五千三百四十五円と、一九%の増加を来しておるから、従つて賃金は比較的有利な傾向を示しておる、こういう点から消費景気の因子もあるのであるというふうなことを常に言つておられるのでございます。これをわれわれの見るところによつて申し上げますと、昭和二十三年の一月からかりに昭和二十九年の一月に至る指数をとる場合には、東京における同じくCPIは、七七%の値上りになつておるのであります。これに対して賃金につきましては、一万一千四十七円から一万五千三百四十五円と、二八%の増加にすぎません。従つて、政府が常に賃金についてあげられる数字は、二十六年から二十八年までの指数をとられて、そうして賃金はCPIを追い越しておる、こういうふうな議論を進めておられるのでありますが、しかしただいま申し上げましたように、これを二十三年からとる場合には、賃金はCPIに対して二分の一以下の進度しか示しておらない。すなわち賃金は物価に追いついておらないという議論が正しいことを示しておるのであります。この点に関して小坂労働大臣のお考えを承りたいと思うのであります。

小坂善太郎自由党労働大臣

○小坂国務大臣 お答えいたします。数字をあげて御質問でございますので、こちらも数字でお答え申し上げたいと存じます。  最近の調査によりますと、実質賃金は昭和九年から十一年までの平均を一〇〇といたしますと、今お示しの昭和二十三年には五四ということになつております。二十七年になりますと一〇三・六、二十八年は一〇七・三になつております。なお今の都市の勤労者の場合でございますが、消費水準を見ますと、同様な基準によりまして、六一・八になつております。これが二十七年には八三・六、二十八年には九四、こういうふうにふえておるのでありまして、私といたしましては、今お話のような点は、この点から出て来ないように考えておるのであります。  なおこの賃金の問題につきまして、個々の賃金の生活家計に及ぼします影響も当然考えるべきものとは存じますが、さらに賃金と園児所得との関連としてやはり考えて行かなければならないと存じます。労働問題も、またこの中の至要部分を占める賃金という問題も、やはり国民経済からまた国民所得から見て行かなければならないというふうに考えておりますが、その点から見ますと、日本の経済構造の中においての勤労所得が、基準年次においては三八・九%でございますが、これが昨年には四八・二形になつておるのでございまして、これは日本の産業構造全体から見ますと、相当百位にある。米英の諸国と比較してみても高位にあるというふうに考えております。賃金はできるだけふやし、その実体的内容をゆたかにするということはもちろん望ましいことでございますが、それを考える場合に、それだけではなく、やはり国民経済全体を伸ばし、その中における賃金の所得をふやして行く、こういうことに努力をいたしたいと考えておるのであります。

松原喜之次日本社会党(左)

○松原委員 ただいま小坂さんがあげられました数字は、消費水準であります。消費水準の中には、単にその生計を維持しているところの主人の収入のみではなく、借入金あるいは内職の収入あるいは他の家族の収入等も入つて、初めて消費水準というものが出て来るのであつて、私の申しておるのは、賃金の問題であつて消費水準の問題ではございません。私がかように申し上げることは、ただいまの答弁をもつてしても知られるごとく、労働大臣たるあなたが日本のこの労働賃金が相当高水準にあるという認識を持つておられる、そこが問題なのであります。もちろん私から申し上げるまでもなく、イギリスと比べましても、フランスと比べましてもあるいはイタリアと比べましても、あるいはよく問題にされておりますソ連と比べましても、日本の労賃はきわめて低位にあるのであります。しかもそれが国民経済的な立場において、すなわち生産力との関係において直接比べて見ましても、労務費は、これは製造工業でありますが、昭和二十四年四月の指数を二七〇といたしまして、昭和二十八年の三月には二四〇に低下している。労務費は生産のコストの中において低下している。しかも賃金はCPIに追つつかないという現実の姿を示している。この点をはつきりと御認識になつて、日本の生産、日本の国民経済全体の立場から見ても、労賃というものが不当に低位にあるというその認識のもとに、すべての労働行政をおやりにならないと、基本において誤つた認識を持つてものを判断せられるということに相なる。これを私はおそれまするがゆえに、労賃に対する基本的認識についてあなたの御認識を確かめたわけであります。私は今いろいろの数字について詳しく議論をしている時間がございませんから次に移ります。  去る十六日の参議院の緑風会の田村文吉議員の委員会における質問に、あなたは炭労の一部ストについていわゆるやおちよう質疑応答をやつていらつしやる。さらにまた一昨十八日の改進党の川崎秀二委員の質問に対して同じ答弁をしておられるのであります。その様子を見ておりますと、田村さんの質疑に対して、あなたは書類でちやんと十分用意されたところのこれに対する見解を発表しておられるのであります。やおちよう質問と申し上げるゆえんはここにあるのであります。この点に関してでありますが、御承知のように一部のこのストが従つてその企業のあるいは職場の他の部門に影響を及ぼしている。それがために他のストライキを行つていない部門が仕事をすることができない。こういう事情が起つて来ることに対して、これは民法上その他の部門に別段責任がないのであるから、これは働こうとして職場へ行つている、そうして働こうとしているのだけれども、他の部門におけるさしつかえが、その労働を実現することができないような事情にしているというにすぎないのであるから、その人に対しては賃金を払うべきであるという意見ももちろん十分聞くべき意見としてこれは認めなければならないと思うのであります。しかしそれに反対するところの小坂労働大臣の意見に対して、私はいいとか悪いとか、どつちが正しいとか議論をするのではありません。御承知のように、過日中山中央労働委員会会長も、この問題に対してあつせんの労をとる意思ありと言つておられるのであります。労働運動というものは私から申し上げるまでもなくこれは生きものであります。死んだような法律の解釈でもつて解決されるような性質のものではありません。だから中山さんがあつせんするということは、この問題をも含めてあつせんせられるに違いないのであります。さらにまたこの問題については、裁判所においてきめらるべき問題であると私は思うのであります。かような法廷できめらるべき問題、あるいは中山会長がみずからこれをも含めてあつせんせられようというかような問題、しかも今紛争のさ中にあるこの問題に対して、労働大臣としてそれに対する行政的見解を発表されるというようなことは、しかもその見解が一方に片寄つて一方には不利なような見解を発表されるということは、きわめて不穏当であると私は君えるのであります。この点に関して労働大臣はいかなる考えをただいま持つておられるか、お伺いしておきたいのであります。

小坂善太郎自由党労働大臣

○小坂国務大臣 お答えを申し上げますが、冒頭に先般の参議院の労働委員会におきます私の答弁がやおちやう答弁であるというお話でございましたが、これはなるほど私は書いたものを持つておりますが、問題になりますようなことにつきましてあらゆる場合について準備をいたしますことは、私の職責上せねばならぬことであると考えまして、そのような問題はあらゆることについていろいろと準備いたしております。ただ国会におきまして政府が質問を受けました場合、これに対して御答弁いたしますことは国務大臣といたしましてまた政府としましても当然の責務である、かように考えておりまして、私の見解を明瞭に申し上げた次第でございます。従いましてただいまいろいろとお述べになりましたように現在紛議中の問題に介入するというような意見は毛頭ないのであります。労働問題につきましては政府としましては労使間の良識にまつことに原則的に考えておりまして、これにみだりに介入することは考えません。やはり解決の方途は中労委をして当らしめるという方針でいる次第でございます。しかしこの基準法というものは御承知のように解釈法規でございまして、基準法違反という問題につきましては刑事罰まであるのであります。民事的な問題につきましても解釈を明瞭にする。刑事的なものについても、これは起訴まで基準監督官が決定するようになつているのでございまして、やはり基準法の場合、民事刑事を問わず行政解釈というものが裁判所の問題に先行する、こういうことになつておりますことを、御承知のことでございますが、特に申し上げておきたいと思うのでございます。ただいまいろいろと御懸念御心配がございましたように、私は炭労の争議の解決ということについては、国民全般が非常な関心を持ち、一日も早き解決を期待しているものと考えております。私は中山中労委会長があつせんの挙に出られんとするようなことも新聞等を通して承知いたしておりますが、一日も早く円満なる解決を得るように期待している次第であります。

松原喜之次日本社会党(左)

○松原委員 国会において質問があればこれに答えるのが政府の責務であるというお話、その通りであります。その通りであるが、ときによれば答えるべき答えを端折つている。ときによれば不穏当ないらざる答弁までもする。そこに実は問題があるのであります。一体こういう問題について、今紛争中の問題について、そうしてあなたの発言が資本家側に非常に有利な解釈であるというその内容を考えまして、この際にそれを発表せられたことについて、あなたは何ら不穏当でない、これは当然政府として発表すべき時期において発表すべきものを発表すべき方法においてやつたものであるとあなたはなお考えておられるのか。そうであるとするならば、私は常識を疑わざるを得ないと思うのでありますが、まあ議論になりますから、私の労働大臣に対する質問はこれくらいにしておきたいと思います。  次に大達文相にお伺いいたしたいのであります。政府は近く教育に関する二法案をお出しになる御予定であると承つておりますが、いわゆる教育の政治的中立に関するこの法案につきましては非常な問題がある。そのきわめて露骨なる反動性、そのきわめて極端な非民主性、これらの点につきましては、追つてわが党から忌憚ない究明をいたすつもりでありますから、私はこの際はこの点には触れないでおきます。ただ私は、やはりもつと基本的な問題についてお伺いしたいのでありますが、まず第一審に、憲法第九条と教育者のこれに対処するところの態度ということについての問題でございます。御承知のように、教育基本法の前文及び第一条を見ると、憲法にのつとり、平和的な国原社会を形成するような国民を育成せねばならぬということが、その重要なる目的として明示されておるのであります。憲法にのつとることになつております。平和国民を養成することになつております。そこでこの憲法第九条は御承知の通り、非常な問題のある条項であります。これに触れるにあたつては、教育者は非常に苦慮し、困惑するであろうと思うのでありますが、しかし憲法にのつとつてこれらの教育をするということになつておるのでありますから、従つて自然この憲法第九条にも触れなければならないということに相なることは当然でありますが、大連文部大臣はこの点について、一体触れてもいいのか、触れるべきなのか、どう考えておられるか、お考えを承りたいのであります。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 お答えいたします。学校における政治教育として、現在の憲法の趣旨を説明し、その精神をよく子供に聞かせるのは、政治教育としては当然のことであると考えております。

松原喜之次日本社会党(左)

○松原委員 憲法の趣旨をよく聞かす、そうして政治教育をするのは当然のことであるというお話でございます。そこで問題が起るのであります。御承知のごとく、国会においてこの二年間しよつちゆう問題になつておるこの第九条が、その教育に最も関係のある条項と相なるのでありますが、この条項ついて政界においてはいろいろの問題が起つておる。そこで私が考えるのでありますが、義務教育をやつておるところの多くの教職員は、やはり自分の位置もかわいい、世の中の空気も察せざるにあらず、いろいろ察すると、こういうふうになつて参りますと、私はまず第一番に、こんな微妙な問題には触れない方が無難だというので逃げを打つ手、こういう態度が一つ現われると思うのであり、あ。  第二の態度としては、第九条に対してはこういう説もある、ああいう意見もある、ただその意見を披瀝いたしまして、そうしてまだ判断力のないところの義務教育の児童や生徒に対してその瀬見、その主張をただ並べ立てて、どれがいいとも悪いとも言わないで、そのままなげやりにぶつつけるという方法、しいて言えばこういう方法もあるわけであります。  第三の方法といたしましては、やはり憲法の前文が力強くうとうておる、あるいは社会科の教科書には方々にうたわれておるように、平和の理想を説いて、そうして将来の世界の平和のために日本民族が貢献するために、こういう憲法を採用したのである。決してこれは与えられた憲法でもなければ何でもない。与えられた憲法であるから、これは一日も早く直さなければならないというような俗論に耳を傾けてはならない。この平和条項をたたえて、そうして児童に、あるいは生徒に平和教育を施す、こういうふうな態度が第三の態度であります。文相はこの三つの態度の中でどれが一番いいとお考えでありますか。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 憲法のできました、趣旨、精神をよく子供に教える、これはもちろん当然なことであります。ただいわゆる平和教育というお言葉でございましたが、この憲法を説明し、よくその趣旨を説いて聞かせる、また平和を愛する考え方を持つ人間を育成して行く、こういうことはむろんしなければならぬ大切なことであります。しかしながら、現在政治七の問題として論争せられておるその場合に、一方の立場だけを子供に教える、すべて政治上の論争というものは制度の改廃を伴う場合が普通でありますから、その場合に、一方の現在の制度がこうであるから、これを改廃しようという考え方は間違いである、こういうふうな考え方を子供に植えつけるということは、これは政治教育としては、つまり良識ある公務員としての政治的教育、これが目的でありますから、そういう政治的な主張等に対しては、将来子供が大きくなつてよく批判をし、判断をする良識を与える、こういうことが眼目でありますから、これは基上本法の第八条の一項に政治教育の基本的態度として書いてある、この良識を妨げて、将来子供の政治的判断力を一方に片寄らせる、こうしたことをしてはならないということもまた基本法に書いてあるのであります。そこで今問題になりました平和教育ということも、もちろん平和を愛し、また平和の精神を持つて行かなければならぬ、これも当然なことであります。また憲法は、その見地から第九条の規定をきめたのである、これも私は当然のことであると思います。しかしながら現在平和教育という名前のもとに、ある特定の政党あるいはどこかの政党が特に主張しておる政治的な考え方、こういうものを片寄つてそれのみを注入する、こういう点に問題があると私は思うのでありまして、ただ憲法の九条を子供に教えるということは別に問題になる筋合いのものではないのでありますけれども、しかしたとえばある政党が平和のための方策として、いわゆる平和三厚則であるとか平和四原則であるとか、具体的にいうと、全面講和のあるいは無抵抗中立あるいは安保条約反対あるいは行政協定反対、こういう一連の平和政策を打出しておる。この場合に、学校でソ連、中共を礼讃して、いわゆる全面講和というものの裏づけ、内枠づけとしてそういう教育をする、あるいはまた無抵抗中立という考え方の上に立つ再軍備反対、こういうようなことを教える。あるいはまた保安条約反対という見地、その裏づけとして反米的な教育をし、アメリカ駐留軍は帰れ、あるいはまた基地は返せ、こういうような一連の片寄つた教育を行うという場合には、これは問題になる。そこは現在の政党の持つておる主張とにらみ合せて、良識ある公民としての政治的教養を妨げるような、いずれか一方に特に偏した教育、こういうものは行わないようにすべきである、こういうふうに思うので、ただ九条の趣旨を説明する、その成立ちはこういう次第であつて、尊重せらるべきものである、こういうことを言うことそれ自身は何らさしつかえないと思う。

松原喜之次日本社会党(左)

○松原委員 あなたも御承知の通り、憲法の前文からあの第九条にかけて、いやしくも日本語を知つておる者が読みますと、非常な理想の観念に燃え、そうして平和をたたえ、平和のためにわれわれは挺身し、尽瘁しなければならないというような観念が自然とわくようにできておるのであります。もしこの観念がわかなかつたならば、それは憲法を読んでいる者ではありません。そこでその平和の理想を説く、ところがそのことが偶然、たとえば具体的に言えば、われわれは平和を追求する限りソ連と中共とももちろん講和しなければなりません。戦時状態のままでは断じていけません。平和を考える者は、日本国民である限り、中共ともソ連ともあらゆる国と平和状態に入つて、平和関係を結ばなければならないということ、すなわち経済関係を結んで大いに日本の経済のためにこれを利用しなければならないし、また相手に対しても大いに尽さなければならない、こういうふうなことを説くのはもちろんこれは平和教育でありす。当然であります。それがあなたのおつしやるように、全面講和というのは片寄つておるなどというような良識では、とうて、良識とは考えられない。平和教育をやろうとすれば、自然全面講和も説かなければならない。しかしそれは社会党左派が説いておる全面講和はこうである、ああであるというようなことは言わぬでもよろしい。これは一国として他の国と平和を結ばなければならないことは当然であります。従つて全面講和をしなければならない、これは偶然われわれの意見と一致するかもしれないが、しかしそうやることが悪いと言われては平和教育にはならないのであります。また無抵抗中立などとはなはだどうも俗論を不謹慎にここで引合いに出されたようでありますが、申しておきますが、左派社会党は無抵抗中立などというようなことは決して主張しておりませんよ。しておりません。それは俗論なんです。現にその問題で、私は大阪で殴打された事件があります。無抵抗ならひとつためしてみてやるから、がーん、どうだ、無抵抗か、こう言われたこれがありますが、そういう無抵抗中立などというばかばかしいことは考えていない。むしろ、日本の国を守ろうとすれば、ちやちな陸軍で一体原子力戦争に間に合うかという問題において、われわれはそういう武力を持つて守るということは今不可能であるから、それで問題だという点から、中立を唯一の外交方針として中立外交を打出しておるのである。そうして現在の日本の経済力にかんがみて、間に合うような、国防になるような軍備は持つことができないからやめておけと言うておるのであつて、決して無抵抗中立などということは唱えておらぬことを特に注意を申し上げておきます。  さきの問題でありますが、平和論が全面講和論となる、必ずそういうところへ行く。そういつたような場合に、あなたはこれは平和教育の逸脱であると考えておるかどうか、お伺いしたいのであります。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 今申し上げましたように、私は全面講和がいいとか、あるいはまた無抵抗中立ということは、これは社会党左派の主張といつて申し上げたわけではないのですから、その辺は誤解のないようにしていただきたいと思います。しかしそれを間違えて言つたのならば訂正いたしますが、いずれにいたしましても簡単にこういうことを言つたらどうだとか、こういうことを言つた場合はいけないとかいうよには行かないのであります。要するに、子供にある政治的な非常に片寄つた考え方を植えつける。その公民としての良識を阻害する。つまり大きくなつて批判力、判断力を持つようになることを阻害して、非常に片寄つた政治的考え方だけを植えつける、こういう実質についての話でありますから、それを憲法九条を教えるとすぐそれに当るかとか、ソ連、中共とも講和をせなければならぬ、これは世界の平和の上に望ましい、これもその通りでありましよう、それを言うたのが悪い、そういう個々断片的の問題ではないのでありまして、非常に片寄つた政治的な主張だけを一方的に植えつけて行く、子供に、良識ある公民としての政治的教養をむしろ妨げる結果を及ぼす、これがいけない、こう言うのであります。

松原喜之次日本社会党(左)

○松原委員 抽象的なお話でありまして、ほとんど私は了解することができないのであります。重ねて申し上げますが、ただいま私が申し上げたように、日本は全面講和をしなければならない、当然しなければいけない、こういうことを言うた場合、それはどうも片寄つておるいうふうに認められるかどうか。ここに文部大臣としての教育方針をきめられるところの一つの心構えが具体的に現われて来る。こういう問題をはつきり認識した上で抽象論を唱えられるのはよろしいけれども、単に抽象論を唱えておいて、実際実例を出したときに、それは一概には言えないなどと言うことは、はなはだ困るのであります。日本は全面講和を当然やるべきである、こう言うて私は一向さしつかえないと思うのですが、文相は何と考えられるか、重ねてお尋ねいたします。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 ただいまお答えをした通りでありまして、教育のことでありますから、一口にいつて、これはいけないとか、これはよいとかいうことにはならぬのでありまして、先ほど申し上げたように、子供に一方的な考え方を植えつける、もつとはつきり言えば、特定の政党を支持したりまたは反対したりするというふうに、子供の政治的な考え方をそこに持つて行く、これがいけないとこう言うのであります。

松原喜之次日本社会党(左)

○松原委員 私のお伺いしておるのは、そんな特定の政党を支持したり、あるいはこれに反対するような教育をする場合を言うておるのでありません。そういう場合はもちろん教育基本法においてはつきりととめてある。わざわざ政治的中立に関する法案なんか出さなくても、そういうことはちやんときめてある。これはあなたの良識で考えてもらいたいのであります。日本はある特定の国と戦時状態をそのまま続けて行くことはいけない、これは平和の精神に反する、だから全力を尽して、今講和のできておらない国々、ソ連とも中共とも講和を結ぶことが平和の精神に合致する考え方だともし教えたら、いかになりますか。その点を具体的にお伺いいたしますと、あなたの教育に対する方針がどういう考えから出ておるのかということを知ることができると私は思うから、この点をはつきりお伺いしたいのであります。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 ただいままさに提案しよりとしておる法律案は、基本法第八条の二項の趣旨を維持するという目的を持つておるのでありまして、基本法八条の二項の趣旨を離れてこれに何ら小のものをつけ加える、こういうつもりは毛頭ないのであります。これは基本法八条の範囲内にとどまるものである、これをまず申し上げておきます。  全面講和について、政治的な主張としてこれかいいのかどうか、あるいは世界の国と平和を結ぶためには全面講和をするのは当然なことだというふうにお話になりましたが、それに対する私の政治的見解を賛成とも反対とも言う必要は今一つもないのであります。しかし、さような特定の政党を性格づけておるような一連の基本的な主張――それは全面講和を今おつしやつたような意味で言うたつて、それがすぐに特定の政党と結びつくものとは言えますまい、しかしそこが教育です。先ほど申し上げたようにこれを一つ言うたらどうだ、これを一つ言うたらどうだ、これはどうだと、一つ一つを言うと、それはみな当らぬということになる。しかし、そういう一連の教育が行われるということが、特定の政党に非常に偏した考え方を子供の頭に植えつける、こういうことになると思うのであります。その意味において、基本法八条二項というものが、現在維持されておるかどうかということに問題がある。基本法八条二項は御承知の通りきわめて倫理的な規定であります。この基本法自体がすべて教育の精神をうたつてあるような法律でありまして、具体的に直接だれかに行為を命じたり禁止したりする規定ではございません。普通の公務員についていえば、公務は公平に全体に対する奉仕者として行わるべきである、こういう程度のものでありまして、八条の二項があるからあとはいらない、こういうものではない。これを現実に侵されておるか侵されておらぬかということは具体的な認識の問題でありますが、しかしかりに侵されておると考えられれば、この法律があるからもうそれでいらぬ、こういうふうには私は思つておりませんので、そういう認識のもとに立つてこのたびの法律案を出す運びにしたわけであります。

西村直己自由党

○西村(直)委員長代理 松原君に申し上げますが、時間の制約がありますから、なるべく質問をお急ぎになり、また要点だけお願いいたします。

松原喜之次日本社会党(左)

○松原委員 時間が短かいから簡単に申し上げますが、私をもつていたしますれば、そういう個々の言動、個々の教え方ではわからない、一連のやり方を総合的に見た上で、それが特定の政党に利益をもたらすかもたらさないかという判断をするのだ、そういうふうなことを言うては、今度出される法律の事案を解決する標準が全然ないということになつて参りまして、かえつて文部大臣が非常にお困りになるのではないかと思うのでありますが、しかし申し上げておきたいことは、教育者は具体的に個々のことを教えておるのであります。従つて全面講和の問題が起れば、今申し上げたような説き方をするかもしれぬ、そのことが一体問題になるのかならないのかということをきめなければ、来るべき法律の適用にあたつても非常に困るのであります。だから、あなたがこういう問題についてどう考えておられるかということを承つたのでありますが、あいまい模糊としてさつぱりわかりません。しかし私はいたずらに追究しようと思つているのではありませんから、次に移ります。  文部大臣もよく御承知のように、吉田さんは憲法議会において、戦争を侵略戦争と防衛戦争、自衛戦争にわけてはいかぬ、近一代戦争は自衛戦の名をもつて行われた戦争ばかりだという賢明なる答弁をしておられます。そして、それがゆえに日本は軍隊をも軍備をも放棄するのであるという主張をいたしておられるのであります。これが第一番。第二番目には、予備隊及び予備隊から名をかえた保安隊を、その当時においては、予備隊、保安隊、これは軍隊にあらずという強い主張をしておられます。第三番目には、今度は保安隊は軍隊と言つてもよろしい、これは軍隊である、言いかえれば軍備を今やつておるのだということにもなるのですが、そこまで言つたら問題ですから、保安隊は軍隊といつてもよろしい、ただ近代戦を遂行する力がない、だからこれは戦力を持つていない、従つてこれは再軍備をしておるのではない、こういうことが第三番目の吉田さんのお考えであります。そして、過日保安庁長官の答弁を聞いておりますと、保安隊は海外に出兵しないけれども、もし敵が攻めて来ればこれをおつぱらう、こういうておられる。これは、防禦するというのです、防禦戦争ならするということです。攻勢防禦ということがいわれますが、これは戦略上あるいは戦術上当然であります。攻勢防禦ということは、もちろん国外に兵隊を出さなければ攻勢防禦にはなりません。そういたしましすと、これは出兵の一歩手前の主張であつて、結局憲法を改正するか、あるいはしなければ、自衛戦争なら出兵してもかまわぬのだ、こういう第四番目の主張の一歩手前であります。私はその説をあなたと議論しようというのではないのですよ。四回も転転としてその趣旨のかわつて来る政府の主張……(「保安庁長官に聞けばよい」と呼ぶ者あり)特に文部大臣に聞くのです。この有名な問題を生徒や児童が全然関知しないということはありません。児童といえども多少頭の進んだ子供は必ずこういう問題を持つて参ります。いわんや中学の生徒はこういう問題に敏感であります。これに対して教育者としてどう答えるのか、こういうふうに変化したと答えるのか、もし、ただ変化を答えるだけでなしに先生の考えを聞かれたときには、これは吉田さんに従つてずつとかわつて行くのか、それともその中の自分が正しいと思うものを教えるのか、一体どうすればよいのか、非常に問題が起ると思いますから、あなたのお考えを聞いておきたいのであります。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 法律案につきましては、すぐ提案になりますから、十分その内容を御検討いただきたいと思います。すでに新聞にも出ておりますから、あるいはごらんをいただいたかと思いますが、私が先ほどから申し上げておりますのは、今度出て来る法律案の問題というよりは、八条の二項に言うところの政治的中立性、これを基準にしてお話を申し上げておつたのであります。先ほども申し上げたように、八条の二項にうたわれておるそのわくの外に出て、その以外のものに対する規定を今度の法律で設けるつもりはないのでありまして、八条の二項でそういう教育はいけないという意味のことが書いてある、その範囲内においてできるだけ厳密に、できるだけ具体的に対象になる教育なりというものをつかみ得るように規定しておるつもりであります。従つてそういう個々の教育の場合、こういうものはどうだ、ああいうものはどうだというふうに断片的に話をするのでありましては、これは疑問というより、それだけでは答えられないというのがむしろあたりまえであると思うのでありますが、しかしそれでも今度できる法律においては、これをなるべくはつきりさせて、拡張した解釈をする余地のないように、なるべく厳格な字句を用いて、そうしていやしくも行き過ぎになつたり、非常にあいまいの場合が起らないように、ということを特に配慮しておるつもりでありますから、これは法律案についてとくと御審議をいただきたい。先ほど来申し上げておるのは、学校における教育が政治的に非常に片寄つては困る、それから片寄つただけならまだしも、それがすぐ特定の政党政派を支持するとか、反対するとかいうところにまで結びついては非常に因る、こういう意味のことを申し上げたのであります。  そこで今お話のような具体的の例について、先生はどう返事をしたらいいか、またどうするべきかという場合の私の申し上げる返事は同じなのでありまして、つまりそういう場合に、先生は自分の意見によつて答えてよろしい。よろしいけれども、その他のいろいろな場合を通じて、特定の政党を支持とか反対とかいうようなことに子供の頭を固めさしてしまうことはよくない。だからそういう場合に、先生がどうも答弁が食い違つておかしいと言つたつて一向さしつかえない。それからそれを社会党左派の連中が反対しておるけれどもこれはけしからぬ、こういうことを言うかもしれない。自由党を支持するというところまで固めて行つて、自由党をいやおうなしに支持させるというような教育、社会党を支持させるようなところまで教育が行く、これが少くとも八条の二項に言うところの事項である、こういうことを申し上げておるのであります。

松原喜之次日本社会党(左)

○松原委員 時間が足りませんから、文部大臣に対する質疑は、法案が出てから後にさらに他の方からしていただくことにしまして、私は文部大臣に対する質疑を打切ります。  次に大蔵大臣にお伺いしたいのでありますが……。

西村直己自由党

○西村(直)委員長代理 松原君、お手元にも通知してありますように時間が超過いたしておりますから、簡潔にひとつまとめてやつていただきたいと思います。

松原喜之次日本社会党(左)

○松原委員 まず第一番に、私が大蔵大臣にお伺いしたいことは予算規模の問題であります。この間わが党の成田委員あるいは他の方々からも問題が起つておりまして、二十九年度一般予算の中には、まさに入れらるべくしてあるいは特別会計に、あるいはその他にのけられた金高がある。だからしてほんとうの予算規模は九千九百九十億ではない、一兆をはるかに突破しておるという議論もあるし、あるいはそれが会計法違反であるかないかという議論もありますが、しかし私の申し上げるのは単に数字だけの問題でございまして、二十九年度の一般予算もしくはこれに準ずるものはこの中に入れるべき性質を持つておるがゆえに、一般予算的金額と申しますか、その規模を考えると、すでに問題になつておりましたようなあの入場税の百九十億、あるいは租税の払戻金の計上を今年からわざわざ切られた九十億、あるいは国有林野特別会計の利益金の三十二億、これらを全部合せると四百二十億ほどになります。従いまして一兆を相当上まわつておりまして……。

西村直己自由党

○西村(直)委員長代理 松原君、その質問はもう前回繰返されてここでやられたのでございます。ですからなるべく重複を避けていただきたい。

松原喜之次日本社会党(左)

○松原委員 しかし大蔵大臣のお答えは違うのです。私の尋ねておるのは、従つて違うお答えを得たいからであります。  こういう金高でございまして、今年度の予算と来年度の予算をすなおに比べてみると――二十八年度と同じべースに立つて比べてみなければこれは比較になりませんが、同じベースに立つて比較しますると、やはり二百億以上ふくれておると私は思うのであります。この点について大蔵大臣の御答弁は形式的な御答弁ばかりであつたが、実質上はそうでないのか一応承つておきたいと思います。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 この点はもう繰返し申してある通り、私どもは予算の編成については、そのときの状況にもよることでありますが、何ら一兆以内に収めるという考えでやつたものではありません。御承知のごとくに入場税というものはその九割を地方にもどすものであるから、そういうのを特別会計に入れてもどすのは当然なことであつて、また租税払戻金のごときも、これは今度法案を出しておりますが、租税の入つたもののうちからもどすものですからこれを別途に扱うことは当然なことであつて、むしろ進歩とも言うべきものである、かように考えております。

西村直己自由党

○西村(直)委員長代理 あとどのくらいな質問がありますか。一問ぐらいならば私は発言を許しますが……。あと一問か二問にしてください。

松原喜之次日本社会党(左)

○松原委員 そこで政府はこの二十九年度の予算を緊縮予算と銘打つておられます。そうして日本のこの経済の危機を切り抜けるためにはこれがぜひ必要だ、日本の経済は国際収支の問題から来ておる、従つて国際収支の改善、日本経済の安定のために第一帝に緊縮予算、それから今度は金融の引締め、それから来るところの物価の引下げ、これで初めて輸出を振興して、そうして国際収支を改善するのだ、これが一連の大事な政策であつて、かるがゆえに緊縮予算と言い、かるがゆえに一兆以下で抑えたという問題が誇示されておると私は思う。ところが私どもをもつてすれば、これはどうもちつとも緊縮されていない。ただ軍事費がふくれる、それだけ他の費用すなわち産業費あるいは民生安定費その他の必要なる平和的な費用をカットして、去年の予算よりちよつとくらい上まわつたところで抑え、大蔵大臣が一生懸命努力して、一方をカットした。だから緊縮予算だと考えておられる。決して緊縮予算ではない。われわれから言えばこれはインフレ的緊縮予算です。大きなインフレの因子を含んでおる。それは何かと言えば軍事費です。大蔵大臣は何も頭を傾けられなくともいい。軍事費とインフレ的要素を持つた費目です。これは財政学のいろはです。それなればこそ、戦前においても日本の大蔵大臣は常に軍部と軍事費について争つて来ておるのです。この軍事費をふくらすことはそのまま認めておいて、すなわち最大のインフレ的な因子をここに置いておいて――生産を増強すれば長期的にはインフレにはならない、そういうことがあるにもかかわらず、産業費その他の費用をカットする。カットしたからそれで緊縮予算だ。こういうふうな考え方は、われわれ了解に苦しむのであります。こういう点についておそらく大蔵大臣も心の中では、軍事費というものは非常にインフレ的な最大の因子であつて、これを断つにあらざれば日本の経済の危機は救えないと思つておられると私は思うのでありますが、この点についてひとつお考えを承りたいと思うのであります。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 心の中から緊縮予算なりと信じております。この予算が緊縮予算でないと仰せになつたのは、今初めて伺つた次第であります。

松原喜之次日本社会党(左)

○松原委員 時間がありませんから簡単にやります。結論的に申し上げると、かかるインフレ的緊縮予算でございますがゆえに、あらゆる面から政府の期待しておるような物価の引下げ、国際収支の悪化の食いとめ、あるいは転換改善というようなことにはなつて来ない。ここに審議庁長官もおられますが、物価は五%ないし一〇%引下げる、通産省もしくは審議庁方面では下期において必ずこれを引下げる、こういうふうに考えておられる。こういうことでありましたけれども、しかし大蔵大臣が三月の終りに予想しておられたところの手持ち外化貝の金高、すなわち八億七千万ドルという水準に、もうすでに一月の終りに予想を裏切つて達しておるではありませんか。だからして、現在のような政策をこのままで持つて行かれたら、おそらく三月末には七億七千万ドル程度になるであろうということは、一般の常識であります。また恐れておる方面では、八月になれば輸出入上必要なところの五億ドルを割つて、手持ち外貨は非常に困難な状態になるであろうと予想しておる向きもあるようであります。従つてこの外貨の面においても非常に予想を裏切る。  それから先ほど労働大臣に聞いたことと関連するのですが、日本の資本主義がこの危機を乗り切ろうとする場合に、おそらく賃金を引下げる。もちろんコストを引下げるためには材料を安くしなければいかぬ。あるいは設備から来るところの負担を軽くしなければならぬ。そうしてこのうちで一番たやすいところの労賃にしわ寄せをするのであります。低賃金主義をもつてこの危機を切り抜けようとするのであります。ところがそれができなかつたらどうするかといえば、インフレをやるのであります。インフレをやつて、実質的賃金の引下げによつて、この危機を乗り切ろうという。必然的にここへやつて来るのであります。ところがなかなか思うようにコストの引下げはできません。従つてむしろ必然的にあるいは本能的にインフレを追わんとする力が経済界に必ず出て参ります。それが陳情になつて現われて来る。現に一万田さんはあなたに対して金融引締めに手心を加えろ、しばらく待て、オーバー・ローン解消の手はそのままやつては困るということを言うておる。また経団連でも同じようなことを言うておるでしよう。これは必ずあなたに陳情が行きます。あるいは進言して参ります。かようにしてやろうとしておる政府の政策をやつてすら怪しいにもかかわらず、もう出発点からくずれようとしておる。政府のいわゆる緊縮政策、金融引締の政策あるいはコスト引下げ政策、ことごとくこれ必然的にくずされようという傾向にあるのです。従つて私は国際収支は非常に改善困難である。かように考えておるのでありますが、大蔵大臣は自信を持つて安心してこの際に処しておられるのであるかどうか、一言お答え願いたいと思うのであります。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 財政の緊縮、金融の引締めの強化、その他各般の財政、経済、金融等の措置と相まつて、私ども必ず所期の目的を達することを確信いたしております。

松原喜之次日本社会党(左)

○松原委員 通産大臣にお伺いいたしますが、来年度の国際収支の見通しを政府から発表されておりますが、それによりますと、ポンド地域においてたしか一億七千万ドルからの輸出増加を二十八年度に比べて予想しておられます。それから一方におきまして輸入はわずか三千万ドルだけ減らすのだという計画を立つておるようであります。こういう見方は、川崎秀二委員が言つておられたように、はなはだ甘い。今大蔵大臣にも申し上げたところでありますが、こういう甘い計画で、すでに外貨収支の予想が足元からくずれております今日、この実現困難な輸出計画を一方において立つて、一方においてはきわめて僅少な輸入制限をするだけであつて、十分外貨を輸入に割当てるという方針をもつておられて、それで物価が下つたり一その物価問題はあとにいたしますが、これで国際収支の改善が実際できると思つておるかどうか。すでに愛知通産大臣の心の中には、これはあぶないという考え方を持つておられるのではないか、あるいは必ずそういう考えを持つておられるであろうと私は思うのであります。しかも外貨割当というものが非常に伏魔殿であつて、たとえば砂糖にいたしましても、あるいは羊毛にいたしましても、あるいは綿花にいたしましても、これらはもちろん国民生活に必要なものであつて、この価格を上げないために相当の外貨を割当てるということが必要であると私は思います。思いますけれども、この外貨を割当てることによつて、もうすぐ割当てられた瞬間、四割のプレミアムがついておることはあなたも御承知の通りであります。こういうプレミアムがつくような日本の円の実勢であります。それはさておきまして、そういうふうな外貨割当によつて、莫大な利益が少数の企業に自然流入するという――反射的利益なのかどうかしりませんが、そういう利益が上るという状態をこのままにしておく、血の出るような外貨を割当てられて、そうして少数の人が莫大な利益をそのままふところにするという、こういう制度をこのままにしておいて、それで通産行政として遺憾ないと思うておられるかどうかということと、先ほど来申しておりますように、すでに外貨計画は足元からくずれておりますが、これでもなおわれわれに示されたところの外貨収支の計画を、そのまま実行して行つて自信がおありになるかどうか。従つて政府の計画通りこの国際収支の改善ができるかどうか。その手前に物価の引下げができるかどうか。すなわち政府の企図しておられる経済政策は根底からくつがえるのではないか。私どもはそれを望まないけれども、こういう断片的な政策を総合してみますと、どうしても危機を乗り切るどころか、ますます日本経済を混乱せしめるものである、この予算全体がそういう性格を持つておると、私どもはおそれるのであります。時間がありませんから、この点だけお答えを願いたいと思います。

愛知揆一自由党通商産業大臣・経済審議庁長官

○愛知国務大臣 お答えいたします。非常に広範囲にわたつてのお尋ねでございますが、できるだけ簡潔にお答えいたしたいと思います。  まず第一に、国際収支の見通しの点が、われわれの計画が甘いという御指摘でございます。これは計画についてはいろいろの批評がございましょう。甘いとごらんになる面もあるとすれば、それだけたとえば輸出努力をいよいよしなければいかぬわけでございます。これは計画しての批判いろいろあろうかと思いますが、そのときどきの情勢の変化ということも多少はございますから、実行上におきましては、いろいろとくふうをして行かなければならぬところがありますが、総体としては私はこの計画で何とかしてやつて参りたいというふうに考えております。  それから外貨の割当の問題と暴利の問題についての御指摘がございましたが、これは二十九年度の外貨予算の編成をまだ私どもはいたしておりません。この編成の方針については、るる申し上げておりますように、必要な原材料というものは確保しなければならぬという考え方で参るつもりでございます。こういうふうな具体的な政府の方針というものがはつきりいたしますと、根本は物資の需給の問題でございますから、一部に行われておりますような思惑的な傾向というものは、全体の傾向からいえば、私は鎮静すると確信いたしております。それから暴利の問題でございますが、これは御承知のように、今御指摘になりました品目等につきましては、メーカーに資金の割当をいたしておるわけでありますから、たとえば中間の一部業者というようなものが、直接外貨を割当てられた瞬間から、現実に巨大な利得を上げるということはないわけでございます。これは勘定上、割当てられたメーカーの側におきまして、観念的な利益というものが上ることは明白でございますが、これは全体としての物資の需給の関係から見て、私は鎮静すると思いますし、特定の一部商社等に暴利が直接に入るということは私はないと思いますが、なおこれらの点につきましては、十分世の中の疑惑のないように、また今後の処置等につきましては、厳正にますますやつて参るつもりでおります。

西村久之自由党

○西村委員長代理 午後二時より再開することといたし、暫時休憩いたします。    午後一時五分休憩      ――――◇―――――    午後二時二十六分開義

倉石忠雄自由党

○倉石委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 午前中総理に対する質問を保留をしておきましたが、副総理がお見えになりましたから、副総理に若干お尋ねをいたします。実は総理大臣にお尋ねしたいところでございますが、御病気のようでありますから副総理にお尋ねするのであります。副総理にお尋ねするのにはちよつとぐあいが悪いと思うのですが、吉田総理大臣は、最近盛んに耐乏生活ということをおつしやつておいでになります。耐乏生活たいへんけつこうでございますが、耐乏生活をお説きになるのには時期を失していると思うのであります。もう少し早く耐乏生活を説かれる時期があつたのではないかと思うのでありますが、そういう時期を過ごされて、つい今日になつた。しかもみずからお説きになりながら、御自分の日常の御生活態度というものは、国民から非常に批判をされております。ここで総理代理としての副総理は、英国のチャーチルのまねでもなさつて、高級自動車を国産自動車にかえるとか、あるいは総理の自動車を副総理と仲よく乗り合うとか何とか、まず国民が納得の行くような生活態度をお示しになること、すなわち身をもつて率先きう行されるということでなくては、いくらお唱えになりましても、国民がかえつて逆の方向に行くことを非常におそれておりますので、これに対して副総理の御所見を伺いたい。これがまず第一点でございます。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 私生活、特に私自身でない総理大臣の私生活のことにつきましての御質問には、お答えを差控えたいと思います。今の政府の閣僚も生活の上にできるだけ耐乏生活らしい面を出して行け、それはまことにごもつともなことであります。わずかなことではありますが、ベース・アップということも閣僚は遠慮いたしておるような次第であります。自動車を小型に買いかえるということは、これは新しく買うのではどうかと思いますが、私生活の上にも耐乏生活を唱えるのにふさわしいことをやつて行くということはやるべきことである、さように考えております。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 ただいま政界の状況のみならず、各般にわたりまして私は民主主義の危機が来ているような感じがいたします。第一総理大臣がワンマンと言われることだけでも、そういう情勢を代表しているような感じがいたします。昨晩は副総理は総理にお会いになつたそうでございますが、こういう状態になつて政治的の責任をさぞお感じになつて、御病気になられたのではないかと私は思いますが、そういうお話は出来ませんでございましたか。予算委員会においても各委員会においても、ほとんど国会における本質的な審議がなされないで、そうしてどろ試合をやるというような、スキャンダルの問題のみでほとんど終始している。法律案のごときはほとんどまだ上程されておりません。予算審議についてもまだまだ尽くさるべきものが多々あると思うのでございますが、そういう本質的なことが行われないで、まるで見当違いのことが毎日行われているということ、これは私は国家の縮図ではないかと思いますが、こういう状態に追い込んで参りまして、私は吉田総理は非常に心配をされて、そのため御病気になられたと思いますが、副総理はこの情勢をどういうようにお考えでございますか。一体国民はだれに信頼したらよろしいのでございますか。今の政治に、政府にたよれないということになつたら、国民は何をたよりにしたらいいのでございますか。ただいま国民は非常に迷つております。心配をいたしておりますので、この際ひとつはつきりと責任ある立場で、御所見を披瀝を願いたいと思います。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 申すまでもないことでありますが、総理の病気は生理的の現象でありまして、この政局の問題とは全然関係ございません。それから今日の国会の状況、これにつきましては行政府の者といたしまして、こういう公の席で批判を差控えます。しかし今宵われておりますいわゆる汚職は、これはすでに司直の手にわたつておりますので、その方において厳正なる調べが行われることを期待しておるのであります。政府としましてはやはりこの際いろいろなうわさ等に動かされることなく、この今の経済的の段階を打開すべく政府の方針を立てて組みました予算の実現、またその他重要法案の通過に全力を上げるべきである、かように考えておるわけであります。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 副総理はお聞き及びと思いますが、総理大臣はときどき議員立法について言及されたことがございました。すなわち議員立法は妥当でないというようなことを申されたことがございます。私はこの総理の考え方というものが、ワンマンと言われる根本はでないかと思うのでございます。議員立法と申しましても、旧憲法当時にはさようなことはなかつた。天皇政治の当時には天皇が官吏をして立案させ、提案させ、そうして国会議員に審議のみさせたのでございます。ところが新しい憲法になりましてから、その四十一条によりますと、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」と言われております。それであるのに、その議員立法というものについて、これを否定するがごとき言説をなされるということは、その考え方自体が民主主義に反する考え方であると思うのでありますが、これに対して副総理はどういうようにお考えでございますか。また予算の増額修正の問題等についても、これは総理が申されたのでございませんけれども、大蔵省あたりに相当強い主張があるやに聞いております。しかしこれまた法律案といい、予算案といい、ともにこれらの議案は――これは提出権は予算については内閣にございますけれども、審議についてはまつたく国会において自由になされなければならないと考えております。もちろん立法の問題にいたしましても、予算の修正等につきましても、議員の行き過ぎといいますか、自粛は当然やらなければならないことで、最も厳正なる態度をもつて処理される場合においては、これは自由になされなければならないと思うのでございますが、こういう問題について折々誤解されるような言動がございましたので、この点ひとつ副総理に御所見を伺つておきます。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 総理が議員立法は里ましくないという意味のことを言われたのは、私も予算委員会か何かで聞いたことがありますが、それは私の記憶では予算の増額修正になる議員立法は望ましくないという意味であつたように考えます。議員立法は旧憲法のもとにおきましても、すなわち帝国議会時代におきましてもやはり認めておつたのでありまして、何人かの賛成者があれば、議員の立法というものは認められておつたのであります。ただ議会の沿革、歴史からいいまして、何と申しましても予算の増額を伴う議員立法というものは、これは問題だろうと考えます。私も議員立法そのものにつきましては、憲法第四十一条を御引用になるまでもなく、これは国会の御随意だと思いますが、しかし政府に予算編成権がありますところから見ても、予算を増額する結論になる議員立法は、これは国会の自省においてできるだけやめていただくことが望ましい、そういうふうに私は考えます。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 これはたいへんな御発言で、実は驚く次第です。国会側の自粛において議員立法をやめてくれということは、これは憲法第四十一条とまつたく矛盾する御所見でございます。一体それでは憲法第四十一条は何を言つているのでしよう。国会は国の最高機関で、そこでもつてすべての問題は自由に決定することができると思うのですが、それを自粛して議員立法をやめてくれ――政府提案の立法は、これはだんだんとやめて行かなければなりません。そうして全部議員立法にかえて行かなければ、ほんとうの民主主義は徹底しない。これがすなわち新憲法の示すところでございます。憲法の七十二条には「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について」云々とございますけれども、この「内閣総理大臣は、内閣を代表して議案」云々というのは、法律案あるいは予算案を含むと思いますけれども、私はこれをたてにとつておられるのじやないかと思うのです。ところが七十三条には、「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行う。一法律を誠実に執行し、国務を総理すること。二外交関係を処理すること。三条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。四法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。五予算を作成して国会に提出すること。」等々とございます。それから、国会法の五十六条には、「すべて議員は、議案を発議することができる。」とございます。この議案を発議し提出し、そうしてそれを審議すること、これが新しい憲法になつてからの根本精神であろうと私は思います。それを政府が自粛しろと言うのは、大蔵大臣が打出の小づちを持つていて、幾らでも金が出せるというような前提に立つての、もしくは選挙区のごきげんとりというか、選挙対策的な、そういう行き過ぎはやつてもらいたくないという意味でありまして、自粛して議員立法はやめてくれということでは、これは憲法の精神を蹂躪するお考え方なんでございますが、そうお思いになりませんか。行き過ぎをしないように自粛をして、国会議員の権威を保ち、そしてあやまちのないように厳正妥当な態度をもつて、議員立法はやつてもらいたいというりならば私にもわかりますけれども、自粛をして議員立法をやめろということでございますと、それは四十一条とはまつたく反対の考え方でございまして、これは日本の民主政治確立の上においては重大なる御発言でございますから、お取消しを願いたいと思います。そうしてあらためて御所見を伺いたい。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 私の言うたことに対して何か非常な誤解か聞き落しがあると思います。私は議員立法が悪いということは、かつて一ぺんも申したことはございません。予算の増額を伴う議員立法は、これを政府でどうとさしずはできませんが、国会において自制されることが望ましい、そういうことを言うたのであります。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 それでは副総理にお尋ねいたしますが、きのうの閣議とかで補助金等の整理に関する法律案というのきめられまして、いよいよ衆議院へ提案されるそうでございます。これは内容を見ますと、文部省、厚生省、農林省、通産省、運輸省、建設省の六省にまたがつており、それぞれ補助ということについては共通ではございますけれども、内容に至りましては、ことごとく立場を異にしたそれぞれの内容を持つておる法律でございます。それを一つにまとめて法律案として上程なさるのでございますか。それともこれは各委員会別に提案なさるお考えでございますか。それをまずお伺いいたします。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 これは一つにまとめて提案いたす所存でございます。  なお御承知のことかと思いますが、それには「当分の間」とありまして、日本が緊縮財政を必要とするその当分の間、これを施行したい考えでございます。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 私の手元にある資料によりますと、文部省関係では新たに入学する児童に対する教科用図書の給与に関する法律を廃止するということがございます。そうすると暫定的、臨時的なものであるならば、これを廃止してしまつたら一体どういうことになりますか。これは廃止ということになると暫定的なものでなくなるのですが、それはどういうふうにお考えでありますか。

森永貞一郎大蔵事務官(主計局長)

○森永政府委員 ただいまの御質問でありますが、教科書関係は当分の間法律の効力を停止する、そういうような条文になつておるはずでございます。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 私はこの経緯を承知いたしておるのでありますが、初め廃止とやつたのです。ところがその廃止というのでは、臨時的な暫定的な措置法としては適当でないということで、停止ということに改められた。改められたその行為は私は非難はいたしません。しかしその根底には国会の立法権を侵害する、何といいますか、官僚独善的な思想が流れておることを、私は民主主義のために悲しまざるを得ない。そういう点について、私は今後反省していただかなければならないと思う。  それは別といたしましても、これは先ほど大蔵大臣にお尋ねしましたから、しつこくはお尋ねいたしませんが、ただ副総理からこの点を伺つておきたいのは、予算が法律を無視してつくられておる。すなわち明日あたり出されるというこの法律が通過しなければ、今編成されておる予算は意味がなくなつてしまう。国会できめた法律に準拠して予算が組まれなければならないのです。ところが法律はあとにして予算が先にできるということ、大蔵省の官僚の考え方だけでやつて、国会できめたこの法律案をあとにするという考え方は、新しい憲法に沿わないのではないかと私は思いますが、副総理はどういうふうにお考えでございましようか。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 これは従来の慣例によつたものでありまして、従来も法律案と同時に予算が組まれておる場合はたびたびあるのでありまして、その慣例によつただけであります。特別に新たなやり方をやつておる次第ではございません。

倉石忠雄自由党

○倉石委員長 吉川君、お持合せの時間がなくなりました。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 委員長の注意がありましたし、私はこのそれぞれ趣を異にした、内容を異にした法律案が一つにまとめられて提案された場合、国会においてはこれをわけて審議することも自由だと思いますので、これについてはこれ以上お尋ねいたしません。それは国会自体の自由になし得ることと私は考えております。  次に、簡単なお答えでけつこうでございますが、吉田首相はときどき知事の官選を唱えておいでになります。これも私は憲法第九十二条から九十五条、あるいは地方自治法第一条等を考えますと、総理のお考え方というものが一体どういうところから出ているのか、その根拠がわからないのです。そこで府県というものは一体、地方公共団体すなわち自治体なりやいなや、この問題について副総理の御所見を伺いたい。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 地方自治法の規定によりますと、府県は現在普通地方公共団体ということになつております。なお知事の官選のことにお触れになりましたが、これは地方財政がだんだんに膨脹して参るその一つの原因が選挙制の知事ということにあるのではないかという考えから、官選論をされたことがあるようでありますが、この問題は地方自治制度の根本に触れる重大な問題でありますので、政府としましては、地方制度調査会の答申をまちまして、慎重に決定いたしたいと考えております。今のところまだ具体的に考えておりません。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 自治体でございますね。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 地方公共団体でございます。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 そういたしますと、副総理のお答えでは自治体でございます。そうすると、府県が自治体ということになれば、知事の官選ということは筋が通らないのであります。やはり公選なんです。ただ地方財政の観点からそういうことをおつしやるということは、これは筋が違うのです。地方財政の立場から、金がかかつてしようがないというならば、選挙で金がかかるというなら、金のかからない選挙法をつくればいい。もともと選挙費用というものはマル公がきまつているはずなんです。だから、それ以上の金のかからないような選挙をやらせることに手をつけて行かなければならないので、金がかかるからといつて、基本法にさからうような措置をとつて行くということは、地方行政を混乱させるだけでございます。副総理もそうお考えだろうと思いますが、どうでございますか。今後選挙に金のからないようにやる。そうすれば今度のスキャンダルだつて出て来やせぬですよ。そういう点にひとつ御配慮をいただいて、自治体は自治体として伸ばして行くような御心配をいただかなければ、いつまでたつても日本の政治はよくならないと思う。同時に、地方財政も健全な状態にはならないと思うのですが、それについて御所見を伺いまして、私の質疑を打切ります。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 知事の選挙そのものを私は言うたのじやないので、公選による知事にからんで財政が膨脹しておることは事実であります。これはまた知事公選制度に伴う弊害の全部じやない、一部でありますが、いろいろな点から総理が官選の方がよくないかという意見を、どこかで述べられたことが新聞に出たのですが、これはまだ政府の意見としてきまつておるわけではございません。

倉石忠雄自由党

○倉石委員長 岡良一君。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 私は、今月の一日から始まりましたこの予算委員会の最近までの会議録を検討いたしました結果、政府の施策について幾多納得いたしがたいもの、不分明なものを発見いたしたのでありますが、時間の制約もありますので、今日はわれわれの最も大きな関心を注いでおりますところのわが国の防衛の問題並びに社会保障の問題について、政府の御方針を承りたいと思うのであります。ただ残念なことには保安庁長官がお見えになつておられませんので、防衛問題につきましては、副総理から、特にこの問題とわが国の主権との関連ある問題について、責任ある言明を得たいと思うのであります。  この会議録に徴しますと、吉田総理大臣あるいはまた木村保安庁長官のわが国の防衛に対する政府の根本的な考え方は、こういうふうに要約されるのであります。すなわち、独立国日本には当然に自衛権が存在する、自衛権を有する以上は当然に自衛力を保有し得る。ただこの自衛力が他国を攻撃し得るような総合的な戦力となることは悪法が許さないし、国力もまたこれに伴わないのである。であるから、戦力に至らざる範囲においては、自衛力の漸増をはかることが必要である、これが保安庁長官あるいは総理大臣の防衛に関する御方針の、いわば要約された結論となつておるのであります。そこで副総理にお伺いいたしたいことは、この政府の自衛力を主張される大前提として、わが国は独立国である、それでは一体、今日のわが国が真に現実の姿として実質的に独立を完成しているかどうか、この点についてお伺をいたしたいのであります。と申しますのは、なるほど国連の国家の権利義務に関する宣言を見ましても、国連憲章の第五十一条等を援用されておりますし、また平和条約第五条を援用されてはおりますけれども、そうしてまたこれらの諸条約と宣言等においては、独立国には集団的なまた個別的な防衛の権利が固有なる権利としてうたわれてはおりますが、しかしこれらの宣言なり条約なり主権に固有なる権利としての防衛の権利というものは、主権が独立をしておるということを、いずれも大前提としていることは御存じの通りなのであります。ところが、たとえば今度の国会における施設方針演説において、総理大臣は、米国が財政緊縮方針に基いてその駐留軍漸減の希望あるに基いて、来年度においては国家財政を勘案して保安隊を増強する方針であると言つておられる。海外派兵を縮小しよう、そうして国民の負担を軽減しようというのは、アイゼンハウアー氏が大統領に立候補されたときにおける選挙の公約である。この政権がこの公約を実現に移さんとする結果が、極東地域における兵力の徹収という現象となり、その結果が、うらはらの関係において、わが国の本年度の予算においては保安庁費が百七十億も増額となつている。このことは、木村長官も二月五日に、中曽根君の質問に答えて、アメリカ駐留軍の漸次の引揚げに対処いたしまして、一種の漸増計画は立てねばならないと言つている。長期の計画は各種の条件よりして立て得ないといたしましても、二十九年度における増強計画は、駐留軍の引揚げに即応して立てねばならないということを言つておられる。こういうことになりますと、内閣のこの重要な政策執行の裏づけである予算の編成というものが――憲法には、政府が予算を作成し、これを国会に提出をすると、こういう重大な任務が明らかに規定してありますが、この予算の作成に関して、現内閣の予算の作成は、こうして第三国の意思に拘束をされているということがはつきり言い切り得るのではないか。このようなことでは、日本の国が完全に独立した主権国家として、自衛権なり自衛力なりを云々し得るだけの条件を満たしておらないのではないか。この点を私どもは非常に疑問に思うのでありますが、副総理の明快なる御答弁を願いたい。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 日本が、日本の防衛に関しまして、アメリカとの間に日米安全保障条約を結んでおることは、二つの主権国が締結した条約でありまして、その条約が日本の主権を侵害しておることは少しもございません。その日米安全保障条約の中に、日本が防衛力を漸増するということを書いております。認めておりますので、日本の国力の許す限りにおきまして、日本の防衛力を増強して行くことは、これは一つの約束に類するものであります。アメリカが財政の必要から日本に駐留する米軍を漸減しようとしておることも、これももつともなことであります。それに対処いたすべく日本が防衛力の漸増を、国定生活を低下させない範囲において考えて行くことは、少しも日本の、主権の制約にはならない、政府はそういう立場をとつております。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 私の質問の言い方が悪かつたのか、副総理の御答弁は少し的がはずれておると思うのでありますが、私は現実に日本が主権国家としての完全な実体を備えておらないのではないか、従つてサンフランシスコ平和条約は、日本の独立へのスタート・ラインではあつたとしても、まだ日本は独立国、家としてのゴールに入つておらないのではないかという点をお尋ねしたのであります。その点について重ねてお伺いいたしますとともに、今の副総理の御発言について重ねてお伺いをいたしますが、それでは、日米安全保障条約はなるほどいろいろ規定を設けておりますが、私どもがこれを拝見いたしますと、日本の受諾すべき義務といたしまして、基地施設の提供あるいはまた演習や駐留に伴う技術的な問題についての義務は、義務づけられておりますが、自衛力の漸増については前文に明らかにこう書いてある、「直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」「期待する。」とこう書いてあるのであります。すなわち防衛力の漸増に関しては、わが方は道義的にその期待に沿うべきであるとはいたしましても、それはあくまでもわが方の自由意思に基く任意の漸増でなければならない。しかるに、たとえば最近政府の方でもその調印を急がれておるMSA五百十一条にも「米国が一方の当事国である多辺的又は双務的の協定又は条約に基いて自国が受諾した軍事的義務を履行すること。」こう相なつておる。こうなりますと、当然相手国の意思によつて日本が防衛力漸増の義務を負うということに相なるのであります。たとえ日米当事者間にどういう了解がかりにあつたといたしましても、MSAを受諾した瞬間に、わが国の防衛力漸増というものがアメリカに対する義務行為と相なつて来る。私どもは詳しい国際公法上の問題は知りませんが、外務政務次官もおられますので、あわせて補足的に御答弁願いたいと思いますが、国際公法上他国の干渉を排除し、進んで自国の対内及び対外事項をみずから処理することが、主権国家の建前とされておる、こういうことが国際公法上の常識となつておるようであります。政府も御承知のことであろうと思うのでありますが、このことは国連の国家の権利義務に関する宣言の冒頭においても、他国の命令を受けず、自由に一切の法律的権能を行使する権利をもつて主権の第一義的な本質と述べておる。ところが自国の運命にかかわるようなこういう重大な防衛の問題について、日本が第三国に対する義務としてこれを漸増しあるいは急増するということになれば、これは当然国際法上の主権国家たる概念とはおそろしく違うものにもなる。また国連の国家の基本的な権利義務の宣言第一条にも大きくもとることになると思う。そういう意味において重ねてお尋ねいたしますが、わが国の今年度予算編成の過程に徴しましても、はたして日本が真に独立せる主権国家としての正しい道を歩んで来たものであるかどうか、こういう事実に照しても、わが国が真に自衛力なり自衛権について論じ得るだけの成熟した条件を持つた主権国家であるかどうか、この点についてあらためて副総理の御見解を伺いたい。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 今前文をお読み上げになりましたように、日本の防衛力の漸増ということが条約上の義務ではございません。ございませんが、漸増することを期待しておるという条文を日本が認めておるところに、道徳上の義務ともいうべきものがあるのでございまして、これを履行することは日本として当然でありますが、しかしいかに漸増して行くかということは日本が自主的にきめることでありまして、二十九年度の予算編成にあたりましても、防衛費の点につきましてアメリカあるいはその他の国のさしずによつて増減するのでは少しもないのでございまして、あくまでも日本の国力の許す限り、財政の許す限り自主的に計上いたしたような次第であります。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 ただいまの副総理の御答弁につきまして、同様なことは外務大臣も武藤君に対する答弁の中にも言つておられる。日米安全保障条約に基く期待をわれわれは履行するのである。従つてMSAの第五百十一条における軍事条項は、決して義務として強制されたものではない、こういうふうに言つておられますけれども、しかしながら一方は期待をするというのである。あく衣でも副総理の指摘されるような道義的な建前であるのでありますから、防衛力の漸増はわが方の自主的な任意の形において進められて行く。一方においては、義務として両当事国の間に協定、調印をされるという事態になれば、このことは当然第三国の意思に強制された義務行為となる。これはだれが見ても明らかなことではないかと思いますが、この点につきまして問答を重ねても平行線になりますから、重ねてお尋ねいたしましたわが国が真に独立国としての実体を備えておるかどうかという点についてお伺いをいたしたいのであるが、たとえばわが国は、一衣帯水の間の、しかも近代戦に耐え得るような強大な軍事力を持つておる中国やソビエトとの間は、いまだに依然として戦争状態にあり、占領、被占領の関係にある。日本の経済自立の生命線と政府みずからも言つておられるところの東南アジア諸国や、ビルマやインドネシアあるいはフイリピン等、これらの国々との間には、いまだ賠償問題の解決がついておらない、これらの国会は日本との講和を拒否しておる。韓国との国交回復すら自力においてはこれを進めることができなくて、アメリカのあつせんにまたなければならない。沖繩は永久統治である、こう声明されても手の施しようがない。このようにお膝元のアジア地域においてさえも、わが国の主権の正常な発動、自由な伸長というものがまつたく抑えられておるというのが現実ではありませんか。こういうような姿で、はたして日本はほんとうに独立した国家の姿である、日本は平和条約を結んだ独立国駅である、こうあえて仰せられるのであるかどうか、この点について重ねて副総理の所見をお伺いしたい。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 法律的には日本はりつぱな主権国家であるのであります。ただ今お述べになりましたのは国力の問題、完全な主権を持つた独立国家でありましても、国力が足りない場合、これは多分に環境にもよりその対象にもよるので、イギリスにアメリカの軍隊がとどまると同じような意味におきまして、日本の環境において日本の防衛を全うする意味で、条約に基いてアメリカの軍隊が駐留することは日本の主権とは関係がない、ただ力の点におきまして日本を防衛するだけの十分な力を持つていないということにおいては同じであります。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 副総理の御答弁は、やはり依然として私のお尋ねしたいポイントをはずれておるようでありますが、なお今申し上げました諸点について、中国やソビエトあるいは東南アジア諸国との国交の調整あるいは賠償問題の解決等については、外務大臣の御出席があればなお具体的な政府の御方針を承りたいと思つておりましたが、御出席もありませんので、この際一言お伺いをいたしておきたいのは、昨日の夕刊を拝見いたしますと、あのベルリンにおける英米仏ソの四箇国外相会議の結果として最終コミユニケの中に、来る四月二十六日ジユネーヴにおいて朝鮮の統一、インドネシアの休戦、アジア地域における緊張の緩和、また平和の回復に関してこれら四箇国のほかに中華人民共和国、朝鮮人民民主共和国、韓国並びに朝鮮動乱に国連軍の一翼として派兵した国々のうち、希望する国国の代表が集まつて、如上申しましたような、いわばアジアの平和回復に関して協議をする。こういうようなことが発表されておるのでありますが、われわれは平和な朝鮮ができ、朝鮮が民主的な朝鮮として統一されるということは、安全なる日本の平和と至大の影響のあることは言うまでもないのでありますが、一体このような会議が今や四月二十六日には開催されようとしておる、これに対して政府といたしましては、何らか積極的な発言権を確保するということは当然なことではないかと思うが、この点についての政府の御方針を承りたいと思います。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 ただいま岡さんがおつしやいます通り、四月二十六日からジユネーヴで会議が行われることになつておるのでありまするけれども、しかしこれは朝鮮及びインドシナにおける軍事行動の跡始末、これを、終焉せしめるその措置を討議することを目的としておるようであります。従いまして招請国である四箇国は、日本の招請ということを予定しておらないのであります。しかし日本としては、極東に関することでありますから、重大なる関心を持ち、注意を怠らないつもりであります。しかし先ほど申しましたような趣旨の会議でありまするので、極東における経済の会議などと違いまして、そうした軍事行動に関しましては、直接関与しなかつた関係でありまするから、ただいまのところは、これに参加をするというようなことは考えておりません。しかし問題の進展に応じましては、十分注意いたしまして、関係国へ中入れをするというようなことはあるかもしれませんが、会議に対する直接の参加ということは、現在のところ考えておらない次第であります。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 それは外務大臣あるいは外務省の重大なる認識下足であると思う。最終コミュニケには、明らかに軍事問題ではなく、朝鮮の統一、アジア地域における緊張の緩和、平和の回復ということがはつきり書いてある。その会議においては、インドシナの問題も議せられるであろうと書いてある。またきようの新聞を見れば、これは朝鮮政治会議のいわばジユネーヴ版であるとも言つておる。しかも今指摘されましたが、たとえばこの問題について、朝鮮政治会議においては、インドはみずから参加することを断つておるという状況になつておる。しかし朝鮮に派兵をした国々は、希望があれば全部参加せしめようというようなこと、中華人民共和国も入ろう、こういう規模において、今コミユニケに明らかにされておるようなそういうテーマをとらえての会議であるとするならば、単に軍事的な跡始末であろう、こういうもので絶対にないということは、これは私の個人的な主観でなく、明らかである。従つて当然政府としては、具体的にこの会議に発言権を要求する、これくらいの見識と努力があつてしかるべきであると思うのであるが、この点は国の最高の政策にかかわる問題であるから緒方副総理の所信を承りたい。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 政府の態度は、先ほど申しましたところで尽きておると思いまするが、岡さんの御説は御意見として拝聴いたしておきます。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 それは私がちやんとお断りいたしましたように、別に私の意見ではないのです。少くとも昨日中央各社の夕刊紙がその最終のコミユニケとして発表しておるものが正しい。それは明らかに今次官の仰せられたような内容のものではない。軍事的な行動の跡始末ではない。もつと積極的な、建設的な、アジアにおける平和をいかにしてつくろうか、これを利害関係のある国国が話合いで何とか話をつけたいという、その意図がはつきり出ておるのであります。でありまするから、この点はもう一度十分にそのコミユニケを御検討いただいて、政府としての明確な責任ある御答弁をいただきたいと私は思う。  一応そういうことでありまするから、次に移りますが、これも緒方副総理にお尋ねいたします。私は防衛の問題と日本の主権にかかわる問題として、以下二、三点お伺いいたしたいのでありまするが、今回政府は保安庁法を改正して、自衛隊が直接侵略に対抗し得るものとしよう、こういうようなお考えのようである。そこで私どもも、もちろん願わないことではありまするけれども、自衛隊が直接侵略に対抗しなければならないような、そういう事態がかりに起つたとき、わが国の自衛隊は、先般成田君に対する木村保安庁長官の答弁によれば、いわば波打ちぎわであるとか、あるいはまた落下傘によつて降下した、日本に侵略の意図を持つ武装軍隊というものに、あるいは海外には出兵をしないが、多少は日本に近い海域において行動するであろうということを言つておられる。しかしまたそのときに是認されたように、今日の戦いというものは、いわば攻勢防禦と申しましようか、先制作戦と申しましようか、やはり日本を侵略する意図をもつて武装した軍隊があるいは発進をして来る基地をたたかねばならないということは、当然のことである。これなしには、いかに直接の侵略に対抗し得るということが自衛隊の任務となつても、有効に対抗し得ないことは当然である。そこでこういう任務は一体何人が持つのであるかということについては、木村保安庁長官は、これはアメリカの海軍なり空軍の力がこれを分担する、こういうふうな御答弁をしておられるのです。  そこでお尋ねしたいことは、こういう事態になつて来れば、当然アメリカの海空軍とわが方の自衛隊というものは非常に緊密な共同作戦を遂行しなければならぬ。軍事行動の変化に機動的に応じたところの、きわめて吻合した共同作戦を遂行しなければならぬことになる。そうなりますると、アメリカの海空軍と日本の自衛隊というものは、当然一本の統帥権のもとに統一されなければならぬ。そういうような事態が考えられるのでありまするが、不幸にしてかかる事態が起つたときには、日本のこの侵略に対する対抗措置を最も有効に遂行するがために、アメリカの海空軍と日本の自衛隊とが共同作戦を遂行する、その場合における一本に掌握された統帥権は、一体どういう形において何人がこれを掌握するというふうにわれわれ誓えていいのであるか。この点について、これは日本の主権にかかわる問題でありまするから、副総理の責任ある御答弁を願いたい。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 そういう場合が万々一起りました場合におきましては、アメリカと日本とが独立国として平等の立場におきまして、つぶさに協商を遂げて、そうして連合軍の形においてその統合した指揮官を選ぶ場合があるであろうと考えます。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 それでは外務次官にお尋ねをしまするが、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定第二十四条には防衛措置としてこういうことが書いてある。「日本区域において敵対行為又は敵対行為の急迫した脅威が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府は、日本区域の防衛のため必要な共同措置を執り、且つ、安全保障条約第一条の目的を遂行するため、直ちに協議しなければならない。」と書いてあります、そこで今申しましたような、これはきわめて不幸な事態ではあり、またわれわれはこういう事態が起らないことを衷心から希望はいたすものでありまするが、こういう事態が万一にも起つた場合には、この二十四条に基いて両国政府が協議をする。今緒方副総理はそのように申されましたが、そのことは、この防衛措置と称して行政協定第二十四条に書いてある規定が行われるという意味に解していいのでありましようか。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 その通りです。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 私がこの点についてこうして少し執ようにお尋ねをいたしたいことは、実は万一にもこういう事態が起るといたしますと、それは日本の国家の状態というものはまつたく非常の事態になつて来る。日本の立法権なり司法権なり行政権なり、憲法に保障された日本の権利なり、また生命、財産というものまでも非常な規制を受け、拘束を受け、制限を受けざるを得ない事態になつて来る。この場合において結局規制し、拘束し、制限するものが当然これらの侵略軍に対する対抗軍隊の最高の指揮官ということになり、これがもし外国の軍隊の指揮官ということになれば、たちどころにわが国の主権とその独立というものは放棄する結果となるのであるが、この点について協議した上できめよう、こういうのんびりとしたことで一体いいのであろうかどうか。この点については、少くとも政府としても保安隊を自衛隊に改称し、直接侵略に対抗し得るのである、このような改正をまでもいたさんとされるならば、この最も主権にかかわるポイントについて、閣内においての何らか意思の統一なり思想の統一がなければならないと思うのであるが、明確にその点をお聞かせを願いたいと思います。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 今の御質問は、共同作戦についても事前にあらかじめ打合せがあるべきだということのように承りましたが、そういうことも、環境の変化に応じまして逐次行われることであろうと考えております。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 そういうことを予定して、日常何か共同で演習をする場合にどうかということをお尋ねしておるのではないのです。まことに不幸なことではあるが、万が一にもそういう事態になつたときにほんとうに武装をして、日本を侵略せんとするそういう部隊と、日本の自衛隊なりアメリカの海空軍が一体的な作戦行動をする場合、その作戦の指揮をとるものは一体何んであるのか、もしこれが外国の司令官であるということならば、これは日本の主権にかかわる一大事であるが、保安庁法の改正をあえてしようとする政府ならば、従つてこの点についてわれわれの納得のできる構想をお持ちではなかろうか、こうお尋ねをしておるのであります。あわせて御見解を承りたい。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 それは主権侵害ということになるとは考えておりません。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 非常に私ども遺憾な御答弁であると思う。言いかえれば、そういう点については政府としても何の御用点も定見もない、こういうふうにおつしやるということは、私どもとしてはほんとうに遺憾にたえません。  重ねてお尋をいたしますが、今日本の現行法規を見てみますと、こういうような事態に関しては、警察法の第六十二条以下のいわゆる同次非常事態というものがある、内乱であるとか騒擾であるとか、重大な災害が起つたときに、治安を維持するがために、国家非常事態を国家公安、委員会の勧告によつて内閣総理大臣は布告することができると書いてある。そういたしますと、日本の警察力というものが日本全域において、あるいはまたその非常事態が宣言された地域においては、これは内閣総理大臣の掌握するところになつておる。こう規定してあるわけなんです。しかしながら警察力は、言うまでもなくこの法律によれば、治安の確保に任ずるとしても、自衛隊は国内における大規模な騒擾等の鎮圧とともに、法が改正されるならば、面接の侵略にも対抗しなければならぬということになる。しかもその指揮がこれまた内閣総理大臣に属する、こういうことに相なりますと、保安庁法改正と警察法の改正とこれを両者合せて考えますと、そういう事態になつたときにおける内閣総理大臣の権限というものは、非常に大きなものになる。私はここであのナチス・ヒトラーの政権獲得の経過を想起いたすのでありますが、一九三一年にあのヒトラーが議会で第一党になつた、次々と絶対的な権力をみずからかちとり、とうとうヒンデンブルグ大統領をたな上げにし、ロボットにし、さらにこれをしりぞけてみずからが総統の地位に上り、国の一切の権力を掌握し、この権力を持つて一切をかり立てて戦争に向つて行く、私どもは今日保安庁法の改正や警察法の改正、これら一連の事実について見ましても、こういう事態を準備するのではないかという懸念を持つのでありますが、こういう問題は、もちろんこれまた政府との間における見解の相違ということになりましようから、私はあえてこの問題に対して深入りはいたしません。  そこで重ねてお伺いをいたしたいのでありますが、ただいまのこの政府の御答弁、緒方副総理の御答弁は非常に不明確であり、むしろ無責任だと思うのですが、こういう事態に立ち至つたときには、やはり日本軍の司令官なら日本軍の司令官に指揮権があるというような点についての明確な規定が、条約なり協定なり法律の上においてあるべきだと思う。こういう点についての御用点があるかないかを重ねてお伺いをいたします。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 そのときの事態によつてかわることでありまして、かりに日本が指揮をとつた結果事実上悪いということもあり得るのでありまして、これまでも主権国で、そういう外国との話合いによつて向うの司令官が出たということもあるわけであります。でありますから、これと主権国の地位というものとの矛盾は何もない。ただそういうことはきまつておるわけではなしに、そのときの事態に応じて決定せられるべきである。しかもそれは、決して主権国の地位を害するものではないということを申し上げる次第であります。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 とにかく私がこういう点を究明いたしますのは、保安庁法を改正し、警察法を改正し等々のいわゆる反動的な立法によつて、いわば権力の集中化をはかり、しかも私どもが指摘しましたような最終の最も大きなポイントにおいては非常にあいまいである。場合によれば、いわば吉の旧憲法における戒厳令にひとしいような状態のもとにおいて、日本国民の基本的な権利なり自由なり生命なり財産なり、日本の立法権なり行政権なり司法権なりまでも非常に大きな制限を受けなければならないという事態において、小瀧さんのお答えによれば、時と場合によれば第三国軍隊の指揮官があるいは指揮をとるかもしれない。実質的に考えたところで、軍事力の優位するものが当然に指揮権をとるというようなことになつては、その瞬間にわが国の独立とわが国の主権が失われる。私どもはそういう観点から、政府のこの一連の反動、特にこれの主権との関連における点をただしたのでありますけれども、政府の御答弁というものはきわめて不明確であり、無責任であり、不分明であるということを私は非常に遺憾に思う。この点についてはまた別の機会にお伺いをいたしたいと思います。  次にお伺いいたしたいことは、特に社会保障の問題についてお伺いをいたしたいと思います。私が考えますに、今日わが国の当面する最も重大な課題は、何と申しましても日本の平和を守るということ、いま一つは国民の生活を貧乏から守ることであるということは、何人も疑いないところであると思う。ところが本年度の予算を見ますと、ありていに申しまして、大蔵大臣は均衡予算と言つておられる。しかしその内容を見ますと、これは防衛費に厚く社会保障制度、生活安定の費用に薄い。その意味における内容については、不均衡きわまる片手落ちの予算であると私どもは思うのであります。これらの点については数字をあげ諸外国の例をあげて、川崎君も、堤君も、瀧井君も政府の所信をただしておられますので、時間の関係もありますから、私はこの点についての数字的な追究はいたしません。ただしかし、政府は今度の国会においては、総理を初め耐乏生活を説いておられる。耐乏生活を説く以上は、やはりその施策の中心を流れる思想は、犠牲負担の均衡ということをモットーとしなければならぬことは、これまた私が申し上げるまでもないことである。この点からいたしまして、特に私は日本の現在における社会保障制度に関連をし、特に緊急を要する問題についての政府の所信を伺いたいと思う。  第一に、わが国の社会保障制度が諸国外に比べて非常に遅れておる。なぜ遅れておるのであるか。なるほどそれには国民所得の関係もありましようし、財政規模の関係もありましようが、機構として遅れておるのは、あの昭和二十五年度以来社会保障制度審議会の勧告がたびたび出ておるにかかわらず、これが具体化されない。単なる局部的な改正にとどまつておるというのは、社会保障制度そのものを総合的に一元的に運営しようという行政権の裏づけを持つ一元的な機構がないということ、これがわが国における社会保障制度の前進の大きな抵抗になつておることは、これは私の一拍するまでもないことである。これは社会保障制度審議会の勧告の都度、特に力点を置いて社会保障制度運営機構の一元化をうたつておるのでありますが、この際、私は思い切つて社会保障制度に関する一切の行政は、これを一本に運営する社会保障省とでもいうような、こういう一元的な機構をつくるべきものではないかと思うのでありますが、この点について厚生大臣のお考えを承りたい。

草葉隆圓自由党厚生大臣

○草葉国務大臣 お話の点まことに望ましいことだと考えます。ただ問題は、社会保障関係の諸制度におきまする内容の問題であります。この点につきましては、年金制度の問題、あるいは社会保険の問題等という多数の関係がありまするために、単に機構の一本化ということばかりではなしに、その内容の統合という問題が中心になつて来る問題だと思います。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 しかしこれは、やはり名は実の賓なりとも申しまして、特に日本のように官庁のセクショナリズムが露骨に現われておる場合においては、実際問題として、機構の不統一ということがその機構にかかわる行政の運営上大きな支障になつておることは、私が一々事例を申し上げるまでもないのであつて、それは厚生大臣のお考え違いではないかと私は思います。せめて現行の社会保険制度だけでも一元化できないでしようか。失業保険や労災保険、健保、国保あるいは厚生年金保険など一本にすべきものと思いますが、その点についての厚生大臣のお考えを承りたい。

草葉隆圓自由党厚生大臣

○草葉国務大臣 これは社会保障制度審議会等で従来強く御要望があつたことであります。従いまして、この一本化の線に沿うような態勢をとつて参りたいと存じまして、今回の厚生年金、あるいは船員保険の問題につきましても、その一つの観点に近寄るという方向をとつて努力をして参つておりますが、それぞれにはそれぞれの歴史と沿革とがありますので、なかなかそれがうまいこと参りかねております。これは実際の問題といたしまして、政府の方針はその方向に参りたいのでありますが、関係者の立場からは必ずしも私どもの考えのように行つて参つておりません。しかし方針といたしましては、お話の通りに、そこへ持つて行きたいと努力いたします。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 今厚生大臣の御答弁を承つておりますると、これは厚生大臣みずから自己の政治力の不足を嘆かれたように思うのであります。これは日経連でさえも要求しておる。もちろん被保険者である労働組合も要求しておる。輿論が要求しておるにもかかわらず、なかなかそうは参らないということになると、これは厚生大臣の政治力の貧困を物語ると言わざるを得ない。われわれは大いに厚生大臣のあと押しをいたしますから、せめてこういう機会に、社会保険だけでも一本に統合していただきたいと思うのであります。  なお次の点は、緒方副総理にぜひ御出席を願いたいと思います。  そこで私は、特に社会保障制度の中でも現行の年金制度が最も遅れており、最も不統一であり、最も不均衡であろうと思うのであります。健康保険制度等については、もう立法段階としては大体において底まで来ておる。労災保険のごときはむしろ諸外国に比しても十分に誇り得るだけの内枠を持つておる。ただ年金制度だけは遺憾ながらまつたく支離滅裂である。そこで私はこの問題についてお伺いをしたいのでありまするが、緒方副総理がお見えになりませんので、おいでになりまするまで、厚生大臣に一言お伺いをいたしたいのであります。  厚生年金保険法の一部を改正する法律案が、社会保障制度審議会のきわめて難渋な審議を経て、その答申したところに厚生省の方でもさらに多少部分的な改訂を加えられて、昨日社会保障制度審議会の諮問に再び付せられておるのでありまするが、私は、この際やはりすべての国民の老後の生活が国の責任において守られ得る方向に、日本の社会保険制度を持つて行くという立場からいたしまして、当然厚生年金保険法は、五人未満のところの労働者でもこれに加え得るのだ、強制加入をもつて加えるというふうにすべきじやないかと思うのです。と申しますわけは、労働者の実数を見ましても、わが国の全労働者の三割は五人未満の事業所に働いておる。その事業所数は全工場の八〇%といわれておる。この人たちが特に待遇においても悪い。その地位においても、永続性がない不安な状況におる。私どもは、こういうような階層こそ厚生年金保険の対象としてかかえ込むことが、今日改正を機会としての大事な一つのポイントではないかと思う。この点についての厚生大臣の御所見を承りたい。

草葉隆圓自由党厚生大臣

○草葉国務大臣 この点は、お話の通り、たいへん必要な点だと考えております。ただ今回の改正にあたりまして、この問題を相当深く研究いたしますると、五人以下の場合におきましては、御承知のように、実態を把握することがなかなか困難であります。かつまた移動性がはなはだしい関係等があります。この資金計画等におきましても、現在の段階におきましてはなかなか見通しが困難でございます。こういう関係から、今回の改正案の中には取入れることができなんだ状態でございまするが、この問題は今後とも研究を進めて参りたいと存じます。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 いずれ厚生年金保険法の一部を改正する法律案が国会に提出されましたら、当該委員会で御意見も承り、また質問いたしたいと思いますので、この際は大蔵大臣にお伺いをいたします。  実は、これはその都度大蔵大臣にお願いをいたしておる問題でありまするが、今話題に出ておりまする厚生年金の積立金の問題です。厚生省からもらいました資料によりますると、昭和二十八年度では、この積立金が厚生年金保険だけで八百五十七億ある。その利子が四十一億ある。昭和二十九年度の予算においては千百八十四億、利子が五十四億。実に厖大な積立金になるのであります。この積立金は、現在いわば大蔵省の預金部の資金として預託されている。従つてこれは大蔵省のいわばお考え次第で、地方債の買入れとか、その他いろいろな資金にまわされておるのであります。しかしながら、これは厚生年金保険法という法律によつて、労働者の零細な賃金の中から、いわば義務的に、強制的に積み立てられたものであります。これが今年度は二十五億勤労者住宅の資金として放出されている。来年度は三十五億を住宅資金として放出することになつている。五十四億の利子に対してわずかに三十五億しか還元されない。これでは無慈悲ではないか。この資金の本体にかんがみても、もつともつと大幅に労働者の福祉に還元すべきものでなかろうかと私は思うのでありまするか、この点についての大蔵大臣の御所信を承りたい。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 厚生年金の積立金は、財政的な見地から、国の財政資金の効率的運用をはかりまするために、資金運用部で統一的に取扱つておることは、岡さんの今おつしやつた通りであります。けれどもその運用にあたりましては、勤労者住宅の建設とか、そういつた厚生年金の制度の本旨に沿うよう今後とも留意して参りたいと実は考えておる次第で、今後とも十分御期待に沿ひたいとは思つておりますが、全般としての財政的な効率的運用をはかることは、大蔵省に課せられた任務でもございますので、その点で漸増して参りたいということで御了承願いたいと思います。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 従来の取扱いとすれば、各省の余裕金等は一応大蔵省の資金運用部へ入るということはございますが、ここ一両年郵政関係の資金にいたしましても、あるいは児童措置費にいたしましても交付金からはずれるとか、いろいろな形において、やはりある特定の目的にこの資金が活用されようというような傾向もあるように思う。特にるる申し上げるまでもなく、この年金がかように零細な労働者のポケットから出た積立金であり、利子にも満たないものがわずかに住宅の資金に充てられているということでは、私は納得ができない。何も今一どきにこれを別途に基金制度でも設けて、全部福祉方面に還元せよというのではありません。また一方一つの年金、基金をつくつてみたところで、それを全部福祉に還元せよというのではないのです。それはやはり長期債なり短期債なり地方債なりに行つてもいいでしよう。しかしある部分はこれをやはり福祉に還元する、そういう民主的な運営の可能な、従つて労使の代表なりあるいは関係官吏なりが加わつて、これが運営の最高の意思決定機関として運営が民主的にされて、これを積み立てて行く、労働者諸君の福祉にもできるだけ大幅に還元をされる、こういうようなことぐらいは、私は政府としてされてもよいのではないかと思いますが、この点重ねてお伺いをいたします。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 こういう資金は、最も安全確実に国家的なために出さなければならぬ点もございまするので、そういつた点の考慮もいりますが、しかし岡さんお話になつたように、この年金制度のできた趣旨からみて漸次これを増額して参つてその方面に入れる、これはきわめて妥当な考えと思いますから、明年度以降なおひとつ十分考えて、御趣意に沿うようにいたしたいと思います。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 もう一点だけお願いいたします。もちろん私は別にこれがむだに浪費をされる、不健全な投資をされるということは歓迎をいたしません。ただしかし、要望しておる向きがあるわけなんです。それは、住宅の問題にしても、あるいはまた厚生年金保険の保養病院にいたしましても、老人ホームにしても、あるいはまた公益質屋の運転資金にしても、労働金庫のそれにいたしましても、やはりいろいろ福祉に還元する道があるのであつて、こういう点は将来十分御考慮願いたいと思います。  そこで副総理がお見えになりましたのでお伺いします。私は先ほど来わが国の年金制度についてお伺いをいたしておるのでありますが、特にこの日本の年金制度は、諸外国の立法例に見ましても、非常な不均衡である。これを恩給と厚生年令に比較いたしましても、その国庫の補助率が、恩給ではほとんどまるまる、百パーセントに近いかと思えば、厚生年金では、労働者の場合には二割、一側、今度、の改正では主として一割五分になつている。あるいは給付の資格にいたしましても、厚生年金ならば一十年、恩給ならば十七年、あるいは支給開始年齢にしても、恩給ならば四十五歳、一生年金であれば、これが五十五歳である。こういうふうにあらゆる条件が非常にでこぼこである。これを私はやはり一本に地ならしをして行くということは、日本の社会保障制度の前進という立場から不可欠な問題であろうと信じておるわけなんです。これは私だけではなく、昨年の十二月十二日の社会保障制度審議会は、このことを心から政府に勧告しておられる。そこで私はお伺いをいたしたいのでありますが、昨年の十一月に人事院が鷲見を提出をいたしました、国家公称負の退職年金法案、少くともあれが制度化されるということになりますると、公務員なり、雇用人なり、また共済制度なりあるいは恩給法なりによつて、老後なり廃疾なり遺族なり障害なりの手当が支給されている一群の人たちには、年金制度というものが一応均衡化されるということになります。従つてこれは、関係労働組合等も非常にこの立法化を、要求いたしておるのであります。政府は一体これを本国会に御拠出になる御意図がおありになるかどうか、この点をひとつ承りたいと存じます。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 人事院の研究した結果につきまして、政府で慎重に今検討しておりますが、今度の国会にそれを法律案として提出することは見通しがついておりません。

倉石忠雄自由党

○倉石委員長 岡君、申合せの時間が来ております。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 なお関連してお伺いいたしますが、十九日の日に衆参両院人事委員会の理事会の懇談会で、浅井人事院総裁から次のような言明があつた。それはかねて公務員諸君の大きな関心事でもあり、当国会もすでに四百に近い請願を受けております地域給の問題でありますが、地域給の勧告については遠からずこれをいたしたい、諸般の情勢を考慮した上でその実施を決定いたしたい、勧告したい、こう言つておりますが、これは今も申しましたように、公務員諸君の非常に大きな希望であり、国会自身もやはりたくさんの請願を受けているのでありますが、はたして勧告がありましたら、政府としてはこれについて必要なる予算措置、財源的措置を講ぜられる御意思があるかどうか、この機会にあわせて公務員の処遇の問題に関連してお伺いいたしたいと思います。

小笠原三九郎自由党大蔵大臣

○小笠原国務大臣 地域給の問題は、かねて私どもはできるだけ地域給をなくしたいという線に持つて行きたいという考えを持つており、人事院もまたさように考えているのであります。しかしながらなかなか複雑な問題もいろいろございますので、なお結論に達しておりません。  それからこの予算に盛るかどうかというお話でございますが、本年はこの予算で五分ないし一別の物価下落を見込んでおりますので、いわば実質賃金の増加を見込んでおりますので、さような措置をとる考えは、目下のところ持ち合せておりません。

岡良一日本社会党(右)

○岡委員 実は私は、何も地域給に対してどういう御方針をお持ち合せかということをお聞きしたのではない、現在支給されているものについて非常な不均衡がある、これが是正は、廃止するしないにかかわらず、前提としていたすべきではないか、こういう観点からお尋ねをいたしたわけでありますので、そういう無慈悲なことをおつしやらないで、これは全国の公務員の非常な期待を持つている問題でありますから、何らかの形で善処を願いたいと思います。  以上私の質問を終ります。

倉石忠雄自由党

○倉石委員長 岡良一君の防衛問題の質疑に関連して、山本勝市君より質疑の申出があります。この際これを許しますが、簡単にお願いいたします。山本勝市君。

山本勝市自由党

○山本(勝)委員 防衛に関する問題に関連いたしまして、一言お尋ね申し上げます。  情報の伝えるところによりますと、今朝六時ごろに済州島の付近で、わが海上保安庁の監視船「さど丸」が機銃掃射を受けた上に、暴力をもつて拿捕されたということが伝わつておりますが、この際関係当局からその実相をできるだけ詳細に御説明いただきたい。またこれに対してどのような処置をとられたか、またとろうとしておられるか、これまたそれぞれの関係当局から御説明願いたいと思います。

山口伝海上保安庁長官

○山口(伝)政府委員 お答えを申し上げます。  巡視船「さど」の連行事件でございますが、巡視船「さど」は、二月十六日十時門司を出港いたしまして、済州島西方の特別哨戒に従事いたしておりましたが、今朝六時三十分農林漁区二百九十四区中ほど、すなわち済州島から見ますと、西南西方約五十海里の地点でございますが、その地点におきまして韓国の警備艇P三八号、これは韓国の沿岸警備隊の船と思われますが、これより銃撃を受けました。さらに横づけを要請されて、七時ころ横づけをいたしまして、「さど」の船長並びに機関長は警備艇に移乗して、先方との間に会談をいたしましたが、向うとしては「さど」を連行する旨発言し、種々交渉いたしましたが、翻意をいたしませんで、八時先方の警備艇の乗員七名が「さど」に移乗して参りまして、「さど」の乗組員二十名を先方の警備艇に移乗方の要請があつたわけであります。八時二分ごろ「さど」の乗組員に対して向うが後甲板に集合を命じました。そこまでの報告がございまして、それ以来「さど」からの通信は絶えたのであります。たまたまその付近に当方の巡視船「くさがき」がおりましたが、これはこの通報を受けまするや、ただちに現場へ直航いたしまして、八時十五分ちようど先方との間六海里程度の距離に、このわが方の「さど」並びに向うの警備艇を視認いたしました。八時三十九分「さど」が針路約九十度をもつて済州島の方へ向つて連行されつつあるのを現認いたしたわけであります。このくさがきは九時五分、これも小銃二発の射撃を受け妨害を受けましたが、九時十五分なおこれに追尾して折衝をいたしましたが、警備艇からは応答がなくて、遂に折衝はこれ以上不可能と認め、九時四十五分、第七管区海上保安本部長――これは門司に駐在する地方の出先機関の長でありますが、この指令によつて一応現場から離脱いたしたのが、今日まで入つておる報告でございます。「さど」の大きさは四百五十トンであります。本来は新潟の海上保安部の所属でございますが、東支那海の特別哨戒に特別派遣を受けておる船でございます。  これが対策でございまするが、さつそくこの情報を外務省にも入れまして、口頭でまずもつて韓国のミツションに対して厳重なる抗議を申し入れ、船体並びに乗組員の即時釈放等の交渉にかかつていただきました。われわれの方といたしましては、現在の警備の状況は海難が非常に多く、あるいはまた昨今浮流機雷が非常に多くなつておりますが、でき得る限りしぼりまして、現在ではおよそ二十隻くらいの巡視船が、交互に五隻程度現場に出て、水産庁の監視船と相提携して、現場の操業の維持並びに安全保護ということに努めておるわけでございます。ごく最近にさらに一段とこの警備を効果あらしめるために、門司の七管区の中に両方の合同本部をつくりまして、民間の対策本部とも随時連絡して、一層の効果を期しておつたやさきに、かような不祥事件が起きたので、まことに遺憾に存じております。以上経過を申し上げました。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 ただいま海上保安庁の長官から報告がありましたように、外務省の方に連絡がありましたので、今朝十一時半に奥村次官が金公使を呼び出しまして、とりあえず口頭で厳重な抗議をいたしました。かつ即時釈放を要求したのであります。しかしながらさらに外務省といたしましては、文書をもちまして大臣の書簡で陳謝、即時釈放、損害に対する補償の要求権利を留保する、並びに将来類似事故の発生を防止するよう要求することになつております。なおこれまでの経験から申しますと、ただ先方に申し入れましても、十分なる効果をあげ得ないというような関係もありまするから、でき得れば他の方法についても考えてみたいと目下検討中でございます。

川崎秀二改進党

○川崎委員 関連質問……。ただいまの韓国巡視船の「さど」の捕獲ということは、従来の漁船問題でさえ日韓関係に非常に大きな影響を与えておるのにかかわらず、こういう海上保安庁の巡視船までが実力をもつて捕獲をされるというような事態に到達すると、非常に日韓関係について深い憂慮をしなければならぬ段階ではないかと私は考えるのであります。その意味では、わが国は、独立して以来自衛の措置について、国内をあげての最大の問題になり、今までこれが政治の中心問題として国民に関心を持たれておる。ことに先般の国会において、木村保安庁長官は、中曽根委員の質問に答えて、日本海沿岸における防備態勢は十分か、それは漁船の捕獲などは李ラインを越えた際にときどき起きるだろうけれども、そういうことでなしに、こちらの自衛力に対して自信があるのかというようなことを聞いた際に、木村保安庁長官の答弁は、「お答えいたします。日本の今のフリゲートの乗組員はきわめて志気旺盛でありまして、訓練は非常によく行つておるということだけは、中曽根君に申し上げて御安心を願いたい。」この間約一箇月半ほど前の第二次臨時国会で言つたばかりです。しかるにここに海上保安庁の巡視船が機銃掃射を受けて実力をもつて拿捕される。しこうしてこれに対して外務省はただ一片の抗議だけしか行えない。しかもそれを救援に行つた「くさがき」とかいう船は、これに対して何ら実力的な保衛手段をとつておらぬ。それであなたこれから先、日本の自衛手段を全うすることができますか。  また私は副総理に、日本の自衛力は非常な危機にさらされておるじやないか、これは見のがすことのできない重大問題として、副総理に私は所信を聞いておきたいと思います。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 ただいままで私が確かめたところでは、今朝外務次官が金公使を外務省に招致して問いただしました際に、金公使の手元にも何らの情報が入つていない。どういう理由で、日本の保安隊の所属船を拉致いたしたか、まだ分明いたしませんが、いずれにいたしましても、先般来の漁船の問題等に続きまして、こういう事態が頻発することは、将来さらに大きな問題を引起すおそれがあるのであります。政府としても、この際十二分に慎重に考慮いたしたいと考えております。ただちにこれを自衛力の問題と結びつけるのはどうかと思いまするけれども、日本の自衛についても、こういう問題が将来さらに輪をかけて起ることも予想しまして、慎重に考えなければならぬと考えます。

川崎秀二改進党

○川崎委員 自信があるか、自信がないか。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 自信があります。

川崎秀二改進党

○川崎委員 自信がないでしよう。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 あります。

川崎秀二改進党

○川崎委員 お尋ねいたすことは、きわめて具体的な事項を私はお尋ねいたします。第一の質問は、この拿捕された地点、すなわち済州島南約五十マイルの海上というのは李ラインからどの辺であるか。李ラインをどのくらいオーバーしておるかということが一つ。関連質問で時間がありませんから簡単にいたしますが、第二の質問は、昨年の十一月における内閣委員会並びに水産委員会で、辻政信委員の笠間に対し、すなわち将来朝鮮海峡、日本海沿岸においてはあるいはかかる不祥事が起るかもしれない、そのときに備えて当然巡視船には武装せよということを要求したそうであります。その際における木村保安庁長官並びに山口海上保安庁長官の答弁なるものは、十分にこれを考慮いたします。あるいは、木村保安長官に至つては、それをやりますということであつた。しかるに今日拿捕された巡視船にはその装備があつたかどうか、ないと私は思うけれども、これについて明快なる答弁を求めたいと思うのであります。

山口伝海上保安庁長官

○山口(伝)政府委員 お答えをいたします。問題の起りました地点は、こちらへの報告によりますと、東経百二十五度十五分、北緯二十三度十五、分付近ということであります。なおこの地点に対して先方側では若干済州島寄りだというようなことも申しておりまするので、なお正確にこの地点につきましては目下調査中であります。わが方として今一応入つております地点は、ただいま申し上げた地点で、むろん李承晩ラインの中であります。  次に火器の問題でございまするが、すでに巡視船五十九隻に対しまして火器を装備する計画を先般立てまして、二十七年度において二十六隻、二十八年度、すなわち本年度に二十三隻、合計四十九隻につきましては、すでに基礎工事が全部終りまして、あとは火器をとりつける工事だけが残つております。残りの十隻につきましては、二十九年度に予算を計上して国会に出ているわけであります。このとりつけの工事につきましては、現在のところ十隻程度の予算がとれておりまして、活がつきましてこれを施行することにいたしております。残余につきましても最近の事態にかんがみまして、急速に進めなくちやならぬと考えております。

川崎秀二改進党

○川崎委員 私は、日韓関係が微妙な際でもあり、またこういう質問は、かつて非常に超国家的な意識のもとに行われた、すなわちこういうことがあれば報復しようとか、そういうような意味で申しておるのではありません。しかしわが国は独立国として今日立ち、しかも自衛手段だけは講じなければならぬということは今日国論であります。そのことさえできないということになると、わが国の独立国としての国家の体面というものは、もはや韓国によつて完全にそこなわれつつあるということを立証する以外はないのであります。非常に重大な問題です。ことにただいまの御答弁によると、基礎工事はできておる、あなたの官僚としての答弁としてはいいかもしれぬ。基礎工事はできているけれども、火器はとりつけられない。なぜ火器をとりつけることを怠つたのか。非常に重大な問題であつて、昨年十一月の半ばごろに辻委員が質問をした、それに対する回答は、必ずこれをやります、あるいは考慮します、あなたのは考慮だつたそうですが、木村保安庁長官のは実行しますという話であつたのを、やつていないとすれば、これは政府の非常な怠慢です。中曽根君の問題に対してもこれは大きな食言問題になると思う。今日は造船疑獄その他の問題が起つておるので、こういうものは質問をしてもそう世間ではあるいは注目はしないかもしれぬ。しかし非常に重大な、外交上白街上の問題が起つておるということをわれわれは特に注意を喚起し、ことに最後にもう一問質問いたしたいのは、こういう場合にフリゲート艦の急派、急にこれを派遣するということに対する措置というものはとられたかどうか。またあの辺一帯における防備をするフリゲート艦の平素の配置というものはどういうふうになつておるのか。フリゲート艦は御承知のように十八隻もあるんだ。そして将来日本が侵略を受けるときの自衛手段として、当然いろいろな配置があるでしよう。北海道あるいはその他の地域も重大であるかもしれぬ。しかし現に最も危険に瀕しておるのはこの朝鮮海峡の問題であるのですから、それに対しては相当な防備態勢をしいておかなければならぬ。現実に起つている問題である。それらに対してあなた方はどういうお考えであるか、この際明白に承りたいと思うのであります。

山口伝海上保安庁長官

○山口(伝)政府委員 お答えいたします。今日の段階でフリゲートをただちに出すかどうかということは、これは実は保安庁の所管でございまして、私がそのことにつきましていろいろ申し上げるわけには参らないのであります。もともと海上保安庁の巡視船が日本漁船の安全保護に出動いたしまして、手に負えないということになれば、次の段階にそういうことが相談されるわけでありまして、この点は慎重に考えて参らなくてはならないと思つております。私が直接フリゲートにつきまして申し上げるわけには参らないのであります。

川崎秀二改進党

○川崎委員 そういうことを答弁する海上保安庁長官を許しておいて実際いいのですか。行政の縄張りが違うかもしれぬ。火器の方は向う側がとりつけるんだ、私は知らぬと言う。これは問い詰めればいくらでも問い詰められるが、今日は関連笠間ですからしないでおきますが、実に驚いた答弁をあなたはする。これは重大な問題です。あえて注意をして私の関連質問を終ります。

倉石忠雄自由党

○倉石委員長 安藤覺君。   〔委員長退席、西村(直)委員長代理着席〕

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 日本は明治維新以来、台湾、青島、あるいは日清、日露、満州、支那事変、あるいはこのたびの太平洋戦争というような多くの戦争を経験して参つておりますが、これら一切の戦争の犠牲者に対する政府の心構え。第二点は教員の政治活動及び教育の根本問題に関連しての点並びに政治の論理観について、政府に御所見をただしたいと思うのでございます。  まず第一にお尋ねいたしますことは、政府におかれましては、明治維新以後におけるところの日本の各戦争並びに、ことに……。   〔私語する者あり〕

西村直己自由党

○西村(直)委員長代理 静粛に願います。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 さきの太平洋戦争における直接の犠牲者に対しての根本観念をいかにお持ちになつておられるのか、この点についてまず副総理としての緒方国務大臣並びに厚生大臣から承りたいと存ずるのであります。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 先般の戦争の五後の犠牲者というものの中には、人命に関するもの、財産に関するものがありますが、ただいまの御質問は普通に戦争犠牲者と申しまする公務症を受けた者、または戦死した者などに関するものだと思いますが、これは国力の許す範囲におきまして、政府はこの方面に責任をしわ寄せすることがないようにできるだけ犠牲を補償すべきである、かように考えております。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 私の考え方によりますれば、ただに日清、日露の戦争のみならず、このたびの戦争におきましても、この直接の犠牲者となつたところの兵員将士は、ことごとく国家の至上命令として、そのこと自体が自分でなさねばならぬところのものとして、あえてあの戦場に消えて行つたと思うのであります。しこうしてあの当時におけるあの戦争を起した者に対して、あるいは当時の指導者に対して、あの戦争がよかつたか悪かつたか、その議論は暫くおくといたしまして、将兵たる者はその国家の至上命令に従つて、またその当時の国民道徳として祖国に一身をささげることが無上の尊さである、かような意味合いから戦場の露と消えて行つたと思うのであります。   〔西村(直)委員長代理退席、西村(久)委員長代理着席〕 しこうして今日におきましてはあの戦争は悪かつたのだ、かようなふうになつておりますけれども、あの戦争が悪かつたにしても、この戦場に消えて行つたところの人々の尊き姿というものは、戦争自体が悪かつたことによつて何ら割引されるべきものでもなければ、汚されるものでもないと思うのであります。この意味におきまして国家が滅びてしまつたならばともかくも、内閣がかわつてあの当時の戦争は悪かつたのだと批判をする立場に立つ内閣であつたとしても、国家の生命が依然として今日継続している以上、その国家のためにささげ尽したところの一切の犠牲者に対して手厚くねぎらうべきもろもろの施策が行われねばならぬと思うのであります。このゆえに現に様様な施策がとられているのでありますけれども、しかし今なおその中から多分に漏れている人々のあることははなはだ遺憾とする次第であります。現にあの年金法の適用から漏れあるいは恩給法の適用から漏れる、すなわち恩給法の別表において決定いたしましたところのあの二十三種類の病名からはずれた病で倒れた人々の中において、何ら恩給法の適用も受けず、弔慰金の通用も受けない人が、今なお全国に七万ないし十万を数えるのであります。しこうしてその召集にあたりましては、第一次、第二次、第三次、厳選に厳選を重ねてあらゆる角度から体格検査を行つて、しかも軍隊の重労働に耐え得るからだとして採用いたしているのであります。その結果として入隊し、三脚月、十箇月、一年、二年の後において病を発して倒れた。あるいは肺結核になつた、あるいは栄養失調になつたということの結果ここに倒れた。それはたまたまそのときの、単なる病気のみならず、環境の判断の誤りから軍医がたまたまこれを公務死として扱わないということの結果、今日において何ら顧みられておらない。こういう実情にある者が、今申し上げた数字にも達するのでありますが、これらについて何らか厚生大臣は御考慮に相なつておられまするか、これを承りたいと存じます。

草葉隆圓自由党厚生大臣

○草葉国務大臣 お話の点、まつたく御同感でございます。国家のために戦争の犠牲になつて戦傷病死をされました人に対しまして、国家は、国家の力の許す範囲におきましてその霊を慰め補償をするという線に沿いまして、戦傷病者戦没者遺族等援護法を実施し、さらに昨年八月一日恩給法の一部改正によりまして現在実施いたしている次第であります。従いまして、二十数種の病気以外は非公務として取扱つているではないかというお話でありますが、これは一応多数の人たちを審査いたします場合におきまして、現在の恩給法の付表によります二十三極、これらの病気の場合は、いわゆるフリーパスをする。それ以外は全然公務死と取扱わないかというと決してそうではございません。その時期あるいは病気の状態あるいは勤務の状態、当時の戦闘の状態等を考慮いたしまして、二十三極はフリーパスだけれども、その他のものはその状態に即応して公務死の範疇に入れるというやり方でいたしているのであります。そういう場合におきましても、ただいまお話にありましたように、約六、七万の人たちが非公務死になる情勢でないか。しかしてそのままにいたしておくとまことにお気の毒ではないかという御意見、まことにこれもごもつともだと思います。従いましてこれらの戦死者あるいは戦病死者、非公務死の人に対しましては、近く戦傷病者戦没者遺族等援護法を改正いたしまして、これらの非公務死者に対しましても弔慰の方法をいたしたいと目下準備いたしております。できるだけ早い機会に御審議をいただきたいと存じております。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 まことにけつこうな御答弁をちようだいいたしたのでありますが、先ほども申し上げました通り、国家の至上命令によつて倒れた人人、そうして健康なからだで二回も三回も身体検査を受けて入隊した後において倒れた、この病気によつてなくなられたことはもとよりでありますが、さらには、たとえば兵営内においてたまたまの外出の日に女を買つた、梅毒に感染した、一箇月後には急激に脳梅毒になつて死んだ、たとえばそういうことの場合であつても、あの索漠たる兵営の中において血気盛りの若者を一切の異性から隔離しておいて、当然の要求として女遊びをする、その結果として脳梅毒になつて死んだ。これは当然自己の過失とか何とかいうことでなくして、そうした兵営という特別な環境に隔離しておいたというところにおいて、その責任は当然国家が負うべきじやないか。かような意味において、私は極端な例をとつたのでありますが、でき得べくんばできるだけ範囲を拡大せられて、今御用意くだすつておられるような法案の拡大解釈こそしていただくことを願つてやまないのであります。いわんや肺結核であるとか、あるいは急性肺炎であるとか、あるいは腸チフス、あるいは栄養失調であるとか、ことに栄養失調のごときは、あの戦争最中における激しい行動の中において、軍隊の給与した食糧というものはいや応なしに栄養失調に陥れるべきものであつた。その食糧はだれが給与するのか。国家が給与する。かような考え方においても、どうかできるだけより広くより大きく御解釈くだすつて、たかだか知れた六万か七万の人々であります。その総金額においても大したものではないと存じます。どうかこの点厚生大臣は格段の政治力を発揮せられまして御努力願いたいと思うのであります。いかに緊縮政策によりまして国家財政の均衡をはかりましても、人々の精神の均衡がはかられなくては国は安泰ではありません。特にその点厚生大臣から大蔵大臣にも強き御要望、あられまして御実現願いたいと存ずるのであります。  次にやはりこれに関連いたしましてでありますが、戦没者の遺児でようやく今中学から高等学校へ移るべき年齢期に達したものが相当にふえて来ておるようであります。しかるところ、現在までの遺児に対する奨学資金といろものは、まことにその志望者の十分の一にも当らぬほどのものしかないのであります。先般も某県におきまして遺児の大会なるものが行われました。このときに私もたまたま臨席いたしておりましたが、その遺児たちの中から選ばれてそれぞれが感想発表をいたしましたが、その中にこういうのがございました。私のお父さんは戦争のためになくなられた。お国のためにと言つて私たちを置いて戦争に行かれた。そうしてなくなられた。だがお国からは何も報いていただいていない。それにお母さんが私たちをかかえて毎日々々あらゆる苦労をしておられる。私たちは何とかしてこのお母さんを一日も早く楽にしてあげたいと思う。だが一方私はいよいよ高等学校へ入学の時期も迫つて来て、これに入りたいと思う。だが学校へ入る資金もない。またたとえば、私が資金をもらえたにしても、私が学校へ行つてしまえば、あの苦労しておられるお母さんを助けてあげて、いくらかでも家中全体の生きて行くためのお金をとるということができない。私はどつちの道をとつたらいいだろうかと考え出すと、眠れない晩が幾晩もありますと、十六になる女の子が訴えておつたのであります。こういう感想はこのほかに幾つも発表されておりました。この遺児の奨学資金に対しての当局の――現在まででありません、これから以後における拡大の御方針、これは当然あろうと思います。これについてはどの程度までなされるおつもりか、これをひとつ承りたいと思います。

草葉隆圓自由党厚生大臣

○草葉国務大臣 これは育英資金の中に戦没者遺児の特別のわくを設けておりますのを、年々拡大して参つておりますと同時に、二十九年度のただいま御審議をいただいておりまする予算の中には、一般の未亡人母子家庭、この約七十万のうち三〇%は戦争未亡人であります。その育英資金として一億五千九百万円計上いたしております。従いまして従来の育英資金をさらに上まわりまして、二十九年度からはそれを実施いたして参る。今後お話のようにだんだんと上級学校に進んで参ります率が多くなりますので、これらの資金等も増強いたして参りたいというふうに考えております。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 ただいま一億数千万の資金を出しておると言われますが、それはその通りでありますけれども、しかしその程度ではとうてい十分の一にも当らぬのであります。なおかつ各県において国費の半額くらいはそれぞれ県が出してもおります。それでもとうてい及ぶべくもないのであります。願わくばさらに今後において数段の御努力をせられて拡張を願いたいと思います。  もう一つ承りたいのは、未亡人に限らずあるいは遺児に限らず、夫の戦死によつて一家の生計が支えて行けない。一旦よそにとつぎあるいは養子縁組みし、しこうして三箇月、六箇月の後に不和となりまして、これが元にもどつて来た。そうして依然として夫なきままに、父なきままに非常に生活が困窮しておる。これが一旦よそにとついだことのゆえをもつてあるいは養子に行つたことのゆえをもつて、元に復籍しておつても何らの恩典に浴することができない。このことは今まできめられた法律的にはこれが決して間違いのある処置ではないと思いますけれども、しかし政治的には、また国家の立場からする道義の上からいつては、まことに妥当ならざるあり方だと思いますが、この点について何か御考慮くだすつておられますか。

草葉隆圓自由党厚生大臣

○草葉国務大臣 これは実際上の問題といたしましてなかなか困難な問題だと存じております。一度結婚いたしますると、いわゆる資格を失つてしまうのです。その失つた資格の人に再び資格を与えるということは、その主人が国家公務員として公務死によるにあらざれば資格は再び出て来ないわけであります。従つてなかなか困難です。ただその問題と関連いたしまして、いわゆる新民法と旧民法のかわり目において同様な状態が起つておる。これらの点につきましては、旧民法の場合にその籍を出た場合には資格がなくなる、昭和二十三年二月一日以降の新民法の場合には資格が出て来たという場合がありますので、これらの調節は今後いたして参らねばならないと考えております。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 お言葉ではございますが、一度権利を捨てたということで、法的にはまさにその通りであるかもしれませんけれども、再び復籍という事実によつて権利を取得するという解釈はできようかと思います。何らかそこらに――これは決して数多いことではなし、またそうしたよき解釈をとるということは決して将来に悪例を残すことではなしいたしますので、何らかこの点についてはひとつ特段の御考慮を願いたいと存じます。  以上お尋ねしましたところでございますが、このことはまことに重大なことでありまして、申し上げるまでもなく先般アメリカのニクソン副大統領がやつて参りまして、アメリカが日本に対して犯した大きな過失がある、それは日本の軍隊を解体したことだということを申しましたが、今日本が独立しておるときに、あえて外国の政治家の話を引例する必要もないと思いますけれども、国内にもこの言葉にたいへん共鳴した人があります。しかし私の考え方をもつてしますれば、アメリカが日本の軍隊を解散したことによつて過失を犯したとすることは決して過失ではない、またもし過失であつても、それはきわめて小さな過失だ、ほんとうの過失は、国家のために、民族のために、八千万同胞のためにとして命を捧げて行つた人々が、わずかに七年か八年の時代の相違によつて、しかも国家が革命せられたのではない、国家が滅びて新しい国家が起きたのではない、その国家は連綿として続いておる。その国家のもとにおいてまことに国家から報いられることの薄い姿、そのお葬式をするにも、あたかも死刑囚の遺骨でも引取つて、世間を恥じて葬式せねばならぬような、ああした遺族の姿に置かせた当時の占領政策、今日まであの遺族たちをしてほんとうに石にひしがれた姿に追い込んだことこそが、日本人の国家に対する忠誠心というものに大きな疑惑を与え、懐疑心を持たせ、そうして再び国家のためにという声が起きても立ち上る姿にならない。もし保安庁長官がおられるならお尋ねしたいと思いますが、先ほどの緊急質問におきましても、巡視船すらが拿捕せられる姿になつておる。その巡視船はあるいはこれに抵抗するだけの命令を与えられておらなかつたかもしれない。しかしほんとうに、今日の李承晩ラインというものはどんなに不当なものであるか、そうしてそれに対して直接行動を加えて拿捕するということについてどんなに不当なものであるかということは全国民が知つており、いわんや巡視船の船長以下各海員は知つておるはずである。しかもこれに対して何ら実力行使をもつて脱走するというようなこともせずに拿捕されているという事実は、その根本には必ずやこの問題が横わつておる。この問題とは、ここでなまさか傷ついて国家がどうなるかということよりも、自分たちがどうなるか、国家はそれをどうしてくれるかという心が必ずそこに横わつておる。私はかような意味において、この問題は事小さくして非常に大きな問題だと存じますので、ひとつ特段の御留意を願いたい、かように存ずるのであります。  次に教員の政治活動の問題と教育の基本問題についてお尋ねいたしたいと思うのであります。まず文部大臣にお尋ねいたしたいと存じますが、文部大臣の教育に対する基本的というかあるいは根本的というか、その大臣の御信念のほどを承りたいと存じます。   〔西村(久)委員長代理退席、小峯委員長代理着席〕

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 この法律案は来週早早……。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 いや、法律案じやありません。あなたの教育に対する根本の考え方です。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 非常に漠然としたことでありますが、教育に関係しましては、教育基本法にわが国における教育の基本的な方針が規定せられておるのであります。私はこの基本的な方針に従つてわが国の教育は進められるべきものだと、かように考えております。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 たいへん漠然としたというお言葉でございましたが、なるほど漠然ともしておるかもしれませんけれども、教育の根本問題についてあなたの御所見を承りたいということならば、これは漠然としたものでもない、最も心臓をさした言葉だと思う。それも何ら文教に関係のない方にお尋ねするのならとにかく、時の文部大臣に向つてお尋ねするのに、何でそれが漠然としておるでありましようか。しかし御答弁は、教育基本法にのつとつて云々というお言葉でありましたから、お尋ねいたしますが、教育基本法は現下のわが国として最も適切なる法規である。この法規の精神、各条章はあくまで遵守せねばならぬと考えておられるものと、ただいまの御答弁によつてさように解釈いたすのでありますが、あるいは何か不足の点があり、あるいは不適当な点があるということで、近い将来これを改正しようというようなお気持をお持ちになつておられまするかどうですか、この点をお尋ねいたします。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 お答えいたします。先ほどの答弁は、実は今度の法律案についてのお尋ねと初めから思い込んでおつたものですから、とつさの場合に漠然という言葉を発したのでありまして、たいへん失礼いたしました。  教育基本法は、ただいま申し上げますように、わが国の教育の基本としてその根本的な精神を規定してあるのでありまして、これはあくまでも尊重せられるべきものであります。私どもはこの基本法の精神をますます発揚せられ、また維持せられることを希望しておるのであります。これに対して、これを変更し、また改正するというような考えはただいまのところ持つておりません。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 教育基本法を改正しようというような考えはないという御答弁でありましたが、その教育基本法の条章において、各条章ともきわめて重要なもののみであるとは思いますが、中でも一審の眼目ともなろうかと思われますのは、第一条の教育の目的、第二条の教育の方針等にあろうかと存じます。しかしもとよりほかの条章も、それはいずれも軽重はないのでありますけれども、この目的と方針とを具現するために他の条章は多く存在しておるやに思われるのであります。  そこで政府はこのたび義務教育諸学校におけるところの教育の政治的中立の確保に関する法律案、そしてこれに関連するところの一、二の改正法律案を排出されるやに承つております。来週早々とかいうお話もあるのでありますが、事実そういう運びになつておられますか。そしてその法案の名前は、今私が申し上げましたような教育の政治的中立の確保に関する法律というような名前でありましようか。それには罰則規定もついておるということでありますが、この点はいかがでありましようか。  以上三点についてお答え願いたい。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 ただいま申し上げましたように、来週早々提案をいたしたいと考えております。それから名前は、ただいま仰せになりましたような名前と記憶しております。あるいは今持つておりませんから、字句は一、二間違つておるかもしれませんが、大体それに間違いないつもりであります。  それからもう一点は……。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 罰則があるのでありますか。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 罰則がついた取締り規定であります。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 大臣少しお耳が遠いのでしようか。(笑声)私非常に声を大きくしておるつもりでありますが、私の声が小さければもつと大きくいたしますが、(笑声)今いよいよ来週早々出すということであられ、名前は大体そういうことであると言われ、また罰則もついておるということでありますが、来週早々お出しになるということはともかくとして、名前が教育の政治的中立の確保に関する法律というようなことであり、また罰則がついておるというようなことであるとすると、この点いずれ委員会にかかつて、委員会において十分検討されるでありましようから、当予算委員会においては、必ずしもこれをこまかく承ることがよいとも思いませんので、きわめて簡略に承るわけでありますが、もしそういうことであるとすれば、まことにこれは重大なことではないかと思います。一体政治的中立という言葉、私は教育の問題について知識が浅いせいかもしれませんけれども、これはまことに解しにくい言葉であります。そしてこの解しにくい言葉のもとに相当重い罰則が規定されてあるとすれば、まことにゆゆしいことではないかと思うのであります。たとえば国際間等において、甲の国と乙の国との戦争が始まつた、丙の国がこの渦中に投ぜずに圏外に立つておる、これが中立という、この意味においてなら私もよくわかるのでありますが、日本の憲法下において、現在こまかいものは別といたしまして、大きくイデオロギーによつて、あるいは歴史によつてわかれている政治を、直接扱う政党と言えば自由党から改進党、社会党右派、左派、わが党、共産党に至るまであります。この間におけるところの中立というのは、数で行きますと自由、改進、わが党、社会党左派、右派、共産党、六つでありますから、わが党と社会党右派との町くらいに立つのが中立というふうにも考えられるのでありますが、この剛の両党くらいのところで教育をして行けば中立が保てるというふうな意味になるのですか、(笑声)この点ひとつお教え願いたいと思います。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 法律の題目は、ただいま仰せになりましたような政治的中立という言葉を使つてありますが、これは基本法の第八条の規定に、いわゆる政治教育に関する基本的な原則が規定してあるのであります。その中の第一項には「良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。」こういうことが書いてあります。そして第二項には、学校の教育が特定の政党を支持し、またはこれに反対するための政治教育をしてはならないという規定があります。このたびの法律の政治的中立という言葉は、第二項にうたわれておるような非常に片寄つた教育でない、片寄らない教育、こういう意味でその言葉を使つたのであります。でありますから、その言葉が不適当であるか適当であるかということは別問題といたしまして、その法律の規定の内容にはその点を明らかに唆示しておるのであります。その法律の内容から、政治的中立という言葉はどういうことを意味しておるかということは明瞭になるものと考えております。ところで今特定政党という言葉が出ましたが、今おつしやいました自由党から共産党まで幾つかの政党が現在ある。そのどれかの一つに極端に偏したような教育が行われるということになれば、いわゆる教育基本法にいうところの良識をもつて政治的の主張を判断、批判するところのそういう政治的教養というものが阻害されることになりますから、一つだけに片寄つた主張を子供に植えつける、こういうことはいけないのだ、これを維持することが政治的の中立、こういうふうに御承知願います。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 なるほど教育基本法第八条第二項に「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」ということが確かにきめられてあります。そうするとこれはむしろ今大臣も申されましたが、妥当であるか妥当でないかはわからないが、中立という言葉を使つた。この基本法第八条第二項の意味において申されるならば、むしろこれは実際政治から離れていろという意味のことであつて、中立というような言葉はまことにお言葉のごとく妥当を欠くのではないか、こうした重い罰則のつく法規に対して、大臣みずからも疑惑を持つておられるような、そうした意味合いの文字はお使いにならずに、もつと適切にはつきりとそのものずばりをさすような言葉をお使いになつてはいかがなものでありましようか、この点についてお伺いいたします。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 先ほど申し上げましたように、表題といたしまして、問題を適用する基本的な行為というものは、法律の中にはつきりと規定してあるのでございます。表題は御承知のように非常に長くなるとかつこうが悪うございますから、そこで政治的中立という言集が使われたのでございまして、表題というものでその行為の内容を判断して、それがすぐ罰則に付される、こういうものではない。これは法律の名前でありまして、その中身は、その中の法律の規程としてはつきりと規定しておるつもりであります。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 これは単なる法律の名前であつて云々と言われるのでありますが、名は実の賓なり、実に名は大切なのであります。この法律の名そのものはその内容一切掌握しておるという名前が使われなければいけないと思います。この点はせめて名前だけでももう一度お考え直しに相なつた方がよかろうと存じております。こういった曖昧模糊とした名前をつけることによつて無用な反対論も起きるかもしれません。無用な反対論の結果無用な行動も起るかもしれません。どうか端的なる名前をつけてくだされるように、特に切望いたします。  次にかような第八条二項がある以上は、もうこれによつてこうしてはならないといつてあるからして、また第九条の宗教の事項においてもそうであります。こういうことをしてはならないといつてあるからして、それについてさらにあらためて法案を出して罰則規定を設けるという必要はないではありませんか。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 これは八条の二項についてごらんをいただきますように、基本法の性格として、学校の教育は、政治教育はこういうものでなければならぬ、こういう原則をうたつたのでありまして、八条の二項が直接だれかに対して一定の行為を命じ、あるいは一定の行為を禁止しておるというものではありません。ただ教育の基本原則を示した、こういうことでありますから、これには直接違反とか、違反でないとかいう、正確な意味においては問題はないのであります。これは原則であります。そこでそれをだれかが違反するというか、抵触するような行為をする場合につきまして、もしこれを取締る必要がある場合には別途の立法が必要である、こういうふうに考えます。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 それでは時間もだんだん迫つて参りましたから、一々の一問一答をやめまして、私がずつと申上げまして、それにお答えを願うことにいたします。  まず第一にお尋ねをいたしますのは、大達文部大臣は一体自由党の党員であられますか、どうですか。もし党員でなかつたにしても、自由党の総裁吉田茂さんの首班せられるその内閣にあつて、その指導、指揮を受けて教育行政を行なつておられる。この教育行政は必ずやその教育内容に影響するでありましよう。すなわち自由党的偏向の教育指導となるということは――なるほどあなたがいかにそれこそ中立を保つた教育行政をするとおつしやつても、あなたが自由党の党員であられ、自由党の総裁であられる吉田茂さんが総理大臣をしておられ、しかも最も恐しい任免権を握つておられる総理大臣のもとにあるあなたが教育行政をやつておられる際、しかもやはり党においても政策審議会があつて、そこに堂々と教育政策についての研究がありましよう。それをあなたに行えと言われる。民主主義の政治のもとにおいて、その内閣においては、政党の起案したところの政策にのつとつた政策をとつて行くということが一番正しいことなのです。しかりとすれば、勢いそこに自由党的偏向の教育行政がとられる。またそれが影響して行くということが考えられるでありましよう。この場合中立というのはどういうことになりましようか。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 一口に政治的中立と申しておりますが、基本法八条の規定は、教育はこうだが、政治的に一方に極端に偏した教育であつてはならない、こういうことを言つておるのでありまして、教育とその教育行政あるいは文教政策、こういうものは逢うのであります。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 なるほど私も教育行政を申しておるのではありません。あなたの教育行政が教育内容に影響して行く。そうして何であろうとも文部大臣という立場に立つ人のやつていることが、末端の教壇に立つところの教職員諸君への大きな影響力となつて、それが教育に響いて来る、それをどうするかということであります。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 文部大臣は法律に定められた権限以上のことをするわけには参らぬのでありまして、今日は文部大臣が学校の教育その個々の場合において、これを左右するということはできないのであります。文部大臣も政府も法律に定まつております限り教育基本法第八条の原則というものは守らなければならぬ、かように考えます。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 なるほどあなたは長い間官僚をしておられましたから、官吏としてのお考え方であられる。なるほど今日文部大臣は教員の任免権を握つておらない、だから影響力は少い、かように仰せられるかもしれませんけれども、政治はそういうものではない。あなたの一ひん一笑が末端の教員諸君には響いて行く。影響して行くのです。この点はやはりあなたはお考えになつておられなくちやいけない。もしもあなたのあり方が何ら末端の教壇に響くことがないとしたならば、あまりにもあなたの人格の影響力の稀薄さ、あるいはあなたがあまりにも末端から軽んぜられているということを、みずからお認めにならざるを得ない結果になるので、この点については多くの御議論を申し上げることはよしましようし、重ねてお尋ねいたすこともよしましよう。  次いで、基本法を改正する意思はない、こういうふうにおつしやられましたが、第一条の目的、第二条の方針についても、最も大切な事項だとも言つておられた。ところが第一条や第二条にはこういうことが書いてあります。「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。第二条(教育の方針)教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。」かようなことが書いてあるのであります。ところが今回の改正法規によつて、今読み上げたような、あらゆる場所において、人格の完成と平和的な国家及び社会の形成者として、あるいは真理と正義とを愛し、個人の価値をとうとび、学問の自由を愛し、自他の敬愛と協力によつて文化の創造と発展に貢献するような青少年を教育すべきだというのでありますが、こういった目的、方針をまつこうから否定し去る結果になりはしないでしようか。なぜかならば、この改正法規の運営のいかんによりましては、その真理も正義も、非真理、不正義と解されることにもなります。現にそうではありませんか。あの堂々たる保安隊、あのすばらしい近代装備と機動力を持つた保安隊、それはせんだつての大戦前まで、日本の陸軍があらゆる努力をして、せめてどんな無理をしてでもあれだけの機動力を持ちたい、こう言つて非常な無理に無理を重ねても、なおかつあれだけの機動力と装備を持つことのできなかつたものを持つておる今の保安隊、国内の擾乱あるいは直接侵略への防衛を任務とするという保安隊、それをしも軍隊ではないといつて、国会議場において堂々と宣言されておる。そうしてそれは事実だとみんに思わせておる。戦力なき軍隊、もしもほんとうに戦う力のない軍隊――なるほど先ほどのできごとのように、拿捕します、拿捕されますといつてすなおについて行くような軍隊、これならばわれわれが莫大な税金を納めて何ら養つておくことはない。何かやはりそこに戦う力を持つておるからこそつくつておるのであります。しかしそれも軍隊じやないと言う。戦力なき軍隊がどうして国内革命軍に対抗し、これと戦つて行くことができるでありましよう。いわんや外国からの侵略に対して防衛軍たり得ましようか。戦力なき軍隊という言葉をほんとうに信ずるとするならば、なぜ国民の膏血をしぼつてかようなものを存置させるのか。これこそ時の権力者の政治によつて、白を黒と言い、あるいは真理を非真理と言い、正義を不正義とする実例じやありませんか。もしも教壇において真理が説かれたとするとき、その権力者の考え方、そのときの圧力いかんによつては、いつでも不正義にされるんじやありませんか。現にこうした事実があるじやありませんか。この点についてはいかにお考えになりますか。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 初めに文部大臣が教育の場に個人的な影響力を及ぼした方がいいというようなお話がありましたが、これは私はまつたく反対の考え方でありまして、教育の場に個人的の影響が及ぶということは、これは努めて避くべき問題である、そういうことがあつてはならぬ、かように思つております。  それから今回提出せんとする法律案が、その運用のいかんによつて教育基本法というものを破壊するようなおそれがありはしないか、こういうお尋ねでありますが、これは具体的にどの点が破壊する結果になるというふうなお尋ねでありますれば、具体的なお答えができますが、私はさようなことは毛頭あり得ないものである、かように考えております。

小峯柳多自由党

○小峯委員長代理 安藤君、申合せの時間が来ておりますので結論を急いでください。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 影響させないことがいい、それはその通りなのです。あなたは影響さしてはならない、努めて影響させないようにされなければならない。だが事実はそうではない。それが政治なんだ。この点は多く議論いたしません。また具体的に示せば答えるというお言葉でありますから、その点徐徐に具体的に申し上げて参りましよう。こうした法案をおつくりにならなくとも、ほんとうにあなたの、これは教育でなくして教育行政のよろしきを得て、教育としての影響力をなくして行政としての影響力が与えられて行くならば、おのずから第八条に規定されたところのものを教職員諸君が実践して行くという姿になつて行くだろうと思うのであります。一体あなたはこれを具体的に示せばと言われますが、あなたにお尋ねしますが、あなたは学校の課程の中の社会科という科目をお廃止になるお考えがあるか、それとも存置せられるお考えであられるか、この点ちよつと承りたいと思います。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 文部省は、学校の教育の方に及ぼす影響力といいますか、教育行政によつて学校の教育を支配する力はないのでありますが、ただ法律に定められるところによつて、教科の実施等については、文部省できめる場合は、法律にきめられた、あるいは教科書の検定をするとか、そういうようなことはできる。文部省内に教育課程審議会というものが設けられております。そうしてこの審議会の議に付して、学校の教科の課程について審議して、これで各学校を指導しております。それで今の社会科の問題でありますすが、社会科につきましては、昨年やはり教育課程審議会の答申がありまして、そうしてある程度の改訂を加えることを決定いたしました。しかしその後ただいまのところ社会科それ自身をやめてしまうということは考えておりません。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 なるべく御簡潔にお願いいたしたいのでありますが、社会科という課程を廃止する気持はないというお言葉でございましたが、今私はここに一つの単なる一例として、学校図書株式会社出版の「中学社会民主的生活の発展」三年の後期の教材だそうでありますが、これを持つておるのであります。この目録を見ましても、内容を見ましても、これに表われている文字そのものは、何ら不当なものでも何でもありません。しかし現在の中学三年後期のあの知識欲に燃えた、しかも科学的に鍛えられて来た頭脳を持つておる昨今の青少年――お互いの時代のように、子いわくということでやつていた時代ならいざ知らず、今日のこの科学によつて鍛えられて来た頭脳を持つた青少年が、この教科書を先生が読み、かつ一応の簡単な解説だけで、それで満足いたしましようか。しかもこの中は、いろいろと児童たちがみずから材料を集め、そうしてお互いに研究し合うということが導かれているのであります。このときにもし先生が、ただここに出ておるだけのことをそつと育つてしまう先生であつたら、むしろ非常に嘆かわしい先生だ。生徒の質問に対して、それは現実においてこう、ああと指導して行く先生であるのが願わしいと思う。しこうしてもし一たび先生がそれをやつたときに、現実のなまなましさに触れて行つたときに、先ほど来問題になつておるところの教育の中立性というもので、教育委員なるものがもしもその教師を憎み、あるいは政治的立場を異にしておることによつて問題としたときに、ここに俄然問題が起きて来るのではないか、これを私はお尋ねしたい。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 今お持ちになつている教科書は、私は内容は存じませんが、しかしお話のように、そういう教材が与えられて、それに対して生徒はいろいろ自習して研究する。またそれに対して先生が指導し、質問に対して答える。これはもちろん必要なことでございまして、それはぜひ活発にやらなければならぬ、こういうふうに考えております。ただその場合に、特定の政党に特に偏するようなことにわたつてはならない、こういうことでありまして、そういう質問研究は当然活発になさるべきであると思います。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 私はその場合に、必ずしも自由党いわく、あるいは自由党政策審議会の発表するところによれば、あるいは日本共産党の発表するところによればと、一々その政党の名前を指して言う。この一々の名前を言えば、まだはつきりしているが言わずしてやつたらどうなるか。言わないでしかも善悪に出発しておつて、共産党の宣言、綱領を支持したり、あるいは自由党の宣言、綱領を支持するつもりはなくて、問われることによつて、それをより明らかに解明してやる親切心によつて、こうしたことがある、ああしたことがある、この党にこういうものがあると言つたときにどうなるか。その善意であるか、悪意であるかは、一ぺん司直の手にかけて、何日間かこれを合法的にとめて調べた上でなければ出て来ないのではないか。そういつた問題を非常に起すのではないかと思う。そのことは時間もありませんし、委員長から注意もいただいておりますから、私は結論へ入ります。  かような社会科というような、まことに実際政治について、実際経済について教えて行かなければならぬ行き方にあるときにおいて、一方においてこういった法律がつくられるということについては、あの政治評論の先哲であつたところの孟子が、まことにうまいことを言つております。つえをもつて人を殺すと、法をもつて人を殺すと、その罪の軽重はいずれであらうかその軽重はないはずである。しかるにつえをもつて人を殺す者は罰せられ、法をもつて殺す者は免れる。これをこれ民を網するという、ということを言つている。網をかけておいて、国民がいやでもその網の中へ入つて行つて、ぎゆつと締められねばならぬようにやつて行く。社会科というようなここにえさを大きく与えておいて、こつちの方に一つの恐ろしい法規がつくられており、このえさを追つて徐々に入つて行けば、その法律の網でびしやつと締められる。孟子の言う民を網するという言葉は、まさにこれに該当するのではないか。確かに過去数年間におけるところの日教組の行き方については、その中に数々の指弾さるべき行動もあつたでありましよう。偏向的傾向もあつたでありましよう。しかしそれは最近とみに、自己反省をなしつつあるじやありませんか。いわんや末端の下部組織においては、中央指導部に対する大きな批判が起きて来ている。それを何を好んで、従来の指導者の方針を再びここで、あの方針がよかつたのだ、中央幹部が育つて心配しておつたのは無理はない、こういった法律をつくつてわれわれの自由をだんだん束縛しようとするのだ、われわれの基本人権を害そうとするのだ、なるほど党幹部の、教組幹部の育つておつたのは正しかつたのだと、逆に反省しこれを批判しつつある末端の下部組織に対して、中央組織の指令が正しいのだ、指導方針が正しいのだと、これに歩み寄らせるような姿に持つて行く愚を演ずる必要はないじやありませんか。一体昨今警察法の改正、あるいはこの教育法の改正というようなことから、この間も自治庁長官が言われたようにやがては地方長官の選挙制を廃止するのだ、官選制にするのだ、そうしたい気持もあるのだということをおつしやる。これはことごとく、あなたが長いこと内務官僚でおられたからそういつたようにうわさされるのであつて、まことにお気の毒ではあると私は思うけれども、この二つの法規の改正から、続いて知事の官選制、そうしてそこに内務官僚の復活、やがて政権の掌握の地盤をつくつているのだなどと、あられもないうわさを立てられ、まことにこれは教育本来の問題の上に、悲しむべきうわさでありますけれども、人の口おおうべくもないのでありまして、こうした点を考えまするときに、むしろこの問題についてにもう一度考え直され、ことには昨今御承知のごとく国会並びに政府の周辺は暗雲にとざされておりまして、毎日の新聞を見ましても、国会があるのかないのかわからぬ、ただ汚職一色に塗りつぶされておるというような状況下にあるとき、こうした大法規――改正法規そのものはきわめて簡単でありますけれども、その触れるところのものは、日本の教育の根本に行くのでありますからして、こうしたものについては、もう一度お考え直しになつて、待機をあらためて御提出になるお考えをお持ちになるわけには行かないかどうか。この点を簡単にひとつお尋ねいたしたい。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 先ほど来申し上げておりますのは、片寄つた教育というものについて申し上げたので、ただ今度の法律は、出ましてから十分御審議をしていただきたいと思いますが、そういう教育をした先生を罰する、こういう法律ではありません。ある政党の党勢拡張のために、あるいはある政党のじやまをするために、そういう目的をもつて教育するように、学校の外から先生に働きかける、それを取締るのでありまして、その先生を処罰の対象にするということではありませんから、その点はひとつ念のため申し添えておきます。なおいろいろお言葉がありましたが、これは先ほども申し上げた通り、来週早々提案するつもりでありまして、私どもとしましては、今日の実際の事態にかんがみて、遷延を許さない必要な法律である、こういうふうに考えております。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 教員を取締るのじやなくして、教員を扇動する者を取締るのだ、こういうことでありますが、たとえば日教組あるいは県教組等におきまして、何らかの当然教員の立場としてなすべき腐朽学校の建築であるとか、あるいは給食の問題であるとかその他いろいろ取上げることができましようが、そういつたものが会議せられて、そうして会議の結果こうしたことをそれぞれの学校職員において運動せよというようなことがあつたとした場合においても、ただいまのような御説明であればこれは当然問題になつて来るに違いない。そうして同町にそういつたことではなく、さつき私が申し上げたようなこうした社会科的な問題であつた場合にも、だれかの影響を受けたのではないか、だれかの扇動を受けたのではないかという問題が必ず起きて来るに違いないのであります。  なおいろいろお尋ねしたいのでありますけれども、すでに時間が切迫いたしまして委員長初め同僚の委員各位に御迷惑をかけておりますので、この問題はこれで打切ります。まことに申訳ありませんけれども、委員長並びに同僚委員諸君の御寛大なるお気持に訴えて、もう一点政治道義の問題、政治倫理の問題についてお許しをいただきたいと思うのであります。実は私このことは吉田総理大臣にお尋ねいたしたく思つておつたのであります。総理大臣御病気とやらでお出ましを願えない。ことに国会の分野におけるところの半数に近い勢力を占めておられる大政党の党首としての総理大臣でありますから、非常に熱望しておつたのですが、それが御出席を願えないということで、まことに遺憾であります。しかし私は長い間……。副総理はお見えになりませんか。

小峯柳多自由党

○小峯委員長代理 非常に油が乗つて来たところ申訳ないのですが、保留していただいたらいかがですか。

安藤覺日本自由党

○安藤(覺)委員 それではお言葉に従いまして明後日にまわしていただきます。しかしぜひ明後日ほんの短い時間でけつこうですからひとつお願いいたしたいと思います。

小峯柳多自由党

○小峯委員長代理 わかりました。安藤覺君の質疑に関連して堤ツルヨ君から質疑を求められております。簡単に願うことにしてお許しいたします。堤ツルヨ君。

堤ツルヨ日本社会党(右)

○堤(ツ)委員 それでは私はただいまの、安藤委員の質問に関連いたしまして、文部大臣にひとつ質問をいたしたいと思いますが、今毎朝新聞を開きますと、いわゆる自由党を中心とした、これはおもに保守政党でありますが、造船汚職の問題、保全の問題、日殖の問題、こうした問題がたくさん社会面をにぎわし、政治面をにぎわしている。この問題に中学の生徒だとか高等学校の生徒だとかいうものが、たとえば小学校の生徒にしても無関心たり得ない。あるいは社会科の時間にこれが生徒の方から質問として出ることもあるでありましようし、先生の方からこれを取扱つて、今日の政治に関連した造船汚職の問題について――政党に対する批判になるわけでありますが、これをやりましたときに、これは教育の中立性を侵害するでありましようか、しないでありましようか、どういう御判断をお下しになりますか。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 説明すると申しますか、これはいろいろ言い方もありますが、大体侵害するものではないと思います。

堤ツルヨ日本社会党(右)

○堤(ツ)委員 教育の基本は、単に読み書きそろばんを教えるだけではありません。善を善とし、悪を悪とするということが人間教育の基本でありまするから、自由党のやつておる造船汚職に対して社会科の時間にこれを批判すること、論議することが中立性を侵害しないとすれば、当然政党に対するところの批判も、これは中立性を侵害しないものと同様に解釈できないものでございましようか。

小峯柳多自由党

○小峯委員長代理 堤さん、自由党がやつておるというような言葉は少しお気をつけ願います。

堤ツルヨ日本社会党(右)

○堤(ツ)委員 それは委員長の主観ですよ。

小峯柳多自由党

○小峯委員長代理 委員長からそういうふうに御注意申し上げます。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 堤さんに御答弁申し上げますが、私の申し上げましたのは、そういう悪いことをするのはいけない、あるいはさらに進んではそういう悪事がかりにありとして、政界から払拭されなければならぬと言うことはさしつかえない、決して党一派に偏したものとは考えない、こう申し上げたのであります。

堤ツルヨ日本社会党(右)

○堤(ツ)委員 私はこれは自由党がやつておるということを先に言つてしまいましたけれども、当然自由党のだれだれ、自由党から出ておるところの大臣のだれだれとか、代議士のだれだれとかいうことになつて、この問題が政党批判になるということは必然だと思うのでありますが、そうするとどこの辺から――この間からあなたの御論議を聞いておりますと、中立性を侵害するという線を引くのか、ここに問題があると思うのですがどうですか。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 政党の批判にわたることを教育の場において述べても、これは原則としてさしつかえのないことであります。その場合に共離党なら共産党、自由党なら自由党、社会党左派なら社会党左派というものの、かりに名前をあげて、そうしてこの政党でなければいけない。ほかの政党はだめなんだ、こういうことを言えば、これはいわゆる片寄つたことになりましよう。それからはつきり名前を言わなくても、その政党を特徴づけるような、つまりその政党の寄つて立つ基盤になつておる性格と申しますか、それから基本的な政策と申しますか、そういう一連のことを教え、そうしてその政党を支持せしめるに至るような、支持させるに至るような、今のように悪口を言うたから反対せしめる、ほめたからすぐ政党を支持させる、こういうものではないのでありますから、その政党を支持し、または反対するに至らしめるような、そういう教育がいけない、こういうことは、きわめて限定せられた、厳重に解釈されるものだというふうに思つております。

堤ツルヨ日本社会党(右)

○堤(ツ)委員 私はこれは非常に大事なところだと思うのですが、文部大臣よく聞いていただきたいのですが、汚職はいけない、そうすると汚職とつながるところの政党、それでは政党は一つ一つ分解して行けばこうなる。そうしてこの問題についてはこういう観点から見たときに、この政党の考えは正しいとか、正しくないとか、よいとか悪いとかいう批判が生れて来ると思う。それをしたからといつて、これが中立性を侵害するように、政府はこの間から言つていらつしやるように私は思う。あなたのこの間からの御答弁を聞いておると、こういう思想はいけないのだから、この政党を支持しないでおけ、またこれがいいんだからこの政党を支持しろというところから言つておるとおつしやいますけれども、そういう不見識な先生はない。この政党の考えは、こういう観点に立つて見るときにこれはよいのである、こういう観点に立つて悪いと思うというこの先生の考え方というものが、私はどうやら今日の文部省の、ことに文部大臣のお考えでは中立性の侵害に解釈されておるのではないかと思うのでありますが、そこのところをもうひとつはつきりしておいていただきたいと思います。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 具体的な汚職の場合でありますが、汚職をする、汚職があるということは非常に嘆かわしい。またそういうことをする政治家というものがあるとすればけしからぬ政治家である。これはかりに自由党にその人が所属しておる、あるいは改進党、どこの政党に所属しておる、こういうことを言つても、それは私はさしつかえない、片寄つた教育とは思わない。たとえばいずれかの政党の党員である政治家に汚職があつた。それがただちにその党に反対をさせ、もしくはその党を支持させるということにはならぬと思う。もし汚職をすることをもつて政策に掲げておるような政党、汚職をすることを本質としてこれを政治的なスローガンに掲げておるような政党がかりにあつたとして、その場合に汚職はいけない、絶対にいけないと言えば、その政党に対する反対な片寄つた教育、こういうことになるかもしれません。

堤ツルヨ日本社会党(右)

○堤(ツ)委員 この政党のこの代議士が、こういう悪いことをした。それから政党の批判に及んで、かくかくしかじかで、ひつくるめてみると、この政党の考えがどの観点から見ても正しいと思うから、もし正しい人ならばこの政党を支持するであろうという言葉を使つたときにはどうなりますか。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 子供に政治上の常識ある判断をさせるような、そういう教養を与えるということが政治教育の目的であります。そこである政党の政策をことごとく説明をして、そうしてこの政党の政策が一番いいのだ、ほかの政党はいけないのだ、こう言う場合には、これは片寄つた教育をしておる、私はこういうふうに思います。

堤ツルヨ日本社会党(右)

○堤(ツ)委員 微妙な問題でありますが、私は一つの政党をけなして一つの政党をほめ上げる、こういう片寄つたことを育つておらないのですよ。けれども総じたところこういう観点に立つてこの政党が正しいと思うから、もし正しいと信ずる政党に一票を入れる人ならばこの党に入れるであろうということを言うたときには、これは教育の中立侵害になりますか。それを取上げていらつしやるように思うのですが……。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 ただいまお話になりました場合は、明瞭に片寄つた教育だと思います。

堤ツルヨ日本社会党(右)

○堤(ツ)委員 そうすると、単なる批判と、それから暗示を与えたという程度と、それから先生が積極的に支持したというところに線を引くということが、私はなかなかむずかしいと思う。たとえば問題をかえますが、学校の先生が子供の弁当の中を見ておる。金持の子供はいい弁当を持つて来る。ニコヨンの子供は弁当を持つて来ない。戦争犠牲者の子供は七色のクレヨンさえ持つていない。富裕家庭の子供は二十四色のクレヨンを持つておる。このクレヨンなり弁当の中を見て社会正義を感じた先生が、これは今日の政治の力によつて社会革命をしなければいけないということを感じて、社会正義感を子供に養わしむるために政治教育をしたとしたら、私はそういう社会正義を感じてくれない先生ならば子供は預けられないと思います。当然だと思います。それに社会正義を感じて教壇でそうした批判をする先生に対して、今日弾圧が加えられているやに感ずるので、私はこの質問をしておるのです。ですから社会正義を感じて政党なり今日の政治に対して鋭い批判を加えて、自分たちもその権利を与えられておるのだ、皆さんも二十歳になつたらそれを行使するのだということで、子供を常識的に教育している先生のあり方というものは、弾圧を食つていいのでしようか。私はそういう批判、この政党はよい、悪いと言つたつて、中立性を侵害しないと思うのですが……。

大達茂雄自由党文部大臣

○大達国務大臣 社会主義革命というものを非常にいいこととして子供に教えて、そして政治も、この社会主義革命というものの基礎に立つた政治でなければいけない、こういうことをかりに先生が言うたとする、これがいずれかの政党の性格と一致するものであれば、私は片寄つた教育だと思います。

堤ツルヨ日本社会党(右)

○堤(ツ)委員 これでけつこうでございます。

小峯柳多自由党

○小峯委員長代理 この際お諮りいたします。昭和二十九年度一般会計予算外二案の審査のため分科会を設置いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「一議なし」と呼ぶ者あり〕

小峯柳多自由党

○小峯委員長代理 御異議なしと認めます。よつてさように決しました。  なお分科会の区分、主査の選定及び分科員の配置につきましては、先例によつて委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小峯柳多自由党

○小峯委員長代理 御異議なしと認めます。よつてさように決しました。  明後日は定刻より開会いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十五分散会

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