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19回国会衆議院1954/08/04

法務委員会上訴制度に関する調査小委員会及び違憲訴訟に関する小委員会連合会 第8号

発言数
15
登壇者
5
会派数
2
開催日
1954/08/04

会議録

小林錡自由党

○小林委員長 これより上訴制度に関する調査小委員会並びに違憲訴訟に関する小委員会の連合会を開きます。  本日御出席の参考人は東京商工会議所専務理事岡松成太郎君であります。参考人におかれましては御多忙のところ、また暑いところわざわざ御出席をいただきましてありがとうございます。  この衆議院の法務委員会におきまして、かつて刑事訴訟法の一部を改正する法律案の審議をいたし、また前国会において民事訴訟法の一部を改正する法律案の審議をいたしました。これらの審議にあたり、また占領後における裁判制度のいろいろの改革などにつきまして、特にさらに考うべきことがあるんじやないか、御承知のように最高裁判所においては一時は七千件からの未済事件を持つており、今でも五千件程度の未済事件があるようなわけであります。一体上告を制限すべきか、あるいはこの未済の多い事件をいかに処分すべきか、上訴制度を改革する必要があるのじやないかというような問題が、われわれの間で深く考えられるようになりました。一方、御承知のように違憲訴訟は具体的争訟に関してのみ上告審として最高裁判所が扱うということが最近の判例になつております。抽象的の違憲訴訟というものが許されないということが今判例になつておりますが、このままでよいであろうか、抽象的の、いわゆる憲法裁判所をつくる必要があるのじやないかというような問題について、われわれは今研究をしながら先月以来今月までに約二十三、四名の方の御意見を伺つたわけであります。本日は財界、業界方面からごらんになつた裁判所に対するこれらの点に触れたお考え、あるいはこれに関しなくてもけつこうでありますから、裁判所というものに対してどういうような御期待をお持ちになり、どういうような御不満があるか、忌憚ない御意見を伺いたいと思うのであります。  お手元に差上げました質問事項の  一、裁判所というものに対して、どういう感じを持つておられるか。もし、裁判所に対して、改善すべき点等希望があれば、述べていただきたい。特に上告制度について御意見を承りたい。  二、違憲審査権をいかに考えられるか。抽象的、一般的違憲審査の制度を採用することの可否。  三、右との関係で最高裁判所はいかにあるべきか。  というような点に触れてお述べいただければまことにけつこうだと思います。  それでは参考人の御意見を伺います。

岡松成太郎東京商工会議所専務理事

○岡松参考人 岡松でございます。御質問に対しまして、主として財界方面から見ました裁判所というものに関して平生われわれが感じております事柄について申し上げたいと存じます。私どもが申し上げる意見は、こういう法律事務に関する専門的意見ではございません。またわれわれの申し上げる事柄は、主として財界においての一般の常識的なお話をいたすのでありますから、事柄がそういう商事関係から発生しました事件というものに関する意見というふうに大体においてはお聞きを願いたいと存じます、それを前提といたしまして申し上げたいと思います。  まず第一に、一般の財界、この中にはもちろん非常にたくさんの中小の商工業者を含めて申しておるのでありますが、まだまだ何と言つても、一般の日本の民衆の裁判所というものに対する考え方の中に、どうも裁判所というところは近づきがたいものだ。裁判所から呼び出されたというだけでも何だか薄気味悪い、のみならず裁判を起すというのはずいぶん酔狂な話で金もかかれば時もかかる、裁判所をいわば自分たちのための機関というように親しみをもつて感じるというような素地ができておりません。これは一般民衆の面における教育なり認識なりというものの欠如ということがあると同時に、私どもはやはり司法に携わつておる方方の方においても、一般の民衆の方に近づいてやるというような御考慮を煩わしたいと思うのであります。  これは非常に一般論でございますが、少しく具体的に、一般に財界で感じられている事柄について申し上げますと、第一は裁判が非常に時間がかかるということでございます。これは一番主要な財界からの訴えであります。普通の事件でも大体三年、四年かかつてしまうのであります。ところが財界におきましては、三年、四年という期間は非常に長い期間でありまして、その間には一切の一般的な経済事情もかわつてしまうのみならず、当事者の営んでおる営業そのものの様子も非常にかわつてしまうのであります。従つてただいますぐに解決してこそ――五十万円、百万円というお金も大きいけれども、三年、四年たつて五十万、百万円がどうなるのかというようなことは、非常にスピードをとうとぶ財界の、このごろの言葉で言うセンスから非常にはずれておるのであります。この点に関しましては、日本の裁判所内及び裁判官が非常に公平であつて、慎重なる審理をされた上で判決を下されるというここに対しては、実業界方面でも非常なる信用を持つております。外国に比べても、日本の裁判というものに対して、今申し上げたような慎重、公平、適正というこうに関しては何らの不満を持つておりません。しかしながら時間がかかるということに対しては、外国の例をそうつぶさに知つておるわけじやございませすけれども、どうも日本の裁判は時間がかかるというここを外国関係、つまり外人の商社などのこつちにおる人から聞くのであります。これは世界中の実業界でも、日本で訴松をやるとえらい時間がかかるということが一つの評判になつておるということを聞くのであります。反面において日本の裁判が非常に公平であるということについては、外人商社も十分これを認めておるようでありますが、時間がかかるのでかなわぬということは、どうも一般の日本人ばかりでなく、外国人すべてからの訴えでもあるようであります。そういう次第で、われわれとしましては、もちろん正確であつて、客観的な真実を把握するということが裁判の最高の要請であるということは承知いたしておるのでありますが、訴えを起す人たちの実際の利益から申しますと、結局商事関係の訴訟というものは、勝つてもあるいは失敗をいたしても、結局金銭の多寡の問題で相対的な問題であります。従つてこれを早く解決してもらうということは、一方において非常に大きな利益なんでありますから――もちろん正確の点を犠牲にしてということではございませんけれども、どうか裁判に当る方々は、私は専門的なことはよく知りませんが、裁判の制度なり手続なりにおいて何らかのそういう欠陥があるならばそれも直していただきたいのでありますが、第一に裁判官の頭を――早いということがやはり裁判をしてやる上において必要だ、それがより望まれておるのだということを絶えず念頭に置いてやつていただきたいと思うのでございます。その逆に弊害の方を申しますと、たとえば家屋の明渡しの訴訟なんというものについては、われわれは実際に見聞きしておるのでありますが、追い出される方から言えばこれはとても法律では結局勝てないということはよく知つておる。だけれども、これを一年でも二年でも、三年でもひつぱつておれば、そのうちにあるいは有利に立ちのき料といいますか、そんなものの解決もできるし、また家も見つかるかもしれない。弁護士さんに頼むのにも、勝てぬでもしようがない、とにかくひつぱつてくれというような依頼をする。そういうことが行われるのを見聞きしております。これなどは日本の判裁所といいますか、裁判官といいますか、それの持つておる一方の長所、すなわち非常に慎重に審理をされるという一方の長所の反面である時間がかかるということを、さして問題としないというところにつけ込んだ法廷を利用した闘争と言いますか、そういうような悪い慣行が生じておるということがあるのでございます。金にせわしい財界方面では、どうせ払わなければならぬものにしても、払う方から言えば少しでもひつぱればやはり有利だということになる。取立てる方から言えば、金頭は減つても少しでも早い方がいい。現在のようなこういうデフレーションで金融の逼迫しておるときにおきましては、手形で売買するかわりに即金で払えば、品物に対する代金の二割や三割は負けるのが一般の慣習であります。そのくらいに早いということはすなわち金なんであります。時は金というがまさにその通りなのでございまして、早く解決をするということが、商取引の上においては非常に必要なことでありますので、そういうような御考慮をお願いしたいと思うわけでございます。  詳しくは知りませんが、上告制度の上におきましても上告の件数が非常にふえておる。そして判事さんの数も戦前の大審院の七十八名に対して現在の最高裁は十五人の判事さんだということであります。その上に行政事務等もふえておつて、非常に忙しいような状態である。引延ばし戦術をやる者から言えば、何でもかんでも上告に持つて行けば有利で、最高裁は非常な事件をかかえておるんだから、そこへ行けば一年やそこいらはすぐたつてしまうというようなことで、日本の裁判が非常に慎重で正確を期するという反面、それを悪用して引延ばすような悪い慣行が行われておりますので、私どももそういう点からやはりそういうことがなくなれば、上告に行く件数も減るのだろうと思いますし、また行つたとしても早く解決していただけると思うのでございます。  それと関連しまして、私ども専門の詳しいことは存じないのでございますが、簡易裁判所というものがございまして、簡易な手続で裁判をしていただける。実際において、どれほどほかの裁判所に対比して手続が簡易になつているかはよく存じませんけれども、とにかく法文を見ましてもいろいろの点で簡単になつているようであります。この簡易裁判所にかかる事件は、法律が改正になつて、たしか十万円以下の金額に関する訴訟である場合には簡易裁判所の所管になるということでございます。これは裁判の性質を問わず、かつ全国的な標準で定められたから十万円ということになつたのだろうと思いますが、この簡易裁判所の精神をもつと拡大されて、たとえば商取引から発生した権利義務に関する訴訟については、少くとも三百万円ぐらいのことになつても、五百万円でもいいと思うのでありますが、ぐつと上げていただけないかと思うのでございます。少しよけいなことかもしれませんが、地方においては十万円というのは相当の金額になると思いますが、大きな都市なんかにおいては、十万円というのはあまりにわずかな金額である。せつかく簡易裁判所を設けられても利用するケースが少いのじやないかと思いますから、できればこれは都市別に、たとえば人口五十万以上の都市については三十万にするというような、地域的な差別も考えていただいたらどうかと思うのであります。特に質的に言つて商取引から生じた係争事件については、三百万とか五百万とかいうふうに思い切つて金額を――思い切つてと言つても商取引から言えばそういう程度が普通でありますから、簡易裁判所に行けるようにしていただきたいと思うのでございます。それから訴訟はこういうふうにして、簡素でなるべく手取り早く時間をかけないで解決するということを私は主たる要求として、それから発生してそういう簡易裁判所の問題を申し上げておるのでありますが、結局時間を縮めるということが訴訟の費用を軽減する、訴訟の費用と申すのは、いわゆる弁護士さんの報酬をも含むのでありますが、そういうものも安くなる、と同時に、商取引の実際に資するという意味においてぜひ一般に裁判というものを早くやつていただく。それから簡易裁判所というようなことが定められてあるのだから、そういうところに商事関係の訴訟はどんどん持ち込まれるようになつたらよかろうと思うのであります。実際問題において商事関係から生じた訴訟で十万円以下というようなものはほとんど裁判にはならぬのではないかと思われますので、現在の簡易裁判所ではどうも商事事件があまりかかつて行かないのではないかと考える次第でございます。  それからやはり関連をしまして、民事調停の問題でございますが、この方も決して私は専門的な知識がない、専門家から見れば、はなはだ不十分な意見かも存じませんが、特に商事調停、これにつきましては私ども平素考えているのでありますが、裁判所以外に、たとえば商工会議所というようなものに、商事調停をやる権限を認めていただくというようなことができないだろうか、現在の商工会議所は昨年の立法によりまして、特別法人として官の認可を得て設立をする公共団体となつております。しかし現在は会議所が終戦後非常にふえまして、あらゆる会議所がこういう商事調停をやるだけの能力を持つている信用のある会議所かというと、現在ではそういう制度がありませんから、そういうところを基準に置いた設立の認可が行われておりませんから、現在のすべての会議所がそういうことをするのに適格であるとは申しませんが、各県に一つ、県庁所在地である都市の会議所というものは、それぞれ非常に戦前長い歴史を持つた、有力であつて信用がおける会議所ができておりますので、その地区内において、商事から発生した調停事件というようなものを会議所に取扱わすというようなことを、ひとつ御研究願えないものであろうかということを私感ずる次第なんであります。もちろん現在でも国際的に起りました商事紛争の仲裁ということを会議所でやつております。国際的には商事紛争が起つた場合には、それぞれ仲裁機関にかけるという慣行がおいおい確立して参りまして、わが国でも今日本商工会議所の中に国際商事仲裁委員会というものをつくつておりまして、これがアメリカの商事仲裁委員会と協約を結びまして、お互の国で発生した日米両商人の間で発生したトラブルをここにかけて調停をしよう、その前提として両国の間の商人が商業上の契約をする場合には、調停条項というものを、その契約の中に入れさすようにしよう。調停条項もなかなかむずかしいものでありますから、お互いにこれは日米間の協約したところの協定の条項に従うという一文を書いておけば、当然に両国の間で、協定ができる協定条項を契約をしたと同じ効力がありまして、この調停にかかるということになつております。現実に毎月少くともこれは数件あるいは十件を越えるくらいの調停事件がございます。しかし大体はいわゆるほんとうの意味の仲裁まで行かない、その委員会のあつせんによつて法律的に言えば和解というのでありますか、両方の話合いがつくということが多いのでありまして、実際はそういう機能によつて相当にたくさんの紛争が解決を見ておるのでございます。もちろんそういう意味の仲裁ということであれば、当人の間の契約によりまして、現在の会議所でもそれは仲裁をするとともできるので、現に国内の紛争についても仲裁をいたしておる例はたくさんではございませんが、あるのでありますが、私どもさらに進んで現在の民事調停法にありますような調停も、あるいはこれはお互いに会議所の会員の間で生じた事件に限定をするとか、何らかの限定はあつてもいいのでありますが、会議所でそういうことができるようになれば、現在裁判所を煩わすところの事件の大きな部分がすでに解決を見ているのじやないかということを感じるような次第でございます。  大体私が申し上げることはこれだけでございます。

小林錡自由党

○小林委員長 それでは質疑に入ります。質疑はありませんか、猪俣浩三君。

猪俣浩三日本社会党(左)

○猪俣委員 今商工会議所に調停裁判のような、調停委員会のようなものをつくつて、そこで調停をさせたらいいじやないかという御議論、これも一つの卓抜な御議論だと思いますが、私は今は、古い十数年あるいは二十年前のころのことですから、今の商工会議所の組織というものがそうなつておるかどうか実は知らぬのでありますが、これはやはり一定の資格の業者から選挙によつて商工会議所の委員というものができるはずであります。ところがその選挙ですが、私が関係した時分の選挙というものは実にでたらめきわまるもので、いわゆる投票権を全部買収して歩いて、そうして一人の人間が何べんも投票して来るというやり方をやつておりました。そうして一般の普通選挙、衆議院あるいは地方議員の選挙のようなやかましい制裁がないので、一種の自治体組織になつておりまして、そのかわり選挙が非常にルーズである。いいかげんの選挙をやつております。今どうなつておるかそこはわかりません。商工会議所がああいうふうな選挙の方法ででき上つているとしますと、これはそういう人たちによつて調停裁判をさせるということになる。しかもその相手が同じ業者である。その選ばれた人たちも業著から選ばれて来るのですから、これははたして適正公平に行われるかどうか、疑問を持つのであります。それからあなたにお聞きしたいことは、今の商工会議所の選挙の状態及びその議員の素質及び業者間の調停をさせるというようなことが、そういう意味から適当であるかどうか。最近の商工会議所を頭に抱いてその辺をお教え願いたい。それが心配なければこれも卓抜な一つの意見ではないかと思うのでありますが、その御意見をお聞かせ願いたい。

岡松成太郎東京商工会議所専務理事

○岡松参考人 お答えいたします。ただいま御指摘になりました商工会議所の制度、主としてその議員の選挙に関する状況はどうなつているかということでございますが、これにつきましては、ちようど今過渡期になつておりまして、その事情を申し上げたいと思いますが、今猪俣委員のおつしやいましたのは、現在われわれが旧商工会議所法と言つております戦前の商工会議所法が施行されておつたときの慣行についておつしやつているわけでございます。ところが戦後におきましては事情が一変いたしまして、一時は民法による社団法人であるが、純然たる会員組織の画工会議所というものが、実は占領軍の指示によりましてでき上つたのでございます。会員組織の会議所というものは英米における一つの古くからの慣行でありまして。会員組織だからといつて必ずしも一部の業者のプライヴエートなクラブ的な存在ではないのでございまして、一般に公共機関としての会議所の役割を果しておるのでありますが、わが国においてはそういう慣習がございませんでしたので、一部戦後にできましたある地方の会議所というようなものでは、古くから会議所の慣行というものを、知りませんので、一部の人たちが寄り合つてクラブをつくるような意味で会議所をつくつた、そうしてお互いに今度はだれかを会頭に選挙しようというようなわけで、選挙とは言うけれども、仲間同士の話合いで投票するというようなことが行われた事実があるのであります。そこで私どもはその弊害を非常に心配しておつたのでありますが。昨年これは議員立法で各派の共同の御提出で、商工会議所法というものが成立をいたしました。これによりますと、ちよど英米式の会議所と、それから戦前日本にありました会議所、これは実は欧州大陸式の会議所でありますが、それを折衷したような会議所制度ができたのであります。会員というものは持つております。しかし会員のほかに法律上特定商工業者という言葉をつけておりますが、その地区内において一定の資格を持つております者、これは一定の資格は各地区によつて相違があるのでございますが、都市の人口によりまして制限をかえておりますが、十万未満の都市の商工会議所におきましては、事業税の年額が二万四千円以上、また法人であります場合には税額二万四千円以上か資本金額が十五万円以上、このどちらかの事項に該当をする者、それから順次段階がございまして、一番大きなところは人口百五十万人以上の都市の商工会議所、これは事業税額におきまして十八万円以上、資本金において三百万円以上、もちろんこの資本金は法人だけについて言うのでありますが、そういう事項に該当する商工業者を特定商工業者として、商工会議所に登録をすることになつております。その登録ということは、つまりその土地の会議所が会員だけをもつて成り立つておりますと、土地の状況をつぶさにはわからない。会員だけの事情しかわからない。はなはだしく申せば会員以外の人には何らの関係も持たぬということになるので、これでは一般の商工業の改善をはかる公共的な使命を帯びた会議所としては欠くるところがあるというので、会員であるといなとを問わず、今申しましたような基準に該当する商工業者は、特定商工業者としてその土地の商工会議所に登録をする。そうしてこの登録された商工業者は議員の選挙に対して選挙権を持つという規定をつくつたのでございます。そこで一方に会員というものがございますので、会員は会費として一定の金額を払い込んでおりますから、この選挙権という上におきまして、会員の方は会費一口について投票権一個というふうに大体きめております。もちろん最高限は大体の会議所で通産省が認可をしておりますが、二十口以下で来ております。一番たくさん持つておる者で二十口、それ以下は口数に応じて持つというふうに大体いたしております。そういうふうにして、会員はもちろんその場合特別の出金をしておるだけに多くの投票権を持つのでありますが、数からいいますと、この特定商工業者というのは非常に多いのであります。しかも一票を持つておるのであります。なるほど買収ということは、公職選挙法のような規定は現在も持つておりません。従つて買収して投票権を集めるというようなことが行われております。しかしそれが行われるのは、一人が五票なり十票なりの投票権を持つておるものですから、そこへ行つて頼んで五票、十票もらつて来るということにおいて投票を集めることに意味があつたのでありますが、たとえば東京のような大きな都市において今の基準で行くと六、七千人の特定商工業者ができます。それはみな一票を持つておるのでありますが、そこを一々まわつて票を集めて歩く、買収して歩くというようなことは実際問題として不可能であります。非常に投票権者の資格を広げましたから、実際において買収ということが、不可能という言葉は使えぬかもしれませんが、非常に困難になりました。従つて投票も公平に行われて、土地の商工業者がこの人ならばと思う人を議員として選んで来るという組織が大いにこの点は改まつたわけであります。この新法による選挙はまだやつておらぬのであります。昨年の十月一日に施行になりまして猶予期間がございますので、まだこの選挙はやつておりませんから、私は実績についてこういうふうであつたということを御報告いたすことは今できないのでありますが、今おつしやいましたようなそういう点を配慮いたしまして、皆さんの御好意によりまして昨年議員立法でそういう大きな本質的な修正が行われました。従つて従来ありましたような非常な不公平な、ある一部の人が金を使つて会議所を壟断して、私物のように利用するというようなことはまず絶対にできなくなつた、戦後における買収行為というものも非常にむずかしいことになつたということで会議所の公平が保てるように改善せられましたので、今後におきましてはその点はまるで改まるのじやないかということを私は期待して申し上げることができると思うのであります。

猪俣浩三日本社会党(左)

○猪俣委員 先ほどあなたの御意見によりますと、十万円という訴訟額は非常に少額だ、結局もつとそれを引上げて簡易裁判所における我利の範囲を広げた方がいいということであつたのであります。そこでお尋ねいたしたいことは、今業界では結局簡易裁判所の方がよろしいという御意見なんでしようか。簡易裁判所の裁判の範囲を広げてその方へ事件をたくさん持ち込みたいという御希望はどういうところから出ているのでありましようか伺いたい。   〔小林委員長退席、佐瀬違憲訴訟に関する小委員会小委員長席に着く〕

岡松成太郎東京商工会議所専務理事

○岡松参考人 その点は先ほども申しました通り、簡易裁判所が一般の裁判所と比べてどういうふうに簡易になつておるかということにつきましては詳しいことは存じないのであります。従つてその本質について私は簡易裁判所の方がいいということは申せないのでありますが、この制度は大体簡易迅速に事件を処理するという目的お立てになつたのだろうと思います。ところが実際問題として、今実業界と申しますか、商工業界では簡易裁判所を利用している事例はないと思います。それはつい昨年まで三万円ということが何であつたのでざいまして、三万円程度のことでことごとしく裁判所に訴えて出るということは、商工業者の間の慣習からいえば、あれはかわり者だというような話になるのでありまして、実際問題として商工業者としては非常に縁なき裁判所であつたのだと思います。それで本年でありましたか、十万円ということに改められたのでありますが、私は商事から発生した事件ということを考えますと、十万円でも低いのじやないかというふうに思います。十万円限度でありますれば、商工業者があまりこれを利用するということは考え得られないのじやないか。十万円くらいで裁判所に行つてあまり手間をかけるというような――もちろんこれは弁護士さんでも頼んだらとても引合わぬというのが一般の商工業者の感じでありますし、簡易裁判所は弁護士を使わないでも自分でやるというような御趣意でありましようが、自分でやればなおさら自分の時間をつぶさなければならぬ。十万円のためにとても時間をつぶしているひまはないということで、十万円では私はとても問題にならぬのじやないかと思う。もしこの制度が簡易迅速に事件を処理するということをねらいとしてつくられた制度でありますならば、最も簡易迅速をとうとぶ商事事件等がこの裁判所に行くようにおつくりを願うことが本来の趣旨に合うのじやないかというところから、商事事件については五百万円とか、せいぜい下つても三百万円とかいうようなところでおやりになつたら、さらに利用者は増すのじやないか。現在ではほとんど利用しておりません。これははつきり申し上げますが、そういうことで申し上げたわけであります。

猪俣浩三日本社会党(左)

○猪俣委員 その趣旨はよくわかりました。名前から簡易裁判所となつておるのでありますから、簡易迅速というようなことからその方を御希望なさつたと思いますが、実際はちよつと違うのであります。これはあなたの御意見として承つておきます。その理由さえわかればいいわけなんであります。  そこで御意見を承つておりますと、とにかく簡易迅速にやつてもらいたい、今非常に長引いてしもうて、テンポの早い経済社会と裁判というものがマツチしておらぬ、それで裁判が死んでしまうのだというもつともの御意見であろうと思うのであります。そこで御存じのように今簡易裁判所あるいは地方裁判所、高等裁判所、それから最高裁判所というものがあるのでありますが、今当委員会で問題になつております上訴制度であります。これに対しまして、ただいまここで委員会の前にも座談的に話したのですが、一体一審、二審、三審というように上訴して念入りにやつてもらうことを希望する人が多いだろうか、もう一審なり二審なりで打切つて、そのかわり早くやつてもらう、つまり拙速主義を希望する人が多いだろうか、あるいはそれと反対の、巧遅といいますか、とにかくちよつとくらい時間がかかつてもいいから正しい裁判をしてもらいたい、正しくしかも早い、これは理想でありますけれども、早いとなると拙になり、それが巧みに真実をつかんだということになると非常に念入りになるということで、人間わざでありますために事実相反するような立場に立つわけであります。そこで今の一般の国民あるいは商工業者というようなものは大体として一体どつちを希望するものであろりかということが今話題になつて、何か世論調査局ででもひとつ調査してみるかということになつたのですが、あなたは多年そういう業者のお世話をなさつておりますので、あなたの見聞するところにおいてどんな輿論になつておりましようか、御意見を承りたいと思います。

岡松成太郎東京商工会議所専務理事

○岡松参考人 お答えいたします。これはもちろん一概には申せぬと思いますが、先ほどからも申し上げました通り商事の取引から発生をいたしました債権債務に関する争いということになりますと、やはり第一にとうとぶのは、もちろん訴訟に勝つということでありますが、時間を早くということだと存じます。しかしそこにも限界がありまして、この一つの訴訟に負けたらおれはこれで身代がすつかりいかれてしまつて終りなんだというような程度になりますと、それはそう簡単に早い方がいいとは言えぬかもしれません。そこには一つの限界があると思います。それはあるいはその事件の当事君の資本金以下の金頭である、個人についても資本金という観念もあるそうでありますが、これは普通はわれわれは用いてはおりませんが、個人ではどうしますか、そういうような一つの限界はあつていいかと思います。思いますけれども、そういう商事から発生した事件というものは、ほんとうは大部分のことは話合いで解決を見ておるのであります。訴訟になつて来るのはよくよくのことでありますけれども、これは事柄にもよりますけれども、いわゆる親族法上の問題であるとか、あるいは個人の権利や名誉に関する問題ということとは質的に違うのでありまして、結局は金の問題だというような相対的な問題になるのであります。従つてその絶対額においてその商人なり業者が、もうそれで最終的な、それによつて打撃を受けてしまうというような金額でない限りは、悪いなら悪い、これはとれぬものならとれぬものとして新しく計画した力がよろしいというふうに行くべきではないか。それはこちらの委員会のあれなんかと非常に違うかもしれませんが、税法なんかの取扱いもあるのであります。少くとも債権として発生しておるのは、これは会社の利益として計上されておる。とれそうもないやつでもなかなか損金に認めてくれぬのであります。そういうようなもので裁判でもしておればとうていそれは損金に算入してくれるということは税務署では認めないというような関係がありまして、業者からいつても訴えるということははなはだ痛しかゆしというような事柄もございます。私は一概には申せないのでありますが、概して申し上げれば、商事から発生した事件におきましては、不正確ではもちろん因るのでありますが、正確迅速ということでございますけれども、多小の正確さは犠牲にしても早く事件を解決をしていただくということを主眼に裁判制度のごくふうを願いたいと存ずる次第でございます。特別上訴制度そのものにつきましては私は二審制度にまるのがいいかとどうかということについてまでは、専門的知識を持つておりませんのでお答えしにくいのでございますが、先ほど申し上げました通り簡易裁判なんということもごく常識的な意味で申したのであつて、今の法律による簡易裁判所でなくて、商事事件については簡易迅速に裁判が行われるようにしていただくことが主眼ではないかと私は感じておる次第があります。

林信雄自由党

○林(信)委員 参考人の意見は世論の代表的な感じとして受取りまして非常に敬服しておるわけであります。先刻も猪俣氏自分でも言われますように、いろいろ雑談のうちに世論調査をやつてみたらというような意見も出ておつたような際でありますから、たいへん仕合せであります。なかんずく商工会議所で紛争の調停をやるという制度、私は非常に貴重な御意見だと思います。元来、争いということは、非常に迅速に解決いたしましても、調停的な、いわゆる伍譲妥協で解決しました結果と比較いたしますと、何かが残る。従いまして争い、いわゆる訴訟という形式で片づきますことよりは非常にいい結果のあることは申すまでもないのであります。その意味におきましては、商事だけでなく、一般の金銭債務の調停にしましても、あるいは借地借家の調停にしましてもそうなんであります。ただ制度にはまたいろいろ弊害がありまして、うつかりすると運営の面で調停委員が非常に圧力を加える、こういうふうな気持を持たれる事例もある、そういう点から考えて、あなたの御提言といいますか、会議所の調停のことにつきましても、都市を異にいたしました両者の間でそういう調停が持ち出されますと、その都市に在住し、あるいは店舗を持つておるものが有利である。しからざるものは何か不利益な調停を受けるというような懸念をまず持つ、また実際においてそういうことがあり得るかもしれない。従いましてこういう制度には、すぐそういう点について思いを凝らさなければいけないと思うのですが、もつともそういう点については、あらかじめの取引の当初において合意をしておきます。しからざればその合意なきものがその後に同意のあつたものという限度にとどめるというような方法も考えられると存じます。実際において必要な制度として考えられると思うのであります。何かそういつたような点までつつ込んだ御調査なり案ができておりますならば、少くとももう少し御研究の御説明くださるものがあつたら伺いたいと思いますと同時に、そういう法的な制度でなくても、これはお互いに承知をされればできることなんであります。進んで会議所においてそういうことをおやりになつておるような実際の実例があるものとしますれば、大体どういうふうに商工業者の方は受取つておられますか。その実情でも承れれば仕合せだと思います。それだけであります。

岡松成太郎東京商工会議所専務理事

○岡松参考人 ただいまの第一点でございますが、何か特別の研究を持つているかということでございますが、私が申し上げているのは、実は先ほどちよつと触れました通り、国際商事調停ということを現にやつているのでございます、その関係の経験から類推して申しているわけであります。国際商事調停ではどういうふうなことをやつているかと申しますと、やはりこれこそ二国の商人の間に起る係争でございますから、その調整の管轄が、アメリカの調停委員会にかかるか、日本の調停委員会にかかるかということは非常に問題であります。アメリカに行つた場合にはアメリカ人に有利である、日本に行つた場合には少くとも事情がわかるだけ日本人が有利であるということは当然想像されるわけであります。国際的な商事の仲裁では、裁利所の問題というのは国内とは比較にならぬほど重大な問題になるのであります。このために、今、日米間の契約の例を申し上げますと、これはどこでも同じでありますが、アメリカと日本と両方に三人のコミツテイをつくつております。その三人のコミツテイというのは、英米両方ともそうですが、日本人一人、アメリカ人一人、それから第三国人を一人。これは日本人は日本の委員会から推薦をします。それからアメリカ人はアメリカの委員会、アソシエーシヨンから推薦します。この両方で推薦された二人が相談し合つて、第三国人を一人推薦するわけであります。日本では日本人、アメリカ人、それからその二人が相談してイギリス人を第三国人として推薦をしておりますが、お互いに管轄について異存があつた場合にはその委員会に訴える。その委員会が最終的にこれは日本で調停に付すべき問題である、これはアメリカで調停に付すべき問題であるということを決定することになつております。これはもう長い国際的慣行でありまして、結局これに従つて行くということが、長い目で見れば一番両国間の紛争を公平に解決するものであるということで、国際的商業社会ではこの慣行が認められておりまして、これによつて裁判籍を決定いたします。  それから調停に当る委員の問題でございますが、それは先ほど猪俣委員のお触れになつたときも、ちよつと私の考えを申し上げようと思つて言い落しましたけども、会議所がやるということは、必ずしも会議所の役員――会頭、副会頭、常議員という役員が調停に当るということではございません。今の委員会におきましても、あらかじめ調停委員としてしかるべき人を選びまして、ずつとリストをつくつております。国際的にはパネルいつとておりますが、ずつとリストをつくつておるのでございまして、日本人の委員とアメリカ側はアメリカ人の委員ができてございます。それは会議所でやる場合でも決してその会議所の役員とは限らない、もつぱらいろいろな業界から公平妥当な判断をする人だというように考えられる人を選んでおりまし、そして当事者がその中から私はこの人を頼みたいということを言います。相手方は私はこの人を頼みたいということを言いまして、二人の委員ができてそこに第三者の委員――それはいろいろな定め方がありますが、会議所から推薦をした人というようなことで、もちろんその法律事務に堪能な方、弁護士の方でもいいのであります。そういう方を推薦して、そしてその三人の委員会で調停に当るというような、国際商事紛争では大体こういう方式をとつておりますから、国内においてもこういうような方法をとつたらしかるべきかと思うのであります。あらかじめつくりました委員のリストについては、これも必要に応じて、あるいは所轄の裁判所の承認を得ておくとかなんとかいうこともできないことじやないと思います。必要があればそういうふうにして、そのときに任意にだれでも持つて来てこれにやらせるというのではなく、初めからちやんとしたリストができていて、そして当事者に選ばせるという方式を国際的にはとつておりますから、国内でもそういう方式をとつたならばと思つております。  それから現実にやつた例をという第二の御質問でございましたが、これは今申したような正確な意味で委員を設けてこれをやつたというようなことはないのであります。しかし各地方におきましては、それぞれその土地の有力者が会頭なり何なりになつておりますので、土地に起つたいろいろな紛争について会議所がその調停をなさる場合、会議所の会頭が仲に入つて納まつたというような例がかなり多うございます。それは正確な意味の調停とか仲裁とはあるいはいえぬかもしれませんが、土地にこんな事件が起つた、どうもみつともなくてほうつておけないということで、会頭なり副会頭なりが間に入つて話をつけたという例は相当にございます。その土地の大きな、ガス会社とどこかの間に起つたという場合、その土地としては大きな事件で、当事者が偉いと、土地としてもそういう大きなものが争うということは不名誉なことで、会頭がその間をかけまわつて無事に納めるという、そういう機能は昔から常に果しております。具体的な例を今持つておりませんけれども、かなりあると思います。そういうような働きを会議所はいたしておるのでございますから、今のように国際商事仲裁にも当つておりますから、そういうような経験を生かしましてこの制度も一ぺんに理想的なものはできるとは思いませんけれども、だんだんに、もしそういうことをやらしていただくようになれば、会議所の心組みも何もかわつて来ますから、先ほど申し上げました通り、一県に一つは必ずそのくらいの使命を公平に果し得る会議所はあると思います。県庁所在地の土地の会議所というようなものは相当にしつかりしておつて、乱脈なことが行われているということはほとんどないと思います。十分に信用も持ち手足も持つておりますから、そういう点は十分にやつて行けるというふうに感じている次第でございます。

林信雄自由党

○林(信)委員 御説明的なお答え、たいへんよくわかりました。従いましてさらに御提言の案について深い敬服の念を起しておるものであります。お願いでありますが、国債商事調停に関します今御説明のようなこと、大体わかつておりますが、なるほど伝統といいますか、いろいろな関係からずいぶん推敲検討されまして、洗練されたものになつておりますが、ただいまの御説明だけでなく、もつと話したいという分もおありになるのではないかと存じます。できますならばその文献資料といつたようなものをこの委員会にいただくことができましたら、十分私たちも研究したいと思います。

岡松成太郎東京商工会議所専務理事

○岡松参考人 ただいまのお求めの資料、なるべくとりそろえまして委員会の方に提出いたしたいと思います。

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 よろしくお願いします。なおあわせてお願いしておきますが、現在国家の制度として商事裁判所といつたようなものがあるのではないかと私考えるのですが、これに対する比較法的な資料が幸い商工会議所にありましたら御提出願いたいと思います。と申しますのは、ただいまの日本の商工会議所における国際商事に関する調停制度というのは、いわば国際慣行に基いたものであつて、国家的制度としては確立されていないように思うのでありますが、現在公正取引委員会というものがあつて、これがある程度商事紛争についても調停的機能を発揮しております。私自身としては、さらにこれを商事裁判的な、一般的なものに発展さしたらどうかという意見を打つているのですが……。かつてマルセイユに行つたときに、マルセイユの商工会議所の中に商事裁判所というものがあつて、商事的な紛争をかなり迅速かつ適正に処理しておるということを案内人から説明を受けた記憶がありますので、先ほど申し上げましたように、これらに対する御意見も、ありましたら、後ほどでけつこうでありますから、資料とあわせて御提出賜わりたいと思います。  他に御質疑はございませんか。――なければ本日はこの程度にいたします。  参考人におかれましては御多忙中かつ暑いところ種々忌憚のない、また非常に示唆に富んだ御意見をお述べくださいましたことをここに厚く感謝申し上げます。  この際お諮りいたします。上訴制度並びに違憲訴訟に関し、作家石川達三君より参考意見を聴取いたしたいと存じたのでありますが、所用のため御出席ができないとのことで、文書をもつて意見を述べて参られました。そこでこれを会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

佐瀬昌三自由党

○佐瀬委員長 御異議なければさようにとりはからいます。  次会は明日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十二分散会

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