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19回国会衆議院1954/07/05

法務委員会上訴制度に関する調査小委員会 第2号

発言数
14
登壇者
5
会派数
1
開催日
1954/07/05

会議録

小林錡自由党

○小林委員長 これより上訴制度に関する調査小委員会を開会いたします。  皆さんお休みのところを遠路わざわざおいでを願つた方も大分多いようでありますが、今後続けてこれを熱心に調査審議してみたいと思いますから、一段のお力添えを願いたいと思います。  違憲訴訟に関する調査小委員会も本日開かれることになつておりますが、これは上訴制度に関する調査小委員会の中に、内容としては違憲訴訟に関する研究の問題も当然含まれておるのでありますから、自然両方にわたつて研究するようになると思います。  本日はまず法務省民事局長にお願いいたしまして、これまで法制審議会に現われた点、あるいは学説その他の方面から研究せられました内容によりまして、ひとつ裁判制度の改革に関して考慮すべき主要問題というような点に触れて、概括的にあらゆる問題の御説明を願いたいと思います。同時にそれに対しての資料等もありましたらば、ひとつこれを述べていただき、あるいは本日間に合わぬ部分に対しては、できるだけ資料を御提供願いたい、こう思います。  それでは村上民事局長にお願いいたします。

村上朝一検事(民事局長)

○村上説明員 裁判制度の改革、ことにただいま問題になつております最高裁判所の機構の改革を考えるにあたりましては、最高裁判所というものが憲法上どういう使命を持ち、どういう権限を持つものであるかということから考えなければならないと思います。その見地から、まず違憲審査権の問題について考える必要があるのではないか、かように考えるのであります。この点に関する憲法第八十一条の解釈といたしましては、最高裁判所の判例が数度にわたつて出ておりますが、一貫して最高裁判所は具体的事件を離れて、抽象的に法律命令等が憲法に適合するかどうかを決定する権限を有するものではないとしておるのであります。これは現行制度のもとにおける判例でありまして、必ずしも憲法八十一条の解釈を、これによつて有権的にきめたという趣旨ではないのかもしれません。この各判決の理由を見ますと、憲法の解釈として、たとい法律をもつてしても、こういう抽象的な違憲審査権というものは与える余地はないという見解をとつておるように見えるのであります。この点につきまして、資料としては、「日本国憲法第八一条の解釈について」と題するものがありますが、これは学説を集めたものであります。学者の間でも、大体通説であるように思います。中には、抽象的な違憲審査権を与えることもできるという解釈をとつておる学者もあるようであります。なおこの点につきましての最高裁判所の判例としては、昭和二十七年十月八日の大法廷の判決、その他数件の判決をプリントして、資料としてお配りしたのであります。具体的事件を離れて、面接に法令が適憲であるかどうかということを審判する、いわゆる憲法裁判の制度をとる外国の立法例もあるのでありまして、その点につきましては、資料の中に、「諸国の憲法における違憲立法審査権」という表題のものを御参照いただきたいと思います。なお明日お届けする予定にしております西独連邦憲法裁判所の法律の翻訳等も御参照願いたいのであります。  わが国におきまして、最高裁判所が現行憲法の解釈として、絶対にかような憲法裁判所としての任務を持ち得ないものであるかどうかということは、なお検討を要する問題であります。もし可能であるとするならば、わが国でも採用することの可否について考える必要があると思います。最高裁判所がいわゆる憲法裁判をなし得ないということが、現行憲法の解釈として正しいといたしました場合に、立法論としてなお次のような点が問題になるのではないかと思います。  まず現在では、最高裁判所ば、具体的な上告事件の審判を通じてのみ法令の違憲か適憲かを審査し得るにすぎないのでありまして、一審、二審を経て最高裁判所の最終的判断がなされるまでには相当の日時を要します。その間重要な法令の効力について、長期間不安定の事態を生ずるおそれがあるのであります。最高裁判所が、下級裁判所に係属しております事件で憲法の解釈に関する重要問題を含むと認めるものを移送させまして、最高裁判所がただちに当該事件について審判をするという制度をとることの可否が検討に値する、かように考えております。一審、二審に係属しております民事、刑事の事件を、そのまま最高裁判所が取上げて最終審として裁判するということも一つの考え方でありますけれども、論点は憲法問題に限らず、そのほかの問題にも触れる事件が多いと思われるのであります。憲法問題に関して最高裁判所が判断を示し、それが、その係属しておる一審、二審の裁判所を拘束するという形で、一種の中間判決のごときものをするという制度も考えられます。  次に外国の立法例、これは主としてインド、カナダ等でありますが、最高裁判所が憲法の解釈について政府あるいは国会の諮問に応じて意見を述べるという制度は、政府あるいは国会がある法律案を提案し制定しようとする際、あるいはすでに制定された後において、その法律案が憲法に適合しているかどうかということについて、その他一般の法律問題につきまして最高裁判所に諮問をする。そうしますと最高裁判所は、これは裁判としてでなく、一種の行政的な機能として意見を述べる。もつとも裁判所みずからその意見には後に裁判となりました際には拘束されない、また政府、国会も法的には拘束されない。しかし政治勢力から独立した最高裁判所の意見というものが政治的には尊重されるであろうという期待のもとにこういう制度をとつておる立法例もあるのでありまして、わが国においてそういう制度をとることがいいかどうかということも研究に値するのではないか、かように考えております。  次に最高裁判所の職務権限の中でさらに検討を要するものは司法行政事務であろうと思います。現行裁判所法のもとにおきましては、司法行政事務は裁判官会議の議によつて行うものとされております。現在の制度は、二面におきまして司法行政事務の処理にあたつて独断、専行ないし情実による弊害を防ぐ上において多大の利点を持つておるのでありますけれども、他面責任の所在を不明確にする、あるいは臨機適切の措置をとる上において必ずしも能率的でない、また場合によりましては裁判官の本来の任務の遂行に支障を来すものであるという批判もあるのであります。従いまして司法行政事務の処理機権、処理の方法等についても研究の必要があろう、かように考えております。  次に問題となりますのは最高裁判所の職務権限の中心を占めておりますところの上告制度の問題であります。上告の範囲及び上告の審判の方法をどうするかということであります。  まず上告の範囲につきましては、現在の民事上告におけるように、一般的に法令違背を理由とするのがいいか、また現在の刑事上告におけるように憲法違反もしくは判例牴触の主張または法令解釈上の重要な主張を含むものと認められる事件のみについて最高裁判所に上告を許すのがよいのか、あるいはさらに最高裁判所に対する上告についてはもつと徹底した上告制限をする余地はないか、また最高裁判所の裁量によつて最高裁判所の審判に値すると認められる事件のみについて上告を許す、いわゆる上告許可制を全面的にとるのがいいかということが問題になると思います。この最後の上告許可制、これは現在主として英米法系の諸国においてとられておる制度であります。上告審判の方法といたしましては、現在の刑事上告におけるように、最高裁判所をもつて唯一の上告裁判所とするか、あるいは現在の民事上告の場合のように、事件の種類によつて高等裁判所にも上告審としての審判をさせるべきかということが問題になります。現在民事と刑事がこの点齟齬しているわけでありますが、いずれかに統一するのがいいのではないかという議論があります。  次に原裁判所に上告事件について事前審査、再度の考案等をさせるべきかどうか、また事前審査をさせるとした場合に、その範囲を適法要件の存否のみに限るべきか、あるいは上告理由のあるかないか、上告裁判所の審判に値するかどうか等にまで拡張すべきかという点が問題になると思うのであります。  さらにまた最高裁判所は、憲法問題等重要な問題を含む上告事件のみについて審判し、一般の上告事件を審判する上告裁判所は別に設けてはどうか、いわゆる中二階のようなものを別につくつてはどうかというようなことも問題になるのであります。  以上申し述べました最高裁判所の職務権限の考え方によりまして、最高裁判所の機構に関する考え方が対応して出て来るわけでありまして、憲法が最高裁判所の使命及び制度をどういうものとして予定しておるかについて、また上告制度の問題と関連いたしまして、まず第一に現在の機構のままでいいかということが一つ、次に裁判官を増員すべきであるか、増員するとすれば何名程度に増員するのが適当であるか、また逆に裁判官を減員して現行の小法廷の制度を廃止すべきかということが問題になります。この裁判官を増員するという意見は、上告の範囲について現在の刑事訴訟法におけるような制限を設けないということが前提となるわけでありますが、また裁判官を減員するという考え方は上告の範囲を現在よりももつとしぼるということと、あるいは中間の別の上告裁判所あるいは事前審査機内をつくるという考え方と表裏しているわけであります。  その他裁判制度の改革につきましては、そのほかにもいろいろ問題があると思うのであります。最高裁判所の裁判官の任命方法は現在のままでいいかどうかということは、やはり最高裁判所の機構を考える際に同時に検討されるべきだと思います。  そのほか最高裁判所に限らず、裁判制度全体にわたる問題といたしましては、簡易裁判所の制度をどうするか、これを存置するとして、その権限の範囲、事件処理の手続等をどうするか、特任の簡易裁判所判事の制度をどうするかというような問題もあるわけであります。  なお先ほど申し上げました上告の範囲を現在よりも拡張して、一般的な法令違背すべてを上告理由として認めるということに仮定いたしました場合に、民事の控訴審、第一審は大体現在のままでいいかどうか、刑事の控訴審は事後審になつておりますが、これをこのままにしておいていいものかどうか、さらにまた刑事の第一審の手続にも影響があるのではないかという問題があると思います。この点につきましては後ほど刑事局の方から御説明申し上げたいと思います。続いて資料につきましては平賀君から御説明いたすことにいたします。

平賀健太検事(民事局参事官)

○平賀説明員 それでは民事局の方で提出をいたしました資料につきましてごく簡単に御説明申し上げます。  リストを提出しておりますので、リストをごらんになりながら見ていただきたいと思うのであります。一番最初の裁判制度の改革に関し考慮すべき主要問題点、これはただいま局長から御説明申し上げた点であります。その次の資料は裁判所の制度の改善に関する意見の分類、これは法制審議会の司法制度部会におきまして現われました各種の意見の要旨、それに対する賛否の意見の要旨を要約いたしたものでございます。これは先回出しまして内容をたしか御説明申し上げたと思いますので、内容の詳しいことを省略いたします。(「通し番号を打つておいてもらいたい」と呼ぶ者あり)それでは主要問題点、ただいま局長から説明をいたしましたのを一といたします。それから今すぐ取寄せますが、意見の分類を第二号にいたします。第三号といたしまして最高裁判所の意見の累年比較表でございます。これは一枚の紙になつております。この表は要するに大審院の十年間の戦前の平均を一番上に掲げまして、その後は最高裁判所の昭和二十四年から昭和二十八年まで、さらに二十九年に至りましては、五月に至るまでの民事、刑事にわけて新受事件、既済事件、未済事件の変化を統計にしたものでございます。これは最高裁判所の調査に基くものでございます。昭和二十六年の後半、それから二十八年の初めにかけまして未済事件が民刑合せて七千件になつたという世間で問題になつた点、ここに出ておるのでございますが、概括的に申しますと、民事の方は全般的に漸増の傾向にあるということであります。それで新受事件も漸増の傾向にございまして、二十八年末を見ますと、民事の新受事件は約二千件でございますが、戦前大審院の平均の新受事件の件数が三千七百六十件となつておりまして、前回の民訴の改正がありましたので、それが多少影響はすると思うのでございますけれども、なおやはり漸増の傾向をたどつて行くのではないかということが予想されるわけでございます。それから括弧内は訴訟事件でございます。括弧の上に記載してあるのは、これは保全処分の事件だとか、そういう事件を考慮して入つているわけであります。民事の方におきましても二十七年以降は既済事件が非常に増加いたしておるのでございますけれども、やはり新受事件には追いついておりませんので、民事に関しましては未済事件がやはり増加の傾向にあるように思われるのであります。二十七年末が千六百六十六件、二十八年末が千九百八十三件、約二千件でありまして、二十九年になりましても大体その線をたどつているようでございます。それから刑事につきましては、二十六年、七年になりまして、非常に新受事件が激増いたしておるのでございます。この新受事件の激増がやはり未済事件が七千件に達したという大きな原因ではなかろうかということがこの表から一応うかがえるわけでございます。しかし二十八年になりますと、新受事件が若干減つておりまして、さらに今後刑事の新受事件は少しずつ民事とは反対に減つて行くのではないかということが一応傾向としてうかがえるのでございます。それから新受事件が非常に二十六年、七年に増加したのでございますが、既済事件もまた二十七年、八年は非常に増加いたしているのでございます。二十七年には八千六百件、二十八年には九千二百件、約一万件の既済があるのでございます。刑事の方は概観いたしますと、新受事件は漸減の傾向にあり、既済事件が非常にふえたということでもつて、未済事件がこの二つの結果といたしましてかなり急激に減つているのでございます。刑事の方におきましては、二十六年末が六千件であつたものが二十七年には五千件になり、二十八年には三千件に減つておりまして、二十九年になりましても、やはり漸減の傾向を刑事はたどつているのでございます。刑事がこういうぐあいで非常に減りました関係で民事、刑事の合計におきましてもこのことが著しく、現われておるのでございまして、二十七年末には七千件であつたものが二十七年には五千件になり、二十八年には三千件に減つておりまして、二十九年になりましても、やはり漸減の傾向を刑事はたどつているのでございます。刑事がこういうぐあいで非常に減りました関係で民事、刑事の合計におきましてもこのことが著しく、現れておるのでございまして、二十七年末には七千件であつた未済事件が二十八年には五千件、約二千件減少いたしておりまして、二十九年の五月では四千九百六十八件というふうに減つて来ておるのでございます。ごく概括的に申しますと、この事件表からそういうことがうかがえると思います。  それから第四号の資料といたしまして、司法制度調査資料第五巻、英国の上訴制度というのがあります。これは薄い印刷にしたものであります。これは先ほど民事局長から御説明申しました英米法における上告許可制の一つの典型といたしまして、英国の民事上訴制度、それから刑事の上訴制度を、それぞれ最高裁判所の関根民事局長と、同じく最高裁判所の岩田調査官が御調査になつたものを収録したものでございます。上告許可制の実際の具体的内容がいかなるものであるかということがこの資料からわかると思うのでございます。  それから次は第五号といたしまして、司法制度調査資料第六巻、上告制度関係資料、これも本日はお手元に配つていないのでございますが、これは先回の民事訴訟法の改正の審議の際にお配りした資料の中に入つておるのでございます。これは要しまするに、法制審議会の司法制度部会と民事訴訟法部会の中間報告書のほかに、日本弁護士連合会の上告制度に関しまする意見書、それから上告制度並びに最高裁判所の機構に関しまする、雑誌などに発表されました学者の意見などを収録いたしたものであります。  それから次は第六号といたしまして、これも本日お手元には配つていないのでございますが、表題を申し上げますと、ドイツ、フランス等における民事上告制度関係論文集、これもたしか先回の民訴の改正の際に御配付申し上げたと思うのでございます。この資料におきましては、ドイツ、フランスの上告裁判所の機構なりあるいはドイツ、フランスでとられておりますところの上告制限の内容、それから、ドイツ、フランス――主としてドイツにおきますところの上告制度の改正論、こういうようなものの学者の論文を収録いたしたものでございます。  それから次は第七号になりますが、タイプで打ちました昭和二十九年七月付日本国憲法第八十一条の解釈について、これは先ほど民事局長から御説明申し上げましたように、日本国憲法第八十一条の解釈といたしまして、具体的な民事刑事の事件を離れて、一般的抽象的に最高裁判所が法令の違憲性、適憲性の審査ができるかという点を中心にしまして、現在日本で出ておりますところの学者の意見を分類いたしたものでございます。その要点をここに抜萃いたしたのでございます。分類の方法といたしましては、まず狭義の違憲審査権を認めたものと解する説――との狭義の違憲審査権と申しますのは、現在の最高裁判所の判例がとられておりますような解釈、すなわち具体的事件を離れては違憲審査権はないのである。具体的事件について、法令の適憲か違憲かを審査し得る、そういう見解、最高裁判所の意見と同意見をまず狭義の違憲審査権といたしましてここに掲げたのでございますが、大多数の憲法学者あるいは、訴訟法学者は、ここにごらんの通り、最高裁判所の見解と大体同じような見解をとつておるのでございます。それからなおこの狭義の違憲審査権を認めるという見解のもとにおきましても、最高裁判所がある法令が違憲であるという判断をいたしました場合に、その最高裁判所の裁判が一体いかなる効力を持つものであるか、一般的にその法令の当該の規定を無効とする効力があつて、国会、政府、下級裁判所、すべてを拘束するものなのか、あるいはそうではなくて、当該の事件に関する限りにおいて、たとえば当該事件の破棄、さしもどしを受けました下級裁判所だけを法律的には直接に拘束するにすぎない。当該事件を越えまして一般的にその法律、法令の当該規定を無効にする効力を持つものではないという個別的効力と申しますか――個別的効力説と、それから先ほど申し衣またのを一般的効力説と、こういうふうにわけますと、この二つの見解が対立しておるわけでございます。一般的効力説を支持する学者もありますが、また個別的効力説を支持する学者もあるわけでございます。その点もこの分類の中におきましては一応触れておきました。それからこれに対しまして、いわゆる憲法裁判的審査権を認めるという説があるわけでございまして、これは具体的事件を離れまして、抽象的一般的に法令の違憲を審査する権限があるという解釈に立つものでございます。私ども調査いたしました範囲では、この見解をとつていられる学者としては、佐々木惣一先生があるのでございます。ほかにはあまりこういう見解は見当らないようでございます。佐々木惣一先生の教科書に出ておるところをこの一番最後に抜萃いたしました。今の資料が第七号でございます。  それから第八号は、違憲訴訟に関しますところの最高裁判所の判例を集めたものでございます。この資料は、一番最初が日本国憲法に違反する行政処分取消請求事件というのから始まつている資料でございまして、お手元に本日配付いたしております。これは先ほど民事局長が御説明申しましたように、わが国の最高裁判所では具体的な民事刑事の訴訟事件を離れては違憲の審査はなし得ないのだという、すべてそういう趣旨の判決なの、でございます。これを第八号といたします。それから次は昭和二十九年七月付の、諸国の憲法における違憲立法審査権、法務省民事局、として、タイプで打つたものでございます。この資料でございます。これは民事局におきまして各国の憲法制度を一応調査いたしまして、細部の研究になりますと、憲法の規定を読んただけではなかなかわからぬところが多いのでありますが、一通り各国の憲法に当りまして得ました結論に従いまして、各国の憲法を分類いたしてみたのでございます。わが国の憲法もやはり歴史的な由来に基くものでございまして、各国の憲法がどうなつておるかということは、やはりわが国の憲法の解釈にも参考になるのではないかというのでつくつたものでございます。  はしがきの点は、これは大したことはないのでございますが、第二の違憲立法審査権を認めない国といたしまして、ここにイギリス、フランスその他ヨーロツパの大陸諸国の名前をあげておるのでございますが、この違憲立法審査権を裁判所に全然認めないという国の建前はどうなつておるかと申しますと、要するに、国会が国の一番最高の機関であつて、国会の権限に対しては何人も干渉できない。憲法の規定からも国会は制限を受けない。憲法以上の絶対的な権限を持つておるという建前の国は、すべてこの裁判所の違憲審査権を認めないのでございます。典型的な例はイギリスでございまして、イギリスの国会であれば、いかなることでもなし得るという格言にもございます通り、裁判所といたしましては、国会が制定した法律につきましては、違憲であるとか、あるいはその他の理由によりましてその法律が無効であるということは絶対にできない建前になつておるのでございます。フランスもまたさようでございます。フランスにおきましては、おもしろいことにはもし国会が憲法の規定に違反する疑いのある法律を制定いたしますと、その法律の規定の効力は問題にならないのに、憲法を改正すべしという憲法の改正の問題になつて来るのでございます。その憲法を改正すべきかどうかということを審査いたしますために、憲法委員会というのが憲法で設けられておるのでございますが、その憲法委員会は一見いかにも違憲審査をするかのようでございますけれども、そうではないのでございまして、憲法に違反すると認められる法律が制定せられた場合に、憲法改正の必要があるかどうかということについて意見を出す機関なのでございまして、ドイツの憲法は裁判所なんかとはまるで違つた性質のものでございます。  ヨーロツパの大陸諸国、ことにフランス憲法の影響を受けました諸国はノールウェー、スエーデン、デンマー ク、オランダ、ベルギー、スイス、スぺイン、ポルトガル、はつきりしている例だけあげましたけれども、このほかにもなお英仏と同じ制度をとる国が少くないのでございます。  ソ連のことは詳しくわかりませんけれども、ソ連もやはり違憲審査権を認めないという点においては英仏なんかと結果は同じなのでございまして、参考のためにソ連のことにもちよつと触れておいたのでございます。ソ連は、おもしろいのは裁判所には一般の法令の最終的な解釈権もないのであります。一般法令の最終的な解釈権もここにあげております。ソ連邦最高人民会議幹部会、これが持つておるという特殊な国なのでございます。この幹部会の法令の解釈に関する意見には裁判所も服しなくてはならない、非常に特殊の制度をとつておるのでございます。  それから第三は、すなわちこの違憲立法審査権を認める国でございます。この違憲立法審査権を認める国におきましては、国会が一番最優位にあるのではなくて、憲法が一番最優位にあるのである。国会といえども憲法の設ける制限には服しなくてはならないという、国会優位の原則に対しまして憲法優位の原則、これを建前としておる国なのでございます。従つて各国の憲法を見ますと、憲法は国の最高法規であるということを規定しております。こういう国におきましては、たとい憲法に違反する法律は無効だという明文の規定がございませんでも、憲法をもつて最高法規とするという憲法の規定から、解釈上憲法違反の法律は無効だということは当然に出て来るというふうになつておるのでございます。その典型はアメリカなのでございますが、要しまするに憲法に抵触しますところの法律というのは無効となるわけでございます。ところがある法律が憲法に抵触するかどうかということは、普通の三権分立の原則に立つておる国におきましては、法律の最終的な解釈権を持つておりますところの裁判所が司法権の行使として行うわけでございますので、結局裁判所の違憲立法審査権というものがこの憲法優位の原則ということから出て来るのでございます。この憲法優位の原則をとる国におきましても、わが国の憲法八十一条におけるように裁判所が違憲審査権を持つということを明文で規定しておる国もございますが、ただ単に憲法は国の最高法規であるということだけでもつて、裁判所の違憲審査権については全然明文の規定を置かない国もあるのでございます。この後者の典型はやはりアメリカ合衆国なのでございますが、大体におきましてこの憲法優位の原則を立てておる国につきましては、明文の規定があるとないにかかわらず、裁判所というものは違憲立法審査権を持つという建前になっておるのでございます。今申しましたように、違憲立法審査権と申しますのは、そういうぐあいでもつて裁判所が司法権行使の機関といたしまして、具体的事件について法律を適用する、その前提といたしまして憲法の解釈をし、法律の解釈をするというところから出ておるのでございまして、この三権分立の原則に立つております国におきましては、やはり具体的な争訟事件があつて、その事件の裁判において必要な限度においてのみ違憲立法審査権というものを行使し得る。従つて民事、刑事の具体的な争訟事件を離れまして、抽象的に違憲立法審査権を行使し得るという制度をとつておる国は、私ども調査いたしました限りではほとんどない、あるいは絶無といつてもいいのではないかという結論なのでございます。もつともこの点につきましては憲法の規定だけからではわからないことがありますので、やはりその国の裁判所の先例、学説なんかも詳しく検討しなければならぬかとも思いますが、一応憲法の規定を通覧いたしましてそういう結論になるのではないかと思つておるのでございます。こういう憲法優位の原則をとりまして裁判所の違憲審査権を認めております。その典型は何と申しましてもアメリカ合衆国なのでございまして、これにならいましてカナダであるとかオーストラリア、ニュージランド、アイルランド、最近ではインドの憲法、ビルマの憲法、フィリピンの憲法もございます。中米、南米諸国も大体このアメリカの先例にならいまして、憲法でわが国の八十一条におけると同じような条文を設けておる国が多いのでございます。この第三のところの三で総括的に述べておりますように、裁判所は、具体的事件の裁判に必要な限度を越えて一般的、抽象的に法律の適憲か違憲かを決定する権限を有するものではない。裁判所にこのような一般的、抽象的な違憲立法審査権を認めるためには、やはり三権分立の建前から憲法上の根拠が必要になつて来るわけでございます。わが国の八十一条の規定がこの根拠になり得るかどうかということが、やはり解釈上問題になつて来ると思うのでございます。ただいまも申しましたように、私どもが調査しました限りにおきましては、憲法上このような権限を裁判所に与えておる国はほとんどその例を見ないのでございます。ただこういう制度はあるのでございます。多少ともこれに類似するものといたしまして、国会を通過しました法律案について政府が違憲を理由として拒否権を行使した場合、いわゆるヴイトーを行使した場合、または政府がその法律案の適憲か違憲かの判断を求めるために、これを最高裁判所に付託した場合、これは要するに政府が拒否権を行使するかいなかというその判断の資料といたしまして、拒否権を行使する以前に、政府が最高裁判所の意見を聞こうとする場合でございますが、こういう場合に最高裁判所はその法律案の適憲性について決定をする権限を有する、こういうことを憲法の明文で認めている国があるのでございます。しかしこれはきわめて少数でございまして、私ども見ました限りにおきましては、中南米すなわちコロンビア、パナマ、ニカラグア、こういう国だけのように思われるのでございます。それからなおリヒテンシュタインという国でも大体同じような制度のようでございます。要するに非常にこういう国は少いのでございます。それから次に最近世界各国の憲法を比較総合いたしまして、その粋をとつたと言われますインド憲法におきましては、最高裁判所の意見を徴するのを相当とするような重要な法律問題または事実問題が生じ、または生ずるおそれがある場合に、大統領は最高裁判所に諮問することができ、最高裁判所は適当と認める審問を経た上で、大統領に意見を報告することができる、百四十三条でこういう規定を記けておるのでございます。それからカナダの最高裁判所法六十条にもやはり同様の規定があるのでございます。しかしながら、これはあくまで法律顧問といたしまして意見を聞くというだけのものでございまして、決して拘束力があるわけじやないのでございます。  それから第四といたしまして、特殊の違憲立法審査制度を有する国があるのでございます。この特殊の制度をとつております国には、やはり裁判所の違憲立法審査権を認める国と同じように、憲法優位の原則をとつておるのでございますが、三権分立の原則を厳格に貫こうという趣旨から、裁判所には終局的な違憲立法審査権を認めないのでございます。この違憲立法審査権を行使させますために、特別に憲法裁判所というのを記けまして、これに違憲立法の審査をそのほかの事項とともに行わせるのでございます。この憲法裁判所は裁判所という名称は用いられておりますけれども、通常の意味におきます司法権行使の主体としての本来の司法裁判所ではないのでございます。むしろ憲法に基いて設置された特別の国家機関、国会、政府、裁判所のいずれよりも上位にある特別の国家機関と見るべきものではないかと考えられるのでございます。右のような憲法裁判所の制度をとります国としては西ドイツが典型なのでございますが、そのほかにオーストリア、それからイタリアがございます。それからなおここにはあげておきませんでしたが、キューバがやはりこれと同じ制度をとつておるようでございます。わが国でも現在憲法裁判が問題になつておりますので、西ドイツのことを少しく内容を詳しくここに要旨だけを書いておいたのでございますが、この憲法裁判所は連邦憲法裁判所という名前が正式の名前でございますが、やはりこれは同国の憲法、すなわち基本法に基いて設置されておるのでございます。憲法以外の普通の法律で根拠を規定しているものはございません。この連邦憲法裁判所は連邦の議会、それから邦の議会ももちんでございますが、議会、政府及び裁判所からは独立の地位を有しておりまして、その権限の行使にあたりましては、これらの他の国家機関から拘束を受けることはないのでございます。この憲法裁判所は十二人の裁判官で構成されますところの二つの部からなり、裁判官の総数は二十四人になるわけでございます。各部の構成裁判官のうち四人は、連邦最高裁判所判事、すなわち司法裁判所としての最高裁判所でございますが、その連邦最高裁判所の判事から、他の八人は、司法裁判所の判事たる資格を有する者または高級行政官たる資格を有し、かつ公法上の学識経験を有する者の中から、連邦議会の両院が半数ずつ選任するという建前になつておるのでございます。一般の司法裁判所の裁所官の任命方法と異にされておるのでございます。  それから裁判所の権限につきましては、十数項目非常にこまかく規定がございまして、たくさんの事項をあげておるのでございますが、その中のものを見ますと、ほかの国でありましたならば、司法裁判所の権限あるいは国会の権限に属させておるような事柄があるのでございます。たとえば大統領に対する弾効事件の審判であるとか連邦、または邦の司法裁判所の判事に対する弾効事件の審判、その他いろいろここにあげておるようなことがあるのでございます。それからなおわが国では破防法に基いて設置されておるところの公安審査委員会の権限に属するような新聞雑誌の発刊停止等、憲法で規定いたしますところの基本的権利の停止の審判であるとか、あるいは非民主的政治団体の解散等の審判、こういうものも入つておるのでございます。それからわが国におきましては、国会の自律的権限にまかせてありますところの議員の資格の得喪に関するところの下院の決定に対する異議の審判を、この憲法裁判所はやるというような特殊の権限本付与されておるのでございます。  そこで憲法解釈の問題と関連いたしますものをここに五項目列挙いたしすしたが、最後の六項目はこれは裁判ではございませんで、意見の開陳なのでございます。第一の、連邦の最高機関の権利義務の範囲に関し紛争がある場合における基本法の解釈に関する審判、これは西ドイツが連邦国家でありますための特殊のものでございます。  わが国でこの関連で問題になりますのは、第二でございます。すなわち連邦または邦の法律が基本法に適合するかどうかについての審判なのでございます。まさしくこれは法律の違憲性の審査なのでございます。ここで御注意をお願いいたしたいのは、この審判は一般私人からの請求に基いてできるのではないのでございまして、連邦政府あるいは各邦の政府もしくは連邦の下院議員の三分の一の請求に基いて、この審判がなされるのでございます。それからまた司法裁判所の請求求基いてもなされるのでございます。要するに一般私人がこの法律は違憲であるというようなことを理由にして、いきなり憲法裁判所に訴えを提起するというような道は、ドイツでも開かれていないのでございます。なおこの連邦政府とか、邦政府とか、あるいは連邦下院議員の三分の一の請求に基くという場合につきましても、やはりある法律について具体的に紛争があり、政府と国会の意見が異なるとかいうぐあいに、具体的の問題があります場合に、この訴えの提起が認められておるのでございます。  それから三、四はわが国とは直接関係がないのでございまして、これはドイツが連邦制をとつておることから出て来るのでございます。  それから五が若干わが国と関係があるのでございますが、公権力による基本的権利の侵害に対する異議の訴えについての審判なのでございます。これはフエルフアツスンクスベシユヴエールデという言葉を使つておりますが、わが国で例をとりますと、これは人身保護事件のようなものなのでございます。その他の事件も含まれますが、要するに国家の公権力によつて具体的に権利を害せられたとする者から請求するのでございます。やはりただ単に一般的に、抽象的にある法律は違憲だということを理由に訴えを提起するのじやないのでございまして、公権力によつて具体的に権利を害せられたというものからこの審判を求めるわけでございます。しかも原則といたしまして、通常の私法的な救済手続を経た上でこの手段が認められるのでございます。いきなり憲法裁判所に訴えるということは原則として認めていないのでございます。

鍛冶良作自由党

○鍛冶委員 救済手続を経た上でということはどういうことですか。裁判をやるということですか。

平賀健太検事(民事局参事官)

○平賀説明員 たとえば日本の人身保護事件のようなものを考えればいいと思います。警察なり検察庁なりが違法に身柄を拘束した、これは憲法違反だというようなことで異議を言うわけでございますが、まず司法裁判所に対する通常の手続、たとえば拘留処分でありましたらそれに対して即時抗告をするとかいうように、司法裁判所内部における手続を経まして、それに不服であれば初めてこの憲法裁判所に訴えるという建前になつておるのでございます。  それから六は、これは憲法裁判所が一種の法律顧問たるの地位を持つておるのでありまして、憲法上の問題に関する法律的の意見の開陳、これは連邦議会の両院及び政府の共同の申請によるか、または大統領の申請に基いてこの意見の開陳がなされることになつておるのでございます。  このドイツの憲法裁判所の特色は、ことに今申しました第二の違憲審査権を行使しまして、連邦あるいは邦のある法律が違憲であり、無効であるという審判をいたしますと、その審判は日本の場合と違いまして一般的な効力があるわけでございまして、連邦及び邦の憲法上の諸機関、議会、政府それからすべての裁判所、すべての行政庁を拘束するということになつておるのでありまして、これはわが国とは明らかに違うところでございますが、しかし先ほども申しましたように、この憲法裁判所の審判手続というのは民衆訴訟的な性格を持つものじやない、一般私人が、ある法律が違憲だから審査してくれというような、そういう民衆訴訟的な性格は持つていないという点は注目すべきであろうと思うのでございます。  それからこの説明におきましてはオーストリア、それからイタリアは省略してございますけれども、大体ドイツと、多少規定は簡略になつておりますけれども、同じような建前でございます。今申しました資料が第九でございます。  それから次に今日間に合いませんでしたので、お手元にまだ配つてありませんが、これは明朝お配りいたすことに予定しておりますが、西独の連邦憲法裁判所法、これの邦訳が出ておりますので、写しをつくつたのでございますが、これを第十号にいたしたいと思います。  それから次は第十一号でございまして、これも明日お配りいたす予定になつております。これはオーストリアの憲法裁判所に関するものを抄録したものであります。以上が民事局の方で準備いたしました資料でございます。  それからただいまお配りの資料の第二号でございますが、裁判所の制度の改善に関する意見の分類、これは先ほど申し上げましたように法制審議会で現われました意見の要旨、これに対する賛否の意見の大要を掲げたものでございます。これを第二号といたします。  ごく簡単に説明申し上げますと、第一は最高裁判所の裁判官の増員案でございます。その案の骨子といたしますところは、「最高裁判所の裁判官を増員する。」、そしてこれと表裏いたしまして「民事、刑事ともに、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反を上告理由とする。」、上告理由を現行の刑訴よりも拡張して、大体民訴と同じような建前にするということなのでございます。  それからなおこの裁判官を増員しました後の裁判所の構成につきましては、この内容の二にございますように、大法廷及び小法廷を設けまして、大法廷の構成は、会議を円滑に行うために、裁判官全員としないで少数とする、こういうことが内容となつておるのでございます。  この支持理由、反対理由がそれぞれあるのでありますが、支持理由は、やはり最高裁判所の負担過重を解消するためには増員以外に道がない。それから裁判の適正を確保するためには、現在のような憲法違反、法令抵触あるいは重要事項というような上告の制限の仕方では実現できないということが支持理由の骨子になつておるわけでございます。これは主として在野法曹の側からの御意見でございます。これに対しましては、反対論といたしまして現行憲法のもとにおきましては、最高裁判所が違憲審査権を持つておる。さらに規則制定権、司法行政権を持つておる、国民審査にも付されることになつておる、こういう憲法の諸規定を考慮に入れると、憲法の所期しますところの最高裁判所というものは、最も識見の高い少数の裁判官を持つて構成されるべきもの、こういうことが憲法の当然予想しておるところであるという憲法の基本解釈から、増員案はいけないという反対理由が第一に出ておるのでございます。その他ここに列挙しておりますようないろいろの理由が述べられておるのでございます。  それからこの増員案に対しまして、新機構設置案というのが第二にございます。この新機構設置案は二つにわかれるのでありまして、その一は一般法律審としての上告部設置案であります。その内容といたしますところは、東京高等裁判所に上告部を設けまして、最高裁判所では取扱わない一般の法令違反事件をこの高等裁判所の上告部で取扱う。最高裁判所では大体現行通りに憲法違反、判例抵触、あるいは重要事項、こういうものだけを取扱う。そのほかの一般の法令違反を理由とする上告は、すべてこの東京高等裁判所に設けられますところの上告部で審判する。ごく比喩的に申しますと、現在の高等裁判所と最高裁判所との間に、昔の大審院のようなものを置く。ですから中二階案とも言われておるわけでございます。そういうことになりますと、最高裁判所の取扱います事件の範囲は、現在よりも狭くなるわけでございますから、最高裁判所の裁判官の員数も、七人ないし九人として、裁判官全員で裁判することとしていいのではないか。裁判官の減員ということが結果として出て来るのであります。これに対しましては、支持理由といたしまして、従来の三審制度というものがわが国の実情に適しておる。従つてその実を維持すべきである。しかしまた憲法のもとにおきますところの最高裁判所の重大な使命というものもそこなわれてはならないので、最高裁判所の骨子というものはやはり残すが、それ以外に昔の大審院のようなものを中間に設けるということになれば、従来の三審制度の実が維持できるという構想なのでございます。これに対しましては、そういう中間機構を設けるのは非常にむだではないか、増員論から言いますと、そうい一般法令違背も最高裁判所でやらせてもいいじやないか。それからまた現状維持論者から申しますと、一般法令違背事件はもう上告理由とする必要がないのではないか、いずれにしてもそういう中間機構を設けることは不経済であり、さらに場合によつては四審級を認めるような結果になる、そういう反対論があるわけでございます。  それから新機構設置案の第二といたしまして、上告審査部設置案というのがあるのでございます。これは最高裁判所の機構や上告事件の範囲というものは大体現在の通りといたしまして、ただ上告事件の審判の範囲を現在の通りといたしましても、現状のもとにおきましては、上告制限というものが必ずしも実効を収めていないのでございます。憲法違反とか判例抵触、あるいは重要事項などに上告の範囲を限定いたしましても、途中でそれをふるいにかける機関がざいませんと、みんな憲法違反あるいは判例抵触というような名のもとに、最高裁判所の中に入つて来る途中で、はたしてこの規格に合つているかどうかということを審査する機関を設ける必要があるというので、この審査部設置案というのが出ております。これには東京高等裁判所に上告審査部というのを設けるのと、東京高等裁判所だけではなく、各高等裁判所に特別の部を設けるという二つの意見がございますが、いずれにいたしましても、この上告審査部にまず上告が提起されるわけでございまして、この上告審査部を経由いたします際に、上告の適法要件を備えているかということだけでなしに、上告適法の理由を具備しているかどうか。すなわち憲法違反の主張に当るかどうか、判例違反の主張に当るかどうか、あるいは重要事項に該当するものと認められるかどうか。そういう上告適法の理由を具備しているかどうかということの審査をさせまして、そういう適法理由を主張していないものは、ここでふるい落すという考え方なのでございます。  この意見につきましては、支持理由といたしまして、途中でこういうふるいにかける機関がないと、上告制限は、決して実効をあげない、これが実質的な理由になつておるのでございます。これに対する反対理由といたしましては、要しまするに、上告適法の主張をしておるかどうかということだけの審査なのであつて、実質的には決して上告理由の有無、上告が理由あるかどうかの実体の判断をするものではないのでございますけれども、やはり実体の判断にわたるおそれがあるということが懸念されるのございまして、適法理由の具備かどうかということを審査すると言いながら、実体の判断にわたるのではないかというのが実質的な反対理由の骨子になつておるのでございます。  以上の二つの意見に対しまして、現機構を維持すべきであるという意見があるわけでございます。その第一といたしましては、原審裁判所に再度の考案をさせるという案でございます。その内容を申し上げますと、ここに書いてございますように、「最高裁判所の機構及び上告事件審判の範囲はおおむね現在のとおりとする。」二といたしまして、「最高裁判所に対する上告はすべて原審裁判所を経由させ、原審裁判所は法令違反の点について再度の考案をする。」なお申し落しましたが、「最高裁判所の機構及び上告事件審判の範囲はおおむね現在のとおりとする」の「現在のとおり」というのは、民事に関しましては、民事上告特例法のことを言つておるのでございます。

小林錡自由党

○小林委員長 特例法がまだ生きておるものとしてですか。

平賀健太検事(民事局参事官)

○平賀説明員 そうでございます。特例法が生きておるものとして、その当時の議論でございますので、特例法廃止前の状態を基礎にいたしておるわけでございます。  それから原裁判所が再度の考案をいたします際に、原判決に法令違反があるということを自認いたしますと、原裁判所は変更の判決をするわけでございます。そうでないときは、上告理由が重要事項に該当するかどうかについて意見をつけまして、事件を最高裁判所に送る、こういう構想なのでございます。  その支持理由といたしましては、重要事項にわたらない一般の法令違反というのは、上告制度の趣旨からいつて、また最高裁判所の使命性格に照して、これを上告理由として取上げるべきではないというのが考え方の骨子になつておるのでございます。しかしながら原判決に、法令解釈上重要事項ではございませんけれども、判決の結果に影響を及ぼすような法令違背があるということがもし原裁判所でわかれば、それはでき得る限り改めることが、正しい裁判をする上においては必要でございますので、ちようど現在の決定の手続において認められておりますような再度の考案という制度を判決にも持つて来ようということなのでございます。  これに対しましては反対論といたしまして、そういう原判決に法令違反があるのを原裁判所で審査して再度の考案をするというようなことは、実際問題として実益がない、そういう明白な誤謬を原裁判所がするというようなことはほとんどないので、原裁判所というのは確信をもつて判決をしているのであるから、こういう制度を設けても実益がないのではないか、というのが反対理由の骨子になつておるのでございます。  それからさらに現機構維持案の第二といたしまして、原審裁判所に上告審査をさせる案なのでございます。これは再度の考案とは違いまして、上告が原審裁判所を経由して提起されますと、原審裁判所では、今度の民事訴訟法の改正で行いましたような上告の適法要件を具備しているかどうかということだけではなしに、上告適法の理由を具備しているかどうかということの審査も行うわけであります。憲法違反、判例抵触、重要事項だけに上告理由を限定するわけでありますから、そういう上告理由に該当するような主張が、主張自体においてなされておるかどうかということまでも審査させようという考え方なのでございます。これによつてこの最高裁判所の判断に値しないようなことの明白な事件を全部原審でもつてふるい落そう、そして上告制限の実効を収めようという案なのでございます。  それから現機構維持案の第三といたしましては、現在の機構を全然そのまま維持する、これは現在の機構を活用し、さらに必要によりまして民事訴訟法、刑事訴訟法に改正を加えまして、運用によつて事を合理的にして行こう、そうして機構の面では、最高裁判所の機構につきましては、現在の機構をそのまま維持して行こうという案なのでございます。これを維持する理由といたしましては、先ほどの事件の統計表のときにちよつと申し上げましたように、最高裁判所の未済事件も減少の傾向にあるのであつて、現在の機構も運用のいかんによつては十分に、合理的に上告事件の処理ができるということが根本の前提になつておるのでございます。  それからこれに対する反対理由は、やはりこれは見通しの問題でございまして、なるほど統計の上では若干未済事件が減少しておるという傾向にあるけれども、これは最高裁判所がよほど無理をされてのことなので、最高裁判所の本来の使命というものを完全に果して行く上においては、現在の機構のままではよほどの無理をしない限りできないのではないか、こういう無理をしなければうまく行かないということは最高裁判所の本来のあり方ではない。どうしても何らかの機構の改革が必要であるというのが反対論の理由なのでございます。

鍛冶良作自由党

○鍛冶委員 これはやはり民事特例を前提にしたものですか。

平賀健太検事(民事局参事官)

○平賀説明員 民事特例を前提にした案でございます。

横井大三検事(刑事局参事官)

○横井説明員 ただいま村上局長の御説明の中で刑事関係の点を刑事局の方で補足すると申しておられますので私から簡単に申上げます。  先般の民訴の改正によりまして民事関係につきましては上告理由が拡張されたわけでございます。従いまして刑事関係との間にギヤツブが生じておりまして、これをどう考えて行くかということをわれわれで問題にしておるわけでございます。これを考えます場合には、やはり最高裁判所の機構問題とからみますので、それの動きをにらみながら内々研究しておるわけでございますが、私どもでもし最高裁なりあるいは上告審の上告理由の拡張ということをいたしますとすれば、それが刑事手続にどういう影響を及ぼすかという点がわれわれの主たる問題になるわけでございまして、私どもでは大体二点に影響が及ぶと考えております。  一つは、現在の刑事手続における控訴審が、いわゆる事後審でございますから、事実点及び法律点の原審の判決を、原審判決当時の状態で、はたして適法かどうか、妥当かどうかを審査をするわけでございますが、もしこの控訴審の事後審をそのまま維持いたしまして上告審に法令違反を全般的に審査させますとしますと、少くとも法令審査の面では控訴審と上告審とは同じ仕事をするということになりはしないだろうか。そこで控訴審の事後審をこのまま維持できるかどうか、あるいは民訴のように続審にするような考え方が研究されなければならないのではないかということであります。これが第一点であります。  第二点は、もし控訴審を続審のようにいたしますとすると、簡易裁判所の事件の控訴審を、はたして高等裁判所にやらしてよろしいかどうか、場合によつては地方裁判所でやらなければならないのではないだろうか、こういう点でございます。  その結果は、さらに簡易裁判所の事件の上告審をどこでやらせるかという問題になつて来ます。従つて上告制度の改正ということは、それだけではとどまらないわけでございまして、ことに刑事手続におきましては、控訴審の構造、さらには簡易裁判所の控訴審なり上告審をどこでやらせるか、どういう構想でやらせるかということなどについても影響を持つて参るのではないだろうか、こう考えましてその点の研究をいたしておるのでございます。従いまして最高裁判所の機構をお考えになる際にはあわせてこの点も同時に御検討願えれば幸いだと思います。

小林錡自由党

○小林委員長 そういう調査された点を少し組織的にまとめた書類でも出してもらえませんか。

横井大三検事(刑事局参事官)

○横井説明員 では一応問題点を書き上げて提出することにいたします。

小林錡自由党

○小林委員長 ではそのようにお願いします。  今両方から御意見がありましたが、大体われわれもわかつて来たと思いますが、皆さんの中で御質問がありましたら……。  ちよつと速記をとめて。   〔速記中止〕

小林錡自由党

○小林委員長 速記を始めてください。  それでは、上訴制度に関する調査小委員会は、これをもつて散会することといたし、明日午前十時から開きますから、できるだけひとつ定刻に御出席を願います。  本日はこれをもって散会いたします。   午後零時二十五分散会

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