法務委員会 第10号
- 発言数
- 50 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 1
- 開催日
- 1954/02/24
会議録
○小林委員長 これより会議を開きます。 外国人登録法の一部を改正する法律案を議題とし、本案の趣旨説明を聴取することにいたします。 なお昨二十三日刑法の一部を改正する法律案及び執行猶余者保護観察法案、以上二案が本委員会に付託になりましたので、この際以上二案を一括議題とし、それぞれその趣旨説明を聴取することにいたします。三浦政務次官。
○三浦政府委員 ただいま議題となりました外国人登録法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。 現行の外国人登録法第十四条によりますと。外国人が登録証明書の交付、引きかえ交付もしくは再交付を申請するとき、または有効期間が満了した証明書の切りかえを申請するときは、それぞれ必要書類に指紋を押捺しなければならない旨規定されております。この規定は、要するに外国人の日本における適法な居住及び身分関係を証する唯一かつ最も基本的な文書である登録証明書が、従来偽造変造されあるいはそのまま他の外国人に売買される事例がしばしば発生いたしましたので、これを防止するための効果的な方法として、指紋押捺制度を設けることを意図しているのであります。 しかしながら、登録の申請にあたりまして一般外国人に強制的に指紋を押捺させるということは、わが国の制度としても初めての試みであるため相当の準備を要し、かたがた一般外国人に対してもその制度の趣旨を周知徹底させる必要がありましたので、当初登録法の附則において、これに関する規定の施行につき一年という猶予期間が置かれた次第であります。 ところがその後、この指紋制度に関する一部外国人の誤解が払拭されず、その施行を強行いたしますときは、当時好転を期待されていた日韓両国の国交調整等に無用な障害を与えるおそれもあると判断いたしまして、第十五国会に外国人登録法第十四条の規定を施行する猶予期間をさらに一年延期する内容の改正案を提案いたしましたが、たまたま右改正案を上程中の衆議院が解散されたため、とりあえず参議院の緊急集会に上程いたしましてその御裁決をいただき、昭和二十八年三月二十六日法律第二十四号期限等の定のある法律につき当該期限等を変更するための法律をもつて、右期間を昭和二十八年六月一日まで延期したのであります。 次いで、新しく召集されました第十六国会の御審議を経て、昭和二十八年五月三十日に当初の予定通り、登録法第十四条の規定を施行する猶予期間を二年とする内容の法律第四十二号が公布施行されましたので、登録法第十四条の規定は、法施行の日から二年以内において政令で定める日から施行されるということになつた次第であります。 従いまして、登録法第十四条の規定は、本年四月二十七日以前に政令をもつて施行期日を定めなければならないわけでありますが、新規事業として指紋押捺制度を実施するためには、相当多額な財政支出を要しますところ、国家財政の現状にかんがみさらに一年間これを延期することが適当であると考えられますので、この猶予期間を、この法律施行の日から三年以内と改める必要があり、この法律案を提案いたしました次第であります。何とぞ慎重御審議のほどを願います。 次にただいま上程に相なりました刑法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。 この法律案は、刑法のうち、刑の執行猶予に関する第二十五条ノ二の規定を改正し、初度目の執行猶予者をも保護観察に付し得ることにして、刑政の目的を達成し、犯罪対策に寄与することを根幹とするものでありますが、なおこれに附加して、日本の航空機が国外航空を開始したことに伴い、国外にある日本の航空機内の犯罪についても処罰することができるようにする規定をも含めてございます。 執行猶予者のうち、少年に対しましては、早くからこれを保護観察に付する制度が行われていましたが、成人の執行猶予者に対しましては、昨年初めてその一部につき保護観察に付することができるようになつたのであります。すなわち昨年の第十六国会は、執行猶予の範囲を拡張するとともに、軽微な犯罪で情状特に憫諒すべき場合は、再度の執行猶予を許してこれを保護観察に付し、初度日の執行猶予者に対しては、必要に応じて保護観察に付することができるようにする趣旨の政府拠出の法律案を審議されたのでありますが、諸種の理由のもとに、初度目の執行猶予者を保護観察に付する点を削除し、かつこの点については、予算その他の措置を講じ、適切な法案を準備し、すみやかに国会に提出すべきであるとの附帯決議がなされ、再度の執行猶予者のみを保護観察に付する法律が成立したのであります。 そのため政府は、右の国会の審議の状況にかんがみ、さらに種々検討を加えた結果、執行猶予者の保護観察は、その成績により実施の必要がないと認められるに至つたときは、仮出獄の例にならい、行政官庁の処分をもつてかりに解除することができるようにするとともに、仮解除の期間中の行為については、再度の執行猶予を除外する規定、及び遵守事項違反を理由として執行猶予を取消す規定を適用しないことにし、かつ遵守事項違反を理由として執行猶予を取消す場合は、情状重しと認められるときに限ることにする等の規定を附加することにして、初度目の執行猶予者をも保護観察に付することができるような改正法案を立案するとともに、別に、執行猶予者の保護観察を規定する独立の単行法として、執行猶予者保護観察法案をも同時に御審議をいただくよう準備をいたし、予算については、昭和二十九年度の予算案において所要の限度において増額を考慮して、この法律案を提出いたした次第であります。 また先にも一言いたしましたように、日本の航空機が国外航空を開始することに相なりましたので、国外にある日本の航空機内の犯罪についての対策が必要と考え、前記のごとく刑法の一部を改正する機会に、国外にある日本船舶内の犯罪と同様に処罰できるよう、刑法第一条第二項の規定をも改正しようとするものであります。 なお、附則においては、この法律を施行する日を規定するほか、この法律の施行前に犯された罪については、この法律の施行による不利益を帰せしめないようにする経過規定を設け、かつ国外にある日本の航空機内の犯罪についての裁判管轄を明らかにするため、刑事訴訟法第二条を改正する規定を設けているのであります。 以上申し述べましたように、犯罪をした者の改善更生のため、できる限り刑の執行を避けてこれを保護観察に付し、その成績に応じて刑の執行を考慮することが最も必要であると考慮して、この法律案を提出いたした次第であります。何とぞ慎重御審議の上、御可決あらんことを切望する次第であります。 次にただいま上程に相なりました執行猶予者保護観察法案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。 この法律案は、その第一条が明記するように、「刑法第二十五条ノ二第一項の規定により保護観察に付された者がその期間中遵守しなければならない事項を定めるとともに、保護観察の方法及びその運用の基準等を定めることによつて、保護観察の適正な実施を図り、もつて、保護観察に付された者のすみやかな更生に資することを目的とする」ものでありまして、別に提出する刑法の一部を改正する法律案と関連し一体をなすものであります。 保護観察を規定する法律といたしましては、すでに犯罪者予防更生法が施行されており、現在執行猶予とともに保護観察に付する旨の裁判を受けている者は、同法により保護観察を受けているのでありますが、執行猶予者に対し保護観察を付することを創始した第十六国会において、この旨を規定する政府提出の刑法等の一部を改正する法律案を審議した際に、犯罪者予防更生法には、執行猶予者の保護観察については適当でないものがあるから、適切な法案を準備し、すみやかに国会に提案すべきであるとの附帯決議をせられたのであります。 そのため政府は、右の国会の審議の状況にかんがみ、さらに種々検討を加えた結果、別に提出する刑法の一部を改正する法律案を立案するとともに、執行猶予者の取扱いは、犯罪者予防更生法による少年あるいは仮出獄者等の取扱いとは区別する必要があると認め、独立の単行法としてこの法律案を提出いたした次第であります。 この法律案におきましては、まず第三条に、保護観察は保護観察所をしてつかさどらしめるものとし、第五条に、保護観察の中核をなす遵守事項を規定し、「保護観察に付された者は、すみやかに、一定の住居を定め、その地を管轄する保護観察所の長にこれを届け出る」ほか、保護観察に付されている期間中、善行を保持し、住居を移転しまたは一箇月以上の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察所の長に届け出ることとし、第二条において、「保護観察は、本人に本来自助の責任があることを認めてこれを補導援護するとともに、第五条に規定する事項を遵守するように指導監督することによつて行うものとし、その実施にあたつては、画一的に行うことを避け、本人の年齢、経歴、職業、心身の状況、家庭、交友その他の環境等を充分に考慮して、その者にもつともふさわしい方法を採らなければならない。」とし、第四条において、裁判の確定前であつても、本人から申出があつたときは、確定後における保護観察の開始を円滑ならしめるため、環境の状態の調整をはかることができることとし、執行猶予者の保護観察に適切な規定を設けたのであります。このほか、刑法の一部を改正する法律案の成立を前提として、保護観察の仮解除並びに仮解除の取消しを、地方更生保護委員会をしてつかさどらしめることとし、かつ、仮解除の取消をする処分についての不服申立を、中央更生保護審査会に審査せしるめことを規定し、さらに、遵守事項違反を理由とする執行猶予の取消につき必要な呼出、引致、留置及び検察官への申出等の手続を規定し、これらの機関のその他の権限については、犯罪者予防更生法に準じて行使できるようにしたのであります。 なお、附則においては、この法律を施行する日を規定するほか、この法律の施行前に犯罪者予防更生法に基きなされた手続及び処分をこの法律施行後も有効ならしめる経過規定を設け、また犯罪者予防更生法、更生緊急保護法及び刑事補償法の一部を、本法の制定により必要な限度において改正する規定を設けております。 以上述べましたように、刑の執行猶予者に対する保護観察の実効を収め、刑政の目的を達成し犯罪対策に寄与するため、この法律案を提出いたした次第であります。何とぞ慎重御審議の上、御可決あらんことを切望する次第であります。
○小林委員長 交通事件即決裁判手続法案を議題となし、質疑に入ります。 この際お諮りいたしておきます。本案審議中に、最高裁判所当局より本案に関し出席説明したいとの要求があります場合には、国会法第七十二条第二項によりこれを承認することにいたしたいと存じますが、御異議はありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○小林委員長 御異議がないものと認め、さようとりはからいます。 それでは質疑の通告がありますから順次これを許します。佐瀬昌三君。
○佐瀬委員 最近交通事犯は全国にわたつて厖大な数に達し、これが犯罪統計として当局の資料にも明確にされておるところであります。交通事犯の内訳は、交通法規の違反と、さらにこれによつて個人の生命、財産等に対する侵害という事犯にわけられるわけでありますが、この交通事犯に対処するため、実体法においてまた手続法において特別の立法を考えなければならぬということは当然であり、また最近の欧米各国における立法例においてもその傾向をうかがい知ることができるのであります。この観点から、今回法務省より交通事件即決裁判手続法が法案として本国会に提案されたことは、まことに時宜を得たものでありますけれども、この一連の交通事犯に対する立法を審議する上におきまして、私どもとしてはさらに考えなければならぬ点が多々あると思うのであります。今申し上げました立法体系から申しましても、交通事犯に対する刑罰法規以外の、いわば被害者の救済に対する損害賠償立法といつたようなものも、当然ここに考え合されなければならぬと思うのであります。この点について、まずもつて法務当局はいかような見解を持つておるか、伺つておきたいのであります。
○下牧説明員 ただいまお尋ねの点ごもつともな点だと存じます。しかし問題が非常に大きくなりますので、とりあえず刑事事件取締りの面における手当を早急にこの法律でいたしたわけでございます。今御質問になりました点は、十分別途に考慮いたしたい、かように考えております。
○佐瀬委員 司法立法として、刑罰事犯に対する簡易手続は、同時にその反面において被害者の救済という民事立法の裏づけがあつて交通事犯に対する完全な処理ができるわけであります。片手落ちな立法というものは、法制度の体系から見ましても、はなはだ体をなさないわけでありまして、この点について十分今後法務当局の検討、用意を促したいのであります。 この機会に幸い運輸省の自動車局長もお見えのようでありますから、この交通事故災害に対する運輸当局の対策と申しましようか、用意のほどを伺つておきたいのであります。
○中村(豊)政府委員 ただいま御指摘の交通事故の激増ということは、われわれも非常に頭を悩ましておるわけであります。それでその対策といたしましては、まず車両の整備、保安検査というものの強化でございますが、これは道路運送車両法でもつて規律しまして、全国各都道府県に一箇所ないし数箇所、陸運事務所に自動車検査所を置きまして検査をしておるわけであります。また検査をパスして使用の段階に入りました車に対しましては、各所有者に対して整備ということを厳重に励行さしております。また運転者に対しては、絶えずその技能の向上ということをはかつておるのでございますが、しかしそのようにしましても、自動車の激増に対して道路は狭いし、交通量が急にふえたために、事故は不可避的にふえる一方でございます。その点で一種の社会不安を起しておることは、われわれは非常に残念に思つておる次第でございます。そこでお話の被害者の救済という問題でございますが、これは確かにお説のごとく何とか考えなければいけない問題であろうと思います。 そこで事故が起つた場合に、今までの状態では結局加害者である自動車所有者または運転者と被害者との話合い、話合いがつかなければ訴訟になつて、これは民事的に解決されておる問題ですが、とかく話合いだけではなかなか長期間かかりますし、もめまして、被害者の救済が十分でないという感じがするのであります。つまり被害者の救済について絶えずトラブルが起り、不明朗な泣き寝入りというようなことも起ることを承知しておりますので、運輸省といたしましては、この問題を迅速的確かつ簡易に処置してしまい、しかもきわめて明朗に処置して、事故が起ることを防止しなければいけないけれども、起つてしまつてから先は簡潔に処理すべきである、かように考えるのでございます。そこでその方法としては、最も簡単といいますか、事務的に簡単な方法は、自動車所有者に対して事故から起つた賠償責任を補償するために保険を強制するという方法でございます。これは欧米各国でも相当早くから実行されておるものでありますが、わが国においては、車が少かつたせいもありますが、遺憾ながらまだ行われておりません。そこでぜひそういう制度を確立いたしたいと考えておる次第でございます。その場合に考えられる問題点はいろいろございまして、損害賠償責任だけに限るかどうか、運送による損害も保険にかけるかどうかというような範囲の問題、また損害賠償だけに限つた場合でも、人だけにするか、物に対しても考えるかどうか、それから自動車については営業用だけにするか、自家用も入れるか、あるいは国の自動車も入れるかという車の範囲の問題、また補償する制度として保険一本やりで行くか、あるいはまた自家保険あるいは供託の制度を併用するか、どうかというような方法論が問題になるわけであります。また保険としても保険会社だけにするか、あるいは自動車関係者が集まつた保険組合というようなものも認めるような方法で、相互組織で救済するかどうかというふうに問題はいろいろ発展してくるわけでございます。またこれを民事法的に見ましても、損害賠償の責任の範囲あるいは責任の推定をどうするか、現在の民法の大原則だけで処理していいか、場合によつては挙証責任を転換させるべきかというような、民事立法的にもいろいろ議論があるところであります。そのようなことを実は運輸省としては相当前から研究しておりますし、外国の立法例も参照しまして、考え方を練つているわけでございます。そこでその成案を得ましたならば、特に関係の深い法務省、また保険としては大蔵省の関係、こういうところに御相談した上で立案したい、かように考えているのでございますが、今は主として大蔵省との関係で、考え方に多少隔たりがあるのですから、それを調整した上で、できましたらこの国会に上程したいものだと考えているわけでございます。
○佐瀬委員 私も年来交通事故の対策として、また立法的には、さようなものがあつてしかるべきであるということを主張して来ている一人でありますが、ただいまの中村局長の構想を伺つて、ある程度わが意を得た感もするのであります。ただお話の中にもあつたようでありますが、交通事故の責任の有無あるいは責任の程度というものを、いかにその立法において取扱うか、民法の一般原則として、民事裁判所等によつて確定されたものに対する責任補償、保険制度というふうに持つて行くか、あるいは責任問題にまで入つて、しこうしてその賠償責任を果す上の保険制度というふうに、これを合一した立法に持つて行くかどうか、かなりこれは法律体系の上から見てむずかしい問題があるのではないかと思うのでありますが、この機会にもう一ペんその点に対する構想と、それからなおこれに対する法務当局の意見をあわせて伺いたい。
○中村(豊)政府委員 民法及び一部商法の保険関係の規定について、原則の例外を認めていただいた方がいいじやないかと考えている点が数点ございます。それは主として被害者の利益を保護するためにという見地からでございます。そのような点について法務省の方に、事務的に非公式にはいろいろと御意見を伺つておりますけれども、まだ正式には案を御相談していないわけでございます。ただ問題は、そういう制度ができましてからも、民事責任の所在あるいはその責任額、賠償額というものは、これは訴訟によるのが当然だろうと思います。その訴訟の制度になれば、一般の訴訟の制度によるのが当然だと思う次第でございますが、できましたならば訴訟まで行かずに、大体賠償額がある程度形式的にきめられれば、それによつてそれこそ事務的に処理してしまうということも考えてみたのであります。ところが、少し話はそれますが、外国では、変な話ですが、たとえば腕一本折つた場合には幾らとか、足一本幾らとかいうようなことをきめてある法制もあるようですけれども、それはどうもわが国では、その被害者の社会的な地位とか立場とかいうことを考えると、どの人も足一本幾らということも言えませんから、そういう形式的な額をきめるということではなしに、やはり賠償額は訴訟によつてきめて行く、あるいは訴訟まで行かなくて、示談で行けばなおけつこうですが、そういうことにして、その確定した額を保険でもつて迅速に処理して行く、こういうふうに考えております。
○下牧説明員 お尋ねの問題は民事局の所管でございまして、私の方からお答えすべき限りではないと存じますけれども、御趣旨ごもつともの点がございます。民事局の方によく御意向を伝えたいと思います。それでこの法律は、そういう交通事故を起したという事件を対象とするのではございませんで、その前の、ほんとうの形式的な道路交通取締法、それに基く命令の違反だけを取上げ、しかも体刑になるようなのは取上げないということにいたしまして、事故を起したような、刑法犯になるようなものは、この法律から対象外として除いてございます。その頭で、とにかくたくさんある比較的軽微な事件を、簡単に処理したいというのがこの法律の目的でございます。
○佐瀬委員 御趣旨のほどはそれぞれよく承知いたしておるのでありますが、なお関連いたしますので、この機会に補足的に若干お尋ねしておきたいのであります。交通違反は、起きてからの処置もちろん重要でありますけれども、その予防こそ最も交通秩序を確立し、交通経済を安全ならしめる上において、また社会不安を除く上において緊要であろうと考えるのであります。そこで交通事件の予防という見地から、政府においてもまずもつて対策を考えられてしかるべきだと思うのでありますが、先ほど自動車局長のお話によると、車体検査、整備等においてはいろいろと措置されているようでありますが、私ども同時に運転者の素質あるいは適格性というものを、強く考えなければならぬのじやないかと思うのであります。おそらく本法案が通過すれば、その被告となる者については、はたして交通違反を起さないような適性を持つておつたか、あるいはまたしよつちゆう事犯を反復するような素質の具有者であるかどうかというようなことを同時に考えなければならぬと思うのであります。それによつてまたこの処分の種類あるいは程度というものも考えていいのではないか、本法案の刑罰及び付随の処分ということに関連してそういうことにまで考え及んでいいのではないか、こう考えるのであります。そこでまずもつて適性考査という点についていかような考慮がめぐらされておるかどうかということについて政府当局の、あるいはこれは警察関係の主管になるかもしれませんが、しかし関連ある当局としてのこの点に対する見解を承つておきたいと思います。
○下牧説明員 お尋ねの問題は主として警察の所管になると存じますが、私どもの承知している限りにおいて申し上げてみたいと思います。 資料といたしまして今手元にございますのは、警視庁で実施したものでございますが、昭和二十七年の十月から本年の二月までに事故を起した運転者につきまして身体及び心理検査を実施いたしております。その数が三百七十九名という数字になつております。それで検査の方法は、警視庁の品川自動車免許試験場、あそこにおきましてこまかい身体検査の方法、それから心理検査の方法をとつておる。身体検査におきましては、特に視力と弁色力、四肢の運動、動作が非常に緩慢であるか敏速であるか、そういう点をいろいろこまかい方法でテストしておるわけであります。それから心理検査というのは、これは何か非常にむずかしいやり方でやつておるようでございまして、詳細なことは存じませんが、いろんな方法で答えを出してみて、それがマイナス同点とかプラス付点ということで点数を計算して結論を出すようでございますが、その検査の結果を見ますと、全体で、身体の関係と心理の関係において欠陥者が三百七十九名のうち三百四十名ございます。六三・三%という数字になつております。それを別々に申し上げますと、視力だけによつて不合格になる者が約九%、制動動作、動作が非常に緩慢であつてそれがうまく行かない、そういう欠陥に基いて不合格と認められる者が二〇%、それから心理だけの検査の結果不合格になる者が一〇%余り、その他視力と制動とそういうものがいろいろかみ合つた関係で不合格になるというような数字が出ておりますので、これからみますと、どうしても運転者の最初の検査が非常に大事になつて参ります。その方面に警察の方からも十分力を注いで、また科学的な研究もいたしておる模様でございます。いずれまた詳細なことを聞きまして御返答いたします。ただいま知り得た限りにおいては、ただいま申し上げたような状況でございます。
○佐瀬委員 次に違反予防の方から見て、また事故災害の予防の見地からして、交通標識の完備ということがきわめて重要であろうと思うのであります。これはいずれの所管かわかりませんが、欧米の市街地を歩いて見ても、交通標識が非常に完備しておるために、交通事犯が非常に予防されておるという実績を私ども見て参つておるのであります。道路の整備と相まつて、交通標識の完備ということを要望しておるのでありますが、これに対する運輸省等における対策を承つてみたいと思います。
○中村(豊)政府委員 道路標識、交通標識の所管は運輸省ではございませんので、道路に関しては建設省、交通関係は国家公安委員会じやないかと思います。ただ私どもの方も非常に関心を持つておりますので、そのようなものの整備や形式のつくり方については、絶えずそのような関係の官庁に要望しまして御相談には乗つておるようなわけでございます。
○佐瀬委員 私どもまたその財源についても考慮しなければならぬと思うのでありますが、最近は交通の科学化という意味から、たとえばガソリン税は目的税にして、それを道路の開発整備に充当する、また私ども現在考えておるのは通行税、汽車等における通行税をやはり目的税にして、たとえば国鉄の近代化、電化等にこれを充当したらどうかというふうにいろいろその進歩的対策の財源を考えなければならぬと思うのでありますが、この道路標識あるいは交通標識を整備するための財源として、私どもしろうとでありまするが、あるいは運転者たる者の受験料あるいはまた自動車のナンバーの代金というか、何かそういつたような自動車にナンバーをつける場合に払う手数料とか、そういつたものをこういう財源に充てたならば、実際的に解決が得られるのではないかというふうにも考えるのであります。そういう受験料とかあるいはナンバーの料金とかいうものは、一体どういう程度の額に達し、またそれがどういうふうに使われておるのか、その用途等についても、この機会に御説明願つておきたいと思います。
○中村(豊)政府委員 道路標識、交通標識の方は、そちらの方から御答弁があると思いますが、今の車のナンバーの交付手数料は登録の手数料も合せまして年額大体二億円くらいあります。そしてそれは主として車両検査場の施設、それからそこに働いておる職員の俸給、給料、事務費というものに充てておるわけでございます。目的税ではございませんけれども、車両の整備には役立つておる次第でございます。
○下牧説明員 受験料の方でございますが、いわゆる手数料でございます。これはそう大した額じやございませんで、一般に四百五十円とか三百円、二百円、安い場合百円、この程度で実施しているようでございます。
○佐瀬委員 その収入は全国でどのくらいですか。
○下牧説明員 各自治体の公安委員会で取扱つて、その後ばらばらになつているようで、今集計したものはないようでございます。
○佐瀬委員 それはいずれまたその主管者についてただしておきたいと思います。 この法案の内容に入る前にもう一点承つておきたいと思うのでありますが、簡易手続で事犯を処理することはまことにけつこうであります。ところがわれわれの最も憂慮する点は、簡易裁判なるがゆえに、ともすると法的知識の乏しい被告は、実際はそう事犯を犯しておるのじやないのだ、しかしたびたび裁判所、検察庁に呼び出されるのはめんどうである、時間その他不経済きわまりないというようなことから、安易な考えでもつて妥協して、簡易手続で裁判を済ませるというような気風がこの制度によつて助長されはしないか。いわば誤判が横行するということは、裁判そのものの権威を傷つけ、やがて遵法精神の一角がくずれるのではないかということをひそかに心配するのであります。大体が運転手というまだ知的水準の低い人たちが対象でありますがゆえに、そういつたようなことが横行するということになりますと、かつて統制犯罪が非常に激増し、その被告か社会にあふれたために、遵法精神、犯罪、刑罰あるいは取締法に対する感覚が非常に鈍つたということが、今日社会秩序を乱す大きな原因になつておる、犯罪心理学の上からもそういうことが実証されておるというようなところから見まして、新制度をつくる場合にはよほどそれらの点を考えなければならぬのであります。そこでこの法案においても、そういう点がいかに考えられた上にかく立法されたか、これに対する御見解を承つておきたいと思います。
○下牧説明員 ごもつともな点でございまして、私どもも一番それをおそれたわけでございます。そこで現在交通事件はほとんど略式命令の手続で処理されております。その略式命令の場合に正式裁判の申立てをしたものと、それから裁判所において略式手続相当ならずというので正式の手続に引直された場合、この分を統計によつて調べてみますと、その数字は大体〇・一%、千人に一人ということになつております。そこで形の上では不服申立率が非常に少い。しかしながらそれだからといつて、今お尋ねがございましたように、何となく不満だけれども、非常に金もかかるし、それから手数もかかるので、まあまあがまんしておこうという事例がないとは言えないと存じます。その点につきましては、まず今度の手続におきましても、略式手続におけると同様に、簡易手続というものはどういうものだということを十分理解させる措置を講じておる。これは法案の第四条第二項にその趣旨が出ております。それからそのほかに正式の手続でもやれるし、それから略式の手続でもやれるし、即決裁判の手続でもやれる、こういうことを説明いたしまして、そうしてこの即決裁判手続によることについて異議がないかどうかということを検察官が確かめます。ただ略式の場合には同意書と申しますか、異議のない旨の書面を取付けておりますが、この簡易手続におきましては、非常に手続を簡単にいたしましたかわりに、裁判官が直接本人を目の前に置いて事件を調べるというかつこうにいたしましたので、本人は必ず一旦裁判官の前に出ることになります。そこでそういう書面をとつておらなくても裁判官の前で異議を申し述べれば、いつでも正式の手続に引直さざるを得ない。その趣旨が法案の第三条の第三項の「即決裁判は、即決裁判手続によることについて、被告人に異議があるときは、することができない。」ということでその点を明らかにしておるわけでございます。それから実体問題といたしましては、現在略式命令手続で行つておりますその手続を、大体そのままの形においてここに持つて参りまして、ただ書面審理でもつてやつているのを、本人を一応呼んで裁判官が事実関係を確かめてやるという点を慎重にしたかわりに、書類の方の作成というものを極度に簡易化いたしたというように調節をとつたわけで、本人の方から言えば、むしろその実体関係の糾明という点では、略式手続よりも慎重になつておるということにいたしておるわけでございます。それから即決裁判の言い渡しをいたします場合に、やはり略式命令におけると同様に十四日以内に正式裁判の申立てができるということを告知するというふうにして、あくまで被告人の自由意思を重んじてやるという手続をいたしておるわけでございます。
○佐瀬委員 この点を厳に警戒する意味から見ましても、まずこの交通事犯に対する検挙が慎重でなければならぬと考えております。簡易に処理できるがゆえにという安易な考えで、街頭にしばしば見受けるように、警察官なりあるいは検察官か小さな、また理由のなさそうなことをとらえて、ただちに違反であるというふうにこれを摘発あるいは起訴するということも考えられるのであります。そこでこの点はあえて交通事犯には限りませんけれども、検察の職務を遂行するのにその人を得なければならぬ、かように私どもは考えております。そこでこの機会に簡単に承つておきたいのは、そういう検察官の適性というものに対する、たとえば審議会とかあるいはその運用の手続とか、そういうものについていかに当局は考えられておるか、この点も承つておきたいと思うのであります。
○下牧説明員 検察官の適格審査につきましては適格審査会というのがございますが、これはよほどのミスとか何かがなければ動かない。普通のこういう交通事犯について、特にそれの適格を審査するという機関はございません。ただ事件が非常に簡単な事件でありますだけに、その処理というものが形式的に流れるというのがわれわれとして注意しなければならぬところであろうかと存じます。その点につきましては、一応検察庁部内におきまして、大体の標準をきめまして、それから必ず起訴する場合におきましてはそれを上司が決裁いたしまして、そうして特別の事由のあるものは許しておる。と申しますのは、その点も私ども心配いたしまして、いろいろ実例について調べてみたのでございます。ところが一つの例をあげてみますれば、無免許運転にいたしましても、通常交通の頻繁な場所で、そして昼間に無免許運転をしておるというようなものは、これは起訴いたしておりますけれども、朝五時三十分ごろやつた、しかも非常に閑散な場所で何らの事故もなかつた、場合によつては練習のために無免許でやつていまして、そして免許を持つておる者が横へ乗つておるというような事例がございます。そういうものは大体起訴猶予にして実質的に処理しております。それから酩酊運転にいたしましても、酒の飲みぐあいを機械ではかりまして、酩酊度の非常に低いようなもの、これはやはり起訴猶予処分ということになつております。それから速度違反にいたしましても、著しく制限速度を超過しておるというのは起訴いたしておりますけれども、五キロとか、ほんのわずか何して、しかもそこが交通の頻繁な場所でないという場合には、それは具体的に検討してやつておる。大体私どもの見ましたところではこの処理は適正に行つておる、かように考えております。それから警察が事件を検挙いたしまして検察庁に送致いたしますにつきましても、軽微な違反は一回ですぐ送致するというようなことはいたしておりません。それが二回重なり、三回重なるというところで初めてこれを送致するというようなことをいたしておりますので、まあまあ事柄が小さいだけにあるいはこんなけちなことでという感なきにしもあらずというような場合もあると存じますけれども、大体の大きな傾向においてはおおむねいいのじやないか、かように考えております。
○佐瀬委員 国によつては交通裁判所という特殊な裁判制度も設けておるくらいでありますが、ここで法案を機会に、今申し上げました検察及び裁判等について、現行制度の範囲内における問題ではありますけれども、特別にその専門化をはかつて、特殊な技能を持つておつて、こういう違反に対して理解力のある検察官あるいは裁判官を特に当てるというような考えをお持ちになつておるかどうか伺つておきたいと思います。
○下牧説明員 現在のところ自動車とか、それから機械の構造に対する特殊の専門的知識がなければ、事件を取扱わせないというほどきゆうくつには考えておりません。ただ業務上過失傷害の自動車事故の事件にしましても、こういう交通取締りの事件にしましても、ある程度専門的なことを知りませんともちろん処理できかねるので、常識でやれる程度のことは各検察官を訓練いたしまして、またそれができる者でなければ、こういう事件は取扱わせないというふうにはいたしております。それから特殊の専門家の意見を聞くという場合はもちろん必要に応じてございます。機械のこまかいことまで一々検察官が知つておるわけではございませんので、そのときはその都度判定を求めるなりいたして措置しておるわけであります。それから専門家をこういう事件の処理に当てるということは、これは外国にも立法例がないことはございませんけれども、例の参審員制度というようなものに関連いたしまして、すぐそこまで飛躍いたしますのは、今の状況においてはいかがかと考えておるわけでございます。
○佐瀬委員 いずれ逐条的な質疑は他の同僚諸君が繰返されると思いますから、私はごく重点的になお二、三の点について承つておきたいと思います。 これは第二条で事物管轄の範囲が限定されているようであります。道路交通取締法違反だけがこの裁判手続によるということのようでありますが、多くの場合交通法規違反は同時にあるいは業務上過失致死傷罪というような刑法犯等を伴う場合が多いと思うのでありますけれども、そういうものはすべて除外する趣旨でありましようか。もしこれが別々に分離されて処罰されるということになると、二度裁判と刑罰を受けなければならぬということで、被告人には結果的に見ると不利になるのではないか、そういう場合はやはり併合罪として合一して裁判するというふうにして、従つてこの略式命令は適略性を持つていないということで常にそれは公判請求ということに相なるのか、この法の運用の上における見通しを伺つておきたいと思います。
○下牧説明員 お尋ねの過失致死傷を伴う刑法犯は、この法律にはもともと乗らないという頭でできております。それは同じ交通事故でございましても、たとえばわれわれ若いころから言われておつたのですが、この過失事件を処理できるようになれば一人前だと言われるくらいで、非常にむずかしい事件でございまして、そういうものを簡単な手続へ乗せることは適当じやないということで、刑法犯は全部除きました。それから道路交通取締法及びそれに基く命令のほかにやはり道路運送法違反あるいは道路運送車両法違反といういろいろ交通に関連する事件もございますけれども、とにかく新しい試みでございますので、範囲を特に多いこれらの事件だけに限りまして、その他の交通に関する事件もこれを除外いたしました。この運用を見て、それがよければある程度そういうものを含めるということは将来考えられるかとも存じますけれども、一応ここから除外いたしたというわけでございます。
○佐瀬委員 そういう場合はこの第三条に規定された交通事件だけを分離して、この手続によるということも絶対いたさないという趣旨に相なるのでありましようか。
○下牧説明員 理論的には分離不可能ということにはならないと存じます。ただ業務上たとえば無免許運転をいたしまして事故を起した、そしていつもそういう無免許をやつているというような状況だと、これは業務上過失傷害と無免許運転とが両方成立いたします。そういう場合業務上過失傷害と無免許運転を一緒にやる場合は必ず併合罪として処理いたしておりまして、二つわけてやるということはいたしておりません。それから場合によりましては、事故を起してけがをさしたが、そのけがが非常に軽いというような場合、被害者も処罰を望まぬというときには、俗にのむと申しますが、業務上過失傷害の方をのんで、無免許運転だけで処理している場合もございます。そういう場合には分離してやつております。それから大きな事故を起して、そしてその間に信号無視なんかあつても、そういう特にこまかいものを、取上げる必要もないということだと、その処分はその点は取上げませず、ただ大きな過失事件、刑法犯だけを取上げてやつているというふうに、具体的事情によつてこの取扱いが違つて参りますが、同じものをばらばらに二度やるということは今まではやつておりませんし、また将来もそういうことはないということを申し上げていいと存じます。
○佐瀬委員 この新制度ができれば、この交通事件に関する限り、略式命令による心要性はなくなるのじやないか。むしろこの即決裁判手続によつた方が、内公的に見ても職権主義がある程度認められて、当事者の納得するような証拠調べもできるようでありますから、むしろこれを一元化して、公判か即決かというふうに行かれた方が、非常に明快であるばかりでなく、事物の性格に合うような制度だと考えるのでありますが、これを併存させておる理由はどこにあるのでありましようか。
○下牧説明員 私どもは、この手続は略式を簡単にするかわりに、一つ丁寧にした点もございまして、そう悪い思いつきじやないと存じております。ただ、何分新しい試みでございますので、どういうふうな動きをするかという点はやはり確かめた上で、略式手続との関連を考えてみたら、こういう意味で、一応これを併存せしめたというのが、概念的な問題として一点。それから実際問題といたしまして、これを理想的に実施いたしますためには、ある程度裁判官の増員も考えてみなければいかぬと思います。それから庁舎ですが、警察か調べる場所と、検察官が調べる場所、裁判官の裁判する法廷、これがほとんど隣合つているくらいの設備が理想的でございまして、流れ作業的に行くのがいいのでありますけれども、その場合に、すぐそういう設備ができるかと申しますと、やはり予算の関係もございまして、ある程度の制約がある。そこで何かやり繰りしなければいけない。特に裁判官が不足いたしておりますところに、あまりたくさん事件が起りましても、とうていはけ切れない。そこで裁判官もできるだけ協力していただくように話合いはついておりますが、それができる限度において、この手続を送り込むごとを検察庁は考えなければいけないという実際問題がございます。裁判官も、なれますとだんだん一日に百件、百二十件ということにもなると存じますけれども、最初のうちは、なかなかそう理想的には参らないと思います。そういう関係があります。 それからもう一つは、被告人が裁判官の面前に出たり、そういうことをするのはいやで、とにかく黙つて書面だけでこつそりやつてもらいたいというように希望する場合もないとは限らない。それらの点を考慮いたしまして、一応これを併存せしめて、この実績を見た上でその後のことは考えてみたい、かように考えておるわけであります。
○佐瀬委員 次に伺つてみたい点が、今の答弁である程度判明いたしたのでありますが、第八条でありますが、公開の法廷でこの簡易手続による裁判が行われるようであります。この公開の法廷というのは、一体全国的に見てどういうふうな配置になるのか。もちろん既設の裁判所もどこか利用されることになると思いますが、予算の関係もあり、人員の関係もあるようであります。これに対する見通しはどうでありますか。
○下牧説明員 現在のところは、現在ございます簡易裁判所の構内を考えておるわけであります。最高裁判所が、この法廷として、たとえば警察署の建物なんかを指定いたしますれば、そこには法廷ということになると存じますけれども、そういう指定は、今のところ行われる見込みは非常に少いのじやないか、かように考えております。そこですぐこの手続を開く場合におきまして、大体いなかの裁判所でしたら、特に設備をいたしませんでも何とかまかなつて行けるのじやないか。問題は東京とか大阪といつた大都会であります。東京地裁管内で簡易裁判所が十五ございますけれども、そのうち問題になりそうなのは、やはり二、三の程度で、あとは現在の建物でもまかなえそうな状況に、今のところ見ておるわけでございます。その点の予算的な手当はまだいたしてございませんけれども、最高裁判所の方で、その点の予算措置を講ずべく、今考慮中ということを承つております。なお最高裁判所の刑事局長がお見えになつておりますからその方からお答えを願います。
○江里口最高裁判所説明員 今の点にお答えいたしますが、この手続は、警察の取調べ、検事の取調べを終つて、ただちに同日裁判所で公開の法廷で審理をして、即日罰金あるいは科料も納めて、それで事務の処理を終るということで、非常にけつこうなことですし、特に裁判官が一々被告に面接した上で、その弁解を聞いた上で処理することになつて、非常にけつこうなことと思いますが、裁判官が一々面接をするということになりますと、審理に相当時間もとるのじやないかと思います。一件大体十分くらいにかかりますので、大体一日に四十件くらいしかできないのじやないかというふうに現在考えております。そういたしますと、現在の人員ではとうていできない。東京の簡易裁判所では大体十三名くらい、大都市の大阪で三名くらい、そのほかで一名くらい、簡易裁判所の判事を十七、八人は増員していただかなければちよつとお引受けいたしかねます。それから法廷もそれだけの設備が必要のように思うのであります。非常にけつこうな案でありますが、そういう予算的な措置の裏づけがなければちよつとできないのじやないか、かように考えるのであります。ただいま大蔵省の方にもこれを折衝中であります。この法案を通していただくに際しましては、法務委員会の方からも、大蔵省の方にそういう予算的な措置を講じていただくように、お口添えなり応援をしていただければ非常に幸いだと思つております。
○小林委員長 その予算の内容は今説明できませんか。
○江里口最高裁判所説明員 この手続によりますと、略式命令を書いたりあるいは送達したりあるいは記録を整理したりというような手数が省けまして、書記官、雇の方の手数はほとんど省けると思うのであります。ただ法廷に立ち会うという点で、やはり書記官も必要と思いますが、今の時節でありますから、書記官、雇は現在のままでやりくりをいたすのでありますが、裁判官と法廷はどうしても必要のように思つて、この点大蔵省と折衝中であります。
○佐瀬委員 その予算の総額は大体どのくらいになつておりますか。
○江里口最高裁判所説明員 今その裁判官の増員と法廷の方について、まだ予算的な点を今ここでお答えできる資料を持つておりませんので、その点十分調査いたしてまた申し上げたいと思います。
○佐瀬委員 第三条の問題でありますが、これは「五万円以下の罰金又は科料を科することができる。」また「その他附随の処分をすることができる。」こうされております。ある程度これは手続法でありますけれども、実体法に触れた規定になれておりますが、「五万円以下の罰金又は科料」とされた理由、それから「その他附随の処分」という意味は何であるかということを提案者から説明しておいていただきたい。
○下牧説明員 もともとこの法律は略式でやれる、その略式の範囲、やり方を直接裁判官が被告にあたつた上でやる、こういう頭できめましたので、この「五万円以下の罰金」ということで五万円で切つたのも略式命令に合せただけのことであります。略式以上のことをするというのは、やはりこれは実績を見た上で考えませんと、すぐそこまで踏み切つてよいかどうかということで、まつたく略式手続をただ口頭化したという頭でこの法律をつくつたものですから、そういう意味で五万円ということにいたしたのであります。附随処分ということも、これは略式手続にある通りそれを書いて参りましたので、この場合では後に仮納付の規定を置きましたけれども、仮納付なんかも付随の処分としてするというふうにここではつきりしたわけであります。
○佐瀬委員 これは国警からも警ら交通課長がお見えになつたようでありますから承つておきたいのですが、この交通事犯に対する行政処分として業務停止と申しましようか、免許剥奪というようなものがあるようでありますが、これは現在どういうふうに運用されておるか、その実態について概略を御説明願いたいと思います。
○後藤田説明員 お答えいたします。行政処分につきましては、御承知の通り道路交通取締法の第九条におきまして、交通事故を起した場合、それから不具癈疾になつた場合、その他特別の事由のある場合に免許の取消し、または停止及びその他必要な処分、こういうことになつておりまして、必要な処分と申しますのは、現在では、講習処分というのは五日以内の講習処分で、これは当該運転者が少し法令の知識が足らぬのではないか、あるいは免状は持つているが運転技能がどうも不十分だ、こういうふうに認められた場合に、五日以内の講習その他必要な処分、こういうことで、やつております。その処分の具体的な基準につきましては、実は昨年の十二月までは具体的に法令によつて基準を定めて行うということでなくして、行政措置で昔の警保局長通牒がございまして、その流れを受け継いで国警になりましてもございまして、一応の行政庁の内部の基準をきめまして、それに基いて処分をきめる、こういうことでございます。ただこれではいかにも行政処分というのが運転者にとりましては相当重大な処分でございますので、行政庁内部のそういつた扱いだけでやるのは不適当であるということで、前国会で取消し及び各公安委員会で定める期間以上の停止処分、これは聴聞に付する、こういう立法ができたわけでありますが、それの施行令等を書くときにあわせまして、基準については総理府令できめようということを私どもの方で考えました。一応行政処分の基準は総理布令によつて定めて、それに従いまして、従来のように国警管内の処分と自治警管内の処分が、その処分の量定が迷うといつたようなことは――昨年の暮れ以来行つており、それに従つて一応基準を定めて処分をする。なお今申しましたように取消し処分と一定の朝開以上の停止、一定期間というのは公安委員会が各地々々の実情が違いますので、それによつて公安委員会に一応まかせられておるわけでありますが、通常二箇月ないし三箇月以上の停止処分ということに全国の状況がなつておるようでありますが、それ以上の停止処分は、これは聴聞を開いた上で、本人の陳述を聞いて、その上で公安委員会が適当と思う処分をするわけであります。こういうことによつて現在運営をいたしておりますが、何分昨年の暮れに発足したばかりでございまして、聴聞の諸般の実情については詳しい点はまだ私の方にもわかつていないのであります。大体そういう基準に従いまして、そういう手続で処分をする、なお聴聞にかからない事案につきましては、これは事件が起りますと署長の方で事件を調べた結果、これはどうも行政処分にしてもらわなければ困るという事案につきましては、これが署長から隊長を通じまして、公安委員会の方に処分要請がございまして、それに従つて公安委員会が協議をいたしました上で処分の量定をきめてやる、こういうことでございます。
○佐瀬委員 そういう行政処分に対して、不服な運転者なり行政訴訟を起すというような事例はないでしようか。
○後藤田説明員 うんと昔のことは私もよく承知いたしておりませんが、最近ここ数年間に起りました事案といたしましては三件ございます。非常にパーセンテージで申しますとこれは問題にならない程度の数でございますが、そこにまた考えようによりますれば若干問題はあるかと思いますが、今までは三件で一件は静岡県にありました。いま一件は新潟、いま一件は福島であります。そのうち新潟県のはまだ最終的にはきまつておりません。福島県の事件の方は略式できまつたのでありますが、それに対して正式裁判請求があつて、争いの結果事件は無罪になりました。行政処分の方は有効であるということで、高裁の判決があつたようでありますが、これもたしか最高裁にあずかつておるのではないかと思います。それから静岡県の方の事件は原告破棄ということで、大体今までのおもな事件は三件であります。
○佐瀬委員 さように行政処分と刑事処分が一致しないというような場合に、被告人側から見ると、これは行政処分も刑事処分もないのであつて、同じ当局の処分が相矛盾したというところに非常な奇異の感を持つことになるであろうと思うのでありますが、そこで制度的に一歩前進させて、こういうふうに簡単に交通事件の処理ができるのであるから、その裁判の段階において、あるいは先ほど御説明のような聴聞会でありますか、そういう関係の意見をも聞くことにして、そうしてこの取消しとか業務停止とか、そういつたような処分をも同時にするという点へ一元化した立法をすることを考えてみてもいいではないか。これは私一個の考えでございますが、これに対する法務当局と警察当局のお考えをこの際伺つておきたいと思います。
○下牧説明員 行政処分と司法処分がおのおの食い違うということは、これは確かにまずいことだろうと思います。ただその制度の目的から言いますと、基本的には司法処分と行政処分はおのおの目的が違いますので、おのおの別途の筋であつていいということになろうかと存じます。そこでこの手続ができますと、今までは司法処分が遅れておつたのか、今度は司法処分の方が先に結論が出るのではなかろうか。そうするとその先に出た司法処分の結論を行政処分の方で尊重するということにいたしまして、また実際の運用もそうなつて行くのではなかろうかと思いますが、そういうふうになつて行きますればその間の調整ができるのではなかろうか。裁判所に司法処分及び行政処分の両方をやらせるというのは、これはただちに割切るのはちよつと問題かと思うのでございまして、なお研究の余地があろうかと思いますが、少くとも今度の場合は司法処分の方が先になる、そしてその結果を重んじて行政処分が行われるということになろう、かように考えております。
○後藤田説明員 この問題はやかましく申しますと、行政処分と司法処分というものはおのおのそれぞれの機関で別途にやる――これはりくつで申せばそういうことになると思いますが、その処分を受ける本人にとりましては、これはただいまの御質疑のようにおかしいと思うのは当然のことだと思います。そこで私どもといたしましては――従来は司法処分の方か非常に遅れるわけであります。そうすると道路交通取締法の目的としております道路交通の安全、危険の防止という面からぐあいが悪いということで司法処分に先行して行政処分をやつておつた。その結果事後になつて司法処分が無罪になる。しかもその事実が間違つておるということでは、これは行政処分としてもまことに不適当な行政処分であるいうことになります。そこで今回この簡易手続法がきまりまして、司法処分の方が早く行われるということになりますれば、行政処分といたしましては当然この判決の結果を尊重しまして、それに合つたような行政処分を行うということは、これは当然そういうようにしなければならぬ、こういうように考えており余す。ただそれを一箇所でやるかどうかということになりますと、これまたいろいろなむずかしい問題があろうかと思います。今ここでどういうふうにやるということを申し上げる段階でないことを非常に残念に思いますが、御了承を願いたいと思います。
○佐瀬委員 進歩的な刑法では、刑事処分も行政処分もこれを合一して、いわゆる保安処分として考えて、合一的な立法化に努めております。たしか日本の刑法改正草案でもそういう傾向はすでに示されておるのでありますが、これは将来の問題といたしまして、現段階における運営は、今両当局から申されたような考えのもとに適正な措置を願いたいと思います。 まだいろいろ質疑したいこともありますけれども、時間の関係もありますので、私の質疑は一応これをもつて打切ります。
○小林委員長 他に御質疑はありませんか。他に御質疑がなければ、本日はこの程度にとどめておきます。 次会は明日午前十時より理事会を開き、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後四時二十五分散会