農林委員会蚕糸に関する小委員会 第1号
- 発言数
- 19 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1954/03/16
会議録
○佐藤委員長 これより会議を開きます。 蚕糸問題について調査を進めます。先般来蚕糸業振興策の一環として、種々論議されておりました生糸輸出確保および蚕糸価格安定方策につきまして、最近農林当局において大体の構想がまとまりつつあるやに承るのでありますが、この際農林当局のこれに対する説明を求めたいと思います。寺内蚕糸局長。
○寺内政府委員 それではただいまわれわれの考えております、生糸輸出確保措置要綱につきまして御説明いたします。まず第一に、何ゆえにこういうことを考えなければならなくなつたかという経過からお話いたしてみたいと思います。 御承知の通り、繭糸価格知安定法というものが二十七年の一月一日実施せられておりまして、この法律の骨子は、糸価を一定の値幅で保つて行こう、すなわち最高価格、最低価格をきめまして、その範囲内で糸価を維持しようというのが根本精神でございますが、そのときはちようど二十六生糸年度でありますが、このときの最高価格は二十三万円、最低価格は十八万円、こうきめたわけであります。当時糸の市場価格はちようど二十万円ないし十九万円程度を上下いたしておつたのであります。そういたしまして、二十六生糸年度は二十七年五月で終りまして、二十七年の六月から今度二十七生糸年度に入りますが、この最高、最低価格も、やはり前年すえ置きの最高価格二十三万円、最低価格十八万ときめて実施いたしておつたのであります。ところが当時政府といたしましては、生糸の手持ちは一俵もございませんので、最高価格を突破したらどうしようかということを苦慮しております間に、二十七年の七月、八月になりましてだんだん価格が上昇いたして参りまして、先ほど申しました通り、二十七年の一、二月ごろは二十万ないし十九万の価格でありましたが、二十七年の七月になりまして二十三万円を突破いたしまして、先ほど申しますように、やはり政府は手持ちがございませんので、本来ならば手持ちの生糸を売り出して最高価格を維持して行くというのが法の建前でございましたが、一俵もございませんので、またそういう場合には禁止価格を設けることができるという規定が、繭糸価格安定法の十条にございましたので、二十七年の七月でございますが、審議会を開きまして、二十四万円というものを禁止価格にする。こうなりますと、今度二十四万円以上に売買すると取締らなければならぬというような建前になつておつたのでございます。これが大体二十七年の夏ごろから暮れにかけましては、二十三万幾らという値段を維持して参りまして、二十四万円を突破することはなかつたのでありますが、十二月末から二十八年の一、二月になりまして、遂に二十四万円の禁止価格を突破いたしてしまつたわけでございます。そこでわれわれといたしましては、これを少し取締らなければならぬ、こう考えまして、三月の末ごろに係官を派遣いたしまして、おもだつた工場を調査したのであります。それによりまして多少そういう禁止価格以上の、俗の言葉を使いますれば、やみ取引の証拠も上つたのでありますが、たまたまそのときにソ連の当事者の更迭がありましたこと等が影響いたしまして、四月に入りましてから価格が下つて参りました。その資料はお手元に差上げてあります数字の資料の、しまいから二枚目の表をごらんくださいますと、その二十八年の一月から十二月までの糸価の推移が出ております。生糸価格の推移というしまいから二枚目の紙でございます。この一番右側の欄に、二十八年の一月から十二月までの糸価の数字が出ております。実勢生糸価格というところをごらんになるとおわかりの通り、四月から二十四万円の禁止価格よりも下がつて参りました。四月、五月、六月と下つて参りましたが、七月になつてまた再び上つて参りました。これは御承知の通り、昨年春繭が凍霜害で非常に減産いたしまして、繭の価格が騰貴した関係であろうと思うのでありますが、まだ七月、八月、九月ごろまでは二十四万円台でございまして、このくらいの端数は、取引の過程における手数料その他の点もございますので、われわれとしてはこれを大体黙認しておつたわけでございます。ところが十月、十一月、十二月になりまして、ことに十一月に入りましてからは例の繭糸課税の評判が世上に流布せられましたので、それに伴う思惑買いがあつたとわれわれは考えておるのでありますが、遂に二十五万円を突破し、ここに出ております数字は月間の平均の数字でありますから低度でありますが、時といたしましては二十六万円というような数字も出たわけであります。そこでわれわれといたしましては、率直に申し上げますと取締りを発動しようと考えたわけであります。ところがだんだん取締り当局とも相談して参りますと、そういう二十六万円という価格が出たのはなるほど禁止価格に違反しておるけれども、その違反者をつかまえて調べてみたところが、実際の生糸の生産費が二十四万円では無理だというような経済の実情があると、そう簡単には取締れませんよという意見もございました。それからわれわれといたしましても、その関係を調べてみたわけでございますが、それはその一つ前の繭価格の推移というところをごらんなりますとおわかりになると思いますが、その一番下の欄の昭和二十八年度の繭の価格をずつと調べて参りました。そういたしますと、ここでおわかりの通り、たとえば二十八年の晩秋蚕のごときは、右から三番目の同上生繭一貫当り価格最高二千円、それから平均でも千九百五十三円というような数字が出ております。この数字は各県で県団体の養蚕団体と、それから県単位の製糸協会との間で協定いたしました正式な協定繭価でございます。これが農林省に報告が来ますので、それをとつておりますが、実際問題といたしましては、末端の組合と個々の製糸との取引のときには、これにプラス・アルフアーがつくわけでありますから、これよりももう少し繭価が高いと思いますが、一応県段階でできました繭価協定の繭価を見ましても、平均いたしまして晩秋蚕といたしまして十九万五千三百円、これに農林省で調査しております製糸業者の加工販売数は五万三千円とわれわれは見ておりまして、これが繭糸価格安定審議会で採用しておる数字であります。これをプラスいたしましても、すでに二十四万円は突破しているという実情になつたわけであります。そこで、糸価が禁止価格を突破し、やみであるとは言いながら、ここで強行して取締りをやるということになりますと、実情をも無視したことになりますし、実際問題として生糸製糸業界の混乱を招くというおそれがありまして、思い切つて取締りがやり得ないというような実情になつたわけであります。 ところが一方、こういうふうに糸価が高騰して参りますと、輸出が非常に不振になりまして、憂慮すべき状態になつたのであります。それはこの一番しまいの、生糸輸出の最近の傾向(三角貿易の関係)という表をごらんになりますとおわかりになります通り、これも二十八年の一月から十二月までの間の輸出の数字をあげてあるわけでございますが、先ほど申しました糸価と見合いながらごらんになりますとおわかりになります通り、大体十がつごろまでは二十四万円台を維持しておりました。そのころまでは、ごらんの通り七月から八月、九月ごろは大体六千俵台を維持しておつたわけであります。十一月に入りまして二十五万を突破し、十二月には二十六万七千円というような実情の価格が出まして、それにつれまして十一月には五千俵、十二月は四千八百俵というふうに、輸出が非常に減退して参りました。この輸出の総数量が減つたこと以上にわれわれが問題にしなければならないのは、次の欄に出ておりますアメリカに対する直輸出でございます。国内の糸価が高騰するに従いまして、アメリカヘの直輸出がずつと減つております。ことに八月以降減つておりますが、特に十一月に入りましてからアメリカヘの直輸出はわずかに十俵しか出ておらない。十二月には六十六俵という古今未曽有の減退を来したわけでございます。それならばアメリカヘは糸が入つておらないかと申しますとそうではないのでありまして、いわゆる三角貿易と申しまして、その当時は主としてブラジルを通してアメリカへ入つておつたのでございます。その次の次の欄にございます通り、対米三角貿易と書いてありますこの数字は、ブラジルなりオランダを通して実際のその糸はアメリカに入つたわけでございますが、こういうふうに、生糸をアメリカに直接輸出いたしますならば完全に日本のドル獲得になるにもかかわらず、ブラジルあるいはオランダ等が、貿易政策上その国のドル輸出に対しで報奨金を出すというような関係がございますので、それに利用せられまして、こういう変態度な貿易となつてしまつたわけでございます。そこでわれわれといたしましては、蚕糸業ことに生糸は輸出を増進するという重大使命があり、しかも特にアメリカへ直接輸出しましてドルを獲得する、そうすれば、生糸というものは完全なる国産品でありますから、百パーセントドルを獲得できるはずのものであります、これがこういうような変態的な事態になりまして、まことに困つたことだ、何とかこの処置を講じまして、輸出総額もふやすと同時にアメリルヘの直輸出をする法をいろいろ考えたわけでございます。そこでわれわれの実行いたしましたことは、とにかく本生糸年度すなわち六月までの暫定措置といたしましては、粗糖とのリンクを行おうではないかと考えたわけでございます。これは昨年の十一月、十二月ごろから粗糖をリンクの材料に使いまして、プラント輸出とかあるいは鯨油とか、その他の輸出振興策に粗糖のリンク制度を使つておりましたから、その仲間に生糸を入れてくれということを交渉いたしまして、ようやく通産省と話がきまりまして、ことしの二月十一日から実行いたしたわけでございます。これにつきましていろいろ新聞紙上等もにぎわしまして、むしろアメリカに対して安売りをし出すというような弊害も出て参りましたけれども、数量的に観察いたしますと、これによつてわれわれが目的としたアメリカヘの直輸出ということは大体成功したわけでございます。その数字を申し上げますと、二十九年に入りましてから一月が三千百六十七俵でございまして、このうちアメリカヘの直輸出は百六十七俵、この当時はまだリンク制を実施いたしておりませんので、やはりこの表の十二月からの継続のような形勢になつております。二月に入りましてから、二月の輸出総額は六千二百十九俵でありまして、そのうちアメリカへ直接出ましたものが三千八百八俵というような数字になりました。それでリンク制によりまして、価格の点についてはとかくの問題を起しましたけれども、輸出の数量を増進するという点については、初期の目的を達したわけでございます。これによりまして、六月までは粗糖とのリンクによつて輸出を増進すると同時に、アメリカヘの直輸出をある程度維持して行きたいと考えておるわけでございます。 しからば六月以降の二十九生糸年度についてはどうするかということが、一番問題になるわけでございます。これにつきましては、二十九生糸年度の糸価がどれくらいになるであろうかというような見通し、及びこれは繭の生産額にも関係して参りますが、その見通しによりまして、最高価格、最低価格の範囲内に入つて来ればそれほど問題ではないのでありますが、大体われわれの見通しといたしましては、少くとも春繭については、昨年の凍霜害及びそれに引続きました冷害の影響がまだ相当残つておると思われるのでありまして、二十九年度の繭の生産額を、大体われわれといたしままして二千八百万貫くらいではなかろうかと予想いたしております。その数字をちよつと説明いたしますと、この資料の一番初めの表をごらんください。蚕糸業の概況といたしまして、上の方の四角のわくのところの繭産額という欄をごらんになりますと、二十七年は二千七百五十四万貫でございまして、ここまでは大体ただいまやつております五箇年計画は成功いたしたのでありますが、二十八年は例の凍霜害によつて非常な減産でございまして、二千四百八十二万四千貫というような減産をいたしたのであります。これによつて二十九年を予想いたしますと、五箇年計画では三千万貰を目標にしておりますが、先ほど申し上げました通り、昨年の凍霜害、冷害の影響でそこまではちよつと無理ではなかろうか、少し甘く見ても二千八百万貫程度ではなかろうか、こういう推測をしております。しかもそれは夏秋蚕による増産を見ますので、春蚕ではその半分の千四百万貫は行かないであろうという見通しであります。そうしますと、繭価がただいまよりもよほど安くなるというようなことも考えられませんし、従いまして糸価が、今までわれわれが苦労いたしましたその苦労が解消するほど価格が下がつてくるとも思われません。やはり二十四、五万程度の価格を維持しやしないか、こう考えられるわけでありまして、これは今月中に開きます繭糸価格安定審議会によりまして、二十八生糸年度の最高価格最低価格のきめ方にもよりますけれども、ただ最高価格、最低価格をきめておいただけではその目的を達せられないと思いますので、われわれといたしましては、ここで繭糸価格安定法の弱点を補強いたしまして、そういう場合の処置をひとつ考えて行こうというふうに考えまして、立案いたしましたのがここにあります生糸輸出確保措置要領というものであります。 この考え方の大要をお語いたしますると、まず第一点はただいま申しましたような繭糸価格安定法の補強方策として、繭糸価格安定法の改正案というかつこうで持つて行きたい、こう考えるわけであります。そこで今までの経過から考えまして、繭糸価格安定法は生糸の最高価格と最低価格をきめまするが、繭の価格については全然手を触れないでおつたけれども、この法律制定当時の考え方といたしましては、生糸の価格を最高なり最低をきめておけば、それに付随して当然繭の方もきまるであろうという考えを持つておつたのでございますが、禁止価格のところでお話いたしました通り、糸の方には禁止価格があつても、繭のほうには最高価格がないということになりまして、繭価が相当上つたのでありまするから、今後はこの生糸の最高価格に見合う繭の方の最高価格もきめて行きたい、それに関連いたしまして、繭の方の最高価格をきめる以上は、今度は最低価格もある程度保証した方がよかろうというふうに考えまして、今回の改正の第一点は、生糸の最高価格及び最低価格に見合うように、繭の最高価格及び最低価格をきめて行きたい、こう考えておるわけであります。しかもその最高最低価格のきめ方は、ただいまやつております生糸の最高価格及び最低価格のきめ方の方針は大体維持して行きたい、こう考えておるわけでございまして、まずこの要綱のその部分を読んでみますと、「政府は、毎年、生糸の最高価格及び最低価格の外、繭の最高価格及び最低価格を定める。生糸の最高価格は、現行の算定方法によるものとし、繭の最高価格は、生糸の最高価格から生糸の加工販売費を差し引いて得た額を基準とし、需給事情その他の経済事情を参しやくして定める。」というふうにいたしたいと思つておりますが、御参考までに、ただいまの生糸の最高価格のきめ方をお話いたしますると、これは繭糸価格安定法の施行令できめてあるのでございまして、「標準生糸の最高価格は、繭の生産費の額に生糸の製造及び販売に要する費用の額を加えて得た額の十二割に相当する額を基準とし、生糸価格指数、主要繊維価格指数及び物価指数の関係から附録の算式により算出される価格(以下「物価参しやく値」という。)の十二割に相当する額並びに経済事情を参しやくして定める。」こうなつております。大体生糸の生産の費の十二割を基準といたしまして、それにそのほかの物価参酌値の十二割を参酌してきめるというふうに書いてあるわけでございます。従つてこれを踏襲いたしまして、繭の方もそういうようなことできめて参りたいと考えておるわけであります。 それから次に繭の最低価格につきましては、繭の最低価格は、繭の生産費を基準とし、その八割五分に相当する額を下らない範囲内において、需給事情その他の経済事情を参しやくし、再生産の確保を旨として定め、生糸の最低価格は、繭の最低価格に生糸の加工販売費を加えで、得た額を基準とし、繭の最低価格に生糸の加工販売費の八割五分に相当する額を加えて得た額を下らない範囲内において、生糸の最高価格の七割に相当する額及び経済事情を参しやくして定める。」大体ややこしく書いてありますが、御参考までに読み上げますと、繭糸価格安定法の施行令によりまして、生糸の最低価格のきめ方はこう書いてあるわけであります。「標準生糸の最低価格は、繭の生産費の額に生糸の製造及び販売に要する費用の額を加えて得た額を基準とし、その八割五分に相当する額を下らない範囲内において、最高価格の七割に相当する額及び経済事情を参しやくして定める。」こう書いてあるのでございまして、繭の生産費及び生糸の加工販売費を加えました、要するに生糸としての生産費の八割五分以下に下つてはいけないという制限がございますと同時に、この繭糸価格安定法によつて値幅をきめるのでありますから、最高価格と最低価格の値幅もある程度きめなければなりませんので、そこで最高価格の七割に相当する額というものが参酌値として入つて来るわけであります。 先ほど申しましたように、最高価格が生産費の十二割でありますから、このまた七割と申しますと、ちようど八割五分というようなところが基準になつて、経済事情を参酌して最低価格をきめるということになつて参るわけであります。そういうふうにいたしまして繭についても最高価格、最低価格をきめますと同時に、今度は生糸の値段が最高価格を突破してしまつた場合にどうするかということが要領の第二以下に書いてあるところでありまして、これについてはこういう措置をとりたいと思つておるのであります。 「第二、政府は、繭糸価が最高価格をこえ又はそのおそれがあると認めるときは、左の措置を行う。一政府は、繭価が繭の最高価格をこえるおそれがあると認めるときは、製糸業者その他繭需要者の団体と養蚕業者の団体が繭の売買の価格、数量及び相手方についで団体協約を結ぶことができる旨を定める。繭需要者の団体と養蚕業者の団体は、団体協約を締結したときは、農林大臣又は都道府県知事の認可を受けなければならない。農林大臣又は都道府県知事は、団体協約による繭価が繭の最高価格の範囲内でないときは、認可しない。」 まず第一に繭の最高価格をきめますが、その維持の方法といたしましては、第一着手としては、当事者の話合いでひとつ協定をしてもらいたいという精神であります。ここで製糸業者の方が団体協定をいたしまして、繭の買う値段をきめるということは現行法でもできることになつておるのでありますが、ここにあります数量及び相手方について団体協約を結ぶということは、ただいまのところは独禁法違反として許されないことであります。 こういうふうに繭の最高価格を突破してしまう。特に生糸の輸出に支障があるというような臨時的な場合にだけ限りまして、生糸業者の団体にそういう協定を結ばせる、価格ばかりでなく、お互いに買上げ数量でありますとか、あるいはだれから買うかというような協定を結ばせるというわけでございます。これはあまり強くしますと、養蚕団体の方に不利益を与えるおそれがありますので、その協定については一々監督官庁の認可を受けさせることにいたしておりますし、またその内容もあまりに製糸業者の方の力が強くて、繭を買いたたくおそれがあるといけませんので、十分監督いたして参りたいと同時に、最高価格以上の協定をしては困るというふうに、第三項のところで最高価格の範囲内でなければ認可しないというような規定をいたしたいと考えております。このように団体協定をして繭の取引をしてもらうことが原則でありますけれども、中には、そういう団体協定でなく個人売買のこともありましようし、また場合によりますと、お互いに協定が遂にできなかつたという場合もあると思うのであります。その場合の処置といたしましては、 「二政府は、繭の売買取引の秩序を維持するため必要があると認めるときは、繭の最高価格の範囲内で繭の売買取引をなすべき旨を定めることができる。」 最高価格の範囲内で繭の売買取引をやつてもらいたいというような命令を出すわけであります。それが繭の方の最高価格でありますが、そういう措置をいたしましても、なおかつ糸の値段が最高価格を越えた場合にはどうするかと申しますと、これが三、四に書いてある措置でございます。 「三政府が一又は二の定をした場合において、糸価が生糸の最高価格をこえたときは、糸価安定特別会計は、その定に係る蚕期の繭から製造された生糸を製糸業者から最高価格で買入れる。」 繭価の方を最高価格で押えますから、それに見合つた生糸の最高価格というのはきまつているはずでありますから、糸価が生糸の最高価格を越えるような場合には、最高価格で政府が一切買い取つてしまうというようにいたしたいと思います。しかしそれを政府が手持ちをするわけではありませんので、次の規定によりまして、 「四糸価安定特別会計が三により買入れた生糸は、原則として、その製糸業者に即時売りもどす。糸価安定特別会計の売渡し価格は、輸出向け生糸と国内向け生糸の二本建に定める。 前項の売渡し価格は、輸出向け生糸にあつては国内及び海外の市況を参しやくして三の買入れ価格以下の額で、国内向け生糸にあつては市価を参酌して、原則として三の買入れ価格以上の額でそれぞれ定める。」要するに一旦政府は最高価格ですべての生糸を買い入れますけれども、国内向けの場合には市価を参酌いたしまして、それよりも高い値段で即時売りもどします。それから輸出向けにつきましては、輸出し得る価格というものを勘案いたしますと、これはたいてい最高価格すなわち政府の買入れ価格以下であろうと思われますので、少し安くして輸出してやる。ここで輸出の確保ということが出て来るわけでございまして、要するに国内向けのものも少し高目に調整金みたいなかつこうで取上げて、それを輸出する方の生糸の補償に充てて行くというような考え方であります。 そういうような処置をいたしまして、これが政府に持つて来ないでやみに流れてはぐあいが悪いと思われますので、その防止処置といたしまして、五の「生糸のやみ売買を防止するため、政府の証紙の貼付していない生糸の売買取引を禁止する等の措置を講ずる。」三、四によりまして政府が買つてすぐ売り渡します。そういう操作をしたときには、この生糸はそういう操作が済んでおりますという証明のために証紙を渡しまして、それを生糸に大体一括ごとに張つておいてもらうという考え方であります。 それから第三では、そういうふうに生糸を最高価格で買い入れ、従つて最高価格で買い入れるように、「政府は、繭の最低価格の維持を図るため、左の措置を行う。 一 政府は、生糸の最低価格による売渡の申込があつた場合において、その生糸の生産者が、繭の最低価格以下の額で繭を購入したと認められるときは、その売渡の申込に応じないことができる。 二 養蚕業者の団体が、繭の最低価格を維持するため乾繭の共同保管をした場合において、農林大臣の承認を受けたときは、政府は、これにつき低利資金、販売及び委託製糸のあつ旋等必要な措置を講ずる。 前項の措置により養蚕業者の団体に損失を生じたときは、政府はこれを補てんす。」 こういう処置をとりたいと思つております。 こういうようなことを考えまして、私どもといたしましては、蚕糸業の関係団体の方面と御相談いたしておりましたところ、なおこまかい点についてはいろいろ議論もあり、御要望も出ておるのでありますが、大体これをやることにそう反対はしないというところまでうまく意見をまとめまして、こぎつけて参つたわけでございます。まだ大蔵省方面とは十分意見が一致しておりません。大蔵省方面では、この点について反対のような考えを持つておりますが、いろいろ今後の折衝によりまして、先ほど申しましたように、ことしの六月以降の生糸の輸出につきまして、糸価の状況にもよりますけれども、安心できない状況でありますので、できればこういう処置によりまして生糸の輸出を確保して参りたい、こう考えております。
○佐藤委員長 これよりただいまの御説明に対する質疑に入ります。なお小委員外の農林委員の発言は、適宜委員長において許可いたしたいと思いますが御了承をお願いいたします。中村君。
○中村(時)委員 一番目にお尋ねしたいのは、二十九年一月に三千百七万俵に対してアメリカ向けに百十六万俵出ております。これに対してリンクをとつて、出血輸出の分をおつかぶせるようにしておりますが、国内価格と輸出価格におけるところの相違があるわけでしよう。あるからこそたとえば原糖等のリンクを考えておるわけですが、その相違額はどの程度になつておりますか。
○寺内政府委員 昨年は四千四百五十一万俵も出たのに今年は三千百七万俵、アメリカヘの輸出が百十六万俵というような不況なので、これを打開し輸出を増進すると同時に、リンクを実行したようなわけであります。ただいまはつきりした数字は持つておりませんが、一月、二月とも国内価格は二十六万円程度しておりましたが、二月アメリカに非常に出ましたのは、アメリカの価格が最高五ドルくらいでありますから、国内価格にしますと二十三万円程度だと思います。その間三、四万円の安売りをしたということです。それを原糖のリンクでカバーしたということになつております。
○中村(時)委員 二十八年一月以降の価格表のデータを出していただきたい。資料として要求しておきます。 それから生糸輸出確保の措置要領の二ページのとこに入つて来て、「原則として三の買入れ価格以上の額でそれぞれ定める。」とありますが、高いからこの安定をさせて行こうとするねらいですね。にもかかわらず、その高い値を今度は原則で買入れ価格以上売ることになつたら、結果においては認めるという行き方になるのではないかと思いますが、こういう問題に関してどうお考えになつておりますか。 もう一つついでに伺つておきたいことは、この二ページのところで「繭需要者の団体と養蚕業者の団体は、団体協約を締結したときは、」云々となつて以下ずつと来るわけですが、このような場合に、団体協約をして行つて、たとえば価格問題について、安いときには価格を高くしてみようと思えば、こういう問題がカルテル的に出て来やしないか、そのような場合に独禁法に抵触して来るというおそれが出て来やしないかという想像ができるわけです。そういうことを、許可した場合に往々にして起り得る現象です。そういう場合に対して、どういうお考えを持つていらつしやいますか。
○寺内政府委員 まず第一点の、原則として製糸業者に即時売り渡す国内価格の方が高くなりまして、要するに国内におきましては、実際の取引が最高価格以上の値段で出ることを認める、そのかわり最高価格以上に出たものは、全部政府の方に徴収してこれを輸出振興の経費に充てようという考えでありますから、製糸家には最高価格だけしか行かないというわけであります。 それから第二の方の団体協約、これはなるほど恒久的制度として認めますと、製糸の方のカルテルの力が非常に強くなることは御指摘の通りであります。それは原則として独禁法違反になるわけでありますから、われわれといたしましても、これを恒久的な制度とは考えませんで、ただいま申しましたように、輸出を確保いたしますために最高価格の範囲内でとどめて置こう、言いかえますと繭の値段が最高を越してしまうおそれがあるときにだけそういうことを認めるという処置をとつて行きたいというのが、この考え方なのでございます。
○中村(時)委員 そういたしますと、たとえば繭だけが輸出という目標が出た場合において、暫定処置としてこれを認めるということになれば、おそらく鉄鋼においても、あるいは関連産業において輸出という名目を立てた場合には、当然この法的処置よりも優位にそのことが推し進められるというおそれがここに出て来るわけなんです。こういうな場合になおよつやつて行くのかどうか。 もう一つ、先ほどおつしやつたのは、最高価で買い入れて今度はそれ以上で売るという行き方、そして、売つた部分の差額をもつて輸出のマイナスをカバーしよう、こういうお考えなんです。これは輸出という目標のためにただ単に価格操作をしただけなんです。それ以上の何物もないということです。これに対してただ単なる価格操作の上からこういう条文をつくつたのか、その点……。
○寺内政府委員 その点はまつたく御指摘の通り、価格操作のためにこういうことをやるわけでございます。
○中村(時)委員 それから他の関連性の問題です。法的に……。
○寺内政府委員 その点につきましては、率直に申し上げますと、あまり深く考えておりませんでした。
○中村(時)委員 それから生糸の闇売買を防止するため、政府の証紙の貼付していない生糸の売買取引を禁止する等の措置を講ずる。」これは字句の問題ですが、禁止する等の「等」ということは、他にまだ何かを考えていらつしやるわけですか。
○寺内政府委員 これはこういうことを考えてるわけでございます。先ほど来いろいろとお話いたしましたが、なお製糸業者が最高価格以上にやみで売るというようなことが予想されるわけであります。それを防止する一つの方策といたしましては、ここに書いてある証紙の貼付をやるのでありますが、そのほかにもう一つの方法といたしましては、この繭の取引につきまして、先ほど来申しますように、団体取引を奨励いたしまして、二によつて、もし団体取引でない個人取引につきましてもある処置を講じ、できれば売買の届出をさせようと考えているのでありますが、そういうふうにいたしまして、大体どの製糸工場はどのくらいの繭を買つたということを、ちやんとわれわれの方で見ておきたいというので、ひとつそういう処置をとろうと思つているわけであります。そういたしますと、一方においてはその製糸工場が買つた繭の数量がわかりますと同時に、御承知の通り今強制検定制度をやつておりますから、その繭の糸歩が出て来るわけであります。それをかけ合せますと、大体あの製糸工場では、どれだけの繭を買つて、その糸歩はどれだけできるはずだという数字がずつとわかるのでございます。それと、この政府の買入れの操作をいたす数字とにらみ合せておりまして、あの工場はあれだけ繭を買つたからもつと出て来るはずだというような、監督いたすような意味におきまして、専門的な言葉を使いますと、糸籍を追究して行くというような操作をする考えが「等」の中に入つているのであります。
○中村(時)委員 そういうことになりますれば、この「等」ということは、明文化しておいた方がいいじやないかという感じがする。それからもう一つ、各団体との協約に対する問題ですが、これは先ほど言つたように、独禁法との問題をよく考慮して考えていただかなくちや、非常に大きな問題になつて来る。この要綱で一番大きな問題になるだろうと思います。それと同時にこれらの協約が、たとえば安かつたら安いで、あるいは高かつたら高いで、それぞれ手があるのです。たとえば政府の買上げ価格の最高というものより、もつと高いというような場合、今度は内密にやれるという手が出て来る。そういうような場合の取締法といいますか、そういう点もひとつ明文化するお考えを持つていらしやるかどうかお聞きしておきたい。たとえば罰則というような問題で……。
○寺内政府委員 そういういろいろな点があろうと思います。これはまだ要綱でございますので、今度法文化いたしますときに十分研究いたしたいと思つております。
○中村(時)委員 私も今初めてこの説明を聞いただけですから、以下保留しまして、もう少し研究させていただきます。
○足鹿委員 きようはまだ説明を聞いてすぐでありますから、よく研究したいと思いますが、お尋ねをする前にもう少し資料をいただきたい。それは、蚕糸業振興五箇年計画と実績の対照、昭和二十六年から実施しておりますが、その計画と実績の対照表、それとそれに対する予算措置の内容、それから輸出を振興して行くということは、繭の生産費の合理化と加工販売費の低下ができれば、別にこういう法律はいらないと思うのです。そういう意味において、ここにいただいております生糸の加工販売費の一覧表というようなものでは、あまりにも抽象的でつかみどころがない。この表のよつて来るその根拠をお示し願いたい。特に最近の傾向を見ますと、加工費にしましても、最高と最低では相当開きが出ているようでありますが、その最高と最低、また中間といつた分類を、できればいただきたい。その次に繭生産費の合理化の問題でありますが、ここにいただいておりますものでは、ちよつとわかりませんので、加工販売費も同様に、ここへ出たものの根拠となる資料並びに最高、最低また中間というようなものがありましたらお願いしたい。それから緊急養蚕業基本調査が行われたそうでありますが、その調査の要領と結果を、まとめられたものがあつたらひとついただきたい。どういうわけか相当繭相場がいいのに、桑園面積の数字が、この間いただいた資料を見ると滅つておりますが、どういう理由で減るのかどうもよくわかりませんが、そういつた疑問を解いてもらう必要のある資料がありましたらお願いしたい。最後に、生糸の輸出確保臨時措置法として出発されたものと、本日お示しになつた繭糸価格安定法の一部改正としてお考えになつているものとの——前者とただいまもらいましたものとの相違点を対照して資料をいただきたい。 以上私がお願いした資料を、次の機会までにお願いしておきます。大体以上です。
○佐藤委員長 ちよつと速記をとめて。 〔速記中止〕
○佐藤委員長 速記を始めて。 本日はこの程度にとどめまして、散会いたします。 午後三時十二分散会