農林委員会 第10号
- 発言数
- 36 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1954/02/10
会議録
○井出委員長 これより会議を開きます。 農政の基本施策及び来年度農林関係予算について、前会に引続き質疑を行います。川俣清音君。
○川俣委員 私数点をあげまして、農林大臣に対して農政の根本方針についてお尋ねいたしたいと思うのであります。 まず第一に、政府の低物価政策の農産物価に及ぼす影響についてお尋ねいたしたいと思うのです。これは通貨の安定、国際収支の均衡、財政の緊縮、物価の引下げが自立経済の基礎を確立することだそうですが、どうもこれらはスローガンとしてはほんとうらしいけれども、実際はうそじやないか、こういう見方ができるのであります。と申しますのは、農業生産物が上るようには思われないと農林大臣は六日の委員会において御答弁になつております。ところが通産大臣並びに大蔵大臣は、本会議における施政演説で、まず農産物価が引下るから労働者の実質賃金が向上いたし、物価下落の方向を決定づけるものだ、こういう説明をしておるのです。これは速記録をごらんなさい。愛知通産大臣もそういう御答弁をしておる。農産物価が引下ることが労働者の実質賃金の向上となる、ひいて諸物価の下落の方向を決定づけるという説明をしております。農林大臣は農産物価が下るように思われないと答弁せられておるのですが、先ほど申し上げたように、政府は通貨の安定と、国際収支の均衡、財政の緊縮から物価を引下げて行くのである、これが根本方針で予算を立てておる、こういうことになつておりますが、一体大臣の答弁の方がほんとうなのか、通産大臣及び大蔵大臣の説明の方がほんとうなのか、どつちがほんとうなのか、どつちかでなければならぬと思うのですが、保利農林大臣のこれに対する見解を伺つておきたいと思います。
○保利国務大臣 お話の点は、速記録にどう出ておりますか。大蔵大臣や通産大臣が申しておりますのは、全体の一般論としての、物価を引下げることによつて実質賃金の向上を期待するということを申していると思います。一体農産物の価格が下落するという要素はどういう場合に起きて来るか。これは貯蔵性に乏しい蔬菜その他のものは、やはり需給の関係によつて市場価格が動いて行くので、物の供給が強くなれば価格は軟化して行くということは、原則的にそうだろうと思います。しかし全体の状態からいいますと、この国民の生活の基礎物資たる農産物というものは、きわめて需給の関係がアンバランスの状態に置かれておりますから、従つて国内的に供給過剰になるという見通しは、今日はつき得ない状態じやないか。従いましてその面から見て、物価の根本的な要素からいたしまして、私はそういうことはまずそう著しく現われることはないというように考えているわけであります。経審長官の発表いたしておりますところによりましても、来年度の農林関係の国民所得の推算にいたしましても、一兆三千億から大体はじいてこの見通しをつけているわけでございますから、その面から見ましても農産物の下落を予想していないということは言えるのじやないかと、私はそういうように見ておりまして、これは原理的にはりくつのあるところでしようけれども、第二番の主要農産物であります米麦の価格が一体下げられるかということは、これはもう常識的に申しましても、そういうことはあり得ないと考えているわけであります。
○川俣委員 そこで大臣にお尋ねしますが、政府の説明によりますと、この夏ごろから諸物価が大体五%ないし一〇%下る、そのように期待をいたしてこの予算を組んだのだ、こういう説明になつております。そうすると、物価というものは一様に同じ目を期して下るのじやないわけですから、一体どこから下つて来るというふうにお考えになつて、この方針を立てておられますか。どこからか下つて来なければならぬと思う。どこから下つて来るというふうにお考えになりますか。大臣のお答えであると、農産物よりも、ほかの工業生産の方の物価が先に下つて来て、あとで農産物が下るようにお考えになつているように受取れるのです。ところが経審長官は、逆に農産物価が先に下つて来て、工業生産物があとで下るのだという大体の考え方のようです。ここに非常に違いがあると思う。もし違うとすれば、閣内の不統一ですから、これはまた別の機会にお尋ねすることにいたしますが、それじや大臣は、何から下ると思つておられますか。工業生産物の方が先に下るか、農産物の方が先に下るか。下るということだけはお認めになつておるようですが、どちらから先に下るというようにお考えになつておりますか、この点お尋ねいたします。
○保利国務大臣 経審なり、通産省なり、大蔵省なりの最高責任者がそういうこと言つておる。われわれはそれを信じておるわけでございまして、これはむしろ大蔵大臣なり、経審長官なりにお聞き取りをいただきたい。私から申し上げることじやないように私は考えます。
○川俣委員 それはとんだ違いですよ。農産物があとで下るというならば、手をこまねいておつて、大した政策はいらない。先に農産物価が下るか、あとになつて下るのかということによつて、農業政策の立て方が違つて来なければならない。そこでお尋ねしておるのです。
○保利国務大臣 農産物価が先に下るから、従つて工業生産品もそれをおつかけて下つて来るという説明を、実際やつておりますか。
○川俣委員 やつております。
○保利国務大臣 私はそういう説明を聞いたことはございません。従つて、私はそれにはお答えいたしかねます。
○川俣委員 それじや大臣は、どちらが先に下るとお考えになつておりますか。あるいは、同時に下るというふうにお考えになつておりますか。農産物でも、米麦という特殊なものだけで私はお尋ねしておるのではない。おそらく一番先に下るものは、水産物並びに水産加工物だと思います。農業生産物で、米麦を除いたものも下らないというように大臣は見ておられるようですけれども、私は下るのじやないかという懸念を持つておる。そこで対策が必要だと考えておるのです。大臣は手放しに楽観しておられるようですが、楽観していいのかどうかという問題が出て来ますので、お尋ねしておるのです。
○保利国務大臣 農産物価が、今日他の物価と比較して妥当であるかどうかということは、根本的には非常に議論のあるところだろうと思います。農産物はずいぶんたくさんのものがございましようが、それはものによつては下るものも、先ほど申しますように、需給の関係あるいは輸出の関係等によつて起きて来ることもあろうとは存じますけれども、主要農産物においては、そういう要素は今日なかなか考えられないのではないかと私は考えておるわけです。しかし結局、全体物価の引下げを招来するような大きな物価上の地位を持つものは、やはり主要農産物ではないか。従つて経審長官等が申しておりますのは、要するに輸出関係からいたしまして、従つて工業生産品等の引下げに中心を置いて施策を講じておる、私はこういうふうに了解をいたしておるわけです。ただしかし、いわゆる農業生産資材等がそのために価格が引下つて来るということになりますならば、農産物価の問題は抜きにしまして、私どもといたしましては、どうしてもそういう方向をとつていただくということについては、強い共鳴を持つわけであります。
○川俣委員 これは大臣にこれ以上追究しても、どうも十分検討せられておらないようですから、大蔵大臣なり通産大臣なりにお尋ねして、あらためてこの点について大臣の所見を伺いたいと思います。 そこでもう少し具体的にお尋ねするのですが、財政規模の圧縮が、経済力の最も弱い農村にしわ寄せされて来るということだけは、認めざるを得ないと思うのです。その結果、農産物の投売り的換金の作用が影響いたしまして、農産物価が下るのじやないかと一応考えられてよいのじやないかと思うのです。と申しますのは、緊縮財政の痛手を一番受けるのは、やはり経済に一番弱いところなのです。そこで今度の冷害地の状態から見ましても、消費地から離れた冷害地の奥地のやみ米価が割合に安いというのは何かということなのです。冷害地だつて需給からいうと非常に不足をいたしておるにかかわらず、やみ米価がなぜ安いかということになりますと、経済力に弱いものでありまするから、自分の飯米を売つて、そうして里に下つて来るなり他に職業を求めて、自分の居住地で生活するよりも、居住地を棄ててある期間季節労働に向うということから、奥地の冷害地のやみ米価が案外安いということも、決して単なる需給上の関係からばかりごらんになるということには行くまいと思うのです。また先般新聞によりますると、統計調査部長は、野菜の生産減が明らかであるにかかわらず、大都市への出まわりは非常に良好である、こういうふうに意見を発表いたしております。今年野菜が減収いたしておりますことは、統計上明らかであります。冷害があり、災害があつて減収しておる。減収しておれば、消費地への出まわりが悪くなつていなければならぬ。価格もまた上つていなければならぬはずですが、比較的横ばいになつておることは、御承知の通りであります。生産が二割、三割減じておるにかかわらず、出まわりがいいということはどういうことなのです。このことはやはり経済力に弱いところの農村が売りに出ておるというところから来る結果なのです。この点大臣はお認めにならないのですか。こういう傾向のあることをお認めにならないで、政策が立つとお考えになつておりますかどうか、お伺いしたい。
○保利国務大臣 事実は事実として、認めるとか認めないとかの問題ではない。事実は事実として認めなければならぬわけです。これはお答えになりますかどうか。たとえば、東北地方のやみ米価が低いということ——やみ米の値段の問題は、税金の問題とかなんとかで、私は必ずしも物価問題の本筋から考えられないのじやないかという感じを持つております。表に出さないで税金を免れるという風潮はいなめない事実だろうと思うわけです。ただしかし、それは結局一方からは、地方的の購買力の関係もございましよう。それから、冷害である、冷害であるということが、内実はどうであつたか、相当の供給力が持たれておるのじやないかというふうに、両面から見なければならぬのじやないか。今野菜のお話でございますが、やみ米価と関連して考えてみますと、結局地方の購買力は必ずしも高くない、これは認められる。しかも今年度の全体の凶作からいいまして、農家の、特に強く主要作物の減収を来しているところとしては、現金収入の方途を講ずるために、そういう蔬菜類をかなり無理をして市場に送り出して来ている。これが今のお話の現象のもとじやないかと私は見ているのです。
○川俣委員 後段の方は私も大臣と同じ考え方です。前段の分はちよつと触れておきたいのですが、大臣はただ税金の関係だけだとお考えになつているようですけれども、これはやみ米の本質をお考えになるとよくわかる。同じやみ米でも、一俵売りは高くて一升売りは安いのです。これは何かというと、いわゆる換金のために、他の品物を買わなければならぬために、一升、二升というものが比較的安く売られているということなんです。ここが問題なんです。すなわち政府が財政規模を圧縮して緊縮財政をとれば、金まわりが悪くなるためにまず一番影響を受けるのは農家であつて、その農家が投売りをしなければならぬような結果になつて、農産物価が下るのではないか、こういう点は私があなたに御説明するまでもないことであるけれども、一応そういう考えに立つて農家政策を立てて行かなければならぬのじやないか、この点なんです。一応それでこの質問は打切りますが、あなたの所管の中の林野庁の予算を見ますと、どんな結果になつているか、これは素材にいたしましても、用材にいたしましても、薪炭にいたしましても、木炭にいたしましても、全部値上りの計算で予算が立てられている。一方政府は五%ないし一〇%物価が下るのだということを言つている。生活必需品である木炭は値上りで計算しております。もう少し詳しく申し上げますと、用材の単価は二十八年度は四百三十円とみなして予算を組んでおりましたのに、四百六十五円で三十五円の値上りです。これは八%の値上りです。薪炭材は単価五十九円が六十二円と見て三円、五%の値上り。木炭だけを見ますと、トン当り二十八年度は一万二千三十一円が一万三千六百二円と組んで千五百七十一円、一割三分の値上げを見込んで予算を組んでおります。そうするとこれは特別会計ですから、政府の財政収入になるようなものはみんな値上りで予算を組んでいる。これはあなたの所管の中に確かにあるものです。数字は御存じないとしても、概要を御存じないはずはない。そうすると政府の計画しているものはみんな値上りを計画しておりながら、一般の物価は下るんだ、しかも農産物価は下らないんだ。これはあとから下るんだということになりますと、一体どれがほんとうかという非常な疑惑が出て来る。下るような傾向で農業をやつて行つた方がいいのか、上るような見込みでやつて行つた方がいいのか、非常に迷つてしまう。そこで私はこの点を明らかにしてもらいたい。
○保利国務大臣 山林の関係、木材あるいは薪炭等の関係は、なるほど今年度の当初予算計画の価格から見ますと、これはなるほど高くなつていると思います。しかし今年度の全体の傾向をごらんいただければ、その価格が物価高を予想して編成していないことは、御了解願えると思う。むしろ現市場価格よりは低目に押えた計画を立てている、私はそう思つているわけでございます。そこのところは少し違うのじやなかろうか。なるほど二十八年度当初のもくろみ予算の額からしますると、高くなつていることは仰せの通りですが、そういう木材、薪炭等の昨年度の価格の変動の情勢をごらんになりますれば、決して物価高を予想して組んでいるということにはならぬのじやないかと私は思います。
○川俣委員 それは大臣詭弁ですよ。確かに二十八年度予算から比べての問題ですよ。
○保利国務大臣 そうすると米だつて同じだ。
○川俣委員 これはそうですよ。しかし現状の市場価格から見て安い、物価高にならないんだという説明はおかしいと思うのです。というのは、二十八年度に政府が組んで立てた物価というものは、林野庁関係のやつは相当市場を支配する能力を持つているのです。日本の林野庁は、御承知の通り木材価格の上に大きな支配力を持つている。薪炭材の約八割は国有林から出て来るものなんです。非常な支配力を持つているのです。支配力を持つていなければ問題じやないのです。去年よりも予算を多目に組んでいるということは、物価を引上げる方向に行くのではないか。市場価格よりも林野庁の払下げの薪炭材が安いことは毎年同じです。同率であります。だから今市場価格より安いんだから物価を引上げることにならないんだというのは、大臣ちよつとおかしいじやないですか。この点どうですか。
○保利国務大臣 これは繰返して申し上げるまでもなく、一体何を標準として五%なり一〇%の物価を引下げたいと言つているのか。去年の二、三月ごろの物価を言うているのか、現在の物価を言つているのか。物価のことでございますから、現在の物価が高い。従つて下げなければならぬ。無理なこともできぬから徐々に行こうというところでやつている。そういう上から行きまして、なるほどお話のように去年の予算価格よりも高い。けれども、現在の物価からすれば著しく低いというところで予算を組んでいるわけでございますから、これは御趣意に大体合つているんじやないかと私は思います。要するに引下げようとする物価の基準はどこに置いているのだ、それは現行の物価であると私は了解しております。
○川俣委員 二十八年度も二十八年度の一般市場価格よりも安く組んでおられることは認めますか。それと同率で、今日の市場より幾らか安く見ていることは大臣の言われる通りなんです。その点を問題にしているのではないのです。二十八年度と横ばい的にやるなら、それでもよろしい。現状のままで物価を押えるならそれでもよろしいのです。引下げるんだということでありますれば、当初において引下げるような方途を講じなければならないじやないか。このことを大臣にお尋ねしている。つまり政府は物価を引下げるのである、あるいは通貨の安定をはかるんだ、こう言いながら、その方向をたどつていないじやないかということをお尋ねしている。林産物価のあり方について今ここで議論をしているのではない。これはまた別の機会にやる。そういうふうに、政府の方から言うと収入になるようなことはできるだけ多く収入をとる。それでつじつまを合せようという意味なら、それでもいいんです。それなら通貨がやはり膨脹になるのです。通貨というものは、政府だけが押え得るものではなくして、こういう物価が出て参りますと、通貨が膨脹して参りますことは、私の説明を要しない点です。通貨を縮小する、財政規模を圧縮するということになると、その効果はどこかに現われて来なければならぬはずです。二十八年度の百円が今の百円より価値が出て来た、こういうことで物価が上らない、それならそれでよろしいです。ところがどうも林野庁の財政収支を合わせるために、将来の計画を合わせるために無理に価格を上げて行つたのか、それならそれでもよろしい。あるいは物価が高くなるという見込みで、これだけの収入源は確保できるというお考え方で、おそらく上げて行つたと思うのです。このくらいの値上りでも十分収益を確保できる、こういう考え方でおそらくこの予算を組んでおられると思う。それだとやはり値上りになつておるのじやないか、この点を指摘しておるのです。そんなに大臣を苦しめるつもりで聞いておるのじやない、あつさり御答弁くださればいいのです。
○保利国務大臣 あつさり申しておるわけですが……。山林特別会計がその収益をあげるために、ちつと物価は上つても、木材価格は上げてもしかたがないというようなことで予算を組んでいるか組んでいないか。それとも現在の市場価格よりも下げようという意図をもつて組んでおるか、それも既往の一年かあるいは二年前の物価よりはそれでも高いじやないか、高いから下げようというわけでございます。それよりずつと高くなつて来ておりますから、それより下げなければならぬ、こういうことで組んでおるわけですから、なるほどとり方によりまして、昨年の水害の前の価格よりも高いことはいなめないことでございます。しかしながらその昨年の水害後非常に暴騰しまして、それがそのまま横ばいになつておる、それを幾らかでも下げて行こう、川俣さんもお話のように、この林野行政の扱つている木材の価格というものは、市場価格を支配するような大きな力を持つ、それだけにその市場価格を下げるようにという配慮から予算は組んでおるつもりでございます。
○川俣委員 大臣、それは用材なら確かに去年の水害を受けた以前より見て今日では非常な高騰をしておることは認めます。ところが木炭になりますと、これは去年の木炭の生産は大体冬季が多い。秋から冬にかけてこの生産が多いです。そうするとこれは災害が起きない前の価格です。また現在生産されておるものはどのくらいかというと、これと比較してみまして、用材は八%、薪炭材は五%でありながら、木炭だけは一三%の値上りです。用材なら大臣の説明よくわかります。確かに災害が起きましてから非常な高騰を来しておるわけです。それに対する幾らかの物価の抑制として、政府が相当安い値段で払い下げをいたしておりますものですから、用材としての値上りは阻止できております。ところが木炭は、これは災害には大して影響ないのです。それがしかも一番多く一三%の値上りです。これは私は悪いというのじやない、どうもこういう傾向が出ておるのじやないか、それを指摘しておるのです。それならこれはどうも林野財政のつじつまを合せるために無理があるんじやないか、もし無理がなければ——私は無理じやないように思うのです。そうすればこれは物価高になつて行くのではないか、どつちなんです。もう一度御答弁願います。
○保利国務大臣 木炭の事情は官房長から申し上げます。私にはよくわからない。
○渡部政府委員 木炭の予算単価は昨年トン当り一万二千三十一円を一万三千六百二円にしておりますので、お話のように製材素材に比べると率は悪くしております。これは正確な数字は今手元にありませんが、お話のように一三%程度になつております。今度は冷害対策で相当の原木を国有林で放出しております。従つて木炭の値段も市価は相当上つておりますので、それに比べますれば、この値上げはものの数ではないと思いますが、多少国有林で木炭関係の素材の安売りの関係をコストの中に織込んでおると思います。
○川俣委員 これは十分答弁できないようだから、これで打切つておきます。 次に、それじや消費米価について一つお尋ねしておきます。消費米価はコスト主義をあくまで強く主張せられて、できるだけ財政負担を下げようというお考えのようであります。これは一応ごもつとものように思うのです。今後さらに緊縮財政の建前を堅持せられるということになりますれば、さらにコスト主義を強行いたしまして、一般財政負担を避けるという結果になるんじやないかと思いますが、大臣は大体そのような方向で進まれるというようにお考えになつておりますか、依然として大臣が前に主張されておつたように、消費米価の値上りを防ぐために、一般財政支出もやむを得ない方向として強く要望されるような考え方でおられますかどうか、この点をお尋ねしておきたい。
○保利国務大臣 国の財政事情からいたしましても、また政策的な観点からいたしましても、これはやはりコスト主義の方向で検討して行くことが正しいと考えております。
○川俣委員 そうすると大臣は、前のできるだけコスト主義によらないで消費米価の値上りを抑制して行くという考え方は、今後の緊縮財政の建前から困難になつて来た、こういうふうにお認めになつておるようです。それではそれはそれでよいとしておきます。ところが国がコスト主義を固執するということになりますと、米の生産費もまたコスト主義を強く主張するようなことになつて参りまして、これが非常に根強い運動になるということをあらかじめお考えにならなければいかぬと思う。国がコスト主義を国の財政の建前から守らなければならないという考え方になつて参りますと、米の生産費もまた当然、構成上もそうでありますけれども、現実的な政治の動きとしても、十分生産費をまかなうような米価でなければならぬと、いう主張を裏づける結果になつて来て、米の生産米価のきめ方について、異常な圧力が農民から農林省に加わるということを、十分了承されなければならないと思いますけれども、大臣この点いかがでありますか。
○保利国務大臣 現在の食糧制度のそれが根本だと私は思つております。まず日本の生産農家の実態をよく認識しなければならぬ。それから出て来る米の値段というものは相当高いというとは、これはどうしても認めてもらわなければならぬじやないか、さればとて、またいかに粉食奨励、米食偏重の是正と申しましても、手の裏を返すように一朝一夕に行くものではない、また大衆生活のやはり一番大きな基礎物資は米であるわけですから、その米の消費家計における地位というものに対しても、生産者はよく理解してもらわなければならぬ。そこで生産者、消費者相互の理解の上に立つて、そして食糧問題を解決して行く方向に持つて行くよりほかに方法はないと、私は思つておるわけであります。従つて、これは多少一般物価論と逆行するようなきらいがあるかもしれませんけれども、今日は昔と違いまして、米自体がすべてを左右するというほど物価上の地位は高くはないと私は思う。従つて生産農家からいえば、とにかくこれが日本の農家経済をささえる中心物資でありますから、従つて農家経済をささえ得るだけの合理的な価格で消費者も満足してもらうという前提なしに、米の問題の解決はあり得ないという感じを私は強く持たされておるわけでございます。
○川俣委員 消費米価がコスト主義をとるということになりますと、従つて農民から生産費をまかなうに足るような米価であるべきだという主張が強くなつて出て来ると思うのです。もう一つは、大蔵省が補助金の切下げや助成金の削除を行おうといたしておりますが、これはすでに米価のコストとして織り込んであるのだからというような説明もなされたやに承わるのであります。こうなつて参りますと、生産米価の決定に及ぼす影響が非常に重大なるものがあると思われます。今後これらの問題をめぐつて、農林省が相当苦境に立つおそれのあることを、今からお考えになつておかなければならぬのじやないかと思うのです。もともと米を初め他の農産物も非常に利潤が薄いのであります。こういう利潤が薄いのにかかわらず、なお国民食糧を確保するために農民が努力しておるのであるから、補助助成が必要と認められて参つて来たのが、日本において今まで農業に与えて来た補助並びに助成の根本施策であつたと思うのです。土地改良、灌漑、排水、ため池、用水路等の工事なども、単に農民保護のものでなくして国の仕事であり、国民全体の要望だと考えられて、政府は施策をとつて来たものと私は理解いたしておるのであります。徳川時代のような封建時代ですら、大きな灌漑、排水工事をやつたり、あるいは用水路をつくつたりいたしておるのは、これは当時の農民大衆に対する施策ではないのです。藩の財政確立のために、または郷土財政確立のために行われた仕事だと私は思うのです。このように土地改良、灌漑、排水、ため池、用水路にいたしましても、またその他の補助助成にいたしましても、単に農民の生活保障的なものばかりでなくして、国民生活の基礎物資であります農産物資を十分確保するという建前に立つて補助助成が行われて来たものだ、こう私は考えております。そこで問題は、一体直接価格で農業を振興させるのか——農産物価をつり合いのとれるような、あるいはそれ以上の利潤が生れるような価格でもつて農業を振興させようとするのであるか、または他の補助助成、その他の公共事業費をつぎ込むことによつて生産費を引下げて行つて農業生産を振興しようとするのであるか、この予算から見ると、どちらかに行かなければならぬわかれ道に来ておると思うのです。自由な価格で、あるいは農民の希望するような直接価格で農業を振興して行くのかどうか。またはこれらの物資が国民生活の上に及ぼす影響が非常に大きいから、助成策あるいは保護政策、またはその他の公共事業費をつぎ込むことによつてコストを引下げて、農業生産をふやして行くという方法をとるのか、どつちかのわかれ道に来ておると思うのですが、大臣はそのようなお考えはありませんか。やはり依然として今まで通りでいいとお考えになるのか。どうもそうではなくして、この辺からどつちかに切りかえて行かなければならぬときに来ておるように思うのです。私はそうあるべきではないと思うのですけれども、政府の財政の組み方から見るとそのように思うのですが、いかがですか。
○保利国務大臣 お話の点は農政上の基本的な問題だと私は思つております。価格政策一本で農政というものは考えられないということは、やはり今日の日本の農業の実態からいたしまして、過去十分長い間いわゆる農林漁業の助長政策をとつて参つたのであります。それは一体どういうことなんた。農産物の生産力を高める、これは絶対の国の要請であると同時に、また他面に農家経済を向上せしめて行くという両面からの要請だと思う。これはどつちからというわけのものではなかろうと思います。しからばどういうわけで農業の部門に、ほかの部門よりも著しく保護助長の政策をとつて来ておるかと申しますれば、とにかく農業というものは本質的になかなか進歩が困難なものを持つておる。従つてあの手この手を通じて日本の農業の技術的と申しますか、耕作条件を改良して行くためには、いろいろの考られるだけの呼び水をかけて向上をはかつて行くということが——足どりは非常に緩漫でございますけれども、ともかくも、米につきましても反当収量がいくらかずつ——畳の目みたいなものだろうと思いますが上つて来ております。それじやこれはこの辺で大体いいと見るかどうかというところにあると思いますが、また価格もある程度助長的な価格をつくつて、それによつて刺激して行くということも一つの手であるかもしれません。それも私は決して否定するものではありませんけれども、日本の農業の実態からいたしますれば、まだいろいろの呼び水をかけて、耕作技術の改良向上をはかつて行かなければならない現状にあることを否定することは、私は断じてできないと考える。従つて価格におきましては、これは非常に議論のわかれるところであろうと存じますが、とにかく合理的な価格をつくり、そして一面助長の面におきましては、国の力の及ぶ限りは私は続けて行かなければならぬと思う。それからまた実際問題としましても、地方に出かけてみまして、ここに土地改良事業が行われたならば、ここらはどのくらいよくなるかというような所があります。全国ほとんどそうでありますが、そういう方面に手を抜くことは私は断じてできないというふうに考えております。
○川俣委員 大臣の答弁は、私は了承する。そこで、もしもそういう大臣のお考えでありますならば、補助の引下げであるとかあるいは公共事業費の打切りであるとか、そういうことについて猛然と憤激して行かなければならないんじやないか、こういう考え方をするのです。というのは、どうも大蔵省の考え方は、米価をきめるときになりますと、一般経済の面からなるべく押えようとする。また一般の補助金やいろいろの公共事業費を見ると、あるいは食糧増産費の増額という方面から見ると、それはすでに米価の中に織り込んであるのであるというようなことで、できるだけ補助率を引下げようとしたり、あるいは公共事業費を削減しようとしているから、私は問題にしている。問題にしているのはそこなんだ。補助率を引下げるためには、これはすでに米価に織り込んでおるのだ、農産物価に織り込んでおるのだということで、引下げの根拠をここに見出している。そして一般の経済趨勢から押えようとする、こういう傾向があるから、どつちかに割切ろうじやないかと私は申し上げたのですが、もしも大臣にお考えがありまするならば、別にそれを強く主張するわけじやないのです。補助費の削減、助成費の削減、食糧増産対策費の削減等に対しては、農林省は大分御奮闘になつたようでありますけれども、まだ少し努力が足りなかつたんじやないかということを申し上げたかつたのであります。そこで私は二十九年度予算の説明書について、ひとつ大臣にお伺いしたいと思うのです。この説明書によりますると、まことに不穏当な言葉が出ておると思つているのです。これは、どうも農林省がこれをうのみにしてもつとものような顔をしているので私はお伺いするのです。というのは、予算説明書の十ページをごらんなさい。第二のところに、「一切これを認めないことにより総花性を根源において未然に防止すること」とある。今までのいろいろな土地改良の工事が総花的になつているので、その根源を断ち切るんだ、こういう話です。それが高能率であつて非常によろしいというようなことを農林省も認めておられるありますけれども、一体こんなことで日本の農政が立つか立たないかということについて疑問を持つているのです。一体、一切これを認めないことにより総花性を根源において断ち切るのだということで大みえを切つておられるが、こんな大みえはいなかまわりのだいこん役者の大みえのようなもので、これは大みえにならない。なぜかと申しますと、日本の農業自体総花性をもつてやらなければ達成できないような状態なんです。今、農地局から資料をいただきましたが、この資料によりますと、水田において土地改良を要する面積は驚くなかれ、全体の耕地面積の約八〇%、内地におきまして百八十二万六千町歩が土地改良を要するということで、あなた方のところから出て来ております。これだけをやるということになりますれば、これは総花的にならざるを得ないはずなんです。また日本の農業というものは、非常に地域的に危険があるのでありますから、危険の分散という点から見ましても、これは総花的にやらなければ非常に危険を伴うと思うが、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
○保利国務大臣 結局これは御承知のように、大蔵省筋において、かような見解を強く持つておることは、いなみがたい事実でございます。そこで、大規模あるいは小規模の土地改良等の要請せられている現状等もまたお話の通りである。戦後、海外の食糧の大給源地を失つてしまつた。そして緊急な食糧増産をやらなければならぬという国家的な要請から、非常に大きく取上げようとした。力の問題を抜きにして、とにかく現在の状態を俗に申しますれば、やりたいところはつばだけつけてしまつて、仕事はさつぱり進まぬということは、要するに財政力の裏づけがない。それが、総花主義といつて、国会でも批判を受けているもとだと思うのでございます。しかしそれじやむだなところをやろうとしておるのかといえば、お話のように決してむだではない、それはどうしてもやらなければならぬ。どうしてもやらなければならぬことだけれども、それを単年度にやり上げ得る財政力がない、総花主義といつて批判を受けているのはその点だけだと思う。そこでとにかく事業を着手した以上は、できるだけ完成を早めて実現をしようじやないか、そういう考え方でございまして、これは私どもも今日の財政事情からやむを得ないと考えておるわけでございます。しかしいずれにいたしましても、日本の農地条件の改善につきましては非常に多くの問題が残されておりますから、これはまた皆様のお力をいただいて、私としても全力をあげて今後も努力をいたして行くつもりでおるわけであります。
○川俣委員 そこで、私が総花性をここで批判しようとしておることは、大規模の方だと五年計画とか六年計画ということになつて効率性が薄いということも言えるのです。そのかわりでき上ると非常に大きな能率を発揮することもこれは認めなければならぬと思うのです。最も手近かに、財政的に手取り早く能率の上るのは、危険の分散の場合からいつても、小規模土地改良を北から南に至るまで全体に行きわたらせるようなことが一番望ましい。だから高能率だ、総花だと言いながら小さいものは打切つて行く、一番高能率なものは打切つて行くというやり方が、総花式だということによつてそれを口実に打切るということについて、農林大臣の所見をお尋ねしたのですか、これは議論だということにしておきます。 そこで問題は、まだまだ能率を上げることができるかといえばできるのです。そういうことで能率を上げることをやらないで、ただ補助金を打切ることだけに努力を費しておるのじやないかと思われる点は、現在の日本の農業土木というものが非常に遅れておる、待つて工事能力が欠如いたしておる。私もこれは認めなければならない、また工事が幼稚です。日本の農業土木ほど工事が幼稚なことはほかに例のないほどなんです。まだまだ発展の余地あり、将来性のあるものでありますけれども、非常に幼稚なんです。また工事施行の計画にいたしましても、もつともつと検討しなければならぬ点がある。従つてこの中にもう一ぺん検討するということになつておりますが、検討が不十分であつたということも認めなければならぬと思う。また技術員の未熟、あるいは技術員の微弱性から来るところの工事の遅れもあると思うのです。そういう点について、技術陣の強化、こういうものを補つて行く方法を立てないで、ただ予算が多いから削らなければならないのだということでは、私はほんとうの高能率性を上げて行くということにはならないと思うのです。私は必ずしも人員をふやせということを言うのではないけれども、農林省の技術員は非常に微弱なんです。これをもつと強化して行かなければ、これらの目的は達成できないと思う。そういう点に少し努力が足りないんじやないか。総花性だと言われたので、びつくりして手をひつ込めたということではならぬと思う。また予算削減の方便にこういう言葉が使われている。もつと急所であるべきものが落ちている。農地局の出先機関でありまする地方の工事事務所等におきましても、研修所において技術を習得させる余地が十分ある。そういう研修予算なんというものになりますと、大蔵省が一番多く持つておる。地方の税務署においても、六箇月も一年も研修させておるじやありませんか。自分の方の研修には十分な手を入れておるけれども——私は決してセクト主義で言うのじやない。農林委員だから農林省の研修が必要だというのではない。農林省が一番研修機関に対して不十分なんです。もつと技術の強化ということを打出されなければならないはずなんです。それが打出されないでおいて、ただ小規模経営を削るのだというようなことで、日本の農業政策を打立てるということについては、私は大きな不満を持つております。大臣は予算委員会にお呼ばれのようでありますから、質問はあとまわしにいたしましてこれだけを申し上げておきます。この技術員の強化について、大臣はいかがお考えになりますか。
○保利国務大臣 農林技術陣が非常に脆弱だというようには、私は正直そこまでは考えておらぬのでございますけれども、御趣旨はごもつともだと思います。そういう点については、その方向で努力しなければならぬと思うのであります。ただこれはおそらく川俣さんもよく実態を御承知だと思いますけれども、一つの事業場に配分する予算がとにかく少いために、それが非常に仕事を遅らせているということに結論はついて来ていると私は思う。もし相当の予算を各事業場に与えることができますならば、今日の農林技術陣はそれをまかない切れないほど貧弱だとは私は考えておりません。しかしいずれにいたしましても技術の重要なことは申し上げるまでもございませんから、お話の通り努力をしなければならぬと考えております。 —————————————
○井出委員長 この機会に小委員及び小委員長補欠選任についてお諮りいたします。委員の異動に伴いまして農業災害補償制度に関する小委員会の小委員一名及びその小委員長並びに林業に関する小委員一名が欠員になつております。この際その補充を委員長において指名いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。
○井出委員長 御異議なしと認めます。それでは農業災害補償制度に関する小委員に足鹿覺君を、林業に関する小委員に久保田豊君を指名いたします。なお農業災害補償制度に関する小委員長には、従前通り足鹿覺君を指名いたします。 暫時休憩いたします。 午後零時五分休憩 ————◇————— 〔休憩後は開会するに至らなかつた]