農林委員会 第5号
- 発言数
- 14 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 5
- 開催日
- 1954/01/11
会議録
○金子委員長代理 これより会議を開きます。 一昨日の当委員会理事会におきまして、農林次官、官房長その他から昭和二十九年度予算の編成過程におきまして、農林関係予算が非常な削減をされる状態にある、こういうことを当局から伺いまして、農林大臣以下農林省といたしましては、悲壮な決意をもつてこれに対して挽回策を講じなければならぬ、こういうお話がありましたので、理事会におきましても、事非常に重大な問題でありますので、時間的に急ぐためにさつそく本日農林委員会を開きまして、そうしてこの二十九年度予算に対する当委員会の意思表示をすべきではないか、こういうことになりまして、なお本日の開会前における理事会におきましても、本委員会としての意思表示をしようということになりました。その問題について吉川委員から、当委員会として決議を持ちたいという申出があります。この際吉川委員より農林予算の問題につきまして発言を求められておりますのでこれを許します。吉川委員。
○吉川(久)委員 私は各派を代表して、昭和二十九年度農林予算に関する決議案を提案したいと思うものであります。 まず案文を朗読いたします。 昭和二十九年度農林予算に関する件 自立経済の確立は現下の急務であり、これがためには農業生産力の昂揚を図り、特に国際収支の改善に資すべき食糧自給度の向上、輸出農産物の振興を強力に推進する必要がある。然るに昭和二十九年度農林予算に対する大蔵原案を見るに、旧臘十五日本農林委員会における「食糧増産に関する決議」、並びに同日の衆議院本会議における「食糧増産並びに国民食生活改善に関する決議」を無視し、緊縮財政の美名の下に、農林予算に対し、大蔵官僚はことさらに大幅且つ独善的な削減を行い、農林政策の遂行を危胎に瀕せしめんとしていることはまことに遺憾に堪えない。 よつて政府は、明年度農林予算について、総合的食糧生産力の増強を超重点項目として明示し、併せて輸出農産物の振興その他農林政策の根幹をなす恒久的対策については、少くとも従前の予算額以上の予算を確保してこれが達成を期すると共に、勤労農民の生産意欲の昂揚を期するよう財政上、金融上万遺憾なく措置するため、速かに第一次査定内容の改訂を行うべきである。 右決議する。 本委員会は、食糧の増産による自立経済確立の要いよいよ緊切なる事情にかんがみ、旧臘十五日食糧増産に関する件の決議を全会一致をもつて採択するとともに、同日の衆議院本会議に食糧増産並びに国民食生活改善に関する決議を上程し、政府に対し強力なる食糧増産対策の推進を要請したのでありますが、その後における予算編成の経過を見るに、衆議院の総意にもかかわらず、農林関係予算は極度に圧縮せられ、あまつさえ法律に基き当然国より支出すべき諸対策費さえもが全面的に削除されるか、もしくは地方財源計算に移すと称して、大幅に削減せられんとするけはいが濃厚であります。しかもこのたびの予算の圧縮削減は、産業経済政策確立の観点から、慎重なる検討の結果行われたものではなく、まつたく予算技術上の見地から独善的、機械的にこれを行つたきらいなしとしないのみならず、農林予算に対する斧鉞はいささか意識的に一段と苛酷をきわめ、公共事業費を加えた予算において前年に比し約三八%の減少となつておるのであります。特に蚕糸予算のごとき、本年度の実行予算の四億円に対し、これを六分の一の六千九百万円に削減するというがごときは、常軌を逸した査定であり、われわれの常識をもつては理解できないところであります。しこうして国の予算規模は、本年度の一兆二百七十三億に比し明年は九千九百四十四億であつて、三百二十九億円減を示し、その比率はわずかに三%に過ぎず、かくてはいわゆる超均衡緊縮予算編成上の犠牲は、あげて農林予算にこれをしわ寄せするものと断ずるも過言でないありさまであります。元来予算案の作成にあたつては、経済の安定と自立の達成を目標とし、インフレを防止し、物価を安定して国際収支の改善を期し得るよう配慮すべきであつて、そのため冗員の節減を行うもまた当然であります。しかるに財政当局はその功を急ぐの余り、過激なる貨幣的手段に訴えることに終始し、まつたく日本農業の特殊性、農家経済の零細性についての現状認識に欠け、生産増強の根幹たる農地の改良造成、農業技術の向上発展とその普及、農林政策の農民への浸透等の基礎的政策の遂行について何らの顧慮をも払うことなく、もつばら一律的緊縮方針に堕したるの結果は、今日まで孜々として育成し来つた農林業の存立基盤を一朝にしてくつがえし、農民をしてその生産意欲を喪失せしめ、生産力の低下はやがて食糧供給力の減退となり、ひいては農林政策崩壊の危機にまで発展し、かくて今次均衡予算編成の最終目的たる自立経済達成の基礎はついに危殆に導かれるにあらざるやを深く憂慮せざるを得ないのであります。 以下今次農林予算の内容の不適当なるゆえんについてさらに項をわかち詳論いたします。 まず、財政当局の今次予算の作成、第一次査定の方針を見るに、予算編成権に藉口し、一切の農林政策を一方的、独断的に処理し、現に存在する諸法規の精神を蹂躪したとのそしりを免れることはできない。このことたるや実に議会政治の否認、国会の意思冒涜を意味するものでありましよう。 次に、昭和二十九年度予算大綱並びに昭和二十九年度公共事業費、食糧増産対策費予算編成要領について見まするに、食糧対策の重点はもつぱら外米の輸入を麦に転換し、輸入補給金を大幅に削減することのみに置かれ、自立経済確立の基盤である国内食糧の供給力を増進して、国際収支の均衡の恒久的確立に資そうとする積極的意欲にはまつたく欠けているのであります。かつまた輸入食糧を麦に切りかえることによつて必然的に起る国民食生活の改善についても、これを積極的に推進すべき予算措置ははなはだ不完全に講ぜられているにすぎないのであります。元来食糧増産は、長期にわたる事業であるが、財政当局の態度は、短期的な経済効果にとらわれ、まつたく大局観を喪失したるものであるといつてよいのであります。 第三に、予算大綱並びに予算編成要領は、いずれも治山治水を最重点的に取上げることをうたつているにもかかわらず、農林関係公共事業費中、治山事業費を見るに、実に前年度より一八%余の減少となつているのであります。この治山事業と密接な関係にある造林及び林道事業についていえば、造林事業費においてわずか七%増加したのみで、林道事業は一七%の減少となつているのであります。しかるに治山治水事業費総額は、四百十二億七千万円でありまして、本年度より二十四億四千万円を増加しているのであつて、両者はその調和を欠き、治水の根源をなす治山事業を軽視するものと断ぜざるを得ないのであります。かくては完全な治山治水事業の遂行は期待すべくもない次第でございます。 第四に、農業普及事業を達成するために設置されている専門技術員、改良普及員、生活改善普及員または林業技術員等に対する補助金を、地方財政平衡交付金に編入するとともに、その補助率の低減をはかつているが、知事公選制の現在においては、それらの補助金が必ず農業改良事業の達成に支出されることの保証はなく、ために本事業に専念する職員の地位、身分を不安定にし、昭和二十三年実施以来着々とその効果を収めつつある本事業の基礎を動揺せしめることとなり、農林政策の末端への統一的滲透のために、はかりしれない悪影響を与えるでありましよう。しこうして蚕業技術員に対する補助金全額打切りについていえば、蚕糸が外貨獲得上重要な地位を占めている事実を思うとき、その考え方が那辺にあるやを疑うものであります。 第五に、わが国農業はその特殊性により、一般企業とは同一に取扱うことはできません。何らかの財政的援助がなければその発展向上は不可能であります。従つて今回のごとき補助金支出の大幅なる削減は、零細規模の過小農にとつて、ただちに再生産資金の縮減を意味し、従つて他面において、長期低利の融資を一段と拡充して、営農の確立をはからんとする農民の自主自立の精神を助成すべきであります。ここから農業の近代化を期し得るのであるにもかかわらず、農林漁業金融公庫に対する財政投融資が前年に比し九十一億円を減じ、実に三割六分という大幅減少となつている事実については、もはや言うべき辞を知らない状況であります。 第六に、植物防疫費については、実に全額に近い削減が行われ、これを個人負担に切りかえるもののごとくでありますが、このことは植物における法定伝染病の蔓延を放任し、防疫事業を個人の事業とするにひとしく、食糧増産に対しておそらく致命的な打撃を与えるでありましよう。 第七に、低位生産地帯に対する各種の特殊立法は、財政当局の無知と迷蒙を覚醒せしむるためやむを得ず制定せられたものであつて、これら地帯に対する生産力振興措置は、国土狭小なるわが国にとつて、わずかに残されたる希望であります。しかるにこれに対する財政支出の廃止ないしは大幅削減は、当該地農民に対して死刑の宣告を与えたにひとしいものであります。 第八に、開拓予算中新規入植については、北海道の千八百戸以外はまつたくこれを認めていないのであります。開拓事業は、潜在的過剰人口に悩む農村の次三男対策として適切であるのみならず、開拓農民の食糧増産に対する寄与は予想外に大きいのであります。入植後数年を経過して安定期に入つた開拓農家は、すでに一般農家より一段と高い生産力を持つているのであります。かつ明年度は新規入植八千戸分の開拓適地が予定せられているので、これら新規入植計画をすみやかに促進することが必要であります。なお開拓農民はいずれも粒々辛苦、一切の悪条件を克服して生産増進に邁進しつつあるをもつて、一般農民とは異なる指導助成を行うべきであります。 第九番に、なおこの際付言しておきたいことは、農林省統計調査部の機構改革と人員整理についてであります。政府においてその人員の半数を整理し、食糧事務所に合体せしむる案を作成中と伝えられておりまするが、農林統計は食糧増産、治水治山、農業改良、経営改善、農業共済、食糧自給などの基本的政策に対する直接的基礎資料を迅速かつ正確に提供することを使命とし、ことに農作物被害等についてはますますその機能の拡充を要請せらるるときにあたりまして、すみやかにこれを整理せんとすることは、まつたく理解に苦しむところでありまして、またその調査は常に総合性の把握を必要とするものであつて、その事務の一部を地方庁に委譲することの不可なるはもちろん、食糧管理事務との合体により、その純粋性、客観性を放擲せしむるがごときは最も慎しむべき事柄に属するものと信ずる次第であります。 以上数項目について、目下大蔵当局により示されつつある明年度農林予算について、われわれの基本的見解を明らかにしたのであります。わが国農家経済がすでに昨年度以来景気の下降段階に入つていることは、諸統計の明らかに示すところでありまして、二十八年の春以来の数次にわたる大災害はこれに拍車を加え、いわゆる階層分化は各地において顕著に現われつつあるものであります。世にいわゆる凶作ブームとはごく一部の現象にすぎず、むしろ都市の消費インフレこそ自立経済の最大の敵であるというべきであります。また戦後における消費水準について、都市と農村を比較し、農村の有利を説く者がありまするが、これは基準年における農村生活水準の著しい低位を無視するものでありまして、百姓はボロを着て、ひえ飯を食つておればよろしいというにも似た暴論であります。二十九年度予算第一次査定は、農家の不況に追い打ちをかけ、これを一気にどん底に追い込むであろうことを深くおそれるものであります。 これを要するに、この予算がかりに成立したとせんか、力弱きわが国農林業に対し、その及ぼす影響のあまりにも深刻であり、国民経済に与えるその反動の激烈ならんことをおそれ、政府当局の猛省を求むるものであります。予算総わく一兆円は何ら物理的限界を示すものではなく、また単に貨幣的な手段を抑制することがインフレ対策のすべてにもあらず、国民生活のための必需物資に対する国内生産力の増大こそインフレに対する最強の防壁たることを自覚し、冷静なる批判を持つて対処せられんことを要望してやまない次第であります。 以上をもちまして、私の趣旨弁明を終ります。何とぞ満場の諸君の御賛同をお願いする次第であります。
○金子委員長代理 ただいまの吉川君の提案に対しまして御意見があれば発言を許します。
○足鹿委員 ただいまの各派を代表した吉川委員の決議案につきまして心からなる賛意を表するものであります。 昭和二十九年度予算編成にあたりまして、政府の農林関係予算に対する方針はまつたく無定見なる暴挙に終始しつつあると言つて過言でないのであります。すなわち食糧の国内自給の大方針をみずから放棄する食糧増産対策費中なかんずく農地関係費を大削減し、増産の基礎条件の整備拡大を後退せしめ、また戦後日本農業の後進性と低位生産地帯の農業生産力を向上せしめるため、ようやく緒に着かんとする農業改良普及制度と一連の農業技術振興のための策を初め、食糧増産政策の一環をなす農薬補助金を初め各種補助金の打切り、削減を強行せんとしつつあることは、日本農業の実情をまつたく無視するものといわなければなりません。さらにまた最近ようやく機構的にも整備しつつある農林統計等を初め、各種の農林機構を廃合せんとするがごとき、あるいは法律上当然計上さるべき各種農林施策の経費、たとえば総合食糧計画の重要なる一環としての畜産振興の基本である飼料対策費の全面打切り等、ことごとく政府みずから憲政を蹂躪し、民主主義と議会政治否認の暴挙に出でんとするものでありまして、わが党の断じて容認せざるところであります。われわれは政府がこの際猛省をいたしまして、今こそ食糧国内自給の基本政策を確立し、これが関連施策を整備して、必要なる経費を計上すべきことを全国三千万農民とともに強く要求いたすものであります。ここにただいま提出されました決議案に対しまして、満腔の熱意を持つて賛意を表し、すみやかに決議が成立をし、これを実行に移されて、われわれの意のあるところが昭和二十九年度農林予算の編成の改定に及びますよう、強くお願いを申し上げる次第であります。 以上はなはだ簡単でありますが、党を代表いたしまして賛意を表するものであります。
○足立委員 ただいま吉川委員から御提案のありました昭和二十九年度予算の大蔵省査定に対する決議案につきすしては、私ども自由党としても全面的に賛意を表するものでございます。趣旨弁明にもございました通り、従来の国策の根幹ともいえる食糧増産対策すらもあえて抹殺せんとする今回の大蔵省の査定の内容を見ましたときに、私どもとしても将来の日本農政のために深く憂慮をいたし、これが是正を強く希望いたしたいのでございます。以下項目を追つて重点事項について私どもの考え方を概略申し上げてみたいと思います。 まず第一に食糧増産対策につきましては、ただいま申し上げました通り、国の基本政策ともいえる重大問題でございますので、予算編成にあたりまして、まずその基本方針としてこれをあくまで堅持し、この予算につきましては、十全の配慮をすべきものであると確信いたします。特に戦後増加して参りました人口問題との関係もございまして、この農地の拡張、改良につきましては、他のいかなる政策にも優先をいたしまして、この予算の確保に努力をして参り、またその効果的なる遂行に国をあげて尽力して参つたのでございますが、今回の査定の内容を見ますると、二十八年度着工のものを含めて、新規の計画につきましては一切これを認めない。また継続事業にいたしましても、効果のすみやかに上らないものにつきましては、一応これを停止ないしは中止するというような考え方のもとに予算の査定が行われておるやに聞くのでございまして、かようなことはこの土地改良あるいは開拓等の効果を寸前に見ながら、あえてこれを傍観しなければならないという事態でありまして、今までに事業遂行のために幾多の犠牲を忍び、この効果を眼前にいたしまして、その犠牲に甘んじて参りました農民の気持を考えるときに、かような暴挙は私どもとしては絶対に賛成できないのでございまして少くとも継続中のものはこれをすみやかに完成をするという方針で事業を推進すべきでありますし、また新規のものにいたしましても、少くとも最小の経費をもつて最大の効果を期待し得る、しかも迅速にその効果を期待し得るものにつきましては、この際さらにその事業を推進して増産対策を講ずべきであると存じております。また開拓につきましても、今回の査定の内容を見まするに、内地開拓につきましてはほとんど顧みられておらないというさんたんたる状況でございますが、先ほど申し上げた通り、日本の不可避的な宿命的な問題であります人口問題解決の大きなかぎとなります次三男対策等につきましては、ぜひとも内地においても、従来通りの方針でこの開拓を推進すべきであると強く信ずる次第でございます。今回の予算が基本的に緊縮財政方針のもとに査定の行われていることは事情はよくわかるのでございますが、さりとて重点を失した予算の編成というものは、私どもとしてはどうしても納得ができない、今申し上げた食糧増産対策の根幹をなす農地の拡張、改良、開拓等につきましては、超重点としてどこまでもこの予算を確保するという方針に改むべきであると確信いたします。 なお食糧増産対策の一環をなすところの耕種改善あるいは畜産の振興等につきましても、非常にじみではありますが、日本の農業を維持発展せしめるために、その基礎となるべき重要なる政策がこの中にとどめられておるのでございまして、そういうものを十ぱ一からげに緊縮財政の美名のもとに抹殺し去らんとする考え方は、あまりにも事務的、あまりにも一方的な考え方であると断ぜざるを得ないのでございます。従いましてせつかく地につきつつありますところの植物防疫対策、あるいは耕土培養の施策、あるいは水稲の健苗育成対策、あるいはまた原種圃、採種圃及び菜種の共同育苗圃等に対する施策、なおまた農業機械の促進をはかるべき経費等につきましては、この際重点中の重点としてぜひとも予算の復活を希望いたすものであります。 なおこの際これに関係いたしまして申し上げておきますが、農業改良普及員、あるいは生活改善普及員等の事業費につまきしては、今回の査定を見ますると、平衡交付金にこれを全面的に移すという方針になつておるようでございますが、今日各府県の実態を見まするときに、必ずしもその財政力は均一ではありません。また知事公選制のもとにおきまして、この重要なる農業政策を画一的、かつ強力に浸透を期するためには、この考え方はいまだ時期尚早ではないかと私どもは断ぜざるを得一ないのでありまして、この重要なる農業政策の浸透のためには、この際どうしてもこれを農林省予算として復活をしてもらいたい、かように存ずるのであります。しかも仄聞するところによれば、平衡交付金にまわします予算の内容は、従来の補助率をはるかに下まわるものになつておるやに聞きますので、その点深く寒心にたえない次第でございます。 なお畜産振興の問題につきましては、かねて国会におきまして決議が行われました通り、食生活改善の急務なることは申すまでもないのでありますが、その基本対策として酪農振興政策を強力に推進すべきものであると存じますが、その根幹をなす集約酪農対策につきまして、今回の予算の査定を見ますると、これが全面的に切られておるのであります。この食生活改善の基盤をなすべき唯一の政策とも言うべき重要なる政策を全面的に切り捨てまして、はたしてこの重要なる食糧政策の完遂ができるかということを考えますときに、私どもとしては、あまりにも無謀なこの削減に対しましては、ただ唖然たらざるを得ないのであります。従いまして畜産振興につきましても、この重点的な施策につきましては、ぜひとも予算を復活すべきであると確信いたします。 なお治山事業、つまり林野庁関係の事業につきましては、ただいま提案者の説明にもありました通り、予算編成の基本項目として治山、治水を大きく取上げながら、その反面農林省関係についてのみ著しき斧鉞を加えておることは遺憾にたえないのでありまして、こういう点から考えますと、決議案の内容にもあります通り、あるいは大蔵官僚が農林省の事業について感情的なる斧鉞を加えたのではないかというような疑いなきを得ないのであります。しかしながらこの治山事業につきましては、林野庁当局と大蔵当局との間にその後の折衝も相当進展しているやに聞きますが、しかし奥地森林開発のために林道を敷設いたしますための予算あるいは林業改良普及事業に対する予算等は、今申し上げた事務当局間の話は別にいたしまして、この際ぜひとも復活をしてもらわなければならないと存じておる次第であります。 なお先ほどちよつと農業改良普及技術員の問題につきまして触れました通り、職員費につきましては、その補助金を全部打切りまして平衡交付金にまわすという方針になつておりますが、これは先ほども申し上げた通り、いまだ過渡的な段階にあります農林政策の統一的、画一的しかも強力なる浸透をはかるために、これが全面的に農林省予算として復活すべきものであると存じておる次第であります。 なお農業共済組合の事務費負担の問題につきまして、大蔵省はあえてこれを半額に削減をいたしておるのでありますが、この制度はきわめて公共的な性格を持つたものでございまして、形は農民の手による任意組合の形をとつておりますが、その実は政府がやるべき社会保障制度をこの農民団体の形において代行しておるという実質的な形になつております。従いまして法律上も事務費補助ではなくして、事務費負担ということに明文化されておるのでありまして、この負担という字句を使つている精神からいたしましても、この共済組合に対する事務費につきましては、みだりに削減をすべきものではない。なおまた実際問題として考えます場合、もしもこれを大蔵省査定の通り半減いたしました場合には、農家の負担は著しく増高して参りまして、この制度の消長にも関係する重大問題でございます。二十八年度における災害に対するこの農業災害補償制度の実際の効果を考えてみましても、農業政策の一つの根幹としてこの制度がいかに重要さを増して来ておるかということは申し上げるまでもないのでありまして、これをあえてこの事務費を削減せんとする大蔵省の意図に対しまして、私ども絶対に承服できないと存ずるのであります。 なお現在輸出農産物の枢軸をなします蚕糸につきましては、今回の査定を見ますると、まつたく全滅の状態でありまして、農林省の当初要求予算九億円余に対しましてわずか六千九百万円という査定は、大蔵当局の農林政策に対する無理解をそのまま露呈しているものと断ぜざるを得ないのでありまして、今日の日本の輸出入貿易の実態を見まするときに、ドル貨をかせぎまする日本国内産の農産物で唯一無二とも申すべきこの蚕糸につきまして、その振興対策を忘れるということは、私どもとしてはどうしても納得できないのであります。従いましてこれに対しましては、この際思い切つて予算を復活し、繭の増産対策を徹底的に遂行いたしまして、この蚕糸の輸出振興を期すべきであると確信いたします。 なおまた食糧管理の面につきまして大蔵省の意図するところは、麦の払下げ価格を引上げることによつてある程度食糧管理特別会計の赤字をカバーしようという考え方を基礎として、一般会計からの繰入金を相当削減をいたしているやに聞いておりますが、もしこれ真なりとすれば、かねて農民から安く買い上げた麦を値上げをして、その利益によつて食糧管理特別会計のまかないをつけようというさもしい根性と断ぜざるを得ないのでありまして、かようなけちな考え方では、日本の食糧政策を遂行することは断じて不可能であると存ずるのであります。 なおいも類及び菜種の農産物価格安定制度並びに飼料需給安定制度につきましては、実施後日なお浅いのでありますが、その実績を検討してみまするときに、きわめて顕著な効果を示しておりまして、農産物価格安定制度につきましては、暴落を予想されておりました菜種の価格のごときも、政府の示しました支持価格以上に安定をいたしまして、農家の経済を潤しておる現状でございます。なおまた飼料需給安定制度につきましても、この制度を実施いたしました前後の関係をグラフによつて調べてみましても明白でありまして、実施後における価格の低落と安定は、きわめて顕著な効果を収めておりますので、かようなよい制度を、これが議員立法であるからといつて抹殺せんとする考え方は、議員立法権に対する冐涜と断じてもさしつかえないと思うのでありまして、このいい制度こそ大いに助長し、育成し、円滑なる運営を期して行くべきであると確信いたします。従いましてこれらの所要の経費につきましては、特別会計にこれを計上すべきものであると考えております。 なお財政投融資の問題でございますが、土地改良その他公共事業が緊縮財政の名のもとに勢いある程度圧縮をされて参りますので、これが補助的な施策といたしまして、融資による事業の遂行を反面考えなければならないのでありますが、今回の大蔵省の査定によりますと、なおかつこの農林漁業金融公庫に対する繰入金、あるいは資金運用部からの貸付金を削減いたしております。この際ただいま申し上げましたような見地から、これはぜひとも復活してもらいまして、この足らざるを補うという意味で、財政投融資の面は再検討をしてもらわなければならぬと考えております。 なお自作農維持融通資金につきましても、今日土地を担保とする金融のまつたく閉塞されておる現状からかんがみまして、これに対しましての資金を全然切つてしまつておるということは、私どもその考え方の根拠を疑うものであります。これはぜひとも資金運用部より貸付を実施してもらうべきであると考えております。 以上重点的な項目につきまして、大ざつぱに私の考えを申し上げたのでありますが、これを要するに、先ほど来各委員からも御意見のありました通り、緊縮財政の美名のもとに、あるいは考えようによりましては大蔵官僚の作意的な、感情的な削減をあえて農林関係の予算に行つているのではないかというような点さえも考えられることは、いかにも遺憾であります。この際日本農政を確立し、従来の、幾多の諸先輩が築いて参りました日本の農業政策を、この上とも推進いたしますために、この際全面的なる再検討と、予算の復活をぜひとも希望いたす次第でございます。吉川委員の提案に対しましては、以上の理由をもちまして、全面的に賛意を表する次第であります。
○金子委員長代理 川俣清音君。
○川俣委員 私は日本社会党を代表しまして、ただいま吉川委員より提案されました昭和二十九年度農林予算に対する決議案並びに提案の趣旨に、そのまま全面的に賛成するものでございます。この賛成をするにあたりまして、一言つけ加えたいことは、今日国際情勢から見まして、わが国の自立経済の確立をはかることが刻下の急務でありますことは、言をまたないのであります。従つてこれがために農業生産力の増強をはからなければならないのでありまして、この観点から、旧臘十五日、農林委員会は食糧の増産のために必要な決議を行い、並びに同日衆議院の本会議におきまして、食糧増産並びに食生活改善に関する決議を行つておるのであります。これらは衆議院の総意を具体的に現わした決議でありますので、この決議に基いて政府並びに特にこれに関係があります農林当局は、これらの決議を十分体しまして、予算編成に当らなければならなかつたはずであるのであります。従いまして私どもは、この委員会におきまして、または衆議院全体といたしまして、政府の出されます予算が確定いたしましてから、私どもが斧鉞を加え、これに対して適正な修正を行うことが本院の、また本委員会の建前でなければならないはずでありまするけれども、あえてこの決議を再びここに取上げなければならないということは、農林省がこれらの決議に対して十分なる決意をもつて臨まれなかつた結果であることを非常に遺憾とするのであります。ことにここに農林大臣の出席を求めておりながら、いまだ姿を見せません。私どもは今日、日本の食糧事情からいたしまして、国内の食糧自給の立場から、いかに今日の農民に多くの負担をかけ、また多くの犠牲をしいておりまする今日におきまして、当然報いるだけの政策が具体化されて来なければならないと思うのであります。もし今日の日本の農民が生産意欲を減退いたしまして、政府に反撃を感ずるようなことになりまするならば、日本の将来に及ぼす影響まことに大きいものがあると憂えざるを得ないのであります。日本の国土を守り、日本の山野を守り、日本の国土を培養しようと、最も熱心な努力を払つております農民に対しまして、予算の削減によつて対抗しようとする政府に対しましては、おそらく将来農民の反撃が現われて来るであろうことを私どもは恐れるものであります。大蔵当局が農林予算に対し、無理解に、しかも同じ治山治水でありながら、建設省の予算に対しましては理解を示し、農林省の予算に対しましては斧鉞を加える等の考え方が現われておりますことは、日本の農民の、今後おそらく憤激いたすところであろうと思うのであります。こういう意味におきまして、吉川委員がるる述べられました今日の農林予算に対しまして、私どもは政府みずから反省してこの国会に臨まれるよう希望するものであります。ことに農林当局は、及ばずながら食糧増産について努力をしておられるがごとき状態でありますけれども、これは十分ではないと思うのであります。その職にある者、農民に多くの指導力を持たなければならない今日の情勢におきまして、その要路にあるところの関係責任者は、もしもこの予算が通らなかつた場合には、十分な責任を負われるだけの態度をお持ちになつておるかどうか、私どもは疑わなければならないことは非常に残念であります。もつと信頼をいたしまして、食糧増産のために大いなる決意のほどを示していただかなければならぬと思うのでありますけれども、あえてこの決議をいたし、さらに農林当局に反省を求めるためにこの決議をいたすことを十分了承されまして、さらに大蔵当局と十分な予算折衝に当られることを特に希望いたすものであります。もしもこれらの委員会の希望を十分体得して、そうして大蔵当局と予算についての協議をいたさない場合におきましては、この委員会は将来紛糾をいたしまして、思うような結果が出て参らぬことを警告いたすと同時に、今ただちに食糧増産のために期待をかけておりました土地改良等が削減され、あるいは唯一の蛋白質資源の確保のために酪農拡充をいたしておりますこれらの予算、またはこの末端の施策を受持ちまして多くの努力を払つておりまする各農業団体、または各機関における職員の熱をさますようなことのないよう特に期待をいたしまして、この決議に満幅の敬意を表して賛成するものでございます。
○金子委員長代理 河野一郎君。
○河野(一)委員 私も提案者の提案理由の説明ないしはまた各党代表の方々の賛成のお話にそのまま賛成するものであります。 ただ一言つけ加えておきたいと思いますことは、ただいま問題になつておりまする大蔵省の査定案なるものがあまりに飛躍しておりますので、こういうものがこのまま現実になつて現われて来るような気がしないのであります。もしこのまま現実になつて現われて来るとするならば、それだけのむだな経費を過去数年間にわたつて、自由党内閣は何のために使つておつたのであるか。もつと率直に申しますれば、これだけ予算を削減しても農林行政が完全に円滑に遂行できるとするならば、ただちに本年度予算の削減をすべきではなかろうか。三月三十一日一晩明けたらばこれだけ少くしてもよろしいということは、いまだかつてわれわれが日本の予算において体験せざるところであります。いかに削減をすると申しましても、節約すると申しましても、これほど飛躍的な削減が急激に行われるということは、その間によほど大きな客観的な変化があるというのならば別であります。しからざる場合に、一兆の予算のわくでとめるのだという儀性だけで、これだけの節減が行われるというばかなことはとうてい考えられません。しかもあえてそれが現実に現われて来るということになりますならば、農林当局に対する現内閣の不信用であります。金を持たせても、その金を十分使うだけの能力のない手合いであつたら、しばらくこの金を押えること以外には、何ものも考える余地がありません。 私はここに農林大臣の御出席があれば、農林大臣からそれらの点について所信をただした上で、この決議案に賛成をしたいのでありますけれども、農林大臣がお見えにならぬことは遺憾であります。ただ委員会として各党一致、全会一致で決議をいたしましたこの決議が、もし何らの効果を見ずしてそのままなおざりにされることになりますと、非常な悪例であります。ただいま自由党を代表されまして、非常に農村のために熱心な御意見の御開陳もあつたのでありますから、私は自由党の農林委員全委員の方々はこの決議に責任を持たれることを信頼いたします。もしそういうことになりませんで、われわれのこの決議がただ一片のほごになるようなことになりますと、その結果将来の委員会の運営にもいろいろ支障を来します。それらの点については、委員長においてしかるべく御配慮が願いたい。そういたしませんと、せつかく委員会で決議はしたが、それはただしつぱなしだ。単なるはつたりか、ゼスチユアだということになりますと悪例になります。われわれ非常に少数の同志でありますから、多くを申し上げるあれを持ちませんけれども、各多数党の驥尾に付して、われわれはこの趣旨に賛同をするものであります。もしこれが実現いたしませんと、その責任はわれわれもともに負わなければならないし、われわれとしても非常に重大な段階に立つておりますから、どうか委員長におかれましては、それらの点について十分御配慮を願いたい。万々そういうことはないでございましようけれども……。 これを要約いたしまするのに、万一こういう飛躍した削減が——実現しようとは思いませんが、これがそういうふうなことになりますれば、農林当局としては、こういう削減をされた予算で、ただいま川俣委員からもお話がありましたが、はたして日本の農林行政を担当する上に責任を持てるものかどうか。絶対に持てないと私は思う。もし持てるとするならば、過去において貴重な国費をむだに使つておつたことになる。その矛盾はどういうふうに御説明になるか。これは非常にめんどうなことになります。第二には、こういう決議が全然効果を現わさずに、一片のほごに化するようなことになりますと、今後の委員会の決議というものに対して非常な悪例を残しますから、そういうことのないように、きようはこれに対して、自由党所属委員の方々の出席も少いようでありますが、足立さんが代表してお話でありますし、理事会においても慎重に御検討になつたことと承りますし、ないしまた農林大臣、政務次官も御出席になつてるるお話になり、所見を述べられた結果がこの決議になつて現われたことと思いますから、これらの点を信頼いたしまして、私はこの決議案に賛成するものでありますが、今申し上げました諸点がわれわれの杞憂になるように、特に委員長において十分御配慮願うということにして賛成をいたしたいと思います。
○金子委員長代理 他に御意見もなければ採決いたします。ただいまの昭和二十九年度農林予算に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○金子委員長代理 御異議なしと認めましてさよう決しました。 なお本件の議長に対する報告並びに内閣に対する申入れに関しましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。
○金子委員長代理 なおこの際本決議に関し農林当局の所見を求めたいと存じます。平野農林次官。
○平野政府委員 衆議院の農林委員会におかれましては、自然休会中の本日特に本委員会をお開きになりまして、ただいまの決議案を満場一致をもつて可決せられましたことにつきましては、衷心より敬意を表する次第でございます。実は農林大臣が出席をいたしまして政府の決意を表明すべきでございますが、本日十時から大蔵大臣と予算の折衝をいたしておりまして、なお引続き進行中でございますので、まことに申訳ない次第でございますが、私からかわりまして所信を表明いたしたいと存ずる次第でございます。 今回の大蔵省の原案は、先ほど川俣委員からお話がございましたように、農林省は何をしておつたかというおしかりでございまして、まことに恐縮にたえないのでございますが、年末年始を大臣初め返上いたしまして努力いたしておりましたにかかわりませず、微力遂にかような原案を前にするということは真に遺憾のきわみでございます。もちろんこれは大蔵省の一試案というにすぎないのでありまして、何ら政府全体の案とは関係のないことでございまして、いずれ近く国会に提出いたしまする政府案につきましては、ただいまの御決議のほどを十分実現いたしたいと存ずる次第でございます。農林省といたしましては、先ほど河野一郎委員から、こういう極端に削減せられた予算でやれるものかどうか、またもしやれるものとするならば、今まで農林省は何をしておつたかという、御質問を兼ねられた御意見の御開陳がございましたが、これについては、はつきり申し上げておきますが、農林大臣といたしましては、この大蔵省原案がそのまま政府案になるというような場合においては、とうていその責任を遂行することはできないということを明言しておるような次第でございます。また特にこの大蔵省の原案は、現行の多数法律を廃止または大幅に修正をするということが前提となつておるのでございまして、私どもとしてはそのような乱暴きわまることが実現するとはとうてい考えられません。特にその一例を申しますならば、農産物価格安定法を廃止するということになつておりますが、農林大臣といたしましては、もしこれを廃止するという場合においては、自分の政治生命を賭けて、また一議員としても絶対に反対であるということを強く声明をいたしておるような次第でございます。われわれといたしましては、ただいまの御決議のほど、また各派の委員の方々の御意見を十分拝聴いたした次第でありますが、全面的に同感でございまして、その御趣旨をでき得る限り実現いたしますように最善の努力を傾注いたす所存でございます。(拍手)
○金子委員長代理 これをもつて休憩いたします。 午後零時三十二分休憩 ————◇—————