P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
19回国会衆議院1954/04/27

内閣委員会 第28号

発言数
100
登壇者
8
会派数
5
開催日
1954/04/27

会議録

稻村順三日本社会党(左)

○稻村委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法案及び自衛隊法案を一括議題となし質疑を続行いたします。質疑の通告がありますからこれを許します。田中稔男君。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 総理が見えませんので、副総理に内閣の責任者としてお尋ねいたしたいと思うのであります。  私の質問はむしろ法案を離れて一種の政治論にわたるのでありますが、政治論に関しまして、いろいろ質問いたします場合は、おおむねきわめて簡単な御答弁に終る場合が多いのでありまして、見解の相違であるとかあるいは御高見は承つておきますという御答弁があるのでありますが、私は、副総理は日本の外交、特にアジアにおける日本の外交につきましては、吉田内閣の閣僚中識見を持つたお方だと思うのでありますから、どうか私の質問に対しましてできるだけ詳細に誠意を持つてお答えいただきたいということを冒頭お願いしておきます。  日本の平和と安全を守るということは国民何人も異論のないところでありまして、終戦の詔勅にもたしか「萬世ノ為ニ太平ヲ開カム」という言葉があつたと記憶しておりますが、みずから臣茂と称せられる吉田首相以下現内閣の閣僚は、たとい私どもと政治的見解を異にしましても、日本の平和と安全を確保する方策については日夜真剣にお考えになつておるところだと思うのであります。その構想をひとつここでごひろういただきたいと思います。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 日本は、今御引用になりました終戦の詔書にもありまするし、また日本が敗戦後とりました国是と申しまするか、それが具体的に現わされましたのは今の憲法でありまするが、その憲法の前文にはつきり書いてありますように、できるならば一切軍備というものなしに、平和を愛好する諸国に信頼をして、いわゆる平和国家として国を立てて参りたいという、これは憲法制定当時の切なる国民感情でもありましたし、また憲法の前文にそれをうたいまして、一つの国是となつて表現されておるのであります。不幸世界の現実、は必ずしも憲法の前文にある日本の平和国家としての理想にそぐわないものがありまして、そのために防衛問題等も現に論議の中心になつておるのでありますが、いずれにしましても、日本としましては世界の平和、人類の福祉ということを念願として、今後防衛力を持つてそれを増強して行く上にも、その趣旨だけは絶対に曲げないという固い決意を持つておる次第であります。ただいかにせん世界の現実が今日自由陣営と共産陣営とにわかれておる、これも私は将来世界が一つになつて行く過程であるとは考えまするが、今の現実を無視するわけには参らない。その間に日本は敗戦によりましてサンフランシスコの平和会議となり、その会議において平和条約を締結いたしまして、共産国はその平和条約に調印を拒否しました関係上、日本はいわゆる平和陣営、自由陣営の一員となつた次第であります。その一つの新しい日本の立場に立ちまして、日本はいかにして世界の平和、人類の福祉の増進に貢献するか、これが今日新しい日本に課せられた一番大きな基本的の問題であると考えるのであります。日本は国連の精神に共鳴して自由諸国との間の連繋を強め、世界の現実に対しましては集団安全保障の理念をだんだん進めて参り、日本自身としても国力の許す範囲内において、国民生活を多く犠牲にせない範囲内において国力相応の自衛力を持つて行こうというのが今の日本の立場であります。さらに日本の地理的関係から申しまして、特にこのアジアの問題には政府としても特別な関心を持ちもして、アジアの平和と申しますか——東南アジア方面には従来ヨーロツパ諸国の覊絆の中にあつた諸国がありますので、その諸民族の繁栄に貢献して参り、その諸民族の繁栄によつて日本もまた国民生活をよくして参りたい。そういう念願をしながら直接間接に世界の平和、人類の福祉を進めて参りたいというのが戦争後における新しい日本の念願であります。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 日本の平和と安全を守ることについての政府の構想の中に国際連合に対する協力というようなお話もありました。ところが現在の国際連合というものはその創立の精神及び目的を没却して、今やアメリカを先頭とする一方の国際的陣営の独裁機関に化しておる、こういうふうに私どもは見ておるのであります。たとえば朝鮮において過去数年間朝鮮民主主義人民共和国及び中華人民共和国の軍隊と戦つたアメリカ以下十六箇国の軍隊は、みだりに国連軍の名称をもつて呼ばれ、インドシナ戦争に対処するためにアメリカが提唱しておるところの英米仏十箇国よりなる東南アジア防衛協定の構想は国連の名において実現を見ようとしておるのであります。こういうふうに国連と申しましても今日は一つの国連ではない、まあ二つの国連とも言つていいような状態でありますが、まつたくアメリカ陣営の一方的機関である。こういう事実にかんがみまして、私は国連が世界の平和と安全を保障するために十分に寄与することはできないのじやないか。ただ形式的に国連と協力するとか、あるいは国連の援助を受けるというようなことでは具体的にほんとうに日本の平和と安全を守るに欠くるところがあるのじやないかと思いますが、国連に対する私どものそういう見方に対して政府当局の御見解を承りたいと思います。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 私は国連の理想は世界平和を庶幾しまする上において欠くるところはないと思うのでありますが、その後いろいろな国際間の現実から、ソ連を中心にした共産陣営の諸国との間の話合いが十分に行かない場合がある。また国連の機構におきましても、あの国連がつくられました当時の世界情勢、すなわち当時のアメリカとしては、自由陣営との間にも十分な協力ができて、話合いによつて世界の平和が進められると思つておつたが、その当時の現実と少しかわつて参つたような事情がありまして、このままただちに十分な世界平和への寄与ができるかということは多少の疑問がありまするが、しかしながらその理想においては欠くるところはないと考えております。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 現在中国の国土には中華人民共和国という新しい国が生れておる。その北京にあります中央人民政府は、中国四千年の歴史においてほんとうに初めて、その国土と国民に対しまして全完な支配権を打立てておる。これは何といつても否認できない客観的な事実である。これは、私ども昨年秋自由党の議員の諸君も御一緒に北京を訪れまして、党派のいかんを問わず、確認した事実であります。今日国連が中国の代表権をこの北京にある中華人民共和国政府に与えないで、台湾にわずかに残存しておりますところの国民政府に与えておるという、こういう不自然な事態が、国連の機能を非常に弱めているのじやないか。これは今日ジユネーヴの会議におきましても、冒頭から問題になつている国際問題でありますが、これについて副総理の御見解を承りたいと思います。国連は何と申しましても、加盟国の国際的協力、なかんずく中国を含めた五大国の協力というものを基礎として成り立つ機構でありますが、今申しましたような事情では国連本来の機能を私は果し得ないと思いますが、この点についての御見解を承りたい。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 中華人民共和国すなわち俗に中共と称しておりまする国の実情については、私十分承知をいたしておりません。新聞、雑誌、あるいは外国の人の報道等によつて知ることはできますけれども、それが中共の実情であるということを私は自分で確信をもつて認めるだけの資料を持つていないので、はつきり中共の立場につきまして申し上げることはできぬのであります。昨年議員の諸君が行かれ、あるいはインドからパンデイツトさんが行つて、いろいろな人が入つて行つて、その話を聞き、その報告を聞いておりますが、これは中共のすべての施設あるいは領土の各方面にわたつての視察というものは、国の実情から許されない。従つて大体視察される方面は同じような限られた地域であるだけに、ほんとうの国情を断定するまでには参らないのであります。ただ私は漢民族の民族性ということには深き信頼を持つております。これは歴史に照してみまして、この民族性は非常に強靱なものであり、あらゆる民族的経験を経て参つただけに、世界のほかの諸民族がなかなか及ばぬような一つの試練を経ている。従つてその漢民族を中心とした中共の将来には、今まで世界が経験しないものが開かれて行くのではないかということを、希望を持つて想像しますけれども、しかし今の中共は、われわれ日本から見ておるところでは、中ソ友好条約という名のもとに、実際においてはソ連の一種の帝国主義的な動きに共鳴しており、特に中ソ友好条約では日本を仮想敵国にしておるというような状態でありまして、中共それ自体がいかなる政体を持つておりましようとも、これは他国の干渉するところでないのでありますけれども、今の、ソ連との共同のもとに現われておりまする行動、これは日本としてはなはだ賛成ができない。中共の内政が漢民族のほんとうの自主的な立場によつて、自主的な考えによつて固められ、一方台湾におりまするいわゆる中華民国の政府との間が調整できるものかできないものか、中共の実情を知らないだけに断定できませんが、このいわば中華民族の内政的の問題が解決されれば、むろん国連との関係は問題はないと思います。今のところは桑港の平和条約におきましても、また従来の日本の立場といたしましても、台湾における中華民国の政権と条約上の関係がありまして、この点につきましては、それを無視してどうということは日本としてできない。非常に曠茫たる地域を持ち、また四億の大衆を擁しておりまする中共というものが、国連関係において、今のようなままに置かれておることは、一つの不自然な状態であるとは考えますけれども、それは他国である日本から批評する限りでない、かように考えております。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 副総理として非常に条理を尽したお話がありましたが、中国の現状を知らないとおつしやる。なるほど副総理がおいでになつたわけでもないし、その御答弁も一応ごもつともではありますけれども、しかし副総理は中国の問題、アジアの問題についてはかねて非常な関心を持つておられる。ことにまた今副総理の地位にもおられまして、隣邦中国の事情を日本の政治家として深く研究することがなくしては、とても私は立てるものじやないと思う。実は自由党の江藤君と一緒に私北京に参りましたが、北京の客舎において、江藤君もつくづく新中国の実情に驚いたのでありまして、帰りましたならば、吉田内閣の閣僚でも副総理ならば話がわかるはずであるからひとつゆつくり進言をしたい、こういうことを私に言つた。私はこれはけつこうなことだと思うのですが、今の御答弁では、どうも副総理はやつぱり逃げておられるのではないかと思う。副総理といたしましては、やはり台湾政府と一応日本が条約を結んでおるという事情も無視できないので、これはもつともだと思いますが、ここで私がひとつお尋ねしたいのは、中華人民共和国の実力あるいは実情というものは十分おわかりにならなくとも、台湾に逃げ込んでおりますあの蒋介石の残存政権、国民政府というものが今後大陸に反攻をして、そうして再び蒋介石が中国の最高の責任者の地位に復活するということはあり得ないと思います。副総理もおそらくその点については私どもと同じ御見解だろうと思いますが、念のために台湾政府の方の現状あるいはその実力あるいは将来の可能性というものにつきましてお見通しをひとつ承りたい。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 台湾にありますいわゆる中華民国の将来につきましては、中華民国が日本の締約国でありますために、日本の政府の者といたしましてその将来に批判を下すべきではないと思います。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 さらに先ほどのお話のうちに、中華人民共和国がソ連の政府と中ソ友好同盟相互援助条約を結んで、日本を仮想敵国としおる、まるでソ連の傀儡のようになつておる、こういうようなお話があつたようでありますが、これは政府の責任ある副総理のお言葉としては、今後国際的に非常な障害になると思います。私ども社会党が政権をとりましたならば、もちろん中ソ両国と早く国交の調整に当りますが、吉田内閣がこのまま続きました場合においても、一日も早く吉田内閣の手で中ソ両国との国交の調整をしていただくことが日本のために必要だと私は思います。そういう場合に今の副総理の御見解は非常にじやまになるのじやないかと思います。中ソ友好同盟相互援助条約は、国民の中には知らない人がありますけれども、第一条の中にもこう書かれておる。「締約国の一方が日本国またはこれと同盟している他の国から攻撃を受けて戦争状態に陥つた場合には、他方の締約国はただちになし得るすべての手段で軍事的または他の援助を与える。」こうなつております。しかしながらその文句の前にもう一つこういう言葉がある。「日本国または直接にもしくは間接に日本国と侵略行為において連合する他の国の侵略の繰返し及び平和の侵害を防止するため、」こういうふうな条件がついておりまして、この条約というものは、何もソ連が中国と結んで、積極的に日本に対しまして何か侵略を企図しようという条約ではない。また第一条だけではありませんで、この条約のすべての条文を通じて見ましても、これは何も日本を仮想敵国とした侵略の条約ではないと思いますが、副総理はこれを侵略の条約とお考えになつておるかどうか、ひとつ確かめておきたいと思います。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 私は中共がソ連の傀儡であるというようなことは申した覚えはありません。そういうことは言うべきことではないのでありますが、今の中共が中ソ友好条約において侵略の意図があると考えておるかということにつきましては、これは今お読み上げになつた条約の条文によりましても、防衛的な条約であつて、中共自身が日本に対して侵略の意図があるということを断定する資料はありません。しかしながら敵意を持つておるということははつきりしておるので、その意味からその条約が廃止されない限り、中華人民共和国と日本との間の関係はなかなか正常な軌道に乗せることは困難であるという感じは持ちます。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 国際関係は反射的なものでありますから、ソ連や中国がこういう条約をつくるにつきましては、今度は日米安保条約というようなものが存在しておるということを見なければならないと思いますが、この条約につきましての質問はこれ以上は申し上げません。  その次に政府は何と申しましてもアメリカ依存、よく言われるアメリカ一辺倒の外交政策をとつておる。これははつきりしておると思います。国連に協力するとか、あるいは自由諸国家群に属するとかいろいろ表現はありますけれども、これは結局言葉のあやで、核心においては要するにこれはアメリカとの協力、提携によつて日本の平和と安全を守ろう、こういうような御方針であることは明らかである。ところが現在のアメリカでありますが、このアメリカを一体われわれはどう見たらよいかということは、私は問題であると思います。政府の御説明を聞きますとアメリカは自由と民主主義の擁護者である、こういうふうにアメリカが非常に美化されておる。しかし私は今日のアメリカは決して自由と民主主義の女神ではないと思う。はつきり申しますならば、ドル帝国主義の権化として、その内外政策において、アメリカは急速に自由と民主主義とを放棄しつつあると私は見るのであります。これは古くからありますけれども、黒人に対する非人道的な差別待遇が依然として行われておる。軍需資本家の豪華な生活の陰には悲惨きわまる貧民窟がなお都会に存在しておる。反共ヒステリーともいうべきマツカーシズムというものが流行しておりまして、自由の精神というものは、アメリカにおいてはまさに窒息せしめられようとしておるのであります。また国外においては差迫つた恐慌の襲来を逃げようとして、世界至るところに自国製品の市場、特に軍需品の市場を探し求め、さらにまたアメリカの軍需工業のため必要な資源の獲得に血眼になつて奔走しておる。たとえば最近におきましてはイラン、パキスタン及びインドシナがその具体的な事例であります。アメリカはその国民の負担において、これらの国の軍事援助の名のもとに大量の武器を供与いたしまして、イラン及びパキスタンにおいてはイギリス帝国主義にかわつて、インドシナにおいてはフランス帝国主義にかわつて、新しい帝国主義的支配者の地位につこうとしておることは明らかである。しかしアメリカの内外政治に現われております帝国主義的傾向というものは、まだ今日ほど露骨ではなくとも戦前、戦時においてもすでに現われておつたのでありまして、その当時の日本の指導者——その指導者の中には緒方副総理も含まれておるのでありまするけれども、日本の指導者はアメリカの帝国主義政策の魔手が極東、特に当時の満州に及ぼうとしておるということを指摘して、国民にたびたび警告をされたのであります。しかも当時の日本は今日の日本とは違いまして、アメリカと肩を並べた帝国主義強国として立つておつたのでありますが、日米両帝国主義の利害の対立は、遂に太平洋戦争になつて爆発したのであります。そうして、戦い敗れてきわめてゆがめられた今日の日本は、アジアのかつて植民地であつた多くの国々と同様に、アメリカの軍事援助を受けるばかりでなく、直接その軍隊の駐留を許すことによつて、日本の平和と安全をアメリカに託そうとしておるのであります。政府は、こういう外交政策、防衛政策を理由づけるために、ソ連や中国の脅威に対抗するために必要である、こう言われておる。しかし、こういうアメリカ依存の外交政策、防衛政策がだんだん強くなつて行きますならば、結局日本はアメリカの植民地あるいは従属国になり下る心配がある。昔のアメリカと今日のアメリカを比べて、むしろ今日のアメリカの方が日本にとつては危険である。決してアメリカは、日本に対して慈喜心を持つて、あるいは人道的な精神を持つて日本を保護してやろうとかなんとかいうのではなくて、日本を守るというのは、要するにアメリカ自身を守るために日本を利用しようというのにすぎないのでありますが、こういうことについて政府の要路の副総理は、手をあげてまかせておつていいと思われておりますか、それともアメリカに対しても十分な警戒心を持つておられるのでありますか、そういう点について腹蔵のない御意見を承つておきたいと思います。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 お話を伺つておりますと、政治的の立場が違うとこうも見方が異なるかと思わざるを得ないのでありますが、アメリカの民主主義の実情に対しまして、いろいろな批判がありましよう、これはアメリカ国内にもあると思いますが、しかし私今アメリカをどう見るかという批判は避けたいと存じます。ただしかし、アメリカがどうありましようとも、日本が今自由陣営におつてアメリカの援助を受けておる、これによつて日本が行く行くアメリカの植民地になる、あるいは奴隷化されるということは、これは日本の民族が国民としての独立の気魂が強く、政治がよく行われて参りますならば、絶対にそういう心配はない。これは一に国民自身が決し得る問題でありまして、今日本が敗戦の後に立ち上る際に、アメリカの援助を受けましようとも、これは日本の国民の考え次第で、日本の将来を心配させる問題にはなり得ない、かように考えております。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 私は日本民族の力量に信頼を置いておりますから、五年や十年アメリカ一辺倒の政策を政府がとりましても、日本民族がアメリカの奴隷となる心配はない。戦時中私ジヤワに行つておりましたが、戦争が終つてインドネシアの独立運動が起つた。四百年来オランダ帝国主義の愚民政策のためにまつたくふぬけ同様になつていると日本が考えておりましたインドネシア人さえ、一たび立ち上りますと、あの大きな独立運動のエネルギーを発揮したのであります。インドしかり、ビルマしかり、阿片戦争以来百年、外国の共同植民地の状態にあつた中国でも、今日偉大なる指導者が現われて国が興ると、ああいうすばらしい発展をするのでありますから、私は二千年の歴史を持ち、かつて外国の侵略を受けたことのないという誇りを持つ日本民族が、政府の政策のいかんによつて数年でどうなるということはないと思います。しかしながら、それは結局政府のそういうアメリカ依存政策に対しまして、絶えず国民が抵抗するということが行われていなければ、やはり日本民族としては相当長い間隷属の状態に置かれるという心配があるのであります。そういう意味で私は政府の政策を批判しておるのであります。具体的に申し上げますと、とにかく日本は平和条約によつて領土の割譲を見ておるのです。琉球諸島、小笠原群島というものが事実上日本の領土でなくなつておる。駐兵権と基地を安保条約によつてアメリカに与えておる。また安保条約、MSA協定を通じてみましても、日本がアメリカに軍事的に協力をすることによつて、場合によつては日本がアメリカのためにアジアで戦わなければならぬ、言いかえればアメリカ帝国主義のアジアにおける番犬の役割をみずから買つて出ようとしておる。また日本の軍需工業を大いに利用いたしまして、日本をしてアジアの兵器廠にしようとしておる、こういう具体的な事実が枚挙にいとまないのであります。これが政府の対米依存政策の具体的な現われであります。私は緒方副総理とは確かに政治的の見解を異にしますが、こういうことにつきまして政府は一体どういうふうにお考えになつておりますか、具体的な御答弁をひとつ承りたいと思います。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 こういうことについて具体的にどういう考えを持つておるか、こういうことという意味が私十分とれませんでしたが、いずれにしても、今の政府のやり方がアメリカ帝国主義の番犬であるといわれるけれども、それの対蹠的観察をなす者は、左翼運動者はソ連の番犬である、手先であるということもいわれましよう。私は、先ほどお述べになつたアメリカとの条約はやむを得ないが、国民が常に抵抗することによつて正しい方向を失わせぬようにして行くという考えよりも、日本が国として条約を結んだ以上は、その相手国を十分に理解して、そしてその協調によつて日本の進むべき道を開いて行く、日本のあれだけの敗戦の後に今とつております政策は、だれが衝に当つてもやむを得ないやり方であつて、独立を完成する途中において、これは何人が局に当つてもやむを得ない、その間において、これはアメリカの奴隷になる方向であるというようなことで、ただ抵抗あるいは反感というようなことをそそつておるのでは、なかなか国の安定もできませんし、いわんや世界平和というものは庶幾し得ない、そうでなくて、できるだけこういう際においては理解を持つて進みたい。私は共産主義と自由主義は今の世界の段階においては両立し得ると考えます。現に第二次大戦の前においては、日本も共産主義国と交通をやつておつた。そういう事態は、もう少し世界がおちつけばおのずから展開される。何といたしましても、新しい日本の目標は世界の平和、人類の福祉であります。それと違う方向に国民をひつぱつて行くようなことはやりたくない、政府としてはさように考えておるのであります。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 今緒方副総理から米ソ共存の可能性についてのしつかりしたお言葉を承つて、私非常に喜ぶものであります。そのことを私は実は今お聞きしたいと思つたのであります。私は先ほどアメリカの帝国主義政策につきまして相当きびしい批判をいたしましたけれども、これは何もアメリカの国民を私どもが非難しようというのではない。アメリカの政府の政策と、アメリカの国民、これはやはり厳密に区別して考えておるのであります。実はアメリカの識者の中でも、ポール・スウイージーという人は、「日本人への忠告」という論文を「世界」に書いておりますが、この中で、日本人がむしろこの際アメリカの帝国主義的政策、それと結びついた日本政府のアメリカ依存政策、これに対してはひとつきびしい批判をやつてもらいたい、それがほんとうにアメリカの国民と日本国民とが提携し、新しい親善関係を打立てるゆえんであるということを強調しておるのであります。私もそういう気持で実は申し上げておるのであります。この場合に私どもは、アメリカの国民ともやはり仲よくしたいが、ソ連の国民とも、中国の国民とも仲よくしたい、こういう考えであります。今副総理が米ソの平和的共存の可能性というようなことを言われました。私はそれについてちようど申し上げたいと思つておつたところでありますが、私も同様に思うのであります。私の見解としましては、まず米ソ両国の国民が平和を求めておるという事実、第二には、ソ連は社会主義の建設のためにまつしぐらに今闘つておる。この社会主義建設というものは平和がなくては不可能でありますから、この意味においてもやはり平和がソ連にとつて必要である。第三には、ソ連は大国であり、大体において自給自足のできる国でありまして、戦争の危険を冒してまで国外に市場と資源を求める必要がないのであります。アメリカがその帝国主義的膨脹政策をやめて、国内においては軍需資本家の独占利潤のためでなく、国民の福祉のために、たとえばかつてルーズヴエルトがやりましたようなニユー・デイールを再び採用し、国外においては、ソ連その他の共産圏諸国とも平和貿易を大規模に再開する、こういうことをしますならば、経済的利害の面においては両国の対立は解消する。第四には、ソ連の実力であります。きようもマレンコフがソ連の最高会議におきまして、原爆には原爆で報復するという演説をした。これは非常に遺憾なことでありますけれども、今日の世界において、やはり最後は実力がものを言う場合もあるのでありまして、今日ソ連の実力をどう見るかということ、これも私は緒方副総理にお尋ねをしたいことでありますが、私はソ連の実力を相当高く買うものであります。すなわち第二次世界大戦において、ヒツトラーのあの優秀な軍隊を壊走させたその実力、朝鮮戦争においてマツーカーサ元帥をして、遂に満州爆撃を思いとどまらせたその実力、原子爆弾だけでなくて、水素爆弾あるいはコバルト爆弾というようなものをも保有するに至つたソ連の実力、こういうものがあります。アメリカの一部には好戦主義者がおります。反共十字軍の対ソ予防戦争というような危険な考えを持つた人がありますけれども、それを押え得るものはソ連の実力ではないかと思うのであります。こういうようないろいろな要因を拾い上げてみましても、私はこれは戦争はなくとも、米ソ共存し得る可能性があるのだ、こう思うのであります。この点をひとつはつきり私どもとしては認識しておりませんというと、米ソの間に介在しておる日本としては、外交政策においてもよろしきを得ることはできないのであります。今副総理のお話を、私の質問の前にもうすでに承りまして、非常に私も心強く思うのであります。私の今申しましたような諸点につきましての御見解を承ることができると幸いであります。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 私は共産主義と自由主義が両立し得ると申しましたが、それはただ一つ条件があるので、お互いに内政不干渉と申しましようか、その国の構造につはて互いに干渉しない、そういうことがなければこれをやつて行けないのであります。今共産主義のやり方を見ておりますと、内政的にどれだけ共産主義の理想が行われておるかということは、これは先ほど中共のときにも申し上げましたように、実情がわかりません。いろいろ活字になつておりますものがそのままの実情であるかどうかということは多少の疑問があります。でありますが、特に外に現われるものが往々にして政府主義的な形をとつて、その国のかりに政府主義的な形をとらぬまでも、内政干渉の形をとる場合が非常に多い。これは共産主義者の方からいうと、アメリカの帝国主義も同様であるということを批判されるかもしれませんが、いずれにしましても、そういう他国の内政に干渉すること、他国の国家構造をかえようとすることが、その方法手段のいかんにかかわらず、そういう態度に出ることが世界平和を害しておることは、これは事実であります。民族の団結によつて、それぞれ個性を持つた国、その個性に基いて政体がいろいろ違つておりますが、それを無理にかえようとする企てが、往々にして共産主義国家で行われておる。これは私は世界の平和を害しておると考えますが、その内政干渉がなければ私は共産陣営と自由陣営は共存し、並行して生きて行ける。これは今の世界平和の段階においては必要であつて、またできることである、かように考えております。

粟山博改進党

○粟山委員 関連質問であります。緒方さんにお伺いいたしますが、資本主義と共産主義とが同じく存在することが許されるというような御答弁であるが、それは日本においてもできるというお考えでありますか。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 途中からお聞きになつたので、少し違つておるようでありますが、世界における共産陣営と民主陣営というか、自由陣営、それが両立することは可能であるかどうかということに対して、私は可能であると申し上げたのであります。

粟山博改進党

○粟山委員 陣営が共同して存在することを許可すということは、その経済機構においても、政治機構においても許されるということに解し得るものと私は考えますが、いかがでありますか。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 共産主義国と民主主義国が両立することができないならば、これは戦争しなければならない。そういうことは、私は今の平和を念願しておる世界においてあつてはならぬことだと考えます。国の中で共産主義を認めるか認めないかということは、主権者である国民がきめる問題でありまして、日本におきましては共産主義の政党を認めておる。これは現実であります。

粟山博改進党

○粟山委員 なるほど今日日本においては、共産主義の政党も、議会における共産党の議員の存在も許されておりますが、もしそれこの共産党ないし共産党の議員が資本主義政党にかわつて政権を獲得した場合、そのイデオロギー、その経済機構、その政治形態というものが日本の国において許されるということ、そういうことが、現内閣の重要なポストにおります緒方副総理に考えられるかどうか、その点を聞きたい。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 共産党による政権は望ましくない。私どもはそういう時代をもたらしたくない。但しそういう時代をつくらぬことは国民の力によるのでありまして、主権者である国民がそういうものを認めなければできない。今の政府の政策がどうこうということでなくて、それは一に国民がきめることであります。今の政府としては共産主義というものに反対でありますけれども、憲法に保障されました思想の自由、結社の自由ということによりまして、共産党の存在はこれを認めておるのであります。

粟山博改進党

○粟山委員 ただいまの緒方さんの、望ましくないという言葉と、絶対そういうものは許すことができないということとはたいへん違うのでございます。そこで今日の吉田内閣あるいは自由党は、そのイデオロギーにおいて、その政治理念において、その経済主義の主張の上において、そういう内閣ができたらできてもよろしいというのか、あるいは絶対にそういうものの存在を許さぬという信念のもとにあるのか、この一点を聞いておきたいと思います。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 今の政府においては共産主義は絶対とつておりません。     〔粟山委員「もう一ぺん」と呼ぶ〕

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 今の政府は、共産主義の政策は絶対にとつておりません。

粟山博改進党

○粟山委員 政策の問題ではないのです。私は日本において共産主義の政党が政権を獲得して共産主義の内閣をつくつて、その権力のもとに、共産主義の政治形態、経済機構のもとにそのイデオロギーを実施する場合、これを拒否するものであるかあるいは容認するものであるか、その一点を聞きたいと思います。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 もちろん政府は共産党の興ることに反対をいたします。また自由党も共産党に反対の立場をとつております。しかし共産党が日本の国土において成長するかどうかということは、これは政府が大きな声を出しましても、共産党反対の声明を出しましても政府の力によつてきまることではないのでありまして、主権者である国民がその意思によつてこれを育成するかどうかということをきめる、その国民の良識に信頼する以外にこれを防ぐ道がないのであります。

粟山博改進党

○粟山委員 なるほど今日は、暴力行為のごときは右であろうと左であろうと、中庸の道を説く者にとつても、いずれにしてもそれは許されておりません。許さるべきものではないのであります。しかしながら共産主義、共産政権をつくるということのその主張と行動というものは、ひとり暴力行為のみによつて決せられるものではないと思うのです。その政党のあり方が、真に共産党の主義主張によつて、その力によつてとつてかわられる事態が生ずることについての道程において、日本の国情に即してこれが許されるものであるかということについては、政府は厳に指導力を発揮しなければならぬと思うのであります。その点について、今の緒方副総理のような意見を聞くにおいては、現在とつておるいわゆる吉田内閣、自由党の政策なり主義主張の上においてそれが許されるものではない、私はかように考えておりますの、で、この点について私は現内閣の心構えを聞きたいと思うのであります。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 私の方からお尋ねいたしますが、民主主義というものを十分に御承知になつておるのでありましようか。今のお言葉では……。     〔粟山委員「それはむろんのことで   すよ。それをどういう点からおつ   しやるのでありますか」と呼ぶ〕

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 政府といたしましては、共産党が成長しないように、そういう共産党の成長する間隙を与えないようにあらゆる政策をやつておるつもりであります。しかし今は主権在民であり、民主主義であり、国民がどういう判断をするかということは、政府の努力のいかんにかかわらず、またほかの方向をとる場合もないとも限りません。その方向をとらないように万全の努力をしておりますけれども、それを決定するものは主権者である国民であるということを申しておるのであります。

粟山博改進党

○粟山委員 ただいま緒方さんは、民主主義のことについて了解しておるかどうかということを言われたが、しからば日本において共産主義と資本主義とが同じむねの下に住むことができるというお考えであるならば、一体共産党の経済主張はどういうものなんでしようか。あるいは政治形態はどういうものなんでありましようか。現にあなたが支持しておられます吉田内閣、自由党の性格というものは、私は日々お目にかかつておりまして、これは了承しておりますが、それと対照した理論を伺いたいと思います。御答弁をお願いいたします。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 ちよつと御質問がわかりませんでしたが……。

稻村順三日本社会党(左)

○稻村委員長 粟山君、関連質問で時間がありまんから、簡単に結論をお願いいたします。

粟山博改進党

○粟山委員 これは非常に重要な問題です。緒方さんが私に、民主主義を了解しておるかと言う。そういう有力な政府当局者が、かりそめにも内閣委員としての私にお問いになる限りにおいては、政府から、日本に共産党の政府や内閣や、そういうような経済機構、政治機構があつてはならないという絶対的な御意見を聞かなければ、あなたから共産主義の理論及び政治形態、経済理論というものを十分にお聞きしなければ、私は遺憾ながら私の質問の体をなすことができないのであります。その点については明確に御指示を願いたいと思います。思想問題でございます。国家の運命に関する問題であります。世界観に立つところの重要問題であります。この問題に対する思想的な理念、政治機構の見解に透徹したる信念なくして、現内閣は一日たりとも世界の屋根の下には住み得ないと思う。自由党の諸君も私は晏然としてその去就を保つことができないと思う。この点について今御答弁ができなければ、文書をもつてその性格について御返答を求めます。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 イデオロギー、社会体制のいかんにかかわらず、米ソの共存は可能だというお話でありましたが、そうしますと、結局現在の日本が中ソ両国と共存できるということになるわけであります。そこで私は中ソ両国との国家調整の問題についてお尋ねしたいと思います。  アメリカはサンフランシスコ平和条約によつて実際上ソ連を締め出してしまつた。日本と中ソ両国との関係は今日まだ法律的には戦争状態の継続であります。しかし日本としましては、太平洋八千キロの海を隔てたアメリカと友好を結び、あるいはこれに依存しながら、一衣帯水の近くにある中ソ両国をいつまでも敵として対立を続けることはとうていできないということは国民の常識であります。そこでこの国交調整について私どもも努力いたしますが、政府においても御努力願いたいと思うのであります。私どもはいささかソ連と中国の実情を研究し、また昨年中国に出かけましていろいろ見聞した結果といたしまして、これは日本の政府が誠意をもつて働きかけるならば、私はソ連及び中国はこれに十分応じるものだと見ております。いろいろな方法はありましようが、早く戦争状態の終結宣言というようなものを交換することが一つの方法だろうと思う。平和条約ができますまでの暫定措置として、とりあえずこれをやらなければならぬと思う。  さらにまた両国との貿易及び漁業に関する話合いというものは、ぜひ何とかとりまとめていただかなければならぬと思う。今日は東西貿易の拡大ということについては、西欧陣営でも非常に熱心であります。アメリカのスタツセンも渡欧いたしまして、英仏等の諸国と了解を遂げたような次第であります。日本においては北洋漁業の問題で平塚常次郎氏あたりが民間使節としてソ連に行く。それから中国との貿易、ソ連との貿易につきましても、民間の動きが非常に活発になつておる。最近は取引の実績も相当顕著なものがあるようであります。こういうふうなことについて政府がお考えになつておるところをとりまとめて、できるだけ詳細にお述べいただければけつこうだと思います。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 ソ連または中共との間の国交の問題、これは日本としても交通をなるべく早く開きたいという希望はあるのでありますが、先ほど申し上げましたように、中ソ友好条約、日本を仮想敵国としておる条約が存在しておる限り、少くも日本の方から直接の話かけはできない、そういう意味で現に開かれておりますジユネーヴの会議、そういう国際会議の際に、それに関連してこういう問題が取上げられて、漸次交通の道が開けるという機会があるかもしれませんが、今の日本として外務当局がどういう構想を持つておるか、十分確かめておりませんが、今のところは手の出しようがないというような現状であります。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 それで昨年秋国会の各党派から議員が参りまして、これが日中貿易協定を結んだ。これは私は一つの成果だと思います。今のお話では、政府としてはこちらから話しかけることはできないということでありますが、どうでしようか、社会党左派というような党派の関係者が北京にでも出かけて、そうして中国との国交調整という問題について何か内談でもするというようなことは、これは吉田内閣ではできない、自由党ではできない、国民外交としてやることができるので、日本全体として非常にけつこうなことと私は思います。社会党としてそういうことを具体的に考えておるわけじやありませんけれども、政府ではやれぬ、こちらから話しかけることはできぬとおつしやるならば、社会党左派がそういう外交上の努力をしようとする場合には、政府としてはむしろこれについては望ましいとお考えになるかどうか、この際承つておきたい。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 お答えをしますが、望ましくないと考えます。社会党でそういう政策持をつておることは承知しておりますが、それには社会党がまず多数を獲得して社会党の政府をおつくりになつて、それからやつていただかないというと、国内に二つの政府があるというような形になりますことは、国内を混乱に導く端緒でありまして、そのことは避ければならぬと考えております。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 私はその点では見解を異にする。二つの政府じやない、社会党は野党でありまして国民の相当の数を代表した一つの党派にすぎない。政府でできないことを国民の相当の数を代表する党派がやるというようなことは、これはイギリスあたりではむしろ普通に行われておることでありまして、私は国民全体から見ますればむしろそれはプラスだと思うのであります。どうも今の御答弁には不満足でありますが、しかしこれについてそれ以上申し上げません。  国交調整はやりたいというようなお話であつたように承ります。そこできわめて具体的な問題でありますが、国交調整をやるについても、やはり何としても両国の人が往来することが必要である。これは渡航の問題であり、旅券の問題である。それからまた民間の学術交流、文化交流というようなことも、いろいろやる必要があると私は思う。あるいはまた、これは緒方副総理は新聞界に関係しておられましたからよく御承知だと思いますが、新聞通信社がお互いに派遣し合うというようなこと、そうしてこれが両国の実情を国民に知らせる、こういうことも国交調整のための具体的の手段としては私は非常に望ましいことだと思う。そういうことについて一々御答弁願いたい。というのは、決して抽象的な話でなく、こういう話がすでにたくさん起つておる。渡航問題は御承知の通り前から何回も問題になつておる。最近だつてたとえば製鉄業者が開らん炭を買うについては、どうしても技術員を現場に送らなければ品質その他については安心できない。どうしてもやりたい。あるいは機械業界の代表者が機械類と米とのバーター貿易をしたい、その売込みのために中国に代表を送りたいと言つておる。また学術交流の問題では、日本の学術会議の代表者が向うに参りまして、中国科学院の代表者をやはり日本に迎えたいという話も計画されております。最後に新聞、通信社の問題でありますが、現在日本の新聞には中国のたとえば新華社というような通信社の通信はあまり載らない。載りましてもほんのわずかの分量がときたまです。それに対しまして香港あたりから国府系の通信社が長文の電報を打つてよこす——香港情報というものは中国の実情を非常に歪曲して逆宣伝をしているような報道が多いのであります。緒方副総理はどうも中国の事情はよくわからぬとおつしやるが、あるいはそういうふうな報道を主として見ておられる結果ではないかと思います。私は日本の大新聞であります朝日新聞にしても毎日新聞にしても、あるいは日本の通信社が向うへ行く、向うからも新華社の人あるいは人民日報の記者といつたものが自由に来る、こういうふうなことにしてお互いに知り合う、こういうふうなことでもひとつ話し合つたらどうか。こういうことは正式の国交の回復がなくても、政府がその気ならば私はできないことはないと思うのでありますが、こういうふうな努力を具体的に重ねて行くという熱意が政府におありであるかどうか、ひとつこの機会に承つておきます。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 今両国の事情をお互いに紹介するために新聞、通信等の特派員を交換する、これは私は非常にいいことだと考えます。現にソ連との間には——私も最近の新聞の実情を知りませんが、これは前からソ連のしきたりがありまして、日本の新聞記者を一人入れれば、タス通信社の記者を一人日本に入れるというようなリシプロカルな方法をとつて参つておる。私ははつきり申すだけの知識は持つておりませんが、そういうことが多分今実施されておるのではないか。ただそれにしましても、そういう基本的の両国の国交が調整されませんと、通信員等の居住あるいは旅行等の問題にも非常に制限をせられまして、実際の事情が紹介できない。これが事実でありまして、その国の政府が発表したもののみを電報にする、あるいは通信するということでは、いたずらにその国の宣伝に乗るということもありますので、この点はたして純粋な両国の事情の紹介という上に役立つかどうか、場合によつては逆効果を来しはしないかということも警戒すべきであると考えております。最近の実情は知りませんが、そういう基本的な条件が調整されました後に新聞、通信の特派員等を交換することは非常にけつこうなことだと考えます。

辻政信小会派クラブ

○辻(政)委員 議事進行。非常にさしでがましいような発言でございますが、ただいまの質問応答を通じて私の印象に残ることは、外務委員会へ出たような感じを受けるのであります。本委員会では防衛関係の重要な審議をやつておるのでありますから、どうか委員長も防衛法案に直接関係のある問題に議論をしぼつていただきたいと思います。まだやりたい方がたくさんあります。

稻村順三日本社会党(左)

○稻村委員長 田中君もそれと関連してひとつ……。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 私の考えは少し違うので、実は日本の防衛を考える場合には世界の情勢、特にアジアの情勢というものをよく知らなければいかぬので聞いておるのです。辻さんと若干所見を異にしますが、委員長のお話もありますから、できるだけそういうふうに進行いたします。  先ほど日本の平和と安全を実現するために政府の構想を聞いたのでありますが、そのうち緒方副総理は東南アジアの諸国あるいは諸民族との協力、こういうことをおつしやつた。私はこれもけつこうだと思う。緒方副総理は二、三年前みずから東南アジアをずつと歴訪されたようです。しかし私は東南アジアの実情を緒方副総理もこれは実際にごらんになり、またいろいろ人の話もお聞きになつたと思いますが、なかなかこれは容易な話ではないのであります。日本が今日のような対米依存政策を続け、MSA再軍備を実現するというような政治の方向を続けておりますならば、東南アジア諸民族との提携も非常に困難であろうというのが私の結論であります。西山大使がこの間お帰りになりまして、何でもインドでは、アメリカがその国を守つているような日本じやだめだというような声がインドの輿論だというようなお話があつたということであります。さらにまたフイリピンとの賠償交渉が頓挫いたしましたが、この事態の背後にはなかなか重大な事情があると私は思う。ナシヨナリスタ党幹部でマニラの市長をしておりますラクソン氏は、「米国はこのような賠償案を押しつけ、フイリピン人の犠牲において日本の反共基地化を推進しようとしている。」こういうことを言つている。あるいはまたレクト上院議員、ナシヨナリスタ党の外交政策のスポークスマンでありますが、この人は「フイリピンの原料を日本に提供し、またフイリピンが日本商品の市場になるという考え方は、かつての大東亜共栄圏の構想と通ずるものがある。」と言つている。こういうふうにして至るところで日本にとつては非常に思わしくない、おもしろくないような言葉を散見しておりますが、これは要するに日本がアメリカに依存して、逆に言うならアメリカの番頭かあるいは手先になりまして、またずつとアジア、特に東南アジア方面に進出を始めるのではないか、こういう危惧の念が言葉となつて現われている。また最近の新聞では、インドネシアに滞在しております日本の商社の人々が、今まではずつと滞在期間の延長を認められておりましたが、最近はもう全部引揚げなければならぬ。こういうことの背後にもやはりインドネシアの反日感情というか、そういうものがひそんでいると私は思う。こういうわけでありまして、東南アジアの諸国と日本がほんとうに提携するということは、今日の日本の政策をこのまま続ける限りは容易ではない。要するに向うはやはり東亜共栄圏のアメリカ版というようなものをみなここで見てとつている。ところで日本が依存しようとするアメリカ自身が今度は東南アジアで非常な不評判である。インドもインドネシアもビルマもアメリカのMSA援助はみな拒否しております。そして中立政策を堅持しているパキスタンのごときは、最近MSA援助を受けることに決しますというと、国民の反感がたいへん盛り上りまして、東パキスタンにおける過般の総選挙におきましては、政府与党が意外の大敗を喫した、またアメリカのさしがねでクーデターをやりました現在のイラン政権に対しまする国民の反感は大したものである、イランの政情はこんとんとしておる、こういうふうな事情でありますが、そのアメリカと結んでそうして東南アジアに進出しようということでは、どうしても東南アジア諸民族からいろいろ誤解を受ける、あるいは反感を受けることはやむを得ぬことである。こういうことを一体副総理はどうお考えになつておりますか、ひとつ御意見を承りたい。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 東南アジアの問題は、結局長い間ヨーロツパ諸国の覊絆下にあつた民族で、太平洋戦争の途中に闘つて民族の解放、独立を獲得した民族でありますから、まだ東南アジアにおける古い勢力がことごとく後退してしまつたというわけでもない。でありまするが、私が自分で感じたところでは、素朴な民族感情というものは日本に対して決して悪くはないと考えるのであります。しかしいろいろな錯綜した事情もありますだけに、この東南アジアと日本との経済上の関係をよくして行くのには相当の忍耐心と時間を要する。結論といたしましては東南アジアの民族をいかにして繁栄させるか——目の前の利害をまずしばらくおいて、東南アジアの民族を繁栄に導く、それに日本の技術あるいはその他のサービスをどう役立たせるかということをいわゆる民族的な感情に訴えることによりまして、東南アジアの将来というものは決して暗くない、こういう感想を持つております。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 東南アジアの民族運動の一つとして現在のインドシナ戦争のことをお尋ねしたいと思います。インドシナ戦争というものの実態は、あるいは中共なりソ連なりというようなものが内政干渉をやつた結果起つておる事態であると緒方副総理はお考えになるかもしれない。しかし私どもはそうは思わないのでありまして、これはやはりインドシナにおきまして、ヴエトナムの民族がフランス帝国主義の空気からみずからを解放しようとするこの革命的な民族運動が軍事的な様相を帯びたものである、こういうふうに見るのである。それは指導理念は共産主義であろうと何であろうと、とにかくこれが欧米帝国主義からみずからを解放しようとする民族運動であるという点においては、これはアジア全般に共通するものを持つておる。ところが私は、このインドシナ戦争に日本があるいは危険な役割をアメリカによつて仰せつかるのじやないかということを心配しておるものの一人であります。内閣委員会あるいは外務委員会でたびたびこのことは問題になりまして、そうして今までのところは、インドシナ戦争に日本が巻き込まれることはないというような御発言もある。しかしながらアメリカが考えておりますところのインドシナ戦争に対する中国の協力、援助というようなことについて警告を発するというような提案については、場合によつては話に乗ろうか、乗つてもいいのじやないかというような御答弁もあつたようであります。     〔委員長退席、下川委員長代理着   席〕 この際私は、内閣を代表して副総理にはつきり御答弁を願いたい。これは国民が非常に心配しておることである。具体的にお聞きしますが、アメリカからインドシナ問題について何か日本に協力を求めるような申入れがあつたのじやないかと思いますが、あつたかどうか、あつたならどういう申入れがあつたか、ひとつ承りたい。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 そういう申入れはありません。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 それではこのインドシナ戦争、インドシナ問題について、アメリカあたりから日本政府に対して何か情報の連絡というようなものは行われておるのでありましようか。これは外務省のことかもしれませんが、副総理としてはおわかりになつておると思いますからひとつお答え願いたい。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 私の承知する限りにおいてはございません。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 新聞によりますとカンボジアの政府が米、英、タイ及び日本の四国に対し、ホー・チミン軍を撃退するため援助を与えてくれるよう要請したという新聞電報が載つておりますが、こういう事実はなかつたのでしようか。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 私の承知する範囲では、そういう事実はございません。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 それでは今までアメリカから何の申入れもない、情報連絡も聞いていない、カンボジアからの救援の申入れも関知しない、こういうことでありますが、デイエンビエンフーがどうなるかによつてきまるわけですけれども、インドシナ戦争はいよいよ最終段階が来ている。デイエンビエンフーの陥落は目睫の間に迫つているようであります。きようの新聞にアイゼンハウアー大統領が非常に重大な発言をしておる。こういうことが書いてある。少し長いですが、読んでみますと、「インドシナはびんのせんのようなもので、これが失われると、それはアジアの隣接地減数億の人間の運命に影響を与えることになろう。新しくできた日本の民主的政府も東南アジアの事態に密接なつながりを持つ。日本としてはこれらの地域と貿易しなければならないからである。もしこれらの地域が共産主義の手に入るとすれば、どうして日本の民主的政府は存続することができるだろうか。」こういうことを最近米商業会議所において大統領が述べております。そうしていよいよ大決定の時が来たというふうなことを言つておる。これは私は聞き捨てにならぬ演説だと思うのであります。大東亜戦争が始まります場合にも、あの日本軍の仏印進駐ということがアメリカに非常な衝撃を与えたことは明らかな歴史的な事実であります。地図を開いてみますと、インドシナのあの地理的な関係というものは確かに非常に重要だと私は思う。そして今言つたようにデイエンビエンフーの陥落も目捷の間に迫つておる。デイエンビエンフーが落ちますとその心理的影響は非常に重大である。しかもすでにホー・チミン軍の勢力は全インドシナにずつとくまなく行き渡つておるような事情である。フランスが手をあげても何とかしてこれを盛り返したいということを考えるのは、アメリカとしては当然だろうと私は思う。その場合に、またそういう場合にこそひとつ利用したいと思つて援助もし、育成もしております日本の、軍隊と申しません、今日は保安隊、自衛隊でありますが、こういうふうなものを何とか利用することについて申入れが、今日はなくとも明日、あるいは明後日には十分あり得ると思う。こういうことについて、今日なくとも、今後そういう申入れがあつた場合には、政府は一体どういうふうな態度をもつてこれに応対される御所存であるかあらかじめ承つておきたいと思います。

緒方竹虎自由党国務大臣・内閣総理大臣臨時代理

○緒方国務大臣 今お読み上げになつた新聞電報からは、今お話になつたような感じが私としては浮んで参らないのであります。現在アメリカからそういう申入れは全然ありませんし、将来そういうことがありそうにも想像しておりません。国際的のことは始終移りかわつて参りますが、仮定のことには具体的の事実がありませんだけに何とも申し上げられないのであります。

下川儀太郎日本社会党(左)

○下川委員長代理 午前の会議はこの程度にいたし、午後一時半まで休憩いたします。     午後零時三十一分休憩      ————◇—————     午後三時三十一分開議

稻村順三日本社会党(左)

○稻村委員長 休憩前に引続き会議を開きます。質疑を続行いたします。田中稔男君。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 当委員会において戦力問答というものはもうほんとうに耳にたこができるほど私ども聞いておりまするし、長官もお疲れになつただろうと思うのでありますけれども、いささか繰返すようになりますけれども、お尋ねしてみたいと思います。  まず外国の武装侵略に対抗する実力というようなもの、あるいは武装団体というようなもの、こういうものが軍隊であることは国際通念でございまして、長官もたびたびこれはお認めになつたところだと思います。自衛隊は外敵の侵略に対抗することを任務としております。これは相当の実力を持つておりますから、軍隊であることは明らかであります。われわれはそう考えます。しかし国によりまして一流の軍隊もあり、二流、三流の軍隊もある。自衛隊が一流の軍隊とはあえて申さないのでありますが、まあ二流や三流の軍隊ではある。ところが長官は、戦力なき軍隊というようなお言葉もあつたようでありまして、たとい軍隊と言うことができても、自衛隊は戦力は持たないのだ、しからば戦力とは何かというと、これは私長官から教わつたのでありますが、近代戦争を遂行し得る装備と編成を持つた実力だ、こういうことであります。その装備の具体的な内容としては、たとえば原子爆弾であるとかジエツト戦闘機、ジエツト爆撃機というふうなものを含んでいなければならぬ、こういうふうな御説明であります。軍隊であることはすでに長官も認められた。私どもは軍隊たることによつてすでにそれは戦力だ、従つて憲法違反だ、こう考えるのでありますが、長官はうまく逃げるために戦力についてそういう独自の解釈をしておられる、こういう長官の解釈は、長官が主観的におやりになつたものだと思いますが、それはどうですか。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 お答えいたします。常々申し上げます通り、軍隊とは何であるか、引続いて戦力とは何であるかということについては、確たる一定の定義というものはないのであります。御承知の通り、わが憲法においては自衛力は否定されていないのであります。一国独立国家たる以上は、外部からの不当侵略に対してこれを守るだけの権利があります。その権利の関係であります力を持つことは当然の事理であります。安保条約においてもまた国連憲章五十一条においてもこれはひとしく認めるところであります。ただ憲法第九条第二項において戦力を持つことを否定されておるのであります。現段階においてはいわゆる戦力に至らざる程度においての自衛力を持とうというのがわれわれの念願とするところであります。しこうして今御審議を願つております自衛隊法による自衛隊にいたしましても、もちろん外部からの不当侵略に対して対処し得る実力部隊、これを軍隊といい、また軍隊といわなくとも一向さしつかいないのであります。要は戦力に至らない実力部隊、われわれはこう考えておる次第であります。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 自衛隊が戦力に至らない実力であり、戦力に至らない軍隊であるという解釈は、これは長官が主観的にそういうふうにきめておられるのでありますが、そう解釈してよろしゆうございますか。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 これは政府の見解であります。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 政府の主観的な解釈と考えてよろしゆうございますか。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 申すまでもなく、政府はそういうぐあいに解釈しておるのであります。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 今自衛権はあるとおつしやいましたが、私どもといえども、すべての国民にみずからを守る権利が固有の権利としてあることを承認するにはやぶさかでないのでありますが、ただ問題はいかにして国を守るかというその方法、手段であります。吉田首相は憲法制定国会におきまして「正当防衛、国家ノ防衛権ニ依ル戦争ヲ認ムルト云フコトハ、偶々戦争ヲ誘発スル有害ナ考ヘデアルノミナラズ、若シ平和団体ガ、国際団体が樹立サレタ場合ニ於キマシテハ、正当防衛権ヲ認ムルト云フコトソレ自身が有害デアルト思フノデアリマス、」これは衆議院で述べられております。さらにまた吉田首相は第六回国会の衆議院の外務委員会におきまして「日本は戦争を放棄し、軍備を放棄したのであるから、武力によらざる自衛権はある、外交その他の手段でもつて国家を自衛する、守るという権利はむろんあると思います。」こう述べております。こういう吉田首相の言葉は今日私どもが唱えているところとまつたく符節を合しておるのであります。私どもが国を守るにしましても、実力によつて、武力によつてこれを守るというのは下の下であつて、むしろ外交そのよろしきを得て国を守る、こういうことが最上の策である。しかも国際情勢、日本の国力、いろいろな事情から考えて、今日はまさにそういう自衛の手段こそ日本にとつては最も望ましいものである。長官のお考えは私どもの考えとも違いますが、吉田首相がかつて発言されましたところと抵触すると思いますが、御意見をお伺いしたい。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 お答えいたします。私は抵触しないと思います。私どもとしても国際間の親和をぜひとも第一にいたさなければならぬと考えております。好んで紛争を巻き起すことは絶対に避けるところであります。しかしながら日本としては少くともみずからの手によつてみずからを守るだけの体制は一日も早く整えておかなければならぬ。自衛体制を整えるからといつて、決して日本が進んで外国と事を構えるというような考えは毛頭もないのであります。わが国といたしましても、国連憲章の趣旨にのつとつて、国際紛争が起つた場合においては、必ずこれを平和的に解決する、これを宣明しておるのであります。ただただ不当な外部からの武力攻撃に対しては、これを守り得るだけのものをふだんから持たなければ、日本の平和と独立とは保ち得ない、こういう見地から最小限度の自衛力を持とうというのがわれわれの考え方であります。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 一国の平和と安全とを実力によつて、武力によつて守るということを考えました場合に、これは時代と場所とによりましては首肯できるところであります。しかし日本の置かれている地理的な条件、しかもまた今日の兵器の発達の段階というようなことを考えますと、武力で国を守るという場合には、どうしても米ソ両陣営のどちらかに依存しなければならぬということになるのであります。一国防衛というようなことは、観念としてはあり得ますけれども、現実にはあり得ない。これはよく改進党あたりが自衛軍をつくれというようなことを言いますが、私は、大体日本だけで軍隊をつくつて、その軍隊で国を守るということはできないので、政府の防衛政策には反対でありますが、改進党のそういう防衛政策にも反対しておるのであります。とにかくアメリカにあらずんばソ連、ソ連にあらずんばアメリカ、どつちかに依存しなければ国を守り得ない、これがきわめて現実的な事情だと私は思う。現に日本の自衛隊にしましても、これはMSA協定があり、日米安全保障条約がある。それでアメリカとの軍事的な協力のもとに、その軍事的な役目を果す日本の保安隊であり、自衛隊である。外交の手段によつて国を守るというならば、外交というものは本来多面的なものでありまして、これはどこの国とも仲よくしようと思えばできるし、また本来そうなければならぬ。だから親米であり、親ソであつてもいい、親世界であつていいわけです。外交の手段によるならば日本が独自の立場を保ち得るのでありますが、武力によつて国を守るというようなら、どうしてもどちらかの側によらなければならぬ。そうして今日は政府はまさにアメリカに依存しようとしておるのでありますが、日本が軍隊をもつて国を守るという方針をとる限り、アメリカの軍隊が日本から撤退しましても、私はやはり続く事情だと思いますが、長官の御所見を承りたい。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 すべて世界が外交交渉によつて平和を維持し得るものであればまことにけつこうであります。われわれもそれを念願しておるのでありますが、歴史の示すところまつたくさように参りません。従いましてわれわれといたしましては、どこまでも平和を念願する以上、一応外交手段によつて国交を調整して行くことは当然であります。しかし世界の情勢をよく達観いたしますると、不意に外部からの不当侵略がないとは限らない。現段階におきましても、われわれは少くともそういうことに十分に注意いたしてわが国の安全を守らなければならぬ、日本の安全を守るについては、今仰せになりましたように、悲しいかな日本独自ではできかねるのであります。おそらく世界の各国といえども、一国でもつてみずからの国を十分に守り得る国は数が少なかろうと思います。日本もその例に漏れない、やむを得ずアメリカとの間に日米安全保障条約を結びまして、相協力して日本の防衛を全うし、ひいてはアジアの防衛を完全にして、そうして世界の平和に寄与するということがわれわれの念願し、また安保条約が締結されたゆえんであります。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 その国際情勢についての判断でありますが、なるほど日米安全保障条約にも「無責任な軍国主義がまだ世界から駆逐されていないので」云々ということがあります。長官の今のお言葉にも、日本の周辺に侵略の危険が非常にある、こういうようにおつしやる。それがほんとうに正しい判断でありますならば、私ども社会党左派に属する議員も苦しい財布の中から無理してでも税金をよけい納めてもらつて再軍備をしなければならぬ、自衛隊をむしろもつと強化しなければならぬと思う。しかし私どもは国際情勢の判断において、遺憾ながら長官と見解を異にする。むしろそういう侵略の危険というものはない。少くとも遠のいておる、こう思う。長官は外務大臣ではないけれども、しかし一国の防衛政策を立てる以上は、やはりこれは相手あつてのことでありますから、国際情勢、特にアジア極東の情勢について一定の判断を前提とすると思いますので、もう少し詳細に御見解を承りたいと思います。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 私はここで具体的に申すことをはばかりますが、少くとも日本周辺における軍備配置その他を検討いたしますると、日本でもやはり相当の注意は要することとわれわれは考えておる次第であります。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 それでは今度は私の方から具体的にお尋ねいたします。ソ連の軍隊が今日本に侵略することを考えておりましようか、そうしてまたそういう何か構えをしておるでありましようか。駐留軍の方からいろいろ極東の軍事情勢などについて保安庁の最高幹部はお聞きになつておるようでありますから、ここは国会であります。国民代表の最高の府であります。もし要すれば秘密会でも開いてお聞かせ願いたい。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 われわれも的確なる資料は持つておりません。しかしながら沿海州、サガレン、千島あたりに相当数の軍備配置はあるものと了承しておるのであります。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 どうもそれでは非常に不満足であります。この間北海道の方面で保安隊がいろいろ演習をやつておつたようでありますが、それには一定の想定があるのだろうと存じます。そうしてその想定に含まれている千島あるいはあの付近の地域におけるソ連軍の配置というものが、やはり前提になつておると思うのであります。どうもそれ以上はお聞かせ願えないようでありまするから、さらに中国の軍隊、人民解放軍と言つておりますが、この中国の軍隊が日本に侵略をして来るというような何か徴候でもありましたら、お聞かせを願いたいと思います。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 中国についての兵数とかその他のことについては、むしろ公にされておりまするから御承知であろうと思いまするが、中国が、御承知の通り、今日本に対して事を構えようというような形勢は私の判断ではないと考えております。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 きわめて具体的にお聞きしますが、朝鮮戦争において南北の衝突があつたわけでありますが、アメリカ軍を中心とする国連軍が南鮮の方を助け、中華人民共和国の人民解放軍が義勇軍として北鮮を助け、遂に国際的な衝突になつた。この場合にまず南鮮、北鮮のあの軍事的な衝突、これは一体北鮮の侵略行動みたいにいわれておりますが、長官はそういうふうにごらんになりますか、それともむしろ私どもが考えておりますように、これは朝鮮民族自体の問題であり、いわば朝鮮における南北戦争みたいなもので、実力によつて統一を実現しようとする朝鮮民族の国内問題である、こういうふうに理解すべきであるか。これは朝鮮戦争がやがて日本における侵略の何か前ぶれであるというふうに宣伝されておる向きもありますからひとつお尋ねをしたい。どうお考えになつておりますか。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 少くとも朝鮮においては北鮮が武力をもつて南鮮を制圧しようという意図があつたものと私は見てよかろうと思います。しこうしていわゆる三十八度線でもつて互いにその境界を協定したのでありますが、アメリカ駐留軍を引揚げると同時に北鮮がそれを突破して来た、ここに端を発しておるとわれわれは見ておるのであります。しこうしていわゆる中国の義勇軍が何がゆえにこれに参加して来たか、中国の意図するところはわれわれがこれを批判する限りではないと思いますが、われわれはすみやかにかような事態の終息せんことを心から念願しておるものであります。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 さつき南北戦争の事例を引きましたが、アメリカに限らず、日本だつて明治維新の際鳥羽伏見の戦があり、いろいろな軍事行動が国内に行われた。これは日本民族の統一のための一種の実力行動だと思うのです。朝鮮におきまして南北にわかれて——これは朝鮮民族としては何とか解決しなければならない不幸な事態であります。まあ南から手を出したか北から手を出したか知らぬが、とにかくほつておけば私はおのずから解決するものではないかと思う。朝鮮の事態を非常に複雑にし深刻にしたのは、むしろ私はアメリカ軍の介入それであろうと思うのであります。時間的な順序から申しましてもアメリカ軍の介入があり、マツカーサー元帥が三十八度線を越えて北進を続け、北京の周恩来外相がマツカーサー元帥に対しましてたびたび警告を発しておる。元帥の軍隊が北進を続け、鴨緑江の岸辺まで作戦を展開するにおいては、朝鮮の隣国である中華人民共和国の政府の責任者として黙つておるわけに行かぬ、こういうことをたびたび警告しましたが、その警告が聞かれなかつたので、人民解放軍が義勇軍という名前で入つて来たわけでありますが、まあそれについていろいろ真意を臆測するということは自由でありますけれども、少くとも表面から見ますと、大体そういうふうになつておるわけであります。私は北鮮の軍事行動を侵略というのもおかしいが、中華人民共和国の軍隊が朝鮮戦争に介入したことをもつて侵略であると考えるのもおかしいのじやないか、いわんや朝鮮を席巻した後はただちに対馬海峡を渡つて九州の北岸に殺到するであろうというようなことを考えるならば、これは私は一種の被害妄想だと思いますが、しかし自衛隊の必要を国民に説かれる場合には、やはりそういうふうな、御説明が行われておるのであります。これは大衆に対する非常な影響があることでありますから、長官はどうお考えになつていますか、もう一度お尋ねしておきたい。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 自衛隊の創設に関して、今あなたの仰せになつておるようなことは決して宣伝的に利用しておりません。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 それから、さつきの戦力問答の続きみたいなことになりますが、かりに長官のお言葉に従つて、日本の自衛隊が軍隊であつても戦力のない軍隊であると、こういうことを承認したといたしましても、日米安保条約のあの行政協定二十四条において、非常時における共同防衛をうたつておるし、MSA協定第八条には、国際緊張の原因を除去するために相互間で合意することがある措置をとるというようなこともここでうたつておるわけでありますから、駐留軍と日本の自衛隊との共同行動、共同作戦というようなことが行われる可能性は十分あるわけであります。その場合に、一体となつて行動します場合、アメリカの駐留軍が戦力であることはもちろん間違いないのでありますが、たとい戦力のない日本の軍隊であつても、駐留軍と一緒になつて作戦する限り、やはり戦力の一部を構成するということは言えると思いますが、どうでしよう。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 アメリカの駐留軍と日本の将来できる自衛隊とが行動をともにする場合、このときにはそれが戦力にならぬかという問題——そのときの場合によりましようが、アメリカの駐留しておりまする地上軍あるいは航空部隊、海上部隊、それに日本の自衛隊が一丸となつてこれを見まするときには、私はこれは戦力になるものと考えております。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 それではつきりしました。それから現在保安隊が持つておりますところの兵器の種類——大体私ども知つておりますが、それはなるほどアメリカ軍のお古をいただいておるというので、それほどりつぱな装備とも言えませんが、しかし聞くところによりますと、火力のごときは戦前の日本陸軍に数倍するものだ、こういうことであります。ところが今度MSA協定がいよいよできますと、アメリカに贈与といいますか、供与を申し込まれる予定になつておる兵器の種類を見ますと、ずいぶんいろいろりつぱなものがありますが、ジエツト戦闘機も入つておるようであります。そうなりますと先ほどのジエツト戦闘機や原子兵器を持つたものは戦力だという御解釈に従うと、だんだん日本の自衛隊も戦力ある軍隊になるわけでありますが、この自衛隊の実力を増強するということについては何も限度はない。これを制限するものは別にないし、また長官といえども一国で自主的に防衛したいという御念願のようでありますから、これは無限に強化して行くというお考えだとすれば、将来ジエツト戦闘機、ジエツト爆撃機さらにいろいろな種類の原子兵器というようなものをアメリカに求める、あるいはまた自前で調達するというふうなことで、だんだん実力を増強して行くという御方針であると承つていいと思いますが、どうですか。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 申すまでもなく日本の自衛力を増加するについてはいろいろの制約があります。まず人員の点から申し上げれば、徴兵制度をしかない限りにおいては、そこにおのずから限界があります。徴兵制度をしく上にはむろん憲法改正を要するのでありますから、現状においてはさようなことはできかねるのであります。またジエツト戦闘機あるいはジエツト爆撃機というお話が出ましたが、これとてもなかなか持つことは容易ではありません。日本の財政力からしましても、さようなものはたくさん持ち得る余地はないのであります。従いまして現段階においてはさようなものは当分の間は見込みがない。ぜひともアメリカの駐留軍とともに携えて、日本の防衛を期するよりいたしかたがないと考えております。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 それは客観的な事情がいろいろ制約しておりますけれども、長官が日本の今日の国防についての責任者として、できるならば独自で強力な戦力を持つた軍隊をつくりたいという御意向であることは間違いないですね。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 さようなことを考えても、私は実現性のないものは何にもならないと考ております。ただ単純な希望にとどまるのみであります。もちろん独立国家たる以上は日本を独力で守り得るだけの力は持ちたいということは、これは日本国民全部が考えるところであろうと私は考えます。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 長官は非常にりつぱな精神家と承つておるのでありますが、やはり大臣となるためにははつきりと志を持たなければならないと思います。今できなくともやろうという志だけははつきりしていただきたい。その志のほどをお聞きしたのでありますが、今の御答弁では不満足であります。日本の国内における徴兵制度の問題とか国力、具体的には財政力とか工業力とか、いろいろな客観的な事情が今ただちに強力な戦力を持つた軍隊をつくるには足りないという御説明であつた。従つて駐留軍に依存し、駐留軍と協力しなければ日本の防衛はでき得ない、こういうお話だつたと思いますが、私がここでちよつと考えますことは、アメリカは日本が独自に一流の軍隊を持つことには反対だろうと思う。アメリカは日本が三流の軍隊を持つことならもちろんこれを許す、二流の軍隊を持つことまではこれを許す、しかし一流の軍隊——一流の軍隊といえばアメリカとでも対抗できる軍隊、これを持つことには、かりにそれができても反対だ、日本がつくるといつたら、これに反対するだろうと思います。というのは、安保条約や何かにも、すでにやはりそういう表現は見えるのでありまして、安保条約の前文に「アメリカ合衆国は、日本国が、攻撃的な脅威どなり又は国際連合憲章の目的及び原則に従つて平和と安全を増進すること以外に用いられうびき軍備をもつことを常に避けつつ、」こういう言葉がある。もちろんこれの意味するところは日本がアジアにおいて脅威する軍国として復活することを否定した規定だろうと思います。しかしながら他方においてアメリカが——これは私午前中緒方副総理に対する質問でも言いましたが、アジアの新しい帝国主義的な支配者として今日登場しておることは隠れもない事実であります。イランにおいて、パキスタンにおいて、イギリスの地位にかわり、インドシナにおいては最近フランスの地位にかわつて、そうして新しい植民地的支配者となろうとしておる。これはアメリカという国柄からして当然のことでありまして、アメリカは軍需恐慌の前夜にあつておののいておる状態であります。その厖大なる生産力、特に軍需工業の生産力、それを一体どこにはけ口を求めるか、この場合にアジアというものは非常に大きな市場であります。一般にその商品の市場として必要なだけでなく、特に兵器を処分する市場として最も望ましいところである。朝鮮戦争はある意味ではアメリカの軍需工業の生産力にはけ品を与えた場所である。インドシナ戦争だつてあるいはそういう意味においてアメリカはこれを利用しようと考えておるかもしれない。そればかりではありません。先ほど申しました一般商品の市場として、あるいは工業の原料、材料を獲得する地域として、アジアというものはアメリカにとつて非常に有力なものなのであります。アジアにおいて反共的な集団防衛体制をつくろう、インドシナ戦争に関連してSEATOをつくる、やがてそれが発展いたしまして、PATOになろうとしておる。こういう場合の防衛体制のかなめをなすものはやはり日本である。これはどうしてもやはりしつかり握つておきたい。握つておきたいけれども日本がアメリカの番頭として、手代として働いておる間は、これはアメリカは少しも文句は言わない。大いに援助もしましようけれども、もし日本が再びアジアにおける雄国として復活する、あるいは東南アジアに対して帝国主義的な支配権を打立てるということになり、そしてその力を頼んで今度はアメリカに立ち向うということになりますと、これはアメリカとしてはたいへんなことです。そういう日本が帝国主義の道において復活する可能性は実は非常に制限されている。アジアにおける革命的な民族運動というものは、もうたいへんなものでありまして、今日本がフイリピンの賠償問題、あるいはインドネシアの賠償問題などをちよつとやつてみましても、なかなか簡単には解決しないことは、もうすでに日々の新聞に明らかでありますから、なかなかそうは行きませんけれども、アメリカとしては万一の事態をおもんばからなければならぬので、日米安保条約の前文なんかにあるこの言葉の裏の裏には、私はやはりアメリカのそういう気持も包蔵されておるのではないかと思う。だから私は日本が、そうして日本の防衛政策の責任者である木村保安庁長官がどんなに一流の軍隊をつくろうとお考えになり、また日本の国力が許すようになりましても、今度はアメリカがこれを押えるのではないか、いつまでたつても日本の軍隊は二流の軍隊までしか行き得ないのではないか。もちろん私は今日一流の軍隊をつくれなんて言つておりません。言つておりませんが、防衛政策を進めて行きましても結局そこに限度があるのではないか、今日の日米の国際関係というものを考えましてこう思うのでありますが、その辺についてひとつ長官の御所見を伺いたい。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 お答えいたします。私は田中委員とアメリカ観を異にしておるのであります。アメリカがさような帝国主義の野望を持つておるとは私は認めておりません。アメリカが日本と安保条約を締結いたしたのも、まさに私は極東の平和、ひいては世界の平和を念願するの挙に出たものと考えておるのであります。アメリカが多大の国費を使つて西欧諸国並びに日本に対して援助しようとする気持も私はそこにあろうと考えておるのであります。ただアメリカといたしましては共産主義陣営の世界制覇を食いとめたい、共産主義陣営が世界を支配すると、人類の自由というものはまつたく奪われるのである、ぜひともこの共産主義国家の世界制覇を食いとめたいという一念から出ておるものと私は考えております。その点についてわれわれもアメリカと協力をして行こうという考え方を持つておるのであります。今いろいろ仰せになりましたが、日本が何もすき好んで強力な軍備を持つことを欲するということは決してないのであります。われわれの念願するところはただただ日本の国が外部から不当な侵略を受ければ日本の安全が害される、ひいては日本国民の自由と平和が乱されるのである、それを防ごう、その防ぐ手段として最小限度の防備力を持とう、われわれはこの念願にほかならないのでありまして、今仰せになりましたような安保条約の前文における、外国に対して攻撃的脅威となるような軍備を持とうという気持は、われわれは毛頭もないわけであります。従いまして今仰せになつたような一流の軍備力を持つというようなことは考えていないのであります。ただ外部からの不当なる侵略に対して日本を防衛するだけの実力を持つていたい、こう考えてやつておるのであります。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 確かに長官と私のアメリカ観は違う。午前中も緒方副総理と質問応答いたしましたが、やはりそれは違うのであります。しかしこれは緒方副総理にも言つたのですが、緒方副総理もその一人である戦前、戦時の日本の指導者の人々はわれわれに対してアメリカの脅威というものを盛んに説かれたのです。アメリカによつて日本はもう包囲されているのだ、それでどうしても包囲網を脱しなければならぬというので戦争を始めたわけなんです。大衆的な宣伝の標語としては米英鬼畜というような言葉も使われたのであります。そのアメリカが今日帝国主義政策というものを放棄しているかというと、放棄しているどころではなくて、今日はむしろさらにこれを強化しているわけなんです。これはアメリカの個々の指導者の主観的な意図といつたものに別にかかわるのでないのでありまして、アメリカの今日の社会体制、最高度に発達したところの資本主義の経済体制というものから来る必然的な傾向なんでありますから、アイゼンハウアーがどうだとか、トルーマンがどうだとかいうわけではないのでありますけれども、これはもうだれもが明らかに認めている事実なんです。今長官はアメリカはまつたく世界の平和と安全の守護神みたいにおつしやいます。もちろん米英鬼畜というような考えは私は間違いだと思う。ことにまたアメリカの政府の政策とアメリカの国民というものは、私は厳密に区別して考えたいと思う。しかしながらアメリカの政府の政策が無害なものであり、日本にとつて恩恵的なものであり、好ましいものである、こう考えると私は少し甘いのではないかと思う。アメリカはちやんと腹に一物があつて日本に対して軍事援助もやろうとしているし、また今までいろいろな救援物資も送つてくれたわけでありまして、そこを手放しでアメリカを信頼するということは、私はやはり国をあずかる大臣の見解としては少し甘いのではないかと思う。それでいろいろなことが出て来るわけでありまして、アメリカの中には極端な人は反共十字軍を結成してソ連や中国に対しまして予防戦争をやろうというようなことを説く人さえある。もちろんこれが今日の政府の主流の考えではないと思いますけれども、しかしそういうことを極論する人もある。ソ連、中国が強くならぬうちにやつつけよう、ソ連、中国に侵略の意図のあるなしにおかまいなくこれをやつつける、こういう極端な議論が公然と行われている。アイゼンハウアー大統領がいわゆるロールバツク・ポリシー、巻返し政策というものを唱えておりますが、それにはすでにそういうにおいがある。アイゼンハウアーのロールバツク・ポリシー、トルーマンのコンテイソメント・ポリシーでありましたか、封じ込め政策、この二つの政策が本質的に違うかといえば必ずしもそうではない。トルーマンの封じ込め政策にしましてもやはり米ソというものは共存できない、敵対的な関係に置かれている宿命というふうなものを感じて立てた政策でありますが、こういうふうなアメリカの方の出方に対しまして、ソ連はどうこたえているかといいますと、ソ連や中国の意図について臆測することはそれぞれの自由でありますけれども、表面に現われたところは平和政策一本やりで来ている。これを平和攻勢であると新聞紙あたりは取上げておりますが、向うの言葉では攻勢というような物騒な言葉は使わなくて、平和政策と言つている。スターリンの時代にしてもマレンコフの時代にしても、対米予防戦争なんということを唱えた政治家はソ連にはいない。公然とこういうことを公開の席上や新聞雑誌で唱えた人々はソ連の政治家にはいない。中国の政治家はもちろんそういう物騒なことを唱えた人は、私は寡聞でありますけれども一人もない。実際のところソ連や中国の侵略の危険というものはいろいろ言われるけれども、どうもそれらしいものはちつとも確証が上つていない。朝鮮の戦争はどうかという人もありますけれども、これとても私の見るところでは、さつき申しましたように、これは北鮮に関する限りは一種の内乱であり、それから中華人民共和国の軍隊に関しては、かつての満州、今日の中国の東北を守るところの一つの自衛行動だといえないことはない、こういうわけでありますから冷静に考えて、私ども何もソ連や中国の味方をして、反米的な立場を故意にとろうとしておるものでは毛頭ないのでありまして、私どもはソ連、中国ともやはり国交調整をしたいが、アメリカとけんかをしようとは思わない、むしろアメリカの政策は別だが、アメリカの国民とは真の友好関係を確立したいとこそ思うのでありますけれども、とにかく冷静に見ましてもソ連や中国の侵略の危険ということは私は誇大に宣伝されている、あるいは誇大どころかどうも故意に宣伝されておるのではないか、何か長官はこれについてもう少し具体的な確証があるならば、中ソ両国の侵略の危険について御説明願いたいと思います。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 御承知の通りアメリカという国は非常に自由な国でありまして、ことに言論が自由でありますからいろいろな議論が公表されるのであります。仰せになつたような議論も出ておることは承知いたしております。これはまつたくアメリカのお国柄と申してよかろうかと思います。これに反してソビエト、中国はまつたく言論は統制されておるのであります。そういうような議論が出ようものならただちに相当な措置をされることは明白であります。国民もある程度言いたいことが言えない事情にあるということは、田中委員もとつくに御承知のことと存じます。ここに私は両国の非常なる差異がある、どちらがいい悪いは申しません。比較できませんが、片一方は言論はまつたく自由の国、片一方は言論は抑制されている国、この国柄を比較してはとうてい私は話にならぬと考えております。そこで中国、ソ連がただちに日本に対して侵略的脅威となるような行動があるか、こういうことになりますと、われわれは今ただちにさようなことは考えていないだろうと思つております。しかし周辺のいろいろの事情から考えてみますと、われわれといたしましては、国の安全を守るために最小限度の自衛力を持たなくてはならぬということ終始頭に入れて考えなければならぬ、こういう観点から自衛隊を創設いたしたい、こう考えておるのであります。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 それでこの自衛権の問題でありますが、先ほども私は自衛権そのものは認めると申しましたが、今度は自衛権を武力によつて行使する場合、その範囲の問題が先般来の委員会でたびたび主題になつたのであります。飛鳥田委員など非常に急所をついて長官を困らしたようでありまして、この自衛権につきましては、第十三国会の参議院本会議において大橋国務大臣がこういうふうなことを言つております。「その自衛権の行使として許されまする活動の範囲といたしましては、若し急迫不正の侵害を排除するために必要があれば外国の領土においてその国が実力を行使することも認められている。これが国際公法の通説でございまするが、」こういつておりますが、これは大橋君は法律の方は秀才でありますから、まあその通りだろうと思う。それからまた佐藤法制局長も、ついこの間でしたか、「その攻撃をとめるのにどうしても必要やむを得ない手段としてその根元をとめるという実力使用は、厳格な自衛権の範囲の中に入るものと考えなければならないというふうに考えます。」これは今度の国会の衆議院外務委員会での答弁でありますが、こういうのはみな同じような考え方、そこで自衛権を発動して参りますと非常にそこに微妙な問題が出て来る、たとえば根室の対岸、千島の方からかりに万一ソ連軍の砲撃を受ける、そうしますとそれをたたく、それは自衛権の行使でありましようけれども、いくらたたいてみてもなかなかこれが鎮圧できないということになりますと、ソ連が砲撃をしておりますところのさらに背後の基地をたたかなければならない、だんだんそれを追つて参りますとソ連のずつと奥地まで、これは自衛権の行使として論理的には私は少しもさしつかえないのじやないかと思うのです。その上にまた攻撃は最良の防禦なりという言葉もある、だからますますそこに微妙な関係になつて来る、しかもソ連とアメリカとの間に介在している日本がもしここに国際紛争に巻き込まれ、戦争の渦中に巻き込まれるという場合におきましては、この戦争の性格はイデオロギー戦争というような性格を持つておりますために、さつきも申しましたように予防戦争というような考えも当然に起り得るわけです。それで日本のとりますところの自衛方法が侵略行動と区別されることは、私は非常に困難になつて来ると思うのです。これは千島の場合だけじやありません、あるいは東支那海、日本海どこでも起り得ることであります、ことに最近の兵器の発達からしますと問題はさらに複雑になる、こういうことにつきまして自衛権の行使の範囲についての国際法上の解釈、これについての御所見と、またそういうふうに自衛の行使の範囲がどんどん広がつて行つて、今日のイデオロギー戦争的な性格を持つた戦争がもし起つて日本が巻き込まれた場合には、自衛と侵略の区別は不可能だということについて御意見をひとつ。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 お答えいたしますが、予防戦争は自衛権の範囲内には属しておりません。自衛権はどこまでもみずからの国を守るためであります。そこに一定の限度がある。直接不当の侵害に対してこれを阻止する、しかもそれよりほかに方法のないという場合に初めて行動するのでありまするから、普通の侵略戦争あるいは今お話になりました予防戦争とは、その本質を異にしておるといわなければならぬと思います。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 現在インドシナ戦争が非常に危険な段階に入つております。それできようの朝日新聞あたりで見ましてもアイゼンハウアー大統領が大決定のときが来たというようなことを言つておる、もしインドシナ戦争においてホー・チミン軍が勝利を占めるというようなことになるならば、東南アジア全体が共産主義の脅威のもとにさらされる、そうしてその結果は、この地方と貿易をしなければ経済自立のできない日本が非常に困つて、現在できておる日本の民主的政府——これは吉田内閣のことを言つているのだろうと思うのですが、その日本の民主的政府、決して民主的でない民主的政府が非常に今度立場上困るであろう、こうこういうことをアイゼンハウアー大統領が御心配になつているのでありますが、この間からこれも委員会でたびたび問題になりましたダレス国務長官が中国に対して警告をする、ホー・チミン軍に対する軍事援助をやめろということを警告をする、こういうことを提唱いたしまして——これはおじやんになりましたが、何でも米、英、仏、それからあそこのインドシナ三国とかいろいろなものを加えまして十箇国からなる東南アジア防衛体制をつくろうというようなことを提案しておりまして、これには大体英、仏も同意したようである。そういうふうな場合日本がやはりその体制に参加を求められる、あるいは正式に参加しなくとも、何らかの形において協力を求められるという可能性はあると私は思うのでありますが、こういうことにつきましてはどうお考えになりますか。あるいは協力をすでに求められておるかもしれぬ。緒方副総理はそういうことはないとおつしやるけれども、これはあつてもないと言わなければならない副総理の立場だと思いますから、副総理の言葉をにわかに信ずるわけに行かぬが、今までないにしても、今後そういうふうなことが起つた場合どうなさるか、自衛隊を握つておられる長官としては、これは事きわめて重大な問題だと思いますから、この間も御答弁があつたようにも聞いておりますが、もう一度お尋ねいたしたいと思います。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 お答えいたします。東南アジアが赤化されると日本に大きな影響を及ぼすであろうということは、これは当然のことであろうと思います。しこうして太平洋同盟とか申しましようか、そういう内容についてはわれわれごうも存知していないのであります。またそういう機構をつくるについて、日本の参加を求めて来たということは現在までのところ絶対にありません。さような場合にどうするかということになりますが、私が保安庁長官としてはつきり申し上げることは、自衛隊はさようなふうには——言葉の裏にお伏せになつておるようでありますが、派兵の問題だと思います。さようなことは絶対にあり得べからざることと考えております。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 別に派兵というようなあらたまつたものでなくとも、たとえば航空関係の技術員——日本じやそういう人はよけいいないでしようけれども、何か軍事上の技術員というようなものを派遣するというふうなことだつて私はあり得ると思う。これは余談ですが、何か新聞を見ておると、フランスからパラシユートの発注が来たとかいうことですが、これはやはりあそこで使うからでしよう。これは別に軍隊のことではありませんが、そういうふうないろいろ物質上、日本にも域外調達みたいなものが特に最近来ているのじやないかと思います。とにかく何らかの形で日本の人力なりあるいは工業力をこの際利用したいというのは、アメリカには十分あると私は思う。アメリカがフランスに肩がわりをしてインドシナ戦争に乗り出す以上は、必ずあると思う。ある意味ではインドシナ戦争における補給基地としてフイリピンとともに、あるいはもうフイリピンにかわつて日本を利用するということは私はあり得ると思う。だから別に派兵ということでなく、長官所管の事項でそういうふうなことが何らか起らないとも言えぬと思いますが、そういう場合にも一切関与はしないという御方針であるかどうか、念のためにひとつ伺つておきたい。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 ただいまのお話の点では、私の所管事項のうちにおいて関与するということはちよつと想像はつきません。しかしそういう場合において日本がどういう形で参加するか、また参加していいかどうかということは、具体的の問題が発生した場合において、大きな日本全体の見地からこれは考慮すべきものであろうと考えております。

江藤夏雄自由党

○江藤委員 関連。ただいま田中委員から、アイゼンハウアーなりあるいはダレス長官の言葉を引いていろいろ御質問があつたのでありますが、そのう号にホー・チミン軍に対する中共軍の援助云々というお言葉がございました。保安庁としてはいろいろそういう軍事上の情報というふうなものもある程度キヤツチしておいでになるだろうと思いますが、はたしてホー・チミン軍に対して中共軍から何らかの軍事的援助をやつておるものであるかどうか。その点どういうふうに御観察になつておるか、ちよつとお伺いしておきます。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 はつきりした情報は、つかむことはまだしておりません。しかし推定は、あるのじやないかということは言われるわけであります。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 ちよつと話がかわりますが、日米安保条約の第一条によりますと、駐留軍の任務は、第一には日本を直接侵略から守るということでありますけれども、それと並んでこういうことが書いてある。「一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起された日本国における大規模の内乱及び騒じようを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、」こういうことがある。ところが今度保安隊が自衛隊になる。そうして保安隊は間接侵略に当る役目を持つておつたのでありますが、自衛隊は直接侵略に対抗することを主たる任務とする。これほどの重大な役目を持つておつた実力部隊、しかも相手は仮想敵国としてソ連や中国が想定される。そういうものの侵略でも撃退できるような実力を持つた自衛隊であれば、国内の内乱や騒擾のごときはもちろん独力をもつてこれは処理できなければならぬわけであります。ところが自衛隊ができましても、なお日米安保条約の第一条が改正されずにそのまま残つておるとしますとどうもおかしいことになる。私はもちろん自衛隊の設置にも反対でありますけれども、しかしながら莫大な国努を費してせつかくつくり上げた自衛隊が、国内のそういう内乱や騒擾の処理にも外国の助力を仰がなければならぬというようなことでは、はなはだもつて納税者としてはたよりないことでありますから、この点につきましては安保条約のこの条文のこの項をやはり削除するというような改正を行つてしかるべきだと思いますが、これもたびたび開かれたようでありますけれども、あらためてまたお尋ねしておきたいと思います。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 お説の通り国内における大騒擾、大反乱、これはもちろん外部からの教唆または扇動によつて起る場合がありますが、かような場合におきましても外国の軍隊によることは、好ましくはないと私は考えております。もちろん日本の自衛隊でもつてこれを処理することは当然な事理であり、また最も好ましい。さらにかような場合に日本の自衛隊を出すことすらほんとうは私は好ましくないと思います。できるだけ日本の警察力でやりたいと考えております。しかしこれはその規模、範囲その他について予測ができないのでありますから、万々一外国のいわゆる解放軍とかいうようなものがたまたま日本の反乱軍と相呼応して、日本の全国土を大騒擾に陥らせしめるような不幸な場合におきましては、何としてもあらゆる方法をもつて鎮圧しなくてはならぬ。さような場合でも私は日本の力だけでやりたい、こう考えております。しかしこの条文があつたからといつて決して不都合ではない、万一の場合を想定いたしますと、あつてもかまわない、こう私は考えておるのであります。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 ソ連におきましては、レーニンの時代から、革命は輸出できるものでないということをよく述べておる。スターリンもたびたび述べて、アメリカの労働者の代表がスターリンをたずねましたときにも、たしかこういうような言葉を言つておつたようであります。しかもこれはずつと歴史的な事実に合つておると思う。また実際日本で外国の解放軍を受入れて、それで日本の改革とか革命をやろうというようなものがあれば、とうていまず成功しないと思う。これは大体日本民族の矜恃をそこなうゆえんでありまして、どこの国だつて、自分の国の改革は自分でやる、自前でやるというのが民族の誇りであります。かりにそういうことを無視して外国の力でどうしようというなら、それは決して国民の支持を得ないと思う。今おつしやるように、何か解放軍が入つて来る、そうして行動を起す、あるいはまた緒方副総理はたしか内政干渉と言われましたが、そういうふうな何か危惧の念が政府の要路の方には非常にあるのではないか。しかしながら、私はそういうことをかりに企図しても、それは成功しない、国民の信頼を得ない、国民の信頼のないところに成功はない、こう思う。むしろ私は逆に考えるのでありまして、内乱が起り騒擾が起るのはなぜか。これは要するに政治がよろしきを得ないからである。国民の生活が安定しておりまして、自由な言論も許されておるという社会におきましては、そんなものが起る気づかいはない、そういもうのがないから、そこに内乱とか騒擾が起るわけです。だから問題はやはり日本の政治をよくすることである。どうも吉田内閣の政治ではそれがうまく行きませんので、従つて今度騒擾におびえ、内乱におびえる。そうすると被害妄想になりまして、もうだれを見ても侵略しそうに見えて、ソ連を見ると、ソ連が今にもやつて来る、中国を見ると、中国が今にも攻めて来る、こういうような被害妄想に陥るわけです。大体日本の防衛政策は被害妄想の上に立つておると思うのでありますが、そういうふうなことで、ここで自衛隊をつくりましても、とてもりつぱな自衛隊はできぬと私は思う。一体軍隊をつくるのには、なるほど金も必要でありましようし、それから頭数もそろえなければならぬ、いろいろありましようけれども、やはり一番大事なものは軍隊の精神であります。木村保安庁長官も、その点では私にまつたく同意を表明されるだろうと思うのであります。軍隊をつくりまして、その軍隊に魂がないなら、これはまつたくかかしであります。戦力なき軍隊はあり得ても、魂なき軍隊はあり得ない。その魂は結局愛国心、今日の日本の青年に一体愛国心があるかと言いますと、愛国心を持とうにも持ち得ないような今日の日本の社会の実情なんです。このことにつきましては、ほんとうに国民の愛国心を盛り上げるというためにどういうことをしたらいいか、御所見を承りたい。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 結局愛国心は、三千年来われわれお互いに血を同じゆうする者が住んでいる国、この墳墓の土地を守ろうというのが愛国心。よりよい、住みよい日本をつくつて行こう、これに根本があると私は私えております。政治が悪ければ、青年がこの政治をよくして、りつぱな、平和な、愛するに足る国をつくつて行こうじやないか、この精神を盛り上らせることが一番大事であろうと私は考えております。今日本の青年は愛国心が足りない、こう仰せになりました。私は決して全国の日本国民の愛国心が足りないわけじやないと考えている。われわれが接する青年の大多数は、われわれの力によつてりつぱな、愛するに足る日本をつくろうじやないかという気魂と精神に盛り上りつつあると考えております。今の保安隊員にいたしましても、われわれの手によつてりつぱな日本をつくつて行こう、そうしてわれわれの手によつて日本の国民を守つて行こう、この精神はきわめて盛り上りつつあることを私は申し上げておきたいと思います。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 愛国心は単に説教によつて、精神訓話によつてこれは培養できるものでない。それで軍隊といいましても、いろいろな軍隊がある。歴史上、また国によつていろいろな軍隊がありますが、たとえばあのフランスのナポレオンの軍隊を考えましても、あれが強かつたのはなぜかと言いますと、これはフランス革命の軍隊であつたためである。まだ若かつた革命将軍ナポレオンは、フランス国民軍によつて支持されて、そうして百戦百勝した。そのフンス国民軍の実体は何かと言うと、フランス革命によりまして土地と自由とを与えられたフランスの農民が、自分らの革命の成果を守り、それからフランス革命の火の手を消そうとしてあるいはプロシヤ、あるいはオーストリア、あるいはその他の諸国の反動勢力がフランス国内に介入を始めたとき、その外部勢力から祖国を守るために、ラ・マルセーユズを高唱しながら国境に向つて進んで行つた。そういう軍隊であつたから強かつた。ちようど似たのが今日の中国人民解放軍だと思うのであります。昨年私ども参りまして、そういうことについていろいろ見たり聞いたりしたのでありますが、今日中国において人民解放軍が五百万くらいおりますが、この軍隊は、これは徴兵制度によるんじやない、志願制度によつてできている軍隊である。しかも志願者が非常に多くて、毛沢東はそれを断るのに困つておる。選に漏れた青年に対しましては、諸君、今度の人民解放軍の募集には選に漏れたけれども、しかしながら諸君が働こうと思えば、今日中国はあらゆる方面に国家の大建設をやつているから、諸君は至るところに志を伸ばす職はあるのだ、落胆するなと言つて「毛沢東が選に漏れた青年を慰めているというような状態である。しかもその青年はみな中国の労働者、農民の子弟でありますが、特に貧農の子弟が多い。それはそのはずでありまして、今日中国の人口の八割まで農民である。しかも農民の中でも、あの土地改革によつて土地と自由と権利を得たところの貧農というものは非常に多いわけでありまして、そういうものの子弟は、この新しい中国になつてこそ、われわれは人間的な生活を営むことができるようになつた、自由も与えられた、権利も与えられた。もしこの中華人民共和国の働く人々の平和な生活を脅かすものがあるならば、中華人民共和国の国家建設を妨げるものである。鴨緑江においても、あるいは雲南の国境においても、あるいはチベツトの国境においても敢然としてこの国を守るという、この人民解放軍の決意がそこから生れた。しかもこれは軍事教育ばかりやつておるものではないのでありまして、平素においては農業に工業に、生産的な事業に非常に協力しておる。こうして楊子江の治水もやり、あるいは淮河の治水もやり、黄河の治水もやつておる、こういうような状態です。要するにこういう場合も、ほんとうに働く者が自分たちの生活がよくなつたという認識の上に立つて、そうしてその自分の愛する祖国、これを守る。単に愛する祖国の山河というような抽象的なものじやないのです。自分の現実の生活を守る。自分の実際に与えられておるところの権利と自由を守る。ここにしつかりした根底がありまして、そうして立ち上つた場合において、この軍隊は強い。日本だつて明治維新後できたところの軍隊、西南戦争において西郷の軍隊を破つた日本の軍隊、日清戦争において大清帝国の軍隊を破つた日本の軍隊、こういう維新後の日本の軍隊は、事情は必ずしも今日の中国と同じじやありませんけれども、しかしとにかくやはり新興の意気にあふれておつた。新興の意気にあふれておつたということは、要するにやはり明治維新によつて八百年間の武家政治がくつがえり、封建の束縛を脱した自由な明治の国民の気持が、そこにあふれておつた。そしてたとえば西郷は偉い人であつても、西郷の起しましたああいう一種の反動的な戦争に対しましては、兵隊としてまつたくしろうとだつたけれども、とにかくそれに打ちかつ力が出たわけであります。ところが一体今の自衛隊は何か。これは日本の農地改革を徹底的に推進し、第二次農地改革に次いで、第三次農地改革でも遂行するために、それを守るための自衛隊かというと、そうじやない。憲法に保障されたいろいろな基本的な人権がたくさんありますが、そういうようなものを守るための軍隊かといえば、そうじやない。むしろ反対でありまして、破防法ができたり、教育二法案ができたり、片つぱしから憲法によつて保障された国民の基本的権利は、だんだん奪い去られつつある。こういうことではとても国民の間に感激が生れるわけがないから、やめるとき六万円でももらおうというようなことで、一種の就職のつもりで入つて来たのが、私は多いのじやないかと思う。対外的にも日本がほんとうにアジアの民族解放運動の先頭を切つて、そうしてイギリス帝国主義、フランス帝国主義、さらに新しくアジアに君臨しようとしておるアメリカ帝国主義とも闘つて、そうしてほんとうにアジア十億の被圧迫民族の希望となつて日本は闘うという、そこに一つの理想でもありますならば、また別でありまするが、それは逆なんです。内外ともに今日日本の自衛隊の隊員を鼓舞するところのそういう高邁な理想もなければ、燃え上る情熱もない。こういうことでは、これが結局失業救済事業みたいになるのはやむを得ぬ。フランスのナポレオンが率いた国民軍のことを思い、今日朱徳が率いておりますところの中華人民共和国の民族解放軍のことを思い、明治の初年の日本の英雄的将軍の率いておつたところの軍隊を思い、それとあわせて今日木村保安庁長官の率いておられますところの自衛隊を考えると、実は情ないのです、木村保安庁長官は私はりつぱな人格者だと思う。直接私は知りませんけれども、かねがね非常にりつぱな人格者であり、愛国の士であることは、私も承つております。しかしながらどんなに長官が努力されましても、長官の仕事は私は成功しないと思う。だから一体これはどうするかと言いますと、早くこういうふうな自衛隊なんかむしろやめちやつて、とにかくほんとうに日本をりつぱな国にして、すべての人々がその堵に安んじて生活を喜ぶような社会を早くつくる、そうしてほんとうに憲法で保障しておるところの基本的人権を十分に享有させるような政治をやる、そういうふうなことがまず前提でありまして、そうしてほんとうに日本が守るに値する祖国になつたというあかつきにおいて、どこか不法な侵略をする国がある場合には、その場合に軍隊をつくるというのなら、これは私は考えられぬことばないと思う。しかし社会党左派は決して今そういう場合を予想はいたしませんし、また今日の国際情勢、戦争の危険はもう遠のいて、どんなにアメリカの好戦主義者が困りましても、世界平和のとうとうたる流れを阻止することはできない。また原子爆弾、水素爆弾ができまして、軍事技術の上から見ましても、もう戦争の技術的な最高の形態段階に来ておりますことが、むしろ戦争を技術的に不可能ならしめておる。こういうふうな段階において莫大な金を費して軍隊なんかをつくることは、まつたく不必要だと思いますけれども、仮定のまた仮定の上に考えますならば、かりに軍隊をつくるならば、まず国民が生活を楽しみ、十分その権利を有する状態になつて、そうして愛する祖国ということを実感においてすべての人々が認識するという事情がまずできませんと、私は魂のある軍隊はできないと思う。しかもこの軍隊は自衛隊と言いますけれども、まつたく他衛隊でありまして、アメリカの世界政策をアジアにおいて遂行するために、日本がその一番大きな番犬の役割をするだけである。これによつて日本の一部軍需工業資本家はもうけます。兵器や弾薬の発注でなるほど事業がにぎわいますならば、軍需工業資本家はもうけます。さらにまた池田前大蔵大臣のごときは、日本の兵器生産を輸出産業として考えたいという御発言が、いつかあつたようでありますが、日本がアジアの兵器廠となりまして、そうして域外調達が日本に殺到するということになりますと、なるほどそれは兵器生産は一つの輸出産業と考えられることもできるのでありましよう。しかしながら兵器の輸出によつて食うような国というものは、これはどうしても好戦的にならざるを得ない。戦争がなくなり、平和になつたならば、輸出産業である兵器産本がばつたり行つてしまう。兵器生産を継続するためには、どうしてもどこかで戦争が常に起つていなければならぬ。全面戦争は起らなくとも、局地戦争、制限戦争は至る所に起つておるという状態が望ましいことになる。具体的にはインドシナ戦争でも、やはりこれはしばらく続いてもらわなければ困る。それは現に朝鮮戦争が休戦になりますと、日本のそういう軍需、特需を受ける方の工業がだめになつて困つておる実情であります。そういうことにもなるわけでありますから、木村保安庁長官の非常な愛国の気持はわかるにしましても、今のような防衛政策を続けておるならば、これは結局日本がアメリカのために国を誤るようなことになつてしまう。  これは非常な大きな話になりましたが、これで私の話は終りますが、ひとつ長官からお話いただけますならば、腹蔵なく御所見を承りたいと思います。必ずしも所見は一致しないと思いますが、私も愛国の至情を披瀝して質問申し上げたのであります。

木村篤太郎純無所属クラブ保安庁長官

○木村国務大臣 お答えいたします。私は不幸にして中国観、ソビエト観に対しては見解を異にしております。今中国についていろいろお説を承りましたが、御承知の通り中国は私は独裁国家と見ております。一つの指令のもとに全国民が動く組織になつておりまして、日本とはまつたく状態を異にいたしておるのであります。これがいいか悪いかは別問題といたしまして、そこで五百万の軍隊を有する、これはみな好んでそれに参加したものだというお説でありましたが、私は必ずしもそうじやないと考えておるのであります。これはよけいなことでございますが……。そこで日本の現在の保安隊について一言申し上げますと、決して私はお話のような志気が乱れておるものとは考えません。現に志望にいたしましても、保安大学校で四百名募集いたしましたが六千になんなんとする応募者がありました。また八千人の欠員に対して六万になんなんとする応募者があるわけであります。これは日本の青年が相当自覚いたしまして、われわれの手によつて愛する日本を守ろうじやないかというその精神の横溢したもの、私はこう考えておるのであります。なるほど愛国心は、愛するに足るべき国をつくることがまず何よりも先だ一私も同感であります。われわれといたしましても、愛するに足るべき日本をつくり上げなければならぬと考えております。青年たちにいたしましても、われわれの手によつて愛する国をつくり上げようじやないか、この精神によつて、現在保安隊員はみな協力しておることと、私は深く深く確信しておるのであります。どうか田中委員におかせられましても、この保安隊を十分に愛していただきたい、私はこう考えております。

稻村順三日本社会党(左)

○稻村委員長 大分時間も経過いたしましたので、本日はこの程度にいたし、次会は明日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時三分散会

国会会議録検索システムで原文を見る ↗