内閣委員会 第3号
- 発言数
- 81 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 6
- 開催日
- 1953/12/23
会議録
○稻村委員長 これより内閣委員会を開会いたします。 保安隊及び警備隊に関する調査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。辻政信君。
○辻(政)委員 練馬の第一管区において起りました。汚職事件は、吉田総監の引責辞職で一段落ついたものと考えてよろしゆうございますか、長官にお伺いいたします。
○木村国務大臣 御承知の通り吉田総監は辞職いたしました。私はそれを受理いたしました。後任もきめて、そうしてさらに不正な点があれば、後任総監の手によつてこれを処置いたしたい、こう考えております。
○辻(政)委員 それでは打切られたのではなくして、新しい総監を迎えてさらに徹底的に粛正するというお考えと解してよろしゆうございますか。
○木村国務大臣 不正な点があれば、新しい総監の手によつてこれを処置いたしたい。その通りであります。
○辻(政)委員 吉田総監の辞職は、犯罪の容疑があつての上でありますか、それとも監督上の責任でありますか。
○木村国務大臣 私への今までの報告、その他本人との会見において、吉田総監には不正な点がないと今は考えております。
○辻(政)委員 そういたしますと、部下監督の責任上からという立場からやめたものと解することができるのでありますが、この事件を調べてみますと、駐屯地部隊長は池野副総監ではないかと思うのでありますが、その点いかがですか。
○木村国務大臣 部隊長は、まさに池野であろうと思います。
○辻(政)委員 そうしますと、部下の犯した過失は、まず部隊長が監督の責任を受け、さらにその上が受けるのが順序であつて、それにもかかわらず、池野副総監は辞表を出したということも聞かないし、処分されたということも聞かない。その上の吉田総監が処分をされ、辞職をしたということは、少しふに落ちないのであります。その点いかがでありますか。
○木村国務大臣 吉田総監の辞任は私が強要したわけじやありません。本人の意思に基いて辞表を提出され、それを私が受理したのであります。池野の問題について、責任がそこまで及ぶかどうかということについては、まだ検討中であります。
○辻(政)委員 池野副総監は、これだけの不祥事をやりながら、責任を感じていないのでしようか。
○木村国務大臣 それは本人の意思によることでありましようが、むろん監督上の責任は、自分は考えておることと考えております。しかし辞表を出すほどのことであるかどうかということについては、これは相当考慮に値するものであろうと、私はこう考えております。
○辻(政)委員 十二月十九日の読売新聞におきまして、「保安隊汚職、上層部に波及か」という大見出しのやつは、長官もお読みになつておると思います。その中に「犯行の動機を追及したところ調べに当つた同中隊員も色を失つた。というのは飯田二十ら給与担当官は駐とん地部隊長(練馬の場合は池野副総監)の指揮はうけず、直接吉田第一管区総監に指揮を仰ぎ責任を負えばよい建前になつている。両名はいずれも総監の意をくんで金品をうけた。とくに飯田二十は総監の内意を受け、やむをえず機密費を工面するため業者から金品を受けたと自供した。」幾多の例を引きまして、最後に「飯田二十は「私も年輩だしかわいい妻子もある。収賄、ピンハネのわるいことは知りぬいている。しかし私がクビになり一家が路頭に迷うことを思えばどうして上司の意に逆らえよう」と泣いて総監の横暴ぶりを訴えた。」こう書いてあるのであります。もちろん新聞のことでありますから、全部が百パーセント正確とはいえないにしても、この大新聞が取上げているからには、私は単なる根も葉もないデマとは考えられない。この中に、明らかにこの種事項が駐屯地部隊長を経由せずして、総監の直接指揮を受けておるということに疑惑を持つのであります。この点について、業務の関係に詳しい増原次長から御説明を願います。
○増原政府委員 この新聞に出ておりまする今御指摘の事項は、会計監査隊が参りまして目下調査をいたしております。しかし今まで聞いておりまするところでは、正規のルートを飛ばして、直接総監が命令をしたというふうなことは、ただいままでのところでは、ないように聞いておりまするが、なおこれは会計監査隊が参つて、厳重に調査をいたしておるわけであります。
○辻(政)委員 われわれの常識からは、このような事件に対しては、総監は関係するのではなくして、むしろ部隊長である池野副総監が監督し、関係するものと考えるのであります。そうすれば、この事件の最も重大な直接の責任者というものは、これは池野副総監であります。それを吉田総監が引責したというならば、その責任は当然さらに上層部に及ぶという見地から引責したと見なければならないのであります。その点についての増原次長の御見解を伺いたいと思います。
○増原政府委員 辞表は吉田君からは第一幕僚長の方へ出し、第一幕僚長から長官の方へ提出をいたしたわけであります。その際私は直接吉田総監に会つておりません。第一幕僚長から聞いたところによりますると、部下統率上の責任を感じてということに聞いております。今度の事件の監督責任として辞職に値するというよりも、統率上の責任というふうに——これは似たような意味でありまするが、そういう意味に、私は第一幕僚長からは承つておるのであります。
○辻(政)委員 子供がどろぼうしたときに、親が責任を負わずに、じいさんが首をつるということがありますか。
○増原政府委員 今の御譬喩はちよつとわかりかねまするが、監督責任については、それぞれ監督者について長官が第一幕僚長をしてこの責任を問わしめるという制度になつておりますし、そういう措置を今とつておると言われたのであります。これはまだ多少豊島の方のものにつきまして、書類整理等の関係が残つておりまして、そういうものを終りましてから、長官の方から適切に監督責任を問い、その措置をされるということになろうと思います。
○辻(政)委員 吉田総監の前歴についてお伺いしたいと思います。私の聞いたところでは、かつて埼玉県の副知事をやつておられた。その際に大きな疑獄事件というか、汚職事件が起りまして、当時の知事は数十万円の収賄で首になり、監獄に入り、その副知事もまた容疑きわめて濃厚でありましたが、物的証拠がないというので罪にならなかつた人であるということを聞いておるのであります。もちろんそれは確実かどうかはわかりませんが、一体だれがあの重要な地位に吉田総監を推薦し、いかなる径路によつて採用したか、当時の実情に詳しい増原次長から直接お伺いしたいと思います。
○増原政府委員 吉田総監が埼玉の副知事をしておりましたことは事実であります。そうしてそのことは私どもも承知をいたして任用をいたしましたが、ただいま仰せになりました疑獄に関連をし、容疑濃厚であつたというふうなことは、私どもは承知をいたしておりません。知事が疑獄事件にかかつたことは承知をしております。しかし吉田君はそのことには関係はないと承知をしております。そうして吉田君を第一管区総監に迎えまするのは、当時予備隊の長官でありました私と、第一幕僚長、当時は総隊総監と申しておりましたが、林君と相談をし、当時の監督大臣と申しますか、大橋法務総裁、この三人協議の上ということが適当でありましよう、採用をいたしたわけであります。
○辻(政)委員 三人協議の上推薦したものである、こう解釈してよろしゆうございますね。私の調べたところによりますと、吉田君は林総監と学校時代の同級生であつて、非常に親しい。あなたともつながりがある。そうしてこの人は明らかに埼玉県知事の疑獄の当時に副知事として補佐した人である。相当の金品をとつたということがあつたにかかわらず、いろいろ手をまわしてその証拠をなくしたために無罪になつた人であるということを、私は自由党の代議士から聞いた。確実なことですよ。そういうことをあなた方も知らないはずはなかろう。それを知つて、単に同じクラスであるとか、あるいは自分のグループであるとかいつて、この警察予備隊の出発当時の最重要ポストに推した、その政治的責任はだれが負うのでありますか。
○増原政府委員 私どもは吉田君が埼玉県知事の疑獄には関係はないと承知をいたしておりました。そうして今申したように、事実上の協議を三人がいたしたということでありまするが、任命者は当時の予備隊長官である私であります。
○辻(政)委員 吉田総監の辞職は、形式的な部下監督の責任でやつたとすれば、それでもつて、これだけ騒がした天下の疑惑を晴らすことができるとお思いになるのか。あるいは吉田総監の名誉のためにも、保安隊の名誉のためにも、司直の手に移し、警察当局の手でこの事件を徹底的に調査する意思があるかどうか、それを承りたい。
○増原政府委員 疑わしきもの、調査をすべきものがありました場合には、もちろんそういうようなこともやつてしかるべきであろうと思います。
○辻(政)委員 そういたしますと、現在では一般官吏の退職と同様に退職金を与え、恩給を支給するのですね。
○増原政府委員 一般の依願退職の扱いであります。
○辻(政)委員 この事件の捜査に当つたのは、たしか第一幕僚長の直轄の警務中隊と聞いておるのでありますが、警務中隊というものは、これは第一幕僚長の直轄であります。言いかえたならば、これはお手盛り捜査であるとわれわれは考えるのであります。お手盛り捜査である。将来の機構改革において、長官に直属して身分を保障された強力なる監察機構を設けない限り、単に自分のお手盛りでつくつた捜査だけで世間をごまかすことはできない。そういうなまぬるい考えを持つておるところに、かような不祥事件が続出するのであります。木村長官としては重大な責任を痛感されて、現在機構改革の発足点にありますから、保安庁長官の直属の、身分を保障された強力なる監察機構をお考えにならなければならぬと思いますが、その点について長官のお考えを承りたい。
○木村国務大臣 保安庁の機構の改革についても、私は考えないではありません。ただいませつかく検討いたしております。さような点についても、将来考慮いたしたいと考えております。ただこの際一言申し上げたいのは、万一不正なことがありますれば、これは公正なる司直の手によつて判断されるべきが当然であろうと考える。またそうならなければならぬと考えております。そうして万事公正に処置をして行きたいと考えております。しかし吉田総監のことにつきましては、ただいまわれわれの機構その他から収集した材料によりますと、個人については不正な点はないと考えておる次第であります。しかし将来万一不正な点が発見されるようなことがありますれば、これは公正なる司直の手によつて裁断を願いたい、こう考えております。
○辻(政)委員 将来ありますればというお言葉ですが、この事件を将来とも引続いてさらに徹底的に捜査をおやりになる決心でありますか。それとも一段落ついたとお考えになるか、どうでありますか。
○木村国務大臣 これは後任の筒井総監がまだ着任いたしておりません。その意見も十分くみとりまして、この事件をどう処置すべきかということについて最後の断を下したいと考えます。
○辻(政)委員 それは筒井君に対してはまことにお気の毒な重荷であります。九州から何も知らない東京にやつて来て、そうして自分の同僚をさばくということは、とうてい新任総監としてはできない。むしろそういう酷なことをやらさないで、現在そこに最大の責任者がおる。警察予備隊当時からよく知つておるその人の手できれいにさばいて、新しい筒井君には気持のいいような状態において仕事をさせるのがほんとうじやありませんか。
○木村国務大臣 筒井君はきわめて厳直な人であると私は認めております。そこで筒井君を煩わして、まつたくこういうことに関係のない総監の手において一まずこの事件の輪郭なり何なりなど十分調査させて、そうしてこの結論が出た上において、どうすべきかというふうに処置するのが妥当であると私は考えております。
○辻(政)委員 筒井君の人格については、私もまたりつぱな人であるということを聞いております。しかしその筒井君を迎えなければ、現在の幕僚及び幹部では厳正にそれを調査する人がないのでありますか。
○木村国務大臣 そうではありません。しかし新任の総監をおいてそういうことをすることは、私は統制上よくないと思います。まず新任の総監によつてこの事件の詳細をよく調べてもらつて、どう処置すべきかということをまず総監の手によつてきめる。その上でわれわれはこれに対する判断をすべきが順序だろうと私は考えております。
○辻(政)委員 それでは一応その点は長官の御意見を了といたしますが、しからば筒井総監によつて、根本的に、最初の出発点からあらためて厳正な目で再調査をされるというふうに解釈してよろしゆうございますか。
○木村国務大臣 そうであります。
○辻(政)委員 この事件は、米国の対外放送にも取上げられまして、日本新軍の腐敗として、大きく報道されております。国内においては、このために保安隊そのものを否定しようとするほどの悪影響を及ぼしておるのであります。警察予備隊として発足してから三年半、その当時からの事実上の最高責任者として、今日のこの醜怪な現状に、増原次長は責任をお感じになりませんか。
○増原政府委員 保安隊に不正汚職等の事件ができましたことについては、私も責任を感じ、はなはだ遺憾に存じております。かようなことが将来再び起りませんように、長官の指示のもとに、大体監督の第一線の責任者としての幕僚長に長官から指示を与え、監督をしていただくということによつて、将来かようなことのないような措置を十分にとつて参りたいと考えます。
○辻(政)委員 事件がこの内閣委員会で取上げられましてから、私の手元には全国から多くの未知の人から、特に遺族から、徹底的に粛正をしてもらいたいという要望が来ております。その中には子供を戦場で失い、夫をなくした人たちがあつて、いまだわずかな恩給さえ受けておらない。その人たちが、あの現職にある、師団長に相当する高官のやつた行為、それを中心として明るみに出された汚職に対しましては、まことに痛憤の辞をもつてつづつておるのであります。厖大な国民の血税を消費する保安隊の上層部に対して、単に形式的な行政処分によつて当面を糊塗することは、とうてい国民としては納得できない問題であると考えるのであります。私は昨年この委員会において、この部屋で、長官がおいでにならないときでありますが、保安隊の綱紀粛正について警告を発しておきましたが、もし増原次長が良心的に自発的にそれに善処をして、そのときから真剣に粛正に乗り出して行つたならば、おそらく今日のような不祥事件は出さずに、少くともそれを減少し得たのではないかと考えるのであります。にもかかわらず一年以上にわたつてその内容さえも長官にいまだに報告してなかつた。この幕僚長の責任を前会追究いたしましたが、その責任に対してあなたはどういうお考えを持つておられるか。
○増原政府委員 先般の委員会で辻委員より綱紀粛正についての御警告がありましたときも、もとより綱紀粛正の問題については、幕僚長の方へ長官から指示をし、お話をされて、そういうことについては十分の警戒を続けさせて参つたわけであります。事を等閑に付したわけではございません。しかしなおかような汚職事件が出て参りましたことはまことに遺憾に存じます。将来さらに一属適切な手を打つように長官から幕僚長に指示をしていただき、勧告をしていただくように補佐を申し上げるつもりでおります。
○辻(政)委員 単に手続上の齟齬というふうには私には受取れない。あのとき申し上げたことは、きわめて好意的に忠告を申し上げたのでありますが、こういうことがあるからやりなさい、それにかかわらずほおかむりをして、単に補給課長のみを首を切つて、あとは転任でごまかしておる。いやしくも教育の最高責任にある者が、その学生に支給する糧食の上前をはねる、そういう醜行を繰返す校長が、また再び久留米の普通科学校の校長の職にある。校長というものは自分の弁当をわけて貧しい子供に与えてやるのが校長である。子供の食う上前をはねる校長で教育ができますか。私この前の委員会で伺いましたが、その後とられた処置について伺いたい。
○増原政府委員 先般も申し上げましたように、当時辻委員から私並びに人事局長へお話をいただいた資料に基いて調査はいたしたのであります。ただ当時の調査の結果では、この間も申し上げましたように特に不法にわたるような事項が出ていなかつたということでございます。しかしさらに具体的事実をお示し願いましたので、目下第一幕僚監部の第一部の副部長和田一正をしてお示しになりました人を呼びまして厳重に調査をいたしておるところであります。
○辻(政)委員 厳重に調査をされておるのでありますから、その結果をまつて私は申し上げたいことがあるのであります。問題は、ああいう一つの徴候をとらえたときに、あなたは、ほんとうにこれではいけないと思つたならば、徹底的にやるべきであり、またはなはだ解せないのは、補給課長の古思三郎だけをあの事件では依願免職にしておられる。これは明らかに不正があつたからやつたに違いないのであります。なかつたからじやない。それを今日までほおかむりして、長官の耳にも入れないようにして、個人的な情誼によつてかえて行つた。そこに問題のがんがある。ことに今度の練馬事件を新聞によつて知りますと、このやり口というのは、当時久里浜の学校において行われたやり品とぴつたりであります。完全に同じ戦術である。犯罪手口はよく似ております。こういうことが行われた。はなはだしいものになりますと、これはあとからこの次の事件で言いますが、前任地において悪いことをした部下をそのまま人事上ひつぱつて新しい任地に行つておる。運転手まで……。こういう事件がある。そうして犯罪を極力ばれないようにして、お互いに利益をわけ合いながら悪をかばつておるというのが今日の人事である。その人事については、ほんとうを示してほしければ示しますよ。そこに、あなた方が真剣に保安隊をよくしよう、良心的にこれを粛正しようという誠意が見られない。私は単なるデマで言つておるのじやありません。こんなことは、やる気ならできる。過去の軍人にも不正がありました。私はあらゆる圧迫を排除して、軍内において粛正の手をあげた。そのために非常な圧迫を受けました。これは当然だ。あなた方がその気になればできる。悪をかばい合つて、しかも悪のグループでもつて、利権に密接な関係ある部門を押えておるというこの人事、これが根本であります。制服を着た人事、元の正規の軍人出身の人事配置と、文官出身の人事配置をよく御研究なさい。利権に直結しておる部門においては、ほとんど大部分を文官出身の者でもつて固めておるじやないか。そこが汚職の根本である。たまたまそこに正規の車人が入り、そして正しい言を吐くと、ただちに左遷されてしまう。この事実がある。悪をかばい合つて行くという頭では保安隊の粛正はできない。これは長官はよほど決心を持たれませんと、容易ならぬものがありますよ。あの警察予備隊発足当時は、失業者と無能官吏と、すねにきずを持つておる者、これをかき集めてつくつた烏合の衆であつた。しかもこれがアメリカの庇護のもとに二年間、うかがうことのできない門をとざされておつた。その間にでつち上げられた悪の根源が、今日瘰癧のように顔を出しておる。もはや内服剤ではなおらない病状に達しておる。思い切つた外科的手術以外に保安隊の現状を粛正することは不可能と私は考える。この点についての長官のはつきりした御決意を承りたいのであります。
○木村国務大臣 私が常に申しておることは、保安隊は国民の信頼を得なければならぬ、これが第一である。信頼を得るについては、かような汚職をまつたく根絶しなければならぬと考えております。そこで、いかにすればこの悪の根源を排除することができるか、これは相当決意をもつてやらなくちやならぬと考えております。しかしそれについては、また相当各方面から検討を加えることを要すると私は考えております。機構の点、人事の点、万般にわたつて十分慎重にこれはとりはからわなければならぬ。そこで、かすに時日をもつてやられんことを私は願いたいのであります。すべてのことは急速に参るものでありません。除々に、しかもなるべく早く、再びさような不正が出ないようにあらゆる面から検討いたしまして、十分の処置をつけたい、こう私は考えております。十分の決意をもつて将来進みたいと思つております。
○粟山委員 関連して。ただいま辻委員の質問を承つておりますと、文官系統と、過去に軍籍にあつた人で採用されている人々との間に何か派閥抗争といいましようか、セクシヨナリズムといいましようか、そこに溶け込んでいないようなふうに聞えますが、事実そういうような状況があるかどうか、伺います。
○木村国務大臣 私の今まで見たところによりますと、隊内ではさような大きな事実は認められません。旧軍人から入られた人も多分におりますが、その人たちと、いわゆる文官出身の隊員との間には相当溶け込んで、互いにこの保安隊をよくしようという気分が見受けられるのであります。それはすみずみに行きますとさような点があるかもわかりませんが、大体において双方溶け込んで、しつくりやつているように見受けられるのであります。しかしながらなおよくこれをしつくりやらせることが何よりも必要であろうと私は考えております。機会あるごとに双方の人たちについて、お互いに融和し——それは悪いところはどんどんデイスカツスして改めなくちやいかぬのでありますが、お互いに虚心坦懐に、何らのわだかまりなく議論をいたしまして、とにかく保安隊をよくするという気分においてただいまのところ双方やつていると私は見ている次第であります。
○粟山委員 私も長官の答えられるように、ぜひそういうことに仕上げてもらいたいと念願にたえません。今日本における重要な問題は何かといえば、いろいろございますが、私ども心を澄まして考えますときに、この保安庁の問題、これにどういう性格を持たして国の安否を確保しなければならぬかというようなことは、国をあげての関心の的となつていることは、私が申し上げるまでもありません。従つて、私どもも議員の一員として考えますときに、今こそこの根本問題を明確に決定しなければならぬときである、かように考えております。自分などは、やはり自分の考えだけでもいかぬから、自分も考えるが、イデオロギーの違つた人の考え方についても謙虚な気持で考えて、またわれわれの主義主張の上から結論を出して、誤らざる国家の大方針を築かなければならぬというように、非常な決意を持つているつもりでございます。ただ襲われた場合にこれに向つて体当りをするといつて、命がけで自分たちのすべてのものをほうり出すようなことは——ただ一人死んで解決するなら何でもないが、そういう時代じやないということを考えるときには、これは国の最大公約数において正しい結論を出さなければならない。私この保安隊といい、保安庁の機構といい、ともかく新しい世帯、国民が目をさらのようにして見ておりまするこの大きな舞台に、かりそめにもいろいろなあやまちがあつたということでは、これは非常に大きく響くと思うのです。実は米の三俵、五俵というようなこと、あるいは盗んだ盗まれたというようなことは全国にみなたくさんありましよう。けれども保安隊なればこそこれは大きく響くのです。それはただ単に盗んだ盗まれた、こういう犯罪行為があつたというばかりじやない、この保安隊が一体どうなるのだろうということから、私はここではなはだ過ぎたることを申し上げるようでありますが、ひとつ聞いていただきたいことは、私どももかつては浜口内閣当時において役人も勤めさせていただきました。二年間の経験の上から、実にりつぱにでき上つた軍人さんがおりました。陸軍の人々にもあつた。今でも後備でもつて終られた人でりつぱな人がおります。けれどもどうも考えてみますと、あのりつぱな陸軍がどうして満州事変から支那事変、大東亜戦につつ込んだかということを、今外国人に調査をされて調べ上げられてそして論ぜられておるものを見るまでもなくして、私どもその原因を考えると一つこういうことが言えると思う、どうも当時の軍人、ことに陸軍においては幼年学校、士官学校、大学と出て、その後出世街道を、その本職の道をどんどんと何ら滞りなく、秀才が秀才であるがままにりつぱな軍人になり得たでありましよう。そうして最高の指揮官になつた。どうもわれわれ当時のことを考えますと、なるほど軍人教育においては徹底しておつたろうが、さてその最高の地位に立つて、大きな政治と非常に緊密に関連するものの立場に立つたときのその動作及び言動を見ますと、非常にあぶないものがあつた。私は日本をこんな敗戦に導いたということの原因はどこにあつたかということを考えるときに、過去の事実を等閑に付すことができないと思う。私は今この保安庁を自衛隊とする、あるいは時が来たならば軍とするかもしらぬというときに、世間の人の心配するのには、あの昔の軍隊のようなあり方で国を誤られてはたいへんだということにあるのです。防衛をきらう者はありません。自衛が正当なものだと考えない者はない。しかし自衛、防衛というものは現実に良心的にどこへ納まるのかということを考えるときに、一般の者は過去の事実を顧みてあんなものにされてはたいへんだということにある。私はそういうことを考えると、今こそ文官が悪い、軍の経歴を持つた人がいいんだ悪いんだということよりも悪はにくむ、あくまでも悪いものは悪いものとして糾弾しなければならぬときには、率先してあなた方の方で範を示していただくことを私はお願いいたしまするが、さらにもつと進んで今後のあり方について国民の同調を得、理解を得るように、文官であろうが、過去の軍人出身であろうが、どういうような人的素材によつて、人的関係によつてこれを導いて行くかということについて、十分私は考えておいてもらいたいと思う。これをお願いします。 私はもう一つ申し上げたいことは、この日本のために非常に重大なことは、私、かつて今の天皇陛下を教育された杉浦重剛先生の「倫理御進講草案」という千ページ余のものを拝見したことがあります。いかに杉浦重剛先生がその天皇学をお教え申し上げるのに苦心したか、これはたいへんなものです。中学校の課程を終えるまでの日々の教える草稿をつくられた御苦心というものはたいへんなものです。杉浦先生は申すまでもなく、漢学に素養があり、英語に堪能であり、国学にも堪能でありました。そしてあの毅然たる精神、そして自分ばかりじやない、ずいぶんそれぞれの人の地位と資力を動員したように思われます。そうしてともかくあれだけのものに仕上げてお教え申し上げたようにその跡がうかがわれる。非常に苦心されたものだ。私今平和憲法のもとにあつて、旧憲法をいたずらに謳歌するものではございません。しかしながらわが日本の過去の歴史として私は謙虚に考えなければならぬ。また大正天皇をお教え申し上げたのは元田永孚先生です。明治天皇に対しては山岡鉄舟先生です。そういうような人々は非常にりつぱな人格者で、善には強く、悪を拒むにおいてはより以上に勇気を発揮いたすところの人である。そういう人が中心になつておればこそ、私は明治から大正、昭和にわたつてともかく日本というものは繁栄の道を歩み得たところの大きな原動力となつたのではないかと思う。今ここに新総監を迎える保安庁内に、委員諸君から日々皆様に対しての質問が行われ、なるほどこりつぱな人格であるにかかわらず部下の者がやつたということによつてつるし上げを食つておるような状態は、私は心の中において泣かざるを得ないのであります。それは過去の歴史を考え、日本の将来を思うときには、あの戦争のさ中に、戦後の虚脱状態の中に育つたところの気の毒な青年こそがいわゆる国の第一線に立たなければならぬ運命に立つておる。この日本の前途を考えるときに、私どもは実に胸を刺される思いをせざるを得ぬのであります。先ほど来の辻君の深刻なる御質問は、これは辻君の良心から出たのでありましよう。しかしながらその御質問をば軽く受取つて、そうして仕上げはふんわりと仕上げて、余裕のある大国民の襟度を養成し得るような方面に皆さんが進んで御指導あられんことを私は希望いたします。はなはだ質問から離れたようなことを申し上げるようでございますが、今こそ重大な時期であり、八千五百万の国民に対してわれわれは明鏡に訴えなければならぬときでありますが、まずもつてこの問題は事務的に取扱うべきものは事務的に、政治的に取扱うべきものは政治的に、十分徹底した調査の上に明確なる答弁を与えられんことを私は希望し長官にお願いをする次第であります。
○稻村委員長 関連質問として冨吉榮二君。簡単にお願いします。
○冨吉委員 先ほど辻さんの質問に対する御答弁でまだはつきりしない点があるので、その点をちよつとお伺いします。この吉田総監の前歴でございますが、長官のお話と次長の御答弁とには食い違いがあります。しかしこれは、次長は当時の知事がシルク事件に連座して収監されたことも知つておる、そのときの副知事であつたことも事実である、こういうことは御説明になりましたが、この警察予備隊に総監がお入りになるときには、副知事からそのままお入りになつたのであるか、それともやめていて、いわゆる野におられた人を引上げたのか、その点をちよつとお伺いします。
○増原政府委員 当時は副知事はやめておりまして、いわゆる野にあつたのであります。
○冨吉委員 そこで私どもには一つの疑問が起るのです。群馬県知事がシルク事件という疑獄事件にひつかかつて、もし当時の吉田副知事が晴天白日の身であるならば、何ゆえにやめたかということが問題になつて来ると思う。知事がそういう事件で不在である場合に、県政を知事のかわりになつて一生懸命切りまわして行かなければならぬのが副知事である。その副知事がやめたということは、これは新聞に書かれてあるシルク事件という疑獄事件に連座して、疑いを受けてやめたというふうに理解される節がある。これはどうですか。
○増原政府委員 私の承知しておるところでは、疑獄に連座したということはないと私どもは承知をしております。当時のやめましたのは、前の知事がやめまして御承知のように選挙がすぐ行われ、当時総務部長であつた、現在も引続いてやつておる方が知事になりましたので、副知事であつた吉田君が身を引いた、こういう事情であると承知しておるわけであります。
○冨吉委員 人事は、先ほど長官がおつしやつたように、これは機構とともに最も重大な問題であります。何といつても人を中心にしてやらなければならぬ。ことに創設当時の保安庁でありますために、ただいま粟山さんからいろいろ御意見をお述べになりましたように、いわゆる人格識見の高い人を選ぶべきである。しかるに確かにこの知事時代の事件に、われわれの知る範囲においてはどうも連座した形跡があつて、辻さんのだんだんお述べになりましたように、法律的にはあるいは証拠不充分というようなことがあつたかもしれないけれども、疑いを受けたことだけは事実である。このような人物を重要なポストにすえられるという考え方が、私どもはおかしいと思う。すべて組織は人の上に立つ者が悪ければ下の者も悪いことをやる。大臣が変なうわさを立てられたり、それが法律上の犯罪にならなくても、あるいは次官が変なことをしたりするのを横目で見ている局長や課長というものが、次第次第に悪くなつて行くことは、幾多の例で明らかであります。上がそういうことを乱り、ことに現在は、先ほど粟山さんもお述べになつたような虚脱状態にあり、アプレゲールといわれる言葉で代表されるように、まことに反倫理的な生活を余儀なくされた人々、そして中心を失つた人々、そういう人々のすべての組織を構成して行かなければならない。その際において、長官あるいは次長あるいは総監というがごとき、最も組織の中心となる人事においては、よほどお考えになりませんと、それは将来に非常な悔いを残すことになると思う。この点に対して、今後機構の改革ということもきわめて重大でありますが、それと同時に何といつてもやはり人事、ことに好むと好まざるとにかかわらず、陸軍と海軍あるいは旧軍人と文官というような育ちぐあいや、系譜によつていろいろ人間には特徴もあり、またお家風もあり、そこから来たところの性格もあることでありますが、その能力はとにもかくにも、人格という問題を最も重要視されて、その人事の中心とせられなければならないと思うのでありますが、これらの起つた問題、たとえば米を盗み出したというような人々が取調べられて、新聞記者に書かれると、おれたちがやつたことはよくないことはわかつているけれども、そう悪いことをしたとは思つていない。上もやつているのだからという考え方なんです。こういう、ことに統制をやかましく言うべきその組織内においては、厳重に上の人が慎まなければならぬ。それで二、三のそういうことに当つた者のみを首にしたり、あるいはまた統率上と言つて、どうも納得の行かないような、ただ吉田氏が一人やめたというようなことだけで問題は解決しないのであります。私は将来この人事の問題において、もつと保安庁においてはしつかりしたお考えを立てることをお勧めするのでありますが、長官の御意見を承りたい。
○木村国務大臣 ただいまの御議論ごもつともであります。何といたしましても保安庁においては、先ほど申しましたように、国民の信頼を得ることがまず第一でありますから、その点については十分われわれは考慮して行きたいと考えております。ただ申し上げたいのは、日本人というものはけちな根性を持つておりまして、とかく人を根拠なく批判することがあるのであります。人を傷つけるということが往々にして行われる。これは必ずしも日本ばかりじやございません。アメリカのニクソンもそうであつたのでありますが、さようなことで世の中を迷わせるようなことをやる事実もあるのです。それを国民が十分冷静に判断して行かなければならぬ。ただ新聞に書かれた事実で、それをうのみにして批判するというようなことであつては、これはとんでもない間違いを起す。みずから省みてなおくんば千万人といえどもわれ行かんと故人も言うておりますが、みずからが一番大事であります。人の批判は私は顧慮するに足らぬと考えております。そして国民もよく冷静に批判して、いかなる人物が最も信頼さるべきかということを考えてもらわなければならぬ。われわれも今後保安庁の機構について十分な考慮を払うと同時に、人的養成においても最善の注意を払つて、国民の信頼をかち得るようにいたしたい、こう考えております。
○冨吉委員 ただいま長官から承つたのでありますが、なるほど荻生徂徠も、いり豆をかじつて人の悪口を言うくらい楽しいことはないと言つたように、日本人の悪いくせであることは長官とまつたく同感であります。これは確かにそうであります。しかしながら私は今言うように、機構内において世間に多少の疑惑を持たしめた人物を御採用になつたことについて申し上げている。そういう点において、人選上において非常な抜かりが従来あつた。こういうことでありますから、その点ひとつ根本的にお考え願つて、今後お改めにならないといけないということを申し上げておるのであります。
○木村国務大臣 ごもつともであります。今後採用いたしますにあたりましては、十分にその点を考慮いたしたい、こう考えております。
○辻(政)委員 ただいま栗山委員から、私の質問に関連して非常に傾聴すべき御意見を承つたのであります。私はかつて軍人でありましたから、その立場からこういう問題を取上げると、いかにも旧軍人出身が、旧文官出身をいじめるような感じをお受けになる人があるかもしれません、しかし、この事件が発生するまでもなく、私が国会に出たとたんに、私の同僚なり後輩なりは私と縁を断つている。なぜかと聞きますと、あなたに接近すると、文官の人たちににらまれる。われわれは旧軍とか文官とかを考えないで、溶け合つて行きたいという気持を持つて進んでおるということであります。また文官出身の中においてもりつぱな人がある。その例をあげてみますと、林第一幕僚長のごときは、その人格にすべての隊員が実際悦服している。単に出身じやない。私の言うのは事実そのものをつくのです。あるいはこの事実が旧正規将校によつて行われたならば、なおさらはげしくつかなければならない。そこを申し上げておるのであります。一つの例話になりますが、終戦後私は重慶に行つて、蒋介石政権の腐敗の現状を見て参りました。その際にこういうことがあつたのであります。非常に軍隊の中に汚職があつた。あのとき軍統局長をやつておつた戴笠という将軍がおります。これは軍の監察機構の局長で、これがある日ある部隊を検閲した。そして練兵場に集まつた隊員の顔を見ると、いかにも顔が青い。そこで彼はその翌朝公表せずに突如としてその部隊の炊事場をのぞいてみると、定量の食事が支給されておらない。聯隊長がピンハネをやつておつた。そこで聯隊長を呼び出しまして部下の面前でみずから銃殺したという例がある。あの中国の軍隊が戴笠一人の力によつてある程度腐敗を防いで来た。彼が飛行機から落ちて死んでしまつた。そして戦争に勝つたあの軍隊が一瀉千里で崩壊して行つた。その根本は、第一線の崩壊ではなくして、中央部の崩壊、高級者の汚職腐敗にあつたのであります。その意味におきまして、出身が何であろうということにかかわりなく、国の運命を決する重大な時期でございますから、何物にも仮借されないで、みずからの手でこの悪をぬぐつていただきたいということを心からお願いいたしておきます。ほかにもまだお聞きしたいことがたくさんあり、これと別個の事件が幾多顔を出しております。しかし私も申し上げるからには的確な資料を持たぬと申し上げられませんから、この休会明けまで皆様に信頼をしまして、この跡始末をどう善処されるかというお手並を見た上で、休会明けの国会においてさらに質問をいたしたいと思います。きようはこれで終ります。
○平井委員 保安庁の汚職事件はしばしば委員会で取上げたのであります。先ほど来各先輩委員の質問を聞いて私も非常に感銘するところが深いのであります。栗山委員の言われたごとく、満洲事変、支那事変がいかなることから起つたか、大きくいえば財閥と軍閥の結託である。小さくは青年将校の独善的行動が満洲事変になつた、こうわれわれは考えておるのであります。そこで今度の問題も、冨吉委員から言われました精神が第一だ。たとい辞表を出してやめても、その人は精神は直らぬのでありますから、辞表を出す出さぬは大した問題ではない。ここでやかましく言つておりますが、ほんとうは責任をとつてやめたからすべての事件が解決するのではなく、要は精神を入れかえる、指導的立場にある指導者が真に国を憂えるという、この反省が責任をとる第一の根本であろうと思うのであります。従つて今後保安隊がいかに発展して行くか、国民が非常に関心を持つておるのでありますから、この際人事はもちろんのこと、各中隊、各班においても、これはどういうところに向けたがいい、これはあちらに勤務させたがいいという監督の立場にいる上官が考えて、徹底的に異動させるが私は一番いいと思う。先般辻委員が久里浜事件を言うておりましたが、久里浜事件で幾らか疑惑を持たれた校長が久留米の普通科学校の校長に——私も福岡県でありますが、こういう人が久留米の校長になるということは実に災難であります。この点も少し調べて、そういう点が幾らかでもあるならば、ただちにこれは九州から去つてもらいたい。筒井総監も九州からやつて来るのでありますが、九州のごときは非常に緊張してやつております。しかしながら、関東におけるこの事件をこのまま放置するならば、九州にもこれが移つて行く。この際大英断をもつて木村長官は大村益次郎になる気があるかどうか、この点をひとつお聞きすると同時に、増原さんもまた、決してあなたの責任を責めたつてしようがないから、今後国民から信頼される保安隊の基礎をほんとうの気持であなたがつくつて行かなければ、今度またやりそこなうと、やめたくらいでは実は済まない。あなたの気持は日本のためになろうという決意だろうと思う。私は責任をとれとは申し上げませんが、ほんとうの気持で増原次長が今後の保安隊の増強をまじめに考えておるかどうか、長官並びに次長のほんとうの信念をお聞かせ願いたいと思います。
○木村国務大臣 私個人のことを申してまことも相済みませんが、私はもうすでに家庭においても子供は成人いたしまして、老妻と二人きりであります。何を苦しんでこのポストにおるか、自分の一身の安楽を顧みれば、私は隠居していい身分であります。ただ私には耿々一片国を愛するの志は持つております。私は実は犠牲になつているつもりであります。世の中には憎まれ者もいなければならないのであります。いい子になつている者ばかりでは国は治まりません。私はいかなることがあつても、保安隊だけをりつぱに育て上げたい、警備隊またりつぱに育て上げたい、この一念でやつているのであります。かような汚職事件を起しましたことは、まことに私は国民に申訳ないと考えております。しかしかようなことでもつて、日本の保安隊なり警備隊が、国民の信頼を失つたらどうなるか。あまりこれを声を大にして、傷つけられるごときことがあつては、私は泣いても泣ききれない。おそらく十万になんなんとする保安隊、警備隊は涙をのんで痛憤しておるだろうと思う。全部が腐つているわけではありません。私は全国各地をまわつて見まするに、実によくやつてくれているのであります。九州の災害、近畿の災害におきましても身を挺してやつてくれておりました。これは何からやつているか、やはりわれわれの手によつて日本の平和と秩序を維持して行こうじやないか、この烈々たる気魂のほとばしりであろうと考えております。決して腐つているわけではありません。一部腐つている人間もおりますが、これはどこの世界だつても当然であります。保安隊ばかりではありません。どこの世界に行つても腐つた人間はおります。しかし国民の信頼をかち得なければならない保安隊、警備隊においては寸毫も国民の不信を抱くようなことがあつてはならぬのであります。その点についてわれわれは総力をあげて、ここに再びそういうようなことのないような処置をして行きたいと思います。この点についてはいろいろな難関にぶつからなければならぬとは考えますが、私老骨はなはだ用をなさない者ではありまするが、この精神をもつて将来保安隊、警備隊の育成に力を注ぎたいと考えております。かわりになるお方があれば、いつでもかわつてやつていただきたい。私は何もこの位置に恋々としているわけではありません。今申し上げている通り、私も老後安らかにして行けば、個人として最も仕合せであろうと思つております。世の中の憎まれ者を買つて私がやつている、その精神をおくみとり願いたいのであります。私は老骨でありまするが、この余世を何も求めているわけではありません。ただただ保安隊、警備隊の育成のみを望んでいるのであります。今後皆様の御協力を大いに願いまして、いかぬ点はどんどん言つていただきたい。反省いたします。そうしてよりよき保安隊、警備隊をつくりたい、私はこう思つておる次第であります。
○増原政府委員 私は地方の知事をやつておりました者ですが、どういうわけでありましたか、警察予備隊の長官という役を仰せつかりました。爾来長官から次長とその職務を続けております。私はこの仕事は非常に大切なことであると考えて、乏しきにむちうつて努力を続けて来ているわけであります。保安隊、警備隊の将来がわが国のために非常に重大であることは、皆さんのたびたび御指摘になつた通りであります。私は役人の地位にあります。長官の信頼を得て、お前しつかりやれと言われる間は保安隊、警備隊の基礎確立、また近く任務をつけ加えるというふうな重大なときにもあたつておりまするから、私としては最善を尽してりつぱな基礎の確立、私の職分に応じて努力いたして行きたい、こう思つております。
○平井委員 お二方の信念もわかりました。来るべき国会、すなわち一月二十五日から再開されますが、これまでにひとつりつぱな保安隊の形をつくつて、そうして保安隊の問題をわれわれは審議いたしたい。一々個人がどうだとか、だれをどうするということは申し上げません。私どもは最初からそういうことはないのであります。しかし人間が人間の道をはずれれば、ただやめたくらいでは私は済まさぬ。しかしながらここらでひとつほんとうに心を入れかえて指導するということになれば、何をか言わんであります。従つて辻さんの言われるがごとく、内部において辻さんのところに行けばぐあいが悪い、こういうことがまたあつてはならぬし、私はないと信じます。なお加藤人事局長はこういう点もひとつ十分に考慮していただきたい。同時に、林幕僚長は人格者だ、こういうことを言われます。私も知つておりますが、いかに人格者でも監督が不行届な場合は、これはやむを得ない。そこで今後間違いのないように、いい人もおりましようが、部下のために責任をとらなければならぬようなことができるのでありますから、そういうことが絶対起らぬという信念と、増原次長においては、保安隊が大衆の信頼を受けるように、こういう形によつて事件はこうなり、今後はこうするんだ、そうして国民の輿望にこたえるという声明を国民に向つてぜひしてもらいたい。そうして新しい年から、りつぱな、信頼のできる保安隊としてわれわれはこの委員会で研究をいたしたい。こういう汚職事件ばかりで委員会がいつもにぎわうということは実に情ない。そこでくれぐれもお願いしておきたいのは、今後はほんとうにだれが見ても、これならよかろうという姿をもつて来国会に臨んでいただきたい。こういう要望をいたしまして、私の意見なり質問を終ります。
○稻村委員長 下川儀太郎君。
○下川委員 前回の内閣委員会におきまして練馬の事件が追及された際に、制服の指導者並びに増原次長から遺憾の意を表された。同時にその際に今後は愛情を持つて部下たちに接するということを申し述べた。ところがそういう愛情を持つてこれから指導すると言われた人々の中から、また指導部の中にこうしたいわゆる疑惑を持たれた人物が出て来た、こうなつて来るとわれわれははたしてだれを信頼していいかわからなくなつて来る。これはおそらく私ばかりでなくて、全国民がひとしく感じておることであろうと私は考える。しかも一体愛情とはどういうことを言つているのか、甘つちよろい言葉でもつて隊員をなだめるとか、あるいはさとすとかいうことではない。きびしく国民やあるいは国に、あるいは部下に犠牲することが、これが指導者の愛情なんだ。そのきびしく犠牲するという言葉を全然忘れて、みずから私腹をこやしておる。そういうことが新聞紙上に書かれるとするならば、これは一体指導者の価値というものはどこにあるかということを、われわれは言いたくなつて来る。もちろん木村長官が先ほど、日本人は人を誹謗したり、あるいは悪口を言うことがすきだというように言つておられたが、私もそう人の悪口を言いたくはない。しかし天下の大新聞が二、三日にわたつてこの吉田総監のことを書いておる。しかもその内容を検討してみると、そううそつぱちのようなことが出ておるわけじやない。捕われた隊員の口から、みずからの首を切られるのがいやさに、吉田総監の言いつけで商人の家をまわつたり、あるいはコミツシヨンをせしめて歩いた、そういうことが告白されておる。そうなつて来ると、先般処理された十数名の隊員は一体どういう立場に置かれるだろうか、私はあの際、彼らが何がゆえにそういう罪を犯したかというその根本を追及してほしいということを長官に言つた。それは事実となつて現れて来ておる。ひつきようそれらの罪ではなくして、それを使嗾した幹部の責任、幹部の罪だ、私はむしろそれらの隊員は無罪にしてやりたいぐらいに思つている。しかも吉田総監の談話を読んでみると、交際費がかさむ。アメリカの方は兵隊勘定で割勘ですべての宴会の費用は払うけれども、日本人は悪いくせで、招待あるいは宴会の場合はほとんどが総監が自腹を切るということを言つておる。そうなつて来ると、言外に自分の交際費がかさむ、かさむからそういうことをあえてしなければならなかつたというようなことがにじみ出て来る。しかも奇怪なことには、先般ここに呼び出されたことを行き過ぎだと言つておる。制服のわれわれを委員会に呼び出すのは行き過ぎだと言つておる。これはむしろそう言う方が行き過ぎなんだ。昔の軍隊ならいざ知らず、今日の民主政治の社会にありましては、国民の税金によつてまかなわれておる保安隊なんだから、国民の代表が、疑惑があればその当事者をここへ呼んで追及するのは当然なんだ。それを、制服を着ておる指導者をこの席上に呼ぶということははなはだ行き過ぎだと言う。そういう考え方で保安隊の指導をしておるから勢い官僚的にもなり、あるいは昔の独裁的な、軍閥的なそういう行動をみずからやつていることを恥とせずに、奴隷的に隊員を使嗾して、みずからの交際費をかせがせるような結果になる。私は愛情という問題を、先ほど木村長官が言われたと同じように、おのれをむなしゆうした、いわゆるほんとうにいけにえの気持ですべての行動をとつてほしい、それなくしては実際の政治はでき得ない、こういうことを考えて参りますと、私はそこにすわつておる方々自身も疑わしくなつて来る。今日あなた方は答弁されておるけれども、辻委員の言をもつてすれば、今後次々といろいろな汚職事件を発表すると、言つておる。あるいは新聞記者も今後二、三回は続けて発表すると言つておる。そうすると、きようの真実があすの虚偽になつて来る。次々とこういう問題が発生した場合には一体長官はどういう責任をとられるか、同時に直接の責任者であるところの増原次長はいかなる処置、いかなる進退をきめようとするのか、それをまず明確にお聞きしたいと思います。
○木村国務大臣 今後続々かような事件が発生するかどうか、これは私は今後のことは見通しはわかりませんが、さような事実は多数発生しないものと私は予想しております。この事件につきましては、なお調ぶべきものがあれば十分に取調べて、明白にいたしたいと考えております。今後の処置については私は十分責任を持つて行動いたしたいと思つております。
○増原政府委員 私が直接の責任者というふうに言われましたが、私は次長として長官を補佐しておるわけで、長官を補佐して、監督をするという責任を痛感いたしております。直接の責任者という建前ではございません。それぞれの責任のある者が上下に統率をして保安隊をなしております。それぞれ上級においてそれぞれの負うべき責任は負わなければならぬ、私も次長として長官を補佐し、監督をすることを補作をする者として責任を感じておる次第であります。将来にわたりましてかようなことが起らないように十分組織の上においても人事の上においても努力をして、長官を補佐して懸命にやりたいと思つております。
○下川委員 直接の責任者でなくても、世論は何か木村さんがロボットで、一切は増原次長がやつておるというように言つておりますので、そのように申したのでありますが、ただ私は、こういうことが発生しないように努力するということではなく、もしたくさん出て来た場合には一体どういう責任をとるか、それを聞いておるのであります。
○木村国務大臣 ただいまの見通しについては、大きな問題は起らないと考えておる。それはすみずみには、大勢の隊員のうちですから多少のことはあるだろうと思いますが、しかし上層部に波及するような問題というものは——それは神ならぬ私ですから、あるかわかりませんが、ないと私は予想しております。そういう万一の場合がありますれば、相当私は自分でやるべきことをいたしたいと考えております。
○増原政府委員 今長官の仰せられた通りでありまして、私は長官を補佐する者としてその責任をとるようにして行きたいと思います。
○下川委員 そこでこの問題と別にお聞きしておきたいことは、先般も申し上げましたけれども、保安庁の入札の状況を見て参りますと、非常に随契が多い。保安庁としてはこの随契はどういう角度に立つてするのか、その点をひとつ明確にお教え願いたいと思います。
○増原政府委員 便宜私からお答えをいたしますが、随契をなし得るものはそれぞれ法令に基いてきまつております。ある一軒でしかできないようなものは当然随契になる。競争入札なり指名入札なりにすることが調達の目的に沿いがたいという場合にも随契をなし得るわけであります。保安庁において現在随契を行つておりますものは、これはそれぞれ第一幕僚監部、第二幕僚監部で行つておるのでありますが、随契を行いまする項目をきめるときは、最初は内局の方へ相談をする、そしてこれは大蔵省あたりとも相談をするという建前でやつておるのです。今やつております大きいものは車両が一番多いと思います。あと通信機械類も相当種目としてはあるわけであります。これは競争入札もしくは指名競争入札で行うのでは、物品の調達が適当でないという建前でもつて随契をやるということにしておるのであります。
○下川委員 そうすると随契の場合は特殊な技術を要して、一軒しかできないとか、あるいは特殊な部品が必要で、そこのところにしかないとか、そういうようなときに随契をするのでございますか、その点をもう一度明確にしておいていただきたい。
○増原政府委員 そういう場合は随契になりまするが、たとえば車両で今随契をやつておりまするのはジープ、これはパテントの関係というようなことで、ここでなければできないという形で随契をやつております。そのほかのものはニッサンとかトヨタとかいすずとかいう比較的その各社の得意なものの車両を振りわける、たとえば四分の三トンのものはどこ、二トン半のものはどこ、二トン半の中でもウインチのついたものとつかないものというようなことで、大体現在ありまする大きい車両会社の比較的得意なところに振り割つて随意契約をいたしております。そういう調達のやり方であります。
○下川委員 自動車のことはわかりまするが、衣料とかカン詰とか、そういうものはどういうことになつておりますか。
○増原政府委員 衣料は私の方では事務をとつておらぬので、こまかくわかりませんが、衣料は大体において私は競争入札及び指名競争入札であると思います。ごく特殊なものは随意契約でやつているかと思います。カン詰類などを随意契約でやつているということは、今よく了承しておりませんが、カン詰類などは大体指名競争入札とか競争入札でやつているのではないかと思います。備蓄食糧についてはたしか指名競争入札でやつているものがあるというふうに考えております。
○下川委員 じようだんを言つては困ります。これは少くも特殊な品物とかパテントのあるものとかいうことならわかつておりますが、あなたの方からいただいたこの入札の資料を見て参りますと、その中には靴下が随契になつている、あるいは制帽がなつている、軍服がなつている、一般の肉のカン詰などが随契になつている。はなはだしいのにはみつ豆が二十六万幾らというように随契になつている。それが個人でなく、点々として随契としてこれにしるされている。みつ豆にしろ、靴下にしろあるいは衣料品にしろ、カン詰にしろ、どこでもできる品物なんだ。どこでもできる品物ならば、最も品質がよくて、最も安いものを競争入札すべきだ。それがどこでもできる品物を随契にする。そこに私は疑惑があると思う。一つ一つこれを追究したら必ずそういう問題が出て来ると思います。あなたが保安庁に帰つてこれを調べてみればわかりますけれども、ちやんと随契の名前まで、割当先まで列記されている。一体随契というものはいわゆる継続事業とかあるいは優秀なパテントを持つている会社とか、特殊な技術を有する、そういう製品に限られている。これは世界的な常識なんだ。ところが一般の軍服とか帽子その他多くの中に随契があるということは、これは明らかに越権行為だと思う。安い、品質のいい品物を競争入札させて、安いものを入れる。それだけ国民大衆の税金が非常に低額になる。それが違つた方面に振り向けられる。それをわざわざ随契にして、高いものを買わなければならぬ。その根拠が一体どこにあるか、おそらく三〇%あるいは四〇%、無数この中に書いてある。これは一体どういうわけなのか。その真実を説明してほしい。
○増原政府委員 ちよつとその方の係が今おりませんので、具体的にこまかに説明を今いたしかねます。事情をよく調べましてからお答えするようにしたいと思います。
○下川委員 いやしくも保安庁の増原次長さんが、そういう多額の金額を購う場合においては、これは当然調査すべきである。しかも二十七年度の入札状況の中にも、二十八年度の入札状況の中にもたくさんある。それを今日まで知らないということがふしぎなんです。係官を呼ばなければわからないというのではなくして、少くともそういう相談にはあずかつていると私は思う。しかもこれはあなたの保安庁から私たちが数年受取つて来た入札状況のプリントなんです。出したあなた方が知らないという法はない。無数な随契なんだから、その一つ、二つの内容がわからぬはずはないと思うから、よく考えて説明してほしい。
○山上説明員 私総務課長でございまして、昨年の初期におきまして調達を実施いたしておりましたので、その関係で今日のことは詳細存じませんが、申し上げますと、現在出されました資料についての個々のことは私よく承知いたしておりませんが、随契にいたす場合には、私どもがやつておりました時分には、先ほど次長さんがおつしやいましたように、こういう規格であるためにそれの生産品がこういう会社でなければできないというようなものであるとか、あるいは特殊の会社以外には生産量がとうてい間に合わないというようなものとか、そういつた特別のもの以外は大金額のものの随契はないのでございまして、原則としては競争入札、特に指名競争もしくは一般公開入札というふうに私はやつて来た記憶を持つておるのでございます。ただいまのお話のうち、くつ下とおつしやいますのは、おそらく私の記憶ではくつ下の規格につきまして、特別の繊維品が入つておる特殊の繊維品、一定の会社のみではできないというような関係から随契になつたのではないか、こういうふうに想像されます。
○下川委員 特別の繊維品が入つているにしろ、日本の非常に繊維品の生産の国だからどこへ注文してもできるはずです。みつ豆にも特殊の甘味が入つているわけではありません。あるいは帽子にしたつてそうであります。肉のカン詰にしたつてこれはどこでもできる、一つ一つこれを調べてごらんなさい。商店の名前と品名と価額が列記されてあつて、そうして随契となつておる。あなた方幹部がそれを知らなくてどうする、そういうところに国民的な疑惑が持たれて来る、そういうところから疑獄事件が発生する、随契なんというのはこれはなれ合い購入です、なれ合い購入ならコミツシヨンは幾らでももらえる、競争入札で安い品物を安く売る、よい品物を安く売る、そこに国民が非常な喜びを感ずる、そいつをあなた方自身が指導部にあつて随契をする、しかもどこででもできる品物をかつてになれ合い購入する、そういう行動自身の中にも、やはりこの練馬の保安隊のようないろいろな事件が発生する、きようはこれで打切りますけれども、その点を十分あなたの方で説明をつけて次会までに御返答をお願いしたいと思います。
○稻村委員長 保安隊及び警備隊に関する調査は本日はこれまでといたします。なお下川委員の物資購入に関する質疑は担当者、責任者の出席をまつて次回に行います。 行政機構改革のうち警察制度に関連して下川委員より法務大臣、緒方副総理に対する質疑の通告がありますが、法務大臣が所用のため本日出席いたしませんので次回に留保いたし、法務大臣及び緒方副総理の出席をまつて調査を行いたいと存じます。 行政機構に関しまして、かねて塚田行政管理庁長官に要望しておりました機構改革案が提出されてお手元に届いておると思いますが、これを速記録に掲載しておきます。なお塚田長官は本日は御出席できないとのことでありますので次回に譲り、本日はこの程度にとどめ、次回は明日午前十時に予定しておきます。 本日はこれをもつて散会いたします。 午後零時二十五分散会