地方行政委員会公聴会 第2号
- 発言数
- 193 件
- 登壇者
- 20 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1954/03/17
会議録
○中井委員長 これより地方行政委員会公聴会を開会いたします。 本日も一昨日に引続きまして、警察法案外一件につきまして、公述人の方々より御意見を承ることといたします。 この際公述人の方々に申し上げますが、御多忙中にもかかわらず、本委員会のため御出席くださつたことに対し、厚くお礼を申し上げますとともに、忌憚なく御意見をお述べくださることを希望いたす次第であります。 それでは議事の進行上、ただちに公述人の方々の御意見を承ることにいたしますが、その公述時間は大体十五分ないし二十分の予定であります。何とぞその要旨は簡明にお述べいただきたいと思います。なお御陳述が終りました後、各委員諸君から質疑があることと存じますから、何とぞ御承知置きを願います。 まず東京都議会副議長清水長雄君。
○清水公述人 警察法の改正につきましては、東京都議会は、東京都を一円といたしましたところの一本の完全なる自治体警察を強く主張し、これを決議しております。そこでこの線に沿いまして、これから述べたいと思つております。 占領治下におきまする行き過ぎの点につきましては、もちろん是正すべきでありましようが、警察の根本でありまする警察の中立性につきましては、どこまでも長く存続し、いやしくも時の権力者が警察を濫用するようなおそれのある制度につきましては、断固反対いたし、また同時に地方分権の趣旨を没却いたしまして、地方自治体が完全なる自治体警察を持ち得ないような制度に対しましても、反対をいたすものであります。 御案内のように、東京都は人口七百五十四万を数える、最も大きな完全なる大都市であり、地方自治団体であります。同時に一面におきましては、都市の性格を持ちまする公共団体であります。従いまして、いずれの面からいたしましても、東京都が完全なる自治体警察を持つことは当然であります。そこで現在改正にあたりましていろいろ論議になつておりまするが、そのうち最も大きく問題視されておるのは、何と申しましても、都道府県一本の警察制度の問題と、任免の問題であると思います。 東京都は先ほど申し上げたような大都市の性格を持ち、一面におきましては府県の性格を持つております。さような関係で、三多摩の自警、国警に関係しております市町村の理事者、並びに議会はもちろん、国警、自警に関係をいたしておりまする職員も、また警視庁に統合し一本となることを希望しております。さような関係で、民主主義の原理に基き、当然東京都は一円といたしましたところの警察制度にいたすべきことを至当と考えるのであります。 次に任免権の問題でありまするが、この問題につきましては、特に東京都に関係いたしておりまする警視総監等のことにつきまして申し述べたいと思います。政府原案によりますと、警視総監の任免は、内閣総理大臣が国家公安委員会の意見を聞いて任免することとなつております。申し上げるまでもなく、東京都の公吏委員会は、東京都七百五十四万人の人たちの手によつて選ばれた東京都の知事が、公安委員を推薦し、また東京都民の手によつて選ばれたる都会議員が組織しております都議会の承認を得て、これを任命しておるのであります。従つて東京都の公安委員会は、まつたく東京都民の手によつてつくられたものです。この東京都の公安委員会が、警視総監の任免に関し何らタツチし得ない。任免権を持つていないということにつきましては、まことに不合理きわまるものでありまして、あたかも会社におきまするところの顧問のような感じがいたすのであります。かようなことになりますれば、結局時の権力者に警察が濫用しやすいようなことに相なるのでありまして、これに対しましては断固反対をいたすものであります。また警視正以上の幹部の任免でございまするが、これも政府原案によりますと、国の警察庁長官が任免し、普通の国家公務員というようなことに相なつておりまするけれども、これにつきましてもまた反対をいたすものであります。申し上げるまでもなく、警察は他の一般公務員と異なり、指揮監督の関係が非常に強く作用されるのであります。いわゆる命令服従の関係が強いのであります。そこで警視正以上の幹部が国の公務員であるということになりますと、結局警視庁全体があげて国家的性格になり、また口では自治体警察と称しましても、実質は国家警察のような形に相なるのであります。 またこの任免権の問題と関連いたしまして、予算の面につきまして一言申し上げます。警視庁の二十九年度の予算は百八億であります。そこで今回政府原案のごとく改正をいたします場合におきましては、約十億の金が政府から東京都に交付になります。しかし三多摩におきまする警察が統合せられる場合におきましては、三多摩の警察に要する費用が約十億を必要といたします。そこで差引ゼロということになりまして、依然として百八億の金は都の費用をもつて支弁しなければなりません。しかし先刻申し上げたように、警察の幹部が国家の公務員でありますれば、結局警視庁全体が国家的性格となり、国家警察というような形になります。さような形態のものに対しまして都の予算を依然として、百八億計上することは、不合理きわまるような感じがいたします。そこで予算の編成、審議等にあたりましては、警察の幹部と東京都の理事者、あるいは都議会との間に混乱を招くようなおそれが多分にあります。 また戦争以前の警察制度におきまする場合におきをして、国からどの程度地方に予算がまわつておつたかという点を比較いたしまして、一応申し上げるならば、もちろん当時の警部というようなものは、地方が任免権を持つておつたのでありますが、予算は警部、警視あるいは警察部長というようなものは、全部国庫支弁であり、また地方公務員でありまする警部補以下の職員の警察予算というものは、大体警視庁に対しましては十分の六、大阪府に対しましては十分の三半、その他の府県に対しましては六分の一というようよ割合をもちまして、国から交付になつておるのであります。これらの割合を見ましても、いかに警視庁に対しまして多く交付になつておつたかという点がわかるのであります。これらを考えますと、まことに思い半ばに過ぎるものがあります。また警察の事務の内容につきまして、警視庁は政府の所在地であるから、国家的警察事務が多いであろうということは一応想像し得られるのでありまするけれども、実際にこれを調査してみるならば、国家的警察事務は約一割五分であります。その他の八割五分、大部分は、東京都民の直接関係いたしまする地方警察事務であります。これらの事務の割合からいたしましても、任免権の問題が主客転倒しているというような感じがいたすのであります。そこで私は、警視総監の任免につきましては、東京都公安委員会が、国家公安委員会の意見を聞いてこれを任免する、または、もしさようなことができないならば、現行通り東京都公安委員会が内閣総理大臣の意見を聞いて任免することが妥当であろうと思います。また警視正以上の幹部につきましては、現行通り地方公務員といたすべきが当然であると思います。 最後に、一言重ねて申し上げます。何と申しましても、せつかくできました警察制度であります。この最もよいところの警察の中立性を長く存続させまして、いやしくも時の権力者に警察権が濫用せられるようなおそれのない制度にし、かつまた地方分権の趣旨が長く存続いたしまして、地方自治団体といたしまして、完全なる地方自治警察が持ち得るような制度になることを強く主張いたします。 以上であります。
○門司委員 議事進行について……。ほかのことではありませんが、公述人においで願つて公述をわれわれ聞いておるのでありますが、これは単にわれわれが聞くだけではありませんで、やはり政府側の諸君も来てもらつて、一緒に聞いた方が私はいいと思います。従つて、ひとつ当局の出席を至急要求してもらいたいと思います。
○中井委員長 門司さんにお伺いします。ただいまの御趣旨ごもつともであります。委員会といたしましては、本日この公聴会のあることは政府側によく伝え、その出席をあらかじめ求めておいたのであります。いまだ政府当局の出席していないことはまことに残念でありますが、さらにただいま出席を要求いたしました。この間政府当局が来るまで公述人の公述を中止せよとの御趣旨ですか。公述は進めても異議なしとの御趣旨でございますか。
○門司委員 私は、できればやはり当局に来てもらつた方が筋が通ると思います。あまり公聴会が形式的に流れて、ただ話を聞くだけでよいということであつてはならないと思います。われわれも研究すると同時に、やはり当局にも研究してもらいたい。それにはやはり国会が御苦労願つておりまする公述人の意見が、当局側にも十分反映するようにしていただきたい、私はこう考えております。
○中井委員長 いかがでしよう。時もだんだん過ぎておりますから、一応公述人の公述は進行するというようなことで御承知願つては。
○加藤(精)委員 当局側が陪席拝聴しませんのは、他にいろいろ議会要務等があることからであろうと思つております。しかし、それはこの委員会の構成には関係ないのです。主として委員がこの公聴会において公聴するわけでございますから、進行だけはしていただいて、その間極力出席を督促していただきたい、こう思つております。
○中井委員長 いかがでしよう、公述人の公述を進めることにいたしては……。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中井委員長 それでは委員各位の御了解のあるものとして、公述人の公述を進めることにいたします。なお政府当局の出席を重ねて催促してください。 次に神戸市長原口忠次郎君の御公述を願います。
○原口公述人 私は、ただいま御紹介をいただきました神戸市長の原口忠次郎でございます。本委員会におきまして、警察法改正案に対する意見を開陳する機会を与えられましたことを衷心より御礼申し上げます。 御承知のごとく、現行警察制度発足以来六年間、敗戦に続く道義と経済生活の混乱によつて、犯罪は量質ともに増大し、特に社会秩序を破壊する事犯が頻発して治安確保が最も案ぜられました最悪の時期を通じまして、都市警察は、一方において人権の尊重、他方において秩序の保持と犯罪その他の事故防止という、この離れ離れになりがちな二つの目標を調和させながら、わが国の最も重要な地域を担当し、現在まで十分に治安確保の国家的要請にこたえて来たのでありまして、このことは、都市警察がその規模と能力において十分であり、また住民の信頼を得ている証拠であると存します。繰返して申し上げますが、都市警察、なかんずく大都市警察は、その規模と能力において十分であつて、わが国の警察の中核をなし、しかもその運営は民主的に行われて、人権尊重に遺憾がないのであります。私どもはこの実績を有し、現在その健在を誇つている都市警察を廃止せんとする政府案には、何としても納得ができないのであります。しかも、政府は従来から自治体警察をまま子扱いにしております。都市警察がその経費の財源不足に悩み、絶えず政府に要望していたにもかかわらず、政府は不足がちな平衡交付金以外には、市町村警察に対しまつたく国費を出し惜しんでいましたのに、一旦ひもつきの都道府県警察実現ともなりますれば、特定経費の全額負担はもちろん、一般経費の相当割合に国費支出の気前のよさを見せるのは、それを裏書きしていると存じます。もし政府がごのたびの府県警察に対する財政援助を今日まで都市警察に与えておられますならば、より一層運営の完璧を期し得たでございましよう。 ここで少しく都市自治体警察のあり方について申し述べてみたいと存じます。警察の機能は国家的治安に関係する騒擾事件とか、全国的手配を必要とする刑事事件に対処いたすことももちろんでありますが、また日々の住民の日常生活に直結した警察、すなわち交通、保安、防犯、青少年の補導等にも重大な使命を持つておりまして、実際の警察活動では、この二つの任務が渾然一体をなして遂行されなければならないことは、御承知の通りでございます。交通警察と道路管理者の間、青少年の教育と補導について、救貧事業と防犯との関係について、公衆衛生と風紀取締りというように一々数え上げて申し上げるまでもなく、すべての市政はこまかい点まで警察が阿吽の呼吸を合せて運営せられるかどうかによつて、その総合効果は非常に違つて参るのでございます。この事実が無視せられまして、単に治安力強化の一面のみを取上げて警察が都市行政から切離されれば、都市行政の総合的運営は阻害されることになりまして、それによつて得るところの利益よりも、失う損失の方が国家的に見て大きいのでございます。さらに警察は必然的に権力の行使に主力を注ぐこととなりまして、市民の人権が侵害される危険が増すでございましよう。都市警察の明るさは失われ、市民の感情は急速に警察から離反して行くことは必然でございましよう。こうなれば、警察は予期した能率が上りませんから、警察当局はさらに一層権力強化の手段を考えることになり、次第に戦前の警察に復帰するおそれがありまして、このようになるのを防ぐのが民主警察の根本理念であると考えるのであります。市民の協力を得られなくなつた警察は必然的に人員を増加し、これに伴つて経費も増高することとなりましよう。 次に最も重要なことは、警察の地方分権が、多年の政治的経験によつて警察の中立性維持のため最上の制度となつていることであつて、これについては、ここに多言を要しないのであります。これらの都市警察の本質を考えますれば、改正案は民主警察の本質の理解において誤りを犯しており、あまりこも警察力の権力的強化に偏向して、自治体と自治警察の中核を破壊し去ろうとするものであります。もちろん行政財政能力の弱い市町村については、実際問題として、自治警察を維持することが無理であり、警察行政の能率的な運営がむずかしいことを認めないものではございません。このような市町村については、住民が自主的にその採否を決定し得る道を開いておくことは、制度として必要であると思います。しかしながら、弱小市町村の自治警を廃止する必要があるから、この際市町村警察はむしろ全部廃止すべきであつて、能力があるからといつて、一部の都市警察を存置することは不適当であるという議論が行われておることは、まことに不可解と存ずるのでございます。かつて米国からわが国に税制改革の使命を帯びて来朝したシヤウプ博士の調査団が、わが国の地方自治体をつぶさに調査いたしまして、結論として勧告していることは、あらゆる地方の事務は、民主政治の理念からも、その負担能力のあるところの最も住民に近い関係の事務とすべきであると申しております。外国人の意見を引用するまでもなく、かつて地方行政委員会議の二箇年にわたる調査の結論において、また地方制度調査会の答申においても、警察事務を含むすべての行政事務は、できる限り住民の身近な地方団体に行わしむべきであるという原則は貫かれているのであります。政府案では、府県警察によつて行政の簡素化と民主的保障をはかると申しておりますが、府県の民主的性格については、多大の疑問を持つております。この府県に警察行政を担当せしめる場合は、警察の自治的、民主的運営が保障せられないと考えるのであります。しかしこの点につきましては、時間も制限がございますので、省略させていただきますが、要するに府県警察は、民主警察の理念にはなはだ遠いのでありまして、民主警察の育成を期する限り、なるべく多数の都市警察を存置すべきであると固く信ずるのであります。しかしながら私は、国家的事案に関し、制度及び運営の上から、国家の関与を否定するものではございません。ここにこれを強く付言いたします。元来本改正案の理由といたしまして、共産党対策等が強調せられておりますが、このような国家的事案に関しては、地方自治的色彩の濃い地方警察事務と区別して、FBIのごとき独立の国家警察制度を設くべきでありますが、これを経済上、財政上の理由などから一本化すべきであるとするならば、事務の量とその日常性からいつても、自治警察を本体として、これに国家的の必要の限度においてのみ、その運営、人事、組織等に関与を認めるにとどむべきであります。政府は今回の改正案をもつて、自治警察であると強弁せられておりますが、首脳部の任免権が国家に存する自治ということはあり得ないのであります。政府の原案は、この意味で必要の限度を越えて一純粋、強力、かつ集権的な警察制度でありまして、旧内務省のもとにおける警察制度にも増して、危険な権力の集中を来すものといわざるを得ないのであります。 次に、市町村警察の非能率の一面として、自治警察相互の連絡が悪いということが指摘され、特に都市と周辺部との関係に警備の盲点があるという議論があります。統計によりますれば、たとえば神戸市の凶悪犯罪の被疑者のうち、その住居地が神戸市内にある者八四%でありまして、あとの一六%のうち、さらに半数以上が他府県であり、周辺部に住居を持つ者はわずかに七%であります。これから推測できますことは、都市は周辺部に対すると同様程度に、他府県との連繋の必要があるということであります。むしろ都市警察は、隣接の府県にとどまらず、全国的な規模において犯罪捜査、治安確保の総合的協力をはからなければならないのでありまして、現にこの方針に沿つて、両面を考えながら通信、鑑識施設の整備、応援協定の締結等がなされておるのでありまして、またこの分野においては、国家もまた自治警相互の連絡調整に当るべき任務を持つておるのであります。 特にこの際一言いたしたいことは、大都市周辺に盲点ができるといわれるならば、府県相互間、たとえば東京都と神奈川県、大阪府と兵庫県の間にも同様に盲点ができるといわなければならないのであります。 次にわが国の経済力にかんがみて、経費の節減をはからねばならない。市町村警察と国警の並存は不経済であるという議論であります。私どもは、さきに申し述べました通り、行財政能力の弱い市町村については、現在の国警の制度でよいと考えておりますが、能力ある都市の警察は、あくまで民主警察の支柱として存置すべきであると確信しており、決して単なる経費論で本末を転倒すべきでないと考えます。また府県は、五大市を廃止すれば二十億の人件費の節約と五億の物件費の節約か可能であるとも申しておりますが、これはまつたく実態を無視した悪宣伝であります。一例をあげますと、一般警察職員の二割減による十億円の節約を算入していますが、五大市警察の現在の定員は、戦後の特殊な治安維持の要請に基いたものでありまして、その後すでに縮減の措置が講ぜられており、現行制度のままでも二割減員の程度はいずれ実現するものであつて、これは府県警察への統合と何ら関係がないのであります。また統合によつて五大市警察本部員を八〇%減員し、約十億円を節約するというがごときは、これらの職員が、どのような職務に従事しているかも検討せずして言われた議論であつて、実際はパトロール隊、機動隊などの第一線部隊を含む本部はせいぜい約二〇%、二億円程度を節約できるぐらいでありまして、この点に関する府県の主張は、故意に事実を曲げんとしているものであります。ことに私が奇怪に存じますのは、今回の改正からわずか一年前に、同じ政府、同じ大臣の下において提案せられた警察法の改正案においては、五大市に府県と同様の警察単位を認めながら、何ゆえに今回これを否認せねばならないかということであります。治安状況に格段の変化もなく、経費節約の問題についても、五大市警を存置してもほとんどかわらないのでありますから、われわれはその理由を見出すのに苦しむのであります。 今や関係都市三千万に及ぶ市民の間には、政府の都市警察廃止案に対しまして、ほうはいとして都市警察を擁護せよという強い世論が起つております。このことは各地の新聞及びNHKを初め、地方放送局の街頭録音によつても明らかであります。委員各位におかれましては、これらの世論の動向を御明察くださいまして、何とぞ慎重御審議の上、都市自治体警察存置について格段の御配慮を賜わりますよう、この席をかりまして最後にお願い申し上げ、私の口述を終ることといたします。
○中井委員長 次は、熊本市警察本部長久原哲雄君より御陳述を願います。
○久原公述人 私は熊本市警察の本部長として、現行警察法が施行されましてから現在まで自治体警察の責任を担当いたしている者として、かつまた戦前戦後を通じ二十八年間にわたり警察に勤務いたした体験に基きまして、ここに目下審議せられつつあります警察法案に対して意見を申し述べます。 まず最初に、今次警察制度の根本的な大改革をせられんとするに際して、過去六年間実際に第一線で治安を担当して参りました自治体警察側の意見は、全然聴取せられなかつたと聞き及んでおりますが、この点について私はすこぶる遺憾に思うものであります。少くとも六年間における自治体警察の運営に当りました者の意見は、十分参考とせらるべきではなかつたかと存ずるのであります。 さて本法案の内容を見まするとき、その主眼とするところは、警察組織の一本化と警察権の中央集権化を企図せられ、そのために民主警察の基本的理念は完全に抹殺され、まつたく昔の内務省警察への逆行の感を深くせざるを得ないのであります。すなわち公安委員会の人事権を剥奪し、内閣総理大臣が警察庁長官と警視総監とを任免し、警察庁長官が府県本部長及び警視正以上の上級幹部の任免権を持ち、人事権はまつたく政府に直結し、中央集権の組織を確立せんとするもので、警察国家再現のそしりは免れないものと言えましよう。警察が政治的に中正なる警察活動を確保するためには、人事が民主的に保障されることがまず最大の要件だと信じます。私は最初に申し上げましたように、戦前の警察組織の中で長年勤務をいたしたものでありますが、その最も著しい弊害の一つとして、警察が政治的中正を失して政争の渦中に介入し、政府与党と結託して、選挙の干渉弾圧に狂奔した事実をつぶさに体験しております。当時私の県では、警察官が内閣と運命を共にして辞職し、内閣更迭のたびごとに現職と退職警察官とが交替し、現職警察官と退職警察官と対立して相争い、ひいては県民の政争を激化せしめ、選挙に際して警察官に対する刃傷ざたを頻発せしめるという、まことに憂うべき事態を現出したのであります。さらにまた戦時中における翼賛選挙においても、翼賛会が推薦する候補者以外は、自由立候補者と称してこれに弾圧を行つた事実等を思い起すとき慄然たるものがあるのであります。かように政治的に警察権の濫用が行わるるに至つたその原因は、少くとも当時の中央集権的警察制度のしからしめたものと言わざるを得ません。終戦後警察の民主化と地方分権とによつて、現在の自治体警察制度が実施されてから六年、その間数次にわたる各種選挙が行われましたが、選挙干渉等にわたるような事実はまつたく根絶し、最も公正なる選挙取締りが実施されておりますことは、まつたく民主的地方分権による政治的中立が確立せられた結果にほかならず、この一点からいたしましても、中央集権的警察制度が政治的中正を破壊する危険を招来するおそれが、多分に内蔵されていると言わねばなりません。改正法案では、昔の警察になかつた公安委員会制度を置いてあるので、その危険性はないと理論づけせられるでありましようが、人事権を持たない弱い公安委員会で、その危険を完全に防止することは困難でありましよう。現行法において、国家公安委員会や国警本部は運営管理の権限を有しないのでありますが、実際には会議または書面によつて、府県公安委員会の運営管理の権限に属する事項について指示が行われている実情であります。しかも新法案では、府県公安委員会は府県警察を管理すると、きわめて漠然たる規定に変更され、他の一方では、国家公安委員会に、国の公安にかかるものについての警察運営権と警察行政の調整権を与えてある点を考えますとき、人事権とともに強力な国家の指揮統制が行われることは必定となると思うのであります。 かような点からして、いついかなる時代に、いかなる者が警察権を利用し濫用するがごときことがないと保障されましようか。私は絶対的に人事権は公安委員会に与えらるべきものと考えます。政府は、人事権を持たなくしては国家治安の責任が持てないと言われるようでありますが、いわゆる国家的な治安については、政府で特別な指揮命令権を持ち、万一これに反するような場合においては、罷免勧告権を留保するというような方法によつて十分その目的は達せられると思うのであります。自治体警察といたしましても、国家的治安の面につきましては真剣に努力を払い、これらに対する問題については、逐一県本部に通報し、県本部より中央に報告せられているはずと存ずるのであります。現行法においても、内閣総理大臣の指示権、府県知事の重要事案処理要求権等が規定されています。しかしまだこれらの規定が適用された事例を見ていないのであります。 なおまた国警、自警と二本建では、国家的治安の確保に支障があると言われますが、大よそ国内治安は、警察のみで確保できるものではないのでありまして、現場の措置並びに違法、不法行為の検挙捜査は警察の職権でありますが、公安調査庁、検察庁等、治安機関の合理的、総合的緊密な連絡調整によつて実現できるものであります。特に事件の最終的処理については、検察庁で行われるのであつて、検察庁が全国的一本化されているので、全国的な治安問題に関しては何ら憂慮される点はないと存じます。しかも一部尖鋭分子の非合法活動に対しては、これは権力をもつて当るよりも、やはり大多数の国民市民が警察に真に親しみを持ち 警察活動に心からの協力を得ることが最も効果的であると考えます。ゆえに市民と親しみやすく、市民の警察だというような制度が最も望ましいところで、自治体警察制度がこの点からいたしましても最も適合したものと思うのであります。次に、自治体警察はばらばらで、連絡が不十分で、非能率であると言われますが、私は絶対さような心配はないと信じております。形の上ではばらばらなようになつておりますが、警察活動の実際の面においては、決してばらばらではないのであります。現行法上警察の責務は判然規定されておりまして、国警といわず、自治警といわず、この責務はまつたく同一であります。私どもはその責務を完遂するために、自警と国警、自警相互間に常に緊密なる連絡と協力をいたしております。その例として、県下の自治体警察署長と国警の地区警察署長の連絡協議会を設けて、国警隊長を会長としてときどき会合を開き、連絡協議をいたしております。また各係におきましても、それぞれ適時必要なる会合を開いて連絡をはかつておるのであります。自治体警察がばらばらにかつて気ままなことをいたしているようなことは絶対にないのであります。また能率の点におきましては、犯罪の捜査検挙の面でも、警備治安の面においても、戦前と比較して決して低下いたしたとは思いません。自治体警察制度実施当初におきましては、戦後の混乱時代で、治安面も安定せず、従つて治安を乱すような事件も発生したのでありますが、これは戦後の混乱した社会情勢下のことで、制度に基因するものとは考えません。しかも都市は治安上最も困難な状態に置かれていたにもかかわらず、戦後の治安ば一応安定したことは明らかな事実であり、都市を受持つ自治体警察の能率が、十分発揮されたことを立証するものと信ずるのであります。熊本市の特殊な問題として、昨年六月西日本を襲つた水害に際して、熊本市は前古未曾有の大泥水害をこうむつたのでありますが、当時被害のきわめて重大なるため、国警県本部に対して応援の要請をなしたのでありますが、国警においても応援派遣の余裕はないということで、市警の職員のみによつて当初の罹災者救助に当つたのでありますが、当時人命を救助した者五百三十八名に上り、二十万に及ぶ罹災民の救護活動は実に容易ではなく、かつまたその間災害を機として、一部尖鋭分子による罹災者への働きかけ等も行われましたが、警備警戒に努めた結果、これらに対するところの治安上の問題も何ら惹起することなく、また災害時の犯罪発生もきわめて少く、治安の完璧を期し得たため、市民は不安動揺することなく、復旧に立ち上り、きわめて敏速な復旧を見ることができたのであります。 犯罪捜査の連絡協調の面におきましては、警察相互間にきわめて緊密に行われております。連絡の不十分によつて犯罪検挙に支障を来したような事例は、かつて経験したことはありません。むしろ犯罪の手配その他連絡協調が、いかに緊密に行われているかという具体的な事例として、自分のところの例をあげてはまことに恐縮でございますが、昭和二十六年六月、国警の管下でありまする五家荘の入口に当る柿迫村の山奥である、西の高野山と称される釈迦院で、黄金仏像並びに現金の集団強盗事件が発生いたしましたが、この特殊事件の手配を受けた市警におきましては、ただちにこれが捜査に着手し、国警と緊密な連絡のもとに特別な一斉捜査を開始しました結果、事件発生の翌々日、市警において犯人全部を逮捕いたしましたが、検挙した刑事に対しては、即刻国警隊長から感謝状とともに賞与金まで贈られたのであります。 かように私どもは、犯罪の捜査については、管内とか管外とかいうような意識はまつたくないのであります。普通事件の検挙におきましても、年間熊本市で、他の自墜または国警管内で発生した事件を八百件程度検挙いたしております。また熊本市で発生した事件を他の自警または国警で五百件程慶検挙してもらつております。ともすると現在の制度では、管轄権に制限されて犯罪捜査が自由にできないようなことを心配される向きもありますが、現行法の規定においても、管外に捜査の手を伸ばすことは何ら制約されず、犯罪捜査上の不便はどうも感じないのであります。 以上の点からいたしまして、現在の制度では連絡が不十分とか、能率が上らないとかいうようなことは絶対にありません。 次に国警、自警の二本建の現制度においては、人員及び施設の重複によつて不経済な負担となつており、その経済的面からしても改正の必要があるといわれますが、熊本市の実際の面を考えて見まして、決して重複するようなことはないと信ずるのであります。同じ市に市警の本部と国警の県本部とが二重にあるのはむだな存在のように思われるかもしれません。しかしこれは実際の状況を申しますと、市の警察本部は警察吏員百十九名でありますが、その担当する仕事はほとんどが第一線で活動いたすのであります。その内容を申し上げますと、公安関係の人員は、直接警備治安関係の情報活動に当つておるのであります。警護交通関係の人員は、全市内の交通事務及び特別警邏隊の仕事に当つております。捜査関係の人員は、これまた同様特別な事件の捜査に当る特別捜査班といえるのであります。なおまた防犯関係におきましても、少年事件の処理、補導、保安関係の指導、取締り等に従事しておるのであります。これらは各所に分割配置すべきものを、その能率の面から考えて、本部で一元的に運用しているだけであつて、決して本部要員として別個に存在するものではないのであります。警務関係、企画関係というのがありますが、これは一本化されても当然必要な人員程度にすぎないのであります。警察の一本化によつて相当な人員の整理ができるとして、三万人の警察職員の整理をやつて、国家経済上多額の経費節減をはかるといわれておりますが、もしかような人員の重複が整理の対象と考えられるといたしましたならば、その誤まれるもはなはだしいと思うのであります。これは、まつたくそれだけ警察力の削減となることは必定であります。もし現在の治安情勢と国家経済の上から人員整理が必要だといたしますならば、自治体警察といたしましても、人員整理をすることはごうもさしつかえないと考えます。 さらに今回の改正によつて、自治体警察職員はその給与率及び退職金等著しく減額されることになつておりまして、すでに全国八万五千余の自警職員に一大不安と動揺を与えていることも見のがすことのできない事実といわなければなりません。一片の法律の改正によつて、多数の警察官の給与を減額するということは、平素黙々として働いている自治体警察職員に著しく不利益をもたらす措置であり、しかもこの不利益処分に対して警察官は法によつて労働組合の組織を禁ぜられており、一方においてこれを強く要求する法的措置も講ぜられていないのであります。これに対しては一時的手当をもつて補われるとされているのでありますが、もし、一本化された場合、一方には手当を受けた者と、一方には手当を受けぬ者とが生ずる結果となつて、これではたしてしつくりとした融和がとれ、円満なる執行務の運営が行われ得るでありましようか。これらの点を考え合せても、今次の改正の非妥当性がここにも指摘されると思うのであります。 以上、本法案に対し各問題点について意見を申し述べたのでありますが、結論として私は、都市自治体警察は存置すべきである、但し自治体の財政その他の事情によつて警察を維持しないことができるという制度が最も妥当であると信じます。ゆえに私は、この法案に対しましては遺憾ながら賛成できないのであります。
○中井委員長 公述人の御公述は一応終了いたしました。よつてこれより質疑に入ります。質疑は通告順によつてこれを許可いたします。鈴木幹雄君。
○鈴木(幹)委員 熊本の久原さんに一、二点簡単にお伺いをいたしたいと思います。あなたの過去三十年の体験に基く、ことにまた六年間の自治警の濫觴から今日までの体験から出ました御意見に対して、多大の敬意を持つて拝聴いたしたものであります。あなたのお話の中で一、二の点につきまして御意見を伺つてみたいと思います。 その一つは、警察は治安の維持確保ということが目的でありますが、それの最終の場面こおきましては、実力を行使する機関ということは争えない事実であろう。実力を行使してでも、また自分の身体に対する侵害をも顧慮することなくしてやらなければならない。こういと使命を持つておる機関なのであります。そういう機関というものは、おそらく多分に、国家的な使命を持つたものであり、そうであるとするならば、その活動、その運営が民主化されるということはもちろん重要な問題でありますが、この点をしばらく論外にするならば、どうしても組織的、系統的なものでなければならないという意見があるのであります。そういうことにつきまして、あなたの御体験から見まして、この点はどういうようにお考えになつておるかということをまずお伺いいたしたい。
○久原公述人 お尋ねの点について意見を申し上げます。お尋ねのように、警察が最終的には実力を行使しなければならぬというのはごもつともなことと存じます。かつまたそれに対しては、相当系統的ないろいろな尽力がなされなければならぬ。これも私お尋ねの通りに感ずるのであります。それにつきましては、やはりその度合いによつていろいろ問題は、あろうかと思いますが、この度合いに従いますところの警察の活動隊の組織につきましては、現在の制度下におきましても、各県等を一つの単位といたしまして、そうして国警、自警を一丸としたところの機動隊の設置をする、こういうことがきわめて必要であり、またそれによつて一つの府県に起り得ると予想されます事態に対して対処できるのではないか。それ以外の国家的な大きな事態に対しますと、これは警察力ではいけないと考えられますし、それにはまた現在あります保安隊その他の問題も考えられると思いますが、私は一応そういうふうに考えます。
○鈴木(幹)委員 今の点はわかりました。 もう一つお伺いいたします。それは人事の問題でありまりが、あなたのお話を承りますと、熊本市警創設以来六年間御在任になつたことと思います。私の知つておる限りにおきましても、市警の本部長と申しますか、市警の長になられた方は、大部分創設以来御在任になつております、その間に更迭をされたという方は、ごくわずかな方しか私は存じません。しかもその原因は、自分自身もしくは部下の間における不正事件であるとか、不当な事件というようなことの責任をとつたということが私の聞いている範囲における大部分の方でありまして、そういう以外の方は、おそらく六年間御在任になつて精励されております。まことにけつこうではありますが、同時に考えなければならぬことに人事の沈滞がある。ことに部下の側から見て参りますと、本部長は六年間以上――今後何年続くかわかりませんが、すわつておられるということは、一面安心感を与えますが、同時に自分の将来を考え、また励みというようなことを考えて参りますと、ここに人事の沈滞というような現象も一面にはあろうと思います。それは、現行法を一応是認する立場において、こういう問題をあなたの御体験から見るとどういうふうにお考えになつているか、こういうことを承りたいのであります。
○久原公述人 人事の問題についてのお尋ねでございますが、意見を申し上げます。 自治体警察は非常に人事が行き詰つておるというようなことを時たま言われるのでありますが、幹部が長年その席についておりますと、下の者が昇進できないというようなことは当然な話であります。しかしながら、自治体警察だからそうである、これが自治体警察の特殊性だということだけには受取れないだろうと思います。やはり自治体警察は、そこにおるからそうであつて、まわつて歩かないから非常に長くおるのではないかというような気も私はするのであります。そうかといつて、長くおるから下がはけない、まわつて歩けば下がはけるかと申しますと、まわつて歩いても、下がはけるというようなことにはどうも私は考えられないのであります。そのために人事交流をする必要があるのじやないかというような議論がありますが、これも一つの方法であろうと思います。従つて、かわつて新たな気持でやるという点におきまして、人事交流というものは必要だと私は思います。
○鈴木(幹)委員 御意見よくわかりました。 原口さんに一つだけお伺いしておきます。それは、今運営をなさつていらつしやいます市警の問題についてですが、市の事務として今自治警があるわけであります。そうして、市町村の任命といいますか、それによつて、公安委員会がこの人事運営一切をつかさどつている。そこで、市の事務の最高責任者として、理事者として、市長さんが公安委員会に対して関与しておるというのは、公安委員の任免をめぐる問題だけでありまして、それ以外の問題については責任もなければ権限もない。こういう建前になつているのが現行法だろうと思います。そこで私がお尋ねいたしたいのは、市長という市の事務の最高責任者、理事者として、公安委員会に対してそれ以上の働きかけをするということは違法だろうと思うのでありますが、そういう建前で、市の事務としての警察事務を処理する上において不都合な点はないか、物足りないという感じはしないか。もしくは市会の面から見まして警察の責任を追究するという場面を考えて参りましたときには、それは一体どういうことになるか。市会は公安委員会の責任を追究するのか、市長の事務に対する責任を追究するのか。この責任の分界というものは一体どういうようになるべきか。御経験なさいましたところから割出して一体どういうようにあるべきであるかということを、ひとつ承りたいのであります。
○原口公述人 お答えいたします。御指摘のように、法律的には、市長が公安委員を任命いたしまして、そうして日常の警察事務は、警察局長をして公安委員会がやらしている、こういうことになつておりまして、直接の責任は市長にはないようでございますけれども、私は、やはり警察事務は市の行政の一部分であつて、市長は最終的な責任は持たなければならないというふうに考えております。従いまして、私の方の市会におきましても、警察問題について市長の意見はどうかということが再三質問される機会が多いのでありますが、そういう場合には、私は市長として、やはり警察事務は市の行政の一部分であるという自分の信念のもとに常に答弁いたして参つておるわけでございます。従いまして、警察の毎日やつております事務を市長としてやはりある程度知る必要があると考えまして、私、市長になりましてから、月に一回ずつ正式な公安委員会に必ず出席いたしまして、いろいろ問題を細大漏らさず知つているわけでございます。しかし そういう問題について意見を言うとかいうようなことは一切私はとりやめておりますが、神戸市全体の治安の最後的な責任はやはり市長として持たなければならない。そういうふうに考えて、私は今日事務を遂行しておるわけでございます。
○鈴木(幹)委員 公安委員会が開かれるたびに市長さんも御出席なさつて聞いておいでになつて……。(原口公述人「一箇月に一ぺんです」と呼ぶ)一箇月に一ぺんですか。それで非常に御努力を払つておいでになりまして、最終的責任を負うに十分なる態勢をとつている、こういうふうな御見解のようでございますが、それならば、法理論的に見ましてそういうあり方がいいのか悪いのか。これは現行法や改正法の問題でなしに、あなたは一体市長として、それで最終的責任を果せるかどうかという問題を一ぺんお聞きしておきたい。つまり私の申し上げていることは、あなたは委員会で意見を述べない、もちろん述べるわけに行かないでしよう。それではあなたの意思は反映はいたしませんね。あなたは公安委員会がどういうふうに運営されているかということは聞いて知つている。あるいは連絡があつて知つている。こういうことですが、最終的責任を警察事務に関して持つ市長としてそういうあり方でいいのかどうかということです。それはそういうふうになつているからよろしい、やむを得ないというのか、また市会もそれで満足しているのか、こういう問題なんです。これは現行法の立場を離れて御意見を伺つているわけです。
○原口公述人 お答えいたします。一箇月一ぺんずつできるだけ私は公安委員会に出席いたしまして、そうして警察のやつている事務をいろいろ聞く。こういうことを私はやつているわけです。私は別に意見を言うとか言わぬということをやつているわけではございませんが、神戸市の治安その他の問題について、警察行政が、私が直接やつている市の私の部局の行政と非常に密接な関係もございますので、そういう問題を処理する上に、私が公安委員会に出るということが非常に必要でございます。 最後的の責任の問題のとりかたについて、今の制度がいいか悪いかという御質問だと思いますが、今の制度ができましたのは、本来ならば公安委員会がなく、ほかの部局と同じような組織になるべきものが、市長一人の考えによつて警察を運営することは間違いを起しやすいというような親心から今日の法律ができ上つておるのではないかと考えております。三人の公安委員の総意によつて警察行政をあやまちないように運営して行くというのが今日の建前だと思います。その公安委員は市長が市会の承認を得て任命することになつておりますので、もしその公安委員が適正な警察行政をやらないと考えた場合には、いつでも取消すような方向に行き得るんじやないかと考えております。従いまして、今日の行政が悪いというふうに私は考えていないわけであります。
○中井委員長 大矢君。
○大矢委員 原口さんにお伺いしたいのですが、政府はこの法案を提出するにあたつて、地方制度調査会の答申を尊重して――これは、これのみならず今度の地方税法の改正の場合でも、特にその答申を尊重して立案したということを言つておる。御承知の通り、今度の調査会の答申は、府県並びに大都市の自治体警察はこれを残せという答申であります。そこで、今度の法案では大都市警察というものはなくなつて、答申と反した法案を出しておるのですから、何か政府から、大都市の責任者として、こういうことになつた経過について、あるいはまた公式、非公式に何か意見を聞かれたことがあるかどうか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
○原口公述人 今から二、三箇月前だと思いますが、私犬養法務大臣にお目にかかりまして、都市警察存置について御陳情を申し上げたことがございます。そのとき犬養法務大臣に、私は、大都市警察は存置すべしという地方制度調査会の答申案が出ておりますから、どうか答申案の通りにお取上げを願いたいということを陳情いたしましたところが、地方制度調査会の案は、あれは一応の参考案である、政府は別に考えておるから、あの通りにするというわけには行かないというような御趣旨のお言葉をいただいたように考えております。で私は、国会議員の方もお入りになり、学識経験者その他の方がお入りになつて、せつかく長いこと政府がおやりになつた地方制度調査会であるから、ぜひあの答申案を採用していただきたいということをくれぐれも申し上げましたが、犬養法相は、私が今申し上げましたようなことをお話になつたように記憶いたしております。
○大矢委員 それでは、こつちから陳情に行つた機会に犬養さんの意見を聞いたので、政府みずからは何らそういう公式、非公式の話がなかつた、こういうことですね。
○原口公述人 さようでございます。
○大矢委員 それでは東京都の副議長さんにお尋ね申し上げますが、府県一本にするということについては、近く今の知事の公選を廃して官選になつた場合に、一つの府県に幾つもの警察があれば困るというので、官選を見越して府県単位の警察にするということがいろいろうわさされておる。私どもは単にひねくれてものを考えるのではなくして、吉田総理もいろいろな機会に、絶えず官選が望ましいということを言つている。ところが憲法に、地方自治の長はこれを公選にするということがありますから、憲法を改正するか、あるいは府県が自治体にあらずということの自治法の改正がなくしては、地方長を官選にするということは憲法違反であります。自治法では、地方公共団体とは市町村並びに府県をいうというのでありますから、これではできないということから、近く自治法を改正して、そして府県知事を官選にする、その場合に二つ、三つの警察があると統制がきかない、こういうことがねらいのようであります。これは決して想像しての話でなしに、自治庁長官もこの委員会でしばしば官選が望ましいと言つている。しかも完全な自治体というのは市町村であつて、府県はいわゆる公益性を持つた中間的なものだ、国の出先機関だと言つている。私のお聞きしたいのは、そういう場合になつたときの公安委員の性格です。もし官選知事になつたときの東京都の公安委員というものは、自治体であつた都知事の推薦する公安委員とは非常にかわつて来ると思う。私はなぜこのことを聞くかと申しますと、警察国家になるおそれが非常にあるとわれわれが指摘いたしますと、その心配はないんだ、現に公選によるところの知事の推薦にして、しかも都会の承認を経た公安委員が牽制するから安心してよろしい、こういう答弁なり説明が行われておりますから、もしそういうぐあいに、官選になつた場合の公安委員の性格をわれわれが考えるときに、ころつとかわるのではないか。そうしますと、今政府が説明しているような、公安委員会そのものが警察の行き過ぎを監督するから心配ないんだということが、公安委員の性格がかわると同様にかわつて来る。そういうことを考慮に入れて、いろいろこの問題についてお考えになつたことがあるかどうか。それはいつのことかわからぬから、当面の問題だけ考えているのか、私どもはすぐにもなるように思つておりますので非常に心配なんです。その点副議長さんはよくおわかりと思いますから、お尋ねしたいと思います。
○清水公述人 非常に先の、大きな問題でありまして、これはあげて国会の先生方の担任であると重います。しかし、一応考えてみますと、さような場合におきましては、自然公安委員会の性格もかわつて来ると思います。そこで、それと方向のマツチしたような改正が行われると思います。さようなことにつきましては、今どれがよろしいとかこれがよろしいとかいう見識は持つておりません。しかし私は、都道府県一本の警察がよろしいのだということにつきましては、東京都の性格が、大都市の地方自治体である反面において、府県の性格を持つた公共団体であるから、東京都の場合においては、東京都を一円とした警察制度でよろしいのだ、こういうことを冒頭に申しております。そこで、全国の都道府県の議長会において決議いたしました都道府県一本の警察体制という点とは、東京都の場合は多少違つておりますから、この点ひとつ御了解になつてください。
○大矢委員 これは小さいことでありますが重要だと思いますから、経験によつてお答え願いたいのですが、自治体警察ができた当時には、御承知の今の保安隊の前身であつた警察予備隊というものはなかつた、あげて警察が一切の治安に任ずるということで、ピストルも持たし、しかも都市の治安が非常に重要だから、終戦前の二倍ないし三倍の大きな人員をもつて構成した。その後警察予備隊ができ、また保安隊ができ、また今後四万もふやして大きなものにしますが、そういうことになりますと、今の警察は半分ぐらいでいいのじやないか。従つて警察予備隊なり、保安隊のできた後における警察のあり方というものは非常にかわつて来ていると私は思います。そこで半数ぐらいに減すことができるかどうか。もちろん労働基準法なんかあつて、なかなか前のようには行かない。時間的にも制限を受けておりますから、そう簡単には行かぬと思いますが、少くともああした大規模の治安を維持するところの一つの軍隊にひとしいものができたのですから、都市の警察なんというものはうんと減員ができるのじやないかということが一つと、それから小型武器を所持させておるが、拳銃が実は二百六十ちようばかりとられておるのです。現にこの間統計をもらつてびつくりした。不注意から来るいろいろな取締りの関係でありますが、これまた二百二十ばかりの生命をなくしておる。生命を保護する警察官によつて、二百何十名が裁判も何も受けずにピストルで殺されている。こういうことになるとたいへんなことになる。こういうことからいたしまして、あの終戦直後の治安から行きますと、あの場合には拳銃というものを持つ必要があつたかもしれないが、今日の警察では拳銃は私は必要じやないと思う。従つて拳銃を取上げる必要があるのじやないかと思うのです。これはそのために巡査みずからも迷惑しておる。うちに持つて来てもやすやす寝られぬ。ずいぶんいろいろな事件が起きて、そのために始末書を書いたり、みずからもけがをしている人がありますが、特にアメリカがこれをやつた。アメリカでは、国民が護身用として自由に拳銃を持つているのですから、相手が持つているからこつちも持つ、これは当然でありますが、日本なんかでは、ほうちようの少し大きなもの.でも凶器として扱われ、あるいは先祖伝来の宝刀であつても、一応届出なければ持たれぬ。何も持たない国民に対して、これを取締る警察官がピストルを持つ、これこそ行き過ぎだと思う。もし警察に行き過ぎがあるというなら、拳銃を持たしたことが大きな行き過ぎだ。これを取上げることによつてどうなるか。大都市はそういう事件が多いのですから、人数を減すということが現状において可能性があるかどうか、しかもどのくらい減されるか、それから拳銃を取上げるごとに対しての可否、これについてこの機会にちよつとお伺い申し上げたいと思います。
○清水公述人 お説の通り、大都市には比較的多数の警察官が配置になつております。またそれだけ警察の事件も多いのであります。しかし一般の国の方針に基きまして、警察官の数を行政整理によつて減すという場合におきましては、現在の機構のもとにおきましては相当程度減らし得ると思います。また拳銃等の問題につきましては、事態の緩急度によつて違うと思うのでありまするが、警視庁管下におきましては、現段階におきましては、一応携帯を必要といたすようにも考えられます。
○中井委員長 なお委員の各位に申し上げますが、時間は十二時を過ぎました。そこで質疑の通告者は全部で八人ございます。何とぞ簡明に質疑を進められんことを望みます。北山愛郎君。
○北山委員 私簡単に熊本の久原さんにお伺いしますが、先ほどの公述の中.で、国家地方警察側の方に、権限が行政管理の範囲にとどまらないで、いろいろな行き過ぎがあるというお話があつたのであります。それに関連してちよつとお聞きいたしますが、現在の自治体の公安委員会の運営のやり方、それから都道府県の公安委員会、いわゆる行政管理のない、運営管理だけの公安委員会の運営のやり方とどういうふうに違つておるか。やはり行政管理並びに運営管理を持つている自治体警察の公安委員会は、比較的管理というものを身を入れてやつておられるのじやないか。またその反面、都道府県の方の公安委員会は、どうもたまに会議を開いて報告を聞く程度ではないか、私はこのように考えてそういう印象を持つておるわけです。ことにまた、国家地方警察の基本規程というものを私いただいておりまするが、それを見ますと、その第五十六条に、これは都道府県の警察隊長の職務を書いてあるのですが、「隊長は、その指揮の下にある国家地方警察の運営の方針に関して、定期的に、又は要求のあつたときは、都道府県公安委員会に出席するものとする。」と書いてある。私ども通常に考えれば、地方警察の隊長というものは、公安委員会の少くとも運営管理のもとにあるのでありますから、要求があれば出るとか、定期的に出るとか、そんなものではないと思う。わざわざこのように書くということは、要するに地方の国警隊長というものが警察執行はどんどんやつている。そうして公安委員会は浮いた存在になつている。そうして定期的に委員会があつた、または公安委員会が要求したときだけ、たまにその委員会に隊長が出て行くというような運営管理のやり方を国家地方警察においてはやつているんじやないか、このように考えまして、あなたの方の市警と相当差異があるんじやないかと思いますので、熊本の場合、国家地方警察の公安委員会と、それからあなたの方の公安委員会のやり方について違いがございましたならば、お伺いしたい。
○久原公述人 御質問にお答えいたします。自治体の公安委員会、すなわち熊本市の公安委員会の運営につきましては、私詳細にわかつておりますが、しかし国家地方警察の県の公安委員会の運営の実情につきましては、直接私関与いたしませんので、いかがになつておりますものか詳細にわかつておりません。しかし自治体の公安委員会は行政管理と運営管理、すべてあわせ持つておられますので、その間にその責任がきわめて重大であることは、これは申すまでもないのであります。県の公安委員会は、行政管理を持たずに運営管理だけでございますので、いわゆる人事権を持つておられぬので、その間に運営管理上につきましても、ある程度の責任上の点から考えまして、自治体の方の公安委員会の運営管理の方が真剣な管理をせられなければならぬというような状況にあるのじやないか、私はそういうふうに考えております。
○北山委員 それでは、これは別に都道府県会安委員会関係の方にお伺いした方がいいと思いますが、さらにもう一点、警察の専門家としてお伺いしておきますが、国家地方警察の基本規程の第五十七条に、「隊長は、その指揮の下にある国家地方警察の職員に対する行政上及び運営上の監督について、管区本部長に対して責任を負う。」と書いてあるのです。私どもは先ほど申し上げましたように、行政上及び運営上の監督については、なるぼど国家此方警察の隊長は管区本部長に責任を負うであろう。しかし現行警察法のもとにおいては、隊長は、運営上の監督については都道府県の公安委員会に対して責任を負うものでなければならぬ、かように考えるものでありまして、国家地方警察基本規程第五十七条は違法である、かように考えるのでございますが、いかがでございましようか。
○久原公述人 法律的な解釈の問題でありまして、私その点まだ詳しく十分なる研究をいたしておりませんので、ここで意見を申し上げることを差控えたいと思いますが、私公述の中で申し述べましたように、府県の国家地方警察の運営管理は、警察法上はつきりと県公安委員会が持つておる、その点は私はつきり申し上げていいと思います。運営管理について、国警本部長官に責任を負うということになつておつて、公安委員会に責任を負うということになつていない点について、違法的なものではないかというお尋ねがありましたが、そういう点につきましては、最初申し上げましたように、まだ十分考えておりませんので、お答えを差控えたいと思つております。
○北山委員 久原さんに最後にもう一点……。先ほど国警本部の方で、行政管理の権限の範囲を逸脱したことをいろいろ行われておるというようなお話がありましたが、その例をひとつ具体的にお聞かせ願いたいものだと思います。
○久原公述人 先ほど公述の中で申し上げましたことは、いわゆる国警本部から府県の警察本部に対しまして、会議の際であるとか、あるいは書面などで流れて来ますものに対する事項に、府県の公安委員会の運営管理に属するものが入つておるということを申し上げたのであります。そういつた具体的のことといたしまして、あるいは人身売買事件の検挙であるとか、交通の取締り、こういつたような問題について書類が流れて来たようなものが、さらに私たちの自治体の方にも流れて参つております。しかしこれは、自治体に対しまして何ら指示する権限はありませんので、かようなことについて御同調をお願いしますというようなことが最後につけ加えてあるわけであります。
○佐藤(親)委員 もし私がお聞きすることについて、公述人の方が申したことと行き違いがあつた場合には御了承願いたい。まず神戸市長の原口さんにお伺いしたいのであります。大体四点お聞きします。第一には、国家は都市警察の育成に十分努力をしなかつたとおつしやつたように拝聴したのですが、この育成をしなかつた、不十分な点についてお聞きしたい。なかんずく、国家から兵庫県に繰込んだ平衡交付金のうち、神戸市の警察にどれだけお使いになつているかお聞きしたいのであります。
○原口公述人 お答えいたします。私が先ほど申しましたのは、都市警察について、われわれは財源が非常に足りないから、いろいろなことを今まで国家に陳情して参つたわけでございます。たとえば国家事犯に必要な器材、あるいはいろいろな通信施設、そういうものがどうしても必要だから、こうこうこういうものについてはぜひ国家の御援助を仰ぎたいといって再三陳情して参つたわけでございます。しかし今日まで私どもが申し上げたことに、政府は全然耳をかしてくれなかつた。そのことを私は先ほど申し上げたわけでございます。平衡交付金のお話でございますが、平衡交付金は、神戸市全体の行政に対して財政需要額を算定されまして、最後にこれこれ足らぬからこれこれ与えると、こういう形になつております。従いまして、兵庫県に参ります平衡交付金のうち、幾ら私の方の警察へ参つたということは、的確にわからないのでございます。ただ私の神戸市として今年度幾ら幾らの平衡交付金――これはいろいろな項目がございまして、その項目をずつと累計して参りまして、私の方でとつておる財源と財政需要額とが全部において足らない場合に平衡交付金をもらう、こういうことになつておりますから、御質問の趣旨には少し沿いかねますけれども、さよう御了承お願い申し上げます。
○佐藤(親)委員 くどくなりますからその点はそれでよろしゆうございます。 次に、警察の任務である刑事警察と行政警察の遂行は一体化せねばならぬというように拝聴したのですが、神戸市としてはもちろんそうでありましよう。府県警察と一体となつた場合においても、一体化されるわけなんだが、御趣旨は、県単位の自治警察ができますと、刑事警察と行政警察の遂行が一体化されないというふうに伺つてよいのですか。
○原口公述人 お答え申し上げます。私が先ほど公述申し上げましたのは、国家的事犯に対しては、特別に組織をお持ちになつた方がいいではないだろうかということを申し上げたのであります。しかし経済的に考えて、一般警察事犯と国家的事犯と一緒にする方がいいということであるならば、一般事務の方の量において、国家事犯のようなことについては特に勘案してもらいたいというふうに申し上げたわけでありまして、御質問の刑事事犯と一般警察事犯と一緒にした方がいいということは私は申し上げなかつたつもりでございます。申し上げる言葉が悪かつたかもしれませんが、私の申し上げましたのはそういう意味で申し上げたわけでございます。 それからあとの方の御質問の趣旨がちよつと私のみ込めにくかつたのでございますが、府県の警察になつても、もちろん刑事事犯と一般警察事犯とは一緒だろうと思つておりますけれども、そういうことについては、私どもはあまり申し上げなかつたつもりでございます。
○佐藤(親)委員 それから地方制度調査会の答申事項というのがあるようでありますが、それは先ほど大矢先生にお答えしたような意味もちよつとその中に入るわけです。その答申案の事項には、結局五大市以外の市町村自治体警察は廃止してもよかろうというふうに答申されたということを承知しておりますかどうか。それから、従つてただいま公述の中に述べられたことと行き違いがありますからお聞きしておきますが、弱小な警察の廃止統合は否定するものではない、こういうふうに承つたのですが、いかがですか。
○原口公述人 お答え申します。地方制度調査会の答申は、五大市に府県単位の警察を置くように答申がされているわけでございます。そのことを私は申し上げておりまして、そのほかの都市については、私は何も申し上げていないわけであります。私が今日公述申し上げましたのは、都市警察を自主的に残していただきたい、その都市の住民の意思によつて残していただきたいということを申し上げたわけでございますから、ほかの都市については、いいとか悪いとかいうようなことは私は申し上げていないわけでございます。それから弱小都市について、自分で辞退するような都市については、やはり今日のような制度で置かれてもけつこうだということを私は申し上げているわけでございます。
○佐藤(親)委員 自治体警察の場合においては、相互間においては非常に円満に進行しているが、府県警察と府県自治体警察となつた場合においては、そういうことはできないであろうというような趣旨に、この公述要旨に載つておることになるのですが、そうではないのですか、どうですか。
○原口公述人 私どもは自治体の第一義的のものは市町村だというふうに考えております。従いまして、自治警察がうまく行くというのは、第一義的ないわゆる市町村、そこにあるもの同士がうまく行くのではないか、こういうふうに考えております。府県の自治体ということについては、私どもは多大な疑問を持つております。市民の方から考えてみても府県というところは、やはり役所は市町村の役所のもう一う上の段階だ、こういうふうに市民は考えております。従いまして住民から、市民から、国民から一番身近な役所といいますと、市町村の役所でございますので、市町村そのものが持つている方が一番身近なふうに感じております。こういう考え方でごいざます。
○佐藤(親)委員 最後に、現在の国家警察は、要するに一都二府四十三県にありますが、結局今回その国家警察を廃止し、自治体警察は市の警察が二百七十六、町村の自治体警察が百三十ある。全国に四百六ある。その四百六は要するに一都二府四十三県の中に入つておる警察なんでありますから、従つてその一都二府四十三県の自治体警察ができるとかりにするならば、そのうちに四百六は自然の間に重複することになるのでありまするけれども、この場合において、一本化した場合の予算と、二元的の予算とに非常な差があるのだが、その場合においてもやはり必要だとする御意見であるかどうか。
○原口公述人 お答え申し上げます。府県警察に一本化された場合に、予算が非常に違うというふうに出ております。たとえば先ほど申し上げましたように、五大市の警察と府県に一本化すれば、二十五億の経費が節減できるというふうにいわれておりますが、これについて私は先ほど公述申し上げたわけでございます。決してそんなふうに、私どもは経費が節減できるとは考えておりません。一本化されなくとも、今日の自治体警察において経費節減のできる面は同じことでございまして、一本化されぬでもできる。それから一本化したためにできるという点は、非常にわずかである、こういうふうに私は考えておるわけでございます。
○中井委員長 藤田義光君。
○藤田委員 私は最初に東京都議会の清水さんにお伺いしたいのでございますが、東京都の区域一円を統轄した新たな区域の警視庁というものの問題を取上げて公述されましたが、その際におきまして、皇宮警察の問題に触れておられなかつたように思います。もし現在の都下一円全部警視庁の管内に入りました場合におきまして、皇宮警察の扱いは現行通りでよろしゆうございますかどうですか。この点だけをお伺いして、そのほかの点は、大体私も御同感の点ばかりでございますから、その点だけをお伺いしておきます。
○清水公述人 皇宮警察の問題につきましては、現在は国警の管下に属しておることはもとよりであります。そこでこれは現在のような特別な措置を講じて、警視庁と切り離して行く方が一応妥当ではなかろうか、しかしこれを一本化した場合におきましても、警備ができないという点はございませんから、御承知のごとくこの点をつけ加えておきます。
○藤田委員 それから原口さんにお伺いしたいのでありますが、今回の警察法改正案に対する賛否両論の中で、五大市警に対する反対論の有力な根拠の一つとしまして、五大市を中心としたいわゆる特別市制の問題が取上げられております。もし警察行政におきまして、五大市だけをほかの都市から分離いたしまして自治警察を存続させるというようなことになれば、これは特別市制に対する外ぼりを埋めることになりはしないかというようなことが反対論の一つの有力な論拠になつております。この問題に関しまして、何か原口さんにお考えがありましたらこの際お聞かせ願つておきたい。純然たる治安の問題、地方自治の問題として警察をやつておられるとは思いますが、何かお考えがありましたらひとつ拝聴したいと思います。
○原口公述人 お答えいたします。今日私どもは、市の毎日の行政をやつておりまする上に、その行政の間では、特別市制などということは何も考えておりません。今日の市の行政がいかにうまく行くか、どうすれば市民に安心を与えるような市の行政ができるかということに立脚いたしまして行政をやつておるわけでございます。従いまして、今日神戸市では市警として、私どものほかの行政、市の行政と渾然一体をなして運営されている、その渾然一体として運営されている中から市の警察だけをほかに持つて行かれるということは、私の神戸市の行政の上に大きな欠陥を来す、私はこういう信念に立ちまして、今日、警察行政の府県一本化について反対を申し上げているので、決して将来どうだとか、こうだとか、そういう意図のもとに考えるいとまは今日ございません。実は今日やつておりまする行政は、非常に私どもは微力ではありますけれども、神戸市政をうまく運営しているのだという確信のもとに進んでいるわけでございます。そういう意味におきまして、自分たちが関与しておる行政の中から、たとい公安委員会が運営はいたしますとも、最終的には、市長の責任である警察行政がほかへ持つて行かれるということは非常な欠陥が生ずる、こういう点に立ちまして、私は先ほど公述のようなことを申し上げているわけでございます。
○藤田委員 昨日、当委員会は東大教授鵜飼先生の公述を求めまして、戦後の警察制度の特性に対する法理的な論拠をいろいろ拝聴したのであります。その特性の最たるものは、第一が公安委員会制度であり、第二が地方分権制度であるというようなことを拝聴いたしました。この行政の最高機関であります内閣、行政に対する責任を持つております内閣制度のほかに、行政委員会制度ができておることは、戦後の日本の三権分立の中の一つの特性であります。この行政委員会制度をつくりまして、政府から独立しました独任制にあらざるいわゆる合議制の行政委員会制度というものがいまだ存続いたしておりますが、私がこの際神戸市長たる原口さんにお伺いいたしたいことは、先ほど鈴木委員の質問にもありましたが、市行政というものの中に一種の行政委員会制度たる公安委員会制度、こういうものがあるのは非常に責任の紛淆を来すのではないか、あるいは市長の総合的な理事者としての行政体制になかなかむずかしいギヤツプをつくりはしないかというようなことも論議したことがあるのでありますが、この点に関しまして、内閣から半ば独立いたしました合議制の行政委員会制度、それから大都市、特に神戸のようなところにおける公安委員会のごとき制度、こういうものと市政とのみぞを――これができますと、今後の市政に相当暗影をきざして来ることをわれれは憂慮するのであります。そういう観点からしまして、市政における公安委員会制度の功罪と申しますか、今後どういうふうにやつたら最もいいか、あるいは現状でよろしいか、あるいはこういう制度というものは再検討をしたいか.市長さんの率直な御意見をお伺いしておきたいと思います。
○原口公述人 お答えいたします。市長として市政を運営して参りますのに、公安委員会の存在がどういうふうであるかという御質問かと思います。先ほども鈴木議員の御質問にちよつとお答え申し上げましたように、私は今日の公安委員会の存在は、市長がほかの部局と同じように取扱うにはあまりに警察行政が市民に重大影響を持つておるというようなところから、三人の公安委員を市長が市会の同意を得て任命いたしまして、警察行政を運営してもらう制度でございます。従いまして、公安委員の選任は、市長の責任においていたしておるわけでございます。市長が自分の責任において公安委員を推薦することは、やはり市長が責任を持つておると私は考えております。従いまして、ただ毎日の行政その他の運営について公安委員会が責任を持つてやつておられるのであつて、最終的な責任はどこまでも市長の責任である、こういうふうに感じております。従いまして、先ほど申し上げましたように、今日の公安委員会制度は、私は悪くはないという考えのもとに、今日の公安委員会制度のもとに神戸市の治安がうまく行くように運営して行くことを、私は心がけてやつているわけでございまして、決して制度が悪いというようなことは考えていないわけでございます。
○藤田委員 次に熊本市警察長の久原さんにお伺いいたします。政府の改正案が国会に出まして以来、いろいろな論議がかわされておるのであります。特に大都市警察の問題が非常に強く前面に出ておりますために、中小都市の警察の存廃問題ということがやや輿論の中に影が薄くなつて来ておるということを、われわれは感じておるのであります。熊本市の人口は二十九万そこそこでありまして、いわゆる中堅の相当右翼の方の都市であります。私はこの機会にお伺いいたしたいことは、特に熊本市及びその周辺の地帯は純農村であります。こういう市内と市外とが有機的に、実際の生活面からしまして有機的に一体をなしておる関係がありますので、熊本市の警察と市外の警察を所管をかえるということによりまして、いわゆる警察法の盲点ができやしないかというようなこともいわれておるのでありますが、実際の運営はいかようになつておりますか、お伺いしたいと思います。
○久原公述人 熊本市の管内とその周辺の管内とにおいて、その制度が現在のように別になつておるということで盲点があるのではないかというようなお尋ねのように思いますが、私は熊本市と周辺の農村とが管轄が違つておるから、警察のいろいろの面に盲点が出て来るというようなことはないと思います。結局そういうような理論からいたしますると、これはいかなる区域をつくりましても同じような事柄が起つて参りますので、それによつてこれを解消することはとうていできないというように考えております。
○藤田委員 次にお伺いいたします。ただいまの久原公述人の御意見、市を単位にしてもそういう問題も多少あるが、府県を単位にしても同様な問題が起きるという御説、ごもつともでありまして、私まつたく了承いたしました。 次にお伺いいたしたいのは、警察が総合的な機能を発揮するための単位について、長年警察行政の第一線におられました久原さんの御意見を聞きたいのでありますが、豊橋市がたしか警察が二つありまして、人口十五万、大体このくらいが警察の総合的な、しかも最も効率的な運営をするのに一番よろしい最低の単位である、こういうことを当委員会でも拝聴したことがあるのであります。そうしますと、熊本市のごとく人口約三十万で、警察が二つだけしかないというような市もございまするが、外国の制度等を見ましても、大体警察官にして何名くらい、市民人口にしてどのくらいが都市警察の最低の形態として最も能率を発揮するに都合がよろしいかということを、ひとつこの機会にお伺いしておきたいと思います。
○久原公述人 お答えいたします。警察の単位がどれくらいの人口を持つておつたが一番いいか、どれくらいならばやつて行けるかというようなお尋ねだと思いますが、これは私は過去六年間熊本市の警察の運営の衝に当つて参りました経験からいたしますると、私の市は現在人口で二十万四千くらいになつておりますが、警察吏員が五百二十三名、それによつて治安の維持に当つておりますが、ここ六年間において、この警察力でとうていまかなえないというような事態は、終戦後のあの混乱時代から現在までまだ一度も私経験しておりません。ある程度の集団的な事件も発生いたしましたが、独自の警察力でもつて大体治安は確保して参つたのであります。将来の点につきましても、特別な事情がない限り、あの終戦後の混乱時代より以上な大きな問題というようなものは別といたしまして、現在の治安情勢その他におきますると、十分私はやつて行けると思う。私の経験からいたしまして、まだ人口の程度の少いところでもやつて行けるところは多分にありはしない、かように思います。しかし何万以上はどうだというようなことは、私もなかなかはつきりお答えする自信を持たないのであります。
○藤田委員 最後にちよつと重要なことで伺いたいのですが、実は昨年の六月末に、熊本県を中心にいたしまして、全九州は未曾有の大災害に遭遇したのであります。今回の警察法の改正によれば、その第五条に、大災害あるいは騒乱等に関しまして、国家公安委員会の管理事項が明示されておりますが、昨年の熊本市警の実際の活動状況を見ますと、保安隊の応援以外、他県の警察隊等の応援は受けずして、ほとんど独力で完璧に近い治安維持を全ういたしております。これは生きた証拠でありまして、私たちはこういう実例を知つておるだけに、今後の市警の運営をきめる場合におきまして非常に有力な資料になつておるのでございますが、あの場合におきまして、熊本の国警本部と市警の連絡状況で何か参考になることがありましたら、この機会に簡単でけつこうですからお示し願いたいと思います。
○久原公述人 昨年六月の災害の際におきまして、先ほど公述のところで申し上げたのでありますが、実は西日本一帯にわたる水害のうちでも、熊本の惨害が最もひどかつたことは御承知の通りであります。この際の警察活動といつたようなものにつきまして、私どもはやはり非常に大きな災害でありますので、災害の警備が非常に重大だということを考えて、国警本部に応援の要請もいたしましたが、県本部といたしましても、その管轄する県下に被害も出ておりますので、応援の余裕がなかつたのであります。災害当時は、警察の点は市警独自でやつて参りました。また保安隊に出動してもらうように知事に要請しまして、知事から保安隊の出動を要請されまして、これが出動して参つたのであります。この保安隊の活動によりまして、私どもの警察、警備の問題に非常に大きな力となつたことは申すまでもないのであります。その後三日過ぎました四日目において、県本部からの応援隊として一個中隊百数名の応援が参りました。その間の連絡につきましては、災害が非常に大きいためになかなか思うようには参りませんでしたが、県本部と市警本部との連絡は、電話その他直接の連絡もいたしまして、また県本部の被害の状況その他につきましては、直接出かけて参りましてその状況はつぶさに調査をしていただいたのであります。こういうような連絡関係において非常に欠陥があつたというような点は、私何らなかつたと信じておるのであります。
○中井委員長 西村力弥君。――時間はすでに一時をさしております。願わくは質疑は簡明に願いたいと思います。なお公述人の方に申し上げておきますが、何とぞ右様の事情をお考えになつて、御説明、御答弁はきわめて簡明がよいと思います。
○西村(力)委員 最も簡明にやりたいと思いますが、最後になりましたので、私の質問すること、考えることは大体同じで、ちよつとあぶれたかつこうでありますので、これ以上申し上げることもないと思うのですが、皇宮警察の問題について清水さんにちよつと伺いたいと思います。私は日本国の象徴である天皇御一家は、やはり警視庁が守護するのが東京都の誇りじやないかという考えを持つておるのでありますが、そうでなくて、国家警察という異例な措置ができておるものだから、このたびの二重橋事件においても、責任の所在が不明確だとか、あるいはその責任のなすり合い的な議論もなされて来るということになるのであります。私は警察が二つにわかれておるからああいう事件が起きたいというのではなくて、実際は別のところに原因があると思うのですが、それを理由にして警察の統合ということまでいわれつつあるのですが、とにかく私としては、この皇宮警察は東京都の誇りであるから、警視庁が守るべきである、こういう方向をたどるべきであると思うのです。この点については、先ほどそういうことを考えていないという御答弁でありましたが、次にはつきりしておきたいのは、東京都として、府県警察一本に賛成する立場は、他の府県がそれに賛成する立場と多少違うというお話でございましたが、いろいろ公述くださいましたことをお聞きしておりますと、結局自治体警察、都市警察存置という結論は、大綱として動かせないものだ、こういうことになるように私は聞いておるのですが、その通りに了解してよろしいかどうかということだけをお伺いしたいと思います。
○清水公述人 かようなことを申し上げまして、多少の矛盾があるかと思いますが、東京都議会におきましては、東京都の性格が大都市であると同時に、府県の性格を持つておる。しかも三多摩の方の関係の人たちがこぞつて警視庁一本に希望している、民主的な立場において一本化する方がよかろうという建前をとりまして、都議会におきましてはこれを決議しております。そこで全国の都道府県議長会におきましては、やはり都道府県おのおの一本の警察といたしまして、しかも自治体警察という建前でこれを決議しております。この間やりやすいとか やりにくいとかいうような面はございますが、大体さような形態であります。しかし私はどこまでも自治体警察で、しかも任免権等の問題につきましては、その都道府県の公安委員会が主体となるべきものであるという点を申し上げたわけです。
○中井委員長 加藤精三君。
○加藤(精)委員 非常に簡単でありますが、まず原口忠次郎先生にお尋ねいたします。国家的な事犯に関して、自治体警察に国の介入をある程ど認めることが必要だろうというお考えをお述べになられましたのですが、それに関連いたしまして、FBIのようなものと、行政警察、自治体警察等と二本建にすることが、わが国の財政経済の面から見て容易でなかろうから一本でいい、国の介入がある程度あつてもいいというお説でありましたが、国家的事犯、ことに治安等に関しまして、自治警察が存続いたしましても、特高とか、警備とか、それに必要な通信連絡、それから教養その他のものは、末端の方まで国家公務員であるところの警察官がある程度入つても、自治警察として協調してやつて行けるというようなお考えでございますのか、その点をひとつお尋ねをしたいのです。 それから清水さんにお尋ねいたしたいのでありますが、総監の任命につきまして、国家公安委員会が任命するか、あるいは総理が任命するにいたしましても、東京都の公安委員会の意見を聞くことにしてもらえば、東京都の議会の方の空気等では、それで満足するというようなふうに私お聞きしたのでありますが、大体そう解釈してよろしいかどうかということであります。 それから皇宮警察のことが問題になりまして、皇宮警察を東京都の警察が管理することは東京都の名誉だというお説もありましたけれども、天皇とか大統領とかの護衛とかいうことは国家的な行政であるから、むしろこの国家の中枢機関の警察庁のもとに置いて管理した方がいいというお考えなんでしようか。その点をひとつお伺いしたいと思います。 それから次に首都警察というような考え、アメリカ、イギリス、フランス等では、全部首都警察は特殊な警察になつており、特に国家行政的色彩が強いわけでありますけれども、国家の大事件とか、あるいは外国人関係とか非常に多いので、東京都の警察を特に首都警察という特別の制度にするということの御意見が東京都側にはないかどうか、その点についての御意見をお伺いしたい。 次に、東京都政でほとんど全部警察の管理をいたして始末をしているのに、国の行政の介入ということについては何となく割切れないものがあるだろうと思います。たとえば教育費における二分の一連帯支弁というような、警察費におきましての往年の連帯支弁制度というようなものがあり、特にいわゆる首都警察については国の支弁率が非常に高かつた。そういう財政の背景のもとにおいてならば、今後よりよけいに国の介入があつてもいいというようなことをお考えになつておられるのかどうか。その点非常に重要なことでございますので、御意見をお聞かせいただきたいと思うのであります。 最後に久原哲雄さんにお尋ねいたしますが熊本県の政党政治の紛争というものは、これは日本国中最大のものであつて、最も醜い歴史をわが国の政治史に記録しているものであろうと思うのでございますが、内閣がかわりますと、上は部長、課長から最末端の警察官、雇さんに至るまでことごとくかわり、血で血を洗うような争いをしている。こういう特殊な歴史的な体験をお持ちであるがゆえに、必要以上に今度の警察法を邪推しておられるのではないか。(笑声)そういうことをお感じにならないかどうか。この警察行政に政党政治の悪弊が浸潤したのは、熊本が一番だと私は思うのですが、一番と言わないまでも、最もひどかつたということを御認識になつておられ、御自分でもそれに引きずられてよけいに心配しているというお考えはないかどうか、その点をお伺いいたします。
○原口公述人 お答えいたします。一般の警察行政事務に、国家的行政をつかさどるものが入つてもうまく行くかというようなお話だと思いますが、私はたとえば神戸市で考えますと、神戸市は二千六百人の警察吏員を持つておりまる。従つて二千六百人でやれないようなものがあれば、どんどんお入りになつてもけつこうだと思います。しかし神戸市の治安を維持し得る二千六百人の警察官がおりますので、どんどん警察事務を御下命になつても一向さしつかえないのではないか。そしてそういう事務に対しては、国家が必要な費用をどんどんお出しになれば非常にうまく行くのではないか。もちろんさらに大きな事件でも入り、あるいは国家公務員が入る必要がございますれば、どんどんお入りになつても私は一向さしつかえないものだというように考えております。
○清水公述人 第一点の任命の問題でありますが、これはまつたく主客転倒しておりまして、東京都の公安委員会が国家公安委員会の意見を聞いて警視総監を任命する。さもなければ現行法通り、東京都の公安委員会が内閣総理大臣の意見を聞いて任命するというふうに申し上げたのであります。 二番の点は、お説の通りでありまして、しかし東京都を一円にした場合におきまして、警視庁におきまして警備いたしても、できないことはないということを申し上げたのであります。 三番の首都警察の問題でありますが、これはおのずから他の府県と違いまして、政府の所在地であります関係上、国の警察事務が非常に多いと思います。そこで全国的に見ますと、大体警察事務の一割くらいが国の事務であるということをいわれておりますけれども、警視庁におきましては一割五分くらいと思います。さような点で、若干他の都市と違います。そこで首都警察というような問題について、一つの単行法をつくられることもけつこうでありましようし、また現在の改正法案におきまして、首都警察というような一章を設けてつくられることもけつこうだと思います。しかしどこまでも、何と申しましても東京都は七百五十余万人を有する大きなりつぱな自治団体であります。その自治団体の持つ自治警察というものは現存していただきたい。これに加うるにいわゆる首都的なと申しますか、国家的な警察事務をどういうふうに配合し、どういうふうな機関をつくるかという点については、ひとつお考え願いまして、とにもかくにも大東京都の自治警察はりつぱに存していただきたいという点でございます。 予算の面でありますが、連帯支弁金というような問題もございましようけれども、御案内の通り東京都は、他の府県に比べましては、最も担税力のある都であります。従つて連帯支弁金の方法によるよりも、むしろ東京都の現在の財政においてまかなつて行くという方が、かえつて簡単ではなかろうかというようにも考えます。
○久原公述人 政争のはげしかつたことにつきましてのお尋ねでありますが、むろんお尋ねのように、熊本県の政争というものは、相当全国にも知られておつたことは事実であります。しかし熊本県民性と申しますか、非常に荒つぽい点もありますし、何でもかでも、ありのままに表面に出してしまうというような関係で、表面的なああいつたようなものは非常にはでに出て来ておつたと思います。しかし内面的には、決して熊本県だけでなくして、全国的に選挙の干渉といつた問題は、これは見のがせないものがあつたと私は思うのであります。だから表面的の問題のみをとらえて、私がそれを非常に強調して、中央集権の弊害を取上げて問題とするというような考え方ではないのであります。
○大石委員 関連して……。私は一分か二分質問しますが、もちろん私は今回の警察法の改正は、国家警察になるのでありますから、これは絶対に反対であります。そこで熊本の久原さんにお聞きしたい。それから神戸の市長さんにも聞きたいし、東京都の人にも聞きたいのですが、公安委員を教育委員と同じように公選にしたらどんなものでしようか。それから自治体警察におられる人は、署長さんになつておる人は、いつまでも署長さんになつておる。人事の交流が一つもない。巡査はいつまでも巡査をしておる。警部になることは一つもない。下積みに積まれておる。これをどういうふうにしたら、この自治体警察の人事の交流がよくできるようになるでしようか。三人の人から逐一御返答をお願いいたします。
○久原公述人 公安委員を市民の直接選挙にしたらどうかというようなお尋ねでございますが、公安委員の任命にあたりましては、いわゆる市民の代表の議会の答申でやつておられます。これを公選にしたらどうかということにつきましては、警察管理の直接の問題ではありまするけれども、これはまだ今まで研究したこともありませんし、またあまりにも政治的の問題でありますので、意見を差控えておきたいと思います。 人事の面につきまして、自治体警察であるから、巡査はいつまでも巡査をしておるというようなことはないのであります。やはり自治体警察におきましても、それぞれの昇任は相当行われております。やはり自治体警察もそれ相当新陳代謝はやつておりまして、何か国警であれば相当昇任する。自治体警察では全然昇任しないというような考えを持たれる面がややもすればありますが、私は決して自治体警察だけがそういうふうに行き詰つておるというような実情にはないというように実は思つております。
○清水公述人 公安委員会の制度でありますが、この問題につきましては、教育委員と同様に公選というようなお説もあるようであります。しかし現在東京都の公安委員会に関する限りは、格別悪い点を聞いておりません。そこでやはりなお当分この制度で行く方がいいではなかろうかというふうに考えます。 それからいわゆる警察署長がいつまでも在任しておつて、下の者が昇進でき得ないというようなお説でございますけれども、警察署長はそれぞれさらに警視正なり、あるいは警視長なり、あるいは警視監というようなものも今度できたようでありますが、順次昇進する道があると思います。そこで問題になりますのは、警察本部長とか警視総監というような人々のはけ口だと思います。そういうようなものにつきましても、先ほど熊本の久原さんから言われたように交流すればよろしい。あるいは私ども考えるのには、警察長というような最上級の人に対しましては、あるいは任期制をつくつたらどうかということも考えられますが、とにもかくにもさようなことによつて、現在上が詰まつておつてどうにもこうにもならぬというようなことは、絶対に避けられ得ないものではないと思います。避け得られるものと思います。
○原口公述人 人事交流の問題については、大体今清水さんのお答え申し上げた通りでありますが、私はそれにつけ加えまして、警察でやつているものはいつまでも警察でやらなければならないという理由はございませんので、適当なポストがございましたら、私の方では、たとえば神戸市全体で人事交流をやれば十分やり得る問題だと考えております。私は現に行つております。 それから公安委員を一般選挙にしたらどうかというお話でございますが、私は先ほど来御答弁申し上げておりますように、市長というものは――たとえば私の環境からの考え方でございますが、神戸市全体について私は責任を持つておるわけでございます。教育委員会についても、一般選挙ではございますけれども、神戸市の教育を私は知らぬということは言えないのでございます。どうしてもやはりいろいろな費用を全部負担いたしておりますような観点から考えましても、私は公安委員会の今日の制度――市長が全責任を持つて市会に推薦し、市会の同意を得て公安委員を任命し、そうして三人の合議制で警察をやらしてもらつている、この制度を私は非常にいい制度だと考えております。
○中井委員長 門司亮君。
○門司委員 清水さんに私も簡単に一つか二つだけ聞いておきます。今の警視庁のことで聞きたいと思いますが清水さんの御意見は、こういうふうに聞けばよろしゆうございますか。東京都は一つの府県と同じような自治体であるから、この中にある警察を、都道府県の単位の警察と同じようにすればいいというように聞いておけばよろしいのですか、そういうふうに解釈してよろしいですか。
○清水公述人 東京都は、ただ都道府県と同じような、東京都を一円にいたしましたものを単位として警察制度をつくればよい、こういうことですか。
○門司委員 そうです。
○清水公述人 さように思います。
○門司委員 私は東京都の性格論から言いますると、必ずしも東京都はそうはならないと思います。東京都は御承知のように二十三区の特別区を持つております。地方自治法の二百八十一条か二条の特別区の問題だと思いますが、ここは、普通の一般市と異つた行政を行つております。市に準ずるとは言いながら、しかし一般市町村の場合には、ここに公安の秩序を保たなければならないとか、いろいろなことが書いてある、この場合にはそれが適用されておらない。従つて東京都の性格は、おのずから二十三区を中心とした一つの行政区画が必要になつて来るじやないかというふうに考えられる。そのことのために東京には、一つの東京都といいながら、同じような八王子の市があり立川の市があり、今日の状態になつて法律をこの通り施行していると思う。それを警察だけ一本にすればいいということになつて参りますと、東京都の今日の性格からいつて、これを改正しない限りなかなか困難でないか。従つて東京都におきましては、二十三区を一つにして行政が行われる首都警察を考えるというならわかる。しかしこれを一つにすれば、東京都においては現行法の建前の上からいうと少し疑問がある。この点を東京都議会の副議長さんとしてどのようにお考えになつているか、お聞きしたい。
○清水公述人 それは現行法においてはもちろんできませんが、しかし大都市の一面におきまして、都は府県の性格を持つている。従つて他のいわゆる大府県よりは比較的一本化につきましてはやりやすいという点を申し上げたのであります。しかも三多摩における各市町村の理事者並びに議会、国警、自警に関係あります職員の大部分が、ほとんど警視庁一本に統合することを希望しております。そこで民主的な理念からいたしましても、東京都一円の警察制度にすることが妥当であるということを申し上げておるのであります。
○門司委員 今の御答弁でありますが、これはあまり議論したくないのでありますが、しかし全国市長会の意見は違います。東京都の中にある八王子も市であり、立川も市であり、武蔵野も市でありますが、これらの意見は今の陳述と違う。全国市長会の意見ははつきりしたものが出ております。それで私は必ずしもその意見には賛成するわけには参りません。 それからもう一つ聞いておきたいと思いますことは、先ほどからの陳述を聞いておりますと、首都警察というようなものが考えられてのお話があつて、私はそこに疑問があるから聞くのですが、東京都が首都警察という一つの特異な警察を持つということは、これは一応考えられる。これは特別のいろいろなものを持つておりますから一応考えられるが、これが府県警察と同じであつていいということが私はわからぬ。現行法から言いましてもそういう矛盾が出て参りますことと、東京都というものの現実の性格は一体市であるのか府県であるのか、見境がつかぬのであります。これが解決されておらない。現に安井君は国際的な太平洋市長会議において、日本を代表して行つて議長をやつているが、これは都知事として行つたか市長としてかわからぬ。しかし太平洋市長会議に出ていることは間違いない。そうすると、あなたの議論の府県と同じでいいということには多少疑問が残つている。これをここで解明しようとは思いませんが、要約して申し上げますと、東京都の場合において、これが府県単位の警察になるか、あるいは現行法が残るか、それはわかりませんが、東京都として首都警察としての別個の性格を持つた警察にするということについて、御意見があつたらお聞かせ願いたい。
○清水公述人 現在の法制下で行政区域を考える場合においては、首都警察をつくる場合においても、また自治体警察をつくる場合においても、とにかく東京都を一つの区域とした警察でよろしい、こういうことであります。それから首都警察をつくる場合においても、東京都の七百五十四万という大人口を擁する自治体警察ということを忘れてはならない。その趣旨を十分織り込んで、いわゆる国家的な警察事務の規模もそこに備えてもらうという意味のことを申し上げたのであります。
○門司委員 私はこれ以上議論はいたしませんが、どうも議論が徹底しないと思うのです。やはり東京都の性格をほんとうに考えるなら、一つの強い首都としてのものの考え方がいるのではないか。従つてその中には、今の皇宮警察というものなんかもおのずから含まるべきであるという考え方が出て来るのであります。皇宮警察を別にして、それで首都という一つの警察制度を設けるようなことについては、私はあまり賛成しない。やはりそこに東京都の特異性がある。私としてはそういうことが考えられる。この点は議論をしてもわかりませんから、この程度にしておきたいと思います。 次に、熊本市の隊長にちよつとお聞きしたいと思います。これはひとつ事実を率直に言つていただきたいと思うのでありますが、この前の水害のときに、国警に応援を求めたが、四日目でなければ――四日目に確かに国警本部の方から応援が来てくれた。その前には保安隊が来てくれたというような御答弁があつたように私記憶しておるのであります。もしそれに間違いがなければ、国警がただちに出動できなかつた理由がどこにあつたか、おわかりでしたらひとつお話願いたい。
○久原公述人 災害の起りましたのが六月二十六日の晩であります。それから応援を派遣いただいたのが三十日の日であります。先ほど申し上げましたように、四日目になつております。それまでに応援要請をいたしましたが、余裕がないということを申されました。県の他の関係でも被害があつたので、応援ができなかつたかどうか、その点どうしてできなかつたかということを私突き詰めてはおりませんりで、御了承願いたいと思います。
○門司委員 国警はどうなんですか。わかつておりますか。どういう理由でやらなかつたのか。
○谷口(寛)政府委員 この問題につきましては、詳細に承知いたしておりません。必要がございますれば、後刻調査いたしまして御報告申し上げます。
○門司委員 今の答弁ですが、国警と自治警との連絡が非常にいいとか悪いとかいうことで、統合しようということが警察法改正の一つのポイントになつておる。だからわれわれは、知らなかつたということは、国警は言えないと思う。国警隊長は一体何をしているのですか。管区本部もあるはずだ。こういう、ことに九州の非常災害というようなものは、実際から言えば、福岡県等においては、知事のこれらに対処する要請があつてもよかつたのではないかと思われるほどの大きな治安の問題があつたと思う。そういうときに、自治警から国警に要請があつたならば、やはりそれくらいのことの連絡は本部になければならないと思うのですが、ほんとうにこれはないのですか。あなたが記憶がないのか、ほんとうにないのか、どつちなんです。
○谷口(寛)政府委員 先ほども申し上げましたように、私はその事実につきまして詳細に承知いたしておりませんから、必要がございますれば、後刻調査をしてお答え申し上げます。かように申し上げたのでございます。当時報告があつたかどうかという事実について、私は現在承知しておりません。かように申し上げたのであります。
○門司委員 それでは私は資料を要求いたしておきますから、ひとつあしたまでにでも……。電話をかければ、昼からでもよい、すぐわかると思いますから、問い合せておいてもらいたい。 もう一つ私は、この機会に国警の諸君に申し上げておきます。斎藤君もさつき来ておつたけれども、どこかへ出かけてしまつておる。一体国警はどう考えておるのです。谷口君は次長だから、長官にかわつて大体答弁ができると思うのですが、委員会が開会されても、諸君は出て来ない。これは公聴会だから議員だけが聞いておけばよい、おれたちは聞かなくてもよいというお考えですか。委員長から前もつてちやんと通知してあるのです。諸君は一体この警察法改正をどう考えているのです。諸君が出して来た警察法の今審議をしているのである。しかもその出して来た警察法の内容について、それを検討する必要があつて一般の人に御迷惑を願つて、ここでその意見をわれわれは拝聴しているのだが、われわれだけが開いていればよいという筋合いではないと思う。国警自身も十分誠意を披瀝して聞くべきであると思う。ここに犬養さんが出て来て、犬養さんが聞いておつてもさしつかえないと思う。国警長官が来ておらなかつたり、来てもすぐ帰つたり、一体どう考えておるのですか。もし国警が不誠意ならば、われわれも態度を改めなければならぬ。けしからぬと思う。
○中井委員長 門司委員のただいまの御発言については、国警においてもよく考えられ、将来とも出席につき格別の勉強せられんことを御注意いたしておきます。
○中井(徳)委員 いつも最後の質問で、時間が迫つて皆さんに非常に恐縮でありますか、私も遅れて参りましたので、熊本の市警の久原さんにだけお尋ねをいたします。問題は二つであります。 先ほど改進党の鈴木さんから御質問がありましたことに関連をしてであります。久原さんにはまことに申訳ないのでありますけれども、私ども今回の警察法改正案を審議する立場といたしましては、今度の警察法改正は、警察官が仕事をするのに都合がよいとか悪いとかいうことよりも、あるいはまた今の内閣が、今度改正することによつて仕事がうまく行くというふうなことよりも、国民のためになるかどうかという面から検討しております。従いまして、警察官が警察法の改革によつて少々不自由になつたり、御不便があつても、これはまあやむを得ないという立場でおるわけであります。鈴木さんがお尋ねになりましたうち、警察官というものは、場合によつては力を用いにやならぬ、死を賭してでもやらなければならぬ、国のために死ぬるというふうな気魄が市警の人にあるかどうかというふうなことでありまして、このことは、私推測いたしまするに、言外に非常に意味があります。市警であると国のために死ぬ気にならぬではないかということ、あるいは市のためには死ねぬけれども、国のためにはいくらでも死ねるというのが日本人の習性であるというふうなこと、そういう考え方が錯綜してあると私は思うのであります。特に戦前の警察に長年勤務されておりまして、戦後の新しい警察には少ししか触れておられない、御関係がないというふうな人々にとりましては、特にその点が御心配であろうと思う。そこでああいう御質問があつたであろうと思うのであります。私らは、実は古い警察のことはあまり知りませんで、新しい警察のことをよく知つているのでありますから、その建前で話を進めて行きたいのであります。結論的に申し上げますと、はなはだ幼稚な質問ではありますけれども、現在熊本市におきまして、自分は市に雇われておる者であるから、国のためにはちよつと死ねぬ、しかし市のためにならば死のうという、鼻曲りのおまわりさんがおるかどうか。あるいは逆に、市のようなものに雇われておるのであるから、おれは警察官であるけれども、命を捨てる気にはならぬ、やつぱり命を捨てるならば国のためであるというふうな、そういう考え方をしておる警察官がおるかどうか。私はおるまいと思うのでありまするが、あれをそのまま皆さんが聞いておられると、一応、なるほどもつともだというふうに考えさせられるような質問でありましたので、私は心配でありますから伺うのであります。この点をひとつはつきりとさしていただきたい。昔から、封建時代ではありましたけれども、堤防一つ直し、橋を一つかけるにしましても、どうしてもかからないときにおきましては、人柱までもやるというふうなことがありました。そのことはきわめて封建的なことで、現代においては通用しないことでありまして、厳禁をされておるし、またやる人もありませんけれども、そういう精神は、同時に国のためには反対であるというふうな、国のためにはそれはやらぬのであるというふうなことではなかろう。この精神を推し進めて行くと、やはり国のためにもなるという考え方で昔からあつたのだろうと思うし、現在の自治体警察の警察官といえども、必ず私はその精神でがんばつておられると思うのでありますが、その点をひとつあなたの口からはつきりと御答弁をいただきたい、かように考えます。
○久原公述人 自治体警察の警察吏員が自治体の吏員であるから、その自治体のためならば命をかけても動くけれども、国家のためにはそうは行かぬということがありはしないかという御心配でありますが、私はこれは絶対にないとはつ言申し上げます。いかなる危険な場合でも、必ず身を賭して行くということを私は自信を持つております。これはいわゆる公共の秩序維持のために、一熊本市というような小さい考え方でなく、大きく日本の再建のためという考え方が十分にあることを確信いたしております。
○中井(徳)委員 当然の御返事でありますが、まことに力強い御発言で、私どもも感銘を受けたわけなのでございます。従つて新しい制度のもとにおいても、いわゆる警察官の士気というものはちつともかわつておらぬというふうに了解していいわけでありますか。
○久原公述人 その通りと私は考えております。
○中井(徳)委員 先ほどやはり鈴木さんがお尋ねになり、また大石さんもお尋ねになりましたが、これも世間ではそうだろうと思つておるようなことで、実はそうでないという一つだと私は思つておるのであるが、念のために伺つておきます。それは人事交流の問題であります。新しい警察制度は、敗戦後、できました当初一、二年は人事交流ができないから非常に不便である。どうも非常に栄進にもさしつかえるという声があつたことは私も聞いております。しかしよく考えてみますると、市警の署員などは、先ほど原口さんからお答えになりましたようなこともありまするし、またさらに世の中はそういうふうにかわつたのでありますから、横浜の吏員が十年たつても出世せぬから副岡へかえてくれ、かわらないのは人事交流がうまく行かないからけしからぬということと原則的にはあまりかわらない議論だろうというふうに思うのであります。また出世ができぬというふうなこと、――これはまあ根本的に出世しなくてもいいという御議論もありますが、一応出世ができないということにつきましても、われわれはよく考えてみますると、それは古い警察制度において、はたしておまわりさんはそういう今考えられておるようにどんどん出世をしたであろうか。巡査として採用されて熊本におりまして、まじめに巡査の業務をやつて、終りまするときに、非常にりつぱであつたので、いつの間にやら警察部長になつておつたとか、あるいは日本の歴代の警保局長や警視総監が、おまわりさんをまじめにやつたからあの人はそうなつたというのは、実は一つもないのであります。そういうことを考えて参りますと、先ほどの鈴木さんの御質問も、どうもこれはおかしいというふうに思うのであります。警察官の皆さんにおかれても、最初はそういう感じがありましたけれども、よく考えてみると、まじめにせいぜいやつて、終るときには何郡何町の警察署長というふうなことであり、場所はかわるけれども、結局それは同じことであるというふうな考え方から、最近はすつかりそういう問題についてはおちついた気持でもつて勤めておられるというふうに私は了解をいたしておるのでありますが、さように了解して間違いがございませんかどうか。
○久原公述人 お答えいたします。先ほどもお答え申し上げましたが、現在のところでは、自治体警察の人事が行き詰まつて昇進ができぬということによつていろいろ不平不満があるということは私の知つております範囲内においてはないのであります。かつまた昇進も十年も二十年もできないということにはなつておりません。勉強して、やはりりつぱな人はそれぞれ昇進ができて行つております。人事交流ということもよくいわれますが、先ほども申しましたが、人事交流は、こつちから警部が行けば向うから警部が来る、結局同じで、その間に場所がかわつて気分を新たにするというようなことはあるかもしれません。そういうようなことはあります。
○中井委員長 これをもつて午前の公聴会を終ります。 この際ごあいさつを申し上げます。公述人て方におかれましては、御遠方のところをわざわざ御出席いただいて、ことに貴重なる御意見を承ることのできましたことはまことに委員会としてありがたく存じます。厚く御礼を申し上げます。 午後の公聴会は二時四十五分正確に始めます。 それでは休憩いたします。 午後一時四十七分休憩 ――――◇――――― 午後三時四分開議
○中井委員長 休憩前に引続き、警察法案外一件についての公聴会を開きます。 午後御陳述を願いまする公述人は、近畿大学教授松本米治君。一橋大学教授田上穣治君。総同盟中央執行委員天池清次君。この御三人であります。 この際、公述人各位に申し上げますが、本日は午前の会議がおそくまで続けられましたために、非常にお待たせをいたしましたことにつきましては、あしからず御諒恕をお願い申し上げますとともに、御多忙中にもかかわらず御出席くださいまして、貴重なる御意見をお述べくださることに対し、委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。 議事の進行上、まず順次公述人の方方より御意見を承り、そのあとで各委員の方々の質疑をお願いすることにいたします。なおその公述時間は、各人大体十五分ないし、二十分を予定いたしておりますので、その要旨は簡明にお述べくださるとともに、質疑応答も簡単明瞭にお願いいたしたいと存じます。 これより公述人各位の御意見を承ります。まず近畿大学教授松本米治君。
○松本公述人 松本でございます。私は公述の内容を三つにわけて申し上げたいと思います。すなわち第一は、警察という行政全般に関する私の考え方、第二は、法案に対する個々の具体的問題点に関する批判、第三は、将来の警察のあり方に関する意見、この三つであります。以下順次申し上げることにいたします。 まず第一の問題たる警察行政全般に対する私の考え方について。ここで申し上げますことは、警察には行政警察と司法警察の二つがありまして、両者はおのおの異なつた作用であり、両者をはつきりと区別することが必要であるということに帰するのであります。私は、この行政警察と司法警察の二つを区別するということが、警察制度改正の論点であると、かたく信じておるものの一人であります。言うまでもなく行政警察は、社会秩序の障害を除去するという作用であり、司法警察は、たとえば犯罪の捜査とか、被疑者の逮捕とかいうような、いわゆる司法作用の補助作用として行われるものでありますが、従来は両者をはつきりと区別いたしまして、司法警察は自治体に属せしめてはならぬとの方針をとりつつ、行政警察も国家が独占していたのであります。もつとも行政警察は、その一部を自治体に属せしめてはいたのでありますが、その場合は、国の行政としてこれをなさしめていたのであります。いずれにいたしましても、従来は行政警察、司法警察ともに国家に属していたのでありますが、両者を区別するという点につきましては、大きな努力が払われて来たようであります。現行警察法は、その第一条が示しているごとく、両者の区別を漠然とし、警察の責務としてこれを一つのものとなし、国及び自治体の双方に属せしめているのであります。また改正法案も、その第二条に示すごとく、両者の区別を判然としていないという点については、まつたく同様の態度をとつているのであります。司法警察といえども、もちろんそれは司法作用そのものではなく、警察という行政作用にほかならないのではありますけれども、私は警察制度のあり方いかんという問題を考察するにあたりましては、両者をはつきりと区別し、その上において組織なり、運営なりを考えることが絶対必要と思つているのであります。このことは警察制度における根本の問題であり、すべての出発点でありまして、さきにも述べましたように、これは警察制度改正の論点でなくてはならないと思うのであります。私は行政警察は、自治体が主体となるべきが当然であり、司法警察は、国家がその主体となるのがよいと考えております。もつとも司法警察の主体が国家であるといいましても、その運営は、国がいわゆる地方分権思想に基きまして地方機関を持つとともに、その一部を自治体に委任するいわゆる機関委任をして指揮監督をする形式 及び参与機関として国民の選定した委員会を置くということを併用するのがよいと平素考えておるのであります。改正法案が全体としてひどく作為的で混雑を来し、後にも述べるようにいろいろな点においてすつきりしていないという感じを与えている根本の原因は、この二つの異なつた警察行政を区別せずに、しいて漠然とされているという点にあるのではないかと思うのであります。またいわゆる民主化と能率化の二つの要請にはさまつて不必要に苦しみ、ためにどつちつかずのいわば畸型児的規定を持つに至つておるものも認められるということも、要するに右のことに最大の原因があるように考えられるのであります。 ところで私は、警察の民主化という問題で特に問題となるのは、行政警察においてではなくて、むしろ司法警察においてであろうと考えるのであります。警察国家という言葉や警察の政党化ということがよく非難の的として用いられておりますけれども、これは主として司法警察において問題となるのであります。識者がおそれ、国民一般が心配するのは、実は司法警察の運営についてではなかろうかと思います。かくて私は、警察の民主化、能率化及び政治的中立の問題は、行政警察と司法警察を区別するというところから出発しなければ、決して正しい結論は出て来ないと考えているのであります。 今私は、警察の民主化ということを言いましたが、この民主化ということに関連して、ひとつ中央集権と地方分権を坂上げまして、中央集権では警察国家になる。地方分権では警察の民主化がなされると主張する向きがかなり多いのでありますが、まことにへんな議論だと考えております。中央集権と地方分権の区別は、権力作用の形式による区別でありまして、ことに地方分権というときに、地方自治を意味するものとして用いる者もありますが、これは明らかに誤つていると考えるのであります。自治行政は国の行政、すなわち官治行政に対する言葉でありまして、両者の区別は作用の主体に着眼してのものなのであります。いずれにいたしても、警察の民主化ということは、権力作用の形式や作用の主体からただちに出て来る概念ではなく、その現実の運用面から論ぜられるものであるということを認識する必要があるということであります。警察行政全般に関する私の態度としてあえて以上申し上げましたのは、以下法案に対する具体的個々の問題として私の坂上げますことと常に大きな関係を持つからなのであります。要するに警察制度改正の論点は、行政警察と司法警察の区別ということにあり、その運用は政治的中立と民主的かつ能率的運営に眼目があると考えているのであります。 以上でいわゆる前論的なものを終りますが、次に第二の問題として、改正法案に対する具体的個々の問題につきまして、その主要なものにつき意見を述べることにいたします。まず改正法案全体に対する私の態度であります。現行警察法を改正することには賛成であります。制度の改正は言うまでもないことでありますが、改正すべき理由があるからなされるのであります。その理由は、一に日本国をよくするという見地において考えられなくてはなりません。すなわち現行制度は日本国をよくし、日本国の警察をよくするという点において欠けるものがある。それゆえに改正ということが考えられるべきものであります。何も地方自治の本旨そのことによつて改正されるべきではなく、また民主化、能率化そのことにのみ着眼して改正されるべきものではないと考えるのであります。私は時間の関係で改正の必要理由を述べることを省略いたしますが、要するに現行警察制度が国家生活との関係におきまして、日本国にとつてよくない点があるという点にかんがみまして、改正することに賛成するのであります。次に、法案の内容につきまして主要な問題点を列挙して私の見解を述べることにいたします。まず第一点は、国家公安委員会と警察庁との関係に関連して、法案の第四条に「内閣総理大臣の所轄の下に、国家公安委員会を置く。」とあります。続いてまた十五条に「国家公安委員会に、警察庁を置く。」とあります。これを行政組織の上からながめてみますと、国家公安委員会は現行法通り総理府の外局、しかして警察庁はその事務局ということにまず考えられると思うのであります。またそう考えなければならないと信じます。ところが警察庁は 法案をながめてみますと、何だか単なる事務局ではないという感じを強く与えます。単に感じを与えるだけではなくて、実は国家行政組織法と比較してみますと、問題が存するとさえ私は考えるのであります。国家行政組織法の第三条に次のようなことが規定されております。「国の行政機関の組織は、この法律でこれを定めるものとする。」続いて第二項に「行政組織のため置かれる国の行政機関は、府、省、委員会及び庁とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる。」続いて三項、これが問題でありますが、「委員会及び庁は、総理府又は各省の外局として置かれるものとする。」とあります。なお他にも関係条文がありますが、第六条を示しておきたいと思います。第六条に「委員会の長は、委員長とし、庁の長は、長官とする。」こうなつております。そうしますと、警察庁というのは単にその名称においておかしいだけではなく、国家行政組織法にどこか矛盾するのではないか、はつきりする必要があるのではないかということを考えるのであります。具体的に申しますと、国家公安委員会も警察庁もともにその実質的な性格は外局、こうなつておるように考えられるのであります。もちろんこういうふうにするということは、新しい行政の行き方かもしれません。しかしながら国家行政組織法は、国家行政の組織に関する根本法であります。そうすると、この根本法を改正するということをしないで矛盾した運用をするということ、私はここに問題があると考えておるのであります。法務省の外局に公安調査庁というのがありますし、公安審査委員会というものがありますが、それぞれ違つておりますから、ここで国家公安委員会と警察庁の関係を論ずるに、それを結びつけて結論を下すことはできないようであります。 それから委員長を国務大臣にするということについてであります。国家公安委員会をはつきりと総理府の外局とするということが確立された限り、私は国務大臣を委員長にすることは組織法上さしつかえないと思います。何となれば、繰返して言う必要はないと思いますが、国家公安委員会が総理府の外局なんでありますから、国務大臣がその長となることは何ら問題ない。たとえば自治庁の長官に国務大臣がなり、保安庁長官に国務大臣がなるのとまつたく同じ議論で解決できると考えております。 次に警察庁の長官の任免でありますが、考えられる方法は三つあります。総理大臣が任免権を持つ、委員長が任免権を持つ、委員会が任免権を持つ、大体三つだと思います。さらに意見だとか、同意だとか、承認だとか、決議だとかいうことを入れることによつて、さらに幾つかわかれると思うのでありますが、結論を申しますと、行政組織上の法理によりまして、すなわち国家公安委員会が総理大臣の所轄のもとにあるということと、それから総理大臣と国務大臣との関係及び国家公安委員会の委員長が国務大臣であるところの外局の長であるということなどにかんがみまして、次の結論を出します。国家公安委員会が総理大臣の意見を聞いて任免する、法案の逆になりますが、これが組織法上すつきりすると思います。しかし別に国家公安委員会の決議事項とするという方法も考えられぬことはありませんけれども、今申し上げましたのがいいかと考えております。 次に第二点といたしまして、都道府県警察本部長の任免について改正案の骨子を見ますと、第二条で警察の責務を明らかにし、三十六条の第二項で都道府県警察がこれを行うとしております。この点からすれば、明らかに警察の核心は都道府県にあるということになるのであります。これが核心であります。すなわち地方自治法上の地方公共団体たる都道府県という自治体が、警察の主体となつているということになるのであります。この点にかんがみまして、次のような結論を出します。すなわち本部長の任免は地方公安委員会がなす、主体は地方公安委員会が持つことが、当然の結論として出て来るのであります。これを具体的に申しますと、都警察の長すなわち警視総監は、都の公安委員会が任免権を持ち、道府県の警察の本部長については、道府県公安委員会が任免権を持つ、当然の結論として私はそう考えるのであります。但し、主として適正に人を得るという点にかんがみまして一国家公安委員会の意見を聞くとか、あるいは警察庁長官の意見を聞くとかいうことを入れた方がいいと思いますが、どちらでもいいと思つております。しかし実際には、警察庁の長官の意見を聞いてとした方が運用では便利かと考えるのであります。 次に第三点といたしまして、警察職員の身分についてであります。法案は、警視正以上を国家公務員とし、それ以下は地方公務員とするとやつておりますが、まことにおかしいことだと思います。言うまでもなく、国家公務員は国家の公務に従事する人であり、地方公務員は、地方公務に従事する人なのであります。どうしてもおかしい。これは能率化、責任の明確化など主として命令系統一本化の実をはかろうとしたものと思われる点がないでもありませんが、先ほどの本部長任免権の問題とともに、いわゆる国の警察と都道府県の警察のつながりをいかにするかという問題にさかのぼるのでありますが、これは最初私が前論として申し上げました司法警察と行政警察を区別するという立場をとれば、きわめて間単に結論が出て来ると思うのであります。結論を申しますが、管区警察局に至るまでは全員国家公務員、それかり都道府県警察の職員のすべては地方公務員が適当かと思つております。地方公務員という身分はほんとうはないりでありまして――私はそう考えておる。都の吏員であるとか、大阪府の吏員であるとか、京都市の吏員であるとか、それが本来の身分でありますが、通常用いられておりますから、私もそれにならいまして地方公務員という言葉を使いました。 次に第四点として、給与の問題、特に調整手当の支給についてであります。附則の第十五条によつて調整手当支給のことが定められてあります。私ははつきり申しますと、全面的に賛成できない。反対であります。それよりも、現在の国警職員の給与を制度上引上げて調整すべきだ、こう考えております。具体的に申しますと、中央におきまして、自治警の平均給を、客観的は基準によりましてすみやかに基準を定める、それによつてなすべきである。調整手当の支給という方法をとらない方がいい。その理由として、次のようなものを考えております。ある警察署で勤務しておるときに、二人の人を比較しますが、いずれも一万五千円もらつておる。ところが甲の人は調整手当として一万五千円になり、乙の人は本俸として一万五千円になつておる。これは気持の上で日々に非常に影響するところが多かろうと思うのであります。これが理由の一つ。それから恩給のこと、退職金のこと、これにも大きく影響を来すのでありますから、どうしても調整手当という方法はとるべきではない。さらに一定の昇給が遅れるということがあります。下の者が上つて来ないと上げられない、こういう事情も起ろうかと思います。こういう点にかんがみまして、調整手当のことはやめて、すみやかに基準の決定をして、それによつてする方がよかろうと考えておるのでります。 次に第五点として、都市警察の問題であります。申し上げたいことがたくさんあるのです。用意もして来ておりますが、簡単に申しますと、まずこの問題も行政警察と司法警察の二つをはつきり区別することによつて自然解消されるものであるという根本的な考え方を持つております。それはそれとして、今日府県側と都市側とそれぞれ主張しております。国警側と自治警側の主張があるといつてもいいかと思います。その主張の理由をおちついて冷静に見ますのに、ある程度双方に理由があるように思うのですけれども、結局本質的な理由は、双方にないというふうに私は見られるのであります。ところが私は次のように考えます。このように本質的な理由がともにないというところにほんとうの理由がある、飛躍するかもしれませんがそれは結局、現状の維持がかなり強く必要であるということにもつながるのであります。ことに大都市の特異性にかんがみまして、大都市特有の警察がいかにあるべきかの問題は、理論的にもまた現実的にも研究されてよい問題だと思います。いな大いに研究されるべき問題であると思うのであります。しかもわが国では、今一つの独立の単位としての都市警察を現に持つているのであります。そういうものを研究するということも、重要だと考えておるのであります。行政警察と司法警察の区別を現実に制度化するという問題とともに、都市警察の問題は、これを存置して研究することが、一応常識的な、そして自然な考え方であろうと思うし、なおそこに大きな価値があるということを考えておるのであります。 さて次に、その都市の標準でありますが、人口によつて線を引くということはまことに困難であります。ところで五大都市ということが今日法制上の概念としてすでに定律されております。法制上の概念として決定しておると言つてもいいわけてあります。そこで簡単に結論を申しますと、少くとも私は、五大市には府県警察と同性質の、同一の立場における警察を存置すべきであるということになるわけであります。 最後に第三の問題といたしまして、将来の警察のあり方について、その考えている意見を述べたいと思つて準備して参りましたけれども、すでに時間も超過しておりますので、ただ二つのことを申し上げておくにとどめたいと思います。一つは、司法警察と行政警察の区別を明確にして、これに基く新しい制度のあり方を研究していただきたいということ、及び警察三法の制定、すなわち組織法と職務執行法と身分法たる警察公務員法とでも言えると思いますが、そうしたものをつくるという線によつて、警察制度を完璧にするように努力していただきたい、それを希望するということであります。 以上でございます。
○中井委員長 次に一橋大学教授田上穣治君。
○田上公述人 私は警察法案につきまして、大体四点申し上げて御参考に供したいと考えるのでございます。 第一点は、今回の警察法案に示されております都道府県警察というものが、はたして自治体警察であるかどうか、これはちよつと見ますと、あるいは批評する向きでは、一種の国家警察ではないかというふうにも言われるのでありますが、その点をまず簡単に申し上げてみたいと思うのであります。 従来現行法の自治体警察は、御承知のように市町村に認められているのでありまして、ただ町村の方は人口五千以上。しかし現在は、町村警察は住民投票によつてほとんど廃止され、当初千三百余りありましたのが、約一割に減つているようでありますが、この現行法における自治体警察につきまして、最近どの程度の規模を持つている自治体が警察を持つのに適当であるか、警察に関する適正規模と申しますか、この点がしばしば議論せられて、あるいは政令諮問委員会あたりのかつての答申のように、十五万以上の市においては適当であろうかとか、あるいは最近の意見でありますと、御承知のように二十万とか三十万以上、さらにもつとしぼりまして七十万とか五大都市、さらに東京の警視庁に限つて認めるのが適当であろうとか、いろいろ意見が出ているようであります。この点につきまして、私は警察に関する自治体の適正規模というのは、警察の組織なり、あるいは経費を負担する能力という点で考えるよりも、むしろ警察作用の性質によつて判断すべきものであろうと思うのであります。組織とか、ことに経費と申しますか、そういう面で考えますと、もちろん人口十五万くらいでありますと、現在ではおそらく警察定員は二百人くらいであろうかと思いますが、そういう程度では、独立の単位としては十分でない、あるいはまたその市の財政の方から考えましても、相当に人口が多くないと、自治体警察を持つことは無理であるというような議論もしばしばきくのでありますが、そういつた経費の負担とか、あるいは警察定員とかいうような点で考えますと、結論は五大市あるいは東京の警視庁、特別区におきましては、十分に自治体警察を持つ資格がある、能力があるという結論になると思うのであります。しかしながら警察の適正規模は、それだけでなくて、むしろ警察作用の性質を考えますと、これはしばしば言われるように、犯罪につきましても、決して一つの大都市におきましても、その区域内で片づく問題ではない。かなり広い地域にまたがる。もちろん道路交通の取締りのような、あるいはその他いろいろあるでありましようが、軽犯罪のごとく、ごく小さな区域において独立に取締る、あるいは治安の維持に当るということも可能な場合が多いでありましようが、しかし最近のいろいろな犯罪、あるいはその他警備の問題にいたしましても、かなり広い地域にわたつて機動性を発揮することが必要である。これは警察作用の性質であろうと思うのでありますが、そういう点で考えると、大都市は人口が多く、経済的にいつて実力があるのでありますが、しかし結論としては、都道府県の区域ぐらいが適当ではないか。もちろんこれも、必ずそうなければいけないという科学的な正確な結論は出ないかと思います。しかしながら現状においては、都道府県の区域の程度が適当であろうと一応考えるのであります。ことに大都市の周辺地区と、それから大都市の都心といいますか、そういう点を不可分のものとして考える必要があるように思いますので、大都市におきましても、この独立な自治体警察を認めるということは、必ずしも適当でないというように思うのであります。 〔委員長退席、灘尾委員長代理着 席〕 次に、そうなりますと、都道府県の警察が、しからば自治体警察かどうか、現在の法案の警察でありますが、この点で従来の自治体警察を考えますと、警察の組織の点では、いわゆる国家地方警察とはまつたく独立している。そういう点では、地方自治の本旨に基いて市町村に警察権が与えられておるというように見えるのであります。あとで第三点で申し上げますが、今回の警察法案については多少問題はあるとしても、従来の国家地方警察に比べまして、運営管理のほか、行政管理についても都道府県の公安委員会が一応持つことになつている。組織の点では、だから一応従来の国警とは性格の違うものである、自治体警察と見てよかろうと思うのであります。ただ警察の作用、性質から申しますと、これは従来から自治体警察におきましても、単純な自治体の公共事務、あるいは固有事務と申しますか、あるいは他の言葉でいえば、自治事務というのではなくて、これは学者がしばしば申します狭い意味の行政事務である。地方自治法第二条にいわゆる行政事務である。これは簡単に申し上げますと、公共事務というのは、自治体の区域内の一般公衆に共通する利益をはかることが公共事務の特色であります。ところが警察関係の事務は、自分の市町村、自分の区域内の住民が平穏であればよろしいというのでは足りないのでありまして、他の地域に発生した事件につきましても、もちろん当然には権限がないのでありますが、しかし警察作用というものは相互に関連している。たとえば犯罪が他の地域に発生したけれども、地元に犯人がいるという場合を考えますと、他の地域における犯罪については、地元の公共の利益を害するとは必ずしも言えないけれども、犯罪はあくまでも検挙しなければならないのでありまして、そういう意味で、警察は単純な地元の自治体の公共事務ではないと考えるのであります。しかしもちろんだからといつて、国家がただちに警察に干与してよろしいというのではないのでありまして、原則は、事情の許す限りはやはり地元で自主的に解決すべきである。ただしかし性質上、たとえば法案に出ております大規模の災害とか騒乱のような、あるいは緊急事態というふうなやむを得ない場合には、これは国家的な性格を持つ事件でありますから、その地元だけで解決をするのは適当でないと思うのでありまして、要するに従来の市町村の自治体警察とほぼ同じようなものが、今回の法案の都道府県警察についても考えられるのではないか、しかしそれは決していわゆる自治体の固有事務、公共事務という意味の警察ではないのでありまして、それは行政事務と学者の申すものであろうと思います。 次に第二点に入りまして、公安委員会の性格あるいは警察の民主化、どうしたら民主化が全うされるか、この点を考えてみたいと思います。いわゆる民主化というのは、他の言葉で申しますと、人民が警察権の濫用を監督し、押える、民主的なコントロールと申しますか、さらにまたいわゆる責任の明確化――この言葉は通常は国会を通して、内閣が国会に国の行政については責任を負う。だから警察関係の事務につきましても内閣が監督をし、内閣が国会に対しては責任を負う態勢になつていなければいけない、そういうふうによく使われるのであります。ところが私は、この点で実は一つ疑問を持つておるのであります。と申しますのは、国会と内閣、そして内閣からさらに公安委員会なり、あるいは警察庁長官、こういう線が明確に出て来ますと、警察が政党化するおそれがある。特定の政党あるいは政府と申しますか、政党政治でありますから、これは自由党の政府であつても社会党の政府でも同じことでありまして、とにかくそのときの政府あるいは与党と結びつくことになる。もちろん必ずしもそれが悪いとは申しませんけれども、しかし警察はやはり政治的な中立性が必要ではないか、この意味におきまして、普通の行政作用のように、直接国会が監督をする、あるいは内閣の責任を負う範囲というのでは必ずしも適当でないのであつて、むしろやはり中立性の意味から、ある程度内閣から独立な機関によつて運営されることが望ましい、私としてはこのように考えるのであります。しかしそういう政治的中立性ということを申しますと、今度は反対に、それでは民主政治でない、国民なり国会とつながりがない民主的な、あるいは責任政治は全うされないという反対が起きるのであります。しかしこの場合に、国会にかわるものとして、あるいはそれと違つた、つまり政治的に無色な一種の国民を代表するものとして、公安委員会を考えるべきではないか、つまり公安委員会というものは、中央では国家公安委員会でありますが、人数、規模はごく小さなものであり、現在は五名の委員でありますが、しかしこの委員の構成は、御承知のように一党一派に偏しないということになつております。ただ現在は、委員の資格がかなりきゆうくつに制限されておりますが、改正法案では、この点もかなり緩和されておりますから、できるだけ広く一般民衆を代表する委員が選ばれることを望むのでありますが、しかしそれは国会とか地方議会とは違つて、政治的に中立な立場にある。その公安委員会がいわば国会にかわつて、警察の独善を押える、民主的に警察をコントロールするということ、それはやがて国民に対して、警察当局の責任を明らかにすることになると思うのでありますが、そういう意味において、公安委員会というものを十分に尊重したいと思うのであります。国会に対し、あるいは内閣との関係が幾分稀薄になる。政治的な中立性が稀薄になる。そのかわりに、公安委員会というものをかなり強いものにしなければいけないと思うのであります。その点で第一に考えられますことは、今度の法案で国家公安委員会というものが必ずしも十分に尊重されていない。現行法では、国警本部の長官は国家公安委員会が任免するのでありますが、御承知のように警察法案ではそうでなくて、内閣総理大臣が任免することになつております。もちろんこれは国会中心、内閣を通して警察行政を国会に結びつけるという点においては徹底していると考えますが、しかしそうなると、先ほどの政治的な中立性が幾分害されることになると思います。しかしながら内閣から総理大臣による任免権を国家公安委員会に移すということ、従来のように持つて来るということは、必ずしも私は民主政治に反しないと思うのでありまして、むしろ政治的に中立な公安委員会によつて、十分に民主的に警察の行政をコントロールするということになるのではないかと思うのでありまして、この点で長官の任免権は、すでにそういう意見が出ておるのでありますが、私は現行法通りに、国家公安委員会に残すべきであると思うのであります。同様にして、今度の法案では、国務大臣が国家公安委員会の委員長として加わることになつておりますが、この点も、考えようによりますとそれほど行き過ぎではないと思います。しかしすでにかりに自由党なら自由党の立場で委員がどなたか入つておるというときに、さらにそのほかに二人入る余地があるのでありまして、そのほかに国務大臣が一人加わりますと、公安委員会というものが政府与党によつてかなり強く影響され、支配される可能性があるわけであります。もし私どものように、警察の政治的な中立性を強く考える立場に立ちますと、この点国務大臣が入ることは賛成しがたいと思うのであります。 なお先ほどの公述人のお話にもありましたが、国家行政組織法との関係は大体あまりすつきりしませんけれども、私は現在の法案で一応よろしかろうと思うのであります。しかしながら、それは国家公安委員会というものは単純な行政委員会ではない。厳密に申しますと、国家行政組織法で言う外局としての行政委員会ではなくして、むしろ国会にかわる議決機関である、政治的に無色な一種の議会のように考えます。そうなると、国家公安委員会と警察庁長官との関係は、府県で申しますと、ちようど府県の議会と府県知事という関系に置いて見るべきではないかと思うのであります。もし単純な行政委員会にすぎないとすれば、これは当然整理の対象になる。今日司法裁判の類似の作用、権限を持たないような行政委員会は原則として整理される運命にあるようでありまして、準司法的な機能を持たない行政委員会はやがて減らされて行くと思うのでありますが、国家公安委員会はどう考えても準司法的なものではないけれども、これは実質において一種の議決機関であると考えるならば、警察庁長官との関係もきわめて当然のことに説明ができると思います。 次に第三点でございますが、新しい都道府県の警察につきまして特に問題になるのは、警視正以上の警察官の任免権が中央にあるということと、それから同時に給与も国家が支弁し、従つてこれらの地方警務官と法案にございます職員は国家公務員である。その点で、何か都道府県の警察が自治体警察ではなくて、従来のような国家地方警察ではないかという疑問でごいま す。私といたしましては、もちろん本来ならば、府県の警察は自治体警察でありますから、地方公務員をもつて充てることが常識的に見て当然と思われます。けれども先ほど第一点でお話しましたように、警察は単純な公共事務ではない、これは一種の行政事務である、その意味において、かなり国家的な性格を帯びている事務だと思うのであります。それともう一つは、現在提出されております法案のように、警察庁長官が内閣総理大臣によつて任免されるということになりますと、これはかなり問題でありまして、内閣が長官を通して地方の府県の警察に干渉し、これを動かすという議論にもなるかと思うのでありますが、しかしかりに私の申しましたように、長官の任免権を国家公安委員会に移す、そうして一応警察の政治的な中立性が維持されるということになりますと、この警察庁において地方の警視正以上の任免権を持つとしても、必ずしも政治的に中央集権と申しますか、あるいは政治的な警察となるおそれはないのじやないか。しかしもつと率直に申しますと、通常の警察は、大体都道府県がおのおの独立に自主的に処理してよろしかろうと思うのでございますが、ただ問題になるのは、法案にあります警察庁の事務――所管事務と申しますか、それは中央から指揮監督をすることになつておる。もちろんその必要がないという御意見の場合には別でありますが、大規模の騒乱などにつきまして、中央からその警察事務について指揮監督、それからこれはきわめてまれでございましようが、緊急事態において、長官なり管区警察局長が地方に対して命令あるいは指揮をする、これが宙に浮いてしまう。もし今申しました国家公務員というか、そういう意味のつながりがないとすれば、単に指揮するといいましても、その指揮が徹底しない場合にどうなるか、もちろんその場合に裁判所に訴える、地方の警察本部長を被告として、警察庁長官から、職務を執行せよと裁判所に訴えるというふうなことはちよつと考えられませんし、またもちろん特別な法律の規定がなければできないことでありますが、そういうことは実行不可能である。もしもそういつた全国的な国家的性格を持つ事件について中央から指揮監督する必要がないならば、私はこの地方警務官という制度を落してしまつてよろしいと思います。けれどもその必要がもしあるとすれば、結局そのことは、警察庁に固有の所掌事務があるといたしますならば、その限度においてはその指揮に従わせることを確保する意味において、国家公務員の身分を認めることが必要であると考えます。 最後に一言、第四点でございますが、しばしば警察法案が、いかにも警察国家を実現するものであるかのごとくいわれるのであります。私は全然その懸念がないとも申しませんが、しかしそれはこの法案とは関係がないことである。政府はいろいろな他の法案におきまして、幾分人民の政治活動を規制して行く、あるいはそれを強化する傾きが見受けられます。しかしこれは、警察法案とは一応切り放して考えることができるのではないか。この点で私は、従来から現行法につきましても、警察法という名称がはなはだ適当でない、これは消防をごらんになりますと、消防法と消防組織法という使いわけがございます。警察法というと、いかにも警察作用に関する根本原則が出ておる法律のように見えるのでありますが、実際はそうではなくて、これは警察組織に関する法律である、まさに消防組織法に相当する法律であろうと考えるのであります。第二項の基本的人権の濫用に対して、公共の福祉というような角度から、どの程度に政府はこれを取締ることができるか、これは行き過ぎがありますと重大問題であります。おそらく国会でも非常な御議論がある点だと思いますが、しかしそれは、今回の警察法とは一応切り放して考えるべきである。何となれば、この警察法案は警察組織に関するものであり、行政組織の一部を規定したものであつて、学問的に警察権の限界といわれますが、警察作用の原則については、別の法律で従来も考えられており、今回もそのように思うのであります。どうも私ども講義をやつておりまして、警察法などといいますと、警察の一般的な原則のように学生もよく誤解するのであります。もつとも国会の議員の方々は、そういう誤解はおそらくないと思いますけれども、私の立場といたしましても、名称があまりにも広過ぎる、漠然としている。むしろ警察組織法というふうにでも名称をいたしますと、かなり意味がはつきりするように考えるのであります。 以上簡単に四点申し上げまして、なお御質問をあとで伺いたいと思います。
○灘尾委員長代理 次は総同盟中央執行委員天池清次君にお願いいたしま す。
○天池公述人 私は労働組合の立場から、この警察法の問題に関しましていささか意見を申し上げたいと思います。 労働組合運動の立場から、警察の行政に関する問題につきましては、きわめて重大な関心を持つておるのであります。私どもは戦後の労働組合運動につきまして、このような考え方を持ちました。戦前における労働組合運動というものが健全に育成しなかつたことは、時の警察の弾圧が非常にはげしく、本来労働組合の健全化のために努力し得ない面があつたのであるから、その健全化し得ない責任はわれわれが負うべきでなく、むしろ時の政府、警察が負うべき責任である。しかしながら、戦後において合法的な舞台において労働組合運動ができる今日におきましては、労働組合運動がいかに健全になるかは、一にかかつて労働組合自体の責任にあるのである、このような観念を持つのであります。このような観点から、まずこの提案の理由にありますように、占領政策のいわゆる再検討である、こういあがいろいろな法案に現われるのでありますが、私はけつこうであろうと思うのであります。ただ占領政策の再検討は、あくまで民主的な立場に立つて考えなければならないということであります。この観点からこの警察法を見て参りますと、いわゆるそでの長さが長過ぎるとか、たけの長さが長いから切るというのではなく、むしろ明治時代に洋服を着たように、せつかく着なれて来たけれども、菅の古い着物がなつかしくて、便利にもかかわらずその洋服を捨てようという感があるのでありまして、この警察法につきましては、私は根本的に反対をするのであります。そして現行における警察法で私はいいという考え方を持ち、さらに申し上げますならば、現行法を一部改正する必要がありと考えているのであります。 以下それに対します理由を申し上げますが、この警察法に根本的に反対である非常に大事な理由は、現行警察法がいわゆる民主警察の制度であるという最も大きなものは、地方自治体警察、それに付随いたします公安委員会が完全なる管理運営権を持つ、この二つが中心になつておると思うのであります。この建前から申し上げますならば、この法律は、実質上自治体警察の廃止を意味しておる、公安委員会の最も大事な警察長の任免権を剥奪しておる、このことのために、いわゆる反民主的中央集権的な警察制度の再現であると考えるのであります。もしこのようなぐあいに私どもが考えて参りまして、この法案を見るときに、府県自治警察というものを創設するということを言うておるのでありますが、はたして府県自治体警察というものが完全なる自治体警察であろうか。この面につきましては、私はきわめて不完全なるものであると考えておるのであります。それは府県における府県の仕事の内容というものが一体どういうものであるか。それから自治体というものが育成して参りました今日までの歴史的な事実の上から見ても、一体これがどうなのであるか。まつたく自治体でないとは申し上げませんが、いわゆる不完全な自治体であると私は申し上げるのであります。いわんや今日の情勢下におきましては、県知事の官選論までいろいろ有力な筋から出るような状態にありましては、現在はきわめて不完全なる自治体でありますが、より不完全なる自治体への方向をいろいろ考えられるという現在の情勢でありますならば、なおさらであろうと考えておる次第でございます。 さらにもう一つ大事な点は、警察職員の身分に関しまして、府県自治体警察のいわゆる警察長以下警視以上の身分の者につきましては、国家公務員とするということになつておるのであります。もし現在の府県における性格がかりに不完全でありましても、真に自治体警察を府県において設けるべきであるというならば、この身分につきましても、完全に地方公務員として行うことが妥当な処置であろうと私は考えておる次第でございます。 さらに公安委員会の骨抜きの問題は、これによりまして内閣総理大臣が警察庁長官を任命し、警察庁長官は府県における警察本部長を任命することになるのでありますから、現在の政府というものがいかに善意に考えましても、私は中央集権化は明らかな事実であり、将来政党警察化するおそれが多分に存在しておると考えております。もつともこの法案の内容には、公安委員会は警察庁長官の任免につき勧告することになり、あるいは総理大臣が意見を聞くことになつておるのでありますが、このようなことは、私は従来からの事実をもつて徴するときに、おそらく不可能であろうと考えております。一例を申し上げますならば、かつて現在の国警長官の斎藤さんが、いわゆる政府の圧力によつて罷免されるような危機に陥つた事実があるのであります。幸いなことに、当時の国家公安委員会がこれを阻止したのでございますが、あのときには、政府は何ら法的な根拠をもつて行つておるのではありません。いわゆる政治的圧力をもつて行つたのでありますから、今日の警察法のごとく、明確に内閣総理大臣にその任免権ありといたしますならば、先ほど申し上げました政党警察の危険がある。しかもかつて政党警察の非常に弊害のありましたときに、当時の政党は政友会、民政党でございました。私どもの立場から申し上げましたならば、同じく当時の支配階級を代表する政党であつたと言えると存じます。今後における政争、政権の交代というものが保守と革進との間に行われようとする形勢にあるときに、政党警察の弊害が政治全般に与える影響というものは、はかり知れざるものがあることを強く憂える次第でございます。 さらに政府の提案理由の中の最も大きな問題は、能率の問題でございます。私はこの点に関しましても、一体現在の自治体警察が能率が悪いということについて、何を対象にお考えになつておるのであるかということを疑うのであります。もし現在の国警との対比においての能率、非能率というものを考えるならば、これは今日までいろいろ行つて参りました実績がございましようから、それらをそれぞれ御参照になれば明らかになろうと思いますが、私どもの少い知識で調べた範囲内におきましては、大差はないのであります。場所によりましては、自治体警察の方が能率のいいところもあるのでありますから、大体大差なしと見てしかるべきであろうと存じます。もし現在の自治体警察の能率というものを、戦前における中央集権の警察の能率と対比いたしますならば、私は大いなる誤りをしておるものと考えます。すなわち当時は、最強の軍隊もありましたし、あるいは法律におきましても、治安維持法、違警罪即決令、あるいはその他の一連の人権を蹂躪する法律がありまして、警察の能力、すなわち逮捕する能力からいいますならば、非常に便利な時代であつた。しかし今日の実情というものは、これとはまつたく異なる実情にあるばかりでなく、私はそこまで行つて能率を対比するということになりますれば、むしろそれは根本的に制度の問題として考えなければならない問題でありまして、ただ能率の問題として考えるべきではないと思うのであります。ただその制度上の問題におきまして多少考えられますことは、各自治体に公安委員会の数が非常に多い、自治体警察ごとに本部が存在するこういうことのために多少の能率なり経済なりといつた面についての重複する面はございましよう。しかしこれが民主的な制度上に重大な問題でありますならば、これはむしろ制度上の問題として、こういう制度がいいか悪いかということに論議をすべきでありまして、経済あるいは能率の面からこれを行うべきでないと考えております。なお経済的な問題につきましてさらに一言いたしますならば、政府は九十億の予算の削減を、この説明内容を読んで参りますと書いてあります。それは何によつてであるかはあれでありますが、大体三万人の人員を縮小するということによつて生ずる財源が非常に多いと思うのですが、これが制度によつて得られるということを私は考えておりません。現行制度におきましても、特にやかましい地方議会が不必要な人員を置くことは考えられないのでありますから、これはむしろ現行法によりましても十分なし得る問題であると考えております。 さらに私は、この警察法によりまして生ずる警察官の待遇上の問題から来る警察官の思想上、あるいは士気の問題につきまして一言申し上げたいと思つております。この提案によりますと、行政改革による人員整理、いわゆる国警、自警合せましてたしか十三万五千と記憶しておりますが、このうち三万人の人員の縮小を行おうとしております。これは四箇年かと思いますが、そういうものによつて行おうとておる。それから給料の問題につきましては、自警の方が現在非常に高いのであります。私のずさんな調査によりますと、巡査におきまして大体三千円ないし五千円の給料の差がある。巡査部長につきましては四千円ないし七千円の開きがある、警部補が五千円ないし七千円、警部が八千円から一万一千円、警視が一万円から一万三千円程度の開きがあるのではないかと推定されます。このような状態で、しかもこれに対する措置は地方条例に委譲をされておるのでありまして、きわめてあいまいであります。もし地方条例によりまして、これらの給料がいわゆる手当の形で調整されるといたしましても、全般の平均になるまで高いものは足踏みをしていかなければならない状態になりましよう。このような関係は、恩給の上におきましても退職手当の上におきましても生ずるのであります。しこういたしまして現在の政府並びに国警の方々がいろいろいわれる中の国事犯、いわゆる国家的な犯罪の中にかなり重点的に考えられておりますのは、共産党の暴力的な活動というものがかなり重要に取扱われております。しかしこれらの対策というものは非常にむずかしい問題でありまして、むしろそういうことを大事な問題と考えつつ、労働組合の存在しない警察官に対し、一片の法律におきまして三万人の整理を行い、給料の事実上の引下げ、待遇上の事実上の改悪を行うことは、むしろ士気をきわめて沮喪せしむることになり、思想上におきましてもきわめて悪化の根源をつくることになり、あるいはきわめて有為な人材を失うおそれが多分にありまして、今日の治安上きわめて重大なる問題といわざるを得ないのであります。 最後に労働組合の立場、経済再建の立場から一言申し上げますならば、今日の日本における経済界の状態というものが、国際的な情勢によりましてきわめて困難にあることは申すまでもありません。このために企業の整理、あるいは産業の合理化、こういう問題が多く起りましよう。しかしこれによつて生ずる労働争議、あるいはデモンストレーシヨン、これらの問題に関しましては、現在の労働組合法におきましても、その合法非合法の境はきわめて微妙なものがあるのであります。この微妙なものに対しまして、特殊な事例を除くほか、今日まで問題がないということは、自治体警察の処置がきわめて適切にこの困難な労働問題を措置をしておることを物語つておると思うのであります。これがこの改正警察法によつて運営される場合におきましては、地方の実情に即せないような人も多く来るでありましよう。あるいは政党警察という建前に立つて参りますならば、その運用面につきましても、かなり強化されて来ることになるでありましよう。もしこういうことになりましたならば、日本の経済再建の上において、私ども労働組合の立場から産業平和を主張するものにおきましては、労働組合運動の不健全化をもたらすことに相なりまして、かつての戦前におけるがごとき様相を一部においても生ずることに相なりますならば、今日の日本の重大な経済再建の上にも支障を来すことは明らかでありまして、むしろこういう派生的な事実が健全な労働組合主義というものを否定し、暴力的、破壊的な運動に追いやることも、従来の歴史、経験から見て言い得ると私は考えておる次第であります。 最後に望みますことは、政府も現行法のいわゆる民主性というものを十分に認めておるのでございます。しからば、自治体警察が創設されましてから今日まで、まだ長い年月を経ているわけではないのでありますから、根本的によろしいこの制度を十分に育成する努力というものを私は強く希望いたす次第であります。ちようど時間が参りましたので、私の公述を終ります。
○加藤(精)委員 田上先生にお尋ねいたします。非常にはつきりいろいろ教えていただきまして、私は長年の疑問に目がさめたような気がいたしまして、非常に感謝いたしておりますが、どうもわからないことがありますので、率直にお答えいただきたい。どうも行政委員会制度を警察の中央機関に関連して設置しているところは、世界各国のどこの警察制度においてもないように思つておるのです。それから鵜飼先生から、アメリカは都市警察が多いというようなことをお聞きしましたけれども、よく調べてみますと、どうも非常に少い。スクール・ボードがアメリカで行われておれば日本でも行われるという話でしたけれども、アメリカ自身では、日本にあるような教育委員会制度というものは非常に少い、こういうことを開くと、立法に携わつた鵜飼教授は、それを維持したいという気持が大いにあるかもしれぬけれども、私は行政委員会制度というものの価値について、またその日本に適用することの妥当性、それについて相当な疑問があるのであります。と申しますのは、民主主義で何百年もやつておつて、少数者の権利をよく尊重する美風もすつかりわかつているようなところでは、しかもきわめて限られた渾然たる自治体等においては効用を発揮するのかもしれませんけれども、どうも鵜飼教授の言うような意味の行政委員会制度の効用を発揮することは、なかなか日本の現状では困難じやないかという疑問が少しある。それで国会が非常によろしくないとか、政府が非常によろしくないということ、これは個々の人間の見解の問題でありまして、国会も非常に連坐制の強化とか小選挙区制とか、だんだん自分自身で非常にりつぱになろうとしている。選挙の浄化、政界の浄化ということを考えておる。間違つた者がいるかもしれぬけれども、それは何十分の一か、何百分の一かである。そういうようなことで、内閣が悪いとか政府が悪いという予断のもとに、何か政治的中立性の確保というようなことに非常に強く一般の新聞その他の言論が向いている。しかしながら実態を公平に観察して立論すべきものじやないか。 〔灘尾委員長代理退席、委員長着席〕 内閣も施政をもつとよくし、国会ももつとりつぱにやつて行く、そういう一つの大きな改善進歩というものと並行して警察法の進歩も考えて行くべきであつて、何か国会とか内閣とかいうものを被告のように扱いながら警察法の立案を考えるということは、根本的に間違つているのじやないか。しかもそのチエツクする一つの考えとしての行政委員会というものは、日本で初めて実験材料になつているような気がするのですが、きのう徹底的に鵜飼教授にお伺いしましたけれども、どうも理解できないので、これはいい機会だから十分教えていただきたい。
○田上公述人 ただいまの御質問に対しまして簡単にお答えいたします。公安委員会の制度は、確かに御指摘のように、それほど外国では徹底していないのでありまして、大体委員会は、警察関係では英国で従来発達したように思うのでございます。アメリカの方では、最近はむしろ少いのじやないかというふうに思うのでございます。たとえば外国の制度でも、西ドイツなどでは、イギリスの方の地域においては、従来警察の委員会がかなりやかましくいわれておつたようであります。これも最近では、大体諮問機関のような形にかわつてしまったようでありまして、アメリカの方の地区では、初めから行政委員会なるものはほとんど問題になつておらぬように記憶いたします。ただ私といたしましては、はなはだ恐縮でございますが、今の内閣とか今の国会を疑い、その公正を疑うという意味では毛頭ないのでございまして、ただしいて申しますと、司法権は独立の裁判所によつて行われる。警察の作用は司法権とは違いますけれども、しかしながら司法警察的なものが最近の国家公安委員会の扱う警察には多いのでございまして、司法警察的なものは、裁判所に準じて、やはり政府からはかなり独立したというか、そういうもので運営されるのが望ましい。これは先ほども申し上げましたが、どの政党が内閣をおつくりになりましても、私は同じことが言えると思うのでございます。それから先ほど申し上げましたが、全然考えを入れかえまして、そうして内閣が警察全般について責任を負うことができる態勢はどうか。確かに従来戦前の警察はそうでありました。しかし私は、どうも従来の警察は賛成しかねるのであります。と申しますのは、よく言われることでありますが、政党、これはあまりはつきり申し上げるとどうかと思いますが、どの政党が従来内閣をつくるといたしましても、そのときの政府与党に対しては警察はほとんど手が出せない。もちろん無理に与党を取締れという意味じやございませんが、少くとも野党と与党、そういつた問題につきまして、警察が公平な立場で臨むことができるかというと、戦前の警察は、私ども伺つておるところでは、そうじやなかつたように思うのであります。もちろんこれは、何もそれだけに議論を集中するのはよくないと思いますが、しかしことにまだ民主政治のあまり十分に発達していない、むしろ国民はまだ政治的にあまり訓練が徹底していないわが国の現状においては、こういう公安委員会のような制度をもう少し活用してもよいのじやないか。ことにさつき申し上げましたが、自治体警察とは何か、自治体警察の特色は何かといえば、各自治体、市町村とか府県とか、そういうものにおいて公安委員会を持つことである。公安委員会がもしはずされますと、警察の性質といたしまして、ほとんど自治体警察というものは跡形もなくなる。ほとんど実体はなくなつてしまうように思うのでございます。警察の民主化というのは、警察作用をまつたく各地方によつて違つた方針でやるというのではなくて、自由かつてな基準で治安の維持に当るというのではなくて、これはやはり全国的に共通な連絡をとる必要があると思うのでありますが、ただその特色は、各地方において公安委員会を持つ、これが警察の民主化のほとんど唯一の方法ではないかというくらいに思うのでございます。だから国民が一層民主的に訓練され、そうして警察作用も、何ら外部から規制しないでも健全にやつて行ける、あるいは国民が信頼できるという時代ならば、公安委員会はやめてもよろしい。と申しますのは、先ほど申し上げました議決機関というふうに私は考えるのでありまして、公安委員会は、普通の行政委員会のように警察についての責任を持つところではない。むしろ外部からその警察当局の行き過ぎを是正する、基本的人権を守つて、そうしてむしろ民衆のために警察権の濫用を監視するというのが公安委員会の大きな使命である。もちろん他方において、民衆と警察とを結びつけるといつた積極的な面もございますが、主としては、やはり警察権の濫用を押える。だからその意味においては議会のように、行政当局のやり方に対して議会が監督を加える、そういう立場に公安委員会というものはあるんじやないか。もしこれが普通の行政委員会でありますと、公安委員会というものが中心となつて警察を動かして行くのでありますが、しかしそれには、むしろ委員が専門家でなければおかしい。この公安委員会の委員だけは、普通の他の行政委員会とはまつたく違いまして、およそ警察と無関係なしろうとの人が委員になつておる。ここらを考えましても、また先ほどのように、公安委員会の権限は何か紛争を処理解決をするというような、そういう裁判類似の作用を持つのではなくて、主として警察は純然たる行政権を発動するものでありますから、そういう点で考えますと、行政委員会制度ははなはだ不適当である。けれども、繰返し申し上げて恐縮でございますが、政治的に中立な一種の議会、そういうものによつて、いわば公安委員会というものは警察の外から専門家のやる警察作用についてブレーキをかけるというところに特色があるのではないか。その意味で、まだ民主政治の経験の浅いわが国においては、当分の間やはり公安委員会というものを存置する必要がある。外国においては、あるいはもうすでにそういう時代は過ぎ去つて必要がなくなつているかもしれませんが、私は、日本の現状としては、公安委員会を考えるべきだと思うのであります。
○加藤(精)委員 ただいまの教授のお説に対して、どうも私実際的にも学問的にも納得が行かない。一世の碩学ですから、たいがいは私の方が間違つているだろうと思うのですけれども、徹底して教えていただきたい。大体わが国の民主主義が終戦後非常な発達をしたということは、私はいろんなことがあるにかかわらず、心の底で非常に強く確信しているから代議士になつたのであります。失礼なことですけれども、教授は時代的にそういうことの御感覚がちよつと遅れていらつしやるのじやないかと思うのであります。 普通選挙になつたということが、完全なる婦人の参政権もあつて、ほんとうに地道に生活と結びつけて政治を考えるということになつたのは、御承知のごとくごく最近なんであります。そう日本の民主主義の進歩の程度を卑下してお考えにならなくてもいいんじやないか。それに関連して、どうも公安委員会制度というものはいささかの疑問があるということでございます。その例証といたしましては、県の教育委員会というものをつくつたのでございますが、これは教育のしろうとである。公安委員会も警察のしろうとであり、円満な常識の持主ということですが、これがいつの間にか左翼的になつて、非常に政党的になつている。これは先生が学校管理者の権限を無視して、業務管理をしてもほつておくところが多いのです。そういう実態から見て、明らかに教育委員会制度というものは不成功じやありませんか。私は、どうも事実目の前に現実の問題がつきつけられているのに、それが成功した、日本の実情だという。それは成功するだろうというお考えは非常に甘いと考えますので、切実な問題でありますから、率直に御回答いただきたいと思います。
○田上公述人 大体は先ほど申し上げた通りでございますが、教育委員会は公選でございまして、私も公安委員会を公選にするというのは、ただいま御指摘のような、あるいは不都合が起きるかもしれないと思っておりまして、その点、教育委員会のような意味と同じ形の公安委員会を設けることには、反対でございます。けれども公安委員会というものがあつて、そして地元の意見を十分に反映して、これはしろうとでございまして専門家でありませんが、専門家の警察作用、警察事務につきまして議会に準ずる、議会のような形の一つの監督を加えるということは、先ほどから申し上げておりますが、私は民主的なことだと思うのであります。 私の申し上げ方がはなはだ不十分でございまして、いかにも現在の日本の国民がまだ幼稚であるというふうに申し上げたとすれば、これはお詫びしなければならないのであります。しかし普通選挙、ことに婦人に参政権が与えられたということは、私自身は大いに賛成なのでありますが、はたして日本の現状において、婦人が政治について十分に自覚を持つておるかどうか。私は昔に返すというのじやなくて、そういつた形式的に参政権が与えられた現状において、実質的な裏づけを重視すべきではないか。その意味においては、余談ではなはだ恐縮でございますが、さらに政治的な教育、啓蒙運動のようなことは十分にやらなければいけない、そういう現状でございますから、公安委員会の制度を今一挙にはずすということは、どうもただいまの御質問とはむしろ逆の効果と申しますか、かなり民主政治の点から申しますと、逆行するような結果になることをおそれるのでございます。はなはだ不十分でございますが簡単にお答えいたしました。
○加藤(精)委員 ただいまのお話では、私の疑問はとうてい氷解できないのでございまして、むしろこの警察事務の中性化をはかるというなら、アメリカの都市警察のコミツシヨナーですか、警察管理者というようなものを適当な形で選挙したり、あるいは任命して吏員にしておいてやるとか、あるいはまた各種の方法があるだろうと思うのであります。国家の中央機関の場合におきましては、どうも――これは与党の意見でも何でもないのでありますが、学問研究のためにお尋ねしておるのでありますが、それこそ従来の人事官のように国会で議決して、任期をつけて、身分保障をしたらいいのじやないか、まわりくどいことをする必要はないのじやないか、それは日本にはまだ無理な制度である、そんなふうに思いますが、それについての御回答はいりません。 先ほど行政事跡ということについて、新しい概念でよく御説明いただいたことは、たいへんけつこうだと思うのであります。これは地方制度調査会の答申で、教育委員会は五大都市に設ける、警察は五大都市の業務にしない。これは今逆になつておるのですが、その行政事務という面から見て、義務教育と警察業務とはどつちが行政事務らしいか。義務教育というのは、今の法制では公共事務にしてしまつていいのではないかと思いますが、これには大きな疑いがある、その点に対する御見解を聞かせていただきたいと思います。
○田上公述人 公立学校などの教育事務がどういう性質を持つかというのは、実は私も正確にお答えができないのでありますが、少くとも自治事務と申しますか、公共事務ではない、かように考えます。その意味においては、警察などと同様に国家的な性格を持つておる。つまり各自治体で――極端に申しますと、その区域内の住民さえ承知すれば、どんないいかげんな教育でもよろしいかというと、そうは言えないのでありまして、やはり全国的に見て、将来の国民というものを考えますと、教育は、どんなにいなかへ参りましても、決して都市の学校に劣らないような教育を学校はすべきだと思います。そういう意味において、国家はやはり重大な関心を持つて、十分にこれを育成されることが必要だと思うのであります。ただこれは、本日の問題を多少はずれるかと思うのでありますが、私の先ほど申し上げましたのは、警察作用も、いわゆる自治体警察は、憲法で申しますと、地方自治の本旨によつて、当然固有といいますか、各市町村に初めから備わつておる、ちようど個人の基本的人権のごときものである。だから絶対に国家はこれを奪つてはいけない。各市町村には最後まで警察権を残すべきだという議論が、しばしばあるのでございますが、これは少少間違つているように思うのでございまして、これの一つの理由は、さつきから申しましたが、公共事務であるといたしますと、結局その地元の住民、あるいは地元のこれを代表する議会なり、あるいは公安委員会なり、そういうところで適当に判断して、自分の方はしいて制限はしなくても、もしほかの方で問題が起れば、他の地区において集会や何かについての規制をするであろう。そういうふうな形になりますと、自治体警察がそうなれば、これは非常な弊害だと思うのでありますが、元来は警察はそうではないのであつて、やはり自分の区域を越えたもつと大きな角度から事務を考えるべきだと思うのであります。そういう意味において、行政事務だと思うのであります。そして行政事務だということは、同時に国家も必要があればその事務をみずから行うことができるという意味でございまして、その点は必ずしも憲法でいう地方自治の本旨を害するものではないけれども、ただいたずらに政府の方で警察権をみずから行い、地方の自治体からは警察権を取上げるということになりますと、これは民主政治の上からいつて私は好ましくない、少くとも日本の現状においては適当でないと思うのであります。事情の許す限り、やはり地方において行わせるのが私は政治的に見て正しいと思うのであります。けれども現状において、最小限慶でありましようが、そういうやむを得ない全国的な事件、災害とか、騒乱、内容はかなり議論があるかと思いますが、とにかく最小限度においてはやはり国家がみずから責任をもつて警察権を発動することが必要である。しかし実際にそういう事態はほとんど起きないかもしれませんが、またわれわれはそのことを希望するのでありますが、通常の警察だけでなくて、それ以外に、やむを得ず国がみずから警察権を行わなければいけない場合もあるのではないか、そういう点に、先ほど申し上げた行政事務の特色があるように思うのであります。もし自治体の公共事務であるといたしますと、現に町村には多くの場合に警察権が与えられていない。また都道府県も、もし憲法上の地方公共団体であるといたしますと、市町村と同じような意味の警察権が初めから備わつておるはずでありますが、しかし現行警察法はそうではないのでありまして、そういう点から考えましても、単純な自治事務、公共事務とは考えられないのであります。
○大石委員 松本さんにちよつとお尋ねします。私はあなたの話を途中からお聞きしまして、はつきりわかりませんけれども、最後に自治体警察を認めるなれば、五大市のみに自治体警察を存置すべきであるということをおつしやいましたが、そういうことはどういう理論上から出たのでしようか。私たちは現在のままの自治体警察、現在の警察法そのままを存置してこそ、真に民主警察であると思つておる。あなたはそういうことをどの根拠でおつしやいましたか、聞かしていただきたい。 それからもう一つ。一橋の先生、婦人に参政権を与えたが、婦人は非常に無知であるとおつしやいました。男にも無知な人はたくさんいます。ここは警察法を審議するところで、警察法に対する公述人としてあなたを呼んでおるのです。ほかのことを言う必要はないと私は思う。あなたはいかに思われるか。どうぞ二人の人、はつきり返事してちようだい。
○松本公述人 まずお答えいたしますが、五大市のみに置くべきであるというふうには申し上げませんでした。少くとも五大都市には設置する必要があると私は考える、こう申しまして、その理由は詳しくは申しませんでしたが、主として次のようなことを列挙いたしました。大都市には大都市としての特異性がある、従つて大都市の警察がいかにあるべきかについては、大都市特有の理論があつてしかるべきである、この大都市特有の警察のあり方の理論は、現にあるものを認めまして研究するに越したことはない、そしてこれを廃止するという理由も特に見出されない、こういうことをまず申し上げました。それから私の持論でありますが、司法警察と行政警察の区別ということは、非常に重要な問題だと考えておるのでありますが、この問題との関連において、都市警察のあり方はすこぶる重要な意味を持つのであります。都市警察のあり方と、司法警察と行政警察との区別、この結びつきに重要な意味を認めたいと私は考えておるのであります。さらにもう少し具体的に申しますと、大都市の警察がいかにあるべきかということを考えつつ、この行政警察と司法警察のあり方を考えるのが、少くとも今日においては特に必要な適当な面である、こういうふうに考えておつたのであります。さらに五大市にというふうに限定いたしましたのは、断りましたように、特にはつきりとした根拠はなかつたのであります。もう少し具体的に申しますと、人口によつて線を引くということの根拠を引きずり出すのが非常に困難であります。もちろん維持する能力ということ、あるいは客観的に見て維持することが適当である、こういう二つの標準が考えられるとは思うのでありますけれども、それにしても、人口によつて線を引くということが困難である。そこで私は、その線については結論をよう出さないのであります。そういうことからして、私のは、少くとも五大市には大都市特有の警察があつてよいし、研究すべきものであるから、この線は残すべきである、こういう結論になつて来たのであります。
○大石委員 しからば松本さんにちよつとお尋ねしたいのですが、現在の政府は、警察を府一本にしようとする。そこで京都市にかりに特別警察があつて、あなたも京都ですが、園部に暴動が起つた、そのときに今度は京都市へ応援を求めに行く、こういう煩雑さが起ります。あなたは学者ですが、私は実際問題を言うておるのです。五大市のみに特別警察を置いたら、京都市なら京都市の特別警察に、園部に暴動が起つたときにさえぎられる。実際問題とあなた方の話が合わない。こういうときに一体どうしたらよろしいのでございましようか、お教えを願いたい。
○松本公述人 特別警察を置くということの意味が私にははつきりいたしませんのです。
○大石委員 それでは私わかるように言います。あなたのおつしやるように、京都市に警察を特に置く。そうすると、今度はあなたが知つていらつしやる園部に暴動が起つた。園部の人は困つて、今度どこへそれを頼みに行くのですか、それをちよつと教えてください。
○松本公述人 今園部というような具体的な例が出ましたが、園部は京都府警察の管轄区域に入るわけであります。そこで園部にそのような暴動が起つたときには、京都府警察に責任は集約されるわけであります。逆の言い方をしますと、京都府警察がその警察事実を決定するとか、あるいは解消するとか、除去するとか、そういうことを行う立場に立つわけでございます。
○大石委員 私の言うことがわかつたのでしようか。(笑声)
○松本公述人 その場合に京都市の特別警察というのはどういう意味なんでしようか。
○大石委員 京都市に隣接している園部という町があるとします。現にあるんです。その園部にかりに暴動が起るとする。そうすると京都府の警察に頼みに行こうとしても、京都府の警察というものは孤立してしまう。京都市というものがあるために、園部に援助に行こうと思つても援助することができない。こういうときには一体どういうふうになるか。私の言うことがわかつたでしようか。(笑声)
○松本公述人 わかりません。
○大石委員 わかるようにもう一ぺん言います。あなたのおつしやるように、京都市にかりに特別警察を認めるとする。そうすると、隣の園部に暴動が起つた場合に、その応援を京都市に頼みに行かなくちやならぬ。そういうときに、一体園部の人はどうなるかということを聞くんです。
○松本公述人 その場合には、園部は京都府警察の管轄の区域なんですから、京都府警察がまず出て参ります。応援を必要とする場合に、京都府警察がどこに応援を求めるかというと、通常の場合、京都市警察に応援を求めることになるかと思います。なお京都市警察が特別警察であるとおつしやいましたが、私は京都市の警察は府県警察と同じ立場、同じ地位に置いてあるということを申し上げたのであります。ですから特別の警察ではないと思います。
○大石委員 特別警察という名前を引用したことはどうかしらないけれども、そこに繁雑なものができます。あなたが五大市に警察を置いたらよいと言われるが、それでここに繁雑なものができるのはどうするかということを私が聞いているのです。
○松本公述人 指摘されましたように、繁雑なものが起り得る可能性はあろうかと思います。けれどもその繁雑なものがあり、不利なものが出て参りまして、不都合な結果が出て参りましても、それ以上のプラスを私どもは見るわけであります。具体的に繁雑なものが出、マイナスが出ましても、そうしたもの以上に大きなプラスのあることを認める、こういう立場でありますので、考え方がその点において根本的に違つているかと思います。
○大石委員 プラスというとどんなことですか。どんなことがマイナスになるか、わからぬから教えてください。
○松本公述人 先ほど大都市に警察を置いた方がいいという理由としてあげましたもの、まずそれが基本的な私の考え方であります。なおさらに具体的に申し上げれば、大都市が、特に警察を運営して行くあらゆる面における能力を持つているものと考えられるということ、それからそれが設けられまして、他の単位であるところの府県警察との間に起るマイナスがかりにあつたにしても、大都市が自分の区域内の平穏を実現するいとうことに比べをすと、その方の利益が大きい。大体こんな考え方であります。
○大石委員 それでかりにこれを横浜市にたとえますと、横浜市に自治体警察を置くとする。そうすると、横浜市に隣接している川崎市は、横浜市警にさえぎられる。そうすると、神奈川県の警察は孤立する、こういうときは一体どういうふうにしたらよろしいでしよう。これをお尋ねします。
○中井委員長 大石さんにちよつとお尋ねしますが、あなたのおつしやつていることは、現行法で行くのか、改正法で行くのかというところに議論のはつきりしないところがあります。
○大石委員 私は現行法を望んでおります。しかしこの方が特別市制を言われましたから、それで私は質問しているのです。たとえて言うと、横浜市に自治体警察を認める。そうすると、横浜市に隣接している川崎市は、横浜市警にさえぎられて、神奈川県の県警察は孤立してしまう、もしこういう事態が起きた場合にどうするかということを老婆心で聞いているのです。
○松本参考人 大石さんの指摘されている点でしたら、むしろ現行法による弊害が大きいということを私考えるのでありますが、それじや具体的にどんなものがあるか、今ただちに申し上げかねますが……。
○大石委員 五大市側に置くというのではない。現行法にあなたは賛成なんですね。それをはつきり聞かしてください。
○松本参考人 少くとも五大都市には置く価値を認めることができると結びました。
○大石委員 そしたら現行法のままでよいじやありませんか。
○松本参考人 その点についてはそうなります。
○大石委員 十万以上ある市のところには置いていいと言つている。それにあなたは何ゆえ五大都市のみを強調されるかと私は言うんです。どうですか。
○大矢委員 実はその問題で私も尋ねようと思つておつた。これは五大都市と言わず、大都市という言葉を使つたように記憶しております。少くとも大都市には必要だという、大都市の限界、内容について私は聞こうと思つたら、ちようど大石さんが聞きまして、そこまで考えてなかつた、少くとも特別な行政区を持つている大都市には必要だ、こういうので、幾らに切るかということはまだ考えていないということでありますから、それ以上お尋ねいたしませんが、私は今度の改正で一つ非常に疑問になることは、大都市の問題に関係するのですが、たくさんな警察署を持つておる。そこでその府県警察本部長が任免権を持ちますから――警察官の異動に対しては、もちろん公安委員会の意見も聞くでありましようが、実際としては任免権を持つておりますこの本部長が――先ほどあなたは刑事司法と行政というものを区別する必要がある、こう言われておりますが、特に大都市の警察署というものは、行政警察の部面で非常に仕事が多い。その場合に、この警察署管内の住民がこの人はおつてほしいと念願しても、警察本部長がその署長の異動をかつてにやる、私は実際問題としてこういうことが非常に出て来ると思う。特に警察本部長は国家公務員である、一方警視正以下は地方公務員であるから、国家公務員である警察本部長は、雇い主の市長、あるいはまた市のことを考えずに――全然考えないわけではないのでしようけれども、その人事の異動をかつてにやられるということでは、警察と民衆のつながり、また地元としてはもつとおつてもらいたい人を置けなくなるようなことに、警察本部長の考え方によつてなるのではないか。もちろん法律的に規定すれば、そういうふうに国家公務員が地方公務員の人事権を持つことはできるかもしれませんが、自治というものを尊重するということから考えますと、国家公務員が来て、それで地方公務員を自由にあつちにる、こつちにやるということは、行政警察面から見ると非常な不合理な面がある。こういうことが一つ。 いま一つ、両教授にお尋ねしたいのですが、私が申すまでもなく、民主主義は住民の基礎の上に立つておるものであります。それを尊重するということは当然でありますが、昨年、どうしてもいけないならば、それを住民投票によつて住民の意思によつていつでも廃止することができるように君らが改正した、そういうことができるように改正しておきながら、今度一年もたたないうちにまた取上げてしまう。これはほんとうの約束から行きますならば、こういう法案をつくろうと思うが、改正の意思のある者に出て来い、それからどうするということをやる。それをこういう生活に重大な関係のあるものに対して、政党の一片の考え方でやるのはどうか。もちろんわれわれは住民を代表して選ばれて出て来ておるのだから、われわれにまかされておるといえばそれまでですが、しかしこれほど生活に重大な関係のあるものを、しかも法律に約束しておきながら、せつかく置いてほしいというものをかつてに取上げるというこのやり方は、はたして民主主義の理念ということに――これは法理的には可能かもしれませんが、政治道徳的に、あるいは法律的に約束したものをこういう処置によつて取上げることはどうか、こう思うのでありますが、それについて、それは多数決でやればやむを得ないのじやないかと言われるのか、あるいはそういうことを法律で約束したのだから、手続上としてそういうことをするのが民主的とお考えになるのか、その点をお伺いしたい。
○田上公述人 ただいまの御質問は、住民投票をもつて廃止に決定したところは廃止すべきであるが、そうでないものは自治体警察を残すべきであるという御意見のように拝聴したのでありますが、私地方をまわつて聞いてみますと、小さな自治体においては、むしろ住民投票を希望しない向きがかなりある。これはこういう席ではどうかと思いますが、住民投票を行いますと、そのために地元でかなり政治的に意見がわかれまして、ことに小さいところでは、ふだん親しくしておる者が、賛成、反対というふうにわかれていろいろ議論をすることになつて、はなはだおもしろくない。法律ではつきりときめていただいた方がぐあいがいいという意見もかなり出て来ております。もちろんこれは大都市の警察の問題ではないのでありまして、比較的中小の自治体の警察の問題でありますが、一一その場所は申し上げませんけれども、そういう意見もかなりあるようでございます。 それからもう一つの、ただいまの御質問に対するお答えといたしまして、確かに地元の意見を聞かないで、一方的国会の法律で自治体警察を地元から奪うということは、はなはだ非民主的ではないかという御懸念のように伺つたのでございますが、これは憲法九十五条の解釈でございまして、九十五条で、そういう極端なおそれのある場合には、その法律は地元の自治体において住民投票で賛成がなければ効力を生じないという規定がございます。けれどもこの制度は、特定のきわめて少数の地方公共団体にのみ適用される法律を国会がおつくりになる場合でありまして、広く一般に一定の――たとえば人口何万以下の市においては自治体警察を認めないというような法律、そういう程度でありますと、これは国会でおつくりになれば、比較的公平な立場でございますから、住民投票の必要はないし、また私は決して非民主的な方法ではないと思うのでございます。もちろんそれは国会が御賛成になつたときでありまして、政府が提案いたしましても御反対になれば、これは全然問題にならないわけでございます。各選挙区、各地方を代表された議員がおいでになりますから、ここでおきめになれば、その点の非民主的であるというおそれはなかろうかと思います。 なおただいまの大矢議員の御質問に対するお答えではないのでございますが、先ほど大石議員からおしかりを受けまして、実ははなはだ恐縮しておるのでございますが、私はすでに二十年来女子の政治教育にも関係しておりまして、かつて教えた者の中には、すでに婦人代議士も出ておるのでございす。毎年数百人の女子の学生に対して政治教育をやつておるのでありまして、そういう点で、ただ教えおりますと、とかくいつまでも子供のように考えまして、何かまだ未熟ではないかというふうに思っておるのでございますが、幸いただいまのお言葉によりまして――これは私どもの教えた人がどうだというわけじやございませんが、もうすでにわが国の女子の政治的な水準がそこまで達しておるというふうに伺いまして、はなはだ感激しておるのでございます。私の言葉が足りませんところはおわび申し上げたいと思います。
○中井委員長 ちよつとこの機会に政府側の答弁を求めることにいたします。それは先ほど門司君からの御質疑がありまして、後刻取調べの上答弁するということになつておる問題です。門司君は間もなく退席されなければならぬ格別の御用件があるそうでありますから、この機会に特にこれをさしはさみます。谷口国警次長。
○谷口(寛)政府委員 午前中門司委員から、昨年の六月の九州水害の場合におきまする熊本県の国警本部と熊本市警との援助協力の実情につきまして、詳細に調べて報告しろというお話がございましたので、概要を御報告させていただきたいと思います。 御承知の通り昨年の水害は、六月の二十五日から雨が降り出したのでありますが、翌日の二十六日午後六時ごろにはもはや相当な水量に達しまして、熊本の市内を流れます白川の水は七尺程度になつて、しばらくすれば氾濫するのではないかといつたような状況にあつたようであります。そのときに午後八時三十分ごろ、市の野田といわれる捜査課長から国警の警務部長に対して、電話でもつて、特別に人数その他の希望はされませんで、一応たいへんな状態だから、国警から応援をしてくれないかという依頼があつたのであります。その場合に、当時国警の隊長は、皆様も御承知と思いまするけれども、昨年の同時刻ごろに同県の鏡というところにあります日産化学の争議の問題に関連いたしまして、当国会に参考人として上京をせられておつたのでございまして、隊長は不在であつたわけでございます。従つて警務部長に連絡がございました。警務部長といたしましては、その水害で全県的に相当な被害があるという情報も入つておりましたし、特に小国という方面、さらに飽託郡というような方面は、ほとんど全滅に近いのではないかといつたような情報も入つておりましたので、今申しました市警の捜査課長の方からの連絡につきましては、全県下の情勢判断がいまだ十分につかない、従つて今ただちに国警として市の方へ応援を出すことはできないということを申したようであります。それを市の方でも了承をせられたのであります。翌日に至りまして、逐次全県下の情勢が明瞭になって参りましたので、国警の側におきましては、翌二十七日の朝の六時ごろに、市内が水浸しになつておりましたので、警務部長と警備部長がボートに乗りまして市警の本部に参りまして、今申しました野田捜査課長その他の幹部に警備の応援措置等につきまして、直接国警側から出向いて相談をいたしたようであります。そのときに市警の本部長も、やはり数日前から熊本市内を離れられまして、県下の南の方のあるところに行つておられたようでありまして、本部長がおられないから十分に結論を得ないままで、そのときは相互に引揚げたようであります。 先ほど申し上げました国警隊長の方は、二十六日の夕刻非常な水が出たという事情を聞きまして、こちらの国会の証言を終りますと一緒に、急速急行列車をもちまして帰りまして、九州へ着きますると、連絡の方法も相当困難でありましたが、例の有明海を和船を雇いまして、非常な冒険をして二十八日の午後九時ごろ帰郷いたしたような状況になつております。そうしていろいろ情報報告を聞きますると、やはりこのままでほつておいてはいけないという判断もされまして、隊長としては、ただちに市の本部長と市の公安委員長においでをいただきまして、そうして国警としては、その後の情勢判断から見て、罹災を受けてない地域の職員も相当おるから、いつでも応援を出しましようということを、むしろ国警隊長から御相談をかけたようであります。この場合も、応援を受けた場合の食糧が市の負担になるかとか、あるいは経費がどうだとかいうような関係で、いささか市の側において躊躇をせられておつたように報告は開いておるのであります。国警隊長といたしましては、今や経費とか食糧とかいうような問題は問題ではない、むしろそういうものにつきましては、国警側でめんどうをみよう、ぜひ出しましようということを強く申しまして、二十九日の六時に相なりまして、市の方から応援要請を、正式に人数と日時をつけ加えまして要望をいたしたようであります。その文書によりますと、三十日の朝から制服部隊百二十名、私服部隊十名、これだけを応援をしてもらいたいという正式の応援要請でありまして、その要請の通り、六月三十日の早朝から、今申し上げた部隊を応援配置につけたというような事情になつております。なお久原熊本市警本部長の御証言の中にもありましたが、国警は四日後に来たが保安隊に出てもらつた、こういうお話でありましたが、四日後になりました詳細の事情につきましては、今申し上げた通りでございます。 あわせて参考までに保安隊関係について申し上げます。さつそく出動いたしました保安隊は、先ほど申しました国警の警務部長がいろいろ市と連絡いたしましても、ただちに国警側の応援を情勢判断上出すわけに行かないという判断から、熊本市内の健軍にある保安隊の出動方を国警側から知事に要請をして、その結果といたしまして、翌二十七日の早朝二百名の保安隊が市内に応援に出た。誤解を招きませんために詳細に申し上げれば、その後逐次保安隊の増強がありまして、一番多い場合においては千二百名程度の保安隊員が応援に出たようでありますが、この最初の二百名以外の逐次の増強につきましては、市側から知事を通じて保安隊の応援を要請したというような事情に相なつておるように聞いております。以上はなはだ簡単でありますが御説明申し上げます。
○中井委員長 ちよつとこの機会に皆様にお諮りをいたします。天池公述人におかれましては、他に御出席になるべき時間が迫つて参つたとのことでございます。天池さんに対しましては格別の御質疑もないようでありますから、この際御退席を願うことにしても御異議はございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○中井委員長 さように決定いたします。天池さんにはお忙しいところおいでいただいて、貴重なる御意見を承ることができましたことは、まことにありがたく存じます。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。御退席くださつてよろしゆうございます。 引続き質疑を続行いたしますが、時間も五時を過ぎること二十分、何とぞ簡明なる御進行を願いたいと存じます。石村英雄君。
○石村委員 松本先生に伺いたいと思います。あるいは私の聞き違いだつたかと思いますが、実は今度の改正法で私が疑問に思つておりますのは、国家公安委員会と警察庁との関係でございます。この法案では、警察庁は国家公安委員会の事務部局、こういうようにはつきり規定してあります。先ほど先生は、事務局のようなものだと思うがというようなお話があつて、そうして国家行政組織法との関係を御論じになつたと思いますが、これは私の臆測であるいは間違いかもしれませんが、従来事務部局である。現在におきましてしも、国家公安委員会を離れて警察本部というものが一人歩きをしておるのじやないかという感がいたすのであります。今回の改正法によりまして、先生は事務部局だと思うがというようなお話になつたように聞いたのですが、政府からは事務部局ではない、これはちやんとした国家行政組織法による庁というような御説明があつたのです。こうなると警察庁は、なるほど国家公安委員会の管理のもとに仕事をするということにはなつておりますが、独立の一つの庁として一人歩きをますますするようになるのではないかという懸念があるのですが、先生の事務局だと思うがという前提のもとの御見解との関係、私の聞き間違いだつたら別ですが、さらにお聞かせ願えれば仕合せだと思います。
○松本公述人 国家公安委員会が総理府の外局であるということは、法案の四条でまず理解されると思います。ところが十五条によりまして、警察庁というものが国家公安委員会のもとに置かれるとあります。ですからその二つの規定からすれば、国家公安委員会が外局の庁であり、警察庁がその事務局であると一応判断ができる、こういうことを最初申し上げました。ところが警察庁の組織なり、運営に当つての権限の内容なり、それから国家公安委員会その他の関係など、法案を仔細に見て検討しますと、大まかな言い方でありますが、国家公安委員会も警察庁もともに外局であるという感じを著しく与える、こういうとになりました。そうすると国家行政組織法の第三条、特に第三項に照して疑問が出て来る、並びに国家行政組織法の第六条に照しても問題が出て来る。単に警察庁という名称だけでなくて、その権限の内容、運営の方法などにおいて問題が出て来る。そこでこの点はどうも私にははつきりしないという気持を持ちながら、先ほどそこまで意見を申し上げたわけであります。
○石村委員 私は一人歩きというような、非常に俗な言葉を使いましたが、先生のお考えも、俗な言葉を使えば、今のお話で一人歩きをしそうになるというようにお考えなんでしようか。
○松本公述人 警察庁が国家公安委員会から離れてしまつての一人歩きという意味なのでございましようか。
○石村委員 そうなんです。この法律によつて当然そうしたことができるようになつて来るんじやないか。
○松本公述人 多少の懸念を持たぬでもありませんが、私としましては、今ただちにそういう結論は出せません。私としまして申し上げるのは、国家行政組織法の第三条と第六条に照してどうも疑問がある。新しい行き方かもしれないけれども、そして新しい行き方がいいかもしれないけれども、国家行政組織法という国家行政組織の根本法があるのであるからして、それに違反することはもとよりいけないが、矛盾する、どうもおかしい、こういう方法はとられるべきではない、ここまで私の気持として申し上げることはできると思います。
○中井委員長 西村君。
○西村(力)委員 松本先生にお尋ねいたしますが、先生は先ほどの御証言で、国家公安委員会の委員長が国務大臣であつても、何ら行政法上の支障はない。法律的にはそういう解釈になるでしようが、今まで公述人の意見の中で、国務大臣にあてるということは、不偏不党であるべきその原則を、もう当初からくずしているというぐあいに昨日は戸倉弁護士が言われました。それからきようの午前中も、担当の国務大臣に時の政府の政党人がなり、また委員の中に同一政党人が二名出るということになれば、これははつきりと公安委員会の性格が不偏不党とは言えないようになるんだということを言われ、それは、行政法の法的解釈を積み立ててやれば、何らそこにさしつかえはないけれども、そういう公安委員会の機能が不偏不党に運営されることを確保する上からは、やはりそうであつてはならないという一つの政治的見解はおとりになることができませんですか。
○松本公述人 その点について申し上げましたとき、私はたしか、自治庁のことと保安庁のことを取上げまして、自治庁の長官が国務大臣、保安庁長官が国務大臣とそれぞれ申し上げたと思います。国家公安委員会が総理府の外局であるという立場を貫くというと、行政組織上としては国務大臣が委員長になつてもさしつかえない、その意味においては一向問題にはならない、ここまで申し上げたのでありまして、そうすることによつて警察の現実の運営がどうであるかということには一切触れませんでした。そこで今の御質問は、その点について松本の考えを述べよというふうに受取れるのでありますが、憲法の六十五条に、「行政権は、内閣に属する。」とありますが、その属し方は、単に個々の行政が内閣に属するといつておるのではなくて、一般に行政は内閣に属すると述べておる、そういう理解を私はするのでありますが、その内閣が重要な警察という行政に関与する、国家公安委員会のあり方並びに動き方に重大な関心を持つことは当然であり、そしてその考えが達成せられるようにすることもまた必要である、そういうふうに考えて参りますと、多少の問題点が出て来るかもしれないけれども、しかし別の面から、内閣の責任を全うするということがさらに重要な問題であるからして、多少の不都合が出て来ても、内閣の責任を全うするという点からはそれがいい、こういう気持です。
○西村(力)委員 公安委員会を認められる前提は、やはり人民のコントロールということ、あるいは先生も、公安委員会そのものが時の政府権力と同一の立場をとつたのでは存在の意味がなくなることは御了解になつていらつしやると思う。ただいまの御説のごとく、内閣の責任というものが先に走つて、それが第一次的なものになつて来れば、公安委員会の存在を否定する結論になるのではないかと思う。どうもそういうふうに論理は進んで行くのじやないかと思うのですが、その点、先生の御見解はどうでありましようか。
○松本公述人 やはり私は、行政組織の立場から、委員長が国務大臣であつてもさしつかえないという気持が、お話をそこまで伺いましたが、動きません。
○西村(力)委員 それではただいまのに関連しまして田上先生にお伺いします。 ただいまの松本先生の結論からいいますと、田上先生のおつしやるこの警察法そのものと、警察国家に進むであろうという危険というものは、これは一致するのじやないという考え方と同じ趣旨のものであると私には聞えるのです。そういうぐあいに法の筋は立つても、現実にはわれわれの懸念は一切払拭されないのですが、この警察法そのものは組織法であるから、その警察権の作用――作用の性質ということを先ほどたびたびお使いになられましたが、そういうこととは関係ないということを言われましても、私たちは納得できない。これは組織法そのものの中にも、当然一つの行く方向を定めるいろいろな関連があるであろうと思うのですが、関係がないと言われましたことのもう少し詳しい御説明、もし組織法において関連がないというぐあいに断定されるならば、そこで、しかしこれこれのものが一つの最低として保障されなければ関連がなくなるという御見解を、ひとつお聞かせ願いたい。
○田上公述人 ただいまの西村議員の御質問に対しまして簡単にお答え申し上げます。 組織法とそれから警察作用に関する法律、これは作用に関する法律はもちろん統一されておりませんので、代表的には、たとえば現在の警察官等職務執行法などでございますが、私が現在の警察法を組織法だと申し上げましたのは、つまり警察法の、あるいは法案のこの規定だけでは、実際に申しまして、警察当局は何も人民に対して権力を行うことができない。どうしてもこれは一々各作用について個別的に法律がさらに用意されなければならないわけでございまして、武器を使用するにいたしましても、その他営業について、道路交通取締りについて、その他御承知の公安条例のような集団行進などの取締りにつきましても、この警察法だけでは何も当局は手が出せないことは御承知の通りであります。その意味におきまして、基本的人権を保障する、あるいは警察国家になることを防止するという意味においては、そういつた警察作用に関するいろいろな法律をおつくりになるときに慎重に御考慮願つて、それが公共の福祉のためにやむを得ないと、必要がないのにかかわらず行き過ぎた取締りをもし含むものであれば、その作用に関する法律を一一批判されて、あるいはこれを適当にお直しになるでしようけれども、今回の警察法案はそういつた警察権そのもの、警察に関する実力と申しますか、そういう統治権そのものには何ら触れていないで、むしろ別に作用に関する法律によつて与えられる、あるいはすでに与えられているその権力をどのように動かして行くかというのでありまして、いわば物にたとえますと、器であつて、器の中に入れるものが甘いものであるか苦いものであるか、そういう中味とは一応別に私ども考えているのでございます。もちろん組織につきましても、組織のあり方によつて、その同じ権力を別に作用の法律から与えられますときに、それが非常に強いものになるときもありましようし、大して力を発揮しないかもしれない。でありますから、もちろんこの警察組織の法律も、十分にわれわれ人権の保障について慎重に考えるべきだと思うのでございます。その点では、先ほどからお話に出ております公安委員会というものにおいて、民主的な運営を考える。その他いろいろな自治体警察というものを、従来と大体同じ線において考える。都道府県の警察は、従来の国家地方警察のようなものであつてはならないと考えるのでありまして、その点行政管理も原則として地元の公安委員会の手に移す、いろいろなくふうが当然考えらるべきであり、またただいまの内閣総理大臣と国家公安委員会の関係、国務大臣を入れるかどうかという点も、もちろん将来の警察を運営して行く上に、警察の民主化という点で、十分にお考えいただきたいのでございますが、しかし警察権そのものは、これは別に他の法律によつて与えらるべきものと考えておりますので、その点を先ほど申し上げたのでございます。御承知と思いますが、はなはだ恐縮でございますが、私の気持はそういう点でございます。
○北山委員 関連してちよつと田上先生にお伺いしますが、組織に関する法律というのと作用のこととわけまして、そして警察権の濫用というのはどちらかといえば、警察作用を規定する法律の審議の際によく注意すれば防げるのじやないかというお話、一応形式的にはそう考えられるのですが、しかし問題はやはりその作用に関する法律というものを、警察機関が忠実にこれを守るかどうかということにかかつて来ると思うのです。今までの警察が、法律を逸脱してやつているという事例が過去においてもたくさんあつて、それが人権蹂躪等においてよく現われておるのじやないかと思う。この一つの例を申し上げて、そしてこれが正しいかどうかについてお伺いしたいのです。実は現行警察法のもとにおいて、国家公安委員会の規則というものをつくつておるわけです。国家地方警察の基本規程というのでありますが、それを見ますと、これは昭和二十三年にきめて以来たびたび改正をしておるのですが、第二条に、「長官は、国家地方警察の執行の長とする。」こう規定している。こういうことがはたして現行警察法の第十三条ですか、そういうものと矛盾しないか、それから基本規程の第十条の第二項には、「長官は、国家地方警察の職員の指揮、管理、規律及び服務に関する規定について、警察法並びに民主的な警察実務の改善に資するよう、必要な改正を国家公安委員会に勧告しなければならない。」その国家公安委員会の指揮監督下にある長官というものが、委員会に法の改正なり、そういうものについて勧告をするというような規定になつて、非常に独立しておるような規程が設けられておる。それから基本規程の第十三条には、「長官は、皇宮警察の行う職務について、国家公安委員会の委員長と定期的に協議するものとする。」公安委員会の指揮監督下にあるそういう長官というものは、そういう業務内容、やる仕事について、自分の上級のものと協議をしなければならぬというような規則をつくつておる。これは私は、現行警察法の第十三条に違反するものである、かように考えるのですが、そのように、現在の組織自体において警察法を忠実に守らなければならぬのに、国家公安委員会の規則において、そのような警察法のもとにおいてどうかと思われるような内部規則をつくつておるのだ。こういうふうな違法をどんどんやつておるようなことではならぬ。私はやはり組織そのものについても、そういうような違法をしないで、まじめにきめられた法律の範囲内で職務を執行するような組織を考えなければならぬじやないか、こう思うのですが、先生のお考えを伺いたい。
○田上公述人 ただいまの御指摘の部分は、私も実はまつたく同じように考えるのでございまして、確かに現行警察法とそして基本規程、もつともこれはひとり国家地方警察の基本規程にとどまらないで、各自治体の警察の基本規程においてもほぼ同様であろうと考えるのでございます。警視総監その他警察長に対して、自治体の方でも、やはりその市町村の公安委員会がその運営なりあるいは行政管理を大体包括的に委任している。ただ一般的な基本方針を規定するだけにとどまるというところは、現行警察法の原則から申しますと、かなり大きな矛盾があるように思います。ただこれはもう過ぎ去つたことであり、また私は詳しい実情を存じませんけれども、二十三年の基本規程が制定された当時ば、まだわが国が占領されていて、そうしてその点でかなり総司令部の方でもいろいろ意見が食い違つていたように思うのであります。もちろんこれは不正確な私の記憶でございますが、そういう意味で、条約発効後の今日においては、当然この点をすつきりと明確にしなければいけない。現在の矛盾のままで、不明確なままで残しておくことは非常に将来によろしくないことと考えるのでございます。将来そのような法律と基本規程、公安委員会の規則の内容がそういうふうに矛盾することは私は反対で、そういうことがあつてはいけないと思うのでございますが、現在のところは、ただいま御指摘になりましたような二十三年のああいう当時の事情で、そしていろいろ総司令部の方の意見も違つておつたようでありますし、これはあるいはやむを得なかつた、かと思うのでございます。簡単にお答えいたします。
○北山委員 ところがただいまの基本規程は、占領下の進駐軍の指令でやつたものらしいから、そこに違法があつてもあのままだ、しかしこれは直さなければならぬというようなお話だつたと思うのですが、しかしこのような部面における行き過ぎにおいては、一向直されていないのです。講和後においてもう相当期間がたつておる。しかしこういうような警察権が今の公安委員会の管理から独立をしてやつて行くというような事柄については、占領の行き過ぎは一向是正されておらぬ。そうして逆の面だけを是正しようとする点は、私どもは実は納得行かないのです。 それからもう一つ申し上げたいのですが、きようの午前にも、熊本の市警の隊長がお話になりましたが、現在の国警長官、あるいは国家公安委員会、それはいわゆる行政管理の範囲で地方の警察を指揮するという関係になります。ところが選挙の取締りであるとか、人身売買の取締りであるとか、反税闘争の取締りであるとか、そういうふうないわゆる警察の運営管理に明らかに属することについて指示しておる。選挙取締りに関する打合せ会議などを開いて、地方の府県警察の捜査課長などを呼んだりしております。そういうような行き過ぎ、これは明らかに違法だと思う。これは行政管理の範囲ではなくて、運営管理であると思われるのですが、このようなことは、やはり作用に関する法律じやなくて、組織に関する法律に関係しているんじやないか。組織に関する法律が警察機関によつて忠実に守られておらない。このごろはどうも憲法以下、法律を非常にそまつにするんです。非常に有利に解釈して、違法を一向何とも思わないような風潮になつて来ておる。このような情勢のもとでは、先生がおつしやるように、警察作用の法律の方で慎重にやればいいのだ、組織に関する方はもういいんだというようなことは、私どもは納得が行かないのですが、それらの点に関連してもう一ぺんお伺いしたい。
○田上公述人 ただいまの御質問でございますが、新しい警察法のもとでは、もちろん私も一選挙の取締りのごときは、警察庁と申しますか、国の警察の方で扱うべきことではない、これはやはり当然に都道府県の警察で処理すべきであつて、将来もそういうふうなことがあつたらどうかという問題に対しましては、私はもつぱら府県の警察で行うべきである、こう考えるのでございます。 それから先ほど私お答え申し上げましたが、占領されておる時代であつたから、そこで基本規程と警察法とに矛盾があつたのはやむを得ないということを申し上げましたが、もちろんこれは規程の上で矛盾があるように見えるのでありまして、ただ実際にそれをどのように扱つていたか、この点は私実情を存じませんので、はつきり申し上げられないのであります。ただ、あるいは訓令のようなものが国警の本部から出たといたしましても、それは私どもの学問的な立場から申しますと、もちろん法律が効力があるのであつて、従つてその法律に違反する訓令のごときは、その限度においてはもちろん効力がない。われわれ人民としてはどちらに従うかといえば、警察法の規定に従つて解釈をし、それに従うのは当然でございまして、内部的な訓令、指揮監督というようなことは、それは警察法に違反するものがなお実際にものを言うというのではなくて、私どもは、やはり現行法の解釈としては、警察法に従つて、法律に従つて解釈をしております。 それからもう一つは、さつきからいろいろお言葉がございますが、もちろん警察組織に関する法律も、警察権の濫用を防止する点で十分な考慮が払わるべきであつて、警察作用の法律にもつぱらその問題をゆだねるという意味では決してないのでありますから、これはあるいは言葉が足りなかつたかと思いますけれども、申し添えておきます。
○西村(力)委員 田上先生のるるの御説明を聞きましたけれども、どうもポイントに接しない御答弁を承つておるんです。それはそれでやむを得ませんが、松本先生も、それでは警察三法の制定を急がれたいということを仰せられた。組織法とか職務執行法とか身分法とか、そういうものを整備せられたらいいとおつしやいましたが、その際においても、やはり田上先生のごとく、もしこの法律が制定されても、相互に牽制し合うことなく、それぞれ独立し得るというようなぐあいに考えられるかどうか。その三法が相互に作用して、警察権力の性質とか、強さ、系統、そういうものを規定して行くのだというお考えになるか、同時に制定しなければならぬというようにお考えになるかどうか、御答弁をお願いいたします。
○松本公述人 先ほど組織法と職務執行法と身分法としての警察公務員法の三つの制定を望むということを申し上げました。この三つのものが完全な形でありまして、初めて警察の全般的な運営が、望ましい線において運営されるものだと私は考えております。その点からすれば、組織法と職務法と身分法の三つがともにそろつてできるというのがいい、当然こういうことになるわけであります。けれども私は、それは意見として申し上げたのでありまして、今のところでは、すでに出されました法案についての意見をということでありましたから、苦しいながらもそうした希望を持つておるけれどもとして、法案の内容について意見を申し上げたのであります。
○西村(力)委員 そういう場合にも、田上先生が仰せられるように、組織法をつくつても、それは警察の作用を左右するものではないという立場をとられるかどうか、その点お聞きしたい。田上先生はそういうことを仰せられる。松本先生はその三つをつくるんだ、これは希望意見としてではあるけれども、もしつくるとすれば、そういう場合においては、組織法は何ら警察の性格をきめるんじやないという立場をとるか、それは相互に関連し、作用して行くんだという立場をとられるか、その点についてのお考えを伺いたい。
○松本公述人 組織法が組織にとどまつて、運営にさして響かないというような考え方は、私はいたしません。組織法といえども運営のための組織なのでありますから、その限りにおいて重大な関係を持つものと考えております。 しかしここで一言申し上げておきたいと思いますが、組織をきめる場合には、運営のことを考えてやらなければならないけれども、運営のことにとらわれて、組織の筋の通らないようなことをしてはならない、これは私の平素の考え方なんですが、そう思つております。
○西村(力)委員 もう一点お伺いしたいんですが、それは門司さんが大分心配されて、少くとも五大都市には都市警察をということでありましたが、十分に警察のあり方を正しくするために、研究の途上にあるという立場をとられておる限り、少くとも五大都市にとどめるということを一歩進めて、現在の警察の制度の育成強化ということは、もつと努力して育成して行く、こういう立場をとつて、その間に検討して、先生の希望として申される方向に持つて行くことが正しいと一歩前進せられないかどうか。学者の結論に対して、とかくの希望的なことを申し上げて悪いのでございますが、何しろ日本の民主主義は――先ほど加藤議員は、民主主義が成就したから、われわれは代議士になつたのだと言われるけれども、われわれとしてはとうていそういうふうには考えられない。警察法についても、日本が明治維新のとき誤つた立場をとつたので、そういうことをやつて行きたくない。形においては資本主義の形をおつかけて行つたけれども、人間革命においては全然それが並行して行かなかつたという誤つた方向をとつているので、日本の悲劇はいつまでも残つている。警察法も、発生的にもう少しわれわれは隠忍自重して、住民の意思で、住民の協力で、住民の……。
○中井委員長 西村君、御質疑は簡潔に願います。
○西村(力)委員 立場で行くことが正しいと思う。そういう立場をとつて行けば、ほんとうに警察官も、おい、こらということはどこからも出て来ないようになつて来るし、また国民の心のすみにも、警察はこわいものであると思わせないようになるまでわれわれは努力して行かなければならぬのではないか。そういう立場から、少くとも五大市に――というよりも、都市警察、自治体警察をもつと現在程度、あるいはそれ以上に努力して育成して行くという立場をおとりになることはできませんかどうか。
○松本公述人 私が警察制度の根本的な考え方として申し上げました行政警察と司法警察の区別、この点がはつきりいたしませんと、ほんとうのところ、私は都市警察のあり方についても結論は出て来ないのであります。行政警察というものは、自治体が当然主体になつていいものだという考えを持つておりますし、それから司法警察については、国家が主体になるのが至当であるという考えを持つておるのであります。そうした考えを制度の上に実際に現わすためにはどうするかという問題に行きましたとき、その都市警察のことも当然考えなくちやいけないのです。ところが今の法案では、この行政警察と司法警察の区別をするという立場が全然とられておりませんので、私にはその点についての結論が出て来ないのであります。そこでやむを得ず――と言つてもいいと思うのですが、法制上の概念として、五大都市というものがあり、五大市には大都市としての特殊の性格がある、従つてそこには特殊の警察というものがあるであろうし、あるべきである。そういう点からしまして、少くとも五大市にはというふうに言いまして、そうして司法警察と行政警察の区別の問題をからみ合せて、そこにおいて研究してみたらどうか。こういうふうに納まつてしまつたのであります。
○中井委員長 松本教授にちよつと関連してお伺いしますが、ただいま仰せられた「からみ合せて」という問題は、どういう意味にとつていいのでございましようか、詳細にひとつお知らせいただきたいのでございます。
○松本公述人 お答えいたします。先ほどから申し上げておりますこと、行政警察は自治体が当然主たるべきもの、この点に出発点を置きまして述べます。このように自治体が当然行政警察の主体となるということにいたしますと、しからばどういう自治体に行政警察の主体を認めるか。府県を考え市町村を考えるわけであります。ところでこういう決定をする場合には、こういう自治体には認めてはいかぬという理由があるかどうかということから始まるのがよかろうかと思います。そこで私その線に沿うて考えてみます。府県に置いてはいけないとか、市町村には置いてはいけないとか、あるいは市には置くが町村には置いてはいけないとか、そういうような置いてはいけないという理論は、私の考えているところでは、どこからも出て来ないのであります。つまり府県にも市町村にも、一切行政警察に関する限り認めていいという結論が出て来るのであります。そうするとたちどころに、その行政警察の主体としての府県だとか、市町村だとかいうものがどういう形において主体になるか、このことの考えに至らなければいけないわけであります。飛躍いたしましたが、そこから都市警察へ続けたのであります。
○中井(徳)委員 両教授からお話を伺いまして、啓発されるところも非常に多かつたのでありますが、一、二お尋ねをいたしたいと思います。最初に松本さんにお尋ねいたします。純法理的な建前から行かれまして、今度の改正案の公安委員会の委員長は、国務大臣でもよいということであります。純法理論から行けば私もそれでもいいというような考え方でありまするが、そういうことになりますと、筋を通すために、都道府県の公安委員会に知事が入りまして委員長になつてやる、それが任命するということでも、やはり私は法理的にはちつともさしつかえないと思うのですが、どうでございましようか。
○松本公述人 法の規定がどうであるかということから決定されると思いますが、今の法案では、地方の公安委員会は地方の知事の所轄のもとに置かれるとありますから、今のお話は少し食い違つておるように思うのですが……。
○中井(徳)委員 私は仮定のことを聞いておるのです。それで法案をそういうふうに改正しても法理的にかまわぬかということです。国務大臣ならばいい、総理大臣が公安委員会の委員長になつてはいけないのですか、その点から伺います。
○松本公述人 総理府の外局という線から、それはいけないという結論が出て参ります。
○中井(徳)委員 それでは都道府県の公安委員会に副知事が入ると、それは法理的にいいかどうか。
○松本公述人 もちろん違法であるとか違法でないとかいうことは、事実の問題じやありませんから断定することはできませんですが、従つて問題は、そのような法を規定することが、すでに存する法体系に照らしてどうか、こういう問題になると思うのですが、その場合の私の考えとして、ごく簡単に申しますが、まず公安委員会が知事の所轄のもとにあるというふうにした限りは、それはできない。それは所轄ということがもちろん指揮監督じやないことは明らかなので、意見を述べたり希望を述べたりするということを内容としたものでありますが、そのように所轄ということをはつきりして、その委員会が置かれておるものとしたならば、そうしたお話のようなところまで発展することはできない。
○中井(徳)委員 一応半分ばかりわかつたのでありますが、どうも私ども法律の専門屋でありませんから何ですが、総理府の外局であればいい、府県であればいかぬ、どうもその辺のところはよくわからぬということにしておきましよう。 それから、私どもは今この法案を大いに検討中でありまするので、実際しろうとのような質問が出ると思いますが、御容赦願いたい。田上先生にお尋ねしたい。先ほど、現在の改正法案は警察組織法というべきものである、それ以外に警察法ということになれば、一体警察は何をなすべきであるか、警察とは何であるか、あるいはどういうことをやつてはならぬかというふうな、いわゆる警察作用といいまするか、そういうものをいうのだと思つたが、実際は組織法であつたというふうなお話でありました。このことは実は私もまつたく同感なのであります。といいまするよりも、私は現在の警察制度を全般に挑めて改革をするというならば、まず第一に、あなたのおつしやる警察法、まずこの大幹をつくつて、それから組織だとか、あるいは警察官の任務というふうなものに入つて行く。少くともこれがなくしてすぐ組織を改革するというのは非常におかしいというので、実はこの委員会でも質問をしたことかあつたわけであります。そのときの回答には、警察官等職務執行法というものがあるということでありまして、調べてみますと、条文のあまり長くないもので、私ども非常に疑問といたしておるのであります。そこで私どもの素朴な考え方としましては、これだけの改革をやるのであるから、まず警察法を――あなたのおつしやる警察法を先にすべきである。それをどうしても先にやつてもらつて、一年や二年遅れたつていいから、今のいわゆる警察組織法に該当するものに手をつけたらどうかというふうな気持を持つておるのでありますが、田上先生のその点に対する率直な気持を伺いたいのであります。
○田上公述人 ただいまの御意見はまことにごもつともなのでございますが、ただ税法やなんかと違いまして、警察法というものは、その性質上抽象的一般的な規定が実は困難なのでございまして、これはことに急を要する、臨機応変と申しますか、そういうふうな措置がかなり多い。でありますから、現在の警察官等職務執行法などは、もちろん実力を行使する場合の規定であつて、われわれが考えます警察作用に関する法律というのは、まだほかにたくさんある。警察の許認可などに関する制度は全部警察作用の法律でございます。しかしそういうものを網羅的に規定することははなはだ困難であつて、外国にもあまり例がないように思うのであります。と申しますのは、結局警察権の発動というのは、基本的人権に対してこれを規制するというか、制限をすることになるわけであります。でありますから、一般的にそういうかたり広いわくを持つた範囲でその活動を認めるということは、必ずしも好ましくない。むしろ具体的な個々の場合につきましては、最小限度において警察作用というものを法律で認むべきである。だから最小限度というのは、やはり現実の情勢によつてもちろん変化するのでありまして、たとえば公安条例、これは法律でなくて地方の立法でございますが、これなんかも、やはり時としては届出制度で十分だと思われる場合もあり、そういうときにもし許可制度をとつておれば、それは行き過ぎであつて、われわれが考えますと、憲法違反だと思うのであります。けれども、しからば常に許可制度が憲法違反かというと、そうでもない。やはり具体的な各時代と申しますか、その時期によつて、情勢によつてこれは変化して行くものでありますから、各種の基本的人権に対応しまして、この集会の自由についてはどの程度まで警察権によつて制限ができる、あるいは言論に対して、学問の自由に対して、その他人権をずらりと並べまして、そのおのおのについて警察権の発動が可能か、可能ならばどの程度に許されるのか、そういうことを考えることは非常に困難であり、またほとんど不可能ではないか。時代なり社会情勢によつては、ある部分はまつたく自由に放任しなければいけない、警察権は絶対に手をつけてはいけないという場合もあり、そういう時代、時期もあると思いますから、そういう意味で、あまり抽象的、一般的な警察作用に関する原則を法律で打立てるということは、困難だと思うのでございます。そういう意味で、簡単な警察作用に関する基本原則を法律の条文におつくりになることは私はけつこうだと思いますけれども、警察組織ほど明確な、あるいは網羅的な規定は、おそらくよほど時日を要するのではないか。ちようど消防組織法に対する消防法に相当するもの、それは現在警察官等職務執行法等で一応考えられておるようでありますが、しかしそれ以上に徹底して法典化するということは、容易でないことと存じます。
○中井委員長 中井君、まだお進めになりますか、六時を過ぎまして、公述人の方々もずいぶんお疲れだと思いますが……。
○中井(徳)委員 今田上さんからの御回答の中に、税法なんかと違いましてというお話がありましたが、これはとんでもないことで、税法は具体的でなければ一銭も税金をとれません。私はそう思います。つくるのはほとんど不可能と言うが、私はそうじやないと実は考えておるのであります。それはそれくらいにしておきますが、私は日本の現状においては、この点が一番心配であると実は思つておる。警察国家再現とかなんとかいうことに対する心配は、これだと思つておりますが、また委員長にしかられますから、この程度でやめておきます。 さらに身分の問題でありますが、松本さんは、府県の警察官なんというものは、あくまで府県の地方公務員にする方が、それの方が筋が通るとおつしやいました。田上さんは、筋としてはそうではあるが、しかしやむを得ないだろうということで、少しこの点はかわつております。御両人を前に置いてどちらがいいかという、そういう失礼なことをお尋ねするのではないのでありますが、ただ田上さんの御説明は、今でも国家非常の際には、総理大臣が特殊な権限を持つことができるという法文がある、そういう面から見ても必要であるというふうな御説明であつたと思うのであります。私どもは、そういう法文が、今の制度では全部が地方公務員であるから必要であつたと思うのであります。そういうふうに身分をだんだんと国の官吏にしてしまうと、、そういう法文がいらぬとは申しませんけれども、なくてもどんどん仕事ができる。今のような制度であるから、特にあの言葉は非常に重要であるのだ。それは、従つて逆に言えば、警視正その他五、六人が二十人になるか十人になるか知りませんが、そういう人たちがどうも国家公務員としておらなくちやならぬという理由に、あの特別の規定は理由にはならない、かように考えるのですが、田上さんの御意見をもう一度伺つておきたい。
○中井委員長 田上先生、何とぞ簡単 に御説明願います。
○田上公述人 身分が警視正以上の警察官、これが国家公務員であるといたしましても、御承知のように、この法案でありますと、警察庁の本来の事務は、つまり重大な非常の災害であるとか、あるいは騒乱といつたような場合でなければ、職務上の指揮監督はできないことになつているのでありまして、その点で非常事態――緊急事態でありますか、そういう事態のもとでは全面的に指揮監督できる。これは非常な違いであつて、私は国家公務員であるとしても、この制度の意味は十分あると考えます。それからなお私も、この都道府県の警察職員を一般的に国家公務員にするということはもちろん行き過ぎであつて、これは最小限度に考えるべきじやないかと思うのでありますが、しかしこの法案に出ておりますような警視正以上――大体は警察本部長あたりを私案は考えているのでありますが、そういつたところは、これは先ほど申し上げました警察庁の所掌事務についての指揮監督、それから緊急事態における、例外的ではありますが指揮監督、これを確保する意味において、やむを得ない必要があると思うのでありまして、もしそうでなければ、この指揮監督という規定がほとんど空文に終つてしまうと考えるのでございます。簡単に……。
○中井(徳)委員 今の御答弁ですが、私は全部地方公務員でありましても、ちつともさしつかえない、法治国家である限りはさしつかえないということを考えております。実際公安委員会は、自分たちが任命しない人を常時指揮監督するという、まことに今の法案は奇妙な形で、実はそのことの弊害の方が多いと考えておりますが、この問題はこの程度にしておきます。 最後に、先ほどから加藤委員その他からお尋ねがありました、いわゆる行政委員会の制度の問題であります。この問題につきまして、そういう委員会ができると、責任の帰属が明らかでないというのが、はつきり申すと保守政党の人たちの一般的の御意見のようでありますが、私はまことにこれは奇妙なことだと考えております。直接的であるか間接的であるかは、それは問題になりましよう。しかし近代国家において、そういうことはどこにもたくさんあるように思うのであります。総理大臣が日本国内何から何まで全部わかつているということは、まことにそれは望ましいかもしれません。しかしこれは国民の側から見て、どちらがいいかということは非常に問題である。われわれはそういう考え方には賛成いたしかねるわけでありますが、たとえば、うしろにおられる斎藤さんのことがしばしば話題になるので、私はなはだ恐縮に思うのですが、ああいう場合だつて、ほんとうに総理大臣がやろうと思えば、公安委員をひとつやめてもらうということから始めるべきであつて、すぐに言うのはまことにおかしな話である。そういう過程において私はやれないことはないと思う。またやれないようなことなら、なぜ所轄としたか、こういうことになつて来るのでありますが、どうもそういう面で、この行政委員会があると責任の所在が明らかでないというふうな俗説が横行いたしておりますので、はつきりとその辺の見解をお願いいたします。
○田上公述人 これは私というか、むしろ学界の方では一般の議論でございますが、おそらく御質問の意味は、行政委員会ということになりますと、行政権をとにかく握つて、単純に議会のような監督をするにとどまらないで、みずから行政権を行い、従つて行政についての責任を負わなければならない地位にある。ところがその行政委員会が合議制でございますから、上から訓令によつてその行政権を行うについての指揮監督をすることができない。これは、合議制は御承知のように、普通は多数決できまるのでありますから、会議を開いて議論してみないとどうなるかわからない。今度のこれは言うまでもないのでありますが、国務大臣を国家公安委員会の委員長に入れるといたしましても、その点はちよつと妙な話でございまして、内閣なり総理大臣の意向が必ずしも徹底しない。会議を開いてやつてみなければどんな結論が出るかわからない。従来の実績と申しますか、他の委員会の例で見ましても、委員長を国務大臣にすることは、その意味からいつてもあまり効果がないようにも思うのでありますが、そういう点で、行政委員会というものは内閣の意向が十分に徹底しない。そうなると、内閣としてはもちろん国会に対して責任を負うことがむずかしくなる。そうすれば、結局国民から浮き上つてしまつて、警察が独善化するというような御懸念であろうと思うのであります。私は先ほど申し上げましたが、行政委員会というものは、そういう点では確かに欠点を持つている。だから裁判のような性質の作用を行う、たとえば選挙管理委員会におきまして、選挙の争訟の裁判を行つたり、あるいは人事院におきましても、不利益な処分などにつきましての一種の裁判を行うのであります。そういうふうな場合は、これは裁判所と同様に、ある程度内閣から独立な地位がなければいけない。けれども一般の行政事務は、私はやはり独任制と申しますか、何らかの独裁的な機構の方が望ましいと思うのであります。ただそれにもかかわらず、警察につきまして繰返し公安委員会を尊重すべきであると申し上げておりますのは、これは警察が、特に先ほどもいろいろ御指摘があつたのでございますが、政治的にどの政党というのではなくて、一般に中立性が必要ではないかと思うのでございまして、その意味で、普通の行政委員会とは意味が違う。けれども、この国会なり地方議会が、直接に具体的な警察作用について当局を呼び出してこれに対し責任を問うというふうなことは、あまり適当でない。やはり議会にかわつて、政治的に無色な公安委員会が、民主的に監督を加えるということが望ましいのじやないか。普通の行政委員会とはかなり性格が違つたものでありますが、私は警察の民主化の方法としては、この公安委員会を今日においても十分に重んずべきだと考えるのでございます。
○加藤(精)委員 松本教授にお尋ねしたいのでありますが、率直に言つて、終戦後の行政委員会は戦前と非常にかわつておりまして、いわゆる地方自治法の第二条の公共の秩序を確保するとかなんとかいうたくさんの問題は、従来警察で扱つていたものはほとんど市町村の業務になつたり、あるいは保健所の業務になつたりして、残つているものは、私のばつとした考えでは、自警団と交通整理ぐらいなものだと思うのです。いわゆる先生のおつしやる行政警察というものはなくなるんじやないですか。ほとんどあとは治安警察です。防犯警察も治安警察でしようし、行政警察という概念が、学問上はあり得るけれども、どうも実際問題としては、今の市町村行政、府県行政では、どうも行政警察というものはないのではないかと思うのですが、そこが重大なところですから、ちよつとお伺いしておきたい。
○松本公述人 簡単にお答えします。決してなくなるものではありません。行政警察というのは、ある積極的な行政を行うに際しての妨害となる性質を持つたものを除く、これが眼目でございます。(加藤(精)委員「そういうものはみな保健所や市役所にかわつてしまつている」と呼ぶ)必ずしもそうは言えぬのでありまして、そのように消極的な目的をもつた行政作用、これが行政警察のあり方であります。
○中井委員長 加藤君、私語を禁じます。――加藤君。
○加藤(精)委員 その次にお尋ねしたいのでありますが、中井委員から御質問のありました点で、地方自治法の百六十六条に、副知事は公安委員会の委員を兼ねることができない、こういう規定があるから、今はそこまで行き過ぎることはできないとおつしやつたんですが、何かほかの法制との関係で、副知事は公安委員長になれないのですか。そこをお聞きしたいのです。
○松本公述人 両方であります。兼ねることができないという考え方が法理において成り立つ、そうして法において明らかにそれが示されておる。簡単に結論だけ言いますと、そういうことになります。
○加藤(精)委員 立法論としては、立法すればできるんじやないのですか。法律でそうきめれば他の法律に著しく抵触するのでございましようか。世界各国で特別の任用をして、シテー・ポリスなりコミツシヨナーというのが事実上やつているんじやないですか、それが公安委員会に入つて、行政委員会制度とかみ合さつて、それでそこへ入つて来たつて、おかしくないのではないかと思います。
○松本公述人 先ほどは知事のようにおつしやつておつたと思いますが、今は副知事とかわつたように思いますが……。
○加藤(精)委員 副知事について御質問したのです。
○松本公述人 副知事ならば、私がさつき申しましたことは取消します。可能であります。
○加藤(精)委員 防犯警察は行政警察だというのでありますか、司法警察でございましようか。
○松本公述人 犯罪の防止、これが行政警察に属するか、司法警察に属するかという御質問でございますか。――行政警察に属すると思います。
○北山委員 私どももこの警察法の審議の際には、十分確めなければならぬと思う点がたくさんあるわけであります。そこできようは時間がございませんから、別に参考人等の形で、専門の学者の方々に来ていただいて、十分法律論なりあるいは質疑応答する機会を与えていただくことにして、きようのところは、おそいですから散会していただきたいと思います。
○中井委員長 お答えをいたします。北山君の発言に対しましては、理事会においてお諮りをいたし、しかるべく決定して参りたいと存じます。 この際公述人の両先生にごあいさつをいたします。本日ばお忙しいところをわざわざ御出席いただきまして、ことにただいまは六時半、この間ずいぶん長い間、しかも貴重なる御意見を承ることができましたことは、まことにありがたう存じます。深.委員会を代表してお礼を申し上げます。ありがとうございました。 本日はこの程度で本委員会を散会いたします。 午後六時三十分散会