外務委員会 第57号
- 発言数
- 60 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1954/06/03
会議録
○上塚委員長 これより会議を開きます。 本日は外交に関する件について政府当局に質疑を行うことといたします。質疑を許します。並木芳雄君。
○並木委員 あしたから議会が閉会になりますので、今後継続して問題になつておる点について二、三アジア局長に私は質問をしたいのであります。第一は日韓会談に伴う問題でありますが、李承晩ラインの問題、それからひいて竹島の問題がございます。ことに最近の報道では二十四日に国籍不明の飛行機が竹島を銃撃したという韓国側の発表がありましたし、翌二十五日には日本の船が竹島を射撃したという韓国側の発表があるような状態でございますが、竹島問題を中心とし、李承晩ラインの問題、これなどについて今後政府はどういうふうな交渉をやつて行くつもりでありますか、まずお尋ねをいたします。
○中川(融)政府委員 ただいまお尋ねの日本の船が竹島を銃撃した、あるいはどこかの飛行機が銃撃を加えたというような新聞報道につきましては、私ども調べましたが、まだ日本側としてそういう事実があつたということを確認いたしておりません。なお今後どういうような処置をとるかというような点につきましては、最近は竹島にも韓国側の漁夫等が来てわかめをとるというような事態もあるやにも聞いております。従つてこういう事態に対しまして日本側として、しかるべく日本側の権利というものはやはりこれを確保する措置が必要であると思うのであります。その点につきましてはなお政府部内で至急研究いたしまして、適切な措置をとりたい、かように考えております。 なお李ラインの措置につきましては、日本政府としては李ラインというような公海上にかつてに線を引いて、その中に外国の船が入ることを阻止する、あるいは外国の漁船が入りまして、漁業をすることを実力を持つて阻止するというような措置は、国際法上の不法行為である、さようなことはとうてい容認することができないということは、累次韓国側に公文をもつて申し入れており、また李ライン内に入りまして操業しております日本側の漁船を韓国側が拿捕し、あるいは漁夫を韓国側に抑留し、裁判にかけるというような事態につきましては、これもそのたびごとに厳重なる抗議をいたしまして、かつそのようなことに伴う損害については、補償を要求する権利を留保するという態度を明らかにしておるのであります。韓国側においてはいまだそのような措置を停止しておりません。この問題はいわゆる日韓会談の非常に重要な題目をなした問題でありますが、政府としては累次この委員会でも申し上げております通り、韓国側との間に外交交渉を再開いたしまして、これらの問題について適切なる解決をはかりたい、かように考えておるのであります。この趣旨からアメリカ政府にも依頼いたしまして、いろいろ会談再開の努力は続けておるのでありますが、遺憾ながら今までのところ、その運びに至つていないのであります。今後におきましても同様の努力を続けることはもちろんでございます。
○並木委員 アメリカ政府にも依願して会談再開の努力を続けておるとのことでございますが、今度吉田首相が渡米しますと、この問題も話に出るのではないかと思います。首相の渡米によつて、少しでも日韓会談再開の見通しに明るさを認めることができるかどうか、そういう点についてお尋ねいたします。
○中川(融)政府委員 首相がアメリカに行かれました場合において、ある程度日韓問題について話をされるかどうか私承知しておりません。しかしながら首相の渡米とは切り離しても、この問題につきまして政府として引続き努力しおりますので、われわれとしてはそのような運びに至ることを期待しておるわけでございます。
○並木委員 日本艦が艦砲射撃をし、また日本の飛行機らしいものが竹島を射撃したということですが、現在そういうことが考え得るのかどうか。つまりああいうところへ行つて射撃をするような飛行機というものが、日本に整備されて来ているのかどうか、あるいはまた艦砲射撃が行われたとすれば、どこの所属のどういうような船によつて、そういうことが起り得るかという点についてお尋ねいたします。
○中川(融)政府委員 どこかの船が行きまして艦砲射撃をした、あるいはどこかの飛行機が銃撃を加えたというようなことにつきましては、先ほど申し上げました通り、われわれとしてはそういうことをまだ知つておらないのであります。海上保安庁のあの水域における警備状況につきましては、海上保安庁当局から御承知願いたいのでありますが、私が今まで了解しております限度におきましては、海上保安庁の船は漸次武装を強化して行く方向にはあるようでありますが、しかしまだあの水域にある船に小火器以上のものをつけておるという事実は聞いておりません。おそらく機関銃のようなものもまだ持つていないのではないかと思います。拳銃程度のものではないかと思います。従つて日本の船が銃撃を加えるというようなことは想像されないのであります。また海上保安庁は、あくまでも正当防衛の場合以外には、そのような武器は使用しないと承知しておりますので、日本の船が銃撃を加えたというようなことは、おそらく事実ではないであろうと考えております。
○並木委員 自衛隊法が発効し防衛庁設置法が発効いたしますと、政府としては今後竹島に対して、正当防衛の意味においてあれを占拠する、またあの辺を守る、哨戒するということを考えておられるかどうか、お尋ねいたします。
○中川(融)政府委員 海上保安庁その他日本の公船が、あの水域、公海上及びわが国の領土であります竹島の水域付近を航海するということはもちろん自由でありまして、現在でもいたしておりますし今後も引続きそのような措置には出ると考えられます。 なお、正当防衛の範囲として、たとえば銃撃を加えたり、あるいは竹島を占拠するということがあるかどうかという点につきましては、条約局長から御答弁いただきたいと思います。
○下田政府委員 正当防衛あるいは緊念避難という行為に訴えるには、何らかの原因がなければならないわけでございまして、ただ竹島という日本の領域に属する島嶼があるからといつて、ただちに正当防衛の行為に出る原因は発生しないわけであります。そこに日本の漁師が参りまして、そしてそれに対して外国の方から危害を加えるとか、あるいはその船を連れて行つてしまうとかいう不当な加害行為がありまして、初めて正当防衛という行為がとれるわけでありますから、ただ正当防衛の名において漫然ととるという必要性はない、そういうように感じております。
○並木委員 しかしあの鼎に韓国の方で標識を立ててこれは韓国の所有であるというようなことをやつておると言われておるので、そういうものをやはり放置することはできないのじやないかと思うのです。これに何らか日本としては実力を行使することが必要になつて来るのではないかと思いますが、その点はいかがですか。
○下田政府委員 日本側の見解によりますと、いろいろな歴史的根拠また法例的根拠からしまして、一時的に外国がこれは自国に属するものであるという意味の標識を立てたといたしましても、日本側の日本領域内と主張する根拠はちつともゆるがない、一時的のそういういたずらによりましてちつともゆるがないと思います。しかしそういう標識が立てられることは、日本側から見れば不法行為でありますので、日本の監視船が参りましてその標識を拾て去るということは、これは一向さしつかえないことでありまして、また現にそういう事態が起つたこともあることでございます。
○並木委員 それでは次に私は濠州との間によりきめられましたアラフラ海の真珠貝採取に関する暫定とりきめについて、政府からそのとりきめの内容の配付を受けましたから若干質問しておきたいと思います。 この暫定とりきめは国会の承認を経る必要がないという政府の見解でございます。その理由としては、新たに国民に対して権利義務を課すものではないからであるということでありますが、私としてはやはりこれは国会の承認を得べきであつたのではないか、こういうふうに感じます。と申しますのは、アラフラ海で、日本の船が、公海では自由に漁業ができることになつておつたのに、それに対して本年度及び今得制限を加えて来る、こういうとりきめですから、やはりこれは実質的にはそこに新たなる権利義務を設定する内容を含んでおるものと思うのです。そういう意味においては、国会の承認を得べきではなかつたかと思いますが、この点をお尋ねいたしたいと思います。
○下田政府委員 一切の条約や国際とりきめが、その締結につきまして必ずしも国会の承認を必要とするものでないということにつきましてはたびたび御説明申し上げましたし、また新憲法下の実際の憲法慣習においてそういう慣例が確立いたしております。つまり既存の法令の範囲内で政府に与えられた、政府に認められました権限内で政府がなし得ることは、その範囲で外国ととりきめいたしましても、これは憲法第七十三条第三月に申しますところの外交案件の処理にほかならないわけであります。外交案件の処理でござとますから、これは政府限りでなし得ることでございます。そういうように存じておるわけでございますが、今回の日濠間の暫定とりきめは、はたして政府の権限内でできるかという点は、これは農林省の問題でございますが、御承知のように漁業法によりまして遠洋漁業というものは一切許可を要することになつております。また漁業法の根拠に基きまして白蝶貝漁業取締規則という規則が制定されております。またそれに基きまして、農林省告示をもちまして真珠貝の採取につきましては、期間、採取量、採取地域、採取すべき貝がらの大きさに至るまで詳細な規則ができております。従いまして日濠間がとりきめましたことの内容は、すべて既存の日本の法令でそのまま実施できることなのであります。従つて政府の持つております権限内で外国との間に相談をいたしまして、暫定的にこういうとりきめをいたした次第でありますので、あらためて国会の承認を仰ぐという必要はない、このように考えております。
○並木委員 しかし、本年度はとにかくとしても、来年度になると、これはまた問題が出て来るものではないでしようか、来年度になつても本年度と同じ程度あるいは本年度以上に真珠貝採取は許される、認められるものという見通しがついておるかどうか。それは国際司法裁判所に訴えてたの判決ができるまでの期間ということともからみ合つて来ますけれども——順序としてはその方を先に聞いた方がよいかもしれません。従つてその点を先にお聞きしますけれども、この暫定とりきめができて、それからもう一つ、両国の間の特別合意書というのですか、そういうものができ上つて、裁判になるということですけれども、そういう方の段取りはどうなつておるのですか。いつごろそれができ上つて、いつごろから裁判にかかる見通しであるか、そうしてかかつた場合に、その裁判はどのくらいの期間を要するものであるか。その点の見通しをまずお尋ねいたします。
○下田政府委員 アラフラ海の真珠貝漁業につきまして、一つは暫定とりきめと、もう一つはヘーグの裁判所の判決を求めるための日濠間の特別合意書という二つのとりきめができるわけでございまして、暫定とりきめの方はキャンベラで交渉し、特別合意書の方は東京で交渉するというように話がまとまつておりますが、前者の暫定とりきめの方は、漁期の関係がありますので、日本の漁船の予定通りの出航にさしつかえないように締結する緊急性があるわけであります。そこで先般キャンベラで調印いたしたわけでありますが、特別合意書の方は、別にいつまでつくらなければならないという期間はございません。のみならず、これは日本政府としてもきわめて慎重な準備を要するのでありますが、濠州政府の方も同様でございまして、慎重な準備をいたしておると思われるのでございます。そこで東京におきましてもたびたび催促はいたしておりますが、わが方といたしましても、そう急いであわてて合意書をつくるという必要はないのでありまして、今のところいつ合意書が締結されるかという点につきましては、見通しがつきません。 第二の合意書の判決が下るまでにどれくらいの期間がかかるかという御質問でございますが、これは合意書の中ではつきりきめられる筋合いでございます。大体両国の間できめられる問題と、裁判所できめる問題とがございます。メモリアルと申しまして両国政府の主張を詳細にしたためたものを出す期間、これは両国できめられますしそれに対して反駁の陳述をなす期間、これも両国政府できめられます。そういうことは両国政府がきめて、特別合意書の中で定めるわけでございますが、その後の判決をいつ下すかということは、これは裁判所の問題でございまして、両国政府で指定するわけには行かないものでございます。従いまして、特別合意書自体がまだ全然見通しがつきませんので、それに基く判決に至るまでの所要期間がどうなるかということについても、目下のところ見通しがつかない次第でございます。
○並木委員 ごく大ざつぱに言つて、やはり一年とか二年とかそんなに長い期間かかるのですか。ごく大ざつぱに、われわれの表現を用いて言つた場合に、今後二、三年はかかるだろうということになるのですか。
○下田政府委員 国際司法判裁所の判決の先例を見ましても、いかなる事件でも相当長期を要しております。でございますから、私どもの大ざつぱな見通しでも、これは少くも一年はかかる。一年より早く判決が下るということはまずないと見通さなければならないと思うのあります。それ以上二年三年というようなこともまたないでありましようが、一年から二年の間ではないかというように見通しております。
○並木委員 そうすると少くとも来年度はまたこの暫定とりきめが問題の対象になると思うのです。その場合に、本年度と同様、またはそれ以上に真珠貝の採取が認められるという見通しは立つておりますか。
○下田政府委員 判決の下るまではこれでやるということでございますから、判決がいくら遅れましてもこの通りにやれるだけの保障は得ておるわけでございます。
○並木委員 局長はそう言いますけれども、第五条に「オーストラリア政府は、この暫定取極が有効である間の千九百五十五年度以降の漁期については、第四条に掲げる取極を基礎として、保存上の要求を考慮し且つ前年度の漁期における操業の結果に照らし、適当と認められる変更を加えて、日本国民による真珠貝採取について取りきめるものとする。」こう言つておるので、適当と認められる変更を加えることになつております。これはふえる場合の変更ならばよいのですけれども、減らされる変更ということもあり得るのではないですか。なければけつこうです。
○下田政府委員 「前年度の漁期における操業の結果に照らし、」ということは前年度にある漁区からたくさんの真珠貝をとりまして、来年度も内じ漁区で操業をいたしますと、その漁区はもうすでに真珠貝がたくさんとれなくなつてしまうというような結果を来すこともあり得り得るわけでありますから、資源保存上の見地から、漁区の変更ということをやはり規定しておかなければならないのであります。従いまして変更という以上は、減らされることもふやされることも理論上はあり得るのでありますが、この暫定のとりきめの根本を流れる原則と申しますのは、現状維持ということであると思います。隻数におきましても、漁獲の総量におきましても、大体昨年度の現状をそのまま踏襲して、そして判決のあるまでは現状維持で行こうというのが、この暫定とりきめの背後にあります両国政府の根本的な考え方でありますので、変更とあるからといつて、減らされるという心配はまずないものと確信いたしております。
○並木委員 そうすると来年度及び再来年度は、あらためて両国で話合いをしてとりきめをしなくても、もうこのままでいいということになりますか。
○下田政府委員 とりきめはこのままで一向さしつかえございませんので、あとはとりきめの実施の問題になつて参ると存ずるのであります。
○並木委員 実施の問題ということになると、第四条に掲げてあるように一九五四年度の真珠貝採取漁期について云々というところに、二十五隻あるいは区域その他具体的に本年度の分があげられております。これに相当するようなものを、また来年になつて実施事項としてとりきめるということですか。その場合にとりきめたものは、第四条と同じような形でこの協定に追加されて来るのですか。
○下田政府委員 とりきめの実施と申しますのは、第五条にいう変更のとりきめということでございます。ですから来年はどの漁区で何隻でやるということでございますが、隻数はもうおそらく同じであります。変更になりますのは漁百区の問題だけだろうと思います。
○並木委員 その点は大体よろしゆうございます。 まだほかにも質問する方があるようですから、あまり時間をもらつては何ですから簡単に質問いたします。フイリピンの賠償の問題なのですが、ひんぴんとしていろいろな情報が外電で入つて参ります。これは結局今までのところ日本の実情調査が行われて、これから調査団が全部本国のフイリピンの方に引揚げて行つた結果、何らかの措置がとられて来ると思うのです。それについてアジア局長としてはどういうような見通しを持つておられますか。あしたから議会が閉会になりますし、この問題はガリオアなんかの問題にからんで、われわれとしては非常に関心が深いわけです。調査団がいろいろの報告をフイリピン政府なり、あるいはレクト上院議員などにやつているようなのですけれども、一体実情はどうなのでしようか。われわれにはさつぱりわかりませんので、今までの調査の状況はどうなつたか、今後賠償の問題についてはどういうふうに打開されて行くものであるかというような点について、この際政府から説明をしておいてもらいたい。
○中川(融)政府委員 フイリピンとの賠償交渉は、御承知のようにいわゆる大野・ガルシア覚書というものを出発点にしたいということが向う側の考え方であつたわけでありまして、これを出発点とするようなことでは、日本側としては話を継続することができないということをはつきりいたしまして、その点についての先方との話合いがつかないので、村田首席全権以下の日本の全権団は帰つて来たわけであります。従つて会議自体が今中絶といいますか、休止状態と申しますか、そのようなことで、はつきり話がこわれてしまつたというようなことではないのであります。一方フイリピン政府からは、日本賠償能力あるいは日本経済の実態を調査するための大蔵大臣を首班といたします調査団が派遣されまして、すでに一箇月になるのであります。新聞等にはいろいろこの調査団の調査の結果と称するものが出たこと等もございますが、これはさらに調査団自体によつて打消されております。調査団の調査の結果というものはフイリピン政府、フイリピン大統領に直接話すのであつて、それ以前にはいかなるところにも、いかなる方法によつてもこれを表へ出すというようなことは絶対にない、新聞等に出ておること等は全部真実でないということで打消しております。これがおそらく真相だろうと考えます。なおフイリピン調査団には、この一箇月の滞在中日本政府当局からは先方の希望するいろいろな資料を提供いたしまして、これに全面的に便宜を供与したのであります。調査団自体がどのような調査をし、あるいはどのような判断をしておるかというようなことについては、われわれは全然存じません。なお調査団は明日大部分の人がフイリピンに帰るということでありますが、帰りましたあとは調査団の調査の結果をフイリピン大統領に報告するものと考えられます。その結果フイリピンが、あるいはフイリピン政府がどのような措置に出るかということはまつたくわかつておりません。従いまして今後の日比賠償交渉がどのようにして打開されて行くかということにつきましても、われわれとしてはまつたく判断の材料がないわけであります。日本側の考え方というものは、先般村田全権一行がマニラに行つております間に十分先方に話してあります。われわれから見ますれば、問題はフイリピン側にあるように思われます。フイリピン側の出方というものを、われわれとしては待つておるというつもりでおるわけであります。もちろん政府としては、この日比賠償問題をできるだけ早い機会に片がつく、解決されるということを望んでおるわけであります。一日も早く賠償交渉が再開されることを期待しておるわけでございます。
○並木委員 最六四億ドルの線、それからまた大野・ガルシア協定というものは会談の基礎である、これは出発点ではない、会談の基礎であるという点は、日本政府としてはかたく守り抜いて行くつもりですかどうか。話合いによつては何らかそこに妥協の余地があるのかどうか、お尋ねいたします。
○中川(融)政府委員 その点につきましてはただいま申し上げました通り、村田全権一行がマニラにおります間に十分日本側の考え方というものを先方に伝えておるのでありまして、日本側の考え方はそれ以後かわつていないわけであります。
○並木委員 会談の途中で大野公使が辞表を出したということは、先般外務大臣から聞いたのですけれども、その真相については、どうして出したのか、それからまたどうしてそれがそのままとりやめになつたのか、われわれ聞いておりませんから、この際局長から答弁を願いたいと思います。
○中川(融)政府委員 ただいま御質問のありましたような新聞記事が現われたことがあるのでありますが、その新聞記事は、外務委員会で絶対極秘ということで話された内容ということで新聞に出ていたのでありまして、従つて私どもはその内容がはたしてその通りであつたかどうか、これは知る由もないのであります。フイリピンとの賠償交渉段階におきましていろいろ起りましたことにつきまして、ただいま公開の席上で申し上げることは避けさしていただきたいと思います。
○並木委員 もう一点MSA関係のことでお尋ねいたしますが、来年度のアメリカの予算は来月一日から始まりますが、それについて政府として大体どういうような見通しを持つておるかということなのです。おそらくアメリカの議会としてもそろそろ予算というものについてのめどがつくだろうし、七月から始まる来年度のアメリカの予算について、MSA協定によつて日本が受け得られる援助の内容、額等についての本年度との比較をしていただきたい。
○下田政府委員 来年度のMSA援助は、ただいまアメリカ政府が、一九五五年度MSA法案といたしましてアメリカの議会に提出いたしておるようでございます。その法案をただいま取寄せておりますが、その全貌はまだつかんでおりません。しかしこれは法案でございますから、議会でどういうように修正されるか、まだわからないのでありますが、一般的傾向といたしましては、アイゼンハウアー政権の予算削減の方針に基きまして、MSA対外援助の総額も減らされております。それから経済援助式のものもずつと減らされておるようでございます。ただ日本から見ますと、アジア方面に対する援助は、ヨーロツパその他他地域に対する援助よりも減らされていないという点が注目されるのでございます。 なおこの際ついでに申し上げておきたいことは、日本の保安隊が従前事実上借りておりました陸上の兵器、装備等は、当初アメリカ政府といたしましては、単行法を制定して、それに基いて日本に譲渡するという方針でありましたが、最近のMSA法案によりますと、MSA法の中に、この保安隊の既貸与武器のことを規定いたしております。従いまして、別の法律も出ず、今まで借りておつたものをもらうことも、MSA援助の一部としてもらえるということに相なる可能性が出て参つたわけでございます。
○上塚委員長 穗積七郎君。
○穗積委員 議事進行で委員長にちよつとお尋ねいたしますが、きようは定例の外務委員会の日でございまして、しかも最終日と一応予定されるわけですが、外務大臣は御出席にならないでしようか。
○上塚委員長 外務大臣はただいま参議院の方へ出席しているはずであります。なお今連絡をとりつつありますが、出席されるかどうかということは、ちよつと明言できません。
○穗積委員 外務大臣にお尋ねしたいことが二、三あつたのですが、それではそれはあとにいたしたいと思います。 一点だけ下田条約局長にお尋ねしておきたいのですが、それは日本の憲法と、日本が外国との間に共同防衛の体制をつくる、またはそういう集団的な防衛機構の中に参加することとの関連について、今までいろいろ法理的に御研究になつておられるだろうと推測いたします。またその必要を生じている情勢だとも思います。そこで政策上のことは総理または外務大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、局長は純法律的の立場からその問題をどういうふうに御解釈になつておられるか。いろいろな場合が想定されるかと思います。日本の憲法は、これはさまつたものでございますが、特にあとの防衛機構から生じます日本が負う軍事的義務の内容いかんによつていろいろな場合があろうと思います。今まで多少予想されますいろいろなケースを考えてみて、いろいろな場合生じて来るだろうと思いますが、それらについて局長の法理的な御解釈をこの際承つておきたいと思いますが、いかがなものでしようか。
○下田政府委員 現憲法下におきまして、外国と純粋の共同防衛協定、つまり日本が攻撃されれば、相手国は日本を助ける、相手国が攻撃されたら、日本は相手国を助ける、救援におもむくという趣旨の共同防衛協定を締結することは、現憲法下におきましては不可能であろうと存じております。
○穗積委員 その不可能だといわれる点は、憲法の条章でどこでさしつかえがございましようか。
○下田政府委員 その理由は、憲法第九条第二項の「国の交戦権は、これを認めない。」というところにあるわけでございまして、共同防衛を約束しながら、おれの国は交戦権がないから、お前の国が攻撃されても、武器をとつて救援におもむいて、交戦権をフルに行使して助けに行くことはできないのだというようなことでは、どこの国も共同防衛協定を結ぼうとする気づかいがないわけでありますから、従いまして交戦権禁止の規定からして不可能であるというように存じております。
○穗積委員 交戦権を発動しない事実上の戦闘行為の限界について、今まで政府のお考えは、たんくかわつて来てもおりますし、人と場所によりましてまた多少の食い違いがあつたと思いますが、交戦権の発動を伴わない事実上の自衛権の発動または警察行為、そういう解釈はどういうようにされるといたしましてもいずれにしても交戦権を発動しない事実上の戦闘行為、そういうものによる協力、これはお考えになりませんか。
○下田政府委員 交戦権を発動しない事実上の戦闘行為だけに参加するということは、現憲法下で許される事実上の戦闘行為の範囲は、自衛権の限界内でございますので、自衛権の限界内であるということは、相手国が攻撃されただけではなくて、日本自身に対して侵略の危険または現実の侵略があつて、初めて自衛権の発動になるわけであります。これは共同防衛という観念よりも、むしろ日本自身の自衛権行使の問題になるのでありまして、従つて共同防衛と観念いたしますよりも、むしろ日本自身の自衛という問題であるというように考えております。
○穗積委員 そういたしますと、第一に交戦権とか自衛権ということが、一体何を交戦権と言い、自衛権の発動というものをどの程度に解釈するかということが、問題になつて来るわけです。実は今おつしやいましたように、日本の自衛権というものは、日本国に対する直接の、つまり日本の領域内に対する直接攻撃以外でも、日本の自衛を危うくするという解釈が、今まで日本においても行われましたし、現在自由主義諸国の間においてもそういう拡大解釈が行われているわけでございますが、そういうことで集団的自衛権の強化という考え方を政府によつて認めておられます以上は、そういう自衛権というものは、具体的には一体どういうことなのか。自衛権の発動ということは、どこまでの限界の行為を自衛権の行為として認めるのかということになりますが、その点はいかがでございましようか。非常に今まで拡大解釈されておりまして、言葉のあやから言いますと、今おつしやつたように、考えられないというようなお話でございますが、自衛権の発動というものは、何も領域内の行為に限らないわけでございますから、そういう場合に非常に日本の安全なり、自衛のために協力関係にある国の安全が脅かされたときに、日本の自衛なり安全に非常な脅威を感ずるということで、集団的自衛権という解釈が出て来ておるわけです。その点はあなたのおつしやる自衛権とは、一体どういう意味で、ございましようか。どの限界を言つておられるのでございましようか。その点ちよつと明らかにしておいていただきたいと思います。
○下田政府委員 平和条約でも、日本国の集団的、個別的の固有の自衛権というものは認められておるわけでございますが、しかし日本憲法からの観点から申しますと、憲法が否認してないと解すべきものは、既存の国際法上一般に認められた固有の自衛権、つまり自分の国が攻撃された場合の自衛権であると解すべきであると思うのであります。集団的自衛権、これは換言すれば、共同防衛または相互安全保障条約、あるいは同盟条約ということでありまして、つまり自分の国が攻撃されもしないのに、他の締約国が攻撃された場合に、あたかも自分の国が攻撃されたと同様にみなして、自衛の名において行動するということは、一般の国際法からはただちに出て来る権利ではございません。それぞれの同盟条約なり共同防衛条約なり、特別の条約があつて、初めて条約上の権利として生れて来る権利でございます。ところがそういう特別な権利を生ますための条約を、日本の現憲法下で締結されるかどうかということは、先ほどお答え申し上げましたようにできないのでありますから、結局憲法で認められた範囲というものは、日本自身に対する直接の攻撃あるいは急迫した攻撃の危険がない以上は、自衛権の名において発動し得ない、そういうように存じております。
○穗積委員 集団的自衛権という観念は、もうすでに今までに日本の憲法下においても取入れられておるわけです。そうなると、今おつしやいましたような論理を厳密に考えて行くと、すでに憲法のわくを越えるものだというように考えますが、その点はどういうふうに理解しておられるのでしようか。
○下田政府委員 集団的自衛というのは、先ほど申しましたように、まだ一般的の確立した国際上の観念ではございません。特別の説明を要して初めてできる観念でございますから、現憲法のもとにおいては、集団的自衛ということはなし得ない。国際法上、たとえば隣の国が攻撃された場合に自国が立つ、そうすると攻撃国側は、何だ、おれはお前の国を攻撃してわけじやない、なぜ立つて来るかといつて、これは国際法上、攻撃国側から抗議あるいは報復的の措置に出られてもいたし方のない問題でありまして、現行国際法上は、特別のとりきめなくして集団的上自衛権というものを確立したものとは認めておらない。従つて憲法は自衛権に関する何らの規定はないのでありますけれども、自衛権を否定していない以上は、一般国際法の認める自衛権は国家の基本的権利であるから、憲法が禁止していない以上、持つておると推定されるわけでありますが、そのような特別の集団的自衛権までも憲法は禁止していないから持ち得るのだという結論は、これは出し得ない、そういうように私は考えております。
○穗積委員 大体局長のお考えは、きようのお話や、今までわれわれが伺いましたものを総合いたしまして、推測ができるわけでございます。これ以上は、もう少し具体的な問題が出て参りましてからあらためて伺いたいと思います。 最後に念のためにちよつと伺つておきますが、今のその御解釈は、これはあなた個人の御意見ではなくて、外務省または政府を代表する統一された御意見と理解してよろしゆうございますか。
○下田政府委員 穗積委員の御質問の集団的自衛権と憲法との関係につきましては、政府の確立した見解を樹立するための相談をいたしたことはまだございません。そういう抽象的の理論として確立したのでなくして、現実問題として相談いたしたことはありますが、そういう理論を立てるための相談をいたしたことはございません。従いまして先ほど私が申しましたのは、外務省と申しますよりは、外務省条約局の研究の段階で得た結論だと申し上げる方がよろしいかと思います。
○穗積委員 非常に慎重に御答弁でございますが、条約と憲法との関係について、特に国際関係の法理の解釈については、われわれとしてやはり条約局のお考えというものは、外務省または政府を代表する意見として見なければならぬ。ということは、今申しましたようなことは、具体的な問題におきまして、さらにもう少し立ち入つた議論をしなければなりませんが、対外的な国内法の上に立つて行政を行つておる条約局が、条約と国内法との関係についてはつきりした政府を代表する意見でなければ、外国との条約上の交渉または協定の交渉または行政措置の交渉というものはできないはずだと思うのでございまして、これは機構の客観的なしかも合理的な解釈からいたしまして、条約と国内法との関連については条約局長の御意見というものは、政治通念からいたしまして、外務省または日本政府の解釈として見なければならない。そうでございませんと、条約局たけの行為だということになれば、今までできました条約と国内法との関連において矛盾しない範囲において、日日の行政事務を処理して行かなければならぬ条約局としては、エグゼキユーテイヴ、執行部でございますから、そこにおける解釈が背骨になつていなければ、一つ一つの行政事務はできないはずです。そういうことになれば、この御解釈というものは、もとより政府を代表するものとわれわれは考えざるを得ないのでございまして、当然なことを念のために念を押したというだけなのでありますから、ひとつすなおにお答えいただきたいと思うのです。そういたしますと、あなたのお答えでは、場合によれば違つた考えが一部政府の部内にあるかもしれませんが、そういうことを無視して、実は黙認されておる以上は、かつてに解釈して、条約局だけで事務を処理していいのだということになりかねない。ほかのことについてもそうなる。ですから当然そういうふうにわれわれ考えるわけですが、いかがなものでしようか。
○下田政府委員 私どもも政府のエグゼキユーテイヴの一つのブランチといたしまして、一応のルーテインの処理はいたしております。小さい問題でございましたら私ども内部で処理する案件もたくさんあるわけでございますが、大きな問題でございましたら、これはもちろん政府の関係部局と十分の相談をいたしまして、政府の意見というものを確立する必要があるわけであります。ところがただいま御提起になりました問題は、まだ現実の問題ではございませんで、まつたくの仮定に立つた問題であります。共同防衛と申しますか、集団的自衛の問題になりますと、日本がまずそれに加入しえる集団安全保障の一単位といたしまして、カウントされる事態になつて、初めて持ち上る問題であります。ただいまの自衛力漸増が完成いたしましたあかつきに、やつと日本は集団完全保障の一つの単位として見られることに相なると思いますから、まだその最初の一歩に入つただけでございますので、現実の問題ではございません。従いまして、外国から集団防衛機構に入れというような申込みのあるはずもございません。政府といたしまして何らかの重要な決定をいたすというのは、現実問題として起つた場合に行われることでありまして、ただいまのような、ただ抽象的な理論の問題として政府が見解を先走つてきめるという必要はないのであります。まつたくの法理上の問題として、条約局の見解を申し述べた次第でございます。
○穗積委員 もとより私がお尋ねしたのは政策上のことでなくて、法理上のことでございます。ですけれども、あなた個人でなくて条約局長、すなわちエグゼキユーテイヴの当該責任部局としての御意見であるとわれわれ理解しておきたいと思います。今までおつしやつたことを整理いたしますと、そう理解できるわけですから、その点は明りかにしておきたいと思います。もう一点だけ、アジア局長にお尋ねいたします。実はこれは大臣にお尋ねすべきであるし、局長にお尋ねするなりあるいは欧米局長にお尋ねすべきことかと思いますが、アジア問題に関連いたしますから、不本意ですが御了解になつている範囲においてお答えいただきたいと思います。先般本院におい決議いたしました、紅十字会の代表者を日本に招聘する問題ですが、院議が決定されました後に、外務省としては、事務当局はどういう準備をなされておられるか、実情をちよつとお話くださいませんか。そしてまた同時に、アジア問題の責任者としてのあなたが、この問題をどういうふうに希望的に解釈しておられるか、あなたのお考えをお尋ねいたしたいと思うのです。というのは、今後アジアの問題を、日本並びにアジア全体のために望ましき状態に処理して行きますためには、それとの関連において、あの問題をどういうふうに処理することが望ましいと思つておられるか。ですからお尋ねいたしたい第一点は、院議が決定いたしました後の外務省内におきますその後の事情の御報告について、第二点は、アジア問題の執行部の責任の地位に立つておられますあなたのお考えをお尋ねいたしたいと思います。
○中川(融)政府委員 紅十字会の代表の人を日本に呼ぶという問題につきまして、先般院議がございまして、それに対します政府の方針について、その際参議院の本会議におきまして、松理、外務大臣からそれぞれ話があつたということを承知しておりますが、桁府の態度は、院議の趣旨に沿つてできるだけこれを尊重して善処したいと六うことであろうと了解いたしております。従つて政府の方針がきまり次第、それに基きまして適当な措置をとる準備がいつでもあるわけでございます。 なお、私個人と申しますか、私の本件についての考えを言えということでございますが、政府の行政組織の根本的な考え方あるいは建前ということからいたしまして、政府の方針以外に、この中の一部局を担当しております者のかわつた考え方というものは、少くとも表に出すものとしては許されないのでありまして、その点につきましては答弁を遠慮させていただきたいと思います。
○穗積委員 それではちよつとお尋ねいたしますが、やろうと思えばいつでもできる、これはずいぶん長い問題でございますし、しかも院議が決定いたしましてからも日がたつておりますし、手続上その他準備等からいたしましても、一切がきまれば短時日の間に実行し得る問題が延びておるわけです。これはまあ最後の決裁は大臣がされるにいたしましても、これを実行したらどういうプラスがあり、どういうマイナスがあるか、実行しなかつたらどういうマイナスがあり、どういうプラスがあるかというような、つまりマテイリアルスといいますか、そういうような資料、情報は、事務当局においていろいろ参考のために当然基礎調査をなさることだろうと思うのです。特に旅券を出すとか出さないとか、渡航を許すとか許さないとかいう問題は、あるいは欧米局のブランチの中にあるかもしれませんが、問題がアジア問題に関連いたしておるわけですから、そういう意味の資料や情報というものについては、あなたのところに関連が非常に深いわけでございますので、裁決決定をする御意思は私はお尋ねいたしませんが、そうじやなくて、それを実行した場合と実行しない場合について、どういうプラス、マイナスがあるかということだけについては、日本の外務省の資料または情報としてはおとりまとめになつておられただろうと思いますが、最近はどういうふうな資料や情報が出ておりますか、できましたらそれを念のために伺いたいと思います。
○中川(融)政府委員 紅十字代表を日本に呼びますことのプラスとマイナスというような点につきましては、大分前に、この委員会でもいろいろ政府側の意見を申し上げたこともあろうかと思つておりますが、これはプラスの面とマイナス面のあることは想像されるのであります。もちろんマイナスと申しましても、あるいはプラスと申しましても、これは想像だけでありまして、はたしてほんとうにそういうマイナスなりプラスがあるかということは、現実に事が終つてみなければわからないわけであります。これが引揚げ問題に非常に役立つという考え方も、確かに一つの考え方としてあり得るのであります。と同時に、一体中共というような政治組織の国に日本側から非常に好意を示すということによつて、その政策というものの影響を受けるであろうかどうかという点については、懐疑的な見方もあり得るのであります。しかしこれについては、しないよりはした方がいいという論もまたその上にあり得るわけであります。やはり何と申しましても、一番のマイナスと申しますか、要するにこれに対して懐疑的となる理由といたしましては、やはりどうしても中共というものに対する今後の日本の態度と不可分の関係があると考えざるを得ないのでありまして、紅十字の代表と申しましても、同時にこれは中共あるいは中共政府、あるいは中国共産党の要人であります。なおこういうことを契機といたしまして、さらに中共との関係を緊密化しようとする空気が助長されることも考えられるのであります。これらのいわば政治的な面ということが、本件についていろいろ問題がむずかしくなる原因ではなかろうかという考えでおります。 なお具体的にどのような資料を私のところから上司のところに出したかということにつきましては、部内事項でございますので、これは言わないでおきたいと考えます。
○穗積委員 最後に率直にお尋ねいたしますが、この問題は実はおつしやる通り、非常に政治的な意味やインフルエンスが多いと思うのです。私はプラスとマイナスについて政府がどのようにお考えになつておるか聞いたのですが、政府が今まで決定されないのを見れば、おそらくプラスだけでなくてマイナスもあるだろう、そしてそのマイナスの方が差引して多くはないかという判断をしておられるからこれを決定しなかつたと思うのです。私は実はそれをどういうふうにお考えになつておられるか伺つて、そしてそれを決裁する立場におられる大臣にお尋ねして——そのマイナスは実はマイナスじやなくて、われわれの判断ではプラス以外にマイナスはないと思つておるわけです。そういう意味で、実はその参考のために、事務当局は一体どういうデータなり資料をお出しになつたのかお伺いしたいと思つたわけですが、お答えにならなければ無理に答弁しろというわけにも行かぬので、はなはだ遺憾ですが、私は希望として局長に申し上げておきたい。 あなたは先ほど、自分は事務当局であり、一ブランチの責任者にすぎないと言つて非常に謙遜されておりますが、あなたはやはり外務省の日々の外務専務、外交事務を処理され、しかも局長におられる。のみならず私はあなたのお人柄から見て、あなたは何らか一つの政治的判断なり良識を持つてアジア問題を処理して行かれるという希望と期待を持つておるわけです。従つて腹の中は、一俗吏のお答えになるようなお考えであろうはずはないとわれわれは思うのです。特にアジアの問題につきましては、ジユネーヴ会議がどうなるか別といたしまして、ジユネーヴ会議だけですべては決定せぬでしようが、大勢としては、中共承認問題は、今度の会議をいたしましても一歩また前進しつつある。中共を無視してアジア問題の処理はできないという事実に世界の外交はぶつかりつつあるわけでございまして、そうなりますと、特に問題になりますのは、日本の経済、深刻になりつつあります日本の経済の一つの方向といたしましても、この中共問題の処理がもし立ち遅れるようなことがありますれば、おそらく今のようなことで行つておりますと——李徳全女史自身に日本に来ていただくだけについてもアメリカに気がねをしておる。それがただ一つの理由だというふうに私には見受けられるのであります。そういうことでやつておられますと、中共貿易問題についてはおそらくはアメリカにすら遅れてしまつて、非常に立遅れになる結果になりはしないか。あなたは心中ではそこのところは明察しておられることだと私は思います。ですからこれ以上もう一ぺんあなたの御答弁をお願いいたしましても、慎重なあなたはそういうことは言われないかもしれませんが、言われなければ言われないでけつこうですから、これ以上のことは大胆にお尋ねいたします。エクゼキユーテイヴの単なる俗吏でないあなたは、こういう問題については一つの方向というか、目標を持つて日常の事務を処理して行くということでなければならぬと思いますが、その点は一ぺんよく一お考えいただくまでもなく、考えておられることと思いますが、あなたの腹一つだと思うのであります。そういうことで今後御努力をいただきたい。あと予定通り行けば、きようで閉会になるはずでありますから、きよう午後にでも大臣が来ていただけはその点をお尋ねいたしたいと思います。もしやむを得ざる何らかの事情で来られないとあれば、これで今国会における私の質問なり希望を申し上げることはできませんから、きようのことは重ねてあなたから大臣にお伝えいただきまして、せひ近い時期に李徳全女史が日本へ来られるようおとりはからいをお願いしたいということを申し上げて、私の質問を終ります。
○戸叶委員 関連して。私も二、三の質問を持つておりましたが、大臣がお見えになりませんので、次の機会に延期したいと思いますが、ただいまの穗積委員の李徳全女史招聘問題に関連しまして一言お伺いいたします。先ほどの御答弁によりますと、李徳全女史が政府の要人であり、政治的な関係もあるからというふうに私は伺つたものでありますが、私はつきりした知識は持つておりませんからわかりませんけれども、聞くところによりますと、李徳全女史はクリスチヤンで、非常にりつぱな、温厚な方であるということが言われておりますが、その点はどうですか。もし御存じでしたらお伺いしたいと思います。そうしてもし李徳全女史がクリスチヤンであり、中共の中におりますからはつきりとした意識を持つておられましても、それほど大きな思想的な影響力があるというような方でないという見通しがつけば、早くお呼びになるというようなお考えであるのか、その点をはつきりお伺いしたい。
○中川(融)政府委員 先般来日本赤十字が考えております紅十字代表招待問題について話をいろいろ聞いてみました。招待する対象は六人あるいは七人という数になつておりますが、団長としては一応紅十字の会長であります李徳全女史を考えておるようであります。はたして李徳全女史が来るかどうかもこの点実ははつきりしない。あるいはこの間北京へ行きまして島津社長が交渉されました際に、李徳全女史は一回か二回しか出て来ない。あとは廖承志と申されましたか、その方が紅十字のアドヴアイザーという形で出て来られました。ところがこの廖という人は中共のそうそうたる領袖だそうであります。あるいはこの廖という人が来るのではないかということも日本赤十字の方では観測しておりました。これはもとよりあとのことで、将来のことはわかりません。なお孝女史は、私の聞いておりますところでは、現在中共政府の衛生部長、つまり厚生大臣でありますが、その人となりと申しますか、経歴と申しますと。ただいま御指摘になりましたように、共産党とは少し縁の速い方の経歴のようです。おそらくクリスチャンということもほんとうかと思います。従つて純粋の党員というのではないということであります。しかし参ります団員が六、七名ということでありますから、必ずしも李女史が来ないで、ほかの人が団長で来るかもしれぬ、その辺のところはわからないのでありまして、おそらく共産党関係の人も相当来るのではないかというふうに考えております。 なお代表自体がたとえば共産党員でなければ政治的な悪影響はないと思うのかというお尋ねでありますが、この点は必ずしもそうとも言い切れないのじやないかと思います。要するに中共からそういう団体が来るということ自体においても、何と申しますか、中共と日本との関係をより緊密にしようというような空気を促進するということはやはりあろうかと思います。
○戸叶委員 私は外交関係を緊密にすることが悪いとは決して思わないのでございます。別に今の日本の政府の方方がそれほど中共の影響を受けられるとは考えられませんので、そういう御懸念はないと思いますし、またことに院議として認められた、すなわち決議案として紅十字社の代表を呼ぶということが、すでに衆議院においても参議院においてもきめられておりますことですから、局長といたしましても一日も早くその実現するように御努力になることを要望したいと思います。私どもは結論といたしまして引揚促進に必ずプラスになるということを考えますから、どうか院議を無視されないような態度を大臣にお勧めになつていただきたい、こういうことを要望いたします。
○上塚委員長 政府に対する質疑は終了いたしました。 この際一言ごあいさつを申し上げます。第十九回通常国会の会期もいよいよ本日をもつて終了の予定でありますが、当委員会におきましては去る十二月十一日以来会議を開くこと五十七日、その間委員各位の真摯なる御精励により、当委員会に付託されました条約二十件、法律案三件、請願四十九件、陳情百四十三件をことごとく議了し、当外務委員会の任務を十分に果し得たことを深く喜びとするものであります。ことに今回は国政上きわめて重要なる案件として、MSA諸協定、防衛秘密保護法案、国連軍協定、日米艦艇貸与協定等相次いで付託せられ、自然委員各位に対し長期長時間にわたる御審議を煩わしたにもかかわりませず、連日の御精励、論議をお尽しくださいましたことに対し、委員長として厚く謝意を表する次第であります。委員会は閉会中も随時開会し、外交問題に対する国民監視の実をあげたいと存じます。 なお最後に当委員会の論議を的確に内外に報道されました記者各位に対しましても、この機会に厚く御礼を申し上げます。 本日はこれをもつて散会いたします。 午後一時五分散会