海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第3号
- 発言数
- 46 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1954/03/02
会議録
○山下委員長 これより会議を開きます。 本日は中共地区残留同胞引揚に関する件について議事を進めますが、その前にお諮りいたします。中共地区残留同胞の引揚げに関しましては、御承知のごとく日本赤十字社において中国紅十字会会長李徳全女史以下の代表を招請すべく努力いたしておりますが、これは今後の引揚げに対して大きな関係を有しておりまして、本委員会もこれに対して各委員の意見をまとめ前回の委員会において外務当局に要望いたしておいたのであります。しかし、この問題が出ましてより相当日時が経過いたしましたので、この際日本赤十字社の意向と企画を明確に聴取いたし、留守家族の要望とともに、委員会の態度を決定いたしたいと思いますが、これについて中国紅十字会代表招請に関する事情を聴取するため、日本赤十字社副社長葛西嘉資君を本委員会の参考人として事情を聴取するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○山下委員長 御異議なきものと認め、さよう決定いたします。 では、ただちに葛西参考人より中国紅十字会代表招請に関する事情についてお話を伺いたいと思います。葛西参考人。
○葛西参考人 ただいま中国紅十字会会長以下を招待することについての経緯を説明せよということでございましたので、申し上げたいと思います。もうすでに大体のことは委員各位には御存じの通りだと思いますが、順序としまして、事柄の起り、それからその後の経緯、それから私どもの、委員長がさつきお述べになりました企画というようなものについて申し上げさせていただきたいと思います。 事の起りは、御承知のように、昨年の初めに三団体の代表が北京で帰国の打合せをいたしまして調印ができましたときに、先方の希望もあり、当時高津団長から、この引揚げができた場合においては、そのお礼の意味をもつて李徳全女史以下をお呼びするように努力いたしたいと思つておるということを言つたことが起りなのでございます。その後の経緯は、御承知のように昨年の三月から日本人が帰国を始めておつたのでありますが、第四次、第五次というようなあたりからだんだんと引揚げて来る数が減るというようなこともありましたので、昨年九月だと思いますが、政府の方に、だんだんと引揚げが細くなつて来たようだから、ひとつあの中国紅十字会招待という問題を努力してもらいたい、許してもらいたいということを正式にお願いをいたし、申入れをいたしたのでございます。当時政府の方におきましては、いろいろ研究の結果、この問題は帰国が済んでから考えるべきだというようなことで、あまり熱心にお相手になつていただけなかつたように思うのでありますが、だんだんと帰国も減つて参りまして、五次、六次、七次までの間に二万六千人ばかりの帰国希望の日本人が帰つたというようなことであつたのでございますが、その後第七次をもつて帰る人がなくなつておつたのであります。突然、昨年の十一月十二日に中国紅十字会の方から、第七次をもつて集団帰国が打切られた、あと帰りたい者があれば個々に帰国をさせるつもりである、その援助もする、しかしその方法は目下研究中であるということを通知して来ただけでございまして、その後中国紅十字会の方からは赤十字に対しましては何らの消息がないのでございます。ちようど十二月の末になりまして、ほおつておけないというようなことで、いろいろ政府とも打合せしたのでありますが、正式に中国紅十字会を招待すると言うことはできないのであるけれども、しかし何とか言わなければならぬというようなことで、昨年十二月二十五日になりましてから、中国紅十字会に、在華日本人の帰国に対する感謝と、それから、まだ帰りたい日本人が残つており、個別帰国というようなことがあるのでありますが、その個別帰国の打合せをすることをかねて、貴国の代表を赤十字のお客さんとしてわが国に招待したいということは、その意思は今でもかわりはないのであるけれども、まだ実現を見ていないのは遺憾であるが、ぜひこれは実行したい意図を持つているというようなことを打電しておるのであります。中国の方からは何も言つて来ておらぬのであります。 大体以上が今日までの経緯でありますが、その後政府の方にも、集団帰国が十一月十二日に打切られたという通知も来ているし、ぜひひとつ紅十字会を招待してもらいたい――このことはどういうことかと申しますと、これは感謝の意味もあります。しかし、あわせて今後の個別帰国の打合せというようなことも先方が日本へ来ればできる、こういうふうに考えて、ぜひ実行いたしたい。今のところ先ほど来くどくど申し上げておりますように、これは感じでございますけども、中国紅十字会との関係は非常にぐあい悪くなりまして、ほとんど壁にぶつかつておるような感じが実は私どもするのであります。そこで、紅十字会の幹部が日本へ来るというようなことがあつて、そしてお互いにひざを突き合せて話をすることによつて、この壁にぶつかつたような感じのするものが打開できるのではないだろうかというふうに考えるものでございます。よく、じやあ招待をしたら必ず帰国ができるかというようなことを聞かれるのでありますが、これは先方、相手方があることでありますので、ここで私が必ずできるということを申し上げることは、これはちよつと言い過ぎだと思いますけれども、とにかくこういうふうな膠着した状態を打開する一つの機会にはなる。ことに日本へでも先方の会長以下廖承志その他の幹部が来ることによつて話をする、あるいはまた日本へ来た機会に留守家族なんかの代表にも会つてもらつて、直接人情に訴えたお話を先方にするというようなことができる機会がありますならば、人間同士のことでありますから、先方も留守家族の気持を体して、そうして促進に役立つのではないだろうか、かように私は考えておるわけでございます。私どもはぜひそんなように願いたいと思うのでございます。先方にも若干のことは伝えたのでありますが、中国紅十字会の方にも都合があろうと思いますので、いずれ日本へ入れることについて政府の方のお許しを得れば、こちらからいろいろ案を出して――その案というのは、今私ども考えておりますのは、大体先方の人を、われわれの代表が行つた人数あるいは時期等から考えまして、七、八人くらい呼ぶことが適当ではないか。それから、時期にいたしましても、まず二、三週間くらいの期間、そして日本の適当な場所、赤十字のいろいろな施設でありますとか、あるいは日本の文化施設でありますとか、あるいはまた中共から帰つた人の定着をしておる状態であるとか、そういうものを中心に見てもらう。もちろん、先ほど申し上げましたように、留守家族の代表等にも折にふれて会つてもらい、直接切々たる気持を聞いてもらうというようなことをやりたいと思つております。これはいずれも政府の方の、これらの外国人を日本へ入れることはさしつかえないという承認を得ました上で、われわれのほうから中国紅十字会の方へ都合を聞き、その都合によつて具体的な案を立てる、こういうふうにしたいと思つております。 右のような趣旨におきまして、私どもとしましては、この中国紅十字会の幹部を呼ぶということは、第一回のときの団長が話した経緯もあり、また今後の帰国打合せのためにも裨益するところが少くない、かように考えておつて、現在でも赤十字といたしましてはそれを非常に熱望いたしておるような次第でございます。 なおその際、いろいろごたごたしたり、あるいはいろいろなデモ行進があつたり、あるいは赤旗乱立等のことがあつて不愉快な状態が起きるのじやないかというようなことも、実は心配をしないのではないのでございますが、これらの点は、日中友好協会並びに平和連絡会の主席とも実は懇談をいたしたのでありますが、二団体の人たちも、自分らも紅十字会の幹部を呼ぶ以上は愉快に旅行させたい、愉快に旅行させたいのに、そういうふうな赤旗乱立でどうこうして騒いで不愉快な旅行をさせたくないので、かようなことをする道理がない、われわれも君らと同じ意見であるということを代表の人たちが現に話しておるようなわけでございますので、団体の協力を得まして円満にやりたい、またやれるのではないかというふうに推察をしているような次第でございます。 大体以上の通りでございますが、なお御質問等によりましてお答えさせていただきたいと思います。
○山下委員長 中国紅十字会代表招請につきましての日本赤十字社の意向は、ただいま参考人より聴取いたしました通りでありまして、委員会といたしましても、海外同胞引揚げ問題の特性にかんがみまして、本件の実現に期待するものでありますが、委員各位の御意向をお伺いいたしたいと思います。
○受田委員 日本赤十字社が中国紅十字との間においてこうした人道的問題の友好的処理を考えておられることに対しては、はなはだ時宜を得たものとして敬意を表します。ことに、赤十字社が昨年あちらへ御足労いただいて引揚げ促進に大いに役に立つていただいたということに対しては、国民は心から感謝しておるのです。それで、赤十字の立場から紅十字の李徳全さんを中心に社賓としてお迎えするということは、これは国民もすべて納得することだと思うのですが、問題は、日本赤十字が非常な努力を傾けてこれが実現をはかろうとして行く上に支障が起る心配はないか、すなわち李徳全さんがこちらへ進んでおいでいただくことに対して不安はないか、この点自信を持つて李徳全さんをお迎えできる確信を持つていらつしやるかどうか、それが一つと、今まで外務省等はこれに対していささか難色を示して来たのでありますが、そういうものに対して政府当局の不安を一掃することについて日本赤十字社としていかなる努力をしておられたか、こういう問題をお伺い申し上げておきたいと思うのです。
○葛西参考人 ただいまのお尋ねは、李徳全女史ほか幹部の人の来ることについて心配になるような点はないか、その点確信があるかどうかということであります。私どもとしましては、先ほども申し上げましたように、お礼の意味で――二万六千人の人を帰してもらい、今後もまたお世話にならなければならぬことでありますので、その点実は万全の計画を立てて参りたいと思つております。心配になります――受田委員はどういう点を御心配になつているか、私もよくわからぬのでありますけれども、私どもとしまして一番心配の点は、不愉快なる旅行になりはせぬかという点で、これを政府の方でも一応心配をされたように、私ども折衝途中でわかるのであります。ということは、結局、デモ行進があつたり、あるいはまた帝国ホテルの前に赤旗が立つてしまつて騒ぐというようなことが心配だと思うのです。これが私ども第一に心配した点であります。先ほども申しましたように、実は三団体として中国紅十字会と折衝をしております関係から、この問題を持出すときに、私ども政府に参ります前に、その点は二団体の代表とも実は特に懇談をしたのであります。実は、そのときに、赤旗乱立のばか騒ぎはしないということを紙に書いて見せると、君はひどいことを書く、赤旗乱立の騒ぎとは何だと言つたのですが、これはまあ私のメモだから、そういう気持は、今デモができたり、あるいは何だかんだするというようなこと、そういう心配、あるいはまた労働組合、産別等の大会があつて、そこに李徳全女史が行くというようなことでいたずらに騒ぐようなことはどうだろうかというような点も、実は内輪でありますが打合せをしたのであります。そのときの二団体の代表の言い分は、先ほども申しましたように、実は愉快な旅行をさせなければならない、それにかような騒ぎをするということは反するのだ、その点は赤十字と同じ心配をしているのだから心配はないと、代表の人たちが確信をせられたのであります。私どももそうだろうと思つて――一年も先生方とお話をしているのですから、そういう心配はないだろうと思つております。そのほか、安全とかあるいはまたいろいろな点があると思いますけれども、これらの点、日本の人たちをとにかく二万六千人帰してくれ、また数千人を帰してくれるという紅十字会に対して、私は、心配の点はない、そう今信じておるわけでございます。
○受田委員 副社長からこちらへおいでいただくことについての構想を伺つたわけでありますが、主目的は李徳全さんに対する国民的感謝の気持を示すということですが、帰つて来られた人は不安なく新しい生活に入ろうとしているのだ、そうして国民各層もそれに協力をしつつあるということを見てもらわなければならぬと思うのです。それが、こちらへ帰つて来た人が就職その他で不便を感じておつたりしてはなはだ憂慮にたえない点があれば別ですが、そういう点についても、こもらの誠意あるところをおぜん立てしてお迎えすることも必要だろうと思うのです。 もう一つ問題は、日本赤十字社といたしまして、これのあつせんの労をおとりいただくことについて、他の二団体との連絡協調を十分なさつてはおると思うのですけれども、おいでいただいた以上は、これは日中友好の契機にもならなければならぬ。李徳全さんを迎える以上、それがアジアの二大民族の融和をはかつて行けるという足がかりにもわれわれはならなければならぬと思いますが、目的はそうした引揚げ促進という点にあるので、虚心にこれを迎える。別にその裏に何かあるのではないかというような政治的な含みを考えないで、またこちらといたしましても、迎える国民の側も、これを機会に一方的に政治的に策謀するとかいうようなことがあつても、これはおいでいただくことの目的と相反するのでありますから、そういうところもみなが虚心に考えて、率直にお迎えするという態勢が必要だと思うのです。そういう点について今不安がないかどうかというお尋ねをしたのでありますが、大体肯綮に当つた御回答をいただいたのですけれども、率直に国民が国のお客さんとしての立場で、あなたの社のお客さんという意味と同時に、われわれは国民的なお客さんとしてお迎えするというような含みを持たして行きたい、こう考えて参つておるのであります。それで、今外務省として不安な点が何かあるのではないかというので幾分躊躇しておられたということも出たのですが、それはあとからお話があるのでございましようが、こういう問題について日本赤十字社の考えておられる構想、それで不安なくお迎えできるのだという万全の策をとつてのりつぱな御態度については、心から敬意を表します。この点、もう一つ、今お尋ね申し上げました日中友好の契機となる大事なお客さんでもあるので、主目的とあわせて、あなたのお示しいただいたお言葉の中にあつた国民的な礼式を十分重んじた待遇をするということに対して、経費その他についての御構想を伺つておきたいと思います。
○葛西参考人 今回紅十字会を呼びますのは、これは先方にも伝えてあるのでありますが、中国紅十字会が示された日本人の帰国の援助に対する感謝の気持を現わす、これが何と言つても中心だと思います。あわせて今懸案になつている個別帰国の問題の打合せをするということを兼ねておる、この二つのことが目的でお呼びする。このことは先方にも伝えてございます。しかし、今受田委員がお述べになりましたように、この機会にそういうことがあれば日中友好の関係もできるであろう、その点も考えなければならぬというような点は、自然副作用としてかようなことが出て来ることは当然のことのように思います。なお、この点は二団体とも相談をしたのでありますが、今回の中国紅十字会招待の計画というものは二団体も了承しておるのでありますが、日本赤十字が日本赤十字のお客として呼ぶのであるという点は、これは実ははつきりさしていただいておるようなことでございます。 また、次に、経費の点なんかはどうなのか、失礼な点があつては困るということで、財政のことを御心配になつてお尋ねいただいたのですが、実は、日本赤十字社は今経済的には非常に貧弱でありまして、中国紅十字会の人を右申し上げましたような計画で呼ぶ十分な経費等がないものでございますから、この計画を九月に外務省にお願いした際にも、ひとつ政府の方から適当な援助をお願いしたいということをあわせてお願いを申し上げておるような次第でございます。従つて、政府の方から今にお許しをいただくときにあわせてお考えいただけるもの、こう期待をいたしておるような次第でございます。
○受田委員 政府の方からまだ御説明があると思いますが、一応副社長に対する質問を終ります。
○山下委員長 葛西参考人に対して他にございませんか。
○吉川(兼)委員 受田委員の方から大体私のお伺いしたい点はお話がございましたので、非常に端折つた話になりますが、お伺いしたいと思います。 ただいま葛西さんの話を伺つておりますると、一番心配なことは、おいでになりました李徳全さん初めお客様に不愉快な思いをさせないということのようでありまして、これはもうまつたく私ども同感でございますが、私は必ずしもあなたの言葉じりにとらわれるわけではございませんけれども、赤旗を振ることがはたして李徳全さんの方から言つて不愉快であるかどうかということをお考えになつたことがあるかどうか。何だかあくまでも日本の感覚で話しておるかのように私聞えてしようがないので、もし私の聞き違いであれば撤回いたしますけれども、デモ行進等についていろいろ御配慮になることはけつこうであろうと思いますが、いわゆる角をためて牛を殺すという言葉もありまするので、あまりにそういうところに拘泥されて、かえつて逆になるおそれがないかということを、今私卒然とあなたのお話を伺いながら感じたのであります。そこで、具体的には、その二つの団体にお話になりまして、どういうふうなことをお話合いになつたかということを、もつと伺つておきたいのです。むろん、これは政治的にお迎えするわけではないのでありますから、政治的な方面にこれを使われることは、儀礼上から考えましてもうまくないと思いまするけれども、何だかそのことをあまり前面に打出していることが、かえつて相手方に逆な感じを与えるのではないか、こういうふうな感じがいたしてならないのであります。従つて、日中友好協会その他の二団体と日本赤十字社との間でお話合いになりました内容を、もつと具体的にここでお示し願えれば幸いだと思います。
○葛西参考人 ただいまあるいは申し上げ方が悪かつたかもしれぬのでありますが、ああいう国から来たものでありますから赤旗を乱立して帝国ホテルの前でがちやがちややる――まあ一応私がそういうことを思いついたものでありますから、そういうことは不愉快ではないか、あるいはまた、デモ行進というようなものをやるということは、大げさなと言いますか、政治的なと言いますか、そういうようなことをねらつたことの一例として私は申したのであります。そういうふうな政治的な目的でなしに、今吉川さんも仰せられたように、今度おいで願うことは、もつぱら人道的な問題でございます。政治から離れている問題であります。そこで、私どもも外務省にもぜひお願いしたいと言つているのはこの点からなのであります。もつぱら人道的な問題であつて、政治的な問題にこれが左右されるというようなことがあつてはいかぬのじやないか、私はそういう心持で他の二団体の人たちと話をしたのであります。今回呼ぶのは、赤十字が赤十字のお客さんとして、日本人の帰国に援助してくれたこの人道的な目的のお礼を言うために呼ぶのである。その例として、例が非常に悪かつたかもしれぬが、赤旗が乱立と言つたのですが、それは一本や二本で別にどうこうということはないので、不愉快な思いをさせる乱立、あるいはデモ行進というか、何かそういうことで、日本へ来た人が、お礼の意味で来てもらつて、そうしてあるいは東京の観光をする場合もありましようから、そういうときにそういうことをする、あるいはまた休養をしなければならぬときにわれわれ言つてしまうというようなことがあつてはいかぬのじやないか。その点は、他の二団体の諸君も、同様に感ずる、愉快な旅行をさせなければならぬ、趣旨は、吉川委員が今おつしやるように、もつぱら人道的に来てもらうのだから、人道主義の立場からやつてもらいたい。それに御同意になつた。こういうことでございます。赤旗を振つてとかなんとかいうことにもしおとりになりましたら、私の意図した意図とは違うのでございますから、御了承願います。
○吉川(兼)委員 ただいまの御答弁で大体意図されておるところはわかりますが、結局お迎えすることになるだろうと思いますけれども、何しろ根本的に考えの相違する面もある国から来るわけですから、こちらだけの感覚で、たとえばあごひもをかけて鉄かぶとをした者が大勢その付近におるというようなことのないように、これはあなたに対しては人が違うかもしれませんが、せつかくのここの委員会でありますから、私の意見のようなものをつけ加えておきますならば、どうかひとつ相当慎重に、しかも政治的にわたらないということを前提にして、むしろ文化的なにおいのするようなお迎えを考えていただきたいということを、蛇足かもしれませんが、つけ加えておきたいと思います。
○葛西参考人 まつたくその通りに存じております。
○福田(喜)委員 ただいま葛西副社長の懇切ていねいなる御説明、途中から参りましてはなはだ何でありますが、一つ二つ葛西さんにお聞きしたいのですが、あるいは御説明があつたことかと思いますが、まだ中共地区には五、六千の人間が残つておる。これは、集団引揚げが打切られたのは中共の一方的な事情によるものでしようか、何か集団引揚が不可能になつた事情がほかにあるのでしようか、それが第一点。それから、集団引揚げが不可能になつたとすれば、個々の引揚げの方法だけしかないのですが、引揚げにつきまして、われわれ中共内部の状況をよく知りませんのでお尋ねしたいのですが、現在個々に引揚げて来るとすればどういう方法で一体行われておるのだろうか、現在その引揚げの方法はどういうふうに個別的に行われているか、それに対する中国側の紅十字会の関与の程度がどういうものであるか、紅十字会を通じないそのほかの引揚げ方法が何かあるのかどうか、つまり紅十字会以外の引揚げ方法があるのか、考えられるのか、また現実に行われているのか。こういう点について葛西さん並びに政府当局のお考えを承りたいと思います。
○葛西参考人 今の福田委員のお尋ねの集団帰国打切りの状況といいますか、どう考えておるかというようなお尋ねでございますが、これは実は私どもにもわからないのでございます。第七次までに先ほど申し上げておるように二万六千人余りの人が帰つて来ました。まだ、私どもの知るところでは、旅順、大連地区等に相当の人がおる、四千人か五千人くらいの人がおるのではないかと推測をされるのでありますが、突然集団帰国を打切られたという通報を受けたのであります。これがどういう意図であるものか、あるいは何かということは、想像も実はできてないような次第であります。集団帰国と申しますのは、御承知のように、こつちの方から船を迎えにやりまして、大きい船ですと二千人、小さい船でも当時五百人の人を乗せて、向うの紅十字会が世話をして船場まで集結させてくれる、集結地におつて三日なり四日なり、あるいは長いのは一月もそこにいる間に宿舎を提供し生活をさせてくれて船に乗せる、そうして日本に持つて来る、こういうやり方です。それが打切られる。まだ帰りたい人がおるかもしれぬ。それは個別に許す。こういうことです。それでは、向うの個別引揚げというのはどういうのかというと、これも実はわからないわけでございます。今度の中共からの集団引揚げが始まります前は、福田委員も御承知のように、香港あたりからごくわずか外国の船に乗つて日本に帰るというような例はあつたのでありますが、昨年の十月以降はそういう例も私ども聞いておらぬようなわけでございますが、しかし、こういうことはその方法は研究しておるのでございます。先ほど総括説明のときに申し落しましたが、実は昨年の十二月二十五日に電報を打ちました際に、個別帰国というものも、個々に帰りたい人が三十人、五十人集まりまして、二百人、三百人あるいは五百人と、上海なら上海あるいは天津なら天津に集まつた場合には、あなたの方の中国紅十字会の方で必要であると思えば言うて来てください、こつちから船を迎えにやりますということは、こつちの意思表示をしてあるのでございます。外国の船等で帰るということになると、なかなか簡単にも行かぬし、どういう援助の方法があるかわからぬのですから、日本側としましては、帰りたい人があつて、ある数まとまつて、向うが必要であると思えば、また船を迎えにやつて、五百人なりあるいは千人なりまとめて持つて来る、それを個別帰国と私の方は考えるのですが、先方の中国紅十字会側で一体個別帰国とそれから集団帰国とどう区別しておるかということも実はあまりはつきりはしないのでありますが、こつちの方からはそういうふうな申入をしておるわけであります。私どもとしては、香港に出て旅費の調達等を向うでやるにしましても、なかなか今まで帰つた人の例なんかを見ても容易に帰ることがむずかしいように思いますので、できれば日本側から船を天津なり上海なりに迎えにやつて、個別ということで、どうせ上海に来ましようから、ある程度まとまつたところでまた船を迎えにやつて、舞鶴に迎えるという方法をわれわれの方はとりたい、そうして帰国を促進したい、こういうわけで、昨年末に先方にその意思表示をしてございます。
○福田(喜)委員 もう一つ伺いますが、実は、個別帰国という内容が大体今のお話でわかつたような気がいたしますけれども、個別帰国というのは、ただいま葛西さんのおつしやるところによりますと、帰つて来る人間が上海なりどつかに集結いたしまして、そうして紅十字会から、大分集まつたから船をもつて迎えに来い、こういうふうなやり方、結果においては、これはあたかも、紅十字会が集団的に世話したのとは違いますけれども、集団帰国と似たようなものだ、こういうふうに了解いたしておるわけでございますが、現在中国との間に国交が未回復の状態にあるときに、お伺いしたいのは、第一は中国紅十字会と中国政府との関係、この関係が一体どういうふうになつているのか、ちようど日本の赤十字と政府の関係みたいなものかどうか、その点が第一点。それから、個別帰国と申しましても、たとえば軍人、軍属あたりの捕虜生活を送つておる者があるかないか、その点もつまびらかにいたしませんが、そういう連中は個別帰国は多分できないだろうと思いますが、そういう点と、それから、あそこで昔の支那に行つておつた連中が帰りたくなつてだんだん引揚げて来る、こういう連中がおもに個別帰国の大体の対象となつて来るのだろうと思いますが、そういう点は、中共の内部はよくわからぬものですから、どういうふうな内部の状態にあるのかということを、御承知であるならばもう少しつまびらかに御発表願つて、遺家族に対して一種の安心感を与えていただきたいのでございます。そういう点につきてまして何か御承知のことがございましたならば、この席において葛西さんの知つておる限りのことを発表していただきたいと存じます。
○葛西参考人 中華人民共和国と中国紅十字会の関係と申しますか、そういう点はどうなつておるかということなんですが、これはあまり詳しいことは実はわかりません。ただ先ほども問題になつておりました紅十字会の会長である李徳全という女史は、向うの中華人民共和国政府の衛生大臣であります。それから、北京で三団体の代表と中国紅十字会と折衝しました際の廖承志団長のごときは、紅十字会とは直接の関係がない人でありますが、紅十字会の顧問のような方であります。これは中華人民共和国共産党の幹事長といいますか、そういうふうな立場にある人のようですが、そういう人が代表になつているというようなことから考えても、全然政府と無関係であるとは思えないわけでありますが、これはそういう形から私が推測をしたことなんであります。いずれにしても、赤十字は、国際赤十字条約によりまして、あるいは国際赤十字の決議等によりまして、ある程度の独立性あるいは自主性というものを持たなければならないというようなことがあるのでありますけれども、しかし、右申しましたような点から、政府と全然無関係な団体であるというようなことではないのじやないかというふうに推測いたしております。これはほんの想像でございますので、それ以上のことは私も存じません。 それから、先ほどお話がありました、中華人民共和国に俘虜になつているような人は個別帰国になるのかどうかというようなお話でございましたが、これは、今回中国紅十字会と三団体と協定いたしまして、日本へ帰国を希望する者は帰すというのは、そういう俘虜とか何とかいう、国家の司法権というか軍事といいますか、そういうもので拘束されている人には及ばないのでございます。一般人として中国にいる、ただ船その他の便がなくて帰れぬ者で希望する者を帰す、こういうことでございます。従つて、先般、御承知のように、ソビエト連邦の方から九百七十一名の中共に関係のある俘虜をソ連から中共に引渡したということをモスクワで聞いて来たのでありますが、これらの者は、個別帰国とか何とかいうことでなく、今度の帰国が済んだあとから、中共側と国交がなければ、日本赤十字なりあるいは中国紅十字会との間でいろいろ折衝をして、そしてそれらの人の釈放ないしは帰国という問題にならなければならぬのじやないだろうか、こう思つております。 なお、個別帰国と集団帰国というものがどうもはつきりしないというのですが、これは実は仰せの通り私どももわからないのでありまして、日本が船を迎えにやつてそして天津から帰すということになれば、事実上集団帰国なんであります。それとどう違うのかというと、実はわからないのでありますが、とにかく、中共側としては、中国紅十字会は集団帰国は打切つて、個別帰国を援助するということでありますから、何か若干違うか、違うてもかまわない、とにかく帰りたい人を帰せばいいのだということで、そういうことを持ち出したわけであります。いずれ、こちらへ中国紅十字会の幹部が来ることになれば、そこらの点も打合せができて、何を考えておつてどうなるのかというふうな点もわかるのじやないか。そこで、紅十字会の人に来てもらうというようなことで電報や何か打つても、今まで返事を寄越さないのであります。もつとも、返事のいるような電報は打つておりません。その後研究中というきりで、研究の結果は、十一月から今日まで何も報告がないのであります。こつちへ来た機会にその中間のことでも聞ければ、待つている人も喜ばれ、また帰国も促進できる、このようなふうに考えております。
○高橋(等)委員 私は、日本赤十字社が李徳全さんを社賓としてお迎えになる目的につきてまして、もう一度お確かめをいたしておきたいと思う。先ほど来いろいろなお話が出いるのでありますが、この点ははつきりとさしておいていただきたい。元来残留同胞を中共から日本に帰すのは当然の措置であると考えておりますが、その引揚げにつきまして中国紅十字会が李徳全さんを中心として非常にいろいろな点で便宜を与えられお世話になつたことに対して感謝の意を表するために日本に来ていただきたい、これがまず第一点。さらに、第二点は、今後の引揚げについて一層の援助を要請して、うまく行くか行かないかわからないが、とにかく来ていただいて何とか引揚げの道を打開したい。この二点になると私は承つているのであります。日本赤十字社が社賓として李徳全さんをお招きいたします目的は、この範囲よりも狭くなく、またこの範囲よりも広いものでもないと、私ははつきりここで確認したお答えを繰返してお願いしておきたい。 もう一つは、七、八人大体こちらへお呼びするようなお話がありましたが、これはどういう関係であるか、念のために伺つておきます。
○葛西参考人 高橋委員からお尋ねでありました目的の点は、今高橋委員がお述べになつた通りでございます。まつたくその通りでありまして、過般九月に政府にお願いをしたときにも、またその後十二月二十五日中国紅十字会の方に打ちました電報にも、その通り書いてございます。ただ先ほどお話がありましたように、そのことから自然日中友好というようなことも生れるだろうというようなこともあつて、それはまあ結果として出るのじやないかということを申し上げたわけであります。目的といたしましては、まつたく今お述べになつた通りであります。政府にお願いしたのも、あるいは先方にお伝えしたのも、その通りでございます。まつたくお述べになつた通りでございます。 それから、七、八人呼ぶという根拠は何だというようなお尋ねでありましたが、これは、実は、三団体として昨年の一月に北京へ参りましたわが方の代表が七人でございます。それに随員を加えまして十五人くらい行つたのでございます。従つて、お呼びするとすれば、向うの都合も聞かなければなりませんが、大体代表として行つた七人というものを考えまして、七、八人ぐらいはどうだろう、こういうことで、これはそんな気持で政府の方にもこの程度でお願いをしたいということをお願いしたわけであります。
○高橋(等)委員 今のお話で、もう一点確かめておきますが、ただいまお答えになりました目的で李徳全さん一行を日本にお招きをする、お招きをしているうちに自然に意思の疏通ができるだろうということ、それを日中友好の契機となるとあなたはおつしやるのか、あるいはもう少しほかの意味があるのか、ひとつ伺つておきたい。
○葛西参考人 たいへんむずかしいあれですが、私の心持としましては、人間が来ますということになれば、人と人と会つているうちに了解が深まつて行く、こういうつもりであります。
○臼井委員 この際動議を提出いたします。本件につきましては、留守家族からのいろいろ希望もございますし、さらに前回の委員会におきましても委員各位よりの要望もありましたので、この際各党一致の意見をもつて委員会の決議とし、中国紅十字会代表招請の実現をいたしたいと存じます。なお、決議の案文につきましては委員長に御一任いたすよう、ここに動議を提出いたします。
○山下委員長 ただいま臼井委員より出されました動議について御意見があればお伺いをいたします。 〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○山下委員長 御意見がなければ、本動議について採決いたします。 臼井委員より提出されました動議について御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○山下委員長 御異議なきものと認め、さよう決定いたしました。 それでは、ただいま御一任願われました決議につきまして、委員長の手元において作成いたしました案文がありますから、これを読み上げます。 中国紅十字会代表招請に関する件 昭和二十四年以来久しく途絶されていた中共地区残留同胞の集団引揚は中国紅十字会の多大なる尽力により昨年三月国民待望の裡に再開され、七回にわたつて二万六千百二十七名の同胞が無事故国に帰ることが出来たが、一応中共地区よりの集団引揚はこれをもつて打切られたのである。 然し、なお多数の同胞が残留しており、これが引揚の実現については、更に中国紅十字会の厚意にまつところのものがあり、留守家族の切なる期待は一にこれにかかつている現況にある。 かねて日本赤十字社は社賓として中国紅十字会の代表を招請し、その厚意に報いるとともに今後の引揚について一層の援助を要請すべく鋭意努力を傾けているが、これに対する留守家族の要望と海外同胞引揚問題の特性に鑑み、政府は、この際日本赤十字社の要望が速かに実現せられるよう善処されんことを望むものである。 ただいま朗読いたしました案文について御異議がなければ、この要請を委員会の決議として政府当局に要望いたすことといたします。 なお、政府当局に対する送付等の手続については委員長に御一任を願います。 この際本件について政府当局の意向をお伺いいたします。中川アジア局長。
○中川(融)政府委員 中国紅十字会の代表の方々を日本に招請したいという日本赤十字社からのお申出につきまして、政府におきましてかねて研究しております。その御趣旨とするところは政府におきましてもよくわかるのでありますが、なお、はたしてこれが引揚げ促進にいかほどの、あるいはどの程度の効果ありやというような点につきまして確固たる見通しも政府としては得ることが今までのところできませんということ、及び、なおこれが日本赤十字社のお考えになつておる目的以外のことに、日本に来られましてからこれが利用されるというようなことが全然ないということははたして保証できるかというような点、あるいはまた、この委員会の御質疑でも御指摘がありましたように、かえつて、いろいろな事情から、せつかくお呼びしながら十分な満足を与え得ないというようなことがありはしないかというような懸念等の事情がありましたために、慎重研究中でありまして、いまだ結論を得ておらないのが実情でございます。本日本委員会におきまして御決議になりました御要望につきましては、政府に御伝達相なりました上は、さらに十分この問題について検討をいたしたいと、かように考えております。
○山下委員長 この際外務省に対する御質疑があれば、これを許します。
○柳田委員 私は、ただいまの本委員会の決議には、日本社会党を代表し満腔の賛意を表するのです。そこで、一応政府にお尋ねしてみたいのですが、この中国からの帰国の問題は何に主眼を置くか。これは、私はあくまでもやはり留守家族の心情になつて、留守家族のほんとうの身内の気持になつてものを考えなければならぬと思う。外務省の面子だとか、そんなことにこだわるべきではない。あくまでも留守家族の方々が一日千秋の思いで待つておられるその気持を体してのみ解決される。私はかように考えるのであります。そこで、この中国からの帰国の問題について、過ぐる一年前からの跡を振り返つてみますときに、外務省自身としても反省する余地が多分にあるのじやなかろうか。そういう点から考えまして、たとえて言うならば、中国からの初めての帰還がある前に、外務省は何としたか。向うからは名簿を送つて来ないじやないか、おそらく名簿を送つて来ないところを見ると、いわゆる無国籍者と称して思想宣伝をするような者を帰還船に乗せて、そうして日本の内部撹乱をやるのじやなかろうかというようなことまでも言つて、そういうような場合には外務省は逆送還をする――。向うからそういう者を送つて来たら、またそういう事実があつたら、逆送還すると言つたこともいいが、そういう仮定の事実に立つて――吉田総理は仮定の事実には答えないと言つておるが、政府の方でみずから仮定の事実を求めて、そういう場合には逆送還をするという宣伝した。はたしてそういう事例があつたかどうか、お伺いいたします。
○中川(融)政府委員 ただいま御質問のありました、中共地区から引揚げました邦人について、あるいは日本に参りました上に先方に逆送還をするというようなことを政府が言つたことがあるかという御質問でございます。(「そんなことを聞いておるのではない」と呼ぶ者あり)さようなことは言つたことはないのであります。もしも中共から引揚げました日本人のうちで日本人でない者がおりました際は、これは正規の手続によりそれをさらに中共へ送り返さなければならない、かようなことは政府としては考えたことはあつたわけでありますが、日本人として帰る者に対しては、それをさらに先方に返すというようなことは考えたことはないのでございます。
○柳田委員 これは私の質問の要点を全然そらされたのでありますが、外務省としては一番痛いところで、お答えできぬと思いますから、詳しくは追究をいたしません。 なお、そのほかに、あるいは札幌でスピード・スケート選手権大会があつたときにも、最初外務省は決していい顔はされなかつた。とうとう最後に圧力に屈服した。ソ連も選手を寄越した。これは日ソ親善に非常に役立つたわけです。そして何も心配されるようなことは起つていない。しかも向うはいわゆる赤化宣伝を何もやつておらぬ。こういう点もあります。どうも、ソ連、中共となると、あまりにも外務省は神経過敏です。そこで、私、はなはだしく不可解なのは、これは一月十九日の毎日新聞に出ておるのでありますが、岡崎外相は島津日赤社長と会談されてこういうようなことを言つておられます。なるべく招きたくない、これが絶対条件というわけではない――。また「外務省としてはこの李徳全さんを日本に招く問題が帰還と交換条件といつたもので今後の帰還に支障を来すものだということがはつきりすればともかく」というふうなことも載つております。同日の中川アジア局長、あなたの談によつても、「招待すれば今後引続いて残つた人々の帰還が行われるのか、実際に証明されるものがあれば、今までの方針を再検討する」、これは先ほどあなたが言われたことと符節を合している。こんなことを向うがだれが約束しますか。現在問題になつているのは、帰還者の身の上に立つて考えた場合に、少しでもこの帰還の隘路になつているものがあれば進んでその隘路を打開されたらいい。結果は結果で後のことである。そんなことを向うは交換条件として出すものではない。面子を重んずる。だれがこんなことを約束するか。島津社長が紳士的に、自分たちが中共へや北京に行つて非常に歓待されたその感激の余り、これは代表団の議題に上つておりませんでしたが、その好意に報ゆるため日本にお招きしたいと言つておる。それでよいじやないですか。それだけですべてが解決する。あとの問題を考えて、「李徳全さんを招いたならば帰してくれますか」――そんなばかな交渉が世の中にありますか。それならば、逆に、向うがそれを保証するならば招きますと言うのか。そんな交渉などというものは、私はおそらくあり得ないと思う。そういうような確たる何らかの見通しがなければ呼ばないとおつしやるのですか。それも絶対にとは言わない、今後の成行き次第だ――。今後の成行きとはどういうところで判断して呼ぶなら呼ぶということをきめられるか。その目安はどこに置いておるのですか。それをはつきり承りたい。
○中川(融)政府委員 中共地区からの今後の邦人の引揚げを促進いたします上に、中国紅十字会の代表の人を招請するよりほかに道がないということであれば、これはやはりそのようにしなければならないと考えております。しかしながら、ただいま葛西副社長からのお話にもありました通り、こうすればおそらく向うの方もいろいろ乗つて来るのではないか、実はこの程度の見通しでこの招請をしようということになつて来ておるのでありまして、従つて、必ずこれでなければ帰れないのだということではないわけであります。そのような事情でありますから、政府といたしましては、それ以外のいろいろの事情、すなわちこれがそのほかの目的に利用されることがないであろうか等の事情もやはり考慮の中に入れて、その両者を比較しておるわけであります。ただいまのところまでは、それについてはいまだ結論が出ていないのでございますが、本日の御決議の御趣旨等も十分加味いたしまして、さらに検討いたしたいと思います。
○山下委員長 柳田委員に御相談いたしますが、本日御決議願いました決議誰を私は外務大臣に手交いたしまして、委員会の意思を伝えるつもりでございます。その後、外務省の様子を見まして、進まないようでございましたら、あらためて委員会を開いてその態度を決定いたしたいと思います。中川アジア局長も全般のことを御承知とは思いますが、何分にも局長でございますので、責任ある外務省の同等は困難かと思いますから、そう願えればそうさせていただきたいと思います。
○柳田委員 しかし、これは大事なことです。今後各種法案も出ますし、そうたびたび委員会も開けぬと思いますから、もう一度重ねてお尋ねいたします。これを招待するにあらずんば支障があるというのならばというその判定は、何を基準になさるのか。これは今後この決議が実現されるかどうかの大事なことですから、お尋ねしておきたい。そういうのであればわれわれも考えたい、そういうのであればというその判定材料は何をもつてなされますか。
○中川(融)政府委員 それは諸般の事情から判定するわけでありますが、それ以外に方法がないということであれば、まさしくはつきりするわけであります。
○柳田委員 諸般の事情からそれ以外に何ら方法がないならば――。あればといういろいろな事項は、これは当然外務当局としてはお考えにならなければならないと思う。その事情があればというのは、具体的にどういう点があるのですか。
○中川(融)政府委員 たとえば、現在中共からまだ帰らない数千名の方あるいは政府の調査によれば三万名という数字も出ておるのでありますが、これが単に向う側が全然理由なしに帰さないというのであれば、これはあるいは紅十字社会を招請するというこちらの好意を示すことによつて、それじや帰してやろうということになるかもしれません。しかし、留守家族等に参つておる現地からの通信等をいろいろ分析してみますと、中共側の措置というものは必ずしもそうなまやさしいものではないようであります。帰りたいという希望の人も帰さずに奥地に連れて行くとか、あるいはその逆に、まだ残つていたいというような人を無理やりに帰すとか、これはいろいろ先方の一つの方針があつてやつておるようであります。従つて、この問題については、日本側の好意を示すことのみによつて簡単に片づくものというふうに即断できるかどうか、これは疑問があろうかと思うのでありますが、もちろんこれはまだごく少数の資料からの推測にすぎませんから、もつとそのようなものを調査いたしまして、中共側の態度なり意向なりというものを分析いたしますれば、はたしてこの方法によつて帰れるかどうかというようなことがおのずからわかつて来るかと考えております。
○柳田委員 大体、十一月十一日に集団帰国打切りの通知がありましてから、すでにもう五箇月間たつておるのです。そうしてまだ結論が出ないというのです。おそらく、この調子なら、われわれがこの委員会でこういう決議をせずにほつておけば、外務省は一年経つても二年経つても三年経つても結論は出さない。いや、出せない。出したくない方針であるとしか考えられない。いかに善意に解釈しても、そうとしか解釈できない。日赤がこれほど責任をもつて呼ぶと言つておられるのであります。しかも、合いろいろ御質問がありましたが、それに対しては、こういう方針で呼びますと言つておられるのですが、これで呼ばないということになれば、外務省は日赤を信用しておらない。外務省としては日本赤十字社そのものを信用されぬということになりますが、外務省としては、日赤はたよりないからまかしておけぬというお考えなのですか、どうですか。この点ひとつはつきりしておいていただきたい。
○中川(融)政府委員 外務省としては日赤に対して非常に大きな信頼を寄せておるのであります。引揚げ問題につきましては、はなはだ遺憾ですが、先方との関係から、政府が直接その衝に当り得ない。それで、この問題につきましては日赤にお願いいたしまして、日赤が従来からその衝に当つておられ、日赤の従来していただいた業績については、非常な敬意と信頼を寄せておるのであります。しかしながら、もちろん政府と日赤とは別ものでありまして、政府としては国の政治全体についての責仕を負うわけであります。おのずから、ある問題については日赤と必ずしも意見の合わない点が出て来るのはやむを得ないところであろうと存じます。
○柳田委員 ただいまの局長の御答弁でありますが、この問題は政治問題ではない、あくまでも人道上の問題だと日赤も言つておられるのですから、それだけ日赤を信用されているなら、日赤の方で呼びたいと言われるならば、その通りさせたらそれでけつこうであろう。それ以上私は何も言うことはないのです。
○受田委員 今の柳田さんの御発言に関連するのですが、アジア局長から、この委員会の決議を十分検討の資料にするというお言葉があつたわけですけれども、由来、岡崎外務大臣は、すでに三団体の中共派遣の問題あるいは華僑の送還等について、今まで慎重過ぎて、しばしば国民の疑惑を招いたこともあるし、また旅券の問題でも、参議院の高良さんがいらつしやるのについて、初めずいぶん議論したが、最後には遂にこれを交付されるというような結果になつておる。また帆足君に対しても同様ですけれども、この問題は、岡崎さんの最高の幕僚たるアジア局長としては岡崎さんのそうしてワン・マン的な性格に対して、十分事務的献策の労をとつていただきたい。この委員会の空気なども十分尊重して検討するという言葉をきよう私はいただきたかつた。ところが、そういうことがなくて、きようの委員会の空気を検討の資料にするという程度のもので、尊重するという意味を含んでおられないという点についても、非常に冷淡に考えておられる傾向があるのですが、少くともこの問題は国民的要望なのです。そして国会の決議もここにされるほどの重大な問題であるから、御趣旨に沿うように努力するというような決意をもつて岡崎外務大臣に報告し協議をなさるべきであつて、そのような冷たい感覚でなくて、熱情を持つてこの促進に役立つように御努力を願いたと思います。これが私の強力なる要望である。 もう一つは、日赤から政府に要請された李徳全さん一行を迎えるための諸経費等のことですが、仮定の問題に対してはしばしば尊重されない政府ではあるが、しかしこれはもう国会の意思がきまつた以上は、それに対して経費の問題も日赤の要請通りにこれを捻出するだけの用意があるかどうか。この点についても決意のほどを伺つておきたいのであります。
○中川(融)政府委員 行政府といたしまして、国会の議決になりました事項につきましてこれを尊重すべきことは当然であろうと思います。私も外務大臣の補佐官といたしまして十分その職責を尽したいと考えております。 なお、紅十字を招請する場合に経費をどうするかという問題につきましては、正式にはあくまでも日赤の賓客としてお呼びになるというお話でありますので、その経費につきましては日赤においてしかるべく御調達になると、かように考えております。
○受田委員 日赤の要請があつた場合には、日赤のそうした努力に対して報いる意味においても、今の日赤自体の経費調達ということは日赤に対する国の何らかの形による援助というう意味とも了解してよろしいかどうか。ここを、ひとつお答えを願いたい。
○中川(融)政府委員 中国紅十字会の代表を招請する場合、政府がこれにあるいは金銭上の援助をするというようなことは、いろいろな事情から適当でないと考えます。その点は日赤においてしかるべく御調達になるものと考えております。
○庄司委員 ただいま議題になりまして、すでに満場の賛成を委員長においては得られました李徳全女史の招請の問題に関しては、やがてこの速記録は公開されるものでありますから、すでに満場一致をもつて、日赤をして一切の責任を帯ばしめて、あふるる感謝と好意の中に招請させることを決議した本日のこの席においては、あまり枝葉末節にわたる質疑応答はどうかと私は思うのであります。要は、われわれが日赤を信頼して――日赤は政府の機関ではない。われわれ国民の少くとも大多数が社員となつてこの健全なる発達を念願しており、また社会福祉の面においても非常な、働きをしておる日赤である。すでに同胞引揚げのためには中共に日赤が行かれ、また日赤以外にも国会議員の中より日中貿易促進のために行かれておる。今や日赤が全責任を負うて御招請を申し上げている李徳全女史の御来日の機会を幸いにして得たならば、一切のプラン等も日赤は当然立てて、送り迎えまで万全を期すつれるものであることは言うまでもございません。葛西副社長の御答弁をわれわれは満幅の信頼をもつて期待していいと考えるのであります。李徳全女史を招聘して、ただちに日中の友好関係の改善のためとか、あまり露骨な具体的なことを期待することは、かえつて事不純に陥るおそれがあるのではないか。また不純のように誤解されるおそれがあるのではないか。もとより、日赤は、私が申し上げるまでもなく、クリミヤ戦争に端を発して、これは崇高なる人類愛と申しましようか、同胞友愛の精神に発しまして、ナイチンゲール嬢のその働きを、またその思想を世界万国に普遍化したものがこの団体である。それが責任を帯びて一切送り迎えの完璧を期すると言う以上は、日赤を信頼されていいのではないか。これはわれわれが信頼すると同時に政府も信頼されていいのではないか。アジア局長とはあまり御交際がありませんが、あなたも外交官として御承知でございましよう。第一次欧州大戦の直後において、いわゆるロシヤがソ連となつた直後において、久しい間とざされていたわが国との国交は再開されるに至りました。そのきつかけをつくつたのはだれかと言えば、今はなくなつた後藤新平伯であります。ヨツフエを呼んで、その当時国内の右翼団その他より反対あるいは圧迫的言辞があつたにもかかわらず、これは政府にのみまかせるわけに行かぬ、いわゆる民間外交の名において日ソの友好条約再開の芽ばえをつくらなければならないというので、後藤氏は熱海温泉に約一箇月ほどヨツフエ氏を招聘され、それに当時外交関係の多くの記者諸君がしばしばヨツフエ氏と面会をされた。それが日ソ外交復興の基礎となつたことは、日本の外交史上において非常に意義のあつたことでありまして、私は別に外交記者でもありませんし、また何ら外交に関係はありませんけれども、われわれ後輩としてこれはよい手本であると考えるのであります。私は李徳全女史招聘による日中外交その他の問題に実は触れたくない。そういう副産物を考えることがよくない。きわめて純真な人類愛に対する感謝の意味において御招聘申し上げたいと思います。そうすれば、留守家族の多くの父や母や妻や、あるいは子らが李徳全女史と面会される機会もありましよう。そういう場合におきまして、李徳全女史としては、自発的に紅十字会の全責任者として帰還促進を援助せねばならぬというお心構えになられることは当然であります。政府は、あまり右顧左眄したり、あるいは李徳全女史を日赤が社賓として招待したいということにこだわらないで、率直に、虚心担懐に旅券交付等の申請がありましたらお許しなされたならばどうか。時はすでに来ておるのであります。これ以上これが延びましたならば、せつかくの招待も、日本国内においては右往左往のいろいろな議論があつて、そうして結局において、この招請になつたのだというような不愉快な感じを持たれるかもしれない。時すでに満ちておるのでありますから、すみやかに政府におかれても、日赤が一切の責任を負うと言明されておるのを信頼なされていいと私は思うのであります。アジア局長一個のお考えでは、ただいままでの御答弁の範囲を出るわけには行きませんでしようけれども、いやしくもこの国会を構成する特別委員会の満場一致の御決議がありました以上は、今までの情勢とは情勢が違うのであります。どうしても外務省がこれを後見しないというような場合には、本委員会はただちに本会議の決議案として上程する段取りになると思うのであります。従いまして、どうか外務省におかれても釈然と了解をされ、あくまでも崇高なる人類愛の精神を基調とされておるところの日赤及び李徳全女史の中国の紅十字会を信頼されまして、これはひとつ簡単明瞭にOKを与えてもらいたい。こういうようなことを申し上げると同時に、こいねがわくは、葛西副社長におかれましても、全責任を持つて李徳全女史一行の歓送迎に万遺憾なきを期していただきたいと思うのであります。これに政治的なものが加わるならば、かえつてこれは見にくいものになるのであります。あくまでも純真なるところの万国赤十字連盟の精神に基調を置いて御善処あらんことを切に要望いたしまして、たいへん遅ればせながら、自由党を代表して賛成演説を申し上げた次第であります。
○山下委員長 他に御質疑がなければ、本件についてはこの程度にいたします。 参考人には御多忙中のところ御出席を煩わし、委員長長より厚く御礼申し上げます。 この際お知らせいたします。海外同胞引揚げ問題も、はや最終段階に入り、その完全解決は強力なる国民運動と相まつて達成さるべき状況にありまして、特に国民運動の中核であります。海外抑留同胞救出国民運動総本部は、現下の情勢に即応して現在改革しようとしているのでありますが、その中心であります常任委員を本委員会の委員各位に委嘱して強化すべく現在計画しておりまして、本委員会に申入れがありましたので、各位におかれましては引揚げ問題の性格にかんがみまして御協力くだされたいと思うものであります。 本日はこれにて散会いたします。なお、次会は公報をもつてお知らせいたします。 午後三時十二分散会