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19回国会衆議院1954/02/05

海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第2号

発言数
48
登壇者
12
会派数
4
開催日
1954/02/05

会議録

山下春江改進党

○山下委員長 これより会議を開きます。  本日はソ連及び中共地区残留同胞引揚に関する件、並びに留守家族援護に関する件について議事を進めます。  御承知のように、昨年十二月初旬ソ連地区よりの引揚げが再び開始され、その後第二次の引揚げが行われる予定のところ、いまだに実現を見ず越年したのであります。さらに、中共地区におきましては、集団引揚げは一応終つたのでありますが、いまだ多数の同胞が残されており、これらの方々の個別的引揚げに中国紅十字会も好意ある言明をなしていますが、これもこんとんたる状態にあります。この際、政府といたしましては、今日までの本問題に関する詳細なる経緯並びにこれが今後の対策についていかなる処置をとられるか、御説明を伺いたいと思います。なお、ただいま御出席の本問題に関する政府当局者は、小瀧外務政務次官であります。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 ソ連からの引揚につきましては、御承知のように日赤があつせんをいたしまして八百名の帰国を見たのでありますが、その後の四百名の方がいまだに実現していないので、いろいろ心配せられておる向きもあるようでございます。しかし、その後日赤とソ連の赤十字社との電報の往復によりますと、これは集結するのに時間がかかつておるためであつて、そのうち通知することになつておるから、その通知を受取つたならば日本としてとるべき引揚げの措置をとるようにという趣旨の返事が参つておるようであります。これがはたしていつごろになるものか、心配せられておりますが、先方からもそのように言つて来ておりますので、必ずこれは実現できるだろうというふうに期待しておるのでありまして、政府側では、引揚援護庁の方でも、いつでも船が出せるような措置をとつているというのが現状であります。しかしなが、ソ連の方では、あとへもう千人ばかりしか残つていないようなふうに申しまして、あとに戦犯として千名あまりが残るというように申したのに対して、当時モスクワに行つておりました日赤の代表の方からいろいろ先方へ質問いたしましたところ、ソ連にいるのは必ずしも千名余りに限るのでなくして、一般シヴイリアンもまだ残つていることを肯定するかのごとき応答をいたしたようでありますので、わが方の調査によりますと一万人ぐらいまだ残つているはずでありますから、これらの点については、今後とも日赤の方でこちらの調査を整えてソ連側へ安否調査を要請するという措置をとるはずであります。今後いかなる措置をとるにいたしましても、御承知のように、日本政府を相手にしないというような態度をとつておりますので、政府が直接とりはからいをすることは困難かと思いますけれども、御承知のように、政府直接の措置としては、国連の機関を通じてさらに国際的な輿論を呼び起し、かつまた国連の機関を通じて向うへ日本側の趣旨が徹底するような措置をとるということは従来とかわりませんが、実際の問題といたしましては、日赤あたりの力を借りまして、さらに今後も引揚げが継続できるように政府としてはたから援助をいたしたいと考えております。  また、中共につきましては、一応集団的な引揚げは終りましたけれども、しかし、あの七次までの引揚げをやりましたときも、最初三万人と言つたのが二万六千人しか帰つて来なかつた。あの数から言つても四千人も残つておることになりますし、日本側の取調べたところを基礎として考えますると、まだ三万人くらいも残つておるという計算になりますので、今後も、これらの帰国を希望する人が帰つて来られるように、先方では個別的な引揚げは今後も援助しようというふうに言つておりますから、個別的の引揚げ、あるいは必要があればこれまで行いました集団的な引揚げということも考えなければならないというふうに存じまして、随時日赤その他の団体から政府側に申出がありまする際には十分これらの団体の活動を援助いたしたいと考えております。ただ、これにつきましては、あるいは皆様の方から後刻御質問が出るかとも思いますが、日赤としては今後の引揚げを促進するために紅十字の代表者を呼びたい、李徳全女史一行を呼びたいというとこを申し出られておりておりまして、政府の方でもこの問題を現に検討いたしておる次第であります。ただ、これにつきましては、すでに他の委員会においても再三問題が提起せられましたし、ことに本会議でもこの問題が出て参りまして、岡崎外務大臣から、絶対にこれを認めないという意味ではないけれども、はたしてこれがほんとうに引揚が促進のための最善の措置であるかどうか、また呼ぶのがお礼の意味であろうか、それともほんとうに引揚促進の意味として効果のあるものであるかというような点について、自分としてまだ十分了解ができないというふうに申しておるような次第でありまして、これにつきましては屡次関係の委員会などで御希望が述べられまするので、私といたしましては、その都度大臣によく委員会の雰囲気なり皆さんの御意見を伝えまして、大臣の考慮を促しておるような次第でございます。  さらにまた、戦犯の問題につきましては、ここにお見えになつております土田委員長も、山下委員長が有田八郎さんと旅行されたあとにおいて、さらにまた各国をまわられまして、日本の実情を述べられて、できるだけ早く戦犯のために、戦犯の名をもつて巣鴨に抑留されておる人がすみやかに釈放されるようということを要請してまわられたのでありまして、本日皆様からの御希望があれば、その詳細については土田委員長から御報告があることと存じますが、しかし、政府といたしましては、ただそうした国連の特別委員会であるとかあるいは土田委員長の努力にたよつているばかりではもとよりございませんので、何か事あるごとに、またほとんど定期的に、各国に駐在しておりまする大公使に対して訓令を発して、この戦犯問題が一日も早く解決できるように努力することを申し進めておる次第であります。ただ、残念なことには、フイリツピンとフランスを除きましては全面的な釈放が行われていない、解決がされていないということは私から申し上げるまでもございません。フランスの方はまだ二人ばかり巣鴨の方に残つておりまするが、これは近く解決するはずであります。その他の国につきましては、これも後刻土田委員長から報告があると思いまするが、政治的に取上げて、個々のケースを審査することなしに全面的な釈放をするというようなところへまだ向うの気持が進んでおりませんために、個々のケースを取扱う委員会をどの国でも設けており、濠州はそうでもないようでございまするが、他の関係国を見ますると、みな委員会を設けて、ここで審議するというふうになつておりまするために、なかなかはかばかしく行かない。そこで、私どもは、たとえばフイリツピンの方の戦犯者が全部釈放になつたというような機会には、ただちにこれをとらえまして、関係国にこういう実情を述べて、これが大きな社会問題である点を指摘いたしまして、もつと高いレベルで政治的な解決をしてくれということを申し進めておるのであります。なおまた、重要な人物がこれらの関係国から日本に来る、あるいは日本から非常にハイ・レベルの使節が向うおもむくというようなときには、そういう機会にもこうした申入れをしておるのであります。しかし、実際問題としては、ことにアメリカのごときは、最近かえつて釈放するのが——随時日本に通知して来る仮出所の人数が減つて来たというような点で、非常に我々は憂慮いたしておりましたが、ちようど昨日在米大使館から受取りました電報によりますと、今後アメリカの方で十一人新たに仮出所並びに減刑を許可いたしたようであります。ここに名前もございまするが、これを見ますると、アメリカの方も決してこれを等閑に付してるんじやない、これからわれわれの努力によつてはまだ仮出所並びに減刑というものもだんだん進められて行くんじやないかというように考えます。  それからまた、オランダにつきましては、後刻係官から詳細申し述べるかと思いまするが、ある誤解がございましたために、最近ほとんど減刑とか仮出所というようなものを認められておりませんが、この誤解を解く措置がとられましたならば、全部とまでは行かないまでも、相当数こうした恩典に浴せるのではないかというように期待いたしております。ただ、イギリスとか濠州につきましては、御承知のように、政治的な関係もございまして、この問題のとりはからいがはなはだ遅々として進まないというような状態でございます。しかし、先ほど思しましたように、個々の問題としてこちらの方から勧告を出しますると同時に、そうした高いレベルでの話合いも随時進めて、今後さらにこうした措置を続けて行つて、できるだけ皆様の御期待に沿うようにいたしたいというので、せつかく私どもの方にも新しい係官をさらに増員いたしましてこうした方面の取扱いをさせておりますと同時に、また皆様の輿論の力をも借りまして、この問題ができるだけすみやかに解決するように今後とも努力を続ける考えでございます。  なお詳細の点については、係の者も参りましたから、さらに御質問でもあれば、つけ加えて御説明申し上げたいと存じます。

山下春江改進党

○山下委員長 これより質疑を許します、吉川委員。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 私は簡単に要領だけをお尋ねいたしますが、今、次官の御説明にございました李徳全女史を日赤が呼ぶことがいいのではないかということを言われておる根拠、それから、オランダがある誤解を持つておること——これはあとで私お尋ねすることにいたします。それから、濠州との政治的な関係で遅々として進んでいないこと、その点をもう少し詳しく……。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 李徳全女史を呼んだ方が中共からの引揚げ解決に有利で、それが今残された最もいい措置であるということは、日赤及び他の二団体から再三申し出ておるところであります。これは、島津社長が北京におられました際は、日本側も三べん向うに出かけて行つたのだから、今度は李徳全女史一行をお招きしたいと思うので、それが実現できるように最喜の努力をしようということで、先方に申されたそうであります。しかし、招請する団体は日赤でありましても、結局入国の問題がある。その入国が許可せられるようにというので、外務省に再三の申出があつたわけであります。ただ、それに対する入国の許可というものは今出ておりません。それについてのいろいろの御議論もあり、大体国会の方ではできるだけ早くこれを認めたらいいじやないかという御趣旨でありますので、その都度外務大臣にも伝えておる次第であるということを先ほど申し上げた次第であります。  それから、その次のオランダの問題につきましては、これは報道陣の方でも掲載してもらわないという約束で、古内参事官が来ておりますから、詳細は古内参事官からお答え申し上げます。  それから、濠州の方は、ほかの国と違つて、特別の委員会も設けていないようであります。御承知のようにマヌス島からこちらに帰つて来た、これだけはわれわれにとつてプラスでござましたけれども、帰つた人はまだ釈放にならない、そこで、東京におります大使館にも申入れをいたしますし、随時西大使の方からもこの問題について先方に申方れをいたしておりますけれども、まだ一人も釈放されないという状態でございます。これは、御承知のように、アラフラ海の問題もあるし、もともと日本に対してはあまりいい気持を持つておらなかつた関係もあり、また来る五月に選挙もあるというようなこともありまして、今の政府としてそういう国内政治の関係もあるようでありまして、反響が非常に思わしくないというのが現状でございます。

中井徳次郎日本社会党(右)

○中井(徳)委員 今の李徳全女史の問題に関連して……。中共から紅十字の李徳全女史を日本に招待するという問題、これにつきましては、世間では、はつきりと言えば九九%まで私どもは賛成をしておると思います。政府におかれましては、これについてただいま小瀧さんからもお話がありましたが、入国の問題とかその他で調査研究しておるということなんでありますが、どういう情勢を調査研究しておられるのですか。どうも私どもにはその辺のことがよくわかりませんので、さらにつつ込すでお伺いをしたい、かように思うわけであります。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 慎重に考慮しておるというふうに申し上げたつもりであります。中共、ソ連その他の共産圏と日本との間における人的な交流と申しますか、人の往復については、政府としては極度にこれを制限するという措置をとつております。これについては根本的にいろいろ御議論もあるでございましようが、民主主義国家との協力態勢をとつている日本として、日本の平和条約にも参加してくれないソ連、またこれまで朝鮮事変に関連して国際諸国と戦つておつた中共、しかも国連に対して日本は協力しておつたので、そういうような関係、また日本に対する必ずしも好ましからないようないろいろな報道が行われておるというような関係からいたしまして、原則的に中共地区あるいはソ連地区との交通というものは政府の方でこれを制限するという措置をとつて来た次第であります。しかし、今度の問題は、これは人道上の重大問題であるので、そうしたこれまでの原則的な立場を必ずしも固持するものではないということは、外務大臣も申しておる通りでございます。ただ、しかし、今度お招きするということが、はたして今後の引揚げにどれだけプラスになるかどうか、またこれがかえつて悪い影響をもたらすようなことはないかどうかという点について、まだ外務大臣の方は十分納得していないようであります。これについてはいろいろ議論もありましようが、そういういろいろな点、また来てからどういうような待遇をしたら向うにそうした悪い影響を与えないか、また、中共の方ではすでに個人的な引揚げについては協力していると言つているにもかかわらず、このお招きをするということを条件のようにして三団体から申し出られるのは、どうもそこに何か裏にあるじやないかというような、いろいろな点を懸念されましていまだに決定に至つていなというのが現状でございます。

中井徳次郎日本社会党(右)

○中井(徳)委員 今のお話を承ると二つにわかれると思います。一般的に中共とソ連の人たちを入国する場合に制限しておる、第二に、はたして李徳全女史を呼んで効果があるかどうかということを考えておる、こういう二つにわかれておると私に拝聴したのであります。  第一の問題でありますが、一般論として政府がそういうお考えをとつておられる、——これは私どもと意見が違うのですけれども、今の政府がとつておられるにしましても、この間のスケートの選手の入国の問題なんかございまして、スポーツに国境がないというので、あれは非常にけつこうなことであつたと思います。そういうものにさえ許しておられるわけでありますから、ことに万国赤十字の精神から言いまして、私どもはどうも、第一の、政府がそういう方針をおとりになつておつても、これは例外的な扱いとしてやつてもらつて十分いい問題である、かように考えておる次第であります。この点について、これは率直にお尋ねするのでありますが、日本政府独自の見解でそれを決定されておるのか、——そうに違いないと私は思いますが、いろいろな自由国家群その他の関係の意見を聞いたりしておられるのか、それを伺いたい。それから、第二の問題で、来ても効果があるかどうかということには、私は今引揚げの問題はそういうことをそこまで考えるような問題ではないと思うのであります。来ることによつて少しでも前進をすればいいじやないかというふうな考え方、——これは、終戦後九箇年、いまだに支那大陸と日本との間に自由な交通ができなくて非常に困つておられる留守家族のことを思いますと、どうも来ても効果があるかどうかわからぬ、もしなかつたら困るというところまで慎重に考える余地のある問題ではない、かように思うのでありますが、そういう点について御意見を伺いたいと思います。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 一般原則についていろいろ異論もあるけれども、しかしそれはそれとして、この場合などは例外的に考えていいんじやないかという御意見であります。例外的に考える必要のある場合には、これは必ずしも排撃するものではないということは大臣もたびたび申しておるのでありまして、現に、日赤の方で出国につきましては、ソ連の方へどれほどか、中共へどうしたとかいうようないろいろな関係がありますので、原則論にこだわつて絶対にこれを認めないという考えではございません。御指摘のように、スケートの選手は日本に参りました。ただ、ここで御記憶願いたいのは、スケートの選手は単なる運動選手でありましたが、李徳全女史は、もう皆様先刻御存じのように中共政府の厚生大臣をしていられるような方でありますし、またその他の方にも、中国共産党のつくつている政府の中で相当重要な地位を占めている人があるわけであります。でありまするから、政治的な意味がスケート選手とは非常に異なつておるということであります。ただ、しかし、その次に御指摘のありました、一体日本独自の考えでやつておるかどうかという点から申しますと、もちろんこれはどこかから圧迫を受けてやつておるというわけではなく、こちらで独自に考えておればこそ外務大臣が数次にわたつて本会議及び委員会の席上でああいうことを申しておるところからも御推察願えることと思います。お説のように、たとい効果は少くても何か助けになるいうならこれを認めたらいいじやないかという点は、私もまつたく同感に存じます。ただ、ここで一つ留意しなければならないのは、少しでも効果があればいいけれども、逆効果があるような場合、せつかく最初考えた人の趣旨はよろしくても、かえつてあれほど待ちこがれておられる留守家族の方々に反対の結果をもたらすことになつてはお気の毒であるので、そうした点も考えなければならないというのが外務省の考え方でございます。たとえば、李徳全女子が見えまして、どこへでもどんどん出て行かれて、これを非常に希望しておる左翼系の団体とどんどんいろいろな行事に加わつて行けるということになれば、あるいはそれはいい結果があるかもしれないとも考えられますけれども、今の日本の立場からいたしますると、そうしたことまで許し得るかどうかという点にいろいろと考えなければならぬところがございますために、こうした面も検討いたしておるというのが現状であります。

中井徳次郎日本社会党(右)

○中井(徳)委員 半分ばかりわかつたのでありますが、率直に申しまして、どうも公式論的過ぎるように私ども考えるわけであります。日本の情勢というものは、これはもう釈迦に説法でありますが、別に李徳全女史が来たことによつてどうこうということでもなかろうと思うのでありまして、日本のことは、密入国者その他の数を調べてみましても、また地理的な位置を考えてみましても、どうもそう公式的な神経だけをとがらしておるというふうなことではほんとうの外交であるかどうかというふうな気持がするのであります。へんな表現でありますが、何かそういうところでがんばつても、非常に甘いような考え方と私どもは感じておるのであります。もつに複雑にいろいろ考えていただきたい。個人の李徳全女史が来たいというなら来てもらおうじやないかというくらいの考え方をしてもらつたらどうかと私は実は考えております。内地へ参りまして方々へ出歩いたり演説をしたりするというふうなことを心配されておるようなお話でありましたが、まあそれだけではないでありましようけれども、そういうことでどうこうというふうな日本の国情であろうかということまで私ども考えたいと思うのでります。いずれにしましても、終戦後九年たちましたので、賠償の問題はさておいて、現在の日本として、この問題が、ことに庶民大衆の一番大きなしこりとして、終戦後の跡始末のしこりとして残つていると思うのであります。はつきり申しますと、政府はこの問題についてずいぶん熱心にお考えになつているに違いありませんが、大衆は決してそうは思つておらぬ。赤十字でやつてくれるというふうな、俗な言葉で言うと、政府はどうもぐあいが悪いというようでは、はなはださびしい感じを実は持つわけであります。率直に申し上げて、あの李徳全女史はぜひこちらへ呼んでもらいたいという意見であることを申し添えて、私の質問を終ります。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 私の最初の質問に対して、次官の答弁があまり簡単過ぎてはつきりしませんでしたが、だんだん明らかになつて参つたのです。ただいま日本政府を相手としない国と引揚げの問題を解決するためには、今まで引揚げ問題に関係をされた日赤等の団体にやつていただくよりしようがない。その団体が李徳全女史を呼ぶことがプラスになるということを主張される。その主張がもつともだとうなずけるならば、政府はそれに対してできるだける便宜をはかるのが当然でございます。ことに、次官は、スケートの選手よりは国家的、社会的に非常に有力な立場にある人だからとおつしやつたのでございますが、有力であればあるほど私は意味があると思うのです。こういう問題で、中共へ行かれた諸君が、行つて来た感じだから、迎えた方がプラスになるのだと信念をもつて主張されているならば、すみやかに実現方についてもつと積極的な態度を政府はとるべきではないかと思うのでございます。慎重に検討しております、なんということでなく、お互いにもつと理解を深めれば、有力な人があればあるほど、今対立しておるそれらの国との関係も緩和されて、全面講和への前進になると思う。日本の国で共産党を認めておきながら、共産主義の国の人が来ることを非常に警戒しているなんということをは、私は言語道断だと思う。私は共産党の立場をとるものでございませんが、こういう人道上の問題をよく認識されて、すみやかに解決されるように、積極的な政府の態度を要望します。それについてどういうようにお考えになりますか。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 日赤の活動というものは、この引揚げ問題は非常に重要問題でありますから、これに対して政府としてできるだけ援助を与えなければならぬということは私もまつたく御同感であります。ただしかし、今度の李徳全女史一行を招くということについて、なるほどもつともというところまで判断をつけていないということは、皆様からお叱りを受けるゆえんでありまして、これは非常に残念であります。本日もいろいろ皆様からお話もございましたので、この皆様の意見は外務省へ持ち帰りまして、とにかくこの問題がはつきりするように努力いたしたいと思います。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 同僚の委員からぜひひとつ李徳全女史をお招きするようにという熱烈な希望の開陳がありまして、私は党派を異にしますがまつたく同感であります。この間ある新聞の寄稿欄だつたと思いますが、東海の忘恩国というような題で、この問題についてある人が感想を書いておりました。政府が当然なすべき仕事をやれないで日赤にまかせた。そしてこれが、万国赤十字の協力によつて、まだ平和条約も結ばれていない中国から数万の人が無事に帰つて来られましたが、これは国際礼譲としてどうしてもお呼びすべきだと思うのです。その効果があるとかないとかということをいろいろ打算的に考えるというふうなけちな考えは私はなくしてもらいたいと思うのです。そして、むしろ外務省が、自分ができなかつた仕事をやつてもらつた日赤に対しても、これはむしろ感謝すべきであつて、日赤の申出には率直にひとつ応じていただきたいと思います。なお、外務省が招請することをしぶつていることについて、何か外国の意向に左右されているんじやないかというような他の委員の御質問がありましたが、実は私もその点を心配しておるのです。具体的に申し上げますと、あるいは台湾政府あたりの意向をいろいろお考えになつているんじやないかと思います。それは、外務省政務次官のお話の中に、李徳全女史が単に紅十字会の会長であるだけでなく、中国の政府の衛生大臣ですか、厚生大臣ですか、そういう要職にあるという、政治的に非常に重要な人物であるということをあげておつしやつたように思われました。あるいた政府としては、中華人民共和国は承認してない、台湾の中華民国の政府を承認しておるような立場から、そういう重要な政治的な立場にある李徳全女史を呼べば台湾政府との関係がおもしろくない、こういうようにお考えになつておるんじやないかと思いますが、これは、私どもも李徳全女史をお招きするのは中国紅十字会の会長という資格においてもつぱらお呼びするのであります。お呼びしましていろいろな折衝があつたり話があつても、これはそういう資格に限つての話合いになると思うので、そういう政治的な立場ということを私は少しも懐疑なさる必要はないと思うのです。そういう点であまり臆病であるとは、あまり神経を使い過ぎておられるように思うのでありますが、そういうことは一切お考えにならないように、もつぱら紅十字の代表の資格において李徳全女史を招請することを促進していただきたい。これについて外務政務次官の御意見を伺いたい。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 ここで私の意見を述べましても効果のないことでありますから、今田中さんのおつしやいましたような点を十分体しまして、できるだけ早くこれを解決するように努力したいということだけを申し上げまてて、私の答弁といたします。

山下春江改進党

○山下委員長 この問題に対する御質疑がなければ、吉川委員の御質問がまだ済んでおりませんので、次の問題に移りますが、よろしゆうございますか。——では吉川委員。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 私は、この際留守家族援護の問題中、戦犯者留守家族に関して重大な問題がありますので、政府当局にお尋ねをしたいと思います。  それは、二月三日の朝日新聞の夕刊であつたかと思いますが、新聞で御承知のように、先般巣鴨刑務所より刑期が満了して出所せられたオランダ関係戦犯者の一人が、書類上の誤りで、その釈放が取消され、再び服役しなければならないことになつたのであります。聞くところによりますと、オランダ政府当局は本人を再び服役させない限り他の二百余の服役者に対して仮出所等を考慮しないという厳重なる抗議を申し込んでいるのでありまして、この問題は、本人並びに留守家族の落胆は言うまでもございません、のみならず、戦犯者並びにその留守家族にとつてまことに重大な関係であります。私はこの問題に対して現在までにとられました政府の処置並びに御意見を詳しくひとつ親切にお答えをお願いするのであります。

古内廣雄外務省参事官(大臣官房戦犯室長)

○古内説明員 お答えいたします。最初に、この問題はオランダ政府とまだ交渉中に属しますので、新聞には書かないでいただきたいと思います。  この問題のおもなる部分は法務省関係のことですから、私からお答えするのはどうかと思いますけれども、まず、御指名がございましたので、外務省に関するところに重点を置きまして御説明いたします。  林鉄夫さんという方は、戦争中憲兵として南方のセラム島に駐屯しておられたときの事件のために戦争後オランダ官憲につかまえられまして、昭和二十二年の三月に蘭印のアンボンのオランダ軍事法廷で終身刑の判決を受けまして、その後現地で服役されておつたのであります。昭和二十五年一月二十三日に巣鴨に帰されまして、その後巣鴨で服役されておつたのであります。その間の管轄はもちろん占領軍にあつたわけあでりまして、日本政府官憲はこれに関係はなかつたわけでありますが、林さんに関しての日本側の巣鴨拘置所の係官、法務省の責任当局が、巣鴨におられるいわゆる戦犯者の方々をお引受けしたときに、占領軍から引継いだ書類があるのであります。その書類によりますと、林さんの刑が十年となつておるわけであります。日本官憲が引継いだ当時は、オランダの軍法会議が下した判決の書類そのもの、あるいはその写しはなかつた。その当時占領軍から引継いだ書類だけが唯一の権威ある書類でした。それによりますと、林さんは十年となつていた。それで、日本側の官憲は、その書類によつて林さんの服役を進めて行かれました。その間オランダ側から減刑措置が三回ございまして、十年の刑が一年短縮され、九年になつていたわけです。そこで、法律的な善行特典ということと未決勾留の通算ということを計算いたしますと、釈放になる九年がちようど二十八年の六月に来るわけであつた。日本側としては、善行特典及び未決勾留の通算によつて九年になつた、その九年が昨年の六月に来たので、満期釈放にしたわけであります。そして、戦犯の方々ののいろいろな身分の変化はその都度関係国に通報することになつておりますので、その満期釈放を通報した。ところが、非常に不幸なことであつたのですが、林さんの名前をオランダ官憲が見まして、そこで問題が起つて来たわけです。先ほど申しましたように、日本側が林さんについて書類を受継いだときには、オランダの方の判決書はなかつたわけでありますが、その後オランダはインドネシアの政府からその判決の引渡しを受けまして、これも時期的には昨年の五月ころかと推定されますが、オランダの政府がその判決を手にしたわけです。それにこちらから行つた通報を照し合せてみまして、オランダ政府が、ちよつとこれはおかしいぞ、日本側で満期釈放とおつしやるけれども、実は林さんは終身刑じやないか。そこで、われわれの方でもびつくりいたしまして、法務省ともいろいろ調べてみましたし、どうしても受継いだ書類は十年となつておるわけでありますから、その旨在京のオランダ大使館並びにヘーグにおけるオランダ政府に対して引継ぎの事情を説明いたしました。どうも間違いない、われわれ日本側としては引継いだ書類によるほかないのだし、それによつてこうこうしかじかという説明をいたしましたら、向うは判決の方を見せまして、こういうふうになつているということで、林さんに関する不幸な問題が去年の夏ごろからずつと起つて来たわけであります。  それで、私ども日本側の態度といたしましては、見せられたその判決に無期とあることは確かなんでありまして、従つて、何はともあれ、どの書類によるかと言えば、やはり判決書によることが正しいのかもしれませんが、しかし、他面日本官憲が正しく受継いだ書類、あるいはそれ以外による書類がなかつたということは正しいわけでありますから、日本側官憲のとつた態度にも落度はないということを十分説明いたしました。判決は無期とあることはあるけれども、しかし日本側のとつたところは落度はないし、責任もない。また御本人も六月以来自由の身になつておられて、いまさら御本人を巣鴨に帰すということはとうていできることではないということでもつて説明したわけであります。ところが、オランダ側としては、それじやどうしてそういう手違いがあつたのかということで、アメリカにもいろいろ問い合しておつたようでありますが、要領を得ない。突き詰めて言えば、オランダ側としても、十年の刑として、それに三回にわたつて減刑をしているようなこともありまして、オランダ側も初めは十年で間違いないと思つていたに違いない。責任ないし落度ということになればオランダにもないとは言えない。それから、おそらくタイブの間違いであつたと思いますが、終身刑という判決から十年というふうに間違えたアメリカの方の行き違いもございましよう。そこで、日本側も、そういうふうにやつたことは正式の書類でやつたんだからということで、この際責任とかそういう問題はお互いに別にして、ひとつ林さんだけはそのままおられるようにしてくれということを再三頼みました。同時に、なおそのほかに二百何名のオランダ側のいわゆる戦犯者があるわけでありますから、林さんの問題とは別に、その問題もこれからいろいろデイスカツシヨンするけれども、ほかの者の仮釈放、減刑釈放の手続も進めてくださいということを、へーグの日本大使館を通じ、あるいは外務省からオランダ大使館を通じてお願いもし、また去年の秋欧州を御旅行なさつた法務省の土田委員長も、直接オランダに行つてそういう交渉をなさつたのであります。  結局、半年ほどすつたもんだいたしました結論から見ますと、オランダは、判決がきちんと出て来た以上、その判決通り林さんに対する刑の執行をしてもらいたい、それに対して日本政府が誠意を示さなければ、オランダの国内事情といたしまして、ほかの戦犯の仮釈放の手続を進めることは困難だということをほのめかして参つたのであります。普通のことと違いまして、こういう問題でどこまでつつぱつて行つたらいいかということは非常にデリケートな問題でございます。というのは、どつちが正しい正しくないかという議論は別にして、とにかく現に二百何名のオランダ関係の戦犯者がつかまつておるということはわれわれとしては非常にお気の毒なことであります。そこで、半年以上いろいろやつた結果、われわれといたしましては、やはりこの際オランダ側が誠意を示せというその線に乗りまして、林さんとも十分話合いをして、林さんに一度帰つてもらつて、日本側で筋を立てまして、しかる後向うが今まで滞らせておりました仮釈放の促進をこちらから頼む、さらに林さん自身についても、判決が出て来て、いろいろ交渉の結果、まことに気の毒だけれども、巣鴨にもどつてもらうが、これはまことにお気の毒な次第だから、林さん自身になるべく早くあらためて減刑、仮釈放を出してもらうという交渉をした方がいいのじやないかということに結論を出しまして、その旨つい最近へーグに訓令を出しました。それから東京におけるオランダの大使館に対しまして交渉をいたしました。現在のところ、へーグで得ました回答においては、オランダは確かに林さんを巣鴨に連れもどすということに対する日本側の誠意を認めまして、ほかの戦犯釈放の手続を至急進めるということを言つておるのであります。但し、その数が何名になるのか、また明日になるか、明後日になるか、あるいは十日、二十日かかるのかわかりませんが、とにかく至急進めるについては林さんが現に巣鴨に入つた日にすぐにオランダ側に通報してもらいたい、そのときからほかの方の正規の手続を進めるからという回答をごく最近得たのであります。率直に申しまして、林さんは納得されまして、来ることになりましたが、おうちの都合もありますので、まだ巣鴨にはもどつておらないのでありますが、近くお入りになり次第、その旨をオランダ側に正式に通報いたしまして、他の戦犯の釈放手続を進めてもらうようにいたしたいと思います。  なお、先ほど申しましたように、その方をやると同時に、林さん自身について、今言つたようなまことに不幸な偶然によるお気の毒なことでありますから、十分それをくんでもらつて、林さん自身もなるべく早く出られるように交渉いたしたいと思つております。交渉の途中において、オランダ側は、こつちの説明によつて、日本政府にもなるほど落度がないということを認めました。そこで、結局どうしてこういう間違いが起つたのかということを非常に考えておつたようであります。それで、一つは、林さん自身が金でも使つてアメリカ官憲でも買収して終身を十年にしたのじやないかというような——全然林さんを知らない人たちですから、そういうふうに悪く考えたこともあつたようですが、林さんから直接聞取書をとりまして、それによりますと、林さん自体は自分は終身刑だということがわかつていたわけであります。ただ、引継ぎの書類でもつて十年となつている以上は法務省当局としてはいわゆる戦犯者の言うことにとらわれる必要はないので書類によつてやつたということの経緯を説明いたしましたところ、向うも林さん自体の誠意について疑わなくなつたので、オランダ戦犯関係はこれによつて幾分好転するのじやないかと期待しております。

山下春江改進党

○山下委員長 法務省の部分に関し中尾矯正局長から御説明願います。

中尾文策法務事務官(矯正局長)

○中尾政府委員 ただいま外務省の古内参事官が御説明になりましたことで大体経緯は済んでおりますが、なお二、三の部分を追加いたしますと、アメリカ軍から引継ぎました書類と申しますのは、実は非常に簡単なものでございまして、ここに写真にいたしました林さんの書類の写しを持つて来ておりますが、わずかこれだけのところへほんの数箇条が記入してあるだけでありまして、私たちは林さんが十年であるということを信じておる。これは言い訳のために申しておるわけではありませんが、今古内さんがお話になりました減刑ということをやつております。この減刑はオランダのウイルヘルミナ女王の誕生日の減刑でありまして、六箇月を一回、三箇月を二回というふうに減刑しておりますが、この減刑というものはすでにジヤワにおる間に、つまりオランダの管轄下にある間に行われた減刑であろうと想像されるのでありまして、この書類はつまり日本おりました占領軍当局引継がれる前にすでにこういう書類ができておつたものと認められるわけであります。林さんは非常に正直な人でありまして、こちらに対しまして、林さんの方から、すでに巣鴨在所中に、実は自分は終身という判決を受けたと思つておるのだが、どういうわけで十年だろう、それでよいのだろうかということを申し出られたことがあるのであります。実は、このときに、私たちの方でももつとつつ込んで、あるいはオランダ側に照会するとか、いろいろな処置をとれば、あるいはわかつたかもしれません。その当時はまだオランダはたしか判決書を持つておらなかつたはずでございますので、結果から申しますると、そのときにオランダ側に照会すれば、まあいいだろうというようなことで、出してくれたかもしれませんが、これは結果論であるので、何とも申し上げられません。私たちといたしましては、この書類だけが唯一のよりどころである。この唯一のよりどころであるところの書類が十年となつておりますので、御本人がこれを無期であるとおつしやいましても、わざわざその不利益な方について一生懸命になつて調査をするという心持ちにも、気分にもどうにもなりませんので、これがあべこべの場合であるならば、もつと何かやつたかもしれませんが、この書類によつた方が利益であるとその当時考えられましたので、そういうせつかくの林さんの申出も、私たちの方で結果においてはこれを黙殺するというようなことになつたのでございまして、これであとの問題はないと思つたわけでありますが、ただいま御報告いたしましたような事情によりまして、とうとうのびつきならぬところまで、参りました。そうして、いろいろな点から考えてみまして、判決がまさに終身刑であるという事実は、これは疑うことができないわけであります。従いまして、こういうふうに釈放したということにつきましてはオランダ側としても了承しておるようでございますが、しかし、その了承したというのは、いい悪いというのとは別個の問題でありまして、とにかくここに終身刑というものが存在している以上は、当然彼について正当な処置をとらなければ承知しないというようなわけで、やむを得ずここに追い詰められたわけでございまして、せつかく郷里におちついておられたところの林さんに対しては、私たちとしてはまことに申訳なく、お気の毒に考えておるわけでありますが、これ以外にちよつととる方法がなくなりましたので、やむを得ずこの処置に出たわけであります。  これで問題が残りまするのは、こういう不安な状態に置かれたのでは、これまで釈放された方々並びにその家族の方々にも安心しておられないではないかということと、また、今入つておりますところの八百人足らずの人たちにつきまして今後いろいろな減刑とか釈放というふうな措置がとられましても、またこれは書類が間違つておつたというようなことがあつてはたいへんなことではないか、第二のこういう問題が起り、また第三、第四と起つて来るのではないかということになりますので、私たちの方といたしましては、ただいま、全体につきまして、関係の先方国に対しまして、あらためてこれが正しいかどうか、元の判決と間違つておらないかどうかということを照合中でありまして、今後こういうことが再び繰返されないように努力をするつもりでございます。  なお、この林さん並びにオランダ関係の人たちのことにつきましては、ただいまのお話の通り私たちといたしましても全力をあげて一日も早く釈放がされるように努力いたしたい、こういうふうに考えておる次第であります。

庄司一郎自由党

○庄司委員 ただいまの御説明で、不幸なる運命にある林鉄夫君の受刑者としての身分関係のことは一応了承いたしましたが、確定裁判における原刑の終身刑というものが、その後オランダ女王のお祝いか何かそういうことによつて、終身刑一等を減じ、あるいは二等を減じ、有期刑十年とか二十年ということになつておるか、あるいは依然として原判決にあるところの終身刑ということに今日もなつておるかどうか、これを念のために伺つておきたいのであります。

中尾文策法務事務官(矯正局長)

○中尾政府委員 結論を申し上げますと、やはり終身刑ということでございます。これは、今から考えてみますと確かに間違いであつたと思われまする点は、この終身刑に対しまして六箇月とか三箇月というふうな減刑は、これは意味がないわけであります。終身刑の減刑ということになりますと、これは国によつて違いますが、二十五年とか二十年というふうにずつと減つて来るわけでございますが、そういうわけでございまして、六箇月とか三箇月とかいうふうな、そういう減刑はあり得ないわけでありますが、それがきちんと一九四八年に二回、一九四九年に一回、こういうふうに六箇月とか三箇月とか減刑がなされておりますので、想像いたしてみまするのに、当時オランダには判決書がない関係上、おそらく現地から十年というふうに何かミスプリントか何かになりまして、そうして林さんが十年というふうになりましたために、現地から本国に対しまして減刑にするということを連絡して、本国の方でも十年と思い込んだためにこういうふうな終身刑にはあり得ないような減刑を行つたというふうに想像されますが、いずれにいたしましても、この辺の事情がさつぱり私たちにはわかりませんので、念のために私たちの方ではただいまアメリカ当局に対しましてこれの事情というようなものを照会いたしておるのであります。なお、オランダ政府の方からもアメリカの方へ、この点につきましてどういう点で間違いが起つたということを今照会をしてもらつております。

庄司一郎自由党

○庄司委員 おそらく、林君が過去八箇年の間刑務所生活において反則等の行為がないとするならば、この点数回の特赦減刑等が行われておるべきはずであると推察されるのであります。そこで、ただいま古内さんの御説明によつても、再び巣鴨プリズンに林君が帰られるということが行われますならば、他の二百余名の受刑者諸君に対するオランダ政府の正しい理解と御同情を得るために、また、林君という不幸な運命に翻弄された一個人に対して、こういうことは正確に敏速に国際的な報道機関の活用等々によつて、十分相当国のオランダ政府等の理解と同情を得ることができるような最善の努力を、外務省なりあるいは法務省等においてもなされて、この不幸を今度は転じて幸となし得るように念願してやまないのであります。一粒の麦地に落ちて死なずば多くの実を結ぶべしという句が聖書の中ありますが、かような不幸なわれわれの同胞の上に幸いの実を結ぶように、ひとつ御善処を願いたい、こういうことを熱望して、私の簡単な質問を終ります。

長谷川峻自由党

○長谷川(峻)委員 今の林君の問題ですが、最近、われわれ引揚委員として、林君の問題が新聞に出て、まつたくお互い委員会の責任で、また負けたものの悲しさ、これを如実にもう一ぺん考えさせられたわけですが、今までの経過報告を聞いている場合に、今から先みんなで、よくしてもらうように最善の努力をしなければなりませんけれども、その手続の関係からして、私は連合軍司令部が日本に渡した書類の中に無期が十年になつておるというふうに了解をしたのですが、将来林君並びに林君が入ることによつて仮釈放を考えるというオランダの善意のためにも、アメリカの責任においてもこういう間違いが起つたのですから、これはひとつアメリカ側にしつかり交渉していただかなければならない。これを考えます場合に、たしか巣鴨のA級戦犯などうわさによりますと、アメリカ時代に名前が間違つて出された者があつた、しかしそれはそのままアメリカ側が認めてしまつたことがあるやに私たちは聞いておるのであります。これがオランダであつたから、非常に厳重に行つたために、林君がもう一度帰らなければならぬことになつたのですけれども、日本政府としては責任がない。そうして書類の引継ぎにおいてアメリカのミスプリントでそういうふうになつておつた。だから、これは日本としては、今われわれのできる段階としては、アメリカがオランダ側に積極的に働きかけるように、将来の善処方の一つの方法としてお考え願えないかどうか、伺いたい。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 お説まことにごもつともでありまして、こういう問題は非常に不幸なできごとでありますけれども、なるべく有利に、利用という言葉は悪いかもしれませんが、活用しなければならないだろうと考えます。とにかく、一度出た者をまたひつ込めるというのでは法の権威も何もあつたものじやない。こういう状態だから日本の戦犯の存在というものが自由国家諸国との友好関係の上にも非常に悪いのだという一つのいい例にもなりますので、その点は十分われわれも留意いたしまして、そうした交渉上に活用いたしたいということを考えておる次第でございます。

長谷川峻自由党

○長谷川(峻)委員 そういう意味合いからいたしまして、ことに林君が善意をもつて、自分が無期であるということを、そういう手続が行われるときに何べんとなく申し入れたということを新聞に発表しておりますし、また今政府委員からの発言を聞くと、その通りだということですから、いかに彼が善意なる青年か、自分がのがれたいためにそうやつたのではないということがはつきりしている。しかも最後にこういうデツド・ロツクに乗つてしまつた。これは、オランダの輿論にでも訴えて、林君自体もう一ぺん釈放になるように、またその善意をきつかけにして、オランダ関係戦犯者二百余名もさらによき待遇なりあるいは特赦等ができる一つの推進になるような意味の工作なりまた考え方なりをこの際お願いしたい。私たち委員会として当局にぜひ善処方をお願いしたいという希望を持つております。

吉川久衛改進党

○吉川(久)委員 私の質問に対して、政府当局からの御説明ないしお答えは、私は了解をいたします。ただ、今後の問題として、問題の林さんのごときは非常に善意であつて、同情にたえません。しかも、国によつて違いますけれども、死刑を執行する場合に、息の根がとまらなかつた場合には無罪になる取扱いさえ法的に認められている国もございます。従つて、災いを転じて福となすように、二百余人の人々の釈放のためにも、またこの善意な林さんのためにも、ひとつ政府当局は最善を尽して救い出しのために努力されるように要望をいたしまして、私は答弁を了解するものであります。

山下春江改進党

○山下委員長 田中委員。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 先ほど外務政務次官のお話の中に、ソ連にはまだシヴイリアンが相当残つているらしいという話がソ連の関係者の話にもあつたというような御報告があつたようでありますが、その点をもう少し詳細にお話願いたい。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 又聞きのことでありまして、そのうち、機会がございましたら、この問題を直接取扱いました日赤の工藤君にお聞きくださると、いろいろ言葉の言いまわしとか、そのニユアンスというものがよくおわかりになると存じます。私の了解しているところでは、あるともないともはつきり言わなかつたけれども否定はしなかつた、安否調査については協力しようというように言つたので、大体向うとしてはないとはつきりそういう者のいることを否定したのではないから、いることを認めたものと了解してよかろうということでございます。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 それで、現在外務省としては、ソ連地区に残留していると推定しておられますシヴイリアンの数はどのくらいですか。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 実は、最近の調査は進行中でありまして、現在の数ではございませんが、昨年の八月一日現在の未帰還者集計表では、ソ連地区で一万二千名が生存資料のある者として発表されております。それに千島、樺太を加えると一万四千五百人ぐらいになります。これに対して、ソ連の発表は、先ほども申しましたように、今残つておる者を加えまして二千三百二十一名ということになつておるわけであります。しかし、このうち千四十七名が全部帰つて来るということになると、大体一万名ぐらいなお残つておるという計算になる次第でございます。

受田新吉日本社会党(右)

○受田委員 今の政務次官の御答弁の中の一万二千の数字は、民間人と軍人軍属との比率はどうなつておるのですか、その点を明瞭にしていただきたいと思います。

鶴見清彦外務事務官(アジア局第五課長)

○鶴見説明員 ソ連地域に残つておられます残留邦人の一般人と軍人捕虜という関係につきましては、現地で復員になられてそのまま向うにつかまつたというような方々もおられますので、軍人と一般人とのはつきりとした区別が必ずしも明確ではないのでありますが、一応昨年の八月一日現在ので政府が調査しました資料によりますと、当時約一万二千名の生存資料のあつた者のうち、約一万一千名が軍人ということになつております。但し、この点は、毎々申し上げているところでありますが、生存資料のあつたという人々は、終戦以後、一九四五年あるいは四六年に一ぺんでも消息があれば、それ以後全然消息がない方でも一応生存資料のある方ということにしております。従いまして、この一万二千名すべての方がシベリア地域に生存して残留しておられるということには必ずしもならないという状況であります。

受田新吉日本社会党(右)

○受田委員 その一万二千名の生存資料のある者のうち、書簡によつて生存が確認されている者の数字と、それから帰還者によつて生存が確認された数字との分類をお伺いしたいと思います。

田邊繁雄厚生事務官(引揚援護庁次長)

○田邊政府委員 先般島津社長が向うへ参りましたときに、千四十七名の名簿を持つて帰つたのでありますが、二十七年以降通信がありまして、その名簿に載つてない方が約八十名ございます。それから、今度帰還された方で、現に生存残留しておられるのを証言した方もありますが、これは舞鶴での一応の調査でございますので、さらに家にお帰りになりましたあとで、復員局等で合同調査を実施いたしまして、その数字を確かめてそれを確認したい。その調査を二月、三月にやる予定にしておりますので、それが完了いたしますればその数字が出て参ります。もつとも、その人たちが第二次の船で帰つて来るかどうかということが残されている問題でございます。従つて、第二次の帰還が終つて見ませんと正確なことはわかりません。

受田新吉日本社会党(右)

○受田委員 今第二次船の帰還が遅れておるので、われわれ国民のすべてがはなはだしく憂慮しておるのでありますが、この方々の帰還促進に政府も民間団体である日赤その他もずいぶん努力していることは認めます。ところが、さらにここで私たちが新しい角度からこの両者の宥和をはかつて打開の道をとりたいと思うことは、昨日でしたか日赤にあてて来たソ連の赤十字社の新春のごあいさつの言葉などを通じて、まことに親愛の情豊かなものを見出したということであります。従つて、こういう機会に、李徳全女史の招請とあわせて——先般ナホトカまでわざわざ見送りに来てくれましたソ連の赤十字の代表者等のあの誠意などを見るときには、日本の赤十字社の代表があちらへ行つたと同じように、李徳全女史を迎えると同じように、感謝の意味からも、国際的な宥和をはかる意味からも、ソ連の赤十字社代表も招請するような動きがあつてもよいと私は思うのです。こういう点についても、政府は、そうした民間団体の動きがある場合に、これに十分協力する用意を持つておるかどうか、これをお伺いしておきます。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 先ほどから申し上げましたようにこの問題解決の上に効果があるということがはつきりすれば、今とつておりますような往復を制限するような政策の例外としてこれを認めなければならないだろうというふうに考えていることにはかわりはございません。ただ、しかし、お礼の気持、非常に感謝する気持、親愛の気持を表わすということは、その代表を日本へ呼ぶことだけに限られているわけではないということも私ども述べたのでありますが、こういうようにいたしますと、中共の紅十字の代表も呼ばなければならないし、ソ連の赤十字の代表も呼ばなければならない、そのうちにいろいろ学者の団体も親愛の情を表わすのだから呼ばなければならない、だんだんこれが突破口となりまして拡大するということになりますので、そうした点にいろいろの考えなければならない点がありまして、これがはつきり決定をしていないという事情のあることも御了承願いたいと存じます。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 李徳全女史招請の件でありますが、実は、この問題は相当長く論議が行われ、国民の輿論はその招請を支持しておるし、この委員会の各党の委員諸君もみな意見が一致しておるのであります。問題は外務省の決意いかんでありますが、事ここに至れば、いつまでもこの問題を未解決のままにして置くわけに行かぬと思います。だから、効果があるかどうかはつきりすれば呼ぶことにやぶさかではないというような、そういうような御答弁を何回も繰返されても私は困ると思うのでありまして、大体外務省としてもおよそはつきりとけじめをつけてもらいたい。だから、近いうちに外務大臣が態度をはつきりして、呼ぶか呼ばぬか、呼ばない意向ならばもう呼ばぬということをこの際向うに通知してやらぬと、赤十字も困るだろうと思う。それから赤十字以外の関係団体も困るだろうと思う。関係団体の方でも、どうしても外務省が呼べないと言うなら、今までお約束しましたがこの際お断りしますという返事を出したいと言つておるのです。だから、ひとつ政務次官は、いつごろまでにこれをはつきりきめていただくか、およその見当をお述べ願いたいと思います。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 今即座に右か左か返答しろということを迫られますならば、私はおそらく大臣の意向を受けて否定的な答弁をしなければならないだろうと思います。しかし、田中委員のおつしやいましたことをよく大臣にも伝えましてなるべく早く解決するようにしたいと思います。

田中稔男日本社会党(左)

○田中(稔)委員 この次の委員会までにどうでしようか、責任ある外務当局の答弁をいただきたいと思うのですが。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 御趣旨をよく体しまして、外務省で協議いたしたいと思います。

山下春江改進党

○山下委員長 委員長から一言。この李徳全女史をお招きするという問題は、各委員が述べられました通り、相当長い間の懸案でございます。いろいろな考え方があると思います。しかしながら、この引揚げの問題は、少くとも中共地区にまだ三万の同胞を残しておりますわれわれとしては、これがよさそうだということに対しては、何はともあれ、それを実行いたしたいというのが本委員会の考え方でもございますので、賢明なる李徳全女史におきましては、まさか政府の心配されるようなマイナス的な行動もおありにならないであろうことをわれわれは確信しつつ、委員会の大部分の意見が李徳全女史をお招きしたいということであつたことを、ひとつ政府へお持ち帰り願いまして、すみやかにこのことが成就できますように御努力を願いたいと思います。  なお、林鉄夫氏の問題につきましても、まことに私どもその不幸お気の毒にたえないのでございますが、先ほどの古内戦犯室長の話を聞き、一抹の愁眉を開いた感もございますが、政府におきましては全力をあげてこの災いが福に転じますように御努力願いたいことを要望いたしておきます。

中井徳次郎日本社会党(右)

○中井(徳)委員 ちよつと簡単にお尋ねします。先ほど受田委員から御質問がありましたのに関連するのですが、今ソ連に残つておりますシヴイリアンが合せて一万四、五千ということですが、実は、情報といたしまして、終戦後抑留された者のうち、あるいはまた戦犯者の中で、満州に関係のありました高官連中の一部がソ連から中共の方へ送り返されているというようなことを聞くのでありますが、この点について、これはあるいは新聞記事に載るとさしつかえあるかとも思いますが、外務省ではどの程度まで情報をつかんでおられますか、ちよつとお伺いいたしたいと思います。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 これは満州国高官かどうかわかりませんが、とにかくタス通信によりますと、ソ連の方から中共政府に引渡したのが九百六十九名あるということが報道されております。でありますから、その中にあるいは満州国にいた高官が入つておるかとも考えます。

中井徳次郎日本社会党(右)

○中井(徳)委員 その九百六十九名が今どこにいるか、私どもはハルビンの近所というようなことを実は聞いていますが、見当がつきませんか。それから、そういう人たちから通信があるかどうか。

小滝彬自由党外務政務次官

○小滝政府委員 この点はわれわれの方にも全然わかつておりません。実はソ連の赤十字へ、この前日赤の代表が参りましたときに聞きましたところが、それは自分の方ではわからないから、中共の方へ聞けというような返事があつたのであります。

山下春江改進党

○山下委員長 この際お諮りいたします。先ほどの戦犯関係の質疑応答中、オランダ関係については、特に政府当局より発表を差控えられたい点があるとのことでありますので、速記録を取調べの上適当に処置いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山下春江改進党

○山下委員長 それでは、さようとりはからいます。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時七分散会

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