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18回国会参議院1953/12/02

法務委員会 第1号

発言数
32
登壇者
7
会派数
2
開催日
1953/12/02

会議録

郡祐一自由党

○委員長(郡祐一君) 只今より委員会を開きます。  先ず調査報告書についてお諮りいたします。本院規則第五十五条によりますと、閉会中調査を終らなかつた事件については、次の会期の始めに未了の旨の報告書を議長に提出しなければならないこととなつております。つきましては検察及び裁判の運営等に関する調査の未了報告書を提出いたすことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

郡祐一自由党

○委員長(郡祐一君) 御異議ないと認めます。なお例によりまして報告書の内容は便宜委員長に御一任願いたいと存じます。報告書提出に賛成の諸君の御署名を願います。   多数意見者署名     三橋八次郎  青木 一男     宮城タマヨ  中山 福藏     羽仁 五郎  棚橋 小虎     赤松 常子

中山福藏緑風会

○中山福藏君 私どもは先だつて一松委員の提議と申しますか、提案と申しますか、かかる調査を委員長の指名によつて命ぜられまして、実は専門員並びに随員のかた及び棚橋委員それから私、四名松江、米子並びに鳥取の三カ所に出張いたしまして、仮監のあり方についての調査を遂げて帰つたのであります。この問題についてはいずれ改めまして報告書の形式において提出することになるでありましようが、仮監というものが問題になつておりまする関係上、一応松江地方における仮監の状況について簡単に御報告を申上げたいと思います。  即ち人権蹂躪というものが起る虞れがある、或いは現に起りつつあるというような考え方で、一応この問題が取上げられたものでございますが、実際松江に参りまして私が見たこの仮監の状況は、丁度小説……例えば岩見重太郎の小説を読みますると、岩見重太郎が或るとき牢獄に投ぜられた、或いは宮本武蔵……じやございません、塚原卜伝でしたかの小説を読みましても、あの牢獄の状況が書いてある。それを私ども現在見て参りました。昔のいわゆる牢獄のままなんですね。ところがそれがいつできたかということになりますと、明治の中期にできたということでありました。そうして簡単に申しますると、目白籠を一つの家の中に入れた有様なんです。目白籠というあの竹の桟が大きな横も縦も巾が約七寸くらいあると思いますが、その四角の格子がずつと四方に廻されておるのであります。そうしてその材木は何を用いておるかと申しますと、棒なんです。非常に高価な材木が使われておつて、そうして丁度鳥籠のような状況を呈しておるのでありますが、その下はコンクリートとなつておるのであります。それで空気抜きがどういうようになつておるかと思つて調べてみますと、そのコンクリートは約一尺八寸くらいの高さだと思うのですが、それに横が六寸くらい巾一尺くらいの、空気の流通のできる穴を持つておるのでありますが、これで果して湿気というものが防げるかどうかということに私どもは注意を払いました。ところがどうも十分の空気の流通はできないのじやないか、従つて湿気というものが多いのじやないかということを先ず第一に考えたのであります。そうしてこの仮監は只今松江の検察庁から約一町半くらいの場所にあるのであります。それからその隣りが地方裁判所、簡易裁判所というようなことになつておつたと思うのでありますが、松江の刑務所から取調或いは裁判のために被疑者がこの仮監に運ばれ、それから徒歩で一町半くらいの所を検察庁或いは裁判所に連行されるということになつておるのでありますが、この仮監に運ばれた被疑者は、検察庁の取調を受ける場合においては、殆んど弁護士に面会を許さないというのですね。これは刑務所、拘置所という場所にはならないというような解釈が検察庁でとられておられるために、それに面接することができない。殊に弁護士という立場から急を要する場合においても、ここの仮監におります間は、終日そこに留置されておつても、絶対に面会を許されないというのが、現在の状況であるということを松江の弁護士会長が私どもに申しておりました。検察庁もこれに対しては異議を唱えなかつたようであります。ただ、夏の間における仮監の衛生上、被疑者に影響があるかどうかという問題でありますが、恐らく夏の候は私は非常に涼しいのではないかと感じて来たのであります。冬はこれに反して相当に寒いと思われます。従つて衛生上の関係は大したものではないという印象を受けたのであります。そういう次第で弁護士会のほうではこの仮監に留置されて居る被疑者に面接ができないことを口を極めて攻撃、非難をしておつたように存じます。大体以上のような状況でありますが、結論的に申しますと、この仮監は昔ながらの牢獄そのままの姿というもので被疑者に対して如何なる心理的影響を与えるかということが一番大きな問題だと思うのであります。私はこの仮監というものを初めて見たのでありますが、小説ではよく絵に描いておりまして昔の牢獄というものはこんなものであるということを心に会得はしておりましたけれども、目の前に見たのはこれが初めてであります。併しこういうふうな仮監を直ちに除去して、新たなる様式のものに変更するということは、これはやはり経費の節約の関係からどうも手が届かないのじやないかということも考えられるのでありますけれども、福井の裁判所でありますか、これは裁判所の問題でありますが、これはまあ裁判所のほうから行けば地方の裁判所もいろいろ改築されるところもたくさんあるでありましようけれども、一カ所にお金をたくさん打込んで、まあモデル・ケースの裁判所だといつて世間では讃えておりますが、これを一歩振り返つて検察庁の側について考えてみますと、やはり同じような重点主義と申しまするか、どういう言葉を以てこれを表現したらいいか知りませんが、やはりそういう方式が検察庁の仮監とか拘置所においても行われておるんじやないかということを私どもはこの松江の仮監を見て感じたのであります。私は冗談に、あの欅の格子を見まして、これを売つて新らしいものを作つたら、随分これは高く売れるから立派なものができるんじやないですかと言つて、冗談を言つたくらいに林木は誠に立派なものでありまして、床の上などは鏡のように立派に拭き掃除がされてきれいなものでありました。これはただ外から仮監を見た感じであります。でこれを近代式に改めるということが、やはり被疑者といえば、まだ判決は確定して既決になつていないんでありまするから、取調べに手心を加へ心理的に悪影響がないような手段を講ずることが肝要だと痛感して帰つたわけであります。何と申しましてもあの立派な棒の格子の牢獄は高価材を使用していますが、ただ感じが、ああいうところに被疑者を入れて取調べるということは、或る意味では残酷だという感じを受けて帰つたのであります。殊に仮監に放り込んでおる間は、刑務所ではないんだからという按配で弁護士の面接を禁止するということは誠に非現代的であるといつた感じを持つて帰つた次第であります。  それから米子、鳥取の状況を聞いてみますると、これはもう普通一般にありふれたいわゆる刑務所の形をとつておる、これだけで尽きると思います。  以上、いずれ報告書によりまして詳しいことは申上げますけれども、こういう有様でありました。

中尾文策法務省矯正局長

○説明員(中尾文策君) 只今仮監の御報告を拝聴いたしまして、私たちも大変責任を感じるものであります。先の国会で御報告申上げましたように、仮監のことにつきましては私たちのほうで数回に亙りまして調査をいたしておりまして、相当これにつきまして改革、改築を要するものがあるということがわかりました。まあできるだけそういうものに手を付けたいというふうに考えておるわけでございますが、この松江の仮監は二十六年度、二十七年度両回に亙りまして予算要求をいたしましたのでありますが、ともかく認められるわけには参りませんでしたので、本年度の手持ちの金を割きまして、部分的な改築をやつておるはずであります。只今のあの構造の全部に亙りまして徹底的に改造するというためには、ちよつとすぐには予算的措置はむずかしいのではないかと思いますが、併しほかのほうともよく考え合せまして、来年度におきましては相当私どもも計画的に、できるだけ予算の許しまする限り手を付けて行きたいというふうに考えております。なお、先日御報告申上げましたように、改築を要するまでに非常に不完全な仮監というものは相当ございますので、そういうことのために生じまするところのいろいろな処遇上の不都合を除きますように、まあ念のために私のほうで先月の十一月六日に通牒を出しまして、不十分な中にもできるだけの手を尽すようにまあ全国にそういうふうな処置をとるように通知を出したのでございますが、特にそういうふうな通風採光というようなことにつきましては、まあすぐそれに手をつけるということはできません。これは改築をいたしません限りは、直ちに根本的な措置をとるということはできませんが、そのほかの処遇上につきましてできるだけ気を付けるというふうに措置をいたしたいと考えているわけでございます。  なお、面会の問題でございますが、これはあそこは刑務所ではないというふうな解釈から面会をさせないというわけではないのでございまして、実は面会をさせまするためには、やはりその設備がどうしても必要でありまして、面会所の設備ということがまだ殆んどできておりませんので、従いましてその設備、それから又人員の関係、つまり職員が必要になりますので、そういう点で手当ができておりませんので、現在のところでは、殆んどこの仮監の面会ということは実行できておりません。ただ一カ所調べてみますと、水戸の仮監はそういうふうな設備ができておりますので、なお又あそこの刑務所では職員の配置がつきましたので、これは以前から仮監での面会を実行いたしております。なお、来年度の予算に裁判所から要求が出ておりまして、私どものほうと打合せいたしまして裁判所の費用で仮監に附属いたしまして接見所、面会所の設備を作るという予算が要求してございます。あれはちよつと何カ所か忘れましたが、数十カ所だつたと思いますが、そういう要求がしてございますので、私どももその仮監での面会をできるようにいたしますために職員の増員を要求いたしております。それで若しこれが認められるということになりますると、まあどの程度認められるかわかりませんが、認められた範囲内におきましては仮監の面会もできるようになるわけでございます。私たちのほうといたしましては遠いところわざわざ本所のほうまで来てもらわなくても、折角そこへ出ているわけでありますから、現地で処理できれば私たちのほうもこれは便利なわけでありますので、こういうことにつきましては原則的にはちつとも私たちはそれを妨害しようとは考え薫りません。ただいろいろな条件が不十分でございますので、お話のような状態でございますが、この点につきましてはできるだけ改善をいたしたい、こういうふうに考えております。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 これは何ですか、当局としては仮監というものの法律上の性格をどういうふうにお考えになつているのですか。刑務所の延長というふうに考えておられるのですか。又単に一時そこに留置しておくというような、いわゆる暫定措置としてのお取扱いになつているのですか。

中尾文策法務省矯正局長

○説明員(中尾文策君) やはり本人の身柄を拘束しております関係上刑務所の一つの設備、まあ刑務所と見ているわけであります。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 刑務所の延長と見ていいわけですね。

中尾文策法務省矯正局長

○説明員(中尾文策君) そういうわけでございます。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 そこで私がその点について突つ込んで尋ねましたところが、現在の看守の服装が背広になつている。折衿になつてネクタイをはめている。この前人数が足りないところでは、看守はネクタイで締め殺されたというのです。それで若しこれが詰襟であつたら、仮監の面会なんかもそういう点において一つの障害が省けるのだというようなことも言つておりました。そこで人間が少いと、どんなひどい目にあうかも知れんというので、一応仮監はできるだけ面会を拒んでいると申しておりましたが、成るほどこれも考慮すべき点だと思いました。この仮監は刑務所が延長であるとすれば、ちようど船舶が領土の延長と見られる関係から、船長が裁判権を船上で持つているように、やはり仮監でも自由に面会をさせて頂くというのが建前でなくちやならないと思うのです。殊に早急の場合には弁護士がとつさの間によい考えが浮んで証拠の関係などを聞きたいと思う場合に、そういうところで面会をさせて頂くということが被疑者の基本的人権を尊重するゆえんともなり、親切ではないかと思うのでございます。その際注意すべきは、人員が足らなくてネクタイなんかで絞殺事件なんかが起ることは実に困るということを言つておりましたが、これは問題だと思うのです。よつて服装についてもお考えになる必要があると思うのです。特にこの件はその時聞いたことですから申添えておきます。

郡祐一自由党

○委員長(郡祐一君) 中山委員の報告、矯正局長の説明がございましたが、何かこれに関連してお尋ねがございましたらどうぞ。それ以外にも御自由に。先ほど中山委員からお話のありました火焔ビンについて刑事局長が来ております。それ以外でもどうぞ。

宮城タマヨ緑風会

○宮城タマヨ君 矯正局長が見えておりますからちよつと伺いたいのでございますが、私自身は新聞によつての知識でございますが、鑑別所を拘置所に置くとか、それから管区の廃止、それからこの矯正局に保護局を吸収しようとかいうようなことをちよつと見たようでございますが、これは何か根拠がございますのですか。

中尾文策法務省矯正局長

○説明員(中尾文策君) 実はこれは臨時行政改革本部とかいうそういうところで内々研究をしておられる由でございまして、実は私たちは公式にはそういうことは何にも存じておらんわけでございますが、従いましてこの根拠の有無ということにつきましてもちよつと……。私たちただまあ想像で考えるよりほか、まだ私たちのほうとしてはちよつと申しげることはございません。

宮城タマヨ緑風会

○宮城タマヨ君 それではよろしうございますが、今度の機構改革のこの問題の中にこういうものがとり入れられますとしますのなら、この三つとも非常に重大問題でございますので、私ども勉強してかからなければならないと思います。そこでちよつと質問いたしましたのですが、安心いたしました。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 ちよつと火焔びんの関係でお尋ねしておきたいのですが、どなたかお見えになつておりますか。

郡祐一自由党

○委員長(郡祐一君) 井本刑事局長が見えておられます。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 このたび火焔びんの問題について最終審である最高裁判所が火焔びんは爆発物でないという判決を下したことは御承知の通りでありますが、この火焔びんが爆発物でないとすれば、その手段方法、被害ということにつきまして刑法上の規定をこれに適用するかどうか、従来ありきたりのままにこれを適用するかどうかという問題なんで丸が、私はこういう判決の結果、いわゆる火焔ぴんというものは爆発物でないとして無罪の判決が至るところに下されるということになりますと、一時潜行的になつた火焔びんが又投げられるということになり、折角私どもの目に映らないようになつたのではありまするけれども、或る時期に遭遇したならば、必ず又こういう火焔びんが投げられることがあるのじやないか、これに対しむしろ特別の立法措置をして、事前にこれを防止することが刑事政策の上からは最もいいのじやないかという気持がするのですが、その点についてどういうお考えを持つていらつしやるか、それを承わりたいと思つているのです。これはむしろ政府自身の考え方もお聞きにならんと御答弁はむずかしいとほ思いますが、単にあなたがた当該関係者として一ツ御意見を述べて頂きたいと思います。

井本台吉法務省刑事局長

○説明員(井本台吉君) 火焔びんの判決が無罪になりまして以来、私ども非常にその面については心配しておるのでございます。かねてこの問題につきましては、各地の検察庁からも何か新らしい立法をしてもらいたいという要望もありまして、よりより協議しておつたのでございます。ただ、この判決前におきましては、却つて新らしい立法をすることが裁判の結果に悪い影響を及ぼすということを考えまして、研究のままに過ごしたのでございます。ところがこの火焔びんの事件が無罪になり、又この火焔びんではございませんが、カーバイトを使つてラムネ弾と称するやはり爆発物のような兇器を使つた事例がありまして、このものにつきましてもこれは九州のほうの裁判所で無罪になつた事件がございます。かような罰則につきましては、これを統一的な法律を作りませんと、一つの罰則を作りますとこれを潜るいろいろな方法を講じます。さような関係で最も適切な方法で、何かいい法律を作らなければならんということについては、非常に私どもも痛感しておるのでございますが、なかなか適当な条文が今すぐに見当りませんので、よりより研究中であるというように申し上げざるを得ないのでございます。ただ現在の状況におきまして、若し又かような火焔びんを持も出すというようなことがあれば、只今までの法律でも或る程度例えば放火容疑であるとか、殺人容疑とか或いは軽犯罪法の第一条第二号にある兇器を隠し持つたものであるというような罰則を適用して、或る程度の取締はできるつもりでおります。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 私は現在の日本の社会状況を見ておりますと、或いは国自体というものが一体として動く理想というものを欠いておるんじやないかと思うのです。頭を切られたまむしが部分部分で跳ね返つておるような姿を呈しておる。統一が少しもとれないような感じを持つておる。私昨晩ソ連がらの引揚者の座談会を聞いておつたところが、教育にどういう方針をとつておるかというと、国定教科書を使つて、そうして国家の理想というものをその国定教科書に盛込んでおる。従つて十カ年の義務教育によつて大体共通した国民の目標というものは一応会得する。従つてソ連の政治というものが外から眺めたの内部的にこれを監察した眼と、その考え方が非常に違うけれども、ソ連自体としてはそういうふうな教育の施し方で、一つの目標を以て国民全体が進んでおるといのですね。私はこの日本の刑事政策の問題でも、教育の問題でも、道徳の方針でも宗教のあり方でも、現在のこの日本においてこれはといつて私どもが頼めにするものはない。私はもう今日日本の上層階級或いは指導的立場にあるかたがたの態度を見ておりますと噴飯に堪えない。私は実のところ気違い扱いされないということであれば、どんなことでも言つてのけたいと考えておるわけです。併し社会的な混乱を来たすという虞れもあり、私どもの立場を顧みて自重しておるだけなんです。ですから私はそういう観点に立つて、これはやはり私どもが、まあ国会議員といえば現在憲法の上から指導的な立場にあるということになつておりまするから、軽率なことはできんのです。併しながら事々物々によつて一つの理想はやはりその片鱗を示ずというか、私ども国会に籍を持つておるものの一つの責任であると私自身考えておるのです。従つてそういう気持において私はいろいろな質問をしておるのです。私自身はそういう考えを持つて一々質問をしておるわけです。  それでお尋ねしておくのでありますが、この爆発物についても単に新らしい法律を作るとこれを潜る、結局頭脳的な動きというものが現われて来るととして躊躇される。例えばペニシリン、ストレプトマイシンが日本に入つて来まして当時は非常によくききました、輸入当時は……。これは今はきかん、それは黴菌に抵抗性ができるからです、これはわかり切つた理論なんです。新らしい武器ができると、すぐ対抗する防止の道具というものができて来る、これは当り前なんです。ところがそれだからと言つて新らしい法律を作れば害があるということは言えんだろうと思う。犯罪というものは被疑者と社会との合作なんです。例えば売春禁止法というものが今盛んに論ぜられて、出すか出さんかということは、これは社会と売春婦の合作なんです。私は決して売春婦だけが悪いと考えておらん。そういうふうな次第でありまするから、法律と犯罪行為というものが並行してこれは進んでおるということは勿論なんです。だから一方の線を打ち出さずに、一方の線だけ残しておくということは、これは私はいかんと思うのです。そういう爆発物を投げるような人間が出た場合には、やはりこれと並行して法律も進んで行つて一歩法律が先んじるということは、社会の是正、粛正ということに役立つ原則だと考えておる。だからいつもこの頃御承知の通り大阪で行われておる畠山裁判長、佐々木裁判長の態度は全然反しております。どつちがいいかということはこれ経論ごうごうごうたるものがある。世論が紛糾しておりまして、そのいずれをとるかということは立場々々で人々の意見が違つておりまするが、併し先ほども申しましたように、一つの理想というものを互いに共通して持つておるならば、この判断というものは極めて容易じやないかと、私は個人としては考えておる。つまりそれを批判する人の見識が足らない、見識が足らないから、どつちがいいかという断定を下せない。それぐらい日本の識者というものは今頭脳的に弱体なんです。私はこれを非常に国家のために憂えておる一人なんです。だから先ず国家の理想というものが今はふらふらしておりましても、打ち出せるまで国の秩序を乱さないような方法をとつて置かねばならん。それには爆発物の鎮圧というものが非常に必要になつて来るのです。だからこれは法律によつて抑えるということは一方では或る程度の弊害というものをかもすかも知れんというような虞れで、これを傍観するということは、当局としては職務の怠慢じやないかと考えて心配しておるのであります。従つて太政官布告なんかのようなものでこれを取締るというような、けち臭い時代遅れのことで新らしい時世に立ち向うというのは、当局の覚悟が足らんのじやないかと思うのであります。従つてこの爆発物の最高裁判所の判決が、我々もいろいろ覧もありますけれども、如何ともすることはできない。司法権の独立した姿からいつて我々の信頼しておる最高裁判所が判決を下したのですから如何ともしようがない。然らばこの対策というものが必要である。売春禁止法について法務大臣があんなに力む必要はありませんよ。あんなものはフランスの状況を歴史的に見ても、わかるのです。又アメリカの禁酒法、嘗て酒を飲むことを禁じながら、あんな馬鹿なことをやつてもらつては困ると言つてこれを廃した。そんなことよりも、私は国家の基本を揺り動かすような問題は、これこそ堂々として法務大臣が肝をきめてかかるべきものだと考える。それでなくちや大臣の資格はありません。  私はいろいろ言いたいことありますけれども、そういうふうな気持で国事に参与さしてもらつておるつもりです。極めて謙虚な気持で皆さんがたにお願いしておる。どうかそういうふうな考えでありますから、この点についてのもう一回、あなたがたのような若い新らしい知識を持つておられる局長さんですから、御意見を披瀝して頂きたいと思います。

井本台吉法務省刑事局長

○説明員(井本台吉君) 只今の御意見誠に御尤もと考える次第であります。私申上げましたのは、とにかく火焔びんを持つておるものがそのまま自由に放任されておるというのでは決してないので、その当時におきましてもこれは放火容疑であり、殺人容疑であるという点についての刑法犯罪も必ず成立しておつたのではないかと考える次第であります。ただ実証の問題がいろいろむずかしいので、古い太政官布告を担ぎ出したため、いろいろな法律問題が生じたということに帰着するのではないかと思うのであります。かような犯罪に対しまして、あらゆる手段を尽して厳重にこれを取締るということにつきましては申上げるまでもないことでございます。この罰則取締につきましても、そのために善良な人々が迷惑をこうむるということのないように、何らかのいい方法があれば至急に立法してみたいということは考えておるのでございますが、非常にむずかしい技術的な問題でありまして、適当な成案をまだ得かねておる次第でございます。例えば軽犯罪法の凶器等にいたしましても、同じ然らば出刃庖丁を持つておつても、魚屋の持つておる出刃庖丁は何の犯罪にもならない。人殺しが出刃庖丁を持つておれば、これは殺人予備の犯罪である。こういうようなことでありまして、火焔びんが問題になつたような要素のものであれば、これは恐らく人を傷つける、或いは殺す、放火をする、そのために持つておるのに違いないのでありますから、その点に関する取締のほうは、現在でも私ども確信を持つて或ろ程度はでき得るとこう考えてはおりますが、なおこの上とも立法のほうで万全を期したいということを申上げたいと思います。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 何とぞ法務大臣とも御相談下さいまして、適当な措置をとつて頂きたいということを特に私からお願いしておきます。今日は法務大臣おいでにならんのですか。

郡祐一自由党

○委員長(郡祐一君) 今日は特に出席を求めておりませんでしたから。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 次官もお見えになりませんね。

郡祐一自由党

○委員長(郡祐一君) 政務次官はおられます。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 政務次官も一つその点について意見を述べて下さい。

三浦寅之助自由党法務政務次官

○政府委員(三浦寅之助君) 非常に結構な御意見を拝聴いたしたのでありまして、それらの点につきましてもよく相談いたしまして適当な対策を考えたいと思います。御了承願いたいと思います。

青木一男自由党

○青木一男君 今の中山委員から提議された問題ですが、今までの法律を適用してやるということになると、刑事局長の言う通りどうしても容疑とか、そういうような解釈で行くことになりまして、これは実証が容易でない、やはり新らしい時代において、社会不安というようなことを防ぐためには、もう少し包括的なそういう危険物或いは社会不安を、与えられるようなものの製造、所持ですね。そのものを端的に取締るということ言いと、なかなか実証上又裁判しなければならないということになつたら、何にもならない。立法上はその点は限界において相当議論がありましようが、これは国会の意思によつて或る程度客観的にきめて行けばそれで済むものでございますから、そういうような適用上或いは裁判上疑義のないようた新らしい立法を一つ考えて頂きたいということを私は特に希望しておきます。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 政務次官に一つ質問していいですか……。それじや一つ極く常識的なところをお尋ねしたいと思いますが、一昨日でありました、政務次官御覧の通り、畠山裁判長が大阪で事件の審理をやつておりまするときに、裁判長に背中を向けて革命の歌を歌つた、こういう記事を御覧になつたと思うのです。この法廷秩序の維持に関する処置というものを現在のままでよいとお考えになつておるのでありましようか。又は刑法上或いは行政罰によつて取締れる現在の法令を活かせば、大体それでよいというお考えでしようか。日本に残された一つの誇るべき姿は裁判制度であると私は考えております。これが威信を失い、国民の信頼感を失うということになりますれば、これはもう日本に何ら誇べきものは残されていないのじやないかと実は考えておるのであります。個々別々に事件を取上げまして、これを理論とか或いは感情で割り切つてしまうわけには行かんと思うのです。私は、個人というものであると同時に社会人であり、日本人であるということから、社会全体から、これをどういうふうに持つて行くかということが大きな問題だと思うわけです。それでそういう点につきましての御意見を拝聴しておきたいと考えます。

三浦寅之助自由党法務政務次官

○政府委員(三浦寅之助君) 只今おつしやられる通り、司法権の独立、司法権の威信を保持するということが絶対に必要であるということは申すまでもないと思うのであります。司法への信頼、司法の威厳を保つ上において、殊に法廷の秩序を維持するということも非常に私は必要なことだと思うのであります。最近、只今も御引例されましたような問題、或いは前の御意見の佐々木裁判長の問題等から見まして、それはその人によつているく見方はあるようでありますが、併しながら、こういうものに対しましても私は或る一定の法廷の威信を保つ意味においても十分に注意しなければならんと思うのであります。何となれば佐々木裁判長の問題が若しよろしい、或いは只今の引例されたのがよろしいということであるならば、その次には、どの程度がよろしいかということがだんだん今度は標準がなくなりまして、結局法廷を占領して、或いは被告が法廷を利用していろいろな被告会議を開くとか、或いは一時裁判長の審理を中止せしめないまでも、或いは開始前においても、何か、法廷を利用して会議するとか、いろいろ協議するとかいうようなことまでに発展しないとも限りませんし、そういうふうな問題をどの程度までに標準を置くかということになりますると、非常にこれはむずかしい問題であり、こういうことが発展しまするというと、法廷の威信、法廷の秩序維持というものは非常に困難になると思うのであります。こういうことになりますと、私個人の意見になるかも知れませんが、私としましては、法廷の神聖という言葉がいいか悪いか知りませんが、法廷の秩序を維持するということになりますれば、法廷においては裁判長の指揮権ということから、少くとも法廷においてそういうことを許してはいけない、又許すべきものではないと考えます。やはり裁判長の立場においては、そういうような審理以外のことはこれは許されないほうがいいのじやないか、又許してはいけないのじやないかというふうに私自身は考えておるわけであります。

中山福藏緑風会

○中山福藏君 有難うございました。それは政務次官として当然の御意見だろうと思います。ただ私申上げたいのは、革命というものは、社会、人間というものはそれぞれ進歩しなければならん。従つて進歩する姿が一つの革命的な現象として社会に現われて来る。だからこれを客観的に如何なるものが社会、人類の進歩を来たすものであるかということを冷静な立場で考え得る高邁な識見者が世の中にいないと、国の方向というものはとんでもないところに落ちて行くということは歴史の物語るところでありまして、私ども歴史はそのために学んでおるのであります。今日私が裁判所の姿を見ておりますというと、大体裁判長というものはどうしていいかわからん、現在の日本の裁判長は……。もう手を上げておる。だから佐々木裁判長・畠山裁判長は、一方は黙祷を許し、一方は許さないと言つて裁判所の中に対立した見解がすでに存在しておる。それから又中立的な意見を持つた裁判長もおるわけだ。丁度動物園の一つの濫の中に三匹の違つた動物が入つていて自分々々の本能を発揮して騒ぐような有様を呈しておる。実にこれは時代の生んだ一つの悲劇だと見ております。そこでこの問題は裁判所の審理、裁判所の独立そのものについては干渉することはできない。裁判権の独立を侵すということになりまするから、これはもう私どもよくわかる。併し裁判所の法廷の秩序というものは、それとは又別個に考え得る余地が残されておるのではないかと思うのです。だからこの点について裁判所の指揮というものはどういうふうに持つて行かなければならんかということは、少くとも最高裁判所の判事の全体会議でも一つ開いて、これは一つの方向というものを決定付けるということはやはりいいのじやないかと私は考えております。それでこれは私は大阪におつて、現地におつてこの裁判所の二つの頭を備えた……何と申しますか、思想というものを裁判長の頭に見てとつておるのでありますが、あわれむべきこれは姿だと私は考えております。それを私どもこうせい、ああせいという資格、権限はないわけでありますけれども、これはやはり裁判所としては、単に裁判権は神聖だとか、こんなものだとか言つても、神聖という感じは国民に与えておりません。裁判所というものは実につまらんものだという感じをこの頃与えて来た。方向の決定というので裁判所の一貫した考え方がないからだと私は思うのです。これはやはり司法当局として、単に最高裁判所の判事も、簡易裁判所の判事も、地方裁判所の判事も、裁判に対しては同格だというような単純なことではなくて、国をどこへ持つて行くかというこれは大きな問題だと思う。そういうような大所高萩から一つ御判断を願つて、この裁判所の法廷の有様をどういうふうに仕上げをするかということは私は非常な大きな問題だと思う。私どもは大阪におつて在野法曹としてあの姿を見て、実は全く悲しみに堪えないわけですね。何とかこれは一つ最高裁判所と御相談賜つて善後措置を講じて頂きたいと思うのでありますが、如何なものでございましようか、そういう点は。

三浦寅之助自由党法務政務次官

○政府委員(三浦寅之助君) 御尤もでありまして、何か今お聞きしますと、法務大臣からも裁判所のほうと打合せをしてそうして適当な措置を講ずるということになつておるそうでございまして、同時に又最高裁判所のほうからもそういうような問題について何か通達をしたそうでありますから、それに対しても最高裁判所としても十分に考えておることだと思うのでありますが、今後ともよくそういう問題について最高裁判所のほうと打合せをして適当な方法を講ずるように相談をいたしたいと思います。同時に、只今の御意見の通り、一体裁判長の法廷指揮権というものの限界につきましても、只今のようにいろいろ議論もありまするし、分れておるようでありまするし、又各人同様の、司法権の独立ということから裁判官というものは何をやつても干渉できないのだというような考えも持つておるやに考えられておる向きがあるのでありまして、非常に私ども考えさせられる点があるのであります。殊に司法権独立だから裁判官は絶対に独立だからというようなことで、例えばこの間の大阪の佐々木裁判長のたまたま問題とからんで、そうして承わりまするというと、判決後に公判調書が一年有余もできないで放任しておくというようなことが一体許されるかどうか。理窟として、そんなことをしておつてそれに対する干渉ができないに至つては、一体その判決によつて控訴しようとしても控訴もできないでありましようし、訴訟の進行もできないでありましようし、或いは又同時に、苟くも人権を擁護する、とか、尊重するとか、或いは迅速なる裁判を受けるという国民の権利とか、我々どういう点から見ましても、そういうような怠慢な処置が一体許されるのかどうかということを考える。私は勿論それは裁判長というものが、公判調書の作成にどれほどの権限があるかは別として、少くとも裁判長として一定のそれに対する調書の作成等につきましても、指揮をしなければならんし、又早速それを完了して、そうして調書の適当な処置をしなければならないということは、私当然なことだと思うのであります。そういうようなことまで司法権の独立だから差支えないのだ、幾らも例があるのだというに至つては、実に遺憾千万だと思います。私は或る裁判所の判事にこれはけしからんじやないかと言つて聞きましたが、そういうようなことは幾らでもあるのだということを聞いて実は私も驚いてしまつたのでありますが、私はそういうことまでも決して司法権の独立、判事の独立だと言つて放任されるものとはどうしても考えられない。司法権の独立ということは、まじめな裁判をやり、まじめな又立派な裁判をするための独立であつて、そういう怠慢な処置まで、一体それまで放任されるということは、私はどう考えましても受取れないのであります。そういうような問題については十分将来研究しなければならない。司法権の独立の問題についても私はよほど研究しなければならんものだと私は実は内心は考えておるのであります。

郡祐一自由党

○委員長(郡祐一君) 他に御発言ございませんか。ちよつと速記をとめて。    〔速記中止〕

郡祐一自由党

○委員長(郡祐一君) では速記を始めて。次回は明日午前十時より開会することにいたし、本日はこれを以て散会いたします。    午後二時二十六分散会

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