水産委員会 第3号
- 発言数
- 27 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1953/11/04
会議録
○委員長(森崎隆君) それでは只今から委員会を開会いたします。 本日五つほどの議題がありまするが、政府委員の関係から次回に割愛しなければならないものが出て来たわけでございます。それと入れ替わりまして緊急に千田委員のほうから丁度請願の形でも出ておりますが、日本近海のオツトセイ猟護事業許可に関する件につきまして、特に緊急の質問をしたいという申出がございましたので、この案件を議題に供したいと思います。
○千田正君 只今委員長の御説明の通り、請願にも出ておりますが、日本近海におけるところのらつこ、おつとせい捕獲禁止法に基いて、現在この業務をやつておる者たちは、全然その漁に従事することができないで、非常に生活も困窮しておる。こういう状態にあるので、その解禁方の請願が出ておるはずでありますが、この点は当委員会といたしましても、米軍の占領治下におきまして、らつこ、おつとせいの捕獲を禁止する法律案なるものが両院を通過して、そうして今日に至つた経緯は、大体各位が御存じの通りでありますが、当時は占領治下であつたためということと、殊に日・米・カナダ等、その他の条約が目前に控えている関係上、外交上の微妙な点もあつて、止むなくこの法案が日本の国会を通過した、こういうのでありますが、当時我々といたしましても、日本の自分の領土内に棲息しておらないところの動物に対しても捕獲を禁止するというような法律が果して立法上可能であるかどうかということで論争したのでございます。併し当時の占領軍の強圧下において、立法の根本的精神はむしろ強制された恰好のままに遂にこのらつこ、おつとせい捕獲禁止法案なる屈辱的な法案が通過したが、我々といたしましては、かかる法案というものは、当時一方においては魚族の資源保護法案という法律案が出ておつて、沿岸の濫獲が年々増加して行く、魚族の保護は重大なるところの沿岸漁業の進展のためにも実行しなければならない。その結果としましては、底曳その他の漁船の整理までして、そうして自制しつこの魚族の保護に当つたのであります。併しながら、一方においてはこのらつこ、おつとせいのごとく他の国に棲息する動物が沿海にやつて来て、そうして日本の沿岸を廻游するところの魚族に被害を与えておる。誠に矛盾した法律と言わざるを得ないのであります。たとえそれが占領下であつたとしましても、立法の精神から言いまするというと、自国の領土内に棲息しないところの海獣を我々が保護しなければならないということは絶対にあり得ないことである。こういう悪法は一日も早く解除しなければならない。独立してすでに二年、我々としましては、この独立国家においてかような屈辱的法案が今なお存続して漁民の生活を脅かすということは、誠に遺憾極まりないことでありますので、この法案の撤廃を要求してやまないのであります。ただここに問題となるのは、一応国際条約、殊に国際信義等に関係する問題であるからその点が一つのネツクにはなるでありましようが、これも日本の国内におけるところの自粛自制の精神を以て、その捕獲の方法に行政的な施策を加えたならば、必ずや相手国にも納得できるだろう。かように我々は考えまするので、水産当局としましては、この問題は重大な問題であると同時に、どうかして沿岸のこの業に従事する者たちの生活を一日も速かに安定するような方策をとつてもらいたい。かように思いまするので、この点水産当局の御意向を承わりたいと思うのであります。
○説明員(岡井正男君) 只今千田委員から御質問を承わりましたが、その点につきましては仰せの通りでございまして、我が国としても吉田・ダレス書簡に基いて現在これを許可しておりませんが、併し一日も早く日本の関係漁業者が困らないような条約の締結をしたいというような気持を以ちまして、現に引続いて調査をやつております。従来まで出ました科学的な資料は、遺憾ながら日本に有利に条約締結をするという基礎付けに不十分だと考えまして、本年も引続いてやつたのでございまするが、本年やりましたもののその資料につきましては、目下水産研究部におきまして鋭意資料の取りまとめを急いでおります。なお関係業者の御意向を総合して考えますると、鮭鱒などを相当おつとせいが多量に食つているんだというようなことをよく言われますので、その点も併せて考慮に入れて、より有利なような調査資料として来年度中には条約締結を是非やりたい。こういうふうなこちらのほうは希望を持つてやつているわけでございます。なお、その条約締結ができまして明朗になりまするまでのいろいろな取締方法等につましても、いろいろ御不満もあるようでございまするが、これらにつきましても関係官庁と適正公正に無理の行かないように我々としては仕事を運びたい、かように考えております。
○千田正君 もう一言聞いておきたいのは、先般水産庁の予算の説明で、らつこ、おつとせいの調査に関する予算の中に、昨年度よりは約倍額に等しい予算を要求しているようであります。ということは、結局調査或いは監督船の増加を意味するのか、若しくはそういうことにおいて漁場の拡大を意味して考えているのか。そうすれば本年度より来年度は捕獲の数も倍額に至るくらいまで捕獲して調査研究するという意図の下に予算を組んでいられるのか。その辺のところはどうでありますか、一応伺つておきたいと存じます。
○説明員(岡井正男君) それは双方ともかみ合わした点で予算を殖やしていると記憶いたしております。
○青山正一君 これはたしか第四国会ですか、第五国会でしたね、GHQの統治下にあつた日本政府としては止むを得なかつただろうとは思いますが、らつこ、おつとせいの捕獲禁止の法律案が出たのです。そのときにたしか私どもの院の中に丹羽さんという人がおいでになりましたが、その議事録を御覧になれば大体わかるだろうと思います。日本領土内に流れて来たそういうものは、私はあぐり網漁業の会長もやつております、漁業団体の会長もやつておりますが、撲殺してもいいとか、或いは取つても差支えないというふうなことで、何かそういう点は大目に見るとかというようなことが、たしかその議事録に載つておろうと思いますが、これはどうなんですか。これは大分警察のほうでやかましく言うているのですか。或いは海上保安庁のほうで何か……、千田さんその関係はどうなんですか。
○千田正君 今青山さんがおつしやつた後段のほうですが、海上保安庁の取締、若しくは国家警察の取締が厳重になつて、あの法律によつて、出さなくてもいい犯罪人を出しているという誠に遺憾な現実なんです。であるから、一応の頭数を殖やして、或いは一定の制限した漁場内で取ることを或る程度許せば、そういう犯罪人が出なくて済むだろうと思う。むしろあの法律があるために犯罪人を作つておるという矛盾した現況であるので、この法律に対しては我々は飽くまでも撤廃若しくは改訂を要望しておるわけなんです。
○松浦清一君 その法律の通つたときの国会に私たちはいなかつたので、その経過はよくわかりませんが、最近にいろいろと事情を聞いてみるというと、おつとせいのその増殖量といいますか、そういう点から考えてみて、これが自由に取れるようにするということについては、誰もこれは反対するものはない。皆そうしたいと考えているわけなんですが、別にアメリカあたりとの国際的な条約があるから、日本でそれを取らないという法律を作つたという、そういうふうになつているわけじやないのですね。そこの点をちよつと聞かして下さいませんか。
○委員長(森崎隆君) この問題について外務省から一つ。
○政府委員(小滝彬君) これは条約と申しますか、昭和二十六年の四月七日付の覚書というのがございまして、これに、おつとせいの海上捕獲に関する日本側の態度を表明しているのでございます。日本政府は、平和条約実施後、新らしい条約、新らしい条約というのは、おつとせいに関する条約が締結されるまでの間は、日本人によるおつとせいの海上捕獲を自発的に禁止して、新条約の締結のための交渉に参加する用意があるということを述べておるわけであります。まあ、それより前は、総司令部の指令によつてやつておりましたが、いよいよ日本が自主的な措置をとり得るようになりましてから、例の平和条約第九条による新らしい協定を作るまでの間にごたごたが起つてはいけないというので、当時はまだ占領下でありましたけれども、こういう覚書を取り交わしたというような関係がありますので、国際道義上これに従つて来ておるわけであります。
○松浦清一君 そうしますと、実際の取扱方としての問題なんですが、アメリカとの間に条約を締結するということのほうが先になるのか、それとも日本の国内において当然これはもう許されるべきものだという判断に基いて、あの法律をなくするということが先なのか。若し法律をなくしても、漁業上そのおつとせい捕獲に関する条約というものがきまるまでは取れないというのであれば、法律は作るけれども、その実施時期を条約が成立するまで延ばしておくとか、そういう扱い方については役所のほうじやどう考えておられるのでありますか。
○政府委員(小滝彬君) 国内法の関係は、水産当局からお話があると思いますが、こういう覚書を以ちまして、日本のほうは自発的に海上捕獲を禁止するという立場をとつておりますので、今後の交渉を有利に導く上にも、又日本の現在の水産界の公正な立場を関係国に十分熟知させる上にも、若しそういう措置をとるということになれば、米国及びカナダに話をする必要があろうと考えます。実はもつと早くこの交渉が開始せらるべきはずでありましたけれども、御承知のように昨年、昭和二十七年の二月から六月までの間四カ月間、三陸及び北海道沖で、米国やカナダと協同して三国の生物学者が共同調査を実施した次第でございます。ところが、この実施調査はいたしましたけれども、その後、共同調査報告書というものを早く書き上げなければならないところ、この共同調査報告書というものが意外に手間取りましたため、交渉開始に至つておらないのは非常に遺憾であります。が併し、この共同の調査報告書というものも極めて近いうちにでき上るということでありまするから、これができたら、早速三国の話合いを開始して、そうして日本側の立場もいろいろ業者の方からのお話もありまするし、水産当局が北洋のほうへ出ていろいろ調べた結果もあるようでありまするから、できるだけ科学的基礎に立つて日本の主張も十分申し述べて、この協定が日本の水産業一般に不利にならないような方向に持つて行きたい、まあそのように考えておるわけであります。その意味を以ちましても、実は一方的に日本だけの判定によつて、海上捕獲を今直ちに許可するというような措置は、却つて将来のために面白くない影響を及ぼしはしないかという立場もありますので、この共同一調査のみならず、水産庁当局といたしましても、いろいろ研究を進めておられるはずであります。
○松浦清一君 その共同調査というのは、日本とカナダとアメリカと三国が共同調査したわけですか。
○政府委員(小滝彬君) ええ。
○松浦清一君 そうしますと、日本だけの意思でその調査書を作り上げるということはできないわけですね。
○政府委員(小滝彬君) これは共同調査を進めておるはずでありまして、その点は或いは水産当局がよく御存じかと思いますが、この共同調査のとき取りましたのは、たしか二千三百頭くらいで、相当込み入つた調査を進めておるはずであります。
○松浦清一君 そうすると、問題の結論を出すほぐし方というものは、やはり共同折衝をやつて早く調査書を仕上げて、どういう方面で年どれくらい取つても差支えないのだという条約が結ばれるということが前提になりますね。それを結局我々の側としては政府に対してやはり早くやるべしということを強く要請するということよりほかないわけですね。どうですかそれは。
○政府委員(小滝彬君) お説の通りでありまして、これは一日も早く完了させなければならないから、こちらのほうからも、水産委員会あたりの非常な要望もありますので、更に督促するようにしなければならないと思います。同時にこの共同調査の報告、又一方は日本側だけででもいろいろな調査もあるのでありましようから、そういうものも附加えて出すということが有利であろうと考えます。いずれにいたしましても、早くやれということを督促して頂くことは、我々が今後米国やカナダに対していろいろな申入れをする場合にも有利であろうと考えます。
○松浦清一君 まあアラフラ海の真珠の採取の問題の経験もあつたので、あれはまあ濠洲との正式の漁業条約が締結されない前に、非公式な話合いといいますか、大体向うの承諾を得た形で出かけて行つて、そうして途中で濠洲自身がああいう法律を作つて混乱になつておる。そういう経験もあるので、これは早くカナダやアメリカのほうへわたりを付けて、そのほうの筋道をやはり完璧にしないと、中途半端なことでやりますと、又濠洲のようなことをやられると大変迷惑で困るので、それをやつてもらわなければしようがないと思うのだが、ほかの方に若し質問がなければ、ちよつと速記をとめてもらつて……。
○千田正君 小瀧政務次官に。あなたはまあ外務省の、外務出だから条約方面は詳しいはずなんだが、我々非常に疑点とするところは、吉田・ダレス書簡に基いてこの法律を国内法として決定した。併しながら、我々から考えれば、日本の領土内に棲息しない動物を日本がみずから国際信義というような形で立法したわけです。ところが一方においては魚族の資源保護法案というものが殆んど同じ年に出て来ておるので、それらの魚族を保護しなければ漁民の生涯ができなくなつて来るというので、わざわざ苦しい中から漁船を整理して、そうして魚族の資源の保護に当つておる。ところがその魚族を食い荒すところのこういう害獣を、而も日本の領海に棲息しないものを国際信義に基いて、そのような禁止法案を出さなくちやならなかつたという当時の実情は、今政務次官が言う通りであります。現在我々は国際情勢からいつても、李承晩ラインからいつても、三浬以上は公海である。公海自由の原則の下に我々は常時主張をしておる今日でありますから、そういうあらゆる面から、国際法上からいつても、又国内的な立法の精神からいつても、我々はこういう法律は一日も速かに改訂若しくは相手方と折衝の上、この法律の内容の改廃をすべきである、かように我々は思うのです。というのは、もう一つ政務次官に聞きたいのは、この法律はもうすでに皆さん御承知の通りでありますが、この法律に基いてらつこ、おつとせいの猟獲取締規則というものが出ておる。これは非常に厳重な規則であります。更に農林省の省令によつて、らつこ又はおつとせいの獣皮及びその製品の製造等の制限に関する省令、こういう非常に厳重な法律を作つて施行しておるのであつて、向う側と紳士的な折衝の結果、まあ条約が締結するまでは犯罪なく済むならは少くとも国内におけるところの取締法規であるとか、或いは省令であるとかいうものを緩和して、一日も早くこうした漁民の陳情に応える方法を考えなければならん、かように思うのでありますが、今の立法精神に対して外務当局としてのお考えはどうでありますか。我々はとにかく日本の領土に棲んでいないものに対して法律を作らなければならないというような馬鹿気たことで屈辱的な法律だと私は思う。
○政府委員(小滝彬君) この問題は何も公海の自由の原則に矛盾するのでなくして、むしろ日本がこの保護の必要を認めて自発的にやつたものでありますから、李承晩ラインの問題などとはよほど趣きを異にするものであつて、向うから強制されたという恰好にはなつていないわけであります。ただ先ほど松浦委員もおつしやいましたように、ここまで共同調査も進めて来たことであり、日本でも折角調査を進めているのだから、でき得べくんば紛争など起さないように、又日本が侵略的な漁業に乗り出したというような心証を与えないようにするのが、勿論当業者にとつては非常に今のところお気の毒ではありまするけれども、そう長いことの問題でもないから、一日も早く交渉して向うと話合いで、日本がプリビロフ・アイランドにおける割当てをもらわないならば、こちらのほうで取つた何頭までは分けてもらうというような方法にしてもいいでありましようから、現実の問題として、静かに考えて見まするならば、一方的にそういう措置を急にとるということも、考は外交上から見て如何かと考えます。ただ国内法規の問題につきましては私は存じませんが、その趣旨に合致するものであれば、或いはそうした余地があるかも知れません。ちよつと速記をとめて下さい。
○委員長(森崎隆君) 速記をとめて下さい。 午後三時四十五分速記中止 ————————————— 午後四時八分速記開始
○委員長(森崎隆君) 速記を始めて下さい。 只今の日本近海のおつとせい猟獲事業許可に関する問題につきましては、いろいろ速記を省いて懇談をいたしましたのですが、これらの各委員からの御発言の内容等は十分一つ考慮されまして、政府において特に早急に善処せられんことをお願いいたしまして、この議案を一応これでおいておきます。
○千田正君 大体今までの御答弁で結構ですが、水産庁当局並びに外務省としては、来年あたりはこの問題は現実に外交の俎上に乗せられますかどうかということと、水産庁としては、何かこの点に腹案があつて、多少議員諸君の要望に応える方針を何らかの形式でとるという御確信があるかどうか、その点だけを伺つておきたいと思います。
○政府委員(小滝彬君) 先ほどから申上げましたように、外務省としては、調査報告をできるだけ速かに作り上げてもらつて、一日も早く交渉に入りたいという考えを持つておりますので、特別の事情、又日本側で特別な資料を出さなければならんというようなことがない限り、来年度においては当然交渉を開始しなければならんというふうに期待いたしております。
○説明員(岡井正男君) 只今のお話でございますが、私どもといたしましては、問題が対外関係でございますので、よほどその点を慎重に考えて参らなければならんと思うのであります。併し漁業者の方が非常にお困りになつている実情というものも十分承わつておるのでありまして、何とかこの問題を早期に解決したいという方向において外務省と今後折衝いたすことは無論でございますが、私どもといたしましても、この問題の実態につきまして、無理をすることによつて、法規違反を誘発すれば、却つて国際信義を害するという逆の面も考えなければならんということは、只今千田委員のお話のあつた通りであります。併し又一方国際信義に対する関係等もありますので、その辺は非常にむずかしいところでございますが、私どもといたしましては、現地の実情を十分承知をいたしておるつもりでありますので、何とかこの問題につきましては実態に即しつつ、又国際信義を害しないという面におきまして、今後の行政措置を十分考えて行かなければならん、こういうふうに考えております。
○委員長(森崎隆君) それでは本件は一応この程度でおきまして、本日はこれにて散会いたします。 午後四時十一分散会