公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第3号
- 発言数
- 83 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1953/11/02
会議録
○森委員長 会議を開きます。 この際御報告申し上げます。奄美群島の復帰に件う法令の適用の暫定措置等に関する法律案について、先に本委員会より連合審査会開会の申入れをいたしておいたのでありますが、同法律案について、明三日午前十時より、法務、地方行政委員会と連合審査会を開くことになりましたので、委員各位の御出席をお願いたします。 —————————————
○森委員長 これより、前会に引続いて、修学のため寮、寄宿舎等に居住する学生、生徒等の住所の認定に関する問題について議事を進めます。この際質疑を許します。高瀬傳君。
○高瀬委員 簡単に自治庁に伺いますが、この六月十八日の通達を出すに至つた根本的な理由を、重複するかもわかりませんが、簡単に説明していただきたい。
○金丸説明員 厳密に申しまして、一般の有権者につきましては、公職選挙法に規定がございます通り、民法上の住所であるかどうかということを厳格に認定して選挙人名簿に登録をいたしておりましたのが、学生につきましては昭和二十一年の通牒以来、まあどちらかと申しますと、現在おりますところを住所と推定をして登録をいたしておつたわけでございます。従いまして、一般の有権者の扱いとの間に均衡を失すると申しましようか、齟齬があると申しましようか、終戦直後の住所か判然といたしておらなかつた時代とは違つて、世情の安定して参りました今日では、学生につきましても、一般の有権者と同じように、正確に住所を認定して名簿を調製するようにしなければならない、こういう考えで六月の通牒を出した次第でございます。
○高瀬委員 そういたしますと、今までの選挙法、過去から現在に至るまでの選挙法で、いわゆる民法上の住所というものについてある程度まで寛大な解釈をもつて投票権を与えておつたという例は、学生の場合以外はございますか。
○金丸説明員 昭和二十一年の通牒のもとにおきましては、病院、療養所等に入院しております患者につきまして、学生と同様に、病院等に住所があると推定をいたしておつたわけでございますけれども、公職選挙法ができます際に、一々厳密に住所がどこにあるかを認定して、名簿に登録をしなければならない、このようになつたわけでございまして、学生以外については、その長期の療養者だけについてしばらく行われたことがあるだけでございます。
○高瀬委員 そうしますと、現在病院、療養所はどういうふうになつておりましようか。
○金丸説明員 厳密に認定をいたしておりますので、清瀬村に御承知のように結核の療養所がたくさんございますが、調査いたしましたところでは、入院しておる者の約一割が、療養所、病院等に住所があるとして名簿に登録をされているようでございます。
○高瀬委員 そういたしますと、ただいま言われた病院、療養所に関するいわゆる有権者の投票権というものは、選挙法において住所に関する例外的な拡張解釈から、そこで選挙権があるというわけではないのですね。その点はいかがですか。
○金丸説明員 その通りでございま
○高瀬委員 わかりました。それでは、わが国で選挙法が施行されて以来、この選挙権を行使する場合に、大体民法上の住所ということがその選挙権があるかないかということの一つの重要な要素になつていると私は了解いたしておりますが、一体自治庁では、この選挙権の行使について、学生に対して何ゆえに——学生というよりは、将来選挙権の行使ということについて、住所の法律上の解釈をゆるめて、あるいは特殊な考慮を加えて選挙権を与えようという意思を持つておるかどうか、この点を伺いたい。
○金丸説明員 私どもは、憲法の十四条あるいは四十四条にございますように、社会的身分等によりまして政治的な差別をしてはならないという規定の精神から考えまして、学生だけ、あるいは軍人だけ、あるいは入院患者だけについて選挙法上特別の便宜を与えるということは、むしろ憲法の精神にそぐわないのではないか、かように考えます。
○高瀬委員 そういたしますと、自治庁がこの六月十八日の通達を出した際の理由として、敗戦直後、居所と住所というものが非常に混迷しておつて、なかなか調査がうまく行かない、従つて正確な意味のいわゆる生活の本拠というものはなかなか捕捉しにくいから、ある程度まで住所と居所というようなものを大目に見て、そうして学生の場合は、修学のために寮におる、あるいは寄宿舎とか下宿におつて通学しておるというような場合は、特にその解釈について大目に見たということですね。それを全然今後やらない、こういう方針なんでありますか、いかがですか。
○金丸説明員 現在の法制のもとにおきましては、やはり一般の有権者と同じように、真実に住所がどこにあるか認定をしてやつて参らなければならない、かように考えております。
○高瀬委員 そうしますと、敗戦直後、いわゆる昭和二十一年の通牒で学生に選挙権を与えた際のこの住所と居所が明らかでないという理由よりも、憲法十四条によつていかなる場合も政治的な差別を選挙権の行使などについてはしてはならないという趣旨にのつとつて、今回の改正がなされておるのかどうか、この点を伺います。
○金丸説明員 そうでございます。ただ、今問題になつておりますのは、住所の認定について、一般の有権者と学生の有権者との間について私どもは差別をしてはならない、こういうふうに考えておるわけでございます。これは選挙権があるかないかということにいてでございます。選挙権が与えられました以上、これは、できるだけ選挙法としましては行使がしやすいように立法上も行政上も考慮しなければならない。これはもちろん申すまでもないことでございますが、住所の認定は、現在の法律を前提にいたしまして、その解釈、適用上、すべての有権者を平等にしなければならない、こういう立場を私どもはとることが正しいのではないかというふうに考えて、通達を出したわけでございます。
○高瀬委員 そうしますと、一般のわれわれに選挙権を与える場合に、憲法十四条の趣旨以外にのつとつて選挙権を与えるということは、私は憲法の趣旨から考えて不可能であると思いますが、その点自治庁としてはいかが考えておりますか。
○金丸説明員 私も同様に存じております。
○高瀬委員 よくわかりました。従つてそういう憲法の趣旨から言いますと、学生なるがゆえに特殊ないわゆる例外的な選挙権を与える、あるいはそういうようなことは全然できないと解釈してよろしゆうございますか。
○金丸説明員 そのように存じます。
○高瀬委員 そうなりますと、問題は非常に簡単なのであります。学生なるがゆえに、住所というものについて拡張解釈あるいは特殊な解釈は全然できない、あくまで選挙権を行使する日本国民は、同じ立場に立つて、住所というものをはつきりといわゆる生活の本拠に求めなければならぬということが、ただいまの問答ではつきりいたしました。私はその点はこれ以上お聞きしないでもよかろうと思います。ただここで、その場合に、この六月十八日の通達の趣旨に従つて、はたして一体政府が考えておるような学生の選挙権の行使に関する改正ができるかどうか、この点私は一片の通達でははなはだ疑義を持つておるわけでありますが、この点、自治庁として、政府としてどういうふうに考えておられるか。
○金丸説明員 私は、先ほど来申し上げますように、公職選挙法に規定しておりますところの住所は民法上の住所である。これがまた従来までの統一した考えでございましたけれども、今回の通達に対します反対の意見といたしまして、民法の住所に限らない、各法律ごとに法律の目的に沿つて解釈をして行つていいのではないか、こういうような意見もあるわけでございます。従いまして、そのような見地からいろいろ反対もございますので、単に通達のままでいたしておきますことは、どうも事態をすつきりと治まるようにするゆえんではないと考えまして、自治庁といたしましては、選挙制度調査会を開き、そこに公法、和法を通じた学者等にも集まつていただきまして、できますならば通常国会に間に合いますように答申を得て、立法的に解決をいたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
○高瀬委員 それではこの問題について選挙制度調査会に諮問されたことがありますかどうか、その点ちよつと……。
○金丸説明員 すでに先月の二十一日に諮問をいたしまして、選挙制度調査会を開いております。
○高瀬委員 どうもその諮問されたということが、この六月十八日の通達を出されてからその間にずれがある。その点私は非常に遺憾に思うわけでありますが、一体選挙制度調査会の答申が急速ににまとまつて、その答申を得る見込みがありますか。
○金丸説明員 私どもは、法律上の解釈として、六月に出しました通達が当然と確信したと申しましようか、そういうことで疑問がありますれば、やはり国会等にお諮りをして、病院の患者と同じように立法的な措置を講じていただくようにしたかつたと思うのでありますが、当時は法律解釈の問題として当然のように思つておりました関係上、自治庁の全体の会議が決定をいたしたわけでございます。できますれば国会に諮つて、立法的な措置を講じていただいた方がよりよかつたということは、今日になつて私どもも考えておるわけでございます。できますだけ通常国会に間に合いますように、選挙制度調査会の方は急いで答申していただくようにお願いいたしております。
○高瀬委員 そういたしますと、選挙制度調査会の答申がありましたら、いわゆる選挙人名簿調製に間に合うように自治庁としては何らかの方法を講じて、この一片の通達によつてかくのごとき重大な改正をせずに、これを法律によつて改正するという決意を持つておられるかどうか、その点も承つておきたい。
○金丸説明員 そういう考えでございます。
○高瀬委員 それならば大体のお考えの向きはわかりましたから、政府がそういう法律案の提出によつてこれらの問題を解決しようという方針がはつきりしておれば、私どもはその法律案が出て来ましてから、この問題について対処したいと思います。私の質問はこれで終ります。
○鍛冶委員 ただいま承つておりますると、行政府としての自治庁の意思は明瞭になりましたが、さらに昭和二十八年七月十八日付をもつて、法務省民事局長の名でもつて、同様の通達を各法務局長あてに出しておると思います。自治庁の方はもちろん法律を研究してやられたことと思いまするが、主として取扱上の行政的な見解からやつておられるものでありまして、法律上の見解については法務省の方が専門であろうと思います。そこで法務省は、いやしくもこれを出される以上は、確固たる信念のもとにお出しになつたと思いまするが、その信念ができましたること、並びにこれを出さなければならない理由がどこにあつたかを、法務省側からお答え願いたいと思います。
○平賀説明員 住所の認定というのは、これは皆様御承知の通り非常にむずかしい問題でありまして、住所の定義そのものが非常に困難であります上に、具体的な事案におきましていずれに住所があるかということは、これは非常に認定が困難なのでございます。ところが、選挙人名簿の調製でありますとか、法務省で所管しておりますところの住民登録事務の処理、こういう多数人を相手といたします事務におきましては、あたかも裁判所でやりますように、いろいろの事情を総合して認定するということは、実際問題として期待しがたいことなのでございまして、やはり一応の行政的な何らかの基準というものをきめて、そして割切つて行くという措置を講じなければならぬことになつて来るのでございます。それで本年の六月十八日に自治庁の方から今問題になつておりますような通達が出ましたので、住民登録の関係においても、やはり住所の認定が、住民登録の関係と選挙の関係において別々になつては非常におかしいことになりますので選挙の関係におきまして政府の解釈というものがそういうふうにはつきりなりますと、住民登録の方におきましても、やはりこれに合せて行くということがどうしても必要なのでありまして、住民登録の方と選挙の方と取扱いが異なるということになりますと、第一線の機関におきましては非常に混乱を来しますし、また選挙人としましても、いずれに登録されるかということについて非常に不安を来す。選挙人名簿にはいずれも登録されるか、住民登録の関係においてはいずれに登録されるかということで非常に不安な状態を来すということになりますので、法務省の方におきましても、やはりこの自治庁の通達にならいまして、住民登録におきますところの従来の取扱い、と申しますのは、学生の住所というのは修学地にあるのが原則だというその原則が、必しも実際問題として適当ではない場合もあり得る。一律に修学地にあるとする取扱いは改めるという趣旨で、七月十八日の民事局長の通達を出した次第でございます。
○鍛冶委員 はなはだ心もとない答弁ですが、私の言うのは、自治庁にならつてやられたのではなく、あなたの方は法律的には主たる立場にあるのだから、自治庁の通達には間違いのないものだという信念のもとに、これをお出しになつたのだろうということを聞いている。どうだかわからぬが、自治庁にならつて出したと言われるなら何をか言わんやだが、その点を聞いている。そうだとするならば、もつと具体的に申し上げます。自治庁と相当協議の上でお出しになつたのか。協議をなされるとするならば、あなた方の方でこうでなければならぬという何らかの根本的な理由があつたろうと私は思う。その理由を伺いたいと思います。
○平賀説明員 七月十八日の民事局長通達を出しました事情は、先ほど申し上げた通りでございますが、六月十八日の自治庁通達が出ます際に、特に協議を受けたわけじやございませんけれども、自治庁の御見解というのは、法務省の方でもかねがね承知いたしておりましたし、従来の住所の解釈、ことに戦前の取扱いでございますが、大審院の判決、それから行政裁判所の判決、あるいは学者の意見、あるいは同じく司法省でやつておりました寄留事務の取扱いなんかの関係におきましては、大体において郷里の方に住所があるという見解の方が有力であつたのじやないかと思うのでございます。現在におきましても、オーソドツクスの解釈といたしましては、やはり郷里にあるという解釈が有力になるのじやないかというふうに考えております。でありますから、七月十八日の民事局長通達を出しますに際しましては、ただ単に自治庁へならえをしたというだけでなしに、やはり私どもの方におきましても、十分検討いたしまして、これでいいのではないかという趣旨で出したわけでございます。
○鍛冶委員 大事なところだからもう一ぺんくどく聞きますが、前に出ておりました通達は、学生、生徒については、寮その他寄宿舎に住しておる場合には、寮及び寄宿舎に住所があるものと推定するとなつておつた。それではいかぬということが明瞭になつたので、そういうようにやつたのだろうと思うが、今あなたの言われたのは、要するに郷里にあるということが郷里にあるとばかりも行かぬ。また寮や寄宿舎にとまつてにおるからというだけで、そこが住所だと認めることがいけないのだ。もつと実際に調べて、生活の本拠がどこにあるか、民法上にいうところの住所ははたしてどこであるかということを確かめない限りは、寮及び寄宿舎におるというだけではいかぬ。こういう趣旨を正当と認められたかどうか。この点をくどいようだがお聞したい。
○平賀説明員 まさしくその通りでございます。
○鍛冶委員 それならば、さらに進んでお聞きしますが、六月十八日の通牒は、趣旨は別にかわらないが、どうもここに例示として「寮、寄宿舎等に居住している学生生徒で、その学資の大半を郷里から仕送りを受け、休暇等に帰省する者の住所は、郷里にあるものと認められる。」とある。これは例示ではありますが、その学資の大半を郷里から仕送りを受けているということをもとにして、仕送りしている先に住所があると、こういうように誤解される憂いがありまて、われわれはこれを見て、よけいなことを言つたものだと思つておりました。そこで、いろいろ研究された結果だと思いますが、二十八年九月二十九日に、自治庁次長の名前をもつて、各都道府県選挙管理委員会にあてて、この訂正の通達を出されました。訂正というか、もう一ぺん言い直したことになりましよう。この点に対しましても、法務省としては、これで間違いないものという信念をお持ちでしようか、いかがですか。
○平賀説明員 自治庁の方におきましては、六月の十八日の通牒の趣旨につきましていろいろ疑義が生じておりました関係で、本年の九月二十九日付で、さらに自治庁の次長名をもつて通牒をお出しになつたのでありますが、民事局の方におきましても、やはり七月十八日の通達の取扱いに関しましていろいろ疑義が生じておるようでございましたので、やはり同日付、すなわち九月二十九日付をもちまして、七月十八日の通達の趣旨をさらに一層明確にいたしたのでございます。
○鍛冶委員 そうですが。それは見ていませんでしたが、それとこれとは同趣旨でしようね。
○平賀説明員 同趣旨でございます。
○鍛冶委員 それならば、考え方においては地方においても一致したと思いますが、そこにで問題は取扱いの点です。この通達によつて事実住所を調べて、生活の本拠がどこにあるか調べるということは、これは何人といえども異議がないと思います。これは選挙管理委員会で調べておられると思うが、そのお調べに対して万遺漏なきようにやつておると認めておられるかどうか。これは自治庁の方から承りたい。
○金丸説明員 私どもはさように考えております。御承知のように、学生の多くおりますようなところで、反対のために、実際上調査書を渡しましても拒否されて、なかなかできないというようなところがございましたが、そういうところはできるだけ、これは職権調査主義でございますから、あるいは住民登録票なり、あるいは配給台帳というようなものを基礎にしたり、あるいは下宿に行つて尋ねるとか、これはほかの人に、たとえば私が家におりませんければ、家の者に聞いて調べるということが一般の有権者についてはあり得ることでござすいます。極力そういうふうにさせております。あるいはどうしても調査ができない、従つて住所がどこにあるか選挙管理委員会として確信がつかないというようなところでは、名簿に登録していないところもあろうかと思います。そういうところは今月の五日から十九日まで十五日間異議の申立てができます。その際に、自分はこうこういう理由で住所が寮にある、下宿にある、だから名簿に登載してもらいたいということを選挙管理委員会に申し出ますれば、それを審査して、その通りであれば名簿に登録する処置をするはずでございます。これによつて、万一そのような登録漏れ等がございますれば、措置して行くことができると思いますので、この点は夏以来非常に問題になりましたために、各府県の選挙管理委員会、あるいは大きな市と申しませんでも、市の選挙管理委員会の団体がございますので、そちらの方で研究をしてお互いに連絡をとつて進めておりますので、私どもは世上心配されておりますような混乱は生じていない、かように考えております。
○鍛冶委員 もちろんそうでなくちやたいへんなんだが、そこで、聞くところによると、調べる方法がないといつてさじを投げておる選挙管理委員会もあるとか。それから、あなたの方の六月十八日の通達に「学資の大半」と書かれたから、学資は幾らもらつておるかと言つて、学資だけで調べておる事例があるということで、これはうわさでありますが、実際耳にするのであります。さようなことがあつてははなはだ困るし、またそういうことのないようにというので九月二十九日の通達を出されたと思うが、もしそういうことがあるとするならば、九月二十九日の通達が効をなさなかつたということになるのですが、その点に対して杞憂にすぎないものか、またどうお思いになつておりますか。
○金丸説明員 選挙管理委員会は、六月の通達によりましても、これは典型的な場合があげてありますので、実情に即して調査しなければならないということは、もう明治二十二年以来選挙人名簿をずつとつくつて毎年々々やつておりますから、私どもは十分に心得ておると思つております。だから間違いはない、かように信じております。
○鍛冶委員 同様のことが私は住民登録にも起ると思う。ことに私として心配にたえないのは、もちろん住民登録には住所のある者でなかつたら登録せられないのですから、その原則が行われるとするならば、住民登録に記載された以上は、一応その記載された者はその他に選挙権がある、こう認めなくちやならぬものだ。また将来においても、住民登録を、そのような効果のある、権威のあるものにしたいと思つて、願わくばこのたびの選挙法の改正にあたつてもそのことを明瞭にしてやりたいものだと考えておつたわけです。ところが、今言うのと同様に、住民登録の際においても非常にこの点の認定がむずかしかつただろうと思われる。また学生生徒に対しては大体どういう取扱いをしておられたか、この点事情がわかれば、わかる程度でひとつ御説明を願いたいと思います。
○平賀説明員 住民登録は昨年の七月一日から実施いたしたのでございますが、その際におきましては、学生寮などに居住しております学生生徒につきましては、修学地にあるのを原則とするという取扱いで発足いたしたわけでございます。先ほどからお話に出ましたように、本年六月十八日の選挙の取扱いがかわりました関係で、こちらも、実はそれにならつて、先ほど申し上げましたように従来の取扱いを変更することにいたしたのでございますが、しかし、最初に申し上げましたように、住所の定義というものがそもそも非常にむずかしい問題でありますし、ことに具体的な個人の住所がどこにあるか、学生なんかのように郷里にも居住する、それから修学地にも居住しておる、居住しているところが一箇所以上ある人につきましては、どちらが住所かということになりますと、非常にむずかしい問題になつて来るのでございます。でありますから、これは将来の問題でございますが、私どもの方といたしましては、できることならば、ひとり選挙だけではございません。住所というものを基礎にいたしまして地方税の問題もありますし、その他住所を基礎とします法律関係はいろいろあるのでございまして、こういう法律関係は、やはり統一的に処理されて行く。選挙の方では住所はここにある、税の関係では別なところにあるというようなことになつては非常に困りますので、やはり統一的な処理ができなくちやいかぬ。しかし、住所というのは、ただ単に学資の出所がどこであるか、休暇に帰省するかどうか、これだけできまるのでないことはもちろんでございまして、その他の諸般の事情を総合して住所を認定しなくちやなりません。この点は本年九月二十九日の私どもの方の通達でもつて重ねて明確にいたしたのでございますが、しかしながら、このように生活関係の全部を総合的に観察して住所を認定しろということになりますと、選挙人名簿もそうでありますが、住民登録のように多数人を相手とする行政事務の処理におきましては、実際問題としてはほとんど不可能に近いと思うのでございます。すべての事情を総合して認定するとすれば、言うべくしてなかなか行われないことではないかと思うのでございます。でありますから、法務省の方といたしましては、できることならば、住民登録法というものができました以上は、しかも住民登録法の第一条におきまして、住所において住民は登録して、これを諸般の行政事務の基礎資料とするということを言つております以上、やはり住民登録によりまして登録された場所、そこを住所として、これを基礎にしてすべての行政事務を処理して行くということが一番いいのじやないか、こういうふうに考えておるのであります。住所登録におきましては、届出によつて登録をするのが原則なのでございます。届出がない場合には職権で登録をするという道ももちろん開かれておりますけれども、原則は届出が原則なのであります。で、住所がどこにあるかということが一番よくわかるのは本人であろうと思うのであります。本人の側から届出が出ましたならば、そこに全然居住しておる事実がないというような場合は別でありますが、そうでない限りは、一応そこに住所があると推定すべきものでなかろうか。これは将来の問題にわたりますけれども、選挙におきましても、やはり住所の認定は届出に基いて登録されております住民登録をもとにして認定して行く。これが真実に反するという事情があれば、職権で訂正するという道はもちろん残されておりますので、こういう方法でもつて選挙人名簿もつくられて行くということになりますと、比較的無理のない、理論にも実際にも合致する取扱いが可能になるのではないか。もし将来公職選挙法が改正されるというような際には、こういう点を十分御考慮願つて、こういう方針で早急に立法化されたならば非常にいいのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
○鍛冶委員 そうだとすると、どうも疑問が起つて来るが、今あがつております具体的な例からいつて、学生、生徒は、住民登録の際に、寄宿舎及び寮に住所ありとして届け出た。今まではそうしておつたでしよう。そうすれば、住民登録は東京に来ておる学生であれば、東京に住所あるものとして登録されておつたと思うのです。そこで、この通達が出ますと、これを一々調べて、職権で取消して、郷里にあるものとしておられるのですか。それともどうしておられるのですか。
○平賀説明員 その点につきましては、九月二十九日の通達でも言つております通り、学生の住所は原則として郷里にあると言つておるわけじやないのでございまして、やはり個々具体的な事実について認定すべきものである。学資の出所であるとか、郷里に休暇には帰るかどうかというのも住所認定の一資料ではあるけれども、それだけが住所認定の資料るのじやない。また修学地に居住しておれば、そこが住所だと断定するのでもない。諸般の事情を総合してやるということなのでございますから、当初におきましては一応修学地に住所があるとして登録をしておるのでありますが、何分住民登録の関係におきましては、職業は記載要件になつておりませんし、登録されておる者がはたして学生であるかどうかということを調べる方法がないわけでございまして、学生だけにつきまして特に学生だけを拾つて実態調査をやるという取扱い、これは妥当でないと思いますので、住民登録の方では、特に学生だけを取出して、あらためて職権で実態調査をしろという趣旨ではないということを九月二十九日の通達で明らかにしておりますので、大体登録当初のままのものが大部分ではないか、その後住所の移動があれば別でありますけれども、大体それが基礎になつておるというふうに考えております。
○鍛冶委員 そうなると実際とこれとが合わないということになつて、はなはだめんどうになつて来る。これは過去の事実だからやむを得ぬといえば、やむを得ぬですが、そうしますと、学生、生徒は寮及び寄宿舎にあるとして、東京で選挙権を行使することになります。しかし、それは選挙管理委員会でどうしておるか知らぬが、かりに住民登録をもとにしてやるとすれば……。そこである人が、これはどうもけしからぬ、住所のないものを住所としてやつたのだというので、仙台の高等裁判所に出したような訴訟を起すとすれば、みんなそれは選挙権がないものとして、数が多かつたらその選挙は無効になるという、はなはだ恐るべき危険を感ずるようになりまするが、 これらに対しては別にお考えはありませんか。また、もしそういう考えがあるとすれば、どういうふうにやろうとにお考えになつておるか。これは重大だと思います。
○平賀説明員 その点につきましては、これはひとり今回だけじやなくて、今までの選挙についてもそういう問題は起ると思うのでございますが、かりに現在の住民登録というものを基礎にして選挙人名簿がつくられておると仮定いたしますと、その住民登録が、かりに寮などの所在場所に住所があるとして登録されておるという場合に、必ずしもその住民登録が間違つているとは言えないのでございます。裁判所で問題になりますと、この場合ほんとうに諸般の事情を総合して認定するわけでありまして、間違つておるのもあるかもしれませんが、正しいのもあるかもしれません。これは一概に全部これにならうということはもちろん言えないというふうに考えます。
○鍛冶委員 それが無効にならぬとも言えないでしよう。そこでもう一つ伺いたいのは、あなたの方で住民登録上住所ありとして認めているにもかかわらず、選挙管理委員会の方で、ないんだ、こういうことで郷里にあるものとしてやられるとなると、住民登録と選挙権というものは一致しないという現実が現われて来る、これははなはだ遺憾だと思うが、これに対して一致するようなことはどうあつてもあなたの方でとられなければならぬと思いますが、これに対してお考えになつておりますか、また何か方法をとつておりますか。
○平賀説明員 法務省の方におきましては、先ほど鍛冶委員からもお話になりましたように、住民登録を基礎にいたしまして選挙人名簿を調製する、税の関係もこれを基礎にしてやるという、そういう趣旨の立法措置ができるのが一番望ましいと考えている次第であります。
○鍛冶委員 いくら立法措置をとつても、行政府と法務省との意見が違つて、法務省はここに住所がある、行政府ではここにないとやられたらしようがありませんよ。それよりも、あなた方の方がこういう見解だと思つたら、この見解が悪いかいいか、それでいいというならば、これに従つて行政府もやる、こういうようなやり方にしなければならぬ。なるべくこうなるのが好ましい。それはもちろんだが、それでは取扱いが非常にめんどうになると思う。私はきよう主として聞こうと思うのはその点なんだ。いろいろこれについては地方ではまちまちになつているとみな言われるのはもつともだと思う。これをいかにして調整するかということを私はここで研究したいと思う。あなた方の先ほどの理論から言うならば、これは間違いないと思うが、実際問題としてそういうふうになるとはなはだ困る、こういうことで私は聞いているんですが、これはもう少し実際に当つて真剣に研究して、もし今まで研究しておらぬというならば、今後どうするかを私は聞きたい。これは重大だと思う。御両名から御意見だけを聞いておきたい。
○平賀説明員 御承知の通り、選挙人名簿の調製は市町村の選挙管理委員会が担当する。住民登録の方は市町村が担当する。担当の機関が違うわけで、ややもすればそれぞれ認定が違うという現象が起りがちでありますので、住所の問題につきましては、自治庁と私どもの方と密接に連絡して、住所の解釈について自治庁と法務省の間に齟齬が生ずることのないように従来は努力して来たのでございます。しかしながら、このように選挙人名簿調製の機関と住民登録の処理の機関が別個の機関になつておりますと、やはりどうしても第一線におきましては見解の相違が生ずることは避けがたいと思うのでございまして、こういう矛盾、不一致を防ぐためには、選挙人名簿は住民登録をもとにしてつくる。住民登録におきまして、ここに住所ありとして登録しておれば、それをもとにして選挙人名簿をつくつて行くということは、事務的には一番簡素でありますし、不一致を生じない方法ではないかと考えるのであります。その具体的な方法につきましては、今法務省と自治庁との間で具体策をどういうふうにするか、こういう方法が可能であるか、可能であるとすれば、どういうふうにしたらいいかということで、検討をしている次第でございます。
○金丸説明員 鍛冶委員の御質問は、従来学生は寮、寄宿舎の方に住所があるとして、たとえば東京なら東京の住民登録に載つておつた。ところが、一概にそうは言えない。もつとも学生によりましては、選挙管委員会の方では親元に選挙権があると認定する、住民登録は残つている、住民登録が残つていると、そこに住所があると推定を受けるから訴訟が起きはしないか、こういう御質問の趣旨でございますね。——そういう心配がございます。ございますので、ところによりましては、今回住民登録の一斉調査をいたしまして、その際に選挙管理委員会と合同調査いたしております。そして住民登録の方では、学生とかいう職業を住民登録表に書かないのであります。そうしますと、選挙権に関係のある住所がどちらにあるかということがわかりませんので、同時に学生であるかどうか、そして住所がどこにあるかという認定をあわせていたしております。だから、選挙管理委員会と、大体住民登録をいたしております係は東京都ですと戸籍課でございますが、これが連絡をとつていたしております。それから今までも住民登録は法律上の直接のつながりはございませんけれども、これは名簿調製上の重要な参考資料にいたしております。 それから、学生については、今回の特別の措置として、六月の通達によりまして、そのように従来の登録通りでは間違いがあり得る、かわり得るということがわかつておりますので、その点は非常に慎重を期しまして、かりに住民登録にあつても、住所がないと認定すれば、それは選挙管理委員会の方からこちらの戸籍の方に通知するし、また郷里の方に、自分の方では選挙権がないと認定をしたから、あなたの方で落していると困るからというので、親元の市町村の選挙管理委員会へ連絡をして、そちらで名簿を調製する際にできるだけ載せるように連絡等も講じております。だから、その点は、市町村の選挙管理委員会と住民登録の係との間におきましては、私どもは相当に緊密な連絡をいたしておると、かように考えております。そういうようなことが起きませんように、九月二十九日でございましたか、民事局長から通牒が出されておるのでございます。この通牒の趣旨は、選挙の方と住民登録との間にできるだけ間違いがないようにという趣旨で、注意を喚起されたものだと私どもは考えておるのでございます、
○鍛冶委員 そこがうまく行かぬとやはり混乱しますが、もう一つ私は実際問題として重要なことを聞きます。米の配給は、住民登録に載つている者でなかつたら配給せないことになつておりはしませんか。御承知なければしかたがないが、いかがですか。
○平賀説明員 配給の方は私詳しく存じませんが、配給の方ではどうも住所でなければ配給しないとはなつてないようでございまして、やはり住所でなく、居所で配給することも認めているようでございます。しかし、まあ大部分の人は住所で配給を受けていると思いますけれども、住所でないところで配給を受けている人につきましては、登録されていなくても配給を受けているわけである、こういうふうに私どもは承知しております。
○鍛冶委員 この点も、登録せられる際に、要するに法律的にいえば居所と住所と別個にせなければなりませんが、これははたして十分に行つているかどうか、非常に疑問だと思います。そこで、大体の取扱いは、住民登録に載つた者は原則として配給されるということになると、今自治庁で言われるように、住所は移つておらぬと自治庁で認められる者でも、配給を得るがために登録をする者が出て来る、こういうことになりますと、そういう場合大きなギヤツプが出て来やせぬかと思つております。これらの点もよほどそれらの人々と協議の上でやられないと、同様の混乱を生じ、選挙権にも重大な影響が来やせぬかと、こう思いますので、これもひとつつけ加えて御研究を願いたいと思います。われわれも、住民登録法をつくるときに相当苦心して、これは責任があるわけですから、住民登録をほんとうの基礎としてやれるようにしてもらいたいと思うので申すのですが、それはその程度の御注意にしておきましよう。 そこで、今度のこの選挙制度調査会に対して内閣総理大臣の諮問しておらるるところは、公職選挙法中住所に関する規定につき改正すべきものがあるか、もしあるとするならば、その要項を示されたい、こうあります。どうも私は、先ほどからの議論によりますると、この諮問事項がちよつとわれわれの考えているのとピントが合わないのじやないかと思う。住所ということは、これはもう法律できまつているのですから、住所に選挙権があるということはほとんどだれも異論がない。さらにまた住所は生活の本拠であるということ、これも異論がない。従つて、住所でなければ選挙権がないだろう、住所は生活の本拠地である、だから生活の本拠地でなかつたら選挙権がない、こういうことを言つておられる。あたりまえのことをあたりまえに言つておられる。研究してみれば問題はないのです。ただ問題は、その生活の本拠地はここであるということをつかむことが困難だ、そしてまたいろいろな官庁によつてその認定の方法が違うとここに混乱が生ずる、こういうことなんですから、そこでむしろこれは住所の規定に関する改訂ではなく、住民認定に対して何か法律上定めることはないか、こういうことでなければいかぬと思うのですが、これはどうです。
○金丸説明員 そういうつもりなんでございますが、先ほど申し上げましたように、選挙法の住所というのは選挙しやすいように認定したらいいのではないか、民法の二十一条の住所とは限らない、こういう説が大分あるのでございます。私はそうは思つておりませんけれども、そういうような学者の意見等もございますので、その点もはつきりいたしたい、また住所の認定の基準も、できますならば、学生だけに限らす、一般の有権者の住所の認定の基準等とも関連して規定した方がいいのではないか、そういう意味でございます。広い意味では、認定の基準も法定したらどうかという気持でございますけれども、民法二十一条の住所でないという意見がございますので、そういうこともあわせて諮問いたします関係上、字句はそのようになつておりますが、実質的には鍛冶委員のお考えと同一だと思います。
○森委員長 鍛冶君にこの際お諮りいたしますが、次の発言を待つておられる方もありますので、簡単に願います。
○鍛冶委員 もう済みます。もう一つ念のために聞いておきたいと思います。今言うように、住所そのものを、民法に言う住所と選挙法に言う住所とをかえるということになれば、これはたいへんなことで、まさかそんなばかなことはできぬと思うが、そうではなくて、問題は生活の本拠というものの認定がむずかしい。そこで、先ほどから議論してみると、あなた方もずいぶんむずかしいであろうし、従つて第一線におります人々が、これを的確に認定するということは容易でないことはおわかりになつたと思います。これはわかつていると思う。そこで私が聞きたいのは、こういうめんどうなものを、六月十八日の通達と九月二十九日の通達だけで、お前らこれでやれということであれば、いろいろ批判の声が起ると思うし、また法務省においても、七月十八日と九月二十九日に出されたかしらぬが、それだけでは私は地方では非常に迷つておると思う。そこで、でき得る限りそういうことに迷わないように、ある程度の基準を示すとか、あるいはこれに対する知識を指導するとか、何らかの手を打たれなければならぬと思うが、手を持つておいでになりますか、いかがですか。また、打つておられぬとすれば、今からでも遅くない。今現に問題になつているのだから至急何らかの具体的の措置を考えられる御意思があるかどうか、これも両方の方にお聞きしたい。
○金丸説明員 御説の通り非常にむずかしいのでありまして、東京都は学生が全国で一番多いところでございます。区の選挙管理委員会から、いろいろな例をあげまして、東京都の選挙管理委員会に、認定についていろいろこまかい点を私どもの方に質問いたして参りましたので、こちらの方でそれに具体的な一々の例について回答をし、これを全国の府県の選挙管理委員会へ出しまして、市区町村の選挙管理委員会へそれを教えて、認定の参考にするようにさせております。
○平賀説明員 民事局の方におきましては、七月十八日の通達を出しましてから以後は、ずいぶん地方から照会がありまして、大分疑義を生じたのでありますが、九月二十九日の通達でもつてその趣旨がはつきりしましたので、その後は別に、まだ日もそうたちませんけれども、照会もありませんので、大体これで一応疑問は解消したのではないか、そういうふうに考えております。
○鍛冶委員 これは、そういうことじやなくて、もつと具体的に、迷わぬように、ぜひともあらゆる方法をもつて指導せられることを希望いたしまして、私のきようの質問を終ります。
○森委員長 島上善五郎君。
○島上委員 この問題は、九月二十一日の本委員会においてずいぶん論議されたところでありますので、私はあまり同じ議論をむし返したくありませんが、念のため三浦法制部長にお伺いしたいというのは、昭和二十一年の通達の当時には、修学のため寮、寄宿舎、下宿等に居住している学生、生徒の住居は、原則としてその寮、寄宿舎または下宿にある、こういう通達がございましたが、私の記憶に誤りがあれば別ですが、この当時はたしか病院に入院しておる者も同様に扱われておつたと記憶しておる。そうして、その後法律改正をいたしまして、その法律改正の際には、病院に入院してる場合と学生生徒の場合とはつきり区別いたしまして、二百七十条の二項に入院加療中の者に関する規定をはつきりと入れております。そのときには、学生に関しては特段の規定がここにはありませんが、私は、入院している者と学生は全然違う、つまり、学生の場合には、学習をすることが社会生活の中心である、住居とは社会生活をしておる中心の場所をさすものである、その人の生活の金がどこから出るかということによつてきまるものではないと思うのです。もしその人の生活費が出るところが住所であるということになるとこれはひとり学生生徒のみならず、いろいろな場合があると思う。海外から引揚げて来てまだ自分の経済生活の基礎がはつきり固まらない者でも、三箇月、あるいは時によつては三箇月に達しない者でも、その引揚げて来た場所で選挙権があるということさえこの法律の二百七十条ではつきり規定しているくらいでありますが、学生ばかりでなく、今日のように生活が困難になれば、一時失業しておつて新あるいは親戚その他から援助を受けておるとか、おめかけさんのように旦那から経済的な援助を受けておるというような場合がずいぶんある。そういう場合のことは今日全然問題になつていない。そうして学生の場合のみを問題にしているということは、それこそ一般人と同様に扱うということを言つておりながら、実際は一般人とはなはだしく区別しておる結果になるわけであります。そこで私は、この法律改正によつて二百七十条の二項に入院加療中の者のことを特段に規定した当時、学生生徒に関する扱いの議論が当然されたと考えるので、その当時のいきさつについてタツチしておられる三浦法制部長に、その間の事情を承りたいと思います。
○三浦衆議院法制局参事 ただいまお尋ねの点につきましては、公職選挙法を制定いたしまして、二百七十条の第二項、第三項に病院に入院加療中の者につきましての特別規定を置いたときにおきまして、一応私どもの方で検討いたしたわけでありますが、御承知の通り、昭和二十一年に自治庁が、そのときの内務省でありますが、通牒を出したときには、修学のため寮、寄宿舎等に入つております人、それから病気のために療養生活をして病院に入つております人たちは同じように取扱いまして、学生については寮とか寄宿舎、それから療養生活をいたしております者は病院の所在地に住所がある、こういうようにいたしたのであります。しかし、いろいろ検討されました結果、ことに法律的な見地から考えましても、病院に入つておる人の生活の本拠をどういうように考えるべきであるかということをいろいろ検討いたしますと、生活の本拠というものはやはり社会生活の中心である場所であろうと考えられますので、病院に入つておる人の社会生活は、社会生活の中心部面があるという意味におきましては、一時的に自分の病気をなおしたりするためにそこに入つておるのであつて、社会通念から申しましても、あるいは本来の法律通念にかんがみましても、病院に住所があるということは適当でない、かように考えました結果、療養生活をいたしておる者につきましては、従来の取扱いをかえて、原則として自分のうちに住所がある、病院に住所があると推定してはならない、かような規定を置いたわけでございます。しかしながら、療養生活におきましてもいろいろな形態がございます。たとえば肺病になつておるとか、癩病になつて長期の療養生活を営んでいる寄るべのない人があつて、そこがその人の長い間の生活の根拠地であるということが認定されるならば、その住所をそこから奪つてほかのところに住所があるということにいたしますことは選挙権剥奪の結果になりますので、そういう人たちについては、二百七十条第三項で特別の規定を置いて、「前項の規定は、入院加療中者の選挙権の行使を妨げる意味を有するものと解釈してはならない。」こういう取扱いをいたしたわけでございます。その場合におきまして、寮生活をいたしております学生、生徒をどうするかということを考えましたが、これは、先ほど来ここでも御議論のありますように、非常に住所認定のむずかしい問題であります。私といたしましては、一応何にもとらわれませんで純法律的な見解から申し上げますならば、学生のいわゆる生活の本拠ということを考える場合には、学生の生活の本拠はどこにあり、どういうものであるかという形態をもう少し掘り下げる必要があると思つておるのでありまして、たとえば、従来あるいは今度の通牒等でいろいろ問題になりました場合におきましても、その人が家から仕送りを受けておるとか、あるいは自活して自分で生活の道を開いておるとか、こういうものを一つの要件にするというようなことが最初に考えられましたが、それはあまり適当でないということであまり重く見ない、こういうことに現在の通牒等においてはなつておるわけだろうと思います。これは、先ほどもちよつとあげられました憲法十四条あるいは四十四条等におきまして、選挙人の資格はその人の財産とか収入によつて区別してはならないという規定があります以上、選挙権を与える、与えないということを、収入、財産によつて区別することはもちろん憲法上適当でありません。また、選挙人の選挙権行使の要件として、東京であるとか郷里であるとかいうことを収入とか財産等によつて区別することも、憲法四十四条の建前から私はどうかと考えておるわけでございます。従いまして、そういうことになりますると、たとえば、学生生活から、家から仕送りを受けているとか生活を自分でやつておるというような要素を除きまして、そうしていわゆる学生の生活の本拠は何かと考えました場合におきまして、さらに一応一般に考えられ得ることは、郷里に休暇の場合にときどき帰つておる、そうすればやはり独立して生活していないのだから、親元に住所があるのではないかというようなことも一応言われておるわけでございます。しかしながら、郷里にたまたま帰るということが生活の本拠とどういうかかわりを持つかということをもう少し考えてみまするならば、いわゆる親元に帰る、郷里に帰るということであつて、それは親の生活の本拠である郷里に帰るということであつて、学生の生活の本拠である自分自身の生活の中心地に帰るという意味とは必ずしも一致するものではない、かように考えるわけでございます。そういうように考えて参りまするならば、少くとも学生、生徒等について、生活の本拠はやはり学生生活ということが社会生活の中心部面である以上は、その他の要素もいろいろ考えられましようけども、どうしても学生生活ということを中心として生活の本拠というものを考えて行くことが法律的にも妥当であろう、かように考えておるわけでございます。従いまして、その当時におきまする学生等に対しまする通牒、要するに寮、寄宿舎に生活の本拠があるから、それで選挙権の行政ができるという従来の通牒は、私は今まで六、七年の問適法にそういうことで運営されて来たと考えまするし、また法律的な見地から申しましても、いろいろ議論はあるとは思いまするが、これがそう無理な解釈でもないと、かように考えますので、従来の通牒につきましてはその通りにいたしまして、特に療養生活の者だけを法律改正の場合に触れたわけでございます。
○島上委員 法律改正の当時のいきさつ、それから理論はわかりました。私も学生……(「われわれはそんな意味でやつたのじやない」と呼ぶ者あり)不規則な発言はやめてください。(「三浦君の意見はそうかもしらぬが、委員会の意見じやない」と呼ぶ者あり)それは疑義があつたらあとで速記録を調べることにしましよう。私も、学生の社会生活の中心はやはり学校へ行つて学問する場所である、こう考える。従いまして、私ども従来の取扱いに対しては何ら疑義も持たかつたし当然であると信じておりましたが、六月十八日突如として、それこそ突如として、金丸選挙部長の名によつて二つの例示までをして、「その学資の大半を郷里から仕送りを受け、休暇等に帰省する者の住所は、郷里にあるものと認められる。」と、きわめてはつきりと、従来の解釈とは全然逆な、従来の通達とは全然逆の通達を出されたわけです。今も議論しておりまして、この問題は非常にむずかしい問題だと言われておりますが、こういうようなむずかしい疑義のある問題を、国会の開会中に——六月の十八日といえばまさに前国会の開会中です。本委員会も成立しておつて、ときどき委員会をやつておつた。そのときにそういう問題を、一選挙部長と言つては失礼かもしれませんが、選挙部長の名によつてかつてに——まあ自治庁で相談されたとおつしやいますが、私どもから見れば少くともかつてです。かつてに出された根拠は一体どこにあるかということを明らかにしてもらいたい。
○金丸説明員 先ほど申し上げましたように、私どもは、公職遣挙法に申します住所は民法二十一条の住所だ、かように、考えております。また、戦前におきまする学生の下宿とか寮とかいうのは、寓居とかあるいは居所寄留をしておるというようなことに徴しましても、住所ではないのではないかというふうな考えでおつたのでございまして、先ほども申し上げました通りに、現行の法制のもとに各種の法律等を総合して考えますならばならば、やはり住所をそのように考えなければならない、諸般の事情から、現在明確に一般の有権者と同じように住所の認定を行わなければならない、そうすれば二十一年の通達をやはり変更しなければならない、こういう結論に達したわけでございます。私どもはこれが当然と考えておりましたので、疑義を持ちますれば、もちろん国会にお諮りをして立法的な措置をお願いをすべきであつたと存じます。また、そうでなくても、立法的措置を講じました方がベターであつたと先ほど申した通りでございますが、私どもといたしましては、法律の解釈は政府の責任でございます。それについて庁議で諮りました結果、疑いを持ちませんでしたので、六月に通達を出したような次第でございますので、その点は御了承をいただきたいと存じます。
○島上委員 法律解釈の結果当然だと思つた、こうおつしやいますが、その当然はあなた方の独断であつて、今三浦法制部長の説明によつて明らかにされたところとは全然食い違つておる。そういう全然食い違つておることを当然だとひとりぎめにして出して、出したあとは、御承知のように非常に大きな波紋を巻き起しているわけであります。これは、あなたは見えていなかつたけれども、この前質問をいたしました際に、仙台の高裁でそういう判決があつたから出したというような答弁があつたように記憶しておりますが、その点は仙台の高裁の判決とはどういう関係があるか伺います。
○金丸説明員 事後でございますけれども、法務省や内閣の法制局のようなところでも私どもと同じ考えでございまして、その点はあながち自治庁だけの独断とは考えておりません。仙台の高等裁判所での判決ですが、私どもは、実は、昨年のよほど早くから、この問題につきましては、学生の住所認定の基準と他の住所認定の基準との間に齟齬があるから、何らかの是正を要すると考えて研究をいたしておつたのであります。そういうやさきに、御承知のような判決がございました。私どもといたしましては、その判決は最高裁判所に参りましてもおそらくはひつくり返らないという見通しを持つておつたのでございます。従いまして、私どもとしては、その判決も一つの参考に——一つのと言いましようか、重要な参考にいたしたのでございますが、そのような判決がございましたことは、実は御承知のように、青森県の五戸町の選挙管理委員会では郷里にあると認定した、そうして訴訟が起きたのでございます。県の選挙管理委員会は、内務省の昭和二十一年の通牒に反するからというので、当選無効の採決をしたのでございまして、これが町の選挙管理委員会の認定通りの判決になりました。従つて、県や市町村の選挙管理委員会から、内務省の通牒通りに今後も住所の認定をやるのか、仙台の高等裁判所の判決通りに改めるのか、いずれかはつきりしてもらわなければ、県の選挙管理委員会としても、市町村の選挙管理委員会としても、名簿の調製上不安である、だからはつきりと自治庁の解釈をしてくれということをいろいろと言つて参つておつたのでございます。しかし、御承知の通り昨年は十月の解散がございました。ことしもまた四月に解散等がございましたので、選挙人名簿の調製に早く着手いたしましたところで大体六、七月のころになりますから、六月の時期を選んで出した、これが偽らない実情でございます。
○島上委員 いろいろと揣摩臆測するのはいけないけれど、私はどうも何らかの政治的意図があるような気がしてしかたがない。しかし、それはそれとしまして、この選挙部長の出した通達を見ますれば「学資の大半を郷里から仕送りを受け、」云々、二項では「主として自己の収入によつて生計を維持している」云々、あとの通達では「専ら学資の出所如何によつて住所の認定が行われるやに誤解している」云々、こういうふうに書いてありますけれども、この前の通達を見ますれば、もつぱら経済的な金の出所いかんにかかわるように解釈するよりしかたがない。これは誤解じやなくて、正しく解釈してそういう結論が出ると思うのです。学生生徒も一般選挙人と同様に扱うんだ、特別扱いをしてはならぬ、こういうことをうたつておりながら、このようにしておりますが、先ほど私が言いましたように、それでは一般人で、その人の生活が他から仕送りを受けているおめかけさんであるとか、その他失業して仕送りを受けているとかいつた場合に、調査した事実があるかどうか。調査させているかどうか。もし調査させていないとするならば、学生と一般人と区別しているということになる。その点を伺いたい。
○金丸説明員 仕送りを受けておる場合に学生の住所が親元にあるというふうに、いろいろほかの事情ももちろん参酌いたしますけれども、認定をいたしますが、逆に仕送りをしておりますために、むしろ家族の方に住所があると認定する場合もたくさんございます。妻子を置いてほかへ出かせぎに行つておりますとか、あるいは役所、会社等から転勤を命ぜられて参りますけれども、家庭の事情からどうしても妻子を、年寄つた両親なりあるいは財産等の関係上、郷里に残しておかなければならない、こういう場合には、有権者であり、社会生活はそちらで営んでおりますけれども、その家族のところに住所があると認定する場合があるのでございます。これは仕送りをしておる主人のところに家族や扶養されているおじいさん、おばあさんの住所があると認定するのではなくて、逆に仕送りをしておりますから、両方の関係を総合的に考えまして、仕送りをしておる人が仕送られている人々のところに住所があると認定をいたしております。これは地方税関係で住民税を徴収いたしますのに、家族の所で住民税を納めさせるか、本人が現在住んでおる役所とか会社等のある所で住民税を納めさせるか、そのほかの法律上の関係におきましても、やはりこの仕送りその他の経済関係を全然無視するわけには参りません。生活の本拠を認定します上には非常に重要な要素であると私は思つておるのでございます。仕送りというのは、仕送る人と仕送られる人との関係を法律的に総合的にどういうふうに判断するかということの一つでございます。だから、仕送つておるから、仕送られている人の住所は仕送つている人の住所にあるとは認定いたしませんで、保安隊なんかの場合には、むしろ仕送つておるというような事実がございましても、やはり親元の方に保安隊員の住所があると認定をいたしておるのでございます。これは金をもらつておるということだけでなく、それは一つの要素であつて、送つておる人と送られておる人との間を法律的にどういうふうに把握するかという一つの重要な要素とわれわれとは考えておるのでございます。
○島上委員 二度目の通達で「専ら学資の出所如何によつて住所の認定が行われるやに誤解している向が極めて多い」と一言つて通達を出しておりますが、これだけを見ますと、何が何だかさつぱりわけのわからぬところがある。その結果、選挙管理委員会は非常に混乱を起しているという話ですが、それではもつぱら学資の出所如何によらないで、その他の諸般の事情をも総合的に調査し考察してきめるんだということになりますと、一体その他の諸般の事情とはどういうことであるか。それからまた実際問題として、学生の場合でも、あるいは学生以外の人の場合でも、そういうその他の諸般の事情ということが選挙管理委員会の手によつて遺憾のないように調査できるかどうか。その他の諸般の事情を総合的に調査するということは、実際上不可能に近いほど困難だという御答弁が先ほどあつた。私も実際そうだと思うのです。そうだとするならば、これは学生の選挙権に対して重大な問題を起すという結果になると思うのです。一体その他の諸般の事情ということはどういうことをさすのか、それが選挙管理委員会の手によつて実際上調査が可能であるかどうか、こういうことについて承りたい。
○金丸説明員 先ほどもちよつと例を申しましたが、妻子を置いてよそへ行つておるというような場合におきまして、私どもは原則としてはやはり家族のところにあるというふうに考えておりますが、あるいは勤務の状況とか、触れておる先にも完全に一軒世帯を持つておる、相互の独立性が非常にあるというような場合には、家族とは別個に住所をそちらの方に移しておる、こういうふうに認定する場合もあるわけでございますから、その世帯を構えている状況、あるいはそこから家族のところへ帰る回数とか、あるいはそこに居住をしている期間、そういうような事情等を参酌をいたしまして、総合的に、と申しましようか、考え合せて、独立の住所を持つているのか、家族の方にあるというべきなのか、またこういう場合にはあなたどういうふうにお考えになりますかと、もちろん本人の意向等もよく聴取してきめるわけでございます。だから、そういう意味におきまして、住所は具体敵にいろいろと調べなければならないのでございますが、実際問題として四千五百万の有権者、実際にはそれ以上の人にわたつて調査をいたさなければなりませんので、御承知のように申告書と申しましようか、あるいは調査表と申しましようか、こういうものを配付し、あるいはいなかの方に参りますと、区長とかそういうふうな世話人でございますが、こういう人々はよく住民の実情を知つておりますので、こういう人が調査したものに基きまして、名簿の調製をいたしているわけでございます。今回学生につきまして特別な調査と申しましようか、いたしましたのは、従来と扱いがかわりまして、従つて一般の人よりも念入りに調査をしなければ厳密な住所の認定ができないというだけでございます。だから私どもは、一般人以上に特別な調査をやつて、それに基いて選挙権に差別を与える——選挙権に差別を与えますならば、私どもも憲法の精神に反すると存じますけれども、職権調査の建前上厳密に住所を認定いたしますために必要な調査を行つているのでございまして、何ら実質上学生とその他について取扱いを異にする。差別の待遇をいたしているとは考えておりません。
○島上委員 どうも質問に対する答弁が少しビントはずれのような気がします。さつき私が言つたことに対して、もう一ぺんはつきり御答弁願いたいですが、学生と一般人と取扱いを別にしないというならば、さつき私が言つたように、失業をしているとか、病気をしているとか、めかけであるとか、他から生活の経費の相当部分——この学生の通達によると、大半の援助を受けているという場合の調査を今までしておるかどうか。またそういう通達を発しておるかどうか。めかけを持つて本妻のところに三日くらいしかいないで、あと二十七日もめかけのところへ行つているという主人の選挙権は一体どつちにあるのかというような問題も、実際上調べているのかどうか。調べるなら調べる、調べることができないなら調べることができないという点も、はつきりしてもらわなければ、学生と一般人を同様に扱つているということにはならぬ。その点をひとつはつきりお答え願いたい。
○金丸説明員 御質問は失業者と病人とめかけの、この三つであつたかと思いますが、私見を申し上げますと、病人でありますればその人が普通に生活をしておるところに生活の本拠があるわけでございまして、療養費についていろいろな人から補助してもらつているということによつて住所はかわるということはないと思います。失業いたしております場合には、国から失業手当等をもらつておると思いますが、これは国によつて手当をもらつて生活をするというのがその人の生活の常態でございます。従つてその人が現在住んでおるところに選挙権がありますので、別に国からもらつておるから日本銀行にあるとか、国会にあるとかいうことはないと思います。まためかけと申しますと、非常に語弊があるかもしれませんが、これも一つの社会生活の常態と申しましようか、そういう一つの生活形態が現にあるわけであります。それがその人の生活の実情でありまして、その住んでおるところにその人の住所があると認定するのは当然であります。別に金をもらつているから、そこを離れてよその方に住所があるというふうには私は考えておりません。
○島上委員 そうだとするならば、学生は親元から三千円を受けているか、五千円受けているかによつて学生の住所をきめるということはおかしいと思うのです。学生は学校へ行つて学習をしているということが社会生活の常態であつて、その者の学資がどれだけどこから出ておるかということによつて住所をきめること自体がおかしいと思う。これはまつたく独断であつて、私どもの了承できない点です。しかも、さつき私が言いましたように、あとの通達では、半分取消したような取消さぬような、わけのわからぬ通達を出しておりますが、この六月十八日の通達に対しては、取消すとか、修正するとかいう言葉が一言もないわけでありますから、基本的にはこれを認めておる、しかも九月二十一日の本委員会において撤回すべきものであるという動議が可決した後に出された通達なのです。この通達によつて、前に出された誤解を解くということを言つておりますが、一体どこが誤解なのか、何をさして誤解していると言つているのか、何が一体それじや正解なのかというような点が、少しもはつきりしていないのです。そこで、あなたがもし学資以外の総合的なその他の事情と言うならば、具体的に学生についていえば、学資は五千円もらつているが、その人のこれこれの条件が寮もしくは寄宿舎を住居と認める条件であるという、その他の条件とは一体どういう条件のことをさすのか、その他の条件がもしなければ、結局は金の出どころ——人間のいるところが選挙権のある場所でなくて、金のあるところが選挙権のある場所、こういうことになつてしまうのです。ある新聞の論評に、人間が投票するのでなしに、これでは金が投票するのだという酷評もありましたが、そういうふうに思われてもしかたがないという点があろうと思います。その他の諸般の事情、諸般の条件とは一体どういうことをさすかということを、もつとはつきりしてもらいたい。
○金丸説明員 住所の認定は、個人個人につきまして事情が千差万別でございますから、一概に言えませんけれども、たとえば仕送り等を受け帰省をするというような事実がございましても、たとえば東京に母親なら母親と二人で一軒家を借りて遊学している、そうして相当独立していると認められるような事情もございましよう。また結婚をしているというような場合もあろうかと思います。こういう場合には、生活としての独立性が認められるのではないか、かように考えておるのであります。従つて、こういう場合には、やはり修学中のところに住所があると認定していいのではなかろうか、こういうように考えておるわけでございます。
○島上委員 意見の違いは意見の違いとして、あとで法律改正の際に私ども十分に述べたいと思いますが、この六月十八日並びに九月二十九日の二度の通達の結果、先ほどの答弁によりますと、地方の選挙管理委員会はほぼ遺憾のないように調査が進んでいるかのような答弁でありましたが、私どもの聞いているとこによると、事実は相当これと違つておる。ある二、三の選挙管理委員会においては、それこそ調査が非常に困難で手をあげてしまつて、従前通りで行くということを申し合せたところがある。またその他のところもありましようが、選挙管理委員会によつて非常にまちまちである。その結果、まだ本年度の選挙人名簿が確定いたしませんけれども、もし十二月二十日に至つて確定しますれば、昨年の選挙人名簿と比べて、本年は、現実にそこにおる、昨年の選挙人名簿に登載されておつた者でも、選挙人名簿から脱漏する場合が相当起きて来ようと思います。これはもう学生に対する選挙権の剥奪だ、こう言われてもしかたがないことになるのではないかと思う。私どもは、そういうきつい言葉を使いたくないけれども、相当多数の学生の選挙権が、この通達による調査の結果によつて、十二月二十日に確定しなければわかりませんけれども、そういう結果が起ろうと思うのです。そういうような多数の学生の選挙権を取上げてしまう、あるいは多数の学生がそのために棄権をするというようなことになりますれば、これは日本の選挙に対して重大な影響を与えることになろうと思います。多数の学生から実際上選挙権を取上げてしまう結果になり、多数の学生が棄権をするという結果になることに対しては、あなたはどういうふうにお考えになつておりますか。
○金丸説明員 私は、先ほど申し上げましたように、住所の考え方を法律に忠実にして今後名簿を調製して行くという趣旨のもとに、今回の通達を出したものでございます。その結果、従来と認定の基準がかわつて参りましたので、郷里と申しますか、そちらの方に住所を認定されて選挙権を移される学生が生じて参りますことは、やむを得ないと考えております。その結果不在者投票をいたしますことは、それは現地で投票をいたしますよりも、確かに不便ではございますが、本年度は初めてでございますので、今度そういう意味で学生諸君にもよく関心を持つていただいて投票をするようにしてほしい、かように考えるのでございます。それからまた、場合によりますと、現在住んでいる寮や下宿等のあるところに住所があると認定をしてもらうよりも、郷里の方にあるという気持で認定をしてもらつた方がいい、自分はそちらの選挙に関心を持つておるというような学生も、地方の大学等に参りますと、私はあると思うのでございます。この点は、一概に学生諸君の気持に反しておるというふうにも言えないのではないか、私はかようにも考えられるように思つております。
○島上委員 おそくなつたし、まだ二、三質問者もおるようですから、私はもうそろそろおしまいにしようと思うのですが、不在者投票の方法があるとおつしやいます。しかし、ここで資料があつたら伺いたいのですが、不在者投票の投票率というものはきわめて低率なんです。これはあなたも御存じだろうと思います。おそらく私は、一般の投票者が六〇%ないし七〇%の際に、不在者投票の投票率は二〇%前後ではないかと思うのです。ですから、その他は全部棄権するということになるわけです。これは最近の一つの実例ですが、釧路で市長及び市会議員の選挙があつた。釧路から東京に来ている人に、あなたの投票権は釧路にあるから、釧路で投票しなさいという通知が行つた。これは一体投票できますか。汽車で三日もかかる。何のことはない、これは棄権を強要しているようなものです。こういうふうにして、実際問題としては、学生が棄権を強要され投票権を取上げられているという事態が起つているのです。私どもは、だからこそ、今度の委員会において、何とか合理的な立法措置を講じたいと思つて考えているわけですが、こういうような事実が起つているのに、不在者投票の方法を活用してほしい、学生の諸君も選挙に関心を持つてほしいと言われる。選挙に関心を持つには、選挙の際に演説を聞いたり、公報を見たり、顔を見たりしなければ、関心を持てない。東京の学校におつて、釧路の市長にだれが立つておるか、市会議員にだれが立つておるかわかりはしないのに、関心を持とうと思つたつて持ちようがない。従つて、よしんば不在投票の方法を活用しようと考えても、投票のしようがないという結果になつてしまう。こういうことは、私は学生の基本的な人権を蹂躙するものだと言つても過言ではないように思われる。こういうような多くの混乱が現に全国各地で起つておりますので、自治庁においては、先ほど、選挙制度調査会に諮問しておる、その諮問を待つて立法措置を講じたいと言つておりますが、私どもは、できるならばこの国会で疑義のない明確な立法措置を講じたいと思つております。その点に対する自治庁のお考えはどうでしようか。
○金丸説明員 先ほど申し上げましたように、私どもは民法の住所が選挙法に言う住所である、公職選挙法上も、地方自治法の十条に申します住所も、また地方税法の住民税を納める住所も、同じ民法の二十一条に言う住所ではないかと考えておりますけれども、いろいろな反対のお説の中には、そういうふうに考えないでいいのではないか、こういうような御意見があるのでございます。従つて民法という基本法でございますが、これと公法との関係もございますし、また私どもの住所の認定の仕方に対しまして、島上先生にはなかなか御納得をしていただけないのでございますけれども、私どもが従来やつております住所の認定の基準としては、今申し上げた通りでございます。また、地方税法に規定しておりまする住民税の住所の認定も、ほぼ同じような考え方で扱つております。こういう点につきましても、はたしてそれが妥当かどうかというような、相当に法律論としてこまかな問題でございますと同時に、また民法と選挙法、あるいはほかの公法との関係で、法律的に相当つつ込んで研究をいたさなければならない。結果としては政治的にも重要な問題であろうかと思いますけれども、解決をいたします道程には、相当に純粋な法律的な問題もございますので、できますならば若干時日をかしていただきまして、選挙制度調査会の結論を得て、法律案を提出いたしますなり、あるいはそれを参考にしていただいて、立法化していただいてもよろしいかと思いますけれども、私どもといたしましては通達を契機にしてこういう問題を生じましたので、それに対する責任上と申しましようか、調査会にはかつた上で、成案を得て国会の御審議を仰ぎたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
○森委員長 それでは本日はこれにて散会いたします。 午後五時五十六分散会